トップシェアであるからこそ、プラットフォームになり得る──LINE舛田氏が語ったグローバル戦略

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

LINE取締役CSMOの舛田淳氏

11月17日から18日にかけて開催されたスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2016」。ここでは2日目のセッション「日米同時上場のLINE、その次の挑戦」の様子をレポートする。このセッションに登壇したLINE取締役CSMOの舛田淳氏は、米TechCrunch記者のHaje Jan Kampsとの質疑を通じてLINEのグローバル戦略について熱く語った。

まずLINEと他のメッセンジャーアプリの違いについて。舛田氏によれば、LINEは日常的なコミュニケーションに徹底的にこだわってきたという。「日常生活で会ったことのある、プライベートな関係。そんな人達を友だちリストに並べて、その中だけでコミュニケーションを取る。そんなリアルグラフに徹底的にこだわったのが開発当初のLINEの差別化のポイント」(舛田氏)

ユーザー数の伸びに意味はない

LINEは、日本や台湾・タイ・インドネシアなどアジア圏を中心に、2016年9月末時点で2億2000万人のMAU(月間アクティブユーザー数)を抱えている。一方で2016年6月末に比べるとほぼ横ばいと、ここにきて伸び悩んでいるのも事実だ。舛田氏は、グローバル全体のユーザー数の伸びについて、本質的な意味はないと切り捨てる。

「LINEが誕生した2011年から2013年頃まで、我々は『どこまでいけるんだろう』と考えていた。日本発のサービスが海を超え、アジアや欧州でどんどん普及していった。ユーザー数が毎週伸びていくなかで、世界中に足を運んで、現地のパートナーと手を結び、現地のコンテンツを調達してきた」

「ただある時、全体としてのユーザー数の伸びに本質的な意味はないことに気づいた。毎週毎週ユーザーは増えるが、全体的にユーザーが増えることには意味がない。これ(MAU)が3億になっても4億になっても5億になっても、我々の思い描いているLINEというサービスを成功させるためには、意味がないとわかった」

トップシェアである必要がある

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

米TechCrunch記者のHaje Jan Kamps

「我々のサービスは、その国々においてトップシェアでなければならない。トップシェアであるからこそ、プラットフォームとなり、その先の事業がうまれる。当時を振り返ると、LINEは多くの国で使われていたが、シェアが3位・4位という国が山ほど出てきた。短期的な投資家の観点では、例えば我々がバイアウトを考えていた場合では、ある種の評価がされるのかもしれない。ただ、私達は私達のサービスを戦略的に成長させていきたいという思いがあり、戦略を切り替えた」

「もちろんグーグルやFacebookのように、世界中で使われるサービスもある。しかし、全てがグローバルなサービスになってはいない。日本のApp Storeのランキングを見ても、決してグローバルプレイヤーだけが並んでいるわけでもない。グローバルプレイヤーが勝っていないケースはたくさんある。LINEはまさにその中の1つ」

「ネクストグローバル」はローカルに

「それぞれの国やローカルエリアによって、ユーザーのニーズは違う。(世界で)画一的なサービスを提供しようというのが、少し前のインターネットの形。ローカルから始まってグローバルになったが、『ネクストグローバル』はローカルになった。そこで文化がきちんと意識されて、慣習に合ったユーザーの行動パターンが求められている。そこにうまく最適化したところが、ユーザーを掴むのだと思う」

「我々のグローバル戦略というのは、きちんと1個1個、日本をやって台湾をやってタイをやって、次はインドネシアだと。アジアのマーケットが我々の挑戦すべきフィールドで、そこを押さえることに今は注力している。つまり(各国の)ローカルのユーザーに愛していただくことが、我々の成長に繋がる、結果としてグローバルにチャレンジできるという考え方。2014年後半から4か国に焦点を絞り、アジアフォーカスとして戦略を動かしている」

「(日本できちんとしたポジションがあるから海外に出ていきやすいというのは)あまり関係ないと思う。日本で考えたことをそのままやるというスタンスでは決して無い。日本で作ったものは当然あるが、やはり現地のスタッフが最前線でその国の人達と触れ合い、そこで生まれるアイデアを吸収して、そこで事業を行う。我々の考え方は、その国その国で最も愛されるサービスを作ることだ」

プラットフォーム化に先行してチャレンジしてきた

インドネシアはLINEがフォーカスする地域の1つだ。しかし、BlackBerry Messengerが同国のメッセンジャーアプリのシェア1位を獲得。LINEは2位と後塵を拝している。その点について舛田氏はこう語る。

「インドネシアではBlackBerry Messengerが強い。これはメッセンジャー業界のミステリーだ。とはいえ、ユーザーの属性を見てみると、若いユーザーはBlackBerryではないものをアクティブに使っている。それがLINEだ。そこではニュースが読めたり、ゲームも楽しめる。メッセンジャーだけでなく、メッセンジャーをアクティブにするためのコンテンツやサービスがあったりする」

「バラバラなサービスではなく、例えばニュースを読もうとすると、メッセンジャーを必ず通過する。LINEが持っているメッセンジャーのユーザー体験、それによって我々はインドネシアに注力するのが遅かったにもかかわらず、シェアを2位にまで伸ばすことができた」

「今はスマートフォンを1人1台持ち始めているし、アプリケーションも使われている。ただ調査によれば、スマートフォンで日常的に使われているアプリは10個もない。これは世界中で同じ。世に出ている90%以上のアプリはゾンビ化していて、作っても使われない」

「その代わりにメッセンジャーがそのプラットフォームになってきている。今までOSが担っていたサービスのプラットフォームを担っていたが、今やメッセンジャーが最もユーザーを集めるゲートウェイになり、擬似的なOSとして振る舞い始めている。WeChatもFacebook Messengerもやろうとしている、メッセンジャーの可能性。そこへLINEは先行してチャレンジしてきた」

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ドローン市場の先駆者Parrot、ブレイクのきっかけは音声処理だった


スタートアップ業界に関する日本最大のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」では、多数のプログラムが開催された。テックトレンドのセッションの中で注目されたのが、無人飛行デバイス、いわゆるドローンについての講演。

現在注目の市場であるドローンは本誌でも連日記事が登場しているが、今回は開催前の予告記事でも紹介されたように、ドローン市場の先駆者であり、代表的メーカーであるParrotから、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏が登壇。これまで日本ではあまり知られていなかった、同社がドローンに参入した意外なきっかけやドローンの可能性に関して語った。

音声処理から出発し、Bluetooth機器、そしてドローンへ

Chris氏はまず、同社の沿革とともに、なぜドローンを手がけたのかを紹介。パリに本社を構えるParrotは、もともと音声を中心としたデジタル信号処理を手がけるメーカーとして出発。90年代前半にBluetooth製品を手がけたことで、音声処理とも関わりが深いオーディオやマルチメディア系の製品、そして自動車関連機器に手を広げる。

とくに自動車関連機器では、同社が得意とする音声処理とBluetoothを活かしたハンズフリー技術を使った機器で支持を得て、多くのOEM先を獲得した。

現在Parrotの事業は大きく分けて3ライン(上図参照)となっており、1つがこの自動車関連機器という。残りの2ラインは、コンシューマー用のBluetooth接続オーディオ機器や、スマートフォン用ヘッドセットが1つ。これを同社は「Connected Objects」と表現している。

ここでChris氏は、Connected Objects分野での最新製品として、ノイズキャンセリング搭載Bluetoothヘッドフォン「Zik 2.0」と、Wireless Plant Monitorとジャンル名の付いた新製品「Flower Power」を紹介。後者は植物の脇に刺し、太陽光量や外気温、肥料濃度、土の湿度をモニターできる。つまり園芸に関連した機器となるわけだが、これは同社にとっても新ジャンルであり、大きく期待していると紹介した。

「ドローンはBluetoothで何が繋がるか、という発想から生まれた」

そして最後の1ラインがドローンとなる。ここでまずは「なぜドローンをビジネスとして手がけようと思ったか?」という点から紹介。「弊社のビジネスにおいて、ドローンは他のジャンルとの繋がりがないのでは? と言われるが、実はテクノロジーでは繋がっている」とChris氏は語る。とくに大きなトピックはBluetoothレシーバーの小型化。つまり同社にとってドローンはBluetoothで繋がる機器としての位置づけがあったという。「Bluetoothでどんなものが繋がるか、インスピレーションした結果だ」。

続けてそうした取り組みを証明するかのように、2005年に社内で開発していたというBluetooth接続のカメラ搭載ラジコンカー、プロジェクト名「BTT」(Bluetooth Toyの略)の試作機を紹介。Chris氏は当時、Parrot創業者のHenri Seydoux氏に「これは車だが、いつか飛ばしてみせる」と紹介されたという。つまり、当時からドローンの構想はできており、テクノロジーが整うのを待っていたということだ。

本格的な開発は2006年に決定したが、当時は社内でも、非常にクレイジーな計画と思われたとChris氏。実は当時の視点では、本体よりもむしろ手頃なコントロールデバイスがないほうが問題だったという。Bluetooth接続機器はヘッドセットやフィーチャーフォンが主流だったためだ。「しかし、2007年にiPhoneが登場し、続いてiOSアプリの開発が可能になった。突然イネーブラーとなりうる技術が登場した」。

ここから3年間の紆余曲折があったが、同社は2010年に初代「AR.Drone」を発売。開発にあたっては、安定した飛行で有利なクアッドコプター形状としながらも、さらに安定性を重視。「14歳の女性でも安定して飛ばせることを目標に、私たちのDSP技術をドローンの姿勢制御に応用した。OSにはLinuxを用いており、ファームウェアと合わせた機体制御には我々ならではのノウハウが多数盛り込まれている」と紹介した。

ここで実際に壇上で、現行製品であるAR.Drone 2.0をデモ飛行。機体自体を垂直方向に数回転させるアクロバット飛行テクニック「Flip」を含めて所狭しと壇上を飛行させ、実際の安定性を印象づけた。

プロ用ドローンの市場は順調に拡大

続けて、AR.Droneより小型となるクアッドコプタータイプの新製品「Rolling Spider」と、ジャンプ可能な走行型ドローン「Jumping Sumo」、さらに年末発売予定となるAR.Droneの第3世代「BEBOP Drone」を紹介。

前者2モデルはすでに発売しているが、BEBOPは未発売の製品。180度という超広角撮影が可能で、かつ3軸の角度制御が可能、さらにブレ補正も強力になったカメラをはじめ、Wi-Fiによる接続とオプションの専用コントローラーやVRヘッドセットへの対応などを「従来機に比べても大きく進化している。私たち自身も楽しみにしている製品」とアピールした。

続いて、プロ用ドローンの市場について紹介。農業分野や鉱山調査をはじめとする広大な土地状態の目視検査や、3Dマッピングによる地図データ製作といった精密測量用途での需要が増している点を強調した。

同社が買収したプロ用ドローンメーカー、Senseflyの次世代製品「eXom」についても紹介。eXomは高度な超音波センサーを備えたことで精密な障害物測定が可能となり、狭い箇所や複雑な地形下での飛行安定性が向上。さらにカメラの画質も向上しているという。

最後にChris氏は「時間が数分ありますので、BEBOP Droneのデモ飛行をお見せしましょう。日本では初めてです」と発言し、試作機のフライトを披露して観客を再び沸かせ、セッションはクローズ。「ハイテクとは楽しめるものでなければならない」(Chris氏)というParrotの姿勢が強く打ち出されたセッションとなった。


PepperとRingの共演に見る近未来のUI

「Ring」との共演も見せた「Pepper」

TechCrunch Tokyo 2014の1日目、2014年11月18日に開催されたセッション「ロボットのいる生活と近未来のUI」では、ソフトバンクロボティクスでPepper事業を手がける吉田健一氏、ユカイ工学の青木俊介氏、指輪型デバイス「Ring」を作るログバーの吉田卓郎氏がロボットとともに登壇した。

壇上には、ソフトバンクが2014年6月に発表したロボット「Pepper」が登壇者とともに立っている。そしてユカイ工学のコミュニケーションロボット「BOCCO」がテーブルの上にスタンバイしている。これらロボットと人間が、どのようなUIでコミュニケーションを取っていくのか。それはソフトウェア開発者にとっても、ベンチャー起業家にとっても、新たなフロンティアとなる領域だ。

Pepperが「マホウノツエ」で家電を制御、「Ring」で人とコミュニケート

ソフトバンクが2014年6月に発表したPepperは、プラットフォームとして開発されたロボットだ。PepperをめぐるテクニカルカンファレンスであるPepper Tech Festival 2014の場で、ユカイ工学はPepperに対応するソリューションとして「マホウノツエ」を公開した。赤外線通信機能を備えたマホウノツエをPepperが手に持ち、Pepperがテレビやエアコンを魔法でコントロールしているかのような光景を作り出した。

「魔法」をイメージしたというデバイス、ログバーのRingもPepperのためのUIとして活用可能だ。会場で見せたビデオでは、Ringのを付けた指の動き、つまりジェスチャーによりPepperを呼ぶ様子や、今日の予定をPepperに聞く様子が描かれていた。ログバーの吉田氏によれば、RingでPepperに指示を出すデモは、「3日ほどでつなぎ込みができた」そうだ。

ログバーの吉田卓郎氏

家庭を結ぶタイムライン、コミュニケーションロボット「BOCCO」

壇上に置かれていたもう1つのロボットBOCCOは、家庭のためのコミュニケーションロボットだ。公開したビデオでは、両親が共働きで帰りが遅い家庭をイメージしたユースケースを紹介した。子どもが帰宅した際、ドアに付けたセンサーを通じて職場の父親に通知がなされる。それを受けて親が子どもにメッセージを送ると、BOCCOは送られたテキストを読み上げてくれるのだ。

もちろんスマートフォンでテキストメッセージを送ることは容易なのだが、「小さな子どもにスマートフォンを持たせたくない親は多いはず」と青木氏は言う。自由度が大きなスマートフォンを小さな子どもに与えると、YouTubeで時間を使いすぎたり、怪しいサイトを開いてしまったりすることはいかにもありそうだ。BOCCOはロボットとしての個性、つまり人とコミュニケートするための性質を備えたデバイスとして作られているのだ。

Pepperを教育に、人にインプットするのではなくエンゲージする

ソフトバンクロボティクスの吉田健一氏

 

ソフトバンクロボティクス吉田氏は、Pepperにはパソコンやスマホにはない「人との関係」、エンゲージメントがあると強調する。「Pepperに入っているデバイスの技術は、実はそれほど革新的というわけではない。何が(今までのデバイスとの)違いかというと、生き物に見えるかどうか。社長(ソフトバンクロボティクス代表取締役社長の冨澤文秀氏)の2歳の子どもは、Pepperに一所懸命パンを食べさせようとする。子どもが見て生き物だと思うという関係性はパソコンやタブレットではありえない」。

ユカイ工学の青木氏もBOCCOの見た目が「ロボットっぽい」ことは重要だと考えている。自動販売機も自動改札機も、例えばユーザーの年齢を判別して挙動を変える高度な動作をする点ではロボットと呼べるかもしれないが、ユーザーは人とコミュニケートする機械とは認識しない。このセッションの文脈での「ロボットらしさ」とは、人とコミュニケートするデバイスとしての個性のことだ。

ユカイ工学の青木俊介氏

ソフトバンクロボティクスの吉田氏は、人間との関係の例として、 教育へのPepperの応用について話した。Pepperが子どもに教えるというやり方では、タブレットによる学習となんら変わらない。だが子どもと一緒に学習するスタイルだと関係が変化する。例えばPepperがわざと間違えて、子どもがそれを指摘する方が、子どもの学習スピードは上がるという。「インプットじゃなくエンゲージする、一緒に間違える」――そのようなコミュニケーションがロボットには可能なのだと吉田氏は言う。

セッションの最後で語られたのは、セキュリティ問題だ。Pepperは人と濃密なコミュニケーションをする目的のロボットだが、それは裏を返せばソーシャルハッキングの道具として使われる可能性があることを示している。「Pepperが子どもに『好きな人はいる?』などと聞くと、思わず答えてしまうかもしれない」(ソフトバンクロボティクス吉田氏)。Pepperのアプリストアでは、手作業でセキュリティチェックを実施する方針という。


成功する起業家に必要なのは「若さ」か「経験」か――国内キャピタリストに聞く

11月18日〜19日に東京・渋谷ヒカリエにて開催中の国内最大級のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2014」。2日間に渡って国内外のテクノロジービジネスにまつわる多数のプログラムが展開されているが、18日午前には「若さか社会経験か?成功する起業家に必要なもの」というテーマで、国内屈指のベンチャーキャピタリスト4人によるパネルセッションが行われた。

パネリストの詳細は以下のとおり。モデレーターを務めたのは、TechCrunch Japan編集長の西村賢。

・秋元 信行 氏(株式会社NTTドコモ・ベンチャーズ 取締役副社長)

NTTグループのコーポレートベンチャーキャピタルとして、スタートアップ支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」を始め、グループ全体のオープンイノベーションを進める。

・松本 真尚 氏(株式会社WiL 共同創業者 ジェネラルパートナー)

ベンチャーと大企業との連携推進を大きなミッションとしながら、日米を中心に投資をしている。最近ではgumiやメルカリへの投資が話題となった。

・丸山 聡 氏(ベンチャーユナイテッド株式会社 チーフベンチャーキャピタリスト)

ユナイテッド株式会社(前ネットエイジ)の子会社として投資事業を展開。インターネットビジネスの黎明期からシードアクセラレーターとして携わる。過去の投資先はmixiやエニグモなど。

・田島 聡一 氏(株式会社サイバーエージェント・ベンチャーズ 代表取締役)

サイバーエージェントの100%子会社。アジアを中心に8カ国11拠点において、シードステージ、アーリーステージを中心に投資活動を行う。

起業家に求められるのは「若さ」か「社会経験」か

―投資のステージによっても異なるかもしれませんが、シードステージやアーリーステージに投資されていると、やはり起業家は若い人が多いのでしょうか?

丸山(以下、登壇者の敬称略):うちはまだできたばかりですが、今のところ20代の起業家に投資していることが多いです。社会人未経験の人もいるし、社会人2〜3年の人も。なぜ彼らに投資しているかというと、生活費が安いからですね。その分、長い間挑戦できるので、僕らの投資スタイルにとってはアドバンテージになります。

秋元:うちも「ドコモ・イノベーションビレッジ」というインキュベーションプログラムをやっていますが、投資先全体のポートフォリオを見ると、ミドルステージ以降の人たちが多くなっているので、あまり学生はいません。それは、うちがベタベタのストラテジックリターンを目的としたコーポレートベンチャーキャピタルの志向なので、本体やグループ会社とのシナジーを追求しようとすると、シードの段階では、なかなか話を進めるのが難しいからです。

松本:年齢はあまり気にしたことはありませんが、うちの本社があるシリコンバレーでは、起業家の平均年齢は35〜40歳くらいが多いんですよね。我々の場合は、ある程度知見を持っている方に対しての投資が日米ともに増えています。

田島:うちの場合、事業会社で一定の成果を出した方が起業するときや、一度起業して会社を売却した方の二度目のチャレンジのときに投資するケースが多いです。それは失敗経験を積んでいる分、成功に対してショートカットできそうな方が多いからという理由と、「サービスじゃなくて産業を売りたい」といったような目線の高い方が多いという感覚があるからです。IPO時に時価総額1000億円を狙っている企業が多いですね。

―起業家の良し悪しについては、どのように見極めていますか?

松本:うちのメンバーは皆インターネット業界に15〜16年くらいいるので、起業家の方ともどこかしら友人関係でつながっている場合が多いです。シリコンバレーに(ベンチャー)村ができているように、日本でもベンチャー村みたいなのができてきているんですよね。まったくお会いしたことがない方は、いっしょにお仕事をされたことがある方にアポをとって、ボードメンバーすべての人物評価をしていただいて、それをある程度信用しながら進めていくことが多いです。

―逆に、若い人がデビューするには、どうすればいいですか?

丸山:今はシードアクセラレーションプログラムが増えているので、そういうところに入っていく方法もありますが、全体で言うとマジョリティではないと思います。大半の人は、まずサービスを作ってみるというところから始めています。起業の前から、ふわふわした段階の事業プランを元に、1〜2年かけてメンタリングをしながら投資に至るケースも多いので、僕らのようなベンチャーキャピタリストを使ってもらうのもひとつの手かなと。

マーケットを「取られる」のか「取りに行く」のか

―肌感覚として、何割くらいの起業家がグローバルを目指していますか?

丸山:世界に目を向けている起業家は日本では圧倒的に少ないですね。極端かもしれませんが、1対99くらいの感覚。本当に世界を見ている人は少ないと思います。今の世の中って簡単にグローバル展開できるので、まずは可能性を模索してみようという意味で、身近な問題を解くだけではなくグローバルに挑戦してみようという話はしています。

―起業家からすると、言葉の違いも大変だし、日本のマーケットは結構大きいし、イグジットも見え始めて……という「プチイグジット問題」(小さなイグジットを目指してしまいがちということ)のようなものがあるように思いますが、その辺りについて、どう思われますか?

松本:僕らはその“プチ感”をなんとか打破したいと思っています。gumiやメルカリにも、「そのまま上場するのではおもしろくないから、世界で戦うための金を調達しよう」と言ったんです。日本で数百億円で上場するということは、グローバルで1000億、2000億を目指せる環境があるってことじゃんっていう話もしますし。

世界中の人が困っているのであれば、課題を解決する対象が日本人だけである必要はない。自分のプロダクトで世界中の人を喜ばせたいという「志」さえあれば、国境なんて関係ありません。日本でゆっくりやっている間に、いつの間にか海外でメジャーになっていたなんてことになるのは残念なので、作った瞬間に5カ国対応くらいすれば? と思いますね。

田島:僕らは東南アジアで(投資を)やっているんですけれど、たとえばインドネシアの起業家は、インドネシアのマーケットが大きいので東南アジアに出て行きたいという人はあまりいません。でも、タイやベトナムやマーケットが小さいので、みんな東南アジアに出て行きたいと言います。日本でもこれと同じことが起こっているのかなと。つまり、日本の中にはそれなりのマーケットがあるので、その中でやっていけばいいと思っている人が多いんじゃないかと思うんです。

隣の韓国は、スマホの普及率が8〜9割になっていますが、マーケットがないので外に出て行きたいという勢いが極めて強い。取られるのか、取りに行くのか。世界大戦になってきているので、市場機会に気付いて、どんどんアジアや世界を取りに行くような起業家が増えればいいと思っています。


イノベーティブな起業を叶えるには、バカげたアイデアを採用すること――BoxのCTOが起業のコツを伝授

11月18日から19日にかけて東京・渋谷ヒカリエで開催中のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」。今年も海外から多数のゲストが参加しているが、企業向けクラウドストレージを展開しているBoxのCTOを務めるSam Schillace氏もその1人だ。Schillace氏は技術者、起業家としても豊富な経験を持つ人物。「Google Docs」の前身となるプロダクト「Writely」を開発し、2006年Googleへ売却したスタートアップ「Upstartle」の創業者兼CEOを務めたほか、現在のテックシーンには欠かせないテクノロジーやサービスを世に送り出してきた。

連続起業の実現のために必要なのは「破壊的なアイデア」

Schillace氏は、現在までに6つのビジネスを立ち上げてきた。もちろんそのどれもが成功を収めたわけではなく、失敗に終わる経験もあった。一度の起業で成功を果たすことも決して簡単ではないが、連続起業を実現するために必要なのは「ハードな、破壊的なアイデアを見つけること」だと話す。

シリコンバレーのキーマンとしては珍しく、コンピューターサイエンスの学位を持っていないSchillace氏。さらに、起業人生をスタートした当初は、スタートアップにフューチャーするメディアもなかった。それでもゲームソフトウェアの会社を起業した。

Schillace氏は当時を振り返りつつ、「 単に『起業のための起業』ではなく、自分のやりたいこと、イノベーションに対する情熱がないとだめだ。そして、それが好きだということが大事だ。それが次の創業につながった」と熱っぽく訴える。ちなみに、なぜネットワークゲームの会社を起業したのかその理由は実にシンプルで「もっと速く、複数人でゲームをしたかったから」だそうだ。

奇妙に思われるアイデアこそ挑戦する価値がある

新しいテクノロジーで遊んでいて、それが起業の情熱にもつながった。では、なぜ失敗もしたのだろうか。Schillace氏はイノベーションのパターンを見つけられるメソッドを生み出した。ズバリ「奇妙に思われるアイデアにこそ挑戦する」ことだ。

奇妙に、そしてバカバカしいと思われるアイデアに挑戦するには、自分たちで使うツールを常に最新状態に保たなくてはならない。また、素早くトライアル(実験)を重ねることが必要であり、そのトライアルに対するユーザーのリアクションを常にウォッチすることが必要である。

ユーザーのリアクションが平凡なら、そのサービス自体が平凡

セッション冒頭から、「破壊的なイノベーティブ」というキーワードを繰り返し使うSchillace氏。

「何かサービスを公開すれば、ユーザーのリアクションが起こる。そしてその中には、何かとても奇妙な反応が必ず現れる。そして一部の少数の人はそのリアクション内容をとても気に入る。つまり、1つのサービスに対してものすごい好きな人、ものすごい嫌いな人が登場する。もし、平凡な反応しかなかったら、そのアイデアはイノベーティブではなく、平凡なものであるということだ」――人は多くの人に受け入れられるサービスやアイデアを採用しがちだが、それは安易な選択であると明言した。

続けてSchillace氏は「これから起業を目指す人に、レッスン形式でレクチャーするならば」と前置き、新しいイノベーティブにつながるヒントを4つにまとめてくれた。

  • レッスン1:可能か、可能でないかのギリギリラインのうちに目をつける。カッティングエッジにいること。
  • レッスン2:使うツールを常に最新状態に、シャープに保っておくこと。
  • レッスン3:強いリアクションを大切に、イノベーティブなアイデアは強いリアクションから生まれる。
  • レッスン4:筋が通っていないように見えても、バカげているように感じても、そのアイデアを採用し、実験していくこと。

 

あなたはそのアイデアやサービスに情熱を傾けられるか?

起業するには自分で「どのようなアイデアやテクノロジーを選択するのか、そのアイデアやテクノロジーはイノベーティブなのか」を選択・判断しなくてはならない。とても重要な判断だが、何を基準にすべきなのろうか。Schillace氏は闇雲に新しいテクノロジーやアイデアを採用して起業へ突き進むのではなく、「(採用しようとしているテクノロジーやアイデアが)破壊的に、興味深い分野であることを見極めること。そして、その分野に自分が情熱を傾けられることを選ぶこと」ことが重要だと主張する。

では、破壊的にイノベーティブなアイデアやテクノロジーをどう見極めればいいのか? 例えばBitcoinを例に挙げよう。これはさまざまなテクノロジーが進化した結果、分散型の信頼できるシステムが構築できた結果誕生した産物であるが、市場には非常にバカバカしいと受け止められた。だが、実際にそのテクノロジーはイノベーティブである。

クアッドコプターなどのドローン、3Dプリンターも同様だ。誕生し、発表された当初は「オモチャじゃないか、こんなもの必要ない」と受け止められていたが、ドローンは新しい流通システムの一翼を担う存在として期待されているし、3Dプリンターは今や医療機器分野において重要な位置を確立している。今の時代は「新しいものがまとまってより効果的に登場している」(Schillace氏)のである。

どんな人にもイノベーティブは重要

「どんな人にもイノベーティブは重要である。テクニカルイノベーションはミステリアスなものではない。また、たとえ大企業であっても成功している企業は、テックカンパニーのスピードで動いている」自身の強い信念で起業を続けている彼は最後に印象的な言葉を使い、セッションをまとめた。


ウチは出会い系ではありません――デートアプリTinderの美人役員が語る

スタートアップに関する日本最大規模のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」。初日となる11月18日の「ファイヤサイド・チャット」に登壇したのはオンラインデートアプリ「Tinder」を開発するベンチャー、TinderのVice PresidentであるRosette Pambakian氏だ。

自らを「出会い系サービスではなく社会的なつながりを作り出すサービス」とし、現在世界各国に3000万ユーザーを抱えるTinder。モデレーターを務めるTechCrunch Senior EditorのRyan Lawler氏が、サービス利用のコツからその世界観、さらには未来像までを聞いた。

異性ウケを狙うなら「趣味を楽しんでいる写真」がベスト

2012年にアメリカで誕生したTinder。アプリとFacebookアカウントとを連携するだけでサービスの登録は完了する。あとは位置情報を利用して現在地付近にいる異性とマッチングし、メッセージなどを通じて仲良くなれば、デートにつなげることができるサービスだ。

サービスの仕組みやユーザーインターフェースはユニークで、アプリに表示された異性を「いいな」と感じた場合は右にスワイプし、「残念ながらパスしたい」と感じた場合は左にスワイプするというもの。スワイプする度に他の異性が次々に表示され、ゲーム感覚で好みの異性を探すことができる。

プロフィールに写真を複数枚登録している人が大半だが、トップに表示される写真が勝負の分かれ目になる。これほど写真が重要視されるサービスはない。「異性とのマッチング率が高い写真に共通するのは、その人の個性や性格が一目で伝わりやすいもの。たとえばサーフィンやロッククライミング、ヨガなど、趣味を楽しんでいる最中の写真は好感を持たれやすい」とRosette氏は話す。

とはいえ「外見がすべて」というわけでもない。Facebookアカウントの情報をもとに、相手との共通の友人や趣味なども表示されるため、共通項にピンと来た相手から気に入られる可能性もある。ただし「両思い」にならないと、アプリ上で連絡を取り合うことはできない。

これについてRosette氏は「近年FacebookやTwitterなどのSNSは普及したが、Tinderのようなデートアプリはこれまでほとんどなかった。既存のSNSでは知らないユーザー同士、お互いに興味があっても、つながりを持つことは難しく、デートアプリの存在意義を感じていた」と振り返り、さらにこう続けた。

「ハラスメントが起きるのは避けたかった。となると、気に入った相手同士でチャットをするほうが、男女ともに安心して快適に使うことができる」(Rosette氏)

リアルと同じく、女性のほうが好みがうるさい

しかし、Ryan氏は「そもそも知らない相手同士が個人的に会うことに抵抗を感じないのか?」と根本的な疑問を口にする。これに対しRosette氏は、わかりやすい例を挙げて説明した。

「たとえばコーヒーショップでくつろいでいるとき、知らない人から突然声をかけられると『怖い』と感じる人が多いはず。Tinderではスワイプしながら気に入った相手を選び、まずはチャットから始めて、気軽に出会えるのが特徴。リアルの場でのように、いきなり声をかけて拒絶される恐怖感もなく、多くのユーザーがライトな社交を楽しんでいる」

続いて「男性と女性それぞれの使い方で、顕著な違いはあるのか?」と尋ねたRyan氏に対し、Rosette氏から興味深い回答が飛び出した。

「現実社会と同じく女性ユーザーのほうが好みがうるさいと感じる(笑)。男性ユーザーに比べると左にスワイプしてパスする率が驚くほど高いほか、閲覧時間が長い。1日の平均利用時間は男女あわせて77分との結果が出ているが、セッションごとに集計すると女性は約8分半、男性は約7分半となった。またマッチングした人のうち、60%がチャットに発展しているが、女性からメッセージを送るケースは少なく、男性から送ることが大半だ」とRosette氏。ネットを通じた出会いとはいえ、リアルでの出会いや恋愛シーンを重なる部分は少なくないことがわかる。

では実際に、どのような目的で、どのように使われているケースが多いのか。もちろんデートアプリと銘打っているように、恋人探しに使う人が大半だろうが、他の使い方もあるのだろうか。

「短期または長期的な関係に発展する出会いを求めるユーザーもいるが、社会的な出会いを求めて使っているユーザーが多い。たとえば出張先でビジネス目的で使う人、旅先で友達を見つけるのに使う人も少なくない」とRosette氏。Tinderユーザーがいる国で使えば、何らかの出会いにつなげることができるのだ。

自分のニーズに合った使い方を楽しんで

さまざまな形での出会いを提供するTinder。しかしRyan氏は「(ネガティブな意味での)『出会い系』ではないと説明しても、今の説明を聞くと、捉え方によっては出会い系として見られることもありそうだ」と指摘する。

これに対しRosette氏は、「私たち自身は“つながりを生み出す”ためにTinderを運営しているが、どう使うかはユーザー次第で、私たちからどう使うべきかは伝えていない。長期的な関係性になるパートナーや恋人探しをするもよし、友達を探すもよし、ビジネス上のつながりを構築するもよし。とにかく、まずはつながってみては、とだけお伝えしている」と分別を持った大人が、自己責任で使うことを強調する。

現在Tinderでは毎日約4000万ものマッチングが見られ、Rosette氏の元にはユーザーからの感謝の声が数多く寄せられているという。「人生が変わった」「友達ができた」「出会った相手と結婚した」など報告内容はさまざまで、結婚式に招かれることもあると話す。

今後の展開については、「2015年にはインドやインドネシア、トルコなどをはじめとする新たな国への進出を目指している。日本のようにスマホ市場が伸びている国々を狙っている」とサービス拡大のため、引き続き海外展開に注力すると宣言した。

さらに、11月6日にリリースされたばかりの有料版「Tinder Plus」にも注力すると語った。「ユーザーからリクエストの多かった機能を搭載したのがTinder Plusだ。たとえば『undo』機能では一度パスしてしまった相手を、必要であれば再度見られるようにしている。もうひとつの目玉『パスポート』機能を使うと、現在地以外のロケーションにいる人とも出会える。たとえば東京から出張でロサンゼルスに行く場合、東京にいる間にロサンゼルスの人をチェックし、出会いにつなげることができる」(Rosette氏)

多種多様なニーズの出会いを楽しめるTinder。大人のライトな社交場、といったところだろうか。日本でも確実にユーザーが増えているが、デートアプリ文化を創る主要アプリとなるか――今後の展開に注目したい。


「最新のアプリ? ほとんど使っていないよ(笑)」Product Hunt創業者が来日講演

今年もいよいよスタートアップ業界最大のイベント「TechCrunch Tokyo 2014」が始まった。国内外のキーパーソンや注目のスタートアップが集結し、11月18日から2日間にわたってさまざまなテーマの講演やパネルディスカッションを繰り広げる。

有名どころではシリコンバレーのスタートアップ界隈で最も注目されている情報サイト「Product Hunt」の創業者、Ryan Hoover氏が来日中だ。Product Huntはテクノロジー関連プロダクトのためのソーシャルニュースサイトといった位置づけのサービスで、すでにY Combinator、Google Venturesなどから計700万ドルを調達した注目株だ。

TechCrunch Tokyo 2014のオープニングセッションでは、そんなHoover氏に「シリコンバレーで次に来るアプリ・サービスは?」というテーマで、元TechCrunch記者のSerkan Toto氏が切り込んだ。

一番のお気に入りは「Instacart」

まず気になるのは、Product Huntのようなサイトを運営するHoover氏が、日々どんなサービス・アプリを利用しているかである。すると同氏が一番に挙げたのが「Instacart」だった。

Instacartは食品をはじめとした日用品を当日配送してくれるサービスである。シリコンバレーの住まいには近所にスーパーマーケットがないため、こういったサービスが重宝するようだ。

「時間の節約にもなる。実際、年をとるにつれて、こういった便利なサービスが好きになってきた。配送にかかるプラスアルファのお金もそんなに問題ない。10代の頃だったら気にしたと思うけどね」(Hoover氏)

Toto氏も同じような用途で楽天市場を使っているという。「重い水とかは運びたくないからECで注文している。日本だと楽天がInstacartに近いかもしれないが、食品関係の即日配達はないかもしれない」と話す。

ちなみにHoover氏は当然のようにTwitterも利用しているが、お気に入りのクライアントアプリはデスクトップ版「Tweetdeck」だそうだ。

 

「常時50〜60サービスは見てるけど、ほとんど使ってない」

最近、驚愕したサービス、あるいはスタートアップはあるか? との質問にはあっさりと「ない」と答えた。「いろいろな製品を常時50〜60は見ている。トレンドとかインスピレーションを受けるが、とはいえ、ほとんど使っていないよ(笑)」とぶっちゃけた。

でも興味を持ったのは、Snapchatの新サービスである「Snapcash」だという。すぐに消えてしまう写真共有サービスとして知られるSnapchatが個人間の送金をサポートしたものだが、「非常に面白い」とHoover氏は評価した。

もう1つ、「Refresh」というアプリにも注目だという。1年半ほど前にリリースされたアプリだ。「Refreshはカレンダーと紐付いて、誰にいつ会うのかといった情報を取得し、その人のバックグランドを送ってくれる。これで(出会う際の)心の準備をしている」とその用途を紹介した。

似たようなGmailの拡張機能に「apportive」というものがあるとToto氏が補足。こちらはLinekedInから相手の情報をピックアップしてくるサービスのようだ。

シリコンバレーの「Next Big Thing」は何だろうか。Hoover氏ならきっと何かに気づいているのではないか?とToto氏が問いかけたが、「その答えを持っていたら、こんな仕事をしていない(笑)」とあっさりかわされた。

特殊な用途にフォーカスせよ

それでも見解として語ってくれたのは次のようなことだ。「クリエイティビティのあるスタートアップは人々の行動パターンを変えようとしている。それが一般人に理解してもらえるか、根付くかはすごく難しい。スナップチャットがいい例で、あのサービスはすでに確実な写真共有の方法が確立されていると理解した上で始まった。もともとあったユーザー行動を研究し、その中でも特殊なユースケースにフォーカスしたことで生まれた」

要は「“あれもこれも”はもうダメだ」ということ。「狙いを定めたユーザー行動の、特定のユースケースにフォーカスしていくのがとても大事だ」とHoover氏は主張した。そういった流れがいま起きている。

「いまアプリは“分散化”しつつある。大企業もスタートアップも特定のユースケース、あるいはエクスペリエンスにあわせて細かいアプリを複数出すようになった。Facebookも別ブランドで「SlingShot」などのアプリを提供している。Pathもメッセージに特化した「Path Talk」を出した。分散化がトレンドかもしれない」(Hoover氏)

Toto氏は日本の無料通話・メッセージアプリ「LINE」を例に挙げた。「LINEは無料通話とメッセージを提供するマザーアプリだけではなくて、ゲームアプリ、Eコマースアプリ、ニュースアプリなどを次々に公開している」と紹介すると、Hoover氏もLINEの動きは認識しており、「分散化」の一例とみなしていた。

 

日本の起業家にアドバイス「あまりクリエイティブになるな」

Toto氏からHoover氏に最後の質問。米国に進出したいという起業家がいたとして、何かアドバイスをもらえないだろうか?

それについては「自分も学んでいるところ。まず文化的な壁がある」と語った。「キャッチコピーなどをそのまま翻訳しても意味がない。それが我々が日本に出るときにも同じ壁にぶつかるだろう。とにかく文化を学ぶ必要があるということ。それはどこでも同じことだ」と非常に謙虚に語った。

さらに「あまりクリエイティブになるな」と釘を刺した。どういうことかというと、まずは「自分のアイデアが本当に受け入れられるのか」にフォーカスすべきだという。

「あなたのアイデアがどの程度の関心を集めるかをまずは計測して、徐々に拡大していくこと。いまやサービス開発の時間はどんどん短縮されている。まずは小さなプロダクトを作って、どういうユースケースに対応するのかを明確にすることだ」(Hoover氏)


TechCrunch Tokyo 2014、スタートアップバトルでプレゼンを競うのはこの12社だ

いよいよ明日11月18日から11月19日にかけて東京・渋谷ヒカリエで開催する「TechCrunch Tokyo 2014」。これまで各セッションの内容や見どころのまとめという形で紹介してきているが、1つ大事なことをお伝えし忘れていた。そう、メインイベントの1つ「スタートアップバトル」の登壇者だ。

スタートアップバトルは創業3年以内のスタートアップに限定したプレゼンバトルだ。今年は昨年より30社ほど多い113社が応募してくれたが、その中から事前審査で選ばれた12社が自慢のプロダクトについて5分間のプレゼンを行う。ちなみに2012年は電動パーソナルモビリティを手がけるWHILLが、2013年は「Ring」を手がけるログバーがそれぞれ優勝を果たしている。今回本戦に勝ち進んだスタートアップをざっと紹介していこう。

mikan

mikanが提供するのは「圧倒的に一番速く覚えられる」を標榜する英単語アプリ。TinderライクなUIで英単語を知っている、知らないに分け、知らない単語に何度も接触することで、ベータテストでは1日1000単語という記憶スピードを実現したという。

AgiC

AgICは家庭用プリンタと伝導性のインクを組み合わせることで、電子回路の高速な試作を実現するプロダクト。IoT、メイカーズムーブメントなんて言われているが、実は電子回路に関しては、革新的な試作というものはなかったそうだ。AgiICでは、自社プロダクトを利用することで、通常1週間ほどかかっていた電子回路の試作を2〜3分に短縮するという。

STANDING OVATION

同社が提供するソーシャルクローゼットアプリ「XZ」は、自分の手持ちのファッションアイテムを登録し、自分が登録したアイテムやほかのユーザーが登録したアイテムを組み合わせて、コーディネートを作成できるアプリだ。将来的にはこのアイテムをもとにCtoCやBtoCのコマースにつなげていく予定。

フォトシンス

フォトシンスが手がけるのはスマートロック「akerun」。ドアの内側にこのakerunを取り付ければスマートフォンを使ってドアの開閉が可能になる。購入者以外のスマートフォンにも開錠権限を与えられるため、ハウスキーピングやしスペースの入場管理などでの活用が見込まれる。

ミニマル・テクノロジーズ

ウェブサイトに1行のスクリプトを埋めるだけで他言語化を実現できるサービス「WOVN.io」を提供。テキストの機械翻訳のような手軽さを感じてしまいがちだが、サイトの他言語化というのは実は翻訳にとどまらない大変な作業。WOVN.ioはそれを非常に手軽にしてくれる。

baton

batonが提供するのは、対戦型の学習アプリ「クイズマッチ」。入試に出るような問題をクイズ化し、全国のユーザーがクイズ形式で対戦できるというもの。現在は日本史に限定して約2000問を配信中。利用は無料となっている。

ビズグラウンド

同社のサービス「Bizer」はもともとスモールビジネス向けの士業や専門家への相談サービスだった。だがそれはあくまでサービスの一部。実はバックオフィスの業務支援サービスを開発していた。例えば新たに社員が入った時に何をするべきかというタスク管理や文書の作成などをサポート。専任者なしでのバックオフィス業務を実現してくれる。

FiNC

FiNCはスマホアプリを活用したダイエット家庭教師サービス。クラウドソーシングで集めた管理栄養士がユーザーのアップした食事に対する評価をしてくれるほか、専門家によるトレーニングの指導、遺伝子検査やアンケートをもとにしたオリジナルのサプリメントなどを提供する。

スペースマーケット

スペースマーケットは、あらゆるスペースをネット上で貸し借りできる、いわばビジネス版の「Airbnb」だ。ベンチャー企業の会議室から、お寺や野球場、帆船、はてはお化け屋敷まで、あらゆるスペースを借りることができる。

ベントー・ドット・ジェーピー

bento.jpは、スマホアプリを2タップするだけでお弁当を注文できるファストデリバリーサービス。メニューは日替わり、価格はデリバリー費用込みで500円。もちろんエリアは限定されるが、最短1分、平均10分でオフィスまでお弁当を届けてくれる。

yTuber.tv

「yTuber.tv」はYouTubeの様々なコンテンツをキュレーションして、テレビのチャンネルのようにカテゴリ分けした、いわばYouTubeの「ラテ欄」を作っている。そして同じコンテンツを視聴しているユーザー同士でメッセージのやりとりが出来るサービスだ。

オープンロジ

「物流をもっと簡単・シンプルに」をコンセプトにした中小事業者・個人向けの物流アウトソーシングサービス。物流会社と連携することで、本来手続きがかかり複雑な料金体系を持つサービスを簡素化した。代表の伊藤秀嗣氏は富士山マガジンサービスの物流システムの構築から約10年間事業に携わった後に起業した。

以上が今年登壇する12社となる。昨年僕は観客席から見ていたわけだけれども、今年は事前のプレゼンから見させてもらっている。どこもプレゼンのレベルが高く、またジャンルもC向け、B向けのウェブサービスからIoTまで幅広いので、正直優勝の予測がつかない。栄光を勝ち取るのははたしてどのスタートアップになるのか。

なお、このセッション様子は当日Ustreamでも公開する予定だ。さらにバトルの直前には、昨年優勝したログバーの吉田卓郎氏も登壇の予定。一般販売までの経緯を語ってもらうほか、デモも披露してくれるという。


Pebble創業者もTechCrunch Tokyoに来る! どうなるスマートウォッチ?

週明けの火曜日、水曜日(18日、19日)に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人ご紹介したい。スマートウォッチの先駆者であり、ハードウェアスタートアップとしても注目の「Pebble」の創業者であるエリック・ミジコフスキー(Eric Migicovsky)氏の登壇だ。

ほかのセッションなどTechCrunch Tokyo 2014の紹介記事は、こちら

Appleがセクシーなスマートウォッチ「Apple Watch」を来年市場投入すると発表したり、GoogleがAndroidコミュニティと多数のパートナー企業という後ろ盾を得て、Android Ware市場が出てきて進化しているいま、独立系スタートアップのPebbleの立ち位置はどうなるのか、というのは大いに気になるところだ。サムスンに至ってはオリジナルのSamsung Gearに始まり、これまでTizen OS搭載、Android Wear搭載モデルを含めて6機種もリリースしている。LG電子やモトローラは丸型のかわいいAndroid Wearウォッチを出している。

市場としても腕に巻くウェアラブルデバイスの市場は急成長している。調査会社Canalysが2014年8月に発表したデータによれば、2014年上半期の市場規模は前年同期比684%と7倍近くになっている。そのほとんどはウォッチでなくバンドだが、多くのウォッチがバンドの機能を兼ねていることや、ウォッチの製品群がまだ出たばかりということを考えると、今後スマートウォッチ市場が大きく伸びる可能性は高そうだ。Pebbleはこの9月に大幅な値下げを行うと同時に、Fitbitのような活動量モニター系のアプリのためのバックグランド実行機能を強化している。これも、ウォッチがバンドを兼ねるという市場動向に対応してのこととも考えられる。

ほかのスマートウォッチとPebbleの違いはいくつかあるが、最大の違いは先駆者としてコミュニティベースで登場して、成長していることだろう。まだ他社のスマートウォッチの噂しかなかったころに、Kickstarterで華々しくデビュー。2012年4月のキャンペーンでは、10万ドルの目標金額をわずか2時間で達成。最終的には1000万ドル(約10億円)を超える支援金が集まるというKickstarter始まって以来の大きな調達記録を作った(ちなみに現在、Kickstarterの歴代支援額トップは2014年8月にCoolestという「21世紀のアイスボックス」によって塗り替えられた)。

Pebbleは電子ペーパーをディスプレイに搭載していて7日連続稼働可能というのも、ほかのスマートウォッチと違うところだろう。ぼくはここ何カ月かGoogle Wareを使っているけれど、1カ月に2、3度は真っ黒な画面の腕時計をしている感じで、バッテリ持続時間は大事だなと痛感している。

初代Pebbleはカラフルでスポーティーな腕時計だったが、この1月にはクラシックなデザインのPebble Steelも発売している。初代Pebbleが99ドル、Steelが199ドル。Steelは機能的には変わっていないものの表面の指紋防止性能が向上していたり、充電プラグを刷新して使い勝手を上げたりしているそうだ。

さて、Pebbleはスマートウォッチ市場の先駆者としても注目だが、ぼくはエリックの話でより傾聴すべきはハードウェアスタートアップとしての側面と思う。背が高すぎて既成品の椅子では飽きたらず、高校生のときに自分で持ち運び椅子を設計してしまったり、何でも「作る」ことが好きだったエリックが、どうやってプロトタイプを作り、そしてコミュニティを育てていったのか。以前、ぼくが聞いたエリックの講演で、彼はこんなことを言っていた

「Pebbleのプロトタイプを作るとき、ユニットあたり数ドルのコストのために素材を探しまわったことは、振り返ってみれば意味がなかった。そんなことより、開発者を巻き込むエコシステムを1日も早く作ってフィードバックをもらうことが大事。初期ユーザーはアーリーアダプターやファンが多いので、完成度に対する要求レベルが低い。だから、初期段階では素材にこだわるよりも1日も早くMVPを作って出せ」

Fortuneのインタビューに答えたエリックによれば、Pebbleには2014年3月時点で約1万2000人の登録開発者がいて、約1000以上のアプリがストアに登録されているという。テックジャイアントとの厳しい競争にされはじめたPebbleだが、今後なにがスマートウォッチの差別化ポイントとなっていくのか。エリックの話はKickstarterを経て成長中のハードウェアスタートアップの成功談としても、最高のストーリーとなるはずだ。

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参加はラストコール! 18日のCTO Nightの登壇CTOをご紹介

すでに告知させて頂いているイベント、CTO Nightの開催が来週18日火曜日と迫ってきたので、聴衆としての参加の呼びかけのラストコールとともに、登壇CTOのご紹介をしたい。

今年のCTO Nightは、1人(1社)あたり5分の発表と3分のQ&Aセッションを行い、全9社に登壇してもらうピッチ・コンテストとなっている。「技術によるビジネスへの貢献度」という観点から審査をし、2014年に最もイケてるCTOを1人選んで「CTOオブ・ザ・イヤー」として表彰するというのがイベントの趣旨だ。

CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればと考えている。スタートアップ企業のCTOの方々の取り組む課題なので、チーム全体の開発力向上のために何をやっているのかという人間組織に寄った話と、ガチのエンジニアリングの話の両方がある。例えば、スマートトイの「Moff」の米坂CTOは「ハードウェア、アプリ、クラウドで構成されるMoffの技術的な取り組み、主にセンシング解析技術(リアルタイムモーションセンシング)によって人間の自然な動作の認識に近づける挑戦」について話てくれるそうだ。

以下が登壇企業(プロダクト名)と、CTOの方々だ。

・Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
・freee株式会社(freee) 横路隆CTO
・Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
・ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
・株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
・株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
・株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO
・株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
・株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

コンテストは夕方4時にスタートして90分ほどでピッチ大会と表彰を行い、そのままTechCrunch Tokyo 2014の交流会と合流する形となっている。イベント内イベントという形なので、TechCrunch Tokyo 2014の本編チケットをお持ちの方は、そのままCTO Nightにも参加していただける。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2014初日の11月18日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを9社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2014」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
審査員
・グリー 藤本真樹CTO
・クックパッド 舘野祐一CTO
・ビズリーチ 竹内真CTO
・はてな 田中慎司CTO
・サイバーエージェント 佐藤真人CTO
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
問い合わせ先】techcrunch@event-info.jp
チケット】税込み2160円(懇親会参加費含む)


1000億円企業目前、話題のデートアプリ「Tinder」もTechCrunch Tokyoに来るぞ

11月18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人ご紹介したい。モバイルのオンラインデートアプリ「Tinder」でバイス・プレジデントを務めるロゼッテ・パンバキアン(Rosette Pambakian)氏だ。左の写真にあるように、ロゼッテはそのままTinderのモデルになれそうな風貌の女性で、きっとTinderの戦略だけじゃなくて、実際に彼女の周囲の人々がどうTinderを使っているかも話してくれると思う。

TechCrunch Japanの読者なら、Tinderのことは知っている人も多いだろうし、それなりに使っている人もいるかもしれない。スマホで異性の写真を見て「好み」「好みじゃない」と直感的に右へ左へと写真をスワイプしていくテンポの良いTinderのンターフェイスは、ファッション系アプリや、学習アプリニュースアプリでの模倣もあるぐらい斬新なUIとして広まっている。Tinderは、単に左右スワイプだけでなくて、「ダブルオプトイン方式」というのが新しかった。選ぶ方、選ばれる方の双方が「好み」としたときにだけチャットを始めることができる。

写真だけでデート相手を選ぶなんて、単なる出会い系でしょという批判もあるようだけど、進化心理学的な観点からはとても理にかなっているという意見もある。つまり、ぼくら人間(あるいはサル)は生存競争やメーティング戦略において、きわめて限られた情報を元に最善の判断をしてきたし、実はすごくその能力に長けているということだ。カメラに向かう肩のアングルや表情、周囲に写り込んだモノを見るだけでも、その人となりがだいぶ分かるし、チャットでメッセージを1、2往復もかわせば、それ以上話をしても仕方ないかだって分かるもの。ちなみに、日本では出会い系というといかがわしいニュアンスを帯びるが、米国では新婚の3分の1はその出会いがオンラインで、こうしたカップルの離婚率はオフラインで知り合った夫婦よりも低いという調査もある

Tinderは旅行先で非日常の恋を探すような若者の間で人気になっているという面もあるというが、今や24言語で提供され、約1000万人にも及ぶDAUがある大人気アプリとなっている。2013年には、TechCrunchを含む、GigaOm、VentureBeat、ReadWriteWebなどのテック系メディアが選ぶベストスタートアップ賞のCrunchiesを受賞しているほど注目されてもいる。

ここ1年ほどで東京でもずいぶん利用が増えてきている印象もあるが、まだまだ日本での利用は全然少ないようだ。Facebookで言えば2008年ぐらいの感じだろうか。

そういう状況だから分かりづらいけど、Tinderはアメリカでは「次のユニコーンクラブ会員になる日も近い」「とっくにビリオンは超えている」などと言われ始めている。テック系スタートアップ業界のユニコーンクラブというのは、短期間で時価総額が1000億円(1Bドル)を超えた稀有の成功事例のことで、例えばここに2014年4月の世界のユニコーンクラブ一覧表がある。

Tinderはアクティブ率も高く、デート・アプリとしては高い人気を誇っている。Tinderは、OkCupidやMatch.comといった出会い系サービスのほか、TripAdvisorやExpediaといった旅行系サイトも買収してきたIACという大手ネット企業から出てきたスタートアップ企業で、最近10%のエクイティを買い戻していたりする。このIACの圧力なのか、実は最近Tindert共同創業者のショーン・ラッド氏がCEOから降格となって、代わりとなる「エリック・シュミットのようなCEO」をTinderは探しているのだと伝えられている。現在進行形の話なのでTechCrunchの記事でも推測の部分が多いが、IACが「ユニコーン」を、ビジネス面での実績のない若いCEOに任せておけなかったのではないかとTechCrunch共同編集長のアレクシアは書いている。

Tinderは11月6日に有料版の「Tinder Plus」をリリースして動向が注目されている。これは従来のTinerに2つのプレミアム機能を加えたものだ。1つは、「Undo」の機能。もっともリクエストの多かった機能だそうで、間違って左にスワイプして消してしまった写真を取り戻す機能だ。Tinderでは一端スワイプしてしまうと、まずその人にはもう巡り会えないという割と一期一会的なデフォルト設定になっている。

もう1つの有料機能は「Passport」と呼ばれる自分の居場所を現在地と異なる都市に仮想的に移す機能だ。Tinderでは半径何kmといった指定で、近くの人をマッチする仕組みになっているが、お金を払うとこれを変えられる。旅行などで現地についてからTinderを起動するよりも、事前に居場所だけ設定で変えてしまって旅先のロマンスに思いを馳せる……、のだと思う。Tinder PlusのPR動画は、少なくともそんな感じだ。

TechCrunch Tokyoに来ていただくTinderのバイス・プレジデント、ロゼッテ・パンバキアン氏には、そもそもTinderが、どんな人たちに、どんな風に使われているのかといったことなんかも含めて、今後の戦略などをお話いただこうと思っている。

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ドローンの先駆者、ParrotがTechCrunch Tokyoで「飛ばす」デモと講演!

PCの登場、インターネットの興隆、モバイルへのシフトというように新しいプラットフォームが広がる時期には多くのイノベーションが起こる。次の大きなトレンドは何かというと、IoTとかウェアラブルというのがテック業界の緩やかな共通認識なんだと思うのだけど、同じぐらい見逃せないのが、急速な進展を見せている「UAV」(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)市場だ。

平和な日本ではピンと来ないところもあるが、UAVはもともと軍事目的で開発が進んでいて、無人偵察機や無人攻撃機などのゾッとする応用がある。翼のある飛行機型のUAVは開発も機体も高価だったが、そこにDIY市場のノリで安価で高性能なクワッドコプターが登場してきたことで、一気に盛り上がってきた感があるのはTechCrunch Japna読者ならご存じの通り。昨年のクリスマスに突然Amazonのジェフ・ベゾスCEOが「Amazon、無人飛行ドローンによる配達を実験中」と世間を驚かせたりもしたのも記憶に新しい。ヨーロッパからは兵器利用禁止に関する議論も聞こえてくるし、最低限のルール作りのもとに多くのスタートアップ企業が生まれて、実験的アイデアを試し始めているとも聞いている。

クワッドコプター、もしくはドローンと総称される複数のローターを搭載する小型の自動飛行デバイスは、UAV市場の一部でしかないが、室内でも飛ばせる機動性の高さと安定性、操縦の容易さなどから一気に注目を集めている。GoProのようなカメラの登場や、スマフォとともに発展した多数のセンサーデバイスの高性能化が相まって、ドローンは「空飛ぶ無人高性能コンピューター」という感じになってきた。

UAV市場では、例えば広大な農場を空からモニターするような応用や、商業地図制作、考古学の発掘調査といった応用がある。FPS的なUIを使ってピラミッドにドローンを潜入させるなんていいよね。MITの広大な複雑な大学キャンパスを飛びながら音声で案内するSkyCallなんていうドローンの応用も話題になった。商業利用や研究利用がある一方で、ホビイスト向けのDIY市場もある。そして、商業向けUAVとDIY市場をつなげようとするスタートアップ企業の「Airware」が多くの資金調達して注目されていたりする。Airwareは2011年にMITの学生だったジョナサン・ダウニー氏が創業した会社だが、2013年にY Combinatorに参加し、デモ・デイでAndreessen HorowitzやGoogle Venturesから1070万ドル(約10億円)の資金を調達するというY Combinatorの歴史を通しても最大のシード後の調達額を記録している。さらに2014年に入ってドローンの商業利用について、利用可能地域や高度などの法整備の議論が進む中、Airwareは2014年7月に名門VCのKPCBからシリーズBとして2500万ドル(約25億円)の資金調達をして、さらに注目を集めた。Airwareは異なる機体やセンサーを超えて、統一したプラットフォームを提供する開発ボードとソフトウェアを提供している。UAVの商業利用とDIY市場を結び付けるカギとなるのかもしれない。

AirwareのダウニーCEOは、ドローンが殺人マシーンを想像させる状況を変えるべく、密猟による絶滅危惧のあるサイの観察プロジェクトをアフリカで行うなど、テクノロジーそのものには善悪はなく、ドローンには良い応用が多数あると主張している。例えば山スキーの遭難客など災害時に被災者を捜索するようなこととか、ピザ配達など物流への応用、交通量調査に使う、農場管理に使うなどだ。懸念されるのは人身事故だが、ダウニーCEOは、稚拙な運用による死亡事故が発生する前に、きちんとしたルール作りが欠かせないとか、もし申請による認可方式にするとしても、スタートアップ企業によるイノベーションを窒息させるような、複雑な申請プロセスにしてはいけないということなんかを主張したりしている。つまり、GoogleやAmazon、そして新興のAirwareなど、シリコンバレーはドローンの応用にかなり前のめりで取り組み始めているのだと思う。Intel Capitalもつい先日、11月4日に総額6200万ドルの投資を16のスタートアップに行っているが、そのうち1社はPrecisionHawkというUAV関連の企業だ。

クアッドコプターによってUAVへの参入障壁を劇的に下げ、ハッカーや研究者、ホビイスト、ゲーマーを中心にコミュニティーを作り上げた先駆者が、フランス企業のParrotだ。2010年に初代機、AR.Droneをリリース。2012年にはAR.Drone 2.0として、センサーやカメラ、ソフトウェアを大幅アップデートし、今はAR.Drone 3.0となる「Bebop Drone」の発売を控えている

AR.Droneといえば、4つのローターが対象に配置された平べったい機体を思い浮かべると思うけど、実はParrotは最近、ミニ・ドローンのシリーズとして「Jumping Sumo」や「Roling Spider」という変種も出している。Jumping Sumoは、以下のような感じだ。

Parrot社自体は、もともと車載向け無線デバイスや、UAV向けデバイスを事業として行っていて、近年はスピーカーやワイヤレス・ヘッドホン「Parrot Zik 2.0」をリリースしているほか、観葉植物観察ソリューションの「Parrot Flower Power」というのもリリースしている。DIY向け、ホビー向け、業務向けと幅広い。ちなみにノイズキャンセル機能を搭載し、耳のカップをなぞることで音量調整や再生コントロールができるParrot Zik 2.0は、11月12日から日本向にも販売を開始するそうだ。

このParrot社から、JPAC地域担当バイス・プレジデント兼マネージング・ディレクターのクリス・ロバーツ(Chris Roberts)氏をTechCrunch Tokyoにお招きして、デモと講演をお願いしている。UAV市場の全体像と、なぜ今ドローンがこれほど注目されているのかををお話いただくほか、同社の最新のデバイスを紹介してもらう予定だ。

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オンライン教育の「二宮尊徳問題」、TechCrunch TokyoでUdacityに解決法を聞こう

11月18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014の講演者を、また1人お知らせしたい。MOOCsブームの火付け役ともなったスタートアップ企業群のうちの1社、Udacityのバイス・プレジデントを勤めるクラリッサ・シェン(Clarissa Shen)氏だ。

かつて大学という閉じた世界で繰り広げられていた教育を、講義風景動画を含めて教材ごとゴロンとネット上で無料でシェアしてしまい、ネット接続環境とやる気さえあれば、地球上のどこにいても最高の高等教育が受けられるようにする。こうした理想を掲げてMITやハーバード、スタンフォードといった米国のトップティアの大学が、次々とオンラインコースを開設。UdacityやCoursera、EdXといった教育プラットフォームが誕生して「MOOC」(Massive Open Online Course)という言葉が大きく注目を集めたのは2011年とか2012年のことだ。

Udacity創業者のセバスチャン・スラン氏は、GoogleフェローとしてGoogle Glassや自動運転運転カーの研究開発をリードしていた計算機科学者であり、スタンフォードの教授でもある。そのスラン氏が、2011年秋に「AI入門」という名称で行っていたスタンフォードの講義教材の一部をオンラインに出してみたところ、またたく間に16万人がサインアップ。コースを終了した人数は2万3000人だたものの、世界の190の国々、異なるバックグランドの人の参加を目の当たりにして、スラン氏は教育者としての自分の責務は世界中の人々に力を与えることで、そのためのメディアとして、インターネットが素晴らしいと気付いたという。これがUdacityの始まりに繋がっている。

2012年、2013年にはスター的なコンピューターサイエンスの教授らが、次々とオンラインコースを開始して、多くのオンライン聴講者を世界中から集めて話題となった。ニューヨーク・タイムズは2012年には「MOOC元年」と宣言し。世界中に高等教育を届けることが、特に途上国の貧困層にとっては教育格差、経済格差の解消に繋がるという文脈で語られ、期待もされた。

その一方で、2014年になると、MOOCs一般の問題として修了率が数%台と非常に低いことが明るみになってきた。しかもコース履修者の多くは、先進国の人々で、すでに学部相当の教育を受けた人々だったということが分かってくる。Edtech分野に明るい日本のある投資家は、「二宮尊徳問題」だと指摘しているが、教材をゴロンと出して、さあどうぞ! と言われて自力でコースを修了できるような勤勉さや熱意を誰もが持ちあわせているわけではなく、「誰もが二宮尊徳なんかじゃなかったのだ」ということが分かってきた、というわけだ。

Udacity創業者のスラン氏自身も、「皆が期待したように、あるいは私自身が願ったようには、われわれは人々に教育を届けられていない。われわれのプロダクトはヒドいものだ」と2013年に認めている

Udacityはこうした事情を受けて、スタートアップ界隈の用語でいえば、「ピボット」しつつあるようだ。1つはフリーミアムモデルに移行して、1対1のメンタリングなどに課金するコースを提供すること。もう1つは、アカデミックな教育よりも、実践的なプログラミング講座などで一種の認定制度を提供する「ナノ・ディグリー」(ミニ学位とでも訳すのか)を、GoogleやAT&T、Salesforceなどと共同で開発して提供するというモデルだ。ミニテストを用意してゲーム的要素を増やすなどもしているようだ。そのときどきで助言をくれるメンターのサービスで課金するというのは、伴走者がいたほうが修了率が高くなることを考えても理に叶っているし、コピーの限界費用がゼロに近いインターネット上では教材に課金するよりも合理的だと思う。産業界の要請を受けて実学に寄せていくことについては議論がありそうだ。

Udacity創業者のスラン氏が、MOOCsブームを「ハイプだった」と公に認めるのは大胆だと思う。社名のudacityはaudacious(大胆な)から来ているが、本当に大胆だ。そしてこの言葉は、いま現在もUdacityがオンライン教育のあり方を、実践を通して模索中であるということの表れなのだろうと思う。

スラン氏は以下のインタビューの中で、面白い歴史観を披露している。新しいメディアが誕生するとき、常に人々は1つ前のメディアをそのまま持ち込むものだという。映画が登場したときには、最初は演劇をそのまま録画するだけだったし、初期のテレビ番組もスチルカメラの延長で作られていた。オンライン教育のあり方についても、今はまだ教室の講義動画を出してみたりしているだけだが、今後50年でドラスティックに変化していくだろうという。

鳴り物入りでスタートしたUdacityなどのMOOCsは2013年には一種の幻滅期を迎えたが、実は端緒に付いたばかりなのかもしれない。そのトップランナーの1社であるUdacityのバイス・プレジデント、クラリッサ・シェン氏には、TechCrunch Tokyo 2014のセッションの1つで、MOOCsを取り巻くオンライン教育の現状や、Udacityの最近の取り組みの全体像をお話いただけると思う。ちなみにUdacityは、直近の2014年9月の3500万ドルのシリーズCを含めて、これまで3度のラウンドで合計5500万ドルもの資金を調達している。シリーズCへの参加VCとしては、Andreessen Horowizや日本のリクルートの名前が目につく。

オンライン教育やEdTechに興味のある人々には貴重な話が聞けるセッションとなることと思う。

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スマホで色変化をチラ見せして入場、TechCrunch Tokyoで「ColorSync」を使います!

以前「QRコードはもう古い!」と書いたら、ビミョーにネット上で怒られたのだけど、QRコードが古臭く感じられるほど斬新なアイデアに基づく電子チケッティングシステム、「ColorSync」をTechCrunch Tokyo 2014の入場時のチケットチェックで使うことにしたのでお知らせしたい。参加予定の人は事前にPeatixのアプリをダウンロードしておいてほしい(Google Play / App Store

ColorSyncの仕組みはコロンブスの卵っぽいナルホド感がある。ご存じない方は以下の動画をみてみてほしい。

動作原理は単純だ。イベント主催者側が用意したタブレットやスマフォなどの端末と、会場に入場する人々が手にしているスマフォに表示される色が、すべて1秒程度で同期しながら変化する。色は赤→青→緑→灰色などとランダムに変化するが、全ての端末がサーバにぶら下がる形となっていて、同じタイミングで同じ色を表示する。同一イベントなら色の変化は同期しているので、カラフルに変化する色の波間にある「仲間はずれ」(チケットを買ってない人)は、人間が見れば一瞬で分かる。

11月18日、19日のTechCrunch Tokyo 2014には1000人以上の人が来るイベントになる。朝の入場時にはどっと人が来るので、QRコードを使うにしろ、身分証明書の提示にせよ、行列ができることになる。あまりに一時に入場が集中すると大変なわけだが、ColorSyncだと人が流れる早さで入場が可能なはずだ。

可能な「はず」というのは、実はまだColorSyncに1000人を超える規模での実績がないからだ。もしColorSyncが期待の動作をしなかったら……と考えて、やっぱりQRコードにしようかという話を内部的はしたりもしたのだけど、TechCrunchが新しいものに懐疑的なんて何かおかしいだろうということで、「やろうよ」で押し切ってみた。まあ、バックアップとして名前を名乗ってもらえればリストと照合してチェックインはできるラインも複数用意するので問題はないと思う。

ご来場予定の皆さん、是非、朝の「色の川の流れ」を楽しみにしてください!

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「部屋中どこでもワイヤレス充電」の時代もすぐ? OssiaがTechCrunch Tokyoに来る

最大40フィート(12メートル)まで離れたスマホなどの端末を、1ワットの電力でワイヤレス充電できるテクノロジー「Cota」のことは、TechCrunch Japanの翻訳記事でも紹介したことがある。このCotaを開発するスタートアップ企業「Ossia」の創業者CEOのハテム・ゼイン(Hatem Zeine)氏が、TechCrunch Tokyo 2014のために来日して講演してくれることが決まったのでお知らせしたい。

ワイヤレス充電といば、「Qi」のように非接触というようなタイプのものはだいぶ普及しているけれど、WiFiのように10メートルぐらい離れたまま充電するような製品は市場に存在しない。もしCotaのようなテクノロジーが普及すれば、ぼくらは「充電」という行為自体を忘れる日が来るかもしれない。家やオフィスにいる間は、モバイルデバイスは勝手に再充電をスタートするからだ。ちょうどWiFiで半自動的にネットに繋がるようなものだ。Cotaは2015年にリテール市場に出荷予定という。

にわかに信じがたいワイヤレス充電のCotaだが、いきなり出てきたわけじゃない。ゼイン氏がCotaを創業したのは2008年にさかのぼり、長らく誰にも実現可能ということを信じてもらえないままステルスで開発を進めてきたのだという。先日2014年9月にサンフランシスコで行われたTechCrunch Disruptが実際に大勢の人の前でデモを見せるお披露目の場となった。

Cotaの送電側は一面に小型アンテナをグリッド上に配置したもので、壁などに埋め込んでもワイヤレス充電が可能なのだという。TechCrunch Disruptのイベントでは200個のトランスミッターが並んだ人の背の高さぐらいの畳状のプロトタイプを使っていたが、これはコンポーネント数が非常に多いために大きいだけで今後は家庭に設置できるサイズにまで小型化可能という。障害物があっても、それを避けるパスを見つけて離れた場所にある受電側に電力を送ることができるという。詳しくはイベントの講演で話してもらえることになっているが、WiFiでいうMIMOのようにマルチパスで送電するということのようだ。受電側は充電が必要になったら微弱なシグナルを発信し、これをキャッチした送電側が位置を特定して指向性の高い形で電力を送る。

ヨルダン出身のゼイン氏自身は、もともとアラブ語圏で最大手のSIerを創業して、マイクロソフトやシスコなどと協業するビジネスを育てた起業家。マンチェスター大学で物理学と数理言語学を学んだという。今はマイクロソフトのお膝元のシアトルを拠点にしている。Ossiaはこれまでに320万ドルを調達していて、Intel Captalも投資している。

残念ながら、Cotaのプロトタイプは今のところデカすぎた。太平洋を渡る輸送は困難なので、東京で実際の現物デモを見せるというのは今回は難しいということだが、ゼイン氏には、Coatの技術と今後の見通し、それから起業家としての創業ストーリーを話してもらう予定だ。

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4年制大学をディスラプト、MakeSchoolのクレイジーな起業家がTC Tokyoに来て話すぞ!

Airbnbの共同創業者の2人に2009年に初めてサンフランシスコで会ったとき、ぼくは「こいつらはクレイジーだ」と思った。泊めた、泊まったなんてことを、勝手にエンドユーザーにやらせるなんて、頭がおかしい。日本で言えば消防法とか旅館業法とか規制もあるだろうし、事故やトラブルがあったらどうするのか? そう聞くと、Airbnbの創業者らは「だって、問題があったら規制当局から電話でも来るよね。今のところ何も来てないし、問題なんてないね」と、シラけた感じで言うのみだった。彼らは、自分たちはCraigslistより安全だとも胸を張った。

Airbnb創業者たちは、楽しそうで自信たっぷりだった。ぼくもそのとき初めてだったAirbnb体験が、あまりに楽しいものだったので、確かに今は人々が経験を通して理解していないだけで、いずれこれは広がるのかもしれないなと思ったのを良く覚えている。

そんな風に、Y Combinatorがシード投資する起業家にはクレイジーなアイデアを語る人が少なくない。世の中を変えようという大きなアイデアを真剣に追求していて、話を聞くと、何だかものすごく説得力があったりするケースがある。おぉ! という感じで面白くてクレイジーなやつらが多い。

MakeSchoolの共同創業者でCEOのジェレミー・ロスマン(Jeremy Rossmann)も、まさにそんな若者の1人だ。激しいアフロヘアだったジェレミーに東京で初めて会ったとき、ぼくはジェレミーと、こんな会話をした。

「ちょ、ちょっと待って。つまりそれって、MITとかスタンフォードみたな大学を置き換えるってこと? ガチで大学と競争するってこと?」

「うん。その通り。3年もしたらMITよりウチを選ぶ学生が出てくるよ」

ジェレミーが共同創業者であるMakeSchoolは、既存の4年制大学をディスラプトしようとしている。Y Combinatorの2012年冬バッチに参加していたサンフランシスコベースのスタートアップ企業だ。

18日、19日に迫ったTechCrunch Tokyo 2014でジェレミーに講演を頼んで日本に来てもらうことにしたので、MakeSchoolのことを少し紹介したい。

最初のビジネスモデルは実は大ゴケ

MakeSchoolは過去半年でピボットして、この10月には社名を変えている。もともとは「MakeGamesWithUs」という名前のスタートアップだった。高校生や大学生にゲーム開発を指導し、そうして生まれた大量のゲームによる収益の30%をレベニューシェアとして徴収する。それがMakeGamesWithUsの当初の狙いだった。

「ゲームはたくさんできたし、学びに来た学生たちも喜んでくれましたよ。17歳で初めて作ったゲームで1カ月1000ドルの売上があった、なんて夢みたいな話でしょ? すごく喜ぶよね。大成功ですよ。でも、ぼくらにとっては300ドルで何人のエンジニアが雇えるのかって話なわけで。ゼロ人ですよ。ダメなビジネスモデルでしたね」

このモデルで何が起こったかというと、iOSでゲーム開発をして売上を立てていたということを履歴書に書いて、大手ネット起業に就職していくハッピーな学生たちがたくさん生まれたということ。そこでジェレミーたちは、生徒から直接授業料を取るモデルに変更したのだという。ゲームから生まれる収益は100%作った生徒のもの。これが、1年前からとても上手く回り始めているという。

面白いのは、授業料を払えば誰でも入れるというわけじゃないところ。応募の80%は門前払いとしていて、合格率は20%程度なんだとか。これはUCLAやボストン大学といった、アメリカのトップ10校より1ランク下の合格率で、MakeSchoolが狙っているのは、まさにここの層の学生だとか。

「大学のコンピューターサイエンスの学位を置き換えたいんですよ。いまはサマープログラムをやっただけだけど、今後は1年のコースを15人の生徒でスタートする。来年も1年コース。その次の2016年には2年のコースを開設する。うちの生徒は2年で必要なことを学んで、GoogleやFacebookに就職するようになる」

サマープログラムにはMITから来た生徒もいたそうだが、非常に評判が良くて、またMakeSchoolで学びたいし、同じ期間の学習なら、むしろMITより効率的で有用だと言っているそうだ。

「アメリカの大学は学費がすごく高いという問題がある。インフレ率より速いペースで学費が上がっています。学位を取るためだけに4年間で1000万円から2000万円かかる。これは生活費をのぞいて、ですよ。だからアメリカ人はみんな大学に行くために貯金をするんです」

「授業品質の問題もある。コンピューターサイエンスの教材は現実に追い付いていません。例えば機械工学や建築って、そんなに変わらないじゃないですか。いま最高の建築学科の教授は、たぶん20年後もそうでしょう。でも、コンピューターサイエンスはそうじゃない。この分野は過去20年で、コンピュータサイエンスの全歴史を通してよりも多くの発明が行われました。いまの大学教育だと、仕事を始めたときに学校とは全然違うことを学ばなければならなくなるんです」

日本でL型大学、G型大学の議論があるように、社会に出てすぐに役立つ実践的な知識と経験、例えばフロントエンド開発だとかiOS開発とかをやるのが、旧来の大学とMakeSchoolの違いの1つ。そうかといってコンピューターサイエンスの基礎理論を飛ばすというような話ではない、というジェレミーは言う。

「MakeSchoolでも理論を飛ばしたりはしていません。企業側に「何を分かっていてほしいか?」と聞いています。GoogleもFacebookも基礎理論は大事だといいますからね。データ構造やアルゴリズムは重要。でも、Facebookに行って実際どんなアルゴリズムをいちばん使ってるんですかなんて聞く人は、今まで大学関係者にはいませんでしたからね」

「ぼくらにはMITやスタンフォードのようなブランド力はないかもしれない。ぼくらのゴールは、FacebookやGoogleといった企業のお墨付きを得ること。こうした企業からの推奨が増えれば増えるほど、生徒にとってMakeSchoolは理にかなった選択になってくる。Facebookが、MakeSchoolのカリキュラムやった人なら雇う、というようになりますからね」

「大学だと4年間かけて1000万円とか2000万円。一方われわれのコースだと2年間で500〜600万円。シリコンバレーにコネクションを持っているので、Y Combinatorのパートナーや起業家、投資家にも会える。MakeSchool経由でインターンシップの紹介をするので、ひと夏だけで150万円は稼げるし、もしインターンシップが得られなかったら返金にも応じます。4年制大学に行った友だちより、2年早く800万円とか900万円の年収でスタートを切れるわけです。Googleなら新卒で1000万円が稼げる今の時代、大学院に行かない人が増えているし、Googleなんかは学部卒をバンバン雇ってますよ。今でも研究者になる気があるなら、4年制大学がベストの選択です。だけど大学院や博士課程に行こうと思わない人たちも、すごく多いわけです」

「4年制大学だと必修科目も多いですよね。文学とか哲学とか。ぼくらもそういうのが大事だとは思っていますよ。でも、そんなの仕事を始めてからやったっていいじゃないですか。人間として大事な教養は長く学ぶものです」

コンピューターサイエンスの基礎と、実践的で現代的なプログラミングの両方を学んだソフトウェア・エンジニアの需要は爆発しているが、大学の教育変革が追い付いていないとジェレミーは言う。

「MITやCMUなど、コンピューターサイエンスで良い教育をしているところは数が限らている。需要のほうが供給よりはるかに多いんです。MITって新入生が1年で何人か知ってますか? 1年で、たった1000人ですよ。このうち300〜400人ぐらいがコンピューターサイエンス専攻です。数万人の需要に対して、これじゃ、ぜんぜん足りていません」

「MITだと受験者の7%ぐらいが合格します。でも、試験に落ちた人のうち上位7%を受け入れたとしても学生の質はほとんど同じだと統計的に言われてるんです。つまり、今はそのぐらい応募が多い。質の高い学生のほうが大学の数より多いので数万人の学生がMakeSchoolのターゲットです」

需要があるのになぜ大学は定員を増やさないのか?

「応募してくる一部のトップを取れば十分と思っているんです。トップ・オブ・トップの学生の質で競争しているからです。MakeSchoolがMITなどの大学に勝てるのは、就職での結果による競争で勝てるからです。インセンティブが違うんですね。それに、大学というのは巨大な官僚組織。そんなに簡単に変われませんよ」

アメリカの大学はもう1つ大きな問題を抱えているとジェレミーは言う。

アメリカの大学には終身雇用に相当する「テニュア」の資格を持つ教授と、そうでない教員がいる。テニュアの教授は研究で評価はされるが、学生からの人気や評判によって辞めさせられることがない。一方、非テニュアの教員は給与が低く、安定もしていない。ニーズはあるのに、MITは教員の予算を削減する方向にあるのだという。こうした教員にとって、教える喜びがダイレクトに感じられるMakeSchoolは評判が良いのだという。「ぼくらは研究とは関係がないので、こうした教員をより良い待遇で迎えられるんです」

ところで、ジェレミーはときどき日本に来て、投資家や教育関係者、ネット企業の関係者らと議論をしたりしているようだ。中国だと北京大学、日本だと東大やDeNAの名前が彼の口から出てきた。MakeSchoolの日本展開はあるのか?

「楽天なんかは英語化を推進しているし、シリコンバレーのスタートアップ企業のマインドセットや技術を持った人たちをインターンとして受け入れるのは理に叶うはず。逆に、日本からシリコンバレーに学び来るというのもあり得る。すでにこれまで2人ほど日本からの参加もあったけど、とても優秀だったし、もっと来てほしいですね」

大学をガチでディスラプトしようというシリコンバレーの人たちの目線の高い発想と、それをガシガシ推進しているジェレミーの話は聞き応えのあるセッションになると思う。TechCrunch Tokyoのチケットにはまだ少し余裕があるので、今からでも是非来場を検討してほしい。

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TCハッカソンに感情認識ロボ「Pepper」が3体も来る! ハックは意外に簡単

ソフトバンクの感情を認識するロボット「Pepper」が、11月15日、16日の週末に予定している「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」に3体ほど来ることになったのでお知らせしたい。

Pepperは現在、開発者向け先行予約として200台限定で出荷準備中だが、実際には2000台を超える申し込みがあって人気となっているそうだ。本体19万8000円、開発者パッケージとしてメンテナンス費を含む月額9800円という比較的高額な価格設定でも、これだけの数を受注しているのにはワケがある。それは、大手企業の新規事業開発部門や、スタートアップ企業、教育や介護での応用を模索する人々などからの引き合いが強いから、という。ソフトバンクの孫社長の当初のプレゼンでは、家庭向けということを強調していたが、介護や店舗での案内係など、今はPepperとビジネスをつなげるという応用に注目が集まってる。

ぼくは、ほかのロボットをプログラムしたことがないので比較はできないのだけど、Pepperを使ったビジュアル開発環境「Choregraphe」は想像以上に手軽だった。開発環境のインストール方法は、ここのQiitaのページにまとまっているけれど、統合開発環境をインストールして同一セグメントのWiFi接続で開発環境を入れたPCをPepperに接続すれば、コードのアップロード準備は完了。統合開発環境にはエミュレーターで動くPepperも入っているので、簡単な動作確認はその場でできる。

開発は「ボックス」と呼ばれる単位で行う。ボックスの1つ1つは、ロボット動作やセンサー入力、条件分岐やループといった制御構造に対応していて、このボックスをドラッグ&ドロップして線で繋いでいくことでプログラムをする。ボックスには具体的には、オーディオ、振る舞い、コミュニケーション、データ編集、フロー制御、LED、数学、モーション、センシング、システム、テンプレート、追跡、ビジョンなどに分類して用意されている。それぞれのボックスには受け付けるインプット・アウトによって、色分けがされていたりして、何となくプログラミング言語の型を思わせるものもあるし、switch/caseのような制御構造で「音声を聞いて、答えがyesならA、noならB」というようなボックスもある。プログラミング経験者ならスラスラとブロックを並べられるだろうし、そうでなければ、むしろ良いプログラミング入門となりそうな印象だ。

ボックスをダブルクリックすると、その場でテキストエディタが開いてPythonで10〜30行程度のコードが表示される。このコードを直接カスタマイズすることでボックスの動作を変えられる。ボックスには、onLoadとかonUnloadといったフックとなるメソッドも用意されていて、JavaScriptなんかのモダンなスクリプト言語で開発経験があれば拡張は簡単にできそう。複数のボックスをグループ化して、新たなボックスを定義するなど抽象化もできるが、これまでの実例だと最大150個程度のボックスを使って複雑な動作をするプログラムを作った人もいるのだとか。

で、どんなアプリができるのか。

たとえば顔認識が搭載されているので、学校の校門に立ったPepperが登校して来る子どもたちの顔を認識し、父母に「学校に到着しました」とメールする仕組みを作ったような事例だったり、ヤマハのボーカロイドを使って、Pepperに何か言葉を投げかけると、その言葉を使った歌を作ってくれるというようなアプリがこれまで実装されたという。視覚と聴覚センサー、それに身振りが加わったハブのような存在として、各APIを繋いで何かを利用者に見せるエージェント的な動きをPepperが果たすというのは分かりやすい応用例。たとえば、占いのアプリをケータイでやると当たり前すぎるが、「占ってます、占ってます! キターッ!」という表現をつけるだけで面白いし、Pepperの担当者によれば、これが意外にハマるそうだ。人の顔写真を撮影して、それを絵画風にレタッチするようなサービスも、Pepperに画家の仮装をさせることで、UIが人型である魅力というのは出てくるという。PCとキーボードの組み合わせがネットを使う最適なデバイスじゃなかったんだね、結局、というのがモバイルシフト時代の共通認識だと思う。同様に、5年や10年経ったときに、天気予報やニュースを見たり、調べ物やレストランの予約をするようなサービスに適したUIは「タッチ画面なんかではなく人型UIだったんだね」ということになる可能性もあるのかなと思う。

ちなみに、今は開発者向けに出しているPepperだが、2月出荷を予定している一般出荷向けPepperには基本的な会話機能に加えて、アプリ数十個が最初から搭載される予定という。ちょうど、iPhone 3Gのローンチのようなもので、アプリストアもオープンして、アプリのエコシステムがスタートする。2月時点で有償アプリの仕組みを提供するかどうかは未定で、これは来年の夏以降となる見通しという。

なお、Pepperを使った開発をTechCrunch Tokyoハッカソンでやってみたい! という人は、9月に行われたPepper Tech Festival 2014のページで、開発者向け資料やクリエーターショー、Pepper技術セッションなどを見て予習しておくように! そして、以下から参加を申し込んで頂ければと思う。

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以下はTechCrunch Tokyo 2014本編のチケット。

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SDカードサイズの開発ボード「Edison」をTCハッカソンで20個ご用意!

TechCrunch Tokyo 2014の前夜祭的な位置付けで、11月15日、16日の週末に予定している「TechCrunch Tokyo Hackathon 2014」の開催まで2週間ちょっととなった。200人が入れる会場を24時間借りた大きめのハッカソンで、すでに160名を超える方に参加登録を頂いている。特別参加エンジニアとして増井雄一郎氏、堤修一氏の参加が決まっているほか、ギークな女優、池澤あやかさんがガチでハックしに個人参加してくれることになっている。

今回のハッカソンは規模が大きいということもあって、特にテーマを設けていない。すでにAPIやサービス、モジュールを提供してくれる企業は多く集まっているのだけど、ここで1つ、ハードウェアをやりたいWeb開発者に朗報があるのでお知らせしたい。

大々的なモバイルシフトと、それに伴うARM攻勢で最近スタートアップ界隈では存在感が薄い気もするインテルだが、ここに来て、やたらとハッカビリティの高そうなSDカードサイズの開発ボード「Edison」(エジソン)を、お正月のCESで発表して注目を集めたのは皆さんご存じの通り。Edisonは端的にいえば、Intel Atom相当の500MHzのデュアルコアプロセッサに1GBのメモリと4GBのフラッシュメモリ、無線モジュール、各種標準I/Oが全部詰まった小型Linuxコンピューターで、5年ぐらい前のPCがSDカードサイズになった感じだ。

国内でも10月末に出荷が始まって、もう手にした人もいるかもしれないが、秋葉原のパーツショップの中には、初回入荷分を売り切ったという話も早速聞こえてきている。今回、TechCrunch Tokyoハッカソンのために、Edison(Arduinoボード)20個、Galileoボード20個、Grove Sensor Kitなどをインテルから提供いただけることが決定した。Edisonを使ってプロダクトを作ったチームには、ハッカソン終了後もそのまま作品としてハックに利用したデバイスを、お持ち帰りいただける。

ちょっとEdisonについて、何が話題となっているのかを簡単に紹介しておきたい。

モノ系のIoTブームを支えているのは、広くはメーカーズムーブメントだが、テック系で言えば、3Dプリンタの登場や、ArduinoやRaspberry Piといった開発ボードの普及だろう。プロトタイピングが身近になり、それまでハードウェアに手を出さなかったエンジニアにまでハンダごてを持たせ、サードパーティ製拡張ボードを含めたエコシステムを育てたのはArduinoの功績だろう。

先行するArduinoやRaspberry Piに対して、Edisonは何が違うのか?

まずサイズが小さいことが挙げられる。開発ボードでありながら、そのままスマート・トイなどに組み込めるというのが大きく異なる。搭載するWiFi(11a/b/g/n)やBluetooth(4.0/2.1)の無線チップは国内の認証を経ているので、Kickstarterでプロトタイプのイテレーションを回すような場合でも、Edision搭載のまま出荷も可能という。インテルのプロセッサといえばバッテリ食いのイメージもあったりしたが、Edisonはボード全体で1W程度の消費電力なのでリチウムバッテリでもそこそこ動くのだそうだ。12月に追加リリース予定のMCU(Micro Controller Unit)開発環境を使えば、I/O部分をMCUでコントロールして、プロセッサ部分は普段は寝かせてしまう省電力な設計も可能になるという。

Edisonはモジュール単体でも発売するが、開発ボードとして使う場合には、ブレークアウト基板キットか、Arduino変換基板キットを利用する。すでにEdision向け拡張ボードもあるが、Arduinoキットを使えば、Arduino向け拡張ボードである「シールド」がそのまま使えるので、Arduino向けサードパーティモジュールと、Linuxを使った開発ができるモダンさを備えているということになる。OSとしてYocto Linuxを搭載しているが、Debian GNU/Linuxの稼働や、その上でのGo言語の稼働も確認されているなど、x86の開発エコシステムが使えるのが非組み込みエンジニアにとっては魅力だろう。Node.jsやPython、HTML5による開発もできて、たとえば、スマート・トイでiPad向けUIを作る場合、HTMLとJavaScriptを使ったりもできるという。このほか開発言語として「Wyliodrin」というScratch風のビジュアル開発言語も利用できるそうで、学校教育を意識している面もあるそうだ。

というわけで、「初物」に近いEdisonを使ってハックしたいエンジニアを、TechCrunch Tokyo Hackathonでは募集中だ。まだチケットには余裕があるので、是非参加を検討してほしい。

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TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWSでは、今年は「CTO・オブ・ザ・イヤー」を選ぶぞ

昨年実施して好評だった日本でもっとも「CTO密度」の高いCTOのためのイベント「CTO Night」を、今年もTechCrunch Tokyo 2014のイベント内で開催することが決定したのでお知らせしたい。前回は100人近いCTOが集まるという、かなり変わったイベントになったのだけど、ちょっとパネルディスカッションがマッタリした感もあったかと反省している。そこで今年は、ちょっと趣向を変えて「CTO・オブ・ザ・イヤー」を選出するピッチ・コンテスト形式として、CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればと考えている。

CTO Nightは、TechCrunch Tokyo 2014の初日、11月18日火曜日午後4時スタートを予定している。1人(1社)あたり5分の発表と3分のQ&Aセッションを行い、全10社に登壇してもらう。そして「技術によるビジネスへの貢献度」という観点から審査をし、2014年に最もイケてるCTOを1人選んで表彰するというのが趣旨。なお、今回の企画にはアマゾンデータサービスジャパン技術本部長玉川氏にも参画して頂いる。

審査員は、グリーの藤本真樹CTO、クックパッドの舘野祐一CTO、ビズリーチの竹内真CTO、はてなの田中慎司CTO、サイバーエージェントの佐藤真人CTOにお願いしている。審査基準はビジネスへの貢献度だが、もう少し具体的に言うと、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」についても評価対象とする。トップを決めるといっても、厳密に点数付けが可能なモノサシが存在するわけではないし、どう評価しても意見が割れるようなことはあるとは思う。ただ、スタートアップ企業でCTOが果たす役割として「技術的視点で経営に貢献し、その結果として社会に新しい価値やインパクトを与える」というのは多くの人の意見が一致するのではないだろうか。今回特に賞金などは用意していないが、こうしたスタートアップの技術面の取り組みに光を当てることには意味があるだろう。

ちょっとここで審査員となっていただくCTOの方々を簡単にご紹介したい。

グリーの藤本CTOは初期から同社プラットフォームを支えるCTOだ。経営視点から技術でビジネスを支えるCTOらしいCTOで、このインタビューでは「コードを書く力・マネジメント力・アーキテクト力、この3つはCTOとしてはどれもある程度は必要」「CTOなら経営に携わるべきだと思います。「経営は知らない」と言って技術のことだけやるのは現実的に難しい」と語っている。ぼくが個人的に藤本CTOのエピソードで忘れられないのは、グリーでGitHub Enterprise導入を決めた時のスピード感が凄かったという話だったりする(ちなみに、このエピソードに出てくる大場氏は、いまはクラウドワークスのCTOだ)。クックパッドの舘野CTOは、Ruby界では良く知られたエンジニアで、たとえば「料理を支える技術 2012」というトークでは大規模なシステムのマイグレーションの話や自社CSSフレームワークの話をするなど大きなトラフィックのあるサービスで、バックエンドをガッツリと作ってきた人物だ。ビズリーチでCTOを務める竹内真氏には、すごいエピソードがある。ビズリーチの創生期物語ともいえる著作『ともに戦える「仲間」のつくり方』(南壮一郎著)によれば、ビズリーチベータ版リリース前に参画した竹内氏は、それまでPHPで苦労しながら作りつつあったバギーなコードベースを全部捨てる決断を経営者に迫り、2カ月という短期間で1人でビズリーチのシステムをJavaベースで開発してしまったという逸話だ。その後も竹内氏は、ビズリーチや、そのアジア版であるRegionUp、ルクサなどのプロダクトの立ち上げるなどサービスの立ち上げるなど、豊富な経験もつ。はてなの田中CTOは情報学で博士号を持つテクノロジストだ。京都大学大学院修了後にNTTネットワークサービスシステム研究所に入り、「Javaプログラム実行速度高速化のための動的コード再配置技術」のようなガチの言語処理系の研究をしていたバックグランドを持つ。2010年からは、はてなCTOとしてアプリ部門とインフラ部門の責任者も兼務しているという。田中CTOによれば、優秀なエンジニアとは「技術の原典を読める人」、そして「リーダーシップを持てる人」だという。サイバーエージェントの佐藤CTOは、大手出版社やネットメディア企業の技術部門を経て2006年にサイバーエージェントに入社。当時まだ1億PV以下だったものの高負荷のために悲鳴をあげていたアメーバのシステム基盤をオープンソースのプロダクトを使って刷新し、180億PVを超える高負荷に耐える基盤を作り上げ、サイバーエージェントに内製主義を根付かせた人物だ。

一体誰がどういう基準で「CTOオブ・ザ・イヤー」なんか選ぶのだ、そもそもそんなことができるのかというご批判はあるかもしれない。でも、多くの修羅場をくぐり抜けてきた経験を積んできたCTOたちが、今まさに限られたリソースの中で経営とエンジニアリングの交わる場所で闘うスタートアップ企業のCTOにエールを贈ることには意味があるのではないか、と思うのだ。

CTO Nightは夕方4時にスタートして1時間半程でピッチ大会と表彰を行い、そのままTechCrunch Tokyo 2014の交流会と合流する形となっている。なので、今回はドリンク・軽食込みで参加費2160円(税込み)とさせていただいた。参加者は200人規模を想定している。イベント内イベントという形なので、TechCrunch Tokyo 2014の本編チケットをお持ちの方は、そのままCTO Nightにも参加できる。ただし、参加資格は昨年同様に「CTO、もしくはそれに準じる肩書きをお持ちの方」とさせていただいているのでご了承いただければと思う。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2014 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2014初日の11月18日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを10社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2014」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による(グリー、クックパッド、ビズリーチ、はてな、各社のCTO)
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
チケット】税込み2160円(懇親会参加費含む)

photo by dierken


ギークな女優、池澤あやかがTechCrunch Tokyoの司会として登場するぞ!

プログラミングができるギークな女優として知られる池澤あやかさんに、11月18日、19日のTechCrunch Tokyo 2014の司会として登壇いただけることが決定したのでお知らせしたい。

この間、ぼくはトヨタの主催するハッカソンに審査員として参加したのだけど、隣にギークなタレント・女優で知られる池澤あやか(@ikeay) が同じく審査員として座っていた。プログラミングができる女優ということで、ぼくは前から池澤さんのことを知っていたのだけど、色々と話をしてみて驚いた。

Webサイトやサービスなど、何かを作るのが好きだというので、「でも本業の仕事で使うということではないですよね?」と水を向けると、「仕事ではシナトラを使ったことがありますね」と来たもんだ。Sinatra!

ご存じない方のために説明すると、SinatraというのはWebサービスやモバイルアプリのバックエンドを作るためのツールとして、スタートアップ企業の間でも定番となっている「Ruby on Rails」の弟分のような存在。ササッと何かを作るときなんかに良く使われる玄人ごのみの開発者向けソフトウェアのことだ。オープンソースのプロジェクトが集まるGitHub上で池澤さんが投げた、このプル・リクエスト(オープンソースのプロジェクトに対してコードの変更を要求すること。最近流行のオープンソースへの貢献のやり方)を見れば、ガチでコードを書いていることも分かったりする。GitHub上で活動している女優というのは、ぼくは池澤さんの他に聞いたことがない。オープンソースは、いまだに男性が多い世界のままで、コミット・ログ(変更履歴)に並ぶ写真もギークなアバターや、むさ苦しい顔が多かったりする。だから以下の「アイドルでーす!」という爽やかな感じのアイコンが混じってる様は異様ですらある。なんて爽やかな……。

池澤さんは1991年生まれの23歳。この3月に慶應義塾大学環境情報学部を卒業していて、実は研究室でもテックなモノづくりをしていたそうだ。以下の写真にあるのは、池澤さんがArduinoで作ったメダカの水槽デバイスだ。メダカというのは視覚情報を頼りにして水の流れに乗る性質があるそうで、これを逆手にとって、メダカを騙すパターンを水槽内部壁面に表示させるという。水槽に向かって手をかざすことでパターンが変化し、メダカが泳ぐ方向を人間が操ることができるARデバイスなのだそう。ぼくはご本人に動画を見せてもらったのだけど、「メダカをハックするんですよ!」と本当に楽しそうに語る。

ギークである。女優である。

おっと、女優活動のほうのご紹介をしていなかった。池澤さんは数年に1度という不定期で東宝芸能が実施している女優の登竜門「東宝シンデレラ」のオーディションで2006年に審査員特別賞受賞し、その年に映画『ラフ』で女優としてデビューしている。映画『あしたの私のつくり方』(2007年)、映画『デトロイト・メタル・シティ』(2008年)、ドラマ『斉藤さん』(NTV/2008年)、土曜ワイド劇場『刑事殺し』(ABC/2007年〜2008年)などに出演してきている。最近だと「NHK高校講座〜社会と情報〜 」にMCとして出演しているそうで、テクノロジーが語れる女優として活躍中だそうだ。

と、いうことで、今年のTechCrunch Tokyo 2014は、TechCrunch Japan編集長のぼく(西村賢)と、池澤あやかさんの2人で司会・進行を務めさせて頂こうと思っている。皆さんにお会いできるのを楽しみにしています!

あ、そうそう、もう1つ。TechCrunch Tokyoのイベント本編の前の週末に開催を予定しているTechCrunch Tokyo Hackathon(11月15日、16日)に池澤さんをお誘いしてみたら、「ハッカソンって参加したことないんですよね。個人参加で行きます!」というお返事だった(なんと!)。すでに告知しているように、今回のハッカソンには特別参加エンジニアとして増井雄一郎氏と堤修一氏の参加も決定しているので、だいぶ豪華な感じのイベントになるのではないかと思っている。まだハッカソンのチケットのほうは少し残りがあるので、参加希望の方はこちらからどうぞ。

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