レストランなどの食品調理業向け在庫管理マーケットプレイスを提供するブラジルのCayena

ラテンアメリカでは、商店の品揃えは楽な仕事ではない。発注は今でも、紙の伝票や電話で行われることが多く、お店の主人が卸屋まで車を運転して品物を手に入れることもある。

Cayenaを創業したGabriel Sendacz(ガブリエル・センダツ)氏とPedro Carvalho(ペドロ・カルヴァーリョ)氏、そしてRaymond Shayo(レイモンド・シャヨ)氏は、材料の確保にテクノロジーを利用すれば、彼らの母国であるブラジルやその他の地域で、レストランやバー、ベーカリー、ホテル、そしてダークキッチンなどの食品調理調製業がもっと楽になると考えた。

「ラテンアメリカのB2Bは巨大な市場ですが、その需要と供給は細分化しています。私たちの顧客も、約90%が中小の家族経営の独立店です。供給の側も、何千もの流通業者が、それぞれいろいろな品物を扱っていますが、マーケットシェアが1%に満たないところばかりです」とシャヨ氏はいう。

対照的に米国には、SyscoやU.S. Foods、Gordon Food Serviceのような大きなフードサービス企業がそれぞれおよそ10%のマーケットシェアを握り、食品から洗剤に至るまでのあらゆるもののワンストップショップを提供している。

Cayenaの共同創業者。左からペドロ・カルヴァーリョ氏、ガブリエル・センダツ氏、レイモンド・シャヨ氏(画像クレジット:Cayena)

そこで、シャヨ氏によれば、いくつかの問題が生じる。まず、ベンダー20社ぐらいで同じ品目の価格が最大で40〜50%も違う。クレジットカードがレストランに払うために30日かかることもあるが、一方レストランは自分の原料等の注文に前金を支払うため、運転資本の問題が生じ、特にレストランは材料費が最大のコストなので資金繰りが苦しくなる。

つまり、ラテンアメリカではレストランが慢性的に経営難を抱えることになる。そこで同社はB2Bのマーケットプレイスを構築し、年商1000億ドル(約11兆5400億円)といわれるラテンアメリカの食品卸業界を狙った。それによりユーザーは原材料などを一度に複数のサプライヤーからまとめて仕入れることができ、翌日に配達してもらえる。また、後払い販売(BNPL)といった新たな金融サービスを提供することもできる。

ユーザーは必要な品目の卸価格を複数の卸店にわたって比較でき、その品目の現在の相場を知ることができる。Cayenaのアルゴリズムは、サプライヤーの在庫品目と価格、ユーザーの予算を比較対照して、ベストマッチをユーザーにアナウンスする。配達には直送方式を利用して、注文が成立したら、そのオーダーを顧客に配達するようサプライヤーに通知が届く。

このマーケットプレイスを立ち上げた2020年以降は、顧客数が1年で10倍に増え、レストランの原材料の調達が困難になるにともない1回の購入単位額は4倍になり、Cayenaでの顧客の平均購入回数は1カ月で5回になった。

この急速な成長で資金が必要になった同社は、2021年後期にPicus Capitalがリードする350万ドル(約4億円)のラウンドを調達し、それが、その前にCanaryのリードで調達した55万ドル(約6300万円)に追加されることになった。

事業は順調で9月のシードラウンドのすぐ後にCayenaはそれまでの倍に成長し、2カ月で倍増というペースが続いたため、年商1億レアル(約22億6000万円)のマイルストーンに達した。同社の現在の商圏は、サンパウロ州の50都市となる。

こうした加速度的な成長が投資家の関心を集め、同社はVine Venturesが主導し、MSA Capital、Picus Capital、Canaan Partners、Clocktower Ventures、FJ Labs、Femsa Ventures、Gilgamesh、Astella、EndeavorおよびGraoVCの参加も得て、1750万ドル(約22億2000万円)のシリーズA投資を先取りすることになった。これにより、Cayenaは総額2100万ドル(約24億2000万円)強の資金を調達したことになる。

「今のところ極めてホットな市場ですが、世界中の投資家が成長企業を探している現状ではそれは良いことです。数年前、私たちは比較の対象にもなりませんでしたが、今ではどこが新しいアプローチと戦略で成長しているのか、誰の目にも明らかです」とシャヨ氏はいう。

Cayenaのビジネスモデルでは、倉庫やトラックや流通への投資はなくテクノロジーのみであるため、資金の多くが雇用に使われる。シャヨ氏の予想では年内に社員数は倍増して60名になるという。また、プロダクトとテクノロジーにもフォーカスしており、新たな金融プロダクトを作り、サプライヤーの地理的範囲も広げたいとのこと。

また、創業者たちはラテンアメリカ全体が商機だと捉えており、トラックなど1台も所有することなく次のステップでまず1〜3年後にブラジルで最大のフードサービスサプライヤーに、その次のステップでラテンアメリカ全体への拡張を考えているという。

画像クレジット:Cayena

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中南米のeコマースアグリゲーターMeramaが創業わずか1年でユニコーンに

最近、中南米のeコマースアグリゲーターへの投資が絶好調だ。

中南米でデジタルブランドの買収、立ち上げを行っているMerama(メラマ)は、シリーズBをリードしたAdvent InternationalとSoftbankから6000万ドル(約68億円)の追加投資を受け、設立後わずか1年で評価額12億ドル(約1361億円)を達成した。そしてこのわずか1日前には、中南米eコマースアグリゲーターのQuinio(キノ)が30社を買収するために、初の資金調達で2000万ドル(約22億7000万円)を獲得した。

今回の追加投資は、9月に発表され、メキシコ・ブラジル拠点企業の評価額を8億5000万ドル(約964億円)へと押し上げた2億2500万ドル(約255億2000万円)のシリーズBラウンドに続くものだ。当時同社はこれを「中南米で実施された史上最大のシリーズBラウンド」と豪語した。

TechCrunchが初めてMeramaを紹介したのは2021年4月で、負債と株式合わせて1億6000万ドル(約181億4000万円)をシードおよびシリーズAラウンドで獲得して、eコマースアグリゲーターの世界に飛び込んだ。同社の調達総額は4億4500万ドル(約504億7000万円)で、うち3億4500万ドル(約391億2000万円)が株式、1億ドル(約113億4000万円)が負債による。

同社の共同ファウンダーは次の5人で、CEOのSujay Tyle(スジャイ・タイル)氏は、Frontier Car Groupの共同ファウンダーで元CEO。Felipe Delgado(フェリップ・デルガド)氏はBeetmann Energyの元CEO、Oliver Scialom(オリバー・シャロム)氏はPetsyの共同ファウンダーで元CEO、Renato Andrade(レナト・アンドレード)氏はMcKinseyの元アソシエートパートナー、Guilherme Nosralla(ギルハーム・ノスララ)氏はWildlife Studiosの元グロース責任者だった。

「中南米は世界最速で成長しているeコマース市場ですが、ブランドはほとんと生まれたばかりか存在しない状態です」とタイル氏はいう。「今後5年のうちに、中南米に数十億ドル(数千億円)規模のブランドが複数誕生するとMeramaは確信しています」。

現在。Meramaには180人以上の従業員がいて、メキシコ、ブラジル、チリ、コロンビア、およびペルーにわたり20のブランドを抱えている。2021年は2億5000万ドル(約283億6000万円)以上の商品を販売する見込みで「キャッシュフローは大幅な黒字」になる見込みだとタイル氏は語った。

同社の有力ブランドには、エレクトロニクス会社のRedlemon(レドルモン)、チリのベイビー用品販売会社、Bebesit(ベベシット)などがある。現在850億ドル(約9兆6417億円)の中南米eコマース市場は急成長中であり、2023年には1162億ドル(約13兆1818億円)に達すると予測されている。

デジタルブランドの買収以外に、同社は独自ブランドも立ち上げている他、ブランドが中南米全体で成長するのを手助けするオートメーションとスケーラビリティーのツールも開発している。また、ブランド管理とサプライチェーン自動化のために自社開発している基礎技術を収益化する計画もある。

最新の調達資金は、同社のアルゼンチン、米国への進出を可能にするものだ。Meramaは、Mandaeの元CTO、Danilo Ferrira(ダニロ・フェレイラ)氏をCTOに、MercadoLibreの元マーケットプレイス担当ディレクター、Ignacio Nart(イグナシオ・ナート)氏をブライベート・レーベル担当上級副社長に迎えて幹部チームを強化した。

全体的に見てeコマースアグリゲーターは、過去数年の間に世界中で勢いを増しており、最近では成功した企業が数十億ドルのベンチャーキャピタルマネーを獲得している。前述したQuinoに加えて、今週北京拠点のNebula Brands(ネビュラ・ブランズ)が5000万ドル(約56億7000万円)を調達した。

それ以前には、ヘルスケアブランドに特化した Gravitiq(グラビティック)の参入やHeyday(ヘイデー)の5億5500万ドル(約629億4000万円)のシリーズCがあった。アグリゲーターのビッグネームでは、Amazon(アマゾン)アグリゲーターのThrasio(スラシオ)が10月に10億ドル(約1143億1000万円)の資金調達を発表し、Perch(パーチ)は5月に7億750万ドルの巨額の資金を獲得した。

ThrasioとPerchとは異なり「中南米は成長ストーリーの舞台なので、Meramはごく少数のブランドに絞り、スケーリングと拡張に焦点を当てています」とタイル氏は説明した。ゴールは主要なeコマースカテゴリーそれぞれにカテゴリーリーダーを1つ持つことで、何百というブランドを集約することではありません」。

新たな資金は「中南米初の消費者直販ブランドのためのインキュベーター」と同社がいうMerama Labs(メラマ・ラボ)の設立にも充てられる。この社内インキュベーターは、新たなD2Cブランドをファッション、化粧品、サプリメント、飲料などの部門に創設する。これは複数のカテゴリーでデジタルD2Cブランドを育成し立ち上げるための新しいグロースチャンネルだ。

「当社はインフルエンサーと協力してブランドを作っていきます」とタイル氏は付け加えた。

画像クレジット:Merama

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(文:Christine Hall、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ラテンアメリカの「アリババ」を目指すMeru、海外から安全に商品を調達できるB2Bマーケットプレイスを構築

海外から商品を調達したり輸入したりする際には、どこかで問題が発生することがあり、企業は代金を支払った品を受け取れなかったり、あるいは何も届かないことさえある。

メキシコに拠点を置くMeru.com(メル・ドットコム)を共同設立したManuel Rodriguez Dao(マヌエル・ロドリゲス・ダオ)CEOと共同設立者のFederico Moscato(フェデリコ・モスカート)氏は、他社のために商品を調達する仕事をしていたとき、当初注文した商品を手に入れることができないなどの問題に直面し、このことを痛感した。

2020年、彼らはEduardo Mata(エドゥアルド・マータ)氏、Virgile Fiszman(ヴィルジール・フィスマン)氏、Daniel Ferreyra(ダニエル・フェレイラ)氏と共同で、中小企業が同じ運命を避けられるようにMeruを起ち上げた。同社は米国時間12月2日、シリーズAラウンドによる1500万ドル(約17億円)の資金調達を発表した。このラウンドは、Valor Capital(バロー・キャピタル)とEMLES Ventures(エムレス・ベンチャーズ)が共同で主導し、創業者グループによる個人投資も含まれている。これまでに同社は総額1700万ドル(約19億2500万円)を調達している。

Meruの技術には、シンプルなプロセスで、価格の非対称性なしに国内外のメーカーをサプライチェーンの他の部分と結びつけるマーケットプレイスとアプリが含まれており、まずは中国とメキシコの間で展開している。品質認証を受けた工場と直接取引していると、ロドリゲス・ダオ氏はTechCrunchに語った。

従来の調達方法では、中小企業は週に2日もの時間を費やし、最大5社の仲介業者を介して、取引しなければならなかった。しかも、平均して80%もの取引が詐欺に遭っていると、ロドリゲス・ダオ氏はいう。これに対し、Meruを利用する顧客は、数分で商品を選択して購入することができ、その際には商品を確実に、そして市場のベストプライスで受け取ることができるという保証も、同社で付けているという。

MeruはY Combinator(Yコンビネータ)の2021年冬のバッチに参加しており、今回の新たな資金調達は、最終的にはラテンアメリカのAlibaba(アリババ)になるという目標に向けて、Meruが中小企業のためのワンストップショップになることを支援すると、ロドリゲス・ダオ氏は述べている。

「私たちは中国でリモートワークを始め、グローバルな取引の中で、新興国でも同じような痛みが発生していることを知りました」と、同氏は続けた。

「私たちは、アリババのようにテクノロジーを駆使した流通によって、仕入れや調達を安全なものにしたいと考えています。そのために、サプライチェーン全体の関係者をつなぎ、彼らが割引価格を利用できるようにしています」。

Meruは開始からわずか1年で、すでに1万人以上の登録ユーザーを抱え、7つの商品カテゴリーを運営している。資金調達を支援するフィンテックのパートナーもいる。Meruがマーケットプレイスを起ち上げた2020年8月には6名だった従業員が、現在では中国とメキシコの両方で合わせて210名の従業員を擁するまでになった。

同社は今回の資金調達を、新たな業種やカテゴリーの追加、技術開発、チームの拡大に充てる予定だ。毎月の収益は40%から50%増加している。

「Meruは、ラテンアメリカの中小企業が、すべて単一のコンタクトポイントを通じて、アジアからより効率的に商品を購入できる統合的なB2Bマーケットプレイスを構築しています」と、Valor Capital GroupのマネージングパートナーであるAntoine Colaço(アントアーヌ・コラソ)氏は声明で述べている。「何千もの商品へのアクセスを提供し、すべての物流、請求、フォローアップのプロセスを管理し、金融ソリューションを組み込むことによって、Meruはラテンアメリカとアジアのグローバルなサプライチェーンのつながりを強化することに貢献するでしょう」。

画像クレジット:Meru.com

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中南米の女性にデジタル口座を提供するチャレンジャーバンクJefaが2.2億円調達

フィテックスタートアップのJefa(ヘファ)は、中南米とカリブ諸国に住む女性向けに特別にデザインされた商品を構築するため、200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達した。同社は11万5000人の女性をウェイティングリストに呼び込むことに成功し、2020年のTechCrunchのStartup Battlefieldにも参加した

Jefaの投資家には、The Venture Collective、DST Global、Foundation Capital、Amador Holdings、The Fund、FINCA Ventures、Rarebreed VC、Siesta Ventures、Springbank Collective、Bridge Partners、Hustle Fund、Foundation Capital、Latitude、J20などが含まれる。また、Daniel Bilbao(ダニエル・ビルバオ)氏、JP Duque(J・P・デュケ)氏、Ricardo Shaefar(リカルド・シェーファー)氏、Jean-Paul Orillac(ジャン-ポール・オリラック)氏、Allan Arguello(アラン・アルゲロ)氏など、複数のビジネスエンジェル投資家もラウンドに参加した。

今回の創業ラウンドに加えて、JefaはVisa(ビザ)と契約を結んだ。複数年の戦略的パートナーシップだ。JefaはVisaのリソースや製品を活用して決済製品などを作ることができるようになる。

「Visaは女性を力づけることを信じています」と、Visa中南米・カリブ地域のフィンテック・パートナーシップ担当シニアディレクターのSonia Michaca(ソニア・ミチャカ)氏は声明で述べた。「金融とデジタルインクルージョンは経済を変革します。毎日の家計支出の大半を管理する女性は、この変革の中核を担うべき存在ですが、従来の銀行では女性はサービスを十分に受けられていません。中南米・カリブ地域の女性主導のプラットフォームであり、この地域の女性の金融ニーズに明確に応えているJefaと提携できることをうれしく思います」。

Jefaのチームは、銀行があまりにも長い間、女性を軽視してきたと考えている。そもそもチャレンジャーバンクでさえ、ほとんどが男性顧客向けに設計されている。女性がチャレンジャーバンクで口座を開設できないというわけではない。しかし、女性にとって不親切な要件もある。

Jefa創業者でCEOのEmma Smith(エマ・スミス)氏は、TechCrunch Disruptに参加した際、ラテンアメリカで現在銀行口座を持っていない人の多くが女性である理由をいくつか挙げた。例えば、最低残高要件は、統計的に男性よりも収入が少ない女性にとってハードルとなっている。

Jefaが事業を開始すると、モバイルアプリから無料で銀行口座を開設できるようになる。銀行の支店に行く必要はない。数日後には、Visaデビットカードが送られてくる。サービスには貯金機能や報酬プログラムも組み込まれる。

Jefaはまずメキシコで製品を展開し、次にコロンビアと中米に広げる予定だ。一元的な銀行サービスからの脱却を試みるチャレンジャーバンクはJefaが初めてではない。例えば、子ども向け銀行(GreenlightStep)、気候変動に焦点を当てた顧客向けの銀行(Aspiration)など、専門性を持つ銀行を作ろうとしているスタートアップがいくつかある。そして今、Jefaが女性に特化した銀行を作っている。

画像クレジット:Jefa

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】中南米の食品事情パラドックス

中南米の農場や畑ではたくさんの食糧が生産されているが、それでも4700万人の人々が今も飢餓状態にある。

この地域は果実、野菜、サケ、トウモロコシ、砂糖、コーヒーなど、世界の農水産物輸出量の約4分の1を占めている。農業は中南米の生計にとってなくてはならない部門であり、GDPの平均4.7%を生み出し、地域住民の14%以上の雇用に貢献している。

しかしながら逆説的に、地域の栄養不良の人々の数は毎年増え続けており、過去5年間に約1300万人増加している。汎米保険組織(PAHO)は、2030年までに「飢餓の影響は地域住民6700万人におよび、この数値に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの波及効果は考慮されていません」と推定している。

主要な責任の一端は、食品廃棄にある。世界で生産される食品の3分の1以上が使用されずに廃棄されており、中南米・カリブ海も例外ではない。流通網が改革、強化されれば、この量の廃棄食品は世界で最大20億人に栄養分を与えるのに十分だ。

それには課題がある。中南米の栄養不良対策が成功するためには、アグリテックとフードテックの技術的ソリューションが当地から生まれる必要がある。中南米は膨大な天然資源を有しているだけでなく、中南米の人々ほぼ全員が、何らかの形で食料不安を経験している。問題を理解している人は最適な解決策を構築するのに最適な人たちだ

Nilus(ナイラス)の最高執行責任者、Ady Beitler(アディ・バイトラー)氏が雄弁に語っている。「世界には飢饉を撲滅するために必要な量以上の食糧があります。それは間違いありません。ないのは、最も必要としている人たちにその食糧を届ける流通システムです」。

幸いなこと、中南米はアグリテックやフードテックのソリューションを創り出し、農業効率を高め人々を飢饉から救う創造力の温床でもある。起業家たちは農民が自分たちの役に立つツールを利用し、食品廃棄を減らし植物由来製品を開発する手助けをする。そんなソリューションは、畑から皿まで、食糧生産システムのさまざまな部分に取り組んでいる。

食品廃棄を減らすことが期待されるイノベーションのカテゴリーの1つが、農業従事者の生産性を上げるためのツールだ。例えばブラジル、ミナスジェライス州の会社Sensix(センシックス)は、ドローンと機械学習を使って農地の肥沃度のマップを作っている。チリのスタートアップ、Ciencia Pura(シェンシア・プラ)は、自然光が得られない時、さまざまな成長段階に 合わせた植物に光を当てるソフトウェアを開発している。

コスタリカのスタートアップ、ClearLeaf(クリアリーフ)は、植物の成長を促進する天然由来の殺菌剤を開発した。そしてブラジルのスタートアップ、SensaIoTech(センサイオテック)は、監視して害虫を適時に検出・特定するための情報を収集するプラットフォームを運営している。

サプライチェーンもまた、食品廃棄を防ぎ、その結果温室効果ガス排出量を減らすための重要な位置にいる。

規格外」を理由にある地域で捨てられる食糧は、人々が飢餓に苦しむ別の地域では十分健康的で消費可能だ。アルゼンチンのスタートアップらが流通を改革しようとしているのはそれが理由だ。Nilusは、食べるのは完全に安全だが、いつもなら捨てられてしまう食糧を回収し、低所得地域に割引価格で販売している。Savetic(サベスティック)は、商品を追跡、データ分析して消費者の購買傾向を予測することでスーパーマーケットの食品廃棄を減らす。

もう1つの食品廃棄を減らすカテゴリーは、農業廃棄物の再利用だ。チリのスタートアップ、Fotortec(フォトーテック)は、農業廃棄物をキノコ類に転換して、香料やタンパク質増強剤に使用する。

そして、タンパク質と栄養分を環境に優しい形で提供する植物由来製品を作っている起業家たちもいる。メキシコシティーのPlant Squad(プラント・スクワッド)は、栄養豊富で環境に配慮した植物由来の代替タンパク質製品を開発している。ブラジル、サン・レオポルドのFaba(ファバ)は、ひよこ豆から持続的な方法でタンパク質を抽出している。

中南米の食糧システムは巨大かつ複雑なので、1日で変わることはない。しかし上に挙げたスタートアップ(他にもたくさんいる)は、集団的行動の道を開き、起業家が必要とする経済的支援を巡る認識を高めている。

アグリテックとフードテックの分野は、世界と地域の投資家やエコシステム構築者たちの関心を呼んでいる。もし起業家たちがこうした重要なエコシステム関係者からもっと支援を受けられるようになれば、とてつもない量の食糧廃棄物が減り、起業家たちは中南米に魅力的で持続可能なフードシステムを作るだろう。

編集部注:Daniel Cossío(ダニエル・コッシオ)氏はVillage Capital Latin Americaのリージョナル・ディレクターとして、地域のより公正な未来の構築に取り組んでいる。

画像クレジット:Jose Luis Raota / EyeEm / Getty Images

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(文:Daniel Cossío、翻訳:Nob Takahashi / facebook

コロンビアのクラウドキッチンFoodologyが約17億円調達、中南米全体へサービス拡大

FoodologyのCEOで共同創業者のダニエラ・イスキエルド氏と共同創業者フアン・ギレルモ・アズエロ(画像クレジット:Foodology)

Foodologyはクラウドキッチンとバーチャルレストランをベースとするレストランブランドで、2019年以降、コロンビアとメキシコで急伸している。今回新たな資金を得たことにより、ラテンアメリカ全体に拡大することを希望している。

ボゴタを拠点とする同社はこのほど、Andreessen HorowitzとBase PartnersがリードするシリーズAのラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達した。これまでの投資家であるKayyak VenturesとJaguar Ventures(今はWollef)も参加し、またInstacartの社長Nilam Ganenthiran(ニラム・ガネンティラン)氏やKavakのCEOであるCarlos Garcia(カルロス・ガルシア)氏、UaláのCEOであるPierpaolo Barbieri(ピエルパオロ・バルビエリ)氏、Burger Kingの元会長Dick Boyce(ディック・ボイス)氏、そしてMeramaのCEOであるSujay Tyle(スジェイ・タイル)氏らのエンジェルたちも投資に加わった。これでFoodologyの調達総額は2000万ドル(約22億7000万円)を超えた。

同社を創業したCEOのDaniela Izquierdo(ダニエラ・イスキエルド)氏とJuan Guillermo Azuero(フアン・ギレルモ・アズエロ)氏は、ハーバード・ビジネス・スクールのレストラン産業コースで出会った。イスキエルド氏は、元々料理が大好きだったので、それをビジネスにしたいと願った。

「リスクの多い業界で、破産や閉店が頻繁に起こります。小さな店でさえ、開店までに相当の資本が必要です。私たちはテクノロジーとデータの力をもっと効率的に利用して、来たるべきバーチャルの世界に備えたいと考えています。バーチャルレストランを、フードデリバリーが支える。これまでは、デリバリーの顧客に奉仕するために、レストランはまったく何も変化しませんでした」という。

さらにアズエロ氏は「フードデリバリーは顧客にとってまあまあの体験であり、すばらしい食体験ではありませんでした」という。食べ物のパッケージングも、あまり良いものではない。Foodologyは、それを変えようとしている。彼らが作ったモデルであれば、レストランのラテンアメリカ全域への規模拡大が短期間ででき、また顧客が喜ぶ食事を配達できる。

そのためにまずFoodologyは、ユーザーの好みに関するデータを収集する。そしてそれを近隣の食べ物の既存の選択肢と対照し、オリジナルの料理を作り、そしてデリバリーに載せる。

イスキエルド氏によると、同社のクラウドキッチンを通常は7つから10のレストランが利用し、各自がよく売れる料理を研究開発し、シェフたちのチームとともにメニューを創造する。

Foodologyのキッチンは現在、コロンビアの6都市に計20、メキシコに10あり、企業従業員は60名、キッチンの労働者は300名を超えている。コロンビアでは、毎月のオーダーが10万件で、総オーダー数は100万のマイルストーンを超えたばかりだ。イスキエルド氏の計画ではさらに6つのキッチンを開き、また今回の資金で2022年にブラジルとペルーにも進出したい。

ラテンアメリカのフードサービス業界は2020年の推計値で2640億ドル(約29兆9820億円)という規模だ。その成長に乗り遅れないためにはキッチンの数を増やすとともに、製品開発にも投資して売上を月額で50%上げたい。そのためにはメキシコでその数を増やすこと、そして新市場の開拓が重要だ。アズエロ氏によると、目標は500のキッチンをサポートすることだ。

「現在、は多くの人にバーチャルレストラン求められているが、この地域では大きなモデルがまだほとんどありません。ラテンアメリカでは私たちが、圧倒的に最大のプレイヤーなのです」とイスキエルド氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

オリンパスが米国での新たなサイバー攻撃を認める、ランサムウェア「BlackMatter」がEMEA地域のシステムを攻撃した数週間後に

日本の大手テクノロジー企業Olympus(オリンパス)は、先の週末にサイバー攻撃を受け、米国、カナダ、ラテンアメリカのITシステムを停止せざるを得なくなったことを認めた。

オリンパスはウェブサイト上の声明で「10月10日に検知されたサイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」であり「現在、この問題を解決するために最優先で取り組んでいます」と述べている。

関連記事:オリンパスがランサムウェア「BlackMatter」の攻撃を受ける

「調査と封じ込めの一環として、影響を受けたシステムを停止し、関連する外部パートナーに報告しています。現在の調査結果によると、この問題はアメリカ大陸に限定されており、他の地域への影響は確認されていません」。

「当社は、この状況について適切な第三者と協力しており、今後もお客様やビジネスパートナーに安全にサービスを提供するために必要なあらゆる手段を講じていきます。お客様やビジネスパートナーを保護し、当社への信頼を維持することは当社の最優先事項です。当社の調査は継続中であり、透明性の高い情報開示に努め、新たな情報が得られた場合には最新情報を提供していきます」。

これは、2021年9月にオリンパスが欧州・中東・アフリカのネットワークへのサイバー攻撃を受けて発表した声明とほぼ同じ内容だ。

攻撃を受けた当時、オリンパスは「サイバーセキュリティ事件の可能性を調査中」とも述べている。この事件を知る人物がTechCrunchに語ったところによると、オリンパスはランサムウェアの攻撃から回復していたという。感染したシステムに残された身代金のメモは、ランサムウェア・アズ・ア・サービス(ransomware-as-a-service)グループ「BlackMatter」にも関連していた。

Emsisoftのランサムウェア専門家で脅威アナリストであるBrett Callow(ブレットキャロウ)氏は、今回の事件が週末に発生したことを受けてギャングがランサムウェアを展開するのは休日を含むことが多いため、繰り返し攻撃を受ける可能性が高まるという。「ランサムウェアだとしても、それがまたBlackMatterであるかどうかはわかりません。また、もしランサムウェアだとしたら、それがBlackMatterであるかどうかはわかりませんが、その可能性もありますし、EMEA地域への攻撃を行った組織が、今回は別のランサムウェアを使用した可能性もあります」。

オリンパスの広報担当者であるSusan Scerbo(スーザン・セルボ)氏からは、コメントを得られていない。オリンパスのセキュリティ事件についての詳細がわかり次第、更新する。

画像クレジット:Filip Radwanski / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ラテンアメリカの卸売部門を変革するB2Bマーケットプレイス「ZAX」が約6.7億円調達

ZAXの共同設立者であるブルーノ・バラディ氏とフェルナンド・ザナッタ氏(画像クレジット:ZAX)

ラテンアメリカで小規模な販売ビジネスを維持するのには、新製品を探すための長時間バス移動や、運営資金不足、支払力不足をともなう。このような非効率性は卸売業者にも波及し、卸売業者はコストや納品期限の引き上げを余儀なくされる。

このような状況に目をつけた2度目の起業となるBruno Ballardie(ブルーノ・バラディ)氏とFernando Zanatta(フェルナンド・ザナッタ)氏は、2019年に「ZAX(ザックス)」を立ち上げ、ブラジルの売り手と買い手をつなぐ運賃・配送・決済ツールを一体化したプラットフォームを開発した。

ZAXを立ち上げる前、CEOのバラディ氏は、2018年にLema21(レマ21)と合併したメガネ型電子商取引会社eÓtica(エオジカ)の創業者だった。CTOのザナッタ氏は、顧客とグローバルな専門家をつなぐツールNetlolo(ネットロロ)の創業者で、以前はDafiti(ダフィティ)のCTOやBuscapé(バスカペ)のCOOも務めていた。

彼らは、テクノロジーとイノベーションのおかげで巨大化しつつある消費者直販市場と、それに反し同じような成長を遂げていない卸売部門を目の当たりにした。多くの人がサンパウロのような都市の中心部まで在庫を買いに行っていたが、注文を書くのに紙とペンを使い、取引にはWhatsAppを使っていたのだ。

「私たちは、人々がすばらしいビジネスを行うのを支援する大きなチャンスを見出しました。eコマースの普及率は7%しかなく、卸売部門では1%以下と、市場はかなり遅れていました。物流、決済、商品の発見など、すべての領域が未開発だったので、そのためのツールを作りました」とバラディ氏はTechCrunchに述べている。

バラディ氏によると、B2B取引でZAXが改善可能な市場は、ブラジル国内だけでも2兆4000億BRL(約49兆円)と推定されている。ZAXのプラットフォームは、当初は衣料品の卸売だったが、現在では靴、電子機器、玩具、アクセサリー、美容用品などに拡大している。購入者はプラットフォームにアクセスし、商品を選び、次に発送方法と支払い方法を選ぶことができる。

ZAXは現地時間10月5日、シリーズA資金として600万ドル(約6億6700万円)を調達した。このラウンドには、Atlantico(アトランティコ)が主導し、FJ Labs(FJラボ)、Caravela Capital(キャラベラ・キャピタル)、GFC、およびZAXの最初の2回の投資ラウンドを主導したCanary(カナリー)が参加した。今回の資金調達により、同社の資金調達総額は830万ドル(約9億2300万円)となった。

AtlanticoのマネージングパートナーであるJulio Vasconcellos(フリオ・ヴァスコンセロス)氏は「ZAXは非常に短い期間ですばらしい実行力を見せてくれました。ZAXは、 ブラジルだけでなく、ラテンアメリカ全体の売り手と買い手を支援する可能性を秘めていますし、卸売と小売はより多くのテクノロジーを利用することで大きく成長することができます」と語っている。

ZAXは、パンデミック前の100社から増加した700社以上のサプライヤーと取引しており、2020年3月以降、収益は10倍になったとバラディ氏は述べている。40人の従業員で構成されるチームを持ち、5万人以上のバイヤーがプラットフォームを利用している。

今回の資金調達により、同社はブラジルのさらに2つの地域に進出し、美容製品やアクセサリーのカテゴリーで製品ラインを増やすことができる。また、バラディ氏は、技術や商品開発のスタッフを追加で雇用したいとも考えている。

次のステップとして、ZAXは金融サービスへ注力をしており、いくつかのBNPL(後払い決済)のアイデアを試験的に実施し、顧客に資金を提供するために金融機関のパートナーを統合している。同社は現在、30日間の融資枠とPOSシステムを提供しているが、将来的にはデジタルウォレットやその他の決済ツールも提供する予定だ。

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(文:Christine Hall、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ソフトバンクグループが中南米で投資を拡大、約3290億円のファンド第2弾を発表

ソフトバンクグループは中南米への投資を拡大する。

日本の投資コングロマリットであるソフトバンクグループは9月14日、中南米のテック企業に照準を当てた2つめのプライベート投資ファンドSoftBank Latin America Fund II(ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドII)を発表した。さしあたり30億ドル(約3290億円)のファンドを新たに立ち上げる。

「ファンドIIは追加の資金調達も検討します」と同社は声明で述べている。

新たなファンドは、2019年3月に発表された50億ドル(約5480億円)のラテンアメリカ・ファンドに続くものだ。この第1号ファンドの初期規模は20億ドル(約2190億円)で、当初はInnovation Fund(イノベーション・ファンド)と呼ばれていた。

ソフトバンクによると、第1号ファンドでは6月30日時点で69億ドル(約7565億円)の価値がある計48の企業に35億ドル(約3840億円)を投資し、正味IRR(内部収益率)は85%となった。同社はこのファンドからユニコーン企業15社に投資した。ここには不動産テックスタートアップのQuintoAndarRappiMercado BitcoinGympassMadeiraMadeiraなどが含まれる。直近ではアルゼンチンの個人ファイナンス管理アプリUaláの3億5000万ドル(約380億円)のシリーズDを共同でリードした。

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ソフトバンクはまた、ポートフォリオ企業の「かなりの価値の上昇」に接したとも語る。例えばKavakとVTEXの価値は4.4倍に、QuintoAndarは2.6倍に、Banco Interは3.5倍になった(いずれも6月30日時点)。

ソフトバンクはブラジル、メキシコ、チリ、コロンビア、アルゼンチン、エクアドルなど中南米全域の企業に投資してきた。

ソフトバンクグループの副社長執行役員でCOOのMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏がソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドを率い、マネージングパートナーのShu Nyatta(シュー・ニアッタ)氏とPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏が同地域の投資チームをまとめている。オペレーティング・パートナーでソフトバンク・ブラジルのトップ、Alex Szapiro(アレックス・シャピロ)氏がファンドの運用チームを率いる。

投資と運用のチームは計60人を超え、マイアミ、サンパウロ、メキシコシティに散らばっている。

ファンドIIはテクノロジーを活用している同地域のあらゆる産業の企業に投資する。シードから公開までさまざまなステージの企業を対象とし、中でもeコマース、デジタル金融サービス、ヘルスケア、教育、ブロックチェーン、法人ソフトウェアなどの分野にフォーカスする。

声明文の中でソフトバンクの代表取締役会長兼CEOの孫正義氏は、中南米を「世界で最も重要な経済地域の1つ」と表現した。

「ソフトバンクは、中南米の何億もの人々の益となるテクノロジーの浸透を引き続き推進します」と孫氏は述べた。「中南米ではかなりのイノベーションとディスラプションが起こっており、中南米におけるビジネスの機運はこれまでになく高まっていると確信しています。中南米は当社の戦略で重要な部分を占めます。だからこそプレゼンスを広げ、マルセロの指揮のもとに投資規模を拡大します」。

クラウレ氏は、ソフトバンク・ラテンアメリカ・ファンドの成功とリターンが同社の予想を「はるかに超えた」と述べた。今後の展望として、2022年は中南米の歴史の中で「最大のIPOイヤー」になる、と同氏は予想している。

TechCrunchは2021年初め、なぜグローバルの投資家が中南米に押し寄せているのかについて取り上げた。当時、ニアッタ氏は中南米のテクノロジーはどちらかというとディスラプションではなくインクルージョンだと筆者に語った。

「人口の大多数は消費のほぼ全部門で十分なサービスを受けられていません。同様に、ほとんどの企業が現代のソフトウェアソリューションのサービスを十分に提供されていません」とニアッタ氏は説明した。「多くの人、企業のために構築する余地がかなりあります。サンフランシスコではベンチャーエコシステムはすでに未来に住んでいる個人や企業のためにほんの少し暮らしを良いものにします。中南米では、テック起業家はあらゆる人の未来を構築しているのです」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

VUの本人確認技術が普及すれば運転免許証や指紋の提示が不要になる

近い将来、人々は自分のアイデンティティを証明するために指紋や運転免許証を提示する必要がなくなるだろう。そう、VUの思い描くとおりに物事が進めば。

アルゼンチンを拠点に詐欺や個人情報保護の対策をてがける同社は、シリーズBラウンドで1200万ドル(約13億2600万円)の資金調達を行ったと、米国時間7月12日に発表した。投資したのはソフトウェア開発企業のGlobant(グロバント)をはじめ、Agrega Partners(アグレガ・パートナーズ)、NXTP Ventures(NXTPベンチャーズ)、Bridge One(ブリッジ・ワン)、IDB Lab(IDBラボ)、Telefónica(テレフォニカ)など。今回の資金調達により、同社が受けた投資総額は2000万ドル(約22億1000万円)になると、Sebastián Stranieri(セバスチャン・ストラニエリ)CEOはTechCrunchに語っている。

過去20年間、サイバーセキュリティ業界で働いてきたストラニエリ氏は、2007年に彼の祖母がアルゼンチン政府に提出する本人確認手続きの手伝いに何時間も費やし、それが実は2分で済むと判明したことをきっかけに、VUのアイデアを思いついた。

「その経験から、摩擦のないデジタル体験の実現に貢献する会社を作りたいと思うようになりました」と、ストラニエリ氏はTechCrunchに語った。

VUの技術は、位置情報、生体認証、ユーザーの行動分析を用いて人の「オンライン上のペルソナ」を作成し、ユーザーに本人確認を提供する。ユーザーのオンラインとオフラインのペルソナを接続して照らし合わせることで、継続的な認証プロセスを可能にし、アルゼンチンやエクアドルなどの政府機関などに、その人が自分でいうとおりの人物であるかどうか、確認する方法を提供している。

VUは、2025年までに330億ドル(約3兆6500万円)を超えるとAdroit Market Research(アドロイト・マーケット・リサーチ)が予想する世界のデジタルアイデンティティ市場で、不正防止や本人確認にテクノロジーを応用しているいくつかのスタートアップ企業の1つだ。同様の技術で最近投資を獲得した企業には、2021年4月に5000万ドル(約55億2000万円)を調達し、評価額が10億ドル(約1105億円)を超えたSift(シフト)や、シリーズDラウンドで1億ドル(約110億5000万円)の資金調達を発表し、評価額が13億ドル(約1436億円)に達したSocure(ソキュア)などがある。

過去3年間で150人以上の従業員を擁するまでに成長したVUは、中南米と欧州で事業を展開している。顧客の中にはSantander(サンタンデール)やPrisma(プリズマ)などの大手企業や、中南米地域の政府機関も含まれる。同社は米国でも初のオフィスをニューヨークに開設しており、今後1年間で人員が4倍以上に増えることを、ストラニエリ氏は期待している。

同社の収益は前年比85%の平均成長率を示しているが、ストラニエリ氏は2021年もこの傾向が続き、2022年には100%の成長率を達成すると予想している。VUはニューヨークの他にマドリッドにもオフィスを開設し、今後はさらにイタリア、フランス、イギリスにもオフィスを開設する予定だ。

そのため、ストラニエリ氏は今回調達した資金を使って、欧州全土と米国で開発者を雇用する予定だという。

GlobantのVUに対する出資は、パートナーシップとしての役割も担うことになる。GlobantはGoogle(グーグル)、Disney(ディズニー)、Apple(アップル)などの企業にソフトウェア開発を提供しているが、VUのデジタル・エクスペリエンスをパッケージ化し、企業が基本ソフトウェアを購入した後にカスタマイズできるようにすることを考えている。VUの技術は今のところ、銀行の本人確認や、小売店のシステムが購入者を認識して確認するワンクリックのeコマースチェックアウトに適している。

「Globantはデジタル・エクスペリエンスを変革しようとしているので、同社がバックアップしてくれるということは、お客様やパートナーに向けて、我々がうまくやっているというすばらしいメッセージになります」と、ストラニエリ氏はいう。「Globantをはじめ、我々のすべての投資家からの支援は、リスクを顧みず、我々に成長する機会を提供してくれます」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:VU資金調達位置情報生体認証個人認証アルゼンチン中南米

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Uberが中南米の食料品配達スタートアップCornershopを完全子会社化

Uber(ウーバー)は中南米のデリバリースタートアップであるCornershop(コーナーショップ)の全株式を取得した。同社株の過半数を取得してからわずか1年後のことだ。現地時間6月21日、ライドシェアの巨人は規制当局への提出書類で、Cornershopの残る47%の株式をUber株2900万株と引き換えに取得すると語った。契約は2021年7月中に完了する予定。

2019年にUberは、Cornershopの過半数所有権を取得する計画を発表した。実際に契約が完了したのは2020年第3四半期になってからで、メキシコでは2021年1月に完了した。今回6月18日に合意に達し、6月21日に報じられた契約によって、CornershopはUberの完全子会社になる。これはUber-Cornershopの関係における当然の成り行きだと本件に詳しい筋が本誌に語った。

この取り引きは、Uberの拡大志向が衰えていないことを示すものだ。Cornershopを完全子会社化することで、パンデミック下に人気が高まっている食料品デリバリー分野を強化できる。Uberは2020年夏にPostmates(ポストメイツ)を企業価値26億5000万ドル(約2920億円)で買収した後、中南米、カナダ、および米国の一部の都市で食料品配達事業を開始した。UberのCEO、Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏は声明で、同社の食料品および特定分野事業の年間予測取扱高が30億ドル(約3300億円)を超えたと語った。

「Cornershopのチームとのつながりを深め、世界規模への拡大を目指す同社のビジョンを支援するとを大いに楽しみにしています」と同氏は付け加えた。「両社一体となって、食料品の即日配達を世界中のUberプラットフォームで実現する戦略をいっそう強化していきます」。

Cornershopはチリに拠点を持ち、2015年にOskar Hjertonsson(オスカー・ヘルトンソン)氏、Daniel Undurraga(ダニアル・ウンドゥラガ)氏、Juan Pablo Cuevas(ファン・パブロ・クエバス)氏の3名が共同設立した。同社は事業範囲をチリ、メキシコ、ブラジル、コロンビア、コスタリカ、ペルー、米国、およびカナダの南北8カ国へと拡大した。4回の調達ラウンドを通じて計3170万ドル(約35億円)を調達しており、Accel(アクセス)とJackson Square Ventures(ジャクソン・スクエア・ベンチャーズ)らの投資家が参加している。

Cornershopに目をつけていた食料品サービスはUberだけではない。元々Walmart(ウォルマート)に2億2500万ドル(約248億円)で買収されるはずだったが、メキシコの反トラスト規制当局の介入によって結局成就しなかった。今回の契約が同様なリスクの対象になるかどうかは不明だ。

Uberは食品小売業との厳しい戦いに直面しており、ライバルの多くはDoorDash(ドアダッシュ)やFavor Fleet(フェイバー・フリート)などのスタートアップと提携することで配達を行っている。

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タグ:Uber中南米Cornershop

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなどの新興市場では決済、融資、ネオバンクがフィンテック業界を掌握

ここ数年、新興市場ではテック関連の投資が活発に行われており、エコシステムの成長につながっている。

アフリカ、ラテンアメリカ、インドなど、これらの市場の一部では、それぞれの地域の傾向や投資に関する包括的な報告が出版社や企業により提供されている。しかし、地域間の傾向や投資を比較対照した報告はほとんどみられない。それも当然だろう。このような作業は骨の折れる仕事である。

そうした中、データ調査機関Briter BridgesとインクルーシブテックのグローバルアクセラレーターCatalyst Fundが発表した報告書は、この3市場の最重要セクターであるフィンテックに対して全体像の提示を試みるものだ。

本報告書「新興市場におけるフィンテックの状況レポート」は、新興市場全体にわたって投資、プロダクト、包括性という3つの指標で評価を行っている。

調査はアフリカ、ラテンアメリカ、インドの177のスタートアップと33の投資家を対象に行われた。ここで使用されているサンプルの規模はごく小さなものであるが、鍵となる所見は非常に印象的である。

それでは中身を見ていこう。

フィンテックは2017年以降、地域全体で230億ドル(約2兆5038億円)を資金調達している

新興市場に向けられた投資意欲はとどまるところを知らない。本セクターは過去5年間、前年比で最大の投資を受け続けている。

3億人を超えるアフリカの成人が、銀行口座を持たない世界人口の17%を占めている。2019年にアフリカ大陸でBranch、Tala、World Remit、Interswitch、OPayによる合計7億7500万ドル(約845億円)超に達する5つの大型取引が行われたことは理解に難くない。2020年は3億6200万ドル(約394億円)に低下したものの、Flutterwave、TymeBank、Kudaなどの企業がこの期間にかなりの額を調達している。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカでは、デジタルユーザーの基盤が拡大し、規制と改革が促進され、中小企業が活況を呈している。アフリカ同様、銀行口座を持たない人の割合は70%と高い。この地域のフィンテック企業はその事業機会をとらえ、NuBank、Neon、Konfio、Clipといった企業が享受するメガラウンドを獲得した。これまでの5年間で、フィンテック系スタートアップは合計100億ドル(約1兆886億円)を調達している。

インドのフィンテック系スタートアップは、2019年だけで48億ドル(約5225億円)という記録的な額を調達したことが報告書に記されている。そして2020年、同セクターは30億ドル(約3266億円)を調達し、CRED、Razorpay、Groww、BharatPeなどの著名な大手企業を含む過去5年間の合計額は116億ドル(約1兆2627億円)に達した。

アフリカの平均シードラウンドは100万ドル(約1億885万円)、インドとラテンアメリカの平均は400万ドル(約4億3540万円)

報告書によると、アフリカでの初期段階の取引は過去5年間で累計16億ドル(約1742億円)以上増加している。特にシードラウンドの平均規模は、2017年の75万ドル(約8250万円)から2020年には100万ドル(約1億885万円)に拡大した。

ラテンアメリカにおける過去5年間の平均シード取引額は約570万ドル(約6億2040万円)であったのに対し、インドでは約460万ドル(約5億円)であった。報告書では、後者のデータはCREDの3000万ドル(約33億円)のシードラウンドにより偏りが生じているとしている。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカはIPOに意欲的で、インドはユニコーンを産み、アフリカはM&Aへ向かっている

2020年StripeがPaystackを買収したことは、その規模とナイジェリアのフィンテック系スタートアップの地元出身というステータスにより、アフリカのM&Aのハイライトとなった。その他に大きな話題となったラウンドには、WorldRemitによるWaveの5億ドル(約544億円)の買収(これは大陸で最大のものである)とNetwork InternationalによるDPO Groupの2億8800万ドル(約313億円)の買収がある。

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アフリカのフィンテック市場ではメガ買収や7桁規模の未公開取引の数々に注目が集まっているが、ラテンアメリカのフィンテック市場ではIPOへの関心が高い。報告書によると、同地域のフィンテック企業は数回にわたり1億ドル(約109億円)のラウンドを行っており(Nubank、PagSeguro、Creditas、BancoInter、Neon)、M&A活動は希薄だ。しかし、Arco Educacao、Stone Pagamentos、Pagseguroなど、その多くが最近上場を果たしている。

一方、インドには25社を超える10億ドル(約1088億円)企業が存在し、毎年増え続けている。先月には8件新たに誕生した。こうしたユニコーン企業は、Paytmのような既存の企業からCREDのような新しい企業まで多岐にわたっている。

決済、クレジット、ネオバンクがフィンテック活動をリード

報告書によると、この3地域では決済企業がフィンテックへの投資の中心となっている。そのサブセット内では、B2B決済が支配的な位置を占めている。次に資金を得たフィンテックのカテゴリーは、クレジットとデジタルバンキングだ。

アフリカでは、決済スタートアップへの投資がクレジットやネオバンクを上回っている。Flutterwave、Chipper Cash、Wave、Paystack、DPOなどが挙げられるだろう。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

ラテンアメリカで最も資金を得ているフィンテック企業はネオバンクである。また、3つのプロダクトカテゴリーすべてに20億ドル(約2176億円)から30億ドル(約3266億円)の資金が集まっている唯一の地域でもある。そうした企業には、NuBank、Creditas、dLocalなどが名を連ねている。

インドではトップクラスの資金力を持つフィンテック系スタートアップは決済カテゴリーに属している。しかし、Niyo、Lendingkart、InCredのような9桁のラウンドを調達する企業が、クレジットやネオバンクで注目すべき存在となっている。

投資家は保険、決済、デジタル銀行の将来に期待を寄せている

5年後のフィンテックプロダクトの将来動向については、調査対象となった少数の投資家のほとんどが、保険、決済、デジタルバンキングモデルを選択肢としている。

投資プラットフォームや組み込み型モデルにも関心が集まっている。彼らの関心は農業や送金に向けられておらず、ウェルステックプラットフォームやネオバンクも優先順位が低かった。デジタルバンキングとネオバンキングが投資家の選択範囲の両極にあるのはなぜだろうか?確かなことはわからない。

画像クレジット:Briter Bridges & Catalyst Fund

報告書の一部では、これらの地域で十分なサービスが行き届いていない消費者のことや、フィンテックスタートアップが彼らにどのようにサービスを提供しているかについて述べられている。また、これらのフィンテックスタートアップがファイナンシャルインクルージョンを促進しているかどうか、どのような機能やプロダクトがそれを可能にするかについても論じている。

そのすべてにおいて、アフリカがラテンアメリカとインドに何年も後れをとっているという明白な事実は、目新しい情報ではない。Briter BridgesのディレクターDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏に話を聞いたところ、アフリカ大陸がラテンアメリカとインドが現在位置しているところに到達するには5年かかるだろうと語っている。同氏はまた、現段階でインドをより良い市場にしているのは、他の市場のように大陸ではなく、オペレーションが一律的であるからだと付け加えた。

「アフリカの54カ国やラテンアメリカの20カ国よりも、1つの国を管理する方が容易です」と同氏はTechCrunchに語った。「アフリカでは、私たちは『アフリカ』というラベルを使いながら、4~6カ国にわたって言及します。ラテンアメリカでは基本的にブラジル、メキシコ、アルゼンチン、コロンビアの4カ国で大手企業が台頭しています。一方、インドは1カ国です」。

同報告書によると、新興市場のほとんどのフィンテック企業は、作物保険、流通業者やベンダー向けのクレジットライン、KYC、電子商取引決済ゲートウェイ、医療金融、保険といったさまざまな分野に進出しているという。ジュリアーニ氏は、この状況が今後も続くと予想している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:アフリカラテンアメリカインド投資決済クレジットカード保険銀行金融

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

ブロードバンドを欠く中南米で遠隔医療を実現するコロンビアの「1Doc3」が約3.3億円調達

パンデミックの影響で米国ではビデオ診察による遠隔医療がほぼ当たり前になっているが、ブロードバンドが普及していないラテンアメリカでは、1Doc3がテキストとチャットを使って医療サービスを提供している。現地時間4月16日、コロンビアを拠点とする同社は、MatterScale VenturesとKayyak Venturesが主導する300万ドル(約3億3000万円)のプレシリーズAラウンドを発表した。

1Doc3の共同創業者兼CEOであるJavier Cardona(ハビエル・カルドナ)氏はこう語る。「私はこのインタビューのためにいいMacBookを使っていますが、中南米のほとんどの人はこうはいきません」。1Doc3という社名は、スペイン語の1、2、3の発音をもじったものだ。

体調が悪いときにかかりつけ医と連絡を取るのは、今日ますます難しくなっている。1Doc3はAIを搭載した遠隔医療プラットフォームを提供し、患者を医師に取り次ぐ前に症状評価、トリアージ、事前診断を行うことで、ラテンアメリカにおけるこの問題の解決を目指している。

「当社が受ける相談の97%は、数分で医師につながります」とカルドナ氏。

患者は医師の診察を受けた後、1Doc3を通じて自宅に処方箋を届けてもらうこともできる。同スタートアップは、この分野の他の企業と同様に、患者が家から出ることなく迅速に治療を受けられるよう、ループを閉じようとしている。

コロンビアに加えてすでにメキシコでも事業を展開している同社は、今回の資金調達の一部を同地域でのさらなる事業拡大と、これまでなかったマーケティング・営業チームの構築に充てる予定だ。

1Doc3はコンシューマーに直接リーチする他、企業とのパートナーシップを構築し、それらの企業が従業員の医療費を同社を通じて支払うことで顧客を獲得している。カルドナ氏の目標の1つは、単価を下げて、中小企業でも1Doc3を利用できるようにすることだ。現在は企業の場合、従業員1人あたり月額3〜4ドル(約330〜440円)を請求している。

「大企業にとってお金は問題ではありませんが、この地域は中小企業により成り立っています」とカルドナ氏。

2013年に設立され、2018年にはTechCrunchの「Latin American Battlefield」でファイナリストに選ばれた同社は、2020年に急成長を遂げ、2020年2月から12月までの間に月に2500件だった相談件数が3万5000件に増え、2020年はキャッシュフローが黒字になった。2021年3月には、MRR(月間経常収益)が12万ドル(約1300万円)になっている。

多くのスタートアップ企業がそうであるように、1Doc3を設立したきっかけは、創業者が直面した個人的な経験だった。

「タンザニアに滞在していたときに治療が必要になったのですが、タンザニアの医師に行く気はありませんでしたし、米国も含めオンラインで医師と連絡を取ることができず、それからこの問題を解決することにとらわれていました」と、当時、中東・アフリカで活動していたカルドナ氏は語った。

今回のラウンドにより、1Doc3の調達額は合計500万ドル(約5億4000万円)に達した。このラウンドに参加した他の投資家には、Swanhill Capital、Simma Capital、そして既存投資家であるThe Venture City、EWA capital(旧Mountain Nazca Colombia)、Startup Healthが含まれる。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:1Doc3コロンビア遠隔医療資金調達ラテンアメリカ

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Aya Nakazato)

ソフトバンクが支援するブラジルのVolpe Capitalが約87億円を調達し中南米への投資を開始

近年、ラテンアメリカのテックとベンチャーシーンは加速度的な成長を遂げている。より多くのグローバル投資家がこの地域のスタートアップを支援しており、特にフィンテックなどの特定の分野が爆発的に伸びている。

グローバル投資家が資金を投入しているのは企業だけではない。ファンドにも投資している。

米国時間3月10日、Volpe Capitalは、ラテンアメリカの高成長技術への投資を目的としたファンドの8000万ドル(約87億2000万円)のファーストクローズを発表した。このファンドは、1億ドル(約109億円)のコミットメント総額と1億5000万ドル(約163億5000万円)のハードキャップを目標としており、注目すべきことにソフトバンク、BTG、Banco Interの関連会社がアンカー投資家として名を連ねている。またVolpeは、同社の経営陣から「大規模なアンカー投資」を受けたという。

ブラジルのサンパウロを拠点とするこのファンドは、3人の共同パートナーAndre Maciel(アンドレ・マキエル)氏、Gregory Reider(グレゴリー・レイダー)氏、Milena Oliveira(ミレーナ・オリヴェイラ)氏によって設立された。特筆すべきは、マキエル氏はソフトバンクが50億ドル(約5449億円)を投じて設立した、ラテンアメリカに特化したイノベーションファンドの元マネージングパートナーであることだ。同氏は主にソフトバンクの支援を受けて、2019年にVolpeを立ち上げた。レイダー氏は、かつてWarburg Pincusで投資を行っていた。

マキエル氏はこのファンドの資金調達について「確固たるコミットメントを得て、大幅な応募超過となった」と述べ「ラテンアメリカにおいて同クラスのファンドが初めて行った資本調達としては最高のものの1つ」と思われると語った。

Volpe Capitalは今後2年半の間に約10〜15社への投資を計画しており、平均的な出資額はそれぞれ約500〜1000万ドル(約5億4000万〜約10億9000万円)になるとマキエル氏は予想している。

これまでにVolpeは、Grupo Uol社の子会社でブラジルのデジタル学習体験を再定義することを目的としたUol Edtech社を支援している。

マキエル氏はTechCrunchにこう語った。「我々は急いでいません。最初の取引に満足しており、資本保全を考慮に入れています。今は市場がホットだと思っているので、忍耐強くサイクルを利用していくつもりです」。

このファンドの戦略は、積極的な資金調達を行っていない企業を狙うことだという。

「我々がアプローチしたときに、必ずしも資金を調達しようとしていない企業に投資したいのです」とマキエル氏は語る。

そして同ファンドは、ステージやプライマリー・セカンダリーの違いにとらわれないという。

Volpeは評価額が5000万ドル(約54億5000万円)未満のアーリーステージの企業や、レイターステージの高成長企業への投資を目指している。ファンドの最初の投資先であるUol Edtech社は後者に該当し、EBITDAマージンが30%を超えているとマキエル氏は述べている。

Volpeはたとえテック関連であっても、資本集約的な産業は避ける予定だ。

「そうした企業は、Volpeよりも懐の深い投資家に適しています」とマキエル氏は語る。

その代わりに、EdTech、ヘルステック、ソフトウェア、フィンテック(クレジット関連ではないもの)への投資を視野に入れているという。

「我々は、ラテンアメリカでディスラプションが起こりやすく、現地でのカスタマイズが必要なセクターを好んでいます」とマキエル氏はいう。「ラテンアメリカにおけるVC・成長産業の段階を考えると、ジェネラリストである方が良いと考えています」とも。

ソフトバンクインターナショナルのCEOであるMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏は、マキエル氏を「ラテンアメリカにおけるソフトバンクのすばらしい創業パートナー」の1人と評している。

クラウレ氏は声明で「Volpeのアンカー投資家の一員になれたことを大変うれしく思い、今後も関係を続けていくのを楽しみにしています」と付け加えた。

ソフトバンクとのつながりがあるアンカー投資家がもう1人いる。ブラジルで上場し、時価総額が70億ドル(約7629億円)を超えるフィンテックプラットフォームInterのCEOであるJoão Vitor Menin(ジョアン・ヴィトル・メニン)氏は、マキエル氏がソフトバンクを通じてInterプラットフォームへの投資を主導したことを指摘した。また、メニン氏によると、マキエル氏は取締役としても「価値ある貢献をした」という。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volpe Capitalラテンアメリカ資金調達ブラジル

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)

ソーシャルコマースによる副収入を支援するElenasが6.5億円調達、ラテンアメリカ全域に拡大計画

コロンビアのスタートアップElenasによれば、同社はオンラインで商品を販売できるようにすることで、何万人もの女性が収入を得るのを支援しているという。同社は米国時間3月4日、シリーズAの資金調達で600万ドル(約6億5000万円)を調達したと発表した。

これは同社が2020年秋に発表した、200万ドル(約2億2000万円)のシードラウンドに加えての資金調達だ。創業者兼CEOのZach Oschin(ザック・オズチン)氏は、パンデミックで消費者が対面ショッピングに対して神経質になる状態が続く中、(特に女性の間で)高い失業率に後押しされ、需要は伸び続けていると述べている。

「当社はこれまで数万人の女性に、副収入を得る機会を提供してきました」とオズチン氏は語る。

同氏は、Elenasは基本的に、ラテンアメリカ全域で1100万人の女性が関与している直販・カタログ販売モデルを改革したものだという。独立した売り手 / 起業家(必ずしもそうではないが、多くの場合、女性)は、250以上の代理店やブランドから、美容、パーソナルケア、電子機器のようなカテゴリの製品のカタログを、割引された卸売価格で閲覧できるようになっている。そして何を売りたいか、利益を含めた価格をいくらにするか決めて、WhatsAppやFacebookなどのソーシャルチャンネルで製品を宣伝する仕組みだ。

デジタルに重点を置いていることに加え、リスクが少ないため、Elenasのモデルはリセラーにとってより優れているとオズチン氏は語る。「これは従来の直販とは大きく異なり、起業家が在庫を抱えないモデルです。また、支払いの回収や配送などは、Elenasとその代理店パートナーがすべて処理するため、起業家は関与する必要がありません」。

「当社の目標は、女性が店舗を運営するために必要なものをすべて提供するバックエンドのオペレーティングシステムを提供することです」と同氏は付け加えた。

Elenasはリセラーのために自動化されたオンボーディングプロセスを提供しているが、その後アプリ内でも「どうしたら売れるか、販売方法のトレーニングを多く行っています」とオズチン氏は語った。

ElenasのCEOザック・オズチン氏(画像クレジット:Elenas)

(2018年にTechCrunchのラテンアメリカStartup Battlefieldに参加した)同社はこれまでに、リセラーに対し700万ドル(約7億6000万円)以上を支払っているという。性別で参加を制限しているわけではないが、オズチン氏の推定によれば、リセラーの95%以上が女性で、そのうち80%が30歳以下、そして約3分の1はこれ以前に直販の経験がないという。

今回の新たな資金調達はLeo Capital,、FJ Labs、Alpha4 Ventures、そしてMeeshoからの出資による。オズチン氏によると、同社の投資家は6つの大陸にまたがっており、国際的なビジョンを反映しているという。実際、同社の次なるステップの1つは、メキシコそしてペルーを皮切りにラテンアメリカ各国に拡大することだ。

Leo Capitalの共同設立者であるShwetank Verma(シュウェタンク・ヴェルマ)氏は声明の中で次のように述べた。「インドと中国でのソーシャルコマースの急成長を見てきて、今回この地域に適した製品と運営モデルを体現してきたElenasとパートナーを組むことに興奮しています。Elenasのチームは包括的でインパクトのあるソリューションを構築しており、これから飛躍的な成長を見込める立場にあります」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Elenasラテンアメリカeコマース資金調達副業コロンビア

画像クレジット:Elenas

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

中南米の零細企業向け財務アプリのTreintaが約5200万円を調達

Y Combinator(Yコンビネーター)2021年冬期生Treinta(トレインタ)は、同社のラテンアメリカ小企業向け帳簿・在庫管理ソフトウェアのために50万ドル(約5200万円)以上の資金を調達したことを米国時間2月11日に発表した。

発表された調達資金は友人・家族の小さなラウンドにY Combinatorからの出資、および2021年初めに調達した22万ドル(約2300万円)からなる。

コロンビア、ボゴタ市拠点の同社は、現在13人のチームからなり、零細企業、特に個人経営の小さな商店にデジタル変革をもたらそうとしている。

デジタル変革の推進は、伝統的なワークフローやプロセスをソフトウェアベースのシステムに転換することであり、大企業だけのためのものではない。大企業のデジタル変革への取り組みの話はよく耳にするが、Treintaは零細企業も大企業と同じく仕事のやり方を変える必要を感じていることに賭けている。

ラテンアメリカの零細企業に取引や勘定や在庫を管理する能力をもたらすというTreintaのコンセプトは、急成長のアイデアであることが証明されつつある。共同ファウンダーのLluís Cañadell(ルイス・カニャデル)氏によると、Treintaの月間アクティブユーザーは2020年8月31日の開業後数カ月間に400%に成長した。本誌が初めて話をしたとき、同社は1月の成長率300%と月間アクティブユーザー3万人を予想していた。カニャデル氏は今週TecnCrunchにメールで最新情報を送り、1月に3万5000ユーザーを達成したという。

また同氏は、今後数カ月間会社が毎月100%前後のペースで成長すると期待していることも語った。そしてTreintaは、総取引金額(アプリに記録された取引高)2500万ドル(約26億2000万円)を数週間前に超えた。このスタートアップは、いいところに目をつけた。

なぜここまで早く成長したのか?コロンビアの都市封鎖は、多くの中小企業に事業のオンライン化を強いた。多くのユーザーにとって「初めて」のデジタルツールを提供することで、Treintaはたくさんの小企業の生き残りを助けている。

Treintaは、同社のユーザー基盤である中小企業オーナー向けに、さらにデジタル決済などのサービスを提供する予定だ。信用調査はカニャデル氏が本誌に語ったもう1つの可能性だ。

このスタートアップには2021年夏の終わりまでの運転資金があり、雄大な計画をもある。カニャデル氏はTechCrunchに、ラテンアメリカ(Treintaがまだ進出していないブラジルを含む)には5000万の「マイクロビジネス」があり、その90%が商取引の記録にまだ紙を使っていると語った。同社によるとコロンビアのスマートフォン普及率は80%を超えており、Treintaには大きな成長の余地がある。

私は同社に、Y Combinatorのデモデーに参加するかどうか尋ねた。カニャデル氏は、投資家とは喜んで話をするが、デモデーの予定はまだわからないと語った。TechCrunchはもちろんその場にいる予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Treinta資金調達ラテンアメリカコロンビア

画像クレジット:Daniel Garzón Herazo / EyeEm / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中南米のフィンテック投資ブームに乗りブラジルのオンライン金融会社Creditasが264億円調達

中南米全域で金融サービスのスタートアップが巨額の資金を集め続ける中、ブラジルでオンライン融資事業を展開するCreditas(クレディタス)は、新たに2億5500万ドル(約264億1000万円)の資金調達を行った。

同社の与信ポートフォリオは10億レアル(約203億円)を超え、これまで5回のラウンドで5億7000万ドル(約590億5000万円)の外部資金調達を行っているため、新たなラウンドでは17億5000万ドル(約1812億8000万円)の企業価値になる。

Creditasは、中南米全域における金融サービス系スタートアップ投資ブームの恩恵を受けた最新の企業だ。CB Insightsのレポートによると、2020年になってから、ラテンアメリカにおけるフィンテック系スタートアップへのベンチャー投資は、2014年の5000万ドル(約51億8000万円)から2020年には139件で21億ドル(約2175億3000万円)を超えるまでに成長しているという。

今回のラウンドの投資家にはLGT Lightstone、Tarsadia Capital、Wellington Management、e.venturesAdvent Internationalの関連会社であるSunley House Capitalなどの新規投資家が含まれている。これまでに出資していたSoftBank Vision Fund 1、SoftBank Latin America DFund、VEF、Kaszek、Amadeus Capital Partnersもまた、同社にさらなる資金を投入するために戻ってきた。

「Creditasは、ブラジルとメキシコの巨大な未開拓の有担保融資市場に参入するための初期段階にあるところです」と、SoftBank Latin America DFundのマネージング・パートナーであるPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏は声明で述べている。

同社の成長は、ラテンアメリカ全域における新しい金融商品のニーズと、ラテンアメリカの金融サービスに取り組むスタートアップへの投資で大きな勝利を収めてきたKaszek Venturesのような投資家の洞察力の両方を証明するものだ。

「シリーズAでの投資以来、我々の道のりは本当に素晴らしいものでした。チームはビジョンを実行し、Creditasは顧客の生涯にわたる主要な金融ニーズに応えるアセットライトなエコシステムへと進化しました」と、Kaszek Venturesのマネージング・パートナーであるNicolas Szekasy(ニコラス・セカシ)氏は声明の中で述べている。

レッドポイントのe.venturesファンドも、ここ数年ラテンアメリカへの投資に注力し、成功を収めてきた。

「Creditasは、ブラジル人がリーズナブルなレートで金融ニーズをコントロールできるようにすることで、顧客や投資家に大きな価値をもたらす、愛される消費者向け商品を生み出しています。レッドポイントであるe.venturesを通じてシード段階から関与してきた私たちは、ブラジルのフィンテック業界に変革をもたらすCreditasを、我々のグローバル成長ファンドでサポートできることに興奮を感じています」と、e.venturesの共同設立者でありマネージングパートナーであるMathias Schilling(マティアス・シリング)氏は述べている。

Creditasはこの資金を利用して、住宅ローンや自動車ローンのほか、顧客の給料を担保にするベイデイローンや小売オプションとしての後払いローンなど、サービスの拡大を計画している。

同社は他の市場への進出も視野に入れており、その足がかりとしてメキシコ市場に目を向けている。

2012年にサンパウロのベリーニ通りにある5平方メートルのオフィスで創業したCreditasは、現在では数百人の従業員を擁し、担保付き融資のマーケットプレイスと独立した住宅・自動車融資事業を基盤とした強固な事業を展開している。

また、同社は初めて四半期決算を発表し、前年同期の7,490万ブラジル・レアル(約15億2000万円)から4050万レアル(約8億2000万円)に損失が縮小していることを示した。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Creditasラテンアメリカ資金調達ソフトバンク・ビジョン・ファンド

画像クレジット:Getty Images under a license

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(翻訳:TechCrunch Japan)

スタートアップの資金調達における明白な男女格差を克服する方法

著者紹介:Ximena Aleman(キシメナ・アレマン)氏は南米のオープンバンキングプラットフォームであるPrometeo(プロメテオ)の共同創業者兼最高ビジネス開発責任者。

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ベンチャーキャピタル投資において、女性創業者は今でも相変わらず男女格差の問題に直面している。他の領域(例えばテック業界全体の女性の数など)では男女格差は解消の方向に向かっているが、資金調達においては格差が解消される兆しが一向に見えない。2012年以降、女性創業者の企業が調達したVC出資額はほとんど変わっていない

フィンテック業界では特にこの男女格差の問題が顕著だ。過去10年間のフィンテック投資額全体のうち、女性創業社のフィンテック企業が調達した額はわずか1%にすぎない。もともと男性偏重の傾向が強い2つの業界、すなわちファイナンスとテクノロジーを融合させたものがフィンテックであることを考えると、この数字も不思議ではない。しかし、この数字は決して、女性がこの分野で優れた仕事をしていないという意味ではない。女性創業者も相応の公平なVC出資を受けてしかるべきだ。

短期的に見ると、現在の投資環境においてVC資金調達を成功させる確率を高めるために女性創業者にできることもある。例えば、コミュニティと自分を支援してくれる人たちの力を借りる、成功するために必要な自分を信じる力を育む、といったことだ。しかし、長期的に考えると、女性起業家に公平な機会を与えるには、根本的な変化が必要だ。VCファンドは、経営幹部を含め、意思決定が可能な役職に就く女性の数を増やすよう、より一層の努力をする必要がある。

この記事では、VC投資における男女格差の現状と格差を是正するために、創業者、出資者、およびファンド自体ができることについて考察してみたい。

公平な競争条件とはほど遠いベンチャーキャピタルの現状

VCによる2019年の全出資額のうち、女性創業者が獲得したのは3%未満であり、創業者に1人でも女性が含まれるスタートアップに出資した米国のVCは全体の5分の1にすぎない。また、平均出資額の規模で比較しても、女性創業企業または共同創業者に女性が含まれる企業は男性のみの創業者によるスタートアップの半分以下である。創業者コミュニティに占める女性の割合が増えていることを考えると、女性創業者がその割合(創業者の約28%は女性である)に応じた調達資金を獲得できていないというのはゆゆしき問題だ。これに人種と民族性の要素を加味すると、数字はさらに厳しいものとなる。2009年以降の調達資金総額のうち黒人女性創業者が獲得したのはわずか0.6%であり、ラテン系女性創業者に至っては全投資額の0.4%しか獲得していない。

統計の数字は厳しい現実を示しているが、筆者はこうした男女格差を個人的に体験したことがある。例えば、私の目の前で、私の共同創業者に「どうして君ではなくこの女性が話をしているのかね」と尋ねたVC投資家がいた。あるいは、出資者となる可能性のある投資家が私の共同創業者に、「君はこの女性とビジネスを始めるつもりかね」と尋ね、「いや、仕事終わりに君が飲みに行く相手を確認しておきたかったのでね」と付け加えたこともある。

こうした話は、VC投資家たちが彼らのポートフォリオ企業の創業チームに男性がいることを当然のこととして期待しており、無意識であれ意識的であれ、経営陣の中の女性の意見より男性の意見を重視することが多い。

では、もしあなたが女性創業者で、資金を調達するためにVCの前でプレゼンする必要があるとしたら、どのような手順を踏めば無事資金調達に成功できるだろうか。

女性として資金を調達する

このように女性にとって圧倒的に不利と思える環境ではあるが、それでもVCからの資金調達を成功させるために女性創業者ができることはいろいろとある。まずは、自分のコミュニティと自分を支援してくれる人たち(メンターやロールモデルがいれば理想的だ)のネットワークを存分に活用して、可能性のある出資者に自分を紹介してもらうようにする。あなたのビジネスをよく理解していて信頼している人たちなら、喜んで協力してくれるだろう。誰かから個人的に推薦された人物となれば、VC側のあなたに対する見方も随分と違ってくるはずだ。

強力な支援者と呼べるような人がいない場合は、女性創業者やスタートアップグループを探して自分のコミュニティの構築を始めることだ。例えば、成長企業の女性リーダーたちのグローバルネットワークであるNext Women(ネクスト・ウーマン)や、テック業界で働く女性同士をつなぎ支援することをミッションとする草の根団体であるWomen Tech Founders(ウーマン・テック・ファウンダーズ)などを活用できる。

資金調達を成功させる鍵は自信を持つことだ。売り込み、プレゼンテーション、交渉スキルなど、すべてにおいて完璧である必要がある。こうした分野でトレーニングが必要だと思うなら、ワークショップか指導プログラムを探して、資金調達のプレゼンテーションを行う前に必要なスキルを習得しておこう。

男性のVCや出資企業の幹部と話していると、こちらが女性であるために差別的な対応を受けていると感じることがあるかもしれない。そのような場合は、自分を信じる気持ちと内面の強さが重要となる。自分が有望で信頼に値する創業者であることを彼らに信じさせる唯一の方法は、あなた自身がそう信じることだ。

結局のところ、現代の女性創業者たちは、女性としてVCからの資金調達を受ける初めての世代であると認識する必要がある。それは本当に大変なことかもしれないが、エキサイティングな体験でもある。無意識の偏見に直面しても、少しずつ分かってもらうしかないと考えることが不可欠だ。男性の共同創業者にすべて任せてしまっているようでは、次世代の女性たちの成功は期待できない。

女性VCが増えれば女性創業者の調達額も増える

確かに、女性創業者が個人レベルで取り組めることはある。しかし、さまざまな障害を乗り越えるにはベンチャーキャピタル自体が内部から変革しなければならない。女性創業者の資金調達額が男性創業者に比べて少ない最も大きな理由は、VCファンド内で女性が占める割合が極端に少ないからだ。

Harvard Business Review(ハーバード・ビジネス・レビュー)の調査によると、投資家は投資の判断を性別に基づいて行い、女性に対して男性とは異なる質問をすることが多いという。男性投資家から真剣に受け止めてもらえず、結果として価値ある投資対象とみなされない女性企業家の話は枚挙にいとまがない。VCの経営陣にはこうした男女格差があるため、資金調達における男女差別を是正する方法として、女性創業者に特化したファンドが出現している。このようなVCは、女性創業者の企業だけでなく黒人創業者の企業にも投資することが多いことは注目に値する。VCコミュニティは、女性および人種的マイノリティーを中心とする投資家を受け入れるだけでなく、コミュニティ全体として、経営幹部により多くの女性リーダーを登用する必要がある。

VCにおける男女平等はビジネスにも有利

Prometeo(プロメテオ)のチームでは創業初日から、意思決定権を持つ役職に男性と女性の両方を配属するよう協力して取り組んできた。創業チームと経営幹部に女性を含めることは、同社において、無意識の偏見に対抗できるという意味でも、よりダイナミックな労働環境を作るという意味でも、重要な役割を果たしてきた。そうした環境では、思考の多様化によってビジネス上の意思決定の質が向上するからだ。

VCファンド内部と創業者コミュニティの両方で男女平等の取り組みを進めることは、収益向上にも良い結果をもたらす。実際、Boston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の調査によると、1ドルの投資に対する利益率は、女性創業者のスタートアップで78%、男性創業者の企業では31%となっている。

南米は、女性創業者が獲得するVC出資額がVC全体の投資額に占める割合が世界一高い地域だ。そのため、女性が南米のフィンテック革命を主導したことも驚くには当たらない。経営幹部に占める女性の割合を増やすことは、結果的に、ビジネスにも良い結果をもたらす。

VCファンドにおける男女格差を軽減するのは容易なことではないが、是が非でも実現する必要がある。VC内部の改革と外部的な取り組み(コミュニティの構築、トレーニングの機会、女性中心の支援ネットワークなど)により、最終的にはすべての人に公平なVC活動の実現に向けて歩を進めることができる。

関連記事:ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:中南米 差別

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(翻訳:Dragonfly)

ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

著者紹介:

ヌネス氏はVale do Dendê(ヴァレ・ド・デンデ)およびAFAR Ventures(AFARベンチャーズ)の共同創設者である。AFAR Venturesは新興市場における多国籍ブランド、企業、投資家のための機会を見出すことを目的とした、グローバルで多様性のあるクリエイティブ&コンサルティングエージェンシーである。

コリア氏はアーリーステージのインパクト投資家で、経済開発、社会起業、インパクト投資の分野で15年以上の経験を持つ。オックスフォード大学の客員研究員としてインパクト投資や多様性、エクイティについて教え、執筆活動を行っている。

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過去5年間、ブラジルではスタートアップブームが起きている。

この国におけるスタートアップの主な拠点は、伝統的にはサンパウロとベロオリゾンテだったが、今ではPorto Digital(ポトデジタル)が拠点を置くレシフェやAcate(アカーテ)が拠点を置くフロリアノポリスなど新しい波が押し寄せてきており、独自のローカルスタートアップ・エコシステムが構築されつつある。さらに最近では、サルヴァドールで「ブラックシリコンバレー」が形成され始めている。

一般的に金融やメディア業界はサンパウロやリオデジャネイロに集中しているが、バイーア州にある人口300万人の都市サルヴァドールはブラジル文化の中心地の1つと言われている。

人口の84%がアフリカ系ブラジル人のこの街には、歴史、音楽、料理、文化などすべてに深く豊かなアフリカンルーツが息づいている。1500万人の人口を擁するバイーア州はフランスとほぼ同じ大きさだ。サンバやカポエイラ、その他様々な地元の郷土料理まで、ブラジルを代表するほとんどすべての文化遺産がこの土地にルーツを持っていると言うから、バイーア州の創造的遺産は明白なものである。

多くの人は、ブラジルがアフリカ以外で最大の黒人人口を抱えていると言う事実を知らない。米国や南北アメリカ大陸の黒人と同様に、アフリカ系ブラジル人は長い間社会経済的な公平性を求め苦闘してきた。また米国と同じく、ブラジルの黒人創業者は資本へアクセスできる機会が少ない。

米州開発銀行のMarcelo Paixão(マルセロ・パイシャオ)教授の調査によると、アフリカ系ブラジル人は白人に比べて3倍以上の確率で信用供与を拒否されている。また、アフリカ系ブラジル人の貧困率は白人ブラジル人の2倍以上であり、彼らはこの国の人口の50%以上を占めているにもかかわらず、立法の役職に就いているアフリカ系ブラジル人はほんの一握りである。言うまでもなく、上位500社の企業のトップレベルに彼らが占める割合は5%にも満たない。米国や英国などの国と比較すると、ブラジルの人口の50%以上がアフリカ系ブラジル人であることから、人種間の財源格差はさらに顕著になっている。

バイーア州はラテンアメリカのイノベーションの震源地となりうる

バイーア州の州都であるサルヴァドールは、ブラジルのブラックシリコンバレー発祥の地であり、地元エコシステムのバブであるVale do Dendêを中心に据えている。

Vale do Dendêは地元のスタートアップ、投資家、政府機関と連携して起業家精神とイノベーションを支援し、特にアフリカ系ブラジル人の創業者を支援することに重点を置いたスタートアップ促進プログラムを運営している。アクセラレーター組織であるVale do Dendêは、スタートアップや技術教育を主流の市場からこれまで十分なサービスを受けていないコミュニティーへと広げる革新的な活動を行っていることから、すでに国内外から注目を集めている。

約3年間でこの組織は、クリエイティブで社会的インパクトのあるセクターを持つ代表的な企業と共に様々な業界にまたがる90社の企業を直接支援してきた。ほぼ全ての企業が二桁成長を達成し、多くの企業がさらなる資金調達や企業の支援を受ける結果となっている。最初のポートフォリオ企業の1つであるデリバリーアプリのTrazFavela(トラズファヴェーラ)は、従来疎外されてきたコミュニティーの顧客と商品をつなぐことに焦点を当て、2019年にアクセラレーターの支援を受けている。ロックダウンがあったにもかかわらず、企業支援後の3月から5月の間に230%の成長を遂げ、最近ではGoogle(グーグル)ブラジルからの更なる支援と投資のための契約を締結した

これはアフリカ系ブラジル企業が認識されていると言う明確な証である。当初Vale do Dendêのメンタリングで支援を受けたもう1つの企業は、観光分野で黒人文化に焦点を当てた企業Diaspora Black(ディアスポラブラック)だ。同企業はFacebook(フェイスブック)ブラジルの支援を受け、2020年には770%の成長を遂げている。

低所得者層のコミュニティーに焦点を当てたヘルステック企業であるAfroSaúde(アフロサウ―デ)も同様で、ファヴェーラ(都市部のスラム街で黒人率が高い貧困街を指す言葉)で新型コロナ感染を予防するための新しいサービスを提供している。このアプリは現在プラットフォーム上に1000人以上の黒人医療従事者を擁しており、極めて人種差別化されていた健康危機問題に対処しながら雇用創出を行なっている。

ルネッサンス開花寸前のバイーア州

ブラジルの厳しい経済状況にもかかわらず、国内外の大企業や投資家がこのスタートアップブームに注目している。大手IT企業のQintess(キンテス)は、サルヴァドールが南米を代表するブラックテックのハブとなることを支援するため、主要スポンサーとして乗り込んでいる。

同社は今後5年間で約1000万レアル(約200万ドル、約2億1000万円)を黒人スタートアップへ投資する予定だと発表しており、その中にはVale do Dendêとの連携による約2000人の技術者の育成や、黒人創業者が率いる500社以上のスタートアップを加速させるプランも含まれている。またGoogleは9月にVale do Dendêの支援を受けて500万レアル(約100万ドル、約1億円)のBlack Founders Fund(ブラック・ファウンダーズ・ファンド)を立ち上げ、アフリカ系ブラジル人によるスタートアップのエコシステムを後押ししている。

スタートアップからイノベーションの新しい波が起きることは間違いなく、アフリカンディアスポラが重要な役割を果たすことになるだろう。世界最大のアフリカンディアスポラ人口を持つブラジルはこの面で主要なリーダーとなることが可能だ。Vale do Dendêはブラジルと南米を代表するより多くのスタートアップを創出し、創造的な経済エコシステムを形成するためのパートナーシップを構築しようと熱心に取り組んでいる。

関連記事:Uber Eatsがチェコ、エジプトなど7カ国から撤退、成長が見込めるマーケットに注力

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:ブラジル 差別 中南米

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(翻訳:Dragonfly)

ラテンアメリカの建設業界向けサプライチェーンを拡大するコロンビアのTülが約4.2億円を調達

コロンビアのボゴタを拠点とするサプライチェーンロジスティックス技術開発のTülは、新たに400万ドル(約4億2000万円)を調達しラテンアメリカに広く進出しようとしている。

Tülを創業したのはEnrique Villamarin Lafaurie(エンリケ・ヴィラマリン・ラフォリ)氏とJuan Carlos Narváez(ファン・カルロス・ナルバエズ)氏で、同社のテクノロジーはラテンアメリカの建設関連用具の半分を扱う中小企業と建設会社を結びつけているとラフォリ氏いう。

ラフォリ氏はかつて北米と南米でセメント販売の大部分を扱うコロンビアの企業、Cementos Argosに10年間勤務し、建設業界に携わってきた。

ラフォリ氏は「我々はバックエンドの大手建設会社とフロントエンドの建築用具会社を結びつけています。製造業者はストアとつながり、ストアに対して直接交渉して販売促進をすることができます」と述べた。

アナログが中心だった業界をデジタル化することで、Tülはサービス開始から8カ月で1000万ドル(約10億4000万円)のランレートを達成し、3000のストアがサインアップしている。

しかもこれはコロンビアだけの数字であるとラフォリ氏はいう。同社はまもなくエクアドルで事業を開始する。ラフォリ氏によれば、エクアドルはラテンアメリカ第2位の建築用具市場(1人あたり)だ。

同社の従業員は現在9人で、新たな資金を得て大幅に人員を増やす予定だ。

Tülのシードラウンドを主導したVine Capital Managementの投資家であるEric Reiner(エリック・ライナー)氏は「コロンビアでは世界で最も厳しいロックダウンが実施されました。人々は家を出ることを許されませんでしたが、建設業は必要不可欠な業務とみなされていました。Tülでは、建築用具のストアから製品を建設業者に直接配送できます。Tülはロジスティクスのネットワークを活用して衛生設備を配送する別ブランドをはじめ、学校やコインランドリーを衛生のための拠点にすることができました」と述べた。

ラフォリ氏の説明によれば、Tülのオンラインサービスは業界のライフラインになっている。

ラフォリ氏は「業界全体が活動を停止し、我々は現場に直接配送するだけでなく近隣の衛生ステーションを作ることでビジネスを続けてきました。その結果、我々が支援した顧客はとても忠誠度の高いロイヤルカスタマーになりました。これだけでたいへん大きな顧客のリテンションを得ています」と述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tül資金調達建設ラテンアメリカ

画像クレジット:Jung Getty / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)