バイデン・ハリスチームが政権移行に向けついに.govドメインを取得

ついに。ほぼ3週間が過ぎただけだが、「バイデン・ハリス」への移行が正式に始まった。

米一般調達局は米国時間11月23日、バイデン・ハリスチームの選挙運動から政権への移行を承認した。同チームはオフィススペースなどの政府のリソースだけでなく、機密事項のブリーフィングや安全なコンピュータへのアクセスも可能になった。それらとともに、輝く新しい.govドメインも与えられる。

移行手続きは法律のあいまいな部分であり、滅多に議論されることはない。これは主に、去りゆく政府と来たるべき政権が平和的に権力を移譲し、政府の継続性を維持しようとするからだ。このプロセスは一般調達局が正式に開始する。あまり知られていないこの連邦機関は、政府の基本的な機能を司っており、次期政権が政府に入るための資金、ツール、リソースを受け取ることを可能にする。

しかし今回は、トランプ陣営が選挙に異議を唱えて多数の訴訟を起こし、同局のトップであるEmily Murphy(エミリー・マーフィー)氏は正式な移行期間の開始に消極的だった。

ミシガン州が選挙結果を承認した後、マーフィー氏はついに11月23日に移行を承認した。

これまで、バイデン・ハリスチームはbuildbackbetter.comを移行ウェブサイトのホスト先として使用していた。現在はbuildbackbetter.govがホストしている。2008年当時のオバマ・バイデン次期政権が使用したptt.govドメインは使っていない。

The Wall Street Journalは先週、バイデン・ハリスチームがメールとコラボレーションにGoogle Workspaceを使用しており、スタッフがアカウントへのログインにハードウェアセキュリティキーを必要とすることでセキュリティを確保していると報じた。企業ならその設定で十分かもしれないが、セキュリティの専門家は政府のサイバーセキュリティサポートの欠如がバイデン陣営を攻撃に対してより脆弱にしている可能性があると懸念を示していた。

ドメインに関してあまり重くとらえる人はいないと思われるが、.govドメインへの移行は、陣営のサイバーセキュリティの取り組みにおける重要な前進を示している。.govドメインがホストする政府の複数のドメインは、乗っ取りやなりすましを防ぐために強化されている(米政府リリース)。簡単にいえば、通常のウェブホスティングサービスよりもはるかに強靭だ。

バイデン氏は、このドメインは変化を表しているとツイートした。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Joe Bidenアメリカ

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(翻訳:Mizoguchi

スタンフォード大学の学生らがラップトップを最も必要としている全米の子供たちのため支援を急ぐ

情報格差(デジタルデバイド)は今更驚くような現象ではない。しかし、Covid-19の猛威によりアメリカ国内で学級閉鎖が始まりつつあった3月、学校関係者らはオンライン授業を進めることがいかに難しいかを目の当たりにし、そしてこの事実はアメリカ人に大きな驚きを持って受け止められた。

生徒たちへのカリキュラムを変更すればよいという話ではない。多くの生徒がインターネットへのアクセスやパソコン自体、またはその両方を持っていないという状況だったのだ。元Microsoft(マイクロソフト)CEOのSteve Ballmer(スティーブ・バルマー)氏が資金提供した無党派組織、USAFactsによると、パンデミックの間、子供のいる440万世帯の家庭がオンライン学習のためパソコンを継続的に使用できる環境になかったのだ。

この問題にスタンフォード大学の学生、Isabel Wang(イザベル・ワン)氏とMargot Bellon(マーゴット・ベロン)氏の2人が果敢に取り組んでおり、その努力が一部実を結んでいる。2人が6か月前に設立した501(c)(3)組織、Bridging Tech(ブリッジング・テック)を通し、彼らはすでに400台以上の修理調整済みノートパソコンを、それを最も必要とするホームレスシェルターに住む子供たちに提供している。サンフランシスコだけで推定2000人のホームレス生徒がいるとされており、2人はベイエリアからこの活動に着手した。

これは2人の純粋な情熱によって開始されたプロジェクトではあるが、当然のことながら2人は同組織を永続的に構築していきたいという強い意思を持っているようだ。彼らは常にデジタルデバイドの問題を気にかけてはいたものの、現状を知ってしまった今、ここからただ立ち去ることはできない。

オハイオ州クリーブランドに位置する裕福な郊外、シェーカーハイツで育ったワン氏は、そこには「常に人種的な緊張感があった」と振り返る(ベストセラー小説の『Little Fires Everywhere』も同様の理由からこの地を背景に書かれている)。「コミュニティに存在した人種差別」の影響もあり、ワン氏は早い時期から十分なサービスを受けられていない人々を対象とした公衆衛生に関する取り組みに関わるようになる。そこで同氏が熱心に取り組んだのは教育への公平なアクセスを中心としたものだった。

生物学専攻のベロン氏は、スタンフォード大学の学生らが主催するアウトドアをテーマにしたOutdoor Houseでワン氏と知り合った。同氏は2人が初めから同じような興味を持っていたと語る。カリフォルニア州サンマテオで育ったベロン氏は、高校とカレッジ時代にホームレスシェルターでボランティア活動をした経験から、テクノロジーへのアクセス不足がもたらす課題に気付く。多くの人にとって、Wi-Fiを使うためにはスターバックスの外で過ごさなければならないという事実があり、また彼らにとっては図書館の中にしか利用可能なパソコンがないと同氏は指摘する。

今年の春世界が閉ざされたと同時に、ベロン氏は多くの人にとってこのような選択肢さえもがなくなってしまったことに気づく。同様にワン氏も同じ心境を抱えていた。友人たちの力も借り、今ではほぼ全員スタンフォードの学生から構成される30名のボランティアとともにこの取り組みに力を注いでいる。

これまでBridging Techはテクノロジーにアクセスできない生徒のためにラップトップを確保することに大きな重点を置いてきた。Citrix Systems(シトリックス・システムズ)とGenetech(ジェネンテック)が大口寄付企業として存在するが、同新興組織がより多くのテック大手からの支援を必要としていることは容易に想像がつく。

状態の良い中古パソコンが手に入ると、Bridging Techが提携している数社の修理調整業者に渡される。どの業者も1年間の保証をつけている。そのうちの1社で、サンディエゴを拠点とするComputers 2 Kidsは、子供たちがあまり助けを借りずにすぐにパソコンを立ち上げて使えるように分かりやすい説明書を添えている。

ベロン氏によると、通常ベイエリアのホームレスシェルターには技術ボランティアがおり、子供たちがコンピューターの電源を入れたり設定したりするのを手伝っているという。ShelterTechという組織は、Bridging Techと提携してコンピューターを受け取ったこれらの子どもたちがWi-Fiにもアクセスできるように取り組んでいる。

これらのデバイスは贈り物として、子供たちに恒久的に使用してもらうことができる。

またBridging Techは、コンピューターサイエンスなどよりスキルに基づいた活動をベースとしたメンターシッププログラムの他、個人を指導するチュータープログラムも開始している。

つい最近まで次の課題をやり遂げることに主に力を注いでいた2人の大学生にとって、非常に大変な取り組みである。しかし北カリフォルニアに彼らがもたらした変化を、他の地域でも引き起こさない訳にはいかない。ベロン氏によると、ニューヨーク、ロサンゼルス、ボストン、ワシントン、アトランタを含むその他の都市のシェルターとすでに話を進めているそうだ。

パンデミックの影響でリモート教育を強いられた恵まれない子供たちが、さらに遅れをとる結果となっており、全米中でこの問題は日に日に深刻度を増している。

これは連邦政府や州政府が真剣に取り組まない限り、簡単に解決する問題ではない。Pew Research Center(ピュー研究所)による2018年の調査によると、アメリカのティーンエイジャーの約5人に1人がコンピューターやインターネット接続へのアクセスが不十分なために宿題を完了できないことが多い、またはそういったことが時々あると答えている。同じ調査内で、低所得層のティーンエイジャーの4分の1が自宅にコンピューターがないと答えている。

ワン氏とベロン氏にとっての最大の問題の1つとして、今後彼らの志をどのように広げていくかという点がある。例えば現在、Bridging Techが修理調整したコンピューターは、ボランティアによって車でシェルターに直接届けられている。Bridging Techは、他の都市でも同じことを可能にするためのネットワークやインフラをまだ備えていない。

2人とも自分たちの限界を認識している。ワン氏は、Bridging Techに必要なのはデバイスの寄付を増やすことだけではなく、助成金の申請書を準備してくれる人材やマーケターそして、他の潜在的なパートナー組織に同組織を紹介してくれる開発の専門家などが必要だと述べている。「私たちは大学生なので、何か教えてもらえることがあれば何でもありがたいのです」と同氏は言う。

また同氏は「Bridging Techは他の都市ではデバイス寄付のプロセスを確立できていないので、ほとんどの都市でデバイスの購入を始めている」と明らかにしている(Whistleと呼ばれる組織を通して購入するのが1つの方法である。この組織は古いデバイスをユーザーから買い取るだけでなく、ユーザーが売却で得た利益を寄付できるような仕組みをとっている)。

ワン氏の新学期が始まり、またベロン氏が来年から修士課程に移った後も、2人はこの活動を続けていきたいと考えている。

「より公平な社会を実現するためには、テクノロジーが公平である必要があります。Covid-19はこれらの問題を悪化させていますが、あらゆるものにテクノロジーが必要であり、これが変わることはありません」とベロン氏は語る。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:情報格差 アメリカ スタンフォード大学

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(翻訳:Dragonfly)

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は11月18日、短信レポート「バイデン次期大統領で変わる米国の技術イノベーション・気候変動政策」を公開した

米国第46代大統領になるジョー・バイデン氏は、トランプ大統領とは大きく異なる技術イノベーション政策および気候変動政策を公約に掲げている。NEDOはこうした変化について、様々な分野で発信されている客観的な情報を整理・分析したTSC Foresight短信レポートとして公表。日本と関わりの深い米国の新たな方向性を注視しつつ、NEDOはこのレポートを基にあらゆる領域で議論を深め、「イノベーション・アクセラレーター」としての役割を強化することで、世界的な課題解決に貢献するとしている。

技術イノベーション政策部分

バイデン次期大統領は「Innovate in America」(アメリカでのイノベーション)を政策として掲示。3000億ドル(約32兆円)を新産業・技術の研究開発に投資し、数百万人分の質の高い雇用を創出するとしており、アメリカの世界的なリーダーシップを確保したい考え。技術流出には慎重なものの、国際的な枠組みを重視する姿勢も見せる。米国第一主義を推し進めたトランプ大統領とは異なり、米国の技術イノベーション政策を強化しながらも、より一層同盟国重視の姿勢に転じる見込み。

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

 

気候変動政策部分

バイデン次期大統領は、大胆な気候変動対策を講じることで気候変動に伴う不平等の是正を追求するという、環境正義の基本思想を持つ。現政権が離脱したパリ協定への復帰も公約に掲げており、また遅くとも2050年までに、米経済全体でCO2排出量をゼロにすることも表明している。具体的施策として、大規模なインフラ整備などからなる「クリーンエネルギー/持続可能インフラ計画」を発表し、4年間で約215兆円を投入する計画。さらに気候変動に焦点をあてた省庁横断的な先進研究プロジェクト機関として「ARPA-C」(Advanced Research Projects Agency focused on Climate)新設を表明し、米国の気候変動政策は大きく前進すると予測。

NEDOがバイデン次期大統領の技術イノベーション・気候変動政策の情報を整理・分析した短信レポート公開

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カテゴリー: その他
タグ: ジョー・バイデン / Joe Biden(人物)政策Policyアメリカ(国・地域)

ニューヨーク市の電動スクーター参入競争が開始

マイクロモビリティシェアリング業界が非常に期待している市場の1つであるニューヨーク市は、電動スクーターの試験運用に関する情報提供依頼書(RFI)を公布し、同市内での事業運営の機会をめぐる企業間の競争が正式に始まった。

同市はまた、データの集計や分析、路上充電や駐車場、安全運転のトレーニングコース、スクーターの回収・保管サービスなど、電動スクーター業界に付随するサービスを提供する企業に対して、関心表明依頼書(「RFEI」)も公布した。

ニューヨーク市は、住民が移動するための新しい方法を提供し、その過程で急成長する業界をサポートしようとしている。Bird(バード)Lime(ライム)Spin(スピン)、Voi(ヴォイ)などのほぼすべての大手eスクーター会社や、知名度があまり高くない他のいくつかの企業が許可の申請を計画しており、各企業がベストプラクティスと独自の特別な運営ブランドを公約として打ち出して同市を説得しようとしている。TechCrunchに電子メールで送られてきた声明により、今回の競争がどのように繰り広げられるか予測できる。ライムやヴォイのような企業は自社の経験を売り込んだ。

ライムの政府関係担当シニアディレクターであるPhil Jones(フィル・ジョーンズ)氏は、電子メールでの声明で「当社はニューヨーク市と協力して、安全性、アクセシビリティ、公平性を優先する世界トップクラスのeスクータープログラムを作成できることをとても楽しみにしている」と述べている。「ロサンゼルス、シカゴ、パリ、ローマなどの大都市のほか、世界中の100以上の都市で事業を運用した経験から学んだように、eスクーターはニューヨーク市がより弾力性と適応性のある交通システムを構築するのに役立つ。ニューヨーク市民が新しい移動手段を模索する中、eスクーターは、ソーシャルディスタンスを保ちながらニューヨーク市内を移動したい人にとって理想的な選択肢となるだろう」とも述べている。

ヴォイは、ヨーロッパでの事業展開から得たノウハウを売りにしている。

ヴォイの共同創設者兼CEOのFredrik Hjelm(フレドリック・イェルム)氏は、次のように語っている。「サイクリングインフラストラクチャーが拡大を続けていること、公共空間をオープンストリートやアウトドアダイニングに変える構想が最近立てられていることなどからわかるように、ニューヨーク市は、街並みを変革するという米国全体での取り組みをリードしている。当社はこれまでヨーロッパの50以上の都市が自動車の利用価値を再考するのを支援してきたが、今後、ニューヨーク市を米国の拠点にしたいと考えている」。

バードは、公平性、安全性、アクセス、効果的な駐車場ソリューションを優先することを公約にしている。スピンはさらに踏み込み、プログラムがどのようなものであるべきかを提言し、いくつかの競合他社の排除を狙う戦術をとった。

スクーター会社がいわゆる格差解消ゾーンを設定し、低所得者向けの料金を少なくとも50%引き下げ、スマートフォンなしでスクーターをレンタルする手段を提供することを求めるよう、ニューヨーク市の交通機関当局に提案したとのことだ。スピンは、このプログラムで許可を与えるのは3~4社のみに限り、1業者あたりのスクーターの上限を2000台にすべきだとも主張している。また同社は、障害者向け車両、スクーターを駐輪施設に確実に固定できるロック技術、および企業が地元で雇用することを条件としたW-2従業員の使用を要件とすることも提案している。

背景

ニューヨーク市議会は6月下旬、市内における電動スクーターシェアリングの試験運用プログラムを作成するよう、ニューヨーク市運輸局(DOT)に求める法案を承認した。DOTは10月までに、eスクーターシェアリングの試験運用プログラムに参加するための提案依頼書を公布する必要があった。

試験運用プログラムは2021年3月1日までに開始しなければならない。ニューヨーク市議会は、DOTと引き続き協力し、試験運用プログラムの実施場所を決定することになっている。TechCrunchがeスクーターを推進する複数の企業や支持者から入手した情報によると、試験運用プログラムの実施エリアが限定されると、このプログラムが失敗する可能性があるとのことだ。

マンハッタンでは運用が禁止されているが、残りの4つの行政区(ブロンクス、ブルックリン、クイーンズ、スタテン島)については規定がない。

スクーターを許可する法案が最初に提出されたのは2年以上前のことだった。しかし、2020年4月にニューヨーク州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏がスロットル式の電動スクーターと電動バイクの同州における使用を合法化する法案に署名するまで、試験運用プログラムの実施は技術的に不可能だった。同州法の下では、マンハッタンでのスクーターシェアリングは許可されず、残りの行政区でも、スクーターのシェアリングサービスを運営するには、試験運用プログラムがニューヨーク市議会で承認されなければならない。

提出された地方法案では、試験運用プログラムがどのように構成されるかについていくつかの要件を設けている。既存のバイクシェアリングプログラムを利用できない地域は、試験運用プログラムの地理的境界を決定する際に優先的に考慮される。許可を受ける企業は、アクセシビリティに配慮したスクーターのオプションを提供するなどの運営規則を満たすことが求められる。

その他の激戦市場

電動スクーターシェアリング企業にとって、ニューヨーク市が世界で唯一の重要な市場というわけではない。シカゴ市、シアトル市、パリ市をはじめとして、他のいくつかの大都市では、パイロットプログラムの申請手続きが完了し、運営許可が下りている。パリ市では、16社もの企業がスクーターを運営するための許可を求めて競争した。同市は7か月間の入札プロセスを経て、ライム、Dott(ドット)、Tier Mobility(ティアモビリティ)に運営許可を与えた。バードは、ちょうど1年前にフランス市場を見込んで大きな賭けをし、パリ市にヨーロッパ最大のオフィスを開設する計画を発表したが、競り負けた。バードは当時、2021年半ばまでに1000人を雇用したいと述べていた。Bolt(ボルト)、Comodule(コモジュール)、スピン、ヴォイ、Wind(ウィンド)も、パリ市での営業許可を受けられなかった。

8月、シカゴ市は2回目の試験運用プログラムにおいて、バード、ライム、スピンに参加を許可した。今回、シカゴ市では、スクーターの使用時間を午前5時~午後10時に限定し、最高速度も時速25キロメートルに制限しているほか、レイクフロント・トレイルのようにスクーターの利用を禁止しているエリアもいくつかある。各スクーター会社が運用できる台数は3333台以下に制限されており、そのうちの50%は格差解消エリアに配備しなければならない。2回目の試験運用では、利用終了時にスクーターを固定物に固定するよう利用者に求めるロックシステムをすべてのeスクーターに実装する、という要件が追加された。

多くの大規模市場では運営業者が既に決まっており、残っている大きな市場はロンドン市とニューヨーク市の2都市のみである。ロンドン市交通局はこの夏、スクーター会社が市内で営業できるようにすると発表した。ただし、営業許可はまだ与えられていない。バード、ボルト(エストニアで創設されたライドシェアリングのスタートアップ)、ライム、Neuron Mobility(ニューロンモビリティ)、ティア、ヴォイ、Zipp Mobility(ジップモビリティ)はすべて、ロンドン市のスクータープログラムに関心を示した。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:スクーター アメリカ

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(翻訳:Dragonfly)

米大統領選、ジョー・バイデン氏が当選確実

緊張の票集計週間を経て、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏はペンシルベニア州を制し、次期米国大統領選挙の接戦を抜け出した。重要な州で勝利を収め、現職の候補を振り切って当選に必要な選挙人270人以上を獲得した。

バイデン氏はウィスコンシン州、ミシガン州、ペンンシルベニア州など2016年の大統領選でDonald Trump(ドナルド・トランプ)氏が抑えた鍵を握る州を奪還した。トランプ氏は前回に続きフロリダ州とオハイオ州で勝利したが、当選にはつながらなかった。バイデン氏はまた一般投票数でも何百万票もリードした。その多くは郵便によるもので、今回は記録的な数となった。

バイデン政権で副大統領を務めるKamala Harris(カマラ・ハリス)氏は、初の女性、しかも有色人種の副大統領と、多くの点で歴史を作ることになる。同氏はカリフォルニア州選出の上院議員で、同州で司法長官も務め、テック産業が盛んな同州でキャリアを築きあげた。

分断はさておき、2020年の選挙は多くの米国民にとって悪名高いものになりそうだ。誤情報の嵐、拡大された郵便投票システムの運命に対する恐れ、米国において23万人超の命を奪った新型コロナウイルスに代表されるように、近年において最も奇妙な選挙だった。バイデン氏の選挙活動は投票を呼びかけるためにドアをノックして直接顔を合わせる代わりに、車に乗ったまま、そしてデジタルのキャンペーンを展開することを余儀なくされた。

また、そうした状況は完璧な誤情報エコシステムを作りだした。11月4日朝のトランプ大統領の誤った勝利宣言や、いまも続く民主党による投票不正があったという主張などが状況をさらに悪化させた。トランプ大統領は選挙結果を受け入れるつもりはないようだ。しかし最終的には票がものをいい、ジョー・バイデン氏が2021年1月20日から大統領となる。

慣習上の民主主義の規範をはねのけながら大統領の座に居座っても、トランプ大統領の決断は最終的な結果にはほとんど影響しない。今後どのようなことがあろうと、米国は誤情報、政治的緊張そして政治的動機による暴力が溢れかえる新たな、そして前例のない不確実な時代に突入する。

元副大統領の勝利により、4年間のトランプイズムは終焉を迎える。しかしその残響は米国政治のあらゆるところに何十年も残るだろう。そうした中で、ジョー・バイデン氏は政治的領域を超えたありそうもない民主党の連合の影響力を利用する計画で新たな時代を切り開く。上院は、2021年1月に対決するジョージア州の結果まではどちらに転ぶかわからない。

バイデン氏は抜本的な気候変動対策や、より多くの米国人をカバーするヘルスケアの拡大、Medicareのような公的選択肢の提供といった計画を示してきた。しかしそうした壮大な計画のほとんどを実行できるかどうかは、民主党上院によるところが大きくなる。民主、共和いずれの党もテック業界に対する規制を積極的に検討すると予想されていたことから、テック政策がどうなるのかTechCrunchは注目していく。

しかし上院の協力はなくても、新大統領は最も必要とされている点において迅速かつ重大な影響を及ぼすことができるだろう。それは新型コロナウイルスパンデミックだ。このウイルスとの戦いにおける国のプランが欠如し続け、またホワイトハウスが新型コロナを軽視してマスク着用を推奨しなかったこともあり、新型コロナは米国中でコントロール不能な状態になり、多くの死亡者をともなう厳しい冬が待ち構えている。

カテゴリー:ニュース
タグ:米国大統領選挙アメリカジョー・バイデン

画像クレジット:OLIVIER DOULIERY/AFP via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

陰謀論組織Qアノンを支持する共和党議員がジョージア州で当選、国政へ

ジョージア州下院選挙でのMarjorie Taylor Greene(マージョリー・テイラー・グリーン)氏の勝利は、QAnon(Qアノン)の連邦議事堂への進出を意味する。

QAnonはとんでもない主張を展開しているが、その1つである性的目的の児童人身売買などに関わっているエリート集団とDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領が秘密の戦争を展開しているとする複雑で奇異な説をグリーン氏は大っぴらに支持している。FBI(米連邦捜査局)は2019年に、QAnonが「陰謀論に駆られた国内過激派」(Yahoo News記事)にとって潜在的にインスピレーションとなる存在だと認定している。

グリーン氏の勝利は危険な陰謀論にとって正当性を示す衝撃的なものだが、予想されていなかったものではなかった。同氏の民主党の対立候補は2020年9月に個人的な事情で出馬を取り止め、グリーン氏の下院議席への道は明確なものになっていた。

一連の陰謀論についてのグリーン氏の支持は、密やかなものではなかった。トランプ大統領が「未来の共和党スター」と呼ぶグリーン氏は声高に人種差別的な考え(POLITICO記事)やイスラム教徒に対する偏見(Daily Beast記事)を表明してきた。同氏はまた、9.11の「真相究明者」説(Media Matters for America記事)も信奉し、新型コロナウイルス感染を減少させる科学的根拠のある手段であるマスクの使用を批判してきた。

かつてインターネットの極右メンバーだけに信奉されていたQAnonは、実世界で犯罪行為を行うようフォロワーをそそのかしてきた。その結果、スタテン島での銃撃事件(npr記事)や、武装によるフーバーダム橋占拠事件(ABC News記事)が起こった。

陰謀論の支持者はまた、ハッシュタグ#savethechildrenも乗っ取り、長らく展開されてきた子供の安全のための取り組みを妨害し、子供を助けると装って極端な思想を主潮に持ってきた。以前QAnonを禁止したFacebook(フェイスブック)はこうした事態を受け、ハッシュタグの使用を制限した

今回の選挙の立候補者にはグリーン氏の他にもQAnon支持者がおり、Jo Rae Perkins(ジョー・レイ・パーキンズ)氏はオレゴン州で民主党の上院議員Jeff Merkley(ジェフ・マークリー)氏に敗れることが予想される。パーキンズ氏は自身の思想についてかなりオープンにしてきて、6月には陰謀論に関連する人気のハッシュタグとともに、自身はQAnonのための「デジタルソルジャー」だと忠誠を誓うビデオをツイートした

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カテゴリー:ニュース
タグ:QAnonアメリカ米国大統領選挙

画像クレジット:Dustin Chambers/Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

トランプ大統領就任時の米国が中国人留学生に発行したビザは4月以来99%減少との報道

Donald Trump(ドナルド・トランプ)大統領がさまざまな手を尽くして外国人を米国から締め出そうとしてきたことは周知の事実であり、高い技術を持つ外国人労働者向けのH-1Bビザプログラムの最近の大改訂(The Wall Street Journal記事)によって、雇用者はH-1B労働者に高い給与を支払うことを強制され、申請者の資格を得るのに必要な学位の種類の範囲が狭められたのもその一例だ。この行動はすでに多数の訴訟の引き金(The Wall Street Journal記事)となっている。

それでも、2020年世界中の学生に発行された米国ビザが、これほど劇的に減少したことには驚く人もいるだろう。米国国務省のデータを挙げたNikkei Asia(日経アジア)の最新記事によると、中国本土の申請者に対して4~9月の間に発行されたF-1学生ビザはわずか808件で、2019年同時期に発行されたF-1学生ビザ、9万410件より99%少なかった。他の国の学生についても状況は変わらず、インドの学生に発行されたF-1ビザは88%、日本の学生は75%、韓国の学生は75%、メキシコの学生は60%それぞれ前年から減少している。

いったい何が起きているのか?いくつかの要因が重なっているようだ。

新型コロナウイルスはもちろんその1つで、家族は子どもたちを米国に送り出すことにいっそう躊躇している。米国の新規感染者数は11月1日だけでも9万3581件で、一方中国は24件、インドは3万8000件、日本は486件、韓国は97件、メキシコは3762件だった。

人種問題もある。多くのアジア人とアジア系アメリカ人が、ドナルド・トランプ氏の新型コロナウイルスを巡る発言は自分たちが生活全般で直面している人種差別を悪化させていると指摘し、「kung flu(カンフー・インフルエンザ)」や「China virus(中国ウイルス)」などの言葉を使われたという回答が多数(ScienceDaily記事)あった。ワシントン州立大学研究チームの最新の研究によると、新型コロナウイルスパンデミック以来増えている人種差別の報告は、健康被害の報告とも一致している(日経アジアは、すでに米国で学んでいる学生も標的となっていると指摘し、米国から出ていけと罵倒された23歳の中国人女性の話を掲載している)。

中国によるワシントンでのスパイ活動への積極的な注目も大きな役割を果たしていると同誌はほのめかし、米国ビザ取得が困難なために一部の中国人学生はカナダなど別の国に向かっていると推測している。

例えばMike Pompeo(マイク・ポンペオ)国務長官は7月にリチャード・ニクソン図書館で行った演説で、「我々は両手を広げて中国国民を歓迎したが、中国共産党は我々の自由で開かれた社会を利用しただけだった。中国は我々の記者会見、研究センター、高校、大学、さらにはPTA集会にまで(USA TODAY記事)活動員を送り込んだ」と語った。

中国人学生に対する反発に限っていえば、トランプ政権では新しいことではないが、ここ数カ月間かなりエスカレートしている。2018年から、国務省は特定の研究分野で学ぶ中国人大学院生のビザを1年間に制限し(The New York Times記事)、経過後は再申請が必要とした。この動きはオバマ政権時代に中国人に5年間の学生ビザを保証した政策(The White Houseリリース)を撤回するものだった。

関連記事:トランプ大統領の突然の留学ビザ制限は米国社会に広く影響する

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ドナルド・トランプビザアメリカ

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国のホリデー商戦オンライン売上高は新型コロナ影響で過去最多の20兆円予想

Adobe Analytics(アドビ・アナリティクス)が発表した予測によると、新型コロナウイルスパンデミックによるeコマースへの急激なシフトは米国のオンラインホリデー商戦に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。Adobe Analyticsは、2020年11月と12月の米国のオンライン売上高が1890億ドル(約20兆円)に達すると予想している。この数字は前年比33%増で、過去最多となる。

Adobe Analyticsは2019年の売上高の増加幅が13%にとどまったことを指摘し、今シーズンだけで2年分の成長を達成することになる、と話す。

画像クレジット:Adobe Analytics

消費者が景気刺激策の追加の小切手を受け取り、そして新型コロナウイルス感染症拡大を押さえ込むために米国の広い範囲で再び実在店舗が閉鎖される事態になれば、オンライン売上高はさらに増える可能性がある。その場合、消費者はオンラインでさらに110億ドル(約1兆1500億円)多く使うことが予想され、オンライン売上高の総額は前年比47%増の2000億ドル(約21兆円)となる。

画像クレジット:Adobe Analytics

また、消費者の今シーズンの買い物の仕方はいつもと違うものになりそうだ。

通常、オンラインショッピングシーズンは実在店舗で展開されるセールのデジタル版であるブラックフライデーセールで始まる。このセールはサイバーマンデーへと続き、消費者は実在店舗での買い物でお得に買えなかったアイテムをオンラインで探す。

ここ何年かで、それぞれのセールイベントの境界は曖昧になっていた。たとえば、オンラインショッピングはサンクスギビングデーへとシフトし、サイバーマンデーまで引っ張る。

今年は、いわゆる「サイバーウィーク」(サンクスギビングからサイバーマンデーまで)が「サイバーマンス」になるとAdobe Analyticsは予想する。

画像クレジット:Adobe Analytics

これは部分的には、11月の最初の2週間に始まる大幅なホリデー割引に始まり、ブラックフライデー週末とサイバーマンデーにかけて最も値引きが大きくなるという流れによるものだ。

Adobe Analyticsはまた、11月1日から21日にかけてのオンライン売上高が毎日20億ドル(約2090億円)を超え、11月22日から12月3日までは1日あたり30億ドル(約3140億円)に増えると予想する。

ブラックフライデーのオンライン売上高は前年比39%増の100億ドル(約1兆500億円)となり、サイバーマンデーは前年比35%増の127億ドル(約1兆3000億円)に達して年間を通じて最大のオンラインショッピングデーになる見込みだ。

画像クレジット:Adobe Analytics

テレビや家電製品の最もお得なセールはブラックフライデーまで続くが、玩具や家具のセールはサイバーマンデーの前日の11月29日に始まる。スポーツ用品の最もお得なセールは12月13日、電子機器は12月18日だとAdobeは話す。

過去数年と同様、モバイルがeコマース支出に大きく貢献することになりそうだ。米国の消費者は2020年に、前年より281億ドル(約2兆9000億円)多くスマホで買い物することが見込まれ、率にして55%の増加だ。

小規模の小売事業者(年間オンライン売上高が1000万ドル〜5000万ドル)も活発なオンラインショッピングの恩恵を受ける。オンライン売上高は大規模な小売事業者よりも大幅に増加する(107%増)。一方の大規模事業者の売上高は前年より10億ドル(約1050億円)増え、率にして84%増だ。

今年、米国の消費者の中には家族に会うための旅行を控える人がいることから、パンデミック前の年に比べると普段なら直接会っていた人に小売から直接送るギフトに米国人は18%多く支出するとAdobe Analyticsは予想している。しかし消費者は迅速な配達に余計にお金をかけるのに興味はなく、64%が即配サービスを利用しないと答えた。つまり、小売事業者は無料配送の締め切り日についてはっきとさせておく必要がある。

画像クレジット:Adobe Analytics

オンラインで購入したものを店舗でピックアップする(BOPIS)傾向も強まるとみられる。多くの小売がカーブサイドピックアップという選択肢も提供していることから、BOPISの注文は昨年よりも40%多くなり、クリスマス前の週に小売が提供するオプションでの全注文の半分を占めることが予想される。

パンデミックのためにホリデーオンライン買い物客の9%が新規顧客だとAdobe Analyticsはみている。コンバージョンレートも13%上昇し、その一方で売上高は33%増加する。ただし、注文1件あたりの額に増減はない見込みだ。

こうした予想を複雑にする要因の1つとして、選挙が挙げられる。これまで選挙年のオンライン売上は選挙結果の影響を受けてきた。2016年の選挙後は14%減、2018年の中間選挙後は6%減だった。Adobe Analyticsによると、消費者の26%が選挙結果がホリデー支出に影響する、と答えた。

今回の予測に使われたデータはAdobe Analyticsのものだ。同社は米国の小売サイトへの1兆もの訪問を分析している。ここには1億ものSKU(最小管理単位)と、米国における大手小売100社のうち80社が含まれているとのことだ。

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(翻訳:Mizoguchi

トランプ大統領の移民規制はこれからの米国企業、労働者に悪影響を及ぼす

私は移民だ。20年前にインドから米国にやって来た。以来、博士号を取得し、2つの会社を立ち上げて100人近くの雇用を生み出した。1つめの事業はGoogle(グーグル)に売却し、投資家に10倍超のリターンを還元した。

これまでアメリカンドリームの中で生きることができ、感謝している。光栄なことに米国市民になり、他の人に益をもたらしてきた。しかし問題がある。私はまさしく、トランプ大統領が追加した移民制限(Business Insider記事)の対象となるような種の人間なのだ。追加の移民規制では、まず米国民に就労機会を提供することを米国企業に求め、H-1Bビザに応募できる資格を狭めている。移民の流入を抑制するためのものだ。

多国籍企業が活用するLビザ、一部の学生が使うJビザとともに、H-1Bビザ応募の資格を厳しくする中で、トランプ政権は経済成長への扉を閉ざしつつある。H-1Bビザスキルワーカープログラムが雇用を生み出し、米国の大学を卒業した人の収入を増やしていることは多くの調査で示されている。実際、もしH-1Bビザの発行を一時停止するのではなく増やしていたら、130万人の新規雇用を生み(American Immigration Councilレポート)、2045年までにGDPを1580億ドル(約16兆6000億円)を押し上げていた、と経済学者は指摘する。

私のような人間を移住できないようにすることは、短期的には必要な人材を確保するのにすでに苦戦しているテック企業にカオスをもたらす。これは経済成長を鈍化させ、イノベーションの息を止め、雇用の創出を減らすことにつながる。移民を歓迎しない国にすることで、トランプ大統領令は世界で最も優秀な若い人を引きつけてとどまらせるという米国企業の能力に大きな打撃を与える。

私の話を参考にして欲しい。私はインドのMITとして知られるインド工科大学(IIT)で電気工学の学位を取った後に米国にやって来た。私がIITに入学した年は、わずか1万の募集枠に対し、数十万人の出願があった。MITよりもIITの方が入学競争は激しい。4年後に私は卒業し、周囲にいた成績優秀な仲間の多くとともに米国で学問を続けることに決めた。

それから、教育を継続し幸運を求めて米国に渡った優秀なインド青年に与えられる道を歩んだ。我々の多くが米国をテクノロジーイノベーションの頂点、そして真に実力主義の国だととらえていた。つまり、移民に正当なチャンスが与えられ、ハードワークが報われ、才能ある若い人が未来を築ける国だと考えていた。

私は10の大学から入学を許可され、トップクラスのコンピューターサイエンスプログラムを提供していたイリノイ大学で博士号のコースを履修することに決めた。すでに博士課程を終えていた学生として、私はコンピューターチップがオーバーヒートしないようにする新しい方法を開発した。いまでは世界中のサーバー企業で使われているものだ。その後、自身のテック企業を興す前にMcKinsey(マッキンゼー)でしばらく働いた。私が興した会社はAppurifyというアプリをテストするプラットフォームで、後にグーグルが買収して自社のクラウドサービスに統合した。

私はグーグルで何年か過ごしたのち、ゼロから何かを始めることが恋しくなり、2016年にatSpokeを立ち上げた。ITやHRのサポートを合理化するAIで作動する発券業務プラットフォームだ。2800万ドル(約30億円)を調達し、60人を雇用した。そしてClouderaやDraftKings、Mapboxといった企業がより効率的な職場を構築し、リモートワークへの移行を管理できるのをサポートした。

私のようなストーリは珍しいものではない。新しい国に移住することは楽観、野心、リスクの許容をともなう。これらすべての要因は多くの移民が自分で新たな事業を始める方向へと向かわせる。移民は、米国で生まれ育った人の2倍の割合で事業を興す。2016年の新規企業の約30%、米国のユニコーンスタートアップの半分以上が移民によるものだ。Procter & Gamble、AT&T、グーグル、アップルそしてBank of Americaなど現在ではアイコン的な存在の米国のブランドの多くが移民、もしくは移民の子供によって創業された。

米国が才能ある若者、特に重要なテクニカルスキルを持っている若者が選ぶ目的地であることは当然だと思う。しかし永遠に続くものはない。20年前に私が米国に到着して以来、インドのテックシーンは興隆を迎え、子供たちはインドを後にしなくても随分と簡単にチャンスを見つけることができるようになった。中国、カナダ、オーストラリア、欧州もまた若い移民が才能やスキル、往々にして米国で受けた教育を持ち込みやすくし、自国の労働力に加わってもらったり、事業を興してもらったりするためにグローバルの人材獲得競争を展開している。

雇用ベースのビザプログラム、短期的なものすら終わりにするのは、米国の経済が真に必要としているイノベーションと起業家精神を締め出すものだ。さらに悪いことに、そうすることで世界で最も優秀な若い人にアメリカンドリームを信じさせ、チャンス探しに駆り立てるのを難しくしている。トランプ大統領令の真のレガシー(遺産)は、米国の企業が今後数年間のうちにグローバル人材獲得で競争を展開するのを困難にすることだろう。それは究極的には雇用創出を阻み、経済を後退させ、米国の労働者が打撃を受ける。

【編集部注】著者であるJay Srinivasan(ジェイ・スリニバサン)氏はatSpokeの共同創業者でCEOだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:atSpokeアメリカ

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(翻訳:Mizoguchi

TikTokのファクトチェック、米国でのIPO、中国の所有権、そして5000億円超の税金

さまざまな噂が渦巻く中、TikTokの中国の親会社であるByteDance(バイトダンス)は9月21日の朝に声明を発表(ByteDanceプレスリリース)し、ここ数週間で世界的に注目を集めている現在進行中の取引を明らかにした。

ByteDanceが引き続きオーナー

中国のByteDanceは、「信頼できるテクノロジーパートナー」であるOracle(オラクル)と「商業パートナー」であるWallmart(ウォルマート)にTikTokの株式の20%を売却した後、残りの80%を保持することを明らかにした。

しかし、私の同僚であるJonathan Shieber(ジョナサン・シーバー)氏が主張したように、この取り決めは多くのオブザーバーの懸念の核心に対処するものではない。「この取引は、米国の消費者とTikTokのアルゴリズムや米国内の世論に影響を与えるために使用される方法について、実際にセキュリティ上の懸念を持っている人々以外のすべての人に利益をもたらす」と主張している。

TikTokの取締役会のメンバーはByteDanceの現在のメンバーだが、ByteDanceの創設者であるZhang Yiming(チャン・イーミン)氏以外は中国人ではない。ウォルマートCEOのDoug McMillon(ダグ・マクミロン)氏は、最近の取締役会メンバーに加わった。

TikTokは米国でのIPOを目指す

TikTokは「コーポレートガバナンスと透明性をさらに強化するために」、米国での新規株式公開(IPO)を模索していることを確認した。動画アプリは明らかにIPOを希望しており、これにより多くの世間の目にさらされることになるが、中国が起源であることに起因する国家安全保障上の脅威への懸念を和らげることができるかもしれない。

注目すべきは、ByteDanceが声明の中で動画アプリを「TikTok Global」と表現している点だ。これは、このアプリが米国とそれ以外の地域に分割されることはないことを示している。法廷文書で明らかにされたように、TikTokは世界中で毎月約7億人のユーザーがいると主張している。そしてそのユーザーのうち1億人は、現在の本社がある米国に住んでいる人々だ。

アルゴリズムは転送していない

以前の報道によれば、ByteDanceはTikTokのアルゴリズムや技術をオラクルに引き渡すことはないとの主張していた。代わりに、米国のデータベース大手であるオラクルは「TikTokの米国ソースコード」のセキュリティチェックを実行する権限を得ることになる。

「ソースコードを公開することは、多国籍企業が直面するデータセキュリティの課題に対する普遍的な解決策です」とByteDanceは述べ、今回の決定を中国にあるマイクロソフトのTransparency Center(トランスペアレンシー・センター、製品に関する透明性をアピールする施設)や、Cisco(シスコ)がドイツのボンに設置した同様の施設と同一視しようとしている。

とはいえ、コードの監視とユーザーデータ管理をオラクルを担うことで、TikTokのブラックボックス化されたコンテンツを中国政府がいじる可能性があることに対する懸念がどのように解消されるのかは、まだ明らかになっていない。

50億ドル(約5200億円)の税金

ByteDanceは、TikTokが今後数年の間に、事業で発生した所得税やその他の税金の合計50億ドル(約5200億円)を米国財務省に支払うことになると見積もっている。にもかかわらず、最終的な数字はTikTokの「実際の業績と米国の税制に左右される」と同社は述べ、税金は「現在進行中の取引とは何の関係もない」と強調している。

教育へのコミットメント

TikTokが米国で50億ドル(約5200億円)の教育基金を設立するとの報道に対してByteDanceは、そのような計画は認識していないが「パートナーや株主」と協力してAIやビデオを使ったオンライン授業を設計するなど、一貫して教育に力を注いできたと述べた。

中国ではByteDanceの教育分野への進出が広く報じられている。英語学習プラットフォーム「Gogokid」(ゴーゴーキッド)のような自社製品以外にも、伝統的な高等教育に挑戦するベンチャー出資の教育機関「Minerva」(未訳記事)など、さまざまな外部プレイヤーに投資している。

画像クレジット:Sheldon Cooper/SOPA Images/LightRocket / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ギャング資本主義と米国の中国イノベーションの盗用、これは正しい道なのか

かつて、米国と中国の経済を見分けるのは「簡単」だった。一方は革新的で、他方はクローンを作っていた。一方は自由市場で、他方は政党とその指導者に賄賂を要求(The New York Times紙)していた。一方は世界のトップの頭脳を引き付ける働きをして、才能のある人たちを受け入れた。他方は、あなたを扇動罪で投獄する前に空港のバックルームに連れて行った(それはどちらもだが)。

これまで、このように比較はいつも簡単にできていて詳細がわからなくても少なくとも方向性は正確だった。

しかし今では、爆発するバッテリーを輸出した国は(The Atlantic記事)は量子コンピューティングを開発しているし、インターネットを開拓した国は空から落ちる飛行機を作っている

TikTokの成功にはさまざまな要因があるが、率直に言ってそれを標的にするには米国の恥さらしでしかない。何千人もの起業家と何百人ものベンチャーキャピタルがシリコンバレーやほかの米国のイノベーションハブに群がり、次の素晴らしいソーシャルアプリを探したり、自分たちで作ったりしている。

しかし、ユーザーの成長と投資家のリターンの法則は偶然にも中国・北京の海淀区(かいでんく)にある。中国のローカルアプリ「抖音」(Douyin)やTikTokのような海外アプリを通じたByteDance(バイトダンス)は、過去10年に消費者に多くのものを還元している(今シーズンのIPOがすべてエンタープライズSaaSであるのには理由があるのだ)。

これは国家の産業政策だけには頼れない勝利と言える。半導体やそのほかの資本集約型産業では、中国政府が数十億ドルのインセンティブを提供して開発を促進できるが、ByteDanceはアプリを構築しているだけで、それを世界中のアプリストアで配信している。Apple Developerアカウントを持つすべての開発者が利用できるのとまったく同じツールを使っている。TikTokのような消費者向けアプリを作って普及させようという「Made in China 2025」(米戦略国際問題研究所レポート)の計画はない、というよりも文字どおり消費者向けの成功のための計画は立てられない。むしろTikTokは、何億人もの人が中毒になるような完成度の高い製品を自ら開発したのだ。

中国がGoogle(グーグル)やAmazon(アマゾン)のような海外の競争相手から市場参入障壁を介して業界を守ったように、米国はいま、TikTokのような海外の競争相手から既存の既存企業を守ろうとしている。共産党が何年も前から要求してきたように、ジョイントベンチャーやローカルクラウドデータの主権を要求しているのだ。

さらにトランプ大統領はByteDanceに50億ドル(約5227億円)の納税を要求(Bloomberg記事)しているようで、若者の愛国教育に資金を提供すると表明している。もちろん大統領はいろいろと注文を付けているが、少なくとも50億ドルの価格は、Oracle(オラクル)のプレスリリースで確認されている(税収が実際に何に使われるのかは推測だが)。最近の香港の抗議行動を(Reuters記事)を長く追っていると、愛国的な若者の教育が2012年のデモのきっかけになったことを覚えているだろう。巡り巡ってくるものは巡り巡ってくると私は思う。

開発経済学者は「キャッチアップ」戦略、つまり中間所得層の問題を後回しにして、欧米との格差を縮めるために各国が選択できる戦術について話すのが好きだ。しかし、いま私たちが必要としているのは、米国の「遅れを取り戻す」戦略を説明してくれる先進国の経済学者だ。なぜなら、私たちはほとんどすべての面で遅れをとっている。

TikTokのここ最近の動向とそれ以前のHuawei(ファーウェイ)の問題が示すように、米国はもはや多くの重要な戦略市場においてテクノロジーの最先端を走っていない。中国本土の企業は、5Gやソーシャルネットワークなど多様な分野で世界的に勝利を収めているが、政府の直接の介入がなければ米国やヨーロッパのハイテク企業はこれらの市場を完全に失っていただろう。たとえ介入があったとしても、まだ失う可能性がある。台湾では、TSMCがIntel(インテル)をすで抜き去り、最先端の半導体製造で1、2年のリードを奪っている。

つまり、最近では中国の歴史や神話を盗み出してまともな映画にすることすらできないのだ。そして、後れを取る戦略は続いている。米国のイノベーションの最大の源泉を破壊しようとしている政権からの移民規制は、新型コロナウイルスの感染蔓延と相まって、留学生の移住者数は米国史上最大の減少につながっている(Axios記事)。

なぜそれが重要なのか?比較的最近のデータによると、米国では電気工学の大学院生の81%が外国人留学生であり、コンピュータサイエンスでは79%が外国人留学生であり、ほとんどの工学・技術分野では、その数は過半数を超えている(Inside Higher Ed記事)。

このような留学生がずっと家にいてくれれば「米国人もなんとか最先端の枠に入るれるだろう」という幻想を信じるのは素晴らしいが、実際のところはどうなのだろうか?イチゴ狩りや給食サービスの労働者に当てはまることは、電気工学を学ぶの大学院生にも当てはまるのだ。しかし、いわゆる 「米国人」 はこうした仕事を望んでいない。これらは大変な仕事であり、報酬面では実入りの少ない仕事であり、米国の労働者や学生が一般的に持っていない粘り強さを必要とする。これらの産業では大量の外国人労働者が従事しているが、それはまさに国内の誰も外国人労働者の役割を引き受けたがらないからだ。

才能があればあるほど、イノベーションも生まれてくる。このような頭脳の源泉が米国のトップ・イノベーション・ハブに宿ることなく、それがどこに行くのだろうと考えているのだろうか。かつて、スタンフォードやマサチューセッツ工科大学(MIT)のコンピュータ・サイエンティストになりたいと思っていた人は、窓際に座って地平線を眺めながら日が沈むのを待っていたわけでないのだ。まして、いまはインターネットの時代であり、彼らはどこにいても、どんなツールやリソースを使ってでも、夢に向かって出発できる環境が整っている。

シードアクセラレーターであるY Combinatorが主催するプログラムの最近の参加者を見ていると、将来の偉大なスタートアップ企業となりそうなグループ、ますます米本土以外の地域からやってくるようになってきていることがわかる。何十人もの賢くて優秀な起業家たちは、米国への移住を考えているわけではなく、むしろ自国の市場が自慢の大国よりも技術革新や技術進歩に対してオープンであることを正しく認識している。フロンティアは米国で閉ざされ、他の場所に移ってしまったのだ。

では、米国、そしてヨーロッパにはいったい何が残っているのだろうか?柔軟性に欠ける企業のトップが、世界最高の技術との競争を避けるために外部の技術革新をブロックするという視野の狭い政策が、経済的な災いのレシピではないのなら、私はそれが何なのか分からない。

しかし、少なくとも米国の若者は愛国心を持っているはずだ。

画像クレジット:Thomas Peter – Pool  / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

WeChatとTikTokのダウンロードが9月20日から不可に、米商務省が発表

米商務省は、TikTok(ティクトック)とWeChat(ウィチャット)の利用禁止に関する詳細を発表した(米商務省プレスリリース)。国家安全保障上の懸念によるこの措置については9月20日までに実施するとの方針を8月に示していた。今回の詳細では、9月20日と11月12日がカギとなる。両アプリ、そしてそのアップデートも9月20日から米国のアプリストアで利用できなくなる。しかしTikTokは11月12日までオペレーションを展開できる。これは11月3日の米大統領選挙以降も利用できるようにするだけでなく、サービス提供を中断することなくOracle(オラクル)やその他のパートナーがTikTokの米国事業を引き継ぐという複雑な交渉を完了させるのに時間を与えることにもなる。

そうしたタイミング、加えて商務省長官Wilbur Ross(ウィルバー・ロス)氏の声明は、この件に関する政治的な意図を如実に表している。

「今回の措置は、トランプ大統領が国家の安全を保障し、米国民を中国共産党の脅威から守るためにあらゆる手段を尽くすことを示している」とロス氏は声明で述べた。「大統領の指示のもと、我々の価値、民主的なルールに基づく規範、米国の法律や規則による積極的な取り締まりを推進する一方で、中国の悪意ある米国市民の個人情報データ収集と戦うために重要な行動を取った」

最初の行動として、Tencent(テンセント)が所有するWeChatと、ByteDance(バイトダンス)が所有するTikTokは9月20日からアプリの配布を停止しなければならない。言い換えると、同日から両アプリはダウンロード全面禁止で、アップデートも不可となる。また「米国内での資金の移動や決済処理を目的とするWeChatモバイルアプリを通じたサービスのいかなる提供」、つまり決済も禁止する。

9月20日以降、WeChatはまた「機能や最適化を可能にするインターネットで展開するサービスの提供」、コンテンツ配信やインターネットトランジット、ピアリングの提供、構成コード、ファンクション、アプリのサービスの提供も禁止され、つまり全面禁止となるようだ。

注意を引くのが、TikTokはオペレーション面で同じような禁止措置を受けないことだ。つまり9月20日までにダウンロードされたTikTokはまだ当分使える。

日付はいくつかの理由で重要だ。まず、大統領選後もしばらくTikTokを利用できる状態にしている。トランプ大統領はこの人気アプリを禁止すると多くの人が言っていた。しかしそうすることで若い有権者の票を失うことになるかもしれない。実際そうなるかはわからないが、再選へ向けた問題となっていたようだ。

2つめに、TikTokのオペレーションを引き継ぐために交渉しているOracleやWalmart(ウォルマート)、その他の企業によるコンソーシアムがサービス提供を中断することなく交渉を完了させられるよう、猶予を与えた。TikTokは米国にユーザー約1億人を抱え、欧州にも同規模のユーザーがいる。

交渉を巡るニュースは日々変化している。完全買収と報じられたかと思えば、OracleはTikTokのデータを管理するがソースコードは含まれないという話になり、はたまた中国と米国の承認を得るためにソースコードもライセンス提供するという話になったりしている。最新のニュースには、上場して新CEOにInstagram(インスタグラム)共同創業者Kevin Systrom(ケビン・シストロム)氏を据えるというアイデアもあった。

皮肉なことに、この最新の動きについて率直に意見を言うテック業界リーダーの1人が、現在のInstagramの責任者Adam Mosseri(アダム・モセリ)氏だ。同氏は他のテック企業にも影響を与える含意について自身の考えをツイートしていた。

アダム・モセリ:この見出しには注意してください、禁止はTikTokの「新規ダウンロード」だけです。

前にも言いましたが、米国のTikTok禁止は、Instagram、Facebook、そしてより広くインターネットにとってかなり悪いことになります。

(もちろん我々はこのところ、アプリと国境を越えて事業展開するための自由をめぐるしっぺ返し戦争の最中にいる。ファイアウォールを備えた多くの国は、国家安全を脅かしていると感じた場合に他国のアプリを禁止することはまったく誤ったことではないとしてきた)。

米商務省の決定はトランプ大統領が8月6日に署名した大統領令に沿ったものだ。大統領令では、国家安全に関する懸念を理由にTikTokとWeChatへのアクセスを阻止する政府の意向をByteDanceとTencentに通達した。

大統領令は、署名されるまでの数週間にわたってTikTok禁止を回避するために展開されていた交渉を促した。協議はまだ続いていて結論は出ていない。米国9月18日現在、Oracle、そしておそらくWalmartもホワイトハウス、財務省、そしてByteDanceと大統領に受け入れられる取引となるよう協議を続けている。中国にもまたTikTok売却を承認する部門がある。

ここ数週間、トランプ政権はアプリや米国のテクノロジーを支えるクラウドインフラにおける海外干渉を排除するための「クリーンネットワーク」という政策を推進してきた。この政策には、特定のアプリの排除、米国ユーザーデータ主権の米国への移管、「クリーン」な設備で構築されたモバイルネットワークインフラ、米国民にとって「クリーン」なコンピューティング環境を整備するためのその他の方策が含まれている。そうした政策は一般的に書かれているが、政権高官の発言からするに明らかに中国をターゲットとしている。

TikTokとWeChatだけが突然排除されることになったアプリではない。インドでは同国で最も人気の決済アプリの1つPaytm(ペイティーエム)が「度重なるポリシー違反」を理由にGoogle Play Storeから排除された。Paytmは何千万もの月間ユーザーを抱える。そして6月下旬にインドは、TikTokを含む中国企業が開発した59のアプリを禁止すると発表した。

テックがグローバル経済の大きな部分を占めるようになり、また国家利益の競合と相まって、テクノロジーの未来をめぐるそうした国家間の戦いは抜き差しならない状態になりつつある。

画像クレジット:Costfoto / Barcroft Media / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Twitterが米大統領選挙に関するニュースやお役立ち情報をまとめたハブを導入

Twitter(ツイッター)は米国時間9月15日、米国民が米国近代史上最も不確実な選挙に備えられるようにする一連のツールを導入し、選挙ハブをデビューさせた。

ツイッターはトレンドを紹介するタブやキュレートされた話題のリストがあるExploreメニューに新たに「US Elections(米国選挙)」タブを追加した。US Electionsタブは、厳選された英語とスペイン語の選挙ニュース、各州のリソース、候補者の情報などが集められた中心的なソースとなる。

ツイッターはまた、選挙に関連する重要な話題について有権者を啓発するために「public service announcements(公共サービスの案内、PSA)」というものも導入する。PSAは有権者登録にかかる情報、郵便投票の入手についてのインストラクション、そして新型コロナウイルスパンデミックがまだ米国中で猛威を振るう中で安全に投票するためのアドバイスなどを紹介する。

「ツイッターは、2020年米国大統領選挙の投票権を有するあらゆる人に投票を促したい。人々が有権者登録できるよう、そして期日前投票を含む新型コロナの中での選挙プロセスをより深く理解したり、投票の選択肢について情報をしっかりと得たりできるようにサポートすることに注力している」と同社の公共政策担当ディレクターであるBridget Coyne(ブリジット・コイン)氏とシニアプロダクトマネジャーのSam Toizer(サム・トイザー)氏はブログに記している。

同社は2020年大統領選挙についての誤情報やプラットフォームの不正操作をめぐる懸念を解決するために、早くから多くの取り組みを展開してきた。紆余曲折を経たFacebook(フェイスブック)と異なり、ツイッターは政治広告を受け付けない方針を2019年10月の段階で決定した(Daily Beast記事)。ツイッターはまた、選挙に関連する誤情報についても数カ月前から積極的に注意喚起を始めた。これは、トランプ大統領のようなたびたびプラットフォームの規則を破る有名な利用者を想定しての措置だ。

ツイッターはトランプ大統領との争いを2020年5月に勃発させた。有権者登録と郵送投票のセキュリティについて誤った主張を含んでいた大統領の2つのツイートに同社が「要事実確認」のラベルを付けたときだ。子供は新型コロナに「ほぼ免疫がある」という誤った主張を含むビデオを共有したとして、ツイッターは過去1カ月半トランプ陣営のツイッターアカウントを凍結し、投票を思い止まらせるような大統領によるツイートを閲覧できないようにし、そして国民に違法である2回投票を推奨した大統領の一連のツイートに制限をかけた

11月の選挙で起こるだろうと国民が予想していることに対応しようと、ツイッターは先週、候補者が時期尚早の勝利宣言を行った場合の問題を解決する誤情報に関するルールを拡大した。同じアップデートの中で、ツイッターは「平和的な政権移行や禅譲を妨げる不法な行為を扇動する」いかなるツイートに対しても対応措置を取ると明らかにした。

ツイッターは誤情報問題を多く抱えるが、大統領選に関してはすぐさまポリシーに変更を加えたり、必要に応じて選択に流動性を持たせたりと、実際の懸念に積極的に応える姿勢を見せている。2020年大統領選での最悪のシナリオを想定することで、ツイッターは少なくとも選挙をしっかりと見張るつもりだ。こうした激動の年においては未知のことがあるが、これで十分であることを祈ろう。

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Twitterは「選挙結果前の勝利宣言」など権力の平和な移行に反するツイートも取り締まる

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タグ:Twitter アメリカ 政治・選挙 SNS

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

Axonが警察向けの新製品を発表、だが今の警察に本当に必要なのは新しいツールなのか

ボディカメラでシェアトップのAxon(アクソン、旧称Taser)が警察向けの新しいテックツールをいくつかリリース予定だ。これにより、警官がペーパーワークにかける時間が削減され、応答時間の短縮が見込める。しかし、警察の基本的な使命とそれを果たすための手段とが疑問視されている今、本当に必要なのはこうしたテックツールなのだろうか。この点については、アクソンのCEOであるRick Smith(リック・スミス)氏でさえ懐疑的である。

アクソンの新製品が、米国の警官と救急隊員にとって役に立つものであることは間違いない。まず、ボディカメラに記録された音声を自動的に文字起こしできる機能がある(当然、機械学習を利用したものだ)。筆者自身、仕事で大量の話し言葉を扱う必要があるので、こうしたツールの便利さはよくわかる。

ボディカメラの役割の1つは、警官と他の人とのやり取りを記録することだが、そのような記録は分類し、整理された形で参照する必要がある。そのためには、ビデオを再生しては止めるという操作を手動で繰り返しながら、どの時点でどのようなやり取りがあったかをメモしていく面倒な作業が必要となる。大まかな文字起こしがその場でできれば、重要な出来事を見つけて手早くリストアップできるので時間と労力の節約になる。

ビデオに記録された単語やフレーズを検索して、対応するタイムコードを関連付けることができる。画像クレジット:Axon

 

ここで重要なのは「大まかな」という言葉だ。これはあくまでも文字起こし用であって、法廷で使える文書を作成するものではない、とスミス氏は明言する。しかし、アクソンは「高精度が期待される現在の市場でも価値のある製品を設計することを目指した」と同氏は言う。

筆者が気になったのは、このサービスも、他のサービスと同様、機械学習用のトレーニングデータに含まれていない話し方をする人については、誤差の発生率が高くなる可能性があるという点だ。プエルトリコ訛りや南部訛りのある人、あるいは地域独特のスラングや方言を使う人の話し方がトレーニングデータに含まれていない場合、そうした人たちの会話はアルゴリズムでうまく処理されない。スミス氏によると、アクソンは自社の音声認識アルゴリズムをライセンス供与して、リアルワールドデータでテストしてから採用したのことだが、バイアスを早いうちに取り除くために多様なデータセットを保持することついては、同氏は多くを語らなかった。たとえアルゴリズムを書いたのがアクソンではなかったとしても、これは倫理的にも実用的にも重要な点であるため、同社の今後の対応に期待したいところだ。

Image Credits: Axon

アクソンのもう1つの新製品は、911番緊急通報時の警官派遣や、警察犯罪処理センターの業務で使用されるさまざまなツールを統合するシステムだ。

スミス氏はこう語る。「無線システム、転送用コールシステム、警官派遣用ソフトウェアなどがある。緊急通報に応対する通信指令係は通常、ソフトウェアのコマンドラインインターフェースのような画面に猛烈な速さでメモを打ち込みながら現場の警官とはプッシュ・トゥ・トーク 式の無線で話す。しかもこの無線は専用チャンネルを使用していない。こんなに非効率的な環境で重要な任務を遂行してきた彼らはすごいと思った。これらのシステムは統合されておらず、各システムが別々の建物に配置されている場合もある。バラバラなシステムをつなげる接着剤のような役割を人間が担っているため、人件費がかさみ、物事は複雑になる。新製品によってすべてのツールが1つのシステムに統合されることになる」。

この新製品「Axon Respond」ソフトウェアにより、通信指令係は手元ですべての作業を一括して行えるようになり、急行できる警官が現場近くにいるかどうか、その警官の専門スキルは何か、といった関連データも同時に確認できるようになる。もちろん、911番通報がよりスムーズに処理され、適切なリソースを適切な場所に配分できるのであれば、どのようなツールでも大歓迎だ。

以下のコンセプト動画でアクソンの構想がどんなものかを見ることができる。動画内のツールは開発中であり、まだ実写の紹介動画を撮れる段階ではないようだ。

このツールの目的は、単により多くの警官をより早く現場に向かわせることではない(もちろん、それも可能ではある)。

スミス氏はこう説明する。「当社のライブストリーム配信サービスを、戦術的な目的以外で利用したいという顧客がいる。メンタルヘルスの専門家をライブでつなげて対象人物の精神状態を評価してもらうという使い方を検討しているようだ。銃と警棒を持った警官ではなく訓練を受けたメンタルヘルス専門家が対応すれば、まったく違う結果になる可能性がある」。

乱用はツールのせいではない

これまで紹介したツールはどれも優れた製品のようだ。しかし、米国は今、警察官による権力と装備(銃、警棒だけでなく、ボディカメラも含まれる)の乱用が引き起こした大きな危機の中で苦闘している最中だ。

ボディカメラは、表向きは説明責任を果たすためのツールに見えるが、実は警察はボディカメラとその録画映像の使用について非常に慎重で、警官が悪者に見える場合は公開せず、警察に対する印象が向上する場合は公開する、というのがボディカメラに対する批判の大部分を占める。実際にそうしたことが行われているのを目にしたことがある筆者にとって、これは仮定の話ではない。この点についてどう考えているのか、スミス氏に尋ねてみた。同氏は、そのようなことが実際にあったことを否定はしなかったが、テクノロジーを悪者扱いすることには異論を唱えた。

スミス氏は次のように語る。「テクノロジーは万能薬ではない。テクノロジーによって警察が抱える問題が解決されることはない。とはいえ、ボディカメラなしでは解決できない問題もある。ボディカメラはジョージ・フロイド氏の死を防ぐことはできなかったと人は言う。確かにその通りだ。しかし、ジョージ・フロイド氏の事件が継続的な変化を引き起こせるのは、ボディカメラがあったおかげだと思う。ボディカメラがなければ、今のように米国全土の警察幹部が懸命に対応することはなかっただろう。法執行機関の幹部たちが米国全土で、『あれは間違いだった。ジョージ・フロイド氏は警官に殺された』と言っている。こんなことは普通ではあり得ない。警察が公の場で同胞を批判するなど、あり得ないことだ。だが、今回のケースでは、十分な証拠が残されていた」。

確かに、ボディカメラの映像のおかげで、フロイド氏を殺害した警官の行為はより明白となった。しかし、これに対しては、近くにいた一般人が事件を撮影していなければ、ボディカメラの映像も公開されなかった可能性は十分にある、というもっともな反対意見がある。米国民の半数が公開を求めていたが、問題の映像は事実上、警察の担当部門の手から力ずくで取り上げる必要があった。

アクソンは、自社のツールを今、警察に売り込むことによって、将来的に法執行機関にとって重要な存在になるための準備をしているようだ。しかし、仮に主要な警察部門の多くが資金不足、大幅な人員削減、組織再編に直面したら(実際、10年以内にそうなる可能性は高い)、アクソンの立ち位置はどうなるのだろうか。筆者はスミス氏に想像を促してみた。

スミス氏は次のように語った。「当社は、同業他社よりも高い順応性を持つ企業でありたいと思っている。政府はこれまで、テクノロジーを調達する際に、すばやく臨機応変に対応する企業ではなく、複雑な調達システムを管理することに長けている企業を優遇してきた。後者のような企業になれば、今抱えているのとまったく同じ問題を作り出してしまうため、当社はそうなることを意図的に避けてきた」。

スミス氏はこう続けた。「それで『リスクを恐れずに、まったくの白紙から思い切ってやってみたらどうか』と提案してみた。それが成功すれば、顧客の方から当社の製品を欲しいと言ってくるだろう。当社が2009年にクラウドソフトウェアの販売を始めたとき、当時の顧客は、クラウドソフトウェアを使うのは違法だと言い、その後数年は、『そんなものを使うなど、とんでもない』という反応ばかり返ってきた。しかし、今や90%の政府機関にとって、クラウドの方がはるかに安全だ。当社は、その姿を現し始めたばかりの新しい世界に向けてモノを作る。こうして作られる新しいモノは化学反応を促進する触媒のようであり、そのせいで難問に直面する場合もあるが、それは同時にチャンスでもある」。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:Axon アメリカ

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(翻訳:Dragonfly)

メキシコとの国境の壁建設の寄附金をめぐる詐欺疑いでトランプ大統領元側近を逮捕

トランプ大統領の元首席戦略官の1人が逮捕された。8月20日に連邦検察が明らかにした容疑(連邦検察リリース)は、国境の壁建設のための資金調達に関係している。Steve Bannon(スティーブ・バノン)容疑者は起訴された4人のうちの1人だ。We Build the Wall(我々は壁を建設する)という運動での資金洗浄と詐欺の容疑がもたれている。

We Build the Wallは、米空軍の元軍人Brian Kolfage(ブライアン・コルフェージ)によって2018年にGoFundMeキャンペーンとして始まった。メキシコとの国境に壁を建設する費用を民間で賄おうという取り組みは、たちまちトランプ大統領の著名な盟友たちを引き寄せた。ここにはバノン容疑者、カンザス州務長官のKris Kobach(クリス・コバッハ)、ボストン・レッドソックス元投手のCurt Schilling(カート・シリング)、防衛関連事業の請負業者で教育長官Betsy DeVos(ベッツィー・デヴォス)の弟Erik Prince(エリック・プリンス)が含まれる。

GoFundMeキャンペーン

4人全員の名前が訴状にあるわけではないが、バノン容疑者とコルフェージ容疑者はいま、キャンペーンで集めた2500万ドル(約26億円)超がどうなったのか問われる事態に直面している。キャンペーンのウェブサイトとチーム紹介ページにはまだアクセスできる。

「被告人は国境の壁建設に関心を示して出資した多くの献金者を、全ての資金は壁建設に使われると言ってだました」とニューヨーク州南部地区の連邦検察検事Audrey Strauss(オードリー・ストラウス)氏は声明で述べた。

「キャンペーン開始者でWe Build the Wall代表のBrian Kolfageは1セントも受け取らないと献金者に繰り返し約束していた一方で、被告人たちは密かに何十万ドルという金をコルフェージに横流しし、そうした金はコルフェージが自身の贅沢な暮らしに使った」

訴状には、バノン容疑者と他のメンバーがWe Build the Wallキャンペーン活動は私益のためではないとしながら、どのように何十万ドルという金を搾取したのか詳細につづられている。コルフェージ容疑者は「給料として、あるいは報酬として1ペニーたりとも受け取らない」と繰り返し主張していた。

バノン容疑者はキャンペーンで集まった2500万ドルから100万ドル(約1億円)超を流用し、その多くを私用で使ったとされている。コルフェージ容疑者はキャンペーンで集まった資金から35万ドル(約3700万円)を個人の費用にあてた疑いがもたれている。両容疑者は非営利団体、ペーパーカンパニー、偽造の請求書、虚偽のベンダーとの取引を通じて支出を隠そうした。

時宜を得た試みとして、連邦検事のオフィスは主要捜査執行者として米郵便公社(USPS)の法執行部署である郵便検査局(USPIS)を指名した。

「この事件の捜査にUSPISが協力することを感謝する。我々はあらゆる詐欺の根絶と立件に引き続き注力する」

画像クレジット:Andrew Harrer/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

レーダー用いた高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

レーダー技術を用いた高齢者向け見守りデバイス開発の米スタートアップ「Tellus You Care」(Tellus、テラス)は8月20日、シリーズAラウンドとして総額7.3億円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、リード投資家の東京大学エッジキャピタルパートナーズ、NTTドコモ・ベンチャーズ、環境エネルギー投資、DG Daiwa Ventures、All Turtles LLC、個人投資家。今回の調達を経て累計調達額は10.5億円となった。

調達した資金は、研究開発、SaaSプラットフォーム開発、マーケティングなどに投資し、Tellusの事業基盤をさらに強固なものとする。日本国内の高齢者施設へのデバイス導入に注力し、在宅介護、将来的にはコンシューマー向けへの商品開発も計画。サンフランシスコ本社に加え、2020年2月に設立した日本法人でも多くのポジションを強化。パートナー企業とともに日本での事業展開を進めるとしている。

Tellusは、自動運転に使われる最新のレーダー技術をいち早く活用し、プライバシーを守る非接触な方法で人のバイタル(心拍・呼吸)情報を測定する研究を進行。2019年夏にNTTドコモと実施した実証実験など、複数・長期のテストを経て開発した最新デバイス「Tellus」は、室内の壁に設置するだけで対象者のバイタルや活動状況(在室・歩行・睡眠・転倒など)の情報を収集できるという。

これら情報はクラウドで管理・分析を行い、どこからでもアクセスが可能。高齢者などの長期的な健康管理や介護の負担軽減、さらには施設の経営支援に貢献するという。測定したバイタルデータを分析するアルゴリズムなどについては、すでに複数の特許を取得済みで、その他多くの特許も申請中。

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

Tellusの見守りデバイスは、手のひらサイズの90×90×32mm。使いやすさ・設置の容易さを重視しており、国内外での受賞歴のあるプロダクトデザイナー、鈴木元氏がデザインしている。設置についても、業者などによる工事は不要。ひとつの部屋に1デバイスを壁に掛けてコンセントに挿すだけで、対象者を見守り続ける。

介護施設向けの管理画面では、日本国内の複数施設での試用を繰り返し、使いやすさを追求。介護士の携帯電話に対して、転倒や離床などの事態にアラートが送られる。

高齢者見守りデバイスの米Tellusが7.3億円を調達、日本出荷とともに高齢者施設への普及目指す

Tellusは、スタンフォード大卒でGoogleなどでの事業経験を持つ2名が、遠方に住む祖父母の介護という原体験をきっかけに、最先端の技術でエルダー・ケア(高齢者介護)を革新的に変えることを目指し2017年7月創業。2018年からは All Turtlesの支援を受け、研究開発、日本市場へのフォーカス、事業提携や資金調達を行っている。

2020年7月31日、Tellusの見守りセンサーは、日本の介護保険制度における「要介護者等の日常生活の便宜を図るための用具」として認定された。これによって利用者は介護保険の補助を受けて、費用の1割~3割の自己負担(所得に応じて変動)でTellusをレンタルすることが可能となった。

トランプ政権が5Gに向けミッドバンドスペクトルのオークションを発表

5Gはワイヤレス接続のクオリティ、帯域幅、レンジ(届く範囲)を劇的に拡大する可能性のある技術としてますます注目を集めている。この技術を実際に展開する際の主な障害の1つは、単純にスペクトルだ。今のところは民間利用に必要とされる技術が不足している。5Gには、建物を透過し、レンジを拡げるために非常に低い周波数のスペクトルが必要だ。また、将来利用される巨大な帯域幅をサポートするには、高い周波数も必要となる。

だが問題の核心はミッドバンドにある。ミッドバンドは、5Gテクノロジーで主に使われるレンジ、レイテンシー(遅延の程度)、帯域幅の組み合わせを支えられる周波数だ。特にレガシーインフラとレガシーデバイスへの橋渡しの役割を果たす可能性がある。

現在、米国におけるミッドバンドのスペクトルは、圧倒的に軍をはじめとした政府機関が利用している。軍はミッドバンドのスペクトルを軍事作戦から衛星接続まであらゆる目的に使っている。これが商用事業者によるこのスペクトルへのアクセスを妨げ、5G展開を阻む要因となってきた。

米国時間8月10日のホワイトハウスの発表が注目に値するのはこうした事情による。ホワイトハウスは、3450~3550MHzの周波数帯がオークションのために正式にFCC(米連邦通信委員会)の管理下に置かれ、民間事業者はオークションに参加すればミッドバンドの周波数帯にアクセスできると発表した。法的手続きの関係上、オークションは2021年12月に行われる予定で、民間利用開始はおそらく2022年になる。トランプ政権高官によると、ミッドバンドの利用にはAWS-3のスペクトル共有ルール(NTIAリリース)が適用されると見込まれる。

ホワイトハウスによると、各軍と国防長官府からの180人の専門家で構成する委員会が編成され、国防総省が利用するどのスペクトルが5Gの民間利用のために解放できるか検討している。

こうした取り組みは、政府機関が5Gにスペクトルを割り当てるプロセスをスピードアップするために議会を通過した法案である「MOBILE NOW Act of 2017」に沿っている。この法律は米政府の通信問題に関する助言機関であるNTIA(米国商務省電気通信情報局)に対して、3450~3550MHzの帯域を2018年の主要な研究分野とするよう指示した(NTIAリリース)。それを受け同庁は2020年1月に、同帯域を民間利用に転換する「実行可能な選択肢(NTIAリリース)」について報告した。

これは、ワイヤレス通信が5Gへ移行する長いプロセスの中で最近みられたポジティブなステップだ。5Gの実現には技術(携帯電話のワイヤレスチップなど)、スペクトルの割り当て、ポリシーの開発、インフラの構築が必要となる。

電気工学の教授であり、高度なワイヤレス技術を研究する学術研究センターであるNYU WIRELESSの創業者のTed S. Rappaport(テッド・S・ラパポート)氏はこう述べた。「これは米国にとって素晴らしいニュースだ。米国の消費者やワイヤレス業界にとっても歓迎すべき動きだ」。

同氏は「業界における既存の知識と研究を踏まえると、特定の周波数の価値が高い」と述べた。「(オークションの対象となる帯域は)今の4Gスペクトルからそれほど離れているわけではないため、エンジニアや技術者が伝播についてすでに十分に理解している。また、電子機器が非常に低コストで簡単に作れるスペクトルだ」。

近年、5Gへの移行が遅いことを巡り、米政府の指導者らに対する圧力が高まっている。韓国や中国などに遅れをとっており(The Wall Street Journal記事)、特に韓国は世界のリーダーだ。通信インフラへの投資と新しいワイヤレスへの移行を先導する韓国政府の積極的な産業政策のおかげで、国内にはすでに200万人を超える5G加入者(RCR Wireless News記事)が存在する。

米国は最大の帯域幅を持つ5Gのミリ波(高周波)スペクトルでは先行したが、ミッドバンドスペクトルの割り当てでは遅れをとっている。本日の発表は注目に値するが、100MHzのスペクトルが5Gを利用する幅広いデバイスをサポートできるのか懸念する声もあり、今回の割り当ては始まりにすぎない。

それでも、ミッドバンドスペクトルが追加されたことは5Gへの移行を後押しする。帯域が決まればデバイスやチップメーカーが自社製品でどうサポートすべきか対応を始めることもできる。米国で5Gデバイスが広く利用可能になり、便利だと感じられるようになるまでには数年かかるかもしれない。ただ、スペクトルの問題は次世代のワイヤレスに到達するには必ず通る門であり、ついにその門は開かれようとしている。

画像クレジット:PAU BARRENA/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

ロシアの衛星兵器テスト疑惑で明確化する宇宙軍事化の証拠

米国宇宙軍は、ロシアが軌道上の既存探査機を使って実施していると疑われている衛星攻撃兵器(Anti-Aatellite Weapon)テストに関する詳細を発表した。問題のロシア探査機は2020年始めに米国のスパイ衛星を追尾している見られたことで大きく取り上げられたのと同じものだ。宇宙軍によると、その同じ宇宙船が何らかの投射物を発射し、現在地球軌道を周回している物体を監視していると見られている。

米国宇宙軍のJohn Raymond(ジョン・レイモンド)宇宙作戦部長は、The Vergeの取材に対して「『ロシアが宇宙ベースのシステムの開発、テストを続けている』こと、およびそれが米国および同盟国の宇宙資産を危険に晒す戦略を追及しているさらなる証拠である」と語った。

宇宙の軍事化は新しい話ではなく、あらゆる方面のあらゆる部隊が攻撃、防御両方の宇宙兵器技術の開発を追究している。考えられる最大のリスクの1つが、今回のように衛星から発射して他の衛星を破壊する兵器であり、地上の通信、諜報、監視など、あらゆる軍事行動の命令、制御に使用されている重要な宇宙基盤を破壊する可能性がある。

宇宙の軍事化に関して米国を悩ましているのはロシアだけではない。4月にインドが行ったテストで、同国は地対宇宙衛星破壊ミサイルシステムを誇示したが、NASA長官はこれを「人間の宇宙飛行と相容れない」ものとして否定した。もちろんこの種の能力を明らかにしたのはインドが最初ではなく、米国、中国、ロシアいずれも同様のテストを実施している。

軌道対軌道攻撃兵器によるリスクの高まりは、米国を始めとする各国軍隊の宇宙内資産の優先度に劇的な影響を与えた。例えば、米国防総省および他の米国防衛・情報機関は、従来利用してきた膨大なコストがかかる巨大な地球同期衛星への依存度を減らし、冗長性を内包する低地球軌道で動作する機敏な衛星群へと転換しているようだ。彼らは商用小規模打ち上げスタートアップにも積極的な投資を行っており、SpaceXなどの既存ロケット企業以上に迅速な軌道ロケット打ち上げサービスの提供を期待している。

宇宙の軍事化に関しては声高な批判者が数多くいることは明白だが、その膨大な戦術的優位に期待する世界の超大国が巨額を投じている事実は変われない。この種のテストの頻度は社会的注目の高まりを踏まえると、中でも米国にとっては、創造的で高度なソリューションを提供できる民間セクターの支援を大いに期待できる分野である。

画像クレジット:Erik Simonsen / Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

RV版Airbnb「Outdoorsy」で家族旅行に出かける人たち、急増中

世界中がかつてない不安感に包まれる中、何か手段があれば今年の夏は休暇にでかけたいと考えている人たちがいる。

新型コロナウイルスへの感染が引き続き懸念される今の状況では、多くの人にとって飛行機もホテルも選択肢からは外れるだろう(費用については言うまでもない。飛行機とホテルを利用する金銭的余裕がある米国民は4000万人減少する見込みだ)。そうなると、今年の夏は旅行先でAirbnb(エアビーアンドビー)を利用するしか方法はなさそうだ。あるいは、遠くに住む親族に会いに行くための交通手段と宿泊場所を確保するにはRV(レクリエーショナルビークル:キャンピングカーやキャンピングトレーラーなど)またはキャンパーバンのレンタルしかないと考えて、そのような車を初めてレンタルしようと計画する人も増えている。

TechCrunchは先週、後者のトレンドの波に乗りそうなOutdoorsy(アウトドアジー)の共同創立者兼CEOで連続起業家でもあるJeff Cavins(ジェフ・ケイヴィン)氏にインタビューを行った。アウトドアジーは2015年に設立されたRVの個人間レンタルサービス会社だ。起業後数年を創業者の自己資金で運営した後、8800万ドル(約95億3000万円)をベンチャーキャピタルから調達した。そのうち1300万ドル(約14億800万円)は、今年初めに静かに完了した5000万ドル(約54億1500万円)のシリーズB資金調達ラウンドの追加分だ。

レンタルプラットフォームを利用する車両オーナーからもレンタル利用者からも手数料を取るアウトドアジーに、顧客の変化や今夏の旅行先に関する最新トレンドについて意見を聞いた。以下がインタビューの内容だ(長さを調整するために多少の編集を行っている)。

TechCrunch(以下、TC):新型コロナウイルスによってアウトドアジーのビジネスモデルはどのように変化しましたか。

ジェフ・ケイヴィン氏(以下、JC):以前は、当社のレンタルサイト利用者の平均レンタル期間は約6日間でした。それが現在では9日間を超えるようになっています。他の多くの企業と同じく、当社も新型コロナウイルスの影響を受け、レンタルサイトでのキャンセルが相次ぎましたが、ある時期になるとものすごい勢いで予約件数が回復し、その後ある程度の件数で落ち着きました。新型コロナウイルスによる影響で一番落ち込んだ3月下旬と現在を比較すると、予約件数は2645%増加しています。

TC:予約全体のうち初回利用者の割合はどれくらいですか。

JC:5月は全予約件数のうち88%が初回利用者でした。これは当社史上、最高記録です。さらに、初回利用者の半数以上がリピーターとしてすでに次のレンタルを予約しています。つまり、5月に当社のレンタルサービスを利用してメモリアルデーの連休に旅行にでかけ、数日で戻ってきてすぐに、例えば7月の独立記念日や6月中の旅行のために予約した利用者が多かったということです。ご存じのとおり、多くの人は子どもたちと一緒に自宅で過ごしています。そのため、米国ではみんなが長い夏休みを過ごしているようなものです。さらに、子どもがいる家庭は特に、RVで移動すればより安全に旅行できると感じているようです。

TC:初回利用者が求めるサービスに何か特徴はありますか。RVを持つキャンプ熟練者だったら要求しないようなサービスを求めていますか。

JC:RV業界で見られる大きなトレンドとして、米国に限ったことではないのですが、新しい消費者は、大型キャンピングカーは求めていません。彼らが求めているのは、キャンパーバンです。なぜなら、当社のレンタルサイト利用者の平均年齢は40歳以下だからです。それまでベビーブーム世代や退職者世代が多めだったRV業界にとってこれは驚きの発見でした。また、当社のレンタル利用者はキャンプに電気設備を求めません。自分たちにとって快適で、資源の無駄が少なく、環境により優しい車を利用したいと思っているのです。そのため、ソーラー発電設備、可搬型の飲料水タンク、マウンテンバイクやスポーツギア用のフックなどが人気です。また、インスタ映えするユニークな場所に行きたい人も増えています。当社は以上のようなトレンドが出てきていると感じており、このトレンドは世界共通だと思います。

TC:昨年1月のインタビュー時、アウトドアジーのプラットフォームに登録されているレンタル用RVは3万5000台でした。現在の登録台数は何台ですか。

JC:現在、個人間レンタル用に登録されている台数は4万8000台です。米国外のユーザーも加えて、API経由でつながっているIndies Campers(インディーズ・キャンパーズ)やJucy(ジューシー)などから利用できる台数を含めると合計6万8000台になります。

TC:レンタル車両の消毒や病気の感染防止のためにどのような対策を実施していますか。

JC:どんな形態の宿泊施設でも衛生管理は重要な要素です。当社では、レンタルRVオーナー向けに、衛生管理に関するCDC(疾病予防管理センター)ガイドラインをまとめたものを作成しています。さらにオーナーには、次のレンタルまでに十分な時間を空けて、車両の消毒を手作業で丁寧に行うようにお願いしています。当社の投資家の中に、ハーバード大学での博士論文でノーベル化学賞を受賞した分子生物学者がおり、入手しやすい最新型紫外線ランプを使った消毒方法について当社の車両オーナーに周知するのを助けてくれています。この紫外線ランプは救急車でも使われていて、一定の時間照射すると、照射された範囲を完全に消毒できます。

レンタル利用者にも、消毒用品の持ち込み利用を勧めています。自分がいる環境は自分でコントロールできた方が安全だと感じる人が多いためです。当社では、レンタル時のキー引き渡しの非対面化を導入したため、今後は、オーナーがキャンプ場まで運転して車を運び、キャンプ用の日よけシートやアウトドア用チェアなどを設置した後でレンタル利用者がその場所に来る、といったことができるようになります。

TC:レンタル利用者の動向が変化しているとおっしゃいました。ちなみに、RVをレンタルしてもヨセミテやイエローストーンに向かうのではなく、例えば小さい子どもがいて在宅勤務が難しい人がRVをレンタルして近場の駐車スペースで仕事をする、というようなケースはありますか。

JC:そうですね、例えば、私はサンディエゴに住んでいますが、祖母はカンザスシティにおり、子どもたちが祖母に会いに行く手だてはありません。でもキャンパーバンやRVをレンタルすれば、自宅待機期間中でも愛する親族に家族で会いに行くことができ、家族の絆も強まります。このような用途でレンタルする利用者が増えています。

TC:今年の初め、予約キャンセルが続いたとおっしゃいました。レイオフをしなければなりませんでしたか。

JC:新型コロナウイルス感染症が流行する前、当社には160人の社員がいました。確かに、多少の組織再編は行いました。当社はイタリア、ドイツ、フランス、英国、オーストラリア、ニュージーランド(後に閉鎖)にもチームを置いていました。そして、新型コロナウイルスによって当社が受けたインパクトのほとんどは、米国外のマーケットからのものでした。米国内では人員をカットするのではなく、社員と一緒に座って話し合い、「もしすべての社員が減給を承諾してくれれば、その報酬として会社の株を譲る。今は会社の雇用を守るべきときではないだろうか」と提案しました。

私は無収入で働いています。給与は受け取っていません。他にも数名の役員が給与を辞退してくれました。社員に減給の見返りとしてより多くの自社株を渡すことで、社員と投資家が協力できるようにしました。

TC:ビジネスが持ち直してきている現在、次の資金調達の計画はありますか。

JC:今すぐにさらに資金を調達する計画はありません。5月は黒字でしたし、6月も黒字になると思います。現在のレンタル予約状況を見ると、新型コロナウイルスの第2波が来て再びロックダウンが実施されない限りは、7月、8月、9月も黒字になる見込みですので、今年は会計年度全体でも前年比増益になるかもしれません。

当社へのインバウンド投資打診はほとんどがレイトステージ・グロース投資家によるものです。会社としてそのような投資を受けたいのか、それとも、自分たちだけで決定して迅速に動ける今の環境を維持したいのかは、役員たちと十分に話し合って決めたいと思います。

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Category:モビリティ シェアリングエコノミー

Tag:自動車 Outdoorsy

シリコンバレーは黒人の起業家と投資家を応援している

警察による残虐行為と体系的人種差別から生じる経済的不平等への抗議行動が米国で続くなか、テクノロジー業界がこの大義への支持を表明しており、ベンチャーキャピタル企業もこの輪に加わっている。

テクノロジー企業の経営陣や彼らを支持する投資家たちは、この抗議運動とBlack Lives Matter(黒人の命の大切さを訴える)運動を支持する声明を発表している。Benchmark(ベンチマーク)、Sequoia(セコイア)、Bessemer(ベッセマー)、 Eniac Ventures(エニアックベンチャーズ)、Work-Bench(ワークベンチ)といった企業、そして SaaSTR Fund(SaaSTRファンド)の起業家であるJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏などがこの大義を支持し、ベンチャーキャピタル業界での人種的偏りを改善する手立てを講じるとツイートした。

しかし、一部の黒人起業家および投資家は、テクノロジーおよびベンチャーキャピタル業界が歴史的不平等に対しこれまで何らのアクションも起こしてこなかった事実を踏まえ、これらの企業の動機に疑問を呈している

「テクノロジー業界で黒人を見出し、雇用し、資金を融資するのは、他のグループを見出し、雇用し、資金を融資するプロセスと同じです。まずそのグループに属する人々と関係を築き、そのコミュニティーのオピニオンリーダーを探し、彼らから学んだ上で、採用チームや投資チームに対し融資の専門知識に欠けた部分があることを伝え、それを埋めるのです。一人の人物に形ばかりの関与をしたり、一度きりの取り組みに資金を提供したり、情報ルートの問題として処理するのは正しいやり方とは言えません」と、Cleo Capital(クレオキャピタル)のマネージングパートナーであるSarah Kunst(サラ・クンスト)氏はメール上でTechCrunchに語る。「これらのファンドが持つ有り余るスキルやリソースを使って学び、関係を構築し、資本を展開する。これこそが重要な点です」。

「採用し、資金を提供する」

投資家の取るべきステップは主に2つに絞り込まれるという。人々を採用し、投資するというアクションだ。

Mediumへの投稿で、ニューヨークを拠点とする投資会社Work-Benchは黒人起業家や投資家への支援を確実に行うための詳細な手順を示した。

同社は、Equal Justice Initiative(イコールジャスティスイニシアチブ)Southern Poverty Law Center(サザンポバティローセンター)Color of Change(カラーオブチェンジ)といった組織への経済的支援に加え、 自社の事業が黒人起業家や投資家支援につながることを保証する新しいステップを導入中である。

同社は、「関心のある場合」に取るその他数々のステップについても詳しく述べている。そのステップには、他のエンタープライズVCのためにエンタープライズスタートアップに取り組んでいる黒人起業家の公開データベースを照合したり、HBCUvc(VCやテクノロジー産業でのキャリアのために黒人を訓練する非営利組織)や黒人が関与するその他のVC企業と協力したりするといったことが含まれている。

一部の企業は、HBCU(歴史的黒人大学)から発生した企業に独占的に焦点を当てる専門プレシード投資ファンドを創設するなど、さらに一歩進んだ手段を講じている。

これらのイニシアチブは始まったばかりの初期段階にあり、投資家たちは彼らの取るステップについて明らかにする準備が整っていないが、彼らは独占的ファンドの枠を大きく拡大している。投資家たちはHBCUやランドグラント大学での採用活動を強化し、多様な候補に目を向けポートフォリオ企業内での社内トレーニングに力点を置き、広範囲かつ強力な社内起業家プログラムを通じて新世代のマイノリティ起業家を生み出そうとしている。

またこういった企業らは、進捗状況を監視し、企業内やポートフォリオの足りない部分を見出すためにベンチマークを設けることや社内調査を実施することを検討している。これを開始するには、まず企業が今まで何人の黒人起業家に投資したかを年次フォローアップとともに透明性と説明責任をもって公開するとよいだろう。

投資家たちはこれらのデータに内々でアクセスできるが、こういった統計を一般公開している企業は稀だ。Initialized Capital(イニシャライズドキャピタル)は月曜日、 最新のファンドのうち、黒人の起業家に率いられている企業は7%であることを発表した

Backstage Capital(バックステージキャピタル)の起業家Arlan Hamilton(アラン・ハミルトン)氏が我々へ送ってくれたメッセージの中で書いていたように、多様性の問題はファンド自体にも及んでいる。

「どこへ行っても投資家たちは、自分たちに何ができるだろうかと私に尋ねてきました。なにも複雑なことではありません。黒人の起業家に投資してください。『すべての』黒人起業家に投資する必要はありません。日頃のセオリーや、いわゆる『基準』を維持して、投資する黒人起業家を何人か見つければよいのです。必要とあらば私のところに130社のポートフォリオ企業がありますし、さらに雇用をおすすめできる数十人の黒人投資家をまとめた厳選リストを紹介することもできます。私のメールアドレスは、ARLAN@BackstageCapital.comです。もうこれで言い訳はできないでしょう」。

VCパートナーを採用する内部活動は、本質的に偏りのあるものだ。これをドミノ効果として考えていただきたい。LPが白人のGPだけに融資する場合、白人のGPは採用すべき他のパートナーを既存のネットワークの中で探すことになる。多様性に欠けるVC企業が、採用担当者または過小評価グループに属する起業家を通じて既存のネットワークを打ち破らない限り、このドミノ効果は今後も続いていくだろう。

「小切手を切りたい」

ベンチャー企業のパートナーたちは、黒人起業家のコミュニティを今後より強くサポートしていくことを約束している。

「私は一年の内そうたくさんの投資をする方ではありませんが(私はじっくり型の静かな投資家です)、あなたの会社の説明資料をメールしてください。6月は黒人起業家とだけ会う、またはZoomミーティングをするつもりです」とJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏はTwitterに投稿した

ニーヨークを拠点とするEniac Ventures(エニアックベンチャーズ)の起業家Nihal Mehta(ニハル・メタ)氏はTwitterで、一対一のビデオ通話サービスを提供するSuperpeerを使用して、黒人起業家から無料でアポイントメントを受け付けると発表した。メタ氏のツイートから24時間以内に夏の間の予約がすべて埋まった。彼は黒人起業家と103回のミーティングを今後行う。

「これは相当な需要があり、黒人起業家とテックコミュニティーの間に埋めなければならない大きなギャップがあることを意味します」とメタ氏は言う。

Eniac Venturesチームは全社で、黒人起業家と話し投資を行うための無料の専用Superpeerコンサルティングスロットを設けている。

Spero Ventures(スペロベンチャーズ)のパートナー、Ha Nguyen(ハ・グエン)氏は金曜日に黒人起業家向けの朝食会とAMA昼食会を主催している。また、グエン氏は黒人起業家に対し、資金調達プロセス、会社説明、次のチェックのための紹介文について支援が必要なときには連絡を取るように提案した。「そして私は小切手を切りたいと思っています」とグエン氏はLinkedInに投稿している

Hustle Fund(ハッスルファンド)のElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏は同社のポートフォリオ企業の15%がネットワーク外の企業であると述べ、起業家に対し同社に今後も完全なインバウンドピッチを送るよう促している。

またイン氏は、Score 3で働いている同社のベンチャーアソシエイトインターンJasmin Johnson(ジャスミン・ジョンソン)氏、あるいはBackstageの元プリンシパルであり、自身の投資家マッチングプログラムを立ち上げたLolita Taub(ロリータ・タウブ)氏のような、多様なネットワークを持つ起業家と非公式な取引フロー関係を築こうとしているところであると伝えた。

タウブ氏は、固定ツイートGoogleフォームを掲載し、そこでスタートアップからの投稿をレビューしている。その企業が彼女のお眼鏡にかなう場合には彼女から連絡し、他の投資家(Backstage Capital、Harlem Capital、Hustle Fund、WXR Fund)にふさわしいようなら、タウブ氏は両者を引き合わせる。

タウブ氏はテック業界とベンチャーキャピタル業界において華麗な実績を持っているため彼女のネットワークは広範囲に渡る。しかし彼女の投資プログラム自体はシンプルだ。これは多様なネットワークを持つバレーのスーパーコネクターなら、誰にでも再現可能な手法だ。

「才能はいつも身近にあった」

投資コミュニティーが黒人コミュニティーへのサポートを先を争って表明する中、黒人投資家やスタートアップ起業家はそうした動きに疑問を投げかけている。

抗議運動が長引き、数え切れないほどの黒人男性や黒人女性が警察の手によって命を失って後、やっと投資家がこの業界、そして国全体が直面する問題について行動を始めたという点にこの問題の深さが表れている。

黒人投資家が率いる企業、Precursor(プリカーサー)は日曜日次のような声明を発表した。

MaC Venture Capital(マックベンチャーキャピタル)のMarlon Nichols(マーロン・ニコラス)氏、Upfront Ventures(アップフロントベンチャーズ)の Kobie Fuller(コビー・フラー)氏といった投資家は、自らの投資活動とアフリカ系アメリカ人の人材ネットワークであるValence(ヴァレンス)のようなスタートアップの創設を通じて、優先事項として多様な起業家グループの育成を行ってきた

ニコラス氏が本日の投稿で指摘したように、業界における不平等を示すデータは驚異的である:

  • 黒人はスタートアップの幹部ランクにおいて82%過小評価されている
  • 調達された全ラウンドの75%以上が白人の融資チームに渡っている
  • 人種的に多様性のある創設チームおよび経営陣チームは、全員が白人の創設チームおよび経営陣チームよりも、買収とIPOにおいて高い実現倍数(RM)を生み出している(それぞれ3.3倍対2.5倍、および3.3倍対2倍)

ですから、心から人種差別に反対であるなら、今すぐに始めることができるのは、黒人男性や黒人女性が率いるスタートアップやファンドに投資しない理由についてあれこれ言い訳するのをやめることです。そのかわりに投資し、ネットワークを広げ、我々をリーダーシップ/意思決定ポジションで雇用し、白人が率いるスタートアップやファンドに適用している基準を我々にも適用してください。

改善への道のりは長く、投資家が現状を変えるためにできることは山程ある。

「あらゆるトップMBAプログラムには黒人の学生組織があり、あらゆるトップテック企業には黒人ERGがいます。まずはこの集団に対し採用活動を行ってください。黒人テックリーダーが率いるUlu(ウル)、Precursor、そして私自身のファンドCleo Capitalなど、とても有力なファンドがあります。 Chris Lyons(クリス・ライオンズ)、Ken Chenault(ケン・シュノー)、Adrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)、そしてMegan Maloney(ミーガン・マロニー)といった非常に優秀な投資家もいます」とクンスト氏は書いている。

「私たちは皆、テック分野の黒人を見出しサポートするためどういったところで時間を費やしているか、熱心に発言しています。私たちはCulture Shifting WeekendやBlack Women Talk Techといったイベントで話し、Code2040やHBCUVC、Blck VCといった団体をサポートしています。簡潔に言うと、私たちは活動に尽力してきましたし、人材は常にそこあったのです。あとは何が残っているかというと、大規模ファンドがこの流れに乗って黒人のVCを雇用したり黒人の起業家に融資をするために真摯な取り組みを行ったりし、また彼らのポートフォリオ企業に対し、リーダーシップポジションに黒人を採用するよう促すことです」。

大規模なベンチャーキャピタル企業が過去数日間で発表した取り組みにより、過小評価グループに属する起業家がベンチャーキャピタル資金や意思決定者にアクセスする機会が拡大し、それが小切手につながるかもしれない。しかし、カレンダー上のアポやメールだけでは人種差別の問題は解決しない。黒人起業家に限定し、1ヶ月間独占的なミーティングを行っても、ベンチャーキャピタル業界に体系的に巣食った問題を解決するには至らない。

それゆえ、ベンチャーコミュニティーはより強固なアクションを取る必要がある。なぜなら言葉だけの声明は、小切手を切ったり採用を行うことほどの力を持たないからである。

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Category:パブリック / ダイバーシティ

Tag:差別 アメリカ

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(翻訳:Dragonfly)