HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

HarvestXがイチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」開設

ロボットによる受粉と収穫で植物工場での果菜類の完全自動栽培を目指す農業機器開発スタートアップHarvestX(ハーベストエックス)は6月21日、イチゴの完全自動栽培ロボットシステムの研究開発施設「HarvestX Lab」を、東京大学本郷キャンパス内のアントレプレナーラボに開設したと発表した。

イチゴ農園などとの協力で受粉と収穫のための技術の検証を続け、すでに要素技術の概念実証を完了したHarvestXは、次にロボットシステムの検証、評価項目の追加、試験サイクルを加速する目的で、年間を通じて実験が可能なこの施設を開設した。植物工場事業者と同等の栽培設備を使うことで、開発環境と運用環境を効率化し、製品の機能や品質を向上させ、2021年夏ごろ、「植物工場に特化した機能拡充に向けて」新たなロボットを発表する予定とのこと。

HarvestXは、「ロボットによる完全自動栽培で農業人材不足・食料の安定生産に貢献する」をミッションに、未踏やロボコンの出身者が集まって2020年8月に創設された。おもに「ミツバチを媒介とした虫媒受粉」という不安定で手間のかかる受粉方法に依存している果物類を、ロボットで自動化する研究を重ねている。

HarvestX Lab設立に伴い、「検出や制御システムを担う人材」の採用を進めてゆくという。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:食品(用語)植物工場(用語)東京大学(組織)農業 / アグリテック(用語)HarvestX(企業)日本(国・地域)

商業赤外線衛星で政府機関より細かい地表温度データを収集・分析するHydrosat、地球の危機に関するデータ提供を目指す

地表温度データをモニタリングするだけで、その地表エリアに関する多くの情報を学ぶことができる。Hydrosatの共同創業者兼CEOであるPieter Fossel(ピーテル・フォッセル)氏は、TechCrunchにこう説明してくれた。「例えば、作物畑にストレスがかかっている場合、植物自体のストレスの徴候より前に、地面の温度が上昇しているはずです」。今回、新たに500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を獲得したことで、同氏はHydrosat初の地表面温度アナリティクス製品を顧客に提供したいと考えている。

今回のシードラウンドは、Cultivation Capitalが新たに立ち上げたGeospatial Technologies Fundが主導し、Freeflow Ventures、Yield Lab、Expon Capital、Techstars、Industrious Ventures、Synovia Capital、そしてミシガン大学が参加した。

2017年末に設立されたこの地理空間データ分析スタートアップは、熱赤外センサーを搭載した衛星を使って地表温度データを収集する予定だ。地表温度は農業データ以外にも、山火事のリスクや水ストレス、干ばつなどの情報を提供できる。フォッセル氏のように、気候変動がすでに地球に力を及ぼし始めていると考えるなら、これらはすべて重要な変数だ。

地上温度のデータはNASAや欧州宇宙機関(ESA)などのレガシー機関で収集されているが、あまり高い頻度では収集されておらず、時には特定の場所の地表温度が16日に1回程度しか読み取られないこともあり、高い解像度でもない。Hydrosatは、このような既存のデータギャップを埋めたいと考えている。同社はマルチスペクトル赤外線カメラを使って他の帯域のデータも収集しているが、主なバリュープロポジションはサーマルデータだ。

最初の衛星は、2022年後半にSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでLoft Orbitalと組み地球低軌道に向かう予定だ。このミッションは、約1年前に心臓発作で他界したHydrosatの前CEOであるJakob van Zyl(ヤコブ・ファン・ジル)氏にちなんで名付けられた。衛星打ち上げというと華やかさが増すようだが、フォッセル氏は同社が「コンテンツ企業であり、データ企業であることが第一」と強調している。

「当社はまた、地表面温度製品の上に、作物の収穫量予測、干ばつ検知、灌漑管理などを目的としたアプリケーションを開発しています。なぜなら、これらはすべて基本的に水ストレスが原因であり、ここで挙げたアプリケーションはすべて、基本的に当社のコア製品である地表面温度データによって実現されるからです」と同氏は語った。

Hydrosatの最初の顧客は、ESAとの契約や、米国空軍および国防総省との3つのSBIR(中小企業技術革新研究プログラム)契約など政府機関だった。しかし今回の資金調達により、同社は製品を商業顧客に提供することが可能になる。商業顧客には、農業関連企業や保険会社、さらには地表データの収集に加えて分析を行いたいと検討している企業などが考えられる。

「(Hydrosatは)おそらく、我々が注力している農業分野からスタートしますが、業界を超えて広がっていく可能性があります。というのも、気温は、環境、水、ストレス、食糧など、当社が対象としている分野以外でもさまざまな活動のシグナルだからです」とフォッセル氏は説明する。「気温は経済活動のシグナルでもあります。防衛やセキュリティの観点からも、温度には多くの優れた使用例があります」とも。

将来的には、Hydrosat社はグローバルなモニタリングを可能にするために、16機の衛星を打ち上げる予定だ。しかし、これはあくまでも中期的な計画だとフォッセル氏はいう。長期的な計画としては、さらに衛星を打ち上げたり、データを充実させるためにバンドを追加したり、分析レイヤーを構築することが考えられる。「その先にあるのは、干ばつ、食糧安全保障、水ストレス、山火事、防衛・安全保障などへの応用を可能にする基盤データを提供することです」と同氏は付け加えた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Hydrosat人工衛星地表温度資金調達農業自然災害SpaceX

画像クレジット:Hydrosat

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

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ビジネス推進支援事業と並行し「わさび」の自動栽培に取り組むアグリテック領域スタートアップ「NEXTAGE」(ネクステージ)は6月15日、わさびの植物工場栽培と出荷を目的とした試験栽培施設「NEXTAGE 沖縄R&Dセンター」を沖縄県中頭郡西原町に開設し、本格始動すると発表した。

自然環境における国産わさびの栽培環境減少を目の当たりにしたNEXTAGEは、「日本の食だけでなく、文化や技術を伝え、様々な企業の方々と繋がり、日本が誇る『わさび文化』の継承と発展、100年後の未来の子供たちに『本物のわさび』を残していきたいという想い」から、2019年、屋内での人工光を使ったわさび栽培の研究を開始した。そして、一定の品質確保と栽培期間短縮の目処が立ったことから、沖縄での試験栽培に踏み切った。そもそも涼しいところで栽培されるわさびを温暖な沖縄で収穫できれば、世界中どのような環境でも「自然栽培と同等品質」のわさびが作れるようになるというのが、沖縄で行う理由だ。

これまでNEXTAGEは、気温・光・水質・水流などわさび栽培に不可欠な要素について、環境やわさびの成長度合いに合わせて調整するノウハウを蓄積してきた。それを活かして、高品質なさわび栽培の実現を目指すという。NEXTAGEが育てているのは、国産わざびの最高峰といわれている「真妻種」。

今後は、沖縄での栽培環境に関するデータを独自開発の栽培管理システムに集約し、遠隔地からの栽培進捗管理や、剪定作業などの判断が行える環境を整備するとともに、カメラやIoTセンサーなどから得られるデータセットを活用した情報分析によるPDCAサイクルの高速化、AI活用による栽培環境の制御・収穫・出荷などを含めた一部作業の自動化を目指すという。

「ALL JAPAN MADEの植物栽培ソリューションを世界へと展開していきたい」とNEXTAGEは話している。

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カテゴリー:フードテック
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牧場経営者のCO2排出量削減を支援、家畜用の新しい環境アセスメントサービス

持続可能な畜産 / 農業において、測定作業は、食糧システムを炭素排出源から炭素吸収源へと転換するプロセスの、最初のそして時には最も困難なステップだ。

そこで、農業を中心とした食糧システムに科学的に注力するDSMと、持続可能性のためのデータ分析を行うコンサルティング会社Blonk(ブロンク)が共同開発したのがSustell(サステル)だ。これは、牧場主が自らの農場経営の持続可能性を理解し、改善するための、ソフトウェアと実践的なサービスを組み合わせたものだ。

持続可能で再生可能な農業の定義は統一されていいないが、通常、土壌中の炭素をより多く回収するための土地管理方法の工夫、より環境に優しい家畜飼料の使用、トラクターなどの農機具による化石燃料使用量の削減など、さまざまな変更が行われる。目標は、温室効果ガスの約14.5%にあたる、畜産業から排出される7.1ギガトンのCO2を削減することだ。

DSMのサステナビリティ&ビジネスソリューション担当副社長のDavid Nickell(デビッド・ニッケル)氏は「動物生産の状況を個々の農場レベルまで正確に把握することが強く求められています」という。「もちろん個々の農場の状況は極めて異なっています。そして、実際の農場のデータを使用して、その農場の正確な姿を把握できるシステムが必要なのです」。

このシステムは気候変動、資源利用、水不足、流出、オゾン層破壊など、19種類のカテゴリーについて、対象の農場の活動が環境に与える影響を分析する。農家は飼料の成分や使用量、糞尿の管理方法、動物の死亡率、電力システムなどのインフラ、輸送ロジスティックス、ガス浄化装置や余熱循環システムなどの緩和技術などの、日々のオペレーションに関するデータを提供するが、場合によってはそれらはソフトウェアにパッケージングされる。

そして、Blonkの環境フットプリント技術は農場のライフサイクルアセスメントを作成する。これは、家畜の飼育開始から農場のゲートを出るまでの環境影響を分析するものである。DSMとBlonkは、鶏、豚、乳製品や卵の生産など、ほとんどの陸上の農場家畜用にSustellモジュールを作成しており、今後は牛や水産養殖にも拡大していく予定だ。

Blonk Consultants(ブロンク・コンサルタンツ)ならびにBlonk Sustainability Tools(ブロンク・サステナビリティ・ツールス)のCEOであるHans Blonk(ハンス・ブロンク)氏は「本当に重要なのは、これまで開発されてきた方法論や基準の流れの上に乗せることができたことです」と語る。

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Blonkは、国連食糧農業機関や欧州委員会などの農業環境基準を1つにまとめ、そのソフトウェアが有用で実用的な洞察を得るために必要な、基礎データの膨大なライブラリを作成した。

「現在のお客さまは、ご自身が何をしているのかを理解したいと思っていらっしゃいます」とニッケル氏はいう。「ご自身のベースライン(フットプリント)を理解し、それをランク付けしたいと考えていらっしゃるのです。何が良くて、何が良くないのかを理解なさりたいということです。お客さまは、国や業界のベンチマークなど、他のベンチマークと比較して自分たちがどのような評価を受けているのかを知りたがっていらっしゃいます」。

Sustellソフトウェアによって農場の排出量が明らかになると、農家は改善すべき点を特定し、DSMは排出量を削減する方法の実施を支援します。これにより、顧客にエンド・ツー・エンドのサービスを提供し、地球に良い影響を与えることができるのだ。

「実践的な介入によって、変化を起こすことができます」とニッケル氏はいう。「私たちは、家畜製品生産のフットプリントを削減する技術に投資してきました。サービスの内容は測定であり、それを変化を生み出すソリューションと結びつけることです。これこそが、この切実な変化を実現するための完全なソリューションなのです」。

しかし、Sustellがその変化を生み出すためには、広く採用され、競合他社との間で学びを共有する必要がある。現在のDSMや、ある意味では資本主義のシステムは、それに対応できるようには作られていない。

ニッケル氏によれば、DSMはまず、Sustellを大手総合畜産会社に持ち込むことに焦点を当てている。これは、革新的な新しい環境技術が、資金や資源のある大手農業コングロマリットや協同組合に採用されて、小規模な家族経営の農場は取り残されてしまうという普遍的な課題となる。しかし、ニッケル氏は、Sustellを小規模な農場にも対応できるようにしたいと考えている。

2つ目の問題は、データの共有だ。ニッケル氏は、Sustellがデータのプライバシーや所有権に関する規則を遵守することを明確に述べているが(これは通常良いことだ)、実際、本当に意味のある環境変化を起こすためには、透明性が重要だ。競合他社同士は、その排出量削減のための最良の方法を、皆が採用して地球を救うために共有する必要があるが、多くの企業はデータを強く囲い込んでいる。

「データ共有は、時間の経過とともに進んでいくと思います」とニッケル氏はいう。「まだその段階には達していないのです。おそらく、より多くのお客様がフットプリントとその報告についての透明性を高められることで、そうしたレベルになるのかもしれません」。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:農業畜産二酸化炭素持続可能性カーボンフットプリント

画像クレジット:NitiChuysakul Photography / Getty Images
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(文:Jesse Klein、翻訳:sako)

衛星データで耕作放棄地の把握や土壌解析を行い農業課題解決に取り組むサグリが約1.55億円調達

衛星データで農業分野における課題解決に挑むサグリが、 リアルテックファンドをリード投資家として、みなとキャピタル池田泉州キャピタル広島ベンチャーキャピタルひょうご神戸スタートアップファンド、他エンジェル投資家等を引受先として総額約1億5500万円を調達した。今回の調達で、投資家である地域金融機関とも連携しながら、全国における市町村のユーザー獲得・導入を目指す。

耕作放棄地をデジタル地図で確認できる「ACTABA」

耕作放置地である可能性が赤色の濃淡で確認できるACTABA

同社は、自治体や農業委員会向けに「ACTABA(アクタバ)」という耕作放棄地把握アプリを提供。日本では農業従事者の高齢化等にともない耕作されなくなった農地が増えているが、その把握は、自治体職員が行わねばならない。ACTABAでは、Planetの衛星データを使用し、農地の荒れ具合を人工知能(AI)が判断、耕作放棄地とみられる土地を、可能性の強弱に応じて赤色の濃淡で表示し、職員の作業を軽減する。耕作放棄地の判定精度は現状でも9割を超える正答率であり、また全国の自治体で広く使われることでACTABA自身が学習し、アプリの精度が高まっていくという。

区画形成の自動化でデジタル地図の作成を容易にするAIポリゴン

区画形成データは、より高解像度なMaxer Technologiesの衛星データを用い、独自のAIポリゴン技術によって加工し、提供しているという。料金は農地面積に応じる。

東南アジアにプレシジョンファーミング(精密農業)を

同社は、衛星データによる土壌解析技術を使って、施肥量適正化による肥料コスト削減や植生解析による収量増加、土壌より生じる「温室効果ガスの把握と削減」など「地球環境改善」と「農家の収益改善」の二軸を求めていく考え。対象は東南アジアとしており、タイ、インドにはすでに進出している。

代表の坪井俊輔氏は横浜国立大学理工学部在学中に、子どもたちが未来に夢を感じられていない状況を危惧し、教育事業の「うちゅう」を創業。日本のみならず海外の子どもたちの様子も知るため、2016年にルワンダへ行くが、若年労働がほぼ義務化されている状況にあり、同じく子どもたちが夢を追いかけられない現状があることを知った。子ども達を労働から解放するため、まず途上地域の農業DXを進めようと、サグリを設立。坪井氏は「当初は営農アプリ開発をはじめ、途中でメディア事業へピボットするなど、試行錯誤して今があります。資金調達を経て、改めてパートナーのみなさまと事業を大きくしていきたいと感じています」と語った。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:サグリACTABA資金調達農業東南アジアタイインド人工衛星日本画像解析

農地の石を除去するロボットを開発するTerraClearが約27.3億円を調達

農業用ロボットと聞いて、石を拾うロボットは最初に思い浮かばないだろう。それは当然だ。果物や野菜の収穫、除草、畑の手入れなどを自動化しようとしている企業は数多い。だが、石は多くの農家にとって依然として大きな問題だ。大きくて重いから除去するのが大変だし、放置していると機械を壊してしまう恐れもある。

「これは、私自身が人生をかけて取り組んでいることです」と、TerraClear(テラクリア)のCEOであるBrent Frei(ブレント・フライ)氏は、プレスリリースで述べている。「世界には4億エーカー以上の耕作に適した土地があり、この問題に対する費用対効果と生産性の高いソリューションを待ち望んでいます。このような反復的な作業は、自動化するのに最適な対象であり、我々の技術を農地に導入すれば、植え付けの準備に必要な労働力と時間を劇的に削減させることができます」。

ワシントン州ベルビューを拠点とするTerraClearは、1時間あたり最大400個の石を拾い上げ、最大300ポンド(約136kg)の石を移動させることができる、自動化されたロボットソリューションを作り上げた。2019年に製品開発を加速させるために600万ドル(約6億5500万円)の資金を調達した同社は、米国時間5月26日、シリーズAラウンドで2500万ドル(約27億3000万円)を調達したと発表した。

Madrona Venture Group(マドロナ・ベンチャー・グループ)が主導したこのラウンドによって、同社がこれまでに調達した資金の総額は3800万ドル(約41億5000万円)に達した。今回の資金は2022年に向けて、生産と販売の拡大および従業員の増員に充てられる。TerraClearのロボット「Rock Picker(ロックピッカー)」は現在、予約受付中だ。同社のシステムは、マッピングサービスやサードパーティのドローンサービスと連携し、AIを使って大きな石を識別して、投入されたロボットがこれらの石を除去することができる。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:TerraClear農業資金調達

画像クレジット:TerraClear

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ブロッコリーの収穫期をドローン画像とAI解析で診断、スカイマティクスの葉色解析サービス「いろは」が生育診断提供開始

ドローンによるリモートセンシングサービスを提供しているスカイマティクスは5月26日、葉色解析サービス「いろは」にブロッコリーを対象とした解析機能を新たに実装し、提供を開始したと発表した。

これまでブロッコリーの生産現場では、生産者が農地を歩きながら花蕾の生育を確認し、収穫のタイミングを判断するという運用が行われてきた。しかし、農地が広ければ確認に時間を要し、また人の目による確認作業は体力的にも大きな負担となっていた。

そこで「いろは」において、生産者が収穫適期の見極めを正確かつ効率的に行える追加機能として「ブロッコリー花蕾診断」が開発・実装した。

同機能では、AIが画像内の10〜15cm程度の花蕾を認識し、サイズ別に集計を実施。そして集計結果を確認することで、撮影時点の農地においてどの規格のブロッコリーが何%存在するのかを把握可能となる。ユーザーはドローンで農地の画像を撮影して「いろは」にアップロードするだけで、たった数時間で花蕾サイズ分布データが入手できるという。

実はスカイマティクスは、ブロッコリー生産を手がけている大規模農業生産法人からの相談を受け、2019年よりドローン画像を用いたブロッコリーの花蕾抽出技術および花蕾のサイズ判定技術の開発に取り組んできたそうだ。以来同社が収集したブロッコリー画像データは数万点に上り、今日においても全国のブロッコリー畑においてデータ収集を継続、日々解析精度の向上に努めている。

スカイマティクスによると、今後ブロッコリーの生産現場においては一斉収穫を前提とした機械収穫体系の導入が進んでいくとされ、農地内の収穫適期の判断がより一層重要となるという。ドローン×画像解析技術により、ブロッコリー生産者の収穫適期の判断の支援を行うとしている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)スカイマティクス(企業)ドローン(用語)農業 / アグリテック(用語)リモートセンシング(用語)日本(国・地域)

スマホ活用・画像解析AIによるイチゴの高精度生育解析の検証実験結果をキヤノンITSが報告

キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)は5月26日、令和元年度から令和2年度にかけて実施したスマート農業技術の開発・実証プロジェクト「阿蘇イチゴスマート農業実証コンソーシアム」(農研機構九州沖縄農業研究センター)の検証実験結果を公開した。

今回の実証実験でキヤノンITSは、映像情報から現在までのイチゴの生育状況を数値化および未来の収穫量を予測する「イチゴ生育画像解析システム」と、遠隔業務支援サービス「VisualBrain」により、スマートフォンと画像情報を用いたイチゴの花数・果実熟度・葉面積の「生育特徴量計測技術」の実証実験を行った。生育特徴量計測技術は、イチゴの生育画像からAIが花の数や果実の⽣育ステージなどを自動判別し、生育状況の指標として定量化するものという。

実証実験では、九州沖縄農業研究センター内のイチゴ品種「恋みのり」「さがほのか」の生育状況をスマートフォンで一定期間にわたり撮影し、解析に適した高精細かつ定点の画像データを収集。そしてイチゴ生育画像解析システムを使った画像解析で得られたデータを「VisualBrain」を通じてクラウドシステムに蓄積し、遠隔から現地の映像や解析結果を閲覧できる環境を構築した。

そしてスマートフォンでの簡易な生育解析として実証したところ、2品種の花数・果実熟度・葉面積の生育特徴量の自動計測精度が90%以上を達成。これにより、スマートフォンのカメラ機能を使い初期費用を抑えた生育解析や、高精度な生育解析が可能だと確認している。

またキヤノンITSは、農林水産省委託事業「令和3年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」にも採択されており、次回のプロジェクト「阿蘇イチゴ輸出スマート農業実証コンソーシアム」(課題番号:21451798)ではイチゴ生育画像解析システムおよび「VisualBrain」を活用したスマートフォンによる生育計測から収量予測、農業熟練者による映像共有を活用した遠隔指導や農作物のリモート審査の実証実験を開始する予定だ。

キヤノンITSは、2015年よりカメラとAIを活用したスマート農業技術の研究開発に取り組んでおり、イチゴ栽培において、花や実の数、葉の大きさ・色などの生育情報をICT技術を用いて数値化するAIを開発したという。さらにこの情報に温度や湿度などの環境データを組み合わせることで、マルチモーダルな情報をもとにした収穫量予測AIの開発に取り組んでいるとした。

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タイヤ交換だけで農業用一輪車・ねこ車を電動化する「E-Cat Kit」が広島県JA尾道市で販売開始

タイヤ交換だけで農業用一輪車「ねこ車」を電動化するE-Cat Kitが広島県JA尾道市で販売開始

農家が使用する運搬用の一輪車、いわゆる「ねこ車」を、タイヤ交換だけで簡単に電動化できる一輪車電動化キット「E-Cat Kit」(イーキャット・キット)を提供するCuboRex(キューボレックス)は5月25日、新たに広島県JA尾道市での販売開始を発表した。

E-Cat Kitは、取り付ける一輪車の種類を選ばず、専門知識もいらない。30度の坂道や悪路にも対応するパワーがありながら、本体は片手で持てるほど軽いという特徴がある。家庭用コンセントで3時間の充電すれば、3日間ほど稼働できる。後付けで電動化する製品は、国内初だ。

CuboRex創設者で代表取締役の寺嶋瑞仁氏は、和歌山高専時代に2010年高専ロボコン全国全国大会で準優勝するという経歴を持つ。みかん畑でアルバイトした経験から「農作業の負担軽減に活用して欲しい」とこれを開発した。2020年10月に、販売を開始してから4カ月間で200台以上が売れ、「作業性が上がった」「疲れも減って、今までなかったことが考えられない」など好評だという。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:CuboRex(企業)農業 / アグリテック(用語)日本(国・地域)

田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

山形県を拠点とする「地方都市の課題を希望に変える街づくり会社」ヤマタガデザインのグループ会社、有機米デザイン(本社は東京都小金井市)は5月25日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を行ったと発表した。引受先はTDK。この増資により資本金などの合計は、資本準備金1億3908万円を含め3億1626万円となった。

有機米デザインは、田んぼの除草の手間を最小化するための自動抑草ロボットを開発するなど、有機米栽培ノウハウの確立に向けた研究開発を行う企業。2012年、元日産自動車のエンジニア2人を中心に始まった自動抑草ロボットの開発は、ヤマガタデザインに母体が移行し、やがて実用化を促進するため、2019年にヤマガタデザインの100%出資により有機米デザインとして独立した。同時に東京農工大学との共同研究契約を締結し、2020年には11都県の農家と連携して実験を重ねた。

自動抑草ロボットは、代掻き(しろかき。田んぼに水を張り土を攪拌して平らにならす作業)の後の田んぼを自律航行して、水をかき混ぜ泥を巻き上げることで水中に差し込む光をさえぎり、水面下の雑草の成長を抑制するというもの。除草剤を使用しない米の有機栽培は、慣行農法にくらべて10アールあたりの粗収入が2倍近くになる一方で、労力が大きく増える。特に除草にかかる労働時間は5倍に上るといわれているため、自動化への期待が高まっているとのこと。これまでの実験で自動抑草効果が確認され、同社では量産化に向けたさらなる改良を加えているところだ。現在は、条件の異なる全国17都府県に75台のロボットを投入し、実証実験を行っている。

TDKとは、2019年12月から協業の可能性を検討し始め、2020年4月から実証実験などで連携してきた。今後はTDKのバッテリーマネージメント技術や量産技術などの開発面でサポートを受け、数年以内の実用化、事業化を目指すという。

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コロナ禍でむしろ育ち盛りの「インドア農業」Boweryがセレブの支援あり約326億円調達

ニューヨークを拠点とする垂直農法のスタートアップBowery Farmingは米国時間5月25日、3億ドル(約326億円)のシリーズC調達を発表した。このラウンドにより同社の資金調達総額は4億7200万ドル(約513億円)を超え、同社の企業価値は23億ドル(約2502億)となる。

Fidelity Management & Research Companyがこの大規模なラウンドをリードし、既存投資家であるGV(旧Google Ventures)、General Catalyst、GGV Capital、Temasek(テマセク)、Groupe Artémis(アルテミスグループ)が参加した。AmploとGaingelsも参加し、それに加えて、レーシングドライバーのLewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)氏、バスケットボール選手でNBA選手会会長のChris Paul(クリス・ポール)氏、女優・映画監督のNatalie Portman(ナタリー・ポートマン)氏、有名シェフレストラン経営者のJosé Andrés(ホセ・アンドレ)氏、シンガーソングライター・俳優のJustin Timberlake(ジャスティン・ティンバーレイク)氏など、セレブ個人投資家も参加した。

今回の資金調達は、Boweryが2020年1月以降、750%の稼働率向上を謳うなど、実世界での目覚ましい成長を遂げていることを受けたものだ。同社はパンデミックに影響されるどころか、むしろ力強く育っているように見える。現在、同社の垂直農法による農産物は、Albertsons(Safeway、Acmeを含む)、Giant Food、Walmart(ウォルマート)、Whole Foods(ホールフーズ)などの大手チェーンを含む850の食料品店で販売されている。

画像クレジット:Bowery Farming

また2020年のパンデミックにともなう店舗シャットダウンの際には、Amazon Fresh(アマゾンフレッシュ)も必要不可欠となったeコマースでのフットプリントを拡大するのに大きく貢献した。

CEOのIrving Fain(アービング・フェイン)氏は、プレスリリースで次のように述べた。「Fidelityをはじめとする新たな投資家からの資金投入、および長期的な投資家パートナーからの追加支援は、現在の農業システムに対する新たなソリューションの重要なニーズと、当社のミッションを支援することで得られる大きな経済的機会を認めていただいたものです。今回の資金調達は、当社の継続的な事業拡大だけでなく、ビジネスの中核をなす独自技術の継続的な開発や、目の前にあるますます重要な機会に向けて迅速かつ効率的に事業をスケールしていく能力の向上にもつながります」。

画像クレジット:Bowery Farming

同社によると、この巨額の資金は、米国内の新たな場所にインドア(屋内)農場を拡大するとともに、従業員の増員や研究開発への投資に充てられるとのこと。前者にはペンシルバニア州ベツレヘムの工業地帯にある新しいサイトが含まれており、これまでで最大の規模になるという。

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衛星画像を使った農地の遠隔監視技術で収穫量を増やすOneSoilが約5.4億円調達

カテゴリー:その他
タグ:Bowery農業垂直農業資金調達

画像クレジット:Bowery Farming

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

衛星画像を使った農地の遠隔監視技術で収穫量を増やすOneSoilが約5.4億円調達

農家が畑を監視して収穫量を増やすための技術を提供しているOneSoil(ワンソイル)は、国際的な投資家であるAlmaz Capital(アルマズ・キャピタル)とPortfoLion(ポートフォリオン)から500万ドル(約5億4000万円)を調達した。

OneSoilの技術は、衛星画像をモバイルやデスクトップのアプリケーションに統合して農業分析を行うもので、遠隔地からの作物モニタリングや、可変レートによる種子・肥料の散布によって、農地における作業時間を短縮し、インプットに対する効率を向上させることができる。

OneSoilがサービスを開始してからまだ2年半だが、すでに180カ国以上の国々で20万人以上の農家やコンサルタントが同社のサービスを利用している。

世界の耕地面積(1億9700万エーカー)の約5%をOneSoilのユーザーがカバーしていると同社は主張しており、その中にはBASF(バスフ)やKrone(クローネ)などの大手農業関連企業も含まれる。

AlmazとPortfoLionから調達した資金は、米国や欧州におけるOneSoilの市場ポジションを拡大するために使用されるという。

「私たちは、農家の方々が十分な情報に基づいた意思決定を農業経営の中で行い、投入物の無駄を削減して、利益を上げられるように支援することを目指しています。そのために、リアルタイムでグローバルな規模の衛星画像処理を組み合わせたデジタルツールを提供し、ユーザーが最高の分析と洞察を行えるようにします」と、OneSoilのCEOであるSlava Mazai(スラバ・マザイ)氏は声明の中で述べている。「私たちの目標は、情報に基づくソリューションと精密農業のための最大のデジタルプラットフォームを構築することです。そのための道をより早く進むために、欧州とCIS(独立国家共同体)では技術とマーケティングの専門家を雇う予定です。北米と南米では農学分野のコンサルタントとビジネスパートナーを探しています」。

Almazの投資家であるPavel Bogdanov(パベル・ボグダノフ)氏によれば、彼らにOneSoilのラウンドへの投資を確信させたのは、農家における同社技術の印象的な採用率の高さだったという。「農家が新しいツールを導入することは、製品の複雑さやコスト、リスク回避の観点から、なかなか進まないものです。少なくともOneSoilを知るまで、その採用は遅れていると思っていました。しかし、OneSoilは農家にとても人気があり、世界的な利用者の増加は目覚ましいものがありました。そこで私たちは、農家にとってより価値のあるソリューションを提供するために、OneSoilへの投資を決めたのです」と、ボグダノフ氏は声明で述べている。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:OneSoil資金調達農業

画像クレジット:Pgiam / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンがインドのスタートアップに投資する272億円規模のベンチャーファンドを発表

Amazon(アマゾン)はインド時間4月15日、主要な海外市場であるインドの中小企業(SMB)のデジタル化に焦点を当てた、同国のスタートアップや起業家に投資する2億5000万ドル(約272億円)のベンチャーファンドを発表した。

今回の発表は、これまでインド事業に65億ドル(約7062億円)以上を投資してきた米国のeコマース巨人が、政府当局や、同社がサービスを提供していると称する中小企業からの批判に直面している中でのことだ。

「Amazon Smbhav Venture Fund」と名づけられたこの新しいベンチャーファンドを通じて、Amazonは中小企業のオンライン化、オンライン販売、業務の自動化とデジタル化、そして世界中の顧客への拡大を支援することに重点を置いたスタートアップに投資したいと述べている。同社は、このファンドのライフサイクル(つまり、何年かけて2億5000万ドルを使い切る予定か)については明らかにしなかった。

Amazonの次期CEOであるAndy Jassy(アンディ・ジャシー)氏は4月15日に開催されたバーチャルイベントで「中小企業は経済のエンジンであり、生命線です」と述べた。「当社は、中小企業を加速させることに情熱を持っています」とも」。

Amazonは、中小零細企業(MSMEs)向けに売掛債権のオンラインマーケットプレイスを運営する、グルグラム(旧称グルガオン)に本社を置く設立3年目のスタートアップであるM1xchangeに1000万ドル(約10億9000万円)の投資ラウンドを実施したと発表した。M1xchangeは、マーケットプレイスを介して中小企業と銀行やノンバンク金融会社を結びつける企業だ。中小企業は売掛債権(為替手形や請求書)を銀行や金融機関に譲渡することでより有利な金利で融資を受けることができ、これにより、中小企業・小規模事業者の支払いに関する課題を解決することができるという。これは、同社のAmazon Smbhav Venture Fundからの最初の投資となる。

Amazon Smbhav Venture Fundは農業とヘルスケアの2つの分野にも重点を置いているが、中小企業との接点があれば、他業種のテックスタートアップも視野に入れていくとのこと。

アグリテック分野ではAmazonは、テクノロジーを活用してアグリインプットを農家によりアクセシブルにしたり、農家にクレジットや保険を提供したり、食品の無駄を減らしたり、消費者に届ける農産物の品質を向上させるインドのスタートアップに投資することを検討している。ヘルスケア分野では、医療機関が遠隔医療、電子診断、AIによる治療提案を活用できるように支援するスタートアップに投資するとしている。

今回の発表は、インドに拠点を置く中小企業に焦点を当てた、Amazonが毎年4日間にわたって開催するSmbhav(ヒンディー語で「できる、可能」を意味する)イベントで行われた。またAmazonはこのバーチャルイベントで、2025年までにインドの北東地域の8つの州から5万人の職人、織工、中小企業をオンライン化し、同地域からの茶、スパイス、蜂蜜などの主要商品の輸出を促進するための取り組みである「Spotlight North East」を発表した。

2020年の第1回Smbhavイベントで、Amazonは10億ドル(約1087億円)を投じて中小企業1千万社のデジタル化を支援することを発表した。同社は2021年4月初め、2020年1月以降、インドで30万人の雇用を創出し、30億ドル(約3260億円)相当のインド製商品の輸出を可能にしたと発表した。

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同社によると、5万以上のオフライン小売業者や近隣店舗(現地ではキラナと呼ばれる)がAmazonマーケットプレイスを利用しており、約25万の新規出品者もプラットフォームに参加したという。同社は15日「Local Shops on Amazon」プログラムを通じて、2025年までに100万のオフライン小売業者・近隣店舗のオンボーディングを目指していると述べた。

2020年には、Amazonの創業者兼CEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が参加した最初のSmbhavイベントからそれほど遠くない場所で、何万人もの抗議者が通りをデモ行進し、Amazonは自分たちをつぶすために不公正な行為を行っている、と主張して懸念を表明した。

今回も同様の抗議活動が行われ、商人たちはAsmbhav(ヒンディー語で「不可能」の意)と名づけられたイベントで政府の介入を求めた。こちらから、彼らのストーリーを一部見ることができる。これはインドでの論争に巻き込まれないように長い間苦労してきたAmazonにとって、継続的な課題だ。

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2021年2月には、米国のeコマースグループである同社がインドの一部の販売者を優遇し、それらの販売者との関係を公に偽り、インドの外資規制を回避するために利用しているとの報道を受け、何千万もの実店舗を代表する有力なインドの業者団体が、インド政府にAmazonの国内事業禁止を要請した。

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全インド商業連合(The Confederation of All India Traders、CAIT)は、ロイター通信の記事で明らかになったことを受けて、インド政府にAmazonに対する深刻な措置を取るよう「要求」した。「CAITは長年にわたり、AmazonがインドのFDI(外国直接投資)規制を回避し、不公正で非倫理的な取引を行っていると主張してきました」とCAITは述べていた。

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、そしてMicrosoft(マイクロソフト)を含む複数の国際的なテクノロジー大手が、近年、インドのスタートアップ企業に投資している。Amazonも、配車スタートアップのShuttlや、消費者ブランドのMyGlammなど、多くの企業を支援している。2021月3月、同社はリテール決済スタートアップであるPerpuleを約2000万ドル(約21億7000万円)で買収した。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Amazonインド投資Amazon Smbhav Venture Fundeコマースアグリテックヘルスケアスモールビジネス

画像クレジット:Pradeep Gaur/Mint / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

野菜・果物など生ゴミ活用のオーガニックポリマー開発で水問題解決を目指すOIST発EF Polymerが4000万円調達

ビル&ミリンダ・ゲイツ財団も支援、生ゴミ活用のポリマー開発で水問題解決を目指すEF Polymerが4000万円を調達

野菜・果物の不可食部分の残渣など有機性廃棄物から開発したオーガニックポリマーを手がける「EF Polymer」(EFポリマー)は4月14日、シードラウンドにおいて、総額4000万円の資金調達を発表した。引受先は、MTG Ventures、Yosemite、Beyond Next Ventures、エンジェル投資家の鈴木達哉氏(Giftee代表取締役)。2018年から始まった沖縄科学技術大学院大学(OIST)のスタートアップアクセラレータープログラムから生まれたスタートアップとしては、初めての大型資金調達事例となる。

EF Polymerは、OISTの2019年度スタートアップ・アクセラレーター・プログラムを通じ、当時22歳のインド人起業家兼CEOのNarayan Lal Gurjar(ナラヤン・ラル・グルジャール)氏らが設立。

生分解性廃棄物(生ゴミ)を新興国でも利用しやすい低コスト・持続可能な農業資材に変換することで、水不足など農業に関わるグローバルな環境問題を解決することをミッションとして掲示しており、野菜・果物の不可食部分の残渣をアップサイクルした環境に優しいオーガニックポリマーの開発を行っている。

EF Polymerが開発するオーガニックポリマーとは?

現在オムツなどに使われ一般的に流通しているポリマーは、アクリル系ポリマーなど化学合成されたものが大多数であり、生分解せず土壌を汚染することや、土壌成分と化学反応し吸水力を失うことから農業利用に適していないという。

これに対してEF Polymerのポリマーは、柑橘系の果物やバナナの皮、サトウキビのバガスなど有機性廃棄物を基に開発を行っているそうだ。このポリマーは、自重の80~100倍の水を保持でき、土壌投入すると保水力と肥料保持力が高まり、40%の節水と20%の肥料削減が期待できるという。また100%オーガニックのため6カ月で完全生分解される。

インドではすでに累計1700kgを販売しており、ビル&メリンダ・ゲイツ財団などの支援を受けながら、500人以上の農家の協力の下パイロットテストを実施しているそうだ。

農業用水不足などの「水問題」を、生ゴミを「資源」として活用し解決

今日の地球上に存在する水のうち人類が利用可能な淡水は約0.01%しかなく、そのうち約7割が農業セクターにおいて消費されているという。これに加え、気候変動や環境汚染などに起因する農業用水の不足など、農家が直面している「水問題」は乾燥地域では特に深刻な課題となっているそうだ。

また、膨大に生み出される生ゴミも社会問題化しており、世界では毎年約2~3億トンの生ゴミを排出しているという。この生ゴミは、全体の30~40%しか利活用が進んでおらず、焼却インフラの少ない新興国では土壌埋設処分による汚染問題を引き起こしている。

そこでEF Polymerは、世界が抱える「水」と「生ゴミ」における社会課題を同時に解決するべく、生ゴミを「資源」として活用することでオーガニックポリマーを開発した。

またナラヤン・ラル・グルジャールCEOは、現在日本の有機農園は0.5%ヘクタールの土地しかなく、農林水産省は今後30年間で25%にまで有機農園を増やそうとしている点を指摘。バイオ廃棄物をリサイクルし、有機農産物を変換する同社のアプローチは、これらオーガニック農業の促進に役立つという。同社のEF Polymerは、有機農園を増やすというプロジェクトに貢献し得る大きな可能性を秘めているとした。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:農業 / アグリテック(用語)EF Polymer(企業)沖縄科学技術大学院大学 / OIST(組織)資金調達(用語)気候変動(用語)ビル&メリンダ・ゲイツ財団(企業)水(用語)日本(国・地域)

スタートアップにはバイデン大統領のインフラ計画を支持する110兆円分の理由がある

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領が2021年3月末に提案した膨大なインフラ投資計画概算で2兆ドル(約220兆円)の規模となり、大幅な増税もともなう。スタートアップとテクノロジー業界全体にとって、この計画の価値は実に1兆ドル(約110兆円)ほどになる。

テクノロジー企業は過去10年以上、農業、建設、エネルギー、教育、製造、運輸、流通といった昔からの業界に適用できるイノベーションの開発に取り組んできた。こうした業界は、非常に強力なモバイルデバイスの出現により、ようやく最近テクノロジー適応における構造的な障害が取り除かれた業界だ。

これらの業界は現在、より強固な経済再建を目指す大統領の計画の核となっている。バイデン政権が期待する取り組みの大半を実現するのは、スタートアップや大手のテクノロジー企業が提供するハードウェアサービスやソフトウェアサービスだ。米国を再び偉大にすべく費やされる何千億ドルもの資金は、直接的であれ間接的であれ、こうした企業にとって大きな後押しとなるだろう。

投資会社Energy Impact Partners(エナジーインパクトパートナーズ)のパートナーを務めるShayle Kann(シェイル・カン)氏は「バイデン氏の新計画に織り込まれている環境重視の投資は、ARRA(American Recovery and Reinvestment Act、米国復興・再投資法)における投資額のおよそ10倍の規模となる。これは、クリーンな電気や炭素管理、車両の電気化など、環境テクノロジーを扱う幅広い部門にとって大きな機会となるはずだ」と話している。

この計画の感触は多くの面でグリーンニューディールに似ているが、目玉は米国が切実に必要とするインフラの最新化、そしてサービスの改善だ。事実、エネルギー効率化はもはや新時代の建設の一部となっているため、グリーンニューディールの核であるエネルギー効率や再生可能エネルギーの開発計画を無視してインフラに投資することは難しい。

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予算案のうち7000億ドル(約77兆円)以上は自然災害への耐性強化に用いられる。例えば、水道、電気、インターネットといった重大なインフラの改修や、公営住宅、連邦ビル、老朽化した商業不動産や住宅不動産などの復旧・改善だ。

また、別途4000億ドル(約44兆円)ほどの資金が、半導体など国内の重要な製造業の強化、将来のパンデミック対応、そして地域のイノベーションハブの立ち上げに投じられる。地域ごとのイノベーションハブは、ベンチャー投資とスタートアップ育成の促進を目指したもので「有色人種のコミュニティやサービスが行き届いていないコミュニティにおける起業家精神の向上を後押しする」ものとなる。

気候への耐性

2020年に米国を襲った数々の災害(および合計で推定1000億ドル、約11兆円ほどの被害額)を鑑みると、バイデン計画の焦点がまず災害対策に向けられていることにも納得できる。

バイデン計画の概要としては、まず500億ドル(約5兆5000億円)を融資に投じ、Federal Emergency Management Agency(連邦緊急事態管理庁)とDepartment of Housing and Urban Development(住宅都市開発省)のプログラム、またDepartment of Transportation(運輸省)の新たな取り組みを通じて、サービスが不十分で災害リスクが最も高いコミュニティにおける強化・保護・投資を行う算段だ。スタートアップに最も関係する点として、大規模な山火事や海水位の上昇、ハリケーンなどを阻止してこれらに備え、農業の新たなリソース管理を実現し「気候に強い」テクノロジーの開発を促進するための取り組みやテクノロジーには、積極的に資金が提供される。

バイデン氏の大がかりなインフラ戦略の大部分と同様、これらの問題にも解決に向けて取り組んでいるスタートアップが存在する。例えば、Cornea(コルネア)Emergency Reporting(エマージェンシーレポーティング)Zonehaven(ゾーンハーヴェン)などの企業が山火事におけるさまざまな側面の解決に取り組んでいる他、洪水予測や気候監視を行うスタートアップもサービスを展開し始めている。また、ビッグデータ分析、監視・感知ツール、ロボティクスといった分野も農場に欠かせない存在となりつつある。大統領がてがける節水プログラムやリサイクルプログラムについては、Epic CleanTec(エピッククリーンテック)をはじめとする企業が住宅ビルや商業ビル向けに廃水のリサイクル技術を開発したところだ。

米国再建物語

バイデン氏のインフラ投資計画で圧倒的な額を占めているのが、エネルギー効率の向上と建物の改修だ。実に4000億ドル(約44兆円)もの資金が、丸ごと住宅やオフィス、学校、退役軍人病院や連邦ビルの改修に充てられる。

Greensoil Proptech Ventures(グリーンソイルプロップテックベンチャーズ)Fifth Wall Ventures(フィフスウォールベンチャーズ)が立ち上げた新たな気候重視の基金は、バイデン氏の計画によってさらにその理論の信頼度を高めることとなる。2億ドル(約220億円)の投資手段を確立し、エネルギー効率と気候テックのソリューション事業に力を入れている基金だ。

フィフスウォールに最近参加したパートナーであるGreg Smithies(グレッグ・スミシーズ)氏は2020年、エネルギー効率の分野で建物の改造とスタートアップのテクノロジーに大きなビジネスチャンスが広がっていると述べている。

「この分野では、実入りが良く、すぐに着手できる案件が数多くある。これらの建物の価値は260兆ドル(約2京9000兆円)にも上るが、ほとんど近代化されていない。こうした老朽化物件に注力すれば、ビジネスチャンスは格段に広がるだろう」。

不動産の脱炭素化もまた、住民の暮らしの質と満足度を高められるだけでなく、世界的な気候変動への取り組みを大きく変える分野だ。フィフスウォールの共同設立者、Brendan Wallace(ブレンダン・ワランス)氏は、声明の中で「エネルギー全体の40%を不動産が消費している。世界経済は屋内で動いているのだ。不動産は炭素問題に大きく関与しているため、気候関連のテクノロジーへの出資が特に多い分野となるだろう」と述べている。

手頃な価格での住宅建設が難しい現状を鑑み、バイデン計画では、この障壁を取り除くための具体的な方策を講じる地域に報酬として柔軟な財政支援を行うよう、新しい補助金計画の議会成立を求めている。その一部に含まれるのは、米国の公営住宅のインフラ改修に使われる400億ドル(約4兆4000億円)の資金だ。

このプロジェクトには、すでにBlocPower(ブロックパワー)などのスタートアップが深く関わっている。

ブロックパワーの最高責任者兼設立者、Donnel Baird(ドネル・ベールド)氏は次のように述べている。「まさにヒーローの登場だ。バイデン・ハリス政権が発表した気候対策は、まさに米国の経済と地球を救うプランで、 「Avengers: Endgame(アベンジャーズ / エンドゲーム)」の現実版を見ている気分だ。過去5年間はやり直せなくても、スマートで大がかりな投資をして未来の気候インフラを整備することならできる。200万軒もの米国の建物を電気化し、化石燃料から完全に切り離す取り組みは、まさに米国への投資だ。新しい業界を生み出し、外国に流出しない雇用を米国人のために創出し、将来的には建物が排出する温室効果ガスを30%削減することにもなるのだ」。

連邦政府によると、スタートアップに直接影響する投資計画の中には、Clean Energy and Sustainability Accelerator(クリーンエネルギーおよび持続可能性促進法)の取り組みとして、270億ドル(約3.0兆円)を投じて個人投資を集める提案書が含まれている。この取り組みで重視されるのは、分散型エネルギー資源、住宅・商業ビル・庁舎の改造、そしてクリーンな運輸だ。サービスが行き届いておらず、クリーンエネルギーへの投資機会がなかったコミュニティに重点が置かれる。

未来のスタートアップ国家への資金提供

連邦政府は次のように発表している。「半導体の発明からインターネットの誕生まで、経済成長の新たな原動力となっている分野は、研究や商品化、強力なサプライチェーンなどを支える公共投資によって成長してきた。バイデン大統領は議会に対し、研究開発、製造、地域単位での経済成長、さらにはグローバル市場での競争に勝つためのツールやトレーニングを従業員と企業に提供する人材育成といった分野について、スマートな投資を行うよう呼びかけている」。

これを実現すべく、バイデン氏は別途4800億ドル(約53兆円)を費やして研究開発を促進する予定だ。このうち500億ドル(約5兆5000億円)は半導体、高度通信技術、エネルギー技術、およびバイオ技術への投資として国立科学財団へ、300億ドル(約3兆3000億円)は農村開発、さらに400億ドル(約4兆4000億円)は研究基盤の強化に充てられる。

また、インターネットを生み出したDARPAプログラムをモデルに、Advanced Research Projects Agency(国防高等研究計画局)の一機関として、気候問題に主眼を置いたARPA-Cの設立を目指す動きもある。気候専門の研究・実証プロジェクトに対する資金としては、200億ドル(約2兆2000億円)が投じられる。こうしたプロジェクトに該当する分野は、エネルギー貯蔵をはじめ、炭素の回収・貯留、水素、高度な核燃料、および希土類元素の分離、浮体式洋上風力発電、バイオ燃料・バイオ製品、量子計算、電気自動車などである。

製造業に資金投入するバイデン氏の取り組みでは、さらに3000億ドル(約33兆円)の政府財政援助を行う用意がある。このうち300億ドル(約3兆3000億円)はバイオプリペアドネスとパンデミックへの準備、500億ドル(約5兆5000億円)は半導体の製造・研究、460億ドル(約5.0兆円)は連邦政府による新たな高度原子炉、核燃料、自動車、ポート、ポンプ、クリーン物質の購買力向上に使われる。

これらすべてで強調されているのは、国内全体で公平かつ均等に経済を発展させるという点だ。そこで、地域のイノベーションハブに加え、刷新的なコミュニティ主導の再開発事業を後押しするCommunity Revitalization Fund(コミュニティ再生基金)に200億ドル(約2兆2000億円)が割り当てられ、農村部の製造業およびクリーンエネルギーの促進を目標にして、国内の製造業投資に520億ドル(約5兆7000億円)が割り当てられる。

さらに、スタートアップ関連では、スモールビジネスがクレジットやベンチャーキャピタル、研究開発費用を獲得できるよう支援するプログラムに310億ドル(約3兆4000億円)が投じられる。予算案では特に、有色人種のコミュニティやサービスが行き届いていないコミュニティの発展を後押しすべく、コミュニティベースのスモールビジネスインキュベーターやイノベーションハブへの資金提供を呼びかけている。

水道と電力のインフラ

米国のC評価のインフラが抱える問題は国内のいたるところで見受けられ、その内容も、道路や橋の崩壊、きれいな飲料水の不足、下水設備の欠陥、不十分なリサイクル施設、発電・送配電設備の増加し続ける需要に対応しきれない送電網などさまざまだ。

連邦政府の声明によると「配管や処理施設が全国で老朽化しており、汚染された飲料水が公衆衛生を脅かしている。推定では、600~1000万軒の住宅への飲料水配給でいまだに鉛製給水管が使われている」とのことである。

この問題に対処するため、バイデン氏は450億ドル(約4兆9000億円)をEnvironmental Protection Agency’s Drinking Water State Revolving Fund(環境保護庁州水道整備基金)とWater Infrastructure Improvements for the Nation Act(水道インフラ改善法)を通じた助成に充てる計画だ。こうしたインフラ交換のプログラムはスタートアップに直接影響することはないかもしれないが、飲料水・廃水・雨水の処理設備や水に含まれる汚染物質の監視・管理システムの改善にさらに660億ドル(約7兆2000億円)が費やされれば、水質検査やフィルタリングなどを扱うさまざまなスタートアップがここ10年以上市場にあふれていることを考えると、恩恵は大きい(事実、水道技術に特化したインキュベーターもあるほどだ)。

悲しい事実ではあるが、米国内の水道インフラの大部分は維持が追いついておらず、こうした大規模な資金投入が必要となっているのである。

また、水道に関して言えることは、近年電力に関しても言えるようになってきている。連邦政府によると、停電による米国の経済損失は年間700億ドル(約7兆7000億円)以上にも上る。この経済損失と1000億ドル(約11兆円)の出費を比較すれば、どちらがいいかは一目瞭然だろう。スタートアップにとって、この計算式で浮く金額はそのまま会社の利益につながる。

より耐久性のある送電システムを構築することは、Veir(ヴェイル)をはじめとする企業にとっては実にうれしい話だろう。ヴェイルは、送電線容量の増加に向けた新しい技術の開発に取り組んでいる企業だ(このプロジェクトは、バイデン政権も計画内で明確に言及している)。

バイデン計画には資金提供だけでなく、Department of Energy(エネルギー省)内部に新しくGrid Deployment Authority(送電網配備局)を設置する案も盛り込まれている。連邦政府はこれを、同局の設置について、道路や鉄道沿線の敷設用地をより有意義に活用し、資金提供手段を通じて新たな高圧送電線を開発するためとしている。

同政権の取り組みはこれだけにとどまらない。エネルギー貯蔵技術と再生可能技術を後押しするため、これらの開発には税額控除が適用される。つまり、直接払いの投資税額控除と生産税控除が10年延長され、その後、徐々に控除が減額されるというわけだ。この計画では、クリーンエネルギーの包括的補助金を捻出する他、政府の連邦ビルについては再生可能エネルギーのみを購入することが盛り込まれている。

バイデン政権下では、クリーンエネルギーとエネルギー貯蔵に対するこの支援に加え、廃棄物の浄化と汚染除去の分野で予算を大きく拡大し、210億ドル(約2兆3000億円)が投じられる予定だ。

Renewell Energy(レネウェルエナジー)をはじめとする企業や、放置された油井を塞ぐ取り組むを続けるさまざまな非営利団体は、この分野に携わることができるはずだ。また、その他の鉱床の回復や、こうした油井から出る排水の再利用といった取り組みの可能性も考えられる他、ここでも投資家はビジネスチャンスを狙うアーリーステージの企業を見出だせるだろう。バイデン計画から出される資金の一部は、汚染されて利用できなくなった工業用地を再開発し、より持続可能なビジネスに変えるために用いられる。

屋内での農業をてがけるPlenty(プレンティ)、Bowery Farms(バワリーファームズ)、AppHarvest(アップハーヴェスト)などの企業は、利用されていない工場や倉庫を農場として再利用することで、大きな利益を上げられるかもしれない。送電網に関する需要を考えれば、閉鎖された工場をエネルギー貯蔵やコミュニティベースの発電に使うハブ、あるいは送電設備に生まれ変わらせることもできる。

連邦政府の声明によると「バイデン大統領の計画は、Appalachian Regional Commission(アパラチア地域委員会)のPOWER補助金プログラム、エネルギー省による(セクション132プログラムを通じた)閉鎖工場の改革プログラム、さらにはコミュニティ主導の環境正義活動を後押しする専用の資金を通して行われる、持続可能な経済開発の取り組みを促進するものである。コミュニティ向けの支援としては、旧世代の環境汚染や蓄積された環境への影響を最前線や工場に隣接する地域で経験してきたコミュニティがこうした問題に対応できるよう、能力構築助成金やプロジェクト助成金が給付される」。

こうした再開発事業の鍵は、スチール、セメント、および化学製品の大規模な製造施設向けに炭素の回収・修復の実証実験を行うパイオニア施設の設立だ。とはいえ、バイデン政権が望めば、さらに一歩先へ進んで低排出の製造技術開発に取り組む企業を支援することもできるだろう。例えば、Heliogen(ヘリオゲン)は大規模な採掘作業用に必要な電力を太陽光発電でまかなっている他、BMWと提携しているBoston Metal(ボストンメタル)は炭素排出量がより少ないスチール製造プロセスの開発を進めている。

関連記事:持続可能な自動車製造を目指すBMWが二酸化炭素を排出しない製鉄技術を開発したBoston Metalに投資

また、これらの資金を使うために不可欠な前提条件として、開発前の段階にある事業に投資する必要がある。これには250億ドル(約2兆7000億円)が割り当てられており、Forbes(フォーブス)誌のRob Day(ロブ・デイ)はこの資金について、比較的小規模のプロジェクトデベロッパーを後押しするだろうと述べている。

デイ氏は次のように述べている。「他の記事でも書いたように、持続可能性に関するプロジェクトを最も有意義な形で、つまり現地の環境汚染や気候変動による打撃を最も受けたコミュニティで実施するには、地元のプロジェクトデベロッパーが鍵となる。比較的小規模のプロジェクトデベロッパーは、単に民間企業のインフラ整備投資を受けるだけでも、多額の出費が必要となる。持続可能性政策に携わる人は皆、起業家の支援について話すが、現状の支援対象の大半は技術開発者で、実際にこうした技術革新を展開する小規模のプロジェクトデベロッパーには支援が向けられていない。インフラの投資家も通常、プロジェクトの建設準備が整ってからでないと資金を提供したがらないものだ」。

より良いインターネットの構築

連邦政府は次のような声明を出している。「広帯域インターネットは、新時代の電気のようなものだ。米国人が仕事をして、平等に学校で学び、医療サービスを受け、人とつながるには広帯域インターネットが欠かせない。それにもかかわらず、ある調査によると、3000万人以上の米国人は最小限必要な速度の広帯域インフラがない場所で生活している。また、農村部や部族の所有地で暮らす米国人のインターネット環境はとりわけ貧弱だ。さらに、OECD諸国の中で米国の広帯域インターネット料金が特に高いこともあり、インフラが整っている地域に暮らしていながら実際には広帯域インターネットを利用できない人も多く存在する」。

バイデン政権は、広帯域インターネットのインフラ整備のために1000億ドル(約11兆円)を支出するにあたり、高速の広帯域インターネットのカバレッジを100%に引き上げる他、地方自治体、非営利団体、および共同組合が所有・運営・提携するネットワークを優先することを目標としている。

新たな資金投入にともない、規制政策にも変化が生じる。これにより、地方自治体が所有または提携するプロバイダーや農村部の電気協同組合が民間のプロバイダーと競合することになり、インターネットプロバイダーは料金形態をさらに透明化する必要が生じる。競争の激化はハードウェアベンダーにとってもメリットとなり、最終的には独自のISP立ち上げを目指す起業家の新事業も生まれる可能性がある。

そうしたサービスの1つが、ロサンゼルスで高速のワイヤレスインターネットを提供するWander(ワンダー)だ。

連邦政府の声明によると「米国人は他の国の人と比べてもインターネット料金を払いすぎている。そこで、大統領は議会に呼びかけて米国人全員のインターネット料金を引き下げ、農村部と都会の両方のインフラを強化し、プロバイダーに説明責任を課し、納税者のお金を守るためのソリューションを全力で探している」とのことだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンインフラ環境問題災害農業炭素脱炭素電力持続可能性公共政策アメリカ

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

屋内農業のAppHarvestが農業ロボット企業Root AIを買収

屋内農業企業のAppHarvestは今週、Root AIを買収したと発表した。買収額は約6000万ドル(約66億円)で、1000万ドル(約11億円)は現金、残りはAppHarvestの株式で賄われる。

Root AIはボストンを拠点とするロボット関連のスタートアップで、その使命は将来の親会社とほぼ一致している。TechCrunchはこのスタートアップを何度か取り上げており、2020年8月のシードラウンドでは720万ドル(約7億9000万円)を調達していた。今回のパンデミックではロボット工学が注目されているが、中でも農業と食品製造は組織がプロセスを自動化する方法を模索しているため、特に注目されている。

前述のシードラウンドを含め、Rootはこれまでに950万ドル(約10億円)を調達しており、同社のVirgo収穫システムへの関心が高まっている。この買収が承認されれば、創業者兼CEOのJosh Lessing(ジョシュ・レッシング)氏がAppHarvestのCTOに就任する。このスタートアップはまだかなり小規模で、19人のフルタイム従業員を抱えている。

両社のコメントによると、ロボットが収集した収穫量のデータが、今回の買収の重要な部分だという。

AppHarvestの創設者で最高経営責任者を務めるJonathan Webb(ジョナサン・ウェッブ)氏は「私たちが知っている農業は異常気象、干ばつ、火事、動物による汚染など、食料システムを不安定にする要素が増えているために破綻しています」と述べた。「屋内農業はこれらの課題の多くを解決し、収集されたデータは作物の品質と収量を予測し管理するのに役立つ、より多くの洞察を指数関数的に提供することができます」。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:AppHarvestRoot AI農業買収

画像クレジット:Root AI

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

「宇宙ビッグデータ米」が2021年中に販売予定、宇宙領域の天地人・農業IoTの笑農和・米卸の神明が栽培着手

「宇宙ビッグデータ米」が2021年中に販売予定、宇宙領域の天地人・農業IoTの笑農和・米卸の神明が栽培着手

JAXA認定の宇宙領域スタートアップ「天地人」は4月6日、スマート水田サービス「paditch」(パディッチ)を提供する農業ITスタートアップ笑農和(エノワ)、米卸大手の神明と協業し、「宇宙ビッグデータ米」の栽培に着手すると発表した。

現在日本の農業は、生産者の高齢化にともない農業就業人口は減少傾向にあり、今後の供給力が懸念されている。天地人と神明と笑農和の3社は、「米が足りなくなる」という共通の危機感を持っているという。そこで3社は、将来的なコメの生産増につながる農業施策として、宇宙の技術を活用した農業を確立するプロジェクト「宇宙ビッグデータ米」を立ち上げ、栽培に着手するとした。

同プロジェクトは3社の強みを活かしており、以下の特徴を備えるとしている。

  • 地球観測衛星のデータを活用した天地人の土地評価エンジン「天地人コンパス」を採用。収穫量が増える圃場(ほじょう。農産物を栽培する場所)や、よりおいしく育つ可能性のある圃場を見つける
  • スマホで水管理を自動化できるpaditchを活用し、適正な水温・水量を維持することで、よりおいしい米を多く栽培する
  • 神明の直営店「米処 穂」で販売予定

宇宙ビッグデータ米の目的のひとつは、「気候変動に対応したブランド米をつくる」ことという。そのため、同タイミング同地域で「天地人コンパス」を使い見つけた圃場にpaditchなどテクノロジーを活用する方式と、従来方式とで栽培を行い、食味や収量などの比較を行う予定としている。

また近年、地球温暖化によって「高温障害」が多発しており、米の外観品質の劣化と食味の低下が懸念されているという。この問題に関しては、圃場選びや水管理で回避できると考えており、今回の栽培方法が有効かを実証する。

天地人は、JAXA職員と農業IoT分野に知見のある開発者が設立した宇宙領域スタートアップ。天地人コンパスを使い、衛星データからビニールハウス内の作物に対する日射量を推定するプロジェクトや、キウイフルーツなどの作物の新規圃場の検討など、農業に関わるプロジェクトを実施している。

神明は、「私たちはお米を通じて、素晴らしい日本の水田、文化を守り、おいしさと幸せを創造して、人々の明るい食生活に貢献します。」の企業理念のもと、基幹事業である米穀事業に加え、無菌包装米飯・炊飯米などの加工食品の製造販売、水産品や青果流通への参入、外食事業の展開など、食に関わる多彩なビジネスを展開している。

笑農和は、「IT農業を通じて笑顔の人の和を創り社会に貢献する」を企業理念に掲げ、全国でスマート農業機器の販売と農業コンサルティングを展開。稲作工程中で最も時間と労力を使う「水管理」工程に着目し、スマホで水管理が行えるるpaditchシリーズを販売している。

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カテゴリー:フードテック
タグ:笑農和(企業)宇宙(用語)食品(用語)JAXA(組織)天地人(企業)農業 / アグリテック(用語)日本(国・地域)

WaterfundがOurCrowdと提携、水・農業技術関連の企業に約54.4億円を投資

水関連インフラ資産の取得・管理に特化した投資・取引会社であるWaterfund(ウォーターファンド)は米国時間3月22日、イスラエルを拠点とするクラウドファンディングプラットフォーム「OurCrowd(アワークラウド)」との契約を発表。Waterfundのチームは、水や農業の技術に注力する15社に投資するため、5000万ドル(約54億4000万円)を拠出する予定だ。その第1弾は、多くの資金を集めている垂直農法のスタートアップ企業であるPlenty(プレンティ)に投資される。

関連記事:垂直農園による果物や野菜の室内栽培を手掛けるPlentyが約147億円を追加調達、累計調達額は約526億円に

このような直接的な投資に加え、両社は「Aquantos(アクァントス)」という水に特化した新しいプラットフォームを共同で立ち上げ、Blue Bonds(ブルーボンド)と呼ばれる水事業関連の金融商品の発行を目指す。Blue Bondsは、10年以上前から存在する環境改善に特化した事業を対象としたGreen Bonds(グリーンボンド)に匹敵する新しいアイデアで、海に貢献できる事業を対象とするものだ。

「私たちは、国家や地方自治体の債務者から気候変動対策債として認証され、支援されるブルーボンドの発行に取り組んでいます」と、WaterfundのScott Rickards(スコット・リカード)CEOは述べている。「この新しい金融ツールなどにより、中東の水事業は、水不足に対処するための先進的な技術を、根本的に新しい方法で獲得できるようになるでしょう」。

リカード氏は、民間資本の不足が水分野のイノベーションを妨げており、今回の新しいパートナーシップと、それによってもたらされるエクイティおよびデットファイナンスの機会が、この状況を変える助けになるだろうと主張している。

一方、OurCrowdは、現在約15億ドル(約1631億円)の資金をコミットしており、25のファンドで約250社に投資を行っている。同プラットフォームが投資した企業の中には、Lemonade(レモネード)、Jump Bikes(ジャンプ・バイクス)、Beyond Meat(ビヨンド・ミート)などがある。OurCrowdのポートフォリオには、既存の農業テクノロジー関連のスタートアップ企業も多数含まれており、2020年11月には、(ポートフォリオの1つである)Sprout Agritech(スプラウト・アグリテック)と提携し、ニュージーランドで新たな農業関連のアクセラレーターを運営している。

「アブラハム合意は、中東全体における水不足の課題に、新しい水・農業テクノロジーをもたらす大きな機会を呈出します」と、OurCrowdの創業者でCEOのJon Medved(ジョン・メドベジ)氏は語る。「Waterfundとともに、画期的な技術を持つ企業に投資し、その設立を支援することが我々の使命です。Waterfundと協力して、水に関する重要な課題に取り組む民間資本を増やすための働きができることをうれしく思います」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:WaterfundOurCrowd農業中東

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

移民農業労働者が米国で就労資格を得て法的に保護されるサービスをSESO Laborが提供

Biden(バイデン)政権が、米国の移民制度を改革する際によく見られる問題に対処する法案を議会に提出しようとしている一方で、SESO Labor(SESOレーバー)というカリフォルニア州の小さなスタートアップが450万ドル(約4億8000万円)を調達して、農場が合法的に移民労働者の手を借りることができるようにした。

SESOの創業者Mike Guirguis(マイク・ギルギス)氏は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)やNFX(エヌエフエックス)などの投資家から資金を調達している。Trulia(トゥルーリア)の創業者であるPete Flint(ピート・フリント)氏が同社の取締役に就任した。同社は12の農場と提携しており、現在46の農場とも交渉中である。もう1人の共同創業者、Jordan Taylor(ジョーダン・テイラー)氏はFarmer’s Business Network(ファーマーズビジネスネットワーク)で最初の製品担当者として勤務した経験があり、以前はDropboxに所属していた。

SESOは1986年から施行されている規制の枠組みの中で、H-2Aビザの取得プロセスを合理化・管理するサービスを開始した。このサービスを利用すると移民農業労働者は、法的保護を受けながら米国に一時的に滞在できる。

現時点でSESOはビザ手続きを自動化し、労働者が必要とする事務手続きを整備することで、申請手続きを円滑化している。同社は労働者1人あたり約1000ドル(約10万6000円)を請求しているが、労働者自身へのサービスを徐々に提供していくことにより、安定した収益源を確保することをギルギス氏は想定している。「最終的には、農業経営者と農場労働者の双方に総合的なサービスを提供したい」とのことだ。

SESOは現在、2021年に1000人の労働者の受け入れを見込んでおり、現段階では収益が発生する前の段階である。ギルギス氏によると、就労ビザを扱う最大の業界関係者は今のところ1年間に6000人の労働者を受け入れているため、SESOは市場シェアを獲得するためにしのぎを削らなければならない。

米国における移民と農業労働者の複雑な歴史

国内での労働者不足を見込む農業雇用主が、移民ではない外国人労働者を一時的または季節的に農場で雇用できるように設立されたのが、H-2Aプログラムだ。労働者には米国の賃金法や労災補償の他、医療保険改革法(オバマケア)に基づく医療の利用を含むその他の基準が適用される。

ビザプログラムを利用して労働者を雇用する雇用主は、出入国時の交通費を支払い、住居を無償または有償で提供し、労働者に食事を提供する必要がある(給与からの天引きが可能)。

1952年に移民国籍法の一環として、H-2ビザ発給が開始された。これにより主に北欧への移住を制限していた出身国別割当制度が強化されたが、1924年に移民法が制定されて以来初めて、アジア系移民に米国の国境が開かれた。1960年代には入管法がさらに緩和されたが、1986年の大規模な移民法改革によって移住が制限され、企業による不法就労者の雇用が違法になった。H-2Aビザは、不法就労者の雇用にともなう罰則を受けずに農場で移民労働者を雇用する手段にもなった。

スタンフォード大学を優秀な成績で卒業し、労働政策に関する卒業論文を書いたギルギス氏によると、一部の移民労働者にとってH-2Aビザは最後の切り札だという。

ギルギス氏は給与計算関連のビジネスを展開するGusto(ガスト)を引き合いに出しながら、同社の最終的な目標について次のように語っている。「私たちは、農場と農業関連ビジネスのための人材派遣ソリューションを用意しています。農業の分野でガストのようになり、人材派遣の包括的なソリューションで農場を強力にサポートしたいと思っています」。

ギルギス氏が指摘するように、農業に従事する労働者のほとんどは不法滞在者である。「これまで食い物にされてきた労働者にとって、H-2Aは法的に就労することを可能にするビザです。雇用主が労働力を確保できるように私たちは支援しており、農業経営者が農場を維持するためのソフトウェアを構築しています」

難しい状況が続く中でも国境を開放する

労働力不足を指摘する最新の数字が現状を反映しているのであれば、農場には人材が必要だが、ロイターの記事を見てみると、問題の主な原因はH-2Aビザの発給不足ではなさそうだ。

ロイターの記事によると、農業機械を操作する労働者に発行されたH-2Aビザの数は、2019年10月から3月にかけて1万798件に増加した。ロイターが引用した米国労働省のデータによると、これは前年比49%の増加である。

H-2Aビザを取得できないということが問題ではなく、米国に渡航できないということが問題なのだ。国境管理の強化、収束しない世界的なパンデミック、パンデミックにともなう移動制限などにより、移民労働者は自分の国から出国できなくなっている。

このような状況でも適切な手段があれば、多くの農場がH-2Aビザを進んで利用できるため、不法移民を減らし、米国人労働者がやりたがらないであろう厳しい農作業に従事してくれる労働者を増やすことができる、とギルギス氏は考えている。

画像クレジット:Brent Stirton/Getty Images

David Misener(デビッド・ミーゼナー)氏は、オクラホマ州を拠点として農作物を収穫するGreen Acres Enterprises(グリーン・エーカーズ・エンタープライズ)のオーナーだが、通常雇用している移民労働者の代わりとなるふさわしい労働者を見つけるのに苦労している。

ミーゼナー氏は雇用しようとした米国人労働者について「収穫する方法や、収穫作業を仕事にするということを理解できませんでした」とロイターに対して語った。

「移民労働者がH-2Aを利用すると、自国で受け取る賃金の10倍を上回る賃金を受け取ることができます。手取りが時給40ドル(約4200円)相当になるため、誰もがH-2Aを欲しがっているのです」とギルギス氏はいう。

ギルギス氏は、適切なインセンティブと、農業経営者が申請・承認プロセスを管理するための簡単な方法を用意すれば、H-2Aビザを利用する雇用主の数が、国内の農業労働力の30%から50%にまで増加する可能性があると考えている。つまり、移民労働者が応募できる求人数が30万件から150万件に増える可能性があり、移民労働者がビザを取得して就労しながら、米国人と同じようにさまざまな法的保護を受けられるということだ。

事務処理を改善して農業労働者を保護する

創業者のギルギス氏は、いとこが農場を立ち上げるのをサポートした経験から、農場労働者のつながりとそれを取り巻く問題に関心を持つようになった。月に数回ギルギス氏が週末に手伝いに行ってたときにいとこの夫から、不法就労者として渡米した際の話を聞いた。

H-2Aプログラムを利用する雇用主は、不法労働者を雇用することで逮捕されることにともなう法的責任を負う必要がなくなる。トランプ政権下で実施されていた不法労働者に対する取り締まりが、ますます増えているのだ。

それでもこのH-2Aプログラムのルーツが、米国の移民政策の暗い過去にあることを否定することはできない。一部の移民擁護者は、H-2Aの制度が専門技術者向けのH-1Bビザと同じように、構造的な問題があると主張している。

移民労働者の支援団体であるResilience Force(レジリエンス・フォース)の創設者Saket Soni(サケット・ソニ)氏は、次のように述べている。「H-2Aビザは、雇用主が労働者を農業分野で受け入れるために使用できる短期の一時ビザプログラムです。すでに時代遅れとなっている移民制度の一部であるため、修正が必要です。米国に滞在する1150万人に市民権を与えるべきです。他国から来た労働者は必要に応じて、国内に滞在できなければなりません。H-2A労働者には市民権を取得する手段がありません。労働者たちが職場での問題について声を上げることができず、私たちのところにやって来るのです。H-2Aは労働者にとってありがたい贈り物であるだけなく、悪用される可能性もあります」。

ソニ氏がいうには、労働者が置かれている状況は非常に不安定であり、解雇されてもどこにも行けないため、仕事の問題について声を上げにくくなっている。合法的にこの国に滞在できるかどうかは、雇用主にかかっているからだ。

「労働力が必要なら、労働者を1人の人間として受け入れなければならないという考えを、私たちは強く支持しています。労働者が足りなければ、滞在を認めるべきです。H-2Aは移民が利用できる時代遅れの制度です」とソニ氏は語る。

ギルギス氏はこの制度についてはっきりと異議を唱えている。そして、SESOのようなプラットフォームが、今後このようなビザで入国する労働者の利便性とサービスを向上させるだろうと述べた。

「最終的に、移民労働者がもっと多くの給料を稼げるようなサービスを検討しています。今後、送金業務と銀行業務を開始する予定です。私たちのサービスは、このプログラムに参加する雇用主と労働者双方に利益をもたらすもので、搾取されるようなことはないと認識してもらう必要があります」とギルギス氏はいう。

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タグ:SESO Laborビザアメリカ移民農業

画像クレジット:Brent Stirton / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

屋内農業向け水質・土壌管理システムを手がけるデンマークのNordetectが約1.6億円調達

屋内農業が拡がりを見せている中、屋内作物の効率と品質の向上を目指して、より優れたデータやモニタリングツールを事業者に提供する新しい企業が続々と誕生している。

そのうちの1つ、コペンハーゲンに本社を置くNordetect(ノルディテクト)は、政府系投資会社やSOSVのような伝統的なアクセラレータから約150万ドル(約1億6300万円)の資金を調達。垂直型農場における養分や水質の監視・管理の方法を改善するという技術を携え、米国市場に参入しようとしている。

温室や倉庫を使った管理農業は、植物が最適な生育条件で育つように、投入物のあらゆる側面を管理できるという利点がある。しかし、単に地面に種を蒔くよりもはるかにコストは高くなる。

このような農業の支持者たちは、水の使用効率を高めたり、農薬や肥料の使用を減らしたり、より品質の高い、美味しい農作物を栽培することで、追加費用を抑えることができると提案している。

そこで登場したのが、Keenan Pinto(キーナン・ピント)氏とPalak Sehgal(パラック・セーガル)氏によるNordetectだ。共同設立者の2人は、8年前にインドで大学生だった頃からの知り合いだ。2人は修士課程で一緒に学び、セーガル氏が植物の開花システム、ピント氏は根を専門に、植物のバイオエンジニアリングに取り組んだ後、2人はよりデジタルな分野に進んだ。だが、植物への強い興味は変わらず、お互いに連絡を取り合っていた。

セーガル氏は医療診断、ピント氏は研究機器の開発という専門的な仕事に従事し、2人とも多忙な日々を送っていたが、植物科学と土壌の健康に関する議論は続けていた。

約3年前、2人は水質監視と土壌の健康管理を組み合わせたツールキットのアイデアを思いついた。セーガル氏はそれまで勤めていたインド工科大学を辞め、コペンハーゲンでピント氏と合流し、Nordetectの事業案の核となる技術の開発を始めた。

同社の技術は、分析装置とカートリッジで構成されている。カートリッジとは、マイクロ流体チップのことで、ユーザーがこれを水槽に挿入してサンプルを採取する。この装置が収集したデータをもとに、農場主は水に入れる栄養素をコントロールして、色や味などの形質を最適化することができると、ピント氏は語っている。

画像クレジット:Shutterstock/Francesco83

Nordetectは2017年にSOSVのアクセラレーター「HAX(ハックス)」に受け入れられ、今回が初めての起業となる2人の創業者は、デンマークから深センに移って事業の開発を始めた。2018年末、同社はデンマークに戻り、SOSVとRockstart(ロックスタート)から少量の追加資本を調達した。

2020年になると、同社は垂直農法が拡大している状況を見て、当初は土壌モニタリングツールだったものに水質モニタリング機能を追加して、屋内農業をサポートするようにした。そこからビジネスが軌道に乗り始めたと、ピント氏はいう。

「興味深いのは、屋外と屋内の市場を比較したときのことです。屋外では少々保守的に感じられましたが、屋内はもっと積極的な印象を受けました。この牽引力のおかげで、今回の資金調達ラウンドでは150万ドルを集めることができました」と、ピント氏は語っている。

今回のラウンドには、Rockstart、Preseed Ventures(プレシード・ベンチャーズ)、SOSV、デンマーク政府の成長基金、そしてニューヨーク州ロチェスターの光エレクトロニクス技術に特化したアクセラレータであるLuminate(ルミネイト)が参加した。

Luminateの参加は、Nordetectが米国に進出する理由の1つだが、それだけではない。同国には、室内農業の企業に資金を提供する資本もある。米国で最大の垂直農法企業であるPlenty(プレンティ)とBowery Farming(バワリー・ファーミング)は、それぞれ5億4100万ドル(約589億円)と1億6700万ドル(約182億円)を調達している。

「垂直農法は、データファーマーズと呼ばれる人々を生み出しています」と、ピント氏はいう。「そこでは、生産物の各束は学習のために使われており、出力よりもデータの方が重要です。私たちはこの市場を足がかりとして利用しました」。

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カテゴリー:バイオテック
タグ:Nordetect農業資金調達

画像クレジット:Bowery Farming Inc. under a license.

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)