アップル、プライバシー保護の懸念を受けて児童性的虐待コンテンツへの言及をひっそり取り止め

Apple(アップル)は、iOS 15とmacOS Montereyにその新しい技術が組み込まれることを発表してから数カ月後、ウェブサイトから児童性的虐待スキャン機能に関するすべての言及を静かに削除した。

8月にAppleは、CSAMとして知られる児童性的虐待コンテンツを同社が検出し、法執行機関に報告することを可能にする機能を導入すると発表した。当時Appleは、すでに違法となりうるコンテンツをチェックするための包括的なスキャンを提供しているクラウドプロバイダとは異なり、画像やデバイスを取得することなく、またその内容を知らなくてもユーザーのデバイス上のCSAMを特定できる技術なので、ユーザーのプライバシーを保護しながら違法画像を検出することができると主張していた。

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これに対し、Appleは大きな反発を受けた。セキュリティの専門家やプライバシー擁護団体は、このシステムが政府のような高度なリソースを持つアクターによって悪用され、無実の被害者を巻き込んだり、システムを操作されたりする可能性があると懸念を表明した。また、児童の性的虐待の画像を特定するのに効果的でないと揶揄する人もいた。このため、数十の市民の自由団体がAppleに対してこの論争の的となっている機能を展開する計画を放棄するよう求めた。

恐怖を和らげるための広報活動を行ったにもかかわらず、Appleは譲歩し、CSAMスキャン機能の展開の延期を発表した。同社は「顧客、支援団体、研究者などからのフィードバックに基づいて、今後数カ月間、さらに時間をかけて意見を集約し、これらの極めて重要なチャイルドセーフティ機能をリリースする前に改善を行うことにしました」と述べた。

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現在、この機能は完全に廃止された可能性があるようだ。

MacRumoursは、AppleのチャイルドセーフティのウェブページからCSAMに関するすべての言及がひっそりと削除されていることに最初に気づいた。12月10日まで、このページにはCSAM検出の詳細な概要と、この物議を醸す機能が「iOS 15、iPadOS 15、watchOS 8、macOS Montereyのアップデートで2021年後半に登場」するとの約束が含まれていた。更新されたバージョンのページでは、CSAM検出に関するセクションが削除されただけでなく、この技術に関するすべての言及と、CSAMプロセスを説明し評価する文書へのリンクを提供するセクションが削られている。現在、Appleのチャイルドセーフティページには、今週初めにiOS 15でデビューしたメッセージのコミュニケーションセーフティへの言及とSiri、Spotlight、Safari検索への拡張ガイダンスのみが含まれている。

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Appleの広報担当者Shane Bauer(シェーン・バウアー)氏はTechCrunchに対し、9月に発表した同機能の遅延に関する声明について「何も変わっていない」と述べたが、CSAM機能への言及が削除された理由については言及しないとしている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Yuta Kaminishi)

アップル、iOS 15.2でSiri専用の「Apple Music Voiceプラン」を開始

Apple(アップル)が、秋のハードウェアイベントで発表したApple Musicの低価格プラン「Voiceプラン」へのアクセスを開始する。このサービスは。ほぼHomePodのスピーカーとAirPods専用で、主にSiriのコマンドでApple Musicにアクセスする。音声だけで操作するこのシンプルなバージョンは、標準の個人プランの月額9.99ドル(税込980円)に対して、月額4.99ドル(税込480円)で提供される。

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音楽の新サブスクリプションはiOS 15.2のさまざまなアップデートの一環で、他にもアプリのプライバシー報告や、メッセージの子どもの安全警告「メールを非公開」によるプライバシー機能などがある。

音声コマンド専用の音楽サブスクなんて誰が必要とするんだ?と疑問に思った人もいるかもしれないが、実のところ、初めてそれを提供するのはAppleではない。

2019年、Amazon(アマゾン)はAmazon Musicサービスをもっと手頃な価格で提供する方法として無料で広告入りのプランを、Echoスピーカー専用として用意した。つまりそれは、AlexaのコマンドからしかアクセスできないAmazon Musicだった。

今回のSiriだけサービスもそれと似ているが、Appleのスマートスピーカーだけに限定されていない。AppleによるとHomePod、AirPods、iPhone、CarPlayなど、Siri対応のデバイスなら何でもよいとのことだ。

この音声オンリーのプランは、曲数が少ないApple Musicの簡易バージョンではない。これまでのサブスクと同じく、会員はApple Musicのカタログに載っている9000万曲や数万のプレイリスト、数百種類のムード、アクティビティプレイリスト、個人化されているミックス、ジャンル別のステーションなどにアクセスできる。Apple Music Radioも含まれている。

このコンテンツにアクセスするために、ユーザーは曲やアルバムやアーティストをSiriにリクエストし、おそらくは「play something chill(チルな曲をプレイして)」や「play the dinner party playlist(ディナーパーティー用のプレイリスト)」「play more like this(こんな曲をもっと)」といった音声コマンドでジャンルやプレイリストを指定するだろう。

Voiceプランの会員は、Apple Musicアプリをある程度利用できる。しかし通常のようにライブラリ全体を閲覧するのではなく、「今すぐ聴く」に先にプレイされた曲が表示され、タップやSiriのコマンドでそれに似た曲を聴くことができる。「ラジオ」は、ライブやオンデマンドのラジオにアクセスできる。検索機能もあるが、検索結果の曲はSiriに要求しないと再生されない。アプリには、Apple Music向けにSiriを最適化する方法も紹介されている。

Siriへのフィードバックは「I like this song(この曲は好き)」とか「I don’t like this song(この曲は好きではない)」などといえばよい。Siriは、歌手の名前や、曲名、アルバム名、発売年なども教えてくれる。

音声でApple Musicに付き合うことは、Siriを訓練することにもなり、ユーザーの好みをよく理解するようになる。そうなると、Siriに「play some music I like(私が好きな音楽をかけて)」や「play my favorites mix(私の好きなミックスをかけて」」などとお願いすると、そのとおりの曲をかけてもらえるようになるだろう。

AmazonのEchoオンリープランに対抗し、Apple MusicのVoiceプランはユーザーのSiriの利用履歴にAppleがアクセスできるようにしている。そしてそのデータを利用して、AlexaやGoogleアシスタントと比べて後塵を拝しているプロダクトを改良することができる。より大きな意味では、有料の音楽サービスを利用することをためらっていたお金に敏感なユーザーに、初めてそれを試してもらう機会になる。広告のない音楽をオンデマンドで聴けることの良さに目覚めたら、Pandoraの広告入りバージョンから離れるかもしれない。

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iOS 15.2のアップデートにより、Apple Music Voiceが提供されるのは、オーストラリア、オーストリア、カナダ、中国、フランス、ドイツ、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、スペイン、台湾、英国、米国となる。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル、正体不明のAirTagを発見するAndroidアプリ「Tracker Detect」をリリース

Apple(アップル)は、プライバシー保護の観点から、アップル製品を所有していない人が近くにある身に覚えのないAirTag(エアタグ)を特定できるようにするための新しいAndroidアプリ「Tracker Detect」をリリースした。追跡されているかもしれないと思ったユーザーは、このアプリを使って近くにあるAirTagをスキャンすることができる。もし見つかったら「unknown AirTag」としてフラグが立てられる。検出されたアイテムトラッカーが10分以上アプリユーザーと一緒に移動していることがわかった場合、ユーザーは検出されたアイテムトラッカーから音を出して、その場所を特定することができる。そこから、そのアイテムトラッカーについて詳しく知る方法と、バッテリーを取り外して無効にする方法が案内される。

「Tracker Detectは、所有者から離れた、AppleのFind Myネットワークに対応しているアイテムトラッカーを探します」とアプリの説明にある。「対象となるアイテムトラッカーには、AirTagや他の企業が提供する互換性のあるデバイスが含まれます。誰かがAirTagや他のデバイスを使ってあなたの位置を追跡していると思われる場合、スキャンしてそれを見つけることができます」。

差し当たって、Google Play StoreのTracker Detectアプリは、AppleのAirTagやChipolo ONE Spotを含む、Find Myネットワークをサポートしているアイテムトラッカーと互換性がある。例えばTile(タイル)のような、Find Myネットワークと互換性のない他のトラッカーは対象外だ。

また、このアプリではAppleアカウントに関連付けられたAirTagをユーザーが追跡することはできないため、実際にはAirTagの機能をフル活用できていない。

「AirTagは業界をリードするプライバシーとセキュリティ機能を提供し、今日、当社はAndroidデバイスに新しい機能を持ってきます」とAppleの広報担当は電子メールでTechCrunchに述べ、 新アプリの提供開始を認めた。「Tracker Detectは、Androidユーザーが、知らないうちに自分と一緒に動いているかもしれないAirTagまたはFind Myをサポートしているアイテムトラッカーをスキャンできるようにします」。

もしユーザーが身に覚えのないAirTagを見つけた場合、iPhoneや他のNFC対応デバイスでそれをタップすると、AirTagを無効にする方法が案内される。Tracker Detectアプリのユーザーは、アプリ内でAirTagの詳細とそれらを無効化する方法を確認することができる。

この新しいアプリの導入は、AppleのAirTagが、バッグやコートの中に入れておけるほど小さいため、密かに人を追跡するために使われるのではないかという懸念を受けてのことだ。2021年初めのワシントン・ポストの報道では、AppleのAirTagによって、相手に気づかれずにストーキングすることが容易になる可能性がある、とされている。他にも、この追跡デバイスが個人を密かに監視するために使われる可能性があると主張する報道が多くあった。

こうした報道を受けてAppleは、所有者の元を離れたAirTagが動いたときに音が鳴るまでの期間を更新した。発売当初は3日間としていたが、8〜24時間の間でランダムに設定できるように変更した。また、ユーザーのiPhoneは、近くに身に覚えのないAirTagを検出した場合、「Item Detected Near You」というメッセージを表示するようになった。つまり、iOSユーザーは見知らぬAirTagを見つけるために別のアプリを必要としない。

しかし、Androidユーザーが近くにある見知らぬAirTagを発見する方法がなかったため、Appleはユーザーが一緒に移動しているかもしれないAirTagを検出できるAndroidアプリを発表する予定であることも発表していた。

AirTagに対する懸念はあるものの、Appleがトラッカーのスキャンをサポートしたことで、まだストーカー対策機能を提供していない競合他社をリードすることになった。この発表を受けて、競合するTileは、誰でもTileアプリを使っていつでも手動スキャンを行えるようにすると述べた。この機能は2022年初めに提供される予定だ。

Appleは2021年4月にAirTagを発売した。価格は1個29ドル(日本での価格は税込3800円)、4個入りで99ドル(税込1万2800円)となっている。アイテムの追跡には、同社が「Precision Finding」と呼ぶ、同社独自の超広帯域チップ「U1」が使用されている。また、Bluetooth LE(低消費電力)も採用している。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルは控訴審の判決が出るまでApp Storeのポリシー変更の必要なし

Apple(アップル)は、Epic Gamesとの法廷闘争で判事が下したアプリ内購入とAPP Storeのガイドラインの変更命令を、実行しなくてもよくなった。判決は、Appleは独占ではなかったというほぼ勝訴だが、同社は、開発者がアプリ内購入の決済先であるApp Store以外のリンクをアプリに追加することを禁じてはならないと命じられた。最初の判決に対してAppleとEpicの両方が上訴し、Epicはメインの主張が認められなかったこと、そしてAppleはアプリ内購入に関する当の判決そのものが不服であるとした。判決ではApp Storeのポリシーの改定は12月9日までとなっていたが、Appleはアプリ内購入ガイドラインの変更は控訴への判決が決まるまで猶予とすることを求めた。

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控訴裁判所は今回、差し止め命令が発効するまでの猶予をAppleに認めた。つまり、開発者はAppleが提供する既存のアプリ内課金システムを使い続けなければならない。アプリ内での支払いのために、自社のウェブサイトにリンクしたり、ユーザーを誘導したりすることは許されない。

米国時間12月8日、米国第9巡回区控訴裁判所に提出された文書(下記参照)では、Epic Games Inc.がAppleの行為が反トラスト法に違反していることを証明できなかったが、同じ行為がカリフォルニア州の不正競争防止法に違反していることは証明できた、という連邦地裁の判断に対して、「少なくとも、その控訴が本質的な問題を提起するものである」とAppleは判断した。

裁判所はさらに、Appleは「修復不能な損害の十分な提示」を行ったとして、判決の一部を猶予にするAppleの申し立てを認めている。

その文書によると、猶予は控訴が審理されるまで有効だ。

Appleは、以前にも停止の申し立てを試みたが、裁判所はその申し立てを却下した。今回の申請は、App Store以外で行われた購入を委託するためのまったく新しいシステムを考え出さなければならないなどと主張し、戦術を変えた後に認められた。

Epic Gamesは、裁判所の決定についてのコメントを控えている。

一方、Appleの広報担当者は、以下のような声明を発表した。

私たちはApp Storeを絶えず進化させて、さらに良いユーザー体験と、優れたiOS開発者のをコミュニティを築くことに努めています。私たちは、これらの変化によってプライバシーとセキュリティのリスクが生じ、また、顧客がApp Storeに関して愛する、ユーザー体験が壊されることを懸念しています。私たちは、この猶予を認めて控訴のプロセスを継続される裁判所に感謝します。

The Verge9to5Macがこの猶予のニュースを先に報じている。

Apple granted stay on injunction in Epic ruling by TechCrunch on Scribd

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップルがApple Walletでホテルの鍵のサポートを開始、まずハイアットと提携

Apple(アップル)は6月に開催したWWDCで、自宅、オフィス、ホテルの鍵や、州の運転免許証をApple Walletでサポートする計画を予告した。そして12月8日、同社はHyatt(ハイアット)がこの新技術を活用する最初のホテルパートナーになることを発表した。ホテルチェーンのHyattは、宿泊客がApple Walletで部屋の鍵を使用できるようにするため、まず米国内の6つのホテルでサポートを開始し、将来的にはさらに多くのホテルで導入する予定だ。

6つのホテルはAndaz Maui at Wailea Resort、Hyatt Centric Key West Resort & Spa、Hyatt House Chicago/West Loop-Fulton Market、Hyatt House Dallas/Richardson、Hyatt Place Fremont/Silicon Valley、Hyatt Regency Long Beachとなる。

新システムは、モバイルアプリ「World of Hyatt」と連動する。アプリで予約をすると、ルームキーをウォレットに追加するオプションを提供する画面が表示される。この体験は、チケットやパスを予約した後、ボタンをタップしてそれらのアイテムをApple Walletに追加し、後でアクセスできるようにするオプションがあるのと似ている。また、他のパスと同様に、予約後すぐにホテルのルームキーを追加することができる。もちろん、チェックイン時にならないとドアが解錠されることはない。

Apple Walletにキーが追加されると、メイン画面に予約日、施設名、チェックイン予定日が表示されるようになる。また、右上の3つのドットメニューをタップして、予約番号や施設の詳細情報など、宿泊に関する情報を確認することができる。さらに、Apple Wallet内から直接Hyattのアプリを起動して、予約を管理することもできる。

ホテルのキーは、iPhoneだけでなく、ペアリングしたApple WatchのWalletアプリにも自動的に追加される。

このシステムでは、プラスチック製のホテルキーカードを持つ必要がないという利便性に加えて、ロビーの列に並んでチェックインする手間を省くことができる。部屋の準備が整ったことをアプリが通知し、宿泊客は携帯電話でチェックインすることが可能だ。そのプロセスが完了するとルームキーが有効になり、部屋番号が表示されるので、そのまま部屋に向かうことができるようになる。これにより、宿泊客はチェックインのために他の宿泊客と列に並んで待つ必要がなくなり、新型コロナウイルスへの露出を減らすことができる。

Appleによると、複数の部屋を持っている宿泊客は、滞在中すべての部屋を同じルームキーとウォレットに追加することができるので、どのバーチャルキーをタップするかを覚えておく必要はない。また、交通機関のパス保持者が使用するエクスプレスモードのように、ホテルのキーもデバイスのロックを解除しなくてもドアを開けることができるエクスプレスモードで機能する。また、このキーは、ジムやプールなどのホテルのアメニティへのアクセスを解除するためにも機能する。

Apple Walletに登録されたハイアットのルームキー:2021年10月27日、シカゴ(画像クレジット:Jean-Marc Giboux/AP Images for Hyatt)

宿泊客がモバイルアプリで滞在延長やレイトチェックアウトを決定すると、ホテルキーも更新される。ただし、ホテルキーを友人と共有することはできない。ホテルキーは、モバイルアプリにログインしているHyattのアカウント所有者にのみ有効だ。チェックアウト後、ホテルキーはApple Walletに記録保存され、削除はされない。

この新しいシステムでは、ホテル側は部屋の鍵のインフラをNFC技術に対応するように更新する必要がある。これにより、対応するPOS端末でApple Payを利用する際に現在行っているように、宿泊客はタップするだけでホテルのドアを開けることができるようになる。HyattはAssa Abloyと共同でソリューションを開発しているが、Appleはホテルが選択したベンダーとの協力に前向きだ。同社はこの技術の導入に取り組んでいる他のホテルチェーンについては明らかにしなかったが、Hyattは世界各地のホテルにアクセスを拡大する計画がある、と話す。

ホテルキーのサポートは、iOS 15を搭載したiPhoneとwatchOS 8を搭載したApple Watchを対象に12月8日から始まる。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

フェイスブックがエンド・ツー・エンド暗号化の全面導入を「2023年中まで」延期

Facebook(フェイスブック)改めMeta(メタ)が、エンド・ツー・エンド暗号化を同社の全サービスに全面展開することを「2023年中まで」延期する。このことは、同社の安全部門のグローバル責任者であるAntigone Davis(アンティゴン・デイビス)氏が英国のTelegraph(テレグラフ)紙に寄稿した論説記事によって明らかになった。

Facebook傘下のWhatsApp(ワッツアップ)には、すでに2016年からエンド・ツー・エンド暗号化が全面的に導入されているが、ユーザーがメッセージデータを暗号化する鍵をユーザーのみに持たせるこの機能は、同社の他の多くのサービスではまだ提供されていない。つまり、エンド・ツー・エンド暗号化が提供されていないそれらのサービスでは、メッセージデータを公権力に提供するよう召喚されたり令状が発行されたりする可能性があるということだ。

しかし、Facebook創業者のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、Cambridge Analytica(ケンブリッジ・アナリティカ)のデータ不正利用スキャンダルを受けて、2019年にはすでに「プライバシー重視のプラットフォームへと転換させる」取り組みの一環としてエンド・ツー・エンド暗号化を同社の全サービスに全面導入する計画であることを発表した。

ザッカーバーグ氏は当時、エンド・ツー・エンド暗号化の全面導入の完了時期について具体的な日程には言及しなかったが、Facebookは2021年初めに、2022年中には全面導入が完了する予定であると示唆していた。

それがこの度、同社は、2023年中の「いずれかの時点」まで完了する予定はないと発表した。明らかに先送りされているようだ。

デイビス氏によると、今回の延期は、子どもの安全に関わる捜査を支援するために情報を法執行機関に提供する能力を同社が保持できるようにして、安全性を確保しながらエンド・ツー・エンド暗号化を実装することに時間をかけたいと同社が希望しているためだという。

デイビス氏は次のように語る。「当社でもそうだが、ユーザーのメッセージにアクセスできない状態で、テック企業が虐待問題に立ち向かい続けることと法執行機関の重要な任務をサポートし続けることをどのように両立できるのかという点については、今も議論が続いている。プライバシーと安全性のどちらかを選ばなければならないような状態にしてはいけないと当社は考えている。だからこそ当社は、適切な方法でこの技術を導入するために、強力な安全対策を計画に盛り込み、プライバシー分野や安全分野の専門家、市民社会、政府と協力している」。さらに、同社は「プロアクティブな検知テクノロジー」を使用して不審なアクティビティを特定することに加え、ユーザーのコントロール権限を強化し、問題を報告する能力をユーザーに付与する予定だと同氏はいう。

Facebookが2年以上前に「全サービスへのエンド・ツー・エンド暗号化導入」計画を公に発表してからこれまで、英国を含む西側諸国の政府は、最高レベルの暗号化を全サービスに全面導入する計画を延期または断念するよう同社に対して強い圧力をかけ続けている。

英国政府はこの点で特に、Facebookに対して苦言を呈してきた。内務大臣のPriti Patel(プリティ・パテル)氏は、Facebookのエンド・ツー・エンド暗号化拡大計画は、オンラインの児童虐待を防止する努力を阻害するものになると、公の場で(繰り返し)警告し 、同社を、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の制作と配信を防ぐ闘いにおける無責任な悪役であるとみなした。

したがって、Metaが今回、英国政府ご贔屓の新聞に論説記事を寄稿したのは偶然ではなかったのだ。

Telegraph紙に寄稿された前述の論説記事の中で、デイビス氏は「エンド・ツー・エンド暗号化を展開するにあたり、当社は、市民の安全を確保する活動に協力しつつも、暗号化されていないデータの組み合わせを用いて各種アプリ、アカウント情報、ユーザーからの報告をプライバシーが保護された安全な状態に保つ」と述べ「この取り組みにより、すでに、子どもの安全を担当する当局機関に対し、WhatsAppから極めて重要な情報を報告することができている」と同氏は付け加える。

デイビス氏はさらに、Meta / Facebookは過去の事例をいくつも調査した結果「エンド・ツー・エンド暗号化をサービスに導入した場合でも、重要な情報を当局機関に報告することができていた」との結論に達したと述べ「完璧なシステムなど存在しないが、この調査結果は、当社が犯罪防止と法執行機関への協力を継続できることを示している」と付け加えた。

ところで、Facebookのサービスにおいてすべてのコミュニケーションがエンド・ツー・エンドで暗号化された場合に、同社は一体どのようにして、ユーザーに関するデータを当局機関に渡すことができるのだろうか。

Facebook / Metaがそのソーシャルメディア帝国において、ユーザーのアクティビティに関する手がかりを集めている方法の詳細をユーザーが正確に知ることはできない。しかし、1つ言えることとしてFacebookはWhatsAppのメッセージ / コミュニケーションの内容がエンド・ツー・エンドで暗号化されるようにしているが、メタデータはエンド・ツー・エンドで暗号化されていないということだ(そしてメタデータからだけでも、かなり多くの情報を得ることができる)。

Facebookはまた、例えば、2016年に議論を呼んだプライバシーUターンのように、WhatsAppユーザーの携帯電話番号データをFacebookとリンクさせるなど、アカウントとそのアクティビティを同社のソーシャルメディア帝国全体で定期的にリンクさせている。これにより、Facebookのアカウントを持っている、あるいは以前に持っていたユーザーの(公開されている)ソーシャルメディアアクティビティが、WhatsAppならではの、より制限された範囲内でのアクティビティ(1対1のコミュニケーションや、エンド・ツー・エンド暗号化された非公開チャンネルでのグループチャット)とリンクされる。

このようにしてFacebookは、その巨大な規模(およびこれまでにプロファイリングしてきたユーザーの情報)を利用して、たとえWhatsAppのメッセージ / コミュニケーションの内容自体がエンド・ツー・エンドで暗号化されていたとしても、Facebook / Metaが提供する全サービス(そのほとんどがまだエンド・ツー・エンド暗号化されていない)において、誰と話しているのか、誰とつながっているのか、何を好きか、何をしたか、といったことに基づいて、WhatAppユーザーのソーシャルグラフや関心事を具体的に把握できる。

(このことを、デイビス氏は前述の論説記事で次のように表現している。「エンド・ツー・エンド暗号化を展開するにあたり、当社は、市民の安全を確保する活動に協力しつつも、暗号化されていないデータの組み合わせを用いて各種アプリ、アカウント情報、ユーザーからの報告をプライバシーが保護された安全な状態に保つ。この取り組みにより、すでに、子どもの安全を担当する当局機関に対し、WhatsAppから極めて重要な情報を報告することができている」)。

Facebookは2021年の秋口に、WhatsAppが透明性に関する義務を遂行しなかったとして欧州連合から多額の罰金を科せられた。WhatsAppがユーザーデータの使用目的と、WhatsApp-Facebook間においてそのデータを処理する方法について、ユーザーに適切に通知していなかったことが、DPAの調べによって明らかになったためだ。

関連記事:WhatsAppに欧州のGDPR違反で約294億円の制裁金、ユーザー・非ユーザーに対する透明性の向上も命令

FacebookはGDPRの制裁金に関して控訴中だが、米国時間11月22日に、欧州の規制当局からの求めに応じて、欧州のWhatsAppユーザー向けのプライバシーポリシーの文言を少し変更することを発表した。しかし、同社によると、ユーザーデータの処理方法については、まだ何の変更も加えていないとのことだ。

さて、エンド・ツー・エンド暗号化そのものに話を戻すと、2021年10月、Facebookの内部告発者であるFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏が、同社によるエンド・ツー・エンド暗号化テクノロジーの応用に関して懸念を表明した。このテクノロジーはオープンソースではなく、専有テクノロジーであるため、ユーザーはFacebook / Metaのセキュリティ方針を信じなければならず、同テクノロジーのコードが本当にそのセキュリティ方針を順守しているかどうか、独立した第三者が検証する術がない、というのが同氏の主張だ。

ハウゲン氏はさらに、Facebookがエンド・ツー・エンド暗号化をどのように解釈しているのかを社外の者が知る方法がないことも指摘し、同社がエンド・ツー・エンド暗号化の使用を拡大しようとしていることについて「Facebookが本当は何をするつもりなのかまったくわからない」と述べて懸念を表明した。

「これが何を意味するのか、人々のプライバシーが本当に保護されるのか、私たちにはわかりません」と英国議会の議員たちに語ったハウゲン氏は、さらに次のように警告した。「これは非常に繊細な問題で、文脈も異なります。私が気に入っているオープンソースのエンド・ツー・エンド暗号化製品には、14歳の子どもがアクセスしているディレクトリや、バンコクのウイグル族コミュニティを見つけるためのディレクトリはありません。Facebookでは、社会的に弱い立場にある人々を標的にすることが、この上なく簡単にできてしまいます。そして、国家政府がそれを行っているのです」。

ハウゲン氏は、エンド・ツー・エンド暗号化の支持については慎重に言葉を選んで発言し、エンド・ツー・エンド暗号化テクノロジーは、外部の専門家がそのコードや方針を厳正に調査できるオープンソースで対応することが望ましいと述べた。

しかし、Facebookの場合は、エンド・ツー・エンド暗号化の実装がオープンソースではなく、誰も検証できないため、規制当局による監視が必要だとハウゲン氏は提案した。ユーザーのプライバシーをどの程度確保するか(したがって、政府当局などによる潜在的に有害な監視からの保護をどの程度確保するか)、という点についてFacebookが誤解を招く指針を打ち出さないようにするためだ。

「私たちはプライバシーを保護し、危害の発生を防ぐ」という見出しの下で書かれた前述のデイビス氏の論説記事は、Metaが「外部の専門家と引き続き協力し、虐待と闘うための効果的な方法を構築していく」ことを誓う言葉で締めくくられており、英国議会の議員をなだめることによって、Facebookが一挙両得を狙っているように感じられる。

「Facebookはこの取り組みを適切な方法で進めるために時間をかけており、当社のすべてのメッセージングサービスでエンド・ツー・エンド暗号化を標準機能として導入することが、2023年中のある時点までに完了する予定はない」とデイビス氏は付け加え「Facebookはユーザーのプライベートなコミュニケーションを保護し、オンラインサービスを使用する人々の安全を守る」という、具体性のない宣伝文句をまた1つ発して記事を締めくくった。

英国政府は間違いなく、Facebookが今回、規制に配慮を示しながら非常に厄介な問題に関する記事を公に発表したことについて、喜ばしく思うだろう。しかし、同社が、パテル内相などからの長期にわたる圧力を受けて、エンド・ツー・エンド暗号化の延期の理由を「適切に導入するため」だと発表したことは「では、非常にセンシティブなプライバシーに関する問題という文脈において、その『適切』とは何を意味するのか」という懸念を強めるだけだろう。

もちろん、デジタル権利の擁護活動家やセキュリティの専門家を含むより大きなコミュニティも、今後のMetaの動向を注意深く見守っていくだろう。

英国政府は最近、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)の検知または報告、作成阻止を目的として、エンド・ツー・エンド暗号化サービスにも応用できる可能性があるスキャニング/フィルタリング技術を開発する5つのプロジェクトに、およそ50万ポンド(約7700万円)の税金を投じた。「代替ソリューション」(プラットフォームにエンド・ツー・エンド暗号化を実装する代わりに、スキャニング / フィルタリング技術を暗号化システムに組み込むことによってCSAMの検知 / 摘発を行う)を開発することによって、革新的な方法で「テクノロジーにおける安全性」を確保するよう閣僚たちが求めたためだ。

したがって、英国政府は(ちなみに現在、オンライン安全法案の制定に向けても動いている)、子どもの安全に関する懸念を政治的な圧力として利用して、暗号化されたコンテンツを、エンド・ツー・エンド暗号化の方針のいかんに関わらず、ユーザーのデバイス上でスキャンすることを可能にするスパイウエアを実装するようプラットフォームに働きかける計画のようだ。

そのようにして埋め込まれたスキャンシステムが(閣僚たちの主張とは相容れないものの)堅牢な暗号化の安全性にバックドアを作ることになれば、それが今後数カ月あるいは数年のうちに厳密な調査と議論の対象になることは間違いない。

ここで参考にできるのがApple(アップル)の例だ。Appleは最近、コンテンツがiCloudのストレージサービスにアップロードされる前に、そのコンテンツがCSAMかどうかを検知するシステムをモバイルOSに追加することを発表した。

Appleは当初「当社は、子どもの安全とユーザーのプライバシーを両立させるテクノロジーをすでに開発している」と述べて、予防的な措置を講じることについて強気な姿勢を見せていた。

しかし、プライバシーやセキュリティの専門家から懸念事項が山のように寄せられ、加えて、そのように一度は確立されたシステムが(著作権下のコンテンツをスキャンしたいという市場の要求だとか、独裁政権下の国にいる反政府勢力を標的にしたいという敵対国家からの要求に応えているうちに)いや応なく「フィーチャークリープ」に直面する警告も発せられた。これを受けてAppleは1カ月もたたないうちに前言を撤回し、同システムの導入を延期することを表明した。

Appleがオンデバイスのスキャナーを復活させるかどうか、また、いつ復活させるのか、現時点では不明である。

AppleはiPhoneのメーカーとして、プライバシー重視の企業であるという評判(と非常に高収益の事業)を築いてきたが、Facebookの広告帝国は「利益のために監視する」という、Appleとは正反対の野獣である。したがって、全権力を握る支配者である創業者が、組織的に行ったプライバシー侵害に関する一連のスキャンダルを取り仕切った、Facebookという巨大なソーシャルメディアの野獣が、自社の製品にスパイウエアを埋め込むようにという政治的な圧力を長期にわたって受けた結果、現状を維持することになれば、それは自身のDNAを否定することになるだろう。

そう考えると、同社が最近、社名をMetaに変更したことは、それよりはるかに浅薄な行動だったように思えてくる。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

アップルが新コーディングプログラム開始のためBoys & Girls Clubs of Americaと提携

Apple(アップル)は、全米の子どもたちやティーンエイジャーにコーディングの機会を提供することを目的とした新しいプログラムを開始するためにBoys & Girls Clubs of America(ボーイズ・アンド・ガールズ・クラブ・オブ・アメリカ)と提携した。Appleの「Everyone Can Code」カリキュラムを使用して、Boys & Girls Clubの子どもたちやティーンエイジャーは、活動の中にコーディングを取り入れることになる。Appleによると、この新しいコラボレーションにより、生徒たちはアプリのデザインと開発の基本を学び、創作する機会を得ることができるようになる。このプログラムは、批判的思考と創造的な問題解決に焦点を当てる。

この新しいプログラムは、まずアトランタ、テキサス州オースティン、ワシントンD.C.、フロリダ州マイアミ・デイド郡、ノースカロライナ州ウェイク郡、シリコンバレーなど、10の地域で開始され、その後、コーディングの機会を全国のクラブに拡大していくことを目標としている。すでに、ニュージャージー州アトランティックシティ、シカゴ、デトロイト、テネシー州ナッシュビル、ニュージャージー州ニューアークでサービスを開始している。

画像クレジット:Apple

「Boys & Girls Clubs of Americaと協力して、何千人もの学生に革新的なテクノロジーの体験を提供してきました、そして、私たちは、Swiftによるコーディングを国内のさらに多くのコミュニティに提供するためこのパートナーシップを拡大することをうれしく思っています」とAppleの環境・政策・社会的イニシアチブ担当副社長であるLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏は、今回の発表に関するプレスリリースの中で述べた。

この最新の取り組みは、AppleのRacial Equity and Justice Initiative(人種的公平と正義のイニシアチブ)を支援するCommunity Education Initiative(コミュニティ・エデュケーション・イニシアチブ)を通じたBoys & Girls Clubs of Americaとの既存のパートナーシップに基づいている。

Appleの「Everyone Can Code」カリキュラムの最新の拡張は、新しい「Everyone Can Code Early Learners」アクティビティガイドを含む、小学生向けの新しいリソースを発表してから2カ月後に行われた。最近発表されたガイドは、Appleのカリキュラムリソースを幼稚園から大学まで拡大するものだ。「Everyone Can Code Early Learners」ガイドによって、幼稚園から小学校3年生までの生徒は、音楽、美術、科学、体育などの複数の科目を通じて、コーディングの中核となる概念の基礎を築くことができる。

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同社は、Everyone Can Codeプログラムを年々拡大し、より多くの年齢層で利用できるようにしてきた。2019年に、Appleは学生がコンセプトを試してみることを目的としているEveryone Can Code Puzzlesというプログラムを開始した。2020年、Appleは、より高度なコーディングアクティビティを行うプログラムEveryone Can Code Adventuresを開始した

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

自動車泥棒がアップルの探し物トラッカーAirTagを悪用、高級車に付けて自宅まで追跡

自動車泥棒がアップルの探し物トラッカーAirTagを悪用、高級車に付けて自宅まで追跡

YRP

アップルの落とし物トラッカーAirTagが、車泥棒に悪用される事件が増えていると報告されています。

カナダのヨーク地方警察(以下「YRP」/ヨークはカナダのオンタリオ州南中央にある地方行政区)によると、現地の窃盗団が高級車を盗むために、AirTagの位置情報追跡機能を悪用した新たな手口を使っているとのことです。車を盗むやり方はほぼ従来通りながら、Airtagによりターゲットにした高級車を追跡しているわけです。

YRPの発表いわく、2021年9月以降にAirTagを使った高級車の窃盗事件を調査したとのこと。車泥棒はショッピングモールや駐車場など公共の場所で見つけた高そうな車を狙い、車の所有者に見つけられないように、牽引用のヒッチや燃料キャップ、バンパーの内側など目立たない場所にAirTagを付けておくそうです。そして被害者の家まで追跡してから盗むしだいです。

自動車泥棒がアップルの探し物トラッカーAirTagを悪用、高級車に付けて自宅まで追跡

YRP

アップル製品には見知らぬAirTagが身近にあれば知らせる機能も備わっていますが、すべての被害者が通知を受け取れるiPhoneを持っているわけではありません。2021年内にAndroidでもAirTagを検出できるアプリが提供予定ですが、記事執筆時点ではいつ配信されるか不明であり、また配信されてもわざわざインストールするAndroidユーザーがどれほどいるかも未知数です。

12月2日(現地時間)ではAirTagが関連した盗難事件は5件に留まっていますが、ヨーク地域だけで過去1年間に2000台以上の車両が盗まれており、この問題が世界中に広がっていく可能性も懸念されます。

YRPは自動車オーナーに対して、できる限り鍵のかかる車庫に駐車し(ほとんどが路上で盗まれるため)、定期的に車両を点検して追跡装置が付いていないかどうか確認し、特に見知らぬAirTagの通知を(iPhoneで)受けた場合には注意するよう呼びかけています。

具体的にどのような手口が使われているかは、2つの参考動画を公開されていますので、視聴して防犯意識を高めておきたいところです。

(Source:YRP。Via:MacRumorsEngadget日本版より転載)

AWSが新たにM1搭載Mac miniをクラウド化

米国時間12月2日に行われた「AWS re:Invent」カンファレンスの基調講演で、アマゾンのWerner Vogels(ワーナー・ヴォゲルス)CTO兼副社長は、AWSがEC2コンピュートサービスの一部としてM1 Mac miniを提供することを発表した。

AWSが初めてMac miniを同社のクラウドに導入したのは、2020年のことだった。これらのminiは、Thunderboltポートを使ってAWS Nitro Systemに接続され、他のインスタンスと同様にEC2クラウドで利用できるようになる。ここで使用されているミニは、標準的なM1チップ8コアマシンで、16GiBのメモリを搭載している。

新しいインスタンスは、2つのリージョン(米国西部のオレゴン州、米国東部のバージニア州北部)で、1時間あたり0.6498ドル(約73.51円)で提供され、AWSのSavings Planによる割引もサポートされる。AWSは、これらの新しいマシンが「iPhoneおよびMacアプリ構築のワークロードにおいて、x86ベースのEC2 Macインスタンスと比較して、価格パフォーマンスが60%向上している」と約束している。

画像クレジット:AWS

これらのマシンのユースケースは、今回のローンチでも変わらない。初代のMacインスタンスと同様に、ここでのアイデアは、デベロッパーがMac OSやiOS用アプリケーションをビルドしてテストするためのハードウェアを提供することだ。

最初のMacインスタンスが発売されたときには、すでにM1 Mac miniが展開されていたことを考えると、今回の発表はほとんどの人にとって驚きではないだろう。当時、AWSはM1マシンが「2021年初頭」に登場すると述べていたが、展開するには少し時間がかかったようだ。

画像クレジット:AWS

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが2021年のApp Store Award受賞者と年間最もダウンロードされたアプリを発表

Apple(アップル)は米国時間12月2日、iPhone、iPad、Mac、Apple TV、Apple Watchの各分野において、楽しみにされていた年間で最も優れたアプリとゲームを紹介するリストを発表した。2021年は、子ども向けアプリメーカーのToca Bocaが「Toca Life:World」でベストiPhone Appを受賞した他、Riot Gamesの「リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト」がベストiPhoneゲームを受賞した。

その他、ベストiPad AppをLumaTouchの「LumaFusion」、ベストiPad ゲームをNetmarbleの「MARVELフューチャーレボリューション」、ベストMac AppをLuki Labs Limitedの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」、ベストMacゲームをCyanの「Myst」、ベストApple TV AppをDAZN Groupの「DAZNスポーツをライブ中継」、ベストApple TVゲームをPixelbiteの「Space Marshals 3」、ベストApple Watch AppをGrailrの「Carrot Weather」、そしてベストApple ArcadeゲームをMistwalkerの「FANTASIAN」が受賞した。

通常、受賞作品は、App Storeに登場して間もない作品や、Appleのテクノロジーを興味深い形で活用した作品、あるいはその年に特に注目を集めた作品などが対象となることが多い。例えば、2020年の受賞作品は、パンデミックの影響がアプリの業界にも反映しており、iPhoneではホームワークアウトアプリ「Wakeout! – 運動療法」、iPadでは「ZOOM Cloud Meetings」が受賞した。

しかし、2021年のベストiPhone Appに選ばれた「Toca Life:World」は、別の理由で興味深い作品だ。このアプリのメーカーであるToca Bocaは、2021年の3月で10周年を迎えたことを祝っていた。最初のアプリをリリースして以来、同社は40以上の子ども向けアプリをリリースしてきた(Toca Bocaではデジタルトイと呼んでいる)。「Toca Life:World 」は、これまでの「Toca Life 」アプリを1つにまとめた集大成とも言える作品だ。

Appleは、この賞を受賞したToca Bocaについて「10年経った今でも、子どもたちの遊びと自己表現の芸術を見事に反復している」と賞賛している。

今回の受賞は、App Storeへの反発や動揺が見られたこの年に、デベロッパーがApp Storeで長期的なビジネスを構築していること、そしてAppleはこのような賞の受賞を含め、その成功をサポートする役割を果たしていることをさりげなく示すものでもある。

また、ストリーミングサービスの「DAZNスポーツをライブ中継」がローカルのスポーツ文化を世界的に広めたことを紹介するなど、他の受賞者も称賛した。一方で、AppleはApple TVやiOSアプリ向けのSportsKitフレームワークを静かに構築しており、DAZNもいつか活用することができるかもしれない。

Appleはまた「Carrot Weather」が誇る最高峰の気象予報精度をアピールした。これは、Appleのデフォルトの天気予報アプリと競合するもので、Appleが所有する「Dark Sky Weather」のデータを使用している。Appleは「LumaFusion」のより速く、煩わしさなくビデオ編集ができるようになる能力を紹介し、ドキュメントエディタの「Craft – ドキュメントとメモエディタ」が「効率性と芸術性」を兼ね備えていることについてもアピールした。しかし、これらのアプリがApple製品(それぞれiMovieとiWorkのPages)と競合していることも無視できない。どちらかというと、このリストの多くは、サードパーティ製アプリの運命が、Appleのソフトウェア開発といかに密接に結びついているかを思い起こさせるものでもある。

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2020年は、App Storeにとって過渡期の年だった。規制当局の監視が強化され、世界各地で新たな法律が制定され、App Storeのコミッションベースのビジネスモデルをめぐるさまざまな訴訟に直面した(現在、控訴中のEpic Gamesとの訴訟を含む)。その結果、Appleは、市場の要求や和解合意に応じて、ポリシーを調整明確化し、場合により手数料の引き下げも行った。

このような変化にもかかわらず、アワード受賞者を含む多くのアプリの成功と品質は依然として高い水準にある。

また、Appleは年末の受賞者を発表するにあたり「つながり」を2021年のトレンドのトップに掲げ、このテーマを念頭に置いて人々の生活に長く続く影響を与えた数多くのアプリやゲームを称えた。このリストには、InnerSlothの協力・対戦型ゲーム「Among Us!」、デート・ネットワーキングアプリ「Bumble – 誠実なマッチングアプリ」(そのトップライバルである「Match 婚活・マジメな出会いマッチング アプリ」は、たまたまApp Storeの批評家として注目されている)、デザインリソース「Canva-インスタストーリー,年賀状デザイン作成や写真編集」、黒人経営のビジネスに焦点を当てた地元の食べ歩きガイド「EatOkra」、2021年から音声チャットルームを開始した女性向けソーシャルネットワーク「Peanut:Find Friends & Support」などが含まれている。

AppleのCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、声明の中で「2021年にApp Store Awardsを受賞した開発者たちは、自らの意欲とビジョンを活かして、その年の最高のアプリやゲームを提供し、世界中の何百万人ものユーザーの創造性と情熱を刺激しました。独学で学んだインディーズのコーダーから、グローバルビジネスを構築する刺激的なリーダーまで、傑出したデベロッパーの方々はAppleのテクノロジーで革新を起こし、その多くが2021年必要とされた深い一体感の醸成に貢献しました」と述べている。

受賞者には、Apple製品の製造に使用されている100%リサイクルのアルミニウムに、App Storeの象徴である青いアイコンがはめ込まれ、反対側に受賞者の名前が刻まれた現物のApp Storeアワードが届くことになっている。

また、Appleは例年通り、その年に最もダウンロードされたアプリのリストも発表した。米国では、最もダウンロードされたアプリは以下のとおりだ。

トップ無料iPhoneアプリ

  • TikTok
  • YouTube:Watch, Listen, Stream
  • Instagram
  • Snapchat
  • Facebook
  • Messenger
  • Google Maps
  • Gmail – Email by Google
  • ZOOM Cloud Meetings
  • Amazon Shopping

トップ有料iPhoneアプリ

  • Procreate Pocket
  • HotSchedules
  • The Wonder Weeks
  • TouchRetouch
  • Facetune
  • Shadowrocket
  • 75 Hard
  • Dark Sky Weather
  • Autosleep Track Sleep on Watch
  • SkyView®

トップ無料iPhoneゲーム

  • Among Us!
  • Roblox
  • Project Makeover
  • Call of Duty®:Mobile
  • Subway Surfers
  • High Heels!
  • Magic Tiles 3:Piano Game
  • Water Sort Puzzle
  • Shortcut Run
  • Bridge Race

トップ有料iPhoneゲーム

  • Minecraft
  • Heads Up!
  • Bloons TD 6
  • Monopoly
  • Geometry Dash
  • My Child Lebensborn
  • Plague Inc.
  • True Skate
  • Grand Theft Auto:San Andreas
  • Incredibox

トップ無料iPadアプリ

  • YouTube
  • ZOOM Cloud Meetings
  • Disney+
  • Netflix
  • TikTok ティックトック
  • Google Chrome ウェブブラウザ
  • HBO Max:Stream TV & Movies
  • Hulu / フールー 人気ドラマや映画、アニメなどが見放題
  • Amazon Prime Video
  • Gmail – Google のメール

トップ有料iPadアプリ

  • Procreate
  • GoodNotes 5
  • Notability
  • Duet Display
  • Toca Kitchen 2
  • Toca Life:Hospital
  • LumaFusion
  • Shadowrocket
  • Affinity Designer
  • Toca Life:Vacation

トップ無料iPadゲーム

  • Among Us!
  • ROBLOX
  • Project Makeover
  • Phone Case DIY
  • Subway Surfers
  • Hair Challenge
  • 魔法のタイルズ3
  • タイルホップ:音楽ゲーム
  • Blob Runner 3D
  • Bridge Race

トップ有料iPadゲーム

  • Minecraft
  • Bloons TD 6
  • Geometry Dash
  • Monopoly
  • Five Nights at Freddy’s
  • Stardew Valley「スターデューバレー」
  • Plague Inc. -伝染病株式会社-
  • ヒューマン フォール フラット
  • Ultimate Custom Night
  • Grand Theft Auto:San Andreas

トップApple Arcadeゲーム

  • The Oregon Trail
  • NBA 2K21 Arcade Edition
  • 忍び足のサスクワッチ
  • ソニックレーシング
  • SpongeBob:Patty Pursuit
  • Skate City
  • パックマンパーティロワイヤル
  • Cut the Rope Remastered
  • Hot Lava :灼熱のホットラバ
  • Angry Birds Reloaded

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Safariのプライバシー保護を迂回したトラッキングに対する損害補償を求める英国の集団訴訟上訴審でグーグルが勝訴

Google(グーグル)は英国最高裁で集団訴訟形式のプライバシー訴訟上訴審で勝訴した。もし敗訴していたら、最大30億ポンド(約4602億円)の罰金が課せられるところだった。

この長期に渡る訴訟は老練の消費者権限活動家Richard Lloyd(リチャード・ロイド)氏が起こしたものだ。同氏は2017年以来、グーグルがApple(アップル)のSafariのプライバシー保護設定を回避して、2011~2012年の間にSafariブラウザーのiPhoneユーザーのプイバシー設定を上書きしていたとして、400万人を超えると推定される英国のiPhoneユーザーのプライバシー侵害に対する補償を求めて集団訴訟裁判を戦ってきた。

ロイド氏の訴訟はプライバシー被害の損害賠償を求めて起こされたものだが、より広い意味では、データ保護違反の損害賠償を求めて英国で代表訴訟を起こせるようにしたいと考えてのことだ。英国の法律では一般に集団訴訟を起こすための体制が確立されていない。

2018年、高等法院はこの訴訟の審理停止を言い渡したが、翌2019年、控訴院はその判決を覆し、審理の継続を許可した。

しかし、今回、最高裁判決では、全会一致で、高等法院の見解は基本的に覆され、集団訴訟は停止された。

最高裁判事は、賠償を請求するには損害 / 損失を被っている必要があり、個人ベースでの損害 / 損失を証明する必要性を省略することはできないという考え方を示した。つまり、代表集団の個々人の個人データの「コントロールの喪失」について、ロイド氏の訴訟で要求されてきたように一律に補償を行うことはできないということだ。

「こうした事項を証明できなければ、損害請求によって賠償金を獲得することはできない」と最高裁は自身の判決について記述している。

この判決はトラッキング業界に対する集団訴訟を起こすことができるようにしたいという英国運動家の望みに大きな打撃を与えた。

グーグルがこの訴訟に負けていたら、プライバシー違反に対するより多くの代表訴訟への門戸が開いていたことだろう。しかし、グーグル勝訴したことで、近年、商業訴訟資金提供者を惹き付けてきた、データマイニングテック大手を相手取った英国の集団訴訟の動きに水を差すことになるだろう。

関連記事:オラクルとセールスフォースのCookie追跡がGDPR違反の集団訴訟に発展

今回の判決を受けてBLMという法律事務所は次のように書いている。「今回の結果は、大量のデータを処理したり、個人データの利用にビジネスモデルの基盤を置いているグーグルやその他の企業(およびそうした企業の株主や保険業者)にとってうれしい知らせとなるでしょう」。

別のLinklaters LLPという法律事務所は、この判決を「データ漏洩領域における損害で新しいオプトアウト体制を作り上げようとしてきた原告の法律事務所や資金提供者には大きな痛手」と評している。

「判決後にたくさんの似たような訴訟が起こると期待していましたが、それも消えてなくなりました」とLinklatersの紛争解決パートナーHarriet Ellis(ハリエット・エリス)氏は付け加えた。「原告の法律事務所は今回の判決を慎重に見直して、それでもまだオプトアウト集団訴訟を戦える可能性が残されていないか調べていますが、かなり難しいようです」。

TechCrunchは前回ロイド氏の代理人を引き受けた法律事務所Mishcon de Reya(ミシュコンデレイヤ)に連絡し、コメントを求めた。同事務所によると、この件に関しては前回ロイド氏の代理人を務めたものの、最高裁訴訟では代理人の務めを果たしていなかったという。

同事務所のデータ実務責任者Adam Rose(アダム・ローズ)氏は次のように付け加えた。「被告が勝訴したものの、今回の判決でデータ保護違反の補償請求が終わりを告げると判断するのは時期尚早だと思います」。

「最高裁はグーグル側の主張を支持したものの、この判決は主に、現在は廃止された1998年データ保護法のもとでこうした訴訟を起こす法的メカニズムに関して判断を下したもので、データ保護法の包括的な権利と原則を否定するものではありません。つまり、まだ説得力ある議論を行う余地は間違いなく残されています。とりわけ、新しい英国GDPRの枠組みのもとでは、特定の集団訴訟の審理が認められていますし、データ保護法違反で補償が適切と認められるケースはあると思います」とローズ氏はいい、次のように付け加えた。「今回の判決でバトンは議会と情報コミッショナーに渡された形になります」。

「議会では、データ保護法のもとでオプトアウト訴訟をより簡単に起こせるようにするには法律が必要だということになるかもしれません。情報コミッショナーの立場からすると、故意かつ大規模なデータ保護法違反に対する断固たる強制行動と、データ主体に対して効果的な司法救済を与えることが早急に必要とされています。これは英国GDPRと現行のデータ保護フレームワークで約束されていることです」。

グーグルは今回の最高裁判決を受けて、裁判の詳細に関する考察は避け、次のようにコメントするだけに留めている。

この訴訟は、10年前に起こり当時当社が対処した出来事に関連するものです。人々はオンライン上でも安全かつセキュアでいたいと思っています。我々が人々のプライバシーを尊重し保護する製品とインフラストラクチャを構築することを長年重視してきたのもそうした理由からです。

グーグルの広報担当はtechUK事業者団体によって出された声明も提示した。同団体は、今回の訴訟でグーグル支持の立場で仲裁に入り、今回の判決について次のようにコメントしている。「今回の上訴が棄却されていたら、膨大なデータを操作するデータコントローラー企業に対して思惑的にいやがらせで訴訟を起こす扉が開かれることになり、民間企業、公的機関の双方に広範な影響が出ていたでしょう」。

techUKはさらに次のように続ける。「我々は代表訴訟に反対するものではありませんが、訴訟を起こすのであれば、まず、データ侵害の結果として個人に損害がもたらされたかどうかを明確にする必要があります。補償請求はその後です」。

ただし、最高裁の判事は「オプトイン」(オプトアウトではない)訴訟の裁判費用について、1人当たりの補償額が数百ポンド(数万円)にしかならない場合、裁判に持ち込むメリットがまったくなくなってしまう(ロイド訴訟では提示額は1人あたり750ポンドだった)と指摘している。というのは、原告1人あたりの裁判費用が補償額を容易に上回ってしまう可能性があるからだ、と指摘している。

はっきりいうと、techUKは、ほぼすべてのデータ侵害に対して代表訴訟を起こすことに反対の立場をとっている。

一方、英国のデータ保護監視機関は、データマイニングアドテック産業に対する法執行についてはまったく消極的だ。2019年以来、ICO(プライバシー監視機関)が違法トラッキングのまん延について警告しているにもかかわらずだ。

英国政府は現在、国内のデータ保護体制の弱体化対策に取り組んでいる

このように、英国の法律に記載されている平均的な英国市民のプライバシーの権利は、今かなりあいまいになっている。

米国では、グーグルは10年前、SafariのCookieトラッキング問題についてFTCと同意し、Safariのプライバシー設定を迂回して消費者にターゲット広告を配信したことについて、2012年に2250万ドルの罰金を支払うことに合意した(ただし、不正行為については認めなかった)。

人権グループも、今回の最高裁判決を受けて、政府に集団的回復の法制化求めた。

Open Rights Groupの事務局長Jim Killock(ジム・キロック)氏は次のように語った。「市民が大規模なデータ侵害に対して、家を手放すリスクを負うことも、情報保護監督機関のみに依存することもなく、回復を求める手段があってしかるべきです」。

ICOはすべてのケースに対応できるわけではなく、ときには、対応を渋ることもあります。我々は2年間にわたって、ICOが違法行為を認めているアドテック業界に対する対策を待ち続けてきました。しかし、対策が実施される様子はありません」。

「このようなケースで法廷費用を支払うために家を手放すリスクを負うのはまったく不合理です。しかし、集団訴訟ができなければ、残された道はそれしかありません。多くの場合、テック大手相手にデータ保護を実施するのは極めて困難です」。

「政府は約束を守り、GDPRのもとでの集団訴訟の実施を検討すべきです。しかし、政府は2月に、ロイドvs.グーグル訴訟で既存のルールのもとでも回復は可能であることが示されたという理由で、集団訴訟の実施を明確に拒否しました」。

画像クレジット:Chesnot/Getty Images / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

アップルの複合現実ヘッドセットはスタンドアローン型とのウワサ

著名なアナリストであるMing-Chi Kuo(ミンチークオ)氏によると、Apple(アップル)の長い間噂になっている複合現実ヘッドセットには、2つのプロセッサーが搭載される。MacRumors9to5Macが入手した最新リサーチレポートでクオ氏は、このデバイスには、M1チップと同等の演算能力を持つメインプロセッサーと、すべてのセンサー関連の演算を処理するセカンダリプロセッサーが搭載されるという。2つのプロセッサーを搭載することで、ヘッドセットはiPhoneやMacに接続する必要がなくなる。

また、ソニーの4Kマイクロ有機ELディスプレイを搭載することで、拡張現実だけでなく、仮想現実の体験も可能になると、クオ氏は述べている。これが可能になるのは、M1チップがディスプレイのサポートに必要なパワーを持っているからだ。センサー用の別のプロセッサーについては「センサーの演算能力がiPhoneよりもはるかに高い」ため、それが必要になるそうだ。クオ氏は、このデバイスが2022年後半に登場すると予想し、Appleは10年後にiPhoneにとって代わることを最終の目標として「包括的な範囲のアプリケーション」をサポートできるようにするだろうと述べている。

このヘッドセットが独立したデバイスになるというクオ氏の予測は、9月にThe Informationが発表した、ヘッドセットがほとんどの処理を行うためには、iPhone、iPad、またはコンピュータとのワイヤレス通信が必要になるとするレポートに反している。また、このレポートは、ヘッドセットは開発者やクリエイター向けで、価格は3000ドル(約33万9000円)程度になるだろうと述べている。

編集部注:本稿の初出はEngadget

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(文:Mariella Moon、翻訳:Yuta Kaminishi)

イタリア、アップルとグーグルに対して「強引」なデータ処理で各13億円の罰金

イタリアの競争・市場当局(AGCM)は、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)が、ユーザーのデータを商業的に利用する際にユーザーに十分な情報を提供せず、同国の消費者規則に違反したとして、両社にそれぞれ1000万ユーロ(約13億円)の罰金を科した。

また、AGCMは、両社がユーザーに商業利用を承諾させるために「強引」な商業慣行を展開していたと非難している。

AppleとGoogleにACGMの制裁への対応を尋ねたところ、両社とも控訴すると述べた。

Googleは、アカウント作成時やユーザーのサービス利用時に関連情報を省略していたと非難されている。これらの情報は、商業目的でのデータ利用に同意するかどうかをユーザーが判断するために提供されるべきものだと規制当局は指摘する。

AGCMはまた、ユーザーがApple IDを作成したり、App Storeなどのデジタルストアにアクセスしたりする際に、情報を商業目的でどのように使用するかについての明確な情報をユーザーに即座に提供していないとして、Appleを非難している。

これは、消費者のプライバシー擁護者としてのAppleのイメージを考えると、かなり驚くべき制裁だ(もちろん、同社のデバイスやサービスは、Google製のような広告付きの安価な代替品と比較して、プレミアムが付く傾向にあることはいうまでもない)。

イタリアの規制当局は、今回の制裁を発表したプレスリリースの中で、両社の慣行をひとまとめにし、特にアカウント作成の段階で、それぞれのユーザーに利己的な商業条件を強引に押し付けていると非難している。

Googleについては、ユーザーが商業的処理を受け入れることを前もって決めている点をACGMは指摘している。また、アドテック大企業である同社は、アカウント作成のステップが完了した後、ユーザーがこれらのデータ転送への同意を後で撤回したり、選択を変更したりするための明確な方法を提供していないことも指摘している。

そして、Appleのアプローチについては、ユーザーが自分のデータの商業利用について適切に選択する能力を否定しているという見解を示している。規制当局は、Appleのデータ取得慣行とアーキテクチャは、本質的に消費者が商取引条件を受け入れることを「条件」としていると主張している。

かなりのマーケティング費用を投じて、自社のデバイスやソフトウェアが他の製品(Googleのものなど)よりも優れていることを示唆しているAppleにとっては、ユーザーのプライバシーを重視していると主張しているだけに、厄介な指摘だ。

Appleは声明の中で、ACGMの指摘を否定し、次のように述べている。

「我々は、当局の見解が間違っていると確信しており、この決定については不服として控訴します。Appleは、ユーザーのプライバシーを尊重することに長年にわたって取り組んでおり、顧客のデータを保護する製品や機能を設計するために、非常に努力しています。当社は、すべてのユーザーに業界最高レベルの透明性とコントロールを提供し、共有する情報、共有しない情報、およびその使用方法を選択できるようにしています」

Googleの広報担当者もこの調査結果に同意せず、次のような声明を出した。

「Googleは、ユーザーに便利なツールと使用状況に関する明確な情報を提供するために、透明で公正な慣行を行っています。ユーザーには、自分の情報を管理し、個人データの使用を制限するための簡単なコントロールを提供しており、消費者保護規則に完全に準拠するよう努めています。当局の決定には同意できず、控訴する予定です」

ACGMの決定内容の全文はこちら(AppleGoogle)で閲覧できる。

イタリアの規制当局はここ数日、大手テック企業の非難で忙しかった。今週初め、当局はAmazon(アマゾン)のイタリア市場でのApple製品販売をめぐる談合の疑いで、AppleとAmazonに総額2億3000万ドル(約260億円)の罰金を科した。

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また、ACGMはここ数年、ハイテク企業に対する調査を強化しており、2021年初めには、ユーザーのデータを商業的に利用した同様の問題でFacebook(フェイスブック)に罰金を科し、今夏には、Android Autoに関連してGoogleに1億2300万ドル(約139億円)の罰金を科した。また、Googleの広告表示事業についても公開調査を行っている

近年、ACGMが科した罰金には、iPhoneの防水性についてユーザーに誤解を与えたとしてAppleに対するものや、デバイスの速度低下についてAppleとSamsung(サムスン)に科したものなどがある

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、違法な情報に対するアクセス制限への同意も

ロシア政府がアップル・メタ・GoogleなどIT大手に現地オフィス開設を要求、法律に違反する情報へのアクセス制限への同意も

Mikhail MetzelTASS via Getty Images

ロシア政府は今週、アップルをはじめとする米ハイテク企業が同国での事業を続ける場合、2021年末までに現地オフィスを開設するよう求めました。

同国の通信規制当局ロスコムナゾル(Roskomnadzor)は、現地に公式なオフィスを持たない企業は広告やデータ収集および送金が制限され、あるいは業務を禁止する可能性があると警告しています。

今年7月、ロシアのプーチン大統領は「ロシアでのインターネット上での活動を行う企業」に対して現地オフィス開設を義務づける法律に署名しています。そして今週初め、ロスコムナゾルが初めて対象となる企業のリストと、ロシアの要件を満たすために具体的に何をすべきかを明らかにしたかっこうです。

今回の企業リストにはアップル、Meta(Facebook)、Google、TikTok、TwitterおよびTelegramが含まれています。Reutersいわく、この措置はロシア政府が米ハイテク大手の活動を抑え、国内のIT企業を育成・強化しようとしているためとのことです。

すでにロシア政府は外国のデジタルサービスに対する課税、国内のIT企業に対する減税、さらにはロシア国内で販売されるスマートフォンなどにロシア製ソフトウェアをプレインストールすることを義務付けるなどの政策を打ち出してきました。アップルもiPhone初回起動時に政府推奨アプリ導入の仕組みを取り入れたり野党指導者アプリを削除しろとの要求に応じるなど、数々の譲歩をしてきました。

ロスコムナゾルがReutersに語ったところによると、対象となった企業はロシア国内にオフィスを開設することに加え「ロシアの法律に違反する情報へのアクセスを制限する」ことに同意しなければならないそうです。

米9to5Macは、これは基本的に「ロシア政府に逆らう情報を検閲する」ことを意味しており、米ハイテク各社が困難な立場に置かれる、と指摘しています。

なおロスコムナゾルに名指しされた企業は、いずれもこの件についてコメントしていません。もしも要求に素直に従ってしまえば、ロシア政府の検閲や人権侵害(反政権活動家ナバリヌイ氏の毒殺未遂事件や、それに続く収監など)を支持したことにもなりかねず、欧米で厳しく追及される可能性もあります。

アップルやGoogleがどういった対応を取るのか、今後の展開を見守りたいところです。

(Source:Reuters。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

アップルがタイ、エルサルバドル、ウガンダでNSO GroupのiPhoneハッキング被害者に注意喚起

Apple(アップル)は、イスラエルのスパイウェアメーカーであるNSO Group(エヌエスオー・グループ)を提訴した数時間後に、タイ、エルサルバドル、ウガンダの国家ぐるみのハッカーの被害者に脅威通知アラートを送信した。

関連記事:アップルがiPhoneの脆弱性を悪用するスパイウェア「Pegasus」のNSO Groupを提訴

ロイターによると、バンコクのタマサート大学の政治学者であるPrajak Kongkirati(プラジャク・コンキラティ)氏、研究者のSarinee Achananuntakul(サリニー・アチャナヌンタクル)氏、法的監視グループiLawのタイ人活動家Yingcheep Atchanont(インチェップ・アチャノン)氏など、政府に批判的なタイの活動家や研究者のうち、少なくとも6人が通知を受け取ったという。違法なハッキングやサーベイランスを追跡するCitizen Labは、2018年にタイ国内でPegasusスパイウェアのオペレーターが活動しているのを確認した。

Appleによれば、このアラートは、国家的な攻撃者に狙われている可能性のあるユーザーに情報を提供し支援するためのもので、エルサルバドルの複数のユーザーにも送信された。その中には、政府批判で有名なオンラインデジタル新聞「El Faro」の社員12名をはじめ、市民社会団体のリーダー2名、野党政治家2名が含まれている。

また、ウガンダの民主党のノアバート・マオ党首も、脅威の通知を受け取ったことをTwitter(ツイッター)で述べている。

Appleからのアラートは次のように警告している。「Appleは、お客様が国家から支援を受けた攻撃者らに標的とされており、彼らがあなたのApple IDに関連付けられたiPhoneを遠隔操作で侵害しようとしていると考えています。これらの攻撃者は、あなたが誰であるか、あるいは職業によって、個別にターゲットとしている可能性があります。国家が関与する攻撃者によってデバイスが侵害された場合、機密データ、通信、さらにはカメラやマイクにも遠隔操作でアクセスされる可能性があります。これが誤報である可能性もありますが、この警告を真摯に受け止めてください」。

Appleは11月23日、NSO Groupを提訴し、スパイウェアメーカーである後者がいかなるApple製品も使用できないようにするための恒久的差し止め命令を求めた。これにより、NSO GroupがiPhoneソフトウェアの脆弱性を見つけて悪用し、ターゲットをハッキングすることがより困難になる。

「本日の措置は、明確なメッセージを送るものです。自由な社会では、世界をより良い場所にしようとする人々に対して、国家が支援する強力なスパイウェアを武器にすることは容認できません」と、AppleのセキュリティチーフであるIvan Krstić(イヴァン・クルスティク)氏は述べている。「Appleは、世界で最も洗練されたセキュリティエンジニアリング業務を行っており、NSO Groupのような悪質な国家ぐるみの行為者からユーザーを守るために、今後もたゆまぬ努力を続けていきます」とも。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Aya Nakazato)

イタリアがアマゾンとアップルに約264億円の制裁金、Beats製品の再販で

Amazon(アマゾン)とApple(アップル)は、AmazonのイタリアのeコマースマーケットプレイスでのAppleおよび(アップル所有の)Beats製品の再販に関する調査の結果、イタリアの反トラスト当局から総額約2億3000万ドル(約264億円)の制裁金を科せられた。

当局によると、両社は共謀し、AmazonイタリアのマーケットプレイスでAppleおよびBeatsの製品を購入する消費者が受けられる割引の水準が低下した疑いがあるとのことだ。

また、再販業者に対する制限を廃止するよう両社に命じた。

AGCM(イタリア競争・市場保護委員会)は現地時間11月23日、制裁措置を発表し、調査の結果、Amazon.itにおけるBeats製品の一部の「正当な」再販業者を阻止するために、2社間で制限協定があったことが判明したと述べた。

制裁金の内訳は、Amazonが1億3450万ユーロ(約174億円)、Appleが6870万ユーロ(約89億円)となっている。

問題の協定は、2018年10月に2社間で締結された。

AGCMのプレスリリースによると、この協定には、AppleおよびBeatsの製品の公式および非公式の再販業者がAmazon.itを使用することを禁止する多くの契約条項が含まれていることがわかった。Amazon.itでのAppleおよびBeatsの製品の販売をAmazonと、当局が「個別に差別的な方法で選ばれた」とするいくつかの再販業者に限定するという制限があり、これは欧州連合の機能に関する条約第101条に違反する。

「調査の結果、小売業者の数に純粋に量的な制限を設け、Amazonと差別的な方法で選ばれた特定の小売業者のみがAmazon.it上で販売できるようにする意図があることが判明した」と当局はリリースに記している(TechCrunchはイタリア語をGoogle翻訳で翻訳した)。

「この協定条件は、小売業者が地理的に差別されているため、国境を越えた販売も制限している。協定の制限は、サードパーティがAmazon.itで提供する割引の水準に影響を与え、その割引の度合いを縮小させた」。

当局は、Amazonのローカルマーケットプレイスが、同国における家電製品購入の少なくとも70%を占めており、そのうち「少なくとも40%は、Amazonを仲介プラットフォームとして利用している小売業者だ」と指摘している。

「それゆえ、競争ルールの適用は、特に今日の状況において、商業活動をする上でますます重要な場所としてマーケットプレイスを利用するすべての小売業者にとって、競争を制限する差別的行為を避け、公平な競争条件を確保することが不可欠だと思われる」と付け加えている。

「こうした観点から、当局の決定は、EU司法裁判所の判決に沿って、競争規則に適合するためには、販売システムは差別的ではなく、すべての潜在的な再販業者に等しく適用される質的基準に基づく必要性を認めている」。

さらにイタリア当局は、Amazon・Apple間の協定に関する調査を踏まえ、ドイツとスペインの競争当局が同様の手続きを開始したことを指摘している。

スペインのComisión National de los Mercados y la Competencia(国家公正競争市場委員会)は今夏、AmazonとAppleに対する懲戒手続きの可能性を発表し、独自の調査を開始した(調査完了までに最大18カ月かかるとされている)。

一方、2018年には、ドイツのBundeskartellamt(連邦カルテル庁)が、Amazonのマーケットプレイス販売者からの苦情を受けて、同社に対する不正行為の手続きを開始した。Amazonが販売者向けの一般取引条件を修正し、競争上の懸念を軽減するための追加変更を約束したことで、翌年、2019年には手続きを終了した。

直近では、デジタルプラットフォームに関するドイツの競争法が大幅に改正されたことを受けて、連邦カルテル庁が両社の市場支配力の審査手続きを開始した。同法では、両企業が「市場間競争にとって極めて重要である」ことが確認された場合、連邦カルテル庁は、市場濫用のリスクを抑制するために、AmazonとAppleがドイツ国内で事業を行う際に積極的に条件を課す事前措置を適用することができる。

今回のAGCMの決定について、AmazonとAppleにコメントを求めた。

本稿執筆時点ではAppleからの回答はなかったが、Amazonは控訴することを明らかにし、広報担当者は以下の声明を発表した。

「当社は、イタリア競争当局(ICA)の決定に強く反対しており、控訴する予定です。提案された罰金は不釣り合いで不当なものです。

当社のビジネスモデルは販売者の成功に依存しているため、販売者を当社のストアから排除することでAmazonが利益を得ているというICAの指摘は受け入れられません。協定の結果、イタリアの顧客は当社のストアでAppleおよびBeatsの最新の製品を見つけることができ、より良い価格、そしてより迅速な配送をともなう、2倍以上に増えたカタログの恩恵を受けています」

また、Amazonは、Appleとの協定は消費者にとって有益だと主張し、マーケットプレイスで購入できるApple製品の量が増えたことや、一部のApple製品に割引が適用された個別の事例を紹介した。

Amazonは、同社のマーケットプレイスが世界の小売市場の1%にも満たず、イタリアを含む同社が事業を展開しているすべての国に、より規模の大きい小売業者が存在すると述べ、いかなる市場支配も否定しようとしている。また、企業はApple製品を販売するために、オンラインと店頭の両方で複数のチャネルを持っていると主張している。

Amazonのマーケットプレイスにおける売上の約60%はサードパーティの販売者が占めており、その中にはAmazonで販売しているイタリアの中小企業約1万8000社も含まれる、とも付け加えた。

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiOSのデジタルIDカード機能リリースを2022年に延期

Apple(アップル)は、IDを同社のWalletアプリに保存できるようにする機能のリリースを延期した。MacRumorsが発見したiOS 15の公式サイトの更新で、Appleはその機能が2022年初めに登場する、としている。同社は以前、2021年後半の提供開始を計画していた。

Appleはこの機能を2021年のWWDCで初めて発表した。その際、同社はこのツールを使えば、クレジットカードやデビットカードと同じように、運転免許証や州のIDカードをApple Walletに追加できるようになると述べていた。この機能をサポートする最初の場所は、米国の一部の空港の運輸保安局(TSA)のチェックポイントだ。

そうした場所では、iPhoneまたはApple Watchを使ってTSAにIDを提示することができるようになる。その際は、IDリーダーでデバイスをタップしてIDを提示し、iPhoneやApple WatchをTSA職員に渡す必要はない。

Appleは9月に、まずアリゾナ州とジョージア州で、その後コネチカット州、アイオワ州、ケンタッキー州、メリーランド州、オクラホマ州、ユタ州の計8州でこの機能を展開することを発表した。TSAチェックポイント以外では、後に小売店や催し会場で使用できるようになる見込みだとAppleは述べている。

2022年初めという以外に、同社はこの機能の具体的なリリース日を明らかにしていない。はっきりしているのは、この機能がiOS 15.2には搭載されないということだ。このアップデートは現在ベータテスト中で、デジタルIDの保存には対応していない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のIgor BonifacicはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Apple / supplied

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiPhoneの脆弱性を悪用するスパイウェア「Pegasus」のNSO Groupを提訴

Apple(アップル)は、国家レベルのスパイウェア「Pegasus」のメーカーであるNSO Group(エヌエスオー・グループ)がAppleの製品やサービスを使用できないようにするための恒久的差し止め命令を求め、このスパイウェアメーカーを相手取って訴訟を起こした。

Appleは声明の中で「さらなる悪用とユーザー被害を防ぐため」に差し止め命令を求めている、としている。

イスラエルに拠点を置くNSO Groupは、顧客である政府がターゲットとするデバイスにある個人データ、写真、メッセージ、正確な位置情報などにほぼ完全にアクセスできるスパイウェアPegasusを開発している。このスパイウェアは、以前は知られていなかったiPhoneソフトウェアの脆弱性を悪用して動作する。ジャーナリスト、活動家、人権擁護者などの対象者の多くは、テキストメッセージで悪意のあるリンクを受け取っていたが、Pegasusはつい最近、ユーザーの操作を一切必要とせずにiPhoneを静かにハッキングすることができるようになった。

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バーレーン、サウジアラビア、ルワンダ、アラブ首長国連邦、メキシコなど、いくつかの権威主義的な政府がPegasusを使用していることが知られているが、NSOは機密保持契約を理由に、数十の顧客名を公表したり認めたりすることを繰り返し拒否してきた。

米国時間11月23日に起こされたAppleの訴訟は、NSOがiPhoneソフトウェアの脆弱性を発見し、それを利用してターゲットをハッキングすることをはるかに困難にすることを目的としている。

2021年初め、Citizen Lab(シチズン・ラボ)の研究者は、NSO GroupがiPhoneソフトウェアに組み込まれた新しい保護機能を回避できる新規のエクスプロイトを開発した証拠を発見した。BlastDoorとして知られるこの保護機能は、デバイスを危険にさらすのに使われるかもしれない悪意あるペイロードをフィルタリングすることで、NSOスタイルの攻撃を防ごうとAppleが設計したものだ。いわゆるゼロクリック脆弱性は、被害者がリンクをクリックしなくても感染することからこのように呼ばれているが、AppleのBlastDoorの保護機能を回避できるため、Citizen Labは「ForcedEntry」と命名した。この脆弱性は、iPhoneだけでなくすべてのAppleデバイスに影響することが判明したため、Appleは9月にパッチを配布した

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アップルがiPhone、Macなど全端末でセキュリティアップデート、政府機関も利用するというNSOのゼロデイ脆弱性を修正

Appleによると、NSOはスパイウェアの配信にApple独自のサービスを利用しているとのことだ。Appleは、恒久的差し止め命令を求めることで、NSOが自社のサービスを利用して、顧客である政府機関がターゲットとしている人々に対して攻撃を仕掛けることを禁止したいと考えている。

「Appleは、最も複雑なサイバー攻撃からもユーザーを守るために常に努力しています。自由な社会において、世界をより良い場所にしようとしている人々に対して、国家が支援する強力なスパイウェアを武器にすることは容認できない、という明確なメッセージを伝えるために、本日このような措置を取りました」とAppleのセキュリティチーフであるIvan Krstić(イヴァン・クルスティチ)氏は述べた。「当社の脅威インテリジェンスとエンジニアリングのチームは、24時間体制で新たな脅威を分析し、脆弱性に迅速にパッチを当て、ソフトウェアとシリコンにおいて業界最先端の新たな保護機能を開発しています。Appleは世界で最も洗練されたセキュリティエンジニアリング業務を行っており、今後もNSO Groupのような悪質な国家支援企業からユーザーを守るために、たゆまぬ努力を続けていきます」。

Appleは、ForcedEntryエクスプロイトの標的となった既知の被害者に通知しており、国家が支援するスパイウェアの標的となったことが判明した被害者にも通知していると述べた。

NSO Groupのメディア担当電子メールアドレスに送ったメールは届かなかった。

画像クレジット:Amir Levy / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップル製デバイス管理のKandjiがシリーズCで約114億円調達、評価額は1年で10倍の約912億円に

Apple(アップル)製デバイス管理プラットフォームを展開するスタートアップ、Kandji(カンジ)は、急速に収益を伸ばし、高額な評価額と多くの投資を引き寄せ、かなり好調に推移している。同社は米国時間11月18日、8億ドル(約912億円)の評価額で1億ドル(約114億円)のシリーズCを調達したと発表した。この評価額は、2020年10月に2100万ドル(約23億9000万円)のシリーズAを実施した際の10倍に相当する。同社はその後半年足らずで、2021年4月に6000万ドル(当時約68億4000万円)のシリーズBを発表した。

今回の投資ラウンドは、Tiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Definition、Frontline Ventures、既存投資家であるFirst Round Capital、Greycroft、Felicis Ventures、The Spruce House Partnership、B Capital Group、SVB Capital、Okta Venturesが参加した。Kandjiはこれまでに1億8800万ドル(約214億4000万円)以上の資金を得ており、そのうち1億8100万ドル(約206億4000万円)は2020年10月以降に調達している。

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Kandjiは、中規模から大規模の企業向けにApple製デバイスを管理する方法を提供している。創業者兼CEOのAdam Pettit(アダム・ペティット)氏は、パンデミックや在宅勤務がインバウンド顧客の関心を高めたと述べている。実際、収益はここ1年間で700%以上も伸びた。

その理由の1つは欧州での成長の結果だ。同スタートアップはロンドンにオフィスを開設し、その地域の市場が収益構成に大きく貢献しているという。「我々は欧州で事業を開始したばかりです。ロンドンにオフィスを開設し、そこでは急速に採用を進めていく予定です」とペティット氏は語った。「そのきっかけは、とても興味深いものでした。当社は海外でのマーケティングをほとんど行っていませんが、この1年間でトップライン売上の約25%が海外からのものになっています」。

また、Kandjiがこのレベルの投資を受けていることを見て、長期にわたりビジネスを行っていくと安心感を持つ大口の顧客が一般的に増えているという。「長く活動していくにつれ、より大きな顧客を増やしてきました。そしてお客様は、当社がここに居続けると感じて下さっているようです」と同氏は語る。「それらの大規模なお客様の販売前後の管理を行うには、より高度なチームが必要です。この半年間、そのための準備を進めてきました」とも。

ペティット氏によると、このプラットフォームを利用している企業は1000社を超え、年初に40人だった従業員は現在250人以上に増えたという。同氏は、2022年までにはこの人数を400人にしたいと考えている。2021年初め、シリーズBの頃に話を聞いたとき、ペティット氏は、多様性に富んだ包括的な文化を築くことがいかに重要か、そしてそれは採用活動から始まると話していた。そのコミットメントは今も変わらないという。

「当社は実際に、パイプラインを拡大するために、さまざまな工夫をしています。通常のネットワークの外に出て、そうでなければ得られないような候補者を採用するようにしています。また、当社だけでなく他の多くの企業にとっても、リモートでの雇用は特定の市場をターゲットにしないという意味で、(多様性の構築に)大きな効果があります。それも、採用パイプラインの多様性を高めるのに非常に役立っています」と同氏は語った。

Kandjiはサンディエゴとロンドンにオフィスを構えているが、ペティット氏は同社はリモートファーストの会社であり、今後もそうしていくつもりだという。

画像クレジット:Kandji

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

ベルキンの新3in1ワイヤレス充電器は最新Apple WatchとiPhoneをすばやく充電

Belkin(ベルキン)の新しい3in1ワイヤレス充電器は、iPhoneとApple Watchユーザーにカスタマイズされており、iPhone 12と13のMagSafe 15Wの充電速度を実現し、最新のApple Watch Series 7の急速充電にも対応している。またベルキンは、USB-Cケーブルを内蔵し、Series 7に高速充電の互換性を提供するApple Watch用の新たなスタンドアロンポータブル高速充電器も発表している。

ベルキンのBOOST↑CHARGE PRO MagSafe 3-in-1 ワイヤレス充電パット(長いので以降「3in1充電器」)は、先に触れたとおりiPhone用のMagSafe 15Wワイヤレス充電器を搭載している。また、AirPodsへの給電に使える標準的なQi対応のワイヤレス充電パッドも搭載、さらに急速充電に対応した調整可能なApple Watch充電パックもある。スタンドの下にはスイッチがあり、新旧のApple WatchモデルやさまざまなApple Watchケースに合わせてスタンドの高さを調整することができる。

スタンドはゴム製のシリコンで覆われているので、夜中にぶつけてもガジェットが傷がつく心配もない。電源は付属の40W電源アダプターに差し込むコード1本だけだ。私はこの製品を1週間ほど使っているが、Appleファンのための、コード1本で最大速度を実現したベッドサイド充電ソリューションとして最高の選択肢だと自信を持ってオススメできる。

価格は149.95ドル(日本では税込1万7800円)で、Appleのウェブサイトなどで本日から販売されている。

ベルキンのBOOST↑CHARGE PRO Apple Watch用ポータブル急速充電器(これも長いので「Watch充電器」と呼ぶ)は、純正のApple Watch用の小さな充電器に代わるすばらしいプロダクトだ。ケーブルが内蔵されているため、持ち運びに便利で、さまざまなApple Watchのモデルやケースに合わせて調整でき、平置きと立て置きの両方で充電可能だ。さらに、Series 7を急速充電することもできる。Apple Watch専用の充電器としては、間違いなく最高の製品だ。

このWatch充電器は59.95ドル(日本では税込7400円)と、Appleの専用マグネット式充電ドックより安価で、Appleのウェブサイトなどで注文を受け付けている。

画像クレジット:Belkin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Katsuyuki Yasui)