YouTubeが動画をブラウザでダウンロード、オフラインでも視聴できる機能をテスト中

YouTubeの動画をmp4のファイルでダウンロードできるサービスで、そのダウンロードボタンのうち正しいものをクリックするのに苦労したことがない人は、立派なインターネットライフを送っているといえるだろう。現在、YouTubeはプレミアムユーザー向けに、そのような海賊版サイトを陳腐化するかもしれない機能をテストしている。

プレミアムユーザーは、10月19日まで、動画をブラウザでダウンロードする機能をテストできる。このテストはモバイル版の機能をウェブに持ち込むもので、YouTubeが現在開発している機能などをプレミアム会員にテストしてもらう企画の一環だ。

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プレミアムユーザーは、デフォルトで動画をダウンロード可能になり、アップローダーにオプトインする必要はない。Chrome、Edg、Operaの最新バージョンを使っている人は、動画を見ているときに「ダウンロード」ボタンをクリックするか、閲覧中に3ドットメニューをクリックする。すると自分がダウンロードした動画にアクセスできるようになる。サイドバーのナビゲーションからもダウンロードフィードにアクセスできるようになる。

画像クレジット:Youtube(TechCrunchがスクリーンショット)

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ただしこれまでのサードパーティのサイトと違って、動画ファイルをユーザーのハードディスクに永久に保存することはできない。

YouTubeによると、ユーザーはキャッシュされたバージョンの動画にアクセスできる。Netflixの番組をダウンロードして、飛行機の上でオフラインで観るのと同じだ。ダウンロードした動画は、オフライン状態でYouTubeのウェブサイトにアクセスすることで観ることができる(オフラインであるというテキストが表示され、ダウンロードした動画が表示する新たなページに移動する)。

この機能はYouTubeのProgressive Web App(PWA)アプリにもある。ダウンロードしたYouTube動画は、ユーザーのインターネット接続が30日以内であれば消えない。

この機能はAndroid Policeが発見した。彼らはYouTube.com/newのサイトの変化に気づいた。この機能の公式提供のスケジュールについてYouTubeは口をつぐんでいるが、一般的なプレミアム会員が実験にアクセスできるのは、プレミアムの新規登録や登録更改のときだ。

画像クレジット:Valera Golovniov/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国人の半数はSNSが情報源、ただしその割合は減少

Pew Research(ピュー・リサーチ)の最新レポートによると、米国成人の約3分の1は、現在もFacebook(フェイスブック)から定期的に情報を得ているが、割合は2020年の36%から2021年の31%に減っている。この減少は、情報を何らかのソーシャルメディアから得ていると答えた米国人の全体的数字のわずかな減少を反映している。その割合も2020年の53%から2021年の48%へと5ポイント下がっている。

ここでいう「定期的に」は、調査回答者が「often(頻繁に)」あるいは「sometimes(時々)」情報をデジタルニュースから得ていると答えたという意味で、他の選択肢は「rarely(まれに)」「never(一切ない)」、および「don’t get digital news(デジタルニュースを見ない)」だ。

この変化は、テック企業が自社プラットフォームで誤情報の拡散を許していることについて厳しい監視下にある状況の中で起きている、とPewは指摘している。こうした批判はパンデミック期間中に増加し、ワクチンの忌避や拒否につながり、その結果誤情報を受け入れた多くの米国人の健康状態の悪化を招いた。

こうした問題に関わらず、さまざまなソーシャルメディアから定期的に情報を得ている米国人の割合は前年からさほど大きくは変わっておらず、ネットで日々のニュースを見る一部の人たちの習慣を反映している。

画像クレジット:Pew Research

定期的にFacebookで情報を得ている米国成人の3分の1に続いて、22%がYouTube(ユーチューブ)から定期的に情報を取得している。Twitter(ツイッター)とInstagram(インスタグラム)はそれぞれ13%および11%の米国人の定期的情報源だ。

しかし、多くのサイトにおいて自身のサイトを定期的情報源としているユーザーの数字がわずかに減少している、とPewは指摘している。これは、各サイトをニュース源として使っている米国成人のずっと小さな割合とは意味が異なり、サイト自身のユーザーベースがどう認識しているかを示している。ある意味でこれは、具体的には概して若いソーシャルメディア・ユーザーのニュース消費行動の変化を測ったものだと言える。

現在Twitterユーザーの55%が同プラットフォームから定期的に情報を得ており2020年は59%だった。一方Reddit(レディット)ユーザーの情報源としての同サイトの利用は42%から39%に減少した。YouTubeは32%から30%、Snapchat(スナップチャット)は19%から16%に減少した。Instagram(インスタグラム)はほぼ変わらず2020年が28%、2021年が27%だった。

今回、唯一ニュース源として成長したソーシャルメディアプラットフォームは、TikTok(ティックトック)だ。

2020年、ショートビデオプラットフォームのユーザーで定期的にそこで情報を取得している答えた人は22%だった。2021年には29%に増加した。

しかし全体的に見ると、これらのサイトのほとんどが米国の成人人口全体にごくわずかしか掴んでいない。米国人でReddit(7%)、TikTok(6%)、LinkedIn(4%)、Snapchat(4%)、WhatsApp(3%)、Twitch(%)を情報源としている人はいずれも10人に1人以下だった。

画像クレジット:Pew Research

サイトを利用しているユーザーの人口属性による違いもある。

白人成人は情報源としてFacebookとRedditに目を向ける傾向がある(それぞれ60%と54%)。黒人およびラテンアメリカ系成人は、Instagramを定期的情報源としている人の割合がかなり大きい(それぞれ20%と33%)。若年成人はSnapchatとTikTokに頼る傾向が強く、LinkedInを情報源とする人の過半数が四年制大学の学位を持っている。

もちろん、2021年7月26日~8月8日に実施されたPewの最新調査は個人の申告データに基づいている。つまり、被験者の答えはさまざまなサイトを情報源として使っていることに関するその人自身の認識に基づいている。これは、現実世界でユーザーがどれほど頻繁にニュースを読みにサイトに訪れるかの測定値とは異なる結果を生むことがある。利用の割合を過小評価する人も過大評価する人もいるからだ。

また、人はソーシャルメディアでニュースを読むことの予期せぬ影響を正しく理解できていない。見出しや投稿は扇動的なクリックベイト(クリックを誘う餌)に隠されてリアクションやコメントによるエンゲージメントを誘発しようとしている。そうした手口はしばしば強いリアクションを誘うことがあるが、必ずしも聞く価値のある人によるものではない。Pewによる最近の調査で、ソーシャルメディアニュース利用者は、選挙や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などの重要な話題に関する事実の知識が少ない傾向があるという結果が出た。そしてソーシャルメディア消費者は過激な陰謀論に接する機会が多い(コメントを読んでいる人にとっては実に明らかだ)。

今回の調査の全標本数は、回答者1万1178名で、標本誤差範囲はプラス・マイナス1.4パーセンテージ・ポイントとなる。

関連記事:米国成人の大半はニュースをソーシャルメディアに頼っていることが明らかに

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国政府・自治体はアップルとグーグル共同開発のコロナ接触通知APIを活用できず大失敗との調査結果

米国政府・自治体はアップルとグーグル共同開発のコロナ接触通知APIを活用できず大失敗との調査結果

ArtMarie via Getty Images

Googleとアップルが共同開発した新型コロナ接触通知APIは世界各国のアプリに採用され、日本ではAndroid版の「COCOA」が数か月にわたって事実上機能していなかった一件もありつつも、英国では6000人もの命を救ったと推計されています。

しかしGoogleとアップルの本国である米国では、このAPIを使ったアプリはほとんど失敗に終わったとの調査結果が発表されています。

米Business Insiderの調べによると、米国の多くの州ではアプリ開発さえ行われず、作られても利用率も低く、わざわざアプリに感染記録を残しているユーザーもほとんどおらず、まるで役に立ってないと判明したとのことです。

この報告では、連邦政府から個人に至るまで様々な失敗例が紹介されています。まず最初の問題は、ホワイトハウス(米行政府)が米国で共通の接触通知アプリを作らず、各州に委ねていたことです。

FTC(米連邦取引委員会)の元チーフテクノロジストは、個々の州にアプリ開発を任せたことが全国的な認知度を高め、ユーザーに検査結果を入力してもらう努力を妨げたのではないかと推測。さらに「もし連邦政府がシステムを支援し、このアプリや同種のアプリを全米に広く展開していたら、この数字(使用率)はおそらく大きく変わっていたでしょう」と述べています。

第2に、米国の約半数の州がそもそもアプリを開発しない道を選んだことです。サービスを利用できた28州および準州の人口は約1億8680万人。つまり、残り1億4150万人(全人口の43.1%)もの米国人が一切カバーされなかったわけです。

第3にアプリを展開した州でも、プロモーションや教育が不十分であったため、利用率が極めて低かったことです。一部の州では住民にサービスを検討してもらうことさえ困難であり、たとえばアリゾナ州では人口の1.3%しかアプリを導入しないまま、2021年7月にはプログラムを終了したとのことです。ほかミシガン州では住民の6.3%、ワイオミング州では0.69%(約4000人)しかアプリを入れなかったという低調ぶりです。

最後に、新型コロナの陽性反応が出た人々のうち、実際にアプリに記録した人はわずか2%でした。接触通知アプリは、陽性診断を受けた本人がアプリを通じて報告し、その人と濃厚接触した可能性のある人々に警告することが目的のため、98%もの陽性ユーザーが記録を付けなければまったく意味を成さないことになります。

これは同じAPIを使っている英国民保険サービス(NHS)のアプリでは、実に感染ユーザーの40%以上が報告していたこととは対照的ではあります。

米9to5Macは、多くの米国人が接触通知アプリを「自分の居場所や会った人を追跡している」と勘違いしていたと指摘。その原因のひとつは偽情報ではあるのですが、もう一つは政治家らが接触通知アプリを使っても安心だと説得するどころか、アプリの使用に積極的に反対していたためだと推測しています。

新型コロナワクチンについてもYouTubeで誤情報を拡散する動画がはびこっているほか、ロシアが自国製ワクチン売込みのために偽情報を広めているとの報道もありました

人類と新型コロナとの戦いは、一方で人流を減らしたりワクチン接種を進めるといった物理的な対策をしつつ、他方では反ワクチン主義者の出会い系アプリなど誤情報を抑止することも必須のため、いっそう困難となっているといえそうです。

(Source:Business Insider。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

YouTubeが米国の全iOSユーザーにピクチャー・イン・ピクチャー表示を展開、Premium加入者から

YouTubeは2018年からAndroid端末でピクチャー・イン・ピクチャーの視聴をサポートしているが、米国時間8月26日、TechCrunchに対して、米国のすべてのiOSユーザーにiPhoneとiPadの両方でこの機能を提供開始する予定であることを明らかにした。現在のところ、YouTubeはプレミアム加入者を対象に、他のアプリを閲覧しながらミニプレイヤーでピクチャー・イン・ピクチャーの動画を視聴できるこの機能のテストを募集している。プレミアムユーザー向けのテスト期間は10月31日までとなっているが、米国のすべてのiOSユーザーがこの機能を利用できるようになる時期は、明らかにされていない。

これはモバイル向けの機能だが、プレミアムに加入しているユーザーは、デスクトップのYouTube experimentsサイトでテストできるようにする必要がある。2020年、YouTubeはプレミアム会員の特典として「実験」を始めた。

実験サイトを下にスクロールすると「iOSでのピクチャー・イン・ピクチャー」が表示され、試すためのオプションが表示される。その後、YouTubeアプリで動画を見ると、アプリからナビゲートしたときに動画のピクチャー・イン・ピクチャー表示が表示されるはずだ。

TechCrunchがとったスクリーンショット

ピクチャー・イン・ピクチャーで動画を表示すると、動画の表示位置や大きさを調整することができる。動画をタップすると、YouTubeアプリに戻る。端末をロックすると、ビデオは一時停止する。

一部のユーザーからは、YouTubeアプリを削除して再インストールしないと動作しない場合があるとの報告がある。

この機能は、YouTubeのiOSアプリに搭載されている既存のピクチャー・イン・ピクチャー機能とは異なり、スマホで移動している間でも動画の視聴を続けることができる。同様の機能は、Netflixなどのストリーミングアプリにもすでに搭載されている。

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画像クレジット:YouTube

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Katsuyuki Yasui)

YouTubeは2020年2月以降、新型コロナに関する100万の危険な誤情報動画を削除

YouTube(ユーチューブ)の最高製品責任者Neal Mahon(ニール・マホン)氏によると、YouTubeは2020年2月以降に新型コロナウイルス感染症に関する危険な誤情報のために100万点の動画を削除した。

マホン氏は、誤情報に対して同社がどのような措置を取っているのかを示すブログ投稿の中で統計を共有した。「誤情報は端の方からメインストリームへと動きました」と同氏は書いた。「ホロコースト否定者や9-11の真実を求める人たちの封印された世界にとどまらず、社会のあらゆる側面に入り込み、時として猛スピードでコミュニティを駆け抜けます」。

と同時にマホン氏はYouTubeのコンテンツ全体における「悪いコンテンツ」の割合はわずかだと主張しれいる。「悪いコンテンツはYouTube上の何十億という動画のうち、パーセンテージとしてはわずかです(全動画の約0.16〜0.18%がYouTubeの規則に違反)」と同氏は書いた。そしてYouTubeが各四半期に約1000万点の動画を削除していて「削除される動画の大半は視聴回数が10回にも満たない」と付け加えた。

Facebook(フェイスブック)も最近、自社プラットフォーム上のコンテンツについて同様の主張をした。同社は先週、人気の投稿のほとんどはミーム、あるいは非政治的なコンテンツだと主張するレポートを発表した。そして新型コロナウイルス感染症とワクチンの誤情報の扱いに対する批判について、同社はワクチン誤情報は大半のユーザーが目にしているものを代表してはいない、と主張した。

パンデミックの間、Facebook、YouTubeいずれも健康に関する誤情報をめぐる規則について特に厳しい目が向けられた。両プラットフォームとも10億人超のユーザーを抱えていて、これはたとえほんのわずかな数のコンテンツでも広範に影響を及ぼす力を持っていることを意味する。そしてどちらのプラットフォームもこれまでのところ、ワクチンと健康に関する誤情報がどの程度広まったのか、あるいはどれだけのユーザーが誤情報に遭遇したのか、開示を却下してきた。マホン氏は、誤情報の削除は同社のアプローチの1つの側面にすぎない、とも語った。YouTubeは「信頼できるソースからの情報の増加と害のある誤情報をともなう動画の拡散の抑制」にも取り組んでいる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。著者Karissa Bell(カリッサ・ベル)氏はEngadgetのシニアエディター。

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(文:Karissa Bell、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソーシャルプラットホームはタリバンの扱いで歩調揃わず

20年間駐留したアフガニスタンから米軍が性急に撤退して、ソーシャルメディアのプラットホームには、そのポリシーをめぐる複雑な意思決定課題が残された。

タリバンは長年、ソーシャルメディアと親しかったが、ソーシャルメディア企業は、粗暴と抑圧で悪名高い集団が自分をアフガニスタンの合法的な統治主体として世界に示そうとしているとき、新たな疑問に直面するだろう。ソーシャルメディアは今やあらゆる政治的指導者や政府に知られ利用されているが、タリバンが権力を固めて統治に乗り出そうとするときにはなお一層、中心的な役割を演ずることになるだろう。

Facebookは、タリバンが権力を握ったときにありうる報復からユーザーを守るための予防措置を、早くから講じてきた。FacebookのNathaniel Gleicher氏はTwitterで、先週同社が講じた一連の対策を発表した。同社はアフガニスタンの人びとが「ワンクリックで」自分のアカウントをロックしてタイムライン上のポストを隠し、友だち(フレンド)でない人が自分のプロフィールの画像をダウンロードや共有できないようにした。

[Nathaniel Gleicher: 3/これらの多くは活動家やジャーナリストや市民社会団体が報告している。さらに私はここに、市民社会活動のエキスパートが提供しているジャーナリストや活動家のための有益なオンラインセキュリティガイドのリンクも入れている。4/アフガニスタンにいる人びとが自分のアカウントを素早くロックできる、ワンクリックツールをローンチした。プロフィールがロックされると、その人のフレンドでない人はプロフィールの写真のダウンロードや共有ができないし、またその人のタイムラインのポストを見ることもできない。]

Facebookはまた、アフガニスタンにいる人の友だちのリストを見たり検索したりできないようにした。Instagramではポップアップが出て、アフガニスタンにいるユーザーに、アカウントを素早くロックダウンする方法を教える。

Talibanは前から、同社の危険な団体のルールに反するとしてFacebookの利用を禁じられている。Facebookの広報担当がBBCの取材に対してこう述べている: 「タリバンは米国の法律ではテロリスト団体として制裁対象になっている。私たちは、タリバンによって、あるいはタリバンに代わって維持されているアカウントを削除し、彼らを称賛し支持し代表することも禁じている」。

実際にはアフガンのタリバンは合衆国国務省によって外国のテロリスト組織と指定されていないが、パキスタンを拠点とするタリバンは2010年以来、そう指定されている。また、外国のテロリスト組織のリストに載っていなくても、アフガニスタンを拠点とするタリバンは、合衆国が9/11以降行っている経済制裁によると、テロ集団と定義されている。

タリバンはFacebookが保有するWhatsAppからも禁じられているが、このプラットホームはエンドツーエンドの暗号化を行っているのでユーザーの特定が困難だ。WhatsAppはアフガニスタンでも広く普及していて、近年ではアフガン軍とタリバンの両方がこのチャットアプリを使ってコミュニケーションしている。Facebookは自社のプラットホーム上でタリバンを許容していないが、しかしタリバンは、その意外なほど急速で摩擦のない権力奪回のあと、WhatsAppを使って支配の計画をアフガンの人びとにコミュニケートし、抵抗を諦めさせている。さらにアフガニスタンの人びとは、タリバンがWhatsApp上に作ったヘルプラインの番号に、暴力や犯罪を報告できる。しかしFacebookは直ちに、そのアカウントを閉鎖した

今週初めにFacebookのコンテンツポリシー担当副社長Monika Bickert氏が、国がタリバンを制裁対象のテロリスト集団のリストから外したとしても、Facebookは独自の評価と決定を行なう、と述べた。Bickert氏はこう言った: 「実際に彼らが弊社の危険な団体のポリシーに違反しているか否かに関しては、あらためてポリシーの分析を行なう必要がある」。

Facebookと同じくYouTubeもタリバンを禁じている。YouTubeのその決定は経済制裁の決定に沿っているようなので、タリバンへの合衆国のアプローチが変われば、並行して変わるかもしれない。

YouTubeの広報は本誌にこう語った: 「YouTubeの方針は適用可能なすべての制裁と通商準拠法に準拠している。したがってアフガンのタリバンが保有し運用していると信じられるアカウントを見つけた場合には、そのアカウントを終結する。さらにまた、弊社のポリシーは暴力をそそのかすコンテンツを禁じている」。

Twitterの上では、タリバンの広報担当であるZabihullah Mujahid氏が、カブールにおける同団体の活動について頻繁にアップデートを続けている。もう一人のタリバンの代表者であるQari Yousaf Ahmadi氏も、気の向くままにTwitterにポストしている。FacebookやYouTubeと違ってTwitterは、同団体を一律に禁ずるのでなく、個々のポストごとにポリシーを適用するつもりだ。

ソーシャルメディア上でタリバンの足跡が今後も増えるようなら、他のプラットホームも同様の決定を迫られるだろう。TikTokは本誌のコメント要請に応じなかったが、以前NBCに対して、タリバンはテロリスト集団だと思うから、同団体の宣伝になるようなコンテンツは許可しない、と言っている。

今のところタリバンの足跡が目立つのは、いわゆるメジャーなソーシャルネットワークだけだが、しかし無理のない予想としては、現状の反乱が常態に転ずるときには、全世界の注視の下で、FBなどに代わる独自のプラットホームを利用して新しいイメージ作りに努めるだろう。

Twitchは、タリバンが利用したらどうするか、という問いには答えなかったが、同社には関連するポリシーとして「サービス切断行為」というものがあり、それで特定ユーザーを禁じている。それは、Twitchのストリーマーたちの間に虐待やセクハラの報告があったときの対応だ。

その新ルールは、暴力的な過激主義やテロなどの深刻な脅威にリンクしているアカウントにも適用される。そういう行為がTwitchの外で行われていても、対象になる。この独特の定義により、タリバンを最初から排除することも可能だろう。米国が将来、制裁を外してテロリストの指定を変えても、Twitchでは許されないかもしれない。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: Photo by WAKIL KOHSAR/AFP via Getty Images)/Getty Images

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グーグルが検索やYouTubeなどの自社プラットフォームにおける未成年者保護を強化

Instagramがアプリを利用する未成年者の保護の強化を展開して数週間経過し、Google(グーグル)もGoogle検索、YouTube、YouTube Kids、Google Assistantなどのサービスにも同様の措置を講じることとなった。同社は米国時間8月10日、オンライン上の若年層を非公開にして保護された状態を維持できるようにサービスおよびポリシーを変更すると発表。広告ターゲットを制限する変更も行う。

関連記事:Instagramが10代ユーザーのアカウントをデフォルトで非公開に、広告や望まない大人からの接触を制限

Googleのサービスは1つのアプリに限定されるものではないので、Instagramの発表よりもさらに広範囲で、同社のサービス全体にわたる変更になる。

米国議会は、Googleをはじめとするハイテク企業に対し、企業のサービスが未成年者に与える悪影響を排除するよう圧力をかけてきたが、Googleは、法律で要請される以上の変更を行うという。

Googleの広報担当者は、TechCrunchの取材に対し次のように話す。「今後の規制に対応するアップデートもありますが、私たちはGoogleとYouTubeを利用するティーンエイジャーを保護するために、法律が要請する以上のことを行ってきました」「これらの変更の多くは、現在および今後発生し得る単体の規制を超えるものです。私たちは、世界中の子どもたちやティーンエイジャーに向けて、一貫性のあるエクスペリエンスとユーザーコントロールを提供する方法を検討しています」。

つまり、Googleは、現状に対応するだけでなく、業界の将来を考慮したアップデートを行うというのだ。

YouTubeでは、13~17歳のユーザーを対象に、デフォルトのアップロード設定を、最も限定的なものに「徐々に」変更していくという。これにより、動画の公開範囲は、一般ユーザーではなく、ユーザー本人と、本人が直接共有する相手に限定されることになる。アップロード設定を「公開」に変更することは可能だが、その際には明確かつはっきりとした意思を持つ選択が必要だ。Googleはこの場合、YouTubeに、自分のビデオの公開範囲を示すリマインダーを設置するとしている。なお、今回の変更はYouTubeの新規アップロードにのみ適用され、現在公開されている動画を遡って非公開にする予定はないとのこと。

また、YouTubeは、13~17歳のすべてのユーザーに対して「休憩」と「おやすみ」のリマインダーをデフォルトで有効にし、自動再生を無効にする。繰り返しになるが、これらの変更は、デフォルトの設定に関するものであり、ユーザーはDigital Wellbeing(デジタルの健全な利用)機能を無効にすることができる。

YouTubeの子ども向けプラットフォーム「YouTube Kids」には、自動再生オプションが追加される。このオプションはデフォルトでは無効になっており、子どもに自動再生機能を使わせるかどうかは保護者の判断になる。この変更は、子どもの安全支援団体や一部の国会議員による、アルゴリズムを使った機能に問題があるという指摘に対応し、選択を保護者の判断に任せるというものだ。保護者はデフォルトの選択をロックすることもできるようになる。

YouTube Kidsからは「過度に商業的なコンテンツ」も削除される。これは長らく「YouTubeは子どもたちによる消費(正確には、親にお金を使わせてくれと頼むこと)を助長している」と主張してきた消費者保護団体や子どもの専門家からの圧力が高まったことを受けた措置である。

許容できるコンテンツと「過度に商業的な」コンテンツの線引きは明確ではないが、例えば人気のある「開封の儀」動画のような、商品のパッケージに焦点を当てた動画は削除するとしている。この変更は、YouTubeで子ども向けの動画を制作している大手クリエーターの中でも、非常に高額な収入を得ているRyan’s Toy Review(ライアンズ・ワールドのおもちゃレビュー)のようなクリエーターに影響を与える可能性がある。同社は商品パッケージの他にも「視聴者に商品の購入を煽る」コンテンツや「商品の過剰な収集や消費に焦点を当てたコンテンツ」の削除も検討するとしている。

画像クレジット:YouTube

YouTube以外でも、未成年者を対象とする変更が展開される。

今後数週間のうちに、Googleは、18歳未満のユーザーまたは保護者が、Google画像検索の検索結果から自分の画像の削除を要請できるようにする新しいポリシーを導入する。これは、欧州ですでに実施されている「忘れられる権利」のプライバシーポリシーを拡張するもので、子どもとティーンエイジャーを守る新しいサービスと制御方法が全世界で展開されることになる。

また、18歳未満のユーザーアカウントについても、さまざまな調整を行う。

YouTubeの変更に加えて、Googleファミリーリンクで管理している13歳未満のすべてのユーザーに対してセーフサーチフィルタリングをデフォルトで有効にして、アダルトコンテンツへのアクセスを制限する。また、18歳未満のすべてのユーザーに対してセーフサーチを有効にし、新たにアカウントを作成するティーンエイジャーにもセーフサーチをデフォルトで適用する。Googleアシスタントでは、スマートスクリーンやウェブブラウザなどの共有デバイスで、セーフサーチの保護機能がデフォルトで有効になる。先の発表のとおり、Google Workspace for Educationを使用している学校の設定でも、セーフサーチがデフォルトになり、ゲストモードやシークレットモードのウェブブラウジングへの切り替えもデフォルトで無効になる。

位置情報の履歴はすべてのGoogleアカウントでデフォルトで無効になっているが、今後は管理対象のアカウントを利用している子どもたちについて、位置情報の履歴を有効にすることはできなくなる。この変更は全世界の18歳未満のユーザーに適用される。法的に成人するまで位置情報を有効にすることはできない、ということだ。

また、Google Playでは、アプリがファミリーポリシーに従っているかどうかを保護者に知らせるセクションが新設され、アプリ開発者は、自分のアプリがどのようにデータを収集・利用しているかを開示することが必要になる。これらの機能は、Apple(アップル)の「App Storeのプライバシーラベル」に一部ヒントを得たもので、すでにAndroid開発者向けに詳細が発表されている

Googleのペアレンタルコントロールツールも拡充される。ファミリーリンクを利用している保護者は、アシスタント機能を搭載したスマートデバイスで、ニュース、ポッドキャスト、ウェブページへのアクセスをフィルタリングしたり、ブロックしたりすることができるようになる。

広告主にとっても重要な変更がある。

Googleによると、年齢制限のある広告カテゴリーがティーンエイジャーに表示されないようにするための保護機能を拡充し、18歳未満のユーザーに対しては、年齢、性別、興味や関心などの要素に基づく広告ターゲティングをブロックするという。ティーンエイジャーや子どもをターゲットにする際に「興味や関心」のデータを利用しないという点は、Instagramが導入した広告の変更に似ているが、Instagramは年齢や性別によるターゲティングを許可している。Googleは年齢や性別によるターゲティングを許可しないことになり、この変更は「今後数カ月のうちに」全世界に展開されるとのことだ。

GoogleとYouTubeにおけるすべての変更は、今後数週間~数カ月の間に全世界で展開される予定である。

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画像クレジット:Nicolas Economou / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

YouTubeが検索機能をアップグレード、チャプターのプレビューと翻訳付き動画が見つけやすく

米国時間8月17日、YouTubeはユーザーが探しているコンテンツを見つけやすくするための2つの機能アップデートを発表した。1つはビジュアル検索機能で、もう1つはユーザーの母国語のキャプションがある外国語の動画を見つけやすくする。

デスクトップ版では従来から、YouTubeのユーザーが動画のサムネイルの上にマウスを合わせると短いクリップが再生される。今後、この機能はモバイルにも拡張され、しかも動画内のチャプターを閲覧する機能も追加され、検索ページから、最も関心があるチャプターに直接アクセスできる。

プロダクト管理のディレクターであるPablo Paniagua(パブロ・パニアグア)氏はブログで次のように語っている。「サワードウの良いレシピを探していて、しかももっと上手に生地をこねたいと考えている人は、新しい検索結果ですべてのステップを動画で見ることができます。生地にイースト菌を入れるところから、パンをオーブンから取り出すところまで。しかも、こね方のチャプターに直行できます」。

もう1つのアップデートは、外国語の動画をユーザーに勧めるとき、母国語のキャプションがあるものだけを選ぶ。たとえば上のサワードウの例では、ユーザーの言語がアイスランド語で、その言語の動画に良いのがなければ、YouTubeはアイスランド語の字幕のある英語のビデオを勧めるだろう。今は英語のビデオだけだが、今後はもっと多くの言語に拡大するという。

画像クレジット:YouTube

また、インドとインドネシアでは、YouTubeがGoogle検索から他のサイトへのリンクで検索結果を補完する機能をテストしている。

パニアグア氏の説明によると「知りたい内容を十分に満たす良質な動画がYouTube上だけで必ず見つかるとは限らないため」だ。

Google検索にはすでにユーザーが動画の途中に飛べる機能がある。しかも2020年の終わりごろには、YouTubeの親会社Googleは、TikTokやInstagramの短編動画を推奨するモバイル検索機能を実験した。ただしその動画は、ユーザーをGoogleの中にキープするために、TikTokやInstagramの中ではなく検索ページの中で開く。

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画像クレジット:YouTube(スクリーンショットはTechCrunch)

YouTubeの検索機能のアップデートが行われたが、現在、プラットフォームの検索アルゴリズムをめぐる議論にまだケリが付いていない。 Mozillaは7月、調査結果を発表して、YouTubeのアルゴリズムが依然として「低級な視聴率稼ぎコンテンツ」を宣伝していると指摘した。Mozillaはブラウザの拡張機能RegretsReporterに参加したユーザーから、データをクラウドソーシングした。ユーザーに、YouTubeの本当は見たくなかったような動画を報告してもらう機能だ。Mozillaによると、そんな悪質動画は、英語以外のコンテンツが英語のものよりも60%多い。でもYouTubeは、外国語のビデオに母国語のキャプションを付けたものの推奨などは、悪質動画の排除に役立つかもしれないがMozillaの調査報告への答えではないと言っている。

「これらの機能は何カ月もかけて開発し、ハウツーやDIYなど、ユーザーが探しているものを見つけやすいようにしている」とYouTubeはいう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTube検索翻訳動画配信

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TikTok風のショート動画サービス「YouTube ショート」がクリエイターへの報酬支払いを開始

TikTok風のショート動画サービス「YouTube ショート」がクリエイターへの報酬支払いを開始

YouTube

YouTubeが、7月13日に開始したTikTok風の短尺動画サービス「YouTube ショート」のクリエイターに対し、報酬の支払いを開始しました。これはYouTubeがクリエイター向けの支払いのために設立した1億ドル規模の「YouTube Shorts Fund」からのもので、YouTubeは報酬支払いに関する詳細をヘルプページで解説しています

YouTubeは今後2022年までに数千人の「適格な」クリエイターをYouTube ショートに招待する予定としています。報酬に関しては動画の視聴数やその他指標に応じ、月額で下は100ドル(約1万1000円)から、上は1万ドル(約110万円)までになるとのこと。また、報酬はYouTubeパートナープログラムに参加しているクリエイターに限らず、ショート動画投稿者なら誰でも受け取る資格があります。

もちろん投稿した動画は支払い対象になるためにYouTubeのコミュニティガイドラインや著作権に関するポリシーを遵守しなければなりません。またGoogleは他の同種のサービス、たとえばTiktokやSnapchatなどにすでに投稿、公開されている動画の再アップロードは求めておらず、それらサービスの透かしロゴ入りの動画を投稿した場合も、報酬の支払い対象外になります。

TikTokなどは、昨年から最大で2億ドルのファンドをクリエイターのために展開しています。これはYouTube ショートのファンドの倍の規模のものですが、クリエイターたちにはさらに評価が高くなるような作品の提出が求められました。

もちろんクリエイターにとってはパフォーマンスに見合う以上の収益が欲しいところであり、ショート動画ひと筋で勝負するつもりならTikTokのほうが良いかもしれません。しかしYouTubeにはショート動画以外にも収益化のための方法が9種類もあるのが大きな利点です。

ちなみに、ショート動画似限って言えば、、Facebookもまた最近10億ドル規模のプログラムを立ち上げ、メインのFacebookサービスだけでなく、Instagramにもクリエイターを引き入れようとしています。Facebookは2022年まで収益のマージンを取らない(つまり収益分はすべてクリエイターの懐に入る)としており、Facebook / Instagramがこの分野での遅れをカバーしようとしていることがわかります。

TikTokのすでに得ている人気と、金にものを言わせるFacebookの間で、YouTubeはクリエイターに報酬を分配する手段を提供し続ける必要があります。YouTubeは今回の1億ドルの基金の支払い開始に関してYouTube ショートを収益化するための最初の一歩だとしています。

TikTok風のショート動画サービス「YouTube ショート」がクリエイターへの報酬支払いを開始

(Source:YouTubeEngadget日本版より転載)

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Alphabetが第2四半期決算で予測超え、Google Cloudが売上54%増で損出減少

主要テクノロジー企業の決算報告が相次ぐ中、Alphabet(アルファベット)は米国時間7月28日株式市場終了後に第2四半期決算を発表した。検索・サービスの巨人は、2021年6月30日締め四半期に619億ドルの売上を計上し、純利益は185億ドル(約2兆300億円)、1株当たり利益は27.26ドルだった。売上は62%増、純利益は166%増だった。もちろんこれはパンデミックに影響された2020年第4四半期との比較だが、それでもこの成長は注目に値する。

Androidメーカーの結果は、予想を打ち砕いた。ウォール街はGoogle(グーグル)の親会社の売上を560億ドル(約6兆1500億円)、1株当り利益を19.14ドルと予測していた。しかし時間外取引でのAlphabet株の値上がりは1桁パーセント前後であり、Microsoft(マイクロソフト)の公式予想売上を上回る結果に対する市場の静かな反応と似ている。

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Alphabetはいくつか変動要素を持つ会社なので、もう少し数字を分解してみよう。

YouTubeの売上70億ドル(約7700億円)は対前年比84%増だ。これはYouTubeの年齢を踏まえると率直にいって好調な結果だ。それでも、ライバルサービスに食われるまでにどれほど多くの広告をYouTubeに載せられるのかは気になるところだ。別の報告でYouTubeは、YouTube Shorts(ユーチューブ・ショート)が「日間グローバルビューが150億回を超えた」ことを発表した。2021年3月に詳しく伝えられた日間ビュー65億回の131%増だ(誰もがTikTokを食べたがっているらしい)。

Google Cloud(グーグル・クラウド)の売上は46億ドル(約5050億円)、対前年比54%増だった。この成長率はMicrosoftが同社のクラウド製品であるAzure(アジュール)について報告した数字よりわずかに大きい。しかし、Microsoftの売上規模はGoogleよりも大きいと考えられているため、投資家はAlphabetの報告よりも大きい成長率を期待していたのかもしれない。Google Cloudは営業損失を1年前の第2四半期の14億ドル(約1540億円)から、今四半期の5億9100万ドル(約650億円)へと縮小した。これは素直に良い結果だ。

Other Bets(その他の投資)部門では売上が上昇した!ただし損失も。Alphabetのskunkworks(最先端技術開発)グループは売上1億9200万ドル(約210億円)を計上し、1年前の1億4800万ドル(約160億円)を上回った。しかし、さまざまな試行錯誤は四半期で14億ドルを失い、前年同期の11億ドル(約1210億円)より悪化した。

営業利益194億ドル(約2兆1300億円)には、Other Betsコストセンターが「含まれている」ため、Alphabetは将来の形ある売上につながるプロジェクトに余裕をもって投資し続けることができる。

しかし、AlphabetのGoogle主要サービス(検索、YouTubeなど)以外のすべての部分が同四半期で損を出している。

>画像クレジット:Alphabet

しかし、真実はAlphabetが報告した2020年第2四半期から2021年第2四半期にかけての壮大な営業利益増だ。営業利益の加速ぶりを見て欲しい!これは少々混乱させるわかりにくい内容だ。

その他の注目ポイント。Googleの株式再購入プログラムは一部変更されたが、一般投資家に影響を与えるものではない。というわけでAlphabetの決算報告記事は、今のところ時間外取引で株価を上げることはできていないが、1兆7500億ドル(約192兆1500億円)を超える時価総額を守るのに十分な好成績だった、としておこう。

巨大テック企業にとってすばらしい時だ。

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTubeが一部クリエイターを対象にライブストリームからのショッピングを試験的に開始

YouTube(ユーチューブ)は、視聴者がライブストリームの動画から直接商品を購入できる新機能のパイロットテストを開始する。この機能は、2021年初めにYouTubeがベータテストを開始した統合型ショッピング体験を拡張したもので、当初は一握りのクリエイターとブランドのみで開始されるとのことだ。

統合型ショッピング体験はオンデマンド動画のみを対象としており、視聴者は信頼できるクリエイターの「信頼性と知識」を利用して十分な情報に基づき購入できる、と同社は当時説明していた。2021年中にさらに多くのクリエイターに展開される予定だとも述べていた。

最近では、小規模な企業に絞った1日限りのショッピングイベントで、ライブストリーミングによるショッピングをテストした

YouTubeの動画プラットフォームは、長年にわたり商品を発見するための強力なツールとして利用されてきた。毎月20億人以上のログインユーザーが同社のサービスを利用して、商品のレビュー、デモ、開封の儀、ショッピングの様子など、将来の購買意欲をかきたてるコンテンツを見ている。しかし、YouTubeの動画で販売したいクリエイターは、動画の説明文や、カードや終了画面などの動画内の要素によって、オンラインショップへのアフィリエイトリンクを宣伝しなければならないことが多かった。

最近では、クリエイターが選んだ特定の商品を視聴者が購入できる「商品棚」も登場した。

一方、統合型ショッピング体験では、視聴者は「商品を見る」ボタンを押すと、動画で紹介されている商品のリストが表示され、動画の中で買い物をすることができる。

画像クレジット:YouTube

この機能によりYouTubeは、 FacebookInstagramTikTokPinterestAmazon、Snapchatなどのスタートアップや競合他社が提供するビデオショッピング体験の増加に対抗できる。そうした企業の多くは、ライブストリーム動画にも対応している。

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例えば、この1年間で、BambuserPopshop LiveTalkshopliveWhatnotなどのスタートアップが、数百万ドル(数億円)規模の資金を調達し、自らのライブビデオショッピング事業に投資している。Facebookは最近、美容、ファッション、スキンケア分野でのライブショッピングをテストするため、「Live Shopping Fridays」を立ち上げた。また、WalmartはTikTokと提携し、ライブストリーミングによるショッピングイベントを複数回実施している。

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さらに成長するインドのeコマースを動画やクリエイターの力でサポートするSimsimをYouTubeが買収

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YouTubeのこの分野への関心も高まっており、今週、インドのビデオショッピングアプリ「Simsim」を買収すると発表した。これは、Google(グーグル)が自社のプラットフォームにビデオショッピング体験をさらに統合したいと考えていることの表れだ。また、Googleは、ショッピング検索事業にビデオショッピングを統合した。その中には、同社の社内インキュベーターであるArea 120を卒業したビデオショッピング製品のShoploopの取り組みなどがある。

YouTubeに統合されたビデオショッピング体験の拡大は、GoogleのShoppingタブにお得な情報やセールの情報を整理した新しいセクションを追加するなど他のGoogle Shoppingの新機能とともに7月21日発表されたもので、掲載を希望する会社に無料で提供される予定だ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTubeが新しい収益化機能「Super Thanks」発表、個別の動画に対してクリエイターに投げ銭可能に

米国時間7月20日、YouTube(ユーチューブ)は最新の機能「Super Thanks(スーパー・サンクス)」を発表した。これは、ファンが直接クリエイターに支払う仕組みに同社が名づけた「Paid Digital Goods(ペイド・デジタル・グッズ、有料デジタル製品)」の第4弾だ。これまでに「Super Chat(スーパー・チャット)」「Super Stickers(スーパー・ステッカー)」「チャンネルメンバーシップ」の3種類が提供されているが、 Super Thanksは、ファンがライドストリームではなくアップロードされた個々の動画についてクリエイターに投げ銭できる初めての機能だ。

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動画に特別の感謝を表したいとき、視聴者は2ドル(約220円)から50ドル(約5500円)まで4種類の設定金額を現地通貨でクリエイターに支払うことができる。Super Thanksを購入したユーザーはメッセージを書くことができて、コメント欄にハイライト表示される。

YouTubeがこれまで提供してきたクリエイターに直接支払うためのツールは、Twitch(トゥイッチ)に追いつくための機能という印象だったが、今回YouTubeは、Super Thanksで差別化をはかろうとしている。Instagram(インスタグラム)にもクリエイターがライブ出演した時に投げ銭できるBadges(バッジ)などの機能があるが、個別の投稿についてクリエイターがお金を受け取る方法はない。代わりにInstagramはeコマースに大きく転換しをはかっていて、ファンがクリエイターとつながる方法としてはSuper Thanksと比べてオーガニックでも直接的でもない。

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画像クレジット:YouTube

2020年はYouTubeのPaid Digital Goodにとって最大の年になり、1000万人以上がSuper Chat、Super Stikcerまたはチャンネルメンバーシップを初めて購入した。2020年に売上の半分以上をこれらの製品から得たチャンネルの数は2019年の3倍以上だった。

「空き時間の私はYouTubeクリエイターです」とYouTubeのPaid Digital GoodsプロダクトマネージャーのBarbara Macdonald(バーバラ・マクドナルド)氏はいう。「実に幸運なことに、私のクリエイターとしての洞察力は、私やチームがYouTubeユーザーのためによりよいプロダクトを作るのに役立っています」。

2019年以来、マクドナルド氏のチームはYouTubeクリエイターの集団とともに、当初「applause(アプローズ)」と呼ばれていたこの機能のベータテスターとしてパイロットテストを進めてきた。参加したクリエイターはプロダクトに関するフィードバックや提案を送り、YouTubeがそれを参考にしている。名前を「applause」から変更する、高額のオプションを追加して売上の可能性を最大にする、Super Thanksのメッセージを他のコメントと区別するなどの提案があった。YouTubeはファンからクリエイターへの支払いから30%を受け取る。一方ライバルのTwitchはストリーマーのサブスクリプション売上の50%を受け取っている。

7月20日から、Super Thanks機能はYouTube Partner Program(ユーチューブ・パートナー・プログラム)のメンバーになっている68カ国、数千人のクリエイターに向けて提供開始される。対象はランダムに決められるが、YouTube Partner Programの有資格メンバーは全員、2021年中に利用できるようになるマクドナルド氏は述べた。

というわけで、ユーチューバーは動画の最後に「いいね!とコメントとチャンネル登録」のかわりに「いいね!、コメント、チャンネル登録とSuper Thanks」をお願いするようになるだろう。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nob Takahashi / facebook

さらに成長するインドのeコマースを動画やクリエイターの力でサポートするSimsimをYouTubeが買収

米国時間7月20日、GoogleがオーナーであるYouTubeは、ソーシャルコマースのスタートアップSimsimの買収を発表した。両社は買収の価額などを公表していないが、情報筋によると、買収に際してSimsimの評価額は7000万ドル(約77億円)ほどだった。

創業2年のSimsimは、本日の発表前までにおよそ1700万ドル(約18億7000万円)を調達し、2020年のシリーズBでは5010万ドル(約55億円)と評価されていた。

グルガオンに本社のある同社は、インドの小企業が、ビデオやクリエイターの力を活用してeコマースに移行する努力をサポートしている。その社名と同名のアプリは、プラットフォームとして各地の小企業や店舗、インフルエンサーと顧客を結びつける。

Simsimを初期から支援しているGood CapitalのRohan Malhotra(ロハン・マルホートラ)氏によると「特定のオーディエンスに的を絞って成長し、楽しい体験を提供して常連客になってもらい、信頼を築いて高額商品を買わせ、メッセージングを個人化してコンバージョンを促進するには、マイクロインフルエンサーの利用が最も効果的です。消費者対象のソーシャルプラットフォーム(Facebook、YouTube、Instagramなど)のような、広告を収益源とする経営がインドでは成り立ちにくいため、どうしても商取引を統合したプラットフォームになりがちです。インドで新たにインターネットユーザーになる人たちは、売り手が主導する対話的な体験を必要とし、この市場の慣行であるオフラインのコマースのネット版を求めることになります」という。

マルホートラ氏も買収の価額などは明かさず、またSimsimのCEOも米国時間7月19日に提出した買収に関する質問には応じなかった。

しかしSimsimの共同創業者であるAmit Bagaria(アミット・バガリア)氏とKunal Suri(クナル・スリ)氏、そしてSaurabh Vashishtha(サウラブ・ヴァシシュタ)氏は、共同声明で次のように述べている。「Simsimを始めたときのミッションは、インド中のユーザーがオンラインで簡単に買い物できるようにすることでした。そのためには、信頼されているインフルエンサーが作ったコンテンツのパワーにより、売り手やブランドが商品を展示し販売できなければなりません。今回、YouTubeとGoogleのエコシステムの一員になったことにより、Simsimのミッションをさらに強力に推進できます」。なお、バガリア氏とヴァシシュタ氏は以前、Paytmに在籍していた。

彼らによると「今後のSimsimを作っていく上で、技術や顧客へのリーチ、クリエイターのネットワーク、そして企業文化において、ここにまさるエコシステムは他にありません。YouTubeの一員になることが待ち遠しいし、世界で最も賞賛されているテクノロジー企業の中でSimsimを開発し続けていけるのは本当にうれしいことです」という。

YouTubeにとっては、このビデオストリーミングの巨人がインドの小企業と小売業を助けていくことにより、従来よりも強力な方法で新たな顧客にリーチできる。YouTubeのアジア太平洋担当副社長Gautam Anand(ゴータム・アナンド)氏が、ブログでそう述べている。

このビデオストリーミングサービスは、インドだけでも月間アクティブユーザーが4億5000万を超えるが、さしあたってSimsimを変える意図はなく、Simsimのアプリがそのまま使える状態を続ける。そしてアナンド氏によると「YouTubeのビューワーにSimsimをどのように見せていくか、そのやり方を検討したい」とのこと。

以前から、Googleはさまざまな形でインドに地歩を築く努力を続けているが、7月20日の発表はその最新の動きだ。これを含めてGoogleのインドへの投資は、向こう2年間で100億ドル(約1兆1000億円)に達する。Googleは他にも、インドのスタートアップGlanceとDailyHuntを支援しており、いずれもショートビデオのアプリだ。

「YouTubeには2500を超えるクリエイターがおり、サブスクライバーは100万を超えています。また、インドで最初にローンチしたYouTube Shortsの成功により、私たちはYouTubeの最良の部分をインドに持ち込むことにコミットしており、新世代のモバイルファーストのクリエイターたちがスタートしやすい環境を作って、クリエイターのコミュニティを大きくしていきたい」とアナンド氏はいう。

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画像クレジット:Simsim/YouTube

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TC Early Stage Pitch-Offで優勝したVyrillはブランドがユーザーによる動画レビューを発見・活用をサポート

Vyrill(ヴィラル)は、ブランドの本当の顧客やユーザーが作ったビデオレビューを発見して企業が利用できるようにする。同社はそのプロダクトを、TechCrunch主催の「TechCrunch Early Stage:Marketing & Fundraising」でプレゼンを行い、9社に勝った。審査員が感心したのは、該当する動画を見つけたりフィルタリングする同社の新しくて革新的な技術だ。

それは、大企業でも小企業でも難しい技術だ。ユーザー生成コンテンツが貴重なのは、本物であることが見てわかるし、したがって説得力も強いからだ。しかし、そんなビデオをすばやく効率的に見つけることはかなり難しい。現時点では、ビデオタイトル検索やそのビデオ全体を確認するなど、労働集約的で不確実な方法しかない。

VyrillのCEOであるAjay Bam(アジェイ・バム)氏がプレゼンで強調したのは、ビデオ広告は最近ますます、マニアではなく普通の人向けになってることだ。工夫を凝らしたマーケティングビデオよりも、製品の実際のユーザーが作ったビデオを利用することが多い。しかしそれらを見つけるのは難しいし、ビデオのプラットフォームが提供している検索ツールは、タイトルや説明のテキストを解析するだけだ。しかしVyrillが開発した自負するソリューションでは、たとえば化粧品のL’OréalならYouTube上の何百万本ものビデオを自社のすべての製品カタログとマッチングさせて、それぞれのビデオを最も適切な製品カテゴリーに割り当てる。これによりL’Oréalは、同社のマーケティングの目的に合った最良のユーザー生成ビデオを見つけて利用できるようになる。そしてVyrillのシステムでは、L’Oréal自身が、特定の製品に結びついたユーザー生成コンテンツを掘り出して見つけることができる。

Vyrillのシステムはビデオを分析して、そのテキストやオーディオや映像を数種類のフィルターで分類する。フィルターのテーマは、ダイバーシティや主題、エンゲージメントなどだ。Vyrillによると、この解析の部分がVyrillの秘密のソースで、これによりブランドは最良のビデオをすばやく見つけられる。またこのシステムを使ってブランドはコンテンツの作者とコネクトできる。そのために、作者のプロフィールやメールアドレスなどが表示される。

バム氏は今回のプレゼンで、現在の顧客数は40社であり、毎月倍増していると発表した。バム氏とCTOのBarbara Rosario(バーバラ・ロザリオ)博士は同社を始めたのは2015年で、2018年にはプレシードで210万ドル(約2億3000万円)を調達した。現在はシードラウンドが進行中で、すでに120万ドル(約1億3000万円)を調達している。

下のビデオが、そのときのプレゼンとなる。

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(文:Matt Burns、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeの動画レコメンドAIは依然として悪行を重ねていることが大規模調査で判明

YouTubeの動画推薦アルゴリズムは長年、さまざまな社会悪を煽ってきたとして非難されてきた。YouTubeには、AIで増幅されたヘイトスピーチ、過激な政治思想、そして同社の広告インベントリに数十億人の目を釘付けにして荒稼ぎするための策略やデマの類があふれている。

YouTubeの親会社であるGoogle(グーグル)は、YouTubeのアルゴリズムが反社会的な動画を推薦していることをめぐって、ひどくなる一方の非難に対して時折対応策を講じているものの(いくつかのポリシー変更憎しみに満ちたアカウトの制限や削除など)、ひどく不健全なクリックベイトを表示するYouTubeの傾向がどの程度復活しているのかは不明だ。

だが、そうした傾向が復活している疑いは限りなく強い。

Mozilla(モジラ)によって公開された新しい調査も同じ考えを支持している。YouTubeのAIによって「他人の不幸を利用して利益を得る」、低級で、争いの種になる、偽情報の動画コンテツが増え続けている。人々の怒りに火をつけ、分裂や分断を縫い合わせ、根拠のない有害な偽情報を拡散するといった行為によって人の目を引く類の動画だ。これらは、悪質な動画を推薦するYouTubeの問題が同社の体質的なものであることを暗示している。つまり、動画の再生回数を増やして広告の表示回数を稼ぐ同社の強欲さの副作用だ。

YouTubeのAIは依然としてひどい行為をしているというモジラの調査結果は、グーグルが少なくとも表面的には改善を行っていると主張することでうまく批判を和らげていることを示唆している。

このようにYouTubeの戦略が曲がりなりにも成功しているのは、推薦エンジンのアルゴリズムの仕組み(と関連付けられたデータ)を世間の目と外部の監視から隠す主要な保護メカニズムが「経営上の機密事項」という都合の良い隠れ蓑によって機能しているためと思われる。

しかし、このYouTube独自のAIブラックボックスをこじ開ける可能性のある規制が、少なくとも欧州では、採択されそうだ。

YouTubeのアルゴリズムを修正するために、モジラは「常識的な透明性を規定した法律、監視の強化、消費者による圧力」を求めており、YouTube AIの過剰機能による最悪の事態を抑制するために、AIシステムに透明性を強制的に導入し、独立した研究者を保護してアルゴリズムによる影響を調査できるようにし、堅牢な制御権(「パーソナライズ」された推薦をオフにする権利など)をYouTubeのユーザーに付与するといったさまざまな法律の組み合わせが必要になることを示唆している。

YouTubeユーザーが観たことを後悔する残念な動画

YouTubeユーザーに対して行われている具体的な推薦に関するデータ(グーグルはこのデータを外部の研究者に対して定期的に公開していない)を収集するため、モジラはクラウドソーシングによるアプローチを採用した。具体的には、ブラウザーの拡張機能(RegretsReporter)を使用して、ユーザーが視聴したことを後悔しているYouTube動画を自己報告できるようにした。

このツールを使用すると、ユーザーに対して推薦された動画(以前再生された動画も含む)の詳細情報を含むレポートを生成して、YouTubeの推薦システムがどの程度機能している(場合によっては「機能していない」)のかを示す実態を構築できる。

クラウドソースで自主的に回答した(モジラの調査にデータが使用された)ユーザーたちは、感染拡大する新型コロナウイルスの恐怖を利用した動画、政治的なデマ「極めて不適切な」子ども向け漫画など、さまざまな「残念な動画」を報告している。レポートによると、最も頻繁に報告されたコンテンツカテゴリーとして、デマ、暴力 / グラフィックコンテンツ、ヘイトスピーチ、スパム / スキャムなどがある。

残念動画のレポートの圧倒的多数(71%)がYouTubeのアルゴリズムによって推薦された動画に対するものだった。これは、YouTubeのAIがユーザーにゴミのような動画を押し付けるのに大きな役割を果たしていることを明確に示している。

また、この調査によって、推薦された動画のほうが調査回答者が自分で探した動画よりも報告される可能性が40%以上高かったことも判明した。

モジラによると、動画推薦アルゴリズムが、YouTube自身のコミュニティガイドラインに違反しているコンテンツまたは以前視聴された動画と関係のないコンテンツをユーザーに提示しているケースがかなり多数見つかったという。つまり、明らかに推薦に失敗したケースだ。

今回の調査結果で特筆すべき点は、視聴して後悔する残念なコンテンツは、非英語圏国のYouTubeユーザーにとって、より大きな問題となるらしいという点だ。モジラによると、YouTube動画を視聴して後悔する確率は英語が一次言語ではない国のほうが60%高かったという。具体的には、ブラジル、ドイツ、フランスではYouTubeの動画視聴で後悔するレベルが「とりわけ高かった」(この3か国は国際市場として決して小規模ではない)。

レポートによると、パンデミック関連の残念な動画もやはり、非英語圏国でより広く見受けられた。これは、世界中で健康危機が継続している今大いに懸念される点だ。

今回のクラウドソーシングによる調査(モジラによるとYouTubeの推薦アルゴリズムに関する調査では最大規模)は、前述の拡張機能をインストールした3万7000人を超えるYouTubeユーザーのデータに基づいているが、このうち実際に動画を報告したのは91カ国、1162人の回答者で、彼らが指摘した3362本の視聴して後悔した動画に基づいてレポートが作成された。

これらのレポートは2020年7月から2021年5月の間に生成された。

モジラのいうYouTubeの「残念な動画」とは実際のところ何を意味するのだろうか。モジラによると、これは、YouTube動画を視聴したときの悪い体験のユーザによる自己報告に基づくクラウドソーシング型概念だという。しかし、モジラによると、この「人力」方式のアプローチでは、インターネットユーザーの実際の経験に重点を置いているため、社会的に主流ではない、あるいは弱い立場の人たちやコミュニティの声をすくい上げるのに効果的だ(狭義の法的な意味での「有害」という言葉を当てはめて終わるのとは対照的だ)。

モジラのアドボカシー担当上級マネージャーで、今回のプロジェクトの主任研究者であるBrandi Geurkink(ブランディ・ゲルキンク)氏は、今回の調査の目的について次のように説明してくれた。「我々は、YouTube動画視聴の泥沼にはまり込んでしまう人々の体験を掘り下げて調査し、よく言われる不快な体験を率直に確認して、そこに埋もれている傾向を把握したかったのです」。

「この調査を実施して、我々が予想していたことの一部が事実であることが確認されたことは本当にショックでした。調査対象人数も少なく使用した方法にも制限のある調査ですが、それでも結果は極めてシンプルでした。データは我々が考えていたことの一部が確認されたことを示していたのです」。

「例えばコンテンツを推薦するアルゴリズムというのは基本的に誤りを犯すものという事実が確認されました。推薦した後で、『おっと、これは当社のポリシーに違反しているじゃないか。これをユーザーに積極的に推薦すべきではなかったな』という具合に。非英語圏のユーザーベースではもっとひどい体験をしているということもあります。こうしたことは事例としてはよく議論されるのを聞きますし、活動家はこれらの問題を取り上げています。しかし、私が今回の調査結果で感じたのは『すごい!データにはっきりと現れているじゃないか』ということです」。

モジラによると、今回のクラウドソーシングによる調査で、ヘイトスピーチや政治的 / 科学的なデマなど、YouTubeのコミュニティガイドラインに違反する可能性が高い、あるいは実際に違反する膨大な数のコンテンツ例が報告され明らかになったという。

またレポートでは、YouTubeが「ボーダーライン上のコンテンツ」とみなす可能性のある多くの動画が指摘されていたという。つまり、分類するのは難しいが、おそらく許容範囲を逸脱していると思われる低質の動画、アルゴリズムによるモデレーションシステムでは対応するのが難しい動画だ(こうしたコンテンツは削除のリスクを逃れ長期に渡って掲載されたままになる可能性がある)。

これに関連してレポートで指摘されているのは、YouTubeは(ガイドラインの中で説明はしているものの)ボーダーライン上のコンテンツの定義を提供していないという問題だ。このため、多くの回答者が「残念」として報告している動画の大半はYouTubeのいうボーダーライン上のコンテンツというカテゴリーに含まれるのだろうという研究者の仮説を検証する手立てがない、とモジラはいう。

グーグルのテクノロジーとプロセスの社会的影響を独自に研究するのを困難にしているのは、研究の基盤となるテーマに掴みどころがない点だ。ただし、モジラのレポートによると、YouTubeへの批判に対するグーグルの対応は「無気力で不透明」だとして非難されてもいる。

問題は、それだけに留まらない。批評家たちは、YouTubeの親会社であるグーグルが、憎しみに満ちた怒りや有害なデマによって生まれるエンゲージメントから利益を得ていることを長い間非難してきた。グーグルが、ユーザー生成コンテンツという名目の下で低質コンテンツビジネスを擁護している間にも、AIによって生成された憎しみの泡によってさらに有害な(それだけに見るものを強力に惹きつける)コンテンツが出現し、疑うことを知らない無防備なYouTube視聴者はますます不快で過激なコンテンツに曝されることになる。

実際「YouTube動画の泥沼にはまる」という表現は、無防備なインターネットユーザーが暗く不快なウエブの片隅に引きずり込まれるプロセスを説明する常套文句となっている。このユーザーの思考回路の修正(洗脳)はAIによって生成された推薦によって白昼公然と行われており、YouTubeという主流ウエブプラットフォームから陰謀論のパンくずリストをたどるよう人々に叫んでいるのである。

2017年、オンラインテロとソーシャルメディアでのISISコンテンツの拡散について懸念が高まっていた頃、欧州の政治家たちはYouTubeのアルゴリズムを自動過激化と称して非難していた。

とはいえ、個々のYouTubeユーザーが過激なコンテンツや陰謀論動画を再生した後「過激化」されているという事例レポートを裏付ける信頼できるデータを取得するのは依然として難しい。

YouTubeの前社員Guillaume Chaslot(ギヨーム・チャスロット)氏は、algotransparencyプロジェクトによって、これまでYouTubeの独自テクノロジーを詳細な調査から保護してきた障害を排除する取り組みを続けてきた著名な批評家の1人だ。

モジラのクラウドソーシングによる調査は、チャスロット氏の取り組みを基礎として、ユーザー自身の不快な体験の各レポートを照合して、いろいろと問題の多いYouTube AIの全体像を浮かび上がらせようとしたものだ。

もちろん、グーグルのみが(詳細度と量の両面において)全体を保持しているプラットフォームレベルのデータを外部からサンプリングするだけで全体像は得られない。それに、自己報告では、モジラのデータセットにバイアスが導入される可能性もある。しかし、モジラはプラットフォームのパワーの適切な監視を支持する立場をとっているため、テック大手のブラックボックスを効果的に研究するという問題は、今回の調査にともなう重要なポイントだ。

レポートでは、一連の推奨事項として「堅牢な透明性、精密な調査、ユーザーに推薦アルゴリズムのコントロール権を付与すること」を求め、適正な監視なしでは、精神的損害を与え人を脳死状態にするコンテンツに、何も考えずにユーザーを晒すことで、YouTubeは今後も有害であり続けると主張している。

YouTubeの大半の機能において問題となっている透明性の欠如は、レポートのその他の詳細部分からも見て取れる。例えばモジラは推薦された残念な動画のうち約9%(200本近い動画)が削除されていることを確認した。削除の理由はさまざまだが、いつも明確な理由があるわけではない(コンテンツが報告され、おそらくYouTubeが同社のガイドラインに違反していると判断した後に削除されたものもある)。

合計すると、こうした一部の動画だけで、何らかの理由で削除される前の合計再生回数は1億6000万回にもなる。

また、残念な動画ほどYouTubeプラットフォーム上で高い収益を上げる傾向があることも今回の調査で判明した。

狂っているとしか思えない数字だが、報告された残念な動画は、回答者が視聴した他の動画よりも、1日あたりの再生回数が70%も多い。この事実は、YouTubeのエンゲージメント最適化アルゴリズムが、単にクリック回数を稼げるという理由だけで、(よく考えられた、有益な情報をもたらす)高品質の動画よりも扇動的な、あるいは誤解を与えるコンテンツのほうを偏って選択するという主張に説得力を与える。

これはグーグルのビジネスにはすばらしいことかもしれない。しかし、民主社会では、ばかげた情報よりも本物の情報に、人工的な / 増幅されたコンピュータ上のデータよりも正真正銘の公開された議論に、争いの種となる部族主義よりも建設的な市民の団結に価値を見出す。そのような民主社会にとって、YouTubeのアルゴリズムは明らかにマイナスだ。

しかし、広告プラットフォームに対する法的な強制力のある透明性要件がないかぎり、そして何より、監査当局による規制の監視と実施がなければ、今後もこうしたテック大手に、無防備なユーザーに目をつけ、社会的犠牲と引き換えに収益を上げる動機を与え続けることになる。

モジラのレポートでは、YouTubeのアルゴリズムが明らかに、コンテンツ自体とは無関係のロジックによって動いている実例も強調している。回答者が残念な動画を報告する前に視聴した動画についてのデータを研究者が持っているケースのうち、実に43.6%で、以前視聴した動画とまったく無関係の動画が推薦されているという結果が得られた。

レポートでは、このような理屈に合わないAIによる推薦コンテンツの急転換の実例を上げている。例えば米国軍の動画を見た人が、その直後に「口コミ動画でフェミニストを侮辱する男性」というタイトルの女性蔑視動画を推薦された例などだ。

ソフトウェア所有権に関する動画を見た後、銃所有権に関する動画を推薦された例もある。2つの権利(right)によって、YouTubeの推薦間違い(wrong)がまた増えたわけだ。

さらには、Art Garfunkelのミュージック動画を見た後「トランプのディベート司会者が民主党と深いつながりがあることが判明、メディアの偏向が限界点に」というタイトルの政治関連動画を推薦された例もある。

こうした間抜けな推薦に対しては「何だって?!」と反応するしかない。

こうした事例のYouTubeの出力は、控えめにいっても「AIの屁のようなもの」としか思えない。

寛大に解釈すれば、アルゴリズムが混乱して間抜けな推薦をしてしまったということなのかもしれない。とはいえ、レポートでは、こうした混乱によって、YouTubeユーザーが、右寄りの政治的偏向のあるコンテンツを見るよう仕向けられている多くの例が紹介されているのは、興味深い。

モジラのゲルキンク氏に最も懸念される点を尋ねると、次のように答えてくれた。「1つは、デマがYouTubeプラットフォーム上で明らかに大きな問題として浮上しているという点です。モジラの支持者や世界中の人たちに聞いた話によると、人々がオンラインに流れるデマについて懸念していることは明白です。ですから、その問題がYouTubeアルゴリズムで最大の問題として浮上しているという事実は大いに懸念されるところです」。

同氏は、もう1つの大きな懸念材料として、推薦動画の問題が非英語圏のユーザーにとって、より深刻になっている点を挙げ、YouTubeプラットフォーム上における世界的な不平等によって「十分に配慮してもらえない」という問題が、そうした問題が議論されているにもかかわらず起こっていることを示唆した。

モジラのレポートに対してグーグルの広報担当にコメントを求めたところ、次のような返事が返ってきた。

当社の推薦システムの目標は、視聴者をいつでもお好みのコンテンツと結びつけることです。ホームページ上だけで2億本を超える動画が推薦されています。システムには、視聴者に好みの動画を尋ねたアンケートの回答を含め、800億を超える情報が入力として与えられています。当社はYouTube上での体験を改善するための取り組みを継続的に行っており、2020年だけで有害コンテンツの推薦を削減するために30カ所を超える変更を実施しました。この変更により、システムによってボーダーライン上のコンテンツが推薦され、ユーザーがそのコンテンツを再生する率は1%をはるかに下回るようになっています。

グーグルはまた、YouTubeに対する調査を歓迎するとし、プラットフォーム調査のために外部の研究者を迎え入れるオプションを検討していることを示唆したが、具体的な内容については触れなかった。

同時に、モジラの調査における「残念な」コンテンツの定義について疑問を呈し、グーグル独自のユーザー調査では、ユーザーはYouTubeの推薦するコンテンツに概ね満足していると主張した。

さらに、実際の発言は引用できないが、グーグルは2021年はじめ、 YouTube向けに「違反再生率」(VVR)という指標の公開を開始した。これは、YouTubeのポリシーに違反しているコンテンツのYouTube上での再生回数割合を初めて公開したものだ。

最新のVVRは0.16~0.18%で、これは、グーグルによると、YouTube上で1万回動画が再生されるたびに、16~18本の違反コンテンツが見つかることを意味する。この数字は、2017年の同四半期と比較して70%以上低下しており、機械学習に投資したことが大きな低下の要因だとしている。

ただし、ゲルキンク氏が指摘しているとおり、グーグル自身のルールにYouTube上で再生すべきではないと明記されているコンテツの再生回数の増加に、どの程度AIが絡んでいるかをコンテキスト化および定量化するためのデータをグーグルが公開しないかぎり、VVRは指標としてはあまり役に立たない。この重要なデータがないかぎり、VVRは大きな見当違いとなる疑いが強い。

「VVRよりも奥深く、本当に役に立つのは、こうしたことに推薦アルゴリズムが果たしている役割を理解することです」とゲルキンク氏は指摘し、次のように付け加えた。「この点は未だに完全なブラックボックスです。透明性が向上しなければ、改善されているというグーグルの主張は話半分に聞いておく必要があります」。

グーグルは、YouTubeの推薦アルゴリズムが「ボーダーライン上のコンテンツ」(つまり、ポリシーには違反していないがグレーゾーンに入る問題のあるコンテンツ)を処理する方法について、2019年に同社が行った変更についても指摘した。この変更によって、この種のコンテンツの視聴時間が70%減少したという。

グーグルは、こうしたボーダーラインカテゴリーは固定されていないことを認めており、変化するトレンドやコンテキストを考慮に入れ、専門家と協力してボーダーラインに分類される動画を決定しているという。ということは、測定の基準となる固定ベースラインが存在しないということだから、上記の70%の減少という数字はほとんど意味がないことになる。

モジラのレポートに対するグーグルの反応で、英語圏以外の市場のアンケート回答者によって報告された経験の質の低下について言及していない点は注目に値する。ゲルキンク氏が示唆しているとおり、一般に、YouTubeが行っているという多くの緩和策は、米国や英国などの英語圏市場に地理的に限定されている(あるいは、まずそうした英語圏市場で対応策を実施してから、その他の市場に徐々に展開されていく)。

例えば2019年1月に米国で実施された陰謀論コンテンツの増殖を抑える変更は、数カ月後の8月になってようやく英国市場にも拡張された。

「YouTubeはここ数年、米国および英語圏市場についてのみ、有害な、またはボーダライン上のコンテンツの推薦について改善を実施したことを報告してきました」と同氏はいう。「この点について疑問を呈する人はほとんどいませんが、英語圏以外の市場はどうなったのでしょうか。個人的には、そちらのほうがもっと注目および精査されてよいと思います」。

我々はグーグルに対して、2019年の陰謀論関連の変更を全世界の市場に適用したのかどうかを確認する質問をした。同社の広報担当によれば、適用したという。しかし、非英語圏市場のほうが、より広範な残念なコンテンツが報告される率がはるかに高いままであることは注目に値する。

明らかに不釣り合いな高いレポート件数を見ると、その他の要因が作用している可能性もあるが、今回の調査結果によってもう1つわかったことは、YouTubeのネガティブな影響に関するかぎり、グーグルは、同社の評価を下げるリスクとコンテンツを自動分類する機械学習テクノロジーの能力が最も高い市場と言語に最大のリソースを投入しているということだ。

AI関連のリスクに対するこうした不平等な対応によって、一部のユーザーが有害な動画のより大きなリスクに曝されることは明白だ。現時点でも多面的で多岐に渡る問題に、不公平という有害な側面が追加された形だ。

これは、強力なプラットフォームが、自身のAIを自身で評価し、自身の宿題を自身で採点し、心底心配しているユーザーに利己的なPRで対抗する状態を放置していることがいかにばかばかしいかというもう1つの理由でもある。

(グーグルは、記事の背景を埋めるだけの上記の言葉だけでなく、自身を、検索と発見アルゴリズムに「権威」を組み込んだ業界で最初の企業であると説明している。ただし、そのような取り組みを正確にいつ行ったのか、そのような取り組みが「世界中の情報を編成し、世界中でアクセス可能かつ有益なものにする」という同社の掲げるミッションを情報源の相対価値を考慮に入れることなく、どのようにして実現できると考えているのかについては説明されていない。そうした主張には当惑してしまう。おそらく偽情報でライバル企業を惑わす不器用な試みである可能性が高いと思うが)。

規制の話に戻ると、EUの提案しているDigital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、説明責任の手段としての広範なパッケージの一部として、大手デジタルプラットフォームにある程度の透明性要件を導入するものだ。この点についてゲルキンク氏に質問すると「DSAは高い透明性を実現するための有望な手段」であると説明してくれた。

しかし、YouTube AIのような推薦システムを規制するには、さらなる法制化を進める必要があることを同氏は示唆した。

「推薦システムの透明性、ユーザーが自分自身のデータの使用許諾を与える権限を持つこと、そして推薦の出力は非常に重要だと考えています。これらは、現在のDSAでは、対応しきれない手薄な部分でもあります。ですから、この部分に腰を据えて取り組む必要があります」と同氏はいう。

同氏が支持を表明している1つの考え方は「データアクセスフレームワーク」を法律に組み込むことで、チェックを受けた研究者が強力なAIテクノロジーを調査するために必要な情報を十分に取得できるようにするというものだ。このアイデアは「透明性に関するさまざまな条項と適用可能とすべき情報の長いリスト」を法律で提示しようとする方法とは対照的だ。

また、EUは現在、AI規制に関する草案を審議中だ。法制化には、人工知能の特定分野への適用の規制に対するリスクベースのアプローチが必要となる。ただし、YouTubeの推薦システムが、より入念に規制されるカテゴリーの1つに収まるのか、あるいは、計画されている法律のまったくの範囲外になるのかは未定だ。(初期の委員会提案では少なくとも)後者の可能性が高そうだが。

「この提案の初期の草案では、人の振る舞いを操作するシステムについて規定しており、これはまさに推薦システムのことです。と同時に、それはある意味、一般に広告の目標であると考えることもできます。ですから、推薦システムがそうしたシステムのどこに分類されるのかを理解するのは簡単ではありませんでした」。

「DSAにおける堅牢なデータアクセスの提供と新しいAI規制の間には、うまく調和する部分があるのかもしれません」と同氏は付け加えた。「最終的に求められるのは透明性ですから、そうしたより高い透明性を実現できるのであれば、良いことです」。

「YouTubeもやろうと思えば十分な透明性を実現できたはずです。我々は、もう何年もこの問題に取り組んでいますが、同社がこの問題について何か有意義な対策を講じたのを見たことがありません。この点は我々も心に留めておきたいと思います。法制化には数年かかります。ですから、我々が推奨したことが一部でもグーグルに採用されれば、それは正しい方向への大きな一歩となるでしょう」。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

StreamlabsがTwitchクリップをTikTok / Instagram / YouTubeに共有できる新ツール「Crossclip」を発表

今やユビキタスなライブストリーミングソフトウェアとなったStreamlabsの開発元が、ストリーマーがゲームのハイライトをTwitch(ツイッチ)以外のプラットフォームで共有するための新しい方法を発表した。Streamlabsは、この新しいツールを「Crossclip」と名付け、現在、iOSアプリと軽量のウェブツールとして提供している。

Crossclipを使えば、クリエイターはTwitchのクリップを、TikTok(ティックトック)、Instagram リール、YouTube ショート、Facebook(フェイスブック)ビデオに適したフォーマットに簡単に変換することができる。クリップのURLを入力し、出力フォーマット(ランドスケープ、バーチカル、スクエア)とあらかじめ用意されたレイアウトを選択するだけで、Twitchから共有したいスニペットを簡単に適応させることができる。

Crossclipでは、クリップの長さをクロップしたり、背景の一部をぼかしたり、フレームをさまざまな場所に配置するレイアウトを選択することができる(例えば、フェイスカムビューとストリームビューを一緒に並べて縦向きに表示するなど)。

Crossclipのコア機能は無料だが、プレミアムサブスクリプション版(月額4.99ドル / 年間49.99ドル、月額約550円 / 年間約5500円)を購入すると、ブランドロゴのウォーターマークが取り除かれ、1080P・60fpsでのエクスポート、より大容量のアップロード、レイヤーの追加が可能になり、編集内容が処理キューの先頭にプッシュされる。

Twitchで発見されるのは難しい。確立されたストリーマーは簡単にオーディエンスを増やすことができるが、スタートしたばかりのユーザーは、数少ない視聴者がたまに挨拶に来るだけの孤独な「Stardew Valley(スターデューバレー)」のセッションを何度も延々と続けなければならない。Crossclipのアイデアは、このプロセスの苦労を減らすよう、ストリーマーがサブコミュニティやタグなど、コンテンツを発見しやすい機能がより充実している他のソーシャルネットワークでオーディエンスを構築しやすくすることだ。

Streamlabsの製品責任者であるAshray Urs(アシュレイ・ウルス)氏は、TechCrunchにこう語った。「クリエイターにとって、自分のコンテンツをより発見しやすくすることは大きなメリットです。最も人気のあるTwitchストリーマーを考えてみると、彼らは非常に人気のあるYouTubeチャンネルを持ち、Twitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)、TikTokに積極的に投稿していることに気づくでしょう。さまざまなプラットフォームでコンテンツを共有し、オーディエンスを構築していなければ、自分の状況をより難しくしていることになります」。

ウルス氏は、TikTokのアルゴリズムによるディスカバリー機能を利用して視聴者を増やすクリエイターが増えていると指摘している。TikTokが最近追加した3分間のより長い動画フォーマットは、ゲーマーやTwitchストリーマーなど、TikTokの活用に興味を持つさまざまなクリエイターにとって有益なものだ。

既存のオーディエンスを持つユーザーにとってもCrossclipは使いやすく、ゲームのハイライトやJust Chattingクリップを、フォロワーを増やしたい場所で簡単に共有することができる。平均的なクリップの変換には2~3分かかり、ワンクリックで簡単に処理できる。似たような機能を持つツールはいくつかあり、独立系ウェブツールであるStreamLadderが最も有名だが、Streamlabsは同じアイデアをさらに改良し、モバイルアプリを追加している。

現在はLogitech(ロジテック、日本法人はロジクール)の傘下にあるStreamlabsは、ここ数カ月でいくつかの便利な製品をリリースしている。同社は2021年2月には、チップ機能を組み込めるリンクインバイオ(link in bio)ツール「Willow」を発表した。Streamlabsは2021年5月、あらゆる種類のゲームコンテンツの新興ハブとなったTikTokとの関係を深め、中核となるライブストリーミングプラットフォームStreamlabs OBSにTikTokでの「ライブ配信開始」機能を追加した。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokのライバル、最大60秒の動画を投稿できる新サービス「YouTube ショート」が日本を含む100か国以上で利用可能に

TikTokのライバル、最大60秒の動画を投稿できる新サービス「YouTube ショート」が日本を含む100か国以上で利用可能に

YouTube

YouTubeは7月13日、短い動画を投稿できる新サービス「YouTube ショート」が、日本を含む100か国以上で利用可能になると発表しました。

YouTube ショート自体はまだベータ版という位置付け。2020年にインドで最大15秒の動画サービスとしてスタートしましたが、その後米国など26か国で提供されていました。

15秒の短い動画を作成できるYouTube Shorts発表。インドでベータ版を提供開始

日本でも以前から視聴は可能でしたが、今後は複数の動画をつなぎ合わせるマルチセグメントカメラ、楽曲を追加する機能、速度の設定などを含む動画作成ツールが利用可能になります。

また、YouTube ショートのグローバル展開にあわせ、動画の特定のポイントにテキストを追加したり、自動でのキャプション追加、最大60秒までの動画投稿、ギャラリーからのクリップ追加、フィルター機能が追加されます。

なお、いまのところYouTube ショートはパートナープログラムの収益対象外となっていますが、収益化する方法は検討しているとのこと。その一つとして、YouTube ショートファンドが発表済みです。これは2021年から2022年にかけて、再生数の多いYouTube ショート動画のクリエイターに対して合計1億ドルの報奨を送るというもの。

YouTubeによると、YouTube ショートのグローバルでの再生回数は1日当たり65億回を超えているとのこと。一方で、TikTokは動画の時間を最大3分まで延長しています。今後も同様のサービスが増えていけば、最適なショート動画の長さに関して知見が得られていくのかもしれません。

(Source:YouTubeEngadget日本版より転載)

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タグ:Google / グーグル(企業)ショートビデオ(用語)TikTok(製品・サービス)YouTube ショート(サービス)日本(国・地域)

トランプ氏がソーシャルメディア企業を訴える、「訴訟」という新たなツイートで世界に発信か

ソーシャルメディアのプラットフォームが、彼を締め出したのは間違いだと主張するトランプ氏による厳しい3つの訴訟は、前大統領にメディアの一時的な関心を集めることに成功したが、話はそれで終わりだろう。

トランプ氏は在任中に、通信品位法の230条を無効にしようとする、ドンキホーテ的で結局空しいクエストに取り組んだが、今回の新しい訴訟は単なる空騒ぎで、それを支える法的実体もない。

訴訟は、TwitterとFacebookとYouTubeが彼をそのプラットフォームから追い出すことで、トランプ氏の憲法修正第1条の権利を侵害したと主張しているが、修正第1条の意図は政府の検閲から国民を護ることであり、私企業が対象ではない。当時トランプ氏自身が連邦政府のトップだったという皮肉は、この訴訟が誰の手に委ねられても消えることはないだろう。

この訴訟は、TwitterとFacebookのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏とMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏、およびGoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏を名指しして(YouTubeのSusan Wojcicki[スーザン・ウォジスキ]氏がまた漏れている!)、3つの企業が「立法府からの脅威と通信品位法230条への誤った依拠、および連邦政府関係者との共同行為への故意の参加に由来する許されざる検閲行為に関与した」と非難している。

訴訟はまた、これらテクノロジー企業が「民主党議員」とCDC(米疾病予防管理センター)およびAnthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士と結託した、と主張している。ファウチ氏は当時、トランプ政権の一員だった。

この議論の核心は、テクノロジー企業と国会議員と連邦政府とのコミュニケーションが、なぜかFacebook、Twitter、YouTubeを「国家の行為者(state actors)」に変えてしまった、という主張だ。その壮大なる飛躍は次のとおりだ。

被告Twitterの地位はかくして、いち私企業のそれを超えて国の行為者の地位になり、被告はそれが行なう検閲の決定において修正第1条の権利に束縛される。

トランプ氏が最高裁判事に指名したBrett Kavanaugh(ブレット・カバノー)氏は、2年前の本件と関連する訴訟で裁判所の意見書を発表した。それは、ニューヨークで公共テレビを放送している非営利団体が、修正第1条に縛られる「国家の行為者」の資格を持ちうるか検討しているものだ。裁判所は、一般公開される公共テレビを運営していることが、その非営利団体を政府機関に変えることはない、独自の編集意思決定を行なういち民間団体としての権利を保有するという判決を下している。

その判決でカバノー判事は「その資産を他による言論のために開く私企業が、その事実のみをもってして、国家kの行為者に変えられることはない」と述べている。

政府に話をしたことや、なぜか政府に脅迫されたことが、TwitterやYouTubeやFacebookを国家の行為者に変えると法廷が判決することもありえないだろう。

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トランプvs.230条(再掲)

修正第1条については、そもそも議論すべきことがあまりないが、ソーシャルメディアのプラットフォームは通信品位法230条で守られている。その簡潔な条文によって彼らは、彼らがホストするユーザー生成コンテンツだけでなく、削除するコンテンツを決めるモデレーションの意思決定においても責任を免除される。

テクノロジーの法的な保護に対するトランプ氏の激しすぎる軽蔑と歩みを合わせるかのように、この訴訟も230条を何度も痛罵している。訴訟は、議会が230条によるテクノロジー企業の保護を取り消すと脅したために、彼らはトランプ氏を禁じることを強制され、それによりどういうわけかソーシャルメディアが政府の一部になり、修正第1条の制約に縛られるという論理を主張しようとしている。

もちろん230条の撤回は、共和党議員トランプ自身の政権がしつこく迫っていたが、意味のない議論であるため何かが変わるわけでもない。

訴訟が主張しているのは、修正第1条によって保護されてしまう言論もありうるため、言論を意図的に検閲できるために議会が230条を工作したとする説だ。この法律ができた1996年には遍在的なソーシャルメディアなど存在しておらず、他の目的もあったことを、訴訟は無視している。

大統領だった4年間でトランプ氏は、ソーシャルメディア、中でもTwitterを利用して、その日のイベントを国と世界に告げてきた。その他の世界の政治指導者たちは、自分のアクションを伝えて宣伝するためにソーシャルメディアを使ったが、トランプ氏のTwitterアカウントはそれ自体がアクションだった。

ソーシャルメディアを禁じられた日以降、前大統領はインターネット全体にコミュニケーションする手段を再建できていない。5月に彼は「From the Desk of Donald J. Trump」という名前のブログを立ち上げたが、多くの関心を集めることができずに、1カ月後に閉鎖した。

トランプ派のソーシャルプラットフォームはいくつかあるが、言論の自由に関する極端な主張が嫌われ、アプリストアのコンテンツモデレーションの要求と苦戦している。しかし、それに懲りない最新の挑戦であるGettrは先週、波乱の多いローンチを迎えた

見方によっては、訴訟はトランプ氏のプラットフォームだ。それは彼自身を、自分の罪のせいで彼を切り離したオンラインの世界へ再び発信するための、最新の方法だ。その意味では訴訟は成功したようだが、その他の点ではだめだ。

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タグ:TwitterFacebookYouTubeSNSドナルド・トランプ通信品位法230条

画像クレジット:Michael M. Santiago/Getty Images/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

YouTubeにインターネットテレビの広告でもっと買い物しやすくなる新機能追加、Z世代をターゲットに

米国時間5月4日、YouTubeは広告主たちに、同社の動画プラットフォームで視聴者が買い物できる機能を予告的に紹介した。同社が近く導入するその新しい対話的機能は「ブランドエクステンション」と呼ばれ、広告主がそれを利用すると、動画の視聴者がボタンをクリックして画面に映っている商品の詳しい情報が得ることができる。

広告主はその新しい広告形式を使って、自分のウェブサイトのリンクや、インターネットテレビの広告中のその他のアクションを高輝度で表示できる。視聴者が「電話へ送る」をクリックすると、その宣伝やURLそのものがモバイルデバイスへ飛ぶが、その際、動画の視聴そのものは邪魔されない。

消費者はモバイルデバイスから、商品を閲覧したり、カートに品物を加えたり、決済を完了したりの買い物体験を通常どおりできる。しかもそのショッピング機能のある商品情報は、動画の視聴を中断されずにモバイルへ送れる。

広告主は、その動画の内容によって広告をターゲティングできる。たとえばフィットネスの動画なら、そこには新商品のランニングシューズのブランドエクステンションが出るだろう。

YouTubeによると、ブランドエクステンションのコンバージョンレートはGoogle Adsで直接見られるようになる。

eコマース関連のもう1つの取り組みとして、これからはブランドがそのダイレクトレスポンスビデオ広告に商品の閲覧用画像を加えられる。つまり、関心を持ったショッパーがその画像をクリックすると、その商品のウェブサイトやアプリへ飛ぶことができる。

YouTubeが自らをeコマース化しようと努力している機能はさらに多く、ここで取り上げているのはごくわずかな例にすぎない。

消費者、特に若いZ世代は、動画を見たりその他の関わり行為をしながらついでにショッピングする傾向があり、Popshop LiveNTWRKShopShopsTalkShopLiveBambuserといったたくさんの動画ショッピングサービスが登場している。Facebookも、FacebookとInstagramの両方でライブのショッピング(何かをしながら見ながらのショッピング)や動画からのショッピングに投資している。

一方、TikTokはWalmartとともに動画によるeコマースのホームになり、最近の数カ月でショッピングのライブストリームを複数ホスティングした。TikTokの中国資本からの切り離しと売却をトランプ元大統領が強制しようとしたときは、Walmartも買い手の名乗りを上げた。他にも、eコマースにおけるTikTokの成功例には、動画にウェブサイトのリンクを統合するツールや、Shopifyの統合などがある。

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Comscoreのデータによると、YouTubeは今でも、広告入りストリーミングサービスの全視聴時間の40%を占めているため、動画ショッピングの見込み客の数も大きい。YouTubeによると、米国のインターネットテレビの市場では上位5社のストリーミングサービスが80%のシェアを占めている中で、広告入りはわずか2社だ。

しかも広告は、YouTubeのeコマース振興努力の一部にすぎない。クリエイターの役割も大きい。

2020年秋のBloombergの記事によると、YouTubeはクリエイターたちに、彼らの動画クリップに商品が登場するとき、それにタグと追跡機能を持たせることを求めた。その後YouTubeは2021年の2月に対する説明を行い、視聴者が自分の好きなクリエイターから買い物できる機能をベータテスト中で、その本番展開は年内と発表した。

ただし、ブランドエクステンションはそれとは別であり、動画からショッピングできる機能を広告主に与える。YouTubeによると、ブランドエクステンションのある広告は、同社が他にもいろいろ用意している対話的機能の第1弾にすぎない。そしてそれは、2021年後半にグローバルで展開される。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:GoogleYouTubeeコマース広告

画像クレジット:Olly Curtis/Future/Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アルゴリズムに焦点を当てた第230条の改正に向け米議員が公聴会で討議

米国時間4月25日に行われたアルゴリズムに関するビッグテック公聴会では、CEOをこき下ろす攻撃的な自由参加の討論会というよりも、話を聞くことを目指し、そういった意味では、ほとんど成功を収めたと思う。

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珍しいことに、公聴会はFacebook(フェイスブック)、YouTube(ユーチューブ)、Twitter(ツイッター)の最高経営責任者ではなく、ポリシー担当主任(ポリシーリード)からの証言を中心に行われた。数時間に及んだ討議では、大きな進展はなかったが、それでも世界で最も影響力を持つ者が一貫して「その件については後ほど説明する」に終始するよりは実りがあったと言えるだろう。

公聴会で議員たちはソーシャルメディアのエコーチャンバーと、アルゴリズムによる、完全に人の行動を再形成することができるプラットフォームを通じたコンテンツの拡散方法について嘆いた。

「この高度技術は、我々の時間と注意をソーシャルメディアに引き付けるよう設計されたアルゴリズムに用いられており、その結果として、子どもたちの注意範囲や、公開講演の質、公衆衛生、ひいては民主主義そのものに危害が及ぶ可能性がある」とChris Coons(クリス・クーンズ )上院議員(民主党・デラウェア州)は言及した。クーンズ上院議員はこの公聴会を開いた、プライバシーとテクノロジーに関する上院司法小委員会会長を務めている。

クーンズ上院議員は、アルゴリズムはイノベーションを推進するが、そのダークサイドには大きな代償があると述べた。

これはもちろん今に始まったことではないのだが、議会の解決に向けての動きは非常に遅く、同じような公聴会が毎回繰り返されている。火曜日の公聴会では、超党派合意のいくつかの領域が強調された。これにより民主党によって厳しく制御される上院を通過する技術改正法案の可能性が定まるかもしれない。クーンズ上院議員は「広範的に超党派の解決策」に到達できるかもしれないという楽観的な見方を示した。

それはどのようなものなのか?おそらくは 通信品位法第230条の改正だろう。これについては何年も前から大々的に記事にしてきている。この法律はユーザーが作成したコンテンツに関する責任からソーシャルメディア企業を保護するもので、バイデン政権の新しい民主党主導の上院と、以前のトランプ政権に影響された共和党主導の上院の両方に共通する、技術規制に関する話題である。

米国時間2021年4月27日、米国ワシントンDCで行われた上院司法小委員会の公聴会にリモート参加し、発言するTwitter Inc.の米国公共政策部長Lauren Culbertson(ローレン・カルバートソン)氏(画像提供: Al Drago/Bloomberg / Getty Images)

壊れたビジネスモデル

公聴会で、議員たちは問題の核心として大手ソーシャルメディア企業が利益を得る方法に固有の欠陥について指摘した。特定の欠陥について企業を批判するのではなく、ソーシャルメディアの多くの問題が噴き出るコアビジネスモデルに主に重点を絞ったのだ。

Ben Sasse(ベン・サッセ)上院議員(共和党・ネブラスカ州)は「本当に複雑で質的な問題には、簡単な量的解決策があるという考えを押しのけることが非常に重要だと思う」と語った。ソーシャルメディア企業は、ユーザーを自社製品に夢中にさせ続けることで利益を得ているため、本当の解決策ではそのビジネスモデルともどもなくす必要があると主張した。

Josh Hawley(ジョッシュ・ホーリー)上院議員(共和党・ミズーリ州)は「こうした企業のビジネスモデルは中毒である」と同意し、ソーシャルメディアを意図的な「注目のトレッドミル」と呼んだ。

Google(グーグル)元社員でテック評論家のTristan Harris(トリスタン・ハリス)氏は、自身の証言において、テック企業がその中心的な設計の信条についてどのように納得させるのかについて歯に衣着せることなく語った。「それはまるで、人質の動画で人質の話を聞くようなものだ」として、エンゲージメントを探すビジネスモデルを舞台裏で突き付けている銃に例えた。

第230条に対する世間の注目

議員がこのような深く根付いたインセンティブを破壊するために提案する1つの大きな方法は何であろう?ソーシャルメディア企業が享受している第230条の保護にアルゴリズムに焦点を置いた例外を追加することだ。そのアプローチを取る法案がいくつか上がっている。

法案の1つは、2020年に John Kennedy(ジョン・ケネディ)上院議員(共和党・ルイジアナ州)、Paul Gosar(ポール・ゴーサー)下院議員(共和党・アリゾナ州)、Tulsi Gabbard(トゥルシー・ギャバード)下院議員(民主党・ハワイ州)が提案した、1000万人以上のユーザーを持つプラットフォームに対し、第230条の保護を継続させたい場合には、ユーザーの行動やデモグラフィックデータに基づくコンテンツを提供する前にユーザーの許可を得ることを求めるものだ。これはユーザーが特別にそのように選択しない限り「ユーザーの見解を分極する情報をユーザーに提供する」ことでエンゲージメントを向上させるプラットフォームから第230条の免責を取り消すのが狙いだ。

また別の法案「Protecting Americans from Dangerous Algorithms Act(危険なアルゴリズムから米国民を守る)法令」では、Anna Eshoo(アンナ・エシュー)下院議員(民主党、カリフォルニア州)とTom Malinowski(トム・マリノウスキー)下院議員(民主党、ニュージャージー州)が、第230条の保護の禁止と「企業のアルゴリズムがオフラインの暴力に繋がる誤報を増幅する場合」にその企業の責任が問われることを提案している。

第230条の擁護者たちは、不十分に対象を絞った法律の変更により、現在の近代的なインターネットは混乱に陥り、その結果意図した改正の努力範囲を超えて連鎖的に悪影響がおよぶと主張している。法律の完全な廃止はほぼ確実に提案されることはないが、わずかな調整でさえ、良くも悪くも、インターネットビジネスが完全に再編される可能性があるとしている。

ホーリー上院議員は、利益を追求するためにアルゴリズムを使用する企業に対してより広い提案をした。「行動広告やアルゴリズムによる増幅を行うプラットフォームから第230条の保護を単に廃止すべきでは」と問い、法律の完全廃止に反対ではないと付け加えた。

上院の反トラスト小委員会委員長を務めるAmy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員(民主党・ミネソタ州)は、アルゴリズムの問題をテック業界の反競争的行為に結び付け「ある企業がその傘下にある全員を買収しているのであれば、その企業が付加製品を開発して誤情報を提供できたかどうか知ることは決してありません。なぜなら競争がないのですから」と語った。

小委員会メンバーのクロブシャー上院議員とMazie Hirono(メイジー・ヒロノ)上院議員(民主党・ハワイ州)は独自の主要な第230条改正法案「Safe Tech Act(安全なテクノロジーに関する法令)」を出しているが、この規制ではアルゴリズムは広告や有料コンテンツよりも問題とされていない。

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アルゴリズムのレンズを通じて第230条を鑑みる主要法案は少なくとももう1つある。ビックテック批判で有名なDavid Cicilline(デビッド・シシリン)下院議員(民主党、ロードアイランド州)が第230条の法案を提案する予定だ。これは、エンゲージメントを向上させ、私腹を肥やすためにアルゴリズムに依存する企業に対し、免責を廃止するものとなる。

「これは非常に複雑なアルゴリズムで、エンゲージメントを最大化して広告価格を吊り上げ、企業にさらなる利益をもたらすように設計されている」と シシリン下院議員は2021年3月Axios(アクシオス)に語った。「これは一連のビジネス上の決定であり、企業が責任を問われるべきだと主張するのは簡単なのかもしれない」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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画像クレジット:Bloomberg / Contributor / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Dragonfly)