Curativeは画期的な新型コロナ検査方法で米食品医薬品局の認可を取得

診断法のスタートアップであるCurative(キュラティブ)は、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染を診断する画期的な検査方法について、米食品医薬品局(FDA)から非常事態時に限った使用認可を取得した。

同社によると、この検査方法は3月末からすでにロサンゼルス市に導入されており、5万3000人の住民が検査を受けているとのことだ。

Curativeの検査では、被験者に咳をしてもらい痰を採取することで、肺の奥のウイルスが検出できるのだと広報担当者は話している。

FDA最高科学責任者Denise Hinton(ダニース・ヒントン)氏がデジタル署名した書簡では、Curativeの検査が以下のように解説されている。

この製品の使用にあたっては、最初に口腔咽頭(喉の)スワブ、鼻咽頭スワブ、鼻腔スワブ、および口腔液検体よりSARS-CoV-2核酸を抽出し分離、純化する。次に、純化した核酸をcDNAに逆転写した後に、PCRによる増幅および認可されたリアルタイム(RT)PCR装置を用いた検出を行う。このCurative-Korva SARS-Cov-2検査は、EUA(緊急使用時許可)の要請により提出された認可手順に解説されているとおり、衛生研究所で一般的に使われているすべての市販マテリアル、またはその他の認可されたマテリアルおよび認可された補助的試薬が使用できる。

dot.LAで最初に紹介されたCurativeは、カリフォルニア大学ロサンゼルス校と提携する医療研究施設KorvaLabs(コーバラブズ)と共同で検査処理を行っている。

この検査方法は、米国での検査数に歯止めをかけているサプライチェーン不足の回避を目指している。現在米国では、検査キットに必要な重要部品の調達が世界的な新型コロナウイルスのパンデミックの影響で調達困難に陥っているため、検査キット不足が続いていると同社は話す。

Curativeは、検体採取と抽出キットの部品の多くを代替する製品の生産に取り組んでいる。それを同社は、磁気シリカビーズを使用しない大規模なRNA抽出方法と呼んでいる。

同社は、もともと敗血症のための画期的な検査方法の開発を目指して2020年1月に創設されたのだが、新型コロナウイルスが世界中に蔓延するようになり、その検査に方向を切り替えた。

「私たちの目標は、新型コロナウイルス検査キットの直交的なサプライチェーンを構築することです。それにより、公共衛生と米疾病対策センターの足かせとなり生産拡大を阻んでいる材料を買わずに済むようになります」と、同社はウェブサイトで述べている。「私たちはまた必要な試薬を提供することで、医療研究所の稼働率向上を目指す事業にも協力しています」。

Curativeは、同社の検査方法は2つの点で優れていると話す。その検体採取法は、医療従事者を危険にさらすことが少ないため個人用保護具の必要量を少なくできる点、そして、代替サプライチェーンを使うことで、素早く検査を拡大できる点だ。

同社は既に1日におよそ5000件の検査を可能にしており、1日に2万個のキットを生産している。検査結果は31時間ほどで届けられる。

「多くの人が検査できる体制は、我が国の新型コロナウイルス対策には欠かせません。認可を得たことで、私たちはさらに生産量を増やし、全国に私たちの検査キットを届けます」と、Curative Inc.の創設者でありCEOのFred Turner(フレッド・ターナー)氏は話す。「私たちは、ロサンゼルス市とロングビーチ市と共同で、数千の人々がドライブスルー施設で検査が受けられるようにしましたが、この検査をさらに全国の大勢の人々にも拡大できるよう、既に万全の態勢を整えています。同時にこの検査キットを使った自宅での検体採取を許可するよう、私たちはFDAとの協議を続けています。認可が得られれば、さらに検査数を増やせます」。

新たに認可されたことで、同社は全国のさらに多くの販売業者と事業を広げることが可能になる。

Curativeの検査は既にロサンゼルスとロングビーチで導入され、ロサンゼルス郡、ロサンゼルス郡消防局、ロサンゼルス郡保安局によって組織的に実施されている。検査キットは消費者に直接販売されるものではなく、医師による注文が必要だと同社は話している。

ベンチャー投資企業のDCVCの支援を受けているCurativeだが、DCVCが有限責任社員に、望むならCurativeの検査キットが手に入ることを示唆する手紙を出したことで、早くも物議をかもした。

DCVCの手紙には以下のように書かれていた。

新型コロナウイルスの症状があり、すぐに検査を受けられない場合は、速やかにお知らせください。我々のポートフォリオに含まれているある企業との特別な関係を通じて、検査キット(簡単で早くて安全な唾液または痰のスワブによるテスト)の送付を手配します。検査結果は1〜3日で郵送されます。

これに続くブログ記事で、DCVCの共同経営者たちはその主旨を以下のように説明した。

州境をまたぐ遠隔治療を可能にする規制変更に伴い、DCVCのすべての知人のみなさんに、Carbon (Health)の優れた医療ケアと完全な検査方法のことを知っていただきたいと考えたのです。そしてもちろん、それには私たちのL.P.で働く方々も含まれます。彼らも我々同様、この厳しい時期に際し、自分自身や家族に対して難しい決断を下しています。

Carbonは素早く患者に優しい電子患者研修により今のペースを保っていますが、Curativeの検査能力が加わったことで、今後10日間で1日あたりの検査数が1万件に拡大される見通しです。この医療戦力の合体が、すべての人への医療を、まさに「手配する」のです。

私たちの表現が傲慢に聞こえたでしょうか? それについて言い訳はしません。誤解された方がいれば、とても残念に思います。誰であれ「割り込み」は許されません。私たちは、友人のみなさんと私たちのコミュニティーに、いつでも質の高い医療を受けることができ、しかも私たちのポートフォリオにある最先端技術を活用できることをお伝えしようと努めているのです。

新型コロナウイルスのアウトブレイクに対処する上で、正確な検査が最重要であることに変わりはないが、数多くのスタートアップ企業が革新的な診断方式の開発に取り組んでいる。

ハーバード大学免疫学者William Hanage(ウィリアム・ヘイネージ)氏は、Business Insiderに「社会で実際に何が起きているのかを正確に知ることが、このパンデミックに対処する上での重要な鍵になります」と話している。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナ治療開発にも取り組む細胞・遺伝子治療のElevateBioが約183億円調達

見通せない経済状況、そして世界中で新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、今は資金調達を行うベストな環境ではないが、一部の企業は巨額調達のクローズを発表している。その一例が、ケンブリッジ拠点のElevateBio(エレベートバイオ)だ。同社は30日、1億7000万ドル(約183億円)のシリーズBを発表した。このラウンドには新規投資家としてThe Invus Group、Surveyor Capital、EDBI、Vertex Venturesが、既存投資家としてF2 Ventures、MPM Capital、EcoR1 Capital、Redmile Group、Samsara BioCapitalが参加した。

ElevateBioは1年弱前に一般向けのサービスを正式に立ち上げた。同社は新しいタイプの細胞・遺伝子治療開発を専門としており、開発と製造それぞれを専門とする新会社を立ち上げて運営している。今回のラウンドで、ElevateBioがこれまでに調達した額は3億ドル(約323億円)超となった。同社は2019年、スイス投資銀行UBSのOncology Impact Fundがリードした1億5000万ドル(約162億円)のシリーズAラウンドを発表した。

ElevateBioは動きを加速させている。R&Dにフォーカスするためにマサチューセッツ州に建設中の広さ14万平方フィート(約1万3000平方メートル)の施設は完成間近だ。同社はまた、特に幹細胞移植に伴うウイルス抑制のためのT細胞免疫治療に取り組むAlloVirという会社も立ち上げた。この治療は臨床試験の後期段階にある。そしてElevateBioはHighPassBioという会社も立ち上げた。HighPassBioもまたT細胞治療を使って幹細胞関連の病気の治療をサポートすることを目的としている。こちらは移植後の白血病再発に主眼を置いている。

ご予想の通り、ElevateBioはCOVID-19の影響を抑制するための取り組みも行っている。特にAlloVirは、免疫システムが脆弱になりCOVID-19によってリスクが高まっている状態の患者を救うのに役立つ一種のT細胞治療の開発に取り組むために 、ベイラー医科大学との既存の研究提携を拡大させている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:Mizoguchi

15分で終わる新型コロナ家庭用テストをScanwellが開発、FDAの承認待ち

スマートフォンベースでの尿路感染症テストを手掛ける在宅診断スタートアップのScanwellが、新型コロナウイルスの家庭用テストを米国民に提供するべく取り組んでいる。中国の診断テクノロジー企業INNOVITAが開発したこの技術は、FDA(米食品医薬品局)に相当する中国政府の当局にすでに承認され、中国では「何百万」という人が使用している。このテストは家庭で行うことが可能で、遠隔からの医療専門家によるガイダンスに従いながら15分で終わり、結果は数時間で判明する。

ScanwellのテストはFDAの承認が必要だが、FDAの緊急認証プログラムを通じてすでに現在承認を得る過程にあるという。FDAのガイダンスでは承認プロセスには6〜8週間かかるとされている(もっと早くなることもある、とScanwellは話している)。そして現在、Scanwellは承認され次第すぐにテストを出荷できるよう、準備を進めている。FDAが緊急認証プログラムでこれまでに承認したのはPCRテストのみだが、今週初めに血清テストも含めるようガイダンスをアップデートした。Scanwellは「FDAの承認を得るのに何ら心配はしていない」とさえ話す。

Scanwellがローンチしようとしているテストは、患者の血液の中の抗体を探すという、いわゆる「血清学的な」テクニックを使っている。これらの抗体はSARS-CoV-2ウイルスにさらされたときにだけ出現する。現段階では、これらのウイルスに対する自然抗体がウイルスにさらされることなく存在するという証拠は見つかっていない。それとは対照的に、現在米国で使用されているタイプのテストである「PCR」は、ウイルスが粘液サンプルの中に遺伝子として存在するかどうかを確かめる分子ベースのアプローチをとっている。

PCRタイプのテストは、血清学的なものよりも専門学的にはより正確だ。しかし血清学バージョンははるかに扱いが容易で、より早く結果を得られる。また、全体的にはかなり正確で、PCRバージョンよりずいぶん低コストで生産できる。加えて、症状が出ている最もシビアなケースだけに限定せずに検査できるようになるかもしれず、すでに自宅で回復している症状がマイルドな人、無症状だがウイルスを持っていて他人にうつす可能性のある人を含め、ウイルスの存在を見つけ出すのに大きく貢献する。

月曜日からEverlywellが展開する予定のもののように、PCRベースの家庭用テストはすでに存在しているが、これらはテストサンプルの回収が必要で、時間もかかる。また、複雑でコストもかかり、世界的に現在不足している綿棒などの材料を必要とする。

テストが利用できるようになれば、人々はScanwellのScanwell Healthアプリにあるスクリーニングプロセスで申し込みができ、テストは翌日配送で届けれられる。検査を受ける人にはLemonaidの医師や看護師が遠隔から案内し、結果やその後のガイダンスはアプリ経由で数時間以内に示される。このテストは70ドル(約7800円)で、純粋にコストのみの費用とのことだ(Scanwellはまた、必要な人への無料サービスを提供する方法も模索している)。この検査はまずはワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州と新型コロナウイルス感染状況が深刻な他のエリアで展開される見込みだ。

テストがマーケットに出てくるまでに6〜8週間かかるとのことだ。しかし現在のCOVID-19の急速な広がりやテスト状況を考えたときに、6〜8週間というのは長いが、おそらくその頃にはこのテストがかなり必要とされているだろう。特に現在行われている他のテストを受けるための条件を満たしていない人のニーズに応えるものになる。

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(翻訳:Mizoguchi

有機廃棄物をバイオプラスチックに変えるVEnvirotechが大規模なパイロットへ

非上場企業VEnvirotechで1年間さまざまな環境技術をテストしてきた共同創業者のPatricia Ayma(パトリシア・アイマ)氏が、バクテリアを使ってバイオプラスチックを作る工程を開発した。そのシステムは生ゴミや食品廃棄物などの有機物を、生物分解性のある使い捨てのプラスチックとして使える製品に変える。「世の中に訴えるのはおこがましいほど単純な技術だけど、みんなの役に立つ」と彼女は語る。

彼女のバイオテックスタートアップは、バルセロナ近郊のBonAreaスーパーマーケットのプラントでパイロット事業を開始した。そこで彼らは、将来の見込み客である企業と一緒に、その技術の大規模なテストをすることができた。Aymaは、そのイノベーションが2つの業界に売り込めると想定している。ひとつは、有機廃棄物の生産者で、彼らは廃棄物管理の費用を少なくしたいと考えている。そしてもうひとつは、自然に分解するバイオプラスチックをさまざまな用途に使いたいと思っている企業だ。

彼女のチームは最近、200万ユーロ(2億4000万円)あまりの資金調達ラウンドを完了した。それにより同社は3000平米のプラントを作ってVE-boxの生産を開始できる。それはポータブルな廃棄物管理容器で、その中で有機廃棄物が生物分解性のプラスチックに変わる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

農作物への化学物質の影響を低減するバイオ農薬開発のTerrameraが48億円超を調達

農業から化学物質の使用を減らすためにバイオ農薬(生物由来の農薬)や種子処理剤を開発・販売しているカナダのTerramera(テラメラ)がこのほど、4500万ドル(約48億円)の資金を調達した。

この投資ラウンドをリードしたのは戦略的投資家Ospraie Ag Science(オスプライAgサイエンス)、Terrameraのこれまでの投資家であるSeed2Growth Venturesだ。

モンサントの役員だったCarl Casale(カール・カサーレ)氏が率いるOspraie Ag Scienceは、生物農薬や有機農法のための製品のメーカー企業を支援している。Terrameraのほかには、Marrone BioInnovations(マッローネ・バイオイノベーションズ)やAgrospheres(アグロスフェレス)なども同社の支援企業だ。

バンクーバーに本社を置くTerrameraは最初、植物のニーム(Neem、インドセンダン)を使用する農薬を大手スーパーマーケットのTargetなど北米の小売企業で売って注目を浴びた。その製品は、トコジラミやダニなど家庭の害虫やカビがターゲットだ。

同社は今、新製品のActigate(アクティゲート)に注力している。そして今回の資金で研究開発と営業マーケティングの能力を上げたいとしている。

同社の創業者でCEOのKarn Manhas(カーン・マンハス)は声明で「弊社は、世界中の農業における合成化学物質の使用量を、Actigateによって2030年までに80%減らしたいと考えている」と述べている。

同社によるとActigateは、生物農薬と従来からの化学農薬の両方の効果を上げるので農業における化学物質の使用を減らせるという。

Ospraie Agのカサーレ氏は「TerrameraのActigateプラットホームはパラダイムシフトを起こし、生物的殺虫剤の効果を上げて化学製剤に対する競争力を高める。その新しい価値を作り出す機会はとても大きく、またコストと無駄と環境被害を減らしながら従来的なやり方に大きなインパクトを与える」と語る。

この投資の数カ月前にTerrameraは、種子処理剤の技術で多くの特許を持つExosect(エグゾセクト)を買収した

Exosectのパテントポートフォリオには、有機的および化学的な種子処理剤のデリバリを改善するための合成物質が多く含まれており、これがTerrameraの技術開発に大きく進歩させるものと思われる。

買収時にマンハス氏は「この知財を獲得したことによって新たな機会が開け、Terrameraの特許であるActigateの目標性能技術(Targeted Performance technology、特定の害虫だけにしか害を与えないこと)が補完される。その知財ポートフォリオは、安全でより効果的な植物保護製品の開発力を高め、世界の誰にでも入手可能で汚染のない食品を作るというわが社のビジョンを実現可能にする」と語る。

関連記事:Cooks Venture picks up $12 million to rethink agriculture from the ground up[再生可能農業の普及に取り組むCooks Venture、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

CRISPR-Cas9ゲノム編集でマウスのHIVウィルス除去に成功

AIDS撲滅の重要な突破口が開かれた。CRISPR-Cas9という技術を用いてマウスの細胞からHIVウィルスを除去する方法を研究チームが発見した。

現在この致死性ウィルスに侵された患者は、毒性のある抗レトロウィルス混合薬を服用してウィルスの複製を抑制しなくてはならない。しかしCRISPR-Cas9は、体内のあらゆる遺伝子コードを切り離すようにプログラムすることが可能で、その精度は極めて高い。例えば、体内のHIV-1 DNAをすべて除去できる可能性を持っている。そして、もしこのDNAを切り離すことができれば、ウィルスが自身の複製を作ることを抑止できる。


論文誌,Molecular Therapyで初めて発表したこの研究チームは、CRISPRを用いることでHIVを完全に消滅させられることを示した。しかもその効果は目覚ましい。わずか1回の治療によって、マウスの臓器及び組織から感染の痕跡をすべて取り除くことに成功した技法を紹介した。

ただしこれは永久的解決方法ではなく、研究チームにとって研究は初期段階にある ーー この研究は昨年実施した概念実証研究に基づいて行われたものに過ぎず、その技法はマウスでしか使用されたことがない。しかし、もし研究チームがこの発見を再現することができれば、将来の臨床実験につながる可能性がある。

「次の段階は、この研究を霊長類で再現することだ。潜伏感染しているT細胞や、脳細胞などのHIV-1聖域からHIV-1 DNAが除去されることをさらに示す上で、HIV感染によって疾患が誘発される霊長類はモデル動物として適している」と論文の共著者であるDr. Khaliliが声明で言った。「われわれの最終目標は人間の患者による臨床試験だ」。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Amazon CEO Jeff Bezosがまたバイオテク企業に投資、今度は新しいアンチエージング療法のスタートアップだ

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シリコンバレーでは必ず何年かに一度、不老不死や長寿を喧伝する者が現れる。その前に、そんなに長生きをして一体何をするのかを、考えておいた方がよい、と私は思うのだけど。今度登場したUnity Biotechnologyは、加齢に関連した症状の進行を遅くすることによって長寿を実現する、と主張するスタートアップだ。同社は今日(米国時間10/27)、シリーズBで1億1600万ドルという巨額を調達したことを発表した。投資家の中には、AmazonのJeff Bezosもいる。

体(からだ)が、細胞の老化を遅らせることがある。何かのストレスで、細胞が分裂を停止することがあり、それは、がん細胞の分裂と成長を停止することもあるから、抗癌治療にも利用できる、と考えられている。でもそんな細胞が多すぎると、加齢とともに別の問題が生じる。Unityが追究しているのは、炎症や、加齢と結びついているその他の疾病を起こす古い細胞を、体が積極的に捨てるようにするための方法だ。

Unityの技術には、体の老化を遅らせる可能性があり、科学や医療分野の上位投資家たちの関心を招(よ)んでいる。またバイオテクノロジー分野の非上場企業としては、相当巨額な資金を獲得した少数企業の、仲間入りをしている。

Bezosは、前にもバイオテクに投資している。それは2014年のJuno Therapeuticsだが、そのときは彼のVC Bezos Expeditionsからの投資だった。Junoはがんの免疫療法で画期的な発見をして、バイオテク企業としては数少ないIPO成功企業の一つになった。

バイオテク企業への投資案件の多いスコットランドのミューチュアルファンドBaillie Giffordのほか、Venrock, ARCH Venture Capital, Mayo Clinic, WuXi Pharmaceuticalsなどがこの投資ラウンドに参加した。

同社の発表によると、元KYTHERA BiopharmaceuticalsのCEO Keith Leonardが新たにCEOになり、これまでのCEOで協同ファウンダーのNathaniel “Ned” DavidはUnityの社長になる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

23andMe、次世代シークエンシング路線からは撤退

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23andMeは次世代シークエンンシングのサービスを継続せず、報道によればそのプロジェクト担当の人員を解雇したということだ。

約6人の社員が同社のユタ州ソルトレークに拠点を置く研究所から解雇されたとBuzzFeedが最初に報じている。LinkedInで我々独自に数えたところによると研究所の少なくとも5人のメンバーが解雇され、その中には2014年にプロジェクト・リーダーとして雇用され、同社の医務部長を務めていたJill Hagenkord博士が含まれる。

 

同社はその主力商品である、199ドルの遺伝マーカー・テストキットの販売は続ける予定だ。同キットを使えば健康状態と系統解析の情報が得られ、同社は世界中のより多様な人種の遺伝情報を積極的に収集、その質、量ともに拡充させる方針だと、同社の創業者であるAnne Wojcicki9月にTechCrunchに対し述べた。

しかしながら、DNA配列のより現代的な決定法で、一般に次世代シークエンンシングと呼ばれる技術に対しては、同社の主眼からは外れるようだ。

次世代シークエンンシングというのは、遺伝コードの細部に至るまでの詳細を調べるいくつもの方法に対して使われる、いわゆる総称だ。この新しいテクノロジーはこの数年間で価格が劇的に低下し、研究者は病気と思しき対象に対してより詳細な情報を得ることが出来るようになっている。結果として、Helix、Color Genomics、Genosといった企業がこの領域に参入し、この遺伝情報を詳細に調べるアプローチを使って、あなたをあなたたらしめているものは何かといった問いや、また自分の遺伝子関連で知りたいことに関しての答えを提供してくれる。

23andMeは2012年にそのテクノロジーに着目し、エクソーム・シークエンシングの予備的な研究を始めた。同社は当時、研究の成功とともに、「全ゲノム配列決定のコストが低下し、それが皆の手の届く選択肢となった時に備える」と述べた。<

TechCrunchは23andMeに対し、なぜその方向性を取りやめることにしたかについて問い合わせたが、それについての回答は今の所、得られていない。しかしながら、同社創業者のAnne WojcickiはBuzzFeedに対して、今回の件はサービスに対する需要の低下、金銭的要因や規制といったこととは一切関係ないと語った。代わりに、彼女によれば、「我々は現在手一杯」であり、それは恐らく現在扱うには少し複雑すぎるだけ、ということのようだ。

「シークエンシングに関しては多くの時間を費やしましたが、それに関しての理解が進めば進むほど私たちはその複雑さも理解したため、取り敢えず今は中心となる事業に集中すると判断するに至ったのです」と、彼女はBuzzFeedに語った。

この件に関して何か進展があれば続報をお届けする。

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(翻訳:Tsubouchi)

九州大学の研究グループがマウスの皮膚細胞からマウスの赤ちゃんを作った

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【抄訳】
日本の九州大学の研究グループが、マウスの皮膚の細胞を、卵細胞を使わずに、赤ちゃんマウスにすることに成功した

その技術は、卵子に精子を受精させる通常の方法ではなく、発生に必要な染色体ペアにより細胞を成長させる方法を使っている。

このような方法の成功はこれが初めてであり、今回も、それほどたくさんのマウスの細胞で‘誕生’が見られたわけではない。Natureに発表された論文には、そう書かれている。

今は話がマウスで済んでいるが、今後はたとえば、年齢的に卵子を生産できない女性が、この技術で自分の“生物学的な”子を作ることも考えられる。ドナーの卵子がなくても、二人の男性が自分たちの子を作ることもできるだろう。

この研究は、2007年のノーベル賞受賞者Shinya Yamanaka(山中伸弥)の、幹細胞に関する研究がベースだ。Yamanakaは、大人の皮膚細胞から多能性幹細胞を作れることを示した。多能性とは、体内で使われているそのほかのどんなタイプの細胞でも作れる、という意味だ。それは、人間の受精卵を破壊しなくてもパーキンソン病などの治療や研究に必要な幹細胞を作り出せるという意味で、画期的な発見だった。

多能性細胞は文字通り多能だから、性を担う細胞も作れるだろう。それを2012年に、当時京都大学にいたKatsuhiko Hayashi(林克彦)が試みた(2014年から九大)。しかしそれは、きわめて困難な研究で、今でもまだ研究者たちは、卵子や精子に似たようなものは作れても、それらが実際に胎児へと発生したことはない。

やがて彼らは、マウスの皮膚細胞から成熟した卵細胞を作れることを発見した。それには条件があり、その皮膚細胞は、マウスの胎児の卵巣または精巣から取られた細胞に包まれて(収容されて)いなければならない。この操作により幹細胞を卵巣や精巣らしきものへと形成できるが、この実験ないし実証を人間の胎児の細胞と人間の皮膚の細胞で行うことは、規制や反対意見のため、現段階では困難である。

そこでHayashiによると彼は現在、胎児の細胞に代わるものとして、何らかの人工的な試材の利用を検討している。

しかし、法律等の規制があるかぎり、この方法でも、簡単に人間を作り出すことはできない。日本の法律は、人工的にないし加工によって作った人間の細胞を受精させることを、研究目的であっても、禁じている。

【中略】

しかし、研究や実験のプロセスそのものも、まだきわめて初期的段階である。この日本の研究では、マウスの皮膚細胞を上記のように加工した胚からの発生成功率がわずか3.5%だった。対して、今日の一般的な体外受精の成功率はほぼ30%、(受精卵の)体外培養の成功率はほぼ40%である。

【後略】

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

遺伝子組み換え作物ではない遺伝子“編集”作物は農務省が規制しないので将来性あり

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遺伝子組み換え作物(GMO)は今、遺伝子編集という新しい技術のおかげで、変わろうとしている。

その最新の例は、CRISPR(クリスパー)を利用して遺伝子を編集した白いボタンマシュルームだ。‘編集’とはこの場合、生物のDNAのパーツを切って並べ替えることだ。

合衆国農務省によると、そのマシュルームは、別の、有害かもしれない、バクテリアのDNAを使っているGMO植物のような危険性がないと思われるので、規制の対象としない。

ペンシルヴェニア州立大学の植物病理学者Yinong Yang博士は、マシュルームのDNAを変えて、酸素に触れても褐変しないようにした。そのコード中の二つの文字を入れ替えただけで、キノコは褐変しにくくなった。

しかし昨年10月に初めて組み換え種を作ったときには、その、遺伝子を変えたマシュルームが農務省の認可を必要とするのではないか、とYang博士は危惧した。

農務省の動植物健康検査サービス(Animal and Plant Health Inspection Service, APHIS)は、アメリカの農業環境を問題のある植物から守る機関で、検査の対象には、バクテリアやウィルスからのドナーDNAを使って植物の病虫害耐性を強化した作物も含まれる。

しかしCRISPRには、従来のGMOにない抜け穴がある。Yang博士はマシュルームに他の生物のDNAをいっさい加えていない。むしろその小変化は、マシュルーム自身の遺伝子で起きている。

CRISPRはかなり新しい技術だが、バイオテクノロジーの分野に新しい生命(いのち)を与え、明らかに規制をめぐる疑問を喚起している。USDAは、自分のDNAを改変した作物を問題視するのだろうか?

過去5年間で30件の、何らかの形で遺伝子編集技術が関わった作物が登場したが、マシュルームはその一つにすぎない。しかしこれまでのところ、答はノーである。

APHISはペンシルヴェニア州立大学宛の4月13日付けの書簡で、マシュルームは確実に規制検討の対象外だ、と確認した。

USDAは次のように声明している: “APHISにはCRISPR/Cas9ホワイトボタンマシュルームが有害植物であると信ずべき理由がない。したがって、同様の質問状に対する前回の応答と同じく、APHISはCRISPR/Cas9により編集されたホワイトボタンマシュルームが、2015年10月30日の貴書簡に記述されているように、連邦規則集第340部により規制されるべきとは見なさない”。

Yang博士は今、彼のマシュルームの企業化の可能性を、思いめぐらしている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Bento Labは、個人で遺伝子分析ができるDIYキット

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自分が「アスリート遺伝子」を持っているか、あるいは、親戚だと名乗る変人と本当に血が繋がっているかを知りたいだろうか。市民科学者諸君、試験管を準備されたし! Bento LabのDIY DNA分析キットを使えば、自宅が実験室になる。

通常は、23andMe等にキットを注文し、試験管に唾を吐いて郵送すると6~8週間で結果が返ってくる。しかし、ロンドン拠点のBento Labは、どこでもテストができる世界初のDIY DNAラボを謳っている。バックパックに入る大きさで、唾液、毛髪、動物細胞組織、さらにはビールやワインからでもDNAを分析できる。

やり方はこうだ:

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試料物質を採取したら、DNA抽出装置の中心にある遠心分離機に入れる。次に右側にあるPCR装置が遺伝子をコピーして、ゲルユニットでDNAを視覚化する。

通常この種の作業に必要な装置は非常に高価で、DNAの専門家が様々な機械を操作する必要があるが、Bento Labの価格はおよそパソコン1台分の739ドルだ ― 外部に委託すれば何十万ドルも費用がかかる、様々な製品のテストにも手が届くようになる。

現在Bento LabsはKickstarterで、22日を残して目標額の2倍以上を集めている。チームは、英国王立工学アカデミー、Makerversity、Imperial College SynbiCITE、およびUCL Advancesの支援を受けている。

セットには、Bento Labキットの他にピペット、試薬、採取用綿棒、操作説明書が付属しており、ネット上のコミュニティーもある。Bento labは、市民科学者たちをつないで、研究や発見を共有できるアプリを開発していると話した。

Bento Labで行う実験がいくつか提案されている。

  • ハンバーガーに馬肉が含まれているかどうかをテストする
  • 遺伝子操作された生命体(GMO)を識別する
  • 自分の味蕾が苦味を感じるかどうかをPTC遺伝子ACTN3の変異から調べる
  • 耐久力を持って生まれてきたかどうかを知るために、「アスリート」遺伝子ACTN3の変異を調べる
  • 血液型遺伝子分類のしくみを調べる
  • 有毒キノコと無毒キノコを識別する
  • 自家製ビールの遺伝子コードを識別する

この個人用ラボは既に世界中でベータテストが行われている。下のビデオでこのクールなDIY遺伝子ラボについてもっと知ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

1000ドル以下で、あなたの全ゲノム配列をスマートフォンで見られる

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Veritas Geneticsは、2015年にヒトの全ゲノム配列を1000ドル以下で解析する会社の一つとなった。このたび同社はそれを一歩進め、ゲノムの解析結果をスマートフォンアプリに配信する。

これがどれほど進歩的かといえば、2001年に初めて人間の全ゲノム配列を決定した時には37億ドルを要したことを考えてほしい。2007年になって初の商用ゲノム解析が、はるかに少ない金額で利用できるようになったが、価格は35万ドルだった。

ヒトの全ゲノム配列を1000ドル以下で、というのは科学コミュニティーの間で一種のキャッチフレーズになっていた。殆どの消費者向けDNA会社は、遺伝子パネルを使って未だにDNA内の一部の配列しか提供していない。例えば、23andMeを使えば、遺伝子パネルから約60種類のテスト結果を得ることができる。

mygenome-03-main-picしかしVeritasによると、myGenomeは999ドルで、全配列データをスマートフォンに届けることができる。料金には、テスト結果に加えて、それが健康に与える影響を解折するためのカウンセリングも含まれている。

乳がんやパーキンソン病の遺伝性素因を持つ人は、結果を見て対策のための行動を起こすことが可能た。例えば、アンジェリーナ・ジョリーは、母親と同じ乳がん遺伝子BRCA-1を持っていることを知り、発症する前に両乳房を全摘した。

ハーバード大学の遺伝子の先駆者、George Churchがこの会社を共同設立し、昨年ハーバード医学校のパーソナル・ゲノム・プロジェクト(PGP)で、協力者5000人に初めて全ゲノム配列を提供した。

Churchは、この価格設定と利用しやすさが、ゲノム配列の新たな標準を作ると信じている。「今や全ゲノムはこれほど身近になり、あらゆる遺伝子検査に取って代わる…なぜなら、このすべてが遺伝子テストであり、さらにまだまだ多くのことに利用できるからだ」とChurchは言った。

これまでの進歩で儲けようとしている一部の会社にとっては問題となるかもしれない。過去に遺伝子業界は、健康状態に関する検査結果を提供したことで政府とトラブルになった。中でも最大だったのが23andMeで、業務を中断し、特定の健康状態に関する結果を提供するために、数年かけてFDAの認可を取得しなくてはならなかった。

Veritasは、検査をCLIA(臨床検査改善修正法案)認定施設で行い、ゲノム配列を決定する前に医師の指示を必要としているため、その点は問題ないだろうがそれでも、どんな問題が起きるかわからない。

人間の遺伝子を修正することは未だにできないが(少なくとも米国内で合法的には)が、行く末は想像できる。自分のDNAの解析結果を低価格で利用できるようになれば、世間からの要求が高まり、遺伝子工学医療を阻止している法律を変えるかもしれない。

これが映画『ガタカ』の暗黒的シナリオにつながると考える人もいるだろうが、この種の技術がもたらすものによって救われる命、改善される生活に私は期待している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

犀角を人工合成したPembientの協同ファウンダGeorge Bonaciが動物の器官の3Dプリントについて語る

動物の遺伝学的に本物と同一の器官を作るPembientは、本誌が取り上げて以降、人気と話題が爆発した。ファウンダのところには次々とリクエストやツイートが殺到し、先月のローンチ以降しばらくは、Redditのいくつかのスレッドでトップの話題だった。

人気の源泉は、野生動物の不法交易をやめさせようとする同社の高邁な目標にあった。数種類の犀が絶滅の危機に瀕しているが、それは角(つの)に治療効果があると信ずる人たちからのお金儲けをねらった密猟に原因がある。密猟された犀は、角だけを取られて、死体は放置される。

Pembientは3Dプリントと遺伝子配列技術を利用して、犀角や象牙など、絶滅危惧動物の器官を短時間で合成し、一般市場で安く売ろうとしている

同社は動物の器官を人工合成するだけでなく、最近では非営利団体New Harvestと、ワシントン大学のInstitute for Stem Cell and Regenerative Medicine(ISCRM)とパートナーして、Experiment.comで黒犀の全遺伝子配列を求めるための、クラウドファンディングキャンペーンを開始した。

西部黒犀は今では公式に絶滅しており、世界に残る黒犀の個体数はわずかに5000頭あまり、と言われている。遺伝子配列事業によって、将来、種が復活するかもしれない。

キャンペーンは締め切りが迫っているが、まだ目標額までは5000ドルあまり足りない。志(こころざし)のある方は、ぜひこちらで寄付を。

Pembientは全体として本当にクリエイティブな仕事を成し遂げ、バイオテクの分野と、それを超えた世界に、強い感銘を与えた。協同ファウンダGeorge BonaciのラボはSOS Venturesの次世代バイオテクアクセラレータIndieBioの中にあり、私は最近そこで彼にも会うことができた。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

シリコンバレーに初のバイオテク専門アクセラレータIndieBioが誕生

シリコンバレーは、掌(てのひら)に収まるコンピュータや、一回の充電で何百マイルも走れる電気自動車や、地球の全周に配置して世界の誰もがインターネットにアクセスできる極小衛星を作る人たちを育ててきた。

これらのビッグアイデアの仲間に、今、バイオテクノロジが加わりつつある。それは安価なロボット技術と、機械学習と、シリコンバレーのイノベーターたちのおかげだ。2014年の合衆国における生命科学への投資額は40億ドル近くに達し、スタートアップの数も急増している。

IndieBioは、そんな動きの一環として、登場すべくして登場したバイオテク専門のアクセラレータだ。ここが注力するのはコンピュータでもネットワーキングでもなく、3Dプリントでつくる動物の器官や、必須酵素を作る腸内細菌、イースト菌から作る人工皮膚などだ。

SOS Venturesが支えるIndiebioは、同社の育成事業に参加するスタートアップに25万ドルの資金と実験用施設、そしてメンターを提供する。メンターには、23andMeの協同ファウンダLinda AveyやHuman Genome Projectの創始者George Churchなどが顔を揃えている。

同社の初の取材ビデオをご覧いただき、そして彼らの今後に期待しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa