シリコンバレーのガレージで起業、米Drivemode共同創業者に聞くクルマとヒトの間にあるべきもの

もう来週の木金、11月16日、17日に開催が迫ったテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の登壇者をお知らせしたい。2014年にシリコンバレーのガレージで創業したクルマ関連スタートアップDrivemodeの共同創業者の上田北斗氏だ。

Drivemodeは車内でスマホを使うためのUIを開発している。「車内でスマホを使う」というと、危険だし止めるべきと考える人が多いだろう。それはその通り。運転中のスマホ操作による事故は日本でも米国でも問題となっている。

Drivemodeが挑戦しているのは、以下の動画にあるように、いかにドライバーの認知的負荷を下げて運転しながらスマホアプリが使えるかを徹底して追求すること。Google Playから入手可能なこのAndroidアプリは、車内での利用に最も人気のあるアプリの1つだ。すでに100万ダウンロードを超え、アクティブな利用者は180カ国に広がっている。アプリは、ドライバーの邪魔にならないように、スマートフォンのさまざまな機能、例えばナビゲーション、メッセージング、通話などを声や簡単なジェスチャーでアクセスできるようにデザインされている。

Drivemodeの上田氏は、既存の大手企業が挑戦できない領域だからこそ、スタートアップ企業がやるべきだし、勝ち目があるのだとぼくに話してくれた。現実問題としてスマホのながら運転は法で禁じようが、良いスローガンを考えようが、なくならない。かといって大手企業がこの課題に取り組むことは難しい。企業イメージや一般社会からの反発が必至だからだ。

スタートアップ企業としてDrivemodeは2017年3月にシリーズAラウンドで650万ドル(約7.4億円)の資金調達を行っている。このとき、車載機器サプライヤーのパナソニックが戦略的投資家としてラウンドをリードしているほか、Innovative Venture Fund Investment、みやこキャピタルに加えて保険会社の三井住友海上(VC子会社経由)も投資家の顔ぶれに含まれている。

Drivemodeの共同創業者の上田北斗氏

上田氏はロサンゼルス生まれの日系アメリカ人。日本のコンテンツを見て育ったそうで、少し話をしただけだと日本人と信じて疑わない感じだ。ワシントン大学で機械工学を学び、ハーバード・ビジネス・スクールでMBAを取得。Drivemode創業前の2011年からはテスラ・モーターズでModel Sセダンのローンチ・マネージャーとして活躍していた経歴をもつ。シリコンバレーのCarTech動向には断然明るい人物だし、イーロン・マスクのそばで仕事をしていたことから、イベントでは「マスク伝説」もちょっとご披露いただけそうだ。

ぼくが聞いたなかで感銘を受けたのは、前にせり出すテスラのドアハンドル機構の話。工学的に実装ハードルが高く、現場のエンジニアが実現コストに対して提供価値が見合わないと匙を投げたくなっていたとき、こうしたハンドルこそがドライバー(ヒト)とクルマのユーザーインターフェイスで、ここは一切妥協してはいけないのだと言い張ったという話だ。

なんだ、そんなことかというヒトもいるかもしれない。もしかしたらDrivemodeが取り組む領域も「なんだUIか」というヒトもいるかもしれない。でも、「そんなことか」と鼻で笑う態度こそ、テレビの本分は画質なのだとハードウェアばかりにこだわって、ソフトウェアやサービス、UXを軽視した日本のテレビ産業と業界、あるいはケータイ業界の失敗の根底にある態度だったのではないだろうか。クルマはいま、複雑で高度なすり合わせを必要とし、日本企業群が得意だったアナログなマニュファクチャリングから、デジタル化され、モジュール化され、イノベーションや要素技術を採り入れて統合するソフトウェア産業に近いものに生まれ変わろうとしているようにぼくには思えてならない。

ヒトとクルマの間にあるべきもの、あるいは今後車内空間にあるべきものを考え続け、作り続けているDrivemodeの上田氏。スタートアップと大手企業、日本と米国、テクノロジーとビジネスと多面的にクルマの未来を見つめる上田氏の話をぜひTechCrunch Tokyoに聞きに来ていただければと思う。チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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TC Tokyo 2017、スタートアップ90社が集うデモブースの熱気を感じてみよう

これまでにもお伝えしてきたように、僕たちTechCrunch Japanは年に1度のスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2017」を11月16日、17日の2日間で開催する。

スタートアップバトルや海外・国内著名スピーカーのセッションなど、見どころ満載のイベントになっている。中でも、セッションと合わせて皆さんにぜひ足を運んでもらいたいのがスタートアップによるデモブースだ。去年今年のスタートアップバトルのファイナリストたち、編集部が選んだ注目スタートアップ、これから羽ばたいていく新進気鋭のスタートアップなど合計で90社近くのスタートアップが集まり、彼らのプロダクトやサービスを披露する場となる。

僕たちは記事という形でスタートアップの“今”を伝えているけれど、その主人公であるスタートアップたちとリアルな場所で直接触れ合えるチャンスだ。実際のプロダクトを手に取ったり、彼らのビジネスモデルについて理解を深めることで、参加者のみなさんにとっても学びの場になることを期待している。ユーザー目線でみたフィードバックも大歓迎だ。

もう少しこのスタートアップ・デモブースのイメージを掴んでもらうために、当日登場するスタートアップを1つ紹介しよう。2016年5月に約20億円を調達し、2017年4月には新型モデルの「Model C」を発表したパーソナルモビリティのWHILLだ。

Model Cは、従来モデルに比べて55%の軽量化と大幅な価格ダウンを実現した20〜40万円のパーソナルモビリティだ。新型モデルの発表時に行った取材で僕はこのModel Cに乗せてもらい、その乗り心地のよさと機動性に感動したことを覚えている。当日のデモブースではその新型モデルに試乗することができる。

スタートアップ・デモブースで皆さんが1つだけ確実に得られるものがある。会場に溢れかえる熱気だ。自分たちが考えた新しいアイデアを知ってほしい、参加者の反応から何かを吸収したいと思う起業家たちの目は真剣そのものだ。それをぜひ、皆さん自身で体感してほしい。

チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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AmazonがAlexaとそのEchoデバイスを日本で発売、検索以外はすべて日本語対応

Amazonが今日、同社の音声スマートアシスタントシステムAlexaと、その自社製実装デバイスEcho, Echo Plus, Echo Dotの、日本における提供を開始した

Alexaシステムの日本ローンチとは、日本語をサポートするAlexa Skills(Alexaのスキル)をデベロッパーが開発できることを意味する。また上記のAmazon自社製デバイス以外に、デベロッパーが独自の日本語対応Alexaデバイスやアプリケーション、サービスなどを開発し消費者に提供できる。Amazonによると、Alexaの音声検索も、近く日本語をサポートする。

Echoデバイスの実際の発売は、来週からである。今回の日本語対応は、先週のインド進出に続く、同社ハードウェアビジネスのアジア展開の一環だ。

日本では日本ローカルのRakutenが強いので、eコマースの分野でAmazonはアメリカのように日本市場を大きく支配していない。Rakutenは金融サービスなどそのほかの分野でも日本でのプレゼンスが大きいが、しかしAmazonも負けてはいない。たとえばAmazonのeブックは2010年から日本でも売られており、当日配達を含むPrimeサービスは、日本でも完全な姿で提供されている。

今回の、Alexaとその自社製デバイスの提供により、Amazonの日本でのプレゼンスは増強されると思われるが、それでRakutenを抜くことはありえない。しかしいずれにしても日本は世界で三番目に大きな市場だから、そのパイの小さな切れ端ですら、その将来的可能性は決して軽視できない。

Amazonは、世界のそのほかの市場も無視してはいない。昨日は、世界の100の市場で発売する‘ベーシックエディションの’Fire TV Stickを発表したし、また昨年はPrime Videoサービスの全世界提供を開始した。まだAlexaが世界展開していないから、その新型のFire TV StickをEcho等から操作することはできないが、まずアジアやアフリカ等でのAmazonのプレゼンスを深く浸透させてから、そのあと、Alexaとそのデバイスを持ち込む、という戦略なのだろう。

日本オリジナル記事

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

今年のTechCrunch Tokyoスタートアップバトル登壇企業は、この20社だ!

いよいよ来週の木曜日(16日)、金曜日(17日)に開催が迫ったスタートアップの祭典「TechCrunch Tokyo 2017」だが、目玉企画であるスタートアップのピッチコンテスト、「TechCrunch Tokyo 2017スタートアップバトル」の登壇企業20社が決定したのでお知らせしたい。バトルで応募企業100社以上のなかから書類審査に通過したのは次の20社だ!

株式会社東京ロケット
建設業における職人の労働環境をITの力で解決する「助太刀くん」を運営。職人が職種と居住地を入力すれば条件にあった現場情報が届くほか、勤怠管理やペイメントサービスを提供する。

ユアマイスター株式会社
ハウスクリーニングや修理などのサービス業者とカスタマーをつなげるサービスのマーケットプレイス「あなたのマイスター」を運営。

ディライテッド株式会社
内線電話を使わないクラウド型受付システム「RECEPTIONIST」を運営。iPadとメッセージングサービスなどを連携することで、内線での取次をなくすシステムを開発。

ecbo株式会社
「荷物を預けたい人」と「荷物を預かる空きスペースを提供する店舗」とをつなぐ荷物預かりシェアリングサービス「ecbo cloak」を運営。

株式会社justInCase
テクノロジーで保険の無駄を省くInsurTech。必要な時に必要なだけ加入できる保険サービス「justInCase」にて、新しい保険のかたちを提案。

株式会社ペイミー
即日給与前払いサービス「Payme」を運営。今までの給与の仕組みを変え、働き方改革の実現を目指しており、飲食・コールセンター・家事代行運営企業様などにて導入実績がある。

株式会社タレントクラウド
タレントプール採用管理システムTalentCloudをもとに、企業と個人がフォローで繋がる「いつでも採用」をコンセプトにした採用サービスを開発中。

株式会社scouty
AIヘッドハンティングサービス。技術系質問投稿サイト、イベント登録サイト、SNSなどから優れた人材の情報を自動的に収集し、最適なタイミングでヘッドハンティングができる。

カバー株式会社
ARやVRを活用し、キャラクターのライブ配信が視聴できるスマートフォンアプリ「HoloLive」を展開。

株式会社トラス
建材をメーカー横断で比較検討できる、建築設計者施工者向けクラウドサービス「truss(トラス)」を運営。建材メーカー各社の製品を横断して、法規の準拠や性能、価格やデザインなどを元に建材選択ができる。

株式会社モスキートーン
OKRやMBOなど様々な手法の目標設定から評価管理をクラウド化で一元化し、企業の目標や評価の管理をクラウド型のソフトウェアで効率化・データ化を促進するサービス「HRBrain」を運営。

株式会社スクルー
子供向けの習い事を月額定額制で提供するマーケットプレイス「スクルー」を運営。スポーツ、音楽、武道、芸術、プログラミングなど30種以上の習い事を体験することができる。

アンター株式会社
医師がわからないときに質問するとわかる医師が回答してくれる、実名制の医師同士のQ&Aサイト「AntaaQA」を運営。現在600名を超える医師が参加。

FunLife株式会社
ミラーとAR技術とモーションセンシング技術を用いた、スポーツトレーニングプラットフォーム「ARC Mirror」を開発。鏡にコーチの映像や3Dモーションデータを投影したトレーニングを実現。

LifeSupportLab株式会社
不要になったスマートフォンをアプリで撮影するだけで買取可能なノールック買取アプリ「あいりぺBox」を開発中。端末のデータを取り出して写真や動画の閲覧可能な機能も準備する。

株式会社空
ホテル経営者向けに無料の経営分析ツール「ホテル番付」を開発。すでに運営中のホテル経営者向け料金設定サービス「MagicPrice」と合わせて、業界の価格最適化を進める。

CONCORE’S株式会社
写真や図面など、建築・土木の生産過程で必要な情報を簡単に作成・共有・活用できるサービス「Photoruction(フォトラクション)」を運営。テクノロジーで建設業の進化を目指す。

Libtown株式会社
個人間のモノ置きのシェアサービス「monooQ」を運営。使っていない部屋や、押入れ、余った倉庫などをトランクルームとして貸し出し報酬を得ることができる。

株式会社Voicy
パソコンやスマートフォンのアプリ向けの音声放送プラットフォーム「Voicy」を提供。現在は約25の新聞や雑誌の情報を音声で流しており、AIスピーカーとの連携なども進める。

DVERSE Inc.
3D CADデータをVR空間に実寸で体験し、アイデアやイメージを共有してコミュニケーションできるソフトウェア「SYMMETRY」を開発。特に建築・土木・デザイン・教育分野で活躍。

1000人以上が見守る日本最大のスタートアップコンテスト

上記20社は初日16日の午前と午後で、それぞれ2ブロック、計4ブロックに分かれて3分間のプレゼンを行う。今年もVCを中心とした審査員にご登壇いただき、その場で質疑も行う。2017年のテックビジネス、そしてネットがリアルに染み出したようなバーチカルビジネスの最前線に取り組む起業家たちと、それを目利きする投資家のやり取りは、それだけでトレンドやビジネスの勉強になる絶好の機会。ぜひ登壇企業の応援をしている仲間だけでなく、今後起業することや、スタートアップへのジョインを考えている人、大手企業で新規事業を検討している人などに見に来てもらえればと思う。

参加チケットはイベント前日まで継続して販売している。特にスタートアップチケットは大幅割引の1万5000円のままなので、ぜひこの機会に検討していただければと思う。

TechCrunch Tokyoは今年で7年目。このスタートアップバトルの場でプロダクトをローンチして、その後にエグジットした起業家も増えている。過去の登壇企業の累計調達額は300億円を超えていて、スタートアップによるイノベーションは今後も勢いと重要性を増していくことだろうと思う。

バトル会場はイベント会場としてはかなり大きい。座席数は800〜900しかないのだけど、例年立ち見が出るので1000人以上が見守るという日本最大のスタートアップピッチコンテストになっている。申し込みベースだけでも、新聞・雑誌・テレビ・ネットメディアの30社以上から取材依頼を頂いている。

スタートアップバトルの審査員は、以下の方々にお願いしている。いずれも経験豊富な投資家、起業家、キープレイヤーの企業人たちだ。

ファーストラウンド審査員
野口 功一氏(PwCコンサルティング合同会社 Global Innovation Factory パートナー職)
丸山聡氏(ベンチャーユナイテッド株式会社 ベンチャーキャピタリスト)
宮田拓弥氏(Scrum Ventures 創業者/ジェネラルパートナー)
宮川正聡氏(JETROサンフランシスコ事務所)
山岸広太郎氏(株式会社慶應イノベーション・イニシアティブ 代表取締役社長)
浜宮真輔氏(日本アイ・ビー・エム株式会社 IBM BlueHub Incubation & Marketing BlueHub担当)
佐俣 アンリ氏(ANRI General Partner)
堤達生氏(グリーベンチャーズ株式会社 General Partner)
河野 純一郎氏(伊藤忠テクノロジーベンチャーズ株式会社 パートナー)
堀新一郎氏(YJキャピタル株式会社 代表取締役)
安納順一氏(日本マイクロソフト株式会社 コマーシャルソフトウェアエンジニアリング テクニカル エバンジェリズム マネージャー)
小笠原治氏(さくらインターネット株式会社フェロー / 株式会社ABBALab代表取締役)
畑浩史氏(アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 プリンシパル 事業開発マネージャー)
寺田輝之氏(エン・ジャパン株式会社 執行役員 デジタルプロダクト開発本部長)
松本真尚氏(WiL,inc Co-founder)
五嶋一人氏(株式会社 iSGSインベストメントワークス 代表取締役 代表パートナー)

ファイナルラウンド審査員
赤坂優氏(株式会社エウレカ 創業者)
川田尚吾氏(株式会社ディー・エヌ・エー 顧問)
松本大(マネックスグループ株式会社 代表執行役社長CEO)
千葉功太郎氏(投資家)
西村賢(TechCrunch Japan編集長)

 

チケットは絶賛販売中だ。5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる団体割引も用意している。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。

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クルマの未来を語る―、TechCrunch Tokyo関連イベントを11月25日(土)にお台場でやるぞ!

11月16日、17日に渋谷・ヒカリエで開催するテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」に関連して、CarTechをテーマにしたトーク・イベント&試乗会を11月25日土曜日の午後に、東京・台場で開催することになったのでお知らせしたい。

開催地は、お台場にある「BMW GROUP Tokyo Bay」というベイフロントの以下のような施設。概要は以下の通りだ。

イベント名TechCrunch Tokyo 2017 x CarTech @BMW Group Tokyo Bay 〜自動運転と都市のモビリティーを考える
参加費:無料(登録は必須です)
開催日時:11月25日(土) 12:00〜18:00(一部と二部があります。基調講演は一部のみ)
開催場所:東京・台場「BMW GROUP Tokyo Bay」(地図
当日のスケジュール:
12:00 受付開始
13:10〜 基調講演「BMWが考えるVisionary Mobility」(発表言語は英語で通訳が入ります)
講演者
ビー・エム・ダブリュー株式会社 代表取締役社長 ペーター・クロンシュナーブル氏

13:50〜14:50 第一部パネルディスカッション「自動運転と都市のモビリティーを考える」(日本語)
登壇者
米Drivemode共同創業者 上田北斗氏
ティアフォー取締役 二宮芳樹氏
ビー・エム・ダブリュー株式会社テクノロジーオフィス・ジャパン研究員/テクノロジースカウト 山下祐作氏
モデレーター:TechCrunch Japan編集長 西村賢

15:40〜16:40 第二部パネルディスカッション「自動運転と都市のモビリティーを考える」(日本語)
(登壇者、内容とも一部に同じ)

主催:Oath Japan株式会社/TechCrunch Japan編集部
協賛:ビー・エム・ダブリュー株式会社

 

今回のテーマはCarTechということで、コネクテッド、自動運転、EV(サステナブル)、シェアードなどをキーワードとして、クルマの未来についてパネルディスカッションを行う予定だ。まず基調講演としてBMW Japan代表のペーター・クロンシュナーブル氏にお話いただき、続いてスタートアップ企業の登壇者2名とBMW Japanの研究員、山下祐作氏を交えて議論を深める。なお、今回のイベントは二部制で、お時間の都合の良いほうに来ていただければと思う。基調講演があるのは一部のみとなっている。

今回お招きしているスタートアップ関係者は、米国シリコンバレーで2014年に創業したDrivemode共同創業者の上田北斗氏と、名古屋大学発ベンチャーのティアフォー取締役の二宮芳樹氏だ。

Drivemode共同創業者の上田北斗氏

Drivemodeは車内でスマホを使うためのUIを開発している。「車内でスマホを使う」というと、危険だし止めるべきと考える人が多いだろう。それはその通り。運転中のスマホ操作による事故は日本でも米国でも問題となっている。ただ、Drivemodeが挑戦しているのは、いかにドライバーの認知的負荷を下げて運転しながらスマホアプリが使えるかを徹底して追求すること。Drivemodeの上田氏は、既存の大手企業が挑戦できない領域だからこそ、スタートアップ企業がやるべきだし、勝ち目があるのだと語る。上田氏は米国生まれの日系アメリカ人で、Drivemode創業前にはテスラ・モーターズでModel Sセダンのローンチ時にプロダクト・ローンチ・マネージャーを務めるなど、シリコンバレーのCarTech動向には断然明るい人物だ。イーロン・マスクのそばで仕事をしていたことから、イベントでは「マスク伝説」もちょっとご披露いただけそうだ。

ティアフォー取締役 二宮芳樹氏

名古屋大学発ベンチャーのティアフォーは、オープンソースの自動運転ソフトウェアを開発している。クルマのメーカーや種類に依存しない汎用のソフトウェアを作っていて、一般的なLidarとカメラを組み合わせることで自動運転の実験などがすぐに開始できるそうだ。クルマである必要すらなく、チューニングすればゴルフカートなどでも利用できるというから、商業施設などバーチカル市場での利用には適しているかもしれない。ただ、オープンソースといってもチューニング部分が簡単ではないため、ここでマネタイズするビジネスモデルを考えているそう。愛知県は2017年6月に自動走行実証推進事業を全国に先駆けて行うと発表しているが、この裏方を担っているのがティアフォーだ。ティアフォーは3Dマップの作成や精緻な点群データの作成も行っていて、センチメートルの単位で車両を制御できるのだという。ご登壇いただく二宮氏は、豊田中央研究所で30年におよぶ自動運転・クルマの知能化の技術に従事した後、2014年からは名古屋大学特任教授を務めながら、ティアフォーの創業に参加している。

BMWテクノロジーオフィスジャパン先行研究員 山下祐作氏

BMWテクノロジーオフィスジャパン先行研究員の山下祐作氏は米パーデュー大学で航空宇宙工学科卒で、国内自動車メーカーで電動車両や航空機、ロボットの研究を経てBMWグループに入社。自動運転やコネクテッドドライブ関連、HMIやインテリアなど担当するほかスタートアップ・テクノロジースカウトを担当業務としている人物だ。BMWというとテクノロジーというよりも「高級外車」というイメージを持つ読者も多いかもしれないが、実は今回のイベントで掲げたテーマのコネクテッド、自動運転、EV(サステナブル)などはすべてBMWが考えるキーワード。どういった取り組みや研究があるのか、その方向性をお話いただければと考えている。

そうそう、重要なことを。

当日、基調講演に続くパネルディスカッションには一部と二部がある。それぞれ基本的には同じ登壇者で同じテーマを論じる。当日は土曜日ということもあって、皆さんのご都合の良いほうに参加していただければと考えている。参加は無料だが、イベント参加登録サイトから事前登録していただければと思う。なお、イベント当日は混雑が予想されるため、今回のイベントに限ってはクルマではなく公共交通機関でのご来場をお願いできれば幸いだ。

上の写真でご想像いただけると思うが、今回イベントを開催するBMW GROUP Tokyo Bayという施設は、日本最大規模のBMWおよびMINIのブランド体験型販売拠点だ。BMWの新車全車種の試乗が可能なので、イベント参加申し込み(無料)と同時に、ぜひ「オンライン試乗予約」のページから申し込みをしておいてほしい。特に今回のイベントテーマに最もあった革新的な電気自動車の「BMW i3」、プラグインハイブリッドのスポーツカー「BMW i8」は台数も少ないため、ぜひ事前申し込みをお願いできればと思う。

 

スタートアップに新たな資金調達手段を提供する日本版AngelList「エメラダ・エクイティ」が本日ローンチ

スタートアップがビジネスを拡大するために資金を調達する場合、その対象はエンジェル投資家やベンチャーキャピタルとなるのが一般的だった。これはTechCrunchで日々紹介しているスタートアップの資金調達に関するニュースを見ても、そのような傾向にあることがわかる。

だが近年クラウドファンディングやICOのように、資金調達の手段も少しづつ広がってきた。本日エメラダがローンチした「エメラダ・エクイティ」もまさにそのひとつ。同社が4月に2億円を調達した際には「日本版AngelList」とも紹介したが、エメラダ・エクイティは株式投資型のクラウドファンディング(以下株式投資型CF)という形でスタートアップ企業と個人投資家を結ぶプラットフォームだ。

エメラダ・エクイティを活用することで、スタートアップはVCやエンジェル投資家に限らず国内の幅広い個人から資金を調達できる。検討開始から払込までが最短1ヶ月以内に完了するため、資金調達に時間をかけすぎず事業の成長にコミットできることもメリットだ。

投資家1人あたりの出資額は最大50万円まで、スタートアップの資金調達は1億円未満と金額には上限はあるが、投資家側も今までは投資する機会のなかったスタートアップ企業に投資できるチャンスにもなる。

出資を受けているスタートアップを対象とした株式投資型CF

株式投資型CF自体は日本でもいくつかでてきているが「すでにプロが出資しているスタートアップが対象」で、かつ「新株予約権を活用」したプラットフォームというのは新しい。

まずエメラダ・エクイティに参加できるのは将来的にエグジットを見据えているスタートアップのみだ。それもエンジェル投資家やVCなど、プロの投資家がすでに出資をしていることをひとつの基準としている。エメラダ共同創業者で代表取締役社長兼CEOの澤村帝我氏によるとシードからシリーズA前後のブリッジファイナンスという形をメインに想定していて、「プロの投資家の補完効果」を得たいスタートアップに活用して欲しいという。

要は投資家は出資企業に成功してもらいたいので、スタートアップは人の紹介やプロダクトのPRなど積極的なサポートを受けられる可能性があるということだ。投資家側もバックグラウンドチェックがあり、長期的な視点と熱量を持って投資先をサポートすることを望む人が主な対象。そのような個人にプロ投資家との「相乗り投資」の機会を提供することで、スタートアップコミュニティを盛り上げていくこともエメラダ・エクイティの狙いだ。

「アメリカでもすでに出資をうけている会社が株式投資型CFを活用する事例が増えている。個人投資家にとっても、誰も投資をしていない会社に投資をするというのは不安。成功するスタートアップはエンジェル投資家やVCが出資しているケースが多いので、そのような企業に様々な個人が投資をするというのがトレンドだ」(澤村氏)

また新株予約権を活用しているのもユニークなポイント。これについては澤村氏自身が野村証券やゴールドマン・サックス証券で資金調達の実務に携わった経験が影響しているそうだ。

「普通株式や優先株式を活用すると多数の個人が議決権を有してしまうので、総会対応や、その後の資金調達やM&Aを実行する際などに支障がでることもある。少ない人材で事業を立ち上げなければならないスタートアップにとって成長やエグジットの阻害になっては致命的だ。新株予約権であれば、投資家はエクイティとしてのリターンを得る機会がある一方で、日々の経営には関与することはなく、スムーズな意思決定体制を維持できる」(澤村氏)

新株予約権を活用することのメリットは管理負担の削減だけではない。バリュエーションの決定を次回調達時に先延ばし、株式持分の希薄化を適正水準に抑えるという効果もある。これは主にシード投資で用いられるコンバーティブル・ノート(転換社債)を改良したコンバーティブル・エクイティと呼ばれる手法だ。

エメラダには澤村氏の他にも証券会社で資金調達やM&Aの実務に携わったメンバーが集まる。エメラダ・エクイティの開発時には社内のメンバーに加え、スタートアップやエンジェル投資家、VC、証券会社の担当者など業界関係者と意見交換をしながら最適なスキームを検討したそうだ。

今後はM&Aアドバイザーとの連携やベンチャー・デットの供給等の施策も考えているとのことで、このようなサポート体制もエメラダ・エクイティの特徴といえるだろう。

1号案件はVCが支援するクラフトビール会社

エメラダ・エクイティについては数十社から検討したいという声が上がっているそうだが、その中で第1号案件としてプロジェクトを開始したのはクラフトビール「KAGUA(馨和)」を生産するFar Yeast Brewing(ファーイーストブルーイング)だ。渋谷で直営の飲食店「Far Yeast Tokyo ~Craft Beer & Bao」を経営していて、こちらに足を運んだことがあるという読者もいるかもしれない。

Far Yeast Brewingはメルカリの子会社となったザワットにも出資をしていたエンジェル投資家の江見淳氏が、香港に拠点を置くNet Capital Partnersを通じて出資している企業。生産量を拡大した後にIPOを見据えていて、今回はエメラダ・エクイティを通じて4000万円強の調達を目指す。

澤村氏によるとこのようなエンジェル投資家との関係性を特に重要視しているそう。エメラダ・エクイティの特徴が「すでにプロが出資しているスタートアップが掲載されたプラットフォーム」ということもあり、歴戦のエンジェル投資家に案件をつないでもらえるようなインセンティブ設計なども検討しているという。

アメリカではAngelListを筆頭にCircleUpFundersClubなどが株式投資型CFサービスを通じてスタートアップの資金調達を支えているが、日本でも同様のプラットフォームのニーズはあるのだろうか。

澤村氏は日本でエメラダ・エクイティを立ち上げることについて「米国のように各大手プラットフォームが年間数百億円単位で株式の発行を担う世界にはすぐにはならないだろう。だが日本の起業は急速に増えており、エクイティファイナンスの総額自体が増えているので、モメンタムは強い。一方で、まだまだスタートアップコミュニティに関与できていない層も多いので、広めていく上では最適なタイミングだと考えている。中長期の話だが、海外のスタートアップ等も誘致できればさらに活発化するだろう」と話してくれた。

排泄予知デバイスの「DFree」が新たに5億円を調達、フランスへの海外進出も

排泄予知ウェアラブルデバイス「DFree」を開発するトリプル・ダブリュー・ジャパン(以下、TripleW)は11月6日、ニッセイ・キャピタルと鴻海ベンチャー投資のパートナーファンドである「2020」から総額5億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2018年度中に10億規模のシリーズBを予定しているが、今回はそれに先立つプレシリーズBとして、既存株主からの機動的な資金調達として行った。なお、今回の資金調達は第三者割当増資ではなく、新株予約権の発行によるものである。

TripleWは、介護の現場で利用される排泄予知ウェアラブルデバイスのDFreeの開発・販売を行う日本のスタートアップだ。

介護施設などの現場では、例えば3時間おきにトイレに連れて行くようなかたちで排泄ケアが行なわれているそうだ。それだけでも大きな労力だが、当然その人によってはその定時誘導のタイミングで上手く排泄ができなかったり、逆に被介護者自身が不安になって必要以上にナースコールを鳴らしてしまうというような問題がある。

DFreeはそのような問題を解決するために生まれたデバイスだ。DFreeは、古くから妊娠診断などでも利用されていた超音波で膀胱の膨張度を計測。それによって排尿のタイミングが近いのか、そうでないのかを判断する。デバイスが排尿を予知すれば、それをBluetoothを通して介護士がもつスマートフォンなどに通知するという仕組みだ。

介護の現場ではたびたび人材不足だと言われているが、時間のかかる排泄ケアをより効率化することで現場の負担を解消することを目指す。

ちなみに、国もこの排泄ケアの重要性を認識している。厚生労働省は2017年10月に「ロボット技術の介護利用における重点分野」を改訂し、新たに6分野13項目が重点分野として定めた。そして、その中の「排泄支援」の分野において「ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器」という項目が新たに追加されている。

DFreeは2017年春から介護施設向けへの販売を開始。これまでに150の施設に導入され、フランスでもパイロット導入が始まっているという。同社はデバイス単体を販売するのではなくログ記録システムまで含めたパッケージとして提供し、月額料金は1台あたり1万円からだ。

同社は今回の資金調達により、これまでの介護施設向けのビジネスに加えて在宅介護での利用を想定したC向けビジネスの実証実験に力を入れる。また、前述したようにフランスを含むヨーロッパ地域への海外進出にも注力していくそうだ。アメリカではなくヨーロッパを選んだのは、日本と同じように介護保険制度が整っているという理由からだという。

また、超音波を利用して内臓を調べるというDFreeの技術を腸にも適用することで、これまでの「排尿予知」に加えて排便予知サービスも実現可能だ。同社はその研究開発にも力を入れていく。

これまでに同社は2016年2月に1.2億円同年5月には5億円の資金調達をそれぞれ実施している。

リファラル採用支援「Refcome」提供元が約2億円調達――1年で登録社員数10倍、アルバイトにも活用

リファラル採用を支援するクラウドサービス「Refcome(リフカム)」を提供するリフカム(Combinatorから社名変更)は11月6日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ及び既存株主のDraperNexus、Beenext、ANRIを引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

今回調達した資金で現在伸びているアルバイト領域への展開に力を入れていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化、さらには新サービスの開発にも取り組んでいく。なおリフカムは2016年10月にも伊藤忠テクノロジーベンチャーズを除く3社から5000万円を調達している。

1年間で登録社員数が10倍、アルバイト・派遣領域で利用が拡大

Refcomeは2016年7月にリリースされたリファラル採用を活性化させるクラウドサービス。人事と現場の社員双方の負荷を減らし、リファラル採用に取り組みやすい環境をサポートすることがウリだ。具体的には人事担当者が社員へ募集内容を周知できる機能や協力してくれた社員を把握できる機能、社員が友人に会社の紹介をしやすい機能などを備える。

2016年10月時点で2700人だった登録社員数は1年間で10倍越えの3万人に増え、月次の売上高も15倍へと成長した。リフカム代表取締役の清水巧氏の話では、この1年でIT企業だけでなく飲食チェーンやアパレル、不動産など導入企業の幅が広がったという。合わせてわずか10%だったアルバイトや派遣での利用比率が1年間で40%に増えるなど、正社員以外の利用も増えたそうだ。

アルバイトや派遣の採用でRefcomeの利用が増えてきた理由はどこにあるのだろうか? その背景のひとつには「離職率の問題」があると清水氏は話す。

「ある飲食店では採用したアルバイトの3人に1人が入社から2週間以内に辞めてしまうということがあった。その1人を採用するのにも求人媒体を使うと7〜8万円かかるということもあり、そもそも辞めない人をなるべく安く採用したいというニーズが強くなっている。リファラル採用の場合は友人が社内にいるため社内になじみやすいこともあり、問い合わせが増えてきた」(清水氏)

アルバイトの募集においても、たとえば「友人紹介キャンペーン」など、これまでもリファラル採用的な施策は行われていた。ただ時代の変化とともにほとんどの人がSNSを使うようになり「リファラル採用」という概念や、それを支援する仕組みも整い始めている。「おそらく5年前では少し早かった。外部環境が追いついてきてちょうどいいタイミングになってきている」という清水氏の話も頷ける。

従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動

清水氏にこの1年の変化についてもう少し詳しく話を聞くと「従業員のエンゲージメント測定とリファラル採用を連動させて提案できるようになったこと」と「事例が増えてナレッジが蓄積されてきた結果、提案できる施策が増えたこと」がサービスの成長につながっているという。

リフカムは2017年4月、アンケート結果を基に社員のエンゲージメントを可視化できる「Refcome Engage(リフカムエンゲージ)」をリリースした。リリース時にも話があったが、リファラル採用がうまくいくかどうかは、従業員のエンゲージメントが大きく影響するのだという。

たとえばある飲食チェーンではリファラル採用に協力的な店舗と非協力的な店舗があり、双方で従業員のエンゲージメントを測定したところ、協力的な店舗はエンゲージメントも高いという結果が出たそうだ。そこでまずはRefcomeの導入企業を中心にRefcome Engageを提案。双方のツールは連動しているため、エンゲージメントの測定結果からリファラル採用の施策設計までをシームレスに行えるようにした。

また1年以上をかけて様々な企業のリファラル採用をサポートする中で、ナレッジが蓄積されより効果的な提案ができるようになったきている。

「たとえば100名規模のITベンチャーで人事から全社的に人材紹介の依頼をしても効果が薄い一方で、事業部長など現場のトップから依頼をするようにしただけでうまく機能するようになった事例がある。規模や業種によっても最適な手法は異なるため、フォローアップする体制を強化してきた」(清水氏)

清水氏が前職のSansan時代にカスタマーサクセス部門に携わっていた経験もあり、リフカムでは初期からカスタマーサクセス(CS)に力を入れていてきた。年間の解約率は10%未満とのことで、現在もCSドリブンで新たな機能や施策が生まれているという。

採用から組織作りまでを一気通貫するHRサービスへ

今回の資金調達を踏まえて、リフカムではアルバイト採用領域を中心にIT業界以外への展開をさらに進めていくほか、リファラル採用の運用支援体制の強化も引き続き進めていく。

そしてその先には新たなサービスや機能を加えることで、リファラル採用システムを超えて組織作りまでをサポートするシステムへ拡張することを構想しているという。

「リファラル採用を推進していると中には今すぐ転職することは考えていない人もいる。そのようなタレントをデータベース化できるものなど、さらに川下のサービスも作っていく。もともと『採用を仲間集めに』をミッションに、リファラル採用を通じて良い会社を作るサポートをすることが目的。RefcomeやRefcome Engageに新サービスも加えることで組織作りまでを一気通貫でできるようにすることで、ミッションの達成を目指したい」(清水氏)

インキュベイトが100億円の4号ファンド組成、シード期VC輩出視野に50億円の新FoFも同時に発表

独立系VCのインキュベイトファンドは今日、100億円規模となる4号ファンドの組成中で年内にクローズすることをTechCrunch Japanへの取材で明らかにした。2015年1月に組成した110億円の3号ファンドに続くもので、3号のスタイルを踏襲して、シード投資と、それに続くフォローオン投資をしていく。4号ファンドの出資者(LP)は事業会社のほか政府系機関、金融機関を含む。

インキュベイトファンド、ジェネラル・パートナーの和田圭祐氏(左)と村田祐介氏(右)

 

3号ファンドのファンドのパフォーマンス(収益性)が良いことから、4号ファンドの投資スタイルも「既存産業の変革を支援するもの」(インキュベイトファンド、ジェネラル・パートナー和田圭祐氏)を中心としていく。ただ、これまで変革のカギがスマホだったところは「コネクテッドな産業領域に広がってくる」(和田氏)といい、これまでゲームやメディア、SaaSなどネットで完結してた事業領域が「ネットの真ん中から染み出している。その染み出し方が深くなる。そこにゼロイチにこだわってシードから投資していく」(同)という。

これまでのFintechやシェアリング、電力系スタートアップなどへの投資に加えて、現状で市場が存在しないものの、もしあれば大きな伸びが見込まれる宇宙やMR、ドローンといった研究開発先行型の領域にも踏み込む。すでに3号ファンドでも月面資源開発事業のispaceや今年LINEが買収したバーチャルホームロボットGateboxのウィンクルなどへの投資実績がある。

ファンド・オブ・ファンズの取り組みを切り出し、新ファンド「IFLP」を始動

インキュベイトファンドでは4人のジェネラル・パートナーが対等なポジションで投資・運用をしてきた。それに加えてファンド資金の一部を若手VCに任せて子ファンドとして運用する、いわゆる「ファンド・オブ・ファンズ」(FoF)の取り組みも行ってきた。TechCrunch Japanの資金調達の記事でも何度も出てきている、プライマルキャピタルIF Angelソラシード・スタートアップスなどは若手VCによるインキュベイトファンドの子ファンドだ。それぞれ元本のリクープも見えていたり、大きなリターンを出してキャリー(キャピタルゲインに比例してVCが得る成功報酬)を得ている若手VCもいる。

これまでインキュベイトファンドでは、こうしたFoFの仕組みで17本(33億円)のファンド、10人以上のVCを輩出してきたという。

このFoFの取り組みを切り出して、新たに50億円規模のファンドとする「IFLP」を年始にも開始する。IFLPには9人のジェネラル・パートナーを置き、それぞれにIFLPから5億円を出資する。各ジェネラル・パートナーは自らの裁量で外部LPから引っ張ってきた資金を足して最大10億円のファンドとして投資を行うことになる。

シード期投資ができるジェネラル・パートナーが日本には圧倒的に足りていない

ベンチャーキャピタルのファームは、戦略コンサルなどと同じでパートナーにならない限りは下積み。伝統的な組織型VCはパートナーになるまで何年もかけて組織階層の中で出世するモデルだったが、もともとインキュベイトファンドは金融系VCから独立した4人のパートナーが運営している「パートナー型」のフラットな形態。「アソシエイトには、いずれ辞めてもらう前提で入ってもらっている。最低3年、最長5年と言っている」(インキュベイトファンド、ジェネラル・パートナー村田祐介氏)というスタイルだ。一人前になったらファンドレイズ(ファンド組成のために事業会社や金融機関から出資を募ること)をやって独立しろ、ということだ。

ただ、駆け出しの若手VCにとっては、ファンドレイズはもちろん、ファンド管理業務やLP報告業務など「重たい」タスクが多い。だから、そうしたVC共通の業務についてはFoFならインフラを共有することで、より多くの若手VCが育つ土壌を用意する。初号ファンドを立ち上げるタイミングくらいの若手VCのプラットフォームを作る、というのがインキュベイトファンドがIFLPを開始する理由だという。

インキュベイトファンドの前身となるインキュベイトキャピタルパートナーズを1999年に設立した赤浦徹氏は、シード期のゼロイチのフェーズで投資ができるジェネラル・パートナーを日本に増やしたいとの思いが強く、米国などスタートアップ先進国と、VCの質でも量でも差が開くばかりだという焦りがあるという。「1人のVCがピカピカの起業家10人を送り出せるとすると、ジェネラル・パートナーを増やしたほうが経済波及効果が大きいのではないかと思っています」(村田氏)

VCの多くは、経営や事業創造の手助けをする、いわゆる「ハンズオン投資」を行うが、インキュベイトファンドではシード期や、シード以前から事業アイデアについて起業家に近い目線で強力な支援を行うスタイルで知られている。

いま日本のスタートアップ界隈では資金が集まりすぎで、スタートアップ企業の数が足りていないと言われている。ただ、起業家が足りないというのは現実である一方、その理由としてVCが起業家となるべき人に出会って事業化の構想を一緒に考えるようなシード投資が少ないという面もある。昨今数も量も増えているCVCはシード期でのリスクを取りづらい。日本でも成功した起業家たちによるエンジェル投資が増えているが、それでも人数的にも金額的にも足りてないのが現状だ。こうした中、立ち上がるIFLPの取り組みがスタートアップ・エコシステムに果たす役割に注目が集まりそうだ。

若手VCによる丁寧なハンズオン型投資でシードのディールを増やす

インキュベイトの4号ファンドも含めて、日本のVCファンドの規模が大きくなっている結果、1回あたりの投資金額、いわゆるチケットサイズが大きくなっている。このためシード期の小さな投資領域が、いまの日本でエアポケットように空いてしまっている、というのが村田氏の見立てだ。本当は2、3000万円あればプロダクトを2回くらい作り直してキャッシュフローを作るところまで行けるチームがあるのに、そこへのシード投資が足りていない。インキュベイト3号ファンドの子ファンドによる出資は、そうした領域において、新しい市場やトレンドに敏感な若手VCが素早く投資して成長させるモデルがうまく行っている。中長期の継続投資になる研究開発型へ本体ファンドが踏み出すのと対をなすかのように、IFLPによる9つの子ファンドにより小回りの効くシード投資の領域もカバーしていくことになるかっこうだ。

ファンドへ出資するLPから見ると、FoFの仕組みは「ゲートキーパー」の役割も果たすことなるかもしれない、と村田氏は指摘する。小さなファンドに対して少額出資する判断を事業会社や機関投資家が個別にやるのは困難だ。多数の子ファンドを束ねた親ファンドであれば、機関投資家が資金を入れやすい。

インキュベイトファンドは、前身となるインキュベイトキャピタルパートナーズの1999年の設立以来、累計300億円以上の資金で300社以上のスタートアップ企業へ投資している。また、創業期に近い起業家と、日本のVCを繋ぐ場としてシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp」を2010年から運営をしている。

“波動”を打って闘うARスポーツ「HADO」開発のmeleapが3億円を資金調達、海外へ本格進出

ストレスがたまってイライラ、もやもや……ああ、こんなときに“波動拳”や“かめはめ波”が打てたらいいのに!と誰しも一度ぐらいは思ったことがあるのではないだろうか。今はいい方法がある。手からビームが出せて、しかも体を思い切り動かして、誰も傷つけずにストレス解消になる、AR(拡張現実)技術を使ったスポーツ「HADO」がそれだ。

HADOを開発するmeleapは11月6日、総額3億円の資金調達を実施したと発表した。引受先はインキュベイトファンドDBJキャピタルと、SMBCベンチャーキャピタルが運営するファンド。

meleapは、2014年1月の設立。KDDI ∞ LABOの第7期に参加し、2016年5月に開催されたSlash Asia 2016では、ファイナリストに選ばれ、PR TIMES賞を受賞している。2017年8月には、インキュベイトファンドが開催するシードアクセラレーションプログラム「Incubate Camp 10th」で総合1位を獲得した。

HADOは、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)とアームセンサーを装着して、3 on 3(または2 on 2)で競い合うゲームだ。手から繰り出した「エナジーボール」を相手プレイヤーにぶつけ、敵のライフを削りながら得点を重ね、勝利を目指す。相手からのエナジーボールを防ぐ「シールド」をジェスチャーで作り出して、防御することもできる。

対戦は、プレイヤー以外の観戦者も映像で楽しむことができる。下の動画は、meleap創業者チーム(CEOの福田浩士氏・CAOの新木仁士氏)と投資家チーム(インキュベイトファンドの和田圭祐氏・DBJキャピタルの河合将文氏)による競技の模様だ。

meleapでは、HADOを国内外のショッピングモールやテーマパーク、レジャー施設などにフランチャイズ展開している。PvP型でなくモンスターを倒すタイプのゲーム「HADO MONSTER BATTLE」、「HADO SHOOT!」などのシリーズを含めると、常設店舗は世界9カ国、25店舗、プレイヤー数は延べ60万人に及ぶ。12月には、昨年開催された第1回大会に続き、最大6カ国からの選抜チームが集う世界大会「HADO WORLD CUP 2017」も東京で開催される。

今後さらに海外展開を加速させたいmeleapでは、調達資金により、アメリカ・ロサンゼルスとマレーシアのクアラルンプールに支社を立ち上げ、店舗開拓と顧客サポート体制の強化を目指す。またHADO以外にも、ARを使った新競技の開発を進めていて、来年のリリースに向けて開発体制の強化も行っていくという。

開催まで10日! TechCrunch Tokyoのスタートアップチケットは最後まで据え置き価格

多くのスタートアップが集まるテックイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の開催まで残り10日ほどとなった。今年も11月16日、17日の2日間にわたって渋谷ヒカリエ9階のホールで開催予定だ。

コンテンツとしては国内外のスピーカーを招いたキーノートセッションや創業3年未満の企業のピッチコンテスト「スタートアップバトル」などを用意している。これまでに発表しているスピーカーはイベントページに掲載しているのでチェックしてほしい。当日のタイムテーブルも、もうまもなく発表予定だ。

今やスタートアップ的な新規事業やプロダクトの生み出し方は、スタートアップだけのものではなくなりつつあるのかもしれない。特にハードウェアや規模の経済が関係してくる領域では、既存インフラやユーザーベース、大資本といった大企業が持つアセットが重要になることがある。企業の壁や企業規模を超えて協業するオープンイノベーションの重要性が増している。そんなこともあってTechCrunch Tokyoでは数年前からオープンイノベーションのために、スタートアップ関係者だけでなく大企業の方々に参加を呼びかけてきた。

そうはいってもTechCrunch Tokyoの主役は起業家や、スタートアップ企業で働くメンバーの方々だ。特に若いメンバーにとって参加しやすいよう、今年から「スタータアップ・チケット」という区分を用意して、一般チケットが4万円のところ1万5000円とお求めやすい価格に設定してある。創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、イベント開催直前までスタートアップ・チケットを購入いただける。今年ステージでデビューする起業家たちや、エグジットを果たしてステージに帰ってきてくれる先輩起業家たちの名前の声を是非聞きに来て頂ければと思う。

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空間に落書きできるAR時代のSNSアプリ「Graffity」正式公開、総額3000万円の資金調達も

位置情報に写真・動画の投稿、SNSを組み合わせたアプリやサービスはいろいろリリースされているが、さらにAR(拡張現実)の要素が加わったアプリが登場した。11月3日に正式公開された「Graffity」は、スマホで空間に絵やテキストを落書きしたり、スタンプや写真を置いたりすることができ、置かれたオブジェクトと周りの風景を一緒に撮影して動画でシェアできる、AR動画のSNSアプリだ。

Graffityで撮影した動画はGraffity内のフォロワーと共有できるほか、TwitterやFacebookへの投稿も可能。また、動画をカメラロールに保存することもできるので、LINEやInstagramなど既存のSNSでも共有できる。

投稿するときに位置情報の共有をオンにすると、地図上に24時間、投稿をピン留めすることが可能。自分の周りで投稿された動画をチェックしたり、誰かが海外のどこかで投稿していればそれを見ることもできる。

Graffityを提供するGraffity代表取締役社長の森本俊亨氏は、ディープラーニング(深層学習)技術に詳しいエンジニアでもある。ABEJAPKSHA Technologyといった、AIを活用した事業を行う企業でのインターン経験、ドワンゴ人工知能研究所におけるディープラーニング関連の研究を経て、2017年8月にGraffityを設立した。

同社は、2017年初夏に公募されたTokyo VR Startups(TVS)のインキュベーションプログラム第3期に採択されている。“人工知能を利用してAR時代の第三の眼を提供する”という同社がAppleのARKitを利用し、ファーストプロダクトとしてリリースしたのが、ARアプリのGraffityだ。

森本氏は、アプリ正式公開に先立つプレローンチの段階で「女子中高生を中心に、数千人規模のユーザーにアクティブに使ってもらっている」という。現在開発を進めている新機能は、落書きを“その場所に保存”する機能。落書きが保存された場所に近づいてアプリをかざすと、別のユーザーもその場で落書きを見ることができる。「セカイカメラと似たような機能だが、アプローチが違っている。ディープラーニングを使った画像処理により、撮影場所を画像から認識することができる」と森本氏は新機能について説明する。新機能の追加は11月中旬の予定だそうだ。またGoogleのフレームワーク、ARCoreを使ったAndroid版の開発も来年予定しているという。

アプリの収益化については、森本氏はこう話している。「ひとつはInstagramのストーリーズと同様のインフィード広告の導入、それからタイアップ広告として(投稿のデコレーションに使える)3Dアニメーションを提供するというLINEスタンプに似たモデルの導入、また『どういった人がどの場所をよく見ているのか』というデータを収集することによって、AR広告も提供できると考えている」(森本氏)

Graffity社はアプリの正式公開と同時に、TVS親会社であるgumi代表取締役社長の國光宏尚氏、TVS、ほかエンジェル投資家を引受先とする、総額3000万円の第三者割当増資による資金調達も発表している。

マネーフォワードがクラウド記帳ソフトを提供するクラビスを8億円で子会社化、記帳業務の全自動化へ

約1ヶ月前にマザーズへ上場したFintechスタートアップのマネーフォワード。同社は11月2日、クラウド記帳ソフト「STREAMED(ストリームド)」を提供するクラビスの全株式を8億円で取得し、子会社化することを明らかにした。

STREAMEDは経理の記帳業務に特化したクラウドサービスだ。ユーザーが領収書や請求書をスキャンすると、1営業日以内に会計データへと変換。システムによる自動仕訳とオペレーターによる作業を組み合わせることで手書きの領収書でも正確にデータ化できることが特徴だ。会計事務所での記帳代行に加え、個人事業主や一般企業向けのプランも提供し幅広い用途で使われている。

一方マネーフォワードもビジネス向けにバックオフィス業務の効率化を支援する「MFクラウド」シリーズを提供してきた。現在は7つのサービスを展開していて、ユーザー数は50万以上、全国で2400以上の会計事務所で活用されている。

特に主力の「MFクラウド会計・確定申告」は銀行やクレジットカードなどの取引情報の自動取得や自動仕訳といった、「デジタルデータを活用した記帳業務の自動化」をひとつのウリとしてきた。

マネーフォワードでは今回の子会社化をきっかけに「アナログデータの記帳自動化」を強みとするSTREAMEDと連携し記帳業務の全自動化を推進するほか、バックオフィス業務におけるAI活用で国内ナンバー1を目指すとしている。

クラビスは2012年の設立でSTREAMEDのリリースは2014年。株主には代表取締役社長の菅藤達也氏のほか、辻・本郷税理士法人やSMBCベンチャーキャピタル、セゾン・ベンチャーズなどが名を連ねている。

 

任天堂のスーパーマリオ オデッセイ、アメリカで大ヒット中

今年の任天堂は好調だ。最新のマリオも追い風となっている。Super Mario Odyssey〔スーパーマリオ オデッセイ〕は、少なくともアメリカでは、マリオ史上最速の売れ行きだという。当地では発売後5日で100万本、世界では200万本売れ、さらに売れ続けている。

この結果はSwitchのヒットを考えれば驚くにはあたらないだろう。新しいマリオ・ゲームに対する需要は大いに高まっていた。それでも現実にこれだけ売れたのは任天堂には喜ばしいニュースだ。

私の記事も含めて、レビューにはおしなべてマリオに対する尊敬の念が現れている。実際このゲームは楽しいし、Metacriticのスコア(点数自体はいつも割引して考える必要があるが、それでも役に立つサイト)も100点満点中97点と高い。これまでの任天堂ゲームでの最高点は『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』の97点だったからこれとタイとなる。

私は任天堂アメリカに「アメリカ市場で」という意味について尋ねてみた。つまり、グローバル市場での最初の週の売上では、たとえばWii向け『スーパーマリオギャラクシー』の方がもっと速く売れたということなのだろうか? 任天堂ではプレスリリースで発表した以上のことを明かすのを避けたが、これは止むをえない。仮にWii向けGalaxyの売れ行きの方が上だったとしてもリンゴとオレンジを比べるようなもので意味のある比較にはならない。

ともあれSwitchは非常にユニークな製品で、任天堂の過去のゲーム機、Wii、Wii U、3DSとは相当異なるボジションにある。マリオとゼルダはSwitchに欠かせないゲームで、Switchのユーザーの大部分がやがてこれらのゲームを買うことになるはずだ。ニンテンドー64の『時のオカリナ』やNESの『スーパーマリオブラザーズ3』のような存在になるに違いない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

5名様以上でチケット価格が半額に、TechCrunch Tokyoの団体割がお得

スタートアップイベント「TechCrunch Tokyo 2017」の開催まであと2週間ほどとなった。今年も11月16日、17日の2日間に渡り渋谷ヒカリエ9階のホールで開催予定だ。コンテンツとしては国内外のスピーカーを招いたキーノートセッションや創業3年未満の企業のピッチコンテスト「スタートアップバトル」などを用意している。

これまでに発表しているスピーカーはイベントページに掲載しているのでチェックしてほしい。当日のタイムテーブルももうまもなく発表予定だ。

今回は改めてTechCrunch Tokyo 2017の団体割引についてご案内したい。一般チケット4万円のところ、5枚以上の申し込みで1人あたり半額の2万円(税込)で購入することができる。もし友人や同僚と何人かでTechCrunch Tokyo 2017に足を運ぶことを考えているなら、5名以上からが断然お得となる。また、創業3年未満のスタートアップ企業の従業員であれば、引き続きチケット価格は1万5000円だ。ぜひこの機会に検討してみてほしい。

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コンテナ型機器による仮想通貨マイニングでICO、テックビューロ、Looop、クリプトマイニングジャパン

仮想通貨取引所ZaifやICOソリューションCOMSAを提供するテックビューロ、太陽光発電セットの販売や電力小売サービスを手がけるLooop、仮想通貨マイニング分野のスタートアップ企業であるクリプトマイニングジャパン(CMJ)の3社は、仮想通貨マイニング事業に関して業務提携を結んだ。Looopとクリプトマイニングジャパンの2社はそれぞれ事業展開のためのICOを近々実施する。テックビューロのICOソリューションCOMSAを利用する。トークン数量や用途などのICOの詳細は追って発表する予定だ。

仮想通貨マイニング事業は、電力コストとマイニング機器の電力対性能比が収益を左右することから、電力コストが安い中国奥地や北欧に設備を置くのが有利とされていた。今回の発表では、Looopが提供する安価な電力とクリプトマイニングジャパンが開発提供する「マイニングコンテナ」を使うことで、日本国内でもマイニング事業の競争力を確保できるとしている。テックビューロ代表取締役の朝山貴生氏は「日本国内でもビットコインのハッシュパワーを確保したい」と話している。

クリプトマイニングジャパンは、独自設計の「マイニングコンテナ」の提供、マイニングプール(複数マイナーが協力して採掘)、クラウドマイニングサービス(多くのユーザーから資金を集めてマイニング事業に投入、収益を分配)の提供を目的として2017年12月から2018年1月までの間にICOを実施する。「マイニングコンテナ」は、輸送用コンテナ内部にデータセンターの機器類を高密度で搭載する「コンテナ型データセンター」の考え方を応用したもの。移動と設置が容易で、高集積かつ電力使用効率が良いメリットがある。コンテナの上部にLooopの太陽光発電設備を設置することで、設置面積あたりの防熱や発電の効率向上に寄与するとしている。コンテナ型には、移動が容易でスケールしやすいメリットもある。クリプトマイニングジャパン代表取締役の三代飛翔氏は、コンテナ型のメリットについて「工場を建設するのに比べて、コンテナ型は短時間で設備をスケール(規模拡大)できる」と話す。マイニングに使うASIC機器やGPU機器の選定、調達に関しても、三代氏は「マイニングを研究するコミュニティ運営を通してノウハウを蓄積してきた」と話している。

今回提携の3社のうちLooopは、2017年12月から2018年2月までの間に発電事業とマイニング事業の拡大を目的とするICOを実施するべく検討を進めている。同社は2011年3月11日の東日本大震災の被災地域へソーラー発電セットの無償提供を実施したことをきっかけに同年創業。家庭向け太陽光発電セットの販売や電力小売サービス「Looopでんき」を手がけてきた。最近では仮想通貨マイニング事業者向けの定額電力料金プラン「マイニングフラット」の提供予定を発表している。同社はICOで調達した資金や仮想通貨マイニングによる収益を、再生可能エネルギーによる低価格な電力供給のビジネスのための設備投資などに活用していく考えだ。

テックビューロは、マイニングで採掘した仮想通貨による決済技術や仮想通貨売却の機能を提供する。またマイニング事業者が仮想通貨の価格下落に対するリスク分散ができるようにするデリバティブ商品などを提供するとしている。

日本でも、最近はビットコインを筆頭とする仮想通貨のマイニング事業への参入のニュースが相次いでいる。GMOインターネットは専用半導体と北欧のデータセンターに100億円規模を投資してビットコインのマイニング事業を開始すると発表しており、マイニングボード販売に関するICOも検討中と発表している。このほかDMM.comやSBIグループも仮想通貨マイニング事業への参入意向を表明している。日本企業によるマイニング事業の機運が急速に高まりつつある状況の中、マイニングに特化したスタートアップ企業と再生可能エネルギーによる新電力事業を運営するスタートアップ企業がICOに挑む形となる。

メルカリファンドが投資先公開――ポケマルやキッチハイク、ジラフなどC2C領域中心に

フリマアプリ運営のメルカリがC2C事業やシェアリングエコノミー事業を活性化する目的で7月に開始した「メルカリファンド」。そのファンドの公式サイトが本日公開され、出資先も明らかにされている。

ポートフォリオには8社が掲載されているが、メルカリファンドからの出資となるのはBASEレンティオを除く6社(厳密には、フラミンゴはファンドの発表前だがファンドと同じスキームでの投資となる)で本日資金調達を発表したジラフBrainCatも含まれている。BASEとレンティオについてはこのスキームができる前からのメルカリの投資先となる(メルカリとBASEは2016年1月に資本業務提携を結んでいる)。

メルカリファンドについてはファンド開始時にも紹介した通り、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)や子会社による投資ではなく、あくまでメルカリ本体でのプロジェクト。出資金額については特に上限を設定せず、個別案件ごとに検討する。

出資する事業に関しては、メルカリメルカリ アッテなど自社サービスとの連携のほか、買収という選択肢をとることも視野に入れているということだった。資金に加えてメルカリ独自のノウハウや採用支援などのサポートが受けられる点も特徴だ。

“フリーランス互助会”なども実現可能――ソーシャル基金サービス「Gojo」がメルカリなどから資金調達

ソーシャル基金サービス「Gojo」を現在開発中のBrainCatは11月2日、リード投資家を務めたメルカリGMO Venture PartnersセレスCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、 医師の提橋由幾氏を引受先とした第三者割当増資を実施し、シード資金として総額5500万円を調達したと発表した。

企業に勤めるTechCrunch Japan読者のなかには、企業内の共済会や互助会に加入している方もいるかもしれない。会社内での互助会では一般に、社員が給料天引きなどで会費を出し合い、その資金をもとに加入者全体への福利厚生を充実させることが目的とされている。

BrainCatが現在開発中のGojoは、特定の組織に属する人だけに限らず、共通の目的や問題をもった不特定多数の人々を対象にした互助会を簡単に設立するためのサービスだ。Gojoを利用することで、たとえば、育児に取り組む主婦を集めた互助会を作成したり、フリーランスが集まる互助会を設立し、独自の所得補償制度を作るというようなことが可能になるという。

また、この互助会の仕組みを使えば、従来のネガティブイベントに備えるという保険的な意味合いのものだけでなく、クラウドファンディングのような仕組みにも構築できるとBrainCatは考えているようだ。

たとえば、起業を目指す若者を対象にした互助会を設立するなんてことも可能かもしれない。メンバーの内の誰かが実際にプロダクトを送り出すフェーズになったとき、それまでに集めた会費をローンチ費用に充てるような仕組みをつくれば、これまでの一方通行の支援とは少し違う、相互支援型の新しいクラウドファンディングができあがる。

ただ、Gojoは保険にも似た仕組みをもつので、この事業を行うにあたり特別な認可などが必要なのかどうかが気になるところだ。BrainCat広報担当者によれば、会員が1000名以下の共済会(互助会)は、根拠法をもたない”任意共済”と呼ばれていて、「Gojoでは、一つの互助会の定員を1000名以下に制限することで、特別な認可などは必要ないという見解だ」としている。

BrainCatは2018年3月までにGojoのβ版をリリースする予定だという。

メルカリとの協働は?

冒頭でもお伝えしたように、今回のラウンドではメルカリがリード投資家を務めている。2017年7月に「メルカリファンド」を立ち上げ、同年9月にはC2Cアプリの「ポケットマルシェ」に1.8億円を出資、そしてつい先日の10月31日には“みん食”コミュニティサービスの「KitchHike」への出資も明らかになるなど、今年はメルカリのスタートアップ投資が加速している。メルカリファンドのWebページもちょうど本日からオープンしたところだ。

BrainCatはメルカリとの協働案について具体的には語らなかったが、C2Cアプリのメルカリと互助会サービスのGojoは相性がいいようにも思う。可能性として、Gojoの枠組みを利用してメルカリユーザー間のコミュニケーションを活発化させたり、もっと言えば、ユーザー同士が設立した互助会でユーザー間でのトラブル保障を行ったりすることも可能なのかもしれない。

買取価格比較サイト「ヒカカク!」運営のジラフがミクシィ子会社やメルカリ等から4億円調達——月間140万人以上が利用

買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」、スマホ特化型フリマ「スマホのマーケット」を提供するジラフは11月2日、複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回ジラフに出資したのはアイ・マーキュリーキャピタル、グリー、メルカリ、アドベンチャーに加え既存投資家であるドリームインキュベータとポケラボ創業者でジラフ執行役員の佐々木俊介氏だ。

ジラフは8月に「CASH」運営のバンクから数百万円程度の資金調達をしているほか、3月にアドウェイズ、アナグラム、個人投資家から1.3億円を、2015年10月にEast Ventures、TLM、個人投資家から4120万円を調達している。それ以前にもシードラウンドで資金調達をしていて、今回の調達により同社の資本金は約6億円となる。

「ヒカカク!」の月間利用者数が140万を突破

2014年9月に開始したヒカカク!が好調で月間利用者数は140万人を突破。3月の時点では100万人を突破したという話だったので、約半年で1.5倍近く伸びたことになる。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏いわく「シブい事業」である修理価格比較サイトの「最安修理ドットコム」も同様に伸びていて、月間利用者数は30万人を超えた。会社全体では3月時点ですでに黒字化をしているという話だったが、事業全体でみても約半年で2倍近く成長しているそうだ。

直近の成長について麻生氏は「SEO経由でのトラフィックの伸びだけでなく、営業サイドやマーケティングサイドなど含めて組織として利益を出せる体制、スピーディーに事業展開できる体制が整ってきたのが大きい」と話す。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏

ヒカカク!では査定申込数(見積もり数)が重要な数値となっているが、トラフィックの増加に加えて申込率も増加したことで全体の数値が底上げされているそうだ。麻生氏の話では申込数を最大化するうえで、特にこの半年は細かいサイト改善など含めた申込率の改善施策を実施。結果としてこの申込率が1.5倍〜2倍近くになったという。

申込率を押し上げる要因のひとつとなったのが、一括で最大5社の見積もりが出せる「一括査定機能」だ。「ユーザーが自分で買取業者を選ぶのはハードルが高い。査定したい商材や住んでいるエリアを入力することで、ニーズに合った店舗の結果が複数返ってくるようになった」(麻生氏)。これによりユーザーの使い勝手が向上し、査定申込をする率が高くなった。

スマホ特化型フリマもリリースし、C2C領域も拡大

冒頭でも紹介した通り、ジラフは8月にCASH運営元のバンクから資金調達をしている。今後はCASHとヒカカク!の連携、協業も進めていくほか、買取事業者向けのマーケティング支援や電話代行といったサービスも充実させる予定だ。

とはいえ既存事業についてはかなり自走できる状態であり、今回調達した資金は主に10月に開始したスマホ買取サービスの「スマホのマーケット」に使うという。スマホのマーケットはスマホに特化したC2Cサービスではあるが、ジラフが間に入って動作チェックや品質サポート、個人データの削除などを行い安全面を担保していることが特徴だ。

今回のラウンドには複数の事業会社が新たに参加しているが、既存の価格比較サイトの伸びを評価している投資家と、C2Cの新サービスを評価している投資家がいるそう。ちなみにメルカリはスタートアップへの投資スキームである「メルカリファンド」を7月に打ち出しており、今回の発表に合わせてサイトも立ち上げている。先日自社の傘下に入れたLabitの「ブクマ!」のように、特化型のC2Cサービスとしてジラフに興味を持ったということだろう。

スマホのマーケットでは購入した端末の修理補償サービスなど未着手だった機能の開発から始めるというが、その先の展開について麻生氏に聞くと「単なるフリマサービスに見えるかもしれないけれど、そこを起点にいろいろな領域に広げていけると考えている」と話してくれた。

デート率の高さがウリ、第3世代のマッチングアプリ「Dine」提供元が1.5億円を調達し日本版リリース

マッチングアプリ「Dine(ダイン)」をアメリカ、カナダで展開するMrk&Coは11月1日、結婚相談所を運営するパートナーエージェントおよびベンチャーユナイテッドを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫からの資本制ローンにより、総額約1.5億円を調達したことを明らかにした。内訳は非公開だが、パートナーエージェントが1億円を出資しているという。

同社はこれまでサイバーエージェントベンチャーズとiSGSインベストメントワークスから約4000万円を調達していて、累計の調達総額は約1.9億円。 今回の調達に合わせてDineの日本版を正式にリリース、まずは東京から始めて順次エリアを広げていく予定だ。

「実際にデートできること」にコミットしたマッチングアプリ

Dineは「直接会うこと」にフォーカスをしたマッチングアプリで、2016年3月にアメリカとカナダでリリースされた。海外から展開を始めていたが、提供元のMrk&CoはDeNA出身の上條景介氏と森岡崇氏が創業した日本発のスタートアップでオフィスも渋谷にある。

日本国内でもマッチングアプリが普及し始めているが、Dineも仕組み自体はシンプルで割と一般的なものだ。毎日定刻にユーザーがレコメンドされ、気に入った相手にはデートのリクエストを送る。そして双方がリクエストを送ってマッチングした場合には個別でメッセージをやりとりし、実際に会うという仕組みになっている。

特徴的なのは、よく見ると相手の顔写真の下に3件のレストラン写真が表示されていること。Dineでは全ユーザーが登録時に自分が行きたいレストランを3件選ぶところから始まり、相手にリクエストを送る際には「どのレストランで会いたいか」を選ぶ仕様になっている。

写真左からレストラン選択画面、ホーム画面、デート日程調整画面

つまりマッチングした時点では、すでに相手と「このお店で会いたい」ということまで具体的に決まっているわけだ。今回リリースした日本版ではまず恵比寿と銀座でそれぞれ50店舗ずつ、合計100店舗のレストランが対象となる。

「アメリカで人気のTinderBumbleはマッチングはするものの、実際に会える確率が低い。大きな要因として、必ずしも婚活や恋活を目的にしている人ばかりではなく目的意識がバラバラだということがある。そしてマッチング後に相手とデートするためには、メッセージスキルが必要で手間もかかるなど障壁が高い。Dineでは実際に会うことにフォーカスしていて、そのために障壁となるものを取り除くことを徹底的に意識している」(上條氏)

最初にレストランを選ぶという設計もそうだし、マッチング後のメッセージ画面にもこだわりが見える。Dineではデートのスケジュールを提案するフォーマットが組み込まれていて、候補日を選択するだけでデートの提案ができる。

当初は自由にメッセージを送れる仕様だったが、それでは脱線してしまったりコミュニケーションが上手くいかないケースがあった。そこでフォーマットを取り入れたところ、デートに行く確率が20%から40%まで跳ね上がったそうだ。

「オンラインではそこまで印象が良くなかったが、実際に会ってみるとすごくいい人だったということは恋活に限らずよくあること。メッセージが苦手だとか、オンラインの人格だけで人が評価されてしまうのは双方にとって損失。Dineではまずは短時間でも実際に会ってみることを大切にしている」(上條氏)

結婚相談所の運営企業から出資を受け、将来的には業務提携も

写真左が代表取締役の上條景介氏、右が取締役CTOの森岡崇氏。

Dineを立ち上げた背景には上條氏が前職時代にカナダに赴任した際の体験も関わっている。当時はオンラインの掲示板を通じて現地にいる日本人との繋がりが広がっていったこともあり、オンラインで人と出会うという体験にポジティブな想いがあったそうだ。

上條氏は業界の変遷も踏まえて、Dineをサードウェーブデーティングアプリ(第3世代)と表現する。

第1世代は1995年にリリースされたマッチングアプリのパイオニア的存在でもあるMatch.comのように、身長や年収など求める条件を入力し、条件に合った人を検索してマッチングするサービス。そしてスマホで使うことを想定し、第1世代の操作性を改善しながらよりカジュアルに使えるようにしたのがTinderを代表とする第2世代のアプリだ。

MAUが5000万人を超えるとも言われるTinderを筆頭に、現在北米で主流となっている第2世代のアプリだが、上述したようにユーザーの目的がバラバラなため真剣に出会いを求めるユーザーの中には不満を持つ人もいるそう。上條氏も複数のマッチングアプリを使う中で「実際に会う」というところに課題を感じ、そこにフォーカスしたDineの開発に至った。

リリースしてから約1年半が経つが、特にデート率(会話が始まってから実際にデートに行く確率)が40%と高く、それに伴ってDAUや売上といった指標も毎月120~150%ほど成長しているそう。創業者の2人はDeNAでソーシャルゲームの開発に携わってきたメンバー。データを基に細かい改善を日々繰り返していて成長の兆しが見えてきたこともあり、その勢いを加速するため資金調達に踏み切った。

今回はVCに加えて結婚相談所を運営するパートナーエージェントからも出資を受けている。具体的な話は今からとのことだが、相談所やイベント運営のノウハウを活用した新サービスなど、将来的な業務提携も考えているそうだ。

「TinderのMAUや会員数を越えようとは思っていない」と上條氏が話すように、Dineでは「デートに行ける」という部分にコミットしながら、今後アプリのグローバル展開を進めていくという。