Waymoが無人ロボタクシーサービスをサンフランシスコの従業員に提供

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門のWaymo(ウェイモ)は米国時間3月30日、サンフランシスコの従業員に完全自律走行車による乗車の提供を開始したと発表した。

Waymoは、プレシディオからキャンドルスティックポイントの最奥部まで広がる「サンフランシスコの初期サービス領域」内で、乗客だけが乗り込む運行を開始し、そこから徐々に拡大していく予定だ。

このニュースの約1カ月前には、同社はカリフォルニア州公益事業委員会(CPUC)から許可を取得後、人間のオペレーターを乗せたロボタクシーの乗車でベイエリアの住民に課金し始めると発表した。また、8月にはWaymoのTrusted Testerプログラムが始まった。このプログラムでは、サンフランシスコの人々が登録して、やはり人間のオペレーターを乗せたWaymo Driver搭載の全電動自動車ジャガーIペースを無料で呼び出すことができるようになった。

サンフランシスコは、Waymoとその最大のライバルであるGM(ゼネラルモーターズ)の自動運転子会社Cruise(クルーズ)との間で、ある種の戦場と化している。Cruiseは2022年2月上旬、自社の完全自律走行の配車サービスの一般提供を開始したが、乗車料金を徴収するためには、まだCPUCの許可を得る必要がある。Waymoは、最終的にドライバーレス乗車で課金するための許可をすでに申請しているかどうかについては明らかにしなかった。

ただし、アリゾナ州フェニックスでは、CruiseはWalmart(ウォルマート)と共同で自律走行配送の試験運用を行っている。最近その試験運用は拡大されたものの、Waymoはロボタクシーの優位性を確立している。同社は2016年からフェニックスでテストを行っており、2020年にはそこで完全自律走行の公共配車サービスを導入した。サービスを通じて毎週数百回の乗車を提供している。

Waymoは2022年3月30日、フェニックスでのルーツを深め、Waymo Driverが最近自律走行距離50万マイル(約80万キロメートル)を達成したイーストバレーからダウンタウンに拡大することも明らかにした。これまでと同様、同社は自律走行スペシャリストを運転席に乗せての乗車をまず自社従業員に提供し、その後、同社のTrusted Testerプログラムを通じて一般の人々にもサービスを開放する予定だ。

Waymoの共同CEOであるDmitri Dolgov(ドミトリ・ドルゴフ)氏は声明で「安全で堅牢、かつ汎用性のある自律走行ドライバー、すなわちWaymo Driverを構築し、その能力と性能を地域や製品ラインの間でうまく移行させることに我々は注力しています」と述べた。「これまでの経験から、第5世代Driverをサンフランシスコですばやく、そして自信を持って展開することができたのと同じように、サンフランシスコとフェニックスのイーストバレーでの経験の組み合わせは、何百万マイルの実走行に基づき、何十億マイルのシミュレーション走行によって後押しされ、すでにフェニックスのダウンタウンでの当社の進歩を導き、完全自律配車サービスの将来の拡張のための準備となっています」。

Waymoは、現時点ではサンフランシスコとフェニックスでの保有車両数は共有しないと述べた。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロータスの新型EV「Eletre」に搭載された技術に同社の自動運転への野望が見える

Lotus(ロータス)は米国時間3月29日、バッテリー駆動の「ハイパー」SUV「Eletre」(エレトレ)を発表した。これは、ロータスが今後4年間に発売を予定している3種類のEV(電気自動車)のうちの最初の1台だ。

どのようなものなのか?Eletreは(ハンガリー語で)「活気づく」という意味で、Lotus初の実用車であり、今後予想されるバッテリー駆動の高級SUVの需要増に対応するための重要なモデルだ。車両のデザインや豪華な内装は特筆すべきものだ。しかし、ロータスの未来を最もよく垣間見ることができるのは、必要に応じて飛び出す4つのLiDAR(ライダー)センサーを含む、いくつかの技術だ。

まずは基本的なことを。Geely Automotive(ギーリー・オートモーティブ、吉利汽車)とマレーシアのコングロマリットEtika Automotive(エチカ・オートモーティブ)が所有するLotusは、このEVに、パワーとトルク、そこそこのバッテリー走行距離を詰め込んでいる。

Eletreは、800ボルトの電気アーキテクチャを採用し、バッテリーを劣化させることなく急速充電を可能にした。各車軸に1つずつ搭載された2つの電気モーターは、最低でも600馬力を発生し、SUVを3秒以内に0〜60mph(時速0〜97キロ)まで加速することができるLotusによると、100キロワット時以上の蓄電能力を持つバッテリーパックは、フル充電でEletreが373マイル(約600キロメートル)走行する(欧州のWLTP燃費基準)ことを可能にするという。また350キロワットの充電器を使えば、20分で248マイル(約399キロメートル)分を充電することができる。

Eletreには4種のドライブモードが提供される。そのうちの1つであるオフロードモードでは、ステアリング、ダンパー設定、パワートレイン、アクセルペダルの反応が調整される。その他、オプションの23インチホイール、アクティブライドハイト、アクティブ後軸ステアリング、アクティブアンチロールバー、ブレーキによるトルクベクタリングなどのハードウェアや機能を追加することが可能だ。

この車両は、2022年後半に中国の武漢にあるロータスの新工場で生産が開始される予定だ。

画像クレジット:Lotus

Lotus Cars(ロータスカーズ)のマネージングディレクターのMatt Windle(マット・ウィンドル)氏は、Lotus初のSUVかつEVであるこの新型車について「私たちの歴史の中に重要な位置を占め、ビジネスを変革したい私たちの変わらない願望を明確に示すもの」だという。

もちろん、この歴史の中の重要な位置を、将来の大きな利益につなげることが目的だ。

LotusはEletreの価格情報を公開しなかったので、競合相手を特定することは難しい。価格次第では、Tesla(テスラ)Model Xや、Lamborghini(ランボルギーニ)からAston Martin(アストン・マーティン)に至る、高級ブランドのトップセラーとして認識される高級SUVと競合する可能性がある。

潜在的な競争相手は増え続けている。Maserati(マセラティ)は先週、中型SUV Levante(レヴァンテ)のバッテリー版と、新型コンパクトクロスオーバーGrecale(グレカーレ)の2種の完全電気SUVを発売する計画を発表した。Ferrari(フェラーリ)初のSUV、30万ドル(約3654万円)のPurosangue(プロサングエ)は2022年後半に登場予定だ。

Lotusの場合、先進運転支援システムの改善や機能追加を行うために、無線を使ったソフトウェアアップデートを行うことのできるセンサーやその他のハードウェアを搭載し、Eletreの「将来の拡張性」を保証している点が特徴だ。

一般に、自動運転車を安全に運用するための鍵として考えられている光検出・測距センサーLiDARは、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Volvo(ボルボ)、そして今回のLotusといった自動車メーカーで採用され始めている。こうした自動車メーカーは、LiDARを完全な自動運転機能ではなく、特定条件下の限定的な自動運転機能のための余裕を提供するために必要なセンサーとみなしている。少なくとも、今はまだそうだ。

画像クレジット:Lotus

LotusがEletreに搭載するLiDARは、このような使い方を想定しているようだ。Lotusは4つのLiDARセンサーを使用する予定で、必要なときに「展開」または「飛び出し」が行われるようになっている。Lotusによれば、LiDARセンサーは必要ないときは隠れていて「必要に応じてフロントガラスの上部、リアガラスの上部、フロントホイールアーチから現れるだけ」とされている。

このLiDARセンサーシステムによって、最終的にはスマートフォンのアプリで駐車場への入出庫ができるようになる予定だ。しかし、Lotus Technology (ロータステクノロジー)の副社長で、ドイツのLotus Tech Innovation Center(ロータステックイノベーションセンター)のマネージングディレクターであるMaximilian Szwaj(マクシミリアン・シュワイ)氏のコメントは、同社が駐車場以外のことも考えていることを示している。

彼は声明の中で「LiDARセンサーやカメラなどのADAS(先進的運転手支援システム)技術は、より自動的な時代に向けて新車に搭載されることが多くなるでしょう」と、現在のための技術はもちろん、未来のための技術も搭載していると述べている。

また、現在の米国の規制では禁止されているカメラを使ったミラーシステムも搭載される予定だ。3種類のカメラは、1つ目はバックミラー用、2つ目は駐車を助けるために上方から360度の視界を作り出すためのもの、そして3つ目は先進運転支援システムに使用される。Lotusは、カメラがLiDARシステムと連動して「自動運転機能」を実現すると述べている。

Lotusは、この「自動運転機能」が駐車以上の野望を意味するのか否かについて、これ以上の詳しい説明をしていない。Lotusが説明するハードウェアは最先端技術ではあるが、効率的で安全な自動運転機能をクルマに搭載するには、計算能力とソフトウェア、そして直感的なユーザーエクスペリエンスを備えたシステムを含め、克服すべき多くの課題がある。

しかし、4つのLiDARセンサーと3つのカメラは、同社の目標が限定的または条件付きの自動運転機能にも及んでいることを示唆している。

画像クレジット:Lotus

その他のイノベーションとしては、同社が多孔性 (ポロシティ、porosity)と呼ぶものがある。これは空力特性、航続距離、効率を改善するために、上下、周囲だけでなく、車体の中に気流を通過させるものだ。Lotusは、ハイパーカーEvija(エヴァイヤ)やEmira(エミーラ)をデザインする際、多孔性に注力した。

今回Eletreに搭載されたことで、このデザインイノベーションは今後も続くと思われる。ロアーグリル、フロントフェンダー、テールランプ付近などに、このエアーチャンネルがわかりやすく配置されている。

特にグリルは興味深いもので、三角形の花びらが連結したネットワークを形成し、クルマが動いていないときや走行中の抵抗を減らす必要があるときは閉じられる。Lotusによれば、電気モーター、バッテリーパック、フロントブレーキの冷却が必要なときに、ラジエーターに空気を送り込むためにグリルが開き、Eletreが「呼吸」できるようにするのだという。

編集部注:Eletreは日本の公式輸入代理店のウェブページなどでは「エレトレ」と表記されているが、Lotus公式を含む現地/海外メディアのビデオなどでは「エレクトラ」と発音されている。

画像クレジット:Lotus

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(文:Jaclyn Trop、Kirsten Korosec、翻訳:sako)

中国のEVシャシーメーカーPIXがスマート車両の自社製造で約14億円調達

中国では過去2年間、機関投資家と企業投資家の両方がドライバーレスの未来に資金を注ぎ込み、自律走行産業が活況を呈している。ロボタクシーサービスの提供やロボバスの運行、配達ボットの展開など、下流で成功している企業は特に投資家に人気があり、数億ドル(数百億円)を調達し巨額の評価額に達している。

現金が豊富になり、有名になる見込みがあるため、上流のサプライヤーもエンドソリューションの構築に着手するようになった。こうした野心的な自動運転ハードウェアサプライヤーの1社が、自動車用スケートボードに特化している中国のPIX Moving(ピックスムービング)だ。この種のシャシーは、バッテリーや駆動ユニットなどの主要コンポーネントを格納し、モジュール式アーキテクチャのためさまざまな種類の自動運転シナリオに適応することができる。Canoo(カヌー)が手がけているものと似ている。

2014年に元建築家のChuan Yu(チュアン・ユ)氏によって設立されたPIXはこのほどプレAラウンドで7200万元(約14億円)を確保し、TechCrunchに語ったところによると調達した資金総額は2000万ドル(約24億円)になった。

同社はハードウェアアクセラレータHAXの第2陣の1社で、ドローンソリューションの構築からスタートした。5年前に自動車分野に進出し、以来、中国、欧州、北米、オーストラリアでひと握りの顧客を獲得した。その中には同社のスケートボードシャシーを採用するAlibaba(アリババ)やBaidu(バイドゥ)、そして守秘義務契約により名前を明かせないが、すぐに使えるロボ車両を購入するドイツのティア1自動車部品メーカーなどが含まれている。

PIXはホワイトラベルのサプライヤーでは満足できなくなり、最近、自社名を冠した自動運転車の提供を開始した。今回の資金調達の一部は、自社ブランドのロボバスやスケートボードのシャシープラットフォームの量産に充て、残りは顧客向けの生産増強、海外展開、採用などに注ぐ。生産能力は2022年中に1200~2500台に達する見込みだ。

PIXは、今回の資金調達における単独出資者の名前を明らかにせず「全国に1万以上の機器を配備している中国の大手衛生ソリューションプロバイダー」とだけ述べた。今回の出資は戦略的シナジーを生み出すことを目的としていて、PIXと出資者は、ゴミ拾いから道路清掃までを意味する「環境オペレーションシナリオ」に対応するサービスロボットを共同開発する予定だ。

PIXの国際事業ディレクターNancy Lee(ナンシー・リー)氏は、ますます混み合う自動運転業界でどのように競争していくかについて、同社が3Dプリンターを使って従来のメーカーよりも低コストかつ短時間でカスタマイズされたシャシーを製造していると述べた。

同社は現在、収益の30〜40%を海外で得ているが、今後2年間でその比率は50%に達すると見込んでいる。中国は自律走行技術の推進者だったかもしれないが、中国の都市の「複雑な」交通事情もドライバーレス車両の大量展開を困難にしているとリー氏は主張した。

PIXは、不思議なことに中国南西部の中心地、貴州省に拠点を置いている。この地域は、Appleのような企業のデータセンターの主要拠点として知られている。また、PIXは北京、上海、深センに研究開発・事業開発チームを抱える。中国以外では、米国でパートタイマー2人が営業と技術サポートに従事しており、ドイツに製造と研究開発を行う子会社を設立中だ。

画像クレジット:PIX’s skateboard chassis

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

BYDとLucidがNVIDIAの自動運転プラットフォームを採用する最新のEVメーカーに

NVIDIA(エヌビディア)は、同社のDrive Hyperion(ドライブ・ハイペリオン)プラットフォームを採用する自動車企業に、新たに2社の電気自動車メーカーが加わったことを発表した。Drive Hyperionは、自家用乗用車からロボットタクシー、自律走行トラックまで、あらゆるクルマの自動運転機能を強化するコンピューターおよびセンサーツールキットである。

その2社とは、中国のBYD(バイド、比亜迪汽車)と米国のLucid Group(ルシード・グループ)だ。両社は、インテリジェントパーキングや先進運転支援システム(ADAS)など、ソフトウェア定義機能を自社の電気自動車に提供しているが、米国時間3月22日に開催されたNVIDIAの「GTC 2022」AI開発者会議で、NVIDIAのハードウェア、ソフトウェア、コンピュートソリューションに依存する自動車メーカーの仲間入りを果たすことを発表した。他にもJiDU(ジドゥ)、Polestar(ポールスター)、Li Auto(リーオート、理想汽車)、Nio(ニオ、上海蔚来汽車)、Xpeng(シャオペン、小鵬汽車)、Volvo(ボルボ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Jaguar Land Rover(ジャガーランドローバー)などが、NVIDIAのテクノロジーを採用している。

自動車メーカーは、運転をアクションではなくスポーツ観戦に近づけるような機能を約束することで、潜在顧客となる人々の注目を得ようと競い合っている。問題は、多くの企業が「ソフトウェア定義」のアプローチで実現すると豪語しているものの、実際には低レベルの自律走行を実現するためのリソースさえ、自社で持っていないことだ。

なぜなら、クルマに自律走行機能を組み込むためには、機械学習アルゴリズムを訓練するための何百万キロメートルもの走行データ、センサーからデータを取り込んでリアルタイムに判断できる高度なソフトウェア、そしてそのすべてを動かすのに必要な計算能力を持つコンピューターが必要だからだ。このような技術は、一般的な自動車メーカーの手に負えないため、自動車会社がIntel(インテル)やQualcomm(クアルコム)、そしてNVIDIAなどの企業に、現在の自動車市場に対応するために必要なツールの開発と統合を依頼することが増えているのだ。

その結果、少なくともNVIDIAにとっては、今後6年間で110億ドル(約1兆3300億円)を超える自動車関連企業とのパイプラインができた。わずか1年前の80億ドル(約9700億円)からそれだけ増加したと、NVIDIAの自動車担当バイスプレジデントのDanny Shapiro(ダニー・シャピロ)氏は述べている。DeepRoute.ai(ディープルートAI、元戎啓行)やWeRide(ウィーライド)など、自動運転関連のスタートアップ企業も、NVIDIAのDrive Hyperionエコシステムに参加することを発表しており、NVIDIAのリーチはさらに拡大している。

BYDは、現在提供されている「DRIVE Hyperion 8」アーキテクチャを使って、次世代の「新エネルギー車」を2023年初頭から製造開始すると、3月22日に開催されたNVIDIAのカンファレンスで発表した。BYDによれば、同社は自動運転とインテリジェントなコックピット機能のための中央演算とAIエンジンとして、NVIDIAの「Drive Orin(ドライブ・オーリン)」車載用システムオンチップ(SoC)のみを使用するという。Orinは1秒間に最大254兆回の演算を可能とし、自動運転車で同時に実行される大量のアプリケーションとディープニューラルネットワークを処理できるように設計されている。BYDは、Hyperion 8が提供するソフトウェアやセンサー類を使用するかどうかなど、さらなる詳細についてはまだ明らかにしていない。

Lucid Groupは同じカンファレンスで、同社の先進運転支援システムである「DreamDrive Pro(ドリームドライブ・プロ)」がNVIDIAのDRIVEプラットフォーム上で構築されていることを明らかにした。現在路上を走っているすべての電気自動車セダン「Lucid Air(ルシード・エア)」には、LucidのADASに統合されたNVIDIAのSoCが搭載されているが、この自動車メーカーは現在も自社製のソフトウェアスタックを使用しており、自動運転とインテリジェント・コックピット機能のために、14台のカメラと1基のLiDAR、5基のレーダー、12個の超音波センサーからなるセンサー群に頼っている。Lucidは、将来の製品についてNVIDIAとさらに協業することを計画しているが、現時点では詳細を公表していない。

NVIDIAのハードウェアとアーキテクチャでシステムを構築することで、これらの自動車メーカーは、NVIDIAが将来的に性能を向上させた際には、Over-the-Air(無線経由)ソフトウェアアップデートで車載機能を強化することが可能になると、NVIDIAは述べている。

「Lucid Airにプログラマブルで高性能なコンピュート・アーキテクチャを採用することで、この自動車メーカーはNVIDIA DRIVEのスケーラビリティを活用でき、モデル数の増加にともなって常に最新のAI技術を取り込むことができます」と、NVIDIAは声明で述べている。

次世代のNVIDIA DRIVE:Hyperion 9

2021年11月、NVIDIAの秋のGTCイベントで、創業者兼CEOのJensen Huang(ジェンスン フアン)氏は、2024年型の車両向けにHyperion 8の提供を開始すると発表した。そして3月22日、フアン氏は2026年に出荷を開始する車両向けとなる新世代アーキテクチャ「Hyperion 9」を発表した。

Hyperion 9はセンサー群の一部として、14台のカメラ、9基のレーダー、3基のLiDAR、20個の超音波センサーを備えるという。先代の12台のカメラ、9基のレーダー、1基のLiDAR、12個の超音波センサーからさらに増えていることがわかる。

「クルマの周りで起こっているすべてのことについて、実に多様で冗長性のある視点を得ることができます」と、シャピロ氏はTechCrunchによるインタビューで語っている。「また、これにはAtlan(アトラン)が採用されます。我々のロードマップではOrinの後継として求められているため、Atlanは追加されたセンサーから入ってくるすべてのデータを処理できる、より高性能なSoCになるでしょう」。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Auroroa、トヨタ・シエナの自律走行型タクシーのテストを公開

自律走行車技術企業のAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、将来のライドヘイル事業に向けて、カスタム設計の自動運転Toyota Siennas(トヨタ・シエナ)の小規模なテストを始める。Auroraの広報担当者によると、同社はテキサス州ダラス・フォースワース地域の高速道路や郊外の道路で、高速ルートを中心に車両テストを行う予定だ。

ハイブリッド電気自動車のトヨタ車には、同社が物資運搬用にテストしているAuroraのクラス8トラックと同じソフトウェアとハードウェアが搭載される予定だ。Waymo(ウェイモ)と同様に、Auroraは、同社が「重要な競争優位性」、つまりトラック輸送と旅客モビリティという2つの重要な市場に共通するコア技術の「移植可能性」を持っていることを証明したいのだ。

このテストの公開は、Auroraがピッツバーグ、ダラス、ベイエリアでテストを行った同じ車の初期開発プロトタイプを発表した6カ月後、またAurora Driver(オーロラドライバー)をロボットタクシー業務用に設計したドライバーレス車両と統合するためにトヨタと提携する意図を最初に表明してから1年後に行われた。

Auroraは以前、2024年後半までに、既存のライドヘイリングアプリ、特にUber(ウーバー)を通じて利用できるドライバーサービス製品であるライドヘイリング「Aurora Connnect(オーロラ・コネクト)」を発売する目標を掲げた。

2020年、AuroraはUberの自動運転部門を買収し、それ以来、同社との関係を維持している。例えば、Auroraの自動運転トラックは、両社がより密接に統合される多段階商用パイロット版の一環として、テキサス州でUber Freight(ウーバー・フレイト)の顧客のために、商品を運搬している。

「私たちは現在、Uberの詳細な市場データを活用して、トヨタとUberと提携してAurora Connectを広く展開するための商業化計画を加速させています」と、Auroraの広報担当者はTechCrunchに語った。「ライドヘイリング市場に参入するために、私たちは、既存のライドヘイリングネットワーク向けにAurora Connectを設計しました。これは、自律走行車と人間のドライバーのハイブリッドモデルを作り、ネットワークが増大する需要に対応し、ライダーにシームレスな経験を提供するのに役立つでしょう」。

Aurora Connectが市場に出れば、ライダーがトリップをリクエストすると、ルートによってAurora駆動の車か人間のドライバーが迎えに来ることになる。

Auroraが商業化への道を切り開いているように見える一方、ロボタクシー業界では他の企業がすでに道路空間を開拓している。例えば、Motional(モーショナル)は、最近ラスベガスでオンデマンドおよびトランジット技術サービスのVia(ヴィア)と無料のロボタクシーサービスを開始し、2023年には同市でLyft(リフト)と商業サービスを開始する準備を進めている。そしてもちろん、Cruise(クルーズ)とWaymoもあり、それぞれサンフランシスコとフェニックスで、自社ブランドのロボタクシーサービスを開始している。

ここ数カ月、Auroraはテキサスの高速道路で、FedEx(フェデックス)などの大企業とともに自律走行型トラックのテストを行っている。最近SPACになったスタートアップは、テキサスはまた、AuroroaがAuroroa Connectを導入する最初の州になるとしている。

「テキサス州には、当社の顧客や将来の顧客の多くが操業している、全米に商品を移動させるために重要な米国の主要な州間道路や路線があります」と、広報担当者は述べた。「テキサスはまた、空港への移動のような、Aurora Connectを開始する際に優先されるルートを開発し、テストする能力を与えてくれます」。

「Sienna Autono-MaaS(S-AM)」プラットフォームで作られた自動運転トヨタ車は、時速70マイル(時速約113km)まで出すことができ、高速道路での安全運転のために同社独自のFirstLight LiDAR(ファーストライト・ライダー)に依存している。

Auroraのテスト車両には、2人の車両オペレーターがいる。1人は運転席でAurora Driverの行動を監督し、もう1人は助手席でエンジニアリングチームに送信するメモを取る。Auroraによると、AuroraのAVスタックを搭載したSiennasは、すでにテキサス州で、路肩での停車時や低速車を回避する場合も含む、Uターン、高速合流、車線変更などをこなしている。

Aurora Driverは、さまざまな形の工事、渋滞、悪天候にも対応している。

現時点では、車両は10台未満と思われる小規模なものだが、Auroraは、今後数カ月のうちに車両を追加し、より多くのシナリオとルートを扱い、密集した都市部に移動してテストを拡大する予定であるという。

画像クレジット:Aurora Innovation

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

埼玉工業大学が世界で初めて水陸両用船の無人運転技術を開発、八ッ場あがつま湖で実証実験

八ッ場ダム無人運航船の入水シーン

八ッ場ダム無人運航船の入水シーン

埼玉工業大学は3月22日、群馬県八ッ場あがつま湖にて、群馬県長野原町が所有する水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」を使った自動航行の実証実験(3月14日実施)に参加したと発表した。陸上から入水し、障害物を避けながら水上を航行、再び上陸する一連の自動運航を成功させた。水陸両用船の無人航行の実証は世界初となる。

無人運航の実証実験を行った水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)

無人運航の実証実験を行った水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」(全長11.83m、総トン数11トン)

埼玉工業大学は、ITbookテクノロジーとの共同研究により、自動運転・自動運航が可能な水陸両用バスのためのソフトウェアとシステムを設計・開発。同実証実験は、長野原町所有の水陸両用船「八ッ場にゃがてん号」にその成果である自律航行システムを搭載して行われた。航行距離は約2km、所要時間は約30分だった。

入出水と水上航行での経路追従のための位置推定には、高精度GNSS(全球測位衛星システム)とジャイロを利用。自動運転には、自動運転システム用のオープンソースソフトウェア「Autoware」を使用し、そのモデル予測制御に船舶モデルを導入。水上と陸上の高精度な経路追従を実現した。障害物の自動検知と回避は、LiDAR、カメラ、ソナーとAutowareの深層学習アルゴリズムを組み合わせて行っている。車用と船用の制御装置を同時制御することで「船舶と車両の自動切り替えもスムーズに行えるシステム」を開発したとのことだ。

無人運航船の運転席

無人運航船の運転席

自動運転バスの研究を行っている埼玉工業大学は、すでに2台の自動運転バスを開発し、公道での営業運行を行っている。ITbookテクノロジーとの共同研究では、その経験を活かして水上の自動運航技術の開発に取り組んできた。2年間の共同研究の成果として、「離着水、離着桟における位置推定および自動運転技術」「水上障害物検知および回避のための技術」「ローカル5Gなどを用いた遠隔操作技術」をすでに構築している。

今回の実証実験は、日本財団が推進し、無人運航船の国際標準化の先導などを目指す無人運航船プロジェクト「METURI2040」の一環として行われた。このプロジェクトでは、国内で5つのコンソーシアムがそれぞれの取り組みを行っているが、これはその1つ「水陸両用無人運転技術の開発〜八ッ場スマートモビリティ〜」によるもの。現在は主に観光目的で利用されている水陸両用船だが、自動運航を実用化することで、将来的には災害時に役立つ技術転用や、「離島へのシームレスな物流インフラ」の構築を目指している。

画像クレジット:
日本財団

LiDARスタートアップLuminarがFreedom Photonics買収、高性能レーザーを手中に

自動運転車のためのビジョンベースのLiDAR(ライダー)と機械知覚技術を開発するLuminar(ルミナー)は3月21日、高性能レーザーメーカーのFreedom Photonics(フリーダムフォトニクス)を買収した。Luminarが自社の普通株式300万株(同日の株価で約4230万ドル[約51億円])を発行した。規制当局への提出書類によると、すべて株式による取引だ。

この買収は、LiDARの中核部品を垂直統合し、より正確で低コストの製品を市場に投入するためのLuminarの最新の試みだ。

「取引は第2四半期に完了する見込みで、Freedom Photonicsの高出力レーザーとその関連フォトニック集積回路技術が、当社の将来のセンサーの性能を最適化するとともに、コストロードマップを前進させることができます」とLuminarの共同創業者で最高技術責任者のJason Eichenholz(ジェイソン・アイヘンホルツ)氏はTechCrunchに語った。

市街地であれ高速道路であれ、自動運転車システムが直面する大きな問題は、遠距離にある物を見て認識する能力だ。アイヘンホルツ氏によると、AVシステムが300メートル先の道路にタイヤや人が見えるかどうかを判断するのに必要な点密度と解像度を得るためには、高出力レーザーパルスと高品質ビームが重要だが、いずれもFreedom Photonicsが得意とする部分だという。

両社の数年にわたる協力関係に続く今回の取引は、LuminarのLiDARの品質を向上させるだけでなく、同社がサプライチェーンにおけるコストをしっかりとコントロールすることを可能にする。これは、レーザーそのものが特に入手しにくいからではなく「自律性を発揮し、自動車に適した環境で求められる積極的な安全性を確保するための適切な性能パラメータを持つレーザーの入手が、かなり難しいからです」とアイヘンホルツ氏は話した。

LiDARは、自動運転システムの中で最も高価な部分の1つだ。そのため、商業化と規模拡大が難しい。コスト削減は不可欠であり、Luminarは積極的に進めている。同社は、アイヘンホルツ氏が「3本の脚」と呼ぶ3つの重要なLiDARハードウェアコンポーネント(受信機、ASICまたは処理能力、レーザー)の材料費を100ドル(約1万2000円)以下にするという目標を掲げている(レーザーは現在、Freedom Photonicsから調達している)。

Luminarはすでに、残る2本の脚のために、技術とチームを獲得済みだ。カスタム信号処理チップメーカーのBlack Forest Engineersを2017年に買収し、Luminarは受信機のコストを数万ドル(数百万円)から3ドル(約360円)に下げることができた。また、2021年のOptogrationとその受信機チップの買収も、アイヘンホルツ氏によると、同社の能力と経済性における制限を取り払った。

「Luminarとの全面的な協力は、Freedom Photonicsにとって完璧な機会であり、私たちの世界クラスのレーザーチップ技術の大規模商業化への道を加速します」とFreedom PhotonicsのMilan Mashanovitch(ミラン・マシャノビッチ)CEOは声明で述べた。「Luminarの自動車産業におけるリーダーシップ推進に役立つだけでなく、他の産業分野の顧客を同時にサポートし、顧客を拡大するためのより大きな機会となります」。

Freedom PhotonicsのスタッフもLuminarに買収された。経営陣は買収完了後も引き続きLuminarでこれまでと同様に事業をリードする。

Luminarの株価は時間外で約2%下がった。

画像クレジット:Luminar

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

NVIDIAが自動運転業界向けマッピング製品を発表

NVIDIA(エヌビディア)は、2024年までに北米、ヨーロッパ、アジアの30万マイル以上の道路をカバーするグランドトゥルースマッピングを自律走行車業界に提供する新しいマッピングプラットフォームを立ち上げたと、創業者でCEOのJensen Huang(ジェン・スン・フアン)氏が米国時間3月22日の同社のGTCイベントで述べた。

「Drive Map(ドライブ・マップ)」と名づけられたこのプラットフォームは、高度な自律走行を可能にすることを目的としている。Drive Mapは、NVIDIAの既存顧客だけのものではなく、AV業界向けの同社の既存のソリューションを補強するものだ。

同イベントでは、さまざまなスマートドライビングや高度な運転支援機能を提供するために、Mercedes(メルセデス)、Volvo(ボルボ)、JiDu、そして3月22日の時点では、BYDとLucid Motors(ルーシッド・モーターズ)によって使用されているNVIDIAのセンサーおよびコンピュート自動運転ツールキットであるDrive Hyperion(ドライブ・ハイペリオン)の次世代版を発表した

TuSimple(ツー・シンプル)、WeRide(ウィーライド)、Zoox(ズークス)、DeepRoute.aiなどのAV企業もHyperionの顧客である。

Drive Mapは、NVIDIAが2021年買収した高精細マッピングのスタートアップDeepMap(ディープマップ)の成果を表している。このツールは、DeepMapの正確な測量地図と、NVIDIAのHyperionアーキテクチャを使用するすべての車両からクラウドソースされた匿名の地図データを組み合わせることで、センチメートルレベルの精度を提供する。このマッピングツールはカメラ、ライダー、レーダーの3つのローカライゼーションレイヤーを備えており、自律走行に必要な冗長性を提供する。

NVIDIAの顧客から引き出されたすべてのデータは、車両の走行中に常にクラウドにアップロードされている。そして、仮想コラボレーションとリアルタイムの物理的に正確なシミュレーションのために構築されたNVIDIAのオープンプラットフォーム、Omniverseに集約されており、車両が適切な定位を達成できるように地図を更新するために使用される。この過程で、NVIDIAはより迅速にマッピングの範囲を拡張することができる。

さらに、Omniverseは詳細なマップを構築するために、自動コンテンツ生成ツールを使用し、それを自律走行車のエンド・ツー・エンド・シミュレーション・プラットフォームであるNVIDIA Drive Simで使用できる走行可能なシミュレーション環境に変換している。

画像クレジット:NVIDIA

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Yuta Kaminishi)

ブリヂストンが自動運転シャトルのMay Mobilityに少数株主として出資

タイヤメーカー大手のBridgestone(ブリヂストン)は、米ミシガン州に拠点を置く自動運転シャトルのスタートアップ、May Mobility(メイ・モビリティ)に少数持分出資を行い、自律走行車のスタートアップにまた1つ投資することになった。

ブリヂストンはこれまでにも、スウェーデンの自律型貨物輸送技術のスタートアップであるEinrideと協力し、自動運転EVトラック輸送のための持続可能なモビリティソリューションを模索したり、自動運転トラックによる長距離輸送スタートアップのKodiak Roboticsに出資してきた。

ブリヂストンは最近、カーケアサービスに特化したラストマイル配送プラットフォームのYoshi、およびタイヤセンサーとデータ管理企業のTyrataとの提携も発表している。他の最近の戦略的投資と同様に、ブリヂストンはMay Mobilityの株式をどれだけ保有しているかは明らかにしていない。

ブリヂストンとMay Mobilityのパートナーシップにより、後者は2022年後半にブリヂストンのタイヤ摩耗予測モデリング技術を同社の車両に搭載する予定だ。ブリヂストンのインホイールセンサーと予測アルゴリズムが、タイヤの空気圧、温度、トレッドの摩耗など、タイヤの健康状態を監視し、最終的にMay Mobilityの総所有コストの削減とAV車両の安全性の向上に貢献すると、Mayの広報担当者は述べている。また、今回の統合により、ブリヂストンはAVの運用に関する知見を得ることで、同社の主力タイヤ製品の改良につなげることができる。

ブリヂストンの米国子会社であるBridgestone Americas(ブリヂストンアメリカスインク、BSAM)のモビリティソリューション&フリートマネジメント社長、Brian Goldstine(ブライアン・ゴールドスティン)氏はこう述べている。「ブリヂストンの予知保全に関する知見を統合する今後の計画は、May Mobilityの車両がより安全、効率的、持続可能な形で運用されることを保証するものです」。

また、May Mobilityは、ブリヂストンが2021年に買収したクラウド型フリートモビリティソリューション「Azuga」を活用することで、業績の向上が期待される。Azugaは、フリート管理、カメラインテリジェンス、ルートプランニング機能をMay Mobilityにもたらす。

May Mobilityは、Waymo(ウェイモ)やCruise(クルーズ)のようなロボタクシーではなく、公共交通機関の補強を目的とした低速AVを、広島を含む5都市で運用している。2021年は、テキサス州アーリントン、ミシガン州アナーバーとグランドラピッズで、交通技術企業のViaと共同でオンデマンドの自動運転シャトルサービスを開始した。

同社は2022年初め、車両をハイブリッドのLexus(レクサス)SUVからハイブリッドのToyota(トヨタ)シエナミニバンに変更する計画で、8300万ドル(約99億1700万円)のシリーズCを調達した。この資金は、Mayが米国と日本で事業を拡大し、黒字化するために使用される予定だという。

またブリヂストンは、Mayの事業拡大を支援するため、同社のAVサービスやメンテナンスサポートを、BSAM傘下のFirestone Complete Auto Care、Tires Plus、Hibdon Tires Plus、Wheel Worksブランドの店舗や、ブリヂストンのモバイルサービス会社であるFirestone Directを通して提供する予定だ。

May MobilityのCEOであるEdwin Olson(エドウィン・オルソン)氏は、声明でこう述べている。「ブリヂストンの全国2200店舗を利用した車両運行・サービスにより、May Mobilityは全米で比類ないスケールアップを実現できます。このコラボレーションは、安全で持続可能なモビリティソリューションをグローバルに提供するという、我々の共通のミッションに基づくものです」。

画像クレジット:May Mobility

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Den Nakano)

中国のドライバーレス配達スタートアップWhale Dynamicが約3億円調達、米国市場を狙う

Nuro(ニューロ)に挑む中国の新進気鋭のスタートアップは米国の配達市場に照準を合わせており、その野望を前進させるためにシード資金を調達した。

Baidu(百度、バイドゥ)のベテラン社員David Chang(デイビッド・チャン)氏が設立した深センの自律配達スタートアップWhale Dynamic(ホエール・ダイナミック)は、約250万ドル(約3億円)のシードラウンドをクローズしたと発表した。中国の大手金融機関出身のベテランが運営する北京の投資会社Qianchuang Capitalがラウンドをリードし、不動産デベロッパーが出資する中国のファンドShangbang Huizhongが参加した。

2018年に設立されたWhale Dynamicは、ハンドルと運転席をなくすことを目的としたNuroのようなドライバーレスの配達バンを開発している。そして、配達ボットがBYD製であるNuroと同様、自動運転車の生産を中国のメーカーと契約しているが、契約が確定していないためメーカー名はまだ明かせない。

Baiduの知能運転グループでプロダクトマネージャーを務めたチャン氏は、Whale DynamicがNuroにわずかに勝るのはコスト面だと指摘する。Nuroは米国で部品を組み立てているが、Whale Dynamicは製造から組み立てまですべて中国で行っているため、価格面で優位に立つことができる。価格は1台約2万ドル(約240万円)だ。

今回の資金投入により、Whale Dynamicは現在30人の従業員からなるチームを拡大し、中国と米国での製品使用例を検討することが可能になる。Huawei(ファーウェイ)出身のエンジニアリングディレクター、Qi Wei(チー・ウェイ)氏をリーダーに、5月に中国のいくつかの都市で最初のプロトタイプ車のテスト走行を実施することを目指している。

中国ではWhale Dynamicは、Meituan(メイトゥアン)やJD.com(JDドットコム)などの小売テック大手との競争に直面しており、これらの企業は2021年、独自の商品専用配達車のテストを開始した。チャン氏は、車輪のついた箱を直接製造するのではなく、乗用車の研究開発とテストを行うという、より時間とコストのかかる方法をとる同社の技術は時の試練に耐えることができると考えている。

乗用車を使っているWhale Dynamicのテスト車両

チャン氏は、最終的には米国を拠点にして、速達サービスやスーパーマーケットをターゲットにしたいと考えている。「中国なら、もっと早く、低コストでテストができます」とチャン氏は中国からスタートした理由を説明する。

中国と米国の規制当局が、国家安全保障上のリスクがあるとしてハイテク企業への監視を強化しているため、2つの国にまたがる企業はより大きな規制に従うか、どちらかの国を選ばなければならなさそうだ。中国のソーシャルメディア大手Sina(新浪)の関連会社が出資するカリフォルニア州の自律型トラック運送会社TuSimple(トゥシンプル)は中国部門の売却を検討している、とロイター通信は報じた。

TuSimpleの車両のほとんどは米国で稼働しており、中国で動いている車両はわずかだ。しかし、米国の規制当局は同社の中国との関わりや中国支社のデータへのアクセスについて懸念を示しており、これがTuSimpleの中国部門を売却する決断につながったと報じられている。

Whale Dynamicではセキュリティ・コンプライアンスを最優先しているとチャン氏は話す。米国市場に参入する際には、AWSやGoogle Cloudといった米国のクラウドサービスを利用し、中国のチームはハードウェアの開発のみを担当する予定だ。LiDARはOster(オスター)とイスラエル拠点で米国にもオフィスを持つInnoviz(イノビズ)、チップはNVIDIA(エヌビディア)、Intel(インテル)と、主要サプライヤーも米国系だ。自社で車両を運用するNuroとは異なり、Whale Dynamicはすぐに使える車両とSaaSのみを提供し、運用部分は顧客に任せる予定であるため、同社が取得できる機密データの量は制限されるはずだ。

画像クレジット:Whale Dynamic’s delivery bot

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

GMが自動運転の子会社「Cruise」のソフトバンク株を買い取りへ

General Motorsが、自動運転技術の子会社であるCruiseの持ち株を増やそうとしている。

米国時間3月18日の夜、同社は、Softbank Vision Fund 1のCruiseの持ち株を21億ドル(約2500億円)で取得すると発表した。またGMは、同ファンドが以前2018年に行ったコミットメントに代わり、Cruiseに対して13億5000万ドル(約1610億円)の追加投資を行う。

この発表の6週間前にCruiseは、一定の制約のある自動運転のロボタクシーサービスをサンフランシスコの公道で開始した。それはSoftbankにとっては、以前の13億5000万ドルの追加投資の約束を実行に移すすべきタイミングだった。

なぜ今、ソフトバンクが売却に踏み切ったのか、その理由は明らかではない。GMの広報担当者は、同社の出資比率が高まることで、クルーズの株主構成がシンプルなものになるだけでなく、GMとクルーズがAV技術の商業化と潜在能力を最大限に引き出すために最も価値のある道を追求するための最大限の柔軟性を提供することができると述べている。

GMのCEOで会長のMary Barra(メアリー・バーラ)氏は、これにより株主の価値が増大するという。

「GMがバランスシートの強みを生かし、Cruiseへの出資を増やし、当社の統合的な自律走行車戦略を推進する機会を得たことを発表できることを非常にうれしく思います。私たちの投資は、長期的な株主価値を創造するための特別な機会であると引き続き信じています」とバーラ氏は声明で述べた。「私たちの投資ポジションの拡大は、Cruiseの株主構成を簡素化するだけでなく、GMとCruiseがAV技術の商業化と潜在能力を最大限に引き出すための最も価値ある道を追求するための最大の柔軟性を提供します」。

GMの出資比率が高まることで、同社がCruiseをスピンオフさせたり、株式公開に踏み切ったりするといった可能性もある。GMは、短期的な計画としてIPOがあるかどうかについては明言しなかった。しかし同社の広報担当者は、GMが前進する際には「株主のために価値を創造するあらゆる機会を検討する」という。GMは、将来におけるCruiseのIPOを否定していないと広報担当者は付け加えた。

CruiseのCEOであるKyle Vogt(カイル・フォークト)氏の発表によると、GMの投資の増加に加えて、同社は反復性のある流動化機会プログラムをローンチした。それは、人材獲得および引き止めるための「目の前の人参」の1つだ。フォークト氏によると、このプログラムは従業員に流動性を与え、同社の上場に際してはIPOに参加しなくても株価上昇による利益が得られるようにするというものだ。

このプログラムでは、現在と過去の社員が権利の確定した株式の任意の量を、各四半期に売ることができる。フォークト氏によると、買うのはGMまたはその他で、その価値はサードパーティーの金融企業が会社の業績や財務予測、マーケットの条件、関連する取引や資金調達案件、そしてマーケットにおける他社との比較などによって決まる。

「私たちの技術のデプロイとスケールが順調であれば、従業員持ち株の価値は上がるはずだ」とプログラムを発表するブログ記事でフォークト氏で述べている。

画像クレジット:Cruise

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

米国で自動運転車のための国家安全基準がついに決定

無人運転車や自動運転機能を備えた自動車に、独自の安全基準が定められることを米国連邦機関が米国時間3月10日に決定した。規則はまず、運転席やハンドルのない車で乗客の安全をどう定義するかを明確化している。

米国運輸省の幹線道路交通安全局(NHTSA)は、この種のものとして初めての最終規則を制定し、人間ドライバーが関与する手動制御装置をもたない車両の乗客のために安全要件を改訂した。

今回の決定は、いくつかの修正に加えて、連邦自動車安全基準(FMVSS)の用語を変更して、自動運転車の空間レイアウトを反映したもので、同局の自動運転の普及にともなう公共の安全確保の取り組みに基づいて作られている。2021年NHTSAは、自動運転車(AV)の運用会社およびメーカーに事故報告書の提出を義務付ける命令を発令し、2020年には、州や企業がAV試験に関する情報を提出し、市民が閲覧できる仕組みを立ち上げた。

「自動運転システム装備車両で運転者が人間から機械に変わっても、人間の安全を維持する必要性は変わることがなく、当初から組み込まれている必要があります」とNHTSAのDr. Steven Cliff(スティーブン・クリフ博士)局長代行が声明で語った。「この規則によって、NHTSAはメーカーが安全を最優先することを求めます」。

さまざまな意味で、この規則はすでに本格化している業界に対応しようとしている。しかし、専用に作られた自動運転車が公道に解放されたことはまだなく、今新しいタイプの車両のための規則の基盤を形成することは、正しい方向への一歩であることは間違いない。

規則ではまず、従来型自動車向けに決められた用語を変更し、曖昧さと不要な用語を排除している。「driver’s seat(運転席)」「steering wheel(ハンドル)」「passenger seat(助手席)」といった用語は、該当する機能をもたない専用自動運転車の空間的参照に用いる意味がない。たとえばCruise(クルーズ)およびZoox(ズークス)の両社が作っているカーシェアリング目的の自動運転車には、伝統的な意味の車内空間がない。

一方、 Waymo(ウェイモ)、Motional(モーショナル)、およびArgo AI(アルゴAI)が路上に送り出しているのは、自動運転システムまたは操舵制御によって操作が可能であるため区別が必要である、とNHTSAはいう。

Nuro(ニューロ)などの自動運転車は、商品の配達に用いられており、人間は乗せないため、NHTSAの基準は、これらの車両を除外するように変更され、保護すべき乗客がいない場合は元の安全要件がなくなることを規定している。

NHTSAの最終規則は、用語を改訂した結果発生するメーカー要件の変更についても言及している。例えば自動運転システム装備車両における先進的エアバッグおよび先進的エアバッグ抑制テルテール(警告表示)、ロック可能義務の扱い、中型バスと大型スクールバスのシートベルト義務の変更などが、「driver」 という用語の削除に続いて記載されている。

自動運転車メーカーは、すでに乗客の安全を考慮して新型車を設計している。たとえばZooxは、まったく新しい形のエアバッグを作りし、センサー、スイッチ、カメラなどを利用したシステムを開発して、乗客の適切なシートベルト利用を確認しているという。しかし、NHTSAの決定は、今後のガイドラインとメーカーが進化する業界の責任をもつための方法を提供するものだ。

「2020年代を通じて、米国運輸省における安全政策の重要部分は、安全基準を自動運転および運転支援システムの進歩に確実に追随させることです」と、Pete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)米国運輸長官が声明で語った。「この新しいルールは、自動運転システム装備車のための堅牢な安全基準を確立するための重要な一歩です」。

画像クレジット:Zoox

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Kodiak Robotics、Ceva Logisticsを顧客に迎えた自動運転トラック貨物輸送の商業運用を発表

自動運転トラック輸送のスタートアップ企業であるKodiak Robotics(コディアック・ロボティクス)は、Ceva Logistics(シーバロジスティクス)と提携し、ダラス・フォートワースとオースチン間およびダラス・フォートワースとオクラホマシティ間で、自動運転走行による貨物輸送を行うと、米国時間3月9日に発表した。KodiakにとってCevaは、初めて公に発表した顧客となる。

これは、Kodiakの技術を公道でテストするための実証実験や試験的な契約ではない。CevaはKodiakの有料顧客の1つであり、Kodiakは事業を継続するための収益を得る。Kodiakは11月に1億2500万ドル(約145億円)のシリーズB資金を調達したばかりだが、Waymo(ウェイモ)やAurora(オーロラ)といった競合と比べると資金が圧倒的に少なく、この分野ではまだ小さなプレイヤーの1つだ。

Cevaとの提携は、Kodiakが商業化への道をさらに進むということを示すだけでなく、Cevaの貨物業務に関する貴重な洞察をKodiakにもたらすことになると、Kodiakの共同創業者でCEOのDon Burnette(ドン・バーネット)氏はTechCrunchにメールで語った。

「これには、Kodiak Driver(コディアック・ドライバー)を、Cevaの既存インフラに最も効果的に統合する方法についての洞察も含まれます」と、バーネット氏はいう。「パートナー企業と貨物輸送を行うことは、物流業界の顧客が実際に望む製品を作り上げるために、非常に重要であると私たちは考えています」。

自動運転システムの背後にある技術は、公道で展開する準備がすでに整っているか、ほぼ整っている。ほとんどの業界の専門家たちは、貨物輸送が自動運転技術にとって最初の大規模な商業用途になると考えている。そのため、物流会社、荷主、輸送業者との提携をめぐり、業界では争奪戦が始まっている。

Alphabet(アルファベット)傘下の自動運転トラック輸送部門であるWaymo Via(ウェイモ・ビア)は、2022年1月にJ.B. Hunt(J.B.ハント)を同社の完全自動運転貨物輸送の最初の顧客とすることを発表し、続いて翌2月にはC.H. Robinson(C.H.ロビンソン)と提携して試験運用を開始することも発表した。Auroraは自動運転トラックのテストを行うためにFedEx(フェデックス)と契約した他、Uber Freight(ウーバー・フライト)の顧客のために貨物の運搬も始めている。

「顧客と一緒に仕事をすることで、私たちはロジスティクスビジネスを深く理解し、彼らやその他の企業とシームレスに事業を展開することができます」と、バーネット氏は語っている。「私たちの顧客は高い要望を持っています。現実世界のシナリオで貨物輸送を行うということは、最適な時間帯や最適なルートを選んで運行することができません。そのため、当社のシステムはより強固なものになります」。

米国内における自動運転輸送のほとんどは、テキサス州で行われている。オクラホマ州では、州議会が完全自動運転車の公道における無人運転走行を認める法案を、先日可決したばかりだ。KodiakとCevaは同州で率先して自動運転による公道走行を始める企業となる。

もっとも、KodiakのトラックはまだWaymoやAuroraと同様に、運転席に人間の安全オペレーターが乗り込み、常に運行を監視することになる。ドライバーはルートの高速道路部分を自動運転モードで運行する。Kodiakはいかなるポリシーの離脱も行わないため、特定の定められた状況では、人間が介入して手動でトラックの運転を引き継ぐ必要はないだろう。

「私たちは、Kodiak Driverが高速道路で遭遇する状況に対応できると期待しています」と、バーネット氏は述べている。「人間のドライバーは、必要と感じた時にはいつでもシステムを解除する権限を持っています」。

2021年11月以来、Kodiakはダラス・フォートワースとオースティン間の200マイル(約322km)の貨物レーンで、Cevaのために毎週荷物を輸送している。この提携は2022年2月、ダラスのCeva施設とオクラホマシティの配送地点を結ぶ、州間高速道路35号線をオクラホマ州へ向かうルートにも拡大された。Kodiakによると、どちらのルートでも、長距離トラック用に作られたコディアックの自動運転トレーラーヘッドが、荷物を詰めたCevaのトレーラーを引っ張るという。

「Cevaでは、イノベーションとはビジネスに影響を与える新しいアイデアの実行であると定義しています。Kodiakとのパートナーシップは、特に現在のサプライチェーン危機や進行中のドライバー不足の観点から、当社の顧客にさらなる事業価値を提供することになるでしょう」と、Cevaの北米事業部で社長兼マネージングディレクターを務めるShawn Stewart(ショーン・スチュワート)氏は、声明で述べている。

Kodiakは、Cevaのために運行している2つのルートに加え、2019年からダラスとヒューストンの間で、そして2021年からダラスとサンアントニオの間で、毎日貨物輸送を行っている。同スタートアップは韓国のコングロマリットであるSKとも戦略的パートナーシップを結び、同社の技術をアジアで展開する可能性を探っているところだ。また、少数株主であるBridgestone(ブリヂストン)とは、幅広いパートナーシップの一環として、スマートタイヤ技術のテストと開発を行っている。

画像クレジット:Kodiak Robotics

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

自動運転システムに対する初のリコール、Pony.aiが同社ソフトのリコール発表へ

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)によれば、自律走行車両スタートアップのPony.ai(ポニー・エーアイ)はカリフォルニア州で2021年10月に発生した衝突事故を受けて3台の車両に対しリコールを今後発表する。

ロイターが最初に報じたところによると、当局は米国時間3月8日に「これは自動運転システムに対する初のリコールだ」と述べた。

NHTSA局長代行のSteven Cliff(スティーブン・クリフ)氏は声明の中で「自動車を操作するのが人間のドライバーであっても自動運転システムであっても、道路使用者を守る必要があることに変わりはありません。この自動運転システムに対する初のリコールで明らかな通り、NHTSAは自動車メーカーと開発者が安全を最優先に最新のテクノロジーを推進するよう、これからも確実に対応します」と述べた。

トヨタが支援するPony.aiは数カ月間にわたってカリフォルニア州でHyundai Kona(ヒュンダイ・コナ)の電気自動車10台を人間の安全オペレーターなしでテストしていた。その際に、そのうちの1台がフリーモントで中央分離帯と道路標識に衝突した。巻き込まれた他の車両はなく、けが人もいなかったが、この事故を受けてカリフォルニア州車両管理局はPonyの無人テスト許可を一時停止し、NHTSAも正式に調査していた。

書類の中でPony.aiは、当局は同社に対しソフトウェアに安全上の問題があるとの考えを伝えてリコールを要請したと述べている。

Pony.aiによれば、事故車両のソフトウェアの問題は他に2台で発見され、すでに3台とも修正済みだという。同社はソフトウェアのコードを修正したとも述べた。

Pony.aiの広報はTechCrunchに対し「Pony.aiの自律走行車両で事故が発生したのはこの1回限りです」と述べ、これまでに実際に600万マイル(約966万km)以上を自律走行し、2021年にカリフォルニア州で30万5617マイル(約49万km)を走行したと補足した。

当局担当者はTechCrunchに対し、Ponyがテストの一時停止の原因となった問題を修正する適切な行動を完了したとカリフォルニア州車両管理局が確認するまでは、無人テスト許可は停止されると述べた。同社のカリフォルニア州における有人テストの許可は影響を受けない。

数日前の米国時間3月7日にPony.aiは、シリーズDの1回目のクローズ後に評価額が85億ドル(約9775億円)に急上昇したと発表していた。同社の米国トラック部門が事実上解体され幹部数人がライバル企業数社に移るなど米国でとてもうまくいっているという状態ではないが、中国ではトラックとロボタクシーの事業を着実に成長させている。

画像クレジット:Pony.ai

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

トヨタが支援するロボタクシースタートアップ「Pony.ai」の評価額が約9775億円に急上昇

中国と米国を拠点とするPony.aiは米国時間3月7日、シリーズDの1回目のクローズ後に評価額が85億ドル(約9775億円)に急上昇したと発表した。自律走行車両が大量に投入されるにはまだ数年かかるこの分野を投資家が追いかけ続けていることの表れだ。

2016年に創業しトヨタが支援するPonyは、中国と米国の両方でテストと運用をしている一連のロボタクシースタートアップの1つで、同様の他のスタートアップにはWeRide、Deeproute、AutoXなどがある。Ponyの前回の評価額は2020年11月の53億ドル(約6095億円)だった。

Ponyがこの1年で直面した困難の数々を考えると、今回の評価額は驚きだ。同社ではトラック部門とロボタクシー部門を統合する経営判断が不評で、その後自律走行トラック部門の主要メンバー数人が退社し、ライバル企業数社のメンバーとなった。米国の同社トラック部門はその後解散したが、中国でのトラック事業は成長を続けている。

12月には衝突事故を受けてカリフォルニア州がPonyの無人運転テストの許可を一時停止した。

テック企業に対する中国当局の監視が厳しさを増す中、PonyはJPMorgan Chaseの幹部だった人物を最高財務責任者として迎えた直後に米国での上場計画をせざるを得なかったと報じられた

ロボタクシーの開発は費用がかかることで知られるが、Ponyは資金は潤沢だと述べている。一般に、自律走行車両スタートアップにとってはトラック事業はロボタクシーに比べると早く収益化できる手段とも見られている。同社はシリーズD-1の後に10億ドル(約1150円)近い「バランスシートの流動性」を有していると述べた。

同社は今回の調達金額を明らかにしていないが、ラウンド全体が完了したら詳しく発表するとしている。

グローバルで1000人以上の従業員を抱えるPonyは、自律走行車両を中国の主要4都市(北京、上海、広州、深セン)、そしてカリフォルニア州のフリーモントとアーバインでテストしている。同社のロボタクシーはBaidu(百度)の自律走行車両とともに、北京郊外の実験区域で乗客への課金を開始する許可も受けた。

資金の用途についてPonyの共同創業者でCEOのJames Peng(ジェームズ・ペン)氏は発表の中で次のように述べた。「我々の技術開発とバランスシートの強みの両方がそろうことで、2022年の採用を大幅に拡大し、新しい自律走行車両のテストと運用の拠点をグローバルで多数開設し、戦略的パートナーシップを進展して、車両を急速に展開します」。

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(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

テラヘルツ波で人間も「透視」する画像センサー

赤外線とマイクロ波の間には、現在の電子機器や光学機器では扱うことができない目に見えない電磁波領域が広がっていいる。その領域であるテラヘルツ波がすごい点は、X線によく似ていることだ。テラヘルツ波を使えば、ある種の固体物質を透視することができるが、X線過剰照射時のような「あれあれ、死んじゃった」という副作用はない。Ruonan Han(ルオナン・ハン)准教授が率いるMITのテラヘルツ統合エレクトロニクスグループの研究者たちは、この領域を利用しようとしている。MITの研究室では、電子的に操縦可能なテラヘルツアンテナアレイが開発されたばかりだ。

このトランプサイズのテクノロジーを使うことで、研究者たちはその領域への扉を開けようとしている。この技術により、より高速な通信や、霧や埃の多い環境でも視野を確保できるシステムが実現できるかもしれない。研究者たちはこれを「リフレクトアレイ」と呼んでいて、コンピュータで反射方向を制御できる鏡のように動作すると説明している。

このリフレクトアレイは、1万本近いアンテナを小さなデバイスに集約し、テラヘルツのエネルギービームを微小領域に精密に集めることが可能だ。可動部がないため、正確かつ迅速に制御することができる。この装置が生成する画像は、LiDAR(ライダー)装置に匹敵するものだが、雨、霧、雪を透過することができる。研究者は、この種の商用デバイスで軍用レベルの解像度を実現できる初めてのソリューションだとしている。

「アンテナアレイは、各アンテナに与える時間遅延を変えるだけで、エネルギーを集める方向を変えることができ、しかも完全に電子化されているので、非常に興味深い存在なのです」と、最近MITの電気工学・コンピュータ科学科(EECS)で博士号を取得したNathan Monroe(ネイサン・モンロー)氏は語っている。「つまりモーターでぐるぐる回る空港の大きなレーダーアンテナの代わりとなるわけです。このアンテナアレイでも同じことができるのですが、コンピュータの中でビット少し変えるだけなので、可動部品は必要ないのです」。

イメージ検知装置として使用する場合には、照射角度1度のビームがセンサー前のシーンの各点上をジグザグに移動し、3次元の奥行きのある画像を作成する。他のテラヘルツアレイは、1枚の画像を作るのに何時間もあるいは何日もかかるのだが、この製品はリアルタイムに動作する。これまでは、1万本のアンテナを同時に制御するために十分なビットを計算 / 通信すると、リフレクトアレイの性能が大幅に低下していた。そこで研究者たちは、アンテナアレイをコンピューターチップに直接組み込むことで、これを回避した。フェーズシフターは、トランジスタがわずかに2個という非常にシンプルなもので、このためチップ上の約99%のスペースをメモリとして確保することができた。その結果、個々のアンテナは異なる位相のライブラリを保存することができる。さらに、2トランジスタのフェーズシフターは消費電力を半減させ、別電源が不要になるというメリットもある。

「この研究以前は、テラヘルツ技術と半導体チップ技術を組み合わせてビームフォーミングが行われることはありませんでした」とハン氏はいう。「今回の研究によって、独自の回路技術により、非常にコンパクトでありながら効率的な回路をチップ上に実現し、そこでの波の挙動を効果的に制御することができるようになったのです。集積回路技術を活用することで、過去にはまったく存在しなかった素子内メモリやデジタル動作が可能になりました」。

「このリフレクトアレイは、高速に動作し非常にコンパクトなので、自動運転車のための画像認識に有用です。特に、テラヘルツ波は悪天候でも見通すことができますので」とモンロー氏はいう。

モンロー氏と彼のチームは、とあるスタートアップを通じてこの技術を市場にライセンスしようとしているが、このデバイスは軽量で可動部品がないため、自律ドローンに適しているかもしれないと示唆している。さらにこの技術は、数分ではなく数秒で動作する非侵襲型のボディスキャナーを実現することで、セキュリティの現場にも応用できる可能性がある。

以下は、システムの仕組みを紹介した動画だ。

画像クレジット:MIT

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)

Waymoがサンフランシスコでロボットタクシー乗車料金の徴収を開始

Alphabet(アルファベット)の自動運転部門であるWaymo(ウェイモ)は、カリフォルニア州公益事業委員会から、サンフランシスコで自律走行車によるライドヘイリングに乗車した人に料金を課すことを認める許可を得た。ただし、許可の規定に従い、人間のセーフティオペレーターが立ち会う必要がある。

このカリフォルニア州公益事業委員会(CPC)からの許可取得は、同社がサンフランシスコで自律走行車を商用化するための最終ステップの1つだ。2021年9月、カリフォルニア州自動車局はWaymoに同市での運転者同席許可証を与え、それにより同社は自社の自律走行車が提供するサービスの対価を受け取ることができるようになった。

この許可は、Waymoが特別にロボットタクシーサービスに料金を課すことを許可するものではなかったが、同社は自律配送から収益を得ることができた。11月、同社はスーパーマーケットチェーンのAlbertsons(アルバートソン)と提携し、サンフランシスコで一部の顧客に食料品を配達している。

Waymoは2021年8月から、サンフランシスコで十分に精査された個人のグループである「Trusted Tester」プログラムのメンバーに無賃乗車を提供している。これは、乗車体験に関する詳細なフィードバックを提供してもらい、同社のサービスに関する学びを手助けするものだ。同社によると、テスターは秘密保持契約書にサインしてプログラムに参加し、ウェイティングリストは数万人に上るという。

今後数週間のうちに、WaymoのSFサービスエリア内であれば24時間365日どこでも有償で乗車できるよう、同社はこのプログラムを発展させる予定だ。

Waymoの広報担当者であるNick Smith(ニック・スミス)氏はTechCrunchに「我々は完全自律走行体験を一般に展開するための道筋を、段階的なアプローチで進めています」と語っている。「それは、私たちがアリゾナで取ったアプローチで、これは 私たちの安全への焦点に深く基づいています。そしてそれは、私たちが今後運営するどの都市でも取るであろうアプローチです。まず、自律走行モードで自律走行スペシャリストがハンドル操作を管理する状態で開始し、選ばれたテスターに、料金を徴収開始する前に無料で乗車を公開します。最終的には、ライダーのみのモード(他に誰も乗っていない状態)での運行に移行します。アリゾナでは、何千人ものライダーがライダーのみのモードで何万回もの移動をこなした実績があり、この方法はサービス運営に関する学びを得るのに役立っています」と語る。

同社は、同社の自律走行型Jaguar I-PACEを何台保有しているのかは共有していないが、最新のCPUC四半期報告書では、Waymoは報告期間中のある時点でライダーによる移動に利用できる車両を約100台保有していたことが判明した。

同社のライドヘイリングサービスであるWaymo Oneは、アリゾナ州フェニックスですでにドライバーレスサービスとして提供されており、このサービスがどの程度のコストになるかの指標となるはずだ。最近のCNBCのレポートによると、5mil(約8km)を14分かけて走った場合、結局1分あたり約1ドル(約115円)のコストがかかったという。Uberの平均的な乗車時間は1分あたり約0.40ドル(約46円)である。

「価格設定は合理的で、サンフランシスコの他のサービスと競争力のあるものになる予定ですが、現時点で共有できる具体的な内容はありません」とスミス氏は語る。

Waymoが有料乗車に完全移行したら、サンフランシスコのTrusted Testerの無料乗車を停止すると、スミス氏は述べた。

同市におけるWaymoの最大の競合であるCruise(クルーズ)は、Waymoがドライブレスの許可を得たのと同じ日にカリフォルニア州陸運局からドライブレスの展開許可を得ており、2月初旬から一般市民に対して人間のセーフティ・オペレーターを介さない無料乗車を提供している。Cruiseは、それらの乗り物を有料化するためのCPUCの許可をまだ待っているところだ。Waymoは、DMVにドライバーレス許可証を申請したかどうかについてコメントするのを避けた。

関連記事:Cruise、サンフランシスコの公道で自動運転タクシーの一般乗車開始へ

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

MotionalとViaが自動運転車による無料の配車サービスをラスベガスで開始

Aptiv(アプティブ)と現代自動車(ヒョンデ)の合弁事業として、自動運転車技術の商用化を目指すMotional(モーショナル)は、オンデマンド交通サービスを手がけるテック企業のViaと共同で、ラスベガスで新たなロボットタクシーサービスを開始した。

2020年10月に初めて提携を発表した両社は、ラスベガスのダウンタウンで一般市民に自動運転車の無料乗車を提供する。この自動運転車には、安全のために人間のオペレーターも同乗することになっている。

このサービスは2021年前半に開始される予定だったが、新型コロナウイルス感染流行による不安から、両社は開始時期を延期していた。MotionalとViaは当初、オンデマンドの相乗りロボタクシーという青写真を開発し、これらの車両が公共交通機関にどのように統合できるかを学ぶ計画だった。両社はその後、相乗りサービスの計画を破棄し、代わりに個人向けの乗車サービスの提供のみを行う予定であることを、Motionalは認めた。

この新サービスは、MotionalがLyft(リフト)との既存の提携関係を延長し、2023年までにラスベガスで商用ドライバーレス配車プログラムを開始する計画を発表してから、わずか数カ月で実現したものだ。MotionalとLyftは、2022年の後半までに運転手なしの無料乗車サービスを開始することを目指しており、一般市民はLyftのアプリを通じて、電気自動車「Hyundai IONIQ 5(ヒョンデ・アイオニック5)」をベースにしたMotionalのロボタクシーを予約できるようになる。

MotionalとViaは、当初は無料で自動運転車の乗車サービスを提供するという、Cruise(クルーズ)やWaymo(ウェイモ)と似たアプローチを取っている。ただし、Motionalは、少なくとも法的には、ネバダ州で乗車に課金することを妨げられているわけではない。

ネバダ州は、現在CruiseとWaymoが商用化を目指しているカリフォルニア州に比べて、自動運転車の公道走行に関する規制がはるかに少ない。例えば、ネバダ州では自動運転車のテストや運行において、人間の安全オペレーターが乗車するか否かということを区別していない。また同州の法律は、自動運転車を配達や配車サービスとして提供することについては何も言及していない。ネバダ州自動車局の広報担当者によれば、このことは「できない」とする規制がない以上、法的には企業が商用自動運転車サービスに課金することが可能であることを意味するという。しかし、この広報担当者は、現在新しい法律が起草されていることにも言及した。

Motionalによると、同社はラスベガスで既存のLyftの運転手付きサービスで行っているように、運賃を請求できる許可を得ていると言っているが、その許可が自動運転車に関連したものなのか、それとも市内でタクシーサービスを運営するために同社に与えられたものなのかについては、詳しく述べていない。

現段階では、MotionalとViaはサービスの宣伝と自社の学習目的のために無料の乗車サービスを提供することで、乗客からフィードバックを収集し、両社の技術を組み合わせてどのように機能するかを研究することができると、Motionalの広報担当者であるAbby O’Malley(アビー・オマリー)氏は語っている。この広報担当者は、両社が商用サービスの運営を目指しているかどうかや、またその時期については明言せず「Motionalは、この試験運用から学び、将来的にViaとのパートナーシップを拡大することを楽しみにしています」とだけ述べた。

画像クレジット:Motional/Via

米国時間2月24日より、乗客はViaアプリを使って、Motionalの自動運転技術を搭載した「BMW 5シリーズ」のロボットタクシー1台を予約できるようになる。これは、Motionalが現在のLyftのサービスで使用している車両と同じものだが、オマリー氏によると、両サービスで使用する車両群は区別されており、Chrysler Pacificas(クライスラー・パシフィカ)もまだテストに使っているとのこと。

Viaのサービス提供時間は、月曜日から金曜日の午前9時から午後5時まで。乗客は、Viaアプリで強調表示されるRTCボンネビルトランジットセンター、ラスベガス市役所、コンテナパーク、ラスベガス芸術地区、クラーク郡政府センターなど、ダウンタウンの特定のポイントで乗車および降車できると、Motionalは述べている。

Motionalによると、このロボットタクシーサービスでは、Viaのインテリジェントな予約、ルーティング、ソフトウェアアプリケーション技術を活用することで、Motionalの自動運転ロボットタクシーとその車両管理、そして車内での乗客体験に役立てているという。

「車両は、乗客からの送迎の要求に基づき、(運用設計領域の中で)その時点で最も効率的なルートを採択します」と、オマリー氏はTechCrunchに語った。「バスが取るような固定ルートではありません」。

Motionalは、Viaと一緒にラスベガスで運行している車両フリートの規模を明らかにしなかったが、オマリー氏によれば、両社は需要を綿密に観察し、将来的にサービスを拡大するための基盤を持つようになる予定だという。

画像クレジット:Motional

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Waymo、ロボタクシーの安全性の詳細を秘密にすることを裁判所に認められる

カリフォルニア州の裁判所は米国時間2月22日、Alphabet(アルファベット)の自律走行部門のWaymo(​​ウェイモ)はAV技術に関する特定の詳細を秘密にしておくことができると判決し、同社は勝訴した。

同社は1月下旬、自律走行車の展開許可に関する一部の情報、およびカリフォルニア州車両管理局と同社との間の電子メールの一部を、身元非公開の第三者によって提出された公文書請求から削除するために、同局を提訴していた。

カリフォルニア州上級裁判所サクラメント支部による今回の判決は、少なくとも自律走行車業界においては、公共の安全に関わるが企業が企業秘密を含むと主張する情報への一般公開に関して、より広範な企業秘密保護の前例となる可能性がある。

Waymoは訴訟の中で、企業秘密の開示を迫られれば、自動運転技術への投資が損なわれ、車両管理局はもはや企業が自社の技術に関する情報を透明性を持って共有する安全な相手ではなくなるという「業界全体での冷え込み効果」があると主張した。

「Waymoがカリフォルニア州車両管理局に提出した許可申請書に含まれていた競争上重要な企業秘密の開示を除外する仮処分申請を裁判所が認めるという、正しい判断が下されたことをうれしく思います」と、Waymoの広報担当者はTechCrunchに語った。「当局と共有する詳細な技術情報は、必ずしも一般と共有することが適切ではないと認識している一方で、当社の自律走行技術と運用に関する安全性およびその他のデータをオープンに共有し続けます」と述べた。

カリフォルニア州でテストや展開を考えている他の自律走行技術企業と同様、Waymoもその安全対策や技術に関する情報を車両管理局に提出しなければならず、その後、車両管理局はより具体的な質問でフォローアップしていた。車両管理局はWaymoの許可申請情報の公文書請求を受けた際、企業秘密が漏れる可能性があると判断したカ所を検閲する機会をWaymoに与えた。Waymoはそれを実行し、車両管理局は主要部分を黒塗りにした状態で第三者にパッケージを送付した。Waymoによると、依頼者はこの黒塗りに異議を唱え、巻き込まれたくない車両管理局はWaymoに車両管理局に対して一時的な差止命令を求めるよう助言したという。その後、裁判官は2月2日に差止命令を出し、これによりWaymoは編集されていない形での資料の開示を永遠に禁止する差止命令を求めるための時間を稼いだ。

Waymoが訴訟を起こしたのは、同社のAVが特定の条件を識別して走行する方法、AVが人間のドライバーに制御を戻す状況を判断する方法、AV車両へのサポートを提供するタイミング、離脱事故や衝突事故への対処方法などの詳細を保護したいためだ。

「これらの研究開発には何年もかかり、莫大な資金を伴います」と、裁判所に共有されたWaymoの宣言文にはある。「WaymoのAV開発は、Waymoが2016年に独立する前、2009年にGoogleの一部として始まり、したがってWaymoのAV開発は12年以上にわたります。Waymoは、AV製品の研究開発に実に多大な投資を行ってきました」。

しかし、実際に企業秘密が含まれているかどうかは、その情報を一切見ることができないため、判断が難しい。

「問題は、その情報を他者と共有しないことによって純粋に経済的価値を得られるかどうかです」と、nuTonomy(Aptivが買収)の元顧問で、ニューヨークのイェシバ大学カルドゾ法科大学院の法学教授Matthew Wansley(マシュー・ワンズレー)氏はTechCrunchに語った。

例えば、物体を知覚する問題や、他の要因がどのように極端なものになるかを予測する問題を詳細に説明するソフトウェアの不具合は、技術の仕組みに関する情報が明らかになり、競合他社がそれを真似るか、特定のビジネスに対する自社の相対的な位置を評価する可能性があるため、非常に機密性が高いとワンズレー氏は指摘する。したがって、企業がそのような情報を公にしたくないのは理に適っている。しかし同氏は、当局がこの技術が完璧ではないことを知っていて、リスクをゼロにすることより、むしろリスクを減らすことに関心があると確信している。もし規制当局が守秘義務のもとにさらなる情報を求めたら、自身は情報共有に傾くだろうとも述べた。

「Waymoが提出した訴状に目を通しましたが、同社が話している情報のカテゴリはかなり広いです」とワンズレー氏は話した。「同社が送った情報の中に企業秘密があるのでしょうか ?おそらく、いくつかあるはずです。送った情報のすべてが含まれているのでしょうか? おそらく、ほとんどではないでしょう。ただ1つ驚くのは、同社が企業秘密だと言っているものが、実際にすべて企業秘密であった場合です。しかし、同社が当局と共有する具体的な情報を知らない限り、知ることは困難です」。

そして今、市民は知る由もない。ビジネス界はこの結果を成功だと思うかもしれないが、カリフォルニア州や一般市民は自律走行車に関して正当な公共安全の懸念を抱いているかもしれないし、当局が自分たちの代わりに判断してくれるとは思っていないかもしれない。

AV技術は非常に複雑で高度なものであり、また当局の多くの職員は必ずしも技術者ではない。市民は、公聴会や学術研究などを通じて、重要で社会に直結する決定が適切に行われているかどうかを検証する権利があると主張する人もいる。

「ある面では、これが単なるブラックボックスである場合、公共の乗り物に対する社会の信頼をどのように醸成するかという核心に触れるものだと思います」とAlston & Birdのパートナーで知的財産権訴訟を専門とする弁護士のRyan Koppelman(ライアン・コッペルマン)氏はTechCrunchに語った。「そして、これは自律走行車の根本的な問題で、データを入力し、データを出力し、その結果が安全であることを示しているだけなのです。ですので企業は、ブラックボックスで何が起こっているか、あなたは知る必要はない、ただ安全だと認識し、我々を信頼してくれ、というでしょう。そして、ブラックボックスを覗き見して署名した車両管理局を信用しなさい、それで社会にとっては十分でしょう、ともいうでしょう」。

Waymo側は、自社の技術に対する不安を解消するために、一般市民と共有している情報の幅を指摘した。例えば、AV安全報告書を発行し、米運輸省に安全自己評価を提出し、法執行機関との対話ガイドと安全手法の詳細な説明を公表している。

画像クレジット:Waymo

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところを必要なだけ見る人間の目のような視覚システム実現

世界初の可動部のない自動運転用ソリッドステートLiDAR開発、見たいところだけを詳しく見る人間の目のような視覚システム実現

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、LiDAR(ライダー)システムの開発・製造・販売を行うSteraVisionは2月21日、世界で初めて、可動部を一切なくし量産性を向上させたソリッドステートLiDARを開発したと発表した。光の干渉を利用した光コヒーレント技術を組み合わせることで、肉眼では見えない遠方や霧の先が見えるようになり、さらに自動運転車向け認識技術と連動させることで、「見たいところを必要なだけ見る」ことができる人間の目のような機能を持たせることが可能になった。

これは、NEDOの「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」において、SteraVisionが2019年から進めてきた「長距離・広視野角・高解像度・車載用LiDARの開発」の取り組みによるもの。高性能LiDARによる省エネルギー化が大きな目標だが、今回開発されたソリッドステートLiDARを使用して、道路や交通状況を把握し早めに対処する「予知運転」が可能になれば、燃費向上による15.2%のエネルギー削減が実現するという。

LiDARは、レーザー光で測距や画像検出を行う光センサー。自動運転車の「目」となる重要な技術だ。これまでは、レーザー光で対象物をスキャンする際に、鏡を動かしてレーザー光を走査させる方式が一般的だったが、そのような可動部があることで、金属疲労による動作停止や、外部からの振動による不安定化、小型化が困難といった問題があった。そこでSteraVisionは、可動部を一切なくしたソリッドステートLiDARを開発した。

このLiDARの柱となる技術の1つが、ソリッドステートスキャナー「MultiPol」だ。液晶を使って光ビームを上下左右に高速でスイッチすることで、デジタルスキャンを可能にした。

ソリッド・ステートスキャナー「MultiPol」の動作原理

ソリッド・ステートスキャナー「MultiPol」の動作原理

もう1つは、光方向性結合器やY分岐器といった光部品の多くを1チップに集積したフォトニックICだ。多くの光ビームのスキャンが行え、指先に乗るほどの小型化と低価格化が実現した。

開発したフォトニックIC

開発したフォトニックIC

そして3つ目が、カメラ画像、パーセプションAI、LiDARの融合だ。LiDARによる物体検出とカメラ画像の自動運転車向け認識(パーセプションAI)を融合させ、カメラだけでは困難だった霧や煙の向こうにある物体の検出や追跡ができるようになった。さらに、アナログ式ではレーザー光を走査させて全体を計測した後にフレームをリフレッシュしていたが、デジタル方式では選択的に重要な部分だけを計測し、即座にリフレッシュができるため高速追跡が可能となり、「見たいところを好きなだけ詳しく見る」という人間の目と同じような効率的な視覚システムが実現する。

カメラ画像・パーセプションAIと、LiDARを融合した重みづけスキャンの例。LiDARによる物体検出(上図)を3Dカメラ画像(下図)と融合して、パーセプションAIにより認識(下図の赤枠部分)させている

カメラ画像・パーセプションAIと、LiDARを融合した重みづけスキャンの例。LiDARによる物体検出(上図)を3Dカメラ画像(下図)と融合して、パーセプションAIにより認識(下図の赤枠部分)させている

SteraVisionでは、これから自動運転、FA、ロボティクス、セキュリティといった分野の顧客ニーズに合わせてチューニングを行い、2022年の7月ごろからサンプル出荷を開始する予定とのことだ。