ジェフ・ベゾスの資産世界一は一瞬だけ――AmazonのQ2は平凡、株価やや下げる

今日(米国時間7/27)、Amazonは第2四半期の決算を発表した。投資家にとって平凡な内容であり、株価は3%下がった。CEOのジェフ・ベゾスは決算発表の直前に一瞬だけビル・ゲイツを抜いて資産世界一になっていたが、株価下落によってたちまち冷たい現実に直面することになった。ベゾスは依然として世界で2位の金持ちにすぎない。

冗談はさておき、今期Amazonは137億ドルで Whole Foodsスーパーマーケット・チェーンを買収しており、その決算はAmazonにとって大きな意味を持つものだった。しかしAmazonは途方もないサイズの取扱総額からごく薄い利益を絞り出すというこれまでのやり方を踏襲したようだ。しかしAmazonがWhole Foods買収を完了し全米で数百にもなる現実店舗の運営をするようになれば、この方式には市場から強い圧力を受けることになるかもしれない。

問題はAmazonの多様な事業の損益がきめて広い範囲に散らばっていることだ―4億ドルの損失もあれば3億ドルの利益もあるという具合だ。同社はこれまでアグレッシブな成長を続けながら利益も確保してきた。しかし来期にはこの路線も限界に突き当たる可能性がある。Whole Foodsの買収を境として、今後Amazonは成長するために投資すれば赤字となるモードに戻るかもしれない。

Amazonの株価は今年驚くべき急上昇をみせた。今年初めと比較して40%もアップした。この値上がりでベゾスは一瞬だがビル・ゲイツを抜いて世界一の金持ちになった。 パソコンをベースにした現実世界とインターネットをベースにしたオンライン世界との交代を象徴するものと受け取られた。AmazonはAlexaで音声認識の世界へ、Twitchでビデオ・ストリーミングの世界に進出したが、Whole Foodsで現実世界の小売業に戻って来たともいえる。

決算資料からAmazonの巨大なオペレーションを支える重要な柱はAWSだということが分かる。Amazonの営業利益は前年同期の7億1800万ドルから今期は9億1600万ドルにアップした。今期純益は1億9700万ドルで前年同期の8億5700万ドルから大きくダウンした。サーバー事業はAmazonの利益を維持する部門であり、仔細に検討するなら、AWS事業そのものだと分かる。この事業はビジネスとして軌道に乗り、年間100億ドルの売上をもたらしている。

AmazonのEPS〔1株あたり利益〕は0.4ドル、で売上は380億ドルだった。アナリストの予測はEPSが1.42ドル、売上が371億8000万ドルだった。売上は前年同期比で25%アップしている。

全体としてAWSは昨年同様のペースで成長を続けている。Amazonは今期AWSの売上は対前年比で42%%アップしたとしている。2016年第2四半期の対前年比成長率は58%だった。今年の成長率はややダウンしているものの健全な成長を続けていることはAmazonにとって重要だ。世界の多数の企業がAWSをインフラとして利用している。Amazonは毎期きわめて高い利益率を誇っている。

もちろんクラウド事業の競争は激しさを増す一方だ。ことにGoogleがクラウド事業に本格的に取り組み始めたし、 Microsoftも当然ながらライバルだ。AWSはクラウド・コンピューティングのパイオニアであり今やほとんどその代名詞ともなっているが、世界の大企業、スタートアップのニーズを満たしていくためには日々サービスを拡充していくことを怠れないだろう。

画像:Drew Angerer/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AmazonがAWS上のユーザープロダクトに翻訳サービスを提供、アプリケーションの多言語化を推進

CNBCの報道によると、デベロッパーがAWSを使ってアプリケーションやWebサイトを作るとき、そのコンテンツを複数の言語に翻訳できる機能を提供しようとしている。クライアントのプロダクトを複数の言語で提供するために使用されるその機械翻訳技術は、Amazonが自社のプロダクト全域で使っている技術がベースだ、とその記事は述べている。

翻訳サービスはクラウドサービスでAmazonと競合するAlphabetやMicrosoftが、Amazonに負けていないと主張できる重要な要素のひとつであり、Googleは最近、ニューラルネットワークで強化した翻訳機能のデベロッパー向け実装を提供開始した。Amazonは2年近く前に機械翻訳のスタートアップSafabaを買収し、それによって実装した翻訳機能でAmazon.comなどのサイトを多言語化している。

最近Amazonは競争力強化のためドイツのハイデルベルク大学と提携して、翻訳結果に対する誤訳の指摘など、ユーザーフィードバックに対応できる機械翻訳プラットホームの開発を進めている。

この件に関し本誌は今、Amazonのコメントを求めている。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AWSのRekognition APIはセレブを認識する――Amazonの機械学習がさらに進歩

Amazon RekognitionはAWSが提供する深層学習を利用した画像認識、分析のサービスだ。今日(米国時間6/8)、Rekongnitionがさらに賢くなった。このサービスは政治、スポーツ、ビジネス、エンタテインメント、メディアなどさまざまな分野の著名人の顔を認識できるようになった。

私はGoogle検索で見つけたいくつかの顔写真(コメディアンのコナン・オブライエン、歌手のジャスティン・ビーバー、知名度さまざまな俳優、女優など)をRekognitionに入力してみたが、すべて認識された。GoogleとMicrosoftが提供している同種のサービスと同様、デベロッパーはAPIを通じてRekognitionを利用するが、AWSのアカウントを持っている読者はこちらでデモを体験できる。

Rekognitionはセレブの顔認識に成功すると、可能な限り、IMDBのページにリンクする(IMDBはAmazonの子会社なので当然だ)。

現在のRekognitionは顔認識だけでなくユーザーが提供するデータに基づいて画像の文脈を認識し、被写体の感情、人口動態的分類ができるが、新機能によってサービスがさらに強化された。

ちなみにGoogleのVision APIには現在まだセレブの顔認識機能はないが、MicrosoftのComputer Vision APIにはある。Microsoftによれば20万人の著名人の顔認識ができるということだ。私がテストしたところでは、Microsoftのサービスの顔認識精度はAmazonとほぼ同様だったが、画面に写っている他の対象についても情報が提供され、これに基づいて写真のキャプションを作ることができた(「スーツにネクタイのジャスティン・ティンバーレイクがカメラに向かって笑っている」など)。

〔日本版〕Rekognitionの画像中の物体の認識、表情分析などの例。MicrosoftのComputer Vison APIはDescriptionで内容に関するキーワードを返してくる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazonが「世界を食い尽くしている」理由を考える

編集部:この記事は起業家のの執筆。経歴

私は昨年12月にソフトウェアのスタートアップを共同で創業し、毎月株主に向けて会社の進捗を報告するメモを送っている。しかし先月は自社の状況に関するメモではなく。われわれのビジネス(小売業)を待ち受ける根本的な状況の変化について書いた。

このビジネスでAmazonは支配的な地位を得ているだけでなく、今後ますますその地位は強化されると判断したからだ。これによってリテールビジネス全般にアポカリプスが迫っている。Amazonは世界最強の企業の一つだが、同時にその本質がもっとも理解さにくい会社でもある。そこで多くの人々からAmazonを分析した私のレターを公開すべきだというアドバイスを得た。

私の最初の会社は自動車部品のメーカーだった。われわれはAmazonに対するベンダーでもあり( Amazonはプロダクトの大口顧客だった)、同時に「マーケットプレイス」のサードパーティーの販売者でもあった(この場合われわれはAmazonに売上から一定の手数料を支払った)。つまり私はAmazonのビジネスについて通常知り得ないような経験をした。AWSを始めとするAmazonの各種の事業についても以前からフォローしてきたし、Amazonという会社は私にとってある種の強迫観念に近いものになっている。

一方、リテール・ビジネスは全体としてティッピングポイントを迎えつつあるというのがコンセンサスのようだ。テクノロジー系メディアもメインストリーム・メディアもAmazonという怪物のさらなる成長が小売業に決定的なコラテラル・ダメージを与えるだろうという記事を多数掲載している。Amazonのライバル(アメリカでは主としてWalmart)に対する優位性は維持可能なものであるのか、またライバルはAmazonのビジネスをコピーすることがでいるのかについても多くの議論が交わされている。

たとえばAmazon Primeの特急配送( 2日から1時間まで)やMarketplace(Amazonが販売するのと同じプロダクトを同じエントリーでサードパーティーが販売できる)、Amazon Goストア(レジなしの物理的店舗)からAmazonのドローン利用配送プロジェクトなどだ。

おそらくこうしたプログラムはすべてWalmartのような実力を備えたライバルなら数年で実現できるだろう。たとえば特急配送で利益が出せるかどうかは配送センターを消費者の近くに設置できるかどうかにかかっている。その点Walmartすでに全米150箇所以上の配送センターを持っている。【略】

こうした点を考慮してもなおかつAmazonは世界でもっとも強力な会社であり、Amazonがライバルに対して持つ優位性はまだ十分に理解されていない。向こう10年ほどの間にAmazonのリテール分野での拡大を止められるライバルは存在しないのではないか?

その理由はメディアやアナリストが好んで取り上げる「ブレットポイントの行列」、つまりアナリストが論じることを好むAmazonの事業の多様化にあるのではない。またジェフ・ベゾスのビジョンや企業文化も決定的要素ではない(もちろん私はベゾスは世界でもっとも優れたCEOの1人だと思っている。またAmazonの企業文化も尊敬している)。Amazonの優位性は事業の全てが外部に向けたサービス志向のアーキテクチャーを持っている点にある。Amazonは同社の事業のあらゆる側面をそれぞれ独立したプラットフォームとして公開し、市場での競争にさらしてきた。

「垂直統合」には落ち込みやすい罠がある。垂直統合(部品の内製化、供給メーカーの買収など)によって大幅にコストが削減できるというのがセールストークだが、実際にはそうはならない。当初実現された利益の増大は競争すべきライバルを失った「供給者」が凡庸化するにつれて帳消しとなってしまう。

自動車産業が典型的な例だ。自動車メーカーは部品メーカーを買収する垂直統合の時期の後で部品コストの急上昇を経験し、外注に戻るというサイクルを繰り返している。ライバルとの競争がない事業部は肥大化し、非効率化する。これを防止するために外部メーカーと競争させたりコスト構造について詳細な検討を加えるといった方法は社内官僚制を悪化させるだけで現実のコスト削減にはまったく結びつかないのが普通だ。

AmazonのSOA(サービス志向アーキテクチャー)の典型はやはりAWSだ(AmazonのエンジニアだったSteve Yeggeが2011年に発足当時のAWSについてa非常に面白い記事を書いている)。2000年代にAmazonの通販事業は驚異的なスピードで拡大を続けていたたが、当時はまだエンタープライズ・レベルのSaaSはメインストリームのビジネスとなっていなかった。そこでAmazonは独自のテクノロジー・インフラを構築する必要に迫られた。この社内インフラを顧客向けのサービス(AWS)として開放するという天才的なアイディアについてはすでに多数の記事が書かれている。この戦略は通年換算140億ドルという巨大ビジネスを生んだ。しかしこの金額自体はAmazonが自ら戦略の正しさを知ったという重要性に比べればいわばボーナスに過ぎない。Amazonはプラットフォーム企業になることは競争の喪失によるコストの増大やテクノロジーの停滞に対する効果的な防壁になると発見した。

Jeff Bezoz, CEO of Amazon.

(写真:Drew Angerer/Getty Images)

AWSのデビュー後、10年以上にわたってAmazonは社内向けに開発したツールを洗練させて外部向けのプロダクトとして事業化するという手法をきわめて意識的に繰り返している。最新の例はAWSのAmazon Connectだ。これはもともと自社の通販事業の連絡先管理のために開発されたツールだがAmazonはこれをクラウドベースのセルフサービスのプロダクトとして外部に公開した。この事業の売上も巨額に上っているが、本質はそこではない。本当の価値は、プラットフォームとして公開することにより、部内ツールが肥大化、非効率化することを防げるという点にある。

もう少し具体的にいえばこうだ。もしAmazon Connectがビジネスとして失敗したとしよう。 Amazon経営陣は数値化された結果(売上の減少など)によって自社の連絡先管理ツールのパフォーマンスがライバルに大きく劣っていと知ることができる。Amazonは事業の監査や競争入札といった資源を浪費し官僚制を肥大させるだけの手段を一切必要とせず事業のパフォーマンスに関する正確なフィードバックを得る方法を発見した。プラットフォーム化して外部に公開すれば、その事業が成功していれば利益を生むし、問題があれば直ちにその結果が出る。おおまかにいえば事業が生む利益は事業の質に比例する。数々の事業においてその質を判定する効果的な方法をAmazonは得た。

AWSは非常に目立ち、したがってわかりやすい例だが、この戦略(実行にはヘラクレスの功業的な努力が必要になる)はAmazonのあらゆる事業、部門において一貫して採用されている。Amazonでは膨大な数のサービスが外部から利用可能になっている。エコシステム全体のプラットフォーム化こそライバルがコピーすることがほぼ不可能なAmazonの優位性だ。

もっとも広く利用されている例はFBAプログラムだろう。Amazonに何か注文したときに「この商品は(社名)が販売し、Amazonが発送します」という文言を見たら、これがフルフィルメント by Amazonだ。

FBAプログラムを利用するサードパーティーの業者は商品をバルクでAmazonに送る(所有権はサードパーティーにある)。Amazonは注文に応じて商品を顧客に配送する。返品やサポートもAmazonが処理してくれる。しかも手数料は驚くほど安い。しかもFBAは Amazonサイトでの販売に限られない。AmazonのFBAマルチチャネルサービスはAmazonサイト外で受けた注文をAmazonが代行して販売してくれる。たとえばステンレスの携帯用魔法瓶、Hydro FlaskはShopifyに独自の通販ストアを持っている。Shopifyのストアで注文を受けるとHydro FlaskはFBA(外部APIを利用)でAmazonにその後の処理を任せることができる。

Hydro Flaskのメリットは明らかだ。同社の製品は中国で製造されており、Flexportのようなフォワーダーを通じてAmazonのフルフィルメント・センターに直接搬入される。Hydro Flaskは自社で在庫を保管、管理するという頭痛(とコスト)を避けることができる。Amazonにとっても種々の利益がある。a) 倉庫の収容能力の活用、b) 配送商品量の増大によるバーゲニングパワー、c)フルフィルメント・サービスの手数料(マーケットプレイスなど各種のサービスを含めた手数料売上の総額は2017第1四半期だけで64億ドル。これはAmazonの売上総額の25%になっている)、等々だ。

しかしこの場合でも長期的にみた真のメリットはAmazon自身の社内ツールの競争力の強化だ。膨大な人員を抱えるフルフィルメントはAmazonにとって最大のコストセンターだが、サービスを外部に公開することよってその能力は日々改善される。

FBAのようなマルチテナント、マルチャンネルのクラウドサービスを公開するのは、社内需要を満たすだけのサービスの構築とはまったくレベルが違う完成度を必要とする。社内のみのツールであれば、ハードコーディングされた素人っぽいやっつけ仕事でもいい。しかしそうしたシステムは改良していくことが不可能に近い。【略】

FBAのようなサービスでは〕処理上のエラーの総量は膨大なものになる。Amazon側で商品が失われたため無条件で何万ドルもの払い戻しを受けた業者をいくつも知っている。FBAを運営するために必要なテクノロジー上の能力に加えてこうしたコスト負担に無期限に耐えられる体力があるライバルは果たしてどのどのくらい存在するだろうか?

Amazonがむこう5年間のうちに小口配送サービス(UPS/FedEx/USPS)に参入することは間違いないと思われる。Amazonは最大のコストセンターを次々にプロフィットセンターに変身させてきた。最初はテクノロジー(AWS)で、次はフルフィルメント(FBA)、次はAmazonのオリジナルブランド商品という具合だ。Amazonはすでに40機の貨物機と何千台ものトレーラーを所有している。 10箇所以上の小口荷物仕分けセンターを開設して既存の配送業者への支払いの軽減に努めている。しかも小口配送サービスには、Amazon自身の膨大な社内需要が存在するだけでなく、アーリーアダプターの顧客となることが確実なサードパーティーの小売業者がFBAに多数参加している。

ここでUPS、FedExからRackspace に至るライバル各社に対してAmazonが持つ決定的な優位性は、同社が「ドッグフードを食べる」、つまり自社サービスの最大のユーザーであるという点だ。たとえばUPSは配送エラーについて通販事業者という緩衝帯を持っている。荷物の破損や行方不明、繁忙期の配送遅延などが起きると消費者はまず通販事業者を責める。業者は向き直ってUPSを責めるという順序になる。しかしAmazonの場合、緩衝帯は存在しない。パフォーマンスが劣っていた場合、責任を転嫁する相手はいない。Amazonの強みは単なる多角化ではなく、それぞれの事業が外部に公開されることでフィードバック・ループを完成させているところにある。このはずみ車が回り出すとライバルがこれに打ち勝つのはきわめて困難になる。【略】

〔Marketplace Web Service (MWS) APIや常時最低価格を維持するrepricersなどツール〕その他、いくらでも例を上げることができる。【略】「イノベーションのジレンマ」をAmazon以上に深く理解している企業は少ないに違いない。

そこで簡単にいえば、Amazonには誰も追いつけないというのが私の結論だ。AmazonがFBAを完成させるのに10年かかかった。仮にこれから5年でWalmartがその水準に達したとして、そのときAmazonはどこにいるだろう? この記事で私が紹介してきたのはAmazonのほんの上っ面に過ぎない。まだ知名度は高くないがSeller Fulfilled PrimeやDirect Fulfillmentなどは今後重要になるだろう。予見しうる将来、既存の大型小売業者がAmazonに太刀打ちするのは難しいだろう。しかしある種のバーティカル、たとえばペットフードのChewy.comのようなスタートアップには、すくなくとも短期的にはチャンスがあるかもしれない。

Amazonが打倒されるとすれば反トラスト法訴訟(しかし同社は小売業売上のわずかな部分しか占めていないので当分の間適用は難しだろう) または消費者が物理的な商品を購入する仕方に重大なパラダイムシフトが起きるような場合しか考えられない。没入的仮想現実がすべてを支配し人間は栄養を点滴で摂るようになるといったことにでもなれば話は別だ。しかしそうしたSF的事態が近い将来起きるとは考えられない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AmazonがM4インスタンスと一部のリザーブドインスタンスの料金を値下げ、ますます分かりづらい料金体系に

Amazonのクラウドコンピューティング部門AWSが今日(米国時間5/3)、再び、一部のリザーブドインスタンス(予約インスタンス)とM4汎用インスタンスの料金を下げた。それらリザーブドインスタンスの料金は最大で17%下がり、3年予約のコンバーティブルリザーブドインスタンスは21%下がる。

AWSの料金体系は完全に透明だが、現時点では、分かりやすいとはとうてい言えない。

たとえば今回のアップデートでは、同社は単純に料金を下げるだけでなく、3年の標準リザーブドインスタンスに関しては、前払いなしという新しいオプションを導入する。これまでの唯一のオプションは1年予約だが、これからは3年予約でC4, M4, R4, P2, X1, およびT2のインスタンスが大幅値下げになる。ちなみに、これらのインスタンス名の意味をご存知の方は、きっとAWSで働いている方に違いない。

前払いなしの1年と3年のリザーブドインスタンスでは、最大17%の値下げになる。さらにややこしいことに、頭金制や契約時全額前払いのインスタンスでは、値下げ率が異なる。ただし値下げ率は、インスタンスを使うリージョンによって違う。17%の値下げは、シンガポールで使うLinuxインスタンスに適用される。そのほかのリージョンでは、11から16%のあいだだ。

コンバーティブルリザーブドインスタンス(契約期間中にインスタンスの種類を変えられるリザーブドインスタンス)では、最大21%という大きな値下げ幅になる(これもシンガポール・リージョン)。しかしそのほかは、インスタンスタイプによって5から19%の値下げ幅だ。

これらに加えて、AWSのもっとも現代的な汎用マシンであるM4インスタンスは、一律に7%値下げされる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

NASAとAmazonが協力して宇宙から4Kライブ・ストリーミング―NABトレードショーの一環

4Kテレビ、あるいはディスプレイを持っている読者もいるだろう。しかしその解像力を本当に活かすようなコンテンツをいつも観ているだろうか? スポーツ中継? Netflixの番組? そんなとこだろう。では宇宙は? 

宇宙飛行士たち(たぶんいちばん事情に詳しいはず)によれば、大気圏外から見下ろす地球の景観は比較を絶して素晴らしいという。今月末にこの映像が高解像度スクリーンにやってくる。AWSとNASAが協力して世界初の宇宙からの4Kライブ・ストリーミングが4月26日に予定されている。

正確な時間は4月26日の太平洋標準時午前10:30だ(日本時間4/27午前2:30)。Varietyによれば、ラスベガスで開催される世界最大の放送機器のトレードショー、NABの一部としてストリーミングされるという。コンテンツは録画され、NASAのウェブサイトからも4K画質で公開される。AWSが協力するストリーミングでは国際宇宙ステーション(ISS)とNAB会場が結ばれ、NASAの宇宙飛行士、Peggy Whitson博士と AWSの共同ファウンダー、 Sam Blackmanが会話することになっている。

ストリーミングにはAWSが新しく公開したElementalエンコードが用いられる。宇宙からの高画質中継というのは驚くべきパフォーマンスだが、ISSとラスベガスを結んで会話ができるというのはエンコードのリアルタイム性をデモするのに絶好だろう。

NASAが宇宙からのライブ・ストリーミングに力を入れるのには理由がある。これは軌道上の強力なカメラを通して得た映像を地上の科学者がリアルタイムで観察、分析することが可能になるからだ。

〔日本版〕ライブ中継は日本では4/27 午前2:30になってしまうが、4K録画をNASAのサイトから見ることができるはず。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AWS、S3の大惨事の原因を公開―ヒューマンエラーが発端だった

Mixed race person watching light column in cloud of blocks

AWSのS3クラウドストレージが4時間にわたってダウンした件は、当然ながら、強い批判を浴びた。AWSは検証レポートを発表し、この事件について原因と経過を詳しく説明した。技術的情報と将来に向けての防止策も含まれている。

直接の原因は、やや平凡な理由だが、ヒューマンエラーだった。あるエンジニア―ここではジョー(仮名)と呼んでおく―が間違ったコマンドを入力してしまったということだ。ジョーはあるサブシステムをシャットダウンするつもりだった。それ自体は日常行われるオペレーションだった。しかし月曜日、バージニア州北部データセンターではルーチンワークが大変な問題を引き起こした。

ジョーは正規の特権ユーザーであるため、システムをシャットダウンするコマンドを入力する資格があった。ただしこの作業はAmazonが「確立された手順書(established playbook)」に従ったもので、ここではS3サブシステムの少数のサーバーを停止することが意図されていた。ところがジョーは誤って多数のサーバーを停止するコマンドを入力してしまった。

素人の表現でいえば、地獄のような騒ぎが持ち上がった。

Amazonはもっと技術的な表現をしているが、問題のエラーはカスケードしてバージニア州北部データセンター全体に影響を与えることになった。ジョーのエラーは決定的に重要なサブシステムを停止してしまい、センターのデータ保存能力の大きな部分を失わせた。システムは再起動を余儀なくされたが、この間S3はリクエストを処理することができなくなった。AWS自身のダッシュボードも機能を失い(これはかなり恥ずかしい事態だ)、S3の稼働状態を確認できなくなった。

そして外部の世界も影響を感じ始めた。一般ユーザーはお気に入りのサイトが開かなかったり、アプリが異常な動作をしたりするのに気づいた。

昼頃、AWSはサービスの復旧に全力を上げていたが、なにぶんシステムの規模が大きすぎた。AWSは何年にもわたってダウンしたことがなく、従って全システムの再起動を行ったこともなかった。S3はいわば自分自身の成功の犠牲になった。再起動をかけるとシステムは安全性のチェックとメタデータの整合性の確認を始めた。ところがこれは予想外に時間を必要とした。

こうしたヒューマンエラーによる事故の再発を防ぐためにAWSでは運営手順に変更を加えるという。レポートによれば「この〔事故の原因となった〕ツールに修正を加え、作動速度を遅くし安全策を追加した。〔停止要求に対し〕配下の最小限のレベルにおけるサブシステムのみを停止させるようにした」という。これでジョーのような慌て者が同様のミスをするのは防げるだろう。

しかしAWSでは、もっと根本的にS3のサブシステムの構成の見直しも行っている。サブシステムをセル(cell)と呼ばれるさらに多数の区画に分割し、一挙に大量のサーバーが停止されないようにするという。これは過去にも試みられたことがあったはずだ。ともかくS3のサブシステムは許容可能な時間で再起動するには大きすぎた。

AWSのレポートは謝罪と改善の約束で締めくくられている。単純なヒューマンエラーで始まったものの、影響が連鎖反応で急速にデータセンター全体に拡大して大事故となった。AWSのシステムがこの種の深刻なエラーを想定せず、したがってそのカスケードを防ぐ機能が組み込まれていなかったのが惨事の根本的な原因だったようだ。

画像: Colin Anderson/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazon S3が停止した日―アナリストは冗長性の重要性を指摘

NEW YORK, NY - DECEMBER 14: Jeff Bezos, chief executive officer of Amazon, listens during a meeting of technology executives and President-elect Donald Trump at Trump Tower, December 14, 2016 in New York City. This is the first major meeting between President-elect Trump and technology industry leaders. (Photo by Drew Angerer/Getty Images)

昨日(米国時間2/28)、Amazonのバージニア州北部データセンターに障害が発生し、 AWS S3クラウド・ストレージ・サービスが4時間近くダウンしたというニュースはご存知のことと思う。その結果、有名なウェブサイトやサービスが停止し、大きな混乱が起きた。

念のため断っておけば、今朝、Amazonのダッシュボードはすべて正常に動作中であることを示している。

影響を被ったサイトやサービスにとっては大事件だったものの、Amazon S3は長年にわたって信頼性が高いサービスだったことは指摘しておくべきだろう。またバージニア州北部データセンターがダウンしても他の13のリージョンではS3は正常に作動した。

今回のS3のダウンのようなクラウド・サービスのダウンをモニターしているCloudHarmonyによれば、S3の動作記録はサービスレベル合意書((SLA)が保証する基準を上回っていたということだ。SLAによればS3は99.9%の稼働を約束しており、下回った場合については返金に応じるとしている。CloudHarmonyの調査では、同社が2014年にクラウド・サービスのモニターを開始して以來、AWS S3は年間でほぼ100%の稼働率を達成している。S3の目立った障害は2015年8月のダウンだった。

CloudHarmonyはMicrosoft Azureの仮想マシンとオブジェクト保管も2月19日に5時間にわたってダウンしたが昨日のS3の場合のような注目は集めていないと指摘する。

クラウド・コンピューティングの専門家、ジャーナリストのBen Kepesは「シアトルのAWS本社では夕べは誰も眠れなかっただろう。しかしこの種のダウンはときおりどうしても起きてしまう」と述べた。Kepesによれば、「AWSは他の同種のサービスと比較して隔絶して大きいパブリック・クラウド・サービスだ。そのためダウンすると各方面に非常に大きな影響を与える。昨日のダウンはいかに多くのサードパーティーがAWSのインフラに依存していたかを印象づけた。残念ながら、こうしたサービスはときおりダウンすることがある。ユーザーはこうした場合に対処する方法を準備しておく必要がある」という。

Kepesは「どんな場所であろうとダウンが起きることはITのプロなら誰でも知っている」 と付け加えた。しかしクラウドは通常地味なサービスでありダウンしても関係者以外には注目を引かない。「世間では大騒ぎしているが、事実はどんな公共サービスであろうと落ちるときは落ちる」という。

Forresterのアナリスト、Dave Bartolettiも同意見だ。彼は今回の事件はクラウド・サービスのユーザーに警鐘を鳴らすものだという。「ストレージに冗長性を持たせることが必要だ。ユーザーはクラウドにデータを保管してサイトやサービスを構築する場合、複数のレイヤーを利用する必要がある。ストレージはS3の特定のリージョンのみに依存してはならない」という。

ただしこれらのアナリストも今回のダウンで被害を受けたユーザーを非難しているわけではない。しかし冗長性というのはIT専門家がシステムに組み込むことを必須としてきた要素で、クラウドの場合でもなんら事情は変わらないという指摘だ。

しかしMoor Insight & Strategyのアナリスト、Patrick Moorheadは今回のダウンについてもっと厳しい意見を持っている。今回のダウンタイムはけっきょくのところ数百万ドルの損害をもたらしたはずで、Amazonは顧客の貴重なデータを保管するサービスを提供するからにはもっと高い冗長性をシステムに組み込んでいる必要があったという。

「パブリック・クラウドだからといってこうしたダウンが起きていい理由にはならない。銀行オンラインでダウンがほとんど起きないのは障害耐性が高いアーキテクチャを組み込んだシステムが構築されているからだ」という。

こうした批判の当否はともあれ、インハウスであろうとAWSのようなクラウドであろうとデータセンターの事故はサイトやサービスにとって死活問題だということは明らかになった。どんなアプローチであれ「これで絶対安全」とはならない。だからといってAWSの責任が否定されるわけではないが、少なくとも過去の運用記録からみればS3はきわめて信頼性の高いサービスの一つであったことは間違いない。

t画像: Drew Angerer/Getty Images

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AWS S3 US-EAST-1がダウン、アメリカは大混乱―Amazonは原因を突き止めたらしい

2017-03-01-aws-perspective-glitched

AmazonのAWS S3クラウドストレージに広汎な障害が発生している。S3を利用している多くのウェブサイト、アプリ、デバイスが一部あるいは完全に作動しなくなっている。AWSは多くのサイトの実行イメージあるいはサイトそのものをホストしている。アプリのバックエンドとして利用しているサービスにはNestも含まれる。

「US-EAST-1のS3に高頻度でエラーが発生する」という障害が発生していることがAmazon AWSサービスのヘルス・ダッシュボードで確認されている。 当初、Amazonでは「プログラムを修正中」と発表したのみで原因など詳しい状況は不明だった。

影響を受けているサイト、サービスにはQ&AのQuora、ニュースレター配信サービスのSailthru、ニュースサイトのBusiness Insider、Giphy、S3が画像をホスティングしている各種yメディア、Slackにおけるファイル共有など多数だ。スマートサーモスタットなどホームIoTのパイオニアであるNestにも障害が発生しており、デバイスのコントロールが不可能になっている。

SimilarTechのトラッキング・データによれば、Amazon S3は14万8213のウェブサイトが利用しており、 12万1761のドメインを運用している。コンテンツのホスティング・サービスとしての利用はアメリカに集中している。ただし利用の絶対量は上位100万サイトの0.8%に過ぎず、たとえばCloudFlareの世界のトップ100万サイトについて6.2%という数字に比べてかなり小さい。それでもAWSのダウンは大きな影響を与えている。

驚いたことに、AWSサービスの健康状態を示すダッシュボードのグラフィックス自体がS3のストレージを利用しており、したがってこの大混乱にもかかわらず「平常通り」の緑のランプが点灯しているという。

われは状況を注視しており、さらに情報が得られしだいフォローする。

アップデート: (11:40 AM PT): AWSはヘルス・ダッシュボードについては問題を修復した。ダッシュボードは 作動の低下やダウンを正しく表示している。Amazonは復旧の努力中。

アップデート (11:57 AM PT): AWSはS3がダウンした「根本的な原因を発見」したもよう。「修正に全力を挙げている」という。ただしそれ以上の詳細は発表されていない。

取材を続行している…

〔日本版〕日本ではSlackのファイル共有を含めて目立った影響は出ていない。US-EAST-1を利用していない場合は正常に作動するもよう。
なおQuoraは”504. Gateway Timeout.”のエラーとなる。Business Insider(英語版)はテキストそのものは表示されるがウェブページとして正しく表示されない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Amazonが企業用のビデオ会議サービスChimeをAWSから提供、エンタープライズ顧客のつなぎとめ策か

Amazon corporate office building in Sunnyvale, California

Amazonが今日(米国時間2/13)、同社のSkype対抗サービスChimeを発表した。それはAWSが提供するビデオ会議とコミュニケーションのサービスで、主に企業ユーザーがねらいだ。

単なるVoIP電話やビデオによるメッセージングだけでなく、Chimeには仮想ミーティング機能があり、ユーザーはこのサービスを利用してリモートミーティングを主催したり、参加できる。料金はユーザー一人月額2ドル50セントからで、ビデオや画面の共有など高度な機能も含めると最高月額が15ドルになる。ベーシックな機能だけなら無料だが、それでできるのはビデオ電話と二人だけのチャットのみだ。

ChimeはWindows, MacOS, iOS, そしてAndroidデバイス上で利用できる。

これはAmazonがSkype for businessやGoogle Hangoutsのようなものを提供する、という単純な話にとどまらず、AWSがGoToMeetingやCisco(WebEx)などと伍して仮想ミーティングの管理サービスに乗り出す、という事案でもある。

AWSのエンタープライズアプリケーション担当VP Gene Farrellが、今日の発表声明でこう言っている: “企業の仮想ミーティングは、今使っている技術に満足していないユーザーがとても多い。使いづらいアプリケーションやサービスが多く、オーディオやビデオの質も悪く、やりたいことをやるためには、複数のツールを頻繁に切り替えながら使わなければならない。しかもそれでいて、料金は異様に高い”。

本誌のエンタープライズ担当ライターRon Millerが今週書いているように、AWSはクラウドサービスではすでに巨人だ。今回Chimeでもってエンドユーザーサービスに進出するのも、競争激化の中でエンタープライズ顧客をもっとしっかりつかまえておきたい、という意思の表れだろう。Microsoft、Google、それにAlibabaのような新参者すら、AWSから顧客を奪おうと必死だ。しかもそのAWSは今や、Amazonの経営の柱と呼んでも過言ではないほどの、財務的優等生だ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AWSがひとり勝ちである理由

クラウド市場を眺めてみると、AWSが異論のないリーダーであり、近い将来もその地位に揺るぎがないであろうことに驚く。しかもGoogle、Microsoft、IBM、そしてOracleといった強豪が競争相手であることを考えると、AWSの大きなリードは更に驚異的だ。ここで疑問なのは、AWSはどのようにそうした優位性を手に入れたのか?ということだ。

先行者だったからというのが簡単な答だが、AWSのCEOであるAndy Jassyは、それは幾つかの点で市場転換力学の古典的なケースだったと、先週ワシントン大学で行われたインタビューで語った。競争相手たちは単純に、心配する必要が生じるほどの十分な市場が生まれるとは思っていなかったのだ。

手遅れになるまで、ちょっとした不快感を無視し続けることは簡単だ。実際、ハーバード大学教授の、クレイトン・クリステンセンは、彼の先駆的な著書「イノベーションのジレンマ」でこの問題を概説している。市場の支配的なプレイヤーたちは、市場の最下層への攻撃を心配する理由がない。そしてそれこそがAWSが初期の頃にやっていたことだ。

ライバルたちについてJassyは、彼らは長く激しくクラウドと戦って来たために、戦いに敗れ去る会社を見ることで、彼らの市場の優位性を脅かすものは存在しないと思いこむ傾向が強まったと語った。

「彼らがクラウドに対して言ったことは、まず、誰もそれを使わない、次に、おそらく使うのはスタートアップだけだ、その場合でも本番には使わないだろう、ということでした。その次には、企業は使わない、そしてその次に言ったのは企業はミッションクリティカルな用途には使わない、というものでした。企業や開発者たちはその労力を注ぐ場所で意見を表明していました。そしていまや(競争相手たちは)この領域で何かを始めようとしています。おわかりでしょうけれど、それは6、7年遅れた動きなのです」とJassyは語った。

screenshot-2017-02-13-14-44-34

AWSのCEOであるAndy Jassy

OracleやIBM、そしてMicrosoftのような企業さえもが、こんなにも力を注いでこなかった理由の1つは、クラウドが彼らのコアバリューを損なうものだったからだ。

「私は、そこに到達するために、ただとても長い時間のかかる企業のカテゴリーがあると思っています。それはOracleやIBMのような企業で、彼らの立場からすれば、私たちが推し進めていたビジネスモデルは、彼らのビジネスに対してとても破壊的なものだったのでしょう」。彼は、根本的に異なるマージンや、価格体系、展開モデルについて発言を続け、そしてそうした企業たちに対して根本的な疑問を提起した。

「多くの大企業が抱えるジレンマだと思います。既存のビジネスを食い潰す動きを本当に加速したいのかどうか。だからこそ彼らは可能な限り長く激しく戦って来たのだと思います」。

Jassyは、他のプレイヤーたち、特にMicrosoftが、参入のためにこれほど長い時間がかかったことに驚いたと告白した。もっとも彼は実社名は挙げずに「湖の向こう岸の会社」と呼んだだけだったが。「私たちが立てた、もっとも甘い予想の中でも、私たちに6、7年の先行が可能になるとは考えていませんでした。特に私たちは、あの大企業とは湖を挟んで向かい側ですし、お互いに相手の会社の沢山の人を知ってたのですから」。

しかし、ライバルたちはいまや方向を定めた。そしてJassyもAWSの1人勝ちの幻想に浸ってはいない。彼は数兆ドルの価値がある市場に向けての厳しい競争があることを認識している。「1人勝ちのプレイヤーが現れることにはならないでしょう。かといって30にもならないと思います。コスト構造を考えると規模が本当に大切なのです。しかし複数の成功したプレイヤーが現れることでしょう、まだ登場していない企業かも知れません。しかし従来の手堅いプレイヤーたちも無視できません。既に膨大な企業顧客基盤を持っていますし、強力な販売チームやその手の何かを有しているからです」と彼は語った。

JassyはAWSが提供している機能の量を考えると、ライバルたちが追いつくためには相当量の仕事をこなさなければならないと述べた。もちろんAWSも定期的に機能を追加している。

こうした全てが市場におけるAWSの優位性につながってきた、そして現時点では追いかけるプレイヤーたちにとっては、本当に困難が予想される。市場は成長を続け、主要クラウドプレイヤーたちは派手な成長を見せ続けるだろうが、先行したAWSは大きなリードを確保し、その地位を近い将来譲り渡す気配はない。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

パブリッククラウドプラットホームにおけるAWSの王座は今後も揺るがず

img_20161130_104056

Amazonは木曜日(米国時間2/2)の決算報告の中で、同社のクラウド事業部Amazon Web Servicesの収益についても発表したが、それらは意外性とはほど遠いものだった。AWSの成長率そのものは、そのライバルのように突出してはいないが、それでも47%の高率、142億ドルという驚異的な四半期売上で35億3000万ドルの利益を上げた。

Microsoft Azureなどの方が成長率が高い、とはいっても、彼らはそもそも、最初から分母が小さい。AWSは巨体になりすぎて、子どもの体の敏捷さを失っているだけだ。

MicrosoftやIBM, Google, そしてOracleやAlibabaまでも、クラウドの高い成長率を誇っているが、彼らを全部合わせてもマーケットシェアではAWSに及ばない。しかも彼らが今後どれだけ売上を稼いでも、市場そのものがものすごい高率で成長している。つまり長期的に見れば、彼らは一定のサイズのパイの分け前を争っているのではない。

今ではいろんな市場予測があって、どれが正しいのかよく分からないけど、IDCの数字では、昨年のパブリッククラウドの市場規模は950億ドルだ。同社は、3年後にはこの倍以上、すなわち2020年には1950億ドルと予想している。これが正しければ、どのクラウド企業にも巨大な市場機会があることになる。

同じくIDCが予測する2020年の全企業のIT支出の総計は、2兆7000億ドルだ。少なくとも当面は、全IT支出の中でクラウドサービスへの支出が、微々たる比率であることが分かる。

これよりも楽観的なForresterは、2020年のパブリッククラウドの市場サイズを2360億ドルと予測している。どんな数字になるにせよ、市場そのものが急成長していることは明らかである。

それはマーケットシェアを争う各社にとっては良いニュースだが、AWS自身も急成長していくわけだから、それに追いつくのは難しい。Amazonは10年以上も前に業界で初めて、パブリッククラウドをInfrastructure as a Service(サービスとしてのインフラストラクチャ)、すなわちIaaSとして市場化したが、その後数年間にわたり、この新しい業態に挑戦する競合他社は一社も出現しなかった。

今日では、Synergy Researchの数字によれば、マーケットリーダーであるAWSのマーケットシェアはとてつもなく大きい。変化の激しい市場だから一概に言えないとはいえ、Synergy ResearchのチーフアナリストJohn Dinsdaleの説では、AWSに追いつくことはMicrosoftにとってすら、非常に難しい。

screen-shot-2017-02-02-at-1-12-09-pm

Dinsdaleは語る: “単純に数字だけから言っても、AWSと二位以下との差があまりにも大きいから、短期的には首位争いと言えるほどの競争はありえない”。しかもAWSは、大きなマーケットシェアに安住することなく、次々と新しいイノベーションを打ち出している。

“AWSはインフラへの巨大な投資を継続しており、サービスの幅の拡大と実行性能の向上にも継続的に努めている。そのビジネスは顧客企業の成長と共に成長し、また今では重要な存在であるAWSを、母体であるAmazonが長期的に支えている。数字から言っても、ビジネスの論理から言っても、規模とマーケットシェアでAWSに匹敵するような競合他社は、近未来においては存在し得ない”、とDinsdaleは言葉を継ぐ。

だから今後しばらくは、すべてのパブリッククラウドベンダが、驚異的な業績をあげるにしても、それはAWSのシェアを奪ってのことではない。むしろ、今でもAWSのマーケットシェアは拡大を続けており、新しい機能やサービスを非常に頻繁に加え続けているから、資本力と企業力で負けていないMicrosoftやGoogleでも、AWSのマーケットシェアに食い込むことは、当分のあいだ難しいだろう。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazon AWSのEC2 Container ServiceにWindows Containersのサポートが加わる

Container

Microsoftは3か月前のWindows Server 2016の立ち上げのときに、Windowsのサーバー上でDockerエンジンを使ってコンテナを動かすことを可能にした。これによりデベロッパーは、Windowsの実行コードをコンテナに収めてWindowsのサーバー上で動かすことができる。もちろんWindowsの実行コードをLinux上で動かすことはできないが、使用するDockerエンジンやそのコマンド体系はデベロッパーにとってすでにおなじみのものだ。そして今日(米国時間12/20)AWSは、同社のEC2 Container Service(ECS)がWindows Containerをベータでサポートする、と発表した

Amazonはそのために、ECSのコンテナエージェントのWindowsバージョンを独自に開発した。しかも、Amazonとしては異例にも、エージェントのコードはApache 2.0のライセンスによりGitHub上で提供される

MicrosoftとDockerの密接な協働により、DockerエンジンがWindows上で動くようになった(Windows 10のAnniversary Update以降を含む)。Windows Server 2016上ではDocker Engineの商用サポートも提供され、今後はエンタープライズ向けのサポートも提供される。ただしWindowsのコンテナは、Dockerの管理ツールに触れることなく、PowerShellからでも管理できる。

なお、一般的にコンテナは軽量のリソースと見なされるが、Windows ServerのDockerイメージはかなり大きくなりがちだ(Amazonによると9.66 GB)。ECS上でWindows Containersを使い始めるためにも、Linuxのコンテナと違って、かなりややこしい部分がある。

古いアプリケーションをクラウドへ移す、という最近のエンタープライズの動向に伴い、Windows上のコンテナはそれらをレガシーのハードウェアからAWSやGoogle Cloud Platform、それにMicrosoft自身のAzureプラットホームなどへ移行させるための、容易な方法と見なされるようになった(AzureはWindows Containersをかなり前からサポートしている)。Amazonは今回Windows Containersを新たにサポートすることにより、この市場のちょっとした分け前をいただきたいのだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

ユーザーがデベロッパーのアプリに再帰定着することを促進するメッセージングツールAmazon Pinpoint

Young businesswoman holding smartphone with apps and icons coming out of it

デベロッパーがアプリケーションを作ったあとの最難関は、その努力に見合う十分なオーディエンスを惹きつけるだけでなく、彼らがそのアプリケーションをたいへん気に入って、定着し再帰してくれることだ。今日(米国時間12/1)Amazonが発表したAmazon Pinpointというツールは、デベロッパーが正確に的(まと)を狙ったプッシュ通知を送ることによって、オーディエンスをデベロッパーとそのアプリケーションに繋ぎとめようとする。

AmazonのCTO Werner Vogelsは、ラスベガスで行われたデベロッパーカンファレンスre:Inentのステージで、これらのプッシュ通知を作って送るにあたっては、デベロッパー側の細心の注意が必要だ、と強調した。“ピンポイント”という名前が示しているように、それは特定のグループに正確に目標を定める。そのグループは、これらの通知を受け取るにふさわしい資質や知識や立場を持つ、ベストのグループでなければならない。

たとえばゲームのデベロッパーは、そのゲームを最近使っていないユーザーに、今度新しいレベルができたことを通知できるだろう。

通知を、その通知に前向きの関心を持つであろう正しいターゲットグループに送れるために、Amazon Pinpointは、デベロッパーによるモバイルの顧客たちの分析を助ける。彼らのビヘイビアを理解し、選んだグループがメッセージのターゲットとして適正な人びとである可能性を高める。

些細なことかもしれないが、AppleのiOS App Storeだけでも200万以上ものアプリがある時代だから、アプリを作っただけでは前進できない。何らかの方法で、人びとにアプリを使ってもらうことができたなら、その次は、正しくターゲットされたメッセージで再帰率を高めるべきだ。それをやるのが、Amazon Pinpointの仕事だ。

それはデベロッパーに、ノイズを振り分けて、特定の嗜好を持つエンドユーザーに直接コミュニケーションするためのツールを与える。また、その効果を測ることもできる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AWS ShieldはAWS上のすべてのWebアプリケーションをDDoSから守るフリーミアムのサービス (デフォルトでon)

img_20161201_092331

Amazon AWSのデベロッパーカンファレンスre:Inventで今日(米国時間12/1)、Amazonのクラウドコンピューティングサービスの上で動くWebアプリケーションをDDoSから守るサービス、 AWS Shieldが発表された。

AWS Shieldは今日から一般的に可利用となり、すでに、AWSの上で動いているすべてのWebアプリケーションに対して(無料で)有効になっている。このサービスは、AmazonがそのElastic Load BalancerやCDNのCloud Front、DNSサービスのRoute 53などで行ったことの成果がベースになっている。それはデベロッパーに、残念ながらこのところますます頻繁になっているたぐいのDDoS攻撃に対する保護を提供する。

shield_splash_1

AWSによるとこの無料サービスは、もっともよくあるタイプの攻撃の96%に対してアプリケーションを保護する。

AWS Shieldには、より高度な有料バージョンもある。このバージョンは、もっと高度な攻撃に対してアプリケーションを保護する。この有料バージョンでは費用の保護も提供されるので、攻撃に遭遇したときに大量のAWS利用料が発生することが、防がれる。また24×7の相談窓口が提供され、特殊な対策等に関して保護のカスタム化を相談できる。有料バージョンの利用料は年額3000ドルと、Elastic Load BalancerやCloudFront、Route 53の利用に伴うデータ転送料金だ。

AmazonのCTO Werner Vogelsによると、同社の顧客は昨年とくに、DDoS攻撃に悩まされていた。

img_20161201_092240

Vogelsによると、Amazonが目撃している攻撃は、ネットワークをダウンさせようとする量的攻撃(volumetric attacks)や、サーバーのリソースを枯渇させようとする攻撃などだ。攻撃の大半(64%)は量的攻撃であり、次位がステート枯渇とアプリケーション層の攻撃だ。

AWS Shieldはデフォルトでonで、デベロッパーをこれらの攻撃から守っている。

これによりAmazonは、Cloudflareや、大手ネットワーキングベンダのDDoS保護サービスと競合することになる。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AWSがローンチするBloxはEC2 Container Serviceのためのオープンソースツールのコレクション

img_20161201_102504

AmazonのクラウドコンピューティングプラットホームAWSはかなり前から、EC2 Container Service(ECS)でもってソフトウェアコンテナのサポートを提供してきた。今日の同社のデベロッパーカンファレンスre:Inventで同社は、コンテナのサポートの仕方に関するいくつかのアップデートを発表した。コンテナは今や、分散アプリケーションを運用する方法の定番とも言える地位に、急速に上(のぼ)りつめている。

まず、EC2のこのコンテナサービスは、カスタマイズの幅が広がる。とくに、Task Placement Engineと呼ばれるツールにより、デベロッパーはコンテナを特定の可利用域に配置できるようになる。

“コンテナの管理と実行は、弊社の少なからぬ顧客にとって、とりわけ一部のオープンソースソフトウェアを使った場合、苦労が多すぎた”、とAmazonのCTO Werner Vogelsが今日のキーノートで述べた。ECSの今回のアップデートは、その苦労の一部を軽減することが目的で、AWS上でコンテナを使うユーザーに、より多くの柔軟性を与える。

また今日Amazonが発表したBloxは、ECS用のコンテナ管理ツールを作るためのオープンソースプロジェクトのコレクションだ。たとえばコンテナのスケジューラーを作りたければ、MesosのようなサードパーティのスケジューラーをECSに統合できる。

Bloxが最初に提供する二つのプロジェクトは、どちらもGitHub上にある。それらは、クラスターのステートをチェックするサービスと、デーモンのスケジューラーだ。これまでオープンソースのコミュニティとは比較的‘浅い仲’だったAWSにしては、興味深い動きだ。しかしコンテナのエコシステムはその大半がオープンソースのプロジェクトに支えられているから、Amazonとしてもそろそろ積極的に関わった方が得策かもしれない。BloxプロジェクトはApache 2.0のライセンスで公開される。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Amazon AWSのクラウドコンピューティングサービスEC2にFPGAインスタンスがお目見え、ビデオや機械学習ではGPUより強力

img_20161130_083641

AmazonのクラウドコンピューティングサービスAWSが今日、FPGA(field-programmable gate array)を使用する新しいインスタンスタイプ F1を発表した。FPGAはその名のとおり、ユーザーが現場でプログラミングできるゲートアレイで、アプリケーションの目的に合った特殊な構成もできる。そのため、場合によっては、従来のCPU/GPUの組み合わせを上回る高速が期待できる。

これらの新しいインスタンスは、AWSのUS Eastリージョンでは今日からプレビューで可利用になり、一般供用は年末頃からとなる。料金はまだ発表されていない。

まだそれほど広く普及しているわけではないが、最近のFPGAは価格も手頃になり、プログラミングも容易になった。そろそろ、もっと多くのサービスで使われるようになりそうだ。今回のようにクラウドからFPGAを提供することになると、多くのデベロッパーによる実験的な利用も拡大するだろう。

f1_fpga_floor_2

“つねに、いろんなものを自分で試してみて、それから一般ユーザーに提供している”、とAWSのCEO Andy Jassyは述べている。

新しいF1インスタンスは、HDや4Kのビデオ処理やイメージング、および機械学習で、GPUに代わって使われることになりそうだ。たとえばMicrosoftは、同社のAIサービスのバックエンドをすべてFPGAで構成している。一方Googleは、自家製専用チップという、高価な路線を選んでいる。FPGAは途中でプログラムを書き換えられるから、アプリケーション内でコンテキストの切り替えが容易にできる。たとえばある時点で未加工の画像を処理していたが、その次にはFPGAをディープラーニング向けに再構成して、その画像を数ミリ秒で分析する、といったことができる。

AWSと共にこのF1インスタンスをテストした企業のひとつNGCodecは、VR/AR処理のためのRealityCodecコードをこれらの新しいインスタンスに移行したが、移行はわずか4週間ほどで完了した。理想としては、これまで手元のデバイスで駆動することが当然だったVR/ARのヘッドセットの、駆動と複雑なビデオ処理を、クラウドからできるようになるかもしれない。NGCodecのファウンダーOliver Gunasekaraによると、コーデックに使ったケースでは、FPGAがGPUよりも優勢だった。エンコーディングには大量の意思決定過程があり、GPUはそれらをCPUにやらせる場合が多いからだ。またこの種のシナリオでは、電力効率もFPGAの方が良い。

Amazonは、Xilinxのチップを使っている。最後に残った、独立系の大手FPGAメーカーだ。新しいインスタンスのスペックは、次のとおり:

  • Xilinx UltraScale+ VU9P, 16nmプロセスで製造。
  • 64 GiBのECCで保護されたメモリ, 28ビット幅のバス上(4つのDDR4チャネル)。
  • CPUへのインタフェイスはそれ専用のPCIe x 16。
  • 論理成分数は約250万。
  • 約6800のDSP(Digital Signal Processing)エンジン。
  • デバッグ用のVirtual JTAGインタフェイス。

しかしFPGAのプログラミングは今でも難しいし、Amazonがそれを容易にするツールを出す気配はない。でも、開発キットはあるだろうし、デベロッパーがこれらの新しいインスタンスを使い始めるために利用できるマシンイメージ(Amazon Machine Image)も提供されるだろう。

NGCodecのGunasekaraによると、Xilinxも、CやC++のような共通言語でFPGAをプログラミングできるためのツールを、多少提供している。同社は、F1インスタンスのためのデコーダーを、それらのツールを使って設計したようだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AWSがパートナーをサポートする多彩な新事業をローンチ、とくにIoTと金融サービスを重視

img_20161129_121008

Amazonのクラウドコンピューティング部門であるAWSが今週、今年のre:Inventデベロッパーカンファレンスをラスベガスで行っている。そのメインイベントに先立って同社は今日(米国時間11/29)、AWSのツールやサービスを売っている同社のエコシステムパートナーのためのキーノートを開催した。そのキーノートで同社は、パートナー事業の大幅な拡張と、ソフトウェアやAPIやそのほかのサービスをAWSのマーケットプレース(AWS Marketplace)で売りたいベンダのための、新しい機能もいくつか発表した。

AWSが発表した新しいパートナー事業はいくつかあり、ひとつは公共部門へ売っていきたい企業向け、もうひとつはAWSのサービスを使おうとする顧客企業を支援する立場のパートナーだ。それらAWSのサービスとは、Redshift, Lambda, Kinesis, Machine Learningなどなどだ。さらに加えてAWSとVMwareは、2017年に統合パートナーシップ事業を発表し、またAlexaのスキルを作っている企業だけのためのパートナー事業も開始される。

これらのパートナー事業に参加した企業は、市場開発のための資金や、さまざまなマーケティング素材、自分のマーケティング素材をブランド化できるたものバッジなどにアクセスでき、場合によってはPartner Solutions Finderでフィーチャーされる(大きく扱われる)。これらの事業はテクノロジー系企業と、コンサルティング系企業の両方を対象とする。

さらにまた、AWS上でIoT金融アプリケーションを立ち上げるユーザー企業を支援する能力のあるパートナーのための事業もある。これらの新しい事業は、マイグレーションやストレージ、DevOps、セキュリティ、ビッグデータなどに注力していくそれらの企業のための既存の事業に加わる形になる。

今回Amazonは、中でもとくにIoTソリューションをAWS上で充実していくことに大きな関心があるようだ。今日のキーノートではAWSのJames Hamiltonが、わざわざ、インターネットに接続された自分のボートを、未来志向の企業にできることの例として挙げたほどだ。これら新しいパートナー事業に参加できる企業の要件を、Amazonは詳細なリストにまとめている。たとえばIoT企業に関しては、これがそのリストだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

AmazonがBibaの特許と従業員を取り込む:新しいビデオチャットサービスをリリースか

screen-shot-2016-11-23-at-17-07-35

AmazonによるTwitchElemental Technologiesの買収は、ビデオサービスに本格的に参入するという同社の大きな戦略の2つのピースでしかなかったようだ。このマーケットプレイスとクラウドコンピューティングの巨大企業は昨年、サンフランシスコを拠点とするBiba Systemsを人知れず買収していた。Biba Syestemsはビジネスパーソン向けのビデオメッセージングアプリを開発する企業だ。ある情報提供者によれば、Amazonは現在ビデオメッセージング・サービスの開発に取り組んでいる最中で、今月開催されるAWS re:Invent 2016でその全貌を明らかにする予定だという。

AmazonによるBiba Systemsの買収の可能性が最初に伝えられたのは先週のことだ。GeekWireは2015年9月にデラウェア州に提出された資料の中で、「Justin Acquisition」と呼ばれる企業体とAmazonの合併に関する記述を見つけた。Justin AcquisitionにAmazonの名が直接記載されているわけではないが、その資料には当時Amazonに雇われていたパラリーガル(法律事務所の事務員)の名前が含まれていたのだ。

私たちはAmazonにこの件に関するコメントを求めたものの、彼らからの返事はない(GeekWireの取材にも応じていないようだ)。そこで私たちは独自で調査をすすめることにした。その結果、私たちはAmazonがBibaのテクノロジーと従業員を取り込んでいたことを突き止めた。BibaとAmazonとの間の直接的なつながりを発見したのだ。

Bibaは2つの特許を取得している。1つはビデオ・カンファレンスに関わる技術、もう1つはオーディオ・ストリーミングに関わる技術だ。そして、この2ヶ月間で2つの特許の所有権がAmazonに移行されている。

さらに、Bibaの従業員に付与されたAmazon名義のEメールアドレスが存在することも突き止めた(この記事でそのEメールアドレスを公開する気はない)。

「ジャスティン・’Biba’」に道をゆずる?

AmazonがBibaのテクノロジーをどのように活用するかはまだ不明だ。だが、情報提供者によればAmazonは先日、数名を対象にビデオカンファレンス製品のテストを行ったところだという。

「彼らはそのプロダクトをサンクスギビング後に控えたre:Inventで発表する予定です」と情報提供者は話す。

そのプロダクトにBibaのテクノロジーが使われているかはまだ分からない(もし本当にそのプロダクトが来週発表されるとすればの話だが)。しかし偶然にも私たちは、Bibaが今年8月と9月に同社のAndroidアプリiOSアプリのアップデートを突然、それも密かに行っていたことに気がついた。同社は2015年9月以降、Twitter上のマーケティング活動を行っていないのにもかかわらずだ。

screen-shot-2016-11-23-at-17-09-54

AmazonがAWSで提供するアプリやサービスの拡大を目指しているのには納得がいく。

すでにAWSでは、クラウド・インフラストラクチャー上で動作するプロダクトをいくつか提供している。それには、クラウドベースのEメールおよびカレンダー管理サービスのWorkMailや、VMwareやParallels、Microsoftなどと競合関係にある仮想デスクトップサービスのWorkSpacesなどが含まれる。

その製品ミックスに、ビジネス向けのコラボレーション・プロダクトやカンファレンス・プロダクトを新たに加えることは自然な流れだと言えるだろう。Bibaが現在提供している機能には、ビデオ/音声カンファレンス、スケジュール管理、連絡先管理、メッセージング、スクリーン・シェアリング、ITマネージャー向けの運営管理機能などがある。

3258735

過去には、はたしてAmazonはエンタープライズ向けソフトウェアのビジネスを拡大していくのかという議論もあったが、この件が本当であれば、その可能性も出てくる。この買収によってAmazonは、AWSの競合サービスであるAzure、そして幅広い種類のエンタープライズ向けプロダクトを抱えるMicrosoftに対する競争力を高めることができそうだ。Microsoftは先日、同社のカンファレンス・プロダクトであるSkypeのアップデートを行い、同アプリは以前よりビジネス・フレンドリーなものとなっている。

AmazonがどのようなサービスをAWSに加えるにしろ、それは既存サービスを共食いするのではなく、補完するようなサービスとなるだろう。すでにAmazonは、AWSでサードパーティーのソフトウェア・プロバイダー向けの大規模なマーケットプレイスを運営している。同社の消費者向けマーケットプレイスのエンタープライズ版とも呼べるサービスだ。

Bibaのテクロジーが活躍しそうな分野は他にもある。すでに述べたように、AmazonはJunstin Acquisitionという企業体を通して今回の買収を実施している。これに関してGeekWireは、同じくAmazonがすでに買収したビデオ・プラットフォームのTwitchと今回の買収には何らかの関連があるのではないかと推測している(Twitchの創業者は同じくビデオサービスのJustin.tvを創業した人物でもある。Twitchのビジネスにフォーカスするため、Justin.tvはすでに閉鎖されている)。

現在4500万人いるTwitchユーザーの多くは、自分のゲームプレイ姿を生中継したり、他のプレイヤーのプレイを観たり、それにコメントをしたりするゲーマーたちだ。だが、Twitchは「食」「アート」などの他の分野への拡大にも取り組んでいる。AmazonがBibaの機能をTwitchに組み込むことで、またはTwitchの機能をBibaに組み込むことで、Twitchにインタラクティブな要素を加え、同サービスをよりB2B向けのプラットフォームへと進化させることができる。

そして最後に、AmazonがBibaを社内用のプラットフォームとして利用する可能性もある。

Amazonの求人を見渡してみても、Bibaの名前に触れているものは1つしかなかった。AWSの顧客サポート部門であるAWS Supportのトレーニングを専門とする、トレーニング・スペシャリストの求人広告を見ると、応募要項のなかには過去にAdobe Connect、Webex、そしてBibaを利用したことがあるという項目がある。Amazonはまず、Bibaのプラットフォームを自社内のサポート・プラットフォームとして利用する可能性がある。そして、その後にAWS上のサービスとしてリリースすることも考えられるだろう。

CrunchBaseによれば、Bibaのこれまでの調達金額の合計は約1500万ドルで、主要投資家にはBenchmark、Trinity、InterWestPartnersなどがいる。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

AWSはVMwareとのパートナーシップでさらにリッチになる、ハイブリッドに本格進出

2016-10-13_1334

VMwareは今年これまでに、MicrosoftGoogleIBMなどとパートナーして、ハイブリッドクラウド路線を強化してきたが、しかしなんと言っても、最大の話題になったのは、今週結ばれたAWSとのパートナーシップだ。

クラウドインフラストラクチャ(IaaS)の市場は現在、AWSのシェアが約1/3、残りがその他、という構造だ。Microsoftが約10%で次位につけている。上述のように、VMwareはメジャーな選手たちの多くと契約を交わしてきたが、AWSとの提携はクラウド市場でAWSがさらに力をつけることになる、という意味でも重要だ。

これまでのSE/ITベンダの多くが、MicrosoftやIBMと組んでハイブリッド方式を推進してきた。それは、大企業はレガシーのハードウェアやソフトウェアを多く抱えているから、外部クラウドへの完全な移行は無理、という理屈からだ。彼らの顧客ベースの現状を見るかぎり、それも当然と言える。

一方AWSは、未来はクラウドにあると主張し、顧客の選り好みはしないけれど、クラウドへ移行する企業や、最初からクラウドの企業を重視してきた。AWSはこのような、クラウド(パブリッククラウド)優先の姿勢を貫いて、今年は115億ドルの売上を達成した

しかしVMwareは、大手ITベンダーたちとの戦略的パートナーシップを重ねつつも、クラウド市場では苦戦していた。VMwareは、ほとんどすべてのデータセンターで使われていることを、誇りにしている。サーバーの仮想化といえば、今も今後もVMwareだ。しかしそれは、データセンターが主役の世界でうまくいっても、世界は今急速に変わりつつある。

VMwareがやってきたのは、単一のサーバーを複数の仮想マシンに分割して、リソースの利用効率を大幅に上げることだった。サーバーが高価だった2000年代の初期には、効率化が絶対的な目標であるITにとって、VMwareはとてもグレートな技術だった。

そんな状況を、クラウドは完全に変えた。仮想マシンはクラウド上にあるので、ユーザー企業はつねに、必要最小限のリソースだけを使えばよい。費用も単純に、使用するリソースの量に比例する。計算機資源を必要に応じて柔軟に増減できるこの方式は、データセンターモデルとVMwareが持っていたアドバンテージを、消し去った。

サーバー効率化の旗手だったVMwareの仮想マシンは、ハードウェアの量や性能によって増設に限界がある。しかもハードウェアとしてのサーバーは、簡単には増設できない。どの企業にも厳しい調達手順があるから、買って設置して動くようになるまで、数週間とか数か月かかる。しかしクラウドなら、必要になったその日に仮想マシンの新しいインスタンスを立ち上げられる。しかも、多くの場合、自動的に。

実際にはVMwareは、2010年ごろにクラウドを試行したことがある。その初期的なPaaSの試行はVMforceと呼ばれ、Salesforceが使う予定だった。そのころ同社は、パートナーシップにも色気を示し、Googleと組むことによって、新興勢力のMicrosoft Azureに対抗しようとした

同社は2013年にもハイブリッドクラウドをトライし、vCloud Hybrid Serviceというものを立ち上げた。オープンソースのプライベートクラウドプラットホームCloudFoundryも最初は同社が立ち上げ、その後Pivotalに移籍した。PivotalはEMC, VMwareおよびGEから2012年にスピンアウトした企業だ

しかし、AWS, Google, MicrosoftそしてIBMとの競合の中では、これらの試みはどれも成功せず、VMwareは群れを抜け出すことができなかった。そして、今日に行き着く。同社はハイブリッドモデルに新しいやり方で再び挑戦し、かつてのコンペティターたちと今や必死でパートナーしようとしている。

AWSとのパートナーシップがこれまでのパートナーシップと違うのは、AWSが市場のトップ企業であり、何度も失敗してきたVMwareのクラウドビジネスを、そしておそらくVMwareのビジネスの全体を、救出できることだ。

AWSとしては、これまで同社では影が薄かったハイブリッドクラウドに本格的に手を出せる。そうなるとMicrosoftやIBMの主力市場にも接近でき、マーケットシェアをさらに伸ばせるかもしれない。

人びとが騒ぐのは、これがVMwareにとってずば抜けて大きなパートナーシップであり、そしてAWSにとっては、そう、お金持ちがさらにお金持ちになれる路線だからだ。競合他社は、自分たちのテリトリーにAWSが侵入してきたと感じて、かなりナーバスになっているだろう。しかもよく見ると、その馬にはVMwareも乗っているではないか!

vmw

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))