マスク氏が完全自動運転システムは「すばらしいものではない」と発言、単一スタックを問題点として認める

Tesla(テスラ)が「AI Day」を開催してからまだ1週間も経っていない。技術的な専門用語が飛び交うこのライブ配信イベントは、同社が自律走行を実現するために最も優秀なAIおよびビジョンエンジニアを誘致することを1つの目的としていたが、すでにElon Musk(イーロン・マスク)CEOは「完全自動運転(Full Self-Driving、FSD)」技術について、ホットテイクを提供している。

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米国時間8月24日に投稿されたツイートで、マスク氏は次のように述べている。「FSD Beta 9.2は、私が思うに実際にはすばらしいものではありませんが、オートパイロット・AIチームは、できるだけ早く改善するために結集しています。我々は高速道路と市街地の両方で単一の技術スタックを持とうとしていますが、それには大規模な(ニューラルネットワークの)再トレーニングが必要です」。

これは重要なポイントだ。自律走行の分野では、多くの人が同様の発言をしている。Kodiak Roboticsの共同設立者兼CEOであるDon Burnette(ドン・バーネット)氏は、今のところ同社はトラック輸送に特化しているが、それはより簡単に解決できる問題だからだという。最近のExtraCrunchのインタビューで、バーネット氏は次のように述べている。

当社の技術のユニークな点は、特定の目的のために高度にカスタマイズされていることです。トラックの高速道路走行性能と都市部の乗用車の高密度走行性能の両方を、同じスタックやシステムで維持するというような要件が常にあるわけではありません。理論的には、すべての運転、すべての条件、すべてのフォームファクターに対応する汎用的なソリューションを作ることは可能ですが、それはよりはるかに難しい問題です。

TeslaはLiDAR(ライダー)やレーダーを使わず、光学カメラのみを使用しているため、ニューラルネットワークの「大規模な」トレーニングが必要である、というのは決して控えめな表現ではない。

マスク氏のツイートに間違いなく心を痛めているであろうAI・ビジョンチームには同情するが、これは同氏にとっては稀有な、明晰で正直な瞬間だ。通常、私たちはTeslaの自動運転に関するニュースを、特別に微調整されたでたらめメーターでフィルタリングしなければならないが、そのたわ言メーターは「完全自動運転」技術について言及されるたびに激しくビープ音が鳴る。念のため言っておくが、これは「完全」な自動運転ではなく、高度な運転支援であり、将来的にはより優れた自動運転を実現するための基礎となり得るものだ。

マスク氏はツイートのフォローアップとして、FSD Beta 9.3を使用しパサデナからロサンゼルス空港まで運転したところ「はるかに改善されていた!」と語っている。これを信じるべきだろうか?同氏は常に楽観主義者だ。2021年8月初め、マスク氏はTeslaが2週間ごとにカリフォルニア時間深夜にFSDの新バージョンをリリースすると述べていた。そして Beta 9は「隙のない」ものになると約束し、レーダーが会社の足かせとなっていたが、ピュアビジョンを完全に受け入れた今、進歩ははるかに速くなるだろうと語った。

おそらくマスク氏は、FSDシステムに関する悪評が相次いでいることから、その矛先をそらそうとしているのだろう。先週、米国の自動車規制当局はTeslaのオートパイロット機能に関する予備調査を開始し、駐車中の救急車両にTesla車両が衝突した11件の事故を挙げた。なぜ救急車両なのか、それはわからない。しかし、米国道路交通安全局(NHTSA)のウェブサイトに掲載されている調査資料によると、事故のほとんどは日没後に発生している。夜間視力の低下は多くの人間のドライバーに当てはまるが、自律走行の世界でそのような事故は許容できることではない。

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Aya Nakazato)

ロボット、チップ、完全自動運転、イーロン・マスク氏のTesla AI Dayハイライト5選

Elon Musk(イーロン・マスク)氏はTesla(テスラ)を「単なる電気自動車会社ではない」と見てもらいたいと考えている。米国時間8月19日に開催されたTesla AI Day(テスラ・AI・デー)で、イーロン・マスクCEOはテスラのことを「推論レベルとトレーニングレベルの両方でハードウェアにおける深いAI活動」を行っている企業であると説明した。この活動は、自動運転車への応用の先に待つ、Teslaが開発を進めていると報じられている人型ロボットなどに利用することができる。

Tesla AI Dayは、映画「マトリックス」のサウンドトラックから引き出された45分間にわたるインダストリアルミュージックの後に開始された。そこでは自動運転とその先を目指すことを支援するという明確な目的のもとに集められた、テスラのビジョンとAIチームに参加する最優秀のエンジニアたちが、次々に登場してさまざまなテスラの技術を解説した。

「それを実現するためには膨大な作業が必要で、そのためには才能ある人々に参加してもらい、問題を解決してもらう必要があるのです」とマスク氏はいう。

この日のイベントは「Battery Day」(バッテリー・デー)や「Autonomy Day」(オートノミー・デー)と同様に、テスラのYouTubeチャンネルでライブ配信された。超技術的な専門用語が多かったのだが、ここではその日のハイライト5選をご紹介しよう。

Tesla Bot(テスラ・ボット):リアルなヒューマノイド・ロボット

このニュースは、会場からの質問が始まる前にAI Dayの最後の情報として発表されたものだが、最も興味深いものだった。テスラのエンジニアや幹部が、コンピュータービジョンやスーパーコンピュータDojo(ドージョー)、そしてテスラチップについて語った後(いずれも本記事の中で紹介する)、ちょっとした幕間のあと、白いボディスーツに身を包み、光沢のある黒いマスクで顔が覆われた、宇宙人のゴーゴーダンサーのような人物が登場した。そして、これは単なるテスラの余興ではなく、テスラが実際に作っている人型ロボット「Tesla Bot」の紹介だったことがわかった。

画像クレジット:Tesla

テスラがその先進的な技術を自動車以外の用途に使うことを語ろうとするときに、ロボット使用人のことを語るとは思っていなかった。これは決して大げさな表現ではない。CEOのイーロン・マスク氏は、食料品の買い物などの「人間が最もやりたくない仕事」を、Tesla Botのような人型ロボットが代行する世界を目論んでいるのだ。このボットは、身長5フィート8インチ(約173cm)、体重125ポンド(約56.7kg)で、150ポンド(約68kg)の荷物を持ち上げることが可能で、時速5マイル(約8km/h)で歩くことができる。そして頭部には重要な情報を表示するスクリーンが付いている。

「もちろん友好的に、人間のために作られた世界を動き回ることを意図しています」とマスク氏はいう。「ロボットから逃げられるように、そしてほとんどの場合、制圧することもできるように、機械的そして物理的なレベルの設定を行っています」。

たしかに、誰しもマッチョなロボットにやられるのは絶対避けたいはずだ(だよね?)。

2022年にはプロトタイプが完成する予定のこのロボットは、同社のニューラルネットワークや高度なスーパーコンピューターDojoの研究成果を活用する、自動車以外のロボットとしてのユースケースとして提案されている。マスク氏は、Tesla Botが踊ることができるかどうかについては口にしなかった。

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Dojoを訓練するチップのお披露目

画像クレジット:Tesla

テスラのディレクターであるGanesh Venkataramanan(ガネッシュ・べンカタラマン)氏が、完全に自社で設計・製造されたテスラのコンピュータチップを披露した。このチップは、テスラが自社のスーパーコンピュータ「Dojo」を駆動するために使用している。テスラのAIアーキテクチャの多くはDojoに依存している。Dojoはニューラルネットワークの訓練用コンピューターで、マスク氏によれば、膨大な量のカメラ画像データを他のコンピューティングシステムの4倍の速さで処理することができるという。Dojoで訓練されたAIソフトウェアは、テスラの顧客に対して無線を通じてアップデートが配信される。

テスラが8月19日に公開したチップは「D1」という名で、7nmの技術を利用している。べンカタラマン氏はこのチップを誇らしげに手に取りながら、GPUレベルの演算機能とCPUとの接続性、そして「現在市販されていて、ゴールドスタンダードとされている最先端のネットワークスイッチチップ」の2倍のI/O帯域幅を持っていると説明した。彼はチップの技術的な説明をしながら、テスラはあらゆるボトルネックを避けるために、使われる技術スタックを可能な限り自分の手で握っていたかったのだと語った。テスラは2020年、Samsung(サムスン)製の次世代コンピューターチップを導入したが、ここ数カ月の間、自動車業界を揺るがしている世界的なチップ不足から、なかなか抜け出せずにいる。この不足を乗り切るために、マスク氏は2021年夏の業績報告会で、代替チップに差し替えた結果、一部の車両ソフトウェアを書き換えざるを得なくなったと語っていた。

供給不足を避けることは脇においても、チップ製造を内製化することの大きな目的は、帯域幅を増やしてレイテンシーを減らし、AIのパフォーマンスを向上させることにあるのだ。

AI Dayでべンカタラマン氏は「計算とデータ転送を同時に行うことができ、私たちのカスタムISA(命令セットアーキテクチャ)は、機械学習のワークロードに完全に最適化されています」と語った。「これは純粋な機械学習マシンなのです」。

べンカタラマン氏はまた、より高い帯域幅を得るために複数のチップを統合した「トレーニングタイル」を公開した。これによって1タイルあたり9ペタフロップスの演算能力、1秒あたり36テラバイトの帯域幅という驚異的な能力が実現されている。これらのトレーニングタイルを組み合わせることで、スーパーコンピューター「Dojo」が構成されている。

完全自動運転へ、そしてその先へ

AI Dayのイベントに登壇した多くの人が、Dojoはテスラの「Full Self-Driving」(FSD)システムのためだけに使われる技術ではないと口にした(なおFSDは間違いなく高度な運転支援システムではあるものの、まだ完全な自動運転もしくは自律性を実現できるものではない)。この強力なスーパーコンピューターは、シミュレーション・アーキテクチャーなど多面的な構築が行われており、テスラはこれを普遍化して、他の自動車メーカーやハイテク企業にも開放していきたいと考えている。

「これは、テスラ車だけに限定されるものではありません」マスク氏。「FSDベータ版のフルバージョンをご覧になった方は、テスラのニューラルネットが運転を学習する速度をご理解いただけると思います。そして、これはAIの特定アプリケーションの1つですが、この先さらに役立つアプリケーションが出てくると考えています」。

マスク氏は、Dojoの運用開始は2022年を予定しており、その際にはこの技術がどれほど多くの他のユースケースに応用できるかという話ができるだろうと語った。

コンピュータビジョンの問題を解決する

AI Dayにおいてテスラは、自動運転に対する自社のビジョンベースのアプローチの支持を改めて表明した。これは同社の「Autopilot」(オートパイロット)システムを使って、地球上のどこでも同社の車が走行できることを理想とする、ニューラルネットワークを利用するアプローチだ。テスラのAI責任者であるAndrej Karpathy(アンドレイ・カーパシー)氏は、テスラのアーキテクチャを「動き回り、環境を感知し、見たものに基づいて知的かつ自律的に行動する動物を、ゼロから作り上げるようなものだ」と表現した。

テスラのAI責任者であるアンドレイ・カーパシー氏が、コンピュータビジョンによる半自動運転を実現するために、テスラがどのようにデータを管理しているかを説明している(画像クレジット:Tesla)

「私たちが作っているのは、もちろん体を構成するすべての機械部品、神経系を構成するすべての電気部品、そして目的である自動運転を果たすための頭脳、そしてこの特別な人工視覚野です」と彼はいう。

カーパシー氏は、テスラのニューラルネットワークがこれまでどのように発展してきたかを説明し、いまやクルマの「脳」の中で視覚情報を処理する最初の部分である視覚野が、どのように幅広いニューラルネットワークのアーキテクチャと連動するように設計されていて、情報がよりインテリジェントにシステムに流れ込むようになっているかを示した。

テスラがコンピュータービジョンアーキテクチャーで解決しようとしている2つの主な問題は、一時的な目隠し(交通量の多い交差点で車がAutopilotの視界を遮る場合など)と、早い段階で現れる標識やマーク(100メートル手前に車線が合流するという標識があっても、かつてのコンピューターは実際に合流車線にたどり着くまでそれを覚えておくことができなかったなど)だ。

この問題を解決するために、テスラのエンジニアは、空間反復型ネットワークビデオモジュールを採用した。このモジュールのさまざまな観点が道路のさまざまな観点を追跡し、空間ベースと時間ベースのキューを形成して、道路に関する予測を行う際にAIモデルが参照できるデータのキャッシュを生成する。

同社は1000人を超える手動データラベリングチームを編成したと語り、さらに大規模なラベリングを可能にするために、テスラがどのように特定のクリップを自動ラベリングしているかを具体的に説明した。こうした現実世界の情報をもとに、AIチームは信じられないようなシミュレーションを利用して「Autopilotがプレイヤーとなるビデオゲーム」を生み出す。シミュレーションは、ソースやラベル付けが困難なデータや、閉ループの中にあるデータに対して特に有効だ。

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テスラのFSDをとりまく状況

40分ほど待ったときに、ダブステップの音楽に加えて、テスラのFSDシステムを映したビデオループが流れた、そこには警戒していると思われるドライバーの手が軽くハンドルに触れている様子が映されていた。これは、決して完全に自律的とは言えない先進運転支援システムAutopilotの機能に関する、テスラの主張が精査された後で、ビデオに対して法的要件が課されたものに違いない。米国道路交通安全局(NHTSA)は 今週の初めにテスラが駐車中の緊急車両に衝突する事故が11件発生したことを受け、オートパイロットの予備調査を開始することを発表した。

その数日後、米国民主党の上院議員2名が連邦取引委員会(FTC)に対して、テスラのAutopilot(自動操縦)と「Full Self-Driving」(完全自動運転)機能に関するマーケティングおよび広報活動を調査するよう要請した。

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テスラは、7月にFull Self-Drivingのベータ9版を大々的にリリースし、数千人のドライバーに対して全機能を展開した。だが、テスラがこの機能を車に搭載し続けようとするならば、技術をより高い水準に引き上げる必要がある。そのときにやってきたのが「Tesla AI Day」だった。

「私たちは基本的に、ハードウェアまたはソフトウェアレベルで現実世界のAI問題を解決することに興味がある人に、テスラに参加して欲しい、またはテスラへの参加を検討して欲しいと考えています」とマスク氏は語った。

米国時間8月19日に紹介されたような詳細な技術情報に加えて、電子音楽が鳴り響く中で、Teslaの仲間入りをしたいと思わない血気盛んなAIエンジニアがいるだろうか?

一部始終はこちらから。

画像クレジット:Tesla

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(文:Rebecca Bellan、Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

Waymo Viaがテキサス、アリゾナ、カリフォルニア州で自動運転トラックのオペレーションを拡大中

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)は、テキサス州、アリゾナ州、カリフォルニア州での自動運転トラック事業を本格的に拡大するために、ダラスにトラック専用のハブを建設し、車両マネジメントサービスでRyder(ライダー)と提携するという2つの動きを行っている。

このニュースは、Waymoが自動運転プラットフォームWaymo Driver(ウェイモ・ドライバー)とそのチームの継続的な成長のために、25億ドル(約2754億円)の資金調達を発表してからわずか2カ月後のことだ。同社の広報担当者によれば、Waymoは、クラス8のトラック(約15トン以上)に搭載した第5世代のDriverのテストを強化していて、テキサス州ヒューストンとフォートワースを結ぶ州間高速道路45号線に沿ってJ.B. Hunt(J.B.ハント)などの運送業者の貨物を運搬し、Daimler Trucks(ダイムラートラック)と協力して堅牢なレベル4車両プラットフォームを開発しているという。Society of Automotive Engineers(自動車技術者協会)によると、レベル4の自動運転とは、あらかじめ設定されたエリア内限定なら人間がいなくても、車が自動運転可能であることを意味している。

関連記事:Waymoが米テキサスで自動運転トラックのテストを物流大手J.B. Huntと共同実施へ

Waymoは、国内で最も忙しい地域の1つにサービスを提供するために、ダラス・フォートワースに、同社の自動運転トラック事業であるWaymo Via(ウェイモ・ビア)専用の9エーカー(約3万6000平方メートル)の新しいトラック輸送ハブの建設をすでに開始している。このハブは商用利用のためにデザインされており、同社がこの地域で規模を拡大し、より大規模で複雑な自動運転テストを実施する際には、何百台ものトラックを収容することが期待されている。Waymoは、このハブはテキサス州での事業をI-45(高速45号線)に沿って、I-10とI-20の間に展開するのに役立つとしている。この場所は、州境を越えた長距離路線をサポートし、Waymoのフェニックスのオペレーションセンターと連携するのに適した場所だ。Waymoは、来年の前半にこの施設に入居する予定だという。

ここで、Ryderとのパートナーシップの出番だ。ダラスのハブは、Waymo Driverのテストを行うだけでなく、Waymo Driverが幹線道路を走って、人間のドライバーがファーストマイルとラストマイルの配送を担当できるようにするための、自動運転と手動運転を組み合わせた高速道路の近くにあるトランスファーハブモデルをテストするための中心的な拠点となる。このモデルを拡大するには、高度な組織化が必要だが、Ryderの車両マネジメントサービスと、500以上の施設で標準化された車両メンテナンス技術が、その役目を果たしてくれるはずだ。

このパートナーシップには、新しいダラスの施設を含むWaymo Viaのすべてのハブとテストサイトにおける車両のメンテナンス、検査、ロードサイドアシスタンスが含まれている。Ryderの規模と影響力、そしてWeymoの自動運転車両データへのアクセスを使って、両社は自動運転トラックのメンテナンスと最適化されたパフォーマンスの青写真作りにも取り組んでいく。

Ryderのチーフ・マーケティング・オフィサー(CMO)で新製品開発責任者でもあるKaren Jones(カレン・ジョーンズ)氏は「このパートナーシップは、当初は車両メンテナンスに焦点を当てていますが、自動運転トラックの大規模展開を成功させるために、自動運転トラックの運用面で協力する機会はたくさんあると考えています」と述べている。「すでに、トラックのサービス性や、近い将来に計画しているトランスファーハブモデルに最適化できるように、Waymoのダラスの新施設のレイアウトやデザインについて協力しています。クラス8トラックの自動運転技術は急速に展開していて、Ryderはトラックの整備だけでなく、自動運転にともなう独自の物流管理においてもリーダーとなる準備を進めています」。

関連記事:Waymoは「自動運転」という表現をもう使わないと宣言するが業界には賛否両論

画像クレジット:Waymo

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(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

ドライバー監視システム需要を喚起する米国の新しい飲酒運転規制条項

2702ページに及ぶ10億ドル(約1106億4000万円)規模のインフラストラクチャ構築法案に、ドライバーがビールを2、3杯飲んだかどうかを検知するテクノロジーを新車に組み込むことを義務付ける条項が新しく追加され、ドライバー監視テクノロジーの開発に取り組んでいるメーカーにとって追い風となる可能性がある。

2021年に導入されたReduce Impaired Driving for Everyone Actと呼ばれる超党派の法律に追加されたこの条項により、米国運輸省は、各自動車メーカーに対して、テクノロジー安全基準を3年以内に確立するよう指示することになる。これを受け各メーカーは、その後2年以内に、同基準に従って、飲酒運転の検知 / 予防テクノロジーを実装することになる(ロイター通信社の記事による)。

この条項には、どのようなテクノロジーを組み込むことが求められるのかまでは明記されていないが、業界の専門筋によると、カメラベースのドライバー監視システム(DMS)を開発しているメーカーが最も有利になるという。DMSシステムはすでに自動車業界では成熟した技術であり、自動運転開発の副産物として生まれたものだ。自動車業界は将来的に死亡事故を大幅に減らす方法として自動運転車の開発に取り組んでいるが、提唱者や規制当局は、この技術には、飲酒運転や不注意運転など、存在する問題を解決する方法として利用する余地があると唱えている。

「今週上院で起こったことは、カメラベースのリアルタイムソリューションへの道を開く可能性を秘めています。今回の新条項の追加で、米国の自動車メーカーは初めて、飲酒によって人体に生じる生理的な変化をリアルタイムで監視する技術を保有し、それを要求されることになります」とSeeing Machinesの科学イノベーション最高責任者のMike Lenné(マイク・レンネ)博士はTechCrunchのインタビューに答えて語った。「飲酒後は、人が周囲の環境をスキャンする方法、目が刺激に反応する方法が信頼できるレベルで明らかに変化します。警察が飲酒の疑いのあるドライバーに「指の動きを追わせる」テストを実施しているのもそのせいです」。

こうしたシステムには、ドライバーの動きを監視して機能障害を検知し、検知されたら車の動きを予防 / 制限するタイプ、BAC(血中アルコール濃度)が法的上限値以上に達しているかどうかを調べ、必要なら運転を強制的に禁止するタイプ、両者を組み合わせたタイプがある。

近年登場した飲酒運転ソリューションはカメラを使ったものだけではない。

Automotive Coalition for Traffic SafetyとNational Highway Traffic Safety Administration(NHTSA)が共同で開発したDriver Alcohol Detection System for Safety(DADSS)プログラムでは、呼気または接触ベースのアプローチを使ってBACレベルを決定する方法を提唱している。接触ベースのアプローチでは、ドライバーの指先に赤外線を当てることで皮膚の表面を介してBACを計測する。DADSSによると、呼気ベースのアプローチは2024年までに、接触ベースのアプローチは2025年までクルマに搭載可能となる予定だ。

レンネ氏によると、BACレベルは上昇するまでに数分かかる可能性があるため、呼気や接触ベースのアプローチよりもカメラベースのアプローチのほうがはるかに精度が高いという。理論的には数杯飲み干した直後に運転しても、数値に現れるまでに数分はかかる。あるいは、運転中にアルコールが分解されてしまう可能性もある。それに、BAC検知では、薬物による運転能力の低下はまったく検出できない。

欧州と米国の比較

欧州では、カメラベースのDMSアプローチを使った飲酒運転検知テクノロジーを搭載するよう各自動車メーカーを促す動きがすでに始まっている。しかし、米国では、この種のテクノロジーに関する議論の大半は、ごく最近まで、運転支援およびレベル2以上の自動運転のためのDMSに重点が置かれていた(Society of Automotive Engineersによると、レベル2の自動運転とは、ステアリングや加速などの機能は組み込まれているが、ドライバーも運転に参加している必要があるというレベルである)。

DMS分野は、GMやフォードなどがハンズフリーの高度なドライバー支援システムを実装するなど、近年成長を遂げているが、上記の条項により、この成長が加速される可能性がある。

「組み込みという観点からすると、今回のテクノロジーは、現在OEM各社が、カメラベースのDMSで不注意運転や居眠り運転を防止するために行っていることとほどんど変わりありません。チップに新たな機能を提供するアルゴリズムが追加されるだけです」とレンネ氏はいう。

今すぐ使えるテクノロジー

「自動運転を実現するテクノロジーの開発にはすでに数十億ドル(数千億円)が費やされていますが、まだ実現には程遠い状態です」とMothers Against Drunk Driving(MADD、飲酒運転根絶を目指す母親の会)の政府業務担当最高責任者のStephanie Manning(ステファニー・マニング)氏はTechCrunchのインタビューに答えて語った。「しかし、その過程で、自動車メーカーは命を救うという意味で今すぐに使えるたくさんのテクノロジーを開発しました。この法案が通過すれば、救われる人命の数という点で米国国家道路交通安全局(NHTSA)がこれまでに行った最大の安全性規則が制定されることになります。今が絶好のタイミングです。これ以上待ったり、策定を遅らせたりすれば、それだけ死者の数が増えるだけです」。

このテクノロジーが市場に出るのはそれほど先ではない、とレンネ氏はいい、その点を認識している。Seeing Machinesは、GMのハンズフリー高度ドライバー支援システムSuper Cruiseで使用されているDMSを提供している。Super CruiseはCadillac(キャデラック)の1つのモデルのみで採用されていたが、機能拡張されてGMの製品ラインに組み込まれ、今ではキャデラックCT6、CT4、CT5、エスカレード、シボレー・ボルトでも採用されている。Seeing Machineのテクノロジーは、メルセデスベンツのSクラスおよびEQSセダンでも使用されている。

「これが規制化されれば、トップダウンで需要が生まれることになるため、この市場への参入企業が増えると予想されます」とレンネ氏はいう。「消費者の需要があるからではなく、すべてのクルマが一律にこうした安全性機能を備える必要が生じるため、市場規模は劇的に拡大し、ビジネスチャンスも広がります」。

IndustryARCによると、世界のDMS市場は、2021年から複合年間成長率9.8%で成長し、2026年までには21億ドル(約2323億円)を超えると予想される。こうしたインフラストラクチャ法案による規制によって生じるトップダウンの需要によって確実に需要は増大するものの、それによって問題の解決が容易になるわけではない。

「人の頭の中で起こっている反応を査定しようとするわけですから、30メートル前方にあるモノを見る前向きのレーダーとはまったく異なります」と同氏はいう。「ある人が安全に運転できるかどうかを判断しようとするわけですから、極めて難しい技術的な問題です。当社は創業21年になります。Smart Eye(スマートアイ)は創業10年以上になります。市場規模は急激に拡大しているものの、新規参入組にとってはハードルの高い難題です」。

新規参入組は、Seeing Machinesやスマートアイ(スウェーデンのコンピュータービジョン企業で業界筋によるとフォードと提携しているというが、フォードはこの点について明言を避けている)などの実績のある大手サプライヤーとの競争に直面することになる。IndustryARCは、他にも、Faurecia、Aptiv PLC、Bosch、Denso、Continental AGといったこの分野の主要プレイヤーの名前を挙げている。その一方で、イスラエル本拠のCipia(旧称Eyesight Technology)、スウェーデン本拠のTobii Techといった新興企業も市場への参入を図っている。

市場の成長余地

市場に参入する企業が増えるとテクノロジーの進歩が加速する。スマートアイが最近、感情検知スタートアップAffectiva(アフェクティバ)を7350万ドル(約80億円)で買収した事実は、将来、乗用車に搭載されるDMSがどのような形になるのかを示唆している。現在DMSが対象としているのは、不注意運転、居眠り運転、飲酒運転のみだが、数年以内に、薬物による身体機能障害、(アルツハイマーなどの)認識機能障害、さらには(あおり運転などの)ロードレイジも対象になると考えられる。

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アイトラッカーテクノロジー企業Tobii(トビー)は、先ごろ、DMS市場への参入を宣言した。DMS分野は、まず欧州、そして米国で法改正が行われる中、ここ数年、同社が研究を進めてきた分野だ。

トビーは、自動車分野へは新規参入組だが、アイトラッキング分野には2001から存在しており、マーケティング、科学研究、バーチャルリアリティ、ゲームなどの業界で事業を展開してきた。トビーの部門CEOであるAnand Srivatsa(アナンド・スリーヴァッサ)氏はTechCrunchに次のように語った。「最も難しいのは、目の形の異なるさまざまな民族を含め、さまざまな人口層にまたがって規模を拡大していくことです。当社は、自動車業界での経験はほとんどありませんが、こうした多様な需要に対応するという点では有利だと思います」。

「当社は創業以来の長い経験を経て、コンポーネントレベルからエンドソフトウェアまで、すべてをカバーする完全なソリューションの実現に必要な要素を備えています。当社の他の業務でこうした要素をこなしてきたからです」とスリーヴァッサ氏はいう。「自動車業界の当社の一部のパートナー企業は、この点をトビー独自の能力とみなしてくれています。例えば当社は独自のasix(モーションセンサー)やセンサーを作成しているため、アイトラッキングに必要なコンピューターについて説明することができます。当社はエンドユーザーソフトウェアも自社開発しているため、スタックの各構成部分が他に及ぼす影響や制約についても把握しており、それらを操作してより革新的なソリューションを実現することもできます。私はそれこそがこの分野で極めて重要な点になるのではないかと思っています。つまり、ソリューションの総コストを削減しながら、すべての車種に効率的にスケールさせるにはどうすればよいか、という点です」。

スリーヴァッサ氏はまた、アイトラッキングによって生成されるバイオメトリクスまたは生理的なシグナルは他の分野に応用する余地があることも指摘する。こうしたシグナルを使えば、外の道路の状況や車内で発生していることに基づいて情報を再構成し、ドライバーが道路状況に意識を集中できるようにシステムを最適化できる。

「私が理想としているのは、前方衝突警告、死角警告、車線逸脱警告などによって最も必要としているときにドライバーを支援してくれるテクノロジーです。つまり、ドライバーが独り善がりになったり、疲れたり、注意散漫になっていないかを察知し、そのときの状況に応じてシステムの動作、警告のタイミングなどを調整してくれる、そんなテクノロジーです」と Consumer Reportsの車両インターフェイス試験プログラムマネージャー兼車両接続 / 自動化担当責任者のKelly Funkhouser(ケリー・ファンクハウザー)氏はTechCrunchのインタビューに答えて語った。「と同時に、ドライバーが集中しているときに邪魔をしたり、うるさく言ってイライラさせたりしないテクノロジーにしたいと思っています。例えば歩道の歩行者に接触しないように意識的にレーンからはみ出して走行することはよくありますから」。

レンネ氏によると、車内で起こっていることを察知してドライバーの好みに合わせた快適な運転体験を提供するドライバー監視システムには大きな可能性があるという。

「こうしたシステムを作るには、より良い運転体験が描けることが何より重要です」と同氏はいう。「そうでなければ、消費者に受け入れられない危険を犯すことになります」。

既存のADAS(先進運転支援システム)の進歩

各自動車メーカーは、長年、飲酒運転テクノロジーに関していろいろと話題を提供してきた。2007年には、日産が飲酒運転コンセプトカーを発表した。これはアルコール臭センサー、表情監視、運転操作などによってドライバーの異常を検知するものだ。

同じ年、トヨタも同様のシステムを発表し、2009年までに搭載するとした。最近では、ボルボが2019年に、ドライバーが飲酒運転または不注意運転をしていないかを監視し、必要に応じてシグナルを送信して運転に介入できるようカメラとセンサーを搭載すると発表したが、このテクノロジーはボルボSPA2のハンズフリー運転アキテクチャー用に設計されたもので、まだリリースされていない。要するに、飲酒運転の防止と検知を義務付ける法律が制定されていない現状では、メーカーは、システムの構築に必要な大半の構成ブロックはすでに用意できているものの、実装のゴーサインを出すまでには至っていないということだ。

マニング氏は、これは安全機能を搭載するなら、何らかの見返りが欲しいというメーカー側の思惑があるからだと考えている。

「メーカー側は公道で最新テクノロジーを搭載した自社の車両をテストしたいが、飲酒運転の撲滅に金と時間とエネルギーを使いたくないのです。それは自分たちの責任ではないと感じているからです。彼らはこうしたルール作りには否定的なのです」と同氏はいう。「彼らはこのルール作りの過程で我々と必死で戦うつもりだということが十分に予測できます」。

GMやフォードの広報担当のコメントは得られなかったが、DADSSプログラムについてNHTSAと協力しているAlliance for Automotive Innovationの社長兼CEO John Bozzella(ジョン・ボゼラ)氏は「自動車業界は、路上の安全を脅かす飲酒運転の脅威に対応するための国と民間企業によるあらゆる取り組みを支援することに尽力しています」と答えた。

「我々は、連邦規制の選択肢としてNHTSAにすべての潜在的なテクノロジーの評価権限を与え、Motor Vehicle Safety Actに従って特定のテクノロジーが乗用車向けの規格を満たしているかどうかを十分な情報に基づいて判断できるようにする、議会指導者やその他の利害関係者による法律制定の取り組みを評価しています」。

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画像クレジット:Volvo Car Group

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

テスラの「完全」自動運転という表現に対し米上院議員がFTCに調査を要請

2人の民主党上院議員が、今度の連邦取引委員会(FTC)の議長に、Tesla(テスラ)のオートパイロットとフルセルフドライビング両システムの自動運転能力に関する、同社の声明を調査するよう求めた。上院議員Edward Markey(エド・マーキィー)氏(民主党・マサチューセッツ州)とRichard Blumenthal(リチャード・ブルーメンソール)氏(民主党・コネチカット州)は、クルマに完全な自動運転能力があると顧客に誤解させかねないTeslaの文言に対して特に懸念を表明している。

「Teslaのマーケティングは、自社の自動車の性能を繰り返し誇張しており、こうした表現は、自動車運転者や他の道路利用者に対する脅威となっています。したがって私たちはTeslaの運転自動化システムの広告およびマーケティングにおける欺瞞的で不公正な行為の可能性について調査を開始し、道路上のすべてのドライバーの安全を確保するために適切な執行措置をとることを強く求めます」と両議員はFTCに対して述べている。

FTCの新議長Lina Khan(リナ・カーン)氏に宛てた書簡で両氏は、Teslaが2019年にYouTubeの同社チャンネルにポストしたビデオを問題視している。Teslaの自動運転を見せるそのおよそ2分のビデオは「Full Self-Driving」(完全な自動運転)と題され、1800万回以上視聴された。

両議員によると「同社の主張はTeslaのドライバーと、旅をするすべて人たちを重傷や死の危険にさらしている」という。

Teslaと公式の調査は、雨が降れば土砂降りになるといった関係だ。例えばこの書簡が発表されたわずか2日前には、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、Tesla車が駐車している緊急車両に衝突した事件の予備調査を開始している。

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リナ・カーン氏は、これまで最も若いFTCの議長だ。彼女は多くの人たちから、反トラスト法で学位を持つことなどから、近年で最も先進的な起用だと考えられている。しかしFTCがTeslaを調査することになったら、そのケースは反トラスト法と何ら関係がなく、むしろ消費者保護に該当することになる。製品に関する企業の、偽のあるいは誤解を招きかねない主張の調査は、確かにFTCの守備範囲だ。

Teslaの主張に対してFTCに公開調査を求めた著名人や機関は、今回が初めてではない。2018年には、2つの特定利益団体Center for Auto SafetyとConsumer Watchdogが、やはり同委員会にAutopilot機能のマーケティングに関して書簡を送った。2019年には上記交通安全局がFTCに、TeslaのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏によるModel 3の安全に関する主張が「不公正または欺瞞的に相当しないか」調査するよう主張した。

Teslaの「Full Self-Driving」(完全自動運転)は、代価の一部またはサブスクリプションとして1万ドル(約110万円)を課金される。現在、同社はそのバージョン9のベータテストを数千名のドライバーで行っているが、上院議員たちはベータも対象にしている。「ベータ9へのアップデートの後でドライバーたちはビデオをポストしたが、それによると、アップデートされたTesla車は予想外の動作をして、衝突を防ぐためには人間の介入を必要とした。マスク氏がソーシャルメディア上に目立たないように置いた生ぬるい警告は、ドライバーを誤導し、路上の全員の命を危うくしたことの言い訳にはならない」という。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

農業機械大手ジョンディアが自動運転トラクター開発Bear Flag Roboticsを約276億円で買収、労働力不足解決を目指す

ロボット関連のスタートアップ企業の世界では、買収が良い結果を生むことがしばしばある。ロボットトラクターのスタートアップに関して言えば、John Deere(ジョンディア)に買収されるのも悪くないだろう。この大手農業機械メーカーは米国時間8月5日、Bear Flag Robotics(ベア・フラッグ・ロボティクス)を2億5000万ドル(約276億円)で買収すると発表した。

2017年に設立されたこの企業は、サンフランシスコ・ベイエリアに拠点を置き、自動運転型の農業用重機を専門に開発している。同社が初めて我々の注目を浴びたのは、設立から翌年のYC Winter 2018に参加した時のことだ。

「私たちは果樹園を見学し、労働問題がいかに深刻であるかを知りました」と、共同創業者のAubrey Donnellan(オーブリー・ドネラン)氏は当時、TechCrunchに語っていた。「トラクターの座席を埋めるのに苦労しているのです。私たちは、カリフォルニアの他の生産者にも話を聞きました。すると、何度も同じことを言われました。労働力は最も重要な痛点の1つです。質の高い労働力を確保することはとても難しい。労働者の高齢化が進み、地元を離れて他の産業に移っていく人も多いのです」。

その後、John Deereは独自に起ち上げたStartup Collaboratorプログラムで、Bear Flagと提携する。その一方で、このロボット企業はその技術を米国内の非公開の(彼らの表現によれば「限定的な」)拠点で展開も始めていた。

「今日、農家が直面している最大の課題の1つは、農業の成果に影響を与える時間に制約された作業を行うことができる熟練労働者の確保です。自動運転は、この課題に正面から対処することができる、安全で生産性の高い代替手段を提供するものです」と、共同創業者でCEOを務めるIgino Cafiero(イジーノ・カフィエロ)氏はリリースの中で述べている。「機械の自動化によって、世界の食糧生産量を増やし、食糧生産コストを削減するというBear Flagのミッションは、Deereと一致しています。Deereのチームに参加し、より多くの農場に自動化を導入できるようになることに興奮しています」。

農業分野は、以前から問題となっていた労働力不足が、新型コロナウイルスの世界的な大流行によってさらに悪化していることで、2020年から関心が高まっているロボット分野の1つである。もちろん、そのように関心が高まっているからといって、ロボット工学スタートアップを起ち上げることの難しさは変わらない。

2021年7月、リンゴ収穫ロボットをてがけるAbundant(アバンダント)という企業は「プロトタイプのリンゴ収穫機を使った一連の有望な商業試験の後、開発を継続して量産システムを立ち上げるための十分な資金を調達できなかった」として、事業を終了することを認めた

Bear Flagのような企業にとって、買収は納得の行く結果だろう。このスタートアップ企業は巨大な新オーナーから多くのリソースを得ることができ、その新オーナーはポートフォリオに新しい技術を加えることができる。実際、John Deereはここ数年、ロボットやドローンなどの最先端技術への進出をかなり積極的に検討している。

Bear Flagはこれまで通り、ベイエリアで事業運営を続ける予定だという。

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タグ:John DeereBear Flag Robotics農業自動運転買収

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

豊田自動織機と自律型フォークリフト開発のThird Wave Automationが戦略的提携

豊田自動織機(TICO)との戦略的提携が発足し、自律型フォークリフトを開発するThird Wave Automation(サードウェーブ・オートメーション)が、投資家からさらに4000万ドル(約44億円)を獲得した。

2018年創業で、カリフォルニアを拠点とするThird Wave Automationは、規制当局に提出したForm Dによると、Norwest Venture PartnersがリードするシリーズBラウンドで4000万ドル(約44億円)を調達した。ラウンドには、既存の投資家であるInnovation EndeavorsとEclipseに加え、Toyota Ventures(トヨタ・ベンチャーズ)も参加した。Norwest Venture PartnersのゼネラルパートナーであるMatt Howard(マット・ハワード)氏は、Third Waveの取締役会に参加する。

Third WaveのCEOであるArshan Poursohi(アーシャン・プルソヒ)氏がTechCrunchに語ったところによると、今回の資本注入は、世界のフォークリフトの3分の1を製造しているTICOとThird Waveの提携をハワード氏が知ったことから始まった。5月に発表されたその提携の下、Third WaveとTICOは共同で自律型フォークリフトを開発する。この機械はTICOの工場で製造され、Third Waveからセンサーと計算基盤が提供される。Third Waveはソフトウェア面を支援する。

チーフロボティシストのMac Mason(マック・メイソン)氏とJames Davidson(ジェームズ・デビッドソン)氏(退社済み)を含むThird Waveの共同創業者3人はロボット工学の分野で長い経験を持ち、Google(グーグル)のロボットプログラムやGoogle Research、トヨタ・リサーチ・インスティテュートなどで一緒に仕事をしてきた。

「私たちは、あらゆる種類のロボットに関わってきました」とプルソヒ氏は話す。「しかし、私たちが作ったロボットはすべて、Googleや、私の場合はSun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)が、コアビジネスではないという理由で開発拡大の価値がないと判断したり、その他の理由によったりして、結局クローゼットのどこかに眠っていました」。

そこで彼らは、自分たちの会社を設立し、実際に使えて直ちに必要とされるロボットに取り組むことにした。

「フォークリフトに注目したとき、それは操作性の美しさの問題でした。つまりそれは、そもそも実際に世界と接点を持つことを目的としたロボットでした」とプルソヒ氏は語る。「しかも、数十年単位では測れない時間軸で、実際に作って出荷することができるものです」。

彼らが開発したフォークリフトは、シェアード・オートノミーと呼ばれる方式で動作する。それはこういうことだ。パレットを持ち上げ、移動することができるフォークリフトは、稼働時間の90%は単独で動く。だが、必要が生じれば、すべてのロボットを遠隔操作することもできる。ロボットの操作は簡単だ。ということは、ロボットが何かに遭遇して動かなくなった場合には、Third Waveではなくその顧客の現場の社員が遠隔操作でサポートすることができるわけだ。

「私たちが物流やサプライチェーンの分野で生み出せるインパクトがあります。それはパレットをさまざまな所へ移動させるだけで可能になります。それこそが私たちが取り組んでいることです。私たちの技術の特徴は、非常に早く立ち上げることができ、ブラウンフィールドの環境でも機能することです」とプルソヒ氏は語る。

同社はまだ開発の初期段階にあるが、前進している。今回の資金調達と最近の技術試験完了による勢いで、採用活動を加速し、商業化に集中することができるとプルソヒ氏はいう。同氏は、同社が業界内のサードパーティー物流オペレーターや小売業者20社と活発にやりとりしていると指摘した。

「あらゆる技術的な側面を試み、確かな答えを得ています」とプルソヒ氏は話す。「これからの1年半から2年は、オペレーションチームの規模を拡大していくことになります。そして今、この製品に対する市場の需要は圧倒的です」。

目標は、2022年末までに100台をフィールド(倉庫などの屋内)に投入し、2023年末までにそれを350~400台に拡大することだ。

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タグ:豊田自動織機Third Wave Automation資金調達倉庫自動運転

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

【寄稿】自動運転関連技術のCOOが教える「契約策定と交渉のベストプラクティス」

2014年に設立されたStradVision, Inc.は、高度な運転支援システム(ADAS)向けの画像処理AI技術のパイオニア。現代自動車やLGエレクトロニクス、IDG Capital、アイシングループなどからの出資を受け、ソウル、サンノゼ、東京、ミュンヘンに拠点を構え、データアルゴリズムのエンジニアをはじめとする170名以上のチームによって、完全自律走行車両の実現を促進すべく事業を展開している。

自動車に関する技術は進歩を続けています。すでに一般の車両にはレーンキープアシストや、衝突軽減ブレーキといった機能が搭載されるようになりました。自動運転技術は特に日々ニュースでキーワードを耳にします。

このように自動車には非常に多くの要素、テクノロジーが詰まっています。本稿はそれらを提供する企業と企業で構成される経済圏、ビジネス展開についてお伝えしたいと思います。

自動車産業の経済圏は自動車産業を支えてきたいわゆる大手メーカーから、先端技術を研究・開発する私たちのようなスタートアップ、ベンチャー企業が参画し、拡大しています。

さまざまな立場で多くのプレイヤーが存在するとはいえ、私たちは自動車という1つの製品を作るため、ひいては安心で安全なモビリティサービスを消費者ならびに社会へ提供するため、友好的なパートナーシップに基づくビジネス関係の構築が求められます。

以下では、多くの経験から、パートナーシップを締結する際、立場の異なる2社が双方にとって中長期的で包括的な成功を収められる交渉のポイントをお伝えしたいと思います。

    1. 目標を知る
      どのような契約でも、それぞれに達成したいことがあるはずです。ビジネスにおいて、どのフェーズにいるのかを認識し、契約に臨む目的と具体的な内容について、交渉前に詳細の考えを詰め、見通しを立てておきましょう。プロジェクトが完了するまでの期間内に達成すべきこと、そしてもちろん関連する金額などの問題は、パートナーシップを進める前にパートナー候補と解決しておく必要があります。
      双方にとって適切な目標を持つためには、交渉の前に適切なリサーチを行い、どこにシナジーがあるのか、お互いがパートナーシップに貢献できることは何かを知る必要があります。
    2. 妥協できるポイントを把握しておく
      理想の目標を念頭に置いて交渉に臨むべきですが、妥協が必要な場合もあることを理解し、交渉を始める前にどの程度の柔軟性を受け入れることができるかを決めておきましょう。また交渉中に、許容範囲に影響を与えるような新しい情報が明らかになることもあります。
      状況の変化に注意を向けつつ、常に現段階のベストはどこかを探っていきましょう。
    3. 柔軟性を持つ
      柔軟に、契約内容や提供するサービスなどを変更できることも重要です。ビジネスを成功させるためには、RFQ(見積もり依頼書)に記載されたクライアントの要件を満たす機能と性能に焦点を当てる必要があります。
      クライアントのさまざまな要求に応えるために、ソフトウェアのカスタマイズや最適化を提案し、期待を上回るパフォーマンスを提供することに細心の注意を払いましょう。
    4. 成功を示し、データを提供する
      OEMやTier1サプライヤーなどの大手企業との交渉では、自社のビジネスのユニークな点や競合他社との違いを示すことが重要です。自分の専門分野で何が優れているのかをアピールしましょう。公開された特許の数や、特許発行までの時間の短さなど、パートナー候補との信頼関係を築くために重要な成功事例などが挙げられますが、このように過去に達成した成果と経験が、新しいパートナーシップの成功にどのようにつながるのかを、具体的にデータで示しましょう。
      1でも触れましたが、それらがどのようにシナジーを生むのかも整理して伝えることが重要です。
    5. 相手のニーズ、情報に耳を傾ける
      基本的なことかもしれませんが、交渉時には不可欠な要素です。相手の話に耳を傾けることは、自社の情報を相手に伝えることと同じくらい重要です。よくよく話を聞いてみると、予想していなかった形で交渉の流れが変わるかもしれません。
    6. リスクを軽減する
      交渉中に対処すべき重要事項のチェックリストを作成し、重要なトピックを忘れないようにしましょう。
      また、交渉中に契約内容が変更された場合は、何かあったときのためにすべてのバージョンを記録しておきましょう。たとえ暗黙の了解だと思っていても、重要な点を契約書から外してはいけません。複雑な問題を引き起こすだけです。法的な根拠を網羅し、機密性を確保します。
      このような細かい配慮は、双方が同じ見解を持ち、将来的に誤解が生じないようにするために不可欠です。
    7. 契約テンプレートと確立された言語
      契約書やパートナーシップの作成や承認が遅れる要因の1つに、技術的な言葉や詳細、プライバシーや機密性を確保するために盛り込まなければならない法的な言葉に囚われてしまう状況があります。
      このような遅延を避けるためには、使う言葉を標準化し、契約ごとに書き直す必要がないようにするのが重要です。技術的・法的な文言を都度考えずに済む分、パートナー候補との信頼関係の構築に集中できる時間が増えます。
    8. ワークフロープロセスの確立
      契約書のレビューや承認の遅れは、契約に関するワークフローが確立されていないことにも起因します。法務担当者や経営陣など、各パートナー企業で契約書を確認する必要がある人は、承認の順番や、フィードバックを受けてからの変更方法など、確立された手順が必要です。
      特にスタートアップ、ベンチャーにおいてはワークフロープロセスが確立されていないことが多いものです。特に優先度の高い契約前においては、早めに社内で調整を行いましょう。プロセスが確立されておらず、契約締結が遅れる危険性があります。
      ただ、すべての契約において同じフローをとる必要はないでしょう。リスクが少ない案件では、契約のワークフローを簡略化したり、半自動化してスムーズに進めることもできます。
    9. 既存の契約を更新または拡大する
      新規のクライアントを獲得するだけでなく、契約のライフサイクル管理の重要性も認識しておきましょう。既存の契約の状況を認識し、既存のパートナーとの強固な関係を維持し、将来の機会に基づいてパートナーシップを拡大できるかどうかを検討することが重要です。
      契約期間の終了前から数カ月前には遅くともパートナーシップの見直しを行い、プロジェクトの契約継続や終了について話し合いを行いましょう。パートナーシップの定期的な見直しが、関係性の安定につながります。

機密性が高く、かつ企業ごとに個別のシーンが想定できるため、具体的すぎるアドバイスは書ききれませんが、基本的に上記9つに気を遣いながら交渉を進められれば、少なくとも、両社にとって、大きなダメージを与えるような契約を交わしてしまうことはないでしょう。ぜひ参考に交渉を進めてみてください。

著者Sunny Leeについて:
 ペンシルベニア大学ウォートンスクールを卒業し、MBAを取得。先進運転支援システム(ADAS)向けのAIベースのカメラ認識ソフトウェアのパイオニアである韓国のテクノロジー企業StradVisionのCOOを務めている。現在Sunnyは韓国、米国、中国、インド、ドイツ、および日本での事業開発とグローバルオペレーションを担当しています。
 以前は、 NaverLabsのモビリティ製品のオーナーだった。彼女の以前の役割には、シカゴを拠点とする経営コンサルティングリーダーであるATカーニーのシニアビジネスアナリスト、およびエンタープライズソリューション部門のLGエレクトロニクスのサンディエゴオフィスのシニアマネージャーも含まれる。また彼女はFlex-KPMG AutomotiveSummitAutotechCouncilなど、数多くの自動車および技術イベントで講演および発表を行ってきた 。

 

カテゴリー:寄稿
タグ:StradVision自動運転先進運転支援システム

自動運転トラック開発のTuSimpleが貨物ネットワーク構築に向けRyderと提携

2021年初めに上場した自動運転トラック開発のTuSimple(トゥーシンプル)は、自動運転トラック輸送をサポートする貨物ネットワークを構築する計画の一環としてRyder(ライダー)と提携した。

7月26日の週に発表した取引の下、Ryderの車両メンテナンス施設はTuSimpleの貨物ネットワークのためのターミナルとなる。AFNと呼ばれているTuSimpleの自動運転貨物ネットワークは、2024年までに米国中で展開されることになっている自動運転トラック輸送網のための配送ルートとターミナルの集合体だ。TuSimpleが上場する前に同社の少数株を獲得したUPS、運輸会社​​U.S. Xpress、Penske Truck Leasing、そしてBerkshire Hathawayのグローサリー・食品サプライチェーン会社McLane IncがAFNの立ち上げ時のパートナーだった。

TuSimpleのAFNは自動運転トラック、デジタルマッピングされたルート、貨物ターミナル、顧客が自動運転ロラックのオペレーションをモニターし貨物をリアルタイムで追跡できるシステムから構成される。

Ryderの施設は主に、TuSimpleのトラックがメンテナンスを受けたり、調整された自動運転システムが使われているセンサーを必要に応じて搭載したりできる戦略的ターミナルとして機能する。一部のケースでは、ターミナルは貨物をピックアップしたい小規模オペレーターのための移送ハブのようにも使われる。しかしこれは、TuSimpleの会長兼CEOのCheng Lu(チェン・ルー)氏によると、顧客がやって来て貨物をピックアップするハブ・ツー・ハブを意図するものではない。

「これらのトラックは修理やメンテナンスが受けられる必要があり、長い稼働時間を持っていなければなりません。これは、自動運転だろうがなかろうが、すべての運送業者が気にかけていることです」とルー氏は話した。

小規模の荷主と運送業者は、貨物のピックアップやドロップオフのためにこれらのターミナルを使うかもしれない。しかし大半の場合、特にUPSのような大規模オペレーターのために、TuSimpleは貨物を直接顧客の配送センターへ運ぶ。Ryderの施設はTuSimpleがより広範な地理的領域でより多くの顧客にリーチすることができるようになる結節点、あるいは停留場となる、とルー氏は付け加えた。

提携は徐々に導入される。TuSimpleは安全オペレーターが運転席に乗り込む50台の自動運転トラックを保有し、アリゾナ州、ニューメキシコ州、テキサス州で顧客のために貨物を運んでいる。提携ではこれら地域にあるRyderの施設をまず使用し、米国中にあるメンテナンス施設500カ所へと徐々に拡大する。

TuSimpleは2021年後半にフェニックスとオーランド間で貨物を運び、東海岸へと事業を拡大する予定だと述べた。同社は新しいトラック25台を注文していて、納車され次第、車両群に加わる。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:自動運転トラックTuSimple物流

画像クレジット:TuSimpe

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Argo AIがカリフォルニア州で自動運転車に一般客を乗せる許可を取得

Ford(フォード)とVW(フォルクスワーゲン)が投資する自動運転車技術のスタートアップであるArgo AI(アルゴAI)は、カリフォルニア州の公道で同社の自動運転車に人々を無料で乗せることができる許可証を取得した。

承認された申請書によると、カリフォルニア公益事業委員会(CPUC)は7月初め、いわゆる運転手付き自動運転車の試験許可証を発行した。米国時間7月30日に同委員会のウェブサイトに掲載された。ArgoとFordはその1週間前、マイアミとオースティンを皮切りに、今後5年間で多くの都市でLyft(リフト)の配車ネットワークに少なくとも1000台の自動運転車を投入する計画を発表していた。

この許可は、州の自動運転車乗客サービス試験の一環だ。Argoは従来の自動運転車試験を超えて拡大を目指す少数の企業グループの一員となった。この動きは、業界、あるいは少なくとも一部の企業が商業運転に向けて準備を進めていることを示している。Argoは、2019年からパロアルト周辺でフォード車を使って自動運転技術の試験を行っている。同社は現在、カリフォルニア州で約12台の自動運転試験車両を有する。また、マイアミ、オースティン、ワシントンDC、ピッツバーグ、デトロイトでも自動運転試験車両を保有している。

Aurora、AutoX、Cruise、Deeproute、Pony.ai、Voyage、Zoox、Waymoが、CPUCの運転手付き自動運転車乗客試験プログラムへの参加許可を得た。このプログラムでは、人間の安全管理者がハンドルを握ることが義務付けられている。この許可を得た企業が乗車料金を請求することはできない。

Cruiseは、CPUCから運転手なし許可証を取得した唯一の企業だ。この許可証があれば、人間の安全管理者がハンドルを握らなくても試験車両で乗客を送迎できる。

CPUCの運転手付き許可証を取得することは、カリフォルニア州における商業化への道のりの一部にすぎない。同州は、CPUCとカリフォルニア州自動車局(DMW)の規制のハードルを越えることを求めている。それぞれの機関は独自の段階的な許可制度を設けている。人間が運転しないロボタクシーの乗車料金を徴収する前に両機関の規制のハードルを越えなければならない。

DMVは、自動運転車の公道試験を規制し、許可証を発行している。DMWが発行する許可証には3つのレベルがある。まず1つ目は、安全管理者が運転する自動運転車の公道試験を許可するもの。60社以上がこの基本的な試験許可を取得した。

次の許可証で運転手なしの試験を行うことができ、その後、商業運転を行うための展開許可証が発行される。人間の管理者がハンドルを握らない運転手なし試験許可証が新たなマイルストーンであり、州内で商用のロボタクシーや配送サービスを開始しようとする企業にとって必須のステップだ。AutoX、Baidu、Cruise、Nuro、Pony.ai、Waymo、WeRide、Zooxは、DMVから運転手なし許可証を取得した。

DMVでの最後のステップは、Nuroだけが達成している展開許可だ。この許可によりNuroは商業規模で展開している。Nuroの車両は乗客を乗せず、貨物だけを積載できるため、CPUCの許可プロセスを回避することができる。

一方、CPUCは2018年5月、自動運転車で乗客を輸送するための2つの試験プログラムを認可した。Argoが許可を獲得したばかりの運転手付き自動運転車乗客サービス試験プログラムは、企業が特定のルールに従う限り、自動運転車による配車サービスの運営を認めるものだ。乗車料金の請求はできず、人間の安全運転手による運転が必要で、一定のデータを四半期ごとに報告しなければならない。

CPUCの2つ目の試験では、運転手なしの乗客サービスが可能で、Cruiseが2021年6月に獲得した

このように、商用のロボタクシーを実現するためには、DMVとCPUCからの許可をすべて取得する必要がある。

[原文へ]

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】自動運転車の普及にはまず運転支援システムが消費者に信頼されることが必要

編集部注:本稿の著者Tarik Bolat(タリック・ボラット)氏はWaveSenseのCEO兼共同設立者。

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この1年間で交わされてきた自動運転車(AV)に関する議論の多くが「いつ自動運転車が公道で標準になるのか」という同じ疑問を中心に展開された。

業界のリーダーたちは2016年に、AVが路上を支配するというビッグゲームを論じていたが、今日では、一部の専門家たちはレベル4の広範な普及を10年以上先に考えている。しかしながら、そのようなタイムラインであっても、自動車メーカーが技術的にも行動的にも大きな障壁を乗り越えなければうまくいかない。AVを消費者に届けるという取り組みは予想以上に困難であり、その中核を担うのは大衆の信頼を得ることだ。

消費者の信頼度とAVの大規模な普及は密接に関係している。予測タイムラインの達成を目指し、この不可欠となる信頼の構築をすぐにも開始するために、自動車メーカーは先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driver Assistance System)への自動運転機能の導入を加速すべきである。

現行のADAS技術が直面している課題

実際、消費者はまだ自分たちのクルマのADAS機能に信頼を置いていない。全米自動車協会(AAA)交通安全財団が2021年に実施した調査によると、ドライバーの80%が自動緊急ブレーキや車線維持補助などの現行の車両安全システムについて機能改善を望んでおり、現在提供されているシステムに対する消費者の信頼感の欠如が指摘されている。

Cruiseがカリフォルニア州で無人運転のテスト車両による乗客輸送の許可を取得するなど、業界における最近の顕著な進展にもかかわらず、AAAの調査によると、自動運転車に乗ることに抵抗を感じないのはドライバーの10人に1人程度だという。消費者はAV技術の急速な進歩を認識していると思われるが、こうしたユーザーからの信頼の欠如は完全な普及に対する大きな障害となり、技術がどれほど発展しようと、業界に脅威をもたらし得るものとなるだろう。

消費者の信頼の醸成を促進するために、業界は消費者の需要を満たすより高度で信頼性の高いADASの実現に目下注力する必要がある。しかし現行のオファリングは、多くの消費者が参加する前に解決すべき大きな課題に直面している。

  1. 一般的な悪条件下での信頼性の欠如:LiDARやカメラのような技術の範囲は、周囲を「見る」ことができるものに限定される。これらのシステムは、車両のセンサーが雪、土、漂積物などで覆われてしまうことで、容易に妨害される可能性がある。さらに、雪や大雨、オフロード条件により車線表示が不鮮明になったり、GPS信号の強度が不足したりすると、車両の位置を追跡する一般的なセンサーが正しく機能しないことが懸念される。
  2. 検知不良:劣化した車線表示、歩行者、他の車両、または一般的な路上物をADAS技術が検知できず、運転者や歩行者が負傷したり死亡したりした事例がいくつか発生している。
  3. 一般大衆からの理解が低い:独立して動作するように設計されたADASの機能がある一方で、システムの能力を最大限に活用して安全性を最大化する方法の理解に関して、一般大衆の知識における一貫した欠如が依然として存在する。この認識の欠如により、不注意にこの技術を誤用する運転者だけでなく、道路を共有する運転者にも不必要な脅威がもたらされる。

これらの課題に対処し、消費者に向けたより良い自動運転エクスペリエンスを創出することは、将来のAV技術の大規模普及に向けた必須のステップである。この領域で消費者の支持を得て変化を起こすための最も即時の機会は、信頼性とユーザーエクスペリエンスの向上を図ることにあり、特に動的な車両安全システムに関してはそれが重要となる。その目的において自動運転車に求められるのは、現行のシステムを強化し、その結果として自動化機能の安全性に対する消費者の信頼を高める、センサーとソフトウェアの改良である。

車両ポジショニングに関する新たな視点

この10年間で、業界はポジショニングシステムにおいて多様な進歩を遂げてきた。ポジショニングシステムとは、車道上でセンチ単位まで車両の位置を特定するシステムであり、従来のハードウェアスタックにとって極めて重要な追加機能である。そのため専門家たちは、堅牢な車両測位の最後の未完成要素として、地中レーダー(GPR、Ground Penetrating Radar)や新しいマッピング技法などの技術に賭けている。過酷な運転条件における操作や、高度に動的な環境のナビゲーションを行う能力に期待を寄せるものだ。

AVの信頼性向上にはさまざまな手段があることは明らかだが、自動車メーカーは依然として、広範な普及に必要な性能の進化を実現するアプローチを模索している。

これらの技術を傑出させる差別化要因を詳しく考察すると、次の3つの重要な問題にどのように対処するかが共通の論旨として見えてくる。オープンハイウェイや駐車場内、あるいはクルマがトラックに囲まれて視界が遮られている場合などにおける路側機能の不足、明確で一貫性のある車線表示が前提となるカメラベースシステムへの依存、そして地表のシーンが刻々と変化し、HDマップが途端に使用できなくなるような急激な環境の変化、である。こうした共通に見られる課題により、消費者は一貫性のない、信頼性の低いADAS機能に不満を抱いている。

これらの重要なギャップを克服する1つの方法として、信頼性の高い車両ポジショニングを確保するための別の手段を模索することが挙げられる。例えば、地中レーダー(GPR)は、今日の自動化システムが直面しているGPSの可用性の不足やその他の一般的な障害がある中で、悪天候や悪路での正確な位置を車両が特定できるようにする。自律性向上の実現性を示すことが肝要である。自動車メーカーは、これらの新しいアプローチを車両に追加することで、より信頼性が高く精度の高いADAS機能を生成し、自動運転エクスペリエンスを保護することができるだろう。

消費者の信頼と大規模なAV普及の足がかりとしてADASに傾注

Partners for Automated Vehicle Education(PAVE)の最近の調査によると、ADAS技術に詳しい消費者は自動運転車に肯定的な傾向があり、その75%は現在ADAS機能を持つクルマを所有し、将来の安全技術に期待を寄せている。これは、現行のADAS機能への消費者のエンゲージメントが、将来のAV普及に対するより肯定的な態度につながる可能性があることを示している。

業界として、私たちはどこに向かうのか。現在のADASシステムにおいて、自動運転の将来の課題に正面から取り組むことで解決すべき唯一の機会が存在することに、多くの人が気づいている。そうでなければ、自動運転は、大量普及を妨げる将来の難題となってしまう。

私たちは、ADAS技術を用いてこれらの重要な課題に取り組み、より優れた運転エクスペリエンスを創造して、大衆の信頼を得る必要がある。高性能なADASを大規模AV普及への経路として用いることにより、目的地に安全に到達できるであろう。

業界は、消費者と歩調を合わせながら、安全で自律的な未来を築くことができるはずだ。

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タグ:コラム自動運転ADAS

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(文:Tarik Bolat、翻訳:Dragonfly)

Waymoが自動運転テックハブのピッツバーグにオフィスを開設

かつてGoogle(グーグル)の自動運転車プロジェクトで、現在はAlphabet傘下の独立会社である Waymo(ウェイモ)は米国東部で事業を拡大する。同社は米国時間7月22日、ピッツバーグにオフィスを開設すると発表した。鉄鋼の街として知られるピッツバーグで自動運転車両テクノロジーを開発・試験する一連の企業の輪に加わる。

同社はエンジニア12人ほどの採用から開始し、ベイカリー・スクエア地区にあるGoogleの既存のオフィスを使用する、とWaymoの動きに詳しい情報筋はTechCrunchに語った。7月22日時点でWaymoのウェブサイトに掲載されているピッツバーグエリアの求人は3件のみだが、同社は間もなく追加する。

新しいチームの一部メンバーは自動運転車両の意思決定を専門とするピッツバーグ拠点のテックスタートアップ、RobotWitsから加わる。ここにはRobotWitsの創業者でCEOのMaxim Likhachev(マキシム・リハチョフ)氏、そしてエンジニアリングやテクニカルのスタッフが含まれる。WaymoはRobotWitsを買収していないが、RobotWitsの知的財産権を買収した、と情報筋は述べた。

Waymoの自動運転プラットフォームWaymo Driverをピッツバーグで展開する計画は現在のところない、とも情報筋は付け加えた。その代わり新しいチームはモーションプランニングの開発、リアルタイムのルートプランニング、Driverの開発に取り組む。これまでのところ、Driverはアリゾナ州大都市圏のフェニックスで展開されてきた。同社のWaymo Viaトラッキング・貨物サービスはトラック運送会社J.B. Hunt Transport Servicesとテキサス州でテストされることになっている。

自動運転技術のライバルであるAurora、Motional、Argo AIはすでにピッツバーグにオフィスを設置済みだ。カーネギーメロン大学の人材で、ピッツバーグ市も自動運転エンジニアリング開発のための正真正銘のハブとしての地位を確立した。ピッツバーグはまた、自動運転トラックに取り組んでいるLocomationを含む、多くの零細AVスタートアップの拠点でもある。

Waymoはすでにサンフランシスコのマウンテンビュー、フェニックス、ニューヨーク、ダラス、インドのハイデラバードにオフィスを構えていて、ピッツバーグはこのネットワークに加わる。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMがアップグレードした自動運転支援システムSuper Cruiseを2022年に6車種に搭載へ

GM(ゼネラル・モーターズ)は自動の走行レーン変更やの牽引サポートなど3つの大きなアップグレードをハンズフリー自動運転支援システムSuper Cruiseに加え、2022年に発売するGMC Hummer EVを含む6車種で利用できるようにする。

GMは2017年の導入以来、着実にSuper Cruiseを改良してきた一方で、ここ何年も同社のラグジュアリーなブランドCadillacへの搭載に限定してきた。機能改良と搭載車両の追加は、ChevroletとGMCブランドのピックアップトラックの所有者にテクノロジーを使って機能を販売する同社の意欲、そしておそらく準備が整ったことを示している。

GMがSuper Cruiseを立ち上げたとき、利用できたのはCadillacのフルサイズのCT6セダンのみで、使用は中央分離帯のある高速道路に限定されていた。それは同社がSuper Cruiseの提供を拡大すると発表した2019年から変わり始めた。そしていま、Super Cruiseは米国の長さにして20万マイル(約32万km)超の道路で利用できる。

そしてGMはさらに拡大する計画だ。2023年までに同社は今後発売するEV、Cadillac LyriqやGMC Hummer SUVを含む22種の車両にSuper Cruiseを搭載することを目指している。

同社は米国時間7月23日、ドライバーの介入なしに作動する自動レーン変更機能をSuper Cruiseに加えると明らかにした。改良されたSuper Cruiseのこの機能は、2022 Cadillac Escalade、Cadillac CT4、Cadillac CT5、Chevrolet Silverado、GMC Hummer EV Pickup、GMC Sierraで利用できるようになる見込みだ。同社はまた、ドライバーがボートやキャンピングカーを牽引しながらハンズフリーアシスタンスシステムを利用できるようにする新機能も開発し、導入する。この牽引機能は牽引能力を持つ2022年モデルの車両でのみ提供される。そしてSuper Cruiseが使える高速道路をドライバーに示す車載ナビゲーションをアップデートした。

Super CruiseはLiDARマップデータ、高精度GPS、カメラ、レーダーセンダー、そしてハンドルを握っている人が注意を払っていることを確認するドライバーアテンションシステムで構成される。TeslaのAutopilotドライバーアシストシステムと異なり、Super Cruiseのユーザーはハンドルに手を置く必要はない。だが、視線は進行方向に向けている必要がある。

Super Cruiseの自動車線変更機能ではドライバーは道路を見ておかなければならない。システムがオンのとき、ドライバーは車線を変更する意思を示すためにウィンカーを操作しなくてもいい。代わりにシステムがドライバーに知らせ後に車線を変更する。システムはゆっくり走る車両を追い越すのにも他のレーンを使う。

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ボートやキャンピングカー、トレイラーを牽引するときはドライバーが介入する自動レーン変更がデフォルトとなる。

こうしたアップデートのすべてはVIP(vehicle intelligent platform)というGMの新しいデジタル車両プラットフォームで可能になっている。VIPはこれまで以上の帯域幅とデータ処理力を提供し、エンジニアがSuper Cruiseの能力に追加できるようにしている。VIP電動アーキテクチャを備えた車両は無線ソフトウェアアップデート経由でSuper Cruiseに機能を加えることが可能だ。つまり、一部の2021年モデル、具体的にはCadillac Escaladeはこうしたアップデートを取り込める。

VIPを搭載していないために、2022年Chevrolet Bolt EUVなどいくつかの車両はSuper Cruiseの異なるバージョンを持っている。結果として、Bolt EUVはこうしたアップデートは受けられない。

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

テスラがオーナーを使い安全ではない自動運転ソフトのテストを行っているとコンシューマーレポートが懸念

サンフランシスコの交通量の多い道路で、自動運転モードのTesla(テスラ)が中央車線から左折する。車両は意図していないバスレーンに飛び込んでしまう。角を曲がったところで駐車中の車の列に突っ込みそうになり、ドライバーがハンドルを握ることになる。これらのシーンは、自動車評論家のAI Addict(AIアディクト)氏が撮影したもので、他にも同様のシーンがYouTubeにアップされている。これらは、携帯電話で話し中の人間なら誰でもやってしまいそうなミスだというかもしれない。しかし、私たちはAIがもっと頼りになることを期待している。

2021年7月初めから、テスラはこれまでのADAS(先進ドライバー・アシストシステム)が行っていたような、カメラとレーダーの利用ではなく、カメラだけを使ったADASであるFSD(Full Self-Driving)バージョン9ベータ の配信を開始した。

無防備な左折などの危険な運転をしている映像や他のテスラのオーナーからの報告を受けてConsumer Reports(コンシューマーレポート)は、米国時間7月20日に声明を発表した。それは今回のソフトウェアアップグレードは、公道での安全性に問題があると考えられるというもので、必要なソフトウェアアップデートが行われた後、同社が所有するSUV「Model Y」で独自にソフトウェアアップデートの内容をテストするとしている。

試作品のソフトウェアを動かすことは、大変だが楽しみでもあります。修正すべき多くの既知の問題を抱えていたので、ベータリストは遅れていました。

ベータ9では、ほとんどの既知の問題には対処できていますが、未知の問題もありますので、ご利用時にはこれ以上ない細心の注意を。

テスラは常に安全性を最優先しています。

コンシューマーレポートは、テスラが既存の所有者とその車両を、新機能をテストするためのモルモットとして利用しているのではないかと懸念している。テスラのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、同社の立場を強調するように、ドライバーに対して「未知の問題もありますので、ご利用時にはこれ以上ない細心の注意を」と、運転中に気を抜かないように呼びかけた。テスラ車のオーナーの多くは、フィードバックのためにベータ版ソフトウェアを提供するテスラのアーリーアクセスプログラムに登録しているので、自分が何をしようとしているのかを理解しているが、それ以外の一般の道路利用者たちはそのような試験に同意していない。

テスラのアップデートは、全国のドライバーに向けて配信されている。コンシューマーレポートはテスラに対して、各州の個別の自動運転規制を考慮しているかどうかについての詳細な情報を求めたが、回答は得られていない。29の州が自動運転に関連する法律を制定しているが、それらは州によって大きく異なっている。Cruise(クルーズ)、Waymo(ウェイモ)、Argo AI(アルゴAI)などの他の自動運転技術企業は、コンシューマーレポートに対して、私有地でソフトウェアをテストするか、訓練を受けたセーフティドライバーを監視役として使用していると回答している。

コンシューマーレポートの安全政策担当マネージャーのWilliam Wallace(ウィリアム・ウォレス)氏は声明の中で「自動車技術は本当に急速に進歩しており、自動化は多くの可能性を秘めていますが、政策立案者たちは強力で意味のある安全規制を導入するために踏み出す必要があります」という。「さもないと一部の企業が、安全に対する責任を負わないまま公道を私的な実験場のように扱うことになります」。

2021年6月には米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、SAEレベル2のADASまたはSAEレベル3、4、5の自動運転システムを搭載した車両の製造者および運用者に対して、衝突事故の報告を義務付ける命令を発令した。

NHTSAの管理代行者であるSteven Cliff(スティーブン・クリフ)博士は、声明の中で以下のように語っている「NHTSAの最大の使命は安全です。衝突報告を義務付けることで、NHTSAは重要なデータにアクセスできるようになり、これらの自動運転システムに現れる可能性のある安全上の問題を迅速に特定することができます。実際、データを集めることで、連邦政府が自動運転車の安全性をしっかりと監視しているという国民の信頼を得ることができるのです」。

FSDベータ9ソフトウェアには、ドライバーの監視下で交差点や市街地を巡航するなど、より多くの運転タスクを自動化する機能が追加されている。しかし、他の道路利用者と車の位置関係や、スクーターに乗った女性が通り過ぎる様子まで詳細に表示される優れたグラフィックによって、ドライバーは肝心な時に支援してくれるはずの技術そのものに注意を奪われてしまうかもしれない。

コンシューマーレポートのAuto Test Center(オートテストセンター)のシニアディレクターのJake Fisher(ジェイク・フィッシャー)氏は、次のように述べている。「テスラがドライバーに注意を払うように求めるだけでは十分ではありません。システムが作動しているときにドライバーが集中しているかを確認する必要があるのです。適切なドライバーサポートなしに、自動運転システムの開発をテストすることは、死亡事故につながる可能性があるというだけでなく、実際に悲劇が起きることもわかっています」。

フィッシャー氏は、テスラはドライバーが道路を見ていることを確認するための車内ドライバーモニタリングシステムを導入すべきだという。これは 2018年にフェニックスで、道路を横断していた女性をはねて死亡させたUberの自動運転テスト車両のような事故を防ぐことが目的だ

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:sako)

コロナ禍でモビリティも変化、いま押さえておくべき5つのトレンドとは?

人の移動を支えるモビリティは、日々変化している。移動のあり方、移動のニーズも変わってきた。Frost & Sullivan(フロスト&サリバン)でアジア太平洋地区モビリティ部門担当アソシエイト・パートナーを務めるVivek Vaidya(ヴィヴェック・ヴァイジャ)氏は「コロナ禍はモビリティトレンドを変化させました」と語る。

ヴァイジャ氏が明かす、5つのモビリティトレンドとは何か。本記事はフロスト&サリバン主催『インテリジェントモビリティサミット2021 ゼロへのイノベーション』中のセッションの一部講演を編集、再構成したものとなる。

「三密回避」で広がった「脱通勤」のライフスタイル

ヴァイジャ氏が最初に挙げる最初のトレンドは「脱都市化」だ。新型コロナウイルスが広まってからというもの、三密回避のために多くの人が「家で働く」ライフスタイルを始めた。企業のマインドセットも変わり、ワークライフバランスの定義も変わった。

同時に、在宅ワークを可能にするツールの活用が進み、働くためのオフィスは必須ではなくなったため、オフィスの縮小やシェアオフィスの活用も進んでいる。生活エリアとして都市部ではなく、郊外を選ぶ人も出てきている。

通勤が必要なくなると、移動の目的が変わり、移動の形にも影響する。また、公共交通機関の需要も変わる。

ヴァイジャ氏は「通勤が減ると、公共交通機関で運ばれる人数が減ります。そのため、シェアードモビリティなど、需要に合わせて運用できるソリューションの必要性が高まります。さらに、より細かな目的に即したモビリティの需要が高まり、自転車やバイクなど、規模の小さな移動手段の需要も出てきます」と語る。

モビリティの競争が変革される

2つ目のトレンドは「新しい価値創造モデル」だ。

現在、モビリティ周辺の競争のありようは変化しており、ティア1企業は現状より広い役割を果たそうとしている。スタートアップの競争も激化している。さらに、製品の差別化要素はクルマ自体のパワーから、コネクティビティと自動運転へと変化しているという。

ヴァイジャ氏は「モビリティにおける競争の中心は製品そのものではなく、サービスやソリューションに移り変わっています」と指摘する。

また、テクノロジーのライフサイクルはどんどん短くなりながら、そのコストは上がってきている。研究に対するリソースの重要性は増し、自動車メーカーにとって規模の経済の重要性は増すばかりだが、同時に成功の不確実性は高まっている。

「この状況を打開するには、競合企業の協力が不可欠です。コネクティビティと自動運転はバリューチェーンとテクノロジーの中で進化していますが、競合企業同士が手を組むことで、さらに成長しようとしているのです」とヴァイジャ氏。

「新しい価値創造モデル」は、こうした競合企業同士の協力関係の構築から生まれているという。多様なバリューチェーンが集結し、企業の垣根を越えたコラボが活発化している。

モビリティもサブスクリプションモデルへ

3つ目のトレンドは「ビジネスモデルの改革」だ。

これまでの自動車産業では、クルマを販売した自動車メーカーの利益、自動車メーカーに部品を販売したティア1企業の利益というように、バリューチェーンの1つ1つがそれぞれで利益を出していた。しかし、この形に問題が生じてきている。

ヴァイジャ氏は「まず、バリューチェーンの利益が圧力にさらされています。サービスや部品に対する利益が縮小。さらに在宅ワークが増え、通勤が減ったことなどの影響で、これまでの自動車を徐々に買い替え、車種のグレードを上げていくような消費スタイルが変化しつつあります。それにともない自動車メーカーはビジネスモデルを変革する必要があるのです」と問題を指摘する。

では、どのように変革していけば良いのか。ヴァイジャ氏は「サブスクリプション型サービスの導入が鍵です」という。

実際、自動車メーカーはAndroidベースのOSや独自OSを導入してハードウェア、ソフトウェア、アプリケーションのシームレスな統合を果たそうとしている。こうした統合ができれば、自動車メーカーは顧客と長期間、直接的な関係を持つことができる、

ヴァイジャ氏は「例えば、顧客がクルマを買って、そこに駐車アプリがインストールされており、そのアプリに対してサブスクリプション料金が発生するといったモデルが可能です」という。

では自動車メーカーとティア1企業は何をすべきなのか。サブスクリプション型モビリティビジネスの鍵はコネクテッドカーとサービスだ。自動車メーカーはコネクテッドカーに焦点を当て、コネクテッドカーの普及率上昇に務める必要がある。

「コネクティビティのための装置や関連するコストは、コストではなく投資と捉えるべきです。これがあれば自動車メーカーもティア1企業も顧客とつながり続けることができ、マネタイズの機会を持ち続けられます」とヴァイジャ氏。

このような装置から得られたデータを活用し、適切なアプリケーションを提供することで、自動車メーカーとティア1企業はアプリケーションをインストールした車両から継続的なキャッシュを手にすることができる。

ヴァイジャ氏は「こうした方法で既存のビジネスモデルのリスクを回避し、キャッシュフローを改善することができます」と話す。

「自動車産業」のマインドセットから「モビリティ」のマインドセットに

4つ目のトレンドは「カスタマーインターフェイスの再構築」だ。

現在、自動車メーカーはカスタマーインターフェイスをコントロールできる立場にいる。そのため、自動車メーカーは自社のブランドの特徴などを意のままに世に送り出すことができる。しかし、EV(電気自動車)が広まることで新しいプレイヤーが市場に登場し、伝統的な自動車メーカーに挑むようになってきた。さらに、シェアードモビリティやMaaS関連企業がカスタマーインターフェイスの主導権を握ろうとしている。その上、顧客がこれまで「運転すること」で得てきたブランド体験を、自動運転車がなくそうしている。

ヴァイジャ氏は「この状況に対応するには、まず『自動車産業』のマインドセットから『モビリティ』のマインドセットに切り替えることが必要です。これはつまり、製品中心の考えから、サービス中心の考えに移行することです。スタートアップとコラボレーションし、新しいバリュープロポジションに投資し、技術と自動運転を受け入れて独自のサービスを提供することで、サブスクリプション型のビジネスに変化することができるでしょう」と対応方法を提示した。

あらゆる『ゼロ』が唯一の未来

5つ目のトレンドは「ゼロカーボンフットプリント」だ。これを推進しているのはスマートシティだ。「自動車メーカーはこれを無視することはできない」とヴァイジャ氏はいう。再生可能エネルギーへの投資額は上昇し、持続可能性は無視できないテーマだからだ。

「ICE(内燃エンジン車)も2040年くらいまでには使われなくなるでしょう。あらゆる『ゼロ』が唯一の未来です。カーボンフットプリントもゼロ。事故もゼロ。死者もゼロ。100%でリサイクルのゴミもゼロ。欠陥ゼロ。リコールゼロ。100%ESGに則る。企業は倫理を問われているのです。紹介した5つのトレンドを見直し、『何が問われているのか』『何をみられているのか』を考えながら、今後のモビリティを前進させてください」とヴァイジャ氏は語った。

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タグ:新型コロナウイルス電気自動車自動運転サブスクリプションカーボンフットプリント二酸化炭素ESGコネクテッドカー

ホンダと楽天が自動配送ロボットの走行実証実験を共同で開始、筑波大学構内および一部公道で実施

写真右下側にあるボックスが、Hondaの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack」(モバイルパワーパック)

写真右下側にあるボックスが、Hondaの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack」(モバイルパワーパック)

本田技術研究所(Honda)と楽天グループ(楽天)は7月19日、自動配送ロボットの走行実証実験を共同で開始したと発表した。実施期間は7月19日~8月31日。実施場所は、筑波大学構内の宿舎周辺と一部公道を含む全長約500m。

現在、コロナ禍により、ラストワンマイルにおける「遠隔・非対面・非接触」配送ニーズの増加、また少子高齢化に伴う配達員不足への対応といった社会課題が顕在化している。その解決に向け、Hondaが長年研究してきたロボティクス技術と、楽天の配送サービスのノウハウとを活用し、自動配送ロボットの検証を行う。

同実証実験では、Hondaが開発した自動配送機能を備えた車台に、楽天が開発した商品配送用ボックスを搭載した自動配送ロボットが、筑波大学構内(一部公道を含む)を自動走行する。電力源にはHondaの交換式バッテリー「Honda Mobile Power Pack」(モバイルパワーパック)を採用しており、充電を待つことなく配送サービスの継続が可能という。

走行中は、楽天モバイルの通信回線(LTE)を用いて、宿舎周辺から最大約650m離れた地点から自動配送ロボットの遠隔監視などを安全確認のために実施する。

また同実証実験での技術検証・データ収集・ニーズ把握を踏まえ、自動配送ロボットを活用した商品配送サービスの提供を目指し技術開発を継続するとしている。

各社の役割

  • Honda:自動配送ロボットの機体とシステムの開発・仕様検討および技術実証
  • 楽天:安全面での対策の検討、商品配送用ボックスの開発およびサービス実用化に向けた検討

なお同実証実験は、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「自動走行ロボットを活用した新たな配送サービス実現に向けた技術開発事業」による支援を受けて実施するものという。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:自動運転 / 自律運転(用語)配送 / 宅配 / デリバリー(用語)物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)Honda / 本田技研(企業)楽天 / Rakuten(企業)ロボット配達(用語)日本(国・地域)

自動運転開発AuroraがSPAC合併で上場へ、評価額は約1.4兆円

2020年12月にUber(ウーバー)の自動運転部門を買収した自動運転車両スタートアップのAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partners Yとの合併を通じて上場する。

米国時間7月15日に発表されたこの取引は、LinkedIn共同創業者Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏とZynga創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏、マネージングパートナーのMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏によって立ち上げられたSPACとAuroraが最終的な協議を行っているという6月のTechCrunchの報道のとおりだ

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NASDAQにティッカーシンボル「AUR」で上場する合併会社の想定される評価額は130億ドル(約1兆4275億円)だ。Uberの自動運転部門の買収後のAuroraの評価額は、100億ドル(約1兆980億円)だった。

合併取引を通じて、 ​AuroraはBaillie Gifford、Counterpoint Global (Morgan Stanley)やT. Rowe Price Associates, Inc.が管理するファンドや口座、PRIMECAP Management Company、Reinvent Capital、XN、Fidelity Management and Research LLC、カナダ年金制度投資委員会、Index Ventures、Sequoia Capitalといったプライベート投資家、並びにUber、PACCAR、Volvo Groupからの戦略的投資で10億ドル(約1100億円)を調達する。

合併会社は、クロージング時に現金約25億ドル(約2745億円)を保有することを見込んでいる。当局に提出した書類によると、ここには2021年3月18日に完了したIPOで調達したReinventの信託口座にある9億7750万ドル(約1070億円)が含まれる。

「当社にとってこれは大きな次なるステップです」とCEOで共同創業者のChris Urmson(クリス・アームソン)氏は7月15日のインタービューで述べた。「明らかに我々のプロダクトをマーケットに持ってくる必要があります。しかし我々はこの上なく当社のチーム、そしてこの取引がもたらすリソース、そしてパートナーにこの上なく胸躍らせています」。

Auroraは4年という期間で、話題を振りまくスタートアップから上場企業になった。同社は2017年にSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏,、Drew Bagnell (ドリュー・バグネル)氏、アームソン氏によって創業された。3人とも自動運転車両テクノロジーに取り組んできた経歴を持つ。

2020年12月に同社はUberの自動運転部門、Uber ATGを複雑な取引で買収することでUberと合意し、これにより合併会社の評価額は100億ドルになった。買収条件により、AuroraはUber ATGに現金を払わなかった。Uber ATGはトヨタ、デンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから2019年に10億ドルの出資を受けたのち、評価額は72億5000万ドル(約7960億円)だった。米証券取引委員会に提出された書類にとると、現金の代わりにUberは合併会社の株式26%を受け取った。

買収後、AuroraはUber ATG従業員の統合にここ数カ月を費やし、現在の総従業員数は約1600人だ。Auroraはつい最近、北米向けの自動運転セミトラックを共同開発することでVolvoと合意に達したと述べた。少なくとも数年は継続すると予想されているこの提携は、VolvoのAutonomous Solutions部門を通じて、Volvoの顧客のためにハブ間の高速道路を自動運転で走行するトラックの開発と展開に注力する。

大規模なベンチャーキャピタル

ホフマン氏、ピンカス氏、そしてトンプソン氏は、彼らが「大規模なベンチャーキャピタル」と呼ぶコンセプトを促進してきた。これまでSPACはそのスケールに達するためのコンジットだった。3氏は白紙小切手会社であるSPAC3社を組成した。

それらSPACのうち2社は非公開企業との合併を発表した。Reinvent Technology Partnersは2月に電動垂直離着陸機を開発するJoby Aviationとの合併取引を明らかにした。Joby Aviationは2021年後半にニューヨーク証券取引所に上場する。Reinvent Technology Partners Zは住宅保険のスタートアップHippoと合併した。

3氏の3つめのSPACはAuroraと合併するReinvent Technology Partners Yで、このSPACはIPOで8億5000万ドル(約930億円)を調達するために8500万株を1株10ドル(約1100円)とした。そして割り当て超過をカバーするために追加で1270万株を発行し、調達総額は9億7700万ドル(約1070億円)となった。同社はNASDAQに上場していて、ティッカーシンボルRTPYUで取引されている。

多くの点で、AuroraとReinvent SPACの合併は理に適ったものだ。

Auroraはすでにホフマン氏と接点があった。2018年2月に同社はGreylock PartnersとIndex Venturesから9000万ドル(約100億円)を調達した。Greylockのパートナーであるホフマン氏とIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ボルピ)氏はシリーズAラウンドの一環でAuroraの役員会に加わった。そして2019年にAuroraはSequoia Capital、Amazon、T. Rowe Price AssociatesがリードしたシリーズBラウンドで5億3000万ドル(約580億円)超を調達した。このラウンドにはLightspeed Venture Partners、Geodesic、Shell Ventures、Reinvent Capital、既存投資家のGreylockとIndex Venturesも参加した。

SPAC取引の両面からホフマン氏とReinventが現れたのは、前例のないことではないが、ありふれたことでもない。アームソン氏は、潜在的な利益相反を避けるためにホフマン氏がこの協議に加わらなかった、とTechCrunchに語った。

「一方でリード(ホフマン氏)の理解と会社との付き合いを考えると、リードは今回の機会を理解するのに最も適した人物の1人です」とアームソン氏はインタビューで述べた。そして、利益相反を回避するために、ホフマン氏はAurora、Reinveintどちらのサイドででも協議に加わらなかった、とも語った。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora Innovation自動運転SPAC

画像クレジット:Aurora

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

トヨタのウーブン・プラネットが高精細地図スタートアップCarmeraを買収

トヨタ自動車が自動運転などの将来に向けた交通技術に投資し、開発を進め、最終的に商業化するために設立した企業であるWoven Planet Holdings(ウーブン・プラネット・ホールディングス)は、高精度地図のスタートアップ企業であるCarmera(カーメラ)を、非公開の金額で買収すると発表した。2021年4月末にウーブン・プラネットは、Lyft(リフト)の自律走行車部門であるLevel 5(レベル5)を5億5000万ドル(約604億円)で買収することで合意に至ったと発表したばかりだ。

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また、これは6月に発表されたNVIDIA(エヌビディア)によるDeepMap(ディープマップ)の買収に続く、高精度地図スタートアップの買収でもある。

今回の買収により、Carmeraはウーブン・プラネットの完全子会社となる。ウーブン・プラネットの代表取締役CEOであるJames Kuffner(ジェームズ・カフナー)氏によれば、Carmeraで働く50人のチームはニューヨークとシアトルのオフィスを維持し、最終的にはウーブン・プラネットの1000人を超えて成長を続ける事業形態に統合されるとのことだ。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの事業会社で東京に本社を置くWoven Alpha(ウーブン・アルファ)の米国拠点となり、同社のAMP(Automated Mapping Platform、自動地図生成プラットフォーム)チームと協業する。Carmeraの共同設立者兼CEOであるRo Gupta(ロー・グプタ)氏は、AMPを統括するMandali Khalesi(マンダリ・カレシー)氏の直属となる。

Carmeraは、商用フリート会社に無料で提供しているサービスから収集したデータを、主要な地図製品の維持・拡大に利用するバーター型のビジネスモデルとして、2015年に設立された。Carmeraの主要かつ最初の製品は、自動車メーカーやサプライヤー、ロボタクシーなど、自動運転車を手がける顧客向けに開発された高精細な地図である。自動運転車開発のスタートアップであるVoyage(ヴォヤージュ)は、2021年3月にCruise(クルーズ)に買収されたが、Carmeraの初期の顧客だった。また、Baidu(百度、バイドゥ)はCarmeraの技術を使って、オープンソースの自動運転基盤「Apollo(アポロ)」におけるマッピングプロジェクトをサポートしている。

Carmeraは、車両やドライバーのリスク管理や安全性の向上を図りたいフリート事業者のために、テレマティクスおよびビデオを使ったモニタリングサービスを提供しており、それら多数のフリート車両から得られたクラウドソースのデータを、自動運転に役立つ高精細地図の更新に利用している。カメラを搭載した人間が運転するフリート車両は、都市部で日常業務を行う際に得た日々新たな道路情報を、自動運転用地図に提供しているというわけだ。

これまでCarmeraは、時間をかけて製品ラインアップを進化させてきた。自動運転用地図にリアルタイムイベントや変更管理エンジンを追加し、都市および市街地計画者向けに空間データや街路分析などの製品を開発した。2020年、同社はいわゆるChange-as-a-Service(サービスとしての変更)プラットフォームを発表した。これは、変化を検出して他のサードパーティの地図に統合できる一連の機能を備えた製品群だ。

リサーチ&アドバイザリ企業のGartner(ガートナー)でVPアナリストを務めるMike Ramsey(マイク・ラムゼイ)氏は「高精細地図の会社で常に問題となるのは、このような機能を持っているのはすばらしいことだが、それをどのように拡張し、提供し、更新し続けるかを考えないと、『誰かに売れそうなソフトウェアのよくできた一部分を持っているだけ』という状態に陥ってしまうことです」と述べている。「今回の買収は、Carmeraの拡張に関する問題を解決するものです」。

画像クレジット:Carmera

Carmeraはウーブン・プラネットに比べて規模も資本も小さいが、業界を注視してきた人はこの合併を予測していたかもしれない。

Carmeraは、ウーブン・プラネットの前身となったToyota Research Institute-Advanced Development(トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメント)と、3年前から協業してきた。このスタートアップが最初に参加したのは、日本で行われた実証実験で、車載カメラを使って都市部や路面の高精細地図を自動生成する方法を開発した。このパートナーシップは2020年に拡大し、日本だけでなくミシガン州のデトロイトなどの道路の地図作成も行われている。

「この関係に多くの投資をすることは実に簡単なことでした」と、グプタ氏は2018年にCarmeraがトヨタと初めて提携したときのことを振り返る。「ビジョンが非常によく似ていたのです。5年前に考えた我々のシードデッキと、ウーブン・プラネットの全体的なビジョンや、地図の自動生成に対する彼らのビジョンを比べると、あまりにも似ていて不気味なくらいでした」。

ウーブン・プラネット(ひいてはトヨタ)は、すでに衛星を使って作成した地図と、現在走行中の何百万台もの車両から得られる膨大なデータを持っている。Carmeraは、ウーブン・プラネットのポートフォリオに、ダイナミックな地図の変更と、フリート事業者や安全性に関するビジネスの経験をもたらすことになる。

「Carmeraとはすでに一緒に実証実験に取り組んできた、近い将来に利用可能なアプリケーションがあります。これらは、まだ発表していませんが、安全性や自動運転の分野に応用できます」と、カフナー氏は語っている。そして、この自動車メーカーの新型Lexus LS(レクサスLS)とToyota Mirai(トヨタ ミライ)に、高精細地図を利用した「Teammate(チームメイト)」と呼ばれる先進運転支援技術が搭載されたことに言及し「私はこれらの次世代の製品にとても期待しています。特に商用フリート車両では、高精細地図には多くの用途があります」と語った。

ウーブン・プラネットが織りなすもの

画像クレジット:Woven Planet/Toyota

LyftとCarmeraの買収は、ウーブン・プラネットが2021年1月に設立されてから行ってきたさまざまな活動の一端を表すものだ。それはトヨタ自動車が、既存のライバル企業や新興企業に対して、特にソフトウェア面での競争力を高めようとしていることも示している。トヨタ自動車の子会社で東京に拠点を置くウーブン・プラネットには、Woven Alpha(ウーブン・アルファ)とWoven Core(ウーブン・コア)という2つの事業会社と、Woven Capital(ウーブン・キャピタル)というVCファンドを擁している。また、この持株会社は、あるゆるモノやサービスが相互接続されたスマートシティのプロトタイプとして、新技術の実験場となるWoven City(ウーブン・シティ)と呼ばれるプロジェクトをてがけている。トヨタは2021年2月、富士山麓にある静岡県裾野市の東富士工場跡地で、このWoven Cityの建設に着工した。

2つの事業会社であるウーブン・アルファとウーブン・コアは、トヨタ・リサーチ・インスティテュート・アドバンスト・デベロップメントの事業をさらに発展・拡大するために、新体制に移行して設立された。ウーブン・コアは地図作成ユニットを含む自動運転技術に焦点を当てており、ウーブン・アルファはWoven Cityを含む新しいコンセプトやプロジェクトの開発を担当している。

そしてウーブン・キャピタルは、これらの次世代モビリティ・イノベーションに投資を行う。このVC部門は、2021年3月に8億ドル(約880億円)規模の新たな戦略的ファンドを起ち上げ、その第一号案件として、無人自動運転車による配送に特化したロボティクス企業であるNuro(ニューロ)に出資すると発表した。6月には、カーシェアリング、ライドシェアリング、自動運転技術企業などの車両管理を支援するためのプラットフォームを開発した交通ソフトウェアのスタートアップ、Ridecell(ライドセル)に非公開額の出資を行っている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:トヨタ自動車Woven Planet買収地図自動運転

画像クレジット:Carmera

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォルクスワーゲンがソフトウェアと自律走行を前面に打ち出した新ビジネス戦略を公表

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)は、今後数十年にわたって競争力を維持するために、ソフトウェア、サービスとしてのモビリティ、バッテリー技術を強化していく。同社をはじめとする自動車メーカーは、自動車の発明以来最大のパーソナルモビリティーの変化に備えようとしている。

中央ヨーロッパ時間7月13日に同社の戦略を説明したHerbert Diess(ヘルベルト・ディース)CEOは、製造から収益ストリームに至るまで、あらゆる面での変革を強調した。フォルクスワーゲンのCFOであるArno Antlitz(アルノ・アントリーツ)氏は、従来の収益が内燃エンジン車の販売によるものであったとすれば、2020年代の残りは、EV販売だけでなく、ソフトウェア、自律走行、さらにはライドシェアリングからも収益が得られるようになると述べている。

そのために、フォルクスワーゲンは欧州に6カ所のバッテリーギガファクトリーを建設し、西ベルリンに8億ユーロ(約1043億円)のハードウェアプラットフォーム研究開発施設を建設するなど、活発に動いている。また、VWは自社の車載ソフトウエア部門であるCariadを強化しており、同部門はサブスクリプションやその他の販売を通じて、2030年までに1兆2000億ユーロ(約156兆円)もの収益を上げる可能性があると述べている。

フォルクスワーゲンは、自律走行についても大きな計画を持っている。同社はライドシェアリングやレンタカーの市場シェアをつかみ取りたいと考えており、統合されたAV(自律走行車)プラットフォームでそれを達成しようとしている。幹部たちは、10年後までには顧客がフォルクスワーゲンの電動AVタクシーやシャトルバスをリクエストできるようになるという鮮明なイメージを語った。プレゼンテーションで示された画像を信じるのならば、その際にはハンドルや運転席はないかもしれない。

「想像してみてください。あなたのおばあさんや8歳の息子さんが、お父さんやお母さんが運転しなくても、好きなときにフォルクスワーゲンのタクシーに乗ってお互いに会いに行けることを」と、ディース氏は提案した。「当社のモビリティアプリの1つを使えば、ID.BUZZがあなたと友達を迎えに来てくれる(未来を)」。

パーソナルビークルにはCariadが搭載され、2025年までに「レベル4の準備」が整うという。シャトルやタクシーのようなシェアードモビリティは、VWが所有・運営し、AV企業のArgo AI(アルゴAI)が開発した技術を使用する。フォルクスワーゲンは2020年6月、このスタートアップへに26億ドル(約2876億円)を投資した。

欧州最大の自動車メーカーであるVWは、MaaS(Mobility as a Service)への投資が功を奏すると予想している。Volkswagen Commercial VehiclesのCTOであるChristian Senger(クリスチャン・センガー)氏は、2030年までに欧州の5大市場だけで700億ドル(約7兆7445億円)以上の年間収益を見込んでいると述べた。ミュンヘンでのパイロットプロジェクトでテストされている自律型ライドシェアのID.BUZZは、2025年にハンブルクで商用サービスとして展開され、その後まもなく米国でも展開される予定だ。

画像クレジット:Volkswagen

これらの推定に沿って、同社は2025年にはBEV(バッテリー式電動自動車)の販売台数が全体の25%、2030年には50%を占めるようになると予測している。ICE(内燃エンジン)のマージンは、需要の減少、排出ガス規制の強化、税制面での優遇措置などにより、ますます厳しくなると考えられ、フォルクスワーゲンは2030年までに欧州でICEモデルの数を60%削減する計画だ。スケールメリットと工場コストの削減により、ICEとBEVのコストパリティは2〜3年以内に達成できるだろうとアントリーツ氏はいう。

これは楽観的な未来だが、フォルクスワーゲンは十分な自信を持っている。同社は、2025年の利益目標を従来の7〜8%から8〜9%に引き上げた。

「2030年までにモビリティの世界は、20世紀初頭に馬から自動車へと移行して以来の大きな変革を迎えることになるでしょう」とディース氏は述べている。「クルマの未来、個人のモビリティの未来は、明るいものになるでしょう」。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenバッテリー電気自動車自律運転

画像クレジット:Volkswagen

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

柔軟な処理能力を備えた自動運転技術の開発を進めるISEEがヤードトラックでハブの配送を自動化

ロボタクシーはまだ数年先になるかもしれないが、今日あるような自動運転車によって変革が可能な業界は他にもある。MITのスピンオフ企業であるISEEは、コンテナの仕分けや保管が行われている一般的な輸送ヤードで、その1つを見出した。このところ人間のドライバーの数が減ってきているが、今後は同社が専用に開発したロボット運転のヤードトラックがその作業を担うことになるかもしれない。新たな資金調達と大手荷主との提携により、ISEEは大きく成長を遂げる可能性がある。

船積場は物流業界の緩衝地帯だ。コンテナを満載した船からコンテナを降ろすとき、クレーンがコンテナを降ろした岸壁にコンテナをそのまま置いておくことはできない。時間に制約があるため、すぐにトラックアウトする必要があるが、あるコンテナは税関や検査を経て1週間施設に留まる必要があるかもしれない。あるいは、冷蔵保管されていて、電気と空気の接続が必要なコンテナもあるかもしれない。

このような状況はいずれも、プロのドライバーによって処理される。適切な場所まで数百メートルまたは数千メートルの距離を走る短距離トラックへの連結、電源のある空きスロットへの設置、長期保管、検査の準備に入るなどさまざまだ。しかし、ロジスティクスの多くの仕事と同様に、年々登録者が減少しているため、この仕事も人手不足に直面している。結局のところ、作業はかなり反復的であるが、特に容易というわけではなく、そしてもちろん、重い機器は危険をともなうことがある。

ISEEの共同創業者であるYibiao Zhao(イビャオ・ジャオ)氏とDebbie Yu(デビー・ユウ)氏は、物流業界はさらなる自動化を必要としており、特にコンテナヤードがその傾向にあると指摘する。「顧客と一緒に仕事をしていると、ヤードでの作業がいかに時代遅れなものかということに驚きます。基本的には人々が大声を上げているだけなのです」とジャオ氏はいう。「これを次のレベルに引き上げる大きなチャンスがあります」。

画像クレジット:ISEE

ISEEのトラックは完全にカスタム化されたものではなく、よくあるタイプのヤードトラックで、LiDARやカメラなどのセンサーを装備して360度の認識を持たせている。その仕事は、コンテナ(未処理のもの、そこが重要)をヤードのあちこちに運び、50フィート(約15m)のトレーラーを左右わずか1フィート(約30cm)のスペースしかない駐車スペースに戻すことだ。

「顧客は、まるで別のドライバーを雇うかのように、当社のソリューションを採用しています」とジャオ氏はいう。安全地帯を設ける必要はなく、ヤードで特別な配慮をする必要もない。ISEEのトラックは、障害物を避けながらインテリジェントに走行し、通り過ぎる作業員のために減速し、自動運転か人間による運転かにかかわらず、他のトラックのためのスペースを確保する。多くの産業機械や車両とは異なり、これらは安全を保ち、予測不可能な混沌とした交通の中で可能な限り安全に運転するように、現在の自動運転の状態を適応させることができるのだ。

人間のドライバーを超える自動化システムの利点は、こうした環境において特に顕著である。ヤードトラックのドライバーのやや特殊な制約の1つとして、運転席がキャビンの左側にあるため、十分によく見えるのは左側だけであり、トラックも左側にしか駐車できないことが挙げられる。もちろん、ISEEトラックにはそのような制限はなく、どちらの方向にも簡単に駐車できる。

画像クレジット:ISEE

効率性もまた、絶対確実な機械思考によって改善される。「ヤードには何百、何千ものコンテナがあります。人間は、何がどこにあるのか覚えていないことにより、ヤードを歩き回ってアセットを探すことに多くの時間を費やしてしまいます」とジャオ氏は説明する。だがもちろん、コンピュータは決して記憶を失わないので、ガソリンを無駄にしてヤードを回り、コンテナやそれを置く場所を探し回ることはない。

一旦駐車すると、別のISEE技術が電気や空気のために必要な接続を行うことができるが、これは悪い状況に置かれた人間のドライバーにとっては危険なステップとなり得る。

ロボットプラットフォームは一貫性も提供する。ユウ氏によると、人間のドライバーは訓練生の段階では能力が低く、慣れるまでに数年かかるという。「私たちは効率性について多くを習得しました」と同氏は語る。「これは基本的に顧客が最も気にかけていることであり、サプライチェーンはスループットによって左右されます」。

そのため、速度を調整することは興味深い課題であると同氏は指摘する。車両がより速く進むのは簡単だが、障害物があるときだけでなく、行き止まりのコーナーなどを注意して走行しなければならないときにも、必要に応じて減速できるようにするための意識が必要だ。

これは自律性を開発するための完璧な訓練の場だと言えるだろう、そしてそれこそが同社のアイデアである。

「今日のロボットは、極めて制約の厳しい環境下では、事前定義されたルールに従って動作します。しかし将来的には、自律走行車がオープンな環境で走行するようになるでしょう。私たちは、ロボットや自律走行車が不確実性に対処できるようにするための技術的なギャップを認識しています」とジャオ氏は述べている。

ISEE創業者(画像クレジット:ISEE)

「私たちは、複雑な人間の行動をともなう、比較的制約のない環境を必要としていました。コンテナヤードは、実際に理想的な関係を築くもの、つまり当社が提供する柔軟な自律性と敷地の組み合わせを実現するものであることに気づきました」と同氏は続けた。「ヤードは私有地であり、規制はなく、すべての車両はそこにとどまり、子どももいないし、ランダムな人々もいません。公共の高速道路のような長距離道路や交通量の多い通りもありません。しかし、単純なものではなく、ほとんどの産業環境同様に複雑です。密集し、混雑しており、歩行者やトラックが行き来しています」。

MITからのスピンアウトであり、論文やコンピュータビジョンの研究に強い基盤を有しているが、これは理論上のビジネスではない。ISEEはすでに、Lazer SpotとMaerskという2つの主要な荷主と協働している。両社とも数百のヤードと約1万台のトラックを所有しており、その多くまたはほとんどがISEEによって自動化される可能性がある。

現時点で同社はパイロット段階を終えており、Maerskと協力して1ヤードで数台の車両を稼働させている。Maersk Growth FundもISEEに投資しており、その額は公表されていないが、近い将来に買収の可能性も浮上している。しかし、当面の計画としては、技術とサービスを拡大し、改良することに注力し、ISEEと将来の競合他社との差を広げることを目指している。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ISEE自動運転トラック物流

画像クレジット:ISEE

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)