大ヒットのきっかけをつくる、インフルエンサーと若手ミュージシャンをつなぐ音楽アプリBreakrが4.6億円調達

音楽アプリのBreakrは2021年7月中旬、Slow Venturesが率いる420万ドル(約4億6000万円)のシードラウンドを調達したと発表した。Andreessen HorowitzのTxOファンドによる70万ドル(約7700万円)の資金調達は、このサービスの開発者がアイデアを実現するための概念実証のようなものだと考えられていたが、今回の資金調達はそれに続くものである。

Breakrのサービスが投資家にとって魅力的な理由は明白である。新進気鋭のミュージシャンとソーシャルメディアのインフルエンサーを結びつける手段として機能する同プロダクト。ミュージシャンはメディアへの露出を高めることができ、インフルエンサーは業務時間中にリスニングセッションを効果的にホストすることで報酬を得る。そしてBreakrは収益の10%を得るという仕組みである。

画像クレジット:Breakr

このサービスは、飽和状態となった音楽市場においてとてもユニークなアプローチを用いたものだ。音楽を発掘すること、発掘されることはともに困難であると誰もがわかっているが、音楽を聴く人のためにアルゴリズムを調整するのではなく、発掘されていない音楽を適切なリスナーの耳に届けるということに焦点をあてているのである。同スタートアップは6人の創業者によって設立されているが、そのうちの2人に話を聞いた際、ラッパーたちがレコード店の前に立ち、ミックステープのCD-Rを1枚5ドルで売ろうとしていた時代のことを思い出した。以来、さまざまなことが進化を遂げてきたが、音楽の発掘に関する問題はまだ誰も完璧に解くことができていない。

「Breakrはアーティスト、インフルエンサー、ブランドを効率的につなげるために必要不可欠なツールです。私自身の経験からいうと、多様なインフルエンサーを見つけるだけでなく、彼らを効果的に動かし、このプロセスを手動で行うというのは非常に手間がかかる作業です」とAMP TechnologiesのMarc Byers(マーク・バイヤーズ)氏はリリース中で述べている。「インフルエンサー・モールと私は呼んでいますが、同社のサービスを活用すれば、キャンペーンが必要とするテイストに最適な才能を購入するだけで良いのです」。

媒体がソーシャルメディアに変わっても、苦労の大きさや無益感は変わっていない。Def Jam(デフ・ジャム)のオフィスから出てきたラッパーのQ-Tipがその場で数小節聞いてくれたという、モブ・ディープの成功話はどこでも起き得る話ではない。もちろん、一般論として世界にはもっと多くのQ-Tipが必要であることは間違いない。しかし人間のクローンを作る技術はまだ存在しないため、Breakrは金銭的なインセンティブを加えて、その体験に近いものを提供したいと考えている。

「世界的に有名なDJやメジャーレーベルのA&RのメールやDMSには、彼らの気を引こうとするアーティストからのメッセージで溢れかえっています」。金融大手のGoldman Sachsに勤務していたこともあるCEOのTony Brown(トニー・ブラウン)氏はそう話す。「私たちは彼らに固有のURLを渡し、彼らはそのURLを送信して『おい、俺のDMSには近づくな、ここで会おう。価格はこうで、あとは話し合おう』という感じになるわけです」。

インフルエンサーがアーティストに対して課金する価格はフォロワー数に応じて高くなる。Breakrによると、約1万2000人のユーザーがインフルエンサーアカウントに登録しており、現在審査が行われているが、すでに3000〜4000のアカウントが承認されている。

「WarnerやSonyのような大企業から、SoundCloud上のラッパーのような無名アーティストまで、あらゆる企業や人々と仕事をしてきました」と、元Adobe勤務の創案者兼製品責任者のAmeer Brown(アミール・ブラウン)氏は付け加える。

ラッパーおよびインフルエンサーであり、長年の友人でもあるTobe Nwigwe(トビー・ノウィーグェ)氏も共同設立者に名を連ねており、自らリスニングセッションを開催するなど、ソーシャルメディアを通じてブランドの普及に積極的に貢献している。

「Breakrチームが構築しようとしていた、インフルエンサーとアーティスト間の技術的な仲介役としてのビジョンを見た瞬間、Breakrこそが未来だとすぐに感じました」とノウィーグェ氏は振り返る。「エリカ・バドゥやデイブ・シャペルのような文化的アイコンが私の音楽を後押ししてくれて、彼らのプラットフォームで私を徐々に広げてくれたことが私にとって非常に大きなチャンスでした。今後はBreakrで、あらゆるレベルのアーティストやインフルエンサーに対してこういったことができるのです」。

文化的アイコンとしては、ラッパーのNasも注目すべき投資家の1人である。TechCrunchに寄せられたコメントによると「つながりを知る前から同社のことは気に入っていましたが、この偶然がこの取引をさらに特別なものにしてくれました」とNasは話している。

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画像クレジット:Breakr

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

TikTokとSnap元社員が作ったソーシャル音楽作成アプリmayk.itが約4.4億円調達

新型コロナパンデミックという世界的な大混乱を経験し、多くの労働者が自分のキャリアパスを再検討し始めている。TikTok(ティックトック)のグローバルマーケティング責任者を経て、Cameo(カメオ)のチーフ・マーケティング・オフィサーとなったStefan Heinrich Henriquez(ステファン・ハインリッヒ・ヘンリケス)氏もそのうちの1人だ。

「TikTok時代から音楽のことを考えていて、本当は自分で何かを作ってみたいと思っていたのですが、最終的に行動に移す勇気を出すまでにさらに1年かかりました。その後、パンデミックが始まったとき、多くの人が『自分は何のために生きているのだろう』というようなことを考えていたと思います」。とヘンリケス氏はいう。

ヘンリケス氏は、Snap(スナップ)のSpectacles(スペクタクルズ)のソフトウェアエンジニアだった共同設立者のAkiva Bamberger(アキバ・バンバーガー)氏とともに、2020年夏に「mayk.it(メイクイット)」の開発を開始した。米国時間9月7日、このソーシャルミュージックアプリがiOSに登場し、Greycroft(グレイクロフト)、Chicago Ventures(シカゴ・ベンチャーズ)、Slow Ventures(スロウ・ベンチャーズ)、firstminute(ファーストミニッツ)、Steven Galanis(スティーブン・ガラニス)氏、Randi Zuckerberg(ランディ・ザッカーバーグ)氏、YouTuberのMr.Beasts(ミスター・ビースト)のNight media(ナイトメディア)、Spotify(スポティファイ)初代CMOのSophia Bendz(ソフィア・ベンツ)氏、Cyan Banister(シアン・バニスター)氏、アーティストのT-Pain(ティペイン)氏、音楽業界のベテランZach Katz(ザック・カッツ)氏などの投資家から400万ドル(約4億3900万円)のシードラウンドを受けたことを発表した。

mayk.itは、人々がスマートフォンだけで音楽を簡単に制作、所有、そして共有できるようにしたいと考えている。ユーザーは、自分で作ったビートをアップロードするか、他のユーザーが作った既存のビートを選択して、ボーカルを加え(恥ずかしければ、ボイスエフェクトや少し古臭い歌詞制作ジェネレータも利用できる)、Giphy(ギフィ)からビジュアルを追加する。作ったものをアプリ上に投稿すると、他のユーザーがディスカバリーページで閲覧することができる。ディスカバリーページでは、ジャンルではなく、フィーリングやテーマによって音楽が分類されている。

mayk.itでは「ペットは今、何を考えていますか」「初恋の人についての歌を作ってください」など「アイデア」や創造性を刺激するものも用意されている。また、曲を左右にスワイプできるTinder(ティンダー)のようなタブもあり、気に入った曲があれば、コメント(応援の意味を込めて「エンカレッジメント(激励)」と呼ばれている)を残したり、リミックスしたりすることができる。

画像クレジット:mayk.it(スクリーンショット)

もちろん、自分の作品にもう少し真剣に取り組みたいと思っているクリエイターにとって、リミックスやコラボレーションは、所有権の問題を引き起こす。誰かが作ったビートに他のユーザーが歌を乗せた場合、それは誰のものになるのだろうか?mayk.itでは音楽を収益化することはできないが、それをエクスポートして他の場所で販売する権利はある。ヘンリケス氏によると、アプリ上のオーディオクリップや曲の制作に関わった人は誰でも等しく分け前を得ることができるそうで、ビートメーカーは利益の50%、シンガーは50%を得ることができる。mayk.itが利益を受け取ることはない。

現状、mayk.itにはアプリ内課金はないが、ヘンリケス氏は、将来的にはブランドと協力したり、アプリ内のマーケットプレイスを確立したりすることで、利益を得ることができるかもしれないと述べている。今のところ、mayk.itはシード資金を使って、新機能の追加、製品の改善、創造性を刺激するツールの構築に注力している。ヘンリケス氏は、LGBTQ+である創業者として、ユーザーがアプリのソーシャル機能を通じてコミュニティを見つけられることが重要だと考えていると付け加えた。

「YouTubeで働いていた頃は、Adobe Premiere(アドビ・プレミア)やAfter Effects(アフターエフェクツ)の知識が必要でした。そして、Musical.ly(ミュージカリー)やTikTokで学んだことは、これらのことを経験しなくてもビデオクリエイターや役者になれるということです。ゲームではRoblox(ロブロックス)が、デザインツールではCanva(キャンバ)がそれを実現していると思います」。

mayk.itは、音楽の作曲や共有ができるRobloxやCanvaのような存在になりたいと考えている。現在のところ、mayk.itでは、Ableton(エイブルトン)をマスターしたアーティストが作ったようなサウンドを作ることはできないが、mayk.itで作ったもので、簡単にTikTokで話題にすることはできる。

mayk.itはApp Storeで公開されているが、アクセス権を得るためのウェイティングリストがある。また「vibe check(バイブ・チェック)」で自分のスキルを試すこともできる。これは、曲を作って、既存のユーザーがあなたを受け入れてくれるかどうかを確認するためのものだ。自慢ではないが、私たちは合格した。

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画像クレジット:mayk.it

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Akihito Mizukoshi)

Apple MusicはShazamの技術でDJミックス内の楽曲に対しきちんと使用料を払おうとしている

Apple Music(アップル・ミュージック)は米国時間9月10日、DJミックスの作成に関わるすべてのクリエイターを個々に適切に特定して支払いを行うプロセスを作成したことを発表した。Apple Musicは、Appleが2018年に4億ドル(約439億5000万円)で買収した音声認識アプリShazam(シャザム)のテクノロジーを使用して、メジャーならびに独立レーベルと協力して、ミックスに登場するDJ、レーベル、アーティストの間でストリーミングロイヤルティを公正に分配する方法を考案しようとしている。これは、DJミックスが関係するすべてのクリエイターに対して長期的な金銭的便益を提供して、他のアーティストが繰り返しクリエイターの作品を利用して制作した場合でも、クリエイターに報酬が支払われるようにすることが狙いだ。AppleはShazamのテクノロジーの初の大がかりな統合として、その価値を認めているようだ。

これまでは、YouTube(ユーチューブ)やTwitch(トゥィッチ)などのライブストリーミングプラットフォームは、他のアーティストの曲の使用を著作権侵害としてフラグ付けする可能性があったため、DJがミックスをオンラインでストリーミングすることは困難だった。アーティストは、ライブセット中にDJが曲を再生されたときにはロイヤリティを受け取る権利があるが、ダンスミュージックの場合には、さまざまな曲を編集して混ぜ合わせて認識できないものにすることができるため、事情はさらに複雑になる。

Apple Musicは、2020年と2021年のトゥモローランドのデジタルフェスティバルのセットを含め、すでに何千ものミックスをホストしている、だがビルボードが6月にそれを指摘していたものの、今回の技術を正式に発表したのはこのタイミングになった。この発表の一環として、Studio !K7のDJ Kicksアーカイブが同サービス上で展開され始め、ファンは15年以上市場に出ていなかったミックスにアクセスできるようになる。

DJのCharlotte de Witte(シャーロット・デ・ウィッテ)氏は「Apple Musicは、ミックスにトラックが含まれているアーティストと、それらのミックスを作成しているアーティストに公正な料金を提供できるような連続ミックスを提供する最初のプラットフォームです。これは、誰もが公平に扱われる正しい方向への一歩です」と、Appleを代表する声明の中で述べている。「オンラインミックスを再び提供できることに、言葉ではいえないほど興奮しています」。

画像クレジット:Apple Music

ダンスミュージックファンにとって、DJミックスをストリーミングできる機能は画期的であり、Apple MusicがSpotify(スポティファイ)と競争するのに役立つだろう(SpotifyはAppleのポッドキャスティングの利用者を上回り、有料サブスクリプションで業界をリードしている)。Apple Musicはロスレスオーディオや空間オーディオを導入し、クラシック音楽チャンネルを買収したにもかかわらず、まだSpotifyには追いつけていない。だがDJミックスの追加によりさらに別のユニークな音楽機能が追加されることになる。

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だがApple MusicがDJロイヤルティの難問へ果敢に切り込んだとしても、パンデミックを乗り越えて生き残ったライブミュージシャンやDJの間で起こっている、より広範な危機に必ずしも対処できるわけではない。

Mixcloud(ミックスクラウド)のようなプラットフォームでは、DJが事前にライセンスされた音楽を使用してセットをストリーミングし、収益化を行うことができるが、Apple MusicのDJミックスにはユーザー生成コンテンツは含まれない。Audible Magic(オーディブル・マジック)と提携しているMIDiA Research(ミディア・リサーチ)は、ユーザー生成コンテンツ(UGC) が、リップシンクのTikTok(ティクトク)であれSoundcloud(サウンドクラウド)DJミックスであれ、音楽を使用するオンラインコンテンツが、今後2年間で60億ドル(約6589億8000万円)を超える価値のある音楽業界の金鉱になる可能性があることを発表した。しかし、Apple自身はまだUGCに投資していない。個人は、Soundcloudの場合のような、個人のミックスをプラットフォームにストリーミングをアップロードすることはまだできない。6月のビルボードレポートによると、Apple Musicは、プラットフォームが結合されたトラックの70%を識別したときのみ、ミックスをホストする。

Apple Musicは、ロイヤルティが正確にはどのように分割されるかについての質問には答えなかったが、これはミュージシャンたちがデジタル環境の中で生計を立てる方法を再考するための小さな一歩に過ぎない。

これらの革新はアーティストに報酬を与える役には立つものの、ストリーミングロイヤルティは、ミュージシャンがお金を稼ぐ方法のごく一部しか占めていない。Appleはミュージシャンに1回のストリームごとに1セント(約1.1円)を支払うが、Spotifyのような競合他社はそれよりもはるかに少ない額しか支払っていない。このことから、UMAW(ミュージシャンと関連労働者組合)は、3月にJustice at Spotify(Spotifyに公正さを)という名前のキャンペーンを開始した。これは、Appleと同じく1回のストリームあたり1セントの支払いを要求するものだ。しかし、特にプラットフォームからのストリーミングに対するわずかな支払いを考えると、ライブイベントはミュージシャンにとって不可欠なもののままだ。もちろん、パンデミックはツアーに対して良い影響を与えていない。さらに追い打ちをかけるような情報だが、2016年にエレクトロニックミュージック協会は、ダンスミュージックプロデューサーたちがライブパフォーマンスと認定されないまま使用された作品から1億2000万ドル(約131億8000万円)のロイヤルティをもらうことができなかったと推定している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Amanda Silberling、翻訳:sako)

ミュージシャンが自分たちのために作ったiPhone用音楽録音アプリ「Tape It」登場

2021年3月にAppleは、ミュージシャンがすぐに音を録り新曲のアイデアを育てることのできるiPhoneアプリ「Music Memos」の新規ダウンロードを正式に停止した。そして現在、「Tape It」という新しいスタートアップがオーディオの録音を便利にするアプリの空白地帯を埋めようと参入している。このアプリは優れた音質と楽器の自動検出、そしてマーカーやメモ、画像のサポートなどの機能を備えている。

Tape Itのアイデアはミュージシャンである友人同士の2人、Thomas Walther(トーマス・ワルサー)氏とJan Nash(ジャン・ナッシュ)氏から生まれた。

ワルサー氏は自身が共同で創業したオーディオ検出スタートアップのSonalyticが2017年にSpotifyに買収された後、3年半Spotifyに在籍した。もう1人のナッシュ氏はクラシックの教育を受けたオペラ歌手で、ベースを演奏しエンジニアでもある。

この2人に、デザイナーでミュージシャンのChristian Crusius(クリスチャン・クルシウス)氏が加わった。クルシウス氏はAccentureに買収されたデザインコンサルティング会社のFjordに在籍していた。

長年ともにバンド活動をしていた創業者チームが自分たちの欲しいものからTape Itの開発を思いついたとワルサー氏はいう。同氏はSpotifyの新しい部署であるSoundtrap(これも2017年にSpotifyが買収したオンラインミュージックスタートアップ)での勤務を終えた後、音楽制作に関わる仕事にもっと取り組みたいと考えるようになった。Soundtrapは一部の人には役に立ったが、同氏やバンド仲間が求めるようなものではなかった。同氏らが求めていたのは、スマートフォンで音楽を録音できるシンプルなツールだった。ミュージシャンが現在Appleのボイスメモアプリでよくやっているように、そしてダウンロード停止となるまでの短い間はMusic Memosアプリでやっていたように。

画像クレジット:Tape It

ワルター氏は「アマチュアであってもプロのツアーミュージシャンであっても、自分のスマートフォンでアイデアを録音するでしょう。スマートフォンはいつも持ち歩いているからです。カメラとまったく同じです。最高のカメラはいつも持っているカメラです。そして最高のオーディオ録音ツールはいつも持っているツールです」と説明する。

つまり録音をしたいときの最も簡単な方法は、ノートPCを開いて何本もケーブルを接続し、それからスタジオソフトウェアを起動することではない。iPhoneで録音ボタンをタップすることだ。

Tape Itアプリはまさにその通りに使えるが、iPhone標準のボイスメモアプリより優位な機能も備えている。

録音する際に、Tape ItはAIを活用して自動で楽器を検出し、カラフルなアイコンを付けて録音データを見つけやすくする。録音のファイルに自分でマーカーを付けたり、詳細を忘れないようにメモや写真を追加したりすることもできる。これは後で録音を確認する際に便利でしょう、とワルサー氏はいう。

画像クレジット:Tape It

同氏は「かっこいいギターのサウンドが録れたら、アンプのセッティングを写真に撮って追加できます。これはミュージシャンがよくやっていることです。サウンドを再現する最も簡単な方法です」と説明する。

シンプルでありながら斬新な機能としては、文章の段落を区切るかのように長い録音データを複数の行に分割できる。同社はこれを「タイム・パラグラフ」と呼んでいる。デフォルトでは水平方向にスクロールする1つの録音データになっているのが一般的だが、分割することで長いセッションを聴きやすくなると同社は考えている。

画像クレジット:Tape It

スマートな波形とオプションのマーカーや写真のおかげで、録音の目的の箇所に戻りやすい。録音をお気に入りに追加すれば、最高のアイデアやサウンドの一覧をすぐに表示できる。iOSのメディアセンターと統合されているので、いつでも時間があるときに音楽を再生できる。

Tape Itの際立った特徴は「Stereo HD」の音質をサポートしていることだ。iPhone XSやiPhone XRといった新しめのモデルに内蔵されている2つのマイクを利用し、社内で開発したAIテクノロジーやノイズ低減技術などを使って音質を向上している。この機能は年額2200円のサブスクで利用できる。

今後Tape ItはAIなどのテクノロジーを開発してさらに幅広く活用し、音質を向上させる予定だ。コラボレーション機能、録音データの読み込みやプロ用スタジオソフトウェアへの書き出しのサポートも計画している。こうなっていくと最終的にTape Itは、SoundCloudがコンシューマ向けサービスにシフトする前に目指していたのと同じ市場に参入していくことになるだろう。

しかし共有機能を追加する前に、まずはシングルユーザーのワークフローを確立したいとTape Itは考えている。

ワルサー氏は「自分専用の便利なものを作るのが重要であると判断しました。コラボレーション機能があったとしても、使うのが好きでないものは使われなくなるでしょう」という。

Tape Itの3人はストックホルムとベルリンに拠点を置いている。現在はブートストラップの段階だ。

iOS版アプリは無料でダウンロードできる。MacとWindowsで使えるデスクトップ版は後日リリースされる。Android版は計画されていない。

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楽曲の所有権をNFTとして販売、ファンがロイヤリティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイス「Royal」
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画像クレジット:Tape It

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

プロお墨付き音楽スタートアップのROLI、財政難を経て「Luminary」として再出発

2013年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で、創業者兼CEOのRoland Lamb(ローランド・ラム)氏がSeaboardの鍵盤を叩いているのを見た途端に、私はROLI(ロリ)に魅了された。ロンドンを拠点とするこの会社は、2016年に発表したモジュール式のBlocksシステムをはじめ、長年にわたって独創的な音楽ソリューションを提供し続けている。

もちろん、クリエイティビティとスタートアップの爆発的な成功は、我々が思うほど一致しないものだ。Business Insiderによる同社のプロフィールは、ROLIの最近の苦境について「ニッチ」な製品群に言及しているが、これはおそらく妥当なことだろう。音楽業界や技術系メディアで知名度の高いファンを獲得したにもかかわらず、同社のデバイスはメインストリームでの成功を運命づけられていなかったようだ。

コロナ禍も相まって、ROLIは英国での管財申請という回避策を取らざるを得なくなった。ラム氏と彼の70人ほどの従業員は、Luminary(ルミナリー)というスピンアウト企業によってROLIの夢を生かし続ける。

画像クレジット:Roli

LuminaryがROLIの知的財産とその負債の両方を引き継ぐことはすでにわかっていたが、これが正確に何を意味するのか、ラム氏と彼の仲間にコメントを求めた。ROLIは、これまで総額7500万ドル(約82億円)超の資金を調達している。

Lambはインタビューでこう語った。「結局のところ、我々が最初に開発したプロ向けの製品は、その市場の範囲内では成功したものの、ベンチャーとしての軌跡を考えると市場の規模が十分ではなかったのです。急成長を目指していましたが、それは難しいことがわかりました」。

最近では、ROLIは「LUMI」キーボードを発表した。これは、ライトアップされた鍵盤を使ってユーザーにピアノを教えることを目的とした、従来よりもメインストリームの製品だ。この製品は、同様の名前を持つLuminaryのフォーカスとなる。また、オリジナルのSeaboard製品ラインも、新会社で引き続き提供する予定だ。

画像クレジット:Roli

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがクラシック音楽配信サービスのPrimephonicを買収

米国時間8月30日、Apple(アップル)はクラシック音楽の提供を拡大するために、Primephonic(プライムフォニック)を買収したことを発表した。2014年にスタートしたアムステルダムを拠点とするPrimephonicは、これまでApple Musicの一般的なストリーミングのアプローチでは不足していた音楽ジャンルに、特に大きな貢献をすることになる。

サービスはApple Musicのプラットフォームに吸収されるため、単独での提供は事実上終了する。米国時間9月7日にPrimephonicは終了し、Appleは自社のストリーミングサービスをベースにしたクラシック音楽アプリを2022年に立ち上げる準備を進める。

Primephonicの共同創業者でCEOのThomas Steffans(トーマス・ステファンス)氏は、Appleが発表したプレスリリースの中で「アーティストのみなさんには、Primephonicのサービスと私たちがクラシック音楽の世界で行ってきたことを気に入っていただいていると思っていますが、今回Appleと一緒になることで、より多くのリスナーのみなさんに最高の体験を届けることができるようになります」と語っている。「クラシック音楽をメインストリームにお届けし、新世代の音楽家と次世代の観客を結びつけることができるのです」。

2020年発表されたPrimephonicのCTO Henrique Boregio(エンリケ・ボレジオ)氏へのインタビューによれば、150カ国でサービスが開始されているとのことだった。また、一般的なストリーミングサービスに比べて、より高い年齢層の人々が利用しているようだ。

エンリケ・ボレジオ氏は、2020年にMixpanel(ミックスパネル)に対して「当社のユーザーの多くは55歳以上で、高学歴で比較的裕福な生活を送っていらっしゃいます」と語っている。「クラシック音楽が好きになってお金持ちになるのか、それともその逆なのかわからないね、とオフィスでは冗談を言っています」。

Appleはこの先行う提供に関して「Apple Musicのクラッシックファンのみなさまは、作曲家やレパートリーごとのより優れたブラウジングや検索機能、クラシック音楽のメタデータの詳細な表示、さらに新しい機能や特典などの、Primephonicの最高の機能を備えた体験をお楽しみいただけるようになります」とコメントしている。

新しいクラシック音楽サービスが開発されている間、Primephonicの既存のユーザーには、Apple Musicの6カ月間 無料利用という形の特別提供を行う。

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画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(文: Brian Heater、翻訳:sako)

楽曲の所有権をNFTとして販売、ファンがロイヤリティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイス「Royal」

音楽とNFTを結びつけて、ユーザーがマーケットプレイスで曲の所有権を買えるようにし、人気が出るとロイヤルティを得ることができるスタートアップへの投資を、Founders FundとParadigmがリードした。

Royalというスタートアップは、「3LAU(ブラウ)」という名前で活躍するEDMアーティストのJustin Blau(ジャスティン・ブラウ)氏と、住宅購入スタートアップ「Opendoor」の共同設立者であるJD Ross(JD・ロス)氏が主導している。ブラウ氏は、NFTコミュニティの中でも特に積極的に活動している人物で、ミュージシャンが暗号資産を利用して作品を収益化する方法を模索する目的で、数多くの新興企業を立ち上げてきた。新型コロナの蔓延によりツアーができなくなってからは、本格的にNFTに取り組み、「クリエイターからすべての価値を奪うプラットフォーム」の力関係を逆転させる方法を探していたという。

Beepleの作品がクリスティーズで6900万ドル(約75億8000万円)で販売され、世の中の人がNFTという言葉を初めて知ったときから数週間も前に、ブラウ氏は自らの記録を作っていた。特製の曲とアートワークを収めたセットが、1170万ドル(約12億9000万円)相当の暗号資産で売れたのだ。

今回のRoyalの投資発表は、CryptoPunksやBored ApesなどのコミュニティNFTプロジェクトに投資家が数億ドル(数百億円)相当の暗号資産を投じるなど、NFT市場の強気の動きが熱を帯びてきた頃に行われた。デジタル作品をブロックチェーン上に置くことに関心のあるビジュアルアーティストは、ここ数カ月の間に、自分のアートを収益化するプロセスを簡素化するためのプラットフォームが数多く登場し、成熟してきているが、ミュージシャンに焦点を当てた取り組みは少なかった。

ParadigmとFounders FundはRoyalの1600万ドル(約17億6000万円)のシードラウンドをリードし、これにロス氏が最近までゼネラルパートナーだったAtomicが参加した。ロス氏と一緒にOpendoorの共同創業者だったKeith Rabois(キース・ラボイス)氏が、Founders Fundの投資をリードした。

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Royalのローンチの詳細やプロダクトの計画は、まだ情報がとても少なく、その分割資産の販売をいつ始めるのかもわからない。しかし最初はブラウ氏の音楽が中心になることは明らかだろうし、彼が音楽業界に占めていた地位がファンや投資家を惹きつけるだろう。ユーザーは今からでもアーリーアクセスでサインアップできる。

NFTのスタートアップはより複雑な所有権分割を追究して、クリエイターたちが成功をファンと共有できるようにする。しかしその複雑さが、規制当局がいずれ介入する原因になるという、さまざまな憶測を招いている。2017年のICOブームでは、多くの創業者たちがSECから書簡をもらって証券詐欺を非難されたが、今回も起業家たちはそれを避けるために相当な努力が必要だ。ブラウ氏によると、同社は法律顧問と密接に協力して、コンプライアンスの完全な達成を目指しているという。

同社にとってもっと大きな課題は、音楽の権利を買うためのアクセスを確実に民主化して、ファンの全員を幸福にし、新しいファンをどんどん作っていくことだ。暗号資産への投機はとても多様化しており、そのための努力が難しい。でもブラウ氏によると、音楽のロイヤリティの所有権の拡散はまだ改良の余地が極めて大きく、現在、目立つのは一般ファンではなく、レーベルやプライベートエクイティ集団やヘッジファンドだ。

「投資家が嗅ぎつけるよりもずっと早く、ファンが所有権を握ることが重要です。アクセスの民主化が、NFTのような暗号資産の未来の鍵を握っている」とブラウ氏はいう。

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画像クレジット:Royal

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

カニエ・ウエストが新アルバム発表に合わせて約2.2万円の音楽ガジェットを発売

Kanye West(カニエ・ウエスト)、あるいはかつてそう呼ばれていた「Ye」は、10枚目のスタジオアルバム「Donda」のプロモーションに全力で取り組んでいる。そのタイトルは、亡くなった母親のDonda West(ドンダ・ウェスト)にちなんで命名されたもので、7月にはアトランタのメルセデス・ベンツ・スタジアムで大規模なリスニング・パーティーが開催された(そしてウエストは、そのロッカールームに滞在し続けた)。今後、故郷のシカゴで開催されるリスニング・パーティーのために、このラッパーは幼少期を過ごしたソルジャーフィールドの家を再建しているところだ

そして今回のアルバム発売に合わせ、ウエストはYeezy Techブランドから200ドル(約2万2000円)の音楽ガジェット「Stem Player(ステム・プレイヤー)」を発売する。公式サイトによれば、このプロダクトはそれぞれのステム(茎)、つまりボーカル、ベース、サンプリング音、ドラムなど、個々の音の要素が分離するように設計されており、別々にエフェクトをかけたり、バランスをリミックスさせたりすることができるという。

このデバイスには、新アルバムの曲があらかじめ収録された状態で販売されるようだ。サイトのFAQには、この製品は「Donda」に合わせて発売されるが、他の音楽にも使用できると付記されている。

画像クレジット:Kanye West

興味深いことに、このデバイスは、ロンドンを拠点とするスタートアップ企業のKanoと共同で開発された。同社は、子どもたちがプログラミングなどを学ぶためのさまざまなSTEM(科学・技術・工学・数学)教育向け製品を販売している。Kanoは2019年に、Disney(ディズニー)ブランドのデバイスを多数発売したにもかかわらず、レイオフに苦しんでいた

同社はここにきて興味深い新たな生命線を見出したようで、この製品はシリコンスキンの外装の背面に「Yeezy Tech x Kano」と、Kanoの社名もクレジットされている。

ウェストは、2019年に前作「Jesus Is King」を発表した際のインタビューで、このデバイス(またはその前身)を名指しで紹介している。当時は、デザイン会社であるTeenage Engineering(ティーンエイジ・エンジニアリング)とのコラボレーションだったようだ。「このアルバムとその前のアルバムのためにTeenage Engineeringと一緒にデザインしたこのポータブル・ステム・プレイヤーは、福音を広めるためのものだ」とウエストは当時、DJのZane Lowe(ゼイン・ロウ)に語っていた。

この製品は2021年夏に出荷される予定だ。

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画像クレジット:Kanye West

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フォートナイトが「記録破りのスーパースター」が登場するゲーム内イベントを予告、日本時間8月7日〜9日開催

Epic Games(エピックゲームズ)は、「Fortnite(フォートナイト)」のバーチャルな草原をTravis Scott(トラヴィス・スコット)がサイケデリックに闊歩して以来となる最大のゲーム内イベントを予告している。

フォートナイト開発元のEpic Gamesが「Rift Tour(リフト・ツアー)」と呼ぶこの謎めいた新イベントは、米国時間の8月6日(金)から8月8日(日)(日本時間8月7日朝から8月9日)まで開催されるという。今回の予告発表で、Epicはプレイヤーに「フォートナイトと記録破りのスーパースターが交わる魔法のような新しい現実へ、音楽の旅に出よう」と呼びかけている。

このミステリーショーのシリーズを盛り上げるゲーム内イベントは、7月29日から8月8日まで開催されているので、プレイヤーは今すぐフォートナイトに飛び込んで、リフトツアーをテーマにした新しいクエストや報酬をチェックすることができる。この綿菓子色のイベントでは、カスタムローディングスクリーンや、ふわふわ雲の子猫のアイコンなどのデジタル賞品が用意されている。

リフトツアーは1回限りのイベントではない。Travis Scott(トラヴィス・スコット)のイベントと同様に、フォートナイトはプレイヤーが参加しやすいように、3日間で5回の異なるショータイムを開催する。Epicは米国時間8月2日(月)に詳細を発表するとのことなので、誰がパフォーマンスをするのか、間もなく明らかになるはずだ。

さて……今回は誰が登場するのだろう?今のところ、すべての兆候がAriana Grande(アリアナ・グランデ)を示している。リーカーたちは1週間以上前からそう言っているし、EpicがApple(アップル)との裁判で公開した文書には、グランデとLady Gaga(レディー・ガガ)が出演するゲーム内イベントの計画が詳細に記されていた。

画像クレジット:Epic Games

また、Forbes(フォーブズ)のPaul Tassi(ポール・タッシ)氏は、最近のリーク情報がいかにGrandeを示唆しているかということについて、彼女のミュージックビデオから引用されたビジュアルテーマや、彼女のペットであるPiggy Smalls(ピギー・スモールズ)を連想させるアートワークなどの点と点をつなげて説明している

Epicは最新のバーチャルイベントをツアーと呼んでいることから、ゲーム内に登場する謎のスーパースターはグランデ1人ではない可能性もうかがえる。もしそうだとしたら、レディー・ガガの出演も考えられる。同社は2020年12月のコンサートにガガの出演を計画していたようだが、実現することはなかった。Kanye West(カニエ・ウェスト)も8月6日に最新アルバムをリリースするが、最近いくつもの物議を醸しているウェストとEpicが提携する可能性は低いと思われる。また、ウェストの最新アルバム「DONDA(ドンダ)」は、もともと別の日に発売予定だったのが延期されてこの日になったということもある。

誰であろうと、間もなく詳細が明らかになるだろう。たとえ、あなたがグランデのファンでなくても、あるいは熱心なゲーマーでなくても、フォートナイトのゲーム内コンサートは、史上最もクリエイティブで視覚的にエキサイティングなバーチャルイベントの1つだ。

巨大なバーチャルラッパーがネオンの閃光を放っている間に、誰もが一度は友達と一緒にメタバースの世界へ飛び込んでみるべきだろう。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Epic GamesFortnite音楽バーチャルイベントメタバース

画像クレジット:Epic Games

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

音楽を利用して脳卒中患者の歩行能力を改善させるMedRhythms

MedRhythms(メドリズムス)は、神経系の損傷や病気を患った人の歩行能力を測定し、改善することを目的としたデジタル治療プラットフォームの開発を進めるために、2500万ドル(約27億4000万円)の資金をシリーズBラウンドで調達した。

このラウンドは、Morningside Ventures(モーニングサイド・ベンチャーズ)とAdvantage Capital(アドバンテージ・キャピタル)が共同で主導し、以前から出資していたWerth Family Investment Associates(ワース・ファミリー・インベストメント・アソシエイツ)も参加。メイン州ポートランドを拠点とする同社は、これまでに3100万ドル(約34億円)の資金を獲得している。

共同設立者でCEOのBrian Harris(ブライアン・ハリス)氏は、ボストンのSpaulding Rehabilitation Hospital(スパルディング・リハビリテーション病院)で神経学的音楽療法の研究者として、脳卒中患者や脳の障害を持つ人々に音楽を使った治療を行っていた。そこでハリス氏は、患者やその家族から、病院外で同様の治療を受けるにはどうしたらよいかという質問を受けるようになった。適切な代替手段が見当たらなかったため、2016年にハリス氏は起業家のOwen McCarthy(オーウェン・マッカーシー)氏とともにMedRhythmsを起ち上げた。

同社のプラットフォームは、センサー、音楽、ソフトウェア、そして「リズミカルな聴覚刺激」という根拠に基づく介入を用いて、運動を制御する神経回路に働きかける。この技術は、脳の聴覚システムと運動システムが外部のリズミカルな手がかりに同期して結合するという神経学的プロセス「エントレインメント(引き込み現象)」を利用することで、時間の経過とともに歩行機能の改善をもたらす。

「音楽ほど脳を活性化させる刺激は他にありません」とハリス氏はいう。「音楽に夢中になっている時には、神経可塑性が新しい結合を作り、古い結合を強化することを助けます。神経可塑性によって私たちは新しいことを学び、脳に障害がある人は回復することができるのです」。

MedRhythmsの製品サイクル(画像クレジット:MedRhythms)

1年前、MedRhythmsのデジタル治療製品は、脳卒中による慢性的な歩行障害を治療するとして、米国食品医薬品局(FDA)からBreakthrough Device(ブレイクスルー・デバイス)指定を受けた。これは、パーキンソン病、急性脳卒中、多発性硬化症などの神経疾患の治療に、音楽を使用することに注目している同社のパイプラインにおける最初の製品でもある。そのために、同社はMassachusetts General Hospital(マサチューセッツ総合病院)と、ニューロイメージング(脳機能イメージング)の研究を行っている。

ハリス氏は、今回のシリーズBで調達した資金を、製品の市場投入やチームと治療パイプラインの拡張に充てたいと考えている。同社ではこの技術を商業化し、臨床試験を開始するために、FDAへの申請を準備しているところだ。

Morningsideの投資パートナーであるStephen Bruso(スティーヴン・ブルーソ)氏は、MedRhythmsのチームを1年前から知っていたと語っている。デジタルヘルス分野に積極的に取り組んでいるMorningsideは、それ以来、MedRhythmsに注目していたという。

新型コロナウイルスは、ヘルスケアの提供の仕方を根本的に変えた。これまでの病院や診療所で治療を受けるという形は、強固だが変化に抵抗するものだったと、ブルーソ氏はいう。しかし、新型コロナウイルス感染流行によって在宅での遠隔医療を余儀なくされ、それはまた、医療業界に革新をもたらすことになった。在宅療法は、患者のコンプライアンスと回復の両方において改善の余地があるとブルーソ氏は期待しており、MedRhythmsは治療を家庭に移行させるという最近の風潮を利用している。

この2〜3カ月の間に、Morningsideが興味をそそられたのは、医薬品以外の方法で脳に影響を与えるという発想だった。

「音楽的な介入によって神経学的な変化や改善を促すというMedRhythmsのやり方には説得力があります」と、ブルーソ氏はいう。「感情的な記憶は音楽と結びついていることがあります。音楽によって薬を飲むよりも豊かな体験ができる。そのためにこの会社は存在しているのです」。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:MedRhythms資金調達歩行音楽遠隔医療

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リアルな会場が再開し始める中、コンサートライブストリーミングのMandolinが約13億円調達

Mandolin(マンドリン)は6月初旬に創業1年を迎えたばかりだ。にもかかわらずインディアナポリス拠点の同社はもう1200万ドル(約13億円)のシリーズAを発表した。2020年10月初旬に500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達してから間もない動きだ。コンサートストリーミングプラットフォームを立ち上げて成長させるのに、世界的なパンデミックは思いがけず幸運な時間となった。

申し込み超過だったラウンドは645 VenturesとFoundry Groupが共同でリードし、High Alpha、TIME Ventures (マーク・ベニオフ氏)といった既存投資家からの追加出資も受けた。

もちろん、世界が以前の暮らしに戻り始めた時にMandolinのような企業はどうなるのかというのは大きな疑問だ。ツアーが取り止めとなりファンやアーティストが手段を模索する中でコンサートライブストリームは確かにかなり勢いづいた。しかし今、会場が再開し始めている。

「アーティストが完売御礼の会場での公演に戻るにつれ、Live+は間違いなくライブのショーを広める、なくてはならないデジタル補完になります」とCEOのMary Kay Huse(メアリー・ケイ・ヒューズ)氏はリリースで述べた。「新規の資金調達ラウンドは、すべての公演がLive+で展開されるよう、当社の中心的なソリューションであるイノベーションの促進、新しいデジタルサービスの展開、マーケットへのルート補強に役立ちます」。

画像クレジット:Mandolin

認めよう。かなり抽象的だ。しかしこの会社は必然的な再開よりも前に会場イベントの推進を目指していた、というのが単純な答えだ。基本的に同社は公演のためのコンパニオンアプリを作りたいと考えている。

ヒューズ氏は先週Varietyに次のように語った。「早ければ年末までに、参加者の50%以上が会場にいながらデジタルで何かを体験するようになればいいと思っています。参加者に使いたいと思わせる、人の心を掴んで離さないコンテンツを制作しています」。

同社は引き続きストリーミングにも注力する。ストリーミングはヒットとなったが、パンデミック後すぐに廃れそうにはない。今回の資金調達とともに、645 Venturesのマネージングパートナー、Nnamdi Okike(ナムディ・オキケ)氏が取締役会に加わる。

「新型コロナの間、ライブストリーミングはお気に入りのアーティストのパフォーマンスを体験したいファン、そしてエキサイティングなライブイベントをファンに届けたいアーティストと会場にとってゲームチェンジャーでした」とオキケ氏は述べた。「Mandolinはこうしたエクスペリエンスを可能にするために最高のテクノロジープラットフォームを提供し、そしてこの急成長中の分野のニーズを満たすために会社を成長させています」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Mandolinライブストリーミング資金調達音楽コンサート音楽ストリーミング

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンが毎月アナログレコードの名盤が届く新サブスク「Vinyl of the Month Club」を米国で開始

アマゾンが毎月アナログレコードの名盤が届く新サブスク「Vinyl of the Month Club」を米国で開始

vovashevchuk via Getty Images

米Amazonが、新しいサブスクリプションサービスを静かに開始しています。この「Vinyl of the Month Club」サービスは、月額25ドルで毎月1枚、60~70年代のおすすめ名盤をユーザーのもとに届けてくれるという、どことなくデア〇スティーニ的なサービス。

俗にビニール盤とも呼ばれるアナログレコードは近年静かに復活を続けており、最近レコードプレーヤーを手に入れた人は、一枚また一枚とアナログ盤を入手してはその音やアートワークを愛でたい衝動に駆られていることでしょう。

そしてアナログ盤を楽しむのなら、それが全盛だった時代の音楽こそが最適。とはいえ当時をリアルタイムで知らない若い世代の人たちにとっては、数ある名盤からどれを選ぶべきかで悩んでしまうかもしれません。

音楽好きなら、どれを買うかを決定するプロセスも楽しみのひとつではあるものの、趣味も多様化している現代、専門家がセレクトした作品を毎月ひとつずつ楽しむという受身な聴き方もまた、限りある時間を効率的に使うという意味では良いのかもしれません。

Amazonの紹介ページには、マイルス・デイビス、レッド・ツェッペリン、フリートウッド・マック、アレサ・フランクリン、ピンク・フロイドというジャズ、ハードロック、ブルーズロック、R&B、プログレッシブロックという、60~70年代当時の英米ポピュラーシーンを代表するアーティスト、グループの顔が並んでいます。

アマゾンが毎月アナログレコードの名盤が届く新サブスク「Vinyl of the Month Club」を米国で開始

Amazon

もちろんこれら以外のアーティストの作品も届きます。たとえばこれまでには、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』があれば、パンクバンド ザ・クラッシュ の『ロンドン・コーリング』もありました。これらのアナログ盤は米Amazonでは47ドルおよび32.56ドルなので、月額費用と照らし合わせて考えれば、このサブスクはお得なアナログ盤入手方法と言えそうです。もちろん、届いた作品にまったく興味がわかなければ、ユーザーは(それが未開封のままなら)返品することができます。今日日、音楽を聴くだけならYouTubeでも各種ストリーミングサービスでも可能なため、もしも返品する可能性があるなら開封する前に中身の楽曲が好みかは確認しておくと良いでしょう。

このサブスクは1か月単位の契約になるため、数か月試しても気に入った作品に出会えずつまらなかったりすれば、すぐに契約をキャンセルできます。なお、残念ながらこのサービスは記事執筆時点では米国のみで提供されており、われわれの住む日本では利用できません。

米国では昨年、アナログレコードの販売が29%増え、その売上げは全体で6億2600万ドルに達しました。CDの売上げはストリーミングサービスの普及と共に減少を続けていますが、アナログレコードの伸びのおかげで物理メディア合計での収益は0.5%の減少にとどまっています。

ちなみに、アナログレコードが毎月届くサブスクリプションサービスはAmazonが最初ではありません。”Vinyl Me, Please“なるサービスはキュレーターのセレクトによるアナログレコードを2013年から毎月、世界40か国の会員に送りつづけており、その会員数は3万人にのぼっています。こちらは日本からでも利用することができます。

(Source:Amazon。Via Rolling StoneEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アナログレコード(用語)Amazon / アマゾン(企業)音楽 / 音楽制作(用語)サブスクリプション(用語)

ライブ会場の再開に合わせてMixhaloが対面式ライブイベント用音声ストリーミングの新技術を発表

全米各地のライブ会場が再開される中、Mixhalo(ミックスヘイロー)は、その対面式ライブイベント用のオーディオストリーミングプラットフォームに「Mixhalo Over Cellular(ミックスヘイロー・オーバー・セルラー)」と「Mixhalo Rodeo(ミックスヘイロー・ロデオ)」と呼ばれる2つの新機能を追加することを発表した。

1つ目の機能は、その名の通り。Wi-Fiに頼る代わりに5Gを活用する。これはMixhaloの初期のWi-Fi製品で魅力とされていた「超低遅延」を提供できると、同社では述べている。

Mixhaloはこの機能を展開するために、携帯電話会社と協力しているが、その社名は明らかにしていない。ただし、この機能はLTEでも利用できるものの、明らかな理由により、5Gの方が低遅延を実現できる機会が多いと言及している。

もう一方の「Rodeo」は、既存の会場の無線ネットワークと連動するように設計されているため、追加のオーバーレイシステムを導入する必要がない。

「Rodeoシステムでは、既存のアクセスポイントがMixhaloのトラフィックを認識し、それに応じてネットワークデータの準備やバッファリングを行うことができるため、実際にネットワークの負担を軽減することができます」と、CEOのJohn Vars(ジョン・ヴァース)氏はTechCrunchに語った。「2015年以降にワイヤレスシステムを導入した会場であれば、Rodeoをサポートするために必要なハードウェアを備えている可能性が高いです。会場のサーバールームにサーバーを設置する必要がありますが、これがRodeoの唯一のハードウェアコンポーネントです」。

画像クレジット:Mixhalo

Incubus(インキュバス)のギタリストであるMike Einziger(マイク・アインジガー)氏らが共同で設立したMixhaloは、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)氏の協力も得て、Disrupt 2017(ディスラプト2017)のステージでプロダクトを発表し、その超低遅延のストリーミング技術でライブイベントのサウンドを観客に届けることを約束した。

当然のことながら、2020年と2021年前半は、ライブイベントと結びついたスタートアップ企業にとって非常に大きな苦難の時となった。新型コロナウイルス感染流行の初期には、契約終了にともない人員削減を余儀なくされたとヴァース氏はTechCrunchに語ったが、その後は多くのパートナーシップのお陰もあり、なんとか成長していると付け加えた。

(左から)ファレル・ウィリアムス、Mixhaloの創業者でCEOのマイク・アインジガー、TechCrunchシニアライターのAnthony Ha。2017年5月17日にニューヨーク市のPier 36で開催されたTechCrunch Disrupt NY 2017 – Day 3のステージにて(画像クレジット:Noam Galai/Getty Images for TechCrunch)

「このような状況の中で明るい兆しが見られたのは、一歩下がって中核製品の改善に集中する機会が得られたからです」と、ヴァース氏は語る。「これらの改善には、今回発表したMixhalo RodeoやMixhalo over Cellularの他、会場内の物理的な位置に基づいて遅延を動的に調整する機能などが含まれています。新型コロナウイルス感染流行前のビジネスに全力投球していた中では、これらの改善に取り組む時間や機会が得られなかったかもしれません。これらの新機能により、スポーツ界のパートナーからの関心が高まり、Mixhaloの使用例が本格的に飛躍することを期待しています」。

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タグ:Mixhaloライブストリーミングイベント音楽音楽ストリーミングエンターテインメント5Gアプリ

画像クレジット:WIN-Initiative

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

約60万人のミュージシャンらの楽曲を管理する音楽ライセンスマーケットプレイスSongtradrが約55億円調達

音楽ライセンスのマーケットプレイスプラットフォームであるSongtradr(ソングトレーダー)は、シリーズDラウンドで5000万ドル(約55億円)の資金を調達したことを、米国時間6月21日朝に発表した。

募集枠を超えた今回のラウンドには、Regal(リーガル)、Aware Super(アウェア・スーパー)、Perennial(ペレニアル)、Argo(アルゴ)、Greencape(グリーンケープ)が参加。2020年8月に行った3000万ドル(約33億円)の調達に続き、ロサンゼルスを本拠とする同社の資金調達総額は1億ドル(約110億円)を超えた。

同社のプラットフォームは、Disney(ディズニー)、Netflix(ネットフリックス)、Apple(アップル)、Coca-Cola(コカコーラ)、Amazon(アマゾン)、Google(グーグル)など、広告、映画、テレビ、ゲームなどの分野で著名な企業に音楽をライセンスしており、約60万人のミュージシャン / ソングライター / 権利者の楽曲を管理している。

Songtradrのこれまでの資金使途には何の問題もない。同社は2021年6月初めに、クリエイティブ・ミュージック・エージェンシーであるMassiveMusic(マッシブミュージック)の買収を発表した。過去1年の間にはCuesongs(キューソングス)、Song Zu(ソング・ズー)、Pretzel(プレッツェル)、Tunefind(チューンファインド)などの企業を買収してきた。

今回の資金調達は、さらなるM&Aや新製品の開発、グローバルな人員の増加に充てられるという。同社はLAに本社を置き、ヨーロッパとアジア太平洋地域にもオフィスを構えている。

Paul Wiltshire(ポール・ウィルトシャー)氏は、プレスリリースで次のように述べている。「Songtradrは、技術を駆使したB2Bの音楽エコシステムの開発と新たな買収の統合を続けながら、急速に加速しています。今回のラウンドでは、このような一流の投資家を集め、急速に進化するデジタル社会における将来の音楽業界に対する我々のビジョンをさらに支持していただくことができ、今後に向けた強固な基盤を得られました」。

ウィルトシャー氏は、同社の2020年の収益が前年比100%の成長を遂げたことを、コメントで付け加えている。

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タグ:Songtradr資金調達音楽エンターテインメント

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

復活したばかりの老舗音楽共有アプリTurntable.fmのそっくりライバル「tt.fm」がiOS・Androidベータ版アプリ発表

あなたが混乱したとしても無理はない。私自身このネタを追ってきて、まさに今書いているところだが、それでも混乱してしまいそうだ。「Turntable.fm」(オリジナルの、そして最近再リリースされた、ソーシャルミュージックアプリの名称)と混同してはいけないTurntable(または「tt.fm」アプリ)は、米国時間6月8日、同社サービスのiOS版、Android版、およびデスクトップPC版を提供開始したと発表した。

簡単に説明すると、オリジナルのTurntable.fmは、ライブ音楽プラットフォームに注力するために2013年に閉鎖された。このサイトで数え切れないほどの就労時間を費やした我々にとって、とても悲しい日だった。しかし、こういうこともある。人は変わり、企業はピボットするものだ。

もちろんそのノスタルジアは、この1年間、家の中に閉じこもって社会とのつながりを求めていたときに猛烈な勢いで戻ってきた。ある程度の年齢に達しており、おそらくTwitchにまだどっぷり浸かれていない我々のようなユーザーは、サイトを懐かしく思うようになった。そこで創業者のBilly Chasen(ビリー・チェイセン)氏は、Turntable.fmの復活を計画した。現在のベータ版では、ロイヤリティの問題を回避するためにYouTubeストリーミングを利用するなどいくつかの変更点はあるものの、ちょっとしたタイムカプセルのようなものだ。よくできている。私はこのところ使っている。楽しい。そしてつい先日、この会社は新しい10年に向けて750万ドル(約8億2000万円)を調達した。

ほぼ同時期に、Turntable.fmの初期の従業員がこのサービスを別の形で立ち上げることにした。モバイル利用に焦点を当て、クラウドファンディングのルートを選択したtt.fmは、懐かしさの波に乗り、2021年3月に発表された50万ドル(約5500万円)の資金調達に成功した。

6月8日、そのサービスがベータ版として開始される。同アプリは現在、Apple(アップル)App StoreとGoogle(グーグル)Play Storeで公開されている。また、ブラウザでアクセスすることも可能だ。Turntable.fmと同様に、tt.fm(ここではわかりやすくするためにそう呼ぶ)もサードパーティの音楽サービスに依存している。起動時には、リンクされたSpotify(スポティファイ)またはApple Musicのアカウント、およびSoundcloud(サウンドクラウド)から音楽を取り込む。YouTube機能は近日公開予定だという。

上の画像からわかるように、このサービスはTurntable.fmと同じフォーマットに基づいており、似ているが異なるグラフィックとなっている。DJがステージ上で曲をプレイし、観客がそれを気に入ったら頭を振ってうなずく。この新しいサービスの特徴の1つは、アーティストによるDJセットをホストすることだ。

Turntable(tt.fm)のCEOであるJoseph Perla(ジョセフ・パーラ)氏はリリースの中でこう語った。「オリジナルTurntableのファンは、ダンスフロアに戻ることを熱望しており、ライブDJセット、音楽ファンとのソーシャルネットワーキング、音楽の共有、オンライン音楽コミュニティなどのニーズに応える製品を求めていました」。

Turntable.fmのファンとしては、ゼロから突然2つのサービスになったことは、突如大金持ちになった恥ずかしさのように感じる。しかし、2021年の混雑したメディア環境の中で、ニッチを超えて本当に成功できるかどうかは疑問が残る。Turntable.fmのようなアプリが1つ存在する余地はおそらくあるだろう。

しかし、2つ?このすでに奇妙な物語は、さらに奇妙なものになりそうだ。

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがShazamKitでAndroidも含む開発者にアプリのオーディオ認識機能を提供

Apple(アップル)は2018年に、音楽認識アプリShazamの4億ドル(約437億8000万円)の買収を完了した。そして今回はShazamのオーディオ認識能力を、ShazamKitという形で開発者の手に渡そうとしている。この新たなフレームワークでAppleのプラットフォームAndroid双方の開発者が、Shazamの大きな楽曲データベースと、さらに開発者が録音したオーディオによる独自のカスタムカタログも利用して、音楽を認識できるアプリを作成することができる。

すでに多くの消費者が、ボタンを押すと今聴いている楽曲を教えてくれるだけでなく、歌詞を確認したり、楽曲をプレイリストに加えたり、音楽のトレンドを調べたりすることもできるモバイルアプリShazamのことをよく知っている。2008年にローンチしたShazamは、Appleが買収したときすでに、App Storeにおける定番アプリの1つだった。

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Appleは、Shazamを単なる音楽識別ユーティリティとしてだけではなく、もっと良い使い方に導こうとしている。新たなShazamKitにより、開発者はShazamのオーディオ認識能力を利用して独自のアプリ体験を生み出すことができる。

新しいフレームワークは、3つの部分で構成されている。まずShazamカタログ認識は、開発者が楽曲認識機能を自らのアプリに追加する。カスタムカタログ認識は、任意のオーディオに対するオンデバイスのマッチングを実行する。3つ目は、ライブラリの管理だ。

Shazamのカタログ認識は、Shazamを代表するほど非常にポピュラーな機能だ。その環境でかかっている楽曲を認識して、そのタイトルやアーティストといった楽曲のメタデータを取り出す。ShazamKitのAPIは、楽曲のジャンルやアルバムの図柄など、その他のメタデータも返す。また、オーディオのどの部分がマッチしたのかも教えてくれる。

楽曲を照合する際、Shazamは実際には楽曲そのものを照合するわけではない。その代わりに、シグネチャーと呼ばれる非可逆的な表現を作成し、それと照合する。この方法により、ネットワーク上に送信する必要のあるデータ量が大幅に削減される。また、シグネチャーを使って元の楽曲を復元することはできないため、ユーザーのプライバシーも保護される。

Shazamのカタログは何百万曲もの楽曲で構成されており、クラウドでホストされ、Appleによってメンテナンスされている。新しい曲が利用可能になると、定期的に更新される。

ユーザーが開発者のサードパーティ製アプリを使用してShazamKitによる音楽認識を行う場合、Shazamライブラリに曲を保存したいと思うことがあるかもしれない。これはShazamアプリにインストールされているか、音楽認識コントロールセンターモジュールを長押しすることでアクセスできる。ライブラリはデバイス間でも同期される。

Appleは、認識した曲がこのライブラリに保存されることをアプリがユーザーに認識させるよう提案している。ライブラリへの書き込みに特別な権限は必要ない。

画像クレジット:Apple

一方、ShazamKitのカスタムカタログ認識機能は、Shazamの音楽カタログではなく、開発者の音声を認識することで、アプリ内で同期したアクティビティやその他のセカンドスクリーン体験を作り出すことができる。

これにより、生徒がビデオレッスンに沿って学習する教育アプリで、レッスンの音声の一部が生徒のコンパニオンアプリでのアクティビティの開始を促すことができる。また、お気に入りのテレビ番組を見ながら、モバイルショッピングを楽しむことも可能だ。

ShazamKitは現在、iOS 15.0以上、macOS 12.0以上、Mac Catalyst 15.0以上、tvOS 15.0以上、watchOS 8.0以上でベータ版が提供されている。Androidでは、ShazamKitはAndroidアーカイブ(AAR)ファイルの形で提供され、音楽やカスタムオーディオにも対応している。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Apple Musicが空間オーディオとロスレスオーディオの提供を開始

Apple(アップル)は2021年5月に、間もなくApple MusicサブスクでDolby Atmos(ドルビーアトモス)によるロスレスストリーミングとSpatial Audio(空間オーディオ)を無料で利用できるようにすると発表した。そのアップグレードが利用できるようになった、とAppleは米国時間6月8日朝に発表した。ただ、多くの人はこのアップグレードが実際には6月7日のWWDCキーノートの後に行われたことに気づいていた

Apple Musicの7500万曲を超える全カタログでロスレスオーディオをサポートする。

ロスレスオーディオはCD品質の44.1 kHz/16bitで始まり、48 kHz/24 bitまでとなる、と Appleは以前言及していた。オーディオファイルは192 kHz/24 bitまで対応するハイレゾのロスレスを選ぶこともできる。こちらを利用するには外部のデジタル/アナログUSBコンバーターを使う必要がある。ヘッドフォンをiPhoneに差し込むだけでは機能しない。

Apple Music購読者は設定で音楽をタップし、オーディオの品質から新しいロスレスのオプションを選ぶことができる。そこではWi-Fi、データ通信、ダウンロードなど異なるコネクションのために使えるよう、いくつかの品質が用意されている。

設定で品質を選ぶと、ロスレスファイルが端末の「かなり多くのスペース」を使うとiOSは警告する。ストレージ10GBで約3000曲を高品質で保存でき、ロスレスだと1000曲、ハイレゾロスレスだと200曲だ。

画像クレジット:Apple

一方、空間オーディオは、H1チップやW1チップ搭載のAppleのAirPodsやBeatsヘッドフォンなどDolby Atmosに対応するハードウェアではデフォルト設定される。iPhone、iPad、Macの最新モデルもDolby Atmosに対応する。Apple Musicの空間オーディオは「間もなく」Androidデバイスでも提供される、とAppleは述べた。

提供開始に際し、Apple Musicは空間オーディオを案内するための新しいプレイリストの展開も6月8日開始した。プレイリストは以下の通りだ。

Appleはまた、 リスナーが違いを聞き分けられるようサポートする特別ガイドもApple Musicの空間オーディオに追加する。ここにはMarvin Gaye(マーヴィン・ゲイ)やThe Weeknd(ザ・ウィークエンド)といったアーティストのトラックが含まれる。そしてAppleはZane Loweがホストするトップのサウンドエンジニアと専門家を招いた空間オーディオについての座談会を米国太平洋標準時間6月8日午前9時(日本時間6月9日午後10時)からApple Musicで提供する。

楽曲はDolby Atmos向けにリマスタリングされる必要があるため、これらのガイドやプレイリストは音楽好きの人が探し回らなくても新しいフォーマットを体験できるようにする。さらに多くの新規リリースとベストなカタログ曲を空間オーディオで加えるために、アーティストやレーベルと協業しているとAppleは話す。この点を強化すべく、Appleはさまざまな取り組みが進行中だと指摘する。主要マーケットでドルビーを利用できるスタジオの数を倍増させたり、独立アーティストへの教育プログラムやリソースを提供したりといったものが含まれる。

Appleはまた、音楽オーサリングツールを「Logic Pro」に直接組み込むと述べた。2021年後半には、ミュージシャンなら誰でも自分の曲をSpatial Audio for Apple Musicで制作しミックスできるLogic Proのアップデートをリリースする予定だ。

関連記事:Apple Musicがロスレス・空間オーディオを2021年6月から提供、追加料金なし

カテゴリー:ネットサービス
タグ:AppleWWDCWWDC 2021Apple Music音楽音楽ストリーミング

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

ポケットの中の音楽スタジオ、700万ユーザーを獲得した作曲アプリ「Rapcha」

YouTube、Snapchat、Twitter、TikTok、FacebookのInstagramは、映画やテレビの業界を根底から覆した。撮影監督やディレクター、俳優はテクノロジーの革新を活かして新しい作品を作り、それを何十億もの消費者に直接見てもらうというニューウェーブを起こしている。2021年4月末、ある新興企業が230万ドル(約2億5000万円)の資金調達を発表し、音楽の世界にも同様のインパクトをもたらそうとしている。

Rapchat(ラップチャット)は、ユーザーが(その名の通り、ラップやその他のジャンルの)音楽を作ることができるアプリで、ユーザーはクラウド上のビートにボーカルを乗せて楽しむことができる。

ソニー・ミュージックエンタテインメントとニューヨークのベンチャーキャピタル企業Adjacent(アジェイセント)が共同で主導した今回の資金調達は、2018年にRapchatが行った170万ドル(約1億9000万円)のシード資金調達ラウンドの延長線上にあり、CEOかつ共同創業者のSeth Miller(セス・ミラー)氏は、同社がより大きなシリーズAの準備を進める一環としての調達であると話す。

ミラー氏とPat Gibson(パット・ギブソン)氏が、2015年に大学在学中に副業として会社を構想した際に、(Snapchatの)chatという言葉をひっかけた言葉遊びを除けば、少なくとも今はRapchatとSnapchatにつながりはない。Rapchatはすでにかなりの規模に拡大している。

現在、Rapchatには約700万人の登録ユーザーがいて、プラットフォームでは毎月50万人のアクティブユーザーが、約10万曲のビートカタログを使って、約25万曲を作成しているという。ユーザーは1日平均35分アプリを利用していて、これは、楽曲を作るユーザーだけでなく、その楽曲を聴いたり共有したりするためにアプリを利用する人たちのソーシャルグラフ(人と人とのつながり)が形成され始めたことを意味する。

Rapchatは、今回の資金調達を利用して、Rapchatのコンペティション「Challenges」の賞金額を増やすなど、プラットフォーム上でできることを拡大していく予定だ。より多くのアーティスト、プロデューサー、業界のエグゼクティブからプラットフォーム上で指導を受けられるようにしたり、プラットフォームのリーチを拡大して、TikTok、Snapchat、Spotify、Apple Musicなど、クリエイターがすでに多くのコンテンツを制作していて、音楽が重要な役割を果たしているプラットフォームとより緊密に統合したりすることも検討している。

Rapchatの成長は、音楽を簡単に作れるようにしたいという同社の夢を実現しただけでなく、クリエイターエコノミー(クリエイターのマネタイズをプラットフォームやテクノロジーが後押しする経済)における貪欲さと歯がゆさを物語っている。世の中には広大な音楽制作の世界があり、自分が評価されるかどうかを知りたいと思う人が増加しているのだ。

巨大なクリエイターエコノミーにおける音楽クリエイターの存在を考えたのはRapchatだけではない。

Voiseyというアプリも類似のサービスを提供しているが、メインは音楽トラックではなく、短いクリップを作って録音し、それを他のプラットフォームで共有することに重点を置いていた。あまり普及はしなかったが、新しいアーティストへの注目を少し集めることに成功し、2020年Snapにひっそりと買収された(現在のところ、SnapはVoiseyのアプリを維持している)。

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TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)も、別の音楽作成アプリJukedeckの買収を行っている。Snapの買収と同様、この買収がどこでどのように行われているのか、今のところ完全には明らかになっていないが、うわさによると、TikTokは新しい音楽サービスを開発中で、より多くのコンテンツをTikTokの音楽レイヤーに接続することができるようになるらしい。

そして、このトレンドを最も裏づけることといえば、Facebook(フェイスブック)がRapchatの真似をしたことだろう。Facebookの社内部門であるNPE(新製品実験)チームは、2021年2月に「BARS」を発表。ユーザーはこのアプリで自分のラップミュージックを作ることができる。

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このような状況下、ミラー氏は(少なくとも今のところは)、新しいプレミアム機能のテストを含め、Rapchatの実績に非常に満足し、自信を持っている。現在アプリは無料で使用できるが、プレミアム機能では、クリエイターに、もっと多くの制作ツールや、作品を共有してマネタイズするためのより良い方法を提供する予定だ。その鍵となるのは、音楽のライセンス料を要求しないということ。Rapchatの価値は、クリエイターが音楽を制作し、それらのトラックのメタデータを使って音楽がどのように使用されたかを追跡することにあり、クリエイターはロイヤリティを維持することができる。

この控えめなアプローチは、Rapchatとその創業者たちが、スタートアップ企業の中ではやや異質な存在であることに由来する。このアプリのアイデアは、ミラー氏とギブソン氏がオハイオ大学(コロンバス)の学生だった2013年に生まれたという。

「大学生の誰もがSnapchatやInstagramなどのアプリを使っている時代でした」とミラー氏は話す。「私たちは、ビデオを撮るためにこれらのアプリを愛用していましたが、音楽を作るためのアプリはありませんでした。そこで私たちは、Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)のコンペティションで、『Snapchatのような、ラップのためのスナップ 』というアイデアを提案しました。その際に誰かがRapchatと言ったのです」。

2015年、彼らはこのアプリを携えて500 Startups(ファイブハンドレットスタートアップ)に参加し、本格的にこのアイデアに取り組み始めたが、それでもビジネスを構築し、投資家の注目を集め、資金を調達するまでには何年もかかっている。その理由の1つは、音楽は扱いが難しいもので、ざっくりというならここ数年の流行は制作サービスではなく、ストリーミングだったからだ。

しかし、ミラー氏とギブソン氏は諦めなかった。「この市場が巨大であることを知っていたのは私にとってはとても意味のあることでした」とミラー氏は話す。「モバイルデバイスが登場し、Instagram、VSCO、Snapchatなどのアプリは人々をフォトグラファーや映像作家に変えました。Substackも人々を執筆者に変えています」。そして今、Rapchatがラッパーのための世界を開拓しようとしている。

AdjacentのリードインベスターであるNico Wittenborn(ニコ・ウィッテンボーン)氏は、声明の中で次のように述べる。「Rapchatはポケットの中の音楽スタジオです」「Rapchatで世界中の誰もが、どこにいても、スマートフォンから直接音楽を録音して公開できるようになります。ユーザーは創造性を最大限に活かすことができます。モバイルを活用したテクノロジーを誰にでも利用できるようにすることがAdjacentの目指すところであり、この次世代の音楽プラットフォームを構築するRapchatのチームをサポートできることを非常にうれしく思っています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Rapchat音楽資金調達クリエイターアプリ

画像クレジット:Rapchat

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

SpotifyがようやくApple Watchでオフライン視聴できるように

Spotify(スポティファイ)とApple(アップル)の関係においては、当然のことながらときに対立することがあった。結局のところ、AppleはSpotifyの最大のライバルとなっているストリーミングサービスを運営している。しかし、Apple WatchとSpotifyはそれぞれの部門で大差でトップの座を維持している。そして協業することは最終的にベン図で重なっている部分のかなりの数のユーザーに利便性を提供する。

Spotifyは米国時間5月21日、明らかに最もリクエストの多かった機能の1つをとうとうスマートウォッチに持ってくると発表した。プレミアム会員は同日から音楽とポッドキャストをオフライン視聴のためにApple Watchにダウンロードできるようになった。つまり、ユーザーはジョギングするときスマートフォンを家に置いたまま出られるようになる。

新機能は標準的なダウンロードとシェアとなる。ユーザーはアルバム、プレイリスト、ポッドキャストの横にある3つの楕円をクリックし、それから「Apple Watchにダウンロード」をクリックする。ダウンロードされると、緑の矢印がタイトルの横に登場する。そしてヘッドフォンをペアリングすると、ウォッチから直接ストリームできるようになる。

Samsungはすでに同様の機能を同社のGalaxy Watchシリーズを含むスマートウォッチに提供している。また、I/O開発者会議での発表によると、Google Wear OSのウォッチでも間もなく提供される。もちろんApple Musicはかなり前からApple Watchでのオフライン視聴を提供しており、Pandoraも同様だ。DeezerもSpotifyに負けず数日のうちにApple Watchにダウンロードできるようになる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SpotifyApple Watch音楽音楽ストリーミングスマートウォッチ

画像クレジット:Spotify

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

ゲーム的アプローチでギターやピアノ、歌などの音楽教育をもっと身近にするYousicianが30.6億円調達

自身が認めているように、Chris Thür(クリス・トゥール)氏はいかにも音楽教育の企業を始めそうな人物ではなかった。

レーザーの研究者だったトゥール氏は、ある投資家との初期のミーティングを思い出す。その投資家は、トゥール氏と共同創業者で電気系エンジニアであるMikko Kaipainen(ミッコ・カイパイネン)氏が音楽の指導者か、あるいはミュージシャンなのかと聞き、最後には「2人がその世界に適しているかどうかを判断する項目をすべて」尋ねた。すべての項目に2人はいちいち「ノー」と答えなくてはならなかった。

トゥール氏は「我々はただ、楽器を演奏したいがその機会がなかったと感じていただけでした。もちろん、そう思うのは我々だけではありません」という。

トゥール氏とカイパイネン氏はあの時の投資家を説得することはできなかったが、Yousicianを始めた。今では音楽教育アプリのYousicianとギターチューニングアプリのGuitarTunaの2つで月間ユーザー数が2000万人に達している。米国時間4月28日、ヘルシンキに拠点を置く同社はシリーズBで2800万ドル(約30億6000万円)を調達したと発表した。

YousicianのCEOであるトゥール氏は「ちょっとした旅」を経てここに至ったと語る。以前はOvelinという社名だった同社が創業したのは10年前で、もともとは子どもにターゲットを絞っていたが、その後年齢を特定しない戦略で成功した。

YousicianのCEOクリス・トゥール氏(画像クレジット:Yousician)

トゥール氏は、Yousicianアプリではインタラクティブなゲーム的アプローチでギターやピアノ、ウクレレ、ベース、歌を練習できるが、ゲーム性はそれほど強くないと説明する。ユーザーは1日に15〜20分練習するという標準的なカリキュラムで上達していく。アプリがユーザーの演奏を聞き取り、間違いの回数に応じて1〜3個の星で評価する。1日に1レッスンは無料で受けられるが、それ以上受けたい場合や曲のライブラリをすべて利用したい場合、あるいは複数の楽器を練習したい場合は、月額19.99ドル(約2180円)からのプレミアムまたはプレミアムプラスのサブスクリプションに登録する必要がある。

トゥール氏は、Yousicianを活用すると自分のスケジュールに合わせて対面のレッスンよりもずっと安い費用で音楽を学べるという。同時に、これは音楽指導者との「ゼロサム」の競合ではないとも指摘する。レッスンとレッスンの間に練習や学習を続ける手段としてYousicianを生徒に勧める指導者もいるという。

Yousicianがユーザーに役立っている事例として、トゥール氏はKaren Gadd(カレン・ガッド)氏のストーリーを挙げる(以下の動画)。ガッド氏は楽器をまったく演奏したことがなかったが、1年後にはバンドメンバーとしてステージに立つまでになった。ただし、人前に立って演奏する機会がなくてもこのアプリは有用であるとトゥール氏は補足した。

トゥール氏は「我々は音楽を読み書きの能力と同じぐらい普通のものにしたいのです。誰もが時々演奏して楽しむべきです。(中略)指導者のもとで学ぶことは多くの人にとって有効ですが、残念ながらすべての人にとって有効なわけではないと思います」と語る。

同氏は、この1年は「我々にとって困難な年であり興味深い年」でもあったという。学生がほとんどリモート学習に移行して「音楽のレッスンはほとんど実施されなかった」ため、実施されなかったレッスンの一部に代わるものとして、Yousicianは10万人以上の指導者と学生に対してプレミアムのサブスクリプションを無料で公開した。

同時に、コロナ禍で自己啓発全般に注目が集まったことの一環として多くの人が楽器の習得に関心を示すようになり、利用が「大幅な自律的成長」を遂げた。月間ユーザー数は1450万人から2000万人に増え、サブスクリプションは80%増加して同社の2020年の売上は5000万ドル(約54億6500万円)となった。

Yousicianはこれまでに合計で3500万ドル(約38億2500万円)を調達した。今回のシリーズBはTrue Venturesが主導し、新たな投資家であるAmazonのAlexa FundとMPL Venturesの他、Zynga創業者のMark Pincus(マーク・ピンカス)氏、LAUNCH Fund創業者のJason Calacanis(ジェイソン・カラカニス)氏、Unity Technologies創業者のDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏、Trivago共同創業者のRolf Schrömgens(ロルフ・シュレームゲンス)氏、Cooler Future創業者のMoaffak Ahmed(モアファク・アフメド)氏、Blue Bottle Coffee Company会長の Bryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏が参加した。

True Ventures共同創業者のJon Callaghan(ジョン・カラハン)氏は発表の中で「Yousicianは10年近くにわたって音楽指導をリードするプラットフォームであり、人々は新たな活力を得てこれまで以上に創造性と音楽の追求に目を向けています。我々は楽器を演奏する喜びと興奮を多くの家庭と家族にもたらす企業およびチームを支援できることを誇りに思っています」と述べた。

トゥール氏は、今回調達した資金をチームの拡大、ブランドマーケティングの向上、製品のローカライズ、音楽アーティストとの関係構築にあてると語った。

カテゴリー:EdTech
タグ:Yousician音楽資金調達

画像クレジット:Yousician

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)