【レビュー】Mevo Multicamは手ごろですばらしいライブ配信スタジオだ……必要なのは「それを信じる」ことだけ

Mevo Multicam Appと3つのカメラがセットになったMevo Start 3パックは999ドル(約11万4000円)。これに良い照明と適当なマイクを加えれば、2000ドル(約22万8000円)以下でフルマルチカムのストリーミングセットアップが完成する。数年前ではまったく考えられなかったことだ……人類の進歩は驚くべきことだとしみじみ思う。これにしっかりとしたインターネット接続を追加すれば、このキットよりも2桁は高価な機器を満載した衛星中継車の中核的な機能が再現される。

プロの放送局のニュースクルーがMevo Startキットを使うことはできるだろうか。それは難しいだろう。もっと高い信頼性と冗長性、そして生放送のニュースレポーターのニーズに対応した機器が必要だ。しかし、同じ問題を別の視点で考えてみると、非常にわかりやすくなる。

例えば、ユーチューバーが自分のスキルを発揮したいと思ったらどうだろう?ウェブカメラとOBS(録画とライブ配信用のアプリ)を組み合わせてライブ配信を行っている人なら、もっと簡単に分解・再構築できるセットが欲しいと思うかもしれない。Twitchで音楽配信をしていたり、自分のバンドで何度かライブ配信したことがあったり、マルチカメラを使ったライブ配信の腕を上げたいと考えている人も、さまざまな会場で行われるイベントのライブ配信を始めたいと思っている人もいるだろう。この場合、Mevo Start 3パックは俄然お買い得に思える。何よりも、最初にセットアップしてしまえば、分解して再度組み立てるのも簡単だ。

少なくとも理論上は良い話だ。しかし、少しリラックスして考えてみよう。本当にこれだけのことができるのだろうか?

テクニカルレビュアーは時として不可能といってもいい課題に直面する。自分の用途ではない製品をどうやってレビューするのか、その製品が対象とするユーザーに適しているかどうかについて、どうしたら有意義なレビューをすることができるのか。Logitech for Creators(ロジテックフォークリエイターズ)のMevo MulticamアプリとMevo Start 3パックは、まさにそのような製品の1つだ。筆者はTwitchやYouTube、Facebookのストリーマーではないが、放送ジャーナリズムを中心としたジャーナリズムの学位を取得している。ニュースキャスターやテレビの生中継レポーターとして訓練を受けたことが懐かしい。BBCニュースの衛星中継車では(文字通り)熱い時間を過ごした。テレビのプロデューサーだったこともある。

問題は、ある業界で専門的な経験を積むと、普通の人とは異なる期待を持って製品に臨むようになることである。BBCに在籍していたときは、生放送中に衛星への信号がほんの一瞬落ちただけでも、ニュースルームの送受信センターにとって信じられないほどのストレスだった。一方で、端的にいえば、このキットは何百万、何千万もの人々にニュース速報を伝えるための中継車1台分の機材を置き換えるためにデザインされたものではない。ユーチューバーに使ってもらうためのものだ。

Mevo Multicamアプリは、マルチカメラを使用したライブ配信のコントロールセンターとして機能する。エレガントなすばらしい方法でマルチカメラストリーミングを行うことができる(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

理論上はMevo Startは非常に良いアイデアのように思える。しかし、これはMevo Startが完ぺきという意味ではない。Mevo Startは明らかに、薄暗いクラブハウスでカメラ機材のセットアップに長い時間を費やしたことのない人によって設計され、その製品チームはMevo Startキットのセットアップと解体を連続して30回行うことを要求されていない。もしそうなら、製品の仕上がりに大きな影響を与えるほんの少しだけ異なる判断をしていただろう。

例えば、カメラの電源ボタンについては実に愚かだ。電源ボタンはゴム製ではあるものの、ボディに対して凹凸がなく、触っただけではどこがボタンかわからない。さらに悪いことに、マットブラックのボディに対して電源ボタンもマットブラックだ。暗闇の中で、何人ものミュージシャンに囲まれながらカメラを設置しようとしたらどうなるかを考えてみたらいい。公平を期すためにいえば、これは製品設計上よくあることである。CADで設計され、明るいハードウェアラボでテストされた製品を、誰かが「カメラが使用されるであろうユースケースに合わせて調整しよう」と考えるのが遅すぎたのだ。

カメラの背面:電源用のUSB-Cポート、ローカルレコーディング用のMicroSDカードスロット、マイク入力、そして暗闇の中では非常に見つけにくい電源ボタンがある(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

デザイン上の特徴を1つだけ殊更に強調するのは申し訳ないとは思うが、電源ボタンはカメラの唯一のボタンであるので重要なことだ。電源ボタンが簡単には押せず、かなりの力で押さなければならない、という点はすばらしい。ライブ配信中の事故は絶対に避けたいものだが、誤って電源ボタンを押してしまうのを防ぐことができる。一方で、ライブ配信のために急いで何かを設定しようとすると、両手がふさがってしまう。筆者の場合、片手はマイクや他の機材でふさがっていて、常に片手でカメラの電源を入れたり切ったりする必要があった。(電源ボタンがかたいということは)つまり、カメラの電源ボタンを押すときには、電源ボタンの反対側の同じ位置をつかんでカメラを固定しないと力が入らない、ということである。残念ながら、電源ボタンを押す際、力をいれようとすると自然にレンズもつかんでしまうということになる。カメラの中で唯一指紋をつけてはならないのがレンズなのだが。

片手でカメラの電源を入れたり切ったりするには、このようにカメラを持つしかない。人差し指は電源ボタンを押しているが、親指はどうだ?次にやるべきことは、レンズについた親指の指紋を消すことか?(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

電源ボタンはさておき、このカメラにはスマートなデザインも多くみられる。迷光を防ぐためにドーム型のレンズの上には小さなひさしがあり、レンズフレアの軽減に大いに役立っている。カメラ底部の三脚穴は取り外し可能で、穴の径を変えればカメラをマイクやライトスタンドに取り付けることができる。カメラ前面のライトLEDは、スタンバイ中のカメラを示す緑のLEDと、実際に撮影中であることを示す赤のLEDで構成されている。カメラにはバッテリーが内蔵されているので、電源がなくてもライブ配信を開始することが可能。外出先でのライブ配信にも適している。これらはすべて、非常に考え抜かれた機能である。

しかしながら、カメラのセットアップには非常に苦労した。3台とも使用する前にファームウェアのアップグレードが必要だった。もしかしたら筆者がAndroidデバイスを使用しているのが原因で、iOSのアプリの方がこなれているのかもしれないが、判読不能なエラーメッセージが表示されて完了までに何時間もかかった。最終的には使えるようになったものの、スマートフォンを6回も再起動する羽目になった。そのうち1回は最初に各カメラに接続するため、もう1回はファームウェアのアップグレードの失敗からリカバリーするためだ。

ファームウェアの問題が発生したことを受けて、筆者はMevoのプレスチームに連絡をしてみた。彼らは開発チームに連絡してカメラが動作するようサポートと提案してくれた。筆者はこれについて検討したが、その申し出は断ることにした。ハードウェアレビュアーとしては、製品の開発に携わった人と電話で話すことができるというメリットがあるが、消費者としては、このようなことは期待できない方が多い。

もし自分で使うためにこのカメラを購入していたなら、この時点で返品していたと思う。筆者はハードウェアのレビューを長年担当してきたが、レビューを始める前にスマートフォンを6回も再起動しなければならないような製品をテストしたことはない。数日間あきらめて、やっと重い腰を上げてカメラを本格的に試そうとしたら、またファームウェアのアップグレードがあった。今回は比較的スムーズに作業を進めることができたが、数週間のうちに2回もカメラのファームウェアをアップデートしなければならないというのは決して心強いとはいえない。

問題の核心は「信頼性」にある。製品の中には、2回、3回うまくいかなくても問題のないものがたくさんある。例えば、Google Nest Thermostatの温度を変更しようとして、最初はうまくいかなかったとしても、それはそれで問題ない。もう一度やってみる、うまくいく。それでOKだ。しかしながら、ライブ配信はエアコンをつけるようなものではない。数千人の人々がライブを観ている場合はストレスレベルが上がり、小さな技術的な問題であっても、とてつもないストレスとなる可能性がある。私の感覚は、何百万、何千万もの視聴者が観ているかもしれない衛星回線のライブや、現場からのライブレポートがニュースルームに届かずに台無しになってしまうテレビの生放送なので、おそらく他のライブストリーマーは、筆者のように技術的な問題に敏感ではないのだろう。

取り外し可能な三脚穴のデザインはありがたい。ネジは照明スタンドのサイズと三脚のサイズの2つ。ネジを外すとマイクスタンドのネジのサイズになる。非常によくできた仕組みだ。ボディに指紋がつきやすいのは指摘しておくべきだろうが、機能的には問題ない(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

製品を完全にセットアップできたら、製品が輝くチャンス到来だ。カメラを操作するMevoのアプリは非常に優れている。Mevo Multicamアプリでは、1台のカメラで撮影を準備し、カメラ間でフェードイン / アウトすることができる。また、ズームインやオーバーレイの使用、さらにはデジタルパンニングも可能だ。基本的には非常にシンプルなセットアップでありながら、非常にパワフルな結果を生み出すことができる。

セットアップのプロセスについては不満を並べたが、それはここで打ち切るべきだろう。筆者はこのカメラをさまざまな場面でテストしたが、一度も期待を裏切られることはなかった。問題も起きなかったし、バッファリングし続けることも、遅延、切断もなかった。

マルチカメラによるストリーミングは、創作活動、音楽ライブ、実写イベントなどに最適である。Mevo Startは、小さなボディに驚くべき価値を秘めている(画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch)

問題は、筆者がこのカメラを完全に信頼することができなかったことであり、結果として筆者が担当するライブ配信にこのカメラを使用することはおそらくないだろう、ということだ。3台のカメラを用意して、もらったばかりの子猫たちが遊んでいる様子をライブ配信するか?もちろん、見応えのある愛らしい映像になると思う。友人が地元のバーで行う音楽ライブの様子を、何十人かのライブ配信愛好家に向けてライブ配信する際は利用するだろうか?おそらく「No」だ。ストレスレベルが高すぎる。長時間なんの問題なくライブ配信して初めて、重要な撮影にこのカメラを使ってもいいと思えるだけの信頼を置けるかどうか、といったところだ

ここに難問がある。ライブ配信は非常に危険で高ストレスなものなので、自分の機材を信頼できると感じることが重要である。私がこれまでにレビューした製品の中でも、Mevoのカメラは信頼という点で最悪のデバイスだ。とはいえ、逆もまた真なりだ。というのは、レビュアーという仕事では、ファームウェアの初期バージョンや、まだ本領を発揮していないソフトウェアを目にすることもある。Mevoは、このレビューで見つかった問題を解決してくれるかもしれないし、3カ月後、6カ月後にはカメラはすばらしいものになっているかもしれない。筆者は喜んでそれを受け入れよう。

少なくとも理論的には、マルチカメラにチャレンジしたいと考えているライブストリーマーにとって、Mevo Start 3パックは費用対効果の高い、完ぺきに近いソリューションとなるはずだ。この製品がおすすめできるかどうかは、数カ月後に再検討したいと思う。

画像クレジット:Haje Kamps for TechCrunch

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

ユーチューバーがリアルで「イカゲーム」を再現、ハリウッド並予算で作られたYouTube動画がクリエイターに与える影響

韓国のサイコスリラー「Squid Game(イカゲーム)」が話題になった。「イカゲーム」は1億4200万人の視聴者を獲得し、Netflix(ネットフリックス)のシリーズ史上最大のヒット作となった。そして今、ユーチューバーのMrBeast(ミスター・ビースト)が、ドラマのタイトルになった死闘を再現し、8日間で1億4200万回の再生回数を記録したことが話題になっている(誰も殺されていないのでご安心を)。

関連記事:Netflix配信の韓国ドラマ「イカゲーム」、全世界で1億4200万世帯が視聴

先日、YouTubeの米国トップクリエイターに2年連続で選ばれた23歳のJimmy Donaldson(ジミー・ドナルドソン、MrBeast)氏は、セットを用意し、456人の参加者の衣装を作り、Netflixのドラマに限りなく近い動画を制作した。そして、Netflixの人気シリーズ同様、最後まで勝ち残ったプレイヤーは、人生を変えるような賞金を手にする。ドナルドソン氏の動画では、参加者は45万6000ドル(約5150万円)を獲得するチャンスが与えられた。

ドナルドソン氏の「イカゲーム」が、少なくとも再生回数では元祖「イカゲーム」と同じくらい人気を呼んだのには、いくつか理由がある。1つには、YouTubeは無料で、Netflixはそうではないからだ。

だが、動画がバイラルにする(拡散する)ためには、コストがかかる。同氏は、25分の動画に、なんと350万ドル(約4億円)もかかったとツイートした。ちなみに、Netflixの全9話のシリーズにかかったコストは、合計2140万ドル(約24億円)。シリーズ1時間あたり平均240万ドル(約2億7000万円)だ。

ドナルドソン氏のような人気ユーチューバーであっても、Netflixのような上場グローバル企業が持つ経営資源にはかなわない。そのため、ドナルドソン氏のように、衝撃的なスタント(人目を引くための馬鹿げた行為)を内容とする動画を作るクリエイターにとって「イカゲーム」の再現のような、前例のないことをするのは難しくなっている。

「イカゲーム」リリース後、9時間を割けなかった人のために、背景を説明しよう。「借金まみれから一生抜け出せないなら、途方も無い富を手に入れるために死闘を繰り広げてみてはどうか」。これが、韓国の債務危機に対するHwang Dong-hyuk(ファン・ドンヒョク)監督の答えだが、海外の視聴者にも共感してもらえるだろう。米国では学生の借金が1兆7300億ドル(約195兆円)に達し、過去10年間で91%以上増加した。もしあなたが、たった一度、歯医者に行っただけで、これまでの貯金を使い果たしてしまうのではないかと心配しているのであれば、登場人物たちが手っ取り早く金を手に入れようと必死になる姿に共感するのは難しくないだろう。

「イカゲーム」の中で、そのゲームは、裕福なエリートたちが自らの娯楽のために作ったものであることが明かされる。貧しい人々がゲームの条件に同意するなら、死闘を演じさせてはどうだろう、ということだ。

そこまで極端でなくても、MrBeastの動画が行っていることも同じだ。同氏は、普通の人々に大金を渡し、自らのブランドであるパフォーマンス的な慈善活動で、何百万人もの視聴者を楽しませ、注目を集めることで金銭的な利益を得ている。

予想どおり、MrBeastの「イカゲーム」動画には、Netflixのドラマをあれほど魅力的にした、感情的な共鳴やサスペンスが欠けていた。参加者は何のリスクも負わないため、昼間の「Wheel of Fortune(米国のゲーム番組)」の再放送と同じ程度に、懸けられたものが小さく感じられる。だがドナルドソン氏は、このスタイルのYouTubeコンテンツを開拓しただけでなく、完成させた。とんでもなく馬鹿げたことをすれば、みんながそれを見てくれる。YouTubeでは視聴時間が金になる。ただ、このモデルを追求していくと、ユーザーの注目を集めるための投資コストが時間を追うごとに膨らんでいく。

クリエイターエコノミーの拡大に伴い、一部のユーチューバーの予算も増えている。しかし、不安定な性質を持つこの仕事で、赤字に陥ることは危険だ。Netflixの「イカゲーム」は、これまでに少なくとも予算の約42倍の8億9110万ドル(約1007億円)を稼いだが、ドナルドソン氏は自身の「イカゲーム」への投資を回収できないかもしれない。

「これ以上できない」というところまでエスカレート

動画「How I Gave Away $1,000,000(僕が100万ドル[約1億1300万円]を誰かにあげるまで)」でドナルドソン氏は、こうしたコンテンツを作り始めたきっかけは、デジタルアイテム収集アプリのQuidd(クイッド)から、1万ドル(約113万円)の動画ブランド契約を持ちかけられたことだと説明している。同氏は、その1万ドルをホームレスの人に渡す動画を撮った。その後もQuiddからの資金で動画を作り続け、その数は雪だるま式に増えていった。

現在、最も人気のある動画の中には「I Ate A $70,000 Golden Pizza(7万ドル[約800万円]のゴールデンピザを食べてみた)」「Last To Leave Circle Wins $500,000(円の中に最後まで残ったら50万ドル[約5650万円]」「Donating $100,000 To Streamers With 0 Viewers(視聴者ゼロのストリーマーに10万ドル[約1130万円]を寄付してみる)」など、投資額がもっと大きなものもある。

MrBeastは9月、クリエイター向けのYouTubeチャンネル「Colin and Samir」で「動画制作に毎月400万ドル(約4億5200万円)を使っているが、自分の期待を上回る動画もあれば、そうでない動画もある」と語っていた。同氏によると「I Sold My House For $1(自宅を1ドル[約113円]で売ってみた)」という動画の制作費は100万ドル(約1億1300万円)を超えたが、広告収入で回収できたのは50万ドル(約5650万円)にも満たず、スポンサー料ではその差を埋められなかった。だが、いくつかの動画が予想以上に良い結果を出している限り、あまりバイラルではない(拡散しない)動画が多少あっても、痛くも痒くもない。

「動画をバイラルにする方法がわかれば、あとはいかに多くの動画を配信するかということになります」と同氏は2020年、Bloombergに語った。「稼ぐことができる金額は実質的に無限です」。

Forbes(フォーブス)は、ドナルドソン氏が2019年6月から2020年6月の間に、YouTubeで2400万ドル(約27億円)を稼いだと推定した(YouTubeだけが同氏の収入源ではなく、MrBeast Burgerというゴーストキッチンを経営したり、Twitch(ツイッチ)でストリーミングしたり、多くのブランドとコラボレーションしたりしている)。しかし同氏は、同じバイラルスターのLogan Paul(ローガン・ポール)氏とのインタビューで、収入のほとんどをそのまま動画に使っていると語っている。

「月に300万ドル(約3億3900万円)とか400万ドル(約4億5200万円)稼いだら、次の月には動画に使ってしまいます」とドナルドソン氏は話す。「私たちが得る、文字どおり『カミソリのように』薄い利益は、すべて単純に再投資しています」。

このようなクリックベイトモデルの問題点は、視聴者が高予算のYouTube動画に鈍感になってしまうことだ。クリエイターはさらにレベルアップする必要に迫られる。

コメディアンのDemi Adejuyigbe(デミ・アデジュイグベ)氏も、Earth, Wind, & Fire(アース・ウインド&ファイアー)の「September」に合わせて踊る動画を毎年公開するなかで、この問題に直面した。

2016年の最初のバイラル動画では、表に「SEPT 21(9月21日)」、裏に「THAT’S TODAY(それは今日だ)」と書かれた自作のシャツを着て、寝室で踊っただけだった。翌年は派手に風船を使い、2018年には子ども合唱団を登場させ、2019年にはマリアッチバンド(メキシコの大衆的な楽団)を雇った。その後の展開はおわかりだろう。2021年、同氏はもうビデオを作らないと決めた。毎年、より大きく、より良いものを作り続けるのは、時間がかかりすぎるし、困難だからだ。そこで、同氏は最後にもう一度、全力で取り組み、ファンから100万ドル(約1億1300万円)以上の寄付を集めた。だが、一連の「September」動画は、同氏の生業にはならなかった。動画が話題になったことで、ハリウッドで注目されるようにはなった。毎年の「September」動画の企画の合間に「The Good Place」や「The Late Late Show with James Corden」などの番組で脚本を担当した

美容・ファッションクリエイターのSafiya Nygaard(サフィヤ・ナイガード)氏も、クリックベイトモデルの問題に直面した1人だ。同氏は最初、BuzzFeed(バズフィード)のビデオプロデューサーとしてファンを獲得したが、退職して自身のチャンネルに投資し、独立することにした。同氏は、美容分野で差別化を図るために「Melting All My Nude Lipsticks Together(私が持っているヌードカラーの口紅を全部溶かしてみる)」「Mixing All My Foundations Together(私が持っているファンデーションを全部混ぜてみる)」など「悪いメイクの実験」をしてきた。1年後には「Melting Every Candle From Bath & Body Works Together(Bath & Body Worksのすべてのキャンドルを一緒に溶かしてみる)」「Melting Every Lipstick From Sephora Together(Sephoraのすべての口紅を一緒に溶かしてみる)」とエスカレートしていった。後者の動画では、600本以上の口紅を使用した。Sephoraの口紅の価格は約10〜50ドル(約1130〜5650円)。同氏の支払額があまりに高額だったため、Sephoraのレジ係が確認のために銀行に電話した。同氏はその様子を撮影した。

しかし、Sephoraであらゆる口紅を買ってしまったら、それ以上のことをするのは無理だろう。ナイガード氏は目下、約1000万人の登録者がいるYouTubeチャンネルを月に1~2回しか更新していないが、Instagram Reels(インスタグラム・リール)やTikTok(ティクトック)には数日に1度のペースで投稿するようになった。TikTokでも高価な買い物をすることがある。ある人気のTikTokで、同氏がBalenciaga(バレンシアガ)の1350ドル(約15万3000円)のピンヒールをデザインした。しかし、117本のBath and Body Worksのキャンドルや、600本のSephoraの口紅に比べれば、小さな買い物だ。

ナイガード氏やアデジュイグベ氏のようなクリエーターは、このように高額で、時に低報酬となるコンテンツから離れることができた。だが、ドナルドソン氏にとって、高予算の動画を作ることは活力の源となっている。自分のチャンネルがYouTubeの食物連鎖の頂点に立ち続けるために、より過激なコンテンツの制作をやめるわけにはいかないのだ。

クリエイター経済への資金供給

スタートアップは事業の成長のために資金を必要とするとき、ベンチャーキャピタルを利用する。動画制作コストが増大する昨今、バイラルクリエイターに投資機会を見出すベンチャーキャピタル企業が出てきている。ベンチャーキャピタルのSignalFireは、クリエイターは最も急成長している中小企業であると述べている。Sam Lessin(サム・レッシン)氏のSlow Venturesのように、その考えを次のレベルにまで高めている企業もある。Slow Venturesは最近、Silicon Valley Girlというチャンネルを持つユーチューバーのMarina Mogilko(マリアナ・モジルコ)氏の将来に170万ドル(約1億9200万円)を投資した。今後30年間、同氏のクリエイターとしての収益の5%を受け取る。

「人」に投資するというのは薄っぺらく聞こえるかもしれない。だが、関係者全員が善意であると仮定した場合、アーティストに金銭的な余裕を与えることは、本当に最悪なことなのだろうか。これは、すでにハリウッドで起こっていることだ。制作会社が脚本を購入し、人材を雇い、映画を売り込んでも、興行的には大失敗に終わることがある。

しかし、クリエイター、つまり「人」はスタートアップではない。そして、自分を超えようとし続けるとどうなるか。燃え尽きてしまうのだ。

ベンチャー企業からの資金調達という緩衝材が、クリエイターの経済的負担を軽減する可能性はある。だが、利害関係者へのアピールというプレッシャーが、さらなるストレスとなることも考えられる。

YouTubeのCEO、Susan Wojcicki(スーザン・ウォジスキ)氏は、2019年にクリエイターに宛てた手紙の中で、燃え尽き症候群の問題が大きくなっていることを認めている。

「自分のチャンネルが上手くいかなくなるのではと心配して、撮影を休めないという気持ちになる、というクリエイターの声を聞いたことがあります」とウォジスキ氏は述べた。「もし、あなたがしばらく休みたいと思っても、ファンは理解してくれるでしょう。結局のところ、あなたが作っているからこそ、ファンはそのチャンネルを選ぶのですから」。

YouTubeのプロダクトチームは、クリエイターが休みから戻ってくると、より多くの再生回数が得られることに気づいた。しかし、Drake McWhorter(ドレイク・マックウォーター)氏は、それは真実ではないと思う、と当時CNNに語った。

「YouTubeはトレッドミルのようなものです」と同氏はいう。「一瞬でも止まったら死んでしまいます」。

ネットでバイラルになるのはこれまでになく簡単になったが、だからといって長期的に視聴者の注目を集めるのが簡単だとは限らない。ネットで生計を立てるには、視聴者が必要となる。MrBeastがハリウッド級の予算でYouTube動画を制作し、なおかつ「カミソリのように薄い」利益しか上げていない今、私たちは「クリエイター経済で勝っているのは誰か」と問わなければならない。結局のところ「Real Life Squid Game」の成功は、ドナルドソン氏にとってよりも、YouTubeにとって、あるいはNetflixにとってさえも、朗報なのかもしれない。

画像クレジット:MrBeast/YouTube

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

InstagramがTikTokクローン「Reels」への投稿に最高114万円のボーナス、ただし米国内からのみ対象

Instagram(インスタグラム)は、Reels(リール)を投稿して欲しいと真剣に考えている。もし運がよければ、Reelsへの投稿に対して最高1万ドル(約114万円)までの報酬を得ることができる。

TikTokの月間アクティブユーザー数が10億人を突破したことで、YouTubeショート、Snapchat Spotlight(スナップチャット・スポットライト)、Instagram Reels(インスタグラム・リール)などの競合プラットフォームたちが、ユーザーに短編コンテンツを自社のアプリに投稿することを奨励している。YouTubeは「ショート」のために1億ドル(約114億円)のクリエイターファンドを創設し、SnapchatはSpotlightチャレンジへの投稿に賞金を提供し、そしていまInstagramは、月次ボーナスプログラムのReels Play(リール・プレイ)を強化する。

しかし、どのような要素がInstagramからのボーナスの大きさを決定するのかについてははっきりしておらず、Instagramもその懸念を払拭しようとしていない。InstagramはTechCrunchに対し、このプログラムは実験的なものであり、まだ初期段階にあると述べている。しかし、その透明性の低さは、これらのプラットフォームを利用して生計を立てているクリエイターにとっては悩みの種となる。今週、このボーナスプログラムに不具合が発生し、対象となるクリエイターたちに「実際には支払いの対象外でした」と伝えられたことがあった。InstagramはTechCrunchに対し、この不具合は修正されたと述べている。

インスタグラムで5万2000人近くのフォロワーを持つMaddy Corbin(マディー・コービン)氏は、1カ月の間に自分のリールに対して1000ドル(約11万4000円)近くの配当を受けた。しかし彼女は、他のクリエイターに別のオファーが行われていることに気がついた。

「私よりも多くのフォロワーがいるのに、600ドル(約6万8500円)しか稼げない人もいたんです」とコービン氏はTechCrunchに語った。より少ないフォロワー数で、800ドル(約9万1400円)を受け取ったひともいた。「報酬がどのようにして生まれたのかを、もっと知りたいと思います。想像するに、過去のリールの見られ方を参考にしているのではないかと考えていますけど」。

コービン氏の半分にも満たない約2万4千人のInstagramフォロワーを持つあるクリエイターがTechCrunchに語ったところによれば、先月、その月に投稿されたすべてのリールの再生回数が170万回に達した場合に、800ドル近くのボーナスが提供されたという。このボーナスはオールオアナッシングではない。このクリエイターが、ボーナス期間中、意図的に1日1リールを投稿し、149万回の再生回数を獲得したところ、689.90ドル(約7万8800円)の配当を得ることができたという。先月Metaが所有する、Instagramを含むすべてのアプリがサーバーの問題で6時間もオフラインになったときには、彼らは残念な思いをした。

だが、今月Instagramはそのボーナスを一段と高めた。現在このクリエイターは928万回の再生で最大8500ドル(約97万1000円)を手にすることができる。先月のレートよりもペイアウト単価が高く、もちろん10倍以上稼げる可能性もある。このクリエイターによれば、自身が3万2千人のフォロワーを持つTikTok(ティクトック)で得られるものよりも、1回あたりの報酬が高いそうだ。

Instagramのボーナスオファーがどのように計算されているかを判断するのは困難だ。あるRedditユーザーは、1カ月で5800万回以上の閲覧回数で3万5000ドル(約399万8000円)近くの報酬を受けている。Instagramのフォロワー数が800人程度のTwitch(トゥイッチ)ストリーマーのMiguel Lozada(ミゲル・ロザダ)氏は、2万4000人のフォロワーを持つクリエイターと同額の8500ドル(約97万1000円)の報酬を受けた。5万9000人のフォロワーを持つ別のユーザーは、今月は850ドル(約9万7000円)のボーナスを提供されたとTechCrunchに語っている。

InstagramはTechCrunchに対して「より多くのクリエイターに報酬を渡せるように、支払いのテストを続けています。まだ始まったばかりなので変化は続きます」と述べている。「私たちは、できるだけ多くのクリエイターを支援できるように、達成可能でそれなりの収益につながる方法でボーナスをデザインしました。目標は、ボーナスが時間とともによりパーソナライズされていくことです」。

ボーナスプログラムに参加したら、自分のリールが注目されなくなったと感じたと報告するクリエイターもいる。

「ボーナスプログラムに参加した最初の3日間は、1日に40ドル(約4571円)くらい稼げていましたが、1週間後には文字どおり暴落して、1日あたり数セント(数円)から数ドル(数百円)になってしまいました」とコービン氏は語る。「コンテンツの出し方をそれほど変えていないのにこうなったことは、興味深いですね」。

Instagramのサポートページによると、これらのボーナスは「ゆっくりと展開している」とのことで、まだすべてのユーザーが利用できるわけではない。そもそも、これらのボーナスは米国内にしか適用されない。

InstagramがTechCrunchに語ったところによると、これらのプロモーションの対象となるのは、ユーザーが18歳以上で、プラットフォームのパートナーマネタイズポリシーを満たしている必要があるとのことだが、これは少し曖昧だ。このポリシーによれば、クリエイターは「十分なフォロワー数」を維持する必要があるものの、Instagramは何をもって「十分なフォロワー数」とするかを数値化していない。TechCrunchは、フォロワー数が800~5万9000人のクリエイターたちがボーナスを支給されたことは確認している。

また、Instagramは今週、ボーナスプログラムReels Surprise(リール・サプライズ)を発表した。このプログラムでは、米国を拠点とするクリエイターたちが特に感動的で楽しいリールを制作した場合に、毎週最大150人に最大1万ドル(約114万円)の報酬が与えられる。対象となるのは、米国を拠点とする18歳以上のクリエイターで、Instagramのコミュニティガイドラインパートナーのマネタイズポリシーを満たし、1000ビュー以上の既存リールを持ち、まだボーナスを受け取ったことがないことが条件だ。

ユーザーがTikTokのコンテンツを再利用するのを阻止するために、Instagramのアルゴリズムは、他のソーシャルメディアプラットフォームからのウォーターマークがあるコンテンツの評価は引き下げる。しかし、YouTube Shortsは、人気のあるクリエイターを自社のプラットフォームに誘導するために、さらに積極的な戦術をとっている。今週Business Insider(ビジネス・インサイダー)は、一部の人気TikTokプレイヤーが6カ月間で100本のYouTube Shortsを投稿することを条件に5万ドル(約571万2000円)のオファーを受けたと報じた。このプログラムは公開されておらず、YouTubeの1億ドル(約114億円)のShortsファンドとは別のものだ。Business Insiderの取材に応じたタレントのマネージャーによると、クリエイターがYouTubeにショートフィルムを投稿した後、それを他のプラットフォームに再投稿するまでには7日間待たなければならないという。

TikTokは成長を続けているが、Google傘下のYouTubeやMeta傘下のInstagramのような長年の巨人によく対抗している。そうした巨人企業にとっては個々のユーザーの短い動画に1万ドル(約114万円)を投じることは、ビジネス上の大きな出費ではないのだ。

取材協力:Sarah Perez

画像クレジット:Instagram

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

YouTubeがすべての動画の「低く評価」数を非公開に

YouTube(ユーチューブ)は米国時間11月10日、動画に表示されている「低く評価」の数を非公開にすることを発表した。この決定は、動画の評価に対する一般の人びとの判断材料に影響を与えるという点で、議論を呼ぶことになりそうだ。しかし、YouTubeは、この変更によって、クリエイターをハラスメントからよりよく保護すると同時に、ある集団がチームを組んで動画に低い評価を与える「低評価攻撃」を減らすことができると考えている。

同社によれば「低く評価」の数は公開されなくなるものの「低く評価」ボタンそのものは削除されないという。ユーザーは、これからも動画のサムダウンボタン(「低く評価」ボタン)をクリックすることで、クリエイターに個人的な低評価の気持ちを伝えることができる。一方、クリエイターは、もし望むならYouTube Studio(ユーチューブスタジオ)で、動画のパフォーマンスに関する他の分析結果とともに「低く評価」の数を追跡できるようになる。

この変更は、YouTubeが2021年初めに行った実験の結果を受けてのものだが、その実験の目的はこうした変更によって低評価攻撃やクリエイターへの嫌がらせが減るかどうかを確認することだった。

YouTubeは実験に際して「低く評価」の数が公開されていると、クリエイターの幸福度に影響を与える可能性があり、動画に低評価を与えようと呼びかける標的キャンペーンの動機となる可能性があると説明していた。それは正しい指摘だが、その一方で「低く評価」はその動画がクリックベイトやスパム、誤解を招くようなものであることを他者に知らせるための有用な役割を果たすこともある。

YouTubeはまた、プラットフォームに参入したばかりの小規模なクリエイターなどからも、低評価攻撃の対象として不当に狙われていると感じているという声を聞いたと述べている。実験の結果、小規模なクリエイターは、大規模なクリエイターよりも低評価攻撃の対象となっていることが確認された。

なおYouTubeは、TechCrunchの取材に対し、具体的な内容や実験で収集されたデータの開示は拒否している。しかし、今回の変更がユーザーとクリエイターの双方にどのような影響を与えるかについては「複数月」にわたってテストを実施し「影響の詳細な分析」を行ったと述べている。

同社は「低く評価」の数を削除するにあたって、たとえばサムダウンボタンの下に「低く評価」した数の代わりに「Dislike(低評価)」という文字列を表示するなど、さまざまなデザインを試していた(これは、同社が現在採用している動画の下にあるエンゲージメントボタンの列に大きな変化を与えないデザインだ)。

画像クレジット:YouTube

ユーザーの感情を伝えるシグナルの公開範囲を狭める、というアイデアを試みた主要プラットフォームは、YouTubeが初めてではない。YouTubeと同様の精神衛生上の理由から、Instagramは数年前から「いいね!」の数を世界的に表示しないテストを始めた。Instagramは「いいね!」の獲得に注力することは、コミュニティに悪影響を及ぼし、クリエイターがプラットフォーム上で自分自身を表現することの満足度が減る可能性があると考えている。しかし最終的には、FacebookもInstagramも判断を完全に下すことができず、「いいね!」を非表示にする権限をユーザーの管理に委ねることで、事実上現状を維持することとなった。

YouTubeの「低く評価」数の変更は、ビッグテックとその精神的健康への影響、特に未成年者への影響が社会的に注目されている状況の中で行われたものだ。企業は、そのユーザーベースをターゲットにして影響を与えるためのシステムの設計方法や、来るべき規制に備えてどのような変更を行うことができるかを再検討している。多くの市場で、議員たちは、YouTubeを含むハイテク企業の幹部たちを公聴会に招き、ハイテク企業のさらなる問題点を抑制するための法案を作成している。メンタルヘルスは、広告ターゲティング、プライバシー、誤った情報のアルゴリズムによる拡散などと並んで、規制の対象となる分野の1つに過ぎない。

YouTubeの場合は、13歳から17歳までのユーザーの保護とプライバシー保護を強化するとともに「不健全な」子ども向けコンテンツの収益可能性を削減することで、求められる変化のいくつかを先取りしようとしている。しかし、市場の大きな変化は、企業にプラットフォームの他の分野でも、幅広い人々に有害な可能性があることも考慮させるようになっている。

とはいえ、YouTubeはTechCrunchに対し、今回の「低く評価」カウントの削除は、規制の変化に対応したものではなく、クリエイターをサポートするためのものだと述べている。

広報担当者は「クリエイター、特に小規模なクリエイターをハラスメントや低評価攻撃から保護する責任がYouTubeにはありますから、積極的にこの変更を行っています」と述べている。

もちろんこれは、大手企業の間でクリエイターの人材獲得競争が激しくなっている中での展開でもある。今日のソーシャルプラットフォームは、特にTikTokの脅威が高り競争が激化する中で、トップクリエイターをひきつけておくための資金を用意している。例えば、YouTubeは2021年、ショートフォームビデオのプラットフォームを立ち上げるために、1億ドル(約114億円)のクリエイターファンドを発表した。そして、この1年ほどの間に、クリエイター体験を向上させることを目的としたいくつかの新しい機能ポリシーを導入してきた。

この「低く評価」数の変更は、本日(米国時間11月10日)より、すべてのデバイスとウェブを含むYouTubeのプラットフォーム上でグローバルで展開される。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

YouTube、閉じたショート動画をそのまま「ショート」で再開するテストをモバイルアプリで展開

YouTube(ユーチューブ)は、TikTok(ティックトック)のライバルであるShorts(ショート)が競争で優位になるようにしている。現在展開中のテストでは、ユーザーがYouTubeモバイルアプリを終了する前にショートのビデオを見ていた場合、デフォルトでショートが直接開くようにしていることを同社は認めた。つまり、ユーザーがYouTubeアプリに戻ってきたときに、YouTubeのホームページに移動するのではなく、ショートの短編動画に案内されることになるということだ。

YouTubeによると、先に公開されたこのテストは、全世界のごく一部のユーザーを対象に、iOS上で実行されているとのことだ。YouTubeは現在、この実験をAndroidにも拡大する準備をしているという。

テストの対象となるのは、ショートとして知られるYouTubeのTikTokに対する回答に参加しているユーザーだ。ショートは、1年以上前にインドで開始され、2021年3月に米国に上陸し、その後2021年に他のグローバル市場にも拡大してきた。この短編動画プラットフォームでは、クリエイターがショートでのコンテンツの再利用を拒否している場合を除き、音楽、オリジナルオーディオ、または他のYouTube動画からの「リミックス」コンテンツに合わせて、最大60秒の動画を作成することができる。

TikTokやInstagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)と同様に、ショートには動画作成ツールが搭載されており、ユーザーはアプリ内で直接動画をアップロードしたり、新しいコンテンツを撮影したりすることができる。また、動画の速度調整、タイマー設定、クリップの結合、グリーンスクリーン効果などの基本的な編集機能も提供している。

YouTubeの広報担当者によると、同社は、今回のテストで、ユーザーが前回アプリを閉じたときの続きから始めることが有用であると感じるかどうかを把握したいと考えている。

しかし、このテストは、YouTubeがTikTokやより一般的な短編動画へシフトを、自社のビジネスに対する潜在的な脅威として捉えていることを示している。TikTokは、短編の縦型フィード形式を普及させたが、その後、YouTubeの領域に少しずつ入り込んできている。例えば、2021年の夏、TikTokは、動画の最大長を60秒から3分に延長した。また、最近では5分間の動画をテストしていることも確認されている。

TikTokに対抗するため、YouTubeは2021年、2021年から2022年にかけて1億ドル(約113億円)規模のYouTube ショート基金とともに、ショートクリエイターに直接報酬を支払う計画を発表した。この支払いは、ショート動画の契約や視聴率に応じて、100ドル(約1万1300円)から1万ドル(約113万円)におよぶ。

しかし、単にクリエイティブなコミュニティにインセンティブを与えるだけでは、YouTubeが優位に立つことはできない。そこでYouTubeは、最後に視聴したのがショートであれば、ユーザーがアプリを再起動したときに、ショートから起動するというより積極的な戦術を試みている。そうすることで、ユーザーがアプリで何かをする前に、スクロールしていくつかのビデオを見る可能性が増えるというわけだ。また、時間を持て余してYouTubeを起動したユーザーの関心を、ショートコンテンツで引きつけることを狙っている。

このテストは、ショートの利用が成長している時期に行われる。YouTubeの親会社であるAlphabet(アルファベット)は、第2四半期の決算において、ショートの1日の再生回数が150億回を超え、第1四半期の65億回から増加したことを発表した。しかし、この増加の一部は、市場の拡大によるものであり、必ずしもユーザーの需要が増加したわけではない。

YouTubeは、これらの新しいテストがどのくらいの期間行われるかについては明らかにせず、指標に加えてユーザーやクリエイターからのフィードバックに基づいて判断するとだけ述べている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

YouTubeが2021年11月から「低品質の子ども向けコンテンツ」の収益化を停止するとクリエイターに警告

YouTube(ユーチューブ)は、同プラットフォーム上で「子ども向き」(made for kids)を謳っているチャンネルに対し、否定的行為や態度を奨励する、あるいは過度に商業的であるなど、質の低いコンテンツを制作している場合、近々収益化を停止すると発表した。同社は以前、この種のコンテンツは専用アプリのYouTube Kidsに採用されなくなることを警告したが、11月からYouTubeはさらに、新しい収益化ポリシーの適用を開始する。これはクリエイターのYouTubeパートナープログラムの参加資格に影響を与え、資格喪失にもつながる可能性がある。


YouTubeが未成年者保護を強化する計画を最初に発表したのは2021年の8月で、今後のアップデートのいくつかは近日施行される規制に直接対応する他、法律の要求を超えるものもある、と語った。当時YouTubeは、13歳から17歳のユーザー向けビデオのデフォルト設定を「非公開」に変更し、未成年ユーザーには休憩や就寝のリマインダーを有効にし、ティーンエージャーや子どもの広告ターゲティングするための「興味や関心」のデータの利用を中止すると語った。変更には、子ども向けコンテンツに特化してい制作しているクリエーターに対する警告もあり「過度に商業的」なコンテンツを同社の低年齢小児向けスタンドアローンアプリ、YouTube Kidsから除外する計画であると記載されている。

関連記事:グーグルが検索やYouTubeなどの自社プラットフォームにおける未成年者保護を強化

今回の行動の前に、いくつかの消費者擁護団体がYouTubeと関係規制機関に対してこの種のビデオをやめさせるよう圧力をかけ、YouTubeはコンテンツと広告の境界を曖昧にしたと指摘していた。また、一部のクリエイターがこの種のコンテンツ制作を支援するブランドとの関係を公表していないことにも言及した。

しかし、何が子どもたちにとって適切かに関する規制やガイドラインがない中、YouTube最大のクリエイターの1人は、Ryan ToysReview(現在はRyan’s World)の億万長者、Ryan Kaji(ライアン・カジ)くん(8歳)という現状がある。同チャンネルは商業主義とおもちゃの開封儀式に強く特化している。

8月にYouTubeは、視聴者の製品購入を誘発するコンテンツや「商品の過剰な収集や消費に焦点を当てたコンテンツ」をYouTube Kidsから削除すると語った。そして今回、YouTubeは低年齢視聴者を対象とするチャンネルや「子ども向け」として分類されているその他のチャンネルも、低品質なコンテンツを公開すれば収益化中止の危機に直面する可能性があると警告した。

これには、ネガティブな行為や態度を助長するコンテンツ(いじめ、不誠実な行い、他社への尊敬を欠く行為、危険な行為、不健康な食習慣、等々)や、教育的内容にみせかけるコンテンツ、理解を妨げるコンテンツ、扇情的または誤解を招くコンテンツ、子どものキャラクターを不適切に利用するコンテンツなどが含まれる。最後の例は近年特に問題となっており、Peppa Pigのようなキャラクターを子どもにふさわしくない状況で登場させるビデオがある)。

関連記事:YouTubeが子ども向け/子どもが登場する悪質ビデオの排除基準をより具体化

画像クレジット:YouTube

11月からYouTubeは「子ども向け」に指定されたチャンネルあるいは子ども向けコンテンツを頻繁に制作するチャンネルのために、上記の品質原則を念頭に置いて拡張された収益化ポリシーの施行を開始すると発表した。

もしクリエイターが低品質のコンテンツを作れば、この原則に則って、YouTubeパートナープログラムから除名あるいは参加が拒否される可能性がある。低品質の原理に当たるその他のビデオも、広告が制限あるいは禁止される場合がある。まず、否定的行為を助長するビデオから適用を開始するとYouTubeはいう。他にも質の悪い「子ども向け」コンテンツに重点を置いたチャンネルも審査の対象になる、と同社は付け加えた。

こうした不適切に関する原則は、コンテンツがYouTube Kidsに適しているかを決定する因子として、すでに利用されており、広くYouTubeアルゴリズムに情報提供されている。しかし、収益化ルールの変更は、コンテンツクリエイターが実際何を作るかを決めさせるはるかに強力な道具だ。

YouTubeは、収益化ルール変更の影響を受ける可能性のあるチャンネルのクリエイターには、変更が施行される前にメールが送られると言っている。また、すぐに影響を受けなくても低品質な子ども向けコンテンツを作っているチャンネルは、広告主向けの警告に黄色いアイコンが付加される。同社は、新たなポリシーの影響を受けるチャンネルの数は明らかにしていない。

反対に、質の高いコンテンツの原則に適合するコンテンツは、今後YouTubeアルゴリズムに推奨されることが多くなり、YouTube Kidsアプリにも採用されるようになる。

質の高いコンテンツの原則には、子どもたちの正しい行いを育むコンテンツ、向学心と好奇心を刺激するコンテンツ、創造性、遊び、想像力を育成するコンテンツ、現実世界の問題との関わりに焦点を当てたコンテンツ、多様性、公平性、包括性を奨励するコンテンツなどがある。

今回の発表は、テック企業が自社サービスを利用する未成年の幸福に関して果たしている役割に対する監視の高まりを受けたものだ。すでに、 GoogleとYouTubeInstagram(インスタグラム)、およびTikTok(ティックトック)は、低年齢ユーザーの安全とプライバシーを重視した改訂を発表している。YouTubeは新しいペアレンタル・コントロールも導入した。また、今週Snap(スナップ)とTikTokは、議会聴聞会に召喚されている。

YouTubeは、今後も各種原則の再評価と改訂を続けていくと言っている。

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画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTube、ユーザーが新たなコンテンツとの出会いをもたらす「New to you」を展開

YouTubeは、2021年の初めに試験的に導入した「New to you」タブを、プラットフォーム上で展開している。この新しいタブは、モバイル、デスクトップ、テレビの各デバイスのYouTubeトップページで利用できるようになっている。YouTubeは、この機能により、ユーザーが普段見ているおすすめ動画以外の新しいクリエイターやコンテンツを発見できるようになるとしている。


この新しいタブは、ユーザーの好みに合ったコンテンツを、これまで出会ったことのないチャンネルから表示する。これは、ゲームや美容などの特定のトピックのコンテンツを探すのに役立つYouTubeの「Explore」リストよりも一歩進んだものだが、ユーザーの特定の関心事は考慮されていない。

YouTubeは「New to you」が視聴者に合わせてパーソナライズされていることを指摘している。これは、ユーザーが興味を持ちそうなコンテンツと、ユーザーが普段見ているものとは少し異なるコンテンツとのバランスを取ろうとしているためだ。

YouTubeはブログで「みなさんからは、おすすめの動画を見終わった後に、新しいクリエイターや新しい動画を見たいという声をいただいています。この新しい選択肢によって、新鮮さを保ちつつ、クリエイターが新たな視聴者とつながることを期待しています」と述べている。

モバイル版では、YouTubeのトップページを更新すると、このタブが表示される。また、フィードをスクロールすると、このタブが表示されることもあるという。なお本機能はパーソナライズされているため、常に表示されるとは限らない。また、このタブを表示するには、YouTubeにサインインしている必要がある。

新機能により、クリエイターは、自分のコンテンツに最も興味を持ちながらも、他の方法では見つけられなかった人をターゲットにして、新たな視聴者を獲得することができる。また、ユーザーが新コンテンツを見つけたり、新たな興味を発見したりするのにも役立つ。

どうやらこの最新機能は、TikTokの人気ページ「For You」をYouTubeが取り入れたもののようだ。この機能は、ユーザーがより多くのコンテンツを見つけるのに役立つだけでなく、クリエイターが発見されるのにも役立つため、TikTokの成功に大きく貢献している。YouTubeの「New to you」フィードは、同じことをユーザーに提供することを目的としているようだ。

この新しい機能は米国消費者製品安全委員会が、プラットフォームが幼いユーザーに与える影響力についてYouTubeとSnapとInstagramを聴聞する予定と同じタイミングで展開された。

画像クレジット:YouTube

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国会議員がSnap、TikTok、YouTubeに対して子供と安全に関する公聴会を開催

議会はこれまで、同じ企業の寡黙で場馴れした経営陣たちを何度も何度も呼び出してきたが、今回はハイテク業界の中でも重要な顔ぶれである2つの企業に新たに注目しようとしている。TikTok(ティックトック)とSnap(スナップ)だ。

米国時間10月26日火曜日には、上院の米国消費者製品安全委員会の議員たちが、この2社とYouTube(ユーチューブ)の政策担当者に、それぞれのプラットフォームが脆弱な若いユーザーにどのような影響を与えるかについて質問する予定だ。Facebook(フェイスブック)の内部告発者であるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏は、自らの正体を明かした直後の2021年10月初旬に、同委員会で同様の問題について証言している。

公聴会の模様は、米国時間10月26日午前7時(日本時間10月26日午後8時)から放映される予定で、Snapのグローバル・パブリック・ポリシー担当副社長のJennifer Stout(ジェニファー・スタウト)氏、TikTokのパブリック・ポリシー担当副社長のMichael Beckerman(マイケル・ベッカーマン)氏、YouTubeで政府関係およびパブリック・ポリシーを担当するLeslie Miller(レスリー・ミラー)氏が証言を行う。

公聴会は、委員長であるRichard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)上院議員(民主党・コネチカット)が主導し、ソーシャルメディアが子どもや10代の若者に与える悪影響に焦点を当てる。ブルーメンソール議員は「FacebookとInstagram(インスタグラム)に関する衝撃的な報道は、若いユーザーに有害な影響を与え、真実性や透明性を欠いることから、ビッグテックによる子どもへのアプローチに深刻な懸念を抱かせるものです」と述べ、Instagramが10代の若者に与える危険性に関する報道を、より広範なソーシャルメディアに結びつけた。小委員会の幹部であるMarsha Blackburn(マーシャ・ブラックバーン)上院議員(共和党/テネシー)は、TikTokのプライバシーに関する問題に特に関心を持っていることを示唆している。

摂食障害、ハラスメント、いじめ、オンラインの安全性、データのプライバシーなどのテーマが取り上げられ、小委員会のメンバーが順番に3社のポリシー担当者に回答を求めていくことが予想される。また、この議員グループは、オンライン上の子どもや青少年を保護するための法案についても議論する予定だが、公聴会でどの程度解決案が提示されるかは未知数だ。そうした解決策の候補としては、16歳未満の子どもたちのために新しいオンライン保護を提供するKIDS法(Kids Internet Design and Safety)などがあり得る。ブルメンソール議員と同じ民主党のEd Markey (エド・マーキー)上院議員が、先月この法案を再提出しているからだ。

現在、ソーシャルプラットフォームが関与している社会的危機は、子どもや若者の精神的健康に限られるわけではないものの、共和党と民主党がともに訴えている問題だ。理由の1つは、珍しく双方の政治的主張に重なりが多い、批判対象であることだ。両党とも、テック系の大企業を何らかの形でコントロールする必要があるという点では一致しているようだが、その理由についてはそれぞれ異なる側面を強調している。保守派にとっては、プラットフォームから消去されるコンテンツに関して、これらの企業があまりにも多くの決定権を持っていることを問題視している。一方民主党側は、過激な表現や誤った情報などのコンテンツが放置されてしまうことを心配している。

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米国時間10月26日の公聴会では、アルゴリズムが有害なコンテンツをどのように増幅させるかについても検討されるだろう。ソーシャルメディア企業は、通常そのアルゴリズムの仕組みについては秘密にしているため、今回の公聴会は、こうした企業がどのようにユーザーに対してパーソナライズされたコンテンツを提供しているかを、一般の人々が知ることのできる貴重な機会となる。理想を言えば、この2、3年の間に米国議会が開催した、しばしば長く繰り返し行われた技術関連の公聴会を通して、私たちはこの種の事柄について多くのことを学んできたはずだ。しかし無知で無関係な質問をする議員と、何時間もメディアトレーニングを受けて回避術を身につけた技術系幹部の間に通常期待できるのは、いくつかのささやかな新情報だけだ。

今回の公聴会にはFacebookは登場しないが、同社やInstagramに関する最近の情報が、同日に行われる公聴会に反映されることが期待される。証言を行うソーシャルメディア企業3社は、Facebookのリーク文書ならびに、そのデータに関して月曜日(米国時間10月25日)に行われたさらなる報道に対する世間の反応に注目している。

Instagramが10代のユーザーに与えるリスクを認識しているという最初の報道が流れた直後に、TikTokはウェルビーイングガイド、より優れた検索ブロック、センシティブな検索語に対するオプトイン警告などの新しい安全対策を導入した。先週Snapは、家族に焦点を当てた新しい安全ツールを発表し、子どもがプラットフォームを使って何をしようとしているのかを、親がもっと見ることができるようにした。この2つのソーシャルネットワークは、Facebook、Instagram、Twitterなどのプラットフォームに比べて若いユーザーに偏っているため、強固な安全ツールがより必要とされている。公聴会に先立ち、YouTubeは、どのような子ども向けコンテンツが収益化の対象となり得るかについての自社の変更を発表するとともに、子どもを中心としたその他の安全対策についても強調した。

関連記事:FacebookはInstagramが10代に悪影響を及ぼすことを把握していながら子供向けアプリ立ち上げを計画、この計画はさらに有害だと考えられる

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

Spotifyは「見て」ももらいたい、ビデオポッドキャスト用ツールを同社傘下Anchorのクリエイターに開放

Spotify(スポティファイ)は、買収、独占契約、その他のパートナーシップの間で、ポッドキャスティングにすでに約10億ドル(約1130億円)を投資している。そして、Spotifyは人々に聴くだけでなく、見てももらいたいと考えている。同社は米国時間10月21日、クリエイターがビデオポッドキャストできるようになる新しいツールを開始することを発表した。このツールは、Spotifyのポッドキャスト制作プラットフォームAnchor(アンカー)が提供するもので、一部のクリエイターのみを対象に、2020年にグローバルで開始したビデオポッドキャストを発展させたものだ。

当時、Spotifyは、ビデオポッドキャストのデビューラインナップには、Spotify Originals and Exclusives(オリジナル&独占)に加え、サードパーティ制作のポッドキャストも含まれていると述べていた。しかし、どんなクリエイターでも動画を配信できるわけではなかった。代わりに、YouTube(ユーチューブ)などの他の動画プラットフォームを利用する必要があった。

この状況が変わる時が来た。Anchorによって、現在のオーディオエピソードの作成・公開するのと同じように、クリエイターが自分のアカウントを使って動画をアップロードできるようになる。公開されたポッドキャストは、Spotifyのモバイルアプリ、デスクトップアプリ、ウェブプレイヤー、そしてほとんどのスマートテレビやゲーム機など、さまざまなプラットフォームで聴くことができる。また、クリエイターは、音声ポッドキャストと同様に、定額制を利用してビデオを収益化することができる。

関連記事:Spotifyのポッドキャストサブスクを米国の全クリエイターが利用可能に

クリエイターは価格を設定し、サブスクリプションに何が含まれるかを決めることができるが、Spotifyは、サブスクリプションによって独占的なビデオコンテンツへのアクセスを提供したり、クリエイターのポッドキャストのビデオ部分をアンロックしたりすることができると提案している。ビデオポッドキャストには、クリエイターの既存の広告パートナーも組み込むことができ、近々、より新しい自動化された広告にも対応する予定だ。

Spotifyは正式にAnchorクリエイターへのアクセスを開始したが、機能は徐々に展開されている。つまり、興味のあるクリエイターは、当面はウェイティングリストに登録する必要がある。ちなみに、Appleはすでに、ビデオポッドキャスティングのホスティングを、すべてのホスティングソリューションを使用するすべてのクリエイターに提供している。

一方、Spotifyのビデオラインナップには、The Ringer(リンガー)のHigher Learning with Van Lathan and Rachel Lindsay(ハイヤーラーニング・ウィズ・ヴァン・レイサン・アンド・レイチェル・リンゼイ)やThe Joe Rogan Experience(ジョー・ローガン・エクスペリエンス)などのオリジナル&独占番組のビデオポッドキャストが含まれている。また、Philip DeFranco(フィリップ・デフランコ)、Jasmine Chiswell(ジャスミン・チズウェル)、The WAN ShowJuicy Scoop with Heather McDonald(ジューシー・スクープ・ウィズ・ヘザー・マクドナルド)など、今後Spotifyで公開される他のビデオクリエーターも含まれる。

Spotifyは過去に、動画への進出を試みては失敗してきた。5年前に行ったオリジナルビデオへの最初の取り組みは大失敗に終わり、同社はしばらくの間、ビデオ計画を棚上げにしていた。しかし最近になって、同社はYouTubeをベースにした動画事業を持つスポーツネットワークのThe Ringerを買収し、動画への復帰の可能性を示唆した。その後も、TikTok(ティックトック)のスターからNetflix(ネットフリックス)の女優になったAddison Rae(アディソン・レイ)との契約など、動画への移行が可能な契約を次々と行っている。

今回のポッドキャストクリエイターへの動画配信の拡大は、YouTubeが自社のポッドキャスティング事業へのさらなる投資を検討しているというニュースに直結している。2021年10月、Bloombergは、YouTubeがポッドキャストに特化した初の幹部を採用すると報じた。実際にアップロードを開始するためのアクセスは、まだウェイティングリストによってブロックされているものの、このニュースを受けて、Spotifyが自社のビデオポッドキャスティングへの取り組みを推進することになったのかもしれない。

現在、Spotifyで動画コンテンツを探すには、見たい番組からエピソードページに移動し、再生ボタンを押してエピソードを開始する必要がある。画面下の再生バーをタップすると、動画がフルスクリーンで表示される。あとは、何をしているかに応じて、聞くか見るかを選ぶことができる。

ただし、動画に対応しているすべてのポッドキャストを簡単に確認する方法はまだない。Spotifyは、サービス開始時にビデオとして利用できるポッドキャストの数については明らかにしていないが、年末までに「数千」のポッドキャストへのアクセスを提供する予定であると述べている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

YouTubeが1週間にわたりクリエイターによるライブ配信ショッピングイベントをテスト開催

YouTube(ユーチューブ)は2021年初め、一部のクリエイターを対象に、ライブ配信ショッピングの試験運用を開始することを発表した。そこでついに、ライブショッピングプラットフォームのより大きな試験運用の準備が整ったようだ。同社は11月15日から、1週間にわたってライブショッピングイベント「YouTube Holiday Stream and Shop」を開催する予定だ。このイベントでは、視聴者が新商品を購入したり、期間限定の特典を適用したり、Q&Aや投票を通じてクリエイターや他の視聴者と交流したりすることができるとのことだ。

同社は、2021年初頭に、YouTube上での統合型ショッピングをめぐるより大きな取り組みの一環として、ライブショッピングへの投資計画を初めて発表した。最初のテストでは、2021年夏にライブ配信の試験版が開始されるまで、オンデマンド動画に焦点を当てていた。

関連記事:YouTubeが一部クリエイターを対象にライブストリームからのショッピングを試験的に開始

それ以来、多くのユーチューバーがファンと一緒にライブブ配信ショッピングを試している。その中には、ネイル磨きコレクションSimply Not Logicalチャンネルで280万人のファンに向けて発表したSimply Nailogicalや、スキンケアライン「Selfless」を450万人のファンに向けて発表したHyram、Walmart(ウォールマート)と提携して商品を販売するライブブ配信ショッピングセッションを行ったRaven Elyseなどがいる(Walmartは以前にも複数イベントでTikTok上でライブショッピングを実験していた)。

YouTubeによると、他の小売業者もより直接参加したそうだ。例えば、Sephora(セフォラ)はライブQ&Aを開催し、Target(ターゲット)は新機能を使ったライブスタイルの販売を行った。

Merrell Twins(メレル・ツインズ)の登場で幕を開けることになっている今後のStream and Shopイベントでは、Walmart、Samsung(サムスン)、Verizonな(ベライゾン)などの一流小売業者の製品も紹介される予定だ。

また、宣伝ウィークでのパネルディスカッションでは、ライブショッピング体験をより深く理解するために行ったリサーチの詳細と、YouTubeがどのような役割を果たしているかを紹介した。Publicis(パブリシス)とTalkShoppe(トークショップ)と共同で実施したこの調査では、視聴者の75%が、クリエイターの#ShopWithMeビデオを見るなどして、ショッピングのインスピレーションを得るためにYouTubeを利用していることがわかった。また、85%の視聴者がクリエイターの推薦を信頼しており、視聴者は動画の制作価値よりも情報の質と量を重視していることがわかった。

YouTubeは、ライブ配信でのショッピングに向けた取り組みを進めているが、まだこの機能を広く提供しているわけではない。その代わり、個々のクリエイターを対象にライブショッピングのテストを続けている。

一方で、ライバルのTikTok(ティックトック)は、独自のライブショッピング機能を進めている。

2021年初め、TikTokはShopify(スポティファイ)と提携し、米国、英国、カナダでTikTokショッピングの試験運用を開始した。2021年9月のイベントでは、新しいパートナーであるSquare(スクエア)、Ecwid(エクウィッド)、PrestaShop(プレスタショップ)、Wix(ウィックス)、SHOPLINE(ショップライン)、OpenCart(オープンカート)とBASE(ベース)とともにショッピングを拡大していると語っていた。また「TikTok Shopping」というブランドで、商品を動画や広告に統合する方法や、ライブショッピングのサポートなど、一連のソリューションや機能を紹介した。

また、Facebook(ファイスブック)は、2021年の春と夏に独自のライブショッピングイベントを開催し、FacebookアプリとInstagramアプリの「ショップ」内にライブショッピング専用のセクションを設けている。

YouTubeは、ライブショッピングイベントの開催日が近づくにつれ、詳細を発表する予定だ。

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TikTokがShopifyとの提携を拡大、米英カナダで買い物機能のテストを実施
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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

企業向け動画配信クラウド・動画SNSの市場データ分析を手がけるエビリーが7億円調達、開発・人材採用・販促活動を強化

企業向け動画配信クラウドのエビリーが総額7億円を調達、開発・人材採用・販売促進活動を強化

企業向けクラウド型動画配信システム「millvi」(ミルビィ)と動画SNSの市場データ分析サービス「kamui tracker」(カムイ トラッカー)を運営するエビリーは10月20日、第三者割当増資と金融機関からの融資による総額7億円の資金調達の実施を発表した。引受先は、大和企業投資、地域創生ソリューション、西武しんきんキャピタル、みずほキャピタル。調達した資金は、動画プロダクトの開発強化、マーケティング強化、開発・幹部をはじめとする全部門での人材採用の強化にあてる。

累計700社以上の利用実績を持つmillviは、企業内でのコミュニケーションや教育において動画の活用が進んだことで新規契約数が前年比の約380%増。動画によるプロモーション活動をサポートするkamui trackerは、YouTuber、広告主、広告代理店など利用者数は2万人以上。YouTubeのチャンネル運用や市場トレンドの分析、YouTuberのキャスティングやタイアップなどに活かされている。

エビリーは「動画の活用で企業のDX推進を支援する」をミッションにかかげ、今後はデータに基づいた動画制作から配信までをワンストップで提供することを目指す。顧客の動画マーケティング領域、インナーコミュニケーション領域の課題解決を支援するためのソリューションをより強化したいという。

グーグルがスマホ代金と各種プレミアムサービスを組み合わせたサブスクプラン「Pixel Pass」発表、Pixel 6は月額約5100円

新しいスマートフォンPixel 6の発表と同時に、Google(グーグル)は新しい購入方法Pixel Pass(ピクセルパス)も紹介した。このオールインワンのサブスクリプションサービスによって、消費者はPixelを購入する際に、すべての費用を前払いするのではなく、月々の低価格で購入することができるようになる。このサービスは、Pixel 6の場合は月額45ドル(約5100円)、Pixel 6 Proの場合は月額55ドル(約6200円)で利用できるが、このサービスは、携帯電話そのものを利用できるだけではなく、ストレージや音楽、YouTube Premium(ユーチューブプレミアム)、無料アプリやゲームといったGoogleのサービスのサブスクリプションも含まれている。

具体的には、加入者は通常月額11.99ドル(約1300円)の広告なしのYouTube、通称YouTube Premiumを利用できる。これには、Spotify(スポティファイ)やApple Music(アップルミュージック)に対するGoogleの回答であり、利用できなくなったGoogle Play Music(グーグルプレイミュージック)の代わりとなるYouTube Music Premium(ユーチューブミュージックプレミアム)も含まれる。

Pixel Passの加入者は、Google One(グーグルワン)で200GBのクラウドストレージを利用できる他、Google Store(グーグルストア)での割引や、通常は月額4.99ドル(約570円)または年額29.99ドル(約3400円)のサブスクリプションでApple Arcade(アップルアーケード)と同様にアプリ内課金や広告なしでアプリやゲームを無料でできるGoogle Play Pass(グーグルプレイパス)を利用できる。

このサービスには修理や「人生のちょっとしたアクシデント」や修理に対応するPreferred Care(プリファードケア)という保険も含まれているとGoogleは述べている。これは、Apple(アップル)のデバイスに対するAppleCare(アップルケア)のGoogle版だ。

Pixel Passに同梱されるPixel端末は、アンロックされているため、主要な通信事業者に対応している。

このサービスは、Google Storeで購入することもできる他、同社独自の携帯電話サービスGoogle Fi(グーグルファイ)のプランと組み合わせて利用することも可能だという。

Pixel Passをサブスクリプションとして購入すると、2年間で最大294ドル(約3万3500円)の節約になるとGoogleは指摘している。しかし、Google Fiを通じて購入した場合は、毎月のFiプランからさらに4ドル(約450円)が割引され、2年間で414ドル(約4万7300円)の節約となる。

このサブスクリプションは、常に最新のデバイスを持ち歩きたいが、プレミアムサービスにもアクセスしたいという、定期的にアップデートする人のために設計されている。このサービスは、明らかにAppleが提供しているiPhone Upgrade Programに代わる、Googleのサブスクリプションプランを目指している。しかし、Appleは、新しいサブスクリプションプランApple Oneを通じて、独自のサブスクリプションサービスを個別に提供しているが、Pixel Passはそれらを一括して提供している。

Pixel 6と新しいPixel Passは、米国で本日よりGoogle StoreまたはGoogle Fiで月額45ドル(約5100円)から予約を開始している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

アルファベットCEOピチャイ氏がテック業界の規制とサイバーセキュリティへの投資を米国に要求

WSJ Tech Liveカンファレンスで行われたリモートワークの未来からAIの革新、従業員の政治活動、さらにはYouTubeにおける誤情報にいたるまで幅広い話題に及んだインタビューで、Alphabet(アルファベット)CEOのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏は、米国における技術革新の現状と新たな規制の必要性について自身の考えを述べた。特にピチャイ氏が強調したのは、米国の連邦レベルのプライバシー基準の創設で、ヨーロッパのGDPR(一般データ保護規則)に類似するものだ。さらに同氏は、中国の技術エコシステムが欧米市場からさらに切り離されていく中、米国がAI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどの分野で有意を保つことがより一層重要であると提起した。

ここ数カ月、中国はテック企業の締め付けを行っており、テック企業による独占の阻止、顧客データ収集の制限、およびデータセキュリティを巡る新たなルール制定など、新たな規制がいくつも施行されている。Google(グーグル)を含め多くの米国テック企業は中国で中核サービスを提供していないが、提供中のいくつかの企業は撤退を始めている。たとえばMicrosoft(マイクロソフト)は2021年10月、LinkedIn(リンクトイン)を中国市場から引き上げた

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ピチャイ氏は、こうした欧米テック企業の中国との分離は今後増えていく可能性があると語った。

またピチャイ氏は、米国と中国が競合する分野で先行することが重要だと語り、AI、量子コンピューティング、サイバーセキュリティなどを挙げて、Googleによるこれらの分野への投資が、政府による「基礎研究開発財政支援」がやや後退したタイミングで行われたことを指摘した。

「政府のリソースは限られているので焦点を絞る必要があります」とピチャイ氏は話した。「しかし私たちが恩恵を受けているのは20~30年前の基礎的投資からです。現代テクノロジーの多くがこれに基づいており、少々慣れきっているところもあります」と彼は語った。「だから私は、半導体サプライチェーンと量子コンピューティングでリードするために、政府は重要な役割を果たすことができると考えています。それは政策面だけでなく、私たちが世界中から優れた人材を集めたり、大学と協力して長期的な研究分野を作り出すことを可能にすることです」とピチャイ氏は付け加えた。それらの分野は民間企業が最初から焦点を当てられるものではないかもしれないが、10年20年かけて実行できると彼は言った。

国境を超えるサイバー攻撃が増加する中、ピチャイ氏は、サイバーワールドのための「ジュネーブ協定」のようなものが必要な時が来たと語り、政府はセキュリティと規制の優先順位を上げるべきだと付け加えた。

同氏は米国における新たな連邦プライバシー規制に賛成する意見を明確に表明した。これはGoogleは過去何度にもわたって強く要求してきたもので、ヨーロッパのGDPRのようなものを想定している。

「GDPRはすばらしい基盤となっていると私は思います」とピチャイ氏は言った。「私は米国に連邦レベルのプライバシー基準ができることを強く望んでおり、州ごとにバラバラな現在の規制を懸念しています。そのために複雑さが増しています」と彼は続けた。「大企業はさまざまな規制に対応して自らを守ることができますが、小さな会社を始めるためには大きな障壁です」。

これは、Facebook(フェイスブック)CEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が規制を求めた際にも再三指摘された問題だ。米国テック業界の規制が強化されることは、FacebookやGoogleのように規制のハードルを超えるためのリソースをもつ大企業に有利に働く。しかし、国が単一の基準を定めることによって、巨大テック企業はただ1つの規則と戦い、米国各州に点在する多くの規則に対応する必要がなくなる。

ピチャイ氏は消費者のプライバシーをセキュリティに結びつけ「プライバシーの最大のリスクはデータが不正アクセスされること」であるとも指摘した。Google最大のライバル、Amazon(アマゾン)のゲーム・ストリーミングサイトであるTwitch(トゥイッチ)がわずか数日前にハックされた後だけに興味深い発言だ。

テック業界の規制でどこに線を引くのかについてピチャイ氏は、法律はオープンインターネットを侵害すべきではないと語った。

「インターネットがうまくいっているのは、相互運用可能で、オープンで、国境を越えた利用が可能で、国境を越えた取引を推進しているからだと私は思っています。だから私たちがインターネットを進化、規制していく上で、こうした特性を維持していくことは重要だと考えています」と同氏は話した。

CEOは他にも、パンデミックが企業カルチャーに与える影響、従業員の政治活動、YouTube上の誤情報などAlphabetとGoogleが直面しているさまざまな問題に関する質問に答えた。

YouTubeの問題についてピチャイ氏は、体験の自由に対する誓約を表明しつつも、最終的には、会社がコンテンツクリエイターとユーザーと広告主のバランスを取ろうとしていることに言及した。同氏は、多くのブランド広告主が自分たちの広告がある種のコンテンツと並んで表示されることを望んでいないと語った。本質的に、YouTubeの広告を基盤とする経済には、誤情報問題の解決に役立つ可能性があることを同氏は示唆した。

「自由市場ベースで考えれば、自分の広告がブランドを損なうと思うコンテンツと並ぶことを広告主は望まない、ということができます。ある意味で、エコシステムのインセンティブが時間とともに正しい判断を後押しすることが実際にあるのです」。

しかしピチャイ氏は、YouTubeは自らがコンテンツの判断を下すことで、パブリッシャーのように振る舞っているのではないか、というインタビュアーの質問はかわした。

ピチャイ氏はパンデミック下におけるAlphabetの企業カルチャーとオフィスへの復帰についても語り、3-2モデル(3日対面と2日リモート)がよいバランスをもたらすと言った。対面勤務日によって共同作業とコミュニティが可能になり、リモート勤務日によって社員は長時間通勤など対面勤務につきものの問題をうまくやりくりできる。しかし、インタビューの別の部分では、ピチャイ氏は少なくなった自身の通勤時間を懐かしんだ。そこは「深く考える」ための空間だったと彼は言った。

従業員の積極活動について。近年多数かつ多様化した従業員が幹部の下した決定と対立する意見を共有することが頻繁に起こり、多くの積極的活動が見られている。ピチャイ氏はこれをビジネスにおける「新常態」だという。しかし、これはGoogleにとってまったく新しいことではないとも指摘した(たとえば数年前、Google従業員は会社が中国市場向けに検閲機能付き検索エンジンを開発していることに抗議した)。

「最近慣れてきたともいえます」とピチャイ氏は語り、会社としてできる最善のことは、決定したことを説明しようとすることだと語った。

「私はこれを会社の強みと考えています、高いレベルで。会社のやっていることをそこまで深く気にかけるほど熱心な従業員がいるのですから」と彼は言った。

画像クレジット:Kenzo Tribouillard / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルとYouTubeが気候変動を否定する広告と有料コンテンツを不許可に

米国時間10月7日、Google(グーグル)は気候変動を否定する広告や有料コンテンツを今後許可しないと発表した。この新しいポリシーは、コンテンツの発行者と広告主とYouTubeのクリエイターに適用され、彼らはもはや「気候変動の存在と原因をめぐる確立した科学的合意に反する」コンテンツから収益を得ることができない。

Googleはこの新ポリシーを、アルゴリズムによる検出と人間が行なう点検を併用して執行する計画だ。この新しいルールにはいくらかの解釈の余地もあるが、Googleによると「気候変動を誇大宣伝や詐欺と呼ぶコンテンツや、世界の気候が温暖化している長期動向を否定する主張、および温室効果ガスの排出など人間の活動が気候変動の原因であることを否定する主張」が不許可の対象になる。

Google Adsのチームはブログで、このポリシー変更は広告主の要望を反映していると述べている。「自社広告がそんなコンテンツの隣りにあるのは嫌だ」という。クリエイターと発行者は、気候変動を否定する広告が自分の動画に出ることも望んでいないが、Googleの動画プラットフォーム(YouTube)は虚偽情報の巣窟であるため、広告だけを排除する効果は疑わしい。

Googleの新しいポリシーは、気候の危機に関する間違った主張に強い姿勢で臨んでいるが、ソーシャルネットワークは気候関連の虚偽情報の拡散に果たす自分たちの役割を最近認め始めたばかりだ。YouTubeも、米国の選挙に関する虚偽の主張をはじめ、過去にはいろいろな問題で、虚偽情報の流れを止めるためのルールの導入が遅いことで悪名高いものであった。

このポリシーが改善であることは確かであり、すべてのプラットフォームが人類の存続の危機を加速するようなものに対しては強固なルールを設けるべきだが、今度のルールは、どんなに強力かつ根気よく執行されても、虚偽情報の界隈に影響を及ぼすだけだ。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeが動画をより身近なものにするキャプション機能を多面的に充実

YouTubeが米国時間10月7日に、新しいオーディオ機能をいくつか発表したが、いくつかはすでに展開されており、残りはこれからの数カ月でローンチする。本日からはライブのストリームに英語の自動キャプションを付けることができ、ストリームのアクセシビリティが増す。これまでこの機能は、チャンネル登録者が1000人以上のクリエイターしか使えなかった。

YouTubeは今後数カ月で、これまでキャプションを付けている13の言語(オランダ語、英語、フランス語、ドイツ語、インドネシア語、イタリア語、日本語、韓国語、ポルトガル語、ロシア語、スペイン語、トルコ語、ベトナム語)すべてに、このライブの自動キャプションを付ける予定だ。

また同社は、動画に複数の言語の音声を付けて、国際的な視聴者に複数言語の音声を提供するとともに、目の不自由な人たちのための説明音声もテストしている。この機能は現在、少数のクリエイターが利用できるが、今後の四半期ではもっと広く提供していくつもりだ。

Androidではキャプションの自動翻訳を、サポートされている言語で展開する(iOSは2021年後半に)。この機能は現在のところデスクトップのみ。さらに、YouTubeはAndroidとiOSで音声書き起こしに対する検索ができるようになるよう計画している。また、2021年後半にYouTubeはモバイルデバイス上で、一部ユーザーにより書き起こしに対するキーワード検索をテストする予定だ。

YouTubeはYouTube Studioで、チャンネルの新しいパーミッションを開発中だ。それは、キャプションや字幕の制作をクリエイターが誰か信頼できる人に委託できる機能だ。この機能は前に「Subtitle Editor」(字幕編集機能)という名前で発表されたが、その際、展開は遅くなるという注記があった。現在も「開発中」だが、この機能には力が入っているため数カ月後にはアップデートがクリエイターたちに提供されるということだ。

同社はコミュニティのブログで「アクセシビリティの向上はYouTubeにとって最も優先すべきものであり、これらのアップデートでクリエイターがより広いオーディエンスに到達できることを期待しています」と述べている。

YouTubeは2010年に自動字幕起こし機能を導入し、それ以降、改良に努めてより広範な可用性を実現してきた。2018年にはYouTube Liveが自動字幕起こし機能になり、YouTubeは他の多くのプラットフォームと並んで、キャプションの改良でプラットフォームのアクセス性と包容性を高めてきた。他のプラットフォーム、たとえばTikTokは、2021年初めにビデオにオートキャプションを加え、Instagramはほぼ同じ時期にStoriesにキャプション機能を追加した

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TikTokが新しいサウンドパートナーを追加、ブランドがオーディオをさらに活用できるように

TikTok(ティックトック)は、ブランドがプラットフォーム上で音楽やサウンドを簡単に利用できるようにすることを目的とした、新しいパートナーシップを発表した。同社は、TikTokマーケティングパートナープログラムを拡張し、ブランドがプラットフォーム上で「サウンドオン」戦略を構築するのを支援する6つの認定パートナーを導入する。TikTokは、ブランドが「サウンドオン」環境を活用して消費者と関わりを持つことができるよう、信頼できるパートナーとブランドを結びつけたいと考えていると述べた。

新しいサウンドパートナーは「カスタムサウンド」と「サブスクリプションサウンド」の2つのカテゴリーでオーディオを提供する。新しいカスタムサウンドのパートナーは、KARM(カルム)、MassiveMusic(マッシブミュージック)、The Elements Music(エレメンツミュージック)だ。TikTokは、カスタムサウンドパートナーが、チャレンジやキャンペーンに関連してコミュニティの参加者を増やすことを目的としたトラックを作成すると述べている。

新しいサブスクリプション・サウンド・パートナーは、Epidemic Sound(エピデミックサウンド)、Songtradr(ソングトレーダー)、UnitedMasters(ユナイテッドマスターズ)だ。これらの新しいパートナーは、月単位、年単位、またはプロジェクトベースのライセンスプランで音楽を提供する。TikTokは、この2つのカテゴリーが、プラットフォームを利用するブランドのさまざまなキャンペーンの目的をサポートするとしている。

「音はTikTokの世界共通言語であり、ブランドがプラットフォーム上で真価を発揮するためには、音楽と音を受け入れる必要があります。当社の新しいサウンドパートナーは、マーケターがTikTokのための戦略を立てるのを支援してきた実績があり、あらゆる規模のブランドに拡張可能なオプションを提供します」。Tiktokのエコシステム部門の責任者であるMelissa Yang(メリッサ・ヤン)氏は、ブログで述べている。「より多くのブランドがTikTokで音を活用し、クリエイティブなサウンドオン戦略によってコミュニティとの有意義なつながりを作ることに期待しています」。

TikTokは、ブランドがトレンドのサウンドをリミックスしたり、独自のジングルを作成したりして、オーディエンスと関わることができるサウンドオンの環境があることを誇りにしている。マーケターの中には、より多くの人にリーチするためにサウンドオフの広告を作ることに慣れている人もいるかもしないが、TikTokは、プラットフォーム上のサウンドがブランドに新しいストーリーテリングのダイナミックさをもたらしたと述べている。例えば、TikTokは、65%のユーザーがオリジナルのサウンドを採用したブランドのコンテンツを好むこと、68%が好きな曲を広告に採用したブランドをよりよく覚えていると答えていることを紹介している。

TikTokは、プラットフォーム上のブランドがユーザーとのつながりを持ちやすくする方法を探しながら、より多くのブランドを登録してきた。先週、TikTokは、クリックできるステッカーや「Choose Your Own Adventure」タイプの広告など、新しいインタラクティブな広告フォーマットを導入する計画を発表した。さらに、今回のサウンドパートナーの拡大は、Square(スクエア)、Ecwid(エクイッド)、PrestaShop(プレスタショップ)など、TikTok Shoppingの新しいブランドパートナーを発表した1週間後に行われた。TikTokは、Wix(ウィクス)、SHOPLINE(ショップライン)、OpenCart(オープンカート)、BASE(ベース)を近日中に追加する予定だ。

TikTokは、ブランドがより多くのオーディエンスにリーチし、差別化された機能のセットでユーザーとのつながりを深めることを支援する方法を模索しているデジタル大手企業の1つだ。例えば、Pinterest(ピンタレスト)は今週初め、ユーザーに一度に多くの商品を購入してもらうことを目的とした、ブランド向けの新しいショッピング機能を導入した。また、YouTube(ユーチューブ)は今週初め、コネクテッドTV上の広告をより買い物しやすいようにし、広告主がより多くのオンライン販売を促進し、ビジネスを成長させることを支援した。デジタル企業がeコマースへの参入を進める中で、ブランドとユーザーの両方をプラットフォームに引き留める方法を模索している。

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画像クレジット:SOPA Images / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Yuta Kaminishi)

YouTubeがR・ケリーの公式チャンネルを削除

YouTubeが、R.Kelly(R・ケリー)の公式チャンネルを削除した。これは、R・ケリーが性的人身売買の罪で有罪判決を受けたためだ。YouTubeはロイターに対して「RKellyTV」と「RKellyVevo」のチャンネルはすでに存在せず、ケリーはYouTube上で他のチャンネルを作成したり所有したりすることはできないとしている。YouTubeは、クリエイターの責任に関するガイドラインに沿って、今回の措置をとった。

ただし、これはすべてを一律に禁止するものではない。ケリーの音楽は、引き続きYouTube Musicで聴くことができる。また、他のユーザーがアップロードしたケリーの動画は、引き続き視聴することができる。編集部はYouTubeに対して、その理由を明らかにするよう求めている。

2017年、2人の女性がR・ケリーの音楽をストリーミングサービスやラジオから削除させるキャンペーンを始めている。彼に対しては、何十年も前から告発が行われてきた。検察は、ケリーがその名声を利用して女性や未成年の少女を搾取していたとし、連邦陪審員は2021年9月、彼を性売買の罪で有罪とした。

R・ケリーの判決公聴会は5月に行われる予定だ。最低の刑期は10年だが、最大で終身刑になる可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris Holtは、Engadgetの寄稿者です。

画像クレジット:Chicago Tribune / Contributor

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(文:Kris Holt、翻訳:Katsuyuki Yasui)

コネクテッドTVのYouTubeの広告でよりショッピングしやすくする

米国時間10月4日、YouTubeは月曜日、動画アクションキャンペーン(Googleの動画向けインタラクティブ広告タイプの1つ)をコネクテッドテレビ(CTV)に拡大し、YouTube広告をよりショッパブルになると発表た。この新しい動きは、広告主がより多くのオンライン販売を促進し、ビジネスを成長させるのに役立つと同社はいう。

視聴者が自分のテレビで動画アクションキャンペーンを見たら、下部にURLが表示され購入に招かれ、デスクトップやモバイルデバイスからショッピングを続けられる。これにより、ユーザーのテレビの視聴が中断されることはない。

YouTube広告のプロダクトマネージャーでディレクターのRomana Pawar(ロマーナ・パワール)氏の説明によると「ログインしたYouTube CTVの視聴者の4分の1は主にテレビを観ているため、リビングルームがブランドを売り込む絶好の場所になり、それら新しい視聴者によるコンバージョン(実購入)も増えていきます。動画アクションキャンペーンの初期のテストでは、CTVで発生するコンバージョンの90%以上が、モバイルやデスクトップコンピューターでショッピング行動ができなかった」。

パワール氏によると、2020年12月に米国では、YouTubeを大型画面で見る人が増え、1億2000万人以上がYouTubeやYouTube TVを自分のテレビでストリーミング視聴した。企業がオンラインセールスを増やすためには、動画アクションキャンペーンを利用して、1つのキャンペーンの中で新しい顧客を見つけ、彼らにYouTubeやGoogleのビデオパートナーからの在庫を結びつけるべきなのだ。

パワール氏は「初めて、パフォーマンスの良い広告主たちはYouTube on CTVを活かしてコンバージョンを促し、計測もできます。TV画面上の動画アクションキャンペーンは今やGoogle Adsからグローバルで利用できます」とブログで述べている。

GoogleがCTVの広告をもっとショッパブルにしたいという計画を発表したのは、2021年3月という早い時期だ。消費者、中でも若者は動画が好きで、買い物しながらエンゲージする。その結果、YouTubeやFacebook、Instagramなどはすべて、ライブのショッピングと動画ベースのショッピング機能に投資しているのだ。

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画像クレジット:Valera Golovniov/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがAIと新機能を導入して検索サービスを「再設計」

Google(グーグル)は米国時間9月29日、Multitask Unified Model(MUM)と呼ばれる新技術を含むAIの進歩をGoogle検索の改善に応用することを発表した。同社のイベント「Search On」では、MUMを活用した新機能をはじめとするデモンストレーションが行われ、ウェブ検索者を探しているコンテンツによりよく結びつけると同時に、ウェブ検索をより自然で直感的に感じられるようになる。

機能の1つは「Things to know」と呼ばれ、探しているモノをもっと簡単に理解できるようにする。この機能は、人がさまざまなトピックを調べるときの一般的なやり方を理解しており、検索者が最初に見たいと思っているテーマを表示する。

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Googleは例として「acrylic painting」(アクリル画)を検索すると、絵の描き方入門や、アクリル画のスタイル、アクリル画の描き方のコツ、アクリル絵の具の掃除の仕方といったさまざまな「Things to know」(知るべきこと)が表示される。アクリル画に関連する350あまりのトピックを見つけることができる。

この機能が提供されるのは数カ月後からだが、将来的にはMUMを使い表面的なトピックだけでなく、「家庭用品でアクリル画を描く方法」といったより深い洞察に基づくトピックをユーザーに開示することができるようになる。

画像クレジット:Google

また同社は、ユーザーが新しいクエリで検索を再開しなくても、最初の1つの検索を洗練し、拡張できる方法も開発している。

アクリル画の例でいえば、Google検索は、水たまりに絵を描くようなパドルポーリングに関する具体的なテクニックや、受講可能なアートクラスに関する情報を提供するかもしれない。それらのトピックにズームインすると、検索結果やウェブ上の記事、画像、動画などのアイデアが視覚的に豊かなページとして表示される。

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これらのページは、Pinterestに対抗するためのものと思われる。Pinterestの画像を多用したピンボードが、人々の視覚的なインスピレーションをウェブサイトへの訪問やオンラインでの購入などの行動に結びつけることを目的としているのと同様に、検索によって人々がインスピレーションを得ることができるようになっている。

Googleによると、このページは「ハロウィンの飾り付けのアイデア」や「屋内の垂直庭園のアイデア」など、ユーザーが「インスピレーションを求めている」検索に役立ち、試してみたいアイデアを提供するとのこと。本日よりモバイル端末で試すことができる。

Googleはまた、動画検索もアップグレードしている。すでに同社は、AIを使って動画内の重要な瞬間を特定している。さらに、動画内で明確な言及がなくても、そのトピックを識別し、ユーザーがより深く掘り下げて学ぶことができるリンクを提供する機能を始めている。

画像クレジット:Google

 

つまり、YouTubeの動画を見ているときに、MUMはその動画の内容を理解して提案をしてくれるということだ。例えば、マカロニペンギンの動画では、マカロニペンギンがどのようにして家族を見つけたり、捕食者を回避したりするのかを語る動画など、さまざまな関連動画をユーザーに提示することができる。MUMは、たとえ動画の中で明確に語られていなくても、これらの用語を識別して検索することが可能だ。

この機能は、今後数週間のうちにYouTube検索で初期バージョンが展開され、今後数カ月のうちにアップデートされ、より視覚的な機能が強化される予定だとGoogleはいう。

この変更は、YouTubeの大きなリーチを活用することで、Google検索へのトラフィック増加にもつながるだろう。Z世代のユーザーの多くは、すでに旧世代とは異なる方法でオンラインコンテンツを検索していることが調査で明らかになっている。Z世代ユーザーは、複数のソーシャルメディアチャネルを利用し、モバイルファーストの考え方を持ち、動画コンテンツに興味を持つ傾向がある。「Think with Google」の調査によると、Z世代のティーンエイジャーの85%がコンテンツを探すためにYouTubeを定期的に利用し、80%がYouTubeの動画が何かを教えてくれたと回答している。その他のデータでも、Z世代は新たなアイデアやプロダクトについて、テキストやネイティブ広告といったコンテンツフォーマットではなく、動画で知ることを好むことが明らかになっている。

モバイルへの移行が検索の優位性に影響を与えているため、Googleにはこのような追加が必要なのかもしれない。今日、モバイルでのショッピング検索の多くは、Amazonで直接始まるようになっている。さらに、iPhoneユーザーがスマートフォンで何か特別なことをしなければならない場合、Siri、Spotlight、App Store、またはネイティブアプリに助けを求めることが多い。

またGoogleは、MUM技術を使ってGoogleレンズを使ったビジュアル検索を改善する方法も発表している。

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画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeが新型コロナに続きワクチン全般の誤情報も禁止対象に

YouTube(ユーチューブ)は米国時間9月29日、ワクチンについての誤情報を禁止する新しいガイドラインを医療誤情報の規則に含めた。Google(グーグル)所有の動画プラットフォームYouTubeは以前、新型コロナウイルス感染症について危険な誤情報を広めた100万本を超える動画削除している。そして現在、YouTubeはワクチンの安全性、有効性、成分に関する誤情報を広めるコンテンツも削除するという。YouTubeは以前、新型コロナワクチンに限定して誤情報を禁止したが、今回、はしかやB型肝炎のような定期接種に関する誤情報や、地域の健康衛生当局や世界保健機構(WHO)によって安全が確認されたワクチンについての一般的な嘘も禁止するために規則をアップデートする。

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規則の変更は、新型コロナワクチン接種率が低い中でのものだ。米国のコロナワクチン接種完了者の割合は約55%だが、この数字はカナダと英国ではそれぞれ71%と67%で、米国より高い。バイデン大統領はソーシャルメディア上でワクチン誤情報が拡散していると指摘した。さらにホワイトハウスは国民にワクチン接種を促すためにOlivia Rodrigo(オリビア・ロドリゴ)氏のような新星のスーパースターに助けを求めすらした。

YouTubeの今回の新しいガイドラインはFacebook(フェイスブック)に倣っている。Facebookは2月に、誤ったワクチン情報を取り締まるために使用している基準を拡大した。Twitter(ツイッター)もまた、ミスリードする新型コロナ情報の拡散を禁止し、AIと人間の組み合わせでミスリードしているツイートにラベルを貼っている。Twitterは、ワクチンとマスクは新型コロナ拡散を抑制しないという誤った主張を展開したジョージア州選出の議員、Marjorie Taylor Greene(マジョリー・テイラー・グリーン)氏を一時停止措置にすらした。

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YouTubeの新ガイドラインに違反するコンテンツの例としては、ワクチンはがんや糖尿病など慢性的な副作用を引き起こすと主張する動画、ワクチンには接種した人を追跡できるデバイスが含まれていると主張するビデオ、ワクチンは人口抑制計画の一環だと主張する動画などが挙げられる。ユーザーがこれらのガイドラインに違反するコンテンツを投稿すると、YouTubeはそのコンテンツを削除し、なぜビデオが削除されたのかをアップロードした人に案内する。初めての規則違反である場合、警告を受けるだけで罰則は科されないとYouTubeは話す。もし違反が初回でなければ、ユーザーのチャンネルはストライク1つとなる。そして90日以内にストライク3つとなると、チャンネルは削除される。YouTubeはまた、Joseph Mercola(ジョセフ・メルコラ)氏やRobert F. Kennedy Jr.(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)氏のようなワクチン反対派の有名人に関連するチャンネルも取り締まる。

「新しいガイドラインでは重要な例外もあります」とYouTubeはブログ投稿で述べている。「科学的なプロセスにおける自由公開討論や議論の重要性を踏まえ、当社は引き続き、ワクチン政策や新しいワクチンの試験、これまでのワクチンの成功や失敗などについてのコンテンツがYouTube上にあることを認めます」。

YouTubeはまた、コンテンツが他のガイドラインに違反しない限り、ユーザーがワクチンに関する個人的な体験を議論することも認める。しかしチャンネルが反ワクチンを促進する動きをみせると、YouTubeはコンテンツを削除する。これらのガイドラインは9月29日から適用される。だが、新しい規則にはよくあることだが「完全適用」にはしばらく時間がかかる、とYouTube書いている。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi