3Dプリント義足事業を展開し日本発のグローバルスタートアップを目指すインスタリムが2.4億円のシリーズA調達

3Dプリント義足事業を展開し日本発のグローバルスタートアップを目指すインスタリムが総額2.4億円のシリーズA調達

3Dプリンティングおよび機械学習(AI)技術を活用し3Dプリント義足を海外で製造販売しているインスタリムは9月30日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額2億4000万円の資金調達を完了したと発表した。引受先はインクルージョン・ジャパン、Mistletoe Japan、慶應イノベーション・イニシアティブ、三菱UFJキャピタル、ディープコア。

インスタリムは、低価格・短納期の3Dプリント義足をフィリピンで製造販売する日本発のスタートアップ。単なる試供品の提供ではなく、事業化の前提となる「カスタム量産体制」(マス・カスタマイゼーション)が構築された3Dプリンター・CAD義足事業として世界初(同社調べ)としている。このカスタム量産体制とは、ユーザー個人のニーズに応じたカスタマイズと、大量生産並みの低コストな供給を両立する生産システムを指すという。義足の提供には患者ごとの断端(切断部)の形状に合わせた製造が不可欠であるため、世界的な普及には、低コストな大量生産とパーソナライズされた受注生産を兼ね備えた提供が不可欠としている。

同社は、今回の資金調達に加えて、経済産業省による事業再構築補助金、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による課題解決型福祉用具実用化開発支援事業などの支援を得ている。

これらにより、現在のフィリピンの首都圏に限られている販売網を地方都市にも複数拠点化し全国展開する。現地製造販売体制の強化やマーケティング施策を通じたグロースの実現も図る。また、より多くの層の人々が義足を購入し就業できるよう、初期出費を抑えたサブスクリプション販売形式を新たに構築するという。

さらに、次なる展開国としてインド(予定)での事業展開を目指す。アフターコロナの情勢に対応した、測定・試着・製品提供までを完全リモートによる非対面での義足製造販売システムの開発も進めるとのこと。

従来義足は、医学知識を持った義肢装具士がユーザーごとの体に合わせ医学的に最適な形状のものを手作りしていることから、価格30~100万円と高価で、また1カ月程度の納期を要しているという。このため、障害者への社会的支援が不十分な開発途上国においては、義足を購入できない方は仕事に就くなどの社会参画が困難となっており、深刻な社会課題となっているという。

そこでインスタリムは、3DプリンティングとAI技術により約1/10の水準の価格と納期を実現し、2019年よりフィリピンで製造販売を行なっている。コロナ禍による移動制限や経済状態の悪化が続いている中でもすでに400人以上のユーザーがおり、1600人以上(2021年8月現在。同社の義足が欲しいが、現在購入できないために引き続き情報提供を希望するという切断患者を掲載したウェイティングリストの患者数)が同社の義足提供を待っている状態という。

同社は、「必要とするすべての人が、義肢装具を手に入れられる世界をつくる」というビジョンの実現に向けて、日本発のグローバルスタートアップ、SDGsスタートアップとして社会課題の解決を目指すとしている。

 

多様な素材が使える3Dプリンターを開発したAON3DがAstrobotic提携、月面着陸機の部品を製造

3Dプリントが大いに注目を集めているのには理由がある。3Dプリンターは新たな形状の物体を作り出すことができ、しかも従来の製造方法に比べてはるかに軽量な素材を使用できることが多い。しかし、アディティブ・マニュファクチャリング(積層造形技術による製造方法)の訓練を受けていない企業や、従来の3Dプリントには適さない素材を使用しなければならない企業など、多くの企業にとっては依然として参入障壁が高いことも事実だ。

3Dプリントのスタートアップ企業であるAON3D(エオン3D)は、自動化を推進することと、さらにこれが重要なのだが、より多くの素材を3Dプリントできるようにすることで、これら両方の障壁を取り除きたいと考えている。そのためにのシリーズAラウンドで1150万ドル(約12億6500万円)の資金を調達した。

AON3Dは、熱可塑性樹脂のための工業用3Dプリンターを製造している。共同設立者のKevin Han(ケビン・ハン)氏は、AON3Dのプラットフォームの特徴について、材料にとらわれないことだと説明する。同氏によれば、7万種類以上の市販されている熱可塑性樹脂複合材や、カスタムブレンドの材料を使用することができるという。顧客が使用している既存の材料を3Dプリントに対応させることができる。これこそが、同社の真のブレークスルーだと創業者はいう。

「ハードウェアのコストのみならず、材料の面でも大きな革新がありました」と、共同設立者のRandeep Singh(ランディープ・シン)氏は、TechCrunchによる最近のインタビューで説明した。「私たちは、大手企業の新素材を取り入れることができます。【略】お客様が特定の理由から使用する必要があると思われる素材を取り上げて、多くのテストを行い、3Dプリント可能なプロセスに変えています」。

これによってAON3Dは、3Dプリントを採用したくても材料を根本的に変えることができない多くの企業に、積層造形製法の可能性を広げることができるという。AON3Dのプロセスなら、その材料を変える必要がありません、とハン氏は説明する。

AON3Dは、モントリオールのマギル大学で材料工学を専攻していたときに出会ったハン氏、シン氏、そしてAndrew Walker(アンドリュー・ウォーカー)氏の3人によって設立された。彼らは1台あたり数千万円もする非常に高価な3Dプリンターと、数万円で買える一般消費者向けの3Dプリンターの間にある市場のギャップに着目してこの会社を起ち上げた。

当初は3Dプリンターの操作をサービスとして事業を始めたが、2015年にKickstarter(キックスターター)キャンペーンで最終的に8万9643カナダドル(約786万円)を集め、同社のデビュー作である3Dプリンター「AON」を支援者に届けた。それから6年が経ち、彼らはこれまでに合計1420万ドル(約15億6000万円)の資金を調達してきた。

今回のラウンドはSineWave Ventures(サインウェーブ・ベンチャーズ)が主導し、AlleyCorp(アレイコープ)とY Combinator Continuity(Yコンビネーター・コンティニュイティ)が参加。また、BDC、EDC、Panache Ventures(パナシェ・ベンチャーズ)、MANA Ventures(マナ・ベンチャーズ)、Josh Richards(ジョシュ・リチャーズ)氏 & Griffin Johnson(グリフィン・ジョンソン)氏、SV angels(SVエンジェルス)も出資した。

AON3Dは、プリンターやカスタマイズされた材料を販売するだけでなく、継続的に企業と協力して、プリンターの使用範囲が企業の製造したい部品に適していることを確かめるために、積層造形のトレーニングを行っている。

AON3Dは航空宇宙業界にも多くの顧客を見つけている。その理由の1つとして挙げられるのが重量面でのメリットだ。これは主にペイロードのサイズによって経済性が左右される宇宙関連企業にとって、非常に重要なことだからだ。さらにコストや時間、そして射出成形など従来の製造プロセスでは不可能な形状を使用できるという利点もある。

顧客の中には、2022年にSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで着陸機を月に送ることを目指している月探査スタートアップのAstrobotic Technology(アストロボティック・テクノロジー)も含まれる。このミッションには、AON3Dの高温プリンター「AON M2+」で印刷された数百個の部品が使用される。これらはおそらく、初めて月面に触れることになる相加的に製造された部品となるだろう。これらには、アビオニクスボックスで重要な部品となるブラケット構成部品などが含まれる。

画像クレジット:Astrobotic

「このパートナーシップにより、Astroboticは使いたい素材をすぐに使うことができるようになりました」と、シン氏は語る。「それまで、同じ材料を別のプロセスで使えるようにするためには、非常に長いリードタイムが必要でした」。例えば、高機能ポリマーを使った射出成形のリードタイムは何カ月もかかるが、3Dプリントなら1日か2日で済むと、同氏は付け加えた。

将来的には、今回調達した資金をもとに本格的な専用の材料ラボを建設し、チームを拡大していくという。同社はこの材料ラボから得られるデータを利用して、3Dプリントのプロセスを完全に自動化し、あらゆる企業が自社製品に積層造形製法を利用できるようにしたいと考えている。

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画像クレジット:Aon3D

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

大阪大学生命工学科研究グループが3Dプリントで和牛のサシを再現できる「金太郎飴技術」を開発

大阪大学生命工学科研究グループが3Dプリントで「和牛のサシ」を再現できる「金太郎飴技術」を開発

大阪大学大学院工学研究科の松崎典弥教授ら研究グループは8月24日、和牛肉の複雑な組織構造を自在に再現可能な「3Dプリント金太郎飴技術」を開発し、筋・脂肪・血管の繊維組織で構成された和牛培養肉の構築に世界で初めて成功したと発表した。

これは動物から採取した少量の細胞から人工培養した筋・脂肪・血管の繊維組織を3Dプリントしたあと、金太郎飴のように束ねてサシの入った培養牛肉を作るというもの。この研究では、筋繊維42本、脂肪組織28本、毛細血管2本の計72本の繊維をバイオプリンティングし、手で束ね合わせ、直径5mm、長さ10mmの肉の塊を作ることに成功した。

これまでに開発されてきた培養肉は、筋繊維のみのミンチ状のものが多かったが、各繊維組織の配合を変えることで、注文に応じて味や食感などを自在に変えることができる塊肉が作れるという。

牛を育てて食用肉を作る従来の畜産方式では、大量の餌や水を必要とし、人が食べるよりも多くの穀物を家畜に与えるなどの非効率性や、放牧地のための森林伐採や糞やゲップによる環境汚染も問題になっている。培養肉は、牛の成長に比較して短時間で効率的に食用肉を生産できることから、そうした問題の解決策として期待されている。

研究の詳しい内容は、8月24日公開の英科学誌Nature Communications(ネイチャー・コミュニケーションズ)に掲載されている。

3Dプリントで作られたTerran 1ロケットの実証打ち上げをRelativity Spaceは2022年初頭に延期

3Dプリントによるロケット開発企業のRelativity Space(レラティビティ・スペース)は、同社の軽量ロケット「Terran 1(テラン1)」の実証打ち上げの日程を、2021年冬から2022年初頭に延期した。同社はTwitter(ツイッター)でスケジュールの変更を発表するとともに、打ち上げがフロリダ州のケープカナベラルから行われることを明らかにした。

#Terran1の最新情報をお伝えします。

ステージ2が、構造試験台で極低温圧力証明+油圧機械式座屈性能試験に合格したとお伝えできることを大変うれしく思います。次は S1の構造テストです。

Terran 1のデモンストレーション打ち上げは、2022年初頭にケープカナベラルLC-16から行われることになりました。

Relativity Space

また、Relativityによれば、ステージ2は極低温圧力と油圧機械式座屈性能の試験に合格したという。今後、ステージ1の構造試験が行われる予定だ。

今回の延期のニュースは、RelativityがTerran 1を2021年の冬に打ち上げると(同じくツイッターで)言ってから、わずか2カ月後のことだった。軌道飛行実証を行うこのロケットにはペイロードは搭載されないが、同社はすでに2022年6月に2回目の打ち上げを予定しているという。そちらのロケットは、NASAとのVenture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)契約の一環として、CubeSat(キューブサット)を地球低軌道に運ぶことになる。

同社の広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、打ち上げ日が延期された理由は「1つではない」とのこと。「新型コロナウイルスの影響でいくつかのプロセスを遅らせている間に、Relativityはこの1年間で、Terran 1のアーキテクチャを改良し、まったく新しいエンジンを開発し、素材をアップグレードしました」と、広報担当者は語り「パートナーとの連携を円滑に進めるため、実証打ち上げの日程を2022年初頭に変更しました」と続けた。

今回の打ち上げでは、3Dプリンターで全体が作られたロケットが、世界で初めて宇宙へ飛び立つことになる。Relativityの技術は投資家の関心を集めており、2021年の夏に行われた6億5000万ドル(約714億円)の資金調達で、評価額は42億ドル(約4600億円)にも達したほどだ。同社はTerran 1に加えて、2機目の「Terran R(テランR)」と呼ばれる重量物運搬用の完全再利用可能なロケットの開発も進めており、早ければ2024年の打ち上げを目指している。

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画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

3Dプリントとロボットアームで住宅建設の工期を短縮するDiamond Age

ベイエリアのDiamond Ageが今週、800万ドル(約8億8000万円)の資金調達を発表した。このシードラウンドをリードしたのはPrime Movers LabとAlpaca VCで、Dolby Family Ventures、Calm Ventures、Gaingels、Towerview Ventures、GFA Venture Partners、そしてSuffolk Constructionなど参加した投資家はとても多い。

同社の売りは、複数の最新技術を組み合わせて利用し、工期と工数を大幅に減らすことだ。Diamond Ageの主張では、同社のその技術が完全に実現すると、手作業を担当する人間労働者を55%減らし、一世帯住宅の建設工期を9カ月から30日に短縮できるという。今回の資金調達の一部は、コンセプトを実証するために、1100平方フィート(約102.2平方メートル)の「デモハウス」を建設するためのプロセスを整えることに使われる。

共同創業者でCEOのJack Oslan(ジャック・オスラン)氏は「私たちはアメリカンドリームを追う次世代のために、高品質で手頃なお値段の一世帯住宅を作る必要があります。それを実現する唯一の方法はオートメーションです」とプレスリリースで述べている。

具体的に同社が利用するのは、ロボットと3Dプリントだ。ロボットについては、26種類のロボットアームアタッチメントを用いて建設をサポートする。また、ガントリーを使った3Dプリンティング技術で、構造物の内壁や外壁を作る。

なぜベイエリアかというと、サンフランシスコのベイエリアは極めて住宅事情が逼迫しているからだ。一般の建設会社も、RaaS(Robotics as a Service)と呼ばれるレンタル方式で同社の技術を利用できる。料金の情報は、今回得られなかった。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

注射に慣れていない医療従事者も対応の「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用

注射に慣れていない医療従事者向け「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用バーチャル技術でカラダの動きをデータ化し、社会実装を進めるイマクリエイトは8月20日、EpiNurse高知県室戸市で8月18日に実施したVR活用ワクチン接種研修において、医療従事者向け「VR注射シミュレーター」を提供したと発表した。今後イマクリエイトは、ワクチン接種研修にとどまらず、地域におけるVR活用の検討を進めるとしている。

VR注射シミュレーターは、注射に慣れていない医療関係者でも筋肉注射の研修を効率的に行えるようにするためのVRコンテンツ。体の動きをデータ化するイマクリエイト独自技術「ナップ」を活用し、京都大学大学院医学研究科監修のもと開発した。教育のための人材を派遣することが難しい地域やコロナ禍において多人数の集まることができない状況においても、効率的にワクチン接種のトレーニングを行える。

同シミュレーターでは、新型コロナワクチンに代表される筋肉注射の手順について、VR内に表示されるお手本に沿って行うだけで感覚的に覚え、身に着けられるという。手順の間違いや漏れを防止できるなど高い学習効果が期待されるとしている。

また今回の取り組みでは、VRを用いたワクチン接種研修の他、Psychic VR LabのXRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」を用いて、室戸市と東京・イマクリエイトをオンラインで接続し、VR空間内におけるディスカッションも実施した。

注射に慣れていない医療従事者向け「VR注射シミュレーター」が高知県室戸市の新型コロナ・ワクチン接種研修で採用

VR空間内でのディスカッションの様子

EpiNurseは疫学(Epidemiology)と看護学(Nursing)を組み合わせた方法論を防災・減災に実践する一般社団法人。代表理事を務める高知県立大学看護学部教授の神原咲子氏は、「今回VRを導入することによって、視覚的に確認しながら、動作の練習できるのはまた新しいステップに一気に拡張したと思いました。看護研究で、筋肉注射練習用の筋肉を3Dプリンタで作る試みもしていたところで、そういうものと一緒にすることでさらにいろいろな可能性が広がる」とコメントしている。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASA

NASAの最新の国際宇宙ステーション(ISS)ミッションには、月の土(レゴリス)を使って現地に建物を作るための3Dプリンター実証機が搭載されています。

Redwire Regolith Print(RRP)と呼ばれるこのプロジェクトは、既存のプリンティング機材と連携してレゴリスに見立てた材料を用いて3Dプリントの実証試験を行い、出力されたものが地球とは異なる環境で期待どおりの強度を示すかどうかを確かめます。

月面に飛行士が滞在するための施設を作ることを考えたとき、全ての資材を地球から持っていくのは現実的ではありません。そのため研究者らは何年も前から現地調達できるレゴリスを使った居住施設の建設を研究し、様々なアイデアひねり出しています。NASAもコンペ形式で画期的なアイデアを募集していました

今回の実験は、その実現を真剣に目指すもので、低重力下での土の3Dプリントが上手くいくかを確かめます。まだまだ課題はたくさんあるはずですが、実験がその解決の足がかりになることが期待されます。またそれは月だけでなく将来の火星への進出にも役立つかもしれません。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

Redwire Space。Redwire Regolith Print(RRP)の3Dプリンター実証機

(Source:NASA。Via Universe TodayEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)宇宙開発(用語)建設 / 建築(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

航空宇宙、自動車、医療、防衛向け産業用3Dプリンター企業ExOneをDesktop Metalが約635億円で買収

Desktop Metal(デスクトップ・メタル)は、先に行われた決算説明会の中で、ExOne(エクスワン)の買収計画を発表した。ペンシルバニア州に本社を置くExOneは、航空宇宙、自動車、医療、防衛などの産業向けにさまざまな業務用3Dプリンターを製造している会社だ。TechCrunchの最近の記事では、同社の移動式3Dプリント工場について紹介した。これは要するに、輸送用コンテナの内部に作られた移動可能な積層造形拠点である。

2月の記事で書いたように、ExOneは米国防総省から160万ドル(約1億7700万円)の助成金を受け、このシステムを現場に投入することを目指している。それぞれのユニットの中には、コンピューター制御の3Dスキャニングステーションの他、金属およびセラミック用3Dプリンター、硬化炉、繊維強化プラスチック用3Dプリンター、圧縮成形ステーションといったさまざまな耐久性の高い産業用機械が設置されている。

関連記事:金属3DプリントのExOneがコンテナ内にポータブル3Dプリント工場を建設、米国防総省と約1.7億円の契約

「この2年間は、当社の技術を政府系機関の用途に提供することに力を注いできました。国防総省、NASA、環境省などです」と、ExOneのCEOであるJohn Hartner(ジョン・ハートナー)氏は、このニュースが報道された際にTechCrunchに語った。「サプライチェーンの分断や製造業の分散化について論じられることがありますが、我々が手がけているのは、分散して前方展開が可能になるというものです。それが必要とされる状況とは、緊急事態や、人道的な任務、あるいは戦闘の最前線などが考えられます」。

買収額は5億7500万ドル(約635億円)で、Desktop MetalがExOneの全株式を取得する。

「ExOneをDMファミリーに迎え入れ、大量生産向けの最先端の積層造形ポートフォリオを構築できることに、私たちは興奮しています」と、Desktop MetalのCEOであるRic Fulop(リック・フロップ)氏は、リリースで述べている。「今回の買収により、両社の補完的な技術と市場開拓の努力が継続的な成長を可能にし、お客様により多くの選択肢を提供できるようになると確信しています。この交流は、積層造形2.0の導入を加速するという我々のビジョンを実現するための大きな一歩となります」。

Desktop Metalは、2020年8月にSPAC(特別買収目的会社)を介して上場する計画を発表して以来、3Dプリントのポートフォリオを拡大するための買収を積極的に進めてきた。2021年1月にはドイツのEnvisionTEC(エンビジョンテック)を3億ドル(約330億円)で買収している。

ハートナー氏は今回の発表において「大量生産における積層造形という共通のビジョンを通じて、より持続可能な未来を実現するために、Desktop Metalと力を合わせていけることをうれしく思います」と述べている。「両社の補完的なプラットフォームは、顧客へのサービスを向上させ、環境に優しい技術の採用を促進し、株主価値の向上につながると、私たちは確信しています。最も重要なことは、我々の技術が、世界を改善できるほどの意義ある生産規模で、重要な革新の推進に役立つということです」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Desktop Metal3DプリンターExOne買収

画像クレジット:ExOne

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新型コロナ検査用3Dプリント綿棒をマサチューセッツのOPT Industriesが完成

2020~2021年にかけて私たちが慣れ親しんだものといえば、鼻腔内の新型コロナウイルス検査用綿棒だろう。しかし、この綿棒は、予想していたよりも手に入りにくかった。2020年5月に米国の118のラボを対象に行った調査では、60%が綿棒の供給に限界があると回答。サプライチェーン上の最もよくある問題は綿棒の不足であると報告している。

ここで綿棒の製造に参入したのが、高密度マイクロファイバー構造の積層造形(3Dプリント)技術を持つOPT Industries(オプトインダストリーズ)だ。OPT Industriesはマサチューセッツ州を拠点とし、設立2年目、従業員15名の小さなスタートアップ企業である。同社のプリンターとソフトウェアは、もちろん綿棒以外のものにも対応しているが、2020年以降は新型コロナウイルス試験で使用する3Dプリント綿棒「InstaSwab」に力を入れている。

2020年、OPT Industriesは、Kaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)や医療製品販売会社Henry Schein(ヘンリーシャイン)といった商業パートナー向けに、4カ月間で80万本の鼻腔スワブ(綿棒)を製造した。この試験製造に成功した同社は、生産能力の向上を見込んでいる。創業者のJifei Ou(欧冀飞、オウ・ジーフェイ)は、最新のモジュラー機器の使用により、1台の機械で一日に約3万本の綿棒を生産できるようになったと話す。

「今回のパンデミックは、当社の技術が貢献できる医療分野を示す機会になったと思います」と、オウ氏はTechCrunchに語る。

世界的にはパンデミックは未だ終息していないものの、検査に関してはワクチンの登場で状況が一変した。米国における新型コロナウイルスの検査数は減少しているが、OPT Industriesは、優れた綿棒を製造して在宅検査の市場に軸足を移すことで、これを乗り切ることができると考えている。

パンデミックを初期のテストランで迎えた同社は、現時点までに約500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達。オウ氏によれば、現在は投資を必要としていない。同社は綿棒製品の次のテスト段階に入っていたが、米国時間7月15日、その結果が発表された。

OPT Industriesが発表した研究結果によると、3Dプリントで製造された鼻腔用綿棒は、平均で63%のウイルス遺伝子を分析装置に移すことができた(繊維製の綿棒、ポリエステル製の綿棒の移行率はそれぞれ36%、14%)。

OPT Industries製「InstantSwab」の性能を従来の2種類の綿棒と比較したグラフ(画像クレジット:OPT Industries)

これらの試験はボストン大学メディカルセンターで実施されたが、その結果はこれまでのところ、査読付きジャーナルには掲載されていない(オウ氏はジャーナル掲載を目指して研究をさらに進めている)。また、試験はヒトの新型コロナウイルス患者ではなく、試験管内(in vitro)で行われた。

理論的には、InstaSwabsは鼻や喉の奥にあるウイルスの痕跡をより多く捕らえることができる。オウ氏は、高密度のマイクロファイバー構造で設計された綿棒などの適切な綿棒は、より多くのウイルスを捕獲し、特に感染初期の、体内にウイルスが少ない時期における偽陰性を防ぐことができると主張する。

新型コロナウイルス検査の偽陰性率を推定しようとしている論文は大量に存在する。例えば34件の研究をまとめたある系統的レビューでは、偽陰性率は2~29%と推定されている。

また、ウイルス量が少ない例と偽陰性を関連付ける調査もある。アルバータ州(カナダ)の公衆衛生研究所で行われたある研究では、約9万5000人の患者から採取した10万0001件の検体(一部の患者からは2~3回検体を採取)を分析し、5件の偽陰性を確認している。

これらの偽陰性は、体内のウイルスRNAの量が少なかったことが原因だが、これはサンプルを採取した時期に起因していると著者は指摘している。つまり、綿棒がウイルスをキャッチできなかったのではなく、そもそものウイルス量が少なかったのだ。

綿棒自体が検査結果に及ぼす影響を分析したところ、研究室で使用された2種類の綿棒で偽陰性の結果が出ている。このことは、綿棒の種類は偽陰性率に影響を与えていないことを意味しているのかもしれないが、著者らは、結論を出すにはさらに多くのデータが必要であるとしている。

だからといってサンプルの収集・保管方法を改善しても検査精度に影響しないとは言い切れない。2021年6月に発表された論文では、著者らは、ウイルス輸送液の量を減らし(サンプルの希釈が少なくなる)、綿棒のデザインを変更して、より多くのウイルスを捕獲し、綿棒が患者の鼻の中に留まる時間を短くすることも、検査の最適化に効果があると主張している。

OPT Industriesが証明しなければならないのは、優れた綿棒は本当に感染の初期段階で十分なウイルスRNAを捕獲することができるのか、高い捕獲率が実際に偽陰性に影響を与えるのかどうか、という2点である。

OPT Industriesの論文(査読なし)は、同社の綿棒がより多くのウイルスを捕獲できることを示唆しているようだが、第二の論点である「同社の綿棒によってヒトの新型コロナウイルス検査の精度が向上する」ことを証明するには十分な情報がない。

オウ氏は次のように話す。「現在、2つの臨床パートナーと協力して、(これを証明するための)臨床研究を行っています」「この研究の結果と次の研究の結果を合わせて、査読付きのジャーナルに掲載してもらうための原稿を準備しています」。

OPT Industriesが3Dプリントで製造した綿棒の優位性を証明した場合、参入できる市場がより大きな問題になる。The Wall Street Journalは、2021年初春にワクチンが普及し始め、新型コロナウイルス検査の需要が全米で約46%急減したと報じている(不思議なことに、検査関連スタートアップ企業の爆発的な増加を遅らせることにはつながらなかったようだ)。

2021年7月現在、米国では1日あたり平均50万4048件の新型コロナウイルス検査が実施されている(1月には1日平均約199万2273件の検査が実施されていた)。感染力の強いデルタ株が広がっているにもかかわらず、CDC(米国疾病対策予防センター)は今もなお、ワクチンを接種した人は定期検査を減らすことができるとしている。

オウ氏は、在宅検査の領域にはまだ成長の余地があると考えている。今回取り上げたのは新型コロナウイルスの検査だが、同社の3D綿棒はほとんどの体液に使用できるという。

「米国では、検査の大部分が、診療所や病院での検査から家庭での検査に移行していることがわかっています。現在はここを焦点として、在宅検査キット企業との提携、協力を検討しています」とオウ氏。

オウ氏によると、すでに「いくつか」の在宅検査キット企業と提携関係を構築しているが、機密保持契約により会社名を明かすことはできない、とのことだ。

新型コロナウイルスに限らず、在宅検査キットの分野には、最近ではAmazon(アマゾン)など、興味深い企業が参入している(Amazonは、新型コロナウイルスと性感染症の在宅検査キットを販売する予定)。

パンデミック後も、OPT Industriesは家庭における新しい綿棒需要に乗ることができそうだ。

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熱プロセスも粉末も使わずコスト削減、金属3DプリントのFabric8Labsが約21.2億円調達
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カテゴリー:ハードウェア
タグ:OPT Industries3Dプリント新型コロナウイルス

画像クレジット:OPT Industries

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

熱プロセスも粉末も使わずコスト削減、金属3DプリントのFabric8Labsが約21.2億円調達

Fabric8Labsは、米国時間7月20日朝、1930万ドル(約21億2000万円)を調達したと発表した。今回のシリーズAは、Intel Capital(インテルキャピタル)が主導し、Lam Capital、TDK Ventures、SE Ventures、imec.xpand、Stanley Ventures、そして著名投資家のMark Cuban(マーク・キューバン)氏が参加している。2018年半ばに調達した400万ドル(約4億4000万円)のシード資金に続くものだ。

サンディエゴに拠点を置くこのスタートアップは、金属の3Dプリントに特化している。過去2年間にDesktop Metal(デスクトップメタル)やMarkforged(マークフォージド)がSPAC経由での上場を決定したことからもわかるように、ここ最近、ホットなカテゴリーである。Fabric8Labsは、低コストとエネルギー消費量の低減が同社のプロセスの利点の1つだとしている。

「当社のプロセスは本質的に異なっており、粉末や熱プロセスを利用しません。代わりに、室温で動作し、電力需要が大幅に低く、低コストの金属塩から作られた水性溶液を利用する電気化学的蒸着法を採用しています」とCEOのJeff Herman(ジェフ・ハーマン)氏はTechCrunchに語った。「汎用的な価格の原材料と電力効率の高いプロセスを組み合わせることで、総所有コストと部品あたりのコストを一段階削減することができます」。

同社によれば、今回の資金調達は、年末までに従業員数を2倍に増やし、既存技術の開発を強化し、高解像度の銅片を印刷する能力を披露するために使われるという。同社はこの技術を市場に投入することを計画しているが、一般的な市場での展開を目指すまでには数年を要すると述べている。

どのような積層造形であっても、スケーラビリティは常に最大の疑問点の1つだ。ハーマン氏は、Fabric8Labsは製造用の3Dプリントをしっかりと視野に入れているという。

ハーマン氏はこう語る。「当社の技術は非常にスケーラブルです。パートナーと共有しているビジョンは、未来の工場に大規模なスケールで当社の技術を導入し、大量生産に対応できるプロセス能力と経済性を備えたものにすることです。Fabric8Labsを導入した工場は、50以上の自動化されたシステムで構成され、大規模な原料タンクを共有することができます。これは、現在稼働している他の大規模な電気化学プロセスと同様です」。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Fabric8Labs3Dプリント資金調達金属

画像クレジット:Fabric8Labs

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

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金属3Dプリント構造物では世界最大、センサーで痛み具合など監視可能な世界初のステンレス製3Dプリント橋が利用開始

MX3D

オランダ・アムステルダムに世界初のステンレス鋼で3Dプリントされた橋がかかりました。この橋はAutodeskと技術協力して開発されたMX3Dソフトウェアを使い、溶接トーチを装着した産業用ロボットアーム4台で、約6か月をかけて”出力”されました。

完成したこの3Dプリント橋の大きさは、全長12.5メートル、幅6.3メートル、ステンレス製の構造部の総重量は4.5トン。これは金属3Dプリント構造物としては世界最大とのこと。

さらにこの橋はただ3Dプリントされたというだけでなく、構造の各所にセンサーが備え付けてあり、橋を渡る人の数やその歩く速度から、振動、歪みなど構造に関する計測データ、さらに温度や大気などの環境要因を測定し、橋のライフサイクルを通して、その構造がどう変化していくかを記録観察可能になっています。

収集したデータは英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究グループが開発した橋のデジタルモデルに適用し解析されて、より大規模で複雑な建築プロジェクトで3Dプリントしたスチール構造物がどう使用できるかを理解する助けになることが期待されます。アラン・チューリング研究所のチームとこのデジタルモデルを開発するケンブリッジ大学のマーク・ジロラミ氏は「古くなった橋の故障を調査すると、それまで見過ごされていた劣化が見つかることがよくあります。常にデータをフィードバックしていれば、早期に問題を見つけ、警告を発してこれらの故障を防ぐことが可能になるかもしれない」と述べています。

また3Dプリントで橋を作ることに関しては、構造の強度が3Dプリント出力する方向に依存することがわかったとし、さらに基本的な強度が圧延鋼と変わらず、方向によってはそれを上回るものだったという意外効果もあったとしました。

数年前までは、デスクトップサイズでなく人が住める大きさの建築物や橋梁といった構造物を作ることはSFの世界の話でしたが、いまやもう、(出力にかかる時間はともかく)実用化の域に来ているようです。

橋の上で発表会を開催。橋を渡った第1号は、同国のマキシマ王妃だった模様

©Rotapool / Remko de Waal
橋の上で発表会を開催。同国のマキシマ王妃が橋について発表し、テープカットを行ったとのこと

(Source:MX3DImperial College London。Via New ScientistEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Autodesk(企業)MX3D3Dプリント / 3Dプリンター(用語)

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題解消を支援、一般的な3Dプリンターで作れる筋肉注射練習モデルが開発・公開

掲載写真は手技確認時のイメージのため、手袋の着用は省略している

慶應義塾大学SFC研究所は7月12日、同大学看護医療学部 宮川祥子准教授らが、3Dプリンターで作れる製筋肉注射練習モデルを開発し、その設計データ・作り方・使い方に関する説明書を特設サイトで公開したと発表した。ライセンスは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CC BY-SA 3.0)。

新型コロナワクチンの「打ち手不足」問題への対応として、職場を離れている看護師、いわゆる「潜在看護師」の活用が求められているが、長期間現場を離れている看護師がなんの準備もなくいきなりワクチン接種業務に就くのは難しく、協力を得にくいという課題がある。そこで、科学技術振興機構(JST)の研究成果展開事業「センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム」が支援し、慶應義塾大学を中核拠点とする「感性とデジタル製造を直結し、生活者の創造性を拡張するファブ地球社会創造拠点」が、上腕三角筋への筋肉注射の練習ができるモデルを生み出した。

今回の開発の中心となった宮川准教授は、かねてより「FabNurse(ファブナース)プロジェクト」を推進し、看護、介護分野にターゲットを絞った3Dプリンターを用いた「ケアのものづくり」による課題解決を研究してきた人物だ。

このモデルは、すでに臨床経験のある(初学者ではない)看護師が上腕への筋肉注射を練習するものとしており、以下の特徴がある。

  • 一般的に販売されている3Dプリンターで出力が可能
  • 肩峰に触れることができ、注射の部位(肩峰から三横指下)を確認することが可能
  • 実際に針を刺して、液を注入することが可能
  • 3Dの設計データは無償で使用することができ、改変可能
  • 作成方法・使用方法に関する説明書が添付されている

このデータは無料で公開されているが、CC BY-SA 3.0ライセンスに基づき製造販売も可能とのこと。ただし、「販売する場合は、新型コロナウイルス対策への貢献という趣旨に鑑み、適正な価格での販売をお願いします」と宮川准教授は話している。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)慶應義塾大学(組織)新型コロナウイルス(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)ワクチン(用語)日本(国・地域)

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援Holoeyesは、Dental Predictionとソフトバンクの協力のもと「5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証」に関する実証実験を7月12日から実施します。

5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用した実験で、東京にいる指導医が大阪にいる若手歯科医に、VR・AR映像を通して診断・治療の指導と手術を支援をするといった内容です。

具体的には、歯が欠損した場合に行うインプラント手術の症例を扱います。インプラント手術は、知識的にも技術的にも比較的難易度の高い処置です。5GとXR技術、3Dプリンティング技術を活用して、物理的な場所の制約を受けずに若手歯科医への知識や技術の伝授ができるかを検証します。

5GとVR・AR技術、3Dプリンティング技術を活用し東京の指導医が大阪の若手歯科医による歯科手術を遠隔支援

3Dモデル/3Dプリンティング模型

実験では患者のデータを基に作成した頭蓋骨の3Dモデルを使い手術に必要な3次元の動きをVR空間で共有します。診断と検討の後、指導医は3DモデルをAR空間で操作しながら、同じ患者の顎骨の3Dプリンティング模型を使って指導します。

若手歯科医はAR映像を見ながら模型にドリルで穴を開けるなどの実習を行うことで、インプラント手術の一連の流れを体験できます。最終的には、指導医が東京からAR映像を通して支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者の手術を行います。

なお、遠隔指導および遠隔手術支援に当たっては、現役の歯科医であるDental Prediction代表の宇野澤氏が、診断を行う上で重要なポイントや解剖に関する手順を解説します。

各種デバイスに対応したHoloeyesの医療用画像表示サービス「Holoeyes XR」と、オンライン遠隔共有カンファレンスサービス「Holoeyes VS」を活用し、ソフトバンクの5GネットワークでVR・AR映像を送受信することで、指導や手術支援を行います。

以降リリースより転載です。

実証実験の概要

  1. 名称:5GネットワークにおけるXR歯科手術支援の有効性の検証
  2. 実施期間(予定):2021年7月12日~9月
  3. 実施場所:東京会場:ソフトバンク本社(東京都港区海岸1-7-1 東京ポートシティ竹芝 オフィスタワー)、大阪会場:5G X LAB OSAKA(大阪市住之江区南港北2-1-10 ATCビルITM棟 6階「ソフト産業プラザTEQS」内)

実施の流れ

  • ステップ1(7月12日実施予定):過去に手術を受けた患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。複数の若手歯科医へ同時に遠隔指導することで、その有用性を検証します。
  • ステップ2(8月実施予定):これから手術を受ける患者のデータを基に作成した3Dモデルで症例検討と解剖手順の確認を行った後、同じ患者の3Dプリンティング模型を使って、若手歯科医が手術の一連の流れを体験します。今後予定している手術を、複数の若手歯科医が同時に疑似体験できることを検証します。
  • ステップ3(9月実施予定):東京の指導医が遠隔支援しながら、若手歯科医が大阪市内の歯科クリニックで実際の患者(ステップ2の患者)の手術を実施します。若手歯科医が、指導医の遠隔支援の下で安全かつ確実に手術ができることを検証します。

(Source:ソフトバンクEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)XR / xR(用語)遠隔医療(用語)拡張現実 / AR(用語)仮想現実 / VR(用語)歯 / 歯科(用語)3D / 3Dモデル(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)ソフトバンク / SoftBank(企業)Dental Prediction(企業)5G(用語)HoloEyes(企業)日本(国・地域)

Relativity Spaceが生産能力を10倍にすべく9万平米超の工場を建設、再利用可能3DプリントロケットTerran R製造へ

6億5000万ドル(約722億円)のシリーズEラウンドで資金調達を終えたばかりの3Dプリントロケットのスタートアップである Relativity Space(リラティビティー・スペース)が、その生産能力を10倍に増やすべく、100万平方フィート(9万2900平方メートル)の本社工場をカリフォルニア州ロングビーチに建設する。

Relativityの同じくロングビーチにある15万平方フィート(1万3900平方メートル)の現工場も生産を続ける。この工場は同社初のロケットとなる使い捨て型Terran 1に、引き続き焦点を当てる。このロケットは少量貨物向けの設計だ。新しい工場はRelativityの重量貨物用完全再利用可能な2段ロケット、Terran Rの開発および生産を目的としている。どちらのロケットもまだ軌道を見たことはないが、RelativityはTerran 1を2021年末に、Terran Rを2024年初めに打ち上げる計画だ。

2022年1月の新工場稼働に合わせて、同社は雇用の拡大も計画している。2021年中に少なくとも200名の社員を追加したい、とCEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏がTechCrunchに語った。新工場の必要労働力は2000人を超えるため「Terran 1の打ち上げとTerran Rの開発開始に向けて1000人単位の新規雇用を行うことは間違いない」とエリス氏は言った。

画像クレジット:Relativity Space

Relativity独自の3DプリンターであるStargate(スターゲート)は、同社のどちらのロケットもプリントできる。しかし、能力はそれにとどまらない。少なくとも理論的には。Terran Rは再利用可能なので、巨大な新工場で生産可能な数よりもはるかに少ないロケットしか必要としないはずだ。そこで疑問が生じる。一連のプリンターは何を作ることになるのか?

エリス氏はいくつか可能性を示唆した。「ここではTerran Rを製造し、当初は開発を行いますが、長期的には次に当社が宇宙に送り込む何かを作るために、この工場の改善と再構成を続けていくことができるでしょう」と彼は言った。しかし、それがどんなものなのか正確には言わなかった。

「たしかに時間とともにプリント能力に余剰ができます、Terran Rは再利用するので。このため、ある時点で私たちには山ほどのプリンターと大量の空き時間があることになります。そんな能力を得たら何ができるか想像してみてください。次の破壊的製品に向けて突き進むだけです」。

Stargateプリンター群に加えて、敷地内にはカスタマイズ版DMLS(直接金属レーザー焼結方)メタル・プリンター、冶金研究所、機械工場、ミッション管制センターなどがある。ミッション管制センターではその名の通りミッションオペレーターが、フロリダ州ケープ・カナベラルとカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地で行われる打ち上げの監視と管理ができる。

Relativityはこの場所を、土地所有者であるGodman Groupから「長期間契約」で賃借しているとエリス氏は言った。かつて当地は、Boeing(ボーイング)が軍用輸送機C-17の製造に使用していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Space工場3Dプリントロケット

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

3Dプリントでわずか60日で完成するRelativity Spaceの新しい大型ロケットTerran R、もちろん再利用可能

3Dプリント製ロケットのスタートアップであるRelativity SpaceがシリーズEラウンドで6億5000万ドル(約712億円)を調達し、調達総額は12億ドル(約1315億円)を超えた。この件に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、Relativityのポストマネー評価額は現在42億ドル(約4602億円)だという。

今回のラウンドを主導したのはFidelity Management & Research Companyで、他にBlackRock、Centricus、Coatue、Soroban Capitalが運用するファンドやアカウントを持つ新規投資家や、既存投資家のBaillie Gifford、K5 Global、Tiger Global、Tribe Capital、XN、Brad Buss(ブラッド・バス)氏、Mark Cuban(マーク・キューバン)氏、Jared Leto(ジャレッド・レト)氏、Spencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏らが参加した。

シリーズEからの資金は、同社の完全に再利用可能な2段式重量物打ち上げロケット「Terran R」の生産を加速するために使われる。Terran Rは、2021年末に初の軌道飛行を行うRelativityのデビューロケット「Terran 1」に加わることになる。

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同社はTerran Rについて固く口を閉ざしてきたが、今回の資金調達の発表と合わせてさらに詳しい情報を明らかにした。予想通り、Terran 1とTerran Rはかなり大きな違いがある。Terran 1は消耗品であり、Terran Rは再利用可能だ。前者は小型ペイロード用、後者は大型ペイロード用に設計されている。Terran Rのペイロードフェアリングでさえ再利用可能であり、Relativityは回収とリサイクルを容易にするシステムを案出した。

この大型ロケットは、高度216フィート(約66メートル)、最大ペイロード2万ポンド(約9トン)で低地球軌道(LEO)に投入される(ちなみにSpaceXのFalcon 9ロケットの高度は約230フィート[約70メートル]、LEOへの最大ペイロードは2万2800ポンド[約10トン]である)。

左がRelativityのTerran 1、右がTerran R(画像クレジット:Relativity)

Terran Rは、1段目に7個の新しい「Aeon R」エンジンを搭載し、それぞれが30万2000ポンド(約134トン)の推進力を持つ。Terran Rのエンジンとロケットを製造するのと同じ3Dプリンターが、Terran 1の動力源となる9個の「Aeon 1」エンジンも製造しており、Relativityは新ロケットを製造するために生産ラインを大幅に再構成する必要がない。

CEOのTim Ellis(ティム・エリス)氏によると、Terran Rを1基製造するのにかかる日数は60日ほどだという。このようなペイロード容量を持つロケットとしては信じられない速さだ。

Terran 1の打ち上げはまだ行われていないが、RelativityがTerran Rの開発を遅らせる様子はない。エリス氏は、同社は2024年にはケープカナベラルの発射台からのTerran Rの打ち上げにも着手する予定であり、今回の新ロケットの最初のアンカー顧客として「有名な優良企業」と契約済みだと述べている。

Relativityは、2021年末に同社初の軌道飛行を行うロケットの約85%のプリントを終えたところだ。このミッションを遂行するTerran 1にペイロードは搭載されない。Terran 1の2回目の打ち上げは2022年6月に予定されており、NASAとの契約「Venture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)」の一環としてCubeSat(キューブサット)をLEOに投入する。

RelativityのCEOであるティム・エリス氏はTechCrunchとのインタビューで、3Dプリントを製造におけるパラダイムシフトであると形容した。「私たちのアプローチ、あるいは一般的な3Dプリントは実際のところ、ガスの内燃機関から電気へ、あるいはオンプレミスサービスからクラウドへの移行に近いものだということが、人々にはあまり認識されていないように思います」とエリス氏。「3Dプリントはクールなテクノロジーですが、それ以上に、実用上ソフトウェアであり、データ駆動型の製造および自動化技術でもあるのです」。

3Dプリントのコアはテクノロジースタックであり、同社は従来の製造方法では「不可能だった幾何学的構造」をアルゴリズム的に生成することができる、とエリス氏は説明する。また、設計は市場の需要に合わせて簡単に調整可能だ。

Relativityの設立前にBlue Originで金属3Dプリント部門の立ち上げを担当したエリス氏は、Terran 1と、カウンターパートである重量物運搬仕様を設計、構築することが、Day1(創業初日)からの戦略だったと語っている。

3Dプリントの実際のメカニズムは、地球上の重力の38%しかない火星のように重力がはるかに小さい環境でも技術的に実現できる。しかしより重要なのは、それが惑星外の不確実な環境で「必然的に必須の」アプローチだということだ。

「Relativity設立へのインスピレーションは、SpaceXがロケットを着陸させ、宇宙ステーションにドッキングするところを目にしたことでした。創業して13年の同社は、その輝かしい成功に留まることなく、人類を多惑星化しようと考え、火星に行くことを目指す唯一の企業でした」とエリス氏は語る。「そして私は、3Dプリント技術が他の惑星に産業基盤を現実的に構築する上で避けられないものだと考えたのです。火星に行こうと実際に試みたり、それが自分たちのコアミッションだと主張する人さえいないときでした。それは5年後の今でも、実際にはまだ当社とSpaceXだけです。そしてそのミッションの後に進むべき数十から数百の企業にインスピレーションを与えたいと、私は心から願っています」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Relativity Spaceロケット資金調達3Dプリント

画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

eranicle via Getty Images

米ノースカロライナ州のウェイクフォレスト大学に属するWinstonおよびWFIRMと称する2チームが、NASAが開催していた技術開発コンペ「Vascular Tissue Challenge(血管組織チャレンジ)」で1位と2位を獲得しました。

このコンペは2016年に開始され、実験室環境において心臓、肺、肝臓、腎臓などの臓器を、血管組織を含み、ある程度の太さと代謝機能を持つように作成することを目標としています。賞金は50万ドルが用意され、上位の3チームに分配されます。

ウェイクフォレスト大の2チームは、いずれもわずかに異なる技術を用いて、実験室で血管を含む肝臓組織の3Dプリントに成功しました。これら組織は30日間生存し機能するように作られ、わずかに優秀とされたチームWinstonが賞金を30万ドル、WFIRMは10万ドルを獲得しています。

NASA技術開発コンペ「血管組織チャレンジ」で肝臓組織を3Dプリントしたウェイクフォレスト大チームが優勝

Wake Forest Institute for Regenerative Medicine

この受賞により2チームは今後、国際宇宙ステーション(ISS)で、それぞれが作り出した画期的な組織モデルに関する試験を実施する機会を得ました。

宇宙空間での実験は、この技術コンペが地上だけでなく、将来宇宙空間で長い時間を過ごすことになるであろう宇宙飛行士らの医療に活用するために行われているから。今回総勢11チームの研究を評価・審査したArun Sharma博士は「これは非常に重要な課題です」「そして、その可能性は無限大です」と述べました。

Center for the Advancement of Science in Space(先端宇宙科学センター)の暫定チーフサイエンティストで、米ISS国立研究所のマネージャーであるマイケル・ロバーツ氏は、この技術が今後10年以内に実用化される可能性があると述べています。そして「これが我々の未来です。15〜20年後にはすべての臓器を作り出すことができるかもしれません」とこれらの技術への期待を語りました。

NASAは、月や火星への旅行を含む将来の宇宙ミッションの準備のために、今後もチャレンジコンテストを活用していきたいと考えています。

(Source:PR NewswireNASAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:医療(用語)ウェイクフォレスト大学(組織)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

再び注目が集まる3Dプリント技術FormlabsがソフトバンクのVision Fund 2などから約160億円調達

3Dプリント業界で大規模な資金調達があった。マサチューセッツ州拠点のFormlabs(フォームラブズ)が5月19日、1億5000万ドル(約160億円)のシリーズEを発表した。同ラウンドはSoftBank(ソフトバンク)のVision Fund 2がリードし、Formlabsの評価額はユニコーンの2倍、20億ドル(約2180億円)となった。

このニュースは、かつて窮地に陥っていた産業がかなりの関心と資金を引き寄せて復活を果たす中でのものだ。注目すべきDesktop Metal、Shapeways、Velo3D、MarkforgedなどはすべてSPAC(特別買収目的会社)経由で上場する計画を発表した。Formlabsは、業界が2026年までに510億ドル(約5兆5570億円)超の規模に達すると予測する最近の研究に言及している。テクノロジーの進化、素材の多様化、そして企業が付加製造を大量生産に取り入れる方法を模索していることを反映している。

MIT Media Labの学生によって2011年に創業されたFormlabsは3Dプリント業界においては変わり種的存在だった。同社はそれまでの付加製造(光造形法)の手法をデスクトップのフォームファクタに変えた。それは業界がバブル崩壊する中で同社が存続し続けるのに十分なものだった。

「現代においては、大半の3Dプリント技術は幅広く浸透するにはまだ高価で扱いにくいものです」とCEOのMax Lobovsky(マックス・ラボフスキー)氏は資金調達に関するプレスリリースで述べた。「当社はユーザーエクスペリエンスとこれらの機器の質の向上にピンポイントでフォーカスしており、その一方で価格抑制は当社の成功ならびに業界の成長にとって重要です。今回調達した資金で、SLAとSLSのテクノロジーの現在のポートフォリオを拡大し、引き続き3Dプリント産業に注がれている期待に応えるために製品開発を加速させる計画です」。

大型ラウンドで獲得した資金は、世界の従業員数の増加、そして大半の3Dプリント技術にとって長い間障害だった大量生産向けテクノロジーの展開にも使われる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:3DプリントFormlabs資金調達SoftBank Vision Fundユニコーン企業

画像クレジット:Formlabs

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

3DプリントマーケットプレイスのShapewaysがSPACで上場へ

Shapewaysは米国時間8月24日の今朝、SPACを通じて株式公開する契約を締結したとの以前の報道を確認した。2020年にハイテク企業の間で人気が高まった同社の製品は、MarkforgedやDesktop Metalなど多くの3Dプリント企業がすでに採用している。

Greg Kress(グレッグ・クレス)CEOはこのニュースに関連したリリースの中で「誰もがデジタルデザインを物理的な製品に迅速に変換できるようにするという我々のビジョンは今日、Shapewaysを上場企業に移行することで、重要なマイルストーンに到達しました。私たちはビジョンの実現に成功しており、今回の資金調達により大規模なデジタルマニュファクチャリングを可能にし、Shapewaysの付加的な造形能力を加速させるとともに、当社の材料や技術をより多くの市場や産業に拡大することができます」。

2007年に設立されたShapewaysはオランダにルーツを持つニューヨークを拠点とした企業で、3Dプリントをサービスとして提供している。具体的には、ユーザーが3Dプリントオブジェクトのプリントを産業部門にアウトソースできる。同社のサービスには、ユーザーが3Dプリントされたオブジェクトを売買できるマーケットプレイスが含まれている。

Crunchbaseによればこれまでに1億700万ドル(約120億円)を超える資金を調達してきたShapewaysは、ブランクカンパニーのGalileo Acquisition Corpとの間で逆方向の合併を行う。この買収によりShapewaysの価値は4億1000万ドル(約450億円)となり、1億9500万ドル(約210億円)の資金を得ることができる。この資金は「Shapewaysの金属積層造形の能力を加速させ、材料や技術の提供を拡大して市場を拡大し、顧客のシェアを拡大するとともに、追加の運転資金を提供する」ことに充てられる。

この買収は規制当局による審査を受けることになるが、ニューヨーク証券取引所では「SHPW」として上場することになる。この取引は、今夏に完了する予定だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shapeways3DプリントSPAC

画像クレジット:Shapeways

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

建設3DプリンターのPolyuseが資金調達、普及を阻む壁とそれを超えるための戦略とは

人材不足、高齢化など、建設業界では課題が山積している。この状況を打破すべく、3Dプリンターの活用が注目されている。そんな中、建設用3Dプリンターを開発するPolyuse(ポリウス)が、Coral Capital、STRIVE、池森ベンチャーサポート、吉村建設工業から約8000万円を調達した。代表取締役の岩本卓也氏は「建設用3Dプリンターの活用は始まったばかり。本格的普及には段階的なアプローチが不可欠です」と語る。建設用3Dプリンターは今後どう活用されていくのか。岩本氏と、同じく代表取締役の大岡航氏に聞いた。

3Dプリンターが建設業界を救うか

建設業界には、すぐに解決できない課題が多い。根強い3K(きつい、汚い、危険)のイメージ、慢性的な人材不足、高齢化、進まない施工期間の短縮、販売管理等コストの膨張など、枚挙にいとまがない。

「現在、建設業界を中心的に支えているのは50代、60代の人材です。この中で10年以内に働けなくなる人もいるでしょう。10年後の建設業界の人材は、今の3分の2になると言われています。建設業界全体のデジタル・トランスフォメーションを進めることで、効率化を進め、人材不足を補うことは喫緊の課題です」(岩本氏)

さらに、これまで建設業界が猶予されてきた長時間労働の上限規制が2024年に始まる。3Dプリンターのようなマシンを積極的に導入することで、職人の負担や労働時間を減らすことも必要になる。

しかし、建設用3Dプリンターの活用は実際にはそれほど簡単ではない。なぜなら、そのためには、建設、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、事業開発を理解する人材が必要だからだ。

「建設において3Dプリンターを活用するということは、3Dプリンターというハードウェアを理解し、それを制御するソフトウェアを開発し、ソフトウェアを使って樹脂やセメントなどのマテリアルを立体的に作り上げ、作ったマテリアルを建設現場のオペレーションに載せ、一連のプロセスを事業として成り立たせるということです。現状、これらのいくつかを持ち合わせるプレイヤーはいますが、すべてを揃えているところは見かけません。そこで、その要素をすべて持つ当社の存在意義が出てきます」(岩本氏)

ポリウスの3Dプリンターは、マテリアルの調整により従来では難しかった曲線造形も可能になった(画像クレジット:ポリウス)

3Dプリンター活用が進まないワケ

3Dプリンターには建設業界の課題を解決する可能性がある。しかし、岩本氏は「3Dプリンターの活用と普及拡大には、主に3つの壁があります」と語る。

1つめが建築基準法の壁だ。これは、建築基準法が直接的に3Dプリンター活用を禁じているということではない。建築基準法を遵守した形で3Dプリンターを活用した建物を建てようとすると、実績を積みづらいのだ。

「建設業界は3Dプリンターを試し始めたばかりで、実績が多くありません。『3Dプリンターで建てた橋は理論上〇〇年保ちます』とは言えるものの、『3Dプリンターで建てた橋が実際に〇〇年保ちました』とは言えないのです。建築基準法を所管する国土交通省は実績重視です。理論的に安全だとしても、実際にどれだけ安全に使えるのか実績のない3Dプリンターで橋を作らせるわけにはいかないのです」(岩本氏)

2つめの壁は3Dプリンターそのものにかかるコストだ。建設用3Dプリンターには、アーム型とガントリー型がある。アーム型は本体の構成要素が少ないので、開発がしやすい。本体を移動させないで印刷できる範囲は狭いが、本体を移動させればでいくらでも印刷範囲を広げられ、汎用性が高い。だが、開発コストが2000万円ほどで高い。一方ガントリー型は印刷範囲であるフレームから開発する必要がある。印刷範囲がフレームにより限定的になるが、広く取ることができる。開発コストをアーム型より安く抑えやすい点が特徴だが、移動や設置が難しい。使い勝手で言えば高価なアーム型が有利だが、コストの面では現状、ガントリー型が現実的だ。ポリウスは主にコスト面での優位性や、協業先との話し合いからガントリー型の3Dプリンターを採用している。

3つめの壁は人件費と工数だ。実は、現段階でポリウス製ではない3Dプリンターを活用した施工を行うと、3Dプリンターなしの既存の施工よりも多くの作業者と工数がかかる。他社製品の場合「マテリアルの粉を入れる人」「ミキサーを管理する人」「ポンプを制御する人」「造形時の状態を見る人」「データを監視する人」など、最低4~5人は必要になる。一方、ポリウス製の3Dプリンターでは、一連の作業に必要なのは1人だ。

「従来では、『建設用3Dプリンター』という一般的な観点でいうと、既存工法より3Dプリンター活用工法の方が人件費と工数がかかる、という壁があります」(岩本氏)

建設業界全体を巻き込む

上記の3つの壁があることで普及が遅れる建設用3Dプリンターだが、それを打開するためには3Dプリンターの活用事例をとにかく増やすことが必要だと岩本氏は話す。建築基準法の壁を超えるため、同社は「法律に触れない範囲での3Dプリンター活用を進めている」(岩本氏)という。具体的には、側溝、土手、テトラポッドなどの土木構造物や、住宅の門扉や置物、公園の遊具といった外構(エクステリア)だ。建築物全体を3Dプリンターだけで仕上げるのではなく、建築物の一部を仕上げ、既存の施工方法と組み合わせることで、3Dプリンターの活用事例を全国規模で増やそうとしている。

大岡氏は「私たちは建築基準法を常に意識しないといけないので、行政とのコミュニケーションが重要です。建設業界の人材不足、効率改善は、行政も重要性を理解しているので、行政と戦うような構図にはなりません。むしろ、行政との関係性が強いゼネコンなどと協力して、業界ごと改善する方法を模索する必要があります。私たちは既存のプレイヤーと戦いたいのではなく、一緒に業界をよくしていきたいのです」と業界全体の協力の重要性も指摘する。

この「業界全体」というのは、ポリウスのキーワードでもある。

「3Dプリンターを活用するには、建設、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、事業開発のノウハウが必要です。ただ、それらを全部まとめて一気通貫でやる企業や組織はこれまでありませんでした。私たちの活動の幅を広げるには、大学などの研究機関に当社の事業や、テクノロジー連携のあるべき姿をお伝えし、業界のあらゆるプレイヤーと研究機関のコラボレーションの可能性を掘り下げていかなければなりません。業界全体のステークホルダーのみなさんと一緒にコンソーシアム型開発を進めていくことが重要です」(岩本氏)

日本で建設用3Dプリンターを制すれば、世界を制す

ポリウスの調べでは、世界には建設用3Dプリンター企業が70社ほどあるという。しかし、日本ではまだまだ珍しい。大岡氏によると、日本は海外と比べて建築に関わる基準が厳しく、ポリウスのようなスタートアップが生まれにくいのだそうだ。

「逆にいうと、海外の建設用3Dプリンター企業は日本に参入しにくいのです。そこで、私たちはそこを逆手にとって建築基準の厳しい日本にまず対応し、その後比較的に基準の緩い海外に進出してこうと考えています」(岩本氏)

とはいえ、日本での3Dプリンター活用はまだまだ始まったばかり。まずはテクノロジーがあまり浸透していない建設業界とのコミュニケーションを重ね、3Dプリンターの信頼を醸成することが必要になる。ポリウスは今回の資金調達により、3Dプリンターを扱うハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニア、マテリアルエンジニアなどの各種エンジニアを募集し、研究開発を進めていくという。

ポリウスのメンバー。写真中央が代表取締役の岩本氏、その左が同じく代表取締役の大岡氏。

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