Facebookバブルは弾けた。未だにアメリカ合衆国の半分はショックから立ち直れていない。アメリカ大統領選に至る月日の間、人々は住んでいる世界とは合致しない情報を見ていたということが分かった。現実だと思っていたものは崩れ去った。
それがFacebookという世界だ。
このソーシャルメディアネットワークは、私たちの周りで起きる出来事を理解するツールを提供する巨大なプレイヤーだ。しかし、しばらく前から、他者の意見や違う視点で物事を見る場合におけるFacebookという声が反響する小部屋の弊害も指摘されていた。だが、今日ほどその影響力の強さを意識した日はなかった。
Facebookのユーザーはこの出来事を災難か、あるいは国が前進するために起きた記念すべきことか、どちらか一方のストーリーを受け取っている。Facebookのユーザーはトランプ氏の勝利は確実、あるいはクリントン氏の当確は決定的、といういずれかのストーリーしか見ていない。Facebookでは、ユーザーが持つ見解がそのまま記事の「いいね!」となり、シェアとして映し出される。Facebookでは、誰かの叫び声は全員に届くか、あるいは誰にも届かないかのいずれかなのだ。
大声で叫ぶほど、Facebookを閲覧する時間は長くなった。それに伴いFacebookの収益も増す。
Facebookはユーザーの見解を反映しただけではない。センセーショナルな記事、さらには頻繁に誤った情報で見解を誇張し、歪めていた。しかし、Facebookにそれを追及しても両手を上げて、「私たちはメディアではありませんから」と言い逃れをしてきた。
Facebookは誰でも常識の範囲内で好きな情報をシェアできる中立的なプラットフォームであると主張している。彼らのコンテンツの検査官はポルノや銃器、薬物といった違法なものや他に禁止している内容のコンテンツがないか注視している。しかしそれ以外の壁の内側にあるコンテンツの内容に関しては目を瞑る。
Facebookはコンテンツの真偽に対する責任を負っていないと主張する中でも、虚偽のニュースサイトがいくつも並び、でっち上げのニュースがネットワークに溢れかえって誤った情報がバイラルに広がった。
さらには、Facebookは「トレンド」セクションを管理していたニュース編集者を解雇し、公平だが、間違いを犯すアルゴリズムにそれを任せるようになった。人の判断を完全に排除したFacebookのニュース配信マシーンの登場は、選挙という最悪な時期に重なった。
Facebookのプラットフォームで人気の高いセクションに虚偽のニュースが入っていることを報じている記事には、アルゴリズムがトレンド入りさせた「明らかに間違った」記事をトラックしている。
Facebookのトレンドには9/11は内部の人間の犯行としたタブロイド記事やFox NewsのキャスターであるMegyn Kellyがクビになったという嘘の情報 、大学がキャンパスから祈っていた人を締め出したという噂が誤りと情報開示する声明文もある。さらには、アラジンの魔法のランプように使えるiPhoneの偽記事を、その名も「FakingNews(偽ニュース)」というサイトから取り上げていた。
Facebookはこれらの批判に対し間違いであったと認め、改善していくとして火消しを行った。
しかし、Facebookはコンテンツの精査ではなく、パブリッシャーがいかに彼らのネットワークで簡単に記事を共有できるようにするかに注力している。Facebookは文字や広告で埋もれがちな記事を読むのに最適な形式を追求し、素早くロードするインスタント記事の開発など技術的な発展に投資してきた。Facebookはユーザーがより長くサイトに滞在する方法を探していて、ユーザーがさらにターゲット広告をクリックするよう、フィードのパーソナライズに力を注いでいる。
もちろんユーザーのエンゲージメントを高める1つの方法は、ユーザーがFacebookを開いた時に良い気分になることだ。そして、Facebookはユーザーの気分を操作する方法を知っている。なぜなら、大規模な調査を行っていたからだ。
Facebookは2014年、68万9000人のユーザーのページを対象に、投稿を改変することでユーザーの気分をポジティブ、あるいはネガティブに変えることができるかの調査を実施したことについて謝罪している。
その調査結果から、ユーザーの気分を変えることができると判明している。
Facebookはそうやって集めたデータを使って、ユーザーがサイトを見続けるために良い感情を想起させるフィードだけを配信するようになるのではないかと人々は懸念した。
何か思い当たる節があるだろう。
WSJは「Blue Feed, Red Feed」のグラフィック記事で、政治分野におけるこの影響を取り上げた。Facebookはユーザーが聞きたいことだけをスプーンに乗せて与え、もう一方の見解への露出は最小限に留めていたということが分かる。
これは、少なくともFacebookにとって有益だった。2016年9月の月間アクティブユーザーは17億9000万人に登る。 前四半期には70億ドルの収益を得た。そのうち利益は23億7900万ドルで、前の四半期の20億5000万ドルより16%増加した。前年同期比では160%の増加だ。
Facebookバブルの問題は、ユーザーがアルゴリズムに騙されるということだけではない。ニュース配信においてFacebookが大きな役割を担っていることが問題を大きくしている。
-
pj_2016-05-26_social-media-and-news_0-02.png
-
pj_2016-05-26_social-media-and-news_0-03.png
2016年5月のPew Researchの調査結果から、現在アメリカの成人の過半数(62%)がFacebookを始めとするソーシャルメディアからニュースを得ていることがわかった。
そして、Facebookはその中でも最大のSNSであり、アメリカの成人の67%にリーチしている。
Facebookユーザーの3分の2(66%)がこのSNSでニュースを得ている。Pew Researchのデータによると、それは全人口の44%に相当するという。2014年時点から30%増加している。
さらに事態を悪化させているのは、ソーシャルメディアは別の主張を理解を促すのには適していないプラットフォームであることだ。 別のPewによる調査から、社会的、政治的な問題についてソーシャルメディアの情報を見て意見を変えた人はたった20%だった。ソーシャルメディアを見て選挙の立候補者への見解を変えたというのはそれよりさらに少ない17%にとどまった。
Pewは意見を変えた内容についてもさらに詳しく調査した結果、ソーシャルメディアは人々をよりネガティブな方向に変える傾向にあったという。つまり、クリントン氏について意見を変えた人々は、彼女に対してネガティブな意見を持つ傾向が3倍高く、トランプ氏から意見を変えた人は彼に対してネガティブな印象を持つ傾向が5倍高かった。
さらにSNSユーザーの82%はソーシャルメディアを見て立候補者に対する意見は変えたことはないとし、ソーシャルメディアへの影響で社会的、政治的問題に対しても79%が意見を変えないとした。つまり、誰かに何かを説得しようとする際、Facebookはそれに適した場所ではないということだ。
私たちはしばらくの間Facebookを使用しているが、今回ほどその影響力の強さを感じたことはないだろう。ユーザーにパーソナライズしたフィードで、見たいことだけが表示されるのは素晴らしいことのように思える。実際はそうではないという状況が目の前に突きつけられるまでは。
昨夜から今朝にかけて人々は、これまで見ていた情報源の情報の質が低いということに気づき始めた。見ている情報がそもそも間違っているか、偏っているかだ。そして最も重要なことは、人々が変わった同郷の叔父だと思っていた彼は異端な少数派なのではなく、怒りを抱え、不満を募らす国民の過半数を代弁する存在だということに気づいたことだ。
[原文へ]
(翻訳:Nozomi Okuma /Website)