カーボンオフセットに関する評価枠組みとデータを提供するSylveraが約36.4億円を獲得

英国を拠点とするスタートアップのSylvera(シルベラ)は、カーボン・オフセット・プロジェクトに関する説明責任と信頼性を高めることを目的とし、機械学習技術を利用して衛星画像やLiDARなどのさまざまな視覚データを分析する。同社が、昨年5月の580万ドル(約6億6100万円)のシードラウンドに続いて、3200万ドル(約36億4800万円)のシリーズAを迅速に完了させた。

このラウンドは、SylveraのシードラウンドをリードしたIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)と、ニューヨークに拠点を置くグローバルなプライベートエクイティおよびVC企業Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が共同でリードした。また、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)、LocalGlobe(ローカル・グローブ)、および多数のエンジェル投資家もこのラウンドに参加している。

2020年に設立されたこのスタートアップは、現在、合計3950万ドル(約45億円)を調達したことになる。

シリーズAは、チームのさらなる拡大や技術面でのリーダーシップの強化など、さらなる事業拡大のために使用されるとしている。

また、このプラットフォームを拡大し、すべてのオフセットに対応できるようにすることも視野に入れている。

共同設立者兼CEOのAllister Furey(アリスター・フューリー)博士は、「市場は、気候変動に対して世界で最も強力なツールの一つです。しかし、人々が実際に良いことをしているプロジェクトに投資するインセンティブを与え、良い仕事をしているプロジェクト開発者に報いるためには、カーボンオフセットの品質を判断するための信頼できるデータが必要です。」と声明で述べている。

「そのため、私たちはボランタリーカーボン市場(VCM)のための最も正確な評価を構築しているのです。私たちはこの資金を利用して、対象範囲を拡大する予定です。そにれより、わたしたちの評価で、企業のサステナビリティリーダー、炭素取引業者、政策立案者が、カーボン・プロジェクトを評価し投資する際に、明確さと自信と選択肢を持つことができるようになります。こうすることで、何十億ドル(何千億円)もの資金を炭素の削減、隔離、除去に回すことができるのです。」と述べる。

Sylveraは、ウェブアプリとAPIで提供する評価について、顧客数を公表していないが、これまでの顧客は様々な業界にまたがっており、Delta Airlines(デルタ航空)、Cargill(カーギル)、CBL(Xpansivマーケット)、Bain & Company(ベイン・アンド・カンパニー)などが含まれるという。

また、「企業のバイヤー、トレーダー、取引所など、さまざまな顧客がいる」とも述べている。「我々の顧客は通常、ネット・ゼロを約束した大規模な機関であり、市場で最も大きなカーボンクレジットの買い手です」。

Sylveraの評価枠組みは独自のものだが、このスタートアップは、カーボンオフセット・データの信頼できる主要な情報源になるという目標を支えるために、プロジェクトの評価を行う方法の詳細を公表することを約束していると言う(重要なのは、直接的な対立を避けるために、カーボンオフセットそのものを取引しないことだ)。

「カーボン・プロジェクトの独立した、詳細かつ最新の評価」というのは、偽物のオフセットやグリーンウォッシュが横行する業界では立派な目標だが、実際に信頼を得るためには、その方法、データ、アルゴリズムについて、独立した、詳細かつ最新の外部検証が必要であることを主張している。

「私たちは、今後2年以内に、Sylveraを、あらゆる種類のカーボンオフセットに関する最も信頼できる情報源にすることを目指しています」と、同社は述べる。「信頼されるデータソースとなるためには、透明性を確保する必要があります。このため、私たちは、評価の枠組み、モデルの精度評価プロトコル、基盤となるモデルの精度数値を公開する予定です。また、今年後半には、世界中の主要大学のパートナー研究者とともに、先進的なバイオマス推論に関する査読付き学術論文を発表する予定です。」と付け加えている。

Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)のパートナーでSylveraの取締役であるCarlos Gonzalez-Cadenas(カルロス・ゴンザレス・カデナス)氏は、声明の中で今回のシリーズAラウンドについて、「うまく機能するカーボンオフセット市場なしには、世界の炭素排出量を減らすチャンスはないでしょう。カーボン・オフセットには毎年数十億ドル(数千億円)が費やされていますが、透明性や説明責任が欠けており、その結果、信頼も失われています。気候変動の緊急事態に対処するために必要な規模に達するには、信頼が絶対に必要です。独立系データプロバイダーであるSylveraは、世界有数の大企業や政府などからの需要が飛躍的に伸びているのを目の当たりにしています。彼らの仕事がいかに重要であるかを浮き彫りにしており、私たちはSylveraとのパートナーシップを拡大できることに興奮しています。」と語っている。

画像クレジット:Sylvera

[原文へ]

(文:Natasha Lomas、翻訳:Akihito Mizukoshi)

カーボンオフセットのサブスクを行うEcologiがクラウドファンディングで資金調達

人々は音楽に定額料金を支払っているのだから、カーボンオフセットにも定額料金を支払い、気候危機に対する良心の呵責を和らげようとする人だっているはずだ。そう考えた英国のEcologi(エコロジ)というスタートアップ企業は、サブスクリプション会員から集めた資金を使って、アフリカやラテンアメリカなどの地域で10日ごとに100万本の木を植えたり、インドネシアの泥炭地を保護する活動などを行っている。そうすることによって会員のカーボンフットプリントを減らし、カーボンオフセットを購入することで会員の排出した二酸化炭素を相殺するというわけだ。

Ecologiは2021年4月、プレマネー評価額1650万ポンド(約25億2000万円)でシード投資ラウンドをクローズし、リードインベスターであるGeneral Catalyst(ジェネラル・キャタリスト)とEntrée Capital(アントレ・キャピタル)から、405万ポンド(約6億2000万円)の資金を調達した。

3万5000人の個人および企業が利用しているこのサブスクリプションサービスでは、会員は毎月少なくとも12本の木を植えて「自分の森を育てる」ことができ、さらに幅広い炭素削減プロジェクトに資金を提供することで、自分のカーボンフットプリントをオフセットすることができる。

2019年の設立以来、これまでブートストラップで運営してきた同社は、領収書、証明書、取締役会議事録、財務諸表などもすべて公開台帳に載せている。

現在は、英国の投資クラウドファンディングプラットフォームであるCrowdcube(クラウドキューブ)では、目標額の200万ポンド(約3億500万円)を上回る資金を集めており、プレマネー評価額は7500万ポンド(約115億円)に達している。この資金は、製品の開発、チームの拡大、米国およびEUでの事業拡大に充てられる予定だ。また、同社は現在、B-Corp(ビーコープ)認証を待っているところだという。

2022年初頭には、企業向けのリアルタイムカーボンフットプリントソフトウェア「Ecologi Zero(エコロジ・ゼロ)」の発売を予定している。

これによって同社は、Normative(ノーマティブ)、Spherics(スフェリックス)、Plan A(プランA)といった他のカーボンフットプリントSaaSスタートアップと競合することになる。

Ecologiは、9カ月間で650%以上の成長を遂げ、2020年1年間で炭素削減による効果を330%増加させたと主張している。2021年1月におけるARR(年間経常収益)は300万ポンド(約4億6000万円)だったが、2021年は850万ポンド(約13億円)のARRで終える見込みだという。

同社はこれまでに合計で2500万本以上の木を植え、120万トンのCO2を相殺したと主張する。これらの木の大部分は、マダガスカル、モザンビーク、ニカラグア、米国、オーストラリア、英国、ケニアで植えられた。さらにインドネシアの泥炭地保護、トルコにおける埋立てガスからのエネルギー生産、インドにおける廃棄籾殻からのエネルギー生産などのプロジェクトを支援している。

共同設立者でCEOのElliot Coad(エリオット・コード)氏は次のように述べている。「コミュニティ・オーナーシップは我々の活動の中心であり、過去2年間の成長の原動力となってきました。だから、当社の熱心な定額会員のみなさまに、Ecologiの株式を所有する機会を提供することは、当然のことだと考えました。そこで私たちは、2021年4月にGeneral Catalystから出資を受けて以来、この3カ月間はベンチャーキャピタルからの出資を断り、コミュニティベースのクラウドファンディングを採用したのです」。

画像クレジット:Ecologi / Ecologi co-founder Elliot Coad

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

マーク&リン・ベニオフ夫妻とSalesforceが気候変動対策で約340億円を寄付

Marc and Lynne Benioff(マーク&リン・ベニオフ)夫妻は米国10月28日、気候変動対策と他の人々に行動を促すために2億ドル(約227億円)を寄付すると発表した。マーク・ベニオフ氏の会社であるSalesforce(セールスフォース)がさらに1億ドル(約113億円)を追加し、寄付は計3億ドル(約340億円)だ。

ベニオフ夫妻の寄付金は2つに分けられる。1億ドルは「Benioff Time Tree Fund(ベニオフ・タイム・ツリー基金」に、残りの1億ドルは夫妻のベンチャー企業である「タイム・ベンチャーズ」に寄付され、気候変動に対処する製品やサービスを開発している有望な新興企業に投資される。

「Benioff Time Tree Fundは、新興国や発展途上国において、最もリスクの高いコミュニティや自然生態系への気候変動の影響を軽減するために、先住民族やコミュニティに根ざした森林管理に焦点を当てます」と同基金は声明で述べた。

マーク・ベニオフ氏は、気候変動に立ち向かうためには、さまざまな構成員が一致団結して努力することが必要であり、植林活動はそのための大きな要素だと話す。

「すべての政府、企業、個人が地球の保護と保全を優先すれば、気候変動の阻止に成功することができます。私たちは100ギガトンの二酸化炭素を分離しなければなりませんが、それを実現するためには森林再生が不可欠です」と述べた。

さらにTime Venturesの方では、エコに特化したスタートアップ企業に1億ドルを投資する計画だ。これは、夫妻の会社が2014年以降、DroneSeed、Loam Bio、Mango Materialsなどの企業に投資してきた1億ドルに上乗せされる。

Salesforceは、すでにネットゼロ(温室効果ガス実質ゼロ)を達成したことを表明しており、9月に開催された同社の顧客向けカンファレンス「Dreamforce」では、2021年3000万本の木を育てるというコミットメントを発表している。この追加の1億ドルは、生態系の修復や気候変動対策などの分野で活動する非営利団体を支援するための今後10年間の助成金など、いくつかの取り組みに分配される。さらに、気候変動対策に取り組んでいる団体に技術を提供し、250万時間のボランティア活動を行うことを計画している。

関連記事:Salesforceがバリューチェーン全体での温室効果ガス実質ゼロを達成

Salesforceのチーフ・インパクト・オフィサーであるSuzanne DiBianca(スザンヌ・ディビアンカ)氏は、ネットゼロの達成に向けた同社の活動は第一歩だが、今回の追加資金は他の団体を支援することを目的としていると話す。

「私たちは、気候変動対策を加速させるために活動している人々に力を与え、気候変動による影響を最も受けている人々を支援したいと考えています。二酸化炭素排出量を削減し、より健康的で回復力のあるネットゼロの世界を実現するためには、大胆かつ緊急の行動が必要です」と述べた。

同社は、再生可能エネルギーの使用と、それが不可能な場合はカーボンオフセットの購入を組み合わせてネットゼロを達成している。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

原文へ

(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

物流・輸送業向け「炭素測定・除去」APIを開発するPledgeが約5億円調達

気候変動の危機が迫る中、多くの企業が自らの役割を果たしたいと考えている。しかし、顧客に「今回の配送にともなうCO2排出量をオフセットしてください」とお願いするのは、たいていの場合、木の実を割るのにハンマーを使うようなものだ。カーボンオフセット関する透明性はほとんどない。さらに、中小企業は高品質のカーボンクレジットにアクセスしたいが、同時に製品、サービス、取引レベルでの影響も計算したい。そして、非常に不正確な「スキーム」ではなく、カーボンクレジットを小さい単位で購入できるといいと考えている。

Pledge(プレッジ)は、貨物輸送、配車サービス、旅行、ラストマイルデリバリーなどの業界を対象としたスタートアップで、顧客の取引に関わるカーボンオフセットを提示することができる。

Pledgeは、Visionaries Clubがリードするシードラウンドで450万ドル(約5億円1300万円)を調達した。Chris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon CapitalとGuillaume Pousaz(ギヨーム・プサ氏、Checkout.comの創業者でCEO)の投資ビークルであるZinal Growthも参加した。Pledgeは、これまでクローズドベータ版として運営されてきた。

同社は、Revolut(レボリュート)の草創期の従業員であるDavid de Picciotto(デビッド・デ・ピチョット)氏とThomas Lucas(トーマス・ルーカス)氏、Freetradeの共同創業者で元CTOのAndré Mohamed(アンドレ・モハメド)氏が創業した。まず物流業と輸送業を対象にスタートする。同社によると、企業はPledge APIを組み込めば、カーボンニュートラル達成に向け、出荷、乗車、配送、旅行にともなう排出量を測定・軽減することができるようになるという。このプラットフォームは、分析や洞察に加え、時間をかけて排出量を削減するために推奨する方法を顧客に提示することを目指す。

Pledgeによると、同社の排出量計算方法は、GHGプロトコル、GLECフレームワーク、ICAOの手法などのグローバルスタンダードだけでなく、ISO基準にも準拠しているという。

重要な点として、Pledgeのプラットフォームでは、個人投資家が株式の一部を購入するように、企業は炭素クレジットの一部を購入することができ、また、ETFのように異なる方法論や地域を含むバランスのとれたポートフォリオにアクセスできる、と同社は話す。

Pledgeの共同創業者でCEOのデビッド・デ・ピチョット氏は次のように説明する。「現在、どのような規模の企業も利用できる、自社の排出量を把握・削減するための簡単で拡張可能な方法は存在しません。従来のCO2測定やオフセットのソリューションは、コストが高く、導入が難しいため、限られた大企業だけが利用できます。私たちがPledgeを立ち上げたのは、どのような企業でも、高品質で検証済みの気候変動対策製品を、可能な限り簡単かつ迅速に導入できるようにするためです」。

Visionaries Clubの共同創業者でパートナーのRobert Lacherは次のように語る。「Pledgeは、あらゆる企業が環境への影響を測定・軽減するためのアプリケーションを立ち上げる際に必要とする導管を開発しています。金融インフラプロバイダーが続々と登場し、あらゆる企業がフィンテックになれるようになったのと同様、Pledgeは関連するツールとその基盤となるソフトウェアインフラを提供し、気候変動対策を実現する会社となります」。

Lowercarbon CapitalのパートナーであるClay Dumas(クレイ・デュマ)氏はこう付け加える。「炭素除去の規模を拡大する際の最大のボトルネックは、供給と需要を結びつけることです。Pledgeのチームは、世界のトップレベルの金融商品開発で学んだことを応用し、ユーロやドル、ポンドを使って、空から炭素を吸い取ることに取り組んでいます」。

ピチョット氏は、大手プライベートエクイティファームでESGチームに所属していたとき、LP(主に年金基金)から、投資先企業のESG、特に気候に関するKPIの透明性や報告を求める声が増えるのを目の当たりにした。同氏は、報告・計算を合理化し、高品質のカーボンクレジットにアクセスして、社内外のステークホルダーにさらなる透明性とツールを提供する方法があるはずだと考えた。

「炭素市場が構築されたメカニズムを調べれば調べるほど、金融サービス業界との類似性が見えてきました。我々は、FreetradeやRevolutのような業界をリードする企業を設立や、設立支援の経験により、気候変動の流れを変えるユニークな切り口を提供できるのではないかと考え、調査を開始しました」とピチョット氏は述べた。

画像クレジット:Pledge / Pledge founders

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

企業の脱炭素化を支援するSustineriは10月20日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による5000万円の資金調達を発表した。引受先はインキュベイトファンド。調達した資金はサービス開発および事業推進メンバーの採用など組織の強化にあてる。また、今秋にはカーボンオフセットAPI「Caboneu」(カボニュー)および温室効果ガス(GHG。GreenHouse Gas)算出APIのβ版をローンチする予定。

カーボンオフセットAPIは、企業による商品やサービスの販売と利用に伴って排出されるGHGについて、相殺・埋め合わせ(カーボンオフセット)が可能なクラウド型サービス。eコマース、自動車保険、旅行・航空などを販売するウェブサイトに数行のコードを記述するだけで、商品やサービスの提供に伴うGHGを算出。さらに同量のGHG削減クレジットまたは再生可能エネルギー証書を購入することで、GHG排出を相殺し気候変動への影響をニュートラルにできる。

こうしたGHG排出量を算定するには専門知識が必要になるが、カーボンオフセットAPIを利用すれば企業のサプライチェーン全体をカーボンニュートラル化可能としている。

法人向けカーボンオフセットAPIで企業の脱炭素化を支援するSustineriが5000万円のシード調達

Sustineriは、「人と地球が共存する新たなあり方を創造する」をミッションに掲げ2017年7月に設立された。企業がサステナブルシフトと脱炭素化を実現するための効果的なソリューションを提供している。事業はカーボンオフセットAPIの開発と運営のほか、GHG算出APIの開発・運営、カーボンオフセットとカーボンニュートラルの実施支援、気候変動対策および脱炭素化に関するコンサルティング。今後は日本企業の脱炭素化およびカーボンニュートラル化に貢献するサービスを継続的に開発するとのこと。

炭素市場Agreenaは農家が環境再生型農業に切り替える経済的インセンティブを提供する

ヨーロッパの温室効果ガス排出量の24%は農業が占めているが、これは過去数十年間に行われてきた集約的な「工業型」農法と、肉の消費の増加によるところが大きい。しかし、新しいアプローチが農業界に旋風を巻き起こしている。「環境再生型農業(リジェネラティブ農業)」とは、劣化した土壌を自然に戻し、野生生物を増やし、地球を破壊する二酸化炭素を蓄えるというもので、文字通り土壌を炭素吸収源として利用する。

森林地帯を作り、泥炭地を復元することで、炭素を吸収すると同時に、ミツバチの授粉などに欠かせない自然多様性の減少を食い止めることができる。さらに、再生農業は、環境やCO2排出に焦点を当てた古い政府の補助金制度や、工業的な農業からの脱却にもつながる。

Agreenaはデンマークのスタートアップで、環境再生型農業に移行した農家が生み出す炭素クレジットを発行、証明、販売している。

2021年夏に設立されたばかりの同社は、このたびGiant Venturesとデンマーク政府のDanish Green Future Fundがリードし、470万ドル(約5億3000万円)のシード資金を調達した。また、欧州の多くの農家も参加している。

Agreenaのプラットフォームは、農家に「CO2e-certificate」を発行し、農家と購入希望者の間で販売することで、農家が従来の耕作地から再生農法に切り替えるための経済的なインセンティブを提供するという。

その仕組みとは?農家は自分の畑を登録し、再生農法に移行するためのアドバイスを受ける。そして、その変化をAgreenaが衛星画像と土壌の検証によって監視する。その後、農家はCO2e-certificateを単独で、またはAgreenaのマーケットプレイスを通じて、農家からカーボンオフセットを購入したい企業に販売することができる。買い手は、Agreenaのプラットフォームを介して、スポンサーしたCO2削減をフィールドレベルで追跡する。

AgreenaのCEOであるSimon Haldrup(サイモン・ハードルップ)氏は次のように述べている。「当社のチームは、カーボンサイエンティスト、ソフトウェア開発者、商業的グロースハッカーを含む30人のプロフェッショナルで構成されています。農業は、歴史的に誇り高い農業国であるデンマークに深く根ざしているため、会社はここで生まれましたが、私たちはヨーロッパ全体で規模を拡大しており、今後はグローバルに展開していく予定です」。Agreenaは、ハードルップ氏、Julie Koch Fahler(ジュリー・コッホ・ファーラー)氏、Ida Boesen(アイダ・ボエセン)氏によって設立された。

Agreenaは、初年度に5万ヘクタール以上の契約を締結し、発行されたカーボンオフセット証書の20%以上を事前に販売したという。

Agreenaには、いくつかの競合が存在する。農業分野のボランタリー炭素市場には、米国のスケールアップ企業Indigo(米国のユニコーン)、Nori(米国&ブロックチェーン特化)、英国・フランスを拠点とするSoil Capitalなどがある。しかし、Agreenaは、垂直統合されたカーボンプラットフォームが重要な差別化要因だとしている。

Giant Venturesの共同設立者兼マネージングパートナーであるCameron McLain(キャメロン・マクレーン)氏は、次のように述べた。「Agreenaの農業カーボンオフセットに対する垂直統合型のアプローチは、業界のニュアンスや農家にとってのインセンティブに共感的なもので、大きな期待を抱いています。また、Agreenaは、まだ誰も解いていない農業分野でのオンラインB2Bコマースを促進する有力なインターネット市場になれると信じています」。

画像クレジット:Agreena

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

何億トンもの二酸化炭素を鉱物化・回収し環境問題に取り組む「44.01」が約5.5億円調達

温室効果ガスの排出量の削減は極めて重要な目標だが、現在我々は大気中のCO2やその他の物質のレベルを下げるという別の課題にも直面している。こういったガスをまったく自然なプロセスで普通の鉱物に変えてしまうという何とも頼もしい方法があるという。44.01は、膨大な量の前駆物質を使用してこのプロセスを大規模に実行したいと考えており、500万ドル(約5億5000万円)のシードラウンド受けてこの取り組みに着手している。

地質学者や気候学者の間では、CO2を鉱物化するプロセスはよく知られている。自然界に存在するかんらん岩と呼ばれる石が、ガスと水に反応して、無害な鉱物であるカルサイトを生成するのだ。実際、かんらん岩の鉱床を貫くカルサイトの大きな筋に見られるように、これは歴史上でも巨大なスケールで発生している。

かんらん岩は通常、海面から数マイル下にあるが、アラビア半島の最東端、特にオマーンの北海岸では地殻変動によって何百平方マイルものかんらん岩が地表に現れている。

オマーンのソブリン投資部門で働いていたTalal Hasan(タラル・ハサン)氏は、オマーンの海岸が世界最大の「デッドゾーン」になっており、その主な原因は排出されたCO2が海に吸収されて集まってくることだという記事を読んだ。環境保護主義者の家系に生まれたハサン氏はこれについて詳しく調べ、驚くべきことに問題と解決策は文字通り隣り合わせであることに気づく。つまりこの国には、理論的には何十億トンものCO2を保持できるかんらん岩の山が存在するのである。

ちょうどその頃ニューヨーク・タイムズ紙は、Peter Kelemen(ピーター・ケレメン)氏とJuerg Matter(ユルク・マター)氏によるオマーンの奇跡の鉱物の可能性についての研究を紹介するフォトエッセイを掲載。当時、タイムズ紙のHenry Fountain(ヘンリー・ファウンテン)氏はこう書いている。

非常に大きな「もしも」の話ではあるが、もしも炭素の鉱物化というこの自然のプロセスを利用し、これをすばやく安価に大規模に適用することができれば、気候変動対策への有効手段になり得るかもしれない。

これが、ハサン氏をはじめ、同スタートアップの「科学委員会」を構成するケレメン氏、マター氏の両氏が提案している計画の大まかな内容だ。44.01(ちなみに同社名は二酸化炭素の分子量に由来する)は、斬新なアイデアとともに経済的かつ安全に鉱物化を達成することを目指している。

第一に、自然な反応を促進させる基本的なプロセスが必要となる。通常はCO2や水蒸気が岩石と相互作用することで何年もかけて起こることであり、反応によって低いエネルギーが発生するため変化を起こすためにエネルギーを加える必要はない。

「大気中のCO2よりも高い濃度のCO2を注入することでスピードを上げています」とハサン氏は話す。「鉱石化と注入を目的とした人工的なボアホールを掘らなければなりません」。

画像クレジット:44.01

これらの穴によって表面積が増し、掘削されたかんらん岩が飽和するまで周期的に高濃度炭酸水が送り込まれる。触媒や毒性のある添加物を使用せず、ただの発泡性の水であるということがこれのポイントである。仮に漏れなどが起きたとしても、ソーダのボトルを開けたときのようなCO2の一吹きが発生するだけだ。

第二に、このために使用する巨大なトラックや重機が新たなCO2を排出して、この取り組みを無意味なものにしてしまわないようにするという課題もある。そのためにハサン氏はバイオディーゼルをベースにした供給ラインをWakudと共同で構築し、原料をトラックで運び、夜間に機械を動かすことで、夜間の燃料費を太陽光発電で補うことができるよう物流面での努力を行なっているという。

かなり大きなシステムを構築しなければならないように感じるが、ハサン氏はその多くがすでに石油産業によってでき上がっていると指摘する。ご存知の通り、石油産業はこの地域のいたるところに存在しているのだ。「石油産業の掘削や探査方法に似ているため、このための既存のインフラがたくさんありますが、我々は炭化水素を引き上げるのではなく、逆にポンプで戻しているのです」。アイスランドで行われている玄武岩の注入計画など他の鉱床開発でもこのコンセプトは採用されており、前例がないわけではない。

第三の課題として、CO2そのものの調達がある。当然大気中にはたくさんのCO2が存在するものの、産業規模で鉱石化できるほどの量を獲得し圧縮するのは容易なことではない。そこで44.01は、CO2回収のエンドポイントを提供するため、ClimeworksをはじめとするCO2回収企業との提携を開始した。

関連記事:支援を求めるExxonMobilを横目にスタートアップ企業は炭素回収に取り組む

排出地点であれ他の場所であれ、多くの企業が排出物の直接回収に取り組んでいる。しかし、数百万トンのCO2を集めたところで次に何をすべきかは不明瞭である。「そこで私たちは炭素回収企業の手助けをしたいと考え、CO2シンクをここに構築してプラグ&プレイモデルを行うことにしました。企業がここに来てプラグインし、その場で電力を使ってCO2の回収を開始することができます」とハサン氏は話す。

具体的な支払い方法については未解決の問題だが、カーボンオフセットに対する世界的な企業の意欲は明白である。従来型のむしろ時代遅れなカーボンクレジットを超えて、カーボンクレジットには大きなボランタリー市場がある。44.01は一時的な隔離からのステップアップと言える、検証済み炭素除去を大量に販売することができるが、そのための金融商品はまだ開発中である(DroneSeedは新世代の排出システムなどの活用を期待して、オフセットを超えたサービスを提供しているもう1つの企業だ。国際的な規制、税金、企業政策などが、進化しながらも非常に複雑に重なり合っている分野である)。

しかし今のところは、このシステムが期待通りの規模で機能することを証明することが第一の目的だ。今回の資金は実際の運用に必要な資金には遠く及ばないものの、実証実験に必要な許可や調査、設備を得るための一歩にはなるだろう。

「純粋に気候変動のために活動している、志を同じくする投資家に参加してもらおうと試みました」とハサン氏。「財務ではなくインパクトで評価されることが、私たちのメリットにもなるのです」(ほとんどのスタートアップがこのような理解ある出資者を望んでいるに違いないが)。

Max Altman(マックス・オルトマン)氏とSam Altman(サム・オルトマン)氏が設立したアーリーステージを対象とした投資ファンドであるApollo Projectsがこのラウンドをリードし、Breakthrough Energy Venturesが参加している(プレスリリースには記載されていないが、オマーンの数家族やヨーロッパの環境保護団体からの少額投資も注目すべき点だとハサン氏は述べている)。

オマーンを起点としながらも、別の場所で最初の商業運用を行うという可能性をハサン氏は示唆している。具体的には言及していないが、地図を見ると、かんらん岩の鉱床はオマーンの北端からUAEの東端にまで広がっていることがわかる。UAEも当然この新産業に興味があるはずであり、もちろん豊富な資金を持っている。44.01のパイロット作業が完了すれば、さらに詳しい情報が得られるだろう。

関連記事
地球温暖化がいよいよ「赤信号」、国連IPCCが報告書で警告
クリーン電力サービスのアスエネがAI活用の温室効果ガス排出量管理SaaS「アスゼロ」を正式リリース
電気通信大が粗悪なCO2センサーの見分け方を公開、5000円以下の12製品中8製品はCO2ではなく消毒用アルコールに反応
画像クレジット:Holcy / iStock / Getty Images Plus / Getty Images under a RF license.

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

「カーボンKPI」でウェブサイトのカーボンフットプリントを測定するRyte

Ryteの創業者チーム

故郷であるこの惑星に我々が及ぼす影響についての意識が高まり、あらゆることに対してCO2の影響が測定されるようになっている。例えば、つい最近までストリーミングのNetflixが測定可能な影響を環境に与えているとは誰も思わなかっただろう。しかしインターネットの相当な部分をウェブサイトやストリーミングサービスが占めると考えると、何らかの影響はあるはずだ。

その影響を測定する方法を確立した新しいサービスが登場し、スケールするための資金を調達した。

RyteはWebsite User Experience Platformを構築する資金として、非公開だった2021年前半のラウンドで850万ユーロ(約11億2000万円)を調達した。このラウンドはミュンヘンのBayern KapitalとロンドンのOctopus Investmentsが主導した。

Ryteは「Ryte Website Carbon KPI」を発表した。同社は、これにより2023年までに全ウェブサイトの5%をカーボンニュートラルにできるとしている。

Ryteは、データサイエンティストや環境の専門家と協力してウェブサイトが二酸化炭素に関して及ぼしている影響を正確に測定できる機能を開発したと説明している。カーボントランジションのシンクタンクであるThe Shift Projectによると、我々のガジェット、インターネット、そしてこれらを支えるシステムのカーボンフットプリントは、世界の温室効果ガス排出量のおよそ3.7%を占めるという。しかもこの数値は、特にコロナ禍以降のデジタル化社会の影響で急速に上昇しつつある。

Ryteにはデータサイエンティストで気候科学と地球温暖化に関する博士号を持つKatharina Meraner(カタリナ・メラナー)氏が関わっている。またClimatePartnerの協力も得てこの新しいサービスを開始する。

RyteのCEOであるAndy Bruckschloegl(アンディ・ブラックシュルグル)氏は次のように述べている。「現在、アクティブなウェブサイトは1億8900万あります。我々はアクティブなウェブサイトの5%、950万サイトが、我々のプラットフォームと強力なパートナー、ソーシャルメディアの活動などを通じて2023年末までに排出ガス実質ゼロになることを目指しています。残された時間は刻々と減っていきますが、ウェブサイトをカーボンニュートラルにすることは他の産業やプロセスに比べればずっと簡単です」。

Ryteはニカラグアのサンホセで実施されている緑化プロジェクトにも協力しており、Ryteの顧客は気候証明書を購入することにより排出ガスをオフセットすることができる。

Ryteによれば、独自のアルゴリズムを用いてウェブサイト全体のコード、ページサイズの平均、チャネルごとの月間トラフィックを測定し、そのサイトのCO2を計算するという。

似たようなサービスは確かにあるが、他のサービスはアドホックでプラットフォームと結びついていない。Googleを検索すればWebsitecarbonEcosistantなどのサイト、そして学術論文が簡単に見つかる。しかし筆者が知る限りでは、これらのスタートアップはこうしたサービスをプラットフォームに組み込んでいるわけではない。

ClimatePartnerの共同CEOであるTristan A. Foerster(トリスタン・A・フォステル)氏は「Ryteとの協力は、情報テクノロジーが気候変動にどう貢献するかについての認知度を高め、同時に今後を変えるツールを提供することになるでしょう。業界をリードするRyteの二酸化炭素計算機能によって、多くのウェブサイトの運営者が自分たちのカーボンフットプリントを理解し、やむを得ない排出ガスをオフセットすれば、結果として包括的な気候変動対策における戦略の基盤となるでしょう」とコメントした。

関連記事
個人で使えるモジュール状の炭素回収デバイスをHoly Grailが開発・試験中、巨大プラントの時代は終わる
廃ペットボトルをバクテリアでバニラ香料「バニリン」に変換、英エディンバラ大学が実証実験に成功
さくらインターネットが石狩データセンターの主要電力をLNG発電に変更、年間CO2排出量の約24%にあたる約4800トン削減

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Ryte資金調達二酸化炭素カーボンフットプリント

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Kaori Koyama)

多数の著名投資家が支援するカーボンオフセットマーケットPachamaが約16億円調達

世界の森林の復元と保全は、大気中の温室効果ガスを減らす最も簡単でコストも安く、シンプルな方法の1つだと長い間考えられてきた。

脱炭素、あるいは事業から排出される炭素の相殺に向けた長い道のりにおいて、簡単な最初のステップを模索している企業にとっては圧倒的に人気の手法だ。しかしこのところ、Bloombergの爆弾のような報道のおかげで、数多くの森林オフセットの効率、妥当性、そして信頼性には疑問の目が向けられてきた。

森林カーボンクレジットのためのマーケットプレイスを構築しているPachama(パチャマ)の財務を投資家が補強することになったというのは、この不確実な背景に反するものだ。このマーケットプレイスについて同社は、衛星画像と機械学習テクノロジーのおかげで透明性があり、検証可能だと話す。

そうした主張は新規ラウンドで1500万ドル(約16億円)をもたらした。共同調達した資金はプロダクト開発とマーケットプレイスの拡大に使われる、と創業者でCEOのDiego Saez Gil(ディエゴ・サエズ・ギル)氏は話した。

わずか1年前に創業されたPachamaは著名な顧客や投資家を獲得してきた。(Amazonがどれくらいマイナスの影響を地球に及ぼしたか考えると)他ならぬJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が、役職を間もなく離れるCEOとして株主に宛てた手紙でPachamaに言及した。南米最大のeコマース企業Mercado Libreは持続可能性に向けた広範な取り組みの一環として80万ドル(約8700万円)のオフセットプロジェクトの管理でPachamaを選んだ。

関連記事:炭素市場を通じて世界の森林再生を支援するPachama

AmazonのClimate Pledge Fundは最新ラウンドに出資している。この最新ラウンドはBill Gates(ビル・ゲイツ)氏の投資部門Breakthrough Energy Venturesがリードした。他の投資家にはLowercarbon Capital(Uberへの投資で成功したエンジェル投資家のChris Sacca[クリス・サッカ]氏の気候専門のファンド)、元Uber幹部Ryan Graves(ライアン・グレーブズ)氏のSaltwater、MCJ Collectiveが、そして新規投資家としてTim O’Reilly(ティム・オライリー)氏のOATV、Ram Fhiram(ラム・フィラム)氏、Joe Gebbia(ジョー・ゲビア)氏、Marcos Galperin(マルコス・ガルペリン)氏、NBAスターのManu Ginobili(マヌ・ジノビリ)氏、James Beshara(ジェームズ・ベシャラ)氏、Fabrice Grinda(ファブリス・グリンダ)氏、Sahil Lavignia(サヒール・ラヴィニア)氏、Tomi Pierucci(トミ・ピエルッチ)氏がいる。

これは同社の投資家のフルリストではない。Pachamaの成功の理由はGoogle、Facebook、SpaceX、Tesla、OpenAI、Microsoft、Impossible Foods、Orbital Insightsなどの企業からトップの人材を引きつける能力と併せて、十分に理解された森林オフセットマーケットに気候ミッションを適用していることだ、とサエズ・ギル氏は話した。

「自然の回復は気候変動の最も重要なソリューションの1つです。森林、海洋、その他のエコシステムは膨大な量の二酸化炭素を大気から隔離するだけでなく、多様な生物に重要な生息地を提供し、世界中のコミュニティの暮らしの源です。当社は誠実さ、透明性、そして効率性をもって資金をこうしたエコシステム回復と保全に振り分けられるようにするのに必要なテクノロジーを構築しています」とサエズ・ギル氏は説明した。「我々のミッションを信じ、長期的に成長を喜んで支えようという気持ちを示している、信じられないような投資家のグループからサポートを得ることができ、名誉に思うと同時に興奮しています」。

南米以外の顧客もまたPachamaのオフセットマーケットプレイスへのアクセスを求めている。Microsoft、Shopify、SoftBankも有料の顧客だ。

これはY Combinator、Social Capital、Tobi Lutke、Serena Williams、Aglaé Ventures (LVMHのテック投資部門)、Paul Graham(ポール・グレアム)氏、AirAngels、Global Founders、ThirdKind Ventures、Sweet Capital、Xplorer Capital、Scott Belsky(スコット・ベルスキー)氏、Tim Schumacher(ティム・シューマッハ)氏、Gustaf Alstromer(グスタフ・アルストロマー)氏、Facundo Garreton(ファクンド・ガレトン)氏、Terrence Rohan(テレンス・ローハン)氏が、Pachamaの2020年の創業以来の調達資金2400万ドル(約26億円)の支援を約束できたもう1つの理由だ。

「Pachamaは大気から二酸化炭素を取り除く自然の潜在能力をフルに引き出すべく取り組んでいます」とBreakthrough Energy VenturesのCarmichael Roberts(カーマイケル・ロバーツ)氏は声明で述べた。「Pachamaのテクノロジーベースのアプローチは、インパクトのあるカーボンニュートラルイニシアチブを認証、モニター、測定するための森林分析に機械学習モデルを使うことで巨大な相乗効果を生み出します。Pachamaのチームが短期間に成し遂げた成果に感銘を受け、彼らのユニークなソリューションをグローバル展開するために協業することを楽しみにしています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Pachamaカーボンオフセット資金調達二酸化炭素

画像クレジット:Thomas Jackson / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブラウザの拡張機能で商品購入時のカーボンオフセットを提案するEcoCartが約3.3億円調達

EcoCart(エコカート)は、提携するオンラインショップで消費者が商品を購入する際に、排出される二酸化炭素を相殺する方法を無料で提案する(ブラウザの拡張機能を使用して!)会社だ。同社はBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)から300万ドル(約3億2800万円)の資金を調達した。

店舗のウェブサイトを運営する企業は、標準的なアフィリエイトのマーケティングモデルに基づいてEcoCartに手数料を支払い、同社はその収益の一部を消費者の二酸化炭素排出量のオフセットのために使う。

EcoCartと直接パートナーシップを結んでいる企業や、受動的なアフィリエイトマーケティングサービスを通して同社と提携している企業は、約1万社に上る。共同設立者のPeter Twome(ピーター・トゥオミー)氏とDane Baker(デーン・ベイカー)氏によると、EcoCartは企業向けの炭素計算ツールやオフセットサービスも提供しているという。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ClimeCo(クライムコ)やBlueSource(ブルーソース)などのサービスを利用して、企業が融資可能なオフセットプロジェクトを調達・集約している。

サンディエゴ大学で出会った2人の共同創業者は、以前にToyroom(トイルーム)というスタートアップを起ち上げ、不必要な消費を減らすためにアウトドア用品を顧客に貸し出すという事業を行っていた。

「私たち自身がこの問題に直面しています。持続可能性という理念を維持することは、非常に難しいと我々は認識しました」と、ベイカー氏は述べている。

EcoCartは、ブラウザの拡張機能を利用する仕組みによって、Cloverly(クローバーリー)のような他のオフセットサービスとは一線を画している。その一方で、企業向けサービスでは、購入にともなう二酸化炭素をオフセットするオプションがチェックアウトフローに直接組み込まれる機能などを提供している。

EcoCartは、2020年6月にB to B(企業間)統合を開始し、現在では500社のベンダーが顧客となっている。これまでに、消費者の約4分の1が購入した商品を会計する際にオフセットすることを選択しており、その結果、約2500万ポンド(約1万1340トン)の二酸化炭素を削減することができたという。

同社を支援する投資家には、PopSugar(ポップシュガー)の共同創業者であるBrian Sugar(ブライアン・シュガー)氏が運営するアーリーステージの企業を対象としたベンチャーファンドのBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)をはじめ、Privy(プリヴィ)の創業者であるBen Jabbawy(ベン・ジャバウィ)氏、Klaviyo(クラビヨ)のグローバルパートナーシップ担当VPであるRich Gardner(リッチ・ガードナー)氏、Chubbie(チャビー)の共同創業者であるKyle Hency(カイル・ヘンシー)氏、Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)会長であるBryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏、BarkBox(バークボックス)の共同創業者であるCarly Strife(カーリー・ストライフ)氏などのエンジェル投資家が含まれる。

オンラインショッピングというと環境に悪いイメージがあるが、2020年Nature(ネイチャー)誌に掲載されたある研究によると、実際には実店舗での買い物より環境に優しくなる場合もあるという。

消費者によるオフセットは、善行ではあるものの、企業が実際に温室効果ガスの排出を抑制し、事業を脱炭素化することに比べると、同等の効果を得ることはできない。実際のところ、消費者のカーボンフットプリントや、地球汚染に対する消費者の個人的な責任という概念は、石油・ガス会社や消費財メーカーに頼まれて、広告会社の幹部が商品を売り込むために考え出したものだ。

しかし、何もしないよりは良いし、環境のために必要なプロジェクトの資金調達に役立つことは確かだ。

EcoCartは、数カ月かけてオンライン注文のカーボンフットプリントを計算する独自のアルゴリズムを開発したという。電子商取引用プラグインとブラウザ拡張機能のいずれも、商品への材料投入量、配送距離、パッケージの重量など、各注文の特徴を利用して、その注文から発生する二酸化炭素排出量を推定しているという。

「EcoCartは、ブランドが顧客と対話しながら、環境への影響を大規模に管理・対処する方法を再構築するものであると、我々は確信しています」と、Base10 PartnersのプリンシパルであるChris Zeoli(クリス・ゼオリ)氏は述べている。「EcoCartは、何十年にもわたって続いてきた有害な気候変動を元に戻すために役立つソリューションです。Base10は、EcoCartの創設者たちが、カーボンニュートラルなショッピングを、小売、マイクロモビリティ、フードデリバリーなどの業界で新しいチェックアウトの基準にしていくための活動に、パートナーとして協力できることを誇りに思います」。¥

カテゴリー:EnviroTech
タグ:EcoCartカーボンフットプリントカーボンオフセット資金調達ブラウザー機能拡張B2Bネットショッピング

画像クレジット:Taqi Fatikh/EyeEm / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Polestarが2030年までに温暖化ガスの排出量をすべて見直して初の「クライメートニュートラル」なEV開発を目指す

Volvo(ボルボ)からスピンアウトしたスウェーデンのEVブランドPolestar(ポールスター)は中央ヨーロッパ時間4月7日、2030年までに初のクライメートニュートラルな自動車を開発するという「ムーンショット・ゴール」を発表した(moonshot=困難だが実現する価値のある壮大な取り組み)。そのためには、植林などの一般的に行われているオフセット手段ではなく、新型EVの製造方法を根本的に変えていくという。

それは、材料の調達から製造、さらには車両のエネルギー効率の向上まで、サプライチェーンのあらゆる要素を見直すことを意味する。

Polestarのサステナビリティ部門の責任者であるFredrika Klarén(フレデリカ・クラレン)氏は、TechCrunchのインタビューに応じ次のように述べた。「当社は、今日多くの人が頼りにしているようなオフセットではなく、排ガスを削減し、除去することでこれを実現しようとしています。オフセットは憂慮すべき戦略だと考えています。製品を生産する際の排出量をオフセットできるかどうか、科学的な裏付けは実際ありません」。

直接的な成果となるのは「Polestar 0(ポールスター0)」と呼ばれる新型車だが、製造工程を全面的に見直す必要があり、最終的にはPolestarの他のモデルにもプロセスが適用される可能性がある。Polestarの全車両が2030年までにクライメートニュートラルになることはないが、同社と親会社のVolvoは、2040年までにPolestarを含む全事業でクライメートニュートラルになるという目標をすでに設定している、とクラレン氏は語った。

Polestarの現行モデルであるPolestar 1(ポールスター1)とPolestar 2(ポールスター2)は、いずれも中国で生産されている。Polestar 0の詳細はまだ決まっていないが、同様に中国製となることを希望しているとクラレン氏は述べた。中国はいまだに石炭への依存度が高いものの、持続可能な技術や製造業は大きく発展していると同氏は指摘した。

「もし私に投票権があるのなら中国での生産を継続しますが、そうは言ってもPolestar 0はどういったソリューションを用いるのかまだ特定されておらず、どこで生産するのか、どんな材料を取り入れるのかなど、以前は考えられなかった新しい方法で考える必要があります」とクラレン氏は述べている。

また、内部システムも定まっていない。Volvo CarsとPolestarの親会社であるGeely AG(ジーリー、吉利汽車)は独自の内部コンピューター・バッテリプラットフォームを開発しているが、Polestarの新モデルにこのシステムを採用するかどうかは決まっていない。

EVの製造工程の中で、クライメートニュートラルに移行するために最も困難な部分は素材であり、具体的にはアルミ、鉄、バッテリー部品がそれにあたると同氏は語った。

「我々は、生産にともなう排出物に取り組む必要があります」と彼女は説明している。鉄やアルミ、そしてリチウムバッテリーに使われる基本的な材料を生産する際の環境負荷は依然として大きい。

Polestarはこの新型車の発表と同時に、Polestar 2および今後発売されるすべてのモデルのカーボンフットプリントを明示するという製品サステナビリティ宣言も発表した。

PolestarのCEOであるThomas Ingenlath(トーマス・インゲンラート)氏は声明の中でこう述べた。「オフセットは言い逃れでしかありません。完全にクライメートニュートラルなクルマを作るために自分たちを奮い立たせることで、当社は今日の可能性を超えることを余儀なくされます。ゼロに向かってデザインするためには、すべてを疑ってかかり、革新し、急成長技術に目を向けなければなりません」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Polestar電気自動車二酸化炭素Volvoカーボンオフセット

画像クレジット:Polestar

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:TechCrunch Japan)

社会意識の高いLAのフィンテック「Aspiration」がカーボンオフセット・クレジットカードを発行

Aspiration(アスピレーション)は、社会意識の高い消費者のための金融サービス会社だ。このほど環境に優しい商品をラインアップに加えた。それはクレジットカードだ。

ロサンゼルスを拠点とするこのスタートアップは、これまでに約2億5000万ドル(約272億4000万円)の資金を調達しており、出資者にはLeonardo DiCaprio(レオナルド・デカプリオ)氏、Robert Downey Jr.(ロバート・ダウニー・Jr.)氏のFootprint Coalition、Orlando Bloom(オーランド・ブルーム)氏といった著名人に加え、伝統的機関投資家のAlphaEdison、Capricorn Investment Groupt、Omidyar Network、Allen & Co.などがいる。カードの利用条件や限度額については明らかにされていない。

Aspirationの共同ファウンダーでCEOのAndrei Cherny(アンドレイ・チャーニー)氏が強調したのは、この新商品の重要性に関する会社の気持ちだ。

「マイルを貯められるクレジットカードは山ほどあります。これは、地球のマイレージを減らす唯一のカードです」とチャーニー氏が声明で語った。「史上初めて、気候変動と戦うツールを財布に入れることができるようになりました」。

Aspirationのカーボンオフセットサービスは、植林活動に他ならない。これは米国における日常生活に関わる温室効果ガス排出を、消費者がゆくゆく相殺するための最も簡単な方法だ。

このカードが使われる度に、Aspirationは同社の全世界の森林再生パートナーに依頼して木を植える。カード保有者がAspirationのクレジットカードを60回使えば、その結果植えられる樹木で米国の平均的世帯の炭素排出量を相殺できる。

「私たちがやっていることは平均的米国人の炭素排出量に基づいています」とチャーニー氏は説明した。「あなたが買い物をするたびに、Aspirationはあなたの木を植えます。計算どおりにいけば、あなたの植えた60本の木が炭素排出に与える影響は、米国の平均的世帯の炭素排出を消し去ります」。

Aspirationのアプリには、利用者の購買行動が社会に与える影響を測るツール群が搭載されていて、クレジットカード利用者は自分の排出量を相殺する進展状況を追跡することができる。炭素ゼロを達成した月には、Aspirationがカード購入金額の1%をキャッシュバックする特典がある。

チャーニー氏によると、会社は認可を受けたパートナーの協力を得て、衛星写真と現地でのモニタリングを使って植林プロジェクトが計画通り進められ、樹木が伐採されていないことを確認している。

同社は企業責任のためだけにこれをやっているわけではない。樹木の栽培が企業にとって(たとえ少額)収益事業になる取引事例が実際にはある。

「そこまでの規模に達した時」とチャーニー氏は言った。「私たちは非営利ではなく、地球を救うことに専念する営利企業になります。人々が地球を救うことで利益を得ることを、地球を破壊することで利益を上げてきたのと同じようにできるようになるまで、問題は続きます【略】もし、石油会社や既存の銀行が、地球を破壊することでしか金儲けができないのなら、地球は危機的状況です」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Aspirationカーボンオフセット

画像クレジット:Aspiration

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

カーボンオフセットAPIのPatchがa16zのリードで4.8億円調達したことを正式発表

カーボンオフセットAPIを開発するPatch(パッチ)が450万ドル(約4億8000万円)の資金を負債調達した。同社は企業が自社の炭素排出量を計算し、排出量に見合ったオフセットプロジェクトを見つけて資金提供するのを支援するサービスを販売している。

TechCrunchの既報どおり、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がラウンドをリードし、既存出資者のVersionOne VenturesMapleVCおよびPale Blue Dot Venturesも参加した。

関連記事:a16zによる次の気候テック投資がカーボンオフセットAPIのPatchになる可能性

PatchのAPIは、社内と消費者向けサービスの両方で使用できる。企業は同社のコードを社内向けサイトのユーザー体験に組み込むことで、社員の出張フライトなどを追跡し、出張による炭素排出を相殺するカーボンクレジットの購入を推奨、管理することができる。

このソフトウェアでは、大気中の二酸化炭素除去を支援するプロジェクトのうち、どこち出資するかを選ぶことができる。出資対象のプロジェクトは、実証済みの森林再生・保存プロジェクトから、直接空気補足・隔離プロジェクトのような早期段階の高度技術まで多岐にわたる。

Patchの共同ファウンダーであるBrennan Spellacy(ブレナン・スペラシー)氏とAaron Grunfeld(アーロン・グランフェルド)氏の2人は、アパート賃貸サービスSonderの元社員で、Patchのカーボンオフセット事業は同社のサービスを利用する企業の脱炭素化の代替手段ではないことをインタビューの中で強調した。むしろ彼らのサービスは、企業が事業運営における化石燃料依存からの脱皮に必要なその他の作業を補完するものだと考えている。

Patchの共同ファウンダー:ブレナン・スペラシー氏とアーロン・グランフェルド氏(画像クレジット:Patch)

Patchは現在11社の二酸化炭素除去プロバイダーと提携しており、第1四半期末までにさらに10社を加える計画だと同社は述べている。例えばプロバイダーの1つであるCarbonCureは、二酸化炭素をコンクリートに注入、固定することで、建造物が存続する限り二酸化炭素を建材の中に埋め込む。

「二酸化炭素除去クレジットは、CarbonCureのようなテクノロジーの普及を劇的に加速する可能性があり、気候変動対策の目標達成にとって極めて重要です。質の高い恒久的なクレジットの需要は急速に高まっており、Patchのリストに載ることで、幅広い顧客を呼ぶことができます」とCarbonCure TechnologiesのJennifer Wagner(ジェニファー・ワグナー)社長が声明で語った。

関連記事:財務の収支報告に加えて未来の企業は炭素収支をと訴えるPersefoniが4億円相当を調達

Patchのサービスを利用している企業はすでに15社ほどある、とTechCrunchは報じている。利用者にはTripActionsの他、未公開株式投資会社のEQTのようにPatchのAPIの利用を自社だけでなく、投資先企業にも拡大する予定の会社もある、とスペラシー氏は語った。

グランフェルド氏は、調達した資金は社員増と新商品開発に使うつもりだと述べた。現在社員は6名で、年末までに24名追加する予定だ。

会社の拡大に合わせて、Patchは炭素排出監視・検証サービスを提供するスタートアップを、同社のAPIを統合して販売するチャンネルにすることを検討している。CarbonChainPersefoni、 あるいはY Combinator卒業生のSINAI Technologiesといった会社のことだ。

関連記事:財務分析を応用して企業の炭素排出量削減を助けるYC卒のSINAI

「ますます多くの企業が、地球温暖化防ぐための排出量削減の取組みでリーダーシップをとっています」とAndreessen HorowitzのマネージングパートナーであるJeff Jordan(ジェフ・ジョーダン)氏はいう。「Patchは、企業が中核事業プロセスに炭素除去を組み込むことをより簡単なものにし、認証済みの炭素除去業社を集め、実装が容易なAPIを通じて企業に簡単に利用できるソリューションを提供しています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:PatchAndreessen Horowitzカーボンオフセット資金調達

画像クレジット:Christopher Furlong / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

企業向けにカーボンオフセットAPIを開発するスタートアップが急増中

カーボンオフセットのためのアプリケーション・プログラミング・インターフェース(API)が出てくるのは時間の問題だった。カーボンオフセットとは、企業が世界の再生可能エネルギープロジェクトや炭素隔離プロジェクトに資金援助することで、自社の温室効果ガスの排出量を(紙の上で)相殺する自主制度だ。

eコマースと決済最大手のShopify(ショッピファイ)とStripe(ストライプ)は、すでにサービスとしての排出オフセットを顧客に提供しているが、今や数多くのスタートアップがソフトウェアを使って処理を自動化しようと狙っている。

たとえば Cloverly(クローバリー)は米国南西部の電力・ガス大手Southern Company(サザン・カンパニー)が社内で立ち上げたスタートアップだ。Patch(パッチ)はアパート管理と短期レンタルサービスのSonder(サンダー)出身の2人がスタートした会社だ。さらにはCooler.dev(クーラー・ドット・デブ)、そして森林再生と森林管理に焦点を当てた国際オフセットマーケットプレイスを運営しているPachama(パチャマ)などなど。

これは企業や消費者向けに環境フットプリントの観察と削減を行うサービスを立ち上げる、というアーリーステージ企業の間で起きている新たなムーブメントの一環だ。

Pachamaの場合、APIをビジネスモデルに組み入れるという発想は当初からビジネスプランに織り込み済みだった、と同社の共同ファウンダーであるCEOのDiego Saez-Gil(ディエゴ・サエズ・ギル)氏はいう。

「私たちが顧客としてShopifyに接してから事態は加速しました」とギル氏はいう。「Shopifyはカーボンニュートラルなサービスの提供を望んでいました。私たちはすでにカーボンクレジットをShopifyに売っていましたが、注文を手動で処理していました【略】 これを大規模でやるためにはクレジットの購入を自動化する必要があります」。

Pachamaが巨大ロジスティック会社でカーボンニュートラルなフルフィルメントサービスを提供しているShipbobと契約を結んでから状況が一変した。

PatchやCloverlyのような会社と異なり、Pachamaには自らのオフセットマーケットプレイスを使ってクレジットを提供できるという優位性があるとギル氏は感じている。

「私たちには、プラットフォームを通じて持ち込むあらゆるものについてマーケットプレイスと検証・監視サービスがあります」とGilは語った。

こうした背景によって、提供するオフセットの品質に高い透明性をもたらすことができる。

カーボンオフセットは、気象変動と戦うための有効な、しかし危険をはらむメカニズムであることが証明されている。ほとんどのプロジェクトは再生可能エネルギーや再生された森林、あるいは既存の森林や土地の保存といったかたちでコミュニティに真の利益をもたらしているが、一方では重複計算やカーボッオフセットの価値を水増しした単なる詐欺プロジェクトなどの問題がある。

Bloomberg News(ブルームバーグ・ニュース)のBen Elgin(ベン・エルジン)氏が連載している記事が、問題の広さを指摘しており、そこではThe Nature Conservancyなど信頼されている組織のプロジェクトも取り上げられている。

「これは、純粋な追加性の問題に行きつきます」とギル氏はいう。「プロジェクトに関わるものすべてについての炭素分離あるいは脱炭素の実際の増加は何なのか【略】オフセットの価値を評価するとき、私たちは科学に基づくアプローチと極めて保守的な仮定に沿う必要があります」。

透明性と説明責任はオフセットの開発、監視、管理をする上で極めて重要であり、これらのオフセットが、事業にともなう温室効果ガス排出量を劇的に減らそうとしている企業にとって中心的役割を果たすことを踏まえるとなおさらだ。

そしてオフセットは一時しのぎの措置にすぎない。最終的に企業は、社会にいっそう大きな影響をおよぼす気象変動のリスクを減らすために、一刻も早く自社の事業から炭素排出を取り除く必要がある。

「こんなに多くの会社がカーボンニュートラルなサービスを提供したがっていることを大変うれしく思います。やがて規範となるものであり、企業は顧客が望むからそうすることになります」とギル氏はいう。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:カーボンオフセット二酸化炭素API

画像クレジット:Getty Images under a license

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SilviaTerraはカーボンオフセットの恩恵を世界中すべての土地所有者にもたらしたい

カーボンオフセット企業であるSilviaTerra(シルビア・テラ)の共同創業者であるZack Parisa(ザック・パリサ)氏とMax Nova(マックス・ノバ)氏は過去10年間、収益を生み出すカーボンオフセットへのアクセスを民主化する方法に取り組んできた。

森林クレジットがビジネスとして活況を呈している。ビジネスの脱炭素化に取り組む複数の世界最大級の企業による数十億ドル(数千億円)のコミットメントが背景にある。2人の創業者が10年間の人生を捧げ築き上げてきたテクノロジーは価値を増す一方だ。

すでに利益を計上している同社が外部から440万ドル(約4億6000万円)を調達したのはそうした理由による。資金調達はUnion Square VenturesVersion One Venturesがリードした。Salesforce(セールスフォース)の創業者であり、One Trillion Trees Initiativeを推し進めるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏も参加した。

「気候危機に対処するための鍵は、いわゆる炭素循環のバランスを変えることです。私たちは現在、毎年約5ギガトンの炭素を大気中に追加しています。大気中の炭素は温室効果ガスとなり、宇宙に放射されずに留まるエネルギーが増え、地球が熱くなります」と、Union Square VenturesのマネージングパートナーであるAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏はブログ記事に書いている。「減らす方法はたくさんあります。今後数週間でさまざまなアプローチについて説明します(二酸化炭素の直接回収や海のケルプの成長など)。私たちがよく理解している方法で、すぐに行動できる対象の1つは森林です。今日の世界の森林は、大気から年間1ギガトンを少し超えるCO2を吸収し、バイオマスに変えています。既存の森林の伐採や焼却(大規模な山火事の防止を含む)を止め、より多くの新しい樹木を植え始める必要があります。そうすれば、森林の潜在力は年間約4〜5ギガトンになります(ある推定では9ギガトンにもなります)」

2人の創業者にとって、新しく得た資金はパリサ氏が育ったアラバマ州北部の森で始まった長い旅の最新のステップだ。

ミシシッピ州立大学で森林科学を学んだ後、パリサ氏はイェール大学の大学院に通い、ケンタッキー州ルイビル出身のコンピューターサイエンスの学生であるマックス・ノバ氏と出会い、パリサ氏と一緒に後にSilviaTerraとなる会社を創業した。

SilviaTerraの共同創業者であるマックス・ノバ氏とザック・パリサ氏(画像クレジット:SilviaTerra)

2人は衛星画像とフィールド測定を組み合わせて、1エーカー(約4047平方キロメートル)ごとに森の木の大きさと種類を特定する方法を開発した。

最初のステップは米国内のすべての森林の地図を作成することだったが、2人の最終的な目標は、炭素市場を木材産業と対等な立場に置く方法を見つけることだった。地主は現金を得るために、木を切る代わりに森林を維持することがどれだけの価値になるかを知ることができるようになった。同社が指摘するように、森林の管理は以前は木材収穫の経済性が推進力となっており、米国では毎年100億ドル(約1兆400億円)以上が費やされていた。

SilviaTerraの創業者らは炭素市場も同じくらい大きくなる可能性があると考えていたが、ほとんどの土地所有者にとってアクセスが困難だ。カーボンオフセットプロジェクトを成立させるには20万ドル(約2100万円)もの費用がかかる可能性がある。これはパリサ氏自身の家族のような土地所有者が関わる小規模なオフセットプロジェクトやアラバマ州で彼らが所有する40エーカー(約16万1874平方キロメートル)の森の価値を上回っている。

パリサ氏とノバ氏は、小規模土地所有者が炭素市場から利益を得るには、より良い方法が必要だと考えた。

炭素経済を生み出すには、米国内のすべての木を記録する単一のソースが必要だった。SilviaTerraにはそうした地図を作成する技術があったが、地図を作成するための計算能力、機械学習の能力とリソースが不足していた。

そこで、Microsoft(マイクロソフト)のAI for Earthプログラムが登場した。

SilviaTierraはAI for Earthと協力して最初の製品であるBasemapを作成した。この製品はテラバイトの衛星画像を処理して、米国の森林地帯の1エーカーごとに木の大きさと種類を特定する。同社はまた米国森林局と協業し、そのデータにアクセスした。このデータは米国の森林資産の全体像作成に利用された。

Basemapのデータを使用して、同社は自然資本取引所と呼ばれるものを立ち上げた。このプログラムは、地域の森林に関してSilviaTerraが持つ比類のない情報へのアクセスと、そうした森林が現在どのようにプロジェクトに使用されているかについての情報を利用する。各プロジェクトは、もしオフセットマネーが入ってこなければ森に覆われていなかったであろう土地を示している。

現在、多くの森林プロジェクトは、そもそも森林に覆われることがなかったであろう土地を利用した合法的なオフセットとして購入者に提供されている。二酸化炭素排出量のオフセットとして、そうしたプロジェクトは実際には無意味で役に立たないものになっている。

「そこは血まみれです」と、業界における不正オフセットの問題の規模についてノバ氏はいう。「私たちは既存の森林炭素プロジェクトを再パッケージ化したり、需要側を既存のプロジェクトと結び付けようとしたりはしていません。テクノロジーの力で森林カーボンオフセットの新しい供給を解き放ちます」。

最初の自然資本取引所プロジェクトは、実際には2019年にマイクロソフトが始め、資金も提供した。その中で、20人のペンシルベニア州西部の土地所有者がプログラムを通じて森林炭素クレジットを生み出した。プログラムはオフセットが40エーカーの土地所有者にとって機能しうることを示した。

SilviaTerraのカーボンオフセットパイロットプログラムに関与する地主はマイクロソフトから支払いを受けた(画像クレジット:SilviaTerra)

「私たちは、すべての土地所有者の年間経済計画サイクルに参加しようとしているだけです」とノバ氏は述べた。「木材経済学にはあらゆる分野があります。そして私たちは次の質問に答える手伝いをしています。炭素の価格と木材の価格を踏まえると、計画されている木材の収穫を減らすことは理に適っているだろうか」。

2人の創業者は最終的に、森林の潜在的なカーボンオフセット値に関するデータを作成することで、土地全体の価値に対して支払える方法を見つけたと信じている。

炭素市場だけではない。SilviaTerraが作成したツールは、山火事の軽減にも使える。「私たちは適切なデータと適切なツールを持ち合わせて、適切なタイミングで適切な場所にいます」とノバ氏は述べる。「データをこれらすべての意思決定と経済性に結び付けるということです」。

SilviaTerra取引所の立ち上げにより、大規模な購入者はカーボンオフセットのために十分に調べられた情報源を得る。それはある意味でWrenようなスタートアップによって行われている仕事にとっては、企業として当然の帰結だ。WrenはUnion Square Venturesの別の投資先であり、消費者の日々の二酸化炭素排出量をオフセットすることに特化している。同様の森林オフセットを大規模に提供しようとしているPachama、3Degrees IncSouth Poleなどの企業の競争相手でもある。

バイデン政権下でカーボンバンクを設立するための議論が進行中であることから、オフセット企業にはさらに多くの機会があるとSilviaTerraの創業者らは述べた。米農務省が運営する既存のCommodity Credit Corp.を通じて設立されたカーボンバンクは、米国全土の農家と土地所有者に林業と農業のカーボンオフセットプロジェクトの費用を支払う。

「こうしたシステムには私たちが今利用している以上の価値があることを誰もが知っています」とパリサ氏はいう。「そのメリットを私たちが切り取って市場に送りだすものと同じレベルに置くまでは【略】価値は上がっていきます【略】絶対にそれは意思決定に影響を及ぼし、キャッシュで回収できます。これは必要とされているものを作るための米国沿岸部から米国中部への送金ポンプです」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:SilviaTerraカーボンオフセット資金調達二酸化炭素排出量

画像クレジット:Roine Magnusson/DigitalVision

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

Klimaは一般消費者が二酸化炭素排出量を簡単に把握できるカーボンオフセットアプリをリリース

Klima(クリマ)は消費者が二酸化炭素排出量を把握し、相殺(オフセット)することを支援するアプリだ。共同創業者であるAndreas Pursian(アンドレア・プルシアン)、Markus Gilles(マークス・ジル)、Jonas Brandau(ジョナ・ブランドー)の3氏は、最初に起業家としてHyperで成功を収めた。

彼らが開発したモバイル雑誌出版ツールキットは2017年にMicに売却されたが、それは10年近く前から始まった一連のコラボレーションの最新の成果にすぎなかった。

Klimaの最高経営責任者であるジル氏は2020年初めのインタビューで「私たちはテクノロジーや、社会を改善するためにできるあらゆる素晴らしいことに魅了されました」と述べた。

2020年12月に立ち上げられたKlimaは、ある意味その努力の集大成だ。

ジル氏とプルシアン氏は最初大学で出会い、後にブランドー氏も合流し、最初のアプリであるPinoを立ち上げた。これは、ドイツのAngela Merkel(アンゲラ・メルケル)首相もプラットフォームの初期の寄稿者として参加した、モバイルベースのビデオ論説ページだ。

政治やメディアとのつながりはMicに売却された出版プラットフォームHyper、そしてKlimaでも継続された。このアプリで3人の共同創業者は、メディアに精通した強みを消費者の行動の変化とオフセットにより二酸化炭素排出量を削減および中和させる目的に利用した。

「私たちが社会を再建している間、私たちにはオフセットという救済手段が与えられ、時間を稼ぐことができます」とジル氏はいう。「今後10年間で50%の排出削減を達成する必要がありますが、これは非常に困難な作業です。あらゆる気候変動の解決策をただちに駆使する必要があります」。

Klimaは他のアプリと同様に、排出量を削減する重要な個人的なステップの1つが食事だと考えている。クルマを自転車や電気自動車に置き換えたり、ファストファッションを減らして古着を購入したりすることもインパクトがある。

Klimaのアプリには二酸化炭素計算機が含まれており、カーボンフットプリントを測定し、ユーザーはパーソナライズされた月額サブスクリプションをカーボンオフセットに使える。同社のアプリは、排出量を削減するためのライフスタイルのヒントも提供する。最後にこのアプリはソーシャルシェアリング機能も提供し、気候変動の戦士の候補が温室効果ガスの排出と気候変動を減らすための戦いへ参加することを可能にする。

「私たちはいま、特別な状況に置かれています」とジル氏はいう。「私たちが創業者として行っていること。私たちは、パンデミックだからといって気候危機が一時停止しているわけではないことを知っています。私たちは、パンデミックが終わったときに、なおそこにいるために十分な資金を調達しました」。

同社にはWoogaの創業者であるJens Begemann(イェンス・ベグマン)氏、Blinkistの共同創業者であるNiklas Jansen(ニクラス・ジャンセン)氏、Pitchの創業者であるChristian Reber(クリスチャン・レーバー)氏、そしてe.ventures、HV Holtzbrinck Ventures、468Capitalなどの機関投資家が投資している。

これまでにKlimaは580万ドル(約6億円)を調達した。同社はユーザーに3種類のオフセットを提供している。1つ目は、植樹プロジェクトのような自然の解決策。2つ目は、太陽光発電設備のような技術ベースの解決策。3つ目は、薪ストーブを家庭用の電気ストーブまたはガスストーブに置き換えるなどの社会的解決策だ。

「これまでのところ、このアプリは大きく前進しています」とジル氏は述べた。同社のアプリは現在、米国、カナダ、豪州、ニュージーランドを含む18カ国で公開されており、現在市場に出回っている気候オフセットアプリの中で最大のユーザーベースを持っていると同社は語った。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Klimaカーボンオフセット環境問題

画像クレジット:Klima

原文へ

(翻訳:Mizoguchi