スペースX、スターリンク衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

SpaceXがStarlink衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

New Zealand Defense Force via Getty Images

SpaceXは、1月15日に発生した大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガのインターネット環境回復のために、Starlinkの衛星コンステレーションによるブロードバンドサービスを提供すべく協力していると報じられています。

現在、SpaceXはフィジーに衛星インターネット通信局を設置している最中で、ここを中継点としてトンガへインターネット回線を延伸させようとしているとのこと。インターネットが通じたとしてトンガの人々がどのようなサービスを期待すれば良いかはよくわかりませんが、現在世界25か国でパブリックベータサービスを提供しているStarlinkサービスにとって、トンガやフィジーへの接続は、回線敷設の手間が大きく省ける衛星ブロードバンドの利点を広く宣伝する良い機会になると考えられます。

噴火で途切れた海底インターネットケーブルの復旧にはまだ数週間ほどかかるとされており、トンガ政府にそれまで通信環境の回復を待てない事情があるのであれば、SpaceXにさらなる支援を求めることもありそうです。また海底ケーブル復旧後も今回の災害のような不測の事態に備えるためのバックアップとして、衛星インターネット環境はトンガのような絶海の島国でこそ求められるインフラとも言えそうです。

ただし、トンガは1月下旬に契約の解釈のもつれからサービスを提供していなかった衛星通信企業Kacific Broadband Satellitesに対して通信開通の許可を出しており、SpaceXがそこへ割り込む格好になることであらぬ競争が発生することになる可能性もないわけではありません。

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

スペースX、地磁気嵐でスターリンク衛星40基を失う

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットで米国時間2月3日に大気圏外に運ばれたインターネット衛星Starlink(スターリンク)のほぼすべてが、目的の軌道に達しない。SpaceXは、打ち上げの翌日に発生した地磁気嵐により衛星に深刻な影響があり、最大で40基が地球の大気圏に再突入するか、すでに突入していることを明らかにした。米地質調査所は、地磁気嵐を、一般的に太陽風の強いうねりによって引き起こされる「急激に磁場が変動する」期間と説明している

こうした嵐は、電子機器や軌道上の人工衛星にダメージを与える可能性がある。今回のケースでは、大気が暖み、大気抵抗(衛星の動きに対する摩擦)がこれまでの打ち上げに比べて最大で50%増えた。SpaceXの説明によると、Starlinkチームは、新たに配備された衛星を救おうと、抵抗を最小限に抑えるためにセーフモード(紙のように飛ぶよう動きを調整するモード)にした。しかし、抵抗が増し、セーフモードを終了できなくなった。

軌道から外れた衛星は衝突の危険はなく、大気圏に再突入する際に完全に燃え尽き、軌道上のデブリも発生しない、とSpaceXは説明している。また、衛星の部品が地上に落下することもない見込みだ。「この特殊な状況は、Starlinkのチームが、軌道上のデブリ軽減の最先端を行くシステムを確実なものにするために、多大な努力を払ってきたことを示しています」と同社は発表文に書いている。

SpaceXは2022年1月時点で、第1世代のStarlink衛星を2000基以上打ち上げている。Starlink衛星をペイロードとする打ち上げは、同社にとって日常的なものとなっていて、世界をカバーするインターネット提供を目的とした最大3万個の衛星からなる第2のコンステレーション形成が承認されれば、さらに頻繁に行われるようになるはずだ。

Starlinkは遠隔地にいる人々にもインターネット接続を提供することができるが、天文学者たちは、巨大なコンステレーションは都市の光害よりも研究にとって深刻な脅威になっているという。実際、国際天文学連合は「衛星コンステレーションの干渉から暗くて静かな空を守るためのセンター」を設立したばかりだ。望遠鏡が衛星コンステレーションによって反射された光を拾い、宇宙の観測を困難にすることが大きな問題であるため、センターは観測所が実行できるソフトウェアや技術的な緩和策に焦点を当てることにしている。SpaceXは2020年にStarlink衛星に「サンシェード」を追加し、明るさを抑えている。Sky & Telescopeによると、現在は確かに暗く見えるが、望遠鏡ではまだ見えるという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの共同編集者。

画像クレジット:Starlink

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA、火星からサンプルを持ち帰る宇宙機MAVの開発に向けロッキード・マーティンと契約

NASA/ESA/JPL-Caltech

火星探査ローバーのPerseveranceには、火星の地表にある岩石や堆積物、大気を含むサンプルを採取してパッキングする役割があります。しかしNASAにはまだそれを地球へと持ち帰る手段がありません。NASAはそのサンプルを手に地球へ持ち帰る宇宙機Mars Ascent Vehicle (MAV)の開発製造企業としてロッキード・マーティンを選定しました。

これはNASAの火星サンプルリターン計画において、無人機で地球にサンプルを持ち帰る最初の往復ミッションになります。このミッションではMAVを搭載するサンプル回収用着陸機(Sample Retrieval Lander)がジェゼロクレーター近辺に着陸、Perseveranceが残したサンプルを拾いあつめてMAVに積み込み、発射台としてMAVを地球に向け打ち上げます。

ロッキードマーティンは複数のMAVプロトタイプを用意しテストします。NASAは、ロケットの地上支援装置の設計と開発に加えて、MAV統合システムの設計、開発、テスト、評価を請け負っています。

言葉で説明すればこれだけのことですが、いざ実行に移すとなるとそれは非常に困難なミッションになると予想されます。MAVは、火星の過酷な環境に耐えるべく堅牢に作られ、他のNASAの宇宙機と完璧に連携する必要があります。さらにMAVは2026年までに打ち上げられる予定のサンプル回収用着陸機に搭載できるぐらいのコンパクトさに仕上げられなければなりません。

契約は1億9400万ドルで2月25日からオプション基幹含め6年の契約期間になるとのこと。火星からのサンプルリターンは、地球以外の惑星からの初のリターンミッションになる予定で、成功すれば生命が存在した可能性もある初期からの火星の歴史を明らかにする重要な資料が得られると考えられています。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

ハイパースペクトル衛星画像技術Wyvernが新たに約4.6億円獲得、スマートファーム施設での実験でも使用される

カナダのスタートアップ企業で、衛星画像技術を手がけるWyvern(ワイバーン)は2021年12月、450万ドル(約5億2000万円)のシードラウンド(新たな取り組みが発表されたおかげで終盤にほぼ倍増した)を実施し、Y Combinator(Yコンビネーター)への参加を発表したばかりだが、さらに今回、カナダのSustainable Development Technology(SDTC、持続可能な開発技術)プログラムを通じて、新たに400万ドル(約4億6000万円)の資金を獲得したことを明かした。

SDTCプログラムは、シード期、グロース期、スケールアップ期の各段階にあるスタートアップ企業に対し、官民の機関や企業とのパートナーシップを通じて、クリーンテックに革新を起こす可能性のあるプロジェクトへの資金提供を行うというもの。SDTCが提供する資金は、スタートアップ企業に株式の譲渡を要求するものではなく、また返済義務のあるローンでもない。その代わり、SDTCとそのパートナーが設定した測定可能な結果と成果物をもとに契約を結び、その目標を達成することで資金を得られる。

Wyvernの場合、SDTCは、BASFのxardio digital farming(ザルビオ・デジタルファーミング)、Olds College(オールズ大学)、SkyWatch(スカイウォッチ)、MetaSpectral(メタスペクトラル)、Wild + Pine(ワイルド+パイン)のコンソーシアムと協力。この3年間におよぶプロジェクトの概要は、オールズ大学にある2800エーカー(約11.3平方キロメートル)の「スマートファーム」施設を使って、Wyvernのハイパースペクトル衛星画像をテストするというものだ。

Wyvernは現在、自社の技術を実際に宇宙へ持って行くことに取り組んでいるため、資金が豊富にあることは非常に重要だ。同社は今後数年内に、最初の観測衛星「DragonEye(ドラゴンアイ)」を打ち上げることを計画している。

画像クレジット:Olds College

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

100kg級小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所がシリーズBセカンドクローズとして10.5億円調達

100kg級小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所がシリーズBセカンドクローズとして約10.5億円調達

世界トップレベルの100kg級小型SAR(合成開口レーダー)衛星の開発・運用を行うQPS研究所は2月8日、シリーズBラウンドセカンドクローズとして、第三者割当増資による約10億5000万円の資金調達を完了したと発表した。

引受先は、未来創生3号ファンド(スパークス・アセット・マネジメント)、SMBC日興証券、みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合(みずほキャピタル)、UNICORN 2号ファンド投資事業有限責任組合(山口キャピタル)、大分ベンチャーキャピタルが運営する「おおいた中小企業成長ファンド投資事業有限責任組合」「大分VCサクセスファンド 6号投資事業有限責任組合」の計5社。2021年12月9日に公表した同ファーストクローズ38億5000万円とあわせ、シリーズBラウンドとしては総額49億円の資金調達を実施したことになる。また累計資金調達額は約82.5億円となった。

今回のセカンドクローズで調達した資金は、ファーストクローズに続き、2022年打ち上げ予定の衛星3号機~6号機、また7号機以降の開発・運用にあてる予定。

QPS研究所は従来のSAR衛星の1/20の質量、1/100のコストで100kg級高精細小型SAR衛星の開発に成功し、夜間や天候不良時でも高分解能・高画質で観測できるSAR画像を提供。今後は衛星を毎年複数機打ち上げ、2025年以降を目標に36機の小型SAR衛星のコンステレーションを構築し、平均10分ごとの準リアルタイム地上観測データサービスの提供を目指している。同プロジェクトを早期実現すべくシリーズB資金調達に至ったという。

QPS研究所は、九州の地に宇宙産業を根差すことを目指し、九州大学名誉教授の八坂哲雄氏と桜井晃氏、三菱重工業のロケット開発者であった舩越国弘氏が2005年に設立。九州大学での小型衛星開発の20年以上の技術をベースに、国内外で衛星開発や宇宙ゴミ(スペースデブリ)への取り組みに携わってきたパイオニア的存在である名誉教授陣と若手技術者・実業家が幅広い経験と斬新なアイデアを基に、「宇宙の可能性を広げ、人類の発展に貢献すること」を企業ミッションとして、現在は世界トップレベルの衛星データビジネスの創出に取り組んでいるという。また創業以前より宇宙技術を伝承し、育成してきた約20社の九州の地場企業とともに人工衛星をはじめ、世界にインパクトを与える数々の宇宙技術開発を行っている。

白熱化する衛星リモートセンシング市場、合成開口レーダーを活用する衛星画像のICEYEが約157億円調達

合成開口レーダー(SAR)を用いた衛星画像を提供するスタートアップ企業のICEYE(アイスアイ)は、新たなシリーズD投資ラウンドで1億3600万ドル(約157億円)を調達、これまでの資金調達総額は3億400万ドル(約350億円)となり、SpaceX(スペースX)を除く宇宙関連スタートアップ企業の中では最も資本力のある企業の1つとなった。ICEYEは、宇宙から地球の画像を撮影するリモートセンシングに注力する企業で、そのために同社が用いる技術は、従来の画像ベースの観測では難しかった雲やその他の障害物で覆われた場所も容易に覗き込むことができるため、利益率の高い国防産業を含む、幅広い顧客を惹き付けている。

防衛産業といえば、ICEYEは米国時間1月20日に米国家偵察局(NRO)と契約を結び、同局によるSARの商業リモートセンシングの評価に参加することになった。ICEYEはまた、すでに軌道に乗せた16基の衛星に加え、2022年にはさらに10基の新しい衛星の打ち上げも計画している。

ICEYEは当初、フィンランドのヘルシンキで設立されたが、その後は米国にも子会社を設立するなど事業の足場を拡げ、2021年からは独自の製造施設も稼働させている。米国内で衛星を製造・運用できるということは、ICEYEが米国の国防に関わる重要な案件を請け負うことができるという意味だ。

その一方で、同社は、保険、海運、海上監視、災害対応、さらには金融など、さまざまな業界の顧客にサービスを提供し続けている。夜間や悪天候など、従来の障害に邪魔されずに地表を頻繁に撮影できることに価値を見出す顧客は後を絶たない。

今回の1億3600万ドルの資金調達は、既存投資家であるSeraphim Space(セラフィム・スペース)が主導し、新たな戦略的投資家や、既存の顧客であるBAE Systems(BAEシステムズ)、Kajima Ventures(カジマ・ベンチャーズ)も参加した。

画像クレジット:ICEYE

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXが月額約5.7万円の「プレミアム」Starlinkプランを発表、最大500Mbpsの速度を実現

SpaceX(スペースX)は、同社の衛星インターネットサービスStarlink(スターリンク)において、より高いパフォーマンスと目を疑うような価格の新サービスプランを発表したとThe Vergeが報じた。「Starlink Premium(スターリンクプレミアム)」と名づけられたこのサービスは、150〜500Mbpsの速度を20〜40msの遅延で提供するとのこと。従来の50〜250Mbpsから速度はアップし、同じ遅延ということになる。アップロード速度も、標準プランの10〜20Mbpsから、プレミアムでは20〜40Mbpsに向上している。

だが約2倍のパフォーマンスアップのためには、5倍の料金を支払わなければならない。標準プランの月額99ドル(約1万1300円)に対し、Starlink Premiumプランは月額500ドル(約5万7200円)となる。また、アンテナなどのハードウェアには、標準プランの499ドル(約5万7100円)に対し、2500ドル(約28万6000円)が必要となり、Premiumアンテナの予約には500ドル(約5万7200円)の保証金が必要となる。

SpaceXによると、この新サービスは「極端な気象条件」でもより確実に機能し、顧客は優先的に24時間年中無休のサポートを受けることができるという。このサービスは、多くの遠隔地で利用できる高速インターネットの唯一の選択肢となる可能性が高く、そうした環境で優れた耐候性は重宝されるだろう。

SpaceXは、2021年10月にStarlinkのベータ版を発表し、同年11月には、オリジナルの円形衛星アンテナよりもはるかに小さく薄い長方形の新しい衛星アンテナを発表した。新しいPremiumアンテナはそれよりも大きく「ネットワークの使用量がピークに達したときでも、重要な業務のための帯域幅を確保するのに役立つ」とSpaceXは述べている。

Starlinkは、1月中旬時点で2000基以上の衛星を打ち上げており、約1500基が運用軌道に乗っている。現行システムでは、現在の約3倍となる最大4408基の衛星運用が認められている。Premiumプランは2022年第2四半期に納入開始を予定しており、現在注文受付中だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starlink

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定宇宙ベンチャー天地人、衛星画像から水道管の漏水可能性区域を判定する実証実験を開始

JAXA認定の宇宙ベンチャー企業であり、宇宙ビッグデータを活用して土地の価値を見出すスタートアップ天地人は、衛星画像を使って水道が漏水していると思われる箇所の推定を行う実証実験を開始する。これは、愛知県の豊田市上下水道局、漏水検査や地中探査事業を展開するフジ地中情報と共同で実施されるもので、豊田市全域を対象として、2022年2月1日から2023年3月下旬まで行われる。

この実証実験で天地人は、衛星画像をAIで高精度解析して水道管の漏水可能性区域を判定し、フジ地中情報が実施する路面音聴調査のデータをもとに、AIによる漏水可能性判定の分析と精度向上を行うことにしている。「最新の衛星データでどこまで漏水可能性区域を判定できるかを検証」すると天地人は話している。

同様の調査は、2021年8月、豊田市の一部地域を対象に行っているが、そのときの推定的中率は約3割だった(556の漏水可能性区域のうち154区域で漏水が判明)。このときは、判定区域の直径を200mとしていた。今回は、直径100m以内に狭め、的中率約6割を目指すという。

月面活動に向け衛星コンステレーション構築を目指すアークエッジ・スペースがシリーズAファーストクローズとして16.7億円調達

キューブ衛星による小型衛星コンステレーションの構築を進める株式会社アークエッジ・スペースが16.7億円の資金調達を実施

超小型衛星の開発運用などを手がけるアークエッジ・スペースは1月26日、シリーズAファーストクローズとして、第三者割当増資による16億7000万円の資金調達を実施したことを発表した。引受先には、インキュベイトファンドをリードインベスターに、リアルテックファンド、MSIVC2021V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタル)などが加わっている。累積調達額は約21億円となった。

アークエッジ・スペースは、経済産業省の「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」に採択(2021年8月)され、JAXAの「⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発」の委託先にも採択(2021年12月)されている。さらにJAXAの公募型企画競争「Comet Interceptor ミッションにおける超小型探査機システムの概念検討」の委託先にも選定された(2021年8月)。またルワンダ政府より、同国初の人工衛星の製造開発を受注し、2019年にはISSの「きぼう」日本実験棟から放出を成功させるなどの実績を持つ。

今回調達した資金で、アークエッジ・スペースは、月面活動に必要となる通信と測位の衛星コンステレーション構築、6U衛星による衛星コンステレーションの実現、人材採用による組織力の強化を目指すという。

月面活動に関しては、「⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発」に関連し、2025年を目途に、月と地球間の超長距離通信システムの構築に必要となる超小型衛星の開発と実証を行う。また、月面活動向け通信・測位システムを担う超小型宇宙機の開発・打ち上げ実証を着実に実施するとしている。「日本の持続的な月、月以遠の深宇宙探査や月面産業の構築」に貢献するという。

6U衛星コンステレーションは、「超小型衛星コンステレーション技術開発実証事業」の一環。「IoT通信」「地球観測」「海洋DX(VDES)」「高精度姿勢制御ミッション」の4テーマに対応した6U衛星7機からなる衛星コンステレーションの開発と軌道上運用を2025年までに実現させる。この衛星により、世界中の政府や研究機関、民間事業者に6U衛星プラットフォームを提供し、「SDGs達成、地球課題解決、海洋のデジタルトランスフォーメーション、持続可能な宇宙産業の創出」に貢献するという。

NASAの雑誌「Spinoff」は宇宙生まれの技術の民間企業転用例を紹介

NASA(米航空宇宙局)の「Spinoff」は、筆者が毎年楽しみに読んでいる雑誌の1つだ。NASAの研究は、驚くべき、そして興味深い方法で世界に浸透しており、その内容が年に1度発刊される雑誌の中で追跡・収集されている。2022年も、ハイキング用のガジェットから重工業、そしておもしろいことに宇宙まで、あらゆるところでNASAの技術に出会うことができる。

2022年度版でも、さまざまな場所で日常的に使われるようになった技術が多数紹介されており、こちらから閲覧できる(約60ページあるので、コーヒーでも飲みながら、ゆっくりご覧いただきたい)。

筆者は、NASAの技術移転プログラムの責任者であるDaniel Lockney(ダニエル・ロックニー)氏に話を聞いた。同氏は、NASAの技術や研究を有効活用しようとする地上の企業に展開する活動を統括している。

「一般的には、次のようなことが起こります。NASAが何かを開発すると、私のオフィスに報告します。私たちはそれを見て、まず、それがうまくいくかどうかを考えます。そして次に、誰がそれを使うのか、もし使える人がいれば、その人に届ける方法を考えるのです」とロックニー氏は説明した。「私は、できる限り無料で提供するよう試みます。収益を上げるとか、米財務省に何かを還元するとか、そういう方針は持っていません。1958年にNASAが制定した法律には、我々の仕事を普及させるようにと書かれていますが、そこには金儲けについては何も書かれていません」。

その結果、コンパクトで長持ちする浄水器や珍しい機械部品など、宇宙や打ち上げのために必要だったが、地上で再利用できるかもしれない興味深い技術が、安価または無料で利用を許諾されることになった。

ロックニー氏は、最新のライセンス契約の中で、特に興味深いと思ったものを2つ紹介した。

「GM(ゼネラルモーターズ)との提携で『Robo-Glove(ロボグローブ)』を開発しました。これは、宇宙飛行士が着用する機能性グローブで、反復作業時の負担を軽減し、握力を高めます」と同氏は語った。「宇宙遊泳で何かを握ったりするのは、2、3回ならできますが、午後ずっと工具を握っているとなれば負担になります。そうした作業を補助するためにこのグローブを開発しました。今では世界中の工場で使われています」。

画像クレジット:Bioservo Technologies

スイスのBioservo(ビオサーボ)は、ロボグローブのNASA特許のライセンス供与を受け、何年も前からそのコンセプトに基づき試行錯誤を重ね、2021年夏には最新版のアイアンハンドを発表した。その最も一般的な使用例は、手に怪我を負ったために仕事を失うかもしれない従業員が、この手袋を使うことでより早く仕事に復帰でき、また痛み止め薬の服用も減らせるというものだ。

技術供与を受けるのが1社だけとは限らない。ロックニー氏は、NASAが完全に人工的な条件下での精密農業における問題を調べた最初の組織だと指摘した。

「NASAは、長距離宇宙飛行でクルーの健康を維持するために、多くの実験を行っています。その1つが、自分たちの食べ物を育てることです。植物を見ることによる心理的なメリットもあります」と同氏はいう。「しかし、土や水耕栽培のような重い培地を使わずに作物を栽培する方法を見つける必要がありました。水はかなり 重く、大変貴重なものです。また、照明も適切でなければなりませんが、エネルギーを使いすぎるのもよくありません。そこで私たちは、小さなスペースでたくさんの植物を栽培するための農業技術を開発しました。植物のストレスをコントロールすれば、生育条件を正確に調整でき、収穫量も向上します。実際に、根を覆う栄養フィルム、適切なスペクトルの光を照射するLED、そしてもちろん、あらゆるところにセンサーを設置しています」。

「都市部でも同じような状況です。農地の資源を浪費せずに、どうやってこの人口に食料を供給するのでしょうか。しかし、私たちがこの研究を主導したのは、誰もその必要性を感じていなかったからです。結局、宇宙飛行での必要性が直接のきっかけとなったのです。そして今、都会の密集地で垂直農法を行い、実際に野菜を食料品店に提供している会社がいくつかあります」と同氏は続けた。

ここで実際に取り上げた例は、取り組みが始まってまだ日が浅い。しかし、消費者と投資家の双方にとって、海外から何千キロもかけて輸送されたものよりも、数ブロック以内で効率的に栽培された食品を手に入れたいという欲求は明らかに存在する。

NASAの仕事は、生命維持のための産業だけでなく、レジャーにも道を開いている。2022年の「Spinoff」に掲載されたもののうち、少なくとも3つのアイテムは、ハイキングやキャンプなどのアウトドア活動に関連している。1つは、もともと宇宙船の外壁に使われていた薄膜の放射防止材が、超軽量の断熱層として13-Oneなどのジャケットに採用された。90年代に研究されたエアロジェルは、シアトルに本社を置くOutdoor Research(このブランドは、店の前を通るとついつい買ってしまう)の新しいギアに採用された。また、NanoCeram(ナノセラム)と呼ばれる素材は、新しい携帯用浄水器ボトルに使用されている。

スピンオフした技術に関する出版物に載っているとは思えないような新しい応用例として、Astrobotic(アストロボティック)の月着陸船「Peregrine」がある。これまで、このような技術は国が支援するプログラムに限定されていたが、商業宇宙分野が急速に拡大する中、NASAの技術は宇宙を目指す企業にとっても貴重なものになっている。

関連記事:月へNASAの水探索車を届けるためにスペースXがFalcon Heavyロケットの打ち上げを2023年に予定

新しいものばかりではない。中には、何十年も前に開発され、今もなお新しい用途やライセンス先が見つかっていないものもある。

「私たちがすべての作業を終え、商業的なもの、製造やマーケティング、または次の新しい何かを行うパートナーを見つけるまでに、10年はかかります」とロックニー氏はいう。「研究開発のタイムラインは長く、商品化のタイムラインも長いのです。

しかしそれは、たとえ何年も前の論文や材料であっても、常に新鮮なものが出てくることを意味する。2022年の「Spinoff」には、さらに多くの注目すべき技術や企業が掲載されているので、ぜひ一読して欲しい。そして、時間があれば、アーカイブもどうぞ

画像クレジット:NASA/nkd Life

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡がラグランジュ点L2軌道に到着、光学機器の調整へ

Steve Sabia/NASA Goddard

打ち上げから1か月を経て、ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(JWST)がラグランジュ点L2に到着しました。この地球から約150万km離れた軌道で宇宙望遠鏡はこれから約3か月かけて光学系の調整など観測の準備を行います。

L2軌道は太陽からの光が地球の影によって遮られるため、機体を超低温に保つことができます。そのため赤外線機器への熱干渉が発生しにくく、観測に最適な環境が得られます。

観測の邪魔になる要素が少なくなれば、非常に遠い宇宙の観測にノイズが入り込みにくく、地球周回軌道から観測していたハッブル宇宙望遠鏡では得られなかった高精度な観測データの取得が期待されます。JWSTは大きなサンシールドも備えており、機体はマイナス230℃という低温で観測を行うことになります。

計画の変更やトラブルの数々に悩まされ、さらには新型コロナによって開発が幾度となく延期されてきたJWSTですが、打ち上げ以降はこれまでのところ目立ったトラブルもなく、順調に観測に向けた準備が進められているのは喜ばしいことと言えるでしょう。

ハッブル宇宙望遠鏡はそろそろ機器としての寿命が近づいているため、その後継的な立場としてのJWSTには期待が高まっています。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

ISSに宇宙初の映画スタジオを2024年までに接続する計画を米エンターテインメント会社が発表

国際宇宙ステーションに、映画スタジオやスポーツアリーナを備えたモジュールが、2024年12月までに接続される可能性が出てきた。このプロジェクトは、宇宙で一部撮影を行うTom Cruise(トム・クルーズ)の映画を共同制作しているSpace Entertainment Enterprise(スペース・エンターテインメント・エンタープライズ、SEE)が発表したものだ。Variety(バラエティ)によると、このSEE-1と呼ばれるモジュールが稼働すれば、テレビや映画の制作だけでなく、音楽イベントやある種のスポーツなどを開催し、それらを撮影したりライブ配信することができるようになる計画だという。

関連記事:NASAがトム・クルーズの映画に協力、ISS宇宙ステーションで撮影

実際にこのモジュールを建造するのは、2年前にNASAからISS初の商用モジュールの建造を受注したAxiom Space(アクシオム・スペース)が担当することになっている。すべてが順調に進めば、SEE-1はISSのAxiom Spaceが建造したアームに接続される。Axiom社のステーションは、SEE-1を取り付けたまま、2028年にISSから分離する予定だ。

関連記事:国際宇宙ステーションの商用化に向けてNASAが居住モジュールの設計をAxiom Spaceに発注

SEEとAxiomがこの計画を実行できるかどうかはまだわからない。なぜなら、SEEは施設の建造費用を明らかにしておらず、現在はその資金調達を計画している段階だからだ。

2021年、ロシアのクルーが初めて宇宙で長編フィクション映画を撮影し、トム・クルーズやDoug Liman(ダグ・ライマン)監督を出し抜いた。その映画「The Challenge(ザ・チャレンジ)」は2022年中に公開が予定されている。一方、クルーズとライマン監督は、2022年後半にISSで映画の撮影を行う予定だ。

関連記事:ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のKris Holtは、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Space Entertainment Enterprise

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(文:Kris Holt、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Rocket Labが宇宙用太陽光電池を手がけるSolAeroを約91.6億円で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙ソリューションの垂直統合というミッションに取り組んでいる。米国時間1月18日、この打ち上げ・宇宙システム企業は、宇宙用太陽光発電製品および精密航空宇宙構造物のサプライヤーであるSolAero Holdings(ソルエアロ・ホールディングス)を現金8000万ドル(約91億6000万円)で買収完了したことを発表した。

1998年に創立されたニューメキシコ州に本拠を置くSolAeroを買収したことで、Rocket Labは衛星製造のための重要なサプライヤーを社内に持つことになる。同時に、Rocket Labのリソースを利用することができるようになったSolAeroは、大量生産と規模拡大に必要な製造能力を得ることができ、他の顧客への供給を強化することが可能になる。

今回の買収は、宇宙市場のさらなる獲得を目指すRocket Labを支援し、その長期的なビジョンを後押すると、広報責任者のMorgan Bailey(モーガン・ベイリー)氏はTechCrunchに語った。

「例えば、Rocket LabがElectron(エレクトロン)やNeutron(ニュートロン)で特定の宇宙機を打ち上げることはないかもしれませんが、ソーラーパネルや、スタートラッカー、リアクションホイール、フライトソフトウェア、分離システムなどのコンポーネントを供給することによって、収益を得ることができ、ミッションの一翼を担うことができます」と、ベイリー氏はいう。「もちろん、SolAeroの技術は、Rocket Lab自身ののPhoton(フォトン)宇宙船にも組み込まれ、当社の垂直統合戦略をさらに後押しすることになります」。

今回の買収は2021年12月に一定の閉鎖条件を前提に発表されたもので、Rocket Labはその数カ月前に、コロラド州のAdvanced Solutions, Inc. (ASI、アドバンスト・ソリューションズ)という宇宙用ソフトウェア会社を4000万ドル(約45億8000万円)で買収することを発表している。ASIの買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を構築し、宇宙船の製造、衛星のサブシステム、フライトソフトウェア、地上運用、打ち上げまでを網羅した「エンド・ツー・エンド」の宇宙企業になるという目標の達成を支援することが目的だという。

関連記事:Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

SolAeroの合併は、Rocket Labが2021年12月に買収した宇宙機分離システム会社のPlanetary Systems Corporation(プラネタリー・システムズ・コーポレーション)と、2020年4月に買収した衛星部品メーカーのSinclair Interplanetary(シンクレア・インタープラネタリー)に続くものだ。

「SolAeroは、Rocket Labの垂直統合型ビジネスモデルを高度に補完するものであり、我々の顧客に完全な宇宙ミッションソリューションを提供することを可能にします」と、Rocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は声明の中で述べている。「これまで1000回以上のミッションを成功させた経験を持つSolAeroのチームは、James Webb(ジェイムズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡や、InSight(インサイト)とIngenuity(インジェニュイティ)を含む火星でのミッションに、宇宙太陽光発電ソリューションを提供するなど、先駆的なミッションを実現してきました」。

InSight火星探査機は、火星表面に展開された史上最大の太陽電池アレイであり、Ingenuityは2021年4月に火星での飛行に初めて成功したヘリコプターである。

SolAeroの製品は、NASAのParker Solar Probe(パーカー・ソーラー・プローブ)宇宙探査機や、国際宇宙ステーションへのCygnus(シグナス)補給ミッションに電力を供給してきた。また、OneWeb(ワンウェブ)のブロードバンド衛星コンステレーションにも電力を供給しており、NASAのArtemis(アルテミス)月面探査計画では、将来の火星探査を可能にするSolar Power Modules(ソーラー・パワー・モジュール)の供給元に選ばれている。

SolAeroで働く425名のチームがRocket Labに加わることで、同社ではカリフォルニア、バージニア、コロラド、メリーランド、トロント、ニュージーランド、そして今後は(SolAeroの)アルバカーキの施設をを含め、合計1100名以上の従業員が働くことになる。SolAeroチームは引き続き、社長兼CEOのBrad Clevenger(ブラッド・クレベンジャー)氏が指揮を執る。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

地球低軌道で撮影されるハイパースペクトル画像を提供するWyvernが約5.2億円調達、2022年に同社初の打ち上げを予定

衛星画像技術の最先端を行くカナダのWyvernが、450万ドル(約5億2000万円)を調達した。そのうち225万ドル(約2億6000万円)はシードラウンドで、残る225万ドルはプレシードと政府投資の合計となる。同社はハイパースペクトルイメージング(可視光線を含むさまざまな波長において波長の違いを識別する能力で対象物の反射光を撮影し、可視化する技術)に特化して取り組んでいる。同社はまた、Y Combinatorの2022冬季に参加している。

TechCrunchは過去にも、インキュベーターCreative Destruction Lab(CDL)の2019年に行われた学会のようなデモデーに参加したときなど、同社を取り上げてきた。その後、同社は資金調達以外の面でも急速な成長を遂げ、社員は18名となり、航空宇宙業界のベテランで元Airbus(エアバス)のCTOだったChristine Tovee(クリスティン・トビー)氏を招いている。さらにWyvernは、2022年に同社初となる衛星の打ち上げを行う。

共同創業者でCEOのChristopher Robson(クリストファー・ロブソン)氏は次のように語る。「打ち上げは、私たちが楽しみにしている次の大きな事業です。これは私たちの最初の画像製品になります。これは超高解像度のハイパースペクトルを得るための最初のステップとなります。超高解像度のものはまだ数年先ですが、登場すれば、かなりすばらしいものになり、ゲームを変えるものになるでしょう」。

宇宙から捉えたハイパースペクトル画像へのアクセスを商用の顧客に提供できるようになれば、Wyvernの最初のターゲットである農業をはじめ、既存の産業の効率を大幅に上げるだけでなく、まったく新しい事業や産業にも実現の機会を提供する。ハイパースペクトル画像は、例えば捉えたシーンの化学的組成など、これまで隠れていた情報を詳細に提供することができる。

シードラウンドをリードしたMaC Venture Capitalは、ハイパースペクトルの広大なポテンシャルを認識しており、ロブソン氏によると、同VCとこの度新たにWyvernの取締役会に加わったAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は、若い同社に完璧にマッチしているという。

「最初の会議のときから、両社は波長が合っていました。またそれ以上に重要なことは、MaCにはすでに宇宙産業への投資経験があったことです。同社は、宇宙市場に対して極めて積極的です。彼らは非常に戦略レベルで考えるため、投資に臨む視点の中に顧客と投資家とパートナーからの見方が共存しています。またそれは、宇宙に限定されず、その他の私たちの顧客市場対しても同様です」とフェンティ氏はいう。

若い起業家とエンジニアと科学者たちのチームが創業したWyvernは、その戦略的な利点に加えて最近、トビー氏を招いた。ロブソン氏は、同社のその重要なリーダーシップチームチームメンバーの招聘について、次のように語った。

「クリスティン(・トビー)はかなり前から私たちの技術顧問団の1人です。また両者は、CDLのころからの強固な関係があります。それに、一緒に仕事をすることが楽しい。クリスティンと我々チームとの間には、お互いに対する深い尊敬があります。私たちとしては航空宇宙のベテランを役員が必要で、宇宙産業に対する私たちの理解を深めてもらいたかった。だから彼女が来たことは、戦略的な面でとてもすばらしいことです」。

Tovee氏はまた、ジェンダーのダイバーシティがおそろしく遅れている業界で、同社の2人目の女性上級管理職として迎えられる。2021年のTechCrunch主催セッションTC Sessions:Spaceに出てくれた、Wyvernの共同創業者でCOOのCallie Lissinna氏は、ダイバーシティは最初から同社のプライオリティであり、そのことは投資家や入社志望者たちとの会話でも良い効果を生んでいるという。

「投資家たちはほとんどみんな、宇宙産業で創業時から50 / 50のダイバーシティ、役員チームでは66%の女性上位を実現していることに言及しとてもユニークだといいます。そしてこのことは雇用や募集にも影響を与えています。学生たちは、私たちの創業チームや社内のダイバーシティがとても気に入った、といってくれます。だからこれは、人材獲得と投資調達の両方の面で、私たちの魅力になっているようです」とトビー氏はいう。

画像クレジット:Wyvern

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

周回衛星向け地上セグメントサービスプロバイダーのインフォステラが総額12億円でシリーズB調達完了

周回衛星向け地上セグメントサービスプロバイダーのインフォステラが総額12億円でシリーズB調達完了、2022年中に米法人立ち上げ周回衛星向け地上セグメントサービスプロバイダーのインフォステラは1月14日、シリーズBラウンドにおいて、総額12億円の資金調達を完了したと発表した。2021年10月実施のファーストクローズ時に7億円、また今回ファイナルクローズとして5億円を調達した。累積資金調達金額は総額24億4000万円となった。

ファイナルクローズの引受先は、既存株主の三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル)、新規投資家のシンガポール政府系投資会社Temasek Holdings傘下のPavilion Capital PTE. LTD.、ICMG共創ファンド1号投資事業有限責任組合(ICMG Partners)、QB第二号投資事業有限責任組合(QBキャピタル、NCBベンチャーキャピタル)を新規株主。

宇宙ビジネスの成長に向けて、周回衛星の事業者に地上セグメントのトータルサービスを提供するため、シリーズBで調達した資金により以下領域に注力する。

シリーズBラウンド調達資金の用途

  • 通信エリアの拡大:通信可能エリアの拡大に向けてStellarStationへの地上局の接続を進める。2021年6月に提携した「AWS Ground Station」の地上局を含め、2022年中早期に世界中で20カ所前後の地上局をStellarStation経由で利用可能となる状態を目指す
  • 衛星オペレーター向け規制対応やライセンス取得サポートの充実:衛星の打ち上げ前に必要となる規制への対応やライセンスの取得のサポートについて、サービスの強化とキャパシティ充実のために体制を強化
  • 国内での地上局ホスティングサービスの開始:日本国内での通信のために、日本での地上局設置に関するニーズがあり、これに応えるため2022年中に日本国内にサイトを準備し、ホスティングサービスを開始することを目指す
  • 米国への事業拡大:海外の衛星オペレーターから、地上局ネットワークについて問い合わせを受ける機会が増えていることから、特に北米でのサービス提供強化のため、2022年中に米国法人の立ち上げる
  • 人材採用・組織力の強化:上記施策の実行に向け、Business Development、Software Development、Operationチームの採用を加速し、組織強化を進める

2016年設立のインフォステラは、周回衛星向けGround Segment as a Service(GSaaS)プロバイダー。「We connect Earth and Space to empower the future」(地球と宇宙をつなげ未来をエンパワーする)をビジョンに掲げ、その実現に向けて「Be the most effective enabler of space business by providing the best access to satellite」(衛星への最高のアクセスを提供し、宇宙ビジネスを最も効果的に実現する)をミッションとしている。

同社は、地上局ネットワークを仮想化するクラウドプラットフォーム「StellarStation」を通じて、柔軟性と拡張性に優れた地上局ネットワークを提供。StellarStationでは、衛星運用者側は一度セットアップを行うだけで、世界中の地上局にアクセスできるようになる。地上局オーナー側は、地上局非稼働時間を他の衛星運用者に貸し出すことで、収益につなげられるとしている。

また、無線ライセンス取得や周波数調整業務など、衛星運用を行うにあたり必要となる地上セグメント側の業務サポートも実施。地上セグメント構築の難易度を下げることで、衛星を活用した新しいビジネスに取り組む企業のミッション開発とサービス改善を支援している。

宇宙のガソリンスタンドOrbit Fabが地球静止軌道にあるAstroscaleのサービス衛星に燃料供給する契約を締結

軌道上における持続可能な運用のための新境地を開くようなパートナーシップが誕生した。「宇宙のガソリンスタンド」を標榜するスタートアップ企業のOrbit Fab(オービット・ファブ)は、稼働衛星の寿命延長サービスに取り組むAstroscale(アストロスケール)と提携し、同社が保有する寿命延長衛星「LEXI(Life Extension In-Orbit、レキシー)に地球静止軌道(GEO)上で燃料補給を行うサービスを提供する。

AstroscaleとOrbit Fabは、どちらも人工衛星の活動期間を延ばすことを目的とした技術を中心に提供する企業だ。Orbit Fabは、衛星が宇宙で燃料を容易に補給できるようにするための技術をてがけており、そのために軌道上で他の宇宙船が簡単に着脱可能な燃料移送インターフェイスを設計した。Astroscaleは、LEXI衛星を使って、静止軌道(GEO)上にある既存の衛星に接続し、コースを修正したり、新たな目標傾斜にリロケーションすることで、ミッションを拡張するサービスを提供する。

AstroscaleはLEXIを「燃料補給できるように設計された最初の衛星」と謳っている。これによってLEXIは、Orbit Fabの燃料移送インターフェース(Rapidly Attachable Fluid Transfer Interface、略してRAFTI)と軌道上燃料タンカーにとって完璧なターゲットカスタマーとなる。計画通りに進めば、2026年にはAstroscaleのLEXIの1号機が宇宙で活躍することになり、Orbit FabはLEXIに最大1000kgのキセノン推進剤を補給する契約を結んでいる。

Orbit Fabによると、同社では今後5年から10年以内に数十の燃料タンカーと燃料運搬船を打ち上げ、地球低軌道(LEO)とGEO、そしてNASAのアルテミス計画に伴って活発化するはずの地球と月の間のシスルナ空間に、これらの宇宙機を戦略的に配備する予定だという。計画通りに進めば、2023年にはOrbit Fabの最初の燃料運搬船2隻が、LEOで試運転を行うことになる。

画像クレジット:Astroscale / Orbit Fab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アークエッジ・スペースがJAXA「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」委託先に選定

アークエッジ・スペース、JAXAの「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に選定、コンソーシアムにて開発計画を検討

アークエッジ・スペースは1月11日、JAXAの公募型企画競争(コンペ)「『⽉⾯活動に向けた測位・通信技術開発』に関する検討」の委託先に2021年12月22日に選定されたこと、同時にKDDIや東京大学などとコンソーシアムを組織し、月探査のための測位・通信システムの総合アーキテクチャーなどの開発検討を行うことを発表した。

アークエッジ・スペースは、超小型衛星の製作運用などを行う東京大学発の宇宙企業。コンソーシアムのメンバーは、アークエッジ・スペースの他、ispace、AAI-GNSS技術士事務所、清原光学KDDIKDDI総合研究所東京大学大学院工学系研究科三菱プレシジョンの7団体となっている。そこで、2022年1月初旬から3月25日まで、月探査の基盤となる測位・通信システムの総合アーキテクチャー、月測位衛星システム、月と地球を結ぶ超長距離通信システムなどの開発計画を検討する。これを通して、国際的な技術調整の場で提案できるアーキテクチャーの設定や、そのアークテクチャーに必要なキー要素技術の研究開発を加速するという。

アメリカが中心となって進められている国際宇宙探査計画「アルテミス計画」の中で、日本は測位や通信といった基盤を「早期に整備し、リードしていく」ことが求められているとのこと。産官学連携でスピーディに技術開発や実証を推進し、「日本の持続的な月・月以遠の深宇宙探査や月面産業の構築に貢献していきます」とアークエッジ・スペースは話している。

中国の探査機「嫦娥5号」が月面に水が存在する証拠を直接確認、世界初

中国の月探査機Chang’e-5(嫦娥5号)が、月面で水の存在を確認するデータを観測した。これは、地球の衛星に水が存在することを現地で確認した初めての例になる。中国の研究者は、Science Advancesに掲載された研究論文で、探査機がH2Oや水酸基(H2Oに近い化学物質)の兆候を検出したと主張している。嫦娥5号は、着陸地点の近くにあるレゴリスの組成をスペクトロメーターで分析した。その結果、ほとんどの土壌のスペクトル観測による水の濃度推定値は120ppm以下で、月面は地球の表面よりもはるかに乾燥していることがわかった。

Honglei Lin他。

中国の科学者たちは、これらの分子のほとんどが太陽風移植と呼ばれるプロセスによって月にもたらされたと考えている。太陽からの荷電粒子が水素原子を月面に追いやり、後に酸素イオンと結合して水と水酸基を形成したという説だ。今回の研究は、NASAが2018年に発表した、空中赤外線望遠鏡を用いて月の太陽に照らされた表面に水が存在する証拠を発見した知見に基づいている。何十年もの間、科学者たちは、月には大気がほとんど存在しないため、月は完全に乾燥していると考えていた。大気がないということは、太陽の厳しい放射線から水分子を守るものがないと考えられていたのだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:China Daily CDIC / Reuters

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

NASAが「アルテミス1号」にAlexaおよびCiscoのWebex統合、音声操作でテレメトリー読上げやビデオ通話なども可能に

NASAが「アルテミス1号」にAlexaおよびCiscoのWebexを統合、音声操作でテレメトリー読上げやビデオ通話なども可能に

Amazon

NASAは、Amazon、Cisco、ロッキード・マーティンと協力して宇宙飛行士がAI音声アシスタントなど商用技術によって、その活動に利益を得られるかどうかを確認する実験計画「Callisto」を発表しました。

Callistoでは、Amazonの音声アシスタントAlexaおよびCiscoのWebex技術をOrion宇宙船に組み込み、音声アシスタントやビデオ通話およびホワイトボード機能といった商用コミュニケーション技術の宇宙空間での有効性を確認します。

音声アシスタントにビデオ通話といえば、映画『インターステラー』でマシュー・マコノヒー演じるクーパーが、宇宙船に届いた家族からのビデオメッセージを見るシーンが思い出されます。あの場面ではクーパーが「数十年分のビデオメッセージがたまっている」と言うコンピューターに対して「最初から再生しろ」と音声で指示を出し、それを視聴します。

実験ではそれと同じようなことを、AmazonやCiscoの商用技術で実現できないか探ってみようというわけです。

最初の試験飛行は、無人のOrion宇宙船が月を周回したのちに地球に戻るアルテミス1号ミッションで実施されます。無人で行われるため、ヒューストンの宇宙センターにいるオペレーターが、仮想の乗組員として宇宙船に音声コマンドを送信、それが船内のスピーカーで再生され、Alexaがそれに対して期待するように動作するか、Webexを使用できるかなどを確かめるとのこと。Alexaは宇宙船のテレメトリーを監視できるように組み込まれ、飛行士は宇宙船の移動速度や月まで残りの距離をたずねたりすることができるようになるでしょう。

また、ホワイトボードの機能は機内の複数のカメラを使用してテストされ、地上管制からの書き込みが機内できちんと表示されるかを確認します。地上と宇宙で落書きを送りあうのにかかる時間は、管制センターが通信の遅れに対処するための方法を検討することにも役立ちます。

深宇宙ではインターネット接続など利用できるべくもありませんが、AlexaやWebexが機能するには代替の通信ネットワークが必要になります。そのため、惑星間ミッション中の通信に使用されるNASAのDeep Space Network(DSN)が使用されます。

Amazonは、Artemis I の実験で得た知見を元に、将来のミッションのため、また地上のインターネット接続環境がほとんど利用できない人々のためにAlexaに改良を加えるとしています。また仮想乗組員として音声コマンドの送信などを体験する機会を、将来の宇宙飛行士である学生らへのSTEM教育の一環として提供することも考えています。

ゆくゆくは、宇宙船に統合された音声AIアシスタントが、長い深宇宙の旅で暇を持て余した飛行士の会話相手になることも想像できます。しかし飛行士には「何か面白いチャレンジを教えて、とだけは聞くな」とアドバイスしておくべきかもしれません。

(Source:AmazonEngadget日本版より転載)

暗黒物質の候補となりうるアクシオンなど未知素粒子を探索する国際共同実験「SAPPHIRES」が始動

広島大学、暗黒物質を探索摺る国際共同実験「SAPPHIRES」を始動

広島大学は、国際共同実験「SAHHPIRES」(サファイアズ)において、2色の強力なレーザーを用いた暗黒物質の探索を始動したことを発表した。目標とするのは、暗黒物質の候補となりうるアクシオンなどの未知の素粒子。波長の異なる強力な2つのレーザー光を真空中で混ぜ合わせることで、未知粒子(アクシオン的粒子)を介した散乱を誘導し、未知粒子を生成、崩壊させるという実験を開始し、その探索結果を公表した。

実験では、真空容器内に波長の異なる2つのレーザー光を照射し光子を衝突させ、そこで起きる未知粒子の生成と崩壊を介した散乱から生じる信号光を観測した。真空容器内に残る原子を排除するために徐々に圧力を下げながら信号光の有無を検証したところ、大気圧の10万分の1以下で残余原子からの寄与が消失し、さらに圧力を下げると信号光が見えなくなった。今回の探索では未知粒子の介在は確認されなかったものの、その結果から、未知粒子の質量と結合に対する棄却領域(反対の仮説が正しくないとされる領域)の提示が可能になったという。

SAHHPIRESは、Search for Axion-like Particles via optical Parametric effects with HighIntensity laseRs in Empty Space(真空中の高強度レーザーによる光学的パラメトリック効果を通じたアクシオン的粒子の探索)の略。拠点はルーマニアのExtreme-Light-Infrastructure原子核部門(ELI-NP)。広島大学大学院先進理工系科学研究科物理学プログラムの本間謙輔准教授らによる研究チームが参加している。ちなみにチタン・サファイアが、高強度レーザーの増幅媒体に使われている。複数の高強度レーザー施設を渡り歩く国際共同研究であるため、この名前が冠されたという。