米民主党議員、ターゲティング広告を大幅に制限する新プライバシー法案を提出

米連邦議会の民主党議員3人が米国時間1月18日、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)、大量に蓄積した個人情報を活用しターゲティング広告で収益を上げているその他のデータブローカー企業に不利益をもたらし、オンライン広告のあり方を劇的に変えようとする新しい法案を提出した。

この法案「Banning Surveillance Advertising Act(監視広告禁止法)」は、カリフォルニア州のAnna Esho(アンナ・エシュー)議員とイリノイ州のJan Schakowsky(ジャン・シャコウスキー)議員によって下院に、ニュージャージー州のCory Booker(コリー・ブッカー)議員によって上院に提出された。テック企業がユーザーに広告を提供する方法を大幅に制限し、個人情報の使用を全面的に禁止するものだ。

この法案が可決された場合「人種、性別、宗教などの保護された区分情報、およびデータブローカーから購入した個人データ」に基づくターゲティングはすべて禁止される。ただしプラットフォームは、都市や州レベルの一般的な位置情報に基づいて広告を表示することができ、また、ユーザーが利用しているコンテンツに基づく「コンテキスト広告」も認められる。

この法律が施行されれば、米連邦取引委員会(FTC)と州検事総長が違反行為を取り締まる権限を有することになり、故意に違反した場合には1件につき最高5000ドル(約57万円)の罰金が科される。

エシュー議員はこう述べている。「『監視広告』のビジネスモデルは、広告ターゲティングを可能にするために個人情報を収集し囲い込むという不適切な行為を前提としています。この悪質な慣行は、オンラインプラットフォームが社会に多大なコストをかけてユーザーのエンゲージメントを追い求めることを可能にし、誤った情報、差別、ライバル陣営を支持する有権者の弾圧、プライバシーの侵害など、多くの害悪を助長しています」。

本日、私は「監視広告禁止法」を@RepAnnaEshooと@RepSchakowskyとともに提出しました。この法律により、広告主は個人のオンライン行動を利用して利益を得ることを止めざるを得なくなり、その結果、私たちのコミュニティはより安全になります。

ブッカー上院議員は、ターゲット広告モデルを「略奪的で侵略的」と呼び、ソーシャルメディアプラットフォーム上で偽情報や過激主義を悪化させる慣行であると強調した。

また、検索エンジンのDuckDuckGo(ダックダックゴー)や、ProtonMailを開発したProton(プロトン)など、プライバシーに配慮した企業が、Electronic Privacy Information Center(EPIC、電子プライバシー情報センター)、Anti-Defamation League(名誉毀損防止同盟)、Accountable Tech、Common Sense Media(コモン・センス・メディア)などの団体とともにこの法案を支持した。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」提供

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始

広告クリエイティブ運用型クラウド「リチカ クラウドスタジオ」を運営するリチカは1月19日、ショートムービープラットフォームの「TikTok」(ティックトック)において、TikTok For Businessの監修のもと「運用型クリエイティブパッケージ」の提供を開始すると発表した。

TikTok For Businessは、広告代理店や制作会社を通さずにTikTokに広告を出稿できるセルフサーブ型広告のプラットフォーム。企業・ブランドと関心事や新しい興味の対象を探すオーディエンスを結びつけることで、広告の枠組みを超えたコミュニケーションを実現させ、認知拡大や顧客獲得といったビジネス課題にアプローチする。

リチカ クラウドスタジオは、デジタル広告やSNS用途で動画や静止画を量産・運用できる「運用型クリエイティブクラウド」。配信面に最適化したクリエイティブを制作・検証・改善が可能で、大手事業会社や広告代理店を中心に400社以上に導入されている。

TikTokはユーザー数の増加とともに広告媒体としての需要も高まっているものの、成果に結びつく広告クリエイティブの研究はなされておらず、最適解が見つからないという課題があった。その状況を受けリチカは、TikTok For Businessの監修のもと、今回の「運用型クリエイティブパッケージ」の提供に至った。TikTokへの出稿を希望する広告主に対してリチカ クラウドスタジオを活用し、TikTokに最適化したクリエイティブを制作。大手事業会社や広告代理店のデジタルマーケティング支援を行ってきた実績を元に、成果につながる広告クリエイティブを提供する。

以下は、広告クリエイティブのサンプル。

広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始広告クリエイティブ運用クラウドのリチカがTikTok for Businessと連携、「運用型クリエイティブパッケージ」を提供開始

テスラの「完全自動運転」を激しく批判するニューヨーク・タイムズ紙の全面広告

米国時間1月16日日曜日のNew York Times(ニューヨーク・タイムズ)紙に掲載された全面広告は、Tesla(テスラ)の「Full Self-Driving(フルセルフ ドライビング)」を「フォーチュン500企業が販売した史上最悪のソフトウェア」と評し「フォーチュン500企業の他の商品で、8分ごとに致命的誤作動をするソフトウェアを見つけた最初の人物に、問題のソフトウェアの価格と同じ1万ドル(約114万5000円)を提供すると募った。

この広告を出稿したThe Dawn Project(ザ・ドーン・プロジェクト)は、最近設立された団体で、軍隊的ハッカーの標的になりうる重要システムの安全でないソフトウェアを禁止することを目的にしている。この広告はTeslaのFull Self-Driving(FSD)を「致命的誤作動が1000分の1以下になるまで」公道から排除するキャンペーンの一環だ。

反対運動団体の創設者であるDan O’Dowd(ダン・オダウド)氏は、Green Hill Software(グリーンヒル・ソフトウェア)という埋込み型安全およびセキュリティシステム向けオペレーティングシステムとツールを開発する会社のCEOでもある。同社はCESで、BMWの製品、iX は同社のリアルタイムOSと安全性ソフトシェアを使用していると話し、同社の新しい無線配信型ソフトウェア製品とデータサービスを自動車電子システム向けに提供することも発表した。

The Dawn Projectのファウンダーによる競合的バイアスの可能性はさておき、Teslaオーナーが都市道路で利用できる先進ドライバー支援システムであるTeslaのFSDベータソフトウェアは、システムの不具合を示す一連のYouTube動画が急速に広まったことで、ここ数カ月間監視の目を向けられている。

NYT紙の広告が掲載されたのは、カリフォルニア州DMV(自動車管理局)がTeslaに対し、専門のセーフティーオペレーター(非常時対応ドライバー)ではなく、一般消費者による同社のテストプログラムが自動運転規則の対象外であるという同局の意見を「再検討する」と伝えた数日後のことだった。カリフォルニア州DMVは、州内における自動運転試験を規制しており、Wyamo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)などのロボタクシーの運用にむけて開発、テストを行っている他の企業に対して、衝突事故あるいは「disengagements(自動運転の解除)」と呼ばれるシステム障害を報告することを義務づけている。Teslaはこれらの報告書を一度も提出したことがない。

その後TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏はTwitter(ツイッター)で曖昧な反応を見せ、TeslaのFSDは公開以来事故も負傷者も出していないと主張した。現在、米国幹線道路交通安全局(NHTSA)は、Tesla Model Yのオーナーによる、自車がFSDモード作動中に左折した際誤った車線を走り、その結果他の車に衝突されたという報告書を精査している

仮にそれがFSDにとって初めての事故だったとしても、Teslaの全車両に標準搭載されているADAS(先進運転支援システム)、Autopilot(オートパイロット)は、すでに10件前後の衝突事故に関わっている

関連記事:米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け

NYTの広告とともに、The Dawn Projectは、自身の主張のファクトチェック(事実検証)を公表し、21件計7時間のYouTube動画のデータを研究した独自のFSD安全分析を紹介している。

分析した動画は、ベータバージョン8(2020年12月公開)および10(2021年9月公開)のもので、著しくポジティブあるいはネガティブな動画は、偏りをは減らすために研究対象から排除している。それぞれの動画は、人間のドライバーが運転免許を所得するために合格する必要のあるカリフォルニア州DMV運転技能評価に基づいて採点された。カリフォルニア州のドライバーが運転試験に合格するためには、車線変更の際に方向指示器を使用する、あるいは他の車両との安全な車間距離を維持するなどの運転操作上の誤りが15回以下、衝突や赤信号無視などの致命的な過ちはゼロでなくてはならない。

同団体の調査によると、FSD v10は1時間以内に平均16回の操作誤り、8分ごとに致命的運転誤りを犯した。v8とv10の間の9カ月間に改善があったことを分析結果は示しているが、現在の改善ペースでは、人間ドライバーの事故頻度を達成するまでに、あと7.8年(AAAデータによる)から8.8年(交通局データによる)を要する。

Dawn Projectの広告には、割り引いて捉える大胆な主張がいくつかあり、それは真剣に受け止めるには統計的基準からよりはるかにサンプル数が少ないからだ。しかし、もしこの7時間のビデオ映像が、平均的FSD運転を代表しているとすれば、発見結果はTeslaのFSDソフトウェアの大規模な問題の兆候を示すものであり、果たしてTeslaはこのソフトウェアを規制されることなく公道でテストしてよいのか、というより大きな問題につながってくる。

「私たちは、家族を公道を走る数千台のTesla車の実験用ダミー人形にする申込みをしませんでした」。

国の規制当局は、Teslaおよび同社のAutopilotとFSDベータソフトウェアシステムに対して行動を起こし始めている。

2021年10月、NHTSAはTeslaに2通の書簡を送り、同社のFSDベータを早期利用するオーナーに対する秘密保持契約の使用、および標準Autopilotシステムで、本来リコール対象とすべき問題の解決に無線ソフトウェアアップデートを使用する決定に対して説明を要求した。また、Consumer Reports (コンシューマーレポート)は2021年夏に声明を発表し、FSDバージョン9ソフトウェアアップグレードは公道で使用するには十分安全ではなく、同氏が独自にソフトウェアをテストする予定であると語った。そして先週、同誌はテスト結果を公開し「Teslaのカメラベースのドライバー監視システムは、ドライバーを路上に注意を向けさせることに失敗している」ていることを指摘した。同誌は、それに対してFord(フォード)のBlueCruise(ブルークルーズ)はドライバーの視線がそれた際に警告を発行していると報告した。

関連記事:米道路交通安全局がテスラに対し、秘密保持契約と無線ソフトウェアアップデートについて説明を要求

それ以来、Teslaは同社v10ソフトウェアの数多くの異なるバージョンを公開した。まもなく10.9が登場するはずで「都市 / 幹線道路向け単一ソフトウェアスタック」および「数多くの構造上のアップグレード」をともなうバージョン11は2月に提供される予定だ。

最新バージョン10.8のレビューはさまざまで、ずっとスムーズになったというオンラインコメンターがいる一方、多くの人たちがこのシステムを使うこと自体に自信が持てないともいっている。RedditのTesla Motors subredditで最新FSDバージョンをレビューするスレッドでは、複数のオーナーがソフトウェアに対する苦情を書いていて「絶対に一般公開できる状態ではない」と書いた人さえいる。

別のコメント人は次のようにいう。「完全に誰もいない直線道路に右折するのに時間がかかりすぎる。その後左折する時には理由もなくためらい続けて走行レーンを妨害し、次の道に入ると突然加速したかと思うと、同じくらい急に減速して、それは制限速度45mph(約72.4km/h)の道路を25mph(約40.2 km/h)だと思って速度を考え直したからだった」。

このドライバーは、最終的に完全にシステムを切り離すしかなかった。なぜなら「信号があり全方向の見通しが良くてまったく交通のない」普通の交差点で行うべき左折をシステムが完全に無視したからだったと語った。

The Dawn Projectのキャンペーンは、FSDは「最悪の時に誤ったことをする可能性があります」というTeslaの警告を大きく取り上げた。

「最悪の時に誤ったことをするかもしれない安全最重要製品が市場に出回ることを許せる人などいるでしょうか」と同団体はいう。「それは欠陥の定義なのではありませんか?Full Self-Drivingはいますぐ私たちの路上から取り除かれるべきです」。

Teslaからも、The Dawn Projectからもコメントは得られていない。

画像クレジット:The Dawn Project

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ミレニアル世代やZ世代を惹きつけたいインスタ風アプリSupernovaはSNS大手の「倫理的オルタナティブ」になれるか

Supernova(スーパーノヴァ)は新しいアプリで、Apple(アップル)とAndroid(アンドロイド)のアプリストアで公開されており、広告収入の大部分を慈善事業に寄付している。Instagram(インスタグラム)とFacebook(フェイスブック)の新しい「倫理的オルタナティブ」と謳う同アプリに、チャンスはあるだろうか?

Facebookがパノプティコン(一望監視施設)のような刑務所になり、米国政府の権力を覆そうとするプライベートグループに参加することを軽々しく提案するのを何年も見てきたか、あるいはInstagramをドゥームスクローリング(ネット上で悲観的なニュースや情報を読み続けること)して、自身や10代の子どもたちのメンタルヘルスが徐々に損なわれていくのを経験した後であれば、多くの人々は、より高潔な原則を持つ代替のソーシャルメディアプラットフォームに大きな満足を覚えるだろう。こうした代替のいくつかは何年にもわたって現れたり消えたり(RIP Path)しているが、Zuckerberg(ザッカーバーグ)氏の悪徳のような支配から大衆を遠ざけることに成功した者はいない。

おそらく人々は忘れてしまっているかもしれない。Facebook(その延長線上でInstagram)がこれほど大きい唯一の理由は、広告収入がこうした無料サービスを支えているからだということを。もし広告主が、十分に魅力的なアプリでソーシャルメディアの群衆を取り込むことができる他の場所を持っていれば、FacebookとInstagramはある程度プレッシャーを感じ始めるだろう。少なくとも、理論上はそうなっている。

広告業界を知り尽くしている英国の起業家が、ミレニアル世代やZ世代にアピールするために設計された独自のソリューションを使って、これらの大手企業に対抗しようと計画している。これらの世代は一般的に、前世代よりもはるかに大義を支援したいという欲求に導かれている。

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏(画像クレジット:Supernova)

Supernovaの創業者でCEOのDominic O’Meara(ドミニク・オメーラ)氏は、かつてSaatchi(サーチ)に在籍した広告の第1人者で、英国アカデミー賞の受賞歴もあり、同スタートアップを主に自己資金で運営している。同氏は次のように語っている。「ASICS(アシックス)のようなスポンサーやMQのような慈善団体は、このアプリに備わる、ユーザーの安全を中心に据えた包括的なソーシャルネットワークという要素を評価して、今回のローンチに参加することを選んでいます。Supernovaが補完するのはまさにそこに存在するギャップであり、私たちは今後数カ月から数年のうちにこのギャップを縮小し、社会に成果を還元するソーシャルネットワークとなることを目指しています」。

「私たちの技術とアクセシビリティは、ソーシャルメディアと広告の力を使って世界がお互いに心から助け合うこと、そしてそれらの行動がどこでどのように役に立っているのかを常に透過的かつ正確に見ることを可能にします」と同氏は付け加えた。

Supernovaはこれを、同社のプラットフォーム上で有害性を防止することにより実現しようとしており(その方法については後述)、ユーザーが「安全かつセキュアであり、友人たちとの前向きで、刺激的で、人生を肯定するようなインタラクションを持つことを推奨されていると感じることができ【略】ヘイト、人種差別、ホモフォビア(同性愛嫌悪)、極端な政治思想などを目の当たりにすることのない場所を作ろうとしている」。

ビジネスモデルはシンプルである。同社は広告収入の60%を世界の慈善事業に寄付し、寄付金は気候変動、動物福祉、緊急事態の対応、健康と福祉、ホームレス支援、人権、メンタルヘルス、海洋清掃の各項目について、会員の希望に応じて配分される。どの要因が最も多くの資金を得るかは、ユーザーによって決定される。

Supernovaによると、世界のソーシャルメディア広告市場の1%以上を獲得できれば、年間6億ポンド(約925億円)を慈善団体に寄付することになるという。対照的に、FacebookとInstagramからの相当額は510億ポンド(約7兆9000億円)となる。しかし当然ながら、その現金は現在すべてザック氏の金庫に入っている。

FacebookやInstagramがヘイトスピーチを禁止していることはよく知られているが、もちろん、実際に行われることはほとんどないことも私たちはわかっている。Supernovaはまず最初に、自社のコミュニティ基準に基づいて「100%人間によるモデレーション」を行うとしており、さらにはユーザー向けに完全な憲章を約束している。

Supernovaアプリ(画像クレジット:Supernova)

どのようなアプリなのだろうか?

Instagramとの類似点はすぐにわかるだろう。ユーザーはコメントやメッセージングとともに写真やビデオを共有できる。ユーザーはフォローすることもフォローされることも可能である(1つか2つのバグが残っており、筆者のプロフィールは選択していないユーザーを自動的にフォローしているようだ)。

ユーザーはアカウントに対して、非公開、検索、フォロー、不要なユーザーのブロックなど、私たちが慣れ親しんできたソーシャルメディアツールのほとんどを設定することもできる。

ここで異なるのは、基礎となる仕組みである。

まず、ユーザーは自身のプロフィールで、Supernovaが広告パートナーから調達した資金を使って支援したい慈善分野を指定できる。

次に、ユーザーにナルシシズムを誘発することなく「Like」が慈善事業の広告収入の一部を得るための票のような働きをする。ユーザーの投稿に「Like」がついた場合、彼らが選んだ慈善団体は寄付として「Supernova Action Fund(Supernova活動基金)」のより大きな部分を得ることになる。

Superlikeや「Supernova」を獲得した投稿は、通常の「Like」の10倍の票を獲得する。ただし1つ難点がある。Supernovaを提供するには、まずユーザーが十分な「Karma Point」を獲得しなければならない。おそらくこれは、エンゲージメントを促進するためであろう。

今のところ、世界的なスポーツブランドであるASICSがSupernovaのスポンサーとなり、メンタルヘルスの慈善団体MQ Mental Health(MQメンタルヘルス)が最初に選ばれた慈善事業となっている。

また、Instagram(というよりFacebookのようなもの)とは異なり、Supernovaにはユーザーがグループに集まることのできる「グループ」機能がある。

オメーラ氏によると、Supernovaへの投資は「友人、家族」による資金調達ラウンドで100万ポンド(約1億5000万円)を超えており、2022年前半には機関投資家からのさらなる資金調達を予定しているという。

人間によるモデレーションについてオメーラ氏に尋ねたところ、次のように回答してくれた。「英国に拠点を置く訓練を受けたチームで、24時間体制で私たちが管理するシフト制を採用しています。彼らは若くて聡明な人材であり、主にコンピュータサイエンスの大学院や学部出身者です。会社の成長に合わせて社内で育成することで、チームが最初からコミュニティに親近感と共感を持てるようにしています」。ただし、同社の規模拡大に伴い、機械学習の支援を受けることになるだろうと同氏は言い添えた。

「Supernovaは、AIによって他のプラットフォーム上で活発に宣伝されている、有害で急進的なコンテンツから解放されます。その結果、Supernovaが万人向けではなく、熟慮される存在になることは間違いありません」とオメーラ氏は語っている。

Instagramでは禁止されていることで知られる乳首は同プラットフォーム上で許可されるのだろうか。

「すべては、投稿の内容や性質、投稿内のテーマによって異なりますが、コミュニティ基準に準拠しているかどうかは確実にチェックされます。違反した場合は削除されます」と同氏。

もし女性が母乳育児について説明しているのなら、それは許されるだろうかと筆者は尋ねた。

「その意図が明らかに有益であり、主題の真の側面を扱っている限りは、おそらくそうなるでしょう。もしその意図や内容が、その主題や私たちのコミュニティに対して、私たちの考えでは失礼であるか、有害であるか、あるいは否定的であるならば、コミュニティ基準や憲章を侵害することになり、削除されるでしょう」と同氏は回答した。

広告主にとってのメリットは何であろうか?

オメーラ氏は次のように語っている。「正しいことをしている『新時代』のソーシャルメディアの一部であることは、ブランドに害を与える可能性のある古い有害な秩序の一部であることとは対照的に、彼らのブランド(PR)にとってすばらしい価値があります。Deloitte(デロイト)によると、ミレニアル世代の80%は、他人の利益を自分の利益よりも優先するブランドからのみ購入したいと考えています。大手広告主は、ソーシャルメディアの現状に辟易しているようです。私は昨日、100億ドル(約1兆円)を超えるグローバル予算を投じている広告主に会い、そのことを明確に伝えられました」。

「当社のプロダクトは完全にスケーラブルで、ミレニアル世代のわずか1%にリーチすれば、毎日4000万人にスポンサー広告を届けられるでしょう。広告主たちが『量より質』を求めている今、これで十分です。1000社以上の広告主による42億ドル(約4822億円)規模のFacebookのボイコットは、その初期の兆候であり、今も消え去ってはいません。代替のオファーは今のところ提供されていません。そこにSupernovaが登場したのです」と同氏は付け加えた。

Supernovaが生き残れるのか、それともDavid Beckham(デイビッド・ベッカム)氏がローンチし、痕跡を残さず沈んだストリーミングソーシャルメディアアプリ、MyEyeになるのかはまだわからない。

タフで物議を醸す話題がこれまでほとんど登場してこなかった、一種の「バニラ(ありきたりな)」ソーシャルネットワークであるだけで、ユーザーを惹きつけるのに十分かどうかという疑問が残る。そして、潜在的に偏った人間によってコンテンツがモデレートされた場合、Supernovaはその決定を好まない人々から訴えられることになるのだろうか?

しかし、少なくとも今回の初公開からは、Supernovaは好調なスタートを切ったようだ。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

Meta、複数のアプリを対象に新プライバシーセンターをテスト中

Meta(旧Facebook)は、プライバシーオプションに関するユーザーへの説明方法を変更している。これまで同社は何度も、プライバシーに関する情報の掲載場所や説明方法を変更してきたが、今回、アプリ群全体のプライバシーに関するFAQやコントロールを1カ所に集約するようだ。

新たなプライバシーセンターは、現在のところ米国の一部のFacebookデスクトップユーザーを対象にしたテスト版だが「今後、数カ月でより多くの人々とアプリ」にロールアウトされる予定だ。限定テストに参加している場合「設定」メニューの「プライバシーセクション」に新しいプライバシーセンターがある。現状、プライバシー設定は「プライバシーセンター」と「プライバシー設定の確認」に分かれており、これは理想とはほど遠いものだが、それでもプラットフォームはこれらの設定方法を改善している。

新たなプライバシーセンターは「セキュリティ」「共有」「収集」「利用」「広告」の5つのカテゴリーに分類されている。Metaは今でも、この変更で「プライバシー教育」という考えを推し進めている。これは、もしあなたがこのようなものをすべて整理しなければ、会社があなたの個人データを有効に利用したときの責任はあなたにある、と教えてくれるものだ。

Facebookはこれまで、ユーザーに複雑で操作しにくいプライバシーコントロールを提供してきた。多くの場合、最も重要な設定がメニューに埋もれている。多少改善されてきているが、Metaがユーザーができるだけ多くのデータを共有し続けるという既得権益を持っていることに変わりはない。その姿勢は、AppleのiOS広告トラッキングの変更に明確な異議を唱えたことで明らかになった。アプリがユーザーの行動を追跡する機能を制限したことは、消費者のプライバシーにとって明らかな勝利だ。

ほとんどの人がこの情報を体系的に調べると仮定するのは現実的ではないが、念のため、すべての情報がどこに保存されているのかを知っておく価値はあるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Katsuyuki Yasui)

Spotifyがポッドキャスト向けにビジュアル広告をアプリに表示するフォーマットを導入

Spotify(スポティファイ)は米国時間1月6日に、ポッドキャスター向けの新しい広告フォーマット「Call-to-Action Cards(コール・トゥ・アクション・カード)」、略して「CTAカード」を導入する。Spotifyのストリーミング広告挿入技術によって実現されたこの機能は、音声広告の再生が始まると、Spotifyアプリにビジュアル広告が表示されるものだ。このカードは、広告主が独自の画像、テキスト、その他のクリック可能なボタンでカスタマイズでき、リスナーを「今すぐ購入する」や広告主が促したいその他のアクションに誘導することが可能だ。

広告はストリーミング中にユーザーの注意を引くことができるが、Spotifyは、ポッドキャストを聴くことが、散歩やジムでのエクササイズ、家事、運転など他のことをしている間のバックグラウンドであることが多いことを理解している。そのため、Spotifyは新しいCTAカードを、ポッドキャストの番組ページとエピソードページの両方で利用できるようにしている。これにより、ターゲットのリスナーは、Spotifyアプリを閲覧しているときに、後で広告と対話することができる、と同社は説明している。これらのカードは、リスナーが広告を聞いてから最大7日間利用可能で、キャンペーンがその前に終了した場合は、それよりも短い期間となる。

画像クレジット:Spotify

将来的には、単にランディングページに誘導するだけでなく、この形式が進化していくとSpotifyは考えている。

「私たちは、このカードをフォーマットの近代化に向けた重要なステップだと考えています。このフォーマットには、今後、ショッパブルやビデオなどのインタラクティブな機能が追加され、より高機能なものになるでしょう」と、Spotifyの広告ビジネス&プラットフォーム責任者であるJay Richman(ジェイ・リッチマン)氏は、今週のCESに参加した際の記者説明会で、このフォーマットを紹介した。

このフォーマットを採用する広告主は、ストリーミング広告の挿入によって可能になった確認済みの広告インプレッションに基づくレポートも利用できるようになる。

Spotifyはストリーミング広告挿入技術に多大な投資を行っており、これによりポッドキャストにリアルタイムのターゲティングとレポーティングが実現された。以前、ポッドキャストがよりオープンなRSSフォーマットで配信されていたときは、ダウンロード可能なコンテンツであるだけに、技術的な制限にも阻まれていた。広告は、番組に動的に挿入されるのではなく、埋め込まれていたのだ。また、オーディオプレイヤーは、番組のどの部分がコンテンツで、どの部分が広告なのかを区別することができなかった、つまり、それは1つのファイルだった。ストリーミング・オーディオの挿入とともに、コンテンツそのものを一時停止して、広告が挿入され、広告が完了した後にコンテンツが再開するようになった。

これらはすべてリアルタイムで行われる。しかし、以前とは異なり、リスナーがメッセージを聞いて楽しくない場合、広告をスキップすることを妨げない。

2020年、Spotifyはポッドキャストのホスティングと広告を手がけるMegaphone(メガフォン)を2億3500万ドル(約272億円)で買収し、ストリーミング広告挿入を自社の番組以外にも拡大し、Spotify Audience Network(スポティファイ・オーディエンス・ネットワーク)を通じてパブリッシング・パートナーにも届くようにした。現在このネットワークには、SpotifyのAnchor(アンカー)プラットフォームを利用する独立クリエイターによる番組も含まれている。そして2021年12月、Spotifyはポッドキャストテック企業のWhooshkaa(ウーシャカア)を買収し、オーディオコンテンツをラジオで放送した後にポッドキャストとしてリリースしたいと考えるラジオ放送局にこの技術を提供することになった。

画像クレジット:Spotify

ストリーミング広告の挿入は、広告が番組に表示されるタイミングをすでに把握しているため、Spotifyはそれに付随するCTAカードもポップアップして、広告主の製品を表示することができる。リスナーにとっては、番組中にホストが宣伝しているのを聞いた商品やサービスを探し出すのに、クリエイターが話していたURLやクーポンコードを思い出そうとする必要がなくなるので、より良い体験になるかもしれない。

しかし、この追加により、Spotifyを使ってポッドキャストをストリーミングすることが、以前よりもさらに広告にサポートされた体験にもなる。プレミアム(有料)購読者であっても、間違いなく邪魔な新しい広告の対象となり、聞き終わった後でもポッドキャストの番組ページとエピソードページの両方に表示されることになる。

Spotifyは、ローンチに先立ち、Ulta Beauty(ウルタ・ビューティ)を含む一部の広告主に対して、新しいCTAカードのテストを行った。Ultaのコンテンツ、ソーシャル、統合マーケティング責任者であるChristine White(クリスティン・ホワイト)氏によると、同社は、あるキャンペーンで約25万人のSpotifyユニークリスナーを獲得し、そのうちの約半数が、オーディオメッセージを聞いた後に、後でアプリを閲覧中にカードを見た人を含んで、少なくとも1つのCTAカードを見たとのことだ。

画像クレジット:Spotify

Spotifyは、CTAカードを、ポッドキャストコンテンツをよりインタラクティブなものにするためのもう1つのステップと考えている。同社はすでに、音声コマンドやポッドキャストの視聴者投票やQ&Aといった機能を通じて、この分野で実験を行っている。これらの機能はリスナーをリアルタイムで魅了し、ポッドキャストの再生中にアプリに戻ってくる可能性も高くする。最近では、SpotifyのAnchorプラットフォームを通じて、ビデオポッドキャストへのアクセスも拡大している。Podcastクリエイターは、自分のPodcastにビデオを追加して、番組を録音しているところを見せたり、この機能を使って、グラフィック、チャート、スライドを追加したりすることができる。この機能は現在、より多くのクリエイターとリスナーに展開されていると、Anchorの共同設立者でSpotifyのトーク責任者のMike Mignano(マイク・ミグナーノ)氏は同説明会で述べた。

Spotifyは、新しいCTAカードを有効にするためにクリエイターが追加作業をする必要はないと述べており、まずは米国時間1月6日から米国内の一部のSpotify Original & Exclusive Podcastで利用可能になる予定だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

ツイッターが約1210億円でモバイル広告プラットフォームMoPub売却を完了

Twitter(ツイッター)は米国時間1月3日、モバイル広告プラットフォームMoPub(モパブ)について、モバイルゲームメーカーでマーケティングソフトウェアプロバイダーのAppLovin(アップラビン)への現金10億5000万ドル(約1210億円)での売却を完了したと発表した。この取引は、Twitterが2023年までに売上高を75億ドル(約8650億円)超へと倍増させる計画を明らかにした後の2021年10月に発表されていた。MoPubはTwitterの2020年の年間売上高に約1億8800万ドル(約216億円)貢献したが、Twitterは現在、製品開発を加速させる中で他分野の開発にさらなる可能性を見出している。具体的には、パフォーマンスベースの広告、SMB、コマースにリソースを振り向けているとのことだ。

Twitterは1月3日、自社が所有・運営する製品の開発をさらに進める計画を改めて示した。

「MoPubの売却が完了し、当社は引き続きプラットフォーム全体の広告強化に注力します。当社の目標は、主要分野でより速い成長を実現し、製品開発を加速させることです」と、Twitterの収益製品担当GMであるBruce Falck(ブルース・ファルク)氏はプレスリリースで述べた。

TwitterのCFOであるNed Segal(ネド・シーガル)氏は以前、MoPubの売却により、Twitterがいかに同社のウェブサイトやモバイルアプリにおける「広告の大きな可能性」に集中できるようになるかを指摘していた

しかし今回の取引は、Twitterにとって広告だけでなく収益モデルを拡大できる新しい分野に投資する機会でもある。同社はここ1年ほどでTwitter Spacesという音声チャットルーム、ニュースレター(Revue買収による)、オンラインコミュニティ、誤情報を暴くプロジェクトBirdwatch、有料サブスクサービスTwitter BlueSuper Followやチップなどのクリエイターエコノミーツールと機能、暗号資産ライブショッピングなどのeコマースなどを立ち上げ、製品開発のペースを大幅に加速してきた。これらの製品を組み合わせることで、Twitterは、例えばチケット制イベントやサブスクの手数料など、新たな方法で売上を求める機会を増やすことができる。

MoPubの売却は、Apple(アップル)がモバイルオペレーティングシステムiOSの最新版で実施した変更によってモバイル広告業界が動揺していた時期に行われたものでもある。Appleの新しいプライバシー重視のツールにより、より多くの消費者がアプリや広告主による追跡をオプトアウトできるようになり、TwitterにとってMoPubのようなビジネスはさほど興味深いものでなくなっている。しかし、AppLovinは、MoPubの需要側と供給側のツールを、より大きなアプリ内メディエーションプラットフォームであるMAXに活用し、その後パブリッシャーと需要パートナーを統一プラットフォームに移行し、さらにビジネスを成長させすることにチャンスを見出している。同社は、2023年までに年間150億ドル(約1兆7300億円)以上の広告主支出の処理を見込んでいると話す

AppLovinによると、買収当時、MoPubのソフトウェアは4万5000のモバイルアプリで収益化の管理に使用され、特定可能なユーザー数は世界中で15億人に達した。現在では、数千のブランドや代理店を代表する150以上のDSPがAppLovin Exchangeに直接アクセスできるようになっている、とも話す。

「開発者は、より高い収益化の機会を促進し、ワークフローを合理化するためのより多くの機能の恩恵を受けていて、これはビジネスの収益増につながります。この統一プラットフォームの力は、今日の市場において比類のないものになると確信しています」とAppLovinの共同創業者でCEOのAdam Foroughi(アダム・フォルーギー)氏は声明で述べた。「より広範なモバイルアプリのエコシステムの成長を促進する、最大かつ最も堅牢なアプリ内広告プラットフォームの運営を目指し、この戦略的買収を実行することに興奮しています」。

この買収は2022年初めに完了するとされていた。

Twitterは1月3日、ネットワークメディエーション、Advanced Bidding、Marketplaceを含むMoPubのプラットフォームが2022年3月31日に廃止されることも明らかにした。MoPub DashboardとReportingは2022年4月8日まで利用可能だ。パブリッシャーは廃止から90日間内にMoPubプラットフォームからAppLovinのMAXプラットフォームへ移行することになる。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】非営利団体にはソーシャルメディアを改善する答えがあり、ビッグテックにはそれを実現するリソースがある

ソーシャルメディアがメンタルヘルスに与える影響についての議論は目新しいものとはいえないが、この秋、Facebook(フェイスブック)が自社プラットフォームの10代向けのメンタルヘルスに対する悪影響を十分に認識していたことを示唆していた報告が出されたことで、議論は再び世界の注目を取り戻した。

このデータ(およびFacebookがこれらの懸念を無視したという事実)は厄介な話だが、ソーシャルメディアがメンタルヘルスに与える影響を理解することはそれほど簡単ではない。実際、ソーシャルメディアは若者が自分自身や自分のアイデンティティを発見するための安全で肯定的な空間やつながりを提供できるとする強い主張も存在している。

ソーシャルメディアへの怒りがもたらす暗い結論の一方で、こうした利点はあまりにもしばしば片隅へと押しやられてしまう。事実、Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)、Facebookといった現在の人気ソーシャルネットワーキングプラットフォームは、収益化を最優先事項としてデザインされている。これらのアプリは、アプリのユーザー時間が増えることで広告収入も増えるため、基本的に過度の使用を促すものなのだ。

最近の反発に応えて、Instagramのような場所は厳格に大人用とすべきだと主張する人もいるが、筆者は10代の若者にとって有益なソーシャルメディア環境を構築することは可能だと強く信じている。それは彼らが自己発見をできる場所であり、アイデンティティを自由に探求できる場所であり、暗闇の中で彼らを慰め、彼らが1人ではないことを知る手助けをする場所なのだ。

この未来が反応的な機能だけで育成できるかどうかはわからないが、ソーシャルメディアの巨人には、他の組織や非営利団体と協力して、ソーシャルメディアをすべての人々にとってより安全な場所にできる可能性がある。

広告型かつ非営利型のソーシャルメディアのためのスペースの創出

営利目的のソーシャルメディアが独占しない世界を想像するのは難しいが、独占は必然ではない。広告収入型のソーシャルメディアアプリを完全に排除するのは現実的ではないかもしれないが、テック業界には広告収入に依存しないプラットフォームのためのスペースを作る機会と責任がある。

もし閲覧数、クリック数、広告数が人々の欲求やニーズに対する二次的なものであれば、ソーシャルメディアプラットフォームの仕組みに革命を起こすことができるだろう。他のアプリからのプレッシャーから逃れたり、仲間と交流したり、自分自身が受け入れられる場所を見つけたり、目的はどうであれ私たちはユーザーが自由に参加できるコミュニティを構築することができる。

Ello(エロ)や、LGBTQ+の若者向けのTrevor Project(トレバーブレロジェクト)のソーシャルネットワーキングサイトであるTrevorSpace(トレバースペース)など、広告なしのソーシャルメディアスペースはすでにいくつか存在しているが、それらの規模は小さく機能も少ないため、 Instagramなどのソーシャルメディアアプリに備わる機能に慣れているユーザーを大量に引き付けることはできていない。

また、若者が匿名で自分のアイデンティティを探求できるオンラインスペースも必要だが、ソーシャルメディア企業がユーザーの精神的健康や健康よりも広告支援を優先する場合には、それはほぼ不可能だ。広告主は年齢、性別、行動、アイデンティティに基づいてユーザーをターゲットできるように、ソーシャルメディアに時間を費やしているのは誰かを正確に知りたいと考えているからだ。これは、ソーシャルメディアを自分が何者なのかを知るための手段として使いたいが、あまり慎重には行動できない若いユーザーにとって特に問題となる。

これを克服するためには、業界全体として利益を目的としないソーシャルメディアスペースへの投資を増やす必要がある。ここ数年、テック大手はプロダクトのイノベーションで驚異的な進歩を遂げており、これを、ユーザーが安心して自分を表現したり、協力的なコミュニティを見つけたりできるサイトにも応用できる可能性がある。

Facebook、Instagram、TikTok(ティックトック)、その他の広告付きアプリにはふさわしいタイミングと場所があるが、収益に左右されないオンラインスペースに対する明確なニーズと要望も存在している。どちらか一方である必要はなく、両方のためのスペースを確保するために私たちは協力することができる。

たとえばTrevorSpaceに対しては、私たちは特定の収益目標を達成するというプレッシャーを与えることなく、ユーザーの要望やニーズをよりよく理解するための研究に投資してきた。この調査を通じて、私たちはユーザーが自分のアイデンティティを探求し、自分を表現できる安全な空間を持つことに価値を見出そうとインターネットを利用していることを学んだ。

AIをずっと使用したらどうなるだろう?

より多くの非営利のソーシャルメディアプラットフォームに投資することに加えて、テック企業たちには、その最先端のAI開発を応用することで、ソーシャルメディア上のユーザー体験を改善し、オンラインに時間をかけすぎたことによる精神衛生上のストレスを軽減できる機会もある。

ソーシャルメディアサイトは現在、機械学習を使用して、人々がオンラインでより多くの時間を過ごすことを促すアルゴリズム生み出しているが、機械学習の可能性はそこに留まるものではない。テクノロジーには、人びとのメンタル不調を悪化させるのではなく、メンタルヘルスをサポートする力があることを私たちは知っている。ではAIを使用して、ユーザーにソーシャルメディアを制御できる新しい力を与えたらどうなるだろうか。

AIが、特定の瞬間に本当に必要としているものを見つけるのに役立てたらどうなるのかを想像してみて欲しい。例えばユーザーが笑いたいときには笑えるコンテンツへ、泣きたいときには泣けるコンテンツへとガイドしてくれたり、志を同じくするユーザー間の前向きな関係を築く手伝いをしてくれたり、または、彼らの生活にプラスの影響を与えるスキルや知識を彼らに与えてくれるリソースを提案したりということだ。

今日のソーシャルメディアアプリの大多数は、AIを使用して、私たち向けのフィード「あなたのための」ページ、そして私たちのためのタイムラインを決定している。しかし、もし私たちがAIを使って、ソーシャルメディア上での自分自身の旅をガイドできるようにすれば、根本的に異なる感情体験を育むことができる。それは、単に時間と注意を独占するのではなく、自分自身の欲求やニーズを支えるものなのだ。

これは簡単なことのように聞こえるし、すでに起きていることだと考える人さえいるかもしれない。しかし、最近Facebookの元プロダクトマネージャーFrances Haugen(フランセス・ハウゲン)氏の証言によって裏付けられたように、現在私たちが大手ソーシャルメディアで見ているコンテンツは、そのようにはキュレーションされていない。その状況は変わる必要がある。

ソーシャルメディアにおける前例のない革新と研究のおかげで、私たちは私たちの幸福に貢献するサイトを作成するために必要な技術は持っている、あとはその開発に時間とリソースを投資して、非営利アプリが主要な広告利用アプリと共存できるスペースを作ればいいだけなのだ。

将来的には、ユーザーが自身の見るコンテンツやそのコンテンツとのやり取りを制御できるようなAIを、ソーシャルメディア企業が非営利企業と提携して開発する可能性があるが、そのためには両者からの多大な時間投下、投資、協力が必要になるだろう。また、ソーシャルメディア大手は、この分野で切望されている代替アプリが入り込む余地を十分に確保する必要がある。

ソーシャルメディアをすべての人にとってより安全で健康的なものにすることは、The Trevor Projectを含む多くの非営利団体が実現に向けて取り組んでいる目標であり、ソーシャルメディア企業の支援によって私たちはその実現に大いなる助けを得ることになるだろう。

編集部注:著者のJohn Callery(ジョン・カレリー)氏はThe Trevor Project(トレバー・プロジェクト)の技術担当上級副社長。

画像クレジット:mikroman6 / Getty Images

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(文:John Callery、翻訳:sako)

アドエクスチェンジのOpenX、子どもの位置情報収集で連邦取引委員会が罰金

広告テクノロジー企業のOpenX(オープンX)は、同社が米国の児童プライバシー法に違反したという疑惑を解決をするため、連邦取引委員会に200万ドル(約2億3000万円)を支払うことになった。

連邦取引委員会は、カリフォルニア州中央地区連邦地方裁判所に提出した訴状において、OpenXが親の同意を得ずに13歳未満の子どもから個人情報を収集したことにより、児童オンライン・プライバシー保護法(COPPA)に違反したと主張している。

カリフォルニア州に本社を置くこの企業は、子どもや幼児、就学前児童の学習用に販売されている数百ものアプリから故意に情報を収集し、このデータ(詳細な位置情報、IPアドレス、デバイスの固有識別子など)を、ターゲット広告に使用する第三者に渡したとしても告発されている。

「OpenXは、子ども向けアプリから直接または間接的に数百万から数億のアドリクエストを受信し、子どもの個人情報を含む数百万から数億のビッドリクエストを送信した」と、訴状には書かれている。

連邦取引委員会の訴状では、OpenXはCOPPAに違反したことに加え、データ収集をオプトアウトしたユーザーから詳細な位置情報を収集していないと偽り、連邦取引委員会法に違反したと主張している。連邦取引委員会によると、OpenXは、一部のAndroidユーザーが位置情報の収集を「許可しない」を選択した後も、位置情報の収集を続けていたとのことだ。

「OpenXは、位置情報を密かに収集し、子どもを含む大規模なプライバシー侵害の扉を開きました」と、連邦取引委員会の消費者保護局で局長を務めるSamuel Levine(サミュエル・レビン)氏は述べている。「デジタル広告のゲートキーパーは、舞台裏で活動していても、法を免れることはできません」。

連邦取引委員会の理事を務めるNoah Joshua Phillips(ノア・ジョシュア・フィリップス)氏は、別の声明の中で、この命令は当初、OpenXに対して750万ドル(約8億5000万円)の罰金を求めていたが、同社の支払い能力が不十分であったため、罰金を200万ドルに減額したと述べている。また、この和解案では、同社がターゲット広告を配信するために収集したアドリクエストのデータをすべて削除し、COPPAを完全に遵守するための包括的なプライバシープログラムを実施することが求められている。

OpenXはTechCrunchのコメント要請にすぐには応じなかったものの、和解案に言及したブログ記事の中で、データ収集は「意図しないミス」であるとし、内部検査の結果「99%以上のドメインとアプリは適切に分類されていた」と述べている。

「当社は、COPPAを完全に遵守するために、ポリシーや手順の見直しと強化に取り組んでいます。また、質的および量的属性の厳格な基準に引き続き従い、サイトやアプリが当社のエクスチェンジに含まれるのに適しているかどうかを判断していきます」と同社は述べている。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イタリア、アップルとグーグルに対して「強引」なデータ処理で各13億円の罰金

イタリアの競争・市場当局(AGCM)は、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)が、ユーザーのデータを商業的に利用する際にユーザーに十分な情報を提供せず、同国の消費者規則に違反したとして、両社にそれぞれ1000万ユーロ(約13億円)の罰金を科した。

また、AGCMは、両社がユーザーに商業利用を承諾させるために「強引」な商業慣行を展開していたと非難している。

AppleとGoogleにACGMの制裁への対応を尋ねたところ、両社とも控訴すると述べた。

Googleは、アカウント作成時やユーザーのサービス利用時に関連情報を省略していたと非難されている。これらの情報は、商業目的でのデータ利用に同意するかどうかをユーザーが判断するために提供されるべきものだと規制当局は指摘する。

AGCMはまた、ユーザーがApple IDを作成したり、App Storeなどのデジタルストアにアクセスしたりする際に、情報を商業目的でどのように使用するかについての明確な情報をユーザーに即座に提供していないとして、Appleを非難している。

これは、消費者のプライバシー擁護者としてのAppleのイメージを考えると、かなり驚くべき制裁だ(もちろん、同社のデバイスやサービスは、Google製のような広告付きの安価な代替品と比較して、プレミアムが付く傾向にあることはいうまでもない)。

イタリアの規制当局は、今回の制裁を発表したプレスリリースの中で、両社の慣行をひとまとめにし、特にアカウント作成の段階で、それぞれのユーザーに利己的な商業条件を強引に押し付けていると非難している。

Googleについては、ユーザーが商業的処理を受け入れることを前もって決めている点をACGMは指摘している。また、アドテック大企業である同社は、アカウント作成のステップが完了した後、ユーザーがこれらのデータ転送への同意を後で撤回したり、選択を変更したりするための明確な方法を提供していないことも指摘している。

そして、Appleのアプローチについては、ユーザーが自分のデータの商業利用について適切に選択する能力を否定しているという見解を示している。規制当局は、Appleのデータ取得慣行とアーキテクチャは、本質的に消費者が商取引条件を受け入れることを「条件」としていると主張している。

かなりのマーケティング費用を投じて、自社のデバイスやソフトウェアが他の製品(Googleのものなど)よりも優れていることを示唆しているAppleにとっては、ユーザーのプライバシーを重視していると主張しているだけに、厄介な指摘だ。

Appleは声明の中で、ACGMの指摘を否定し、次のように述べている。

「我々は、当局の見解が間違っていると確信しており、この決定については不服として控訴します。Appleは、ユーザーのプライバシーを尊重することに長年にわたって取り組んでおり、顧客のデータを保護する製品や機能を設計するために、非常に努力しています。当社は、すべてのユーザーに業界最高レベルの透明性とコントロールを提供し、共有する情報、共有しない情報、およびその使用方法を選択できるようにしています」

Googleの広報担当者もこの調査結果に同意せず、次のような声明を出した。

「Googleは、ユーザーに便利なツールと使用状況に関する明確な情報を提供するために、透明で公正な慣行を行っています。ユーザーには、自分の情報を管理し、個人データの使用を制限するための簡単なコントロールを提供しており、消費者保護規則に完全に準拠するよう努めています。当局の決定には同意できず、控訴する予定です」

ACGMの決定内容の全文はこちら(AppleGoogle)で閲覧できる。

イタリアの規制当局はここ数日、大手テック企業の非難で忙しかった。今週初め、当局はAmazon(アマゾン)のイタリア市場でのApple製品販売をめぐる談合の疑いで、AppleとAmazonに総額2億3000万ドル(約260億円)の罰金を科した。

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また、ACGMはここ数年、ハイテク企業に対する調査を強化しており、2021年初めには、ユーザーのデータを商業的に利用した同様の問題でFacebook(フェイスブック)に罰金を科し、今夏には、Android Autoに関連してGoogleに1億2300万ドル(約139億円)の罰金を科した。また、Googleの広告表示事業についても公開調査を行っている

近年、ACGMが科した罰金には、iPhoneの防水性についてユーザーに誤解を与えたとしてAppleに対するものや、デバイスの速度低下についてAppleとSamsung(サムスン)に科したものなどがある

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

欧州のデジタル規制の再改定でフェイスブックの態度が変わる可能性、内部告発者フランシス・ホーゲン氏が欧州議会で証言

Facebook(フェイスブック)の内部告発者Frances Haugen(フランシス・ホーゲン)氏は、先に行われた英国と米国の国会議員の前でのセッションの後、欧州議会で洗練された証言を行った。

ホーゲン氏のコアメッセージは、大西洋の両側で発せられたのと同様の深刻な警告だった。「Facebookは安全より利益を優先し、個人、社会、民主主義に悪影響を及ぼす有害コンテンツの増幅を無視することを選んでいる。そして、欧州の規制監督は、こうした無責任な運営を行うプラットフォームを統制し、責任あるものにするために不可欠であり、立法者たちがソーシャルメディアに規制を課すことに一刻の猶予もない」。

Facebookの内部告発者として(これまでで)最も注目度の高い人物であるホーゲン氏は、欧州議会から非常に好意的な反応を受けた。議員たちは、同氏が時間を割いてくれたことや、彼らが同氏の「勇気」と表現する、懸念を公に表明してくれたことへの感謝の言葉を惜しまなかった。そして同氏が発言する前や、約3時間にわたるプレゼンテーションと質疑応答の最後にも、同氏を称賛した。

議員たちはさまざまな問題について同氏に質問した。最も大きな関心が寄せられていたのは、新たに導入されるEU全域のデジタル規制が、不安定なプラットフォーム大手に対して、効果的な透明性と説明責任をいかに最大限にもたらし得るかということだった。

Digital Services Act(DSA、デジタルサービス法)は、欧州議会議員の知性の前に置かれている。欧州委員会の提案に対する修正の検討と投票が行われており、この過程で同法案が大きく変化する可能性もある。

一部の議員が行動広告の全面禁止を求める動きを見せたことなどを受け、コンテクスチュアル広告のようなプライバシー保護に配慮した代替手段が法案に盛り込まれた。あるいは最近支持を得た別の修正案では、ニュースメディアをプラットフォームコンテンツの削除から除外するよう求めている

蓋を開けてみると、ホーゲン氏はこうした修正案に好意的ではないことがわかった。しかし、この規制を総じて支持すると同氏は発言した。

DSAの全般的な要点は、信頼できる安全なオンライン環境を実現することに置かれている。そして本日のセッション中に発言した多くの欧州議会議員たちは、ホーゲン氏が欧州議会で発言することに世界的な注目が集まっていることを受けて、EUの警笛を吹く街頭演説的なオポチュニティを捉えた。Facebookの(さらに)別のパブリシティ危機の真っただ中にある中、デジタル規制が審議中であるだけでなく、採択に向かって急速に進んでいる進歩的な状態であることを知らせるものだ。

Facebookの内部告発者は政治的エゴを満たすことに快く応じてみせた。EUがプラットフォーム規制に真剣に取り組んでいることに「感謝する」と述べ、EUはDSAにより「グローバルなゴールドスタンダード」を築くオポチュニティを有していると示唆した。

とはいえ、同氏は2021年10月に行われた別の証拠審議の際にも、英国議会で同様の表現を用いている。そこで同氏は、同国のオンライン安全法について同じように熱弁を振るった。

ホーゲン氏は欧州議会議員たちに対し、Facebookは「データを使ってごまかす」ことに並外れて長けている、と英国の立法者たちに警告した内容を繰り返し、Facebookのプラットフォーム上で起きていることに関するデータを提出することを単純に要求するだけのような甘い法律を通過させてはならない、と議員らに印象つけた。むしろFacebookは、データを引き出して監視監査を生成するのに使用するクエリの詳細に至るまで、同社が引き渡すデータセットのすべてについて説明を求められるべきだということだ。

法制化においてこのようなステップを取らなければ、EUの新しいデジタル規則に大きな抜け穴ができ、Facebookはチェックマークを付ける構図を描くのに必要なあらゆるクエリを実行して、選択的に自己利益的なデータを提供することでうまく乗り切るだろう、とホーゲン氏は警鐘を鳴らした。

Facebookのように信頼できないプラットフォームでも規制が効果を発揮するためには、市民社会組織や外部の研究者たちの幅広いエコシステムからの多層的で動的かつ継続的なインプットが必要だと同氏は提言した。新たに発生してくる弊害を掌握し、法律が意図した通りに機能していることを確保するためだ。

AIがもたらすインパクトに関して求められている説明責任を真に果たすためには、現在DSAが提案している「吟味された学識者」だけではなく、より広範な分野の外部専門家にプラットフォームデータを提供することで、監視に対する広い視野を持つべきだと同氏は強く要請した。

「Facebookがデータで偽ることは明らかです」と同氏は欧州議会で語っている。「DSAの導入を奨励します。Facebookはデータを提供する際、その取得方法を示す必要があります【略】データを引き出すために使用したプロセス、クエリ、ノートを開示することが極めて重要です。これを確認できない限り、提供された情報を信頼することはできません」。

ホーゲン氏は単に警告を発するだけではなかった。同氏はさらに賛辞を重ね、欧州議員たちに次のように伝えた。「欧州がこれらのプラットフォームを規制する上で重要な役割を担うことを強く信じています。欧州は活気に満ちた、言語的に多様な民主主義国家だからです」。

「言語的にも民族的にも多様な4億5000万人のEU市民のためのDSAの権利を獲得すれば、世界に向けたゲームチェンジャーを創出できます。ビジネスのオペレーションに対する社会的リスクの評価を各プラットフォームに義務づけることで、構築するプロダクトやその構築方法の決定は、利益の最大化だけに基づくものではなくなります。言論の自由を保護しつつ、リスクに対処する体系的なルールや基準を確立し、透明性、監視、執行がどのように機能すべきかを世界に示すことができるでしょう」。

「プラットフォームは自社がどのような安全システムを持っているのか、それらの安全システムがどのような言語に対応しているのか、言語ごとのパフォーマンスを明らかにしなければなりません。これを確実にすることが、深刻に、切実に求められています」と同氏は続け、包括的な情報開示の必要性に関する自身の主張を具体化した。「正直なところこれは欧州人の大多数にとって危険なことなのだろうか?と思われるかもしれません」。

ホーゲン氏によると、このようなアプローチは、そのプラットフォームが稼働するすべての市場と言語にまたがる弊害に対処する上で必要な「言語に依存しないコンテンツ中立的なソリューション」をFacebookに迫ることで、欧州を超えた規模のメリットをもたらすという。

Facebookの(限られた)安全予算における偏り、つまりどれだけの予算が英語圏の市場に向けられているのか、そして / または規制を恐れている少数の市場に向けられているのかという点は、Facebookの非常に多くの内部文書が漏洩したことで増幅された核心的な問題の1つである。そして同氏は、FacebookのAIモデルに状況に応じた透明性を持たせることで、強力なプラットフォームがどのように運用されているのか(そして何を優先するのか、何を優先しないのか)というグローバルな公平性の欠如に対処できると提言。そのためには一般的なパフォーマンス指標に加え、市場、言語、安全システム、そしてターゲットを絞ったコホート単位においても、詳細な情報が必要になると指摘した。

安全性を体系的な要件としてFacebookに取り組ませることは、欧州全域の市場でプラットフォームが引き起こす問題を解決するばかりでなく「世界の脆弱な地域に住んでいて、あまり影響力を持たない人々のために声を上げることにもなる」と同氏は主張する。そして次のように言い添えた。「世界で最も言語的な多様性に富む地域は、往々にして最も脆弱な地域であり、欧州が介入する必要性を抱えています。欧州は影響力を有しており、そうした地域の人々のために真に力を発揮できるのです」。

ホーゲン氏の発言の多くは以前の証言や記者会見でもお馴染みのものであった。一方、質疑応答では多くのEU立法者たちが、有害なコンテンツの増幅というFacebookの問題がマイクロターゲット / 行動広告(当議会で活発に議論されている)の全面禁止により解決されるのではないか、という論点に同氏の声を引き込もうとした。これによりアドテックの巨人は、背後にある人々の情報をデータ駆動型操作を通じて利益を得るために使用することができなくなるだろう、ということだ。

これについてホーゲン氏は異議を唱え、規制当局が決定するのではなく、人々が自分でターゲティング広告の有無を選択できるようにすることを支持すると述べた。

全面禁止の代わりに、同氏は「特定の事柄や広告は【略】実際に規制される必要があります」と提案し、規制の対象となる領域の1つとして広告料金を挙げた。「現在のシステムはヘイトを助成しています。つまり、ヘイト的な政治広告を掲載する方が、そうではない広告を掲載するよりも5倍から10倍安いのです。それを考えると、広告料を均一にする必要があると思います」と同氏は説明した。「ただし、特定の人をターゲットにした広告を規制すべきであるとも考えています」。

「ご存じかどうかわかりませんが、特定の広告について100人のオーディエンスをターゲットにすることも可能です。それが悪用されていることはまず間違いないと思います。政治広告に過剰にさらされているのはどのような人かを分析したところ、驚くことではありませんが、最も影響を受けているのはワシントンD.C.の人々で、それは極端に過度な露出状態です。私たちは月に何千もの政治広告について話し合っています。ですから、特定の人々を彼らの認識なしにターゲットにするメカニズムを持つこと【略】は容認できないと私は考えます」。

ホーゲン氏はまた、Facebookはサードパーティのデータソースを利用して、広告ターゲティング目的でユーザーのプロファイルを充実させていることに言及し、その利用を禁止するよう主張した。

「プロファイリングとデータ保持に関して、サードパーティのデータを取得することを許可すべきではないと思います。Facebookはクレジットカード会社やその他の形態と協働していますが、これは彼らの広告の収益性を根底から高めています」と同氏は述べ、次のように付け加えた。「データソースと連携する際にはその都度承諾する必要があると思います。人々は、Facebookに自分たちのデータの一部があることを知ればとても不愉快に感じるはずです」。

しかし、行動広告ターゲティングに関しては、全面禁止の支持を慎重に避けている。

それはこのセッション中に生じた興味深い波紋だった。この問題にはEU内部でモメンタムがあり、それにはホーゲン氏自身の内部告発が地域の立法者たちのFacebookに対する懸念を増幅させた結果としての影響も含まれていた。そしてホーゲン氏はそれを喚起するのに貢献したかもしれないのだ(しかしそうしないことを選んだ)。

「ターゲット広告に関しては、人々がどのようにターゲティングされるかを選択できるようにすべきであると強く提言します。そして、人々に選択を強要するダークパターンを禁止することを推奨します」と同氏はある回答の中で述べている(しかし「ダークパターン設計」のようなシニカルで多面的な要素に対し、規制当局がどのようにして有効な法律を作ることができるのかについての詳細には触れていない)。

「プラットフォームは、そのデータをどのように使うかについて透明である必要があります」と同氏は自身の提案のすべてを包含する本質を伝えてから、次の提案を繰り返すことに依拠した。「すべての政治広告に均一の広告レートを提供するようプラットフォームに義務づけるポリシーを公表すべきであることは、私が強く提唱するところです。政治広告でヘイトを助成すべきではありません」。

行動広告を禁止することに反対する同氏の主張は、規制当局が完全に包括的なプラットフォームの透明性を達成することに集約されている(むしろそれに依存している)ようだ。それは、Facebook(およびその他の同業各社)が人々のデータを使って実際に行っていることの正確な実態を提示できること、つまり、ユーザーがそのようなターゲティングを望むかどうかについて真の選択ができるようにすることだ。したがって、全面的な説明責任の遂行が重要な意味を持つ。

しかしセッションの別の局面で、それは子どもたちがFacebookのようなプラットフォームによるデータ処理に本当の意味で同意できるかどうかを尋ねられた後だったが、ホーゲン氏は、子どもはもちろんのこと、大人たちも、Facebookが自分たちのデータで何をしているのかを(現時点で)理解できているのか疑問であると主張した。

「自分がどのような情報をトレードしているのかを子どもたちが理解できるかということに関してですが、大人である私たちはほぼ間違いなく、何をトレードしているのかを理解していないと思います」と同氏は議員たちに語った。「アルゴリズムに何が含まれているのか、子どもたちにインフォームドコンセントが与えられるような形でターゲット設定されているのか、私たちにはわかりません。インフォームドコンセントが与えられているとは思えませんし、子どもたちの能力も限られています」。

これを踏まえると、同氏の信念、つまり「前述のような包括的な透明性は可能であり、すべての大人が操作的な行動広告を受け入れるか否かの判断を真に情報に基づいて下すことができるデータ駆動型操作、という普遍的に包括的な構図を描き出すだろう」との考えは、何というか、やや希薄に見える。

ホーゲンの論理、すなわち、規制当局がユーザーに提供されているあらゆるものについて不適切 / 不正確に伝達すること、および / または規制当局がユーザーに自らのリスクと権利に関する適切かつ普遍的な教育を保証していないことを含む、根本的な透明性の欠如に対して同氏が提案した解決策に従うならば、データ駆動型の搾取が(今まさに法律に組み込まれているフリーパスで)続いていくリスクがあることは確かであろう。

ここでの彼女の議論は一貫性に欠けているように感じられた。行動広告を禁止することに対する同氏の反対、そしてそれゆえに、ソーシャルメディアの操作的な有害性を助長する1つの根本的なインセンティブに対処することに反対している同氏の主張は、論理的というよりむしろイデオロギー的なものであるかのようだ。

(確かに、世界中の政府は同氏が主張しているような高い機能を備えた「完全な」監視機能を緊急に導入することができるという信念の飛躍は必要なように思える。とはいえ、同時に同氏は、何週間もかけて立法者たちに対し、プラットフォームは非常にコンテキストに特化した、データが詳細に記述されたアルゴリズムマシンとしてしか解釈し得ないものだと強く訴えてきた。同氏が今回の質疑応答で述べたようなFacebookの「驚くべき」データ量を考えれば、目の前にあるタスクの規模の大きさはいうまでもない。Facebookからデータを生の形で取得した場合、規制当局にとってあまりにも膨大すぎることが示されている)

これはおそらく、権利の専門家ではなく、データサイエンティストに期待される視点でもあるだろう。

(前述のような、行動広告の禁止に対する同氏の即座の拒否は、害が流れてそれが感じられるマシンの外にいるのではなく、ブラックボックスに内通してアルゴリズムやデータを操作することに専念してきたプラットフォームのインサイダーに見られるような、一種のトリガー反応といえよう)

セッション中の別の場面で、ホーゲン氏は、ソーシャルメディアの問題に対する唯一の万能薬として徹底的な透明性を求める自身の主張をさらに複雑にした。EUがこのような複雑な問題の施行を最大27の国家機関に任せることに対して警告を発した。

もしEUがそうするなら、DSAは失敗するだろうと同氏は示唆した。代わりに立法者たちに助言したのは、Facebookレベルのプラットフォームを包み込むために必要だと同氏が指摘する、非常に詳細で階層化された動的なルールの実施に対処するための中央EUの官僚機構を作ることだった。同氏はさらに、自身のような元業界のアルゴリズムの専門家たちがそこに「居場所」を見つけ、彼らの専門的な知識への支援や「公的な説明責任に貢献することによる還元」が推進されることを提唱した。

「アルゴリズムが実際にどのように機能し、その結果がどのような結果をもたらすのか、これらの分野の正式な専門家の数は、世界的に見て非常に少ないのが現状です。この分野に修士号や博士号はありません。そのため、分野に携わる企業の1つで働き、社内で実地訓練を受ける必要があります」と同氏は説明し、さらに次のように付け加えた。「この機能を27の加盟国に委譲した場合、1つの場所でクリティカルマスを獲得できなくなることを、私は深く懸念しています」。

「十分な専門家を確保し、それを広く分散させることは、非常に難しいでしょう」。

プラットフォームが人々の目をたやすく欺くことを防ぐためには、利己的なデータセットや「脆弱な」AIの中の悪質な詳細を明らかにする必要があると立法者たちに警告する声が非常に多い中、広告に個人データを使用しないなどの単純な制限を規制当局が実際に設定することにホーゲン氏が反対していることは、教訓的であるように思える。

同氏はまた、規制当局はプラットフォームがデータを使って実行できることに制限を設けるべきか、および / またはアルゴリズムに使用できるインプットに制限を設けるべきかについて、欧州議会議員らから直接質問を受けた。この質問に対しても、同氏は制限ではなく透明性を優先した(しかし他のところでは、前述のように同氏は、広告プロファイリングを充実させる目的でFacebookがサードパーティのデータセットを入手することは少なくとも禁止すべきだと主張している)。

結局のところ、このアルゴリズムの専門家のイデオロギーには、データ駆動型ソフトウェアマシンのための効果的な規制を考え出す方法について、ブラックボックスの外で考えることに関してはいくつかの盲点があるようだ。

民主主義社会がデータマイニングテクノロジーの巨人たちからコントロールを奪い返すためには、ある程度の急ブレーキは必要なことかもしれない。

したがって、ホーゲン氏の最大のアドボカシーは、デジタル規制を致命的に台無しにする抜け穴のリスクに関する極めて詳細な警告であろう。ここでのリスクが多元的であるという点で、同氏は間違いなく正しい。

同氏はプレゼンテーションの冒頭で、もう1つの抜け穴の可能性を指摘した。立法者たちに、ニュースメディアのコンテンツをDSAから除外しないよう求めた(これも議員たちが検討している修正案の1つだ)。「コンテンツ中立性のルールを作るのであれば、本当に中立でなければなりません」と同氏は主張した。「何も選ばれず、何も除外されないということです」。

「現代の偽情報キャンペーンはいずれも、システムを操作することで、デジタルプラットフォーム上のニュースメディアチャンネルを不当に利用していくでしょう」と同氏は警告した。「プラットフォームがこれらの問題に取り組むことをDSAが違法とする場合、私たちは法の有効性を損なうリスクを負うことになります。実際、今日の状況よりも状況が悪化する可能性があります」。

質疑応答の中でホーゲン氏は、いわゆる「メタバース」の構築に向けて計画されているFacebookの方向転換に照らして、規制当局が直面するであろう新たな課題について議員たちからいくつかの質問を受けた。

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これについて、同氏は議員らに対し「非常に懸念している」と述べ、家庭やオフィスでのメタバース供給センサーの普及によってデータ収集量が増加する可能性に警鐘を鳴らした。

同氏はまた、Facebookがワークプレイス用ツールの開発に注力していることが、ビジネスツールに関して従業員がほとんど発言権を持っていないことを考えると、オプトアウトが選択肢にさえならない状況をもたらすのではないかという懸念を表明した。これは人々が将来、Facebookの広告プロファイリングと、生計を立てることのどちらかを選ぶというディストピア的な選択に直面する可能性を示唆している。

Facebookが「メタバース」に新たな焦点を当てたことは、ホーゲン氏がFacebookの「メタ問題」と呼んだものを浮き彫りにしている。これはつまり、同社が現在のテクノロジーによって生じた問題を終わらせて修復するよりも「先に進む」ことを優先しているということでもある。

規制当局はこのジャガーノート(圧倒的な力を持つ存在)に対して、安全性に重点を置いた新たな方向性を計画させるためのレバーを投入しなければならない、と同氏は強調した。

​​画像クレジット:BENOIT DOPPAGNE/BELGA MAG/AFP / Getty Images under a license.

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックの広告ツールが特定の個人をターゲティングできることを研究者グループが発表

スペインとオーストラリアの学者とコンピュータ-科学者のチームによって執筆された最新の研究論文で、Facebook(フェイスブック)のプラットフォームがユーザーに割り当てる関心事項について十分に認識していれば、Facebookのターゲットツール使用して、特定の個人のみに排他的に広告を配信できることが実証された。

「Unique on Facebook:Formulation and Evidence of (Nano)targeting Individual Users with non-PII Data(Facebook上での一意性:非個人データによる個人ユーザーのナノターゲティングの定式化と証拠)」と題するこの論文では、Facebookのプラットフォームによってユーザーに割り当てられた趣味・関心事に基づいて、ユーザーを一意に識別できる可能性を示すメトリックを定義する「データ駆動モデル」が説明されている。

研究者たちは、Facebookのアドマネージャーツールを使用して、意図した特定のFacebookユーザーのみに届くように多数の広告をターゲット配信することができることを実証した。

この研究では、Facebookの広告ターゲットツールが有害な目的に利用される可能性について、新たな疑問を投げかけている。さらには、Facebookがユーザーについて収集している情報を使用して個人を特定できる、つまり、ユーザーの趣味や関心のみに基づいてFacebook上の膨大なユーザーから1人を選び出すことができるという状況を踏まえ、Facebookの個人データ処理帝国の合法性についても疑問を呈している。

この研究結果により、行動ターゲティング広告の禁止または段階的廃止を求める議員に対する圧力が強まる可能性がある。行動ターゲティング広告は、個人的にも社会的にも害を及ぼす可能性があるため、何年にも渡って非難の対象になってきた。少なくとも今回の論文によって、こうした侵襲的なツールの使用方法について確固とした抑制と均衡を求める声が高まりそうだ。

また、この研究では、こうした独立系の研究機関でもアルゴリズムを利用したアドテックを調査できることの重要性も浮き彫りになっており、研究者のアクセスを遮断しないように求める対Facebookの圧力も強まるに違いない。

Facebookの関心は個人データ

「私たちのモデルで検証した結果、Facebookによってあるユーザーに割り当てられた関心事集合のうち4つの大変珍しい関心事または22のランダムな関心事によって90%以上の可能性でそのユーザーをFacebook上で一意に特定できることが明らかになりました」とマドリード大学Carlos III、オーストラリアのGraz University of Technology(グラーツ工科大学)、スペインのIT企業GTD System & Software Engineering(GTDシステム&ソフトウェアエンジニアリング)の研究者は書いている。これにより、1つの重要な事実がわかる。つまり、Facebookが認識している珍しい関心事または多くの関心事を持つ個人は、Facebook上で、数十億人という膨大なユーザーの中からでも容易に特定できるということだ。

「この論文は、私たちの知るかぎりでは、世界規模のユーザーベースを考慮した上で個人の一意性について調査した最初の研究です」と彼らは続け、28億人のアクティブなユーザーに対するデータマイニングというFacebook固有のスケールについて言及した(注:Facebookはユーザー以外の情報も処理している。つまり、Facebook上でアクティブなインターネットユーザーよりもさらに広範なスケールの人たちにリーチしている)。

研究者たちは、今回の論文は「Facebookの広告プラットフォームを体系的に悪用してインターネット上の非個人識別情報データに基づくナノターゲティングを実装できる可能性」について最初の証拠を提示するものであることを示唆している。

Facebookの広告プラットフォームが、1対1で相手を巧みに操るためのパイプの役割を果たしていることについては早くから論争が繰り広げられてきた。例えば2019年のDaily Dotの記事には、性生活に不満を抱えている夫に、妻やガールフレンドを心理的に操作するサービスを販売していたSpinner(スピナー)という会社の例が紹介されている。挑発的で無意識に相手を操作する広告がターゲットのFacebookやインスタグラムのフィードにポップアップ表示されるというものだ。

今回の研究論文では、2017年に起こった英国の政治生命に関する事例にも言及している。労働党の選挙運動の最高責任者がFacebookのカスタムオーディエンス広告ターゲティングツールを利用して、党首のJeremy Corbyn(ジェレミー・コービン)氏をだますことに成功したのだ。ただし、このケースでは、ターゲットになったのはコービン氏だけではなかった。彼の同僚や彼と同じ考えの数人のジャーナリストにも広告が送られた。

今回の研究チームは、Facebookのアドマネージャーツールを利用すれば、特定の1人のFacebookユーザーに広告を送ることができることを実証している。彼らはこのプロセスを「ナノターゲティング」と呼んでいる(現在のアドテックで「標準的」な「インターネットベース」の広告をユーザーグループに送るマイクロターゲティングとは異なる)。

「本稿では、21のFacebook広告キャンペーンによって実験を実施することで、広告主がユーザーの関心事を十分に認識していれば、Facebook広告プラットフォームを体系的に悪用して特定のユーザーに排他的に広告を配信できることを論文の3人の執筆者が証明する」と論文には書かれており、この論文は「ターゲットユーザーの関心事のランダム集合を認識するだけで、Facebook上に1対1のナノターゲティングを体系的に実装できる」という「最初の経験的証拠」を提示するものだとしている。

彼らが分析に使用した関心事データは、彼らが作成し、2017年1月以前にユーザーによってインストールされたブラウザ拡張機能を介して、2390人のFacebookユーザーから収集されたものだ。

この拡張機能はData Valuation Tool for Facebook Users(Facebookユーザー向けのデータ評価ツール)と呼ばれ、各ユーザーのFacebook広告設定ページを解析して、ユーザーに割り当てられた趣味や関心を収集すると同時に、Facebookのブラウジング中にそのユーザーに配信される広告によってFacebookにもたらされる利益のリアルタイムの推測値を計算する。

関心事データは2017年以前に収集されたものの、Facebookの広告プラットフォームを介して1対1のターゲティングが可能かどうかをテストする研究者たちの実験は2020年実施された。

「具体的には、この論文の3人の執筆者たちをターゲットとするナノターゲティング広告キャペーンを設定しました」と彼らはテスト結果について説明する。「私たちは、Facebookが各ターゲット執筆者に割り当てた関心事のリストから5、7、9、12、18、20、22個をランダムに選択したものを使用して各執筆者向けにオーディエンスを作成することで、データ駆動型モデルが実際に機能するかどうかをテストしました」。

「2020年の10月から11月の間に合計21回の広告キャンペーンを実施して、ナノターゲティングが現在実現可能であることを実証しました。実験でモデルの実施結果を評価したところ、攻撃者があるユーザーについて18個以上のランダムな関心事を認識していれば、そのユーザーに対して非常に高い確率でナノターゲティングを実行できることが分かりました。実験で18個以上の関心事を使用した9つのうち8つの広告キャンペーンで、当該ユーザーのナノターゲティングに成功しました」。

したがって、Facebookに18個以上のあなたの関心事が登録されている場合、あなたを巧みに操ることを目論んでいる人物にとって、それらの関心事は極めて興味深いものになる。

ナノターゲティングは止められない

1対1のターゲティングを防ぐ1つの方法として、Facebookが最小オーディエンスサイズに厳しい制限を課す方法が考えられる。

今回の論文によると、Facebookは、キャンペーンのオーディエンスサイズが1000人を超える(以前は21人以上だったが2018年にFacebookが制限値を上げた)可能性がある場合、アドキャンペーンマネージャーツールを使用して「Potential Reach(潜在的リーチ)」値を広告主に提示しているという。

しかし、Facebookは、実際には、この潜在的リーチよりも少ないユーザーをターゲットとするキャンペーンを広告主が実施することを禁止していない。ただ、メーッセージがリーチする人の数が極めて少ないことを広告主に知らせないだけだ。

研究者たちは、複数のキャンペーンで、1人のFacebookユーザーに無事広告が届いたことによってこの事実を実証することができた。その結果、広告のオーディエンスサイズはFacebookの広告レポート生成ツールによって生成されたデータを参照したものであること(「Facebookにより1人のユーザーだけにリーチしたことが報告された」)、ウェブサーバー上にユーザーが広告をクリックすることによってのみ生成されるログ記録が存在することによって確認された。さらには、ナノターゲティングの対象ユーザーに広告とそれに付随する「この広告が表示されている理由」オプションのスナップショットを取得してもらった。このオプションの値は、ナノターゲティングに成功したケースのターゲティングパラメーターに一致していたという。

実験結果のサマリーには次のように追記されている。「本実験から得られた主な結論は次のとおりである。(i)攻撃者がターゲットユーザーから18個以上の関心事を推測できる場合、Facebook上の特定の1人のユーザーをナノターゲティングできる可能性は非常に高い。(ii)ナノターゲティングは非常に低コストで実現できる。(iii)本実験によると、ナノターゲット広告の3分の2は有効キャンペーン期間中7時間以内にターゲットユーザーに配信されると予想される」。

ナノターゲティングの防止対策について議論されているこの論文の別のセクションでは、Facebookが課しているとされるオーディエンスサイズの制限は「まったくの無効であることが判明した」と主張しており、20人というオーディエンスサイズ制限は「現在適用されていない」と断言している。

また、Facebookがカスタムオーディエンス(広告主がPIIをアップロードできる別のターゲティングツール)に適用しているという100人制限の回避策も提示されている。

以下論文より抜粋する。

広告主による極めて少数のオーディエンスをターゲットとする広告の配信を防ぐためにFacebookが実装している最も重要な対策は、オーディエンスを形成するユーザーの最小数に制限を課すというものだ。しかし、この制限はまったくの無効であることが判明した。本論文の結果に動機付けられたFacebookは、アドキャンペーンマネージャーを使用して20人を下回るサイズのオーディエンスを設定することを禁止した。我々の調査では、この制限は現在適用されていない。その一方でFacebookは、最小カスタムオーディエンスサイズを100人とする制限を課している。セクション7.2.2で説明するとおり、この制限を回避して、カスタムオーディエンスを使用してナノターゲティングによる広告キャンペーンを実装するさまざまな方法が文献で紹介されている。

この論文では、全体を通して、インターネットベースのデータを「非個人識別情報(non-PII:Personally Identifiable Information)」と呼んでいるが、このような枠組みは欧州の法律のもとでは無意味であることを忘れてはならない。欧州では、一般データ保護規則(GDPR)のもとで、個人データについて非常に広い見方をしているからだ。

PIIという言葉は米国でのほうがより一般的だ。米国では、欧州のGDPRに相当する包括的な(連邦)プライバシー法というものがないからだ。

アドテック企業もPIIという言葉を使いたがる。ただし、それはずっと限定されたカテゴリでの話だ。アドテック企業が実際に処理するすべてのデータ(個人を識別およびプロファイリングして広告を配信するために使用できるデータ)という意味ではない。

GDPRのもとでは、個人データとは個人の名前やメールアドレス(つまり、PII)などの明白な識別子だけでではなく、個人を特定するために間接的に使用できる情報(居場所や関心事など)も含まれる。

以下に、GDPR(第4(1)項)の関連部分を抜粋する(強調部分はTechCrunchによる)。

「個人データ」とは、識別されている、または識別可能な自然人(データ主体)に関する任意の情報を指す。識別可能な自然人とは、特に、名前、識別番号、場所データ、オンライン識別子などの識別子、またはその人の身体的、生理的、遺伝的、精神的、経済的、文化的なアイデンティティに固有の1つ以上の要素を参照することで、直接または間接に識別可能な自然人のことである。

他の研究でも数十年に渡って繰り返し示されていることだが、個人は、クレジットカードメタデータNetflixの視聴習慣など、わずかな「非個人識別情報」があれば再特定できる。

膨大な数の人たちをプロファイリングし広告のターゲットにするFacebookは、継続的かつ広範囲にインターネットユーザーの行動をマイニングして関心事ベースのシグナル(つまり、個人データ)を収集し、個人プロファイリングを行って各個人に合わせた広告を配信する。そのFacebook帝国が、世界中のほとんど誰でも巧みに操作できる(ただし、相手について十分な知識があり、その相手がFacebookのアカウントを持っていることが条件)可能性のある攻撃ベクトルを作り出したとしても何も驚くには当たらない。

しかし、それが法的に問題のないことであるとは限らない。

実際、人々の個人データを処理して広告ターゲティングを行ってもよいというFacebookの主張の法的根拠は、EUで長年に渡って問題とされてきた。

広告ターゲティングの法的根拠

Facebookは以前、ユーザーは自身の個人データが広告ターゲティングに使われることについて同意していると主張していた。しかし、Facebookは、行動ターゲティングのためにプロファイリングされることを承諾するのか、ただ友人や家族とつながりたいだけなのかのどちらかをユーザーに選択してもらう際に、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づいて選択できるようにしていない(ちなみに、見返りを求めず、具体的で、明確な情報に基づく同意というのは、同意についてのGDPRの基本的なスタンスだ)。

Facebookを使うには、自分の情報が広告ターゲティングに使用されることを承諾する必要がある。これは、EUのプライバシー運動家が「同意の強制」と呼ぶものだ。つまり、同意ではなく、強制だ。

しかし、2018年5月のGDPR施行以来、Facebookが合法的にヨーロッパ人の情報を処理できるのは欧州のユーザーが広告の受信についてFacebookと契約している状態だからだ、という主張に切り替えたようだ。

FacebookのEU規制当局として主導的立場にあるアイルランドのデータ保護委員会(DPC)によって今週始めに公開された仮決定では、こうした暗黙の主張変更は透明性に欠けるとして、Facebookに対し、3600万ドル(約40億9500万円)の罰金を課す提案をしている。

DPCは、Facebookの広告契約の主張には問題があるとは考えていないようだが、欧州の他の規制当局は問題があると考えており、アイルランドの仮決定に意義を唱える可能性が高い。この件に関するFacebookのGDPRに対する不満をめぐる規制当局側の調査は今後も続き、当分は終わりそうもない。

仮にFacebookがEUの法律を回避しているという最終判断が下った場合、Facebookはユーザーに対し、ユーザーの情報を広告ターゲティングに使用できるかどうかについて見返りを求めない選択肢をユーザーに与えることを強制されることになる。そうなると、Facebook帝国に存在の根幹に関わるような風穴をあけることになる。というのも、この研究でも強調しているとおり、(ターゲティング広告に利用せずに)保管しているだけの関心事データでも個人データになるからだ。

それでも、Facebookは、問題など存在しないと主張するいつもの常套手段を使っている。

今回の研究に対して回答した声明の中で、Facebookの広報担当はこの論文を「当社の広告システムの動作原理についての理解が間違っている」として一蹴している。

Facebookの声明では、この研究者たちの結論の核心部分から注意をそらして、彼らの研究結果の重要さを矮小化しようとしている。以下に、広報担当の言明を示す。

この研究は当社の広告システムの動作原理を間違って把握しています。広告ターゲティングに使用する特定の人に関連付けられた関心事のリストは、その人がそのリストを共有することを選択しないかぎり、広告主が見ることはできません。このリスト、つまり広告を見た人を特定する具体的な詳細情報がなければ、この研究者たちの手法を使って広告主が当社のルールを破ろうとしても無駄です。

Facebookからの反論に答えて、論文の執筆者の1人であるAngel Cuevas(アンヘル・クエバス)氏は、同社の議論を「残念だ」と表現し、問題がないなどと主張するのではなく、ナノターゲティングのリスクを防止するためのより強力な対策を実装すべきだとしている。

この論文では、ナノターゲティングにともなう数多くの有害なリスクが指摘されている。例えば心理的説得、ユーザーの操縦、脅迫などだ。

「驚くのは、ナノターゲティングが実現可能であり、対策は広告主がユーザーの関心事を推測できないと仮定することくらいしかないことをFacebook自身が暗黙に認識していることです」とクエバス氏はいう。

「広告主がユーザーの関心事を推測する方法はいくらでもあります。この論文でも、(ユーザーからは研究目的で行うという明示的な同意を得た上で)ブラウザのプラグインを使って実際に試してみました。それだけではありません。関心事の他にも、(今回の研究では試しませんでしたが)年齢、性別、都市、郵便番号などのパラメーターもあります」。

「これは残念なことです。Facebookのようなテック大手は、広告主がFacebookプラットフォームでのオーディエンスサイズを決めるために後で使用できるようユーザーの関心事を推測することなどできないという前提に頼らずとも、もっと強力な対応策を実現できるはずです」。

例えば2018年のCambridge AnalyticaによるFacebookデータの悪用スキャンダルを覚えているだろうか。Facebookのプラットフォームにアクセスした開発者が、クイズアプリを使って、気づかれることも同意を得ることもなく、数百万人のユーザーのデータを抽出することができたという事件だ。

つまり、クエバス氏のいうとおり、広告主 / 攻撃者 / エージェントが同じような不透明でずるいやり方を実装してFacebookユーザーの関心事データを取得し、特定の個人を巧みに操ることは決して難しくない。

論文の注には、ナノターゲティングの実験を行った数日後、テスト用キャンペーンに使用したアカウントがFacebookによって何の説明もなく閉鎖されたと記載されている。

Facebookからは(アカウントが閉鎖された理由も含め)論文に記載した具体的な質問に対する回答はなかった。だが、もしFacebookがナノターゲティングの問題を認識していたから閉鎖したのであれば、なぜそもそも特定の1人のユーザーをターゲットとする広告の配信を防ぐことができなかったのだろうか。

訴訟の増加

この研究結果は、Facebookの事業にどの程度広範囲な影響を及ぼすだろうか。

あるプライバシー研究者の話によると、この研究はもちろん訴訟に役立つという。欧州では、特にFacebook(広くはアドテック全般)に対するEU規制当局のプライバシー保護対策が遅々として進んでいないため、訴訟の数が増えている。

また別の研究者は、今回の研究結果は、Facebookが、個人データは処理していないと見せかけておきながら、実はユーザーの体系的な再特定化を大規模に行っていることを浮き彫りにしていると指摘する。つまり、Facebookは膨大な数のユーザーの膨大なデータを蓄積しており、個人情報の処理に制限を設ける程度の範囲の狭い法的規制など事実上回避できてしまうことを示唆している。

このため、行動ターゲティング広告がもたらす害を抑える有意義な制限を課そうとする規制当局は、Facebook独自のアルゴリズムが同社が保持する膨大なデータ内を検索して、その中からユーザーの代理人に相当するパラメーターを探し出して利用するという方法に気づく必要がある。また、同じような論法でFacebookのアルゴリズムによる処理は法的な制限を回避する可能性がある(例えばFacebookが慎重に扱うべき関心事の推測の問題で使った戦術)ことも認識しておく必要がある。

別のプライバシーウォッチャーで独立系の研究者でコンサルタントのDr Lukasz Olejnik(ウカシュ・オレジニク)博士は、今回の研究を驚くべきものだとし、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入る内容だと説明する。

「28億人から1人を特定するのはとてつもないことです。Facebookプラットフォームは、そのようなマイクロターゲティングが行えないようにする予防策を講じていると主張しているにもかかわらず、です。この論文は、過去10年間で最も重要なプライバシー研究結果のトップ10に入ります」と語る。

「関心事は個人データに含まれるとするGDPR第4(1)項の意味する関心事によってユーザーを特定することができるようです。ただし、こうした処理をどのようにして大規模に実行するのかは明確に示されていませんが(ナノターゲティングのテストは3人のユーザーに対してのみ実行された点を指摘して)」。

オレジニク氏は、この研究はターゲティング広告が個人データ、そして「おそらくGDPR第9項の意味における特殊なカテゴリのデータにも」基づいて行われていることを示していると指摘する。

「これはつまり、適切な保護対策が行われていないかぎり、ユーザーの明示的な同意が必要であることを意味します。しかし、論文の内容から、私たちは、そうした対策は存在しているとしても不十分だという結論に達しました」と同氏は付け加えた。

今回の研究はFacebookがGDPR違反を犯していることを示していると思うかという質問に対し、オレジニク氏は「DPAは調査を行うべきです。その点は疑問の余地がありません」と話す。「技術的には難しい案件かもしれませんが、立件は2日もあればできるはずです」。

我々はこの研究結果をFacebookの欧州DPAで主導的立場にあるアイルランドDPCに知らせ、GDPR違反があるかどうかを判定するための調査を行うかどうか聞いてみたが、本記事の執筆時点では回答がなかった。

マイクロターゲティングの法的禁止に向けて

この論文によってマイクロターゲティングの法的禁止を肯定する論拠が補強されるかという質問に対し、オレジニク氏は、歯止めをかけることは「前進ではある」が、問題はその方法だと答えた。

「全面禁止にする場合、現在の業界および政治環境の対応準備ができているかどうかは分かりません。とはいえ、少なくとも、技術的な防止策は求めるべきです」と同氏はいう。「(Facebookによれば)すでに防止策は講じているということですが、(ナノターゲティングの件については)防止策は存在しないも同然のようです」。

オレジニク氏は、グーグルのプライバシーサンドボックス案に組み込まれているアイデアを一部利用すればすぐに変化が起こる可能性があると提案する。しかし、同案はアドテック各社が競争監視につながるとして不満を表明したため頓挫してしまっている。

マイクロターゲティングの禁止についてクエバス氏に意見を聞くと、次のように答えてくれた。「私の個人的な立場から言わせていただくと、我々はプライバシー保護のリスクと経済(求人、イノベーションなど)とのトレーオフについて理解する必要があるということです。私たちの研究によると、アドテック業界は、個人識別情報(メール、電話、住所など)について考えるだけでは不十分であり、オーディエンスの範囲を特定する(絞り込む)方法についてより厳しい対策を実装する必要があることは明らかです。

「その上で申し上げますが、私どもはマイクロターゲティング(少なくとも数万人規模のユーザーにオーディエンスを限定できる能力と考えます)を禁止することには反対です。マイクロターゲティングには重要な市場が存在しており、そこでは多くの仕事が生まれています。また、必ずしも悪いこととは限らない興味深いことが行われている極めて革新的な分野でもあります。ですから、マイクロターゲティングの潜在能力をある程度制限してユーザーのプライバシーを保護するというのが私どもの立場です」。

「プライバシーの分野で未だに解決されていない疑問は同意だと思います」と同氏はいう。「研究コミュニティとアドテックエコシステムは、(理想的には協力して)十分な説明を行った上での同意をユーザーから得るための効率的なソリューションを作成するために取り組みを進める必要があります」。

大局的な話をすると、欧州では、AI駆動形ツールの法的要件がおぼろげに見え始めたところだ。

EUでは2021年初めに提案された人工知能の高リスクの応用を規制する法律が施行される予定だ。この法律では「人の意識を超えて作用する行動を大きくねじ曲げるためのサブリミナル技術で、その人または別の人に心理的または身体的な害を及ぼすかその可能性のある技術」を展開するAIシステムの全面禁止が提案されている。

そのため、Facebookのアドツールが脅迫や個人の心理的操作に利用されないようにするための適切な保護策を同社がまだ実施していない場合、FacebookのプラットフォームがEUの将来のAI規制のもとで禁止に直面するのかどうかを推測してみるのは少なくとも興味深い。

とはいえ、現時点では、Facebookのターゲティング帝国にとっては、相変わらずもうかるビジネスである。

クエバス氏にFacebookプラットフォームに対する今後の研究計画について尋ねると「次の研究で是非やりたいのは、関心事と他の人口統計情報を組み合わせることでナノターゲティングが『より容易になる』のかどうかという調査です」。

「というのは、広告主がユーザーの年齢、性別、都市(または郵便番号)といくつかの関心事を組み合わせてユーザーに対してナノターゲティングを実行できる可能性が非常に高いからです」と同氏はいう。「こうしたパラメーターをいくつ組み合わせる必要があるのかを知りたいのです。年齢、性別、住所と数個の関心事をユーザーから推測するほうが、数十の関心事を推測するよちもはるかに簡単です」。

このナノターゲティングの論文は2021年12月のACM Internet Measurement Conferenceでのプレゼンテーションとして受理されている。

画像クレジット:NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

Promoted.aiは膨大な商品があふれるマーケットプレイスで買い手と売り手をマッチングさせるツールを開発

現在、マーケットプレイスには多くの商品が溢れている。それらは買い手に見付けてもらうのをただ待つしかないため、売り手になるのは大変だ。Promoted.ai(プロモーテッド)は、そんなマーケットプレイスの検索で、買い手と売り手をマッチングさせるツールを開発し、人々があなたの商品を見つけるための手助けをしようとしている。同社はその仕事を継続するために200万ドル(約2億3000万円)の資金を調達した。

Promotedは、Pinterest(ピンタレスト)のエンジニア兼エンジニアマネージャーだったAndrew Yates(アンドリュー・イェーツ)氏とDan Hill(ダン・ヒル)氏の2人が起ち上げた会社で、買い手がもっと簡単に欲しいものを見付けられるようにして、それがリピート購入につながるようにしたいと考えた。そして売り手には、自分の商品が検索でどのように表示されるかをすぐに確認でき、販売を改善するためのツールを提供したいと考えた。

「私たちは、検索されたすべての商品について、誰かが興味を持って最終的に購入することになるのは何であるかを予測します」と、イェーツ氏はTechCrunchの取材に語った。「これは、完全なパッケージです。私たちが業界や顧客から発見したことは、適切な場所に適切なタイミングでデータを置くことができるように、データインフラが必要だということです」。

Promotedの技術は単なるアイテムではなく、全体像の最適化であると、イェーツ氏は説明する。つまり、大規模な販売者と小規模な販売者の間で注目度を共有するにはどうすればよいかを公平に考え出し、その上でユーザーがその検索に満足しているかどうかを考慮するのだ。

イェーツ氏とヒル氏は、2020年にベイエリアを拠点にPromoted.aiを立ち上げ、最近のY Combinator(Yコンビネータ)の冬期コホートに参加した。今回の資本投入では、同アクセラレーターに加え、主要な投資家としてはInterlace Ventures(インターレース・ベンチャーズ)とRebel Fund(レベル・ファンド)が資金を提供している。

InterlaceのマネージングパートナーであるVincent Diallo(ヴィンセント・ディアロ)氏は、この会社に惹かれた理由として「この分野ですばらしい経験を積んでいる」と感じられたチームの存在が大きいと述べている。

Interlaceは主にコマーステクノロジーに投資しているベンチャーキャピタルであり、ディアロ氏はPromotedが取り組んでいる2つのトレンドに注目した。1つ目は、小売業者がマーケットプレイスを開設することで、電子商取引や配送の幅を広げようとする動き。2つ目は、ある種の顧客行動やコミュニティの構築を通じて、市場のサブセットを獲得しようとする縦割り型のマーケットプレイスが増えていることだ。

「Amazon(アマゾン)の業績の大部分は広告マネージャと広告収入によるものです。そこで私たちは、このようなツールを構築することにチャンスがあると確信しました」と、ディアロ氏は付け加えた。

Promotedは企業向け案件をターゲットにしており、新たに調達した資金は人材雇用に充てる予定だ。しかし、同社の資金調達ラウンドは少し変わっていた。

同社のチームの大部分は、Facebook(フェイスブック)、Pinterest、Google(グーグル)の元エンジニアで構成されている。優れた人材をめぐり激しい競争が繰り広げられている環境の中で、同社の創業者たちは、従来のシード資金調達という方法を採るのではなく、創業時のエンジニアチームに株式を提供し、残りの資金を5万ドル(約570万円)以下ずつ個人エンジェル投資家から調達することにしたのだ。

「そのためには、いくつかのすばらしい資金に背を向けなければなりませんでしたが、その代わりに、優秀な人々、専門家、支持者のすばらしいネットワークを手に入れることができました」と、イェーツ氏はいう。「私たちは、優れた才能を確保するためには、エンジニアに直接株式を提供する方が良いと考えました。なぜなら、株式は非常に注目されており、経験豊富な機械学習や広告のエンジニアの現金給与は非常に高いからです。最終的には、チームを拡大するための追加資金を調達する予定です」。

Promotedはまだ若い会社だが、すでにHipcamp(ヒップキャンプ)やSnackpass(スナックパス)などのマーケットプレイス・アプリと連携しており、顧客はコンバージョン率の向上を実感している。例えばHipcampでは、Promotedによって総予約率が7%以上増加したと、イェーツ氏は述べている。

同社は今後、製品のローンチマネージャー方面に注力し、リスティング広告における広告マネージャーのようなツールを開発していく予定だ。

画像クレジット:Richard Drury / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インドが高利益を約束する無責任な暗号資産の広告禁止を検討

インドのNarendra Modi(ナレンドラ・モディ)首相と複数の関係者が現地時間11月13日に行った会議の概要をまとめたメモによると、インド政府は、顧客にかなりの利益を約束し、そのような取引の不安定な性質について透明性を持たない暗号資産取引所による広告を禁止すべきだと「強く感じている」という。

記者団に共有されたメモによると、無責任な広告が国内の若者を惑わせており、中止しなければならないというコンセンサスが、政府を含む複数の関係者によって得られた。

ここ数週間、Andreessen Horowitzが支援するCoinSwitch KuberやB Capital Groupが支援するCoinDCXなどの大手暗号資産取引所は、多くの個人が非常に無責任だとみなす広告を打ち出している。

現在、暗号資産とその取引を監督する公式な枠組みがないインドの議員らは、業界の進むべき道を策定すべく、ここ数四半期に複数の利害関係者と対話を行ってきた。

こうした動きは、ビットコインやその他の暗号資産を人生で初めて購入する人がインドでますます増えていることを受けてのものだ。伝説的なAmitabh Bachchan(アミタブ・バッチャン)氏や、インド最大のいくつかのヒット作品に出演しているRanveer Singh(ランヴェール・シン)氏など、ボリウッドのスターたちがここ数週間で暗号資産取引を推進している。

その一方で、CoinSwitch KuberとCoinDCXは、若者が情報に基づいた投資判断ができるようなコンテンツを提供するために、ポッドキャストやその他のコラボレーションを業界関係者と開始した。

また、インドの議員らは、暗号資産取引手段がマネーロンダリングやテロ資金調達に悪用される可能性について懸念を示してきた。

これを抑制するために政府関係者は、暗号資産取引所に対して顧客の完全なKYC(本人確認)の実施を要求する可能性を示している。ほとんどの暗号資産取引所は先回りしてこの要求を満たしていて、一部の取引所はユーザーが自分のトークンやコインをプライベートウォレットや他の取引所に移動することを禁止している。

しかし、少なくとも当面の間、インド政府が暗号資産に関与しようとしているのはその程度かもしれない。

知名度の高いある政治家が今月初め、業界の幹部にブロックチェーン技術をめぐるイノベーションを歓迎する法律を国が打ち出し、インドのプロジェクトへの外国からの投資に前向きであることを示したと、この件を直接知る人物がTechCrunchに語っている。

中国政府が暗号資産取引を取り締まっていることを受けて、このような潜在的な動きに対する政府の確信が強くなっていると、情報筋は述べた。この人物は問題が非公開であることを理由に匿名を要求した。

11月13日のメモでは、政府は「ブロックチェーンが進化する技術であることを認識しており、それゆえに政府は注意深く見守り、積極的な措置を取る」と伝えられている。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

モバイルゲームの巨人ZyngaのCEOが広告危機への対応とブロックチェーンゲーミング部門について語る

ウォール街と自身のガイダンスを上回る実績を上げたZynga(ジンガ)は、第3四半期決算で売上7億500万ドル(約804億円)、前年同期比40%を記録し、月間アクティブユーザー数1億8300万人、前年同期比120%増でモバイルユーザー数は過去最大に達した。

第2四半期にはApple(アップル)のプライバシーポリシー変更の深刻な影響を受け、8月5日から11月4日の間に持ち株の30%を売却するという劇的な出来事があったにも関わらず、予測を超えるユーザー数を獲得し、好調のうちに年を終える見込みが立ったことを伝える米国時間11月10日のニュースを受け、Zyngaの株価は急騰した。

ZyngaのCEOであるFrank Gibeau(フランク・ジボー)氏(画像クレジット:Zynga)

TechCrunchはZyngaのCEOであるFrank Gibeau(フランク・ジボー)氏をインタビューし、モバイルゲームの巨人がどうやって広告危機を乗り越えながら、クロスプラットフォームの拡大とブロックチェーンへの進出という転換ができているのかを尋ねた。

嵐を乗り切る

4月26日、Apple(アップル)はIDFA(広告識別子)を変更し、デベロッパーにATT(アプリ追跡透明性)ツールを使ってユーザーがiOSアプリを横断して追跡されることからオプトアウトできるようにすることを要求し、モバイル広告エコシステムを震撼させた。ロックダウン中に獲得した新規ユーザーは、パンデミックによる制約が解除されると一気に離脱し、獲得コストは急増した。企業は次々と15~20%の売上減少を報告し始めた、とConsumer Acquisitionは伝えている。中でも最も影響が大きかったのが、Snapchat(スナップチャット)のような広告プラットフォームや広告主のPeloton(ペロトン)、広告プラットフォームでも広告主でもあるZyngaなどだ。

「2021年の中間点は大変でした」とジボー氏がTechCrunchに語った。「当社はIDFAと大きな再開需要の問題の重なりから最初に立ち直った企業の1つです。進路を正すために、広告出費を抑え、新しいツールと技術の実験を開始して、9月には平常状態に戻りはじめました」。

ジボー氏は、「FarmVille 3」の公開を成長速度が回復するまで待ったことを話し、11月4日の発売後、この新作ゲームがiPadとiPhoneのApp Storeでそれぞれ第1位と第2位になったことを大いに喜んでいた。

「最悪の状態を脱したことを実感し、第4四半期に向けて新規ゲームへの投資を拡大できることを喜んでいます。この時期を乗り越えるための鍵は、当社のファーストパーティーデータ(自社で収集したデータ)をChartboost(チャートブースト)プラットフォームでどう使うかです」と、Zyngaが2021年買収した広告ネットワークに言及した。

「プレイヤーが当社のゲームにやってきた時に起きることやプレイしたイベント、当社の既存サービスで広告主が何をしているかなどに関して、私たちは大量のデータを持っています。ファーストパーティーデータを活用することで、会社にとって有益なリターンやオークションを予測するためのモデルを構築することができます」と同氏は語った。

Zyngaは、Unity(ユニティ)、Google(グーグル)、Iron Source(アイアンソース)とも提携して、プレイヤーをターゲットするよりよい方法を見つけようとしている。

「この問題には多くの賢い人が取り組んでいます。これはどちらかというと時間の問題で、答えがないわけではありません。長期的に見て、Appleは健全な広告市場を支える有効なプラットフォームを作ると同時に、プレイヤーのプライバシーを守ろうとしているので、私たちは喜んで協力しています」と同氏は語った。

ハイパーカジュアルを使いこなす

Zyngaのビジネスの80%はサブスクリプションとアプリ内購入の少額決済だが、売上の5分の1は広告によるものだ。ハイパーカジュアルゲームと呼ばれる、シンプルなインターフェースで通常30秒以内にプレイが終わるゲームの人気が広告を支えている。

第3四半期、Zyngaは広告売上を前年同期の2倍近くに伸ばした、とジボー氏はいう。この成功に寄与したのは、Zyngaが1年前に買収したトルコ拠点のゲームメーカーRollic(ロリック)で、Zyngaが同カテゴリーのトップ3パブリッシャーになるきっかけとなった。

「アプリストアのインストール数を見ると、ハイパーカジュアルは最大のカテゴリーです。非常に安上がりのゲームで膨大なオーディエンスにリーチできるので、広告を主要な収益方法として利用しています。当社にとって非常に実入りの良い分野であり、私たちのネットワークにユーザーを誘う理想的な入口です。このネットワークは、2022年以降に当社の成長を支える大規模なパブリッショングと広告のプラットフォームを作るという私たちの野心的計画につながっています」とジボー氏は言った。

すべての道はメタバースに続く

Zyngaが次にリリースする大型ゲームは、「Star Wars:Hunters」で、Androidの一部市場で2021年11月中旬に限定公開し、iOSとSwitchで2022年にテストを開始するとジボー氏はいう。これは同社にとってゲーム専用機で動く最初のクロスプラットフォームゲームであり、「Farmville 3」は、macOSで公開された最初のクロスプラットフォームゲームだった。

ジボー氏は、Zyngaのモバイルゲームを他のプラットフォームでプレイできるようにすることへの関心について話した。

「FarmVilleファンとStar Warsファンはどこにでもいるので、プラットフォーム無依存にして私たちの体験をできるだけ多くの場所に提供するのは至極当然のことです」と彼はいう。「結局私たちは、ゲームは1人より一緒にプレイするほうが楽しいと信じているソーシャルゲーム会社です。だから、革新を起こして新しいことを試すことは会社カルチャーの一部なのです」。

2020年以来、ZyngaはSnapchatGoogle Nest、およびAmazon Alexaでゲームを提供してきた。そしてつい最近、TikTokで同社初のゲーム、Disco Loco 3Dを公開した。これは無料でプレイできる音楽とダンスのチャレンジだ。

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「ゲーミングの世界では、次のプラットフォームを逃すと窮地に追い込まれます。そこで失敗すると、非常に痛い目にあいます。だから、さまざまなソーシャルプラットフォーム向けに体験を開発して、チャンスがあるかどうかを見ることは非常に重要だと思いました。Snapchatとの提携では、彼らのエコシステムでゲーミングの存在を大きくするに方法を協力して考え、いくつか良い結果を得ていますが、まだ始まったばかりです」とジボー氏はいい、それらのゲームは概念証明が目的であり収益を生むためではないことを強調した。

Netflix Gaming(ネットフリックス・ゲーミング)は11月2日に公開され、Zyngaの元最高クリエイティブ責任者であるMike Verdu(マイク・バードゥ)氏が指揮をとった、とジボー氏は語った。「Netflixにとって、このビジネスのサブスクリプション部分にどうアプローチしたいのか、ユーザーはゲームをどのような操作するのかなど、検討すべきことがまだたくさんあるので、彼らがサードパーティーコンテンツを受け入れる準備ができているのかどうか私にはわかりませんが、将来どこかの時点で話をするのはとても有意義だと思います」。

さらにジボー氏はこう付け加えた「それがNetflixでもRobloxでもEpicでもValveでも、そこにプラットフォームがあり、私たちのコンテンツがそこにあって聴衆に届けることが理に適っているなら、私たちは間違いなく追究していきます」。

しかし、おそらくZyngaにとって今後最大の冒険は、元EA(エレクトロニック・アーツ)幹部のMatt Wolf(マット・ウルフ)氏を新設のブロックチェーンゲーミング部門の責任者として迎えたことにかかっている。NFT(非代替性トークン)の狂乱がゲーミング業界に吹き荒れ、ブロックチェーンのスタートアップ、Mythical Games(ミシカル・ゲームズ)やAnimoca(アモニカ)やForte(フォーテ)の評価額は過去数カ月で10億ドル(約1140億円)に達し、デベロッパーがゲームを横断して使える永久収集アイテムを作る後押しをした。

「この分野には多くの資金と人材が流れ込んでいます」とジボー氏は言い、決断のタイミングを説明した。「当社のファンダーで会長のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏と、長年取締役を務めているBing Gordon(ビン・ゴードン)氏がこの分野に非常に熱心なので、ブロックチェーンは長期的にゲーミングの一部になると私たちは信じています。

ウルフ氏が現在最適な道筋を見極めるための専門部隊を立ち上げているところで、FarmVilleで農場を所有することでエンゲージメントや定着率が向上するかどうかなどを調べる予定だとジボー氏は語った。

「私たちはZyngaのスピードで動くつもりなので、数カ月のうちには何かをお見せできると思います」と同氏は語る。

画像クレジット:Zynga

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(文:Martine Paris、翻訳:Nob Takahashi / facebook

モバイルゲームでオーディオ広告を配信するAudioMobがシリーズAで約16億円調達、グーグルなどが支援

AudioMobは「押しつけがましくない」オーディオ広告をモバイルゲームに配信するスタートアップだ。ポップアップするようなちょっとした広告はプレイヤーの気に障るようなものではなく、AudioMobはそのメカニズムをどうにかして解明したようだ。

AudioMobは、Makers FundとLightspeed Venture Partnersが主導するシリーズAで1400万ドル(約15億9500万円)を調達した。Sequoia Scout ProgramとGoogleも参加した。これまでの調達金額の合計は1600万ドル(約18億2200万円)となった。

AudioMobは今後も実験的なオーディオテクノロジーの開発、複数の国での特許申請、ロンドンとアブダビにあるオフィスの拡大を続ける計画だ。同社は、評価額が1億1000万ドル(約125億3000万円)程度であると主張している。

筆者は2020年にCEOのChristian Facey(クリスチャン・フェイシー)氏とCTOのWilfrid Obeng(ウィルフリード・オベン)氏に会った。同社が活発に動き出し早期のトラクションを得て、Ed Sheeran(エド・シーラン)やNas(ナズ)、そしてIntel、Jeep、KitKatなどのブランドと協業したころだ。

AudioMobは現在、中国を除くすべての国のモバイルゲームにオーディオ広告を配信し、特にアラブ首長国連邦、ドイツ、カナダでは成長が目覚ましい。

フェイシー氏は「我々は、AudioMobのビジョンに対して長期的な成功と我が社の未来を期待する投資家の熱い思いに感動しています。我々はオーディオで業界全体に革新を起こそうとしています。業界を適切なやり方でディスラプトする技術とチームを作り、最終的にはテック業界の新たなユニコーンになるでしょう」と述べた。

オベン氏は「利用者は邪魔をされたくない、広告主は広告を聞いてもらいたい、ゲーム開発者はリテンションに影響を及ぼさずに収益を上げたいと考えるものです。我々はこの3つのニーズをすべて満たすプロダクトを開発しました」と述べた。

Googleは2021年6月に、ヨーロッパの黒人ファウンダー基金の対象とする30社のスタートアップの1つとしてAudioMobを選出した

画像クレジット:AudioMob、共同創業者のクリスチャン・フェイシー氏(左)とウィルフリード・オベン氏(右)

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(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

フェイスブックがユーザーの政治的信条、宗教、性的指向を広告ターゲットにすることを禁止予定

Facebook(フェイスブック)は米国時間11月9日、個人の健康、性的指向、宗教的・政治的信条などの、潜在的に「センシティブ」な属性に基づいてユーザーをターゲティングすることを、この先広告主に許可しないことを発表した。たとえば「Lung cancer awareness(肺がんの知識)」「LGBT culture”(LGBTカルチャー)」「Jewish holidays”(ユダヤ教の休日)」などが、2022年初頭からターゲット外となるカテゴリーの例だ。

同社はブログに「こうした詳細なターゲット設定オプションを削除する決定は容易ではなく、この変更が一部の企業や組織に負の影響を及ぼす可能性があることは承知しています」と記し、その上で公民権の専門家、政策立案者、その他の関係者からの意見が今回の決定を後押ししたと述べている。広告収入はFacebookの主要な収入源であるため、広告ポリシーの大幅な変更は大きな副次的影響を及ぼす可能性がある。

Facebookは年齢、居住地、性別(ジェンダー)など、プロフィールに記載されている情報に基づいて、ユーザーをターゲットにすることができる。しかしFacebookプラットフォームが、ユーザーのプロフィールに記載されている性的指向に基づいてターゲットを絞ることはこれまでもしていなかったと、同社の担当者はTechCrunchに語った。この先、削除される広告とは、ユーザーのプロフィール内の関心カテゴリーに基づいて提供されている広告を指すという。

これまでFacebookは、ユーザーのアクティビティに基づいて、そうした関心カテゴリをユーザーのプロフィールに割り当てていた。Facebookのコンテンツにどのように関わったかに応じて、ユーザーには「米国のユダヤ文化」「LGBTの権利」「バラク・オバマ」など、Facebookが「センシティブ」と呼ぶカテゴリーが割り当てられる可能性がある。2022年1月19日から、広告主はこれらのような関心事に基づいて広告をターゲティングすることができなくなる。なお「ロッククライミング」や「編み物」など、センシティブではない他の関心グループは引き続きターゲットとして使われる予定だ。センシティブかどうかに関わらず、そうしたカテゴリーは何万もあるのだ

いまでもユーザーは、デスクトップの「設定とプライバシー→設定→広告→広告設定→広告のターゲット設定に使用されるカテゴリ→興味・関心のカテゴリ」で、自分のプロフィールにひも付けられた関心グループを確認することができる。また特定の関心事に基く広告を見たくない場合は、そこでオプトアウトすることができる。

この広告ポリシーの変更は、Facebookプラットフォームの親会社として新たに社名を変更したMeta(メタ)が、内部告発者のFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)氏がリークした文書に関連した一連の上院公聴会の後、厳しい監視の目に晒されていることに起因している。より多くの文書が報道機関にリークされるにつれて、Metaは一部のジャーナリストの報道が同社の振舞を誤って伝えていると主張し、防御の姿勢を強めている。

とはいえ、Facebookの広告ポリシーは何年も前から問題視されていた。2020年の米国大統領選挙に向けて、Facebookは、作成できる政治広告の種類に制限を設けた。また2018年には、米住宅・都市開発省(HUD)が、家主や住宅販売業者たちが公正住宅法(Fair Housing Act)に違反する行為をFacebookが幇助していた件告発したことを受けて、Facebookは広告の5000以上のターゲティングオプションに対して同様の削除を実施した。その前の2016年には、Facebookは住宅、雇用、クレジット関連の広告に関する「民族的親和性」ターゲティングを無効にしている。これはProPublica(プロパブリカ)のレポートで、そうした機能が差別的な広告に使われる可能性があると指摘されたことを受けたからだ。住宅や雇用に関しては、特定の社会属性に基づいて広告を出すことは違法なのだ。また、ProPublicaの別の報告書によって、Facebookは反ユダヤ的な関心事のカテゴリーに基づく広告ターゲティングも削除している。

また同社は「私たちは、プラットフォーム上でどのように人びとにリーチできるかについての広告主の期待によりよく沿うと同時に、私たちが利用可能にしているターゲティングオプションを広告主が乱用することを防ぐことの重要性に関する公民権専門家、政策立案者、その他の利害関係者からのフィードバックにも対処したいと考えています」とブログ投稿を行っている。「こうした、詳細なターゲティングオプションを取り除く決定は容易ではなく、この変更が一部の企業や組織に負の影響を及ぼす可能性があることは承知しています」。

Facebookは、データが悪意ある者に悪用される可能性を懸念してこれらの決定を下したとしているものの、このデータが潜在的にポジティブな方向に使用される場合もあるため、一部の関係者を心配させている。たとえばこれまでは「糖尿病の知識」に興味がある人には、コンディションの管理に取り組んでいる非営利団体を紹介することができていたのだ。

それでも、Facebookには、特定のオーディエンスにアクセスするためのツールがまだ数多く残されている。例えばユーザーがiPhone上で広告トラッキングを許可した場合、Facebookの広告主はその情報を広告のターゲティングに利用することができる。また企業は「エンゲージメントカスタムオーディエンス」「類似オーディエンス」などを活用して、ユーザーにリーチすることができるが、その概要については同社のブログ記事で紹介されている。

画像クレジット:Lionel Bonaventure / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

Zoomが無料ユーザー対象の広告表示をテスト

Zoomは「ベーシック」の無料プランユーザーに対して広告を表示する試験的なプログラムを導入する。同社は、広告は投資の支えとなり、プラットフォームを無料のユーザーに今後も提供できると述べている。

基本プランユーザーがホストするミーティングに参加する基本プランユーザーに対してのみ、広告が表示される。最初のテストでは、ミーティングを終了するときにユーザーが見るブラウザのページに広告が表示される。最初のテストの完了後に、ユーザーインターフェイスの別の場所に広告が表示される可能性がある。

テストの一環としてCookie管理ツールへのリンクを示すウェブサイトにバナーが表示されるので、ユーザーはどんな広告が表示されるのかを管理できる。同社は、プライバシーの声明を更新してミーティング、ウェビナー、メッセージングのコンテンツをいかなるマーケティング、プロモーション、サードパーティの広告目的にも使用しないと明記したとも述べている。

画像クレジット:Zoom

Zoomはミーティング中は広告が表示されないと明言しているが、この最新の動きは大きな変更だ。無料の基本サービスでは最長40分のグループミーティングをホストすることができるため、Zoomはコロナ禍で爆発的な人気を得た。今回の変更で無料の基本ユーザーに対して新たな制限が課されることになるが、同社はこれは必要なステップであるとしている。

Zoomの最高マーケティング責任者であるJanine Pelosi(ジャニーン・ペロシ)氏はブログ投稿の中で「この変更によって、無料の基本ユーザーは我々が常に提供してきた堅牢なプラットフォームのまま、引き続き友人、家族、同僚とつながることができます」と述べた。

今回の変更が導入される前の2020年、Zoomは人気のビデオ会議ツールにはとどまらない存在になろうとしていた。2021年4月には同社プラットフォーム用アプリを開発する企業に投資するために1億ドル(約113億円)のファンドを開設した。2021年8月にはこのファンドから最初の投資ラウンドを実施した。

買収に関しては、機械学習ベースのリアルタイム翻訳を導入するためにドイツのスタートアップであるKarlsruhe Information Technology Solutions、略称「Kites」を買収する計画を2021年6月に発表した。さらにクラウドベースのカスタマーサービスソフトウェアメーカーであるFive9の買収も計画していたが、こちらはその後中止された

画像クレジット:Thomas Trutschel / Getty Images

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(文:Aisha Malik、翻訳:Kaori Koyama)

ゲーム内広告の拡大とメタバースへの準備のためにアドテック企業Admixが資金調達

2020年6月、アドテック系スタートアップ企業のAdmix(アドミックス)が、シリーズAラウンドで700万ドル(約8億円)の資金を調達したことを紹介した。ロンドンに拠点を置く同社は、ゲーム、eスポーツ、仮想現実、拡張現実に広告を提供している。

大規模なゲーム内広告では、広告主が広告代理店のモデルに頼るのではなく、慣習的な広告購入プラットフォームを通じて、プログラムに従って入札を行うことができるが、この分野は広大であり、まだ十分に活用されていない。

Admixは、この広告モデルをさらに強化するために、シリーズBラウンドで2500万ドル(約28億4000万円)の資金調達を実施した。この資金によって同社はその「In-Play(インプレイ)」ソリューションの規模を拡大し、Facebook(フェイスブック)などの企業が明らかに構築を進めているメタバーズのような新しいプラットフォームに対応する準備を進めていく。

今回の資金調達により、Admixの総資金調達額は3700万ドル(約42億円)に達した。

この投資ラウンドは、Elefund(エレファンド)とDIP Capital(DIPキャピタル)が共同で主導し、Force Over Mass(フォース・オーバー・マス)、Notion Capital(ノーション・キャピタル)、Speedinvest(スピードインベスト)、Rocket Capital(ロケット・キャピタル)、Colopl Next(コロプラ・ネクスト)、Sure Valley Ventures(シュア・バレー・ベンチャーズ)、Sidedoor Ventures(サイドドア・ベンチャーズ)の他、成長投資家のKuvi Capital(クヴィ・キャピタル)やゲーム業界のエンジェル投資家たちも参加した。

AdmixのCEO兼共同設立者であるSamuel Huber(サミュエル・ヒューバー)氏は次のようにコメントしている。「私たちはインターネットが新たなステージに入ると考えています。それはWeb 3.0あるいはメタバースと呼ばれるもので、リアルタイムの3Dインタラクションと、ゲーム業界が先導する新しいクリエイター経済を特徴とします。【略】私たちの業界の多くのプレイヤーは基本的に代理店ですが、Admixはクリエイターが可能な限り最善の方法でコンテンツを収益化できるための重要なインフラを構築しています」。

Elefundの創業者兼マネージングパートナーであるSerik Kaldykulov(セリク・カルディクロフ)氏は次のようにコメントしている。「サムとジョーは、まさしく我々がElefundで一緒に仕事をしたいと思っているタイプの創業者です。彼らはデジタルゲームの未来に対するすばらしいビジョンを持って、AdmixとIn-Playを作り上げました。彼らはメタバースと呼ばれるようになる世界において、消費者と企業がどのように存在し、どのように相互作用するかということが形成される上で、引き続き重要な役割を果たすだろうと、私たちは信じています」。

さらに詳しくいうと、同じ分野の企業にはBidstack(ビッドスタック)、Adverty(アドバーティ)、Anzu(アンズ)、Frameplay(フレームプレイ)などがあると、ヒューバー氏は語る。しかし、これらの企業との違いは、Admixが「データを利用して、適切なゲームの、適切なユーザーに、適切なタイミングで、邪魔にならない広告を提供するためのプロセスを自動化するインフラを構築している」ことだと、ヒューバー氏はいう。「この技術は、スケーラビリティ(同社は過去2年間で300以上のゲームと数百の広告主と取引したが、90%はセルフオンボーディングしている)とネットワーク効果が防御可能であることを意味します。それが、このカテゴリーを支配するためにVCが当社に賭けている理由です」。

Admixは最近、Calvin Klein(カルバン・クライン)、Schuh(シュー)、Movember(モーベンバー)、Sky(スカイ)といったブランドと、In-Playを使った広告活動の契約を結んでいる。

画像クレジット:Admix / Samuel Huber, co-founder

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Snap第3四半期、iOSのプライバシー変更が広告ビジネスに予想以上の打撃を与えたと発表

Snap(スナップ)は米国時間10月21日の収支報告で、第3四半期の収益予想を達成できなかったと述べた。第3四半期の売上高は10億7000万ドル(約1214億円)で、ウォール街が予想していた11億ドル(約1248億円)には届かなかった。

同社のデイリーアクティブユーザー数(DAU)は3億600万人で、第2四半期の2億9300万人から増加した。この成長は急激ではないが、少し前までは完全に存在価値が失われる危険性があったプラットフォームとしては、十分に健全なものといえる。

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Snapchat(スナップチャット)は、Apple(アップル)がiOSのプライバシーに関する大きな変更を行ったことで、ユーザーの行動を自社の枠を超えて追跡しようとするアプリに新たな制限が設けられたことが、収益の減少につながったと考えている。SnapのEvan Spiegel(エヴァン・シュピーゲル)CEOは、通話の中で、広告主ツールへの影響がいかに破壊的であるかということに気づかなかったと述べている。多くの広告主は、これまで慣れ親しんできた広い視野を失ったことで、ユーザーの行動を計測するための新しい、より抑制された方法に適応しなければならなかった。「それらのツールからは、基本的に何も見えなくなってしまいました」とシュピーゲル氏は語った。

シュピーゲル氏は、Snapのビジネスの落ち込みは一時的なものであるとし、新しい標準に適応するには「時間を要する」と述べ、Appleの広告変更による長期的な影響はまだわからないとしている。また、Snapの業績不振には、より広範なパンデミックの市場トレンドも影響していると述べている。

ユーザープライバシーに大きな恩恵をもたらすiOSの変更に適応しようとしている広告ビジネスは、Snapだけではない。Facebook(フェイスブック)も、Appleの新しいポリシーにより広告をターゲティングする能力が低下したため、第3四半期に大きな影響が出ることが予想されると警告している。

意外なことではないが、SnapやFacebookなどの広告事業者が依存しているクロスプラットフォームのトラッキングについては、選択肢を提示された場合、ほとんどのユーザーがオプトアウトする。Facebookのリーダーとは異なり、シュピーゲル氏は、モバイルOSにより多くのプライバシー機能を追加するというアップルの決定を、その変更がSnapの収益にどのように影響するかにかかわらず、一貫して支持してきた。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)