月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

月面など長期宇宙滞在時の食料生産を目指しISS「きぼう」日本実験棟で世界初の袋型培養槽技術の実証実験

密閉した袋内で栽培されたレタス。写真左は収穫前の様子、写真右が地上に回収する前の様子

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は10月22日、国際宇宙ステーション(ISS)の日本実験棟「きぼう」にて、将来の月面探査などにおける長期宇宙滞在時の食料生産を目指した、世界初となる袋型培養槽技術の実証実験を実施したことを発表した。これは、「JAXA宇宙探査イノベーションハブ」の共同研究提案公募の枠組みで、JAXA、竹中工務店、キリンホールディングス、千葉大学、東京理科大学によって2017年から行われてきた共同研究の一環だ。

袋型培養槽技術とは、小さな袋の中で植物を増殖させるというもの。密閉した袋の中で栽培されるため、雑菌の混入がなく、外に臭いが出ない。設備が簡易でメンテナンスしやすく、省エネルギーで、人数に合わせた数量調整も簡単に行えるコンパクトなシステムという特徴がある。今回の実験は、微小重力環境、閉鎖環境での有効性、水耕栽培や土を使った栽培と比べた優位性を確認するため実施した。

実証実験用栽培装置

実証実験用栽培装置

「きぼう」内の実験装置の設置場所

「きぼう」内の実験装置の設置場所

実験装置は、44×35×20cm、重量5kgという小さなもの。この中で、3袋のレタスの栽培が行える。内部にはISSの飲料水を無菌化して培養液を作り供給する装置と、生育状況を定期的に自動撮影する装置が組み込まれている。また袋の中の空気交換も行われる。

実験は、2021年8月27日から10月13日までの48日間行われた。9月10日にはレタスの本葉が確認され、その後、順調に成長して収穫に至った。今後は、レタスと培養液、生育記録を回収して、宇宙での適用可能性やこの栽培方式の優位性を評価するという。また、レタスが食用に適しているかを調べるとともに、培養液を分析して、ISSの環境制御・生命維持システムで再利用処理が可能かを確認する。

月面農場モデルイメージ

月面農場モデルイメージ

JAXAでは、地球からの補給に頼らず、月面に農場を設営して長期滞在のための食料を生産する研究を行っている。将来的には、この袋型培養槽技術を用いた宇宙船や滞在施設での大規模栽培により、持続的な宇宙活動に貢献できるよう研究を続けると話している。

民間宇宙ステーション「Starlab」は地球低軌道経済の到来を予感させる

民間宇宙ステーションの時代が正式に到来する。Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)の3社は先日、2027年に商用ステーションを起ち上げる計画を発表した。しかし、これは新しい宇宙経済を発展させるための次の論理的ステップに過ぎないと、各社は述べている。

関連記事:Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

「過去10年間は宇宙へのアクセスを構築する時代でしたが、次の10年は宇宙に行き先を構築する時代になります。それが、この業界における我々の重要な命題の1つです」と、VoyagerのDylan Taylor(ディラン・テイラー)CEOは述べている。

米国が初めて打ち上げた宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」に敬意を表して「Starlab(スターラブ)」と名付けられたこの新しい宇宙ステーションは、膨張式の居住モジュール、ドッキングノード、ロボットアームを備えたものになる。3社は官公庁と民間企業の両方からの強い需要を見込んでいるものの、NanoracksのJeffrey Manber(ジェフリー・マンバー)CEOは「Starlabの中核は科学です」と強調した。

Starlabは最終的には観光客も受け入れることができるが、観光を第一に考えたプロジェクトではないと、マンバー氏は付け加えた。「宇宙観光旅行は話題になりますが、持続可能なビジネスモデルを構築するためには、それ以上のものが必要です」と、同氏はいう。

3社は、NASAの「Commercial Low Earth Orbit Destinations(商業的地球低軌道目的地開発)」プロジェクトへの入札として、Starlabを同宇宙局に提出した。このプロジェクトでは、宇宙ステーションを開発する民間企業に最大で4億ドル(約454億円)の契約が割り当てられる。

このようなプロジェクトには莫大な公共投資が必要となるものだが、この資金提供は、特に国際宇宙ステーションの離脱が間近に迫っていることを考慮すると、NASAが地球低軌道における存在感を維持することに関心があると世界に示す意味でも重要であると、テイラー氏は述べている。

マンバー氏も同様の意見を述べている。「私たちは宇宙ステーションの空白期間を作りたくありません」と語る同氏は「業界や社会の誰もが、米国が低軌道に宇宙ステーションを持たない期間があってはならないことを理解しています」と続けた。

しかしながら、全体的には民間の資金が鍵となる。そこでVoyager社の出番だ。2021年、Nanoracksの過半数の株式を取得した同社は、プロジェクトの資金調達と資本配分を監督することになる。

「現実的には、米国議会から十分な資金を得ることはできません」と、マンバー氏はいう。「そんな時代は終わりました。これは商業的なプロジェクトです」。

LEO(地球低軌道)経済の将来については、企業や公的機関が設計の標準化と競争力の維持をどのように両立させるかなど、未だ不明な点が多い。

テイラー氏は、いくつかの重要な技術を標準化するには、コンソーシアムを起ち上げる方法が有効であると提案している。NASAからの投資も居住システムの共通化に役立つだろうと、Lockheed Martinの民間宇宙部門VPであるLisa Callahan(リサ・キャラハン)氏は、TechCrunchによるインタビューの中で語っている。

「NASAは顧客として、宇宙輸送におけるこの並外れた革命を解き放ちました」と、マンバー氏は語る。「NASAがカーゴで成功したように、商用クルーで成功したように、宇宙に興味を持つ市場があれば、小規模な民間宇宙ステーションにも同じようなことが起こると予想できます」。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーロン・マスク氏、Starshipロケットは「規制当局の承認があれば」来月にも最初の軌道打ち上げの準備ができると語る

SpaceX(スペースX)の「Starship(スターシップ)」ロケットは、テキサス州南東部で現在も開発が進められており、発射塔の建設や、宇宙空間に到達した際の動力源となる真空仕様の「Raptor(ラプター)」エンジンの搭載など、重要な要素に大きな進展が見られる。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、規制当局の承認が得られれば、来月にも初の軌道宇宙飛行を試みる準備ができると述べている。

SpaceXがこの試みを実施するためには、これまでテキサス州ブラウンズビル郊外の開発拠点で行ってきたStarshipのテスト飛行と同様に、米国連邦航空局(FAA)の承認が必要になる。FAAは基本的に、SpaceXが打ち上げ時に何か問題が発生しても最小限のリスクで済むように、必要な安全対策をすべて講じていることの証明を求めている。

Starbase(スターベース)発射塔が完成に近づき、初の軌道飛行に向け、StarshipとSuper Heavyブースターがスタンバイ

SPadre

すべてが順調に進めば、規制当局の承認を得た上で、来月にはStarshipの最初の軌道打上げに向けた準備が整います。

Elon Musk

この開発段階では、それも決して有り得ないというわけではない。SpaceXはすでに開発プログラムの中で、多くのStarship試作機が爆発するのを目にしてきた。だが、SpaceXのテストには、地球の大気圏内における高高度飛行テストや、制御された着陸に向けた宇宙船の降下など、いくつかの成功例もある。

SpaceXの次の大きなマイルストーンは、Starshipとブースター部分の「Super Heavy(スーパー・ヘビー)」のコンボを完全に積み重ねたバージョンを、地球の大気圏を超えて宇宙空間に飛ばすことだ。マスク氏によれば、技術的にはその準備は整っているとのことだが、FAAが最近行った打ち上げライセンス付与に関するパブリックコメントの募集が示唆するところによれば、規制当局の承認が得られるまでには1カ月以上かかる可能性もある。

先週行われたタウンホールミーティングでは、次のステップに進む前にFAAがSpaceXと一緒に検討・対処しなければならない多くの問題を、賛成派と反対派の両方が声をそろえて提起した。しかしながら、FAAはテストを目的とした一時的なライセンスを発行し、進行中の打ち上げ許可を再検討することで、これらの問題の解決を先送りする可能性もある。

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

周回衛星向け地上セグメントサービスプロバイダーのインフォステラが7億円のシリーズB調達

インフォステラは10月21日、シリーズBラウンドにおいて第三者割当による総額7億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は宇宙フロンティアファンド(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー)、三菱商事、伊藤忠商事、ネクスト新事業新技術1号投資事業有限責任組合(tb innovations)、みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合(みずほキャピタル)。累計資金調達金額は19億4000万円となった。さらに2021年中の最終クローズに向け、既存投資家や新規投資家との協議を継続するという。

また、2020年3月に発行した新株予約権付社債の引受先である、大和エナジー・インフラ、三菱UFJキャピタル7号投資事業有限責任組合(三菱UFJキャピタル)、三菱HCキャピタルが新たにインフォステラの株主となった。

2016年設立のインフォステラは、周回衛星向けGround Segment as a Service(GSaaS)プロバイダー。地上局ネットワークを仮想化するクラウドプラットフォーム「StellarStation」を通じ、衛星通信用地上局サービスを展開している。2021年1月に軌道上の衛星との実証実験に成功し、5月には商用衛星向けのダウンリンクサービスを欧州政府系機関向けに提供開始した。

同社は、調達した資金をもとに、StellarStationを通じ提供可能な地上局数を増加するための開発体制、主に米国市場進出に向けた営業体制、顧客数増加に伴う運用体制についてそれぞれの強化のための人材採用を進める予定。

 

StellarStationは柔軟性と拡張性に優れたクラウドベースの地上局プラットフォーム。衛星運用者は一度のセットアップで世界中の地上局にアクセス可能となる。地上局のオーナー側は、地上局の非稼働時間を他の衛星運用者に貸し出すことで収益に繋ぐことができるとのこと。

Nanoracksなど民間3社が2027年までの商業宇宙ステーション立ち上げを計画

NASA(米航空宇宙局)は以前から、老朽化した国際宇宙ステーション(ISS)に代わる商業運用の後継ステーションを民間企業に奨励してきた。Axiom Space(アクスアム・スペース)はすでにその意向を表明しているが、Nanoracks(ナノラックス)、Voyager Space(ボイジャー・スペース)、Lockheed Martin(ロッキード・マーチン)で構成される新たなコンソーシアムは「史上初の自由飛行の商業宇宙ステーション」を建設し、2027年に運用を開始する予定だと発表した。

関連記事:民間商業宇宙ステーションの実現を目指すAxiom Spaceが約138億円を調達

この新しい宇宙ステーションは、米国で3番目に建設された宇宙ステーション「Skylab(スカイラブ)」にちなんで「Starlab(スターラブ)」と名づけられる予定だ。Starlabには4人の宇宙飛行士が滞在する。その規模は国際宇宙ステーションよりもはるかに小さく、人間が居住できる加圧空間は国際宇宙ステーションの3分の1程度だ。そのため、ISSや中国の宇宙ステーションのように分割して軌道に乗せるのではなく、1回の打ち上げで軌道に乗せられると期待されている。

Voyagerが株式の過半数を保有するNanoracksは、現在ISSで使用されている多くの部品を設計・製造しており、この3社のチームは宇宙での運用においては豊富な経験を持つ。Voyagerはこのプロジェクトに戦略的指導と資本投資を行い、Lockheed MartinはStarlabの主要メーカーであると同時に、さまざまなテクニカル部品をつなげるインテグレーターでもある。

宇宙ステーションの主な構成要素は、Lockheedが製作した膨張式の居住モジュールで、貨物や乗組員を運ぶ宇宙船のドッキングカ所や、ステーションの外で貨物やペイロードを操作するための宇宙ステーションにあるようなロボットアームを備えている。

クルーとして想定されるのは、官民の研究者、メーカー、科学者で、宇宙旅行者などの商業的な顧客も含まれるという。NASAが民間ステーションを導入する意図は、公的資金を最大限に活用しながら、NASAにとって継続的な宇宙空間の占有をより持続可能なものにするために、多くの顧客の中の1人になることだ。

画像クレジット:Nanoracks

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

米上院予算委員会がNASAに月着陸船プログラムで2つのチームを選定するよう指示

有人着陸システムにまつわる物語はまだ終わっていない。

米上院が現地時間10月18日に発表した2022年度のNASAに関する予算案では、有人着陸システム(HLS)プログラムで2つのチームを選定するよう、航空宇宙局に指示している。だが、そのための追加予算は1億ドル(約114億円)に過ぎない。

NASAの2022年度予算は全体で248億3000万ドル(約2兆8400億円)、そのうちこのプログラムのための予算は総計12億9500万ドル(約1482億円)となる。

「この資金を使って、NASAは2つのHLSチームの研究・開発・試験・評価をしっかりとサポートし、冗長性と競争性を確保することが期待されている」と、この予算案では述べられており「上院予算委員会は、補助的な研究ではなく、開発のための実質的な投資を期待している」と続けている。

指示は明確だ。明確でないのは、NASAがそれに見合った資金の増加なしに、どのように2つのHLSチームに資金を提供しようとしているかということだ。

まず、現在までの経緯を少しばかり振り返ってみよう。HLSは、アポロ計画時代以来、半世紀ぶりに人類が月に降り立つことを目指すNASAのアルテミス計画の重要な一部である。2021年4月、NASAはアルテミス計画の宇宙飛行士用着陸機の開発に、Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いるSpaceX(スペースX)のみを選定した。つまり、2020年5月にSpaceXとともに選ばれていた、防衛関連企業のDynetics(ダイネティクス)や、航空宇宙関連の最大企業であるLockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、Draper(ドレイパー)の協力を得て「ナショナルチーム」を名乗るBlue Origin(ブルー・オリジン)は選から漏れ、SpaceXの1社のみが残ったということだ。

関連記事:NASAがアポロ計画以来となる有人月面着陸システムの開発にSpaceXを指名

これまでNASAは基本的に、競争を促すために、また1社のプロジェクトがうまくいかなかった場合の保険として、少なくとも2社のベンダーを選ぶ戦略を採ってきた。国際宇宙ステーションのCommercial Crew(商業乗員輸送)プログラムでも、NASAはSpaceXとBoeing(ボーイング)の両方に宇宙飛行士輸送用の宇宙船を発注している。つまり、NASAがSpaceXだけを選んだことは、歴史的な前例から逸脱していると言ってもいいだろう。

これを不服とするBlue Originは4月以降、NASAの決定に対する抗議運動を展開してきた。同社はまず、政府の監視機関である米会計検査院(GAO)に契約締結について異議を申し立てたが、GAOが同社の抗議を却下すると、連邦請求裁判所に訴状を提出した。

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NASAはSpaceXを選定した理由について、予算の制約がある中で、Blue Originの提案(59億ドル、約6750億円)やDyneticsの提案(90億ドル、約1兆300億円)と比較して、SpaceXが最も強固な着陸機の提案を低価格で提供していたからだと主張している。3つの提案のコストに大きな差があることを考えると、上院によるHLSプログラムへのわずかな増額(1億ドル)によって、NASAが追加のチームを選定できるかどうかは不明だ。

NASAのBill Nelson(ビル・ネルソン)長官は、同宇宙局が最終的には必要な資金を得ることができると確信しているようだ。「最終的には、すべての叫び声が収まり、すべての押し合いへし合いが終わって、その多くはNASAとは何の関係もなく、NASAは必要な資金を得ることができると思います」と、ネルソン長官はSpaceNews(スペース・ニュース)のインタビューで語っている。

今回の予算案によると「少なくとも2つのチームがサービスを提供すること【略】が、現在の開発プログラムの最終目標であるべきだ」としている。この法案がそのまま最終予算に組み込まれた場合(下院との交渉が必要なのでまだわからない)、NASAは30日以内に議会と国民に対して、新しい指示に従う計画を説明することになる。

画像クレジット:Dynetics

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

国際宇宙ステーションで初の長編映画撮影を行っていたロシア映画班が無事に帰還

国際宇宙ステーションで初の長編映画撮影を行っていたロシア映画班が無事に帰還

ISS、NASA

10月17日午後1時半過ぎ、国際宇宙ステーション(ISS)で初の長編映画撮影を行っていたロシアの映画撮影班クリム・シペンコ監督と俳優ユリア・ペレシルド、そして宇宙飛行士のオレグ・ノビツキーの3人がソユーズMS-18宇宙船で地上に帰還しました。帰還直前のソユーズの試験ではスラスター誤噴射がありヒヤリとさせられましたが、その後は問題はありませんでした。

ハリウッドを出し抜いてISSで撮影された初の長編映画になる予定の作品「The Challenge」は、テレビ局のChannel OneとYellow, Black and Whiteプロダクション、そしてロシア宇宙機関Roscosmosの協力で制作されます。

ノビツキー飛行士はソユーズMS-18ミッションとしてNASAのマーク・ヴァンデハイ飛行士とロシアのピョートル・ドゥブロフ飛行士とともに4月9日からISSに長期滞在していて、今回映画班と一緒に帰還しましたが。映画撮影クルーが同乗することになったため、残りの2人は、滞在期間を6か月延長することになりました。結果、ヴァンデハイ飛行士はNASAの飛行士としてもっとも長くISSに滞在した飛行士の記録を樹立することになります。

また、記録という点では、ユリア・ペレシルドはプロの役者としては先日Blue Originの宇宙船に搭乗したウィリアム・シャトナー氏より1週間早く宇宙に行った人物になりました。

ISSで撮影された「The Challenge」がいつ頃公開されるのかがわかるまでにはしばらく待つ必要がありそうですが、おそらく国際的な作品というよりはロシア国内向けと思っておくのが良さそうです。それでも、ISSでの映画撮影の実績は、今後トム・クルーズやそれに続く世界的なスターたちが続々と低軌道へ向かい、何らかの作品を作るようになる未来を拓いたかもしれません。

(Source:NASAEngadget日本版より転載)

Space Perspectiveが気球による成層圏への旅行を計画、費用は1人約1430万円

Blue Origin(ブルー・オリジン)、SpaceX(スペースX)、Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)が商業打ち上げに成功したことで、正式に宇宙旅行の新時代が到来した。しかし、ロケットスペースプレーンを使って人々を宇宙に連れて行くことを計画しているこれらの企業とは異なり、2年前に設立されたSpace Perspective(スペース・パースペクティブ)という企業は、別の方法を採っている。

開発に莫大な費用がかかり、すべての顧客が受け入れられるとは限らないロケットで宇宙に行く代わりに、このスタートアップ企業は、大きな気球に取り付けられたカプセルを使って成層圏に行く旅行の提供を計画している。この計画は投資家の関心を集めており、同社は米国時間10月14日、2024年後半に予定されている最初の商業飛行に向けて、4000万ドル(約45億6000万円)のシリーズA資金調達を実施したと発表した。

Space Perspectiveは、すでに475件の予約を集めており、顧客は1万ドル(約114万円)から2万5千ドル(約285万円)の保証金(搭乗を希望する時期がどれだけ早いかによって異なる)を支払うことでその予約を確保している。最終的に支払う費用の総額は、1人当たり12万5000ドル(約1430万円)となる予定だ。

ロケットに乗らないということは、それによるトレードオフがある。気球に乗る方がはるかに安く、リスクを避けたい顧客には魅力的かもしれない。しかし、大気圏のそれほど高い位置まで行くことはできず、無重力も体験できない。国際的に認知されてはいるが実際には目に見えない「宇宙」の境界線であるカルマンライン(海抜高度100キロメートル)を超えることはなく、同社の成層圏気球では地球上の約30キロメートルの高さまでしか行くことはできない(とはいえ、せいぜい高度1万2000メートルほどにしか達しない民間航空機と比べたらはるかに高いが)。

それでもSpace Perspectiveは、同社の提供する6時間の飛行で、特に地球の丸さや宇宙の黒さなど、すばらしい景色を楽しむことができると約束している。計画では、スペースバルーンは時速20キロメートルほどの速さで2時間かけて徐々に上昇した後、2時間かけて遠地点を滑空し、最後の数時間で徐々に下降していく。カプセルは海に着水し、8人の乗客と1人のパイロットは船で回収される。これは、NASAやSpaceXが乗員用カプセルを回収する方法と同じだ。

それほど高い場所に行かない代わりに、他の利点がある。同社の説明によると、Space Perspectiveの気球に乗ることは、宇宙飛行士の打ち上げというよりも、大手航空会社のファーストクラスのフライトに近い感覚で楽しめるという。乗客はカプセルの中で、Wi-Fiやバーさえも利用できるようだ。事前に特別なトレーニングも必要ない。同社の広報担当者の話では、飛行前の安全に関する説明は、現在の民間航空会社で客室乗務員が行っているものと変わらないという。

この会社はすでに重要なマイルストーンに達している。6月にはフロリダ州のスペースコースト宇宙港から、無人の加圧されていない実物大カプセルシミュレーターを、目標高度まで打ち上げることに成功した。次の一連のテストフライトも無人で行った後、2023年に最初のパイロット搭乗テストフライトが行われる予定だ。

Space Perspectiveは、夫婦で共同CEOを務めるJane Poynter(ジェーン・ポインター)氏とTaber MacCallum(テーバー・マッカラム)氏によって設立された。2人は、閉鎖空間で地球の状態を再現するという野心的で風変わりなプロジェクト「Biosphere 2(バイオスフィア2)」のクルーだった。その後、彼らは宇宙飛行士の生命維持装置を開発するParagon Space Development Corporation(パラゴン・スペース・ディベロップメント・コーポレーション)と、リモートセンシング用の成層圏気球を開発するWorld View Enterprises(ワールド・ヴュー・エンタープライゼス)を設立した。2021年10月初めには、World Viewも、2024年までに成層圏へ気球で行く旅を提供すると発表した。こちらの料金は5万ドル(約570万円)とさらにお手頃だ。

今回実施されたSpace PerspectiveのシリーズA資金調達は、Prime Movers Lab(プライム・ムーバーズ・ラボ)が主導し、新たな投資家としてLightShed Ventures(ライトシェド・ベンチャーズ)、Explorer 1 Fund(エクスプローラー・ワン・ファンド)、Yamauchi no.10 Family Office(ヤマウチ・ナンバー10ファミリー・オフィス)が参加。他にもTony Robbins(トニー・ロビンズ)氏や、VC企業のE2MCとSpaceFund(スペースファンド)、Kirenaga Partners(キレナガ・パートナーズ)、Base Ventures(ベース・ベンチャーズ)、1517 Fund(1517ファンド)などが出資している。

画像クレジット:Space Perspective

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米宇宙軍がベンチャーキャピタル「Embedded Ventures」と提携し新たな研究開発プロジェクトを設立

かつて宇宙産業を支配していたのは、米国政府だった。米国政府で、いくつもの事業を限られた数の巨大航空宇宙企業に外注し、その技術を長期にわたる中央集権プログラムで利用してきた。爆発的な技術革新と一部にはベンチャーキャピタルと未公開株式のおかげで、米国政府は数ある顧客の1つとなった。しかし、そのままでいるつもりはない。

そのために、米国宇宙軍(USSF)のSpaceWERXオフィスは、設立11カ月のベンチャーキャピタル、Embedded Ventures(エンベデッド・ベンチャーズ)と提携し、国内の宇宙経済を発展させるとともに、国の利益を守るために利用できる研究開発機会の創出を目指す。

これはUSSFが共同研究開発契約(CRADA)と呼ばれるこの種の研究開発契約を、ベンチャーキャピタルと結んだ初めてのケースだ。また、米国政府がベンチャーキャピタルの慣行と資金調達モデルの利点を活かそうとする兆候の1つでもある。

元々CRADAは米国防総省(DOD)と、政府との協業を望むスタートアップとの間で利用されていた。このファンドに事業パートナーとして最近参加したMandy Vaughn(マンディー・ヴォーン)氏が、CRADAを推進するためのアイデアを提案した、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jenna Bryant(ジェナ・ブライアント)氏は言った。Embedded VenturesとWalter McMillan(ウォルター・マクミラン)中佐ら政府関係者との間で数回電話が交わされ「その後はご存知のとおりです」とブライアント氏は言った。

ベンチャーキャピタルにもDODにとってもこれまでに逃したチャンスはたくさんあったので、この5年契約の提携は少しでもその痛みを和らげるものになるだろう、とEmbeddedの共同ファウンダー、Jordan Noone(ジョーダン・ヌーン)氏がTechCrunchに語った。例えばベンチャーキャピタルは公共機関よりもずっとすばやく動くことができる。さらにVCは、防衛に利益をもたらす新たな新興技術の動向を察知する能力をもっている。

スタートアップもこの提携の恩恵を受けることができる。多くの若い企業にとって、米国政府と仕事をするためには、長い契約期間や厳しき規制されたプロセスなど複雑で威嚇的なプロセスがともなう。その多くは教育に行き着く。スタートアップは戦略的決断を下し、政府との契約に適合するように準備を進める。VCの支援が生かされるのはそこだ。

「このように軍民双方にとっての好機を支援することに対して、ベンチャーキャピタルコミュニティ反応は決して良いものではありません」とヌーン氏はいう。しかしそうした機会は、契約申請の障壁を越える意志を持つ会社にとって利益が大きい。

Embeddedにとって、一企業に賭ける可能性は、向こう側に米国政府という巨大な顧客がいる可能性がある場合の方がずっと高い。加えて、今後20年間主役を演じられる宇宙テクノロジーには、官民連携が必要になる可能性が高い、とヌーン氏はいう。SpaceXが、部分的に、NASAの投資によって種をまかれたのと似ている。

「ベンチャーキャピタル・コミュニティにエコシステムが出来上がり、そこで冷戦のさなかにシリコンバレーが誕生してテクノロジーを生み出してきました。それが今は誰もが消費者向けアプリばかり作っています」とヌーン氏はいう。「その間何が起きたのか、どうすればシリコンバレーが国家安全保障に関われるように舵を取り直せるのでしょう」。

EmbeddedとUSSFは定期的に顔を合わせて進捗について話し合い、その中で基準を設定する。これはCRADAプログラム下の新しいタイプの提携で、両者間に金銭の授受がないため、目標の一部は成功する提携はどのようなものかを定義して、将来再現できるようにすることにある。両社が共同投資する必要はないものの、協業の結果の1つがそうなる可能性はある、とEmbeddedの広報担当者は語る。

「業界の人たちはいつも、『みんなが一緒に働き、ベンチャーのペースで動くにはどうすればいいか』と話していますが、実際にやっている人はいません」とブライアント氏は付け加えた。「今すぐ何か行動することが私にとって重要なのです」

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ベゾス氏のBlue Originが最高齢記録90歳「カーク船長」を含む2度目の有人宇宙飛行に成功

Blue Origin(ブルーオリジン)は米国時間10月13日、俳優のWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏を含む4名のクルーを、テキサス州西部にある同社の施設から宇宙へ送り出し、無事に帰還させた。これで同社は2回中2回、有人飛行に成功したことになる。

NS-18と名付けられたこのミッションは、Blue Originにとって2021年5回目のロケット打ち上げであり、ロケット全体では18回目の打ち上げとなる。

今回のクルーには「スタートレック」のジェームズ・T・カーク船長を演じたことで最もよく知られているシャトナー氏、Blue Originの社員で同社のNew Shepard(ニューシェパード)ミッション&フライトオペレーション担当副社長を務めるAudrey Powers(オードリー・パワーズ)氏、Planet Labs(プラネット・ラボ)の共同設立者で現在はベンチャーキャピタルDCVCのパートナーであるChris Boshuizen(クリス・ボシュイゼン)博士、臨床試験ソフトウェア企業Medidata Solutionsの共同設立者であるGlen de Vries(グレン・デフリース)氏が含まれていた。

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90歳のシャトナー氏は、これまで82歳のWally Funk(ウォーリー・ファンク)氏(7月に行われた同社の前回の打ち上げで搭乗)が持っていた、最高齢宇宙飛行記録を更新した。

打ち上げは米国東部時間午前10時50分頃に開始され、ロケットは国際的に宇宙の境界線として認められているカルマンラインを通過した。この頃、クルーは数分間の無重力状態を経験した。クルーカプセルは約11分後、パラシュートを使って自律的に発射施設に着地した。ブースターも自律的に発射台付近に着陸した。

この打ち上げの成功は、急成長中の宇宙旅行業界で主導的な地位を確立したいと考えているBlue Originにとって大きなニュースだ。しかし、ビリオネアのJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が2000年に設立した同社にとって、この数週間は完全に順調と言えるものではなかった。9月末、21人の現役・元従業員が共同で、同社の職場はセクハラや安全への配慮が欠けていたと主張する書簡を公開したのである。

この文書は米連邦航空局(FAA)の目に留まったようで、FAAはTechCrunchに対し「FAAはあらゆる安全性に関する申し立てを真摯に受け止めており、現在情報を検討している」と述べた。

Blue Originは宇宙旅行市場において、今夏に独自の有人飛行を成功させたRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)の他、9月にInspiration4のクルーを3日間の旅で宇宙に運んだSpaceX(スペースX)などの競合他社との競争に直面している。

打ち上げの様子はこちらからご覧いただける。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

ブルーオリジンがカーク船長ら4人を宇宙に送り出す様子をライブで観よう、日本時間10月13日19時30分から

Blue Origin(ブルーオリジン)は、初の有人ロケットを軌道に乗せることに成功してからわずか3カ月、米国時間10月13日に再び打ち上げを行う準備を整えた。今回は、Blue Originの創業者兼CEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の代わりに、最高齢での宇宙飛行を目指す90歳のWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏が搭乗する予定だ。

NS-18ミッションは、テキサス州西部のバン・ホーン近郊にある同社の広大な発射施設「Launch Site One(ローンチ・サイト・ワン)」から離陸する予定だ。クルーは、同社のNew Shepardロケットに搭乗する。当初、打ち上げは米国時間10月12日に予定されていたが、米国時間10月10日、強風が予想されることからBlue Originのミッションオペレーションは、1日延期することを決定している。

NS-18ミッションのクルーを紹介しよう。

  • William Shatner(ウィリアム・シャトナー):「Star Trek(スタートレック)」のジェームズ・T・カーク船長を演じたことで知られる俳優
  • Audrey Powers(オードリー・パワーズ):New Shepardミッション&フライトオペレーション担当のBlue Origin副社長。2013年に入社し、同社の副顧問を務めた後、チームを離れていた
  • Chris Boshuize(クリス・ボシュウイズ):Planet Labsの共同設立者で、現在はベンチャーキャピタルDCVCのパートナー
  • Glen de Vries(グレン・デ・ヴリーズ):臨床試験ソフトウェア企業「Medidata Solutions」の共同創業者。2019年にMedidataを買収したフランスのソフトウェア会社「Dassault Systèmes」のライフサイエンスヘルスケア担当副会長でもある

打ち上げライブ配信は米国太平洋時間10月13日午前5時30分(日本時間10月13日午後19時30分)頃に始まり、その約1時間後に打ち上げが行われる予定だ。

クルーのボシュウイズ氏は、2020年のTCセッションにも参加してくれた。次のイベントは12月に開催されるので、ぜひご参加ください

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画像クレジット:Blue Origin

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Rocket Labが宇宙飛行ソフトウェア・ミッションシミュレーション企業ASIを45億円超で買収

Rocket Lab(ロケット・ラボ)は米国時間10月12日、米コロラド州を拠点とする宇宙ソフトウェア企業Advanced Solutions, Inc. (ASI)を4000万ドル(約45億4000万円)で買収したことを発表した。今回の取引にはアーンアウト条項に基づき、CY2021の業績に応じて最高550万ドル(約6億2000万円)の追加支払額が含まれる。ASIの専門分野は、誘導・航法・制御(GNC)ソリューションを含む宇宙船フライトソフトウェア、およびミッションシミュレーションとテストソフトウェアだ。この買収は、Rocket Labが宇宙システム部門を強化し、真の「エンド・ツー・エンド」宇宙企業になるための取り組みを強化するものだ。

Rocket Labは創業以来、打ち上げを主な事業としており、Electron(エレクトロン)軽量物運搬ロケットの製造と飛行に関する独自の専門知識により、新興の商業打ち上げ市場において独自の地位を確立している。また、2020年、Sinclair Interplanetaryを買収し、宇宙船のハードウェアコンポーネントの開発・製造という点で重要な能力を加えた。ASIの20年以上にわたる宇宙ソフトウェア分野での経験は、複数の軌道および惑星間のミッションに利用されており、Rocket Labがミッションの打ち上げだけでなく、計画、テスト、運用などの面でも顧客に提供できるサービスを強化するのに役立つ。

今回の買収条件では、ASIチームはコロラド州に残り、同社の創業者兼CEOであるJohn Cuseo(ジョン・キュセオ)氏が引き続き経営を担当し、既存の顧客との関係も維持される。またこれによりRocket Labは、官民ともに宇宙産業が盛んなコロラド州に拠点を置き、チームを成長させることができる。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ウォズニアック氏の宇宙企業「Privateer」は混雑化して危険な宇宙のGoogleマップを目指す

現在、地球低軌道上(LEO)には、壊れた衛星やロケットの破片、多段式ロケットや宇宙ミッションの残骸など、何百万個もの宇宙ゴミが散乱しているが、これを一掃することを目的としたベンチャー企業が次々と誕生している。Steve Wozniak(スティーブ・ウォズニアック)氏と共同で宇宙ベンチャーを設立したAlex Fielding(アレックス・フィールディング)氏によると、LEOの清掃は重要な課題だが、1つ問題があるという。宇宙ゴミ(スペースデブリ)の多くは、実際にどこにあるのかわからないということだ。

「軌道清掃企業は、地球低軌道上にあるほとんどの物体がどこにあるのか一致した意見がなく、それぞれの瞬間に3~400km程度の精度以上で把握することができません」とフィールディング氏はTechCrunchに語った。

フィールディング氏とウォズニアック氏は、新会社「Privateer」を設立して、この知識のギャップを解消しようとしている。これまでステルス状態にあったこの会社は、9月にウォズニアック氏がYouTubeにアップした1分間のプロモビデオへのリンクをツイートしたことで注目を集め、Privateerは宇宙空間の物体の清掃に力を入れるのではないかとの噂が広まった。

しかし、それは微妙に違っていた。「Privateerは実際には、宇宙をきれいにするという目標でスタートしたわけではありません」とフィールディング氏は説明する。「私たちは、宇宙のGoogleマップを作ることを目指してスタートしたのです」。

フィールディング氏とApple(アップル)の共同創業者ウォズニアック氏のコラボレーションは、今回が初めてではない。2人は2000年代初頭に、物体の物理的な位置を追跡する技術を開発する無線ハードウェア企業Wheels of Zeus(WoZ)を設立している。

「20年前、私たちがそれ(WoZ)を始めたとき、宇宙にあったものの半分はゴミでした」とフィールディング氏は語る。その後、状況はさらに悪化していった。「今の世界では、(軌道上には)もっともっと多くのものがあり、その中でも特に危険なものはほぼすべてが低軌道にあり、非常に高速で移動していて、ほとんどの場合よく追跡されておらず、理解されていません」。

宇宙ゴミの危険性は依然として存在する。5月、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士が、モジュールの1つに取り付けられたロボットアームに幅5mmの穴が開いているのを発見した。アームは機能していたが、ISSが衝突を避けるための操作をしなかったことから、当たった物体は、米国宇宙軍の宇宙監視ネットワークが追跡できないほど小さい軌道上の数百万個の物体の1つであると考えられる。

Rocket Lab(ロケット・ラボ)やSpaceX(スペースX)のような打ち上げ企業が、かつてNASAのような公的機関が独占的に行っていたサービスを今は提供しているのと同じように、Privateerはこうした膨大なデータギャップを埋められるかもしれない。

Privateerは、最初から早いペースで取り組みを進めている。同社は、2022年2月11日に「Pono 1」と名づけられた最初の小型衛星を打ち上げる予定だ。Pono 1の大きさは約3U(約30cm)で、非光学式センサー30個と光学式カメラ12個の合計42個のセンサーを搭載する。非光学式センサーは、4ミクロンの精度を実現する。衛星本体は炭素繊維を用いて3Dプリントで作られ、そうすることによりチタンと同等の剛性を持つ単一の固体部品になるとフィールディング氏はいう。推進剤の代わりに、磁気トルカという衛星姿勢制御用の電流を発生させる小型装置を使って方向を制御する予定だ。

Pono 1衛星は4カ月間だけ運用され、そのあと軌道離脱して地球の大気圏に戻り焼失する。2番目の衛星であるPono 2は、4月末に打ち上げられる。Privateerは、両機の打ち上げのためにすでに打ち上げ業者を決定し、必要な承認を得ている。

これらの打ち上げに加えて、Privateerは、軌道上のロジスティックスとサービスを提供するスタートアップであるAstroscaleとすでに協力関係にあり、現在、宇宙ゴミ除去衛星のデモを行っているとフィールディング氏は述べている。また、Privateerは、米国宇宙軍とのパートナーシップも締結した。

フィールディング氏は、宇宙の完全なGoogleマップを追求しないことは、単なる怠慢ではなく、命取りになるかもしれないという。「私は普段は楽観主義者ですが、今でも非常に恐れているのは、遅すぎたのではないか、2年以内に軌道上で最初の有人宇宙飛行士の犠牲者が出るのではないかということです。そう考える理由は、地球低軌道での(物体や活動の)急増にあります」。

関連記事:日本の宇宙スタートアップAstroscaleが宇宙で軌道上デブリをつかまえて放すデモに成功

画像クレジット:Maciej Frolow/Photodisc / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

最初の「宇宙製造施設」をSpaceXのFalcon 9ロケットで軌道に運ぶとVarda Space Industriesが発表

宇宙空間に製造施設を建設したいと考えているスタートアップ企業のVarda Space Industries(ヴァルダ・スペース・インダストリーズ)は、2023年に最初の宇宙機をSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットに載せて軌道に打ち上げる契約を結んだと、米国時間10月11日に発表した。

同社が初めて軌道に送り込む宇宙機の現物は、SpaceXのライバル会社であるRocket Lab(ロケット・ラボ)が製造する。Rocket Labは、Vardaのために後に続く2基の宇宙機も製造することになっている。これら3基の宇宙機には、Vardaが製作した2つのモジュール(微小重力下で製造を行うモジュールと、地球に持ち帰るための再突入カプセル)が備わる。

それぞれの宇宙機は、軌道上に3カ月間ほど留まり、約40〜60kgの製造した素材を、再突入カプセルで地球に持ち帰ることを目指している。

Vardaの目標は、宇宙空間でしか持続的に得ることができない微小重力の恩恵を、バイオプリントされた臓器や特殊な半導体などの革新的な材料の製造に活かすことだ。

カリフォルニア州トーランスを拠点とするこのスタートアップは、SpaceXのベテラン社員だったWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders Fund(ファウンダーズ・ファンド)のプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏が2020年11月に設立。以来、急速に成長してきた。2021年7月に4200万ドル(約47億5000万円)のシリーズA資金調達を発表したVardaは、2023年に2回、そして2024年に3回目の打ち上げを行うという意欲的な打ち上げスケジュールを計画している。

関連記事:無重力状態が続く「地球外」工場実現を目指すVarda Space Industries

Vardaの宇宙機は、Falcon 9のライドシェアミッションで打ち上げられる数多くの物体の1つである。宇宙に行くためのコストを顧客間で分散させ、実質的に相乗りで宇宙に到達することを可能にするライドシェア・ミッションは、新しい、そして儲かるプログラムだ。SpaceXは太陽同期軌道に最大200kgのペイロードを送りたい個々の顧客が支払う打ち上げ費用を、100万ドル(約1億1300万円)まで削減することを約束している。

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マスク氏はスペースXの新都市「スターベース」の発電所とロケット燃料に必要な天然ガスをどうやって調達する?

SpaceX(スペースX)が世界最大のロケットのテストを開始する前に、ある環境関連の文書にFAA(米連邦航空局)の承認を得る必要がある。そこに、燃料の調達先についての重要な詳細が欠けていると専門家は指摘する。

FAAは9月、SpaceXのStarship(スターシップ)とSuper Heavy(スーパーヘビー)ロケットのプログラム環境アセスメント(PEA)の草案を発行し、パブリックコメントを募った。Elon Musk(イーロン・マスク)氏は、スターシップとスーパーヘビーロケットをまもなく軌道に乗せ、その後、火星に送ることを目指している。142ページに及ぶ草案の対象は、マスク氏が新都市「スターベース」の建設を希望しているテキサス州ボカチカにおける、SpaceXの施設での建設と日常業務だ。飛行前のオペレーション、ロケットのテスト、打ち上げと着陸、燃料・水・電気の供給などが含まれる。

新しい前処理システムで、天然ガスを精製・冷却し、スターシップとスーパーヘビーロケット用の液体メタン燃料にする。その上、新しい250メガワットのガス火力発電所向けに、さらに多くのガスが必要となる。この規模の発電所は、通常10万以上の世帯に電気を供給し、コストは数億ドル(数百億円)に上ることもある。PEAはロケットの打ち上げについて大きく取り上げているが、新しい発電所についてはほとんど触れていない。特に、1日に必要な数千万立方フィートのガスが、メキシコ国境近くにあるSpaceXの遠隔施設にどのように運ばれるのかが明らかにされていない。

バーモント大学ロースクールのPat Parenteau(パット・パレントー)教授は「PEAにこのような記述がないのは異例であり、連邦政府の国家環境政策法(NEPA)に違反している可能性があります」という。

「NEPAは、いわゆる『Look-before-You-Leap(跳ぶ前に見よ)』法です」とパレントー教授は話す。「連邦政府の意思決定者に、ある行動が環境に与える影響と、それを回避する方法を知らせるための法律です」。

発電所への天然ガス運搬には一般的にパイプラインを利用する。連邦政府機関の関係者がTechCrunchに語ったところによると、SpaceXは2021年の初め、リオ・グランデ・バレー国立野生生物保護区を通る、今は使用されていない天然ガスパイプラインの再利用について問い合わせてきたそうだ。

「彼らはメタンの輸送に、現在彼らが行っているようにトラックを使うのではなく、パイプラインを再利用したいと考えています」と匿名の関係者は述べた。

しかし、この関係者と州の記録によると、そのパイプラインは2016年に永久に放棄された。その関係者がTechCrunchに語ったところによると、廃止されたパイプラインには現在、テキサス大学リオグランデバレー校のインターネット接続用の光ケーブルが設置されているという。

大規模発電所と定期的なロケット打ち上げの両方を支えるのに十分な天然ガスをトラックで運ぶのは、かなりの大仕事になる。TechCrunchが話を聞いたあるエンジニアによると、毎年タンカーで何千回もの運搬が必要になるという。

2021年初めにブルームバーグが最初に報じたように、SpaceXは自らガスを掘削することに興味があるとさえ表明している。同社は、放置された複数のガス井の所有権をめぐる争いの中で「SpaceXには、輸送やガス市場への販売に依存しない、異なる経済的な動機で天然ガスを利用する独自の能力があります」と記している。

SpaceXがどの方法を選択するかにかかわらず、環境への影響はPEAで開示されるべきだったとパレントー教授はいう。

「メタンは非常に強力な温室効果ガスです。裁判所は、メタンが絡むプロジェクトを誰かが提案する際には、ガス井、パイプライン経由の輸送、ガスが燃やされる下流での影響までを考慮しなければならないとしています」。

スターベースについて調査している環境エンジニアのブログによると、PEAでは、熱酸化装置、アンモニア貯蔵タンク、ガスフレア焼却装置など、ガス発電所やガス処理施設によくある設備についても言及していない。これらはすべて、二酸化炭素排出量や大気汚染など、環境に影響を与える。

FAAは次のような声明を出した。「評価書の草案は、米国家環境政策法など適用される環境関連法令を順守して作成されました」。

SpaceXはコメントの要求に応じなかったが、マスク氏は米国10月7日木曜日に開催されたTesla(テスラ)の株主総会で、同社の化石燃料への依存について触れた。「人々は炭素税がテスラの利益になると言っています」と同氏は発言した。「私は、『それはそうですが、SpaceXには不利です』と言いました」と述べた。そして、大気中のメタンは最終的に二酸化炭素に分解されることを指摘した。「メタンのことはあまり気にしなくていいです」と締めくくった。

ガス発電所の正確な位置は不明だが、広さは約5.4エーカー(約2万2000平方メートル)、高さは最大150フィート(約46メートル)の構造物で、昼夜を問わず1年を通して連続して稼働する。また、PEAによると、小規模(1メガワット)の太陽光発電所もあり、SpaceXはそれを拡張したいと考えている。

同社がガス発電所を必要としているのは、新しい海水淡水化プラントを稼働させるためだ。このプラントでは、打ち上げ時の防音や消火のために、年間数百万ガロン(数百万リットル)もの真水を生産する。また、空気から液体酸素を作るために、大量の電力も必要となる。

適用される連邦規則はNEPAだけではない。パレントー教授と別の専門家によると、250メガワットの発電所は通常、米大気浄化法の下で、重要な新規大気汚染源として認定される。そうなれば、長期にわたる環境審査が別途必要とされる。

「NEPAが制定されてから50年以上が経過しているにもかかわらず、このようなことをする機関があるとは驚きです」とパレントー教授はいう。「誰も気づかないことを期待しているのではないでしょうか」。

11月1日にパブリックコメント期間が終了すると、FAAは最終版のPEAを発行し(安全性に関する発見事項を付す可能性はある)、SpaceXに許可を出すか、あるいは通常は数年を要する、より詳細な環境影響評価書(EIS)を作成する意向を表明する。

最終版PEAがNEPAや大気浄化法の要件を満たしていなければ、地元のコミュニティや環境団体がFAAにEISの作成を求める訴訟を起こし、スターシップの軌道への打ち上げがさらに遅れる可能性がある。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Mark Harris、翻訳:Nariko Mizoguchi

筑波大学発の宇宙領域スタートアップ「ワープスペース」が資金調達、累計調達額が約10億円に

筑波大学発の宇宙領域スタートアップ「ワープスペース」が資金調達、累計調達額が約10億円に

筑波大学発の宇宙領域スタートアップ「ワープスペース」は10月6日、シリーズAラウンドのファイナルクローズとなる、第三者割当増資による資金調達を発表した。引受先は、SBI 4&5投資事業有限責任組合(SBIインベストメント)、みずほ成長支援第4号投資事業有限責任組合(みずほキャピタル)など。創業からの資金調達総額は約10億円となった。

今回の資金調達をもって、民間として世界初となる商用光通信衛星であるとともに、世界初の衛星間光通信ネットワークサービス「WarpHub InterSat」を構成する最初の光通信衛星「WARP-02」の開発を加速させる。また、今回みずほキャピタルの運営するVCからの出資により、ワープスペースの株主に3大メガバンクすべての系列ファンドが揃うことになった。

筑波大学発の宇宙領域スタートアップ「ワープスペース」が資金調達、累計調達額が約10億円に

ワープスペースの「WarpHub InterSat」小型光中継衛星群(イメージ)

2016年設立のワープスペースは、前身の大学衛星プロジェクトを含め、これまで2機の通信衛星を打ち上げている。宇宙や人工衛星に関する高い専門性に加え、JAXAをはじめとする研究機関とのパートナーシップ、つくば研究学園都市が保有する豊富な実験・試験設備などを強みに、WarpHub InterSatの実現を目指している。

2023年の実現を目指すWarpHub Intersatは、世界初となる小型光中継衛星による衛星間の光通信ネットワークサービス。地上から500~800キロの低軌道では地球観測などを行う人工衛星の数が爆発的に増えており、WarpHub Intersatによって地上とこれら衛星との間での常時高速通信が可能になり、より多くの観測・センシングデータをリアルタイムに近い形で取得・利用できるようになるという。

アラブ首長国連邦が2028年にアステロイドベルトに探査機打ち上げ、小惑星への着陸を目指す

アラブ首長国連邦(UAE)の宇宙機関は、火星と木星の間にある小惑星帯に探査機を送り、2030年代初頭には最終的に小惑星に着陸させることを目指している。これはアラブ首長国連邦の民間宇宙企業にとって、大きな弾みがつくミッションとなることは間違いない。

このミッションは2028年に打ち上げが予定されている。そこから宇宙機は、長く曲がりくねった旅に出る。5年間で36億キロメートルの距離を移動し、金星と地球をブーメランのように回りながら十分な速度を得て、最終的には2030年に火星の先にある小惑星帯に到達する予定だ。UAEでは、2033年に探査機を小惑星に着陸させることを目指している。これは2014年に宇宙機関を設立したばかりの国にとって、野心的な目標だ。

これまで、NASA、欧州宇宙機関(ESA)、そして日本の宇宙機関であるJAXAが、宇宙機を小惑星に着陸させている。今度のミッションが成功すれば、UAE宇宙局はこれらの少数のグループに加わることになる。その明確な科学目標は来年発表される予定だが、探査機が収集するすべてのデータは、宇宙の起源についての理解を深めるのに役立つ可能性がある。これらの小惑星は、太陽系が形成されたときの天空の残り物であると考える科学者もいるからだ。

今回のプロジェクトは、国内の宇宙産業の発展を目指しているUAEにとって、最も新しく最も意欲的な取り組みとなる。重要なのは、UAEが契約や調達の優先権を与えるとしている首長国連邦の企業が、このプロジェクトから利益を得られる立場にあることだ。

UAEは2020年7月、Emirates Mars Mission(エミレーツ・マーズ・ミッション)の「Hope(ホープ)」探査機を打ち上げ、2021年の2月には火星周回軌道へ乗せることに成功した。この探査機は火星を1年(687日)かけて周回し、火星の大気に関するデータを収集することになっている。

また、UAEは2022年に「Rashid(ラシッド)」と名付けられた重量10キログラムほどの小型月面探査車を、月へ送ることも予定している。この探査車は、カナダの民間企業3社の技術とともにペイロードとして、日本の宇宙ベンチャー企業であるispace(アイスペース)の「HAKUTO-R(ハクトR)」ミッションのランダーで月面に輸送される予定だ。

関連記事:日本の宇宙企業ispaceの月着陸船がカナダ宇宙庁とJAXAからペイロード輸送を受託

UAE宇宙庁のSarah Al Amiri(サラ・アル・アミリ)長官によれば、この最新のミッションは、火星へのミッションに比べて「5倍ほど複雑になる」という。その新たなレベルの難しさについて、UAEは声明の中で「宇宙機の設計とエンジニアリング、惑星間航行、複雑なシステム統合」に加えて、宇宙機の通信システム、電力システム、推進システムに求められる性能も高くなると述べている。

画像クレジット: ESA/Rosetta/NAVCAM Flickr under a CC BY-SA 3.0 license. (Image has been modified)

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

ロシアの映画監督と女優がISSに到着、12日間滞在し軌道上での映画撮影に挑戦

Handout / Reuters

2020年、NASAはハリウッドスターのトム・クルーズがSpaceXの宇宙船で国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗し、宇宙での映画撮影を行う計画があることを認めていましたが、ロシアはその計画から”初”の文字を奪い去るつもりです。10月5日、ロシアの映画監督と女優ら撮影クルーが、ソユーズ宇宙船で映画『The Challenge』の撮影のためにISSに到着しました。映画クルーの滞在期間は12日間の予定です。

この映画は、宇宙飛行士の命を救うために国際宇宙ステーションに派遣されたロシア人医師の奮闘を描くという内容とされます。監督のクリム・シペンコはコメディ作品『Son Of A Rich』を(ロシア国内で)大ヒットさせた実績があり、女優のユリア・ペレルシドは映画だけでなく舞台での経歴も持つとのこと。両氏は打上げに先だって、宇宙飛行士が受ける訓練をこなしており、その様子はロシアのテレビでも報道されていました。

ちなみに、ロシアの映画クルーは12日間で再びソユーズに乗って地上に戻りますが、宇宙飛行士でない民間人のISS滞在は今後も続きます。12月には、日本の前澤友作氏と、前澤氏が設立した「スペーストゥデイ」社の映像プロデューサーの平野陽三氏が、米国の宇宙旅行斡旋企業「Space Adventures」を通じて予約したソユーズに搭乗し、やはり12日間滞在します。

そして2022年2月下旬には、SpaceXのCrew Dragonのシートを購入した3名を含むクルーがISSに向かう予定になっています。

最近は宇宙を舞台とする映画でISSが描かれることも多く、その再現度も目を見張るものがありますが、さすがにISSの”現場”で撮影した映像が劇場用映画に使われるのはおそらく初。どのような出来栄えになるのかは気になるところです。

(Source:New York TimesEngadget日本版より転載)

NASAが「アルマゲドン」のような小惑星軌道変更ミッションの打ち上げを11月23日に予定

NASAが、最もハリウッド的なミッションである「Double Asteroid Redirection Test(二重小惑星軌道変更実証実験)」の打ち上げ日を決定した。これは基本的に映画「Armageddon(アルマゲドン)」の予行演習だ。映画とは違って、核兵器や石油掘削機、Aerosmith(エアロスミス)は登場しないものの、これは小惑星の軌道を大幅かつ予測可能な方法で変化させることができるかどうかについての実践的なテストとなる。

惑星防衛調整局(!)が管理するこのDARTミッションでは、比較的近くにあるディディモス(Didymos)連星と呼ばれる二重小惑星に、一対の宇宙機を送り込む。この二重小惑星には、直径780メートルの大きな惑星(これがディディモス本体)と、その軌道上に直径160メートルの小さな惑星がある。

この小さい方の惑星が、地球に衝突の脅威を与える典型的な種類の小惑星(この大きさの小惑星は増えており、観測が難しい)であるため、これに約500kgの宇宙機を6.6km/sの速度で衝突させ、その軌道を変更させる可能性を試すのだ。これによって小惑星の速度はほんの数パーセント変わるだけだが、その軌道周期には大きな影響を与えることになる。それがどの程度の影響を与えられるかを正確に把握することは、いつか将来、地球への衝突を避けるために小惑星の軌道を変更させるミッションに役立つが、当然のことながら、宇宙に浮かぶ岩石に宇宙機を衝突させることに関する既存の科学はあまりない。

小惑星に衝突させるDART機に同行するもう1台の宇宙機は、LICIACube(Light Italian CubeSat for Imagine Asteroids、小惑星画像用軽量イタリア製キューブサット)と呼ばれ、先週最後の仕上げが終わったばかりだ。こちらは作戦の直前に切り離され、衝突の瞬間に飛行しながら「結果として生じる噴出物と、おそらく新たに形成される衝突クレーター」の撮影を試みる予定だ。

これが非常にエキサイティングで興味深いミッションであることは間違いないが、当初予定されていた2021年夏の打ち上げウィンドウは延期され、11月23日が新たな打上げウィンドウの初日となった。DARTは米国太平洋標準時の11月23日午後10時20分に、南カリフォルニアのバンデンバーグから、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで打ち上げられる予定だ。

「Osiris-Rex(オサイリス・レックス)」や日本の「はやぶさ2」など、地球の宇宙機関は小惑星に手が届くようになってきた。ディディモス連星攻撃計画については、打ち上げに向けてより詳細な情報が得られるようになるだろう。

関連記事:はやぶさ2が小惑星タッチダウンに成功、弾丸射出しサンプルリターンミッション実施

画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

北海道スペースポートHOSPOがCAMPFIREと協定、「宇宙のまちづくり」のためクラウドファンディングによる資金調達開始

北海道スペースポートHOSPOがCAMPFIREと協定を結び「宇宙のまちづくり」のためクラウドファンディングによる資金調達開始

北海道の東部海岸に面する大樹町に位置する北海道スペースポート「HOSPO」(ホスポ)を推進する北海道大樹町とSPACE COTANは10月4日、CAMPFIREとの3者間パートナーシップ協定を結び、クラウドファンディングによる資金集めを開始すると発表した。

「宇宙のシリコンバレー」を目指して、スペースポートを中心とした地域づくり、町づくりを進めるHOSPOプロジェクトは、これまで企業版ふるさと納税で、25社から2億5330万円の資金提供を受けているが、個人でも支援したいとの声を受けて、数々のクラウドファンディングを実施することにした。第1弾は「【北海道スペースポート】HOSPO LC-1クルーとして共に宇宙を目指そう!」で、5000円を寄付するとリターンとしてHOSPOプロジェクトの仲間「HOSPO LC-1クルー」になれるというもの。集めた資金はHOSPOのPR・営業・観光などの商品開発、HOSPO関連事業に使われる。

このほかに予定されているクラウドファンディングは、北海道コンサドーレ札幌との限定コラボTシャツがもらえるコース(1万6000円)、大樹町の特産品がもらえるコース(2万円)、ロケット射場に名前が刻めるコース(3万円)、ホリエモンとの宇宙交流イベントに参加できるコース(5万円)、LC-1の竣工式でテープカットができる権利がもらえるコース(100万円)、さらにはインターステラテクノロジズのロケットZEROを打ち上げる権利がもらえる10億円のコースなどもある。

HOSPOは2021年4月から本格稼働し、すでに最初のロケット射場「LC-0」は、JAXAや民間ロケット企業、大学などの航空宇宙実験に利用されている。2023年には人工衛星打ち上げロケット用の射場「LC-1」が稼働し、現在ある1000m滑走路をスペースプレーン用に300m延伸する計画もある。