EarlyBird(アーリーバード)という登場したばかりのフィンテックスタートアップは、家族が子供の将来のために投資できるようにしたいと考えている。EarlyBirdモバイルアプリを通じて、ものの数分で親は未成年者のための後見口座を開くことができる。この口座はUGMA (Uniform Gifts to Minors Act=未成年の子どもへの財産の移譲について規定している法律) 口座としても知られている。こうした口座では一般的に、親あるいは「保護者」が未成年の子どもに代わって株や債権、投資信託、その他の証券などに投資できる。子どもが成年になったとき、それらの投資は子どものものになる。
アプリを通じて親は子どものために口座を開き、家族のメンバーや親しい友人に口座への貢献を呼びかけることができる。
アイデアそのもの、少なくともその精神はHoneyFundのようなものとそう違うものではない。HoneyFundでは、新婚の人たちがギフトの代わりに現金のプレゼントを親しい人にお願いできる。それと同様に、EarlyBirdは家族や友人に寄付を呼びかけることで、子どもにおもちゃやぬいぐるみをあげる以外のプレゼント方法を提供している。ただしEarlyBirdでは単刀直入に募金をお願いしてはいない。結局、これは美化されたクラウドファンディングプラットフォームであり、投資を可能にしている。
特にEarlyBirdは親の後見口座開設を簡単に、そしてわかりやすいものにするのが目的だ。これに挑むフィンテックはEarlyBirdが初めてではなく、たとえばStash(スタッシュ)やAcorns(エーコーンズ)がある。
ただしEarlyBirdは、ソーシャル機能と寄付機能を持つプラットフォームを投資口座に組み合わせている。小切手やグリーティングカードと一緒に渡す現金と違って、口座への寄付を本物の贈り物のようにしようというコンセプトだ。
画像クレジット:EarlyBird
EarlyBirdのアプリでは、寄付する人は投資口座への寄付とともに短いビデオ「メモリー」を録画できる。子どもはのちにこうしたビデオで回顧でき、これにより寄付をよりソーシャルで個人的な体験にすることができる。加えて、他の家族のメンバーや友人もビデオを閲覧し、その子どもの投資口座に寄付しようという気持ちになるかもしれない。
EarlyBirdのアイデアは、AgilityIOの前COOで現在EarlyBirdのCEOであるJordan Wexler(ジョーダン・ウェクスラー)氏と、かつてYello.coで働きバイスプレジデントまで務め、いまEarlyBirdでCOOをしているCaleb Frankel(カレブ・フランケル)氏によるものだ。
ウェクスラー氏は、自身の身内の家庭に子どもが生まれたときに、実際の贈り物に代わる方法としての投資を考え始めたと説明する。
「かわいらしい姪が生まれた数年前に経験した問題からすべては始まりました。私は姪っ子に首ったけで、馬鹿馬鹿しいぬいぐるみに数百ドル(数万円)も使いました。かなりゴミのような贈り物にです」と話す。
数年前、同氏は子どもに代わってインデックスファンドに現金を投資するというアイデアを思いついた。
「私は姪っ子の人生に大きな影響を、彼女が大きくなったときに実際に使うことができるようなものを与えたかったのです」と同氏はいう。
実際、ウェクスラー氏の父親はかつて同じことを同氏のために行った。ウェクスラー氏が12才だったとき、父親はTD Ameritradeの口座を通じて彼にお金を与えた。後にウェクスラー氏はこの口座からお金を引き出して、最初のスタートアップの資金に使った。このスタートアップは中国・青島市のSucceedOverseasで、企業の従業員転勤をサポートする戦略コンサルだった(2015年にChiway Education Groupに買収された)。
ウェクスラー氏はEarlyBirdの共同創業者フランケル氏に青島市で出会い、そして米国に戻ったときに再会した。彼らは2019年、子どものために後見投資口座を開きたい親向けにそのプロセスを簡単にしようとEarlyBirdでチームを組んだ。
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公平な観点からいうと、おそらく後見口座は子どもを持たない人にはあまり知られていない投資ビークルだ。子どもがいる人にとってもある程度そうかもしれない。これは、もう1つの選択肢である529プラン(米国の学資積み立てのための公的貯蓄制度)の方が税制上の利点があるためにもっと人気があるからだ。
いずれの口座でも未成年に代わって家族が投資できる一方で、529プランの投資は税が免除される。授業料や家賃、寮費、本など教育にかかる費用のための出金にも課税されない。これは大きな特典だ。
一方、UGMA口座はある水準になると課税される。不労年間所得1100ドル(約11万円)は非課税だが、それ以降の2200ドル(約22万円)までは子どもの税率で課税される。2200ドル以上の不労所得は、子どもの税率よりも高い信託・遺産の税率で課税される。
UGMA口座への寄付は所得税控除の対象にはならないが、個人向けなら1万5000ドル(約155万円)まで、既婚カップルまでなら3万ドル(約310万円)まで課税されない。
ほとんどの家庭が大学の費用や税金上のメリットを想定して投資しているため、529プランはよく知られている。しかしウェクスラー氏は、状況は変わりつつあると指摘する。
「多くの親が実際には15年後の教育や大学がどのようなものになっているか想像できず、もう少しフレキシブルなものを求めています」と説明する。
加えて、UGMA口座は必要なら大学のために使える。しかしもし、いつの日か米国の大学の費用が無料になったら、UGMA口座の投資は何にでも使える。そうしたフレキシビリティは、このところ一部の親にとってUGMA口座、そしてこの分野に参入しているAcornsなどの他のフィンテックが魅力的に映る理由だ。
しかしEarlyBirdは1年以内に529プランにサービスを拡大する、と話す。ただそこから開始しなかっただけだ。
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Acorns、Stashの後見プランと、EarlyBirdとの別の違いはEarlyBirdがいかにプロダクトに財務管理リテラシーを組み込んでいるかだ。
誕生から5才までの間、親は子どもの口座をすべて管理する。しかし子どもが6〜13才のとき、親は子どもに特別な「閲覧のみ」モードでアプリを見せることができる。このモードでは子どもは自分の投資を確認し、増えていく様子を見ることができる。13〜18才で子どもはアプリをダウンロードでき、親と一緒にアプリを操作できる。そして18才(州によっては21才)以降は子どもが口座を管理する。
EarlyBirdはまた、保守的なものからハイリスクハイリターンのものまでそろったさまざまなポートフォリオを提供することで投資をシンプル化している。保守的なものだとポートフォリオは100%ETF債権ベースのものになり、アグレッシブなポートフォリオは100%ETFエクイティベースのものだ。Acornsと同様、EarlyBirdは固定されたポートフォリオモデルも提供している。しかしEarlyBirdはまた、ユーザーが自分の価値観に合わせて投資できるようカスタマイズしたポートフォリオも提供する。そしてユーザーは規模を問わず再投資の自動化を選ぶこともできる。
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ポートフォリオはEarlyBirdアドバイザーEvan List(エヴァン・リスト)氏が率いる金融アドバイザーの専門家チームがデザイン・構築した。同氏はBernstein Private Wealth Managementで12年間バイスプレジデントを務めている。ポートフォリオには、各出資比率がEarlyBirdが定めた目標とする分配の10%以内に留まるようにする調整エンジンをバックエンドに統合している、と同社は話す。必要に応じて、他のロボ投資家と同様に四半期ごとにポートフォリオをレビューし、再分配する。
現在、EarlyBirdの投資口座はApex Clearing Corporationとの提携のもとに展開されている。Apex Clearingは米証券取引委員会に登録しているブローカーディーラーで、米金融業規制機構(FINRA)と米証券投資家保護公社(SIPC)の会員だ。この提携により、計50万ドル(約5200万円)までの投資は保護される。EarlyBirdはゆくゆくはブローカーディーラーに移行することを目指している。
現在EarlyBirdは月3ドル(約310円)の管理費で売上を上げている(子ども1人増えるごとに月1ドル=約103円プラスされる)。
今後は多くのフィンテックがそうであるように収益化を追求する。Apex Clearingとの取引と決済を活用する計画だ。そしてブローカーディーラーに移行するにつれ(ユーザーベースと管理資産の規模が大きくなったとき)、他のブロケージ同様に有料貸付プログラムを展開する。
はっきりさせておくと、こうしたプログラムは現在提供されておらず、EarlyBirdは設立されてまだ1週間だ。
同社は、Network Venturesがリードし2020年11月にクローズしたラウンドで240万ドル(約2億5000万円)を調達した。本ラウンドにはChingona Ventures、Bridge Investments、Kairos Angels、Takoma Ventures、Subconscious Ventures、そのほかさまざまなエンジェル投資家が出資した。
EarlyBirdのiOSアプリは無料でダウンロードできる。
画像クレジット:EarlyBird
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(翻訳:Mizoguchi)