2015年もやりますCTO Night! スタートアップを技術で支えるCTOたちを讃える

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11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015だが、今年もまたイベント内イベントという形で「TechCrunch Tokyo CTO Night powered by AWS」を開催するのでお知らせしたい。開催は2日間の会期のうち初日の夕方4時スタートで予定している。参加には申し込みが必要だけど、チケットは無料だ。

CTO Night自体は今年でもう3回目だが、昨年始めた表彰制度の「CTO・オブ・ザ・イヤー」の第2回を開催したい。CTO Nightは、CTOの日々の仕事の成果をシェアし、たたえ合う場にできればという趣旨で開催している。イベント形式は、8〜10社程度のスタートアップ企業のCTOに登壇いただいて、5分の発表と3分の質疑によるピッチ・コンテストとなっている。審査するのは技術によるビジネスへの貢献度で、もう少し具体的に言うと、「独自性」、「先進性」、「業界へのインフルエンス」、「組織運営」について評価対象とする。

2014年11月の昨年は以下の9社が登壇。発表内容は組織論から技術的な発表までさまざまだったが、NewsPicksで知られるユーザーベースの竹内秀行CTOが、初代の「CTO・オブ・ザ・イヤー」に輝いたのだった。

2014年のCTO Night登壇者

  • 株式会社ユーザベース(SPEEDA/NewsPicks) 竹内秀行CTO
  • Beatrobo, Inc.(PlugAir) 竹井英行CTO
  • freee株式会社(freee) 横路隆CTO
  • Tokyo Otaku Mode Inc.(Tokyo Otaku Mode) 関根雅史CTO
  • ヴァズ株式会社(SnapDish) 清田史和CTO
  • 株式会社オモロキ(ボケて) 和田裕介CTO
  • 株式会社Moff(Moff Band) 米坂元宏CTO
  • 株式会社エウレカ(pairs) 石橋準也CTO
  • 株式会社DoBoken(ZenClerk) 磯部有司CTO

今年もまた、昨年同様に経験豊富なCTOの方々に審査員をお願いしてあって、ギークとビジネスの間に立つ人たちにジャッジをお願いしようと思っている。審査員の方々のついては、昨年の記事も参考にしてほしいが、今年は2015年4月にソラコムを創業した玉川憲氏(昨年はAWSエバンジェリストだった)が抜けて、代わりにAWSのソリューションアーキテクトで、スタートアップ企業でのCTO経験もある松尾康博氏が審査員として加わる。ビズリーチの竹内真氏も、昨年はCTOだったが、いまは求人検索エンジン「スタンバイ」の事業部長という立場に変わられ、再び新規事業立ち上げに挑戦されている。また、新たにディー・エヌ・エーの川崎修平CTOが加わるほか、サイバーエージェントグループの子会社群で組織しているゲーム部門の技術責任者である白井英氏にも参加していただくこととなっている。とっても豪華な顔ぶれだ。

2015年のCTO Night審査員

  • グリー 藤本真樹CTO
  • DeNA 川崎修平CTO
  • クックパッド 舘野祐一CTO
  • はてな 田中慎司CTO
  • サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
  • アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博(ソリューションアーキテクト)

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コンテストはイベント初日の11月17日月曜日の夕方4時にスタートし、90分ほどでピッチ大会と表彰を行う。その後は、そのままTechCrunch Tokyo 2015の懇親会と合流する形となっている。今回はCTO Nightに関してはイベント参加費は無料となっている。CTOの皆さまには、ちょっと(だいぶ)早めに仕事を切り上げたりして参加を検討していただければと思う。これまで同様、イベント参加は、CTOや、それに準じるエンジニア組織をリードする立場にある人に限らせていただければと考えている。

ところで、今の日本では、かつてなかったほどCTOが必要されていると思う。ITや技術がスゴいと言っても、実社会への接点で価値が出せなければ意味がない。かつて企業や社会とITの接点といえば、「CIO」「情シス」「SIer」といった“IT業界”だけの話だった。しかし、いまやテクノロジーネイティブな人たちが、それぞれの領域で自分たちでビジネスやプロダクトを作るという動きが強まっている。社会にインパクトを与える価値をソフトウェア・エンジニアリングによって生み出すとき、そのカギとなるポジションの1つはCTOだと思うのだ。

TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS

イベント名称TechCrunch Tokyo CTO Night 2015 powered by AWS
日時】TechCrunch Tokyo 2015初日の11月17日火曜日の夕方4時スタート(90〜100分)
コンテスト】登壇CTOによる1人5分の発表+3分のQAセッションを9社行い、審査を経て「CTO・オブ・ザ・イヤー 2015」を選出する
審査基準】技術によるビジネスへの貢献度(独自性、先進性、業界へのインフルエンス、組織運営についても評価対象)
審査】CTOオブ・ザ・イヤー実行委員会による
審査員
・グリー 藤本真樹CTO
・DeNA 川崎修平CTO
・クックパッド 舘野祐一CTO
・はてな 田中慎司CTO
・サイバーエージェント 白井英 SGE統括室CTO
・アマゾン データ サービス ジャパン 松尾康博氏(ソリューションアーキテクト)
企画・協力】アマゾンデータサービスジャパン
運営】TechCrunch Japan / AOLオンライン・ジャパン
問い合わせ先】event@tc-tokyo.jp
チケット】無料(参加申し込みは必要です)

ブロックチェーンの正体

image編集部注この原稿は、森・濱田松本法律事務所パートナーの増島雅和弁護士 (@hakusansai)による寄稿である。増島氏は2000年に東京大学法学部を卒業し、2001年弁護士登録、森・濱田松本法律事務所入所。2006年に米国のコロンビア大学法科大学院を卒業し、シリコンバレーのウィルソン・ソンシーニ法律事務所に勤務。2007年ニューヨーク州弁護士登録。帰国後には2010~2012年まで金融庁監督局保険課兼銀行第一課で、法務担当課長補佐を務めた。日本ベンチャーキャピタル協会顧問、日本クラウドファンディング協会理事などを歴任している。

ブロックチェーンの「誤解」

ここのところ急速にブロックチェーンに対する注目度が高まっています。Overstockが開発した、ブロックチェーン技術を用いた非上場株式の取引プラットフォーム「」、ブロックチェーン技術を用いて中央清算機関なしに株式の仲介を実現することを目指してNASDAQと提携したChainなどがこれまで取り上げられてきましたが、三菱UFJフィナンシャル・グループが、ブロックチェーン技術を国際的な金融取引市場に応用することを標榜するR3CEVのプロジェクトに参加する22の銀行の1つとなることがアナウンス(発表PDF)されてから、日本のマーケットでもブロックチェーンまわりがざわついてきました。

日本では、ブロックチェーンというとビットコインを連想する人が多いと思います。「ビットコイン」とは仮想通貨の1つであるビットコイン(これは小文字でbitcoinと記載されるのが通例です)と、これを支えるブロックチェーン技術としてのビットコイン(これは大文字でBitcoinと記載されます)の2つを意味しており、ここで議論をしているのはブロックチェーン技術としてのBitcoinに関連するものです。しかし、この記事でご説明しようとしているブロックチェーンとは、Bitcoinそのものを意味するものではありません。日本のビジネス界では、まだブロックチェーンとはビットコインが採用しているブロックチェーン技術(Bitcoin)のことを意味しているものと捉えている人が多く、ブロックチェーンとBitcoinを混同してブロックチェーン(特にそのリスク)を論じるものが多く見られます。テクノロジー系媒体を代表するTechCrunchすらそのような記事を掲載していますので(「次の革命をもたらすのはブロックチェーンかもしれない」(原文))、ビジネス界でこうした記事にも目配りをしているビジネスパーソンの多くが、このような捉え方をされているのは無理からぬものがあります。

技術サイドの方には当然のこととして理解されていることなので改めて指摘するのも憚られるところですが、Bitcoinというのはブロックチェーン技術を応用した1つのプロトコルに過ぎません。技術を評価して応用する側にあるビジネス界の人々にとっては特に、ブロックチェーンとBitcoinを混同して理解し議論することは、ブロックチェーンの本当の破壊力を見誤るように思います。実際、ビジネスの観点からすると、Bitcoinはブロックチェーン技術の中ではかなり極端なシチュエーションを想定したプロトコルであり、ブロックチェーン技術の応用例としては例外の方に位置づけられるべきものであるともいえるように感じます。

この記事は、ビジネスサイドの人たちに、ブロックチェーン技術をどのように体系を立てて理解すればよいかについて、同じくビジネスサイドにいる筆者の考えを共有することを目的とするものです。そのうえで、ブロックチェーン技術がビジネスにどのように応用することができるのかについて、その見取り図を示そうとするものです(編注:ビットコインの解説にについては、「誰も教えてくれないけれど、これを読めば分かるビットコインの仕組みと可能性」も参照)。

なぜ、ビジネスサイドが、わざわざブロックチェーン技術について理解しなければならないのか、ブロックチェーン技術のビジネス応用について理解しておけば十分なのではないか、という考え方があるかもしれません。しかし、筆者の考えでは、これではブロックチェーン技術のビジネス応用を適切に評価・議論することができません。なぜなら、Bitcoinという、かなり極端なシチュエーションを想定したブロックチェーン技術のアイディアが先行して世の中に広まってしまったため、ブロックチェーン技術のビジネス応用を考える際に、Bitcoin固有の技術的な制約や限界に関する言説が、ブロックチェーン技術に対する評価を歪めてしまいがちであるためです。ブロックチェーン技術についての体系的な理解をすることなくそのビジネス応用について評価・検討しようとすると、技術的な側面からの誤った理解がこれを邪魔するということが起こりうるように思います。

説明を開始する前に1つ留保事項を述べておきます。ブロックチェーン技術は多義的な解釈が可能な技術です。インターネットとは何か、と問われたときに、それぞれの時代ごとに主流の捉え方があり、時とともにバージョンアップされていったのに似ているかもしれません。この記事では、現時点で筆者が一応納得している、ビジネス応用に関する初期的な検討に耐えると思われる、ブロックチェーン技術の体系的な理解を皆さんと共有したいと思います。ビジネス業界の外からは、別の解釈もあるでしょうし、ビジネス業界からも、時を経てより良い解釈の方法が提示される可能性も十分にあると思っています。ぜひとも皆さんの考えを教えて下さい(@hakusansaiにてお待ちしています)。

管理者の有無によるブロックチェーン技術の分類

テクノロジーサイドの論文を読んだり技術者の方々と議論したりした結果、ブロックチェーン技術は、下図のような体系で整理して理解すると、ビジネス応用について検討・評価する際の見通しが良いように思います。

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(*)ただし、管理者がいてノード参加が自由というものも作ることができる

まずは、管理者について、ブロックチェーン技術を採用し、ビジネスの用途でこれを管理するのは誰か、という点からブロックチェーン技術を見る視点です。ブロックチェーン技術については「管理者が存在しない」という事態も想定されており、その典型がBitcoinということになります。ブロックチェーンをビジネス用途に用いる場合、その導入を検討する企業はブロックチェーンを管理したいと考えるのではないでしょうか。管理の主体は、単体企業とすることもパートナーシップ関係にあるコンソーシアムによって担われるとすることも考えられます。管理主体を誰にするかは、ビジネスの戦略上はたいへん重要なポイントになりますが、ブロックチェーン技術という観点からはそれほど大きな問題ではありません。すなわち、ブロックチェーン技術としては、単体企業を管理者とするものとコンソーシアムを管理者とするもののいずれもが可能であり、それぞれに最適化したプロトコルを持ったサービスを採用するか、もしくは同一のプロトコルを用いて他の技術的な側面からそれぞれに最適化したサービスを採用するかということをビジネスサイドとしては考えることになります。

コンピューターシステムであれそれ以外のものであれ、およそ一定の仕組み・システムを運用するためには管理者が必要と考えられていました。企業内システムしかり、コーポレート・ガバナンスしかり、自治体や国家運営であってもしかりです。Bitcoinというのは、理論的にはこの管理者の存在を前提としないプロトコルを採用しています。管理者の存在を前提とする必要がないことから、Bitcoinは民主的な技術であるといわれ、その応用である仮想通貨(bitcoin)は、国家システム(なかんずく貨幣システム)に対する強力な代替案を提供しうるアプリケーションであるとして、驚きをもって受け止められました。しかしながらこのことは、ブロックチェーン技術は管理者が存在しないものでなければならないことを意味するものではありません。ブロックチェーンは分散型台帳技術であり(ブロックチェーンを「台帳」と解釈すべきかどうか自体についても諸説があり、ものの見方によって多義的な解釈が可能です)、それ自体は無色透明のものであって、管理者をどのように設定し、または設定しないことにするかは、プロトコルのアーキテクチャの問題にすぎないということができます。

誰でもノードとして参加できるか、管理者によるコントロールを可能にするか

ブロックチェーンはpeer to peer技術を応用したものなので、技術的にノードの存在が必要になります。このノードに誰がなることができるのかというのが次の視点となります。管理者が存在しないブロックチェーン技術の場合には、管理者が存在しないというその特性は、ノードの参加の可否を判断する者が存在しないということを意味し、したがって誰でもノードに参加することができるというアーキテクチャを採用することになります。ブロックチェーン技術を解説する際に「Trustless」という表現が出てくることがありますが、これは主としてこのことを述べたものです。

逆に、管理者が存在するブロックチェーンについては、ノードとなるかどうかについて管理者がこれをコントロールすることができるということになります。これには、エンドユーザーを直接ノードとするものや、エンドユーザーは誰かということと誰をノードとするかを分けて考えるものとがありますが、いずれにしても、ノードとなることができる主体を管理者がコントロールすることができること自体には変わりがありません(エンドユーザーが自動的にノードとなるものについては、そもそもそのエンドユーザーにアカウント開設を許可するかどうかを管理者がコントロールすることによって、ノードをコントロールすることができることになります)。この特性を表現するものとして、しばしば「Trusted」という表現が用いられています。

コンセンサスとプルーフの必要性

ブロックチェーン技術について、これをpeer to peer技術を用いて管理する分散型台帳であると見た場合、この台帳の書き換えをコントロールする方法が技術の中核を占めることになります。台帳の書き換えは、そこに何らかのトランザクションが起こることを意味していますが、このトランザクションに対する同意(コンセンサス)と、それが真に当事者によって行われたものであること、さらには対象が二重にトランザクションの対象となっていないことを確認(プルーフ)する作業が必要となります。

ブロックチェーン技術に、誰でもノードに参加することができるアーキテクチャを採用する場合、ノードには悪意のある者が参加する可能性があることを念頭に置いて全体を設計しなければならないことになります。すなわち、悪意のあるノード参加者が分散型台帳を改ざんしないことを確保する仕組みが必要ということになります。Bitcoinにおいては、これをproof of workと呼ばれる方法で、台帳の書き換えには一定の計算を行うことを要するものとすることで、解決しようとしています。計算が必要であるということは、コンピューターリソースとこれを動かす電力を必要とするということを意味していますが、これらの資源を提供することのインセンティブとしてbitcoin自身を資源の提供者(つまりマイナー)に付与することをあらかじめ約束することで、悪意のあるノード参加者にとって、台帳を改ざんするよりはマイニングに従事するほうが経済的に効率的であるという状態を創出しているわけです。これにより、悪意のあるノード参加者を想定しつつ、台帳の改ざんの懸念を払拭しているところに、Bitcoinというプロトコルの際立った特徴があるといえます。

逆にいうと、ブロックチェーン技術に管理者の存在を想定し、ノード参加者を管理者が選定することができるというアーキテクチャを採用した場合、そもそもそんなに悪意のあるノード参加者などというのを想定してガチガチなプルーフ作業を必須としなくても良いではないか、という発想がうまれうることになります。

どの程度のプルーフ作業を必要とするかは、分散型台帳の書き換えの速度、すなわちトランザクションの速度と深く関係することになります。厳格なプルーフ作業を要求する場合、これはビジネスにおいては取引の実行に要する時間が長くなることを原則として意味します。そうすると、その長さがすなわち決済速度ということになり、この点のブロックチェーンのアーキテクチャ、さらにはそのプロトコル自身が、ビジネス上、その取引にそのブロックチェーンが使えるかどうかという話に直結することになります。

このように、ブロックチェーン技術においては、厳格なプルーフ作業を求めること、ビジネス的に言うと台帳に対する悪意のある改ざんがなされないという信頼性を技術的に高く確保することと、トランザクション速度を高速化することの間には、一定のアンビバレントな関係があるといわれています。このバランスをどこに置くのか、ということを考える際に、悪意のある改ざんを防止するためにノード参加者自身をコントロールするという発想を持つことができる、管理者が存在するブロックチェーン技術とその存在を前提としていないブロックチェーン技術の間には、サービスの設計を考える上で、大きな差があるということだと思います。

さらに言うと、プロトコルをどうするかという問題は、ビジネスの応用に際して一定の制約を生むことになるとはいえますが、この点は提供される製品のアーキテクチャによって、一定程度解消されうるということであると思います。例えばBitcoinのプロトコルを用いたとしても、その上に何か別のレイヤーを設けて工夫することにより、トランザクション速度に関して何らかの改善を図ることができる余地はあるということかと思います(Bitcoinというプロトコルは、管理者の存在を前提とはしていないというだけで、このプロトコルを用いたサービスを設計する際に、管理者を置いた形のサービスを作ることができないということではまったくありません。)。但し、Bitcoinのプロトコルに本源的に存在する制約や限界が、これを用いたサービスの設計を窮屈にするということはありえるかもしれず、それによってサービスがビジネス上どの領域に利用することができるのか、ということに影響することはありうるのだと思います。

また、Bitcoinが完全なオープンソースであることに関連して、事業者が提供するサービスの中には、そのおおもとをBitcoinに由来するものが多くあります。これらはビットコインフォークと呼ばれ、Bitcoinが持つ特性を多かれ少なかれ引き継いでいることになります。ブロックチェーン技術を用いたサービスを一から開発する(すなわちコードを一行目から書いていく)ためには、peer to peerによる分散型合意形成技術、暗号技術、セキュリティ技術など異なる領域にわたる技術を開発陣が高いレベルで習得していなければならず、そのような開発チームを組織して、ビットコインフォークではない、特定のビジネス応用に最適化したサービスを作り上げるためには、かなりの時間と開発コストがかかると言われています。

ブロックチェーンには「トークン」は必須ではない

ブロックチェーン技術に言及する際には、しばしば「トークン」と呼ばれるシステム内の貨幣のようなものと、マイナーと呼ばれるトークンの発掘者の存在が指摘されることがあります。しかしながら、これらはブロックチェーン技術にとって必要不可欠の要素ではありません。ブロックチェーン技術を分散型台帳としてとらえる見方からすると、システム内でこの分散型台帳を適切に管理することができればよいわけであり、そのための設計として、トークンというものを導入するかどうか、またマイナーという仕組みを導入して分散型台帳の管理のためのリソース提供を動機付けするかどうかは、サービスのアーキテクチャないしその根本にあるブロックチェーンのプロトコルをどのようにするか、という問題に過ぎません。

同様に、台帳を誰が見ることができるかという点も、サービスの設計の問題ということになります。

ブロックチェーン技術の応用

ブロックチェーン技術を分散型台帳とみた場合、その応用としてビジネス界が着想するものとして決済分野があります。決済には資金や証券などの分野がありますが、資金は記録によりその価値の帰属者を法的に定めることができ、証券についても電子的な記録によりその保有者を法的に定めることができますので、ブロックチェーン技術を用いてトランザクションの実行を適切に記録する(誰と誰の間のいつ行われた何の移転に関する取引かを記録し、その認証を行うことで、二重譲渡のような事態を防止する)ことにより、ブロックチェーン技術に決済機能を発揮させることができそうです。

他方で、このような記録台帳による記載と資産の法的な所有の決定が必ずしも対応していないものも存在します。例えば債権の譲渡は、誰が現在債権者であるかについて対外的に主張することができるためには、債務者に対する通知や債務者による承諾が必要です。したがって、記録台帳による記載を債務者への対抗可能なものとするためには、債権の売買当事者間の合意とその認証のみではなく、債務者に対する通知がなされたことや債務者が承諾したことについての認証が必要になることになります。動産の場合には、売買当事者間の譲渡の合意のほかに、その動産が買主に引き渡されたことについての認証もなければ、記録台帳の内容のとおりの資産の所有関係があるということは言えません。不動産の場合にはその権利の取得や喪失について対外的に主張するためには登記が必要ということになりますので、ブロックチェーンによる記録と登記システムが何らかのつながりを持たなければならないことになります。そこで、もっとも先進的なアイディアとして、登記システムにブロックチェーンが組み込まれるべきであるという主張がなされているところです。技術的にはともかく現状の登記実務を念頭に考えると、それなりに超えるべきハードルがあると言わざるをえませんが、確かにそのような仕組みが採用された暁には、現在の中央集権的な登記システムの維持にかかるコストは劇的に減らせることになるでしょう。現に、債権については電子債権記録法という法律により、電子債権記録機関における記録によってその権利の発生と移転の法律上の効果を担保する仕組みができており、こうした新しい法律上の枠組みの制定により、資金や証券以外の資産の移転分野にブロックチェーン技術が応用されていく可能性はあると考えられます。

ブロックチェーン技術の捉え方として、これは台帳ではなく5W1Hが記載された記録簿であるという識者もいます。これを台帳と表現するか記録簿と表現するかは言葉の綾に過ぎないように思われますが、このような表現をされる人の中には、チューリング完全なブロックチェーン技術であれば、契約上の義務をデータレイヤーを取扱うチェーンと同じチェーンで取扱うことができ、これによりブロックチェーン上で契約関係を表現することができると同時に、その契約条件が整った際に契約上の支払の履行がなされることを確保するという仕組みをつくり上げることができるということを強調する人が多いようです。これを表現する単語として、「スマートコントラクト」という呼び方がなされることがあります。このようなスマートコントラクトにおいては、単純化して言えば、移転対象となる資産を移転する諸条件がブロックチェーン上に表現され、記述されたすべて条件の成就が認証された場合に資産が台帳上移転するという仕組みをブロックチェーンに織り込んでおくという発想がなされています。

このようなスマートコントラクトの考えは、ガバナンスないしモニタリングと呼ばれるものの考え方を変更するかもしれません。例えば取締役に対する株主のモニタリングについて、取締役の行動に様々な条件を課したうえで、それらの条件を成就した場合に報酬が付与されるものと考えた場合、これらの条件関係がブロックチェーン上に表現されていれば、その条件の成就が認証されないかぎり取締役に報酬が支払われないということになります。取締役のモニタリングを、判定が容易な複数の条件の組み合わせとその成就の認証行為としてとらえ、これを報酬と紐付けることで、コーポレート・ガバナンスの最重要の問題の一つであるところの取締役の行動規律を低コストで確保することができるのではないか、と考えることは、スマートコントラクトの延長上の議論として少なくとも成立し得るように思われます。

また、スマートコントラクトとIoTの関係にも着目する必要があります。スマートコントラクトでは、一定の条件が成就することをもって資産の移転が生じる(より正確には帳簿上の記載が変更される)ということをブロックチェーン技術によって自動的に発生させることができるわけですが、この「条件」が客観的な事象の発生そのもの、もしくはそのような事象と紐付いたものであることがあります。例えば、「午後10時までに帰宅する日が1週間のうち4日以上あったら5000円を支払う」という契約があった場合、「午後10時までに帰宅する」という条件が果たされたことを確認する方法として、本人が帰宅したことを申告させ、誰かが本人の自宅に電話して認証する方法がありえます。これに代わる方法として、本人が電子鍵で自宅ドアを解錠した場合にスマートロックからモバイル端末を経由して帰宅の事実とその時刻が送信されれば、その日に「午後10時までに帰宅する」という条件を満たしたことをブロックチェーン上で認証することができることになります。

こうしてみてみると、そもそもビットコインという仮想通貨システム自体が、これまでは国家がコストを掛けてメンテナンスしてきた貨幣システムのガバナンスに相当するものを、ビットコインというプロトコルの中で、法定通貨のガバナンスとコスト構造が全く異なる仕組みにより、実現したものととらえることも可能であるように思われます。すなわち、ビットコインという仮想通貨システムが成立していることそのものが、ブロックチェーン技術がこれまでのガバナンスとそのためのコストというものに対して、強烈な転換を迫るものたりうることの証左であるという見方もできるということです。

画像認識からデイトレへ、深層学習のAlcapaDBが意外なピボットで100万ドルを新規調達

「お前が一体なに言ってんのかも分かんねぇし、誰がこんなクソに金を払うのかも分からねぇよ!って、ピッチが終わった途端、開口一番にそう言われたんですよw」

デラウェア州で法人登記、満を持してのプロダクトリリース。渡米し、意気込んで多数のVC回りもした。そして東京で行われたSlush Asiaファイナルで、歯に衣着せぬ毒舌で知られる500 Startups創設者のデーブ・マクルーアに上記のように痛烈に批判され、プロダクトに根本的な問題があることに気がつく……。

と、そんな風にピボットを決める前の状況を振り返るのは、2013年2月にAlpacaDB(創業時の日本の法人名はIkkyoTechnology)を創業した横川毅CEOだ。

ディープラーニングを使った画像認識をサービスとして提供する「Labellio」をベータ版としてリリースしたのは2015年6月のこと。もともとAlpacaDBはデジタルデータの大半を占める非構造化データを処理する労働集約型の仕事を弱いAIで代替するという目標を掲げて創業していたので、画像認識領域でサービスを提供するのは自然なことだった。GPUが利用できるクラウド側で、ある程度汎用のディープラーニングの処理環境を用意してサービス開発者やエンジニアのプロトタイピング用途に向けて提供するというのがLabellioだった。

Labellioベータ版リリースのブログエントリはエンジニア界隈でちょっとした話題とはなった。ただ、いま振り返って読むと、すでにリリース時点で「用途が良く分からない」と当事者自らが語っているのは良い兆候ではなかったのかもしれない。画像のシーン解析や定点カメラの状態検知、SNS上の画像から特定プロダクトを認識する、などといった用途例を並べた後に、AlpacaDB自身が以下のように書いていたのだった。

「ただ、もちろん、用途は上記だけではないです。正直、プロダクトを作成した僕らもこのサービスで何を生み出すことができるのかわかっていません。画像認識をこれほど簡単にデザインできるプロダクトはこれまで存在しなかったので、これまで一部の人しかできなかったことが、だれでも利用できるようになったことで、たくさんの「新しい用途」が見つかるのではないかと思っています」

リリース数カ月で1200の画像認識分類器と800件のユーザー登録があったものの、確立された新しい用途を短期間で見つけ出すのは容易ではなく、結局ピボットすることに決めた。

横川CEOは、次のように振り返る。「ディープラーニングを活用した画像認識のスタートアップにはmetamindという会社もある。ただ、彼らも迷走している感がある。技術フォーカスじゃないとダメだと考えるあまり、そもそも(ユーザーがほしがるものを作れという)スタートアップの基本が欠けていた。テクノロジーアウトじゃなくて、誰が喜ぶのか考えろよということですよね」。

ならば、デイトレーダーのモデル化を助けるのに深層学習だ! えっ?

同じディープラーニングを活かして今度はデイトレーダー向けのトレーディングプラットフォーム「Capitalico」(キャピタリコ)を開発すべく、AlpacaDBは今日、総額100万ドルの資金調達をしたことを発表した。今回のラウンドで出資するのはイノベーティブ・ベンチャー・ファンドアーキタイプベンチャーズ、エンジェル投資家の木村新司氏、ビップシステムズだ。これまでにAlpacaDBはMOVIDA Japanから500万円のインキュベーション資金のほか、経産省の目利き事業による補助金や日本政策金融公庫の借入などで3000万円ほど資金を調達している。

さて、読者の99%くらいはデイトレーダーではないだろうから、このAlpacaDBのピボットに対して、「デイトレかッ!」というツッコミをしたくなる人が多いに違いない。ぼくはそうだった。

ただ、トレーディングにターゲットを絞ったのは、共同創業者を入れて7人いるメンバーで徹底して議論した末のことだという。

「6月から7月に社内で議論しました。これをやり続けるのならオレは辞めるというメンバーが出るほど議論をした。動画に技術を適用してカメラ監視に特化したらどうかという議論もあって、実際にリサーチも行った。ただ、それができたとしても嬉しくないし、いくらヒアリングしてもハラオチしなかったんです。でもトレーディングであれば、喜ぶ人がいるだろうと。少なくとも自分は嬉しい」

AlcapaDBは2015年7月から3カ月をかけてCapitalicoのMVPを作り、この10月初頭から少数の限定ユーザー向けにβ版を公開している。一般公開は2016年1月を予定している。ディープラーニングを使っているが、画像認識でCNN(Convolutional neural network)を使っていたのに対して、時系列データを扱いやすいRNN(Recurrent neural network)を使うように変更しているという。

横川CEOはもともと慶応大学卒業後に6年ほど大手投資銀行のリーマン・ブラザーズと野村證券にいて金融関連の仕事に就いていた。リーマン・ショック後に野村に移籍して2年ほど経った頃、家庭の事情で実家で仕事せざるを得ない状況となったことから退職。その後の3年間はフルタイムのデイトレーディングをやっていたという。デイトレーディングを生業とする人たちの中には、横川氏のように、ほかにできる仕事がないからという理由でやっている人もいるそうで、そういう人たちを助けたいという思いがあるそうだ。

Capitalicoは、ウェブ上でユーザーがプログラミングを一切必要とせずに自動取引アルゴリズムを生成できるプラットフォームだという。先物や為替取引のためのテクニカルのチャート分析を行うためのプラットフォームで、トレードの意思決定をするためのもの。

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機械学習で何をするかというと、これまでデイトレーダーがやっていた分析、例えば「バックテスト」と呼ばれるモデルの検証を助けること。チャート分析は、各種指標の時系列での動きを視覚化して、そこから法則性を導いて、これをアルゴリズムに落とすというような作業をする。何を指標として自分のダッシュボードにどう表示するかはトレーダーによって異なる。また、どういう時間軸で分析するかもトレーダー次第。

「チャートがこういう動きをしたときには、直後にはこういう値動きがあるのではないか」という仮説を立てて、これを過去のデータに当てはめて検証する。これがバックテストで、こうした解析はかつて簡単なプログラミングができる人たちだけが可能だったという。これをCapitalicoではノンプログラミングで行い、アルゴリズムが手元に溜まっていくようにしていくそうだ。以下は9月にNVIDIAが主催したGPU関連の技術カンファレンスのGTC JapanでAlpacaDBの林佑樹氏が行った説明のスライドだ。

 

「Capitalicoに似たテクニカル分析サービスとして、すでにQuantopianというのがあります。彼らはユーザーにPythonを書かせますが、ぼくたちはそこの部分が勝手にできるものを提供しています」

デイトレーディングは、ごくごく少数の人だけが儲けている上に、極めて投機的なギャンブルのようなもの。勝った、負けたは結果論でしかなく、常に大勝ちしている人がいるのはカジノと同じで単に確率の問題。上位1%とか2%の大金持ちにしたって運を実力だと思い込むギャンブラーと同じではないのか? ということを横川CEOに聞くと、次のような答えが返ってきた。

「デイトレで負けてる人はカンに頼っている人たち。ロジカルじゃないんです。ロジカルに分析して過去に遡って仮説を検証できるようにする。移動平均線のこういう位置関係にあったとき価格がこう動く、というアイデアがあるとき、それが本当なのか、確率はどのくらいなのか。これをノンプログラミングで分析するのがCapitalicoです」

どうして利益が出せるのかといえば、市場のプレイヤーにはいろいろな人がいて、異なる時間軸と思惑で値段を見て売り買いしているからだそうだ。例えば生命保険のALMをやってる人は為替から儲けようということは考えていなくて、ポートフォリオのバランスを取ってるだけ。だから決まった日に銀行に振り込むだけだし、1年単位で数字を見ている。デイトレーダーは1日単位、あるいはもっと短い5分単位のようなチャートを見て稼ぎを取りに行くことができる。

正直ぼくにはデイトレーディングにどういう本質的価値があるのか、そしてそれがどこまで大きくなるのか分からない。横川CEOは「特定のプロフェッショナルをサポートして彼らの業務を自動化していくサービスは経済的に意味がある」としていて、「みんなが特定の価値だけに縛られない生き方ができる世界を目指していて、人類によるお金への依存性が現状よりも少しでも減るような社会が実現されることで僕たちが思い描く世界に近づけるはず」と話している。

ありそうでなかったウェアラブル・トランシーバー「BONX」 スノボ好きの元東大生が開発

“ウェアラブル・トランシーバー”というと既存ジャンルに思えるが、そうではない。日本のスタートアップ企業から面白いガジェットが登場した。2014年11月創業のチケイは今日、「BONX」を発表してクラウドファンディングを通じた予約販売を開始した。予約販売の価格は、1個1万5800円、2個だと1つあたり1万4800円などとなっている。色は4色。出荷は11月末から12月中旬。

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BONXは片耳にぶら下げる小型デバイスで、スノーボードや釣り、自転車、ランニングなど屋外で複数人で遊ぶようなときに仲間同士でリアルタイムで会話ができるというコミュニケーションツールだ。耳に装着したBONXは専用アプリを使ってBluetoothで利用者のスマホと接続する。アプリは3G/LTEのネット通信を介して、ほかの利用者と接続しているので、デバイス(利用者)同士の接続距離は、Bluetoothの制限を受けない。

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ここまで聞くと、Blutoothヘッドセットのような感じと思うかもしれないが、以下の点がBONXではユニークだ。

まず、しゃべっているときだけ利用者の音声を拾って接続中の仲間全員に届ける「ハンズフリーモード」を実装しているのが特徴だ。ハンズフリーモードでは、東大発ベンチャーのフェアリーデバイセズが開発した音声認識技術を使うことで、人間の発話だけを検知している。スノボや自転車だと速いと時速30〜50km程度で動くことになるが、このときの風切音や、周囲を行き交うトラックのエンジン音など、外部ノイズを拾いづらい設計になっている。マイクも2つ搭載してマルチレイヤーによる騒音、風切り対策をしているという。こうした対策がない一般的Bluetoothヘッドセットは、スポーツなどでは風切音で使い物にならなくなる。

従来のBluetoothによる音声通話と、BLEによるスマホとのペアリングという新旧のBluetoothを同時に使う「デュアルモード」を使っているのも実装上の特徴で、これによって高音質と低消費電力を実現している。チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏によれば、バッテリー駆動時間は現在バッテリーモジュールの調達中のために不確定であるものの最低5時間以上は確保できるだろうとしている。

BONXはハンズフリーモード以外にも、「ノーマルモード」を用意している。これは、いわゆるPTT(プッシュ・トゥ・トーク)で、トランシーバーのようにしゃべりたいときに明示的にボタンを押す形だ。ノーマルモードで利用するとバッテリーがより長時間持つほか、音声の遅延が少ないという。ハンズフリーモードでは音声検知をしている分、遅延が入るが、ぼくが量産試作機を実際に少し使ってみた感じでは実用上問題ないレベルのものに感じられたことを付け加えておこう。サーバ側の実装としても、遅延の蓄積が検知された段階で遅延分を無視して、リアルタイム性を優先するような処理を入れるなどBONXでは「スポーツなどでのリアルタイムコミュニケーション」というユースケースに特化した最適化をしているそうだ。この利用シーンについてチケイは「アウトドアで激しい運動をしている最中でも、まるでちゃぶ台を囲んでいるかのような自然な会話ができるというのは、実際に体験として画期的」で、「BONXを使うことで逆に、今までがどれだけ孤独だったのか気づきます」と説明している。

GoProにインスピレーション、スノボ好きの元東大生が起業

チケイを2014年11月に創業した宮坂貴大CEOは、東京大学で修士課程を終えるまで合計8年間大学にいたが、「大学時代は、半分くらいはスノボをやっていて、4年間は北半球と南半球を往復していた」というほどのスノボ好き。2011年4月の大学卒業後はボストン・コンサルティングで戦略コンサルタントとしての道を歩んでいたが、BONXのアイデアを思い付いて2014年8月に退社。もともと「いつかは自分で事業をやりたいとは思っていた」という宮坂CEOは、肥料や農薬を使わない「代替農業」での起業も考えていたが、GoProの華々しい成功にインスピレーションを受けたそう。

チケイ創業者でCEOの宮坂貴大氏

「BONXを思い付いたのは、GoProの事業を見たことがきっかけです。サーファーだった人(GoPro創業者のニック・ウッドマンのこと)が自分自身の姿を撮りたいということでカメラを作ったのがGoProの始まり。個人的なニーズを事業化したわけですよね。これは自分でもできるんじゃないかと思ったんです」。もともとスノボの経験から潜在的ニーズは感じていた。ただ、ニーズがあるならすでに製品があって良さそうなもの。「なぜ今までBONXのようなものがなかったのか?」という問いに対して、宮坂CEOはデュアルモード対応Bluetoothチップが出てきたことや、野外でも電波が入るようになった外的環境の変化を指摘する。

ウィンタースポーツの文脈で言えば、実は日本がウィンタースポーツ大国であるということもある。1992年のピーク時に2000万人いたウィンタースポーツ人口が800万人に激減しているとはいえ、まだまだ多いし回復の兆しもある。規模の違いはあれど、世界にある2000箇所のスキー場の3分の1は日本国内にあるそうだ。宮坂CEOは、すでに電波状況を調べるべく各地のスキー場へ足を運んでいるそうだが、シリコンバレーの人たちが必ずいくスキー場のタホ湖ではケータイの電波が入らないという。つまり、シリコンバレーのギークたちは「雪山なんて電波入らないじゃん」と思っているかもしれず、BONXは日本で生まれるべくして生まれたようなところがあるのだ。ちなみに全世界だとウィンタースポーツ人口は5000万〜1億人程度と言われているそうだ。もう1つのBONXのターゲット層であるサイクリストは数千万人規模。

宮坂CEO自身は文系だが、プログラミングやArduino工作を自分で勉強したりハッカソンに参加する中で、ハードウェア関連スタートアップ企業のユカイ工学創業者で代表の青木俊介氏に出会い、そこからiOSハッカーで知られる堤修一氏などをプロジェクトに巻き込んだ。現在は早稲田大学系VCのウエルインベストメントなどから総額1億円ほどの資金を集め、フルタイム4、5人、フリーランスも入れると14、5人というチームでプロジェクトが動き始めているという。

アイデアの検証は2014年末に開始して、今は量産試作段階。この11月にも深センでの量産を開始する。ハードウェアスタートアップが深センで量産するというと、予期せぬトラブル発生という事態も脳裏をよぎるが、実はプロジェクトチームには元エレコムのデザイナーが立ち上げたデザイン事務所が入っていて、深センでの発注経験があるエレコム時代のチームでやってるのだとか。国内GreenFundingでのキャンペーンを終えたら、第2弾として来春にはKickstarterでのキャンペーンも予定している。第2弾では、よりスポーツに適した性能を発揮するモジュールを組み込むアイデアもあるそうだ。

さて、BONXを発表したチケイだが、実は11月17日、18日に渋谷ヒカリエで開催予定のTechCrunch Tokyo 2015のスタートアップバトルのファイナリストとして登壇が決定している。書類審査による予選を勝ち残った12社のうちの1社だ。まだチケットを販売中なので、ぜひチケイのようなスタートアップの勇姿を会場に見に来てほしい。

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ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社、共同通信デジタルと資本業務提携

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役の

JX通信社代表取締役の米重克洋氏(左)と取締役COOの細野雄紀氏(右)

ニュースアプリ「Vingow」などを開発するJX通信社は10月15日、共同通信デジタルとの資本業務提携を実施したことを明らかにした。資本提携として、共同通信デジタルを割当先とした第三者割当増資を実施。金額は非公開だが、関係者らによると億単位の資金を調達しているという。

「NewsDigest」

「NewsDigest」

JX通信社は2008年の設立。2012年10月よりVingowを提供している。Vingowは、ユーザーがあらかじめ登録したキーワードに対して、最適なニュースを閲覧できるというニュースアプリ。その仕組みを実現するために、同社では独自のエンジンを開発。ネット上の記事をクロール・自動解析・要約している。

Vingowで行っている記事の収集から整理・編集・発信のという一連のプロセスを、SaaS型のニュースエンジン「XWire(クロスワイヤ)」としてニュースサイトなどに提供しているのが同社のコア事業だ。大きなところでは、T-MEDIAホールディングスの運営するポータル「T-SITE」などへの導入実績がある。

また2015年には、速報配信に特化したニュースアプリ「NewsDigest(ニュースダイジェスト)」の提供も開始。ダウンロード数は数十万件だが、速報ということでプッシュ通知も積極的に行っていることもあり(もちろん設定でオフにできる)「起動回数やアクティブ率は他のニュースアプリと比較しても非常に高いのではないか」(JX通信社代表取締役の米重克洋氏)という。
さらにこのNewsDigestをベースにした法人向けの速報検知サービス「FASTALERT」も開発。大手メディアや金融機関を対象に提供していくという。

速報検知の仕組みについて聞いたところ、「Vingowで1日5万件の記事を解析してきた。その中から例えばどういった単語がニュースに使われるかなどのデータを蓄積している。人によってはビッグデータと呼ぶかも知れないが、そういった情報をもとにニュース性を見ている」(米重氏)とのこと。

これについては同社取締役COOの細野雄紀氏が例を挙げて説明してくれたのだが、例えば「ソーシャルネットワーク上で話題になっている記事」という切り口だけで速報のニュースを集めようとすると、2ちゃんねるのまとめ記事なんかも頻出するそうだ。そこでその内容を「ニュースそのもの」かどうか、すばやく正確に判定するために、Vingowで培ってきたノウハウが生きているという。

今回の資本業務提携により、JX通信社は自社の技術を共同通信グループの報道現場に応用する取り組みを協力して進めるとしている。また共同での新製品開発も検討するほか、XWireの拡販などでも協力していくとしている。

ツイキャスがゲーム実況配信に向けて機能を強化、Twitchやニコ生を追随

twicas2014年にはAmazonがTwitchを買収、2015年8月にはYouTubeも専用のチャンネル「YouTube Gaming」を立ち上げたように、ゲーム実況のストリーミングは世界的なトレンドの1つとなっているようだ。日本だと「ニコニコ生放送」がその文化を作ってきたし、ディー・エヌ・エー(DeNA)も8月にスクリーンの様子をリアルタイムで配信できる「Mirrativ」をリリースして好調だと聞く。

そんなゲーム配信の領域にモイのライブ配信サービス「TwitCasting(ツイキャス)」も参入する。同社は10月14日、ツイキャスにて、外部ツールを使った配信に対応したことを明らかにした。これはゲーム実況配信での利用を想定したものだ。

ツイキャスは4月時点で1000万ユーザーという数字を発表しているが、配信者として最も多いのは、雑談をする女の子。つまりは日常的なことを配信するユーザーだという。ツイキャスのユーザーの6割は女性で、それも10〜20代が過半数。そんなユーザー層もあいまって、「ゲームの実況をしている人は少なかった」(同社)のだという。ツイキャスはアプリによる配信が半分以上だと聞くが、それではテレビ画面を配信すると粗くなってしまう。こういったことも背景にあるのだろう。

だが一方で、ゲーム実況はライブ配信の中でも世界的な盛り上がりを見せている領域。新たなユーザー層を拡大すべく、ニコ生の配信者なども利用する動画配信ソフト「Xsplit」をはじめとした外部ツールへの対応を行ったという。またこれにあわせて、ツイキャス内にゲーム関連の10カテゴリを設置。視聴者の導線も整えた。

では既存のサービスではなくツイキャスでゲーム実況配信をする配信者側のメリットは何なのだろうか。モイによると「プッシュ通知とSNS連携」なのだそう。実況開始時にツイキャスのアプリでプッシュ通知が行われるほか、コメントがTwitter投稿と連携することで、「(ツイキャスというサービスの中に閉じることなく)SNSなどの『外』に情報を発信できることで視聴者が増えることは確信している」(モイ)ということだ。

スマホ買取価格比較サービス「ヒカカク!」運営のジラフが4120万円の資金調達

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スマートフォンやパソコンの買取価格比較サイト「ヒカカク!」やスマートフォンの修理価格比較サイト「最安修理ドットコム」を提供するスタートアップのジラフ。同社は10月13日、East VenturesとTLMおよび個人投資家、新たにCOOとして参画する柴田雅人氏などから合計4120万円の資金調達を実施したことをあきらかにした。

ジラフの創業は2014年10月。創業間もなくEast VenturesとTLMからシードマネーを調達しており、2つのベンチャーキャピタルから追加投資を受けるかたちとなる。

以前の記事でも紹介したが、ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏は、もともと新卒でベンチャーキャピタルから内定をもらっていたという人物。スタートアップ関連イベントのスタッフなどで活躍する中、投資ではなく自ら起業するという選択肢を選んだ。創業前の2014年9月からスタートしたヒカカク!は、月間のユニークユーザーが15万人ほど。「ベースは少ないが、月ごとに40%程度の数字で成長している」(麻生氏)。20〜30代男性のユーザーが多いこともあり、直近ではその世代にも刺さるような「時計」や「ロードバイク」といったカテゴリの買取価格情報も掲載している。

「価格比較」と聞くとどうしても価格.comなどを浮かべてしまうが、麻生氏いわくヒカカク!とはユーザーのニーズが全く違うモノだという。「他社の比較サービスが強いのはレビューなどの情報であり、モノを売る際の窓口になりきっているかというとそうではない。サービスとしては別物ではあるが、まだフリマアプリなどのほうが競合に近いかもしれない」(麻生氏)。将来的には「『モノを売る』となったときの最初のレイヤーになりたい」とのこと。何かを売りたいユーザーが価格をヒカカク!で調べて、そのあとは買取の実店舗やオークション、フリマアプリなどほかのサービスに繋ぎ込むような世界観を目指すという。

同社では今後、サービス開発とサイト内のコンテンツ充実に注力する。「(価格を登録する)買取業者にとってもユーザビリティの高い裏側の仕組み作りはこれから。買取業者はまだアナログ。ウェブ集客の価値や自社でやる以上の(ヒカカク!というプラットフォームを使う)コストメリットを伝えていく」(麻生氏)

インターンシップ市場は拡大するか? 就活の新しいあり方を提案する「InfrA」がローンチ

結婚情報誌ゼクシィが2010年に実施したアンケート調査によれば、今や結婚するカップルの7割が結婚前に生活をともにする、いわゆる「同棲」を経験している。これを読んでいるTechCrunch Japanの若い読者にはピンと来ないかもしれないけど、ほんの一世代とかふた世代前までは「婚前交渉」というインビな言葉があったくらい、結婚前に生活をともにするなんてトンデモナイと考える人が少なくなかった。でも、一緒に暮らしてもみずにいきなり結婚なんて恐いよね。

就活にも似た事情があると思う。採用する企業にしてみても、これからキャリアをスタートしようという学生にしてみても、「本当にコイツでいいのだろうか? ちょっと試せるなら試してみたい」という気持ちがあるのが本音だろう。一緒にやってみれば、価値観や相性が分かる。エントリーシートの文章を表面的に洗練させるだけ洗練させ、大量に送って、大量に見るのなんて不毛なのかもしれない。

そんな時代背景から、本誌でもお馴染みのWantedlyのような、職探し・人材探しの新しいカタチが出てきているが、この問題の当事者の一方である学生起業家によるスタートアップのTraimmuが、つい先ほど、インターンシップ関連サービスの「InfrA」(インフラ)をローンチした。

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成果報酬型でインターンシップのマッチング

InfrAは学生向けインターンシップの掲載媒体として機能する。現在参加企業はリクルートホールディングス、弁護士ドットコム、グロービス、トレンダーズをはじめ、スタートアップ企業のC Chanel、ZUU、ユーザーベース(NewsPicks)、Rettyなど30社。実際にインターンシップが決まれば企業はInfrAに対して成果報酬を支払う。この市場ではインターンシップ1件につき平均10万円程度の支払い発生するが、InfrAではその半分程度という。

インターンシップ期間終了後に、企業側から学生に対して定型フォーマットに従ったフィードバックが行われるのがInfrAの特徴だ。この夏に大阪大学を中退した、Traimmu創業者の高橋慶治氏は、以下のように話す。

「フィードバックが学生のマイページに表示されます。フィードバックには4項目あって、採用理由、インターンシップで取り組んだ内容、インターンシップ生の強み・弱み、改善の提案です。学生がインターンシップを希望する理由は、自己の成長と就職のため。フィードバックは学生にとって非常に重要です」

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Jobwebの調査によれば、約85%の学生がインターンシップを選ぶ際に「フィードバックがもらえるか」を重視している一方、これまでのインターンシップは、ただ参加して終わりというものが多かったという。ここには終了時に社員に聞きづらかった、という学生側の事情もあるようで、それを解決するのが、インターン終了後に現場社員から必ずフィードバックがもらえる仕組みというわけだ。「参加して終わりではなく、成長に活かせる。学生ファーストで考えています」(高橋CEO)

プロジェクト参加など実績を可視化し、そのままエントリーシートに

このフィードバックは、仕事やプロジェクトの内容のみが公開され、それ以外は本人にしか見えない非公開となるが、そのままエントリーシートとして使えるようにするという。11月には就職活動用ページを用意する。「これまでのエントリーシートは文字ベースで学生時代の取り組みを書くもので、形骸化していた。InfrAではプロジェクト参加履歴など経歴を可視化し、データとして蓄積していきます」(高橋CEO)

過去に参加したインターンシップのほかにも、留学経験やゼミ・研究室での成果、学外でのプロジェクトなどの経歴を時系列順に追加していくことができるという。

Traimmuは、2015年6月にコロプラネクストからシード資金を得て、インターンを含めて7人のチームでスタートを切っている。TraimmuがInfrA公開前から運営しているウェブメディアで、月間12万人の学生が読む(16万UU)「co-media」と連携することで、知名度が低く学生へのリーチが難しいスタートアップのリアルな姿を伝えるなどしていくという。

また、InfrAでは地方学生向けの就活シェアハウスを経営する「地方のミカタ」と提携することで学生に対して安価に住居を提供するそうだ。高橋CEOによれば、現在学生たちの間でインターン経験者は増加中とか。

「ここ2、3年は増えていますね。1日とか1週間程度の短期インターンだと周囲で8割程度が経験しているイメージです。中長期のインターンシップは比較的少なく、経験者は1〜2割です。IT系やスタートアップ・ベンチャーが多いですが、中長期的には大手や外資系でも増えていくのではないかと思います」

「一度企業と接点をもっている学生は、自分の尺度、自分の目で見ることができるようになります。企業文化を知った上で納得して企業選びもできる。企業にとってはミスマッチを減らせるのがメリットです。入社してからギャップを感じて3年以内に退職する離職率が厚生労働省が毎年発表している統計では約30%だと言われています。1人あたり200〜300万円をかけて学生を獲得している企業には厳しいです。インターンシップは、企業と学生の熱量をすり合わせる重要な作業です」

元ピムコジャパン社長の高野真氏がGenuine Startups共同代表に——大企業との“橋渡し”を強化

左からGenuine Startupsの伊藤健吾氏と高野真氏

シードアクセラレーターのMOVIDA JAPANからスタートアップ投資の機能をスピンアウトして生まれたGenuine Startups。現在2号ファンドの組成中であるこのベンチャーキャピタルに元ピムコジャパン取締役社長で、アトミックスメディア代表取締役CEO、フォーブスジャパン発行人兼編集長の高野真氏が共同代表参画した。同氏はすでにGenuine Startupsの株式の4割を取得しているという。

MOVIDA JAPANは創業期のスタートアップに対して、育成プログラムと数百万円規模のシード投資を行っていた。これはMOVIDAの代表であった孫泰蔵氏やMOVIDAから独立したGenuine Startups代表の伊藤健吾氏が、シリコンバレーのようにスタートアップが数多く生まれ、そのほとんどが死に、残った中から優れたプロダクトが生まれるという「多産多死」モデルの構築を提唱するところからスタートした。

伊藤氏はMOVIDAから始まった投資活動や、周辺環境の変化によって「起業への世の中の見方は心理的なハードルは下がったのではないか」と振り返る。そして次の課題は「成功件数を増やすこと」だと語る。実際にMOVIDA、Genuineからは多くのスタートアップが生まれ、次のシリーズでの資金調達を成功するケースもある一方、まだIPOなど大きなイグジットが発表されていない状況で次の課題解決を掲げるのに違和感がないわけではないが、実際起業に対するハードルは心理的な側面だけでなく、資金、インフラなどさまざまな面で下がったのではないだろうか。

そうは言ってもスマートフォンアプリを作れば当たるという時代ではない。伊藤氏は「アプリのゴールドラッシュは終わった。インフラは早くなり、端末は優秀になった。クラウドで大量のデータも活用できるようになった。今後は既存のインダストリのプレーヤーと組んでいくことがトレンドになるし、買収にも繋がっていく。2号ファンドではその領域で投資をやっていきたい」と説明する。2号ファンドでは、食・農業、環境・エネルギー、金融、物流、教育、エンタープライズといった領域に投資していくのだという。

そこで課題となるのが既存のプレーヤーとの“橋渡し”だ。「大企業とスタートアップの連携」なんて言葉はこの数年いろんなところで聞いたし、大企業がスタートアップのサービスを導入するといった「お付き合い」程度の話はあっても、協業や買収といった規模感での連携はそうそう生まれてこない。そこで、もともと大企業や政界との親交が深く、個人でもスタートアップへの投資(Origamiやエニタイムズなどが同氏からの調達を発表している)を行う高野氏を共同代表に迎えたという。

「エスタブリッシュ層とのつながりを考えるとベテランの人と組みたいと考えていた。6月末に高野さんと出会い、8月末には共同代表になってもらった」(伊藤氏)。「政策的にもベンチャーは重要。Forbesでもそれを後押ししたいと思っていた。(孫)泰蔵さんとも、ベンチャーだけではなく大企業を巻き込んでいかないといけないと話していた。伊藤君は専門性やコネクションを持っており、僕は(エスタブリッシュ層)のバックボーンを持っている。サイロ型ではなく、広がりのあるビジネスを作っていく」(高野氏)

では具体的にはどういったことをやっていくのか? 2号ファンドでは今後、シード期のスタートアップに対して2000万〜3000万円程度の出資を行うほか、大企業が課題などを公開し、それに対して最適だというスタートアップが手を挙げるというようなビジネスマッチングも検討中だという。2号ファンドでは20億円規模のファンドを組成を目指す。

ところでForbesという雑誌の代表を務める高野氏が投資に携わることで、自らの手がけるメディアの内容にバイアスがかかったりしないのだろうか? これに対して高野氏は「(Forbesでは)提灯記事はいくらお金をくれてもやらない。なぜそんなことができるか? それは編集長がCEOだから。ビジネスのためにオーナーの顔を見る必要はない」と回答している。

物理演算ゲームBrain Dotsに自分でステージを作れる「ビルダー機能」が搭載された

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トランスリミットが提供する物理演算パズルアプリ「Brain Dots」。当初300までだったステージ数も現在は500以上にまで拡大したが、ヘビーユーザーはすでに全ステージをクリアしているそうで、同社にはステージ追加の要望が寄せられている状況だ。

そんなBrain Dotsが10月1日にバージョン2.0のアプリの提供を開始した。その目玉となるのが、ユーザーが自らステージを作成し、他のユーザーと共有できる「ステージビルダー機能」だ。

ステージビルダー機能を使えば、ユーザーはBrain Dotsのステージを構成する様々なパーツを自由に配置し、新たなステージを作成できる。作ったステージは、作成したユーザーがクリアすると公開可能になる。公開されたステージは世界中のユーザーがプレイしたり、評価・お気に入り登録したりできる。

コンシューマーゲーム機のWii Uにおいては、9月に任天堂が「スーパーマリオメーカー」というタイトルをリリースしている。これは人気アクションゲーム「スーパーマリオブラザーズ」のステージを自ら作成し、世界中に公開できるというもので、ソーシャルネットワークを見ると非常に人気を博しているようだ。今回のステージビルダー機能のコンセプトはこれに近いだろう。トランスリミットでは新機能によって、「Brain Dotsはユーザーが作りユーザが遊ぶプラットフォームとして生まれ変わる」と説明している。

ちなみに最新のダウンロード数やアクティブユーザー数については聞けなかったが、「ダウンロード数は伸びているし、継続率は非常にいい。(アクティブについては)リリース当初の勢いがもの凄かったので目減りしている感はあるが、もうひと山作っていく」(トランスリミット代表取締役の高場大樹氏)とのこと。

ステージビルダー機能のイメージ

ステージビルダー機能のイメージ

花と植物がテーマのメディア「LOVEGREEN」、運営会社が資金調達

lovegreen

インキュベイトファンドが運営する起業支援プログラム「Incubate Camp 8th」にも参加していたストロボライトが9月30日、アイモバイル、SMBCベンチャーキャピタル、プライマルキャピタル、個人投資家より資金調達を実施したことを明らかにした。調達額は非公開。

ストロボライトが手がけるのは、花や植物を中心とした生活「ボタニカルライフ」の支援をテーマにしたメディア「LOVEGREEN」だ。日本にも進出する米houzzやDeNA傘下のiemoが住宅をテーマにしたメディアというならば、LOVEGREENはその植物版といったところだろうか。

ボタニカルとは、「植物の」という意味。2014年頃から飲料や美容関連の商品などでもそのキーワードが使われるようになってきた。実際アパレルやインテリアショップでも植物を販売しているケースをよく見かけるようになった気がするのだが、ストロボライト代表の石塚秀彦氏によると、「20〜40代、今までのコアな園芸層とは違う新しい層が購入している」のだという。

Instagramのハッシュタグを見ても、「#花」の投稿数は「#ファッション」の2倍なのだとか。もちろんファッションもアイテム名やブランド名、植物も品種名など粒度の違うハッシュタグが数多く存在するのでこの「2倍」という数字をそのまま人気のバロメーターと考えるわけにはいかないだろうが、植物に今までとは違う層の注目が集まっているというのは事実だろう。

その一方で、実はこれまで特化したスマートフォン向けのメディアはあまりなかったと石塚氏は説明する。キュレーションメディアなどでも花や植物を扱う記事はあるが、それはコーディネートやデザイン的な見方が中心。「育て方などについて困った際、頼るメディアやコミュニティがない状況。そういうニーズも解決していきたい」(石塚氏)。今後は広告や店舗課金、ECなどでのマネタイズを検討する。

モバイルポータル「Syn.」参画のスケールアウト・nanapi・ビットセラーが合併、新会社は「Supership」に

supership2014年10月にKDDIが主導して立ち上げたモバイルインターネット向けの新ポータル構想「Syn.」。昨年11月には僕らのイベント「TechCrunch Tokyo 2014」でもその詳細を聞くことができたし、参画企業のサイト・アプリにはSyn.の独自メニューが付くなどしていたのだけれども、発表から1年が経過して1つ大きな動きがあったようだ。

Syn.に参画し、KDDI傘下となっているスケールアウト、nanapi、ビットセラーの3社は、11月1日(予定)を効力発生日として合併することを明らかにした。新会社名は「Supership株式会社」となる。新会社の代表には、KDDIにおけるSyn.構想の立役者であり、Syn.ホールディングスおよびビットセラーの代表取締役を務める森岡康一氏が就任する。

今後は各社で展開していた広告、インターネットサービス、プラットフォーム事業等の事業基盤を活用。「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもとで新サービスを提供するとしている。具体的なサービスについては現時点では明らかにされていない。また、各社で提供するサービスについては、引き続き利用できる。

またSyn.ホールディングスでは同日、あわせてアップベイダー、Socketを子会社化したことも明らかにしている。

英国発の日本人スタートアップ・エネチェンジ、電力自由化に向けサービスを開始

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

先週僕は米国サンフランシスコで開催されたTechCrunchのイベント「Disrupt San Francisco 2015」に参加していた。そこで衝撃的だったことの1つは大麻に関する新メディア(ラッパーのSnoop Doggが10月に「Merry Jane」なるサイトを立ち上げる)や大麻ショップ向けのPOSシステム「Green Bits」が、そのステージで発表されていたことだ。

日本で生まれ育った僕としてはテック系のイベントでこういう話が出ること自体が驚きだが、米国では医療用に加えて娯楽用での大麻の使用を認めている州が複数存在しており、その数は増えつつあるという。その是非はさておき—1つはっきりと言えるのは、今まさに新しいマーケットが生まれており、スタートアップが活躍するチャンスがあるということだ。

では日本にはそんな新しいマーケットがあるのだろうか? 僕が最近よく聞くキーワードは2つ。2020年の東京五輪を見据えた「インバウンド」、そして2016年4月よりスタートする「電力自由化」だ。今回はその電力自由化のマーケットにチャレンジするスタートアップ、エネチェンジについて紹介する。同社は9月30日より、電力の価格比較サイト「エネチェンジ」において、専用ダイヤルでオペレーターが電力会社選択の相談・支援を行う「エネチェンジ優先予約」をスタート。電力自由化に向けてサービスを本格化する。2016年の年始にも各電力会社から価格等が発表されると見られるが、それ以降はより具体的な乗り換えプランの提案などを行う予定だ。

エネチェンジ優先予約

エネチェンジ優先予約

英国発の日本人スタートアップがそのルーツ

エネチェンジは2015年4月の設立。そのルーツは英国発のスタートアップだ。もともとは建築・エネルギー事業を手がけるJASDAQ上場のエプコの代表取締役 グループCEOの岩崎辰之氏や、英・ケンブリッジ大学の卒業生らが英国で2013年に電力関連の技術を研究する「Cambridge Energy Data Lab」を設立。そこで電力データの解析をはじめとして研究やサービス開発を進めていたが、そこから価格比較サービスを切り出す形で日本にエネチェンジを立ち上げた。

エネチェンジの代表には、同ラボの創業メンバーである有田一平氏が就任する。有田氏はJPモルガンで債権やトレーディングなどにかかわるシステムの開発に従事。その後グリーの海外向けプラットフォームの開発に携わった。

ところでこのエネチェンジ、なぜ英国発なのか? それは英国が2002年から電力自由化を進めており(ヨーロッパ各国は2008年までにすでにほとんどの国が電力を自由化している)、なおかつ経済規模が大きく、かつ地理的には島国という、日本のモデルとなる環境なのだそうだ。そこでの研究成果を日本の市場に生かす考えだ。

ミログ創業者の城口氏が創業メンバー・アドバイザーに

エネチェンジ創業メンバーの1人であり同社のアドバイザーを務めるのは、ケンブリッジ大学で電力データ解析の研究を行う城口洋平氏。同氏はかつてはAndroidのログ解析サービスを提供するミログを立ち上げた人物だ。ミログは2009年に創業したが、ユーザーの同意を得る前にデータを収集・送信するという仕様が問題となりサービスを終了。2012年に会社を解散した。城口氏はその後渡英し、現在はケンブリッジ大学で日本人唯一の電力データ研究者として活動している。

城口氏によると、英国では電力自由化に伴って、「『ライフネット生命』モデルと『ほけんの窓口』モデルの新会社が登場した」のだという。もちろん前述の2つのサービス名は例でしかないが、要は新興の電力会社と、その販売窓口が生まれたそうだ。前者は相当の資金力が必要となるし、競合となる既存の電力会社は巨大だが、後者はスタートアップでも比較的挑戦しやすいマーケット。2006年にスタートした価格比較サイト「uSwitch.com」は1億6000万ポンド(約291億円)で売却されるなど、イグジット実績も出ている。

ちなみに日本の電力市場は約7.7兆円。オール電化や電気自動車の登場を背景にしてオールドエコノミーながらまだまだ成長している領域でもある。すでに価格比較サービスの価格.comでも電力比較のサービスをスタートしているし、他にも競合サービスを準備中のスタートアップがあるとも聞いている。

エネチェンジはすでにエプコやB Dash Venturesから合計2億2000万円を調達している。今後は採用やカスタマーサポートの強化、電力自由化に関する啓蒙も含めた広報・宣伝活動などを進める。また本日より、タレントのデーブ・スペクター、京子スペクター夫妻が広報アドバイザーとして就任するという。

【詳報】ソラコムがベールを脱いだ、月額300円からのIoT向けMVNOサービスの狙いとは?

ソラコムがステルスで取り組んでいた新規プラットフォーム事業の詳細を明らかにした。ソラコムは、元AWSのエバンジェリスト玉川憲氏が2015年3月にAWSを退職して設立したスタートアップ企業で、創業直後に7億円というシードラウンドとしては大型の資金調達が注目を集めた。TechCrunch Japanは発表直前にソラコムに話を聞いてきたので詳しくお伝えしたい。

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提供を開始したSIMカードを手にするソラコム創業者で代表の玉川憲氏

ソラコムが取り組むのは、IoT向けの格安MVNOサービス「SORACOM Air」だ。これだけ書くと、何だまたもう1つ別のSIMカード提供会社か登場したのかと思うかもしれないが、2つの点で注目だ。

1つは、利用用途によっては月額利用料が300円で済むという衝撃的な安さ。これだけでもIoTや業務用スマホ・タブレットの全く新しい市場を切り開く可能性がある。

さらにもう1点、ソラコムの新プラットフォームが注目すべき理由は、基地局だけ既存キャリアのシステムを流用していて、残りをソフトウェアで実装している点だ。通信キャリアはもちろん、従来のMVNO事業者は、パケット交換、帯域制御、顧客管理、課金など、キャリア向けの専用機器を利用していた。ソラコムでは、この部分をAWSのクラウド上に展開したソフトウェアで置き換えてしまった。

これは単に運用コストの削減に繋がるだけでなく、高い柔軟性とスケーラビリティーを確保できるということだ。例えば、SIMカードを搭載したデバイス、もしくはそのデバイスを管理するサービス側からソラコムのAPIを叩いて通信速度をダイナミックに変更できたりする。これは、ちょうどAmazon EC2でインスタンスをソフトウェア的に切り替えるような話だ。暗号化通信もクラウドの豊富なコンピューティングリソースを使うことでソフトウェア的に簡単に実現できてしまう。AWSでサーバーがプログラマブルになったように、ソラコムは通信サービスをプログラマブルにしてしまうということだ。

IoTで未解決だった「通信とセキュリティー」問題を解決する

ソラコムの狙いと、今後のビジネスモデルの話は、創業者である玉川憲氏の経歴に重ねて説明すると分かりやすいかもしれない。

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WatchPad

玉川氏は東京大学大学院機械情報工学科修士卒で、日本IBMの基礎研究所でキャリアをスタートしている。2000年ごろ、IBMで「WatchPad」と名付けられた今で言うスマートウォッチを作っていたそうだ。製品化には至らなかったものの、Linux搭載で腕に巻きつけられる超小型コンピューターとして当事非常に大きな注目を集めた。

「2000年にIBMの基礎研でWatchPadを作っていたのですが、その頃からIoTの課題って変わってないなと思っています。1つはバッテリーが持たないこと。10年かかって2倍にもなっていませんよね。10年で100倍速くなっているコンピューターとは違います。もう1つはネット接続。近距離無線は進化しているものの、まだまだネット接続が難しいのが現状です」

「もう1つ未解決なのはセキュリティーです。デバイスで暗号化をすると小型化や低コスト化ができません」

ソラコムでは、通信とセキュリティーについての回答を用意したという。

近距離通信としてはBluetoothが普及しているし、家庭内のWPANとしてZ-WaveやThread、Weave、ZigBeeなどの規格もある。しかし、これらはスマホやハブといったアップストリームにぶら下がった端末までの接続のためのもので、ネット接続ではない。一方、Wi-Fiは小型デバイスにとっては難しい。玉川氏によれば、これまでモバイル通信は、おもにヒト向け。「IoT向けのモバイル通信を作りたい」と考えて立ち上げたのがソラコムだという。

従来のMVNOと違って専用機材ではなく、クラウド上に各機能を実装

モバイル向け通信に参入するといっても、「全国に設置した基地局だけで1兆円ぐらいのアセット。パケット交換や帯域制御、顧客管理、課金といった部分で数千億円規模の投資。さらにISPも入れて、この3つをやって初めて通信キャリアなわけですが、われわれは、そうはなれません」という。

「一方、MVNOといえば、楽天やイオン、DMMが参入しています。これは(1契約あたり)2000円で仕入れて2500円で売るというビジネスで、ブランドや販売網があればできますが、これもわれわれにはできないし、テクノロジーのビジネスでもありません。われわれがやるのは基地局だけをレイヤー2接続の契約で利用して、残りはクラウドネイティブで提供するというモデルです」

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従来のMVNOの接続では、キャリアが持つ基地局からパケットが飛んでくるゲートウェイに続けて、MVNO事業者が利用者認証や課金管理、利用者ごとのポリシー適用のための機材などをそれぞれ用意する必要があった。ここはエリクソンなど専用ベンダーが提供するハードウェアの世界。ここの機能群をAWSのクラウド上にソフトウェアで実装したのがSORACOM Airで、クラウドの特徴であるスケーラビリティーの高さがメリットだ。玉川氏は「人口の10倍とか100倍のデバイスが繋がってきても対応できるような、IoTに特化したバーチャルキャリア」と、そのポテンシャルを説明する。

スケーラビリティーは上限のほうだけなく、小さい単位から即利用できるという点にも当てはまる。例えばデバイスとサービスを統合したソリューションを展開する企業が通信部分が足りていないようなケース。

「従来のMVNOだとSIMカード2000枚以上、500万円以上からと言われたような話が、SORACOM Airなら1枚から利用できる。誰でも通信キャリアになれるというモデルで、自在に値付けしてビジネスができます」

クラウド上に実装された通信管理機能には、AWSクラウドと同様にWebコンソールからでも、APIからでも操作可能で、複数SIMを一括操作するようなことができる。各端末からでもサービス側からでもAPIを通して、各SIMの通信状態の監視や休止・再開、速度変更といったことができる。

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SORACOM AirのSIMカードは20枚で1万1600円(1枚580円)など。月額基本料金は300円で、32kpbsだと1MBあたり上り0.2円、512kbpsで1MBが0.24円。上り・下りで料金が違ったり、夜間割引も適用されるなど明朗会計だ。料金設定はAmazon EC2のインスタンスサイズを選ぶようなイメージだ。将来的にはニーズに応じて料金を変動させる「スポットインスタンス」のようなことも、アイデアとしては検討しているそうだ。以下がSORACOM Airの価格表。s1.minimumとかs1.fastとか、何だか見慣れた命名規則だ。

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SORACOM Beamで暗号化やルーティングなど高度な処理をクラウドにオフロード

IoTで未解決だった問題として、玉川氏はセキュリティーを挙げていた。これについてはクラウドで潤沢なリソースを使った「SORACOM Beam」というサービスで解決可能だという。SORACOM Beamはデバイスとサービスを繋ぐ通信経路を暗号化したり、ルーティングするサービスだ。

セキュアな通信を行うには暗号化が必要だが、小型デバイスに暗号化処理をやらせるのは重たい。ただ、もともとキャリアのパケット網はゲートウェイ部分まではセキュアなので、ソラコムにパケットが入ってきてインターネット側のシステム(サーバー)へと繋ぐ部分を暗号化すれば良いだけだ。そこで、

・HTTP→HTTPS
・MQTT→MQTTS
・TCP→SSL

という変換をソラコムのクラウド上で行うことで、重たく面倒な処理はデバイスではなくクラウドで済ませることができる。実際、車いす開発のWHILLは、バッテリーをできるだけ使わずにセキュアに見守りシステムを作ることを検討していて、こういうケースだと「TCP→SORACOM Beam→HTTP」とすることで、デバイス側の負荷をオフロードできるのだという。タイムスタンプやSIMのIDもソラコム側で分かるし、カスタムヘッダを付けてHTTPSで送ることもできる。そして、これがまた重要だと思うのだけど、こうした設定はすべて、デバイスの設定に触れることなくAPIで変更ができる。出荷したIoTデバイスに触れることなく、サービス改善や新規サービス開発が可能ということだ。

ソラコムでは今回、デバイスやソリューション、インテグレーションのサービスを提供するパートナープログラム(Soracom Partner Space)を発表している。現時点では、以下のような企業がテストしているそうだ。

・内田洋行:IoT百葉箱
・リクルートライフスタイル:無料POSレジアプリ「Airレジ」にSORACOM Air搭載、イベント会場で1カ月だけ臨時店舗運営
・フォトシンス:スマートロックのAkerunで応用、カギを開けるときには低速、ファームウェアのアップロード時には転送速度をアップ
・フレームワークス:物流システムにおける動態管理システム。トラックにスマホを搭載してGPSデータだけを利用。業務時間のみの小容量の通信
・キヤノン:事務機器でSORACOM Airの実証実験
・東急ハンズ:業務システムのバックアップ回線として利用
・Global Mobility Service:フィリピンでクルマにSORACOM Airを搭載。割賦未払いの利用者のクルマを遠隔地から停止

いろいろな実験的取り組みがベータ期間中にも出てきているが、ソラコムの新サービスは、Amazon S3が出てきたときと似ているかもしれない。S3のリリース初期には開発者だけではなく、個人利用で使ってしまうパワーユーザー層にもアピールしたものだ。SORACOM Airも1枚880円からAmazonで購入できるので、何かのアプリが出てきて個人ユーザーが使うような事例も出てきそうだ。

Amazon同様に継続的な値下げ努力とイノベーションで競合に勝つ

ステルス期間は別として、ローンチしてしまえばアイデアは自明だし、ソフトウェアの話なので誰でも実装できるのではないだろうか。競合が出てきたときに、ソラコムではどうやって戦っていくのだろうか。

「ソラコムは、モバイルとクラウドが融合した初めての形と思っています。単純な通信ではなく、暗号化したり、認証したりという付加価値があます。新機能や新サービスも開発していきます。まだ2つ3つは温めているアイデアがありますし、実際にお客さんと話している中でニーズが見えてくる面もあります」

「これはAWSが出てきたときと似てるなと思っています。AWSはクラウドです。当事は、うちもクラウドですといってプライベートクラウドみたいなのが、たくさん出てきましたよね。でも、その多くはあくまでもサーバー仮想化の話であって、AWSがやっているようなクラウドネイティブではありませんでした。ハードウェアを仮想化して、物理サーバー上に仮想マシンを複数設置しましたという程度にすぎなくて。もちろん仮想化は仮想化で価値はあるんですけど、瞬時に使えて、いつでもやめられて、いくらでもスケールできるというクラウドとは違いますよね」

「もしソラコムが取り組む市場が良い市場だとしたら、今後は競合がたくさん入ってくるはずです。でも正しいアプローチでやれる企業は少ないと思うんです。いつでも始められて、いつでも利用をやめられて、APIが備わっていて、自動化ができてという。そういうことを質実剛健にやっていけるような企業は少ない」

「われわれも運用コストに少しだけ利益をのせて回していくのですが、Amazonみたいな薄利多売モデルで、どんどん価格を下げていきます。Amazonにいた私からすると当たり前のことですけど、ふつうはそうじゃありません。多くの企業は大きな利益を取っていくので、同じアプローチを取る会社が多いとは思っていません」

「かつてAWSがでてきて、その結果、InstagramやDropbox、Pinterest、Airbnb、Uberといったサービスが出てきたみたいに、ソラコムのようなプラットフォームによって、きっと面白いIoTが出てくるんじゃないかなと思います」

“学生起業”の挫折乗り越えたアトコレ、メンバーズ傘下に——今後はインバウンド向けメディアを運営

アトコレの石田健氏(中央)、右からサムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

アトコレ(現:マイナースタジオ)の石田健氏(中央)、サムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

2011年9月に設立された学生スタートアップのアトコレ(9月に社名をマイナースタジオに変更)。同社をメンバーズが買収することが明らかになった。買収額は非公開。関係者によると数億円程度になるという。

創業間もなくメンバーが会社を離れることに

同社は創業時にはサムライインキュベートからシードマネーを調達。アート作品に特化したまとめサイト「みんなの美術館 アトコレ(現:MUSEY)」を提供していた。だが1年ほど経った頃、当時の代表をはじめとしたメンバーが会社を離れ、サービスを企画した石田健氏だけが代表取締役として会社に残ることとなった。ちなみに当時の代表は、現在クラウドソーシングサービス運営のクラウドワークス取締役副社長兼COOを務める成田修造氏。ほかのメンバーは、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役・中川綾太郎氏、同社取締役の河合真吾氏。それぞれ新しい場所で活躍をしている。

創業から間もないタイミングでの挫折。「みんなで『互いのキャラが濃すぎるとダメなのか』ということまで話し合った。個人的な視点だが、オペレーションを回すのが得意な人間や市場の方向性に明るい人間がいて個性も違う。一方で僕は研究員をやりたいようなタイプ。みんながひと通り事業を経験した今ならまた違うのかも知れないが、それぞれの(事業への)体重のかけ方が違っていた」——石田氏は当時をそう振り返る。

結局アトコレは石田氏を残して実質的に活動を停止。石田氏も大学院に進学し、その一方で個人プロジェクトとしてニュース解説メディア「The New Classic」をスタートした。この反響が大きかったことからサービスをアトコレに移管して運営することになったが、「広告で月の売上が数十万円程度、それ以外は2年間ほとんど何もしていなかった」(石田氏)のだという。

サムライ榊原氏「環境をリセットしてもう一度挑戦を」

そんな状況だが、石田氏には会社をたたむという選択肢はなかった。「当時は学生起業ブーム。だからといって『学生は勝手』と言われるようなことはしたくなかった。榊原さん(株主であるサムライインキュベートの代表取締役・榊原健太郎氏)にも『自由にやりなよ』と言われたので、すぐにではなくても、勝負できるマーケットを見つけて結果を出そうと思った」(石田氏)。榊原氏も当時を振り返って「全員環境をリセットして、もう一度挑戦してもらうべきだと思った」と語る。

一念発起したのは2014年の春。新たに社内にメンバーを迎え、メディア事業を強化。おでかけをテーマにしたキュレーションメディア「Banq」をはじめとした複数の特化型メディアを立ち上げた。Banq、THE NEW CLSSICは、それぞれ現在MAU(月間アクティブユーザー)数百万人のサイトに成長している。

「Banq」のスクリーンショット

「Banq」のスクリーンショット

メディア運営を通じて、オウンドメディアの運用支援事業にも進出した。「単純にコンテンツを作って納品するのではなく、メディア運営ノウハウをもとにSEOなども支援する。ライターに価値に置くよりも、コンバージョンに価値を置いたメディア作りをしている」(石田氏)。売上高などは非公開だが、メディア運営とオウンドメディア運用支援で黒字化は達成しているという。

アトコレでは、メンバーズの買収に合わせて社名をマイナースタジオに変更している。今後はメンバーズのクライアントをターゲットにしたオウンドメディア運用支援・コンテンツマーケティングを行うほか、新たにインバウンド向けのメディアを立ち上げる予定だという。「Banqはただのキュレーションメディアに見えるかもしれないが、実は裏側で各記事にスポット情報が紐付いている。このスポット情報を生かして、新しい『シティガイド』を作っていきたい」(石田氏)

ジャック・ドーシーいわく「Squareはゴールデンゲートブリッジ」、国内の加盟は10万店舗以上に

Square CEOのJack Dorsey氏

Square CEOのJack Dorsey氏

専用カードリーダーとスマートフォンを使ってカード決済を実現する「Square」。このサービスについて、Square共同創業者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は「創業の地であるサンフランシスコのゴールデンゲートブリッジのような、『橋』のようなもの」だと説明する。

Squareは9月28日、東京・虎ノ門にて日本初の開催となるプライベートカンファレンス「TOWN SQUARE TOKYO 2015」を開催。橋とは、その冒頭に登壇したDorsey氏の言葉だ。

Squareは2009年、米サンフランシスコで設立された。2010年には米国でサービスを開始。日本では三井住友フィナンシャルグループの三井住友カードと提携し、2013年5月にサービスを開始した。専用のリーダーを使ったカード決済のほか、レジやレシート、アナリティクス、請求書などの機能を一元的に提供している。料率は3.25%。国内では楽天の「楽天スマートペイ」、PayPalの「PayPal Here」、コイニーの「Coiney」などの競合サービスがある。

冒頭の「橋」の話に戻ろう。Dorsey氏はサービスを提供して間もない頃から、Squareについてゴールデンゲートブリッジを例にして語っている(こちらは2011年のTechCrunchの記事だ)。それは、優美なデザインを持っており、100%いつもそこに立っている(=信頼できる)プロダクトであるということ。その橋を行き来することで、様々な人がビジネスを実現する——Squareはそういう存在なのだという。

加盟店は国内10万店舗に

Squareが日本でサービスを開始して2年。国内の加盟店は現在10万店以上。個人事業主からミドル・スモールマーケットを中心に加盟店を拡大。業種でいえばアパレルなどの小売店を中心に、飲食やサービス、さらにはイベントやライブ会場など移動を前提とした店舗での利用も拡大している。

当初の利用は都心部が中心だったが、現在では地方にも加盟店は拡大。北は北海道の寿司屋から、南は沖縄のカフェまで各所で利用されているという。競合各社が加盟店舗数やアクティブな利用率を出していないので、比較することが難しいところはあるが、少なくともSquareは国内で成長しているということのようだ。

Squareの加盟店はミドル・スモールマーケットが中心

Squareの加盟店はミドル・スモールマーケットが中心

また大企業への導入も進んでいる。Square最高事業責任者のフランソワーズ・ブロッカー氏は、ローソンやタワーレコード、横浜DeNAベイスターズなどもSquareを利用していると説明。ユニクロを展開するファーストリテイリングでも、代表取締役会長の柳井正氏の提案で2013年10月より試験的に導入。当初は特設コーナーなどで利用していたが、徐々にその利用範囲を広げているそうだ。「感謝祭(セール)などではレジの台数を増やすが、これがSquareだとスピーディーかつ省スペースで実現できる。店舗によっては 臨時のレジだけでなく、常設レジとして導入している」(ファーストリテイリング 業務情報システム部部長の岡田章二氏)

 

競合のローンチ、焦ることはなかった

Squareに出資し、国内でサービスを共同展開するのは三井住友カードだ。取締役会長の島田秀男氏が語ったところによると、同社は2011年にSquareにコンタクトを開始した。「テクノロジーがビジネスを変える時代を強く感じて、社内の若手をシリコンバレーに向かわせた。これをきっかけに日本でビジネスを展開できないかと話し合いを重ねてきた」(島田氏)。 Squareの企業理念は「Make Commerce Easy(商業活動をシンプルに)」。これがユーザー視点を重視する自社の考えともマッチしたと語る。

国内でSquareの競合を見てみると、2012年10月にCoiney、2012年12月に楽天スマートペイが先行してサービスを開始している。だが島田氏は「(Squareの)サービス開始より少し前に他社が類似サービスをローンチすることになったが、焦ることはなかった 。一番早く提供するよりも、お客様に満足頂けるのが一番だと考えた。そして入念な準備期間を経てサービスを提供するに至った 」と語る。

またSquare日本法人のカントリーマネージャーである水野博商氏は、Squareが米国の企業であることから、参入当時に「黒船が決済市場を食いに来た」と言われたことを振り返った上で、初期コストやスペースの問題でこれまでカード決済を導入していなかった企業や店舗がSquareを導入しているため、「市場を食うのではなく、広げている」とした。

Squareの利用動向。円の大きさが決済額の大きさを示す

Squareの利用動向。円の大きさが決済額の大きさを示す

10月にはICカード対応端末を発売。国内で新サービスも

そんなSquareだが、すでに発表されている通り、10月1日よりこれまでの磁気型のクレジットカードに加えて、EMV(ICカードの国際標準規格)に対応した「Squareリーダー」を販売する。メーカー希望小売価格は4980円となっているが、10月31日までに決済受付を開始した事業者に対して4980円分の決済手数料を還元する。大手量販店やAmazon.co.jpなどで購入可能だ。

また機能面でも、現在米国で提供中のギフトカード(加盟店が独自デザインで発行可能)を年内にも国内で提供するほか、特定の属性の顧客に対してプロモーションを行うような顧客管理機能についても2016年をめどに提供していくとしている。

金融インフラをブロックチェーンで代替してコストを10分の1に、日本から「mijin」が登場

ミッションクリティカルな金融機関システムを、Bitcoinなどの暗号通貨で使われる要素技術であるブロックチェーンで置き換える――。こういうと日本のIT業界に身をおいてる人の反応は2つに割れるのではないだろうか。「何を寝言みたいなことを言ってるのだ?」という反応と、「それはとても理にかなってるね」という反応だ。

ダウンタイムの許されない高可用性や、データ損失のない信頼性が要求されるITシステムというのはハードもソフトも「枯れた技術」を使うのが定石。まだ実用性や有用性が証明されていないBitcoinの技術を使うなどというのは、世迷い事っぽくも聞こえる。ただ、Bitcoinという仕組みを実現するベースになっているブロックチェーンそのものは、可用性と堅牢性の高いP2Pネットワークとして様々な応用が期待されている技術だ。

ブロックチェーンは複数のサーバが参加するP2Pネットワークであるということから、中央管理サーバのない、いわゆる冗長構成となっているほか、原理上データの改ざんがきわめて難しいという特徴がある。

このことから、例えばシティバンクは独自のデジタル通貨プラットフォーム「CitiCoin」を実験中だし、Nasdaqはブロックチェーン技術を提供するChainと提携して未公開株式市場で同社技術を使うと発表している。ほかにもUBSが「スマート債権」を実験中だったりと、アメリカの金融大手が新技術の取り込みに向けて動き始めている。9月15日にはゴールドマン・サックスやバークレイズを含む9つの大手銀行がブロックチェーンで提携すると発表している

金融関連ベンチャー投資支援をしているAnthemisグループは「The Fintech 2.0」という分析レポートのなかで、ブロックチェーンによって銀行のインフラコストを2022年までに150〜200億ドル削減できるのではないかとしている。

面白いのは、最近アメリカの金融関係者らがBitcoinというネガティブなイメージのつきまとう言葉を避けて「ブロックチェーン」という言葉を使うようになっていることだ。Bitcoin関連のポッドキャストやコンサル、講演で知られるアンドレア・アントノポラス氏の言葉を借りて言えば、Bitcoinというのはインターネットにおける電子メールのようなもの(ちょっと長めの動画インタビュー)。1995年ごろにWebブラウザが爆発的普及を始めるまでは、インターネットとはメールのことだった。しかしTCP/IPを使った最初に成功したアプリがメールだっただけで、実際にはインターネットはもっと多様なサービスを生み出す革新的なイネーブラーだった。同様に、Bitcoin発案者とされる中本哲史の本当の発明はブロックチェーンのほうで、Bitcoinのような暗号通貨は、その1つの応用にすぎないという。

ちなみにシリコンバレーの著名投資家マーク・アンドリーセンは2014年初頭の時点でBitcoinの登場のインパクトを、1975年のパーソナル・コンピューター、1993年のインターネットの登場になぞらえている。アンドリーセンは、Bitcoinの本質的な価値は、ビザンチン将軍問題というコンピューター・サイエンスの研究者たちが取り組んできた課題におけるブレークスルーであることが根底にあると強調している。互いに無関係の参加者が、信頼性のないインターネットのようなネットワーク上で、どうやって合意形成を達成するのかという問題だ。

自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)

さて、アメリカでブロックチェーン技術利用へ向けて金融大手が動き出している中、日本発のBitcoin関連スタートアップであるテックビューロが今日、自社内、またはパートナー間のみ利用可能なブロックチェーン「mijin」(ミジン)を発表した。Bitcoinはオープンでパブリックなブロックチェーンで運用されているが、mijinは、そのプライベートネットワーク版といった位置付けだ。

mijinは現在クローズドβのテストフェーズにあり、2016年初頭から提携企業への提供を開始する。また2016年春には有償の商用ライセンスのほか、オープンソースライセンスのもとソースコードの一般公開を予定している。mijinは、地理的に分散したノード間で2015年末までに秒間25トランザクションの処理能力を提供し、2016年末までに秒間100トランザクションを実現するのが目標だという。プライベートな同一ネットワーク内では秒間数千トランザクション以上での高速動作も実現するとしている。mijinを提供するテックビューロは日本発のスタートアップ企業だが、顧客の大半が欧米顧客になると見ていて、そのことから「忍者」的なキャラをあえて選んだのだそうだ。mijinというのは忍者が使った武器の一種なんだとか。

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テックビューロ創業者で代表の朝山貴生氏は、mijinで構築したブロックチェーンで既存のデータベースを置き換えることで、企業のポイントサービスや決済サービス、オンラインゲーム、航空会社マイレージ、ロジスティックス、保険、金融機関、政府機関などの大規模で高度なシステム基盤にまで幅広く利用できると話す。銀行系のシステムだと初期構築とハードウェア費用で数億円、運用フェーズでも月額数千万円ということがある一方、mijinでクラウド上に数十台のインスタンスを立ち上げることで、初期費用ゼロ、月額数十万円の運用が可能となるだろうという。

このコスト削減の背景には、システムの堅牢性や冗長化といった技術的な部分がなくなることに加えて、不正防止対策や運用マニュアルの整備など運用コストの削減効果もある。テックビューロのリーガルアドバイザーである森・濱田松本法律事務所の増島雅和弁護士はプレスリリースの中で、「ビットコインプロトコルに依存しないプライベートブロックチェーンというユニークな立ち位置でローンチされるmijinが金融・商流・ガバナンスをどのように変えていくのか、大変興味深い」と語っている。

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ブロックチェーン技術を使ったスタートアップ(またはプロジェクト)には、BlockstackSETLBankchainHYPERLEDGERMultiChainEthereumFactomStorjなどがある。金融向け、汎用ビジネス向けなどいろいろあって、すでに走りだしている。ただ、オープンソースで非アプリケーションのプラットホーム指向というmijinのモデルはユニークで、今からでもポジションを確保できるのではないかと朝山氏は話している。

テックビューロは国内でBitcoinを含む暗号通貨の取引所「Zaif Exchange」を運営していて、2015年3月に日本テクノロジーベンチャーパートナーズから1億円を資金調達している。

Bitcoinやブロックチェーンがどういう技術なのかという解説は、朝山氏によるTechCrunch Japanへの寄稿も参考にしてほしい。

CtoCコマースのメルカリが新会社「ソウゾウ」を設立、代表には元ヤフーの松本氏

CtoCコマースを提供するメルカリ。同社が9月17日、100%子会社となる新会社「ソウゾウ」を設立したことを明らかにした。資本金は非公開。代表にはメルカリ執行役員の松本龍祐氏が就任する。

松本氏は2800万ダウンロードの写真加工アプリ「DECOPIC」を手がけたコミュニティファクトリーの創業者で、同社をヤフーに売却したのち、ヤフーのアプリ開発室本部長などを務めた。2015年3月にヤフーを退職し、5月にメルカリに参画している。

ソウゾウはまだプロダクトのリリースをしておらず、Wantedlyなどを通じて人材募集を開始したところ。松本氏は「今後新しいアプリをどんどん作っていく」としている。同氏はDECOPIC以外にもTRILLなど女性向けのサービスやメディアにも関わってきているが、ソウゾウは特に女性にターゲットを限定したサービスを展開するという訳ではないという。

ちなみにメルカリの創業期の社名は「コウゾウ」。ソウゾウはこの名称にかけたもののようだ。まずは最初のプロダクトの提供を待ちたい。

エフルート創業者・佐藤崇氏の次なる挑戦はアプリ紹介メディア「AppCube」、事前登録を開始

appcube

モバイルサービスの黎明期、2003年にビットレイティングス(現:アクセルマーク)
を設立し、検索サービス「froute.jp(エフルート)」をはじめとしたサービスを提供した佐藤崇氏。2010年には同社を離れてモブキャストに参画。取締役としてプラットフォーム事業を推進した人物だ。

佐藤氏は2015年1月にモブキャストの役員を退任。再び起業家とし挑戦すべく、新会社のスマートアプリを設立した。6月にはEast Venturesおよび山田進太郎氏(メルカリ代表取締役社長)、藪考樹氏(モブキャスト代表取締役)などの個人投資家から合計3450万円の資金を調達したことを明らかにしている。

そんなスマートアプリの第1弾サービスが間もなくローンチする。同社は9月16日、「AppCube」のティザーサイトを公開し、サービスの事前登録を開始した。今秋中にもまずはAndroid向けにサービスを提供する。

AppCubeは、スマートフォン向けアプリの情報を集約したアグリゲーションサービス。国内のアプリストアに掲載された300万件以上のアプリの情報をクロールしてリアルタイムに収集。アプリの情報と、人工知能で分類した関連レビューやニュース、動画などを集約し、ユーザーの利用動向に合わせて表示する。デモを少し見せてもらっただけなので「人工知能云々…」というところは分からなかったのだけれども、1つのアプリに紐付いて、さまざまな媒体に分散されているレビューや動画などが一覧して閲覧できることは確認できた。特にゲームなど「濃い」アプリの情報収集に向いているだろう。自分がインストールしたアプリを把握し、最新情報を通知する機能なども用意する。

佐藤氏いわく、AppCubeは「アプリ紹介メディアとも言えるが、(コンテンツを作るのではなく)テクノロジーでストアにあるアプリの情報、アプリに紐付く外部の情報をすべて網羅する」のだという。Android、iOSあわせて300万以上もあると言われるスマートフォンアプリ。だがその99%はユーザーに発見されずに埋もれているのが現状だ。その理由は「広告で歪んだランキングや検索メニューからアプリを探す」(同社のリリースより)から。そこでAppCubeでは、アプリの関連情報を網羅。利用動向も把握することで、新しいアプリとの出会いを提案するとしている。

他業界に奪われたシェアを取り戻す——クロスカンパニーがアパレルのレンタルサービス「メチャカリ」を提供する理由

2016年のIPOも報じられるアパレルメーカー、クロスカンパニー。同社が今、「アパレル×テクノロジー」の領域を強化しているのをご存じだろうか。TechCrunchで4月に報じたとおり、ネットを利用した宅配クリーニングサービスを提供するスタートアップ「BASKET」を買収。現在は同社の代表取締役社長である松村映子氏を中心に、社内に70人規模のエンジニアチームを組織する準備をしているという。

そんなクロスカンパニーが9月16日、自社のアパレル商品をレンタルするサービス「メチャカリ」を開始した。

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メチャカリはスマートフォンアプリを使ったファッションレンタルサービス。月額利用料は5800円。アプリ上に掲載されるファッションアイテムを最大3点までのアイテムをレンタル可能。アプリ上で申請して返却(送付時に返却用の袋や送付状が付属する)すれば、返却した点数だけ再びレンタル可能になる仕組みだ。当初は同社の女性向けアパレルブランド「earth music&ecology」の商品のうち、靴やアクセサリーを除く1000パターン以上の商品を取り扱う。

60日間レンタルしたアイテムは返却せず、自分のものにできるのが大きな特徴だ。60日経過したタイミングでレンタル中のアイテムとして表示されなくなり、そのアイテム以外で最大3点のレンタルが可能になる。なお返却時には500円の手数料がかかる。ちなみにレンタルで届く商品はすべて新品なのだそう(理由については後述)。

同社はこのサービスに3年で8億円の投資を行う予定。もちろん収益化は検討しているが、クロスカンパニー ウェブマーケティング部課長の澤田昌紀氏によると、それ以外の意図があるのだそう。

背景にあるのは「若者のファッション離れ」

また「若者の○○離れ」の話か……と思う読者もいるかも知れないが、実際、若い世代のファッションへの支出は年々減少している。総務省の調査データによると、若年層女性がファッションアイテムにかける1カ月の金額は2008年で1万7287円だったが、2014年では1万718円になっている。もちろん経済動向など、金額だけで判断できない話ではあるが、7年で約4割も減少しているのは事実だ。

「業界では、アパレルがシュリンクしているというのは周知の事実。(自社の商品も)10〜20代に人気というイメージだが、実際の売上を見ると20代後半がボリュームゾーンで、若年層がファッションから離れている状況。どうやったらティーンにもっと興味を持ってもらえるかが課題だった」(澤田氏)。つまりこのサービスには若年層へのマーケティング的な意味合いもあるのだという。

TechCrunchで紹介しているサービスで言えば、スタートアップのノイエジークが「airCloset」を展開して人気を博しているようだ。だがアパレルメーカー自らがレンタルサービスを提供するのは、同社いわく「初の試み」だという。「例えばUBERなどは(タクシー業界の)事業主体ではない(ネット業界の)人たちがサービスを開発して、世の中のライフスタイルを変えていた。クロスカンパニーは自らがライフスタイルを変えていきたい。極端な言い方になるが、他の業界に奪われたシェアを取り戻したい」(澤田氏)

マーケティング視点でのサービスとはいえ、もちろんサービス単体でのマネタイズも視野に入れる。ユーザー数30万人で黒字化できるとのことで、3年の投資フェーズではまずその数字の達成を目指す。

メーカーがレンタルサービスを提供する強み

澤田氏はアパレルメーカーがレンタルサービスを提供する強みとして、「自社ECとの連携」があると語る。

メチャカリのシステムは自社のECと連携しており、販売在庫をそのままレンタルに回すのだという。そのためレンタルするアイテムはすべて新品だし、在庫も豊富だ。また返却した商品は検品の上でアウトレット商品としてECサイトで販売するという。

これは何を意味するのか? メチャカリは、ユーザーにとっては「レンタルサービス」ではあるが、同社にとっては、返却フロー以外を除けばECの在庫・物流をそのまま転用したサービスということだ。

また既存のレンタルサービスであれば、商品を貸しだして、返却後に検品し、次に貸し出すという「1点1点の管理」が必要だが、同社では返品後にアウトレットに回すため、その管理の必要がない。要はレンタルサービスのガワをかぶったサブスクリプション型ECなのだ。

ではこんなサービスを提供して本業のECに影響が出ないのだろうか? 実際テストでサービスを提供したところ、もともと購入頻度の高いユーザーについては月額の平均購入額が上がり、購入頻度が一般的なユーザーについては購入額に変化はなかったということで、「服の好きなユーザーは、服を借りることで、一層購入する」という行動が見えているのだという。