暗号資産(仮想通貨)・ブロックチェーン技術に関連する国内外のニュースから、重要かつこれはという話題をピックアップし、最新情報としてまとめて1週間分を共有していく。今回は2020年7月12日~18日の情報をまとめた。
デジタル日本円の行方は? 日本における中央銀行デジタル通貨(CBDC)動向
日本銀行の「中央銀行発行デジタル通貨とは何ですか?」によると、一般には、中央銀行デジタル通貨(CBDC。Central Bank Digital Currency)とは「デジタル化されていること」「円などの法定通貨建てであること」「中央銀行の債務として発行されること」の3要素を満たすものという。簡単にいえば、デジタル日本円、デジタル米ドルなどにあたるデジタル通貨と考えて差し支えない。
国内におけるCBDCについて日本銀行は、現時点では発行は未定であるとするも中央銀行がCBDCを発行すべきかどうかは重要な検討課題であるとしている。
2017年9月6日、欧州中央銀行と共同で分散型台帳技術(DLT。Distributed Ledger Technology)に関する調査「プロジェクト・ステラ」による共同調査報告書を公表。
2020年1月21日には、カナダ銀行、イングランド銀行、欧州中央銀行、スウェーデン・リクスバンク、スイス国民銀行、国際決済銀行(BIS)とともに、それぞれの国・地域においてCBDCの活用可能性の評価に関する知見を共有するために、グループを設立したことを報告した。
また日本銀行決済機構局は2020年7月2日、「中銀デジタル通貨が現金同等の機能を持つための技術的課題」と称したCBDCにおける課題についてレポートを公開した。レポートでは、CBDCが現金と同等の機能を持つためには、「誰もがいつでも何処でも、安全確実に利用できる決済手段」であることが求められることから、CBDCが多様なユーザーが利用可能になる「ユニバーサル・アクセス」と、通信・電源途絶への耐性を備えたオフライン決済機能等を備える「強靭性」という2つの特性が技術的に実現可能かどうかを検討することが重要なテーマになることを報告している。
7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)でも、短いながらCBDCの話題が登場した。「中央銀行デジタル通貨については、日本銀行において技術的な検証を狙いとした実証実験を行うなど、各国と連携しつつ検討を行う」としている。
タイ中央銀行がCBDCの実証実験を開始、実際に利用されている企業システムに統合
Facebook(フェイスブック)が支援するLibra(リブラ)プロジェクトへの懸念を皮切りに、中国のデジタル通貨/電子決済(DECP。Digital Currency/Electronic Payment。デジタル人民元)の試験運用などがすでに2020年4月には報じられており、積極的なスタンスを採っている国もある。
タイ中央銀行(BOT。Bank of Thailand)は、研究開発中のCBDCが次の段階へと進み、大手企業間の金融取引にて実証実験を開始した。この実験について、BOT副総裁のバチラ・アロムディー氏が語った説明をタイ英字メディア「The Nation」が7月16日に報じている。
BOTは6月18日、CBDCを利用した、企業向け決済システムのプロトタイプ開発プロジェクトを発表している。同プロジェクトは、実現可能性調査の実施に加えて、実際に企業で利用されているシステムにCBDCを統合するようで、バチラ氏の発言はその発表内容について公に語ったものとなっている。
また、バチラ氏は「中央銀行はCBDCの利用を一般向けに拡大することも考えているが、それには包括的な調査をする必要がある」と、課題についても述べている。CBDCが実現できれば金融取引のコストを削減できるだろうと、メリットについても言及。同氏は、中国においてはトークンの形でのデジタル通貨の公共利用は金融システムには影響を与えなかったことを引用し、付け加えている。
BOTのプロジェクトは、セメント・建設資材会社Siam Cementとそのサプライヤーの調達・財務管理システムに、プロトタイプCBDCを統合するという。プロトタイプCBDCは、企業間の資金移動の柔軟性を高め、サプライヤー間でより迅速かつ機動的な決済を実現するなど、企業にとってより高い決済効率を実現する金融イノベーションとして期待されている。同プロジェクトは年内には終了する予定で、その後、BOTはプロジェクト概要と成果を公表する予定。
また、BOTとタイの主要金融機関8社によるCBDC共同研究プロジェクト「Project Inthanon」では、ホールセール(機関投資家・公共機関等大口顧客対象の営業)CBDCを利用した国内ホールセール資金移動の研究・開発を行っている。同プロジェクトは、2019年5月より香港金融管理局(HKMA)とも共同研究を実施。越境決済のプロトタイプを開発し、タイバーツと香港ドルのリアルタイム交換および送金の実現可能性を探ってきた。2020年1月にプロトタイプの完成を報告している。バチラ氏は今回、2020年9月にはBOTと香港金融管理局との取引にCBDCを利用し始めることも明らかにしている。
マネックス証券が暗号資産CFD(差金決済取引)取扱い開始
マネックス証券は7月17日、新たに提供を開始した金融商品サービス暗号資産CFD(差金決済取引)に対応する専用アプリ「MONEX TRADER CRYPTO」のiOS版をリリースした(Android版は公開済み)。
同証券の暗号資産CFDは、ビットコイン(BTC)・ビットコインキャッシュ(BCH)・イーサリアム(ETH)・XRP(リップル)の4銘柄、最大2倍のレバレッジ取引が行える。専用アプリは、暗号資産CFDのストリーミング注文や指値・逆指値注文ほか、OCO、IFD、IFOなどの複合注文にも対応している。アプリは、マネックス証券に口座を開設していない場合も暗号資産の相場価格やチャートなどの機能のみ利用可能。
改正金融商品取引法(金商法)の2020年5月1日施行により、暗号資産のデリバティブ取引は金商法の「金融商品」と規定されたため、改正法施行後に暗号資産デリバティブ取引を取り扱うには、金融庁の第一種金融商品取引業ライセンスが必要となった。それに伴い、ライセンス取得済みの証券会社は、暗号資産デリバティブ取引を取り扱うことが可能となった。
マネックス証券は、7月8日より主要ネット証券では初となる暗号資産関連店頭デリバティブ取引の取り扱いを開始した。
また、これまで(5月1日以前)暗号資産デリバティブ取引を行ってきた暗号資産交換業者(仮想通貨交換業者)は、第一種金融商品取引業ライセンスがなくとも「みなし金融商品取引業者」として業務を継続できるとした。また、経過措置として改正法施行日以後6ヵ月以内に金融商品取引業の登録申請を行うことで、原則1年6ヵ月間業務を継続できるとしている。ただし経過措置は既存の業務範囲に限られるため、新規の顧客を獲得するといったことはできない。
NFTマーケットプレイス「miime」で、ブロックチェーンゲーム内キャラクター・アイテムが日本円で取引・決済可能に
メタップスアルファは7月14日、ブロックチェーンゲームのキャラクターやアイテムなどNFT(Non Fungible Token。ノン ファンジブル トークン)をの売買できるマーケットプレイス(取引所)「miime」(ミーム)において、日本円による決済機能を追加したことを発表した。
ブロックチェーンゲームにおけるデジタルアイテム(NFT)は、一般には(ゲーム会社のものではなく)プレイヤーの保有物として設計されており、プレイヤー間で自由に取引できるようになっている。
ただし取引の際、イーサリアム(ETH)など暗号資産を事前に準備しておく必要がある。暗号資産を保有していない新規ユーザーにとってこれが大きなハードルとして存在するとともに、NFT取引市場の発展における課題となっていた。
従来miimeも例外ではなく、取引にはイーサリアムを必要としていたため、その解決に取り組んできたという。
今回miimeでは、クレジットカード(VISA・マスターカード)による決済方法に加えて、グループ会社が運営する送金アプリ「pring」による決済手段を導入。暗号資産を保有していないユーザーもmiimeを介してデジタルアイテム(NFT)の取引を日本円で行えるようになった。
ちなみにNFTとは、イーサリアムのトークン規格ERC-721準拠など、代替不可能性を備えるトークンを指す。NFTは、発行するトークンそれぞれに固有の性質や希少性を持たせられるため、ゲーム内のアイテムやキャラクターをNFTとして設計することで、他と交換不可能(代替不可能)な世界にひとつしかないアイテムやキャラとして表現できる。またそもそもブロックチェーン技術を基盤としているため、NFT保有者(プレイヤー)は、所有権やその移転について、改ざん・偽造が不可能な形で透明性を保ちつつ管理できる。
miimeの場合は、ブロックチェーンと組み合わせたWebアプリケーションとして動作し、ブロックチェーン上において様々な処理を自動化する仕組み「スマートコントラクト」によりデジタルアイテムの売買成立と同時に所有権の移転を実行しているという。
現在miimeは、「My Crypto Heroes」 や「CryptoSpells」など、国内主要ブロックチェーンゲームタイトルのデジタルアイテム(NFT)を中心に、全9タイトルに対応している。今後は、コレクション要素を持ったカードアイテムや、ワイン・アートといった高付加価値商品など、非ゲーム領域におけるデジタルアイテムの売買も視野に事業展開を考えているという。
NFTおよびNFTマーケットプレイスは、あらゆるデジタルアイテムの所有権売買の取引をユーザー間で行うことを可能にし、将来有望なブロックチェーン技術・サービスのひとつともいわれている。
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