屋内外問わずGPSで子どもの見守り ー Jiobitが300万ドルを調達

2_170119_jiobit_pocket

シカゴに拠点を置くJiobitは、ワイヤレステクノロジーを使って、子どもがいつどこにいようが親が安心できるような環境を築こうとしている。同社のフラッグシップ機は、バッテリー寿命が長く、ドタバタと動き回る幼児や児童がどこにいるか確実に把握することができ、子どもが想定範囲外に出てしまったときはモバイルアプリ経由で親に通知を送ることもできる。

以前Motorola Mobilityでヴァイスプレジデントを務めていた、JiobitのCEO兼ファウンダーのJohn Renaldiは、GPSを使って子どもがいる場所を確認するプロダクトはこれまでにもあったと話す。しかし、彼自身の子どもがシカゴのミレニアムパークで迷子になり、20分間も必死に子どもを探し続けた経験から、これまでの製品のほとんどは位置情報の詰めが甘く、屋内外どちらでもうまく機能するものがないということにRenaldiは気付いた。親が子どもを連れて行くことの多い美術館やスーパー、ホテル、病院など、街中に溢れる屋内施設を考えると、これは深刻な問題だ。

小さな白い直方体のような見た目のプロダクトは、角が丸められており、子どものベルトループやジャケット、バックパックなどに簡単に取り付けられるようになっている。また柔らかいシリコン素材からできているため、敏感な子どもの肌にも優しく、重さは単三電池一本分ほどだ。使用頻度にもよるが、バッテリーは平均で2、3週間に1回充電するだけで良い。

Jiobitのモバイルアプリを使えば、子どもが予期せぬ場所へ向かったときに、親もしくは親公認の保護者に通知が送られるようになっている。さらに機械学習の技術によって、Jiobitは自動的に子どもの活動範囲を特定できるため、親は事前に「ルール」や子どもの行動範囲を指定しなくてもいい(マニュアルで設定することも可能)。そして毎日の子どもの動きがレポートとして親のもとに届くようになっている。子どもの情報が第三者に漏れてしまわないように、アプリやデバイスが送受信するデータは全て暗号化されている(JiobitによればどちらもCOPPAに準拠している)。

Jiobitはこの度、位置情報サービスに明るい投資家からシードラウンドで300万ドルを調達した。具体的には自動運転トラックを開発しているOtto(現在はUber子会社)の共同ファウンダーのLior Ronや、シカゴを拠点とするMATH Venture Partners、Inflection Equityなどがラウンドに参加していた。

Lior RonはJiobitへの投資を決めた理由のひとつとして、Renaldiの才能を挙げた。ふたりはMotorola時代の同僚で、RonはMoto 360やその他のウェアラブル・モバイルデバイスの開発を率いていた。さらに彼は、上手く設計され、じょうぶで正確なJiobitのプロダクトは、子どもを守り、親を安心させることで世界を変える力を持っていると考えている。

「みんながより良い生活を送れるように日常に溢れるものをスマート化したり、人がもっとスマートになるようにAIをつくったりするチャンスはどこにでも転がっています。次のイノベーションの波は、交通の分野であれ、医療や住宅であれ、このふたつを組合せた素晴らしいチームによって生み出されることになるでしょう。ここ最近はそんなチームに投資しています。そもそもOttoとUberの自動運転技術の開発に忙しいので、投資先は選り好みしています」と彼は話す。

Renaldiによれば、Jiobitは今回調達した資金を、人員の強化やデバイスとアプリの市場デビューへの準備にあてる予定だ。同社は今年中に事前販売をスタートさせる計画だが、具体的な日にちは明かされなかった。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

大学生活支援アプリのOohlalaが400万ドルを調達

oohlala_app_header

大学の出欠確認など、最近は何にでもアプリが使われているが、数が多いからといってひとつひとつのアプリが良いというわけではない。Oohlalaは、大学ごとにカスタマイズされた学生向けのアプリを使って、これまでに何百という大学の現状を変えてきた。同社はさらなるビジネスの拡大に向けて、シリーズAで400万ドルを調達したと本日発表した。

さまざまなウェブサイトやサービス、アプリが重なり合った各大学のオンラインサービスを考えると、生徒やスタッフがOohlalaのプロダクトに魅力を感じるのも理解できる。このサイトで授業に登録して、別のサイトでスケジュールを作って、あれは公式アプリだと上手くできない、予定より1時間早くTwitterに情報が公開されてしまった、など大学が抱える問題の例を挙げればきりがない。

「学生からすると、大学のオンラインサービスはとても複雑で、各機能がいろんな場所に散らばってしまっているという印象を受けます」とOohlalaのファウンダー兼CEOであるDanial Jameelは、TechCrunchとの取材で語った。

彼はトロント大学在学中に学生生活課に勤めており、1万5000人の新入生に対して点在するリソースをまとめて説明しようとしていた。全ての情報が一か所にまとまった学生向けプラットフォームがない状況では、新入生が困ってしまうのも仕方がない。

お金のやりくりや授業の課題、教授からのフィードバックのためのサービスを今の段階で改革する価値はそこまでない。しかしネットワーキングや、食べる場所、落とし物のチェックなど、それ以外に学生がすること全てをカバーできるようなサービスがあればどうだろうか?

もともとOohlalaは学生生活のソーシャルな面に力を入れていたが、それ以外にも学生が困っていることはたくさんあるとすぐにわかった。

「大学で過ごす4年間のことを考えてみると、学生生活とはとてもユニークなものだということがわかります」とJameelは言う。「その間は生活の大半が大学中心になりますからね」

さらにほぼ全ての学生(95〜98%)はスマートフォンを持っており、彼らはカテゴリー別に自分たちの生活を管理している。例えば友人や家族との広域なやりとりはFacebookで、親しい友人はWhatsAppやSnapchatで、デートはTinderで、といった具合だ。Oohlalaはそのようなアプリのひとつとして、学生生活をまとめる存在になることをゴールに設定し、その狙いは大当たりした。

Oohlalaアプリはそれぞれの大学に応じてカスタマイズされており、生徒用の掲示板、教授の連絡先、授業の情報や教室の場所、安全情報、アラートなど、以前であれば十数種類のウェブサイトやアプリ、サードパーティのサービスに散らばっていたであろう機能を一手に備えている。私自身このようなサービスが在学中にあったらきっと喜んでいたことだろう。そしてもちろんITや運営を担当している部署は、アプリ経由で有用なデータを手に入れることができる。

世界8ヶ国、200校で利用されているOohlalaは、既に黒字化を果たしている。昨年の間に会社のサイズは3倍に成長し、顧客の3分の2が同社と3年契約を結んでいる。ではなぜ資金調達が必要だったのか?

「業界のリーダーになる上で、私たちは今いい位置にいると思います。実績は積み上がっていますし、利益も出ていて、YCのパートナーからも『そろそろ次のステップに進んでもいいんじゃない?』と言ってもらいました」とJameelは話す。

今回調達した400万ドルという金額にはちゃんと背景がある。Oohlalaはもっと大きな金額を調達することもできたが、これまでも同社は必要最低限の資金で上手くやりくりできており、社内に出来る限り多くの株式を残しておきたいという思いがあったとJameelは言う。

またVCの活動があまり活発ではない一方、生活費も低く抑えられるトロントで起業したことをJameelは誇りに思っている。「私たちはゴキブリのように生活していました。資金が限られていたので、確実に儲かるビジネスモデルをつくらなければいけなかったんです」

「正直言って、資金調達を行った1番の理由は投資家でした。人とのつながりも大事ですからね」と彼は続ける。なお、University Venturesが中心となった今回のラウンドには、Joe MontanaのLiquid 2ファンドやCheggのファウンダーのOsman Rashidが参加していた。さらにOohlalaは、MacmillanのM&A部門の社員を取締役として迎えており、エドテック業界にいる同社にはうってつけの人材だ。

gw_landing_pageしかし投資家が特に魅力を感じたのは、学生同士の交流の促進や、スケジュール管理の簡素化といったOohlalaの機能ではない。

「教育界で1番大きな問題は効率性です」とJameelは言う。「他社のアプリは、本当に生徒の成績に結びついているのでしょうか?」

Oohlalaを利用する大学は、エンゲージメントやリテンションなどの観点からアプリの効果を計測している。Oohlalaもある学部で調査を行い、セメスターごとにアプリを使っている生徒と使っていない生徒の様子を比較(補正済み)したところ、アプリを使っている学生の方が中退率がかなり低いという結果が出た。

「ただアプリを使っているから中退しない、と言っているわけではありません。」とJameelは話す。「一方で、私たちは学生に必要なツールやサポートを提供しています。彼らはモバイルファーストの世代なので、アプリこそが効果的な手段だと考えています」

マイナス面はほとんどなく(もしかしたら、また別のサードパーティーに生徒を管理させることに対して慎重な大学もあるかもしれないが)、学生生活の快適さをユーザーエクスペリエンスや使いやすさと対等に扱うようなサービス内容で、Oohlalaはうまく要点をついたようだ。今回の資金調達によって、学生のニーズにあった(そして彼らにふさわしい)現代的でモバイルファーストな大学生活用のアプリはもっと広まっていくだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ジェイ・クレイトンSEC委員長候補がシリコンバレーに歓迎される理由

2017-01-27-high-five

ウォールストリートの有力な弁護士、ジェイ・クレイトン( Walter “Jay” Clayton)はまだSEC〔証券取引委員会〕委員長への就任を正式に承認されていない。しかし共和党が多数を占めるアメリカ議会の勢力バランスを考えれば、クレイトンが承認されることはほぼ間違いない。

これはスタートアップのファウンダー、その投資家にとって歓迎されるニュースだ。最近のSECの動向に関心を強めていた人々はクレイトンの任命で証券市場においてかなりのフリーハンドを得られることになりそうだ。

クレイトンについて念のためにおさらいしておくと、彼は「インサイダー中のインサイダー」だ。今月初め、ドナルド・トランプ次期大統領(当時)がクレイトンをSEC委員長候補に選んだときのDealbookの記事によれば、「取引をまとめる達人」だという。 ワシントンの有力法律事務所、 Sullivan & Cromwellでクレイトンは長年にわたり公開、非公開企業のM&Aを担当してきた(ゴールドマン・サックスに対する助言を含む)。 また新規上場の専門家でもある(Alibabaの2014年の上場を担当)。2008年の危機〔リーマン・ショック〕の際には、サブプライム抵当に関連してクライアントと司法当局の和解を処理した。

企業の政治戦略と投資の専門家、ブラッドリーー・タスクは「こうした背景がシリコンバレーに対して持つ意味は大きく分けて2つある」と言う。タスクはUberを含め多数のスタートアップが当局の規制と戦うのを助けてきた。タスクによれば「クレイトンはテクノロジー企業についてある程度の経験がある。これはシリコンバレーで歓迎される資産だ」という。

タスクは「AlibabaのIPOを担当したというのはもちろんウィルソン・ソンシーニで日頃から取引をまとめていたのとは違う」と言う。ウィルソン・ソンシーニはスタートアップを担当する法律事務所としてシリコンバレーで長年トップの地位を占めてきた。「しかしそれでも〔Alibabaの上場は〕このビジネスに経験があることを意味する。経済全体に与える影響にも理解があるだろう」。

タスクによればさらに重要な点は「クレイトンは特定の政治信条を追求する活動家ではないという点だ。つまり証券取引の規制は強化されるべきだという信念の持ち主ではない」。

この点は退任したメアリー・ジョー・ホワイト前委員長と鋭い対照となる。ホワイトは1年近く前にシリコンバレーを訪問し、ファウンダー、投資家に対して、非公開企業の評価金額が急騰していることにSECは「懸念を抱いている」と警告した

昨年10月にわれわれも書いたとおり、SECは血液検査のスタートアップ、Theranosの不正を機にシリコンバレーのエコシステムにに介入を強めようとしていた。クレイトンはこれに対し、SECを効果的に運営することに専念し、アクティビストとしてSECの権限拡大を追求することには消極的とみられる。投資家とファウンダーの関係は相互の信頼に任されることになるだろう。

市場外取引のマーケットプレイス、EquityZenのファウンダー、シュリラム・バシャムは「クレイトンのSECは『シリコンバレーのことはシリコンバレーに任せる』という立場を取るだろう。ただし現在進行中の事件にどう影響するかはわからない」と述べた。昨年SECが調査を開始したと報道されたケースには、菜食主義者向け食料品のHampton Creek、オンライン小口金融のLendingClub、マイクロ・ベンチャーファンドのRothenberg Venturesなどがある(SECは進行中の調査に関してはコメントしないのが常だ)。「しかし将来を考えると、投資家は自分自身でリスクを判断せよ、という方向になりそうだ」とバシャムは見ている。

最近のSECは問題あるスタートアップの調査に力を入れ過ぎているという批判があった。クレイトンはこうした権限拡張の方向を是正するだけでなく、同時に、資本の調達、形成をバックアップするような規則を作ることも期待されている。最近のSECでは資本形成を助ける適切なルールづくりがなおざりにされているというのが共和党の主張だった。

バシャムはクレイトンのSEC委員長就任でクラウドファンディング・プラットフォームも含めてM&Aのペースは加速する可能性が高いと考えている。クラウドファンディングでは現在、企業が調達できる金額の上限は1年あたり100万ドルとされているが、SECは500万ドルにアップすることを準備している。

バシャムはさらに適格投資家(accredited investor)の定義もさほど遠くない将来、変更されると予想する。現在の定義は「純資産100万ドル以上(自宅不動産を除く)あるいは年間収入20万ドル以上」となっているが、バシャムは「適格投資家の範囲を拡大する方向で改正が行われるだろう」という。

結局問題になるのは誰が何のためにどういった改正を望むのかだ。

この点に関してタスクは「クラウドファンディング・プラットフォームは『さらに規制緩和を』と要求するだろう。しかし彼らには政治力が欠けている。テクノロジー業界も全体としてあまり関心がない。本格的なベンチャーキャピタリストや起業家はクラウドファンディングには興味を示さない。小口投資家はまだしばらく待つことになるだろう」と考えている。

画像: Bryce Durbin/TechCrunch

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AIでトレーディングを自動化するAlpacaDB、総額175万ドルの資金調達

alpaca

AIとデータベース技術を用いてトレーディングの自動化などを行う米AlpacaDB。同社は1月25日、イノベーティブ・ベンチャー投資事業有限責任組合、D4V、三菱UFJキャピタル、マネックスベンチャーズのほか、フィンテック領域に投資するエンジェル投資家のEric Di Benedetto氏ほか個人投資家らから、総額175万米ドルの資金調達を実施したことを明らかにした。

AlpacaDBは2015年2月の設立。もともとは独自のAI技術用いて画像認識のプロダクトを手がけていたが、2015年にそこからピボットしている。創業から現在のフィンテック領域へのチャレンジについてはTechCrunchの過去の記事を読んで頂きたい。

そんな同社では現在、AIを用いて株式(米国株式市場のみに対応)の売買タイミングをアドバイスする「AlpacaScan(アルパカスキャン)」、そして為替取引の自動取引サポートサービス「AlpacaAlgo(アルパカアルゴ)」の2サービスを展開。AlpacaAlgoは2016年11月から一部のユーザーに限定して限定して展開しているが、2カ月間で実取引総額は1億ドル超だという。

AlpacaDBでは今回の資金調達をもとに、これら2つのサービスの開発を進めるほか、トレーディングにおけるAI技術とデータベース技術の更なる研究開発と事業展開を進めるとしている。また今春にはAlpacaScanのモバイルベータ版を提供する予定だとしている。

旅行版のGoogle Adwardsをつくる ― 旅行記サイト「Compathy」を運営する日本のワンダーラストが1.3億円を調達

p1100639

旅行の計画を立てるとき、それを紙のノートに書きとめたり、PCのメモ帳に書きとめるという読者も多いのではないだろうか。何を隠そう、僕も先日ロンドンに旅行したときには計画をワードに書き出していた記憶がある。なかなかアナログな方法だ。

今日紹介するワンダーラストは、旅行の計画から記録までワンストップで提供するWebサービスの「Compathy」を展開する日本のスタートアップだ。ワンダーラストは本日、モバイル・インターネットキャピタルとSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額1億3000万円を調達したと発表した。

ワンダーラストはこれまで、旅行記録を投稿と閲覧ができるSNSサービスの「Compathy」とメディアの「Compathy Magazine」(日本語、英語、中国語版)を軸にビジネスを展開していた。だが、同社は今回調達した資金を利用して、サイトから直接ホテルの予約や計画ができる新機能を追加する。また、ワンダーラストに蓄積された「旅行計画データ」を利用した新しい広告プラットフォームの構築も目指す。

ログブックは累計2万5000冊、メディアは月間300万PV

Compathyは、ユーザーが自分の旅行記を記録したり、それを外部に公開できるSNSサービスだ。ユーザーが写真を投稿すると、その場所が自動的にタグ付けされ、旅のルートや時間軸をまとめたログブック(旅行記)を作成してくれる。ユーザーは平均して一度に20枚から30枚程の写真を投稿するそうだ。

他のユーザーのログブックを閲覧することも可能だ。国や地域ごとにまとめられたログブックをお気に入りに登録しておけば、自分だけのオリジナル・ガイドブックを作ることができる。 compathy01

これまでに作成されたログブックは累計2万5000冊で、月間400冊のペースで増加しているという。ワンダーラストが手掛けるメディア「Compathy Magazine」日本語版のMAUは100万人。英語版と中国版のMAUは合計で10万人だ。日・英・中あわせると、Comapathy Magazineの月間PV数は300万だという。海外ユーザーは全体の10%程だ。

ワンダーラスト代表取締役の堀江健太郎氏は、「情報がフローとして流れがちのFacebookとは違い、自分専用のページに情報がストックとして溜まっていくのが嬉しいという声をよく聞く。ログブックの閲覧はスマホで、投稿はPCでという利用例が多い」と説明する。

Compathyは以前にもTechCrunch Japanで紹介しているので、参考にしてほしい。

ドラッグアンドドロップで行きたいところを追加、ホテルもその場で予約

ワンダーラストは今回調達した資金を利用して、Compathyに2つの新機能を追加する予定だ。

まず1つ目は、旅行の予約機能と計画機能だ。これまでのCompathyは旅行を「記録」しておくサービスだったが、今後新たにサイトから直接ホテルを予約できる機能を取り入れる。

自分の行きたい観光地をドラッグアンドドロップで追加していくと、それを踏まえた旅行ルートが自動的に表示される。そのため、ルートを参考にして近くのホテルを予約することもできる。

%e6%97%85%e8%a1%8c%e8%a8%88%e7%94%bb%e7%94%bb%e9%9d%a2_%e3%83%86%e3%82%99%e3%82%b9%e3%82%af%e3%83%88%e3%83%83%e3%83%95%e3%82%9a

僕の個人的な経験だが、旅行で行きたいところをピックアップして、その計画を踏まえて地理的に便利そうなホテルを探すのは面倒な作業だ。1日目に訪れる観光地の近くでホテルを探しても、次の日に訪れる観光地までのアクセスが便利だとは限らない。

だから、観光地をつなぐルートを表示してくれて、さらにホテルの予約がサイト内で完結するのは、僕にとって嬉しい機能だ。現段階では、Compathyから利用できるホテル予約サイトは1つだけだが、今後はホテルや航空予約の比較サイト「Skyscanner」のAPIを利用するなどして、さまざまな予約サイトの料金を一覧で表示していくそうだ。

「旅行版のGoogle Adwardsをつくる」

旅行の予約と計画はユーザーに向けた新機能だ。それに加えて、ワンダーラストはその旅行計画データを利用した収益施策も新たに展開していく。具体的には、ある旅行計画を立てたユーザーに対して広告を表示する権利に、企業が入札できる「リバースオークション」だ。Google Adwardsでは、あるキーワードが検索されたときに広告を表示する権利に入札するという仕組みだが、ワンダーラストが目指すのはその旅行版である。

堀江氏によれば、特にオンラインの旅行会社では、ほとんどの広告費をキーワード広告に費やしているという。しかし、旅行業界ではその費用対効果はそこまで高くない。

例えば、あるユーザーが「ハワイ」と検索したとしても、そのユーザーがハワイに「行きたい人」なのか、「行ってきた人」なのかという時系列は分からない。一方、Compathyが企業に提供するのは旅行の計画データなので、旅行会社にとってはこれから旅行する見込み客に直接アプローチすることが可能になる。

「ネット上には”どこどこに行ってきた”というデータは大量に存在するが、”どこどこに行くつもりだ”というデータはあまり存在しない。そのデータを活用することで、売りたい人に直接売れる仕組みを作りたい」と堀江氏は語る。

この入札機能に対する業界の反応を聞くと堀江氏は、「大手の旅行会社は、まだあまり興味を示してくれていないのが現状。しかし、新しい仕組みも柔軟に取り入れるオンラインの旅行会社は高い興味を示してくれている」と話す。堀江氏は、ホテルの予約機能で実績をつくることによって入札に参加する企業を増やしていきたいと語る。同社が狙う市場の規模は「国内で2700億円」だという。

ホテルの予約と旅行の計画機能は今年4月から正式に公開予定。リバースオークションの仕組みは今年中にも公開したいと堀江氏は語っている。

ソフトウェアテスティングの自動化ツール「Tricentis」がInsight Venturesから1億6500万ドルを調達

Portrait of girl lighted with green numbers

企業の開発チーム向けにソフトウェアテスティングの自動化ツールを提供するTricentisは本日、Insight Venture Partnersから大量の資金を調達した ― 正確にいえば、1億6500万ドルだ。同時に、Insightのマネージング・ディレクターであるMike TriplettがTricentisの取締役に就任することも明らかになった。

従来のソフトウェア開発の現場では、プロダクトを市場に送り出すまでに数カ月もの時間がかかっていた。ソフトウェア・テスティングを行うためには、フロントエンドのインターフェイスからバックエンドのコネクターにいたるまで、プログラムの隅々をテストするためのスクリプトを書かなければならない。しかし、ソフトウェアの中身が変更されると過去のスクリプトをそのまま利用することはできず、多大な時間をかけ、マニュアルで修復作業を行う必要がある。

今よりも物事がゆっくりと進んでいた過去の時代は、それで上手く行っていた。しかし、これまでよりも頻繁にプログラムのアップデートが行なわれるようになり、それに適した素早いソリューションが必要とされている。そこでTricentsの出番だ。

Tricentis CEOのSandeep Johriは、同社のサービスについてこう説明する。「私たちが行うのは、GUIとAPIの両方を対象にしたアプリケーションのスキャンです。それによって、コードの内容をネイティブに解釈していきます。私たちはそのアプリケーションがビジネスの文脈でどのように機能するかを解釈し、理解して、テスティングの土台を構築していきます。その後、.NET、HTML、Javaなど、想定されるものすべてに対してテストを行います」。プログラムがアップデートされたら、再度スキャンをし直すだけでいい。

Insightはこのアプローチに目をつけた。従来のウォーターフォール式のソフトウェア開発手法から、モダンなアジャイル式へとシフトしつつある企業のソフトウェア開発現場。そこで生まれる大きな問題を解決するのがTricentisだ。

Tricentisに似た機能を提供するオープンソース・ツールはすでに存在しており、そのようなツールを利用する企業も多い。それについてJohriは、Tricentisが顧客として抱えるのは複雑な環境下にさらされている企業がほとんどであり、そのような環境においては、Tricentisのオートメーション化のスピードにかなうツールは他にないと語る。

Johriに取材してみた限りでは、彼はTricentisのバリュエーションを公開するつもりはないし、それについて心配をしているようにも見えない。Insightという単独投資家を持てたことに幸せを感じるとJohriは語る。さらに彼は、「ユニコーン」と呼ばれるような過大評価された企業は、従業員や投資家に対してそれに見合う価値を現実化できていないのではないかと話す。

Tricentisは2007年にオーストラリアで創業した。現在は主に、ドイツ、スイス、オーストリアなどドイツ語圏の国でツールを提供している。同社は、その6年後の2013年にシリーズAで700万ドルを調達し、本格的なビジネス拡大を決断した。

同社はこれまでに400社の顧客を獲得しており、現在260人の従業員を抱えている。Tricentisの開発チームは今もオーストラリアに拠点を置いている。1億6500万円を手にした同社は今後、営業およびマーケティングチームの強化を図るようだ。Tricentsはこれまでバーンレートを低く抑えてきたとJohriは話す。彼は、今後もそれを変えないようにしたいと話しているが、戦略的買収のチャンスは探し続けていくという。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

免許電子化プラットフォームのSigmaが435万ドルを調達

sigma-team-pic

モバイルアプリ検索エンジンQuixeyの元社員が新たに設立したSigmaは、今でもアナログな手段に頼っている資格の認証や登録業務をオンライン化することを目指している。このゴールを実現するため、この度同社はAndereessen Horowitsが中心となったシードラウンドで435万ドルを調達した。

彼らのビジネスのアイディアは、2014年末にSigmaの共同ファウンダー兼社長のTomer Kaganが友だちと一緒に、ベリーズへスキューバ旅行に行ったときに生まれた。彼らはそれぞれ、Professional Association of Diving Instructors(PADI)から発行された免許を持って旅行先へ向かった。

当時、PADIが発行する免許はダイビングをする上で欠かせないもので、携帯していなければダイビングができないようになっていた。しかしプラスチックの免許に頼った確認というのは、ダイバーだけでなく、インストラクターやダイビングショップにも問題を生じさせていた。

ダイバーはダイビングの記録を自分たちで台帳に残さなければならず、ダイビングショップやインストラクターがその証拠をPADIに渡したあとに免許が発行されていた。つまりダイビングに関わる人全員が、他の人から受け取った情報を信じながらそれぞれの役割を果たしており、しかもその情報を検証するのも簡単ではなかった。

Kaganや彼の友人は、今の時代になぜ免許がオンライン化していないのだろうと考えずにはいられなかった。なぜ紙の台帳やプラスチックの免許というアナログな仕組みに縛られなければいかないのだろう?全ての記録をオンライン化するにはどうすればいいのだろう?

その頃KaganはQuixeyのCEOを務めていたが、そのアイディアを捨て去ることができなかった。そこで2015年の秋に、彼は自らのアイディアを100人ほどの小さなフォーカスグループで発表した。そして翌年1月、Quixeyでパートナーシップ担当ヴァイスプレジデントを務めていたJacob Orrinが、Kaganにアイディアを実行したいと持ちかけた。

OrrinはほとんどがQuixeyの社員から構成されたチームをまとめ、Sigmaの最初のバージョンとなるシステムの開発に取り掛かった。そして友人や家族から集めた少額の資金を使いつつ、彼らは2016年8月にリミテッドアルファ版をローンチした。それからすぐに、スカイダイビングのインストラクターやドロップゾーンの運営者がSigmaに興味を示しはじめた。

スカイダイバーやスキューバダイバー、そしてそれらのスポーツを管理している団体は、ダイビングの記録や免許確認に関して同じような問題を抱えていた。どちらのスポーツにおいても、間違いは生死に関わる。例えばカリフォルニア州ローダイ(Lodi)では、昨年スカイダイビング中の事故で死亡者が出た。そして調査の結果、インストラクターがUnited States Parachute Association(USPA)から認証を受けていなかったということがわかったのだ。

このような背景を考えると、免許のデジタル化を求める声が挙がっているのにも納得がいく。そしてUSPAは、Sigmaを使ったメリット(オンライン上のバッジのようなもの)と免許の発行を初めて採用した大手アウトドアスポーツ団体になった。スカイダイバーは、これまで紙のライセンスを提示していたドロップゾーンで、今後はデジタルのメリットと免許を見せるだけでよくなる。

参加者の活動記録や免許が未だに紙のシステムで管理されているアウトドアスポーツの団体というのは、Sigmaの最初のターゲットとしてはうってつけだ。なお、どんな団体でもSigmaのシステムに参加できるが、Sigmaが公式であると確認した団体しかメリットの発行はできない。

あるアウトドアスポーツをやっている人は、ほかのスポーツにも興味を持っていることが多いということが、Sigmaが最初にアウトドアスポーツに目をつけた理由だ。現在Sigmaは他の分野へ進出する前に、アウドドアスポーツでネットワーク効果を築きあげようとしている。

他にSigmaのサービスが役立つ業界として、例えば全体を統括する団体のいない免許が必要な仕事を考えてみてほしい。むしろ履歴書に載っているほとんどの役位や職位が自己申告で、粉飾されているものも多い。

今年から正式に共同ファウンダー兼社長としてSigmaに参加したKaganによれば、同社のゴールは現在自己申告制のものも含め、現在オンライン化できていない全ての実績や資格のメリットをつくることだ。

短期的に見たときの勝算のある確かな市場戦略と長期的に見たときの大胆な目標もあって、Andreessen HorowitsのJeff Jordanは、Sigmaの435万ドルのシードラウンドでリードインベスターを務めることを決めた。

Jordanはそれ以前にもQuixeyに在籍していたKaganと何度か顔を合わせたことがあり彼を評価していたが、結局Quixeyへ投資することはなかった。そんなJordanも、Sigmaのアイディアにはすぐに共感した。

実はJordan自身もダイバーで、PADIのアナログな免許制度の非効率さをよく知っていたのだ。そして彼はSigmaのサービスが、ダイビングやスカイダイビング以外の分野にも応用できると感じた。

「競合企業はあまり見当たらず、特にアウトドアスポーツのような分野であればなおさらです」とJordanは話す。「しかし(Sigmaが)他の分野にも対応できるのを願っています」

Andreessen Horowitz以外にも、SigmaのシードラウンドにはWI HarperやSusa Ventures、Azure Capital、Greylock Partners、Sherpa Capitalのほか、Adam D’Angelo、Adam Foroughi、Auren Hoffman、Paul Ferris、Holly Liu、Jay Eumなどのエンジェル投資家が参加していた。

現在Sigmaは11人強で構成されているが、サービスのスケールにあたって今後人員を増やしていく予定だ。さらにアーリーアダプターのUSPA以外にも、アウトドアスポーツの団体へのアプローチを考えている。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

航空運賃を1ヶ月先まで予測 ― 値下がりに備えて航空運賃を固定できるFLYRが800万ドルを調達

Airplane in the sky and cloud at sunrise

トラベル系スタートアップのFLYRは本日、シリーズAで800万ドルを調達したと発表した。FLYRは業界のオープンデータと独自に集めた航空券の過去価格データに人工知能を適用することで、航空運賃を予測する。

今回の調達ラウンドでリード投資家を務めたのはPeter Thielが所有するファンドだ。また、SECへの提出書類によれば、Thiel Capital代表のPhin Uphamが今回のディールに関わっているようだ。本ラウンドを含めると、FLYRはこれまでに合計で1300万ドルを調達したことになる(前回のシードラウンドでは2社から400万ドルを調達している)。

「ファイアー(fire)」と音韻が似た名前をもつFLYRは、その旗艦プロダクトであるFareKeepで知られる企業だ。同プロダクトを利用すれば、1週間のあいだ航空券の価格を固定することができる。手数料は20ドル以上だ。FareKeepは航空運賃の保険と同じコンセプトをもっている。もしも固定した価格よりも航空運賃が値下がりするようであれば、ユーザーはその低くなった価格で予約を完了するか、もしくは固定した価格と実際の価格の差額を返金してもらうことができる。返金までにかかる日数は約1日程度だ。

FareKeepと同じような機能を提供する航空会社もあるが、TripAdvisorを含むいくつかの予約サイトではFLYRを利用した航空運賃の固定機能をユーザーに提供している。FLYRはクレジットカード会社との提携も視野に入れているようだ。

FLYRの競合はHopperやOptions Awayなどのサービスだ。Hopperは航空券を予約するのに最良のタイミングを教えてくれるサービスで、より直接的な競合となるOptions Awayは、FareKeepと同様に航空運賃を固定するサービスを提供している。

今回取材したCEOのJean TripierとCTOのAlexander Mansによれば、同社は今回調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくとのこと。海外出張をする従業員を多く抱える企業向けのサービスなどがその例だ。

「これまでのように1つの商業プロダクトを提供するのではなく、いくつかのソリューションを合わせたサービス・ポートフォリオを構築し、予約プロセスのさまざまな段階で利用できるソリューションを提供していきます」と同社はいう。Mansは加えて、「航空運賃とそれに対する需要を予測するだけでなく、今後私たちは消費者行動の予測にもフォーカスしていきます。それにより、私たちのクライアントが抱えるユーザーに、より良い体験を提供していきます」と語る。

FLYRは近々、航空券の「取り置き」とも呼べるサービスを公開する予定だ。このサービスを利用することで、ユーザーは航空券を分割払いで購入することができる。手数料などは一切かからない。現在、FLYRはアメリカとヨーロッパを結ぶ航空券を多くカバーしている。今回調達した資金はカバーする空路の拡大にも利用される予定。Tripierによれば、特にラテンアメリカの空路を強化していくようだ。

Peter Thielが所有するファンドのほか、本ラウンドには以下の投資家が参加した:JetBlue Technology Ventures、Streamlined Ventures、AXA Strategic Investors、Amadeus、Western Technology Investment、Plug and Play、Chasm Capital Management。

Streamlined Ventures創業者のUllas Naikは、「FLYRの強みは、1ヶ月先までの航空運賃を正確に予測できる能力です。その能力はさまざまなケースに応用することができるため、異なる業種のプレイヤーや顧客に価値を提供することが可能です。究極的には、このようなAI技術は市場全体を大きくしていきます。なぜなら、顧客はこれまで以上に自信をもって航空券を購入することができるからです」。

Naikによれば、FLYRは調達した資金を利用して新プロダクトの開発を進めていくが、それに加えて、世界中のパートナーサイトにある購入ボタンの「真横に」FLYRが提供する予測価格を表示していくようだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

テクノロジーに「感動」を加える ― 電通ベンチャーズがアミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資

masthead_light

家庭用ロボットのJibo、コオロギから抽出したタンパク質を使用した健康食品のExoなど、新しい事業領域にチャレンジするスタートアップを中心に投資する電通ベンチャーズ。今年9月にVRスポーツのLiveLikeへ、12月にはVRエンターテイメントのSurviousへ出資するなど、同社はここ最近「エンターテイメント」領域への出資を進めているようにも感じる。

本日電通ベンチャーズが出資することを発表したTwo Bit Circusも、エンターテイメント分野のスタートアップだ。

電通傘下のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドである電通ベンチャーズは2017年1月18日、アミューズメントツール開発の米Two Bit Circusに出資することを発表した。金額は非公開。今回の調達ラウンドには電通ベンチャーズのほか、JAZZ Ventures Partners、Foundry Group、Techstars Ventures、Intel Capital、Georgian Pineが参加している。

Two Bit Circusが表舞台に現れたのは、2013年5月にKickstarterでエンターテイメント・イベント「STEAM Carnival」の運営資金を募ったときだった。STEAM Carnivalはその後、10万ドルの目標数字を達成している。

Science、Technology、Engineering、Mathematicsの頭文字をとった「STEM」という言葉がある。彼らのイベント名にある「STEAM」は、それにArtの頭文字を加えた言葉だ。その後STEAM Carnivalは2014年10月にロサンゼルスで開催され、1万3000人を動員している。

心を揺さぶるプロダクト

Two Bit Circusが得意としているのは、最新技術にアートやエンターテイメントの要素を加えたプロダクトの開発だ。これまで同社は、イベントなどで展示されるプロダクトの受託開発を主に手がけていた。下の動画は、Verizonと共同で開発したアメリカンフットボールの世界を体感できるVRギアだ。

電通ベンチャーズのPedro Ao氏は、心を揺さぶるプロダクトの開発力こそ同社がTwo Bit Circusへの投資に踏み切った理由だと語る。「技術が普及するためには、それがただ生まれるだけでは不十分。そのためには消費者の感情に訴えかけることが必要になる。Two Bit Circusはそこが上手い。彼らには、新しい技術を消費者ウケするものに変える力がある」。

Two Bit Circusの事業領域は電通ベンチャーズがフォーカスする投資分野でもある。電通ベンチャーズは2016年9月、VRでスポーツ観戦ができるLiveLikeに出資。その3ヶ月後の2016年12月にはVRゲーム開発のSurviosに出資している。

Two Bit Circusは必ずしもVRだけにフォーカスした企業ではないが、VRをはじめ新技術を利用したエンターテイメントという共通点はある。「電通ベンチャーズがフォーカスする領域の1つがニューメディアだ。特に、VRは電通がもつ力が活かしやすい領域だと思っている」とPedro氏は話す。

Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入

今回の資金調達を経て、Two Bit Circusのビジネスは新しいフェーズに突入する。

これまで、彼らのメインビジネスは企業からの受託開発だった。しかし、STEAM Carnivalなどでプロダクト開発の経験を積んだ彼らは、今後自社のプロダクト開発に力を入れていくという。Arduinoを搭載した紙でつくられたロボット「Oomiyu」のほか、「大人も子供も楽しめるテクノロジー・アトラクション」を楽しめる自社のテーマパークを建設する予定だという。そのテーマパークは新しいプロダクトをテストする場にもなっていくようだ。

電通ベンチャーズがTwo Bit Circusへの出資に加わったことで、将来的にアジア地域へのビジネス拡大も可能性がありそうだ。実際、電通ベンチャーズやKDDIがJiboに資本参加したあと、Jiboは東アジア地域への拡大を本格化している。それについてPedro氏は、「当面はアメリカ市場にフォーカスしていく予定だが、電通のリソースを利用することで将来的にはアジア地域への拡大もありうるだろう」と話す。Two Bit Circus側も、以前からアジア地域には興味を示していたようだ。

どれだけ業界から注目される新技術でも、ビジネスとして成り立つには、その技術を消費者の心に届くプロダクトへと落としこむことが不可欠だ。業界で注目されるVRにしても、今後どれだけ消費者を振り向かせるコンテンツを生み出せるかどうかが普及への鍵なのかもしれない。電通ベンチャーズがTwo Bit Circusに期待するのはその役割だ。

動画制作「Viibar」が新たに4億円調達、日経との資本業務提携でメディア事業を本格化

viibar

FacebookでもTwitterでも、料理動画やガジェットの紹介動画が流れてくるとついつい見てしまう。どのSNSもすでに動画に対応していて、多くのメディアや企業は動画コンテンツに関心を持っている。だが、テレビ局や制作会社でない会社が自社で高品質な動画を制作してマーケティングするのはそう簡単ではない。Viibar(ビーバー)は、その課題を解決するため、プロの動画クリエイターと企業とをつなぐクラウドソーシングサービスを提供している。

Viibarは本日、日経新聞社との資本業務提携を発表した。同時に日経新聞社、電通の100%子会社である電通デジタル・ホールディングス、そして既存投資家のグロービスから総額4億円の資金調達を実施した。

Viibarには審査を通過したプロクリエイターが登録している。企業は指名やコンペ形式で、自社のニーズに最適なクリエイターに動画制作を依頼できる仕組みだ。

Viibarは単に動画に特化したクラウドサービスというだけでなく、プロクリエイター向けの動画制作支援ツールも提供している。動画制作に関わるグループのスケジュール管理やチャット機能などがある。また、クリエイター同士が交流したり、プロジェクトを行うのに必要なスキルを持った他のクリエイターを募ったりする機能なども備えている。

現在3000名以上のプロの動画クリエイターがViibarに登録し、実写はもちろん、アニメやCG、ドローンを使った撮影やVR動画の制作にも対応できるとViibar代表取締役、上坂優太氏は話す。これまでに600社以上のデジタル動画マーケティングを手がけてきたという。

今回の資金調達では、クリエイターがより働きやすくするためのシステム開発を進めること、そして新たに立ち上げたメディア事業に投資していくと上坂氏は言う。Viibarはこれまでクラウドソースによる動画制作と動画マーケティングを主に手がけてきたが、今後はメディア向けの動画コンテンツ制作事業にも注力する。すでにViibarの社内チームは、ヤフーが手がけるエクササイズを紹介する動画メディア「Sporay(スポレー)」のディレクションを担っているという。

今回発表した日経新聞社との資本業務提携もメディア事業での提携だ。Viibarは日経新聞社が展開するライフスタイルメディア「NIKKEI STYLE」における動画コンテンツや動画広告の制作、そして動画コンテンツのマーケティングで協力していく。

2013年4月に創業したViibarにとって、シード投資をのぞくとこれが3回目の資金調達となる。2014年2月にはグロービスとグリーベンチャーズから3億円、そして2015年5月にはヤフー、グロービス、グリーベンチャーズから7億円を調達した。今回の調達を含めるとこれまでに総額14億円を調達した計算だ。

上坂氏はViibarで、クリエイターが適切な対価の仕事がマッチングできる世の中を実現していきたいと話す。オペレーションは機械に任せ、人がクリエイティブな仕事ができるような世界を目指している。

「Win-Win-Winは業界への大切なメッセージ」 ― 日本の宿泊権利売買サービスCansellが4000万円を調達

newlogo

日頃たまった疲れを癒やすために、休暇を利用して旅行にでかけるという人も多いことだろう。

しかし時間をかけて計画した旅行でも、急な用事やアクシデントでキャンセルせざるを得ないこともある。せっかく楽しみにしていた旅行が無くなるだけでも悲しいことだが、それに追い打ちをかけるように、キャンセル料の支払いという悲しみもある。

日本のCansellは、そのキャンセル料の負担を軽減してくれるスタートアップだ。Cansellは本日、株式会社DGインキュベーション、株式会社カカクコム、大和企業投資株式会社、株式会社イノベンチャーを引受先とする第三者割当増資を実施し、総額4000万円を調達したと発表した。

Win-Win-Win

cansell_e382b5e383bce38392e38299e382b9e381aee6b581e3828c

「Cansell」では、キャンセルせざるを得なくなった宿泊予約の権利を売買することが可能だ。

ユーザーは宿泊予約の権利を第三者に販売することで、キャンセル料を支払う場合にくらべて費用を節約できる可能性がある。一方で、権利の購入者は通常より安い宿泊料でホテルに泊まることができ、ホテル側も通常の宿泊料金を受け取れるというメリットがある。転売目的の出品を防ぐため、ユーザーは購入価格以上で権利を出品することができない仕組みだ。2016年9月15日のプレビュー版公開はTechCrunch Japanでも紹介している。

このように、CansellのビジネスモデルはWin-Win-Winの構造をもつ。この点は代表の山下恭平氏が特に大事にしているサービスのメッセージだという。

cansell_e5b1b1e4b88be681ade5b9b3

Cansell代表の山下恭平氏

「業界からの反発が気になるところだったが、意外にも業界からつつかれることはなかった。逆に、宿泊施設や旅行業者などから何か一緒にやりたいという声もあった。やはり、ホテルとユーザーを含めたWin-Win-Winの関係を、サービスがもつ大切なメッセージとして出していたのが大きいと思う。このサービスはホテル側の理解も得られないと本格的な成長は難しいと考えているので、今後は積極的にコミュニケーションをとっていきたい」と山下氏は話す。

プレビュー版での出品頻度は2日に1回程度とのこと。この数字について山下氏は、「積極的なPR活動を行っていないのもあるが、出品数はまだまだ」とコメントしている。ただ、サービスの認知度は口コミベースで少しずつ広がりを見せているようだ。たとえば先日、フリーランスライターの塩谷舞(通称しおたん)氏がCansellについてつぶやいたツイートが4000回近くリツートされたという。

Cansellは今回の資金を利用して、エンジニアの確保とPR活動の強化をはかる。Cansellは去年10月からブロガー向けアフィリエイト・プログラムの提供を開始しており、人気ブロガーのイケダハヤト氏が記事を執筆するなど一定の効果はあったと山下氏は話す。

「旅行」をテーマにしたシナジーも

山下氏によれば、Cansellへの出品案件で多いのは沖縄などリゾート地の宿泊権利だそうだ。さらに、宿泊日が1ヶ月ほど先の案件が多い。つまり、都心部へのビジネス出張が急にキャンセルになってしまったという案件よりも、国内旅行や地方のライブイベントなどで予約した宿泊権利が出品されるケースが多いようだ。予約時の購入単価は5万円から6万円ほどで、その約3割引で出品される。

プレビュー版で分かった傾向を踏まえて、今後は「旅行」というテーマに沿った新機能なども期待できるかもしれない。

今回の調達ラウンドをリードしたのはデジタルガレージ(DG)グループのDGインキューベーションだ。今回の出資に参加したカカクコムもDGグループの一員である。デジタルガレージは2015年6月にシンガポールLCO社と資本業務提携を結び、海外旅行アプリ・プラットフォームの提供を開始している。そのため、今後はDGグループとCansellとのシナジーにも期待できそうだ。

同様に、株式会社イノベンチャーはメーカーの新商品や余剰在庫を利用したサンプリング業務を展開している。Cansellと同じく2次流通市場を領域とする企業だけあって、こちらでも何らかのシナジーが生まれる可能性がある。

Cansellは今年4月にも正式版の公開を目指す。正式版では宿泊施設ごとに紹介ページを設け、そこに出品案件をひも付けする機能や、お気に入りのホテルの宿泊権利が出品されたことを通知する機能、ホテルのレビューシステムなどの新機能を追加する予定だ。

ChefやAnsible以外のクラウド管理ツールが必要なワケ―、Mobingiが2.5億円のシリーズA調達

mobingi

クラウドやサーバー群の管理・自動化のツールといえば、ChefやAnsible、Terraformなど、すでにたくさんある。Dockerのようなコンテナ型仮想化ツールの普及と相まって、ますますクラウド上のシステムは柔軟でプログラマブルになってきている。ツールや言語といった好みの違いはあるにせよ、今さらクラウド管理ツールが他に必要なように思えないという人もいるのではないだろうか。

日本を拠点に創業したスタートアップ企業Mobingi(モビンギ)のクラウド管理SaaSは、ジャンルとしてはChefに似ているものの、全く違うビジネスモデルとターゲットユーザー層の組み合わせを想定していて、企業が持つアプリのライフサイクル全体を管理するプラットフォーム作りを始めている。

クラウドのデスクトップを作る

2015年にMobingiを創業したWayland Zhang(張卓)氏は「クラウド・コンピューティングのデスクトップを作っている」と狙いを説明する。

「既存のAnsible、Chef、Dockerなどのツールは全て開発者をターゲットにしています。アプリのライフサイクル全体をやろうと思うと複数ツールを組み合わせる必要がありますし、それらを使いこなすための、非常に優秀なエンジニアが必要になります」

「今のクラウドコンピューティングには画面がありません。Windows以前のMS-DOSのようなもので、文字でコマンドを打ち込んでいる状態です。われわれMobingiが作りたいのはクラウドにとってのWindowsデスクトップのようなものです」

ChefやDockerなどは、すべてAPIがあってプログラマブルだから抽象化や自動化の恩恵が得られる。ただ、ターゲットはガチのソフトウェア・エンジニアやインフラ技術者だけだ。OSSプロジェクトとして人気があり、とてもうまくコミュニティーによる開発が回っているように見えるが、ビジネスモデルとターゲット層を考えると、違うモデルがあるべきなのではないか―、というのがMobingiの言い分だ。

クラウドの潜在ユーザー層は現在よりずっと広い。自社でソフトウェア開発をしている企業やエンジニアでも「実際にはVMすら立ち上げられないのが現実」(Wayland氏)とユーザー層もある。ちょうどCUIがGUIとなってユーザー層が一気に増えたPCと似た議論だ。

面白いのは、Mobingiはクラウドのノウハウを持たないとか、ネット系の技術力が不足している層だけがターゲットではないということだ。すでにクラウドのノウハウを持っているネット系企業も対象で、特に新規事業を立ち上げるときに必要なクラウドリソースの調達といった場面では、「やれば自分たちでできるとしてもMobingiのようなツールを使うようになっていくだろう」という。小窓ラインインターフェイスを使いこなすソフトウェアエンジニアであっても場面によってはGUIを使うというのに似た話かもしれない。

Mobingiは具体的プロダクトとして、AWSなどパブリッククラウドのデプロイ、環境セットアップ、アプリの自動スケール、監視、ログ分析などの運用、をWebベースのUIで提供する「mobingi Cloud SaaS」を提供する。例えば、AWS利用の場合の自動スケーリングではインスタンス起動リージョンやインスタンスサイズ、スケールさせるサーバー数の上限・下限を決めるなどポリシー設定しておけば、Elastic Load Balancer、VPCなど必要な機能を自動で設定してくれる。AWSには需給に応じて利用料が変わるスポットインスタンスというVMがあるが、これをうまく利用してコスト削減を自動化するSpot Optimizer機能も提供する。ライフサイクル自動化では、Docker、GitHub、Jenkins、Travis、Fluentd、Datadog、Mackerelを利用できる。mobingi SaaSはパブリッククラウドのほかに、OpenStack、vSphere、CloudFoundry、Kubernets、Apache Mesosなどプライベートクラウドも含めて複数のクラウドを同じUI/UXで管理できる。顧客データセンターのオンプレミス環境でMobingiを運用できるエンタープライズ版も提供する。SIerがMobingiを使ってシステム開発をして、それを顧客に売ることもできるという。

  1. mobingi_console2

  2. mobingi_oem

  3. mobingi_console_create

開発者と利用する企業ユーザーは別

Mobingiのターゲットユーザーは意思決定権(決裁権)を持つビジネスパーソンや開発チームやプロジェクトのリーダーたちだという。こうしたユーザーはChefやDockerを直接扱えない。ChefやDockerは素晴らしいソフトウェアでオープンソースプロジェクトとしても成功している。しかし収益をあげるビジネスモデルは、今のところまだ良く分からない。開発者に愛されても、それがそのままビジネスになるとは限らない。むしろ、Red HatがLinuxでやったように、あるいはGitHub Enterpriseがgitに対して果たした役割のように、ビジネスモデルの変革が必要なのだというのがWayland氏の言い分だ。

Mobingiはオープンなプラットフォームとして提供する。Mobingi利用者側の企業には開発者もいて、自分たちのニーズに必要な「アド・オン」などを開発する。監視やロギングなどのツールだ。こうした開発面はオープンソースコミュニティーモデルで行う。開発者のインセンティブとして、もちろん自社利益ということもあるが、プラットフォームへの貢献や承認欲求、自己表現、技術力の分かりやすい示し方といったことになる。プロジェクトで認められるとイベント講演への招待もあるだろう、とMobingiのWayland氏はいう。Mobingiは「エンジニア=ビジネス=プラットフォーム」という三角形のモデルということで、OSSプロジェクトの良さを持ちつつ最初からビジネスを取り込む試みということのようだ。

これはセールスフォースのクラウド開発プラットフォームに近い考え方だ。実際、セールスフォース傘下のPaaS、Herouも2015年からHeroku Enterpriseと企業向けサービスを出すなど、単に開発者に愛されるだけでなく、ビジネスパーソンたちに顔を向けた仕組みをリリースするなどマネタイズを模索している。

日本に法人を戻して2.5億円の追加資金調達

photo01

Mobingi創業者のWayland Zhang(張卓)氏

Mobingi創業者のWayland氏は中国・瀋陽生まれの33歳のエンジニア起業家だ。高校生だった18歳からカナダ在住だったそう。カナダの大学在学中だった2004年にストリーミング動画サービスを立ち上げて月商8000ドルまで成長させたり、中国のSNS向け広告プラットフォームを立ち上げて2009年に売却。さらにゲームエンジンのスタートアップ企業を起業して2013年に日本企業へ売却するなど、起業家として成功を重ねてきた。日本企業へ売却した関係から日本の顧客と接点があり、Mobingiのニーズに気づいたという。

当初Mobingiの法人は日本で設立。チームメンバーも日本人が多い。ただ、米500 Startupsからのシード投資を受けたことからいったん本社を米国を移動した経緯がある。今日1月16日には既存投資家であるアーキタイプベンチャーズ、Draper Nexus Venturesから追加でシリーズAラウンドとして2億5000万円の資金調達を明らかにし、このタイミングで再び法人を日本に移した形だ。Mobingiメンバーは現在11人で、8人がエンジニア。Mobingi SaaSの登録アカウント数は2000。800〜1000がアクティブユーザーだ。有料版を利用しているのは20数社で、顧客には富士通、ヤマダ電機などが含まれる。

日本のクラウド普及は、他国に比べて結構進んでいて、AWSの売上の10%程度は日本。「中国は2、3年遅れている。いずれ中国のクラウド市場も狙いたいが、まずは日本企業の中国進出や、その逆をやりたい」とWayland氏は話している。

Moon Expressが2000万ドルを調達、月面着陸に向けて本格始動

moon-express-lander-2

Google Lunar X-Prizeに参加中のMoon Expressは、シリーズB1で2000万ドルを調達し、月への処女航海に必要な資金が揃ったと発表した。今回の調達資金を含め、Moon Expressはこれまでに合計4500万ドル以上を、個人やVCのFounders Fund、Collaborative FundさらにはAutodeskなど民間から調達している。

2016年7月に、Moon Expressは民間企業として初めて月への渡航許可を手に入れた。同社は宇宙船MX-1Eを2017年中に月へと飛ばそうとしており、同時にX-Prizeの賞金2000万ドルの獲得を狙っている。

「ついに月への発射に必要なリソースが整いました。私たちのゴールは、地球の社会・経済圏を大部分が未開拓のまま残った8番目の大陸である月へと広げ、学生や科学者、宇宙機関、営利団体のために低価格で月の探索や開発ができるようにすることです」Moon Express 共同ファウンダー兼CEO Bob Richards

Moon Expressが月面への軟着陸を成功させれば、これは民間企業としては初めて、歴史上4番目の偉業達成となる。これまでに月面軟着陸を成功させたのは、全てアメリカ、旧ソ連、ロシアの政府系巨大組織だった。

もちろんこのタイトルを獲得するために、Moon ExpressはイスラエルのSpaceILやインドのTeam Indus(日本チームのHAKUTOが観測機で相乗り)、そしてさまざまな国の組織から成るSynergy Moonといった他のX-Prize参加者を打ち負かさなければならない。それぞれのチームはコンテストへの残留条件として、ロケットの打ち上げ契約をX-Prizeに見せて承認を得なければならなかった。

そして参加者で一番早く月面を500メートル移動し、高画質の動画と画像を地球に送ることができたチームには2000万ドル、2位のチームには500万ドルがおくられる。

おそらくX-Prizeの要件の中で1番厳しいと思われるのが期日だ。賞金を獲得するためには、全ての課題を2017年中に完了させなければならないのだ。ちなみにX-Prize Foundationは、既に一度期日を延ばしている

Google Lunar X-Prizeが特にユニークなのは、参加者が必要資金の90%を民間から集めなければならないと言う点だ。理論的はこの条件によって、利益を重視したビジネスプランが集まり、月に関連したビジネスの発展が加速することになる。

またMoon Expressは、衛星の打ち上げを行っているRocket Lab USAとロケット5台分の契約を結んだ。設立間もないRocket Lab USAは、同社の実験的な宇宙船Electron(Moon ExpressのMX-1Eを月まで運ぶロケットと同じもの)をまだ実際に飛ばせていないが、初めての打ち上げが今月末に予定されている。そして全て計画どおり進めば、Moon Expressの宇宙船は今年中に月へと向かうことになる。

Rocket LabのElectron初打ち上げは今週末を予定。一方NASA VCLSミッションは彼らにとって6回目の打ち上げにあたる予定で今年中に実施される計画。

(編集部注)その後本ツイートには、Rocket Labから「今月はテストを行いませんが、打ち上げ実験には確実に近づいています」という連絡があったと付け加えられている。

複数台のロケットを手に入れること、何か問題が起きてもMoon Expressは複数回チャレンジすることができる。計画では、Rocket Lab USAのElectronがMX-1Eを地球の軌道まで運び、そこでMX-1Eをロケットから切り離し、それ以降はMX-1Eが機体に取り付けられたロケットエンジンを使って月まで移動していく。

そして4日間におよぶ移動の後、MX-1Eは月面に着陸する予定だ。他のチームは探査機を使って500メートルの移動という条件を達成しようとしているが、Moon ExpressはMX-1Eのスラスターを使って500メートル先の地点まで機体を”跳ね”させようとしている。

Moon Express lander on moon

X-Prizeの結果はどうあれ、Moon Expressは月に行くことを何らかのビジネスと繋げようとしている。彼らはいくつもの月面でのロボットミッションを計画しているほか、長期的にはロケットの燃料に変えられる月の水など、月の資源を調査・調達しようとしている。

「月には1兆ドル分の貴重な資源が存在すると分かっており、今後私たちは急成長しているテクノロジーを使って、これまで超大国しかなし得なかったことを起業家ができるようにし、全ての人類のために月の資源を開放するチャンスを掴めるかもしれません」

なお4500万ドルの民間資金は、Moon Expressのオペレーションや製品のテスト・開発、打ち上げ費用などにあてられる予定だ。また同社は既にフロリダ州のケープカナベラル(Cape Canaveral)宇宙ロケット打ち上げ基地17、18のリノベーションに着手しており、今年中の打ち上げに向けて宇宙船のテストやオペレーションがこちらで行われる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ユーザーがいる場所まで給油車をお届け ― Yoshi.Incが210万ドルを調達

yoshi_car

Yoshi.Incは、どこにクルマを停めていてもそこまで給油車を運んでくれるサービスを提供するスタートアップだ。同社は現地時間12日、合計で210万ドルの資金調達を完了したと発表した。同社はこの資金を利用して、給油デリバリービジネスを新しい地域へと拡大するとともに、自動車関連の新しいビジネスを展開していく。CEO兼共同装用者のNick Alexanderは、「ガソリンスタンドやオートショップで行うサービスを、ユーザーがその時にいるところで、かつ競争力のある価格で提供します」と説明する。

今回の調達ラウンドをリードしたのはZhen Fundで、その他にもJoe MontanaのLiquid 2 VenturesやY combinatorパートナーのAli Rowghaniを初めとする個人投資家も本ラウンドに参加している。Yoshiは2016年のY Combinatorバッチにも参加している。

現在Yoshiのサービスは月額20ドルで利用でき、それに別途で給油した分のガソリン代金がかかる。また、洗車サービスやオイル交換、ワイパー交換などには追加料金が発生する。これらのサービスはすべてYoshiのアプリで注文可能だ。YoshiはFirestone(北米ブリジストンのタイヤ製造・卸売事業子会社)と提携を結んでおり、無料でタイヤの空気圧をチェックするサービスを提供しているほか、ユーザーはYoshiのアプリを通して新しいタイヤを購入したり、タイヤ交換サービスを注文できるようになっている。

Palo Altoを拠点とするYoshiは、アトランタ、ナッシュビル、ベイエリア近郊でサービスを提供している。同社の競合となるのはMobile Fuel、Fild、WeFuel、Purpleなどのスタートアップや小規模ビジネスだ。しかしAlexanderは、他社が提供するサービスの種類はYoshiほどに充実していないと語る。

今回の調達ラウンドに参加したJoe MontanaはYoshiのチームを賞賛し、「Yoshiがこれからも順調に成長する姿を見たいものです;彼らはこれまでこの業界をリードしてきましたし、これからも現状のマーケットを攻略しつづけ、さらに将来のマーケットにも応用可能な戦略を見せてくれることでしょう」。

Alexanderによれば、同社は今回調達した資金を利用して、人材の強化、サービス提供地域の拡大、サービスの安全性の向上を図る。また彼は、Yoshiが成長できたのは同社の紹介制度によるところが大きいと話している。同僚や家族を紹介したユーザーにはポイントが配布され、そのポイントを使って無料で給油をしたり、クルマのパーツを購入できるようになっているのだ。
ただし、Yoshiの給油トラックとスタッフを出動させるためには、1人のユーザーからの注文だけでは不十分だ。サービスが提供されるのは、その地域で少なくとも3人のユーザーからの注文が集まったときに限られている。Yoshiのアプリはコンシューマー直結型のアプリではあるが、エンタープライズ向けサービスの拡大も目指している。従業員のクルマや営業車に給油をしたり、パーツの交換をするなどの利用法がある。
サービスの会員費や利用料金を一部援助する企業もあれば、単にYoshiの利用を推奨するにとどまる企業もある。企業向けサービスが生まれた背景として、給油のために仕事に遅刻する従業員がいるという事実があった。また、クルマの不調のせいで気が散ってしまうこともある。Yoshiの「一度注文すれば、あとはおまかせ」サービスを推奨することは、従業員のプロダクティビティを向上することにもつながるのだ。
(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

宮崎県産の野菜を1時間で都内に届ける「VEGERY」が正式ローンチ、東京・根津にはリアル店舗も

ベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一朗氏(左)とVEGEO VEGECO 根津店長の杉本恭佑氏(右)

ベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一朗氏(左)とVEGEO VEGECO 根津店長の杉本恭佑氏(右)

TechCrunchの読者であれば、日用品のデリバリーサービスである「Instacart」については聞いたことがあるだろう。ユーザーがオンラインで注文した日用品を、Shopperと呼ばれるクラウドソーサーがスーパーで購入してユーザーのもとにすぐ届けてくれるサービスだ。また2016年には日本でもフードデリバリーサービスの「UberEATS」が上陸した。こちらもUberが集めたクラウドソーサーが、ユーザーの注文した飲食店の料理を自転車やバイクを使って届けてくれるというものだ。

これらのサービスは普段、クラウドソーシングのように余剰リソースを用いた「シェアリングエコノミー」という観点で語られることが多いが、もう1つ重要なのは、注文してすぐにモノを届けてくれるという「オンデマンド」を実現したデリバリーサービスであるということだ。今日はそんなオンデマンドなデリバリーサービスがスタートしたので紹介したい。ベジオベジコは1月13日、野菜を中心とした生鮮食品のデリバリーサービス「VEGERY」の正式サービスを開始した。App Storeより無料で専用アプリをダウンロードできる。

VEGERYは同社が直接契約した農家が生産する宮崎産の野菜を中心とした生鮮食品のデリバリーサービス。ユーザーがアプリ上で野菜を選択し、届けて欲しい時間帯(最短で約1時間)を選択すれば、同社のスタッフがその時間帯に自宅まで野菜を届けてくれるというもの。商品代に加えて390円の送料がかかる。

screen696x696

「VEGERY」のアプリ。グッドパッチがUIを担当した

2016年11月からステルスでサービスを開始。サービスが好調だったことから(ノンプロモーションながら1カ月以内のリピート率が30%。毎週商品を買うユーザーが全体の25%。コンバージョン(ここではアプリを立ち上げて購入する割合を指す)は10%、単価で3000〜4000円という数字が出ているのだそう)本日正式なサービスローンチに至った。

ローンチ時点では約90種類の野菜および加工品を販売する。サービス提供エリアは渋谷区、世田谷区、港区、目黒区の一部のエリア。渋谷に自社の配送のセンターを立ち上げており、約15人のスタッフが、自転車やバイクで配送を行う体制を作った。4月をめどに都内23区をカバーし、Androidアプリもリリースする予定だという。

VEGERYのローンチにあわせて、東京・根津にリアル店舗(超オシャレな八百屋だ)「VEGEO VEGECO 根津」もオープンしている。また、B Dash Ventures、ドーガン・ベータ、宮崎太陽キャピタルからシードマネーを調達したことも明らかにしている。金額は非公開としているが、1億円程度とみられている。

ベジオベジコではこのシードマネーをもとに、都内の配送センターや宮崎での集配体制など物流オペレーションを自前で(ただし宮崎〜東京の配送については運送会社と提携)構築しているという。

ベジオベジコはECサイト構築などを手がけるアラタナと、同社が立ち上がった宮崎県の地元企業との合弁で2011年にスタートした会社(当時の社名は「あらたな村」)だ。代表取締役社長の平林聡一朗氏はアラタナのインターン経験を経て、3年前に代表に就任。VEGERYの前身である宮崎県産野菜の定期購入サービスを開始した。その後アラタナは2015年3月にスタートトゥデイの子会社となったが、そのタイミングで株式の一部をアラタナ代表取締役社長の濵渦伸次氏が個人で譲受。グループから独立して事業を展開してきた。

当初は「スムージー用の宮崎県産野菜」とうたい定期購入サービスを展開していたベジオベジコ。芸能人やモデルなども利用していたそうだが、よりスケール感のあるビジネスを検討した結果がこのVEGERYなのだそう。「日本はコンビニエンスストアもどこにでもあって便利だが、いざ東京で新鮮な野菜を買うのはなかなか難しい。宅配サービスもあるが時間がかかるし、欲しい野菜だけ買えない。Instacart的に『欲しいモノだけ1時間で届く』というサービスができないか考えていた」(平林氏)

ビジネスのスケールを考慮し、物流まわりのオペレーションも自前で整えた。実はデリバリーサービスの多くは、利益を出すのが非常に難しいという。原価率3割程度のピザの宅配ならまだしも、原価率6割、7割のネットスーパーでマネタイズしようとすると厳しくなる。スタートアップとしては大きな投資が必要となるが、将来的なスケールやコストを考慮し、自前で物流サービスを構築するというのが最良だと判断したという。

また、根津にオープンしたリアル店舗も今日から営業中だ。インテリアデザイン監修をワンダーウォールの片山正通氏、ロゴ等のキービジュアルをアートディレクターの平林奈緒美氏が担当した。リアル店舗はブランディングの意味合いも強いようだが、今後は店舗を拠点に配達エリアを拡大することなども検討しているという。

海外を見れば「Amazon Fresh」のような生鮮食品の即時デリバリーサービスも登場しているが、VEGERYではまず野菜の種類を拡充し、その後食肉など取り扱い領域を拡大していく予定だという。ベジオベジコでは当面の目標として月商1億円という数字を掲げている。

VEGEO VEGECO 根津の店内に並ぶ野菜

VEGEO VEGECO 根津の店内に並ぶ野菜

ヘルスケアスタートアップのFiNCが20億円を調達 ーーAI活用の新アプリ開発に注力

finc

法人向けのウェルネス経営サービス「FiNC for Business」、個人向けのダイエットプログラム「FiNCダイエット家庭教師」などを手がけるFiNCは1月13日、カゴメ、第一生命保険、未来創生ファンド(トヨタ自動車・三井住友銀行などが主要投資家のベンチャー投資ファンド)、明治安田生命保険相互会社、ロート製薬および個人投資家から合計20億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達した資金は人工知能(AI)領域へのさらなる投資や、2017年内にリリース予定のコンシューマー向けウェルネス・ヘルスケアプラットフォームアプリ「FiNC」の開発およびマーケティングに充てるとしている。

最近ではフィットネス用ウェアラブルデバイス大手のFitbitとの連携を皮切りにカゴメ、東京急行電鉄との連携も発表するなど、法人向けサービスの展開を積極的に推し進めていたFiNC。各サービスでのユーザー数や売上高などは非公開としているが、売上高の比率は法人、個人向け事業でそれぞれ半々程度だという。

新アプリのFiNCは、人工知能を活用したパーソナルヘルスケアアプリ。“キレイになれる キレイが続く”がコンセプトとなっており、人工知能による専属コーチ(AIパーソナルコーチ)が、個人に最適化されたヘルシーレシピやフィットネスプログラムを教えてくれるという。また、著名人や専門家、友人のフォロー機能も搭載予定とのことで、フォローした人たちから美容・健康に役立つ情報やアドバイスが得られるとしてる。サービスは無料で利用できる予定。新アプリの開発を通じて、法人向けサービス(BtoBtoEで提供する従業員向け健康管理アプリ)の機能強化も図るとしている。

先行して提供しているFiNCダイエット家庭教師などもすでにAIを活用してユーザーに対するコーチングを行っているが、今後は食事の画像解析、姿勢の画像解析、フィットネスプログラムのリコメンド機能の精度向上などを通じてAI領域の強化も進める。これにより、ユーザーのお悩み、症状、ライフスタイル、体重・睡眠・歩数などのデータを複合的に解析。コーチングの精度向上を狙っていく。

 

不動産データのHouseCanaryがGoogle元CEOのエリック・シュミットなどから3300万ドルを調達

castle-house

HouseCanaryによれば、米国の住宅市場は30兆ドルもの規模をもつが、個々の住宅がもつ価値を表したデータはいまだ不正確なものだという。不動産スタートアップのHouseCanaryは自分たちであればより良いデータ分析ができると信じており、今回の資金調達ラウンドにも参加したEric SchmidtとKobe Bryantなどの投資家から信頼を獲得している。

「(住宅市場に関するデータの洗練さ)は、株式市場のそれと比べて25年ほど遅れています」とHouseCanary CEOとJeremy Sicklickは話す。HouseCanaryが目指すのは「米国市場で最も正確に住宅のバリュエーションをする」ことだ。

HouseCanaryは機械学習と包括的なアルゴリズムを駆使し、1億軒もの住宅価値の評価と予測をするデータビジネスを構築した。彼らのメトリックスには地域にある学校の数、就労のしやすさ、犯罪率などが含まれている。

HouseCanaryのターゲットは不動産投資家やクライアントのために住宅の価値を評価する人々だ。

Eric Schmidtのファミリーオフィスで不動産投資を担当するLauren Pressmanは、「不動産に関するデータが発行されるのは年に4回か1回の場合がほとんどです。そのため、不動産投資家は古くなったデータや不正確なデータを基に意思決定するしかありませんでした」と語る。「HouseCanaryが住宅価値の評価プロセスからヒューマンエラーやバイアスを除くことで、先の不動産市場の急落で私たちが経験したことを避けられるのではないかと期待しています」。

Europlay Capital Advisors CEOでHouseCanaryへの出資者でもあるMark Dyneは、「(HouseCanaryは)古びた不動産業界をディスラプトできる大きな可能性を秘めた企業です。データは貯めるだけでは十分ではありません ― それをごしごしと擦り、キレイにし、マッチさせ、洗練されたアルゴリズムに通してやる必要があります」。

サンフランシスコを拠点とするHouseCanaryの創業は2014年で、これまでにシードラウンドでBasepoint VenturesやBryant Stibel Investmentsから資金を調達している。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

暗がりでも読み取れるバーコードスキャナー「Scandit」が750万ドルをAtomicoから調達

scandit-case-display-img

何らかの理由で、エンタープライズ、SAAS、フィンテック、ロジスティクスの分野でスイス出身のスタートアップが評価を得ている ― その好例が、チューリッヒで数年前に創業したScanditだ。彼らのアイデアはとてもシンプルである。バーコードを高価な専用スキャナーで読み取るのではなく、スマートフォンのカメラで読み取るための豊富な種類のハードウェアとソフトウェアを提供するというものだ。2012年にTechCrunchでScanditを紹介したビデオはここにある。しかし、このビデオを観てもらうと分かるように、今のScanditはバーコード読み取りの精度が驚くほど高くなっている。

それを踏まえれば、彼らがロンドンを拠点とするVCのAtomicoからシリーズAで750万ドルを調達したことにも納得がいく。

Scanditはソフトウェア・プラットフォームと頑丈なスマートフォン用のケースを提供している。Motorola、Honeywell、Zebraなどが提供する専用のスキャナーと高価な永年サポート・パッケージにとって大きな脅威となるプロダクトだ。

Scadit CEO兼共同創業者のSamuel Muellerは、「少数の企業がシェアの4分の3を握っています」と話す。つまり、この業界をディスラプトする機は熟しているのだ。

今のところ、HomeDepot、Macy’s、GE Healthcare、Coop Group、PostNL、Shell、Verizonなどの企業がScanditを利用しており、これらの大企業がScanditのアイデアを気に入っていることがこのリストから伺える。

Scanditはとても高度なスキャニング技術を持ちあわせており、バーコードから2メートル以上離れた暗がりでもそれを読み取ることが可能だ。同じことを従来のスキャナーで試してみるといい。また、ScanditはスキャナーSDKも提供しており、サードパーティーのディベロッパーが自身のアプリにスキャン機能を組み込めるようにもなっている。さらに、Scanditの「Flow」プラットフォームにはユーザー・マネジメント機能、デバイス・マネジメント機能、アップデートのプッシュ通知機能、分析機能が備えられている。

Scanditは今後、USやヨーロッパに新しい営業拠点を構えて海外向けビジネスを強化する構えだ。

Scanditの創業は2009年で、創業メンバーはETH Zurich、MIT、IBM Researchなどでリサーチャーとしての経験を積んだ博士たちだ。

編集部注:VerizonはAOL及びその傘下にあるTechCrunchの親会社である。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

社員のパフォーマンスを可視化する目標・評価管理サービス「HRBrain」が資金調達、正式版も公開

hr-brain

半期、あるいは年に1回は上司と仕事の成果を確認し、人事考課を受ける人も多いのではないかと思う。社員にとっては昇給や昇格に影響する点で重要だが、会社にとっても配置転換などの人事戦略を立てるのに重要な指標となる。モスキートーンが提供する「HRBrain」は、社員の目標と評価をクラウドで一元管理するためのサービスだ。本日、モスキートーンはジェネシアベンチャーズとBEENEXTから数千万円規模の資金調達を実施したことを発表した。また、資金調達と同時にHRBrainの正式版も公開した。ちなみにジェネシアベンチャーズはサイバーエージェント・ベンチャーズの元代表取締役社長、田島聡一氏が新たに創業したベンチャーキャピタルで、モスキートーンへの出資が第1号案件となる。

HRBrainを利用するには、まず初めに組織の部署や役職、各社員の情報を登録する。社員の情報は1名づつ入力することも、エクセルシートをアップロードして登録することも可能だ。会社によって目標管理の方法は異なるだろう。HRBrainでは目標管理のためのテンプレートを用意していて、OKRや360度評価などに対応している(OKRは「Objective and Key Result:目的と主な結果」の意味で、グーグルなどで用いられている目標管理の手法だ)。

企業はテンプレートをカスタマイズして利用することができる。また、人事情報はセンシティブな内容を含むため、HRBrainでは被評価者に評価者のコメントなどを表示するかどうかや社員の評価結果の閲覧権限など細かく設定することができる。設定が完了したらあとは、期首に各社員が目標を入力して提出し、期末になったら担当者が評価を入力するサイクルを行う流れだ。

okr

OKR用の目標シート

 

モスキートーンのファウンダーで代表取締役の堀浩輝氏はサイバーエージェントのAmebaの事業部長を務めた経歴を持つ。そこで組織の目標管理の難しさを体験したのがHRBrainを開発したきっかけという。会社が小さいうちは紙やエクセルシートでも十分だが、50名以上の組織になってくると管理の手間が増えてくる。会社では人事異動で組織編成が変わることもあるが、紙やエクセルだと社員の過去の情報にアクセスしにくい。HRBrainはこうした人事考課の作業を効率化するために開発したと堀氏は言う。

社員のモチベーションアップに活かす

人事考課や目標管理の分野でサービスを提供するスタートアップには他にも人材周りでサービスを提供する「CYDAS」や社員の顔と名前を軸に置く人材マネジメントサービス「カオナビ」などがあるが、HRBrainの利点は人事データを活用できることと堀氏は説明する。HRBrainでは、クラウド上に集約した人事データを分析することで、例えば社員の自己評価と評価者からの評価の乖離が大きい社員を特定することができる。乖離の原因は社員の自己評価、あるいは評価者の評価が甘いケースなどがあるが、いずれにしろ被評価者と評価者の目標のすり合わせや評価基準の設定が十分にできていないことが考えられる。優秀な人材を正当に評価していないのなら社員のモチベーションを下がり、最悪離職することにもなりかねない。HRBrainのアナリティクス機能は部署ごとや社員ごとの視点からも、全社的な視点からも人事評価を見ることができ、 従業員の評価設計や適材適所の配置転換、育成計画といった人事戦略に役立てることができると堀氏は言う。

15991493_1626859897340545_1109571602_o

HRBrainのアナリティクス機能

モスキートーンは2016年3月に創業し、スタートアップアクセラレーター「TECH LAB PAAK」の第5期の参加企業だ。2016年9月に開催された「TECH LAB PAAK」のデモデイではTechCrunch Japan賞を受賞した。HRBRainは2016年11月からベータ版をリリースしていて、すでに十数社が利用しているという。HRBrainは本日、正式版をリリースした。料金体系はユーザー数別の従量課金モデルで、1ユーザーあたり600円から900円だという。

「会社にとって重要なのは社員のパフォーマンスであり、多くのことは社員のパフォーマンスを引き出すための手段です」と堀氏は話す。HRBrainでは一番重要なパフォーマンスを測り、それを他の指標を比較することで社員のスキルやカルチャーフィット、モチベーションが分かるようにしたいと堀氏は言う。HRBrainで社員のパフォーマンスの領域を抑えたら、ゆくゆくは周辺領域である労務管理や給与管理にも展開していく計画だと堀氏は話している。

成功と失敗は「紙一重」ではない——投資家が語ったスタートアップの“光と影”

tct-ls01

スタートアップ、起業、ベンチャー――最新テクノロジーと親和性の高いウェブメディアだけでなく、最近ではテレビなどでも成功事例が華々しく取り上げられるようになったが、そんな成功の裏には失敗もある。光と影、表裏一体なのだ。とはいえ、その結果に至る要因を探ると、紙一重ではないことが見えてくる。

2016年11月17日から18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch TOKYO 2016」のプログラム「投資家から見たスタートアップの『光と影』」では、グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏とiSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏がパネルディスカッションを行った。

「資本施策」「人事・労務」「パートナー」「学生起業」「イグジット」「投資家」の6つの側面に、“光”を当てられた影。見えてきた「起業家たちの心がけるべきこと」とはなんだったのだろうか。

不確実性を恐れるな。シェア、バリュエーション、事業計画は綿密に

最初のテーマに選ばれたのは「資本施策」。なにが良くてなにがいけないのか、陥りやすい罠とはなにかを今野氏、五嶋氏が投資家という立場で語った。

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

「資金供給プレーヤーは増えているため、調達できる金額は上がってきている」と今野氏。「とはいえ、ステージに合った金額で集めていかないと、次のラウンドでの調達が難しくなる」という。

「例えば、コンセプトの段階で期待値の高さから、数十億円の時価総額で投資家が投資をしても、時間の経過とともに期待値に実績が追いついてくるかどうかが次第に明らかになってくると、次のファイナンスで身動きが取れなくなります他方、早期の段階で非常に多くの割合の株式を外部に希薄化してしまい、それ以上の希薄化を防ぐために、事業計画と資本政策やバリューエーションの相関性を説明できないプレゼンテーションを聞くと、『ああ、こういう資本政策をしてしまうリテラシーの持ち主なんだな』と考え、その経営者は見切られてしまいます」 (今野氏)

五嶋氏も「スタートアップは、不確実性があって当然。でも、『将来へのビジョン』が抜けていてはダメ。資本政策と事業計画をバラバラに考えている起業家をかなりの頻度で見るが、『シェア』『バリュエーション』『事業計画(KPI)』を連動させ三位一体として考え、パワーポイントで1枚のグラフにまとめられる程度の計画性必要じゃないでしょうか。そうすれば不確実性に対応した、そのときどきに合った資本施策を検討できます」と補足した。

学生のうちに起業したほうが成功する?

「人生のできるだけ早いうちに起業という経験をしておいたほうがいい」との風潮がある昨今。果たして、デメリットはないのだろうか。

「孫正義氏やマーク・ザッカーバーグ氏などの例もあるので、いいも悪いもない、と思っています」と語り始めた五嶋氏。「とはいえ、投資案件としては『キツい』場合がほとんどです。体感的に成功する確率が低いから。そもそもビジネスモデルが『人材』か『イベント』多いというのも、投資を難しくしている要因のひとつです。加えて、上下関係をうまくコントロールできない、という問題であったり、個人のビジネス能力ではなく友情をベースにして仲間を集めてしまう、といった『学生起業あるある』な問題で、事業が崩壊しやすい。少なくとも私自身は、『若いうちにどんどんやったほうがいい』と焚き付ける立場ではないかなぁと思っています」と持論を展開した。

モデレーターを務めたTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が「『金をやるから起業しろおじさん』もいましたよね」と挟むと、「サポートするのであれば、最後までサポートしてあげて欲しいですよね」と五嶋氏は付け加えた。

今野氏は、昔と比べ、資金調達のことも含め情報を比較的容易に得られるこの時代にあって「『こういう事業計画で起業するんですけど、どうやりましょうか』という“勝つ”ための相談なら乗る。でも、起業しようかな、どうしようかな、と悩んでいるのであればやめたほうがいい」と活を入れた。

さらに、「今はどうしようか悩んでいるけれど、将来起業したいというのであれば、まだ従業員規模が数十人で、経営者と経営判断を間近に見られるスタートアップ企業にジョインしてみれば?」と勧める。理由は「起業家の経営手腕や苦悩を見られるから。社会人経験のないところからいきなりはじめるより、実例を目の当たりにしておいたほうが、自分が同じような壁にぶち当たった際、『ああ、これか』と納得できるようになる」と説明。加えて、「起業して失敗したとしても、うまく失敗してほしい。クローズの仕方が上手であれば、2回目、3回目が必ずあるので、そこは諦めないでほしい」と会場内で起業しようとしている若者たちにエールを送った。

……ときれいにまとまるはずだったのだが、岩本から「学生起業の失敗で一番最悪のパターンは?」と聞かれた両氏はそれぞれ「行方不明」「仲間割れ」と即答。会場には笑いが起こっていたが、最悪パターンにだけはならないようにしよう、と心に誓った人もきっといただろう。

世の中の優秀な人材の99%は大企業に、残り1%を見逃すな

話は「人事」と「労務」に。採用関連で相談を受けることも多いというモデレーターに対し、「はっきり言ってしまえば、『スタートアップには新卒でも中途採用でも、優秀な人は来ないという前提で採用活動をする必要があります」と五嶋氏。その理由を聞かれると「実際に大学時代から優秀な人まず大企業に就職しているでしょう?」と質問で返し、会場をうならせた。

とはいえ、次のようにも補足した。「現実として、日本では優秀な人材のほとんどは大企業を目指し、大企業に入社し、大企業から出てきません。でも、ごくまれにそうではない人材もいる。優秀な人の中の1%くらいでしょう。変人ともいえます。そういう人材を見極めて、絶対に逃さないことがスタートアップの採用には大事」(五嶋氏)

今野氏は「スタートアップでは、スーパーマンのような人を想定したあらゆるスキルを盛り込んだ募集要項を記載することが多い。でもそんな人はいない」と、採用がうまくいかない原因を一刀両断。その解決法として「ひとりひとりのジョブディスクリプションを明確にして、募集要項に反映させること」を挙げた。そして、次のような注意点も加えた。「創業当初は創業者の持つアントレプレナーシップが必要かもしれませんが、人材募集をしている、ということはステージがもはや組織化のフェーズに進んでいるんです。それにもかかわらず、社長がオペレーションに関わる前提で現場レベルの人を採用し過ぎると社長のキャパシティがボトルネックになり、むしろ企業の伸びは失われます。そして、その段階に来たのであれば、社長はオペレーションに携わるのをやめましょう。それも成長を止める一因になるからです」(今野氏)

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

労務に関しては、「多くのことで周りの目が『あそこはスタートアップだから』と温かい目で見てくれるかもしれないが、法律はスタートアップも大企業も関係ないので、法律をしっかり学び、労務マネジメントの知識を持ってほしい」と五嶋氏。今野氏も「レイヤーが3つ(編集注:経営者、マネージャー、現場の3レイヤーで、経営者が直接全ての業務を把握できない規模になってからということ)ほどの規模になった際、見ていないところで“何かが”生じがちなので、時間を捻出して対策を講じておくといいですね」とアドバイスした。

「目指せないM&A」より計画を立てて最善を尽くす

「イグジット関連で『こういう考えは改めたほうがいい』ということについて」話題が変わると、「IPOの目的のひとつは資金調達。一般的に資金調達した場合は事業に投資したりM&Aをしたり将来の成長に当てますよね。上場時の事業計画と資金調達後の資金使途の整合性をきちんと取る必要があるのではないか」と今野氏。「上場したときにたかだか数億程度の営業利益では、将来のための投資をするとすぐ吹っ飛んでしまう規模だから、マーケットデビュー時のストーリー作りは大事」と続けた。

五嶋氏はそれを補完して「成長の絵が全く描けていない中で、創業者のイグジットのための『上場ゴール』を目指す人もおり、僕からはそれをいいとか悪いとかは判断しません。市場の投資家が決めることですから。ただ、上場後に『やっぱり業績を下方修正します』というような事態が最近頻発していることは、正直違和感を感じますが、業績が計画に届かないのは、ある意味仕方ない、それは結果ですから。でも「市場との対話」は?「は? と問いたいですね。業績計画を含む市場との対話、事業の成長、本当に最善を尽くしきったたかどうか、それが問われるのではないかと思います。市場を軽視し、成長への志がない上場を『上場ゴール』と呼ぶのです」と語った。

また、M&Aに関して今野氏は「IPOのセカンドオプションとして考えるのはやめたほうがいい。市場環境や競争環境の変化によって、その事業のサステナビリティや産業のライフサイクルが変わったりするから」と語り、五嶋氏は「M&Aは相手あってのもの。『芸能人のだれそれさんと結婚することを目指します!』と言うのと『Googleに買ってもらうことを目指します!』と言うのはなんら違いがなく、数十億円規模のM&Aになると買い手も限定的で、現実として能動的に目指せるものではない。能動的に目標にできるのは先ずIPO」とバッサリ切り捨てたが、「M&Aによるイグジットを検討する局面が訪れた時には、みんながハッピーになれるようにはこだわってほしい」と応援する言葉も添えていた。

互いに対するリスペクトが成功の鍵

5つめのテーマは「パートナー」。特に大企業が新規事業としてスタートアップと組む場合を前提に「べき・べからず」が論じられた。

今野氏は「大企業のオープンイノベーションの流れを掴んで成功にこぎつけるスタートアップは、大企業側のキーマンと繋がっている。その見極めが重要。それから、大企業のもつデータやアセットを最適化するテクノロジーを持っているスタートアップは、複数の大手企業からのそれぞれ受託案件をこなすような事業計画を立てていることがあるが、その時点ではそれで良いとしても、大企業側からすれば、あるタイミングから自分たちのデータなりを出すのであれば資本も入れたいと思うはず。将来的に上場したいという思いを持つ起業家は、ではその場面になったらどうするのか、という踏ん切りを付ける時が必要になるでしょうね」と2つの注意事項を挙げた。

「期待値コントロールを失敗させない」と語るのは五嶋氏だ。「大企業からは『全面的にバックアップしますよ、ふんわり』、スタートアップからは『なんでもやります、ふんわり』では具体的ではない。到達すべき数値目標、撤退ラインをはっきりさせていない場合が多いので、それぞれの役割分担をはっきりさせ、期待値コントロールをしっかりする必要がある」と説明。

さらに重要なこととして「根底のところで大企業の中の人とスタートアップの人はお互いに尊敬しあっていない」とズバリ。「お互いに尊敬の念を持たないと絶対に成功しないので、いいところを探し合って学び合ってほしい」とアドバイスした。

耳の痛いことを言う投資家を大切に

資金調達という面でのパートナーを語る上で、避けられないのは「投資家」についてだろう。最後に、組むことによって失敗してしまう、あるいは成功できる相手=投資家について2人に考えを聞いた。

五嶋氏はこれまでの経験から「お金を使うだけ使って売り上げが立たず、資金が足りなくなってしまうのは、シードの時期しっかりとした事業計画とこれに連動する資本政策・バリュエーションを詰めていないから」と警告。「最初に事業計画が無理なものかどうかを見極めない投資家、見たことのない桁のお金を手にして浮かれてしまう起業家、その両方に問題がある。よく確認もせずにお金をくれるより、『ここはどうなっているのか』『こうするべきなのではないか』と耳が痛くなるようなことを言ってくれる、相談に乗ってくれる投資家を大切にしてほしい」とアドバイスした。

そして、シード時期の起業家に投資をしていない今野氏からの次のようなリクエストでトークセッションは締められた。

「シードの段階で相談に来てください。『ここではこのようなバリュエーションで集めたほうがいい』など具体的でストレートな話ができるのは、利害関係のない間だけですから。できるだけ早いステージのうちにみなさんとお会いしたいですね」(今野氏)