「ワーキングプアをなくす」無料オンラインキャリア相談サービス「CHOICE!」のCompassが2億円のシリーズA調達

オンラインでのキャリア相談サービス「CHOICE!」を提供するCompassは10月18日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を発表した。引受先は、はたらくFUND、マネックスベンチャーズ、田中邦裕氏(さくらインターネット代表取締役社長)。

調達した資金は、AIマッチング機能などの開発体制の強化、営業マーケティングチームの強化にあてる。これらにより、市場開拓に向けた自治体との連携、企業開拓のフォロー体制を整えるともしている。

CHOICE!はより多くのキャリア相談の機会と、ミスマッチの少ない就業機会を作ることを目的とするオンラインサービス。近年はコロナ禍により就業と転職の機会が減少する一方で、CHOICE!でのキャリア相談が増加しているという。相談後には「相談データを活かした転職活動」を提案する「CHOICE!+転職エージェント」の提供も行っているそうだ。これらプロダクトの実績が評価された結果、神戸市や京都市といった自治体での就労支援をDX化する取り組みも広げている。

2017年設立のCompassは「日本からワーキングプアをなくす」ことをミッションに掲げ、LINEアプリを活用し求職者と求人会社のマッチングを行なうスタートアップ。CHOICE!のほか、キャリアアップと働き方に役立つウェブメディア「WORLD Compass」や、LINEを活用したキャリア相談機能を搭載したデジタル母子手帳「Mother Helper」などを運用している。

運動習慣を形成する音声フィットネスアプリのBeatFitが2億円調達、健康経営領域での成長を加速

音声フィットネスアプリ「BeatFit」(Android版iOS版)を開発・運営するBeatFitは10月19日、第三者割当増資を実施しシリーズBラウンドとして約2億円の資金調達を2021年9月に完了したと発表した。引受先はリード投資家のインフォコム、共同投資家のツクイキャピタル、またVOYAGE VENTURES、そのほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアや法人向け人材の獲得費用にあて、プロダクト開発を促進させるとのこと。同時に、リード投資家であるインフォコムとの業務提携を締結し、健康経営領域での成長速度を加速させる。健康増進領域にとどまらず新規事業の開発も開始し、さらなる企業価値の向上を目指す予定。

BeatFitは、運動習慣を形成し運動不足を解消するための音声フィットネスアプリ。筋トレやウォーキング、ストレッチや睡眠など12ジャンル700以上のクラスが用意されている。運動に最適な音楽、また現役プロトレーナーの音声ガイドで構成されるオリジナルフィットネスコンテンツの配信を通じて、効果的な運動習慣作りをサポートするという。

「この世から不健康をなくす」というビジョンを掲げて2018年に設立されたBeatFitは、同名のアプリの開発・運営を主事業とする。健康という資産を楽しくスマートに管理できる仕組みを実現し、元気な社会の実現を目指している。2020年に開始した法人向け事業も順調に成長を遂げているとのこと。

金沢大学などが乳がん発症の超早期兆候を作り出す仕組み発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学などが乳がん発症の超早期の兆候を作り出す仕組みを発見、がん予防・超早期がんの診断治療への活用に期待

金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構などによる研究グループは10月19日、乳がん発症の際に必ず表れる超早期の微小環境を作り出すメカニズムを発見したと発表した。癌予防、超早期がんの診断治療への活用、ひいてはがん撲滅への寄与が期待される。

乳がん発症の超早期には、間質細胞、免疫細胞などが集まり、がん細胞を取り囲む微小環境が作り出される。その微小環境から生み出されるサイトカイン(免疫細胞から分泌されるタンパク質)が、がん幹細胞様細胞に影響を与えていることはわかっていたが、実態は不明だった。この研究では、そのメカニズムを分子レベルで明らかにした。さらに、この微小環境がFRS2βといいう分子によって整えられ、がん細胞の増殖が始まることも突き止めた。

FRS2βの影響で炎症性サイトカインが生み出され、細胞外に放出されると、そこに間質細胞や免疫細胞が引き寄せられる。マウスを使った実験では、この状態の乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植すると、1カ月以内に大きな腫瘍ができた。だが、FRS2βのない乳腺に乳がん幹細胞様細胞を移植しても、まったく腫瘍はできなかった。

この研究を発展させることで、乳がん発症前に整えられる乳腺微小環境を標的とした治療が可能になり、乳がんの発症予防、早期治療が実現するという。

研究グループのおもなメンバーは、金沢大学がん進展制御研究所/新学術創成研究機構の後藤典子教授、東京医科大学分子病理学分野の黒田雅彦主任教授、東京大学医科学研究所の東條有伸教授(研究当時)、東京大学特命教授・名誉教授の井上純一郎教授、国立がん研究センター造血器腫瘍研究分野の北林一生分野長、九州大学病態修復内科学の赤司浩一教授、慶應義塾大学医学部先端医科学研究所遺伝子制御研究部門の佐谷秀行教授ほか。

年利0.1%でポイントが増える「楽天ポイント利息」がスタート

年利0.1%でポイントが増える「楽天ポイント利息」がスタート楽天が「楽天ポイント利息」の本格提供を10月18日から開始しました。

「楽天ポイント利息」は、「楽天PointClub」から専用ページへアクセスし、預けるポイント数を設定するだけで、預入期間とポイント数により所定の利率に応じてポイントを増やせるサービスです。

利率は年0.108%(月0.009%)で、預入は100ポイント以上から1ポイント単位で追加可能。また1ポイント単位で通常ポイントとして即時に引き出せます。

同社はこれまでに「楽天ポイント」を利用して投資の疑似体験ができる「ポイント運用 by 楽天PointClub」や、ビットコインの取引体験ができるサービスを提供していました。本サービスの提供によって「楽天ポイント」活用の選択肢をさらに拡大した格好です。

(Source:楽天ポイント利息Engadget日本版より転載)

スペクティ・日本気象協会・トランストロンがトラックの運行データから路面・周辺気象情報を抽出する実証実験

スペクティ・日本気象協会・トランストロンがトラックの運行データから凍結・積雪など路面情報や周辺気象情報を抽出する実証実験

AIリアルタイム危機管理情報ソリューション「Spectee」を提供するSpectee(スペクティ)は10月18日、日本気象協会、ネットワーク型デジタルタコグラフのメーカー「トランストロン」と共同で、AIなどの先端技術を活用したトラックの運行データの解析から、路面情報、周辺気象情報などの抽出を目的とする実証実験を行ったことを発表した。

2021年2月から6月にかけて行われたこの実証実験では、トランストロンのデジタルタコメーターを導入している札幌市の幸楽運輸、富山市の池田運輸の協力のもと、走行中に取得した路面の画像データ、日本気象協会の気象データをスペクティのAIで分析し、乾燥、湿潤、凍結、積雪などの路面状況を判定した。これにより実用化に向けた有効なデータが得られたことから、さらに精度を高め、スペクティ、日本気象協会、トランストロンの3者で実用化に向けた検討を進めてゆくという。

OutNow運営のニュースレター配信サービス「theLetter」が正式ローンチ、一般向けに提供開始

OutNow運営のニュースレター配信サービス「theLetter」が正式ローンチ、一般向けに提供開始

OutNowは10月18日、2020年7月よりクローズドβとして提供していたニュースレター配信サービス「theLetter」の正式版をローンチし、一般向けに提供開始すると発表した。クローズドβの段階で、1000人を超える月額有料読者を持つ書き手も現われているという。

theLetterは、集客と収益化に最適化されたニュースレター配信を容易にするプロダクトと、書き手が集まるコミュニティ運営により書き手の収益向上させるというサービス。ジャーナリストやライターが読み手からの直接収益を得ることで、既存媒体への寄稿・執筆以外の方法で情報発信を行ない、記事単価アップを果たすことを目的としている。

読み手の課金・購読状況によって閲覧制限を設ける機能を備え、アンケートや返信といった形で読者と細かいやり取りを行うことも可能。theLetterコミュニティではノウハウ共有がなされているほか、運営側から書き手同士のコラボレーションのきっかけも提供するとしている。

利用料金は、書き手の場合は、有料読者から受領する購読料の17%(決済手数料・入金手数料込み)に相当する金額(税込)となる。決済手数料と入金手数料は、有料読者から購読料の支払いを受けるにあたり利用している、ストライプジャパンが提供する決済サービス「StripeConnect」の手数料となっている。

また読み手の場合は、OutNowを無料で利用可能。ただし、書き手との間で有料購読契約を締結した場合には、書き手が定めた金額の購読料(税込)を支払う必要がある。

2018年4月設立のOutNowは、theLetterの企画・開発・運営を手がけている。創業者の濱本至氏が、フェイクニュースやセンセーショナルな切り取りをする報道に目を奪われることなく、専門家やジャーナリスト・ライターから直接情報を入手したいと考えたことからtheLetterを開発開始したという。

脳卒中のAI予測診断を救急医療サービス「Smart119」に実装、千葉消防局が実用化へ

脳卒中のAI予測診断を救急医療サービス「Smart119」に実装、千葉消防局が実用化へ

千葉大学発の医療スタートアップSmart119は10月18日、脳卒中AI予測診断アルゴリズムの研究論文がイギリスの科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されたことを発表した。この論文は、急性期の脳卒中にAI予測アルゴリズムを確立し、有効性を実証したことを報告している。

三大疾病の1つである脳卒中は、くも膜下出血、脳梗塞、脳出血、主幹動脈閉塞などが含まれ、突発的に発病する傾向が強い。救命はもちろんのこと、片麻痺などの後遺症を抑えるためにも緊急の治療が求められる。しかし、救急隊員の判断は医療機関と共有されず、病院に到着してからの診断によって病状が特定されるのが現状だ。

そこでSmart119は、救急隊員の判断の精度を高め、専門医や設備を持つ医療機関での的確で迅速な治療を実現するために、救急隊と医療機関とで診断結果が共有できるAI予測診断を開発した。これは、容態、疾患履歴、気象状況など、患者の個別の背景条件から脳卒中の症状を診断できる。

実験では、千葉市内の医療機関と千葉市消防局の協力で、脳卒中の可能性のある救急患者約1500人の、容態、年齢、性別、気象状況のデータを収集。そのうち約1200人分(80%)のデータは機械学習の分類アルゴリズムモデルの設計に利用され、残る約300人(20%)のデータはテストに用いられた。分類アルゴリズムをテスト用300人のデータで検証した結果、評価指標AUC(Area under the curve)値で高い精度(0.980)が示された(AUCは、分類のアルゴリズムの精度を示す曲線値。閾値「0.8」を上回ることで高精度とされる)。

このアルゴリズムは、本年度中に緊急医療情報サービス「Smart119」に実装される予定とのこと。これを導入している千葉市消防局の救急車に装備されているタブレット端末アプリで利用できるようになる。

掲載した画面写真はデモ版のため、正式リリースでは変更になる場合がある

救急隊員は、患者に脳卒中の可能性がある場合に「脳卒中診断ボタン」をタップし、診断専用ページで患者の容態を選択肢に従って入力する。すると、AI予測診断で病状が確定し、受け入れ先の自動選択とともに、受け入れ要請が実施される。受け入れ先病院では、この情報を基に、救急車が到着する前に専門医の召集や緊急手術に関する準備を整えることができる。

このアルゴリズムは、他の病状への応用も期待されている。またこれは、Smart119により特許申請がなされている。

サイバーセキュリティのFlatt Securityが2億円調達、海外市場ターゲットのプロダクト「Shisho」開発を加速

サイバーセキュリティ事業やウェブエンジニアのための学習プラットフォーム「KENRO」(ケンロー)を提供するFlatt Securityは10月18日、第三者割当増資による約2億円の資金調達(一部借入を含む)を発表した。引受先はB Dash Ventures、フィンテック グローバル、事業会社1社。既存事業の収益と調達した資金により、海外市場を念頭に置いたセキュリティプロダクト「Shisho」(製品のβ版を提供中)の開発速度の向上を目指す。累計調達額は約4億5000万円となった。

Shishoは、グローバルで「組織内のプロダクト開発・運用業務とセキュリティ業務との分断の解消」を実現すべく開発されたプロダクト。技術的な核となる脆弱性の感知・修正エンジンをオープンソースソフトウェア(OSS)としてGitHub上で公開しており、製品のβ版の提供を10月6日より行なっている。

2017年5月設立のFlatt Securityは、サイバーセキュリティ領域を手がける東京大学発のスタートアップ。「セキュリティの力で信頼をつなげ、クリエイティブな世界を実現する」をミッションに掲げており、ユーザーのシステムに情報漏洩やデータ改ざんにつながる脆弱性がないかを調査する「セキュリティ診断」(脆弱性診断)やKENROを提供している。また、インターネット上で利用可能なソフトウェア・ハードウェアの脆弱性を調査する「脆弱性リサーチプロジェクト」を実施している。

混雑情報を提供するVACAN Mapsが埼玉県44自治体・東京都目黒区・群馬県桐生市で衆院選の期日前投票所の空き状況配信

マップ型混雑情報を提供するVACAN Mapsが埼玉県44自治体・東京都目黒区・群馬県桐生市で衆院選の期日前投票所の空き状況を配信

AIとIoTを活用して施設の空き状況・混雑状況を地図上に表示するサービス「VACAN Maps」を運営するバカンは10月15日、第49回衆議院議員総選挙において、埼玉県内44自治体、東京都目黒区内、群馬県桐生市の期日前投票所の混雑情報を同サービスを通じて提供することを発表した。なお、県単位での導入は埼玉県が初となる。

VACAN Mapsは、専用アプリをダウンロードすることなく、スマートフォンやパソコンのインターネットブラウザでレストランやカフェ、トイレ、観光地、避難所などの空き情報をリアルタイムで調べることができるサービス。混雑状況の検知方法は、環境や予算に合わせ「店舗・施設に設置されたボタン型IoTデバイスを店員・施設スタッフが操作」「カメラで取得した施設内状況のデータをAIで自動判定」「スマートフォンなどから直接入力」など、さまざまな方法から選択できる。

今回の衆院選の期日前投票所では、投票所の職員が専用IoTデバイスを操作することで混雑情報を更新。空き状況は「空いています」「やや混雑」「混雑」の3段階で表示される。混雑を可視化し住民に情報を届けることで、当日投票時に比べ投票所が少ない期日前投票の混雑緩和、密を避ける環境づくりをサポートする。混雑情報のほか、投票所の場所や投票日などのデータも地図上に掲載されるため、投票率の向上につながる効果も期待される。サービスの提供は期日前投票に合わせて開始される。

マップ型混雑情報を提供するVACAN Mapsが埼玉県44自治体・東京都目黒区・群馬県桐生市で衆院選の期日前投票所の空き状況を配信

埼玉県内の対象となる自治体

川越市、熊谷市、行田市、飯能市、加須市、本庄市、東松山市、春日部市、狭山市、羽生市、鴻巣市、深谷市、上尾市、越谷市、蕨市、戸田市、入間市、朝霞市、志木市、和光市、新座市、桶川市、久喜市、北本市、八潮市、富士見市、蓮田市、坂戸市、幸手市、日高市、吉川市、ふじみ野市、白岡市、伊奈町、三芳町、毛呂山町、越生町、川島町、鳩山町、横瀬町、皆野町、長瀞町、杉戸町、松伏町(計44自治体)

DXを推進する日清食品がアプリを内製、ノーコード・ローコードで営業担当が25時間で完成

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 2の10月13日13時5分に行われたセッション「外注から内製化へ。製造業が取るべき次なる一手!日清食品グループが実現した『低コスト』『高スピード』のアプリケーション開発の世界」では、IT企業ではない日清食品がDX推進の一環として行ったアプリ内製化について語られた。その様子をレポートする。

登壇者は日清食品ホールディングスのCIO成田敏博氏と情報企画部係長武田弘晃氏だ。

老舗食品製造企業がアプリ内製化に取り組むようになった背景

日清食品ホールディングスCIO成田敏博氏

日清食品は1948年に設立された70年を超える老舗の食品製造企業だ。売上収益は約5000億円、営業利益が約550円という企業規模である。

2030年に向けた成長戦略テーマ「既存事業のキャッシュ創出力強化」「EARTH FOOD CHALLENGING 2030」「新規事業の推進」を達成するのに欠かせないのが「フードテックイノベーション」であるとしており、デジタルのみならずビジネスの変革も含むためNBX(日清ビジネストランスフォーメーション)としてDXに取り組んでいる。

取り組みを大きく2つの柱に分けており、その柱の1つ「効率化による労働生産性の向上」内に「ツールの最大活用」がある。

同社では、従業員にSurface Proを支給しており、ほとんどの業務がSurface Pro、つまりノートPCで行われているが、工場内作業中、取引先への移動中などではモバイル端末のほうが操作しやすい。腰を落ち着けて作業できる環境であっても、スキマ時間にノートPCを取り出し、起動し、テザリングをし、検索するといった動作は時間や手間がかかる。

そのため、ツール開発に「モバイルファースト」を掲げ、できるだけモバイルで業務を行えるようにすることを目指した。

しかし、製造業のためエンジニアを多数抱えることは現実的ではない。かといって外注では社内のニーズに迅速に対応できない。

そこで、2021年に入ってから内製化のため「ノーコード・ローコード」でのアプリ開発を検討。Power Appsを活用したアプリ開発に取り組むことになったのだ。

25時間で開発した営業活動を助ける商品検索アプリ

日清食品ホールディングス情報企画部係長武田弘晃氏

どの企業でもそうだが、日清食品グループでも営業担当者は商談など外回りが多い。移動中やスキマ時間に、得意先から質問されるであろう商品について調べるには、ノートPCよりモバイル端末に優位性がある。

とはいえ、商品データベースにアクセスするには、支給されているノートPCからしか行えず、開くのが難しい場合は社内の営業事務担当者に当該製品の検索を依頼していたという。場合によっては、検索してもらったものが正しいかを確認後、取引先へメールしてもらうということも行っていた。

これでは、営業事務担当者は、その都度、行っていたかもしれない作業の手を止めて、依頼に応えなければならないし、外回りをしている営業担当者にもストレスがかかってしまう。

そこで、すでにMicrosoft Listsに格納している商品データベースをスマホで検索できるような商品検索アプをMicrosoft Power Appsで開発することにした。

アプリの開発に要した時間は、開発のためのトレーニング、フィードバックを受けての修正の時間も含めてわずか25時間。内訳は、ハンズオントレーニングが2時間、大枠の作成に10時間、日清らしいデザインや使い勝手の追加に7時間、営業戦略部門へβ版の説明を行うのに1時間、そしてフィードバックを受けて行った機能の追加開発に5時間だ。

同アプリの特徴としては、商品検索時に品目コードでも略号でも商品名でも検索できること、入力文字列も全角半角、大文字小文字、ひらがな・カタカナを問わず直感的に利用できること、フィルターやソートはコンボボックスではなくワンタップで検索できるボタン形式を採用していること、ヘルプのキャラクターに同社のキャラクター「ひよこちゃん」を使っていることなどがある。

また、閲覧履歴を設けて移動中に調べた商品情報にすばやくアクセス可能にした他、手元にある商品のバーコードをスマホカメラで読み取って、当該商品の情報もクイックに得られるようにした。

フィードバックによって追加された機能は、商品情報を得意先へメール送信するというもの。おかげで、社内にいる営業事務担当者へ都度連絡する必要がなくなったという。

Power Appsを選んだ理由として武田氏が挙げた理由は3つ。1つ目はすでに同社内で使ってたMicrosoft 365製品群との相性が良いこと、2つ目はその契約範囲内で使えたため追加コストがかからなかったこと、最後は短期間でユーザーが望む機能拡張が行われていることだ。

これまでは、Microsoftパートナー企業に開発を依頼していたという武田氏。しかし「それでは社内ナレッジが蓄積できず、いつまでたっても自社開発が行えない」と考えた。それでは、社内のニーズに迅速に応えるというNBX取り組みの趣旨に反してしまう。

そこで、MicrosoftパートナーであるAvanade(アバナード)に、アプリ開発のハンズオントレーニングや開発に必要な情報のQ&Aといったサポートを依頼。その甲斐あって、25時間という短時間でのアプリ開発に成功した。

アプリβ版を営業戦略部門へ公開した際の反応は「早く使いたい」「いつから使えるの?」といったポジティブなもの。「ユーザーが、使ってハッピーになれるUI / UXであると確信した」という。

完成版のリリースには、事前告知として全国の営業担当者向けにデモを行い、ついでリリース時にイントラネットとオンライン社内報などを使って告知を行った。その結果、使い勝手の良さもあいまってリリースから短期間で浸透し、多くの人が利用するようになった。

成功の要因は開発環境にPower Appsを選んだこととユーザーファーストの思想

Microsoft 365とのシームレス連携を考えてPower Appsを選んだ日清食品グループだが、メリットが多かったという。それはUIの作成が容易だったこと、標準機能が充実していること、ローコードであることだ。

Power Appsを選んだこと以外に、プロジェクトの成功要因として、武田氏は3つのものを挙げた。

1つ目はユーザーファーストに基づいた開発を行ったこと、2つ目ははUI / UXにこだわったこと、最後はAvanadeのサポート力の高さだ。

「ソリューションファーストだったら、ユーザーがハッピーになるソリューションを開発できなかったはず。また、日清らしい親しみやすさや直感的な操作感へのこだわりをもって開発したため、ユーザーが使いたいと思うようなものを作ることができた。そしてこれらは、アプリ開発において不慣れだった自分たちの質問や相談にクイックに応じてくれたAvanadeの高い技術力なしにはなし得なかった」(武田氏)

外部にツール開発の依頼を出していれば得られなかったナレッジは、部内で共有した。それにより、Power Appsができることを把握し、アプリのメンテナンスも行えるようになり、ユーザーのニーズにアプリ開発で応えられるかもしれないという選択肢を持つことができ、同社のモバイルファーストをさらに推進することが期待される。

日清食品グループでは「ハッピー」「クリエイティブ」「ユニーク」「グローバル」という4つの思考をバリューとして捉えている。

アプリ開発の内製化は、ユーザーが抱く課題を解決するものになるため、またノートPCでは作業しづらい環境でもモバイルで業務ができるため、さらに使いたくなるUIであるため、ユーザーにハッピーをもたらすものとなる。

「製造、販売、倉庫といったそれぞれの現場で業務をしやすくするため、またBCP対策としても有効なモバイルファーストを今後も推進していくことで、日清食品グループのDX化をさらに推進していきたい」と武田氏は述べて、セッションを終了した。

目標達成を支援する営業予実管理クラウド「GRAPH」を手がけるグラフが2000万円の資金調達と正式ローンチ発表

目標達成を支援する営業予実管理クラウド「GRAPH」を手がけるグラフが2000万円の資金調達と正式ローンチ発表

グラフは10月15日、Coral Capitalおよび日本政策金融公庫から2000万円の資金調達を実施したと発表した。また、目標達成を支援する営業予実管理クラウド「GRAPH」(グラフ)を9月末に正式ローンチしたことを明らかにした。調達した資金は、GRAPHの新機能開発および人材採用への投資にあてる。

GRAPHは、営業組織の営業予実管理を「誰でも、すぐ、簡単に」実現できるツール。既存の導入ツールやリテラシーにかかわらず、導入初月から適切な営業予実管理やその先の目標達成を支援するという。

GRAPHの特徴

  • 導入初月からデータを見える化:GRAPHは導入初日から運用開始可能。また日々の入力は、数値のみで10項目程度となっており、営業担当者1人あたり1日2~3分の入力時間で、予実管理に必要十分なデータを管理可能
  • 適切な予実管理を実現するダッシュボード:GRAPHは、洗練されたビジネスチームのダッシュボードをプリセットしているという。営業日数に応じた独自の目標進捗率を管理し、最小限のデータ入力で蓋然性の高い予実管理が可能
  • 富なナレッジで安心のサポート:多業態での営業管理経験をもつエキスパートが導入から活用定着までを支援。営業マネジメントのエキスパート不在の組織においても、ツール・コンサルティングの両軸で支援する

同社は、追加予定の機能として「ビッグデータを活用した営業マネジメント支援」「アワード機能」「他社CRM連携」を挙げている。営業マネジメント支援では、蓄積されたデータの分析や、データに基づいた営業施策の提案をGRAPHが行うという。アワード機能では、GRAPHの実績データを基にメンバーを表彰。「当月売上No.1」「成長率No.1」など多種多様なアワードを設定し、トップ層に限らず幅広いメンバーのモチベーション向上につなげる。

また他社CRMとGRAPHを連携することで、導入済みツールを活かしつつ、日次での緻密な予実管理を行うことが可能となるという。

昨今、DXへの関心の高まりから、営業組織においてもCRMやSFAといった営業支援ツールの導入・活用例が見られるという。ただグラフによると、ツールを導入する企業の多くが、煩雑なツール運用を現場に浸透させつつ営業成果につなげることの難しさに直面しており、うまく活用しきれていない現状があるとしている。

慣れないシステム構成を1から設計し、ツールへのデータ入力業務を現場に浸透させることは容易ではなく、多くの工数をかけて入力したデータからネクストアクションが導き出せず、データが死蔵しているケースも多く存在する。

一方GRAPHでは、洗練・厳選した予実データを1日2~3分の入力でリアルタイムに見える化し、営業プロフェッショナルのサポートのもと、ネクストアクションに繋げられるとしている。

目標達成を支援する営業予実管理クラウド「GRAPH」を手がけるグラフが2000万円の資金調達と正式ローンチ発表

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

スマートフォンで建築家に注文住宅の間取りを依頼できる「madree」(マドリー)など運営するスタジオアンビルトは10月13日、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、マネーフォワードベンチャーパートナーズのHirac Fund、ほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアなどの人材獲得やマーケティング費用にあて、既存事業の改善や蓄積された間取りデータを活用した新しいサービス開発を行なうとのこと。また、ハウスメーカーや住宅関連企業との連携強化していくという。

madreeは、自分の暮しに合った間取りをスマートフォンから登録建築家に作成してもらえるサービス。間取りを軸とした独自の注文住宅プラットフォームという。作成した間取りは、提携住宅会社での概算見積もりをサイト上から依頼可能。同じ間取りについて複数社から概算見積もりを取ることもできる。会員登録ユーザーは4万2000人、定型住宅会社は200社以上となっている。

2017年6月に設立されたスタジオアンビルトは、「日本でいちばん多くの建築デザインを届けるプラットフォームをつくる。」をビジョンに掲げる建築デザイン領域のスタートアップ。madreeのほか、建築設計の仕事をオンラインで全国の建築系デザイナー・エンジニアに依頼できる設計事務所や工務店向けサービス「STUDIO UNBUILT」(スタジオアンビルト)も運営している。7000名を超える建築設計関連の専門家が利用しているという。

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

ウェブ制作や動画制作を相談できるB2Bマッチングのユーティルが2.4億円のシリーズA調達、開発・運営体制を強化

企業のDX支援プラットフォームを展開するユーティルは10月14日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億4000万円の資金調達を発表した。引受先は日本ベンチャーキャピタル、コロプラネクスト、グリーベンチャーズ、岡三キャピタルパートナーズ、サイバーエージェント・キャピタル、basepartners 有限責任事業組合。

今回調達した資金により、事業拡大へ向け開発・運営体制の強化を図るとしている。また、AIやIoTなど取扱商材を拡大し、DXを併走するコンシェルジュとしてデジタル領域全体をカバーする相談カウンターサービスを提供する。

ユーティルは、「デジタル化をもっと簡単に」をミッションとして2015年4月に設立。企業のDX担当者向けにウェブ制作に関する相談カウンター「Web幹事」、動画制作に関する相談窓口「動画幹事」、システム・アプリ開発の「システム幹事」などを運営している。

旗艦サービスである「Web幹事」では、ウェブ制作の専門家が顧客に合った制作会社を無料でアドバイス。失敗しない制作会社選びを1つの窓口で行えるよう、専門家とともに5000社以上の制作会社データベースから比較検討できるという。

データ資産管理支援SaaS開発運営・コンサルティングのMinittが6000万円のシード調達、開発部門・組織体制・マーケ強化

データ資産管理支援SaaS開発運営・コンサルティングのMinittが6000万円のシード調達、開発部門・組織体制・マーケ強化

データ資産管理をサポートするSaaS型クラウドサービスの開発・運営、およびコンサルティングを手がけるMinitt(ミニット)は10月14日、シードラウンドにおいて6000万円の資金調達を発表した。引受先は、Headline Asia(旧Infinity Ventures)が運営するLAUNCHPAD FUND、マネックスベンチャーズ、ビジョナルが運営するBizReach 創業者ファンド。調達した資金は、開発をはじめとする組織体制の強化、マーケティング活動にあてられる。

昨今、センシティブな情報の取り扱いについて慎重さが求められる一方で、データベースに存在するそれら情報を適切に管理・運用する余裕が企業になくなってきているという。また同社は、DXを推進する大手企業や顧客のセンシティブ情報を扱う企業の多くは、データを安全・柔軟・容易に引き出す仕組みを構築できずにおり、ビジネスを素早く拡張するための大きな阻害要因となっているとしている。

「プライバシー情報を持たずに活かせる未来を創る」をミッションに掲げるMinittは、企業が持つ顧客のセンシティブ情報などの適切な管理・取り扱いについて、運用面でサポート。情報取り扱いの責任とプレッシャーや硬直化した業務フローから現場を解放し、企業がビジネスの本質的な価値提供に集中できるプロダクトの開発を進めているという。

同事業領域は、今後日本でも大きなマーケットとなることを見据え、企業が抱える課題の解決に向けたプロダクト開発と事業展開を加速させたいとしている。

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズが総額約11.5億円のシリーズC調達、事業拡大・展開の加速に向け組織体制・採用など強化

小売業界のDXを推進するフェズは10月13日、シリーズCラウンドの第三者割当増資および既存取引銀行などからの融資により総額約11億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのニッセイ・キャピタル(既存投資家)、またIncubate Fund US, L.P.、SHIFT、MTG Ventures、フォースタートアップスキャピタル。今回の資金調達は、既存投資家に加え、事業シナジーが見込める新規投資家からの調達という。調達した資金は、事業拡大および事業展開の加速に向け、組織体制・採用強化などに活用する予定。

2015年12月設立のフェズは、「小売業界の変革パートナー」として、小売・メーカー両社の売上が向上するよう、データを基に「両社の売上アップに繋がるマーケティングを支援するOMOプラットフォーム事業」と「売上が伸びる店頭づくりを目指す小売DX事業」を展開するリテールテック企業。

現在、ドラッグストアチェーンを中心とした複数小売事業者とパートナーシップを組み、約8000万以上(2021年6月時点)の消費者IDと連携しており、各小売事業者の許諾を得た際に利用が可能となっているという。

さらに、小売事業者の売場計画や店頭実現率、販売実績や施策効果など、すべてをデータで可視化できるプラットフォームを構築し、小売事業者の売上アップ、業務効率化に貢献する事業も2021年より展開。データを基に、実店舗で売上が伸びるファクトを解明するだけでなく、同プラットフォームが小売事業者本部で練られるMD戦略や各商談などの基本インフラとなることを目指すとしている。

動画で組織実行力を高めるマネジメント支援サービスClipLineが6億円調達、店長・ミドルマネジャー支援機能を強化

動画で組織実行力を高めるマネジメント支援サービス「ClipLine」が6億円調達、店長・ミドルマネジャー支援機能を強化

動画で組織実行力を高めるマネジメント支援サービス「ClipLine」(クリップライン)を提供するClipLineは10月13日、第三者割当増資による総額6億円の資金調達を発表した。引受先は、既存投資家のインキュベイトファンド、シンガポールのベンチャーキャピタルAxiom Asia Private Capital。累計調達額は21億円(資本性ローンを含む)となった。同社は、引き続きシリーズEエクステンションラウンドの実施を予定しているという。

調達した資金は、より経営に寄り添うサービスとしてClipLineを進化させるため、「店舗運営に必要な情報をスコア化するダッシュボード機能の実装」「店長・ミドルマネジャーの利用シーンに即したマルチデバイスの開発」など特に現場マネジメントの柱となる「店長・ミドルマネジャー支援」機能の強化に注力する。その他の使途としては、人材獲得による組織体制の強化を挙げている。

同社は、2014年10月より、動画とクラウドで多店舗展開ビジネスの生産性を改善するものとして、サービス産業に向けClipLineの提供を開始。2021年9月末時点で約1万5000店舗、40万人に利用されているという。

ClipLineにより、OJTを1対1ではなく、1対多人数へ拡張し、24時間どこでも新人が1人でトレーニングできる環境を構築でき、指導者の拘束時間を削減するとしている。またマネジメントをリモート化し、ミドルマネージャーの負荷削減を通じた販売管理費の抑制や、暗黙知の形式知化による店舗間での理念体現・ノウハウ共有などの実績もあるという。

自治体・企業向けEV導入支援・運用システムやEVカーシェアを提供するREXEVが約6.3億円のシリーズB調達

自治体・企業向けEV導入支援・運用システムやEVカーシェアを提供するREXEVが約6.3億円のシリーズB調達

自治体と企業に向けた電気自動車(EV)の導入支援・運用システムの提供や、EVカーシェアリング・サービスの「eemo」(イーモ)を展開するREXEV(レクシヴ)は10月13日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による約6億3000万円の資金調達を発表した。引受先は、ジャフコ グループ、芙蓉総合リース、住友三井オートサービス、三菱UFJキャピタル、北陸電力ビジネス・インベストメント(北陸電力)など。技術面・営業面において引受先各社との協力体制を強化する。

調達した資金は、電気設備や電力契約の最適化支援、大規模導入時における充電制御の高度化などの「自治体や企業のEV転換を支援するソリューションサービスの開発」、多数のEVの同時制御による大規模調整、蓄電池の周波数制御、電力のダイナミックプライシングへの対応といった「再生可能エネルギーの大量導入を支える、EVエネルギー・マネジメント技術の強化」、多様な移動ニーズに応えるための技術開発、非常時にEVを蓄電池や移動電源として活用するユースケース拡大などにあてられる。

レクシヴは、カーボン・ニュートラル社会の実現を目指し、EVの普及促進と車載バッテリーを活用した新たなエネルギー・マネジメントを推進する。拡大するEV市場において電力関連の課題にも着目し、EVの利便性の向上や有効な活用方法の提案、EV導入の拡大と再生可能エネルギーの普及拡大にも貢献したいという。

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けのセール&リースバックサービス「CASHARi」(カシャリ。Android版iOS版)を開発・運営するガレージバンクは10月13日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による1億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、既存投資家のW ventures、またマネックスベンチャーズ、山崎令二郎氏(起業家・エンジェル投資家)。累計資金調達額は約1億5000万円となった。調達した資金は運営体制の強化やCASHARのUX改善とサービス拡充にあてる予定。

CASHARiは、簡単な操作だけでファッションからデジタルまで幅広いアイテムの価値を査定し資金化すること、またその資金化したアイテムを使い続けることが可能なアプリ。一切の手続きがオンラインで完結するのも特徴。買取代金の受取りは、口座振込、口座登録不要のセブン銀行ATM受取を選択可能。サービス利用中はアイテムを手放す必要がなく、利用料を支払うことでアイテムを使い続けられる。リース期間は3カ月。リース終了後に残存価格を支払えば、ユーザーは売ったアイテムを再び買い戻すことができる。個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

個人向けセール&リースバック「CASHARi/カシャリ」のガレージバンクが1億円のプレシリーズA調達

2020年にオープンβを開始し、2021年8月にはユーザー数が1万人を突破した。2021年7月には、好きなタイミングでいつでも解約できる「中途解約機能」をリリース。事前チャージ不要のコンビニ後払い型決済サービス「こんど払い byGMO」といった新機能も導入している。

2020年1月設立のガレージバンクは、「モノの価値を、みんなの力に」をミッションとするスタートアップ。モノの価値を公正に評価し、その価値を即座に資金化する仕組みを整えることで、サーキュラー・エコノミーの実現と、信用情報に頼らない新たな個人向けファイナンスの実現を目指している。

 

リピート率59%アップ!電子カルテ軸の鍼灸プラットフォームで受療者、鍼灸院、見込み客それぞれの課題を解決

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 1の10月12日13時35分に行われたセッション「世界の人々の健康をサポートする鍼灸メーカーがSaaS事業を提供するに至るまで(真のDXとは何かについて)」をレポートする。

登壇したのは、鍼灸鍼をはじめ医療機器の開発・製造・販売を行ってきたセイリン ICTプロジェクトリーダー 菊地正博氏とAzureを使ったeコマース開発を得意とするシグマコンサルティング プロジェクトリーダー 木下浩之氏だ。

鍼灸業界の発展を阻む課題をプラットフォームで解決

「鍼灸業界の発展を支えるプラットフォーム」というサブタイトルで進められた当セッション。2020年9月に「鍼灸つながるカルテ」「はりのマイカルテ」をリリースした背景がセイリン菊地氏の口から語られた。

鍼灸治療を受ける人(受療率)は年間560万人で、国内人口の約5.6%。受療したことがあるもののリピートにつながらない人は約2000万人いる。

「肩こり 鍼」などで検索するような鍼灸に興味のある見込み客は約670万人、健康やボディケアに関心のある層は2400万人いるものの、実際に鍼灸治療を受けるに至っていなかった。

鍼灸業界の発展には、受療したもののリピーターになっていない人や見込み客をいかに呼び込むかが課題だが、それには、立ちはだかる負のスパイラルを断ち切る必要があるという。

負のスパイラルには、受療者、鍼灸院、見込み客、他業界の抱くイメージや体験などがある。

受療者側には「施術の効果を感じられない」「本音を言いづらい」「保険適用外で治療費が高い」というもの、鍼灸院側は「来てくれなくなった理由がわからない」「それゆえ施術や接客レベルを上げようがない」「サービス改善のモチベーションが上がらない」というもの、見込み客にとっては未経験ゆえ「怖い」「効果が不明」「マッチする鍼灸院を探せない」という負の感情が、医療施設や介護施設など他業界からは「鍼灸による成果のエビデンスがない」「信頼できる鍼灸師が少ない」「連携するメリットが見いだせない」ため紹介・連携できないという課題があった。

そこで、セイリンではそれらの課題を解決する最適解が電子カルテを軸とした鍼灸プラットフォームであると考えた。

単なる電子カルテであれば、すでにさまざまな医療機関で採用されているが、これは、施術側が治療を記録するためだけのものではない。治療内容とともに、日常生活で気をつけるべき点などのフィードバックを患者に提供し、鍼灸師は受療者からの満足度に関するフィードバックや相談を受けられるようになっている。これにより患者の満足度は上がり、鍼灸師もサービスや技術向上のモチベーションを上げられる。

さらに、患者の症状と施術内容を鍼灸データベースに蓄積することで、これから施術しようとしている鍼灸師には最適な施術のレコメンドを、医療施設や介護施設には鍼灸治療を使うことのメリットなどを含むエビデンスを提供可能になる。

患者から受け取った満足度評価や感じられた効果も蓄積され、その情報は4月1日にリリースした鍼灸院検索サイト「健康にはり with はりのマイカルテ」でいずれ検索可能になり、新規ユーザーが自分にマッチする鍼灸院を探すのに役立てられる。

つまり「鍼灸つながるプラットフォーム」のシステムを導入することで、これまで鍼灸業界の発展を阻害してきた負のスパイラルを断ち切れるというわけだ。

とはいえ、タッチポイントであるアプリの使い勝手が悪ければ鍼灸師も受療者も手間と感じてしまう。

鍼灸師が使う電子カルテ「鍼灸つながるカルテ」はPC、タブレット、スマートフォンのマルチデバイス対応なうえ、入力しやすさを確保しているという。

また、治療前後の変化、治療内容など、通常、自分のものであるのにアクセスできないカルテの内容を鍼灸院から患者へ患者側電子カルテ「はりのマイカルテ」を通じて共有することで、受療者が施術の効果を実感でき、通院のモチベーションを上げられるような仕組みを作っている。

さらに、通常であれば鍼灸院に到着後に記入する問診票の内容をアプリを通じて事前に伝える仕組みもあるため、現状を落ち着いて入力できるうえ、到着後の待ち時間が減るというメリットがある。鍼灸師にとっては、患者が来院する前に情報を得られるので、前もって施術準備を行える。

患者に記載してもらった情報も含めた電子カルテの情報は、ビッグデータという形で鍼灸データベースに蓄積するが、それは教科書にも記載されていない内容だ。師匠たちから受け継いできた「暗黙知」が、システムに入れるすべての鍼灸師に共有され「形式知」となることが、業界全体のメリットになる。

また、蓄積された情報はエビデンスとしても機能するため、鍼灸治療を選んでもらえるよう介護施設や医療施設に交渉できるようになるため、また見込み客の認知度が上がるため、新規受療者の増加も見込める。

リピート率アップについては、鍼灸院「ニイハオ鍼灸院」の導入事例が紹介された。「はりのマイカルテ」導入前後3カ月で比較したところ、アプリ利用患者50人の来院平均回数が2.09回から3.32回へ59%アップ。未利用患者43人の平均来院回数が1.66回から1.71回であったことを考えると、カルテ共有の効果が高かったことがうかがえる。

菊地氏は、4月にリリースした受療者向け鍼灸院検索サイト「健康にはり」内の情報を定期的にアップデートしていくことで「針灸初心者でも安心して治療を受けてもらえるようにしたい」という。

最後に「鍼灸つながるプラットフォームにより、鍼灸治療に関する知を次世代に伝えること、針灸業界の発展を支え、受療率5%を15%にアップさせることを行っていきたい」と今後の抱負を語った。

針灸業界の発展を支えるプラットフォームをさらに下から支える

シグマコンサルティングの木下氏は、同社がAzureを使ったeコマースの知見をどのように鍼灸つながるプラットフォームに活かしたかということについて解説した。

これまで、針灸業界には同様のサービスがなかったため、ニーズを聞き取りながらゼロベースで実装。Azureがあったからこそ、1年半という短期間で行えたことを強調した。

とはいえ、カルテ情報の取り扱いには高度な機密性が要求される。

ここで、シグマコンサルティングの知見が活きてくる。eコマースでは、クレジットカード情報など財産に関係する情報のやり取りが必要になる。シグマコンサルティングには、PCIDSS(Payment Card Industry Data Security Standard。クレジットカード業界のセキュリティ基準)といったセキュリティ事項に対応した実績あり。今回のプラットフォームのシステム構成にも、Azure AD B2Cの認証の仕組みを導入することで堅牢なシステムをすばやく構築した。

データベースにはSQLを利用することで拡張性を担保しつつ、SaaSビジネスで重要なランニング費用低減を図ったという。

これまで器具販売を中心に営業してきたセイリンがSaaSビジネスを成功させるための事業支援も行ってきた。その中にはセイリンだけでなく、導入する鍼灸院へのサポートも含まれる。

セイリンには、営業活動の目標値として「鍼灸院が同システムを導入することによって成功体験を得る」というものを設定した。そのうえで、営業活動を可視化し、営業プロセスを見直ししやすくして商談内容に一定の品質が保たれるようにした。

鍼灸院へは、プラットフォームを利用することで成功体験を得られるようカスタマーサクセスチームを立ち上げて対応した。カルテの電子化、受療者とのコミュニケーション促進、予約業務の効率化など、いくつかのポイントを押さえて支援。サクセスが明確化されたことで、KGI・KPIも明確になり、次なるカスタマーサクセスを実現するためにプロジェクトを改善する必要があり、その点でも支援したという。

「これらの支援により、組織は自走型へと変化する。シグマコンサルティングは、開発からビジネスの成功までをサポートしていける」と、木下氏は締めくくった。

オリンパスが米国での新たなサイバー攻撃を認める、ランサムウェア「BlackMatter」がEMEA地域のシステムを攻撃した数週間後に

日本の大手テクノロジー企業Olympus(オリンパス)は、先の週末にサイバー攻撃を受け、米国、カナダ、ラテンアメリカのITシステムを停止せざるを得なくなったことを認めた。

オリンパスはウェブサイト上の声明で「10月10日に検知されたサイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」であり「現在、この問題を解決するために最優先で取り組んでいます」と述べている。

関連記事:オリンパスがランサムウェア「BlackMatter」の攻撃を受ける

「調査と封じ込めの一環として、影響を受けたシステムを停止し、関連する外部パートナーに報告しています。現在の調査結果によると、この問題はアメリカ大陸に限定されており、他の地域への影響は確認されていません」。

「当社は、この状況について適切な第三者と協力しており、今後もお客様やビジネスパートナーに安全にサービスを提供するために必要なあらゆる手段を講じていきます。お客様やビジネスパートナーを保護し、当社への信頼を維持することは当社の最優先事項です。当社の調査は継続中であり、透明性の高い情報開示に努め、新たな情報が得られた場合には最新情報を提供していきます」。

これは、2021年9月にオリンパスが欧州・中東・アフリカのネットワークへのサイバー攻撃を受けて発表した声明とほぼ同じ内容だ。

攻撃を受けた当時、オリンパスは「サイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」とも述べている。この事件を知る人物がTechCrunchに語ったところによると、オリンパスはランサムウェアの攻撃から回復していたという。感染したシステムに残された身代金のメモは、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(ransomware-as-a-service)グループ「BlackMatter」にも関連していた。

Emsisoftのランサムウェア専門家で脅威アナリストであるBrett Callow(ブレットキャロウ)氏は、今回の事件が週末に発生したことを受けてギャングがランサムウェアを展開するのは休日を含むことが多いため、繰り返し攻撃を受ける可能性が高まるという。「ランサムウェアだとしても、それがまたBlackMatterであるかどうかはわかりません。また、もしランサムウェアだとしたら、それがBlackMatterであるかどうかはわかりませんが、その可能性もありますし、EMEA地域への攻撃を行った組織が、今回は別のランサムウェアを使用した可能性もあります」。

オリンパスの広報担当者であるSusan Scerbo(スーザン・セルボ)氏からは、コメントを得られていない。オリンパスのセキュリティ事件についての詳細がわかり次第、更新する。

画像クレジット:Filip Radwanski / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Katsuyuki Yasui)