クチコミを成功させる6つの原理

編集部注:Jonah BergerはWharton Schoolのマーケティング教授で、New York Timesのベストセラー書籍、”Contagious: Why Things Catch On“の著者。Twitterアカウントは@j1berger

なぜ、会社や製品やサービスによって、クチコミの多いものと少ないものがあるのだろうか。それは運ではない。科学だ。ソーシャルメディアの専門家は、つまらない製品やつまらないアイデアについて話す人はいないと説明する。だからみなさんは、面白い製品やブランドほど話題になると考えるたろう。驚いたことに、そうではない。

スタートアップはクチコミ次第で生きも死にもする。新しいウェブサイトであれ、革新的リクルーティング・サービスであれ、B2Bサイトであれ、スタート直後の消費者認知度は常に低い。誰もあなたの存在に気付かない、だからクチコミで広げる必要がある。しかし新しいベンチャーの殆どは大きな広告予算を持っていない。オーガニックに成長しなければならない。既存の顧客やファンに新たな客を呼んできてもらう ― ひとりずつ。

ではなぜ、他より早く話題になる会社や製品やアイデアがあるのだろうか? クチコミを得るには奇跡が必要であるかのように考える人がよくいる。幸運でなくてはいけない。市場環境が最適でなくてはならない。3つか4つの説明不能な要素が不可解な方法で組み合わさってマジックが生まれる、等々。

それは面白い理論ではあるが、完全な誤りである。

人はよくクチコミを得るには奇跡が必要であるかのように考える。幸運でなくてはいけない

クチコミにはそれを支える科学がある。それはランダムではなく、人がある物より他の物について話す理由は運ではない。行動経済学によって人がなぜ特定の選択をするのかが研究されているように、あるいは統計学者が「ビッグデータ」から人間行動に関する洞察を引き出すように、研究者たちはわれわれが何を話題にしシェアするかを決める際の人間行動の分析に懸命だ。

例えば最近のある研究で、私は同僚と共にコカコーラ、ウォルマートから小さなスタートアップにいたるまで約1万種類の製品やブランドに関するクチコミデータを分析した。ハイテク企業からサービスまで、B2Bから消費者向けパッケージ製品まであらゆる物を対象とした。別のプロジェクトでは 約7000件のオンラインコンテンツについてバイラル性を分析した。政治や国際ニュースから、笑いのネタやスポーツやファッションまで。

しかしこれらの研究の焦点は、どの商品がよく話題になるか、あるいはどのタイプのオンラインコンテンツがバイラルに広がるのかについてだけにあったのではない。むしろ重要なのはこれらの結果の背後にある動機を理解することだった。ある物事が他よりよく話題になり、あるいはある物事がバイラルになる際に潜む人間行動。異なる感情(悲しみ対怒り等)が人々のシェアする内容に与える影響。オンラインとオフラインのコミュニケーションにおけるトップ・オブ・マインド[意識の一番上にあるもの]について話すかどうかに与える影響の違い。会話の心理学。ソーシャル伝達の科学、等々。

例えば「トリガー」を考えてみる。ディズニーは、Cheerios(シリアルのブランド)より面白い。それはハマりやすく感情に訴える体験だ。しかし、問題は人々がそれを頭に浮かべることはあまり多くないことだ。たしかにテーマパークに行った直後はそのブランドを多く口にするが、何週間何ヵ月たってからは、思い出すトリガーがない限り、話題にはしない。

Cheeriosは面白さには欠けるが、人は1日1回365日朝食を食べる。たとえCheeriosを買わなくても、毎週シリアル陳列棚の前を通るたびに目に入る。その結果Cheeriosの方がずっと多くトップ・オブ・マインドになる。製品やアイデアがいくら面白くても、人々がそれを思い出すトリガーがなければ、頭に浮かばない。トップ・オブ・マインドは即ち、口をついて出てくるかということだ。

この研究で発見したクチコミ促進要因は、トリガーだけではない。私たちは人々が話しシェアするのを推進する6つの原理が働く様を、繰り返して見てきた。6つの原理の頭文字をとってこれをSTEPPS(Social Currency、Triggers、Emotion、Public、Practical Value、Stories)と呼ぶことにする。

Social Currency[ソーシャル流通性]。普段乗っている車や着ている服と同じように、われわれが何を言うかによって、人々がわれわれを見る目が変わる。ある物事によってその人が良く見えれば見せるほど、人はそれを伝えたくなる。

Triggers[トリガー]。最初に頭に浮かぶものが、最初に口から出る。ピーナツバターからジャムを連想するように、ある製品やアイデアを思い出すことが多いほど、よく話題に上る。

Emotion[感情]。人は気にかけているものをシェアする。ポジティブ(ワクワク感やユーモア)であれネガティブ(怒りや心配)であれ、感情の高ぶりはシェアを促進する。

Public[公開性]。人は他人の真似をする。しかし、猿が見たものを真似ると言われるように、見えやすいものほど、真似しやすい。公開の場で見えやすいものほど、真似を促進する(例:iPodの白いヘッドホン)。

Practical Value[実用価値]。人は自分の見栄えを良くしたいだけではなく、人の役にも立ちたいと思っている。だから役に立つものほどシェアする。資金調達10の方法や、交渉に役立つ5つのヒント、などを思い浮かべてほしい。

Stories[物語性]。誰も自分を歩く広告塔とは思われたくない。もっと大きな物語の一部について話したい。だから「トロイの木馬」物語、即ち自分のブランドが便乗するためのメッセージを作るのである。

これら6つの原理には、クチコミを増やすための処方が含まれている。これは伝染コンテンツを作り、より多くの人々が製品やアイデアついて話すようにするためのレシピだ。

このレシピ通りにすればバイラルなヒットが保証されるのか? ノーだ。しかし、打率を上げることはできる。毎打席ホームランを打てる人はいないが、打撃の理論を理解することによって、ヒットや二塁打、時にはホームランを打つことによって打率を上げることができる。

クチコミに関しても同じだ。なぜ人が話題にしシェアするかの科学的根拠を理解することによって、企業や組織は製品やアイデアのクチコミを増やし、ヒットになるのを助けることができる。

[画像提供:Shutterstock

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(翻訳:Nob Takahashi)


モバイル・アプリがポストPC時代のエンタープライズ・ソフトウェアの主役になる条件

編集部注: 本稿筆者のAaron Levieはクラウド・コンテンツ共有サービス、Boxの共同ファウンダー、CEO。Twitterは @levie

週明けに開催されるAppleのWWDCカンファレンスには何千ものデベロッパーが参加する。だが、彼らの会社のほとんどはAppleがiPhoneとAppStoreをオープンするまで存在していなかった。

ところがエンタープライズ向けアプリの市場はほぼ手付かずのままだ。なぜエンタープライズ版のAngry Birds〔に相当するキラー・〕アプリが出現しないのだろうか?

ポストPC時代のエンタープライズはPC時代から激変

70年代後半に始まったPC革命によって幕が開いたPC時代は2007年頃にポストPC時代に転換し始めた。しかし当面、エンタープライズのITは大きく変化しなかった。PC時代にはMicrosoftと大手ハードウェア・メーカーとOracle Siebel、PeopleSoft、Lotusなど少数の巨大ソフトウェア企業を頂点とする寡占的エコシステムが長い時間をかけて確立した。企業IT部門は混乱を嫌い、群小ソフト企業はこのエコシステムに居場所を見つけることができなかった。

他の大規模な変換と同様、PC時代からポストPC時代への変化も一直線に進むものではない。IT部門などバックオフィス業務の大部分は伝統的オフィス環境 で実行される。ところがフロントオフィスの業務が実行される場所はもはやオフィスではない。顧客先、実店舗、空港、飛行機、地下鉄、ホテルなどだ。

医師は診療に必要な画像をiPadのVueMeで確認する。営業担当者は出先から契約書や報告書を送信する。航空会社のパイロットもペーパーレス化する。セールス担当は出先でWebexを使う。 連邦裁判所の判事も訴訟文書をiPadで読む。分散チームはLuaで共同作業する。

エンタープライズ・アプリはiPadsに登場し始めてはいるが、レガシーベンダーの地位を脅かすところまで行っていない

Chris Dixonは「歴史が繰り返すものなら、タブレットにネーティブな生産性アプリがやがて開発されるはずだ」と主張する。しかし、この分野ではMicrosoft、Oracle、SAP、IBMその他のPC時代の主役たちの影は薄い。タブレット・アプリは検索してタップするだけでインストールされてしまう。PC時代のようなベンダーによる囲い込みは効果がなくなった。エンドユーザーはウェブ会議だろうとCADソフトだろうとCRMシステムだろうと、即座に手にすることができる。アプリはあくまでその価値、つまり機能、デザイン、使い勝手、価格などで判断されるようになった。企業向けライセンスで縛り付けておくパラダイムは過去のものだ。

昔だったらインフラの入れ替え、ソフトウェアのライセンス、メンテナンス契約、後方互換性などさまざまなハードルのために変化がエンタープライズ社会に及ぶ速度は遅かった。しかし今日では事情は違う。新プロダクトの採用のカーブは急速だ。Steven SinofskyがD11カンファレンスで述べたように、エンタープライズが求めるものは様変わりしている。

エンタープライズ・アプリ・エコシステムへようこそ

毎年エンタープライズ市場に投じられる金額は膨大だ。正確にいえば2970億ドルにもなる。しかしモバイル・アプリはその中でごくわずかなシェアしか占めていない。BYOD(個人のデバイス持込可)のポリシーが広まり、アメリカの企業社会では多様なデバイスが使われるようになった。しかしソフトウェアの購買パターンはまだ大きく変化していない。モバイル・アプリの市場は何百億ドルにもなっているが、そのほとんどは消費者向けであり、エンタープライズ向けではない。

ここではAngry BirdsやSupercellが年間何億ドルもの金を稼いでいる。コミュニケーションの分野ではWhatsApp、Lineといったスタートアップが破壊的イノベーションをもたらし、キャリヤから何十億ドルもの売上を奪い自らも相当の売上を達成している。

ところがエンタープライズ・アプリはiPadsに登場し始めてはいるが、レガシーベンダーの地位を脅かすところまで行っていない。なぜだろうか?

エンタープライズの場合、消費者向けアプリとは異なるメカニズムが働く。IT部門以外の社員は有料アプリを利用する権限がない。ポストPC時代に入って、スピード、効率、使い勝手の向上が劇的に進んでいるというのに、エンタープライズ・ソフトウェア調達の現場は何一つ変わっていない。

こうした状況を打破するには、デベロッパーがプロダクトを企業に採用させ、料金を得るプロセスを改善する必要がある。つまり現在エンタープライズ・ソフトウェアの導入にあたって必要とされているような煩雑な手続きを大幅に簡素化しなければならない。

消費者、一般ユーザー向け市場ではクチコミの効果が大きい。ユーザーは友だちの使っているアプリに興味を持つ。しかしエンタープライズ市場ではユーザーにアプリを発見してもらうために別のアプローチを取る必要がある。このためにはAndroidやiOSプラットフォームなどのプラットフォーム側がエンタープライズ向けに最適化したセクションを設けてくれることが望まれる。アプリ・デベロッパー側では高いレベルの保証やサポート、SLA(サービス・レベル契約)、堅牢なセキュリティーの提供によってエンタープライズの信頼を得るよう務めなければならない。

こうした条件が揃ったときには、エンタープライズ向けモバイル・アプリに真のポストPC時代にふさわしいイノベーションと市場拡大が爆発的に起こるだろう。.

幸いなことに、ポストPCの各種デバイスの普及は一段と加速している。タブレットが登場したのはわずか3年前だが、今や年間2億台も販売されている。それだけの数が売れるようになるまでパソコンは27年もかかった。モバイル・ソフトウェアの市場も同様のスピードで拡大している。2015年には仕事でモバイル・デバイスを利用する人口は13億人になると予想されている。エンタープライズ・モバイル・アプリのデベロッパーにとっては過去の例を見ない巨大市場が一挙に現れることになる。われわれの挑戦は今始まったばかりだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


オバマ氏の大統領令が、特許ゴロのばかげた悪用を阻止する

アイディアを所有することに法的権利を与えることが、意図せざるばかげた結果を生むことがある。「大ばかな特許がスモールビジネスを破壊している」と、NBAダラス・マーベリックスのオーナー、Mark Cubanはかつて私に言った。スタートアップのおよそ1/3が特許侵害で脅されており、その多くがスモールビジネスを脅して示談に持ち込むことだけを目的として設立された組織(いわゆる「特許ゴロ」)による。オバマ大統領は今日(米国時間6/4)午前、国際的に嫌われている企業体に対していくつかの非常に具体的な大統領令を発動する決定を下した。

背景を少し説明した後、ばかげた法の乱用を阻止する3つの方法を挙げる。

特許囲い込みの歴史

特許ゴロ、あるいはもっと外交的正式名称である特許係争団体[Patent Assertion Entities (PAE)]は、知的財産を蓄積して他の脆弱なスモールビジネスを脅して示談に持ち込むことのみを目的とするダミー会社である。

「彼らは自分では何ひとつ生産していない。他人のアイデアを利用してハイジャックし、金をゆすり取ろうとしているだけだ」と、オバマ大統領は今年のGoogle+ハングアウトで明言した

サンタクララ大学の研究によると、特許裁判の推定61%が特許ゴロによるもので、訴訟の76%が15社以上を訴えている。これは言うなれば訴訟マシンだ。

知的財産の囲い込みは、アメリカで多くの偉大なイノベーターたちが主張してきた由緒ある伝統だ。ライト兄弟は補助翼(翼につけられた着陸時に伸びる小さなフラップ)を持つ飛行機を商品化する者は誰でも訴えると脅した。「1917年に政府が介入し、ライト兄弟に特許をライセンスするよう命じたことで、ようやく飛行機のイノベーションが本格的に始まった」とスタンフォード法科大学のマーク・レムレー教授は書いている

よって、過激な特許囲い込みに対する政府の介入は、アップルパイ並みにアメリカンなのである。

ばかげた乱用を阻止する3つの試み

1. 機能クレームの範囲を狭める – 多くの恥知らずな会社が、とんでもなく広い範囲のイノベーションの所有権を主張する。Amazonが「ワンクリック購入」ボタンの特許を取得しようとしたことは有名だ。Acacia Researchという特許ゴロは、インターネット経由で医療画像を送信することの所有権を主張した。オバマ氏の大統領令は「発明の範囲を、ある目的を果たす〈あらゆる〉方法ではなく〈特定の〉方法に限定しようとしている」と、電子フロンティア財団がこの大統領命令に関するブログ記事で説明している。

「官邸がソフトウェアの機能クレームに注目していることは大変喜ばしい。特許ゴロによる広すぎる特許係争の多くは、これに起因していると私は考えている」とレムリー教授が私宛のメールで語った。

2. エンドユーザーを巻き込む – 時として特許ゴロにとって、彼らが所有権を主張する製品を使っていると言って企業の不意をつくだけの方が簡単なこともある。例えばLodsysは、ユーザーに「クリックしてアップグレード」させているアプリデベロッパーを脅す暴力的訴訟を続けている ― AppleとGoogleが提供している機能だ。

当然Appleは自社ユーザーを守るためにこれに介入し、未だに裁判は続いている。

3. 所有者を公表する – 特許ゴロは法の抜け穴を使って審査を回避し、誰が実際にその知的財産を所有しているかを隠そうとするが好きだ。例えば、Intellectual Venturesは、特許権を主張するダミー会社を1000社持っていて、司法審査を避けることが戦術であると自ら認めている。オバマ大統領の命令は「特許所有者は、特許庁に真の所有者の最新状態を報告する」ことを義務付けている。

追加のステップ ― おそらく不十分

オバマ大統領が宣言するだけでアメリカ特許の混乱状態を正すことはできない。法律の助けが必要だ。具体的には、彼は「敗者負担(loser pays)」を支持している。これは、特許ゴロが裁判で負けた時に支払い義務を負わせることを意味している。今年の2月に、〈革新的ハイテク企業を言語道断な法的争いから救う〉(SHIELD)法案がこの解決策を提案している。

情報の自由のタカ派にとってはこの命令でも全く不十分だ。Mark Cubanをはじめとする多くの人々が、ソフトウェア特許のほぼ全面廃止を要求している。ずる賢い特許ゴロが利用する法の抜け穴はどうやっても残る。MITのEric von Hippleは、デザインに多くの資金を必要とする発明(新薬やiPhoneなど)にとって、特許は殆ど価値を提供しないことを発見した。

何を信じるにせよ、この大統領令が正しい方向への一歩であることは間違いないようだ。

[Flickr User Cali4Beach]

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(翻訳:Nob Takahashi)


Microsoft、Windows RTのライセンスを値下げか? ―妥協だらけのプラットフォームを救うのは何をしても難しい

今朝(米国時間6/3)のBloombergの記事によれば、MicrosoftはWindows RTのライセンス価格を値下げするという。MicrosoftはRTの低調なセールスにテコ入れするのに懸命なようだ。

Windows RTはiPadに対するMicrosoftの回答という触れ込みで登場した。MicrosoftはWindows 8デスクトップ版OSから多くの機能を低消費電力のデバイスに移植し、iPadよりはるかに安定性の高いシステムを構築することを狙った。しかしその過程でMicrosofはOSの別バージョンを作ってしまい、デベロッパーはIntelベースのWindowsとARMベースのWindowsRT(Windows Phone 8、Xboxも同様)という2つのOSに対処しなければならないことになった。

Windows RTがリリースされてから8ヶ月たつが、メインストリームのWindows RTデバイスはほとんど存在しない。他方、Windows 8搭載デバイスは急速にWindows RTと同じ価格帯まで値下がりしてきた。

MicrosoftはiPadないしAndroidタブレットではなくてWindow RTを買うべき説得力のある理由をユーザーに与えることに失敗したといえる。Windows RTで喜んだのはもっぱらMicrosoft Officeを使う旅回りのセールスマンぐらいなものだろう。

値下げは多少の効果があるだろう。

Androidタブレットも初期の頃、価格設定で悩んだことがある。当時Androidタブレットは高価すぎたために存在意義が疑われていた(HTC Jetstreamなど)。そこに250ドルのB&N Nook Color、Amazon Kindle Fire、そしてNexus 7が登場した。200ドル台の低価格のおかげで、Androidタブレットは突如存在意義を復活させることができた。さらにSamsung他のメーカーが続いて、大型タブレットの価格も低下し、Androidタブレットは意味のある市場シェアを獲得した。

しかしWindows RTの場合、たとえ200ドルにまで値下げしても復活できるかどうか疑わしい。

主要メーカーは続々とWindows RTのサポートを打ち切っている。HPは最初期にRTのサポートを中止した。Samsungもすぐそれに続いた。HTCも最近RTタブレットの開発を中止した。

現行製品ではDell XPS 10、Surface RT、Asus VivoTab RTがWindows RTのロゴを表示している製品だ。BloombergによればDellはRTの新製品を開発中だという。しかしLenovoもRT搭載のIdeaPad Yoga 11の製造を早々に中止している。これら以外は問題とするに足りないような製品しかない。

Acerは最近ComputexでIconia W3を発表した。この8インチWindowsタブレットは今月中に379ユーロで発売開始されるようだ。このデバイスは720pディスプレイ、デュアルコアAtom Z2760 CPU、32または64GBのメモリ、microSD expansionスロットを備えている。しかしこのタブレットはWindows RTではなくWindows 8を搭載している。Acerの会長はWSJのインビューに対して、「Windows RTが今後大きな影響力を持つことはないだろう。フル機能のWindows 8が持っているソフトウェアの互換性を欠いているという大きな欠点をWindows RTが克服するのは難しい」と述べた。

Windows RTはそもそもの構想からして間違いだった。「バッテリーの長持ちか、それとも使い勝手か」という選択を消費者に強いたのは愚かだった。もちろん消費者は両方が備わっていることを望む―iPadがその例だ。

Microsoftは値下げの後、販売奨励金さえ出すことなるかもしれない。しかし消費者は、というよりもっと直接にメーカーが、はっきりと態度を表明している。消費者もメーカーもWindows RTが金を出すに値するプロダクトとは見ていない。当初から指摘されていたとおり、Surface RTはあまりにも妥協が多すぎるプラットフォームだった。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Eメールの賽の河原問題

結婚を考えている現代人に与えるべき助言:「結婚する前にこれを考えること。『自分はこの人が携帯電話を見続ているところを、残る人生見続けたいだろうか?』」

ギリシア神話のシーシュポスは、神々の怒りに触れた罰として、毎日巨大な岩を山頂まで運び上げ、ようやく運び終えると岩が転がり落ちるということを繰り返した。

人間のデジタル環境に関する金言は山ほどあり、実に示唆に富んだものも多い。「Eメールとは他人から与えられたto-doリストである」は私のお気に入りの一つだ。あるいは、この記事の最初に挙げたのもそうだ。もっと堀り下げてみたい人のために、「メールの問題はそれがメールであること」もある。ただし、メールはあらゆる人間的コミュニケーションの頼りになる代役にすぎないことを知っておく必要がある。

IT業界の人間なら、1日に16時間メールに返信を続け、他に何も触れないこともできるだろう。未読ゼロというバカげた目標を達成しても、翌朝起きた時には未読276だ。.

それは抗し難くばかばかしいが、その数字に安心感や便利さを覚える人たちのために、われわれはメールをばらまく。タクシーの中でメールに返信する。あるいは食事の直前、ひどい時にはセックスの後に。あなたは、人よりも自分の携帯電話の方が魅力的に感じ始め、実際の会話よりもデジタル会話を好むようになる。携帯電話は、ドラッグに一番近い存在となり、空き時間や、自分の最も親密な時間に行うことが仕事になる。あなたは実存主義の教科書的事例だ。

ふつうの言葉でいえば、ダメ人間である。

「愚かさに気付くためには自殺が必要か?」とはシーシュポスの神話のアルベール・カミュ自身による解釈だ。「いや、抵抗が必要だ」と彼は答えた。そして、自動返信を設定して自分がいかに重要かをアピールすることは、これまた実存主義の典型例であり、答にならない。メールに不満を漏らすブロガーは、自分がいかに人気者であるかという不満を言っているだけだ。私の未読は4万6761 ― 成功を示す問題だ。

この場合、毎日メールに6時間以上費やす前に必要な抵抗は、返信を期待しないよう人々を教育することだ。そして、返信がない時に必要なら電話や何か他の方法を使ってもよしとすること。さもなければ、あなたはトイレからメールを送る人間になってしまう。

あの岩に近づいてはいけない。

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(翻訳:Nob Takahashi)


調査報告:無人運転カーを信頼する人は全世界で57%、ただし子どもを乗せても良いという回答は46%

コンピューター制御の自動運転(運転手なし)カーに対する消費者意識調査は既にご覧になっただろうか。Ciscoがとりまとめたものだ。調査のほとんどはネットワーク経由での購入についてのものだが(やはりカーディーラーが嫌いだという人は多い様子だ)、自動運転カー(driverless car)についての意識調査も掲載している。回答者のうち57%が、無人運転カーが辺りを走っていても平気であるとしている。ただし、それぞれのマーケットによっても受け取り具合は異なるようだ。

どうやら、新興国の方が自動運転カーを許容する意識が高い様子。たとえばブラジルでは回答者の95%が自動運転カーを許容すると述べている。また、インドでも86%、そして中国でも70%という数値が出ている。

しかしアメリカではその割合が60%に下がり、ロシアでは57%となる(ロシアでは、ともかくまずはきちんと制御できるようにするのが先決だ)。未だにマニュアル車が人気を集めるドイツでは自動運転カーなど認めないという人も多い(許容すると回答したのは37%に過ぎない)。ロボット慣れしているだろうと思われる日本では、許容する人が28%しかいないという結果も出ている。

ちなみに、自分の子どもを自動運転カーに乗せるかと問えば、上の数値はいずれも低くなる。しかしそうは言っても、自動運転カーが市場に投入されれば、それなりの普及は期待できそうだと言って良いのではないかと思われる。

技術に対する信頼性という点で見ると、保険やメンテナンスコストの低減に繋がる可能性があるのなら、運転習慣を車によって記録されてもかまわないと考える人が74%にのぼっている。また65%の人が、自分に適した車を提案してくれるのなら、身長や体重、および運転習慣を自動車メーカーとシェアしても良いと考えているそうだ。

テクノロジーを使ってセールスマンを排除すること

車の購入行動について問うと、ほとんどの人が営業マンと直接に話をせずにすませたいと考えているという結果が出た。回答者の半数は、直接的に営業マンと話をする必要がある場合でも、販売機のような機械を経由して話したがっているそうだ。半数以上(55%)はビデオチャットなどの仕組みによって購入が完了出来れば良いと考えているのだそうだ。こちらでも、新興市場における方がアメリカやドイツにおけるよりも比率が高くなっている様子だ。

ブラジル、インド、ロシア、そして中国などの新興マーケットにおいて、購入時にも機械経由でという希望が大きくなっているようだ。ドイツや日本では、機械を通すのみで購入を完了したいと考える人は少なくなる。アメリカは新興マーケットと、日本やドイツにおける数値の間くらいになるのだろう。

尚Ciscoは、自動運転カーが単純に道を辿る機能を持つだけではいけないとも言っている。車は今ではほとんど日用品化している。そこに着目してメーカー(およびスタートアップ)は、「サービス」の拡充に注力すべきだと、レポートを結んでいる。駐車場を効率よく発見したり、より快適で自動化したネットワーク機能を提供すべきだと言っているわけだ。

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(翻訳:Maeda, H)


iOS7で伝統のスキューモーフィズム追放の噂―Appleが必要としているのは新デザインではなく新たなキラー・サービスだ

噂によれば、iOS 7はこれまでiOSデザインの中核となっていたスキューモーフィズムのほとんどを捨てることになるという。新たにiOSの責任者となったJony IveはiOS 7から現実を模倣したリアルなテクスチャーを備えたデザインをことごとく追放し、きわめてフラットなものに置き換えたという。

それはそれで結構だが、iOS 7の新機軸がそこで終わりだったら Appleは大きな問題を抱え込むことになる。真の問題はiOSの見た目ではない。Siri、iCloud、iTunesといった中心的なサービスがGoogleや多くのスタートアップが提供するものに比べて今や見劣りすることが問題なのだ。

携帯電話のハードウェアというのは金属ないしプラスティックの薄い筐体の上に高精細度モニターを取り付けたものに過ぎない。そういうもので他社といつまでも大きな違いを出しつづけるのは難しい。なるほどAppleの製品は現在でも他のほとんどの製品に比べて品質に優位性がある。しかしその優位性は日一日と縮まっている。Appleはアプリの質と量を誇ってきたが、1年前に比べると、今はその説得力も薄れている。というのも優秀なアプリのほとんどはAndorooidとiOS(あるいはやがてWindowsPhoneでも)の双方で利用できるからだ。

今やメーカーがライバルに差を付けられる領域は提供するサービスになっている。SamsungやGoogleはこの点を理解している。Appleももちろん理解しているはずだが、現在提供されているサービスは一頭地を抜いて優秀という域には達していない。鳴り物入りで登場したSiriだったが、今になってもそれほど高い実用性を持つには至っていない。iCloudは特長がよくわからないサービスだし、クラウド・ストレージを必要とするデベロッパーはAppleのサービスよりGoogle Drive やMicrosoftのSkyDriveのようなクロスプラットフォームのサービスを好むようになっている。 iMessageは優秀なサービスだがキラー・サービスというほどの力はない。さらにこの分野ではWhatsAppを始めサードパーティーのメッセージ・サービスが猛威を振るっている。Mapsについては触れずに置くのが無難というものだろう。

一方でGoogleはユーザーがその時点で必要としそうな情報を予め推測して提供するGoogle Nowを提供している。またGoogleは「定額・聞き放題」の音楽サービスをAppleのiRadioに先駆けていち早くローンチした。地図、クラウド・ストレージは言うまでもなく、Googleドキュメントの生産性アプリも何光年も先を行っている。GoogleがQuickofficeを買収したので、Appleがこれまであまり力を入れて来なかったPages、Numbers、Keynoteといったツールより優秀な生産性ツールがiPadに提供されるかもしれない。なるほどGoogle+はまだFacebookほど巨大な存在ではないが、Googleに膨大なユーザー情報をもたらしつつある。一方、AppleはといえばPingで失敗したままだ。

Googleはデータとサービスだけでなく、デザイン分野においてさえ徐々に進歩している。Appleもいくつかデータセンターを持っているとはいえ、基本的にはハードウェア・メーカーだ。Appleの問題はライバルが次第に優秀なハードウェアを作れるようになり、品質における差を詰めつつあることだ。ライバルに対する優位性を今後も維持するためにはサービスで差をつけるしかない。

iOS 7のデザインはiOS 6より優れたものになるのだろう。しかしそれはショーウィンドウの模様替えに過ぎない。Appleが真に必要としているのはライバルにない新たなキラー・サービスだ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


MicrosoftがiPadをけなすCMをリリース―Windows 8タブレットがダメな理由がよく分かる

自社の製品が市場で遅れを取っていれば苛立たしいだろう。トップの製品にケチをつけたくなる気持ちは理解できる。最近、検索とメールでGoogleに食ってかかったMicrosoftが今回はタブレットでAppleをけなした。最新Windows 8タブレットのCMはiPadを横に並べてWindows 8タブレッtがいかに優れているか主張するものになっている。Asus VivoタブレットはiOSにできないことがたくさんできるというのだ。

MicrosoftはSiri風の音声を使って(ごくありふれた女性の声の合成音声だからこれは別に難しくない) 、Windows 8タブレットにできてiPadにはできないことを数え上げている。しかしそのセリフがあまりわかりやすくない。たとえばWindows 8のSnapマルチタスク・モードでPowerPointをデモしている場面でiPadが「私はそんなアップデートがありません」というのだが、私はしばらく考えてしまった。最後に価格の比較になってAsusのタブレットの方がずっと安いと訴える。

単にSiriに喋らせるというアイディアが弱く、セリフもまずいというだけはない。最大の問題は、Microsoftが選んだ「Windowsタブレットにはこれができる」というその機能が、なぜWindowsタブレットが市場で受け入れられないかを浮かび上がらせてしまったところにある。一般のユーザーはタブレットにマルチタスクでPowerPointのスライドを作る機能などは望んでいない。そういう作業のためには普通のコンピュータを使う。

CMの最後のシーンが最悪だ。Siriの声が「PowerPointはできません。Chopsticksなどをプレイしてはどうですか?」と言う。しかし競争相手をやっつけたいときに、iPadがいかに驚異的にリアルなバーチャル体験を提供できるかを見せるのはまったくの逆効果だろう。自分の製品がデモできる同等のユーザー体験がないなら特にそうだ。楽器やゲームなどの楽しい体験に対して(いくら実用性があるとはいえ)真面目くさった作業を並べて見せても市場の大勢を変えるのは無理だろう。

この記事は掲載当初Asus VivoタブレットをSurfaceと勘違いしていた。訂正済み。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


MicrosoftがiPadをけなすCMをリリース―Windows 8タブレットがダメな理由がよく分かる

自社の製品が市場で遅れを取っていれば苛立たしいだろう。トップの製品にケチをつけたくなる気持ちは理解できる。最近、検索とメールでGoogleに食ってかかったMicrosoftが今回はタブレットでAppleをけなした。最新Windows 8タブレットのCMはiPadを横に並べてWindows 8タブレッtがいかに優れているか主張するものになっている。Asus VivoタブレットはiOSにできないことがたくさんできるというのだ。

MicrosoftはSiri風の音声を使って(ごくありふれた女性の声の合成音声だからこれは別に難しくない) 、Windows 8タブレットにできてiPadにはできないことを数え上げている。しかしそのセリフがあまりわかりやすくない。たとえばWindows 8のSnapマルチタスク・モードでPowerPointをデモしている場面でiPadが「私はそんなアップデートがありません」というのだが、私はしばらく考えてしまった。最後に価格の比較になってAsusのタブレットの方がずっと安いと訴える。

単にSiriに喋らせるというアイディアが弱く、セリフもまずいというだけはない。最大の問題は、Microsoftが選んだ「Windowsタブレットにはこれができる」というその機能が、なぜWindowsタブレットが市場で受け入れられないかを浮かび上がらせてしまったところにある。一般のユーザーはタブレットにマルチタスクでPowerPointのスライドを作る機能などは望んでいない。そういう作業のためには普通のコンピュータを使う。

CMの最後のシーンが最悪だ。Siriの声が「PowerPointはできません。Chopsticksなどをプレイしてはどうですか?」と言う。しかし競争相手をやっつけたいときに、iPadがいかに驚異的にリアルなバーチャル体験を提供できるかを見せるのはまったくの逆効果だろう。自分の製品がデモできる同等のユーザー体験がないなら特にそうだ。楽器やゲームなどの楽しい体験に対して(いくら実用性があるとはいえ)真面目くさった作業を並べて見せても市場の大勢を変えるのは無理だろう。

この記事は掲載当初Asus VivoタブレットをSurfaceと勘違いしていた。訂正済み。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


研究結果:パソコン無料配布で教育の貧富格差は埋められない

最新の研究によると、4人に1人の子供が自宅でFarmVilleをプレイできないことに関して、われわれはあまり心配する必要がない。

「われわれの研究によると、パソコンの所有そのものが、低所得児童の短期的学業成績に大きく影響を与える可能性は極めて低い」と、Robert W. FairlieおよびJonathan Robinsonは、カリフォルニアで行われた大規模な無作為パソコン無料配付に関する研究について報告した。一面これは、パソコンを持たない子供たちの破滅の日予言が誇張であったことを示す良いニュースだ。しかし、パソコン無料配布は貧困による学業格差を解消する容易な方法の一つと考えられており、それが振り出しに戻ることになる。

「実験はパソコンの所有と利用時間には多大な影響を与えたが、学業成績、標準テストの得点、単位取得、出席状況、懲罰等、さまざまな教育成果に関する影響の証拠はみられなかった」と最新結果を説明した。これはインターネットのない子供たちが試験で著しく不利であるというこれまでの証拠に反する

パソコンが利用できないために貧しい生徒が不利になるという(理にかなった)不安に基づき、カリフォルニア州では州中央部の15校に通う小6~高1生1123名にパソコンを無料提供した。重要なのは、統計に強い管理者が無作為に生徒の半数を対象に選んだことで、このためパソコンを受け取った子供が普通以上に高い意識を持っていたことを心配する必要はない。

懸念の通り、49%の子供たちがインターネットからファイルをダウンロードする方法も知らなかった。当然ながら、パソコンの利用時間が増えるにつれ、彼らが教育的とはいえないゲームに触れる時間も長くなった。「自宅にパソコンがあると、学校の勉強のためのパソコン利用時間が増えると同時に、ゲームやソーシャルネットワークその他のエンターテイメントに費やす時間も増えるので、両者は相殺されるかもしれない」と研究者らは推測する。

もちろん、パソコンは教育以外の効果ももたらす可能性がある。基礎的なコンピューター・リテラシーは知識経済に間違いなく役立つ。しかし本当の問題は、貧困な子供の多くが情報技術関連の職につく機会すら持てないことであり、貧富格差は広がる一方だ。SATスコアの格差は40%に拡大し、大学卒業に関しては1980年代以来50%に急増した

これは、一番それらしい犯人の方がはあるかに問題であることを意味している・・・家族と環境だ。私は非行の恐れのある青少年を何年か教えたことがあり、大学を重視しない親たちがいかに熱心な子供たちの意欲を削いでいるかを目の当たりにした。私の家庭では、それが何であるかを知る以前から大学へ行くことを期待されていた。

同じ期待をされていない子供たちは大きな不利を強いられており、それを修復できるガジェットは存在しない。

[H/T: @markwarschauer]

[Image Credit: San Jose Library]

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(翻訳:Nob Takahashi)


Andreessen HorowitzのChris Dixon、 「3Dプリンティングは新たな産業革命を起こす。スタートアップはソーシャル疲れ」

起業家からエンジェル投資家に転じ、現在は有力ベンチャーキャピタル、Andreessen Horowitzのゼネラル・パートナーを務めるChris DixonがTechCruch Disruptに登壇し、3Dプリントが新たな産業革命を起こす可能性と述べた。Dixonは将来この分野に多数の投資を計画しているという。一方、ソーシャルネットワーク分野のスタートアップについては「ソーシャル疲れがみられる」と懸念を示した。

4月に入って3Dプリンティング会社のShapewaysのシリーズCラウンドにChris DixonはAndreessen Horowitの資金3000万ドルを投じている。Dixonはこれを機に同社の取締役に就任した。

Dixonは「Shapewaysはハードウェア製造業には未開拓のチャンスが数多くあるということのよい例だ。3Dについてはいろいろ語られているが、伝統的なベンチャーキャピタルからの投資はまだ非常に少ない」として次のように述べた。

われわれは3Dプリンティングを信じがたいほど画期的でもっとも重要なイノベーションの一つと考える。これは製造業を一変させるだろう。われわれは近く複数の投資をする。実際、小規模なハードウェア・メーカーがKickstarterのようなプラットフォームに多数のプロジェクトを登録している。これは資金を集めると同時に一般ユーザーに3Dプリント・テクノロジーを周知させ、関心を惹きつけるという狙いもある。ここでユーザーによって選別を受け、成功したスタートアップはやげて大規模なベンチャー投資のルートに乗ってくるだろう。

ニューヨークはハードウェア・スタートアップのハブになりつつある。新しいスタートアップにとって有利な環境であり、新たな投資が呼び込まれるだろう。私はニューヨークはハードウェア・ルネッサンスのセンターになると言っている。賢明なエンジニアはこれまでソーシャル・ネットワーク開発に力を入れてきたが、今はハードウェア・デバイスの開発に重点を移しつつある。”

ソーシャル・ネットワークは全般的に疲れがみえる。人々は直接手で触れることができるような新しい経験を求めている。

この背後には、スマートフォン系のデバイスが大量に市場に出回ったことがある。これによって多くの電子部品の価格が下がり、デバイスの製造コストを大幅に減少させた。これがハードウェア産業全体に影響を与え、ひいてはウェアラブル・コンピュータの出現につながっている。

Dixonは電子部品のようなローエンドの革命がShapewaysが提供するようなハイエンドのイノベーションを生み出していると 説明した。また、インターネットが「出版」に対して与えたたような変革を3Dプリントなどのハードウェアの発達が製造業に対してもたらすだろうと予測した。

インターネット以前には、著者は出版社と交渉して契約し、出版社の投資によって本を出版していた。ブログや電子書籍が普及した現在、個人でも十分負担可能なまでに出版のコストは激減し、出版を民主化した。3Dプリンティングもハードウェア製造に同じような影響を与えるだろう。これまでは新製品を市場に出すためにはOEMメーカーと契約するなど大きな投資を必要としたが、今後はShapewaysのような産業用3Dプリント・サービスがコストと製造ロットの規模を劇的に減少させる。

今やハードウェア・スタートアップにとってニューヨークはソフトウェア・スタートアップにとってのサンフランシスコのような存在になってきた。ここには大勢のすばらしい投資家がおり、起業家も集まってくる。ニューヨークに欠けているのはスタートアップを大企業にまで育てる中間的レイヤーだ。スタートアップが良い製品を開発し、したとする。人員を100人くらいに増やし、国際展開したり、営業部門を拡張したりしようとしたとき、サンフランシスコならGoogleその他の投資家を頼ることができる。ニューヨークにもそういう環境が必要だ。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


新経済サミット2013:シリコンバレーのエコシステムを日本に作るには何が必要か

新経済サミット2013

シリコンバレーではスタートアップが次から次へと立ち上がる。投資家が彼らに資金提供し、成長を加速させIPOやバイアウトを成し遂げる。成功した起業家は再度スタートアップするのであれ、投資家サイドにつくのであれ、またシリコンバレー内で活動を続ける。この様子を見て世界各国から人材が集まり、さらに質と量が増していく。このような好循環エコシステムがシリコンバレーにはある。

このエコシステムは日本では作ることができないのだろうか。また、できるならば何が必要なのだろうか。本日開催された新経済サミット2013のセッションの1つではシリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタル(以下、VC)と起業家が共に登壇し、この疑問についてもディスカッションが行われた。

このセッションに登壇したのはEvernoteのPhil Libin氏、DomoのJosh James氏(AdobeにバイアウトしたOmniture創業者、2006年NASDAQ上場企業最年少CEO)、ApceraのDerek Collison氏(Google、VMware出身)、DCMの茶尾克仁氏、500 StartupsのGeorge Kellerman氏で、モデレータはライフネット生命の岩瀬大輔氏が務めた。

このトピックで彼らが口を揃えて言及したのは「日本人は悲観的」ということだ。EvernoteのPhil Libin氏はよく日本を訪れるそうだが、いつも日本人から「日本は何がダメなのか?」と聞かれるという。海外の人は日本をポジティブに捉えているが、当の日本人は日本がダメだとネガティブに思い込んでしまっている。近隣諸国の中国や韓国では自国をポジティブに考えている起業家が多く、日本とは正反対なんだそうだ。

今回の登壇者であるPhil Libin氏のEvernoteは売上の30%が日本からのもので、DomoのJosh James氏が以前立ち上げたOmnitureも同様に売上の20%を日本が占めていたという。また、Phil Libin氏によると100年以上存続している世界の企業3,000社のうち、2,500社は日本の会社だ。

世界のIT市場のマーケットシェアでも日本は多くの割合を占めているなど、悲観的になる要素は他国から比べると少ないように思えるかもしれない。ではシリコンバレーを楽観的に捉え、日本を悲観的に捉えさせてしまう要素は何なのだろうか。

DCMの茶尾克仁氏は日本で起業するインセンティブが少ないことは1つの要因だという。例えば、中国では起業すると税金がかなり免除される。スタートアップに参加する人達にとっては金銭的なインセンティブが欠けており、シリコンバレーではストックオプションが当たり前だが、日本では存在を知らない人も多い。このようなインセンティブの欠如は解決すべき問題だという。

また、日本の起業家は自信が欠如しているとApceraのDerek Collison氏はいう。日本人は会話の中で「私にはできないと思う」と発言する人が多いが、シリコンバレーでは自信を持って「それはできる」と出来もしないことですら言う人が多いの出そうだ。才能や技術力に関しては差は無いが、自信を持たないだけで差が出ているのだ。

最後に言及されたのはヒーロー的存在。アメリカではスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツといったヒーロ的存在の起業家が居たり、マーク・ザッカーバーグのように若くして成功した起業家をヒーローのように扱う。しかし日本ではIT起業家が若くしてIPOしても一瞬だけ盛り上がり、その後はすぐに落ち着く印象がある。これはサービスの規模や生活の中でそれに触れる時間なども関係しているのかもしれないが、アメリカのように社会的にIT起業家をヒーロー扱いするようなムード作りは大切だという。

IT起業家の社会的印象と言えば、日本ではまだ親や身内の反感を買うことも多々あるだろう。だが、このような出る杭を打たれるような雰囲気は変えなければシリコンバレーのようにはならない。このセッションの終わりに、500 StartupsのGeorge Kellerman氏は会場に居る起業家を立たせ、「彼らを祝福してください。彼らはリスクを取り、次の世代のビジネスを作っているのです。」と拍手を求めた。次に全員を立たせると「日本だと出る杭は打たれますよね? でも、皆で立てば杭は出ません。皆で日本を変えましょう!」と締めくくった。


新経済サミット2013:起業家に告ぐ「失敗を恐れるな、実行せよ」

新経済サミット2013

本日、東京で開催された新経済サミット2013には数多くのシリコンバレーで活躍するIT起業家が登壇した。この記事ではAirbnbUberoDeskFabといった今急成長しているサービスのCEOが参加したセッションをレポートする。

日本ではまだサービスを提供していないスタートアップもあるが、名前を聞いたことはあるであろうAirbnb、Uber、oDesk、Fabの4社。現在は多くのユーザーを獲得し、成長し続けている。ユーザー数1,000万人、会社設立後4年で評価額10億ドル、7秒に1つは商品が売れるなど、彼らのサービスは2、3年で大きく成長してきた。

このような数字を見ると「彼らは元々才能がある」、「アイデアが良かったから成功した」と思い、自分にはマネできないと感じる方も居るだろう。しかし、彼らの話を聞くと、今でこそここまで大きなサービスに成長したが何度も失敗し、そして何度もチャンレジしたからこそ、今成功している。

例をあげてみよう。Fabの創業者Jason Goldberg氏は何度もスタートアップを立ち上げているが、VCから調達した資金を含め4,000万ドルを失ったこともある。Fabを立ち上げる2011年2月直前までは前年から男性同性愛者向けのサービスを2回リリースし、失敗に終っている。

oDeskのGary Swart氏も7年前にスタートアップを立ち上げた際に義理の父から資金を提供してもらったのだが、返済できずに終ってしまった。UberのTravis Kalanick氏はP2Pのサーチエンジンを開発していたが、著作権など法律に触れ数千億ドルの訴訟を起こされたし、Airbnbに関しては立ち上げ期に上手くいかない時期が続いたが、シリアルを作り、それを売ることで日銭を稼いだこともあるし、サービスは4回リローンチしたそうだ。

彼らはこうした失敗で諦めるのではなく、ここから得られる教訓を基に次に進んでいる。セッションの中で彼らが強調したのは「失敗を恐れずに実行すること」だった。アイデアを思いついても実行に移さないのでは意味がない。それは得られるものが何も無いからだ。

FabのJason Goldberg氏によると良い起業家というのは失敗しても、次は違う視点から見れる。そして、失敗は実行を通さなければ経験できない、とAirbnbのBrian Chesky氏は語った。

さて、彼らはスタートアップし、失敗を経験しているが、失敗と判断する撤退の基準はどこに置いているのだろうか。

UberのTravis Kalanick氏は自分のサービスが世界を変えると信じれなくなり、疑問を持つようになった時が潮時だという。

これに対してFabのJason Goldberg氏は1年以内にサービスが大きくならないのであれば、辞めるべきだと語った。なぜならば、現代はサービスが良ければ自然に広がる環境にある。それにも関わらず、1年が経過しても規模が大きくならないのであれば、それは本当に解決すべき問題ではないのだという。

Airbnbは撤退は考えていなかったようだが、100人が愛せるプロダクトならば100万人でも変わらない。だから、100人が好きだと言ってくれることに集中した。その結果、気に入ってくれたユーザーが他のユーザーを呼び込む好循環が生まれ、成長できたそうだ。

要約すると、抽象的だが「自分とユーザーが心から愛せるプロダクト」でないと判断した時が潮時と言える。そして、逆に言えばこの条件を満たせるのならば、成長する可能性は大いにあると言えるだろう。


Google、Global Impact Awardの助成金300万ドルを人身取引防止活動3団体に授与

Googleの非営利部門は昨年12月、Global Impact Awardsプログラムをアナウンスしていた。そしてこの度そのプログラムに則って3つの組織が300万ドルの資金を受け取ることになったと発表した。この3つの組織は、ヘルプラインを開設することにより、世界中の潜在的被害者の発見およびサポートを行うために尽力している。

3つの組織とはPolaris ProjectLiberty Asia、およびLa Strada Internationalで、共同して「Global Human Trafficking Hotline Network」の構築を行なっているのだ。

行われたGoogleによるアナウンスによれば、世界中で2100万人の人が、何らかの形で隷属状態に置かれているとのこと。またそれにともなう不法行為により、違法行為者は320億ドルの利益をあげているのだそうだ。Global Human Trafficking Hotline Networkの目的は、違法行為のホットスポットとなっている場所を特定して、それに対応できるようにすることだ。こうした活動についてGoogleは2011年から1450万ドルの資金を拠出している。

またPalantir TechnologiesおよびSalesforce.comもデータの管理および分析や、反人身取引のためのホットラインセンターの拡大に協力することで、活動に協力している。

Google IdeasのディレクターであるJared CohenおよびGoogle GivingのDirectorであるJacquelline Fullerは次のように述べている。

Polaris Projectは、アメリカ国内において寄せられた72,000以上のホットライン通話に基いて人身取引の活動状況などをまとめて国内外にデータを提供しています。しかし全世界的にはそうした直ちに利用できるデータベースは構築されていません。ただし、そうしたデータベースの完成を待つ必要はありません。各国で人身取引問題に対する意識を共通化し、そして協働していくことで、関連データを共有して被害者の救済にあたり、違法活動を抑制し、さらに必要な法律を提案する動きへと結びつけることができるからです。人を奴隷のように扱うことは断じて許されるものではありません。直ちに活動を開始する必要があるのです。

今回の発表について、各組織からの発言をまとめたビデオを掲載しておこう。

Googleの非営利活動については、Jacquelline Fullerに対して行ったインタビュー記事もある(英文)。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)


Google、Global Impact Awardの助成金300万ドルを人身取引防止活動3団体に授与

Googleの非営利部門は昨年12月、Global Impact Awardsプログラムをアナウンスしていた。そしてこの度そのプログラムに則って3つの組織が300万ドルの資金を受け取ることになったと発表した。この3つの組織は、ヘルプラインを開設することにより、世界中の潜在的被害者の発見およびサポートを行うために尽力している。

3つの組織とはPolaris ProjectLiberty Asia、およびLa Strada Internationalで、共同して「Global Human Trafficking Hotline Network」の構築を行なっているのだ。

行われたGoogleによるアナウンスによれば、世界中で2100万人の人が、何らかの形で隷属状態に置かれているとのこと。またそれにともなう不法行為により、違法行為者は320億ドルの利益をあげているのだそうだ。Global Human Trafficking Hotline Networkの目的は、違法行為のホットスポットとなっている場所を特定して、それに対応できるようにすることだ。こうした活動についてGoogleは2011年から1450万ドルの資金を拠出している。

またPalantir TechnologiesおよびSalesforce.comもデータの管理および分析や、反人身取引のためのホットラインセンターの拡大に協力することで、活動に協力している。

Google IdeasのディレクターであるJared CohenおよびGoogle GivingのDirectorであるJacquelline Fullerは次のように述べている。

Polaris Projectは、アメリカ国内において寄せられた72,000以上のホットライン通話に基いて人身取引の活動状況などをまとめて国内外にデータを提供しています。しかし全世界的にはそうした直ちに利用できるデータベースは構築されていません。ただし、そうしたデータベースの完成を待つ必要はありません。各国で人身取引問題に対する意識を共通化し、そして協働していくことで、関連データを共有して被害者の救済にあたり、違法活動を抑制し、さらに必要な法律を提案する動きへと結びつけることができるからです。人を奴隷のように扱うことは断じて許されるものではありません。直ちに活動を開始する必要があるのです。

今回の発表について、各組織からの発言をまとめたビデオを掲載しておこう。

Googleの非営利活動については、Jacquelline Fullerに対して行ったインタビュー記事もある(英文)。

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(翻訳:Maeda, H)


フリーソフトウェア運動はどこで方向性を間違えたのか(そしてその修正方法)

ぼくの視野では、テク産業の過去10年における最大の変化は、ソーシャルメディアでもなければクラウドコンピューティングでもビッグデータでもITの消費者化でもなく、モバイルですらない。それは、業界の主流部分によるオープンソースの受容だ。それまでは、わずか10年前ですら、オープンソースは疑問視されていた。当時は、“オープンvs.プロプライエタリ”という議論が、あちこちの会議やパーティーで噴出していた。ベンダたちは、オープンソースに関するFUDをばらまいていた。しかし今では、あらゆるベンダが自分を“オープン”と呼びたがる。

なぜそうなったのか? ライターのEvgeny Morozovは、最近The Bafflerに寄稿した長文の中で、それをTim O’Reillyのメディア/カンファレンス帝国のせいだ、と言っている。

Morozovによると、O’ReillyはRichard Stallmanのフリーソフトウェア運動をハイジャックして、それを、より企業フレンドリーなオープンソース運動に変えた。そこからさらにO’Reillyは歩を進めて、Webの自由を、Googleのような企業がオンラインで好き勝手ができることへと定義変えし、オープンガバメントを政府に透明性と説明責任を持たせる運動ではなく、営利企業に無料で自由にデータ集合を与えることの必要性へと定義変えした。

フリーソフトウェアのフリーは“自由”の意味、“タダ/無料”ではない。

Morozovの記事は、ドットコムバブル期に話題になったカリフォルニア的イデオロギーと、その政治への影響をあらためて問い直している。つまりそれは、原理原則を犠牲にして実用主義を優先した結果、に対する問いだ。でもMorozovは、オープンソースがフリーソフトウェアを乗っ取ってしまった決定的な理由を、見落としているように思える。

Morozovは、オープンソースとフリーソフトウェアの違いを看過している。フリーソフトウェアのフリーは、その名の通り、言論の自由などと同じく“自由”という意味であり、free beer(無料のビール)のような“無料”という意味ではない。その自由をMorozovは、“ユーザがプログラムをどんな目的にでも使えること、その動作構造を調べられること、そのコピーを再配布できること、その改良バージョンを公開リリースできること”、と解釈している。

しかし(Open Source Initiativeの定義による)オープンソースソフトウェアもその多くは……(Free Software Foundationが定義する)フリーソフトウェアだ。では、何が問題なのか? 二つの運動の違いは、フリーソフトウェアが社会的な運動であるのに対して、オープンソースが方法論であることだ。Stallmanは”Why Open Source misses the point of Free Software“(なぜオープンソースはフリーソフトウェアを誤解しているのか)と題するエッセイで、フリーソフトウェア運動が増進に努めてきた自由をオープンソースの擁護者たちが無視している、と非難している。そして、だからこそ、オープンソースの正しい意味すら世の中に伝わっていないのだ、と。

Morozovは両者の違いについて、フリーソフトウェアはユーザの側面を強調し、オープンソースはデベロッパを強調する、と書いている。でも、フリーソフトウェアも、その主な関心はデベロッパではないだろうか。つまりその自由は、主にデベロッパの自由であり、ほとんど一般大衆とは無縁だ。しかしこの点にこそ、運動がコースを間違えた理由がある。

もちろん、デベロッパ以外の人たちにもソフトウェアの自由を気にする理由はある。活動家やセキュリティに関心のある人たちは、自分たちが使うソフトウェアを調べたい、あるいは信頼できる専門家たちに調べてもらいたい、と思う。でも、グラフィックデザイナーたちに、PhotoshopよりもGIMPを使え、後者ならコードを調べたり、書きかえたり、自分だけのバージョンをリリースできるから、と言ってみよう。あるいはデータアナリストに、ExcelではなくLibreOfficeを使うべき理由を、ミュージシャンにLogicではなくArdourを使うべき理由を述べてみよう。どんな結果になるだろうか。

そこで、こんな疑問が湧いてくる: オープンソースがフリーソフトウェアを日陰者にしてしまったのは、O’Reillyが天才的マーケターだったからか。あるいは、Stallmanが気にするような自由を人びとが全然気にしないからか? フリーソフトウェアの主なユーザがデベロッパであることは、むしろ当然ではないか?

企業とデベロッパがオープンソースソフトウェアを使ってプロダクトを作れると知ったとき、水門が一挙に開いた。

昔を知る人に言わせると、業界の主流部分をオープンソースに改宗させた第一の功績者はApacheだ。その理由は、1)オープンソースの(そしてフリーな)サーバがとても優れていた、2)企業が商用に利用してもおとがめなしのライセンス(カスタムソフトウェアとくっつけてもよい)。

企業とデベロッパがオープンソースソフトウェアを使ってプロダクトを作れると知ったとき、水門が一挙に開いた。その良い面は、オープンソースの技術を勉強する人たちが増えて、企業はオープンソースによる開発に多くの予算を割くようになったこと。オープンソースが今のように優勢にならなかったら、ブログはすべて、プロプライエタリなコンテンツ管理システム(CMS)の上で動いていることだろう。ColdFusionで書かれたコードが、Windows ServerやIISの上で動いているだろう。

O’Reillyがフリーソフトウェア運動に代えて描いた絵の中では、実用主義者たちが実用目的のために妥協を図ろうとしている。オープンガバメントも、企業にとってデータがオープンになりそれによって経済が刺激されなければ、離陸することはなかっただろう、という議論もある。だが、その今後の姿はまだ見えてこない。業界の主流部分(“mainstream, メインストリーム”)がオープンソースを受容したことによって、フリーソフトウェア派のデベロッパに雇用機会が生まれ、本もカンファレンスのチケットもたくさん売れるようになった。でもそれはイデオロギーの軽視であり、デベロッパたちが80年代の初めに夢見たようなソフトウェアの自由だけが受容されたのだ。

ぼくはデベロッパではないけど、ソフトウェアの自由は重視したい。でも、ほかにも重要な自由があると思う:

  1. ハードウェアドングルや執拗なオンラインの本人確認なしに、自分が買ったソフトウェアはどんなデバイスの上でも自由に動かしたい。
  2. 政府や企業から詮索/のぞき見されない自由。
  3. 自分のデータを複数のアプリケーション間で移動(==利用)できる自由。
  4. アプリケーションを異なるホスティングプロバイダ間で移動できる自由。
  5. 高額な年会費月会費に縛られない自由。
  6. 多くのWebサイトの利用規約の「私のやり方に従えないなら出ていって」からの自由。.

〔2番は、パーソナライゼーションへの個人データの利用など。〕

上の1番は、フリーソフトウェア運動にも含まれる。そのほかは、オープンWebや連邦型WebインディーWeb、それにベンダ関係管理(VRM)、などの主唱者たちが、今主張している項目だ。まだほかにも、重要な自由はいくつもあると思うが、それらも含めて、新しいフリーソフトウェア運動、ユーザの今日的なニーズにも対応するフリーソフトウェア運動の基盤が、そこにはあるべきだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


運転中の携帯端末操作、年齢を問わずに増加(悪化)中

運転中にテキストメッセージを送受信するのは、若者に特有の傾向だと思っている人が多いのではないだろうか。ティーンエイジャーたちは運転中にどのようなことに気をつけるべきかを知らず、無謀な行動をしそうに思える。また携帯端末を常にいじり続けているという印象もある。

しかし、AT&Tが資金を出した最近の調査によると、実のところ「大人」でもかなりの人がテキストメッセージのやり取りを行なっているそうだ。本調査は1,011名の「大人」を対象に行われた。

この調査によれば、成人の半数近くが運転中にテキストメッセージのやり取りを行なっていることがわかった。ティーンエイジャーについての調査では43%であったので、むしろ「大人」の方が多い率を示していることになる。さらに、運転中にメッセージのやり取りをしている「大人」の98%以上が、悪いことと知りつつ行なっているそうなのだ。

この調査はAT&TのIt Can Waitキャンペーンの一環として行われたものだ。昨年中にAT&Tの販売店や、CMなどでよく宣伝されているキャンペーンなのでご存知の方も多いだろう。キャンペーンでは、運転中にメッセージ送受信を行なって注意力散漫となってしまったせいで、障害を負ってしまったり、あるいは大事な人を失ってしまったりした経験を持つヤングアダルトやティーンの悲惨な話を紹介している。

全米安全評議会(NSC)によると、ティーンも運転中に携帯端末をいじっているが、数にすると「大人」のドライバーの方がはるかに多く(1千万人程度対1億8千万程度)、成人による不注意運転にも大いに気をつけるべきであるとしている。ちなみに疾病予防管理センター(CDC)によれば、毎日平均して9名ほどが、テキストメッセージの送受信に関わる事故で命を失っている。関連事故により、日々1,060人もの人が負傷してしまっているのだそうだ。

メッセージのやり取りを行うには端末を見ながら操作する必要があり、当然ながら気持ちも運転から離れてしまう。路上で最も危険な行為のひとつだと言えるだろう。集中しているときと比べて23倍も事故を起こしやすくなるというデータもある。

尚、現在のところ大きく問題となっているのはテキストメッセージのやり取りについてではあるが、運転中の注意力を散漫にする仕掛けはますます多く生まれつつあるのが現状であると言えよう。Googleグラスのことを思い起こす人もいるだろう。関連事故を防ぐための動きなども現実化しつつあるところでもある。「It Can Wait」をもう一度よく考えてみるべきだろう。

原文へ

(翻訳:Maeda, H)


利用規約を作ることはサービスを作ること

この寄稿はAZX総合法律事務所の弁護士、雨宮美季氏によるものだ。雨宮氏は共著で本日発売の『良いウェブサービスを支える「利用規約」の作り方』を上梓している。この本は昨年3月に開催された「利用規約ナイト」がきっかけとなり、エンジニアや経営者のために「この1冊を読めば、利用規約について検討すべきことがひと通りわかる」というガイドブックを作りたいと考えて書かれたものだ。

新しくサービスをローンチしようとするとき、「利用規約」を準備しなければならないということは、随分知られてきた。これは、facebookやInstagramなどで利用規約の改定を行おうとする際にユーザーから猛反発を受け、内容変更を余儀なくされるニュースが相次いだため、利用規約に対するユーザーの関心が高まり、これをサービス運営者側も無視できなくなったことも背景にある。実際、弁護士である私のところにも、利用規約のたたき台を準備したうえで、連絡をしてくるスタートアップは多い。

しかしながら、これらを「なぜ作らなければならないのか」「どうやって作ればよいのか」「いつのタイミングで依頼すればよいのか」については、まだまだ知られていない。

また、応対する弁護士の方でも、サービス内容を把握したうえで、法的構成を整理し、適法性を検討できる能力を要求される。「分かりにくい法律用語で一方的に会社に有利な内容を作る」という時代はとうに終わり、ユーザーフレンドリーな分かりやすい内容にしなければtwitter等で炎上の可能性もあり、何よりサービスのファンが根付かない。

こうなってくると何が正解かは教科書に書いてあるものではなくなり、利用規約に関する情報が驚くほど少ないことに気がつく。そこで、今回は、「利用規約の作り方」の最初の1歩として、利用規約を「なぜ作らなければならないのか」「どうやって作ればよいのか」「いつのタイミングで依頼すればよいのか」をお伝えしたい。


「利用規約」はなぜ必要なのか?

「利用規約」はなぜ必要なのか。これらはサービスの運営を円滑に行うために必要なのだ。クレーム対応の際の話し合いの土俵を作っておき、サービス運営者として最低限のディフェンスをするために重要な意味を持つ。また、利用規約とあわせて作られる「プライバシーポリシー」については個人情報保護法、「特定商取引法に基づく表示」は特定商取引法というそれぞれの法律に基づく要請を実現するという機能も持つ。例えば、「通信販売にはクーリングオフ制度はない」のだが、返品の取扱い(返品を禁止する旨の表示でもよい)について法律に従って明確に規定していないと返品を認めなければならないという規制はあるため、適切に表示しておかないと重大なビジネスリスクをもたらすことになる。さらに、「プライバシーポリシー」については、今や「個人情報」に限定されず、プライバシーに関わる情報にも配慮した対応が求められている。

どうやって作ればよいのか? 

利用規約などを作成する際、他社の類似サービスのものを比較検討するのは非常に勉強になる。たとえば、禁止事項を確認することで、どのようなクレームが起こりがちなのかが分かり、免責事項を確認することで、特に回避すべきリスクが分かる。また、「なぜこれが規定されているのだろう」と理由がわからない条項があったら、その理由を弁護士などに相談するといい。法律上の理由が隠されている場合も多いからだ。たとえば、CtoCのオークションサイトをやろうとしたときに、他社の「出品禁止ガイドライン」を参考にしようとすると、「動物」「お酒」「薬」などが規定されていることに気づくだろうが、これらは法律の規制に配慮してのものなのだ。日本に類似するサービスがない場合は、海外の先行するサービスの利用規約も十分参考になる(但し、法規制の違いや商習慣の違いには注意する必要がある)。

もっとも、他社の利用規約をそのままマネしただけでは道義的に批判をあびる可能性はもちろん、サービス自体の競争優位性も確保できない場合が多いだろう。そこで、自由な使用を前提に公開されているひな型をベースに、他社の類似サービスの禁止事項や免責事項などを参考にカスタマイズしていく形で作成するのも一案である。基本的な条項については、どこも大きな違いはなく、「カスタマイズ」が必要な部分にこそ、サービスの特徴が出るのである。

いつのタイミングで相談すればよいのか?

遅くとも(クローズドの)βサービスローンチ前には、「利用規約」の内容の相談に来てほしい。実際、サービス内容を聞いてみると、法的構成が整理されていなかったり、適法性のリスクが把握されていなかったりするケースが少なくないからだ。法的構成が違えば、売上計上の仕方、法的責任、未収の場合のリスク、適用される法的規制も異なる。また、ひとくちに「適法性のリスク」といっても、届出制など厳しくないものもあり、理屈の立て方で抵触しない構成も可能である場合もある。だからこそ、サービスページを最終的に作り込む前に相談に来てほしい。例えば、電気通信事業法に基づく届出や有料職業紹介はベンチャーにとってもハードルは高くはなく、該当可能性についても官公庁のガイドラインが出ており、分かりやすい 。

「もちはもち屋」であり、関連する法律を全て知っている必要などなく、構えずに相談に来ていただき、サービスのありのままの現状と、将来のビジョンを出来る限り教えて欲しいのだ。

私が過去に経験した例でも、早い段階で相談に来てもらえたために、料金のもらい方でリスクをヘッジすることができたり、競合との差別化を明確に打ち出せたりした例もある。また、利用規約を作っていくうちに、特にクレームが起こりやすいことがみえてきて、これを利用規約のみならず、ユーザー登録画面にも明確に書いておくことで高い信頼を得ることができた例も多い。利用規約の作成は、UIや画面遷移にも大きく影響するのだ。

「利用規約を作ることはサービスを作ることなんですね」

最近クライアントに言われてうれしかった言葉。これをみなさんにも実感してほしい。


利用者を〈見る〉インターフェースがもたらすもの


今週、私たちはSamsungを代表する次世代スマートフォンを垣間見る可能性が高いが、大方の噂によると、そこには利用者が小さな画面を注視しているか目をそらしたかを検知する自動スクロール機能が搭載されるしい。具体的な内容は一切明らかにされていないが、他でも視線追跡の技術は、画面に向かっているかどうかだけでなく、意識を集中しているかどうかまで正確に把握できる水準に達している。

利用者が端末に集中するのと同じくらい利用者に集中する端末がやってくる。これはGalaxy S IVに限った話ではない。そしてその時,アプリケーション市場における膨大な革新の可能性と、モバイル広告にとって一儲けできるチャンスがもたらされる一方で、そこには過去5年間に位置情報サービスの普及がもたらした問題が小さく思えるほどのプライバシーの懸念が潜んでいる。

アプリの変革

自動スクロールは、ユーザーの意識がどこにあるかを検知することでアプリに可能になる応用のごく一面にすぎない。もちろんそれは便利であり、モバイル機器における「ページ」の概念や、スクロールバーさえも全く無意味にするかもしれない。しかし、アプリ使用時に利用者がどこを見ているかという新情報を得ることによるソフトウェアインターフェースの変革に比べれば、些細なことだ。

デザインは一つではなくユーザー毎にあつらえる

ユーザーの行動に合わせてリアルタイムに変わる動的インターフェースを想像してほしい。そして十分賢い技術をもってすれば、アプリのレイアウトはパーソナル化における次のフロンティアになるかもしれない。今日の開発者が推薦エンジンやアルゴリズムを使い、ユーザーがアプリを開くたびに最も魅力あるコンテンツで出迎えようと努力しているように、明日われわれは、「万人向けデザイン」の概念を捨て、一人一人によって異なる戦略をとるアプリを目にするようになるかもしれない。

そしてコンテンツといえば、あなたの目が自然にどこを見るかを端末が知っているなら、あなたのコンテンツ嗜好もよくわかっているだろう。どんな種類のコンテンツが好きかだけでなく、何にいちばん興味を引かれたかを具体的に知ることができる。個々のシーン毎に何が視聴者の目を捕えたか、どの登場人物が受け入れられたか、シーン内でどの部分が視聴者の関心を引きよく注目されたか等を分析して、ヒートマップや動画を作ることさえとっぴな考えとはいえない。このいずれもが、Flipboardのような既存のパーソナル化エンジンを後押しし、パーソナル化ウェブの精度を高める。

マーケターの楽しみ

人がどこを見ているかを知ることはマーケターの夢だ。アプリのどこに広告を配置すべきかを正確に教え、消費者の注目を引くために何が有効で何がそうでないかに関して驚くべき知見を与えてくれる。そして、他の購買層データと統合することによって、さらに効果の高い購買者ターゲティングが可能になるだろう。

企業や広告主がモバイル広告のROI[投資収益率]を高める手段を探し求めているのは当然であり、 Googleも例外ではない。顔面フィードバックデータを収集することは、マーケティングで次のレベルに上がるために秘密の暗号を手に入れるのと同じ効果がある。ただし、扱いは慎重にする必要がある。そこには乱用の可能性がいくらでもある。例えば、アプリ内であなたが一番好きなコンテンツを見つけた場所に、次々と広告が現れるようになったり、あなたが注目するのを待って売り込みの集中砲火を欲びせる自動再生ビデオ広告を想像してほしい。

広告における顔や目の追跡技術には良い使い道も悪い使い道もある

あらゆるマーケティングツールと同じく、顔や目の追跡技術には良い使い道も悪い使い道もある。しかし、どちらもこの新しいモバイルデータに内在するプライバシー問題と戦う必要がある。

顔データは、プライバシーの境界線か?

位置情報は、消費者の間に少なからぬ騒動を引き起こし、未だに誰もが安心できる技術とは言えない。カメラ内にある視線や顔の動きを検知するために作られたセンサーによって集められたデータは、個人のプライバシーにとって全く新しい境地に踏み込むものであり、監視機関や、懸念をもつユーザー、恐らく政府関係者らによっても厳密に監視されるべきだ。

問題は、この種のデータを集めることが、その利用に対する大規模な反対運動を引き起こすほどの警戒心を与えるかどうかだ。位置情報はユーザーにとっての利点があまり明らかではないにも関わらず、何とか切り抜けて今や新しいアプリの殆どに採用されている。果たして顔面追跡も同じ試練を受けるのだろうか。個人を特定しない形で使われるならば不満を鎮められるのだろうか。私にはすぐに答えが思いつかないが、モバイルファースト世代は、旧世代よりも個人データの共有に意欲的なので、初期の反射的抵抗を何とか乗り切れるかもしれない。

結局、自分を知っているスマートフォンの方が知らないものより良い。そして、自分を「見る」ことの出来るスマートフォンの方がそうでないものより自分を知っている。このテクノロジーがしっかりと根をおろすまで、数年間は心許ない状態が続くかもしれないが、時折興味深い利用法が数多く出てくるころを期待したい。

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(翻訳:Nob Takahashi)

信頼を勝ち取るために、Facebookはニュースフィードの変更をGoogle PageRankのように公表すべきだ

ネガティブな報道とユーザーの混乱が多すぎる。それはFacebookがニュースフィードを黙っていじった結果だ。Biltonゲート事件が我慢の限界だった。Facebookは公開ニュースフィードのアルゴリズム変更に関する情報提供を、GoogleがPageRankで行っているようにするべきだ。Facebookは、フィードをいじることがユーザーに役立ち、もっと広告を売るためではないことをユーザーを説得すべく、教育と透明性が必要だ。

Facebookは綱渡り状態にある。彼らは、マーケター、コンテンツ制作者、アプリ開発者、会社の利益、そして何よりも大切なユーザー体験のバランスを取らなくてはならない。時と共に、その権力、普遍性、富、そしてプライバシー問題のために、人々は何かの変更を見るそはから最悪の結果を想定するようなってくる ― Facebookはもっと個人情報を搾取してもっと稼ぎたいだけだ。

それは半分だけ正しい。データと金が欲しいのは間違いない、しかしFacebookは基本的に使命に駆られる会社た。Facebookの記事を書いて3年間、数十人もの従業員をインタビューし、サンフランシスコでの出来事も知り、私は彼らが世界をもっとオープンで繋がったものにしたいと本気で考えていると、心から信じている。

そうすることは、もっと個人情報をむさぼり金を稼ぐことを意味している。そのデータはサービスをパーソナル化するために使われ、お金はそれを作る人を雇うために使われる。しかし注目すべきなのは、彼らが使命を果たして財を成す唯一の方法は、ユーザー体験を最優先させることだという事実だ。もし広告主やバイラルアプリの開発者がFacebookを支配するようになれば、数年後には彼らが広告を見せたりアプリを売ったりする相手がいなくなってしまう。

このため、Facebookがニュースフィードを変える時、それはエンドユーザーの利益のためである場合が普通だ。問題は、多くの場合にそれがFacebookページ管理者やプロのコンテンツ制作者、例えばNew York TimesのNick Biltonの犠牲を伴うことだ。Facebookは、ユーザーがいいね!をつける可能性の高い記事がニュースフィードに流れるよう、アルゴリズムに変更を加える。それは読者の数を求めるジャーナリストや企業ページの記事が減ることを意味する場合もある。

transparency over fearFacebookは、そうした変更を加えた理由を伝えるやり方が下手で、変更も黙って行ってきた。いずれも人々に、欲深さのためであると思わせた。Facebookはこれに関して昨年夏以来大きな問題を抱えてきた。スパム通報されたFacebookページに対する罰則を強化し、全般的にファン1人当たりのいいね!が少ないFacebookページのリーチを減らした。同時期に、Facebookページがより多くのユーザーにリーチできるプロモーテッドポストを導入した。人々は直ちに、Facebookはプロモーテッドポストを買わなければリーチを減らすと言ってFacebookページを脅していると言って、彼らを非難した。Dangerous Mindsのあるブログ記事(右に貼ってある)は、Facebookを「史上最大のおとり商法」と呼び、16万2000件のいいね!を得た。

実際には、元々FacebookはスパムまがいのFacebookページを排除しようとしていたし、プロモーテッドポストは、ずっと以前からあるスポンサー記事を簡単に買う方法の一つにすぎない。仮にアルゴリズム変更と広告が関係していたとしても、意図的にフィードの質を下げることはFacebookの利益にならない。人々の読む量が減れば、プロモーテッドポストから得た収益は利用量の減少によって打ち消されてしまう。

この問題は先週末Biltonが長文記事で、彼のフォロワーに表示される記事が1年前より減っていて、それはFacebookが広告を増やしたためであると示唆したことによって再び浮上した。Facebookは、一部の有名ライターのエンゲージメントが減っていることを認めたが、それはたまたまユーザーがBiltonの記事を見たくなかっただけであり、殆どの著名人は露出を増やしていると主張した。しかし、最終的にFacebookは、言うなれば世界最強の会社とは思えない防御的態度を取った。、

もしFacebookが、スパム対策や公開フィードのリーチに関するコミュニケーションで先手を打っていれば、こんな状態になることはなかっただろう。Facebookは既に気付いていると私は感じており、少なくともニュースフィードの主要なアルゴリズム変更を行う前にはアナウンスをするようになるのではないかと思っている。利用規約の変更についても書いたように、「人は理解できないことを恐れる」ものなので、Facebookのゴールは理解を深めるさせることにある。

Google Inside Search

Googleではうまくいった。彼らは数ヵ月毎に、「検索クオリティーハイライト:8、9月で65箇所を変更」のような記事を掲載して、PageRankに関わる数十箇所の変更を概説するので、ウェブマスターは自サイトのGoogle検索ランクが変動することを知る。

例えば、昨年8月に載ったある変更は「システムの精度と適用範囲を改善することによって地元ウェブ検索でより関連性の高い結果を得られるようにした。検索結果がユーザーの地元であることを識別する方法が改善され、適切にランク付けできるようになった」というものだった。これによって地元以外のサイト管理者は、Googleが地元を優先したために自分のトラフィックが減るかもしれないことを知る。

Facebookは、小さな変更を頻繁に行い、時としてフィードに大きな変更を加える。明日発表される新しいコンテンツ別ニュースフィードもその一つだ。この大型変更に関しては、リアルタイムの更新一覧や詳細な解説記事が出るかもしれない。あるいは、Googleのように定期的な変更一覧を公開すると共に、主要な変更点を発表するかもしれない。Facebookはこれらと同時に、そもそもなぜ変更するかを説明するユーザー教育が必要だ。理想的なトーンは、「私はユーザーのために戦う!」的で、かつマーケターやパブリッシャーや開発者に、利己的スパマーの罪を着せることのないもの。

陰謀論者を説得することはFacebookにとって容易な仕事ではない。その多くは企業は邪悪だと体質的に考えているだけだ。透明性の推進が唯一効果を発揮するのは、自分が勝ち企業が勝つための最優先事項は、そこを人々が喜んで時間を過ごす場所にすることであると、Facebookが人々に伝えられる時だ。

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(翻訳:Nob Takahashi)