「ルトロン」の技術を活用したAI自動動画作成ツール「VIDEO BRAIN」提供開始、運営は総額15億円を調達

動画メディア「LeTRONC(ルトロン)」や動画広告サービスなどを運営するオープンエイトが、AIによる自動動画生成機能「LeTRONC AI(ルトロンAI)」を発表したのは2017年10月のこと。同社で内々に活用されてきたこの機能がついに8月28日、「VIDEO BRAIN(ビデオブレイン)」の名で、一般企業向けにクラウドサービスとして提供開始された。

オープンエイトが運営するルトロンは、観光スポットやレストラン、イベントといったおでかけ情報や、美容、ファッションなど、女性向けの動画を配信するメディアだ。2016年5月のウェブ版公開を皮切りに、SNS、アプリなど複数チャンネルで配信される分散型メディアとして、オリジナルコンテンツを展開。アプリは100万ダウンロード超、SNSファン数はのべ約700万となり、提供する動画コンテンツは約8000本を数える。

ルトロンでは、AIを活用してユーザーの視聴履歴などを分析し、ユーザーごとの趣味嗜好に合った動画コンテンツを自動生成している。そのテキストマイニングや画像解析、自動編集など動画に関する技術を応用して、提供するのがVIDEO BRAINだ。

VIDEO BRAINで動画を作るのに、特別な知識は要らない。PowerPointでプレゼン資料を作ったことがある人なら誰でも、いや、もしかしたらそれよりもずっと簡単に、動画が作れるかもしれない。

写真・動画やテキストなどの素材を画面から入力していくと、AIエンジンがデータを分析し、100種類以上ある動画フォーマットから、おすすめを提案してくれる。動画や画像の長さ・大きさは編集が可能。入力したテキストからテロップとして配分される文言なども微調整することができ、最短3分で動画を書き出すことができる。

テキストと画像の入稿から、編集、プレビューと動画の書き出しまで、VIDEO BRAINを操作するところを見せてもらったのだが、「すごい」と思わず声が出たのは、画像に合わせてテロップテキストの配分が自動で終わったところ。動画を説明する文章として、5000文字ぐらい入力ができるそうなのだが、それらが各画像の内容に沿って、何となくいい感じに割り振られるのだ。

もちろん、自動の割り当てで気に入らないところは、自分で手を加えることもできる。テロップの修正以外も、画像サイズやシーンの入れ替え、秒数の調整などを「パワポ」レベルの操作でできるので、本当に動画制作の経験は必要ない。

TechCrunchに掲載されているものでも短めの記事なら、動画や画像素材を取り込んで、ちょっとした動画コンテンツが簡単に出来上がりそうだ。実際、クローズドでサービスを導入しているメディア企業で、ニュース記事を動画化しているケースもあるということだった。

オープンエイト代表取締役社長 兼 CEOの高松雄康氏によれば、クローズドで先行導入している企業は大手を中心に約10社。外部向けコンテンツや広告動画だけでなく、CSR活動や、飲食業でのオペレーションマニュアルといった従業員教育にも使われているそうだ。

高松氏は「広告など、動画の活用は広がってきたが、まだまだ予算が小さく、体制がないために取り組めないという企業は多い。また、社内向けマニュアルなど、そもそも大がかりな編集が不要で、必ずしも外部へ制作を依頼するほどではない場合もある。そういうケースでも、小さな予算で簡単に動画ができて、効果が試せる、という状況をVIDEO BRAINで提供したい」とサービス開始の背景について説明。「いろいろ試してもらって、動画を利用しようという企業の裾野を広げたい」と語った。

利用料金は月額15万円(契約期間1年間)。今後、素材のより適切なマッチングができるよう、さらにデータの学習・AIエンジンの改良を行っていくという。また高松氏によると「今秋には英語・中国語への対応を、年内には音声データへの対応も予定している」とのことだった。

オープンエイトでは、VIDEO BRAINの開発と推進を目的として、WiL未来創生ファンドを引受先とする約15億円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。また動画事業のアドバイザーに江端浩人氏を迎え、VIDEO BRAINの機能強化や販売促進、海外展開を推進するという。

“検索がいらない”サロン予約アプリ「requpo」がVCやアイスタイルらから約2.3億円を調達

ユーザーのリクエストに対して美容師から提案が届く、“検索不要”のサロン予約アプリ「requpo(リクポ)」。同サービスを提供するリクポは8月29日、環境エネルギー投資、アイスタイル、アドウェイズ、マネックスベンチャーズ、iSGSインベストメントワークス、SMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、総額約2.3億円を調達したことを明らかにした。

requpoの特徴はユーザーが起点となり、面倒な検索なしでサロンを予約できる点だ。従来のように美容室側が用意したメニューやスケジュールに合わせてサロンを探すのではなく、ユーザーが登録したリクエストの内容に興味を持った美容師側からオファーをする。

前回の記事でも紹介した通り、この仕組みで2016年11月にビジネスモデル特許を取得した。

ユーザーはエリアやメニュー、希望金額、おねだり、日付、時間、髪型(任意)を登録しておけば、あとは美容師からのアプローチを待つだけ。1回のリクエストには最大で3人からアプローチが届くので、気に入ったものを選べばいい。

もちろんエリアによって違いはあるけれど、たとえば美容師が多い表参道エリアだと5分ほどで3つのオファーがくることも珍しくないそう。結果的に手間なくスピーディーに、自分の要望に合ったサロンを予約できることがユーザーにとってのメリットだ。

以前から提供していたiOS版に加えて2018年の1月にAndroid版をリリース。エリアも拡大し、1都3県の一部地域(東京、神奈川、埼玉、千葉)のほか愛知や大阪、福岡の各エリアでも対応を開始している(requpoでは美容師ユーザーの登録数が一定数に達したエリアごとに提供する仕組み)。

また前回調達した資金を活用してプロモーション面も強化。2017年9月には乃木坂46の伊藤万理華さん(現在は同グループを卒業)をPRキャラクターに起用してコラボCM動画を展開した。これらの取り組みの成果もあり、リクポ代表取締役CEOの木崎智之氏によると「1年前に比べると登録ユーザー数が約20倍、美容師数も約10倍に増えている」という。

ユーザー層に関しては18歳〜24歳の女性が最も多く半数近くを占め、25歳〜34歳の女性も加えると全体の70%ほどになるそう。また女性向けのブランディングをしてはいるものの男性でも利用でき、実際に男性のユーザーもいるようだ。

requpoの仕組みはリクエストにマッチした美容師からすぐにオファーが来るのであれば、確かに使い勝手がいいだろう。リクエストはスマホから数十秒〜数分程度でできるし、検索のわずらわしさもない。一方でリクエストをしても美容師からの反応が全くなければ、却って余計な手間とストレスがかかってしまう。

木崎氏の話では、まさにこのマッチング率をあげることに現在力を入れているそう。たとえば大きめのサロンからの要望が多かったという“店舗アカウント”(オーナーが髪を切っている最中でも、他のスタッフが代わりにオーナーの枠で予約を取れる機能)などを今後追加していく方針だ。

「requpoは美容師の空き時間をシェアリングエコノミー化しているような側面があるので、いかに美容師ユーザーにとって提案しやすいような設計を作れるかがマッチング率をあげるポイントにもなる。単に美容師の数を増やすというだけでなく、アプリ側の改善や機能開発を強化していく」(木崎氏)

今回調達した資金はこれに向けて主にエンジニアを中心とした人材採用と、プロモーション強化に用いる計画だ。

リクポは2015年12月の設立。これまでも2016年3月にTLMと複数のエンジェル投資家からシードマネーを、2016年12月にコロプラ、ベクトル、大和企業投資、エンジェル投資家から8000万円を調達している。

リクポのメンバー。最前列の中央が代表取締役CEOの木崎智之氏。

LINEチャットでレストラン予約の「ビスポ!」にLINE、本田圭佑氏らが出資

LINEチャットで、さまざまなモノやコトを相談したり、予約したりできる時代。旅行恋愛相談など、TechCrunch Japanでもいくつかサービスを紹介してきているが、8月28日にリリースされた「ビスポ!」は飲食店予約をLINEチャットでできるサービスだ。

ここで「あれ、そういうの既になかったっけ?」と思った方は、なかなか鋭い。実は2015年にLINEがRettyとの提携で「LINE グルメ予約」というお店探しと予約ができるサービスを提供していたのだが、2017年3月にサービスを終了している。

また、飲食店探しをユーザー同士が人力で助け合うサービスとして2015年3月に始まった「ペコッター」も、現在はグルメコンシェルジュサービスとして予約代行をメインのサービスとして運営。iPhoneアプリのほかにLINEボット版を提供している。

こうした飲食×チャットの世界に新たに加わったビスポ!は、一見すると、ほかのチャットボットと同じように「LINEで友だちになって希望条件をチャットすると、店を提案してくれて、最終的には予約もできる」というサービスだ。

運営会社Bespo(ビスポ)代表取締役CEOの高岳史典氏は「ビスポ!は、飲食業の課題に飲食店サイドに立って解決するサービスだ」と、その特徴を説明する。

飲食店業界に入って知った課題

高岳氏は、新卒で日本興業銀行に入行、P&Gでマーケティングを担当した後、コンサルティング会社を経て、いわゆる「ライブドア事件」により一度は解体されようとしていたライブドアに参画し、再編やNHN Japan(現在のLINE)との統合に関わった。ライブドアに参加した経緯や現LINE CEOの出澤剛氏との出会いを本人が綴ったテキストを読んだ方もいるかもしれない。

その後、2013年に飲食業界で起業し、ラムチョップとワインの店「ULTRA CHOP」を経営。5年間で4店舗を展開するに至る。

実は高岳氏は2016年9月に、いわゆる「食べログスコアリセット事件」の発端となる下記ツイートを発信している。新聞や週刊誌などでも話題になったので、ご記憶の方もいるだろう。

ちなみにその後、食べログ運営のカカクコムは「有料集客サービスを利用しているかどうかが点数に影響することは一切ない」とアナウンス。店舗のサービス利用状況や検索結果での優先表示と、点数の更新との間には関連はない(偶然タイミングが重なっただけ)と説明している。

ともあれ、こうして自らが飲食店を経営し、業界向けサービスを見ていく中で課題を感じたという高岳氏。いま提供されているサービスには「飲食店サイドに立ったものは、なかなかない。飲食店を課金対象にしか見ていないサービスが多い」と述べる。そこで「課題を解消することで、日本の飲食店をもっと豊かにしたい」と考え、2018年1月に設立したのがBespoだ。

高岳氏が考える、飲食業界の課題は3つある。直前キャンセル、集客、人材確保だ。

直前キャンセルについては、Bespo設立前の2017年、飲食店経営をしながらマーケティングやITに関するアドバイザーをしていた高岳氏が、ダイナースクラブ、LINE、ポケットコンシェルジュの3者を連携させた「ごひいき予約」サービスをプロデュースしている。

ごひいき予約は、「何カ月も先まで予約が取れない」ような人気店でありがちな、「当日急にキャンセルせざるを得なくなった」席をダイナースクラブが買い取り、LINEの公式アカウント経由で会員に告知、即時転売するというもの。転売後の予約・決済をポケットコンシェルジュのシステムが担当する。

そして今回リリースされたビスポ!が取り組むのは、集客の課題だ。有名店でも人気店でもない、ほとんどの飲食店では、集客ができないことは、キャンセルよりさらに大きな問題となる。

「例えば評判のお寿司屋さんのNo.2が独立して、店を持ったとする。いい素材を確かな腕で出していれば、最初は前の店の常連さんが様子を見に来てくれたりするからよいけれども、ちょっと駅から遠い、といった場合、せっかくよいネタを仕入れていても、ずうっとお客さんを待っていなければならない、なんてことになりかねない。では『食べログ』や『ホットペッパー』に“課金”して検索順位の上位掲載を狙えばよいのか?というと、そういうことでもない」(高岳氏)

トレタとの連携で空席のみをリアルタイムにレコメンド

ではビスポ!は具体的にどうやって、集客の課題を解決しようとしているのか。

ユーザーにとっては、ビスポ!は検索をせずにLINEチャットで店を見つけて、予約までできるサービスだ。LINE公式アカウントの「ビスポ!(@bespo)」と友だちになって、利用を開始する。

メニューの「かんたん予約」では、チャットボットのガイドに合わせて希望日時、人数、予算、ジャンル、場所などを選べば、希望日時に席が空いている店が候補としてリアルタイムで表示されるので、好きな店を選んで予約ができる。

また「わがまま予約」では、かんたん予約の条件に加えて「アレルギー対応メニューを用意してほしい」「デザートプレートを誕生日用にデコレーションしてほしい」といったリクエストが可能だ。利用できるのは1人当たりの予算が5000円以上から。わがまま予約の場合は、条件に対応できる店があれば、早ければ30分程度で、遅くとも24時間以内に順次返信をくれるので、その中から好きな店を選んで予約することになる。

飲食店側も予約管理はアプリで行う。予約の状況の確認や、わがまま予約の場合に返信して予約を待つかどうかの判断、ユーザーへのお礼メッセージ送信が可能。また、ビスポ!を利用する店舗間で見られる、ユーザー評価とコメントも入力することができる。

肝となるのは「予約台帳と連携しているので、条件の中で、空席のある飲食店のみが自動的にレコメンドされる」という点だ。

「既存モデルの予約サービスでは、店は空席、つまり“在庫”を予約サービス側に預けている状態になる。お客さんにとっては“金曜夜7時”といった在庫が人気なわけだが、そうした在庫が予約サービス上で前日までにはけなかったとしたらどうするか? 実は店は予約サービスから在庫を引き取って『当日予約は電話で』といった形で予約を受けるようにしているんです」(高岳氏)

ビスポ!はトレタの予約台帳と連携することで、リアルタイムでの空席マッチングを可能にしている。「予約の取りっぱぐれがなくなるので、店としては安心できる」と高岳氏は話す。

わがまま予約の場合でも、空席がなければ店に通知は来ず、空きがあるときだけリクエストが通知される。返信するか、スキップするかは店が選べるようになっていて、返信した場合には、ユーザーが店を選択するまでは席が仮予約の状態になる。

「店は、例えば夕方の早い時間帯なら『お客さんを入れたいので、多少のわがままには応えよう』となるが、必ず満席になると分かっている曜日・時間帯で、安めの予算で面倒なリクエストが届いた場合には、スキップすることもできる。いわばリバースオークションのようなスタイル」(高岳氏)

飲食代金の支払いは原則として店舗で行うが、わがまま予約については「訪日外国人客も支払いやすいように」ということで、事前に設定した予算をLINE Payで支払うこともできるよう、年内には機能を実装する予定だという。

高岳氏は「かんたん予約とわがまま予約のどちらが好まれるかは分からないが、まずは両方実装してみて、いろいろと改善していこうと思っている」という。わがまま予約のフリーワードについては、自然言語解析などを使って、より適切なマッチングに結び付けることも検討しているそうだ。

ビスポ!の利用料は、ユーザー側は無料。飲食店側は、初期費用や月額費用は不要で、かんたん予約なら、予約が成立して来店した人数1人あたり300円、わがまま予約の場合は、予約が成立した時点での予算総額の6%を手数料として支払う(来店してからの追加注文には料金がかからない)。ただし、トレタを導入していない飲食店の場合は、予約・顧客台帳の利用料として月額1万2000円が必要となる。

「競合サービスでは、月額の掲載料が店にとっては負担になる。また掲載料に対してどれだけ集客できたのかがつかめず、費用対効果が分からない。ビスポ!は送客した分だけ費用が発生するので、費用対効果が明確だ」(高岳氏)

テクノロジーをふんだんに使って飲食業の課題を解決したい

Bespoではサービスのリリースと同時に、LINE子会社のLINE Venturesとプロサッカー選手・本田圭佑氏の個人ファンドKSK Angel Fund、および複数の個人投資家などから資金調達を実施したことも明らかにしている。調達金額は非公開だが、関係者の話や登記情報などから総額1億円前後とみられる。

チャット画面はLINE、空席データ連携についてはトレタの全面協力により構築したというビスポ!。サービスリリースにあたって、同社にはLINE取締役CSMO/LINE Venture代表取締役の舛田淳氏がアドバイザーとして就任している。

ローンチ時点で、港区、中央区を中心とした約50店舗が参加するというビスポ!は今後、今年中に参加店舗数1000店舗、ユーザー数10万人を目指す。また、2020年には1万店舗、100万人の利用を、国内のみの展開で達成したいとしており、このほかにもインバウンドユーザーによる利用者増をもくろんでいるそうだ。

Bespo(ビスポ)代表取締役CEOの高岳史典氏

高岳氏はそもそも飲食業界で起業した理由をこう語っている。「人と向き合う仕事がしたかった。多くても1日に数十人ぐらいを相手にする仕事、例えばネイルサロンでも美容院でもよかったけれども、たまたまラムチョップと出会って、飲食店で起業することになった。それが今につながっている」

また、飲食業界へ入った当初と今との違いについて「5年前だったらトレタもなかったし、もっと前はLINEもなかった」と高岳氏は言い、「今、このタイミングだからこそ、テクノロジーでできる課題解決はいろいろある。そしてそれは飲食店をやって、1日10人と向き合っていたから見えたこと。そこから1000店舗へサービスを広げれば数万人、1万店舗なら数十万人のユーザーとつながる」と述べている。

「テクノロジーをふんだんに使って、しかしテクノロジーありきではなく課題ベースで解決していきたい」という高岳氏。「今あるコンシェルジュ的なサービスは人力に頼るところが大きく、それは時間も労力もコストがもかかる。完全にテクノロジーで解決する方向で、課題をクリアしていきたい」と話している。

飲食店の経営も、これからも続けていくそうだ。そして「そのときどきで、できる技術を使って課題解決していく」と高岳氏は言う。まだ手を付けていない課題の「人材確保」についても、「解決の糸口となる技術は見つけている」と高岳氏は述べ、「数年内の近いうちに、人材の課題も解決する新サービスを提供するつもりだ」と話していた。

オンラインM&Aマッチングの「TRANBI」が約11億円を調達、後継者問題の解決へ事業承継を促進

オンライン上で事業の売り手と買い手をマッチングする事業承継・M&Aマーケット「TRANBI(トランビ)」。同サービスを展開するトランビは8月28日、VC3社および複数のM&A仲介会社より総額約11億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金は事業拡大へ向けた組織基盤の強化、サービス開発およびマーケティング強化に用いる計画。今回トランビに出資した企業は以下の通りだ。

  • SBIインベストメント(SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合)
  • 西武しんきんキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • あがたグローバルコンサルティング
  • アイ・シー・オーコンサルティング
  • ストライク
  • 辻・本郷 ビジネスコンサルティング
  • 名南M&A
  • フォルテワン
  • 優和コンサルティング

中小企業の経営者の高齢化などに伴う事業承継問題は、日本の大きな社会問題のひとつだ。経済産業省が昨年公開した資料によると「今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、うち約半数の127万(日本企業全体の約3割)が後継者未定」だという。

一方で同資料には「休廃業・解散企業の5割は黒字」とあるように、事業を他の人に任すことができれば継続できるものも少なくない。ただし、その事業を任せる人、つまり事業の買い手を探すのが簡単ではなく、多大なコストを要する部分でもあった。

ならばインターネットを使ってオンライン上でマッチングできる仕組みを作ろうというのが、オンラインM&Aサービスだ。

TRANBIのほかにも昨年紹介した「ビズリーチ・サクシード」のほか、アンドビズ(日本M&Aセンターの子会社)の「&Biz」やエン・ジャパンの「MAfolova」。スタートアップが手がける「M&Aクラウド」や「FUNDBOOK」など、関連するサービスが近年一気に増えてきている。

TRANBIは事業の売り手がM&A案件を登録することでスタート。登録した案件が即座に公開され、興味を持った買い手は直接コンタクトを取り事業の売買について交渉する。案件登録やメッセージは無料で、実際に成約に至った場合に買い手が譲渡金額の3%を手数料として支払う。

一般事業主だけでなく、M&A仲介業者、会計士・税理士事務所、金融機関、公的機関など専門家が利用することも可能。その場合は成約時に事業会社から得た手数料の10%をTRANBIに支払う仕組みだ。

2018年7月末時点で同サービスには1万1066社が登録。累計M&A案件数は1417件、累計マッチング数は5410件となっている。

またトランビでは現在60社を超える金融機関、M&A仲介会社と業務提携を締結。今後もこの動きを加速させることで「後継者問題に揺れる中小企業のM&Aによる事業承継を促進し、国内経済・地域活性化に寄与する全国的なネットワークの構築を目指してまいります」としている。

キズナアイが参加するVTuber支援プロジェクト「upd8」運営のActiv8が6億円調達

バーチャルYouTuber(VTuber)など、バーチャルタレントを企画・運営・プロデュースするActiv8(アクティベート)は8月28日、Makers Fundgumiを引受先とした総額6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

8月にユーザーローカルとCyberVが「VTuberが直近半年間で4000人以上増えた」と発表しているとおり、バーチャルタレント業界は今年に入り、急激に盛り上がっている。VTuber自体も増え、関連するサービスや取り組みも続々と現れている。4月にはグリーが総額40億円の「VTuberファンド」を開始、6月にはVTuber向け配信サービス「ホロライブ」運営のカバーが2億円を調達するなど、投資も活発だ。

4000体のVTuberが存在するといわれるこの業界で、Activ8ではバーチャルタレントによるUGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)文化や関連産業の振興を目指し、個人・企業を問わずタレントを支援するプロジェクト「upd8(アップデート)」を運営する。upd8はバーチャルYouTuber人気ランキングでも上位常連のキズナアイも参加するプロジェクトだ。

upd8では、企業とのタイアップといった仕事をバーチャルタレントに紹介するエージェント機能の提供、コミュニティーの創出を行う。コミュニティーについては、リアル、バーチャルに関わらず、イベント実施など、タレントの活動する場を提供している。また、キャラクターの撮影環境についても、スクラッチで開発。サービスとして提供する。

Activ8代表取締役の大坂武史氏は同社の事業を「VTuber業界を活性化することを目的としている」と説明。つまり、UUUMなどのプロダクションがリアルなYouTuberの活動をさまざまな形で支援するのと同じようなことを、バーチャルタレントについて行うということのようだ。

「我々には“生きる世界の選択肢を増やす”という目標があって、その選択肢のひとつがVRの世界だと考えている。バーチャルタレントがVRシステムの上で活動できる舞台をつくり出すため、サイバースペースでのスタジオ事業も行っている」(大坂氏)

Activ8は2016年9月の設立。キズナアイをはじめとするVTuberたちを支援してきた。今年5月31日には、upd8をバーチャルタレントのサポート事業として公式にローンチ。支援プロジェクト、タレント募集を本格化した。

同社はこれまで資金調達については公表してこなかったが、Tokyo XR Startupsなどが既に投資をしており、今回の資金調達は3度目、シリーズBラウンドにあたる。

今回の調達では、VRに造詣の深いgumiと、世界規模でクリエイティブ産業への投資を行うMakers Fundが参加。大坂氏は「バーチャルタレントがVRシステム上で動けること、VR空間で価値創造を行うことにフォーカスしていきたい。人がVR空間で生産を行い、生きていくための仕組みづくりを目指す。また世界×エンタメ市場にも踏み出していくつもりだ」と資金調達の意図について説明する。

具体的には大きく3つの分野に投資する、と大坂氏は話している。1つめはバーチャルタレント支援のための人材確保だ。「トップVTuberのキズナアイの支援を通して、バーチャルタレントの価値の最大化を図りたい。リアルイベント開催やテレビ出演などに加えて、海外でもボーダーレスにチャレンジを応援することで、バーチャルタレントが活躍する場を広げる」という大坂氏。「バーチャルタレントもリアルのタレントと同様、タレントを中心とした360度ビジネス。そのためには、さまざまな場面に対応する人材が必要だ」と話す。

2つめは、upd8を通して、既存のバーチャルタレントとは違ったセグメントからタレントを発掘し、支援すること。大坂氏は「キズナアイ以外でも、バーチャルタレントが必要とされるセグメントはいろいろある」という。「男性タレントや教育コンテンツ向けのキャラクター、音楽などの芸能に特化したタレントなどは、まだ着手されていない領域。こうした分野のタレントも自社でプロデュースしていこうと考えている」(大坂氏)

3つめは、VRシステム自体の拡張だ。「“生きる世界の選択肢を増やす”という目標を掲げているので、VR世界で活動できることを増やしたい。VR内で撮影が完結するような仕組み、システムの開発も進めていく」と大坂氏。「バーチャルタレント支援の範囲の拡大とシステムの深掘りの両方向に投資していくつもりだ」と話していた。

Nylasが電子メールAPIツールを拡張するために、1600万ドルをシリーズBで調達

開発者がAPIを使用して、電子メールコンテンツをアプリケーションに統合することを簡単にしてくれるスタートアップのNylasが、本日(米国時間8月22日)Spark Capitalによって主導される1600万ドルのシリーズBを発表した。

既存の投資家である8VC、Great Oaks Capital、Rubicon Venture Capital、そしてJohn Chambersの個人ファンドに加えて、Slack Fund、Industry Ventures、そしてScaleUpなどが投資家として名を連ねている。本日の投資で、調達額の総額は3000万ドルに達した。

Nylas APIはStripeやTwilioと同じように動作するが、数行のコードで支払いや通信機能にアクセスできるようにする代わりに、Nylasは開発者たちが電子メール、カレンダー、そして連絡先情報にアクセスすることを助ける。このようなAPIの背後にあるアイデアは、アプリケーションのコア目的外の特定の領域に対する専門知識がない開発者が、その特定の領域の機能に簡単にアクセスできるようにすることだ。

同社のCEO、Gleb Polyakovは、Nylas以前には、多くの技術的な手間暇をかけることなしに、電子メールシステムに接続できる効果的な方法は存在しなかったと言う。「インターネットを使用しているすべての人が、電子メールアドレスを持っていて、メールボックス、カレンダー、そしてアドレス帳には膨大な量のデータが置かれています。これまで、企業はそのデータを効果的に利用することができませんでした」と彼はTechCrunchに語った。

この種の情報に任意のアプリケーションからアクセスすることは、必須の能力のように思えるが、大部分の企業はそれを行うことが困難であるという理由から、包括的なアプローチを避けているのだと、共同創業者でCTOのChristine Spangは語る。

「私たちはそれぞれの電子メールシステムのネイティブプロトコルに対するアダプターを構築しました。例えばGmail、Microsoft Exchange、オープンソースのIMapサーバー、そしてさまざまなIMap実装で利用可能なさまざまな拡張機能などが相手です。そして重要な点は、これらのアダプタで、Google、GoDaddy、Yahooなどのバックエンドプロバイダと通信することができるということです」とSpangは説明した。

写真:Nylas

この機能は様々なシナリオで開発者にとって有益なものとなるだろう。例えばCRMのためのデータを、セールスマンと顧客の間で交換された電子メールから抽出するとか、複数の個人の予定とミーティングルームの空き状況を見て、全員の都合が良い時間にミーティングを設定することなどだ。

設立されて約5年のこの会社は、現在ニューヨークとサンフランシスコに35人の従業員を抱えている。新しい資金調達で、エンジニアリングを追加し、営業チームとマーケティングチーム立ち上げて、年末までにその人数を倍増させる予定である。これまでのマーケティングの大部分は開発者たちからの問い合わせに基くものだったが、彼らは企業に直接マーケティングすることで顧客ベースを広げたいと考えている。

現在は200の顧客と数千人の開発者たちがこのプロダクを利用している。顧客リストには、Comcast、Hyundai、News Corp、Salesloft、そしてDialpadなどが含まれている。

[原文へ]
(翻訳:sako)

写真: MirageC / Getty Images

AIがホテルの単価を最適化、ダイナミックプライシング支援ツールのメトロエンジンが7億円を調達

AIを活用してホテルや旅館の客室単価の設定を支援する「メトロエンジン」などを展開するメトロエンジン。同社は8月23日、複数の投資家より総額約7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回メトロエンジンに出資した投資家は以下の企業・個人などだ。

  • SBIインベストメント
  • NECキャピタルソリューション
  • エボラブルアジア
  • JR東日本スタートアップ
  • タップ
  • ベクトル
  • ベンチャーラボインベストメント
  • 菅下清廣氏

メトロエンジンが手がけるのは、事業者がいわゆる“ダイナミックプライシング”を活用するためのサポートツールだ。現在はこれをホテルや旅館向けに提供している。

ダイナミックプライシングとは、モノやサービスの価格を需要と供給に応じて変動させる仕組みのこと。需要予測を基に“適正価格”を設定することで、事業者にとっては収益向上にも繋がる。

海外では宿泊施設やエアチケットだけでなく、ライブやスポーツのチケットなど様々な業界でこの仕組みの導入が加速。日本でもヤフーと福岡ソフトバンクホークスが観戦チケットを価格変動で販売した事例などがあり、その注目度が増してきている。

ダイナミックプライシングでポイントとなるのが、いかに適正な価格を毎回算出することができるか。関連するビッグデータをリアルタイムに集め、それらを徹底的に分析した上で需要を予測し価格を導き出すシステムが必要だ。

メトロエンジンの場合は競合宿泊施設の客室単価や在庫数、レビュー数など「宿泊客の予約行動」に関わる様々なビッグデータを収集。それらをAIが分析した上で客室単価を算出する。

従来はこれらの業務をレベニューマネージャーと呼ばれるような担当者が人力で行なっていたわけだけど、複数のツールを使って多様な情報を収集したり、何度も新しい情報を反映させるのには相応の時間とコストがかかっていた。

メトロエンジンの特徴のひとつはそれをテクノロジーによって効率化できること。同社代表取締役CEOの田中良介氏は「適正な価格を出すことで収益の向上に繋がるだけでなく、そこにかかっていた人件費や調査費用、時間といったコストを削減できる」と話す。

現時点で国内を代表とするホテル数十チェーンへの導入が決定済み。調達した資金を活用してエンジニアやデータサイエンティストの人員を100名程度まで拡大し、ダイナミックプライシングの精度向上を始めサービスのさらなる改善、成長を目指していくという。

また今回のラウンドは同社にとって資金面以外でも大きなインパクトがある。このビジネスを拡大していく上では欠かせないのが、宿泊施設の基幹システムであるPMS(Property Management System)との連携だ。調達先であるNECとタップはPMS領域において実績のある2社。両社とタッグを組めたことはメトロエンジンにとって大きいだろう。

同社ではまず宿泊施設における価格の最適化を支援していくが、今後は他の領域においても単価設定や需要予測の仕組みを展開していく方針だ。

「今後あらゆる領域でモノやサービスの価格がダイナミックプライシングかサブスクリプションのどちらかになっていくと考えている。宿泊施設のように供給に上限があるものはダイナミックプライシング、ニュース記事の購読のように供給に上限がないものはサブスクリプションというように、この流れが2〜3年で一気に加速する」(田中氏)

たとえば航空券や高速バス、駐車場などは同社が持つ技術だけでなく、保有している宿泊施設のデータとも関連性がある領域。すでに持っているアセットを組み合わせることで、精度の高い需要予測や単価設定も実現できるという。

メトロエンジン以外でも、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した価格決定に関わる技術をホテル業界以外にも展開しようとしているし、6月には三井物産とヤフーがダイナミックプライシング事業の合弁会社を設立するといった動きもあった。

日本でもこれからいろいろな領域に、ダイナミックプライシングの波が訪れるのかもしれない。

メトロエンジン代表取締役CEOの田中良介氏

インフルエンサーマーケティング基盤のBitStarが13億円を調達、事業会社との戦略的協業を図る

写真右から3人目:BitStar代表取締役 渡邉拓氏

インフルエンサーマーケティングのプラットフォームを運営するBitStarは8月20日、第三者割当増資と銀行からの融資により、総額13億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

第三者割当増資の引受先は、既存株主であるグローバル・ブレインが運営するファンド、ABCドリームベンチャーズが運営するファンドのほか、コロプラネクストが運営するファンド、グリー子会社のWright Flyer Live Entertainment、INTAGE Open Innovation Fund、Makers Fund朝日新聞社名古屋テレビ・ベンチャーズの各社・各ファンドなど。

BitStarは広告・プロダクション・メディア制作の3つの領域で、テクノロジーを活用したインフルエンサーマーケティングのしくみ、インフルエンサーと企業とを結び付けるプラットフォームを提供している。

インフルエンサーマーケティングのプラットフォーム事業では、UUUMVAZ、THECOOが運営する「iCON CAST」、Candeeなど、ほかにもサービスがある。BitStar代表取締役の渡邉拓氏は「UUUMやVAZはプロダクション機能を、Candeeは制作を得意としている。BitStarは元々は広告領域に明るく、一番シェアもあったが、プロダクションや制作領域にも進出して3領域を垂直統合し、一気通貫で対応できる点が強み」と述べる。

同社がインフルエンサーと企業のマッチングプラットフォーム「BitStar」を公開したのは2015年秋のこと。以来、「スマホ時代にインフルエンサーが活躍できるインフラづくり」をビジョンに掲げ、約3年間テクノロジーを強化してきた、と渡邉氏は言う。

「インフルエンサーマーケティングを手がけるところでも、まだまだアナログなところが多い。BitStarはインフルエンサーの創出・発掘から育成、マネタイズまで、テクノロジーの力でデータを使って自動化や最適化を進めてきた」(渡邉氏)

例えば、創出・発掘ではYouTubeやInstagramなどの成長インフルエンサーを自動検知してスカウトできるクローリングシステム、育成支援では、YouTubeチャンネルをデータに基づいて分析し、配信方法を最適化するシステムを、またマネタイズ支援では、大量の企業からのオファーを効率的に実施するマッチングプラットフォームなどを提供している。

こうした施策もあって、キャスティングなども含めた同社の広告取引の累計案件数は約4000件となっているそうだ。

そして同社はBitStarのほかにも、昨年秋以降、プロダクション領域やメディア領域にも事業を展開。インフルエンサープロダクション「E-DGE」やインフルエンサーマーケティングのプランニング・分析ツール「Influencer Power Ranking」、ファンコミュニティサービスの「costar」といった、新サービスを追加した。またバーチャルYouTuber(VTuber)のグループ「アマリリス組」のプロデュースも始めている。

渡邉氏は「広告・プロダクション・メディア制作を垂直統合することで、各領域で重なる部分ができ、ナレッジやテクノロジーの共有が可能になる。この事業間の連携で、各分野が相互成長できる」と話している。

さらに3領域にわたって事業を展開することで「どのプレイヤーとも協業できるのも利点」と渡邉氏は言う。今回の資金調達では、事業会社の出資参加により戦略的協業を図ることも同社の目的のひとつとなっている。

例えばグリー子会社のWright Flyer Live Entertainmentは、先日VTuber専用のライブ配信プラットフォーム「REALITY」をリリースしたばかり。彼らとのタッグでBitStarはVTuber事業の推進を図っていく。

またインテージには、TVだけでは実態が捉えにくくなってきたコンテンツ視聴について、Influencer Power Rankingを通じて、SNS上の情報を提供。共同で商品開発も検討している。

朝日新聞社、名古屋テレビとは、YouTubeチャンネルなどのデジタルメディア制作で協業を図っている。今回追加投資を行ったABCについては、朝日放送グループ傘下のアニメ製作会社と組んでVTuberプロデュースも検討するという。

これらの動きについて渡邉氏は「YouTuberをテレビへ出演させるというデジタルからマスへの流れだけでなく、マスからデジタルへの流れを作っていくことも考えている」と述べている。

ほかにも「資本提携に限らず協業を図っていく」と渡邉氏は言う。8月10日には博報堂との戦略的提携を発表。「調達資金の一部をインフルエンサーマーケティングに関わるスタートアップへの出資や、M&Aに投資することも予定している」と渡邉氏は話している。

資金調達で「インフルエンサーが活躍できるインフラづくり、エコシステムの強化を図りたい」と渡邉氏は語る。

また渡邉氏は、MCN(マルチチャンネルネットワーク:YouTuberと提携してプロモーションや権利管理などをサポートする組織)への出資も行い、海外のインタラクティブエンターテインメント事情に精通するMakers Fundが株主として参加したことについては「海外の先端情報を取り入れ、グローバル展開につなげることも期待している」とも述べている。

BitStarは2014年7月の設立。これまでにシードラウンドでEast Venturesから、2016年8月のシリーズAラウンドでコロプラから、2017年6月のシリーズBラウンドではグローバル・ブレインから資金を調達している。また2017年10月にはTBS、ABC子会社のCVCから資金調達を行っている。今回の資金調達はシリーズCラウンドにあたる。これまでの累計調達額は約18億円に上るとみられる。

キャンセルした宿泊権利を売却できる「Cansell」が2億円調達

ホテル予約の売買サービス「Cansell」を運営するCansellは8月20日、DGインキュベーション、DK Gate、マネックスベンチャーズおよび個人投資家から総額2億円を調達したと発表した。

Cansellは、ホテルの宿泊予約をした人がやむを得ずキャンセルしなければいけないとき、その宿泊権利を他のユーザーに売却できるサービスだ。売却するユーザーは、通常通りホテルに宿泊代金を支払うが、Cansellを使って宿泊権利を売却して代金を受け取ることで、トータルで見た場合の負担額を減らすことができる。また、購入者は通常より安い料金でホテルに泊まれるというメリットがある。

Cansellは2018年3月に宿泊施設向けのパートナープログラムを開始したほか、宿泊代金を他の予約サイトと比較できる機能を追加するなどサービスのリニューアルを続けてきた。今回の資金調達は、そうしたサービス改善によってCansellが新しいフェーズに突入したことを意味する。

代表取締役の山下恭平氏は「今回のリニューアルで、一旦サービスとしての形が整った。これからはマーケティング施策にどんどん投資していくフェーズ」だと語る。広告など通常のマーケティング施策はもちろん、キャンセルを申し込んできた宿泊者に対してホテルから「Cansellというサービスがある」と紹介してもらうなど、ホテル側を巻き込んだ施策も展開していくという。

Cansellは2016年1月の設立で、2017年1月にはシードラウンドにて4000万円を調達している。

AIでアパレル業界に変革を、ファッションポケットが2.6億円を調達

AIを用いたファッションコーデの解析技術を活用し、トレンド予測やアパレル企業向けの商品企画サービスを開発するファッションポケット。同社は8月17日、東京大学エッジキャピタルや千葉功太郎氏らを引受先とする第三者割当増資により約2.6億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドは同社にとってシリーズAにあたるものであり、シードラウンドからの累計調達額は3.5億円になるという。

ファッションポケットは2018年1月の設立。画像・映像解析に関連するAI技術を核に、ファッション領域において複数の事業を開発しているスタートアップだ。

たとえば8月からアパレル企業数社に提供しているAI MD(AIを活用したファッション商品企画)サービスでは、500万枚以上のコーデのデータを解析し、色や着こなしなどのトレンドを予測。その結果を商品企画に活用する。

「大企業と言われる所でも、ごく数名の担当者が何千点何万点もの商品企画を担っていたりする。業界ではヒット的中率が約50%などもとも言われ、仮に100点出せば定価で売れるのは40〜50点ほど。残りは値引きで販売するか廃棄する。大きな課題があるものの、これまでの仕組みでは解決できなかった」(ファッションポケット代表取締役社長の重松路威氏)

重松氏によるとAI MDサービスを活用して作られた洋服が2019年から実際に店頭に並び、販売されるそうだ。

また法人向けには画像・映像解析技術を用いた実店舗の顧客分析サービスも開発中。内装を気にする店舗でも設置しやすいように特別なハードウェア(カメラ)を含めたサービスで、顧客の顔や洋服、店内での行動から「どういうタイプの顧客が、店舗内でどのような行動をしているか」を解析してアパレル企業やデベロッパーに提供する。

そのほか2019年には消費者向けのサービスとして、AIを活用した新たなファッションECモールをリリースする計画もある。

ファッションポケットの代表を務める重松氏は、前職のマッキンゼー時代から様々な産業においてAIやIoTの活用、事業化の支援をしてきた。AIを商用化することで人々のライフスタイルを良くしたいという思いから起業を決断。多くの人にとって影響が大きい分野を探した結果、生活の必需品でもあり楽しさにも直結する“衣服”の分野を選んだのだという。

この半年間はビジネスサイドの体制を整えながら、CTOの佐々木雄一とともに独自で学習データの収集・仕分けを行い、同社の基盤となるアルゴリズムの開発に従事(なお佐々木氏はスイスの研究所でデータ分析を学んだ後、マッキンゼーを経て前職ではディープラーニングを製造業に提供する会社で研究開発センター長を担っていた人物)。アジア諸国を中心にデータ収集のためのネットワークも培ってきた。

ファッションポケットでは今回調達した資金を基に開発人材を中心に組織体制を強化し、学習データの整備を進める。合わせて上述したようなAIサービスの拡販、商用化に向けてプロダクト開発を加速する計画だ。

売れ残り食品の再販マーケットを提供するKarma、1200万ドルを調達

ストックホルムのスタートアップであるKarmaは、地元のレストランや食料品店に対し、売れ残り品を割引販売するためのマーケットプレイスを提供している。そのKarmaが、シリーズAにて1200万ドルの資金を調達した。

出資をリードしたのはスウェーデンの投資ファームであるKinnevikで、アメリカのベンチャーキャピタルであるBessemer Venture Partners、アプライアンス機器メーカーのElectrolux、および以前から出資を行なっていたe.venturesも参加している。今回の調達により、合計調達額は1800万ドルとなった。

Karmaは、Hjalmar Ståhlberg Nordegren、Ludvig Berling、Mattis LarssonおよびElsa Bernadotteらによって2015年末に設立された。そしてその翌年、レストランや小売店で売れ残った食品を、消費者に対して割引販売するためのマーケットプレイスを提供するアプリケーションをリリースした。

消費者として利用するには、iOSないしAndroid版アプリケーションで場所を登録するだけでいい。取り扱い店および取り扱い商品が表示されるようになる。欲しいものをみつけたらKarmaアプリケーションを利用して支払いを行い、閉店までに商品を受け取れば取り引きは完了だ。お気に入りの店舗を登録しておいて、そこで新たな商品が販売開始されると通知を受け取るようにすることもできる。

KarmaのCEOであるStåhlberg Nordegrenによれば、「生産された食品の3分の1は無駄になっています」とのこと。「レストランや小売店での売れ残りを販売できるようになれば、食品の無駄を大いに減らすことができるのです。私たちはアプリケーションを通じて直接に食品を購入して持ち帰ることができるようになるのです。売り手側の立場で考えれば、無駄を減らして売り上げを増やすことができます。また消費者側からすれば、おいしい食品をより安く購入することができるようになるわけです。そしてもちろんゴミを減らすことによって環境への負荷も減らすことができるわけです」。

地元であるスウェーデンでサービスを開始し、これまでに1500件以上のレストラン、小売店、ホテル、ベーカリーなどがKarmaを利用するようになっている。従来は廃棄されていた食品が販売されるようになり、これまでに35万人の利用者がKarma経由で商品を購入しているとのこと。Ruta Baga、Marcus Samuelsson’s Kitchen、およびTableなどの有名レストランや、Sodexo、Radisson、Scandic Hotelsなどの有名企業、および大手スーパー3社も、パートナーとしてKarmaを利用している。

2月からはイギリスでもサービスの提供を開始しており、すでにロンドンの400件以上のレストランがKarmaを利用しているとのこと。地元でよく知られるAubaine、Polpo、Caravan、K10、Taylor St Barista’s、Ned’s Noodle Bar、およびDetox Kitchenなどが名を連ねている。

Ståhlberg Nordegrenによれば、Karmaをよく利用するのは25歳から40歳までの、若いホワイトカラー層なのだとのこと。オフィス街で働き、帰りに夕食をピックアップして帰るというスタイルが目立つのだそうだ。もちろん学生や高齢者層の間でも、おいしい食品を割安で入手できるということで話題になっているようだ。

調達した資金は、スーパーマーケット向けのプロダクト開発およびヨーロッパを皮切りとする新市場の開拓のために利用する予定であるそうだ。従業員は、ストックホルムに35名の従業員を抱えているが、2020年中頃までには5ヵ国150名程度にまで拡大していくプランを持っているとのことだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

シェフと企業をマッチング、Green Dining運営がシードラウンドで2000万円を調達

企業向けに、会議やちょっとしたパーティーのためのお弁当やオードブルを届けてくれるケータリングサービス。古くは仕出し弁当として提供されてきたサービスだし、今では「ごちクル」のようにウェブでサービス展開するものもたくさんある。

そんな中で今日紹介する「Green Dining」は、料理を発注するというのではなく、料理人と企業やイベントをマッチングする、というプラットフォーム事業だ。

Green Diningを提供するグラアティアは8月13日、ゼロワンブースターSGcapitalほか複数の個人投資家を引受先とした約2000万円の資金調達を発表した。同社は2017年8月、ゼロワンブースターがキリンとともに運営する「KIRINアクセラレター2017」で優秀賞を受賞している。

グラアティアは2016年11月の設立と同時にGreen Diningの運用をスタートした。グラアティア代表取締役の竹内恵子氏はIBM、Microsoft、Amazonと外資系IT企業に所属してきた人物。同じく外資系IT企業を経験してきた共同代表取締役の新垣道子氏とAmazonで知り合い、「食」と「場」を提供するサービスを提供したい、とこの事業を立ち上げた。

竹内氏はGreen Diningのサービスについて「はじめから企業向けとして設定した」と話す。「家庭へシェフを呼ぶ、というサービスもあるが、家庭にはキッチンもあるし、サービスとして企業が間に入るメリットはあまりない。BtoBで大きな会をターゲットにすると、運営も難しいので需要があるし、(間に入ることで)特別感のある料理やイベントを提供することができる」(竹内氏)

大手企業で法人の顧客に相対してきた経験もあり、企業のニーズを捉えることにも長けていた、という竹内氏。「サービスを提供していく中で、企業がどうすればより使いやすくなるかもわかってきた」と話している。

また、マッチングする一方の先となるシェフのニーズも見えてきた、と竹内氏はいう。「フリーのシェフとして働いている人も多いが、中にはレストランをやっている人も。いずれも“店舗”にこだわらずに腕を振るいたい、プロの料理人だ。そうした人たちがビジネスをやりやすくするためのプラットフォームとしてサービスを提供していきたい」(竹内氏)

Green Diningが目指すのは、従来型の「ザ・ケータリング」ではない、と竹内氏。「企業にとって、社員のコミュニケーションやオープンイノベーションを生み出すような、料理と場を提供するのが我々のサービス。商談に使いたい、という企業や、食を使ったビジネス創出についても相談を受けるようになった」と話す。

これまでに累計約1万5000人が、企業のネットワーキングイベントや祝賀パーティー、社内イベントなどで、その料理を楽しんできているというGreen Dining。1回あたりの参加者数は30人から1700人と幅広い。「1000人を超すような会では、シェフ1人では回らないので、数名のチームを用意するなど、Green Diningでプロジェクトマネージメントも行っている」そうだ。

これまでの約1年半は、市場の需要を見ながらマニュアルで運営されてきたというGreen Dining。竹内氏は「今までは事業のベースづくりのため、いろいろと試しながらやってきた。資金調達を機に、エンジニア増強、プラットフォームシステムの構築を行っていく」と述べている。

トークンエコノミー×グルメSNS「シンクロライフ」、トークンへの転換権を付与したスキームで資金調達

つい先日、グルメSNS「シンクロライフ」がトークンエコノミーの仕組みを導入することで、同サービスをさらにユニークなものにしようとしていることをお伝えした。

具体的には良質なレビュアーなど、プラットフォームに貢献しているユーザーが報酬として独自トークン(SynchroCoin)を受け取れる仕組みを設計。将来的に保有するトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の支払いに使えるようにしたりすることで、独自の経済圏を作ろうという取り組みだ。

この構想の実現に向けて、シンクロライフを運営するGINKANは8月10日、セレスと元サイバードホールディングス代表取締役会長の小村富士夫氏を引受先とする第三者割当増資により、総額8000万円を調達したことを明らかにした。

セレスとは業務提携も締結。モッピーなどアクティブ会員が350万人を超えるスマホ向けポイントメディアの基盤を持つセレスとタッグを組み、メディア間のシナジーやブロックチェーン技術の実サービスへの活用に向けた研究開発を進める方針だ。

なお今回の資金調達はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するトークンへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資というスキームを採用。詳細については後述するが、これによって株式市場への上場や事業売却以外のエグジットも可能になるという。

AI活用で好みにあった飲食店をレコメンド

シンクロライフは、ユーザーがレストランでの食体験を投稿できるグルメSNSだ。

特徴のひとつがAIを活用したレコメンドシステムによる、パーソナルキュレーションの仕組み。ユーザーの投稿や観覧履歴を始めとしたアプリ内でのアクションを独自のアルゴリズムで学習・分析することで、使い続けるほど自分の好みに合った飲食店が見つかりやすい仕様になっている。

同アプリにはすでに17万件以上のレビュー、42万枚の写真が掲載。現在は日本語のほか英語や韓国語、中国語にも対応し、82ヶ国でユーザー登録、48ヶ国でレビュー投稿がされているという。

そして8月2日にβ版をリリースした新バージョンでは、ここにSynchroCoinというトークンの概念が加わった。冒頭でも触れた通り、良質なレビューや飲食店情報の登録、編集、翻訳といったプラットフォームに貢献したアクションに対して報酬が付与されるようになる。

コミュニティを加速する手段としてのトークン

ここでおそらく多くの人が気になるのが「良質なレビューとはどんなものか」「トークンを付与したところでどれほどの効果があるのか」といった点ではないだろうか。

この点についてGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏に聞いてみたところ、各ユーザーが持つスコアや各レビューの性質、そしてそこに対する「行きたい」などの反応をスコアリングする仕組みのようだ。シンプルに言えば「そのレビューは誰が投稿したものか、そしてそれに対してどんな反応があったか」が基準になる。

もう少し補足をすると、そもそもシンクロライフには以前から「経験値」というゲーム要素が導入されていて、トークンのようなインセンティブはないものの同じようなシステムが回っていた。

ユーザーは投稿した口コミのサービス貢献度に応じて経験値を獲得でき、経験値がたまるごとに称号(初段〜神)がランクアップする仕組みを導入。例えばまだ誰も投稿していない店舗や投稿が少ない店舗のレビューを書いたり、他のユーザーの参考になる(「行きたい」が多くつくなど)レビューを書いたりすると経験値が貯まるようになっている。

ここですでにレビューをスコアリングする機能は実装されていて、しかもこのシステムがシンクロライフのコミュニティを拡大するのに大きな影響を与えてきたのだという。それは投稿数や写真枚数の増加はもちろん、店舗情報の追加や修正、閉店依頼といったアクションにも繋がったそうだ。

「実は以前からアプリ内通貨のような仕組みをやりたいという思いはあった。今まではレビューや情報提供を通じて飲食店やプラットフォームに貢献しても、それはボランティア的な位置付け。そこにトークンという経済的な要素を入れることで、ユーザーのモチベーションや継続率も上がるのではと考えた。トークンはもともと動いているコミュニティを、さらに大きく強固にするためのものだ」(神谷氏)

今までにないグルメコミュニティの可能性

シンクロライフでは報酬用として全体の20%となる2000万トークンをプールしていて、そこから1週間ごとに一定量を分配するように設計されている。つまり毎週スコアの集計が行われ、その値に応じたトークンがもらえるというわけだ。

現時点でトークン付与の対象になるのは飲食店のレビューと店舗情報の作成。今後は情報の翻訳や加盟店舗の紹介などに対してもトークンを提供したいということだった。

神谷氏いわく「レビューではなく、良質なレビューであることが重要」というように、とにかくレビューを書けばトークンがもらえるという仕様ではなく、トークンの付与はあくまでサービスへの貢献度が高いアクションに限定する。

その一方で「消費者が気軽に楽しめる環境を作ることがキャズムを超える鍵」とも話していて、加盟店舗で食事をした際に還元リワードとして一定割合のトークンが付与される仕組みを作る計画。この還元率を店舗が設定できるようにすることで、顧客を呼び込む集客ツールとしても機能するようにしたいという。

その先にはトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の決済で利用したりできるようにする予定。もしこのサイクルが上手く回れば、今までとは違ったグルメコミュニティができる可能性もあるだろう(もちろん加盟店をどれだけ開拓できるかなど、超えなければならない壁はある)。

トークンへの転換権を付与したスキームによる調達

最後に今回の資金調達のスキームについても少し触れておきたい。冒頭でも紹介したように、今回はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するSynchroCoinへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資という形を取っている。

GINKANではこれまでエンジェルラウンドで小村氏らから3000万円を調達しているほか、昨年香港法人のSynchroLife, LimitedにてICOを実施。755イーサ(日本円で約5000万ほど)を集めた。

ただこのICOを取り巻く環境はまだまだ不透明な状況にある。今回は神谷氏に加えセレスの担当者にも話を聞くことができたのだけど「一部ではICOをしていると監査法人が監査契約を結んでくれないとか、投資家から出資を受けづらいといった話も聞く」のだという。

GINKANとセレスのメンバー。前列の左から2番目がGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏

セレスではこれまで仮想通貨・ブロックチェーン領域の事業展開や、関連するスタートアップへの出資を推進してきたが、アプリケーションレイヤーへの投資はまだ多くないそう。シンクロライフについてはトークンエコノミーとの相性なども鑑みて出資をしたいと考えた一方で、ICOをしていることがひとつのネックになった。

「(セレスは)事業会社なのでそこまでエグジット、エグジットと言う訳ではないが、取締役会などで話をする際にはそのストーリーを話す必要はある。もし仮に監査法人がつかなかった場合にどうするかを相談した上で『だったらトークンへの転換権をつければいいのでは』という話が出てきた。ビジネスとしてきちんと成功すれば、その裏側にあるトークンは値上がりしていると考えられるためだ」(セレス担当者)

トークンへの転換権を行使することで、IPOやM&A以外でのイグジットも仕組み上は可能になり、これがスタートアップの新たなオプションにもなりうるというのが双方の見解。フレキシブルな資金調達の手段を作ることで、スタートアップ界隈へはもちろん「トークンエコノミーの発展にも寄与できれば」という。

“今ヒマな時間”ですぐ働けるワークシェアアプリ「タイミー」が5600万円調達

ワークシェアサービス「タイミー」を提供するタイミーは8月10日、ジェネシア・ベンチャーズ、サイバーエージェント・ベンチャーズ、コロプラネクスト3号ファンド、F Ventures、複数の個人投資家らから総額5600万円を調達したと発表した。

8月2日にリリースしたばかりのタイミーは、人手が足りない飲食店などのお店と、暇な時間を有効活用したい人たちをマッチングするサービスだ。個別のお店ごとの応募や採用面接は不要。アプリに空いた時間を入力するだけで、数多くの候補から「今ヒマな時間」に働けるお店を探すことができる。詳しい機能やUIについては、リリース時に掲載したこちらの記事も参考にしてほしい。

2017年8月に設立したタイミーにとって、今回が初の外部調達となる。同社は今回調達した資金を利用して、「開発体制のさらなる強化、マーケティング施策の充実により、新規クライアントの獲得と対応エリアの拡大を目指す」としている。

気になる英語ニュースを使って英語力強化、「ポリグロッツ」が6500万円を調達

英語学習アプリ「POLYGLOTS(ポリグロッツ)」などを運営するポリグロッツは8月9日、QBキャピタル、PE&HR、パイプドHD、米国の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により総額6500万円を調達したことを明らかにした。

ポリグロッツについてはこれまでも何度か紹介しているけれど、自分の興味があるジャンルの英文ニュースを軸に英語力を強化できるのが特徴。ビジネスやテクノロジー、ファッションなど各分野のニュースが配信されていて、情報収集をしつつ英語の勉強もできるというわけだ。テクノジーカテゴリではTechCrunchの記事も読むことができる。

わからない単語をタップすることで辞書を引けるほか、日本語訳がある記事で訳文を見ながら学習したり、音声が付いている記事でリスニング力を鍛えたりすることも可能。自習だけではなく、先生のオンラインレッスンを受けられる機能も搭載された。

2014年末のリリースから4年近くが経ち、現在のユーザー数は約100万人。今後は調達した資金も活用し、蓄積した学習者の学習履歴データ、学習コンテンツ、先生とのレッスンを融合することで「学習者一人一人に最適化されたカリキュラムを、AIで自動生成し、これまでにない学習効率と効果を実現する語学サービス」を目指すという。

なおポリグロッツは2014年5月の創業。これまで2015年にEast Venturesやエンジェル投資家らから資金調達を実施しているほか、2017年12月にも事業会社と個人投資家より600万円を調達している。

プロサッカー選手の本田圭佑氏が荷物預かりサービス「ecbo cloak」に出資

ecbo代表取締役社長 工藤慎一氏と本田圭佑氏

店舗の空きスペースを活用した荷物一時預かりサービス「ecbo cloak(エクボ クローク)」を運営するecboは8月8日、プロサッカー選手・本田圭佑氏の個人ファンドKSK Angel Fundから第三者割当増資による資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は非公開だが、関係者の話から千万円単位の規模のエンジェル投資とみられる。

ecbo cloakは荷物を預けたい人と遊休スペースを持つ店舗とをつなぐ、シェアリングサービス。2017年1月に東京都内でスタートした同サービスでは、コインロッカーの代わりに、カフェやレンタサイクル、着物レンタル店、郵便局、提携鉄道会社の駅構内など、さまざまなスペースをサイトから事前予約し、荷物を預けることができる。

現在、東京・京都・大阪・福岡・沖縄・北海道・愛媛などの都市でサービスを提供。旅行者による利用のほか、お祭りやイベント、日常の買い物などでも利用されているという。

ecboは2015年の創業。2017年3月にはANRIや個人投資家の渡瀬ひろみ氏、千葉功太郎氏から数千万円の調達、2018年2月にはJR東日本、JR西日本、メルカリなどから数億円規模の調達を行っている。

今回の資金調達について、ecbo代表取締役社長の工藤慎一氏は、JR東日本、JR西日本との連携などで国内市場への展開の道筋が見えてきたことから「今後、海外展開するにあたり、プロサッカー選手としてグローバルに活躍する本田氏の人脈を通じて、世界各地での連携に期待している」と述べている。

本田氏はKSK Angel Fundから、中高生向けプログラミング教育のライフイズテックに投資したのを皮切りに、クラウドファンディングのMakuakeや、人事評価管理クラウドのHRBrain、千葉功太郎氏が設立したドローンファンド2号など、国内外のスタートアップやファンドに投資を行っている。

工藤氏は「(先月本田氏が俳優のWill Smith氏と設立を発表した)Dreamers Fundもそうだが、本田氏はアメリカをはじめ海外のスタートアップとの接触も多く、提携先のグローバルな開拓でも連携していきたい」と話す。またパブリシティの面でも本田氏との連携を図っていく。

ecboでは「2025年までに世界500都市にecbo cloakのサービスを広げる」との目標を掲げて、海外展開を今後具体化していくという。

またecbo cloakの利用シーンの中には、スポーツ観戦中やプレー後の利用なども含まれる。ecboではサッカーをはじめとするスポーツのサポートも行っていくとしている。

定型的なPC作業はロボットにお任せ、クラウドRPAのBizteXが4億円を調達

定型的・反復的な事務作業をロボットが代行するクラウドRPAサービス「BizteX cobit」。同プロダクトを運営するBizteXは8月7日、WiLとジェネシア・ベンチャーズを引受先とした第三者割当増資により総額約4億円を調達したことを明らかにした。

今回のラウンドは2017年7月にジェネシア・ベンチャーズから総額4000万円を調達したシードラウンドに続く、シリーズAという位置付け。BizteXでは近日中の公開を予定しているBizteX cobit APIにともなうシステム連携や企業間アライアンスの強化、開発体制・マーケティング体制の強化に調達した資金を用いるという。

近年RPA(Robotic Process Automation)というワードをTech系以外のメディアでも目にする機会が増えてきたように感じる。RPAはソフトウェアロボットを活用して定型的な作業を自動化する仕組みのこと。生産性向上や働き方改革を推進する手段のひとつとしても注目を集めている。

BizteXが展開するBizteX cobitは、この仕組みをクラウド上で提供するクラウド型のRPAサービスだ。プログラミングが不要で、Webブラウザからシンプルな操作でロボットを作成できることが特徴。インストールの必要がなく即日利用も可能なため、これまで一般的だったオンプレミス型と比べて導入のハードルが低い。

利用料金は初期費用にロボットの稼働ステップ数に応じた固定の月額費用が加わる(ステップとはロボットに覚えさせる動作ひとつひとつの単位のこと)。

2017年11月の正式版リリース以降、幅広い業種や規模の企業が導入。企業数は非公開であるもののアカウント数は1150、作成されたロボット数は4200、総実行ステップ数は1411万ステップを超えているという。

BizteX代表取締役の嶋田光敏氏によると、特に多いのがウェブ系の広告代理店、IT系の事業会社、人材系企業の3業種なのだそう。たとえばSEO業務で各キーワードの検索順位を調べてシートにまとめる作業をはじめ、与信審査や反社チェック時の反復作業、オファーメールの送信作業(タイマー予約)などが自動化される業務の典型例だ。

導入企業の規模も少人数の会社から、ソフトバンクグループの子会社やディップのような上場企業までさまざま。クラウド型の場合はセキュリティ面がひとつのネックとなりそうだが、嶋田氏の話では「金融系企業の子会社がグループ内で申請をしてまで使ってくれる事例も出てきている」とのこと。

BizteX cobitでは誰がいつ、どんなロボットを作ったかは全てログが残るような仕様で、“営業部”“マーケティング部”など組織ごとに分割して管理することが可能。管理者と一般ユーザーのような権限設定機能も備える。現在はセキュリティの要件レベルが高い企業にも徐々に採用してもらえはじめているという。

今回の資金調達も踏まえ、直近では近日公開予定のBizteX cobit APIにともなうシステム連携、コンサルティングパートナーなど企業間アライアンスの強化に取り組む方針。各種機能の拡張や使い勝手の改善にも引き続き力を入れる。

また将来的にはサービス上に蓄積された代行業務のデータを用いることで、ロボットの作成をさらに簡単にする仕組みも考えているようだ。

「たとえば過去のデータから顧客に向いていそうなロボットを提案したり、サイトのURLを入れたら類似する企業で活用されているようなロボットを提案したり。ロボットの代行業務データを活用しAIと連携することによって、ルールベースによるRPAから機械学習により進化するRPAを作っていきたい」(嶋田氏)

BizteXの経営陣および投資家陣。写真左から3人目が代表取締役の嶋田光敏氏

freeeが65億円の追加増資、LINE・三菱UFJ銀行と連携強化

右からfreee代表取締役CEOの佐々木大輔氏、取締役CFOの東後澄人氏

クラウド会計ソフト freee」などを提供するfreeeは8月7日、合計で約65億円の追加増資を発表した。第三者割当による資金調達で、引受先はLINE、三菱UFJ銀行、ライフカード、海外ファンドなど、合計で6社。今回の増資で累計資金調達額は約161億円となる。

freeeといえば7月2日に五反田にある同社オフィスで初となる戦略発表を開催し「スモールビジネスを世界の主役に」という新たなミッションを披露したばかりだ。今後はそのミッションを達成するため、LINEならびに三菱UFJ銀行とは連携も強化し、新サービスならびにプロダクト開発への投資を進める

創業者で代表取締役CEOの佐々木大輔氏ならびに取締役CFOの東後澄人氏はTechCrunch Japanの取材に対し、同社は今後も「開発を加速させていく」と語った。

「これまでは(バックオフィス業務などの)効率化を加速させるのがミッションだった。これはfreeeに期待されていることなのでやり続ける。それに加えて、これからはビジネスを伸ばす支援をしていく。その会社が本業で動いている部分においても価値が提供できるサービスをやっていきたい」(佐々木氏)

東後氏は「サービスとしてできることを拡充していくためには中長期的な開発への投資が必要だ」と説明。今回調達した資金は今まで過去7回行なった調達以上に開発に充てられるのだという。

大きく投資する開発対象は3つあり、その1つがこれまでやってきたバックオフィス業務の自動化ならびに経営の見える化を加速させること。最近だとfreeeは7月2日に財務データを活用する「予算・実績管理機能」を新たにリリースし、財務・経営データを自動分析・集約した上での可視化を実現しているが、更なる領域での自動化が期待できそうだ。

2つ目はスモールビジネスに対する資金調達の支援。freeeに蓄積されたデータをうまく活用することによって、最適なパートナーから最適な手段で最適な条件で資金を調達することが可能となるシステムの構築を目指している。

3つ目はフロント業務に近い部分の業務の効率化。freeeといえば会計・給与計算などバックオフィス業務の効率化のためのツールというイメージが強いが、今後は在庫管理やプロジェクト管理などといった、よりフロント業務に近い領域のオートパイロット化を目指していくという。

LINEとの業務提携に関して、「今後は共同でサービスを開発したり、共同のサービスを展開するなども考えていければと思っている」と東後氏は話した。freee は2018年5月、「freee 開業応援パック」に、LINEが提供する店舗・企業向けのLINEアカウント「LINE@」を新規特典として追加したと発表している。今後の業務提携に関して、「LINE@のユーザーに対しfreeeを提供、freeeユーザーに対しLINEのサービスを提供することが直近まずやれること」だと東後氏は語った。

また、freeeは2017年5月に三菱UFJ銀行とのAPI連携を発表したりこれまでも業務提携を行なってきたが、連携をさらに強化していく。詳しいサービス内容は不明だが、「決済面でよりオンラインで完結するようなスペースをお客様に提供していくことは双方にとって大きなメリットとなる」と東後氏は話した。

freeeはサービス提供開始から約5年で利用事業所数が100万を突破、「BCN RETAIL- 3強が戦うクラウド会計ソフト」によるとクラウド型会計ソフトおよび給与計算ソフトのシェアでNo.1。佐々木氏は「今回調達した額は日本の中ではかなり大きく、時価総額も結構な額になっている。上場をちゃんと選択肢としてとれるように、準備を進めている」と述べた。

オンライン商談ツールのベルフェイスが5億円調達、セールスビッグデータの活用目指す

ブラウザだけでオンライン商談ができるウェブ会議システム「bellFace」を提供するベルフェイスは8月7日、総額5億円の資金調達実施を発表した。引受先は、グロービス・キャピタル・パートナーズSMBCベンチャーキャピタルYJキャピタルキャナルベンチャーズが運用する各ファンド。

増資に伴い、既存株主のインキュベイトファンド代表パートナーの赤浦徹氏とグロービス・キャピタル・パートナーズ マネージング・パートナーの仮屋薗聡一氏が社外取締役に就任する。

セールスに役立つ機能をさらに強化したbellFace

2016年9月の記事でも紹介したが、bellFaceはブラウザさえあれば使えるウェブ会議システムだ。SkypeやGoogleハングアウトと異なり、相手にソフトウェアのインストールやアカウント登録を強いる必要がなく、離れたところにいる社外の顧客と商談するインサイドセールス用途に使いやすくできている。

ユーザーはベルフェイスのページで発行される“接続ナンバー”を顧客と電話でやり取りするだけで、ブラウザの種類やバージョンは問わず、プラグインも不要で使える。クラウド上に保存された資料を表示して、相手と確認しながら話をすることもできる。

2015年のリリース以降、プロダクトのアップデートも進んでいる。PCだけでなく、iPadやiPhoneのブラウザにも対応したほか、画面共有機能、セールスパーソンを美肌と細見え効果できれいに見せるビューティーモード、動画プレゼン機能や50MB以下のファイル共有機能、名刺プロフィールの表示など、さまざまな機能を搭載してきた。

ベルフェイス代表取締役の中島一明氏は「画面共有機能はSaaS系企業のデモにも最適で、利用が伸びている。相手側がPCであれば、双方で画面共有ができるため、テクニカルサポートでも活用してもらっている」と話す。

中島氏によれば「これらの機能強化が導入企業増につながった」とのこと。「2018年7月現在で有料での導入企業が700社、13000ユーザーを超えた。特にマーケティングをしていないが、月に350〜360件ほどの問い合わせがある」という。

「メールアドレスやFacebookのアカウントなどが分からなくても、やり取りができて、資料も共有できる。接続の簡単さが導入企業には喜ばれている。特に営業では身内よりも顧客との間のほうが、コミュニケーションする機会が多い。BtoB営業のためのツールとして機能を追求し、そこに2年間注力してきた成果が現れたと考えている」(中島氏)

同じような機能を持つブラウザベースのウェブ会議システムには、URLを発行するだけでビデオチャットが可能なAppear.inZOOMなどもある。これらと比較したときに、bellFaceが「オンライン商談、インサイドセールスに特化したツール」たるゆえんは、その「商談データの扱い方」にある。

bellFaceでは、どの資料をどのような順番で、どれくらいの時間見せたかを秒単位で取得して営業ログを記録する。また、共有メモに双方で書き込みを行うことができ、議事録を作りながら話せるので認識の齟齬も生じにくい。さらに双方のビデオ画像を録画し、変換したファイルがクラウド上に残る。商談の最後には、顧客へのアンケートも実施できる。

これらの情報をSalesforceなどのCRMツールに紐付けて保存することで、営業内容を成果と結び付けて確認することが可能。社員へのフィードバックに生かすことができるという。

日本でのインサイドセールス普及を目指す

ベルフェイスは2015年4月の創業。2016年8月にはインキュベイトファンドほか数社から1.6億円の資金調達を実施している。

中島氏は現在の状況について「既存ユーザーの継続率も高く、導入も増えている」と説明する。マーケターや広報の専任者はいないそうだが、問い合わせを月300件以上受けるまでに至ったのは、「カスタマーサクセスに力を入れたから」という。

bellFaceではユーザーが顧客に接続ナンバーを発行してもらうことから商談が始まるが、その時に顧客に必ず「ベルフェイス」と検索してもらうことになる。また、そのほとんどがBtoBの商談で利用されている。

「“お客さまのお客さま”が商談でbellFaceを利用し、『うちでも使えるのではないか?』と思ってもらうことができた。導入企業の顧客がユーザーになるケースが多く、サービスの利用頻度が高くなればなるほど、ユーザーが増えた。つまり、ユーザーを成功させればユーザーが増えるという状況。カスタマーサクセスに投資してよかった」(中島氏)

前回の資金調達から約2年。「大手から小規模までさまざまな企業に使ってもらって、今は実績・プロダクトともに充実したところ。土台ができたと考え、2度目の資金調達を行うことにした」と中島氏は述べる。

今回の調達資金について中島氏は「カスタマーサクセスに引き続き投資する」と話している。「きれいごとでなく、それが一番効率がよいから」だという。解約したくないと思われるようなプロダクト強化と実績づくり、Salesforceなどの外部CRMツールとの連携機能強化や、ユーザーコミュニティ醸成にも力を入れるそうだ。

「ユーザーコミュニティについては、現在月1度、ユーザー会を実施しているが、貸し会議室を利用している状態。スタートアップによくある『おしゃれなオフィスに引っ越して……』というよりは、ユーザーイベントを安定して開催するために、オフィスの移転を計画している」と中島氏は説明する。

米InsideSales.comの調査によれば、米国において2017年に営業利益ベースでフィールドセールスが占める割合は71.2%で、リモートまたはインサイドセールスの28.8%に比べれば依然として高い。だが2018年にはリモートおよびインサイドセールスの比率は30.2%に伸びると予測されている。

また米国の小売業を除いたセールスパーソン570万人のうち、43.5%はインサイドセールス専任、56.5%がフィールドセールス担当で、その差は縮まってきている。しかもフィールドセールスの担当者もいまや約半分の時間をリモートセールスに充てているという。その割合は2013年時点に比べて89.2%増加している。

日本でも働き方改革が進む中、効率のよい時間の使い方、生産性向上が求められることもあって、訪問営業で費やされる移動時間やコストに目が向けられ、インサイドセールスへの注目が集まっている。

「日本ではまだ普及しきっていないインサイドセールスという新しい営業スタイルを、マーケットに浸透させるため、広告などのマーケティングにも投資していく」と中島氏は話している。

さらにベルフェイスでは、蓄積される商談データを「セールスビッグデータ」として活用することも検討している。中島氏は「大量のセールスログとアンケートの分析を人が行い続けるのは非効率。人工知能を活用することで、例えば画像解析による“笑顔率”とCRMで見える成約率との関連性を分析するなど、非言語コミュニケーションの解析を行い、数字で分析可能にしたい」と述べる。

「今までは企業と顧客の間で、マーケティングやCRM、MAなど企業に近い部分にはデータがあってツールがあり、デジタル化が進んでいたが、顧客との接点であるセールスの効果については、ブラックボックスで分析が進んでいなかった。既存のツールに加えて、セールスもデジタル化し、蓄積されたデータをマネジャーが使えるようにすることで、営業に必要なサジェストを出せるようにしていきたい」(中島氏)

笑顔率の分析やセールスパーソンへのフィードバックについては、社内で実際にbellFaceを使って実施してみているそうだ。「営業担当によっては『笑っていないほうが数字が取れる』ということもあるはず。それぞれの適性に合わせた提案ができるようになれば。また自部署では不要と顧みられなかった営業情報が、実は隣の部署では必要だった、というケースも企業ではよくあること。そうしたデータを拾い上げて、適切な部門にサジェストするような機能も用意したい」(中島氏)

月定額カーレンタル事業など展開するSmartDriveが17億円調達、高齢者の運転見守りサービスも開始へ

自動車の走行データ解析サービスを提供するスマートドライブは8月6日、産業革新機構、ゴールドマン・サックス、モノフル、2020(鴻海グループのファンド)を引受先とする第三者割当増資により総額17億円を調達した。

スマートドライブは、自動車に取り付ける専用デバイスから50〜60項目にわたるデータを取得・解析し、それをもとに自動車保険の開発や走行データ可視化サービスなどを展開するスタートアップ。その解析技術を軸に、法人向け車両管理サービスの「SmartDrive Fleet(旧DriveOps)」や、運転の安全度によって掛け金が変動するテレマティクス保険をアクサ損害保険と共同で提供するなどしている。

走行データの解析技術をもとにさまざまな事業を展開するスマートドライブだが、なかでも特に注目を集めたのが、運転の安全度によってポイントを付与する機能などが特徴の月定額カーレンタルサービス「SmartDrive Cars(以下、Cars)」だ。スマートドライブ代表取締役の北川烈氏は、2018年2月よりスタートしたCarsについて具体的な数字を明かさなかったものの、初動は順調で「年内には全国展開をはじめる」とした。

また、このサービスは本来、スマートドライブのパートナー企業が保有する車両を貸し出すというモデルだが、中古車や新車を販売するディーラー各社からの引き合いも多くなっているという。Carsが提供するデータ解析機能(安全運転によりポイントがもらえるなど)を切り出し、自動車を販売する際にセットサービスして提供できないかというものだ。そのため、スマートドライブは今後、プラットフォーマーとしてこれらの機能をディーラーに提供する役割を担うことも検討しているという。

スマートドライブは今回の資金調達を期に、Carsなど自社のC向け事業の拡大を目指す。調達した17億円はCarsのさらなる開発費用とプロモーションに使用するほか、2018年10月に正式リリース予定の新サービス「SmartDrive Families(以下、Families)」の開発費にも充てる。Familiesは、自動車の走行データを利用して離れて住む高齢の家族を見守ることができるサービスだ。

高齢化が進む日本では、高齢ドライバーによる運転事故は社会課題の1つ。そういった事故が増えるにつれ、「〇〇歳以上のドライバーからは免許を取り上げる」などの議論も出てきた。しかし、そもそも安全運転の度合いは個人によって異なるし、クルマが日々の生活に欠かせないものとなる僻地に住む人は、できるだけ長く免許を保持したいというのが正直なところだ。

Familiesでは、専用デバイスを家族のクルマに取り付けるだけで運転の安全度を計測することができ、より実態に即した形で、彼らが保有する免許を返上させるべきかどうか判断できるようになる。同様のサービスを提供する競合他社は存在するものの、Familiesの強みとしては、シガーソケットに取り付けるだけという導入の容易さ、費用の安さなどがあると北川氏は話す。

走行データの解析という技術を軸に、さまざまな領域へのビジネス展開を模索するスマートドライブ。今回の資金調達では、今述べたC向け事業の強化のほか、物流のモノフルとの連携によりロジスティクス領域でのビジネスを強化するほか、研究開発部門の「SmartDrive Lab」を中国・深センに設立するなどしている。