遠隔医療が新型コロナ流行抑制に「まだ」大きく寄与していないのはなぜか

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが猛威を振るっている。

米国で感染者が激増する中、新型コロナの急激な感染拡大で最もありそうな可能性1つは、病院の対応能力がパンクしてしまうことだ。ニューヨークのような都市の病院はすでに患者であふれており、出動した病院船(「希望と連帯という名の7万トンのメッセージ」)や、現場を支援する退職医療従事者卒業前の医学生にも頼っている。

テレヘルス(遠隔医療)はその動きと並行して、米国の保健システムにとって「あるといい」ものから「なければならぬ」ものへと急速に進化している。

テレヘルスは名前先行から期待を経て、ついに導入へ

このタイミングは予見的だ。テレヘルスのテクノロジーは完成度はまちまちだが数十年にわたり存在してきた。ただこれまであまり実践に取り入れられてこなかった。2005年から2017年まで、テレヘルスを介した医師の診察は150回に1回、専門医の診察は5千〜1万回に1回にとどまった

導入の主なきっかけは2週間前の連邦政府の発表だ。テレヘルスの使用に関するメディケアの適用制限を一時的に解除すると発表したのだ。政策の変更には、専門分野や利用局面の点での対象範囲拡大、自己負担の撤廃、HIPAA(医療の携行性と責任に関する法律)のプライバシー要件緩和などがある。例えば、HIPAAは従来、AppleFaceTimeなどのユビキタスなテレビ会議テクノロジーを禁止していた。

発表を機に、いわば一夜にしてテレヘルスはついに主流となった。

米国最大級の医療機関でテレヘルスの採用が急速に進んでいる。マサチューセッツ総合病院では、オンライン診療の1週間の予約数が過去数週間で1020倍に増えた。ニューヨーク大学ランゴーン医療センターでは、新規予約の急増に対応するためスタッフを5倍にした。米国最大のバーチャルケアプロバイダーであるTeladoc(テラドック)では現在、毎週10万を超える予約が報告されている。

テレヘルスの利用事例の多様化

先駆的な医療システムを利用したテレヘルスの急増により、米国の医療業界ではこれまでになかったユニークな利用事例が生まれている。

利用事例はさまざまな局面で見られる。いくつか例を挙げれば、緊急治療、集中治療、トリアージ(重症度の選別)、経過観察などだ。病院以外では、ヒューストンのProject Emergency Telehealth and NavigationETHAN、緊急遠隔医療及びナビゲーションプロジェクト)などの国内の先進的な取り組みにおいて、救急隊員と救急救命士がテレヘルスを初期対応に使用した先例がある こうしたプログラムは、新型コロナに対応するRapidSOS(ラピッドSOS)などのスタートアップが積極的に開拓してきた

Kaiser Permanente(カイザーパーマネンテ)、Intermountain Health(インターマウンテンヘルス)、Providence Health(プロビデンスヘルス)などの医療関連企業は、フィラデルフィアのジェファーソン病院の業績に基づき、病院への玄関口となる緊急治療室で、医療提供者と新型コロナの疑い患者(patients under investigation)の接触を最小限に抑えるための遠隔受け入れプログラムを採用した

病院へ搬入する際にテレヘルスを使って患者の状態を観察し、医療提供者の安全を確保している。こうした技術は、個人用保護具が大幅に不足している状況で極めて重要であることが証明されつつある。

ワシントン州エバレットのプロビデンス地域医療センター(アメリカで最初に新型コロナの症例が発生した場所)では、ICU(集中治療室)患者の遠隔監視プログラムを6週間かけてゼロから構築したEarlySense(アーリーセンス)のようなスタートアップが、マルチモーダルセンサー(1つのチップで複数種類のデータを取得できるセンサー)と視聴覚機能を組み合わせ、混み合っていない病棟の臨床的悪化を遠隔で検出・評価することを可能にした。

緊急治療室や入院病棟から出た後は、TytoCare(タイトケア)のような遠隔スクリーニングツールを使用すれば、以前は医師で対面で行っていた治療や検査が遠隔から可能になる。新型コロナの不安定な臨床経過を踏まえれば、緊急治療室から出た後は効率的で定期的な診断によって症状を観察し、その後必要となる集中的な治療にうまく導くことが重要になる。

同様に、特にICUを出た後は病気がすんなりと回復しない可能性があるため、遠隔テクノロジーはいわゆる「退院後症候群」を緩和し、入院治療後の長期的な健康を確保するために不可欠だ。

最初に導入すべきはどこか、いやあらゆる場所か

さまざまな形のテレヘルスの利用がほぼ一夜にして解禁されたことはポジティブなニュースだが、米国では広範囲な普及を妨げる障壁が残っている。 現代医学のメッカで進められるプロトタイピングの段階から、ヘルスケアの広い局面で役立つツールへと移行する前に、テレヘルスはいわゆる「ラストマイル問題」の解決に取り組まねばならない。

ここで言うラストマイルとは、地域で医療を提供するにあたっての非技術的または現場実践的な要素を指す。テレヘルス同様、医療提供に伴う実践的な要素への対応が不十分である場合、医療提供者が患者に新しいテクノロジーを適用することはできない。テレヘルスの場合、ラストマイルは4つの領域にグループ化できる。(a)適用範囲と償還(b)法的な懸念(c)臨床治療(d)社会的課題の4つだ。連邦政府の今月の政策変更は、不法行為責任の制限、厳密にはHIPAAに準拠していない可能性がある一般的な電話会議プラットフォームの許可など、いくつかの法的問題を解決する上で大きな一歩だった。

ただし、特に米国人の86.5%を占めるメディケア非対象者にとって、テレヘルスの利用を妨げる大きな障害が他の3つの領域で立ちはだかる。新型コロナに効果的に対処するには、リソース不足の状況下で、米国28100万人にくまなくテレヘルスを届ける必要がある。ウイルスが広く蔓延する中、地域の医療システムは足下の症例急増に対処するためテレヘルスのようなテクノロジーに大きく依存している

テレヘルスの拡大に不可欠なもの

患者の補償範囲に関して、20194月の時点で保険プランにテレヘルスサービスの補償を義務付けている州は36のみだった。補償対象者の1回の診療にかかる自己負担額はおおむね5080ドル(約55008700円)だった。自己負担を免除しているプランもあるが、将来ほぼ上昇が見込まれる追加の年間保険料が必要だ。こうした個人の費用負担は、現在の感染拡大の中で、非メディケア患者のテレヘルス利用を妨げる。

United Healthcare(ユナイテッドヘルスケア、4500万人の米国人が加入)、Humana(フマナ、3900万人)、Aetna(エトナ、1300万人)などの民間保険会社は、この2週間でテレヘルスサービスの自己負担額を免除した。残りの数億人の米国人をカバーする民間保険会社はこれに続くべきだ。マサチューセッツ州は先月、すべての保険会社にテレヘルスをカバーするよう義務付けた。他の州が続けばこの動きは加速する。

医療提供者への償還に関しては、わずか20%の州が保険償還率の同等性(payment parity)を義務づけている(そもそもテレヘルスが保険でカバーされていればの話だ)。同等性とは、テレヘルスに関する保険からの償還率(日本の診療報酬点数に相当)を、同様の診断を対面で受けたときと概ね同じにすることだ。償還率の格差によってテレヘルスの採用が望ましくない、あるいは受け入れがたいものになってきていた。テレヘルスの償還率は同等の対面診療よりも平均2050低い

テレヘルス導入の障壁は独立系の医療機関にとってさらに高い。標準的なテレヘルスプラットフォームを使用するには利用料を支払う必要があるが、一方でテレヘルスを取り入れると収益が約30%減少してしまう。新型コロナの感染が拡大する中、大規模な医療機関や個人経営の医院によるテレヘルス採用を金銭面で実施可能にするために、各州はここでもマサチューセッツ州にならい、民間保険会社からの償還率の同等性を導入するチャンスを活かすべきだ。

最後に、臨床治療については、テレヘルスをどこでどのように実施しうるかに関して多くの課題がある。具体的な実践に移すにあたり、テレヘルスを臨床診療の既存のワークフローと統合する必要があるが、現在の保険ルールがこれを妨げている。たとえばオンラインでの「訪問」や定期検診は再診患者にのみ認められている。新規の患者については、精密検査を必要としない軽度の症状または一時的な問題を示す患者であっても許されていない。これは最近のCMS(メディケア・メディケイド・サービスセンター)のポリシーでもそうだ。

さらに、「ストアアンドフォワード」(医療情報を電子的に別の場所に送信すること)を利用した助言や遠隔患者モニタリングなどの非同期方式はほとんどの州で制限されている。これらは地域的に散らばった患者へ柔軟に医療を提供する上で不可欠であり、効率的で拡張性の高い方法だ。

また、テレヘルスを実施できる「場所」は、患者の自宅でのサービス提供を禁止する「サービス発生場所」の方針によって制限されている。いくつかの条件を満たす必要もある(脳卒中の診断アヘン吸引からのリハビリなど)。こうした一貫性を欠く過剰規制がテレヘルスの普及を非現実的なものにしている。さらに、求められる免許が州単位のため、医師は州境をまたいで医療を提供できない。これは、19世紀に州によって医療の質に差があったことが背景にある。

患者が集中している地域で新型コロナに対応する医療を支えるために、各州はニューヨーク州フロリダ州にならい、州外の免許使用禁止を一時停止して免許の移転を許可するか、少なくとも他州との「免許協定」を通じて相互の免許融通を進める必要がある。

社会的課題に関しては、人口層別にアクセスにかなりの格差が存在する。たとえば、米電気通信情報局の2018年の調査によると、高齢者などの脆弱さを抱える層は全人口平均に比べ、インターネットへアクセスする割合は21%低く、ビデオ通話については約50%低い。貧困層がオンラインで医師とコミュニケーションをとる割合は34%低い。その他の人口統計上の少数派(ヒスパニック系や低学歴層など)も、テレヘルスのテクノロジーにアクセスしたり利用したりする可能性は低い。

そうした層は、新型コロナにより死亡率が上昇する健康に影響する社会的決定要因や併存疾患に直面する可能性が高く、新型コロナなどへの感染リスクを減らす健康リテラシーのレベルも低い。そのため、テレヘルスへのアクセス不平等は、新型コロナの流行曲線を平坦化する国としての能力に重要な影響を及ぼす。

そうした人々の医療へのアクセスを広げる唯一かつ最良の施策1つは、医師以外の医療提供者の診療範囲を拡大することだ。医師以外の医療提供者は、難解な法律によって翼を奪われている。各州の医師会が、ほとんどの患者には医師による「監督」が必要だと主張し、この法律をがっちりと擁護している。これは1980年代以降に行われたさまざまな分析に反する見解だ。各種分析によって、医師以外のヘルスケアプロバイダー(看護師や医師の補助者など)が医師と同等の高品質のサービスを提供できることが示されている。

さまざまな医療関連従事者(登録看護師薬剤師歯科医救急隊員ソーシャルワーカーなど)を動員し、より裁量をもたせてスクリーニング、診断、治療、処方に従事してもらえば、新型コロナを前に「戦力倍増装置」としてテレヘルスの能力を補強できる。緊急事態で専門医と総合医を結ぶプラットフォームを提供するThe MAVEN Projectのようなスタートアップの可能性を解き放つこともできる。

カリフォルニア州のように地理的に広がりのある州では2030年までに、医療関連従事者がプライマリ・ケアの半分を占めると予想されており、彼らを活用する政策が特に重要だ。静かに進む新型コロナの感染拡大から全国の患者を保護するために、なかなか進まないカリフォルニア州議会法案890のような、医療関連従事者を活用する取り組みを推進するために設計された法案を承認すべきだ。

要約する。連邦および州の機関による初期の新型コロナ対応がテレヘルスの普及を促した。だが、ウイルスが国全体を包囲しつつある状況では、より包括的な解決策が早急に必要だ。この目に見えない敵を倒すために、テレヘルスを生み出す者、使う者、便益を受ける者に、何としても必要な武器を与えることになるからだ。今、テレヘルスを強化するには、ペンと紙が最も重要なテクノロジーだと思われる。短期的には上院議員へ送る手紙が、我々の手元にある最も強力な弾薬かもしれない。

【編集部注】筆者のEli Cahan(エリ・カハン)氏はニューヨーク大学の医学生で、スタンフォード大学のナイト・ヘネシー奨学生として保健政策の修士過程に進む予定。同氏はデジタル健康イノベーションの有効性、経済性、倫理性を研究テーマとしている。

画像クレジットBSIP / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

LINEを活用した歯科矯正サービス「DPEARL」が歯科医による遠隔コンサルサービスを開始

「歯並びをきれいにする歯科矯正は、審美的に意味があるだけでなく、健康にとっても重要な領域です」

LINEで予約して始めるマウスピース型歯科矯正サービス「DPEARL(ディパール)」を提供するフィルダクト代表取締役の金子奏絵氏は、そう切り出した。欧米では歯並びをきれいに保つことは、ずっと以前から意識されているが、日本では「歯並びを治したいが、なかなか踏み出せない」という人が多いという。

「日本で歯並びがよくない人は全体の64%。そのうちの9割が未治療者で、人口の約58%が歯並びの改善が必要なのに、できていない。矯正に踏み出せない理由としては、費用の高さ、矯正期間の長さ、ワイヤー型の矯正器具を使ったときの見た目が大きい。(従来のワイヤー型での)一般的な歯科矯正の費用は相場が100万円。期間は2〜3年で確かに潜在ニーズに応えられていないのが現状だ」(金子氏)

金子氏は東京医科歯科大学歯学部口腔保健学科の出身で、歯科技工士免許を持つ人物だ。「旧態依然とした歯科業界を変えたい」と同大学大学院医歯学総合研究科在学中に起業。歯科矯正を「安い」「スピーディー」「万全のサポート」を備えたサービスでアップデートしようとDPEARLを企画・開発した。

テクノロジー活用で歯科矯正を低コスト・短期間化、モチベーション維持も

DPEARLでは、CADや3Dプリンターといったテクノロジーを活用して、これまで歯科医師がワイヤーの屈曲を行い、時間をかけて行ってきた矯正の時間とコストを削減。低コストで、しかも目立ちにくい透明なマウスピースを装着しての矯正を可能としている。

またユーザーからDPEARLが直接費用を預かり、歯科医師や歯科技工士に支払うD2Cモデルを採用。これにより、ユーザー・歯科医師・歯科技工士のそれぞれにとって適正なプライシングを実現し、「平均20万〜40万円の価格で矯正が行える」(金子氏)という。

DPEARLの利用フローは以下の通りだ。まず、DPEARLのLINEアカウントを友だち登録し、初診を予約。提携クリニックへ行き、マウスピースによる矯正が可能かどうかを歯科医が初診時に診断した上で、歯型を取る。その後、歯科技工士がデジタルシミュレーションを製作。約2週間で専用のマウスピースが作られて届くので、そこから装着・矯正が始まる。

マウスピース型の歯科矯正のメリットには、目立ちにくいということのほか、いつでも取り外しができるという点もある。このため、矯正中の歯みがきなどの手入れはしやすいのだが、これは実はデメリットにもなり得るのだという。マウスピース矯正では、1日18〜20時間の装着時間が必要だが、これを守れないと矯正期間が長期化することになりかねない。

DPEARLはLINEを活用することで、装着中のユーザーのモチベーションをサポートするサービスも提供。矯正の進捗状況がグラフで一目で分かるほか、シミュレーション動画もLINEで確認でき、提携ドクターによる定期的なコメント送信や歯科衛生士などによる質問への対応も行われる。

歯科サブスクなども構想、矯正を予防歯科の入口に

2019年3月からDPEARLのビジネスモデルを検証してきたという金子氏。2019年11月には先行受付を開始し、今年3月から正式にリリースした。都市部だけではなく、クリニックの少ない地方からの登録も進んでいるとのこと。売上などのめども立ち、ビジネスが成り立つとの判断から、現在はブランディングとオペレーション構築を進めているところで、今後スケール拡大を図るという。

「DPEARLは、歯科矯正をもっと身近に感じてもらうためのきっかけを与え、LINEを使ったサポートにより、効果も上げるという役割を担うブランド。今回、新型コロナウイルス感染拡大のこともあり、新たに遠隔で、歯科医が歯並びのコンサルティングを行うサービスを開始した」(金子氏)

4月8日にフィルダクトが提供を開始した「DPEARL Home Dental」は、今までは最初のチェックからクリニックに足を運ぶ必要があったところを、家にいながらにして歯並びの状態を知ることができるというものだ。DPEARL Home DentalのLINEアカウントを友だち登録し、スマホで撮影した歯並びの写真をアップロードすると、歯科医師がそれを見て歯並びの問題点を指摘し、DPEARLでの矯正期間や費用の目安を教えてくれる。確かに、オンライン越しに概算が見積もれるなら、歯科矯正へのハードルを下げるには十分役立ちそうだ。利用は無料で、先着1000名が対象となる。

このサービスは、米国で提供されている歯科矯正サービス「SmileDirectClub」や「Candid」のように、歯型を取るキットが送られてきて歯科矯正が全てオンラインで完結するというものではないので、最終的には対面での診察や歯型取りが必要だ。キットでの歯型取りについて金子氏は、今のところ「精度が確実でないため、正しい矯正につながらず、時間や費用がかえってかかる可能性があり、DPEARLでは採用しない」と回答している。

金子氏は「海外で提供されているサービスのモデルでは、歯科矯正器具を販売することに主軸があり、クロスセルでほかのものも販売するようなものが多い。だが我々は『歯科矯正を予防歯科の入口』と捉えている」と述べている。

「日本の歯科は、ずっと治療が主流で成り立ってきた。近年は悪くなってから受診するのではなく、予防を強化したいというトレンドはあるが、なかなか進んでいないところもある。この流れを、審美やコンプレックスを切り口として仕掛けるのはピッタリだと考えた。矯正に取り組む患者さんは歯に対する意識が高くなるので、定期的なクリーニングを勧めれば定期来院にもつながりやすい」(金子氏)

金子氏は「フィルダクトはマウスピース矯正にとどまらず、古い歯科業界に風穴を通し、インフラを整えていくような企業となることを目指している」として、DPEARLについて「歯科のサブスクリプションなど、プラットフォームへの移行も構想としてある。歯科矯正サービスは歯科予防産業の入口として捉えている」と話している。

今後「3Dと予防歯科、テクノロジーと予防歯科の切り口で、D2Cブランドで多くの人を引きつけられるようなサービスを考えている」という金子氏。「口腔の健康と糖尿病や脳梗塞、高血圧など、全身の健康は密接に関連している。口腔をよくすることは全身の健康につながる。歯科受診がステータスに感じられるようなサービスを提供していきたい」と語った。

医療機器セキュリティ向上のCyberMDXが約22億円を調達

ヘルスケアセキュリティのスタートアップであるCyberMDXは、最新の資金調達ラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達したことを米国時間4月7日に認めた。

ニューヨークに拠点を置くCyberMDXは、病院のネットワークに接続された資産とデバイスを管理し、リアルタイムで攻撃を監視するサイバーインテリジェンスプラットフォームを通じて、主に医療機器の保護と病院ネットワークのセキュリティ向上に取り組んでいる。

CyberMDXはわずか4年前に設立されたにもかかわらず、医療分野でより存在の知られたサイバーセキュリティスタートアップの1社となった。同社の研究部門はすでに、麻酔器や呼吸器に使用される輸液ポンプやネットワークプロトコルなど、広く使用されている医療機器に複数の脆弱性があることを発見しており、米国土安全保障省を通じて警告を発している。

2000万ドル(約22億円)の資金調達は、Relyens Groupの一部門かつヨーロッパ最大の保険とリスク管理プロバイダーであるShamが主導し、既存投資主であるPitango Venture CapitalとQure Venturesが参加した。

CyberMDXはこの2000万ドル(約22億円)により、新しい地域や市場に向けてプラットフォームを展開していく予定だと述べている。

今回の資金調達は極めて重要な時期に実施された。世界中の何千もの病院や医療施設が新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによる重圧の中で、CyberMDXは同社のプラットフォームが彼らの負担を軽減できることを望んでいる。

「今日の新型コロナウイルスや前例のない事案を考慮すると、この困難な時期に医療コミュニティを支援することが我々のミッションの一部であると考えている」と、CyberMDXの共同設立者かつCEOのAmir Magner(アミール・マグナー)氏は述べている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:塚本直樹 Twitter

米国では新型コロナ対策で睡眠時無呼吸用の装置を改造して人工呼吸器の不足に対処

米食品医薬品局(FDA)は、従来とは異なる解決策に対する必要性が高まるなか、同局の方針と規制を適応させるよう取り組んできた。つまり、新型コロナウイルス(COVID-19)患者の治療に必要な医療機器の不足などに対応するためだ。カリフォルニア大学バークレー校と同サンフランシスコ校、さらには実働中の病院に所属する医師、エンジニア、医学研究者のグループは、人工呼吸器不足に対応する独創的な解決策を考案した。それがFDAの緊急使用許可(EUA)の基準を満たすことを願っている。これまでほとんど使われずに放置されていた、どこにでもあるハードウェアと、備蓄されている医療用呼吸器具によって解決しようというもの。

このグループには、肺疾患専門医、医学および工学の教授、その他多くのメンバーがいる。自らを、COVID-19 Ventilator Rapid Response Team(COVID-19人工呼吸器緊急対応チーム)と名乗っている。睡眠時無呼吸症候群の治療に一般的に使われている既存のCPAP(Continuous Positive Airway Pressure)マシンを改造して、一種の人工呼吸器として利用する方法を編み出した。人工呼吸器は、ICU内で重度の新型コロナウイルス患者の呼吸を維持するための挿管に必要とされている。

睡眠時無呼吸用の装置は、自力で呼吸できない患者が継続的に使用するようには設計されていない。基本的に、睡眠中に患者の気道が塞がれないようにし、酸素レベルを維持して、望ましくない目覚めやいびきを防ぐもの。このCPAPの改造に取り組んだグループは、挿管に使用できるチューブを使用して、ハードウェアを適合させることができた。主導的な役割を果たしたのは、ベイエリアの3つの病院のICUで、肺の疾患を専門とする救命救急医、Ajay Dharia(アジャイ・ダリア)博士と、カリフォルニア大学バークレー校の工学系の大学院生だ。

すでにFDAは、緊急の必要性がある場合には、もともと人工呼吸器として設計されていない呼吸装置の使用を検討するよう、医療施設や専門家に促すガイダンスを発行している。これだけでも、人工呼吸器緊急対応チームのアプローチは一歩先んじたものだったことになる。それでもチームは、当局からの緊急の認可をさらに求めている。というのも、大量の機器を改造するには、サプライヤーやメーカーと大規模に協力することが必要だからだ。

さらにチームでは、現在使われていないCPAP、つまり睡眠時無呼吸症候群用の装置を寄付してくれるよう、個人や組織に協力を求めている。それを改造して、人工呼吸器を作るためのベースのハードウェアとして使うためだ。興味のある人は、チームのウェブサイトで、さらなる情報をチェックしてみよう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

自宅エクササイズのPelotonがAndroid TVアプリをリリース

米国内のジムが軒並み休業している中、自宅でエクササイズを可能にするPelotonのような会社に、予期していなかったような好機が訪れている。このオンライン・フィットネスの会社は、新規の顧客を獲得することを見込んで、プラットフォームのサポートを充実させている。米国時間4月2日には、何百万台というスマートTVが採用するOS,Android TV用のアプリをリリースすることを発表した。

Pelotonは先月、新型コロナのパンデミックに対応して、月額12.99ドル(約1400円)のエクササイズアプリの無料トライアル期間を、30日から90日に延長すると発表した。Pelotonも、ウイルスの影響を受けていないわけではない。先月、同社はビジターに対してスタジオを閉鎖し、インストラクターだけでクラスを開催することにした。また、オンラインのバイクとルームランナーの宅配事業を休止している。

Pelotonは、これまでもFire TV、Chromecast、AirPlayをサポートしていることを宣伝してきたが、今回のアプリの追加により、ほとんどの新しいスマートTVのユーザー向けサポートも加わることになる。アプリは、すでにAndroid TVのGoogle Playストアで入手可能となっている。

すでにPelotonのユーザーで、Android TVの画面にエクササイズを表示しようと考えている人は、知っておくべきことがある。このアプリは、心拍数モニターや、Peloton製以外のバイクのケイデンスセンサーなど、Bluetooth接続による外部センサーをサポートしていない。また同社は、最高のパフォーマンスを得るためには、Android 6以降でアプリを実行することを勧めている。

関連記事:在宅フィットネスPelotonの株価が新型コロナによる外出制限を受け急上昇

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

新型コロナ対応の細胞療法の早期治験を米食品医薬品局がCelularityに認可

Celularity(セルラリティ)は、ベンチャーキャピタルから支援を受け、癌治療のための画期的な細胞療法に取り組んでいる。新型コロナウイルス(COVID-19)に有効と考えられる治療法に関する早期臨床試験を開始するため、必要なFDA(米食品医薬品局)からの初期認可を受けた。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko/Getty Images

Crunchbaseによると、同社はこれまでに、少なくとも2億9000万ドル(約313億円)を調達している。「ナチュラルキラー」(NK)細胞療法を使用して、免疫システムが疾患と闘う際の反応を高める。Celularityでは、こうしたNK細胞を、胎盤組織から培養された幹細胞から得ている。通常は、病院が医療廃棄物とみなしているものだ。

同社は、ベンチャー投資会社のSection 32と、いくつかの戦略的投資家から支援を受けている。その中には、現在はブリストル・マイヤーズ(Bristol Myers)の一部門となったCelgene、生物医学技術開発会社のUnited Therapeutics、J. Craig Venter(J・クレイグ・ベンタ―()氏によって創立され、ベンチャーキャピタルから支援を受けたスタートアップのHuman Longevity、そして上場している生物医学企業のSorrento Therapeuticsが含まれる。Celularityは、新たな細胞療法についていくつかの応用に取り組んでいたが、それはもともと癌治療に焦点を当てたものだった。

同社が成し遂げた本当のブレークスルーは、細胞療法に使う細胞を、患者から取り出した細胞から培養する必要がないこと。それは時間もお金もかかるプロセスなのだ。それゆえ、同社への期待は高く、多くの資金が集まった。Celularityは、NK細胞を生成して保存できるので必要なときにいつでも輸血できる。

Celularityでは「FDAの承認を得て、86人を対象とした小規模な治験を開始し、新型コロナウイルスに感染した成人に対し、CYNK-001免疫療法による治療の有効性をテストする予定である」と述べている。中国でも、ナチュラルキラー細胞が新型コロナウイルスの治療に使用できるかどうかをテストする、少なくとも2つの研究が進行中だ。

NK細胞は、身体の免疫系の一部である白血球の一種。特定の病原体を標的とするt細胞とは異なり、NK細胞は通常、免疫システムをサポートするように働く。感染や変異によってストレスを受けていると判断される体内の細胞を特定して破壊する。

この治療法は、特定の種類の癌の治療には効果を上げているものと考えられる。同社の研究者は、新型コロナウイルスを全身に広げる新型コロナウイルスの能力を停止させることで、同様の結果が得られると推測している。

ただし、NK療法を実施するにあたっては、それ相応の潜在的な障害とリスクがある。何よりも、新型コロナウイルスは免疫システムを暴走状態にする可能性があり、致命的となる場合もある。感染によって引き起こされる「高サイトカイン血症」だ。免疫システムが、肺の健康な細胞を攻撃し始め、臓器不全を起こして死に至らしめる。その場合、新型コロナウイルスに対する免疫反応を高めることは、患者にとって危険なこととなる。またNK細胞が、新型コロナウイルスを引き起こす新型コロナウイルスに感染している細胞を検出できず、治療の効果が得られない可能性もある。

「研究では、ウイルスの種類に関係なく、ウイルス感染に対してNK細胞が強力に活性化されることが確かめられています」とCelularityの最高科学責任者であるXiaokui Zhang(キアオクイ・ジャング)氏は、声明で述べている。「こうした作用は、CYNK-001が感染した細胞を排除することによって、SARS-CoV-2ウイルスの複製を阻害し、疾患の進行を遅らせることで、新型コロナウイルスの患者に有益である可能性を示唆しています」。

新型コロナウイルス 関連アップデート

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

Estimoteが新型コロナ接触者を追跡するウェアラブル端末を発表

Bluetoothを使ったビーコン端末のスタートアップであるEstimote(エスティモート)は、その専門技術を活かし、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大を抑えるための一連の新製品を開発した。同社は、社会的距離の確保や隔離が要請されている間も物理的に狭い場所に集まって作業しなければならない人たちの職場の安全性を高めると共同創設者Steve Cheney(スティーブ・チェイニー)氏が確信する、新分野のウェアラブル端末を作り出したのだ。

ストレートに「Proof of Health」(健康の証)ウェアラブルと呼ばれるこのデバイスは、接触者の追跡を目的としている。言い換えれば、それぞれの職場の施設レベルで、人から人への新型コロナウイルスの感染経路をモニターするものだ。その狙いは、従業員の間で万一感染が発生した場合、状況を把握し、手遅れになる前に拡大を抑制する手立てを提供することにある。

このデバイスには、パッシブGPSによる位置追跡システムに加え、Bluetoothと超広帯域無線(UWB)接続を利用した近接センサー、充電式バッテリー、LTE通信機能が備わっている。さらに、装着者の健康状態や、健康の保証、症状、感染の確定といった記録状態の変更を手動で行える。装着者が、感染の可能性または感染確定に自身の状態を変更すると、接近した距離と位置情報の履歴を基に、接触した相手の情報が更新される。これらの情報は、接触の可能性のある人たちの詳細情報を保管し集中管理するための健康ダッシュボードにも記録される。現在は、ひとつの組織内での使用を想定してデザインされているが、この情報を企業全体あるいは一般社会での追跡に役立てることができないか、WHOを始めとする保健機関と協力する道を探っているとチェイニー氏は話している。

このデバイスは、さまざまな形態で展開できるよう作られている。現在すでにある丸い小石のようなタイプ(紐を取り付けることで首に装着して情報を確認できる)、調整可能なバンドで腕に巻くタイプ、施設の入出管理でよく使われている従来型のセキュリティーカードと一緒に携帯しやすいコンパクトなカード型タイプがある。小石型タイプはすでに生産に入っており、これから2000ユニットが展開される。近い将来、同社のポーランドにある製造資源を生かして、さらに1万ユニットを生産できるよう態勢を強化する予定だ。

Estimoteは、ほぼ10年間、企業向けにプログラム可能なセンサー技術を構築し、AppleAmazonといった巨大グローバル企業とも協力関係にある。チェイニー氏が私に話してくれたところによると、彼はその技術を、パンデミックによって生じたこの特異な問題に応用する必要性を即座に認識したというが、Estimoteはすでに18カ月前から、別の目的でその技術の開発に取り組んでいた。サービス業界の従業員向けに、安全対策や非常ボタンを提供するというものだ。

「このスタックは18カ月間、フル稼働しています」と彼はメッセージで話してくれた。「私たちは、すべてのウェアラブルのプログラムを遠隔で操作できます(LTE接続されてます)。工場に配備する場合、そのウェアラブルに遠隔でアプリを開発します。これがプログラマブルIoTです」

「ウイルスのおかげで、人と人が間近に接する場所での健康確認の診断技術が必要になるなんて、誰も思いませんでしたよ」と彼は言い足した。

接触者追跡をテクノロジーで実現しようという提案は数多くある。スマートフォンで収集された既存のデータを利用する方法や、カルテを転送する消費者向けアプリの応用などだ。しかし、それらの取り組みには、プライバシーの問題が大きく関係してくる。しかも、スマートフォンを使うことが前提だ。人の行き来が激しい環境では、正確な位置追跡をスマートフォンで行うのはほぼ不可能だとチェイニー氏は指摘する。専用のウェアラブルを作ることで、Estimoteは従業員同士の「侵害」的な行為を避けることができるとチェイニー氏は言う。その目的に合わせて作られたデバイスを使用し、従業員の間だけでデータを共有するからだ。さらに、取り外しができる形態で、部分的に自分でコントロールができる。また屋内では、モバイル機器は専用ハードウェアのように精度の高い追跡が行えないとも彼は話している。

しかも、このようにごく限られた領域での接触者追跡は、感染拡大を、他の方法よりも早く徹底的に抑制するための早期警報を雇用主に伝えるだけのものではない。実際、センサーデータから得られた大きなスケールでの接触者追跡情報により、新型コロナウイルス対策に、新しい優れた戦略がもたらされている。

「一般的に、接触者追跡は、個人の記憶や、高レベルの想定(例えば、その人の勤務シフトなど)に依存しています」と、ジョン・ホプキンズ大学応用物理研究室のBrianna Vechhio-Pagán(ブリアンナ・ベッキオペイガン)氏は言う。「新しいテクノロジーによって近距離、つまりおよそ2m以内での接触を追跡できるようになり、他の方法でもたらされる誤差が減りました。BlurtoothやUWB信号からの感染状態や症状を含む濃厚接触者追跡データにより、患者や医療従事者の安全を守る新しい優れた方法が発見されるでしょう」。

人との距離を保つ方針がいつまで続くかは今のところは不明だ。何カ月も続くという予測もある。感度に差があったとしても、Estimoteのようなソリューションは、リスクを回避して従業員の健康と安全を守るための最大の努力を払いつつ重要なサービスや業務を遂行する上で、欠かせないものとなる。さらに大規模な対策も必要だろう。一般市民を対象とした接触者追跡計画などだ。Estimoteの取り組みは、そうした計画の設計や開発の参考になるはずだ。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

スマート体温計の発熱者マップが新型コロナ対策での外出自粛の重要性を示す

米国ヘルスウェザーマップ

スマート体温計メーカーのKinsa(キンサ)は、インフルエンザなどの季節性疾患が地域でどのように感染拡大するかを示す正確かつ予測的なモデル作りに着手しており、発熱者マップは新型コロナウイルスの世界的なパンデミックにおいて役立つ可能性がある。キンサの米国ヘルスウェザーマップでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を特定してその感染拡大を追跡することはできないが、地理的データに紐づく発熱状況が確認できるため、各地域で講じられる社会的距離戦略と隔離対策の有効性が簡単に把握できる。

キンサのヘルスウェザーマップが2月にニューヨークタイムズに掲載されたとき、同社製体温計の米国市場での流通量は約100万個だった。だが、記事掲載の1週間前から注文が殺到し、注文数は1日あたり1万個ほどに及んでいる。これは同社の分析が、米国総人口に対し非常に膨大なデータセットに基づいていることを意味している。キンサ創設者兼CEOのInder Singh(インダー・シン)氏は、同社がオレゴン州立大学助教授Ben Dalziel(ベン・ダルジエル)氏と提携し、今までにない高精度と高粒度で、地域レベルでのインフルエンザ予測を可能にしたと説明した。

「私が当社を起業した理由の核となる仮説が正しいことが証明された。その核となる仮説とは、感染症の突発的発生の検出や感染拡大の予測をするためには、罹患者から得られる、医療的に正確でリアルタイムの地理的なデータが必要であることだ」とシン氏は言及した。「当社は、自社データをダルジエル氏の感染病拡大第一原理モデルに入力した。そして9月15日には、風邪やインフルエンザのシーズンの残り全期間すなわち超局所的な20週間における感染の山(ピーク)と谷に関して、非常に正確に予測できることが示された」

これまでも、インフルエンザの感染を追跡・予測する努力はされてきたが、今までの「最新技術」は国もしくは複数の州レベルでの予測であり、個別の州や、ましては地域内の傾向の追跡や予測は不可能であった。リードタイムに関しては、キンサとダルジエル氏によるモデルの数ヵ月ではなく、実質的に最短3週間で達成可能だった。

新型コロナウイルスの世界的大流行という危機的な状況がなかったとしても、シン氏、ダルジエル氏とキンサが成し遂げたことは、テクノロジを利用した季節性疾患の追跡と緩和に向けた大きな一歩である。またキンサは1カ月前に「非定型疾患レベル」と呼ばれるヘルスウェザーマップ機能を有効にした。これは米国における新型コロナウイルスの感染と、社会的距離戦略などの主な緩和戦略の効果を解明する重要な先行指標となるだろう。

「リアルタイムの病気の兆候を集め、そこから予想値を取り除く」とシン氏は新しいビューの機能について説明した。「そうすると、非定型疾患が残る。つまり、通常の風邪やインフルエンザの時期からは予想されない発熱者のクラスターが残る。それは新型コロナウイルスと推定できる。新型コロナウイルスだと断言はできないが、普通ではないアウトブレイクであるとは言える。完全に予期されなかった菌株の変異型インフルエンザの可能性もある。また別の何かかもしれないが、少なくともその一部はほぼ間違いなく新型コロナウイルスだろう」。

「非定型疾患」ビュー

キンサの米国ヘルスウェザーマップ「非定型疾患」ビュー。赤色は、発熱で示される、予測レベルよりも高い疾患を示す

発熱者報告件数

グラフは、キンサの正確な季節性インフルエンザ予測モデルに基づき、各地域の予測数(青色表示)に対する、実際の発熱者報告件数を示す

上記の例で、シン氏は発熱者の急上昇は、推奨される距離戦略のガイダンスを無視するマイアミ市民と観光客の報告と一致していることを指摘した。ただしそのエリアでは、ビーチの閉鎖やその他の隔離措置などより厳格な措置が講じられた後に急下降がみられた。シン氏は住民が社会的距離戦略を無視しているエリアには急上昇がみられ、ロックダウンやその他の措置が講じられると、その5日以内に曲線が下に向くと言及した。

キンサのデータはリアルタイムというメリットと、ユーザーによって常に更新されるというメリットがある。これは、社会的距離戦略や隔離戦略のより即効的な効果を示すという点では、増加する新型コロナウイルスの検査結果数といった他の指標よりも時間的な利点がある。こうした戦略について起こった批判の1つは、感染確認例が増加の一途をたどっていることだが、専門家は社会的距離戦略がプラスの影響を及ぼしていても、検査の利用可能性が広がると、地域に新しい感染例が増えると予測している。

シン氏が指摘するように、キンサのデータは厳密には発熱範囲の体温を示すものであり、確認された新型コロナウイルスの症例を示すものではない。しかし発熱は新型コロナウイルスの症状がある患者の重要な初期症状であり、キンサが現在行っている風邪とインフルエンザに関連する発熱患者数の予測では、現在の状況は、少なくともかなりの確率で新型コロナウイルスの感染が拡大していることを示している。

アウトブレイクの追跡に位置データを使用することに尻込みする者もいるが、シン氏は地理的な座標と体温のみに関心があると言及。これらのデータを個人を特定する情報に結び付けることはないため、完全に匿名による集計プロジェクトとなる。

関連記事:米政府はハイテク企業と協議し新型コロナとの戦いに位置情報を活す作戦を練る

シン氏は「地理的信号をリバースエンジニアリングして個人を特定することはできない。不可能だ」と話してくれた。「これは個人のプライバシーを保護し、社会や地域が必要とするデータを公表する正しい方法だ」と言う。

非定型疾患を追跡する目的で、キンサは現在利用されている標準疾患マップと同等にまで精度を上げることはできない。そうするにはより高度な精巧性が必要とされる。しかし同社は、さらに多くの体温計を市場に出すことで、データセットの拡大に努めている。キンサのハードウェアは多くの健康関連のデバイス同様、現在いたるところで在庫切れとなっているが、シン氏は部品コストの全体的な値上がりにも関わらず、サプライヤーからの部品調達を進めていることに言及した。またシン氏は、他のスマート体温計メーカーとも協力したいと考えており、同社モデルにデータを入力するか、キンサ独自のアプリをワイヤレス体温計ハードウェア用の標準接続インターフェースを使ったBluetooth体温計と互換性を持たせることも検討している。

現在キンサでは、非定型疾患ビューを進化させ、疾患レベルがどの程度の速さで減少しているか、また感染の連鎖を効果的に断ち切るにはどの程度の速さで減少する必要があるかを視覚的に示すことで、自らの選択や行動が与える影響について、一般の人々にさらに情報を提供していくことに取り組んでいる。特に毎日公表される感染者数が切迫した数値になる中で、保健機関、研究者、医療専門家は一様に奨励していることだが、外出を控え、他者との距離を保つという勧告は我々全員にとって課題となっている。キンサの追跡機能は希望の光を与え、各個人の貢献が重要であるということを明確に示してくれるだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

パーキンソン病治療研究のAspen Neuroscienceが75億円調達し臨床試験へ

自らの名前を冠したスクリップス研究所ローリング・ラボの創設者、Jeanne Loring(ジーン・ローリング)博士は2012年以来、パーキンソン病の治療に多能性幹細胞をいかに活用するかを検討してきた。

そして8年たった今、ローリング博士が研究内容を実用化するために立ち上げた会社Aspen Neuroscience(アスペン・ニューロサイエンス)が7000万ドル(約75億円)の資金を調達し、臨床試験に着手する。

おおよそ6万人の米国人がパーキンソン病と診断されている。この病気は運動機能を司る脳の一部を破壊する。ドーパミン分泌に関連する脳内の特殊な神経細胞が減少し、その結果、運動機能に障害が出る。ドーパミンは意欲や動きを脳内でコントロールする神経伝達物質だ。

Aspenの実験治療は、すでにパーキンソン病を抱える患者から皮膚細胞を取り出し、それらを山中伸弥氏やJohn Gurdon(ジョン・ガードン)氏が2012年にノーベル医学生理学賞を受賞したテクニック使って多能性幹細胞に変える。

ローリング博士やAspenのCEOであるHoward Federoff(ホワード・フェデロフ)博士が8年をへて実用化しようとしている研究は山中氏の発見が発端となっている。

パーキンソン病の他の細胞移植治療は壁にぶつかっていた。というのも、患者の体が異質の神経細胞に拒絶反応を示すからだ。これは臓器移植でたまにうまくいかないことがあるのと同じで、移植を受ける側の体が異質の細胞を拒否するために起こる。

Aspenの技術は、治療の元となる多能性幹細胞をつくるのに患者自身の細胞を使う。パーキンソン病と診断された患者は生体組織検査に同意して細胞を取り出してもらい、細胞は培養される。その後細胞は、細胞の構造を記憶している不活性ウイルスRNAを使うことで多能性幹細胞に変わる。

多能性幹細胞はさらに神経細胞に変わり、その後患者に移植される。パーキンソン病で破壊された神経細胞に取って代えるためだ。

フェデロフ博士とローリング博士は旧知の中で、カリフォルニア大学アーバイン校副学長を務めていたフェデロフ博士はローリング博士と彼女のチームが取り組んでいる内容を知って、副学長を辞めてAspenにCEOとして加わった。

フェデロフ博士は以前、パーキンソン病治療に取り組む企業のMedGenesis Therapeutixを立ち上げている。「我々がパーキンソン病で行うことの大半や現存の遺伝子治療は病気を安定させる。線維芽細胞は時計の針を戻すのに役立つ」とフェデロフ博士は話す。

鍵となるのは、自家製細胞の使用だ。細胞の採取と移植を同じ人に行う。

Aspenの新しいアプローチは長年ヘルスケアに投資してきたOrbiMedやARCH Venture Partners、Frazier Healthcare Partners、Domain Associates、Section 32、そして前Y Combinator会長Sam Altman(サム・オルトマン)氏からの支援を引き付けるのに十分なものだった。

新たな資金を得て、Aspenは役員会の増強を図った。Gossamer Bio創業者のFaheem Hasnain(ファーム・ハスナイン)氏がAspenの会長職に就き、ARCH VenturesのベンチャーパートナーTom Daniel(トム・ダニエル)氏とOrbiMedのパートナーPeter Thompson(ピーター・トンプソン)も役員会に加わった。

Aspenの初のプロダクトは現在、パーキンソン病の散発的治療を目的とする治験研究が行われている、と同社は述べた。2つめのプロダクトは、遺伝子修正とパーキンソン病の遺伝子の形を扱う神経細胞セラピーを活用している。

同社によると、今回調達した資金で残っていた研究と、主要プロダクト関連研究のFDAへの提出の費用を賄うことができる。加えて、臨床試験第1段階でのデータ収集と第2段階無作為研究にも使われる。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

スタートアップ製ウェアラブルで新型コロナによる下気道感染症を早期発見する研究

現在の新型コロナウイルス(COVID-19)による危機的状況は、たった1つの試みや対処策で完全に「解決」できるという見込みはほとんどない。そこで、スタートアップのWHOOP(フープ)のフィットネスと健康管理のためのリストバンドなどを対象にした、新しい研究が重要性を増してくる。オーストラリアのセントラル・クイーンズランド大学が主導し、クリーブランド・クリニックが協力する研究では、新型コロナウイルスに感染したと自己判断している数百人のボランティアにWHOOPを装着してもらい、収集したデータから各自の呼吸活動の変化を継続的に監察する計画を立てている。

この研究で使用するデータは、WHOOP Strap 3.0という機器から回収される。このリストバンドには、装着した人の睡眠中の呼吸数から睡眠の質を数値化して示す機能があり、最近のアリゾナ大学の外部研究により、その呼吸数の測定値の正確性が認められている。その研究で、侵襲的手段を除いてはもっとも正確に呼吸数が測れる装置であることが示されたため、今回の研究に携わる人たちは、他の方法によって症状が検知される以前に新型コロナウイルス患者の呼吸活動の異常を知らせる早期警報装置として有効ではないかとの仮説を立てたのだ。

WHOOPは、彼らのハードウェアが報告する呼吸数は、正しいと認められた個々の基準値から外れることがめったにないと話している。そのため、基準値から逸脱するとしたら、極端に気温が高くなったり酸素濃度が変化するといった環境的な原因か、下気道感染症などによる身体的な異常しか考えられない。

新型コロナウイルスは、まさに下気道感染症だ。上気道感染症であるインフルエンザや風邪とは違う。つまり、(比較的簡単に解消できる)環境的原因では説明がつかない下気道の問題による呼吸数の変化と新型コロナウイルスの事例との間には、強力な相互関係があると言える。WHOOPのウェアラブルは数値の偏りを機能不全の兆候として検出するため、本人が呼吸の異常を自覚する前に、基準値と呼吸数との乖離から体の変化を知ることができる。

この研究は、現時点ではまだ仮設の段階でありデータによる裏付けが必要だ。研究チームは、それには6週間ほどかかると話しているが、その調査を開始するアプリには、すでに「新型コロナウイルスに感染したと自己申告した最初の数百人」が集まっているという。目標は、陽性と診断された500人を参加させることだ。またこの他にも、健康や運動をモニターするウェアラブルを新型コロナウイルスの早期発見システムにできないかを探る研究がいくつか進められている。そのひとつに、カリフォルニア大学サンフランシスコ校とOura Ring(オーラ・リング)の共同研究がある。

以前のパンデミックと違い、この新型コロナウイルスの場合は、私たちがデータドリブンのアプローチで問題を解決する方法に慣れてきた時期に発生した。また、自分で数値を測定できる健康器具も数多く普及している。それらが、感染拡大の状況をより正確に評価するための手段となり、ウイルスが人々の間でどのように広がり、あるいは終息していくのか、その傾向を教えてくれるようになるだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

感染に導く新型コロナのタンパク質をモデル化、免疫療法のImmunityBioとMicrosoft Azureが協力

大量のグラフィクス処理能力を結合する取り組みが、現在のパンデミックの背後にある新型コロナウイルス(COVID-19)の治療法や治療薬の開発に取り組んでいる研究者に鍵となる力を与えるかもしれない。

免疫療法のスタートアップであるImmunityBioが、Microsoftと協力し、合計24ペタフロップのGPUによるコンピューティングパワーを使って、新型コロナウイルの原因であるSARS-CoV-2ウイルスを人間の細胞に入らせる、いわゆる「突起タンパク質」(スパイクプロテイン、Spike Protein)の極めて詳細なモデルを作ろうとしている。

この新たなパートナーシップには、スパイクプロテインのモデルを、従来のように数か月ではなくわずか数日で作れるようになる、という意味がある。この時間節約によりモデルが、ワクチンや治療薬を開発している研究者や科学者の仮想的な手に早く入るようになり、そして彼らは自分たちの仕事を、人間のACE-2プロテインのレセプターにくっつくことを彼らが防ごうとしているまさにそのプロテインの、詳細な複製を作るところまで前進させることができる。ウイルスの感染とは、まさにスパイクプロテインのその働きのことだからである。

科学者が研究している治療法のメインは、体内のウイルスの拡散を防止または最小化して、ウイルスがそれらのプロテインにくっつくのをブロックすることだ。そしてそのためのもっとも単純な方法は、スパイクプロテインがターゲットのレセプターに接続できないようにすることだ。新型コロナウイルスから回復した患者に自然に生成される抗体は、まさにそれをやっている。現在開発中のワクチンも、同じことを先回りしてやらせようとしている。また多くの治療薬は、ウイルスが新しい細胞をつかまえて体内で自分を複製しようとする能力を、弱めようとしている。

両社のパートナーシップの具体的な中身は、Microsoft Azureのクラスターからの機械学習アプリケーションが使用する1250のNvidia V100 Tensor Core GPU群がImmunityBioの320 GPUのクラスターによる分子モデリングワークと協働するかたちになる。そのコラボレーションの結果を、COVID-19の治療や予防に取り組んでいる研究者たちに提供し、彼らの研究開発努力の迅速化と有効化を促進する。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

5分で新型コロナの検査ができるAbbot Labsの検査装置をデトロイトが米で初めて利用

米国デトロイトのMike Duggan(マイク・ダガン)市長は4月1日、CNNのWolf Blitzer(ウルフ・ブリッツァー氏)の番組で、デトロイト市はAbbott Labsの5分で結果がわかる新型コロナウイルス(COVID-19)検査装置を使用する最初の都市になると発表した。市長によるとその装置は、ファーストレスポンダー(広義の救急対応要員)が利用する。目標は、自己隔離中でまだ検査で陽性ではないファーストレスポンダーを検査することだ。

デトロイト市はAbbott Labsの検査装置を今日すなわち4月1日に受け取った。24時間以内に使用可能になる、と市長は言っている。

このAbbottのシステムには、米食品医薬品局(FDA)の緊急時使用免除が下りている。それは小さな台所用品ぐらいのサイズの検査装置で、小型で結果が早い点ではほかの方法より有利だ。

デトロイト市は新型コロナウイルスの被害が特にひどい。最近の数字では、デトロイト周辺の郡がミシガン州の7615名のコロナウイルス患者の81%を占めている。2500名強の警官の20%以上が、新型コロナウイルスの検疫を受けている。デトロイトの患者数がとても多いため、市長は行政の正規の調達ルート以外から誰よりも真っ先に検査装置を入手した。

The Washington Post紙によると、ダガン市長はAbbot Labsの会長で前CEOのMiles White(マイルス・ホワイト)氏の携帯電話の番号を入手して、米国時間3月29日の朝に彼を起こし、検査装置の提供を懇願したという。この早朝の電話によって市は、5台のマシンの入手と5000件の検査を可能にした。

本日のAbbot Labsのツイートによると、すでに同社の検査装置のある地域における緊急看護活動の一環として、システムを新型コロナウイルス向けに利用できるようにしていく。同社によると同社の製品はすでに米国において、最も多く利用されているポイントオブケア分子診断装置(現場で用いる分子生物学的診断装置)だ。そしてそれは、医師のオフィスや、緊急ケアクリニック、救急救命室などの医療施設で広く使われている。

Abbottの予測では、4月には500万件の検査を作り出せる。それは新しい高速検査と、3月18日にFDAの緊急時認可が下りた従来的な検査機関による高速検査を合わせた数字だ。

新型コロナウイルス 関連アップデート
[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Cue Healthが現場で使用する携帯型新型コロナ検査器の開発で米政府と契約

バイオテックのスタートアップCue Healthが、米保健福祉省(U.S. Department of Health and Human Services)の生物医学先端研究開発局(Biomedical Advanced Research and Development Authority, BARDA)と1300万ドル(約14億円)の契約を結んだ。この契約金は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を起こしている新型コロナウイルスSARS-CoV-2の存在を検出する、片手で持てる分子検査器の開発と迅速化に使用される。

Cueは2014年に、家庭でも検査などができるインターネットに接続された超小型実験室(ミニラボ)で起業し、これまで750万ドル(約8億円)を調達している。同社が現在開発しているプロダクトは、カートリッジのような検査キットとインターネットに接続されたミニラボデバイスを結びつけて、結果をパーソナライズされたアプリベースの健康ダッシュボードに送信する。

同社は2018年にBARDAと3000万ドル(約32億円)の契約を結んでおり、インフルエンザと多重呼吸器病原体の現場および家庭用簡易検査器の開発と検証を任されていた。この既存の関係や作業は新型検査器の開発に向けた努力を早急に始めるのに役立つだろう、と同社は言っている。

CEOのAyub Khattak(アユブ・カタック)氏は、声明で「過去2年間、家庭や治療現場でインフルエンザの分子検査を20分でできる検査器をBARDAと共同開発してきた。我々のインターネットに接続するプラットフォームは、SARS-CoV-2ウイルスの検査に関しても重要なツールとして役に立つだろう」と述べている。

同社はまた同年のシリーズBで4500万ドル(約48億円)を調達し、初めてのFDA認可の臨床製品を開発する資金にした。それらは同社にとって初めての消費者向け診断ツールの評価に使われる製品でもあった。

Cueが提案している検査ソリューションは、綿棒で採取した鼻水を検体として、25分間以内に結果が出る。検体を検査専門機関などへ送らなくても治療の現場で検査することができる。

FDAの緊急時使用認可(Emergency Use Authorization)で認められた、現場使用型高速検査器はCueの製品だけではない。利用可能になる具体的なスケジュールはないが、検査器が足りない現状では、効果がある製品がなるべく多くあった方がよい。このCueの仕事は、グローバルな危機や未来のパンデミックで役に立つ、長期的な意義を持つだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

スタートアップのグループが新型コロナと戦う医療従事者にフラットパックの防護ボックスを提供

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対処する医療機関を支援できないかと、スタートアップ企業や起業家たちがいろいろな取り組みをしている。その中に、個人用防護具の需要に応えるCOVIDボックスプロジェクトがある。トロントのボランティアが立ち上げた活動で、スタートアップの創設者やその従業員、さらに医師や医療の専門家も参加している。

このグループが作っている新型コロナウイルス感染症患者の挿管に使う箱は、ポリカーボネート製で、輸送しやすいようにフラットパックになる(平らに折り畳める)。受け取った先で即座に組み立てができ、医療機関などの医師が患者に挿管するときに使用できる。挿管とは、患者の気管にプラスティック製の管を挿入して気道を確保することをいう。特人工呼吸器を使わなければならない人には欠かせない処置だ。新型コロナウイルス感染症が重症化すると、通常は人工呼吸器による治療が必要となる。

挿管ボックスは、医療従事者を守るもう1つの防護層になる。透明プラスティックが使われているので、処置に支障はない。デザインは世界中の新型コロナウイルス感染症患者の挿管をできる限り医療従事者の安全を守りながら行うというグローバルな課題に対処するために、台湾の賴賢勇(ライ・シェンヤン)医師が考案しオープンソース化したものをベースにしている。

COVIDボックスプロジェクトでは、必要な材料がある場合に自作できる手順も公開しているが、もっと大量に配布できるように彼らは大量生産の道を探っている。まずはカナダの病院から開始して、全世界の医療機関の需要にも応じていく予定だ。Taplytics(タプリティクス)の共同創設者でCTOでもあるプロジェクトの共同創始者のJonathan Norris(ジョナサン・ノリス)氏は、チームは1週間かけてプロトタイプの作ったと話している。

「先週の初めに、Taplyticsの財務責任者Gloria Cheung(グロリア・チャン)が私たちのところへやって来て、新型コロナウイルス感染症の患者に挿管するときに医療従事者を守るための簡単なプラスティックの箱を医師たちが欲しがっていると教えてくれました」と彼はメッセージで話してくれた。「私たちは医師グループと、Taplyticsのエンジニアたち、そしてFIRSTロボティクスプログラムで指導をしてくれた私の知人たちとを引き合わせ、その目的に適ったフラットパックにできる箱のデザインを行い、いくつものプロトタイプを作ることができました。私たちはEventscape(イベントスケープ)と協力して、急いでプロトタイプを作り、最終バージョンを仕上げ、昨日、トリリアム・ヘルス・ネットワークでの使用許可をもらったところです」

グループでは、大量生産のための寄付製造を手伝ってくれる仲間を募っている。特にCNCルーターを持っているところが望ましい。むしろ、基本的にCNCルーターさえあれば作ることができるものだ。また、1/4インチ(6ミリ)厚ポリカーボネート板の提供者も探している。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

J&Jが新型コロナのワクチン開発基金に米政府機関と共同で約1070億円出資

製薬大手のJohnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)は30日、米国保健・福祉部門の生物医学先端研究開発局(BARDA)と提携して新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンと抗ウイルス治療研究開発に10億ドル(約1070億円)超を拠出すると発表した。

この提携は、BARDAとJ&JのJanssen Pharmaceutical (ヤンセンファーマ)の部門がすでに結んでいる合意を拡大させたものだ。

合意では、同社はワクチン10億人分超を提供することを目標としている。遅くとも2020年9月までにワクチンの臨床試験を行う予定で、初回出荷分のワクチンは2021年初めまでに緊急使用目的で提供される見込みとしている。

BARDAのJ&Jとの提携は、現在行われているワクチンの開発に加え、可能性のある抗ウイルス治療の研究・開発も含んでいる。これらの取り組みの中には、ベルギーの科学機関Rega Institute for Medical Researchと行っている開発もある。

J&Jはまた、グローバルの製造能力を拡大するとも述べた。追加の生産能力により、緊急パンデミック使用のための収益目的ではない安価なワクチンを一般に提供することが可能になる、と同社は説明している。

ハーバード大学医学部附属病院のひとつベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センターのチームとの協業でJanssen Pharmaceuticalは1月に可能性のあるワクチン候補の研究を始めた。そうした候補はいくつかの学術機関でのテストを経て主要な新型コロナウイルスのワクチン候補となり、またこれとは別に2つのバックアップもあるとのことだ。

先週、 ワクチンに取り組んでいる別の製薬会社であるModerna Health(モデルナ・ヘルス)は、早ければ今秋にも、ヘルスケアワーカー向けに実験治療を行うことができるかもしれないと明らかにした。

Modernaのワクチンは、この病気の予防のために少量の新型コロナウイルスそのものではなくメッセンジャーRNAを使っている。mRNAの使用は予防接種を受ける人を病気にさらさないということであり、病気にかかるリスクはない。

Modernaは3月23日にワシントン州で行われた第1段階の臨床試験の一環として、ボランティア参加者にワクチンを提供した。

画像クレジット:zhangshuang / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

フォードとGE Healthcareが小さな企業が設計した人工呼吸器を7月までに5万台生産

Ford(フォード)とGE Healthcareが、Airon Corpの人工呼吸器の設計をライセンスを取得して、2020年7月までにミシガン州の工場で5万台生産する。それは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の患者に必要不可欠な医療機器を提供する同社の幅広い取り組みの一環だ。

フォードはまず、エンジニアのチームをAironのフロリダの工場に送って、人工呼吸器の増産を手伝う。現状ではその工場でAiron Model Aの人工呼吸器を1日に3台しか作っていない。フォードはまた、ミシガン州イプシランティの部品工場で4月20日より、Airon Model A-E人工呼吸器の量産を開始する。その工場では全米自動車労組の500名の従業員がボランティアで働き、その給与をフォードが払う。フォードは自動車の生産をパンデミックの間中断する。

米国時間3月30日のフォードの発表によると、同社はAironの人工呼吸器を4月中に1500台、5月には1万2000台、7月までには計5万台を生産する。月産能力は最終的に3万台にまで拡大する。

フォードとGE Healthcareはまた、GE Healthcareが設計した簡易人工呼吸器を量産にも取り組んでいる。

3月30日に行われた以上の発表は、自動車メーカーと医療機器メーカーの協力により新型コロナウイルス治療のための人工呼吸器不足を緩和しようとする最新の取り組みとなる。新型コロナウイルスは肺を侵して急性呼吸促迫症候群と肺炎をもたらす。まだ臨床的に実証された治療法がないので、患者の呼吸を助け病気と戦うためには人工呼吸器に頼るしかない。The New York Timesの記事によると、米国には約16万台の人工呼吸器があり、他には国家戦略備品(National Strategic Supply)として1万2700台がある。

GMは先週、インディアナ州ココモのエンジン工場で1000人のワーカーによりVentec Life Systemsの人工呼吸器の生産を開始すると発表した。生産開始は7〜14日後で、4月中にはFDA(米国食品医薬品局)が認可した人工呼吸器を出荷される計画だ。Ventecはまた、ワシントン州ボセルの工場で増産に努めている。

フォードとGE Healthcareの提携により、Airon Corpにも注目が集まっている。小さく非上場の同社は、ハイテク空気圧式ライフサポート製品を専門にしている。GE Healthcareがフォードに導入したAiron Model A-E人工呼吸器は、同社によると気圧で動作し電気を使わない。Aironはこの人工呼吸器を2004年から製造している。

Aironの設計が選ばれたのは、シンプルな設計のためフォードが迅速に生産規模を拡大できると想定されたためだ。FDAが認可し、医師も認めるその設計は、呼吸不全や呼吸困難になった多くの新型コロナウイルス患者のニーズに応えるとGE Healthcareの副社長兼最高品質責任のTom Westrick(トム・ウェストリック)氏はいう。

今回の提携では、フォードは製造資源を提供し、GE HealthcareはAironから人工呼吸器の設計をライセンス供与し、臨床における専門的な知識を提供する。

画像クレジット: Ford

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Medtronicは定評のあるポータブル人工呼吸器の完全な設計仕様とコードを無料公開

医療および生物医学工学系企業のMedtronic(メドトロニック)が、話題になっている。それというのもTesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOが、新型コロナウイルス(COVID-19)危機に対処するために人工呼吸器を生産したいと同社に相談を持ちかけたからだ。3月30日、Medtronicは、それよりもずっとインパクトのある取り組みを発表した。同社はPuritan Bennett(PB) 560ポータブル人工呼吸器の完全な設計仕様、製造マニュアル、設計資料そして将来的にソフトウェアのコードも一般公開する。

PB560にはいろいろな利点があるが、1つは比較的コンパクトで軽量なため、簡単に持ち運びができて、いろいろな医療機関や医療現場に設置して使えることだ。さらにこの機種は2010年に発売されているため10年間、安全に患者の治療を行ってきた医療機器としての実績もある。

現在、人工呼吸器の製造や、Dyson(ダイソン)のような畑違いの製造業者にも作ることができる新しい人工呼吸器の開発などのさまざまな取り組みが行われており、より多くの患者に行き渡るように、既存のハードウェアに改良を加えようとする企業もある。だがMedtronicは、世界中の製造業者が新たな生産ラインを設備できるように、費用も手数料も取らずにすべてを無料公開するという方法をとった。

それでも、現在の生産ラインを作り変えて別のものを製造するのは、どのような設計仕様を手に入れたそしても、現実には大変な仕事になる。だがMedtronicの取り組みは、今何が作れるかを模索している人たちに必要なリソースを与えることを意図している。それが、新しい画期的なアイデアの青写真になるからだ。製造業者は、Medtronicの実績ある設計を見ることで、自分たちでも比較的早期に製造可能なそれと同じ、または近い性能を有する機器を開発できるかも知れない。

Medtronicではその設計は、短期間で製造に入れて、それぞれの状況に適した設計を開発しようと試みている「発明家、スタートアップ、学術機関」に特に適していると話している。

「私たちはPB560の設計仕様を公開することで、業界の壁を越えて参加を望む企業が、早急に人工呼吸器を製造できる方法を考え、新型コロナウイルスと戦う医師と患者の役に立てるように手助けします」と、MedtronicのMinimally Invasive Therapies Group(低侵襲性治療グループ)対外コミュニケーション責任者John Jordan(ジョン・ジョーダン)氏は言う。

その一方でMedtronicは、PB980やPB840などのより高度な人工呼吸器の製造を続けるが、それらはさまざまな専門メーカーから集めた「1500点以上の部品」が必要で、「専門性の高い熟練した人材」と「相互接続されたグローバルなサプライチェーン」に依存しているためだと彼は話す。PB560でも、ある程度まで同じことがいえるだろうが、小型でシンプルなデザインのために、医療分野に初めて参入し、ほとんどあるいはまったく経験を持たずに人工呼吸器の製造に舵を切ろうと考える企業には最適の候補となる。

注意すべきは、Medtronicは厳密にはPB560の設計仕様をオープンソース化するわけではないということだ。同社は、新型コロナウイルスの世界的パンデミックに対処する場合に限って、特別な「パーミッシブ・ライセンス」を発行する。そして、ライセンスが失効するのは、WHOが「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の公式な終息宣言を行ったとき、または2024年10月1日のいずれか早い時点となる。

限られた期間であれ、Medtronicのような営利目的の企業が、独自開発したコード技術を一般公開するところまで考えるというのは、新型コロナウイルス危機がいまだ拡大傾向にあり、深刻化を増している証ともいえる。

PB560の設計仕様を見て、それを元に独自の機器を製造したいと考えるスタートアップや製造業者の皆さんは、こちらでライセンスの内容に同意して登録すれば、ファイルにアクセスできるようになる。

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

Alphabet傘下のVerilyが新型コロナ検査ツールキットを公開

Alphabet(アルファベット)傘下の医療科学会社であるVerily(ヴェリリー)の新型コロナウイルス検査プログラムは、当初トランプ大統領の誤解を招く発言で水を差されたが、このほどVerilyはカリフォルニア州におけるコミュニティーベースの新型コロナウイルス検査プロジェクトを設立、ドライブスルー検査場を展開して米国時間3月25日には1200件ほどだった検査件数が、3月28日には3700件を超えた。

Verilyのチームは最新のブログ記事に成果を報告しており、CNBCは先週の報道で、同社がGoogleを含むAlphabet傘下企業から1000人のボランティア協力を得て検査能力を高め、この検査サイトが新たなレベルに達したことを伝えた。現在カリフォルニア州全体で計4カ所の検査施設を運営中であり、これらはわずか2週間で設立された。

これは決して長くはない時間に成し遂げられた大きな結果であり、Verilyはこの実験で得られた成果と学んだ教訓を広めていきたいと考えている。同社はガイドラインと資料を整理して、コミュニティーベースの検査プログラムを実施したい人(認定された検査機関、検査材料、医療専門家が揃っていることが条件)が誰でも利用できるようにこちらで公開している

提供されたガイド資料には、ドライブスルー検査プロセスに関わる全員のワークフローや必要な個人防護具の種類、現地スタッフの調整、派遣方法などさまざまなドキュメントがある。ダウンロードしてプリントできる検査場の掲示物も一式用意されている。

このガイド資料はVerilyのProject Baseline(プロジェクト・ベースライン)チームがカリフォルニア州公衆衛生局を始めとする州の管理・規制機関と協同で作成したものであり、スタンフォード大学医学部の指導も受けている。総合的にこのガイドは、Verilyの実験結果を自社だけでは実現できなかったスケールで広めることを目的にしている。

しかしVerilyは、自社の検査施設の拡大も目指していることは間違いなく、新たな場所にも開設しようとしている。このガイドは同社の経験を他社が最大限に活用するためのものだが、再現するためには、移動式新型コロナウイルス検査の最新知識をもつチームが情報を共有したとしても、数多くの専門知識や資源が必要だ。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

新型コロナ治療開発にも取り組む細胞・遺伝子治療のElevateBioが約183億円調達

見通せない経済状況、そして世界中で新型コロナウイルス感染拡大が続く中で、今は資金調達を行うベストな環境ではないが、一部の企業は巨額調達のクローズを発表している。その一例が、ケンブリッジ拠点のElevateBio(エレベートバイオ)だ。同社は30日、1億7000万ドル(約183億円)のシリーズBを発表した。このラウンドには新規投資家としてThe Invus Group、Surveyor Capital、EDBI、Vertex Venturesが、既存投資家としてF2 Ventures、MPM Capital、EcoR1 Capital、Redmile Group、Samsara BioCapitalが参加した。

ElevateBioは1年弱前に一般向けのサービスを正式に立ち上げた。同社は新しいタイプの細胞・遺伝子治療開発を専門としており、開発と製造それぞれを専門とする新会社を立ち上げて運営している。今回のラウンドで、ElevateBioがこれまでに調達した額は3億ドル(約323億円)超となった。同社は2019年、スイス投資銀行UBSのOncology Impact Fundがリードした1億5000万ドル(約162億円)のシリーズAラウンドを発表した。

ElevateBioは動きを加速させている。R&Dにフォーカスするためにマサチューセッツ州に建設中の広さ14万平方フィート(約1万3000平方メートル)の施設は完成間近だ。同社はまた、特に幹細胞移植に伴うウイルス抑制のためのT細胞免疫治療に取り組むAlloVirという会社も立ち上げた。この治療は臨床試験の後期段階にある。そしてElevateBioはHighPassBioという会社も立ち上げた。HighPassBioもまたT細胞治療を使って幹細胞関連の病気の治療をサポートすることを目的としている。こちらは移植後の白血病再発に主眼を置いている。

ご予想の通り、ElevateBioはCOVID-19の影響を抑制するための取り組みも行っている。特にAlloVirは、免疫システムが脆弱になりCOVID-19によってリスクが高まっている状態の患者を救うのに役立つ一種のT細胞治療の開発に取り組むために 、ベイラー医科大学との既存の研究提携を拡大させている。

新型コロナウイルス 関連アップデート

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

言葉もわからない旅先での体調不良に困る旅行者と地元医師をつなぐAir Doctorが約8.4億円を調達

旅行者と旅先の医師をつなぐ、ヘルステックスタートアップのAir Doctor(エア・ドクター)が、シリーズAで780万ドル(約8億4000万円)を調達した。ラウンドはKamet Ventures(AXAが支援するベンチャービルダー)と、The Phoenix Insurance Companyが主導した。

2016年に設立されたAir Doctorは、海外で体調を崩し緊急ではないアドバイスや処置が必要な旅行者の力になることを目的とするスタートアップだ。同社は旅行者が旅行保険または福利厚生制度などを介してアクセスできる、ローカルな民間医師のネットワークを作り上げた。このプラットフォームは5大陸の42カ国で利用することができ、場所、言語、専門分野、および費用で検索できる。

「Air Doctorは創業者チーム自身の旅の経験から生まれました。外国で病気になって、誰に連絡すべきなのか、どうすれば必要な対応を受けることができるのかがわからず、恐ろしい気持ちになったからです」と語るのはAir DoctorのCEOで共同創業者のJenny Cohen Derfler(ジェニー・コーエン・ダーフラー)氏だ。

「製品開発責任者のYam Derfler(ヤム・ダーフラー)は、南アメリカを8カ月間旅行した際に、このアイデアを思い付きました。別々のタイミングで病気になった彼と彼の友人は、英語を理解する医師を見つけることが多く、まったくお手上げだと感じたのです」。

Air Doctorが当初、旅行中の患者に焦点を当てていたが、ダーフラー氏はすぐにこれは、旅行者一般を取り巻く医療エコシステム全体に影響を与えるものであることに気がついたと語る。

「地元の医師たちには、まったく新しい個人顧客のグループにアクセスするための信頼できる方法がありませんし、保険会社は面倒で問題のある医療サービスに莫大なお金を浪費していて、医療サービスに関連した顧客体験を向上させたいと思っています。そして旅行代理店は自社のパッケージに信頼できるサービスをバンドルしたいと思っているのです。すべての関係者にメリットをもたらすプラットフォームを構築する必要があることが、明らかになったのです」と彼女は言う。

Air Doctorは、医療専門家のグローバルネットワークとデジタルプラットフォームを組み合わせて、保険会社のコストを削減し、クレジットカード会社や携帯電話会社に付加価値の高いソリューションを提供することができる。ケア提供側から見た場合には、このシステムは医師の収入とデジタルでのプレゼンスを高めると同時に、海外旅行者にその母国語で「最高レベルの医療」を提供できると同社は主張している。

「私たちの目的は、世界中のすべての旅行者が、必要なときに経験豊富な地元の医師や専門家に連絡できるようにすることです。そうすることで、病院や観光客向けクリニックに行かなくても済むお手伝いができるのです」とダーフラー氏は付け加えた。

最初にAir Doctorの顧客となったのは、イスラエルの大手保険会社の1つであるThe Phoenixだ。同社はその後、このシリーズAラウンドに参加し投資を行った。The Phenixは、Air Doctorを自社の顧客に紹介することにより、請求コストを削減して損失率を削減することができた。これは救急サービスではなく外来診療所に患者を誘導することで支払いを削減できたからだ。

「私たちの最大のセールスポイントは、コントロールです」とAir DoctorのCEOは強調する。「旅行中に病気になったときには、自分の状況をコントロールできていると感じたいものです。私たちのオンラインプラットフォームは、患者が自分のニーズと好みに最も適した医師を選択できるように、幅広く地元の開業医に関する豊富な情報を提供することによって、患者が解決策を迅速に見つけるのに役立ちます。最も重要なのは、母国語を使った医療サービスへのアクセスを支援することです。これは、自分の状況をコントロールできると感じるという点で、最も大切なことの1つです」。

今回の最新のラウンドは、Air Doctorが2018年7月に行った310万ドル(約3億3000万円)のシードラウンドに続くものだ。今回の新たな資金は、Air Doctorの医療ネットワークと研究開発能力を強化し、保険、通信、そしてクレジットカード業界を横断した国際的な事業拡大のために使用される。

原文へ

(翻訳:sako)