テック界のリーダーたちが米議事堂暴動でSNSの役割に対して声を上げる

トランプ大統領支持の過激派たちが米国議会議事堂を激しく襲撃した後、多くのテック企業幹部や業界リーダーがTwitter(ツイッター)のCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏とFacebook(フェイスブック)のCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏に、大統領のメッセージの拡散と暴力支持をより積極的に抑制するよう求めている。

トランプ大統領が過激派たちのことを「とても特別」と呼んで家に帰るよう促すビデオを公開したあと、FacebookTwitterはコンテンツを削除した。Twitterは同社ルールの「将来の違反」はアカウントの永久停止につながると警告し、トランプ大統領のTwitterアカウントを少なくとも12時間凍結する措置を取った。

長い精査を経て、TwitterとFacebookはようやく今回の暴動によってトランプ大統領の扇動的なツイートやメッセージに対応することになった。この件はまだ続いており、テック界の一部の有名な人物は暴動の原因は選挙に関する誤情報を無視して拡散させたプラットフォームにあるとしている。誤情報の拡散はトランプ政権が終わろうとしている現在、暴力的なレトリックの動きを制御不能にした。

Twitterの初期投資家の1人であるChris Sacca(クリス・サッカ)氏は「(ジャック)そしてザック、あなたたちに責任があります。4年間、あなたたちはこの恐怖の種を正当化してきました。暴力的な反逆を扇動することは言論の自由ではありません。もしあなたがそうした企業で働いているのなら、これはあなたの責任でもあります。アカウントを閉鎖しなさい」。

Reddit(レディット)の共同創業者、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏はサッカ氏の発言にこう付け加えた。「子どもたちのために答えなければならない、難しい疑問がたくさんあります」。オハ二アン氏は2020年のBlack Lives Matter(黒人の命も大切だ)抗議活動をきっかけに役員を退いた。

Facebookの元セキュリティ最高責任者のAlex Stamos(アレックス・スタモス)氏は「ラベリングは意味をなさず」、TwitterとFacebookは「トランプを排除しなければならない」として両社とも行動を起こす必要があると書いている。

テックプラットフォームは、誤情報の発信と陰謀論で結びついているグループの問題を野放しにしているとして、これまでに幾度となく集中砲火を浴びてきた。Twitterの直近の対応は誤情報の可能性があるツイートにフラッグを立てるという措置の導入だった。

テック投資家でRedditの元CEOであるEllen Pao(エレン・パオ)氏は、今日のカオスはドーシー氏が行動を起こさなかったことに直接つながっていると主張している。パオ氏と、テック企業の元創業者でCEOのLaura Gómez(ローラ・ゴメス)氏は2020年11月、トランプ大統領が「クーデター」を扇動するのにTwitterを使用していると明確に非難し、ドーシー氏にトランプ大統領のツイッター上での影響力を制限するよう求めていた。

「我々は正しいことをするよう彼らに伝えました。彼らはしませんでした。そして今こういう事態になっています」とパオ氏は本日Twitterに書いている。

このほどGoogle(グーグル)のAIチームから解雇されたトップの研究者であるTimnit Gebru(ティムニット・ゲブル)氏はFacebookとTwitterを厳しく非難したが、より厳しい非難の矛先をYouTubeに向けた。同氏はYouTubeがヘイトスピーチを促進していることに関して「注目を浴びないよう完全に逃れてきた」としている。

暴動者たちのことを「特別な人々」と呼び、家に帰るよう促しているトランプ大統領の最新の動画はTwitter、Facebook、YouTubeから削除された。

Facebookのインテグリティ担当バイスプレジデントのGuy Rosen(ガイ・ローゼン)氏は、暴動は「緊急事態であり、トランプ大統領の動画削除を含め、適切な緊急措置を取っています。動画は現在も続いている暴力のリスク抑制に貢献しないと判断して削除しました」とツイートした。Facebookは公式な声明文も出している

大統領就任式まで2週間となり、プラットフォームは引き続き平和的な政権交代を守るという点で重要な役割を果たす。本日の事件は転換点のようだ。テロリズムにより、シリコンバレーのテック業界の人たちは業界で最もパワーがあるリーダーたちを非難し、さらなる暴力沙汰が起こる前に行動するよう促すことになった。

「@jack、@vijaya、@kayvz、単刀直入にいわせてもらいます。少なくとも明日はドナルド・トランプのアカウントを停止させなければ、この議事堂暴動はあなたたちの責任にもなります。残念ながらトランプはここ数日、主にあなたたちのツールを使って暴動を扇動してきました。あなたたちはいま行動する必要があります」とテックジャーナリストのKara Swisher(カラ・スウィッシャー)氏はTwitterへの投稿に書いた。

カテゴリー:その他
タグ:ドナルド・トランプアメリカ米国大統領選挙SNSTwitter、Facebook

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

2020年クリスマスの週のApp Store売上高は約1855億円、元旦は過去最高に

Apple(アップル)は米国時間1月6日、App Storeの年末商戦の売上高について最新情報を発表した。App Storeのユーザーはクリスマスイブから大晦日にかけての週にApp Storeで18億ドル(約1855億円)使い、その主なものはゲームだった。そして元旦に5億4000万ドル(約556億円)超を使い、1日あたりの支出額としては過去最高を記録した。

パンデミックがどの程度2020年のアプリ支出額の増加に貢献したか、Appleは詳しく語らなかった。ただし、年間を通じたトップのアプリにはZoomやDisney+、そして人々が集えるRobloxやAmong Usといったゲームなど、誰かとつながったりエンターテインメントを楽しんだりするのに役立つものが含まれる、と述べている。

しかしながら、Appleは2020年にユーザーがアプリやゲームにいくら使ったか、詳細は明らかにしなかった。そのためそうした数字についてはサードパーティの推定を参考にしなければならない。Sensor Towerの年末レポートによると、App Storeでの世界の消費者支出は2020年に723億ドル(約7兆4500億円)に達し、この数字は前年の555億ドル(約5兆7200億円)から30.3%増加した。App Annieも年間レポートに先立つ初期予測で似たような数字を発表した。

一方、AppleはApp Storeのデベロッパーが2008年にApp Storeが始まって以来、これまでに2000億ドル(約20兆6000億円)超の収益をあげたと指摘した。昨年発表した1550億ドル(約15兆9700億円)から増えている。

Appleの2020年のホリデーウィークもアプリとゲームの支出額は前年比16%増の14億2000万ドル(約1460億円)と過去最高の記録を打ち立てた。2020年に消費者は18億ドル(約1855億円)使ったことから今回も記録を更新したようだ。しかしその点についてAppleがなぜ米国時間1月6日の発表で触れなかったのかは不明だ。

同社はまた、2020年要約で他のサービス事業に関する最新情報も明らかにした。それによると、Apple Musicにとっては「記録的な年」となった。具体的な数字は示さず、その代わりiOS 14のリスナーの90%が「今すぐ聴く」やアップデートされたSearch、パーソナルラジオステーション、Autoplayといった新機能を試したとだけ明らかにした。同社はまた、歌詞機能の利用が2020年は倍増したとも述べた。

また、Apple TV+アプリは現在100カ国超にあるデバイス10億台で利用でき、新作やクラシック映画、テレビ番組など10万超の作品を購入またはレンタルできると明らかにした。

一方、Apple Payは現在、米国のストアの90%超、英国のストアの85%、オーストラリアのストアの99%で利用できる。

Apple News、iCloudそして新しいサービスFitness+についても言及があったが、ユーザーの利用状況や成長に関する数字は示さなかった。

同社はまた、Apple Arcadeが取り扱うゲーム数が140作品に達し、Apple Booksは9000万人超の月間アクティブユーザーを抱え、Apple Podcastsは現在175カ国超で利用できると述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleApp Store

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(翻訳:Mizoguchi

クラウドネイティブモニタリングツールのChronosphereがシリーズBで45億円獲得

元Uber(ウーバー)のエンジニア2人が2019年に立ち上げたスケーラブルなクラウドネイティブモニタリングツールのChronosphere(クロノスフィア)は米国1月5日、4340万ドル(約45億円)のシリーズBを発表した。同日からサービスが一般に公開されることも発表した。

2019年の1100万ドル(約11億円)のシリーズAに参加したGreylock、Lux Capital、ベンチャーキャピタリストのLee Fixel(リー・フィクセル)氏がラウンドをリードした。新しい投資家としてGeneral Atlanticも参加した。Chronosphereはこれまで5440万ドル(約56億円)を調達した。

創業者であるCEOのMartin Mao(マーチン・マオ)氏とCTOのRob Skillington(ロブ・スキリントン)氏の2人はUberでオープンソースのM3モニタリングプロジェクトを始め、同プロジェクトを基盤として2019年にChronosphereというスタートアップを立ち上げた。Aラウンドでマオ氏が筆者に語ったように、同社はオープンソースプロジェクトの実行管理の簡素化を目指した。

M3自体は実行するにはかなり複雑なテクノロジーです。非常に複雑で大規模な問題を解決しますが、実際に実行するにはかなりの投資が必要です。そのため、私たちが最初にしていることは、その管理を行うことです。

マオ氏は、同社が2020年のほとんどをプロダクトの反復とベータ版の顧客との協業に費やしたと述べ、オープンソースプロジェクト上に商用サービスを開発したことには確かにメリットがあったとつけ加えた。

「私たちは、すでにオープンソースプロジェクトの基盤を持っていることを幸運だと思っています。しかし私たちはそのテクノロジーの上にプロダクトを開発することに本当に集中したいと思っていました。また、このプロダクトを本当に差別化したいと考えました。私たちが2020年に集中していたのはほとんどそういったことです」とマオ氏は語った。

マオ氏は、まだAラウンドからの資金が残っていたため、同氏とスキリントン氏が今回の新しいラウンドでの資金調達を模索していたわけではなかったと指摘した。だが、同社の既存投資家が彼らに近づき、彼らはバランスシートに資金を追加すると決めた。その資金で会社を成長させ、従業員を引きつけ、またプロダクトと会社を発展させ続けるための十分な資金を持っていると顧客を安心させることもできる。

同社は2020年の成長にともない従業員を大幅に増やし、2019年のAラウンド時点の13人から現在は50人になった。2022年末までに倍増する計画だ。マオ氏によると、創業者らは当初から多様性のある会社を作る方法を考えていた。

「そのため、昨年から適切なリーダーと、多様性にも関心のある適切なリクルーティングチームとを確実に採用するようにしています。その後、性別と人種の多様性の両方について全社的なゴールとターゲットを設定しました。私たちはこうした具体的な目標に責任を持ち、達成度合いを管理しています」とマオ氏は語った。

同社は当初から、それも新型コロナウイルス(COVID0-19)の前からシアトル、ニューヨーク、リトアニアにオフィスを広げており、それが採用基盤の拡大に役立ってきた。マオ氏は、オフィスに戻れる時がいつ来たとしても、ほぼリモートで働き続けたいと考えているが、従業員がお互いに直接会うことができるよう各所にハブを維持している。

一般に公開されたプロダクトで同社は、顧客基盤の拡大を目指す。関心を集めるオープンソースプロジェクトとともに、同社には新しい顧客を商用のプロダクトに引き付ける実証済みの方法がある。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Chronosphere資金調達

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ARで簡単に紛失物を探し出せるウルトラワイドバンド搭載トラッカーをTileが準備中

Tile(タイル)は、2021年に新製品を発表する準備を進めている。Apple(アップル)の待望のAirTag、そしてSamsung(サムスン)製を含む今後マーケットに投入される他の紛失物追跡サービスのライバルになるものだ。これまでのTileのトラッカーは、ユーザーが置き忘れた鍵など紛失物の場所を特定できるようにするのにBluetoothを活用してきたが、新製品では紛失物を見つけるのにウルトラワイドバンド(UWB、超広帯域無線)テクノロジーを駆使する。また、Tileモバイルアプリを通じてユーザーを紛失物の場所まで誘導するのに拡張現実(AR)を活用する。

UWBテクノロジーはiPhone 11モデルとiPhone 12モデル、そしてサムスンの最新デバイスを含むいくつかのAndroidデバイスで利用できる。

BluetoothやWi-Fiと同様、UWBは短距離のワイヤレスコミュニケーションプロトコルだが、かなりの高周波を使用している。空間および方向のデータをとらえるのに使われるもので、Tileのトラッカーのような紛失物を探すデバイスにとって役立つ。

アップルは2020年、サードパーティーのデベロッパーが同社のU1チップにアクセスできるようにした(iMore記事)。このチップは、iPhoneが「NearbyInteraction」フレームワークを通じて空間認識できるようUWBテクノロジーを使っている。Tileが今後発表する新製品でどの程度新しいフレームワークを使っているかは明らかではなく、先の報道によると同社は特にアップルとの協業で秘密保持契約を結んでいるようだ。

新製品コンセプトのイラストをみると、TileのUWBモデルはTile MateやTile Proなど他の小型トラッカーと似たような外観だ。四角形で中央にボタンがあり、粘着テープで取りつけられるよう背面はフラットになっている。そして他のTile製品と同様、キーチェーンにも取り付けられる。

コンセプト図(画像クレジット:Tile)

通常、Tile製品は鍵やリモコン、ハンドバッグ、ダッフル、荷物、持ち運びする小さなものに取り付けたり、電化製品や自転車のような大きめのデバイスに貼り付ける。紛失物が近くにある場合はBluetoothで、ずっと遠くにある場合にはTileの「community find」ネットワークで場所を特定できる。後者の場合は、紛失モードにセットされたTileトラッカーの場所を特定するのにユーザーのスマホにインストールされたTileアプリを活用する。紛失アイテムが見つかった時には、持ち主に通知がいく。この機能により、たとえばTileユーザーは誤って飛行機に置き忘れてきたものの位置を特定したりできる。

一方、新しいトラッカーは紛失物特定のプロセスをこれまでよりも簡単にするためにUWBを使う。

UWBは空間認識能力があるため、ユーザーがトラッカーの発信音を拾えないときでも屋内外で紛失物の場所を特定できる。これは紛失物がソファのクッションなど何かの下に埋もれているとき、あるいはタンスのようなものの中にあるときにも役立つ。また2階建、3階建といったフロアが複数ある家のような大きな空間で簡単に紛失物を見つけることも可能だ。

ユーザーは、TileアプリでARが使えるカメラビューを立ち上げることができる。これは方向を示す矢印や紛失物の場所のARビューなどのオーバーレイを使ってユーザーをその場所まで誘導するものだ。

コンセプト図(画像クレジット:Tile)

Tileの計画に詳しい情報筋によると、TileはiOS、Androidデバイス両方で使える新トラッカーを2021年後半にリリースする予定のようだ。価格はまだわからない。Tileはもちろん今後もBluetooth活用の人気デバイスの販売を続ける。というのも、マーケットに出回っているスマートフォンの多くはまだUWBに対応していないからだ。最新デバイスのみこのテクノロジーが使える。

Tileはこれまで紛失物トラッカーのマーケットをリードしてきたが、2021年はサムスンやアップルといったスマホブランドから新製品がリリースされることが予想されており、Tileは競争激化に直面することになる。

2020年に開催されたサムスンのGalaxy Unpackedバーチャルイベントで、同社は新SmartThings FindアプリにUWBを搭載する計画を明らかにした。1月4日の週に認証機関NCCに提出された画像の中には、今後発売されるSamsung Galaxy SmartTagトラッカーがあった。そのデバイスは四角形で、キーチェーン取り付け用の穴が空いているなどTileトラッカーにかなり似ている。

一方で、アナリストのMing-Chi Kuo(ミン-チー・クオ)氏による新たな調査分析によると、アップルはTileと競合する製品AirTagを2021年に発表する。アップルはすでにAirTagの存在を認めていて、また公式のサポートビデオで紛失物トラッカーに意図せず言及した。AirTagのリーク画像も今週出回り始め、AirTag発売は「間もなく」とするレポートに勢いを与えている。

UWBを搭載したトラッカーはTileがマーケットをリードする位置を保つのに貢献するかもしれない。2020年時点でTileは2600万ものTileデバイスを販売し、1日あたり195カ国で約600万のアイテムの位置を特定している。Tileのウェブサイトには、同社のデバイスは230カ国・地域で使える、とある。この規模でTileはマーケットを引っ張る存在だ。しかしアップルのAirTagは、同社の「Find My」アプリとしっかり連携するというファーストパーティのアドバンテージがあるかもしれない。ただし懸念されることもある。Tileは2020年の独禁違反の公聴会で、アップルが競争に勝つためにいかに自社プラットフォームやマーケットパワーを行使しているかに言及した。

TileのUWBデバイス計画は現時点で公にされていない。

「製品のロードマップについてコメントできませんが、当社は常に顧客エクスペリエンスの改善と、紛失物探しの弱点の解決を模索しています」とTileの広報担当はTecCrunchに語った。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Tile

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移民の創業者に特化するOne Way Venturesが2号ファンドの資金調達完了

移民の創業者を支援するベンチャーキャピタルのOne Way Ventures(ワンウェイベンチャーズ)は、2号ファンドの資金調達を5750万ドル(約59億円)で完了した。One Wayがデビューファンドとなった2800万ドル(約29億円)の投資ビークルについて発表してから3年になる。

創業パートナーのSemyon Dukach(セミョーン・ドゥカッチ)氏によると、One Wayは新しいファンドで「小切手のサイズ(1回の投資額)」を50万ドル(約5200万円)から100万ドル(約1億300万円)に増やすことができ、機関投資家が参加するシードラウンドを迅速にリードできるようになる。デビューファンドが投資で資金を使い切ってしまった現在、より大型のファンドを立てるのは当然のことだ。これはシードブームの盛り上がり(未訳記事)も反映している。投資家は競争力を維持するために資本の増強を余儀なくされている。

One Wayは、移民の創業者の支援にはっきりと特化している数少ないベンチャーキャピタルの1つだ。移民を支援し、彼らが国に留まるのを助ける別のファンドとしてUnshackled Venturesがある。同ファンドは直近では2019年に2000万ドル(約21億円)のファンドの資金調達を完了した(未訳記事)。

ドゥカッチ氏は、同社の移民への特化は取引を行う上で最大の競争優位の1つになるという。One Wayは、移民の創業者を1つのコミュニティにまとめ、新しい国、文化、環境に適応するという(比喩的な)意味で同じ言語を話す。新型コロナウイルス(COVID-19)は人と直接会う機会を制限しているが、同社はバーチャル本社とバーチャルイベントのコンセプトを試しながらポートフォリオ企業をまとめようとしている。

ベンチャーキャピタルのような閉じた世界でのコミュニティと翻訳が「私たちがほとんど常にラウンドに参加する理由です」とドゥカッチ氏は述べる。

「私たちがこれまで競争の激しいラウンドに入り込むことができたのは、多くの価値を提供する天使のように扱われたためです。価値の一部が、本当にクールなものだという感覚にすぎないときであってもです」

One Wayの投資先にはBrex(未訳記事)、ClasstagChipper(未訳記事)が含まれる。48社のポートフォリオ企業のうち、2社には移民の共同創業者がいない。ジェネラリストであるOne Wayは機械学習、フィンテック、エドテックに大きく賭けている。

トランプ政権下の移民環境は、レトリックと政策の両方の観点から、軽微ではあるがOne Wayに影響を与えたとドゥカッチ氏はいう。同社はモントリオールにベンチャーパートナーであるPhilippe Kalaf(フィリップ・カラフ)氏を擁し、政策変更のリスクをヘッジしている。

パンデミックと選挙の年にファンドの資金調達を完了したことに関しては、One Wayは当初計画していた資本のほぼ2倍を集め、2020年の小切手と現金のお祭り(未訳記事)に加わった。

「2、3のLPには選挙が終わるまで待ってもらいました」とドゥカッチ氏は語った。「バイデン氏が勝てば気持ちよく投資できるということでしたから」。

One Wayは新しい資本の獲得とともにチームを拡大させる見込みだ。同社は、消費者プライバシースタートアップの共同創業者であるEugene Malobrodsky(ユージン・マロブロドスキー)氏のパートナー加入により、ボストンからサンフランシスコに拡大した(PR Newswire記事)。

多くのベンチャーキャピタルと同様(未訳記事)、One Wayも意思決定層の多様性に関して遅れをとっている。現在、One Wayのすべてのパートナーは男性だ。同社はRobinhood and Trusted Healthの元幹部であるNadia Asoyan(ナディア・アソヤン)氏をベンチャーパートナーとして迎える予定だ。ベンチャーパートナーはジェネラルパートナー(GP)とは異なるため、決定を下したり「小切手を書く」際にはGPのサインをもらう必要がある。チームには他に、プラットフォームアソシエイトのAnnie Patyk(アニー・パティック)氏という女性メンバーがいる。

ポートフォリオの観点では、One Wayは50社のうち女性が創業または共同創業した10社に投資している。ポートフォリオには、マイノリティの共同創業者がいる19社と、黒人またはラテン系の創業者がいる7社も含まれている。

ドゥカッチ氏によると、理想的な創業者は戦略を社名に表している。

「片道チケットでやって来たものの、行く会社もなければ最終的にどうなるのかもわからず、言語、文化、ネットワークといった拠り所を持たない人がいます」とドゥカッチ氏は述べる。「そういったことをくぐりぬける人とは、どういう人なのか。将来成功すると予想されるといったことに止まらず、巨大な業界に変革をもたらす可能性を予見させます」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:One Way Ventures資金調達

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Pokèmon GoのNianticがゲーマー用コミュニティプラットフォームのMayhemを買収

Pokèmon Goの開発で知られるNiantic(ナイアンティック)がサンフランシスコの小さなゲーミングスタートアップを買収した。同スタートアップは、ゲーマーが人気のタイトルについてのコミュニティを作るのをサポートするためのリーグ・トーナメント組織プラットフォームを構築している。

Crunchbaseによると、Mayhem(メイヘム)はY Combinatorの2018年冬クラスに参加して570万ドル(約5億9000万円)の調達に取りかかった。その他の出資者には2018年のシリーズAをリードしたAccelそしてAfore Capital、 NextGen Venture Partnersなどがいる。

MayhemのフォーカスはYCデビュー時からわずかにシフトした。デビュー当時、同社はeスポーツゲームプレイのビデオ並びにコーチユーザーがいかにパフォーマンスを向上させられるかを分析するVisorというサービスを発表した。そして同社はゲーマーが試合を見つけたり、同社プラットフォーム上でOverwatchのようなゲームのためのトーナメントを組織したりするのをサポートするコミュニティツールへとフォーカス全体をシフトさせたようだ。

Nianticは買収の取引条件を明らかにしなかった。

Mayhemのチームの「大半」はNianticに加わる。MayhemのCEOであるIvan Zhou(イヴァン・シュウ)氏はNianticのソーシャルプラットフォームプロダクトチームに、残るメンバーはプラットフォームエンジニアリングに入る。

Nianticは声明文で、買収が「当社のミッションの中心にある現実世界のソーシャルへのコミットメントを強化する」と主張した。

Nianticの最近の買収のほとんどがテクノロジーを駆使した拡張現実(AR)に集中しており、今回のようにコミュニティ組織にフォーカスしているテックの買収は興味深い。

Pokèmon Goは引き続きNianticのドル箱商品だが、その後の新作ではPokèmon Goほど口コミで成功しておらず、オーガニック成長は偶然手に入れられるほど簡単なものではない。コミュニティツールを構築するスタートアップの買収は、NianticがAR分野における野心と比類なきヒットのための広域プラットフォームの構築に努めている中で、自分たちの取り組みを前に進めるのに社外のテックを取り込む準備が整ったことを意味する。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Niantic買収

画像クレジット:Bloomberg/Contributor / Getty Images

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元アップルエンジニアによるLiDAR開発のAevaが上場を前に206億円調達

元Apple(アップル)のエンジニア2人が創業したLiDAR開発のAeva(アエヴァ)が上場に先立ち香港のヘッジファンドSylebra Capitalからプライベート投資で2億ドル(約206億円)を調達した。

カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置くAevaは2020年秋に、特別買収目的会社(SPAC)のInterPrivate Acquisition Corpと合併し、ディール後の時価総額は21億ドル(約2166億円)だと発表した。Aevaによると、InterPrivateの普通株を保有するSylebraからの今回の資金調達により、上場後の調達額は5億6000万ドル(約578億円)超になる。

Aevaは以前、PIPE(限られた投資家を対象に行う私募形式の株式の売出)でAdage CapitalやPorsche SEなどから1億2000万ドル(約124億円)を調達した。InterPrivateが投入していた2億4300万ドル(約250億円)を含め、累計調達額はSylebraが追加投資する前で3億6300万ドル(約374億円)だった。

さらに重要なことには、Sylebraは投資の大半で1年固定契約に踏み込み、全適格株で合併を支持する。合併は2021年第1四半期にクローズする見込みだとAevaは述べた。

Aevaの共同創業者でCEOのSoroush Salehian(ソロウシュ・セールヒアン)氏は投資について、同社の事業モデルと成長プランへの「自信の多数票」と表現した。Aevaは調達した2億ドルをさらなるR&Dへの投資とクルマ、電化製品、産業アプリケーションといった主要特定分野におけるプログラムを大規模展開するのに使う、と同氏はTechCrunchへの電子メールで述べている。

「ここ数カ月、そうした分野で当社のユニークな4D LiDARテクノロジーに対する顧客の関心が高まってきています。追加のリソースによって当社はこの増大する需要によりすばやく対応できます」と同氏は話した。

光検出とレーダー距離測定のLiDARは車周辺の高精度な3D地図を作成するのにレーザー光を使って距離を測定する。Aevaの創業者であるセールヒアン氏とMina Rezk(ミナ・レズク)氏は「4D LiDAR」と呼ぶものを開発した。太陽やその他のセンサーの干渉を抑制しながら、距離に加えて範囲はそのままにすぐさま速度も測定できるというものだ。同社のFMCWテクノロジーは省電力でもあり、知覚ソフトウェアに盛り込むことができる。

LiDARセンサーは、自動運転車の商業展開に必要不可欠なものと広くとらえられている。ただ、このセンサーには多くのユースケースがあり、自動運転車の商業展開への道のりが思っていたよりも長いものになるとわかってから、LiDAR開発会社は他のユースケースを追求し始めた。ここ2年間、自動車メーカーはLiDARを消費者に提供する新しい乗用車、トラック、SUVの高度ドライバーアシスタンスシステムの能力や安全性を高めるために使われる重要なセンサーとして考えられるようになってきた。Aevaのテクノロジーは、主に自動運転車両と高度な運転アシスタンスシステムでの使用を想定して開発されてきた。そしてこのテクノロジーは電化製品での活用でも関心を呼び起こしている、とセールヒアン氏は述べた。

従来のIPO手法を回避してSPAC合併を通じて上場するLiDAR企業はいくつかあるが、Aevaはそのうちの1社だ。VelodyneとLuminarもまた上場企業になるためにSPACと合併した。LiDARスタートアップのOusterは2020年12月にSPACのColonnade Acquisition Corpとの合併を通じて上場することに合意したと発表した。

関連記事:LiDARスタートアップのLuminarが約3600億円のSPAC合併で株式公開へ

カテゴリー:モビリティ
タグ:AevaLiDAR資金調達SPAC

画像クレジット:Aeva

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グーグルとアルファベットの従業員が労働組合結成を模索中

Google(グーグル)とAlphabet(アルファベット)の従業員200人以上のグループが、組合を結成する取り組みを発表した。Communication Workers of America Union’s Campaign to Organize Digital Employees(CODE-CWA、アメリカ通信労働組合のデジタル従業員組織キャンペーン)のサポートを受けて、Alphabet Workers Union(Alphabet労働組合)は従業員と契約労働者の両方に門戸を開くことを模索している。

これまでに227人が労組支援に署名し、組合費として年俸の1%を払うことを約束した。署名した労働者の多くがサンフランシスコ・ベイエリアのオフィスに勤務していて、1人はケンブリッジの勤務だ。

しかし明確にしておくと、Alphabet労働組合は従来の労組と比べ少々変わっている。現在の加入者はAlphabetの従業員13万2121人のうちわずか227人。Alphabet労組が意図するところは必ずしもAlphabet傘下企業と駆け引きができるようになることではなく、共通の目的に向かって一致して取り組むことだ。

「これは歴史的なことです。主要テック企業におけるテックワーカーによる、テックワーカーのための初の労組です」とグーグルでソフトウェアエンジニアとして働くDylan Baker(ディラン・ベイカー)氏は声明で述べた。「我々は代表を選び、民主的に決定を下し、費用を払い、そして会社に自分たちの意見を反映させたいと望むグーグルの全労働者が労組に加入できるようにするためにスキルを持つ幹事を雇います」。

Alphabet労組は、Kickstarter(キックスターター)やGlitch(グリッチ)のようなテック企業での2020年初めの労組結成に続くものだ。加えて、ピッツバーグのグーグルと契約しているHCL Technologies(HCLテクノロジーズ)の労働者とベイエリアのテック企業カフェテリアワーカーも2020年に労組を結成した。

「労働者の産業があります。労働者の新世代、特にテックとゲームの業界においては若い人が急激に増えています」とCODE-CWA組合幹事のWes McEnany(ウェス・マクアナニー)氏は、なぜテック企業に労組が増えているのかについてTechCrunchにこう述べていた。「一部の人は、本当に悪いことをしている企業で働いてかなり儲けています。彼らは、もういい加減にしろ、というような社会的地位にいると思います」。

グーグルは過去数年、多くの労働問題を抱えた。グーグルでのストライキ実行、ストライキ組織者に対する報復措置の報道、Timnit Gebru(ティムニット・ゲブル)博士の最近の退職などがあり、グーグルの労働者が取り組みを公式なものにすることに決めたというのは驚きではなない。

プレスリリースの中で労働者たちは、Alphabet傘下企業で働く労働者の半数以上が契約業者であり、それゆえに彼らは多くの福利厚生が受けられていない点も指摘した。加えて、ハラスメントで訴えられた幹部にかなりの額の退職金が支払われた件や、軍のドローン技術など政府との契約の一部も問題視している。

一方、全米労働関係委員会(NLRB)はちょうど先月、グーグルが労働者を調査し、広範に干渉し、そして全国労働関係法によって保障されている権利の行使を抑制することで全国労働関係法に違反したとしてグーグルを提訴した。

NLRBはまた、「従業員が労組を結成、加入、サポートしたり、他の保護された言動に従事する」ことをグーグルが思い止まらせていたとも主張している。

そうした主張は労働者が組合を結成したい理由だ。ただ、彼らは現在、労働条件について集団で話し合う法律上の権利を持っていない。

従来のプロセスでは、次のステップはAlphabetからの承認を模索することになるだろうが、これは難しい。Kickstarterの労働者が2019年にKickstarterに承認を要求したとき、労働者の大半が労組をサポートしていたにもかかわらず同社経営陣は却下した。承認するどころか経営陣はNLRBと正式な選挙を行うよう強制した。これを受けてKickstarterの労働者は職場をボイコットしたが、Kickstarter労組は発足してから承認されるまでにおおよそ10カ月かかった。

TechCrunchへの最初の声明に続いて出した2つめの声明文の中で、グーグルの人事担当ディレクターKara Silverstein(カラ・シルバーステイン)氏は次のように述べた。

「我々は、協力的でやりがいのある職場づくりに常に懸命に取り組んできました。従業員はもちろん当社が支持する労働の権利を有します。しかしこれまでそうしてきたように、今後も全従業員に会社が直接関わります」。

Alphabet労組は正式に承認されればCWA Local 1400に属する。

「この労組結成は、グーグルワーカーによる何年にもわたる果敢な取り組みの結果です」とグーグルでプログラムマネジャーとして働くNicki Anselmo(ニッキ・アンセルモ)氏は声明で述べた。「『実名』ポリシーとの戦いからProject Maven反対、セクハラをした幹部に支払われた言語道断の退職金への抗議に至るまで、我々が集団で行動したときのAlphabetの対応を目の当たりにしてきました。ニュースで騒がれた後でもAlphabet従業員が敬意を払われるよう、新しい労組は共有する価値観を確かなものにする持続可能な組織です」。

労働者たちはまた、労組結成を決めた理由を詳細につづった論説をニューヨークタイムズ紙に出している。

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英裁判所がウィキリークス創設者アサンジ被告の米国引き渡しを却下

英国の地方裁判所はWikiLeaks(ウィキリークス)の創設者、Julian Assange(ジュリアン・アサンジ)被告の米国への引き渡しを却下した。

ウェストミンスター治安裁判所で現地時間1月4日朝に行われたヒアリングでVanessa Baraitser(ヴァネッサ・バライスター)判事は、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、またアサンジ被告の不安定な精神状態に影響をおよぼすことが考えられるという観点から米国の刑務所システムへの引き渡しは過酷だとして、米国への引き渡しを却下した。

ハッキング陰謀、そして議論を巻き起こしているスパイ活動法に反する数多くの罪を行ったとしてアサンジ被告を自国での裁判にかけることを模索してきた米国は控訴すると述べた。

アサンジ被告の裁判は、報道の自由・表現の自由 vs 国家権力の重要なテストとしてみなされてきた。

判決でバライスター判事はアサンジ被告の引き渡しに対する数多くの弁護論を退けたが、アサンジ被告が自殺を図る恐れがあり、自殺を阻止するために導入されうる回避策に対する知性を被告が持ち合わせているという臨床証言に同意した。

「アサンジ氏が自殺を図るかもしれないというリスクは、裏付けがあるものだと確信しています」とバライスター判事は132ページにわたる判決に書いており、そこでは2020年のヒアリングにあった引き渡しについての多くの精神科医の証言についても触れている。

「かなり高いしきい値を要する引き渡しを阻むものとして、抑圧があることを認めます。また、条約上の義務に影響をおよぼすことにかなりの公益があることも認めます。留意すべき重要な要因です。しかしながら、アサンジ氏の自閉スペクトラム症には「1つのことを思い込む」傾向があり、こうした厳しい条件のもとでアサンジ氏の精神状態の悪化が自殺を招くかもしれないことを認めます」。

また「アサンジ氏の精神状態にとって、米国への引き渡しは過酷なものになり得ます」とも書いている。

判決はアサンジ氏の即日釈放を命じているが、この記事執筆時点で同氏は拘留されていて、保釈聴聞会次第となる。

米国は14日以内に控訴できる。

身柄引き渡しを免れようと2012年から2019年にかけてロンドンにあるエクアドル大使館に籠城したアサンジ被告は、同大使館が外交上の保護を中止した2020年に逮捕された。

アサンジ被告は保釈の条件に違反したとして英国の裁判所で有罪となり、禁錮50週がいい渡されていた

米国は、それとは別の罪状でアサンジ被告の引き渡しを要求するとすぐさま述べた。これらの罪状は、元米軍インテリジェンスアナリストで内部告発者のChelsea Manning(チェルシー・マニング)氏がWikiLeaksにリークした機密情報をアサンジ被告がいかに入手して公開したかにともなうものだ。

【更新】米司法省の広報担当はTechCrunchに次のような声明を出し、控訴する方針を明らかにした。「英裁判所の判決に我々は極めて落胆している一方で、米国が提起した法律上の論点で勝利したことには満足しています。特に政治的な動機、政治的犯罪、公正な裁判、言論の自由についてのアサンジ氏のすべての主張を裁判所は退けました。我々は引き続きアサンジ氏の米国への引き渡しを模索します」。

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Boseの最新睡眠イヤフォンSleepbuds IIは現時点で最も洗練されている

2020年は睡眠という点で不思議な年だった。筆者の睡眠レベルは「少なすぎる」と「多すぎる」の間を行ったり来たりしたが、多くの場合、前者に近づく傾向があった。2020年は、個人的なストレスからより大きな社会的懸念まで、睡眠不足のいい訳に事欠くことがなかった。

そしてありがたいことに、過去数年間、不眠の問題に対する技術的解決策が不足することもなかった。もちろん、時として根底にある問題を特定するのは難しいし、治すのはさらに難しい。特効薬はない。筆者がこの仕事でいつも得ている教訓だ。1つのテクノロジーですべての病気を治すことはできない(何年にもわたる大がかりで高額の治療で解決できないことは何もないと確信している)。

スリープイヤフォンはそれ自体新しい現象ではまったくない。Bose(ボーズ)は2018年半ばに本格的にこの分野に参入し、このカテゴリーに洗練された(そして高価な)アプローチを提示した。同社は、たとえばオーバーイヤーソリューションを提供するKokoon(コクーン)とはまったく異なる方向に進んだ。

Sleepbudsはその名が示すように完全ワイヤレスのイヤフォンだ。第2世代のこの製品は、Boseがオリジナルで抱えていた大きな問題をいくつか克服した。その中にバッテリーに関する深刻な苦情もあった。250ドル(日本では税込3万3000円)のイヤフォンへの影響はかなり大きく、それは文字通りひと仕事だった。

バッテリーと接続に関する苦情は、こう表現しても良いと思うが、すぐに解決されたようだ。筆者が数週間、就寝時に着脱したユニットは現在大きな接続の問題はない(電話をベッドの近くに置いているものと仮定する)。概ねバッテリーは一晩中もち、残量は20%弱となる。目を覚ましたらケースに入れて、数時間で充電される。

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とにかく作りはしっかりしている。会社名とそれから連想する価格からそう期待されているはずだ。スライド式のフタがついたランプ内蔵の金属製充電ケースからイヤフォン自体まで、デザインを全体的にきちんと掘り下げて見ていきたい。ささいなことが眠りの大きな障害になると思う人間として、筆者はイヤフォンが煩わしく感じられないことに好意的に驚いた。イヤフォンは快適に耳に滑り込み、耳と同じ高さに保たれるため、何かに引っかかることはない。柔らかくてゴムのようなウイングも、イヤフォンを所定の位置に保つ素晴らしい仕事をしている。

イヤフォンの最大の制限は、実際にはデザインによるものだ。オリジナルと同様、Sleepbuds IIは付属のアプリでのみ動作する。アプリでイヤフォンをペアリングして位置を特定し、Boseの音楽ライブラリーを提供する。同社のスリープサウンドのキュレーションは全般的に成功している。サウンドは、雨や風のような自然の音から、同社が選んだアンビエントトラック(環境音楽)まである。毎晩「Moby Dick(白鯨)」を読みながら海の音を聞く習慣がついた。とにかくこれは眠りにつくかなり良い方法だ。

機能をある程度限定するという判断を評価したい。筆者はおそらく、デバイスでポッドキャストやテレビ番組を聴き始めると思う。だが、バイノーラルビートやアンビエントセレクションなどにより、イヤフォンで何が達成できるのかを見極めたい。究極的には、消費者に選択肢を与えることは正味ではプラスになると思う。

とはいえ、イヤフォンは限られた(しかし拡大する)サウンドライブラリーに対応できるよう調整されている。アクティブノイズキャンセリングはないが、イヤフォン自体のパッシブキャンセリングとオンボードサウンドが、環境ノイズやいびきなどをうまく遮断する。おそらく、たとえば建設現場の騒音には適さないが、睡眠を妨げる微妙な障害にはうまく機能する。また長距離フライトにも適している。再開された時には。

睡眠市場向けイヤフォンは現在何点かあるが、Boseは現時点で最も洗練されたパッケージだと思う。価格は当然のことながら多くの人にとって障壁となると思われる。そして限られたサウンドライブラリーが断念する理由になる人もいるだろう。だがお金があり、眠りにつくのが難しいなら検討する価値がある。

関連記事:ボーズが睡眠に特化したイヤフォン新製品「Sleepbuds II」を発表

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EarlyBirdは子ども将来のために家族が投資できるアプリ

EarlyBird(アーリーバード)という登場したばかりのフィンテックスタートアップは、家族が子供の将来のために投資できるようにしたいと考えている。EarlyBirdモバイルアプリを通じて、ものの数分で親は未成年者のための後見口座を開くことができる。この口座はUGMA (Uniform Gifts to Minors Act=未成年の子どもへの財産の移譲について規定している法律) 口座としても知られている。こうした口座では一般的に、親あるいは「保護者」が未成年の子どもに代わって株や債権、投資信託、その他の証券などに投資できる。子どもが成年になったとき、それらの投資は子どものものになる。

アプリを通じて親は子どものために口座を開き、家族のメンバーや親しい友人に口座への貢献を呼びかけることができる。

アイデアそのもの、少なくともその精神はHoneyFundのようなものとそう違うものではない。HoneyFundでは、新婚の人たちがギフトの代わりに現金のプレゼントを親しい人にお願いできる。それと同様に、EarlyBirdは家族や友人に寄付を呼びかけることで、子どもにおもちゃやぬいぐるみをあげる以外のプレゼント方法を提供している。ただしEarlyBirdでは単刀直入に募金をお願いしてはいない。結局、これは美化されたクラウドファンディングプラットフォームであり、投資を可能にしている。

特にEarlyBirdは親の後見口座開設を簡単に、そしてわかりやすいものにするのが目的だ。これに挑むフィンテックはEarlyBirdが初めてではなく、たとえばStash(スタッシュ)やAcorns(エーコーンズ)がある。

ただしEarlyBirdは、ソーシャル機能と寄付機能を持つプラットフォームを投資口座に組み合わせている。小切手やグリーティングカードと一緒に渡す現金と違って、口座への寄付を本物の贈り物のようにしようというコンセプトだ。

画像クレジット:EarlyBird

EarlyBirdのアプリでは、寄付する人は投資口座への寄付とともに短いビデオ「メモリー」を録画できる。子どもはのちにこうしたビデオで回顧でき、これにより寄付をよりソーシャルで個人的な体験にすることができる。加えて、他の家族のメンバーや友人もビデオを閲覧し、その子どもの投資口座に寄付しようという気持ちになるかもしれない。

EarlyBirdのアイデアは、AgilityIOの前COOで現在EarlyBirdのCEOであるJordan Wexler(ジョーダン・ウェクスラー)氏と、かつてYello.coで働きバイスプレジデントまで務め、いまEarlyBirdでCOOをしているCaleb Frankel(カレブ・フランケル)氏によるものだ。

ウェクスラー氏は、自身の身内の家庭に子どもが生まれたときに、実際の贈り物に代わる方法としての投資を考え始めたと説明する。

「かわいらしい姪が生まれた数年前に経験した問題からすべては始まりました。私は姪っ子に首ったけで、馬鹿馬鹿しいぬいぐるみに数百ドル(数万円)も使いました。かなりゴミのような贈り物にです」と話す。

数年前、同氏は子どもに代わってインデックスファンドに現金を投資するというアイデアを思いついた。

「私は姪っ子の人生に大きな影響を、彼女が大きくなったときに実際に使うことができるようなものを与えたかったのです」と同氏はいう。

実際、ウェクスラー氏の父親はかつて同じことを同氏のために行った。ウェクスラー氏が12才だったとき、父親はTD Ameritradeの口座を通じて彼にお金を与えた。後にウェクスラー氏はこの口座からお金を引き出して、最初のスタートアップの資金に使った。このスタートアップは中国・青島市のSucceedOverseasで、企業の従業員転勤をサポートする戦略コンサルだった(2015年にChiway Education Groupに買収された)。

ウェクスラー氏はEarlyBirdの共同創業者フランケル氏に青島市で出会い、そして米国に戻ったときに再会した。彼らは2019年、子どものために後見投資口座を開きたい親向けにそのプロセスを簡単にしようとEarlyBirdでチームを組んだ。

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公平な観点からいうと、おそらく後見口座は子どもを持たない人にはあまり知られていない投資ビークルだ。子どもがいる人にとってもある程度そうかもしれない。これは、もう1つの選択肢である529プラン(米国の学資積み立てのための公的貯蓄制度)の方が税制上の利点があるためにもっと人気があるからだ。

いずれの口座でも未成年に代わって家族が投資できる一方で、529プランの投資は税が免除される。授業料や家賃、寮費、本など教育にかかる費用のための出金にも課税されない。これは大きな特典だ。

一方、UGMA口座はある水準になると課税される。不労年間所得1100ドル(約11万円)は非課税だが、それ以降の2200ドル(約22万円)までは子どもの税率で課税される。2200ドル以上の不労所得は、子どもの税率よりも高い信託・遺産の税率で課税される。

UGMA口座への寄付は所得税控除の対象にはならないが、個人向けなら1万5000ドル(約155万円)まで、既婚カップルまでなら3万ドル(約310万円)まで課税されない。

ほとんどの家庭が大学の費用や税金上のメリットを想定して投資しているため、529プランはよく知られている。しかしウェクスラー氏は、状況は変わりつつあると指摘する。

「多くの親が実際には15年後の教育や大学がどのようなものになっているか想像できず、もう少しフレキシブルなものを求めています」と説明する。

加えて、UGMA口座は必要なら大学のために使える。しかしもし、いつの日か米国の大学の費用が無料になったら、UGMA口座の投資は何にでも使える。そうしたフレキシビリティは、このところ一部の親にとってUGMA口座、そしてこの分野に参入しているAcornsなどの他のフィンテックが魅力的に映る理由だ。

しかしEarlyBirdは1年以内に529プランにサービスを拡大する、と話す。ただそこから開始しなかっただけだ。

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Acorns、Stashの後見プランと、EarlyBirdとの別の違いはEarlyBirdがいかにプロダクトに財務管理リテラシーを組み込んでいるかだ。

誕生から5才までの間、親は子どもの口座をすべて管理する。しかし子どもが6〜13才のとき、親は子どもに特別な「閲覧のみ」モードでアプリを見せることができる。このモードでは子どもは自分の投資を確認し、増えていく様子を見ることができる。13〜18才で子どもはアプリをダウンロードでき、親と一緒にアプリを操作できる。そして18才(州によっては21才)以降は子どもが口座を管理する。

EarlyBirdはまた、保守的なものからハイリスクハイリターンのものまでそろったさまざまなポートフォリオを提供することで投資をシンプル化している。保守的なものだとポートフォリオは100%ETF債権ベースのものになり、アグレッシブなポートフォリオは100%ETFエクイティベースのものだ。Acornsと同様、EarlyBirdは固定されたポートフォリオモデルも提供している。しかしEarlyBirdはまた、ユーザーが自分の価値観に合わせて投資できるようカスタマイズしたポートフォリオも提供する。そしてユーザーは規模を問わず再投資の自動化を選ぶこともできる。

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ポートフォリオはEarlyBirdアドバイザーEvan List(エヴァン・リスト)氏が率いる金融アドバイザーの専門家チームがデザイン・構築した。同氏はBernstein Private Wealth Managementで12年間バイスプレジデントを務めている。ポートフォリオには、各出資比率がEarlyBirdが定めた目標とする分配の10%以内に留まるようにする調整エンジンをバックエンドに統合している、と同社は話す。必要に応じて、他のロボ投資家と同様に四半期ごとにポートフォリオをレビューし、再分配する。

現在、EarlyBirdの投資口座はApex Clearing Corporationとの提携のもとに展開されている。Apex Clearingは米証券取引委員会に登録しているブローカーディーラーで、米金融業規制機構(FINRA)と米証券投資家保護公社(SIPC)の会員だ。この提携により、計50万ドル(約5200万円)までの投資は保護される。EarlyBirdはゆくゆくはブローカーディーラーに移行することを目指している。

現在EarlyBirdは月3ドル(約310円)の管理費で売上を上げている(子ども1人増えるごとに月1ドル=約103円プラスされる)。

今後は多くのフィンテックがそうであるように収益化を追求する。Apex Clearingとの取引と決済を活用する計画だ。そしてブローカーディーラーに移行するにつれ(ユーザーベースと管理資産の規模が大きくなったとき)、他のブロケージ同様に有料貸付プログラムを展開する。

はっきりさせておくと、こうしたプログラムは現在提供されておらず、EarlyBirdは設立されてまだ1週間だ。

同社は、Network Venturesがリードし2020年11月にクローズしたラウンドで240万ドル(約2億5000万円)を調達した。本ラウンドにはChingona Ventures、Bridge Investments、Kairos Angels、Takoma Ventures、Subconscious Ventures、そのほかさまざまなエンジェル投資家が出資した。

EarlyBirdのiOSアプリは無料でダウンロードできる。

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(翻訳:Mizoguchi

エネルギー貯蔵システム開発のFluenceのバリュエーションが1030億円以上に

カタール投資庁(QIA)は、エネルギー貯蔵システムインテグレーターであり、電力管理技術開発会社であるFluence(フルーエンス)に1億2500万ドル(約130億円)を投資する。この取引におけるバリュエーションは10億ドル(約1030億円)を超える。

Fluenceは米国の独立系発電事業者であるAES Corp(AESコープ)とドイツの産業コングロマリットSiemens(シーメンス)の合弁事業。同社の戦略および提携担当副社長であるMarek Wolek(マレク・ウォレク)氏によると、取引前にすでに9億ドル(約930億円)の評価がついていた。

Fluenceは新しく得た現金でソフトウェアとサービスの開発および取得を目指す、とウォレク氏は話す。同社の中核クライアントである電力会社や独立系発電事業者に提供するメニューを増やせるという。

そして、同社が公開市場から追加の流動性を求めるまでそれほど長くはないかもしれない、とウォレク氏は語る。QIAはすでにバッテリー会社のQuantumScapeに投資していると同氏は指摘した。QuantumScapeは2020年11月下旬に特別目的買収会社に買収されて以来、株価が急上昇している。

QIAによる投資後、AESとSiemensは引き続き過半数を持つ株主として留まる。2社はそれぞれ44%の持ち分を保有する。

「世界的な気候変動の問題は、世界中の技術者と投資家の能力を組み合わせて初めて取り組めるものだと信じています」と、Fluenceの最高経営責任者であるManuel Perez Dubuc(マニュエル・ペレス・デュブク)氏は声明で述べた。「エネルギー貯蔵は脱炭素グリッドの要です。QIAを国際的な株主として加えることで、Fluenceはさらに迅速にイノベーションを起こし、大規模バッテリーを基礎とするエネルギー貯蔵の巨大な世界市場に打って出ることができます」

ワンプラネット・ソブリンウェルスファンド・イニシアチブの創設メンバー6社の1つであるQIAは数十億ドル(数千億円)規模の投資ビークルだ。Fluenceのような気候関連のテック企業への支援継続に必要な多額の資本を有する。

ウォレク氏によると、Fluenceはすでに約5ギガワットのエネルギー貯蔵および管理システムを幅広い顧客に導入している。

Fluenceは自社とそのエネルギー貯蔵事業を世界的な脱炭素化の重要な一部分であると考えている、とウォレク氏はいう。脱炭素化は気候変動との戦いで不可欠だ。だが、必要な技術は電力の貯蔵だけではない。

「エネルギー市場と1つのテクノロジーを見て、その1つのテクノロジーがすべてを解決するというのは難しい」とウォレク氏は述べる。

むしろ同社の役割は、同社が展開するバッテリー技術を、業界や社会が必要とする電力供給に求められる他の技術と統合できるようにすることだ、とウォレク氏はいう。「私たちは絶対にバッテリーベースのストレージの専門家になりたいと思っています」とウォレク氏は述べる。「同時に、ストレージにとどまらず給電機能を拡張するため、デジタル面にかなりの投資を行っています」。

それは将来、水素燃料プロジェクトの開発者のような他のエネルギー供給業者と協力することを意味するかもしれない、と同氏はいう。

「私たちはバッテリー側のエネルギーの部分をマスターしたいのです」とウォレク氏は会社の究極の目標について語った。

その目標は同社をElon Musk(イーロン・マスク)氏のTesla(テスラ)が手がけるエネルギー事業と衝突するコースに置くことになるかもしれない。

現在のFluenceの10億ドル(約1030億円)という評価額と、QuantumScapeの366億ドル(約3兆7700億円)という時価総額は、テスラの価値が6500億ドル(約67兆円)を超えると見られている理由を説明している。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:カタール投資庁Fluence投資

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中国の適応制御ロボットメーカーFlexivが103億円調達、北米進出も視野

世界中の事業所が生産ラインとサプライチェーンの自動化に目を向けるにつれ、ロボットを製造する企業が投資家の関心を大いに集めている。資金調達した最新例がFlexiv(フレックヒブ)だ。TechCrunchが入手した情報によると、同社は中国のオンデマンドサービス大企業Meituanなどの投資家から1億ドル(約103億円)超を調達してシリーズBラウンドをクローズした。

他の主な投資家には中国のベンチャーキャピタルファームMeta Capital、中国の大手農業法人New Hope Group、プライベートエクイティファームLongwood、Jack Ma(ジャック・マー)氏のYF Capital、名高いベンチャーキャピタルファームGaorong CapitalGSR Ventures、そしてPlug and Playの中国と米国のベンチャーなどが含まれる。今回のラウンドによりFlexivの累計調達額は1億2000万ドル(約124億円)超になった。

同社は中国のいくつかの主要都市とカリフォルニア州で事業を展開し、従業員の3分の2は中国に配置している。AIスタートアップに共通の戦略は、米国で働いたか教育を受けた中国人の創業者によって練られている。

スタンフォード大学のBiomimetics and Dexterous Manipulation Lab(生体模倣技術および高度活用に関するラボ)の卒業生であるWang Shiquan(ワン・シークアン)氏は2016年、製造業のための適応制御ロボットを専門とするFlexivを創業した。今回調達した資金で同社はAIで動く多目的のロボットをサービス業や農業、ロジスティック、医療ケアといった他の分野で応用する計画だ。

たとえばMeituanの戦略投資を通じて、FlexivはMeituanのフードデリバリー事業にソリューションを提供できるかもしれない。フードデリバリー業務には繰り返し作業や、かなりのボリュームの作業が含まれ、オトメーションが導入されつつある。

FlexivのロボットRizonによる曲面作業(画像クレジット:Flexiv)

その一方で従来の製造業においてはオートメーションを導入する余地はまだかなりある、とワン氏はTechCrunchとのインタビューの中で述べた。特に家電は高精度でデリケートな製造プロセスを要するため、往々にして製造ラインは新製品のために刷新される必要がある。力覚フィードバックとコンピュータービジョンシステムを備えているFlexivのロボットは新しい環境に適応でき、新装置のセットアップにかかる時間とお金を節約できるかもしれない、とワン氏は主張した。

同社のフレキシブルなロボットは競合他社のものとは異なる、とも同氏は述べた。

「従来のロボットアームは周辺に障壁がない時は安全にタスクをこなせます。しかし複雑な環境での作業になるとやや能力は落ちます。皿洗いなどシンプルに見えるタスクの多くは実際にはかなりのAIベース認識と判断力を必要とします」。

Flexivは2020年下半期に大量生産を開始し、これまでに約100のロボットを製造した。ロボット販売、ソフトウェアのライセンス貸し、アフターサービスの提供で収益を上げる計画だ。今後の課題は、同社の新しいテクノロジーを信じてくれるパートナーや顧客をさまざまな業界で探すこととなる。

同社にとってまだ中国が最大のマーケットだが、海外展開においては北米が主要マーケットだ。ワン氏は「それぞれの国にロボティクスの先端をいく競合企業があります」との考えを示した。「中国の強みは製造、サプライチェーン、人件費です」。

「従来のロボティクスと適応制御ロボティクスの分野における各国間のギャップは確実に狭まっています」とも述べている。

関連記事:室内用フードデリバリーロボットを開発する中国のPuduが約16.1億円調達

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Flexiv資金調達中国

画像クレジット:Flexiv

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナで露見したサプライチェーンの脆弱性

パンデミック初期、程度の差こそあれ、世界中でロックダウンが行われそうなことは明らかだった。当然のことながら、トイレットペーパー(および、そこまでではないがペーパータオルとティッシュ)が飛ぶように売れた。店側は突然、人間が消費する最も基本的で便利なモノの1つが売り切れていることに気づいた。

このレベルまで人々が備えるというのはかつて見られなかったし、サプライチェーンの準備も整っていなかった。サプライチェーンは依然としていつも通りのスピードで動いていたため、需要と供給の間にギャップが生じた。

パンデミックがさらに進行すると、基本的な商品の供給というこの問題は、個人用保護具(PPE)の安全の限界を引き伸ばしていた最前線の労働者に移った。これにより需要の急変によるサプライチェーンへの影響が明らかになった。企業は自社の設備を保護具と手指消毒剤の生産に再利用し始めた。手っ取り早く利益を上げる目的の企業もあれば、サプライチェーンのニーズを満たす目的の企業もあった。

政府や企業は緊急に対応した。サプライヤー候補からの申し出をまとめるスプレッドシートがあったようだ。

この間、市場全体を概観することは困難だった。品質、仕入先の検索、価格変動があらゆるところで混乱を引き起こしていたからだ。製造元を追跡し、製造施設の品質管理に関するデータを入手することはほぼ不可能だった。市場は粗悪な製品や偽物で溢れかえっていた。サプライチェーンの構造に関する解説記事が初心者向けガイドとともに出始めた。

消費者は、現状のシステムがこういった激変のために構築されたものではないことを理解し始めた。

再考を促される企業の調達戦略

我々がはっきりと目撃したのは、企業はサプライチェーンをほとんどコントロールできないということだ。大半の企業は通常、直接の調達先に関して穏やかに機能するリスク計画しか用意していない。我々のほとんどがXbox Series XやPlay Station 5なしでこのホリデーシーズンを過ごさなければならない理由はこれだと察しがつく。そうしたゲーム機は1つの調達先からの部品で作られる製品ではない。1つのゲーム機を作るために多数の部品と材料が使われる。

外装材の仕上げ工程から、染色のための材料、各種プラスチック、低コスト国に生産拠点を設ける必要性といった要素すべてが、物事が正常に動かない場合には生産を遅らせる可能性がある。ゲーム機を分解すると企業、プロセス、材料、国からなる非常に複雑なマトリックスを見てとることができる。

もし我々が、ゲーム機の各部品の旅をすべての材料、関係する人間、企業、場所をわかりやすく表現し、直接可視化できれば、サプライチェーンの非効率性がどこにあるのか特定できる。

すべての材料と部品はサプライチェーンのどこかを通るが、その過程でストーリーは失われる。個別具体的なデータは入手できないため、企業と国のいずれも、サプライチェーンを混乱に陥れる世界的な出来事に備える効果的なリスク計画の作成に苦慮している。

現在、ほとんどの人が気づかぬところで革命が起こっている。分散型台帳技術(ブロックチェーン)により透明性をサプライチェーンにもたらすことが可能になりつつあるのだ。

脆弱性を特定する

企業が自らを守るためリスクの所在を把握しようとするなら、いろいろ掘り下げて考える必要がある。そのためには、直接の調達先やそのまた調達先をはるかに超え、流通施設や輸送ハブを含む完全なサプライチェーンのマッピングが必要となる。これは時間と費用がかかるため、ほとんどの大手企業は支出の大部分を占める戦略的な直接の調達先にのみ注意を向けてきた。

だが、サプライチェーンを詳しく調べるよりも、ビジネスを停止させる突然の混乱の方がはるかにコストがかさむ可能性がある。

マッピングプロセスの目標は、サプライヤーを低・中・高リスクに分類し、適切なリスク緩和戦略を練ることだ。ただしこのアプローチは、サプライチェーンの任意のポイントで異なるサプライヤーが生成するデータにアクセスできる場合にのみ可能となる。その場合はデータを信頼することができ、分析が可能になる。

目的は遅延や混乱を早期に警告し、調達先の多様化または主要な材料や品目の備蓄を可能にすることだ。もちろんこれはすべて不確実だ。トイレットペーパーがなくなってからわずか数カ月後にはワクチンが普及している。

パンデミック、ワクチン、サプライチェーン

我々がグローバルで自由な市場だと思っていたものが2020年試された。医薬品会社は、インドで生産された頭痛薬の有効成分など、いくつかの主要成分を調達できない事態に直面した。すべては自国で必要とされる商品を確保するための国同士の戦いになった。この傾向は、貿易におけるナショナリズムと保護貿易主義の高まりによっても強化された。サプライチェーンの管理と可視化の必要性は明白であり、民間部門だけでなく政府にとっても優先事項になった。

ワクチンの展開によりリスク、調達、プロセス管理という点だけでなく、品質と責任という点からも上記の問題が発生する。偽物からサプライチェーンプロセスの極めて特定のポイント(Reuters記事)を標的とするすでにアクティブなサイバー攻撃(ワクチンは特定の温度で出荷・保管する必要がある)まで、製造におけるすべてのタッチポイントのストーリーを伝える分散型物流システムの必要があろう。だがすでに見られるように(The Washington Post記事)、政府が自身のサプライチェーンに対するニーズを管理できないなら、こうしたことはそもそも問題にすらならない。

新型コロナウイルスのパンデミックから教訓を得ることは可能だ。企業と業界全体が政府と緊密に協力して、グローバルなサプライチェーンモデルを再考し変革する時が来た。1つ確かなことは、パンデミックがすでに多くの組織、特に原材料または完成品を世界中からの調達に大きく依存している組織の脆弱性を露呈したということだ。

幸いなことに、サプライチェーン全体の可視性を高め、リスクを軽減し、次のパンデミックという変動性に対処できるインフラを構築する新しいサプライチェーンテクノロジーが登場している。サプライチェーンに沿って提供されるデータの説明責任と信頼を確保するためのソリューションとして、分散型台帳テクノロジーが有用であることはすでに証明されている。デジタルサプライネットワークは、線形サプライチェーンモデルに徐々に取って代わり、機能別のサイロを分解し、エンド・ツー・エンドの可視性、コラボレーション、機動性、最適化を実現する。

これは将来に向けた朗報だ。家から働き、トイレットペーパーを備蓄し、更新ボタンをクリックしてまったく数が足りないゲーム機がカートに追加されているのを期待するような1年を過ごしてきた我々は皆、今やサプライチェーンロジスティクスの専門家だからだ。

【Japan編集部注】Jens Munch Lund-Nielsen(イエンス・ムンク・ルント・ニールセン)氏は、IOTA Foundationのグローバルトレードおよびサプライチェーンの責任者。

カテゴリー:その他
タグ:サプライチェーン新型コロナウイルス

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(翻訳:Mizoguchi

韓国の不動産物件情報をデジタル化・集約表示するDongnaeが約4.2億円調達

パンデミックによりほとんどの時間を1カ所で過ごすことを余儀なくされているにもかかわらず、不動産テックは好調だ。それも米国でだけではない。

Dongnae(トンネ)は韓国の不動産賃貸・売買マーケットのデジタル化に挑んでいる。同社は410万ドル(約4億2000万円)のシードラウンドのクローズを発表した。本ラウンドはFlybridgeとMetaPropがリードし、Goodwater CapitalやMaple VC、そして韓国と米国のさまざまな戦略的エンジェル投資家が参加した。今回のラウンドによりDongnaehの累計調達額は480万ドル(約5億円)になる。

Dongnaeは韓国生まれ、ニュージャージー育ちのMatthew Shampine(マシュー・シャンパイン)氏によって設立された。WeWork Labsを運営しながら、シャンパイン氏はアジア、特にコワーキング大企業の部門を設立するために韓国に駐在した。何回も転居し、同氏はかなり細分化された韓国の不動産マーケットに巨大な穴を見つけた。

Dongnaeは米国のRedfin(レッドフィン)にかなり似ている。買い手と借り手に新しい家探しのための集約された場所を提供している。現在、Dongnaeは韓国初の真のMLS(不動産情報システム)を構築するために同国の何千ものブローカーと提携していて、買い手側または借り手側にのみ物件を表示する。

いくつか重要な事情がある。韓国の不動産マーケットは米国のものと大きく異なる。まず、ほとんどの建物の1階には小売スペースがあり、建物にはそれぞれブローカーが付いている。つまり、限られた数の不動産だけを扱う何千人ものブローカーが韓国には存在することを意味する。実際、韓国よりもかなり人口の多い米国と同じだけのブローカーが韓国にはいる、とシャンパイン氏は話す。

2つめに、ブローカー業界全体が細分化されているために、取り扱い可能な全物件をまとめている真のMLS(マルティプルリスティングサービス)が韓国には存在しないことだ。借り手や買い手は何十人ものブローカーにあたらなければならず、通常オンラインで写真を閲覧するのではなく、実際に物件を見に行かなければならない。このシステムではブローカーが往々にして買い手・借り手サイドと売り手サイド両方の代理人を務めることになり、つまり買い手側にとって一番良い状態で交渉することにはならない。

Dongnaeは扱われている全物件を1カ所に集約するのにブローカーと提携していて、物件をブラウズできるインターフェースを買い手や借り手に提供している。実際、DongnaeではTinderのようなエクスペリエンスとなる。理想とする物件、最終的にぴったりとくる物件を探すために左右にスワイプできる。

Airbnbと違ってDongnaeは煩雑な作業をこなしている。4Kの写真を撮り、各写真にデジタルウォーターマークを入れ、それをブローカーに渡したりしながら各物件のデジタル一覧を構築し、Dongnaeに掲載している。

「必ずしもフランチャイズではなく、かなり提携に近いものです」とシャンパイン氏は話した。

Dongnaeは、他のブローカー同様に買い手側から手数料を徴収することで収益を上げている。韓国では手数料は約8%だ。Dongnaeのチームは25人で、男女の割合はほぼ半々とかなり多様性がある。

カテゴリー:その他
タグ:Dongnae韓国不動産テック資金調達

画像クレジット:Dongnae

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新型コロナ関連の研究も行うDNA分析の23andMeが約85億円調達

米証券取引委員会に提出された書類によると、DNAテストを行うテック企業23andMeが総株式額8500万ドル(約88億円)で新たに8250万ドル(約85億円)弱を調達した。Wall Street Journalが確認して報じた(Bloomberg記事)今回の資金調達にはSequoia CapitalやNewView Capitalといった投資家が参加した。23andMeがこれまでに調達した資金は累計8億5000万ドル(約880億円)となる。

Wall Street Journalに宛てた23andMeの声明によると、シリーズFラウンドに特定の意図はなく調達した資金は事業拡大に充てる。23andMeの事業は個人向けの在宅遺伝子テストキットの提供がメインで、このテストで個人は自身の健康について、そしてDNAに基づく家系図について知見を得ることができる。

健康増進と先祖や家系図についての情報獲得を個人向けに宣伝する一方で、同社は収集したデータに基づく研究にも注力してきた。自社による最近のデータ活用例としては遺伝子マーカーがいかに新型コロナウイルス(COVID-19)への感受性に影響を及ぼすか、というものがある。またサードパーティーの研究を支援するためにデータを使うこともある。ただし、データはそうした目的に限定し、集合・匿名化されたフォーマットで共有される、と同社は強調している。

23andMeは1月に従業員全体のおおよそ14%をレイオフしたことを認めた。ただしパンデミック、そして同様のグローバルな健康危機が将来起こりうるという可能性に直面する中で、新型コロナに関する2020年の取り組みで同社のプラッットフォームに新たな価値が見出された。

関連記事:米テック業界で続くレイオフ、遺伝子検査の23andMeでも

カテゴリー:ヘルステック
タグ:23andMe遺伝子資金調達

画像クレジット:ERIC BARADAT/AFP / Getty Images

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2020年は大麻にとって決定的な年だった、今後の展開は

新型コロナウイルス(COVID-19)がこの1年を支配した、との表現は控えめだ。パンデミックは私たちのビジネス、他の人間、周りの世界との関わり方の方向性を変えた。eコマースからデジタル決済まで、ビジネスの多くのトレンドが数カ月で数年分進んだ。

大麻業界も例外ではない。大麻はすでに米国内で最も急速に成長している産業だが、2020年は次の段階へ進む年となった。現在、大麻の合法化を支持する米国人は記録的な割合に達している。

誰に聞いても、大麻は大統領選挙の日の最大の勝者の1つだった。アリゾナ州、モンタナ州、ミズーリ州、ニュージャージー州、サウスダコタ州で合法化されたのだ。現在、米国の3分の1以上(1億1100万人以上)が娯楽用の大麻が合法化された州に住む。合法的なこの業界の規模は2021年までに245億ドル(約2兆5000億円)になると見込まれている。

今や大麻が米国のメインストリームの定番となったことはかつてないほど明白だ。この上昇軌道は2021年に向け、業界だけでなく経済全体にも新たな扉を開く。イノベーション、投資、雇用の機会がこの分野に流れ込む。

「グリーン」エコノミー

3月以来、5700万人以上の米国人が失業保険を申請した。大麻に関連する経済的機会や雇用の機会は特効薬ではないが、無視すべきではないことは確かだ。

合法大麻の売上高は2019年に200億ドル(約2兆800億円)近くに達し、今後4年以内に年間400億ドル(約4兆1600億円)を超えると予想されている。業界の成長に合わせ、企業は採用を進めている。合法的な大麻の市場はフルタイム換算で24万3700人の米国人の仕事を支えている。その数は2018~2028年に250%の増加となる見込みだ。大麻業界は米国で最大の新規雇用を生み出す源となる。

大麻はまた、州の経済を強くする。特に州と地方の予算が減少する中で、税収を増やす機会を生み出すことができる。たとえばアリゾナ州は新しい合法化措置の下、大麻の販売に16%の税金を課す。この税金はコミュニティーカレッジ、警察、消防署、公衆衛生プログラムに向けられる。

大麻eコマースの進化

2020年に強まった傾向が1つあるとすれば、それは大麻の需要が非常に高く、不可欠な消費財だということだ。

この春の外出禁止令の広がりの中で食料品店、ガソリンスタンド、薬局と並んで、多くの州で大麻を扱う小売店が「エッセンシャル(生活に不可欠)」に分類された。デパートで買い物をしたり映画館に行ったりすることはできなかったが、大麻を扱う近くの小売店で買うことはできた。政府のこの承認は、大麻業界がメインストリームに引き上げられたという市場への強いシグナルとなった。

消費者からの強い反応が記録的な大麻の売り上げにつながった。前例のない需要により、大麻の小売業者はビジネスのやり方や顧客の商品購入方法に革命を起こすことを余儀なくされた。ウイルスを広める可能性のある人と人との直接の接触を最小限に抑えるため、大麻を扱う小売店ではビジネスを最新化するため、また従業員と消費者の安全のため、eコマースとデジタル決済ソリューションにすばやく目を向けた。

こうした業界全体での変化の結果、オンライン売上高は年末までに7億9450万ドル(約830億円)に達する。これは当初の見積もりをはるかに上回る。専門家はパンデミックがeコマースへのシフトを5年早めたと推測する。この傾向はDutchieでも見られた。3月以降、オンライン注文は700%増加し、平均注文数量は32%増加した。

2021年に向けて

こうした政治やビジネス上の変革は驚異的なスピードで早送りされたマイルストーンだった。では次に来るのは何か。

合法的な業界の最前線でテクノロジーの革新が進んでいる。大麻を扱う小売店は、コンプライアンスが不可欠であり高度に規制された業界における業務をテクノロジーにより合理化できる。次に、小売店がより積極的に情報に基づく意思決定を行うにはデータをもっと理解する必要があるため、データがますます重要になる。これは、あらゆる規模の小売店で重要になるが、特にオンライン体験をより高いレベルに引き上げたい大規模小売店で重要になる。

このニーズを満たす新しい法人向けソリューションがついに市場に登場しつつある。小売店はこうしたソリューションでデータをフル活用し、オンラインでの独自性をデザインすれば、もっと多くのプレーヤーが業界に参入したとしても競争力を維持できる。

合法化が広がるにつれ業界もさらに合法的になり、大麻の販売と使用は後ろめたいものではなくなる。大麻を扱う企業はメインストリームの様々な業界の最も著名な企業から多くの優秀な人材を引きつけるようになるはずだ。以前はこの分野への参入をためらっていたソフトウェアプラットフォーム、企業、投資家が大麻関連企業と協力し、投資を始めると思われる。また、大麻の連邦レベルでの合法化は流動性を高め、より多くの投資取引へ扉を開く可能性を秘めている。

さらに、すでに見え始めた動きとして、小売業者が大規模な買収や合併を続け、業界全体で統合の傾向が高まっている。複数の州で営業する多くの企業が小さなプレイヤーを飲み込む。小さなプレイヤーは力を合わせてまとまり、業界のプレイヤーは集約されていく。

大麻の未来

大麻産業はまだ揺籃期にあるが、その可能性は非常にはっきりしている。

より多くの州で合法化され、業界が成長・成熟するにつれ、方位磁針の向きは私たちが望む方向と近くなるだろう。合法的な大麻の産業は他のメインストリームの産業と同じようにテクノロジーと資金にアクセスできる業界になる。イノベーターはもっと自由に集まり、業界を前進させる最新のテクノロジーソリューションを開発できるようになる。そして、消費者と患者は望むものをもっと容易に手に入れられるようになる。

【Japan編集部注】筆者Ross Lipson(ロス・リプソン)氏はオンライン大麻市場であるDutchie(ダッチー)の共同創業者でCEO。同氏はオンラインでの料理の注文を含むさまざまな業界向けの高度で公平なデリバリーサービスで10年以上の経験を持ち、2つの事業のイグジットに成功した。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:大麻アメリカ

画像クレジット:Helen H. Richardson/Media News Group The Denver Post / Getty Images

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英AIチップメーカーGraphcoreが約230億円調達、IPOも視野に

自動サービスによるシステム、薬剤開発やウイルス拡散の予測に使われているプラットフォーム、5Gネットワークのトラフィック管理など、人工知能ベースのアプリケーションは動かすのに途方もない計算能力を必要とする。そうしたタスクに合わせたプロセッサーのデザイン・製造分野における最大手の1社が米国時間12月29日、事業を次なるレベルにもっていくために大きなラウンドをクローズした。

英国ブリストル拠点のAIチップメーカーGraphcore(グラフコア)はシリーズEで2億2200万ドル(約230億円)を調達した。CEOで共同創業者のNigel Toon(ナイジェル・トゥーン)氏がインタビューの中で明らかにし、調達した資金はいくつかの主要目的のために使われると述べた。

Graphcoreはまずこの資金を「IPU(Intelligence Processing Unit)」と呼ばれるアーキテクチャを基にしたテクノロジーを引き続き展開するのに使う。IPUはAIアプリケーションのために最適化されているNVIDIA(エヌビディア)やIntel(インテル)のチップと競合する。そしてGraphcoreは今後あり得る上場に向けた財政面の補強にも資金を使う。

今回の調達で、Graphcoreが保有するキャッシュは4億4000万ドル(約456億円)となり、ポストマネーのバリュエーション27億7000万ドル(約2868億円)で2021年をスタートさせることになる、とトゥーン氏は述べた。

「当社は賭けに出て急成長し、目の前にあるチャンスを最大限活用するという攻めの立場にあります」と同氏は付け加えた。今回のシリーズEを「プレIPO」ラウンドと呼ぶには時期尚早かもしれませんとも話し、「十分なキャッシュを確保し、これにより次の段階に移ることになります」と述べた。ここ数週間、同社は英国ではなく米国のNASDAQ(ナスダック)上場を目指しているのではと噂されてきた。

今回の資金調達は複数の投資家からのものだ。カナダのオンタリオ州教職員年金基金がリードし、Fidelity InternationalやSchroders、そして既存投資家のBaillie GiffordやDraper Espritも参加した。Graphcoreの累計調達額は7億1000万ドル(約735億円)になった。

シリーズEでGraphcoreはバリュエーションを増やした。2020年2月にシリーズDの資金調達に1億5000万ドル(約155億円)追加したとき、バリュエーションは19億5000万ドル(約2020億円)だった。しかしそれでもやはり、トゥーン氏は今年が同社にとって「困難の多い」年だったと表現した(世界全体にとってもそうだった)。

「スピードバンプ(減速させるための路上の隆起)の年だったと思います」とトゥーン氏は話した。「困難に直面し、物事を進めるスピードを再調整しました」。

多くの企業にとってそうだったが、2020年はさまざまな面で異なっていた。

1つには、Graphcoreのハードウェアとソフトウェアのプロダクト開発は、これまでになく小さなパッケージに最速のプロセッサーを搭載して進められた。同社は7月にフラッグシップのチップ「GC200」の第2世代と、同チップで作動する新しいIPU Machineを立ち上げた。IPU Machineについて、同社は立ち上げ時に「ピザボックスのサイズで」処理能力ペタフロップを達成した初のAIコンピューターと表現した。

その一方で、そうしたプロダクトの製造と立ち上げの大部分はリモートワークで行われた。新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑制するために従業員は在宅勤務となった。新型コロナは世界を呑み込み、事業運営の仕方を大きく変えた。

実際、業界全体として、そして先行きが不透明な中で企業がいかに支出し、投資するかも大きく変わった。Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Google(グーグル)など一部の企業は自社チップ製造に真剣に取り組むようになった。他の企業では統合整理がみられた。たとえばNVIDIAはArm(アーム)を400億ドル(約4兆1400億円)で買収した。

こうした動きはGraphcoreにとって逆風となった。Graphcoreは買収する予定はまったくない、とトゥーン氏は述べた。同社の戦略は自社のリソースによる成長をベースとしている。

そして、驚くことではないが、同氏はNVIDIAによるArm買収を歓迎していない。「注意深くなければ、あまりにも統合が進んでイノベーションを殺しかねません」とトゥーン氏は話した。「当社は英国政府に自社の姿勢を明確に示しました。当社は、NVIDIAとArmのディールがいいものだとは考えていません」。これは多少皮肉だ。というのもトゥーン氏と共同創業者のSimon Knowles(サイモン・ノウルズ)氏は前のスタートアップを他ならぬNVIDIAに売却したからだ。

トゥーン氏はまた、Graphcoreの新規顧客についても言及を避けた。しかし金融サービス企業やヘルスケア業界、自動車メーカー、インターネット企業など、同氏がいうところの「巨大企業」が関心を示していると述べた。そうした企業は、システムを運営するのに、あるいは自前で開発することもあるプロセッサーを補完するために、Graphcoreが構築しているテクノロジーを必要としている。(Graphcoreの戦略的投資家にはMicrosoft、BMW、Bosch、Dellが含まれる)

Graphcoreは「大量生産ボリューム」の最新プロダクトを出荷していると話した。そしてトゥーン氏は大企業数社が2021年に発表されるだろうと述べ、来年はチップ業界にとって全体的に2020年より平穏な年になるだろうとの見通しを示した。

来年はテクノロジー、特に次世代コンピューティングの需要が顕著に出てくるはずだ。投資家たちは2020年の混乱が収まるにつれ、Graphcoreの事業は伸びると確信している。

「クラウドテクノロジーや5G、AIの浸透といった昨今のコンピューティング潮流のおかげで、専用AIプロセッサーのマーケットは今後数年のうちに大きくなることが予想されます。Graphcoreがこの部門でリーダーになると確信しています」とオンタリオ州教職員年金基金イノベーションプラットフォーム(TIP)のシニアマネジングディレクターであるOlivia Steedman(オリビア・スティードマン)氏は述べた。「TIPはそれぞれの分野で最先端をいくGraphcoreのようなテックを活用した事業への投資に注力しています。Graphcoreの今後の成長とプロダクト開発を支えるために、ナイジェル、そして彼の強固な管理チームと提携することを嬉しく思います」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Graphcore資金調達

画像クレジット:Graphcore

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(翻訳:Mizoguchi

新型コロナで需要が高まる技能習得のコンテンツを提供するEdTechのAceableが52億円調達

州公認クラスのためのモバイルエドテックサービスを展開しているオースティン拠点のAceable(エシーブル)は、プライベートエクイティファームのHGGCから再び5000万ドル(約51億7000万円)を調達し、投資家から「お墨付き」を得た。

創業8年になるAceableは運転免許筆記試験の準備サービスとして始まり、今では運転免許と不動産エージェント向けのオンライントレーニングツールとなっている。

AceableがFloodgate CapitalやSilverton Partnersなどの投資家から400万ドル(約4億1000万円)を調達したのは4年前のことだ。

そしていま、銀行口座に5000万ドルを追加し、累計調達額は1億ドル(約103億6000万円)になった。Aceableは提供する認証の数を増やすことを目指していて、特に職能開発にフォーカスしている。

同社は組織的、非組織的に成長する道を今後模索すると話した(これは買収の可能性を検討することもあり得るという、洗練されていない表現だ)。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が発生し、米議会が零細事業者のサポートを十分に提供しなかったために解雇された米国人が新しい仕事を探すのにともなって、「新しい技能の習得」や「技能の向上」は、バズワードになりそうだ。

エドテックはパンデミックの間に利用がかなり増加し、何百万人という米国人が新たなスキルや商売を学んだり、すでに持っているスキルを磨いたりするためにオンラインクラスに目を向けている。

「キャリアを変更したり磨きをかけたりすることで人生の目標に向かって新たな機会を手にすることができます。当社のビジョンは、誰でも好きな職業、しかも給料のいい職業に就けるよう技能や認証を習得可能にすることです」とAceableの創業者でCEOのBlake Garrett(ブレイク・ギャレット)氏は話した。「HGGCは当社の戦略的パートナーであり、長期的な金融パートナーであります。同社は、人生を変えるために誰でもアクセスできるようにしている比類ない教育経験を作り出すという当社のビジョンを受け入れ、実現に向けて加速させています」。

技能の習得や技能の向上に向けられた新たな関心をつかむために、他のスタートアップも何百万ドルもの資金を調達している。Degreedは2020年6月にEdTechマーケットで独自展開するために3200万ドル(約33億1000万円)を調達した。しかし誰がこうした新しいプラットフォームの恩恵を受けるのかについては疑問が残る。

Aceableが他のいくつかのプラットフォームと連携してエグジットしたり、現在マーケットにあるオプションで解決されていないコミュニティにサービスを提供することは可能だ。

Aceableが指摘するように、専門的な職業に就いている4人に1人がライセンスや認証のトレーニングを受ける。そしてこうしたクラスは往々にして、これまでよりも収入が高い職業につながる。

「我々はAceableのミッションとモバイルファーストの教育テクノロジーの開発における長期的な成功を信じています」とHGGCのパートナーであるJohn Block(ジョン・ブロック)氏は述べた。「今回の投資はAceableのチームに対する自信をさらに深めていることを意味し、また人々が教育を続けることでほしい人生を手に入れられるようにしつつAceableが次のレベルへと成長できるようにします」。

Aceableは現在プラットフォームで2200時間分の教育コンテンツを提供していて、36州の1300万人を訓練するのに使われた。同社はCapital Factoryアクセラレータープログラムから始まり、Sageview Capital、Silverton Partners、Floodgate Fund、Next Coast Venture Partners、Wildcat VC、Nextgen Partners、そしてHGGCを含む投資家から資金を調達した。

カテゴリー:EdTech
タグ:Aceable資金調達

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フェイクニュースとソーシャルメディアの「共鳴室」問題をスマートなニュースアプリで解決するGawq

Gawqと呼ばれる新しいスタートアップがフェイクニュースの問題とソーシャルメディアが作り出す「エコーチェンバー(共鳴室)」問題に取り組みたいと考えている。ソーシャルメディアでは、巧みに操られたアルゴリズムとパーソナライズされたフィードによって我々の世界観が形成される。Gawqが新しくリリースしたモバイルニュースアプリでは、さまざまなソースからのニュースを提示しつつ、ユーザーによるニュース、意見、有料コンテンツなどのフィルタリング、ソースの比較、事実かどうかの確認、さらにGawq上のコンテンツの正確性の確認を可能にすることを目指す。

GawqのアイデアはJoshua Dziabiak(ジョシュア・ディジビアク)氏が出した。同氏は今や利益を計上しているインシュアテックスタートアップのThe Zebraの共同創業者で、現在取締役も務める。2020年3月に常勤から退き、その直後にGawqを創業した。

「それは情熱のプロジェクトとして始まり、その後ビジネスに変わりました」とディジビアク氏は説明する。「私はより大きな社会的影響を与える何かをしたかったのです。そして、このアイデア、この問題は、特にこの1年間で非常に大きく表面化し、拡がりました」と同氏はいう。

ニュースがソーシャルメディアチャネルから流れると、人々は自分だけのバージョンの現実を見せられる。アルゴリズムは人々が関心を持たないニュースを取り除き始め、関心を持つニュースをどんどん見せ始めるからだ。時が経つにつれ、このシステムにより一部の配信元は突飛でセンセーショナルな見出しによりクリックや怒りを引き付けるようになった。だが、右寄りまたは左寄りの聴衆に訴えるニュースに傾き、また偏る配信ネットワークも生み出した。

その結果、メディア環境は全体として、必ずしもニュースの質ではなく読み手を意識し始めたとディジビアク氏はいう。質の高いジャーナリズムはまだ生み出されているが、あらゆるノイズをかき分けて見つけるのが難しいこともある。

「ジャーナリストとコンテンツクリエーターは成功のために新しい手段を必要としています。クリックやシェアの数ではなく、ジャーナリズムの核心をなす倫理に基づくものです」とディジビアク氏は語った。

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Gawqの名前は、近頃の見出しが我々の注意を引くためによく叫んでいる様子を思い起こさせる意図がある。だがそれは、このアプリがニュースの正確性を念頭に置いたアプリであるという点では的外れだ。根本的にGawqというニュースアグリゲーターは、読者が見出しを「gawk(驚きの目で見る)」ことではなく、実際にはより批判的な目でニュースを読み、検討することを目指している。

アプリは当初、いずれの方向に偏っているものを含め、あらゆる種類と大きさの150を超える多様なトップメディアソースから構成される。配信元が網羅するトピックは米国や世界のニュース、政治、スポーツ、ビジネス、技術、エンターテインメント、科学、ライフスタイルニュースなどに及ぶ。

またGawqは、アルゴリズムやパーソナライズエンジンを使わずにトピックごとにその日のニュースを整理する。読みながらクリックすると、ある話題に関する報道を他の情報源と比較し、異なるメディアが同じトピックについてどうに書いているのかを深く理解できる。画面上部の巧妙な赤と青のスライダーバーを指で赤い方に引っ張り右寄りのソースからの報道を確認したり、青側に引っ張り左寄りのソースの報道を表示したりできる。

同社によれば、メディアを監査する3つの異なる非営利団体(AllSidesMedia Bias Fact CheckAd Fontes Media)のデータを使用して、ソースが「右」か「左」かを判断する。

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スライダーバーのすぐ下には、目下のトピックに関するファクトチェックが簡単に参照できるようになっている。

ユーザーはアプリの設定で一部のニュースソースのオンとオフを切り替えられる。だが、Gawqは「多様なメディアの品揃え」がある場合にアプリが最適に機能することをユーザーに喚起するためにオンオフの切り替えを思いとどまらせる表現を使っている。

さらにGawqは「スマートラベル」機能を導入して、論説、スポンサーコンテンツ、セレブのゴシップなどのニュース以外のコンテンツを自動的に識別してタグ付けする。かっちりしたニュース以外を非表示にしたいなら、オンとオフを切り替えることもできる。

もう1つの優れた点は、もし配信元にとってではないなら少なくともニュースの利用者にとってということだが、Gawqがデフォルトで記事を「リーダーモード」に流し、最近ニュースサイトのページを埋めつつある広告や余計なものを取り除く機能だ。必要に応じて、クリックによりウェブサイトの記事を表示することもできる。

上記の多くは読者へのニュースの表示方法に関するものだが、Gawqのより大きな賭けはニュースレビューアーからなるウィキペディアのようなコミュニティを作れることだ。レビューアーはジャーナリズムの慣例を守っているかどうかに基づき記事を評価する。これは、より野心的で、おそらく過度に楽観的な取り組みだ。

すべての記事で、ユーザーはレビューボタンをクリックすると短いクイズに誘導され、記事のバランス、提供された詳細、見出しがクリックベイトであったかどうかを評価できる。次にユーザーはコメントを追加してレポートを送信する。このレビュープロセスは、プロフェッショナルジャーナリズム協会が定めるジャーナリズムの倫理規約に基づいて構築されたとディジビアク氏はいう。

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おそらく、Gawqユーザーのうち記事を評価するのは少数にとどまる。だが時が経ち規模が大きくなるにつれ、レビューはニュースの消費者の目から見たニュースの正確性とセンセーショナルな傾向について、正確な評価を配信元に提示できるかもしれない。そのようなデータは会社外部で価値を持つかもしれないが、今のところGawqのビジネスモデルは「未定」だとディジビアク氏は認めた。

Gawqが取り組もうとしている問題は難しいものだ。そして間違いなく、世界観を広げる必要がある人がそのために新しいアプリをダウンロードする可能性は極めて低いと思われる。彼らは多くの場合、パーソナライズされたソーシャルメディアのフィードからニュース(そして多くの場合、怒りや嘘)を取り込む、ニュースの受動的な消費者だ。それから彼らは、誰でも見ることができるニューステレビチャンネルからお気に入りを1つ選んでクリックする。だが、より中立的なメディアを求める人は増えている。Gawqは情報源を比較する際、ニュースを右、左、または真ん中に配置して中立的なメディアを見つけるのに役立つ。

Gawqは現在自己資金で経営しており、エンジニアの小さなチームを抱え、ほとんどが契約ベースで働いている。ただし、Gawqは将来の資金調達を否定していない。

このアプリはiOSAndroid無料でダウンロードできる。

関連記事:インシュアテックのThe Zebraの年換算売上高が約106億円に達し利益を計上

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