3ステップでAIによる映像解析を開始できる「SCORER Cloud Processing」が登場

映像解析システムの開発プラットフォームを提供するフューチャースタンダードは12月12日、AIによるクラウド映像解析ツール「SCORER Cloud Processing(スコアラー クラウド プロセッシング、以下SCP)」の提供を開始した。

フューチャースタンダードはこれまでに、映像解析技術を使ったプロダクトやサービスの開発を簡易化する開発プラットフォーム「SCORER(スコアラー)」を提供してきた。SCORERは、カメラや映像に関する最新の解析技術をブロックのように組み合わせることで、安価で簡単に映像解析システムを開発することを可能にする。システム企業やAIベンチャーなどの持つ高性能・高機能な映像解析技術、ネットワーク技術、クラウド技術、組込み技術の提供を受け、それらを一元的に管理・利用できる。SCORERについては、以前のTechCrunch Japanの記事でも詳しく紹介している。

SCPは、SCORERのクラウド版サービスだ。SCPでは、ログインすれば、映像解析の知識や経験がない人でも簡単に、AIによる映像解析が始められる。映像解析の設定に必要な手順は「解析したい映像を選択」「解析アルゴリズムを選択」「解析結果を確認・出力」と3ステップで済み、とても簡潔だ。

SCPで利用できるAIアルゴリズムには、フューチャースタンダードが自社で開発したオープンソースベースの顔認識・人物認識アルゴリズムである「SCORER Attention Counter」「SCORER Pedestrian Counter」のほか、コンピュータビジョンやディープラーニング領域で高い技術力を持つ、香港SenseTime(センスタイム)のオブジェクト認識技術「SENSE Video(センスビデオ)」も搭載されている。SENSE Videoのアルゴリズムでは、道路を撮影した映像から交通量を計測することや、歩行者の年齢・性別判断機能を利用した属性分析、動線解析なども行うことができるという。

また、2017年内にはリコーが提供する人物検知アルゴリズムも実装を予定。さらにMicrosoft AzureやAyonoxが提供するアルゴリズムについても近日、実装を予定している。

SCPは、ユーザー登録・初期費用は無料。SCORER Attention CounterとSCORER Pedestrian Counterについては、ライセンス料金や従量課金なしで利用できる。SENSE Videoについては、ライセンス料金が月額1万2000円、映像の長さに応じて1時間あたり70円の従量課金となっている。

フューチャースタンダードでは、今回のクラウド版のリリースに合わせて、既存のSCORERシリーズのサービス群についても見直し、再定義を行った。従来から提供しているRaspberry Piを使ったキットやSDKを「SCORER Edge」と位置付け。また大容量になりやすい映像データをIoT機器・カメラからアップロードするための上り優先のデータ通信SIMは、2年縛りなし・1カ月単位で契約が可能な「SCORER LTE」にリニューアル。500GBプランで月額3200円、大容量プランで月額5500円(初期費用は各4000円)と料金も下げ、本日より事前受付を開始した。

フューチャースタンダードでは「AIは『開発するもの』から『使うもの』となっていく。利用の間口を広げるために、初期費用不要で従量課金で利用できるものとしているし、データアップロードのハードルも下げた。また、AIアルゴリズムも各社のものを(プラットフォームとして)取り入れることで、ユーザーはイニシャルコストを小さくして比較することもできる」と一連のサービスリリース、リニューアルについて説明している。

フューチャースタンダードは2014年3月の設立。2016年1月にインキュベイトファンドなどから1.3億円を調達、2017年7月にはスパイラルベンチャーズ、テックアクセルベンチャーズなどから2.1億円を調達している。

「『信頼せず検証する』ブロックチェーン技術で金融インフラを見直そう」、BlockstreamのSamson Mow氏

信頼(trust)の概念を見直し、金融インフラを再定義して置き換えよう──これが、カナダBlockstream社CSO(Chief Strategic Officer)であるSamson Mow氏が、TechCrunch Tokyo2017のGuest Session「ブロックチェーン技術で『信頼』を再考する」(関連記事)で語った内容である。

抽象度が高く、スケールが大きすぎる話題だと考える人もいるだろう。非現実的な話とすら受け止める人もいるかもしれない。だが、「信頼」の概念の再定義こそが、ブロックチェーン技術に注目が集まっている理由だ。つまりSamson Mow氏はブロックチェーン技術のインパクトについて正攻法で語ったのだ。

まず所属企業とプロダクトの話から。カナダBlockstream社は2014年設立。メインオフィスはサンフランシスコにあり、45名の社員の2/3はエンジニアだ。シリーズCでは6000万ドルの資金を調達した注目のスタートアップである。政治的配慮からかMow氏は強調しなかったが、Blockstream社は、ビットコインの開発者サトシ・ナカモトにメールで助言した人物であるAdam Back社長兼共同創業者を筆頭に、ビットコインに貢献した開発者が参加していることで知られている。

そのBlockstream社の主な製品は次の3種類だ。(1) 商用のブロックチェーンプラットフォーム「Element」、(2) 仮想通貨取引所どうしで流動性を融通するのに利用できる製品「Liquid」(ビットコインと2-way peg(双方向に連動)したサイドチェーンとして作られている)、(3) モバイル環境で使えるビットコイン・ウォレットの「Green Address」である。いずれもビットコインに深く結びついた製品である。

同社は無料のサービス「Blockstream Satellite」も提供している。静止軌道に位置する通信衛星を活用し、地球上のどこでもビットコインのブロックチェーン同期を可能にすることを目指す。例えば大災害でインターネットインフラが途絶したり、政情不安によりインターネットが遮断されたりするような事態に陥っても、パラボラアンテナを建てればビットコインのブロックチェーンの同期に必要な情報を受信することができる。衛星インターネットなど送信手段と組み合わせれば、地上のどこかででもビットコイン決済を使うことができる。ただし残念ながら日本を含むアジア地域は現時点ではサービスの対象外だが、「2018年Q1までにアジアでも使えるようにする」とのことだ。

同社はオープンソース・ソフトウェアへの貢献も行っている。主な対象は、ビットコインそのもの(Bitcoin Core)、ビットコインの少額高頻度決済を可能にするLightning Network、そして最近発表したスマートコントラクト用のプログラミング言語「Simplicity」だ。Simplicityは名称が示すようにコンパクトな言語仕様をもつ。Mow氏は「Simplicityはすべての言語仕様をTシャツ1枚に載せられる」と説明する。

「信頼せず検証する」原則で金融インフラを再構築する

続けて、Samson Mow氏は、Blockstream社が掲げるスローガン「Rethink Trtust(信頼を見直そう)」について説明した。ブロックチェーン技術を、金融インフラに活用するビジョンである。

前提となるのは、世界最大規模のパブリックブロックチェーンといえるビットコインだ。ブロックチェーンは耐改ざん性を重視する技術である。そして最も大きな計算能力(ハッシュレート)に裏付けられたビットコインのブロックチェーンは、最も頑健な耐改ざん性を備える。

ブロックチェーン技術を使うと信頼(trust)の概念が変わる。Mow氏はブロックチェーンの特性を列挙する。「検証可能性、リアルタイム監査、公開された取引台帳、セキュアな暗号学的トークン、インターネット上で動作、全ノードがデータの複製を持つこと」。これらの特性を活用することで、金融インフラを合理的に再構築することができる。

ここで提示された「信頼」に関する新しい考え方を象徴的に示すスライドを引用する。「Don’t Trust. Verify.」と記されている。これは金融分野の取引にあたり会社組織や制度を信用して全面的に任せるのではなく、自動的、機械的、暗号学的に検証するアプローチを採ることで、より良いシステムを作ることができるという提案である。

ブロックチェーンによるイノベーションの中心は「信頼できる仲介者が発行したIOU(借用証書)」を用いるやり方から、「デジタルな資産」を直接交換するやり方に移行できることだ。ブロックチェーン上のトークンは、データベース上に記録された帳簿という以上に「デジタルな資産」としての意味を持つ。帳簿には偽造や改ざんの可能性があるが、ブロックチェーン上のトークンは「資産」そのものなのだ。

「どういう場合にブロックチェーンが必要なのか? 監査・検証できることが重要である場合、マルチパーティーで情報を書き込む必要がある場合、マルチパーティーがお互いを信用していない場合、データの冗長化と回復可能性が求められる場合だ」。このようにMow氏は語りかける。

これはつまり、金融インフラのように「信頼」が重要と考えられている分野でブロックチェーンは特に大きな役割を発揮できるということだ。例えば銀行のシステム、銀行間送金、証券取引所、仮想通貨取引所など、あらゆる金融インフラをより合理的に見直すことができる。金融インフラはブロックチェーンを使うことで透明になり、効率的になり、第三者が監査可能となり、即時決済が可能となり、煩雑な手続きを省略できるようになり、しかもより安全になる。「例えば、仮想通貨取引は、従来のシステムから、(ブロックチェーンの2nd Layer技術である)Lightning Network上のアトミックスワップに置き換えることが可能だ」。

このようなビジョンを語った後、Samson Mow氏はこう締めくくった。「破壊的イノベーションが、ブロックチェーン技術の分野でも起きている。世界中のインフラを再構築するチャンスだ」。

「Live Shop!」提供のCandeeが総額24.5億円を調達、ライブコマース事業の横展開を視野に

若い女性向けのライブコマースアプリ「Live Shop!」を手がけているCandeeは本日、総額24.5億円の第三者割当増資を実施した。リードインベスターはEight Roads Ventures Japanが務め、既存株主であるYJキャピタル、NTT ドコモ・ベンチャーズ、オプトベンチャーズ、グリー、大一商会、みずほキャピタルも調達ラウンドに参加。また、同時にEight Roads Ventures Japanの深澤優壽氏がCandeeの社外取締役に就任したことを発表した。

Live Shop!」は、モデルやインスタグラマーなどのインフルエンサーが出演する1時間程度の番組をライブ配信するアプリだ。ユーザーは番組を見ながらインタラクティブにハートのスタンプを送ったり、コメントを残したりできることに加え、番組で紹介される商品を購入することができる。

Candee20176月に「Live Shop!」をリリースし、現在週に10本ほどのライブ配信を行なっている。Candeeではこれまでに9800本以上のライブ配信、1300以上のモバイル動画を制作したという。

サービスリリース以降、「検証をしっかりやってきた」と取締役副社長CCOを務める新井拓郎氏は話す。ライブコマースは一足先に中国で盛り上がっているものの、本当に日本のユーザーもライブ配信を見て物を買うのか。検証を進めた結果、ユーザーのライブ配信におけるエンゲージメントを高めることで、商品の購入率も高まることが分かり、ライブコマース事業に手応えを感じていると新井氏は言う。

「ライブ配信中にハートのボタンを押したり、コメントしたりするユーザーの参加率を見ています。このユーザーの参加率を高めていくと、購入率も高まることが分かりました」。

Candeeの掲げるソーシャルビデオプラットフォーム構想

Candeeは、現在提供している「Live Shop!」を他にも音楽、ニュース、スポーツといった分野に横展開する「ソーシャルビデオプラットフォーム構想」を描いている。「視聴者のエンゲージメントを作って、ユーザーにアクションしてもらうことは、どの領域でも活用できる部分であると考えています」と新井氏は説明する。具体的な時期はまだ決めていないものの、次はスポーツ分野でのサービス展開を検討しているという。トライアル段階ではあるが、CandeeはすでにNTT ドコモと「Live Shop!」の番組内でスポーツ関連の配信企画を進めている。

今回の資金調達は「ソーシャルビデオプラットフォームの構想に向けてアクセルを踏むため」であり、事業拡大と人材採用に充てる予定とCandeeは説明している。

孫の写真や動画をテレビで共有、「まごチャンネル」開発元のチカクが1億5000万円調達

離れて暮らす家族のテレビに写真や動画を送ることができるIoTデバイスの「まごチャンネル」。その開発元のチカクは12月12日、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当増資により1億5000万円を調達したと発表した。これにより、同社の累計調達金額は3億円超となる。

同時に、「カーブス」や「らくらくホン」などのシニアビジネスに参画したこともある、村田アソシエイツ代表の村田裕之氏がチカクの顧問に就任。また、企業間レンタル移籍プラットフォーム「ローンディール」を通して関西電力の田村博和氏が6ヶ月限定でチカクにジョインする。

まごチャンネルはITリテラシーの低いシニア世代でも簡単に使えるように設計されたIoTデバイス。遠く離れた場所に住む家族と、テレビを通して写真や動画を共有することが可能だ。

まごチャンネルの操作はテレビのリモコンで完結する。だから、スマホやPCの操作に慣れないシニア世代でも使いやすい。その名の通り、祖父母たちのテレビに「まご専用のチャンネル」を追加するためのデバイスだ。また、まごチャンネルのクラウドストレージに写真をアップロードすると家の形をしたデバイスの“窓”が光り、祖父母がその写真を観ると専用アプリ経由で通知がくるなど、離れて暮らしていても距離がチカク(近く)感じるような仕組みが特徴だ。

ところで、前回の取材時には3万9800円だったまごチャンネルの価格は、現在1万9800円まで値下げされている。チカク代表取締役の梶原健司氏によれば、「うまく増産が進み、価格を下げられるようになった」という。

現在はWebサイトや通販サイト経由での注文が多いということだが、そういった純販売だけでなく、他社との連携も順調に進んでいる。野村證券が実施したアクセラレータープログラム「VOYAGER(ボイジャー)」に採択されたこと経緯から、同社と共同でまごチャンネルを利用したカスタマーリレーションの構築の実証実験を行っている。これは、野村證券の営業員が顧客にまごチャンネルをプレゼントし、子供や孫の動画に混ざって営業員が挨拶ビデオレターを送るというもの。

証券会社の営業員は1人が抱える顧客の数が多く、直接会ってコミュニケーションが取れる顧客の数は限られている。顧客の高齢化も進むなか、彼らとのコミュニケーションを深めるためにシニア向けに開発されたまごチャンネルが選ばれたというわけだ。この協業を通して、これまでに3000台のまごチャンネルが導入されている。

チカクは2014年3月の創業。同社は2015年9月にクラウドファンディングプラットフォームの「Makuake」でまごチャンネルを発表した。そして、その翌年の2016年12月には500 Startupsなどから約1億円を調達している。現在、チカクはまごチャンネルの第2世代を開発中で、2018年の投入に向けて準備を進めているという。

クルマのアフターパーツを扱うカタログECサイト「Garage」運営が2.5億円を資金調達

クルマのカスタマイズパーツを扱うカタログECサイト「Garage(ガレージ)」を運営するMiddleFieldは12月11日、フェムトパートナーズが運用するファンドを引受先とする2.5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

MiddleFieldは2015年12月の設立。モータースポーツに関する情報を提供するウェブメディア「Motorz(モーターズ)」と、アフターパーツと呼ばれるクルマのカスタマイズ用パーツを販売するカタログECサイトのGarageを運営している。

2017年4月にサービスを開始したGarageでは、まとめて確認することが難しかったクルマのアフターパーツを、メーカーや車種、デモモデルごとに情報掲載。自分が乗っているクルマから探すことができる。また、取り付け店舗の紹介やパーツの対応車種情報なども提供しており、パーツ購入後の取り付け相談や予約もできる。パーツ購入や取り付け相談は現状、メールまたはウェブチャットベースで行う仕組み。現在は1500超のブランドや300店舗以上の取り付け店舗と提携し、クルマのアフターパーツ領域でデータ量では国内最大のインターネットサービスとなっているという。

MiddleFieldでは今回の資金調達により、運営体制の強化のほか、Garageのサービスリニューアルに伴うデータベースの強化、取り付け店舗とのネットワークの構築や、中古車販売、ユーザー間取引などの新機能を順次提供していく、としている。

AIとのレッスンで英会話を学ぶ「TerraTalk」、提供元が2億円を調達

AI英会話アプリ「TerraTalk(テラトーク)」を提供するジョイズは12月8日、YJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、ベンチャーラボインベストメント、インキュベイトファンドを引受先とする第三者割当増資により、総額約2億円を調達したことを明らかにした。

TerraTalkはアプリと会話することを通じて、様々な場面で使える実践的な英語を習得できる英会話アプリだ。実際に教室に通ったりオンライン通話サービスを使って講師からレッスンを受けるのではなく、スマートフォンのマイクを使いながらAIを相手に会話を進める。

レッスンではAIとの会話をチャット形式で確認することも可能。自分が話した英語がリアルタイムで文章化され、会話が成立しない場合は再度トライすることになる。

実際に少し試してみたが、はっきりと発音をしないとうまく認識されないのでその点については注意が必要。ただ相手がAIなのでシャイな人でも使いやすいのと、講師のスケジュールなどを気にせず好きな時間にレッスンを受けられるのは使い勝手がいい。

また会話だけでなくレッスンで使う重要単語や発音を学べるドリルや、リスニングスキルを磨ける機能も備える。月額1980円の有料プランでは自分の使いたいシーンに応じて適切なレッスンを選べるように、旅行やビジネス、日常会話など100以上のコース用意。加えてアプリが発音や表現を自動で診断し、苦手な箇所をピンポイントで学習できる「弱点克服ドリル」などを提供する。

ジョイズによるとスピーキングの個別指導が困難な教育現場の課題を解決できるサービスとして学校や塾からも関心を集め、自習用教材として品川女子学院や日体大柏高校などでTerraTalkが採用。また大手サッカースクールのクーバーや野球教室BBCなどでも活用実績があるほか、地方のインバウンド対策への支援も進めているという。

今回調達した資金を基に、今後ジョイズではTerraTalkのさらなる機能拡充と事業基盤の強化を図る。

SoftBank Vison Fund、不動産仲介のCompassに4.5億ドル――ポストマネーの企業評価22億ドルに

鉄は熱いうちに打てといわれるが、Fidelityがリードしたラウンドで先月1億ドルを調達した不動産仲介のスタートアップ、Compassはさらに巨額の投資を受け入れた。今回SoftBank Vision Fundが4億5000万ドルを投資するのに加えて5000万ドルの発行済の株式買い上げが予定されている。調達された資金は不動産の売買・賃貸のプラットームを世界に拡大するために利用される。

ニューヨークに本拠を置くCompassの資金調達総額は7億7500万ドル、ポストマネー〔投資後評価額〕で22億ドルとなる。わずか数週間前の企業評価額は18億ドルだった。

今回の巨額のラウンドは前回のラウンドと時期的にほぼ重なっている。共同ファウンダーのAllonが日本でSoftBankとの契約をまとめた日にFidelityは1億ドルの投資を発表した。

Compasshsがオンライン不動産仲介に地歩を築いたのは2012年にさかのぼる。当時はUrban Compassという社名だったが、800万ドル資金を支援者から調達するこtに成功し、最大のシードラウンドだとして話題になった。もっともすべては比較の問題で、現在の状況からすると800万ドルは小銭とも見える。

Compaqssは現在アメリカの11都市で運営されている(1億ドルの資金はこの運営のためと発表された)が、共同ファウンダー、会長のOri AllonはインタビューでSoftBankから投資で目標をさらに拡大し、世界的な規模への展開をめざすと語っている。【略】

Compassがこれほど大型の投資を引き寄せる理由のいくぶんかは共同ファウンダーの経歴にある。Allonはエンジニアであり、起業家としてはスタートアップをGoogle、Twitterに売却しており、それぞれの検索ビジネスの重要な基盤となっている。共同ファウンダー、CEOのRobert Reffkinは元ゴールドマン・サックスの金融専門家で、その経歴も申し分ない。

同時にCompassのテクノロジーそのものものも投資家の強い関心をひいたはずだ。Compassは当初、ローカルビジネス情報の革新を目指していたが、ここである要素をローカルビジネスのカギとして重視した。つまりユーザーの実際のロケーションだ。このプラットフォームが提供する近隣ビジネスのデータベースはわかりやすく、事前に十分な審査を受けていてCompassのユーザーが信頼することができた。

不動産仲介にシフトしたCompassが現在ターゲットとするのは高級な物件と顧客だ。 ハイエンドの物件の取引はマージンが大きいし、不動産の購入を考えている高所得者からの着実な需要がある(Allonは「将来もハイエンドだけに絞っていくつもりはないが、当面はこの市場に集中する」とインタビューで語っている)。

家屋の購入・賃貸希望者と物件所有者を仲介するサービスとしてCompassは決して最初の会社ではない。この分野にはZillow、Trulia、Redfin、Homes.com、Rent. comなどの有力サービスを始めとしてきわめて多数の会社が存在する。しかしCompassは、たとえていうなら、多数の既存のスマートフォンンの中に誕生したiPhoneのような存在となる可能性がある。後知恵かもしれないが、iPhoneはユーザー体験を慎重にコントロールし、ユーザーをしっかり見極めることによって既存のスマートフォンが目指しながら実現できなかった高いクオリティーのサービスを実現できたのではないだろうか。

また巨額の投資はCompassの驚くべき成長に見合ったものだ。不動産業者の数―Compassはユーザー向けと不動産業者向けの二つ面でビジネスをしている―という重要な要素を2年間で5倍に増やすという結果を出している。これが手持ち物件数を飛躍的に増大させ、顧客の多様な需要に応えられるようになるという循環を生んでいる。同社は今年、1万6000件の成約(取扱高140億ドル)、売上にして3億5000万ドルを達成することが確実と見られている。

SoftBankのVision Fundaid上級投資専門家、Justin Wilsonは「「不動産というのはきわめて大きいビジネス部門でありながら、これまでテクノロジーが関与する度合いが比較的低かった。そのため非効率と断片化が著しかった。Compass従来と異なるエンド・ツー・エンドのテクノロジー・プラットフォームを構築し、多様なデータを集約し、顧客の当初の物件の検索を始めとして、顧客と不動産業者の双方を取引のあらゆる段階で支援する。保有するユニークなデータとテクノロジーによるディスラプトにより大きく成長し、Compassは数兆ドルにも上る不動産業においてユニークな地位を築いていくはずだ」と声明で述べている。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

LINEのスマートスピーカー第2弾「Clova Friends」が本日より予約開始、LINE MUSICとセットで6750円

8月の先行販売を経て、10月に正式販売を開始したLINEのスマートスピーカー「Clova WAVE」。同製品も含めスマートスピーカーといえばスタイリッシュなデザインのものが多いが、12月8日より予約販売がスタートした「Clova Friends」はちょっと違う。

LINEのスマートスピーカー第2弾となるClova Friendsの特徴は、片手で持てるコンパクトさとポップなデザインだ。LINEキャラクターのブラウンをモチーフとした「Clova Friends BROWN」、サリーをモチーフにした「Clova Friends SALLY」の2種を用意。毎日話しかけることを想定してキャラクター性を持たせている。

耳がマイクになっていることに加え、鼻やくちばしを1度押すと一時停止、長押しすると「Clova」と声をかけたことと同じ状態となるなど各パーツにちょっとした仕掛けを搭載。背面にはマイクオフや音量の調整、Bluetoothペアリング用の複数のボタンを備える。

重さは378グラムで、サイズはBROWNが72×72×170.3ミリ、SALLYが72×72×166ミリ。バッテリーも搭載し外出先でも利用可能だ。

機能面はClova WAVEと同様に音楽の再生、天気やニュースの読み上げ、LINEメッセージの送信・読み上げ機能を備えるほか、12月下旬までにLINEの無料音声通話の発信機能も搭載する。「○○さんに電話をかけて」といったように、音声のみで通話ができるようになる。着信機能についても今後対応していく予定だという。

またClova WAVEでユーザーから反響が高かった、赤外線コントローラーに対応したTVや照明の操作も今後オプションでクレードルを設置し対応していく。

Clova Friends本体の価格は8640円(税込)だが、2018年3月31日までの限定商品としてLINE MUSICを6ヶ月間利用できるチケットを付けた「Clova Friends + LINE MUSIC セット」を6750円(税込)で販売する。

12月8日の午前0時から特設サイトや楽天市場で予約販売を開始、各家電量販店でも準備予約販売を始める。届け日および店頭は12月14日からになるという。

チケットキャンプがサービスを一時停止、商標法および不正競争防止法違反の容疑

ミクシィは12月7日、子会社のフンザが運営するチケット二次流通マーケットプレイス「チケットキャンプ」内での新規出品、新規会員登録、新規購入申し込みを一時停止することを発表した。

チケットキャンプのサイト上の表示について、商標法違反および不正競争防止法違反の容疑で捜査当局による捜査を受けており、詳細については現在捜査中。操作には全面的に協力をするとしている。またミクシィでは事実の確認および原因の究明のため、外部の弁護士を交えた調査委員会の設置を決定。委員会の構成等の詳細や調査結果の公表日程は決定し次第公表するという。

フンザでは本日よりチケットキャンプにおける新規出品、新規会員登録、新規購入申し込みを一時停止するとともに、現在出品中で取引が開始していないチケットについては運営事務局が出品取り下げの手続きをする。

現在出品中のチケットで取引が進行中のものについては通常通りサービスを利用できるほか、チケキャンダンクシートとXFLAG JAMシートは購入できる。また売上金についても、振込依頼をすれば通常通り受け取り可能だという。

 

B Dash Venturesが100億円規模のICOファンド設立へ、ICOで大成功したQUOINEも参画

今年、いろいろな意味でかなりの注目を集めたキーワードは何かと聞かれると、「ICO」と答える人も多いのではないだろうか。そのICO分野でまた大きなニュースが飛び込んできた。日本のVCであるB Dash VenturesがグローバルICOファンドを設立するのだ。

B Dash Venturesは2017年10月、仮想通貨への投資事業やICOコンサルティング事業を行うことを目的に新会社「B Cryptos」を設立しており、今回発表されたICOファンドの運営は同社が行うことになる。

写真左より、B Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏、B Cryptos代表取締役の本吉浩之氏、QUOINE代表取締役の栢森加里矢氏

TechCrunch Japan読者のなかには仮想通貨まわりに詳しい人がいることは承知の上で説明しておくと、ICOとはイニシャルコインオファリングの略で、資金調達を行いたい企業が独自の仮想通貨(トークン)を発行することで資金を集めることを指す。企業が発行したトークンが仮想通貨の取引所へ上場をすれば、株式と同じように取引所経由で売買ができるようになる。また、トークンのなかには発行企業が提供するプロダクトやサービスの購入にも使えるものもある。

B CryptosのICOファンドはこれから組成していくという段階だから、どのようなLP(出資者)の顔ぶれになるのか、ファンド規模がどれくらいになるのかはまだ分からない。しかし、B Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏によれば「ファンド規模は100億円ほどになる」見込みだという。これは、米Pantera Capitalが設立した1億ドルのICOファンドに匹敵する規模だ。

B Cryptosがファンドとして利益をあげる仕組みはこうだ。同ファンドは、ICOでトークンを発行したスタートアップ企業への出資の対価として、上場前のトークンを受け取る。基本的には、トークンが取引所に上場して価格が上昇したところで売却し、利益を得る。従来のエクイティ投資でいえば、これは未公開株式への投資にあたる。第三者割当増資などでスタートアップの株式を引受け、株式市場への上場(IPO)のタイミングで株式を市場に放出することだ。

しかし、B Cryptosはそういった上場前のトークン投資だけでなく、上場後のトークンにも投資を行っていくという。その割合は「外部環境がどうなるかによって変わる」(渡辺氏)ということだが、ファンドとして比較的大きな利益を狙いやすいのは上場前のトークンを取得することには変わりはない。

ICOファンドの出資者として考えられるのは、通常のVCファンドと同じく、事業会社や機関投資家、個人投資家などだ。また、その出資者リストのなかに他のVCが含まれる可能性も大いにあるだろう。VCによっては、ファンド組成時の規約もあって暗号通貨に直接投資できないこともある。前述したPantera Capitalの場合は、そういったVCが出資者としてICOファンドに参加した例もある。

登録仮想通貨交換業者であるQUOINEがファンド運営のサポート

今回組成する予定のICOファンドでは、2017年9月に仮想通貨交換業登録(関東財務局長第00002号)を受けたQUOINE(コイン)が参画する。B Dash Venturesによれば、これによりB CryptosのICOファンドは「登録仮想通貨交換業者がサポートする日本初のグローバルICOファンド」になるという。

QUOINEはみずからもICOを成功させたことでも有名だ。QUOINE CFOの紺野勝弥氏によれば、同社は2017年11月に行った独自トークン「QASH(キャッシュ)」の売り出しにより、日本円にして約100億円を調達。ICOに参加した投資家は、世界98カ国4988人だったという。ディスカウントも含めた売り出し価格が26円だったQASHは、現在100円付近の価格をつけるまでになった。

それと、ちょっとややこしいのだけれど、QUOINEはB Dash Venturesの投資先の1つでもあり、仮想通貨取引所「QUIONEX」を運営する企業でもある。また、B Criptosの投資委員会にはQUOINEから人材が拠出されることにもなっている。つまり、投資案件によっては、QUIONEXに上場予定の企業に投資するかどうかを検討する場にQUIONEの社員がいるというケースも出てくるだろう。

それについて渡辺氏は、「(以上のようなケースの場合、)利益相反になることを防ぐため、投資委員会ではQUOINE、B Dash Venturesに加え、外部の有識者の方に入って頂き、公正で的確な投資判断を行う」としている。

そのうえで、B CryptosのICOファンドにQUOINEが参画することによるメリットとはなんだろうか。B Cryptosによれば、QUOINEが今回のICOファンドに果たす役割は以下の通りだ。

  • ICOファンドの投資委員会に人材を拠出
  • 投資案件のソーシング
  • QUOINEがもつセキュアな取引所システムの活用(例えば、ウォレット管理システムの活用による資産保全、アービトラージ取引でのシステムの活用)

まあでも、おそらくQUIONEが参画することでB Cryptosが得られる一番のメリットは、このICOファンドの信用度が高まるということではないだろうか。ICOには大きな期待が寄せられている反面、いわゆる「ICO詐欺」が現れるなど、不安視する声があることも確かだ。これから出資者を集めるフェーズに入るB Cryptosにとっては、そのような不安を払拭することが重要になってくる。

「ファンドの構想から約半年かかった」と渡辺氏が話すB CryptosのICOファンド。彼らはこれから、どのような出資者からどれだけの金額を集めるのだろうか、そしてどのような企業に投資をしていくのだろうか。

買取アプリ「CASH」が最低査定価格1000円キャンペーンの対象を変更、新規ユーザーの初回時のみに

即時買取アプリ「CASH」運営元のバンクDMM.comが70億円で買収したのは11月21日のこと。それから1週間もたたない11月27日にはメルカリが「メルカリNOW」を発表、同日にはCASHがアイテムの最低査定価格を1000円にすることを発表するなど、現在”即時買取”分野は急速に変化している。

そのCASHだが、「最低査定価格1000円キャンペーン」の内容に変更があったようだ。12月7日、CASHアプリではキャンペーン対象者を変更する旨のお知らせがあった。今後は新しく会員登録をしたユーザーの初回キャッシュのみが最低査定価格の対象となり、対象者以外についてはキャンペーンを一時的に停止するという。

国際送金サービスTransferWise創業者、Skype時代の経験を題材に破壊的イノベーションを語る

ロンドン発スタートアップ企業のTransferWiseの共同創業者で代表取締役のTaavet Hinrikus(ターヴェット・ヒンリクス)氏は、TechCrunch Tokyo 2017のGuest Session 「国際送金のヒドさに憤慨して起業―、英Fintechユニコーン創業ストーリー」で講演し、自ら関わった破壊的イノベーションについて語った。

TransferWiseは、移民のための国際送金サービスだ。銀行を使い国際送金をすると、手数料が高く日数がかかることに皆不満を持つ。この課題の解決に暗号通貨/仮想通貨が有効との議論があるが、現状では各国の法整備にはムラがあり普及の度合いも今ひとつ。TransferWiseは、既存の金融サービスの枠組みを使いながら国際送金に風穴を空けるサービスといえる(詳しくはこの記事参照)。

Skypeも最初は「オモチャだ」と笑われた

エストニア出身でSkypeの第一号社員だったHinrikus氏は「Skypeは電気通信のサーバをディスラプトする。TransferWiseも銀行業界を変える」と語る。

「2003年、エストニアの首都タリンにあるソビエト連邦時代の古いビルの一画でSkypeを作っていた」とHinrikus氏は振り返る。「優れた発明はオモチャと呼ばれて笑われる。Skypeはオモチャだ。AT&Tとは競争にならない、と言われていた」。これは、破壊的イノベーション理論の提唱者であるクリステンセンが語る通りの展開である。最初はオモチャに見えたイノベーションは市場で急速に洗練されていき、やがて既存のビジネスを打ち負かす力を持つようになる。

SkypeもTransferWiseも、移民であるHinrikus氏自身が必要としていたサービスだった。「高校時代にアメリカに留学した。国際電話料金が高すぎて、1カ月に1回しか電話をかけられなかった。今は毎日のようにSkypeで話をしている」。このような世の中の変化を作り出したいとHinrikus氏は語りかける。

「本当の問題を解決し、プロダクトを10倍良く、それを素早く」

Hinrikus氏は、講演のまとめとして次の3つのメッセージを伝えた。「第1に、マーケットの本当の問題を解決しよう。第2に、プロダクトを10倍良くしよう。第3に、それを素早くやろう」。

ここで強調したのは「10倍良い製品」というくだりだ。「クルマは馬車より10倍速い。『若干よい』ではなく、『数倍〜数十倍よい』を目指すべきだ。顧客はその10倍よい製品について話をし、噂で伝わっていく。TransferWiseも銀行送金より10倍安いと分かり顧客が広がってきた」。もちろん「素早くやる」ことも大事だ。「良い試みはすぐ模倣されてしまう。さらなる投資を迅速に行うことが重要となる」。

Hinrikus氏は「あなた自身がディスラプトされる可能性がある」と警告する。それを防ぐ方法は「(1) 欲深くならないこと、(2)カスタマーにフォーカスすること、(3)”What If”と問い続けること」だとHinrikus氏は続ける。収益の追求だけに気を取られると、カスタマーや自分達の動機を忘れてしまう。「もしコンピュータにマイクがあって簡単に電話できたらどうなるだろうか?」「金融危機の時、代替手段があればどうなっただろうか?」と常に問いを発することが、次のアクションにつながる。

締めくくりの言葉は「世界を変えたいと思うだろうか?」。Skypeで世界を変え、TransferWiseで国際送金ソリューションを立ち上げた経験者がスタートアップ関係者にエールを送る講演となった。

オンライン学習塾の「アオイゼミ」をZ会が買収——市場の拡大にらみ

写真右から、Z会 代表取締役社長 藤井孝昭氏、葵 代表取締役社長 石井貴基氏、栄光 代表取締役社長 山本博之氏

中高生向けオンライン学習塾「アオイゼミ」を運営するは12月7日、Z会グループのZ会ラーニング・テクノロジによる買収を明らかにした。Z会ラーニング・テクノロジは11月30日付で葵の全株式を取得し、完全子会社化。買収額は公開されていない。葵はZ会グループの元で継続してアオイゼミの事業を行う。

葵は2012年3月の設立。2013年9月から12月まで実施されたインキュベーションプログラム「KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)」の第5期に参加している。2014年8月にはジャフコから1.2億円を調達、2015年11月にはKDDI Open Innovation Fund、マイナビ、電通デジタル・ホールディングスなどから総額2.8億円を調達している。

代表取締役社長の石井貴基氏は、葵の創業前にはリクルートで広告営業、ソニー生命保険でも営業を経験。生保営業で低所得層から高所得層まで、家庭の生活費のアドバイスを行っていく中で、子どもの学習塾費用が高いこと、所得の低い家庭でも低価格のものが選択できない構造に疑問を感じたという。そこで、ITでより安く、より便利な学習塾のサービスを提供しようと考えた石井氏が立ち上げたのが、アオイゼミだ。

2012年6月にサービス提供を開始したアオイゼミは、現在会員数が40万人を突破。無料で見られるライブ授業に加えて、いつでも無制限で授業動画が再生でき、テキストダウンロードや講師への個別質問などが可能な「プレミアムプラン」でも、月額3500円〜5000円と一般の学習塾よりはかなり低価格で利用でき、主力の課金メニューとなっている。プレミアムプランの会員数は非公開だが、新規申込者数は昨年対比で300%以上となっているそうだ。

Z会グループは、学習塾の栄光ゼミナールをグループに取り込むなど、老舗の通信教育事業者としては積極的に買収を行ってきている。また、EdTech(教育系テクノロジー)スタートアップにも、資本業務提携などの形で投資をこれまでにいくつか行っている。

石井氏は「オンライン学習塾は黒船として、既存の学習塾などのプレイヤーからは警戒されてきた。だが最近では他社でも提携が進み、融和が始まっているのではないだろうか」と話している。今回のM&Aについては「今後、オンライン学習市場は通信教育はもとより、学習塾の領域まで広がると見ている。栄光ゼミナールも傘下に持つZ会グループで、グループを代表するようなオンライン学習サービスの提供をしていきたい」と、まずはZ会グループ内へのサービス提供を進めたい意向を表明。その上で「Z会グループの豊富な教材やノウハウを投入して、No.1オンライン学習サービスを目指す」と意欲を見せる石井氏は「アオイゼミの旗振りで新規事業の準備もスタートしている。来春ごろにはリリースを予定している」と明かした。

また、Z会代表取締役社長の藤井孝昭氏は「葵のグループ参入を心より歓迎する。アオイゼミが培ってきたオンライン学習サービスの技術・ノウハウにZ会グループが保有するコンテンツ・リソースを組み合わせることで、アオイゼミ事業の一段の強化を図るとともに、両社の力を結集することにより、新しい価値を提供したい」と述べている。

ファンと有名人のクローズドな双方向コミュニティ「fanicon」、課金機能で良質なコミュニティを形成

インフルエンサーマーケティングを手がけるTHECOOは12月7日、会員制のファンコミュニティアプリ「fanicon(ファニコン)」を正式ローンチすると発表した。

faniconはタレント、インスタグラマー、ユーチューバーなどのインフルエンサー(THECOOは彼らのことを「アイコン」と呼ぶ)が自身のファンと交流するためのコミュニティアプリだ。

有名人との接点がテレビしかなかった時代と比べ、最近ではInstagramやTwitterなどのSNSが浸透し、普段は観られない有名人の休日の過ごし方などを知ることができるようになった。友だちの写真に混じって有村架純氏の写真がInstagramに流れてくると、彼女と友だちになれたような気になってしまうのは絶対に僕だけじゃないはず。でも、そういった交流は有名人からの一方通行であることも多い。

一方のfaniconは、有料会員制を採用することで良質なコミュニティ形成を担保するとともに、ファンとアイコンとのあいだの双方向コミュニケーションを促進するために開発されたアプリだ。

faniconの使い方は次の通り。アイコンはまず、faniconをダウンロードして自身のコミュニティを作成する。このとき、コミュニティ参加にかかる月額会員料金の設定を行う。現在のところ、会員料金は500円くらいに設定されることが多いそうだ。

コミュニティを作成したあと、アイコンはアプリ内に用意された投稿機能やライブ配信機能、そしてファンとの直接メッセージ機能などを通してコミュニティを盛り上げていく。コミュニティにはファン同士が交流するグループチャット機能もあり、ファンが集まれば集まるほどコミュニティが活性化していく仕組みになっている。

THECOO代表取締役の平良真人氏によれば、faniconはこれまでに40人のアイコンと1万人の有料会員を獲得しているという。

インフルエンサーにとって新しい収入源に

アイコンは、会員料金からAppleとGoogleに支払う手数料の30%を引いた額をTHECOOと折半する。しかし、アイコンにとってのマネタイズ方法はこれだけではない。月額課金に加え、ポイント制の「スクラッチくじ」を企画することもできる。

アイコンはスクラッチくじの景品(例えば、サイン入りTシャツなど)を設定し、その排出量とスクラッチ1回ごとの必要ポイント数を設定する。そして、ファンたちはアプリ内で購入できるポイントを消費してくじに参加するという具合だ。ポイントの最低購入単位は5ポイント=120円からとなっている。

平良氏によれば、300人のファンがいるアイコンがこれを実施したところ、3日間で30万円分のスクラッチが行なわれたという事例もあるそうだ。

伝統的な芸能事務所に所属するテレビタレントなどがfaniconをどれだけ受け入れるのかはまだ分からないけれど、少なくとも、未来のはじめしゃちょーやヒカキンとなることを夢見る若者たちには新しいマネタイズ手段として受け入れられそうだ。

テスラの経験からクルマとヒトの接点となるサービスを着想、Drivemode上田北斗氏

米Drivemode共同創業者の上田北斗氏は、11月16〜17日開催のTechCrunch Tokyo2017のFireside ChatでTechCrunch Japan編集長の西村賢と対談し、「Drivemodeが見つめる近未来のクルマとヒトの関係」について語った。

Drivemodeはクルマの運転中にスマートフォンを使えるようにするサービス(関連記事)。ユーザーとの接点となるのは車載機器として考えられたUIを備えるスマートフォンアプリだ(デモ動画)。Google Mapなど普段使っているアプリを、運転中に操作することを考慮したUIで使うことができる。本田技研工業との共同研究で、クルマのハンドルに設置した操作用パッドからスマートフォンアプリを使う取り組みも進めている(デモ動画)。

「テスラはUXの積み重ねが『ガジェット』として評価された」

Drivemode共同創業者の上田氏はワシントン大学で機械工学を学んだ後、ハーバード大学でMBA(経営学修士)を取得し、2011年にテスラモーターズに入社する。在学中にインターン志望でテスラを訪問するが「MBAは要らない」と言われてしまう。「エンジニアリング専攻です。MBAは忘れてください」と食い下がり、そのときまでのテスラでは前例がなかったインターンとして働き始めた。

そんな上田氏は日本の観客のために日本語でセッションに参加してくれたのだが、実は日本滞在経験は最長3カ月。中身はアメリカ人だが日本語が喋れるのは「家では英語だと親に話を聞いてもらえない」環境だったからとのこと。

テスラでは「Model S」のローンチマネージャーを務めた。テスラが成功した理由のひとつは「クルマではなくガジェットして認識されたこと」と語る。シリコンバレーには、クルマに興味がなくガジェット好きな人が多い。タッチスクリーン付きディスプレイパネルや、ドライバーや乗客がクルマに近づくとドアハンドルが突き出す仕組みなど、ガジェットに興味がある人を引きつける細かなUXの積み重ねが評価された。UXが重要との知見は、Drivemodeに引き継がれていると見ることもできるだろう。

「テクノロジーとヒトの接点をおさえたい」

2014年、上田氏は4年働いたテスラを離れ、Drivemodeの共同創業者となる。クルマとスマートフォンの組み合わせはネガティブなイメージがある。「スマートフォン操作による不注意運転で事故が起きる。ここは誰かがなんとかしないといけない」。クルマを運転する動きの中で自然にスマートフォンを使えるUXを作る。そこがDrivemodeが目指すところだ。「一度使って便利だと分かっているテクノロジーはどうしても使ってしまう。(アメリカには)クルマのナビゲーションの方法がスマホしかない人も多い」。

上田氏はテスラ時代を振り返り、Drivemodeの構想について次のように語る。「それまでのクルマは古くなる一方だが、テスラはソフトウェアのアップデートでどんどん良くなっていく」。ここがテスラ車のユーザーにとって驚きだった部分だ。「ここで引いて考えると、アップデートで良くなるのはスマホと同じ」。クルマのパフォーマンスの評価尺度は、以前は加速や乗り心地だった。テスラ車ではそれに加えてテクノロジーとの触れあい、インターフェースの要素が強い。「今はクルマと人の関係の変化の時期。テクノロジーと運転者の接点をおさえることが大事だ。新しいスマホの使い方が出てくるなら、いち早くキャッチアップできる立場に立ちたい」。このような考え方がDrivemodeの背景にはある。

Drivemodeにはパナソニックが出資しているし、前述したように本田技研との取り組みも進めている。「日本の大企業と一緒に仕事をしていてやりづらいことは?」との質問に対しては、「『できない』前提で話が始まる。カルチャーが違う」と返した。「日本の会社はミーティングで『難しい』という言葉を多用するのでアメリカ人も「ムズカシイ」と音で覚えてしまう。意味を聞かれて”difficult”と訳したら、アメリカ人は『difficultは不可能ではない。OKだ。いける!』と受け取る。Noという意味だと説明すると驚く」。

セッションの最後、会場へのメッセージを聞かれた上田氏は次のようにコメントした。「やらないリスクを考えます。新しいことをやるか、現状維持か。やらないことで自分の中の可能性が下がる場合が多い。失敗する可能性が高いことをやらない理由にはしない。やればゴールに近づけるなら、やる」。

「飲食店のネット予約を当たり前に」VESPERが1.5億円を調達、オートメーションで業界革新へ

飲食店向けのオンライン予約管理システム「TableSolution(テーブルソリューション)」を提供するVESPERは12月6日、SMBCベンチャーキャピタル株式会社を引受先とする第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

なおVESPERは2015年にもジャフコから2億円を調達しているほか、元ソニー代表取締役社長の出井伸之氏やメルカリ創業者の山田進太郎氏も株主となっている。

ホテルチェーンや星付きレストランなど2000店舗に導入

TableSolutionは飲食店のオンライン予約や顧客管理をサポートするSaaS型のシステムだ。メインとなる予約管理機能に加えて電話自動応答やカード決済、POSシステム連携といった各種機能を備え、14ヶ国語に対応。基本料金は席数に応じて月額1万2000円、1万5000円、2万円のいずれかとなる。

2013年7月のリリース以降顧客を増やし、現在は約2000店舗が導入。大手グローバルホテルチェーンや星付きのレストランなども活用する。ネット予約システムを使ったことがある飲食店が、さらなる機能を求めてTableSolutionに行き着くケースも多く、導入店舗の65%が他システムからの乗り換えだ。

また現時点で海外10カ国に展開。拠点を持つ韓国ではコンラッドやグランド・ハイアットなど有名ラグジュアリーホテルの店舗にも導入実績がある。VESPER代表取締役の谷口優氏によると「海外のトラックレコードが評価されたこと」が今回の資金調達にもつながったという。

前年対比で予約件数が約3倍、無断キャンセル防止策の利用進む

以前取材した際に、谷口氏は指標として「予約件数」を重要視しているという話をしていた。実際にどれだけ活用してもらえているかを測るためだが、この数値が2017年10月時点では前年対比で約3倍に増加しているという。

成長の要因のひとつは、飲食業界の課題でもある無断キャンセルを減らすべく2017年6月にリリースした、カード決済機能「キャンセルプロテクション」だ。この機能では飲食店がネット予約成立時に事前カード決済、ないしクレジットカード利用枠に応じた一部仮押さえ(与信)できる。

あらかじめ金額が決まっているイベントなどでは事前決済をし、キャンセルの場合にはポリシーに基づいてキャンセル料を相殺するプラン(事前決済型)。予約時にカード情報を入力してもらうことで、直前キャンセルには与信枠を上限にキャンセル料を請求するプラン(与信型)の2つを用意。TableSolution導入店舗が対象で、追加の導入費や月額固定費用がかからないこともあり引き合いが強く、すでに約300店舗で利用されている。

勝手ながらレストランの事前決済には抵抗がある人も多いイメージだったが、谷口氏によるとおもしろい結果がいくつかでているそう。ある導入店舗では現地決済プランと、それよりも1000円安い事前決済プランを2つ用意した。するとほとんどの利用者が事前決済を選んだため、途中から事前決済のみに変えたという。

「宿泊や航空券、映画などネット上で予約をして事前決済することが、少しずつ当たり前になってきている。最初は事前決済を嫌がる人も多いかと思ったが、利用者の心理的な負担も変わってきているように感じる」(谷口氏)

新宿の人気レストランでは他システムからTableSolutionに切り替え、ネット予約の全プランを与信型プランにしたところ約64%だったキャンセル率が0.2%まで低下。その一方で来店数は増えた。

「以前は『とりあえず予約しておこう』という人が多くキャンセル率が高かったことに加え、本当に行きたい人が予約できなくなっていたのではないかと考えている。結果として本当に行きたい人が予約できるようになったため、来店数の増加につながった」(谷口氏)

キャンセルプロテクションを活用する寿司屋では、当日キャンセルを申し出た顧客にポリシーに沿ってキャンセルフィーが発生する旨をつげたところ、なんと7~8割がやっぱり行くと答えたそう。自分自身もやってしまったことがあるため胸が痛いけれど、飲食店の予約や当日キャンセルがどれほど気軽に行われているかがわかる。

谷口氏によるとこの傾向は海外の方がさらに顕著らしく、キャンセルプロテクションは海外の飲食店からの関心も高いという。

ネット予約を当たり前に、オートメーションも当たり前に

VESPERでは今回の資金調達を機に、今後はさらに海外展開を加速させる計画だ。まずは東南アジアのラグジュアリーホテルを中心に、2020年をめどに海外2000店舗、国内1万2000店舗へTableSolutionの導入を目指す。

またより広い店舗が使えるように簡易版のリリースを検討するほか、2018年は分析システムの基盤を強化していくことを大きなテーマとして掲げる。

「上位概念にあるのは、オートメーション。適切なデータを適切なタイミングで顧客に届けることで、広告予算の配分や顧客管理を最適化するサポートをしていきたい。AIの導入なども含めて基盤を強化する」(谷口氏)

VESPER代表取締役の谷口優氏

TableSolutionを立ち上げた当初から根本にあるのは、ネット予約を当たり前にしたいということだ。飲食業界でも人材が不足し人力だけで対応するのは難しくなってきているし、今後さらに国内の人口減少が進めば飲食店は外国人の顧客を獲得していく必要もある。そうなれば複数言語に対応し、24時間いつでも予約を受け付けられるネット予約システムはニーズがありそうだ。

「飲食店の人とも『1回も予約の電話がならないけど、今までと同じ数のお客さんが来るなら楽だよね』という話を毎回している。理想は100%ネット予約になること。今後さらにネット予約を当たり前に、そしてオートメーションを当たり前にしていきたい」(谷口氏)

「リモートワークを当たり前にする」、オンライン秘書サービスなど開発するキャスターが3億円調達

オンライン秘書サービス「CasterBiz(キャスタービズ)」などを展開するキャスターは12月5日、WiLを引受先とした第三者割当増資を実施し、総額3億円の資金調達を完了したと発表した。また、同社は年内にも、既存株主を引受先とする第三者割当増資を追加で実施する予定だ。

「リモートワークを当たり前にする」というミッションを掲げるキャスターは2014年9月創業のスタートアップだ。同社はオンラインで経理、人事、秘書代行などを行うCasterBizを2014年12月にリリース。その後にも、リモートワーカーをオンラインで派遣する「在宅派遣」やウェブ制作や開発受託に特化した「RemoteStyle」など、新しい働き方を軸にした新サービスを次々に展開してきた。

そして、2017年9月には“新しい働き方”特化の求人サイト「REWORK」をリリース。同サイトには現在までに60件の求人が掲載されている。

キャスターが提供するサービス群

少子高齢化が進む日本では、労働人口は年々減っていく一方だ。そんななか、安倍政権は「一億総活躍社会」の実現に向けて、さまざま働き方改革を推進している。リモートワークや在宅勤務といった新しい働き方の推進もその1つだ。

でも、一部の先進的な企業を除いて、大部分の企業ではそのような新しい働き方が十分に浸透していない印象もある。その理由として、キャスター代表取締役の中川祥太氏は次のように語る。

「リモートという分散型労働を行う際の基本的な運用ルールとして基礎となるものが存在していないからだと認識しています。しかし、一旦ベーシックなルールさえ一般化して普及してしまえば、必然的に導入が進むと思う。弊社では運用ルールが整備された各サービス群の中で、企業側の運用ルールなどのハードルを下げ、購入しやすい形態に直す事で、企業側の導入を促進していく考えだ」(中川氏)。

キャスターは今回調達した資金を利用して、更なる事業拡大に向けた人材採用の加速と、徹底した効率化を図るシステム開発を行うとしている。新しい働き方を軸としてさまざまな分野に対応するサービスを横展開してきた同社だが、今後の戦略についても中川氏は「基本的には働いて貰う側、働く側の両面ともにニーズが多様な状態。今後も横展開が主軸の戦略となる」と語る。

自分株式の取引サービス「VALU」が千葉功太郎氏より数千万円調達、投機でない支援のためのSNSを目指す

模擬株式で自分の価値を取引できる「VALU」は本日、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とする第三者割当増資を実施した。金額は非公開だが、VALUの広報担当者によると数千万円規模という。

VALUは2017年5月31日にベータ版をローンチ。ローンチ当初、自分の価値が「時価総額」として数値化され、自身が発行する模擬株式「VA」を取引できるVALUは大きな反響を呼んだ。YouTuberやブロガーなど、多数のインフルエンサーがVALUに参加したが、全てが順風満帆でもなかった。

2017年8月、YouTuberのヒカル氏、ラファエル氏、いっくん氏、3人の株式を保有する井川氏が一斉に株式の大量売却を行い、彼らの株式を保有していたユーザーが損失を被る騒動が起きた。VALUは売買注文をすべてキャンセルし、一連の取引で発生した手数料収入は寄付するという措置を講じたことで騒動は収束したものの、ユーザーが安心してサービスを利用するためのルールの整備が追いついていないという印象を与えた。

この騒動後、VALUでは価格操縦行為の規制と利用者保護のためのルール作りを進めてきたと広報担当者は説明する。中でも大きな変更は、売却できるVA数を制限したことだ。騒動前までユーザーは自分のVAを制限なく売買できる状況だったが、現在は1回に売買できるVA数が発行発行数全体の10%未満までと制限をかけている。

投機目的ではなく、ユーザー間のコミュニケーションを促進するため、流動性が高くならないよう運営しているという。「騒動前は、売買を楽しむ場でしたが、今はSNSを楽しむ場、そこに支援したい方がいたら売買が発生するという投機ではないコミュニケーションができてきています」と担当者は説明する。

その効果があってか、現在、ユーザー数は8万人を超えたそうだ。VALUはファンや支援者を募ることができるサービスであるが、最近ではSNSとしても機能し、一緒に作品を作ったり、個展を開いたりする仲間が見つかる場にもなっていると担当者は話す。

今回の資金調達により、サービスのアプリ開発とグローバル展開を進める予定だ。まずはアメリカと中国でローンチし、その後欧州などの地域にも広げる。VALUはビットコインで取引する性質上、暗号通貨の法整備が進んでいる国から順次サービスを提供していく考えだという。

メルカリ、金融関連の新規事業に進出へ——代表取締役に元グリーCFOの青柳直樹氏が就任

写真左:メルカリ取締役社長兼COO 小泉文明氏、右:青柳直樹氏

12月4日、メルカリは金融関連の新規事業を行うメルカリの100%子会社・メルペイの代表取締役に、元グリー取締役の青柳直樹氏が11月28日付で就任したことを発表した。青柳氏はメルカリの執行役員も兼務する。

青柳氏はドイツ証券を経て、2006年にグリーに入社。グリーではCFOとしてKDDIとの資本提携や2008年の東証マザーズ上場、2010年の東証1部上場などを主導した。2011年からはGREE International CEOに就任し、海外事業の拡大にも尽力。事業統括本部長などを歴任し、2016年9月に同社取締役執行役員常務を退任している。退任後はベンチャー企業への投資・支援に取り組むエンジェル投資家としても活動していた。11月14日には人事労務クラウドのSmartHRに株主として参画すると発表があったばかりだ。

メルペイの具体的な事業内容については明らかになっていないが、青柳氏のほかにも、元WebPayのCTOとしてLINEグループに参画し、LINE Pay事業を経験した曾川景介氏や、同じくメルカリの100%子会社としてブランド品に特化したブランド査定付きフリマアプリ「メルカリ メゾンズ」などを提供するソウゾウ代表取締役の松本龍祐氏、元サイバーエージェント執行役員でAbemaTVなどを手がけた後、2017年6月よりメルカリに参画した横田淳氏らが役員に就く(松本氏、横田氏は7月に設立されたメルカリファンドのプロジェクトにも関わっている)。

メルカリ広報によると、サービスは来年以降の提供になる予定。その詳細については明らかにしていないが、曾川氏を中心にして「ブロックチェーン関連の開発も進めたい」(同社)とも話している。なお、メルカリは2016年にイギリス法人の子会社として同名のMERPAYという会社を設立している。こちらはイギリスでの事業展開のための会社であり、今回発表されたメルペイとは現時点で直接的な関係はないという。

ウェブ接客ツールに新構想、サイト間やO2Oでの顧客体験を可視化する「KARTE CX CONNECT」発表

ウェブ接客ツール「KARTE」を提供するプレイドは12月4日、KARTEをベースに、サイト間や実店舗などで分断されていた顧客の行動を横断的に可視化して、最適な顧客体験(Customer eXperience:CX)の設計・展開を可能にする「KARTE CX CONNECT」の提供開始を発表した。

KARTEは、サイト来訪者の特徴や行動をリアルタイムに解析して可視化し、ポップアップでの提案やチャット、SNSメッセージなどで個々の顧客に合わせたコミュニケーションを設計・提供することができる、ウェブ接客のためのプラットフォーム。2015年3月にサービスを開始し、2年後の2017年2月末時点で導入社数が1430社、年間のEC分野での解析売上金額は5000億円を超えているという。

あくまでサイト来訪者に対する接客に閉じていたKARTE。だが今回発表したKARTE CX CONNECTでは、KARTEを導入するメディアと広告主サイト、ブランドサイトと購入サイト、サイトと実店舗など、ドメイン間やオンライン・オフラインで分断されていた顧客の体験を統合して可視化。サイト(ドメイン)やオンライン・オフラインをまたいで、個々の顧客に合わせたコミュニケーションを設計することを目指すとしている。エンジニアによる開発や、マーケティングツール間の複雑な連携は不要で、KARTEのみで顧客の可視化と、それに合わせたアクション(接客)が可能だ。例えるならば、これまでプライベートDMPのように、自社サイトに閉じて、顧客の行動解析や接客を行っていたKARTEだが、このKARTE CX CONNECTで連携すれば、同じ顧客が連携するサイト間でどういった行動をしたか、またそれに対して接客を行うか、ということが分かるようになる。

例えば不動産サイトの場合、不動産ポータルサイトと仲介サイトやブランド・販売サイト、顧客とのタッチポイントとなるショールームのそれぞれにKARTE CX CONNECTを導入することで、マンションの購入を検討する顧客の行動の流れを一気通貫で把握することができる。

最終的にはオフラインで購入が行われることの多い、住宅や金融サービスなどでも、実店舗をつなげた営業支援が可能。オンラインから送客した顧客に対して、実店舗でも興味や関心に合わせた商談やコミュニケーションが実現できるという。

KARTE CX CONNECTは、メディアサイトではAll Aboutでの採用が同日発表されたほか、大手銀行、生命保険、保険相談サービス、住宅仲介サービスなどでの導入が決定しているそうだ。

プレイド代表取締役の倉橋健太氏は、KARTE CX CONNECTの提供により「KARTE=ウェブ接客=ポップアップツールではなく、KARTE=CXM(カスタマー・エクスペリエンス・マネジメント)へと進化していく布石になると考えている」と述べている。