不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

不動産営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmart(ハウスマート)は10月8日、第三者割当増資による計7億円の資金調達契約を締結したと発表した。引受先は、JIC ベンチャー・グロース・ファンド1号投資事業有限責任組合(JIC ベンチャー・グロース・インベストメンツ)、サファイア第一号投資事業有限責任組合(サファイア・キャピタル)。累計資金調達額は約14億円となった。

調達した資金は、事業拡大・開発スピードを加速させるための人材採用、導入店舗のカスタマーサクセス強化、不動産データベースの拡充、内部体制の強化などに投資する。現在、東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県の1都3県で展開しているプロポクラウドを、近い将来エリアを拡大して提供できるよう事業を進めるという。不動産仲介会社向け営業支援SaaS「プロポクラウド」を手がけるHousmartが7億円調達、人材採用やカスタマーサクセス強化

2014年10月設立のHousmartは、「住を自由に」をミッションに掲げ、テクノロジーとデザイン、不動産の専門知識を融合させ、「住」の概念をもっと自由なものに進化させることを目指すスタートアップ。

プロポクラウドは、営業担当者に代わって顧客の希望条件に合う最新の物件情報や売却に関するコンテンツを自動でメール送信する、不動産仲介会社向け営業支援システム。対象物件は、居住用中古マンション、新築戸建、中古戸建(オーナーチェンジ物件除く)だ。

不動産業界には、従来「物件数が多すぎて最新の物件状況を把握しきれない」「自社のシステムに物件情報を入力するのは手間がかかりすぎる」「顧客の長期フォローが必要だが、人力では対応しきれない」という課題があり、同社独自のビッグデータとシステムにより解決するものという。

最新の物件情報や売却に関するコンテンツの自動メール送信機能に加え、顧客管理機能、顧客別活動履歴のチェック、最新物件情報の検索・閲覧、手動メール送付など、営業活動に必要な機能が備わっており、プロポクラウド1つで不動産営業のDXを実現できるとしている。

 

現代アートEC運営のTRiCERAが1.9億円調達、アジア・北米顧客増加に向けコンテンツ・機能開発・プロモーションを強化

現代アートEC運営のTRiCERAが1.9億円調達、アジア・北米顧客増加に向けコンテンツ・機能開発・プロモーションを強化

グローバルアートマーケットプレイス「TRiCERA ART」を運営するTRiCERAは10月7日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による1億9000万円の資金調達を発表した。引受先は、KUSABI、DGインキュベーション(デジタルガレージグループ)、ポーラ・オルビスホールディングス、SMBCベンチャーキャピタル、マネックスベンチャーズ。デジタルガレージグループとマネックスベンチャーズはシードラウンドに続いての追加出資。

調達した資金により、アーティストのさらなる獲得と、世界中で顧客をより増加させるためのコンテンツ強化、機能開発・プロモーション強化を行う。具体的にはアジア・北米を中心とした顧客の獲得、UI/UXの向上、そして人材の採用を積極的に進める。

2018年11月設立のTRiCERAは、「創造力に国境なんてない」を理念に、日本やアジア諸国をはじめ、世界中のアーティストが自由形式にアート作品を発表・販売できるTRiCERA.NETを2019年3月より運営。

2021年9月末現在TRiCERA ARTは、4800名を超えるアーティストが参加し、総出品数3万点を超えるアートプラットフォームに成長したという。アーティストの国籍は半数以上が日本以外となっているほか、月間流通総額も前年比3〜5倍と伸びているそうだ。現代アートEC運営のTRiCERAが1.9億円調達、アジア・北米顧客増加に向けコンテンツ・機能開発・プロモーションを強化

ツイッターが中核事業への投資を加速、モバイル広告MoPubを売却へ

Twitter(ツイッター)は米国時間10月6日、2013年に買収したモバイル広告プラットフォームMoPub(モパブ)を、モバイルゲームおよびマーケティングソフトウェアメーカーのAppLovin(アップロビン)に売却すると発表した。

Twitterは、2013年に約3億5000万ドル(約390億円)でMoPubを買収したが、今回は現金10億5000万ドル(約1170億円)で同社を売却する。MoPubによると、同社は2020年に、約1億8800万ドル(約210億円)の売上高でTwitterに貢献した。Twitterは以前、2023年までに年間収益を2倍にするという目標を掲げていた。

TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏はプレスリリースの中で「今回の売却により、当社の収益プロダクトロードマップへのフォーカスと自信がさらに高まり、Twitterの長期的な成長を支える中核製品への投資を加速させることができます」と述べた。

TwitterのCFOであるNed Segal(ネッド・シーガル)氏は、今回の買収はTwitterが新製品の開発を急いでいる中で「巨大な」広告機会に再び焦点を合わせるための手段だと特徴づけた。シーガル氏によると、Twitterは今後、自社で運営する製品の開発を重視していくが、ここ数カ月、そのビジョンに合致した企業の買収に幅広く投資しているようだ。

Twitterはこれまで、ほとんど問題なく事業を進めてきたにもかかわらず、2021年に入ってビジネスを大きく変える動きをいくつも見せてきた。立て続けにプロダクトをリリースする中で、TwitterはSuper FollowsTicketed Spacesなどの機能により、クリエイター経済の爆発的な成長を利用した新たな収益源を模索しているが、これらのプロダクトの浸透は今のところ限定的だ

Twitterは2021年、広告なしの読書ツールScroll(優れていたが今はないニュースアグリゲーターNuzzelを含む)や、人気のニュースレタープラットフォームRevueなど、新しい方向性を示す多くの買収を行った。

Twitterはまた、Clubhouseのようなオーディオルームや、新しい関心事ベースのコミュニティを立ち上げ、プラットフォームを害のない快適に過ごせる場所にするための実験的な機能を数多く提供している。これらの機能は、有料の月額制サービスTwitter Blueの広範な立ち上げに向けて準備を進めていく上で、重要な役割を果たすはずだ。

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画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

【スタートアップバトル】過去の出場企業紹介 6:STANDS

TechCrunch Tokyo 2021は、12月2、3日にオンラインで行うこととなった。そのメインとなる「スタートアップバトル」はもちろん2021年も開催する。

新進気鋭のスタートアップがステージ上で熱いピッチを繰り広げるピッチイベント「スタートアップバトル」には、例年数多くの企業が参加、熱戦が繰り広げられている。投資家や大企業の新規事業担当者も多く参加、スタートアップバトルをきっかけに出資が決まったり、優秀な人材の採用につながることも少なくなく、日本スタートアップ業界における登竜門ともいえる存在となっている。

ここでは、そんなスタートアップバトルにおいて、2020年にファイナルラウンドに進出したSTANDS(スタンズ)を紹介したい。

同社が提供する「Onboarding(オンボーディング)は、ソフトウェアのユーザー体験を変えLTV最大化を支援する、ソフトウェアサービス提供社のためのSaaS。Onboardingを導入すると、エンジニアの工数をかけずにノーコードでソフトウェアのユーザーインターフェース・ユーザーエクスペリエンス(UI/UX)を変えることができ、ユーザーごとに最適な体験を提供することで長期的な関係を築ける。

またユーザー属性や利用状況を分析し、データをもとにした施策を実行・改善といった、PDCAに必要な機能をワンストップで提供し最短でROIを実現する。

スタートアップバトルへの本登録は記事末のリンクで行える。出場登録締め切りは2021年10月11日(月)。

応募条件(詳しくはバトル応募ページに記載)

  • 未ローンチまたは2020年10月以降にローンチしたデモが可能なプロダクトを持つスタートアップ企業であること。
  • 法人設立3年未満(2018年10月以降に設立)で上場企業の子会社でないこと。

スタートアップバトルの応募はこちらから

小売業の未来「会話型コマース」を構築するWizardが正式な立ち上げに先立ち約55.8億円調達

2021年初めにWalmart(ウォールマート)の米国eコマース部門の責任者を退任したMarc Lore(マーク・ローレ)氏は、eコマース分野の新しいスタートアップ企業である「Wizard(ウィザード)」を支援している。ローレ氏は「会話型コマース」分野のB2BスタートアップであるWizardの共同設立者、取締役会会長、投資家としての役割を担っている。Wizardは、将来のモバイルコマースはテキストで行われると信じている。同社の正式な立ち上げに先立ち、米国時間10月6日、同社はNEAのTony Florence(トニー・フローレンス)氏が主導する5000万ドル(約55億7600万円)のシリーズAを発表した。

関連記事:EC界の寵児マーク・ローリー氏がJet.comを3115億円で売却し4年余りでWalmart退社

このラウンドには、ローレ氏とAccel(アクセル)も参加している。フローレンス氏、ローレ氏、AccelのSameer Gandhi(サミアー・ガンジー)氏は、Wizardの共同創業者兼CEOであるMelissa Bridgeford(メリッサ・ブリッジフォード)氏とともに役員を務めている。

このスタートアップは、興味深い創業ストーリーを持っている。というのも、多くの人が思っているほど新しい企業ではないからだ。

かつてニューヨークで金融のキャリアを捨てたブリッジフォード氏は、オースティンを拠点とするStylust(スタイラスト)を設立・運営し、消費者が買い物をする際のアシスタントを提供することを目的としたテキストベースのショッピングプラットフォームを提供していた。ユーザーは、スクリーンショットや写真をテキストで送信すると、ウェブサイトにアクセスすることなく、テキスト上で購入可能な商品のオススメを受けることができる。Stylustは、AIと画像認識機能を活用して、消費者に購入すべき商品の選択肢を提供した。また、StylustにはB2Bの要素もあり、ブランドに「ワンテキストチェックアウト」の体験を約束している。キャッシュとして残っていた同社のウェブサイトによると、同社は35%のコンバージョン率、もしくはウェブベースの商取引の10倍のパフォーマンスを謳っていた。

WizardはStylustを「買収した」と言っているが、チーム全体(9月に最高責任者として新たに採用された数名を除く)はStylustで働いていた社員で構成されている。買収当時、Wizard は市場に製品を出していなかった。

厳密にいうとまったく新しい会社ではあり、現在はローレ氏のeコマースにおける経験に頼ることができ、一流の投資家の支援を受けることができる。

ブリッジフォード氏は、Wizardを「我々のビジョンをより大きなスケールで構築し、リテールテックの分野で非常に優れたビジョンを持ち、実績のある創業者であり、実績のある経営者であるマーク氏とパートナーを組むことができる」機会だと表現している。

「会話型コマースが小売業の未来であるというビジョンを、私たちは共有しています」とブリッジフォード氏は付け加えている。

しかし、同社はまだ製品の詳細については語っていない。その代わり、このB2Bサービスについて、ブランドや小売業者が消費者とテキストで取引できるようにするものだと説明している。このサービスは、加入から検索、支払い、配送、さらには再注文までカバーした、モバイルでの「エンド・ツー・エンドのショッピング体験」と位置づけられている。

これらのテキストベースのチャットは、これまでのメッセージングアプリのチャットボットとの煩わしいやりとりとは違うと、ブリッジフォード氏は主張している。

「私たちは、自動化と人間味の組み合わせによって、最適なユーザー体験を提供すると同時に、バックエンドには拡張性のある強力なテクノロジーを構築することができました。それこそが『聖杯』なのです」と彼女は説明している。「これこそが、会話型コマースの未来像なのです。私たちは、チャット機能や自然言語処理を組み込んでいます。これらの技術はどれも急速に進歩しているものです」。

言い換えれば、1、2年前にチャットボットで経験したイライラするような体験は、今日の体験ではないかもしれないということだ。

「このテクノロジーの最終目標は、実際にはテクノロジーによって実現されているにもかかわらず、人間と話しているように感じさせることです」とブリッジフォード氏は付け加えた。

Stylustは、今回の買収により、Wizardとのブランド提携をもたらした。

以前の Stylust のウェブサイトには、Laughing Glass Cocktails(ラフィング・グラス・カクテル)Desolas Mezcal(デソラス・メスカル)Pinhook Bourbon(ピンフック・バーボン)Marsh House Rum(マーシュ・ハウス・ラム)Neft Vodkas (ネフト・ウォッカ)などの顧客情報が掲載されていた。また、Austin Biz Journalの特集では、ワインやスピリッツの小売に力を入れていることが紹介されていた。しかし、Florida Funders(フロリダ・ファンダーズ)が2020年にStylustを支援するという記事では、Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)、Walmart、Sephora(セフォラ)、Allbirds(オールバーズ)などの一流小売店との関係が記されていた。

Wizardとどことの関係が継続されるのか、また、アルコールブランドや他の小売業者に焦点を当てていくのかは、同社が資金調達以降の事業に関する詳細について言及を避けているため、不明だ。

同社は、今回の資金をAI、機械学習、自然言語処理などの分野や、営業、財務、業務などの非技術系の職務における採用に充てる予定だ。その中でも特に注目しているのが、チーフピープルオフィサー(最高人事責任者)の採用だ。現在のチームは、ニューヨークとオースティンにあるオフィスで働いているが、Wizardはリモートの技術チームのポジションの空きを埋めるために全国で採用活動を行っているとのことだ。

Wizardには、特にテキストマーケティングの分野で、同社のビジネスの特定の側面に対応するサービスを提供する競合他社がすでに存在する。しかし、もっと広く言えば、消費者がメッセージを介してブランドと交流する方法は他にもあり、それらが時間の経過とともにより完全な形の製品へと進化する可能性もある。現在、消費者はFacebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのソーシャルメディアで商品を見つけ、商品に関する質問をMessengerやダイレクトメッセージで行うことが多い。WhatsApp(ワッツアップ)は、消費者がアプリ内で直接製品やサービスを発見できるよう、企業向けの製品カタログを構築している。Apple(アップル)もBusiness Chatでこの市場に参入し、すでにiMessageのチャットで購入できるようになっている。

Wizardは、専用のメッセージングアプリや、例えばiMessageを搭載したiPhoneを必要とせず、SMSに注力することで、競合他社との差別化を図ることができる。しかし、テキストベースのスパム詐欺増加しているSMSに賭けることは、よりリスクの高い賭けでもある。しかし、ローレ氏はそれをいとわない。

「これまでのキャリアのほとんどをeコマースで過ごしてきた私にとって、会話型コマースが小売業の未来であることは明らかでした」とローレ氏はいう。「ディープラーニングが普及していく中で、極度にパーソナライズされた会話型のショッピング体験を実現する能力は、人々の買い物の仕方を変えていくでしょう。メリッサ氏とWizardのチームが構築しているものは、その変革をリードするものだと確信しています」と述べている。

画像クレジット:racorn Shutterstock

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(文:Sarah Perez、翻訳:Akihito Mizukoshi)

アップルがApp Storeの「問題を報告」リンク復活、不正行為対策への協力を呼びかけ

Apple(アップル)がApp Storeに変更を加える。iOS 15、iPadOS 15、およびmacOS MontereyデバイスのApp Store製品ページに「問題を報告」リンクを復活させる。ユーザーがアプリに関する問題を簡単に報告する方法を提供する。アプリに不快なコンテンツや違法なコンテンツが含まれていないか、あるいは消費者からお金を騙し取ろうとしていないかなどを報告することができる。Appleは数年前、App Storeからユーザーフレンドリーな「問題を報告」ボタンを削除したが、それはあだとなったのかもしれない。新たな報告によると、上位アプリの多くが詐欺であり、消費者に数百万ドル(数億円)の損害を与えている。Appleはこの状況について議会から質問を受けたこともある。

このボタンの復活は今週初めに発見の報告があったものの、Appleは米国時間10月6日まで正式に発表していなかった。

関連記事:アップルがユーザーによる悪質なアプリや詐欺行為の報告を簡単に

Appleによると、この新機能は現在、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドで提供されており、時間をかけて他の市場でも提供していくとのことだ(ただし、厳密にはこの機能は新しいものではなく、このようなボタンはApp Storeの初期の頃には重要な機能だった)。

「Report a Problem(問題を報告)」ボタンのある古いApp Storeの例(画像クレジット:Dummies.com)

このボタンは、ユーザーがインストールしたアプリにのみ表示される。

ボタンをクリックすると、ユーザーはreportaproblem.apple.comで「詐欺または不正行為を報告」や「有害な、乱用的な、または違法なコンテンツを報告」などのオプションを選択することができる。また、アプリ内課金を含まない無料アプリの問題も報告できるようになる。

App Storeのスクリーンショット、2021年10月

Appleによると、AppleのApp Review、Discovery Fraud and Live Moderation、Financial Fraudの各チームは、報告された問題について、不正、人為的操作、乱用、その他のApp Store Review Guidelines違反の兆候がないか調査する。そして、発見した問題を解決するために開発者に連絡を取る。ただし、消費者に対する直接的な金銭的救済措置については言及していない。消費者はこれまで通り、このページから別の手続きで返金を要求しなければならない。

Appleが数年前にサブスクリプションモデルに移行して以来、App Storeでの詐欺行為は明白で悪質なものとなり、多くの場合、収益性が高い。悪質な業者らは同モデルに移行してすぐに、ビルトインされたツールを利用して消費者を騙し、サブスクリプション購入に誘導しようとした。Appleは、定額制アプリに「ダークパターン」やその他の不正な手段を使おうとする開発者を捕まえることを目的とした新しいガイドラインを発表した

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Fleksyの共同創設者がApp Store詐欺による売上減でAppleを提訴

ある開発者、特定して言えば、詐欺師によって失われた収益をめぐってAppleを提訴したKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリオ)氏は、App Storeにおける最悪の詐欺行為に焦点を当てることを自らの使命としている。

同氏自身のビジネスに影響を与えたその詐欺では、Apple Watchアプリの偽物が消費者から数百万ドル(数億円)を騙し取ったと言われている。同氏はまた、エンドユーザーにとっていかに大胆で悲惨な行為であるかという理由で見出しを飾った詐欺も発見した。その中には、ユーザーの生活費(約60万ドル=約6600万円)をビットコインで騙し取った暗号資産ウォレットアプリや、実はオンラインカジノが隠れている子ども向けゲーム、年間500万ドル(約5億5000万円)を騙し取っていたVPNアプリなどがある。

エレフテリオ氏は現在、App Storeの詐欺事件をもう1件調査しており、近日中に公開する予定だと話している。この事件では、数百万件ダウンロードされたアプリの開発者が、数千万ドル(数十億円)の収益を上げていた。

同氏の仕事は、AppleがApp Storeの不正行為対策にどれだけ投資しているかについて疑問を投げかけた。結局のところ、1人の開発者が空いた時間に次から次へと詐欺を暴くことができるなら、世界で最も価値のある企業にもできるのではないだろうか。

実際、同氏は、より簡単に詐欺を発見するためのシステムさえ開発した。「Bunco Squad」というこのツールは、アプリの評価、レビュー、ダウンロード数、収益などの指標をダッシュボードに表示し、アプリに信頼度のスコアを付与する。詐欺師の多くは偽の評価を購入しているため、アプリの総合的な星評価とレビューの記載があるもののみから算出した評価を比較し、詐欺の可能性を見つけるというのは非常に簡明だ。

同氏は「Bunco Squad」をApp Storeで公開しようとしたが、当然のことながら却下された。Appleからは、アプリが提供する情報の一部が不正確である可能性があると言われたそうだ。

App Storeの不正に関する問題は、2021年になって議会にまで持ち込まれた。

Appleは、4月に行われた上院の反トラスト法に関する公聴会で、App Storeの詐欺師を止める能力がないように見えることについて質問を受けた。同社は、安全で信頼できるアプリ市場を維持するため、開発者に代わって詐欺行為に対処していることから、開発者に課す手数料を正当化していた。上院議員たちは、このようなApp Storeの詐欺行為を発見するために、なぜジャーナリストやその他の「オープンソースの報告」(エレフテリオ氏のような公の取り組みを指していると思われる)に頼らなければならないのかについて情報を求めた。

関連記事:米上院は独禁法公聴会でアップルのApp Storeにおける不正防止の怠慢を非難

そのときのAppleの回答は、セキュリティや不正行為との戦いは「いたちごっこ」であり、改善に努めているというものだった。

Appleは、10月6日の発表で、不正行為への効果的な対策には一般の人々からの協力が必要であることを認めたようだ。

同社は、App Storeの変更に関するお知らせという形ではあるが、一種の声明を発表した。その中で、同社が詐欺対策に十分な努力をしていないのは、おそらく詐欺アプリの収益がApp Storeの利益に貢献しているからだ、という噂を打ち消そうとしたようだ。

「問題のあるアプリは、ユーザーと開発者のApp Store体験を低下させます。私たちは、削除すべき問題のあるコンテンツの種類を特定する技術を常に拡げています。問題のあるアプリは削除され、その開発者はApple Developer Programのメンバーシップを失う可能性があります」と述べている。

「Appleは、App Storeがすべての開発者にすばらしい機会を提供し続けるために、問題のあるアプリからユーザーを保護することに深くコミットしています」と付け加えている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

YouTubeがR・ケリーの公式チャンネルを削除

YouTubeが、R.Kelly(R・ケリー)の公式チャンネルを削除した。これは、R・ケリーが性的人身売買の罪で有罪判決を受けたためだ。YouTubeはロイターに対して「RKellyTV」と「RKellyVevo」のチャンネルはすでに存在せず、ケリーはYouTube上で他のチャンネルを作成したり所有したりすることはできないとしている。YouTubeは、クリエイターの責任に関するガイドラインに沿って、今回の措置をとった。

ただし、これはすべてを一律に禁止するものではない。ケリーの音楽は、引き続きYouTube Musicで聴くことができる。また、他のユーザーがアップロードしたケリーの動画は、引き続き視聴することができる。編集部はYouTubeに対して、その理由を明らかにするよう求めている。

2017年、2人の女性がR・ケリーの音楽をストリーミングサービスやラジオから削除させるキャンペーンを始めている。彼に対しては、何十年も前から告発が行われてきた。検察は、ケリーがその名声を利用して女性や未成年の少女を搾取していたとし、連邦陪審員は2021年9月、彼を性売買の罪で有罪とした。

R・ケリーの判決公聴会は5月に行われる予定だ。最低の刑期は10年だが、最大で終身刑になる可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris Holtは、Engadgetの寄稿者です。

画像クレジット:Chicago Tribune / Contributor

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(文:Kris Holt、翻訳:Katsuyuki Yasui)

希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

AVA Intelligence(アバインテリジェンス)は10月7日、AIを活用した旅行サービス「AVA Travel」(アバトラベル)の正式版リリースを発表した。また、AVA Travelの旅行提案機能(レコメンドエンジン)のAPI提供事業にも挑戦すると明らかにした。希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

AVA Travelは、ユーザーの希望や条件を基にAIが適した旅行情報を提案するサービス。2019年8月にローンチしたβ版では、海外における約100都市からユーザーに合わせた旅行先の提案を行っていた。その後コロナ禍の影響もあり、国内旅行先の提案にも対応し、現在は国内外合わせ約400の旅行先から好みに合わせて提案するようにしたという。

また、広島県を舞台としたアクセラレーションプログラム「ひろしまサンドボックス『D-EGGS PROJECT』」(2021年4月採択)で実証開発を行い、正式版では現地での具体的な観光スポット・ホテル・体験・レストランまでユーザーごとにおすすめ順で提案可能となっているそうだ。特に、広島県尾道市周辺の観光情報は、現地の人のみぞ知るようなディープな情報も提案できるようにしており、自力で探していては出会いにくい、新たな発見を提供するという。

さらに同社によると、AVA Travelの裏側で動いている旅行提案機能について、APIとして利用希望先へ提供する事業を開始予定という(2022年に正式提供予定)。現在、同機能の正式提供に向け、実証開発に協力可能な企業を募集中だ。

同APIでは、旅行に関する希望・条件を送ると、それに応じた旅行先や、旅行先における観光スポット・ホテル・体験・レストランなどをおすすめ順で受け取れる。これにより同社レコメンドエンジン提供先では、まだ具体的な旅行プランの決まっていない検討ユーザーに対して瞬時に提案することが可能となり、ユーザー体験価値の向上が期待されるという。希望条件を基にAIが旅行情報を提案する「AVA Travel」が正式リリース、レコメンドエンジンのAPI提供事業にも挑戦

気が散らないウェブコンテンツ読書サービス「Scroll」閉鎖、「Twitter Blue」の機能に

広告などを取り除き、ウェブ上の長いコンテンツを読みやすくするサービスのScroll(スクロール)が約30日間サービスを停止し、Twitter Blueの機能になる。Twitter(ツイッター)がTechCrunchへの電子メールの中で認めた。Twitterは5月にScrollを買収し、Twitter上でプレミアム機能としてScrollを提供する計画だと述べていた。Scrollは独立事業としてサービスを停止した後、Twitter Blueの一部として「Ad-Free Articles(広告ゼロの記事)」になる。

関連記事:ツイッターが予定するサブスクサービスの充実を狙い広告を取り除きページを読みやすくするScrollを買収

Scrollの現在の購読者に送られた電子メールには「ローディングが迅速で、広告がない記事を引き続き読むことが可能、その一方でお気に入りのサイトのジャーナリズムをサポートするTwitter Blueを購読してください」と書かれている。

Scrollは現在、月5ドル(約560円)で有料購読者にUSA Today、Buzzfeed News、The Atlantic、The Vergeなどを含むさまざまなウェブサイトでの広告が入らないブラウジングを提供している。Scrollの使用はリーダービューに似ていて、読者がコンテンツにフォーカスできるよう、広告やトラッカー、その他のウェブサイト上の邪魔なものを排除する。月額料金の一部は購読者が読むコンテンツの資金にあてられる。

ScrollとTwitterが買収を発表して以降、Scrollは新規購読の受付を停止してプライベートベータに移行し、チームはScrollのTwitterへの統合に取り組んだ。現在の利用者は、ScrollがいつTwitter Blueで利用できるようになるのか、そして直接的な移行があるのかどうか知らされていない。2社は数週間内に詳細を提供すると約束している。

Twitterは以前、購読者がTwitterを通じてScrollを使用するとき、サブスクの売上高の一部は出版社とコンテンツを制作したライターのサポートに充てられると言及した。プレミアム購読者は、報道機関やTwitterの自前のニュースレタープロダクトRevueの記事を簡単に読むためにScrollを使うことができるとTwitterは説明していた。RevueはTwitterがこのほど買収したサービスで、すでにTwitterに統合されている。

Twitter Blueは現在、カナダとオーストラリアでのみ利用できるというのは注目に値する。購読すると、Twitterユーザーはプレミアムな機能にアクセスできる。ここには、ブックマークを整理するツールや、Twitterが長らくリクエストされてきた「編集」ボタンに関連して提供するものに最も近いものになる「Undo Tweet」機能などが含まれる。Twitter Blueにはまた、リーダーモード機能もある。Twitterが以前、Scrollの計画とは関連がないと言っていたものだ。一部の人はTwitter Blueに他の機能を期待していたかもしれないが、リーダーモードはScrollのような確固たるサービスとは対照的なThread Readerといったサードパーティのアプリに代わるものだ。

カナダとオーストラリアでは、Twitter Blueの購読料金は現在、3.49カナダドル(約310円)と4.49オーストラリアドル(約360円)だ。今後の統合で料金が上がるかどうかは不明だ。

画像クレジット:Twitter

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

InstagramがIGTVブランドを廃止、リール以外のビデオを「Instagram Video」フォーマットに統一

Instagram(インスタグラム)責任者のAdam Mosseri(アダム・モセリ)氏は最近「もはや写真共有アプリではない」と発言し、TikTokやYouTubeとの熾烈な競争の中で動画へのシフトを重視する考えを示した。米国時間10月5日、同社は動画をInstagramの中心的存在にするという大きなゴールへ向けた新たな一歩として、IGTVの長尺動画とInstagramのフィードの動画を「Instagram Video」という新しいフォーマットで一本化することを発表した。

長い動画も短い動画も、ユーザーのプロフィールに新たに設けられる「動画」タブに表示されるようになる。

Instagramで動画を見つけたときは、その動画をタップするとフルスクリーンモードになる。見終わった後は、スクロールしてそのクリエイターの別の動画コンテンツを見るか、戻るボタンをタップしてフルスクリーンモードを抜けることができる。

ただしこれらの変更はリールには影響しない。InstagramのショートビデオプラットフォームでありTikTokのライバルであるリールは、別のものとしてそのまま残るとのことだ。ユーザーがスクロールして見る場合、動画のフィードにリールが混ざることはない。

画像クレジット:Instagram

IGTVは今回の変更が実施される前からすでに、スタンドアローンのプロダクトやブランドとしては人気を失っていた。トラクションが少ないことから、2020年初めにInstagramのホームページからオレンジ色のIGTVボタンは消えていた。TechCrunchが以前に報じた通り、Sensor Towerの調査によれば10億人以上いるInstagramユーザーのうちスタンドアローンのIGTVアプリをダウンロードしたのはせいぜい700万人だったことから、こうした動きになった。Sensor Towerは、2021年8月31日時点でIGTVアプリのインストール数はApp StoreとGoogle Playを合わせて全世界で1800万と推計している。

関連記事:InstagramがついにTikTokに敗北を認める

InstagramはIGTVボタン廃止の決定について、Instagramユーザーの大半はIGTVのコンテンツをフィードや「検索&発見」のプレビューから見つけているためと説明していた。しかし現実には評論家やクリエイターが主張するように、スタンドアローンのプロダクトとしてのIGTVがあることでフラッグシップであるInstagramアプリ内でわかりにくさや混乱が大いに生じ、その一方でスタンドアローンのIGTVアプリがたくさんダウンロードされることはなかった。

ただしIGTVアプリがなくなるわけではない。「Instagram Video」とリブランドし、Instagram VideoフォーマットのコンテンツとInstagramライブのビデオを配信すると同社は述べている。リールのビデオは配信されない。

今回の変更が実施されても、ユーザーはリールでないビデオをこれまでと同じ操作でアップロードすることができる。Instagramのホーム画面の右上にある「+」ボタンをタップし「投稿」を選択すればいい。最長60分間のビデオを投稿できる。

アップロード機能の変更として、トリミング、フィルタ、人と場所のタグ付けといった新機能が追加される。

画像クレジット:Instagram

これまではIGTV動画だった長尺動画は、これまでと同様にフィードには60秒間のプレビューが表示される。ただし動画が広告の対象である場合のプレビューは15秒間で、これもこれまでと変わらない。

今回の変更により「IGTV広告」と呼ばれるものはなくなり、代わりに「ストリーム内ビデオ広告」と呼ばれるようになる。クリエイターはこれまでと同様に長尺動画を収益化し、ブランドもこのフォーマットを利用できる。そしてこれもこれまで通り、動画もInstagramが実施しているクリエイターとのレベニューシェアのテストの対象となる(ただし企業が動画に力を入れてより多くの人にリーチしたい場合、60秒以内にする必要があるとInstagramは述べている)。

Instagramは、クリエイターは動画をストーリーズでクロスポストしたりダイレクトメッセージで共有したりしてもかまわないとしている。

Instagramは今回の変更によって動画のエクスペリエンスを簡素化することを目指している。しかしリールが別のものとして残っているので、動画は依然として長さで分類されることになる。これはYouTubeがTikTokの脅威に対抗している方法と似ている。TikTokの競合であるYouTubeショートは、YouTubeアプリ内に専用のボタンがある。Instagramのリールと同じだ。

Instagramによれば、今回の変更はiOSとAndroidの両方に対して全世界で公開を開始している。

関連記事:TikTokのライバルとなる60秒以内の動画サービス「YouTubeショート」が米国に上陸

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

工場DXのための現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を提供するものレボは10月5日、第三者割当増資による総額1億8000万円の資金調達を発表した。引受先はALL STAR SAAS FUND、京銀未来ファンドなど。

調達した資金は、製造業のサプライチェーンのデジタル化を推進すべく、ものレボの開発・販売、ものレボと連携する「サプライチェーンプラットフォーム」の事業化のための人材獲得にあてる。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

サプライチェーンプラットフォームとは、ものレボを活用し製造現場のデジタル管理を実現できた顧客と、少量多品種・短納期の調達ニーズを持つ企業のマッチングを図る仕組み。

現在ものレボは、2019年1月より国内外の77社130工場(2021年8月31日時点)の製造現場において利用されているという。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

多くの中小製造業は大手の系列からの下請けの仕事が多く、系列トップの業績に左右されやすく、安定した経営のための系列以外からも受注できるようにすることが課題となっている。同プラットフォームで受注することができれば、系列からの脱却、工場の稼働率アップと売上拡大が期待できるとしている。また発注側は、効率的に試作部品や治工具を調達することで事業のスピードが向上するという。77社130工場が利用する製造業専門の現場向け工程管理SaaS「ものレボ」を手がけるものレボが1.8億円調達

消費者やニーズの多様化により、従来の大量生産大量消費ではなく少量多品種・短納期の要求が高まってきており、同社はこの要求にいち早く応えるためサプライチェーンプラットフォームを形成し、様々なニーズに応える体制づくりをサポートする。

ノーコードイベントプラットフォームeventos提供のbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化

ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」(イベントス)を提供するbravesoft(ブレイブソフト)は10月5日、第三者割当増資および銀行融資により約7億円の資金調達を発表した。引受先は、マイナビ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、イノベーション・エンジン、VOYAGE VENTURES、岡三キャピタルパートナーズ、名古屋テレビ・ベンチャーズ、近鉄ベンチャーパートナーズ、ほか1社。調達した資金は、マーケティング・プロダクト開発・技術研究に投資する。

eventosは、ノーコードで自社のイベントプラットフォームを構築できるSaaSサービス。イベントのウェブサイト制作、申込フォーム、会員管理、チケット販売、出展者ブース、オンライン開催、イベント公式アプリの構築まで、プログラミング不要で自由に自社イベントプラットフォームを構築可能という。これまで300件以上のイベントに導入され、累計100万人以上の体験をアップデートしたとしている。ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化ノーコードイベントプラットフォーム「eventos」を提供するbravesoftが約7億円調達、マーケ・プロダクト開発・技術研究強化

ラテンアメリカの卸売部門を変革するB2Bマーケットプレイス「ZAX」が約6.7億円調達

ZAXの共同設立者であるブルーノ・バラディ氏とフェルナンド・ザナッタ氏(画像クレジット:ZAX)

ラテンアメリカで小規模な販売ビジネスを維持するのには、新製品を探すための長時間バス移動や、運営資金不足、支払力不足をともなう。このような非効率性は卸売業者にも波及し、卸売業者はコストや納品期限の引き上げを余儀なくされる。

このような状況に目をつけた2度目の起業となるBruno Ballardie(ブルーノ・バラディ)氏とFernando Zanatta(フェルナンド・ザナッタ)氏は、2019年に「ZAX(ザックス)」を立ち上げ、ブラジルの売り手と買い手をつなぐ運賃・配送・決済ツールを一体化したプラットフォームを開発した。

ZAXを立ち上げる前、CEOのバラディ氏は、2018年にLema21(レマ21)と合併したメガネ型電子商取引会社eÓtica(エオジカ)の創業者だった。CTOのザナッタ氏は、顧客とグローバルな専門家をつなぐツールNetlolo(ネットロロ)の創業者で、以前はDafiti(ダフィティ)のCTOやBuscapé(バスカペ)のCOOも務めていた。

彼らは、テクノロジーとイノベーションのおかげで巨大化しつつある消費者直販市場と、それに反し同じような成長を遂げていない卸売部門を目の当たりにした。多くの人がサンパウロのような都市の中心部まで在庫を買いに行っていたが、注文を書くのに紙とペンを使い、取引にはWhatsAppを使っていたのだ。

「私たちは、人々がすばらしいビジネスを行うのを支援する大きなチャンスを見出しました。eコマースの普及率は7%しかなく、卸売部門では1%以下と、市場はかなり遅れていました。物流、決済、商品の発見など、すべての領域が未開発だったので、そのためのツールを作りました」とバラディ氏はTechCrunchに述べている。

バラディ氏によると、B2B取引でZAXが改善可能な市場は、ブラジル国内だけでも2兆4000億BRL(約49兆円)と推定されている。ZAXのプラットフォームは、当初は衣料品の卸売だったが、現在では靴、電子機器、玩具、アクセサリー、美容用品などに拡大している。購入者はプラットフォームにアクセスし、商品を選び、次に発送方法と支払い方法を選ぶことができる。

ZAXは現地時間10月5日、シリーズA資金として600万ドル(約6億6700万円)を調達した。このラウンドには、Atlantico(アトランティコ)が主導し、FJ Labs(FJラボ)、Caravela Capital(キャラベラ・キャピタル)、GFC、およびZAXの最初の2回の投資ラウンドを主導したCanary(カナリー)が参加した。今回の資金調達により、同社の資金調達総額は830万ドル(約9億2300万円)となった。

AtlanticoのマネージングパートナーであるJulio Vasconcellos(フリオ・ヴァスコンセロス)氏は「ZAXは非常に短い期間ですばらしい実行力を見せてくれました。ZAXは、 ブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全体の売り手と買い手を支援する可能性を秘めていますし、卸売と小売はより多くのテクノロジーを利用することで大きく成長することができます」と語っている。

ZAXは、パンデミック前の100社から増加した700社以上のサプライヤーと取引しており、2020年3月以降、収益は10倍になったとバラディ氏は述べている。40人の従業員で構成されるチームを持ち、5万人以上のバイヤーがプラットフォームを利用している。

今回の資金調達により、同社はブラジルのさらに2つの地域に進出し、美容製品やアクセサリーのカテゴリーで製品ラインを増やすことができる。また、バラディ氏は、技術や商品開発のスタッフを追加で雇用したいとも考えている。

次のステップとして、ZAXは金融サービスへ注力をしており、いくつかのBNPL(後払い決済)のアイデアを試験的に実施し、顧客に資金を提供するために金融機関のパートナーを統合している。同社は現在、30日間の融資枠とPOSシステムを提供しているが、将来的にはデジタルウォレットやその他の決済ツールも提供する予定だ。

画像クレジット:

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

コネクテッドTVのYouTubeの広告でよりショッピングしやすくする

米国時間10月4日、YouTubeは月曜日、動画アクションキャンペーン(Googleの動画向けインタラクティブ広告タイプの1つ)をコネクテッドテレビ(CTV)に拡大し、YouTube広告をよりショッパブルになると発表た。この新しい動きは、広告主がより多くのオンライン販売を促進し、ビジネスを成長させるのに役立つと同社はいう。

視聴者が自分のテレビで動画アクションキャンペーンを見たら、下部にURLが表示され購入に招かれ、デスクトップやモバイルデバイスからショッピングを続けられる。これにより、ユーザーのテレビの視聴が中断されることはない。

YouTube広告のプロダクトマネージャーでディレクターのRomana Pawar(ロマーナ・パワール)氏の説明によると「ログインしたYouTube CTVの視聴者の4分の1は主にテレビを観ているため、リビングルームがブランドを売り込む絶好の場所になり、それら新しい視聴者によるコンバージョン(実購入)も増えていきます。動画アクションキャンペーンの初期のテストでは、CTVで発生するコンバージョンの90%以上が、モバイルやデスクトップコンピューターでショッピング行動ができなかった」。

パワール氏によると、2020年12月に米国では、YouTubeを大型画面で見る人が増え、1億2000万人以上がYouTubeやYouTube TVを自分のテレビでストリーミング視聴した。企業がオンラインセールスを増やすためには、動画アクションキャンペーンを利用して、1つのキャンペーンの中で新しい顧客を見つけ、彼らにYouTubeやGoogleのビデオパートナーからの在庫を結びつけるべきなのだ。

パワール氏は「初めて、パフォーマンスの良い広告主たちはYouTube on CTVを活かしてコンバージョンを促し、計測もできます。TV画面上の動画アクションキャンペーンは今やGoogle Adsからグローバルで利用できます」とブログで述べている。

GoogleがCTVの広告をもっとショッパブルにしたいという計画を発表したのは、2021年3月という早い時期だ。消費者、中でも若者は動画が好きで、買い物しながらエンゲージする。その結果、YouTubeやFacebook、Instagramなどはすべて、ライブのショッピングと動画ベースのショッピング機能に投資しているのだ。

関連記事:YouTubeにインターネットテレビの広告でもっと買い物しやすくなる新機能追加、Z世代をターゲットに

画像クレジット:Valera Golovniov/SOPA Images/LightRocket/Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Hiroshi Iwatani)

物流ラストワンマイルのDX目指す207が5億円調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

物流ラストワンマイルのDXを目指す207が5億円のシリーズA調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

物流業界のラストワンマイルのDXを目指す207(ニーマルナナ)は10月6日、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、環境エネルギー投資、Logistics Innovation Fund、Headline Asia、DG Daiwa Venturesの計4社。調達した資金により、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発、さらなる事業拡大・サービス成長にむけた採用活動の強化を行う。シードラウンドを含めた累計調達額は約5億8000万円となった。

同社によると、調達した資金は具体的には以下にあてるという。

  • 物流・配送利用者向けに再配達問題を解決する「TODOCU」(トドク)において、配送状況のリアルタイム確認を実現する機能追加
  • 配達員向け配送効率化アプリ「TODOCUサポーター」では、集荷関連業務すべてを一元集約し業務効率化を実現する機能追加
  • 物流・配送事業者向けの配送管理システム「TODOCUクラウド」において、物流会社および荷主のシステムとのAPI連携機能を開発

今後は、配送事業者・配送員の配送効率化をより高めるサービスを提供し、物流のラストワンマイル市場ですべての配送員が利用するようなインフラサービスへの進化を目指すという。2022年には日本全体の配達員の50%、10万人が活用するサービスを目指し、物流業界の人材不足などの課題解決に寄与したいとしている。物流ラストワンマイルのDXを目指す207が5億円のシリーズA調達、サービスの機能追加や外部システムとの連携機能開発

現在、コロナ禍によって生活者の巣ごもり需要が高まり、特にEコマース分野において顕著な変化が出ており、2020年の宅配便の取扱個数は約48億個と、前年度と比較し約11.9%増加しているという(国土交通省「令和2年度宅配便取扱実績について」)。

その中で物流業界では、人材不足や新人教育コストの増加、再配達問題、属人的管理作業の慢性化などをはじめ、以下のような課題が顕在化しているそうだ。

・​ドライバーは配送中に電話を受けるため都度停車する必要がある
・ドライバーが配送中に電話を受けることで気が散り事故の原因につながる
・ドライバーの配送状況を逐一確認しなければならない

207は、これら課題を解決すべく「いつでもどこでもモノがトドク世界的な物流ネットワークを創る」をコーポレートミッションに掲げ、2019年9月よりTODOCU、2020年2月よりTODOCUサポーターの提供を開始した。2020年5月には、人々の空き時間を利用して荷物を配達するシェアリング型宅配サービス「スキマ便」、同年12月にはTODOCUクラウドも提供している。

これらにより「配送状況をリアルタイムで一元管理可能」「ドライバーに土地勘がなくても視覚的に届け先を把握でき業務を効率化できる」「ドライバーが効率のよいルートで配送網を回れる」などが可能なことから、サービスローンチから約2年の現在、物流・配送事業者の従業員も含め1万5000名以上の配送員が利用しているという。

Podcastleはポッドキャストの制作から公開までできるオールインワンのプラットフォーム

最近の主要ポッドキャスト制作プラットフォームとしてはAnchorとDescriptが有名だが、バックミラーにはPodcastleが見え始めている。Podcastleは録音、制作、公開をすべてカバーするオールインワンのプラットフォームだ。

PodcastleはRTP GlobalとPoint Nine Capitalが共同で主導したアーリーステージのラウンドで700万ドル(約7億8000万円)を調達した。S16 VCと、以前に投資したSierra VenturesとAI Fundも参加した。

Podcastleは急成長中のクリエイターエコノミーに参入している。あるレポートによるとクリエイターエコノミーの規模はおよそ1042億ドル(約11兆6000億円)と評価され、最近では200万以上のポッドキャストが存在する。

Podcastleによれば、これまでに約15万人のクリエイターが同社を利用し、その数は急速に増えているという。コンシューマクラスのマイクでスタジオ品質のリモートインタビューをする、マルチトラックで録音と編集をする、ポッドキャスト中の話し言葉を切り出して聴きやすくするなど、ポッドキャストクリエイターが簡単に使えるツールを備えているためだ。また、テキストを読み上げて話し言葉にしたり、逆に話し言葉をテキストにしたりして、クリエイターはオーディオをテキスト書類のように編集できる。

以前はPicsartのエンジニアリング担当VPで、現在はPodcastleの創業者でCEOのArtavazd Yeritsyan(アルタヴァズド・イェリツィアン)氏は次のように述べた。「2022年に1日あたりの平均視聴時間は1時間37分になると予想され、ポッドキャスト業界はストーリーを伝える上で最も影響力のあるカテゴリーの1つになります。Podcastleは技術的な障壁をすべて取り除き、クリエイターがほんとうに大切にしなくてはならないこと、つまり人々と共有したいコンテンツの制作と配信に集中できるように努めています」。

同氏は、Descriptは編集ツールだがPodcastleは「創作」プラットフォームに近く、クリエイターはこのプラットフォームでリモートインタビューをしてそのまま編集もできるという。「MicrosoftのドキュメントとGoogleドキュメント、あるいはSketchとFigmaを比較するようなものです。この例えでいうなら、我々はGoogleドキュメントでありFigmaです」と同氏は筆者に語った。

RTP GlobalのマネージングパートナーであるAlexander Pavlov(アレクサンドル・パブロフ)氏は次のように述べた。「ポッドキャスティング市場は2020年に114億6000万ドル(約1兆2700億円)に達し、Podcastleは意欲の強いホストとクリエイターを満足させる統合ソリューションを提供しています。我々はこのプラットフォームには大きな可能性があると見ており、Podcastleのこれからの成功を支援できることをうれしく思っています」。

Point Nine CapitalのパートナーであるLouis Coppey(ルイ・コッペイ)氏は次のように述べた。「Point Nineは近年、パリのPlayPlay、ロンドンのGravitySketch、ブダペストのShapr3Dといったクリエイティブソフトウェアに投資してきました。この3社はビデオ制作やVR、3Dのデザインを徹底的に平易にしています。Podcastleはオーディオコンテンツ制作の民主化への道を開いています」。

Podcastleは4種類の料金プランを用意しており、基本的な機能は無料で利用できる。

画像クレジット:Podcastle team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

TelegramがフェイスビックとWhatsAppに障害が発生した日に7000万ユーザー増加を発表

米国時間10月4日に発生したFacebook(フェイスブック)の数時間に及ぶ障害は、会社、創業者、株主、そしてそのサービスに依存している多くの企業に打撃を与えたかもしれない。しかし、インスタントメッセージングのライバル企業にとっては、それは非常に良い1日となった。

関連記事:フェイスブック、Messenger、Instagram、WhatsAppなどすべてがダウン中、DNS障害が原因か

Telegram(テレグラム)の創業者兼CEOであるPavel Durov(パベル・デュロフ)氏は、10月5日に、同社のインスタントメッセージングアプリに7000万人という驚異的な数のユーザーが増えたことを発表し、そのサービスにとって「ユーザー登録数とアクティビティの記録的な増加」と表現した。

デュロフ氏は、自身のTelegramチャンネルに「Telegramは大多数のユーザーにとって完璧に機能し続けたので、我々のチームがこの前例のない成長にどのように対処したかを誇りに思います」と書いている。しかし、実際のところ、その日はそれほど完璧ではなかった。

「とはいえ、アメリカ大陸の数百万人のユーザーが一斉にTelegramに登録したため、一部のユーザーは通常よりも遅い速度を経験したかもしれません」とデュロフ氏は付け加えている。

最近10億ダウンロードを突破したTelegramは、2021年初めの時点で月間アクティブユーザー数が5億人に達している。

関連記事
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ユーザー数5億人に迫るインスタントメッセージアプリTelegramが2021年に広告プラットフォーム導入

また、TelegramとWhatsApp(ワッツアップ)の両方と競合するSignal(シグナル)も、新しいユーザーを増やした。同社は「数百万人の新規ユーザー」がアプリに参加したとツイートしている。

TelegramとSignalがライバル企業の犠牲の上にユーザーを増やしたのは、今回が初めてではない。WhatsAppが新しいプライバシーポリシーの内容を正確に説明するのに苦労していた2021年の初めにも、TelegramとSignalは数百万人のユーザーを獲得している。

Signalの持ち株会社の会長であるBrian Acton(ブライアン・アクトン)氏は、TechCrunchとのインタビューで、2021年初めのWhatsAppの失敗について「小さな出来事が最大の結果の引き金になった」と語っていた。

画像クレジット:Chris Ratcliffe/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Yuta Kaminishi)

日米11以上のプロ球団が採用のシーン映像分析プラットフォームを手がけるRUN.EDGEが資金調達、累計調達額15億円に

日米11以上のプロ球団が採用のシーン映像分析プラットフォームを手がけるRUN.EDGEが資金調達、累計調達額15億円に

スポーツや教育分野で映像分析プラットフォームを提供するRUN.EDGE(ラン.エッジ)は10月4日、プレシリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資および日本政策金融公庫からの特別貸付(資本性劣後ローン)による資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII2号投資事業有限責任組合)、Sony Innovation Fund、三菱UFJキャピタル(三菱UFJキャピタル8号投資事業有限責任組合)、日本リビング保証。シードラウンドからの累計調達額は約15億円となった。

調達した資金により、プロユースで培った技術をアマチュア向けに展開し、選手の競技力向上に貢献する。また、オンライン教育向け・メディア向け・産業向けなど積極的に技術展開し、生活やあらゆる社会活動の中で、映像を「シーン」で使えるよう価値提供を進める。

RUN.EDGEは、富士通の事業から独立・カーブアウトし、スカイライトコンサルティングと共同で活動を開始。映像分析のSaaS型サービス・プラットフォームを提供している。野球向けサービス「PITCHBASE」(ピッチベース)は、日本と米国において11以上のプロ球団が採用。サッカー・バスケ・ラグビー他フィールドスポーツ向けアプリケーション「FL-UX」(フラックス)は、Jリーグクラブ、Bリーグクラブ、欧州リーグクラブをはじめとした国内外の50以上のトッププロ・アマチュアクラブに利用されているという。

日米11以上のプロ球団が採用のシーン映像分析プラットフォームを手がけるRUN.EDGEが資金調達、累計調達額15億円に

野球向けサービス「PITCHBASE」(ピッチベース)

日米11以上のプロ球団が採用のシーン映像分析プラットフォームを手がけるRUN.EDGEが資金調達、累計調達額15億円に

サッカー・バスケ・ラグビー他フィールドスポーツ向けアプリケーション「FL-UX」(フラックス)

また、プロスポーツで培った映像技術をオンライン教育向けに展開した「TAGURU」(タグる)は、コロナ禍の中で新しい教育を促進するために大学や塾で導入・実証が進められているそうだ。

日米11以上のプロ球団が採用のシーン映像分析プラットフォームを手がけるRUN.EDGEが資金調達、累計調達額15億円に

オンライン教育向けに展開したTAGURU」(タグる)

【インタビュー】2021年のグロースマーケティングにおけるマーケターの雇用とアウトソーシングの比較をMKT1に聞く

Emily Kramer(エミリー・クレイマー)氏とKathleen Estreich(キャスリーン・エストライヒ)氏は、戦略的なマーケティング会社MKT1(エム・ケー・ティー・ワン)の創設者であり、その活動は単にマーケティングだけには留まらない。前回のインタビュー記事でも触れたように、MKT1は、マーケティングコンサルティング、リクルートやメンタリングのワークショップの開催、エンジェルシンジケート(エンジェル投資家とスタートアップをつなぐ資金調達プラットフォーム)への投資など、さまざまなサービスを提供している。

この2人の創業者は現地時間7月20日、TechCrunchのマネージングエディターであるDanny Crichton(ダニー・クライトン)氏とともにTwitterスペースを利用して、グロースマーケティング業界について語った。両氏は、グロースマーケティングがエンジンであり、グロースマーケティングを構成する他の細分化されたマーケティングが燃料と考えるなど、いくつかの新しい視点を提供した。

マーケティングに関する見解などの会話を交わした後、質疑応答のセッションを設けたところ、インタビューを聴いていた創業者らからは、マーケターは雇うべきか、アウトソースするべきかなどの質問が寄せられた。

以下は、Twitterスペースでのインタビューの抜粋であり、長さとわかりやすさを考慮して編集している。

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グロースマーケティングとは何でしょうか。

エミリー・クレイマー氏:簡単な例えでいうと、マーケティングは、燃料とエンジンで構成されている。グロースマーケティングがエンジンであり、コンテンツマーケティング、プロダクトマーケティング、コミュニティ、イベントなどのすべては燃料となる。マーケティングオペレーションを構築し、トラッキングを行い、すべてを世に出せるようにすることに始まり、メール、広告、SEO(検索エンジン最適化)、そしてウェブサイト上で行っていることまで、すべてがエンジンを機能させる。そして、これらすべてを使って、オーディエンスをマーケティングファネルに取り込むのだ。

誰かにサインアップしてもらったり、セールスにつなげるためのクオリファイドリードを見つけることだけではない。カスタマーサクセスチームやプロダクトチームのサポートも含まれる。一対多の方法でオーディエンスとコミュニケーションをとることが、マーケティングの機能と考えている。特にグロースマーケティングは、通常、フルファネルであり、エンジンであり、絶えず変化している。

グロースマーケティングを含め、当社ではマーケティングにおいてあらゆるものに名前を付け、その数は5000にも及ぶ。トップダウン型の営業組織ではデマンドジェネレーションと呼ばれることが多いが、当社ではデマンドジェネレーションをグロースマーケティングのサブセットと考え、特にリードをセールスにつなげることに焦点を当てている。これがグロースマーケティングに対する考え方だ。しかし、マーケターによって考え方は異なるだろう。

2021年のグロースマーケティングの状況はどうか。2021年の夏、何に注目しているのか。

クレイマー氏:2つの大きな変化に注目している。1つは、コミュニティをグロースマーケティングの一部としてどのように考えるかということ、少なくとも、これまでに行われてきたことに対して「コミュニティ」という言葉を使っていることだ。「コミュニティ主導の成長」という言葉は明らかに強力なバズワードで、これは基本的に成長を推進するために人々を会話に参加させることを意味する。もう1つは「プロダクト主導の成長」という言葉で、これはまさにセルフサービスを表す言葉だ。

プロダクトグロース担当者やプロダクトグロースチームと連携するグロースマーケターと、1つの中心となるチームという構成が、過去10年間のトレンドだった。「プロダクト主導の成長」という言葉が、それらすべてに使われている。マーケターは、自分たちの役割さえもリブランディングするのが好きなようだ。

キャスリーン・エストライヒ氏:多くの企業が、グロースマーケティングについて早期から考え始め、1人目のマーケターを雇うことを考えている。以前はシリーズAで雇用していたが、資金調達ラウンドのレベルが全体的に幾分上がったこともあり、シードステージの企業の多くが、より早い段階で成長について考えるようになっている。

グロースマーケターのスキルセットの需要は非常に高まっている。今までもそうだったが、今はそれが顕著になっているように思う。多くの企業がより早く資金を調達し、より迅速に推進力を高めて評価額を上げようとしているため、そのニーズは非常に高いと考えている。当社が話を聞いたほとんどの企業が、マーケターを採用したいと考え、より早い段階で必要な成長の手段について検討している。

マーケターが過剰な分野、不足している分野はどこか。現在、需要が高い分野はどこか。十分に活用できていない分野はどこか。

エストライヒ氏:全体的に、マーケターの需要は非常に高い。特に、プロダクトマーケティングでの関心が高くなっている。プロダクトマーケティングを専門とするマーケターは多い。というのも、通常、スタートアップ企業の1人目のマーケターはプロダクトマーケティングの経験者であり、多くの企業がプロダクトマーケターを求め、そして、単に大企業の出身者というだけではなく、プロダクトマーケティングの経験を持つ人を見つけているためだ。

大企業のプロダクトマーケティングでは、製品ラインと密接に結びついていて、プロダクトマーケティングだけを行っていると思われる。しかし、アーリーステージのスタートアップでは、プロダクトマーケティングだけではなく、ディストリビューションを理解している人材が必要だ。そのため当社では、多くの企業に「π型マーケター」と呼ばれる人材を採用することを勧めている。つまり、マーケティングの2つの分野に深く精通している人材だ。

多くの場合、プロダクトマーケティングとグロースマーケティングの2つだが、そのような人材を見つけることは通常の市場では非常に困難だ。特に今の市場では、その役割を果たすのはかなり難しいといえるだろう。該当する人材を見つけるには、レベルや経験の面で多少の妥協が必要となるかもしれない。しかしそれでも、プロダクトマーケティングとグロースマーケティングの両方に精通した人材を見つけることができれば、マーケティングチームを立ち上げたばかりの企業の多くは、その恩恵を受けることができるだろう。

クレイマー氏:最近の数週間でも、いくつかのスタートアップ企業との会話の中で「ああ、当社の1人目のマーケターはコミュニティマーケターになるだろう」という声を聞いた。その役割は進化し、大きく変化している。スタートアップのマーケティングを始めた10年ほど前は、コミュニティといえばソーシャルメディアのことを指していたが、今ではまったくその意味はなくなった。そのため、以前にそういった役割を担っていた人材を見つけることは非常に難しくなっている。

コミュニティマーケティングというと、コンテンツやバーチャルイベント、カスタマーサクセスなどを多く手がけてきたという意味になる場合もある。そういう人々の場合、コミュニティマーケターには不適格、あるいは適格かどうかの判断がつかないということになるだろう。募集された役割と、実際に応募した人材とのミスマッチを目にすることもある。

それを踏まえた上でのマーケターへのアドバイスとしては、仕事の内容や職責をよく読み、自分がやってきたことと合っているか、あるいは自分がやるべきと考えている職責とあっているかを確認することだ。もしかすれば、自分ができることを教えたり、創業間もない企業での役割を定義する方法を教えたりする機会があるかもしれない。

グロースマーケターと仕事を始めるのに適した時期はいつでしょうか。

エストライヒ氏:「1人目のマーケターを雇うのにふさわしい時期はいつなのか」という質問はよく耳にする。エミリーと私が創業者たちによくいうことは「創業者チームが最初のマーケティングチームである」ということだ。初期のメッセージングやポジショニングの多くは、創業者が行っている。多くの場合、初期のビジョンを描き、それが資金調達の方法となるだろう。それを考える方法は、一旦一歩下がって「さて、ニーズは何だろうか。自分たちが成し遂げようとしていることは何だろうか」と問うことだ。そして、プロダクトマーケットフィットについて考えることだ。

通常、プロダクトマーケター、グロースマーケター、あるいはπ型マーケターを最初に迎えるべきと考えている。最初のマーケターを迎える前に、実際に市場に出す製品を用意しておくのが望ましい。もしそうでなければ、製品が世に出て一握りの顧客を獲得するまで待つ必要があるだろう。そこまで行けば、1人目のマーケターを誰にするか考え始めるべきかもしれない。

1人目のマーケターは、グロースマーケティングの経験を持つプロダクトマーケター、もしくはプロダクトマーケティングの経験を持つグロースマーケターのように、両方の経験を持つ人がよいだろう。初めにエミリーがいったように、ビジネスモデルの経験があり、即戦力になる人だ。なぜなら、アーリーステージの企業で最初に行うマーケティングの仕事は、多くの役割を兼ね、多くの仮説を検証し、多くの仕事をすることになるからだ。

そのためにも、仕事をしたくないような高齢の人は雇わないようにしたい。そういった人たちは、あなたがまだ準備できていないであろうチームを雇いたがるものだ。また、何をすればよいのかわからないような若すぎる人も雇わないようにしたい。バランスの取れた、ミドルレベルの人材を見つけることも重要になってくる。

クレイマー氏:プロダクトマーケターは、注力すべきニッチを見つけるサポートをしてくれるということだ。ある程度の顧客を確保し、スタート地点を決めておくべきだと考えている。プロダクトマーケターは、実際にはオーディエンスマーケターといったほうがいいのかもしれない。自分たちがやっていることを、特定のオーディエンスにどうやって伝えるかを見つけ出してくれるマーケターだ。何らかのアイデアがあった場合、彼らはチーム内で「他のオーディエンスに拡大すべきか、このニッチな分野にとどまるべきか、他のオーディエンスは何を必要としているのか、顧客とコミュニケーションがとれているか、顧客は何といっているか」といったことを考え続ける手助けをしてくれる。

彼らは、チームがオーディエンスについてすべてを把握し、また、新しいオーディエンスに手を広げ、テストするのを支援する責任がある。これはプロダクトマーケティングの重要な役割だ。しかし、製品の開発やリリースを犠牲にしてまで、そのような人材の早すぎる投入は、非常にリスクが高いことだといえる。

MKT1では、B2B企業や成長段階にある企業における特定のマーケティング機能について、フルタイムの雇用とアウトソーシングのバランスに何か傾向は見られるか。

クレイマー氏:創業者は初期の段階は「マーケティングに多くの時間を費やしているが、マーケターを雇う必要はない。コンテンツについては請負業者や代理店を雇えばいいし、SEM(検索エンジンマーケティング)やSEO(検索エンジン最適化)についても請負業者や代理店に頼めばいい」と考えるだろう。そうすると、多くの請負業者を抱えることになる。しかし、どんなに優れた請負業者であっても、依頼元に担当者やレビューアーは必要であり、やるべきことが明確に指示されていなければ、よい結果は得られない。また、多くのクライアントを相手にしているので、そのすべてにすばやく対応することはできない。

また、請負業者の管理にも手間はかかり、特にその分野の経験がない人は、業者とのやり取りに自分で仕事をするのと同じくらいかかることもある。多くの場合、マーケティングは、何かを引き渡せばよい他のビジネス領域に比べて反復的であり、特にクリエイティブな面では、自社のブランドを確立するために、その傾向は強くなる。つまり、やり取りが何度も必要になる。

ただし、代理店や請負業者にアウトソーシングした方が良い分野もいくつかあると考えている。その1つが有料検索だ。起業してしばらくの間はSEMのスペシャリストを雇う必要はないだろう。SEMは確かに専門的で、独特な厄介物であり、何が有効で何が無効なのか、よく変化する。その仕組みを理解し、一日中AdWords(アドワーズ、現在のGoogle広告)を見ていてくれる人がいると、本当に助かるので、人を雇うには良い分野だ。そのため、マーケティングチームの規模にかかわらず、当社は常に検索仲介業者に補強してもらっており、当社のチームに専任のサーチ担当者がいたとしても、彼らをサポートするために業者を利用している。これは常に必要なことだ。規模が大きくなると多種多様なことを行うようになるため、さまざまな代理店が必要になるだろう。

また、コンテンツの分野でも、コンテンツ担当者やプロダクトマーケターを補強するために請負業者を利用することは有効だと考えている。それでもやはり、請負業者に費用を払って大量のコンテンツを作らせる前に、コンテンツの内容、伝えたいメッセージ、自社の独自性、ブランディング戦略を明確に理解しておく必要がある。そうでなければ、結局は何も伝えられず、目標を達成できないコンテンツの山になってしまう。

そのため、コンテンツと有料検索は、常にアウトソーシングするのに適した分野だ。そして、規模が大きくなるにつれて、つまり最初はそうではなく、またビジネスのタイプにも依存するが、PR、つまりメディアとの関係もアウトソーシングが有効な分野だ。これについては、今話をしているTechCrunchの方がもっと詳しいだろう。しかし、メディアとの関係は規模の経済が大きく作用する分野だ。そのため、メディアに精通した代理店、あるいは多くのメディアとの関係のある代理店を持つことは、非常に意味のあることだが、それはもっと後の話だ。しかし、PR、コンテンツ、有料検索については、これらを管理する人材を社内に確保しておかないと、アウトソーシングが役に立つどころか弊害をもたらすことになりかねない。

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(文:Miranda Halpern、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックの内部告発者が身元を明かし、同社は「安全よりも利益を選ぶ」と発言

Wall Street Journalが掲載したFacebookの最近の社内文書によると、同社はVIPたちに同社のルール違反を許し、またInstagramが10代のメンタルヘルスを害していることを知っていた。その情報を暴露したFrances Haugen(フランシス・ホーゲン)と名乗る内部告発者がこのたび、ニュース番組60 Minutesのインタビューに応じ、その内容をThe New York Timesが報じている。

ホーゲン氏は60 Minutesで「いろいろなソーシャルネットワークを見てきたが、Facebookほどひどいところは他にない。Facebookはこれまでに何度も、安全より利益を優先してきた」と語った。

ホーゲン氏のウェブサイトTwitterのアカウントによると、同氏は2019年にFacebookに入社して民主主義と虚偽情報の問題を扱い、また防諜活動も行ってきた。彼女はFacebookのプロダクトマネージャーだったが、5月に退社した。

当初彼女は、Facebookの内部文書「数千ページ」を、内部告発者救援団体Whistleblower Aidの創設者John Tye(ジョン・タイ)氏に渡し、その情報を公開した場合の法的保護と支援を求めた。その膨大な文書には、社内調査の結果やプレゼン用のスライドデッキ、添付文書なども含まれていた。彼女はまた証券取引委員会(SEC)に公益通報者としての告発状を提出し、Facebookの内部的行為が同社の公式声明に反している、と非難している。

内部告発者フランシス・ホーゲンはアイオワ州出身のデータサイエンティストで、コンピューターサイエンスとハーバードのMBAの学位を持つ。彼女によると、Facebookでやりたかった唯一の仕事が虚偽情報対策だったが、それはネット上の陰謀理論で友人を失った経験があるからだ。

SECへの告発状でホーゲン氏は、Facebookの社内調査や文書をCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏やその他の役員が公表している声明と比較している。ある例の中で彼女は、Facebookは選挙の虚偽情報に寄与貢献し、1月6日の国会議事堂の暴動を招いたと述べている。

「Facebookは2020年の選挙と暴動に関連する虚偽情報や暴力的な過激主義と戦ってきたと声明を出しているが、実際のところFacebookは自らのアルゴリズムを把握しており、プラットフォームはこのような有害なコンテンツを実際には奨励していた。そして永続的な対策を社内的に推奨したり展開することをしなかった」と彼女は告発状の添え状に書いている。

続けて「このサイトは、エンゲージメントを奨励することにおいて、対立を生むコンテンツを許容している。同社自身の調査が、憎悪や対立を煽り分断をそそのかすコンテンツがあることを示し、多くの人に怒りを喚起することは他の感情を喚起するより容易だという。Facebookは、アルゴリズムをもっと安全なものに変えれば、人びとがそのサイトで過ごす時間が減り、広告のクリック回数が減り、同社の収益が減ることを知っていた」と60 Minutesで述べた。

SECの告発受付窓口は通常、企業の内部通報者に保護を提供するが、彼女とその法務チームはさらに上院議員のRichard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏(民主党)とMarsha Blackburn(マーシャ・ブラックバーン)氏(共和党)に接触した。彼女はまた、フランス、英国、そしてEUの議会の議員にも話をしている。

最近リークに対して神経質になっているFacebookは、60分のインタビュー放送前にその内容を知り、「視聴者の誤解を招く」と非難した。ポリシーとグローバル問題担当の副社長Nick Clegg(ニック・クレッグ)氏はCNNに「Facebookは人間の善と悪と醜さを表しているが、悪をなるべく減らし善を増やす努力をしている」と述べている。そして彼は、1月6日の事件でソーシャルメディアを非難するのは「馬鹿げている」と付け加えた。

Facebookの広報担当者Lena Pietsch(レナ・ピエッチ)氏は声明で次のように述べている。「あの番組は私たちのプラットフォーム上で人びとの安全を護るために弊社が行っている大きな投資を無視している。私たちが悪質なコンテンツを奨励し、対策を何もしていないというのは端的にいって真実ではない」。また、同社が大衆と規制当局を誤導しているという説に対しては「弊社は弊社が公表している声明を遵守しており、私たちの仕事に関する規制当局からのいかなる質問にも答える用意がある」という。

ホーゲン氏によると、彼女が求めているのはFacebookの改革であり解体ではない。「私たちが進むべきは、透明性と真の統治へ向かう道です。Facebookを粉砕せよという主張ではありません」と放送で述べている。ホーゲン氏は12月5日に、若いユーザーに対するFacebookの影響力について下院で証言する予定だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。Steve DentはEngadgetの編集者。

画像クレジット:Robert Fortunato, CBS News/60 Minutes

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(文:Steve Dent、翻訳:Hiroshi Iwatani)