食材流通のプラネットテーブルが1億円の資金調達、サービス提供エリア拡大へ

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食材・情報取引プラットフォーム「SEND(センド)」を展開するプラネット・テーブルがサイバーエージェント・ベンチャーズ、セゾン・ベンチャーズなどから総額約1億円の資金調達を実施した。払い込みは2015年12月、バリュエーションや出資比率は非公開。なお同社は2015年3月にGenuine Startupsと個人投資家から3500万円のシードマネーを調達している。

プラネット・テーブルが提供するSENDは日本全国にいる特徴を持った農畜産水物生産者と、そんな生産者が手がけたこだわりの食材を使いたい飲食店の直接取引を実現するプラットフォーム。取引に関わるオペレーションや保管(東京・渋谷の同社オフィスには業務用冷蔵庫が並んでいる)、配送までを自社でカバーする。また生産者・飲食店間の取引データをもとに需給を予測。流通量の最適化を進めている。2015年8月にローンチし、これまで広尾や恵比寿、六本木など東京都心部の飲食店に限定してサービスを提供してきた。

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現在、約230の生産者(ただし季節により変化。常時数十の生産者が食材を販売)と約200の飲食店がプラットフォームに参加している。プラネット・テーブル代表取締役の菊池紳氏によると、「想定よりも速いスピードで成長している。単価もリピーターも増える傾向にあり、特に9月に畜産物の取り扱いを始めて以降は月額20万円を超える店舗もある」(菊池氏)という。ただしSENDでは流通量が多いものではなく、こだわりの生産物に特化する方針であり、「飲食店の仕入れのすべてを補うのではなく、全体3分の1程度をSENDを通じて提供したい」と説明する。

プラネット・テーブルでは今回の資金調達をもとに営業および開発体制の強化を進めるほか、食料生産支援に向けたサービスを提供していくとしている。また西東京や横浜、千葉など、提供エリアについても拡大する予定。パートナーシップによる地方進出も進めて、2016年度には飲食店1000店舗の利用を目指す。

ちょっと気になったのが提供エリアの拡大について。同社はこれまで、トラックを自社で保有し、配送までを行ってきたという。ではサービス拡大に伴って今度はトラックの数を増やして自ら「物流会社」になろうということなのだろうか? 菊池氏はそれを否定した上で、「例えば飲食店への配送は通常午後2時〜4時くらいが基準になる。その時間帯に稼働していない冷蔵倉庫やトラックも少なくない」とだけ語った。

ここからは僕の想像でしかないが、同社が狙っているのは——毎度おなじみのバズワードで恐縮なのだけれど——「シェアリングエコノミー」の領域だろう。先日ラクスルが発表した物流サービス「ハコベル」のように、リソースの余っている倉庫なりトラックなりをネットワーク化していくのではないか。このあたりは今後また話を聞いてみたい。

プラネット・テーブルでは、食に関するQ&Aサービス「FoodQ」を2015年6月にリリースしているが、こちらについても近くリニューアルする予定だ。

グロービスが総額160億円の5号ファンドを組成、年金基金の出資は「VCの悲願」

gcpちょうど1年前の年始、僕はインキュベイトファンドが組成した110億円の3号ファンドについて記事にしたのだけれども、2016年も年始に大型のファンド組成のニュースがあった。

ベンチャーキャピタルのグロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)は1月4日付けで第5号となる新ファンド「Globis Fund V, L.P.、グロービス5号ファンド投資事業有限責任組合」を組成した。一次募集(ファーストクローズ)は約140億円。出資するのは三井住友信託銀行、日本政策投資銀行、大同生命保険、マスミューチュアル生命保険株のほか、国内大手企業年金基金を含む国内外の大手機関投資家。ファンド総額は160億円の予定だが、すでにそれ以上の出資要望があるそうで、3月末の最終募集(ファイナルクローズ)を前に、すでに募集が完了している状況だという。

GCPでは1996年に1号ファンド(5億4000万円)を組成。1999年に2号ファンド(200億円)、2006年に3号ファンド(180億円)、2013年に4号ファンド(115億円)を組成。累計120社以上への投資を行っている。直近の投資先上場企業としてはピクスタやイード、カヤック、ブイキューブなど、TechCrunchの読者もよく知るIT企業が多い。

投資領域は「6 Tech」ほか、投資額は1社最大20億円超に

5号ファンドで投資対象とするのは、「6 Tech」(FinTech、HealthcareTech、EduTech、HomeTech、AutoTech、FrontierTechの総称)のほか、シェアエコノミーやAR/VR、IoT、AIなど。GCPパートナーの高宮慎一氏いわく、「IT(Information Technology:情報技術)&IT(Industry Transformation:産業の変革)の領域。2016年に『来る』という領域かどうかに関わらず、ファンドが終了する10年先までを見据えた投資を行う」とのことだ。

投資対象とするのはシードマネーを調達済みで、シリーズA以降の調達を検討しているアーリーステージのスタートアップが中心。GCPというとレイターステージの資金調達を手がける印象が強かったのだけれども、よくよく考えてみると、メルカリやスマートニュースなどもアーリーステージでの投資だ。内訳としては「ざっくり45%がアーリーステージ、35%がミドルステージ、残りがレイターステージ」(高宮氏)なのだそう。具体的には1社あたり数億円〜最大で20億円超の出資を行う予定だという。

昨日はシード特化のVCであるSkyland Venturesの新ファンドのニュースがあった。その中でパートナーの木下慶彦氏が自身の投資スタンスについて、進捗報告のために起業家の時間を取るようなことをしないためにも「ノーハンズオン」だと語っていたが、GCPのスタンスは、バリバリの「ハンズオン」なのだそう。もちろん投資対象のステージも違うし、事業内容によって出資先ごとにVCが支援するべき内容は異なるので、どちらが正しいという話ではない。

GCPのハンズオンの中で特徴的なのは、3R、すなわちIR、PR、HRの業務支援だという。投資担当以外のキャピタリストや親会社であるグロービスのスタッフ、社外のパートナーなどと連携して各種のリソースを提供するのだそうだ。例えば元証券会社の引受担当者がIRまわりのコンサルティングをしたり、グロービスの広報チームがPRの支援をしたりするほか、GCPが投資先企業の人材ニーズをとりまとめてヘッドハンターに共有。一括で広く人材の確保を進めるといったこともしているそうだ。

年金基金からの出資は「VCの悲願」

ファンド組成のニュースはこれまでいくつもあったが、少し珍しいのは、「企業年金基金などの機関投資家が出資している」という内容だ。高宮氏はこれについて、「ある意味では国内VC、ひいてはベンチャー業界の悲願ではないか」と語る。

それはどういう意味か? 100億円超のファンドを組成するとなると出資者1組織ごとに10億円ほどの額を集める必要が出てくる。かといって10億円もの資金を出せるような組織なんてそうそうはない。そこで銀行や保険会社、政府系金融機関などの機関投資家からの出資を仰ぐ必要があるわけだ。そんな機関投資家の中でも、年金基金といえばリスクに対して非常にセンシティブな運用を行ってきたところだ。例えば2015年には、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が年金の運用において、四半期での損失を出したと批判を浴びた。もちろん短期的に見れば8兆円近い損失という大きな話だ。だがたった1つの四半期の損失という見方もできる。長期的に見ればGPIFは高い運用成績を上げており、しかもベンチマーク(運用成果を測定し、評価するための基準)と比較しても良い結果となっている。

しかしそういったネガティブな反応を意識する以上、年金の運用はセンシティブにならざるを得ないというのは致し方ないところ。とはいえ年金基金は数千億円を超えるような運用総額を誇っているわけだし、代替資産(株式や債権以外の資産。不動産もVCへの出資もこれにあたる)に長期的視点で腰をすえて投資するプレーヤーであるという意味でも、機関投資家の中でも大きな存在だ。米国においては、年金基金からの資金がVC業界の発展を支えてきた側面が大きいとも聞く。

そんな背景がある中で年金の資金が入ることについて、高宮氏は「もちろん我々の成果が評価されたということや、そのIRを行った結果ではある」とした上で、「それ以上に、ベンチャーというハイリスクハイリターンな領域に、年金の大きなお金が流れ始めたということが大きい。GCPだけの話ではなく、VC業界、ベンチャー業界全体に意味があること」(高宮氏)と説明する。

2015年3月に発表されたJapan Venture Researchのレポートでは、スタートアップの調達額は増加(一方でその社数は減少)というトレンドが紹介されているが、米国と比較すれば国内VCの投資額はまだまだ小さい(2012年度で米国VCの投資額は国内VCの約24倍という数字もある。リンク先はベンチャーユナイテッド チーフベンチャーキャピタリストである丸山聡氏のブログ)。今回の発表は「GCPが大きなファンドを1つ作った」というだけ(もちろん、「だけ」といっても大きなファンドができることは国内のスタートアップコミュニティにとっては大きな意味がある)の話だが、背景を読み解けば「国内VCに流れるお金の変化」という大きな兆しの見える話とも言えそうだ。

BASEとメルカリがタッグ、最大4.5億円の出資を含む資本業務提携

左からBASE共同創業取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

左からBASE取締役の家入一真氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ取締役の小泉文明氏

今日から仕事が始まる人も多いだろうが、早速大きなニュースが飛び込んできた。ネットショップ開設サービス「BASE」を提供するBASEは1月4日、フリマアプリ「mercari」を提供するメルカリとの資本業務提携を実施したことをあきらかにした。

今回の提携に伴い、BASEはメルカリを引受先とした最大4億5000万円の第三者割当増資(マイルストーン達成による最大額)を実施する。出資比率は非公開。また元ミクシィ取締役CFOで、現在メルカリ取締役を務める小泉文明氏がBASEの社外取締役に、メルカリ プリンシパルエンジニアの長野雅広氏がBASEの技術アドバイザーに就任する。

サービス面での連携も検討中だというが、具体的には明らかにされていない。BASEでは今後採用活動やマーケティングを強化するとしている。近いうちにも採用向けのイベントなどを共同開催するほか、アプリでの送客やマーケティングなどで協力する予定だという。

同じビルでスタートしたBASEとメルカリ

BASE代表取締役の鶴岡裕太氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏の2人が語ったところによると、両社はもともと非常に近い関係にあった。BASEは2012年に六本木一丁目にあったビルで業務を開始したが、そこはpaperboy&co.(現GMOペパボ)創業者であり、BASEの共同創業・取締役である家入一真氏が当時手がけていたプロジェクト「Liverty」や、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」のハイパーインターネッツなど、家入氏が関わるスタートアップが数多く入居していた。

2012年にZynga Japanを退任し、約1年かけて世界一周を旅行。再び起業の準備をしていた山田氏もそのビルを拠点にしていた。また両社はともにベンチャーキャピタルのEast Ventures(EV)から出資を受けることになる。そのためビルの取り壊しが決まった際の移転先も同じ、六本木にあるEVのインキュベーションオフィスだった。

もともと家入氏と山田氏は同世代(家入氏は1978年生まれ、山田氏は1977年生まれ)の起業家として、また個人投資家として親交が深かったが、これに鶴岡氏も加わるかたちで「ときどき事業の相談をしたり、お互いが人の紹介をしたりしていた」(鶴岡氏)のだという。創業当時22歳だった鶴岡氏からすればひとまわり年上で、起業家経験の長い山田氏はメンター的な存在の1人だった。今回の発表も、もともとVCなどからの資金調達に動いていた鶴岡氏が山田氏に相談したことがきっかけなのだという。

BASEの店舗数は現在20万店舗。流通総額で見れば、年間数十億円後半の規模にまで成長した。「これまで出店者を増やすことに注力してきたが、2016年からは購入者を集めるフェーズになる。購入者を集めるノウハウを持っているのがメルカリ。彼らの持っているノウハウで学べるモノがあればなんでも学んでいきたい」(鶴岡氏)。メルカリは2013年からの2年半で日米2700万ダウンロードを達成。この短期間でテレビCMを含むマーケティングも経験している、この速度で成長を遂げたスタートアップはそう多くない。

メルカリ、今後はスタートアップ出資を加速

メルカリについては、2015年12月に黒字化を達成していることを報じたばかりだが、本格的な出資はこれが初めて。山田氏は今後、スタートアップへの出資や買収を「積極的にやっていきたい」と語る。

CtoCコマースだけでなく、BASEのようなスモールBtoCのコマースを自社でやる可能性はなかったのかとも思ったのだが、メルカリの山田氏は「現在リソースの9割をmercariの米国展開に使っている。またCtoCといっても、サービスCtoCのような領域もあって幅が広い。なのでBtoCについては連携してやっていくのがいいと思っている」と語る。

またBASEについては、代表同士だけでなく、経営陣や社内のキーマンらに親交があり、文化的にも近い(小泉氏いわく「ミクシィやフリークアウト、paperboyなど出身の『ネット大好き企業』の集まり」だそう)ことも出資の動機になったという。なお今後BASEを買収する可能性についても聞いたのだが、「BtoCとCtoCなので実は全然サービスが違うし、ブランディングも違う。権限や責任を与えて自走できるのが筋肉質な組織を作ると考えている」(小泉氏)とのことだった。

将棋で磨いたAI技術をFintechへ応用、HEROZが1億円を追加調達

将棋AIをビジネス化して実績を伸ばしているHEROZが今日、創業6年目にして追加で1億円の資金調達を行ったと発表した。これまで取り組んきたでボードゲームAIによるビジネスの国際展開に加えて、金融やヘルスケア領域にもAIを適用していくという。第三者割当の引受先は一二三(ひふみ)インキュベートファンド。

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HEROZの「将棋ウォーズ」については以前TechCrunch Japanでも取り上げた。将棋なら羽生名人ということになるが、人間のチャンピオンを凌駕する実力を持つに至ったAI技術を活かし、HEROZは人間同士のオンライン対戦のコミュニティーを作ってきた。一般プレイヤーからすると、AIはすでにあまりにも強いので、AIが「コーチ役」を果たしていて、これにユーザーは課金するという仕組みが回り始めている。月商は非公開だが原価率が低く済む割にユーザーの熱量が高いのが特徴といい、強力なAIを呼び出して自分に代わってAIに指してもらうのが5手で100円。それから1日3局という対局数制限が解除できる月額500円の有料課金ユーザーが全体の1割程度。提供開始から3年、現在1日20万局以上の対戦が行われているという。

将棋ウォーズで培ったマネタイズモデルを国際展開しようというのが「バックギャモンエース」、「チェスヒーローズ」だ。将棋人口は約1270万人。これに対してバックギャモンは約3億人、チェス約7億人と、市場はより大きい。チェスやバックギャモンは、欧米では高級指向の文化として受け入れられていてプレイヤーの贅沢品の購買傾向が高いことから、HEROZではメディアとしての価値もあると見ているという。例えば、世帯収入が12万ドル以上ある人のうち21%が日常的なチェスプレイヤーなのだそうだ。

金融やヘルスケアでも応用が効く

将棋AIで培った機械学習やディープラーニングのノウハウは、「そのままではないものの並列化や機械学習のテクニックなど応用が効く」(HEROZ共同創業者で代表取締役の高橋知裕氏)ことから、まずは金融分野に進出する。具体的には市場のアービトラージを取るようなもので、過去データから将来を予測するようなもの。これはすでに証券会社に提供してて、「証券会社が持っている分析よりも良い結果を出している」(高橋氏)という。また、まだ実証段階の取り組みであるもののヘルスケア領域でもAIの適用を試みる。こちらの分野では、医療系ベンチャーの日本医療機器開発機構と協業に向けて模索を開始した段階という。

HEROZは2009年4月創業で、創業時にビッグローブキャピタルなどから1億円の資金調達をしたあと、モバイルゲーム関連で収益を上げてビジネスを回してきた。会社として「AI x モバイル」を掲げていて、将棋AIで最高峰の強さであるPonanzaの開発者の山本一成氏など過去3人の将棋電脳戦出場者がいるなどトップエンジニアを抱えているのが強み。社員数は現在約70名。

クラウド会計のfreeeがFinTechファンドなどから10億円を調達、年間の調達額は45億円に

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフト「freee」をはじめ、クラウド給与計算ソフト、会社設立支援ツールなどを提供するfreeeは12月28日、SBIホールディングス傘下のSBIインベストメントが運用する「FinTechファンド」などを引受先とした合計10億円の第三者割り当てを実施したことをあきらかにした。同社の2015年の資金調達額は8月の調達とあわせて45億円。同社の発表によると、未上場企業においては年内で最大の額になるという。

freee代表取締役の佐々木大輔氏

freee代表取締役の佐々木大輔氏

クラウド会計ソフトのfreeeはこれまで40万件以上の事業所が利用。12月には三菱東京UFJ銀行やみずほ銀行など11の銀行との協業も発表している。これはfreeeのユーザーである中小企業や個人事業主の会計データを、ユーザーに許諾を得た銀行が閲覧できるようになるというもの。今後銀行側では、会計データを与信にした融資など、新たな金融サービスを企画・検討していくという。

またfreeeは12月16日にメディア向けの説明会を開催しているが、その際には、現状のfreeeはまだサービスの第1段階であると説明。今後は、会計事務所向けに、経営判断のためのレポーティング機能や分析機能、マーケティング機能などを提供していく。

その説明会の際に同社が強調していたのが、「10年後になくなる職業として公認会計士が挙げられているが、そうはならない」ということ。

多くの職業が今後コンピューターで置き換えられるとした2013年のオックスフォード大学のレポートでは、人工知能の発展により10年後には会計士の仕事がなくなるとも言われている。だが今後、企業のリアルタイムな経営パートナーになっていくことで、「なくなる職業」にはならないというのがfreeeの主張だ。freeeをはじめとする会計ソフトは、毎月ではなく、リアルタイムにレポートを閲覧できる。このリアルタイムな数字をもとに、素早い経営判断を支援していくことが求められているのだと。前述の機能強化は、この方針に沿ったもの。具体的なスケジュールは未定だが、2016年中にも順次新機能が提供される見込みだ。

freeeの今後のプロダクト開発について

freeeの今後のプロダクト開発について

クラウド家計簿提供のBearTail、今度は経費精算サービスの提供を開始

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スマホでレシートを撮影するだけで全自動で家計簿を作成できるクラウド家計簿サービス「Dr.Wallet」。このサービスを提供するBearTailが、今度はビジネスパーソンをターゲットにした新サービスを公開した。同社は12月24日、クラウド経費精算サービス「Dr.経費精算」ベータ版の提供を開始した。サービスは月額980円(30日間無料)。2016年1月には法人向けプランの提供も予定する。

Dr.経費精算は個人時事業主や中小企業向けの経費精算サービス。スマートフォンアプリやウェブサイトにて領収書を撮影して送信するだけで、データ化、さらに仕訳までを行う。登録されたデータは事後の編集も可能。データはExcel、CSV形式で提供される。

もともとBearTailが提供してきたDr.Walletでは、撮影したレシートのデータを、画像認識とクラウドソーシングの手入力で処理。目視をはさむことで高い精度を提供していた。今回提供を開始したDr.経費精算ではそのノウハウをいかしてサービスを提供しているという。

経費精算の自動化と聞いて気になるのは、交通系ICカードの読み込みだ。例えば先行する経費精算サービスであるクラウドキャストの「Staple」などは5月にICカードの読み込みに対応。この機能のリリース後にユーザーを拡大しているといった話を以前の取材で聞いた。

BearTailでもそのあたりのニーズは意識しているようで、ベータ版では交通経路検索機能により、駅名からの料金登録をまず実現。今後は「2016年早いタイミングで予定している正式版では、ICカードのNFC読み込み、オンライン利用明細の自動取り込みの機能も追加する予定」(BearTail代表取締役の黒崎賢一氏)としている。

Fintechという言葉でひとくくりにするワケではないが、電子帳簿保存法の改正を受け、2017年度にもスマートフォンで撮影した領収書での経費精算が可能になると見込まれていることからも、この領域のスタートアップの動きは活発。BearTailもそこに着目した。「今後クラウド化が進んでこなかった経費精算サービスが一気にクラウド化すると考えている。帳票入力や回覧・保管にかかわる経費精算関連市場は1兆円とも言われるが、その中でデファクトスタンダードを目指す」(黒崎氏)

動画学習のスクーはユーザー20万人に、1980円のプレミアム課金サービスも開始

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オンライン動画学習サービス「schoo WEB-campus」を提供するスクー。2011年10月に立ち上がったこのサービスは、2015年12月時点でユーザー数20万人を数えるまでに成長した(2014年12月時点でのユーザー数は11万人)。

現在は個人および法人(現在100社が導入)向けの有料課金サービスでマネタイズしているschooだが、今回、個人向け有料課金プランにおいて、上位プランとなる「プレミアムプラスプラン」の提供を開始した。これまで提供してきた個人向けの課金サービス「プレミアムプラン」が月額980円(4月以降。それ以前は月額525円だった)なのに対して、この新プランはその約2倍、月額1980円という価格設定になっている。

ではこのプレミアムプラスプランではどういったサービスを提供されるのか。まずは、既存の課金プラン同様の録画授業の視聴機能。無料であれば基本的にリアルタイムでしか視聴できない授業を、無制限でタイムシフト視聴できるというものだ。これに加えて、登壇した先生の資料のダウンロード機能、動画と連携したリッチノート機能、途中で中断した授業を続きから再生できる記憶機能などが提供される。

リッチノート機能のイメージ

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今回の取り組みはスクーいわく「質の高い学習コンテンツを、より多く生成するための生態系の強化」なのだそうだ。オンライン上には無料だったり、低価格帯のコンテンツがあふれている。スクーはそれらとの差別化として、「学習効果を最大化するための良質なコンテンツを提供し続ける」ということ重視しているとのことで、「良質なコンテンツを提供し続けるためには高いレベルでのビジネススキームを作る必要がある。ユーザーに学習しやすい環境を整える機能を提供し、学習に対する満足度を高めてもらう。そして、スクーは授業生成におけるすべてに対して投資を行うことで、質の高い学習体験をユーザーに還元する。そのための手段」(同社)としている。

日経グループのQUICKからまさかの美少女キャラゲームーー背景には3年がかりの大プロジェクト

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QUICKと言えば、日本経済新聞グループで金融・経済向けツールやレポートを提供する、1971年設立の言ってみれば“おカタい”会社。そんな同社が、美少女ゲームアプリを出したというのだから驚きだ。

同社は12月21日より、iOS向けにゲームアプリ「IRroid(アイアールロイド) 恋の有効フロンティア」の提供を開始した。App Storeから無料でダウンロードできる(アイテム課金あり)。来春にはAndroid版のアプリも提供する予定だ。

このゲームでは、NTTやキリンホールディングス、旭硝子、帝人、コロプラなど、約30社の応援キャラクター(各社とも擬人化され、美少女イラストとなっている)が登場。ユーザーは「カブ主」となって、お気に入りのキャラクター5人をポートフォリオ(カードゲームで言うところのデッキだ)に自分の資産(実際のお金ではなく、ゲーム内通貨だ)を配分して投資を行う。

株価はリアルな株価データと連動している。ユーザーは投資で資産を増やしつつ、そこで得た通貨でアイテムを購入してIRroidたちにプレゼントを贈るなどしてコミュニケーションをとり、親密度を高めていく。キャラとの親密度が高くなれば、キャラごとのストーリーが閲覧できるほか、株価が上がった際などにボーナスがあるという。

プレスリリースには記載がなかったが、アプリを立ち上げると開発元としてユビキタスエンターテインメントのロゴが表示された。正直なところ最初は提供元と美少女キャラのギャップに戸惑ったのだけれど、本気のゲームアプリとして仕上がっている。

このアプリ、そしてアプリのベースとなる「IRroid」の世界観を作っているのは、「チャンス部」と呼ばれる選任5人、兼任2人で組織されたQUICK若手社員集団とのこと。

同部署の部長である大河内善宏氏に聞いたのだが、IRroidは(1)若年層に企業への関心を高めファンにする(投資家層の拡大)、(2)金融リテラシーの向上と“投資”の社会イメージの改善(証券全体のリブランディング)、(3)証券金融市場の活性化と投資教育(投資・企業情報の啓蒙活動)ーーという3つのミッションを掲げた本気(と多分担当者の趣味と)のプロジェクトなのだという。

プロジェクトは3か年の中期計画のもと進行しており、2014年8月にまず、IRroidのサイトがオープン。これまでに105社の上場企業の応援キャラクターを生み出し、各社の株価データ(や4コママンガ、イラストなど)を提供してきた。

「1年目は今回のコンセプトに共感いただける企業を増やしていくことに注力をいたしました。2年目はいかにユーザーに想い入れを持っていただき、ファンを拡大するうえで、キャラクターにストーリーを加味したアプリをリリースいたしました」(大河内氏)

3年目となる2016年には、「IRroidのブランドを、証券会社、発行体の方々にライセンス提供を行い、実際に投資家を増やすお手伝いをしていきます」としており、6月にはキャラクターを起用した企業紹介ムックを出版する。さらにはテレビの経済番組、新機軸のIRイベント等も企画しているという。

フィリピン留学の口コミサイト「School With」が刷新、欧米含む7カ国に対応

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安価かつ日本からの距離も近いということで、英語レッスンのためにフィリピン・セブへ留学するという話はよく聞くようになった。フィリピンにおける日本人留学生の数は2010年時点で4000人だったが、この5年で8倍に増加しているという。だが一方で課題になるのはトラブル。ウェブサイトでうたう制度や設備も、いざ現場に行ってみると十分に整っていなかったりすることもあるそうだ。

フィリピン留学の口コミサイト「School With」を運営するスクールウィズ代表取締役の太田英基氏も、フィリピン留学中にそんなトラブルに見舞われた1人。創業に関わったスタートアップを離れ、トラブルがきっかけとなり、「信頼できる口コミの集まる場を作りたい」という思いから2013年に会社を設立。School Withを立ち上げた。

これまで集まった口コミは140校、1700件以上。語学学校の基本情報から金額、英語使用ポリシーなどが掲載され、学校ごとにユーザーの実名による口コミが投稿されており、月間4万人の留学希望者がアクセスしているという。同サイトを通じて留学の契約が成立することで手数料を得るビジネスモデルで、売上高は非公開ながらも「成長中」(太田氏)だという。同社経由での申し込みでは、学校倒産時の補償や、カード決済による留学費用の分割支払いといった機能を提供している。

そんなスクールウィズが12月22日にリニューアルを実施。フィリピンに加えて米国、カナダ、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、アイルランド、マルタの7カ国の語学学校の情報の掲載をスタートした。

今回のリニューアルにより、School Withに掲載される学校数は合計1014校になった。太田氏は「独自アンケートを実施したところ、フィリピン留学の認知度は大学生で3割程度とまだまだ低い。海外の様々な地域の情報を集めた場所を提供することで、よりフラットに語学留学について考えられると思う」と語る。最近ではフィリピンで基礎的な英語を学び、その後欧米でより上のクラスの英語を学ぶ「2カ国留学」の需要も徐々に高まっているそうで、今後もこういったユーザーのニーズにあわせた機能強化を進めるとしている。

飲み友マッチングの「JOIN US」にAndroid版、来春までにはマネタイズも開始

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6月にiOSアプリに限定してサービスを開始したマッチングサービス「JOIN US」が、12月18日にAndroid版アプリを公開した。Google Playから無料でダウンロードできる。

JOIN USは以前にもご紹介したとおりで「今夜の飲み仲間を探す」というコンセプトを持ったマッチングサービス。正午から翌日5時までに限定してサービスを提供。時間を過ぎると、チャット履歴なども毎日リセットされる。サービスを利用するには、Facebookアカウントでログインした後、今夜どこで、何人(1人、2人、3人以上)で飲むかを登録すればいい。

そうするとユーザーの周辺で飲んでいる、もしくは飲む予定のユーザーを最大8組までマッチングしてくれる。マッチングは男女問わず、距離の近さやログイン時間の近さをもとに、「より飲みに行きやすい人」が優先される。Facebook上の友人とはマッチングしない機能も用意する。

特徴的なのが、初回ログイン時に行われる「審査」だ。同社がネットワークする「飲み会好きのアンバサダー」たちが、Facebookのプロフィールやアクティビティをもとにその人物が信頼できるかを調査して、不正利用を防ぐという。当初審査の通過率は30%前後だと聞いていたのだが、現在は18%とより“狭き門”になっているという。ただし既存会員は友人を会員に招待することができる。

サービスは現在無料だが、運営するVikona(当初はエニグモの創業メンバーらが2013年に設立したgram30が運営していたが、JOIN US事業を切り出すかたちで分社化した)代表取締役の内田洋輔氏によると「2月ぐらいからマネタイズのテストを開始して、3月にも(課金機能を)実装する予定」だという。課金ユーザーに対してはマッチング数を拡大するほか、マッチング場所の指定といった機能を提供していく予定。またユーザー数などは明らかにしていないが、「利用者の70%〜80%程度が翌月も利用してくれている状況」(内田氏)だという。

動画プロダクション・メディア運営の3Minuteが3億円の調達、セプテーニとは協業も

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女性特化のYouTuberプロダクションや動画メディア「MINE」を運営する3ミニッツ(3Minute)は12月16日、セプテーニと動画広告領域での資本・業務提携を締結したことを明らかにした。セプテーニのほか、複数社(社名非公開)を引受先とする第三者割当増資も実施。合計約3億円を調達している。

今回の提携を契機に、3Minuteがマネジメントするインフルエンサー(女性YouTuberなど)を素材に、両社が共同で広告クリエイティブを制作。セプテーニが広告販売していく。今後は共同での広告商品開発も進める予定だ。

このほか、動画メディア「MINE」のスマートフォンアプリ「MINE TV」もiOSおよびAndroid向けにリリース。MINEは25〜35歳の女性インスタグラマーを中心にサービスを拡大。現在MAU(月間アクティブユーザー)40万人を誇る。配信するのは自社制作のオリジナル動画が中心。月間数百本の動画を制作しており、ネイティブ広告の取り組みもスタートしているという。

コロプラがVR領域に最大5000万ドルの出資、専門ファンド「Colopl VR Fund」を設立

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米国ではVC・Rothenberg VenturesのVR特化型インキュベーションプログラム「River」なんかも活発に活動しているようだが、日本でもVR領域のスタートアップを支援する動きが活発化している。

11月にはgumiが子会社「Tokyo VR Startups」を設立すると発表。VR領域のスタートアップに対して、資金を提供するほか、ワーキングスペースの貸与やバックオフィスサポートといった支援を行うプログラムを開始している。

そして今日12月16日には、コロプラと同社の投資子会社であるコロプラネクストが共同でVR特化のファンド「Colopl VR Fund」を設立すると発表した。

Colopl VR Fundは、コロプラとコロプラネクストが最大で5000万ドルを出資する、同社いわく「世界最大級のVR専門ファンド」になるという。コロプラネクストが運用を担当するほか、すでにVRコンテンツを開発するコロプラ、同社子会社で360度動画関連事業を行う360Channelが技術面での支援を担当する。

VR向けHMDの代表格である「Oculus Rift」やプレイステーション4向けのHMD「PlayStation VR」などが2016年にも発売される予定で、業界関係者からは「2016年はいよいよVR元年」といった声も聞こえてくる。コロプラによると、同社は2年前からVRの研究を進めていたという。

クラウドソーシングでマンガ制作——フーモアがデジガレなどから2億円の資金調達

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クラウドソーシングでマンガ制作を行うスタートアップのフーモアは12月16日、デジタルガレージ傘下のDGインキュベーションおよびDK Gate(講談社との合弁。今回が初の投資となる)、アドウェイズを引受先とした合計約2億円資金調達を実施したことを明らかにした。

フーモアは2011年11月の設立。クラウドソーシングの仕組みを利用してゲーム向けのイラストや3DCGなどを制作してきた。競合サービスであるMUGENUPなども詳細は違えど同様のスキームを採用しているとも聞くが、制作工程を分業する独自のスキームを採用、さらに、国内外で約3000人のクリエイターをネットワーク化することで、短期間で高品質な制作物の量産を実現しているとしている。売上高は非公開だが、2年目以降、前年比500%、230%、140%というペースで成長しており、現在は売上高数億円という規模になっているという。

このノウハウを元に、2015年1月からはマンガ制作の新規事業を開始。漫画制作の工程についてもイラスト同様に分業することで、スマートフォンに特化したマンガの制作を行っている。ディー・エヌ・エー(DeNA)の「マンガボックス」をはじめとしたスマホ向けのマンガアプリが登場しているが、そこに配信するマンガ——スマホ向けゲームのコミカライズや「マンガ広告」、すなわちネイティブアドなど——をこれまで1年弱で150本以制作してきたという。

以前、とあるスタートアップがマンガ広告を作成して漫画アプリ上で配信したが、コンバージョンは「通常広告と比較しても厳しい結果が出た」なんていう話を聞いたことがあった。通常の広告と同じように、マンガ広告も演出や構成が重要だし、なによりコンバージョンまで導かないといけない。またフーモアのように制作に特化しているのであれば短期間に漫画を量産し、品質を落とさないことも求められる。このあたりの課題を解決するために、分業型のクラウドソーシングのスキームが有効だと説明する。

フーモアでは今回の出資もとに、マンガを使った広告素材の制作、オリジナル作品の制作を進めていく予定。

オンデマンドでメイクやネイル、マッサージの施術を受けられる「careL」、MOSO mafiaがサービス公開

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昨日もシェアリングエコノミー協会設立のニュースがあったが、人やモノ、スペースなどさまざまな遊休資産の貸し借りを行うプラットフォームは多数登場している。その市場規模は10年後には3350億ドルにも上るなんていう話も出ている。

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東京・恵比寿に拠点を置くスタートアップのMOSO mafiaもシェアリングエコノミーの文脈に沿ったサービスを手がける1社だ。同社は12月15日、ネイルやヘアメイク、エステなど美容・リラクゼーションのCtoC型のオンデマンド予約サービス「careL(ケアエル)」を公開した。当面はオープンベータ版サービスとして、東京都内の渋谷、恵比寿、表参道、代々木、六本木、麻布十番、赤坂周辺でサービスを展開する。

careLは、ドライマッサージ、ヘアセット、メイク、ネイルケアのリアルタイム予約サービスだ。サイト上では、ユーザーが現在いる場所をもとにして、最速・最短距離で予約できる施術者を探して、予約までを行うことができる。口コミやレビューの投稿も可能。決済は今後カードに対応する予定だが、現在は当事者間で現金を手渡しで支払う仕組み。店舗に行くだけでなく、出張サービスを受けることも可能だ。

料金はサービス内容によって統一しており、施術者に関わらず、ドライマッサージでは15分980円、ネイルケアではパーツ付け放題のプランで5800円いった設定をしている。

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サービスを支える施術者は、MOSO mafiaが独自にネットワークするヘアメイクアーティストやネイリストなど約50人。彼らの多くはフリーランサー、もしくは小規模の事務所で仕事を請け負っている。本業を持つかたわらで、隙間時間にcareLでのサービスを引き受ける。

代表を務める渡辺大介氏は、学生時代にアート作品に興味を持ち、それがきっかけでクリエイティブコモンズの存在を知り、ついには弁理士になったという人物。その後は弁理士事務所、ユニチャーム、コンサルティング会社のプライマルで務めた後、独立。本業と並行して、エステサロンを経営することになった。

「エステサロンはクオリティと場所、料金設定を調整できれば儲かるビジネス。しかし課題があった。どれだけ抑えても、1店舗出店するには2000万円以上の初期投資が必要になる。一方で年間の売上は3000万〜5000万円。これでは一気に店舗を増やすことは難しい。また広告を打つにしても店舗数が多くないとレバレッジが効かない」(渡辺氏)。そこで目を付けたのがシェアリングエコノミーの仕組みを使ったサービス提供だった。

ユーザーのニーズもまさにシェアリングの仕組みがマッチしたのだという。カットやパーマであれば店舗もスケジュールも決まっていることが多いが、ヘアメイクやマッサージ、ネイルなどは突然オーダーしたいニーズが高い。そのためリアルタイムに施術を受けたい個人と時間の空いている施術者を結び付けることが価値を生み出すと考えたという。米国には先行するオンデマンドメイクサービス「Glamsquad」などがある。同社は今年10月、700万ドルの資金を調達している。

Labitがゲームメディア運営の子会社「ゲームエイト」をGunosyに譲渡

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Labitは12月15日、同社子会社のゲームエイトの保有株式をニュースアプリ「グノシー」を運営するGunosyに譲渡することで合意したことを明らかにした。譲渡の金額等は非公開。これによりゲームエイトはGunosyの連結子会社となる。また現在代表取締役を務める西尾健太郎氏が、引き続き事業を牽引する。

Labit代表取締役の鶴田浩之氏は兼任していたゲームエイトの取締役を辞任、また西尾氏もLabit取締役を辞任する。すでに西尾氏が保有していたLabit株式は鶴田氏が買い取っており、今後Labitとゲームエイトの資本・経営両面での関係性は一切なくなるという。

ゲームエイトは2014年8月の設立。Labitで運用していたゲーム情報サイト「Game8」の事業を切り出すかたちで100%子会社として分社化した経緯がある。その後西尾氏に加えて外部株主2者がいる状況だったが、今回Gunosyが100%の株式を買い取ることとなった。Game8は現在、月間ユーザー数1059万人(11月14日〜12月14日実績:Google Analytics調べ)で、単月黒字化を達成。Labitいわく「国内で有数のゲーム情報メディアとして成長いたしました」とのこと。

では子会社を売却したLabitの今後はどうなるのだろうか? 代表の鶴田氏は次のように語る。「Labit社としての物語は続く。何年後か分からないが、世界有数のカンパニーになることを夢見ている。 現在フルタイムのコアメンバー3人にアルバイト2人の少数精鋭。今夜にも新サービスをリリースする予定だ」

健康ITのFiNC、今度はゴールドマン・サックスから資金を調達

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先週ANAホールディングスやクレディセゾンなど大手企業を中心とした資金調達を実施したヘルスケアITのFiNCだが、今度はThe Goldman Sachs Group(ゴールドマン・サックス) の本社経営委員会メンバーからの資金調達(先週発表のシリーズBの追加出資)を実施したことを明らかにした。金額や出資比率は非公開。

元みずほ銀行常務の乗松文夫氏を代表取締役副社長CAO兼CWOに、元ゴールドマン・サックス証券幹部の小泉泰郎氏を代表取締役副社長CFO兼CSOにそれぞれ招聘。元ミクシィ代表取締役の朝倉祐介氏や元LINE株式会社代表取締役社長の森川亮氏らを戦略顧問に据えるなど経営陣の強化に努めてきたFiNCだが、このステージの国内スタートアップにゴールドマン・サックスが出資するというのは珍しいケースだ。

FiNCでは今回の調達を契機にグローバル事業の本格展開を進めるとしている。

クラウドキャストがセゾンとIMJ-IPから資金調達、経費精算サービスにクレカ連携機能

lg_staple_intro-3121e45fa784275f1d3ab97e3cd8c23f経費精算サービス「Staple(ステイプル)」を提供するクラウドキャストは12月11日、クレディセゾン(6月に設立した100%子会社のセゾン・ベンチャーズからの出資だ)およびIMJ Investment Partners(IMJ-IP)を引受先とした第三者割当増資を実施することを明らかにした。調達額や出資比率は非公開だが、関係者によれば数億円前半程度の規模になる模様。

Stapleは2014年9月のリリース。アプリへの入力で手軽に経費精算ができるほか、交通系ICカードの読み取り、会計システムとの連携にも対応している。金額は個人向けが無料、承認フローなどを備えた法人向けが1ユーザー月額600円となっている。これまで広告や人材、不動産、全国展開の小売業などの業種の中小・ベンチャー向けにサービスを提供しており、無償・トライアルを含めて150以上の企業・組織で利用されている。

同社ではクレディセゾンとの資本提携を機に、クレディセゾンの3500万人の顧客基盤や永久不滅ポイントなどと連携。Staple の機能拡張および顧客基盤拡大していくとしている。具体的には、クレジットカードの利用履歴をもとに、自動で経費を登録する機能を提供していく。

開発基盤も強化する。クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏によると、直近2カ月弱で有償ユーザーの数が2倍になるという状況なのだそうだ。今後は領収書の読み取り機能なども提供する予定だとしている。

協業のイメージ

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スマート目覚ましから体験VRまで、TechCrunch Tokyoの「未来展示」をご紹介

11月に開催したTechCrunch Tokyo 2015では、セッションのほか中堅・大手からスタートアップまで多くの企業にブース出展をしていただいた。それに加え、今回新たに「フューチャーラウンジ」という出展枠をもうけた。コンセプトは「体験できる、最新のテクノロジー」。スポンサー企業や昨年のバトルファイナリストなどのブースに加え、全部で5社、IoT、VRコンテンツなど、最近特に注目を集めている分野の企業が展示を行ったので紹介しよう。

1.スマート目覚まし、cloudiss(クラウディス)(株式会社CEREVO)

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この小ささ、スタイリッシュなデザインから、これが一体なんの製品なのか、想像ができない人もいるだろう。デモブースがあった少々広いホールでビープ音が鳴ったかと思えば、音源はこの小さな目覚ましだった。

image01スマート目覚ましcloudissは、イベント前日の11月16日に発表されたばかりだ。専用のアプリで通常の目覚ましと同じようにアラームをセットしたり、Googleカレンダーと同期することもできる。ここまでは普通の目覚ましアプリやデバイスと、さほど変わりはない。今回デモブースで来場者のみなさんに体験していただきたかったのは、そのサイズから想像できないアラーム音量の大きさと、止めるときのアクションだ。止めるときは、全力で本体を振らないといけない。最大でiPhoneの3倍にもなる音量のアラームは、設定した強度で、かつ、設定した回数を振るまで、鳴り続ける。私も体験したが、かなり辛い。寝ぼけながらでも適当に振れば止まる、なんて甘いものではない。会場で即売会を行っていたが、買い損ねた人はオンラインストアから購入可能だ。

2.モトクロスで宙返りを体験(株式会社HOME360

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イベント開催前の記事でも取り上げた、モトクロス体験型VRを展示したのは株式会社HOME360。

体験する人はモトクロスにまたがり、Oculusを装着する。前面からは扇風機の風が当たり、後ろでは人力でモトクロスをタイミングに合わせて動かしていたので、よりリアルに近いアトラクションになっていた。

RedBullのモトクロスコースを疾走する。360度動画での体験者はまさに宙返りのシーンを体感している。パソコンの画面を見ているだけでも酔ってしまいそうだった。HOME360が作っているのはこの動画コンテンツ。同じコースを複数のカメラで撮影した映像を繋ぎあわせるということだが、宙返りの映像などは、つなぎ方が特に難しいという。ツギハギが見えないようにするのが、技術の見せ所だと話してくれた。

3.体感できるVR、UnlimitedHand(H2L株式会社)

H2L社の触感VRコントローラー・UnlimitedHandは、TechCrunch USのイベント、TechCrunch Disrupt SF 2015でローンチしたばかりで、TechCrunch Japanでもその様子を紹介した。コントローラーはリストバンド型で、ラバー製。今回H2Lは2種類のVRコンテンツを用意。1つめは、手に鳥が止まってくれるもの。Oculusとコントローラーを装着すると、パソコンの画面には自分の手の一部と、森の中の映像が映し出される。自分の手に鳥が止まると、止まった感触が、振動か、静電気のような微弱な電気で伝わってくる。

2つめは、文化財の中を走り回れるもの。このVRコンテンツは東京大学発のベンチャー・アスカラボが提供したそうだ。

このコンテンツでは、壁にぶつかったりすると、ぶつかった感触を体感することができる。

4.電池のオン・オフや出力をアプリで調整できる、MaBeee(ノバルス株式会社

image04ノバルス株式会社は、電池の出力をアプリでコントロールできるソケット・MaBeeeを開発した。このソケットに入れた電池をおもちゃや電動歯ブラシなどに入れると、スマートフォンでその製品のオン・オフや動きをコントロールすることができるようになる。自分のスマートフォンが、電池を使う全てのデバイスのリモコンになるのだ。このソケットとアプリはBluetoothでペアリングをしている。 プラレールのデモでは、スマートフォンを振って電車の走るスピードを変えたり、 スマートフォンの傾きでスピードをコントロールする様子が紹介していた。

クラウドファンディングのMakuakeでは目標の8倍以上となる428万円を集めている(12月10日現在)。

5.見守りロボット、bocco(ユカイ工学株式会社

image03最後にご紹介するのは、小さな見守りロボット「bocco」だ。boccoは家族一人ひとりのメッセージを預かってくれる。例えば子供が帰宅して、boccoの再生ボタンを押すと、あらかじめ録音してある「おかえりなさい」という、生の声のメッセージを再生してくれる。 反対に、子供から、boccoにボイスメッセージを録音することもできる。boccoにメッセージを録音するると、親のスマートフォンにはメッセージが届いたという通知が表示される。電話ではないので、ちょっと時間が空いた時などに、あとから聞くことができる。専用のアプリにすべてのメッセージは記録されている。ちなみに、お父さんと子供のやりとりは、お母さんが聞くことができる。また、ボイスメッセージだけでなく、メッセージをテキストで送信すると、bocco本体が、そのメッセージを読み上げてくれる。

10月から、Amazonでも取り扱いを開始している。boccoの特筆すべき点は、様々なセンサーやAPIの連携が可能なことだ。9月には中古マンションのリノベーションなどを手がけるリノべると、スマートハウス分野で提携を発表した。boccoに指示するとテレビの電源を消してくれたり、ニュースや天気予報を喋らせることもできる。

職人が適切な所得を得られるように——縫製マッチングプラットフォーム「nutte」の挑戦

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「10年縫製をやっていたが貧乏で嫁にも逃げられて…でも何かこのビジネスを変えるいい方法がないかと考えていた」——招待制イベント「Infinity Ventures Summit 2015 Fall Kyoto」のプレゼンバトル「LaunchPad」で第2位となった縫製特化のクラウドソーシングサービス「nutte」。サービスを提供するステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏との会話は、こんな話から始まった。

縫製職人の厳しい環境

大学生の頃からファッションブランドを立ち上げることを目標にしていた伊藤氏。大学卒業後にまず広告デザインの会社で働き、資金を貯めて縫製の専門学校に入学。専門学校の卒業後に晴れて縫製職人となるが、同氏を待っていたのは厳しいビジネス環境だった。

伊藤氏に聞いたところだと、一般的に縫製職人は個人が自宅で、もしくは少人数が小さなアトリエで作業するのだという。そして取引先から発注される仕事を受けることで生計を立てている。だが職人側から積極的に取引先たるメーカーなどに直接取引の提案を行うことはあまりないのだそう。

ステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏

ステイト・オブ・マインド代表取締役社長の伊藤悠平氏

さまざまなケースがあるのであくまでざっくりとした話になるのだが、「振り屋」と呼ばれるエージェント的な業者(これはOEMメーカーだったり、商社だったり、エージェント専業だったりと状況によって異なる)がメーカーからの生産依頼を受けて縫製職人に仕事をアサインすることが多い。

これはメーカー側、工場や職人側の手間を減らす構造とも言えるが、一方で中間業者ありきの構造とも言える。職人が新規の取引先を自力で開拓することは難しいし、安価な海外への発注が増えるなどして価格競争に陥り、職人に支払われる金額は下がる一方なのだそう。

その結果、著名ブランドのサンプルを作っているような技術を持った職人であっても、1枚2000円のシャツまでを縫製しないと生活が難しいという状況もある。振り屋側もビジネス。注文量や注文額大きくないと自分たちの事業が成り立たないため、サンプル縫製など小ロットの注文を受けることは難しいという。

クラウドソーシングの仕組みで職人を支援

伊藤氏はこの小ロットの注文と縫製職人を直接繋ぐことで、縫製業者の収入を確保する道を模索していたのだそう。そんなときランサーズのサイトを知る。そこからクラウドソーシングの仕組みを使うことで、この課題を解決できないかと考えるようになった。

そこからの動きは速かった。東京都が2014年に開催したビジネスプランコンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY」に参加。それと並行してエンジニアを口説き、開発体制を整えた。そしてビジコンで出会ったメンバーも巻き込むかたちでチームを組成。2015年2月にnutteを公開した。

nutteは縫製を依頼したいユーザーと、登録した縫製職人をマッチングするサービス。ユーザーが制作物の詳細や金額、納期などを設定して案件を登録すると、興味を持った縫製職人がユーザーに連絡、条件が折り合えば案件成立となる。職人は期限内に縫製を終えて納品(一度nutteに送付し、検品した後ユーザーに送付することになる)。ユーザーが支払いを行う。料金の20%が手数料としてnutteに支払われる。商品は1点から発注可能。作り手を検索してメッセージを送ることもできる。近いサービスとしては、縫製工場のクラウドソーシングサービスである「シタテル」がある。

当初は100人程度の職人をネットワークし、ノンプロモーションでサービスをスタート。展示会用のサンプルなど、小ロットの発注を積み重ねていった。現在は1800ユーザー(発注者)、登録する職人は数百人にまで拡大した。3000万円のシードマネーを調達した11月以降、広告の配信も始めた。10月比で売上数は4倍に伸びた。

法人向けの発注を中心にしつつも、CtoCコマースのような個人発注も拡大中だ。例えばコスプレ衣装の縫製などはニーズの高い案件となっている。案件は発注者側が登録するが、その成約率は約90%。「よほど安い、納期が短いという案件でない限りは成約している」(伊藤氏)。最近ではセミプロクラスの職人の登録にも積極的だ。ドレスやジャケットのような本格的な縫製ニーズだけでなく、ぞうきんや巾着袋といったちょっとした縫製のニーズも高いためだという。

今後は一級和裁技能士の登録も促し、本格的な着物の縫製までに対応できる仕組みを作るほか、技術力の高い職人がほかの職人の品質テストをするような組みも導入する予定だ。「これまで誰も儲からないで幸せにならない状況。縫製職人が適切な所得を得られるのが最大の目的。それを実現できる状態をつくるのがまず最初の目標」(伊藤氏)

11月に3000万円の資金を調達

ステイト・オブ・マインドは11月にみずほキャピタル、ガイアックスグループのほか、元クックパッドCFOでミューゼオ代表取締役の成松淳氏、ピクスタ代表取締役社長の古俣大介氏、公認会計士で元みんなのウェディング社外監査役、エルテス社外監査役の本橋広行氏などから合計約3000万円の資本調達を実施。このほかにも著名なスタートアップ企業家複数人がエンジェルとして同社を支援している。

中でも古俣氏はビジコン時代に出会って以来のメンター的な起業家だという。「1年前まではガラケーを使って、デットとエクイティの違いも分からなかったが、ITや起業に強い人たちが支援をしてくれている」(伊藤氏)。同社では、2016年12月までにユーザー数3万人、累計取引件数5000件、流通額2億円を目指す。

トイレを使って全自動のヘルスモニタリング——健康IoTのサイマックスが資金調達

ヘルスケアIoT製品を開発するスタートアップのサイマックスは12月9日、Draper Nexus Venture Partners II,LLC、iGSインベストメントワークス(アイスタイル傘下のCVCだ。詳細はこちら)および個人投資家から資金調達を実施したことを明らかにした。調達額は非公開で、今回がシリーズAの調達となる(IoTスタートアップを支援するインキュベーターのABBA Labからシードマネーを得ている)。払い込みは11月で、リードインベスターはDraperとなっている。

サイマックスは2014年6月の設立。代表取締役の鶴岡マリア氏は以前、インキュベーターのサムライインキュベートで投資家の支援から新規事業までを担当していた人物だ。同社のオフィス兼コワーキングスペース「Samurai Startup Island(SSI)」の立ち上げにも関わっており、こちらのスペースで同氏を見たことがあるというスタートアップ関係者も少なくないのではないだろうか。

残念ながら同氏が手がけたサービスは終了してしまったのだが、その後サムライインキュベートを退社、起業の準備を進めてきた。

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タンク左側に見えるのがサイマックスの製品だ

サイマックスが開発するのは、世界初となる小型・低価格のトイレ後付け型の分析装置とヘルスモニタリングサービス——もう少し具体的に説明すると、自宅や施設のトイレに後付けで設置し、自動で排泄物の分析を行うというもの。

こちらの写真を見て欲しいのだが、便器内にセンサーを設置、タンク左に付いている装置でデータを取得、クラウド上にデータをアップして解析、その結果をスマホアプリで閲覧できるというものになる。

その精度は非常に高いそう。またクラウド上で解析を行うため、逐次その検査方法もアップデートできるのも強み。すでにヘルスケアメーカーなどが競合製品を提供しているが、鶴岡氏いわく強みとなるのは検査項目の多さと価格。

サイマックスの製品で検査できる項目は早期の糖尿病(完全に治せるフェーズ)、痛風、高血圧・心疾患リスク、感染症などのスクリーニングやモニタリング。「発見できる疾患数は桁違い」(鶴岡氏)。また価格は競合製品では200万円程度のものから数千万円のモノ(病院や検査機関にある装置)まであるそうで、手軽に導入するのは難しそうだ。サイマックスの製品価格は非公開ながらそれよりも安価に導入できるとしており、さらに「施設のトイレに導入して使用する場合、1回980円でサービスを提供できる予定」(鶴岡氏)とのことだ。

同社は2014年以降製品を開発を進めてきた。最近ではメドピア主催イベント「Health 2.0-Japan」内で行われたヘルステックのピッチコンテスト「Afternoon Pitch Competition」に出場して優勝するなど徐々に露出を始めている。

サイマックスでは以前、血液1滴で疾患の検査ができるというプロダクトを開発していた。そこからトイレを使った全自動なシステムにピボットしたようだ。「病院に行かず、この場で腫瘍マーカー検査ができるとしてユーザーテストを行ったが、針を使って血を抜くこと自体をやったことないので抵抗があるという人が多かった。予防領域だと『血を抜く』という行為はハードルが高かった」(鶴岡氏)。そこでより簡単に疾患をチェックできるものを…と思い、現在のプロダクトにピボットした。今後はテスト導入を進めていき、来夏にも正式にリリースする予定。