最新の脅威インテリジェンスをゲーム化、全従業員がセキュリティスキルが身に付けられる「Immersive Labs」

Immersive LabsのCEOジェームズ・ハドリー氏。ブリストルのEngine Shedにて。2021年6月2日

実際にある最新の脅威インテリジェンスを使って「ゲーム化」された方法でサイバーセキュリティのスキルを企業の従業員に教えるプラットフォームImmersive Labs(イマーシブラブズ)が7500万ドル(約82億円)のシリーズCラウンドをクローズした。同ラウンドは新規投資家のInsight PartnersがMenlo Ventures、Citi Venture、そして既存投資家のGoldman Sachs Asset Managementとともにリードした。

調達した資金はImmersiveの米国でのサービス拡大に使い、多くの人がパンデミック後もリモートワークを続けることで引き起こされているサイバー脅威への新たな関心の波をとらえる。2017年創業のImmersive Labsは現在200人を雇用し、英国のブリストルと米国のボストンに共同本部を置く。同社は今後2年で従業員数を600人超に増やし、APAC(アジア太平洋地域)と欧州でも事業を展開する計画だ。同社の「Cyber Workforce Optimization」プラットフォームは、組織内のスキルがどのように対処しているかを計測するための取締役会レベルのメトリクスとベンチマーキングを提供する、と主張する。

Immersiveはベンチャーファンディングで計1億2300万ドル(約135億円)を調達し、顧客にはHSBC、Vodafone、NHSなどを抱える。「対前年比100%超」で成長している、とImmersiveは話す。

CEOで創業者のJames Hadley(ジェームズ・ハドリー)氏は「ますます多くの事業機能にとってサイバーリスクが問題になっていて、サイバーセキュリティの知識とスキルはもはや、バックオフィスにひっそりといる何人かのテック人材のものだけであるべきではありません。ソフトウェアを制作するチームからCEOに至るまで、誰もが広範にわたって浸透している会社の問題を解決するのにそれぞれの役割を果たす必要があります。幅広い人にロック解除と証拠のスキルが求められます」と語った。

Insight PartnersのマネージングディレクターRyan Hinkle(ライアン・ヒンクル)氏は「ここ数年、かなりのグローバル顧客と売上成長を確保し、Immersive Labsは急速に発展しているサイバースキル業界で強固な地位を確立しました。影響力のあるリーダーシップ、成長マーケットにおけるイノベーティブなプロダクト、強固なユーザーエンゲージメントでもって、同社はサイバー準備マーケットを引き続きリードする立場にあります」と述べた。

インタビューでハドリー氏は「Insight Partnersを選んだのは、当社がCIO(最高情報責任者)やCEOに販売している法人B2BでInsight Partnersが真に強みを持っているためです。成功している英国のサイバーセキュリティ会社という点で、当社は次のDarktraceになりたいと考えています」と筆者に語った。

比較は非現実的かもしれない。Immersive LabsはDarktraceと同様にCYLONサイバーアクセラレーターから登場し、Darktraceと同じ投資家を抱える。しかし Immersive LabsはシリーズCで7500万ドルを集めた一方で、DarktraceはシリーズDまでその規模の資金調達をしなかった。Darktraceはロンドンで上場し、企業価値は17億ポンド(約2640億円)だ。

元GCHQセキュリティ研究者でトレーナーのハドリー氏は、サイバートレーニングを率いていたときにサイバーセキュリティスキルのプラットフォームのアイデアを思いついた。筆者は同氏に、なぜImmersiveがプラットフォームで「フライホイール効果」を提案できると考えたのか尋ねた。

「人々はサイバー脅威がひどくなる一方だといつも話します。しかし確かに現在もそうで、公知のものです。サイバーセキュリティはもはや地下にいるギークの責任ではないと我々は確信しています。実際にはビジネス全体の問題です。そして今、大きな波がやって来つつあります。サイバー犯罪は2021年、そして来年とスケール外のものとなります。というのも、企業が身代金を払っているからです。その結果として、当社は危機における政策決定を測定するための分析に注力しています。CIO、部門にかかわらず、どの企業でもかなりの共感を呼んでいます」とハドリー氏は述べた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Immersive Labs資金調達

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

前年比100%の成長を遂げたスウェーデンの遠隔医療サービス「Kry」、パンデミックで地位向上

スウェーデンのデジタルヘルススタートアップKry(クリー)は、臨床医と患者をつなげて遠隔診療を行う遠隔医療サービス(およびソフトウェアツール)を提供している。同社は、パンデミックが西欧を襲う直前の2020年1月に、シリーズCで1億4000万ユーロ(約184億6000万円)を調達した。

2021年4月末に発表されたシリーズDには、前回に続き応募者が殺到し、資金調達額は3億1200万ドル(2億6200万ユーロまたは約339億2400万円)。資金は、西欧地域での事業拡大を加速させるために使われる。

2015年に創業したスタートアップであるKryの今回のラウンドには、新旧入りまじった投資家たちが参加した。シリーズDはCPP Investments(カナダ年金制度投資委員会)とFidelity Management & Research LLC(フィデリティ・マネジメント&リサーチLLC)が主導し、The Ontario Teachers’ Pension Plan(オンタリオ州教職員年金基金)やヨーロッパを拠点とするベンチャー・キャピタルのIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Accel(アクセル)、Creandum(クリアンダム)、Project A(プロジェクトA)などの既存投資家が参加している。

新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行し、ソーシャルディスタンシングが必要になったことから、遠隔医療分野の地位が明らかに向上した。そのため、遠隔診察を可能にするデジタルヘルスツールの導入が患者と臨床医の両方で加速している。Kryは2020年、医師によるオンライン診察を可能にする無料サービスの提供にすばやく取りかかった。当時、医療を支援しなければならないという大きな責任を痛感していた、と同社は語っている。

公衆衛生上の危機的状況の中で、Kryの俊敏性は明らかに功を奏し、2020年のKryの前年比成長率は100%になった。つまり1年前に約160万件だったデジタルドクターの予約数が、現在は300万件を超えているということだ。また6000人もの臨床医が同社の遠隔医療プラットフォームとソフトウェアツールを利用している(登録されている患者数は公表されていない)。

しかし共同設立者兼CEOのJohannes Schildt(ヨハネス・シルト)氏によると、医療の需要に関しては、ある意味では穏やかな12カ月だったようだ。

パンデミックの影響で、新型コロナウイルス感染症の検査(Kryが一部の市場で提供しているサービス)など、新型コロナウイルス感染症に関連する特定の需要が高まっていることは確かだ。しかし同氏がいうには、国家的なロックダウンや新型コロナウイルス感染症への懸念から、医療に対する通常の需要がいくらか抑制された。そのため、新型コロナウイルス感染症による公衆衛生上の危機の渦中に、Kryが100%の成長率を達成したのは、医療の提供がデジタル化されていく中での次なる展開を占う出来事にすぎない、と同氏は確信している。

「世界的なパンデミックに関して、言うまでもなく当社は正しい道を進んできました。振り返ってみると、メガトレンドは明らかにパンデミックよりずっと前から存在していましたが、パンデミックがそのトレンドを加速させました。そして当社の活動を支えるという点で、そのトレンドが当社と業界に貢献しました。現在、医療システムの前進に遠隔治療とデジタル医療が重要な役割を果たすという考えは、世界中にしっかりと定着しています」とシルト氏はTechCrunchに語った。

「この1年間で需要が増加したことは明らかです。しかし医療提供をより広い視点から見てみると、欧州のほとんどの国で、医療サービスの利用率が実質的に過去最低になっています。なぜなら、厳しい制限がかけられたことで、多くの人々が病気にならないからです。かなり不思議な力が働いています。一般的な医療サービスの使用状況は、実質的に過去最低になっていますが、遠隔治療は増加傾向にあり、当社は以前よりも多くの業務を行っています。これはすばらしいことです。当社は多くの優秀な臨床医を雇用し、臨床医がデジタルに移行するのを助ける多くの優れたツールを提供しています」。

Kryの無料版の臨床医向けツールは、同社の「地位を大きく向上させた」とシルト氏はいう。パンデミックによってデジタルヘルスツールの導入が加速し、サービスの提供に大きな変化が起こっていることに、シルト氏はとてもワクワクしている。

「私にとって最大のポイントは、今や遠隔治療がしっかり確立され、定着しているということです。ただし成熟度のレベルは、欧州市場の間で差があります。2020年のKryのシリーズCラウンドのときでさえ、遠隔治療は当たり前のものではなかったかもしれません。もちろん当社にとっては、ずっと当たり前のものなのですが。どんな場合にもはっきり分かっていた点は、遠隔治療は未来への道であり、必要不可欠だということです。医療提供の多くをデジタル化する必要があります。そして当社がやるべきことは、着実に前進することだけです」。

(現在のパンデミックによるロックダウンが原因の需要の抑制はさておき)医療資源の需要が高まるなか、デジタルへの移行は(必然的に)制限されている医療資源の活用を拡大するために必要なものだとシルト氏は主張する。どんなときにも、Kryが医療提供における非効率性を解決することに注力してきた理由はここにある。

Kryは、公的医療制度で働く臨床医を支援するツールを提供するなど、さまざまな方法で非効率性を解決しようとしている(シルト氏によると、例えば、税金で賄われているNHSを通して大部分の医療が提供されている英国市場では、全GP[一般開業医]の60%以上がKryのツールを使用している)。さらに(いくつかの市場では)遠隔治療と外来診療所のネットワークを組み合わせた総合的な医療サービスを提供しており、利用者が臨床医の診察を直接受ける必要がある場合には、外来診療所に行くことができる。また、欧州の民間医療機関とも提携している。

要するにKryは、医療提供をサポートする方法にはこだわらない。この考えは技術面にも及んでいる。つまりビデオ診療は、感染症、皮膚疾患、胃の疾患、心理的障害など幅広い疾患に対する遠隔診療を提供する遠隔治療事業の一環にすぎない(いうまでもなく、すべての疾患を遠隔治療できるわけではないが、一次診療レベルの診察の多くは、医師と患者が直接面会する必要はない)。

今回の新たな資金調達によって投資が拡大されるKryの製品ロードマップでは、Internet Cognitive Based Therapy(ICBT:インターネットベースの認知行動療法)やメンタルヘルスの自己評価ツールなどの患者向けアプリを拡張して、デジタル指向の強い治療を提供することにも取り組んでいる。シルト氏によると、同社は、慢性疾患をサポートするためのデジタルヘルスケアツールにも投資する予定だ。このために、(実績のある既存の治療法をデジタル化するか、新しいアプローチを提案するかして)より多くのデジタル治療法を開発したり、買収や戦略的パートナーシップを通じて能力を拡大したりしている。

過去5年以上にわたり、不眠症不安神経症などの疾患、理学療法士の施術を直接受ける必要のある筋骨格疾患や慢性疾患のための、実績のある治療プログラムをデジタル化するスタートアップが増加している。Kryがプラットフォームを拡大するために連携するパートナーの選択肢は確かに豊富にある。しかし同社は、ICBTプログラムを自社開発しているため、デジタル治療分野そのものに取り組むことに不安はない。

「医療の大きな変化と移行の第4ラウンドに入ったことから、臨床医が高品質の医療を極めて効率的に提供するための優れたツールに投資し続けること、そして患者側の経験を深めることは、当社にとって非常に大きな意味があります。そうすることにより、より多くの人々の支援を続けることができるからです」とシルト氏はいう。

「当社は、ビデオやメッセージのやり取りを通して多くのことを行っていますが、それはほんの一部にすぎません。当社は現在、メンタルヘルス管理計画に多くの投資を行い、ICBT治療計画を進めています。また慢性疾患の治療への関与も深めています。当社に、臨床医がデジタル的にも物理的にも高品質な治療を大規模に提供するための優れたツールが存在するのは、当社のプラットフォームがデジタル面と物理面の両方を支えているからです。また2021年は、ときには同社が自力で、ときにはパートナーの力を借りて行っているデジタルでの医療提供と、物理的な医療提供を結び付けるために尽力しています。ビデオ自体はパズルの1ピースに過ぎません。当社が常に大切にしてきたことは、最終消費者の視点、患者の視点から医療を見ることでした」と同氏は語っている。

同氏は次のように続ける。「私自身も患者なので、当社が行っている多くのことは、一部の分野で構築されているシステムの非効率さ加減に対して私が感じたフラストレーションが動力源になっています。世の中には優れた臨床医が数多くいますが、患者目線の医療が足りていません。そして欧州市場の多くで、アクセスに関する明確な問題が発生しています。このような問題が、常に当社の出発ポイントでした。どうすれば、患者にとってより良い方法でこの問題を確実に解決できるのでしょうか。その解決策として、患者のための強力なツールとフロントエンドの両方を構築する必要があることは明らかです。そうすれば患者は簡単に治療を受けることができ、自分の健康を積極的に管理できるようになります。また臨床医が操作、作業できる優れたツールの構築も必要です。当社はそれにも力を入れています」。

「当社が抱えている臨床医だけでなく、提携している臨床医も含め、多くの臨床医が当社のツールを使用してデジタル医療を提供しています。そして当社はパートナーシップの下で、多くのことを行っています。当社が欧州のプロバイダーであることを考えれば、最終消費者が実際に治療を受けられるようにするには、政府や民間保険会社とのパートナーシップも必要です」。

デジタル医療提供分野の別のスタートアップたちは、AIを活用したトリアージや診断用チャットボットを使った医療へのアクセスを「デモクラタイズ」する(多くの人に普及させる)という大きな目標について話している。人間の医師が行っている仕事の少なくとも一部をこれらのツールで置き換えることができるという考えがあるからだ。そのスタートアップたちの先頭に立ち、大きな存在感を示しているのは、おそらくBabylon Health(バビロン・ヘルス)である。

それとは対照的に、Kryは、同社のツールに機械学習テクノロジーが高い頻度で取り入れられているにもかかわらず、AIを派手に宣伝することを避けてきた、とシルト氏は述べている。同社は診断チャットボットも提供していない。方針にこのような違いが出るのは、重視する問題が異なるからだ。Kryは医療提供における非効率性を問題視している。シルト氏は、医師による意思決定は、この分野におけるサービスが抱える問題の中では優先順位が低いと主張している。

「当社はいうまでもなく、製造しているすべてのプロダクトにAIや機械学習ツールだと考えられるものを使用しています。個人的には、テクノロジーを使ってどの問題を解決するかよりも、テクノロジーそのものについて声高に叫んでいる企業を見ると、少しイライラします」とシルト氏は話す。「意思決定支援の面では、当社には他社と同じようなチャットボットシステムはありません。もちろん、チャットボットは本当に簡単に構築できます。しかし私が常に重要だと考えているのは、『何のために問題を解決するか』を自問することです。答えは『患者のため』です。正直に言って、チャットボットはあまり役に立たないと思います」。

「多くの場合、特に一次医療には2つのケースがあります。1つ目は、尿路感染症にかかっており、以前にもかかったことがあるため、患者はなぜ助けが必要なのかをすでに知っているというケースです。目の感染症も同じです。また湿疹が出て、それが湿疹だと確信していれば、誰かに診てもらったり助けを得たりする必要があります。自分の症状に不安があり、それが何なのかよくわからないケースもあります。そして患者は安心感を得たいと考えます。それが深刻なものかどうかに関わらず、チャットボットがそのような安心感を与えてくれる段階にあるとは思えません。やはり患者は人間と話がしたいでしょう。ですからチャットボットの用途は限られていると思います」。

「そして意思決定については、臨床医が適切な意思決定を行えるようにするなど、当社は臨床医のための意思決定支援を行っています。しかし臨床医が得意とするものが1つあるとすれば、それは実のところ意思決定です。そして医療における非効率性について調べると、意思決定プロセスは非効率的ではありませんでした。マッチングが非効率的なのです」。

シルト氏は「大きな非効率性」がもたらすものとして、スウェーデンの医療システムが翻訳者に費やしている金額(約63億7500万円)を挙げているが、この金額は多言語を話す臨床医と患者を適切にマッチングすることで簡単に削減できる。

「ほとんどの医師はバイリンガルですが、患者と同じ時間に活動しているわけではありません。そのためマッチング面では多くの非効率が生じます。当社が時間を費やしているのが、たとえばこの非効率なのです。どうすれば非効率に対応できるか。当社に助けを求めている患者が最終的に適切な治療を受けられるようにするにはどうすればいいか。あなたの母国語を話す臨床医がいれば、互いに理解しあうことができるのか。看護師が十分に対応できるものか。心理学者が直接対応すべきものか、などを考える必要があります」。

「すべてのテクノロジーにおいて常に重要なのは、実際の問題を解決するためにテクノロジーをどのように使用するかであって、テクノロジーそのものはあまり重要ではありません」とシルト氏は付け加えた。

欧州における医療提供に影響を与える可能性のあるもう1つの「非効率性」は、患者が一次医療にアクセスしにくくすることで、コストを削減しようとする(民間の医療機関の場合は、保険会社の利益を最大化しようとする)問題のある動機によるものだ。請求プロセスを複雑にしたり、サービスにアクセスするための情報やサポートを必要最低限しか提供しない(あるいは予約を制限する)ことで、患者は特定の症状に関わる専門医を見つけ出し、その専門医に診てもらうための時間枠を確保するという、面倒な作業をしなければならない。

できるだけ多くの病気を回避するために、できるだけ多くの人々の健康維持に取り組むべき分野で、こうした動きがあるのは非常に残念である。こうした取り組みにより、患者自身にとっても良い結果がもたらされることは明白だからだ。実際に病気の人々を治療するための費用(医療費および社会的費用)を考えた場合、2型糖尿病から腰痛まで幅広い慢性疾患は、治療にかなりの費用がかかる。しかし適切に介入すれば完全に予防できる可能性がある。

患者にとっても医療コストにとっても、あらゆる点で優れた予防医療への移行が切望されているが、シルト氏は、それを促進するための重要な役割をデジタル医療ツールが果たすと考えている。

「本当に頭にきます」とシルト氏は言い、続けてこう述べた。「医療の提供にはコストがかかるという理由から、医療システムは人々が簡単に医療にアクセスできないような構造になっていることがあります。これは非常にばかげたことであり、一般的な医療システムでコストが増加している原因にもなっています。まさにその通りです。なぜなら臨床医と患者が最初に接する一次診療にアクセスできないからです。その結果、二次診療に影響が及んでいるのです」。

「欧州市場のすべてのデータから、そのような問題が見えてきます。一次診療で治療を受けるべき人々が救急処置室で治療を受けています。一次診療へのアクセス方法がないために、一次診療を受けることができなかったのです。一次診療の受診の仕方がわからず、待ち時間が長く、何の助けも得られないまま、さまざまなレベルにトリアージされます。そして最終的に尿路感染症の患者が救急処置室に来ることになるのです。医療システムが患者を寄せつけなければ、莫大なコストがかかります。それは正しいやり方ではありません。システム全体をより予防的で積極的なものにする必要があります。当社は、今後10年間にそのための重要な役割を果たすことができると考えています。その鍵を握るのがアクセスです」。

「患者が当社に支援を求め、当社は患者に適切なレベルの治療を提供する。当社は医療をこのようなシンプルなものにしたいと考えています」。

欧州で医療を提供するには、取り組むべき課題がまだ数多くあるため、Kryはサービスを地理的に拡大することを急いでいない。主な市場は、スウェーデン、ノルウェイ、フランス、ドイツ、イギリスであり、同社はこれらの国々で(必ずしも全国的にではないが)医療サービスを運営している。留意すべきは、同社が30の地域でビデオ診療サービスを提供していることだ。

米国でのローンチの計画はあるかと尋ねられたシルト氏は「現在当社は欧州に非常に注目しています」と答えた。「欧州以外に進出することは決してない、とは言いません。しかし今は欧州にかなりの力を注いでおり、その市場を熟知していますし、欧州の制度の中でどのように行動すべきかを知っています」。

「欧州と米国では医療費の支払いに関する制度が大きく異なっています。また欧州では最上のものが注目されます。そして欧州は巨大な市場です。欧州すべての市場で、医療はGDPの10%を占めているので、大きなビジネスを築くために、欧州の外に出る必要はないのです。当分の間は、欧州に注力し続けることが重要だと考えています」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:遠隔医療Kry資金調達新型コロナウイルスメンタルヘルス機械学習医療費医療スウェーデン

画像クレジット:Kry

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

秘密計算エンジン「QuickMPC」を手がける名大・名工大発スタートアップAcompanyが2億円調達

秘密計算エンジン「QuickMPC」を手がける名大・名工大スタートアップAcompanyが2億円調達

秘密計算エンジン「QuickMPC」を開発するAcompany(アカンパニー)は5月14日、プレシリーズAラウンドにおいて、総額2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、リードインベスターのANRIとBeyond Next Venturesの2社、またDG Daiwa Ventures、epiST Ventures。調達した資金は、プロダクト開発、秘密計算アルゴリズムの研究開発および採用・組織体制の強化への投資を予定している。

秘密計算とは、従来の暗号手法が抱えていた欠点を克服した次世代の暗号(秘匿)技術だ。従来の暗号化手法はデータの活用時にローデータ(生データ、非暗号化データ)に戻さなければならないが、秘密計算ではデータの活用時(分析や機械学習モデルの作成といったシーン)も暗号化(秘匿)したまま安全にデータを扱うことが可能となる。

そのため、データのプライバシー保護とデータ流通の両立に期待の大きいものの、これまでのところ研究開発段階に留まっているケースが多いのが現状という。

これを受けAcompanyは、2020年10月リリースのQuickMPCとともに、国内有数の秘密計算テクノロジー企業として、デジタルマーケテイング、医療などのデータ活用時のプライバシー保護が重要である領域へ秘密計算の実用化を推進してきた。今回の資金調達は、これら取り組みを通じて期待されるニーズに応えるべく実施したものとしている。

またAcompanyは、秘密計算を中心とした、プライバシーテックに関連した情報発信およびイベント開催を行うコミュニティ「秘密計算コンソーシアム」を立ち上げ、同コミュニティメンバーの募集を開始した。応募は「『秘密計算コンソーシアム』メンバー募集ページ」より行える。

同コミュニティでは、個人情報保護法の改正を始めとしたデータ活用とプライバシー保護が相反している現状に対応すべく、法令遵守したデータ活用やプライバシー保護テクノロジーの勉強会や情報発信を行う。

Acompanyは、「データを価値に進化させる。」というミッションのもと、プライバシー情報や機密情報などの活用が難しいデータに対し秘密計算技術を軸に、プライバシー保護とデータ活用の両立を実現する名古屋大学および名古屋工業大学発スタートアップ。主に、QuickMPCの提供を軸に、プライバシー保護及びセキュリティに関するソリューションを展開している。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Acompany暗号化(用語)名古屋大学(組織)名古屋工業大学(組織)秘密計算(用語)プライバシー(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

データ活用で映画の多様性を促進するJumpcutがAtomicから資金調達

Jumpcut(ジャンプカット)の創業者であるKartik Hosanagar(カーティク・ホザナガー)氏は、ウォートンスクールの教授だが、10年ほど前、変わった方法で夏休みを過ごした。脚本を書いたのだ。インドを舞台にした同氏の脚本は、プロデューサーの関心を集めたが、初めて監督を務めるインド人の映画へ資金を提供しようとする人はいなかった。

今では、多様なキャストを起用した映画が注目を集めている。2021年、Chloé Zhao(クロエ・ジャオ)氏が有色人種女性として初めて、また女性としては史上2人目にアカデミー賞監督賞を受賞した。また、前回の授賞式では、Bong Joon-ho(ポン・ジュノ)氏の「Parasite(パラサイト 半地下の家族)」が、英語以外の言語の映画として初めてアカデミー作品賞を受賞した。それでも、マッキンゼー・アンド・カンパニーの最新レポートによると、ハリウッドは業界の多様性の欠如により、毎年100億ドル(約1兆1000億円)を逸している

「少数派の声、少数派のストーリーにどのように賭けるのか」。ホザナガー氏は問う。「意識はあっても行動がともなわない。誰もその方法を知らないからです。私がJumpcutを興したのはそのためです。この会社は、私が20年間取り組んできたデータサイエンスと起業家精神が、仕事以外の場で私という人間と出会うことができる珍しい会社なのです」。

ウォートンでホザナガー氏は「AI for Business」プログラムのファカルティリーダーを務めている。同氏は、2016年にweb.comに3億4千万ドル(約374億円)で買収されたYodleの創業者だ。しかし、その次のベンチャーでは、データサイエンスの経験を生かし、表現力の乏しいクリエイターが携わるメディアプロジェクトのリスクを取り除くことで、ハリウッドの同質性に挑戦したいと考えた。

「ビジョンは、グローバルなコンテンツ制作において、よりインクルーシブな時代を築くことです」とTechCrunchに話した。

ホザナガー氏は2019年にJumpcutに取り組み始めたが、米国時間6月10日、Atomicが投資するこの会社はステルスモードから抜け出し、映画における少数派の声を高めるために活動する初のデータサイエンス主導のスタジオとしてスタートする。すでにこのスタジオでは、合計36回アカデミー賞にノミネートされたLawrence Bender(ローレンス・ベンダー)氏(「Pulp Fiction(パルプ・フィクション)」「Good Will Hunting(グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち)」)、エミー賞受賞プロデューサーのShelby Stone(シェルビー・ストーン)氏(「Bessie(ブルースの女王)」「The Chi」)、ショーランナーのScott Rosenbaum(スコット・ローゼンバウム)氏(「CHUCK(チャック)」「The Shield(ザ・シールド ルール無用の警察バッジ)」)などのパートナーを得て、12のテレビや映画のプロジェクトが進行中だ。

Jumpcutは、Y Combinatorをモデルとしたアプローチで、新しい才能をバイヤーやプロデューサーとペアリングする。まずアルゴリズムを使い、YouTube、Reddit、Wattpadなどのプラットフォームから何十万ものビデオをスキャンし、有望な才能を探し出す。このアルゴリズムは、幅広い分野から絞り込みをかけ、常に新しい視聴者を獲得しエンゲージメントを高めるクリエーターを見つけ出す。そして、Netflix、BuzzFeed、CBS、ソニー、WarnerMediaのアドバイザーや出身者を含むJumpcutチームが、誰とつなげるべきか見極める。

ホザナガー氏は、このアルゴリズムの成功例として「The Expanse(エクスパンス)」や「Shadowhunters(シャドウハンター)」などの番組に出演している女優のAnna Hopkins(アナ・ホプキンス)氏を挙げた。ホプキンス氏はカメラの前で成功を収めているが、執筆活動もしたいと考えている。

「私たちは彼女の短編映画をいくつか発掘しました。アルゴリズムがそれらを割り出した理由は、人々がコメントで『心温まる。良い意味で』とか『ティッシュをちょうだい』などの強い感情的な反応を示したからです」とホザナガー氏は説明する。ホプキンス氏は作家として広く知られているわけではないため、脚本を売り込んだテレビネットワークを通じてJumpcutが見出したのだと同氏は思っていたが、そうではなかった。「私たちは『いえ、私たちのアルゴリズムがあなたを見つけたのです』と話しました」。

Jumpcutがクリエイターを見つけた後は、10万人以上の潜在的な視聴者を対象にアイデアのA/Bテストを行う。その過程で、データサイエンスにより、そのアイデアが売れることを出資者に証明することができる。

「構想としては、クリエイターが従来のハリウッドエージェンシーに見い出されるのを待つのではないということです。クリエイターがトップエージェントにアクセスする必要があるなら、また旧来のボーイズクラブに戻ってしまうからです」とホザナガーは話す。「私たちは、そうしたプロセスの多くを自動化し、ハリウッドのエージェンシーが見つけてくれるのを待つのではなく、視聴者の心に響くすばらしいストーリーを作っている人たちを発掘しています」。

クリエイターは、幅広い視聴者に受け入れられるアイデアを思いついたら、インキュベータープログラムであるJumpcut Collectiveに招待される。このプログラムで、アーティストは6週間かけてコンセプトからピッチまでアイデアを発展させる。次に、Jumpcutがプロジェクトを制作パートナーやバイヤーとマッチングする。

これまでに、Jumpcutは3つのインキュベータープログラムを開催した。ホザナガー氏によると、現在進行中の12のJumpcutプロジェクトのうち、9、10のプロジェクトがインキュベーターから生まれたものだ。例えば、あるプロジェクトでは現在、ディズニーのアジア太平洋部門と提携して制作を進めている。

Jumpcutは、今回のシードラウンドでの調達額を公表していないが、Atomicが唯一の投資家であることは認めた。

ホザナガー氏のこのプロジェクトには、かつての教え子であり、BuzzFeedの元プロダクトマネージャーであるDilip Rajan(ディリップ・ラジャン)氏と、Super Deluxeのオリジナル担当SVPを努め、CBSにも在籍したWinnie Kemp(ウィニー・ケンプ)氏が加わった。ケンプ氏は、ネイティブアメリカンが主役の初の番組「Chambers」や、耳の不自由なクリエイターとキャストを起用した初の番組「This Close」の制作総指揮を担当した。調達した資金のほとんどは、インキュベーターを運営するプロダクト側のエンジニア、データサイエンティスト、プロダクトマネージャー、クリエイティブ側の制作幹部などの給与に充てられる。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:映画資金調達Jumpcut多様性

画像クレジット:Jumpcut

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

オンライン学習大手Byju’sがインドで最高評価額のスタートアップに、UBSなどから資金調達

EdTechの巨人Byju’s(バイジュース)がUBS Group、Zoom創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏、Blackstoneなどから新たに3億5000万ドル(約383億円)を調達し、ポストマネーで評価額が165億ドル(約1兆8094億円)とインドで最も価値の大きなスタートアップになった。

書類の中で、Byju’sはアブダビの政府系ファンドADQやPhoenix Risingを含む多くの投資家から約3億5000万ドルの投資を受けたことを明らかにした。新たな企業価値はPaytmのものを上回った。Paytmの直近の企業価値は160億ドル(約1兆7546億円)で、インドのスタートアップ業界でトップだった(Paytmは現在上場を模索中で、30億ドル[約3289億円]の調達と企業価値300億ドル[約3兆2899億円]を目指している)。

今回の資金調達は、Byju’sが2021年初めに開始した大きなラウンドの一環であり、同社は150億ドル(約1兆6449億円)の調達を目指している。最近の投資家にはB Capital GroupやヘッジファンドXNなどが含まれる。Byju’sは2019年7月に57億5000万ドル(約6305億円)、2020年末に110億ドル(約1兆2063億円)と評価されていた。

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Byju’sは新たに調達した資金をさらに多くのスタートアップ買収に使う計画だ。2021年初めにTechCrunchが報じたように、インドのコーチング機関Aakashを10億ドル(約1096億円)で買収したByju’sはオンライ学習スタートアップTopprの買収のデューデリジェンスを進めていて、米国拠点のEpicの買収も協議している。

Byju’sは学生の大学過程と大学院レベルの教育に向けた準備をサポートしていて、近年はあらゆ学年の生徒を対象にしサービスを拡大してきた。Byju’sアプリの家庭教師はピザやケーキなど実生活にあるものを使って複雑な問題を教えている。

パンデミックのためにインド政府は1カ月にわたって全国ロックダウンを敷き、学校も閉鎖したが、そのパンデミックはByju’s、そしてUnacademyやVedantuなど他のオンライン学習スタートアップの成長を加速させた。

2021年初め、Byju’sはユーザー数が8000万人に達し、うち550万人が有料購読者だと述べた。収益を上げているByju’sは2020年米国で1億ドル(約109億円)を売り上げた、と(Byju’sに出資している)GSV Venturesのマネージングパートナー、Deborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏はインドのベンチャーファンドBlume Venturesが3月に開催したセッションで述べた。

Byju’sの幹部は2021年初めのUBSイベントで、Byju’sの直近の年換算売上高は8億ドル(約877億円)で、12〜15カ月以内に10億ドル(約1096億円)に達する、と話した。同社はここ数カ月、海外展開の計画も加速させている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:Byju’sインド資金調達

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号のAshiraseが5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度製品化

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

靴に装着した「あしらせ」とスマートフォンアプリ

本田技研工業(Honda)の新事業創出プログラム「IGINITION」(イグニッション)発第1号スタートアップ企業「Ashirase」(アシラセ)は6月11日、シードラウンドにおいて、5000万円の資金調達を発表した。引受先は、Hondaおよびリアルテックファンド。調達した資金により、視覚障がい者の方に実際の生活で利用可能かつ最終仕様に近い試作を2021年度に製作することを目的に、靴装着型IoTデバイスおよびナビゲーションアプリを開発、2021年中に実証試験を実施する。またその結果を活用し、2022年度中の製品化を目指す。

Ashiraseが開発する「あしらせ」は、音声入力や案内を行うスマートフォンアプリと、靴の中に取り付ける立体型のモーションセンサー付き振動デバイスで構成された、視覚障がい者向け単独歩行支援ナビゲーションシステム。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

「あしらせ」の振動デバイス

なおこのデバイスは、本体には柔らかく、形状を保てる素材を採用し、靴の中に入れても違和感が少ないという。装着したまま靴を脱ぎ履きできるため、付け忘れの心配もないそうだ。また充電はマグネットでの設置方式を採用しており、1回2時間の充電で1週間程度の使用が可能。

あしらせでは、GNSS測位情報と、ユーザーの足元の動作データから、視覚障がい者向けの誘導情報を生成。アプリで移動ルートを設定すると、白杖を持つ手や周囲の音を聞く耳を邪魔しないよう、靴の中に取り付けたデバイスが振動する形でナビゲーションを実施。直進時は足の前方の振動子が振動、右左折地点が近づくと右側あるいは左側の振動子が振動して通知する。進行方向を直感的に理解できるため、ルートを常に気にする必要がなくなり、より安全に、気持ちに余裕を持って歩行できるようになるとしている。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

ロービジョンを含めた日本の視覚障がい者数は、国内164万人(【日本眼科医会研究班報告 2006~2008】日本における視覚障害の社会的コスト)、アメリカや欧州を含めた先進国全体では、1,200万人にのぼると推定されているという。一方、盲導犬は国内1000頭程度しか存在しないそうだ。また、ガイドヘルパーは自治体ごとに利用制限が設けられているとともに、歩行支援では腕を掴むなど必ず密になることから、コロナ禍の影響でヘルパーを辞める方が増えているという。

こうした背景から、視覚障がい者の方は単独で歩行するケースが増えているとされるものの、単独歩行には様々な課題がある。Ashiraseは、その中でも「歩行が出来ない、大変な思いをすることで、『外出が怖い』といった心理的課題が発生」「安全確認とルート確認に追われながら歩いている」「歩行時は聴覚に頼ることが多いため、音声ナビなどを使う聴覚を邪魔され、不安を感じたり危険に遭遇したりする」の3点に注目したそうだ。

ホンダ新事業創出プログラムIGINITION第1号「Ashirase」が5000万円調達、視覚障がい者向け単独歩行ナビを2022年度に製品化

Ashiraseは、「あしらせ」により視覚障がい者が自分自身で安全を担保しつつ余裕を持って歩けることが外出したいと思える気持ちや達成感の後押しとなり、ひいては自立につながると考えているそうだ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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企業内の「時間の使われ方」を分析するTime is Ltd.が、約6.1億円を調達

企業の生産性分析を手がけるスタートアップ企業のTime is Ltd.(タイム・イズ・リミテッド)は、会社時間にとってのGoogleアナリティクスになろうとしている。あるいは、企業にとってのApple(アップル)のスクリーンタイムのようなものか。いずれにしても、企業内における時間の使われ方をマッピングすることができれば、膨大な生産性の向上が可能になり、お金をより有効に使うことができると、同社の創業者たちは考えている。

Time is Ltd.は今回、レイトシードラウンドで560万ドル(約6億1000万円)の資金を調達した。この投資ラウンドはロンドンを拠点とするChalfen Ventures(チャルフェン・ベンチャーズ)のMike Chalfen(マイク・チャルフェン)氏が主導し、Illuminate Financial Management(イルミネート・ファイナンシャル・マネジメン)、Acequia Capital(アセキア・キャピタル)、既存の投資家であるAccel(アクセル)、そしてエンジェル投資家としてSeal Software(シール・ソフトウェア)の前会長だったPaul Sallaberry(ポール・サラベリー)氏と同社の取締役だったClark Golestani(クラーク・ゴレスタニ)氏もこのラウンドに参加。さらに契約文書分析企業であるSeal Softwareの創業者で元CEOのウルフ・ゼッターバーグ(Ulf Zetterberg)氏が、社長兼共同創業者として会社に加わることも発表された。

このベンチャーは、2020年買収されたSocialBakers(ソーシャルベーカーズ)の創業者として知られるシリアルアントレプレナー Jan Rezab(ヤン・レザブ)氏の最新作だ。

非効率な会議、しつこい通知チャット、各種ビデオ会議ツール、メールの大洪水などは、我々の誰もが経験していることだろう。Time is Ltd.は、Microsoft 365(マイクロソフト365)、Google Workspace(グーグル・ワークスペース)、Zoom(ズーム)、Webex(ウェベックス)、Microsoft Teams(マイクロソフト・チームズ)、Slack(スラック)などのインサイトやデータプラットフォームを取得することで、この問題に対処しようというのだ。収集されたデータとインサイトは、経営陣が会社の生産性、エンゲージメント、コラボレーションを測定する新しいアプローチを理解し採用することに役立つと、このスタートアップ企業は述べている。

同社は現在、企業が参照できる400の指標を収集しているという。例えば、The Wall Street Journal (ウォール・ストリート・ジャーナル)がTime is Ltd.に設定したタスクによると、Slackと電子メールの平均応答時間を比較した場合、Slackが16.3分であるのに対し、電子メールは72分だった。

チャルフェン氏は次のようにコメントしている。「ハイブリッド型や分散型のワークパターンを測定することは、すべての企業にとって重要です。Time Is Ltd.のプラットフォームは、このような測定を簡単に利用でき、種類が異なる非常に多くの組織にとって実用価値があります。世界中のすべての企業に仕事の改善をもたらすことができると信じています」。

レザブ氏は次のように語っている。「社内のコラボレーションやコミュニケーションに関するこのようなデータを、プライバシーに配慮した方法で、既存のビジネス指標と一緒に分析することができれば、すべての企業にとって社内の鼓動を理解することにつながります。今後10年以内には、これらのプラットフォームからのインサイトを無視できないことに誰もが気づくでしょう」。

欧州のオンライン食品販売業界をリードするRohlik Group(ローリック・グループ)の創業者でグループCEOであるTomas Cupr(トーマス・クプル)氏は、次のように述べている。「パフォーマンスデータを利用する従来のBI(ビジネスインテリジェンス)アプローチとともに、Time is Ltd.を利用することによって、チーム内のコラボレーション方法を改善し、社内およびベンダーとの仕事の進め方を改善することができます。Time is Ltd.が提供するデータは、ビジネスリーダーにとって必要不可欠なものです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Time is Ltd.資金調達データ分析

画像クレジット:Time is Ltd. founders

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

腸の免疫調節に作用するメカニズムを発見し免疫医薬品を開発するアイバイオズが7.7億円を調達

腸の免疫調節に作用するメカニズムを発見し免疫医薬品を開発するアイバイオズが7.7億円を調達

創薬バイオテック企業アイバイオズ(AIBIOS)は6月11日、第三者割当増資による総額約7億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、リードインベスターのSBI インベストメント、既存株主のBeyond Next Ventures、アクシル・キャピタル。

調達した資金により、免疫学に基づき、消化器・オンコロジー (がん)・ニューロサイエンス(神経精神疾患)および希少疾患の4疾患領域という研究開発パイプラインの中長期的な開発を実施。同時に、慢性炎症性疾患が長期的に悪化すると悪性腫瘍に至るリスクが高くなることから、がん免疫分野も強化していく方針という。戦略的ビジネスパートナリングを通じ医療機関および製薬企業と共同研究・開発を継続して行い、アンメット・メディカルニーズ(Unmet MedicalNeeds)に応える技術革新を活用した新薬創出を目指す。

AIBIOSは、事業創立時より免疫システムの重要性を重視しており、岡山大学と有機合成プラットフォームを通じ新規低分子医薬品創出の共同研究を行い、また慶應義塾大学と免疫疾患モデルを通じて、腸における過剰な炎症を抑える新しいメカニズムを発見し、腸管粘膜の新たな免疫調節機構を解明した。炎症性因子の抑制と粘膜修復の可能性を持った作用機序のある低分子は、さまざまな慢性炎症性疾患の治療に多大な貢献をするものと期待されているという。

AIBIOSは、腸管内の免疫システムのバランスに着目しており、生体防御の最前線で働く腸粘膜で発症する炎症性腸疾患(IBD。Inflammatory Bowel Disease)を対象とした新薬候補物AIB-301のグローバル開発を手がけている。

IBDは、最も患者数の多い指定難病であり、大腸と小腸など消化管に炎症が起こり、腫瘍を合併することもある疾患という。原因は不明で、根治できる方法がいまだにないそうだ。IBDでは主に下痢や腹痛といった症状が起こり、悪化した「活動期」と落ち着いている「寛解期」を繰り返す、極めて治療が難しい病気という。

このIBDを対象とするAIB-301は、免疫システムを過度に抑制せず、中長期的に使用できる新規医薬品としての開発を目指しているという。そのため、安定した治療過程を観察しながら適した診断ができるように、遺伝的要素や腸内細菌といった新規バイオマーカーも併せ持ってグローバル臨床試験の実施を計画しているそうだ。

また近年の臨床研究では、腸は独自の神経ネットワークを持っており、脳腸相関を介してお互いに密接に影響することが明らかになりつつある。北海道大学遺伝子病制御研究所とAIBIOSとの共同研究では、脳内の特定血管に免疫細胞が侵入し、微小炎症(MicroInflammation)を引き起こす、新しい「ゲートウェイ反射」を発見した。この血管部の微小炎症は、通常は存在しない神経回路を形成して活性化し、消化管や心臓の機能不全を引き起こすリスクがあることを解明した。

これらの発症メカニズムは慢性的なストレスにも関連しており、AIBIOSでは、米国の神経外科医師との共同研究を通じて、多発性硬化症やパーキンソン病の新規治療薬の開発しているという。加えて、慢性ストレスが「睡眠障害」を誘導し、さまざまな臓器に対して悪影響をおよぼしていることもわかってきた。これらの研究成果をもとに、腸疾患のみならず、抗炎症作用と免疫調節を介して、中枢神経系、呼吸器系疾患、自己免疫疾患の治療薬の開発を目指しているとした。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:アイバイオズ(企業)創薬(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

「たまり場」で友達と遊べる通話アプリ「パラレル」運営元が12億円のシリーズB調達、開発体制・マーケ・海外展開を強化

友達と遊べる通話アプリ「パラレル」運営元が12億円のシリーズB調達、開発体制・マーケ・海外展開を強化

友達と遊べる通話アプリ「パラレル」(Android版iOS版)を運営するパラレルは6月11日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による総額12億円の資金調達を発表した。引受先は、ジャフコグループ、KDDI Open Innovation Fund、ANRI、W ventures、三菱UFJキャピタル。調達した資金により、パラレルを世界的なコミュニケーションアプリとするため、主に開発体制やマーケティング強化、またグローバル展開強化を行う。

また「パラレル」を日本中ひいては世界中の人と人とのコミュニケーションをさらに楽しませる場とすることに注力していくため、コーポレートブランドを刷新した。また2021年6月11日付で、会社名を「React株式会社」から「パラレル株式会社」に、同時にコーポレートロゴも変更、「パラレル」のサービスデザインもリニューアルした。

友達と遊べる通話アプリ「パラレル」運営元が12億円のシリーズB調達、開発体制・マーケ・海外展開を強化

パラレルは、仲の良い友達とオンライン上に「たまり場」を作り、コンテンツや時間を共有しながら遊べる通話アプリ。友達同士が現実世界で会って遊ぶのと同様、またそれ以上の体験をオンライン上に作ることをミッションとし、場所を問わず、共通のコンテンツを楽しめる次世代コミュニケーションアプリを目指しているという。サービス開始から約1年半で累計登録者数が100万人を突破、月間総通話時間は4億分に上るそうだ。

友達と遊べる通話アプリ「パラレル」運営元が12億円のシリーズB調達、開発体制・マーケ・海外展開を強化

月の利用者・月の通話回数の伸びは、2020年1月~12月での比較数値。また、月の総通話時間・1日の通話時間平均は2021年5月現在の数値

パラレルを立ち上げると、放課後の教室のようなたまり場がオンライン上に現れ、そこに入室することで、友達や家族、恋人など身近な人たちと、様々なオンラインゲームで遊べたり、画面共有しながらエンタメコンテンツを同時視聴・体験できたりする。

現在パラレルは、特にZ世代がオンラインゲームを通じて仲間とコミュニケーションを楽しむ際に使用するアプリとして支持しているという。今後はオンラインゲームで遊ぶ機会にとどまらず、映画やライブ、音楽鑑賞、ショッピングなど、日常的なシーンで、友人や家族、恋人などと一緒に時間を共有しながらコンテンツを楽しめる、たまり場空間を作るとしている。

今後はさらに多くの方がパラレルを使うような新機能の開発、エンタメ企業との戦略的アライアンス連携などにも注力する。また、徐々にシェアが広がりつつある海外への展開も本腰を入れて強化する。

月の利用者・月の通話回数の伸びは、2020年1月~12月での比較数値。また、月の総通話時間・1日の通話時間平均は2021年5月現在の数値

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:音声ソーシャルネットワーク / オーディオソーシャルネットワーク(用語)パラレル(企業・サービス)資金調達(用語)日本(国・地域)

日本発パブリックブロックチェーン開発のStake Technoloigesが約11億円調達、「世界で勝つ事例つくる」

「パブリックブロックチェーンこそが『未来』だと思います。私たちは日本発のプロダクトで、世界級のユニコーンを目指しています」。そう力強く話すのは、日本発のパブリックブロックチェーンであるPlasm Network(プラズムネットワーク)Shiden Network(紫電ネットワーク)の開発をおこなうStake TechnoloigesのCEO渡辺創太氏だ。

Stake Technoloigesはこれまで、世界最大級の暗号資産取引所であるBinanceからの資金調達や、「Microsoft for Startup」への採択など、ブロックチェーン業界の最先端を走ってきた。同社は2021年6月11日、中国のブロックチェーン特化VC大手のFenbushi Capitalなどから総額約11億円の資金調達を発表した。

今は「インターネットの黎明期」の段階

渡辺氏が率いるPlasm Networkは、Polkadot(ポルカドット)上でスマートコントラクトを扱うことに特化したブロックチェーンだ。Polkadotは、異なるブロックチェーン同士をつなげる「インターオペラビリティ(相互運用性)」を持つ。

この「インターオペラビリティ」の必要性ついて、渡辺氏はこう説明する。「例えば、私たちの生活に欠かせないインターネットも、本格的な普及以前は企業や研究機関が独自のプロトコルやネットワークを使用しており、互換性がなかったのです。でも、共通のレイヤーができ上がることで、各ネットワーク同士に相互運用性が生まれて、世界中どこにいてもつながることができるようになりました」。

「一方で、今世の中に数百あるともいわれるブロックチェーンは、基本的に個々のネットワーク別に運用されていて、つながっていません」。例えば、Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)は完全に別のネットワークであるため、イーサリアム上のDeFiなどでビットコインを利用することはできない。ビットコインの保有者はイーサリアムのそれより圧倒的に多いと予想されるため、現状の機会損失は大きいと言わざるを得ない。

ブロックチェーン同士がつながり合う世界

この課題を解決するのが、Polkadotが持つインターオペラビリティ(相互運用性)だ。Polkadotは、リレーチェーン(心臓部分)と、パラチェーン(手足の部分)に分かれており、約100個あるパラチェーン(手足)同士がつながることで、相互運用が可能になる。わかりやすいメリットの例としては「Polkadotを経由することで、ビットコイン(のバリュー)でイーサリアム上のNFTを購入できたり、ビットコインをイーサリアム上でステーキングできるようになる」と渡辺氏はいう。

Plasm Networkは、このPolkadotのパラチェーンの1つに入ることを目指している。ただ、パラチェーンの枠は約100個と限りがあり、今後、オークション形式で世界中のブロックチェーンプロジェクトと競い合うことになる。しかし渡辺氏は「Plasm Networkは現在、上から2、3番目という位置にいる」と自信を覗かせる。

スマートコントラクトに特化するPlasm Networkは、今後DeFiやNFTゲームといった数多くのdApps(分散型アプリ)が開発される基盤となる存在だ。いわば、Plasm Network上に築かれた「国」と、他の99個のパラチェーンの「国」が、Polkadotを経由して相互に交わり合うという「世界」が実現する。なんだか凄そうではあるが、うまく想像しづらいのが正直なところ。

渡辺氏は「『今できないこと』ができるようになるので、これはイノベーションです。だからこそ、将来的なユースケースやメリットを、現時点で具体的に想像することは少し難しい(笑)。でも、このインターオペラビリティによる変革の波は、この1、2年で一気に来ると思っています」と話す。インターネットが相互につながり世界を一変させたように、ブロックチェーンも今後「相互運用」が常識になると、我々が今想像することもできない使い方が発見されていくのかもしれない。

「日本が世界で勝つ」成功例となる

「日本発の企業が世界級のユニコーンになるためには、DXだけでは難しい。世界と戦うには、やはりプロダクトで勝負するしかないと思っています」。こう話す渡辺氏は、慶應義塾大学在学中の2014年にブロックチェーンと出会った。「黎明期から関わることができるイノベーションって珍しいと思うんです。インターネットが始まった頃、僕は生まれてもいなかったし、モバイルの時は中学生だった。でもブロックチェーンは、2008年から全員が『よーいどん』でスタートしたので、これはチャンスだと」。

渡辺氏は、大学を休学してシリコンバレーのブロックチェーン関連企業で1年間働いた後、日本に帰国してStake Technologiesを設立。総勢13名のチームは日本、韓国、中国、シンガポール、欧米と世界中に散らばっており、将来は法人をなくしてDAO(自律分散型組織)で運営する予定だという。

「日本がグローバルで勝つための『How To』が、まだまだ足りていません。米国では最近上場を果たしたCoinbaseが、過去にCompoundUniswapに投資しています。これらのプロジェクトはすでに育ってきていて、そこからさらに次のプロジェクトに投資するという段階。一方で日本は、まだこの最初の段階さえも完成していない。だから、私たちが先陣を切ってグローバルで勝つ成功例をつくり、日本のブロックチェーン業界に良い循環をつくっていきたい」と同氏は想いを語る。

いよいよ、6月15日からPolkadotのR&DチェーンであるKusamaの第1回パラチェーンオークションが始まり、Shiden Networkが参加する。さらにその後は、本丸であるPolkadotのパラチェーンオークションが始まり、Plasm Networkが参加する予定だ。執筆時点で2兆円を超える時価総額を持つPolkadotは、暗号資産業界全体でもトップ10に入るビッグプロジェクト。そのPolkadotの代表的なパラチェーンへの道を歩むPlasm Networkは、日本だけでなく世界を代表するパブリックブロックチェーンになる可能性さえも秘めているといえるだろう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Stake Technoloiges資金調達Polkadotブロックチェーン日本スマートコントラクト

相続手続きのDX化による「すべての相続問題の解決」を掲げるbetterが総額約1億円を調達

相続手続きのDX化による「すべての相続問題の解決」を掲げるbetterが総額約1億円を調達

「テクノロジー×専門家のノウハウ」によって、すべての相続問題の解決を掲げるbetter(ベター)は6月10日、第三者割当増資およびデットファイナンスによる総額約1億円の資金調達を発表した。引受先は、ニッセイ・キャピタル、AG キャピタルなど。調達した資金は、さらなる課題を解決するプロダクト開発、マーケティングチャネルの拡大、営業やエンジニアを中心とした採用強化、より柔軟なカスタマーサポート体制構築に用いる。

betterは、公認会計士・税理士およびリクルート出身のエンジニアを中心に2018年に設立。「すべての相続問題を解決するプラットフォームになる」をビジョンに、「無限の選択肢から、より良い決断を導く」をミッションとしており、まだまだアナログ作業が多分に残る「相続に関わる各種作業」のDX化を推し進めているという。

提供中のサービスとしては、一般層が相続税申告にかかるコストを大幅削減できる「better相続税申告」、義務化が予定される相続不動産の名義変更を行える「better相続登記」がある。両サービスとも、専門家のノウハウとテクノロジー導入による効率化を実施し、ユーザーにかかる費用や手間の大幅削減を実現している。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:遺産相続(用語)資産管理(用語)better(企業・サービス)資金調達(用語)日本(国・地域)

USBキーのような暗号資産ハードウェアウォレットLedgerが415.6億円を調達

現地時間6月10日にフランスのスタートアップLedger(レジャー)は、シリーズCラウンドで3億8000万ドル(約415億7000万円)調達した。10T Holdingsがリードしている。この日のラウンドを終え、同社の評価額は15億ドル(約1641億円)になった。

ラウンドには既存の投資家であるCathay Innovation、Draper Associates、Draper Dragon、Draper Esprit、Korelya Capital、およびWicklow Capitalが参加。他にTekne Capital、Uphold Ventures、Felix Capital、Inherent、Financière Agache、およびiAngels Technologiesが新たに参加した。

Ledgerの主力製品は、暗号資産(仮想通貨)を管理するためのハードウェアウォレットだ。外観はUSBキーに似ていて、小さな画面を備えデバイス上で取引を確認できる。この小さな画面が重要な理由は、プライベートキーをLedgerデバイスの外に出さないためだ。

大きい金額の暗号資産を保管する場合、取引所のアカウントには置きたくない。もし誰かがサインインに成功すれば、あなたの暗号資産はすべて引き出されてしまうからだ。ハードウェアウォレットを使っていれば、暗号資産を自分でコントロールできる。

同社が初めて出した製品はLedger Nano Sだった。デバイスをパソコンと繋ぐにはUSBケーブルが必要だった。その後発売されたLedger Nano Xでは、Bluetoothを通じてスマートフォンで資産の受け渡しができるようになった。Ledgerは、貸借対照表に暗号資産を載せたい企業のために企業向けソリューションも提供している。

Ledgerはこれまでに300万台以上のハードウェアウォレットを販売している。そして毎月150万人が同社の暗号資産管理ソフトウェアソリューションであるLedger Liveを使っている。同社は全世界の暗号資産の15%程度を管理しているとまで言っている。

会社設立からの約7年間は平坦な道のりではなかった。2018年の暗号資産ブームが終わるとハードウェアウォレットへの関心は消滅した。さらに、同社は高額な資産を管理していることから、深刻なデータ侵害を受け27万2000人の顧客が影響を受けた。

この日の調達ラウンドを受け、同社は新製品の発売、Ledger LiveのDeFi(分散型金融)機能強化、さらには暗号資産エコシステム全体の成長支援を計画している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Ledger暗号資産ハードウェアウォレット資金調達

画像クレジット:Ledger

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヘッドレスのコンテンツ管理システムContentstackはAIを導入しトレンドに乗る

ヘッドレスのコンテンツ管理システム(CMS)、マーケティング用語でいう「コンテンツ・エクスペリエンス・プラットフォーム」を提供するContentstackが米国時間6月9日、シリーズBで5750万ドル(約62億9000万円)を調達したことを発表した。参加投資家の数が予定を超えたと同社がいうそのラウンドは、同社のシリーズAをリードしたInsight Partnersがリードし、新たな投資家のGeorgianと、これまでの投資家であるIlluminate VenturesGingerBread Capitalが参加した。これで、同社の総調達額は8900万ドル(約97億4000万円)になる。

Contentstackの創業者でCEOのNeha Sampat(ネハ・サンパット)氏は、次のように述べている。「2020年はリテールや金融サービス、ゲーム、旅行などの業種の指導的な企業を支援して、彼らの顧客のための個人化された体験を作って収益を増進し、顧客の満足度を高め、ブランドロイヤルティを育てました。今回の資金調達ラウンドは、私たちの戦略が有効だったことを示しており、特に平等性と顧客への配慮およびプロダクトのイノベーションの3点が弊社の革新的な信念です。2021年は稀に見る困難な年ですが、弊社のチームは人たちの心に残るほどの結果を届け、また、デジタルファーストの世界のために最良のアジャイルなCMSプラットフォームを提供してきた成長の軌跡を継続できることは 非常にありがたいことです」。

同社によると、2019年10月の3150万ドル(約34億5000万円)のシリーズA以降、顧客ベースは150%増加した。新たな顧客の中にはBroadcom、Chico’s FAS、HP、La Perla、Leesa Sleep、McDonald’s、NBCなどがいる。

Contentstackは数カ月前に、これらの顧客のためにユーザーインタフェイスを一新し、AIと機械学習へのGeorgianの注力により、これらの新しい技術を同社も導入できると主張している。

そのGeorgianのリードインベスターEmily Walsh(エミリー・ウォルシュ)氏は次のように述べている。「Contentstackとその経営陣は非常に優れています。いくつかのグローバルブランドとの会話からは、彼らの企業にとってContentstackが極めて重要であることが伝わってきます。そのプロダクトは企業において、ビジネスと技術の両方のユーザーに愛されています。弊社のテクノロジープラットフォームにアクセスできるようになったContenstackは、同社自身の効率がアップするだけでなく、顧客とパートナーに提供するイノベーションと体験とサポートを充実できます。私たちは、Contentstackの顧客がAIを利用して新たな洞察と自動化を達成し、ビジネスのアドバンテージを得ていくことにも喜びを覚えます」。

同社は新たな資金で投資と技術を加速し、その国際的な成長とパートナーのエコシステムの拡張に当てる計画だ。

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タグ:ContentstackヘッドレスCMSAI資金調達

画像クレジット:Contentstack

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オンライン完結で営業活動し経営者・決裁者に直接アポが取れるSaaS「アポレル」のアライアンスクラウドが8000万円調達

オンライン完結で営業活動を行い経営者・決裁者に直接アポが取れるアポ獲得支援SaaS「アポレル」を手がけるアライアンスクラウドが約8000万円調達

セールステック事業を展開するアライアンスクラウドは6月9日、第三者割当増資による約8000万円の資金調達を発表した。引受先はベクトルなど。調達した資金は、経営者・決裁者限定の決裁者アポ獲得支援SaaS「アポレル」の機能開発、サービス拡大に利用する。

アポレルは、オンライン完結で決裁者にアポが取れる完全審査制の決裁者アポ獲得支援SaaS。自社営業マンに代わりオンライン完結型の営業活動を行うことで自社営業リソースを増やすことなく、効率的かつスピーディーな決裁者アポイント獲得を実現する。顧客企業の決裁者と直接マッチングすることで、成約可能性の高い新規リードのみを獲得することや、アプローチから契約締結までの時間を短縮できるとしている。

アポレルは、購買意思決定者である決裁者しか登録できないため、ニーズがマッチすればスピーディーにアポが決まるという。また「アポを実施する意思だけではなく、アポを受ける意思も持っている」などを判断軸に審査制を採用。そのため、他社サービスの導入意欲が高い企業のみが集まったコミュニティが成立しているそうだ。ターゲットやニーズを選び、日本全国の決裁者にオンラインでアポを取ることを可能としており、効率的な顧客開拓やパートナー探しを行えるとしている。

同社は、アポイント獲得手段として「決裁者へのダイレクトメッセージ機能」「決裁者限定のオンラインピッチイベント」「コンシェルジュからの仲介サポート」の3点を挙げている。決裁者へのダイレクトメッセージ機能は、データベース上で従業員数・業種などの基本情報、何をいつまでに・どのくらいの予算で購入したいかという購買ニーズで企業の決裁者を絞り込み、ダイレクトメッセージを送付可能。決裁者が商品やサービスに興味を持てばマッチング成立となりアポイントを調整できる。

また決裁者限定のオンラインピッチイベントでは、各社持ち時間の中で自社サービスのプレゼンを実施。イベント終了後に興味を持ったサービスがあったかどうかアンケートをとり、その結果に基づきアライアンスクラウドがマッチングを行う。コンシェルジュからの仲介サポートでは、定例ミーティングを通じてサービス内容や訴求ポイントをヒアリングし、マッチする企業を直接紹介。商談後に受注につながらなかった場合は、紹介企業からアライアンスクラウド経由でフィードバックを回収するため、今後の改善につなげられるという。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アライアンスクラウド(企業)Sales Tech / セールステック / 営業資金調達(用語)日本(国・地域)

アバターフィギュアなどのマーケットプレイスが付随するNFTゲームエンジンをMythical Gamesが開発中

NFT(非代替性トークン)の売上高が最も投機的な高値から下がってしまった現在も、その可能性を利用しようとしているスタートアップ企業には、暗号化された収集品には過去数カ月の間に誇大広告されたよりも、はるかに多くの可能性があると信じている投資家から、依然として多額の資金が集まっている。

ロサンゼルスを拠点とするNFTゲームのスタートアップ企業であるMythical Games(ミシカル・ゲームズ)は、新規および既存の投資家から7500万ドル(約82億円)の資金を調達した。同社は最初のタイトルにおける野心を拡大し、開発者がブロックチェーンベースのゲーム体験を構築できる実質的なプラットフォームを作り上げようとしている。

今回のシリーズBラウンドは、WestCap(ウエストキャップ)が主導し、01 Advisors(01アドバイザーズ)と、Gary Vaynerchuk(ギャリー・ヴァイナーチュック)氏のVaynerFund(ヴァイナーファンド)が、既存の投資家に加わって参加した。このスタートアップ企業は、これまでに1億2000万ドル(131億円)という莫大な資金を調達している。

Mythical Gamesは現在「Fall Guys(フォールガイズ)」と「Roblox(ロブロックス)」と「Funko Pop(ファンコポップ)」を組み合わせたような「Blankos Block Party(ブランコスブロックパーティー)」というタイトルを開発中だ。このPCゲームは、ユーザーがコンテンツを作成するというソーシャルゲームの大きなトレンドに便乗しており、さまざまなアーティストやデザイナーが作成したアバターフィギュアやアクセサリーを購入できるマーケットプレイスが付随している。ユーザーは、このマーケットプレイスを通じて、限定版もしくは通常版のアイテムを購入したり販売したりすることができる。ただし他のNFTプラットフォームとは異なり、これらのアイテムはプライベートブロックチェーン上に存在するため、OpenSea(オープンシー)のようなパブリックなマーケットプラットフォームで転売することはできない。

Mythical Gamesは、ブロックチェーンベースのゲームの仕組みを普及させようと盛り上がっている動きに加担しながらも、まだ全盛期を迎える準備が整っていないと見られている暗号プラットフォームの要素は放置している。ユーザーはBitPay(​ビットペイ)を通じて暗号資産でプラットフォーム上のアバターを購入することができるが、クレジットカードで支払うこともできるので、ウォレットを設定したり、シードフレーズを書き込んだりする手間が必ずしも要るわけではない。

Mythical Gamesはユーザー数の増加にともないBlankosに大きな期待を寄せているが、大きな投資の好機はおそらく同社のチームが構築しているゲームエンジンの方にある。その「Mythical Economic Engine(ミシカル・エコノミック・エンジン)」は、新進気鋭のゲーム開発者が、規制上の問題に巻き込まれることなく、NFTベースのマーケットプレイスを構築できるように設計されており、クリエイターがアンチマネーロンダリング法を遵守し、顧客確認を行うためのツールを備え、地域を超えたコンプライアンスに対応する。

「(NFTのような)新しい市場にはさまざまなサイクルがあります」と、Mythical GamesのJohn Linden(ジョン・リンデン)CEOは、TechCrunchに語った。「私たちは、実際にこれが長期的にはゲームを変えると考えています。ゲームスタジオと話をすればするほど、潜在的な使用例が次から次へと見つかっています」。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Mythical GamesNFT資金調達

画像クレジット:Mythical Games

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

復活したばかりの老舗音楽共有アプリTurntable.fmのそっくりライバル「tt.fm」がiOS・Androidベータ版アプリ発表

あなたが混乱したとしても無理はない。私自身このネタを追ってきて、まさに今書いているところだが、それでも混乱してしまいそうだ。「Turntable.fm」(オリジナルの、そして最近再リリースされた、ソーシャルミュージックアプリの名称)と混同してはいけないTurntable(または「tt.fm」アプリ)は、米国時間6月8日、同社サービスのiOS版、Android版、およびデスクトップPC版を提供開始したと発表した。

簡単に説明すると、オリジナルのTurntable.fmは、ライブ音楽プラットフォームに注力するために2013年に閉鎖された。このサイトで数え切れないほどの就労時間を費やした我々にとって、とても悲しい日だった。しかし、こういうこともある。人は変わり、企業はピボットするものだ。

もちろんそのノスタルジアは、この1年間、家の中に閉じこもって社会とのつながりを求めていたときに猛烈な勢いで戻ってきた。ある程度の年齢に達しており、おそらくTwitchにまだどっぷり浸かれていない我々のようなユーザーは、サイトを懐かしく思うようになった。そこで創業者のBilly Chasen(ビリー・チェイセン)氏は、Turntable.fmの復活を計画した。現在のベータ版では、ロイヤリティの問題を回避するためにYouTubeストリーミングを利用するなどいくつかの変更点はあるものの、ちょっとしたタイムカプセルのようなものだ。よくできている。私はこのところ使っている。楽しい。そしてつい先日、この会社は新しい10年に向けて750万ドル(約8億2000万円)を調達した。

ほぼ同時期に、Turntable.fmの初期の従業員がこのサービスを別の形で立ち上げることにした。モバイル利用に焦点を当て、クラウドファンディングのルートを選択したtt.fmは、懐かしさの波に乗り、2021年3月に発表された50万ドル(約5500万円)の資金調達に成功した。

6月8日、そのサービスがベータ版として開始される。同アプリは現在、Apple(アップル)App StoreとGoogle(グーグル)Play Storeで公開されている。また、ブラウザでアクセスすることも可能だ。Turntable.fmと同様に、tt.fm(ここではわかりやすくするためにそう呼ぶ)もサードパーティの音楽サービスに依存している。起動時には、リンクされたSpotify(スポティファイ)またはApple Musicのアカウント、およびSoundcloud(サウンドクラウド)から音楽を取り込む。YouTube機能は近日公開予定だという。

上の画像からわかるように、このサービスはTurntable.fmと同じフォーマットに基づいており、似ているが異なるグラフィックとなっている。DJがステージ上で曲をプレイし、観客がそれを気に入ったら頭を振ってうなずく。この新しいサービスの特徴の1つは、アーティストによるDJセットをホストすることだ。

Turntable(tt.fm)のCEOであるJoseph Perla(ジョセフ・パーラ)氏はリリースの中でこう語った。「オリジナルTurntableのファンは、ダンスフロアに戻ることを熱望しており、ライブDJセット、音楽ファンとのソーシャルネットワーキング、音楽の共有、オンライン音楽コミュニティなどのニーズに応える製品を求めていました」。

Turntable.fmのファンとしては、ゼロから突然2つのサービスになったことは、突如大金持ちになった恥ずかしさのように感じる。しかし、2021年の混雑したメディア環境の中で、ニッチを超えて本当に成功できるかどうかは疑問が残る。Turntable.fmのようなアプリが1つ存在する余地はおそらくあるだろう。

しかし、2つ?このすでに奇妙な物語は、さらに奇妙なものになりそうだ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ベータ資金調達音楽音楽ストリーミング

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

安定した大手を離れづらいシニアエンジニアとどうしても来て欲しいスタートアップをマッチングするCommit

エンジニアを採用したいアーリーステージのスタートアップと、新しい仕事を探しているエンジニアをマッチングするのにユニークなアプローチを取っている、カナダ・バンクーバー拠点のスタートアップCommit(コミット)は現地時間6月9日、600万ドル(約6億6000万円)のシード資金を調達したと発表した。同ラウンドはAccompliceがリードし、Kensington Capital Partners、Inovia、Garage Capitalが参加した。

リモートファーストのスタートアップとの協業に注力しているCommitは2019年の創業だ。Hootsuiteで初期従業員として出会った共同創業者でCEOのGreg Gunn (グレッグ・ガン)氏と、同じく共同創業者でCTOのBeier Cai(バイエル・カイ)氏は、どのようにCommitを機能させたいか詳細を詰めながら人の助けを借りずに会社を興した。

「(Inovia Capitalで)私はEIR(客員起業家)で、世界を変えるようなアイデアを持ってやって来るすばらしい創業者たちを目にしました。彼らは資金を調達しましたが、最大の問題は会社に加わってくれるエンジニアを獲得することでした」とガン氏は説明した。

共同創業者でCTOのバイエル・カイ氏、共同創業者でCEOのグレッグ・ガン氏、戦略・オペレーション担当副社長のティファニー・ジュング氏(画像クレジット:Commit)

ガン氏の経験では、創業者たちは通常、会社に加わるフルスタックのテックリーダーを探す。しかしそうしたシニアエンジニアは往々にしてすでに大企業でかなり快適な任務についており、アーリーステージのスタートアップ、あるいはアーリーステージを脱していてもスタートアップに賭けるというのは彼らにとって最も現実的な選択ではない。

何十人というエンジニアと話して、共同創業者の2人は多くのエンジニアが現在働いている会社内で築いたサポートネットワークを失いたくないと感じていることに気づいた。仲間のエンジニアから受けるサポートだけでなく、公的・私的なメンターシップや大企業が提供する自己啓発の機会を通じて受ける組織的なサポートなどもそこには含まれる。加えて「アーリーステージスタートアップでの採用は大変です」とガン氏は指摘した。ホワイトボードのスキルを試すだけで、エンジニアとしての実際の能力についてはほとんど語られないような技術面接を、もう何度も受けたいとは思っていない。

そうしてチームはこうしたバリアを除く方法を探すことに決めた。VCファームのように、Commitは協業するスタートアップやスタートアップの創業者を細かく調査する。そのためCommitにやってくるエンジニアたちは、こうしたスタートアップが少なくとも資金調達を予定し、エンジニアに軌道を描かせて潜在的に早期のリーダーの役割に育てる用意がある真剣な会社であることを知っている。

一方、エンジニアがCommitと提携している企業に次々とインタビューを受けなくてもいいよう、Commitはエンジニアにテクニカルに関するインタビューを行ってエンジニアを精査する。ガン氏が指摘したように、これまでのところCommitが協業したエンジニアはパイロットプロジェクトを開始する前に平均1.6人の審査を通った創業者に会った。

大手テック企業を辞める財政的なリスクを和らげるために、Commitは仕事が見つかるまで協業するエンジニアに実際に給料を払う。現在は、未来の雇用主とパイロットプロジェクトを開始するエンジニアの90%がフルタイムでの雇用に落ち着いている。

画像クレジット:Commit

創業者とエンジニアのマッチングに加え、同社はコミュニティのメンバーに仲間からのサポートやキャリアについてのアドバイス、コーチング、他の転職サービスなどを受けられるよう、エンジニアのリモートファーストコミュニティへのアクセスも提供している。

バックエンドでCommitは創業者とエンジニアをマッチングするために多くのデータを使っているが、チームがかなり選り好みし、提携する人々のプロフィールが偏っている一方で、Commitは多様性のある創業者やエンジニアのプールを構築することに注力している、とガン氏は述べた。「当社が戦っているものは、こうした機会が偏在していたという事実です」とも話した。「シリコンバレーですら、そうした機会にアクセスを持つためには社会的・経済的地位を持つ階級出身でなければなりません。当社では、全ビジネスモデルは住みたいところで利用でき、希望するあらゆる機会へのアクセスを手にします」。2021年後半、Commitは雇用ダイバーシティに特化したプロジェクトを立ち上げる計画だ。

Commitのスタートアップパートナーには現在Patch、Plastiq、Dapper Labs、Relay、Certn、Procurify、Scope Security、Praisidio、Planworth、Georgian Partners、Lo3 Energyがいる。Commitはこじんまりと事業を開始し、これまでのところ協業しているエンジニアは100人足らずだが、今後12カ月でエンジニア1万人超のコミュニティに拡大したいと考えている。プログラムに参加したいエンジニアはウエイトリストに登録できる。

カテゴリー:HRテック
タグ:Commitエンジニア資金調達カナダ

画像クレジット:tupungato / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

より良い選択を学ぶオートコンプリートで誰でも文章を早くかけるようになるCompose.ai、企業独自の言葉遣いにも対応

今日のGPT-3の世界では、テキストを扱う新しいソフトウェアサービス話題になることも、珍しくなくなった。Compose.aiもそんな企業の1つで、同社は独自の言語モデルを開発し、多くの人が文章をもっと早く書けるようにしてくれる。初期のプロダクトが早くも投資家の関心を引き、Craft Venturesがリードするシードラウンドで210万ドル(約2億3000万円)を調達したことを同社は米国時間6月8日の朝に発表した。

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Compose.aiは、ウェブを閲覧しているときにどこでも使えるオートコンプリート機能を提供する。AIを搭載したバックエンドは、ユーザーの声を学習し、コンテキスト(文脈)を吸収してより良い回答を提供したり、やがては企業の大きな声を吸収して文章のアウトプットを整える機能も備えている。

共同創業者のLandon Sanford(ランドン・サンフォード)氏とMichael Shuffett(マイケル・シャフェット)氏によると、Compose.aiは、5年後に平均的な人たちは書くときにすべてのワードをタイプしていない、と信じている。同社は、Compose.aiのChromeエクステンションで今後はもっと多くの人たちがそうなって欲しい、と述べている。ブラウザーのエクステンションなら、会社の許可がなくても使えるはずだ、と。

サンフォード氏とシャフェット氏の説明によると、同社の言語アルゴリズムはマルチティアのプロダクトだ。最初の段階として、インターネットそのものを読んで学習(主に英語)し、第2段階として具体的なドメイン、たとえばeメールというドメインを扱う。第3段階にはユーザーの声を学習し、そして今後の第4段階では、企業内で一般化している言語へのアプローチ、すなわちその企業独自の言葉遣いのパターンなどを扱う。

企業が従業員に共有言語モデルを提供することで、彼らが文章を書く際に言語や単語選択の好みを提示できるというのは興味深いコンセプトだ。このように強力で中央集権的なトーンという考え方は、役に立つものと知的に厳格なものの中間に位置する。しかし、多くの人は書くことに自分なりの工夫をしたくない、もしくは書くことをまったく好まないものだ。したがって、中央集権的なサポートを増やすことは、ほとんどの人にとって面倒なことではなく、むしろ時間を節約するハックになるだろう。

いずれにしてもCompose.aiは、新たに得た資金でスタッフを増やそうとしている。現在、フルタイムが3名と若干の契約社員だけだ。サンフォード氏とシャフェット氏によると、今後も小さな会社を維持し、少数の経験豊富な技術者と機械学習のスタッフでプロダクトチームを充実させたいという。

Composeの今後、どのような展開を行うのだろうか?創業者たちはTechCrunchに対し、少しずつ企業との対話を始めており、第4四半期末には有料サービスを開始する予定だと語った。これは早期の収益を意味し、スタートアップのランウェイを大幅に延長することになるだろう。

Composeが構築しているものは技術的にシンプルなものではなく、経済性を適切に調整するための興味深い作業が待っている。同社の創業者はTechCrunchに対し、同社のプロダクトが顧客のために実行するパーソナライゼーションの作業は、間違ったやり方をすると高くつく可能性があると述べている。2人は、将来的に月額10ドル(約1100円)のプランを経済的に魅力的なものにすることは可能だが、「ナイーブ」な方法で行えば、Compose.aiは同じアカウントをサポートするために500ドル(約5万4800円)の計算コストを費やす可能性があるという。

それはまずい。

同社は、間近に迫った有料プランが経済的にうまくいくと確信している。TechCrunchでは、機会があればそのバージョンの同社プロダクトを試してみたいと思っている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GPT-3機械学習Compose.ai資金調達文章

画像クレジット:danijelala/Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

3Dビジョン対応の自律型倉庫用ロボットを開発するクロアチアのGideon Brothers

クロアチアのザグレブを拠点とするロボット・AI関連のスタートアップであるGideon Brothers(ギデオンブラザーズ、GB)は、Koch Industries Inc.のベンチャー・成長部門であるKoch Disruptive Technologies(KDT)がリードするシリーズAラウンドで3100万ドル(約34億円)を調達した。DB Schenker、Prologis Ventures、Rite-Hiteもラウンドに参加した。

今回のラウンドでは、Gideon Brothersの既存の投資家も複数参加した。Taavet Hinrikus氏(TransferWiseの共同創業者)、Pentland Ventures、Peaksjah、HCVC(Hardware Club)、Ivan Topčić(イワン・トプチッチ)氏、Nenad Bakić(ネナド・バキッチ)氏、Luca Ascani(ルカ・アスカニ)氏などだ。

今回の投資は、GBのAIと3Dビジョンを活用した「自律移動ロボット」(AMR)の開発と商品化を加速するために使用される。AMRは商品の運搬、集荷、受け入れなどの単純作業を行い、人間はより価値のある作業に専念できるようになる。

また、ドイツのミュンヘンとマサチューセッツ州ボストンにそれぞれオフィスを開設し、EUと米国で事業を拡大する。

Gideon Brothersの創業者たち(画像クレジット:Gideon Brothers)

Gideon Brothersは物流、倉庫、製造、小売業向けの水平・垂直方向のハンドリングプロセスに特化したロボットと、それに付随するソフトウェアプラットフォームを手がけている。理由は明らかだが、パンデミックの際には、サプライチェーンのロボット化の必要性が爆発的に高まった。

GBのCEOであるMatija Kopić(マティーヤ・コピック)氏は次のように述べた。「パンデミックにより、スマートオートメーションの導入が大幅に加速していますが、当社は前例のない市場の需要に対応する準備ができています。そのための最善の方法は、当社独自のソリューションを、世の中で最も大きく、最も要求の厳しい顧客と結びつけることです。当社の戦略的パートナーが抱える真の課題は、当社のロボットがすでに解決しつつあるものです。彼らは我々とともに世界で最も革新的な組織にロボットによる変革をもたらすすばらしい機会を捉えようとしています」。

さらにコピック氏は付け加えた。「このような先進的な業界のリーダーとのパートナーシップは当社のグローバルな活動の拡大に役立ちますが、我々は常にクロアチアのルーツに忠実であり続けます。それは私たちのスーパーパワーなのです。クロアチアのスタートアップシーンは急激に拡大しており、我々はこの国がロボットとAIの大国になるためにさらなる機会を引き出したいと考えています」。

Koch Disruptive Technologies(KDT)のディレクターであるAnnant Patel(アナント・パテル)氏は次のように述べた。「全世界で300以上のKochのオペレーションと生産ユニットを担うKDTは、最先端のAIと3D AMR技術により企業が倉庫や製造プロセスにアプローチする方法を著しく変革するGideon Brothersの技術の独自性と可能性を理解しています」。

DB Schenkerのコントラクト・ロジスティクス担当取締役のXavier Garijo(サビエ・ガリコ)氏は「Gideon Brothersとのパートナーシップにより、クラス最高のロボットやインテリジェント・マテリアル・ハンドリング・ソリューションへのアクセスが確保され、最も効率的な方法で顧客にサービスを提供することができます」と述べた。

GBの競争相手はSeegrid、Teradyne(MiR)、Vecna Robotics、Fetch Robotics、AutoGuide Mobile Robots、Geek+、Otto Motorsなどとなる。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Gideon Brothersクロアチア倉庫資金調達

画像クレジット:Gideon Brothers robots

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

オンライン広告が大反響を巻き起こした人工肉ナゲット「Nuggs」開発Simulateが約55億円調達

ニューヨークを拠点とするSimulate(シミュレート)は米国時間6月8日、5000万ドル(約55億円)の資金調達を発表した。Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏の投資ファンド「776」が主導した今回のシリーズBラウンドにより、代替肉製品手がける同社の資金調達総額は6000万ドル(約66億円)を超え、企業価値は2億6000万ドル(約285億円)に達した。

Simulateの最初の製品である「Nuggs(ナグス)」(旧社名でもあった)は、積極的なオンライン広告が奏功し、すでに大きな反響を巻き起こしている。同社では、この6カ月の間に小売店における販売を大幅に強化したという。このチキンナゲットの代替品は、2019年夏の発売時にはオンライン注文を通じて消費者に直接販売されていた。米国が新型コロナウイルスの影響を受けたこの1年の間に、その販売は目立った変化を記録した。

「新型コロナウイルス流行の最中、人々は冷凍食品を直接ドアに届けて欲しいと強く望んでいました」と、同社の創業者でCEOを務めるBen Pasternak(ベン・パスタナック)氏はTechCrunchに語った。「当時、私たちは消費者直接販売のみを行っていたので、小売店販売に移行する前に大きな成長を遂げました」。

現在では、小売店の買いやすさや直販価格が制限されることから、売上の大半は小売店での販売によるものになっていると、パスタナック氏は付け加えた。同社の製品は5000カ所の小売店で販売されており、その中にはWalmart(ウォルマート)およびSam’s Club(サムズ・クラブ)、Target(ターゲット)、Whole Foods(ホールフーズ)などの超大手も含まれる。

「現在はレストランやファーストフードでの販売開始に向けて準備を進めているところです」と、パスタナック氏はいう。「国際的には、最近カナダで販売を開始しましたが、他の国へ拡げることも計画しています」。

今回調達した資金は、雇用の拡大にも投じられる。現在20名の社員は、2022年までに50人に増える予定だ。「増員の半分以上は、エンジニアリングチームの拡大に充てる予定です」と、パスタナック氏は語っている。

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カテゴリー:フードテック
タグ:代替肉Simulate資金調達

画像クレジット:Simulate

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)