MITが「さわれる」ビデオを作った

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厳密に言うと、ビデオは対話型メディアではない。しかしMITの新たな研究プロジェクトはそれを変えようとしている。同大学のCSAILラボが開発した技法を使うと、視聴者はビデオに映った物に「触れ」て、まるで現実世界で物に触れているかのように直接動かしたり影響を与えたりできるようになる。

つまりこの技術を使うと、誰かがギターを弾いているYouTubeビデオでフレットを拡大表示して弦をマウスでドラッグすれば、実際に弦をはじいたような音がするという意味だ。あるいは、古い橋に人工の風やトラックの振動等のバーチャルストレスを与えて、負荷テストを行うこともできる。

このCSAILの新しいモデルでは、通常のカメラで撮影したビデオをチームが開発したアルゴリズムで解析し、個々の物体の振動を分析する。最短5秒間のビデオからでも解析が可能で、他の動作に対してどう反応するかを予測して現実的な予測モデルを作ることができる。


通常この種の効果をビデオゲームや対話型メディアで実現するためには、バーチャルモデルの製作という費用も時間もかかる手作業が必要だ。バーチャルなアニメキャラクターが現実世界と融合したロジャーラビット型映画の制作にこの新技術を使えば、リアルなビデオをCGと合成するのも簡単になり、ロジャーラビットをはるかに越える応用が可能になる。

MITはこの技術が面白い結果を生みそうな場所として、ポケモンGOの名前を挙げている。捕えようとしているBulbasaur[フシギダネ]が、草むらと実際に触れあっているように見えたらどうだろうか。大作映画でCGエイリアンが現実世界の都市を破壊する様子をビジュアルに表現するのもずっと容易になるだろう。

この新しい手法は、VRやARの技術に対する関心と投資の波に乗る最適のタイミングで登場した。多くの対話型VR体験の開発コストを大幅に削減することで、コンテンツ分野に新たな関心が寄せられることが期待できる。つまるところ、誰もがVRの価値を証明するものを求めている。最終的にCSAILは、VRビデオが今以上に魅力ある双方向メディアになれることを証明できるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

蟻のコロニーを研究するともっと良いネットワーク分析ができる…MITの研究より

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蟻は、多くのことが上手だ。物を持ち上げる、コミュニケーションする、ピクニックを台無しにする。彼らが彼らの科学に基づいた投票を行うことも、明らかになっている。巣を移動する時が来ると、この小さくて勇敢な昆虫は、選ばれた議員たちによる投票をする。その民主的な過程は、すくなくともある部分、お互いがぶつかり合うことによって決められる。

(人間の)科学者たちは、蟻が自分たちの環境を探検するとき、どれだけ他の集団にぶつかるかによって、自分たちの人口密度を決める技(わざ)を持っている、と信じている。そのランダムな探検が結果的には、一定のスペースにどれだけ多く存在しているかを知るための、最良の方法なのだ。

“今われわれは、その直観の背後にあるものを厳密に分析しようとしている。彼らが行う推計は、ちょっとした雑な推計ではなくて、きわめて良質な推計なのだ”、とMITの電気工学とコンピューターサイエンスの院生Cameron Muscoは説明する。今彼は、この主題に関する新しいペーパーを査読中だ。“時間の関数として、それはだんだん正確になる。そして最後には、これ以上は無理と思われるほど速くなる”。

彼のペーパーは、このような“ランダムウォーク”による探検が、ネットワーク通信のアルゴリズムの基盤を提供し、ソーシャルネットワークやアドホックなデバイスによるネットワークなど、いろいろなネットワークの推計に利用できる、と主張している。とくに、さまざまな理由でランダムな標本(サンプリング)が得られないような場合のデータの決定に役に立つ、という。ランダムウォークのシナリオでは、蟻などの“探検者”が、グラフ上の任意の隣接セルを訪れる確率が、どのセルに関しても等しい。しかもこの方法は、人口密度の決定が、サンプリングによる方法と変わらないぐらい速いから、研究者たちは驚いている。

Muscoは曰く、“グリッドのまわりをランダムに歩いて行くと、グリッドを斜めに横切らないから、すべての人とぶつかることはない。だからグリッドの遠い端の方にいる誰かは、ぼくとぶつかる確率がゼロに近い。でも、そんな連中とぶつかる確率は低くても、ローカルな連中とぶつかる確率は高い。ローカルな連中との遭遇をすべて数えることによって、自分が決してぶつかることのない遠方の連中がいることを、判定する必要があるのだ”。

画像提供: MIT

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MITの匿名ネットワーク通信プロトコルRiffleはTorの長年の王座を揺るがすか

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Torはこれまでずっと、匿名通信の定番的なサービスだった。しかし、だからこそTorは、NSAやFBIにとっておいしいターゲットのひとつだった。でも、今度MITで作られた新しい匿名化プロトコルは、こんな、金も権力もたっぷりある攻撃者に対して、Torよりももっとしなやかで強いかもしれない。

Torの問題は、敵がネットワーク上の十分にたくさんのノードにアクセスできれば、パケットがどこをどう辿って来たかを、調べられることだ。通信の内容は分からなくても、パン屑をたどることによって、最初の送信者を突き止められるだろう。少なくとも、理論的には。

そこでMITの院生Albert Kwonが率いるチームはスイスのEPFL(国立工科大学)と協働して、Torの匿名化技術を跳び越えるためのまったく新しいプラットホームRiffleに取り組んでいる。

Kwonはこう言う: “Torは攻撃の隙(すき)を作らないため、レイテンシーをできるかぎり低くしようとしている。Riffleのねらいは、できるだけ多くのトラフィック分析に対して、抵抗性を持たせることだ”。

Torは”The Onion Router”(玉ねぎルーター(router, 経路作り))の頭字語で、メッセージをまるで玉ねぎのように複数の暗号化層で包む。Riffleはこれに加えて、攻撃者を困らせるための二つの方法を導入している。

まず、受信したメッセージの順序をサーバーが変えて次のノードに渡す。そのようにして、メタデータを利用して入信と送信のパケットを調べようとする行為を、妨害する。

また、本物のメッセージをダミーに置き換え、それを追ってターゲットを捉えようとする悪質なサーバーを、二段階で防ぐ。まずメッセージは、一つではなく複数のサーバーへ送られる。そして、送信メッセージを、そのサーバーが受信したメッセージであることを証明できるための、それ単独で真偽を検証できる数学的証拠で署名する。このようにすると、メッセージに手を加えたサーバーを一度に見抜くことができる。

これらのテクニック…mixnetsdining-cryptographerネットワーク(DCN)…はどちらも前からあるが、深刻な欠陥が両者の採用を妨げていた。二つを同じシステムで使うなんて、ましてや…である。DCNはスケーラビリティがなくて帯域を大食らいする。mixnetsが必要とする証明は、計算が高価すぎて低いレイテンシーを維持できない。

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Kwonらのチームは、これらの弱点を避けることのできる実装方法を考案した。その技術的詳細はこのペーパー(PDF)に載っているが、そのキモは、公開鍵と秘密鍵(対称鍵)を併用することだ。それは、Webで使われているやり方と、あまり変わらない。

古い技術をこのように変えることによって、それらを実装したネットワークはアクティブとパッシブの両方の攻撃に耐性を持つだけでなく、スケーラビリティもよくて、処理時間も多くない。彼ら研究者たちの推計では、数百名のユーザーによるファイル共有が理論値で100KB/s、マイクロブログのように帯域集約的ではない使い方では、10万名のユーザーを10秒未満のレイテンシーで扱える。

Kwonによると、開発と試行に利用したのはギガビットLAN上の3台のサーバーだが、意外にも、サーバーを増やすと、ある面では性能が低下した。

“サーバーが多ければセキュリティは増すが”、とKwonは書いている。“しかしながら、パフォーマンスの点では、すべてのメッセージがすべてのサーバーを経由するのだから、サーバーが少ない方がよい”。

このプロトコルは、普遍的で大きなグローバルネットワークよりも、小さなセキュアなネットワークがねらいだが、でもほとんどの国や地域社会で、匿名ノード10万は十分な数だろう。

Riffleのダウンロード可能なバージョンはまだないが、Kwonによると、現状はプロトタイプだから、公開するためにはまずコードの掃除が必要、ということ。商用化の計画はないし、Torを置換する気もない。もちろん、ある面では、Torよりもずっと優れているのだが。

TorとRiffleの両者について、“設計目標は互いに排他的(両立しない)面もあるが、しかし一方ではそれらは互いに補完的でもあり、Riffleのセキュリティと、Torの大きな匿名集合の両方を利用できる”、とKwonは書いている。

Kwonのサイトをときどき覗いて、今後のアップデートに注目したい。

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服にワッペンのように縫い付けておける軽量薄型毒ガス検出器をMITで開発、当面は軍用を目指す

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MITの4人の研究者チームが、毒ガスを検知するウェアラブルセンサーを開発した。これとアプリによりスマートフォンなどのワイヤレスデバイスがユーザーに、危険を知らせることができる。

研究者たちが構想しているのは、送信機の回路も含めてクレジットカードよりも薄くて軽いバッジを作り、それを実戦用の軍服に縫い付けておくことだ。

“兵士はすでに大量の装備を身につけているし、その中には多くの通信機器もある”、とMITの化学の教授Timothy Swagerが、彼が中心になって書いたこのセンサーに関するペーパーで述べている。Journal of the American Chemical Society載ったそのペーパーは、ポスドクの学生Shinsuke IshiharaやPhDのJoseph AzzarelliとMarkrete Krikorianらが共著している。

“しかし今の兵士は毒ガスを検知するウェアラブルセンサーを身につけていない。検出装置はいろいろあるが、身につけて動き回れるようなものではない。われわれのセンサーは、紙よりも軽い”、とSwagerは語る。

簡単に言うとそのセンサーは、カーボンナノチューブを搭載した回路だ。カーボンナノチューブは筒状に連なった炭素分子で、細いワイヤーのように見える。

Swagerはこう説明する: “通常のワイヤー、たとえば電気のコードなどは、プラスチックで包まれて外界と遮断され、ユーザーを安全にしている。しかしカーボンナノチューブは、プラスチックなどで包んで絶縁を実現することができない。われわれの場合はナノチューブをポリマーで包んでいる”。

サリンガスのような毒ガスに触れると、ポリマーが壊れて絶縁がなくなる。そのためナノチューブが互いに接触して伝導性を持つようになり、信号がスマートフォンなどへ送信される。

信号の送信はNFCで行われるので、スマートフォンなどのワイヤレスデバイス側にもNFCの能力が必要だ。また、NFCはその名(near-field communication)のとおり、伝達距離が短い。ただし、インターネットがなくても通信できる利点がある。

センサーの反応は不可逆性なので、一定の量の毒ガスを検知し報告したら、その後空気中にガスが検出されなくても、検知〜報告量は下(さ)がらない。

“可逆的に反応するセンサーもある。そういうセンサーでは現在の検知量に応じて信号が変化(増減)する。しかしこのセンサーは違う。反応が不可逆的なので、総量が分かる”、とSwagerは述べる。

ウェアラブルのバッジと通信装置から成る毒ガス検出器は、労働者が毒性の化学物質に触れがちな各種の工場などで、民間の需要もありえるだろう。

Swagerによると、この製品を作り出す技術はすでにマサチューセッツ州ケンブリッジのC2Sense社にライセンスされている。商用製品の開発にも取り組んでおり、それには少なくとも1年はかかる、ということだ。

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MITの新しいコンパイラーが、アナログコンピューティングと生物学シミュレーションを進化させる

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人生は、何とかなる。そして多くの場合、その方法はアナログだ。インパルスのような脳の活動電位でさえ、コンピューターの1と0より複雑だ ― そして細胞や系のデジタルシミュレーションは容易ではない。アナログ電子回路はこうした難問に太刀打ちするための強力なツールだ ― そしてMITの新しいコンパイラーは、プログラミングを大幅に簡易化する。

アナログ回路はバイナリー信号を通さないが、事実上無限種類の値を持つ入力を扱うことができる。そして、そのような数多くの独立した値 ― 化学濃度、pH、温度等々 ― を伴う細胞のシミュレーションには、特に適している。

そうした複雑な関係を、科学者は微分方程式でモデル化することが多い。もちろん解はデジタル的に求められる ― しかしデジタルコンピューターは同じ作業を連続して何十億回も繰り返さなくてはならない。データを薄くスライスすればするほど精度は高くなる。

しかしアナログ回路では、方程式の各値に相当する電圧が正しく設定され、それぞれがこの電流やあの電流に影響を与え、電気力学の法則の要求に応じることによって自ら答を出す。完全かつ連続的な解が、すばやく簡単に求められる ― しかしそうした回路をどう構成すべきかを知ることは、簡単とはほど遠い。実際それは、複雑さが増すにつれ、並外れて困難になっていく。

MIT CSAILの大学院生、Sara Achourは彼女の指導教授であるMartin Rinardおよびダートマス大学のRahul Sarpeshkarと共に、Acroと呼ばれるコンパイラーを作った。これは実質的に、人間が読めるデジタルコードをアナログコンピューター回路の構成に変換するものだ。

Example of a diagram describing an analog circuit.

アナログ回路を記載した図面の例。

いくつかのトランジスタを使うことで、細胞形態アナログ回路は複雑な微分方程式 ― ノイズの影響を含む ― を解くことができ、そのためには何百万ものデジタルトランジスターと、何百万ものデジタルクロックサイクルが必要だ」とMITのニュースリリースでSarpenshakarは言った。

コンパイラーは関連する数式を見て、正しい結果を生む回路を生成する ― 数式1つにつき14~40秒かかるが、これは人間が解を求めるのに比べて大幅な改善だ。そして、改善されたのは時間だけではない。アナログ回路の構成はどんなに大きなアナログ回路にもスケーリングが可能で、単一の細胞だけでなく、器官や組織全体にも使える。

バイオインフォマティクス(生物情報学)の仕事をしているのでない限り、アナログコンピュータを直接見ることはないだろうが、生物プロセスのシミュレーションの進歩は、それ自身に加えて医療分野の研究を進める一手段でもある。

彼らの書いた新しいコンパイラーの論文はAssociation for Computing Machineryカンファレンスで先週発表された。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

熱として逃げていた太陽光のエネルギーを完全に捉えるナノ素材により太陽電池の発電効率を倍増

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MITの研究者たちが作った、まだ実験段階の太陽電池は、パネルの一定面積あたりの電力生成量を増加し、太陽熱の利用効率を上げる。しかも、それに関する科学者たちの説明が、すごくクールだ: “まだ完全に最適化されていない配列でも、ショックレー-クワイサーの限界(Shockley-Queisser limit)を超えることができた”。

ショックレー-クワイサーの限界はもちろんフィクションではなく、太陽電池のエネルギー効率の理論的最大値だ。それは、いちばん多く使われているシリコンベースの製品で32%程度、とされている。

この限界は、電池を重ねるなどの工夫で克服できるが、今回の研究チームの一員である博士課程の学生David Bierman(上記の説明をした人)によると、もっと良い方法は熱光起電(thermophotovoltaics)だ。太陽光をいったん熱に換えて、それをさらに、電池が吸収しやすい光として再出力する。

えーと、つまりこういうことだ: 太陽電池は特定の波長の光で効率が最高になる。紫外線は短すぎるし、赤外線は長すぎる。だいたい600nm(オレンジ色の可視光線)ぐらいがパーフェクトだ。太陽から来る光は、さまざまな波長の光で構成されていて、600nmはその一部にすぎない。そこで、太陽電池が太陽光から生成できるエネルギーの量には限界がある。それが、ショックレー-クワイサーの限界の論拠のひとつだ。

Biermanらのチームは、太陽と電池のあいだに一工程を加えた。それは、“細心の工程で作られたカーボンナノチューブの構造体”を利用することだ。“カーボンナノチューブは、太陽光の全スペクトルをほぼ完全に吸収できる”、とBiermanはMITのニュースリリースで述べている。“光子のエネルギーのすべてを熱に変換できる”。

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チームの熱光起電電池が仕事中

従来の太陽電池では、熱はエネルギーの浪費にすぎないし、電池の動作の邪魔にもなるので、嫌われていた。でもこのやり方では、熱は浪費を許されない。むしろ、カーボンナノチューブが熱を光に戻すのだ。しかもその波長は正確に、光起電電池にとって最適の波長だ。

結果は、効率の大幅アップだけではない。熱は、光と違って保存や移動が楽にできる。日中の太陽光をすべて熱に変換して保存すれば、それを必要に応じて光に変換できる。たとえば、夜などに。言い換えるとこの技術は、太陽光を後(のち)の利用のために保存する。

実験の結果が理論を確証し、プロトタイプのTPV(熱光起電)電池の性能は期待どおりだった。しかしこの技術が研究室を出るためには、複雑なカーボンナノ素材の量産という、難題の克服が必要だ。だから、来年や再来年にあなたが熱光起電を利用していることは、ありえないだろう。でも、とても大きな将来性のある技術だから、実用化されないまま終わるとは思えない。

この研究は、Nature Energy誌に発表されている。

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MIT、太陽電池を強力な光で修複する技術を発見

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時として科学の世界では、答は目と鼻の先にあったということがある。例えば、太陽光技術の限界に関する問題を解決する物は、何あろう、光だった。

過去数年間、太陽電池の材料として、ペロブスカイト化合物の可能性に注目が集まっている ― しかし、本質的は欠点により効率は限られている。しかし、今日(米国時間5/24)MITが発表した新たな研究によると、同化合物の制限に対する答は最も便利な場所にあった:非常に強力な光だ。

有機-無機金属ハロゲン化ペロブスカイトの薄膜に強い光を当てると、物質内の欠陥が修複される効果が働き、太陽電池の受光効率が高まる。この修複方法には、同物質の発光効率を高める効果もあるため、新たなLEDやレーザーの開発にもつながる。

修復方法には解決すべき問題がまだ残っているが、長期にわたって効率を維持する方法は最大の課題であることから、メーカーにとっては大いに価値がある。この研究によって、一年以内には各企業が様々なタイプの材料を市場に提供することが期待できる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

豚の腸で作った折りたたみ式小型ロボットが誤飲した電池を取り出す…MITや東工大らの研究

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MITとシェフィールド大学と東京工業大学の共同研究チームが、William BurroughsのSF小説にありそうなプロジェクトを進めている。乾燥させた豚の腸で作った小さな折り紙状のロボットをカプセルに収めて飲み込むと、それが体内でアコーディオンのように開く(上図)。

胃の中でその小さな‘肉ロボット’はスティック-スリップ的に動きまわり、周囲との摩擦を利用して自分を前へ進める。操縦は、磁石の磁界が行う。磁石の機能は二つあり、その残る一つは人が飲んだ小さな電池を拾い上げる。

電池の誤飲という事故は、意外と多いようだ。MITによると、合衆国では毎年、3500個の時計用電池が誤飲されている。一部はウンチと一緒に排泄されるが、胃や食道の組織を傷つけるものもある。そこで研究者たちは、小さく折りたたんだロボットを使う、という解決方法を思いついた。

この話には、豚がさらに関係している。研究者のShuhei Miyashitaはこの独特な‘ロボット技術’の可能性に着目し、ハムの小片の中に電池を入れてみた。共同研究者のDaniela Rusによると: “電池の成分は30分で完全にハムに溶融した。そこから重要なことを学んだ。電池を誤飲したら、できるだけ早くそれをとり出さなければならない”。

またチームは、テスト用に模造の胃を作るときも、寛大な豚さんに依存した。豚の胃で、消化の過程を理解したのだ。しかしその後は、シリコンで胃の模型を作り、水を入れ、味付け胃液としてレモンジュースを加えた。

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わずか1ドルの紙の上で約2時間でジカウィルス感染を検出できる合成生物学的技術をMITが開発

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その日、メディアへの対応に追われていたMITの生物医学工学の教授Dr. James Collinsによると: “これはわれわれのグループにとって、何かの大感染が急激に勃発したとき、どれだけ早く対応できるかを知るための、興味深いケーススタディになった”、という。その日5月6日に発表された論文は、今感染が広まりつつあるジカ・ウィルス(Zika virus)を診断する、安上がりで、結果が出るのが早くて、効果的なツールを詳述していた。

Collins博士は話を続ける: “1月の終わりごろMITは、今誰がジカを研究しているか、と問う同報メールを全研究者に送った。われわれは、何もしていなかった。今のチームと前のチームの全員に、われわれなら何ができるか、と尋ねた。われわれの合成生物学のプラットホームを利用して、診断検査を作れるだろうか? 圧倒的多数が、作れると答えた。全員が、今やってることを棚上げして、新しい検査手法の開発に専念した。そして約5週間か6週間で、それは完成した”。

記録的な短期間でチームは、CollinsのチームがハーバードのWyss Institute(ヴィース研究所)で開発した技術を使って、資源の乏しい地域でも利用できる、紙を使う簡単な検査方法を作り出した。それは、これまでのやり方の数十〜数百分の一の時間と費用で、この疾病を検出できた。チームメンバーの出自は、Harvard, MIT, University of Toronto(トロント大), Arizona State University(アリゾナ州立大), Cornell, University of Wisconsin-Madison(ウィスコンシン大マディソン校)、Boston University(ボストン大)など、多岐にわたる。

“対応しなければならない要件が、いくつかあった”、とCollinsは説明する。“検査はローコストであること。結果が出るのが早いこと。リソースの乏しい現場で簡単に展開できること。われわれのプラットホームなら、これらのチャレンジにうまく対応できる、と私は思った。センサー本体は、きわめて小額でできる。展開の費用も、微々たる額だ。ローコストの検査とはこの場合おそらく、一検査あたり1ドル未満、という意味だ”。

患者から得た一滴の血液を沸騰させてウィルスからRNAゲノムを取り出す。その後のちょっとした処理において、紙を使用する。

“われわれが作ったのは、紙製の本当に上出来な合成生物学プラットホームだ”、とCollinsは語る。“われわれがやったのは、細胞の内部的な働きに着目すること、数十種類の酵素を使うこと。そうすると、紙の上で結果が分かる。それらをフリーズドライし、室温で保存し配布しても、活性の喪失がほとんどない。これこそが、このプラットホームのイノベーションの中核だ”。

上記の全過程に要する時間は約2時間で、安い機材しかない現場でも完全にできる。CDCなどの大規模な研究機関に送って、あらためて検査する必要はない。現在、このシステムではジカとデング熱とエボラを検出できる。この三つが、システムの最初のターゲットだった。

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Collinsは、今後もっと多くの病原にこの技術を適用できる、と信じている。

“今はインフルエンザの検査に使うことを検討している。HIVもだ。ライム病やハンセン病にも利用したい。また、今とは完全に違った形で、迅速で安価な癌の診断にもこのプラットホームを利用できるかもしれない”。

ただし現時点では、チームの主な目標は、ジカ熱がいちばんひどく広がっている地域で展開できる最良で最速の方法を見つけることだ。

“今われわれはブラジルやコロンビアのグループと一緒に、この方法を現場に、そして患者たちに届ける方法を検討している”、とCollinsは語る。“まだまだテストが必要だが、でもこのプラットホームには大きな将来性がある。適正な機関やグループの手に渡れば、普及の速度はとてもはやいだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MITが歩くロボットを3Dプリンターでまるごと出力

MITの研究チームは圧力供給で作動する歩くロボットのプロトタイプを1台の3Dプリンターでそのまま出力することに成功した。つまりこのロボットはプリンターから出てきた状態ですぐに歩き出すことができる。組立は必要なし。

このミニ6脚ロボット0はMITのCSAIL〔コンピューター科学人工知能〕ラボが開発したもので作動液体を含むすべてのパーツはプリンティングが終了した時点で完全に作動可能だという。この研究グループはStratasys社(世界最大級の3Dプリンター・メーカー)の高機能プリンターを利用している。このプリンターは同時に8種類の素材を利用できる。

〔日本版〕ビデオはサラ・バー記者が解説しているが、0:30あたりからCSAILラボで開発された「すべて組立ずみ」のロボットが多数登場する。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MITが香港にイノベーションセンターを開く、深圳に近くて潤沢な資金にも近い場所

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香港が、合衆国の高名な技術系大学MITの、アクセラレータ的イノベーションセンターになろうとしている。

Massachusetts Institute of Technology(すなわちMIT)が今日、このアジアの都市国家に来夏、初めての“イノベーションノード”を開設する、と発表した。MITによるとこのセンターは一種のスタートアップインキュベータであり、“才能をリソースに結びつけることによって学生たちに、アイデアをより速く市場化するやり方を学んでもらう”、のだそうだ。

それなら確かにインキュベータだが、でもこの場合は同時に、香港の大学との研究の機会や、イベントとコミュニティ活動のプラットホーム、およびインターン事業も提供する。また新しいハードウェアやテクノロジのプロトタイピングや試験のための、マーケットスペースをオープンする計画もある。同様の便益を今MITは、合衆国で構築しつつある。

今回とくに香港を選んだ理由を、学長のRafael ReifがWall Street Journalのインタビューで述べている。それによると、香港は金融のハブであり、またアジアの主要なイノベーションの中心都市に近いことが挙げられている。

“香港の大学は優秀であり、また香港はビジネスのプロフェッショナルも多い”、とReifは述べている。“さらに深圳には製造のインフラストラクチャがあり、少量生産にも対応できる”。

今やますます世界的な製造拠点と見なされるようになった深圳に近いことが、大きな理由のようだ。

MITのブログ記事は、こう述べている: “MITと香港の学生たちの物理的および仮想的なコラボレーションを促進し、アイデアの商業化を強力に推進することがねらいだ。たとえば医療機器やセンサ、ロボットなどはMITのキャンパスやこのノードでプロトタイプを作り、ボストンまたは香港地区でテストし、深圳で少量生産することができる”。

MITの海外センターは日本とチリとシンガポールにあるが、香港のそれは、合衆国の外では初めてのイノベーションのためのセンターだ。

香港にいるMITの卒業生グループがセンターにアドバイスし、事業のコーディネーションを手伝う。その中の数名は、このプロジェクトの初期の出資者でもある。

参考記事。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

写真やビデオ映像から前面の反射や邪魔者(物)を取り除く技術をGoogleとMITの研究者が開発

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飛行機やホテルの窓から写真を撮ると、大量の反射が入り込むことが多い。そこでGoogleとMITの研究者たちは、できあがった画像から反射や、そのほかの邪魔者を自動的に取り除く方法を見つけた。

今月後半に行われるSiggraph 2015に提出される論文で、Tianfan XueMichael RubinsteinとCe LiuとWilliam T. Freemanの4名は、携帯電話で撮った短いビデオで、そのアルゴリズムを活用する例を述べている。

その例では、窓の反射や、窓ガラス上の雨滴、前面のフェンスなどが、最終画像ではほとんど消えている。そのアルゴリズムはビデオのさまざまな画像を見て、前景にある邪魔者と、そのうしろの目的画像を見分ける。このような試みは前にもあったが、今回ほど見事なのは初めてだ。

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ちょっとこわいのは、このアルゴリズムは窓の反射を検出するから、反射だけの鮮明な画像を作ることもできる。フェンスの画像も作れるが、こわいのはこっちではない。反射を鮮明に読み取れるということは、テレビの悪徳警官シリーズにもあったように、反射画像から個人情報を盗むこともありえるのだ。

ただし、この技術がスマートフォンのカメラで使えるようになるのは、もっと先の話だ。

しばらくは、このビデオを見るだけで満足しよう(下に埋め込み):

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

この空飛ぶ自動車を作っている会社は実在する企業か?…どうやら投資目当ての詐欺ではなさそう

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空飛ぶ自動車のお話は、かなり昔からあった。60年代のJetsonsから80年代のBack To The Futureに至るまで、何度も何度もそれは登場した。ぼく自身も、ふつうに地上を走ってて、その気になれば飛行もできる車を、ぜひ運転したいと本気で思った。

マサチューセッツ州WoburnのTerrafugiaも、この夢の実現に挑戦した企業のひとつだ。その最新機種TF-Xは、見事なルックスだが…。

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TF-Xの仕様は:
– 地上ではプラグイン型ハイブリッド
– ふつうの車として運転可能
– 航続距離500マイル
– 一台用のガレージに収まる

発売は、2021年を予定。

ぼくは気に入ったけど、でもこれは実在する企業なのか? 彼らは何者か? うむ、Terrafugiaは2006年創業で、MITのビジネスプランコンペで賞金10万ドルを獲得し、シード資金を調達しようとしている。これまで、580万ドルをすでに調達している。

同社の最初のプロジェクトTransitionは、プロトタイピングから試験飛行まで2年を要している。それは合法的なストリートカー(路上走行OK)で、飛行機に変身でき、元の車に戻れる。ご覧あれ:

Terrafugia社は2010年に、DARPAのTransformerプロジェクトで下請けをやっている。それは、“空飛ぶHumvee”を作ろうという、6500万ドルのプロジェクトだった。

ファウンダたちはMITで出会い、空飛ぶ車を作ろう、ということで意気投合した。

というわけで、彼らは本気の本気だ。

来週は、Terrafugiaのことをもっと詳しく調べてみたい。同社に聞きたいことを、この記事のコメントで書いてくれたら、ぼくがそれを、確実に尋ねるからね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

IM中、相手が返信するまでの「空き時間」で単語を学習するWaitChatter

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オンラインコミュニケーションの機会は質・量ともに拡大している。しかし、それがために無駄にする時間も増えているのではないかと考える人がいるようだ。すなわち、IMのウィンドウを見ながら無為に過ごす時間が増えているのではないかという意見だ。そして、そういう問題を解決しようとするアプリケーションも生まれてきた。WaitChatterというもので、IM画面前でスタンバイしている時間を、スキル取得のための有効な時間に変えてしまおうというプロダクトだ。Google Chatの利用中、相手が返信してくるまでの空き時間で外国語の単語を覚えることができる。

このアプリケーションはMITのComputer Science and Artificial Intelligence Labの研究から生まれたものだ。調査によるとIMを利用する人は平均して10分ないし15分をアプリケーションの前で無駄に過ごしているのだそうだ。この無駄な時間をボキャブラリービルディングの時間に使おうと考えて作られたわけだ。このWaitChatterは、今のところGoogle Chat(Hangoutsに移行してしまった人は、Google Chatに戻す必要がある。但しこの作業は簡単に行うことができる)用のエクステンションとして提供されている。チャットウィンドウ内に学習用のコンテンツが表示されるようになっている。。

単語学習アプリケーションは数々あれど、意識的に学習時間を作って利用するのは精神的な負担にもなるものだ。空き時間を活用しつつ、そして精神的な負担もなくして学習に役立てようというのが狙いだ。

先行テストの段階では、予め用意された単語リストや、IM中で利用された用語から1日に4つほどの単語が表示させるようになっていたとのこと(訳注:正式リリース版はプライバシーの観点から、チャットメッセージから単語を取得するようなことはしていないようです)。このような方法で外国語がマスターできたり、あるいはネイティブになれたりするわけではない。しかし単語を覚える程度のことにならば、ちょっとした空き時間も有効に活用できるというわけだ。

このWaitChatterを産みだしたリサーチチームは、チャットの場合のみならずメールの読み込み時や、あるいは実生活においてタクシー待ちをしている場合のような「空き時間」を有効に活用する方法を模索しているところだとのこと。

ところでWaitChatterは今のところ、Google Translateが対応しているアルファベット言語に対応している。今後はまず、SkypeやFacebook Messengerなどの他IMプラットフォームにも対応していきたい考えなのだそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

MIT大学院生たちが考案した、つけ爪型Bluetooth対応タッチパッド

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ディック・トレイシーの腕時計型無線機を見るまでもなく、なぜか人々は2つのテクノロジーをひとつにまとめ、それによってなんとなく「デキルヤツ」風にみせかけることが大好きだ。本日ご紹介するNailIOも、そうした発想から生まれてきたものだといって良いかもしれない。タッチパッドを親指につけるネイルチップに融合し、インタフェースの新局面を繰り広げようとするものだ。

具体的にはどういうものだろうか。簡単にいえばネイルチップ型ウェアラブルデバイスだ。このデバイスの上で線を描いたり、スワイプを行ったり、あるいは文字をタイプしたりすることができる。製作したのはMIT Media Labのリサーチャーたちだ。料理をしているときやウォーキングのとき、あるいは何か手作業をしているときにも邪魔にならないウェアラブルであると自賛している。

「目立たず、邪魔にならないデバイスです」と、MIT大学院で学ぶCindy Hsin-Liu Kaoは言う。「身につければ、ほとんど身体の一部のようにしか感じなくなります。もちろん取り外しも簡単ですから、身体に融合してしまうというわけではありません。ただ、自身の身体を動かすような感じで、外部デバイスを操作できるようになるのです」。

ネイルチップはアジア諸地域で流行しているアクセサリーだ。これをみたKaoが、アクセサリーをセンサーにしてしまおうと考えたのだ。バッテリーやBluetooth通信機能も備え、サイズは切手ほどのものとなっている。プロダクトはキッチンやオフィスワーク中など、さまざまなシチュエーションで試してみたのだそうだ。プロトタイプはタッチセンサーに回路をプリントして製作し、さらには表面に装飾用のステッカーを付けてみたりしたそうだ。

「一番難しかったのはアンテナの配置ですね」と、同じく大学院で学ぶArtem Dementyevは言う。「干渉しないような距離を稼ぐのがとても難しかったのです」とのこと。

親指の爪を使ってメールを書くような時代が迫っているのだろうか。そんなことはないだろう。ただ、モバイル時代が進化するにあたって、新しいインタフェースを用意しておくのはとても重要なことだ。Apple Watchとのペアで親指タッチパッドを使うことはないだろう。しかし、表立ってデバイスを扱えないようなシーンにて、すぐにも使い始めたいと考える人もいることだろう。親指を使うデバイスだけあって、なかなか「いいね」な未来を感じさせてくれる。

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(翻訳:Maeda, H

やわらかい指先を持ち、指先の変形を視覚的にフィードバックして細かい作業を精密に行うロボット、MITのBaxter

ロボットにも愛が必要だ。そこでMITの研究者たちはロボットのBaxterに触圧センサをつけ、やさしい愛撫や、やわらかい握手ができるようにして、愛し愛されている実感を持たせることに成功した。というのは嘘だが、でもBaxterは製造業の工程で利用されて、反復的な作業を行い、そのとき、物をつかむ指先に感圧パッドをつけることにより、動きのやさしさ、優雅さ、繊細さを実現する。

その視覚的なセンサはGelSightと呼ばれ、ロボットの‘はさみ’に、高度な感受性を与える。はさむ力を継続的にフィードバックすることにより、USB充電器のソケットへの差し込み(上図)や、卵を割らずに持ち上げることなどができる。はさみの先端の機構室が薄いゴムで覆われていて、内側からカラーLEDで光らせる。そのゴム膜は表面が反射性の塗料で塗られており、物を握ろうとしたときの変形をセンサに伝える。そしてその変形の過程から、はさみにとっての対象物の位置と、それに加えられている力を計算する。

MITの視覚科学の教授Edward Adelsonは、“自分の子どもたちを見ていて触感に関心を持った”、という。“子どもたちが視覚の利用方法を覚える過程に魅了されるだろう、と期待していたが、実際にもっと魅了されたのは彼らの指の使い方だ。でも自分の専門は視覚なので、指に来る信号を視覚的に見るためには、運動や触覚を表す信号をビジュアルな信号に変える方法を見つける必要があった。像として見えれば、その扱い方もわかるからね”。

つまり彼は、何千もの小さな感圧センサをはさみの指先に敷き詰める代わりに、ゴム膜の変形という形(光センサへの距離)を“見る”システムを作ったのだ。ゴムは、接触しやすい指先パッドにもなる。

しかもセンサの感度(精度)はミリメートル単位だ。すなわち:

“Plattの実験では、MITのRethink Roboticsから派生したBaxterロボットには指が2本のはさみがあり、その片方の先端にGelSightセンサがついている。ありふれたコンピュータビジョンのアルゴリズムを使って、そのロボットは、ぶら下がっているUSBプラグを認識し、それをつかもうとした。まず、USBプラグとはさみとの位置関係を、プラグに浮き彫りになっているUSBのシンボルから把握する。ロボットがプラグをはさむ位置で、二次元の各次元にそれぞれ3ミリの変差はあったが、それでもUSBプラグをUSBポートの挿入することができた。ポートが許す変差は、3ミリどころか、せいぜい1ミリ程度だったのに。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


MITの電動四足ロボットはチータのように駆ける

上のビデオでご覧のとおり、MIT(マサチューセッツ工科大学)のフットボール競技場を電動の四足ロボットが軽快に走り回っているというのは驚くべき光景だ。Cheetah(チータ)と名付けられたこのロボットは、Boston Dynamicsが開発したBig Dogの弟分というところだが、外部動力源なしに時速48kmで走ることができる。

CheetahはMITのバイオミメティクス(生体模倣)・ラボが開発中の複雑な地形を自由に移動できる軽量で強力かつ電動の四足ロボットだ。このグループが開発した高トルク高密度アクチュエーターというテクノロジーにより金属骨格に損傷を与えることなく脚を精密に高速駆動することが可能になったという。このロボットの外骨格は本物のチータの骨格をモデルにしているという。本当に生体模倣テクノロジーであるわけだ。

ガソリンエンジンを動力とするBig Dogと違って、電動のCheetahは非常に静かで、軽快に見える。幸い、爪と牙は装備されていない―少なくとも、今のところは。

via ieee

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


視力に応じて自動的に表示を調節するMITのテクノロジーで老眼鏡がいらなくなる

MIT〔マサチューセッツ工科大学〕の研究者グループはカリフォルニア大学バークレー校と協力して、ユーザーの視力に合わせて自動的に表示を調整するテクノロジーを開発中だ。これが実用化されれば、たとえば、老眼鏡をかけなくてもスマートフォンやカーナビの表示が読めるようになる。

この視度対応ディスプレイには裸眼3Dテクノロジーが応用されている。ただし3D表示とは異なり、左右の目に対して異なる像を表示するのではなく、それぞれの瞳孔の異なる部分に向けて少しずつ異なる像を表示する。これによって水晶体の焦点距離が補正され、網膜に正しい像が結ばれるようになる。その代償として解像度が若干低下するがこれはさほど大きなものではない。しかし、瞳孔の特定部分に光を送るために微細なピンホールを利用しているため表示の明るさは大幅に低下する。そういう難点はあるものの、十分に商用化可能なテクノロジーだ。

このディスプレイの用途についてMITのチームは、主として遠視として現れる加齢に伴う視力低下の補正に特に有効だろうとしている。2焦点、あるいは多焦点レンズのメガネをかけないとカーナビが読めない老眼の人々に、そういうわずらしいメガネがいらなくなるわけだ。

このテクノロジーがKindleのようなタブレットに組み込まれたら素晴らしいだろう。私自身もいずれ2焦点メガネが必要になるはずなので、それまでにこのディスプレイが実用化されていることを切に願うものだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


アイスクリームを成形プリントする3DプリンタをMITの学生が開発


[三度目のテストでやっと成功]

もうすぐ、3Dプリントを利用した家庭用ソフトクリーム製造機が買えるようになる。MITの三人の学生、Kyle HounsellとKristine BunkerとDavid Donghyun Kimが作った家庭でアイスクリームを作る3Dプリンタは、ソフトクリームを押出成形したらすぐにそれを冷凍するので、冷やしたお皿におしゃれに盛り付けることもできる。

そのシステムはまだ概念実証の段階だが、甘い甘いクリームから、かなり複雑な形でも作り出すことができる。Bunkerはこう説明する:

このプリンタを設計しようと思ったのは、3Dプリントという最新の技術で何か楽しいものを作り、とくに子どもたちの心をつかみたいと思ったからだ。新しい技術を生み出すことも重要だが、若い世代に科学や技術への関心を持ってもらうことも、それに劣らず重要だから、極端なことでもやってみたい、と思っている。


[Cuisinart製のソフトクリームサーバを改造, 台の下部が冷凍機(液体窒素容器は上部に)]

春学期にこのプロジェクトを始めた彼らは、まず星の形をプリントするところまでこぎつけた。まだ商用化する意思は彼らにないが、でも実用性は十分にありそうだ。

“このマシンを作ってるときは大量のアイスクリームを食べた。とくに、二日間徹夜したときには、夜中の間食も朝食もアイスクリームだった。でも、とっても楽しいプロジェクトだった”、と彼女は言っている。

彼らはJohn Hart教授のクラスで食品添加物について勉強している。プリンタの製作も勉強の一環だ。Solidoodleの3Dプリンタを使って、受け皿と押出成形をコントロールし、成形されたアイスクリームを液体窒素で冷凍する。そこがうまくいかないとアイスクリームは溶けて、甘い液のプール、食べられる悲惨ができあがる。アイスクリームが大好きなぼくは一度に3ガロンも食べることがあるぐらいなので、このマシンはぼくの頭の中でも3Dプリントしまくっていた。



[上の図の現物写真]

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


剛体から軟体に変化し、狭い穴でもするりとぬけられるロボットをMITが開発

近未来のロボットは、映画「ターミネーター」のT-800 Model 101ではなく「ターミネーター2」に登場するT-1000みたいになるかもしれない。MITのチームが開発した相が変化する素材は、ワックスとフォームという平凡な材料を使用しているが、剛体から軟体まで随意に変わることができる。低コストのロボットにも使えるので、形を変える性質がロボット掃除機やロボット暗殺者などにも応用できるだろう。

この素材を作った機械工学と応用数学の教授Anette Hosoiは、教え子のNadia Chengやそのほかの研究者とチームを作っている。今後の可能性としては、たとえば、内蔵や臓器、血管などに形を自在に変えながら入り込んでデリケートな手術を行うロボットなどが考えられる。MITのニュースによると、倒壊した構造物の中に入って生存者を探すロボットもあり、ということだ。


クレジット: 制作–Melanie Golnick, MIT News; ビデオ素材提供–Nadia Cheng.

このプロジェクトはGoogleが買収したロボット企業、マサチューセッツ州のBoston Dynamicsで開発が行われている。最初それは、DARPAの助成金による化学ロボット(Chemical Robots)の研究事業で、狭いところへもするりと入り込める蛸のような能力のあるロボットの開発を目指していた。工学的レベルでの最大の課題は、ぐんにゃりとした軟体でありつつ、対象物にしっかり力を加えることのできる素材を作り出すことだった。それが可能であるためには、剛体と軟体とのあいだで相変化が可能な素材でなければならない。

このたびHosoi教授らが開発した素材はワックスを利用し、そこに加熱用のワイヤが血管のように通っている。加熱されると柔らかく、冷めると硬い。この構造には、剛体のときに受けたダメージを自動修復する利点がある。まさにT-1000のように、ロボットは平面状態から起き上がったり、深い傷でも治ってしまう。

この素材は、いわゆる液体金属ではないが、しかし研究者たちは、今後のバージョンではワックスではなく、半田や白鑞(しろめ)のような強度のある材料を使えるだろう、と考えている。T-1000も、原料は一種の石なのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))