科学的根拠に基づくADHDサポートアプリ「Inflow」がシードで約2.6億円を調達

注意欠陥・多動性障害(ADHD)の症状には、不安、慢性的な退屈、衝動性、集中力が続かない、怒りのコントロール、さらにはうつ病などがある。しかし、ADHDの患者は、評価を受けるための長い待機期間や、非常に高価な治療に直面することが多い。

2020年に設立されたあるスタートアップは、臨床医やコーチのチームの知識をアプリに注ぎ込み、ADHDの症状に対処するためのガイド付きプログラムを提供することで、この問題を解決しようとしている。そのために、Inflowは、ユーザーが認知行動療法(CBT)の対処ストラテジーを日常生活に導入できるようにすると主張している。

2020年、InflowはRhythm VCとエンジェル投資家から68万ドル(約7800万円)を調達した。同社は今回、ロンドンのHoxton Venturesが主導するラウンドでシード資金として230万ドル(約2億6400万円)を調達した。

Y Combinatorr(YC、Yコンビネータ)の21バッチ卒業生であるInflowは、米国を拠点とするRoute 66 Venturesの参加も得ている。

また、複数の著名なエンジェル投資家が同社を支援しており、その中には、依存症デジタルクリニック「Quit Genius」の共同創業者Yusuf Sherwani(ユスフ・シェルワニ)氏、Maroof Ahmed(マルーフ・アーメド)氏、Sarim Siddiqui(サリム・シディキ)氏や、法律サービスのチャットボット「DoNotPay」のCEOであるJoshua Browder(ジョシュア・ブラウダー)氏らが含まれている。

ただし、このアプリはまだ独立した臨床試験を経ていないことを指摘しておかなければならないが、同社によれば、それは年内に予定されているという。

同社の広報担当者は次のように述べている。「臨床試験の準備として、米国リッチモンド大学のLaura Knouse(ローラ・ノウス)博士と共同で、ユーザビリティとフィージビリティの研究を行いました。この研究では、事前と事後の症状と機能障害の評価を行い、Journal of Attention Disordersに投稿しました」。

Seb Isaacs(セブ・アイザックス)氏、元Babylon HealthのプロダクトマネージャーであるLevi Epstein(リーバイ・エプスタイン)氏、ADHDの専門家であるGeorge Sachs(ジョージ・サックス)博士によって2020年に設立されたInflowは、今回の資金調達によりチームを拡大し、追加ツールやサービスを展開していく。

InFlowのアプリ

Inflowは「SimpleMind Pro」「Brain Focus」「Focus@Will」などのアプリが存在するADHDアプリ市場の中で競合することになるが、実際のところ、ほとんどのアプリは、ADHDの当事者が使用できる可能性のある生産性向上アプリとして宣伝されているに過ぎない。

Inflowの仕組みは、ユーザーが毎日の短いエクササイズや課題をこなすことで健康的な習慣を身につけ、スキルを学び、ADHDに特化したマインドフルネス技術を実践し、自分の神経学的な差異を知り、ネガティブな思考をリフレーミングするというものだという。

Inflowは、毎月1万5千回以上ダウンロードされているとしている。

共同創業者のSeb Isaacs(セブ・アイザックス)氏はこう述べている。「私たちは、ADHDのケアプロセスを簡素化し、ケアが行き届いていない何百万人ものADHD患者にリーチできると確信していました。Inflowは、すでに多くの課題を抱えているメンタルヘルスシステムでは実現できない、即時かつ手頃な価格のオンデマンドサポートを提供することができます。ウェイティングリストや紹介の必要もなく、複雑な受け入れプロセスもありません」。

Hoxton VenturesのパートナーであるHussein Kanji(フセイン・カンジ)氏は次のように述べている。「ADHDを持つすべての人に成功して欲しいというミッションをInflowが果たすのを見守ることができて光栄です」。

画像クレジット:InFlow founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

ペプチド医薬品開発を手がける宮崎大学発「ひむかAMファーマ」が総額6億円超のシリーズB調達、創薬開発を進展

ペプチド医薬品開発を手がける宮崎大学発「ひむかAMファーマ」が総額6億円超のシリーズB調達、創薬開発を進展

難病指定の潰瘍性大腸炎などに向けたペプチド(アミノ酸の結合体)医薬品を開発するひむかAMファーマは1月14日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による追加資金調達をクローズしたことを発表した。シリーズBの調達総額は6億円を超えており、シリーズAラウンドからの累計調達額は12億円を突破した。シリーズBラウンド追加資金調達に参加した主な投資家は、Fiducia GrowthTech投資事業、ナントCVC2号投資事業(南都キャピタルパートナーズ、ベンチャーラボインベストメント)など。

調達した資金を用いて、開発品「HM201」のオーストラリアでのPhase1試験などの創薬開発を実施する。HM201の主成分は、ひむかAMの共同創業者である北村和雄氏(宮崎大学特別教授)が発見したペプチド「アドレノメデュリン」(AM)をベースに新規開発したもの

ひむかAMは、2017年2月に設立された宮﨑大学発のスタートアップ企業。多彩な生理活性を有するペプチドホルモン(アドレノメデュリン)をベースとした創薬開発を行っている。HM201は、炎症性腸疾患に対する新たな治療薬として開発が進めており、2021年12月からオーストラリアにおいて、現地子会社であるHimuka AM Australia Pty Ltd.においてPhase1試験を開始している。

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化し効率化する電子ワークシートの共同開発を開始

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化・効率化する電子ワークシートの共同研究を開始

大阪大学医学部附属病院とヘルステック企業TXP Medicalは1月11日、治験や臨床研究のデータ収集を標準化し効率化することを目的とした電子ワークシート(症例報告書)開発のための共同研究を開始すると発表した。治験や臨床研究の現場担当者の負担を軽減し、医薬品、医療機器開発の発展に貢献するという。

通常の診療とは異なり、治験では特別な臨床データの収集が必要となる。通常それら被験者情報は、紙媒体のワークシート(症例報告書)に記入され管理されている。臨床試験値など、病院内でデータ化され電子的に管理されている情報であっても、医師や臨床研究コーディネーターがそれをワークシートに転記して、さらに治験依頼者が用意したEDC(Electronic Data Capture System)に打ち込むという作業が求められることもある。

その結果、電子カルテ、ワークシート、EDCと3つの異なるデータソースの整合性を確認する必要が生じ、ワークシートに修正があれば、整合性確認をその都度行わなければならなくなる。担当者の負担は増大し、多くの時間も食われる。転記ミスやチェック漏れなどのヒューマンエラーが起きる恐れも少なくない。

大阪大学医学部付属病院とTXP Medical、治験や臨床研究のデータを標準化・効率化する電子ワークシートの共同研究を開始

そうした手作業を軽減しようと、電子ワークシートの開発が開始された。まずは、過去の治験のデータを使って電子ワークシートのシステムを開発し、実現可能性の評価を行う。ベースとなるシステム開発完了後に、実際の治験や臨床研究に適用し、さらに評価を行うとしている。

電子ワークシートによって、業務の流れは以下のようになる。

  1. 電子カルテ入力時にテキスト構造化システムを用いて患者基本情報や基礎疾患情報、有害事象と考えられる記載を自動抽出し構造化
  2. 治験特有の評価項目を電子ワークシートに入力
  3. 他院の服薬情報や臨床検査値はOCRで院内環境の電子カルテより抽出し構造化
  4. 院内ネットワークに構築された治験に必要な構造化データをQRコードに変換し、院外ネットワークの電子ワークシートに統合

電子ワークシートは、2022年3月末をめどに大阪大学病院所属のCRCグループと共同でブラッシュアップし、仕様を決定する。そして4月末をめどに効果推定を行い、大阪大学病院の新規治験で試験活用が開始される。実用性が確認された段階で、他の医療機関にも展開を開始する予定。

漕いで漕いで漕いでスマホを充電、トレーニングを電力に変えるSportsArtのジム用マシン

サプライチェーンからトレーニングジムのメンバー基盤まで、すべてをずたずたにしたパンデミックの中、プロフェッショナルグレードのジム用マシンメーカーのSportsArt(スポーツアート)が、電力網にエネルギーを戻せるローイングマシンを発売したのは、ちょっと夢のある話だ。風力発電やソーラーパネルと違うのは、動力が胸筋と三角筋と僧帽筋だというところだ。

このローイングマシンではマイクロインバーターで、ひと漕ぎごとの運動を携帯電話の充電に変える。同社の試算によると、放電状態のiPhoneをフル充電するには約2時間のボート漕ぎが必要だ。ちなみに私はバッテリーが切れそうな携帯電話をエクササイズマシンに乗るモチベーションに変えることにしばらくの間、興奮を覚えた。ハンドルバーのグリップには漕ぐ抵抗を増やすコントロールがあるので、ご想像のとおり、抵抗を増やせば発電力が高くなる。

同社はこのG260ローイングマシンを先週ラスベガスで行われたCESで披露し、漕手が出力したエネルギーの約74%を利用可能な電力に変換できると語った。私は今週、同社のCOOと話す機会があり、人力を使って電気を作ることになぜ意味があるのかを尋ねた。

「1時間のワークアウトで、概ね冷蔵庫の消費電力、約200ワット時が生み出されます」とSportsArtのCOOであるCarina Kuo(カリーナ・クオ)氏が説明した。ただし、ボートを漕いでTesla(テスラ)を充電するのはまだ無理だと彼女は認めた。ポイントはそこではない。「通常のトレッドミル(ランニングマシン)は1時間当たり約1000ワットの電力を消費します。ワークアウトするだけでなく、ワークアウトの消費電力を相殺する手助けができるというのが私たちの考えです」。

SportsArtは創業40年以上になる会社だ。本社は台湾で、米国の事業拠点はシアトルにある。さらに同社は、ドイツとスイスにも事業所を持ち、300人の従業員が世界に散らばり、80カ国で営業活動を行っている。主要なターゲットはトレーニングジムと体力をつけるためのリハビリテーション施設だが、現在ホーム市場も評価しているところだ。短期的には、マンションなどの共用ジムが同社にとって最適な対象だとクオ氏は言った。

「特にフィットネス業界では、新型コロナウイルス感染症のためにジムを稼働できないことが、家庭向け販売の爆発的増加につながっていることにまちがいありません。そこは競争が非常に困難な分野で、なぜならほとんどの購入者は安い製品のことを考え、必ずしも質を求めていないからです。これは当社が競争したい場所ではありません。私たちは品質の重要性を信じています」とクオ氏は説明し、同社が10~15年前に販売したエクササイズ器具を今でもメンテナンスしていること、今もジムや医療現場で業績をあげていることを話した。「私たちは最良の部品を使うことにこだわり、あらゆる部分を業界最高の保証で守っています。市場でこのような差別化要因を持てることは重要だと固く信じています」。

業務用マシンが主であることは、マシンがジムの片隅で95%の時間使われずにいるのではなく、発電し続けているほうがいいということを意味している。利用回数が大きく増えれば、マシンはジムの電気代にインパクトを与えられるかもしれない。

「私たちは家庭市場に進出しようとしているわけではありません。今は最適なターゲットを探しているところです」とクオ氏は説明し、同社の過去40年間のグリーンとリサイクルへの取り組みを強調した。「ジムでは特に違いが生まれます、なぜならサステナビリティのメッセージを発信できるからです」。

画像クレジット:SportsArt

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ジャーナリングが可能な書く瞑想アプリmuuteによる学校共同プロジェクトがスタート、第1弾は9校の中高生約200人が参加

AIジャーナリングアプリ「muute」(Android版iOS版)を開発・運営するミッドナイトブレックファストは1月11日、生徒の自己理解力の促進やメンタルヘルス向上を目的とする学校共同プロジェクト「mutte for school β」の開始を発表した。第1弾として北海道、東京、静岡、大阪、高知から9校の中学校・高校より約200人が参加する。

ジャーナリングとは、欧米で人気のメンタル・セルフケアやマインドフルネスの手法のひとつ。頭に浮かんだことをありのままに書き出していくもので「書く瞑想」とも呼ばれる。自分の思考や感情、日々の行いを振り返り文字として書き出すことで心身の健康と自己肯定感の向上に効果があるという。muuteは、このジャーナリングを行えるうえ、書き出された内容や関連する感情や思考をAIが分析しフィードバックしてくれるアプリ。今まで気づけなかった自己の感情の揺れ動きや思考パターン、価値観などを発見できるとしている。

コロナ禍での生活により多くのストレスがかかるようになり、メンタルの不調を訴える人が増加しているという。若年層においても中程度のうつ症状を持つ子どもの割合が、高校生では30%、中学生は24%に上ることが明らかになっている(国立成育医療研究センター「『コロナ×こどもアンケート』第4回調査報告」)。

また学校現場では、自己の生き方や興味・関心のある分野を明らかにする「自己理解力」、必要な情報を収集し適切に整理・分析を行う「批判的思考力」、主体的に課題設定を行い解決に取り組む「主体的行動力」など非認知能力を高める取り組みが必要とされている。非認知能力とは、意欲・協調性・創造性・コミュニケーション能力といった、測定できない個人の特性による能力のこと全般を指し、OECDでは社会情緒的スキルと呼んでいる。

具体的には、学習指導要領の改訂により、高校において2022年度から「総合的な探究の時間」という新科目が実施される。人権問題や気候変動といった多様な社会課題を考えながら、個人的な興味と関心を基に「自己の在り方生き方」を考え自ら課題を発見し解決することを目的とするものだ。しかし具体的な指導方法の前例が少ないため、多くの学校で授業内容を模索する段階が続いている。

ミッドナイトブレックファストは、若者のメンタルヘルスの影響や学校教育現場の実態から、生徒の自己理解力の促進やメンタルヘルスのセルフケア手法において何か施策を提供できないかと検討する中で、教育機関との共同プロジェクトとしてmutte for school βを開始することとなった。同時に、自己理解やメンタルヘルスに関する状態変化などの効果検証と、実際の学校教育におけるmuuteアプリの活用および導入方法を検討する取り組みとしても行われる。

プロジェクト参加校は、札幌新陽高等学校(北海道)、ドルトン東京学園中等部・高等部(東京)、三田国際学園中学・高等学校(東京)、日本大学三島高等学校・中学校(静岡)、追手門学院中学校・高等学校(大阪)、大阪夕陽丘学園高等学校(大阪)、常翔学園中学校・高等学校(大阪)、四條畷学園高等学校(大阪)、土佐塾中学・高等学校(高知)の9校で、参加者は中学1年生から高校3年生までの約200人。実施期間は2021年1月11日~1月31日。

イヤホン型脳波計とニューロテクノロジーAIを手がけるVIE STYLEが1.8億円調達、ブレインテック領域の研究開発を強化

イヤホン型脳波計とニューロテクノロジーAIを手がけるVIE STYLEが1.8億円調達、ブレインテック領域の研究開発を強化

イヤホン型脳波計とニューロテクノロジーAIを開発するVIE STYLE(ヴィースタイル)は1月13日、総額約1億8000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は、AIX Tech Ventures、静岡銀行、静岡キャピタル、フィンテック グローバル、FUNDINNO(クラウド株主)、個人投資家。調達した資金により、ブレインテック領域での研究開発および採用・組織体制の強化を行う。

2013年8月設立のVIE STYLEは、「味わい深い人生を 〜Feel the life〜」をビジョンに掲げるスタートアップ企業。ブレインテックと音楽で、人々の感性をアップデートし、ウェルビーイングに貢献することを目指している。世界中の人々が感性豊かな人生を送ることを支援するサービスを創造するともに、脳神経に関わる未来の医療ICT・デジタルセラピューティクスの発展にも寄与したいという。

同社第1弾プロダクト「VIE ZONE」(ヴィーゾーン)は、イヤホン型脳波計で外耳道から脳波を取得し、独自開発のAIエンジンにより、集中度およびストレス・疲労などを解析するという。音楽を用いて脳をチューニングすることで、ストレスの軽減やフロー状態へ導くことを目的とした生産性支援サービスとなっているそうだ。

また、自社製品開発と同時に、通信インフラ企業、製薬企業および国立研究機関などとともに、脳科学を用いたソリューションの共同研究開発事業を実施しており、直近では2桁以上のプロジェクトを進めているという。特に、疾病の予防・診断・治療などの医療行為をデジタル技術を用いて支援・実施するDTx(デジタルセラピューティクス)の研究開発、社会実装に取り組んでおり、様々な疾患に対して、これまでにない新しい治療法の開発を目指している。

 

ヘルスケアテックの仏Doctolibが暗号化スタートアップTankerを買収

フランスのスタートアップDoctolib(ドクトリブ)は、米国時間1月11日にTanker(タンカー)の買収手続きを完了する見込みだ(当局への提出書類による)。Doctolibはフランスのユニコーンで、医者や医療従事者の管理業務を支援する「サービスとしてのソフトウェア」を開発している。具体的には、医者と患者を引き合わせる予約プラットフォームとして機能し、ヨーロッパで30万の医療専門家が有償で利用し、6000万人の患者がDocolibを利用している。

Tankerは、医療テック企業がユーザーデータを安全に管理するのを支援するスタートアップだ。同社はプロトコルを開発するとともに、ウェブアプリやモバイルアプリ、デスクトップアプリに統合するためのクライアントサイド開発キットを提供している。

アプリにTankerを統合すると、患者と医療従事者の間で共有されるメッセージやファイルがエンド・ツー・エンドで暗号化される。Tankerも、Tankerの顧客もファイルやメッセージを解読することは不可能で、それはプライベート暗号キーをアクセスできないからだ。つまり、送り主か受け手でない限り、データを解読することはできない。

医療業界に焦点を当てているTankerは、Doctolibの他に、医療保険スタートアップのAlan(アラン)や遠隔医療のスタートアップQare(ケア)の名前が同社ウェブサイトの顧客リストに載っている。2020年6月にDoctolibは、Tankerとの提携によって、エンド・ツー・エンド暗号化を導入したことを発表した。

ある情報源が、DoctolibとTankerとの取引の詳細がかかれた2022年1月3日の当局提出資料を送ってきた。2021年12月22日に提出された前回の資料も買収に言及している。いずれの書類もPappers(パッパー)で見ることができる。

「DoctolibはTankerという会社の株式を買い取る計画です」と弁護士が書簡に書いている。「この取引は2021年12月9日に署名された合意書に基づいて実行され、Tankerの株式資本の100%がDoctolibに移管されます」。

直近の提出書類では2022年1月11日が取引完了日となっていて、それは本日にあたる。別の情報源は、買収が現在進行中だと私に伝えた。TechCrunchはDoctolibに連絡を取ったが、本件については「ノーコメント」という返答だった。

法定書類によると、DoctolibはTankerを現金および株取引によって買収し、Tankerの価値を2800万〜3400万ドル(約32億3000万~39億2000万円)としている。

企業価値の謎

昨日私は、Doctolibの最近の指標と今後の製品リリースに関する記者会見について書いた。興味深いのは、Doctolibの共同ファウンダー・CEOであるStanislas Niox-Chateau(スタニスラス・ニオックス=シャトー)氏が、同社は「過去数年、調達ラウンドについて発表していません。毎年、毎四半期、投資家のみなさんは、当社の長期計画に基づいて、追加あるいは初めて投資しています」と語ったことだ。

関連記事:フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

遡って2019年、同社は企業価値が11億3000万ドル(約1302億9000億円)に達したと発表した。Doctolibが調達ラウンドについて話したのはそれが最後だった。

しかしそれは最新の調達ラウンドではない。例えばCharlie Perreau(シャーリー・ペロー)氏は、General Atlantic(ゼネラル・アトランティック)が2020年2月に6900万ドル(約79億5000万円)を同社に投資したことを指摘している。

同社の企業価値に関していうと、Tankerの買収に基づくとDoctolibの1株の価値は170.91ユーロだ。Doctolibの株数は約1800万株なので、Doctolibの企業価値は約30億ユーロ(約3932億2000万円)ということになる。

この評価額はDoctolibのユーザー基盤(30万人)とDoctolibの最低料金(月額129ユーロ[約1万6900円])を考えると低く感じる。おそらくDoctolibの株価は、Tankerの投資家への好意から、やや低くつけられているのだろう。おそらくDoctolibは、しばらく資金調達をせず、近々高い企業価値で調達しようとしているのだろう。今のところは謎のままだ。

関連記事:フランス、ドイツ、イタリアの30万人もの医師や医療従事者に使用されている仏Doctolibのツール群

画像クレジット:Doctolib

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グルーヴノーツと東京大学、マルチモーダルAIにより超音波検査画像と診療情報を統合した高精度な疾患画像判別モデル開発

グルーヴノーツと東京大学、マルチモーダル深層学習により超音波検査画像と診療情報を統合した高精度な疾患画像判別モデル開発

AIと量子コンピューターを活用できるクラウドプラットフォーム「MAGELLAN BLOCKS」(マゼランブロックス)を開発するグルーヴノーツは1月7日、東京大学医学部付属病院と共同で、人工知能を用いた医療画像と診療情報の統合による高精度な疾患画像判別モデルを開発した。同日付けで、学術誌「Journal of Gastroenterology and Hepatology」において論文を発表した。

研究グループが開発したのは、腹部超音波検査画像と診療情報をAIで統合した、肝腫瘤を判別するためのモデル。これまでの画像診断モデルは画像のみを学習させていたが、そこに診療情報を統合することで飛躍的に精度が向上するという。

肝腫瘤の早期発見で広く用いられているのは、腹部超音波検査だ。しかし、良性か悪性かを判断するには、CTやMRIで血流の状態を見る、つまり「質的な診断」を行う必要がある。研究グループは、画像と数値などの異なる種類のデータを同時に学習できるマルチモーダル深層学習(マルチモーダルAI)を用いて超音波画像診断と診療情報を統合することで、新しい肝腫瘤の疾患画像判別モデルを開発した。これを使えば、腹部超音波検査だけで質的な診断が可能になり、CTやMRIの放射線被曝のリスク回避や費用の削減にもつながる。

研究グループは、2016年4月から2018年11月までに東京大学医学部附属病院で腹部超音波検査を受けて肝腫瘤が発見された1080例(悪性腫瘍548例、良性腫瘍532例)に対して、グルーヴノーツのMAGELLAN BLOCKSでマルチモーダル深層学習を用いた判別モデルの作成と精度の評価を行った。

その結果、超音波検査のみに比べて、超音波検査に患者背景情報、肝臓の炎症情報、肝臓の繊維化情報、アルブミンの情報を統合したモデルでは、AUROC値が0.994(1に近いほど正確)と非常に高い精度が示された(ちなみに超音波のみの場合は0.721)。AUROC値はThe area under the receiver operating characteristic curve(ROC曲線下面積)の略で、判別モデルの性能を評価する指標の1つ。

超音波画像のみのモデル(左図)、マルチモーダル深層学習を用いて超音波画像に診療情報を統合したモデル(右図)の診断精度を示したROC曲線。この曲線の下の面積(青色部分)が大きいほど診断精度がいいということになる。診療情報を統合したモデル(右図)では、左上の欠けた部分が少ない良好な診断精度を示した

超音波画像のみのモデル(左図)、マルチモーダル深層学習を用いて超音波画像に診療情報を統合したモデル(右図)の診断精度を示したROC曲線。この曲線の下の面積(青色部分)が大きいほど診断精度がいいということになる。診療情報を統合したモデル(右図)では、左上の欠けた部分が少ない良好な診断精度を示した

こうした学習モデルでは、サンプル数が多いほど正確な判別が可能になるが、医学研究では患者の同意取得や倫理的な問題もあって大量の患者サンプルを入手することが難しい。しかし今回の研究で、マルチモーダル深層学習を使えば大変に高い精度での判別が可能になることがわかった。この手法は、他分野への応用も期待されるとのことだ。

アボットが、一般向けバイオウェアラブルの開発をCESで発表

米国の医療機器メーカーであるAbbott(アボット)は、一般消費者向けの多用途バイオセンシングウェアラブルの製造に乗り出そうとしている。

同社は、2014年から糖尿病管理用の持続血糖測定器(CGM)を製造しているが、米国時間1月6日にCESの会場で行われたヘルステックの基調講演で、アボットの会長兼CEOであるRobert B. Ford(ロバート・B・フォード)氏は、より一般的なフィットネスやウェルネスを目的としたコンシューマー向けバイオウェアラブルの新製品ライン「Lingo(リンゴ)」を開発していると発表した。

フォード会長は基調講演の中で「テクノロジーは、ヘルスケアをデジタル化、分散化、民主化し、人々と医師との間に共通言語を作り上げ、自分の手で自分の健康を管理する力を我々に与えてくれます」と語った。
「私たちは、あなたとあなたの大切な人に、よりパーソナルで正確なケアをもたらす未来を創造しています。それは今まさに起こっていることです。そしてその可能性は驚くほど膨大です」。

フォード氏によると、Lingoのセンシング技術は、グルコース、ケトン体、乳酸など、体内の「重要なシグナル」を把握できるように設計され、将来的にはアルコールレベルの確認にも使用できるようになるという。

アボットは2021年、アスリート向けのバイオセンサー「Libre Sense Glucose Sport Biowearable iii(リブレ・センス・グルコース・スポーツ・バイオウェアラブル III)」を発表し、欧州で販売を開始した。これは、マラソンの世界記録保持者であるEliud Kipchoge(エリウド・キプチョゲ)選手などがトレーニングのサポートに使用している。

アボットはLingoで目指す目標について、体重管理、快眠、エネルギー増進、思考の明晰化を求める人々に向けて、グルコースのモニタリングを拡大することだと述べている。

同社では、このような用途の拡大を支援するために、グルコース以外のバイオマーカーを測定できるバイオセンサーを開発しているという。

「ケトン体バイオウェアラブルは、ケトン体を継続的に監視し、自分がケトーシス状態に入る速さを確認したり、ダイエットや減量に関する洞察を提供することで、何が原因で今の状態が維持されるのかを正確に理解するために開発しているものです」と、プレスリリースには記載されている。「乳酸バイオウェアラブルは、運動中に蓄積される乳酸を継続的に監視し、運動能力の指標として利用できるようにするために開発中です」。

なお、アボットの広報担当者は、最初に発売されるバイオウェアラブルはケトン体を監視するための「Lingo Keto(リンゴ・キート)」で「2022年の後半」に欧州で販売が開始されることを認めた。

近年には、米国や欧州、アジアの多くのスタートアップ企業が、フィットネスに熱中している人々やダイエット目的の人々、または一般的な健康志向の高い消費者を対象に、医療目的以外のさまざまな用途に向けてCGMハードウェアの製品化を目指したり(アボット製の既存のセンサーもこれに含まれる)、リアルタイムの血糖値測定サービスを開始している。

早くからこの分野に参入したこアボットは、バイオセンシングを利用したコンシューマー向けウェアラブルが普及する可能性は非常に高いと見ているようだ。

CGMバイオセンサーを腕に装着した生活や、バイオセンサーが継続的に更新する生体プロセスの情報はどのようなものなのかを知りたい人は、先日TechCrunchに掲載したUltrahuman(ウルトラヒューマン)の「Cyborg(サイボーグ)」サービスのレビュー記事を参照していただきたい。

画像クレジット:Abbott

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

IBM、過熱するヘルスケアビジネスの「Watson Health」を手放すとの報道

Axiosの記事によると、IBMはそのWatson Health事業部をわずか10億ドル(約1156億円)で売却するすることを検討している可能性があるという。このところますますホットなヘルスケアの分野からIBMはなぜ逃げていくのか、しかもそんなに安い金額で。

2021年12月は、Oracleが280億ドル(約3兆2365億円)を投じて、デジタルの健康記録企業であるCernerを買収した。またMicrosoftはこの春、200億ドル(約2兆3118億円)近くを費やしてNuanceを買収した。ここは医療分野で広く利用され、ヘルスケア関連の顧客が1万社ある。これは巨額な資金であり、企業各社が医療分野への参入を目指し、そのために巨額の資金を投じていることを示唆している。

IBMは2015年4月にWatson Healthを立ち上げて、大きな話題になった。それは、IBMの人工知能プラットフォームWatsonを、ヘルスケアの目的に使用するはずだった。論旨は次のようなものだった。どんなに優秀な医師でも、世の中の文献をすべて読むことはできないが、コンピューターならすばやく読むことができ、医師の専門知識を補強し、より良い結果をもたらすための行動指針を提案することができるだろう。

そしてIBMが何かやるときのお決まりのパターンとして、同年9月にはケンブリッジに豪華な本部をオープンした。パートナーシップの発表も始めた。すべての候補をチェックして、CVSやApple、Johnson & Johnsonなどとパートナーした。

そして、企業の買収を始めた。最初の買収は、医療データの企業PhytelとExplorysだった。それも、パターンの一環だ。次は医療画像データを提供するMerge Healthcareの10億ドル(約1156億円)の買収だった。さらにその後、同社の最高額の買い物である26億ドル(約3005億円)のTruven Health Analyticsの買収があった。それは合計で40億ドル(約4624億円)の買収だったが、今のOracleやMicrosoftが払った額に比べると、慎ましい額かもしれない。しかしWatson Healthが態勢を整えようとしていた2015年から2016年の頃には、巨額だった。

これらの動きはすべて、データ中心型のアプローチをWatson Healthの機械学習モデルに注ぎ込むためだった。理由はともかくとして、それは狙い通りに動かなかったが、前CEOであるGinni Rometty(ジニー・ロメッティ)氏のクラウドとAIへの注力によって会社をモダナイズする計画の一環だった。

ロメッティ氏は、2017年のHarvard Business Reviewで楽観的に語っている。

私たちのムーンショットは、世界水準の医療を世界の隅々まで届けることです。その一部はすでに実現しています。Watsonは世界最高のがんセンターで訓練を受け、中国やインドの何百もの病院に展開されています。その中には、100人程度の患者に対して、腫瘍医が1人しかいない地域もあります。そのような地域の人々は、これまで世界レベルの医療を受けるチャンスがなかったのです。Watsonは腫瘍学のアドバイザーとして、医師の意思決定をサポートします。そして、これはまだ始まりに過ぎません。

しかしロメッティ氏は2019年に去り、彼女の後を継いだArvind Krishna(アルビンド・クリシュナ)氏は異なる目標を掲げた。彼はAxiosに、ヘルスケアの大きなビジョンは楽観的すぎるかもしれない、と述べている。Constellation ResearchのアナリストHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、その言葉がIBMの撤退の理由を説明しているだろう、という。

「IBMはハイブリッドクラウド戦略に注力しています。その過程で、注目と資本をそらし、風評被害のリスクを抱えるすべての資産を処分しようとしています。Watson Healthは確かにこの3つに当てはまるため、IBMがこの部門を売却しても不思議ではありません」とミューラー氏はいう。

IBMは今後も全社的に他の方法でヘルスケア事業を追求すると思われるが、仮にWatson Healthを捨てることになったとしても、これだけの資金を注ぎ込みながらほとんど回収できなかったため、失敗した戦略だと考えざるを得ないだろう。もちろん、それが実現しても大きな驚きではないにせよ、これはまだ噂の範疇に入るものだ。

画像クレジット:Boston Globe/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Apple Fitness+、新機能「Collections」と「Time to Run」シリーズを導入

Apple Fitness+は、米国時間1月10日から新シリーズ「Time to Run(タイム・トゥ・ラン)」とともに、新機能「Collections(コレクション)」を導入する。Collectionsは、ユーザーが目標に到達できるように整理したFitness+ライブラリのワークアウトや瞑想のシリーズだ。この機能は、約2000のワークアウトを利用し、ユーザーが次のワークアウトを始める際に、モチベーションを高める新しい方法を提供する。Apple(アップル)によると、Collectionsは、ユーザーが具体的なトレーニングを選択するのに役立つプランを提供するとのことだ。

発売時に利用できる6つのCollectionsは「30-Day Core Challenge」「Improve Your Posture with Pilates」「Perfect Your Yoga Balance Poses」「Run Your First 5K」「Strengthen Your Back, Stretch Your Hips」、そして「Wind Down for a Better Bedtime」を含んでいる。

Appleの新しい「Time to Run」シリーズは、2021年開始した「Time to Walk(タイム・トゥ・ウォーク)」機能の延長線上にある。同社は、この新シリーズを、ユーザーがより安定した、より良いランナーになるためのトレーニングを支援するために設計されたオーディオランニング体験と説明している。各エピソードは、人気のランニングルートに焦点を当て、Fitness+のトレーナーによるコーチングが含まれている。エピソードは、それぞれのランニングの強度、場所、コーチングに合わせてデザインされたプレイリストを備えている。また、各エピソードには、Fitness+のトレーナーによって撮影されたルートの写真も含まれている。

Time to Runは、3つのエピソードでスタートする。Cory Wharton-Malcolm(コーディ・ウォートン・マルコム)氏がコーチを務めるロンドン、Emily Fayette(エミリー・フェイエット)氏がコーチを務めるブルックリン、そしてSam Sanchez(サム・サンチェス)氏がコーチを務めるマイアミビーチだ。毎週月曜日に新しいエピソードが公開される予定だ。Appleは、車イスを使用しているApple Watchの顧客のために、Time to RunがTime to Run or Pushになり「Outdoor Push Running Pace」のワークアウトを開始するオプションが提供されると指摘している。

画像クレジット:Apple

「新しい年の始まりに、多くの人が自分の目標に向かうための新しい方法を探していることを私たちは知っています」と、Appleのフィットネス技術担当副社長Jay Blahnik(ジェイ・ブラニク)氏は声明の中で述べている。「これらの新しい追加機能により、Fitness+は、あなたがフィットネスの旅のどの地点であろうと、心と体を鍛えるための高品質で多様なコンテンツの最も完全なライブラリによって、どこでも簡単にモチベーションを上げ、アクティブに過ごすことができるようになります」。

Appleは、米国時間1月10日に開始するCollectionsとTime to Runに加えて、ユーザーがより頻繁に歩くことによってアクティブになることを目的としたシリーズ、Time to Walkの第3シーズンも導入する。今シーズンでは、毎週新しいゲストが追加される予定だ。ゲストには、Hasan Minhaj(ハッサン・ミンハジ)氏、Chelsea Handler(チェルシー・ハンドラー)氏、Bernice A. King(バーニス・A・キング)氏などが登場する。

また、Fitness+では、ワークアウトのプレイリスト全体を1人のアーティストにあてるArtist Spotlight(アーティスト・スポットライト)シリーズにもコンテンツを追加し、Ed Sheeran(エド・シーラン)、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムズ)、Shakira(シャキーラ)、The Beatles(ビートルズ)の楽曲を使った新しいワークアウトを提供する。ワークアウトの種類は、サイクリング、ダンス、HIIT、ストレングス、トレッドミル、ヨガがある。

Appleは2020年12月14日にFitness+を発売し、その後、Peloton(ペロトン)を含む他のサブスクフィットネスとの競合に取り組んできた。Fitness+は、月額9.99ドル(約1100円)で単独のサブスクとして、または月額29.95ドル(約3400円)でApple Music、Apple TV+、Apple Arcade、Apple News+、2TBのストレージを持つiCloud+にアクセスできるApple Oneプレミアプランの一部として提供されている。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

「高齢者に役立つテクノロジーはすべての人の役に立つ」とスタートアップはCESで示す

2022年のCESではエイジテックのスタートアップが可能性の広さを示した。テクノロジーが高齢者の生活をもっと快適にする助けになるなら、他の多くの人々の助けにもなるだろう。移動のサポート、健康状態をモニタリングするプラットフォーム、長期的な資金計画などが役に立つのは高齢者に限ったことではない。

米国時間1月5日、筆者はAARP Innovation Labsのバーチャルプレゼンに登場したスタートアップの記事を公開した。このプレゼンではファイナンスのリテラシーに関するプラットフォームから更年期対策プロダクトを開発するD2Cのスタートアップまで、さまざまなテーマが取り上げられた。

TechCrunchでは他にも、開閉式のトレイシステム、棚、オプションの冷蔵庫を備えたLabrador Systemsのロボットカート「Retriever」を紹介した。最大25ポンド(約11.3kg)を運搬できるRetrieverは移動に制限のある人の助けとなり、家庭で洗濯物や食事などを運ぶことができる。このカートはAlexaの音声コントロールにも対応している(同社はAmazon Alexa Fundの支援を受けている)。

関連記事:Labrador Systems、高齢者や不自由がある人を助ける支援ロボットの手を2023年までに家庭へ

Sengledは心拍数や体温、睡眠の記録などをレーダーでセンシングして健康状態を把握できるスマート電球を発表した。スマートモニタは新しいアイデアではないが、Sengledの電球は極めて控えめだ。TechCrunchのハードウェア担当編集者であるBrian Heater(ブライアン・ヒーター)は「転倒検知など、高齢者介護に役立つ可能性のあるアプリケーションを搭載している」と記している。

関連記事:この電球はユーザーの健康状態をモニターする

テック大手が家庭用ヘルスモニタリングに参入する傾向も続いている。LGは、2021年と2022年の同社の全スマートテレビにリモートヘルスプラットフォーム「Independa」のアプリをインストールすると発表した。これにより、ユーザーはLGのテレビで遠隔治療の予約を取り、薬剤給付のプランを利用できる。

医療機器スタートアップのEargoは、最新の補聴器「Eargo 6」を発表した。新機能として自動で設定を調整する専用アルゴリズムの「Sound Adjust」を搭載し、ユーザーは騒がしい環境で手動で切り替えをして会話を聴きやすくする必要がなくなる。また、Eargoのアプリで選択できる環境設定の「マスクモード」も追加され、マスクをつけている人の話がこれまでよりクリアに聞こえるようになる。

Sensorscallは、Apple WatchやFitbitなどのヘルストラッキングデバイスと統合されたリモートモニタリングアプリ「CareAlert」のアップデートを公開した。家族や介護者は新しい健康状態ダッシュボードを通じて、毎日のルーティン、睡眠パターン、衛生の状況、キッチンの使用に関する傾向を見ることができる。CareAlertを開発したのは、自立して生活する(つまり住み慣れた家で生活し、その多くは家族と離れている)高齢者だ。

BOCCO emoロボット

BOCCO emoは介護施設での見守り用に作られた最新のロボットだ。開発したのはクッション型ロボットのQooboを作ったユカイ工学で、テーブルに置ける小型のBocco emoは医療用のIoTデバイスと接続して患者のバイタルを監視し、状態を看護師に通知する。患者が助けを必要とする場合は、看護師が到着するまでBOCCO emoが患者に話しかける。患者の状態を家族に知らせることもできる。BOCCO emoはすでに日本で試験運用を実施し、現在は日本国内の病院で使われている。この小さなロボットは「emo言語」を使う。ユカイ工学はこれについて、ユーザーの話と感情を理解し、それに応じて「効果音、顔の表情、ジェスチャー」で反応するものと説明している。

IoTセンサーを活用して自立した生活を支援するスタートアップには、Nodeus SolutionsのKoKoonがある。これはモバイルアプリに接続された小さなIoTセンサーのネットワークで、介護者や家族を対象としている。アルゴリズムが個人の習慣を学習し、行動に変化があれば介護者に知らせる。

IoTセンサー、AI技術、モバイルアプリを組み合わせたスタートアップとしては他にCaregiver Smart SolutionsUnaideSmart Macadamがある。

画像クレジット:Marko Geber / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)

あなたの血はどれくらい甘い?Scanboは体を傷つずに血糖値を測定する

糖尿病の人やその疑いを持たれたことのある人なら、指に針を指し血を1滴とって棒に付ける作業を、指がしびれるまでやったことがあるだう。指先穿刺式血糖値検査は事実上の標準だが、AI企業の Scanbo(スカンボ)はこれを終わりにして、その1滴の血液を市販の診断ツールと強力なデータ分析で置き換えようとしている。

この会社が開発したプロトタイプは、3電極の心電計(ECG)とフォトプレチスモグラム (PPG)を組み合わせた装置だ。60秒間の測定結果を一連のアルゴリズムに送り込むことによって、非常に信頼できる測定値を得られる。装置は非侵襲的に血糖値のモニタリングを行うが、同社のファウンダーは、同時に血圧測定も行うことができると言っている。

私はTechCrunchのバーチャルCES特集取材の一環で、同社ファウンダーでCEOのAshissh Raichura(アシーシ・ライチュラ)氏からテクノロジーの詳細を聞いた。彼はデモンストレーションもしてくれて、まず自身の血液を市販の指先穿刺血糖値検査器で測定し、つぎに同社のプロトタイプを使った。測定値はそれぞれ6.2と6.3mmol/Lで、両者の差は数%以内だった。

「3本の電極はECGデータおよびPPGの追加測定に使用します。60秒間測定したら、原データを機械学習畳み込みニューラルネットワークとディープ・ニューラルネットワークで分析します。すべてのデータを合わせ、3種類の機械学習アルゴリズムを使った結果から血糖値を分析します」とライチュラ氏がデモの準備をしながら私に話した。「私たちの製品を商品化したいので、現在、FDA(米食品医薬品局)とカナダ保健省の認可を取得するつもりです」。

動作中のScanboプロトタイプ(画像クレジット:Scanbo)

血糖値の非侵襲測定が可能だと知って私は驚いた。いわゆる非侵襲的方法の多くは、体内埋め込みセンサーフィラメントセンサーワイヤーを使用して測定している。Scanboが使用している方法は、医学論文誌で研究結果が報告されている。この手法を使った製品をこれまでにFDAが認可したことはないようなので、製品を市場に出すためには時間のかかる医療承認プロセスに直面することは間違いない。

同社は、血圧測定も可能だという。通常は診療所や自宅でカフを巻いて測定するものだ。

「心電図データを取得した後、それをshort wave transmission lengthというものに変換します」と、ライチュラ氏は血圧データを取り出す方法を説明した。「それに基づいて、非侵襲的でカフ不要な方法で血圧を計算します。このアルゴリズムも特許出願中です」。

これらのテクノロジーを手にしている同社には、楽しみな選択肢がある。自身でハードウェア装置を製造するか、アルゴリズムとテクノロジーを、PPGやECG機能のあるデバイスをすでに販売している企業にライセンスするかだ。

「現在出願中の特許が2件あります。純粋なハードウェア、設計方法、電極の合金化方法、あらゆるパラメータを一度に取得できるセンサーなどに関するものです」とライチュラ氏は説明し、あらゆるデータを一度に測定しようとしていることをほのめかした。「従来の機器を見ると、1度に1つのものを測定していて全部まとめてではありません。私たちの場合、装置に指を4本置いてもらえれば、全データを取得して、アルゴリズムを使って患者の健康に関するさまざまな側面から結果を報告できます」。

Scanboはこのテクノロジーを、自宅で現在使われている医療に関する技術や技法のいくつかを置き換えるものになると期待している。

「私たちはAIとMedTechを組み合わせた会社です」とライチュラ氏は述べ、市場が注目し始めていることに言及した。「このプロダクトを手に、会社はまさにスタートを切ったところです。Medtronic(メドトロニック)、Samsung(サムスン)、LG(エルジー)などの企業がすでに当社との協業ができないか声をかけています。私たちは世界でさまざまな市場に進出するための戦略的提携をいくつか結ぶつもりてす。世界で4億人の2型糖尿病患者が「血糖値測定器」を必要としていますが、ほとんどの人たちは買うことができません。継続的な血糖値測定など考えられません。私たちのコスト削減効果は膨大です。価格は月額20ドルまで下げられます。生物学的廃棄物も使い捨て器具もありません、検査紙も何もいりません、純粋な機械学習アルゴリズムと充電式デバイスだけです」。

会社はまもなくこのプロトタイプと臨床試験結果を武器に、シードラウンドを実施して、認可を取得し最終的に商品を市場に出すためのスタートを切ろうとしている。

画像クレジット:Scanbo

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Nob Takahashi / facebook

脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

脳ドック用ソフトウェア「BrainSuite」(ブレーン スイート。受信者向け医療機関向け)を手がけるCogSmart(コグスマート)は1月6日、シリーズAラウンドにおいて、総額3億5000万円の資⾦調達を実施したと発表した。引受先は、オムロンベンチャーズ、アイロムグループ各社、DG Daiwa Ventures、アイティーファーム、MAKOTOキャピタルが運営・関与するファンド、個⼈投資家。累計調達額は4億1000万円となった。調達した資⾦により、国内外でのさらなる研究開発の推進や事業拡⼤に取り組み、社会課題の解決に挑み続けるとしている。

2019年設⽴のCogSmartは、「早期段階からの認知症予防」の普及を目指す東北大学発の医療テクノロジー系スタートアップ。「脳医学とテクノロジーの⼒で、⼀⼈ひとりがいつまでも健やかに、⼼豊かに暮らすことができる社会を作る」をビジョンに掲げ、認知症の早期段階からの予防や、認知機能の改善・維持のための医療・ヘルスケア機器の製造販売事業、またこれらに関する解析・データサイエンス事業を手がけている。

同社が手がけるサービスの1つがBrainSuiteで、首都圏の病院・健診施設を中心に提供。さらに、東北や⻄⽇本エリアの病院でも提供を開始しており、今後全国各地での展開を予定している。

同サービスは、30代から70代までを対象に、頭部MR画像のAI解析技術などを利用することで、海馬の体積や萎縮程度を測定・評価し、同性・同世代と比較した脳の健康状態を可視化するものという。これにより行動変容のための「気づき」を提示し、脳の健康状態の維持・改善方法について受診者に合ったアドバイスを提供することで、「認知症にならない生涯健康脳」の実現を脳医学の観点から支援する。脳ドック用ソフトウェアBrainSuiteを手がけるCogSmartが3.5億円のシリーズA調達、事業拡⼤・国内外での研究開発推進

またCogSmartは、⼤規模頭部MRIデータベースを⽤いた医⽤画像分析に関する研究にて⻑い蓄積を持つ東北⼤学医学研究所 瀧研究室をはじめ東北大学と密に連携し、画像解析ソフトウェアなどの開発を実施。⼈⼯知能技術を活⽤した頭部MR画像解析プラットフォームを構築していることから、企業・医療機関様などの要望に応じて、認知症分野以外にも脳疾患・症状などに関する画像解析ソフトウェアの受託開発、またそのデータ分析を柔軟に⾏うことが可能という。

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔医療センターの構築や海外展開を加速

専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

遠隔ICUサポートサービスを提供するT-ICUは2021年12月28日、第三者割当増資による総額5億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、パソナグループ、Beyond Next Ventures、SMBCベンチャーキャピタルおよび個人。

調達した資金を用いて、NTT西日本との「遠隔医療におけるエッジコンピューティング技術を活用した情報処理の実現方式に関する共同実験」およびNEDO助成事業「スコアに基づく遠隔集中治療モニタリングシステム」の製品化、地方と都市の医療格差の課題解決に向けた遠隔ICUにとどまらない遠隔医療センターの構築、JICAの受託事業「新型コロナウイルス感染症流行下における遠隔技術を活用した集中治療能力強化プロジェクト」を足がかりとした海外展開を加速させる。

遠隔相談サービス「リリーヴ」

遠隔相談サービス「リリーヴ」は、「全ての病院に集中治療医を」を形にする重症患者診療の支援システム。全国的に専門家が不足する重症患者診療の現場を集中治療医・集中ケア認定看護師で構成されたメディカルチームが24時間365日サポートする。命に関わる重症患者診療を担う医療スタッフの不安に寄り添い、呼吸・循環管理、鎮静・鎮痛、感染症治療などの全身管理を最新の知見と豊富な経験で支援する。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」

遠隔モニタリングシステム「クロスバイ」では、ベッドサイドに配置した高性能カメラによる細やかな患者観察を実現。患者の表情や顔色、呼吸様式の観察も可能で、人工呼吸器を含む各種医療機器と接続することで、多面的な患者情報を院内の離れた場所へ届けることが可能な遠隔モニタリングシステムという。複数の患者を一画面で同時にモニタリングし、医療機器との接続でそのグラフィックモニターを表示することもできる。感染隔離中のCOVID-19診療において非常に有効な手段という。専門医による遠隔集中治療サポートのT-ICUが総額5.7億円調達、遠隔集中治療モニタリングシステムなどの製品化や海外展開を加速

 

この電球はユーザーの健康状態をモニターする

CES 2022で見つけた、ちょっと変わった楽しい製品だ。心拍数、体温、睡眠の記録といった健康状態の測定ができるスマート電球だ。必要なものではないが、おもしろい。

本製品は、一見したところ最新のNest Hubと同様の機能を持ち、同様の技術を使用している。レーダーセンサーを中心に、ユーザーの身体の変化を計測し、スマートウォッチやフィットネスバンドを装着する必要のないパッシブなヘルスモニターシステムとなる。

もちろん、電球と睡眠時に頭の横に設置するために特別に設計された製品とでは、もっと多くの変数があります。また、フィットネスバンドや指輪をしないという便利さは、電球にアウトソーシングしたいと思うほどすごいことなのか?精度はどうだろうか?身体に直接取り付けるセンサーによる測定値と精度を競うのは酷ではないだろうか?

このスマートホームガジェットは、BluetoothとWi-Fiの機能を持ち、転倒検知など、高齢者介護に役立つ可能性のあるアプリケーションを搭載している。The Vergeは、2022年末に価格未定で発売予定となっているこの電球について、もう少し詳しい情報を紹介している。メーカーのSengledは、この展示会で、スマートオイルディフューザー、ポータブルランプ、モーションセンサーなど、他の製品も多数発表している。

画像クレジット:Sengled

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

心電図などさまざまなデータを測定するWithingsのスマート体重計

体重計は、しばらく前から体重以外のことも教えてくれるようになっている。Withings2009年以来、そうした体重計のリーディングカンパニーの1つだ。米国時間1月3日、同社は体のあらゆることを測定するブランドであることをこれからも目指して、Withings Body Scanを発表した。この299ドル(約3万5000円)のガラス面に乗れば、体重に加えて心電図やセグメント体組成が測定され、神経活動もモニターされる。

この体重計は家庭用心電計となるため、FDA(米食品医薬品局)の厳しい承認を得る必要がある。同社のScanWatchは手首で心電図を測定できる機能があるためFDAの承認に時間がかかり、ヨーロッパに比べて米国では発売がかなり遅れた。

関連記事:【レビュー】Withings ScanWatch、Apple Watchと正反対なスマート腕時計には乗り換えるべき価値がある

今回発表されたBody Scanには、Withingsの体重計でおなじみの機能に加えて新機能もいくつか追加されている。Body Scanには重量センサーが4つ搭載され、体重を50グラム以内の誤差で測定する(あるいは90キロの人なら誤差はわずか0.025%)。さらにITO(酸化インジウムスズ)電極14個が本体に、ステンレス電極4個が格納式ハンドルに内蔵されている。これらのセンサーを組み合わせて、6誘導心電図とセグメント体組成のデータを取得する。

Body Scanは心拍数、血管年齢、そして前述の心電図など、健康状態に関連するデータを日々分析する。多くの電極を備えているため、多周波BIA(生体電気インピーダンス測定)であらゆる体組成を知る面白さもある。従来からある標準的な体脂肪率以外に、体水分率、内臓脂肪、筋肉量と骨量も測定できる。さらに胴体、腕、足など部位別の結果もわかる。

Withingsは、マットレスの下にセットする睡眠トラッカー、スマート血圧計、体温計などを販売し、スマート健康フィットネスセンサーのラインナップも増やしている。こうした流れから考えると、Body Scanは明らかにブランド拡張だ。

Withingsはハードウェア製品に加えてアプリ内のヘルスコーチングも提供している。ユーザーは自分の健康上のゴールを達成するためにコーチング、臨床の専門家、自分に合った栄養指導、エクササイズのプランを利用できる。アプリから履歴も含めて健康に関するデータを書き出すこともでき、栄養士やトレーナー、医療従事者とともに積極的に自分の健康に関与したい人には特に有用だ。

画像クレジット:Withings

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Kaori Koyama)

2022年、もっと「エイジテック」に注目しよう

この2年間、私たちの多くは、画面を通してしか高齢の身内と会うことができず、安全とひきかえに物理的な距離を取りながら、年老いていく身内を見守ってきた。今回のパンデミックでは、何よりも高齢者の脆弱性が浮き彫りになった。創業者、投資家、ジャーナリストなど、テック業界の関係者はみんな「エイジテック」にもっと注意を払う必要がある。

「エイジテック」はニッチな分野ではなく、人口の高齢化は一部の国に限られた話でもない。世界保健機関(WHO)の最新レポートによれば、2030年には6人に1人が60歳以上の高齢者になり、80歳以上の高齢者は2020年から2050年にかけて3倍の4億2600万人に増えると予想されている。

またレポートには「人口の高齢化と呼ばれるこのような分布の変化は、高所得国で始まったものですが(例えば、日本では人口の30%がすでに60歳以上)、現在では低中所得国が最も大きな変化を経験し始めています」と書かれている。「2050年には、世界の60歳以上の人口の3分の2が、低中所得国に住んでいることになるでしょう」。

WHOの報告書は続けて「グローバル化、技術開発(交通・通信など)、都市化、移住、ジェンダー規範の変化などが、直接的・間接的に高齢者の生活に影響を与えています」と述べている。公衆衛生上の対応としては、現在および予測されるこれらの傾向を把握し、それに応じて政策を策定する必要がある。

大手テック企業は、こうした高齢人口増加の可能性をとらえ、既存のプラットフォームやハードウェアに新しいサービスを作り始めている。例えば、2021年12月初めにAmazon(アマゾン)は「Alexa Together」を正式に発表した。これは、Alexaデバイスを介護者のためのツールに変えるもので、ユーザーが助けを求めることができる機能や、緊急時のヘルプライン、転倒検知、デバイスの設定を管理するためのリモートアシストオプション、いつもより活動的でないことを家族のだれかが確認できるアクティビティフィードなどを備えている。一方、Google(グーグル)は、2020年老人ホームで「Nest Hub Max」の簡易版インターフェースの試験運用を開始した。これは、ロックダウン時に入居者が孤立感を感じないようにするための取り組みだ。

関連記事
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グーグルが老人ホームで簡易UI版Nest Hub Maxをテスト中

しかし、私がもっと興味を引かれているのは、エイジテックに焦点を当てたスタートアップだ。ハードウェアのイベントを取材していると、高齢者向けの技術を開発している企業が多いことに勇気づけられる。来週のCESでの発表はまだほとんどが伏せられたままだが、イベントのエイジテック系のスタートアップをまとめて紹介する予定だ。

関連記事:ユーザーの動きに合わせて点灯、家族が倒れたら介護者に通知が届くスマートランプNobi

2021年1月に開催された前回のCESでは、Nobi(ノビ)のスマートランプが最も興味深い製品の1つだった。このスマートランプは、転倒や不規則な動きを検知すると介護者に警告を発したり、人が立ち上がって歩くと自動的に床を照らしたりする、控え目なシーリングランプだ。

そのときには他にもエイジテック関連のプレゼンテーションがいくつか行われたが、その中には、非営利団体のスタートアップアクセラレータープログラムであるAARP Innovation Lab(AARPイノベーションラボ)による9社のプレゼンテーションも含まれていた。その多くは、高齢者が介護施設に入居するのではなく自宅で過ごす「エイジ・イン・プレイス」を支援するものだった。その中には、既存の構造物や敷地に合わせてアクセス可能なモジュール式の仕事場や自宅スペースを提供する「Wheel Pad」(ホイールパッド)、自宅で利用者の転倒リスクを予測できる体重計「Zibrio」(ジブリオ)、家族やその他の介護者が利用者の様子を確認できるApple Watchアプリやウェアラブル(ジュエリーなども含む)を開発する「FallCall Solutions」(フォールコール)などがある。

関連記事:CES 2021で注目を集めた高齢者の暮らしや介護者を支えるテックスタートアップ

しかしハードウェアができるのは今のところその程度だ。世界中のスタートアップは、介護者のニーズにも目を向けている。介護者の燃え尽き症候群は大きな問題だが、テクノロジーで支援できる余地がある。例えば現在シンガポールとマレーシアで展開しているHomage(ホーミッジ)は、今後2年間でさらに5カ国に進出する予定だ。同社は介護者を評価し、患者とのマッチングを支援するために、各医療提供者のプロフィールを作成し、また看護師と協力して、医療提供者が手動移送技術などの必須タスクをどのように実行できるかを評価する。これらのデータはすべて、マッチングエンジンによって使用され、家族や患者にとって介護者を見つけるプロセスを迅速にすることができる。

一方、英国では、Birdie(バーディ)が介護事業者を支援するためのソフトウェアツールを構築している。これには、管理コストの削減、介護者のチェックイン、投薬に関する通知をリアルタイムに行うことができるものなどがある。このスタートアップの目標は、よりパーソナライズされた予防的なケアを提供することで、成人が年齢を重ねても自宅で長く暮らせるようにすることだ。

家族構成の変化にともない、世界の高齢者は徐々に孤立化していて、それはテクノロジーを使っても解決するのは難しい問題だ。しかし、オンデマンドの高齢者支援とコンパニオンシップのプラットフォームであるPapa(パパ)は、高齢者の孤独感に対処することが有望なビジネスモデルになることを示している。マイアミを拠点とし、現在27州で事業を展開しているこのスタートアップは、前回の6000万ドル(約69億1000万円)のシリーズCからわずか7カ月後の先月に、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導するシリーズDで1億5000万ドル(約172億7000万円)の資金を調達したことを発表した

誰もが安全だけでなく、快適さと尊厳をもって人生の終わりに到達する権利を持っている。テクノロジーは高齢者が愛する人たちから遠く離れざるを得ない社会力学の変化に対する解決策の一部となり得る。私の新年の抱負の1つは、TechCrunchでもっと多くのエイジテックスタートアップを取り上げることだ。もし私が注目すべきスタートアップをご存知ならshu@techcrunch.comまでメールを送って欲しい。

画像クレジット:eclipse_images / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:sako)

自宅往診サービスのコールドクターが24時間対応体制確立、夜間・休日に加え平日昼間のオンライン診療・医療相談も提供

自宅往診サービスのコールドクターが24時間対応体制確立、夜間・休日に加え平日昼間のオンライン診療・医療相談も提供開始

自宅往診サービス「コールドクター」(Android版iOS版)を運営するコールドクターは12月27日、従来の夜間・休日に加えて新たに平日昼間のオンライン診療および医療相談サービスの提供を本日より開始したことを発表した。

コールドクターは、往診サービスの認知度が高まる中で「夜間・休日に限らず、医師に相談したい」というユーザーの声を受け、今回のオンライン診療・医療相談サービスの提供をスタート。新たに「医療相談」という選択肢を増やすことで、「体調が少し変かもしれない」という段階から気軽に医師や看護師に相談することを可能にした。コールドクターは今後も、より幅広い患者の声に応え、患者とその家族に寄り添い、サービスの向上を目指したいという。

コールドクターは、健康保険が適用可能なの往診サービスで、ウェブサイトおよび専用アプリから予約可能。医療機関との連携により約400名の医師が登録されており、最短30分で医師が診察に訪問、その場で薬の処方もされる。支払いは、クレジットカード払い、または後日郵送で請求(GMO後払い:コンビニ払い・銀行振込が選択可能)。

また専用アプリは、診察の予約操作や診察後の情報管理機能、往診する医師の現在地や到着時間がわかる「到着時間予測機能」、処方薬の情報を確認できる「お薬情報機能」、クレジットカード決済機能、ユーザー本人だけでなく家族の情報も登録できる機能などを備えている。

診察エリア(北海道)

  • 北海道:札幌市(中央区、東区、西区、北区、白石区、厚別区、豊平区、手稲区、清田区、南区)、石狩市、当別町、江別市、北広島市

診察エリア(関東)

  • 東京都:23区、武蔵野市、調布市、府中市、小金井市、国分寺市、国立市、小平市、西東京市、東村山市、狛江市、東久留米市、清瀬市、稲城市、東大和市、立川市、日野市、町田市、昭島市、多摩市、武蔵村山市
  • 神奈川県:川崎市(全区)、横浜市(青葉区、都筑区、港北区、鶴見区、神奈川区、緑区、旭区、保土ケ谷区、西区、南区、瀬谷区、中区、港南区、磯子区、戸塚区、泉区)、大和市、相模原市(中央区、南区)、座間市、綾瀬市
  • 埼玉県:さいたま市(大宮区、見沼区、浦和区、西区、北区、南区、緑区、中央区、桜区)、川口市、蕨市、戸田市、草加市、八潮市、朝霞市、新座市、志木市、上尾市、北足立郡伊奈町、桶川市、北本市、蓮田市、白岡市、比企郡(川島町、吉見町)、和光市、さいたま市岩槻区、三郷市、吉川市、越谷市、春日部市、南埼玉郡宮代町、北葛飾郡杉戸町、久喜市、加須市、富士見市、入間郡三芳町、東松山市、ふじみ野市、所沢市、行田市、鴻巣市、幸手市、坂戸市、鶴ヶ島市、川越市

診察エリア(近畿)

  • 大阪府:大阪市(北区、淀川区、東淀川区、都島区、旭区、城東区、東成区、鶴見区、中央区、天王寺区、生野区、阿倍野区、東住吉区、西区、大正区、港区、福島区、此花区、西淀川区、浪速区、西成区、住吉区、住之江区)、豊中市、吹田市、摂津市、守口市、門真市、寝屋川市、大東市
  • 兵庫県:尼崎市、伊丹市、西宮市、宝塚市、川西市

診察エリア(中部)

  • 愛知県:名古屋市全区、刈谷市、清須市、豊明市、日進市、みよし市、東郷町、大府市、東海市、瀬戸市、春日井市、長久手市、北名古屋市、岩倉市、尾張旭市、あま市、海部郡、飛島村、津島市

診察エリア(九州)

  • 福岡県:福岡市(東区、博多区、中央区、南区、城南区、西区、早良区)、小郡市、春日市、大野城市、那珂川市、糟屋郡(志免町、須惠町、新宮町、粕屋町、宇美町、篠栗町、久山町)、久留米市、飯塚市、八女市、筑紫野市、古賀市、宮若市、朝倉市、糸島市、朝倉郡(筑前町)、三井郡(大刀洗町)、八女郡(広川町)
  • 佐賀県:鳥栖市、三養基郡(基山町、上峰町、みやき町)、神埼市、神埼郡(吉野ヶ里町)

難聴治療と多発性硬化症治療の新薬をFrequency Therapeuticsが発表、第II相試験の不本意な結果を受けて試験を再設計

Frequency Therapeutics(フリークエンシー・セラピューティクス)は設立から間もないが、浮き沈みを経験している。研究開発イベント期間中の米国時間11月9日、同社は、主力の難聴治療薬の開発状況を補足する多くの発表を行い、いくつかの方向性を示した。

2015年に設立されたフリークエンシー・セラピューティクス(以下、フリークエンシー)は、難聴のための再生医療アプローチに取り組んできた。このアプローチでは前駆細胞の再生を軸としている。前駆細胞は、最終的に蝸牛の中で音を伝導する重要な有毛細胞となる。これらの有毛細胞が不可逆的に消失したり損傷したりすると、最も一般的な難聴である感音性難聴になる。

同社は2021年11月、難聴の治療薬候補であるFX-322に関する発表をいくつか行った。フリークエンシーは、初期の試験で蓄積されたデータを示し、FX-322が臨床的利点をもたらすこと、第Ⅱ相試験の結果が思わしくなかったのは、試験設計に不備があったことを説明した。そして、新しい難聴治療薬と多発性硬化症治療薬のプログラムを発表した。

FX-322試験設計の刷新

感音性難聴のほとんどの症例は、人工内耳または補聴器のいずれかを使用して治療される。突発性難聴を発症した場合は、ステロイド治療を施すことがあるが、感音性難聴の治療や改善を目的として承認された治療薬はない。

FX-322はすばらしいスタートを切った。1件の第Ⅰb相試験では、15人にFX-322を投与し、8人にプラセボを投与したが、有害な副作用は認められなかった。FX-322を投与した4人は、特定の言葉を聞く能力において、臨床的に意義のある改善が見られた。

ちなみに、フリークエンシーは単に音を聞く能力ではなく「言語知覚」に基づいて治療薬の効果を評価している。人工内耳に関する他の治験でもこの指標が使用されており、チーフサイエンティフィックオフィサーのChris Loose(クリス・ルース)氏によると、この方法で聴覚治療薬を評価することの有用性について、同社とFDAの意見は「一致」しているという。

フリークエンシーの最高開発責任者であるCarl LeBel(カール・ルベル)氏によると、治療薬の効果は長期的に持続している。5人の被験者を1~2年追跡調査して得た未発表の耐久性データから、3人の被験者に統計的に有意な改善が今なお続いていることがわかった、とカール・ルベル氏はTechCrunchに語っている。

「このことは、一部の被験者は効果を維持できることを示しています。その効果は1年持続するかもしれません。あるいは2年かもしれません。こうした改善が見られる患者をさらにモニターする必要はありますが、この薬は実際に疾患修飾効果があることを示しています」とルベル氏は述べた。

しかしFX-322に関する良いニュースは長くは続かなかった。第Ⅱa相試験では、プラセボと比べて難聴の改善が見られなかった。

この試験は95人の被験者を対象に実施された。半数にFX-322が4回投与され、残りの半数にプラセボが投与された。両群とも改善は限定的なものであり、同社はその試験でFX-322の「明確な効果はなかった」と報告した。

このニュースが発表された日、フリークエンシーの株価は36ドル(約4100円)から7ドル(約800円)に下落し、それ以来、過去の高値を大きく下回っている。これを受けて、一部の株主は、2021年3月23日以前の収支報告、プレスリリース、SEC提出書類、プレゼンテーションで、経営陣がFX-322について事実を曲げて伝えたとして、集団訴訟を起こした。

この時点で、経営陣は、この試験は公平ではない判断によるの悪影響を受けたと主張している。ルベル氏によると、患者は臨床試験を受けるために、自身の聴力を過小評価した可能性があるからだ(そして試験は、その可能性を考えて適切に調整されなかった)。

TechCrunchの取材に対し、ルベル氏は「患者が試験に参加する際、過去の言語知覚スコアと試験のベースライン訪問時のスコアが一致しなかった」と述べている。

フリークエンシーのコーポレートアフェアーズ上級副社長であるJason Glashow(ジェイソン・グラショウ)氏は、同社はこれを試験の「設計上の問題」だと考えていることを明らかにした。

「この試験は公平ではない判断の影響を受けましたが、それは参加した被験者の責任ではありません」と同氏は続けた。

研究開発イベント時に、フリークエンシーは3つの第Ⅰ相試験で蓄積したデータについて報告し、FX-322が反応パターンを示していたこと、第Ⅱ相試験の結果は異常値だったことを主張した。

フリークエンシー・セラピューティクスが実施したFX-322に関する3つの試験で蓄積したデータは、ある反応パターンを示した。第Ⅱ相試験ではプラセボと比べて効果は確認されなかったが、経営陣は、この試験は公平ではない判断の悪影響を受け、試験設計が不十分だったと主張している(画像クレジット:Frequency Therapeutics)

このニュースが、進行中の訴訟にどのような影響を与えるのかは不明だ。しかしこの経験が、FX-322の今後の試験の構造を特徴づけたと言える。

フリークエンシーは、FX-322に対する新しい第Ⅱb相試験の開始をすでに発表している。124名の被験者が参加するこの試験では、ベースラインの聴力を測定する前に、被験者の聴力をモニターする1カ月の「リードイン」が設けられた。最初の患者は、2021年10月にFX-322が投与された。

また、どのようなタイプの難聴を対象とするかについても同社は焦点を絞り込む。対象となるのは、騒音性難聴または突発性感音難聴と診断された被験者になるだろう。微妙な違いではあるが、治療の対象となる難聴のタイプのパラメータがわずかに変わってくる(CDCの推定によると、騒音性難聴は年間1000万〜4000万の人々に影響を及ぼしている)。

新しい治療薬候補と多発性硬化症プログラム

フリークエンシーはその地歩を固めるために、初めて、FX-322以外の製品にも取り組もうとしている。同社は、FX-345という新しい製品の試験も計画している。FX-345は、FX-322に含まれる小分子の効能を改良したものだ。ルース氏によると、この効能により、FX-345は蝸牛の深部にまで浸透することができる。

同社は、2022年第2四半期に、新薬治験開始申請(IND)を進める予定だ。

フリークエンシーは、FREQ-162という多発性硬化症の治療薬も開発中である。これは同社が以前から明確に述べていた目標の1つ「再生医療へのより幅広い取り組み」に向けた新たな一歩だ。

TechCrunchが確認した説明によると、同社は、治療薬がオリゴデンドロサイトの発生を促進できることを示す、マウス試験から得た予備データを持っている。多発性硬化症の患者は脂肪鞘が劣化しているが、オリゴデンドロサイトはその脂肪鞘を産生する。

しかし、同社は今後の試験のスケジュールを明らかにしていない。

今のところ、FX-322と新たに設計された試験への重点的な取り組みは変わらない。新たな試験では、未解決の問題の解決策が見つかる可能性がある。

画像クレジット:Science Photo Library – VICTOR HABBICK VISIONS / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)