MetaがVRヘッドセットなどが並ぶ実店舗をカリフォルニアで計画との報道

ニューヨークタイムズ紙によると、かつてFacebookとして知られていた会社は、Metaへとブランド名を変更する前から小売店を開設する可能性について議論していた。どうやら、実店舗の開設についての議論は2020年から始まっていたらしいが、最終的には何も決まっておらず、このプロジェクトはまだ破棄される可能性がある。しかし、もしMetaが実店舗を開くとしたら、それは完全な小売店ではなく、Reality Labs部門が開発したデバイスを紹介する体験型店舗のようなものになるとされている。

それらのデバイスには、仮想現実ヘッドセットOculus Quest(近日中に「Meta Quest」になる予定)や、主にビデオ通話用に設計されたガジェットPortalなどがある。また、FacebookがRay-Ban(レイバン)と共同開発したStoriesと呼ばれる拡張現実のスマートグラスも展示される可能性がある。タイムズ紙が入手した文書によると、Metaの目標は、店舗で「好奇心」と「親近感」を喚起し、顧客がヘッドセットを試しながら「判断に迷わない旅」ができるような居心地の良い雰囲気を提供することだという。

同じ資料によると、Metaはモダンでミニマリスト的な美しさを持ち、ブランドをさりげなく配置した店舗を想定している。同社は、Facebook Hub、Facebook Commons、Facebook Innovations、Facebook Reality Store、From Facebookなど、さまざまな名称を検討した。最終的にはFacebook Storeに落ち着いたが、会社名が変更された今、それも変わる可能性が高い。

Metaがこの計画を進めた場合、最初の小売 / 体験型店舗はReality Labsのオフィスがあるカリフォルニア州バーリンゲームに設置される予定だ。ただ、タイムズ紙によると、このプロジェクトは最終的には世界中に広がり、さまざまな国や地域に拠点を置くことになるかもしれないとのことだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Facebook

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

LINEがAzureパートナー各社と小売業界のDX支援を目的とした共同プロジェクトを開始

LINEがAzureパートナー各社と小売業界のDX支援を目的とした共同プロジェクトを開始

LINEは11月4日、日本マイクロソフトおよびMicrosoft Azureパートナー各社と基本合意書を締結し、小売業界のDX支援を目的とした共同プロジェクトを開始したと発表した。LINEのAPIとAzure提供サービス群をかけ合わせた小売業界向けソリューションの開発・導入をワンストップで推進する。

LINEがAzureパートナー各社と小売業界のDX支援を目的とした共同プロジェクトを開始

共同プロジェクトへの参画企業

具体的な活動内容は、以下の通り。

  • LINEとAzureサービス群を利用した新規ソリューションの企画・開発:同プロジェクトへの参画パートナーを通じた小売向けソリューションの企画および開発支援を実施
  • パートナープログラムの発足:同プロジェクトへの参画パートナーの募集、参画パートナーのソリューション開発における技術支援、参画パートナー間での共同ソリューションの企画支援を実施
  • クライアント企業への共同提案・企画支援:LINEのAPIとAzureサービス群を活用した小売向けソリューションの提案、クライアントへのハンズオンを実施
  • マーケティング支援:各種イベントへの参加、各社主催のセミナーなど事例発信を通じたプロモーション支援
  • データ分析:同プロジェクトの結果から得られた、各プラットフォーマーおよびパートナーによる協働でのデータ分析

サイバーエージェントAI Lab・大阪大学・東急ハンズが操作者4名ロボット20体による自律・遠隔ハイブリット接客の実証実験

サイバーエージェントAI Lab・大阪大学・東急ハンズが操作者4名・ロボット20体による自律・遠隔ハイブリット接客の実証実験サイバーエージェントは11月4日、同社研究開発組織AI Lab、大阪大学大学院基礎工学研究科東急ハンズと共同で、東急ハンズ心斎橋店(大阪市中央区)にて、操作者4名が遠隔対話ロボット20体による接客を行い、店舗における顧客満足度を向上できるかを検証すると発表した。実証実験は、2021年11月18日から11月29日まで行われる。調査結果については、2022年2月以降に発表の場を設ける予定。

これは、内閣府が主導するムーンショット型研究開発事業の一環である「ロボットによる次世代サービスの実現」をテーマにした実証プロジェクトの第3弾。第1弾と第2弾では、市役所でのコミュニケーション活性や空港での顧客体験創出の検証を行っており、今回は東急ハンズ心斎橋店において、遠隔対話ロボットによる「多接点での迅速な質問対応」「きっかけの提供」が、顧客の満足度や新しい体験価値につながるかどうかが検証される。つまり、「商品の場所がわからない」とか「おすすめの商品を知りたい」といった顧客の「困った!」に迅速に対応できるかが調査される。

具体的な調査内容は次の4つ。

  1. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作することで、顧客に対し迅速な質問対応ときっかけの提供をどれだけ遂行できるか
  2. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作することで、顧客の満足度を高めることができるか
  3. 東急ハンズのスタッフではないオペレーター4人によるロボット接客が、東急ハンズの熟練スタッフに比べてどの程度パフォーマンスを発揮できるか
  4. 複数体のロボットを4人のオペレーターが操作する際に生じる利点や課題

東京大学が街路を歩行者専用にすると小売店と飲食店の売上げが向上することを証明

提供メニューの「仕込み」を発注できる飲⾷店向けアプリ「シコメル」を運営するシコメルフードテックが1.5億円調達
東京大学が街路を歩行者専用にすると小売店と飲食店の売上げが向上することを証明

オープンストリートマップ(OSM)から取得した歩行者空間の時系列変化の例。バルセロナ市とヴァジャドリッド市の2012年12月における歩行者空間の分布

東京大学先端科学技術研究センターは10月29日、街路を歩行者空間化することで、街路に立地する小売店や飲食店の売上げが、非歩行者空間に立地する事業者に比べて売上げが高くなることを定量的に示す研究結果を発表した。ウィズコロナに対応した街づくりにおいて、パンデミックへの備えと経済活動とを両立させる街路の有効活用といった政策立案や住民との合意形成に、強い根拠になりうるとしている。

この研究は、東京大学先端科学技術研究センターの吉村有司特任准教授、熊越祐介特任研究員(研究当時)、小泉秀樹教授のグループが、マサチューセッツ工科大学センセーブルシティラボのセバスティアーノ・ミラルド、ポスドク研究員、パオロ・サンティ主任科学研究員、カルロ・ラッティ教授、アーバン・サステイナブル・ラボのイーチュン・ファン博士課程、スーチー・セン教授、ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行(BBVA)のホアン・ムリーリョ氏らとの共同で行われた。

研究対象となったのはスペイン全土。2010年から2012年にかけて、毎月、歩行者空間の分布情報を取得、またBBVAからは、歩行者空間周辺に立地する事業者の匿名化された取引情報の提供を受けて調査が行われた。車が通れない歩行者と自転車専用の空間(歩行者空間)の周辺に立地した小売店や飲食店の売上げを、そうでない地域の小売店、飲食店と比較したほか、非歩行者空間から歩行者空間へと街路の用途変更が行われた地区での「周辺環境に及ぼす経済的影響」が調査された。その結果、どちらも歩行者空間での売上げが向上することが判明した。

以前から、生活必需品の購入は歩行者空間であるか否かはあまり影響しないが、ランチやディナー、お茶を飲むといった体験型の消費活動は「歩行者中心で編成される街路」が好まれるという推測はあったが、それがデータとサイエンスにより裏付けされる形となった。

米アマゾンが地元小売店での商品受け渡しに再挑戦

Amazonが展開中の「Local Selling」(ローカル販売)サービスは、地域の小売店が近隣の顧客に品物の受け取り場所と近くて早い配達の両方を提供する。

新しいオプションで売り手は、商品の店内受け渡しなどのサービスを特定のZIPコード(郵便番号)で提供し指定できる。場合によっては、顧客が品物を売り手の店舗から当日配達で購入し、それをその店舗で受け取ることもできる。

店舗で受け取ることができる商品は、ページに「store pickup」(店で受け取る)タブがある。顧客が注文すると、店舗に品物が到着したとき通知が届く。その商品は、最大5日間、店舗にある。

店舗ではまた、その店舗による配達を指定できる。配達の手配をするのは、その店舗自身だ。顧客が購入時に「arranged delivery」(配達を頼む)を指定すると、店舗が顧客に配達の日時を連絡する。注文の際の指定で、家具や大型家電などの据え付けを頼むこともできる。

AmazonのLocal Sellingは、それを申し込んだ地元店だけでなく、以下の全国チェーンでも利用できる:

  • Mavis Discount Tire
  • Sears Hometown Store
  • 4 Wheel Parts
  • Electronic Express
  • Best Buy
  • Appliance Connection
  • Mattress Warehouse
  • Beach Camera
  • Adorama
  • DataVision
  • Exclusive Furniture
  • World Wide Stereo
  • MODIA
  • Focus Camera

同社によると、Local Sellingは2021年〜2022年にかけて拡張するため、実施したい店舗は今日からでも応募できる。

Amazonのレクリエーションおよび職業部門担当副社長Jim Adkins(ジム・アドキンス)氏は「私たちが行った調査によれば、地元店での受け渡しは多くの顧客に受け入れられている。またこの機能により売り手は顧客とより親しくなり、自店の優れた商品や自店の利便性を訴求することが、喜んでもらえる」という。

なおAmazonは2019年に、同じく顧客が小売店で品物を受け取る仕組みとして、「Counter」(カウンター)というサービスをテストした。それは同社が小売店とパートナーして、オンラインで注文した品物の受け渡しカウンターをセットアップするものだった。

今回の企画でAmazonが望んでいるのは、サードパーティのネットワークと実店舗を利用して顧客の手に品物がより早く届くことだ。またそれによりAmazonは、顧客を小売店のウェブサイトよりもむしろ、自分のマーケットプレイスにキープしたい。また、パンデミックで街角での受け渡しが増えていることも、契機になっている。

しかも、WalmartやTargetにはかなり前からこのオプションがあり、Amazonも大型店や地域小売店と今後もさらに競合していくためにはこのような新しいサービスが必要だ。Shopifyのマーチャントにも今では店内受け渡しサービスがあるから、Amazonは彼らとの競合も意識せざるをえない。

画像クレジット:David Becker/AFP/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeが1週間にわたりクリエイターによるライブ配信ショッピングイベントをテスト開催

YouTube(ユーチューブ)は2021年初め、一部のクリエイターを対象に、ライブ配信ショッピングの試験運用を開始することを発表した。そこでついに、ライブショッピングプラットフォームのより大きな試験運用の準備が整ったようだ。同社は11月15日から、1週間にわたってライブショッピングイベント「YouTube Holiday Stream and Shop」を開催する予定だ。このイベントでは、視聴者が新商品を購入したり、期間限定の特典を適用したり、Q&Aや投票を通じてクリエイターや他の視聴者と交流したりすることができるとのことだ。

同社は、2021年初頭に、YouTube上での統合型ショッピングをめぐるより大きな取り組みの一環として、ライブショッピングへの投資計画を初めて発表した。最初のテストでは、2021年夏にライブ配信の試験版が開始されるまで、オンデマンド動画に焦点を当てていた。

関連記事:YouTubeが一部クリエイターを対象にライブストリームからのショッピングを試験的に開始

それ以来、多くのユーチューバーがファンと一緒にライブブ配信ショッピングを試している。その中には、ネイル磨きコレクションSimply Not Logicalチャンネルで280万人のファンに向けて発表したSimply Nailogicalや、スキンケアライン「Selfless」を450万人のファンに向けて発表したHyram、Walmart(ウォールマート)と提携して商品を販売するライブブ配信ショッピングセッションを行ったRaven Elyseなどがいる(Walmartは以前にも複数イベントでTikTok上でライブショッピングを実験していた)。

YouTubeによると、他の小売業者もより直接参加したそうだ。例えば、Sephora(セフォラ)はライブQ&Aを開催し、Target(ターゲット)は新機能を使ったライブスタイルの販売を行った。

Merrell Twins(メレル・ツインズ)の登場で幕を開けることになっている今後のStream and Shopイベントでは、Walmart、Samsung(サムスン)、Verizonな(ベライゾン)などの一流小売業者の製品も紹介される予定だ。

また、宣伝ウィークでのパネルディスカッションでは、ライブショッピング体験をより深く理解するために行ったリサーチの詳細と、YouTubeがどのような役割を果たしているかを紹介した。Publicis(パブリシス)とTalkShoppe(トークショップ)と共同で実施したこの調査では、視聴者の75%が、クリエイターの#ShopWithMeビデオを見るなどして、ショッピングのインスピレーションを得るためにYouTubeを利用していることがわかった。また、85%の視聴者がクリエイターの推薦を信頼しており、視聴者は動画の制作価値よりも情報の質と量を重視していることがわかった。

YouTubeは、ライブ配信でのショッピングに向けた取り組みを進めているが、まだこの機能を広く提供しているわけではない。その代わり、個々のクリエイターを対象にライブショッピングのテストを続けている。

一方で、ライバルのTikTok(ティックトック)は、独自のライブショッピング機能を進めている。

2021年初め、TikTokはShopify(スポティファイ)と提携し、米国、英国、カナダでTikTokショッピングの試験運用を開始した。2021年9月のイベントでは、新しいパートナーであるSquare(スクエア)、Ecwid(エクウィッド)、PrestaShop(プレスタショップ)、Wix(ウィックス)、SHOPLINE(ショップライン)、OpenCart(オープンカート)とBASE(ベース)とともにショッピングを拡大していると語っていた。また「TikTok Shopping」というブランドで、商品を動画や広告に統合する方法や、ライブショッピングのサポートなど、一連のソリューションや機能を紹介した。

また、Facebook(ファイスブック)は、2021年の春と夏に独自のライブショッピングイベントを開催し、FacebookアプリとInstagramアプリの「ショップ」内にライブショッピング専用のセクションを設けている。

YouTubeは、ライブショッピングイベントの開催日が近づくにつれ、詳細を発表する予定だ。

関連記事
TikTokがShopifyとの提携を拡大、米英カナダで買い物機能のテストを実施
フェイスブックがライブショッピングを本格展開、米国で今週からイベント開催

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズは10月13日、シリーズCラウンドの第三者割当増資および既存取引銀行などからの融資により総額約11億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのニッセイ・キャピタル(既存投資家)、またIncubate Fund US, L.P.、SHIFT、MTG Ventures、フォースタートアップスキャピタル。今回の資金調達は、既存投資家に加え、事業シナジーが見込める新規投資家からの調達という。調達した資金は、事業拡大および事業展開の加速に向け、組織体制・採用強化などに活用する予定。

2015年12月設立のフェズは、「小売業界の変革パートナー」として、小売・メーカー両社の売上が向上するよう、データを基に「両社の売上アップに繋がるマーケティングを支援するOMOプラットフォーム事業」と「売上が伸びる店頭づくりを目指す小売DX事業」を展開するリテールテック企業。

現在、ドラッグストアチェーンを中心とした複数小売事業者とパートナーシップを組み、約8000万以上(2021年6月時点)の消費者IDと連携しており、各小売事業者の許諾を得た際に利用が可能となっているという。

さらに、小売事業者の売場計画や店頭実現率、販売実績や施策効果など、すべてをデータで可視化できるプラットフォームを構築し、小売事業者の売上アップ、業務効率化に貢献する事業も2021年より展開。データを基に、実店舗で売上が伸びるファクトを解明するだけでなく、同プラットフォームが小売事業者本部で練られるMD戦略や各商談などの基本インフラとなることを目指すとしている。

小売業の未来「会話型コマース」を構築するWizardが正式な立ち上げに先立ち約55.8億円調達

2021年初めにWalmart(ウォールマート)の米国eコマース部門の責任者を退任したMarc Lore(マーク・ローレ)氏は、eコマース分野の新しいスタートアップ企業である「Wizard(ウィザード)」を支援している。ローレ氏は「会話型コマース」分野のB2BスタートアップであるWizardの共同設立者、取締役会会長、投資家としての役割を担っている。Wizardは、将来のモバイルコマースはテキストで行われると信じている。同社の正式な立ち上げに先立ち、米国時間10月6日、同社はNEAのTony Florence(トニー・フローレンス)氏が主導する5000万ドル(約55億7600万円)のシリーズAを発表した。

関連記事:EC界の寵児マーク・ローリー氏がJet.comを3115億円で売却し4年余りでWalmart退社

このラウンドには、ローレ氏とAccel(アクセル)も参加している。フローレンス氏、ローレ氏、AccelのSameer Gandhi(サミアー・ガンジー)氏は、Wizardの共同創業者兼CEOであるMelissa Bridgeford(メリッサ・ブリッジフォード)氏とともに役員を務めている。

このスタートアップは、興味深い創業ストーリーを持っている。というのも、多くの人が思っているほど新しい企業ではないからだ。

かつてニューヨークで金融のキャリアを捨てたブリッジフォード氏は、オースティンを拠点とするStylust(スタイラスト)を設立・運営し、消費者が買い物をする際のアシスタントを提供することを目的としたテキストベースのショッピングプラットフォームを提供していた。ユーザーは、スクリーンショットや写真をテキストで送信すると、ウェブサイトにアクセスすることなく、テキスト上で購入可能な商品のオススメを受けることができる。Stylustは、AIと画像認識機能を活用して、消費者に購入すべき商品の選択肢を提供した。また、StylustにはB2Bの要素もあり、ブランドに「ワンテキストチェックアウト」の体験を約束している。キャッシュとして残っていた同社のウェブサイトによると、同社は35%のコンバージョン率、もしくはウェブベースの商取引の10倍のパフォーマンスを謳っていた。

WizardはStylustを「買収した」と言っているが、チーム全体(9月に最高責任者として新たに採用された数名を除く)はStylustで働いていた社員で構成されている。買収当時、Wizard は市場に製品を出していなかった。

厳密にいうとまったく新しい会社ではあり、現在はローレ氏のeコマースにおける経験に頼ることができ、一流の投資家の支援を受けることができる。

ブリッジフォード氏は、Wizardを「我々のビジョンをより大きなスケールで構築し、リテールテックの分野で非常に優れたビジョンを持ち、実績のある創業者であり、実績のある経営者であるマーク氏とパートナーを組むことができる」機会だと表現している。

「会話型コマースが小売業の未来であるというビジョンを、私たちは共有しています」とブリッジフォード氏は付け加えている。

しかし、同社はまだ製品の詳細については語っていない。その代わり、このB2Bサービスについて、ブランドや小売業者が消費者とテキストで取引できるようにするものだと説明している。このサービスは、加入から検索、支払い、配送、さらには再注文までカバーした、モバイルでの「エンド・ツー・エンドのショッピング体験」と位置づけられている。

これらのテキストベースのチャットは、これまでのメッセージングアプリのチャットボットとの煩わしいやりとりとは違うと、ブリッジフォード氏は主張している。

「私たちは、自動化と人間味の組み合わせによって、最適なユーザー体験を提供すると同時に、バックエンドには拡張性のある強力なテクノロジーを構築することができました。それこそが『聖杯』なのです」と彼女は説明している。「これこそが、会話型コマースの未来像なのです。私たちは、チャット機能や自然言語処理を組み込んでいます。これらの技術はどれも急速に進歩しているものです」。

言い換えれば、1、2年前にチャットボットで経験したイライラするような体験は、今日の体験ではないかもしれないということだ。

「このテクノロジーの最終目標は、実際にはテクノロジーによって実現されているにもかかわらず、人間と話しているように感じさせることです」とブリッジフォード氏は付け加えた。

Stylustは、今回の買収により、Wizardとのブランド提携をもたらした。

以前の Stylust のウェブサイトには、Laughing Glass Cocktails(ラフィング・グラス・カクテル)Desolas Mezcal(デソラス・メスカル)Pinhook Bourbon(ピンフック・バーボン)Marsh House Rum(マーシュ・ハウス・ラム)Neft Vodkas (ネフト・ウォッカ)などの顧客情報が掲載されていた。また、Austin Biz Journalの特集では、ワインやスピリッツの小売に力を入れていることが紹介されていた。しかし、Florida Funders(フロリダ・ファンダーズ)が2020年にStylustを支援するという記事では、Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)、Walmart、Sephora(セフォラ)、Allbirds(オールバーズ)などの一流小売店との関係が記されていた。

Wizardとどことの関係が継続されるのか、また、アルコールブランドや他の小売業者に焦点を当てていくのかは、同社が資金調達以降の事業に関する詳細について言及を避けているため、不明だ。

同社は、今回の資金をAI、機械学習、自然言語処理などの分野や、営業、財務、業務などの非技術系の職務における採用に充てる予定だ。その中でも特に注目しているのが、チーフピープルオフィサー(最高人事責任者)の採用だ。現在のチームは、ニューヨークとオースティンにあるオフィスで働いているが、Wizardはリモートの技術チームのポジションの空きを埋めるために全国で採用活動を行っているとのことだ。

Wizardには、特にテキストマーケティングの分野で、同社のビジネスの特定の側面に対応するサービスを提供する競合他社がすでに存在する。しかし、もっと広く言えば、消費者がメッセージを介してブランドと交流する方法は他にもあり、それらが時間の経過とともにより完全な形の製品へと進化する可能性もある。現在、消費者はFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのソーシャルメディアで商品を見つけ、商品に関する質問をMessengerやダイレクトメッセージで行うことが多い。WhatsApp(ワッツアップ)は、消費者がアプリ内で直接製品やサービスを発見できるよう、企業向けの製品カタログを構築している。Apple(アップル)もBusiness Chatでこの市場に参入し、すでにiMessageのチャットで購入できるようになっている。

Wizardは、専用のメッセージングアプリや、例えばiMessageを搭載したiPhoneを必要とせず、SMSに注力することで、競合他社との差別化を図ることができる。しかし、テキストベースのスパム詐欺増加しているSMSに賭けることは、よりリスクの高い賭けでもある。しかし、ローレ氏はそれをいとわない。

「これまでのキャリアのほとんどをeコマースで過ごしてきた私にとって、会話型コマースが小売業の未来であることは明らかでした」とローレ氏はいう。「ディープラーニングが普及していく中で、極度にパーソナライズされた会話型のショッピング体験を実現する能力は、人々の買い物の仕方を変えていくでしょう。メリッサ氏とWizardのチームが構築しているものは、その変革をリードするものだと確信しています」と述べている。

画像クレジット:racorn Shutterstock

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

インドネシアで卸売りマーケットプレイスを運営するUlaにアマゾン創業者が出資

インドネシアのeコマース企業であるUla(ウラ)は、2020年の創業以来、3000万ドル(約33億3000万円)以上の資金を調達し、多くの著名な投資家と関係を築いてきたが、さらにこの度、世界で最も裕福な人物の信頼を獲得したようだ。

Amazon(アマゾン)の創業者が、この1年半前に創業したスタートアップの新たな資金調達ラウンドに出資したと、関係者やこの件に詳しい多くの人物が語っている。

ジャカルタに本社を置くUlaには、B Capital Group(Bキャピタル・グループ)、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パトナーズ)、Quona Capital(クオナ・キャピタル)がすでに出資しているが、現在は8000万ドル(約88億8000万円)以上を調達する新ラウンドの確定に向け、交渉を進めているところだ。

アマゾン創業者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、自身のファミリーオフィスであるBezos Expeditions(ベゾス・エクスペディション)を通じてUlaに投資することに合意したと、関係者が語っている。B Capital Group、Tencent(テンセント)、Prosus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)が主導するこのラウンドは、早ければ2021年10月中にもクローズする見込みだ。

ベゾス氏は、企業間電子商取引プラットフォームを運営するUlaに関心を示しているが、現在のところ、アマゾンはほとんどの東南アジア諸国には進出していないか、あるいは限定的なプレゼンスを維持しているのみである。

Ulaの広報担当者は、米国時間10月2日に求められたコメントの要請に応じなかった。

Ulaは、小規模な小売店が直面するサプライチェーン、在庫、運転資金などの非効率性を解決するための支援を行っている企業だ。卸売り電子商取引マーケットプレイスを運営し、店舗オーナーが必要な在庫だけを仕入れられるようにするとともに、運転資金も助成している。

このスタートアップは、インドのFlipkart(フリップカート)の元幹部で、Sequoia Capital Indiaの元パートナーであるNipun Mehra(ニプン・メーラ)氏、以前はアマゾンで働いていたAlan Wong(アラン・ウォン)氏、一般消費財大手P&Gのインドネシア事業を監督していたDerry Sakti(デリー・サクティ)氏、Lazada(ラザダ)とaCommerce(エーコマース)に勤務していた経歴を持つRiky Tenggara(リキー・テンガラ)氏によって設立された。

画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ネットショッピングで「カート」に入れたものを自動的に分類するプラグインCarrotが約6.1億円を調達

eコマースの発展により、私たちはこれまで以上にブラウジングやショッピングをするようになったが、だからといって実際にそれほど多くのものを買っているわけではない。実際、Shopifyが引用したBaymard Instituteによると、ショッピングカートの約70%はデスクトップ上で放棄され、その数はモバイルやタブレットでは増える一方だという。

Bobby Ghoshal(ボビー・ゴーシャル)氏と共同設立者Ramin Bozorgzadeh(ラミン・ボゾルグザデ)氏による最新のベンチャー企業であるCarrotは、この状況を変えようとしている。

Carrotは、カートに入れた商品を保存し、自動的に分類するプラグインだ。

同社はKindred Ventures、M13、Abstract、Designer Fund、Combine、Paris Hilton(パリス・ヒルトン)氏、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Riverpark、Nextviewなどの投資家から550万ドル(約6億1200万円)のシードラウンドを受けたことを発表した。

Carrotの「特別なソース」は、小売店を問わず、カートに入れた商品を追加のボタンや信号なくキャプチャーする製品の機能だ。この技術は、カートに入れるというアクションをキャプチャーし、価格や小売店を含む情報をプラグインに保存する。

Carrotは、小売業者自体に基づいてカートを自動的に分類するが、ユーザーが独自のフォルダを作成することもできる。例えば、電灯を複数の小売店で購入する場合「電灯」というフォルダを作成し、価格や外観をCarrot内で比較することができる。

また、カートに入れた商品の価格変動を追跡することで、ユーザーはセールの時期を知ることができる。

Carrotでは、レジストリーを作成して友人や家族に送ることができる。レジストリー製品は、Carrotの主なユースケースの延長線上にあり、まだ完全な機能としては構築されていない。つまり、欲しいものリストのページを友人や家族に送っても、誰かがある商品を買ったかどうかはわからないので、重複してしまう可能性があるということだ。しかし、チームはその機能を近い将来に実現するという。

ゴーシャル氏は、シリアルファウンダーだ。Candidを共同で設立し、1億5000万ドル(約167億円)以上の資金を調達した他、WeWorkでデザインと成長の責任者を務めた経験もある。一方、ボゾルグザデ氏は、WeWorkのファウンディングエンジニアであり、WeWork Labsのエンジニアリング責任者、Etsyの初期のエンジニアでもあった。

現在、Carrotはデスクトップ版のみを提供しているが、モバイル版でもカートを保存できるようにしている。ゴーシャル氏によると、カスタマーからのフィードバックで、Carrotが提供する番号を使って、アイテムをカートにテキストで入れたいという要望があったそうだ。このアイデアは、ユーザーが後で買いたい商品をすでに自分にテキストで送っているということだ。

Carrotは、アフィリエイトモデルを利用して収益を上げている。小売店は、最初のセッション後にチェックアウトしたカスタマーごとに同社に支払う。

最終的には、ブランドが月額料金を支払うことで、競争入札やオーディエンスプロファイリングなどの機能を利用できるSaaSモデルに移行する計画だ。また、複数のチャートで単一のチェックアウトオプションを利用できるようにし、交換手数料などで収益を上げることにも取り組んでいる。とはいえ、現在は規模の拡大に重点を置いているため、収益は優先事項ではない。

ゴーシャル氏は、同社最大の課題は、人々がCarrotの使い方を話し、それを友人と共有するということも含めた規模の拡大にあると考えている。

「Googleのプラットフォームに関する課題についても考えなければなりません」とゴーシャル氏はいう。「理想的には、Googleに掲載されることですが、Googleがこの分野に参入するつもりがあるかどうかはわかりません。そこには考えなければならないリスクがあります」。

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(文:Jordan Crook、翻訳:Yuta Kaminishi)

バングラデシュの小売店のDXを進めるコマースプラットフォームShopUpが同国最大規模となる約82.5億円調達

バングラデシュの小規模店舗のデジタル化を進めているスタートアップのShopUp(ショップアップ)は、南アジア市場でも最大規模となる新たな資金調達ラウンドで7500万ドル(約82億5200万円)を調達した。

Peter Thiel(ピーター・ティール)氏のValar Ventures(バラール・ベンチャーズ)がShopUpの7500万ドル(約82億5200万円)のシリーズBラウンドを主導した。このラウンドには、Prosus Ventures(プロサス・ベンチャーズ)の他、既存の投資家であるFlourish Ventures(フローリッシュ・ベンチャーズ)、Sequoia Capital India(セコイヤ・キャピタル・インディア)、VEON Ventures(VEON ベンチャーズ)も出資している。今回の新たな投資により、同社の累計調達額は1億ドル(約110億円)を超え、ValarとProsusにとっては、1億人以上のインターネットユーザーがいるバングラデシュでの初めての取引となる。

バングラデシュでは、隣国のインドと同様、小売全体の95%以上が近隣の店舗で行われている。バングラデシュには約450万店の小売店があるが、そのほとんどがデジタル化されていない。

インド、パキスタン、その他のアジア諸国と同様に、バングラデシュでもこれらの小規模店舗は多くの課題に直面している。在庫選択のための大規模な目録を持たず、良質な価格設定や迅速な配送のための交渉をすることもできない。また、これらの小規模小売店では、売上全体の3分の2以上が、現金やデジタル決済ではなく、クレジットで処理されているため、大規模な流動性リスクに陥っている。

ShopUpはこれらの課題を解決しようとしている。同社は、フルスタックの企業間商取引プラットフォームを構築し、在庫を確保するための卸売市場、物流(顧客へのラストマイル配送を含む)、運営資金など、多くの核となるサービスをこれらの店舗に提供している(インドの多くのスタートアップ企業と同様に、ShopUpは銀行やその他のパートナーと協力して運営資金を提供している)。

ShopUpの共同創業者兼CEOのAfeef Zaman(アフィエフ・ザマン)氏は、同社はこの1年間で、提供するサービスを拡大し、バングラデシュ国内での普及を進めてきたとTechCrunchのインタビューで述べている。例えば、バングラデシュ最大のメーカー、生産者、流通業者と提携し、小規模店舗へ在庫の確保と供給をしているという。また、その物流サービスは、すでにバングラデシュで最大のものとなっている。

ShopUpは、他の企業と同様にパンデミックの影響を受けたが、国が開かれ始めたことで、回復の兆しが見えてきたという。全体として、この1年間で事業は13倍以上に成長したとのことだ。

「ShopUpのリーダーシップチームは、過去12カ月間、強力な実行力を発揮してきました。バングラデシュの十分なサービスを受けていない小規模事業者向けに作られた3つの製品で2桁の成長を遂げ、明らかに市場のリーダーとなりました。バングラデシュのような急成長を遂げているフロンティア経済圏では、小規模事業者が経済の主な原動力となっています。オンライン経済への移行を迅速に進めるために、製品の連携したエコシステムを構築するというアフィエフ氏のビジョンに協力できることをうれしく思います」とValar Venturesの創業パートナーであるJames Fitzgerald(ジェームズ・フィッツジェラルド)氏は声明の中で述べている。

ザマン氏によると、この1年間で、バングラデシュのこうした小規模店舗の間でテクノロジーの導入が加速しているという。「彼らは今、複数のネットサービスを利用しています。ShopUpだけでなく、メッセージや暗号資産なども利用しています。今後もこの傾向は続くでしょう」。

ダッカに本社を置くこのスタートアップは、技術者やエンジニアの大部分が暮らしているベンガルールにオフィスを構えており、今回の新たな資金は、チームの拡大のために投入される予定だ。ザーマン氏は、今回の資金調達の一環として、従業員のストックオプションの数を3倍に増やしたことを明らかにした。

「今回の投資は、過去10年間で最も急速に成長している経済圏の1つであるバングラデシュへの参入を意味しています。ShopUpは、細分化された市場の中で、小規事業者のさまざまなニーズを解決するために、強い実行力を発揮してきました。何百万もの小売業者に力を与え、彼らが国の経済成長に参加できるようにするというShopUp の取り組みを支援できることをうれしく思います」。とProsus Venturesのインド投資部門責任者Ashutosh Sharma(アシュトシュ・シャルマ)氏は語っている。

画像クレジット:ShopUp

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(文:Manish Singh、翻訳:Akihito Mizukoshi)

欧州でAmazon流のフルフィルメントと物流をeコマース企業に提供するByrdが約21億円調達

新型コロナウイルスをきっかけに始まったオンラインショッピングの盛り上がりは衰える気配がなく、ヨーロッパのeコマースは2021年30%の成長が見込まれている。このような需要に対応するため、欧州でインフラを構築して販売業者の受注や配送をサポートし、Amazonに代わるフルフィルメントサービスを提供しているスタートアップ企業が、事業拡大のための資金調達を発表した。

倉庫や物流業務を管理するソフトウェアを構築したり、オンラインストアの商品の保管、集配作業をサポートするサービスを行ったりしているByrdは、シリーズBとして1600万ユーロ(約20億9200万円)を調達した。すでに活動している5カ国に加え、東欧、北欧、南欧の5つの市場に拡大するために使用する予定だ。2016年にオーストリアのウィーンで設立されたByrdは英国、ドイツ、オランダ、フランスにも進出し、合わせて約15のフルフィルメントセンターと200の顧客を抱えており、その中にはDurex、Freeletics、Scholl、Your Superfoodsなど、ヘルス&ウェルネス、消費財、化粧品、ファッションなどのD2Cブランドが含まれている。

銀行大手のSantanderから2020年スピンアウトしたフィンテック / eコマース関連の戦略的ベンチャーキャピタルであるMouro Capitalが今回のラウンドをリードし、Speedinvest、Verve Ventures、Rider Global、VentureFriendsも参加した。Byrdは評価額を公表していないが、現在までで約2,600万ユーロ(約33億9900万円)を調達している。

Byrdが狙っている市場機会は成長しつつあり、規模だけでなく、小売業者の需要やフルフィルメントパートナーに求めるものも大きくなってきている。

eコマースは見かけによらず複雑なビジネスである。見かけによらずというのは、私たちが消費者として実際に目にするのは、欲しい商品を適切な価格で見つけることができ、クリックしてあまり面倒な手続きなしに購入し、理想的にはすぐに手元に届くという機能だけだからだ。

しかし、これらのことを可能にするためには裏方で多くのステップが必要で、そのほとんどが複雑であり、通常、一般的な小規模小売業者のコアコンピタンスではない。そのような業者はたとえ人々が欲しがっていると思われる製品を知っていても、それをどうやって届けるかがわからないのだ。そのようなステップには、マーケティング、決済、ユーザーインターフェースのデザイン、パーソナライゼーション、製造、その他のサプライチェーン、そして注文商品を顧客に届けるための物流やフルフィルメントなどがある。eコマースがより大きなチャネルへと成長していく中、これらのサプライチェーンに含まれるすべての部門がかつてないほど大きな可能性を秘めている。

一般的に、小売企業はこれらのサービスを提供するために第三者のテクノロジー企業を利用するが、ここでByrdが、企業の物流とフルフィルメントを扱う外注パートナーとして登場する。Byrdは、小売企業がフルフィルメント業務全体をByrdに委ねることができるよう、一連のAPIを構築している。

これには商品の受け取り、保管、集荷を行うByrdの倉庫との連携や、企業の販売ネットワークとの連携が含まれる。販売ネットワークには、企業のオンラインストアだけでなく、Amazonやその他のマーケットプレイスで商品が販売されている場合も含まれる。注文が入り商品を集荷して発送する際には、Byrdが自社の技術を駆使して、UPS、DHL、Amazon、postNLなどのさまざまな運送会社のネットワークを活用し、商品を購入者に届けるための最も安くて簡単な方法を見つけ出す。

このような事業を行っているのはByrdだけではない。Byrdと競合する他の独立系企業(最大手の1つであるShipBobは、先に10億ドル(約1101億2800万円)の評価額で2億ドル(約220億2520万円)の大型ラウンドを実施した)と並んで君臨しているのがAmazonだ。巨大eコマース企業であるAmazonは、(FBAによる)フルフィルメントだけでなく、オンラインストアでの視認性やマーケティングなど、さまざまなサービスを提供しており、売り手にとってのワンストップショップのような存在となっている。

Byrdの共同設立者兼CCOであるPetra Dobrocka(ペトラ・ドボロッカ)は、インタビューで次のように述べている。「Amazonは一般的に大きな市場シェアを占めているため、多くの販売店は、たとえ主に顧客獲得のためのチャネルとして使用するのであっても、Amazonを使わないというわけにはいきません」。

しかし問題は、Amazonのオプションや他の第三者プロバイダーの中には、パーソナライゼーションにそれほど対応していないものもあるということだ。実際、eコマースが成熟し、厳しい競争にさらされるようになると、eコマース事業者は自分たちが優位に立ち、他社と差をつけるための方法を模索するようになる。この問題についてもByrdが登場し、パッケージをカスタマイズすることで、実際にはByrdが提供するサービスであっても、顧客が直接サービスを体験できるようにしたり、持続可能な配送方法などのオプションも提供している。

これによりスタートアップ企業のスケールアップの速度が遅くなる可能性もあるが、サービスは品質の高いオプションとして提供されている。このことは、品質管理がまったく不十分であったり、市場の中で明確なアイデンティティが欠如していたりする場合には重要な意味を持つ。とりわけスケールアップを続けている場合はそうである。

「私たちはAmazonの代替サービスともいえますが、まったく違うものでもあります。当社の販売者は、ブランドを重視し、お客様にトータルな体験を提供したいと考えています。また、この点を評価してくださる小規模のお客様もいらっしゃいます」とドボロッカは語る。確かに、中小企業は大企業に比べるとサービスレベルを下げられてしまうことがよくあり、小規模な小売業者でも大企業のように扱ってくれるフルフィルメントサービスがあることはプラスだ。

これは、小売業者がよりはっきりとしたオンライン販売での存在感を出し、パーソナライゼーションを構築するのをサポートするテクノロジー企業が次々と登場しているという大きなトレンドの一環でもある。(2021年6月に資金調達を発表したオンラインストア・デザイン・プラットフォームのShogunも、このトレンドに乗ったスタートアップ企業の一例だ)。

これらすべての結果として、Byrdは非常に大きな成長を遂げ、収益は1年前に比べて300%増加し、月に数十万個の小包を取り扱うようになったという。

ByrdはB2Cを中心としたビジネスを展開しているが、それに近い領域であるB2BでもByrdは活躍できると考えており、ドボロッカによれば、今後数カ月のうちにB2Bビジネスもオンラインで登場する予定だ。また、次にどの国でフルフィルメントを構築するかは明らかにしていないが、Mouroの関与を考えると、スペインが次の国の1つになるのではないかと思われる。

Mouro CapitalのゼネラルパートナーであるManuel Silva Martínez(マニュエル・シルバ・マルティネス)は以下のように声明で述べている。「特に新型コロナウイルスの影響で、柔軟なデジタルeコマースフルフィルメントソリューションの必要性が高まっている中、ByrdのシリーズBの資金調達を主導できたことをうれしく思います。Byrdのエンド・ツー・エンドの能力、持続可能性への注力、そして有名ブランドの顧客は、競合他社とは一線を画しており、今回の投資による地理的拡大がもたらす成功を期待しています」。

画像クレジット:chain45154 / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

【コラム】データサイエンティストは恐れずに新しい分野に挑戦せよ

編集部注:本稿の執筆者Ilyes Kacher(イリエス・カーシャー)氏は、商品画像をオンラインで一括編集するAIベースのプラットフォーム、autoRetouch(オートレタッチ)のデータサイエンティスト。

ーーー

私はフランス出身のデータサイエンティストで、コンピュータービジョンの研究技師としての経験を日本で積んだ後、母国に戻った。しかし今、私はコンピュータービジョンのハブとは思えないドイツのシュツットガルトでこれを書いている。

ただし、みなさんが想像するであろうドイツの自動車技術の仕事をしているのではない。代わりに、パンデミック下の驚きべきチャンスを最もありそうもない場所で私は見つけた。そこはシュツットガルトのeコマースに特化したAI駆動の画像編集スタートアップで、あらゆる小売製品のデジタルイメージングプロセスを自動化している。

日本での経験は、仕事で海外に移住することの難しさを私に教えた。日本では、プロフェッショナルネットワークとの接点を持つことが往々にして必要だ。しかしここヨーロッパでは、多くの都市にアクセスできることが利点だ。パリ、ロンドン、ベルリンなどの都市は、特定技術のハブとして知られていると同時に、多様な雇用機会を提供している。

パンデミックのために完全リモートワークが増加している中、職探しの範囲を広げることで、興味にあう機会がより多く提供される。

意外な分野で価値を見つける、たとえば小売業

私は今、高級小売業からスピンオフしたテック企業で、自分の専門技術を製品画像に応用している。データサイエンティストの視点からアプローチすることで、私は小売業のように巨大で確立した業界への新たな応用に価値を認識見出した。

ヨーロッパには世界的に有名なブランドがいくつもあり、中でもアパレルと靴が代表的だ。その豊かな経験が、数十億の製品と数兆ドル(数百兆円)の市場にイメージング技術を応用するチャンスを生み出している。小売企業の利点は、定常的に画像を処理することで、AI企業が収益を上げ、利益を上げる可能性もあるベースを作ってくれていることだ。

もう1つ、探求すべき分野として、研究開発部門の一部にあることの多い独立部門がある。私は相当数のAIスタートアップが、非常にニッチなクライアントの研究コストとその結果得られる収益のために利益を上げていない分野に取り組んでいるところを見てきた。

データを持っている企業は収益見込みのある企業

私が特にこのスタートアップに惹かれたのは、そのデータアクセスの可能性だった。データはそれ自体非常に高価であり、多くの企業は限られたデータしか利用できない。B2BやB2Cレベル、中でも小売業やフロントエンドのユーザーインターフェースに関わるデジタルプラットフォームと直接つながりのある企業は狙いどころだ。

こうした顧客エンゲージメントデータを活用することは全員の利益になる。将来の研究開発や分野内のその他のソリューションに応用できる他、自社の他部門と協力して弱点を解決することにも使える。

さらにこれは、ブランドが影響を与えるユーザーの関連分野への関心が高ければ高いほど収益の可能性が大きくなることを意味している。私からのアドバイスは、データがすでに管理可能なシステムに保存され、アクセスが容易な企業を探すことだ。そういうシステムは研究開発に有用だ。

難しいのは、多くの企業がそういうシステムを導入していないこと、あるいはシステムを活用できるスキルを持つ人がいないことだ。もし、深い洞察を語れなかったり、システムが未導入の会社があったら、データ活用の方法を導入するチャンスを探してみて欲しい。

ヨーロッパでは最善策には自動化プロセスの開発が関わっている

私は、プロセスとコアシステムを作るチャンスをくれるアーリーステージ企業の成功の秘訣を知っている。私が働いていた会社は、入社当時まだ新しく、ある分野のためにスケーラブルなテクノロジーを開発する仕事をしていた。チームが解決すべき課題はすでに解決していたが、山ほどあるその他の問題を解決するために行うべきプロセスはたくさんあった。

1年に渡る大量一括画像編集を自動化するプロジェクトは、開発しているAIが、同時に複数の可変要素(複数の画像とワークフロー)を横断して独立に動くことように作られていれば、既存の有名ブランドには出来ないことをするテクノロジーだということを教えてくれた。ヨーロッパでこれを実行している企業はほとんどないため、それができる人材は切望されている。

というわけで、ちょっとしたカルチャーショックを恐れることなく、飛び込んでみてはいかがだろうか?

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画像クレジット:Warit Silpsrikul/EyeEm / Getty Images

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(文:Ilyes Kacher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米中西部の食料品チェーンSchnucksにSimbeの商品棚スキャンロボットTallyが導入される

セントルイスに本拠地を置く食料品チェーンSchnucks(ジャムブランドSmucker’sのキャッチコピー「Smucker’sのような名前が付いているのだから、良いものでなければならない」を想起する)は今週、全米111カ所の店舗にSimbe Roboticsの技術を導入すると発表した。

この契約は、食料品店をはじめとする、エッセンシャルビジネスにおける自動化への関心が大幅に高まることとなった世界的なパンデミックから1年半後に結ばれることとなった。

Simbeのモバイルロボットは、在庫のスキャンを行い、店舗の棚に何があるのか、何を補充する必要があるのか、常に最新の情報を提供してくれる。小売業で働いたことのある人ならばわかると思うが、在庫管理は業界において最も大きな悩みの種の1つだ。数時間の営業停止や徹夜での作業が必要になることも少なくない。

Schnucksが最初にこの技術をテスト導入し始めてから4年後、今回の「複数年にわたる」チェーン全体への導入が決定した。数年をかけ、パートナーシップは徐々に拡大している。Simbeによると、同社の商品棚スキャンロボットこと「Tally」は、在庫切れの商品を20〜30%減らすことができ、従来の人による確認に比べて14倍も多く在庫切れを見つけることができるという。

Schnuck Marketsは、Simbe RoboticsのTallyロボットを店舗に導入し、棚の状況を把握することでより良いショッピング体験を提供。2021年8月13日、米国Des Peres, MOで撮影(画像クレジット:Simbe)

「Tallyを全店舗に導入することで、これらの新たな識見をサプライチェーン全体で運用可能にし、収益に直結するような意思決定を行うために必要なリアルタイムデータを活用する能力を強化することができる」。とSchnucksのVPであるDave Steck(デイブ・ステック)氏は、リリースで述べている。「Tallyはオペレーションを効率化し、最終的には我々のお客様とチームにとってより良い店舗体験を生んでくれる、当社の店舗に欠かせない一部となっている」と述べている。

Brain CorpやBossa Novaなど、多くの企業が在庫スキャンの自動化に取り組んでいるが、後者はWalmartが2020年末に大口の契約を打ち切ったことで、大きな挫折を味わうことになった。

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画像クレジット:Simbe

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(文:Brian Heater、翻訳:Akihito Mizukoshi)

体験型ストア「b8ta」が国内3店舗目を渋谷に11月オープン、試飲・試食も可能なカフェスペースにより食品カテゴリー拡充

体験型ストア「b8ta」が国内3店舗目を渋谷に11月オープン、試飲・試食も可能なカフェスペースにより食品カテゴリー拡充

b8ta Japan(b8ta、ベータ)は8月16日、国内3店舗目となる「b8ta Tokyo – Shibuya」を発表した。2021年11月中に、渋谷区にオープンする予定。住所は、〒150-0002 東京都渋谷区渋谷1丁目14番11号 小林ビル1階。営業時間は11:00~19:30。定休日は不定休。

渋谷駅から徒歩約1分という好立地にオープンする新店舗のコンセプトは、「より進化した体験型ストアを見据えた実証実験店舗b8ta 1.5」。b8ta Japan代表の北川卓司氏によると、実店舗での体験価値向上のために今どのような機能や体験が実店舗で求められているのかを探るという。b8taのビジネスモデルであるRaaS(Retail as a Service)を進化させるため、3つの新しい取り組みを実施する。

3つの新しい取り組み

  • 新たにカフェスペースを設置し、食品カテゴリーの体験拡充:カフェスペースではコーヒーなどの飲み物を提供。既存店舗では取り扱いが少なかった食品カテゴリーを充実させ、試飲・試食など五感に訴える体験を充実させる
  • 店内での体験をリッチにするアプを開発:より手軽に店内で商品・サービスの体験や発見できるようにする。帰宅後も店内で体験した商品情報を覚えておけるアプリを新たに開発し、提供
  • フレキシブルなイベントスペース:従来の店舗では店内のレイアウトを自由に変更することが難しかったが、可動式什器を導入することで、大型商品設置やイベントなどの様々なニーズに沿ったレイアウトを可能にする

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カテゴリー:その他
タグ:小売(用語)b8tab8ta Japan日本(国・地域)

ウォルマートがAdobeと提携し自社のeコマーステクノロジーを他の小売業者に提供

Walmart(ウォルマート)は、実店舗を中心とした小売事業から、対面販売とオンラインショッピングを融合したビジネスへの転換を図るために投資してきたソフトウェアや小売テクノロジーを、初めて他の小売業者にも提供すると、米国時間7月28日に発表した

ウォルマートは、新たに提携を結んだAdobe(アドビ)との戦略的パートナーシップを通して、Walmart Marketplace(ウォルマート・マーケットプレイス)へのアクセスや、さまざまなオンラインおよび店舗におけるフルフィルメントやピックアップに関するテクノロジーを、Adobe Commerce Platform(アドビ・コマース・プラットフォーム)に統合する。

これらテクノロジーは、Adobe Commerceと(アドビが買収した)Magento Open Source(マジェント・オープンソース)のどちらの顧客も利用できるようになると、アドビは述べている

これはつまり、ウォルマートは数千もの中小規模の小売業者に、世界最大級の小売業者が事業運営に使用しているのと同じツールを、実質的に利用できるようにさせるということだ。

この提携により、アドビの顧客である小売業者は、商品を受け取れる店舗や時間をオンラインで表示することができ、カーブサイド(道路の路肩)や実店舗内など、複数の受け取り方法を提供することが可能になる。店員にモバイルツールを供給して、注文の受け取りや商品選択の確認、代替品の取り扱いなどができるようにしたり、商品を注文した顧客がカーブサイドに到着する時間を店員に知らせるなど、受け取り注文に関して顧客とのコミュニケーションを図るさまざまなツールを利用することができるようになるわけだ。

また、今回の提携によって小売業者は、ウォルマート・マーケットプレイスに自社の商品を配給して販売することもできるようになる。

この提携は、小売テクノロジーによる新たな収益源を提供し、ウォルマートの収益に貢献することを目的としているだけでなく、ウォルマートがAmazon(アマゾン)とオンライン小売の覇権を争う上での新たなツールとして機能する可能性もある。

小売業者は、Adobe Commerceプラットフォームを利用して、ウォルマート・マーケットプレイスに商品を掲載し、全米各地に2日で商品を配送するウォルマートのフルフィルメント・サービスを活用することで、これまでよりも広い顧客を相手に商売できるようになる。

そしてウォルマートにとっては、これまでアマゾンに大きく水をあけられている、マーケットプレイスで販売可能な商品数を増やすことができる。

ウォルマートのマーケットプレイスは、第三者機関の推計によると、新型コロナウイルス感染流行の影響によるオンラインショッピングの急増により、2020年には推定7万人の出品者数を抱えるまでに成長した。これは2019年に比べて2倍以上の増加だ。Marketplace Pulse(マーケットプレイス・パルス)のデータによると、現在ウォルマートのマーケットプレイスの出品者数はさらに増えて10万人を突破しているとのこと。一方、アマゾンのマーケットプレイスは、全世界で推定630万人の総出品者を数え、そのうち150万人が現在アクティブに活動していると推定されている。

ウォルマートがマーケットプレイス事業を拡大する上で問題となっている可能性があるのは、売り手にとっての使いやすさに関することだ。ウォルマートのマーケットプレイスは、アマゾンに比べてはるかに使いづらく、プラットフォームで販売が承認されたかどうかについて、ウォルマートから返事が来るまで何カ月も待たされるという苦情が、多くの中小販売業者から寄せられている

アドビとの提携は、このような問題の解決に役立つ可能性がある。

アドビは、他のチャネルソリューションを単一の統一された拡張機能に統合することにも取り組んでおり、顧客の小売業は、アカウント設定やカタログの編纂が容易な統合されたツールを使用して、アマゾンを含む複数の販売チャネルで販売することができる。

ウォルマートが自社の小売テクノロジーを他の企業に提供するのは、これが初めてだと同社は述べている。また、この新しいパートナーシップがどのような収益をもたらすかということについては、まだ予測していないとのこと。しかし、アマゾンも最近は、AIやコンピュータービジョンを活用したキャッシャーレス決済「Just Walk Out(ジャスト・ウォーク・アウト)」システムのような、斬新な小売イノベーションの投資収益率を最大化することを追求している。ウォルマートの動きはこれに続くものと言えるだろう。

「Scan & Go(スキャン&ゴー)などのチェックアウト技術や、AIを活用したスマートな代替品推奨機能、ピックアップ&デリバリーなど、あらゆるアイデアの中心には、人々が金銭的負担を減らし、より良い生活を送るための手助けをするという私たちの中核的な使命があります」と、ウォルマート・インクの最高技術責任者および最高開発責任者を務めるSuresh Kumar(サレシュ・クマーシュ)氏は、声明の中で述べている。そして「コマースエクスペリエンスを提供するアドビの強みと、当社の比類なきオムニカスタマーの専門知識を組み合わせることで、私たちは他の企業のデジタルトランスフォーメーションを加速させることができます」と続けた。

両社の発表によると、米国においてアドビの顧客の小売業者は、2022年初頭からウォルマートのテクノロジーを自社のストアフロントに統合できるようになるとのこと。価格やその他の詳細については、導入時期が近づいたら発表される予定だ。

今回の発表は、チャネルパートナーとしてアドビと提携することで技術の再販に役立てるというものだが、ウォルマートには小売業者を直接対象とするGoToMarket(ゴートゥマーケット)チームもある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:WalmartAdobeeコマース小売

画像クレジット:Nicholas Kamm/AFP / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

食品・日用品チェーンストアEC「垂直立ち上げ」プラットフォームStailerの10Xが15億円調達、2年で流通総額10倍以上を目指す

食品・日用品チェーンストアEC「垂直立ち上げ」プラットフォーム「Stailer」の10Xが15億円調達、今後2年で流通総額10倍以上を目指す

生鮮食品・日用品など多店舗運営(チェーンストア)小売事業者向けに「垂直立ち上げ」によるEC化を行うプラットフォーム「Stailer」(ステイラー)を展開する10X(テンエックス)は7月28日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約15億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、既存投資家のDCMベンチャーズとANRI。これにより累計調達額は約21億円となった。

10Xは、創業者で取締役CEOの矢本真丈氏が、メルカリ在籍中の同僚だった共同創業者・取締役CTOの石川洋資氏を誘って2017年6月に設立した。矢本氏は東日本大震災で避難生活を送っていたときに「火を入れた料理」に感動したことと、育休中に家族の食事を作ってきた体験から、献立アプリ「タベリー」事業を立ち上げ、そこに食材を注文できる機能を付けたことをきっかけに、ネットスーパー「タベクル」を立ち上げた。これらの事業は今は終了しているが、その経験がStailerの基礎となった。

Stailerは、スーパーマーケットやドラッグストアなどを多店舗展開を行う小売・流通事業者を対象に、「ECやドライブスルーなどの顧客体験の実現と、そのサプライチェーンの構築」を支援するプラットフォーム。エンドユーザー向けのモバイルアプリ、店舗向けのピック&パック、在庫管理システム、配送業者向けのオペレーティング・システム、分析ツールなどをフルセットで提供する。2020年5月にサービスを開始しており、すでにイトーヨーカドーをはじめ、ライフ、薬王堂などが利用している。Stailerで提供されたネットスーパーアプリの利用者翌月継続率は約70%。1カ月の平均購入額(ARPU)は約2万円と高い定着度を見せている。

食品のEC化率が物販全体の中でも低く、しかも急成長する欧米や中国に比べて立ち遅れている日本市場を、10Xは「大きな成長ポテンシャルがある」とポジティブにとらえている。今回の資金調達で、ソフトウェアエンジニア、事業開発、コーポレートなどの幅広い職種で人材を募集し、組織拡大、チェーンストアECの物流機能の拡張、顧客獲得に投資を行い、Stailerの展開を加速するとのこと。さらに、「事業シナジーの高い企業やソフトウェアプロダクト開発に強みのある企業」への出資やM&Aも積極的に検討し、「生鮮食品や日用品をオンラインで購入する体験を当たり前にするべく、Stailerプラットフォームの流通総額について、今後2年で10倍以上を目指します」と話している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:グローサリー / grocery(用語)小売(用語)、・食品 / 食料品 / 食材 / 食品加工(用語)10X(企業)ネットショッピング / eコマース(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

インドの小規模小売店の運転資金や在庫を支えるElasticRunが約80億円調達

インドの小規模小売12万5000店超が運転資金やトップブランドからの在庫を確保したり、売り上げを伸ばすためのeコマース会社と協業をサポートするスタートアップElasticRunが、現地時間4月28日、世界2番目のインターネットマーケットである同国でさらにリーチを伸ばすために新たに資金調達したと発表した。

インド・プネー拠点のElasticRun(イラスティックラン)は、既存投資家のAvataar VenturesとProsus Venturesが共同でリードしたシリーズDラウンドで7500万ドル(約80億円)を調達したと明らかにした。同じく既存投資家のKalaari Capitalも本ラウンドに参加し、創業4年になるElasticRunがこれまでに調達した資金は累計1億3050万ドル(約140億円)になった。インドの大都市や小都市、町、村に点在し、eコマース大手やスーパーチェーン小売業者と競合するのは難しいことがわかっている何百万もの小規模小売店は、同国における新しい取り組みの中心にある。

多くのeコマース企業、実在店舗チェーン、フィンテックスタートアップが巨大な未開拓の機会に目を向け、こうした家族経営の小規模店と先を争って協業しようとしている。

2019年の会議で事業について話すElasticRunの共同創業者でCEOのSandeep Deshmukh(サンディープ・デシムク)氏

ElasticRunは、在庫確保のために1カ月に数日は大きな街に足を運ばなければならないというのが典型的な小売店経営者が、信頼でき、そして手頃な価格の商品を大手ブランドから直接入手するのをサポートしている(リーチを大きく広げられるため大手ブランドはこのサポートを気に入っている)。

こうした小売店のオーナーはまた、商売が低調なときは特に何もせずに何時間も過ごす。ElasticRunはこの労働力を顧客への配達に有効利用するためにAmazonやFlipkartなどを含む最大のeコマース会社と提携することで、この空き時間問題も解決している(eコマース会社はこの取り組みに価値を見出している。というのも、小規模店はインドでは大きな存在であり、顧客にすばやくアクセスでき、往々にして独自の在庫を持っているからだ)。

Prosus Venturesのインド投資責任者Ashutosh Sharma(アシュトシュ・シャルマ)氏は、ElasticRunが可変容量でクラウドソースの配達モデルを構築したとTechCrunchに語った。このモデルは、配達するのに給料を支払う人の数を固定している他のプレイヤーとElasticRunが異なる点だ。ElasticRunがレールを敷き、数多くの新たな機会が出てきたとシャルマ氏は話した。

そうした機会の1つが、運転資本を小規模小売店に提供することだ。小売店の経営者は多くの場合、貯蓄がなく、在庫を補充する資金を確保するために既存の在庫を売る必要がある。ElasticRunは近年、こうした小売業者にクレジットを提供するために銀行やノンバンク金融会社と提携を結んできた。

ElasticRunは現在インドのほぼ全州の300超の都市で事業を展開している。12万5000店超と協業し、今後18〜24カ月で100万店へと拡大する計画だ、と共同創業者で最高テクノロジー責任者のShitiz Bansal(シティズ・バンサル)氏はTechCrunchとのインタビューで述べた。

ElasticRunの現在のランレートは約3億5000万ドル(約380億円)で、この数字は今後12カ月で10億ドル(約1090億円)に成長する見込みだとバンサル氏は話した。

共同創業者で最高執行責任者のSaurabh Nigam(サウラブ・ニガム)氏は、新たな資金調達で過去5年にわたる同社の成長の「有形便益」に初期の従業員がアクセスできるようにした、と述べた。

カテゴリー:その他
タグ:ElasticRunインド資金調達eコマース小売

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

近隣の小売り店舗の回帰など、意外な2021年の米不動産業界のトレンド

パンデミックにより、誰もが予想していたよりも早く、リモートワークやオンデマンドデリバリーが日常的なことになった。世界がパンデミックから抜け出そうとしている今、「場所」は1年前ほど重要ではなくなった。

現代社会は、超高層のオフィスビルや高級マンションが立ち並ぶ洗練された大都市を生み出した。そして今、これらの都市の中心で活躍していた人々は、ポストパンデミックの世界での都市のあり方を考えている。

ここでは取材を元に、不動産のプロパティテクノロジーに注目する10人のトップ投資家がどのように未来を見据えているかを探る。

投資家らは総じて楽観的だ。というのも、本来なら氷河期にあるはずの不動産業界では、不動産テックが将来不可欠なものになると考えているからだ。しかし、少なくともパンデミック以前の戦略を知る者からすれば、オフィス分野は最も見通しが難しいようだ。

投資家らは、リモートワークが将来的に重要な役割を担うと考えており、郊外や比較的小さな都市での住宅需要が引き続き高いと予測している。そして、一戸建て住宅の販売や賃貸などの分野に焦点を当てたフィンテックやSaaS製品を特に高く評価している。多くの投資家は大都市への投資を続けているが、代替住居(敷地を共有する付属住宅ユニット)や気候関連のコンセプトを中核に据えている。

最も意外だったことは、一部の投資家が小売りのリアル店舗に期待していることだ。最新のデータを見れば、それも納得できる。大げさに聞こえるかもしれないが、地方の小規模ビジネスにとっては、より良い時代を迎えているのかもしれない。詳細は後にしよう。

オフィスがより贅沢品となるとき

パンデミックと既存のトレンドが相まって、オフィスの賃借人は「より高級品の消費者に近くなった」と、Bain Capital Ventures(ベインキャピタル・ベンチャーズ)のベンチャーパートナーであり、古くからの不動産テック投資家および不動産事業者であるClelia Warburg Peters(クレリア・ウォーバーグ・ピーターズ)氏はいう。

「1950年代以降、優位な立場にいた」家主は、これからはテナントを第一に考えなければならないと同氏は言い「賢明な家主は、単に物理的なスペースを提供していれば良かったものが、テナントにマルチチャネルのワークエクスペリエンスを提供していかなければならないというプレッシャを感じているだろう」と続ける。

それには、複数のオフィスを行き来する従業員を管理するためのソフトウェアやハードウェアなど、具体的な付加サービスが含まれる。しかし、今日の市場では、新たな姿勢が求められている。同氏は「これらの資産は、テナントのニーズに応えることを重視した、より人間的な関係の中で提供される必要がある」とし「リース期間は必然的に短くなるため、テナントに対してこれまで以上に積極的に売り込み、サポートしていく必要があるだろう」という。

こういったオフィス環境の変化は、郊外では供給側に有利に働く可能性がある。

MetaProp(メタプロップ)のZach Aarons(ザック・アーロンズ)氏は「都市部に本社のある企業は、従業員にスペースを提供しなければならなくなるだろう」と語る(同氏の会社は、この分野に関して非常にポジティブなレポートを発表したばかりだ)。しかし、多くの企業は「時折、従業員が家を出て働く必要が生じたとしても、電車で1時間もかからないよう、郊外に何らかの代替オフィスも提供したいだろう」という。

そして「メタプロップチームの多くのメンバーが前職で行っていたように、今でも(資金提供ではなく)実際に不動産の購入をしていたとしたら、郊外のオフィスの購入を積極的に検討していただろう」と付け加えた。

ほとんどの人が、リモートワークは今後根づいていき、将来的にオフィススペースのあり方に影響を与えると考えている。

Wilshire Lane Partners(ウィルシャー・レーン・パートナーズ)の共同設立者でマネージングディレクターのAdam Demuyakor(アダム・デムヤコール)氏は、概して大都市には強気だが、スタートアップ企業自身がすでに特定の場所から移転しつつあると指摘する。これは重要な先行指標であるとTechCrunchは考えている。

「この1年を振り返って興味深かったのは、パンデミックによって地理的な柔軟性を得たことで、スタートアップ自身がどのように進化し始めたかということだ」と同氏は語り「以前は、スタートアップ(特に不動産関連のスタートアップ)は、顧客や見込みのある資金源、人材の集まる場所の近くに「本社」を置かなければならないというプレッシャーを感じていた。しかし、ここ数カ月でこうした変化が見られるようになった」と述べる。

実際、筆者の元同僚で、現在はInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)のパートナーであるKim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は、同社のポートフォリオ企業に対して定期的に行っている最近の調査で、こうした傾向を明らかにしている。パンデミックが始まった頃、創設者が会社を設立したい場所の1位はまだベイエリアだった。今では、リモートファーストが1位になっている。一方、投資先の企業では、リモートファーストか、本社を小さくして遠くにオフィスを置くハブ&スポークモデルのどちらかに移りつつある。何らかのオフィスを維持している企業は、週5日よりも大幅に少ない日数しか使われていないと答え、また、3分の2近くの企業が、勤務地による給与調整は行わないと回答している。

これは小さなサンプルだが「スタートアップは(a)効果的なリモートワークに必要なテクノロジーの活用に長けていることが多く、(b)同時に、人材獲得のための激しい競争にさらされている。そのため、パンデミックが過ぎ去った後、スタートアップの動向を観察することで、『仕事の未来』がどのようなものになるか推測できるだろう」とデムヤコール氏はいう。

一部の(大きな融資を受けている)家主や(大きな予算を持っている)大都市は、オフィスの再配置を早急に進めており、一部の大企業はオフィススペースを増設したり、現在の所在地へのコミットメントを改めて明確にしたりしている。

そういった努力に加え、直にネットワークを築きたいという自然な欲求が、産業クラスターを元に戻し、人々を以前の場所に引き戻すことになるのかもしれない。ともすれば、以前の100%近くまで戻るかもしれない。その場合、それはどういったものになるのだろうか。

RET Ventures(RETベンチャーズ)のパートナー兼マネージングディレクターであるChristopher Yip(クリストファー・イップ)氏は、このようなシナリオでは、パンデミック時のような傾向が持続するだろうという。そして「公衆衛生への配慮に敏感になった人々は、大量輸送機関より自動車や自転車などの単独の交通手段を好んで使うようになり、駐車場関連やバイクシェアリングのテックツールが伸びる可能性がある。また、不動産管理の観点からも、タッチレステクノロジーやセルフリースを可能にするツールに消費者の関心が高まり、密集した環境での生活をより快適に、より健康的にするテクノロジーが増えていくだろう」と同氏は続ける。

もう1つのシナリオとして「多くの仕事が完全なリモートであり続ける場合」を挙げる。

同氏は「理論的には、小売店やオフィスビルは、経済的構造上苦しい状況が続く可能性があり、ある地域の政府関係者からは、オフィスビルを手頃な価格の住宅に転換するという話も出ている」と実情を話し「都市の市場の空室率が高いままであれば、住宅に対する需要が高くない市場でも家主がホテルタイプの滞在から収益を得ることができるAirbnb(エアビーアンドビー)Kasa(カーサ)のような短期賃貸プラットフォームへの需要が高まるだろう」と語る。

Fifth Wall(フィフスウォール)のパートナーであるVik Chawla(ヴィック・チャウラ)氏は、中間的なシナリオを描いている。「大都市はパンデミック後も知識労働者や優秀な人材を惹きつけると思うが、リモートワークが労働経済にとってますます重要な要素となり、オフィスとそれ以外の場所で過ごす時間の中で柔軟性が増すと予想している」。

これはやはり、ある種の長期的な価格の下落を意味する。「都市レベルでは、需要の減少により、パンデミック前の水準に比べて賃料は右肩下がりになるはずだ」と同氏は主張する。「そうは言っても、パンデミックを通して成長を遂げた都市の不動産エコシステムは、イノベーションの時期を迎え、それに伴い、住宅密度、ADU、モジュラービルディング技術の増加が見られるだろう」。

DreamIt Ventures(ドリームイット・ベンチャーズ)で都市開発テック部門のマネージングディレクターを務めるAndrew Ackerman(アンドリュー・アッカーマン)氏も、商業オフィスの価格はそのうち緩やかに下落し、その後、スペース管理に関する複雑な問題が発生すると見ている。

「仕事が平常に戻ることは、オフィスの終焉ではなく、より柔軟なワークアレンジメントをもたらすだろう。しかしそのことで、今後5年から10年で賃貸契約が更新されていく間に、オフィススペースの需要は壊滅的ではないものの、徐々に減少していくことになる。問題は、その後、余ったオフィススペースをどうするかということだ」。

「オフィスを住居へ転換することはなかなか厄介だ」と同氏は言い「レイアウトが一番の制約だ。最近のオフィスの多くは、窓がなく内部に深い空間を持っており、再利用することを難しくしている。たとえ、狭いレイアウトであっても、構造的な要素が住居には適さない場所にあることが多い。水道管やガス管を適切な場所へ移すために、建物のコンクリートに何千もの穴を開けるのは大変な作業だ」と説明する。

これは、まだ価値のある物件の新しいタイプの利用法につながりそうか、と問うと「共同生活やマイクロユニットがより魅力的な転用方法かどうかというのは、今調査している分野の1つだ。オフィスの休憩室やビル内側の大部屋を、共有のキッチンやダイニングエリア、そしてレクリエーションや仕事のためのフレックススペースに変えれば、多額の費用をかけて改装しなくても、ビル内部の深いスペースを再利用できるかもしれない。また、配管のルートをあまり変更する必要がないのであれば、時間とともに変動するオフィスや住居スペースに対する市場の需要に応じて、個々のフロアを転換することも(さらには元に戻すことも)可能かもしれない」と同氏は答えた。

投資家10人全員が、オフィス自体に対する見通しが強気か弱気かは別にして、(当然のことながら)不動産テックは次の時代の大都市の中核をなすものだと考えている。

住宅の新たな均衡

パンデミックの間、ほとんどの場所で住宅の供給は大幅に制限され、購入を希望する人が増え、売却を希望する人は減った。今まで注目を集めていた都市で、賃貸価格が大きく下落していることとは裏腹だ。

住宅問題とそのソリューションの1つとして共同生活に注目しているウィルシャー・レーンのデムヤコール氏は「パンデミックにもかかわらず、ミレニアル世代やZ世代にとって、現在の賃金水準では、物件の価格が最も高い都市(ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなど)は依然として高嶺の花だ」という。そして「そのため、大都市での生活のコスト負担を軽減するための物件やソリューションに対する需要は、今後も継続すると考えている。例えば、その中核として、共同生活は経済的に1つの判断となるだろう。住みたい場所に住むことをより容易にするソリューション(ADUもその一例だ)は、今後も発展していくだろう」と続ける。

Camber Creek(キャンバー・クリーク)のマネージングディレクター兼ゼネラルパートナーであるCasey Berman(ケイシー・バーマン)氏は「都市がより充実した生活、仕事、遊びを求める人々を惹きつけ続けるのは、そういった体験を実現する住宅密度と機会を提供しているからだ。このような事実がある限り、その欲求を満たす都市空間と不動産に対する新たな需要が生まれるだろう」と主張する。

また同氏は、密度の高い生活をより安全に、より便利にする製品やサービスに投資しており「そのためのソリューションがますます普及していくことを期待している。Flex(フレックス)は、オンラインによる分割払いでテナントの賃料の管理と支払いを容易にし、それに伴い、家主にとっては期日通りに支払いを受ける可能性が高まる。Latch(ラッチ)の入退室管理システムは、新築の集合住宅の10棟に1棟の割合で導入されている。また、この1年で多くの人がペットを購入した。PetScreening(ペットスクリーニング)は、ペットが介助動物や支援動物の場合、ペットの記録の管理と確認を容易にする」と述べる。

Picus Capital(ピカス・キャピタル)のパートナーであるRobin Godenrath(ロビン・ゴーデンラス)氏とJulian Roeoes(ジュリアン・ルーエス)氏は、おおむねこの視点を共有しており、都市での新しい生活スタイルが、人々の暮らし方により根本的な変化をもたらす可能性があると述べている。

「柔軟な生活ソリューションにより、リモートワーカーは短期か長期かにかかわらず、都市生活のために完全に管理された手頃な価格の安全な賃貸オプションを使って、さまざまな都市で時間を過ごすことができる」と両氏はいう。そして「一方で、商業施設から住宅への転換は、単位面積あたりの価格を下げる効果があり、長期的に戻ってくる居住者がよりゆとりのある空間を購入できるようになる。共同生活は集合住宅を高密度化するが、リモートワークへの移行が進むことによる仕事での社会的交流の希薄化を考慮すると、私生活におけるコミュニティの重要性が増すため、今後も興味深い分野だと考えている」と述べる。

しかし、現代の不動産テックは、長期的には郊外やその他の地域も魅力的にしていると多くの人がいう。生活の役に立つすばらしい新技術は、あらゆる場所に導入することができる。

不動産テックは、新たな郊外ブームの火付け役にもなっている。「都市部への回帰の傾向が続いており、郊外型の生活への需要が高まっている」と両氏はいう。「不動産テック企業は、特に住宅の売買や賃貸の取引プロセスをデジタル化することで、このシフトを可能にする重要な役割を果たしている(iBuyer、代替融資モデル、テクノロジー対応仲介業者など)。さらに、不動産テック企業は、遠隔鑑定、3D / VR映像、デジタルコミュニケーションなどにより、物理的なやり取りの低減にも関与しており、パンデミックの間も住宅の購入者と販売者の効率的かつ安全な取引に大きく貢献している」。

最終的には、都市部の価格帯をより手頃にするテクノロジーが、郊外でも同様に役立つだろう。「当社は、住宅売買プロセスのデジタル化が加速していることに加え、郊外型住宅への需要が大幅に増加していることや、買い手のプロファイル(テクノロジーに精通したミレニアル世代など)が進化していることから、建設、交通の便、ライフスタイルなどの面で、不動産テックが郊外の生活に大きな影響を与える多くの機会が広がっていると確信している。これには、賃貸専用住宅の建設、モジュール型住宅の建設、低価格住宅、コミュニティの構築、デジタルアメニティなどに注力する企業が含まれる」と両氏は述べる。

インタビューを行った投資家の多くは、一戸建ての賃貸市場のトレンドを重視していた。再びRETのクリストファー・イップ氏の見解に戻る。

同氏は「過去10年間注目されなかったトレンドの1つに、一戸建て賃貸(Single-Family Rental、SFR)市場の成長がある」とし「多くの大手投資家がこのアセットクラスに参入している。SFR市場は都市部からの移住の恩恵を受けることができ、SFRを支えるテクノロジーは業界全体にポジティブな波及効果をもたらすだろう」という。

また「SFRの物件は、効率的かつ大規模に運営することが特に難しい。多世帯住宅と比較して、多種多様なレイアウトのユニットがあり、地理的にも分散している」と同氏は説明する。そして「テクノロジーによって、SFRの運営者はオペレーションとメンテナンスを合理化できるようになった。SmartRent(スマートレント)のようなスマートホームツールを使えば、分散した物件をリモートで監視し管理することができる。当社はこの分野を有望視しており、この市場で効果を上げる不動産テックツールに注目している」と述べる。

ドリームイットのアンドリュー・アッカーマン氏も同意見だ。「一戸建て市場は軽んじられてきたが、ここしばらく、資産と不動産テックの両方の観点から、徐々に関心を集め始めている。例えば、パンデミック前には、NestEgg(ネストエッグ)Abode(アバウド)など、この業界のエコシステムにサービスを提供するスタートアップに投資していた。新型コロナウイルス感染症はこれらのスタートアップにとって良い方に働き、概して一戸建て住宅の物件が注目を集めた」と同氏はいう。

Urban.us(アーバン・ユーエス)の共同設立者であるStonly Baptiste(ストンリー・バティスト)氏とShaun Abrahamson(シャーン・エイブラハムソン)氏は、共同生活や短期賃貸などの選択肢により人々が新しいライフスタイルを見つけることができ、地理的な自由度が増した世界が広がっていると考えている。「共同生活はコスト面だけでなく、コミュニティとのつながりという見過ごされてきた重要な問題を解決してくれるので、Starcity(スターシティ)のようなポートフォリオ企業は非常に成長している。また、ノマド的なライフスタイルが生まれる余地もある。マイアミについて話されることの多くは、移住についてだが、多くの場所にとって関心の高い問題は、人々が1年のうち何カ月をそこで過ごすかということだろう。つまり、リモートワーカーから見れば、例えばマウンテンバイク、サーフィン、スノーボードなど、特定のアクティビティにアクセスしやすい場所になるかもしれない。スターシティは都市間の移動を容易にし、Kibbo(キボ)はバンライフを中心としたコミュニティを構築することで、都市を超越したサービスを提供している」と両氏は語る。

ベインキャピタル・ベンチャーズのクレリア・ウォーバーグ・ピーターズ氏は、こういった変化が郊外不動産市場に与える影響を次のようにまとめている。

「住宅取引の混乱は、現在、iBuyers(インスタントバイヤー、売主から直接住宅を購入し、最終的には売主として物件を再販する)、ネオブローカー(一般的にエージェントを雇用し、権原ローンや権原保険などの二次サービスを利用して収益を上げる)、エリートエージェントツール(トップエージェントに焦点を当てたプラットフォームやツール)の3つのコアカテゴリーに落ち着いている」。

こういったイノベーションの組み合わせは、今までの住宅用不動産を変えつつある。「消費者は、ホームエクイティーベースの融資モデル(自宅を株式化して販売したり、自宅の完全な所有権を時間をかけて購入したりする)など、代替的な金融手段の活用にますます積極的になっている。このような新しいモデルの成長と普及により、住宅市場全体が統合され、仲介業者の販売手数料や、住宅ローン、権原保険、住宅保険の販売による手数料が、機能的に1つの大きな、そして絡み合った複雑な市場となっている」と同氏は語る。

近隣の小売店の驚くべき復活

人は、にぎやかで歩きやすい地元の店が並ぶ昔ながらのメインストリートのような雰囲気が好きなようだ。しかし、独立した小売店をやりくりしようとしている人々には難しい状況が続いている。

Amazon(アマゾン)をはじめとする90年代に登場した「Eテイラー(電子小売業者)」などの電子商取引は、薄利の従来型小売業に打撃を与えた。さらに最近では、アートギャラリーや高級レストラン、ブティックなどが多くの都市でジェントリフィケーション(富裕化)の前兆となっている。そういった場所ではより高い賃料を払える借り手が増えたため、小売業店舗の家主が積極的に賃料を値上げし、結果的に一等地では家賃が払えない店舗が続出することになった。

パンデミックの影響で地元の店が閉まっている間に、得意客さえもオンラインで注文するようになり、決定打となったようだ。

しかし、複数の投資家が妙に楽観的な見方をしている。パンデミックは1年以上にわたって社会・経済活動に大混乱をもたらしたが、ほとんどの人が、実生活において小売店の存在は現代生活に欠かせないものだと認めている。

「人間は基本的に社会的な動物であり、安全に人と会えるようになれば、誰もが直接対面での交流を求めるようになると考えている。さらに、週5日のオフィスワークからの解放は、自宅でも規律正しいオフィス環境でもない、『第3の空間』への欲求を高めることになるだろう」とピーターズ氏はいう。

「商品を販売することよりも、顧客が実際に商品を手に取りウェブサイト以上にブランドコンセプトを体感できる環境を整えることに重点を置く、『Apple Store』のような小売店が今後も増えていくだろう。パンデミックが終わる頃には小売店の賃料が大幅に下がっていると予想されるため、新型コロナウイルス感染症以前よりもさらに実験的な試みが行われると考えられる。小売業にとっては非常に興味深い時代になるだろう」。

小売関連のテクノロジーを専門に投資しているか、第3の空間のアイデアに広く投資しているかにかかわらず、他にも、複数の投資家がこの視点で見解を述べている。

「小売業が10年以上前から変化しているのは事実だ。eコマースで普通に買えるものは、書籍や衣料品だったものが今では惣菜や食料品にまで拡大している。また、パンデミックがeコマースの成長を加速させ、リアル店舗の小売業が損失を被っているのも事実だ」とRETのイップ氏はいう。そして「しかし、人はやはり人間であり、直接会って交流することを求めている。たとえ都市の完全な立ち直りまで時間がかかっても、大都市にはかなりの数の小売店を支える客足があり、ポップアップショップのような革新的なモデルを導入することで、空き店舗の問題に対処できるだろう。また、大衆市場では、小売業に対する信頼がまだあることも留意する必要がある。主要なREITは2020年初頭から半ばにかけて苦戦したものの、多くは大幅に回復しており、いくつかは実際にパンデミック前の数値を上回っている。小売業にとってはひどい10年であり、この1年は最悪の年だったが、このセクターの幕を引くにはまだ早すぎる」と述べる。

ピカスのゴーデンラス氏とルーエス氏によると、映画館は、パンデミック後に一般市民の生活が一斉に再開された場合の成功を待ち構える小売セクターの一例に過ぎないとのことだ。

「ショッピングセンターの目玉テナントである映画館は、予約席、4DX映像、劇場内のレストラン、カフェ、バーなど、より総合的な体験型ソリューションの提供により、すでに従来型の営業スタイルを刷新しており、さらにパンデミックをきっかけに、プライベートシアターのレンタルやイベントなどのサービスを拡大している。こうした傾向は、レストラン(実体験のように感じる料理エクスペリエンス)から伝統的な小売業(オンラインとオフラインを統合したショッピングエクスペリエンス)まで、小売不動産業界全体に拡大していくだろうと見ている。また、小売不動産オーナーが見込みのあるテナントを特定して物件を売り込んだり、小売業者が店舗内での顧客エンゲージメントを促進し、カスタマージャーニーに関する重要なインサイトを得たりする時にも、不動産テックが決定的な役割を果たすと考えている」。

意外なことに、最近ではインターネットも味方になっている。「また、オンラインとオフラインの体験を巧みに融合したハイブリッドモデルにも大きな可能性があると考えている」と両氏はいう。「フィットネス分野を例にとると、スタジオでのコースを配信してより多くの参加者を募ったり、スタジオでのレッスンや自宅でのワークアウトを通じてトレーニングや健康状態の推移をアプリでトラッキングしたりするという新しいスタイルが考えられる」。

インタビューで投資家から聞いたものではないが、小売業の未来を信じる理由は他にもいくつかある。

また、小売業が、投資家が出資している他の多くのソリューション、特に都市の魅力を高め、気候変動などのマクロな問題を解決するためのソリューションとどのように関わっているかもわかるだろう。

バティスト氏とエイブラハムソン氏は「都市には活用されていない多くの資産があるが、最大のものは自動車に割り当てられている公共スペースだろう」とし「永続的に変っていくだろうと思われることは、駐車スペースを自家用車からマイクロモビリティ(自転車、スクーター、キックボード用のレーンや駐輪場など)に再配分することだ。Coord(コード、スマートゾーンという技術を使い商用車などの縁石スペース利用を管理)、Qucit(キューシット、多くの大都市で自転車やスクーターのシェア事業を管理)、Oonee(ウーニー、安全な自転車、スクーター、ボード用の駐車場)などのポートフォリオ企業に多くの需要があると考えている」と述べる。

これは、両氏が予見する好循環の始まりに過ぎない。

「(自動車の排除)が起こると、物流のようなユースケースはマイクロEVにシフトできる。同様に、パークレット(車道の一部を転用して人のための空間を生み出す取り組み)やシーティングエリアによって公共のスペースが増える。EUでは自動車使用の禁止を推進しているが、全体的に道路で自動車の往来が減れば、大きな変化が起きるだろう。確かに個人の生活の空間を明け渡すことになるが、共有スペースや社会的なスペースが増え、都市を魅力的なものにする可能性がある。こうしたことにより、共同生活が促進され、都市で生活するためのコストを下げることができるとともに、低密度のコミュニティでは比較にならないほど共有スペースから多くのものを得ることができる」と両氏は話す。

ウィルシャー・レーンのデムヤコール氏も同様の見方をしている。

同氏は「当社の全体的な戦略を立てる上での原則の1つは、常にスペースの活用に焦点を当て、有効に活用されていないスペースを、テクノロジーによって収益化する最良の方法を見つけ出すことだ。このことは、StufNeighbor(スタッフ、ネイバー、地下室、駐車場、その他の空きスペースの収益化)MealCo(ミールコ、空きキッチンの収益化)WorkChew(ワークチュウ、レストランのシーティングエリア、ホテルのロビー、会議室の収益化)Saltbox(ソルトボックス、空き倉庫の収益化)など、当社の直近の投資案件の多くに明確に表れている。家主は、このようなタイプの戦略を適切に利用すれば、今日の不動産業界で見られる空室の増加を中期的に緩和できる」と述べる。

この主張が正しければ、小売業は、より共有スペースのような存在になるかもしれない。「特に、先に資金調達を発表したばかりのワークチュウの製品は、需要側と供給側の両方で多くの需要がある。ホテルやレストランは、あまり利用されていないスペースやインフラを収益化するために、同社との提携に対する関心は極めて高い」とデムヤコール氏は述べる。そして「もちろん、雇用主や企業は、本社のオフィス以外で過ごす時間を増やしたいと考えているハイブリッドな従業員に提供できる簡単なアメニティとして、この共有スペースに満足している」と付け加える。

インタビューした投資家らから明確に聞いたわけではないが、小売業の将来を信じる理由がいくつかある。

  • まず、経済学者や政策立案者さえも驚くほど、パンデミックの間に何百万もの新しいビジネスが生まれている。その大部分は、非常に地域に根ざしたもので、食品の宅配(カップケーキ)やサービス(出張ヘアカット)、地域で強い支持を得ているインターネットファーストの製品(Etsyの多く)などが挙げられる。これらの起業家らは、インターネットで事業を始め、商業施設の賃料が下がった今、実店舗を構えるに十分な収益を上げている。
  • 第2に、新型コロナウイルス感染症の期間を耐え抜いた地元企業の多くは、インターネットで成功する方法を見つけ出した。近隣でどの企業が嵐を乗り切っているかは、好みのオンデマンドデリバリーやサービスのアプリを開いて注文すればわかる。
  • 第3に、投資家の回答や入手可能なデータが示すように、家主はすでに賃料を下げ始めており、数十年ぶりに借り手市場が形成されている。
  • 第4に、従来のビジネスでも新しいタイプの資金調達が可能となり、オンラインでの副業や趣味(あるいはより大規模なプロジェクト)で成功を収めている企業は、拡大のための資金を得ることができるようになる。(この理由はおそらくかなり推測的なものだが、著者らは、ここTechCrunchで未来を見極めようとしている)。例えば、Shopify(ショッピファイ)は、新しい「定期収入を取引するためのプラットフォーム」のcom(パイプ・ドット・コム)に資金提供をしたばかりだ。両社はこの関係について今は多くを語っていないが、ショッピファイで成功している多くの小規模ビジネスが、リアル店舗の採算の目処が立ったときに速やかに新しい種類の資本注入を受けることの想像はできる。

こういったすべてのことを、都市の密度や自転車レーンの設置による気候変動への配慮など、都市に対する考え方の他の広範な変化も含めて考慮すると、パンデミック以前の世界というよりも、ニューアーバニストの空想といわれそうな世界が見えてくる。

同時に、これらのコンセプトは小規模な都市、郊外、そして町にも展開されている。産業クラスターの古いネットワーク効果が奇跡的な復活を遂げない限り、すべての都市が最高の生活の質を提供するために競争することになる。

仮に、産業クラスターがかつてのように集結しないとしよう。そうすると、多くの家主や金融業者、市の予算はすぐに支出を削減せざるを得なくなり、魅力的な都市の経済の足を引っ張ることになるかもしれない。

そのような場合でも、ニューヨークやサンフランシスコのように、住宅や小売店、アメニティを中心に据える都市が再生することは想像に難くない。もしかしたらいつの日かこの数十年を、パンデミックで全世界が底を打ち長期的に正しい答えを決める必要が生じる前の古き悪し時代だったと振り返る日が来るかもしれない。

ということで、読者には、著者がインタビューした投資家らの回答全文を紹介したい。各投資家の回答は、このすでに十分に長い記事より更に濃い内容であり、詳細を読む価値はある。このような変化に関する継続的な記事の支援のため、Extra Crunchを購読して欲しい。

不動産テックと都市の未来については、近々さらに掘り下げる予定だ。この件について他に考えがあればeldon@techcrunch.comにメールして欲しい。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:新型コロナウイルス不動産リモートワーク住宅アメリカeコマース店舗小売

画像クレジット:Boston Globe / Getty Images

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(文:Eric Eldon、翻訳:Dragonfly)

アマゾンがインド小売業者のデジタル化を支援する同国スタートアップを買収

Amazon(アマゾン)はオフラインの店舗がオンライン店舗を展開するのをサポートするインドのスタートアップを買収した。オフライン店舗が小売販売の95%超を占め、そして人口が世界第2位のインドに食い込もうというAmazonの最新の試みだ。

Amazonは現地時間3月30日、創業4年のPerpule(パーピュール)を買収したと発表した。規制当局へ提出した書類には、Amazon Technologiesがインドのスタートアップを買収するのに現金1470万ドル(約16億円)を支払ったとある。そしてPerpuleの従業員への補償として追加で500万ドル(約5億5300万円)拠出するはずだ。

これまでに636万ドル(約7億円)を調達したPerpuleはオフラインの小売業者がデジタル決済を受け付け、そPaytmやPhonePe、Google Payなどがインドで展開しているさまざまなミニアプリストアで出店できるようにするためにモバイル決済デバイス(POSマシーン)を提供している。

「Perpuleは、インドのオフラインの小売店舗が在庫や精算プロセス、全体的な顧客エクスペリエンスをうまく管理できるようにする、イノベーティブなクラウドベースPOSを構築しました」とAmazonの広報担当は声明で述べた。

「インドの顧客のために買い物エクスペリエンスの水準を引き上げながら、あらゆる規模の事業者への成長機会の提供に注力すべく、Perpuleのチームに加わってもらうことを喜んでいます」。

2016年に創業されたPerpuleの最初のプロダクトは、Shoppers Stop、Spar Hypermarket、Big Bazaarといったスーパーチェーンでの行列を顧客が回避できるようにすることにフォーカスしていた。しかし、PerpuleのCEOであるAbhinav Pathak(アビナブ・パタック)氏が最近のインタビューで語ったところによると、同社はそのプロダクトを展開しようとしたが、広がらなかったという。

Prime Venture Partners、Kalaari Capital、Raghunandan G(ラグナンダン・G)氏(ネオバンクZolveの創業者)などから出資を受けているバンガロール拠点のPerpuleは近年、事業者がグループ注文に対応できるようにするStoreSEのようなプロダクトを立ち上げるなど、事業を拡大してきた。

そして2020年は事業地域も拡大し、インドネシアやマレーシア、タイ、シンガポール、ベトナムなど東南アジアマーケットでサービスの提供を開始している。

Amazonは近年、デリバリーネットワークや倉庫を拡大するために、実在(オフライン)店舗のインドでの圧倒的な存在感を出し、販売促進のために実在店舗の在庫に頼るなど、積極的に実在店舗を取り込もうとしている

Amazonの実在店舗への接近は、Flipkart、そして2020年(FacebookやGoogleなどから)200億ドル(約2兆2100億円)超を調達したReliance Jio Platformsがこのマーケットを支配しようと競っている中でのものだ。Perpuleの買収は、Googleがが似たようなプロダクトを展開しているDotPeへ出資してから1週間も経っていない。

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あらゆるものを売っている零細の小売店は、家族経営で賃金は安く、家賃がほとんどない。どこにでもあるため(業界推定ではインドには3000万の零細小売店がある)、より迅速な配達を提供できている小売大手はない。その上、そうした零細小売店の経営状態は往々にして大半のデジタル店舗よりも良好だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Amazonインド買収Perpule小売

画像クレジット:Noah Seelam / AFP / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi