始まる前から終わっていた6人のベストセラー作家によるNFTの世界、「廃墟の王国」の顛末

米国時間10月25日の朝「The Ruin stirs, and the Five Realms rumble(廃墟が復活し、五つの世界の争いが始まる)」というサイトがウェブで公開された(現在はアーカイブ化されている)。サイトには次のように記されている。「New York Timesのベストセラー作家であり、数々の賞を受賞しているMarie Lu(マリー・ルー)、Tahereh Mafi(タヘラ・マフィ)、Ransom Riggs(ランサム・リッグス)、Adam Silvera(アダム・シルヴェラ)、David Yoon(デビッド・ユーン)、Nicola Yoon(ニコラ・ユン)が共同制作したファンタジー大作「Realms of Ruin(廃墟の王国)」に、みなさまをご招待いたします」と。

著名なヤングアダルト作家である彼らは、この発表をソーシャルメディアで共有し、ファンのためにTwitter、Instagram、Discordサーバーを開いて、従来の出版業界をWeb3の新たな時代に押し上げる、話題の新しいプロジェクトについて話し合った。Web3とは、プライバシー、データの所有権、作品(ファンによる創作物も含むと考えられる)の報酬に焦点を当てた分散型インターネットの進化形である。

この共同幻想作品を進めるにあたり、まず6人の作家が、彼らが著作権を持つ架空の世界について元となる12の物語を投稿する。ファンは(それをベースに)二次創作物を書き、それをSolanaブロックチェーンでNFT(非代替性トークン)としてミント(作成・発行)し、「Realms of Ruinに提出する。作家たちがファンが書いた二次創作物をおもしろいと思えば、それをプロジェクトの公式な物語の一部として宣言する。

数時間後、ファンがDiscordサーバーでプロジェクトへの懸念を展開した。作家が作った世界についての二次創作物をファンが書いた場合、その二次創作物の所有権は誰が持つのか?二次創作物をNFTとしてミントすると、二次創作物の著作権はどうなるのか?さらに、作家たちがターゲットとする読者は、CoinbaseやGeminiのようなプラットフォームで暗号資産を購入するには若すぎることを考えると、懸念はさらに悪化するのではないか?

ハーバード大学ロースクール、フランク・スタントン憲法修正第1条の教授、Rebecca Tushnet(レベッカ・タシュネット)氏は、この状況を次のように的確に表現する。「人々が理解できないターダッキン(七面鳥にダックとチキンを詰めて焼いた料理、詰め込まれた状況の例え)のようなものだ」。つまり、一般的なNFTの問題に加えて、著作権の問題や、二次創作作家が商業的な環境で作品を収益化することに躊躇してきたという歴史的な問題が詰め込まれているのだ。

6人のヤングアダルト作家と9人の開発者チームは、2カ月間、昼夜を問わず休暇も取らずにRealms of Ruinの実現に向けて取り組んだが、発表から数時間後、大きな反響を呼んだこのプロジェクトは中止された。

TechCrunchは、Realms of Ruinプロジェクトに詳しい関係筋から匿名で話を聞いた。関係筋によると、開発者チームと協力してプロジェクトを進めていた作者たちは、得るものよりも失うものの方が大きいと判断してプロジェクトを終了したとのことだ。

プロジェクトはさまざまな要因が重なって最終的に破綻した。ターゲットとしていたユーザー層はNFTのミントによる環境への影響を懸念していたものの、NFTの仕組みを十分に理解していたわけではない。プロジェクトのさまざまな要素も事前に十分に検討されていなかった。また、ファンは自分の二次創作物を収益化することで生じる法的な問題を懸念していた。

新興技術のディストピア

「Realms of Ruin」に参加したマリー・ルーやタヘラ・マフィの作品のような、気候変動などの現実の問題に対する不安を反映したディストピア小説に惹かれるヤングアダルトの読者は多い。マリー・ルーの未来小説は、気候変動による大惨事が差し迫っていることを予見させるもので、それを読んだユーザーは、NFTをミントする際の環境コストに関心を持っていた。

イーサリアムやビットコインのようなブロックチェーンは「Proof of Work(PoW、プルーフオブワーク、暗号資産とブロックチェーンを紐づける仕組み)」という取引の正当性を検証するアルゴリズムで「計算」を行っている。この計算はエネルギーを大量に消費し、効率が悪い。

そのため、Twitterなどでは、自然災害の頻度が増加しているという投稿と、米国の平均的な家庭の1週間分の電力と同じだけのエネルギーを消費する暗号取引で高価なJPGを購入するユーザー、というニュースが混在し、認知的不協和が生じている。しかし、Realms of Ruinは、Solanaブロックチェーンを使用していることをアピールして、こういった懸念を軽視していた。

アーカイブされる前のプロジェクトのウェブサイトには次のように書かれていた。「Realms of Ruinは、環境への影響を最小限に抑えた低コストの取引を実現するためにSolana上に構築されています」「ここまで読んでくれたあなたは、Solanaブロックチェーンで物語からNFTをミントする際に必要なエネルギーよりも多くのカロリーを消費しています」。

現在イーサリアムでミントされるNFTとは異なり、SolanaでNFTをミントするための取引手数料は1セント以下になる。Solanaブロックチェーンの開発元、Solana Labs(ソノララボ)のコミュニケーション責任者であるAustin Federa(オースティン・フェデラ)氏は、TechCrunchの取材に応じ「SolanaでNFTをミントする際に必要なエネルギーは、30mlの(室温の)水を沸騰させるのに必要なエネルギーよりも小さい」と話す。これはSolanaが部分的に「Proof of Stake(PoS、プルーフオブステーク、PoWの代替システム)」という、PoWよりも検証に必要なエネルギーが少ないアルゴリズムを利用しているからだ。しかし、10代のファンがブロックチェーンの違いを十分に理解しているとは思えない。プロジェクト発表後のツイートの中には、NFTをミントすることをアマゾンの熱帯雨林の破壊に例えているものもあった。

このような理解の不足は、暗号化技術が解決しなければならない大きな問題、すなわち一般のユーザーにどのように理解してもらうか、という問題を象徴している。

フェデラ氏は次のように話す。「人はNFTと聞いて、クリスティーズ(老舗オークションハウス)で6900万ドル(約78億5000万円)で売買されるものか、非常に暗号化されたものかのどちらかを思い浮かべます」「私がRealms of Ruinにとても期待したのは、彼らがそのギャップを少しでも埋めようとしていたからです」。

計画性の欠如、説明不足による懸念

もう1つの問題は、NFTの、いわゆる「ガス代(手数料)」をめぐる誤解だった。

一般的にNFTをミントする際にはガス代がかかる。イーサリアムブロックチェーンでは、ミントにかかるコスト(ガス代)が高く未だに重大な参入障壁となっているが、Solanaブロックチェーンではわずか数円しかかからない(フェデラ氏は、Solanaネットワーク全体で長期的に手数料を低く抑えるように設計されていると付け加える)。Realms of Ruinの世界に創作物を提出する際は、NFTをミントするためにガス代の取引が発生するが、ファンの間では「二次創作物を書くために作者にお金を払わなければならない」という誤解が生じてしまった(実際は、ブロックチェーンでのミントの一環として手数料が発生する、が正しい)。

原作者がほとんど介入しない活発なファンコミュニティがオンラインで無料で展開される現在、こういった誤解は厄介だ。

ヤングアダルト作品を扱うエージェントであるMegan Manzano(ミーガン・マンザノ)氏は、TwitterでRealms of Ruinに対する懸念を表明している。「もっと検討できたのではないか、あるいはどこかに正しいことを説明するセクションが用意されていたのではないか……事前に説明できたはずの質問がたくさんあったように感じました」。

また、キャラクターのNFTを収集品として販売するというRealms of Ruinの計画も戸惑いの対象となった。プロジェクトのマーケティングでは、これらのデジタル収集品がストーリーの共同執筆という要素とどのように関わりあうかも不明瞭だった。

関係筋によると、キャラクターNFTの販売は、すでに暗号化技術に慣れている人を対象にすることを意図していて、利益は「Community Treasury(コミュニティトレジャリー)」に充てられ、ガス代の補助や、おもしろいストーリーに対する暗号化技術でのインセンティブの提供など、コミュニティが定めるあらゆるベネフィットのために利用されるという。しかし、キャラクターのNFTを持っていないとそのキャラクターが主人公の創作物を書くことができないと思い込むファンも存在し、プロジェクトの開発者はRealms of Ruinのウェブサイトで、それが誤りであることを適切に説明していなかった。

この関係筋は、Community Treasuryの内容についても説明が不十分だったと認めている。

ある開発者はDiscordで次のようにコメントした。「近いうちにコミュニティでいつ、どのようにTreasuryを利用するかを決定します。そのような決定をするための仕組みを作っていきたいと思っています」。

ファンからは次のような質問があった。「このコミュニティは現在、事実上このDiscordだけで成立していますが、仮に私たち全員がトレジャリーの収益をすべてユニセフに寄付すると決めたら、そうするのですか?」。

「はい、そうです(もう少し複雑ですが)」と開発者は答え「みなさんが知りたいと思っているすべての質問に対する答えが準備できていないことがわかりました。質問に答えられるように努力します」とコメントした。

ファンからは「発表時にこれらの回答がないのは無責任だ」という指摘があったが、関係筋によれば、このプロジェクトは11月8日から展開される予定となっていて、今回の発表は(ローンチではなく)ティーザー(宣伝したい商品の要素を意図的に隠して注目を集める広告)を目論んだものではないか、と話す。

二次創作物と所有権、NFT

二次創作物は著作権や所有権といった厄介な問題をはらみながらも肥沃な市場である。

トップクラスの二次創作作家であれば、オンラインでの成功を現実の出版へとつなげることもできる。オンラインで何万人もの読者を獲得することができれば、オリジナルのキャラクターとオリジナルのストーリーで、 New York Timesのベストセラーリストに名を連ねることができても不思議はない。

最近の例としては、2019年に出版されたTamsyn Muir(タムシン・ミューア)の「Gideon the Ninth(第九のギデオン)」があり、New York Timesは「過剰な宣伝をすべて実現した壊滅的なデビュー作 」と評している。ミューアは、自分が二次創作物を書いていたことを隠してはいない。また、二次創作物をはっきりと支持しているのが、マッカーサー財団の「ジーニアスグラント」受賞者であり、権威あるヒューゴ賞の最優秀小説賞を3年連続で受賞した唯一の作家でもあるN.K. Jemisin(N.K. ジェミシン)だ。収益面では「Fifty Shades of Grey(フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ)」シリーズのE.L. James(E.L. ジェイムズ)が、二次創作物をオンラインに投稿することでキャリアを構築した作家の最も良い例かもしれない。このシリーズが世界的にヒットする前、彼女は「Twilight」の二次創作物を書いていた。

しかし、オンラインプラットフォームを通じた二次創作物の収益化はもっと面倒な問題だ。例えばTumblrが有料のサブスクリプション商品「Post+」を展開すると発表した際、同社はこの商品で利益を得られるコンテンツクリエイターの例として、二次創作作家を挙げたが、これを見た作家たちからは、二次創作物を有料化することで法的な問題が発生するのではないか、という懸念の声が聞かれた。

「私が一番心配していたのは、(Realms of Ruinプロジェクトの作家たちが)ファンにたくさんの作品を書いてもらい、その中から自分たちの世界に合うものを選ぶ、という点でした。彼らがすでにこの世界を構築し、著作権を持っている、というのが厄介です」とマンザノ氏は話す。同氏は、二次創作作家たちが自分の作品を使って今後何をすることができるか、あるいは作品を認められたり報酬をもらえたりするかどうかが不明瞭だ、と話す。

このプロジェクトに近いTechCrunchの情報源は異なる意見のようだ。創立にかかわった6人の作家がRealms of Ruinの著作権を所有しているとはいえ、(少なくともウェブサイトのアーカイブによれば)二次創作作家はフランチャイズの所有権を持たずに大規模な出版プロジェクトに参加することで報酬を得ることができる。例えばスター・トレックの小説は850冊以上出版されているが、その作家たちは「スター・トレック」の権利を有しているわけではない。

前述のレベッカ・タシュネット教授(大手二次創作サイト「Archive of Our Own」を運営する「Organization for Transformative Works(変形的作品のためのNPO)」の法務チームのメンバー)は、こうした疑問(に対する回答)はRealms of Ruinと作家の間で実際にどのような契約が結ばれているかによって異なる、と話す。

タシュネット教授はTechCrunchの取材に応じ「プロジェクトが権利を認めているのであれば、著作権侵害の問題ではなく所有権の問題になります。これは契約内容で決定されます。しかし、一般的に予想されるのは、二次創作作家には限られた権利しかない、ということです」と話す。Realms of Ruinプロジェクトは正式に開始される前に閉鎖されたため、契約の詳細は不明である。

「二次創作の権利は最も面白みのない話でしょう」とタシュネット教授は続ける。「作家が『私が作った世界を利用して遊んで欲しい。収益の一部も支払います』ということは珍しくありません。Kindle Worldsもこのような試みでしたが、最終的には採算が合わなかったようでAmazonはKindle Worldsを閉鎖してしまいました」。

二次創作作家たちの多くは、Kindle Worldsのようなプロジェクトは「企業がコミュニティから利益を得るための見え透いた手段」であるとして懐疑的である。こういった疑念は、Archive of Our Ownの設立時にまで遡る。

2006年「FanLib」というプラットフォームがベンチャーキャピタル投資で300万ドル(約3億4000万円)を調達し、著作権者(「スター・トレック」を所有するViacomCBSなど)が二次創作コンテストを開催してファンと交流できるプラットフォームを立ち上げた。しかし、当時の二次創作作家たちは「FanLibはコンテストに入賞しなかった人も含めて、すべての応募者に作品の権利を放棄させ、FanLibによる商業目的での使用を許可するよう要求している」とこれを批判した。これらの二次創作作家が「スタートレック」の著作権を所有していないことは当然だが、これらの作家にとっては、自分がページに載せた実際の言葉を所有すること、そしてViacomCBSが自分の作品を商業化したい場合は、自分が許可するかどうかを決定できる、ということが重要だったのだ。

推理小説作家で、自身も二次創作作家であることを公表しているNaomi Novik(ナオミ・ノヴィク)は、2007年にインターネット上のペンネームで画期的なブログ記事を投稿し、後に「Archive of Our Own」となるプロジェクトを提案した。Archive of Our Ownは広告のない、寄付ベースの、二次創作作家が運営する二次創作作家のためのプラットフォームで、二次創作物の合法性を前面に打ち出している。なお、FanLibは2008年までにディズニーに売却され、すぐに閉鎖された。

Archive of Our Ownは現在、PatreonやKo-Fiのようなサイトにリンクしてチップを募ることを禁止して、収益化によって起こりうる著作権の問題から作家を守るための活動をしている。

「二次創作物を収益化しようとする試みは往々にして多くの論争を引き起こします」とタシュネット教授は指摘する。「これまでの経験から、ファンのコミュニティを活性化できる最も良い解決策の1つは、コミュニティに任せ、実際には交流を制限することだとわかっています。その方がファンダム(熱心なファンや彼らによる文化、世界)にとっても、ファンダムを生み出す作品を作った作者にとっても、一番健全な状況を作れるようです」。

Realms of Ruinプロジェクトを知る関係筋は「Realms of Ruinをブロックチェーン上に構築することにしたのは、ブロックチェーンの技術で、二次創作作家が、その作家自身の作品であると保証されたうえで、合法的に作品の対価を得られる新しい方法を実現できるから」だと説明する。

ブロックチェーン上では、ストーリーがどのようにお互いに影響したかを系統で簡単に追跡することが可能で、作家同士がお互いの作品に刺激を与え合ったことを確認することができる。つまり、誰かが誰かのストーリーに呼応するストーリーを書いて、そのストーリーに紐づくNFTが高額で売却された場合は、インスピレーションを与えた作家にも報酬が支払われることになる。また、原作者にとってのNFTの魅力は、従来の創作文化での販売とは異なり、NFTが売れるたびに、原作者にも還元されるという点にある。従来の創作文化では、原作者が1万円で絵を売った後、買い手が10万円で転売した場合、(販売額の何パーセントかを原作者を受け取るという権利を明記した契約書がない限り、)原作者に対するロイヤリティは発生しない。

しかし、タシュネット教授は、二次著作物が直面する法的問題を解決するには、ブロックチェーンの利用だけでは不十分だと主張する。

教授は次のように話す。「NFTに没頭している人たちは、何か新しい問題を解決したと思っていますが、実際にはそうではありません。興味深い法的な問題があったとしても、それとNFTとの関連はただの偶然以上のものではなく、著作権に関する問題は現実世界の法律が決めることです」「この件に関して新しいことは何もありません。自分の原稿を船で送り出し、どこの国の法律が適用されるのかを調べなければならないということは、太古の昔から変わっていないのです」。

廃墟

結局のところ、Realms of Ruinは、数時間だけ公開され、アーカイブされてしまったプロジェクトだった。しかしながらRealms of Ruinの事例は、Web3を世界に広める際に、既存のインターネットコミュニティのスピリッツがどのように守られるのかについて(当然)懐疑的なコミュニティを説得しようとして直面するであろう課題を示している。

興味深いことに、Web3の価値観は、Archive of Our Ownのような二次創作物のメッカとあまり変わらない。どちらも現在よく見られるモデル、すなわちユーザーの関心の収益化と引き換えに無料のアクセスを提供する、広告付きのインターネットサービスを超えようとしている。

「この技術は、まだ信じられないほど初期の段階にあります」とフェデラ氏。同氏はRealms of Ruinに対する反発の多くは、ユーザーがブロックチェーンベースのプロジェクトを誤解していることによるもので、事実に基づくものではなかったと考えている。「しかしながら、いずれのプロジェクトも、暗号化技術とは何か、なぜそれをベースにプロジェクトを構築することにしたのかを、もっと上手に説明するべきです」。

Realms of Ruinを知る関係筋は、Web3を出版の世界に持ち込むのは時期尚早だろう、と話す。暗号化技術推進の先駆者たちが耳当たりの良い言葉で、作者がコンテンツに対して正当な報酬を得られる広告のないインターネットの世界を説いていても、多くのユーザーはこのエコシステムに懐疑的だ。ともすれば詐欺っぽい男性中心の暗号化技術のコミュニティで、外部からのアクセスも難しいように感じられる現状では、ユーザーを責めることはできない。

マンザノ氏は次のように話す。「導入にはまだ早すぎると思います」「著作権や、作家に期待されること、権利、商品化などを結び付けて考える必要があります。一定のルールや期待値が示されていないと、どっちつかずのいい加減なものになってしまうのではないかと心配しています。出版業界がこの分野を把握し、取引や商品化、ファンへの露出という問題に適切に統合するには、あまりにも新しすぎるのです」。

関係筋は、プロジェクトに協力している開発者と作家たちは、その辺り、すなわち、たとえばファンがRealms of Ruinのストーリーをオリジナルの小説にして販売した場合にどうなるのか、ということを十分に検討していなかったことを認めている。暗号化技術との連携よりも、Realms of Ruinの展開の不透明さの方が、プロジェクトの命取りだったのかもしれない。

「10代の頃の自分だったら、好きな作家が自分も参加できる何かを作っているのを見たら飛びついていたかもしれませんね」とマンザノ氏はいう。「ファンを集結して盛り上げるには、もっと緻密な方法があるように思います」。

画像クレジット:Grandfailure / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

【コラム】NFTと未来美術史「NFTはウォーホルたちのポップアートに最も近い存在だ」

私は美術史家として「近代美術」の市場の変遷について幅広い研究を行ってきた。そしてその私に言わせてみれば、NFTには今、世代を超えた何かが起こっていると断言できる。

天文学者が新しい銀河の誕生を目撃しているようなもので、美術史家としては非常にエキサイティングな時代である。Cryptopunks(クリプトパンク)、Bored Ape(ボアードエイプ)、Beeple(ビープル)が達成した数百万ドル(数億円)という偉業は、美術品オークションの歴史における長い前例を打ち破り、我々が今デジタル文化と暗号資産をめぐる構造の転換点に近づきつつあるということを示唆している。

その転換点が近づいているのは間違いないのだが、現在最も注目されているNFTの運命は驚くほどに不明瞭だ。このようなサイクルのいくつかを間近で見てきた私が自信を持って言えることは、アートトレンドがアートヒストリーになるかどうかを決定づけてきた要素が今日のNFTには欠けており、十分な執筆活動が行われていないということある。

これまでに長期的な評価(および市場価値)を維持することができたムーブメントとは、美術館や大学など、名声を引き出し、知識を生み出している機関に自らを結びつけることに成功したものだけである。

つまり、先にタイムズスクエアで開催されたNFT.NYCは、ダウンタウンのSotheby’s(サザビーズ)やアップタウンのMoMA(ニューヨーク近代美術館)とどのような関係にあるだろうか。あるいは、世界有数の近現代美術プログラムと言われているコロンビア大学の美術史・考古学学科との関係はどうなのか?

NFTの世界ではこのような疑問さえも不要なのかもしれない。ゴールデングローブ賞やニューヨーク大学の映画学校に、TikTok(ティックトック)で人気のコンテンツの価値を判断してもらおうとは誰も思わないだろう。

しかし私は、NFTの価値を長期的に育てようとする真剣な試みはなされないだろうという見解には懐疑的である。数十億ドル規模のエコシステムを組織化して整理しようとしないなどというのは、あまりにもリスクが高すぎる。ゲートキーパーやテイストメーカーは有機的に発生するものであり、NFTの世界よりも数百年も前から600億ドル(約6兆8300億円)規模のアート市場には、強力なゲートキーパーやテイストメーカーがすでに存在しているのである。

実際にアーティスト、コレクター、キュレーター、学者の関係性が、勝者と敗者、先見者と模倣者、貴重な遺産と一過性の流行を選別し、過去数世紀にわたってどの美術史が生き残るのかという断層線を形成してきた。そしてNFTの世界では、この知的価値と金銭的価値の交わりが、ほとんどの人が考えている以上に重要な意味を持つと私は確信を持っている。

美術史的に見て現在のNFTの立場に最も近いものは、おそらく1960年代初頭に劇的に現れたポップアートだろう。Jasper Johns(ジャスパー・ジョーンズ)やAndy Warhol(アンディ・ウォーホル)などのアーティストたちが突如として現れ、スクリーンプリントやリトグラフなどの技術的で既成概念にとらわれないメディアを用いてカラフルでわかりやすいイメージを制作するため、本格的に取り組んだのである。

意図的かどうか別として、この動きによりオールドマスターの世界から締め出されていた成り金層にかつてないほどの大量の作品を売り込むことができた。スープ缶を印刷した50枚の作品は、フェルメールの1作品よりもはるかに多くの市場行動を支えることができたのである。

ジョーンズとウォーホルの成功が持続したのは、Leo Castelli(レオ・カステリ)氏というディーラーの努力によるところが大きい。同氏は現代美術史の中で最も影響を与えた人物でありながら、その名が広く知られていない人物である。

私の調査によると、カステリ氏は自分の仲間の作品が美術館の壁に飾られ、学術論文の題材になるよう熱心に働きかけ、時には倫理的・法的規範に背くような努力をしていたことが明らかになっている。ここで重要なのは、彼の努力によって新たな重要な声の波が押し寄せたことだ。カトリック信者の若いアメリカ人だけでなく、最初にオープンになった同性愛者たちの声も響き始めたのである。一騒動起きることは避けられないが、歴史をリアルタイムに書くことで、必要な変化の扉を開くことができるのである。

ポップアートによって起きた美術館のエコシステムの活性化は、今回の民主化のエピソードとは明らかに対照的である。1980年代の「絵画への回帰」は、オークションを重要視するNFTのダイナミクスを予兆するようなもので、アートディーラーのMary Boone(メアリー・ブーン)氏とSotheby’sのCEOのAlfred Taubman(アルフレッド・トーブマン)氏は先物取引や信用買いに似た手法を開拓したが、これはブロックチェーン以前のアートオークション空間における最も偉大なイノベーションである。彼らは事実上、二次市場の火にガソリンを注いだわけだが、その作業をサポートする学術的、制度的マトリックスには大きな関心が払われず、彼らが煽ったセンセーションはほとんど忘れ去られてしまったのである。

こういったことは長期的に見ると非常に重要なことである。数年後、数十年後、数百年後、暗号資産の使用量は必然的に増加していくことになる。現在、地球上のほぼすべてのインタラクションは何らかの形でテクノロジーに媒介されており、記録される通貨はそのメディアに固有のものになる可能性がますます高くなっている。このように長期的な可能性を探れば、NFTの持つ表現力だけでなく、学術的な知識創造の基本的な手段を再考する大きな機会となるだろう。

ここには非常に豊かな可能性が潜んでおり、高等教育に危機の波が押し寄せていることを考えればなおさらのことである。例えば政治学者が分散型自律組織(DAO)の一部として実験的な投票メカニズムを操作する機会を得ることを想像してみて欲しい。あるいは、歴史家が芸術的な再構築によってアーカイブ記録の隙間を埋める作業をするというのはどうだろうか。

広範囲の研究から世界を変えるような発見が生まれることもある。投票の仕組みが実験的なものから政府の中心的なものへと変化し、最終的には包括的な気候変動対策や無価値な立法への必要性を取り除いてくれるかもしれない。このようなアイデアを生み出すNFTの世界も、学術界とのコラボレーションによってのみ重要な意味を持つものを生み出せるのだ。歴史上の産物として美術館に保存(そして市場評価)される価値のあるものを。

現時点では、分散化されたイーサの中にオープンな可能性が残されている。理想的には社会全体に最良の純効果をもたらしながらどのようにして実践を歴史に変えていくのかは、未だ大きな疑問である。

編集部注:本稿の執筆者Michael Maizels(マイケル・マイゼル)氏は美術史家。創造性、テクノロジー、経済学の交差点で働く学際的な研究者で、戦後美術史におけるビジネスモデルの進化に関する新しい研究に関する著書を2021年中に出版予定。

画像クレジット:PixelChoice / Getty Images

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(文:Michael Maizels、翻訳:Dragonfly)

暗号資産ゲームは短期的にどれだけの資金を吸収できるだろうか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

みなさんこんにちは!今回は、インシュアテック、SPAC、そしてダイレクトリスティングがIPOの価格問題をどれだけ解決できるかについてお話ししたい。だがその前に暗号資産について取り上げる。

先週の暗号資産周辺はにぎやかだった。Coinbase(コインベース)の業績報告からは、第3四半期の資産クラスの取引活動がいかに忙しかったかを知ることができた。Robinhoodの業績報告を思い出せば、Coinbaseが開示したものは驚きではないだろう。米国の株式投資プラットフォームの暗号資産収益が大幅に減少したために、Coinbaseも第2四半期と比較して、取引量と収益の両者が減少した。

これに関連して、暗号資産取引所FTXの米国事業所が自社のパフォーマンスデータの一部を公開した。これによると、2021年9月までの3カ月間は全体的に減少傾向にあるものの、暗号資産取引市場はまだ成長可能であることが示されている。

つまり、暗号市場は急速に進化(脱皮?)し続けているのだ。大規模ブロックチェーンと中小規模のコインのアクティビティは、四半期ごとに大きく変動する可能性がある。Coinbaseのような企業にとっては、これは収益や利益の変動を意味している。

しかし、Coinbaseは現金を豊富に持っているため、暗号活動の長期的な動きがポジティブなものである限り、短期的な浮き沈みはそれほど大きな問題ではない。

長期的な上昇トレンドに賭けるもう1つの企業集団は、暗号資産ゲーム会社たちだ。彼らはここ数カ月、非常に忙しい日々を送っている。例えば、Patron(パトロン)は暗号資産ベースのゲームに投資するために9000万ドル(約102億5000万円)のファンドを組成し、Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)は暗号資産ゲームを開発するために2021年の夏に7500万ドル(約85億4000万円)を調達、トレーディングゲームのParallelは評価額5億ドル(約569億3000万円)で調達を行い、Axie Infinity(アクシ・インフィニティは)2021年の年頭に資金調達を行っている

また先週、Forte(フォルテ)は、暗号資産ゲームのインフラのために7億2500万ドル(約825億4000万円)を調達した。このことから、私はブロックチェーンゲームが短期的にどれだけの資本を吸収できるのだろうかと考えている。これまでのところ、少なくとも伝統的なベンチャーキャピタルの考え方の中では、ゲームはベンチャーキャピタルの投資対象としては不適切であることが証明されてきた。それはなぜか?というのも、ゲームはどちらかというとヒットに左右される商品であり、発売後に好調でも収益が減少していくタイトルもあるからだ。

投資家は、予測可能で成長性のある強力な収入を求めている。そして投資家は、収益の不均一性や不確実性を嫌うものなのだ。新規タイトルは、失敗する可能性があるという不安要素を持っている。

それなのに、暗号資産に群がり、ゲーム企業がもてはやされているとは?ベンチャーの投資対象としての魅力を失わせていたゲーム会社の経済的・社会的リスクが、ブロックチェーンをバックボーンとして構築されることで改善されるというのだろうか?それがなぜそうなるのかを私は理解できない。しかし、投資家たちはあたかもそれが起きるとばかりに資金を投入している。さまざまな賭けがどのような損得に落ち着くのかを見ていきたいと思う。

インシュアテック、SPAC、そしてデータ

現在は決算期を迎えている最中だ。メジャーな企業はもちろんのこと、中小企業も多くの時間とエネルギーを費やしている。先週のいくつかの決算報告会から、以下のようなことがわかった。

インシュアテックは難しい:Metromile(メトロマイル)がLemonade(レモネード)に身売りしたというニュースの直後では、公開インシュアテック企業の運命に疑いが生じても仕方がない。とはいえ、先週発表されたRoot(ルート)の決算では、この自動車に特化した保険会社の業績が投資家に評価されて、株価が大きく上昇しや。

しかし、Rootにとっては、ライバルが新しい落ち着き先を見つけたからといって、すべてが順風満帆というわけではない。先週、RootのCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏にインタビューした結果、私たちは保険分野での成長のタイミングがいかに複雑であるかを知った。

現在、多くの自動車保険会社が直面している補償価格の設定に関する市場の不確実性(つまりRoot自身の問題ではない)を考慮し、Rootは短期的な成長目標を引き下げたとCEOは説明している。車両や人件費などのインフレ圧力により、保険料の決定が難しくなっており、市場の各プレイヤーが新規契約の獲得に慎重になっていることがわかった。

これは、Rootが長期的に問題を抱えていることを意味するものではないが、マクロ的な状況が、どのように技術や技術を応用したビジネスにとって厳しい状況をもたらしているかを示している。Rootは、データとスマートなソフトウェアが、時間とともに保険の価格を改善していくことに賭けている。しかし、上場直後の同社は、事実上前例のないビジネスの根本的な経済的変化に遭遇していると、ティム氏はいう。Metromileが上場後すぐに諦めて事業を売却したのは、このような複雑な事情があったからかもしれない。

SPACはおそらく大丈夫:先週、NextDoor(ネクストドア)が公開会社として取引を開始した(オリジナルのメモはこちら)。私たちは取引初日にCEOのSarah Friar(サラ・フライア)氏にインタビューを行い、彼女が選択した上場方法について話を聞いた。

彼女によれば、NextDoorは2020年後半に製品計画の一部を止めなくてはならなくなり、これによってより多くの資金を調達する必要性が生じたのだという。また、NextDoorは上場準備が整っており、SPACパートナーを通じて事前に決められた価格でまとまった資金を調達することができたため、この取引は彼女の会社にとって意味のあるものとなった。

これはある意味標準的な視点であり、SPACが2021年初頭に流行した理由を詳しく説明してくれるものだ。しかし、その後の状況は変わり、多くのSPAC主導の組み合わせでは、買収対象を発表して取引を完了させた後に、一部の支援者が資本を引き上げることも起きている。

NextDoorは、そうした資金引き上げ問題が必然的なものではないことを示した。最初のリリースでは、SPACパートナーが4億1600万ドル(約473億2000万円)の現金を事業に注入するとしていたが、最終的な集計では4億400万ドル(約460億円)となった。これは、失われた資本比率としては超低水準だ。そして、NextDoorの株価は、SPAC以降順調に推移している。このように、SPAC主導のデビューでも、場合によってはうまくいくこともあるようだ。

ダイレクトリスティングは価格の万能薬ではない:Amplitude(アンプリチュード)は、最近ダイレクトリスティング(直接上場)を行い、先週上場企業になって初めての収益を報告した。上場以来、同社の取引は好調で、今週の終値は1株当たり73.86ドル(約8409円)と、基準価格の35ドル(約3985円)を大きく上回っている。

Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によれば、同社の現在の価値は80億ドル(約9108億円)強だ。同社が不本意な価格付けを避けるために伝統的なIPOではなくダイレクトリスティングを選択したことに対して、私たちは、同社がダイレクトリスティングに先だって2021年初めの調達時の評価額が約40億ドル(約4554億円)だったことに苛立っていたのではないかと気になっていた。結局、彼らは価格の問題を避けるためにダイレクトリスティングを行い、Roblox(ロボロックス)が行ったように事前に個人投資家から資金を調達したのだ。

AmplitudeのCEOであるSpenser Skates(スペンサー・スケイツ)氏は、従来のIPOでは価格の歪みがさらに大きくなっていただろうと語り、ダイレクトリスティングに手応えを感じていると述べた。それに対して、私たちは「おそらくそうでしょうね」と答えるだけだ。しかし、非公開市場の投資家が自分の資金を一気に倍にしてしまう様子は、結局別の金持ちが儲けをさらっていくだけの間違った値付けのIPOが生み出す「儲け損ない」と似たものにみえる。

それではまた!

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

インドが高利益を約束する無責任な暗号資産の広告禁止を検討

インドのNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相と複数の関係者が現地時間11月13日に行った会議の概要をまとめたメモによると、インド政府は、顧客にかなりの利益を約束し、そのような取引の不安定な性質について透明性を持たない暗号資産取引所による広告を禁止すべきだと「強く感じている」という。

記者団に共有されたメモによると、無責任な広告が国内の若者を惑わせており、中止しなければならないというコンセンサスが、政府を含む複数の関係者によって得られた。

ここ数週間、Andreessen Horowitzが支援するCoinSwitch KuberやB Capital Groupが支援するCoinDCXなどの大手暗号資産取引所は、多くの個人が非常に無責任だとみなす広告を打ち出している。

現在、暗号資産とその取引を監督する公式な枠組みがないインドの議員らは、業界の進むべき道を策定すべく、ここ数四半期に複数の利害関係者と対話を行ってきた。

こうした動きは、ビットコインやその他の暗号資産を人生で初めて購入する人がインドでますます増えていることを受けてのものだ。伝説的なAmitabh Bachchan(アミタブ・バッチャン)氏や、インド最大のいくつかのヒット作品に出演しているRanveer Singh(ランヴェール・シン)氏など、ボリウッドのスターたちがここ数週間で暗号資産取引を推進している。

その一方で、CoinSwitch KuberとCoinDCXは、若者が情報に基づいた投資判断ができるようなコンテンツを提供するために、ポッドキャストやその他のコラボレーションを業界関係者と開始した。

また、インドの議員らは、暗号資産取引手段がマネーロンダリングやテロ資金調達に悪用される可能性について懸念を示してきた。

これを抑制するために政府関係者は、暗号資産取引所に対して顧客の完全なKYC(本人確認)の実施を要求する可能性を示している。ほとんどの暗号資産取引所は先回りしてこの要求を満たしていて、一部の取引所はユーザーが自分のトークンやコインをプライベートウォレットや他の取引所に移動することを禁止している。

しかし、少なくとも当面の間、インド政府が暗号資産に関与しようとしているのはその程度かもしれない。

知名度の高いある政治家が今月初め、業界の幹部にブロックチェーン技術をめぐるイノベーションを歓迎する法律を国が打ち出し、インドのプロジェクトへの外国からの投資に前向きであることを示したと、この件を直接知る人物がTechCrunchに語っている。

中国政府が暗号資産取引を取り締まっていることを受けて、このような潜在的な動きに対する政府の確信が強くなっていると、情報筋は述べた。この人物は問題が非公開であることを理由に匿名を要求した。

11月13日のメモでは、政府は「ブロックチェーンが進化する技術であることを認識しており、それゆえに政府は注意深く見守り、積極的な措置を取る」と伝えられている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

M1 Pro / M1 Max搭載MacBook Proを使った暗号資産イーサリアムのマイニングは効率的!? ただし元を取るまで17年かかる

M1 Pro / M1 Max搭載MacBook Proを使った暗号資産イーサリアムのマイニングは効率的!? ただし元を取るまで17年かかる

UFD Tech

新型MacBook Proに採用されたM1 ProおよびM1 Maxは大幅な性能アップを実現していることから、暗号資産のマイニング(採掘)に使えないかと脳裏をよぎった人も少なくはないはず。それを実際に試してみた結果が報告されています。

海外掲示板Redditにも、同じ疑問を抱いた人たちがスレッドに集まっています。最初の「M1 Maxは55MH/sでETH(イーサリアム)を採掘できる?メモリの帯域幅はRX 6700 XTとRTX 3060 Tiの間だ」というお題をきっかけに「M1 Maxが40以上のMH/sを出せるなら、M1 ProではなくM1 Max MacBook Proを注文するよ」などの話題が盛り上がっています。

ちなみに「MH/s」とは暗号資産を採掘する速度であるハッシュレートの単位であり、1秒間の計算が100万回ということです。

さらに「考慮すべき事実は、最も効率的なSoCであり、専用GPUよりも電力消費がずっとずっと少ない。MacBookのリセールバリュー(買取や下取り価格)は基本的に市場で最も優れています(中略) SoCには、画面出力、超高速ビデオエンコーディング、暗号化、非常に強力なニューラルエンジンなど、特定の処理に特化した複数の専用プロセッサが搭載されています(中略)基本的には最も効率的な汎用CPUであると同時に、最も効率的なプログラマブルASICでもあるんだ」といったレスポンスもあり。

また「私は64GBのM1 Max 16(インチ)を持っていますが、ハイパワーモードで動作させたところ、ストックのethminer-m1バイナリで約10.25MH/が出ています。決して高速ではありませんが、非常に効率的で、1Wあたりのハッシュレートはおそらくとても良いでしょう」との声もあります。

そして実際にテストをして、数字を出している人もいます。YouTuberのUFD Tech氏はM1 Pro搭載Macで採掘をして、その電力効率の良さに驚いています。すでにM1 Mac向けに暗号採掘用のコンパイル済みバイナリソースコード)が配布されており、本動画ではそのインストール方法と使い方(今回はイーサリアム)が説明されています。

まず注意すべきは、バックグラウンドでのマイニングはしない方がいいということ。ちょっとしたWebブラウズでもマシンのパフォーマンスを落としてしまうので、Macを使わないときのみ実行したほうがよさそうです。

そうした注意を払った結果、M1 Proでは5MH/s以上の速度が出ており、総消費電力はわずか17W。Windows PCで同じ結果を出すためにははるかに多くの消費電力を必要とすることからも、十分にいい結果と言えそうです。

ただし電気代を差し引いた後の利益は、1か月あたりわずか12.82ドル、1日あたり約42セントにすぎません。もしも暗号資産マイニングのためだけにMacBook Proを買うとすれば、元を取るのに17年はかかる計算となります。購入から4~5年で下取りに出すとすれば利益はもう少し改善しそうですが、いずれにせよ小遣い稼ぎの域を出ることはなさそうです。

すでに購入している人は、Macを使っていないときにマイニングをしても害はなさそうではありますが、一攫千金は望むべくもないと思われます。4Kや8K動画編集などでM1 Max MacBook Proを24時間フル操業させている人は、今まで通り本来の業務に専念させておくのが賢明かもしれません。

(Source:RedditUFD Tech。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

アップルは暗号資産を「検討中」とティム・クックCEOが語る

米国時間11月9日に開催されたNYT Dealbook Conference(ニューヨークタイムズ・ディールブック・カンファレンス)のインタビューで、Apple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)CEOは、同社が暗号資産を検討していることを認めたものの、暗号関連の製品を「すぐに」扱う予定はないことを明らかにした。クック氏は、同社が可能性を探っている暗号資産の分野について詳細は言及しなかったが、アップルの事業には同氏が暗号資産の導入を検討しようと思わない分野がいくつかあると述べた。

インタビュアーのAndrew Ross Sorkin(アンドリュー・ロス・ソーキン)氏から、アップルはApple Pay(アップルペイ)や「それ以外で」暗号資産を受け入れることを検討しているかと訊かれたクック氏は、暗号資産について「私たちは何らかの検討はしている」と曖昧に答えた。クック氏は続けて、暗号資産製品について公に話す準備はできていないものの、アップルが暗号資産に投資する意味のない分野は決めていると説明した。

「私には自分がやらないだろうと考えていることはあります。例えば当社のキャッシュバランスです。これを暗号資産に投資することはないでしょう。私が自分の資産を暗号資産に投資しないからというわけではありません。人は暗号資産に触れるためにアップルの株を買うとは思わないからです。もしそうしたいのであれば、直接、暗号資産に投資することができます」と、クック氏は説明した。

クック氏はまた、アップルが自社製品の支払い手段として暗号資産を採用する計画はないとも述べた。

しかし、クック氏は、暗号資産がアップルのレーダーの中にあることを明言し、暗号資産関連で「我々が確実に検討していることは他にある」としながらも、この件に関してアップルに現時点で発表することはないと語った。

Apple Payの競合であるPayPal(ペイパル)、Venmo(ベンモ)、Square Inc.(スクエア)のCash(キャッシュ)アプリは、この数カ月の間にすべて暗号資産の分野に進出している。それなのに、アップルが同様の方針を取るという決断を、少なくとも検討さえしていないとしたら奇妙なことだ。また、クック氏個人は暗号資産への投資に反対しているわけではなく、インタビュアーのソーキン氏に、自身も暗号資産を所有していることを認めている。

「多角化したポートフォリオの一部として所有することは合理的だと思います」と、クック氏は語り、笑いながら「誰かに投資のアドバイスをしているわけではありませんよ」と付け加えた。

同CEOは続けて、暗号資産には以前から興味を持っていたと語った。

また、NFT(非代替性トークン)については興味深いと思っているが、一般の人々が興味を持つような形に展開するには、しばらく時間がかかると思うとも述べている。

このインタビューでは、セキュリティやプライバシーに関するアップルの見解や、Epic Games(エリック・ゲームズ)が現在控訴中の反トラスト法をめぐり法廷で争っているApp Storeのオープン化など、アップルをはじめとするテクノロジー業界の大企業にとって重要なタイムリーな話題についても触れている。

クック氏は、このユーザーの選択肢の問題について率直な意見を述べ、ユーザーは携帯電話を購入する際に、すでに選択権を持っていると指摘。ユーザーがアプリストア以外の環境でアプリをロードしたいのであれば、つまりサイドロードと呼ばれる行為をしたい場合は、それを可能にする別のプラットフォームを選ぶことができると述べた。

「人々はすでにそのような選択肢を持っていると、私は思います……なぜなら、もしサイドロードしたければ、Androidスマートフォンを購入することができるからです」と、クック氏は述べた。「すでに選択肢はあるのです。携帯電話ショップに行って、もしそれが重要であるのなら、Androidフォンを買えばいいのです」。

アップルの見解では、サイドロードはリスクが大きすぎると、クック氏はいう。もちろん、アップルにとっても、App Store(アップストア)やアプリ内課金で得られる数百万ドル(数億円)の収益を失うことになる。

クック氏は、AR技術に対しても一般的な期待を口にしたが、Facebook(フェイスブック)がMeta(メタ)として最近進めているVR計画や、自動車に関わるアップルのプロジェクトの可能性についてはコメントせず、アップルはあまり未来について語らないようにしていると述べた。

さらにクック氏は、アップルの政治に対するスタンスについても詳しく言及。アップルにPAC(政治活動委員会) はないと述べ、同社が中国市場へ参入していることを擁護した。

「我々には企業としてできる限り多くの場所で事業を行う責任があると、私は考えます。なぜなら、ビジネスというのは巨大な触媒だと思うからです」と、クック氏は語った。「私たちは可動橋を跳ね上げるのではなく、橋を架けるべきだと考えています。それがビジネスの鍵だと思います。発言という点では、個人的に発言することもあれば、公に発言することもあり、状況によってさまざまです」。

画像クレジット:David Paul Morris / Bloomberg / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

将来、DiscordにNFTと暗号資産ウォレットが登場するかもしれない

Discord(ディスコード)はすでに、NFT(非代替性トークン)のコミュニティの事実上の拠点となっているが、さらにこれらのつながりを大幅に深めることを計画しているかもしれない。

米国時間11月8日、Discordの創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏が、Discordが人気の暗号資産ウォレットサービスのMetaMask(メタマスク)や、多くのモバイル暗号資産ウォレットが基盤としているオープンプロトコルであるWalletConnect(ウォレットコネクト)と統合されている様子を示すスクリーンショットをツイートした。シトロン氏は、本当は「これは大変なことになるだろう」を意味しているNFTのツイッター用語である「probably nothing(おそらく大したことじゃない)」を用いて、以下のようなツイートを行った。

現段階でのウォレットのサポートは、純粋に予備調査的なものに思える。シトロン氏は、この仮の暗号資産統合がどのように機能するのか、Discordが暗号資産統合の検討にどれほど真剣に取り組んでいるのかについては詳細を提示せず、同社もまた具体的な説明を拒んでいる。

Discordの広報担当者はTechCrunchに対して「私たちはいつでも、提供するコミュニティを改善できるものを探求し実験し続けています」と語った。そしてこのスクリーンショットは最近行われたハッカソンでのものだと付け加えた。

Discordがソーシャルチャットアプリに暗号資産機能を追加することに興味を持っているという想像はまだ仮説段階かもしれないが、もし同社がEthereum(イーサリウム)への対応を行うのであれば、その計画は単なる支払いにとどまらない可能性が出てくる。また、Discordは最近、NFTについての考えに関する調査をユーザーに対して行った。

2021年Discordは、何千ものNFTプロジェクトの自然発生的な拠点となった。それらのプロジェクトの多くは、専用のDiscordサーバーを通じて、フォロワーと連絡を取り合い、最新情報を送り、売上や市場の動きを追跡している。また、NFTの配布イベントをコーディネートする際にも、Discordが選ばれている。イベントでNFTが「鋳造」され、支援者たちに販売または配布された後、それらは最終的にOpenSea(オープンシー)などの取引プラットフォームに送られる。その際、多くの場合には、大幅な値上げが行われる(ご存知のように、通常はJPEGが対象だ)。

Discordは、Ethereumやその他のデジタル通貨での支払いを念頭に置いているだけかもしれないが、シトロン氏がMetaMaskのサポートをほのめかしたことは、NFTを中心としたより野心的な計画を示唆している可能性もある。Ethereumのようなコインは、基本的な支払いや取引に使用することができるが、この暗号資産は、Ethereumのブロックチェーン上のスマートコントラクトを通じて追跡・取引される、ほとんどのNFTの技術的バックボーンとしても機能している。

Discordは抜け目のない経験豊富な企業であり、人びとが自分のデジタルアイデンティティを表現するためにNFTをどのように利用しているかをよく理解していると思われる。Discordはテキストとボイスのチャットアプリで、ユーザーのアイデンティティは主にどんなアバターを選んだかで表現されている、これは現在NFTが注目していることだ。すでにTwitter(ツイッター)やDiscordでは、NFTに精通したユーザーたちが、最もレアな(そしてしばしば最も高価な)NFTを選んで、PFP(プロフィール画像)として使用している。MetaMaskがサポートされれば、Discordは、ユーザープロフィールにリンクされたギャラリーにNFTを展示したり、所有権がブロックチェーンによって担保された「認証済み」のアバター画像を選択したりする場所になるかもしれない。

特に、急成長を遂げているWeb3.0の分野で同社はその足場を活用できる立場にある。なおWeb3とは分散化、デジタルグッズ、所有権に基づく仮想IDなどで定義されると多くの人が予想しているインターネットの次の段階である、しかし、Discordは現状でも有利な材料を持っている。

ツイッターでは、シトロン氏のツイートと、同社が実施した「DiscordとWeb3.0」に関するアンケートが相まって、賛否両論が巻き起こった。多くのアカウントからDiscordユーザーに対して、DiscordがNFTに全面的に乗り出すのではないかという懸念を理由に、月額料金で機能特典を提供しているプレミアムNitro(ニトロ)サブスクリプションをキャンセルするよう呼びかけが行われた。「Nitroサブスクリプションを解約してやったぜ。@discordはクソ、NFTもクソ」とつぶやいたツイートには1万近くの「いいね!」がついた。

また、シトロン氏のツイートには、Discordの芽吹きつつある暗号資産計画が、詐欺やスパムでコミュニティサーバーを圧迫している結果になっていることを嘆く声も多数寄せられている。シトロン氏は、Discordが、NFTの交換や販売を中心とした多くのサーバーなどで横行するいい加減な行為に対処するために、新たなチームを設立したことを伝え、一部のTwitterユーザーを安心させようとした。「スパムとセキュリティは、この世界における当社の最優先事項です」とシトロン氏は書く。「最近、具体的な対処チームを立ち上げました。詳しくは追ってお知らせします」。

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画像クレジット:Discord/Eric Szwanek

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:sako)

ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始

GaudiyがNFTや分散型IDなどブロックチェーンを活用しファン体験を統合する新規ゲームIPパートナーを募集

ブロックチェーンとエンターテインメントを結び付け、ファンコミュニティー事業を展開するGaudiy(ガウディ)は11月9日、コミックスマートと共同でブロックチェーンを活用したファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」(ガンマ!コミュニティ)正式版の提供開始を発表した。

Gaudiyは、マンガアプリ「GANMA!」(Android版iOS版)を介しマンガ家の育成やマンガコンテンツの配信などを行うコミックスマートと共同で、ファンが自主的にマンガ作者や作品を応援できる共創型のファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」ベータ版の開発と提供を行ってきた。そこでは、「漫画の新たな楽しみ方やファンと漫画の新しい関係性を、ファン主体で創っていくコミュニティ」として、ファン同士の交流や創作活動を促進すると同時に、新しいオークション方式による作品関連のデジタルアイテム(NFT)の販売といったファン体験の実験も行われた。

一般にNFTの販売では、設定価格から値段を下げてゆく「ダッ・チオークション」方式(競り下げ方式)が主流だが、わかりづらいなどの問題が多い。そこでGANMA!コミュニティでは、値段を競り上げてゆく方式をベースに、慶應義塾大学経済学部の坂井豊貴教授との共同研究で生まれた「Gaudiy-Sakai方式」を採用した。これは、事前入札期間を設け、参加者の需要に応じてNFTアイテムの発行枚数を決めるというというもの。価格と発行枚数を適切に調整できる「公正でユーザーフレンドリーな」方式だという。実際にGaudiy-Sakai方式のオークションでは、NFTになじみの薄い中高生も多く参加し、「作品のファンを楽しませる新しい体験を提供」できたとGaudiyでは話している。

ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始ブロックチェーン・NFT活用したマンガのファンコミュニティーサービス「GANMA!コミュニティ」正式版が提供開始

そうした取り組みにより、新規ファンの増加、ファン同士の自発的なコミュニケーションの創出・活性化が見られ、「コミュニティ醸成における一定の成果」が確認されたことから、GANMA!コミュニティ正式版のリリースとなった。Gaudiyとコミックスマートは、今後も「マンガ業界の課題解決と新しいファン体験の創出」に務めてゆくとのことだ。

暗号資産取引所の新グローバル規制対応を支援するNotabeneが約11億円を調達

米ニューヨーク市を拠点とする暗号資産コンプライアンスSaaSスタートアップのNotabene(ノタベネ)は、F-Prime CapitalとJump Capitalが共同でリードしたシリーズAラウンドで1020万ドル(約11億円)を調達した。今回の資金調達により、Notabeneの評価額は4500万ドル(約51億円)となった。

新たな投資家には、資金調達前にNotabeneの顧客であった暗号資産取引所のLunoBitsoの他、BlockfiとGemini Frontier Fundのベンチャーキャピタル部門が含まれる。また、シリーズAではIlluminate Financial、CMT Digital、Fenbushi Capital、ComplyAdvantageのCEOであるCharlie Delingpole(チャーリー・デリングポール)氏も新規投資家として、Castle Island VenturesやGreen Visor Capitalなど既存投資家の輪に加わった。Notabeneは、会社設立から半年後の2020年10月に176万ドル(約2億円)のシードラウンドを実施した。

Notabeneのソフトウェアは、その多くが暗号資産取引所である50社以上の顧客が、2019年に課せられた金融活動作業部会(FATF)の「トラベルルール」を遵守するのをサポートしている。トラベルルールは、FATF加盟国の暗号資産取引所に対し、本人確認(KYC)やマネーロンダリング防止(AML)の規制を確実に守るよう、1000ドル(約11万円)以上の送金について顧客を特定する情報を交換することを求めている。FATFは10月にトラベルルールに関する新たなガイダンスを発表し、取引所がルールを遵守するために必要な事項を明確にした。

Notabeneは、ユーザーのプライバシーを保護しつつ、取引当事者間での情報伝達を可能にする技術を求める取引所のニーズに応えている。識別検証プロセスでは、ブロックチェーン上の匿名のウォレットアドレスを実際の顧客とリンクさせる必要がある。NotabeneのCEOであるPelle Brændgaard(ペレ・ブランドガード)氏はTechCrunchに、取引の当事者とNotabeneだけがこの情報を見えるようにすることが重要だと話した。

また、Notabeneが提供する本人確認サービスは、コンプライアンスを確保するだけでなく、適切な相手との取引を確実に行い、詐欺のリスクを回避したいと考えている消費者の間で暗号資産取引の信頼を築くのにも役立つ、と同氏は付け加えた。

Notabeneは今回の資金調達で得た資金を新規顧客の増加に対応するための技術開発に充てる予定だ。

Notabeneの取締役会に加わるJump Capitalのパートナー、Peter Johnson(ピーター・ジョンソン)氏がTechCrunchに語ったところによると、投資家であるJump Capitalが実施した調査に回答した25の暗号資産取引所のうち、90%がトラベルルール遵守のためにNotabeneを利用する予定だ。ジョンソン氏は、Notabeneの製品が暗号資産業界の重要な問題を解決しているという「市場からの圧倒的なフィードバック」が、Jumpの投資の部分的な動機だったと述べた。

Notabeneの最大の競合相手は、コンプライアンスのための一元化されたプロトコルを導入している業界のワーキンググループだ。Fidelity InvestmentsやStandard Charteredなどの銀行がメンバーに名を連ねるTravel Rule Protocol(TRP)ワーキンググループは、その代表的なものの1つだ。このような一元化されたプロトコルにより、メンバーである機関や取引所はデータを共有し、ユーザーはコンプライアンスに則った取引を簡単に行うことができる。

これらのグループのメンバーは米国拠点の取引所に集中していることから、排除を助長する可能性がある、とブランドガード氏は話す。

「例えば、当社はナイジェリアを拠点とする会社をいくつか顧客に抱えていますが、ナイジェリアには暗号資産に関する規制の枠組みがありません。ですので、この分野のゲートキーパーがいて、『完全に規制に則った企業のみを対象とする』と言えば、顧客企業は自動的に排除されてしまいます」とブランドガード氏はTRPのようなグループについて述べた。

同氏によると、Notabeneの創業チームと初期従業員の多くは、分散型アイデンティティのスタートアップ企業UPortの出身だという。UPortでの経験を生かしたNotabeneの分散型フレームワークによって、会員数を制限することなく、取引所全体の信頼性を高めることを期待している、と同氏は述べた。

画像クレジット:Notabene Team

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Nariko Mizoguchi

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が最初の3回の給与をビットコインで受け取ると表明、マイアミ市長に対抗か

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が最初の3回の給与をビットコインで受け取ると表明、マイアミ市長に対抗か

ThaiMyNguyen via Getty Images

次期ニューヨーク市長エリック・アダムズ氏が、Twitterで市長としての最初の3回の給与をBitcoinで受け取りたいと発言しました。これはおそらく、11月2日にマイアミ市長のフランシス・スアレス氏が次の給与はBitcoinで受け取ると述べたことに対して「ならば自分は向こう3か月分を」とばかりに意気込んだ発言と考えられます。

なぜ両市長がこれほどまでにBitcoin推しなのかといえば、両市はいま、米国における暗号資産のメッカとしての地位を得ようとしているから。

マイアミ市は今年8月、米国の市として初の独自暗号資産「MiamiCoin」を創設しました。MiamiCoinは採掘されるとその70%が採掘者に、30%がマイアミ市に収められるしくみで、Washington Postによればマイアミ市はこれまでに710万ドル(約8億円)を超える金額をMiamiCoin採掘から得たとされます。

また今年はじめには、スアレス市長がBitcoinでの税金の支払いや、暗号資産による市職員の給与引き出しを推進する計画を発表、さらに暗号資産に関するカンファレンス「Bitcoin 2021」を開催するなどして業界の注目を集めており、こうした動きに対する期待感からか、暗号資産取引所やスタートアップ/ベンチャー企業のいくつかがマイアミにオフィスを構えたり移転をし始めています。

一方、ニューヨーク市はといえば、これまではBitcoinや暗号資産に対しては消極的な姿勢を示していました。今年はじめの段階では、ニューヨークは市内でのBitcoin採掘を3年間禁止することで温室効果ガス排出の変化を確認する環境アセスメント実施法案を議会で揉んでいたほどです。

しかしこのほど次期ニューヨーク市長に選出されたアダムス氏は、6月に市長選における民主党からの指名を得たときには、ニューヨーク市を「Bitcoinの中心」、また「すべての技術の中心」にしたいと抱負を語り、新たなビジネスの育成を公約に掲げました。そしてBitcoinや暗号資産への政策についてもマイアミを追撃したいとの考えを述べています。

ただ、世界最大の金融都市として知られるニューヨーク市とはいえ、暗号資産でその覇権を握るには先行しているマイアミ市よりも強力に暗号資産の推進をしていく必要があります。アダムズ氏はBloomberg Radioでスアレス氏とともに「切磋琢磨」して行きたいと述べたものの、市長が3回分の給与をBitcoinで受け取ったところで、それほど大きな影響を及ぼすとは考え難そう。またニューヨークに帝国(エンパイアステート)を築いてきた金融企業たちとも、どのように折り合っていくのかが気になるところです。

ちなみに、米国以外では、たとえばエルサルバドルなどはすでにBitcoinを法定通貨として定めています。また中国は国家として独自の暗号資産「デジタル人民元」を推進するためか、全てのBitcoin取り引きを違法とする措置を講じています。

(Source:CNBC。Via The VergeEngadget日本版より転載)

【コラム】イーサリアムはプライバシーの基準も変える

イーサリアムは世界で最も人気のあるデジタル契約コンパイラーで、多くの人によって管理されているものの、誰かが所有しているわけではない。イーサリアムが普及している要因の1つで最も興味深いのは、おそらくイーサリアムが描く未来だろう。イーサリアムは、今後所有権、価値の創造、そしてこれが最も重要であるが、プライバシーに関する現在のインターネットの基準を変えていくだろうと思われる。

どのような変化が今後起こるのだろうか?

イーサリアムでは、アプリを開発できるだけでなく、写真、音楽ファイル、ビデオ、お母さんのお気に入りのかぼちゃパイのレシピ(他にも日々生み出されるさまざまな可能性があるが)など、デジタルなものなら何でも一意に有償で所有、交換、保管できる。

多くの人々がインターネットはさまざまな保護によって階層化されると予想してきたが、Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ-リー)氏の言葉の言い換えになるが、結局は基盤となるテクノロジーを誰もが利用できるようにすることで、その受容と有用性が大幅に向上することがわかった。

イーサリアムとWeb 3.0の出現によって、インターネットが単にプライベートであるというだけでなく、オープンで透明性のあるものである、という概念が生まれ、状況が変化しつつある。

イーサリアムのこれまで

2013年、Vitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏は、イーサリアムのアイディアを思いつき、イーサリアムは2年後に開発されサービスの提供を始めた。このプラットフォームは、インターネットにアクセスできる世界中のだれもが、永続的なアプリケーション(分散型アプリ、またはdAppsとして知られる)を開発できるように設計された。この分散型アプリは誰もが使えるが変更はできないもので、厳密な整合性を備えたオープンソースソフトウェアである。これらのアプリの基本機能はスマートコントラクトと呼ばれ、デジタル契約を可能にする。

つまり、言い換えると、もはや仲介者を通して財務サービスや法務サービスを行う必要がないということである。イーサリアムは基本的に証書保管代理人、公証人、IDをチェックする銀行の出納係、または住宅ローンの原資産所有者を必要とせず、それらを一瞬のデジタル取引に置き換えてしまう。

この非常に貴重な機能によりイーサリアムは、現在多くの競争者の先を行く最も有名な暗号資産そしてブロックチェーンの1つとなった。ビットコインの価格は最近史上最高値を記録し、イーサリアムの周辺は大いに沸き立っている。

これに関連する概念であるWeb 3.0は、これらのピアツーピアのブロックチェーンを用い、ユーザーが仲介者なしに、データを取り扱い、価値を保存し、エンティティとやりとりする、といったことを可能にする、未来のインターネットと目されている。

イーサリアムの現在

イーサリアムが法務、財務、契約締結などの基本インフラになるにつれ、その強みや弱みを理解することが財産の所有と譲渡の基本的な性質になるだろう。

Stephen Hawking(ステファン・ホーキング)氏の「基礎的コンピュータープログラミングは学ばなければならない必須のスキルである」という言葉をこの状況に即して言い換えれば、イーサリアムでのスマートコントラクトの基礎を学ぶことは、基本的な法務スキルや財務スキルになるだろう。

現在イーサリアムで最も注目を集めているアプリケーションはNFT(non-fungible tokens:代替不可能なトークン)である。NFTは比較的新しいものであるが、価値の保存だけでなくデジタルな一意の所有権を主張するものとして、消費者、アーティスト、投資家に人気である。

NFTは、操作、変更、複製ができない、つまり代替不可能であるため、インターネット上であらゆるデジタル(ファイル)を所有または取引することができる。Ape、Kitty、Punkを巡りソーシャルメディア上で騒ぎが起こっているが、それらはすべて、高価なデジタルアートにファンが群がる急成長中の現象に関連している。

このテクノロジーの1つの使用例として予測されるのが、惑星間のマイニングである。地球を本拠地にしている企業は、社員が実際に訪れることがほとんどない小惑星の鉱業権を売買する必要がでてくるだろう。

他に予想される使用例としては住宅ローン、不動産購入、イベントチケット販売、音楽祭、ファイルストレージ、ゲーム(例えばAxie InfinityはプレイヤーがNFTに基づくゲーム世界でしっかり生計をたてることができるという証拠である)などがある。

可能性は無限であり、日々好奇心がありエネルギーに溢れたコミュニティによってアイディアが生み出されている。

今後のイーサリアムの課題

この基盤となるテクノロジーに規制が追いついてきている現在、多くの人がそれを制御する試みを目にすることになるのか確信を持てないでいる。暗号戦争で長年たたかわされてきた議論には暗号化を抑制または損なう要求がともなっていたが、それと同様に、イーサリアムの「変化しない性質」に変更を加えると、その重要な特性である「永続的整合性」が損なわれる可能性がある。

イーサリアムの不変性とそれが広く受容されている状況との間には、潜在的な対立が存在する可能性がある。つまり金融規制当局が何らかの形でその展開に対して所有権を得たりまたは管理しようとするかもしれないということである。これらの規制当局が「広くつながったノードの領域を、その真の価値である分散性自体を損なうことなく慎重に管理するにはどうしたらよいか」という疑問にどう答えるか大変興味深い。

このテクノロジーが直面するその他の課題や限界はと言えば、パフォーマンスの持続可能性ではないかと思われる。イーサリアム上にアプリなどを作成する際、ガス代といわれる料金が必要になるが、近年この料金が上昇しており、プラットフォームの処理時間が遅くなっていることが知られている。イーサリアム2.0は非効率性を解消できると考えられているが、すべての取引を保存し計算するために最適化されたブロックチェーンにおいて、スピードを維持し続けるにはどうしたらよいのだろうか?

セキュリティも課題の1つであり、広く悪用されているわけではないもののイーサリアムには脆弱性の問題があることが知られている。Poly Networkは「契約呼び出し間の脆弱性」に起因するハッキングがあったことを2021年報告している。

スマートコントラクトは作成するには複雑な機能であるため、ネットワークに展開する前に十分な監査が必要である。イーサリアムのセキュリティもパスワードを必要としない、非対称暗号化に基づいて構築されている。量子コンピューティングが最終的に非対称暗号化標準を混乱させる可能性は多いにある。

私たちは、イーサリアムやブロックチェーンがいかに存続し続け、それを私たちがメタバースへ、そしてそれを超えて維持していけるのかに興味がある。

編集部注:本稿でAshley Tolbert(アシュリー・トルバート)氏とTarah Wheeler(タラ・ウィーラー)氏によって述べられた見解は両氏の個人的見解であり、両氏が関係する団体の見解ではありません。アシュリー・トルバート氏は、情報セキュリティの研究者およびエンジニア。タラ・ウィーラー氏はハーバード大学ケネディスクールオブガバメントのベルファーセンターサイバープロジェクトフェローで、情報セキュリティ研究者。

画像クレジット:Prostock Studio / Getty Images

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(文:Ashley Tolbert、Tarah Wheeler、翻訳:Dragonfly)

BTSがNFT市場に参入、韓国の暗号資産取引所Upbitとの合弁で

K-POPのメガスターBTSを擁する韓国のエージェンシーHybeは、韓国の暗号取引所Upbitと合弁会社を設立し、NFT事業に参入する予定であることを発表しました。

Hybeは、暗号資産取引所Upbitを運営するブロックチェーンベースのフィンテックスタートアップDunamuの株式2.5%を5000億ウォン(約482億円)で購入する。同時にDunamuは、ソウルに本社を置く音楽エージェンシーの新たに発行されたHybe株(5.6%の株式)を5億9240万ドルで取得すると規制当局に申請している。

合弁会社はNFTフォトカードを作成し、グローバルなHybeのファンとアーティストのコミュニケーションアプリ「Weverse」で取引される予定だ。HybeのCEOであるSi-Hyuk Bang(パン・シヒョク)氏とDunamuの会長であるChi-Hyung Song(チ・ヒョンソン)氏は、現地時間11月4日の説明会で共同声明を行った。

HybeのBTS NFTには、動画やアーティストの声などが含まれているとパン氏はいう。それに加えて、世界中のファンがデジタルフォトカードを仮想空間で交換することができるようになる、チ氏は述べた。

Hybeとその子会社は、BTSブランドをデジタル領域でより深く拡張するためのさらなる計画も発表した。NFT JVに加えて、BTSのビデオゲーム、そして「ウェブトゥーン」ビジネスが予定される。

Hybeは現在、ポップバンドを生み出す企業の中で最も成功している企業の1つであり、彼らはその波に乗っています。説明会では、Hybe AmericaのCEOであるLenzo Yoon(ユン・ソクジュン)氏が「HybeとUniversal Music Groupは、グローバルなガールズグループのデビューを披露する準備もしています。これとは別に、Hybe Japanは日本でボーイズバンドを発表する予定だと、CEOのHyunrock Han(ハン・ヒョンロク)氏は述べている。

韓国のK-POP大手は、既存のIPをデジタル資産に変えることで収益の可能性を広げるため、NFTに備えている。

韓国の4大エンターテインメント企業であるHybe、JYP、SM、YGは、この新しい技術を利用しようと競い合っている。JYP Entertainmentは7月にDunamuと提携してK-POPベースのNFTプラットフォームを立ち上げ、SMは2019年に暗号資産とブロックチェーンのプラットフォームを構築を発表している。

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(文:Kate Park、翻訳:Katsuyuki Yasui)

CoinbaseがAI駆動型カスタマーサポートの印Agaraを約45億円超で買収へ

Coinbase(コインベース)は、AI駆動のカスタマーサポートプラットフォームを運営するスタートアップAgara(アガラ)を買収する。両社が米国時間11月2日に発表した。暗号資産(仮想通貨)取引所であるCoinbaseは、ユーザーがサービスを利用したりサポートを求めたりしやすくしようとしているようだ。

両社は買収に関する財務面での詳細を明らかにしなかったが、取引の規模は4000万〜5000万ドル(約45億〜56億円)の間だとこの件に詳しい2人が筆者に語った。Coinbaseの広報担当者はコメントを控えた。また、Agaraの共同創業者で最高経営責任者のAbhimanyu(アビマニユ)氏も、守秘義務契約を理由に取引規模についてのコメントを却下した。

データインテリジェンスプラットフォームのTracxnによると、インドで創業して4年目のAgaraは、今回の買収前にBlume Ventures、RTP Global、UTEC Japan(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、Kleiner Perkinsから約700万ドル(約8億円)を調達していた。

Agaraは機械学習と自然言語処理に関する深い専門知識を構築し、それをユーザー体験の向上に役立てている。40人以上の従業員を擁する同社は、世界中に複数の大口顧客を抱え、Salesforce、Shopify、Twilioなど多くの人気サービスに統合されている。買収後、AgaraはCoinbaseにフォーカスを移すとアビマニユ氏はTechCrunchとのインタビューで答えた。

「我々は、大きく分けて2つのことに注目して会社を立ち上げました。1つはカスタマーエクスペリエンスとサポート。2つ目は機械学習です。MLテックスタックを作り、それをカスタマーケアに応用するという考えでした」とアビマニユ氏は話す。「我々が行っている複雑な業務の中には、電話での問い合わせがあります。電話によるサポートのすべてではないにしても、その多くを自動化することに取り組んできました」と述べた。

同氏によると、Agaraのテックチームは、その大部分がインドで勤務しており、買収の一環としてCoinbaseに加わる。両社は年内に取引を完了する予定だ。今回の動きの数カ月前に、Coinbaseはインドにテックハブを構築する戦略を打ち出し、Google Payの元幹部であるPancaj Gupta(パンカジ・グプタ)氏を採用していた。

「Agaraの強力な技術を活用して、当社のカスタマーエクスペリエンス(CX)ツールを自動化し、強化する計画です。ここ数カ月でサポートスタッフの人数を5倍に増やし、年末までに24時間365日の電話サポートとライブメッセージを提供することを発表しました。今回の買収により、パーソナライズされたインテリジェントでリアルタイムなサポートオプションを顧客に提供することができるようになります」とCoinbaseのエンジニアリング担当EVPであるManish Gupta(マニッシュ・グプタ)氏は声明で述べた。

画像クレジット:TechCrunch / Flickr

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

ワンクリックで暗号資産の空売りが可能な「Beta Finance」

あらゆる暗号資産(仮想通貨)の貸し借りと空売りをワンクリックで行うソリューションを開発した分散型金融プロトコルのBeta Finance(ベータファイナンス)は米国時間10月29日、プライベートおよびパブリックのローンチパッド投資ラウンドで575万ドル(約6億6000万円)を調達したと発表した。

プライベート投資ラウンドでは、Sequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)が主導し、ParaFi Capital(パラフィ・キャピタル)、DeFiance Capital(デファイアンス・キャピタル)、Spartan Group(スパルタン・グループ)、GSR、Delphi Digital(デルファイ・デジタル)、Multicoin Capital(マルチコイン・キャピタル)も参加した。

Allen Lee(アレン・リー)氏が設立したBeta Financeは、ユーザーがより簡単に暗号資産をショート(空売り)して価格変動に対抗できるようにし、またリスクヘッジのための別の手段を提供しようとするスタートアップだ。

既存のDeFi(分散型金融)プロトコルは、ごく限られた成熟した暗号資産の借り入れと空売りにしか対応しておらず、大多数のトークンはユーザーがアクセスできないようになっている。

Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーン上に構築されているBeta Financeは、この非効率性を解消するために、より幅広い選択肢と機能性を提供する初のユーザーフレンドリーなプロトコルであると自らを称している。

そのワンクリックソリューションによって、技術的なノウハウを持たないトレーダーでも、あらゆるトークンのショートポジションを管理・更新することが可能になる。関連するすべてのトークンの情報がインターフェイス上で直接入手でき、それを判断材料とすることができる。

「ユーザーは、既存の金融市場で無視されている、最もボラティリティ(価格変動性)が高い資産の多くをショートすることができるため、ボラティリティを相殺してリスクをヘッジし、より健全なリターンを得ることができます」と、Beta Financeは述べている。

「空売りは、DeFiプロトコルに欠けていた金融インフラの重要な部分であると考えています」と、リー氏はTechCrunchによるインタビューで語った。「DeFiが伝統的な金融に取って代わるためには、空売りのようなツールを構築することが必要であると、私たちは確信しています」。

自社で発行した仮想コイン「BETA」がBinance(バイナンス)で取引されているBeta Financeは「カテゴリーを定義するプロトコルになる可能性を秘めている」と、Sequoia IndiaのプリンシパルであるPieter Kemps(ピーター・ケンプス)氏は声明で述べている。

Beta Financeによると、同プラットフォームの立ち上げから最初の1カ月の内に、1万人以上のユニークアドレスに対して、1万件以上の入金、1000件の借り入れ、500件のショートポジションを処理したとのこと。このプロトコルはロックされている総額の平均が1億9500万ドル(約223億円)を超えたと、同社では述べている。

「Betaは、ワンクリックショートの先駆者であることに加えて、プロトコルをローンチしてからわずか1週間後には、NFDトークンの空売りを可能にしてNFT(非代替性トークン)をショートした最初のプロトコルとなるなど、安全性を保ちながら多様な資産(ボラティリティの高いものを含む)に対応できる能力をすでに証明しています。DeFiエコシステムの今後において、Betaは重要なステークホルダーになることを、私たちは楽観視しています」と、ケンプス氏は述べている。

Beta Financeは、今回調達した資金を、製品提供の幅を広げ、より多くの人材を雇用するために活用すると、リー氏は述べている。

画像クレジット:Beta Finance

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

クリエイターが稼ぐ方法としてPatreonは暗号資産を検討

Patreon(パトロン)の共同創業者でCEOのJack Conte(ジャック・コンテ)氏と最高プロダクト責任者のJulian Gutman(ジュリアン・ガットマン)氏は、現地時間10月28日に開催されたThe Informationの2021 Creator Economy Summitのパネルに登壇し、同社の会員制プラットフォームの暗号資産に関する計画について質問を受けた。

「暗号資産とNFTの分野で、明らかに壮大なイノベーションが起きています」とガットマン氏は話した。「私たちが目にするアート市場や貴重品市場では、狂気じみた価格がつきます。それがクリエイターエコノミー全体で持続可能なのか、明らかではありません。しかし、には、基本的な技術的要素というものがあり、オーディエンスに価値を売る方法として機能しています。クリエイターの活動が世の中で重要性を増すと、二次販売によってその価値を継続して享受することができます」。

Patreonは9月、四半期ごとのCreator Policy Engagement Programのライブストリームに先立ち、クリエイターコミュニティに対し、クリエイターコインのアイデアを提示した。このライブストリームでは、クリエイターがプラットフォームのポリシー変更について意見を述べることができる。だが同社は、このテーマについてクリエイターと深く話し合うことができなかった。Mastercardのアダルトコンテンツに関する新基準に関連した、より緊急性の高い問題と一緒に提示されたためだ。

Patreonのポリシー責任者であるLaurent Crenshaw(ローレント・クレンショー)氏はPatreon Connectのライブストリームで「私たちは今、いかなるタイプのイニシャル・コイン・オファリング(ICO)の創設についても検討していません。明らかに、Patreonの現在のガイドラインでは認められていません」と話した。「しかし、多くのクリエイターから、彼らの支援者に対し、コインやトークンなどにより、限定的なメンバーシップや特典を提供することに興味があるという声を耳にしてきました。そうしたデジタルアイテムは、クリエイターのファンクラブの一員であることを示し、持ち続けることができます。そこで私たちは、少なくとも、そのような方法をガイドラインが認める可能性を探れるのではないかと考えました」。

Patreonでは、クリエイターが個人的な投資話やアドバイスをすることはできるが、現在のガイドラインでは、クリエイターやその支援者の直接的な金銭的利益を目的としたコインや、投資スキームの一部として提供されるコイン、暗号資産の購入や入手を促す明示的なインセンティブなどは禁止されている。しかし、クリエイターがクリエイターコインの提供に興味を示すなら、Patreonはポリシー変更を検討するという。

クリエイターコインとは、暗号ベースのソーシャル通貨の一種で、基本的には、ファンがクリエイターの成功に投資できるような仕組みだ。BitCloutRollRallyなどの企業が個別のトークン作成に取り組んでいる。クリエイターのトークンを早期に購入し、その人がスーパースターになれば、自分も利益を得ることができる。

「Patreonが常に心がけていることの1つは、クリエイターにとって持続可能で長期的な道筋を作っていくことです。収益化が爆発的に進むことではありません」とガットマン氏はThe Informationのサミットで述べた。「ですから、NFTやその基盤となる技術が、クリエイターにとって持続可能で長期的な収益を生み出すためにどう役立つのかを検討し、理解することに興味があります。しかし、個々のアセットの販売を伸ばすことに関していえば、クリエイターにとって価値があると思えるなら、クリエイターが提供できる幅広いポートフォリオの一部として、クリエイターコインの提供を考えないわけではありません。しかし、私たちとしては、クリエイターにとって持続可能で継続する未来を築くにはどうすればよいかを真剣に考えているがために、暗号資産についても広く検討しているわけです」。

クリエイターに作品の所有権を与えることを目的とする暗号資産の取り組みもある。例えば、アーティストはNFTを販売するたびにロイヤルティを得ることができるが、通常のファインアーティストに同じことは当てはまらない。

「暗号資産やNFTに関する一般論として、私はクリエイターが自分のメディアやコンテンツを所有するという考えがとても気に入っています。クリエイターがレバレッジを効かせてコントロールするという考え方が好きなのです。プラットフォームではなく、クリエイターがオーディエンスのデータを所有するという考え方も好きです。基盤となる多くのインフラが、クリエイターに自立の力を与えてくれるというのはすばらしいことだと思います。権力を組織から個々のクリエイターに移すという考え方が好きです」とコンテ氏はイベントで語った。「私は、このテクノロジーの多くが目指しているのはそういうことだと思いますし、それが本当に深くエキサイティングなことだと思っています」。

しかし、Patreonが先月提案した、クリエイターが暗号資産に手を出せるようにするというPatreonのアイデアには、多くのクリエイターが抵抗を感じていた。ほとんどは環境コストが理由だ。

「暗号資産を加えるというアイデアは心配です。アーティストのコミュニティにおける暗号資産の評判は絶対的に悪いからです。表面的には有益であってもです。クリエイターの支援者がプラットフォームへの暗号資産導入に賛成しないことで、支援者を失ってしまうのではないかと心配しています」と、あるクリエイターはライブストリームの公開チャットに書き込んだ。

パネルの司会を務めたThe InformationのLaura Mandaro(ローラ・マンダーロ)氏は、コンテ氏に対し、Patreonには暗号資産に取り組むフルタイムの従業員がいるのかと尋ねた。

「それについてはノーコメントですが、検討はしています」とコンテ氏は答えた。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

眼球スキャンと引き換えにさまざまな人に暗号資産を提供するWorldcoin、OpenAIのCEOらが立ち上げ

暗号資産への関心の高まりに乗じて投資家が競い合う中、さまざまなスタートアップ企業が世代をまたいだ多くのユーザーに暗号資産ウォレットを所有してもらうための工夫をしている。

OpenAI(オープンエーアイ)のCEOであるSam Altman(サム・アルトマン)氏、およびAlex Blania(アレックス・ブラニア)氏が設立したWorldcoin(ワールドコイン)は、世界に自社の暗号資産を受け入れてもらうために、最も大胆な試みを行っているスタートアップの1つといえるだろう。同社は、あらゆる人にスマートフォン上の暗号資産ウォレット(および暗号資産の一部)を持ってもらおうとしているが、そのためには、ユーザーがそのユーザー本人であることを判断できる方法を構築しなければならない。Worldcoinは、可能な限り理想的な方法で本人を証明するネットワークを作ることを目指しているが、そのためには、何十億もの眼球を「Orb(オーブ、球体を意味する)」という約2kgの虹彩スキャン装置でスキャンすることが必要だ。

アレックス・ブラニア氏(左)、サム・アルトマン氏(右)(画像クレジット:Marc Olivier Le Blanc)

インターネットは、まったく形の定まらないユーザーネットワークを形成して発展してきた。ボットネット(悪質なソフトウェアに感染したコンピュータのネットワーク)には、自分のID(アイデンティティ)を使う実在のユーザーと、実存する別の人物になりすましたユーザーと、偽名を使うユーザーの3種類のユーザーが存在する。これは(現在のソーシャルメディアプラットフォームがそうであるように、)ユーザーに与えられるインセンティブが不平等になる原因となるが、金融に関連する場合は不平等のみならず詐欺の原因にもなる。Worldcoinは、地球上のすべての人が、ネットワーク上の1つのウォレットだけにサインアップするようにして、このような事態を回避しつつ、暗号資産の公平な分配を実現したいと考えている。

WorldcoinのCEOであるアレックス・ブラニア氏はTechCrunchの取材に応じ、同社の暗号資産Worldcoinは、十数年前に始まった暗号資産が実現することのできなかった、インターネット経済によるより統一された公平なグローバル経済を推進するための、さらに大きな取り組みの一環であると話す。

「Worldcoinの構想は、ベーシックインカムが世界にとって非常に重要なものになるのは確実であり、インターネット経済へのアクセスは、現時点で判明しているよりもはるかに重要になるだろう、という議論がきっかけです」とブラニア氏。

Worldcoinは、イーサリアム(ETH)をベースにした「レイヤー2」の暗号資産で、イーサリアムのブロックチェーンのセキュリティを活用しながら、独自の経済を実現する。ブラニア氏によると、Worldcoinをイーサリアムの上に構築することにしたのは、主にイーサリアムの開発者ネットワークが理由で、同氏はネットワークにWorldcoinも採用してもらいたいと考えている。最初はビットコインから暗号資産を始めて欲しいと考える暗号資産推進派も多いが、ブラニア氏は、イーサリアムのレイヤー2と比較してビットコインにはスケーラビリティの問題が多すぎる、と考えている。

ブラニア氏は「ビットコインは、何十億人ものユーザーには対応できません」「ご存じのとおり、トランザクションに時間がかかるので非常に高価です」と話す。

6月にはBloombergがWorldcoinの設立初期の詳細を報じたが、ブラニア氏は「(記事には)かなり悩まされた」とし、Worldcoinが行っていることは複雑なプロセスであり、さまざまな情報が錯綜していることを認めつつも、Worldcoinのローンチに向けて、世界中のユーザーにプロセスを知ってもらうことができると確信していると話した。

そういえば……オーブとは?

Worldcoinは非常に厳格なユーザー獲得フローを採用している。Orbカメラのライセンスを世界中のライセンス事業者に供与し、あらゆる大陸、国、都市で、ネットワーク上の新規ユーザーを1人ひとり手作業で確認する、というものだ。

プロセスの基本形は、Orbで人の虹彩を撮影し、その画像をハッシュコードに変換する(Worldcoinによれば、変換プロセスは非可逆とのことだ)。その虹彩に紐づいたハッシュコードがまだアップロードされていないかどうかをデータベースで確認し、ハッシュコードが存在しないユニークのものであれば、ハッシュコードを新たに保存する。すると、ユーザーはアプリで暗号資産ウォレットを所有できるようになり、そこからOrbがQRコードをスキャンする、というものだ。(本名ではなく)仮名のウォレットコードに関連付けられた検証済みユーザーのネットワークと、実際の眼球写真ではなくハッシュコードが大量に保管されたデータベースを構築することで、ブラニア氏は、Worldcoinのユーザーが急増する中でも同社のプライバシーに関する取り組みを明確に伝えていきたいと考えている。

インドネシアで行われた利用者獲得のためのOrbのセッション(画像クレジット:Worldcoin)

ブラニア氏によると、南米、アジア、アフリカ、ヨーロッパの4大陸における最初のテストでは、ライセンス事業者はOrb 1台あたり、平均して1週間に700人を超えるユーザーを獲得することができた。現在、30台のOrbのプロトタイプが現場で稼働しているが、(すべてが計画通りに進めば)今後数カ月のうちに数百台を追加し、最終的には月に数千台のOrbを出荷する計画だという。米国のユーザーがWorldcoinとOrbを体験できるのは、しばらく先のことになりそうだ。

ブラニア氏は「(WorldcoinやOrbに関連する)米国の規制がもっと明確になるまで、米国での発売を遅らせることになるかもしれません」と指摘する。

すべてが根気のいるプロセスとはいえ、何百万、何千万ものユーザーに初めての暗号資産ウォレットを提供すると同時に、ブロックチェーンを使用して認証されたインターネットユーザーのネットワークを構築する、というのは、暗号化に投資してきた多くの投資家が、有り金をはたいてでも投資したいと思う内容だ。Worldcoinのローンチにともない、このサービスを利用する検証済みのユーザーにはWorldcoinの一部が割り当てられる(定額制かドルペッグ制かは未定だが、後者になるようだ)。全体では、Worldcoinの供給量のおよそ80%がユーザーに割り当てられ、10%はWorldcoinが留保し、残りの10%は投資家が受け取ることになる。

つまり、ユーザーは無料(ただ)でお金を手に入れるのだが、この大きな問題の1つは、ユーザーがお金を使ってしまうことである。ブラニア氏は、今後Worldcoinがネットワークやユーティリティーを拡大していく過程で、ユーザーが無料で受け取った暗号資産はすぐには清算できないような仕組みを作っていく、と話す。

投資家に関しては、WorldcoinはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導し、Coinbase(コインベース)、Reid Hoffman(リードホフマン)、Day One Ventures(デイワンベンチャーズ)、Multicoin(マルチコイン)、FTX(エフティーエックス)のSam Bankman-Fried(サム・バンクマン・フリード)氏、Variant(バリアント)のJesse Walden(ジェシー・ウォルデン)氏などが参加したラウンドで、2500万ドル(約28億5000万円)を資金調達した。ラウンド前の評価額は10億ドル(約1140億円)であったが、ブラニア氏によると、Worldcoinとその知的財産権は最終的には財団に転換され、ユニコーン企業(評価額が10億ドルを超える未上場のスタートアップ企業)という題目はここではほとんど意味をなさないという。Worldcoinに資金を提供する投資家たちは、Worldcoinの供給量の10%という投資家への割り当てを目的としている。

「会社自体の持ち分は、基本的にはまったく問題にならないはずです」とブラニア氏。

結局のところ、課題は新しい暗号資産に注目を集めることと、数十億、数千億のユーザーを獲得することである。独自のハードウェアが、利用者獲得の現場によって大幅に異なる環境で何十億、何千億もの眼を確実に解読できるようにすることも課題だ。Worldcoinには大きな課題がいくつもあるが、中には実際にOrbが流通するまで明らかにならないものもある。これらの課題のいくつかは絶え間なく流入する投資家の資金が解決するかもしれないが、この(かなり複雑な)プロセスすべてを理解してもらうという課題は残るだろう。

このことはWorldcoinのウェブサイトによく表現されている。「Nothing like this has ever been done before and the outcome is uncertain.(前例のないことで、結果は不確実です)」。

画像クレジット:Worldcoin

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(文:Lucas Matney、翻訳:Dragonfly)

NFTマーケットプレイスOpenSeaの苦悩、「真の友人は正面から君を刺す」

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは!今日は気楽な話題なので、くつろぎながら読んで欲しい。

よく知られているオスカー・ワイルドの言葉に「真の友人は正面から君を刺す」というものがあるが、この言葉は覚えておくべき機知に富んだ真実だ。Coinbase(コインベース)がNFTに参入するという最近の決定について、ここ1、2週間あれこれと考えているうちにこの言葉が浮かんできた。

関連記事:CoinbaseがNFT市場参入を発表、OpenSeaに対抗するマーケットプレイスを準備中

いくつかの事実を知れば、ワイルドの言葉がなぜ今の状況に合っているのかがわかるだろう。

  • a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者であるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、上場前から支援してきたCoinbase(コインベース)の役員を務めている
  • 一方a16zはOpenSeaのシリーズAを主導した。これは2300万ドル(約26億円)規模で、NFT市場に多額の資金と信用をもたらした
  • Coinbase VenturesもOpeanSeaに投資しているが、これは同VCが行ってきた数多くの投資の1つだ
  • そしていま、CoinbaseがNFTに参入することを発表したことで、ウェイティングリストに大量の登録者が集まった

暗号資産ウォッチンググループのDappRadar(ダップレーダー)によれば、現在OpenSeaは最大のNFTマーケットプレイスだ。もし競合するソリューションに興味を示したユーザーたちが、著名な暗号資産投資プラットフォームであるCoinbaseで実際にNFTを売買するようになれば、CoinbaseはOpenSeaを圧倒するかもしれない。

そうなると、OpenSeaは困った立場になるだろう。

VCが上場後も企業の取締役に留まるのは、彼らがそうすることを選択し、そして投資先企業が彼らを引き留めるのであれば問題はない。公開された企業のボードメンバーになることを習慣にしているVCもある。例えばMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、Facebookの取締役会に参加しているが、Facebookはアンドリーセン氏についての説明の中で、彼が以前にeBayやHPで取締役を務めていたことを紹介している。やるもんだ。

しかし、ある投資家が上場後も投資先企業の役員に留まりながら、同じ投資家の会社のポートフォリオ企業と直接対抗することを決めたとすると、少し厄介なことになる。その投資家がまだ働いているところ。仮に私がOpenSeaの立場だったとすると、アンドリーセン氏がCoinbaseのボードにいて同時に彼のベンチャーファーム(a16z)が私(OpenSea)の投資者に名を連ねているときに、Coinbaseが私の市場を攻撃することを決めたとしたら、私は腹を立てるだろう。

「真の友人は正面から刺す」ものなのか?

また、Facebookによる最近の暗号資産の推進は、ご存知の通りCoinbaseとの提携であることも思い出そう!

関連記事:フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

また最近、Facebookのボードメンバーが関わる皮肉な事態は他にもみられた。例えばPeter Thiel(ピーター・ティール)氏はFacebookの役員だ。そして彼は同時に、政治家を目指すJ.D. Vance(J.D.バンス)氏も支援している。ここで注目すべきは、J.D.バンス氏が選挙に出馬しながらFacebookを攻撃している点だ。個人的には大企業が中小企業を沈めようとしているのを見るのは好きではないので、OpenSeaの事態を眺めているのは少々不愉快だが、Facebookの資金が循環してFacebookの尻に噛みついているのを見るのは、その過程で稚魚たちが被害を受けていないこともあって滑稽だ。

とはいうものの、もう少し取締役会の席を他者に譲ったほうが良いのではないだろうか。そうでなければ、a16zは自分たちが支援している創業者たちを貶めるような活動を続けることなってしまうだろう。

Volvoその他のIPO

今週は時間を見つけてVolvo(ボルボ)の公開について調べようと思っていたが、それはかなわなかった。ここで会社自身によるノートを見ることができる。Volvoから分離したPolestar(ポールスター)は、SPACを使って株式を公開している。

そして先週の終わりに、Braze(ブレイズ)は株式公開を申請した。この会社とそのS-1については、米国時間の月曜日の朝一番に詳しくお伝えする。

今後も、(冗談抜きで)最高の企業ギフトプラットフォームを構築しようと競い合う熾烈なスタートアップレースの様子などを紹介していく。

関連記事:ボルボの高級EVブランドPolestarが約2兆2200億円の評価額でSPAC上場へ

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

SFをテーマにしたNFTカードゲーム「Parallel」が急成長中、投資家の注目も高まり約570億円調達

Ethereum(イーサリアム)エコシステムの暗号資産投機家にとって、NFT(非代替性トークン)が保有資産を多様化するためのホットなスペースとなっていることは周知の事実である。これを、質の低い芸術作品を騙されやすい人に売り込む絶好の機会と考える人がいる一方で、NFTベースのゲームは一般に拡がる運命にあり、早い段階で仕組みを利用することができた製品が利権を得ると考える人もいる。

イーサリアムのブロックチェーンをベースにしたSFカードゲーム「Parallel(パラレル)」は、他の暗号資産プロジェクトよりも急激に成長を遂げている。投資家もそれに気づいており、このプラットフォームは、暗号資産専門VCのParadigm(パラダイム)から5億ドル(約570億円)の評価額を得て5000万ドル(約57億円)を調達したと、TechCrunchに語った。これまで同社には、YouTube(ユーチューブ)の共同創業者であるChad Hurley(チャド・ハーリー)氏、Focus Labs(フォーカス・ラボ)、OSS Capital(OSSキャピタル)、Yunt Capital(ユント・キャピタル)などが出資している。

「最高の暗号資産ゲームは、ファーストパーティのコンテンツを超えて、プレイヤーや開発者のコミュニティを刺激し、ゲームそのものを構築するものになるでしょう。我々は、Parallelのユニークなアプローチと初期の熱狂的なコミュニティに感銘を受け、彼らの次の成長段階を支援できることをうれしく思います」と、Paradigmの共同創業者であるMatt Huang(マット・ファン)氏はメールで語った。

Parallelは、世界的なエネルギー危機を解決しようとする終末論的な試みの後、人類が宇宙から脱出するというファンタジー系ストーリーをベースにしている。CryptoPunks(クリプトパンク)などの高い価値が付けられたドット絵的な他のNFTプロジェクトとは異なり、Parallelのアートスタイルはリアリズムを重視したものになっている。

Parallelが今後リリースする予定のNFT(画像クレジット:Parallel)

このSF NFTカードゲームは、NFTへの投機が急増した2021年8月に最初のパックをリリースすると、すぐに人気に火が着いた。暗号資産情報を追跡しているCryptoSlam(クリプトスラム)によると、Parallelの取引量は1億500万ドル(約120億円)に迫るという。同タイトルに含まれる「Masterpiece(マスターピース)」カードの1つは、110万ドル(約1億2500万円)相当のイーサリアム暗号資産で販売された。9月の売上は1100万ドル(約12億5000万円)を超える程度で収まったものの、このように大きな金額が動いた月は、NFTプロジェクトの長期的な価値に大きな影響を与える可能性がある。というのも、その間に購入された希少な品を長期的に保有することで、オンチェーンで鋳造(発行)される新しい資産の価格基準を安定させることができるからだ。

何千人もの技術に精通した投機家が、大金持ちになるためにシステムを破壊しようとすることほど、システムのストレステストになるものはない。その結果、NFTの「ドロップ」は、ありとあらゆる悪夢のようなシナリオに悩まされてきた。独自のドロップシステムを構築してきたParallelにとって、今のところ順調に進んでいるものの、数日後に迫った次のドロップは、カードの潜在的な価値が高まっていることもあり、どれだけスムーズに進むかに人々の注目が集まっている。

このプロジェクトのゲーム要素は、実際にはまだ存在しておらず、初期の資金はそれを構築するために使われている。Parallelは、NFTの売上に対して10%のロイヤリティを徴収し、その半分がゲーム内の賞金として保持され、残りは会社の収益となる。これはコアプラットフォームにとって将来的により大きな収益をもたらす可能性があるが、ゲームのエントリーポイントが数千ドル(数十万円)に膨れ上がると、この「ゲーム」としての性質はまったく違ったものになってしまう。希少性で投資家を惹きつけつつ、新規ユーザーにも優しい市場のバランスをとることは、NFTゲームプロジェクトが取り組まなければならない大きな課題となっている。

画像クレジット:Parallel

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

JPG画像に100億円?希少価値のある優良NFTプロジェクトを買い漁るMeta4 Capitalの狙い

2020年のNFT(非代替性トークン)狂乱は、アート、トレーディングカードゲーム、豪華アバター、デジタル・オブジェクトなどさまざまな分野に暗号資産がなだれ込むきっかけとなったが、今のところ、機関投資家はこうしたブロックチェーンベース商品を注意深く見守りながら、背後にいるプラットフォームに株式投資べく資産を準備しているようだ。

フロリダ州マイアミ拠点のMeta4 Capital(メタ4キャピタル)は、このトレンドに逆らい、集めた資金をプロジェクトそのものにつぎ込み、画素の粗いカエルやデジタルの馬や少々疲れたサルを買い占めている。これは多くの伝統的スタートアップが一蹴する大胆な判断だが、チームはすでに大きな後ろ盾を得ている。リードインベスターはベンチャーキャピタルおAndreessen Horowitz(a16z)だ。Meta4は最終的に、a16zが支える1億ドル(約114億円)のファンドをターゲットにしている。

共同ファンダーのBrandon Buchanan(ブランドン・ブキャナン)氏とNabyl Charania(ナビル・チャラニア)氏は、著名VCのファンドに支えられて、予測可能性がないことでよく知られている市場に新境地を開こうとしている。Meta4の関心事は、認められた優良NFTプロジェクトの希少品を買うことであり、数には注目していない。2021年同社は、100万ドル(約1億1000万円)のパイロットファンドを立ち上げ、その資金でNFTを31件だけ購入した。その中には1組のCryptoPunks(クリプトパンク)やCrypToadz(クリプトトーズ)の他、 Zed Run(ゼッド・ラン)の馬がいくつか入っている。彼らの投資は、ここ数カ月の市場回復を受けて、すでに価値総額が500~600%になっていると言われている。

関連記事:イーサリアムの「最古のNFTプロジェクト」CryptoPunksをめぐる驚くべき熱狂

2021年4月にBeeple(ピープル)のコラージュが6900万ドル(約78億6000万円)で売れた後、NFTが初めて多くの投資家の目に止まって以来、驚くばかりの資金がこのスペースに流入している。8月にはNFTプラットフォームのOpenSea(オープンシー)が取引高34億ドル(約3873億3000万円)の新記録を打ち立てた。劇的な投資急増のきっかけの1つとなったのが、ビジネスインフルエンサーのGary Vaynerchuk(ゲイリー・ベイナーチャック)氏が、稀少なCryptPunkサルを376万ドル(約4億3000万円)で買ったことだった。高額取引の勢いは続いた。今週、レアなBored Ape(ボアード・エイプ、退屈なサル)が270万ドル(実際には696.969ETH、約3億1000万円)で売れた。

「私は投資家に対し、『ツナミ』はまだきもいないと言っています。これは必要な代物、今すぐ必要な代物。エイリアンもサルも必要なのです」とブキャナン氏はTechCrunchのインタビューで語った。

NFTスペースに高まる興奮がある分、規制の明瞭性を欠いている。既存ルールの遵守も欠けている。規制当局はCoinbase(コインベース)などの主要取引所に焦点を宛てているようだが、暗号資産投資の世界に関わる前に証券弁護士だったブキャナン氏によると、人気のNFTプロジェクトは闇の領域に陥りつつあるという。多くのNFTプロジェクトが投資家資産のリターンに複雑なメカニズムを開発しており、ブキャナン氏が特に強調したのは、NFTオーナーに独自のトークンを与えるプロジェクトがいくつかあることで、そのふるまいは証券に酷似していると彼はいう。

「私たちがまだ買っていない商品があるのには理由があるのです」。

新しいプロジェクトが毎日出現し、資産の爆発はいくつもの急上昇ユニコーンNFTスタートアップを生み出した。その多くがMeta4を支えるa16zが支援しているもので、OpenSeaやトレーディングカードゲーム、NBA Top ShotのメーカーであるDapper Labs、Axie Infinityを作ったSky Mavisなどがいる。2021年の夏、a16zは22億ドル(約2506億5000万円)の暗号資産に特化したファンドを立ち上げた。Meta4によると、このファンドはアートやコレクションアイテムに焦点を絞り、NFTスタートアップへの株式投資は見合わすようだ。

「(a16zは)そちらはカバー済なのだと私は思っています」とブキャナン氏はいう。

画像クレジット:Meta4 Capital

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

Facebook(フェイスブック)が「Novi(ノヴィ)」と名づけた暗号資産ウォレットの小規模な試験運用を開始した。現時点では、米国とグアテマラの限られた人々のみが、Noviにサインアップして、使い始めることができる。

Facebookは、Diem(ディエム)協会の創設メンバーだ。しかし今のところ、Noviでは同協会のブロックチェーン(Diemネットワーク)上にある同協会のステーブルコイン(Diem)を活用するのではなく、代わりにFacebookはPaxos(パクソス)やCoinbase(コインベース)と提携。これによってユーザーは、Paxosの米ドルステーブルコイン「USDP」を送ったり受け取ったりでき、これらの暗号資産はCoinbaseが管理(カストディ)することになる。しかし、これはあくまでも中間段階であり、Facebookはいずれ、USDPをDiemに置き換えることを計画しているという。

Facebookは当初、暗号資産プロジェクトに対して大きな計画を立てていた。同社は「Libra Association(リブラ協会)」と呼ばれる暗号資産の運営コンソーシアムを設立し、これに参加する企業とと協力して、不換紙幣や国債のバスケットに連動するまったく新しいデジタル通貨「Libra(リブラ)」を発行する計画だった。本来であればLibraは、単一の現実世界の通貨ではなく、複数の通貨を混ぜ合わせたものがベースになるはずだった。

しかし、Facebookは多くの中央銀行から強い反対を受けることになった。彼らは、Libraが一部の国で準主権的な通貨になることを恐れたのだ。協会は2020年、その野心を抑えて、単一通貨のステーブルコインに注力することを発表した。

ステーブルコインとは、時間の経過によって変動することがない固定の価値を持つ暗号資産のことだ。例えば、Libra Associationが「LibraUSD」を発行するならば、1LibraUSDは常に1米ドルと同じ価値を持つことになる。

数カ月後、Libra Associationは再びいくつかの変更を発表、LibraはDiemに名称が変わり、協会名も「Diem Association(ディエム協会)」になった。同様に、Facebookのウォレットプロジェクトも
「Calibra(カリブラ)」からNoviにブランドが変更された。しかし、DiemもNoviも、まだ準備は整っていなかった。

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そして今、FacebookはNoviの試験を実際の一部ユーザーを使って始めようとしている。同社はまず、米国とグアテマラ間の送金に焦点を合わせることにした。送金したいNoviユーザーは、Noviアプリをダウンロードしてアカウントを作成し、デビットカードなどの支払い方法を使ってNoviに入金する。

入金された米ドルは、手数料なしでUSDPに変換される。Paxosが発行するUSDPは米ドルステーブルコインで、以前はパックスダラー(PAX)と呼ばれていたが、Paxosは最近、USDPにブランド名を変更した。

USDPはその価値を確保するために、現金および現金同等物によって担保されている。Noviユーザーの資金は、Coinbase Custody(コインベース・カストディ)によって管理される。つまり、CoinbaseがNoviのユーザーのためにUSDPの資金を保管するということだ。

Noviユーザーは、他のNoviユーザーにUSDPを送ることができる。繰り返しになるが、送金にかかる手数料は必要ない。しかし、お店での支払いや家賃の支払いにNoviを使うことはできない。そのためにユーザーは、現金の必要な場所では、Noviの残高を引き出したり、銀行口座に残高を送金したりできる。

しかし、NoviはUSDPをグアテマラ・ケツァルに変換する際に手数料がかかるかどうかについては言及していない。米ドルステーブルコインのUSDPをグアテマラの通貨単位に両替するには、為替レートを選択しなければならず、それにはスプレッド、流動性、その他のさまざまな変数が関わってくるからだ。

また、Noviは展開したいと考えるすべての市場で、フィアット / クリプトのオンランプおよびオフランプ(法定通貨と暗号資産の交換サービスを提供する場)を設けなければならない。

Facebookによれば、これはNoviの始まりに過ぎないという。それは第一に、まずはグアテマラと米国(アラスカ、ネバダ、ニューヨーク、米領ヴァージン諸島を除く)の一部のユーザーにのみ試験的に提供されるということ。そして第二に、FacebookとDiem Associationは、いずれ独自の暗号資産を立ち上げる計画を諦めていないということだ。

「我々のDiemに対するサポートに変更はなく、Diemが規制当局の承認を得て発行できるようになれば、NoviにDiemを導入して運用を開始するつもりであることを明確にしておきたい。私たちは相互運用性を重視しており、きちんと行いたいと考えています」と、NoviプロジェクトのリーダーであるDavid Marcus(デヴィッド・マーカス)氏はTwitterで述べている。

Facebookが暗号資産Libraの発行計画を発表したのは、2019年6月のこと。それ以降、暗号資産のエコシステムは大きく変化した。特に、いくつかのステーブルコインが信じられないほどの人気を博しており、Tether(テザー)とUSD Coin(USDコイン)の流通量は現在、合わせて1000億ドル(約11兆5000億円)を超えている。そんな中で、Diemが既存のステーブルコインに追いつき、新たなユースケースを開拓できるかどうか、興味深いことになりそうだ。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)