米宇宙軍がベンチャーキャピタル「Embedded Ventures」と提携し新たな研究開発プロジェクトを設立

かつて宇宙産業を支配していたのは、米国政府だった。米国政府で、いくつもの事業を限られた数の巨大航空宇宙企業に外注し、その技術を長期にわたる中央集権プログラムで利用してきた。爆発的な技術革新と一部にはベンチャーキャピタルと未公開株式のおかげで、米国政府は数ある顧客の1つとなった。しかし、そのままでいるつもりはない。

そのために、米国宇宙軍(USSF)のSpaceWERXオフィスは、設立11カ月のベンチャーキャピタル、Embedded Ventures(エンベデッド・ベンチャーズ)と提携し、国内の宇宙経済を発展させるとともに、国の利益を守るために利用できる研究開発機会の創出を目指す。

これはUSSFが共同研究開発契約(CRADA)と呼ばれるこの種の研究開発契約を、ベンチャーキャピタルと結んだ初めてのケースだ。また、米国政府がベンチャーキャピタルの慣行と資金調達モデルの利点を活かそうとする兆候の1つでもある。

元々CRADAは米国防総省(DOD)と、政府との協業を望むスタートアップとの間で利用されていた。このファンドに事業パートナーとして最近参加したMandy Vaughn(マンディー・ヴォーン)氏が、CRADAを推進するためのアイデアを提案した、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jenna Bryant(ジェナ・ブライアント)氏は言った。Embedded VenturesとWalter McMillan(ウォルター・マクミラン)中佐ら政府関係者との間で数回電話が交わされ「その後はご存知のとおりです」とブライアント氏は言った。

ベンチャーキャピタルにもDODにとってもこれまでに逃したチャンスはたくさんあったので、この5年契約の提携は少しでもその痛みを和らげるものになるだろう、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jordan Noone(ジョーダン・ヌーン)氏がTechCrunchに語った。例えばベンチャーキャピタルは公共機関よりもずっとすばやく動くことができる。さらにVCは、防衛に利益をもたらす新たな新興技術の動向を察知する能力をもっている。

スタートアップもこの提携の恩恵を受けることができる。多くの若い企業にとって、米国政府と仕事をするためには、長い契約期間や厳しき規制されたプロセスなど複雑で威嚇的なプロセスがともなう。その多くは教育に行き着く。スタートアップは戦略的決断を下し、政府との契約に適合するように準備を進める。VCの支援が生かされるのはそこだ。

「このように軍民双方にとっての好機を支援することに対して、ベンチャーキャピタルコミュニティ反応は決して良いものではありません」とヌーン氏はいう。しかしそうした機会は、契約申請の障壁を越える意志を持つ会社にとって利益が大きい。

Embeddedにとって、一企業に賭ける可能性は、向こう側に米国政府という巨大な顧客がいる可能性がある場合の方がずっと高い。加えて、今後20年間主役を演じられる宇宙テクノロジーには、官民連携が必要になる可能性が高い、とヌーン氏はいう。SpaceXが、部分的に、NASAの投資によって種をまかれたのと似ている。

「ベンチャーキャピタル・コミュニティにエコシステムが出来上がり、そこで冷戦のさなかにシリコンバレーが誕生してテクノロジーを生み出してきました。それが今は誰もが消費者向けアプリばかり作っています」とヌーン氏はいう。「その間何が起きたのか、どうすればシリコンバレーが国家安全保障に関われるように舵を取り直せるのでしょう」。

EmbeddedとUSSFは定期的に顔を合わせて進捗について話し合い、その中で基準を設定する。これはCRADAプログラム下の新しいタイプの提携で、両者間に金銭の授受がないため、目標の一部は成功する提携はどのようなものかを定義して、将来再現できるようにすることにある。両社が共同投資する必要はないものの、協業の結果の1つがそうなる可能性はある、とEmbeddedの広報担当者は語る。

「業界の人たちはいつも、『みんなが一緒に働き、ベンチャーのペースで動くにはどうすればいいか』と話していますが、実際にやっている人はいません」とブライアント氏は付け加えた。「今すぐ何か行動することが私にとって重要なのです」

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米宇宙軍からBlue Origin、ULA、Rocket Lab、SpaceXの4社が次世代ロケット開発に関わる契約を獲得

2019年12月に空軍から軍種としてスピンアウトした米国宇宙軍は、次世代ロケットエンジンの試験や上段の改良に関するプロジェクトに向けて、次の契約を勝ち取った企業を発表した。

この契約は、宇宙軍の宇宙システム司令部が管理する「Space Enterprise Consortium(SpEC、スペース・エンタープライズ・コンソーシアム)」プログラムによって選定された企業に付与されるものだ。SpECは、米国防総省と宇宙産業の連携を促進し、約600社の参加企業が契約を競い合っている。今回の契約は総額8750万ドル(約97億5000万円)で、以下の4社のロケット打ち上げ企業が獲得した。

  • Blue Origin(ブルーオリジン)は、大型ロケット「New Glenn(ニューグレン)」上段用の極低温流体管理技術開発のために2430万ドル(約27億円)を獲得
  • United Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、新型「Vulcan Centaur(バルカン・ケンタウルス)」2段式大型ロケットのアップリンク・コマンド&コントロールのために2430万ドルを獲得
  • Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社史上最高額となる2430万ドルの契約を獲得。この資金は、同社の次期中型ロケット「Neutron(ニュートロン)」の上段の開発に充てられる
  • SpaceX(スペースX)は「Raptor(ラプター)」ロケットエンジンの燃焼安定性分析および試験のために1440万ドル(約16億円)を獲得

SpaceXとULAは、宇宙軍の国家安全保障宇宙打ち上げプログラムのもと、米国政府のための打ち上げ業者としてすでに選定されている。Rocket LabとBlue Originの両社は、2024年に次回の打ち上げ契約を競うことになるだろう。今回の契約は、両社が入札に向けて準備を進めていることを窺わせるものだ。なお、Blue OriginとNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、2020年にSpaceXとULAに敗れている。

今回の契約獲得について、Rocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)CEOは、Neutronロケットに対する「信頼の証」であると声明で述べている。「私たちはElectron(エレクトロン)で信頼のおける打ち上げシステムを構築してきましたが、ニュートロンでも同じことを行い、より打ち上げ能力の大きな新型ロケットで、引き続き自由な宇宙へのアクセスを提供して参ります」。

画像クレジット:Aubrey Gemignani/NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国防総省が小型宇宙船向け原子力推進システムを模索

米国防総省(DoD)の地球外への野望が少し見えてきた。SpaceNews(スペースニューズ)によると、同省は中小規模の宇宙船を想定した民間による原子力推進システムの募集を開始した。DoDは地球軌道外探査ミッションの遂行を目指しており、既存の電動あるいは太陽光宇宙船はこの役割にも小型の船体にも向いていない、と同省の国防イノベーションユニットは語っている。

原子力推進システムは、理想的な「高デルタV」(約10 m/秒)を実現しながら、乾燥重量2000 kg以下の小型化が可能だ。ペイロードに電力を供給するだけでなく、影になっているときに宇宙船を温かく保ち、地上や他の部品への放射線を最小限に抑えることを期待されている。応募の締め切りは9月23日で、契約は最短で60~90日以内に行われる予定だ。

当局はこの要請が便宜的なものであることを認めている。NASAをはじめとする各機関はすでに原子力宇宙船の開発や支援を行っているが、完成はかなり先だ。DoDはプロトタイプを3~5年以内に欲しがっている。このテクノロジーは、短期プロジェクトのために比較的速く原子力推進を実現する暫定策としての意味をもっている。

今回の募集はどんな宇宙船が進行中なのか何もヒントを与えていないが、小型宇宙船に焦点を絞っていることは、控えめな目標の探査機や人工衛星が関与する可能性を示唆している。この強力な有人宇宙旅行で火星に行くことはないだろう。それでも、DoDが現存の宇宙船エンジンの制限に不満で、より強力な設計への早道を求めていることは明らかだ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏はEngadgetのウィークエンドエディター。

画像クレジット:NASA

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

気候変動で米国は安全保障のあり方が再定義される、書評「All Hell Breaking Loose」

今日の気候変動のポリティクスにおける亀裂の中で最も不幸な分断の1つが環境活動家と国家安全保障に関わる人々との連携の欠如だ。左翼系の環境活動家は右よりの軍事戦略家と付き合わず、前者は後者を破壊的で反エコロジカルな略奪者とみなしているし、後者は人々の安全保障よりも木やイルカを優先する非現実的な厄介者とみなしていることが少なくない。

しかし、気候変動により、両者はこれまで以上に緊密に連携することを余儀なくされている。

名誉教授で数多くの著作を持つMichael T. Klare(マイケル・T・クレア)氏は、自著「All Hell Breaking Loose(大混乱:気候変動に対するペンタゴンの視点)」の中で、過去20年間で気候変動がどのように米国の安全保障環境を形作ってきたかについて、ペンダゴンの戦略アセスメントに対するメタアセスメントを行っている。本書は、謹直で繰り返しが多いがいかめしいわけではない。そして防衛に携わる人々が今日最も厄介な世界的課題にどのように対処しているかについて、目を見張るような見方を提供してくれる。

気候変動は、国防の専門家でなければ気が付かないようなかたちで、実質的にあらゆる分野で安全保障環境を弱体化させている。米海軍の場合、沿岸から工廠や港へアクセスするわけだが、海面の上昇は任務遂行力を減退させたり時には破壊する脅威である。そのよい例がハリケーンが米海軍施設の最大の中心地の1つであるバージニアを襲った時であった。

画像クレジット:Metropolitan Books/Macmillan

米国の軍隊は、米国内のみならず世界中に何百もの基地を持っている。その意味で、戦闘部隊であると同時に大家のようなものでもある。これは当たり前のことだが繰り返していう価値がある。こうした施設のほとんどが、任務の遂行に影響を及ぼしかねない気候変動による問題に直面しており、施設の強化にかかる費用は数百億ドル(数兆円)、あるいはそれ以上に達する可能性がある。

これに加えて、エネルギーの問題もある。ペンタゴンは世界でも有数のエネルギー消費者であり、基地向けの電気や飛行機の燃料、船舶用のエネルギーを世界規模で必要としている。これらを調達する任にあたっている担当官にとって気がかりなのは、その費用もさることながら、それが入手できるのか、という点だろう。彼らは最も混乱した状況であっても信用できる燃料オプションを確保する必要があるのだ。石油の輸送オプションがさまざまな混乱にみまわれる可能性があるなか(暴風雨からスエズ運河での船舶の座礁まで)、優先順位を記したリストは気候変動のために曖昧になりつつある。

ペンタゴンの使命と環境活動家の利益が、完璧ではないにしても、強く一致するのはこの点である。クレア氏はペンタゴンが、戦闘部隊の任務遂行力を確保するためにバイオ燃料、分散型グリッドテクノロジー、バッテリーなどの分野に投資している様子を例として示している。ペンタゴンの予算を見て批評家は嘲笑うかもしれないが、ペンタゴンは、より信頼できるエネルギーを確保するため、いわゆる「グリーンプレミアム」を支払っている。これは他の機関では現実的には支払いが難しいような額であり、ペンタゴンは特殊な立場にあると言える。

両者の政治的な協調は、それぞれの理由は大きく異なるものの、人道的対応ということでも続いている。ペンタゴンの責任者が地球温暖化で懸念していることの1つは、この機関が中国、ロシア、イラン、その他の長年の敵対者からの保護といった最優先の任務ではなく人道的危機への対応へとますます足を取られて行くことである。ペンタゴンは、災害の起こった地域に何千という人数を派遣できる設備と後方支援のノウハウを持っている唯一の米国の機関として頼りにされている。ペンタゴンにとって難しいのは、軍隊は人道支援の訓練ではなく戦闘訓練を受けた存在であることだ。ISIS-Kを攻撃するスキルと、気候変動で難民となった人々のキャンプを管理するスキルとはまったく異なるのである。

気候変動活動家は、気候変動により何百万という人々が飢饉と灼熱から逃れるために難民となることがないよう、安定した公平な世界のために戦っている。ペンタゴンも同様にその中核的任務以外の任務に足を取られることのないよう、不安定な国家にテコ入れしたいと考えている。両者は異なる言語を話し、異なる動機を持っているものの、目指すところはほぼ同じなのである。

気候変動と国家安全保障との関係で最も興味深いのは、世界の戦略地図がどのように変化するかである。氷がとけ、北極海航路がほぼ1年を通して航行できるようになった今( そしてまもなく1年中航行できるようになる)、主な勝者はロシアであるが、クレア氏はペンタゴンが北極圏をどのように安定させるかについて的確な説明をしている。米国は、戦闘部隊に対し北極圏での任務の遂行と、この領域での不測の事態に備えるための訓練を初めて実施した。

クレア氏の本は読みやすく、そのテーマは大変興味深いが、どう想像力を膨らませても、見事に書かれた文章とは言えない。同書はまさにドラマ「Eリング」に出てくる防衛計画専門家チームによって書かれたかのようであり、筆者はそれをメタアセスメントと呼んでいる。これはシンクタンクがまとめた数百ページにおよぶ論文であり、これを読了するには、スタミナが必要である。

厳しい見方をすると、本書のリサーチと主な引用はペンタゴンのアセスメントレポート、議会証言、および新聞などの二次的レポートを中心になされており、当事者による直接的なインタビューはわずかであるかまったくないのであって、これは現代の米国の言説における気候変動の政治的な性質を考えると、大きな問題である。クレア氏は確かに政治を注意深く観察しているだろう。しかし将軍や国防長官が政府の報告書として公的にサインをする必要がない場合に、彼らがどのような発言をするかを私たちは知ることができない。これは大きな隔たりであり、本書を読むことで読者がどれほどペンタゴンの真意をつかめるのかは疑問である。

そうはいっても、本書は重要な位置付けを持つ本であり、国家安全保障に関わるコミュニティもまた、その利益を保護しつつではあるが、気候変動における変化を導く重要な先駆者でありうる、ということを思い出させてくれる。活動家と軍事戦略家は敵意を捨ててもう少し頻繁に話し合うべきである。同盟を結ぶ意義はあるのだから。

2021年夏に発表された気候変動に関する本

画像クレジット:Sergei Malgavko / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

インテルと米国防総省が米国内のチップ製造エコシステムを支援する契約を締結

Intel(インテル)は、米国防総省と米国内の商用チップ製造エコシステムを支援する契約を締結した。このチップメーカーは、米国内における半導体サプライチェーンを強化することを目的とした「RAMP-C(Rapid Assured Microelectronics Prototypes – Commercial)」と呼ばれるプログラムの第一段階を主導する。

このプログラムを主導することになるのは、インテルが最近起ち上げたIntel Foundry Services(インテル・ファウンドリー・サービス)部門だ。

RAMP-Cの一環として、インテルはIBM、Cadence(ケイデンス)、Synopsys(シノプシス)などの企業と提携し、国内の商用ファウンドリーエコシステムを構築する。インテルによれば、このプログラムは、国防総省のシステムで必要とされるカスタム集積回路や、商用製品を作るためのものだという。

「RAMP-Cプログラムにより、商用ファウンドリーの顧客と国防総省の両方が、インテルの最先端プロセス技術への多額の投資を活用できるようになります」と、インテル ファウンドリー・サービスのRandhir Thakur(ランディール・タクール)社長は声明で述べている。「当社の顧客や、IBM、ケイデンス、シノプシスなどのエコシステム・パートナーとともに、私たちは国内の半導体サプライチェーンを強化し、米国が研究開発と高度製造業の両面で、リーダーシップを維持できるよう支援していきます」。

インテルは最近、約200億ドル(約2兆2000億円)を投じてアリゾナ州に2つの新工場を建設する計画を発表した。その目的は、同社が米国内におけるファウンドリー顧客の主要な供給者となることだ。同社はこれらの新工場が、製品の需要拡大を支えることになると述べている。

国防総省とインテルの提携が発表されたのは、新型コロナウイルス流行とその世界的なサプライチェーンへの影響などにより、世界的な半導体不足が続いている中でのことだ。インテルは、他のハイテク企業や自動車メーカーとともに、この問題の解決策についてホワイトハウスと継続的に協議している。インテルのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)CEOは2021年7月に、Biden(バイデン)政権の高官と会い、チップ工場の増設計画について話し合い、補助金の獲得を訴えた。

関連記事:Google、Intel、Dell、GMなどテックと自動車業界のCEOたちが世界的なチップ供給不足問題で米政府と討議

ゲルシンガー氏は、今回のRAMP-Cに関する声明の中で「2020年で学んだ最も重要な教訓の1つは、半導体の戦略的重要性と、米国にとって強力な国内半導体産業を持つことの価値です」と述べている。

「2021年初めにインテル・ファウンドリー・サービスを起ち上げたとき、米国政府を含むより多くのパートナーに当社の能力を提供する機会が得られることを、私たちは大変喜びました。RAMP-Cのようなプログラムを通じて、その可能性を実現できるのが非常に楽しみです」と、ゲルシンガー氏は続けた。

1月にCEOに就任したゲルシンガー氏は、このチップメーカーの経営を立て直し、チップの製造と販売に関する新しい戦略を追求することを目指している。数カ月前、インテルはチップ製造業者のGlobalFoundries(グローバルファウンドリーズ)を300億ドル(約3兆3000億円)で買収する交渉を行っていると噂されたが、今のところ、その方面に関するニュースはない。

関連記事:Intelが3.3兆円でチップメーカーGlobalFoundries買収を交渉中との噂画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【コラム】シリコンバレーは軍事業務に対する偏見と戦うべきだ

編集部注:本稿の執筆者Phil Wagner(フィル・ワグナー)博士はSparta Scienceのファウンダー。南カリフォルニア大学で医学学位を取得した後、同氏はスポーツや軍隊、労働衛生の実績と傷害予防における根拠に基づく方法の欠如に不満を感じ、Sparta Scienceを設立する動機となった。

ーーー

職場での政治的議論は、2000年代初めに私がLAC+USC Medical Center(ロサンゼルス郡+南カリフォルニア大学医療センター)で訓練を受けていたころには推奨されていなかった。

13階の囚人病棟で、我々は職務上の義務として飲酒運転犯や窃盗犯を他の患者と同じように治療し、彼らの立場に関する刑事司法政策に関する意見を述べた。

その意味で医療が特別というわけではない。我々の生活は法律家、軍人、その他の公共サービス提供者が、個人の意見よりも社会的義務を優先することによっていっそう向上する。

テック企業はしばしば同様の社会的に重要な役割を果たすことを目指すが、職務上の義務と個人の意見の区別を会得する者は稀だ。私はテック企業のファウンダーとして、アマチュアから大学、プロにいたるスポーツや労働衛生、さらには増え続ける軍事機構の人員など幅広い組織にサービスを提供するテック企業をこの目で見てきた。

前政権下では、軍の仕事をすることは世界を良くする力になるという会社のミッションと一致しているのか、という疑問を何人かの同僚が投げかけた。過去数年間、軍事業務に対するこの偏見はいくつかのシリコンバレー大手企業を混乱に陥れ、時には契約の解除や不更新の誓約や米軍に関わる作業に対する明白な抑制効果を引き起こした。

テクノロジー企業と軍との協力関係は新しくないが、今ほど多くの議論を呼んだのは稀である。こうした協力は20世紀を通じて標準的な慣行であり、そこから生まれたマイクロ波レーダーやGPS、ARPANETなどの軍事技術は、現代のつながった世界の構成要素として平時との二役をこなしている。

軍事契約はシリコンバレーにおいて、伝統的に国の軍事的優位と企業の収益というウィンウィンの関係と見られてきた。連邦政府の財源に支えられた壮大で実現困難な計画の数々は、プロダクト志向の技術者にとって魅力的選択肢の1つでもある。

この関係が過去数年間崩れつつあり、Microsoft(マイクロソフト)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)をはじめとする企業の従業員たちは、前政権の政策に対する強い嫌悪のためにあらゆる政府プロジェクトと距離を起こうとしている。しかし、ワシントンに新しい指導者を迎えた今、企業とテックワーカーは、軍事業務に対するその認識が永久に植え付けられるものなのか、それとも変化を続ける関係の中の1章に限定されるものなのかを決める必要がある。

先へ進む前に、従業員と軍部間の緊張関係に関する前政権の誤認識を修正しておくべきだろう。最近ある研究が、反軍隊思想はテックワーカーの普遍的特質であるという概念に疑問を投げかけた。

2019年終わりから2020年初頭にかけて実施された調査でジョージタウン大学のセキュリティ新興テクノロジーセンターは、AI専門家の中でペンタゴンとの仕事を否定的に見ているのは1/4以下であり、78%は肯定的あるいは中立的であるという結果を得た。

国防総省との業務機会を追求する用意のある企業は、商業顧客と政府顧客との違いと優位性をよく考えるべきだ。

政府の契約は一般的に、多大な金額と低い利益幅と長い業務期間が特徴だ。これは、売上に基づいて評価されるVC支援企業にアピールし、政府契約独特の構造は、利益は大きいが変動の大きいB2BおよびB2C市場の仕事にとって歓迎される補完要素だ。両極端を混ぜ合わせることで強力な全体が生まれるが、それは株式と債権のバランスを取る投資信託とあまり変わらない

多くのファウンダーが、国防総省(DOD)との契約を追求しないのは、軍事ビジネスに従事していると見られたくないからだ。私はSparta Science(スパルタ・サイエンス)でその一例に遭遇した。社員たちは政府のあらゆる政策の全面支持を受けた政府職員を支援する業務に参加した。

現実はもっと微妙だ。DODは5000億ドル(約54億6980万円)以上の年間予算と280万人の労働力を有する。戦闘に関わっている個人はそのごくわずかであり、組織は多数の管理者と専門家に支えられてそれぞれのミッションを遂行している。

DODでは常時1300万件契約が進行中であり、その分野は医療、アパレル、物流からソフトウェアライセンシングまで多岐にわたる。軍はまさしく米国の断面であり、そこで働く人々を支援することはシリコンバレーの伝統であり、公正なビジネス手法であり、正しい行動である。

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カテゴリー:その他
タグ:コラム軍事ペンタゴン

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(文:Phil Wagner、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

米国防総省がセンサー・AI・クラウドを組み合わせ「数日先の異変を察知」する未来予知システム「GIDE」開発中

icholakov via Getty Images

アメリカ合衆国統合軍のひとつ、アメリカ北方軍(NORTHCOM)は、Global Information Dominance Experiments(GIDE)と呼ばれるセンサー、AI、クラウドコンピューティングを組み合わせた「未来予測システム」を開発し情報面と意思決定面での優位性を獲得しようとしています。すでに3度目の実験を行っており、司令官いわく「11の戦闘司令部すべてが同じ情報空間で同じ能力を使って協力」して実施したとのこと。

NORTHCOM司令部および北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)の司令官グレン・ヴァンヘルク空軍大将によると、このシステムは膨大なデータセットパターン、異常状態、トレンドデータを評価分析して、国防総省に「数日先を見通す能力」を提供することを目指しています。

わかりやすくいえば、映画『マイノリティ・リポート』でピタピタスーツを着て水浸しになっている予知能力者の役割を、AI技術で実現しようとしているわけですが、GIDEは決して10年単位の未来の話ではなく、すぐに利用できるツールの組み合わせで、リアクティブ(反応的)な情報収集からプロアクティブ(積極的)な情報収集環境を構築しているとのこと。

しかも、このシステムは数分とか数時間単位ではなく、数日単位で情勢を把握できるようなるとされています。たとえば何らかの社会的軍事的異変が起こるとして、それが数分後や数時間後なら、軍として対処するにも時間が少なすぎます。しかしもしそれが数日前にわかるのならしっかりと意思決定や戦略を練る余裕もでき、作戦指揮官たるヴァンヘルク大将にとっても部隊配置や大統領を含め各機関のトップと意思統一をはかることができ、大きな”備え”となるはずです。

GIDEシステムは収集する情報として、たとえばある場所に駐車する自動車の数が突然増えただとか、基地に飛行機が集中しはじめたといった、平時とは異なる手がかり、を予測の材料とします。しかしこのシステムだけで「明日どこそこで事件が起こるから」といった具体的な情報がわかるわけではなく、依然として多くの人々が情報を元に頭を使って手立てを考え、実際に動いて備えを講じる必要があります。それでも、テロのような奇襲攻撃を事前に察知できるようになれば、交渉によって戦いを避ける道も探れるかもしれません。それは、非常に価値あるシステムであるはずです。

(Source:U.S.DoD。Via The DriveEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:安全保障(用語)AI / 人工知能(用語)クラウドコンピューティング(用語)軍事(用語)センサー(用語)テロ / テロリズム(用語)米国防総省 / ペンタゴン(組織)

1兆円超規模の米国防総省JEDIクラウド契約を最終的に破綻させたのは単一ベンダー要件

米国防総省がJEDIのクラウドプログラムを中止したことで、見込みがないように思われていたプロジェクトの長く険しい道のりが終わりを告げた。問題は、結局うまくいかなかったのはなぜかということだ。最終的には、国防総省が単一ベンダー要件に固執していることがその原因として指摘できると思う。その条件は、誰にとっても意味をなさないものであり、表面上は契約を勝ち取ったベンダーでさえもそうである。

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国防総省は2018年3月、次世代のクラウドインフラストラクチャを構築するための100億ドル(約1兆1000億円)規模の10年にわたるクラウド契約発表した。別名「Joint Enterprise Defense Infrastructure」、略称は「JEDI(ジェダイ)」である。スター・ウォーズを思わせる呼称はさておいておこう。

このアイデアは、単一ベンダーとの10年間の契約で、2年間のオプションで開始するものだった。すべてが順調に進めば、5年のオプションが行使され、最終的に3年のオプションで契約はクローズする。年間利益は10億ドル(約1100億円)が見込まれていた。

契約が完了した時点での総額はかなり大きいが、AmazonやOracle、Microsoftのような規模の企業にとって、年間10億ドルは大した金額ではない。その意義は、このような知名度の高い契約を獲得したことの威信と、それが販売を誇示する権利にどのような意味をもたらすかということにあった。つまるところ、国防総省の審査に合格すれば、おそらくほぼあらゆる人の機密データを扱えることになるだろうということだ。

いずれにせよ、単一ベンダー契約のアイデアは、クラウドがクラス最高のベンダーたちと協働するオプションを与えてくれるという一般通念に反するものだった。この不運な契約の最終的な勝者であるMicrosoftは、2018年4月のインタビューで、単一ベンダーのアプローチには欠陥があることを認めている。

Microsoftの防衛事業を統括するLeigh Madden(リー・マデン)氏は、Microsoftがそうした契約を勝ち取ることができると確信しているが、それは必ずしも国防総省にとって最善のアプローチではないとTechCrunchに対して語っていた。「国防総省が単一ベンダーだけを採用する道を行くのなら、私たちは勝つために参加します。しかしそうは言いいながらも、それは私たちが世界で見ているような、80%のお客様がマルチクラウドソリューションを採用している動きとは、対照的なものなのです」。

おそらくそうした要因により、最初から絶望的だったのだろう。その上、要件が完全に明らかになる前から、クラウドインフラストラクチャ市場シェアをリードするAmazonを優遇しているという不満の声が上がっていた。Oracleは特に声高に主張しており、RFPが公表される前から、前大統領に直接訴えていた。同社はその後、米政府説明責任局(Government Accountability Office)に苦情を申し立て、このプロセス全体が不公正で、Amazonに有利になるように設計されていたとして複数の訴訟を起こした。しかし、彼らの苦情はその都度却下された。そしてご存知の通り、結局はAmazonが勝者とはならなかった。

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その過程において多くのドラマが展開される中、2019年4月に国防総省はファイナリストとして2社を指名した。そしておそらく、その2社がクラウドインフラストラクチャ市場のリーダーであるMicrosoftとAmazonであったことはそれほど驚くことではなかっただろう。ゲームが開始された。

前大統領の直接の介入もあった。同年の8月に、前大統領は国防長官に対し、本プロセスがAmazonに有利であるとの懸念を挙げて、事案を再検討するよう命じた。これに対しては、国防総省、会計検査院、裁判所から数度にわたって反論がなされている。また、元国防長官Jim Mattis(ジム・マティス)氏は自身の著書で、同氏が前大統領から「100億ドルの契約からAmazonを締め出せ」と命じられたことを明らかにしており、問題をさらに複雑にしている。前大統領の目的は、ワシントンポスト紙のオーナーでもあるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏に仕返しすることにあるように思われた。

プロセスにおけるAmazonの優位性についてのこうした主張をよそに、2019年10月の金曜日の午後遅くに勝者が発表され、勝利を得たのは実際にはAmazonではなかった。その代わり、Microsoftが契約を勝ち取った。あるいは少なくともそのように思われた。そしてAmazonが法廷でこの決定に異議を唱えるのもそう遠くないだろうと見られていた。

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AWSの前CEOのAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は、AWSのre:Inventの発表から数カ月後には、大統領がこのプロセスに不当な影響を与えたという考えを表明していた。

「政治的な干渉を受ける事態に陥ってしまったようです。ある会社に対する軽蔑を公にしている現職の大統領と、その会社のリーダーがいる状況では、国防総省を含む政府機関が報復を恐れずに客観的な決定を下すことが非常に難しくなるでしょう」とジャシー氏は当時語っている。

そして訴訟が起こされた。同社は2019年11月に、技術的なメリットではなく政治的な動機によるものだとして、Microsoftを選択する決定に不服を申し立てる意向を示した。そして2020年1月、Amazonは訴訟が解決するまでプロジェクトを停止するよう裁判所に要請した。翌2月、連邦判事はAmazonの主張に同意し、プロジェクトの停止を命じた。プロジェクトが再始動することはないだろうと思われた。

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国防総省は同年4月に、契約調達プロセスに関する内部調査を完了し、不正行為は確認されなかったと結論付けた。当時筆者は次のように書いている。

100億ドルの長期にわたるJEDI契約は当初から論争の的になっていた。国防総省の監察総監室による本日付の報告書には、若干の落ち着かない状況や潜在的な確執がありながらも、全体的な契約調達プロセスは公正かつ合法的なものであり、パブリックコメントが行われたものの、大統領の言動はプロセスに不当な影響を与えなかったと記されている。

2020年9月、国防総省は選定プロセスのレビューを終え、Microsoftが勝者であると再び結論付けたが、訴訟はまだ進行中であり、プロジェクトは停滞したままであったため、それほど重要な意味を持たなかった。

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法的な論争は2021年に入っても続いていた。そして国防総省は先日、「2018年にJEDIのビジョンを発表して以降、状況は変化しており、先に進む時期に来ている」と述べ、ついにこのプロジェクトを白紙に戻した。

国防総省は最終的に、単一ベンダーアプローチは最善の方法ではないという結論に達した。プロジェクトを軌道に乗せることができなかったからではなく、複数のベンダーと協力し、特定のベンダーに縛られない方が、技術的にもビジネス的にも理にかなっているからだ。

国防総省の最高情報責任者を務めるJohn Sherman(ジョン・シャーマン)氏は声明で次のように述べている。「JEDIが計画されたのは、当省のニーズが今とは異なり、CSP(クラウドサービスプロバイダー)の技術と我々のクラウドとの間の知識交流が成熟していなかった時代です。JADC2(Joint All Domain Command and Control、コネクテッドセンサーのネットワーク構築に関するイニチアチブ)やADA(AI and Data Acceleration)などの我々の新しいイニシアチブ、国防総省内のクラウドエコシステムの発展、複数のクラウド環境を活用してミッションを実行するためのユーザー要件の変化などを考慮すると、我々を取り巻く環境は進化しており、従来型と非従来型の戦闘ドメインで優位に立つための新たな道すじが保証されています」。

言い換えれば、国防総省は、世界の他のほとんどの地域と同様に、マルチクラウド、マルチベンダーアプローチを採用することで、より多くの恩恵を受けられるということだ。とはいえ、国防総省はベンダーの選択をMicrosoftとAmazonに限定することも示唆した。

同省は声明で次のように述べている。「当省は、Microsoft Corporation(Microsoft)やAmazon Web Services(AWS)を含む限定された数の業者からの提案を求める意向です。市場調査によると、これら2つのベンダーが当省の要件を満たすことができる唯一のクラウドサービスプロバイダー(CSP)であることが示されています」。

これはGoogleやOracle、IBMには受け入れ難いことかもしれない。ただし同省は、将来的に他のCSPがそれらの要件を処理する能力を持っているかどうかを確認するために、市場を監視し続けるとしている。

最終的に、単一ベンダー要件に大きく左右されたことで、競争が過熱し、政治的に緊張した雰囲気が生まれ、プロジェクトが実現しない結果となった。国防総省はこの先、技術のキャッチアップに取り組む必要がある。JEDIの調達プロセス全体に関わる芝居じみた所行に3年の歳月が費やされたが、それはこの長きにわたる、不穏当な様相も呈する技術の物語において、最も嘆かわしい側面と言えるかもしれない。

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

米国防総省がついにMSとの1兆円超規模クラウド契約「JEDI」を白紙に、リセットしてやり直し

世界最大のクラウドインフラ企業が数年にわたって争奪戦を繰り広げてきた結果、米国防総省は米国時間7月6日、論争の的となっていた勝者総取りの100億ドル(約1兆1000億円)規模のJEDI契約をついに白紙に戻した。結局、誰も勝てなかった。

「テクノロジー環境の変化にともない、長い間延期されてきたJEDIクラウド契約は、もはや国防総省の能力ギャップを埋める要件を満たさないことが明らかになりました」と、米国防総省の広報担当者は述べた。

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契約調達のプロセスは、2018年に国防総省のクラウドインフラ戦略を担う100億ドル(約1兆1000億円)、10年にわたる契約のRFP募集から始まった。国防総省の広報担当者であるHeather Babb(ヘザー・バブ)氏はTechCrunchに対し、1人勝ち方式を採用する理由を次のように述べていた。「単一受注が有利なのは、特にセキュリティの向上、データへのアクセス性の向上、当省によるクラウドサービスの採用と利用を簡素化できるからです」と、当時同氏は語った。

しかし企業各社は当初から、マルチベンダー方式の方が国防総省にとって良い結果をもたらすと考え、1人勝ち方式に反対していた。特にOracle(オラクル)などは、入札プロセスがAmazon(アマゾン)に有利になるように設計されていると考えていたようだ。

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AmazonとMicrosoft(マイクロソフト)の2社が最終選考に残り、最終的にはMicrosoftが選ばれた。しかし、Amazonは自分たちの方が優れた技術を持っているととともに、当時CEOだった(ワシントンポスト紙のオーナーでもある)Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏を公然と軽蔑していた前大統領が直接干渉したために、この契約を失ったと信じていた。

Amazonは決定に対して法廷で争うことにしたが、数カ月の遅れの後、国防総省はそろそろ先に進むべきだという判断を下した。Microsoftは7月6日のブログ記事で、この遅延を引き起こした原因として、Amazonを非難した。

「国防総省がMicrosoftをJEDIパートナーとして選定してから20カ月が経過し、政策立案者が注目すべき課題が浮き彫りになりました。1つの企業が、国を守る人々のための重要な技術アップグレードを何年も遅らせることができるのであれば、抗議プロセスには改革が必要です。Amazonは2019年11月に抗議申し立てを行いましたが、訴訟から判決が出るまでに少なくとも1年はかかると予想され、その後控訴される可能性もありました」と、Microsoftは契約終了に関するブログ投稿に記している。

しかしAmazonは独自の声明の中で、プロセスが公正に行われなかったとの考えを改めて示した。「当社は国防総省の決定を理解し、同意します。残念ながら今回の契約先決定は提案のメリットに基づくものではなく、政府調達にあるまじき外部からの影響を受けたものでした。米国の軍隊を支援し、戦闘員や防衛パートナーが最高の技術を最高の価格で利用できるようにするための当社のコミットメントは、これまで以上に強固なものとなっています。今後も国防総省の近代化を支援し、重要な任務を達成するためのソリューションを構築していきたいと考えています」と同社の広報担当者は述べている。

最初から、うまくいくわけがなさそうに見えたプロジェクトにふさわしい終わり方には違いない。国防総省がちょっと洒落っぽく「スター・ウォーズ」の名を冠したこの契約を発表したときから、この調達プロセスは昼ドラのように紆余曲折してきた。

初めの頃は騒々しく激しさが渦巻いたが、結果的には無意味な結果につながっていった。我々は、次に起こるであろうクラウド調達プロセスに注意を移すこととしよう。

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タグ:米国防総省MicrosoftJEDIAmazon裁判

画像クレジット:US Dept of Defense / Wikimedia Commons under a Public Domain license.

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

Oculus創業者が起ち上げたAI防衛企業Andurilの評価額が約5000億円超に

テック業界の因襲打破主義者であるPalmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏が設立したAI防衛企業のAnduril(アンデュリル)は、新たにシリーズD投資ラウンドで4億5000万ドル(約497億円)の資金を獲得し、わずか4年でこのスタートアップ企業の評価額は46億ドル(約5080億円)に達した。

2021年4月には、同社が新たな投資を求めており、2020年7月に19億ドル(2093億円)だったその評価額は、40~50億ドル(4407億〜5508億円)になる見込みと報じられていた。

今回のラウンドは、エンジェル投資家であり、シリアルアントレプレナーでもあるElad Gil(イラッド・ギル)氏が主導した。同氏は元Twitter(ツイッター)のバイスプレジデントで、Google(グーグル)出身者でもあり、急速な成長を遂げる企業への投資実績がある。このラウンドには、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)、8VC、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Valor Equity Partners(バロー・エクイティ・パートナーズ)、D1 Capital Partners(D1キャピタル・パートナーズ)も参加した。

ギル氏は今回の投資について、ブログで次のように述べている。「ほとんど組織的な刷新が行われていない旧態依然とした機関が私たちの新型コロナウイルス対策に影響を与えたように、防衛産業も過去30年の間に著しく凝り固まってきました。これらの既存企業に直接挑戦する新しい防衛技術企業は、この何十年もの間、存在しませんでした……」。

Andurilは2017年にひっそりと創業したが、トランプ政権下で税関・国境警備局や海兵隊から契約を獲得し、急速に成長してきた。Oculus(オキュラス)をFacebook(フェイスブック)に売却した後、会社から追い出された若くて野心的な創業者のラッキー氏は、一般的にトランプを嫌うテック業界において、トランプ大統領の最も著名な支持者の1人として注目を集めた。

Andurilは、長時間飛行可能なドローンや監視タワーなどの防衛用ハードウェアを製造しており、これらは同社が開発した「Lattice(格子)」と呼ばれる共有ソフトウェアプラットフォームに接続されている。このシステムは、軍事基地の安全確保や国境の監視のために使用され、同社の対UAS(無人航空機)技術「Anvil(アンヴィル)」は、敵のドローンを空から叩き落とすこともできる。

比較的安価なハードウェアとセンサーフュージョンや機械学習技術を組み合わせ、防衛分野の大手企業よりも機敏に契約パートナーを介して提供するというAndurilのミッションを、共同設立者でCEOを務めるBrian Schimpf(ブライアン・シンプフ)氏は「変革」と表現している。

「国防総省が我々と同じ問題を認識しており、エマージングテクノロジーを陸・海・空・宇宙の各領域で大規模に展開することに真剣に取り組んでいるという我々の自信が、今回の資金調達には反映されています」と、シンプフ氏は語る。

Andurilは創業当初から国防総省との提携を視野に入れており、2020年には空軍がJADC2(Joint All-Domain Command and Control、全領域統合指揮・統制)プロジェクトのための技術をテストする50社のベンダーのうちの1社として国防総省から選ばれた。JADC2は米軍のすべての隊員、機器、車両をつなぐスマートな戦争プラットフォームの構築を目的としている。

米国の税関・国境警備局との協力関係も、2020年には試験的なものから正式な認定事業へと発展した。Andurilは、米国の国境付近を自律的に監視する能力を持つネットワーク接続型の監視塔を供給している。

Andurilは2021年4月、大型機から発射可能な小型ドローンの開発で知られるArea-I(エリアI)を買収した。Area-Iの顧客には、米国陸軍、空軍、海軍、NASAなどが名を連ねており、その関係性が今回の買収を後押ししたものと思われる。

関連記事:米空軍の入札企業にOculus VR創業者設立の防衛関連企業Andurilが選ばれる

カテゴリー:ドローン
タグ:AndurilOculus資金調達軍事国防総省

画像クレジット:Anduril

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国防総省が1億7500万におよぶ保有IPv4アドレスの管理権を無名企業に与えたと報じられる

米国防総省が1億7500万件におよぶ保有IPv4アドレスの管理権を無名企業に与えたと報じられる

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1月20日、ドナルド・トランプ大統領の退任に世界が気を取られている間に、フロリダの無名企業が国防総省から大量のIPアドレスの管理権限を与えられたとWashington Postが伝えています。このGlobal Resource Systems(GRS)と名乗る企業は2020年9月に設立されたばかりでトランプ氏の退任後すぐに国防総省が持つ5600万のIPv4アドレス管理権を主張し、その数は3か月後に1億7500万件にまで増加しました。

1億7500万件といえば約43億あるIPv4アドレス総数の約6%に相当する数で、これほど大量のIPを持つのは民間企業では大手通信キャリアぐらい。米国防総省の「Defense Digital Service」のディレクター、ブレット・ゴールドスタイン氏はこの動きは軍が持つIPアドレスの不正使用を研究・防止するための「試験的な取り組み」の一環だと述べています。また国防総省はIPアドレスの管理権そのものは依然として所持していると述べています。

GRSが具体的に何をしているのかは定かではありません。また政府との契約情報は見当たらず、公開されたウェブサイトすらないため、いったい何をする会社なのかもわかりません。一説には、この会社は国防長官直属のDefense Digital Serviceと呼ばれるチームが関わっているともいわれている模様です。

国防総省や軍は、米国に敵対的な政府やサイバー犯罪者が、国防総省が抱えている未使用のIPアドレスを乗っ取るのを防止するため、専門チームの知識を利用しようとしているのかもしれません。これによって国防総省は、攻撃者がオンラインでどのように活動しているか、また、なにか起こる前に潰しておくべき設定ミスがないかといったことを得られるのかもしれないとセキュリティ専門家が推測していると、Washington Postは述べています。

(Source:Washington PostEngadget日本版より転載)

カテゴリー:セキュリティ
タグ:米国防総省 / ペンタゴン(組織)

MicrosoftがARヘッドセット12万台を米軍に提供へ、最大2.4兆円の契約

AR / VRデバイスのキラーユースケースは文字どおり兵器ということになるかもしれない。米国3月31日、Microsoftは、Holo Lensテクノロジーをベースにした何万台もの拡張現実ヘッドセットを米陸軍に提供する契約を獲得したことを発表した。同社によればこの契約は10年間で218億8000万ドル(約2兆4240億円)にもなるということだ。

Microsoftは、IVAS(統合視覚増強システム)準拠のARヘッドセット12万台を陸軍に納入する。HoloLens 2は現場将兵のニーズに合わせて機能がアップグレードされている。

MicrosoftのAlex Kipman(アレックス・キップマン)氏は「このプログラムはユーザーの状況認識を強化し、さまざまなシナリオでの情報共有と適切な意思決定を可能にします」とブログで述べている。

この契約は、Microsoftが2018年に米軍に拡張現実テクノロジーを提供するために獲得した2年間、4億8000万ドル(約531億7000万円)の契約に繋がるものだ。この契約には、納入されたデバイスの評価結果によりさらに10万台以上のヘッドセットの追加オーダーが生じるる可能性があることが定められていた。Microsoftの広報担当がTechCrunchに送ったコメントには「拡張現実テクノロジーは従来より多くの適切な情報を部隊に提供し、意思決定を助けます。今回の新しいミッションはMicrosoftと国防省との長年にわたる信頼関係に基づき、さらに拡張するものです」と述べていた。

Microsoftによれば、今回の発表は「プロトタイプの提供から本格的な量産と実戦部隊への配備への移行を意味する」ものだという。

12万台のヘッドセット納入というのは、これまで大規模な応用が乏しかった拡張現実テクノロジーにとって最大スケールの展開だ。Microsoftは政府契約による資金を確保したことで将来的に民生機器や企業利用のレベルのデバイスを開発するベースとなるテクノロジーの開発に取り組むことができる。拡張現実テクノロジー業界の大手企業には軍との契約に消極的だったり反対意見を述べるところも多いが、Microsoftは軍事部門から契約を得ることに積極的だ。

関連記事:マイクロソフトが「HoloLens 2」を出荷開始、日本でも

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:MicrosoftHolo Lensペンタゴン

画像クレジット:US Army

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(文:Lucas Matney、翻訳:滑川海彦@Facebook

ロケット史上最高の事前契約数を記録したRelativity Spaceが米国防総省と初打ち上げ契約を締結

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、すでに相当数の打ち上げ契約を交わしている。事実、CEOで共同創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏によれば、同社のTerran 1(テランワン)ロケットの事前契約の数は、ロケット史上最高を記録したという。だが、とりわけ重要なのは最も新しい契約先だ。それは米国防総省(ペンタゴン)。同省は国防イノベーション部門(Defense Innovation Unit、DIU)の取り組みとして、450〜1200kgのペイロードの地球低軌道への打ち上げに即応できるパートナーを探し続けてきたが、Relativity Spaceは、今回の契約でその役割を担うこととなった。

「かなり大型の衛星です。これだけの宇宙船を打ち上げられる業者はかなり限られます」とエリス氏はインタビューに応えて話した。「3mのペイロードフェアリングを持つTerran 1は、実際にそのサイズのペイロードが打ち上げられるすべての米国企業の中でも特異な存在です。そのスケールに十分に対応できるフェアリングを有しているのは、いまだに私たちだけです」。

DIUには、革新的な米国企業、特に技術開発が比較的初歩の段階の企業と協力するという特別な使命があり、その契約は、将来にわたり国防総省との深い関係が保証されるお墨つきとも見られている。だが今回のケースは、Relativity Spaceが比較的成熟した企業であり、国防関係以外の政府機関のものを含むミッションの事前契約数が多いことが評価された。

「今回は、特定のロケットを必要とする現実のミッションがあったからです」とエリス氏。「またこれは、国防総省を初めて顧客として迎えともに仕事ができる、そして私たちが聞いてきた政府の要望を実現できる大きなエコシステムへ駆け上がるすばらしいチャンスでもあります。これはすべてTerran 1に焦点を当てたものですが、もちろん、このプロジェクトとはまったく別に、私たちはTerran Rについてもすでに公表しています。これは、ほんのきっかけに過ぎません。私たちが作るあらゆるものを活用して、さまざまな分野で国益を支えてゆく多大な好機を私たちは見据えています」。

関連記事:Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

エリス氏が話していたのは、先日Relativity Spaceが発表した大積載量ロケットTerran Rだ。これは3Dプリントでロケットを建造するこの会社が2021年2月に発表した大型ロケット計画であり、地球低軌道に衛星コンステレーションを投入する目的で注文に応じて作られる。変化するニーズに即応でき、冗長性の高い衛星技術を特に求める国防総省は、これまでに何度も衛星コンステレーションへの強い関心を示してきた。

カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Spaceロケット3Dプリントペンタゴン

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

バイデン政権下、米国防総省が気候変動対策で作業部会を設置

米国防総省が、気候変動に関する作業部会を立ち上げた

新しいグループはJoe Bryan(ジョー・ブライアン)氏が指揮する。彼は2021年初めに国防長官の気候問題担当特別補佐官に任命された。

これは、世界的な気候変動がもたらす危機への対策を求める議案を推進するためにバイデン政権が執った、いくつかの方策の1つだ。

声明によるとブライアン氏は、オバマ政権下で海軍長官のエネルギー問題担当副補佐官を務め、今回はバイデン氏の最近の大統領令とそれに次ぐ気候とエネルギーに関連した指示書に対する省としての対応をまとめるためにグループを指揮監督し、また気候とエネルギーに関する実際の対策措置とその進捗を点検する。

国防総省は数千億ドル(数十兆円)にも上る政府支出の財布のひもを握り、電力、石油・ガス、産業資材などを大量に消費している。サプライチェーンの効率を向上させ、車両の排出プロファイルを削減し、再生可能エネルギーを電力事業に利用するために同省がとるいかなる措置も、再生可能で持続可能な技術の商業化と温室効果ガス排出量の削減に大きく貢献する可能性がある。

声明によると、国防総省はすでにリスク分析、戦略開発、計画ガイダンスに気候変動の安全保障上の影響を含めており、設置計画、モデリング、シミュレーション、戦争ゲーム、国防戦略にもこれらのリスク分析を含めている

「競合する物流環境における行動の自由を改善するためにプラットフォームの効率性を向上させることであれ、施設における主要な能力の回復力を強化するために新たなエネルギーソリューションを導入することであれ、我々の任務目標は気候目標と十分に整合している」と、Lloyd Austin(ロイド・オースティン)国防長官は声明で述べた。「国防省はその連携を活用して、軍の近代化、サプライチェーンの強化、同盟国やパートナーと緊密に協力する機会の特定、将来の成功に欠かせないエネルギー技術で中国と競争していきます」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:米国防総省気候変動

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アマゾンがマイクロソフトが獲得した1兆円超の米国防総省JEDI契約の差し止めを裁判所に要請

米国防総省が米軍に技術近代化の道筋を提供するとされていた100億ドル(約1兆300億円)、10年におよぶJEDIクラウドの契約を発表してから2年以上が経過した。Microsoft(マイクロソフト)が2019年10月に契約を獲得した一方で、Amazon(アマゾン)はその決定に抗議するために裁判所に訴え、それ以来、法的には中途半端な状態が続いている。

米国時間12月15日にはアマゾンが、マイクロソフトを選ぶという決定を差し止めるように、裁判官に求める最新の一手を法廷闘争で打ったとき、この政府調達を巡る長い物語に新たな変化が生じた。アマゾンの主張は以前にも行ったものと似ているが、今回は国防総省の再評価プロセスを狙ったものだ。この再評価時に、国防総省は契約と選定プロセスを見直した結果、マイクロソフトという決定に変わりはないと2020年9月に発表していた。

アマゾンは、この再評価に大きな欠陥があり、大統領からの不当な影響や偏見、圧力を受けていたと考えている。これを踏まえてアマゾンは、マイクロソフトが選ばれた契約の決定を差し止めるよう裁判所に求めている。

JEDIの再評価と再決定は、政治的な理由で官僚の誠実な分析と論理的思考を抑圧する政権の犠牲となり、最終的には国家安全保障と効率的で合法的な税金の使用を損なうことになる。国防総省はこの調達を客観的かつ誠実に実施していないことを改めて露わにしている。再決定は差し止められるべきである。

想像の通り、マイクロソフトのコミュニケーション担当本社副社長であるFrank X. Shaw(フランク・X・ショー)氏は、このアマゾンの主張に同意せず、自分の会社がベストプライスで落札したと信じている。

「入札で負けたアマゾンは、当社の価格設定を知らされ、当初の価格が高すぎたことに気づきました。その後、彼らは価格を下げるために入札を修正しました。しかし、すべての基準を同時に見渡したとき、国防総省のキャリア調達担当者は、優れた技術的優位性と全体的な価値を考えると、当社が最良のソリューションを提供し続けると判断したのです」と、ショー氏はTechCrunchに共有した声明の中で述べている。

アマゾンの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、「我々は単に、この契約先決定に露骨に影響を与えた技術的な誤り、偏見、政治的な干渉に関して、裁判所による公正で客観的な見直しを求めているだけです」とのことだ。

両者の立場からすれば、いい分はそうなるだろう。

国防総省は2018年に、JEDI(Joint Enterprise Defense Infrastructure)と名付けられた100億ドル、10年に渡る契約のために入札を行うと発表した。一般的な政府の契約に比べて、はるかに大規模なその金額と領域は広く注目を集め、その調達プロセスは最初から議論の的となっていた。この入札プロセスがアマゾンに有利になるように構成されていると不公正を主張する声が、特にオラクルから上がっていたからだ。

最初の発表から2年以上が経過し、マイクロソフトが当初の契約を勝ち取ってから1年以上が経過した。しかし、いまだに大手テック企業2社が互いに批判し合う法廷闘争では膠着状態が続いている(未訳記事)。どちらも譲歩しそうにないため、最終的な判断は裁判所に委ねられることになる。おそらくこれで長い戦いの物語に終止符が打たれることだろう。

【注記】国防総省はコメントを求める我々の要求に答えていない。状況に変化があればこの記事を更新する予定だ。

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カテゴリー:ネットサービス
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画像クレジット:The Washington Post / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Oculus創設者が立ち上げたAndurilが国境の仮想壁となるスマートなドローンを発表

国境の壁を仮想的に作る(米関税国境警備局記事)企業がステルスで高速飛行が可能なドローンの新バージョンを開発し、それを利用する米税関国境警備局(CBP)との新たな契約を勝ち取った。Oculus(オキュラス)の創設者が立ち上げた若い防衛系テック企Anduril(アンデュリル)は、2020年9月にCBPから(US Spendingレポート)、AI駆動の自動監視塔計画のための3600万ドル(約38億円)の資金(Twitter投稿)を調達した。

Andurilは、この短いトランプ政権の時代に(Daily Beast記事)大きく成長し、創設からわずか3年の企業でありながら、防衛当局から驚くほどの期待を集めた。2020年7月、CBPはこれまで建設された監視塔群のために2500万ドル(約26億5000万円)をAndurilに授与している。同局は現在のAndurilとの契約を維持しつつ、さらに200基を2022年までに建設(CBP記事)する予定だ。その予算規模は2億ドル(約210億円)を超える(The Washington Post記事)。

ハードウェアのイノベーションを高速に繰り返すこの突出した企業が、一般消費者向けVRシステムをOculusを通じていち早く世に送り出した問題多き人物(未訳記事)であるPalmer Luckey(パルマー・ラッキー)氏の会社だと思えば納得もいく。彼は、テック界の強力なトランプ支持者(未訳記事)であり、新たなベンチャーに打って出たとき、現在はFacebook(フェイスブック)傘下となったVR企業Oculusから多くの才能を引き抜いた。また、Peter Thiel(ピーター・ティール)氏が創設し、米連邦政府との契約で成長し株式公開の準備中であるPalantir(パランティア)の元従業員も大量に集めている。

関連記事:Border wall bill draws on Palmer Luckey’s new defense company(未訳記事)

創設当初は完全に隠密状態であった同社だが、特に2019年は、そのドローンの性能を公表するようになった。これまでAndurilは、同社がAnvil(アンビル、金床)と呼ぶ、無人航空機を特定し撃ち落とす機能を備えてた(同社は「攻撃ドローン」と呼ばれることを嫌う)対無人航空機ドローン(The Verge記事)の登場を、しきりにメディアに売り込んでいた。そして今、Andurilは、小型で非常に静かでいくつかの新機能を備えた、第四世代のGhost(ゴースト)型ドローンを発表した。

Ghostは、長時間飛行が可能で、見たものをAI駆動の中枢神経系に送る能力を有する。それはAndurilの監視塔やその他のあらゆるハードウェアとデータを共有し、同社のLattice(ラティス)ソフトウェアプラットフォームに中継すると、気になるものを監視対象として特定する。CBPの場合は、米国境を越えた人物を自動的に特定し、国境警備隊員に警報を発するということになるのだろう。

Anduril Industries「Ghost 4を発表します。最もインテリジェントなVTOLです。軍事用小型無人航空機として、戦場の通常作戦でリアルタイムの情報提供を行い、戦闘員の状況判断を助けます」。

Ghost 4はGhost型ドローンの最新バージョンであり、飛行時間は100分、「ほぼ無音の音響特性」を誇る発見されにくい機種だ。さらに同機は、AndurilのLattice AIソフトウェアを内蔵していると思われる。それにより、通信状態の悪い場所や「紛争」地域での運用や目標の特定が可能になる。この新型Ghostは、複数のGhostで形成された群を1人で操作でき、さまざまな機器を用いてデータ収集が行える。

同社によると、Ghost 4は「空中諜報活動、監視と偵察、物資配達、浸入防止、シギント、電子戦」など、さまざまなタイプの任務に対応できるという。モジュラー式システムでカスタマイズが可能なデザインになっているため、Andurilはさらに応用範囲を広げることもできるのだが、今は境界地域と国境の監視のための契約の獲得に集中している。

同社は、CBPとともに2018年からテキサスとサンディエゴで業務を開始している。その翌年までに、Andurilはアメリカ南部の国境地区との関係を正式化し、CBPのサンディエゴ地区では数多くの監視塔の運用に当たり、テキサスではさらに多くの監視塔建設を受注し、寒冷地仕様のハードウェアのための新しい運用試験をモンタナ州とバーモント州の国境地区で実施(The Daily Beast記事)した。

2020年7月、Andurilは2億ドル(約21億円)の投資をAndreessen Horowitzとティール氏のFounders Fundから受けたことを発表し、評価額はこの3年間でおよそ20億ドル(約210億円)に達した(The Washington Post記事)。「私たちがAndurilを創設したのは、シリコンバレーのテック企業が国防総省と手を結ぶことの価値を信じているからです」と、AndurilのCEOであるBrian Schimpf(ブライアン・シンプ)氏は設立当初に語っていた。

米国防総省は、前バージョンのGhostの使用事例を模索しおり、Andurilは、その生まれて間もないビジネスの拡大を望んでいることは明らかだ。それはそう遠い先のことではない。Andurilは2019年にアリゾナ、日本、ハワイの海兵隊基地を「仮想デジタル要塞」で囲む1350万ドル(約14億円)の契約(海兵隊資料)を決め、軍との連携を専門とする人材(Defensnews記事)を雇い入れた。現在、同社の仕事は、母国である米国の防衛予算の一項目(Fedscoop記事)としての地位を確保している。さらに実入りの大きな防衛関連事業の契約につながる扉が、Andurilの前には開かれている。

関連記事:Palmer Luckey’s new defense company Anduril looks interested in AR and VR on the battlefield(未訳記事)

画像クレジット:Anduril

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(翻訳:金井哲)