Epic Gamesが3Dモデル共有プラットフォームのSketchfabを買収

ニューヨークを拠点とするスタートアップ企業のSketchfab(スケッチファブ)が「Fortnite(フォートナイト)」や「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」の開発元として知られるEpic Games(エピック・ゲームズ)に買収された

Sketchfabは3Dアセットをアップロード、ダウンロード、閲覧、共有、販売、購入するためのプラットフォームを構築してきた。これは本質的に、ウェブ上における3Dファイルの主要な貯蔵庫となっている。

Epic Gamesは今回の買収の条件を明らかにしていない。Sketchfabは今後も別のブランドとして運営・提供されていく。Epic Gamesによると、Unity(ユニティ)を含むサードパーティ製ツールとの統合はすべて継続して利用できるとのことだ。

Epic Gamesがこれまで、最も人気が高い制作ツールをいくつか開発あるいは買収してきたことを考えれば、今回の取引は理に適っている。Unreal Engineは、過去20年ほどの間で最も人気のあるビデオゲームエンジンの1つだ。

最近では、このUnreal Engineはビデオゲーム以外にも、特殊効果、仮想世界の3D探検、複合現実プロジェクトなど、さまざまな用途に使用されている。

しかし、アセットのないエンジンは使い物にならない。そのため、クリエイターは自分で2Dや3Dのアセットをデザインするか、そのプロセスを外注するか、あるいはアセットを直接購入する。これによってアセットとクリエイターによる1つのエコシステムが形成される。

Epic Gamesは独自のUnreal Engineマーケットプレイスを持っているが、Sketchfabは、テクノロジー、リーチ、コラボレーションを3つの重要な柱として、決定的な3Dマーケットプレイスの構築に長年取り組んできた。

テクノロジー面については、Sketchfabでは3Dモデルをあらゆるプラットフォームで見ることができる。Sketchfabのビューアーは、デスクトップとモバイルの両方の主要なブラウザで動作し(Sketchfabのサイトでその一例を見ることができる)、VRヘッドセットにも対応している。3Dモデルは、Blender(ブレンダー)、3ds Max(スリーディーエスマックス)、Maya(マヤ)、Cinema 4D(シネマフォーディー)、Substance Painter(サブスタンス・ペインター)など、自分の好みの3Dモデリングアプリからアップロードできる。

Sketchfabでは、あらゆるフォーマットをglTFやUSDZのファイルフォーマットに変換できる。これらのフォーマットは、AndroidやiOSで特に効果を発揮する。

次にリーチに関しては、Sketchfabは長年にわたって驚異的な成長を遂げてきた。2018年に同社は10億ビュー、200万メンバー、300万3Dモデルという指標を掲げ、クリエイターがプラットフォーム上で直接アセットを売買できるようにストアを起ち上げた。

最後にコラボレーションについて。Sketchfabは、常に3Dモデルを扱う企業にとって興味深い機能となるSketchfab for Teams(スケッチファブ・フォア・チーム)を、2020年に導入した。これは、Sketchfabのアカウントをチームの他のメンバーと共有できるSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)で、基本的にはGoogle Drive(グーグル・ドライブ)の共有フォルダのように機能し、3Dモデルを共有することができる。

今回の買収に伴い、Epic Gamesはすぐにいくつかの変更を行った。まず、Sketchfabのストアで課せられる手数料が、これまでの30%からEpic Games Storeと同じ12%に引き下げられた。同社はArtStation(アートステーション)を買収した直後にも、同じようにArtStationの手数料を引き下げている。

月額利用料を支払っているSketchfabユーザーにとっては、すべてが少し安くなった。従来のPlus(プラス)プランのすべての機能は無料で利用できるようになり、Pro(プロ)プランのすべての機能はPlusプラン加入者に提供されるようになるなどだ。

「私たちは創造性の新時代に力を与え、クリエイターがオンラインで作品を披露したり、3Dコンテンツにアクセスできるサービスを提供することを使命として、Sketchfabを設立しました」と、Sketchfabの共同設立者でCEOを務めるAlban Denoyel(アルバン・デノワイエ)氏は発表の中で述べている。「Epicと一緒になることで、私たちはSketchfabとその強力なオンラインツールセットの開発を加速させることができ、ひいてはクリエイターにより優れた体験を提供できるようになります。Epicと協力してメタバースの構築に取り組み、クリエイターが自分の作品をさらに発展させることができるような環境を作れることを誇りに思います」。

ArtStationとCapturing Reality(キャプチャリング・リアリティ)の買収に続き、Epic Gamesは買収を活発化させている。同社がゲーム業界向けにエンド・ツー・エンドの開発者スイートを構築したいと考えていることは明らかだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Epic Games買収3D

画像クレジット:Sketchfab

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インド最大のEdTechスタートアップByju’sが米国の読書プラットフォームEpicを約550億円で買収

Byju’s(バイジュース)は7月21日、カリフォルニアに本社を置く読書プラットフォームのEpic(エピック)を5億ドル(約550億円)で買収したと発表した。インドで評価額が最大のスタートアップByju’sが米国マーケットで事業を拡大する最新の動きだ。

買収取引は現金と株式によるもので、Epicの創業者であるKevin Donahue(ケビン・ドナヒュー)氏とSuren Markosian(スレン・マーコシアン)氏が引き続きEpicを率いる、とByju’sはTechCrunchとのインタビューで述べた。

Epicは社名を冠した、12歳以下の子ども向けのデジタル読書プラットフォームを展開している。米国の小学校の90%で活用されている同プラットフォームは、200万人超の教師と5000万人もの児童(2020年の2000万人から増加した)が使用している。

初期投資家にEvolution Mediaを抱えるEpicは、何人の子どもが本を読んでいるか、どれくらい読書に関わっているか、どこで関心が薄れ始めるかなど、リアルタイムの匿名化および集約されたデータを集めて分析している。Netflix風の動きの中で、Epicはまたオリジナル本の紙バージョンのリリースも開始した。

TechCrunchは3月に、Byju’sがEpic買収を交渉中だと報じた。ドナヒュー氏とマーコシアン氏はByju’sと関わりがある。2人がByju’sの共同創業者でCEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)氏と最初に会ったのは4〜5年前だが、買収話が始まったのは2021年だと2人は話した。

レヴィーンドラン氏(写真)はインタビューで、自身の息子がアプリを使っていて、それがきっかけとなってスタートアップを起業する機会を真剣に追求するようになったと述べた。

「我々は約8年前に、あらゆる子どもに本を提供する、という目標でEpicを創業しました。テクノロジーを通じて子どもを読書に夢中にさせることができ、子どもと読書の間にある障壁を取り除くことができると考えたのです。当社のプラットフォームはいま、米国のほとんどの学校で活用されていて、5000万人超の子どもにリーチし、10億冊の本が読まれました」とマーコシアン氏は話した。

「このプラットフォームの構築は個人的な思いからです。我々の子どもにもっと本を読んで欲しいのです。ですので、この点を鑑みて世界にプラットフォームを拡大することに目を向けるのは我々に取って理にかなったものでした。バイジューと話し始めたとき、教育に対する情熱、そしてテクノロジーが教育の機会を広げるのに役立つという信念を共有していることに気づきました。バイジューとともに我々はEpicを次のレベルにもっていくことができます」とマーコシアン氏は語った。

Epicがリリースしたオリジナル作品(画像クレジット:Epic)

米国での事業拡大

Byju’sにとって新しいプロダクトは現在のポートフォリオを拡大し、同社が探し求めてきた米国についての専門性をもたらす、とレヴィーンドラン氏は述べた。Byju’sのサービスへのEpic追加は「読書は子どもの学習にとってパワフルなフォーマットであるため、プロダクトという観点から賞賛すべきものです」とも話した。

「Epicのプロダクトの提供は米国の生徒にさらなるオプションをもたらし、当社がサービスを提供しようとしてきた層にリーチするのに役立つでしょう。Epicはこうした層をよく理解しています」とレヴィーンドラン氏は指摘した。

​Byju’s​は2021年初め、コーディングと数学をオンラインと非オンラインで提供し、またラインナップに音楽、英語、美術、科学を加える計画の一環として、海外事業をByju’s Future Schoolへとブランド変更した。レヴィーンドラン氏は、Epicがブランド名を改称するか決めていないと話したが、同社が米国でよく知られているブランドあることを認めた。

7月初めに米国でディズニーのキャラクターを使った学習アプリを立ち上げたByju’s​は米国で主に3つのサービスを提供している。各サービスは2021年だけでそれぞれ1億ドル(約110億円)を売り上げる、とレヴィーンドラン氏は予想している。「当社の野心は世界に影響を与えることです」と同氏は述べた。

Byju’s​は北米事業に10億ドル(約1100億円)を投資する計画だと同氏は話し、Epicのサービスをインドや他のマーケットにも投入する計画だとも付け加えた。

買収と資金調達

EpicはByju’s​の一連の買収の最新例だ。ここ2年、Byju’s​は米国拠点の子どもにフォーカスした「フィジタル」スタートアップのOsmoを1億2000万ドル(約130億円)で、オンラインコーディングのプラットフォームWhiteHat Jrを3億ドル(約330億円)で、コーチングセンターチェーンのAakashを10億ドル(約1100億円)近くで、そして(正式に認めていないが)インドのEdTechスタートアップTopprとGradeupを買収した。

「我々は買収をするために買収をしたわけではありません」。自身教師であるレヴィーンドラン氏はそう語り、買収した会社の買収後の成長と成功、そしてこうした企業がどのようにもともとの創業チームに率いられているかを指摘した。「当社の野望はかなり長期的なものです。我々は創業者らが成長を加速させるのをサポートするために協業しています」と同氏は述べ、Byju’s​がさらなるM&Aの機会の模索にオープンであると付け加えた。

2020年にパンデミックが始まってから15億ドル(約1655億円)を調達し、Blackstoneなど著名投資家を引きつけたByju’s​は、近年の資金調達が若い会社の買収を支えたと述べた。同社は現在、外部からさらに資金調達する計画はないが、レヴィーンドラン氏は今後数カ月内の資金調達は排除しなかった。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Byju’sインド買収

画像クレジット:Paul Yeung / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

さらに成長するインドのeコマースを動画やクリエイターの力でサポートするSimsimをYouTubeが買収

米国時間7月20日、GoogleがオーナーであるYouTubeは、ソーシャルコマースのスタートアップSimsimの買収を発表した。両社は買収の価額などを公表していないが、情報筋によると、買収に際してSimsimの評価額は7000万ドル(約77億円)ほどだった。

創業2年のSimsimは、本日の発表前までにおよそ1700万ドル(約18億7000万円)を調達し、2020年のシリーズBでは5010万ドル(約55億円)と評価されていた。

グルガオンに本社のある同社は、インドの小企業が、ビデオやクリエイターの力を活用してeコマースに移行する努力をサポートしている。その社名と同名のアプリは、プラットフォームとして各地の小企業や店舗、インフルエンサーと顧客を結びつける。

Simsimを初期から支援しているGood CapitalのRohan Malhotra(ロハン・マルホートラ)氏によると「特定のオーディエンスに的を絞って成長し、楽しい体験を提供して常連客になってもらい、信頼を築いて高額商品を買わせ、メッセージングを個人化してコンバージョンを促進するには、マイクロインフルエンサーの利用が最も効果的です。消費者対象のソーシャルプラットフォーム(Facebook、YouTube、Instagramなど)のような、広告を収益源とする経営がインドでは成り立ちにくいため、どうしても商取引を統合したプラットフォームになりがちです。インドで新たにインターネットユーザーになる人たちは、売り手が主導する対話的な体験を必要とし、この市場の慣行であるオフラインのコマースのネット版を求めることになります」という。

マルホートラ氏も買収の価額などは明かさず、またSimsimのCEOも米国時間7月19日に提出した買収に関する質問には応じなかった。

しかしSimsimの共同創業者であるAmit Bagaria(アミット・バガリア)氏とKunal Suri(クナル・スリ)氏、そしてSaurabh Vashishtha(サウラブ・ヴァシシュタ)氏は、共同声明で次のように述べている。「Simsimを始めたときのミッションは、インド中のユーザーがオンラインで簡単に買い物できるようにすることでした。そのためには、信頼されているインフルエンサーが作ったコンテンツのパワーにより、売り手やブランドが商品を展示し販売できなければなりません。今回、YouTubeとGoogleのエコシステムの一員になったことにより、Simsimのミッションをさらに強力に推進できます」。なお、バガリア氏とヴァシシュタ氏は以前、Paytmに在籍していた。

彼らによると「今後のSimsimを作っていく上で、技術や顧客へのリーチ、クリエイターのネットワーク、そして企業文化において、ここにまさるエコシステムは他にありません。YouTubeの一員になることが待ち遠しいし、世界で最も賞賛されているテクノロジー企業の中でSimsimを開発し続けていけるのは本当にうれしいことです」という。

YouTubeにとっては、このビデオストリーミングの巨人がインドの小企業と小売業を助けていくことにより、従来よりも強力な方法で新たな顧客にリーチできる。YouTubeのアジア太平洋担当副社長Gautam Anand(ゴータム・アナンド)氏が、ブログでそう述べている。

このビデオストリーミングサービスは、インドだけでも月間アクティブユーザーが4億5000万を超えるが、さしあたってSimsimを変える意図はなく、Simsimのアプリがそのまま使える状態を続ける。そしてアナンド氏によると「YouTubeのビューワーにSimsimをどのように見せていくか、そのやり方を検討したい」とのこと。

以前から、Googleはさまざまな形でインドに地歩を築く努力を続けているが、7月20日の発表はその最新の動きだ。これを含めてGoogleのインドへの投資は、向こう2年間で100億ドル(約1兆1000億円)に達する。Googleは他にも、インドのスタートアップGlanceとDailyHuntを支援しており、いずれもショートビデオのアプリだ。

「YouTubeには2500を超えるクリエイターがおり、サブスクライバーは100万を超えています。また、インドで最初にローンチしたYouTube Shortsの成功により、私たちはYouTubeの最良の部分をインドに持ち込むことにコミットしており、新世代のモバイルファーストのクリエイターたちがスタートしやすい環境を作って、クリエイターのコミュニティを大きくしていきたい」とアナンド氏はいう。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:YouTubeインドeコマースSimsim買収クリエイターGoogle

画像クレジット:Simsim/YouTube

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(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ライブビデオストリーミング会社LiveUの買収をPE大手Carlyleが正式に認める

米国時間7月19日にお伝えした、LiveU(ライブユー)の売却が間近に迫っているというニュースに続き、米国時間7月20日には同社とその買い手であるCarlyle(カーライル)がその取引を正式に認めた。LiveUは世界の約3000の主要メディアに採用されているライブストリーミング・ハードウェアおよびソフトウェアの大手開発会社である。

売り手は、2年前にLiveUを2億ドル(約219億円)で買収したFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)で、Carlyleと同じプライベート・エクイティ(PE)企業だ。LiveUとCarlyleは、今回の売却条件を明らかにしていないが、有力な情報筋によれば、4億ドル(約438億円)以上だと伝えられている。Carlyleは、投資資金はCarlyle Europe Technology Partners(カーライルヨーロッパテクノロジーパートナーズ、CETP)IVによって提供されると発表している。同ファンドはヨーロッパと米国のミドルマーケットテクノロジーに焦点を当てて投資を行うファンドだ。LiveUはイスラエルに本社を置いているが、今回の買収はCarlyleにとってイスラエルでの初のハイテク企業買収となる。

LiveUの評価額が2年間で2倍になったのは、現在のメディアの状況を反映したものでもある。特に、動画はコンテンツや情報の消費の中心であり、その存在感は高まる一方だ。このため動画の撮影・送信方法を改善するツールを開発する企業が注目されているのだ。

またパンデミックも動画市場を活性化させた別の要素だ。LiveUは、今回の東京オリンピック大会の数千時間におよぶイベントの録画・配信に使用される予定だ。東京大会では、多くの重要なイベントが無観客で行われるため、これまで以上にライブビデオコンテンツへの依存度が高くなるだろう。

そのことはまた、LiveU自体が成長し、その地位を確固たるものにしていることにも由来している。最近では、同社は英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partners(ガーランド・パートナーズ)を買収し、同地域の顧客とより直接的な関係を築き、ビジネスを拡大しようとしている。

同社は、映像を撮影するカメラなどの機器だけでなく、それを送信するためのエンコード機器、そして素材を受け取って利用するハードウェアまでの、垂直統合型の提案を行う。

また、高品質な映像を撮影し伝送するために不可欠なデータ圧縮を行うソフトウェアを開発し、携帯電話や衛星などのさまざまなネットワークを組み合わせて動作させている。

要するにこれは非常に奥行きのあるシステムであり、部分的にも、全面的にも採用することが可能なのだ。そしてこの柔軟性と信頼性により、3000社を超えるメディア企業が顧客として名を連ねており、スポーツイベントや大規模なニュースイベントなどの注目度の高いイベントや、日常的なビデオ報道にも使用されている。

FranciscoはLiveUを資産として比較的早く手放したが、Carlyleはより戦略的な計画を持っているようだ。Carlyleは「メディアテック分野での深い経験を活かして、LiveUの成長への熱望を支援したい」と述べている。同社はすでにDisguise(ディスガイズ)、NEP、The Foundry(ザ・ファウンドリ)、Vubiquity(ビュービクイティ)、BTI Studios(BTIスタジオ)、The Mill(ザ・ミル)などの隣接業務企業に投資している。また、LiveUは、同社が連携プレーを継続するための役割を果たすようだ。

LiveUは声明の中で「Carlyleは、高品質なライブ映像配信の需要が急速に高まっていることを利用しつつ、M&A活動や有機的な成長を通じて、LiveUの市場での地位をさらに強固にすることを目指します」と述べている。同社によれば、5Gが広く普及することでその傾向が加速するという。

LiveUの共同創業者であるCEOのSamuel Wasserman(サミュエル・ワッサーマン)氏は「Carlyleと提携することで、LiveUのグローバルな事業展開とサービスの拡大を図ることが可能になり、大変うれしく思っています。今回の買収は、LiveUにとって重要な節目であり、当社の事業に対する強い信頼を示すものです」と述べている。「Carlyleは、メディアやテクノロジー分野での実績に加え、グローバルなネットワークを活用することで、業界の深い専門知識を提供してくれるでしょう。ここ数年のFrancisco PartnersとIGP Capitalのサポートとパートナーシップに大いに感謝しています」。

CETPのアドバイザリーチームの責任者であるMichael Wand(マイケル・ワンド)氏は「Carlyleは、急速に成長している革新的で破壊的なメディアテクノロジー企業に投資してきた実績を持っています。今回急速に成長している市場の最前線にいるLiveUと提携できることを本当にうれしく思っています」と述べている。「LiveUチームとのパートナーシップにより、新しい分野への進出、ターゲットを絞ったM&A、特にライブコンテンツの需要が急増しているライブスポーツに対する主要メディア放送局との関係強化などを通して、彼らの成長をサポートしていきます。高品質のリアルタイムビデオコンテンツへの移行が進んでいること、他の伝送技術と比較した場合のボンディングセルラー技術(複数の電話回線を束ねて伝送速度を上げる技術)のコスト面での優位性、セミプロやノンプロのスポーツなどのこれまで日の当たらなかった分野にライブ放送を導入する機会などは、LiveUに大きな成長の可能性を提供できると考えています」。

関連記事:PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CarlyleLiveU買収ライブストリーミング動画配信イスラエル

画像クレジット:LiveU

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

ライブビデオストリーミング会社LiveUの買収をPE大手Carlyleが正式に認める

米国時間7月19日にお伝えした、LiveU(ライブユー)の売却が間近に迫っているというニュースに続き、米国時間7月20日には同社とその買い手であるCarlyle(カーライル)がその取引を正式に認めた。LiveUは世界の約3000の主要メディアに採用されているライブストリーミング・ハードウェアおよびソフトウェアの大手開発会社である。

売り手は、2年前にLiveUを2億ドル(約219億円)で買収したFrancisco Partners(フランシスコ・パートナーズ)で、Carlyleと同じプライベート・エクイティ(PE)企業だ。LiveUとCarlyleは、今回の売却条件を明らかにしていないが、有力な情報筋によれば、4億ドル(約438億円)以上だと伝えられている。Carlyleは、投資資金はCarlyle Europe Technology Partners(カーライルヨーロッパテクノロジーパートナーズ、CETP)IVによって提供されると発表している。同ファンドはヨーロッパと米国のミドルマーケットテクノロジーに焦点を当てて投資を行うファンドだ。LiveUはイスラエルに本社を置いているが、今回の買収はCarlyleにとってイスラエルでの初のハイテク企業買収となる。

LiveUの評価額が2年間で2倍になったのは、現在のメディアの状況を反映したものでもある。特に、動画はコンテンツや情報の消費の中心であり、その存在感は高まる一方だ。このため動画の撮影・送信方法を改善するツールを開発する企業が注目されているのだ。

またパンデミックも動画市場を活性化させた別の要素だ。LiveUは、今回の東京オリンピック大会の数千時間におよぶイベントの録画・配信に使用される予定だ。東京大会では、多くの重要なイベントが無観客で行われるため、これまで以上にライブビデオコンテンツへの依存度が高くなるだろう。

そのことはまた、LiveU自体が成長し、その地位を確固たるものにしていることにも由来している。最近では、同社は英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partners(ガーランド・パートナーズ)を買収し、同地域の顧客とより直接的な関係を築き、ビジネスを拡大しようとしている。

同社は、映像を撮影するカメラなどの機器だけでなく、それを送信するためのエンコード機器、そして素材を受け取って利用するハードウェアまでの、垂直統合型の提案を行う。

また、高品質な映像を撮影し伝送するために不可欠なデータ圧縮を行うソフトウェアを開発し、携帯電話や衛星などのさまざまなネットワークを組み合わせて動作させている。

要するにこれは非常に奥行きのあるシステムであり、部分的にも、全面的にも採用することが可能なのだ。そしてこの柔軟性と信頼性により、3000社を超えるメディア企業が顧客として名を連ねており、スポーツイベントや大規模なニュースイベントなどの注目度の高いイベントや、日常的なビデオ報道にも使用されている。

FranciscoはLiveUを資産として比較的早く手放したが、Carlyleはより戦略的な計画を持っているようだ。Carlyleは「メディアテック分野での深い経験を活かして、LiveUの成長への熱望を支援したい」と述べている。同社はすでにDisguise(ディスガイズ)、NEP、The Foundry(ザ・ファウンドリ)、Vubiquity(ビュービクイティ)、BTI Studios(BTIスタジオ)、The Mill(ザ・ミル)などの隣接業務企業に投資している。また、LiveUは、同社が連携プレーを継続するための役割を果たすようだ。

LiveUは声明の中で「Carlyleは、高品質なライブ映像配信の需要が急速に高まっていることを利用しつつ、M&A活動や有機的な成長を通じて、LiveUの市場での地位をさらに強固にすることを目指します」と述べている。同社によれば、5Gが広く普及することでその傾向が加速するという。

LiveUの共同創業者であるCEOのSamuel Wasserman(サミュエル・ワッサーマン)氏は「Carlyleと提携することで、LiveUのグローバルな事業展開とサービスの拡大を図ることが可能になり、大変うれしく思っています。今回の買収は、LiveUにとって重要な節目であり、当社の事業に対する強い信頼を示すものです」と述べている。「Carlyleは、メディアやテクノロジー分野での実績に加え、グローバルなネットワークを活用することで、業界の深い専門知識を提供してくれるでしょう。ここ数年のFrancisco PartnersとIGP Capitalのサポートとパートナーシップに大いに感謝しています」。

CETPのアドバイザリーチームの責任者であるMichael Wand(マイケル・ワンド)氏は「Carlyleは、急速に成長している革新的で破壊的なメディアテクノロジー企業に投資してきた実績を持っています。今回急速に成長している市場の最前線にいるLiveUと提携できることを本当にうれしく思っています」と述べている。「LiveUチームとのパートナーシップにより、新しい分野への進出、ターゲットを絞ったM&A、特にライブコンテンツの需要が急増しているライブスポーツに対する主要メディア放送局との関係強化などを通して、彼らの成長をサポートしていきます。高品質のリアルタイムビデオコンテンツへの移行が進んでいること、他の伝送技術と比較した場合のボンディングセルラー技術(複数の電話回線を束ねて伝送速度を上げる技術)のコスト面での優位性、セミプロやノンプロのスポーツなどのこれまで日の当たらなかった分野にライブ放送を導入する機会などは、LiveUに大きな成長の可能性を提供できると考えています」。

関連記事:PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

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タグ:CarlyleLiveU買収ライブストリーミング動画配信イスラエル

画像クレジット:LiveU

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

PE大手Carlyleがライブ放送・ストリーミング技術のLiveUを438億円超で買収すると関係筋

コンテンツに関してはストリーミングが何より肝心になってきている中、世界中のどこからでもライブ配信できる技術を開発している企業の1つが買収されることになった。LiveU(ライブユー)は、ライブ中継やブロードキャスト映像をキャプチャして配信するための衛星 / セルラーハードウェアおよびソフトウェアを提供しており、3000以上の大手メディア企業に採用されているが、プライベートエクイティ投資会社であるCarlyle(カーライル)に4億ドル(約438億円)以上で買収されることになったと、複数の関係筋がTechCrunchに語った。

LiveUはイスラエルに拠点を置いており、取引は地元メディアによって進んでいると報じられていた。TechCrunchの情報筋によると、この買収はクロージングの最終段階に入っており、早ければ米国時間7月19日か20日にも発表される可能性があるとのこと。LiveUの広報担当者はこの記事へのコメントを控えており、Carlyleの広報担当者からはコメントを得られなかった。

注目すべき点は、ここ2年の間にLiveUが買収されるのは2度目だということだ。同社は以前、Francisco Partnersという別のPE企業に2億ドル(約219億円)で買収されている。

25カ月で2倍以上になった評価額の急上昇は、動画コンテンツへの関心が大きく高まっていることが一因だ。

少し前までは、テレビの限られたチャンネルでしかライブビデオを観ることはできなかった。それが今では、ライブやそれに近いもの、あるいはオンデマンドの動画が、あらゆる場所で観られる。オンデマンドやライブストリーミングの映像は、アプリ(放送専用のもの、またはYouTubeやFacebookなど他のコンテンツと一緒に提供されるもの)やウェブサイトで観ることができ、テレビだけでなく、スマホやタブレット、PCでも観ることが可能だ。今日では、人々に情報を提供したり楽しませたりするための主要なメディアとなっており、IPトラフィック全体の80%以上を占めている。

そのため、映像を撮影して配信するプロセスを、より簡単に、より安く、より高い品質で実現する技術を開発している企業が注目されるのは当然のことだ。(LiveUは、テニス選手権からDerek Chauvin〔デレク・ショーヴィン〕被告の裁判まで、多くの注目を集める報道に使用されている)。

もう1つの理由は、LiveUが買収によって規模を拡大したことにあるようだ。2021年初め、LiveUは英国市場のチャネルパートナーであるGarland Partnersを非公開で買収し、同地域の顧客に近づくことに成功した。ある情報筋によると、この統合により、LiveUが買収されるための道筋ができ、その評価も上がったとのことだ。

Carlyleと同時期に他の買い手がいたかどうかは定かでないが、Carlyleは2020年、かなり積極的に買収やグロースステージ投資を行っている。2020年は、新型コロナウイルスのパンデミックとそれにともなう消費者や企業の行動の変化を受けて、資金の動きが激しい年だった。

同社の欧州(特に英国)における他の買収事例としては、英国のハイブリッドワークスタートアップである1eを2億7000万ドル(約295億円)で買収した他、ゲーム会社のJagexを約5億3000万ドル(約580億円)で買収した。また、韓国のMaaSスタートアップであるKakao Mobilityへの2億ドル(約219億円)の出資も行っている。今回のLiveUは、イスラエルでの最初の案件になると思われる。

イスラエルは、こうした活動の大きな恩恵を受けている。テルアビブを拠点とするベテラン投資銀行家でスタートアップアドバイザーでもあるAvihai Michaeli(アビハイ・ミカエリ)氏は、2021年の最初の6カ月間に同国内のスタートアップがまとめて110億ドル(約1兆2039億円)を調達したと見積もっており、それは7月19日の時点ですでに120億ドル(約1兆3133億円)にまで拡大している。PE企業は常連客であり、イスラエルでのエグジットに関しては「内部から改善して、さらに高い価値で売却する」というのが常套手段だという。他の例としては、Francisco Partnersが2021年2月にMyHeritageを約6億ドル(約657億円)で買収している。

さらなる情報が得られれば、この記事を更新する。

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画像クレジット:LiveU

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Aya Nakazato)

Zoomが約1兆6000億円で2000社以上の顧客持つクラウドコールセンターFive9を買収

Zoom(ズーム)は過去1年間の目覚ましい株価上昇を利用して、初の大型買収を行った。2年前のIPO時には約90億ドル(約9850億円)と評価されていた人気のビデオ会議会社は、米国時間7月18日夜、クラウドコールセンターサービスを提供するFive9(ファイブ9)を約147億ドル(約1兆6000億円)で買収することで合意したと発表した(全株式による取引)。

設立20年のFive9は、2022年前半に完了する予定のこの取引の後、Zoomの事業部門となると両社は述べている。

この買収案は、提供するサービスを拡大するためのZoomの最新の試みだ。この1年間でこのビデオ会議ソフトウェアは、複数のオフィスコラボレーション製品、クラウド電話システム、オールインワンのホームコミュニケーションアプライアンスを追加した。

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Citrix(シトリックス)やUnder Armour(アンダーアーマー)など、世界中に2000社以上の顧客を持ち、年間70億分以上の通話を処理しているFive9の買収により、Zoomは「240億ドル(約2兆6200億円)」とも言われるコンタクトセンター市場に参入することができるという。

Zoomの創業者兼CEOであるEric S. Yuan(エリック・ヤン)氏は、声明の中でこう述べた。「当社は常にプラットフォームを強化する方法を模索しており、Five9の追加は、当社のお客様にさらなる喜びと価値を提供するために、自然にフィットするものです」。

今回の合併により、両社はそれぞれの顧客基盤において「大規模な」クロスセリングの機会を得られると考えている。

Five9のCEOであるRowan Trollope(ローワン・トロロープ)氏は「企業はコンタクトセンターに多大なリソースを費やしていますが、それでも顧客にシームレスな体験を提供することに苦労しています」と述べている。

「企業がこの問題を解決し、より有意義で効率的な方法で顧客と接することを容易にするのが、Five9のミッションです。Zoomとの提携により、Five9のビジネス顧客は、Zoom Phoneを中心としたベストオブブリードのソリューションにアクセスできるようになり、より多くのメリットを実現し、ビジネスに真の成果をもたらすことができるようになります。これは、Zoomの『使いやすさ』の哲学と幅広いコミュニケーションポートフォリオと相まって、お客様が好みのチャネルを介してエンゲージすることを真に可能にします」とも。

両社は米国時間7月19日に共同でZoomコールを行い、今回の買収についての詳細を発表する予定だ。

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

Intelが3.3兆円でチップメーカーGlobalFoundries買収を交渉中との噂

チップ業界でのM&Aとなると、数字は決して小さなものではない。NVIDIA(エヌビディア)がARM(アーム)を400億ドル(約4兆4030億円)で買収したのをはじめ、2020年のチップ業界の4件の取引合計額は1060億ドル(約11兆6680億円)だった。2020年のチップをめぐるM&A騒ぎで1つ驚きだったのは、Intel(インテル)が傍観者のままだったことだ。もし、噂になっているチップメーカーGlobalFoundries(グローバルファウンダリーズ)の買収案件が実現すれば、それも変わる。

噂は最初にウォールストリートジャーナル紙が7月15日に報じた

チップ業界に詳しいMoor Insight & Strategiesの創業者で主任アナリストであるPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、GlobalFoundriesの買収はIntelにとって合理的だと話す。GlobalFoundriesは現在、社の方針転換を図るために1月に取締役会に加わったCEOのPat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)氏のもと、Intelや他の企業向けにチップを製造・販売する新たな戦略を推進している。

「GlobalFoundriesは5G RF、IoT、そして自動車に特化したテクノロジーとプロセスを有しています。GlobalFoundriesを獲得すればIntelは顧客にすべてを提供できる『フルスタック・プロバイダー』になるでしょう。これは(Intelのチップ製造戦略である)IDM 2.0に完全に当てはまり、GlobalFoundriesなしだと戦略を達成するのに何年もかかることになります」とムーアヘッド氏はTechCrunchに語った。

この買収ではまた、部分的にはパンデミックとパンデミックがグローバルサプライチェーンに与えた影響のために世界的にチップが不足して膨大な需要がある中で、Intelは製造施設を手に入れることになる。同社はアリゾナでの2つのファブ(チップ製造プラント)建設に200億ドル(約2兆2015億円)超を注入する計画をすでに明らかにしている。こうした計画にGlobalFoundriesを加えることで、実現すれば今後数年で広範な製造能力を手に入れることになるが、そこに辿り着くには数百億ドル(数兆円)というかなりの投資をともなう。

GlobalFoundriesは米国拠点の世界的なチップ製造メーカーだ。同社はIntelのライバル、AMDから2012年にスピンオフされ、現在はアブダビ政府の投資部門、Mubadala Investment Companyによって所有されている。

投資家らはGlobalFoundriesとIntelが合体するというアイデアが気に入っているようで、Intelの株価は記事執筆時点で1.59%上昇している。この取引はまだ噂の段階であり、決定的なものは何もなく、最終確定しているわけでもないことを強調しておく。何か動きがあればお伝えする。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがpringを買収した理由とは? 「米IT大手が日本の決済市場を席巻」は本当か

グーグルがpringを買収した理由とは? 「米大手ITが日本の決済市場を席巻」は本当か7月13日、Googleはモバイル金融サービスを提供する「pring(プリン)」の全株式を取得するための契約に合意したことを発表した。

同社には親会社のメタップスをはじめ、ミロク情報サービス、日本瓦斯(ニチガス)、伊藤忠商事、ファミマデジタルワン、SBIインベストメント、みずほ銀行、SMBCベンチャーキャピタルなどメガバンクを含む複数の資本が入っており、株式譲渡が完了するとみられる8月中には実質的にGoogle傘下の企業となる。

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

Googleによる買収が発表された「pring(プリン)」

pringでは買収後も既存のサービスに変更はないと説明しているが、同件の最初に報じた日本経済新聞では「Google、日本で金融本格参入へ 国内スマホ決済買収」のタイトルで、Googleがpringをベースに日本国内における送金・決済サービスの分野に本格参入することを伝えており、いわゆる「GAFA」などの名称で呼ばれる米IT大手の金融分野での日本進出が本格化しつつあることを予感させる流れになっている。

「pring(プリン)」とはどういうサービスか

pringの会社設立は2017年、サービス開始はiOS版アプリの登場した2018年3月と、「○○Pay」などが多数リリースされた時期に登場した金融スタートアップの1社となる。

pringに関してよく誤解されている1点を挙げれば、同社が志向しているのは「○○Pay」が提供しているような「QRコード(バーコード)決済サービス」ではなく、「送金」を中心とした「シンプルなお金の移動サービス」だ。

以前に筆者が同社代表取締役の荻原充彦氏にインタビューしたときに、同氏は「純粋に送金に特化しているサービスは少ない。目指すのは早くて便利でどこでも使えるSuicaのようなサービス」とpringの特徴を説明している。

JCBの提供しているSmartCodeの仕組みなどを通じてQRコード決済が行える機能もあるものの、主眼はあくまで「個人間送金」、あるいは企業が経費精算などで従業員への支払いなどに利用する「業務用プリン」といったサービスとなる。

「なぜGoogleはpringに興味を持ったか」「pringをどのようにGoogleの金融サービスに組み込んでいくのか」という2つの疑問があるかと思うが、後者については比較的簡単に説明できる。

pringをGoogle Payの「ウォレット(Wallet)」とし、ここを基点にして送金や、決済など他の金融サービスと連携していくのが将来的な計画だろう。

送金などで受け取ったお金はいったんウォレットにプールされ、再び他者に送金したり、そのまま買い物や銀行口座などから引き出すことができる。pringの場合は銀行口座と連携せずともセブン銀行ATM経由でウォレットへのチャージや現金の引き出しが可能なため、この仕組みを手軽に利用できる。

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行との提携で会見したpring代表取締役の荻原充彦氏(右)

セブン銀行ATMでアプリから出金する

セブン銀行ATMでアプリから出金する

ただ興味深いのは、この送金機能が現在提供されているのは米国とインドの2ヶ国のみだ。Google Pay自体は本稿執筆時点で40ヶ国でのサービス提供が行われているにもかかわらず、2015年のサービス開始(当時は「Android Pay」の名称)から6年経過した現在においてなおこの状態となっている。

多くの国ではGoogle Payにカードを登録してオンラインやオフラインの店舗での支払いに利用できるのみだ。またインドで提供されているサービスは(2017年のサービス開始当初は「Tez」のブランド)、登録された銀行口座間の送金が基本となっており、いわゆるウォレット方式とは異なる。モバイル送金それ自体は非常に便利な仕組みだが、Google Payのような決済サービスと組み合わせることで残高の利用機会が増え、互いに相乗効果をもたらす。

日本におけるGoogle Payは登録可能な対応カードや決済手段が限られており、どちらかといえばFeliCaチップを使った「おサイフケータイ」に依存する部分が大きい。個人的意見でいえばGoogle Payを使う場面は自ずと限られているという認識だが、今後「送金」の仕組みが加わることで、より活用場面は増えるだろう。

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

Google Payの店頭決済において利用可能なカード一覧。選択肢としては決して多いとはいえない(出典:Google)

金融端境期のGoogleによるpring買収

「送金」サービスと一口にいうが、実際に使い勝手のいいサービスを提供するのは難しい。「マネーロンダリング防止の観点から送金の監視が必要」という話に加え、「異なるサービス間でどのように送金を行うのか」という問題がある。

同一サービス間であればアカウント同士の残高を移し替えるだけなので問題ない。ところが送金先が同一サービスにアカウントを持っていない場合、異なるサービスのアカウントを指定して送金を行う必要がある。現状、そのような仕組みが実装されているケースはほとんどなく、例えば「割り勘」のような仕組みを実装する際の障壁となっている。

皆が皆使っているサービスなら問題ないが、そこまでユーザーを獲得しているサービスはそうない。Google Payがもし送金機能を標準で実装し、さらに日本において多数のユーザーが存在する“iOS向け”のGoogle Payアプリをリリースすれば、この問題を解消できるかもしれない。

pringアプリのメイン画面

pringアプリのメイン画面

送金サービス提供にあたってもう1つの問題が振込手数料の存在だ。前述のように同一サービス間であれば残高の付け替えだけで済み、ほとんどコストのかからない作業だが、アカウントへの出入金や他のサービス(あるいは銀行口座)への送金が発生した場合、振込手数料が必要となる。

pringを含む“送金”や“出入金”の機能を提供する「○○Pay」の金融サービス事業者は改正資金決済法における「資金移動業者」と定義される。資本規制を含むさまざまなルールが規定される免許事業者の銀行と比べて参入障壁は低いものの、100万円以上の資金の移動に制限を受けたり、「預金」にまつわるサービスが提供できないなど、決済や送金に特化した認可事業者の扱いだ。

位置付けとしては、資金移動業者は特定の銀行の支店に口座を持ち、そこを通じて他のサービスや銀行と精算業務を行っている。銀行間の資金決済処理は全銀システムを通じて行われているが、その際に必ず手数料が発生する。

一般に、銀行口座振込で1回あたり2百数十円の振込手数料が要求されるが、これは全銀システムを経由していることによる。近年、この全銀システムの手数料の高さや、システムへの接続が銀行以外のサービス事業者(資金移動業者など)に開放されていないことが問題視されており、手数料値下げや緩和の方向に向かいつつある。

また、全銀システムなどの利用料が1回利用あたりの一律料金で設定されていることにより、特に小額送金や決済において「手数料が相対的に非常に高くなる」という点も、キャッシュレス化の進展において小額決済が現金からキャッシュレス決済に移行する際の障害になっていると考えられている。

小額決済や送金を可能にする「ことら」という仕組みがメガバンクらを中心にJ-Debitの仕組みをベースに検討されており、こうしたニーズとのギャップを埋めるべく金融業界の新しい動きとなっている。つまり、オンラインシステムが稼働を開始してから長らく変化の少なかった銀行業界だが、ここ最近になり急速な変化が起きつつある。

これはインターネット事業者など業界外からの参入が増え、競争が激化しつつあることと無縁ではない。Googleのpring買収はこの日本での金融端境期の中で起きた大きなイベントの1つであり、2016年のApple Payの日本でのサービスインと合わせ、少なからぬ影響を業界に与えることになると考える。

米IT大手が日本の金融市場を席巻するという話は本当か

この手のニュースが報じられると、毎回話題になるのが「米国のIT大手が日本の金融市場も席巻し、銀行は過去のものになる」というテーマだ。

実際のところ、金融業界は規制に大きく縛られた業界であり、国ごとにルールや商習慣も大きく違う。仮に先進的で革新的なサービスであっても、そう簡単に複数の地域や国に一度に展開が可能なほど甘い世界でもない。

例えば、Googleがpringを買収したところで銀行の代わりにはなれないし、Google自身が銀行免許を取得して日本で自ら本格的な金融サービスを提供するような面倒な道は選ばないだろう。それよりは、すでに日本ですでに地場を固めている複数の金融機関と手を組み、すばやく必要で手軽なサービスを展開する方が効率がいい。

Appleがあくまで既存金融機関などとの提携で「Apple Pay」を日本に持ち込んだように、方法としてはそちらの方が圧倒的にスマートだ。一方で、今後給与デジタル払いが解禁されたタイミングで、pringのような仕組みを利用するケースはさらに増えるとみられ、“地ならし”という点で今回の買収は大きな意味を持つ。

実際のところ、こうした地域間でのルールや文化の違いが金融サービスの提供にあたっては大きな障壁となる。例えば、先日ゴールドマン・サックスの日本支社が国内で銀行業免許を取得したことが話題になったが、これが必ずしも「日本でのリテールバンク参入」や「Apple Cardの国内発行」に即つながるわけではない。

ゴールドマン・サックスは「Marcus」ブランドで2016年に米国でリテールバンク市場に参入しつつ、2019年にはカード発行の外販事業で初の顧客として「Apple Card」の発行を請け負った。

Apple Cardはスマートフォン(iPhone)利用に特化した分かりやすいUIと、最大3%の“キャッシュ還元”が特徴のクレジットカードだが、日本と米国でカード利用のビジネスモデルが大きく異なっていることから、同じ商品性で日本にサービスを投入するのは難しいと考えられている。将来的には分からないが、この仕組みが日本の消費者に受け入れられるかも含め、参入に時間のかかるビジネスと思われる。

Marcus by Goldman Sachsのページ

Marcus by Goldman Sachsのページ

また、Appleについては米国で「Buy Now, Pay Later(BNPL)」への市場参入が米Bloombergによって報じられている。これはApple Payの支払いオプションとしてクレジットカードやデビットカードによる一括決済だけでなく、「4回払い」の指定が可能になるもの。市場背景などの詳細は筆者の別の記事を参照いただきたいが、米国のクレジットカードでは一括決済後に弁済金を自ら少しずつ返済していく仕組みが一般的であり、指定期日を過ぎるとその分が利息として請求される。

「ミニマムペイメント」とは毎月やってくる返済期日に最低限弁済しないといけない金額のことであり、早めに返済すればするほど手数料は低くなる。いわゆる「リボ払い」と呼ばれるものだが、日本では分割払いの回数や手数料は最初の決済時に決定されるものなので、BNPLのような仕組みは馴染みにくいだろう。

近年、米国を含め欧米を中心にBNPLの仕組みがブームになっているが、その理由として「クレジットカードの与信枠が少ないので、それを超える買い物をしたい」「そもそもクレジットカードを使いたくない」といったユーザーのニーズを反映したものとなっている。

小売店側も販売機会の増加や決済単価を増やすため、本来のカード決済手数料よりも高い(米国ではクレジットカードと比較して1.5-2倍程度とされる)BNPLをあえて導入し、売上全体を伸ばすことに利用している。

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

BNPL市場興隆の例。オーストラリアでの調査報告で、クレジットカード発行枚数の減少とともにBNPLの決済額が増えつつある(出典:ネットプロテクションズ)

このように、「GAFAが日本金融を席巻する」という話はそう単純なものではなく、これまで変化の少なかった金融業界のビジネスモデルに影響を与えつつも、あくまで相互関係に則って展開されるものだということが分かるだろう。

過度な警戒は必要ないが、これら米IT大手が日本の金融市場にサービスを提供することでどのような影響を与えるのか、自分の生活をどう変化させるのかを考えつつ、今後の思索につなげていきたい。

(鈴木淳也。Engadget日本版より転載)

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トヨタのウーブン・プラネットが高精細地図スタートアップCarmeraを買収

トヨタ自動車が自動運転などの将来に向けた交通技術に投資し、開発を進め、最終的に商業化するために設立した企業であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、高精度地図のスタートアップ企業であるCarmera(カーメラ)を、非公開の金額で買収すると発表した。2021年4月末にウーブン・プラネットは、Lyft(リフト)の自律走行車部門であるLevel 5(レベル5)を5億5000万ドル(約604億円)で買収することで合意に至ったと発表したばかりだ。

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また、これは6月に発表されたNVIDIA(エヌビディア)によるDeepMap(ディープマップ)の買収に続く、高精度地図スタートアップの買収でもある。

今回の買収により、Carmeraはウーブン・プラネットの完全子会社となる。ウーブン・プラネットの代表取締役CEOであるJames Kuffner(ジェームズ・カフナー)氏によれば、Carmeraで働く50人のチームはニューヨークとシアトルのオフィスを維持し、最終的にはウーブン・プラネットの1000人を超えて成長を続ける事業形態に統合されるとのことだ。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの事業会社で東京に本社を置くWoven Alpha(ウーブン・アルファ)の米国拠点となり、同社のAMP(Automated Mapping Platform、自動地図生成プラットフォーム)チームと協業する。Carmeraの共同設立者兼CEOであるRo Gupta(ロー・グプタ)氏は、AMPを統括するMandali Khalesi(マンダリ・カレシー)氏の直属となる。

Carmeraは、商用フリート会社に無料で提供しているサービスから収集したデータを、主要な地図製品の維持・拡大に利用するバーター型のビジネスモデルとして、2015年に設立された。Carmeraの主要かつ最初の製品は、自動車メーカーやサプライヤー、ロボタクシーなど、自動運転車を手がける顧客向けに開発された高精細な地図である。自動運転車開発のスタートアップであるVoyage(ヴォヤージュ)は、2021年3月にCruise(クルーズ)に買収されたが、Carmeraの初期の顧客だった。また、Baidu(百度、バイドゥ)はCarmeraの技術を使って、オープンソースの自動運転基盤「Apollo(アポロ)」におけるマッピングプロジェクトをサポートしている。

Carmeraは、車両やドライバーのリスク管理や安全性の向上を図りたいフリート事業者のために、テレマティクスおよびビデオを使ったモニタリングサービスを提供しており、それら多数のフリート車両から得られたクラウドソースのデータを、自動運転に役立つ高精細地図の更新に利用している。カメラを搭載した人間が運転するフリート車両は、都市部で日常業務を行う際に得た日々新たな道路情報を、自動運転用地図に提供しているというわけだ。

これまでCarmeraは、時間をかけて製品ラインアップを進化させてきた。自動運転用地図にリアルタイムイベントや変更管理エンジンを追加し、都市および市街地計画者向けに空間データや街路分析などの製品を開発した。2020年、同社はいわゆるChange-as-a-Service(サービスとしての変更)プラットフォームを発表した。これは、変化を検出して他のサードパーティの地図に統合できる一連の機能を備えた製品群だ。

リサーチ&アドバイザリ企業のGartner(ガートナー)でVPアナリストを務めるMike Ramsey(マイク・ラムゼイ)氏は「高精細地図の会社で常に問題となるのは、このような機能を持っているのはすばらしいことだが、それをどのように拡張し、提供し、更新し続けるかを考えないと、『誰かに売れそうなソフトウェアのよくできた一部分を持っているだけ』という状態に陥ってしまうことです」と述べている。「今回の買収は、Carmeraの拡張に関する問題を解決するものです」。

画像クレジット:Carmera

Carmeraはウーブン・プラネットに比べて規模も資本も小さいが、業界を注視してきた人はこの合併を予測していたかもしれない。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの前身となったToyota Research Institute-Advanced Development(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)と、3年前から協業してきた。このスタートアップが最初に参加したのは、日本で行われた実証実験で、車載カメラを使って都市部や路面の高精細地図を自動生成する方法を開発した。このパートナーシップは2020年に拡大し、日本だけでなくミシガン州のデトロイトなどの道路の地図作成も行われている。

「この関係に多くの投資をすることは実に簡単なことでした」と、グプタ氏は2018年にCarmeraがトヨタと初めて提携したときのことを振り返る。「ビジョンが非常によく似ていたのです。5年前に考えた我々のシードデッキと、ウーブン・プラネットの全体的なビジョンや、地図の自動生成に対する彼らのビジョンを比べると、あまりにも似ていて不気味なくらいでした」。

ウーブン・プラネット(ひいてはトヨタ)は、すでに衛星を使って作成した地図と、現在走行中の何百万台もの車両から得られる膨大なデータを持っている。Carmeraは、ウーブン・プラネットのポートフォリオに、ダイナミックな地図の変更と、フリート事業者や安全性に関するビジネスの経験をもたらすことになる。

「Carmeraとはすでに一緒に実証実験に取り組んできた、近い将来に利用可能なアプリケーションがあります。これらは、まだ発表していませんが、安全性や自動運転の分野に応用できます」と、カフナー氏は語っている。そして、この自動車メーカーの新型Lexus LS(レクサスLS)とToyota Mirai(トヨタ ミライ)に、高精細地図を利用した「Teammate(チームメイト)」と呼ばれる先進運転支援技術が搭載されたことに言及し「私はこれらの次世代の製品にとても期待しています。特に商用フリート車両では、高精細地図には多くの用途があります」と語った。

ウーブン・プラネットが織りなすもの

画像クレジット:Woven Planet/Toyota

LyftとCarmeraの買収は、ウーブン・プラネットが2021年1月に設立されてから行ってきたさまざまな活動の一端を表すものだ。それはトヨタ自動車が、既存のライバル企業や新興企業に対して、特にソフトウェア面での競争力を高めようとしていることも示している。トヨタ自動車の子会社で東京に拠点を置くウーブン・プラネットには、Woven Alpha(ウーブン・アルファ)とWoven Core(ウーブン・コア)という2つの事業会社と、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)というVCファンドを擁している。また、この持株会社は、あるゆるモノやサービスが相互接続されたスマートシティのプロトタイプとして、新技術の実験場となるWoven City(ウーブン・シティ)と呼ばれるプロジェクトをてがけている。トヨタは2021年2月、富士山麓にある静岡県裾野市の東富士工場跡地で、このWoven Cityの建設に着工した。

2つの事業会社であるウーブン・アルファとウーブン・コアは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントの事業をさらに発展・拡大するために、新体制に移行して設立された。ウーブン・コアは地図作成ユニットを含む自動運転技術に焦点を当てており、ウーブン・アルファはWoven Cityを含む新しいコンセプトやプロジェクトの開発を担当している。

そしてウーブン・キャピタルは、これらの次世代モビリティ・イノベーションに投資を行う。このVC部門は、2021年3月に8億ドル(約880億円)規模の新たな戦略的ファンドを起ち上げ、その第一号案件として、無人自動運転車による配送に特化したロボティクス企業であるNuro(ニューロ)に出資すると発表した。6月には、カーシェアリング、ライドシェアリング、自動運転技術企業などの車両管理を支援するためのプラットフォームを開発した交通ソフトウェアのスタートアップ、Ridecell(ライドセル)に非公開額の出資を行っている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタ自動車Woven Planet買収地図自動運転

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Discordがネット上の有害コンテンツとハラスメントに真剣に取り組むためAIソフトウェアSentropyを買収

オンラインチャットプラットフォームのDiscord(ディスコード)はSentropy(セントロピー)を買収する。AIを利用してオンラインハラスメントやヘイト発言を検出、削除するソフトウェアを開発している会社だ。

現在Discordは、発言の管理に「マルチレベル」のアプローチをとっており、社内の人力監視チームと有志のモデレーターと管理者の力で個々のサーバーの基本ルールを作っている。ユーザーを守り、コンテンツ管理ポリシーを整備することに特化したTrust and Safety(信用と安全)チームは、2020年5月時点でDiscordの労働力の15%を占めている。

Discordは、Sentropyの独自製品を既存のツールキットに組み込むとともに、同社の経営陣も迎え入れる。契約条件は明らかにされていないが、この買収は有害なコンテンツとハラスメントに真剣に取り組むことが正しい行動であるばかりでなく、ビジネスにもなることを示す証だ。

「Trust and Safetyチームの技術とプロセスは競争優位性のために使うべきものではありません」とSentropy CEOのJohn Redgrave(ジョン・レッドグレイブ)氏が合併を発表するプログ記事で述べた。「誰もがデジタルでもリアルでも安全でいる権利があります。モデレーターたちはこのオンラインで最も困難な仕事を、効率よくかつ悪影響なくこなすためのツールを与えられるべきです」。

Discordは危険なコンテンツに真剣に向き合うことに関して、必ずしも良い評判を得ていない。リアル世界の暴力と結びついた極右グループが、同プラットフォームに居着いていたこともある。Discordがヘイトや過激思想を厳しく取り締まるようになったのは、バージニア州シャーロッツビルで開かれた極右集会「ユナイト・ザ・ライト・ラリー」で反人種差別運動家のHeather Heyer(ヘザー・ハイヤー)氏が亡くなった後のことだった。

2018年2月、Discordは白人至上主義者とネオナチ・グループを追放してプラットフォームを浄化し、ルーツであるゲーミング事業から主流ソーシャルネットワークへと成長するための道を歩み始めた。現在Discrodは1億5000万人の月間アクティブユーザーを擁し、あらゆるコミュニティにとって居心地の良い場所という地位を確保しつつ、コアユーザーであるゲーマーたちを掴み続けている。

レッドグレイブ氏が自社とDiscordの自然なつながりについてブログで詳しく述べている。

Discrodはソーシャルネットワークの次世代を担う会社です。そこは、ユーザーが販売される商品ではなく、コネクティビティーとクリエイティビティーと成長のエンジンである世代です。このモデルでは、ユーザープライバシーとユーザーの安全はプロダクトの主要な要素であり、後付けではありません。このモデルの成功は、次世代のTrust and Safetyをあらゆるプロダクトのために開発することにかかっています。私たちはこの責任を重く考え、Discordの規模でDiscordの資源と人材とともに働くことで私たちの影響力を高められることを謙虚に受け止めています。

Sentropyは、オンラインハラスメントと虐待を発見、追跡、駆逐するためのAIシステムを擁して2020年夏静かに開業した。その後同社は1300万ドル(約14億4000万円)の資金を調達し、Reddit(レディット)の共同ファウンダーであるAlexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏と彼のVC会社であるInitialized Capital(イニシャライズド・キャピタル)、King River Capital(キング・リバー・キャピタル)、Horizons Ventures(ホライゾンズ・ベンチャーズ)、Playground Global(プレイグラウンド・グローバル)らの著名な投資家が出資した。

Sentropyは、同社のソフトウェア製品であるDetect and Defend(ディフェクト・アンド・ディフェンド)を使用している既存の企業ユーザーに9月末までサービスを提供する。同社の消費者向け無料ダッシュボードのSentropy Protectは7月初めに閉鎖された。

関連記事:Sentropyがソーシャルメディア上の攻撃から人々を守るツールをローンチ、Twitterを皮切りに展開

Sentropyの製品はソーシャルネットワークに依存しておらず、特定のプラットフォームに特化したソリューションではないと考えられている。Discord傘下に入った後も、安全なオンライン空間を作るための知見を広くインターネットで共有していくつもりのようだ。

「私たち自身のコミュニティを守るために開発したベストプラクティスとテクノロジーとツールをインターネット全体で共有する最善の方法を、Discordとともに考えていくことをとても楽しみにしています」とレッドグレイブ氏は言った。

Discordの未来は明るい。同社は2021年4月、評価額100億ドル(約1兆1050億円)といわれたMicrosoft(マイクロソフト)による買収提案を固辞した。現在Discordは自立に満足しているようで、そう遠くない将来のIPOも計画している。

関連記事:Discordがマイクロソフトによる買収を固辞、独自に新規株式公開を目指す

カテゴリー:ネットサービス
タグ:DiscordチャットツールビデオチャットSentropy買収

画像クレジット:Discord/Eric Szwanek

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

グーグルがQR決済・送金アプリの「pring」を買収

メタップスは7月13日、同日開催の取締役会において、同社持分法適用関連会社pringの全株式をGoogleに譲渡すると決定したと発表した。同社はpring株式を45.3%保有しており、譲渡額は約49億2000万円となっている。株式譲渡実行日は、7月下旬~8月下旬。同日、22.7%保有のミロク情報サービス、18.6%保有の日本瓦斯(ニチガス)も全株式譲渡を発表した。

pringは、友人・知人などと個人間送金が行える送金アプリを提供。経費精算・報酬支払いなど法人から個人に送金できる法人向けサービスや、QR決済事業なども展開している。

メタップスは今回、Googleによるpringの全株取得の意向を受け、メタップスが保有するpring全株式を譲渡する決定を行った。メタップスは、B2B事業およびストック型ビジネスに注力するための、事業ポートフォリオの見直しの一環としている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:送金(用語)Google / グーグル(企業)買収 / 合併 / M&A(用語)pring日本(国・地域)

マイクロソフトが脆弱性を検知するサイバーセキュリティ企業RiskIQを買収

Microsoft(マイクロソフト)は、脅威インテリジェンスとクラウドベースのソフトウェアを組織向けのサービスとして提供しているサンフランシスコ拠点のサイバーセキュリティ会社RiskIQ(リスクアイキュー)を買収することを明らかにした。

RiskIQの脅威インテリジェンスサービスをMicrosoftの旗艦セキュリティサービスに統合することになるこの買収取引の条件は明らかにされなかったが、Bloombergは発表に先立って、MicrosoftがRiskIQに現金で5億ドル(約552億円)超を支払うと報道した。Microsoftは報道にあった数字の確認を却下した。

買収の発表は、組織がリモートとハイブリッドの労働戦略へとシフトするのにともなってセキュリティへの関心が高まっている中でのものだ。

RiskIQはウェブを調べ、ウェブサイト、ネットワーク、ドメインネーム記録、認証、そしてWHOIS登録データなど他の情報についての詳細を把握し、どのアセットやデバイス、サービスが社のファイアウォールの外からアクセスすることができるのか、顧客に視認性を提供する。これにより企業はアセットをロックダウンし、悪意ある行為をする人物からの攻撃対象領域を限定できる。主に、クレジットカード窃盗マルウェアを脆弱なウェブサイトに組み込むグループの集まりであるMagecartを企業が発見して理解するのをサポートしてきた。

Microsoftは、RiskIQのテクノロジーを主力製品に組み込むことで、労働者が従来のオフィス環境の外で働き続ける中で、顧客はこれまで以上にグローバルな脅威に対する総合的な視点を構築することができる、と話す。

買収はまた、組織がサプライチェーンリスクに目を光らせ続けるのにも役立つとも指摘する。これはおそらく多くの組織にとって優先度が高まっている。2020年のソフトウェアプロバイダーSolarWindsへの攻撃では、少なくとも1万8000もの顧客に影響がおよび、そしてちょうど2021年7月にITベンダーのKaseyaがランサムウェアの攻撃を受け、川下企業1000社超に影響が出た。

関連記事:独立記念日を狙うKaseyaのハッキング、ランサムウェアで何百もの企業に被害

Microsoftのクラウドセキュリティ担当副社長Eric Doerr(エリック・ドーア)氏は次のように述べた。「RiskIQは顧客がMicrosoftクラウド、AWS、他のクラウド、オンプレミス、そしてサプライチェーンからのものなど社内の攻撃対象領域全体のセキュリティを見つけて評価するのをサポートしています。インターネットをスキャンして分析するという10年以上にわたる経験でもって、RiskIQは攻撃者がつけ込む前に企業が脆弱なアセットを特定して修復するのを手助けできます」。

RiskIQは2009年の創業で、これまでに4回超のラウンドで計8300万ドル(約92億円)を調達した。同社の共同創業者でCEOを務めるElias Manousos(エリアス・マノソース)氏は買収で「胸躍った」と述べた。

「RiskIQのビジョンとミッションは、当社の顧客とパートナーのセキュリティプログラムをしっかりと保護するために、比類ないインターネットの視認性と洞察を提供することです」とマノソース氏は話した。「互いの能力を合わせることで、今日の脅威に対する最高の保護、調査、対応が可能になります」。

今回の買収は、Microsoftがここ数カ月セキュリティ分野で行ってきた多くの買収の1つだ。同社は2020年、Azure IoT事業を強化するためにイスラエルのセキュリティスタートアップCyberXを、そして6月にはIoTセキュリティ会社のReFirm Labsを買収した。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:MicrosoftRiskIQ買収

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

イーロン・マスク氏がSolarCity買収に関する訴訟で買収の正当性を主張

Elon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間7月12日朝、2016年の26億ドル(約2870億円)でのTesla(テスラ)によるSolarCity(ソーラーシティ)買収をめぐる訴訟で証言した。訴訟では株主のグループが、買収は業績が悪化していたSolarCityの「救済措置」だったと主張している。株主たちはSolarCity買収費用のTeslaへの返済を模索している。

2017年にデラウェア地方裁判所に提出された訴状では、SolarCityが買収当時、破産に近い状態だったと主張している。SolarCityの取締役会長で最大株主だったマスク氏は買収の恩恵を直接受け、同氏の一部の友人や家族も同様だったとも申し立てている。SolarCityの創業者のLyndon Rive(リンドン・ライブ)氏とPeter Rive(ピーター・ライブ)氏はマスク氏のいとこだ。

SolarCityは「一貫して利益を上げるのに失敗し、増大する債務を抱え、持続不可能なレートで現金を使った」と原告は主張している。訴状にはまた、SolarCityが10年で30億ドル(約3310億円)超の借金を抱え、その半分近くの返済期限が2017年末だったともある。Teslaによる買収は株主の85%が賛成して承認された。

マスク氏の弁護士は、買収はTeslaを輸送・エネルギー会社へと変えるCEOの長期的なビジョンの一部だったと話す。買収クロージングの頃にTeslaのウェブサイトに掲載された「Master Plan、Part Deux」というタイトルのブログ投稿の中で、マスク氏はSolarCityとTeslaの合体は、Powerwall(Teslaの家庭・産業用蓄電プロダクト)と屋根設置型ソーラーパネルを組み合わせたビジョンを実現するための鍵だと述べている。

カウアイ島のソーラーストレージ施設立ち上げで出席者による調査を受けるModel X。Teslaは2016年11月にSolarCityを買収した。

ワシントンポスト紙のWill Oremus(ウィル・オレマス)氏が法廷の外からツイートしたところによると、7月12日の証言の中でマスク氏はTeslaがModel 3の生産期限に間に合わせるためにソーラー事業からフォーカスをシフトせざるを得なかった、と述べた。USA Todayの記者Isabel Hughes(イザベル・ヒューズ)氏も、マスク氏が同社のソーラー事業部門の業績不振をパンデミックのせいにした、と法廷からツイートした。マスク氏は原告団の弁護士Randall Baron(ランドオール・バロン)氏の質問を受けた。バロン氏は2019年の宣誓証言でマスク氏を「恥ずべき人」と呼んだ人物だ。

マスク氏の弁護士は、同氏が買収に関する幅広い議論と交渉に関与していなかったと話すが、原告側は不関与が「表面的」だったと主張している。この訴訟の最大の疑問は、マスク氏が買収取引に過度の影響を及ぼしたかどうか、そしてマスク氏や他の役員メンバーが取引に関する情報を株主から隠したかどうかだ。

訴状に名前が挙がっている他の役員メンバー、Robyn Denholm(ロビン・デンホルム)氏、Ira Ehrenpreis(アイラ・エーレンプレイス)氏、Antonio Gracias(アントニオ・グラシアス)氏、Kimbal Musk(キンバル・マスク)氏、Stephen Jurvetson(スティーブン・ジャーベンソン)氏は2020年6000万ドル(約66億円)、そして弁護士費用と訴訟費用の1680万ドル(約19億円)を保険で支払うことで和解した。マスク氏が唯一の被告となった裁判は新型コロナウイルスパンデミックのために1年延期されていた。

裁判は10日間続く見込みだ。審理が行われているデラウェア地方裁判所は陪審員がおらず、代わりに裁判官副長官のJoseph Slights III(ジョセフ・スライツ3世)氏が審理を行う。スライツ氏が買収は不適切だったと判断しても、Teslaが当時SolarCityに払った26億ドルよりかなり少ない額を支払うようマスク氏に命じる可能性がある。

カテゴリー:その他
タグ:イーロン・マスクTeslaSolarCity買収裁判

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

fundbookがM&Aマッチング後の交渉プロセスを可視化する「fundbook cloud」機能の無料提供開始

fundbookがM&Aマッチング後の交渉プロセスを可視化する「fundbook cloud」機能の無料提供開始

独立系M&A仲介企業fundbook(ファンドブック)は7月8日、同社M&Aプラットフォームのうち、M&Aマッチング後の交渉フェーズから最終合意までの交渉過程をオンライン上で可視化するM&A特化型システム「fundbook cloud」部分について、無料公開すると発表した。これにより、交渉中のアドバイザーのサポートがかたよることなく、透明性の高いM&Aが可能になり、さらに対面での取引が難しいコロナ禍での交渉も安全に行えるようになるという。

fundbookは、譲受企業が自ら候補先を選んでマッチングが行えるM&Aプラットフォームを2018年7月から展開している。これまでのM&A仲介で課題とされてきた「アドバイザーの先入観に左右されがちな属人的要素」を排除でき、時間や場所にとらわれないマッチングも実現するというものだ。

このM&Aプラットフォームを、「公平でスピーディーなM&Aを実現する総合プラットフォーム」に発展させようと、fundbook cloudとして「ディール管理」機能と「データファイルの受け渡し・保存管理」を可能にするクラウド機能を追加した。これら機能は、同社M&Aプラットフォームでマッチングを行い、ディールフェーズに進む譲受企業向けのサービスとなっている。

ディール管理については、M&Aの交渉に関わる日程やタスクを一元管理するというものだ。

データファイルの受け渡し・保存管は、交渉で必要となる機密情報や重要書類のやり取りをfundbook cloud上だけで安全に行い、送付履歴や修正履歴などの一元管理を可能にするというものだ(今回の実装では最終契約フェーズ前までのデータに限定)。

今後は、「ブラックボックスになりがち」なM&Aプロセス全体の可視化や、M&A後の統合プロセス(PMI)の管理機能なども加えて充実させゆくという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:買収 / 合併 / M&A(用語)fundbook(企業)日本(国・地域)

約200機からなる地球観測衛星コンステレーションのPlanetが約3097億円のSPAC合併で上場へ

約200機の衛星ネットワークを運用し、地球イメージングとその観測から得られたデータのアナリティクスを提供しているPlanet(プラネット)は、特別目的買収会社(SPAC)であるdMY Technology Group IVとの合併により株式を公開すると発表した。買収後の株式価値は28億ドル(約3097億円)で、Planetは、dMY IVの出資による3億4500万ドル(約382億円)、BlackRockが運用するファンド、Koch Strategic Platforms、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、およびGoogle(グーグル)から提供される2億ドル(約221億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含め、クローズ時に5億4500万ドル(約603億円)の現金残高を得ることになる。

少しの途切れの後、Planetは、今週SPACルートで公開市場に参入する2社目の重要な民間宇宙企業となった。両社とも地球観測事業を行っているが、7月6日にSPACによる合併を発表したSatellogicは、現在のところはるかに小さな規模で事業を展開している。2010年に設立されたPlanetは、これまでに約3億7400万ドル(約413億円)を調達し、現在稼働している中で最大の地球観測衛星コンステレーションを運営している。

同社のミッションは、地球イメージングデータが収集され、地球上の商業的利益に提供される方法を変革することだ。Planetの衛星ネットワークは、地球上のすべての陸地を毎日完全にスキャンすることができ、同社の創業者兼CEOであるWiill Marshall(ウィル・マーシャル)氏の言葉を借りるならば「地球データのBloombergのようなターミナルを介して」顧客に提供できるという。このサービスはサブスクリプションで提供されており、Planetによると、2021年1月に終了した直近の会計年度で1億ドル(約110億円)以上の収益を上げているとのこと。

Planetは、合併によって得られた資金を、既存の負債の返済に加え、既存事業の運営資金および「新規および既存の成長イニシアティブの支援」に使用する予定。同社は2021年後半に合併を完了させることを目指しており、その時点で、合併後の企業はニューヨーク証券取引所(NYSE)でティッカー「PL」で取引されることになる。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Planet衛星コンステレーションSPAC人工衛星

画像クレジット:Planet under a CC BY-NC 2.0 license.

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

サイバーセキュリティのZeroFoxがダークウェブ脅威インテリジェンスのVigilanteを買収

企業がソーシャルメディアやデジタルチャンネルに潜むリスクを検知するのをサポートするサイバーセキュリティのスタートアップZeroFox(ゼロフォックス)が、ダークウェブ脅威インテリジェンス会社のVigilante(ヴィジランテ)を買収したと発表した。

物議を醸している犯罪レポーティングアプリと勘違いしないで欲しいのだが、Vigilanteはサイバー攻撃から組織を守るのに役立つ情報を仕入れるためにダークウェブを調査している。買収取引の条件は明らかにされなかったが「業界で最も堅牢な」ダークウェブインテリジェンスソリューションを構築するために、ZeroFoxが専門家とアナリストで構成されるVigilanteのグローバルチームを引き継ぐ。

Vigilanteの数十年前に開発されたダークウェブ監視ツールをベースに、共同のソリューションは危険にさらされたクレデンシャルとボットネットにかかるリスクインテリジェンス、感染して脆弱なホストに関するネットワークインテリジェンス、そして脅威アクターとセキュリティ侵害インジケーター(IoC)についてのインテリジェンスを提供するために2社のデータセットを組み合わせる。ZeroFoxのAI処理能力を取り込んだプロダクトはまた、ボットネット曝露モニタリング、脅威モニタリング、そして特定の顧客向けの調査と脅威アクターエンゲージメントや資産回復のインシデントレスポンスも提供する。

「別の方法ではアクセスできないデータセット、研究者や専門家で構成されるチーム、ZeroFoxのスケールと人工知能の組み合わせで、説得力あるダークウェブインテリジェンスサービスを提供します」とVigilanteの共同創業者Mike Kirschner(マイク・キルシュナー)氏は述べた。

これまでよりも広範に組織をサポートすると2社がうたう今回の買収は、ダークウェブでの犯罪行為が激増している中でのものだ。こうした傾向は最近の調査で明らかになっている。パンデミックによってサイバー犯罪が増加し、2020年の情報漏洩件数は2019年から141%増の370億件超となり、ランサムウェアは100%増えた、とRisk Based Securityは情報漏洩に関する年次レポートで指摘した。

「ダークウェブと地下犯罪組織は現代の脅威インテリジェンスプログラムの重要な要件です」とZeroFoxのCEOであるJames C. Foster(ジェームズ・C・フォスター)氏は述べた。「当社の顧客は違法な経済活動について、そしてボットがどのように攻撃しているのか、あるいは顧客のクレデンシャルやクレジットカード、個人を特定できる情報、その他の情報が違法な経済活動の中で取引され得るのかについて把握する手法を必要としていて、また新たな戦術や搾取、脆弱性を理解する必要もあります」。

フォスター氏はVigilanteの買収により、顧客の情報を保護するのに役立つダークウェブインテリジェンス収集能力の「スケールと網羅性」が増す、と話した。

ZeroFoxは2020年2月、Intel CapitalがリードしたシリーズDラウンドで7400万ドル(約82億円)を調達し、この資金をグローバルでの事業拡大とプロダクト戦略を加速させるのに使うと発表している。この発表の前の2017年に同社は Redline Capital ManagementとSilver Lake WatermanがリードしたシリーズCで4000万ドル(約44億円)を調達した

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ZeroFoxダークウェブ買収

画像クレジット:Dmetsov / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

リマックがブガッティをVWグループから買収、新EV会社「ブガッティ・リマック」を設立

クロアチアの電動スーパーカー・スタートアップであるRimac Automobili(リーマック・アウトモビリ)が、フランスに本拠を置く超高級車ブランドのBugatti(ブガッティ)を、Volkswagen Group(フォルクスワーゲン・グループ)から買収することになった。Financial Times(フィナンシャル・タイムズ)の報道によると、リマックは新会社「Bugatti-Rimac(ブガッティ・リマック)」の支配的な55%の株式を所有し、フォルクスワーゲン・グループのPorsche(ポルシェ)が残りの45%を所有することになるという。

「リマックとブガッティは、互いに提供し合える有益な特色が完璧にマッチします」と、リマックの創業者でCEOであるMate Rimac(マテ・リマック)氏は、声明で述べている。「若く、機敏で、急速な自動車およびテクノロジー企業として、当社は電動技術における業界のパイオニアとしての地位を確立してきました。また、当社は先日発表したNevera(ネバーラ)によって、速いだけでなく、エキサイティングで高品質な優れたハイパーカーを開発・製造できることを証明しました。ブガッティは、1世紀以上にわたる卓越したエンジニアリングの経験を持ち、また歴史上最もすばらしい伝統を持つ自動車会社の1つでもあります」。

リマックは2021年6月初め、120kWhのバッテリーパックと4つのモーターを搭載し、1.4MW(約1914馬力)という驚異的な最高出力を実現したハイパーカー「Nevera」を発表した。同車は停止状態から時速100kmまで1.97秒で加速し、最高速度は時速412kmに達する。Neveraは、これまでブガッティの「Chiron(シロン)」が専有していた世界最速のスポーツカーの座につくことが期待される。

2009年にガレージで起業したリマックが、最も魅力的で有名な自動車ブランドの1つとして、スーパーカーを製造するまでになったことは、いかに電気自動車が高級車やスポーツカーの市場を席巻し始めているかを示している。電気自動車には環境への配慮だけでなく、自動車の未来を切り拓くスピードがある。

今回の発表にともない、リマックはバッテリーシステムやドライブトレインなどの電気自動車用コンポーネントの開発・生産・供給業務を、リマック・グループが100%所有する新会社「Rimac Technology(リマック・テクノロジー)」に分離し、別の組織として世界中の自動車メーカーと協業していくと述べている。

なお、ブガッティ・リマックの設立は、リマック・グループ内の株主構成には影響しない。同社の声明によると、マテ・リマック氏は引き続きリマック・グループの37%の株式を保有し、Hyundai Motor Group(現代自動車グループ)が同12%、その他の投資家が27%の株式を保有するとのこと。ポルシェは最近、リマックへの出資比率を15%から24%に引き上げたが、その保有株式の合計によって新しいEV会社の支配権を持つことはない、と両社はFTに語っている。

マテ・リマック氏が率いることになるブガッティ・リマックの本社は、クロアチアのザグレブに置かれるが、ブガッティの製造施設は、これまでと変わらずフランスのモルスハイムに残る。

関連記事:ポルシェがEVハイパーカー・部品メーカーRimac Automobiliの持分を24%に増やす

カテゴリー:モビリティ
タグ:Rimac AutomobiliBugattiVW電気自動車Bugatti-Rimac買収

画像クレジット:Rimac Automobili

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

スウェーデンのゲーム大手MTGがインドのゲームスタジオPlaySimpleを約400億円で買収

スウェーデンのゲーム大手Modern Times Group(MTG)がインドのスタートアップPlaySimple(プレイシンプル)を3億6000万ドル(約400億円)で買収した。両社が現地時間7月2日明らかにした。

MTGはPlaySimpleに買収代金の77%を現金で、残りを株式で支払う。非公開の特定パフォーマンスメトリクスが向上した場合のために、買収額とは別に1億5000万ドル(約167億円)の報酬も用意されている、と両社は述べた。

この買収取引はインドのスタートアップ界で最大のエグジットの1つとなる。PlaySimpleは2016年のシリーズAで約1600万ドル(約18億円)の評価額でElevation CapitalとChiratae Venturesから400万ドル(約4億円)を調達した(PlaySimpleはベンガルールで創業され、外部投資家から計450万ドル、約5億円を調達した)。

買収の理由は明らかだ。「Daily Themed Crossword」「Word Trip」「Word Jam」「Word Wars」など9つの言葉ゲームを展開しているPlaySimpleの売上高は2020年、前年比144%増の8300万ドル(約92億円)に達し、2021年の上半期は売上高6000万ドル(約67億円)超と順調だ。

2016年のシリーズA後のPlaySimpleのキャップテーブル

「これまでに制作したゲーム、そしてチームとともに成し遂げたそのインフラや規模を誇りに思っています」とPlaySimpleの共同創業者で経営陣のSiddhanth Jain(シッダンス・ジャイン)氏、Suraj Nalin(スラージ・ナリン)氏、Preeti Reddy(プリーティ・レディ)氏は共同声明で述べた。

「MTGの仲間に加わるにあたり、当社独自のテクノロジーをMTGのポートフォリオにあるゲームで駆使し、欧州マーケットに進出し、そして最先端のテクノロジーに投資してエキサイティングな新しいゲームを制作することを楽しみにしています」。

PlaySimpleの無料で遊べるゲームは7500万回超ダウンロードされ、約200万人のデイリーアクティブユーザーを維持している、とPlaySimpleは話す。同社は2021年後半に数多くのゲームをリリースする計画で、またカードゲーム分野にも手を広げる。

「PlaySimpleは急成長中で、極めて収益性の高いゲームスタジオです。MTGにとってはエキサイティングな新規分野である無料の言葉ゲームにおいて、世界トップのデベロッパーの1社としての地位をあっという間に確立しました」とMTGの会長兼CEOのMaria Redin氏は声明で述べた。

ここ数四半期でHutchとNinja Kiwiも買収しているストックホルム拠点のMTGは、PlaySimpleが多様なゲーム分野を構築するのをサポートすると話した。「(MTGの子会社の)GamingCoの事業を拡大して多様化させることは営業成績を加速させるのに役立ち、と同時に安定したビジネスを築くのにも貢献します」と述べた。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Modern Times Group買収スウェーデンインド

画像クレジット:PlaySimple / MTG

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Barracuda NetworksがSkout Cybersecurityを買収してXDR市場に参入へ

Barracuda Networks(バラクーダネットワークス)は、ニューヨーク拠点のXDR(拡張検出・対応)サービスのチャネルパートナー向け専門プロバイダーであるSkout Cybersecurity(スカウト・サイバーセキュリティ)を買収した。

契約条件は非公開。これでカリフォルニア拠点のサイバーセキュリティ会社は急成長中のXDR市場への参入を果たした。

ビジネスがクラウドへ移行し、ハイブリッドワーキングを採用したことで、サイバー攻撃が増え続けた結果、セキュリティ専門家の80%がXDRソリューション(複数のセキュリティレイヤーからデータを収集、分析して脅威の検出を改善する)を最優先にすべきだと発言しており、企業の68%が2021年および2022年にXDRを実装する計画だ。最新の調査結果による。

SkoutのXDRプラットフォームを同社のセキュリティチームとともに導入することで、BarracudaはMSP(マネージドサービス・プロバイダー)にリアルタイムの連続的セキュリティ監視機能を提供、より効率的に脅威に対応できると言っている。アーリーステージのcyber-as-a-service(サービスとしてのサイバーセキュリティ)スタートアップであるSkoutは、RSE VenturesClearSkyから総額2500万ドル(約27億9000万円)の資金を調達しており、他にAIベースのエンドポイントプロテクション、Eメールプロテクションサービス、およびOffice 365モニタリングを自社のXDRプラットフォームを通じて提供している。

この買収は、最近ゼロトラストアクセスプロバイダーのFyde(ファイド)を買収したBarracudaの戦略的M&A機運を継続させるものでもある。

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「MSPは顧客のもつエンドユーザーやそのデバイス、およびデバイスがアクセスするデータを、ますます高度化する脅威から守る必要があります。このレベルの保護を顧客や自分自身に対して実現するために、MSPはビジネス形態を「セキュリティ中心」の運用に変えつつあります」とBarracuda MSPのSVP兼ゼネラルマネージャー、Brian Babineau(ブライアン・バビノー)氏は語った。

「Skoutが加わったことで、BarracudaのMSPパートナーは環境を横断してセキュリティソリューションを展開することが可能になり、データフィードを統合された24時間運用システムと接続して迅速な分析と対応ができるようになります」。

買収契約は2021年7月中に完了する見込みで、規制当局や第三者の了解、その他の慣例的な締結条件を満たす必要がある。

かつて上場企業だったBarracudaは、2017年11月に非上場株式投資会社のThoma Bravoに16億ドル(約1785億円)で買収されて非公開化された。Palo Alto Networks(パロアルト・ネットワークス)やSymantec(シマンテック)と競合する同社は、クラウド接続のネットワークとアプリケーションにセキュリティ機能を提供し、Delta Airlines(デルタ航空)、Hootsuite(フートスイート)、Samsung(サムスン)をはじめとする20万以上の顧客を有している。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Barracuda買収XDR

画像クレジット:Krisztian Bocsi/Bloomberg / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Nob Takahashi / facebook