Snap、上場初日の株価40%急騰―時価総額300億ドルに

2017-03-03-snapchat-spectacles

新規上場初日のSnapの株価は売り出し予定価格を40%以上上回って取引が開始された。 ニューヨーク証券取引所(NYSE)の初値は1株当たり24ドルだった。

ここしばらく投資家の期待と焦燥を一身に集めたSnapだったが、今朝の値動きは投資家がいかにSnapの将来に期待しているかを明らかにしただけでなく、ウォールストリートにとっても新規上場の理想的な前例となった。今年はテクノロジー企業の上場の動きが加速しそうだ。Snapにとっては、新規上場で株価が急騰したことはそれ自体で良いことであるだけなく、投資家全員を満足させる結果となった。

昨日、Snapの売り出し価格は17ドル、時価総額240億ドルが予想されていた。17ドルという株価自体、2月にSnap(とウォールストリートの証券会社)が設定した売出し予定価格の上限を上回っていた。Snapは上場によって34億ドルの資金を調達することに成功した。Snapの急成長は同時にコストのアップをもたらしているいるが、この収入は十分にそれをまかなえるだろう。

24ドルをつけた後、株価は一時25ドル以上に上げたが、その後はほぼ安定している。現在の株価による時価総額は300億ドル以上となっている。ちなみにTwitterの時価総額は110億ドルだ。

ここまでのSnapの上場が成功だったことは疑いないが、今後に向かっては複雑な問題を抱えている。複数のレポートはSnapの上場に予定価格を上回る大量の市場資金が流れこんでいることを指摘している。Snapは今後もさらに株式発行によって資金を調達できるだろうが、そのつど今朝のような取引価格のアップを必要とする。上場が成功しているイメージを維持すると同時に投資家にも利益を確保できなければならない。

もちろん24ドルという初値はSnapがかなりの金額を取り逃がしたということでもある。2億株の売り出し価格と取引価格の差は10億ドル以上にもなる。そうであってもSnapの上場は大成功という印象を与えたことは確かだ。

しかしSnapの上場はいろいろな面でかなり異例だ。投資家が購入した株式には議決権が付属していない。つまり投資家はSnapが今後さらに巨大な企業に成長するだろうという期待を買ったことになる。CEOのEvan SpiegelとSnapのチームが長期的にもSnapの運営に成功するだろうという期待だ。共同ファウンダーのSpiegelとBobby Murphyはほぼ完全にSnapの議決権を握っている。つまり2人はSnapの経営にあたってウォールストリートの顔色をうかがう必要はない。しかし株価が好調であれば社員の士気にも新たな人材の獲得にも有利に働くことは言うまでもない。

新規上場による資金調達は資金繰りの健全化と同時に企業買収その他の大型の経営イベントに対する手当でもある。Snapは運営に数億ドルを必要としている。今後5年間で総額でAmazonには10億ドル、Googleに20億ドルを支払う必要がある。Snapは企業買収にも非常に積極的だ。こうしたことからも資金需要はきわめて高い。

将来に向けて残る疑問は、SnapはFacebookがこれまで実現してきたような健全な成長を続けられるだろうかというものだ。Twitterの株価は頭打ちで先行きは不透明だ。Snapのユーザー数の成長は失速し始めている。逆に広告ビジネスは急成長中だ。Facebookのライバルの地位をウォールストリートに認めさせるためには今後いくつかのハードルを越える必要があるだろう。

Snapは上場企業となった。つまりこれまでよりはるかに透明性の高い環境でライバルと広告ビジネスの競争をしなければならいということでもある。Snapは有望なスタートアップとして企業の広告予算のうち「先物買い」の部分を集めることに成功した。しかし今後は広告予算のメインの部分を安定して占めるようになる必要がある。それにはFacebookが提供できないような機能がこれであるとはっきりさせねばならない。ともあれウォールストリートはユーザー数の頭打ちや経営権の偏りといった懸念には目をつぶり将来性に賭けたようだ。

〔日本版〕Snapの値動きはこちらでリアルタイムで表示されている。高値は26ドル、日本時間で午前6時は25ドルちょうど。The Wall Street Journalの記事によればエヴァン・スピーゲルの婚約者でスーパーモデルのミランダ・カーがNYSEでセルフィーを撮影している。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Apple、明日の四半期決算は成長再加速との予測―iPhone 7は7800万台以上の見込み

shutterstock_152974484-apple-aapl

Appleは明日(米国時間1/31)、クリスマス商戦を含む四半期の決算を発表する。再びiPhoneに注目が集まっている。今やAppleの売上の大半はiPhoneから来ている。iPhoneの売上の変動は巨大な意味を持つことになる。

Appleのこれまで四半期決算を観察すれば、過去1年は波乱の年度だったことがわかる。簡単にまとめると、売上は3四半期連続でダウンした。アナリストはAppleの快進撃もついに終わったかと懸念を抱いた。Appleはすでに下り坂なのか?

どうやら、今期はAppleにとって久々の成長再開となるようだ。アナリストの予測では、売上は774億ドルで、昨年同期の758億ドルから2.1%のアップとなりそうだ。 この数字はAppleの前回のガイドラインの予測と一致する。Appleは今期の売上を760億ドルから780億ドル程度と予測していた。

この四半期のiPhoneの売上は7800万台をやや上回るだろう(前年同期は7500万台)。これほど大きな数字となると直感的にとらえるのが難しい。アナリストによれば、Appleは1分ごとに590台のiPhoneを販売した計算だという。私としてはAppleがそんなスピードでiPhoneを製造できたことに驚いている。

まずこういったところが現在判明している全体像だ。細かい数字は実際の発表に待つとして、興味ある点がいくつかある。MacBook Proは大幅にアップデートされた。出荷が始まったのは四半期の半ばだったが、今期のMacのセールスに大きな影響を与えたことは確かだ。Appleはかなり長いあいだノートパソコンの分野を放置してきたため、今回の新モデルはは大きな反響があった。

Apple Watchもアップデートされた。AppleはこれまでApple Watchの販売台数を発表していない。12月にティム・クックは「Apple Watchのセールスは順調だ」と述べた。IDC調べのウェアラブル全般の売れ行きに関する数字はそれほど楽観を許さないものとなっている。これまでのところApple WatchはiPhoneをメインとする企業というAppleの性格を根本的に変えるような成功を収めていない。

最後に、Appleは自社をハードウェア製造者であると同時にサービスの提供者と位置づけている。そこで今期Appleのサービスはどうであったか知りたい。任天堂のSuper Mario Run始め数多くのiPhone向けの新しいアプリが発表されているので売上は増加したはずだ。問題はこの増加がApple全体にとって意味があるほどの大きさだったかどうかだ。これについてはまだ情報がない。

私としてはAppleの電話記者会見が待ちきれない。質問したい事項が山のようにある。ティム・クックはその全部に答えることはないだろうが、Appleについてかなりのヒントが得られるはずだ。特に私が知りたい情報はAppleの自動車に関する取り組みと中国での売れ行きだ。また Qualcommに対する10億ドルの訴訟や、(もちろん)トランプ大統領についても尋ねたい。

画像:Kris Yeager/Shutterstock (IMAGE HAS BEEN MODIFIED)

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Twitterの2016年を振り返る

2016-12-23-twitter-dorsey-3

大規模レイオフ、買収取り止め、ユーザー数伸び悩みというのがTwitterの2016年だったようだ。こうした要素がTwitterの将来を不透明にしている。これがTwitterがウォールストリートで歓迎されていない理由だろう。

ジャック・ドーシーのCEOとしての1年を要約するなら、やはり株価の下落ということになる。ドーシーはTwitterに活力を吹き込むためにありとあらゆる努力を払ってきたが、それでも十分ではなかった。

少なくともTwitterの最新の四半期決算は、ここしばらくで初めて経営陣がサービスの立て直しを図る努力を始めたことをうかがわせる。Twitterは社員の9%をレイオフした。主なターゲットはセールス、マーケティング、事業開発の各部門だった。財務内容とユーザー数を嫌気してTwitterを買収する話が立ち消えになった後、緊急に必要とされていた立て直し策としてウォールストリートには多少の意味があったようだ。それでも株価は意味あるほどの反発を示さなかった。要するに市場は改善策の小出しなどは求めていない。Twitterが確信をもって立て直しを実行することを求めている。

そこでまずジャック・ドーシーの1年を株価で確認してみよう。

Twitterの株価は―驚くべし―1年で29%も下落している。Salesforceその他の大企業がTwitterの買収を考えているというニュースが浮上したときはこれこそ株主が待ち望んでいた(ノアの方舟でハトがくわえて戻ってきたという)オリーブの小枝かと思われた。Twitterの成長が止まったなら、さらに大きな企業の一部になるのが適切なのでは? このニュースに他社も買収に興味を持ったし、なによりTwitterの株価は大きく上昇した。

しかし長く続かなかった。Twitterで ハラスメントやトロルが野放し状態だとしてディズニーが買収から撤退した。Saleseforceも買収の可能性を否定し、他社も続いた。Twitterはいじめ、トロル、ハラスメントなどを抑える努力があまり成功してない。新規のユーザーにとってサービスがわかりにくく フォロワーを得る上でも不利に働くという問題については事実樹手付かずだった。その代わりにツイートの文字数制限からユーザー名を外すといったアップデートがあっただけだった。それはそれでいいことだが、Twitterに成長を取り戻すにはそういうことでは足りない。

Twitterの2017年は不透明性が増しそうだ。同社ではセールスのリストラを実施するので売上のガイダンスを発表しないとしている。 レイオフに加えてセールスのチャンネルの再編成によってビジネスのコアとなる広告事業を活性化しようとしているのは確かだ。しかし最近の決算の数字は以前の成長ぶりに比べてさほどバラ色にはみえない。投資家はユーザー数の伸びに加えて広告収入の伸びも期待している(ただし同社はデータ事業に比べると広告事業の割合は小さい)。

株式市場の認識は厳しさを増している。そもそも買収の噂であれほど株価が上昇したということが市場におけるTwitterの将来に対する信頼が失われたことを意味している。Twitterは最近、コンテンツのライブ・ストリーミングをサービスに導入するなど刷新を図っている。Twitterは現在でもあらゆるニュースが一番早くアップされるプラットフォームだ。

大統領選挙いくぶんかTwitterの第4四半期の助けになったようだ。ビッグ・ニュースが飛び交う空気はTwitterのビジネスにとってある種の緩衝材の役割を果たした。ガイダンスを発表しないことに決めたのも、良い数字を発表できれば投資家を驚かせるのに役立つだろう。ともかく次の四半期決算はTwitterがウォールストリートの信頼を回復できるかどうかで非常に重要な瞬間となる。【略】

twitter stock comp

2017年を迎えるにあたってTwtterはリセットボタンを押そうとしているなどいくつか明るいニュースもある。 Twitterの株価は下落を続けているが、これは買収対象として魅力を増すという効果もあるだろう。小出しの改良であれ、Twitterが進路を修正することはいったんは手を引いた企業に買収を再考させるきっかけになるかもしれない。

しかしこれは「諸刃の剣」でもある。Twitterの株価が下がり続け、失敗が続けばTwitterは「もの言う株主」を引き寄せることになり、彼らは直ちにTwitterの根本的なリストラを要求することになるだろう。2016年にTwitterは株式市場に対してビジネスが順調に運営されいる証拠を見せることができなかった。Twitterが株価の低落を止めることができないなら2017年にはそのツケが回ってくるかもしれない。

Twitterが市場の信頼をつなぎ止め、独自の企業として進むためにはビジネスだけでなく、プロダクトそのものの変革も必要だ。FacebookとSnapchatがユーザーの伸びでも広告収入の伸びでもロケットの勢いで先行を続けている。Twitterはプロダクト・レベルでオンラインでの会話の第3のチャンネルであることをユーザーに納得させると同時に、ビジネスでも広告主の企業の会議室で第3のプレイヤーの地位を確保する必要がある(ビジネス面ではSnapchatはまだスタートしたばかりだが)。

2016年は失敗だった。ウォールストリートはTwitterの進む方向に満足してない。2017年はさらに不確定な要素が増える。ジャック・ドーシーは投資家の不満をなだめるためにすることが山積している。

画像: TechCrunch / Matthew Lynley

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

会議、ブレーンストーミングで頭が良さげに見せる9つのトリック

2016-10-02-shipit

この記事はCrunchNetworkのメンバー、で作家、コメディアンのSarah Cooperの執筆。Cooperは風刺的ブログのTheCooperReview.comを運営している。以前、Googleドキュメントのデザイン責任者を務めたことがある。現在は企業を舞台にしたユーモアの執筆と講演に力を注いでいる。CooperのFacebookInstagram。以下の記事はCooperの近刊、 100 Tricks to Appear Smart in Meetings

(『会議で頭が良さげに見せる100のトリック』 10月4日 Andrews McMeel刊)からの抜粋

会議やブレーンストーミングの席でなにか新しいアイディアを考え出さねばならないという圧力はときに息苦しいほどになる。幸か不幸か、たいていの場合、会社が求めているのは新しいアイディアではない。

本当は無意味な暇つぶしであるこうしたミーティングで重要なのは「そこにいること」だ。その過程で「他人が出したアイディアを自分のアイディアのように思わせる」、「ミーティングの効果を疑うような発言をして自分がその場のリーダーであると印象づける」ことができれば理想的だ。

以下、あなたがそのグループの創造力の源であると思わせるのに役立つ 9つのトリックを紹介しよう。

  1. 水を取りに行きながら「誰かなにか要る?」と尋ねる

image1-4

ミーティングが始まる前にすかさず立ち上がって「誰か何か要る?」と尋ねる。メンバーはあなたが思慮深く親切で気前がよい、と感じる。その上、一切の言い訳を必要とせず、10分間席を外していることができる。 誰も何も欲しがっていなくても、ミネラルウォーターや清涼飲料水のペットボトルと適当なスナック類を持ち帰ること。

メンバーはどうしてもその飲み物、食べ物に手を出すことになり、その過程で皆はあなたの先見性に感じ入る。

  1. 粘着パッドに何か図を描き始める

image2-2

ミーティングのテーマが説明されたら粘着パッドの大きいのを一枚剥がしてなんでもいいからフローチャートみたいな図を描く。 同僚は自分たちがまだテーマをよく飲み込めないでいるうちにあなたが即座にかくも複雑なアイディアを思いつけたことを不安な面持ちで盗み見ることになる。

  1. あまりくだらないので考え深か気に聞こえるような比喩を持ち出す

image3

皆が問題を定義しようと努力を始めたら、ケーキを焼くとか、そのようなわけのわからない例えを持ち出す。同僚は当面の問題との関連が全然理解できなくともともかく同意のうなずきを示すはずだ。わけがわからないことを言われると人は完璧に自分のレベルを超越した創造的なアイディアの持ち主なのだと思ってしまう。あなたがケーキが好きなだけだということは気づかれない。

  1. 「それは正しい質問かな?」と質問する

image4

問題が難しくなってきたとき、質問の意義を疑う質問をすることほど質問者の頭を良さ気に見せるものはない。万一誰かが「われわれの質問が正しい質問かどうかってそれはどういう質問?」と質問の意味を尋ね返してきたときには「それがまさに私が質問したかった点だ」と答えよう。

おまけ:些細に過ぎるアイディアをけなす方法

自分は考えのスケールが大きいゲームチェンジャーだというように振る舞っているときにスケールの小さいアイディアに悩まされそうなときがある。

以下のようなフレーズが対策として有効だ。

  • それはディスラプトするかな?(But how is it disruptive?)
  • 10倍にスケールできる?(Is this 10x?)
  • それが未来というものだろうか?(Is this the future?)
  • それはダメだったはずだと思う。(I thought that was dead.)
  • 決定的な勝利なのか?(What’s the big Win?)
  • Appleがもうやってないか?(But isn’t Apple doing that?)
  1. イディオムを使って質問する

image5

イディオムを使って質問の形でけなすのはスマートで有効な方法だ。こういうイディオムの中から選ぶのがよいだろう。〔いずれも「それは無用だ、かえって悪化させる」の意〕

  • ユリをさらに金メッキで飾ることにならないか?(Isn’t that gilding the lily?)
  • 豚に口紅では?(Isn’t that putting lipstick on a pig?)
  • クソ団子を磨くようなものだ(Seems like we’re polishing a turd.)
  1. アイディアが湧き出すきっかけになるようにみえるとっぴなクセを身につける

image6

「考える助けになる」とか「アイディアが沸いてくるんだ」というようなことをいってとっぴなクセを披露する。パジャマ姿で現れる、床にあぐらをかいて沈思黙考する、その場でジョギングする、ボールを壁にぶつける、スティックをデスクの引き出しから取り出してドラムを叩く真似をするなどいろいろ考えられる。複数を混ぜて実行してもよい。 アイディアは出て来なくても同僚はあなたのコントロール不可能な創造的精力らしきものに恐れをなすはずだ。

おまけ:ビッグ過ぎるアイディアをけなす方法

アイディアが非常にビッグな場合、あなたは会社のリソース配分について真剣に考えているところを見せるのがよい。

以下のようなフレーズが参考になる。

  • ディスラプトしすぎてないか?(Is it too disruptive?)
  • ロードマップにはどう収まる?(How does this fit into the roadmap?)
  • つまりピボットしろと?(This seems like a pivot.)
  • 無理筋というものでは?(Isn’t that a non-starter?)
  • それはスコープ外では?(Isn’t that out of scope?)
  • それをどうやってテストする?(But how would you test that?)
  • それは国際化できる?(Will that work internationally?)
  1. 「CEOはどう考えるだろう」と言ってみる

image7

同僚に自分がCEOなどのトップと非常に親しいことを印象づける。まず「このアイディアだがCEOはどう思うかな?」と言ってみる。あるいはCEOのファーストネームを親しげに呼ぶ。次に彼/彼女に会ったときこの話題を持ち出してみよう、と言う。CEOが大いに気に入りそうなアイディアを思いついておめでとうと皆を祝福する。 CEOにたいへん近いことを十分にわからせると同僚はあなたをCEO候補の一人ではないかと考えるようになる。

  1. 「それは正しいプラットフォーム(フレームワーク、モデル)だろうか」と尋ねる

image8

「前進のためのフレームワーク」というような言葉を持ち出すと、同僚より大きなスケールで考えているように見せることができる。「思考のモデル」でもいいし「これをいかにプラットフォーム化するか」でもいい。こういメタ単語は同僚を煙に巻き、自分には何も新しいアイディアがないことを隠すのに効果的だ。

  1. あるアイディアを皆が気に入りそうだったら、すかさず「よし、それで決まりだ!」と叫ぶ

image9

全員があるアイディアに興奮している、あるいは気に入っているように見えたらこう叫ぶのがよい(原文、Ship it!は「(製品などを)出荷する」の意味)。たしかに多少とっぴな印象を与えるし、笑う人間もいるだろう。しかしあなたはこれによってある種の権威を確立できる。あたかも会議の結論を出したり、ミーティングを終わらせたりする権限が―実際は少しもないのに―あるように見えるのだ。

100 Tricks to Appear Smart in Meetings は10月4日に刊行される。 予約はこちらから。著者のサイト100Tricks.comでも関連記事が読める。

〔日本版〕 上記はもともとユーモア記事だし、日本の現実と直接比較するのは難しい。しかし風刺として笑えるだけでなく、誇張にせよアメリカのテクノロジー企業のミーティング、ブレーンストーミングの雰囲気がうかがえる。例文には原文を残し、日本文はなるべく逐語訳に近いものにした。一部それが難しい場合があり、non-starter(競馬での出走取り消し馬)は「無理筋」としてある。ship itなどについては訳文内に注記した。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

確定―VerizonがYahooのインターネット事業を48億3000万ドルで買収

2016-07-26-yahoo-verizon

何ヶ月にも渡った価格交渉数回にわたるレイオフの末、アメリカYahooはついに売却先を確定した。

Verizon(AOLの親会社。AOLはわれわれTechCrunchの親会社)はYahooの本体事業を48億3000万ドルのキャッシュで買収することを公式に発表した。買収される事業にはYahooの広告、コンテンツ、検索、モバイル活動の一切が含まれる。

Verizonの会長、CEOのLowell McAdamはプレスリリースで、「われわれは1年と少し前にAOLを買収し、あらゆるサイズのスクリーンを利用する消費者、クリエーター、広告主を結びつけるという戦略を一歩進めた。今回のYahoo買収でVerizonはトップクラスのグローバルなモバイル・メディア企業としての競争力をさらに高めることができた。同時にデジタル広告における売上の加速も期待される」と述べた。

YahooのAlibaba、Yahoo Japanの持株は今回の買収の対象となっていない。これらの資産には数百億ドルもの価値がある。7月22日現在、Yahooが保有するAlibabaの15%の持ち分は312億ドル、Yahoo Japanの34%の持ち分は83億ドルだった。 Yahooの特許ポートフォリオも今回の売却の対象外だが、10億ドル前後の価値があるとみられている。TechCrunchがつかんだところによるとサニーベールのYahoo本社は売却の対象だという。

Yahoは最終的にAOLと統合される。Verizonの執行副社長、プロダクト・イノベーションと新事業の責任者、Marni Waldenが買収プロセスを指揮する。AOLのCEO、ティム・アームストロングは社内向けメモの中で、マリッサ・メイヤーと緊密に協力していることについて触れている。メイヤーはYahooの社内向けメモの中で、「個人的には(Yahooに)留まるつもりだ。私はYahooとそのチームを愛し、信じている。Yahooを次の章に飛躍させることは私にとって重要だ」と書いている。メイヤーは買収手続が完了するのは2017年の第1四半期の末と予想している。【略】

昨年、Verizonは AOLを44億ドルで買収した。Verizonは現在でもトップクラスのテレコム企業だが、AOLとYahooを買収したことからすると、今後は事業とその売上の多様化を図っていくつもりのようだ。

買収手続が完了した後、YahooとAOLを統合すれば、巨大なメディアと広告の子会社が生まれる。AOLははるかに大きなスケールでウェブとモバイルのオーディエンスにリーチすることが可能になる。広告事業のターゲットは10億人単位になるかもしれない。

〔ティム・アームストロングのメモにあるように〕最終的にVerizonはデジタル広告事業でGoogle、Facebookと競争できる存在になるつもりらしい。オンライン広告は現在、シリコンバレーのこの2社にほぼ独占されたかたちだ。Verizonは3番目のプレイヤーになろうとしているようだ。

反トラスト法当局により買収が承認されるとして、Verizonはさらに2つのハードルを超えなければならない。直近の四半期決算の電話記者会見でYahooは社員8800人、契約社員700人を擁していると述べた。これに対してAOLの社員は6800人だ。どちらも数千人という規模の2つの会社を統合するのは誰にとっても容易な仕事ではない。第二に、 Yahooは近年相当の赤字を出し続けている。VerizonはYahooをまず黒字体質に変える必要がある。そうでなければYahooはAOLの足を引っ張る存在になってしまう。

プレスリリースで VerizonはYahoo買収の理由を説明し、同社には10億人のユーザー(うち6億はモバイル)がいることを挙げた。またYahooが数多くの優良ブランドを所有していることも指摘している。Verizonはニュース、スポーツ、Yahoo Mail(月間アクティブ・ユーザー2億2500万人)を例示した。広告媒体と広告テクノロジーではBrightrollFlurryGeminiを例に挙げている。面白いことに VerizonはTumblrについては触れなかった。

Yahooが公式に 事業売却の可能性を認めたのはこの2月だった。【略】マリッサ・マイヤーが 2012年にYahooに加わったとき、Yahooを再活性化するビッグ・プランがあるということだった。マイヤーやモバイル化の努力を倍加し、人材獲得のためのスタートアップ買収を10回以上実行した。Tumblrは11億ドル、Brightrollは6億4000万ドルだった。またYahoo Mail、Flickr、Yahoo Weather、Yahoo Messengerなど既存プロダクトのアップデートにも力を入れた。

しかしこうした努力もYahooの収益構造を目立って改善するには至らず、ついにオンライン事業の売却という結果になった。

今から考えれば、売却先は当初からVerizon以外なかったかと思えるがYahoo買収に関心を示した企業にはAT&T、TPGグループ、Dan GilbertのQuicken Loans関連の投資家などがある。Verizonはこの後電話記者会見を予定しており、さらに詳しい説明が聞けるかもしれない。このニュースが流れた後のVerizonの株価は、市場取引スタート前の数字だが、特に動きがない((+0.21%)。 この買収の情報は金曜日にリークし始め、株主、投資家は今日の発表を十分に予期していた。

Screen Shot 2016-07-25 at 1.52.11 PM

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Appleの株価急落の原因を検討する

SAN FRANCISCO, CA - OCTOBER 22:  Apple CEO Tim Cook speaks during an Apple announcement at the Yerba Buena Center for the Arts on October 22, 2013 in San Francisco, California.  The tech giant announced its new iPad Air, a new iPad mini with Retina display, OS X Mavericks and highlighted its Mac Pro.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

昨日(米国時間4/26)、Appleが第2四半期の決算を発表した後、時価総額は400億ドル減少した。これは深刻な事態だ。時間外取引でAppleの株価は最大で8%もダウンした。

事態は考えられる限り最悪のコースをたどった。まずAppleは売上と利益で予想を達成できなかった。iPhoneの売上はとうとう対前年比で崖から転落したように減少した。Appleが発表した第3四半期のガイダンスはきわめて生温いものだっった。簡単にいえば、良い四半期だったとはいえない。Appleはこの点について比較の対象となる昨年の四半期の業績が好調過ぎたことと世界経済のマクロな問題を指摘している。

まずは発表された数値をまとめておこう。

  • 売上:506億ドル。 昨年同期は580億ドル。アナリストは520億ドルを予想していた。
  • 利益:一株あたり1.90ドル。アナリストの予測は2ドル。
  • ガイダンス:第3四半期の売上予測は410億ドル、利益は43億ドル。前年同期は496億ドルでアナリストの予想は474億ドル。
  • iPhone販売:5120万台はアナリストの予測、5070万台を上回ったが、昨年同期の6120万台を下回った。
  • iPad販売:1030万台。アナリスト予測は940万台。昨年同期の実績1260万台に届かなかった。
  • Mac販売: 400万台はアナリスト予測の440万台、前年同期の実績460万台をいずれも下回った。
  • 中国本土:これまできわめて強い成長を遂げてきた地域だが、売上は125億ドルで昨年同期の実績、168億ドルを大きく下回った。

アナリストの予測を上回った点が多少はあったが、売上実績とガイダンスは低調で、市場の反応はAppleに大きな打撃となった。一日で8%の株価急落というのは同社として初めてのことだ。なるほどAppleは昨年1年で20%の下落を経験しているが、これほどドラマティックな株価の変動は過去になかった。ドラマティックな演出はAppleの得意分野だが、これはそれとは異質だった。

さまざまな数字に株式市場は反応する。プラスに働くのはまず利益だ。アナリスト予測の達成は良いニュースで、予測を上回るならなおさら良い。しかしApple、Twitter、Facebook、Alphabet(Google)のような大企業となると、成長性が株価の動きに占める割合がおそろしく大きくなる。Appleは過去13年で初めて売上の前年同期割れを発表しただけでなく、次の四半期の見通しも同様に暗いことを認めた。

同日に決算を発表したTwitterと比較してみよう。Twitterは売上でアナリスト予測を上回ることに成功した。さらにユーザーベースも意味ある成長を達成していた。Twitterの今期の月間アクティブ・ユーザーは3億1000万で、前年同期の3億500万を上回った。しかしTwitterの発表によれば、ガイダンスの売上予測は5億9000万ドルから6億1000万ドルの間で、アナリストの第3四半期の売上予測、6億7800万ドルを大きく下回った。着実に売上を伸ばしているものの、ユーザーベースの拡大が歯がゆいほど遅い(ときおり減少する)企業としてはまことに不本意な決算となった。

では別の企業と比較してみる。Alphabetはアナリストの予想をドラマティックに上回り、一時、時価総額でAppleを上回った。 クリックあたり単価(要するに1クリックの価値)が連続的に低下しているにもかかわらず、売上が健全な成長を見せたからだ。ところがAlphabetはc売上でも利益でもまったく弱気」であることが発表されて株価はただちに5%も下落した。

そこで話はAppleに戻る。前四半期、Appleの成績は業界関係者の期待に届かなかった。関係者は皆これが一時のことなのか、将来も続くのかいぶかった。その結果はやはり下落傾向が続いた。Appleは2期連続でウォールストリートの予測を下回った。これまでAppleの株価は健全な成長をもっとも長く続けてきた。単にIT分野の話ではなく、世界を通じてそうだった。もしAppleの株価が期待どおりアップしないなら、テクノロジー業界全体に(為替変動など)何か問題があるはずだと考えられていた。しかし最近の四半期では、Appleの成長の核心であるiPhoneに陰りがみられることがはっきりしてきた。

公開企業であることは一般投資家の意思に株価が左右される可能性を意味する。一般投資家は独自の利害にもとづいて行動する。 つまりカール・アイカーンのような「もの言う株主」はApple株を大量に取得することによって、一般投資家の利害を背景にAppleに強い圧力をかけけて不本意な行動を取らせることが可能となる。 なるほどAppleは群を抜いて巨大な企業だが、独自の戦略のみで行動することはできない。〔株式を公開している以上〕Appleはウォールストリートをハッピーにしておく必要がある。

ウォールストリート側からいえば、AppleにはもっとiPhoneやiPadsを売り、さらに新しいビジネス分野を発見してもらいたい。これに対してAppleはiPhoneとiPadをアップデートし、iPad ProやiPhone SEといった新製品を投入してきた。またサービス面でもApple Musicをスタートさせた。これは期待どおりに成長すれば売上の新しい柱のひとつなり得る。同社の発表ではApple Musicにはすでに1300万の有料ユーザーがおり、今期の売上は60億ドルに達したという。全体の売上からすればまだごく一部だが、すくなくとも新しい成長の可能性は見せたことになる。

今回の株価の下落はもうひとつ、人材の獲得という面でも問題となる。Appleのような企業に就職した場合、報酬のかなりの部分がストック・オプションで支払われ、いわば半凍結状態となるのが普通だ。株価が下落すれば、報酬は当初の期待を下回る。現実に報酬の目減りを経験している社員はAppleよりもっと安定した成長した成長が見込める企業への転職を考えるようになる―たとえばFacebookだ。あるいは成功すれば巨額のリターンが期待できる起業という道を選びたくなるかもしれない。Appleが今後も成長していくためにはきわめてイノベーティブな人材が必要だ。そうした人材を獲得し、保持するためには十分な報酬を支払えなくてはならない(Appleは貯めこんだ巨額のキャッシュに当面手を付けるつもりはなさそうだが)。

Appleにはウォールストリートを満足させるために打つ手がいつくかある。利益を株主に還元する、あるいは自社株買いによって株価をアップするのがその一つだ。しかし株価を投資に見合うレベルに引き上げるためにはAppleは本業で成長を続けなければならない。一株当たり利益のアップや自社株買いはたしかに役立つが、それは投資家の利益を真剣に考えていることを市場に向けてアピールするという効果が大半を占める。問題はAppleの成長であり、成長が続くかぎりウォールストリートは満足し、Appleもフリーハンドを得る。

それが実現できない場合、Appleは戦略の練り直しを必要とするだろう。さもなければ、ここ数年、Appleの実績に不満の声を上げてきた株式市場との危険な対決に踏み込むことになる。

〔日本版〕Appleの株価はこのページなどに掲載されている。4月28日早朝(JST)のAppleの株価は97.82ドル、時価総額は5386億ドルなどとなっている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Evernoteの波乱続く―Alex Pachikovなど著名副社長2人が辞任

2015-12-24-evernote

Evernoteでは依然として過渡期が続いているようだ。それを証拠立てるように、国際的にも有名な副社長2人が同社を離れたことが伝えられた。パートナーシップ開発担当副社長でEvernoteの設立最初期から9年以上在籍していたAlex Pachikovが来年1月に新天地を求めることをTechCrunchはつかんだ。またLinkedInのプロフィールによれば、ブランド担当副社長のAndrew Sinkovも最近Evernoteを離れている。

こうした人材の流出の5ヶ月ほど前に、CEOで共同ファウンダーでもあるフィル・リビンがエグゼクティブ・チェエアマンに移され、元Googler幹部のChris O’NeillがCEOのホットシートに座るという人事があった。リビンは名門ベンチャーキャピタルのGeneral Catalyst Partnersのマネージング・ディレクターも兼任しており、EvernoteのCEOを退くことになったのは「日々の決定を行う時間が取れなくなったのが理由であり、まったく自分の意思で行われたものだ」と強調している。しかしTechCrunchは先月、COOのLinda Kozlowskiが今年一杯で会社を去るという情報を得た。

EvernoteもPachikovも辞任の件の取材には回答していない。

Evernoteにとって2015年は波乱の年となった。経営陣の交代に加えて、同社はスタッフと業務も一新した。海外オフィス3箇所を閉鎖し、47人を解雇し、Evernote Food、Skitch、Clearly、Pebble Watchという人気アプリをシャットダウンすることを発表した。(Mac版のSkitchのみ斧を免れたらしい)。Evernoteではこうした改革を「コア・ビジネスに資源を集中するため」としている。

Pachikovのチームにはさらに大きな改革が行われ、ある情報源はこれを「新スタッフによって旧メンバーは大虐殺された」と表現した。 チームのカギとなってきた人材、パートナーシップ担当ディレクターのTammy Sun、パートナーシップ担当上級ディレクターのPearl Woon-TaiはボスのPachikovに習うように同社を離れた。スタンフォードの卒業生であるWoon-TaiはFacebookに移り、現在そこでモバイル事業のパートナーシップを担当している。

主要スタッフの離職はそれだけでは会社がトラブルに直面していることを意味しない。投資家はEvernoteのビジネスを詳細に検討した結果、不調に陥っており経営の根本的立て直しが必要だと結論したようだ。Evernoteの新CEO、O’NeillはEvernoteを支えるビジネスの柱を新たに構築しなければならないが、それを全く新しい陣容で実行できるのはあながち悪いことではないだろう。結局ビジネスでは結果がすべてだ。Evernoteにとって2016年は非常に重要な再出発の年になる。

画像: WhatleyDude/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

数値経営入門―スタートアップは常に優れたメトリクスを利用して課題を把握しよう

2015-12-18-metrics

私はベンチャーキャピタルのパートナーという立場上、たくさんの取締役会資料を見てきた。どれも手作業で美しく仕上げられ会社の現状を細かく報告している。ところが、こういう美麗な報告書の山は私を不安な気持ちにさせる。

私は部内でサービスの管理のために利用されているダッシュボードのスクリーンショットの方がずっと好きだ。こういうスクリーンショットは取締役会向けに慎重に用意されたものではない。毎回取締役会には同じフォーマットのスクリーンショットを提出してくれるとありがたい。

その理由は、一見皮肉な事実だが、取締役会向け資料が重要なのは取締役会が重要だからではない。会社のパフォーマンスを正確に描写している限りにおいてその資料は会社経営チームにとって重要なものとなるのだ。だから会社経営チームは取締役会向け資料ではなく、ダッシュボードにもっと注意を払う必要がある。

優れたメトリクス〔客観的基準に基づいて収集された数値〕は業種を問わず共通に比較できる要素を備えている。比較できるだけでなく、即座に誰でも理解でき、そこから会社が必要としている決定がどのようなものか分かる。比較できるというのはつまり、メトリクスが時系列やユーザー別に整理されており、自社とライバルの動向がひと目で分かるようなもの、ということだ。優秀なメトリクスは、取締役会で常に問題となるあの質問、「この情報が事実であるなら、次にどのように行動すべきか?」に答えを与えてくれる。

これに対してわれわれが「虚栄のメトリクス」と呼ぶのは、たとえばページビューの数だとかFacebookの「いいね!」の数だとかいうような収入に直接結びつかない数値だ。虚栄のメトリクスには実質的な情報は含まれていない。今後の行動の指針にもならないし、ビジネスのパフォーマンスを改善する方法も教えてくれない。こういうものは取締役会の資料として無意味だ。

Arnold CapitalのPaul Arnoldは「大半のメトリクスで、時間はかかるが、私は最後には絶対値と動向とを見分けることができるようになる。会社を運営するにあたっては後者が決定的に重要だ」と言っていたが、私も同意見だ。

トップクラスの CEOはメトリクスに基いて会社を運営する。ところが大半のCEOにとってこれは不自然な行動に思える。人間ではなく数字を重視しなければならないからだ。数字を正しく認識し、その動きに対して自分も責任を持ち、部下にも責任を持たせるというのは非常に難しい任務だ。どうしたらそのような任務に正しく取り組めるだろう?

決定的に重要なメトリクスを選び出す。 どんな会社の場合であっても、われわれが求める財務情報は、予算、粗売上、販売原価、粗利益、人件費、純損益、キャッシュバーンレート(現金消耗率)、手持ちの現金及び現金等価物、等々だ。

IT系スタートアップ企業の初期段階の重要なメトリクスには、プロダクトのアクティベーション、エンゲージメント、リテンションなどが含まれる。ここでカギとなるのはその会社のプロダクトが本当にユーザーのニーズを満たしつつあるのかどぷかという点だ。それによってユーザーがプロダクトを今後も使ってくれるか、理想的には、そのプロダクトなしの生活は考えられないほどに気に入ってくれそうかどうかが占える。MetricStory,のCEO、 Josh Gebhardtの観察によれば、B2Bプロダクトの場合、各種サイロ的ビジネスにおいて垂直ないし水平の切り口で見た利用率の変化は優秀なメトリクスとなるという。

これらに加えてわれわれは投資先企業に対して次のような財務情報の提供を求めるのが普通だ。

SaaSのスタートアップThe Better Software Company(われわれのffVCのポートフォリオの1社)のCEO、Steve
Codyは「われわれに必要とされる成長を達成するためには社内文化をそれに適合させると同時に、セールスのカギとなる次の3つの分野のメトリクスに対する注意を怠らないことだわれわれば顧客数、MRR額、顧客の重要行動の3分野をこ常にライブでモニターしている。これらは会社の運営にとっていわば主要な燃料ともいうべき要素だ」と述べている。

また、Lean Analyticsは、これら一連のメトリクスに注目することをさらに広い範囲のスタートアップにも勧めている。

https://lh6.googleusercontent.com/Cr9y-0Ev08WrsUQF-hZlPTc8PTLC3YGR1x0NDotIY1QTt98n_J6mLoKADkNhaHunL7vlkA1TA9L2XI5MxnYZDOCW9JowEg9_OWCmZpYHHXX0_Z0uhexLm1jayX7bkIFfTL362GE

経営チームのためのダッシュボード。 現在さまざまなダッシュボード・ツールが利用できる。AnaplanChartMogulDomoFathomGeckoboardGoodData,、RJ MetricsMicrosoft Power BIMode AnalyticsTableauなどだ。高いレベルで経営の概要を知りたい場合、TrustRadiusが ビジネス・インテリジェンスを得る助けになるだろう。この点ではG2 Crowdも役立つ。

社員のパフォーマンスをモニタする。この分野では Betterworks15Fiveが優秀なツールだ。

ライバルとのベンチマーク比較。 ベンチマーク化されたメトリクスはことの他に役立つ。注目している分野においてどれが最高水準であり、どれが平均的な数字であるかひと目で分かるからだ。Google Analyticsは先ごろ、ベンチマーク機能を提供することを発表した。Compass.coPayScaleもそれぞれの分野のメトリクスを知るために役立つ。

事前の財務予測と現実の達成度を取締役会に報告する。 仮に会社が極めて初期段階にあり、まだ正式の取締役会が開かれない場合でもファウンダーと経営チームは取締役会と同様のアドバイザーの組織を作っておくことを強く勧める。私は以前、取締役会(同様のアドバイザー会議を含む)のための提出資料のテンプレートを作っておいた。またシリコンバレー最大のVCであるAndreessen Horowitzのスタートアップ・メトリクスという記事も参考になる。

われわれのベンチャーキャピタルのCFOのグループはスタートアップがメトリクスを利用することを積極的に助けている。私の同僚でポートフォリオ・アカウンティングの責任者を務めるCristian Valbuenaは最近3日間にわたってサイト上でセミナーを開催し、メトリクスの利用に関連する問題を扱った。

たとえばChristianは、「ウエブサイトへの訪問者」というメトリクスは、1)サイトを訪れた実際の人数が不明(1人のユーザーが100回訪問することもあれば、100人が1回ずつ訪問することもある)、 2) 訪問者の行動の結果が不明(そのまま立ち去ったのか、売上に結びついたのか?)、などの点を指摘した。

つまりユニーク訪問者数とコンバージョン率の双方を組み合わたものでなければ良いメトリクスとはいえないわけだ。良いメトリクスは現状を正確に理解する助けになるだけではなく、今後どのような行動を取らねばならないかを知るうえでも非常に役立つ。

ベンチャーキャピタリストとしてのこれまでの経験から、われわれは論理的に正しい良いメトリクスを導入し、一貫して利用する経営チームは成功を収める確率が非常に高くなることに気づいた。われわれはこうした有望なグループに読者の企業も加わることを強く願っている。

画像:robuart/Shutterstock

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Yahooが本体のインターネット事業を売却、との報道で同社の株価は7%急増…残るはAlibabaとYahoo Japanの持ち株のみ

yahoo-logo

The Wall Street Journalの記事によると、Yahooの取締役会は、今後の複数の会議において、同社の中核事業の売却を検討する。

そして当然ながら、このニュースのあとの時間外取引でYahooの株価は7%急増した。同社の中核事業はおおむね低迷していたし、同社が保有しているAlibabaの持ち株の方が、Yahoo本来の時価総額よりも高くなっていた。その中での株価急増は、意味が大きい。

WSJの記事によると今後の会議で取締役会は、Alibabaの持ち株と同社のインターネット資産の両方を売るか否かを決定する。売却を提案されている同社のAlibaba持ち株は、税の問題がらみで売るのは容易でないと報道されて以来、今後の取り扱い方針が未定のままにされていた。

一方同社のぱっとしないパフォーマンスにより、今年の株価は30%以上下がっていた。

同社の、AlibabaとYahoo Japanの持ち株を合わせた額に比べると、株主たちの評価による同社の中核事業の実質価値は、ゼロ以下である。つまり会社の将来性に対するポジティブな確信がほとんどない、ということだ。今や株主たちにとって断然重要なのは、Yahoo JapanとAlibabaの持ち株の方だ。

〔ここにグラフが表示されない場合は、原文をご覧ください。〕

[graphiq id=”fg7vHLreF7″ title=”Yahoo Inc. (YHOO) Stock Price – Trailing Year” width=”600″ height=”487″ url=”https://w.graphiq.com/w/fg7vHLreF7″ link=”http://listings.findthecompany.com/l/19200951/Yahoo-Inc-in-Sunnyvale-CA” link_text=”Yahoo Inc. (YHOO) Stock Price – Trailing Year | FindTheCompany”]

 

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

巨大企業が支配するストレージ市場に参入したPure Storageの戦略とは…ストレージのド素人を雇うことだった

[筆者: Elisa Schreiber, John Colgrove, John Hayes]

2009年に創業されたPure Storageは、EMCやHPなどの既存勢力が30年以上も支配してきた業界に参入した。協同ファウンダのJohn “Coz” ColgroveとJohn Hayesは、既存の大企業と競合して負けないためには、まったく新しいやり方のストレージ企業を作らなければならない、と承知していた。

そのためにCozとHayesは、ストレージの既成概念にとらわれないゼロからのスタートが必要だ、と考えた。彼らはストレージに関して経験のない消費者企業の技術者を数名雇用し、彼らがどんなやり方をするか見守った。Cozは語る、“やり方を知らない仕事を任せられたら、人はなんとかして自分なりのやり方を見つけようとする。ほかの人たちがどうやってるか、なんてどうでもいいんだ”。彼らが作ったチームは、スキルも、物づくりに対する考え方も、さまざまな人たちの集まりだった。

事業をスケールするために助けが必要になったとき二人は、彼らがどんなリーダーを求めているのかを考えた。“名ばかりのトップは要らなかった”、とCozは回想する。彼らが求めたのは、いろんな人がその人を慕ってくるような人物で、自分たちの既存の企業文化との相性も良く、そして製品に貢献できるような人だった。そして、ビジネスの洞察力と技術力を兼ね備えた人物として、Scott Deitzenを迎えた。

同社は今も成長が続いているが、CozとHayesはチームのイノベーション意欲が衰えないことを求めている。従来のR&D部門や“部外秘”プロジェクトなどと違ってPure Storageには“スタートアップの中のスタートアップ”があり、そこが最初からエンドユーザのユースケースを想定しながら新製品を開発している。“純粋な”研究プロジェクト、というものはない。開発チームはメインのプロダクトチームと一緒になってイノベーションを継続し、その成果を現製品と開発製品に反映している。“イノベーションは製造ラインの上で生まれる、がうちの哲学だ”、とHayesは語る。

〔訳注: 筆者三名の経歴等は原文を見てください。〕

[原文へ]。
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

好調Facebook、第3四半期売上は45億ドル―世界のユーザーは15億5000万を超える

2015-11-05-facebook-mau-2015

Facebookの成長は止まる気配がない。世界のユーザーは15億5000万人を超え、2015年第3四半期の決算によれば、売上はアナリストの予想を上回る45億ドルに達し、1株当たり売上は0.57ドルとなっている。直前の第2四半期の売上は40億4000万ドルだったから、11.3%アップの大躍進だ。

Facebookが毎月発表しているユーザー数は前年同期比で4.02%急増している。 成長率自体、 2015年第2四半期には3.47%だったから今期に入って急増したことになる。

先進国市場ではFacebookのユーザー数が飽和状態に近づいているという観測も出ていたが、途上国を中心に世界でまだまだ多くのユーザーを集めつつあることがわかる。

ウォールストリートのアナリストはFacebookの今期売上を43億7000万ドル、1株当たり売上を0.52ドルと予想していた。

Facebook DAU q3 2015

メディアの注目を集めるのはFacebookの総ユーザー数だが、ビジネスの状態をもっと正確に反映するのは毎日のアクティブ・ユーザー数(DAU)だ。Facebookの毎日のDAUは10億1000万人で、8月末は1億人だった。直前の第2四半期の月間アクティブ・ユーザー(MAU)は9億6800万人だったから、DAIUをMAUで割った値、つまり毎日Facebookを使う月間アクティブ・ユーザーの割合は65.1%ということになる。以前から変わらず続く「近頃のFacebookはださくなった」という大合唱にもかかわらず、大半のアクティブ・ユーザーは毎日Facebookをチェックしていることがわかる。

Facebookの今期のモバイル・ユーザーは13億9000万人で、第2四半期は 13億1000万人だった。 毎日のモバイル・アクティブ・ユーザーは8億9400万人(第2四半期は8億4400万人)なので、モバイル・ユーザーは今やFacebookの全アクティブ・ユーザーの78%を占めるという結果となっている。モバイル・デバイスのみでFacebookを使うユーザーは7億2700万人となっている。

いささか驚くべきことだが、売上をもたらす中心となっている市場、すなわちアメリカとカナダで、Facebookは400万人の新規ユーザーを獲得している。つまりFacebookはさまざまな観測とは逆に、北米市場で、これまでFacebookを使うのをためらっていた層や、高齢者、正規にFacebookを使える年齢に達したティーンエージャーなどの獲得に成功していることを示すものだ。

Facebook Ad Revenue

過去3ヶ月のFacebookの GAAP標準の純利益、つまり実質的純利益は8億9600万ドルで、これも直前四半期の7億1900万ドルを大きく上回っている。この四半期にFacebookがMessengerを強化してパーソナル・アシスタントを全ユーザーに公開する準備として人工知能のために巨額の投資を行ったことを考えると、利益額はいっそう印象的だ。決算の発表と同時に、時間外取引で、Facebookの株価は 2.3%ほど急上昇した。

Facebookが先端的テクノロジーの開発に力を入れながらもコストをコントロールできる能力を示したことで、市場は同社が人工知能や仮想現実といった未来的分野でもリードを続けられるはずだと確信を持ったようだ。

明るい決算発表の中で唯一、暗雲となり得る数字は、総売上に占めるサードパーティーからの支払売上の割合の低下が止まらないことだろう。これはゲームが急速にモバイル化するにつれ、一時Facebookの売上の大きな部分を占めていたウェブ・ゲームのプラットフォームが死滅しかけていることによる。ただしゲームの売上は第2四半期の2億1500万ドルから今期2億200万ドルに低下したとはいえ、Facebookの総売上の5%以下にすぎないので、さほど大きな懸念とはいえなのいだろう。

[アップデート:: D決算説明の電話会議で大きな発表があった。Facebookのユーザーはビデオを毎日平均して80億回再生しているという。今年4月時点では平均40億回の再生だったのでほぼ倍増したことになる。]

facebook-video-gif-clear-2

全体としてみると、第3四半期はFacebookが長期的展望に立った戦略的投資に力を入れつつ、世界的に規模を拡大し、新たな収入源を獲得するのに成功した期間といえるだろう。Facebookは今期、
ショッピングビデオ視聴の面でテストに力を入れた。どちらのも将来、重要な収入源となるはずの分野だ。

また広告テクノロジーでCanvasという新しいフォーマットがテストされた。私はインスタント広告(Instant Ads) というネーミングが気に入っている。こうしたリッチ・コンテンツによるマーケティングはFacebookアプリのユーザーの広告クリック数をアップさせる効果がありそうだ。

今や11歳を迎えたFacebookだが、この決算発表を見ると、時の試練に立派に耐えたと評価できるだろう。

Facebook ARPU 2015 Q3

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

バトル応募企業紹介:難病での休職、妻の産休手続き——起業家の経験が生んだ労務支援サービス「SmartHR」

150811smarthr01

スタートから5年を数えるOpen Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」。4月に開催された第10期のデモデイで最優秀賞に輝いたKUFUのサービス「SmartHR」がクローズドベータ版のサービスを開始した。事前に募集をしていた約300社に対して順次アカウントを提供している。あわせて、SmartHRのサイト上で、新規のクローズドベータ版ユーザーも追加募集している。

SmartHRは「入退社の書類作成」「社会保険の手続き」といった労務手続きをサポートするサービスだ。例えば入社時の書類作成の場合、新入社員の氏名や住所などを入力すると、印刷すればそのまま利用できる役所提出書類などを自動で作成。さらに画面上にToDoリストを表示し、必要な作業を指示してくれる。今秋をめどに政府が提供する電子申請システム「e-Gov」と連携し、オンライン上での書類申請も可能になるという。ビズグラウンドの「Bizer」のほか、freeeやマネーフォワードが提供するクラウド会計サービスの機能の一部が競合にあたるだろうか。

自身の病気、妻の産休がサービスのきっかけに

KUFUの設立は2013年1月。代表取締役の宮田昇始氏は、かつてスタートアップで勤務していたが、数万人に1人発症するかどうかという難病にかかって顔面左半分麻痺、聴覚障害、視覚障害という経験をしたのだという。しばらく休職して病気から回復したが、自分の生き方や働き方を考えた上で独立しようとなったのだそう。そこでフリーランスで活躍していたデザイナーやエンジニアと作ったチームが同社の母体となった。

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

受託を受けながらいくつかサービスを企画。その1つを持ってonlabの門を叩き、見事にプログラムに採択されるも、「スタートして1カ月くらい『本当にそこにユーザーの課題があるのか』とヒアリングを続けていた。深掘りして考えて行くと課題があるのか分からず、数えるだけでも9回のピボットをした」(宮田氏)のだという。

そんなタイミングで思い出したのが前職での休職経験。その際、休職時の手当の申請などで社会保険労務士(社労士)にはお世話になったのだそう。また時を同じくして宮田氏の妻が産休をすることになったが、会社で手続きをしてもらえなかったために宮田氏が代行。その面倒さを痛感したという。

「ここにユーザーのニーズがないかと思ってヒアリングしたところ、特に10人程度の会社だと、労務の専任者がおらず代表が労務手続きをしているというケースが多かった。コストが合わないため、労務は面倒だが社労士を雇えないのだという。そういった課題を解決できるサービスを考えた」(宮田氏)

デモが動くようになって各所に話をしたところ、反応が良かったのは小規模の会社だけではなかった。「実は30〜50人規模の会社の反応が一番いい。その規模でも労務専任の人材がおらず、経理や人事が兼任している状況」(宮田氏)。現在はベータ版でサービスを提供しているため、利用は無料。今後は月額課金を中心にしてサービスを提供する予定だが、詳細については現在検討中だという。

同社はOnlabのほか、DGインキュベーションおよび非公開の1社からシードマネーを調達している。金額については非公開となっている。

なお同社は、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のイベント「TechCrunch Tokyo 2015」の目玉企画「スタートアップバトル」に応募頂いている。

スタートアップバトルは2日目の11月18日午後に予定している企画で、100社以上の応募の中から書類審査を勝ち残った約10社が投資家や起業家、経営者、スタートアップ関係者、大手ネット企業の事業担当者などを含む観客の前でプロダクトのお披露目をするコンテストとなっている。

もちろんSmartHRが登壇するかどうかは審査が終わるまで分からないが、早く正式版のサービスをお披露目してもらいたいと期待している。

【TechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルの応募はこちらから

【TechCrunch Tokyo 2015の前売りチケット購入はこちらから

HTCの企業価値が事実ゼロに―製品に深刻な脆弱性も

2015-08-11-htc-grip-and-htc-one-m9

一時はスマートフォンのトップ・ブランドの一角を占めたHTCの企業価値が事実上、ゼロになった。今年に入って株価は60%も下落していたが、週明けにさらに9.8%下げ、ついに現在の時価総額がHTCの手持ちキャッシュの額より低くなった。株式市場はキャッシュを除くHTCの工場、ブランドその他一切の資産の価値をゼロとみなしているわけだ。

さらに悪いことに、HTCのOne Maxをアンロックするための指紋認証データが暗号化されず、だれでも読める状態で格納されていることが発見された。セキュリティー上、最悪の違反である。ハッカーは簡単に /data/dbgraw.bmpファイルを読みだして認証データを得ることができる。

一言でいって、HTCはまずいことになっている。

われわれのJon Russell記者も書いているとおり、HTCも対策を取らなかったわけではない。しかしHTCやSamsungは低価格モデルで新興中国勢との競争にさらされており、フラグシップモデルではiPhoneという強力きわまりないライバルが存在する。

2006年にHTCが携帯電話を製造し始めたとき、市場はいくつかのセグメントにはっきり分かれていた。ひとつはキャリヤの援助で事実上無料で提供されるベーシック・モデルで、搭載されたJavaプログラムができることといえば電話帳の管理くらいだった。中位のモデルはHTC WizardやSamsung Blackjackなどで、無数の新製品が毎月発表されていた。最上位にはビジネスパーソンの向けのBlackberrykeがあり、やがてiPhoneが登場し、GalaxyのようなAndroidのフラグシップモデルがその後を追った。携帯電話入門者向けの安価でベーシック製品から、マニア向けの高機能上位モデルまで、価格による住み分けができていた。

しかし現在の市場は「iPhoneとそれ以外」に色分けされている。スマートフォン市場は全体として飽和点に近づいている。製品アップデートのサイクルも長くなっている。中間価格帯の市場が事実上消滅し、ユーザーは高価なモデルを長く使う層と、恐ろしく安い機種を買う層に二極化した。

今週、HTCはワンツーパンチを食ってしまった。株価の続落と製品の脆弱性の発見はさらなる株価の下落を招き、フランド・イメージも低下するだろう。 HTCはMotorolaを見習って真っ逆さまに転落するのをなんとか食い止めることができるかもしれない。しかし市場には無数のスマートフォンが溢れており、ビジネス環境は非常に厳しい。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Webサイト作成のWixがプロのWebデザイナー(そして小企業の経営者)を育てる教育事業WixEdを開始

screen-shot-2015-07-10-at-11-10-04-am

DIYでWebサイトを作れるサービスWixが、今度は、ユーザに本職のWebデザイナーになってもらうための教育訓練サービスを始めることになった。

今日(米国時間7/10)同社が立ち上げたWixEdは、無料のオンライン教育事業で、これまでWixを使うこと==既製のテンプレートを使うことだったユーザに、自分でWebサイトデザインビジネスを立ち上げるまでに必要な知識と技能の一から十までを教える。

コースは三部分から成り、(1)Wix WebmasterクラスではWixが提供するツールを使って行うWebデザインを教える。(2)(3)そしてビジネスクラスとマーケティングクラスでは、小さなネットビジネスを経営するために必要な、あらゆる知識を教える。それには、SEO入門、eコマース、会計経理、そして写真術まで含まれる。

Wixのインストラクタ集団がいつでも質問に答え、宿題の結果を評価する。宿題には、本物のネットビジネスのためのWebサイトの構築、もある。

WixでWixEd事業を担当するYuval Finkelsteinによると、“Webサイトの作り方を学ぶだけではなくて、小企業のオンラインプレゼンスを完全に統括できる人物を育てる”、という。“オンラインのマーケティングは2年前ぐらいから強力になっているが、それを今では小企業も利用できる。必要なのは、それを使いこなせるプロになることだ”。

Screen Shot 2015-07-10 at 11.53.28 AM

WixはWixEdを3年がかりで秘かに作ってきたが、1か月かけて行った小規模なベータでは、ユーザの80%が少なくとも2本のビデオを見ており、またすべてのビデオの30%が、最後まで視られたことがわかった。

ビデオ教材は、著作権の法律なら専門の弁護士、Google AnalyticsならGoogleの社員というように、それぞれその道の専門家を起用した。

Finkelsteinの見通しでは、全コースの終了に要する時間は平均で2〜3週間だが、ベータ期間中には全コースを週末の3日で終了した強者(つわもの)もいた。

Webデザインや小企業の経営について学べるコースは、オンライン教育の先輩格CourseraやUdemyなどにもある。そんな中でトップのユーザ評価を得たいと欲張っているWixは、WixEdの差別化要因として人間インストラクタによるサポートを導入し、また教材コンテンツも細心のキュレーションにより、効率的な学習過程の構成を心がけた。

“理論は、実用知識を理解するための必要最小限にとどめた”、とFinkelsteinは語る。“Webサイトを作って運営するために、Webの歴史や初期のSEOテクニックについて知る必要はないからね”。

合衆国には小企業のオーナーが数百万もいるが、WixEdを卒業した者のクライアントベースとしてとくにFinkelsteinが想定しているのは、6800万もいるWixのユーザの一部だ。彼らの中には、本物のビジネスのためのWebサイトを作ることになったら、自作よりも有資格のWixプロフェッショナルを起用する人が多いだろう、と彼は構想している。

Finkelsteinによると、Wixは、この事業の今後の急速な拡大にあらかじめ備えており、また、今後も永久に無料だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

会社経営のすべての雑務を引き受けるGeniacが大手会計事務所Grant Thorntonから£22Mを調達

splash

“ビジネス管理”という、あまり聞いたことのない分野に挑戦しているロンドンのGeniacが、イギリスの大手会計事務所Grant Thornton UK〔日本法人〕から2200万ポンドを調達した。Geniacはまだ、ベータである。

GeniacのファウンダMichael GalvinとEduardo Martinezは、元Accentureのコンサルタントで、企業の本業以外の管理雑務をすべて、自分たち一箇所で引き受けることを目指している。

“サービスとしてのオフィス(office as a service, OaaS)”を自称する同社は、ユーザ企業の経理会計、税務、法務、人事管理(+給与事務)、経営管理のすべてを引き受ける。

同社はロンドンとグラスゴーで向こう1年間は人集めに励む、という。

Geniacは今後、イギリスと海外でGrant Thorntonの企業支援事業win businessesの一環として組み込まれる。それは、DeloitteやPwC、E&Yのような経営コンサル業務のスタートアップバージョンだ。

同社の利用は月額会費制で、料金は企業のサイズによって異なる。

主な競合他社は、言うまでもなくGoogleとMicrosoftだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

レジャー予約サイト運営のアソビューがJTBと資本業務提携、6億円の資金調達

screenshot_334

遊び・体験の予約サイト「asoview!」を運営するアソビューは4月22日、JTB、YJキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、ジャフコを引受先とする総額約6億円の第三者割当増資を実施した。JTBとは出資とあわせて業務提携も締結している。

asoview!は2012年にスタートしたアクティビティ予約サイト(当初はサービス名が「あそびゅー!」、社名はカタリズムだった)。2013年10月にYahoo!トラベルと連携。2014年3月にはグロービス・キャピタル・パートナーズとジャフコを割当先とした約2億円の資金調達を実施している。ちなみに創業期には現在YJキャピタル取締役を務める小澤隆生氏がエンジェルとして投資をしている。

同社によると、この1年間でasoview!の提携店舗数は3倍以上の約2700社に増加、申込数は非公開ながら、約5倍に拡大しているのだそう。今回の資金調達をもとに、サービスの改善と予約管理システムの機能拡充を図るほか、サポート体制の強化をすすめる。さらにインバウンド(訪日外国人観光客)向けコンテンツを整備。さらに地域行政・観光協会向けのソリューション提案人員を拡充するとしている。

またJTBとの業務提携では、以下の5分野を中心に、着地型商品(アウトドアアクティビティや文化体験など、旅行目的地側が企画・運営する観光商品のこと)の企画・販売などを進める。

Web販売:JTB」及び「るるぶトラベル」とasoview!の相互商品提供及び連携等

・エリアプロモーション:地方自治体及び観光協会向けの着地型コンテンツを利用したプロモーションサービス及び販売等

・インバウンド:訪日旅行オンライン予約サイト「JAPANiCAN.com(ジャパニカン)」におけるasoview!コンテンツの販売等

・法人ソリューション:着地型商品を活用した企業向けの体験型研修事業の企画・販売、企業向けプロモーション事業での企画・販売等

・福利厚生サービス:会員制福利厚生サービス「えらべる倶楽部」サイトにおけるasoview!コンテンツの提供等

IPの価値を最大化する–任天堂がDeNAと組んでスマートデバイス市場に参入

ゲーム業界に大きな衝撃の起きる発表があった。任天堂とディー・エヌ・エー(DeNA)は3月17日、資本業務提携を実施すると発表した。

既報のとおりだが、両社はグローバル市場を対象にしたスマートデバイス向けゲームの共同開発・運営および、多様なデバイスに対応した会員制サービスの共同開発を行うという。

また両社の株式を持ち合うかたちで、第三者割当によりDeNAが保有する自己株式1508万1000株(発行株式数の10%、約220億円)を任天堂が取得。同時に任天堂が保有する自己株式175万9400株(同1.24%、約220億円)をDeNAが取得する。

同日開催された会見には、任天堂代表取締役社長の岩田聡氏、DeNA代表取締役社長兼CEOの守安功氏が登壇。提携の経緯について語った。

任天堂のIPの価値を最大化する

両社の出会いは2010年6月。DeNAが任天堂に対して、「Mobage向けにIPを供給してもらえないか」というオファーをしたところからスタート。以後交流を続けてきたという。

これまで1983年のファミリーコンピューター発売以降、ケータイ、スマートフォン向けゲームには目を向けずにゲーム専用機ビジネスを手がけてきた任天堂。プラットフォーム移行期が円高と重なり収支バランスを崩したこと、プラットフォーム移行自体がスムーズに進まなかったといったこともあったため、岩田氏は「スマートデバイスの普及により、ゲーム専用機ビジネスで様々なご意見、それもどちらかと言えば悲観的なご意見を頂戴することが増えてきた」と語る。

また音楽プレーヤーやカメラなどがスマートデバイスに飲み込まれてきたように、「ゲーム専用機もスマートデバイスに飲み込まれるのでは?」と言われる状況だとした上で、それらのデバイスと違って、「任天堂のゲーム専門機上で動くソフトの最大の供給者が任天堂自身である」と、ゲーム、コンテンツメーカーとしての強みを持っていると語った。

岩田氏はゲーム専用機ビジネスについて「未来を悲観していない」とした上で、自社の強みであるゲームソフトやキャラクターといったIPの価値最大化に向けてスマートデバイス向けのIP活用を決めたのだそうだ(2014年1月の経営方針説明会でもスマートデバイス活用に触れている、その延長ということだった)。

「テレビの存在しなかった125年前に創業した任天堂が、テレビを積極的に活用したのと構造的に同じ。様々な手段を柔軟に活用していく」(岩田氏)

だが、「かたくなに」と言って過言ではないほどスマートデバイス向けゲームからは距離を置いていた任天堂だ。岩田氏もそういった意見があることに触れた上で、「デジタルの世界ではコンテンツ価値が容易にデフレ化し消耗しがち。コンテンツの新陳代謝も激しく、寿命が短くなりがち。どうすればIPの価値を維持発展させながら、ビジネスができるか考え続けてきた」とその理由を振り返った。

黒子になっても構わない—DeNAをパートナーに選んだ理由

もちろん任天堂にスマートデバイス戦略で提携を持ちかける事業者は多かったのだそうだ。そんな中で2010年からコミュニケーションを続けてきたDeNAと組んだ理由は、「トップレベルのサービス構築、運営ノウハウにある」(岩田氏)という。

さらに、Q&Aセッションでは、繰り返し提案をしてきたDeNAの情熱、さらには「言葉は極端だが『黒子になって構わない』と言ってくれた。サービス開発に協力をいとわない。エース級人材を当てて頂けるというコミットメントがあった」(岩田氏)とその理由を付け加えた。

今回の発表では、任天堂がこれまで提供してきた会員向けサービス「クラブニンテンドー」に変わるデバイス間をまたぐ会員サービスを共同で開発するほか、共同でのタイトル開発について触れられたが、ゲームタイトルなど具体的な内容については、それこそ任天堂の人気IPの名前1つ出ない状況だった。ただしスケジュールについては、「少なくとも今年アウトプットがないスピードでは意味がない」(岩田氏)とだけ語っていた。

両社の役割については、IPごとに変わるものの、「多くの場合はフロントサイドが任天堂、DeNAがサーバサイドやバックエンドを担当する」(守安氏)ことになることが多そうだ。レベニューシェアなどもその工数により分配するということだった。

また岩田氏はスマートデバイスと並行して、任天堂がゲーム専用機ビジネスを継続することを強くアピール。そのため、ゲーム専用機とスマートデバイスで同一タイトルを提供しないこと、また新ハード「NX」について来年にも詳細を発表する予定であると説明した。同時にDeNAも、任天堂との提携だけでなく、オリジナルIPの提供を続ける。「これまでもDeNAは様々な会社とIPタイトルを作ってきた。そこは力を入れてやっていく。一方で自社IPへの思いも持っているので並行して進める」(守安氏)

射幸心をあおる課金、しない

会見の最後にはQ&Aセッションがあったのだが、そこで記者やアナリストから言葉を変えつつ2度質問があったのが、ソーシャルゲームなどにつきものだった射幸心の話題だ。2人の質問はざっくり言えば「子どもにも信頼されてきた任天堂が、射幸心をあおるような課金ビジネスをやっていくのか」ということだ。

これに対して岩田氏は「任天堂の納得しないままサービスを提供することはあり得ない。(DeNAと)両社が納得して提供するし、お客様が納得して頂けるようにする」と説明。アイテム課金については一律に否定する気はないとしつつ、「世の中で『ビジネスとして行き過ぎ』『子どもに提案していいのか』ということを任天堂IPで使うことは望まない」(岩田氏)とした。さらには、今回の提携を通じて「新しいビジネスモデルの発明ができたら最高」と語った。


スタートアップの人たちがMarissa Mayer(Yahoo CEO)から学ぶべきこと


 

今日のテクノロジ業界の中でいちばん、人びとやメディアの関心をそそる人物の一人が、Marissa Mayerだろう。だから彼女が、Business Insiderの主席ライターNicholas Carlsonが書いた新刊、Marissa Mayer and the Fight to Save Yahooの中で、強力なキャラクターとして描かれているのも当然だ。本誌は、先日彼をお招きして、同書についていろいろお話をうかがった。

話の内容は上のビデオでお分かりいただけるが、ここでは二つほど引用しよう。同書が注目されているのは、Marissa Mayerと彼女の職責に関する詳細で情け容赦のない記述が多いためだが、しかし著者のCarlson自身は、これまでの多くの調査や執筆活動から得た経験や情報を通じて、彼女に対し、敬意以外のなにものをも抱いていない、というのだ。

“Marissa Mayerは完璧なロックスターだと思うね。彼女は激務をこなし、クリエイティブで、どんなことにも対応できる力量を持っている。彼女には、超能力がある。

…[もしも今Yahooを下りたとしても]、彼女はまだ39だ。これから、どんなすごいことでもできる。来週、別の企業のCEOになっていても、おかしくないね。”

同書は主に、大企業のトップとしてのMarissa Mayerの仕事ぶりに焦点をあてているが、Carlsonによると、彼女にはスタートアップの人たちが参考にすべき点がたくさんある、という。

“Mayerが22−3のころ、スタンフォードを出たばかりのころの、話をしよう。彼女はトップクラスの優等生だったから、とびきりの選択肢がたくさんあった。コンサルタントにもなれた。研究者としての一生を送ることもできた。しかしそれでも彼女は、まだどこの馬の骨とも分からない、おかしな名前(Google)の会社に行った。

…彼女はプログラマとしてGoogleに入った。彼女はGoogle本体のプロジェクトに関わった。Googleの最初の広告システムを作り始めたのも、彼女だ。彼女は数か月、それに取り組んでいた。そこへ、あのJeff Deanがやってきた。彼はプログラマのスーパースターだから、多くの読者が彼を知っているだろう。彼はそのシステムを、約3週間で完成させた。

そのときのMayerの態度が、上出来だった。彼女はこう言った: “いいわ。私はGoogleでプログラマのスーパースターにはならないわ。もっとほかのことで、会社の役に立ちたい”。そして彼女は、どんな問題にも全身でぶつかっていった。彼女は多くのことを達成し、ついにLarry Pageの右腕と呼ばれるようになった。それ以降は、Googleのすべてのプロダクトが、彼女を通ってから世に出るようになった。

彼女から学ぶべきは、何ごとにも全身でぶつかれ、ということだ。”

ビデオ撮影: John MurilloYashad Kulkarni, 編集: Yashad Kulkarni, 製作: Felicia Williams

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))