安価なエッジデバイスにディープラーニング搭載、AIoT時代の開発基盤構築へIdeinが8.2億円を調達

「やりたいのはセンシングをソフトウェアを用いて高度にしていくこと。画像認識や音声認識などの信号処理技術によって、従来の物理的なセンサーでは取れなかった実世界の情報を取得してソフトウェアで分析できるようになった。自動車産業を代表に、製造や物流など様々な分野がソフトウェアでビジネスをしていく形に変わる中で、その基盤となるサービスを提供したい」

そう話すのはIdein(イデイン)で代表取締役を務める中村晃一氏だ。近年サーバーではなく末端のデバイス(エッジデバイス)で画像や音声データを処理する「エッジコンピューティング」が注目を集めているが、Ideinは安価なエッジデバイスにディープラーニングを搭載する技術を持つスタートアップとして知られる。

7月には手軽にエッジコンピューティング型のシステムを構築・運用できる開発者向けプラットフォーム「Actcast」のβ版を公開。今後はActcastのADKを用いて開発したアプリケーションを売買できるマーケットプレイス機能などを備えた正式版のリリースも見据えている。

そのIdeinは8月19日、グローバル・ブレインなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により総額8.2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達した資金は同社のメインプロダクトであるActcastの本格的な事業展開に向けた人材採用の強化や業務環境の拡充に用いる計画だ。

Ideinとしては2017年7月に数社から1.8億円を調達した後、2018年2月にアイシン精機と資本業務提携を締結して以来の資金調達。今回同社に出資した投資家陣は以下の通りだ。

  • グローバル・ブレイン6号投資事業有限責任組合及び7号投資事業有限責任組合(グローバル・ブレイン)
  • HAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND投資事業有限責任組合(博報堂DYベンチャーズ)
  • Sony Innovation Fund by IGV(Innovation Growth Ventures)
  • SFV・GB投資事業有限責任組合(ソニーフィナンシャルベンチャーズとグローバル・ブレインが共同設立)
  • DG Lab1号投資事業有限責任組合(DG Daiwa Ventures)

エッジコンピューティングを普及させるために必要なこと

ここ数年エッジコンピューティングがホットな領域となっている背景には、サーバー集約型(オンプレ・クラウド型)AIシステムの課題がある。

「従来のソフトウェアと違いAI技術を使ったサービスの大きな違いは常時動き続けるのが基本。扱うのは画像や音声といったデータのボリュームが大きいもので、膨大な生データを処理するため計算の負荷も高い。結果的に通信コストとサーバーコストが従来のWebサービスとは比べ物にならないくらい、桁違いにかかってしまう」(中村氏)

高コストであることが現在AIの発展を阻害している1つの要因であり、まずはそれを解決したいというのがIdeinの考えだ。末端デバイスで計算を行うエッジコンピューティングの場合、サーバーに送るのは必要なデータのみ。通信回数が桁違いに減るので通信コストを削減でき、計算用のサーバーがいらないためサーバーコストも抑えられる。

加えてサーバーのスペックがボトルネックになることによるスケーラビリティの問題を回避できるほか、プライバシーの観点でも個人情報や機密情報が漏洩するリスクも減らせる。

もちろんエッジコンピューティングを普及させるためにはクリアしなければいけない課題もある。中村氏が主要なものとして挙げるのが「エッジデバイスの価格」「ソフトウェアの入ったデバイスがばら撒かれた際のシステム開発やメンテナンス」「ビジネスモデル」の3点だ。

「サーバーでやっていた計算をデバイスに持っていくので高額になりがち。画像認識機能を持ったカメラが1台数十万円で販売されているのが現状だ。また様々な場所にソフトウェアの入ったデバイスがばら撒かれた時、たとえば数千個のデバイスに1個1個ソフトウェアが入っている場合にどのようにメンテナンスを行うのかはものすごく重要なポイントになる」

「ビジネスモデルもやっかいな問題。デバイスにソフトウェアを乗っけるので、組込みソフトウェアのライセンス販売のようなビジネスになりやすく、クラウドでサブスクリプション型のサービスとはギャップがある」(中村氏)

安価なデバイスへディープラーニング搭載、遠隔運用の仕組みも

この3つの課題をクリアし、幅広い開発者がエッジコンピューティング型のシステムを構築する手助けをするのがActcastだ。

前提としてIdeinは自社のエッジ技術を使った受託開発を主力にしているわけでも、ディープラーニング用のコンパイラを販売しているわけでもない。開発者向けのクラウドサービスを提供するスタートアップであり、サービスのユーザーである開発者に対してエッジ技術を無償で提供している。

同サービスの特徴の1つは安価なエッジデバイスで高度な計算ができること。これは上述した「エッジデバイスが高額になってしまう」問題を解決する技術であり、前回の記事で詳しく紹介した点だ。

IdeinではかねてからRaspberry Pi上でディープラーニングモデルによる高度な計算を実行できる仕組みを研究してきた。エッジAIに取り組むプレイヤーはいくつか存在するが、演算量をできるだけ減らすためにモデル圧縮を採用する企業が多い。一方でIdeinはモデル圧縮ではなく“プロセッサー側をハックする”というアプローチをとった。

「自分たちがやったのはプロセッサー側に乗っているGPUを汎用的な計算に使えるように、アセンブラからコンパイラまでソフトウェアスタックを丸ごと作るということ。プロセッサーの引き出せる性能を上げるとともに、高い効率で使えるコンパイラ技術を研究した」(中村氏)

中村氏によるとモデル圧縮を採用した場合「精度の維持が難しい」ことに加え「開発者が作ることのできるアプリケーションに制約が出てくる」ことがネックになるそう。Ideinは別のアプローチを取ることで安くても精度を落とさず、なおかつ開発者がより自由にアプリケーションを作りやすい仕組みを整えた。

ユーザーはActcastのSDKを利用すると追加のハードウェアを用意せずともRaspberry Piのみでエッジデバイス向けのアプリケーションを開発することが可能。TensorflowやChainerなど既存のフレームワークで開発したモデルをそのままの精度で動かせる。

また中村氏いわくこの技術ばかりがフォーカスされがちなのだそうだけれど、実はより重要なのが「遠隔からソフトウェアを書き換えられること」だという。

「AI技術のようなものは開発者もユーザーも最初から正確なニーズを掴むのは難しく、やりながらアップデートすることが重要。やればやるほどデータも蓄積され精度が上がるので『1回作りきって現場に設置したら終わり』というやり方では上手くいかない。Actcastでは核となるアプリケーションの遠隔インストールや設定変更機能を始め、エッジコンピューティングシステムを構築しようとする際に必要な『ディープラーニング以外の部分』を一通り揃えている」(中村氏)

正式版ではApp Storeのようなマーケットプレイスの仕組みを

上述した特徴に加え、今後予定している正式版には同社のビジネスのキモとなる「マーケットプレイス」など新しい概念も追加される。

これはApp Storeのような感覚で、ActcastのSDKを使って開発したアプリケーションを売り買いできる仕組みだ。各アプリの価格は1デバイス、1日単位で自由に設定可能。エンドユーザーはミニマムで様々なアプリを試すことができ、ベンダーもいいものを作ればサブスク型のスケーラブルなビジネスを確立するチャンスを手に入れられる。

中村氏によるとエンドユーザー側からは特にリテールやセキュリティ業界からの問い合わせが多いそう。Actcastを上手く使えば従来は受託開発会社などと時間とコストをかけてPoCから取り組んでいたようなプロジェクトも、より安価に最小単位から現場でテストできる。これまでコストなどが理由でAI活用に踏み切れなかった企業や個人にとっても新しい選択肢になるだろう。

このマーケットプレイスはIdeinにとっての収益源でもあり、同社はApp Storeと同様にベンダーから手数料を得る計画。開発用ツールの提供などは無償で行うことで、より多くのベンダーが参加しやすい環境を作っていきたいという。

IdeinではActcastのパートナープログラムも展開中で(現在は24社が参加)、多くのパートナーとの協業を通じて魅力的なプラットフォームサービスの構築を目指すとのことだ。

宇宙飛行士の作業をロボットで代替し作業コスト100分の1以下へ、GITAIが約4.5億円調達

1時間で約500万円(5万ドル)——。これは1人の宇宙飛行士が1時間宇宙で作業を行う際に発生すると言われているおおよそのコストだ。

ここ数年、世界的に宇宙開発の競争が加熱するに伴い宇宙での作業ニーズが高まっている。国際宇宙ステーション(ISS)の商業化が検討されているほか、米国民間企業を中心に宇宙ホテルや商用宇宙ステーションの建設が進められていることからも、今後さらにその需要は急増していく可能性が高い。

その際にネックになるのが冒頭でも触れた宇宙飛行士のコストや安全面のリスク。今回はこの課題に対して「地上から遠隔操作できる宇宙用作業代替ロボット」というアプローチによって作業コストを100分の1に下げる挑戦をしているスタートアップ・GITAIを紹介したい。

同社は8月20日、Spiral Ventures Japan、DBJ Capital、J-Power、500 Startups Japan(現Coral Capital)より総額で410万ドル(約4億5千万円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

GITAIは2016年9月にエンジェルラウンドでSkyland Venturesから約1500万円、2017年12月にシードラウンドでANRIと500 Startups Japanから約1.4億円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドという位置付け。

調達した資金はGITAIロボットの開発費用として活用するほか、2020年末に予定するISSへの実証実験機の打ち上げ費用に使う計画だ。

なお本ラウンドは6月末に実施したものであり、GITAI創業者兼CEOの中ノ瀬翔氏によると年内を目処に追加調達も検討しているとのこと。その場合はトータルで最大10億円規模となる見込みだという。

宇宙飛行士の「運用メンテナンス」の多くは代替できる

GITAIはユーザーがVR端末やグリップを装着することで、離れた場所にあるロボット(アバター)を自分の身体のように制御できる「テレプレゼンスロボット」を開発するスタートアップだ。

360度カメラを搭載したロボットの視界がディスプレイ越しに共有されるほか、ロボットの腕の動きや触覚の一部もグリップを通じて共有することが可能。前回「フレームレートと解像度を維持しながらユーザーとロボット感の遅延を抑える低遅延通信技術」を1つの特徴と紹介したが、最新の6号機ではそれに加えてデータ削減・圧縮技術や負荷低減技術を始め、専門性の高いメンバーが各分野の技術を結集させた高性能なロボットとしてパワーアップしている。

宇宙ステーションの限定的なネットワーク環境を前提に、スイッチ操作や工具操作、柔軟物操作など従来のロボットでは難しかった汎用的な作業を1台のロボットで実施できるレベルに至っているそう。このロボットをまずはISSへと送り込み、地球にいるオペレーターが遠隔制御することで宇宙飛行士が担ってきた汎用的な作業を代替しようというのがGITAIの取り組みだ。

「宇宙飛行士のコストの8割以上が交通費。つまりロケットの1回あたり打ち上げコスト×打ち上げ回数でここがほとんどを占める。(宇宙放射線の影響があるため)だいたい3ヶ月に1回くらいの頻度で地球と宇宙を人が行き来しているほか、その倍くらいの頻度で補給物資が送られている」(中ノ瀬氏)

この一部がロボットに変わるとどうなるか。まず宇宙ステーションに送り込むのが人からロボットに変わるだけで、安全の審査や訓練などが不要になり1回あたりの打ち上げコストを大きく抑えられる。加えてロボットの耐久性があることが条件にはなるが、放射線の影響も受けないので地球と宇宙の間を行き来する回数を減らせるのはもちろん、物資の補給回数も減らせるため全体の打ち上げ回数自体も削減できる。

生身の宇宙飛行士であれば1日に作業できる時間は約6.5時間と限られるが、ロボットであればオペレーターを交代制にすれば24時間働き続けることも可能。これらの組み合わせによって宇宙での作業コストを100分の1以下まで減らせるという。

もちろんこれはGITAIロボットが宇宙飛行士の作業を代替できることが前提だ。

「実は極めて重要な宇宙飛行士の作業時間の内、だいたい8割くらいの時間が掃除を始めとした『運用メンテナンス』に費やされている。その多くは人間じゃないとできない作業ではなくロボットでも代替できるもの。これが進めば科学実験や広報など、宇宙飛行士が人間にしかできない仕事にもっと多くの時間を使えるようにもなる」(中ノ瀬氏)

GITAIでは2018年12月にJAXAと共同研究契約を締結し、GITAIロボットによる宇宙飛行士の作業代替実験に取り組んできた。3月時点で主要作業18個のうち72%(13個)は代替に成功したと紹介したが、現在は部分的にではあるものの18個全てを代替できるようになった。

「現時点では人間が1分でできる作業をこなすのに3〜10分かかるようなものもあり、実用化できる段階までには達していない。少なくともそれを3分以内に、なおかつ100回やれば100回成功する精度まで上げていくことが必要だ」(中ノ瀬氏)

今は1秒間の遅延が発生しても人間が遠隔から制御した方がスムーズな作業が多いため、動作の約9割を遠隔から操作し、残りを自律化して対応しているそう。中ノ瀬氏の話では遠隔制御と自律化のハイブリッドが最もパフォーマンスが上がると考えていて、本番環境では半分くらいの作業を自律化することを見据えている。

量産化ではなく高単価一点物、人件費よりも交通費に着目

GITAIはもともと中ノ瀬氏の個人プロジェクトを法人化したものだ。最初から宇宙領域にフォーカスしていた訳ではなく、マーケットリサーチやユーザーヒアリングを進める中で「最もビジネスとして成立するチャンスがあると考え宇宙領域に絞った」(中ノ瀬氏)という。

技術的な観点では今の段階で性能の高い汎用的なロボットを実現するのは難しく、ましてや完全自律型となると世間で期待されているようなことはまだ全然できていない。それでもコストは数千万円規模になり量産化のハードルはものすごく高い。そのレベルではビジネスとして成立しないが、オペレーターが裏側いる『半遠隔・半自律型』であれば性能が上がり解決策として機能すると考え、このテーマでに取り組み始めた」(中ノ瀬氏)

その上で領域を絞るにあたり中ノ瀬氏が着目したのが「交通費」だ。ロボット企業の中にはロボットを人件費削減のソリューションとして期待するケースも多いが、性能が低く単価の高いロボットが今の段階で人を置き換えられる可能性は低い。むしろ交通費が非常に高い業界や、人間が行くにはとても危ない領域にロボットを持ち込めば人間が行く必要がなくなり、ビジネスになると考えたそうだ。

合わせて「量産化はしない」ことを決断。量産化を目指せば結局性能が下がってしまい、量産機のコストも数千万円規模になるのでビジネスとして成り立ちにくい。そうではなく高単価一点物で成り立つ領域に定めることにした。

「それらの条件に唯一合致したのが宇宙。もともと交通費が何百億とかかっているので、仮にロボットが1台1億円しても十分成立する。特に宇宙ステーションが民営化されていく流れがあり、民間の宇宙ステーションも増えている状況だったので、まずここに絞って半遠隔のロボットを投入すれば技術的にもビジネス的にも実現できると確信を持った」(中ノ瀬氏)

GITAIには今年の3月にSCHAFTの創業者で元CEOの中西雄飛氏が新たにCOOとして加わった。中西氏は同社をGoogleに売却後も継続して二足歩行ロボットの実用化に向けたプロジェクトに携わっていた人物。2018年末でSCHAFTはGoogle社内で解散となったが、新たなチャレンジの場としてGITAIを選んだ。

「中西自身もSCHAFTで自分たちと同じ結論にたどり着いた。彼はGoogle内で大規模な予算と優秀なメンバーとともに完全自律型の量産機の実現を目指したが、現在の技術水準では実用化に至らなかった経緯がある。でも裏にオペレーターがいてもよく、高単価一点物の領域であれば解決策になりうる。ちょうどタイミングが合ってオフィスに遊びに来てもらった時にGITAIの構想やチームに共感してもらい、一緒にチャレンジすることになった」(中ノ瀬氏)

中ノ瀬氏が「各領域に詳しい世界クラスのメンバーが集まっていて、チームの総合力の高さは1番の強み」と話すように、9人のフルタイムメンバーのうち6名は博士号の取得者。そのうち5名は東京大学情報システム工学研究室(JSK)の出身で、各自が磨いてきた技術を持ち寄り1台のロボット開発に取り組んでいる。

2023年を目処にISS内でサービスイン目指す

今後GITAIでは2020年末にISSへの実証実験機打ち上げを予定しているほか、2023年を目処にISS内での汎用作業代替ロボットサービスのリリースも計画中。まずは宇宙機関からスタートし、徐々に民間の宇宙ステーションにもターゲットを広げていく戦略だ。

「ビジネスモデルとしてはロボットを売るわけではなく、ロボットによる作業代行サービスを宇宙で提供する。1時間で500万円かかっていた作業を1時間50万円で実現するイメージだ。初期の顧客層はNASAを中心とした宇宙機関。宇宙飛行士の単純作業に多額の税金がかかっているので、それを民間にアウトソースする流れ自体はすでにある。まずはそこをロボットで代替していく」(中ノ瀬氏)

実用化に向けては「1秒遅延環境での自律化の推進」「無重力環境下でも動くための『脚』の開発」「2年間現地で働けるレベルの耐久性の実現」などクリアしなければならない課題も残っていて、引き続きプロダクトの改良を進めていくという。

宇宙市場は30兆円を超える巨大なマーケットであり、宇宙ステーションの中に限らず事業を拡大できるポテンシャルも大きい。GITAIでも宇宙ステーションの検査・修理、小型衛星の燃料補給、デブリ回収などの作業を代替するロボットや月面基地建設ロボットなど、宇宙領域での横展開も視野に入れているようだ。

「今宇宙では汎用的な作業ができるようなロボットが求めらているが、そこで必要とされるのはロボット技術者。自分たちの特徴はそこに強みを持つメンバーが中心となって開発していること。自分たちがやろうとしているのは地上の汎用的なロボット技術を宇宙に持っていくことであり、そういった観点から見るとやれることはたくさんあると感じている」(中ノ瀬氏)

社員主導型採用システムのHERPがシリーズAで総額4.6億円を調達

HERPのメンバー。写真右端が代表取締役CEOの庄田一郎氏

クラウド型採用管理システム「HERP ATS」を運営するHERPは8月19日、総額約4.6億円の資金調達を実施したことを明らかにした。第三者割当増資の引受先はDCM VenturesDNX Venturesと、メルカリCEOの小泉文明氏やエウレカ共同創業者の赤坂優氏、西川順氏ら複数の個人投資家。調達ラウンドはシリーズAに当たる。

HERPは2017年3月創業。TechCrunch Tokyo 2018スタートアップバトルにも出場した、HRテックのスタートアップだ。代表取締役CEOの庄田一郎氏は、リクルートで新卒エンジニア採用などを担当したあと、採用広報担当としてエウレカに入社。エウレカでは「Couples」の事業担当者も務めていた人物だ。2017年12月には、エウレカの共同創業者である赤坂優氏と西川順氏から、数千万円規模のシード資金調達を発表。今回の調達はこれに続くもので、累積資金調達額は約5.1億円となる。

HERPが提供するHERP ATSは、採用担当だけでなく、現場社員も含めた全社で採用活動に取り組みたい企業を支援する、採用管理プラットフォーム。複数の求人媒体と情報を自動連携して一括管理でき、Slackとの連携により、進捗などを現場メンバーとのスピーディな情報共有を実現。社員が積極的に採用活動に参画できるようサポートする。

2018年1月からベータ版として提供されてきたHERP ATSは、2019年3月に正式にリリースされ、約5カ月で累計導入企業は150社に到達。売上も前月比140%ペースで伸びているという。

HERPはまた、人材採用業界版のOpen APIとして「Open Recruiting API構想」を掲げてきており、これまでに「SmartHR」や「カオナビ」など、各種HRサービスとの連携を発表している。

今回の調達資金はHERP ATSへの事業投資と、それに伴う人材採用強化に充てるという。また、今後は全社型の採用プラットフォームとして、HRテック業界でシェア拡大を目指し、日本の採用のさらなる成長に貢献するべく、引き続きプロダクト開発・運営に取り組むとしている。

庄田氏はHERPが「自社で採用媒体や人材紹介などの人材情報を扱うサービスを運営していないという点で、HR業界において第三者としてのポジションにある」と述べ、「それを前提に、社員主導型の採用方式『スクラム採用』という独自の思想を持っていること」、「HR領域における深いドメイン知識を持つ強いプロダクトチームが育っていること」、そして「多くのユーザーに応援いただいていること」に強みがある、とコメントしている。

調達にあたって庄田氏は、「これらの強みをベースに、ユーザーに愛される真に価値あるサービスが、自然と広がっていくようなHR業界を作る、その当事者になっていきたい」と抱負を語る。HERPでは、2021年末までに累計導入社数1000社を目指すという。

Wordで作った契約書のバージョン管理を自動化する「Hubble」が1.5億円を調達

契約書を中心とした法務書類のバージョン管理サービス「Hubble(ハブル)」を展開するHubbleは8月19日、複数のVCやエンジェル投資家などから総額で1.5億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社では2019年1月よりHubbleの本格販売をスタートし、現在は三井不動産を含むエンタープライズ企業を始め、ITベンチャーやスタートアップ、弁護士事務所にサービスを提供。今後は社外のユーザーとドキュメントを共有できる機能の開発も予定していて、調達した資金で組織体制の強化やプロダクトのアップデートに取り組む計画だ。

なお今回Hubbleに出資した投資家陣は以下の通り。同社では昨年にも既存株主のANRIなどより数千万円の資金調達を実施している。

  • Archetype Ventures
  • DNX Ventures
  • マネーフォワード
  • ベンチャーユナイテッド
  • 三菱UFJキャピタル
  • 国内外のエンジェル投資家数名

Wordで作った法務書類を一箇所に集約、履歴管理も自動化

Hubbleは企業の法務担当者を始め、事業部のメンバーや弁護士事務所のスタッフが法務書類を作成する際に直面するバージョン管理(履歴管理)やコミュニケーションの課題を解決するSaaSだ。

具体的には「Wordで作成した契約書のドキュメントが複数存在し、どれが最新版かわからない」「契約書に関するコミュニケーションがメールやチャットツールに散らばってしまっている」といったような問題を解消する。

昨年7月の先行リリース時にも紹介したように、作成したファイルの履歴を自動的に整理・管理してくれることと、その情報に関連するやりとりをサービス上に集約してくれることが大きな特徴だ。

ファイルがアップデートされた際の変更点(差分)も自動で抽出されるので、変更点をたどったり過去のバージョンに立ち戻ることも簡単。もともと「GitHubのような仕組みがあれば契約書のバージョン管理が簡単になるのではないか」という思想から生まれたプロダクトでもあるため、ブランチなど同サービスからヒントを得た概念や機能も盛り込まれている。

使い方はシンプルだ。従来はメールを使って「ダウンロード→内容の更新→最新のファイルを添付」という流れで何往復も共有し合っていたWordファイルを、Hubble上に一度アップロードするだけ。あとはファイルを保存すれば自動で履歴が管理されるとともに、最新版がサービス上に保存されていく。

ここまでの説明で「Googleドキュメントと何が違うの?」と思われるかもしれないが、ポイントは「これまでのワークフローを崩さず、クラウドの恩恵を受けられる」点にある。

特に契約書のような法務書類は今でもWordで作成されるのが一般的。そのためHubbleでもこの文化を崩さず、ユーザーが書類を作成・編集する際はいつも通りWordを使う。ただし保存ボタンを押せばHubble上に履歴が自動で蓄積されていくので、やり方を大きく変えずにバージョン管理の悩みを解消できるわけだ。

「新しい作業や努力をしなくても『これまで通りWordで書類を作っているだけで差分が自動でトラッキングされること』はどの顧客からも好評。Word文化を残したまま使えるというのは初期から大事にしてきた考え方だ」(HubbleでCEOを務める早川晋平氏)

Hubbleでは各バージョンに対する担当者のコメントも集約されるため、修正した意図やこれまでの経過を把握するために過去のメール・チャットを検索する作業も不要。一方で閲覧権限の範囲は細かく調整できるので「法務部が検討したプロセスやコメントが表示されない形で事業部のメンバーに共有したい」といった現場のニーズにも対応する。

従来のワークフローで自社のリーガルDBを構築

Hubbleにはこれまで時間のかかっていた業務を効率化するだけでなく、情報を残していくことで自社のリーガルデータベースを自動的に構築していく効果もある。

要は従来であれば特定の担当者のみに帰属しがちだった知見や情報が社内に集まり、受け継がれていくということだ。

「『契約締結に至るプロセスや意思決定の意図』が集約されたデータベースは会社の大きな資産。担当者が変わったり、新入社員が入社してきた時もここにアクセスすれば今までの知見を活かせる。情報が蓄積されていけば会社のリーガルリテラシーを一段上げることにも繋がる」(HubbleのCLOで弁護士でもある酒井智也氏)

時代の流れ的にも人材の流動性が高くなり、リモートワークなど新しい働き方を取り入れる企業も増えつつある。そういった背景もあり法務書類やそれに関する情報を特定の担当者ではなく、クラウド上で1箇所に蓄積しておきたいというニーズ自体も高まっているそうだ。

酒井氏によるとこの傾向は企業に限らず、弁護士事務所でも同様とのこと。「弁護士事務所こそ優秀な弁護士の考え方が社内に残っていく効果は大きい。今は弁護士業界も競争が激しくなったことで『チームとしてどう戦っていくのか』という考え方が広がり、複数人で情報を共有する文化ができ始めている」(酒井氏)

Hubbleは2019年1月に本格販売を始めてから業界や企業規模問わず導入が進んでいるが、特に大企業や弁護士事務所からの反応が良いそう。当初想定していた契約書の管理だけでなく、最近では就業規則のほかIR用の資料や株主総会用の書類など、利用される書類の幅も広がってきているようだ。

利用者も法務担当者のみならず事業部メンバーへと拡大していることに伴い、幅広い場面で利用できるように8月からはスマホ版の提供も始めている。

リーガルテックの波に乗りさらなる事業拡大へ

これまで法務・法律の分野といえば比較的レガシーな領域で、セールスやHR、会計と比べてもテクノロジーの導入があまり進んでいなかった。ただ近年は「クラウドサイン」のようなプロダクトを代表に、日本国内でもリーガルテック周りのクラウドサービスが少しずつ浸透し始めている。

早川氏や酒井氏も、実際に法務部や弁護士事務所の担当者と接する中で「業界全体のITリテラシーがどんどん高くなってきていることを実感するようになった」という。

「(周辺業界のIT化の流れも受けて)日本全体として法務も変わる必要があるという考えのもと、リーガルテックの活用などを軸とした議論が活発になってきた。現時点ではアーリーアダプター層だけかもしれないが、リーガルテックがあることを前提に自分たちの業務や働き方をアップデートしようという考え方も徐々に広まってきていて、業界内でも差が生まれ始めている」(酒井氏)

もちろんクラウド上で法務書類を扱うことや契約書の履歴を保存していくことに抵抗がある企業もまだまだ存在するだろうし、一般的に広く普及している段階とは言えない。

ただ「まずは書類の内容によって(従来の方法とHubbleを)使い分けていく形にはなるかもしれないが、今後リーガルテックが加速していく感覚やHubbleをより多くの企業に使ってもらえる手応えはある」というのが2人に共通する考え。今回の資金調達も組織体制を強化し、さらなる事業拡大を目指すためのものだ。

ターゲットユーザーが慣れ親しんだWord文化を残しつつ、現場の課題を解決できる仕組みを取り入れたのがHubbleのポイントだ

早川氏の話では新たな取り組みとして、今秋頃を目処に外部共有機能の提供とフリーミアムプランの追加を計画中とのこと。現在は月額数万円からの有料プランのみ提供しているが、「社外ユーザーは一定の機能を無料で利用可能」というようにフリーミアムプランと外部共有機能を組み合わせることで、社内だけでなく取引先など対外的な交渉にもHubbleを使える仕組みを整える。

「外部共有機能は多くの導入企業から要望があった機能でもあると同時に、ネットワーク効果を最大化しユーザーを拡大する仕掛けにもなる。契約書を敵対した関係性で作るのではなく、共同でドキュメントを作成するような感覚で作ってもらえるようにHubbleをもっと浸透させていきたい」(早川氏)

契約書のバージョン管理というニッチな領域に絞ったプロダクトはないものの、顧客のニーズによっては導入検討時にクラウドストレージサービスの「Box」や契約マネジメントサービスの「Holmes」と比較されることもあるそう。

他のサービスに比べるとHubbleは特化型で用途は限られるが、今の所はこれまで通り「(クラウドサインやDocuSignなど)API連携によって他の領域の優れたサービスとシームレスで繋げられるような環境を整えつつ、多機能化はせずニッチでも尖ったサービスを目指す」方針だ。

「何かに尖っていないと、使ってもらったお客さんに『このプロダクトは使いやすいから他の部署にも広めたい』とは思ってもらえない。自分たちの理想は全ての契約書がHubbleを使って交渉されて、履歴もきちんと管理されていくこと。それに向けてより尖ったプロダクトを作っていきたい」(早川氏)

美容医療の口コミアプリ「トリビュー」がW Venturesなどから3.5億円を調達

美容医療の口コミアプリ「トリビュー」を運営するトリビューは8月8日、W Venturesニッセイ・キャピタル三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資と、日本政策金融公庫からの融資を合わせ、総額3.5億円の資金調達を実施したと発表した。

プチ整形にリピート……変わる美容医療

トリビューは健康保険適用外の美容外科、美容皮膚科、矯正歯科を対象にした、美容医療の口コミ・予約アプリ。ユーザーによる15万枚以上のビフォー/アフターを含む経過画像と7000件以上の体験談投稿を集めており、施術価格や施術する箇所、クリニックのエリア、満足度によって、クリニックやドクターが比較できる、いわば「美容クリニック版の食べログ」のようなサービスだ。2017年10月のリリースからの累計ダウンロード数は15万件を超えている。

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リリース時には口コミ機能を中心としたコミュニティの要素が強かったトリビューだが、その後、情報収集や比較に加えて、クリニックの予約申し込みができるサービスにアップデート。カウンセリング予約はチャット形式で行える。また希望する状態の写真をアプリ内のメモに保存しておき、カウンセリング時にドクターとやり取りをスムーズに行うための機能も追加された。

ひとくちに二重といっても、幅をハッキリ出したいのか、控えめにしてナチュラルにしたいのかで施術も変わる。施術内容によって術後どれくらい腫れるのか、程度や期間も違うので、社会人なら休暇を取れる期間を合わせる必要も出てくる。トリビューでは、体験談と投稿写真で具体的な施術のイメージがつかめる点と、希望する状態を客観的にクリニックに伝えられる点が、特徴となっている。

口コミ投稿時には、パーツや施術内容など、細かな条件(約120種類)をひも付けられるように設計されており、情報を検索するユーザーのための網羅性が担保されている。また、会員登録時にも興味のある施術などをアンケートし、ユーザーごとにトップ画面の表示を変更しているそうだ。

トリビュー代表取締役の毛迪(モウ・デイ)氏は、美容医療を受けようとする人たちの情報へのアクセス方法が近年変化していると話す。「以前はSNSアカウントで『整形』タグを追うのが主流だった。最近はボトックスやヒアルロン酸注射など、『プチ整形』とも言われるライトな施術が増えている。こうした施術を選ぶ人たちの中には『整形』という言葉に抵抗があるユーザーも多くなった。施術件数も増えていて、エステとの境界がぼやけてきている。隆鼻術や目頭切開術などの大きな外科手術は基本1回きりのものだが、今は軽い施術をリピートする、身近なものに美容医療が変わってきている」(毛氏)

「なりたいスタイルが伝わる」美容医療を目指して

日本国内の美容医療市場は、美容外科・美容皮膚科を合わせて約4000億円、審美歯科が約3500億円で合計すると7500億円規模となっており、そのうち20〜30%が広告市場が占める。1件の施術の平均価格は20〜30万円。ただしリスティング広告の落札価格は高騰しており、施術に至る前の予約までの案件獲得でも2〜3万円の出稿費がかかるという。

またユーザーの側から見ると、サイト検索の結果表示にはアフィリエイトサイトなどが多く、怪しいイメージが美容整形にはある。クリニック側も広告では薬機法などによる規制があり、具体的な効果はうたえない。結果として、ユーザーが自分に合ったクリニックやドクター、施術を見つけにくい状況になっている。

トリビューのビジネスモデルは、美容医療を受けたいユーザーとクリニックのマッチングだ。また最近では、クリニック探しからさらに踏み込んで、自分に合ったドクターを探す動きがスタンダードになってきていると毛氏はいう。

「美容医療ではドクターのセンスも問われるし、好みの顔のスタイルというものもある。ヘアサロンでも、相性のよい美容師を指名したり、カリスマ美容師がいたりするが、同じように美容医療の世界にも、相性のよいドクターやカリスマドクターが存在する」(毛氏)

トリビューではドクターごとに施術の体験談が見られるほか、クリニックの予約時に備考欄でドクターを指名するユーザーもいるという。自身も美容医療を10代から利用してきた毛氏は「整形を成功させるためには、情報収集とドクターとのマッチングがカギになる」と話す。

「整形の失敗はミスコミュニケーションから起こる。髪型と同じでユーザーが『思っていたのと違う』と不満に思ったとしても、ドクターの側からすれば『手術はちゃんとやった』となることも多い。これはお互いにとってもったいない、不幸なことだ。美容院へヘアカタログを持っていった客が気に入った髪型をオーダーし、美容師の側は客の髪質などから『その通りにはできないけれど』と違うスタイルを提案するのと同じように、カウンセリングでなりたいスタイルが伝わるフォーマットも提供していきたいと考えている」(毛氏)

毛氏は「コミュニティ機能からスタートしているが、ユーザーに寄り添って施術の成功に導くアプリ、サービスを目指す」と語る。また美容整形にまつわる怪しいイメージを取り除くべく、「パブリックカンパニーとして、きちんとした情報を提供していく」と話している。

トリビューのユーザーはほぼ女性で20代が中心、半数は整形の経験があるという。「会員の平均施術単価は28.5万円と高めで、中には韓国で手術を受けるユーザーも。熱量のあるユーザーが多い」と毛氏はいう。

競合サービスには「Lucmo(ルクモ)」や「Meily(メイリー)」などがあるが、毛氏は「トリビューでは口コミ機能に加えて、情報の網羅性を重視していく」と述べ、「他社も含めて情報を得られるアプリが広まっていることはいいこと。かつては怪しまれていた美容医療の世界も、インスタグラムなどで施術を公言する投稿が当たり前になってきている。そうした中でもリードカンパニーになれるよう、がんばりたい」と語っている。

中国や韓国では、日本よりかなり早い2011年ごろから美容医療関連のアプリが出回っている。例えばテンセントが出資する美容整形アプリの「SoYoung(新氧)」では、コミュニティ、マッチングに加えて、施術資金を融資するローンや、保険などの金融サービスも展開する。

トリビューでも「ユーザー向けには口コミ、マッチング・予約機能に加えて、ローンや保険サービスの提供も進めていきたい」と毛氏はいう。また、クリニック向けには集客のほか、クリニックが得意分野を伝えるブランディング機能やCRM機能も提供していきたいとのこと。美容医療関連のサービスを多角的にそろえた上で、2020年末をめどに累計会員数100万人、契約クリニック数1000院到達を、そして2022年までのIPOを目指す。

2017年7月に創業したトリビューは、今回が3回目の資金調達となる。同社が調達した金額の累計は約4.5億円となる。今回の調達資金はクリニックへの拡販やユーザー向けプロモーションの強化、コンテンツ強化に充てるという。

トリビューのメンバー。写真中央は代表取締役の毛迪(モウ・デイ)氏。

空出身の宮崎氏がAI旅行提案サービスをリリース、4000万円超の資金調達も

2018年、スタートアップが進出する領域としてトレンドのひとつになった旅行関連サービス。チャットでざっくり条件を伝えるだけで旅行プランの提案・予約ができる「ズボラ旅 by こころから」や後払いで旅行に行ける「TRAVEL Now」、LINEとTravel.jpとの提携でスタートした「LINEトラベル.jp」など、旅行領域への進出は盛んに行われていた。

大きな市場があり、ディスラプトする余地が残るジャンルとして、旅行カテゴリーはスタートアップや投資家にとって、まだまだ魅力的な開拓先のようだ。8月8日には、新たにAIを活用した旅行サービス「AVA Travel(アバトラベル)」のベータ版リリースが発表された。サービスを提供するのはAVA Intelligence(アバインテリジェンス)。創業者はホテルのプライシングサービス「MagicPrice」を提供、TechCrunch Tokyo 2017 スタートアップバトルで最優秀賞を獲得したで開発企画、マーケティング、広報PRを担当していた宮崎祐一氏だ。

メタサーチ+AIでスマートな旅選び体験を提供

AVA Intelligenceは2018年10月の設立。ユーザーデータをもとに、それぞれに合った選択肢や情報を提供するアバターAIを開発するスタートアップだ。今回リリースされたAVA Travelは、ユーザーの性格や旅行に関する条件をもとに、AIが適した旅行先を提案。旅行先情報の閲覧・保存から、航空券・ホテル検索までを1プロダクトでまかなえるサービスである。

宮崎氏は高校生の頃から起業すると決めていたそうだが、旅行サービスで創業しようと決意したのは、自身が約30カ国へ旅行した経験からだ。「予約サイトではサイトによって値段などが違い、情報の非対称性が大きい。また、それを解決するために価格比較サイトなどでよく使われている『メタサーチ』の手法では情報量が多くなりすぎて、逆にユーザーの選択が不自由になるという点に課題を感じた」と宮崎氏はいう。

AVA Travelでは、メタサーチによって旅行予約サイトや旅行情報サイトなど、複数サイトにある多くの情報を自動収集しながら、AIにより各ユーザーに合った情報だけを判断して提供。情報の非対称性は解消しつつ、自分に合った情報に絞って提案してくれる。

検索・提案の効率のほかに、既にある旅行提案アプリやサービスと違う点として宮崎氏が挙げるのは、「タビマエの提案サービスというだけでなく、タビナカ、タビアトといった旅行の一連のプロセスで一貫して使えるサービスを目指しているところ」だという。

「AVA Travelでは旅行先を決める際に必要なインスピレーションをAIが瞬時に与え、旅行先ではどんなことができるのかを詳しく見ることができる。これにより旅行メディアサイトを複数、自身で見に行く必要はなく、気に入った旅行先情報があれば、それをAVA Travelのユーザーページ内にストックできる。今回のリリースでは実装していないが、今後はこのストックした旅行先情報から簡単に旅行先スケジュールを生成する機能の実装も計画している。また、訪れた旅行先情報をまとめて管理したり、必要に応じて公開したりできる、タビアト機能も実装予定。タビログ管理ができることに加えて、このタビログ情報をもとにAIがよりユーザーの好みを理解し、学習するようになる予定だ」(宮崎氏)

今回のベータ版では、ユーザーはAIからの旅行提案を実際に受け、予約まで行える。AIの学習度や提案できる都市の数(現状では海外の100超程度の都市が対象)の関係でベータ版としてリリースしているが、今後AIの学習度を進め、日本国内の提案も可能として、正式版公開を目指すという。

「空での経験は実に多く生かせている」

宮崎氏は起業にあたり、「空での経験は実に多く生かせている」という。そもそもAIを活用してホテル料金の提案を行うMagicPriceとは「旅行×AI」という分野が同じ。それゆえ「旅行業界における知見や人脈、そしてAIの可能性、生かし方が感覚として身についている」と宮崎氏は述べている。

また「スタートアップでのサービスをグロースさせる経験ができたことも非常に良かった」と宮崎氏。空CEOの松村大貴氏は「起業家が日本にどんどん増えていってほしい」と語っており、その思いは宮崎氏も同じだという。「スタートアップで働く人がどんどん増え、またそこからさらに新しいスタートアップを創業する人が増えていって欲しいと思う」(宮崎氏)

今回、プロダクトリリースの発表と同時にAVA Intelligenceでは、サイバーエージェント・キャピタルインキュベイトファンドTRADコンサルティング汐留パートナーズを引受先としたJ-KISS型新株予約権方式による増資と、日本政策金融公庫、みずほ銀行からの融資による、総額4000万円超の資金調達実施を明らかにしている。調達資金は、さらなるプロダクト開発、採用とユーザーへのコミュニケーション強化などに充てるという。

写真左から2人目:AVA Intelligence代表取締役 宮崎祐一氏

ヘリコプターシェアのAirXが約1.3億円調達、近畿圏の中距離空移動の活性化進める

ヘリコプターのシェアリングサービスを開発・運営するAirXは8月7日、総額約1.3億円の資金調達を発表した。近鉄ベンチャーパートナーズ、マネックスベンチャーズなどを引受先とした、シリーズAラウンドの第三者割当増資となる。

同社は、貸し切りヘリコプターをネットでオーダーできる「AIROS」、ヘリコプターの遊覧プランを予約できる「AIROS Skyview」、ヘリコプターの座席を1席ずつ予約できるシェアリングサービス「CodeShare」などのサービスを手がけている2015年2月設立のスタートアップ。使用頻度が低いヘリコプターや軽飛行機などの小型航空機を、シェアリングや時間貸しにより有効活用し、主に中距離(50km〜500km)の空移動の低価格化を実現する。

今回の第三者割当増資の引き受け先となる、近鉄ベンチャーパートナーズとは事業連携を予定している。近鉄グループが関⻄に所有する交通基盤にヘリポートを設置し、近畿日本鉄道が営業エリアとする伊勢志摩などの観光地に航路を拡大するとのこと。

代表取締役の手塚 究氏は今回の調達額について「現在は資金を突っ込んでいくタイミングではなく、次世代交通の登場を見据えてしっかりと根を張っていく時期だと考えている」とのこと。そのうえで、「まずは都市部から観光地への送客を中心に航路を開発していく」とコメント。

関西には現在、USJ近くの舞洲ヘリポート、八尾空港、京都伏見にあるJPD京都ヘリポートの3拠点があり、近鉄グループやその他の出資元との協業により、伊勢志摩や吉野、高野山、城崎などへの新たな移動手段として活用する計画だ。現在、同社のサービスに登録しているユーザーは4000人ほどで、富裕層が多いとのこと。最近では訪日観光客の需要も高まっているそうだ。

ヘリコプターの時速は100〜200km、高性能なものでも300km程度なので、前述のように航路としては都市部から200km〜300km離れた中距離に位置する観光地が候補になる。ちみに首都圏では、西武ホールディングスとの協業により夏季限定で下田や箱根の航路を運行している。

現在東京には新木場の東京ヘリポートしか拠点がない点については、「赤坂のアークヒルズ屋上にあるヘリポートも利用できないこともないが、着陸料が高く、着陸できる機体にも制限があるので定期運行は難しい」とのこと。都内にある小型飛行場での離着陸についても、騒音などの問題でやはり定期運行実現のハードルは高いそうだ。

その一方で、「現在のヘリコプターが出す騒音は80デシベル以上ですが、静音仕様の機体の開発も進んでいます。今後、自動車並みの騒音レベルである60デシベル程度まで下がってくれば、都市部での稼働も現実味を増す」と手塚氏。墜落などのリスクがあるので周辺住民との協議は必要だが、現在は災害時用に設置されている高層ビルのヘリポートを将来的には普段使いできるかもしれない。手塚氏によると「今後はビジネスジェットやセスナ機のシェアリングも手がけていきたい」とのことだ。

 

オンライン貸付投資「Funds」運営のクラウドポートがシリーズBで7億円調達へ

貸付ファンドのオンラインマーケット「Funds(ファンズ)」を運営するクラウドポートは8月5日、VCや事業会社などから、7月31日時点で総額6.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。引き続き調達を進め、現在のシリーズBラウンド全体で総額約7億円の調達を予定しているという。

「行列ができる金融商品」になったFunds

クラウドポートは2016年11月、代表取締役の藤田雄一郎氏と共同創業者の柴田陽氏により設立された。藤田氏はソーシャルレンディングサービス「クラウドバンク」の立ち上げに携わった人物。柴田氏はポイントアプリ「スマポ」など複数のサービスを立ち上げ、売却した経験のある連続起業家だ。

写真前列中央がクラウドポート代表取締役の藤田雄一郎氏、その右隣が共同創業者の柴田陽氏。

クラウドポートでは創業後、ソーシャルレンディング事業者の情報を横断で比較できるサイト「クラウドポート」を2017年2月に公開し、運営していた。ソーシャルレンディングサービスが注目を集める一方で、不適切な貸付審査やファンド募集などが問題視されることもあり、「第三者的な立場でソーシャルレンディングの魅力とリスクを伝えていきたい」(藤田氏)として立ち上げられたサービスだ。

その後、クラウドポートは自ら第二種金融商品取引業の登録を行い、個人向けの投資サービスとしてFundsを2019年1月からスタート。比較サイトのクラウドポートは主とする事業のスイッチにともない、1月17日付で金融メディア「ZUU online」を運営するZUUへ事業譲渡されている。

現在のメイン事業であるFundsは、個人が1円から貸付ファンドの取引ができるマーケットプレイスだ。「資産形成したい個人」と「事業資金を借りたい企業」とを結び、スマホで貸付ファンドの取引ができる。このサービスでは、金融業者であるクラウドポートが資金を集め、定められた基準を満たすファンド組成企業へ送金。ファンド組成企業が自社グループ内で事業資金を必要とする会社に貸付を行うというスキームになっている。

1月23日の正式ローンチ時には、3つのファンドで募集が行われ、募集開始から約15分で総額8000万円超の申し込みを完了。その後も1億円のファンドが募集開始1分39秒で満額申し込みを達成するなど、7社10ファンドで即日完売が続いている。このためユーザーからは「せっかく口座を開いたのに申し込みができない」との声も上がっており、6月からは一部のファンドの投資申込に抽選方式を導入することとなった。

Fundsに登録する投資家は、正式ローンチから半年の6月時点で1万人に達した。ユーザーは20〜40代の男性、年収300万円〜600万円のビジネスマンが中心という。藤田氏は「株やFXと比べて、忙しい人が片手間ででき、1円から投資できる点が評価されている」と分析していて「『行列ができる金融商品』になった」と述べている。

抽選方式のファンド申し込みでは、1億円分のファンドに3億円の応募が集まるなど「プロダクト・マーケット・フィットが成立している」と藤田氏。「老後資金への不安などから、資産形成の意識は高まっており、それを支えるためのサービスにもなる。自分事として投資ができる点も特徴。国民総資産運用時代に、貯蓄から資産運用への流れを後押しするサービスを提供していきたい」と語る。

ポストIPO企業に成長資金の調達手段を

今回の資金調達は、2018年3月に実施した総額3.1億円の調達に続くものとなる。今回調達に参加した投資家は、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、グローバル・ブレイン、三菱UFJキャピタル、VOYAGE GROUPが米SV FRONTIERと組んで立ち上げたSV-FINTECH FundなどのVCと事業会社だ。

「出資企業とは海外ノンバンク事業などの分野で連携を期待している。また、各社が持つさまざまな企業とのつながりを生かして、資金を調達したい企業に新しい手段が提供できるのではないかと思う。三菱UFJグループについては、銀行との連携を強くしたい思いがある。銀行は預金を背景にしていることから企業への出資がしづらい立ち位置にある。我々と一緒に連携して投資できれば」(藤田氏)

先日、神戸で開催された招待制のスタートアップイベント「Infinity Ventures Summit 2019 Summer KOBE」では、ピッチコンテスト「IVS LaunchPad」でFundsが優勝を勝ち取った。藤田氏は「この勢いに乗ってサービス認知、利用者拡大を図りたい。まずは投資家を増やし、事業者も募っていく」として、調達資金をマーケティング強化に充てる考えだ。またサービス強化のための人材獲得にも力を入れるという。

現状は「投資家の投資意欲が旺盛で、事業資金に大きな額を必要とする不動産関連事業へのファンドが多くなっている」というFundsだが、藤田氏は「幅広い産業を取り入れたい」と話している。今後、ポストIPOスタートアップを対象にしたファンドも手がけたいという。

「上場することで運転資金の獲得はできるが、逆にファイナンス手段が限定的になるスタートアップも多い。成長資金がなかなか獲得できないということで、ニーズはある」(藤田氏)

実際に具体的な話が進んでいるポストIPOスタートアップもあるとのこと。実現すれば「投資家も公開株によるものだけでなく、応援などユニークな体験ができるようになる」と藤田氏は話していた。

施主と解体⼯事会社をマッチングする⼀括⾒積もりサービス「くらそうね」のβ版がリリース、1.5億円の資金調達も発表

写真中央がクラッソーネ代表取締役、川口哲平氏

解体⼯事・外構⼯事の3社⼀括⾒積もりサービスを運営するクラッソーネは8月1日、LINEを使った解体⼯事の⼀括⾒積もりサービス「くらそうね」のβ版を愛知県限定で提供開始した。

くらそうねは、 物件の住所などに関する簡単な質問に答えるだけで、解体工事の⾒積もりを提示してもらえるサービス。最⼤10社の⼯事⾒積もりが、最短1⽇から随時閲覧可能となる。

スマホでLINEアプリを使い、場所、時期、予算などの項目をチャットボットに伝えると、見積もりが送られてくる。ユーザーはその見積もりのリストを「安い順」、「現場に近い順」、「過去の評価が高い順」などに並び替え、1社の工事会社を選ぶ。

くらそうねのUI

クラッソーネ代表取締役の川口哲平氏は、2つの課題が存在したため、くらそうねの開発に至ったと説明する。1つ目は、解体工事を依頼する際、昔ながらの一括見積もりサービスしか選択肢がなかったため、「依頼するとたくさんの電話がかかってくる」、「見積もりが出るまで数週間かかってしまう」、というのUXが当たり前の状態だった、ということ。そして2つ目は、解体を比較する要素はが値段しかなかった、ということだ。

「ユーザーは『トラブルなくちゃんとやってほしい』と考えている。だが、値段以外の『トラブルなくちゃんと』といった要素が見える化されていないため、値段でしか選べない。そうすると、ちゃんとやっていないのに安いところが選ばれてしまうという現状がある」(川口氏)。

上記のような課題を解決するため、くらそうねではユーザーが工事会社を「応対マナー」、「追加費⽤」、「⼯事品質」、「⼯期遵守」、「近隣配慮」といった項目でレーティング。そうすることで、値段以外の部分を「見える化」することを目指している。料金以外の判断基準が増えることは、施主にとっても、「ちゃんとした」⼯事会社にとっても、メリットとなると言えるだろう。

また、解体⼯事をはじめとする建設業界は多重下請構造になっているため、多額の中間マージンが⼯事料⾦に上乗せされるため、施主の負担が重くなるだけでなく、下請けの⼯事会社の利益を圧迫しているという現状もある、と川口氏は話す。そのため、くらそうねでは、施主と⼯事会社を直接繋げることにより、中間マージンの発⽣を抑え、適正な価格での工事の実現も目指している。

川口氏いわく、解体業界は「地味だが大きくて伸びている、プレイヤーがいない業界」。同氏は「年間で約50万棟が解体され、市場規模も1.7兆円。解体は今後も増えていく見込みのため、市場は4兆円規模に伸びるのではないかと考えている」と説明した。

クラッソーネは同日、リード投資家のオプトベンチャーズ、静岡キャピタル、三⽣キャピタルを引受先とした第三者割当増資により、総額1.5億円の資⾦調達を実施したと併せて発表している。川口氏いわく、同社は調達した資金をもとに開発体制を強化していく。

「今回の新しいサービスは、まずβ版を愛知県で、30社限定で運営をスタートする。ブラッシュアップした後に、他地域にも広めていく」(川口氏)。

また、くらそうねでは解体工事の費用のデータが集まるのため、最終的には見積もりが即時に出るサービスを目指していくと川口氏は話していた。「今は24時間で10社出るようにしているが、究極、1分で10社、1分で100社の見積もりが出るサービスとなる」(川口氏)。

アペルザが総額約12億円調達、メディアとeコマースを活用した製造業営業支援ツール「アペルザクラウド」に注力

製造業向けカタログサイトやマーケットプレイスの運営を手がけるアペルザは7月31日、総額12億円の資金調達を発表した。内訳は、Eight Roads Ventures Japanをリード投資家として既存株主のGMO Venture Partnersやジャフコのほか、新たにSMBCベンチャーキャピタルと三菱UFJキャピタルを引受先とした第三者割当増資、日本政策金融公庫からのデットファイナンス(融資)。

写真に向かって後列左から、三菱UFJキャピタルの清水孝行氏、Eight Roads Ventures Japansの村田純一氏、SMBCベンチャーキャピタルの太田洋哉氏、GMO Venture Partnersの宮坂友大氏、前列左からアペルザでCEOを務める石原 誠氏(アペルザ)、同社COOを務める田中大介氏

同社は、2016年7月に設立された製造業のミスマッチの問題を解消するスタートアップ。創業期に、元ソニー会長の出井伸之氏、元楽天副社長の島田亨氏、 メルカリ取締役社長兼COOの小泉文明氏がエンジェル投資したことでも有名だ。なお出井氏と小泉氏は現在、アペルザの経営顧問を務めている。

現在アペルザのサービスには約7600社の企業が登録しており、月間利用ユーザーは30万人になっているという。具体的には、FA・制御・センサ、電気電子・半導体、計測・試験・検査などの企業が登録している。これらの企業は各業界では知られた存在だが、専門性が高いため、その業界を離れると知名度が一気に落ちる。

知ってる人はすぐに調べられるが、知らない人はなかなかたどり着けない。こういったミスマッチを解消するため、同社はこれらの企業とその取り扱い製品・部品をジャンル別に分類・整理。目的の製品や部品を作っている企業を容易に見つけることができる。あくまでもB2Bだが、例えば電気電子・半導体のカテゴリであれば、半導体・セミコンダクタ→マイコンとさらにジャンルを絞り込んでいき、「遅延時間可変タイプ ボルテージディテクタ」(遅延回路内蔵CMOS RESET IC)といった部品の1情報が手に入るうえ、その場で購入することも可能だ。

そのほか、ものづくりニュース by アペルザオートメーション新聞ウェブ版IoTナビといった専門メディアを運営しており、キーパーソンへのインタビューや業界最新事情、新製品ニュースなどの記事を日々配信している。

同社は4月に、これらの既存サービスで蓄積されたデータを活用した製造業向けの営業支援ツール「アペルザクラウド」もリリース。同社が運営する専門メディアなどを活用したPR展開、各社の製品カタログデータのクラウド管理、見込み客の誘導や顧客の管理、eコマースの運用代行など、多岐に渡るサービスを提供する。

今回調達した資金は、このアペルザクラウドの顧客基盤拡大に向けた体制強化およびマーケティング費用に投資する。具体的には、カスタマーサクセスやマーケティングの部署の強化に当て、2020年1月までに社員数を現在の約50名から倍の100名体制に増やすとしている。

TechCrunchでは、アペルザでCEOを務める石原 誠氏に今回の資金調達について話を聞いた。

TC:今回の資金調達でデットファイナンスが占める割合を教えてください。
石原氏:1億円程度です。

TC:デット1億円程度なら第三者割当増資だけで十分かと感じましたが、あえて1億円を融資に頼った理由は?
石原氏:ダイリューション(株式の希薄化)を鑑みてということになります。また、自社サービスが製造業の中小企業向けということもあり、本業支援に熱の入っている金融機関との相性がよく、拡販のための営業を支援してもらうという思惑もあります。

TC:今回調達した資金はマーケティングやクライアントサクセスの向上に投下するとのことですが、具体的な施策を教えてください。
石原氏:マーケティングに関してですが、CMなどは現時点では考えていませんが、動画は想定しています。具体的にはタクシー広告などを検討しています。また、今回調達した資金を活用して、マーケティングの部署を新設します。そして、クライアントサクセス、営業、エンジニアはそれぞれ増員します。

TC:今回は主にVC、CVCからの資金調達ですが、今後事業会社から出資を受けることなどは検討していますか?
石原氏:事業会社との取り組みは、実はいくつか水面下で進めているものがあります。また今後始まる予定のものもあり、株式を絡める可能性がなくはないと考えています。

TC:期限を区切って人員をいきなり倍増する狙いは?
石原氏:これまでも100名規模で耐えられる組織整備を進めてきました。現在それが仕上がりつつあるため、大幅増員に耐えられると判断しています。事業も好調ですので、半年という短期間で積極採用を進めていく考えです。

TC:アペルザクラウドの利用社数は?
石原氏:非公開のため正確な数字は申し上げられないのですが、すでに数百社レベルです。アペルザクラウドの料金プランは、月額10万円(年間契約)となっています。

堀江貴文氏創業の宇宙開発スタートアップ・インターステラテクノロジズが12.2億円を調達

ロケットの開発や製造、打ち上げまでを手がけるインターステラテクノロジズは7月29日、総額12.2億円の資金調達を発表した。今回調達した資金は人工衛星軌道投入用ロケット「ZERO」の開発に必要な設備投資、人材採用、材料費などに活用する。同社は堀江貴文氏が創業者で、稲川貴大氏が社長を務める2003年5月設立の企業。

また、日本創生投資代表取締役の三戸政和氏を取締役に迎えて、今後はシリーズC以降での資金調達を進めていく。さらに海外展開を見据え、トレードシフトジャパン代表取締役の大久保紀章氏も取締役に就任する予定とのこと。シリーズBラウンドおける第三者割増資で引き受け先は以下のとおり。

  • 帯広信用金庫
  • 北洋銀行
  • ほっかいどう地方創生投資事業有限責任組合
  • 笠原健治氏(ミクシィ取締役会長)
  • 内藤裕紀氏(ドリコム代表取締役)
  • 田中修治氏(OWNDAYS代表取締役)
  • 古川健介氏(アル代表取締役)
  • 三戸政和氏(日本創生投資代表取締役)
  • 山本博士氏(スマレジ代表取締役)

同社は2016年にプロサッカー選手の本田圭佑氏、East VenturesなどからシリーズAラウンドで2億円を調達し、観測ロケット「MOMO」の開発を推進。5月4日に「MOMO3号機」の打ち上げが成功したことにより、同社としては観測ロケットとしては商業打上げのベースに乗ったことを確信、ZEROの開発を本格化できるフェーズに入ったと考えている。

なお、7月27日に打ち上げられた観測ロケット「ペイターズドリームMOMO 4号機」については残念ながら失敗となった。

打ち上げ約64.3秒後に機体に搭載したコンピュータが異常を検知したことでエンジンを自動で緊急停止させ、 警戒区域内の海面へ安全に落下したとのこと。打ち上げ結果は以下のとおり(暫定値のため今後の解析により変動する可能性あり)。

  • 打上時刻:7月27日16時20分00秒
  • 飛行時間:172 秒(2分52秒)
  • 最大高度:13.3km
  • 最大高度時刻:打上げから96 秒(1分36秒)後
  • 落下位置:射点より東南東9kmの海上

機上カメラからの静止画

  1. 20190728-165510

    提供:インターステラテクノロジズ
  2. 20190728-165359

    提供:インターステラテクノロジズ
  3. 20190728-165239

    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
  7. 20190728-165519

    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
  11. 20190728-165440

    提供:インターステラテクノロジズ
  12. 20190728-165309

    提供:インターステラテクノロジズ

夢しかない宇宙!地表形状や高度・変位を測定する衛星開発のSynspectiveが累計109億円調達

衛星データの解析や合成開口レーダー衛星の開発・運用を行うSynspective(シンスペクティブ)は7月26日、シリーズAラウンドとして第三者割当増資による86.7億円の資金調達を実施した。2018年2月の創業からの累積調達額は109.1億円で、同社によると1年5カ月で同額の調達は宇宙スタートアップ企業として世界最速であり、日本国内では最大規模とのこと。

関連記事:堀江貴文氏語る「日本が世界に勝てるのは宇宙とロボティクス、今が大チャンス」
今回の資金調達により同社は、SAR(Synthetic Aperture Rada、合成開口レーダー)衛星の開発・製造体制とソリューション開発を強化するとのこと。また、将来的に25機の衛星群を構築し、世界主要都市の日次観測を目指す。

同社は、衛星による観測データを活用したさまざまな事業を手がけるスタートアップ。内閣府「ImPACT」プロジェクトの成果を応用した独自の小型SAR衛星により高頻度観測を可能にする衛星群を構築。衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供する。

SAR衛星は、自ら電波を発することで地表形状や高度・変位を測定できる衛星。通常の光学式衛星とは異なり、曇天や夜間でも地上を観測できるというメリットがある。同社よると、低コスト・小型のSAR衛星による衛星群を構築することで、天候や時間帯に依存しない観測データが広域・高頻度で取得可能になるという。

これらのデータがどのように生かされるのかは提供先次第だが、これまでにない天候や日照に影響を受けずに高頻度で取得するデータが貴重なものであるのは確かだ。

第三者割当増資引受先は以下のとおり。

  • スペース・エースタート1号投資事業有限責任組合
  • 清水建設
  • ジャフコ
  • 東京大学協創プラットフォーム開発
  • 慶應イノベーション・イニシアティブ
  • Abies Ventures
  • みらい創造一号投資事業有限責任組合(東工大関連VCファンド)
  • 三菱UFJ信託銀行
  • 芙蓉総合リース
  • 森トラスト
  • SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合
  • みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合

家具サブスクの「airRoom」が約1億円を資金調達しパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

写真中央がElaly代表取締役の大薮雅徳氏

家具やインテリアのサブスクリプションサービス「airRoom(エアールーム)」運営のElalyは7月24日、オークファン、F Ventures 2号投資事業有限責任組合、名古屋テレビ・ベンチャーズ、コロプラネクスト 3号ファンド投資事業組合、Japan Angel Fund 1号投資事業組合、そして複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施したと発表。同社は2018年10月にも数千万円規模とみられる資金調達を発表している。

個人投資家には元メルカリ執行役員CTOの柄沢聡太郎氏、ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長の児玉昇司氏、Smartly.ioのSales Director(Japan)坂本達夫氏、そしてベクトル代表取締役社長の西江肇司氏が含まれる。

2018年10月にローンチしたairRoomは人気ブランドの家具を月額500円から利用できるサブスクリプションサービスだ。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県と大阪府で利用可能なこのサービスでは、1万点以上におよぶ家具のラインナップを用意している。プロのインテリアコーディネーターによるコーディネート提案や配送料、返却料、組立、設置が無料となっており、「安心保証」付きのため、傷をつけても心配する必要はない。また、2018年12月には、物置きのシェアリングサービス「モノオク」との連携により、家具の一時預かりサービス「airRoomトランク」の提供を開始した。パッケージ商品のサブスクリプションも2018年11月に開始されている。

TechCrunch Japanでは、2018年5月設立のElalyで代表取締役を務める大薮雅徳氏に今回の資金調達とairRoomの今後の展開について話を聞いた。

家具サブスクのリーディングカンパニーを目指すための株主構成

大藪氏は、「今後、家具サブスクの2Cの市場を作り上げていく上で、まずは僕らがそこのリーディングカンパニーであるというところを市場に対して示していく必要がある。そのためには、上場がやはりかかせない。そして上場を成し遂げていくためには大規模資金は必要ではあるが、一方で得た資金で最大限のレバレッジを効かせていかなければならない。そのためには、そこに対する知見を持っているメンバーを入れる必要があった」と話す。

今回の調達ではモノのサブスクに知見のあるメンバーを株主として迎えた。児玉氏は月額制でブランドバッグが使い放題の「Laxus(ラクサス)」運営の代表取締役社長、Smartly.ioの坂本氏はカメラ、家電、ガジェットのレンタルサービス「Rentio(レンティオ)」に投資しており、コロプラネクストはLaxusの株主。加えて、既存株主のサムライインキュベートは定額制ファッションレンタルの「airCloset(エアークローゼット)」に出資している。

大藪氏は、これにより「国内におけるそれぞれのドメインにおいての第一線を走っているスタートアップの知見が手に入る」と述べた。

今後の全国展開を見据え、愛知県は名古屋テレビ・ベンチャーズ、九州は福岡が拠点のF Venturesに協力を仰ぐ。また、airRoomは当初より家具に留まらず、コマース領域を全方位的に包括していくことを考えているため、その面ではメルカリ元CTO柄沢氏の知見を活かす。

そして、家具のサブスク市場の構造が「クラウドワークスとランサーズの状況に類似している」ため、上場を目指すと言う意味でもクラウドワークスCOOの成田修造氏を株主として迎えた。

今後はパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

今回調達した資金をもとに、Elalyは体制を強化、商品ラインナップを拡充し、人工知能やARなどのテクノロジーを利用したソリューション開発への投資や人材採用を行う予定だ。同社は顧客への家具のコーディネートの提案をウェブで展開中だが、ElalyではairRoomのアプリを開発し「部屋の写真をパシャっと1枚撮り『このような生活をしたい』と説明するだけで家具のコーディネートを提案されるというところを目指していく」(大藪氏)

airRoomはローンチしてから約半年。「解約率が見るからに減っている」そうだ。大藪氏いわく、その要因はコーディネート提案。家具の稼働率は現在90パーセントを超えており、「ほぼ在庫がない状況で、返却もわずか」なのだという。今後は強みである「パーソナライズ」をさらに強化していく予定だ。そのため、「顧客データは勿論のこと、加えて商品データと不動産データ、この3つのデータを取っていく」と大藪氏は説明。

「従来の家具メーカーが持っている顧客データは、性別や年齢、住んでいる場所など、本当に一般的なデータのみ。だが、適切にパーソナライズしようとするのであれば、そのデータだけでは不十分だ。例えば、ペットを飼う人と飼わない人では選ぶ家具には差がある。より洗練されたパーソナライズには顧客データだけでは足りていない」(大藪氏)

商品データに関して、大藪氏はairRoomでは「ID管理を11つの商品ごとに行なっている」と述べた。これにより、「どのようなユーザーに貸したらどの程度の傷などが付いた上で返却されるのかがわかる」(大藪氏)

不動産データは、部屋の間取りやデザインなどのデータだ。「例えば、床が白い部屋に住んでいる人と床が一般的な茶色なのとではやはり選ぶ家具は違う」(大藪氏)

大藪氏は、「顧客データ、商品データ、不動産データの3つの掛け合わせが重要」と説明した上で、「これを前提としてデータを取っていき、パーソナライズの精度を上げていくというのが短期的に目指しているところだ」と話した。

airRoomでは現在、比較的リーズナブルな値段の家具を揃えているが、ラインナップを増やしていく上で、「50万円、60万円の家具」も借りられるようにしていく。

「そうなった時に、貸し借りのトランザクションを通じて溜まる与信データをどんどん溜めていきたいと考えている。これによって、例えば、『この人は安定的に使ってくれる』、『綺麗な状態で返してくれる』、というのがわかれば、使える家具の値段の幅がもう少し上がる、というところをやっていきたい。サブスクは主にB2Cだが、airRoomでは徐々にC2C化していくことを検討している」(大藪氏)

SmartHRがシリーズCラウンドで総額61.5億円を国内外の投資家から調達

写真左からシニフィアン共同代表 朝倉祐介氏、小林賢治氏、SmartHR CFO玉木諒氏、代表取締役 宮田昇始氏、ALL STAR SAAS FUND 前田ヒロ氏、シニフィアン共同代表 村上誠典氏

クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRは7月22日、シリーズCラウンドで総額約61.5億円の資金調達を決定したことを明らかにした。今回の調達額のうち、約55億円が第三者割当増資、約6.5億円が新株予約権付社債。今回の調達でSmartHRの累計調達額は約82億円となる。

本ラウンドの出資者は、朝倉祐介氏、村上誠典氏、小林賢治氏の3人が設立したシニフィアンの200億円規模の新ファンド「THE FUND」、BEENEXTを設立した前田ヒロ氏が率いるALL STAR SAAS FUND、サンフランシスコを拠点とするLight Street Capitalほか2社が新規投資家として参加。既存株主からはCoral Capitalが運用するSmartHR専用ファンドの「SmartHR SPV」とWiL、BEENEXTが参加している。THE FUNDとALL STAR SAAS FUNDについては、いずれもSmartHRが出資1号案件となる。

SmartHRでは、外部サービスとの連携強化やオプション機能によるプラットフォーム化構想を2018年に打ち出し、「雇用契約機能」や「カスタム社員名簿機能」をリリースしてきた。2019年秋には従業員情報を分析する「ラクラク人事レポート機能」もリリース予定だ。

また今年1月に保険領域の新子会社、SmartHR Insurance設立を発表。確定拠出年金や保険を駆使して、従業員向けにお金の不安の課題解決を目指している。さらに先週7月16日には子会社SmartMeetingにより、会議の課題を改善するためのクラウドサービス「SmartMeeting」も発表したばかりだ。

SmartHR代表取締役の宮田昇始氏は、SmartHRをはじめ、これらのサービスはいずれも「企業の従業員の働き方の課題を解消するという共通点がある」と語っている。

今回の調達資金は、SmartHRの開発費、人材採用・人件費、マーケティング費用に投資するという。SmartHR代表取締役の宮田昇始氏は「開発・人材とマーケティング半々の割合で投資していく。マーケティングに関しては顕在化している顧客だけでなく、潜在層にもアプローチしたい。紙・はんこ・役所に行くことが当たり前だという企業でも、サービスを知ってもらえさえすれば、導入が決まっている状況。これらの手続きをまだ課題と感じていない顧客に啓蒙したい」という。

今回シリーズCラウンドでもあり、グロースファンドともパートナーシップを組むということで、そろそろ気になってくるのがIPOの時期だ。SmartHR CFOの玉木諒氏は「確定的な時期は申し上げられない」としているが、「IPOは企業が継続的に成長するための重要な手段。価値を最大化できる時期を見て公開も目指したい」と答えていた。

人材のスキルや教育を管理する「SKILL NOTE」運営が1.2億円の資金調達、製造大手の海外拠点対応を急ぐ

製造業の現場で働く人材のスキルと保有資格を管理する「SKILL NOTE」を開発し提供するイノービアは7月19日、インキュベイトファンド、およびジェネシア・ベンチャーズを引受先とした、1.2億円の第三者割当増資をシードラウンドで実施したことを発表した。

SKILL NOTEは、主に製造業、工事業、IT業の企業が、社員の保有資格やスキル、教育を管理するためのクラウド型システム。

スキルマップや教育訓練記録を作成、記録し管理でき、また、教育訓練の進捗管理や資格更新のアラート通知機能により、教育訓練計画の遅れ、スキルや資格の保有漏れを防ぐことができる。

SKILL NOTEの詳しい内容は、TechCrunch Japanでも以前に紹介しているので、こちらの記事も是非、参考にしてほしいのだが、企業側には事業継続のためのスキル管理ができるといったメリットがあり、人材にとっては計画的にスキルアップすることが可能となるといった利点があるのが特徴的だ。

今回調達した資金をもとに、イノービアでは、UIを改善するほか、カスタマーサクセスを拡充、また、「製造大手企業の海外拠点対応の加速」を視野に入れ、外国語対応を急ぐ。

同社はこれまで、カスタマーサポートという形での「受け身」な対応はとっていたものの、「こちらから出向き、現場で伴走しながら使いこなしていただけるようにしていく」ことでカスタマーサクセスを拡充していくと、同社の代表取締役、山川隆史氏は話した。

また、カスタマーサクセスの一環として、ユーザー同士がコミュニケーションを取れるよう、リアルな場でミートアップを行うようなコミュニティを形成していく。ユーザーから、他社はどのように活用しているのか、というような問い合わせが多く寄せられたため、「ユーザー同士がコミュニケーションを取り、より良い人材育成が製造業の中に普及するような環境を作っていきたい」と山川氏は説明。

そして、外国語対応では、まずは英語に対応できるようにする。日本企業より、「中国工場に導入したい」というような問い合わせもあるため、より長いスパンでは中国語ならびにタイ語にも対応できるようにしていく予定だ。山川氏いわく、「システム自体は多言語対応という形を後ろでとろうと思っている」ため、英語対応が可能となった後には比較的スムーズに他言語にも対応できるようになる。

イノービアのミッションは「人材の成長を科学して物作りをアップデートする」こと。

山川氏は、「製造業の中では、『人材育成は重要』だと経営層は言い続けているものの、実際に現場に行くと、物作りや開発で手いっぱいで、育成は重要だと考えていても手が回っていないこともある」と話す。

そのような環境のもと、従業員一人一人が「成長実感を持って生き生きと働いて活躍できるような世界を作っていく」ため、SKILL NOTEを開発するに至った。

「(製造業界には)昔ながらの、先輩がやるのを見ながら覚えたり、『良い上司にあたったらラッキーだね』、というようなのがまだまだある。そういうのを無くし、人材の成長育成を科学的にアプローチすることで、従業員が生き生きと働きながら成長することができる環境を整える。そのような形で、製造業をアップデートし、未来を変えていく」(山川氏)

今後、製造業の現場へのPCやiPadなどの端末の導入が今以上に進み、加えて、外国語に対応し製造大手の海外拠点に導入されていくことで、イノービアはSKILL NOTEの需要を大きく拡大していく構えだ。

動画業界に新たなエコシステムを、ワンメディアが4.2億円を調達して新事業を本格始動

ワンメディアのメンバー。中央が代表取締役の明石ガクト氏

「分散型動画メディアはこの1〜2年でひとつの区切りを迎えた」

そう話すのはミレニアル世代やZ世代向けに様々なジャンルの動画コンテンツを制作・配信してきたワンメディア代表取締役の明石ガクト氏だ。

2014年創業の同社は早い段階から「ONE MEDIA」ブランドの下、FacebookやTwitter、Instagramなど各SNS上で独自路線の動画コンテンツを展開。まさに分散型メディア領域で存在感を発揮してきた。

そのワンメディアが資金調達を機にこれまでのスタイルを変え、新たなフェーズへと大きく舵を切るようだ。

同社は7月16日、LINE Venturesなど複数社を引受先とした第三者割当増資により総額約4.2億円を調達したことを明らかにした。

ワンメディアにとっては2018年1月に3.5億円を調達して以来、約1年半ぶりの資金調達。今回は以下のVC・事業会社が投資家として参画している。

  • LINE Ventures(LINE Ventures Japan有限責任事業組合)
  • グローバル・ブレイン(KDDI新規事業育成3号投資事業有限責任組合)
  • オー・エル・エム・ベンチャーズ(OLM1号投資事業有限責任組合)
  • ABCドリームベンチャーズ(ABCドリームファンド2号投資事業有限責任組合)
  • みずほキャピタル(みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合)
  • セプテーニ・ホールディングス

この資金調達は、半年間ステルスで仕込んできたという新事業「クリエイターネットワーク事業」への投資が目的。同事業を通じて映画や広告、テレビなど多様なバックグラウンドを持つクリエイターとタッグを組み、彼ら彼女らが各SNSを含むデジタルスクリーン上で自作のコンテンツを配信できる機会を広げていきたいという。

ワンメディアとしてはONE MEDIAブランドで複数チャネル上に動画を配信する一般的な“分散型メディア”形式から、各クリエイターを主語に“個人の名前で”動画を届ける方法へと転換。自らが動画制作のプロフェッショナルとしてコンテンツレイヤーで戦い続けるのではなく、プラットフォーマーとして個々のクリエイターの活躍を支える役割へと少しずつシフトしていく構想のようだ。

すでに第一弾プロジェクトとしてクリエイターをネットワークし、企画から制作・配信までを同社が総合的にプロデュースする「ONE BY ONE」の取り組みもスタート済み。明石氏いわく「ONE MEDIAブランドの殻を破るための挑戦」でもあるという新事業について、その背景や概要を聞いた。

今のままでは「視聴者の変化」に対応できない

冒頭でも触れた通り、ワンメディアはカルチャーやニュース、エンターテインメントなど多様なジャンルの動画を複数のチャネルで広く配信してきた。

2018年11月時点でONE MEDIAの総月間リーチ数は2800万、総月間いいね数は5万に達し、合計で22万フォロワーを抱えるメディアに成長。複数の番組を制作するとともに、トヨタや本田技研、パナソニックなど大手企業をスポンサーとしたタイアップ動画も次々と手がけている。

特に2018年1月の資金調達以降は「面の理解を重視して取り組んできた」と明石氏が話す通り、新しいメディアやスクリーンに対応した試みにも力を入れた。InstagramのIGTVに特化した番組制作や、山手線まど上チャンネル・駅ナカOOHなどマルチスクリーン向けのコンテンツがまさにそうだ。

その一方で明石氏は動画業界を取り巻くトレンドや視聴者の変化から、より適した形へと事業をアップデートする必要性も感じていたという。特に同氏が近年の大きな変化に挙げるのが「視聴者から求められるコンテンツの変化」だ。

かつてテレビが主流だった時代にはニッチな層にだけウケるものよりも、メジャーなものが好まれた。ただ各個人がスマホを含む視聴用のデバイスを手に入れ、複数のチャネル上で自身の趣味嗜好に合ったコンテンツを楽しめる時代に変わると、必要とされるコンテンツも変わってきた。ニッチでも熱量の高いものの価値が一気に高まったのだ。

結果としてクリエイターに求められるコンテンツの種類と量は大幅に増加することになる。

スマホやSNSの台頭は、視聴者だけではなく作り手の概念も変えた。個人が簡単に作り手となり、1つのメディアとして大きな力を手にするようになった。インフルエンサーという言葉も今では当たり前のように使われている。

「この時代に強いのはUUUMさんのようにクリエイターをたくさん抱えていて、熱量の高いコミュニティをいくつも持っているような会社。視聴者が特定のブランド単位ではなく、信頼できる人やコミュニティをベースに情報を取得するようになってきた今、ONE MEDIAを主語にしたコンテンツを分散型で複数のメディアに出していても対応できない。複数の個人が主語となっていかないと細分化されたニーズを満たせないと考えた」(明石氏)

冒頭で触れた明石氏の「分散型メディアがひとつの区切りを迎えた」という考えも、そのような背景から来たものだ。

日本国内でもレシピ動画を筆頭に分散型メディアが一時期盛り上がったが、視聴者の変化だけでなくFacebookなどプラットフォーム側のアルゴリズム変更の影響などもあり、そこに大きく依存していたプレイヤーは方向転換を迫られた。

一方でチャネルを問わず訴求力のあるコンテンツを制作できるプレイヤーも、さらなる可能性を模索した動きを見せているという。先日発表された朝日新聞社が動画メディア「bouncy」を事業譲受したというニュースはその代表的な事例だと言えるだろう。

「メンズノンノ」から「少年ジャンプ」へ

このようなメディアを取り巻く時代の変化に対応するべく、ワンメディアが密かに進めてきたのが今回発表されたクリエイターネットワーク事業だ。

このネットワークでは「媒体ごとに違う指標で評価され、横の人材移動も全然ない“分断”された業界」(明石氏)だった動画・映像業界の垣根を超えて、映画監督やTVディレクター、CMプランナーといったバラエティ豊かなクリエイターを集める。デジタルスクリーン上で活躍の機会を提供することに加え、評価軸を統一することも狙いだ。

「細かいニーズに応えるためには、動画の表現方法自体もどんどん更新されていく必要がある。ワンメディアが自社で抱える数十人単位の個人だけでなく、業界に携わるフリーのクリエイターや制作会社で映像を作っている人も巻き込み、みんなで取り組むべき大きなイシューだ。そうであるなら、みんなの拠り所になるような場所・仕組みを作ろう。そんな気持ちで始めた」(明石氏)

現段階の構想はデジタルスクリーンをジャックすること。スマホを筆頭に、タクシーや山手線の中、スマートディスプレイなどネット通信を介したデジタルメディアに特化してコンテンツを手がけていく。

「電波というメディアの上で、テレビ局がいろいろなコンテンツを手がける。印刷物というメディアにおいて、出版社がプラットフォームとなりコンテンツを生み出す。ワンメディアはデジタルスクリーンにおける同じような存在を目指したい」(明石氏)

これまでワンメディアは自社で制作スタッフを抱え一通りのコンテンツを内製してきた。いわば「コンテンツレイヤー」のチームだったわけだけれど、今後はその機能を保持しつつも会社としてはコンテンツを作るクリエイターを束ねた「プラットフォーム」としての役割を強化する。

明石氏は「同じ集英社の雑誌でも編集部が一丸となって1つの作品を作るメンズノンノはコンテンツレイヤーに近く、編集者が個別の連載作品を独り立ちさせるようなマインドで育てあげ、そうした作品が集まってできた少年ジャンプはプラットフォームに近い」ことを例に説明してくれたけれど、これに当てはめるとワンメディアはメンズノンノから少年ジャンプへと移行する形だ。

キャストとクリエイターの化学反応をプロデュース

第一弾プロジェクトとしてスタートした「ONE BY ONE」はこの方針を具体化したもの。各動画の細かい演出はクリエイターが考え、ワンメディアは動画の企画から制作、配信までの工程を総合的にプロデュースする役割を担う。

ONE BY ONEの取り組みとして6月からLINE VISION内で「すがもとゆうこす日記」「ONE RAP, ONE CAM」「カレーに恋する女の子」の3番組がスタートした。それぞれキャストとクリエイターがコラボする形になっているが、ワンメディアは進行管理やキャスティング、流通先の確保などコンテンツ制作に必要なサポートに徹する。

「『ジャンル』と『キャスト』と『クリエイター』の掛け合わせ。特に既存の仕組みで足りていないのがクリエイターのパートだと考えている。個人(キャスト)がメディア化する中で、そのコンテンツの魅力を最大限に引き出すにはクリエイターの目線や編集が不可欠。そこをしっかりサポートしながら、個と個だけでなくワンメディアも掛け合わせることで、新しい動画の可能性を追求したい」(明石氏)

2020年5月までに参加するクリエイターの数を1000人まで拡大することを目標とするほか、出口となるコンテンツの配信先も今後拡充する計画。TwitterやYouTubeなど各種SNSや各デジタルサイネージ端末に加えて、NetflixなどSVOD(定額制の動画配信プラットフォーム)も見据えているという。

ONE MEDIAブランドの殻を破り、新たなフェーズへ

少し余談になるけれど、明石氏も言及していたUUUMが7月12日に「note」を運営するピースオブケイクとの資本業務提携を発表した。UUUMは昨年にもインスタグラマーを支援するレモネードを買収するなど、YouTube上でコンテンツを発信する動画クリエイターに限らず、個人クリエイターへのサポートの幅を広げている。

個人が1つのメディアとして大きな力を得るようになった社会では、そのような個人とうまくタッグを組みながら強固なネットワークを築いた企業が一層力をつけていくのかもしれない。

動画に関して言えば、配信先となるデジタルスクリーンは今後も増えていくであろうし、5G時代が到来すればニーズも一層高まるだろう。「動画コンテンツが求められるシーンが増えても、クリエイターネットワークなら対応できる」というのが明石氏の考えだ。

事業の拡大とともに動画制作の依頼も増えたが、それに伴って「これまで自分たちがやらなかったような動画の相談や、ONE MEDIAの枠組みではあまり成果を出せないかもという相談」も増えた。自社で蓄積してきたナレッジと、ネットワークに参加する各クリエイターの表現や興味を組み合わせれば、今後はそういった案件もカバーできる可能性があるという。

またクリエイターとワンメディアで役割分担をすることで、純粋に制作できるプロジェクトの数を増やすことも期待できる。明石氏によるとVISION内でスタートした3つの番組はあるプロデューサーが1人で担当しているそう。従来のように全てをワンメディアで担った場合、1つの番組につき4人がかりでやっていたような作業量とのことだ。

労働集約型の色が強かった動画・映像業界においては、その課題に対するアプローチとしてAIやクラウドソーシングの仕組みが用いられていたりもするが、ワンメディアではそのどちらでもない「クリエイターのネットワーク」を通じて、クリエイターの個性を活かしながら育成と活躍を支援する体制を整えていきたいという。

今後ワンメディアではONE BY ONEの他にもクリエイターネットワーク事業に関連するプロジェクトをいくつか立ち上げる予定。これらの取り組みを通じて動画・映像業界における新たなエコシステムを構築することを目指す。

「これまでONE MEDIAに対して持たれていたイメージの殻をぶち破り、新しいONE MEDIAの形を作って段階になる。『新しい動画産業をつくる』というミッション達成に向けて、多様なクリエイターやプロデューサーと一緒に挑戦を続けていきたい」(明石氏)

痛くない乳がん用診断装置を開発のLily MedTechがアフラックCVCから資金調達

Lily MedTecは7月12日、アフラック・イノベーション・パートナーズ(アフラック・コーポレート・ベンチャーズ)からの資金調達を発表した。調達額が非公開。

Lily MedTecは、超音波を用いた乳房用画像診断装置の開発を手掛ける2016年5月設立のスタートアップ。東京大学医学系研究科・工学系研究科での研究技術を基に、リング型の超音波振動子を用いた乳房用画像診断装置「リングエコー」の開発を進めている。

乳がん検査としては専用のX線装置であるマンモグラフィが普及しているが、検査時に検査台に乳房を載せて上下と斜め横から挟む必要があるため、痛みを感じることが多い。また。X線を利用するため被爆のリスクもある。さらに、脂肪性、乳腺散在、不均一高濃度、高濃度など、脂肪や乳腺組織が多い、いわゆる高濃度乳房の場合は精度が落ちるという問題もある。

リングエコーは、X線ではなく超音波振動を利用するため被ばくリスクがないほか、乳房を圧迫する必要がないので痛みもないのが特徴だ。Lily MedTecによると、臨床試験によって装置の基本機能の有効性は確認できているとのこと。今回の資金調達によって、開発スピードを向上させ、量産化に向けた社内外の体制強化を進めていくとのことだ。

アフラック・イノベーション・パートナーズは、アフラック生命保険の親会社である米アフラック社が2019年2月に設立したCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)。米本社のCVCであるアフラック・コーポレート・ベンチャーズが持つ2億5000万ドル(約271億円)の資金を、インシュアテック(保険テック)やヘルステック、バイオテックなどの分野のアーリーからレイターまでのスタートアップへ投資している。

国内ではLily MedTecのほか、予防医療プラットフォーム開発のMRSO(マーソ)、管理栄養士監修のレシピ検索・献立作成サービスのおいしい健康、医療検索サイトMedica Noteなどへ出資済みだ。

SNS分析・運用サービスを提供するAIスタートアップのAIQが2億円調達

AI技術を活用したSNS分析・運用サービス「AILINK(アイリンク)」などを提供するAIQ(アイキュー)は7月12日、総額約2億円の資金調達を実施したことを明らかにした。調達先はand factoryほか複数の投資家と金融機関。AIQにとっては外部からの初の資金調達となる。

社会実装を重視してAIをSNS運用サービスに展開

AIQの設立は2017年7月。創業からちょうど2年になる人工知能スタートアップだ。AIQ代表取締役社長CEOの高松睦氏は前職で、大手通信キャリアを相手に先端技術を使ったソフトウェアの提案・開発を行っていた。そこでディープラーニングに出会い、「ディープラーニングを使い、自分たちのサービスとして提供できれば」と考えたことが起業のきっかけだった。

AIQ代表取締役社長CEO 高松睦氏

「先端技術を扱ってはいるが、ビジネスサイドから人工知能を手がけているのが我々の特徴。研究を深掘りしていくというよりは、社会実装することを重視している」(高松氏)

AIQでは、画像解析エンジンとSNSに特化した自然言語処理エンジンを独自に開発。2つを組み合わせることによって、SNSに投稿された写真や動画、テキストなどの情報から、投稿者の性別・年代・地域・趣味嗜好などの属性を、高い精度でプロファイリングできるという。

また、これらのエンジンを使ったサービスも展開している。その代表的なものがインスタグラムアカウントの分析・運用サービスAILINKだ。企業のインスタグラムアカウントと親和性の高いユーザーを抽出でき、相性のよいアカウントには自動でフォローや「いいね!」などのアクションを実施。フォロワー増やマーケティングに役立てることができる。2018年9月には、顧客からの要望が高かったTwitter対応版もリリースした。

AILINKはフォロワー増を目的として導入されることが多いそうだが、「ユーザー分析をした上で自動運用を行うので、効果が高い」と高松氏は話している。「マスマーケティングが頭打ちになる中で、コアなファンとのつながりを持つことができ、ケアすることも可能。購入単価増に結び付けることもできる」(高松氏)

AILINKサービス紹介サイトより

インスタグラムの自動運用ツールには、競合も数多い。どういった点で優位性があるのか高松氏に尋ねると、「独自のSNS分析に適したAIエンジンを持つことと、データを保有している点だ」との答えが返ってきた。「ハッシュタグのみでなく投稿全体を分析し、ランダムなゴーストアカウントではなく興味がありそうな人をフォローするので、フォローバックがきちんと得られて、タイムラインで情報を届けることができる」ということだそうだ。

高松氏はSNSをAI開発とサービス展開のフィールドとして選択した理由について、こう述べている。「スタートアップとして人工知能を手がけるためには、学習のためのビッグデータがなければならない。SNSは豊富に学習データがあり、着手しやすかった」(高松氏)

フォロワーのさらなる活用のために新プロダクトを準備

今回の調達資金は、現サービスの開発、販売のための人材強化に充てるというAIQ。また、8月に新サービスの立ち上げも予定しているという。

「AILINKでフォロワーは蓄積できたとして、その後のアクションに顧客は悩みを抱えている。新サービスでは、フォロワー分析に焦点を当てる。例えばスイーツに関するアカウントなら、和菓子なのかアイスクリームなのかケーキなのか、アカウントのつながりを分析する。ネットワーク分析の結果を利用して、フォロワーをインフルエンサーとしてマーケティングに生かしたり、商品開発に協力してもらったりといった、次のステップを考えるための『究極のファンベースマーケティングのためのプラットフォーム』を用意したい」(高松氏)

また、本ラウンドのリード投資家であるand factoryとは、資本業務提携も実施。and factoryが展開するユースホステル事業「&AND HOSTEL」などのIoTデータや提供するアプリで蓄積するユーザー行動のビッグデータなどを活用した、データとAIによる新プロダクトの研究開発を今後両社で検討していくという。

ALSOKも出資のディーカレットが32億円調達、仮想通貨の決済技術開発にアクセル踏む

仮想通貨(暗号通貨)の取引・決済サービスを提供しているディーカレットは7月11日、総額32億円の資金調達を実施した。出資企業は、筆頭株主であるインターネットイニシアティブのほか、KDDI、コナミホールディングス、住友生命保険、大同生命保険、明治安田生命保険、中部電力、阪急阪神ホールディングス、松井証券、エネルギア・コミュニケーションズ、綜合警備保障(ALSOK)、凸版印刷の計12社。

今回の調達した資金は開発体制を強化に当て、デジタル通貨の新たな決済プラットフォーム開発を進める。より多くの企業からの出資を受けることで、仮想通貨からデジタル通貨へサービスの範囲を拡大する狙いがある。

同社のサービスは、資金の預け入れを銀行だけなく、金融機関を利用したペイジー入金、ローソン、ファミリーマートなどで依頼できるコンビニ入金を用意しているほか、日本円への出金機能も備える。QRコードを使った送金も可能だ。

テレビ番組の視聴者提供映像を支える、JX通信社が約5億円を調達

JX通信社は7月11日、約5億円の資金調達を発表した。グローバル・ブレイン(グローバル・ブレイン7号投資事業有限責任組合)、SBIインベストメント(SBI AI & Blockchain投資事業有限責任組合)を引き受け先とする第三者割当増資で、累計調達額は計約14億円。

今回調達した資金は、リスク情報SaaS「FASTALERT」を軸としたサービスの強化、「記者のいない通信社」としての新しい報道プラットフォームの確立に使うとのこと。また今回の第三者割当増資に伴い、グローバル・ブレインで代表取締役社長を務める百合本安彦氏が社外取締役に就任する。株主にはグローバル・ブレインのほか、共同通信グループ、QUICK、サイバーエージェント・キャピタル、SBIインベストメント、ベクトル、テレビ朝日ホールディングス、三菱UFJキャピタル、フジ・スタートアップ・ベンチャーズなどが名を連ねる。

FASTALERTは、SNSから災害、事故、事件などのリスク情報を収集して配信するシステム。最近では事故や災害の際に視聴者から提供される写真や映像が増えたが、実はこれらを数あるネットコンテンツの中から抽出できるのがFASTALERTの特徴だ。テレビ局は同システムを使うことで短時間で著作権者に使用許諾について連絡できるようになる。現在、NHKとすべての民放キー局に導入されているほか、地方テレビ局、新聞社、警察、消防、自治体などでの採用実績もある。

そのほか同社では、報道価値をAIが判定するニュース速報アプリ「NewsDigest」、自動電話世論調査サービス「JX通信社 情勢調査」などのサービスも提供している。