受託から再びスタートアップ、「新設分割」でSprocketが分離独立して資金調達した理由

photo02「2000年創業で15年ほど走ってきました。2013年で年商10億円程度と、それなりにビジネスは安定してましたが、受託ビジネスはスケールしない。このまま行くのか? ホントは自分は何がやりたかったんだっけ? そういうことで悩んでいたとき、投資家から会社を3社に分けてはどうだとアイデアをもらったんです」

こう語るのは2014年4月に法人登記し、最近新たに1.2億円の資金調達をしたSprocketの創業者で代表取締役の深田浩嗣氏だ。Sprocketは、深田氏が2000年に創業した「ゆめみ」から分離独立した「スタートアップ企業」だ。

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スタートアップにとって受託は麻薬

スタートアップ企業にとって受託ビジネスは麻薬に似ている。創業チームがエンジニアリングに強いと、つい受託案件に手を出してしまう。大きなビジネスを立ち上げようという志で創業したものの、プロダクトの収益化の道筋が見つからないとか、資金が底を尽きそうとか、さまざまな理由で受託案件を取ってしまう。もともとエンジニアリングに自信があるチームであれば、いつでも自分たちの食い扶持を確保する売上ぐらいは作れたりする。

「麻薬」などと不穏な例えはしたが、受託開発ビジネス自体に悪いことは何もない。上手く回せば顧客は喜ぶし、収益もあがる。ところが、受託案件を回し始めると一定のリソースが費やされることになって、肝心の自社プロダクトがなおざりになる。しかも、受託ビジネスの収益がPL上インパクトを持ち始めると簡単にはヤメラレナイ体質になりがちだ。こうした理由から、成功しているスタートアップ企業の創業者が「受託は麻薬。絶対手を出してはダメ」というのを聞くことは少なくない。

10年以上に渡って受託ビジネスをしてきて、「新設分割」という耳慣れないスキームを使ってスタートアップ企業として再スタートを切ったSprocketの深田氏。その歩みは、多くの起業家やスタートアップにとって参考になる話だと思うので、少し長くなるが、まとめてみたい。

iモードブームで受託ビジネスは順調に

ゆめみは「モバイルをやろう」という方向性だけを定めて2000年に創業した。ちょうど1999年2月にiモードが登場したころで、すぐにケータイブームの波に乗った。「最初は自己資金で、ほとんど受託をやっていた」といい、企業の公式サイトを受託で作った。「作った瞬間に、ユーザーが一気に大量にくるような感じ。月額300円の有料サービスでも、すぐに数十万単位でユーザーが集まった」。まだケータイが小さなモノクロ画面で、着メロも単音という時代だ。同時期にケータイブームの波に乗ったIT企業にインデックスやサイバードなどがある。占いコンテンツや着メロなどがビジネスになっていた。

photo01ゆめみが知られるようになったのは、ケータイ向けショッピングサイト「ガールズ・ショッピング」を他社と協業で立ち上げた2001年から2005年のこと。「すぐに月商2、3億円になった。グローバルで見るとモバイルECの先進事例だった」(深田氏)という。ただ、レベニューシェアに絡んだ金銭問題で2005年に協業会社との関係が悪化。ゆめみは開発を受け持っていたが、「ECなので先方に売上が入る。システム開発のスピードが遅いというので、いきなり支払いが止まった。先方は金をもらいたかったら軍門に降れという感じだった。うちもキャッシュリッチでもなかったし、何カ月か入金が止まると苦しい。この人達のものを作るために会社を始めたわけじゃない」ということで、裁判にこそならなかったものの、合意の上で決裂するという結果になった。

事業会社やVCから資本を入れて、2005年にまた受託に業態を転換した。営業はおらず、社長の深田氏自らが案件を獲得していたが、「ニッチだったのもあって営業で案件を取るのに困ったということはなかった」という。当時の様子を深田氏はこんな風に振り返る。

「2004年、2005年にVCにお金を入れてもらった。エンジニアが多い会社なので、そこは評価を受けていたと思う。ただ、「こいつは助けてやらないと」という意識があったのではないかと思う。投資だから、もちろんビジネス的な判断もあったのだとは思うが、個人的にはVCに助けてもらったという風に感じている」

「まだ20代でワケが分からない状況だったこともある。40人の社員がいたが、いろいろとプロジェクトをやっている中で大型プロジェクトがあって、それが終わると、いきなり社員のうち半分の仕事がなくなるようなことが起こった」。

Badgeville、ゲーミフィケーションとの出会い

2007年ごろから風向きが変わった。スマホの波がやってきて、大手ファーストフードチェーン向けに「かざすクーポン」など先進的なシステム開発に携わることになる。いまでいうオムニチャネル・マーケティングの走りで、ビックカメラやトイザらスといった大手から受注し、事業基盤が安定してきた。

2010年頃、ゆめみに投資していたインキュベイトファンドの赤浦徹氏に「ゲームをやってみたら」とアドバイスを受けた。グリーやKLabが伸びていたし、mixiやMobageといったプラットフォームがあったので自明の選択ではあった。一方で、深田氏自身はゲーマーではなく、「なんでみんなゲームやるのかな」と疑問に思って敬遠していたタイプだそうだ。

結局、ゆめみでは3、4本のタイトルを出しはしたものの、企画・運用の両面でメンバーのスキルセットの不一致や市場参入のタイミングとして最後発だったことなどから、ゲーム事業は上手く行かずに撤退した。ただ、ゲームをやってみたことで見えてきたものがあるという。

photo03「自分でもゲームをやり始めたら、そのうち1つにハマった体験があるんです。カヤックが出した野球のゲーム。トータルのメカニズムがあって、良くできている。達成感や上達感、そのサイクルが良くできていて、なるほど、こういうことか、ゲームって良くできてるなと、その仕組に関心をもったんです。例えば、ただ煽るだけだとユーザーはお金を使いません。でもゲームをやり続けていくうち、例えば通勤の行き帰りに、このキャラを育てるのに1週間かかる。それを100円買えるなら、それは安いとなる。あ、なるほど、こうやってハマるんかと」。

「要するに心理学だなと直感的に理解できた。これはゲームじゃなくてもいいんじゃないのかって思った」

2010年というのは、ちょうどゲーミフィケーションという言葉が出てきたころでもある。深田氏は2011年にサンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptに行き、Badgevilleというスタートアップを知ったそうだ。Badgevilleは2010年創業の企業向けゲーミフィケーションプラットフォームを提供する企業だ。創業者のところに話をしに行き、2012年には「Sprocket」というサービス名でOEMとして国内事業を開始。

ただ、「Badgevilleは作りが荒かった」という。「規模が大きいと耐えられない。それで自分たちで作り始めたのが1年半前。2013年終わりぐらいです」。

これなら自分たちのほうがイケてるのでは?

2013年の夏ぐらいから深田氏は悩み始める。「本当の意味での事業ポテンシャルを追いかけるのに、これがベストな座組だろうかと。チャンスは大きいと思っていました」。Badgevilleは2010年創業だが、2012年までに5回のラウンドで合計4000万ドルほどの資金を調達していたり、Oracleからバイスプレジデント級の人材を引っ張ってきたりしていた。そういうアメリカのスタートアップ企業のダイナミックな成長をOEMパートナーとして目の当たりにして、「プロダクトの成長の仕方とか、サービスの品質を見ていて、なるほど、こんな感じと肌感覚で分かった」と深田氏は言う。「開発速度だったり、機能の強化だったり、ビジョナリーがどうディスカッションして、どうやってビジョンを形にしていくかといったことですね。最初は40億円ぐらいお金を集めてるし、開発スピードも速いし、これはかなわないなと思っていました。でも成果の出し方とか、もっとやり方があるのになとも思った。われわれがやってるほうがイケてるんじゃないのって」

Badgevilleは様々な要素を含むゲーミフィケーションのプラットフォームだが、実際に企業で導入して効果を出し、売上を立てるためには、啓蒙もしないといけないプロダクトだ。アメリカでは、ここをパートナー戦略でやることが多い。BadgevilleもAccentureやOracleと一緒にやろうとしていた。「ひと工夫すれば成果がでるタイプのプロダクト。これは日本的じゃないかと思ったんです。彼らにできないやり方で勝負できると思った」。

Badgevilleはその後、シリーズCの調達をしたところで、創業CEOが数億円のエグジットで辞めてしまい、また別のスタートアップ企業を始めた。ビジョンを語る人間がいなくなったことで、深田氏はBadgevilleが成長するわけがないと読んだ。そういうときに、じゃあ自分はどう成長の機会をとらえるんだ、と考えたのが現在のSprocketに繋がっている。

Sprocketはゲーミフィケーションを取り入れたオムニチャネルマーケティングツールで、今まで深田氏が日本の大企業を相手に提供してきたノウハウを実装した「エンジン」となる製品だ。「Sprocketは3、4割の完成度。人間がカバーしないといけない部分があって、スケーラブルじゃない。これを8割、9割と自動化していく」のが目標だという。受託ビジネスとは開発のアプローチも異なってくる。「受託をやってる中では、各プロジェクトで共通する要件ってなんだろうか、どうまとめるかっていうのは、あまり考えない」からだ。せいぜいノウハウのある人材がスタート時に全体像を描くのが早くなるとか、コードの流用が少しあるとか、そういう程度だったという。新しくSprocketを作るに当っては、改めて要件の洗い出し、壮大なマインドマップを描いたそうだ。何を入れて何を入れないのか、整理してみると受託とは全然違うものになったという。

3つに分割したうち新設2社の評価額は元の1社を上回る

Sprocketは「人的分割型新設分割」と呼ばれる方法で、ゆめみから分離独立した。実はネイル写真共有アプリの「ネイルブック」を提供するスタートアップ企業のスピカも、ゆめみからスピンアウトしていて、外部から2014年4月に5000万円の資金を調達し(その後、追加で1億円を調達)ている。だから、ゆめみは3社に分裂した形になる。「人的」とある通り、3グループに社員を分けた形だ。面白いのは、3つの会社の資本構成は全く同じで、既存投資家に影響はないこと。一方で、分離したSprocket単体で1.2億円の資金を調達できたのは成長性に対する評価が高かったからだ。もし分割せず、ゆめみのまま資金調達をしようと思っても「受託の会社として評価されるので、時価総額が付かない。ゆめみ単体だと10億円も行かなかったと思う」という。スピカとSprocketの新設2社の評価合計額だけで、すでに元のゆめみより大きくなっている。スモールビジネスと、スタートアップという2つの異なる成長モデルの違いがより評価額の違いに出ているわけだ。

ちなみに深田氏は「第二創業の覚悟にプレミアムが乗っているのかもしれません」としつつ、ぬるま湯でやるわけじゃないとコミットメントを示す意味でも、今回の資金調達では個人で資金を入れたそうだ。

深田氏は現在38歳。新たなスタートとはいっても、ゆめみ時代からB2C領域で実績とコネクションがあり、書籍の出版経験もある。Sprocketは創業1年にして社員12人、クライアント数20社、年商1億円も見えているという。「大手のクライアントが多いので、与信で落とされるまくるかと思ったら、意外にそうでもなかった」と順調なスタートのようだ。

マーケティング・オートメーションという大きな市場でみれば、マルケトEloquaHubSpotなど、グローバルで見れば競合や類似サービスがひしめしている。日本市場だとFlipdeskKARTEといった新しいところが出てきているところ。深田氏の分析だと、この市場ではこれまで、日本国内では日立やIBMといったSIerが競合となることもあったが、過去にITシステムといえばCIO予算だったものが、今はマーケティング部門にシフトしていることから追い風が吹いているそう。狙っているのは、マーケティングオートメーション市場の中でも中規模から大規模で、単一ツールではなく多種サービスを提供する統合型の市場。具体的には、カスターマージャーニー設計、リピートプログラムの設計・導入、ユーザー行動促進施策の設計・導入、データ分析による検証・最適化といった領域で、アナログ時代に当然だった「おもてなし」をデジタルで提供していくのだという。

「おもてなし、というと言葉として陳腐なニュアンスも出てしまうが、ぼくが京都生まれ京都育ちということもあって、本来の意味でのおもてなしとは何かということは深く考えているつもりがあります。「奉仕」的な意味ではなくて、むしろ主客間の切磋琢磨におもてなしの本質があるのですが、デジタル時代においてはこれがむしろ企業と消費者の関係のスタンダードになっていくだろうと。そして企業が消費者の自己実現を支えるような存在になっていくと考えています。個人的にも、値段勝負、クーポン勝負で決まっていくような社会にはぜんぜん魅力を感じませんし、もっと多様で豊かな勝負の仕方があっていいよな、と思っています。Sprocketは最終的には導入企業を通じてこういう世界観を実現するためのプラットフォームに育てていくつもりです」(深田氏)

以下にSprocketが提供するサービスのパーツ一覧とも言えるチャートを添付しておく。ここに企業での導入事例がある。

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解析ツールのユーザーローカル、YJキャピタルとEast Venturesから約2億6000万円の資金調達

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ヒートマップに対応したアクセス解析ツール「User Insight」やソーシャルメディア解析ツール「Social Insight」などを提供するユーザーローカルが5月25日、YJキャピタル、East Ventures引受先として約2億6000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。同社は今回調達した資金をもとに、ビッグデータ分析事業強化進める。

ユーザーローカルは2007年の設立。代表取締役を務める伊藤将雄氏は、もともと楽天のエンジニア・プロデューサーで、「みんなの就職活動日記」を事業化、法人化した人物。その後早稲田大学大学院にウェブ上の行動解析を研究し、その成果をベースにした製品を提供すべく、ユーザーローカルを設立した。これまで国内外25万サイト以上への無料解析ツールを提供しているほか、国内700社以上へ商用アクセス解析ツールを導入。月間70億PV以上のデータを分析しているという。

同社によると、顧客増による分析対象となるデータ量増大、スマートフォン・マルチデバイス領域やO2O分野での分析ニーズの高まりを受けて資金調達を実施したという。今後は大規模なインフラ投資のほか、業種に特化の解析サービスも提供していくという。すでに4月から、メディア業界に特化した「Media Insight」なども提供している。

LINE元社長・森川氏の動画メディアC CHANNEL、「黒字化はやろうと思えばすぐに」

「黒字化はやろうと思えばすぐになります。(再投資して事業を成長させるので)すぐにするつもりはありませんが」——LINE代表取締役社長の座を離れ、4月に自らスタートアップの起業家として動画プラットフォーム「C CHANNEL」を立ち上げた森川亮氏。完成間もないオフィスで、こう語ってくれた。

森川氏の新会社C Channelは5月21日、東京・原宿にオープンしたばかりのオフィス兼スタジオで戦略発表会を開催した。冒頭のコメントは、その発表会の後の懇親会でのものだ。

女性向けメディアとの提携、同時にコンテンツも強化

まずは戦略発表会の内容から。森川氏が語ったところによると、サービス立ち上げから1カ月が経過したC CHANNELは100万ページビュー、コンテンツ(動画)数は800件、全視聴時間の合計は4300万時間。ユニークユーザー数は非公開だが、「数十万人」(森川氏)とのこと。

森川氏に100万ページビューという数字をどう評価しているのか尋ねたところ、「世の中的には決して高い数字ではない」とした上で、「動画コンテンツはこの短期間で800も集まったし、これからもっと増えると思う」と説明した。

すでに各所からC CHANNELの動画を配信して欲しいという相談があるそうで、「いろんなメディアに出ることでトータルでのブランドが作れる。縦長のモニタはすべてC CHANNELのコンテンツになっていく。将来的には(プラットフォームではなく)、ブランドを作っていきたい」とのことだった。

森川氏の言葉通り、C Channelでは積極的な提携を進めている。5月20日にはロケットベンチャーの手がける女性向けキュレーションメディア「4meee!」とのコンテンツ提携を発表。今回の発表会でも、Tokyo Girls Collectionを手がけるF1メディアとの提携が発表された。これにとどまらず、今後も広く外部との提携を進めていく予定だという。

コンテンツも引き続き強化していく。発表会では、モデル・タレントの三戸なつめさんや、カナダ生まれのモデルのテイラーさん(ようかい体操第一のYouTubeへの投稿は89万回再生だそうだ)がC CHANNELの動画投稿者である「クリッパー」として参加することが発表された。

さらにネイリストや皮膚科医師など、専門家によるワンポイントレッスン動画の配信も開始する。クリッパーとして参加を希望する女の子も増えているそうだが、現在はその枠を100人に限定して、まずは品質の担保に努めるということだった。

会場となったC Channelのオフィス

会場となったC Channelのオフィス

縦長動画とデジタルサイネージの親和性

質疑応答の場で広告のニーズについて聞いたのだが、今まで動画プラットフォームと比較して、投稿を限定してクオリティコントロールができていること、C Channelが社内で撮影から編集、配信までを実現する体制があること、そしてLINE元代表によるスタートアップという自身の話題性があることなどから、「期待され、応援されている」(森川氏)状況なのだという。具体的な社名は挙がらなかったが、すでに複数社の広告配信が決定しているそうだ。

森川氏が主張するのはデジタルサイネージとの親和性。C CHANNELでは、スマートフォンでの閲覧を想定して、縦横費で横長の動画ではなく、縦長の動画を制作している。これが駅や複合ビルの柱などに設置されるデジタルサイネージにぴったりだそうで、そのニーズは「想定以上」なんだとか。その理由は、柱のように縦長な場所に設置するサイネージは、もちろん画面も縦長だからだ。テレビでもウェブでも、基本横長の動画が求められているため、そのままサイネージで流すのは難しいのだ。

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C Channelでは以前からECなんかも展開する予定だとしているが、冒頭に紹介した森川氏のコメントは、コンテンツの多面展開、そして動画広告ですでに収益化が見えているということだろうか。

発表会の最後に森川氏はこう語った。「つい最近までは渋谷のヒカリエで仕事をしていたが、若い人のメディアを作りには文化を知らなければいけないと慣れない原宿に来た。ビルの上から見下ろすのではなく、地上で時代の流れ、最先端のはやりを勉強するためにここに来た。小さいスペースではあるが、ここから情報を発信していく」

老舗黒板メーカーとカヤックが生み出した新しい黒板「Kocri」はiPhoneとApple TVを利用

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政府が発表している「 世界最先端IT国家創造宣言工程表(2014年6月改定)」によると、教育環境のIT化に向け、2019年をめどに電子黒板の導入が進められているのだとか。

2014年6月に日本教育情報化振興会(JAPET)が発表した調査結果によると、電子黒板が学校に1台以上あるというのは全体の75.3%。それなりの普及率にも見えるが、全教室に設置しているというのはわずか4.6%(全教室に設置、全教室と特別学級への設置の合計)という数字。製品価格の高さが導入のボトルネックになっているという。

じゃあ手っ取り早く電子黒板の良さを取り入れるにはどうすればいいのか? 愛媛県にある1919年設立の老舗黒板メーカーであるサカワが出した回答は、既存の黒板と既存のガジェットを組み合わせるというものだった。同社は5月20日、カヤックとともに新しい黒板システム「Kocri」を発表した。

Kocriは画像ファイルや動画ファイルなどの教材を用意し、iPhoneに転送。その内容をApple TVにミラーリングし、さらにプロジェクターを通じて黒板に投影するという仕組みだ。まずは以下の動画をご覧頂きたい。

 

実際の授業では、アプリを通じて黒板に図形や五線譜などを投影。投影された図形に、チョークでの板書を継ぎ足すようなかたちで使っていく。投影には専用のアプリを利用。料金は5000円を想定するが、5月22日までに申し込めば無料になる。なお実際の提供は7月頃を予定している。

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サカワでは、カヤックとともに「みらいのこくばん」プロジェクトというものを進めてきた。その様子はTechCrunchの姉妹サイトであるEngadgetなんかでも紹介されている。Kocriはこのプロジェクトで得られた知見も数多くフィードバックされているそうだ。

現在Kocriのサイトでは前述のアプリの無料提供キャンペーンに加えて、機材一式の無料貸し出しも実施している。こちらの貸し出しも7月からスタートする予定だ。

エイベックスとサイバーの定額制音楽配信サービス「AWA」は5月27日よりスタート

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米国ではSpotifyがプレスイベントを開催して、ビデオ配信サービスランナーのペースに合わせて楽曲を選択する機能などを発表している。数日前にはスターバックスとの提携によって、店舗内に流れる楽曲の選択が可能に…なんて話もあった。

ではSpotifyは日本でどんな状況なんだろうか? 日本法人の設立はもう数年前のことで、日本で音楽配信サービスの立ち上げに関わったキーマンらが参画しているなんて話は聞くものの、「間もなくサービス開始」というステータスから変化はないようだ。

ソニーではサブスクリプション(定額制)モデルの音楽配信サービス「Music Unlimited」を3月に終了し、Spotifyと提携した「PlayStation Music」を開始しているが、それも海外だけの話。日本では光景サービスは利用できず、ただ「Music Unlimitedが終了した」というだけの状態。

現在国内で展開するサブスクリプション型の音楽配信サービスと言えば、アジアを中心に1000万超のユーザー数を誇るKDDI傘下の「KKBOX」やJ-POPに強い「レコチョクBEST」など。またちょっと毛色が違うかも知れないが、USENも2013年末から「スマホでUSEN」を開始している。LINEも2014年末にエイベックス・デジタル、ソニー・ミュージックエンタテインメントとともにLINE MUSICを設立。サービス開始に向けて準備を進めている状況だ。

そんな中、以前からサービスの提供を発表していたエイベックスとサイバーエージェントによる音楽配信サービス「AWA」が、5月27日からスタートするという発表があった。

サービスを提供するAWAは、2014年12月の設立。エイベックス・グループ・ホールディングスの100%子会社であるエイベックス・デジタルとサイバーエージェントが共同出資している。アプリケーションの開発や運営をサイバーエージェントが、配信楽曲調達の手配をエイベックス・グループがそれぞれ担当している。

AWAに楽曲を提供するのはKADOKAWAやソニー・ミュージックエンタテインメント、ユニバーサルミュージックをはじめとする17主要レーベル。2015年末までに約500万曲、2016年末までに1000万曲の提供を見込む。また、6000以上のオリジナル「プレイリスト」を用意。ユーザーは自らプレイリストを作成したり、人気DJや音楽プロデューサーなどのプレイリストを利用したりできる。

サービスはプレイリストの視聴などができるLite Plan(月額360円を予定)と、Lite Planの内容に加えてプレイリストの作成・公開などに対応するPremium Plan(月額1080円を予定)の2つのプランを用意。サービス利用開始から90日間は、お試し期間として無料での利用が可能となっている。

グロースハック向けツールを提供するシロク、今度は解析サービス「Growth Analytics」を提供

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プッシュ通知・解析サービスの「Growth Push」、行動記録・分析サービスの「Growth Replay」、メッセージ配信・分析サービス の「Growth Message」と、スマートフォンアプリのグロースハック向けのツールを立て続けにリリースしてきたシロク。今度はそれらのツールとも連携するアプリの解析サービス「Growth Analytics」の提供を開始する。

Growth Analyticsでは、スマートフォンアプリの運用に必要なデータの取得・解析や、改善施策の効果検証を行うことができる解析サービスだ。Google Analyticsなど各種解析サービスで取得したデータを取り込むことも可能だそう。

シロク代表取締役の飯塚勇太氏は、「データを貯める点ではなく、データを活用する点に主眼を置いているサービス。多くの企業は分析サービスでデータを取得しているが、そのデータを本当に活用できているということは少ない。別サービスで取得しているデータも取り込んで、より詳細な分析やサービス運営に活用することができる」と説明する。

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シロクではこれまでサイバーエージェントグループのアプリにてサービスの試験運用を続けており、そこで得た知見をノウハウを蓄積してきたそう。例えばサイバーエージェントでは、カレンダー形式でサービスの運用スケジュールから数値目標の管理までを行う「運用カレンダー」というものがあるそうなのだが、これも機能の1つとして取り込んでいる。

シロクがこれまで提供してきたグロースハック系サービスとSDKを共通化しているそうで、アプリに1つのSDKを導入すれば、Growth Pushをはじめとした同社の各種グロースハック系サービスが利用できる。料金はサービスの規模によるが、月額70万〜120万円程度になる。これに初期費用30万円がかかる。

シロクではGrowth Analyticsの提供とあわせて、データサイエンティストが改善施策を提案する「クラウドデータサイエンティストサービス」もあわせて展開していくとしている。

生活密着型クラウドソーシングのエニタイムズが高野真氏、グリー、DeNAなどから2.3億円の資金調達—リアルでのマーケティングなど強化

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生活密着型のクラウドソーシングサービス「Any+Times(エニタイムズ)」を運営するエニタイムズ は5月21日、元ピムコジャパンリミテッド取締役社長でアトミックスメテディア代表取締役CEOおよびフォーブス ジャパン編集長の高野真氏、グリー、ディー・エヌ・エー(既存投資家)、その他個人投資家を引受先とする、総額2億3000万円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回調達した資金をもとにシステムの強化を進めるほか、マーケティングや人材の採用・育成を進める。

また、今回の調達とあわせて、高野真氏のほか、既存投資家であるインキュベイトファンドの和田圭祐氏が社外取締役に就任する。さらに、3月から同社のエバンジェリストとして活躍しているジャーナリストの佐々木俊尚氏がメディア顧問に就任する。

Any+Timesは、日常の家事や旅行の間のペットの世話、家具の組み立て、語学レッスンなど、生活に密着した「手伝って欲しいこと」「得意なこと」を提供しあえるクラウドソーシングサービス。同社はこれまで「生活密着型クラウドソーシングサービス」「生活密着型シェアリングエコノミーサービス」銘打ってサービスを展開してきたが、今回の発表にあわせて、Any+Timesを「サービス ECのマーケットプレイス」と再定義したそうだ。最近はスタートアップによる家事代行サービスなども増えているが、クラウドソーシングを使うことで、そういったものよりも柔軟な仕事の依頼ができるというわけだ。

ユーザー数は非公開とのことだったが、スマートフォンアプリのダウンロード数はiOS、Android合わせて13万2000件。現在は東京・多摩地区で慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科などと協力した地域人材活性化のための取り組みも進めるなど、リアルでのマーケティング活動も強化している。

犬の飼い主と預かり先をマッチングするペット版Airbnb、CAV出資先のDogHuggyがサービス開始

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国内では法律上はグレーゾーンだと指摘されるAirbnbだが、検索してみると、すでに国内でも数多くの代行業者がいることは分かる。日本のホスト数は8000件以上だと聞くし、僕の周囲ではサービスを利用した、よく使っているなんて話を聞くことも増えた。

そんなAirbnbやUberなどが代表格に挙げられるシェアリングエコノミー関連の新しいサービスにチャレンジしているのが、ペット版Airbnbとも言える「DogHuggy」だ。同社は5月20日にサービスを正式公開した。

ペットの飼い主とホストをマッチング

DogHuggyは、旅行や外出などでペット(主に犬)を預けたい飼い主と、現在、もしくはこれまでに犬を飼うなどして飼育経験のあるホストをマッチングするサービスだ。

サービスを利用するにはまず、飼い主が住んでいる地域の近所にいるホストを検索。条件等を確認して予約。あとは当日ペットを預けに行けばいい。決済もサイト上で行う。

料金はホストが設定できるが、想定単価は1泊あたり5000〜6000円程度。その30%をDogHuggyが手数料として徴収する。ホストは収益をNPO寄付することもできる。

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2014年末から試験的にサービスを開始。現在のホストは首都圏を中心とした数十人。獣医やペット飼育経験者、さらにはペット関連の有資格者を中心に、面接などを行った上でホストとして認定しているという。ホストは1日数回ペットの写真を飼い主に送ることになっているため、状況の把握もできるという。また将来的には預けている最中のトラブルに対応するよう、保険の適用も検討中だそうだ。

ちなみにいわゆるペットシッターとしてホストが犬を預かるとなると、第一種動物取扱業の認可が必要になる。だが、DogHuggyでは動物取扱業の保管と貸出の免許を取得しており、まずDogHuggyが飼い主の犬を預かり(保管)、今度はDogHuggyがその犬をホストに預ける(貸出し)というかたちにすることで、法律上の課題をクリアしているという。

獣医を目指した高校生が起業

ペットの飼い主とペットシッターのマッチングサービスとしては、米国では「DogVacay」などが有名なのだそう。CrunchBaseにもあるが、同社は2014年11月に2500万ドルという大規模な資金調達を実施している(これまでの合計調達額は4700万ドル)。国内でも「inDog」など、サービスを準備しているスタートアップがあるようだ。矢野経済研究所の調査によると、国内のペット市場は2014年度で1兆4288億円。美容室や医療、保険、ホテルなどの各種サービスでは前年度比100.9%の7314億円となっている、大きな市場だ。

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏

DogHuggy代表取締役の長塚翔吾氏は現在18歳。日本でも数少ない獣医学部のある麻布大学附属高等学校をこの春に卒業したばかり。もともとは獣医を目指していたそうだが、高校で動物保護について学んでいる中で、自らができることを模索した先にあったのがこのサービスでの起業だったのだという。

飼い主が長期で外出する際に利用するペットホテル。しかし狭いケージは犬にストレスを与え、価格も決して安くない。そんな環境に対して罪悪感を感じると答える飼い主もいたそうだが、他にソリューションがないというのが現状だ。

代々木公園などで実際にペットを散歩させていた飼い主などにも数多くヒアリングしたが同様の意見が出たという。そこで考えたのが、すでに適切な環境で犬を飼っているホストに犬を預けるという仕組みだった。

「目の前の困っている犬1匹を救うことも大事。だが、目先のことだけを考えるのではなく、飼い主にもっと動物保護とはどういうことか知ってもらって、人とペットの真の共存を実現していきたい」(長塚氏)

CAVからシードマネーを調達

DogHuggyは3月にサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)のシード投資枠「Seed Generator Fund」からシードマネーを調達している。金額や出資比率は非公開。ただしシードの投資枠は3億円で、基本的には1社1000万円を上限にしているという話だから、数百万円というところだろう。

ちなみに、高校生だった長塚氏は、検索エンジン経由でCAVのシード投資について知り、その門戸を叩いたのだそうだ。そして親を説得した上、高校生だった2月に起業している。その後、東京大学獣医学科出身でサイバーエージェントの広告や開発を担当していた染谷洋平氏がCTOとして参画した(僕はこの染谷氏の経歴にも驚いたのだけれども)。

同社が目指すのは「動物後進国の日本を先進国にすること」。その第一歩となる目標は、DogHuggyのホスト500人までの拡大だという。

短期的な採算性ではなく長期的な協業に——中小企業バックオフィス支援のBizerと法律事務所のAZXが資本提携した理由

中小企業のバックオフィス業務をクラウドで支援するサービス「Bizer」。このサービスを提供するビズグラウンドが5月18日、AZX Bizer Support Fund なるベンチャー投資ファンドを割当先とする第三者割当増資を実施したと発表した。投資額等は非公開だが、数百万円程度だと聞いている。

このAZX Bizer Support Fund 、実は今回の出資に向けて組成されたファンド。AZX 総合法律事務所を筆頭に、士業によるスタートアップ支援を手がけるAZX Professionals Groupがパートナーとなっている。外部資本も入っておらず、その名の通りビズグラウンドへの投資だけを行うファンドだ。

両者は今回の投資を契機に業務提携も実施。Bizerのユーザーは、AZXの弁護士に初回30分無料相談ができるようになるほか、AZXの契約書作成サービス「契助」の割引利用が可能になる。今後については、ビズグラウンド代表取締役の畠山友一氏いわく、「今のBizerのサービス範囲だけにとどまらず、新たな事業領域での協業も検討していく」のだそう。

法律事務所がスタートアップ投資をする意味

Bizerのユーザーからすれば弁護士によるサポートが強化されるワケだし、AZXからすれば投資先の支援をすることで将来的なキャピタルゲインも期待できる。さらにはスタートアップのクライアント獲得にもつながる話だ。ただスタートアップの法務に強いとは言え、法律事務所が投資まで行うというのは日本ではあまり聞かない。

ちなみに、米国シリコンバレーに拠点を置く大手法律事務所のWilson Sonsini Goodrich & Rosati Professional Corporation(ウィルソン ソンシーニ)もクライアントであるスタートアップに積極的に投資してきていることで知られている。これはスタートアップへの支援の強化につながる一方、士業として客観性を欠くことになるということで賛否両論あるようだ。

「もともとはBizerをAZXのクライアント向けに利用できないかという点を検討したことが最初の契機。だが出資をすることで、短期的な収益面での採算性ではなく、長期的な視点で一緒に協業していくことができると考えた」—AZX Professionals Group CEOで弁護士の後藤勝也氏は語る。

実はAZXでは1月頃からスタートアップへの投資を検討していたのだそうで、これが初の案件となる。「以前からフィーベース(都度士業に料金を支払って相談などをするという形式)でサービスを受けるのはまだ厳しい状況なので、株式を持ってもらえないかというような相談もあった。今回の出資は、フィーベースのサービスを無料・低額にするという趣旨ではなく、連携してサービスを作るためのものだが、今後はこのような趣旨でも投資していきたい」「我々もビジネスとしてやっている以上、お金をもらっていないとできないこともあったが、投資先であれば組織としてきっちりと支援していける」(後藤氏)

具体的な投資目標などは聞けなかったが、「ベンチャーキャピタル等が想定する資本政策を乱さないよう了解を得つつ投資を進める」(後藤氏)とのこと。また投資先ごとにファンド(ただし、基本的には外部のLPを入れない)を組成する予定だという。

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Simon Cunningham

 

ソーシャル時代のオリコン目指す—ランキング型ニュースアプリ「Wanpick」

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アイスタイル、エキサイト、インキュベイトファンドが出資する、スマートデバイス向け動画広告の新会社「OPEN8(オープンエイト)」。4月に会社の設立と女性ユーザー特化のスマートフォン動画広告ネットワーク「VIDEO TAP」を発表していた同社が、ニュースアプリ「Wanpick(ウォンピック)」の提供を開始した。

アプリ自体は1週間ほど前のiMEDIA SUMMITで発表されていたし、僕も以前にベータ版を利用させてもらっていたのだけれども、本日よりApp Storeでの公開がスタートした。

ソーシャル時代のオリコンを目指す

Wanpickは、FacebookやTwitter上といったソーシャルメディア上で話題になっているニュースをキュレーションして表示してくれるアプリだ。ロジックの違いなどはあるが、ざっくりとはSmartNewsやGunosyのようなイメージでいいだろう。

画面上方にはニュースカテゴリのアイコンが横並びに表示されるが、1番のウリは1時間ごとに1位から10位まで10件のニュースを表示する「ソーシャルニュースランキング」。画面を下にスクロールしていくことで、タイムラインをさかのぼりながら話題をチェックすることができる。OPEN8代表取締役の高松雄康氏はこのランキングを中心とした構成で「ソーシャル時代のオリコンを目指している」と語っている。その他のタブは朝夕30件のニュースを表示する。

画面右側には、特許出願中だというインターフェースの「ストレッチピッカー」が表示される。コロプラが採用する「ぷにコン」をちょっと思い出したのだけれども、ストレッチピッカーは画面上のボタンを上下に引っ張ることで、その引っ張り具合に合わせたスピードでスムーズな画面遷移を実現している。これは動画を見てもらったほうが早いだろう。ちなみに開発はシンガポールやベトナムで行っているそうだ。

動画広告の事業者がニュースアプリを提供する理由

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先日動画広告のネットワークを発表したばかりの同社がなぜニュースアプリを提供するのか。そしてダウンロード数やMAUで数百万という数字のニュースアプリが複数ある中で、最後発としてチャレンジしてうまくいくのだろうか。高松氏はその理由について、「アイスタイルというメディア運営からスタートした会社であるから」語る。「もちろん動画広告の実験の場としても使っていくが、そこで広告を流していく、収益を上げていくということをやりたいのではない。(メディアに)トラフィックを流すことで、メディア側の収益にコミットするプラットフォームを作りたい」(高松氏)。またユーザー数についても、ニュース視聴をする媒体としてはまだまだ大きくない領域であり、同社が狙う女性層も含めて数百万ユーザーを狙えるとしている。

同社の動画広告プラットフォームは女性向けメディア限定。それならば女性向けのニュースに特化したアプリかなのかとも思ったのだが、「デザインに関しては女性にも使ってもらえるように配慮した。しかし女性に(ファッションやコスメなどのコンテンツが中心の)女性向けメディアだけを当てるようなニュースアプリのニーズはすごくニッチ。(アイスタイルの)@cosmeだけは特殊だが。我々はマス向けのニュースを提供していく」(高松氏)とのことだった。

ほかのニュースアプリと比較して特殊なのは、自社でキュレーションメディアも運営し、それを1つのチャンネルとして表示しているところだ。Yahoo!検索で上位の検索ワードに関する情報をまとめた「検索ワード急上昇まとめ」と、エンタメ情報を紹介する「W-STYLE」の2つのチャネルを用意。社内のスタッフが日々情報を更新するのだという。人気の検索キーワードを中心にコンテンツを作るということで、SEOでの集客効果は見込めそうだと思ったが、最近何かと残念な話題が多いキュレーションメディア。そのあたりはしっかりしたコンテンツが出ることを楽しみにしたい。

交通系ICカードをAndroid端末にかざせば処理完了、経費精算サービス「Staple」がバージョンアップ

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クラウドキャストのスマートフォン向け経費精算サービス「Staple」。2014年10月(iOS版のみ。Android版は2015年3月)にスタートしたこのサービスがバージョン2にアップデート。新たに、NFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末を使った交通系ICカードの自動読み取り機能を実装した。

Stapleは面倒な経費精算を、専用のスマートフォンアプリを使って手軽に入力できるサービスだ。個人および10〜20人規模の程度の中小企業のほか、各種イベントをはじめとした短期プロジェクトでの利用を想定している。

今回のリニューアルにあわせて、新アプリの「Stapleリーダー」を公開。ユーザーがNFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末上でこのアプリ起動し、交通系ICカードをタッチすれば、カードの使用履歴を自動で取得。データはStapleのクラウド上にアップロードする。

あとはStapleのウェブサイトにアクセスするかアプリを起動し、勤怠に関わるデータを選択すれば、自動的に経費精算の一覧に反映される。これでもう、Excelにいちいち移動の記録を書き込んでいくという手間から開放されるわけだ。取り込んだデータは修正不可能なため、不正な処理も起こらない。また定期区間なども自動で処理され、二重に経費を申請するといったこともなくなる。

利用手順

実はこの機能、Staple開発時からユーザーから要望が高かったのだそう。「この機能さえあれば導入したいという声もよく聞いていた」(クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏)

またこの機能のほか、外部サービスとの連携を強化。すでに連携済みの弥生会計に加えて、freeeやMFクラウド会計、A-SaaS、FreeWay、勘定奉行の合計5サービスに対して、経費データのインポートが可能になった。

動画制作クラウドのViibarがヤフーと資本業務提携、既存株主含め7億円の資金調達

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「動画元年」なんて言われていたのは去年か一昨年のことだっただろうか。ともかく動画に関するビジネスが急速に拡大しているのは事実だ。十代のカップルが自らの動画をアップする「MixChannel」は女子中高生の2人に1人が利用しているそうだし、動画広告のプラットフォームも複数スタートしている。UUUMのようなYouTuberのマネジメント会社も登場してきたし、動画制作向けのクラウドソーシングサービスもある。

そんな動画制作特化型クラウドソーシングサービスの1つ、「Viibar」を運営するのがViibarだ。同社は5月18日、ヤフーと資本業務提携を行うことを明らかにした。

資本提携では、ヤフーに加えて既存株主であるグロービス・キャピタル・パートナーズおよびグリーベンチャーズが出資。総額約7億円の第三者割当増資を実施した。あわせて、ヤフー執行役員 マーケティングソリューションカンパニー長の荒波修氏が社外取締役に就任する。なお、業務提携の詳細については、6月後半にも詳細を発表するとしている。

動画広告が成長。売上は前年比30倍に

Viibarは動画制作に特化したクラウドソーシングサービスだ。現在国内を中心に約2000人のクリエーターがユーザー登録。動画制作はスタッフが進行管理や制作スタッフのマッチングを担当。クライアントとクリエーターはオンライン上でコミュニケーションを取りながら動画を制作していく。

Viibar代表取締役の上坂優太氏

Viibar代表取締役の上坂優太氏

これまで、動画広告や商品説明動画などウェブで利用される動画をはじめ、テレビCMやOOH(交通広告や屋外広告)などに向けた動画を制作してきた。売上高は非公開ということだったが、「2013年度から2014年度で30倍成長」(Viibar代表取締役の上坂優太氏)なのだそう。

初年度ということでベースとなる売上が決して大きいとは思わないが、それでも30倍というのはすごい数字だ。この成長の背景にあるのは、急増する動画広告のニーズ。「テレビCMやOOHなど、利用の幅も広がっているが、そこはあくまで一次関数的な成長でしかない。当初から明確にあったウェブの動画広告が大きく成長している。市場ではクリエイティブ不足が明確な課題になってきた」(上坂氏)

制作だけでなく、“成果”に結びつく機能の提供へ

上坂氏は、「安かろう悪かろうではない」と、Viibarで作成する「動画」そのものの品質が評価されていると説明するが、同時に「動画広告」としての品質を高めているところだと語る。

動画広告は、単純に動画としてのクオリティだけでなく、動画を閲覧した人がそのサービスを利用したり、商品を購入するといった“成果”が求められるもの。そのため、どれだけイケてる動画を作るかということではなく、動画広告をユーザーに配信するという一連のフロー——企画、制作者のマッチング、動画制作、動画の配信、効果測定、そして効果測定を元にしたPDCAを回す——を通じて、成果を出していかなければならない。

だがこれまでのクラウドソーシングが担当していたのは「制作者のマッチング」「動画制作」といったパート程度だ。Viibarでは現在、動画広告にまつわる一連のフローを自社でまかなえるよう、各種開発を進めているのだそうだ。「動画広告はクリエイティブの要素が大きいが、そのクリエイティブを評価して、次の企画に落とし込むというところまでをデータドリブンでやっていく」(上坂氏)

具体的な内容については聞けなかったが、動画制作に加えて動画配信やアナリティクスの機能も提供していくということだろう。実際、今回の調達を機に、データアナリストなどの採用も始めていると聞いた。

ヤフー本体が出資するも「基本的にはIPO目指す」

ヤフー本体によるスタートアップへの出資というのは、それほど多いケースではない。Facebookを使った懸賞サービスを提供していたクロコスや、映画チケットの共同購入サービスを提供していたブルームなど、買収案件が比較的目立っている印象だ。

ヤフーによる買収の可能性について上坂氏に尋ねたところ、「基本的にはIPOを目指している。動画広告は急速に伸びており、特にBtoB、BtoBtoCでレバレッジを書けてサービスを展開するには、以下にジャイアントと組むかというのは重要になると思っている。ただし我々はYouTubeやFacebookなどともすでに取引もあるし、基本的に独立した存在」としている。

「赤字上場でもしっかりした成績が残せた」2Q決算でクラウドワークス吉田社長

20年後にクラウドソーシングで年間総契約額3兆円の仕事を提供する——クラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は、5月15日に開催された決算説明会兼事業戦略発表会でこのように語った。

事業は成長、「しっかりした成績が残せた」

すでに昨日発表済みではあるが、クラウドワークスの2015年9月期第2四半期(第1〜2四半期累計)の営業収益で3億6500万円(前年同期比で307.8%増)、営業利益は2億8300万円の赤字(前年同期は1億700万円の赤字)、経常利益は2億8700万円の赤字(同1億700万円の赤字)、純利益は2億9500億円の赤字(同1億800万円の赤字)。

事前見通しの通り利益を見ると赤字ではあるものの(ただし、質疑応答以外、プレゼンで利益のことに全く触れなかったのはちょっと気になったのだが)、総契約額では前年同期比で97%となる6億5600万円。クラウドワーカー(登録ユーザー数)は年間257%増の58万人(4月末時点の数字、5月に60万人を突破したそう)。営業収益は四半期ベースで見ると前四半期比229%となる218億円。会見でクラウドワークス代表取締役社長の吉田浩一郎氏は「『赤字上場で大丈夫か』と言われたが、しっかりした成績が残せたのではないか」と語る。

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2015年9月期は総契約額はプラットフォームサービスで25億円(上半期実績で8億4000万円)、エンタープライズサービスで9億円(上半期実績で3億円)を目指す。2014年にスタートしたエンタープライズ向けの事業も好調とのことで、継続利用に加えて、大手企業の新規獲得も好調だったとした。

会見で吉田氏が繰り返したのは「総契約額」というKPI。同社では2017年9月期に総計約100億円という計画を掲げていたが、今後体制強化と新サービスで2016年度での達成を目指すという。ただし黒字化の時期については明言せず、事業への投資の可能性も挙げつつ、「(総契約額)100億円での黒字か赤字についてもまだ考えているところ」と説明するにとどまった。

さらに20年後の目標として、年間総契約額3兆円という数字を掲げた。吉田氏は—名前こそ出さないものの、ソフトバンク代表の孫正義氏を暗に例に挙げつつ——「僕らの世代でも夢を持っていい。今は『何を言っているんだ』と言われるかもしれないが、温かく見守って頂きたい」「上場市場の末端に立った以上、投資家のみなさまに精一杯答えたい」と語った。

新サービス「クラウドワークスBPO」を展開

4月には、最長6カ月程度のクライアント企業でのオフィスワークを経てリモートワークへ移行することで企業の不安を取り除き、長期のリモートワークを実現する「クラウドワークステクノロジーズ」を発表していたが、同社は今回新たに「クラウドワークスBPO」なるサービスを開始した。

BPOとはビジネス・プロセス・アウトソーシング、つまり作業ではなく業務そのもののアウトソーシングだ。クラウドワークスBPOでは、同社のスタッフがクライアント企業に常駐。クラウドソーシング事業の「クラウドワークス」や前述のクラウドワークステクノロジーズを使ってアウトソーシングの組織体制を設計するというもの。

このサービスでターゲットとするのは、電力関連事業。2016年4月に電力小売が完全自由化されるが、「関する業務が大量に発生する。その課題に対応する」(吉田氏)のだという。具体的には補助金申請や電力会社向けの接続申請、電力需給管理といった業務に向け、リサーチ・マーケティング・経理・コールセンター・原稿制作・書類作成・監視などを行う。同社ではこの事業で2018年内に10億円規模の業務をクラウドソーシング化するとしている。

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マーケティングデータを一気通貫で分析、「B→Dash」運営のフロムスクラッチが3億円調達

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「収益に一番直結するチャネルがわからない」「複数のツールを使うと手間とコストがかかる」「情報量が多すぎて見づらい」――。

企業のウェブ担当者にありがちな悩みである。コンバージョン数やCPAを追いかけても、本当に収益につながっているか不明。わからないので様々なツールを試してみても、見るべき指標が重複する。重複を解消しようと自分で各レポートを組み合わせるのも大変……というわけだ。

企業のマーケティングプロセス全体のデータを統合し、一気通貫で分析するSaaS型マーケティングプラットフォーム「B→Dash」は、こうしたウェブ担当者の悩みを解決しようとしている。ウェブ集客から顧客管理までと、マーケティングの入口から出口までを一元管理できる。

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例えば、認知や流入、回遊といった「集客プロセス」は、Google AnalyticsやSiteCatalystで分析できる。しかし、メール配信やコンテンツ、ソーシャルメディアの管理といった「集客後のプロセス」となると、HubspotやMarketo(マルケト)、オラクルのEloqua(エロクア)といったツールが必要になってくる。

最近ではDMPやマーケティングオートメーションが話題だが、これらはGoogle AnalyticsやSiteCatalystのようなアクセス解析ツールとの接続が前提。バラバラのサービスを導入したせいでデータ間の断絶が起き、運用工数やコストだけが増えてしまうケースもあると、B→Dashを運営するフロムスクラッチは指摘する。

これに対してB→Dashは、他のサービスとの連携ではなく、集客から顧客管理までの機能をオールインワンで実装。同社はこれを「プライベートマーケティングプラットフォーム」という独自の名称をつけている。料金はプラットフォーム開発費用が100万円〜、月額課金が50万円〜。昨年11月に販売開始し、デジタルマーケティングに注力するB2C企業を中心に50社が導入している。

15日には、Draper Nexus Venture Partnersと伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど4社を割当先として、総額約3億円の資金調達を実施したことを発表。B→Dashの新規機能開発や組織体制の強化を図る。

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素人でも使える統計分析ツールのサイカが2億円調達

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専門知識不要で使えるクラウド統計分析ツールを手がけるサイカは15日、総額2億円の資金調達を実施したと発表した。同社は2013年10月、企業が持つデータに潜む関連性を見つけられるツール「adelie」を公開。売上という「成果」に対して、CM放映回数、チラシ配布枚数、天候などの「要素」が、お互いにどのように影響したのかを自動抽出してくれる。

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例えば、アパレル販売メーカーが導入した場合、CM放映後に売上が100万円アップ、チラシ配布週に売上が10万円アップ、天候は売上と無関係……といったことを分析。これによって、経験の裏付けや盲点の発見、未来の予測ができるようになるわけだ。

通常、統計分析をするには専用ツールだったり、成果と要素の関係を読み解く専門家が必要。一方、adelieは企業が持て余すExcelデータをインポートするだけで、相関するデータを自動抽出するのが特徴。ヤフーやリクルート、GUなど40社以上が導入している。

営業マンの「行動の効果」を数字で表す

2014年1月には米Salesforceなどを引受先として、1億円の資金調達を実施した。以降、Salesforceのクラウド型営業支援ツール「Sales Cloud」と連携し、営業マンの行動データに基づいて最適な行動を提示するツール「Rockhopper」を開発。今月リリースした。

Rockhopperは、セールスパーソンの「行動の効果」を数字で示す営業支援ツール。例えば、家電量販店向けにルートセールスする企業が導入した場合、「売場作成」「商談」「店頭での接客」などの行動と、それに費やした時間をプルダウンメニューから入力する。これにより、「売場作成は1時間につき800円の効果」「接客は成果への影響なし」といったことがわかる。

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Rockhopperの利用イメージ

 

セールスパーソンにとって、活動記録を逐一報告しようとすると、本業が圧迫されてしまうことも少なくない。Rockhopperは行動記録に最適化したインターフェイスを採用したことで、日々の報告業務の負担を軽減。すでに導入した大手電機メーカーでは、行動データの入力率が23%から97%にも上がったのだという。

現場で記録されたデータは、アプリ上で一覧可能。営業マネージャーは分析結果を見ながら改善点をアドバイスできる。アプリ上で「ノウハウを学ぶべき営業マン」と「ノウハウを教えるべき営業マン」をリコメンドし、マッチングする機能もある。

今回調達した資金は主に、Rockhopperの開発に投入。エンジニアや、adelieやRockhopperを導入した企業向けのサポート要員も増やす。増資に伴い、リードインベスターを務めたDraper Nexus Venture Partersに在籍する倉林陽氏がサイカの取締役に就任している。倉林氏はSalesforceの元日本投資責任者。サイカとしては、ベンチャー経営やSaaS事業の知見を得る狙いがあるようだ。

サイカは2013年11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルに登壇し、マイクロソフト賞を受賞している。

“ちょうど良いERP”を実現、クラウドで勤怠や経費精算を一元管理するチームスピリットが4億円調達

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勤怠管理に経費精算、電子稟議……と従業員が日々入力するデータの数々。そのツールがバラバラだと、面倒くさいことこの上ない。こうしたデータをセールスフォース上で、1回のログインですべて作業できるようにしたのが「TeamSprit」だ。

運営元のチームスピリットが15日、シリーズCで総額4億円を調達した。このラウンドを仕切ったのはDraper Nexus Venture Partners。これに米salesforceや日本ベンチャーキャピタルが参加した。

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TeamSpritは勤怠管理から就業管理、経費精算、工数管理、電子稟議といった、基幹業務につながるシステムをクラウドで一元管理。各機能を連動させ、必要なデータだけを既存の会計や給与計算のシステムに取り込める。導入にコストや時間がかかるERPと比べ、“ちょうど良いERP”を実現すると同社は謳っている。

料金は1ユーザーあたり月額600円。salesforce.comのクラウドプラットフォーム「Salesforce1」に対応しているため、iOSやAndroidなどマルチデバイスで使えるアプリを標準装備する。

サービス開始3年で360社、4万人以上が利用。主に社員100人前後で、大企業の子会社や上場が視野に入ってきたスタートアップが導入しているようだ。

調達した資金ではセールスマーケティングを強化。増資に伴い、リードインベスターを務めたDraper Nexusの倉林陽氏が取締役に就任する。倉林氏はsalesforceの元日本投資責任者。当時から引き続いて、チームスピリットを支援することとなる。

人工知能がユーザー好みのファッションアイテムを紹介する「SENSY」、開発会社が1.4億円の資金調達

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最近人工知能関連のニュースが増えているが、今度はファッション領域に人工知能を利用するスタートアップの資金調達が発表された。カラフル・ボードは5月14日、ACAが運営するアジアグロース2号投資事業有限責任組合などを引受先とした第三者割当増資を実施。総額1億4000万円の資金調達を実施したと発表した。

カラフル・ボードが手がけるのは、ファッションセンス学習人工知能AIロボットアプリ「SENSY」。2014年11月にリリースされたこのアプリでは、ユーザーが画面に表示される提携ブランドの服を、気に入れば右に、気に入らなければ左に、とTinderライクにフリックして選択していくことで人工知能が感性を学習し、そのユーザーの感性に合ったファッションアイテムを提案してくれるというもの。気になるアイテムは提携ブランドのECサイトで購入できる。提携ブランドは2015年4月時点で2465ブランドとなっている。

アプリに搭載される人工知能「SENSY」(アプリ名と同じ)は、同社と慶應義塾大学、千葉大学で共同開発している。カラフル・ボードでは今後、ユーザーと同じ感性を持った、いわば「クローン」のAIロボットネットワークを構築。ユーザーに代わって情報収集したり、人と人がAIロボットを介して知識、経験、感性などを共有し合う世界観を目指すとしている。

また、Amazon.com傘下のShopbop.comのほか、イタリアのYOOX Groupと提携。今後は韓国、台湾など東南アジアへの展開を進めるとしている。