クラウドロボティクスプラットフォーム開発のRapyuta Roboticsは“物流ロボのサブスク化”を目指す

Rapyuta開発の倉庫用の“協働型”ピッキングロボット

クラウドロボティクスプラットフォーム「rapyuta.io」を提供するRapyuta Robotics(ラピュタ・ロボティクス、以下Rapyuta)は2月17日、物流倉庫大手の日本GLPのグループ会社で配車支援サービス「配車プラス」提供のモノフル、ならびに産業用ロボットなどの製造を行う安川電機と資本業務提携を締結したことを発表した。リードインベスターはモノフル。また、Rapyuta Roboticsは同日、物流施設の自動化に向けた「RaaS(Robot as a Service)」提供のプラスオートメーションとのパートナーシップ構築についても併せて発表している。

Rapyutaはチューリッヒ工科大学からスピンオフした大学発ベンチャー。2014年7月設立の同社はEU出資の研究プロジェクト「RoboEarth」出身チームにより日本で創業された。

もともとはドローンのプラットフォームを開発していたが、市場が未成熟だったため、ピボット。現在の主軸は物流だ。Rapyutaの代表取締COO、クリシナムルティ・アルドチェルワン氏は、EC市場が急成長、物流の仕組みが複雑化、そして慢性的な人手不足から、「ロボットによるオートメーションのニーズが非常に高まってきている」と話す。「だが、現場のニーズにオートメーションの技術が追いついていないというのが現状」(アルドチェルワン氏)

同氏いわく、既存のソリューションは、「スケーラビリティ」と「柔軟性」が欠けている。そのような課題の解決のためにRapyutaが開発しているのが、rapyuta.ioだ。

rapyuta.ioを使えば、自律移動ロボットや自動フォークリフト、ロボットアームなど、多種多様、かつ複数のロボットを、クラウドから一括管理し、協調制御や、ロボットナビゲーションなどを行うことができる。その他、ロボットソリューションの効果計測シミュレーションや、ソフトウェア・アップデートを含めたリモートメンテナンス機能もある。

rapyuta.ioの最大の利点は、インフラ構築の手間が省けることにより、すぐにロボティクスソリューションの開発を始められること。そして、サービスやデバイスのカタログが用意されていることにより、オープンエコシステムによるソリューション開発が可能で、「ユーザーが得意とする技術分野の開発に集中出来る」ことも強みだ。その件に関して、アルドチェルワン氏は「今後はエコシステム構築に注力していきたい」と言う。

「ロボットは、様々なハードウェアやソフトウェアの組み合わせでできる塊。1社で全て作ることは難しい。だから、色々な人が参加して、交換できるようなエコシステムは大事。ハードウェアの開発者やソフトウェアの開発者が、自分のハードウェアやアプリを入れる。それをエンドユーザーが使えるようにしていきたい」(アルドチェルワン氏)

Rapyutaでは倉庫用の“協働型”ピッキングロボット(AMR:Autonomous Mobile Robot)の開発も行い、商用化を進めている。同社いわく、既存倉庫に何も手を加えなくても導入できる点が特徴だ。

本日発表されたモノフルとの提携、そしてプラスオートメーションとのパートナーシップ構築の狙いは、大きな初期投資が必要とするため大企業しか利用することが出来なかったロボティクスによるオートメーションを、サブスク化し、提供すること。「将来的にはAMRのみならず、フォークリフト、アーム、AGV(無人搬送車:Automated Guided Vehicle)などの幅広いタイプのロボットを扱うレンタルサービスを提供することを視野に入れています」(Rapyuta)

また、安川電機の提携では、プラットフォームに接続されるロボットの種類を増やし、「複数ロボットの連携ソリューションなどの新たな付加価値を生み出すこと」を目指す。加えて「両社の提携により、柔軟性が高く優れたソリューションを人的資源及び財務的な余力が限られている中小企業も含めた幅広いお客様に利用されることを期待しています」(Rapyuta)

Rapyutaは2015年1月にCYBERDYNE、フジクリエイティブコーポレーション、ブイキューブ、そしてSBIインベストメントを引受先とするシードラウンドで3.51億円、2016年9月にSBIインベストメントと社名非公表の事業会社1社を引受先とするシリーズAラウンドで10億円を調達したことを明かしている。

「本気で世界シェア1位を取りにいく」Reproが4年ぶりの増資で約30億円を調達

Repro代表取締役の平田祐介氏(前列中央)と投資家陣

「前々期まで2期連続で黒字が続いていて、きちんと売上が立っていた反面、攻めの投資ができなかった部分もある。当初は赤字を掘って投資をすることに恐れもあったが、この1〜2年で自分の視座を2段階ぐらいあげることができ、前期は赤字になりながらも先行投資を進めてきた。今回の調達は自分にとって決意表明のような意味もある。世界シェア1位を本気で目指していきたい」

Repro代表取締役の平田祐介氏は自社の現状と展望についてそのように話す。同社は2月13日、YJキャピタルなどを引受先とした第三者割当増資とデットファイナンスを合わせて総額で約30億円を調達したことを明らかにした。

  • YJキャピタル
  • SBIインベストメント
  • NTTドコモ・ベンチャーズ
  • KDDI(グローバル・ブレインが運営するKDDI Open Innovation Fund 3号 )
  • DGベンチャーズ(既存投資家)
  • DG Daiwa Ventures (DG Lab Fund / 既存投資家)
  • ジャフコ(既存投資家)
  • みずほ銀行、三井住友銀行、三菱UFJ銀行、商工組合中央金庫(デットファイナンス)

Reproにとって外部からの資金調達は約4年ぶり。前回の調達は2016年3月まで遡る。2014年の設立後、翌年にアプリ分析ツール「Repro」をローンチ。最初こそ「全然売れなかった」ものの、マーケティング機能を搭載しアプリマーケティングツールへと進化したことで急成長を遂げてきた。

現在Reproのプロダクトは66ヶ国、7300を超えるサービスに導入されている。

2018年に平田氏に取材をした際にもT2D3(SaaSの重要指標で、サービス開始から3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と年々売上が成長する状態のこと)の軌道に乗り、事業が年々成長していることは聞いていたので、個人的には「次はエグジットのニュースかも」なんて考えもあった。

事実、もともとReproは2年で数億円規模のM&Aを目指すべく設立された会社であり、前回の調達後にM&Aの交渉を進めていた時期もあったという。

ただ、結果的にReproが選んだのは別の道だった。IPO路線へとシフトし、さらなる成長、ひいては世界シェア1位に向けて、人材採用や研究開発などへ積極的に投資を実行。今回の調達はその流れをさらに加速させるためのものだ。

マーケティングツールからCEプラットフォームへ

Reproは2016年にマーケティング機能を取り入れたことを機に、アプリマーケティングツールとして事業を拡大してきた。

特徴はデータの取得から加工、マーケティング施策へのアウトプットまでを一気通貫でサポートしていること。Reproを使えば、取得したアプリユーザーの行動・属性データをリテンション分析やファネル分析など様々な仕組みを用いて徹底分析し、その結果を基にプッシュ通知やアプリ内メッセージといったマーケティングアクションを実行するところまでをワンストップで完結できる。

この仕組みをベースに、近年力を入れてきたのが「チャネルの拡張」だ。2018年にスタートしたWeb版によって、アプリ・Web横断で施策を実施することが可能に。昨年からはCDP(カスタマーデータプラットフォーム)系の事業者と繋ぎこみを行い、オフラインデータへの対応も始めた。

オフラインもカバーすることで、OMO文脈の複合的な施策もReproでできるようになる。たとえばアパレルブランドの渋谷店でジャケットを購入したとしよう。その情報はPOSデータに入り、CDPを経由してほぼリアルタイムにRepro上にもあがってくる。

Repro上にはそのジャケットと相性が良いネクタイの情報があったので、ジャケットを購入した消費者に対して「先ほどは渋谷店でのお買い上げありがとうございました。店頭には置いてなかったのですがジャケットに合うネクタイがあるので、良かったらいかがですか」というメッセージをアプリに通知する。そんなことが可能になるのだという(この取り組みはまだ正式な商用化はしてないそう)。

チャネルの拡大により顧客層も広がってきた。当初はアプリを作っているIT系企業がほとんどを占めていたが、小売を始め、全国チェーン展開している企業、数十万人以上の従業員を抱えるエンタープライズへの導入も進んでいる。今後は金融や小売、外食などへ積極的に展開していく計画だ。

アプリのデータのみを扱うアプリマーケティングプラットフォームから、Webやオフライン、IoTなどのデータも取り込んだ上で、消費者1人ごとに最適なコミュニケーションを行えるプロダクトに進化したRepro。これを機にプロダクトの打ち出し方も「CE(カスタマーエンゲージメント)プラットフォーム」へとリブランディングしたことも明かしている。

AIの研究開発を加速、子会社設立で本格的なグローバル進出も

チャネルの拡大と並行して強化してきたのが「AIによる自動化」と「グローバル展開」だ。

Reproでは2018年7月に研究開発チーム「Repro AI Labs」を設立し、ユーザーとの適切なコミュニケーションに不可欠な“シナリオ設計”をAIが手助けする仕組みを開発。話題を集めた「少年ジャンプ+」との実証実験では、AIがアプリから離脱しそうな傾向にあるユーザーを予測し、プッシュ通知を通じてユーザーの離脱を防ぐ取り組みを行った。

このチャーン予測機能はすでに商用化済み。蓄積してきたデータとAIを活用して、プッシュ通知のタイミングをパーソナライズする機能や、優良顧客を予測する(たくさん課金してくれそうなユーザーを予測する)機能などを次々と手がけている。

「マーケティングオートメーション(MA)ツールという単語から多くの人が連想するのは、そのツールを買えばマーケティングが自動化されることのはず。でも実際にはめちゃくちゃ人間の手が必要なのが現状で、だからこそ市場が爆発的には伸びなかった。近年は本当に人間が介在せずにマーケティングを自動化することが技術的にも可能になりつつあるので、Reproでもそこを突き詰めていく」(平田氏)

パワーアップしたReproを引っさげ、2019年8月にはシンガポール子会社を設立。まずは東南アジアを軸にCEプラットフォーム領域でシェアを拡大するべく、本格的な海外進出を進めているところだ。

「2年で数億円規模のM&Aを目指す」からのスタート

今回の資金調達は上述した取り組みをさらに前進させることが目的だが、その意思決定に到るまでには様々なドラマがあったようだ。

冒頭で触れた通り、もともとReproは2年で数億円規模のM&Aを目指すことを目標に数人のメンバーが集まって立ち上げた。当初は苦戦し「いつ潰れてもおかしくない状況」に直面しながらも、PMFを達成。事業を成長軌道に乗せられた時には創業から3年が経過していたという。

「ある日創業メンバー全員から呼び出されて『平田、俺たち2年で数億円のエグジットを約束して集まったよね。でも現時点ですでに3年が立っている』という話になった。自分で会社をやっていたり、別のことを抱えながら2年間という約束で協力してくれたメンバーもいたので、そろそろM&Aに向けて動き出してくれということで、投資家とも相談しながら話を進めた」(平田氏)

当時のReproは売上が前年比で300%成長し、勢いに乗り始めていた時期。実際に数社から買収のオファーが届き、そのうちの1社に絞って数十億円単位の具体的な交渉も進めていたという。

「最終的に希望する金額と先方から提示された金額に少し開きがあった。死ぬ気でここまで会社を作ってきて、まだまだ伸ばせる自信があるし良いメンバーと一緒にやれてもいる。安売りするのは自分たちがやってきたことを否定している気もして、徹底的に話し合った結果、IPO路線に切り替えこのチームでさらなる成長を目指すことに決めた」(平田氏)

とはいえ、当初は頭で納得していても精神が追いつかない時期もあった。もともと2年間という前提で「毎日18時間くらい働いて目的達成してやるという気持ちだった」が、IPO路線に変えるということは当面の間CEOとして経営を担い続けることが基本となる。当初の想定より責任も重い。

悩みを抱えていた結果、事業は黒字を継続しているものの思い切った投資ができず、後から振り返れば機会損失や競合の参入を許すことにも繋がった。

「改めてIPOを目指す意義は何か、1年ほど前まで悩んでいた。その中で見えてきたのが、日本がこのままだと暗い国になってしまうのではないかということ。才能ある若い人材が夢や目標を語れなかったり、社会に出ることを危ないことだと考えていたり。これから人口も減りGDPも減少する中で、数少ない成長産業であるIT領域から外貨をしっかり稼げるサービスを出せないと、未来はもっと暗くなってしまう」(平田氏)

Reproは以前から複数の国にユーザーを抱えていて、国外でもニーズがあることはわかっていた。だからこそ「腹をくくって世界シェア1位を目指す」道を選んだ。「日本人は事例ができると強い。自分たちが良い事例を作れれば、もっと大きい産業でも海外で勝負をする起業家が増えるはず。だったら自分の余生をかけてやりきる意義もある」という思いもあった。

直近1年ほどは戦略的に赤字を掘りながら、人材採用を強化中。いよいよ自分たちの資金だけでは足りなくなってきたため4年ぶりの増資を決めた。

増資のテーマは「国内の盤石な体制を築いた上で、海外を攻めること」。今回のラウンドで3大キャリア(関連するVCも含めて)を仲間に招き、金融業界でDXを推進するSBIも株主に加わった。海外子会社にも積極的に投資を実行し、IPO時には少なくとも子会社単体でARR3億円以上を目指すという。

ちなみにメンバーは毎月10人前後増えているそうで、現在は約200名体制。エンジニア(Rubyのコミッターが7人いるそう)やReproのキモとも言えるCS部隊を中心に組織も強くなってきた。

今後は海外に開発拠点を設けグローバル規模で開発体制を強化するほか、シンガポール法人に続く新たな拠点の開設も計画しているという。

プロダクトとCS体制で東南アジアのシェア獲得目指す

Reproが勝負を挑むCEプラットフォームはグローバルの競争が激しい領域だ。平田氏が過去の取材でも名前をあげている「Braze(旧Appboy)」を筆頭に複数のプレイヤーが存在し、東南アジアにおいてもReproはかなりの後発になる。

その状況下においてどう戦っていくのか。1つのポイントは地域ごとのマーケターの成熟度とニーズの違いだ。

平田氏の話では米国はマーケターが成熟していて多くの担当者は自走できる。そのため自分がやりたいことが機能として実装されているのか、スペックが同じならどちらが低価格なのかといったような「プロダクトの機能面」で比較されることがほとんどだという。

一方で日本の場合、米国ほど個々の担当者にマーケティングの知識が浸透していないことが多い。だから機能面以上に「目標達成に向けて密にサポートしてくれるか」が重要なカギとなる。

過去に日本展開していた米国産のツールと比較しても「当時は機能面で2.5倍くらい先行されていた印象」(平田氏)だったが、周りからは“コンサルの域”とも言われるようなCSチームによる手厚い伴走支援によって、Reproは国内市場の競争に勝ってきた。

では東南アジアの場合はどうかというと「米国と日本のミックス」なのだそう。ツールの評価方法は米国に近く機能面がシビアに比較されるが、マーケターが成熟しているわけではないので伴走支援も欠かせない。それがネックになって先行して市場に乗り込んだ米国企業も現時点では苦戦している状況で、後発でも十分に付け入る隙があるというのが平田氏の見解だ。

「(CEプラットフォームも含めて)CRMの領域は日本人に向いている。市場の啓蒙から必要で、アドテクなどと比較して成長に時間がかかる一方、頑張ってやり続ければ確実に伸びる。リングに立ち続けて、死ななければ勝てる領域だということが少しずつ見えてきた」

「海外の競合も複数いるが、10年20年かけて本気でやり続ける起業家がどれだけいるかというと、ほとんどいないという感覚。だからこそ覚悟を持って耐え続ければ世界戦でも勝てる手応えはある」(平田氏)

もちろんCEプラットフォームとしてグローバルで覇権を握るにはプロダクトの改良も不可欠。これについてはAIによる自動化の推進などに加えて新たな試みも進めている。現時点で詳細は明かせないとのことだが「B2C企業向けの次世代CRM」の確立に向けて、現在のReproには足りていない要素を開発していく計画だという。

世界でトップシェアを誇るプロダクトを目指し、4年ぶりの増資を経て次のステージへと動き出したRepro。同社のこれからの動向に注目だ。

AIで採用候補者の入社後活躍や退職確率を予測する「TRANS.HR」、メルカリ小泉氏らから約5000万円の資金調達

「採用において主観的な意思決定が多い。“なんとなく”ではなく定量化したかった」

そう話すのは、機械学習の技術を用いることで、採用候補者が入社後にどれくらい活躍するのか、退職する確率はどれくらいなのかを予測する、ピープルアナリティクスサービスの「TRANS.HR(トランスエイチアール)」を開発するTRANS(トランス)で代表取締役を務める塚本鋭氏。

TRANSが経営者1000人を対象に行なった調査によると、「『面接での見極め』が自分は“平均以上”だと思うか?」という問いに対し、68%が「思う」と回答。そして、「『面接での見極め』が正しいか定量的に確認したことがあるか?」という問いに対し、89%が「ない」と答えた。

「経営には『ヒト、モノ、カネ』とあるなかで、一番『ヒト』の領域が定量化されていないと感じている」と塚本氏は言う。

さらに、同社が26歳から79歳の会社役員1000人を対象に2019年10月に実施したインターネット調査は、「前職で成績を残した優秀な人材を採用すれば活躍すると約7割が回答」、「しかし、転職前後で同じくらい活躍をした人は約3割しかいない」と結論づけた

例えば、膨大な従業員を抱える大企業の出身者が、たとえ優秀な人物だとしても、少人数で切磋琢磨しなければならないスタートアップにフィットするとは限らない。経営者らが直感的に“ハマる”と感じたとしても。そう塚本氏は話す。

塚本氏は東京大学の大学院で機械学習や大規模シミュレーションに関する研究に従事し、人工知能学会研究会優秀賞、東京大学工学系研究科長賞(総代)などを受賞した。大学院を修了後、野村総合研究所にコンサルタントとして入社、2013年にクラウドワークスに8人目の社員として参画し、2014年には同社のIPOを経験。同氏が2018年に設立したTRANSでは、「採用した人が活躍しない、すぐに辞めてしまう」といった課題をデータ活用で解決することを目指す。

TRANS.HRは、「未来予測に最適化」されているという、自社開発の適性診断「TRANS.適性診断」を用意している。その適性診断により、採用候補者が「感性」的か「理論」的か、など、6つの軸を評価し、先に診断を受けた現社員たちのデータと見比べることで、入社後活躍や離職確率を予測し、採用や配置などの判断基準として利用できる。特徴は、候補者の採用から退職までのHRデータを一元管理し分析できる基盤を用意し、特許申請中であるHR領域に特化した機械学習の予測アルゴリズムを持つこと。2019年6月のβ版公開から7ヵ月で、上場企業を中心とした120社以上に利用されるようになった。

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そんなTRANSは2月13日、メルカリ取締役会長の小泉文明氏、キープレイヤーズ代表取締役の高野秀敏氏、クラウドワークス代表取締役社長CEO吉田浩一郎氏らを引受先とする第三者割当増資、ならびに融資により、約5000万円の資金調達を実施したことを発表した。調達した資金をもとに、同社はTRANS.HRの正式版ローンチに向け、研究、開発を進める。

今後の展開について、塚本氏は「(TRANS.HRは)今は企業が自社に合う人材を判断するためのツール。だが、利用社数が増えていくと、各社の『活躍モデル』が構築される。応用すると、『ある応募者がどの会社に行くと一番活躍できるのか』が数値化できる」と説明。

「マッチングの制度を高めることにより、日本全体の生産性を上げられるのでは。労働人口が減っていく中で、社会全体での最適配置をどうやっていくか。そこがTRANSが抱いている一番大きな課題だ。データを使って最適配置が可能になるのではないか。そこに向けてトライしているところだ」(塚本氏)

顧客生涯価値を予測するロサンゼルスのスタートアップ「Retina」が新たに約2億7500万円を調達

顧客の行動と今後の生涯価値を冷静に見つめるロサンゼルス拠点のスタートアップ、Retinaが新たに250万ドル(約2億7500万円)を調達した。

画像:Mykyta Dolmatov / Getty Images

前回のシードラウンドで投資したロサンゼルスのベンチャーファーム、Crosscut Venturesが今回の新たな資金を支援した。この資金調達は、ロサンゼルスのスタートアップのエコシステムのおかげで、南カリフォルニアのエコシステムを拠点とする企業は資金調達に応じてくれる投資家を近隣で探しやすくなっていることを示している。

販売業者はRetinaのShopifyアプリを使ってデータを処理し、顧客生涯価値を予測することができる。Shopifyと統合していない販売業者は、自社が持っているデータをRetinaに処理してもらって顧客生涯価値を予測できる。Retinaはオンラインの顧客獲得や返金について20〜30%のコストダウンを販売業者に対して確約している。

Retinaの広報担当者によると、同社はリーセンシー、フリークエンシー、チャーンのレートの分析に基づいて顧客獲得の計画を立てるという。同社は、顧客データまたは支払いプラットフォームに記録されているこれまでのトランザクションのログを分析してデータを収集すると公表している。

Retinaの共同創業者でCEOのMichael Greenberg(マイケル・グリーンバーグ)氏は発表の中で次のように述べている。「すべての顧客は同等に獲得されるわけではなく、実際は顧客の大多数がビジネスの妨げになる。Retinaは、最初の購入の6カ月後ではなく直後に、さらに多くの買い物をする顧客を見つける。我々のクライアントはオンライン広告の費用を何百万ドルも節約しつつ、売り上げを伸ばしている。今回の資金調達により、我々はサービスを拡大し、2020年中にさらに多くのブランドに分析を提供する」。

Madison Reedなどのオンライン販売ブランドや、カミソリのサブスク企業のDollar Shave Clubが、Retinaのプロダクトをすでに利用している。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

「TikTokの可能性を信じて全張りする」TikTok特化のMCN、Nateeがアカツキなどから資金調達

左からアカツキ「Heart Driven Fund 」パートナーの石倉壱彦氏、Natee取締役COOの朝戸太將氏、同代表取締役の小島領剣氏、「Heart Driven Fund」ヴァイスプレジデントの熊谷祐二氏

スマートフォンやSNSを含むインターネットの普及によって「個人が作成したコンテンツ」の存在感が増してきた。ユーチューバーを筆頭に影響力を持つ個人が次々と台頭してくるのに伴い、彼ら彼女らの活躍を支えるMCN(マルチチャンネルネットワーク)も複数のプレイヤーが登場し、しのぎを削っている。

国内のMCNと言えば2017年に東証マザーズへ上場したUUUMがその代表格だけれど、今回紹介するNateeは「TikTok」に特化したMCN。つまりTikTokの領域においてUUUMのようなポジションを確立しようとしている。

そのNateeは2月5日、アカツキをはじめとする複数の投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。同社では2019年5月にシードラウンドで複数の投資家より約1800万円、同年10月にプレシリーズAラウンドでアカツキより約5000万円を調達済み。デットも含めると累計で約7500万円を調達している。

同社に出資している投資家リストは以下の通りだ。

  • アカツキ(同社の投資プロジェクトであるHeart Driven Fundから)
  • East Ventures
  • 野口圭登氏
  • 森本千賀子氏
  • JJコンビ
  • 匿名の投資家複数人

中国版のTikTokから刺激を受けてTikTok特化のMCNに

NateeはビズリーチでエンジニアとしてスタンバイやHRMOSに携わっていた小島領剣氏(代表取締役)とリクルートキャリア出身の朝戸太將氏(取締役COO)が2018年11月に創業したスタートアップだ。

ファウンダーの経歴だけ見るとHRTechの事業をやっていそうな気もしてくるけれど、彼らが選んだのはグローバルで急速に成長を遂げているショートムービーアプリのTikTokだった。

「中国版のTikTok(Douyin)を見た時にこれはやばいなと。検索による能動的なインターネットが終わって、レコメンドによる自動的なインターネットの時代が来た。まさにテレビの世界がモバイルでもようやく実現されたんだなと感じた。レコメンドエンジンの優秀さや(開発元の)ByteDanceの技術力も含めて、YouTubeやInstagramに並ぶようなサービスになると大きな可能性を感じた」(小島氏)

Nateeのミッションは「人類をタレントに!」。「自己表現をしながらありのまま生きる人たちを増やしたい。その人たちがもっと稼げるような環境を作りたい」(小島氏)という思いから、TikTokにフォーカスしたMCNという道を選択した。

ちなみに小島氏は学生時代に教育領域で一度起業を経験。当時から同じようなテーマを掲げていたため、ドメインや手段こそ大きく異なるものの、やりたいこと自体は以前から変わっていないそうだ。

現在Nateeでは数十万人のフォロワーを抱える人気TikTokerを含め、約120名のタレントを抱えている。年齢層は10代から30代まで幅広く、ジャンルも美容やスポーツ、お笑いなど様々。中にはトイプードルもいて、所属タレントのフォロワー総数は1500万人近くに上る。

特にNateeが重視してきたのが「しっかりと売れる人を育てること」(小島氏)。知っている人も多いとは思うけれど、現在日本で提供されているTikTokと中国のDouyinでは機能が異なり、中国版でのみ搭載されているものがいくつかある。たとえばECやライブ配信の仕組みがそうだ。

小島氏が重要視するのがTikTok上でモノを売れるEC機能。現在TikTokのMCNではフォロワー数を基にした純広告が主なマネタイズ方法になっているが、今後クライアントが「それが本当に効果に結びついているのか」をよりシビアに追求するようになれば、純広告だけでは思うような収益をあげられない可能性もある。

それもあって、ゆくゆくはTikTokにEC機能などが入ってくることも見越して、しっかりと活用できるようなタレントを今の段階から育てているのだという。

創業から1年ほどが経過し徐々に基盤が整ってきたため、昨年の秋頃からは広告営業もスタート。まだまだ規模は大きくないものの、すでに複数のナショナルクライアントとも取引がある。また1月にはTikTokの公認MCNとして契約を締結した。

徹底的なテックドリブン武器に成長

Nateeの特徴の1つは「徹底的なテックドリブン」であることだ。小島氏がエンジニアということもあり、初期から自社でタレントのアサインツールや動画アクセス解析ツールなどを内製。これを用いて有望なタレントをいち早くスカウトしたり、制作したコンテンツの分析やチューニングに力を入れたりしながら着実に事業を伸ばしてきた。

TikTokのMCN自体は国内でも複数のプレイヤーが存在するが、エンタメ業界がアナログな要素が多い業界でもあるため、テクノロジーに秀でた企業は少ない。企画やキャスティングに強みを持つMCN(事務所)が多い中で、クリエイティブ制作や広告・アカウント運用、効果測定までをワンストップでできるのがNateeの強みになっている。

「インフルエンサーをキャスティングして何らかの投稿をした場合、『再生回数はこのぐらいでした』で終わってしまいがち。自分たちはたとえば背景の色やテロップの色を変えたらどうなるのか、といったように細かい改善と分析を繰り返しながら、データを基にクリエイティブの勝ちパターンを探っていくような取り組みを続けている」(小島氏)

現在は案件管理などのオペレーションを効率化・自動化する社内ツールも開発中だ。MCNは案件やタレントの数が増えるに伴ってオペレーションコストも増加しやすい構造だが、Nateeではそこにテクノロジーを取り入れることで、より効率的に運営できる体制を作ろうとしている。

外からは見えづらいが、中ではゴリゴリとテックを活用している点が同社の面白いポイントの1つかもしれない。

TikTok×MCNで確固たるポジションの確立目指す

2018年11月の創業から1年強、TikTokに特化したMCNとして事業を拡大してきたNatee。2020年1月にはTikTokの公認MCNになった

今回実施した資金調達は主に組織体制の強化が目的。広告営業やタレントマネージャーを中心にメンバーを増員しながらクライアントとのタイアップに力を入れるほか、上述した社内ツールの開発などを進める。規模が大きくなってきたこともあり、コンプライアンス面の教育も含めて良質なタレントの育成にも一層力を入れる方針だ。

中長期的には日本のタレントやIPがグローバルでも活躍できるようにするのが1つの目標。すでに半年ほど実験的に中国チームを動かしているそうで、一部のコンテンツを中国語に翻訳してDouyin上で配信する試みも始めた。数年後には海外の売り上げ比率を全体の50%ほどまで高めたいという。

MCNは一定のブランドを築ければネットワーク効果が働き、有望な人材が次々と集まってくる可能性も高い。そういう意味では1社だけが勝ち残る訳ではないものの「Winner takes allになりやすい市場」(小島氏)であり、NateeとしてはしばらくTikTok1本に絞って勝負をしていくつもりだ。

「現状ではTikTokはマネタイズが難しいプラットフォームであり、YouTubeなどと繋げて運用している企業も多い。ただ自分たちはその可能性を信じて、TikTokに全張りする。MCNは人が人を呼ぶモデルであり、『あの人がNateeに所属しているから』という理由でタレントが集まる事例が徐々に生まれてきた。市場を取り切るなら今年が勝負だと思っているので、TikTokと心中する気持ちでチャレンジしていきたい」(小島氏)

中古住宅プラットフォーム事業のWAKUWAKUが4.1億円の資金調達

中古住宅とリノベーションを主軸とした不動産テック企業のWAKUWAKUは2月4日、総額4.1億円の資金調達を実施したことを発表した。オプトベンチャーズ、ナック、iSGSインベストワークスを引受先とする第三者割当増資、ならびにデットファイナンスによる調達だ。

WAKUWAKUは、リノベーションブランド「リノベ不動産」、ならびに“オシャレ建材ECサイト”「HAGS」を運営。そして、不動産、建築業界向けSaaS事業として、業界特化型のマーケティングオートメーションのツール「Customer now!」を開発する。

リノベ不動産では、エンドユーザーに対し中古マンション探しからリノベーションのデザインや施工までのサポートをワンストップで提供。加えて、物件購入費用とリノベーションの費用をまとめて住宅ローンとして組むことのできる特別ローンも案内する。

WAKUWAKUはリノベ不動産をB2Bのサービスとして提供。不動産会社や建築事業者は、リノベ不動産に加盟し会費を負担することで、ホームページの作成、ウェブマーケティング、手に入りにくい建材の供給、設計士の派遣、など、包括的な支援を受けることが可能だ。現在は国内230拠点で展開している。

会員数6500以上の“オシャレ建材ECサイト”「HAGS」では、床材からインテリア、エクステリアまでを揃えている。WAKUWAKU代表取締役の鎌田友和氏いわく、顧客のデザインに対するリテラシーと比例してユニークな建材のニーズが凄く高まってきている。

「『こんな暮らしを実現したい』という希望を持つユーザーが増えている一方、業界は対応できるだけのノウハウを持っていない。当たり前にどこでも使っているような建材では、顧客が求める共感は叶えることができない。新たなルートを開拓しなければならないと言った時に、なかなかこだわった建材の調達ルートがない上、ルートを開拓するのは大変だ。僕たちはこれまでに何千というリノベーションの事例を作ってきたので、建材をサイトに集め、これまでの施工事例と紐付けた。建材の調達はこのサイトが一発で解決できる」(鎌田氏)

Customer now!は2019年12月にリリースされたばかりの、不動産、建築業界向けのマーケティングオートメーションツール。スコアリング機能や、過去データを基に購買意欲の強い顧客を察知し、ポップアップやメールによる対応を自動的に行う、などといったことが可能だ。

調達した資金は、主にHAGSとCustomer now!の開発に使われる予定。リノベ不動産が現在230拠点で展開していることからもわかるとおり、これまでのWAKUWAKUはリアルな拠点の開発に注力してきた。今回調達した資金でIT周りの開発に投資し、エンドユーザーの獲得を更に加速させていく方針だ。

鎌田氏は、「リノベ不動産、HAGS、Customer now!。これらにより、業界の繁雑な業務を効率化し、多様化する(顧客の)ニーズに対応することができるよう変革し、(顧客が)ワクワクする、自分らしい生活が当たり前のようにできる社会を目指したい」と話した。

法人営業を効率化する企業情報DBのBaseconnectが18億円調達、導入企業は3万社を突破

法人営業を支援する企業情報データベース「Musubu」開発元のBaseconnectは2月4日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資と金融機関からの融資により、総額18億円を調達したことを明らかにした。

2018年4月にスタートしたMusubu(旧Baseconnect LIST)は現在までに3万社以上が活用。調達した資金を活用し、データベースの拡充とともに法人営業をワンストップで支援する新機能の開発や、マーケティングへの投資などを行っていく。

なお同社では2018年11月に実施したプレシリーズAラウンド(4.3億円調達)を含め、これまで4回に渡って累計で約6.4億円を調達済み。今回はそれに続くシリーズAラウンドの位置付けで、既存投資家でもあるYJキャピタルをリードインベスターとして複数の投資家から出資を受けている。

  • YJキャピタル(既存投資家)
  • イーストベンチャーズ(既存投資家)
  • みずほキャピタル(既存投資家)
  • ユーザベース(既存投資家)
  • キャナルベンチャーズ(既存投資家)
  • 京銀リース・キャピタル(既存投資家)
  • ジャフコ
  • オリエントコーポレーション
  • 京信イノベーションCファンド
  • 京都銀行・三井住友銀行・日本政策金融公庫 他(融資)

数百〜数千社もの営業リストをオンライン上でサクッと作成

Musubuは2018年4月にBaseconnect LISTとしてリリースされた企業情報データベースだ。

100万社を超えるデータの中から、売上や従業員数、設立年月など25以上の軸で企業を絞り込み、自社の要件に合ったリストを作ることが可能。従来は手作業で膨大な工数をかけて作成していた営業リストを「ぽちぽちクリックしてるだけで、簡単に何百社分も作れる」のが大きな特徴だ。

過去のアプローチ履歴や成約企業のデータなどを取り込んでおけば、成約の可能性が高い見込み顧客を人工知能が提案してくれる仕組みも搭載。2019年11月にはリストアップした企業への営業状況や進捗を管理できる営業管理機能も加わった。

Baseconnect代表取締役の國重侑輝氏の話では、ITや人材、コンサルなどを中心に幅広い業界で使われているそう。多くの企業には法人営業担当者が在籍しているため、彼ら彼女らの営業リスト作成や企業情報収集、市場調査を支援する「法人営業向けのホリゾンタルな検索エンジン」として拡大してきた。

「MAやSFAをゴリゴリ使いこなしている会社やインバウンドマーケティングが中心の会社というよりは、アウトバウンドな営業を軸としていて、そのやり方に課題や危機感を感じている企業に使ってもらっている。膨大な時間をかけて闇雲に営業先を探すのではなく、既存取引先のデータなども踏まえてしっかりとターゲットを定め、もっと効率的にアプローチできる手段へのニーズが高い」(國重氏)

データ拡充で導入企業は3万社超え

冒頭でも触れた通り、2020年1月にMusubuの累計導入企業数は3万社を突破した。2018年11月の取材時は5000社を突破した直後だったので、そこから1年強で2万5000社増えたことになる。

國重氏がその要因にあげるのがデータの拡充だ。前回はまず100万社まで企業データ数を拡大したいという話をしていたけれど、その目標は達成。今は次のステップとして事業所(支社、営業所、工場など)データや人物データの整備にも取り組み始めている。この事業所データが充実してきたことで「支社や営業所、工場などが存在する地方の顧客」にとっても使い勝手が良くなった。

Baseconnectのビジネスは人力とテクノロジーによる自動化を組み合わせて膨大な情報を整備し、それをデータベースという形で顧客に提供するモデル。國重氏は「質の高いデータを作って提供する」という意味で自社を製造業として捉えているそうで、「データマニュファクチュアリングカンパニー」という表現を使っていた。

当然今後のBaseconnectにおいても核となるのはデータの部分。継続的なデータ更新体制の構築やニュース性のあるデータ(社長交代を含む人事異動やオフィス移転、新規の求人、資金調達など)の拡充に力を入れるほか、店舗データや製品データなど構造化されていない情報の整備も進めていく予定だ。

「純粋なSaaSへの進化」へ、データ拡充と機能拡張に投資

Baseconnectのメンバー。ちなみに同社は京都発のスタートアップで現在も京都市内にオフィスを構えている

データ整備以外の領域では案件管理や取引先管理といった新機能をMusubuに搭載していく計画で、そこにも投資をする。

従来のMusubuはあくまでデータベースとしての色が強く、同サービスを使ってダウンロードした企業データを、営業管理ツールやマーケティングツールにインポートして活用していた企業も多かった。要はデータを有効活用するには複数のツールを行き来する必要があり、顧客からすれば面倒だったわけだ。

Musubuではすでにリリースしている営業管理機能に加えて、法人営業の業務プロセスを一貫して支援するために必要となる機能を順次投入することによって「やりたいことが一箇所で実現できるオールインワンサービス」を目指していく。

これはBaseconnectにとって「Musubuを純粋なSaaSへと進化させる挑戦」でもある。Musubuはデータベースという性質上、必ずしも継続的に使われる類のプロダクトではない。「数ヶ月契約して一旦解約し、また必要になったタイミングで再契約する」といった使い方をする企業もいて、お手本となるようなSaaSプロダクトに比べるとチャーン(解約率)も高いという。

結局のところ「現時点ではシンプルな企業情報のデータベースサービスになっている」(國重氏)ことがその理由であり、これを日々の業務で継続的に使ってもらえるSaaSへ変えていくことが今年から来年にかけての大きなテーマだ。

また少し先の話にはなるが、構築してきたデータの新たな活用方法としてパートナーシップ事業も強化する計画。すでに「SPEEDA」や「Sansan」、「 Eight」へのデータ提供を始めていて、今年はプラットフォーマーや大手企業との連携・提携にも力を入れていくという。

「ライバルはラグジュアリーブランド」日本酒スタートアップのClearが2.5億円調達

Clear代表取締役 生駒龍史氏

日本酒スタートアップのClear(クリアー)は2月3日、総額2.5億円の資金調達実施を発表した。Clearは、日本酒に関するWebメディアを運営しながら、プレミアム日本酒のブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」を展開。酒蔵と共に開発した高品質・高価格の日本酒をネット経由で販売するなど、日本酒に特化した事業を展開している。

海外で高まる日本酒ニーズによりスタートアップに勝機

ここ数年、国内外でSAKEスタートアップの動きが活発だ。これはしかし、日本酒産業そのものに勢いがあるということではなく、むしろ産業自体はもう数十年、ずっと衰退傾向にある。なぜ、この分野で新興企業に注目が集まるのだろうか。

農林水産省「日本酒をめぐる状況(令和元年10月)」(PDF)によると、日本酒の国内出荷量はピーク時(1973年)には170万キロリットルを超えていたが、近年は50万キロリットル程度まで減少。一方で吟醸酒、純米酒といった「特定名称酒」の比率は増加傾向にあり、出荷量も一般酒と比べれば、そう大きく落ち込んでいない。

また、国内出荷量が減少傾向にある中で、輸出量は日本食ブームなどを背景に増加傾向にあり、2018年の輸出総量は約2万6000キロリットルと10年で倍になった。金額では2013年に初めて100億円を突破して以来増え続けており、2018年には222億円と10年で3倍の伸びとなっている。

さらに、日本酒の海外輸出を促進するため、政府も後押し。輸出向け商品のみを製造する場合に限り、日本酒製造場の新設許可を政府が検討していることが2019年11月、明らかになった。これまでは需給均衡を保全するため、原則として清酒製造免許は新規発行されていなかったのだが、これで国外向け限定とはいえ、日本酒造りに新規参入する道が開ける可能性が出てきた。

こうした状況のもと、パリに醸造所を開設し、世界酒としての日本酒開発を進めるWAKAZEや、地方に眠る酒蔵をよみがえらせ、土地オリジナルの日本酒を蔵と組んで販売する日本酒応援団、AIによる日本酒レコメンドサービスや、SAKEセレクトショップなどを運営するMIRAI SAKE COMPANYといったスタートアップが登場。資金調達や大手企業との提携を実現してきている。そのひとつが、SAKE100などを展開するClearだ。

Clear代表取締役の生駒龍史氏によれば「国外でもSAKEベンチャーは増えている」とのこと。同社の調査では現在、45〜50社ぐらいのスタートアップがあるそうだ。日本酒の海外出荷量は年120%成長を遂げているが、「フランスワインの世界市場は1兆2000億円規模なので、(222億円の日本酒市場は)まだまだ伸びしろがある」と生駒氏は考えている。

「これは歴史的に革命的なことだ」と生駒氏は言う。「これまで日本酒のプレイヤーは減ることはあっても、新たに入ってくることは長年なかった。それが近年、新規参入が始まっている」(生駒氏)

この状況を生んだ理由について「インバウンド訪問者が増え、日本各地で本場の日本酒を飲んだ人たちが、帰国してから『地元でも日本酒が飲みたい』と考えて動き出していることや、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことで和食がムーブメントとなり、それに合う食中酒として日本酒が求められていることなどが考えられる」と生駒氏は分析している。

輸出のための酒造免許発行だけではなく、内閣府や国税庁などの関連省庁が中心となった、クールジャパン戦略の枠組みの中で促進する日本産酒類の輸出に関わる予算も、年々増加している。

「日本に1400ある蔵元は、1カ月に3社廃業している。これは赤字だからだ。蔵元は『安くてうまい』酒を追求してきたし、国税庁も金額ではなく、生産する量に対して課税してきた。一方で多様化は進んでいる。(大量生産を想定した)ビジネスモデルが同じようには成立しなくなっている」(生駒氏)

生駒氏は「日本酒業界にはラグジュアリーブランドが求められている」と語る。「海外では、フランスの第1級格付けのシャトーが造るワインのような、最上級の日本酒へのニーズがある。そういう環境では、レガシーなプレイヤーでなく、スタートアップにチャンスがあると見ている」(生駒氏)

世界に認められたプレミアム日本酒「百光」

Clearは2013年2月の設立。2014年にWebメディア「SAKETIMES」をローンチし、その後、英語版の「SAKETIMES International」も立ち上げ、運営している。

Clear代表の生駒氏は「一ファンとして日本酒の情報を集めるときにメディアが必要だったが、それがなかったので自分で作ることにした」とSAKETIMES立ち上げの経緯について話す。「当時は日本酒に関する情報がほとんど、流通していなかった。ちょうどバーティカルメディアの運営がはやっていた頃。2014年にSAKETIMESを立ち上げたときには、取材先の蔵元も『どこの馬の骨か分からないメディアが来た』という感じだったが、地道に取材を続け、2016年ぐらいからは、逆に執筆依頼が来るようになった」(生駒氏)

SAKETIMESのページビューはローンチから5年間伸び続けており、現在は月間90万PV、45万UUと、日本酒専門Webメディアとしては国内でもトップクラスになったという。生駒氏は酒メディア運営の知見をワインやウイスキーなど、ジャンルを広げて横展開するのではなく、「日本酒の未来をつくる」という最初の動機に従い、深掘りしていくことを選んだ。その結果生まれたのが、2018年7月にスタートした日本酒ブランド、SAKE100だ。

SAKE100は、海外で求められる“最上級の日本酒”を酒蔵と共に開発し、販売する。「日本酒のラグジュアリーブランドをつくる」ことを目指す生駒氏は、2018年10月のシード調達から、今回のシリーズAラウンドに至るまで「定量より定性に注力してきた」と、日本酒におけるブランドづくりの重要さについて強調する。

SAKE100ブランドで提供されているプレミアム日本酒の例として、山形県の楯の川酒造と開発したフラッグシップ商品「百光(びゃっこう)」がある。百光は、山形県産の有機栽培で作った酒米を精米歩合18%まで磨いて作る、「上質」を追求した日本酒として、2018年7月にリリースされた。

リリースから1年足らずで、百光は世界的なワイン品評会「IWC(インターナショナル ワイン チャレンジ)2019」の純米大吟醸酒部門でゴールドメダルを獲得。また“フランス人によりフランス人のために開催される”日本酒コンクール「Kura Master 2019」でも、純米大吟醸酒部門でプラチナ賞を受賞している。「同じ年で、2つの賞を受賞することは少ない」と生駒氏はプロダクトの品質に自信を見せる。

その品質の高さから、一流ホテルや有名レストランでソムリエやシェフに認められ、パレスホテルやアマンリゾーツ、星野リゾートなどでも採用されているという、SAKE100の日本酒。ホテル・飲食業界といった業者だけでなく、個人向け販売でも「直近でリピーターは年間8万5000円〜9万円を購入し、年間100万円以上の購入者も2人いる。エンゲージメントは高い」と生駒氏は述べている。なお、販売の99%は消費者向けが占めるという。

蔵とのネットワークを大切にしながら海外展開図る

一般消費者からも認められ、海外および有名店でプロ中のプロによる評価も得たSAKE100に、投資も集まった。今回のシリーズAラウンドに参加した投資家は下記のとおりだ。

  • アカツキ(同社ファンド事業「Heart Driven Fund」から)
  • 朝日メディアラボベンチャーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • MTG Ventures
  • OPENSAUCE
  • KVP(既存株主)
  • 三井住友海上キャピタル
  • ほか、複数の投資家

SAKE100の売上拡大策について、生駒氏は「面は広げたいけれど、ブランドとして需給バランスも大事。必要以上に生産を絞って無理に価値を上げることはしないけれども、どんどん作って出すということもしない」と語る。「そもそも製造サイクルに制限がある日本酒は、ブランドづくりと相性が良い。米を仕込んで、冬からある一定の時期酒造りをしたら、その年は造りたくても造れないというところに価値がある」(生駒氏)

2020年からは、調達で得た資金も活用して、SAKE100の海外展開を図ると生駒氏はいう。冒頭で挙げた農水省の資料によれば、日本酒の輸出額で見た輸出先上位国は、アメリカと中国・香港だ。全体の約3分の1がアメリカ、ほぼ同額で中国・香港の合計が続き、残りが他の各国となる。

「フランスへの進出はブランドとしての意義は強いが、マーケットは小さい。中国は市場の伸び率はよい国だが、ラグジュアリーブランドとしての日本酒を展開するにはまだ、少し早いのではないかと見ている。そこで、アメリカのサンフランシスコを中心としたベイエリアで事業展開を図るつもりだ」(生駒氏)

サンフランシスコは、郊外にワインの高付加価値化に貢献した産地・ナパバレーもあり、ミシュラン3つ星レストランはニューヨークより多い美食都市で、高単価のプレミアム日本酒へのニーズも高いと生駒氏はにらむ。「日本と同様、高級店や富裕層へアプローチしていく。進出するなら早い方がいい」(生駒氏)

5〜6年前の投資環境では日本酒スタートアップの旗を掲げても「投資家がピンとこなかった」が「今は変わった」と生駒氏はいう。「グローバルでの成功、ユニコーンを作るといった投資家の課題をかなえるのが、必ずしもWebサービスやB2B SaaSでなくなってきている今、強いのは(リアルな)プロダクトだ。D2C文脈でなくともグローバルに展開できて、富裕層にアプローチできる日本酒は、産業そのものがド真ん中に入りはじめている」(生駒氏)

国内外のほかのSAKEスタートアップと比べて「メディアで培った事情理解があることがClearの強み」と語る生駒氏は、SAKETIMESの運営のなかで、蔵を数百軒まわって誰よりも日本酒についてインプットしてきた、と自負する。「日本酒という産業を背負っていきたい。日本酒への熱意と情熱では誰にも負けない、ということを知ってもらっている、蔵とのネットワークをこれからも大事にしていきたい」(生駒氏)

「競合はエルメスやルイ・ヴィトンといった、ほかのラグジュアリーブランド」という生駒氏。「“心を満たし、人生を彩る”圧倒的な品質の日本酒づくりを通して、(あると暮らしやすさが上がるといった)機能ではない、プレミアムな日本酒のある豊かさ、ライフスタイル、世界観を実現したい」と語っていた。

徳島拠点の電脳交通がJapanTaxiやドコモ・JR西のCVCなどから2.2億円調達、タクシーを軸に交通空白地帯の解消目指す

徳島を拠点とする電脳交通は、第三者割当増資による2.2億円の資金調達を発表した。引受先は既存株主である、JapanTaxi、NTTドコモ・ベンチャーズ、JR西日本イノベーションズ、ブロードバンドタワー、個人投資家。NTTドコモ・ベンチャーズはNTTドコモの、JR西日本イノベーションズは西日本旅客鉄道(JR西日本)の100%子会社のCVCだ。2018年にこれらの株主から約1.8億円の資金を調達しているので、累計調達額は4億円となる(エンジェルラウンド合わせると累計4.1億円)。今回調達した資金は、営業拠点の拡大、カスタマーサクセス体制の構築、パートナー企業開拓、社員採用強化などに投下される。

関連記事:クラウド型タクシーコールセンターの電脳交通がJR西日本と連携

同社は、配車手配やコールセンター業務といったタクシー会社のバックオフィスのクラウドシステムを開発・提供する、2015年12月設立のスタートアップ。代表の近藤洋祐氏は、祖父から受け継いだ地元のタクシー会社である吉野川タクシーの代表取締役でもあり、自らもタクシードライバーの経験がある人物。2019年2月にはJR西日本、日本交通、篠山市(現・丹波篠山市)と連携し観光客向けタクシー乗り放題サービス、2019年3月にはNTTドコモと山口市阿東地域を運行エリアとするタクシー事業者2社と連携した公共タクシー運行といった実証実験を進めてきた。また、同社のタクシー配車システムは2019年12月時点で、全国18都道府県、約3000台のタクシー車両に搭載されているという。

関連記事:電脳交通が兵庫県篠山地区でタクシー乗り放題サービスを実証実験

また同社は、地域交通の課題解決を目指す自治体・企業との新たな連携のかたちとして「地域交通アライアンス」の発足も発表。少子高齢化によって公共交通の縮小傾向が続いている中、交通空白地帯で住民や観光客の移動を担う「足」の維持・確保をタクシーを軸に目指していく。

同アライアンスで推進するのは以下の3点。

  1. 電脳交通が持つ既存配車システム機能を地域交通の課題解決に向けてカスタマイズ。必要に応じて新規開発し、ソリューションとしてパッケージングの上で提供
  2. 自治体および運行事業者に対するヒアリングやPoC実施/本格運用に向けた具体的な施策実行の伴走支援
  3. 自治体や運行事業者といった運用側のプレイヤーと、そのためのソリューションを持つ企業サイド双方の開拓、マッチングやコーディネートの実施

さらにNTTドコモとは、今春をメドに国内の2地域で公共タクシーの実証運行を予定しており、現在運行に必要な新機能の開発を進めているとのこと。

多拠点住み放題「ADDress」が社会的インパクト投資として資金調達、逗子・習志野などに拠点をオープン

月額住み放題の多拠点居住プラットフォーム「ADDress」を運営するアドレスは1月31日、社会変革推進財団リノべるアイティーファームを引受先とする増資と、日本政策金融公庫からの融資による資金調達の実施を明らかにした。金額は非公開。今回の調達は、2019年にJR東日本スタートアップほかを引受先として実施したシリーズAのエクステンションラウンドに当たり、ラウンドは継続中ということだ。

ADDressは月額4万円からの定額で、全国の拠点に自由に住める多拠点コリビング(Co-living)サービスだ。個室を確保しながら、シェアハウスのようにリビングやキッチンなどを共有。空き家や空き別荘のオーナーと契約することで、遊休不動産の活用とコスト抑制を図っている。

今年1月には、初のホテル提携拠点としてJR東日本ホテルズが運営する群馬県みなかみ町の「ホテルファミリーオ みなかみ」、初の旅館拠点として長野県山ノ内町の「志賀高原幸の湯」をオープン。ほか栃木県益子町や逗子、茂原、習志野、千倉、大網白里、一宮にも拠点をオープンした。今後も拠点を増やし、4月までに45拠点展開を予定しているという。

また月額制のホステル泊まり放題サービス「Hostel Life」を運営するLittle Japanとの提携により、月額プラス1万円でホステルパスサービスが利用できる実証実験も2月1日より開始することになっている。

ADDressは「住まい」だけでなく、「移動手段」との連携も行うことで、多拠点を回遊するライフスタイルの拡大を図ろうとしている。目的は、人口減少によって発声する空き家増加などの課題を背景に、多拠点居住を通じて都市と地方の人口をシェアし、関係人口の増加・地域活性化を進めることだ。そのために同社は、移動の定額化、国内のMaaS経済圏の実現も図ろうとしている。

具体的には、ANAホールディングスとの連携により、本日から航空券サブスクリプションサービスの実証実験を開始。ADDress会員は月額プラス3万円で、ANA国内線の指定便について、月に2往復することができるようになった。

今回の資金調達でアドレスは「今後、多拠点コリビングサービスを広げるとともに、全国で進行する人口減少や空き家の増加、都市部への人口集中等の社会課題解決に向けて関係人口を創出し、社会的インパクトの創出を目指す」としている。

出資者とは一部、事業連携も進める予定だ。社会変革推進財団は、インパクト評価の知見やネットワークを生かして、ADDressの社会的インパクトの可視化を支援する。

リノベるは、リノベーションのノウハウや不動産会社・金融ネットワークを生かして、空き家活用のパートナーとしてアドレスと協業。またリノベるで住宅設計・施行してきたオーナーへ、ADDressによる多拠点生活の利用を推進していく。2月下旬以降は、空き家を活用したい戸建オーナー向けに、ADDress拠点とリノベるの戸建てリノベーションを共同で案内するセミナーなども順次展開していく予定だ。

AI学習サービスのアイデミーが8.3億円調達、法人向けのAIプロジェクト内製化支援を強化へ

AI学習プラットフォーム「Aidemy」や同サービスを活用した法人向けのAI研修サービスなどを展開するアイデミーは1月30日、UTEC(東京大学エッジキャピタル)など複数の投資家を引受先とする第三者割当増資により総額8.3億円を調達したことを明らかにした。

アイデミーにとっては2018年5月にUTECと個人投資家9名から9200万円を調達して以来の資金調達。今回は事業会社やVC、数名の個人が新たに加わり累計の調達額は9.4億円となった。なお具体的な投資家リストは以下の通り。

  • UTEC(リード投資家 / 既存投資家)
  • 大和企業投資
  • ダイキン工業
  • テクノプロ
  • 東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)
  • 千葉道場ファンド(前回ラウンドでは千葉功太郎氏が個人で出資)
  • Skyland Ventures(既存投資家)
  • 松永達也氏(アイデミー社外取締役)
  • 河野英太郎氏(アイデミー非常勤執行役員)
  • 鈴木智行氏(元ソニー副社長)
  • 鈴木悠人氏(JapanWork代表取締役)

ダイキン工業はアイデミーが展開する法人向けサービスの顧客であり、テクノプロとは昨年11月に事業提携を締結済み。アイデミーでは今後両社との取り組みを加速させるとともに、法人向けサービスの拡充に力を入れていく計画だ。

法人事業が成長、製造業を中心に40社以上が有償導入

アイデミーは2014年に当時東京大学の学生だった石川聡彦氏(代表取締役CEO)が創業したスタートアップ。何度かピボットを繰り返した後、2017年12月にAIプログラミング学習サイトのAidemyをローンチした。

同サービスはディープラーニングや自然言語処理などの技術を、ブラウザ上で手を動かしながら学べるのが1つの特徴。開始約2年で登録ユーザー数は5万人を超える。エンジニアが自分の仕事の幅を広げるために使っているケースが多いという話は以前も紹介した通りだ。

現在アイデミーではこのAidemyの基盤を軸にB2B事業へと徐々にシフトしつつある。

2018年にベータ版としてスタートした「Aidemy Business」はAidemyをAI教育研修ツールとして使いやすいように、管理者機能などを追加したもの。昨年4月には正式版をローンチするとともに、オンライン学習サービスに加えてリーダー向けのコンサルティングサービスなどの提供も始めた。

現在は製造業のエンタープライズ企業を中心に金融系や人材系、SIerなど約40〜50社が有償でアイデミーのサービスを活用。石川氏によると約半数近くの顧客がアップセルやクロスセルに繋がっているという。

「特に製造業のニーズが強い。AIを活用したプロジェクトを進める中でコアな部分はできれば内製化したい、もしくは外注するにしても社内にAIに詳しい人材がいないと上手く進まないというのが課題。クラウド教育研修サービスを導入してもらうと半年程でかなり人材が育ってくるため、そのメンバーを軸に新規事業や既存事業の改善に取り組む目的で、予想以上にクロスセルやアップセルに繋がっている」(石川氏)

「AIの内製化支援」テーマに新プロダクトの開発も

今後は「AIの内製化支援」というコンセプトで法人向けのサービスをさらに拡充させていく方針だ。

最近はいろいろな所で「DX」というキーワードを目にする機会が増えてきたが「その中の大きなテーマの1つがAIの活用であり、日本を代表する企業のAI活用やDX支援をしていきたい」とのこと。今回調達した資金を人材採用やマーケティングへ投資し、2年後には現在の10倍となる400社以上へのサービス提供を目指すという。

今は比較的規模の大きい企業が中心となっているが、導入ハードルを下げた安価なプランも作っていくことで中小規模の企業のサポートにも取り組んでいく計画もあるようだ。

また既存事業の強化に加えて、新プロダクトの開発にも取り組む。石川氏の話では「AIに特化したHerokuのようなPaaS」などを法人向けに展開していく予定なのだそう。AIを組み込んだ製品を実運用する際にはメンテナンスや監視、管理といった業務が必要になる。それらの一部を自動化することで現場をサポートしていくことが狙いだ。

「どの企業にとってもゴールはAIの教育研修ではなく、それを現場で運用して利益につなげていくこと。人材育成は最初のステップでしかなく、そこから実運用に至るまでの事業定義や試作品の開発も含めて一気通貫で支援していきたい。特にAIに詳しい人材が社内で増えてくると、今はまだ顕在化していない運用に関する課題も浮き彫りになってくるはず。その負担を減らすプラットフォームを作っていく」(石川氏)

“下膳ロボ”で飲食店の片付けを自動化、Google出身エンジニア創業のスマイルロボティクスが資金調達

人手不足の深刻な飲食店の課題をロボットやテクノロジーで解決する——最近はこの領域に取り組むテックカンパニーが増えてきた。

たとえば過去に何度か取り上げたコネクテッドロボティクスは“たこ焼きロボ”を含む調理ロボットを開発するスタートアップ。ほかにも調理や食器洗い、接客(無人カフェなど)といったように、それぞれの工程において作業を支援したり自動化するプロダクトが国内でも登場している。

今回紹介するスマイルロボティクスもその1社だ。同社が現在開発しているのは食後の食器を自動で回収してきてくれる“下膳ロボット”。アームを搭載して片付けを完全自動化しようというプロダクトはまだ世の中に存在しておらず、その実用化を目指している。

そんなスマイルロボティクスは1月30日、ANRIとディープコアより総額4500万円の資金調達を実施したことを明らかにした。今後ロボットの研究開発を加速させるために人材採用を強化するほか、複数の飲食店にてロボット導入の実証実験を進めていく計画だ。

テーブルまで移動してきてロボットがアームで食器を回収

スマイルロボティクスが手がけるプロダクトについては、実物を見てもらうのが手っ取り早いだろう。以下はプロトタイプのデモ動画だ。

あくまで開発段階のものではあるけれど、実現しようとしているのは動画のように「テーブルまで移動してきて食器をアームで回収し、バックヤードまで運んでくれるロボット」。スマイルロボティクス代表取締役の小倉崇氏の話では回収した食器をシンクにつける、もしくは食洗機にセットするところまでも視野には入れているという。

アームの付いていないロボットであればすでに存在するが、アーム付きとなると技術的な難易度も上がる。特にネックになるのが「認識技術と安全性の部分」(小倉氏)だ。

人が食事を終えた後の食卓は食器の位置や状態もバラバラ。その状況を正しく認識して適切に回収作業を行うのは、単純な作業を自動化することに比べて難しい。またお客さんの近くをロボットが移動していくわけなので、安全性も担保しなければならない。

スマイルロボティクスではディープラーニングをベースにしたAI認識技術や3Dセンサーといったテクノロジーをフル活用しつつ、多様な環境で動かすことができ、なおかつ安全にスピーディーに片付けを行うロボットの開発を目指している。

JSK出身、元SCHAFTのエンジニア達が挑む下膳の自動化

小倉氏はロボットの研究開発で有名な東京大学の情報システム工学研究室(JSK)出身だ。その後トヨタを経て、2014年に二足歩行ロボットを手がけるSCHAFTに加わった。同社は前年にGoogleに買収されていたので、Alphabet傘下のX(旧Google X)内でロボット開発を続けていた。

そのSCHAFTプロジェクトが2018年に解散したこともあり、自身で事業を立ち上げるべく2019年にGoogleを退職。同年6月にスマイルロボティクスを設立している。

ちなみに創業後すぐにジョインした椛澤光隆氏と小林一也氏もJSK出身で元SCHAFTのメンバー。スマイルロボティクスはバリバリのロボットエンジニア集団というわけだ。

スマイルロボティクスのメンバー(前列)と投資家であるANRIとディープコアのメンバー(後列)。前列左から小林一也氏、小倉崇氏、椛澤光隆氏。最前列は開発中のプロトタイプ

下膳をロボットで完全自動化すると聞くとロマンを感じるけれど、最初は小倉氏の「自宅の食卓の片付けが大変なので、自動化させたい」という個人的なペインがきっかけ。前職時代から自宅に作業ロボットを置いて片付けを効率化する実験もやっていたという。

「いざ起業すると決めた時にあれを本格的にやりたいなと思ったが、(価格などの面で)家庭向けに販売するのは難しい。それならB2Bはどうかと思い調査やヒアリングをしたところ、興味を示してくれる企業が複数いたので可能性を感じた」(小倉氏)

起業当初はカフェの業務自動化やラーメンを自動で作る機械など、周囲のニーズを参考にいろいろなロボットを作ってみることから始めたそう。ただそれらは比較的簡単に作れてしまうものも多く、自分たちではやらないことを決めた。

「ビジネスが得意な人たちが容易に参入できる領域では不利なので、技術的に難易度が高くないことは自分たちのチームでやるべきではないなと。その点、アーム付きの移動するロボットを作り一般の人もいる場所へ導入していくというのは、ものすごくチャレンジング。自分が知る限りはまだ誰も実現していないからこそ、自分たちの強みを活かせる」

「また個人的にはロボットを工場から身近なものへどんどん近づけたいという思いをずっと持っていた。飲食では普通の人が入ってこない調理場は工場に近く、その調理場とお客さんをつなぐ下膳はちょうど中間的な位置付けで自分のやりたいことにも合致する。従来は調理場にこもりがちだったロボットを、もう一歩、人がいるところへ進出させていきたい」(小倉氏)

複数の飲食チェーンから引き合い、今後は実証実験へ

飲食店の業務を「キッチン」と「ホール」に分けた場合、キッチンの中でも調理や盛り付けの工程にはすでにいくつものプレイヤーが参入している。加えて小倉氏によると「ロボット技術というよりは調理器具に近く、自分たちの専門からは少し外れるイメージ」だという。

一方でホールに関しては、飲食店に話を聞くと「接客にはこだわりがありできれば人の手でやりたい」という声も多かった。そんな中で自動化に対する反応が1番良かったのが下膳だ。

「どの飲食店も人手不足に困っている反面、自動化したり、セルフにしたりすることに抵抗がある業務も多い。ただ下膳に関しては基本的に人がやっても大きな付加価値を出しづらい領域。そこに人手をかけるよりは、自動化することで他の仕事にもっと人の力を使いたいというニーズがあることがわかってきた」(小倉氏)

特に1店舗当たり10人ほどが働いている中規模〜大規模な飲食店は相性がいいと考えているそう。人手不足な上に今後新規の採用が難しくなる中で、下膳を自動化することによって業務負担を減らしたいというニーズは大きい。国内に約60万店ある飲食店のうちだいたい20%は10人以上が働いてる店舗であり、まずはここがメインのターゲットになりそうだ。

現在すでに数十〜数百店舗を持つ大手ファミレスチェーンやファストフード店、寿司チェーン、ラーメンチェーン、大手介護施設などと話を進めている状況で、今後実証実験に取り組む予定。1番早いところでは5月ごろのスタートを目処に検討しているという。

面白いのは飲食チェーンが多い中で介護施設も含まれていること。介護施設でも入居者の状態に合わせた食事を提供しているが、できれば下膳よりも食事のサポートやコミュニケーションにスタッフの時間を使いたいという思いがある。下膳の自動化ニーズは必ずしも飲食店に限ったものではないのかもしれない。

とはいえ、現時点ではまだまだプロトタイプを開発しているフェーズ。まずは今回調達した資金を人材採用の強化とロボットの開発に投資し、プロダクトをアップグレードした上で実証実験に取り組んでいく。

小倉氏は笑いながら「もしかしたらいつの間にかアームがなくなっているかもしれない」と話していたけれど、それは冗談としてもプロダクトの仕様やターゲットとする顧、具体的な価格などは現時点でカチッと固めすぎず現場のニーズを確かめながら柔軟に対応していく方針だ。

「ロボットはどこまでいってもハードウェアから離れらないので、本当に高品質なものを作るためにはハードウェアを自分たちで押さえる必要があると思っている。時間はかかるかもしれないが、将来的にはAppleみたいにハードウェアとソフトウェアがものすごい強い結合をすることで、めちゃくちゃ品質の高いものを生み出すようなチャレンジをしていきたい」(小倉氏)

ペットテックのシロップが2億円調達、データを軸に飼い主とペットに最適な情報提供へ

保護犬猫のマッチングサイト「OMUSUBI」やペットライフメディア「ペトこと」を展開するシロップは1月29日、複数の投資家を引受先より総額2億円を調達したことを明らかにした。今回の投資家にはジェネシアベン チャーズ、セレス、コロプラネクスト、三浦崇宏氏(GO代表取締役)のほか、社名非公開の上場企業や匿名の個人投資家も含まれる。

シロップは2015年設立のペットテックスタートアップ。今回調達した資金を活用して人材採用を強化するとともに、蓄積したデータなども活用して既存事業のサービス拡充を進める計画だ。

なお同社では昨年4月に既存投資家やチュートリアル・徳井義実氏ら複数の個人より8000万円を調達。それ以前にも複数回に渡って数千万円規模の調達を実施済み。今回も含めると累計調達額は約3.5億円となった。

ペット版Pairs「OMUSUBI」は会員1万人突破

現在シロップの事業の軸となっているのは冒頭で触れた2つのサービスだ。

保護犬猫と飼い主をつなぐOMUSUBIは「ペット版のPairs」と言えばわかりやすいだろう。仕組み自体は非常にシンプルなマッチングサービスではあるが、保護団体の完全審査制を取り入れ、密なカスタマーサポート体制を構築することで譲渡トラブル回避や譲渡率向上を目指してきた。

審査済みの登録保護団体数は昨年4月から約2倍に増え、100団体を突破。会員数も1万人を突破している。

大きなアップデートとしては昨年8月にデータレコメンド機能「相性度診断」を追加。ユーザーからライフスタイルや好きなタイプなどの嗜好データを収集し、犬や猫のプロフィールデータと照合して相性度を可視化する仕組みを導入したところ、月間応募件数が2倍以上になったという。

「犬や猫は100種類以上いて種別の特徴や性質はそれぞれ異なる。それを度外視してしまうことがミスマッチにも繋がるが、事前に全てを把握することは難しいのでデータを活用してマッチングをサポートしている。たとえば最初は何となく猫を希望していたが、嗜好データなどを踏まえると実は犬の方が相性が良く、実際にマッチングに至ったケースもある」(シロップ代表取締役の大久保泰介氏)

現在は保護犬猫を対象にしているが、ゆくゆくはそれ以外の犬猫と飼い主のマッチングにも広げていくことを検討しているそうだ。

このOMUSUBIが人とペットとの“出会い方”を変えるサービスであるのに対し、ペトことはメディアを通じてペットの“育て方”を変える。獣医師などペットの専門家150名以上が執筆・監修している点が1つの特徴で、オススメのお出かけスポットやグッズから、獣医療や栄養知識まで幅広いコンテンツを提供。最大時のMAUは160万人だ。

ビジネスの観点ではタイアップ広告やOMUSUBIと連動したソーシャルグッド・SDGs文脈のプロモーションのほか、記事経由での宿泊施設の予約やAmazonでのグッズ購入によるアフィリエイトも一定の規模に達しているというのは前回も紹介した通り。現在は正式展開に向けて準備中ではあるものの、昨年にはフード領域の新サービスとしてドッグフードのD2C「PETOKOTO FOODS」を開発した。

昨年9月にベータ版をスタートしたものの、事前予約申し込みが600名を超えるなど継続的な安定供給が難しくなったため販売体制の構築に向けて中断。まずは限定的に販売を再開し、春頃を目処に規模を拡大していく計画だという。

データ活用で飼い主とペットに最適化した情報を提供へ

大久保氏が今後の注力ポイントにあげていたのが、前回に引き続きデータの活用だ。特にペトことにおいては春頃からデータを用いたパーソナライズ機能を実装する予定。「蓄積されてきた飼い主やペットのデータを活用するフェーズ」(大久保氏)に差し掛かり、ユーザーごとにマッチした情報を配信していく。

まずは情報(記事コンテンツ)とフードが中心。ペトことで得られたデータから最適なカロリー量を提案し、フードを定期配送することでペットの健康をサポートできる仕組みを作りたいという。

今回調達した資金もペトことの情報コンテンツの拡充や開発強化、D2Cフードの体制強化に向けた人材採用に投資をしていく計画。また少し先の話にはなるが、OMO文脈の取り組みとしてリアルなドッグカフェを開設するような構想も大久保氏の中にはあるようだ(まずはポップアップ型で)。

「ペトことを使えば自分とペットに最適化された情報が出てくるという体験を作っていく。いずれは自分たちに合ったキャンプ場がレコメンドされ、その予約まで一気通貫でできるようにしたいと考えている。ペットライフにおいて点となる機能をどんどん増やしながら、それらをデータを軸につなぎ合わせて線にしていきたい」

「社内のメンバーは全員が犬や猫の飼い主で思いは強い。『人が動物と共に生きる社会をつくる』というミッションを掲げているが、犬・猫自身や飼い主を含む動物を好きな人だけでなく、苦手な人も支え合える社会を作るのが目標。信念を持って取り組んでいきたい」(大久保氏)

スマートロックをサブスクで提供するビットキーが39億円超の資金調達、ID連携・認証などの基盤も整備

通販サイトで注文した商品が、今日配送できると通知が来た。あなたは配送業者に、配達時間帯の一度きりのオートロック解除の許可を送り、自宅マンションの玄関ドア前まで届けてもらうよう指定する。今夜は楽しみにしていた人気アーティストのコンサートがあり、帰宅は遅くなる予定だからだ。

終業時間になり、オフィスを出る。ライブ会場はオフィスから地下鉄で数駅。駅のゲートは最近、顔認証に対応したので、ゲートを通るだけで運賃が自動的に電子マネーで精算されるようになった。あなたは会場の最寄り駅で降り、コンビニエンスストアに立ち寄る。少し喉が渇いたので、商品の水を棚から取り、店を出た。万引きしたわけじゃない。ここでも精算は顔パスになっているのだ。

コンサートチケットを顔認証とひも付けておいたので、ライブ会場への入場もゲートを通るだけ。スマートフォンの電子チケットを確認して席に着く。と、スマホから軽いアラート音が響く。どうやら1列ズレた席に座ってしまったようだ……。

——こんな感じの未来を、デジタルID連携・認証と権利処理のプラットフォームで実現しようとしているスタートアップがある。独自の「鍵」テクノロジーを開発するビットキーだ。

写真左からビットキー代表取締役CEOの江尻祐樹氏、代表取締役COOの福澤匡規氏

スマートロックにちょっと詳しいTechCrunchの読者なら、ビットキーは初期費用ゼロのサブスクリプションモデルで電子錠を提供する、IoTハードウェア企業としてのイメージが強いかもしれない。だが「カギとトビラ」はビットキーがやりたいことのほんの一面に過ぎない。

1月23日、ビットキーはシリーズAラウンドで総額39億300万円の資金調達を、2019年12月末に完了したと発表した。ゴールドマン・サックスをはじめとする10社を引受先とした約34.4億円の第三者割当増資と、りそな銀行、みずほ銀行からの4.6億円の融資が調達金額の内訳だ。2018年8月創業(会社設立は同年5月)の同社の累計調達額は約50億円となった。

シリーズAラウンドで第三者割当増資に参加した企業・ファンドの一覧は下記の通りだ(五十音順)。

  • HHP共創ファンド1号投資事業有限責任組合
    (阪急阪神不動産のCVCファンド)
  • グッドパッチ
  • グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合
  • ゴールドマン・サックス
  • サイバニクス・エクセレンス・ジャパン1号投資事業有限責任組合
    (CYBERDYNE子会社のCEJキャピタルが運用するファンド)
  • 新生ベンチャーパートナーズ1号投資事業有限責任組合
    (新生企業投資が運営に関与するファンド)
  • フルタイムシステム
  • マーキュリア・ビズテック投資事業有限責任組合
    (マーキュリアインベストメントが伊藤忠商事と共同組成したファンド)
  • 31VENTURES Global Innovation Fund 1号
    (三井不動産が運営するCVCファンド)
  • 他1社

物理扉+デジタル上のカギ認証・ID連携も支える「鍵テック」

2019年4月にビットキーが発売を開始したスマートロック「bitlock LITE(ビットロック ライト)」は、初期費用なし、月額300円(年間一括払いの場合・税別)の低費用のサブスクスタイルとしたことが功を奏し、9カ月で12万台を受注。国内でのシェアを一気に拡大した。

また、同社のコアプラットフォームで、bitlock LITEをはじめとする「bitlockシリーズ」にも応用されている、ID連携・認証と権利処理のデジタルキー基盤「bitkey platform(ビットキープラットフォーム)」は、2019年2月にプロトベータ版が発表された後、開発が進み、12月には正式版が公開されている。

ビットキー代表取締役CEOの江尻祐樹氏は、bitkey platformを「安全で、便利に、気持ちよく、鍵の共有やID連携・認証、権利の受け渡しができるようにする基盤」と説明する。技術的には各種のP2P・分散技術や暗号化技術を組み合わせて開発されているbitkey platformだが、「何に使えるか」を説明した方が分かりやすいだろう。

「カギとトビラ」の領域では、bitkey platformは自宅やオフィスなどの出入りのほかに、自宅不在時の配達や家事代行業者の入室、不動産の物件のセルフ内見、民泊など宿泊施設の鍵システムなどに応用できる。ここまでは他社の提供するスマートロックでカバーできる範囲でもあり、想像も付きやすいところだ。

さらにbitkey platformでは、物理的な「トビラ」を開くだけでなく、デジタルな認証によりセキュリティのゲートを開くID認証、各サービスのIDをセキュアにつなぐID連携と、ユーザーの持つ権利を安全・正当に保証・移動する基盤としての利用が構想されている。具体的には、金融取引でのID認証とセキュリティの強化、クルマや交通機関などのモビリティや買い物での利用、チケット購入者の本人確認などへの応用が考えられている。CES 2020でのトヨタによる発表で話題となったスマートシティも、ID連携・認証が活用できそうな舞台のひとつだ。

「bitkey platform」の4つの機能

今回の調達資金について、江尻氏はまず「bitlockシリーズをあらゆる扉に物理的に広げていくために、セールス、マーケティング体制の強化を図る」と使途を説明している。サブスクリプションモデルで提供するbitlockのカスタマーサクセスおよびサポートを充実させるため、人材やシステム、仕組み面も強化していくという。スマートロックのプロダクトそのものについても「9カ月の展開でノウハウが蓄積してきた」として、「ハードウェア面でも、ソフトウェア面でも、さらに開発を進める」と江尻氏は述べ、「2020年中にbitlockシリーズの受注台数100万台を狙う」と話している。

さらにビットキーでは、bitkey platformを活用できるような事業者を対象にした、提携先の拡大も重視している。「(デジタル完結型の)SNSが勃興した2000年代に比べて、2010年代は、AirbnbやUBERなどのシェアリングエコノミーをはじめ、入口はデジタルで出口がリアル、というサービスが広がった時代だった。今後一般にもこの流れが広まると見ている。不動産会社やECサイトなどで、入口がデジタルなサービスを展開する企業をパートナーとして連携し、bitkey platformをリアルの出口につなげるID連携・認証のハブとして提供するため、研究・開発も進めていきたい」(江尻氏)

bitkey platformはプロトベータ版公開以降、国内外から想定以上の引き合いがあり、正式版リリースから1カ月ほどだが「既にかなり多くのパートナーが決まっている」(江尻氏)とのこと。今後、システムやオペレーション体制を整えて、連携を実装していくと江尻氏は述べている。

その他、スマートロック開発の中で採用しようとしている、顔認証などの生体認証についても研究・開発がなされているところだと江尻氏。「生体認証は個人情報の固まり。システムなどを整備して情報保護に強い仕組みを作ろうとしている。これができれば、KYC(Know Your Custmer:顧客の本人確認)についてもbitkey platformで、ID認証とeKYCの仕組みを入れて実現することができる。チケット認証のためのスマートIDなどについては、数カ月で実装したいと思っている」(江尻氏)

「データセラーはやらない」「強者総取りは目指さない」

江尻氏は「初期費用ゼロのbitlockばらまきが注目されがちだが、ビットキーは創業以来、最初からBtoBに力を入れてきた企業だ」と語る。「社会インフラとしてのデジタルキープラットフォームを展開するために、強い営業力で取り組み、事業提携を実現してきた」(江尻氏)

toBでの強さの実例として江尻氏が挙げたのが、集合住宅のオートロックを解除できるbitlock GATEの普及ペースだ。2019年7月、月額2000円からの定額制で発売されたbitlock GATEは、既に数千を受注しているという。「販売数が数万レベルになれば、オートロックを顔認証で開くことも実現できるようになるだろう」(江尻氏)

競合について江尻氏は、アメリカのAmazonで不在配達の課題を解消するために取り入れられたスマートロック「Amazon Key」など「局所競合はある」というが、「いずれもオープンな取り組みではなく、エコシステムやプラットフォームの一部が被っているだけ」と話している。そして「ビットキーでは、それぞれの入口となるサービスを倒すつもりはない。またパートナーが別のパートナーと組んでもよいと考えている」として、各サービスと手を結び、そのハブとしての役割を担いたいとの考えを強調した。

スマートID、スマートシティの行き着く先として「スマート国家」のようなものも考えられる。実際、日本でも出入国審査で顔認証が導入されたし、中国では顔認証その他の生体認証によるIDチェックが広がっている。ただ、その活用が「政府、または企業によるプライバシーの把握、管理」にまで及ぶと、ディストピアっぽい気持ち悪さが拭えない。

江尻氏は「データセラーはやらないと決めているし、社内にもそれを徹底している」とビットキーのポリシーを宣言。今後もこのポリシーは貫くつもりだ、と述べている。加えて「サービサーをインフラ(プラットフォーム)に従わせるのは良くないと考える」とも話している。「強者総取りでなく、緩くつながることを目指す。1社による囲い込みではなくオープンにすることで、サービス提供者は互いの許諾さえあれば連携でき、コントロール権はそれぞれにある形が作れる。これなら、国をまたいでも連携がしやすくなる」(江尻氏)

この考え方はハードとして提供するスマートロックにも及んでいる。「bitlockシリーズも良いものにしたいとは考えているし、そのための開発もしているが、ビットキーのベースはそこではない。僕らとしては他社とも組んで、プラットフォームを提供したいと考えている。パートナリングが進めば進むほど、ネットワーク外部性が効いてきて、事業者間の連携も作りやすくなる。そこで各社をブリッジする存在になりたい」(江尻氏)

面倒な出張手配はチャットで丸投げ、出張支援クラウド「ボーダー」が1.5億円調達

ボーダーのメンバー。前列中央が代表取締役の細谷智規氏

出張支援クラウド「BORDER」を開発するボーダーは1月22日、三井住友海上キャピタル2018V投資事業有限責任組合(三井住友海上キャピタルが運営)とPKSHA SPARXアルゴリズム1号投資事業有限責任組合(PKSHA Technology Capitalとスパークス・AI&テクノロジーズ・インベストメントが共同運営)を引受先とした第三者割当増資により、1.5億円を調達したことを明らかにした。

ボーダーは2014年8月の創業。これまでに匿名の個人投資家などから2度に渡って資金調達を実施済みで、今回が3回目の調達となる。

在宅スタッフ×チャットコンシェルジュで手軽に出張手配

BORDERは出張の“手配”と“管理”における課題を1プロダクトで解決する法人向けのサービスだ。

特に中小規模の企業では、出張のたびに総務担当者(出張者本人の場合もあるだろう)が条件に合った航空券やホテルを探して手配することが多い。その作業には一定の工数がかかり、出張の数が増えてくると大きな業務負担となる。

また出張では手配だけでなく「誰がどんな経緯で、どのフライトを選択したのか」「会社内の出張規程を満たしているのか」といったチェックをする管理業務も発生する。総務や経理の担当者は1件ずつ内容を確認していく必要があるため、こちらも出張件数が増えればかなりの工数がかかってしまう。

BORDERではこれらの出張にまつわる業務を「チャットコンシェルジュとダッシュボード」を通じて効率化・透明化する。ユーザーがやることは要望と会社の出張ルールを伝えるだけ。後はBORDERのオペレーターがチャットベースで条件に合った航空券やホテルをピックアップしてくれるので、提案された候補の中から1つ選べばOKだ。

手配した出張のデータはダッシュボード上に自動で蓄積されていくため、総務担当者が自身で入力したり集計する手間もない。BORDER以外で予約した情報を取り込むことも可能で、出張に関する情報を一箇所に集約し可視化できる。

また取り込んだ情報を基にした安全管理機能を搭載。登録済みのフライトや宿泊施設の情報からメンバーの滞在期間と滞在先を特定し、出張者や管理者に現地の緊急ニュースを届ける仕組みも備える。

BORDERのダッシュボード。登録した出張情報からメンバーの滞在先なども見える化する

BORDERの特徴はチャットシステムを活用したスピード感と、手配から管理までを一体型でサポートしていることだ。「チャットによるコミュニケーションは旅行の手配と相性が良い」というのがボーダー代表取締役の細谷智規氏の見解。メールよりスピーディーで、なおかつ電話と違ってお互いのタイミングを合わせる必要もないため、ユーザーは手軽にサクッと出張手配を依頼できる。

料金面に関しても1回につき手数料1000円のみと利用のハードルが低い。BORDERでは在宅のオペレーターがリモートで出張手配をサポートする仕組みを構築。運営にかかるコストを抑えることで、スタートアップや小規模な事業者でも使いやすい料金体系を実現した。

今後は蓄積してきた出張データの活用強化へ

細谷氏の話ではこれまでに350社以上がBORDERを活用しているとのこと。メルカリやモンスター・ラボを始めIT系のスタートアップやメガベンチャーの利用も多く、中小規模の企業がメインにはなるものの全体の1割強は上場企業だ。

BORDERには出張者ごとの過去の手配情報や好み、同僚の利用履歴、会社の規定といったデータがたまっていくため、使い続けるほど提案の精度が高まっていく可能性を持っているのもポイント。SaaS型のプロダクトのように月額定額制で提供している訳ではないが、利用者向けのアンケートでも出張プランの提案についての満足度は94.7%と高く、継続利用する企業も多いという。

もちろんある程度出張の件数が増えてくれば、旅行会社に依頼するという選択肢も出てくる。ただ細谷氏によると既存プレイヤーは「手配」に注力しているケースが多く、予約したデータを活用した安全管理やコストの可視化、コスト削減サポートなど「改善」まで踏み込めている企業は限られる。

出張管理を効率化するBTM(ビジネストラベルマネジメント)ツールも複数存在するものの、スタンドアロン型で、インストールして特定のPCから使用するものが中心なのだそう。導入費や利用料も高く、BORDERとは特徴や狙っている顧客層も異なる。

欧米ではSaaS型で安価に使えるBTMツールが徐々に普及しつつあり、企業の規模を問わず出張管理が効果的に行われるようになってきている状況。ビジネスモデルに違いはあれど、BORDERとしても手軽に出張管理ができることを強みに、より多くの企業への導入を目指していく。

今回の資金調達も事業拡大に向けた開発体制の強化やマーケティングへの投資が目的だ。特にボーダーにとって重要になるのが出張データの活用方法。「第一段階の強みが在宅スタッフの力とチャットを掛け合わせた一連の仕組みだったとすれば、今は徐々に出張のデータが蓄積されてきて、それをどう活用していくかという段階に入ってきている」(細谷氏)という。

具体的に細谷氏が挙げていたのがコスト削減や安全管理、出張手配においてのデータ活用。現時点でもすでに取り組んではいるものの、さらに提案精度を上げていくのが目標だ。

また国内出張と海外出張など、利用シーンによって今後はチャットコンシェルジュとセルフブックの混合型が主流になるというのが細谷氏の考え。ユーザーが自身で手配する場合にも、たとえばデータと機械学習技術を組み合わせるなどして、ユーザーの負担を減らす仕組みを開発するといった展開はありえるだろう。

今回のラウンドではPKSHA Technology Capitalが共同運営するファンドも投資家として参画している。現時点で具体的な話があるわけではないようだが、PKSHAとは事業面での連携なども検討していきたいとのことだった。

担当者にかわってAIが自動でオススメ物件提案、不動産テックのハウスマートが約3億円調達

個人向けの中古マンション提案アプリ「カウル」や不動産仲介会社向けSaaS「プロポクラウド」を展開するハウスマートは1月22日、日本郵政キャピタルとアコード・ベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により約3億円を調達したことを明らかにした。

今後は組織体制を強化し、引き続き2つの事業の機能拡充や対応エリアの拡大を進めていく計画。なお同社は2018年9月にアコード・ベンチャーズなどから3億円を調達するなど、これまで複数回の資金調達を実施している。

ハウスマートは代表取締役の針山昌幸氏が、不動産会社や楽天を経て2014年10月に創業した不動産テック領域のスタートアップだ。

2016年から運営しているカウルはAIやビッグデータを用いて、ユーザーの中古マンション選びをサポートするアプリ。アプリ上で各物件に“お気に入り”や“興味なし”などのリアクションをしていけば、AIが個々の希望条件と趣味嗜好を学習しておすすめのマンションを提案する。部屋探しから見学までの担当者とのコミュニケーションもメッセージ機能を使えばスムーズだ。

特徴的なのは売買事例や賃貸事例、築年数、間取り、最寄駅などの関連データを分析した上で、現在の適正価格や35年後までの価格推移を「カウル推定価格」として算出できること。気になる中古マンションが今後どういった価格を推移していくのかはもちろん、「購入した場合と、同等の条件の中古マンションに賃貸で住み続けた場合ではどちらがお得か」なんてこともチェック可能だ。

気になるマンションの価格変動を教えてくれる機能や学区からマンションを見つけられる機能なども搭載。昨年末には千葉県と埼玉県にも対象を広げ、現在は1都3県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)の主要エリアにてサービスを展開する。会員数も5万人を突破した。

カウルはユーザーにとってだけではなく、事業者側にとっても大きな価値がある。これまで人力のみでは限界があった膨大な物件情報のキャッチアップや各ユーザーへの継続的な物件提案を、テクノロジーによって大幅に効率化・自動化してくれるからだ。

このシステムによってハウスマートでは1人の営業パーソンが通常の約30倍に当たる600人以上の顧客を担当できたという話は前回調達時に紹介した通り。そしてカウルの仕組みを他の不動産仲介会社でも使えるようにSaaS化したのが、昨年3月にリリースしたプロポクラウドだ。

同サービスの特徴は「テクノロジーによって、仲介会社と顧客が継続的に繋がり続けるのをサポートできること」(針山氏)。従来は物件探しから実際に提案するまで1人の顧客に対して45分〜50分ほどの時間がかかっていたが、プロポクラウドでは最初に約1分ほどで顧客の情報や希望条件を入力しておくだけでいい。

そうすると条件にあった中古マンションがメールにて自動で提案され、顧客のリアクション(詳細閲覧、いいね、興味なし、問い合わせなど)を見ながら必要に応じてフォローすることもできる。

プロポクラウドでメールにて物件提案をしている様子

「1番のペインはお客さんとの関係性構築が大変だということ。不動産は人生でも1番高い買い物であり、初回の問い合わせから数ヶ月、数年にわたって1人のお客さんと関係性を維持していく必要がある。ただし人力だけでは継続的に情報提供することが難しかった。プロポクラウドはそこをサポートできるサービスとして、活用してもらえている」(針山氏)

料金は月額5万円からの定額制で登録する顧客数に応じて変動するモデルだ。針山氏の話では現在60店舗以上が導入済み。特にエンタープライズ企業と相性が良く、不動産仲介会社の2018年度売買仲介実績上位20社のうち6社がすでにプロポクラウドを活用している。

実は昨年3月にスタートしてからしばらくは顧客獲得が想定以上に難航していたそう。新しいものに対してそこまで興味がある企業も少なく、話を聞いても「自社サーバー以外は考えられない、クラウドなんてとんでもない」と言われることもあったという。

少しずつ状況が好転し始めたのは秋口頃からだ。そもそもマーケットを啓蒙する目的で不動産テックや不動産業界のトレンドを解説するセミナーを開始。日本でもメディアで不動産テック関連のトピックが取り上げられることが増え、その領域に特化したイベントなども開催されたことで徐々に潮目が変わってきた。

またヒアリングを重ねた結果、顧客の事業規模によっても課題感が異なり、プロポクラウドはエンタープライズ企業のニーズに合致していることを発見。直近はそこにフォーカスして機能改善を進めている。

「エンタープライズ企業は広告周りのノウハウがあるため集客は得意。集客ができているからこそ、その後の顧客と繋がる部分により大きな課題感を持っている。一方でSMBのお客さんは集客部分に悩まれている方も多く、それぞれで1番課題だと感じている部分が異なる」(針山氏)

プロポクラウドでは自動提案された物件に対する顧客のリアクションが一覧で把握できる

ハウスマートでは今後も引き続きカウルとプロポクラウドの2事業を伸ばしていく計画。今回調達した資金で開発体制・組織体制の強化を進め、機能追加のほか戸建てへの対応、関西エリアへの拡大などにも取り組む。

また少し先の話にはなるとのことだったけれど、プロポクラウドにおいては今後マンションを売却したいユーザーと営業マンをつなぐ「売却側」の機能も提供していく方針。それに向けた開発も進めていくという。

スマホAR対戦アプリのGraffityがプレシリーズAラウンドで1億円を資金調達

AR対戦アプリ開発のGraffity(グラフィティ)は1月20日、プレシリーズAラウンドで総額約1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。引受先はディープコア、East Venturesと複数の個人投資家で、J-Kiss方式での調達となる。

Graffityメンバーと投資家。写真前列中央がGraffity代表取締役の森本俊亨氏

高校体育で採用されたスマホARゲーム「HoloBreak」

Graffityは、2017年8月の創業。2017年11月に3000万円の資金調達を発表している同社は、これまでに空間に落書きできるAR SNSアプリ「Graffity」AR対戦ゲーム「ペチャバト」といった、スマートフォンで遊べるtoC向けのARアプリを提供してきた。

現在同社は、ARシューティングバトル「HoloBreak(ホロブレイク)」を手がけている。HoloBreakは仮説実証フェーズにあり、一部教育機関やアミューズメント施設に提供しながら、検証・開発を進めている最中だ。

HoloBreakは、スマホで画面の向こう(画面の先の見知らぬ誰か、という比喩的な意味ではなく、リアルに画面の目の前)にいる相手と撃ち合う対戦ゲームだ。どういうゲームか、というのは動画を見てもらえると、よりわかりやすいかもしれない。

同社から以前リリースされたペチャバトも、対戦相手のスマホを的として、雪合戦のように「弾」をタップして投げ合い、当たると得点できるゲームだった。ペチャバトが4人対戦でHPを削り合う、勝ち残りバトルロワイヤル形式だったのに対して、HoloBreakはチーム戦で得点を重ねていくゲームになった。

また、HoloBreakではアメリカンフットボールのように攻守の役割があり、使う武器が選択できるなど、戦略を立てて挑むことになるため、思考力・判断力とチームワークが要求され、よりスポーツ性の高いゲームに仕上がっている。

その先端技術とスポーツ性が評価され、HoloBreakは、2019年11月には筑波大学附属高校の体育選択科目に採択された。同校の体育選択科目では生徒が授業内容を提案する方針になっており、ペチャバトのユーザーだった生徒の発案で、HoloBreakが取り上げられることになったそうだ。

Graffity代表取締役の森本俊亨氏は「バットやボールといった道具不要で、スマホさえあれば体を動かして遊べるARゲームを作っていく」と話している。ARスポーツでよく名前が挙がる対戦ゲームの「HADO」の場合は、フィールドが設置された施設で遊ぶことが前提となっている。スマホだけでも遊べるHoloBreakは「その点が、ちょっと違っている」と森本氏は説明する。

「Graffityが目指すのは、ARを軸に人と人とのつながりを変えていくこと。ARプロダクトのゲーム性を生かして、新しいコミュニケーションを作りたい」という森本氏。競合として見ているのは、同じスマートフォンで遊べて、画面と可処分時間を取り合う可能性があるソーシャルゲームだ。

「スマホARはARバトルという形で最も広まるだろう」

HoloBreakはこれまでに、教育機関2カ所、エンタメ施設2カ所に提供されている。森本氏によれば「いずれも満足度は高い」ということだ。高評価を踏まえ、今回の資金調達により、HoloBreakをスマホアプリとして広く公開できるように開発を進めていくという。2020年秋には日本のアプリストアでリリース予定で、その後、海外にも展開を図る。

森本氏は「スマホARは、ARバトルという形で最も広まるだろう」と話す。「『AR×バトル』は世界でもまだ確立されていない市場。多くのARアプリは『ARならではの体験』ではなく、使われ続けるものではないが、ARバトルは『ARならではの体験』をうまく生かし、日常に浸透するプロダクトになる可能性が高いため、ARアプリの本命になると考えている」として、「そのARバトルの領域で、No.1を取りたい」と語る。

そのためにも、まずはHoloBreakのようなARシューティングバトルゲームを国内外にリリースし、教育機関やテーマパークなどにも導入していきたいという森本氏。またHADOのようにeスポーツ化も考えているとのことで、いずれは大会を開けるようにしたいとのことだ。「HoloBreakで実績を作れたら、キャラクターなどのIP保有者と組んで、別タイトル展開も狙っていきたい」とも話している。

「ARを軸に人と人とのつながりを作りたい、というのがミッションに『ARで、リアルを遊べ。』を掲げる我々の目指すところ。これからも、人と人とのコミュニケーションを大切にしていく」(森本氏)

マネタイズについては、基本的にアプリ内課金を中心としていくというGraffity。BtoCで創業しながらも、技術を核にBtoB事業へピボットしていくスタートアップも多い中、森本氏は「当面、BtoCでがんばっていく」と話していた。

Graffity代表取締役 森本俊亨氏

500万ユーザー間近の学習管理SNS「スタディプラス」が7億円調達、大学からの広告収益が拡大

学習管理SNS「Studyplus」など教育領域で複数の事業を展開するスタディプラスは1月20日、RFIアドバイザーズが運営するファンドをはじめとする複数の投資家より総額約7億円を調達したことを明らかにした。

今回は同社にとって2018年5月に発表した資金調達に続く、シリーズCラウンドという位置付け。旺文社ベンチャーズや増進会ホールディングス(Z会)、新興出版社啓林館など教育系の事業会社も数社加わっていて、一部の投資家とは事業面でも連携しながらさらなる成長を目指していく計画だ。

主な投資家は以下の通り。VCや事業会社のほか、個人投資家も含まれるという。

  • RFIアドバイザーズ
  • 博報堂​DY​ベンチャーズ
  • 西武しんきんキャピタル
  • みずほキャピタル
  • 旺文社ベンチャーズ
  • 横浜キャピタル
  • 池田泉州キャピタル
  • ユナイテッド
  • 増進会ホールディングス
  • NSGホールディングス
  • 新興出版社啓林館

主力のStudyplusは大学からの広告収益が拡大

スタディプラスは2010年設立のEdTechスタートアップ。2012年3月スタートのStudyplusに加えて、SaaS型の教育事業者向け学習管理プラットフォーム「Studyplus for School」や電子参考書のサブスクアプリ「ポルト」を運営している。

中でも主力事業のStudyplusはビジネスサイドも含めて大きく成長しているようだ。現在の会員数は495万人を突破。特に大学進学希望の高校3年生の3人に1人が利用しているなど、受験を考えている高校生のシェアが高いのが特徴だ。

機能面でも日々の勉強時間を記録できる機能を軸として目標管理や先輩の体験記、参考書レビュー、コミュニティなど大学受験を控えるユーザーをサポートする仕組みがいくつも取り入れられている。

ユーザーには無料でこれらのサービスを提供し、広告で収益をあげるモデル。スタディプラス代表取締役の廣瀬高志氏や取締役CFOの中島花絵氏によると、高校生が日常的に使っているアプリという特性もあって「大学からの広告売り上げがかなり拡大している」という。

「少子化により定員割れしている大学も出てきている中で、受験生に効果的にアプローチしたいと考えた際に選んでもらえる機会が増えてきた。従来は交通広告や紙の新聞、高校で配られる進学情報誌などが一般的だったが、(大学としては)効果測定がきちんとできて、なおかつ受験生にダイレクトにプロモーションをしたいというニーズが強くなっている」(廣瀬氏)

「『大学広告のデジタルシフト』が1つのキーワード。一方で高校生側もたくさんの情報が溢れる社会の中で、自分にとって適切な情報を取得できているかというと必ずしもそうではない。本格的な受験勉強を始めて、偏差値がわかってから行きたい大学を決める高校生も多いのが現状だが、本来は順番が逆のはず。Studyplusは受験勉強よりも前の段階から使っているサービスなので、その特性も活かすことで進路選びにおける矛盾や課題も解決できると考えている」(中島氏)

2018年のシリーズBで調達した資金も活用しながら直販の営業部隊を構築することで、大学との直接取引が増加。それによって「(大学側が)本当に抱えている課題がわかり、本当に求められている商品設計もできるようになってきたのが大きな変化」(中島氏)だという。

教育事業者向けSaaSや参考書サブスクもさらに強化へ

教育事業者向けSaaSのStudyplus for Schoolも主に中学生、高校生を対象とする全国の学習塾・予備校約500校以上に導入が進むなど拡大中だ。

同サービスはStudyplusと連携して先生が生徒の学習進捗を管理できるほか、アドバイスや励ましなどオンライン上で手軽にコミュニケーションできるのが特徴。塾業界が徐々に集団指導型から「自立学習型」へとシフトし、ICTなどを使いながら先生がコーチングをするスタイルが浸透していく中で、現場で求められるサービスを目指しているという。

全ての生徒が放っておいても勉強するわけではないので、個々の進捗を把握しながらサポートできる学習管理サービスのニーズは高い。「Studyplusをかなりの生徒が使ってくれていることがSaaSにおいても優位性になり、現時点ではほぼ独占的に事業を展開できている」(廣瀬氏)状況だ。

また昨年9月から新規事業として始めたポルトも対応教材が43冊に増加(リリース時は30冊)。今夏には100冊まで拡大することを視野に入れている。まだ立ち上がったばかりのサービスではあるものの「1日3時間ポルトを使って勉強している」というユーザーが出てくるなど、少しずつ成果も見えてきた。

廣瀬氏によると、ユーザーに「ポルトで気になった参考書を紙で買いたいか」をアンケートで聞いたところ約3分の2が買いたいと答えたそう。参考書を何冊もカバンに入れて持ち運ぶのは大変なので、場所に応じてポルトと紙を使い分けるユーザーもすでに一定数存在するようだ。

今回の資金調達はこれらの事業を投資家とも協業しながらさらに成長させるためのもの。昨年2月にStudyplus for Schoolを軸とした業務提携を締結済みのZ会や、ポルトに参画している旺文社や啓林館とは共同での取り組みを加速させていく計画だという。

「2010年に創業してから今年で10周年になるが、ここにきて国もかなりEdTechに力を入れ始めていて、今後PCやタブレットの配布など学校の中でのICT活用も急速に進む。古参なEdTech企業としてはようやく長年地味にコツコツやってきたことが花ひらくタイミング。これまで通り3つの事業を通じて教育領域の根本的な課題を解決しつつ、プラットフォームビジネスをより強固なものにしていきたい」(廣瀬氏)

卒花の実例レポから式場検索、結婚準備に必要な情報を集約した「ウェディングニュース」が2.8億円調達

SNSやクチコミサイトを通じて“消費者のリアルな声”が世の中に行きわたるようになった今の時代、個人が情報を集めたり何かを購入したりする経路にも変化が訪れている。

従来は雑誌などアナログでの情報収集が基本だった「ブライダル」もその1つ。近年はインスタグラムやオンライン上の情報サイトを参考にする人が増えてきた。たとえば楽天(ラクマ)が2019年5月に発表した調査結果を見ても、結婚式を挙げた人たちの情報収集源が変わってきていることがわかる。

ただし本当に欲しい情報を得るためには複数のサイトを回遊するなどして“情報武装”する必要があるのが現状。実はくまなく探せば情報を拾うことができたものの、自身でそこにたどり着けずに「結婚の準備を進める過程で苦い思いをした」という人も存在する。

この課題に対する解決策として、結婚準備に必要な情報を1箇所に集約し簡単にアクセスできる仕組みを構築してきたのが「ウェディングニュース」だ。同サービスでは約5000人の先輩花嫁による結婚式の実例レポのほか、ネット上に公開されているクチコミ・情報コンテンツなどを集めてユーザーに提供。月間ユーザー数は80万人を超える。

昨年1月には結婚式場のメタサーチ機能をリリースするなど新たな取り組みもスタート。運営元のオリジナルライフでは今後もプロダクトを進化させていく計画で、それに向けて本日1月20日に複数の投資家より総額2.8億円を調達したことを明らかにした。

同社にとってシリーズAラウンドとなる今回はニッセイキャピタル、セプテーニ・ホールディングス、有安伸宏氏が投資家として参画。オリジナルライフでは2018年1月にベクトルなどから1.2億円を調達しているほか過去に複数回の資金調達を実施していて、累計の調達額は4.7億円となった。

結婚準備の情報を一箇所に集め「情報の非対称性」を解消

上述した通り、ウェディングニュースは結婚準備に役立つ情報を集めたポータルメディアだ。自社オリジナルのコンテンツに加えて、他社サイトのコンテンツや花嫁ブログなどから関連する情報を集約し「花嫁コーデ」「式場」「お金・段取り」などカテゴリ分けした上で配信している。

初期からインスタに力を入れていて、フォロワー数は20万人を突破。iOSアプリではインスタで人気を集めたウェディング関連の投稿が毎日100件ピックアップされているほか、「ケーキ」「アクセサリー」など特的のキーワードについてインスタ、花嫁ブログ、複数サイトを横断検索することもできる。

もともと代表取締役の榎本純氏が「情報の非対称性が大きい」ことを課題に感じて立ち上げたのがきっかけということもあり、ネット上に散らばる有益な情報に1つのアプリから素早くたどり着けるのがウリだ。

前回紹介した2018年1月の時点では情報コンテンツを集めたアグリゲーションサイトの色合いが強かったけれど、そこから徐々に結婚式を終えた卒花ユーザーが投稿する実例レポを蓄積。そのコンテンツを軸に、2019年1月からは式場選びにフォーカスした「ウェディングニュース式場検索」を始めた。

これは実例レポと結婚式場に特化したメタサーチサービス(複数サイトを横断比較できるサービス)を組み合わせたような仕組みだ。式場選びに関する「トリバゴ」「トラベルコ」などをイメージしてもらうとわかりやすいだろう。

ユーザーは5000人・60万枚を超える先輩花嫁が投稿したリアルなレポートによって各式場の特徴を把握できるほか、複数サイトを比較した上で最もお得な予約ルートをチェックすることが可能。また会場ごとに「初期見積もり費用と実際の価格でどのくらいの開きがあるのか」本当の料金を調べられる機能も備える。

榎本氏の話ではこの式場検索機能はユーザーからの反響もいいそう。ウェディングニュース上での結婚式場などのフェアの予約件数は月間で1500人を超え、売り上げも安定的に月1000万円を超える規模に成長してきているという(予約件数は式場検索だけでなく、記事コンテンツ経由のものなども含めた数値)。

実例レポによる結婚式選びで業界構造を変える

オリジナルライフが式場検索機能の提供を始めたのには、ユーザーの課題を根本から解決するには業界の構造自体を変える必要があるという考えに至ったからでもある。

「徐々にユーザーから支持を集めるようになってきたものの、そもそも情報武装しなければ損をしてしまうような構造自体がおかしい。ウェディングニュースを運営する中で気づいたのが、真の課題は『結婚式にリピーターがいない』こと。(式場は)常に新規の顧客を開拓し続けるために広告費用の負担が大きくなり、それが高いマージンなどにも繋がっている」(榎本氏)

結果的に日本の結婚式費用は世界一高いと言われることもあるそう。ただ榎本氏によると高いマージンによって式場が暴利をとっているわけではなく、営業利益の6割はメディアに集中している。式場としては利益を確保するためには新規ユーザー獲得に直結する広告費に目がいきがちで、いい結婚式の体験を作ることにフォーカスしにくい構造だという。

そんな業界の課題を「卒花による実名レポで結婚式場を探す体験」が広がれば変えられるのではないか。それがまさに式場検索機能を通じてオリジナルライフが取り組んでいることだ。

結婚式はその性質上、同じ人が何度も頻繁にリピートすることは考えづらいけれど「サービスを体験した人の体験談が次のユーザーを連れてくる仕組みができれば、そのユーザーはリピーターに近い」というのが榎本氏の考え。この流れが加速すれば結婚式場もいい結婚式を作ることが新規顧客の開拓に直結し、最終的にユーザーも恩恵を受けられる。

ここで「要は口コミサイトでしょ?そんなの前からあったよね」と思う人がいるかもしれない。それは本当にその通りで、みんなのウェディングやウエディングパークといったベンチャーは何年も前から式場の口コミサービスを軸として事業を拡大してきた。

では従来の口コミとウェディングニュースの口コミは何が違うのか。榎本氏は「“人となりがわかる”実例であること」をポイントにあげる。

「従来の口コミは“レビュー”に近かった。匿名のユーザーによるテキスト中心の投稿で、結婚式場の目星がついた後に『本当に大丈夫なのか』をチェックするような使われ方をしていた。一方でウェディングニュースの口コミは実名ではないものの投稿者の顔がわかり、実例写真を軸にエモーショナルな体験談を投稿している点が特徴だ。内容もネガティブなものよりもポジティブで加点採点型が多く、その人となりを踏まえた実例から式場を選ぶという流れが、実際に起こり始めている」(榎本氏)

冒頭で触れたインスタで結婚式の情報収集をする人が増えてきているというのも、まさにそれと同じでことなのかもしれない。この「人を軸に選ぶ」というトレンドは何も結婚式に限った話ではなく、コスメの「LIPS」、インテリアの「RoomClip」、グルメの「Retty」などにも共通するのではないかという話だった。

OEMで事業会社とタッグ、新たなスタンダードの確立目指す

オリジナルライフでは「ウェディングニュース」の基盤を活用した他社との取り組みを加速させる計画。1月には第一弾として宝島社が発行する女性ファッション誌「sweet」と共同で新サービスをリリースした

今回の資金調達はプロダクト開発やマーケティングへの投資を強化しウェディングニュースの使い勝手を向上させるとともに、実例による式場選びの体験を広げていくためのものだ。

オリジナルライフには現在9人のコアメンバーが在籍していてCEOとCTO以外は女性、それもほとんどが卒花のメンバー。これまで自分たち自身の体験や課題感なども踏まえてコンテンツやプロダクトを作ってきたことで「ユーザーのニーズに合致したものが作れたのではないか」(榎本氏)という。

今後はそれを継続しつつも、プロダクト開発やビジネスサイドのプロフェッショナルを仲間に加えることで、プロダクトに磨きをかけていきたいとのこと。新機能に加えてWeb版のリニューアルやAndroid版の開発なども見据えているようだ。

またビジネスをスケールさせていく上ではウェディングニュースの認知を広げ、ユーザーの第一想起を獲得していく必要もある。その施策としてオリジナルライフではウェディングニュースの基盤をOEM提供し、他社と共同で今までリーチできなかった潜在ユーザーに訴求する取り組みを進めていく。

第一弾として今月11日には宝島社が手がける女性ファッション誌「sweet(スウィート)」とタッグを組み新しいウェディングメディアをリリース。今後も20代〜30代の独身女性の顧客基盤を持つ事業会社とも連携しながら、結婚式準備や式場選びにおける新たなスタンダードの確立を目指す。

巨大カタパルトでロケット不要の打ち上げを追究するSpinLaunchが約40億円を調達

宇宙船の打ち上げ技術を突飛なアイデアで180度逆転させたいと願うSpinLaunch(スピンローンチ)がシリーズBで3500万ドル(約38億5800万円)を調達し、今後もその探究を続けていくことになった。その動力学的打ち上げシステムはまだデモ以前の段階だが、今年はそれが変わると同社は言っている。

TechCrunchがSpinLaunchの野心的な計画を最初に報じたのは2018年で、同社が最初の3500万ドルを調達したときだ。その前の1000万ドルと今回の3500万ドルを合わせると、同社の調達総額は8000万ドルになる。これだけの資金があれば、宇宙船打ち上げ用カタパルトを実際に作れたかもしれない。

関連記事:宇宙スタートアップのSpinLaunchが3000万ドル調達へ、リング状カタパルトで衛星打ち上げを目指す

SpinLaunchの基本的な考え方は、「回転加速方式」により、ロケットをまったく使わずに宇宙船を脱出速度まで加速し、大気圏の外へ放り出すというものだ。同社はそれ以上の詳細をまったく語ろうとしないが、想像では、螺旋状にカールした巨大なレールガンから宇宙船などの搭載物が時速数千マイルで大気圏に突入するというものだ。その際、天候はいっさい影響しない。

当然ながら、この方法には反論が山ほどある。いちばんわかりやすいのは、「真空のチューブからそんな速度で大気圏へ射出するのは、ペイロードをレンガの壁にぶち当てるようなものだ」という説だ。SpinLaunchもこの問題を解決しないかぎり前へ進めないと思うが、さらにほかの問題や疑問もある。しかし同社はほとんど何も明かさず、針のようなコンセプト機の写真をくれただけだ。

でも、もうすぐ大々的なパブリシティの機会が訪れるのではないか。得られた資金でロングビーチに新しい本社とR&D棟を作ったし、ニューメキシコのSpaceport Americaに飛行テストのための施設が完成した。

今回の資金調達を発表するプレスリリースで、創業者でCEOのJonathan Yaney(ジョナサン・ヤニー)氏は「今年の後半にはSpaceport Americaで、大型加速機による弊社の初の飛行テストに成功して宇宙への打ち上げ技術の歴史を変えたい」と語る。

宇宙スタートアップの成功するテーマの1つが打ち上げコストの低減であり、SpinLaunchは軌道へのアクセスが50万ドル以下という技術で、彼らのコスト節約努力をすべて大きく跳び越えようとしている。テストが成功すれば、最初の商用打ち上げを2022年と予定している。

今回の投資ラウンドをリードしたのは、これまでの投資家Airbus VenturesとGV、KPCB、そしてCatapult VenturesやLauder Partners、John Doerr、Byers Familyなどだ。

関連記事:The four corners of the new space economy(宇宙産業の4つの難所、未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa