【コラム】バイデン政権はインクルーシブであるためにAI開発の取り組みにもっと力を入れる必要がある

本稿の著者Miriam Vogel(ミリアム・フォーゲル)氏は、人工知能に存在する無意識の偏見を減らすことを目的とした非営利団体EqualAIの代表兼CEO。

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人工知能国家安全保障委員会(NSCAI)は2021年3月、不安なメッセージを公的に伝える報告書を発表した。「米国は、AI時代に防衛したり競争したりする準備ができていない」というものだ。この報告書は、直ちに回答が求められる2つの重要な質問につながる。つまり、米国がAIの開発と導入に遅れをとった場合、米国は世界の超大国であり続けるのか?そして、この軌道を変えるために私たちは何ができるのか?

一見、中立的に見える人工知能(AI)ツールを放置すると、不平等が拡大し、事実上、差別が自動化されてしまう。テクノロジーが可能にする弊害は、すでに信用判断、医療サービス広告などで表面化している。

このような事態の再発と規模の拡大を防ぐために、Joe Biden(ジョー・バイデン)政権は、AIと機械学習モデルに関する現行の法律を明確にする必要がある。これは、民間企業による利用をどのように評価するかという点と、政府システム内でのAI利用をどのように管理するかという点の両方においてだ。

一見、中立的に見える人工知能(AI)ツールを放置すると、不平等が拡大し、事実上、差別が自動化されてしまう。

政権は、ハイテク分野に重要な地位の人事を置いたり、就任初日にEquitable Data Working Group(公平なデータのためのワーキンググループ)を設立する大統領令を発布するなど、好印象を与えている。これにより、米国のAI開発とデジタル空間における公平性の確保を懸念する懐疑的な人たちをも安心させた。

しかし、AIへの資金提供を現実のものとし、その開発と利用を保護するために必要なリーダーと体制を確立するという強い決意を政権が示さなければ、その安心も束の間のことだろう。

優先順位の明確化が必要

連邦政府レベルでは、AI政策や技術分野における平等性へのコミットメントが大きく変化してきている。OSTPの副局長であるAlondra Nelson(アロンドラ・ネルソン)、NECのTim Wu(ティム・ウー)、NSCのKurt Campbell(カート・キャンベル)など、バイデン政権内の注目を集める人事を見ると、内部の専門家による包括的なAI開発に大きな焦点が置かれていることが分かる。

NSCAIの最終報告書には、包括的なAI開発のためのより良い基盤を実現するために重要となる提言が含まれている。例えば、現在および将来の従業員を訓練するためのU.S. Digital Service Academy(米デジタルサービスアカデミー)を通じて新たな人材パイプラインを構築することなどが挙げられている。

また、報告書では、副大統領が率いる新しいTechnology Competitiveness Council(技術競争力協議会)の設立を推奨している。これは、AIのリーダーシップに対する国の取り組みを最高レベルの優先事項として維持するために不可欠なものとなるだろう。ハリス副大統領が大統領との戦略的パートナーシップを持っており、技術政策に精通していること、公民権に力を入れていることなどを考慮すると、AIに関する政権のリーダーシップをハリス副大統領が陣頭指揮することは理に適っていると思われる。

米国は模範となるべきだ

AIは、何千通もの履歴書に目を通し、適している可能性のある候補者を特定するなど、効率化を実現する上で強力であることはわかっている。しかし、男性の候補者を優先的に採用するAmazonの採用ツールや、人種に基づく信用の「デジタル・レッドライニング」など、差別を拡大することもできてしまう。

バイデン政権は、AIが政府の業務を改善する方法についてのアイデアを募る大統領令を各省庁に出すべきだ。また、この大統領令では、米国政府が使用するAIが意図せずに差別を含む結果を広めていないかどうかを確認することも義務付けるべきである。

例えば、AIシステムに組み込まれた有害なバイアスが、差別的な提案や、民主的で包括的な価値観に反する提案につながっていないかどうかを評価する。そして、AIが常に反復して新しいパターンを学習していることを考慮すると、定期的に再評価を行うスケジュールを設定するべきだ。

責任あるAIガバナンスシステムの導入は、特定の利益を拒否する際にデュープロセスの保障が求められる米国政府においては特に重要だ。例えば、AIがメディケイドの給付金の配分を決定するために使用され、そのような給付金がアルゴリズムに基づいて修正または拒否された場合、政府はその結果を説明できなければならず、これはまさに技術的デュー・プロセスと呼ばれている

説明可能性、ガイドライン、人間の監督なしに決定が自動システムに委ねられると、この基本的な憲法上の権利が否定されるという、どうしようもない状況に陥ってしまう。

同様に、主要企業によるAIの安全対策を確実なものにするにあたり、政権はその調達力を通じて絶大な力を持っている。2020年度の連邦政府の契約費は、新型コロナ対策費を含める前でも、6000億ドル(約64兆9542億円)を超えると予想されている。米国政府は、AIシステムを連邦政府が調達する際のチェックリストを発行すれば、非常に大きな効果を上げることができる。これにより、関連する市民権に配慮しつつ、政府のプロセスが厳格かつ普遍的に適用されるようになるだろう。

AIシステムに起因する差別からの保護

政府は、AIの弊害から私たちを守るためのもう1つの強力な鍵を握っている。調査および検察の権限だ。判断がAI搭載システムに依存している場合、現行の法令(ADA、フェアハウジング法、フェアレンディング法、公民権法など)の適用可能性を明確にするよう各機関に指示する大統領令が出れば、世界的な大混乱に陥る可能性がある。米国で事業を行っている企業は、自社のAIシステムが保護対象クラス(Protected Class)に対する危害を加えていないかどうかをチェックするきっかけができることだろう。

低所得者は、AIの多くの悪影響に対して不相応に弱い立場にある。特にクレジットやローンの作成に関しては、従来の金融商品へのアクセスや、従来のフレームワークに基づいて高いスコアを得ることができない可能性が高いため、その傾向が顕著だ。そしてこれが、そのような判断を自動化するAIシステムを作るためのデータとなる。

消費者金融保護局(CFPB)は、差別的なAIシステムに依存した結果の差別的な融資プロセスについて、金融機関に責任を負わせる上で極めて重要な役割を果たす可能性がある。大統領令の義務化は、AI対応システムをどのように評価するかを表明するための強制機能となり、企業に注意を促し、AI利用に関する明確な予測で国民をよりよく保護することができる。

個人が差別的な行為をした場合には責任を問われ、説明もなく恣意的に公共の利益が否定された場合にはデュー・プロセス違反となることが明確になっている。理論的には、AIシステムが関与している場合、これらの責任と権利は容易に移行すると思われるが、政府機関の行動や判例(というよりもむしろ、その欠如)を見る限り、そうではないようだ。

差別的なAIに対する法的な異議申し立てを基本的に不可能にするようなHUD(都市住宅開発省)規則案を撤回するなど、政権は良いスタートを切っている。次のステップとして、調査や訴追の権限を持つ連邦政府機関は、どのようなAI行為が審査の対象となり、現行の法律が適用されるのかを明確にする必要がある。例えば、HUDは違法な住宅差別について、CFPBは信用貸しに使用されるAIについて、労働省は雇用、評価、解雇の際に行われる判断に使用されるAIについてといった具合だ。

このような行動は、苦情に関する原告の行動に有益な先例を作るという利点もある。

バイデン政権は、差別のない包括的なAIの実現に向けて、心強い第一歩を踏み出した。しかし、連邦政府は、AIの開発、取得、使用(社内および取引先)が、プライバシー、公民権、市民的自由、米国の価値観を保護するような方法で行われることを連邦政府機関に要求することで、自らの問題を解決しなければならないだろう。

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(文:Miriam Vogel、翻訳:Dragonfly)

EUがAIのリスクベース規則の罰金を全世界年間売上高の最大4%で計画、草案流出で判明

人工知能の利用をめぐる規則草案を作成中の欧州連合の議員らが、違反したユースケースについて全世界の年間売上高の最大4%(もしくは2000万ユーロ[約26億円]のどちらか高額な方)を罰金として検討していることがわかった。公式の発表が見込まれるAI規則の草案が流出し、Politico(ポリティコ)が報じたことで判明した。

AI規制をめぐる計画はしばらく前から予想されていた。2020年2月には欧州委員会がホワイトペーパーを公開し「高リスク」とされる人工知能の利用を規制する計画の概略を発表した。

当時、EUの議員は分野ベースでの検討を進めていた。エネルギーや人材採用といった特定の分野をリスク領域と想定していたのだ。しかし、流出した草案を見るとこのアプローチは見直されたようで、今回、AIリスクに関する議論は特定の業界や分野には限定されていない。

焦点は代わりに、分野に関係なく高リスクのAI利用に関するコンプライアンス要件に向けられている(武器や軍事的な利用は明確に除外されているが、それはこの領域がEU条約の対象から外れているため)。とはいえ「高リスク」の定義については、この草案だけではまだ不明瞭だ。

ここでの欧州委員会の最大の目標は、AIの社会的信用を高めることにある。そのために「EUバリュー」に染まったシステムによってコンプライアンスチェックと均衡化を図り、いわゆる「信用できる」 「人間主体」のAI開発を促進するという。そこで「高リスク」と見なされていないAI応用のメーカーも、本委員会の言葉を借りると「高リスクのAIシステムに適用される必須条件の自発的な適用を促進するため」に行動規範を導入することが推奨されている。

本規則のもう1つの焦点は、連合内のAI開発を支える方策の制定だ。加盟国に規制のサンドボックス制度を定めるよう迫ることで、スタートアップや中小企業が市場展開前の段階で優先的にAIシステムの開発とテストの支援を受けられるようにする。

草案では、所轄官庁が「当局の監督と是正に全面的に従いながらも、サンドボックスに加わる事業体の人工知能プロジェクトについて自由裁量権と均整化の権限を与えられる」としている。

高リスクのAIとは?

計画中の規則では、人工知能の利用を予定する事業体が、特定のユースケースが「高リスク」かどうかを見極め、それゆえ市場展開前に義務付けられているコンプライアンス評価を実施すべきかを判断しなければならないとされている。

草案の備考によると「AIシステムのリスク分類は、その利用目的にもとづいて決定される。該当のAIシステムの利用目的を具体的な状況や利用条件を含めて検討し、その利用が何らかの危険を及ぼすかどうか、またその場合、潜在的な危険の重大度と発生可能性がどのくらいか、この2つを考慮することで決定される」。

草案は「本規則に従って高リスクと分類されたAIシステムは、必ずしも各分野の法律において『高リスク』とされるシステムまたは商品とは限らない」とも言及している。

高リスクのAIシステムに関連する「危険」の例を草案のリストから挙げると「人の負傷または死、所有物への損害、社会への大規模な悪影響、重要な経済的および社会的活動の通常運用に不可欠なサービスを大きく混乱すること、経済、教育、または就業の機会への悪影響、公共サービスおよび何らかの公的支援の利用に対する悪影響、(欧州市民の)基本的権利への悪影響」などが含まれている。

高リスクの利用についても、いくつかの例が取り上げられている。例えば人材採用システム、教育機関または職業訓練機関へのアクセスを提供するシステム、緊急のサービス派遣システム、信用度評価、税金で賄われる社会福祉の配分決定に関係するシステム、犯罪の防止・発見・起訴に関連して適用される意思決定システム、そして裁判官のサポート目的で使用される意思決定システムなどだ。

つまり、リスク管理システムを制定し、品質管理システムを含めた市場展開前の調査を実施するなどコンプライアンス要件が満たされている限り、規制計画によってこうしたシステムがEU市場で禁じられることはないだろう。

その他の要件はセキュリティ分野の他、AIのパフォーマンスの一貫性確保に関するものだ。「重大なインシデントや、義務違反を含むAIシステムの誤作動」については、どのようなものであれ発覚後15日以内に監督機関に報告することが規定されている。

草案によると「高リスクのAIシステムも、必須条件への準拠を条件として連合市場に出す、あるいは運用することができる」。

「連合市場に出されている、あるいは運用されている高リスクのAIシステムを必須条件に準拠させる際は、AIシステムの利用目的を考慮し、提供元が定めるリスク管理システムに従って行うべきである」。

「これらに加え、提供元が定めるリスク制御管理策は、すべての必須条件を適用した場合の効果および起こり得る相互作用を鑑み、また関連する整合規格や共通仕様書など一般的に認められている最高の技術水準を考慮して定めるべきである」

禁止されるプラクティスと生体認証

流出した草案によると、計画中の法令の第4項では一部のAI「プラクティス」が禁止条項に挙げられている。例えば、大規模な監視システム、さらには差別につながりかねない一般の社会的なスコアリングシステムへの(商業目的での)適用などだ。

人間の行動、意思決定、または意見を有害な方向へ操るために設計されたAIシステム(ダークパターン設計のUIなど)も、第4項で禁止されている。個人データを使用し、人や集団の弱さをターゲットとして有害な予測をするシステムも同様だ。

一般の読者の方は、本規則が人のトラッキングをベースとする行動ターゲティング広告、つまりFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)といった企業のビジネスモデルで用いられるプラクティスを一挙に禁止しようとしているのではないかと推測されるかもしれない。しかし、そのためには広告テクノロジーの巨大企業らに、自社のツールをユーザーに有害な影響を及ぼすツールだと認めてもらわなければならない。

対して、彼らの規制回避戦略は真逆の主張にもとづいている。フェイスブックが行動ターゲティング広告を「関連」広告と呼んでいるのもそのためだ。この草案は、EU法を定着させようとする側と、自社に都合のいい解釈をしようとする巨大テクノロジー企業らとの(今よりも)長きにわたる法廷での戦いを招くものとなるかもしれない。

禁止プラクティスの根拠は、草案の前文にまとめられている。「人工知能が特別に有害な新たな操作的、中毒的、社会統制的、および無差別な監視プラクティスを生みかねないことは、一般に認知されるべきことである。これらのプラクティスは人間の尊厳、自由、民主主義、法の支配、そして人権の尊重を重視する連合の基準と矛盾しており、禁止されるべきである」。

本委員会が公共の場での顔認証の利用禁止を回避したことは、注目に値するだろう。2020年の初めに流出した草案ではこの点が考慮されていたが、2020年のホワイトペーパー公開前には禁止とは別の方向へかじを切ったようだ。

流出した草案では、公共の場での「遠隔生体認証」が「公認機関の関与を通じてより厳格な適合性評価手順を踏む」対象に挙げられている。つまり、その他ほとんどの高リスクのAI利用とは異なり(これらはセルフアセスメントによる要件順守が認められている)、データ保護の影響評価を含む「テクノロジーの利用によって生じる特定のリスクに対応するための承認手続き」が必要だということだ。

「また、評価の過程で、承認機関は定められた目的でシステムを利用する際の誤差によって生じる危険(とりわけ年齢、民族、性別、または障害に関するもの)の頻度とその重大度を考慮しなければならない」と草案は述べている。「その他、特に民主的プロセスへの参加や市民参加、さらには参照データベース内の人々のインクルージョンに関する手段、必要性、および比例について、その社会的影響を考慮しなければならない」。

「主として個人の安全に悪影響を与えかねない」AIシステムもまた、コンプライアンスの手順の一環として高水準の規制関与を受ける必要がある。

すべての高リスクAIの適合性評価に用いるシステムについては引き続き検討が続いており、草案では「本規則への準拠に影響しかねない変更がAIシステムに生じた場合、あるいはAIシステムの利用目的に変更が生じた場合には、新たに適合性評価を実施することが適切である」としている。

「市場に出された、あるいは運用を開始した後にも「学習」を続ける(機能の実行方法を自動的に適応する)AIシステムについては、アルゴリズムおよびパフォーマンスに生じた変化が適合性評価の時点で事前に特定および評価されていない場合、新たにAIシステムの適合性評価を実施する」とのことだ。

規則に準拠する企業へ与えられる報酬は「CE」マークの取得だ。このマークによってユーザーの信頼を獲得し、連合の単一市場全体で摩擦のないサービスを提供できる。

「高リスクのAIシステムを連合内で自由に利用するには、CEマークを取得して本規則との適合を示す必要がある」と草案は続ける。「加盟国は本規則で定められた要件に準拠するAIシステムの市場展開または運用を妨げる障害を生んではならない」。

ボットとディープフェイクの透明性確保

提供元は、商品の市場展開前に(ほぼセルフでの)評価を実施し、コンプライアンス義務(モデルのトレーニングに使用するデータセットの品質確保、記録の保持・文書化、人間による監視、透明性の確保、正確性の確保など)を果たし、市場展開後も継続的に監視を続けることが要求されている。このように「高リスク」のAIシステムを安全に市場に出すべく、いくつかのプラクティスを法的に禁止し、EU全体での規則適用に用いるシステムの確立を模索すると同時に、草案では人をだます目的で使用されているAIのリスクを縮小しようとする動きがある。

具体的には、自然人とやり取りをする目的で使用されるAIシステム(ボイスAI、チャットボットなど)、さらには画像、オーディオ、または動画コンテンツを生成または操作する目的で使用されるAIシステム(ディープフェイク)について「透明性確保のための調和的な規定」を提案しているのだ。

「自然人とやり取りをする、またはコンテンツを生成する目的で使用されるAIシステムは、高リスクに該当するか否かに関わらず、なりすましや詐欺といった特定のリスクを含む可能性がある。状況によっては、これらのシステムの利用は高リスクのAIシステム向けの要件および義務とは別に、透明性に関する特定の義務の対象となるべきである」と草案は述べている。

「とりわけ、自然人はAIシステムとやり取りする場合、それが状況や文脈から明確に分かる場合を除き、その旨は通知されるべきである。さらに、実在の人物、場所、出来事との明確な共通点がある画像、オーディオ、または動画コンテンツを生成あるいは操作する目的でAIシステムを使用し、そのコンテンツが一般人によって本物と誤解されるものである場合は、ユーザーは人工知能の生産物にそれぞれ表示を付け、人工物の作成元を開示することで、該当コンテンツが人工的に作成されたあるいは操作されたことを開示しなければならない」。

「表示に関するこの義務は、該当コンテンツが治安の維持や正当な個人の権利または自由(例えば風刺、パロディー、芸術と研究の自由の行使、さらにはサードパーティーの適切な権利および自由を保護するための題材)の行使のために必要な場合には適用されない」。

実施の詳細は?

このAI規則案はまだ委員会によって正式に発表されてはいないため、詳細が変更される可能性はあるが、2018年に施行されたEUのデータ保護規則の実施がいまだに不十分なことを踏まえると、(複雑な場合が多い)人工知能の具体的な利用を規制するまったく新しいコンプライアンス層の導入がどこまで効果的に監視し、違反を取り締まれるのかは疑問だ。

高リスクのAIシステムを市場に出す際の責任(かつ、高リスクのAIシステムを委員会が維持予定のEUデータベースに登録することなど、さまざまな規定への準拠責任)はそのシステムの提供元にある一方で、規則案では規制の実施を加盟国に一任している。つまり、各国にある1つまたは複数の所轄官庁に監視規則の適用を管理するよう任命する責任は、それぞれの加盟国にあるということだ。

その実態は、EU一般データ保護規則(GDPR)の先例からすでに見えているだろう。委員会自体も、連合全体でGDPRの実施が一貫したかたちで、あるいは精力的に行われていないことを認めている。疑問点は、駆け出しのAI規則が同じ フォーラムショッピングの運命をたどらないようにできるのかという点だ。

「加盟国は、本規則の条項が確実に実践されるよう必要な手段をすべて取らなければならない。これには、違反に対して効果的かつバランスのとれた、行動抑止効果のある罰則を規定することが含まれる。具体的な違反については、加盟国は本規則で定められた余地と基準を考慮に入れるべきである」と草案は述べている。

委員会は、加盟国の実施が見られない場合の介入について補足説明をしている。とはいえ、実施方法について短期的な見通しがまったくないことを考えると、先例と同じ落とし穴があることは否めないだろう。

将来の実施失敗を阻止するため、委員会は次のように最終手段を定めている。「本規則の目標は連合内での人工知能の市場展開、運用開始、および利用に関する信頼のエコシステムを構築するための環境を整えることである。それゆえ、加盟国がこれを十分に達成することができず、措置の規模または効果を鑑みた結果連合レベルでの実施の方がよりよい成果を達成できると考えられる場合、連合は欧州連合基本条約第5項に定められた権限移譲の原則に従う範囲で、措置を講じることができる」。

AIの監視計画には、GDPRの欧州データ保護委員会と類似のEuropean Artificial Intelligence Board(欧州人工知能委員会)を設立することが含まれている。この委員会はEUの議員に向けて、禁止されているAIプラクティスや高リスクのシステムのリストなどに関して重要な推奨事項や意見を述べ、欧州データ保護委員会と同じように規則の適用を支援していくこととなる。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

関西学院大学と日本IBMが授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を企業・自治体・大学に提供開始

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す関西学院大学は4月27日、日本アイ・ビー・エム(日本IBM)と共同開発した「AI活用人材育成プログラム バーチャルラーニング版」(VL版)について、2021年7月より企業・自治体・大学に対し有償提供を開始すると発表した。2024年度に受講者を年間5万人に拡大するとしている。

価格は1科目につき税込2万2000円/年、同じ科目の2年目以降の再受講は税込6600円/年で履修可能となり、継続的な学習による知識の定着を目指す。2021年度は年間5000人の社会人の受講利用を見込んでおり、2021年7月より大同生命保険が本社職員1500人の受講を予定している。関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

VL版は、初学者でもAI活用の実践的な知識・スキルを体系的に修得できるよう設計した「AI活用入門」「AI活用アプリケーションデザイン入門」、「AI活用データサイエンス入門」の3科目(1科目20時間程度)で構成しており、すべてオンライン(オンデマンド)での開講となる。

これら内容は学内開講プログラムと同じで、音声や字幕によるガイダンス、講師の解説、デモ動画、オンラインでの演習、時間制限付きの課題研究、ランダムテストなどの多様な機能を有するオンライン・プラットフォームとなっているという。またプロシーズが提供するLMS「Learning Ware」(ラーニングウエア)を利用しているため、企業・自治体・大学側でのシステムの導入は必要ないそうだ。

学習者の質問に対しては、IBM Watson Assistantを搭載したチャットボットで回答する仕組みを構築しており、提携する企業・自治体に所属する社会人は、時間や場所の制限なく、いつでもどこでも何度でも受講が可能。

受講時間は、1科目あたり20時間程度。単元ごとに設定されているオンラインテスト(ランダム出題)すべてを一定の正解率でクリアすれば合格し、修了証と、オープンバッジ・ネットワークがブロックチェーンで管理するデジタル修了証「オープンバッジ」が発行される。オンラインテストの正解率、講義の早送り・スキップ禁止などの条件を解除する設定も可能だが、その場合は修了証は付与されない。またオープンバッジは、IMS Global Learning Consortium(IMS Global)が定める国際技術標準規格に準拠したものとなっている。

2022年度以降、「AI活用実践演習A(JavaによるWebアプリケーションデザイン)」「AI活用実践演習B(Pythonによる機械学習・深層学習)」「AI活用実践演習C(Webデザイン)」の3科目を提供科目として順次追加し、2024年度には合計6科目を提供する。

今後は企業や自治体をはじめ大学にも提案し、2022年度からは社会人、高校生などにも展開。2024年度には受講者を年間5万人に拡大させることで、関西学院大学と日本IBMは、AI人材の創出に貢献する。

関西学院大学と日本IBMが実際の授業と同内容の「AI活用人材育成プログラム VL版」を提供開始、2024年度に受講者年間5万人を目指す

関西学院大学は、「AI・データサイエンス関連の知識を持ち、さらにそれを活用して、現実の諸問題を解決できる能力を有する人材」の育成を目的に、2017年より日本IBMと共同プロジェクトを立ち上げ、「AI活用人材育成プログラム」を開発した。

関西学院大学による学術的な知見と、日本IBMのコンサルタントやデータサイエンティストによる多様なAIの社会実装の先進事例を反映した実践型プログラムとして10科目で構成しており、2019年4月より文系理系問わず全学部生を対象に開講しているという。

2021年度には「AI活用入門」「AI活用アプリケーションデザイン入門」「AI活用データサイエンス入門」の基礎3科目をe-ラーニング化しVL版として開講したところ、AIリテラシーの修得を目的とする「AI活用入門」のVL版初年度春学期の履修者は2071人に上り、学生のAIに関する関心の高さが示されたという。

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材料研究を効率化するプラットフォーム開発するのイスラエルMaterials Zoneが約6.5億円を調達

テルアビブに拠点を置くスタートアップ企業で、AIを活用して材料研究の高速化を図るMaterials Zone(マテリアル・ゾーン)は、シードラウンドで600万ドル(約6億5000万円)の資金を調達したと、米国時間4月27日に発表した。この投資ラウンドはInsight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、クラウドファンディングの「OurCrowd(アワークラウド)」も参加した。

Materials Zoneのプラットフォームはさまざまなツールで構成されているが、その中核となるのは、科学機器や製造施設、実験装置、外部データベース、発表された論文、Excelシートなどからデータを取り込み、それを解析して標準化するデータベースだ。このデータベースは必要に応じて可視化することができ、研究者にとってはこれがあるだけで恩恵になると、同社は主張する。

画像クレジット:Materials Zone

「新しい技術や物理的な製品を開発するためには、まずその製品を構成する材料やその特性を理解する必要があります」と、Materials Zoneの創設者でCEOを務めるDr. Assaf Anderson(アサフ・アンダーソン博士)はいう。「ゆえに、材料の科学を理解することがイノベーションの原動力となります。しかし、材料の研究開発や生産の背景にあるデータは、慣習的に管理が不十分で、構造化されておらず十分に活用されていませんでした。そのため実験が重複したり、過去の経験を生かすことができなかったり、効果的な共同作業ができなかったりして、莫大な費用と手間が無駄になっていました」。

画像クレジット:Materials Zone

アンダーソン博士は、Materials Zoneを設立する以前、バル=イラン大学のナノテクノロジー・先端材料研究所に在籍し、コンビナトリアルマテリアル実験室の責任者を務めていた。

Materials Zoneの創設者でCEOであるアサフ・アンダーソン博士(画像クレジット:Materials Zone)

「私は材料科学者の1人として、研究開発の課題を身をもって経験しているため、研究開発がどのように改善できるかということを理解しています」と、アンダーソン博士はいう。「私たちは長年の経験を元に当社のプラットフォームを開発し、革新的なAI(人工知能)/ML(機械学習)技術を活用して、これらの問題に対する独自のソリューションを生み出しました」。

例えば、新しい太陽光発電用の透明なウィンドウを開発するためには、適切なコア材料とそのパラメータを見つけるために何千回もの実験が必要になる。Materials Zoneは、このようなデータをすべて集約して標準化し、それを扱うためのデータおよびワークフロー管理ツールを提供することで、このプロセスをより速く、より安価に行えるようにすると、アンダーソン博士は説明する。その一方で、同社の分析・機械学習ツールは、研究者がこのデータを解釈するための支援をする。

 

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

欧州議会議員グループが公共の場での生体認証監視を禁止するAI規制を求める

40名の議員からなる欧州議会の超党派グループは、人工知能(AI)に関する立法案を強化し、公共の場所における顔認証やその他の生体認証による監視を完全に禁止することを委員会に求めている。

また、このグループは、個人を特定できる特徴(性別、性的区別、人種・民族、健康状態、障害など)を自動認証することも禁止するよう議会に要求し、このようなAIの利用は大きな人権リスクをともない、差別を助長する恐れがあると警告している。

欧州委員会は、AIの「高リスク」アプリケーションを規制するフレームワークのプロポーザルを発表するとされているが、中央ヨーロッパ夏時間4月13日、Politico(ポリティコ)がその草案をリークした。先にレポートしたように、リークされた草案は、この問題に対する国民の関心の強さを認めているにもかかわらず、公共の場での顔認証やその他の生体認証を行う遠隔識別テクノロジーの使用を禁止する事項は含んでいない。

議員グループは欧州委員会に宛てた書簡で「一般にアクセスできる公共空間における生体認証の大量監視テクノロジーは、多数の無実の市民を不当にレポートし、過小評価グループ(ある地域において、全世界における人口比よりも小さな割合しかもたないグループ)を組織的に差別し、自由で多様性のある社会を委縮させると広く批判されています。だからこそ、禁止が必要なのです」と述べ、その内容も公開されている。

議員グループは、予測的ポリシングアプリケーションや、生体特徴を利用した無差別な監視・追跡など、個人を特定できる特徴を自動的に推定することによる差別のリスクについても警告している。

「これはプライバシーやデータ保護の権利を侵害し、言論の自由を抑圧し、(権力側の)腐敗を暴くことを困難にするなどの弊害をもたらし、すべての人の自律性、尊厳、自己表現を脅かします。特に、LGBTQI+コミュニティ、有色人種、その他の差別されているグループに深刻な損害を与える可能性があります」と議員グループと記し、EU市民の権利と、差別のリスク(そして、AIで強化された差別的なツールによるリスク)からコミュニティの権利を守るために、AIプロポーザルを修正して、こういった行為を違法化するよう欧州委員会に求めている。

「AIプロポーザルは性別、性的区別、人種・民族、障害、その他の個人を識別できる保護すべき特徴の自動識別を禁止するチャンスです」と議員たちは続ける。

リークされた欧州委員会プロポーザルの草案では、無差別大量監視という課題に取り組んでおり、こういった行為の禁止や、汎用の社会的信用スコアリングシステムを非合法化することも提案されている。

しかし、議員グループはさらに踏み込んだ議論を求め、リークされた草案の文言の弱点を警告し、プロポーザルの禁止案を「システムに暴露される人の多寡にかかわらず、ターゲットのない無差別な大量監視をすべて禁止する」ように変更することを提案している。

また、公共機関(または公共機関のために活動する商業団体)に対しては大量監視を禁止しないという提案にも警鐘を鳴らし、現行のEU法や、EU最高裁の解釈を逸脱する危険性を指摘している。

書簡には「私たちは、第4条第2項の案に強く抗議します。この案では、公的機関はもちろんのこと、公的機関に代わって活動する民間の行為者であっても、『公共の安全を守るため』に(大量監視の禁止の)対象とならないとされます」と書かれている。「公共の安全とは、まさに大量の監視を正当化するためのものであり、実務的に有用性があり、裁判所が個人データの無差別大量処理に関する法律(例、データ保持指令)を一貫して無効にしてきた場でもあります。禁止の対象とならない可能性は排除する必要があります」。

「第2項は、これまで司法裁判所が大量監視を禁止していると判断してきた他の二次的な法律を逸脱すると解釈される可能性もあります」と続ける。「提案されているAI規制は、データ保護の法体系に起因する規制と一体となって適用されるものであり、それに代わるものではないことを明確にする必要があります。リークされた草案には、そのような明確さがありません」。

議員グループは欧州委員会のコメントを求めているが、今後予定されているAI規制案の正式発表を前に、欧州委員会がコメントを出すことはなさそうだ。

今後、AIプロポーザルに大幅な修正が加えられるかどうかは不明だ。しかし、この議会グループは、基本的人権が共同立法の議論の重要な要素であること、そして、非倫理的なテクノロジーに正面から取り組まないルールであれば「信頼性の高い」AIを確実するためのフレームワークという議会の主張は信用できないと、いち早く警告している。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU生体認証顔認証人工知能・AI

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

VC投資にAIを活用する女性投資家3人のグループ「TLC Collective」

ベンチャーキャピタルはネットワークビジネスである。ファウンダーのネットワークから投資家やエンジェルの人脈、潜在顧客や人材、サービスプロバイダバイダーの糸のように細い繋がりまで。これらのネットワークの密度が成功を決める。任務に合った人物や、資本政策に沿った出資者を見つけることができれば、スタートアップは一歩リードできるかもしれない。

それはCasey Caruso(ケーシー・カルーソ)氏が深く考えてきたテーマだ。スタンフォード大学在学中の研究プロジェクトで、彼女は少々変わったかたちのネットワーク密度に目をつけた。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)モデルを用いた投資判断の評価だ。3人の共著者は、アルゴリズムを使ってVCを最適化する方法を分析した。これは彼女にとって馴染みのあるクロスオーバーポイントであり、Googleでエンジニアとして働きながらBessemer Venture Partnersでパートタイムで投資していたときに培った技術的経歴に基づいている。

サンフランシスコのローワー・パシフィック・ハイツにある北イタリア料理レストラン「SPQR」のディナーで、彼女は友人で現在ブロックチェーンに特化したPantera Capitalのプリンシパルを務めるLauren Stephanian(ローレン・ステファニアン)氏、Google VenturesのパートナーであるTerri Burns(テリー・バーンズ)氏と投資について語っていた。そこで3人は、すべての道がローマに通じるのと同じように、3人全員が同じ方向に進んでいることに気がついた。テクノロジーを使ってベンチャーキャピタルの意思決定を改善する。「私たちは全員が訓練を受けたコンピューター科学者です」とカルーソ氏は言った。「その基礎訓練のおかげで、3人とも実利的に問題に取り組みます」。

彼女らは昼間の仕事と別に共同作業を開始した。どうすればAIを最初期ステージのベンチャーに適用して、モデルから特徴を識別すると同時に、ビジネスの定性的特長にも対応できるだろうか。そして、2019年に、投資に関する正式な共同体を作ることを決め、投資の基盤としてTLC Collective(3人のイニシャルを組み合わせた)を立ち上げた。

自ら出しあった資金を使って、TLCはテック企業のファウンダーにエンジェルおよびプレシード資金を投資している。これまでに11社への投資を終えており、データディスカバリープラットフォームのSelect Star数週間前に私が紹介した)、オーディオ会議アプリのClubhouse、生物データプラットフォームのWatershed、リモートワークマネージャーのFriday、暗号資産(仮想通貨)リスク・ンプライアンスプラットフォームのTRM、ユーザーインフラプラットフォームのSlytchほか、さまざまな会社がある。

TLCの投資先はさまざまな分野に渡っが、すべてを繋いでいるのがファウンダーの技術志向だ。「私たちは技術志向の強いチームに投資します、なぜなら私たちが非常にテクニカルで、それが第1の断基準だからです」とカルーソ氏は言った。一方、ステファニアン氏は、技術力は重要な指標ではあるが、焦点となる分野は3人で異なっているという。「同じような経歴ですが、興味の対象と持っているスキルは異なります」と彼女は言った。バーンズ氏は消費者に、ステファニアン氏はフィンテックと大企業と暗号資産に、カルーソ氏は先端技術に、それぞれ焦点を当てていると3人は言った。

これまでのところ、グループは3人にとってまだ「サイドギグ」(副業)であり、基礎となるアルゴリズムの改善を繰り返しているところだ。「アルゴリズムを実際に使う場合と、フレームワークやリファレンスとして使うだけの場合を行ったり来たりしています」とカルーソ氏は説明する。「プログラミングの経験を使ってアートとサイエンスのバランスを見つけようとしています」。

投資のペースはほぼ四半期に1回で、当面これが続くだろうとチームは言っていた。今後も自己資金による投資を続けるつもりで、ローリングファンドやクラウドファンディングなどの新しいモデルへの拡張が必要だとは感じていない、少なくとも今のところは。「ローリングファンドのことは考えたこともありません」とCaruso氏は言ったが、グループはOn Deck Angelsの一員であることを認めた。ステファニアン氏は、今あの分野の熱気はすごいという。「自分でシンジケートを立ち上げている人たちから実に多くのメッセージが送られてきます」と彼女は語った。

グループの投資金額は、1回当たり数万ドル(数百万円)から数十万ドル(数千万円)の範囲だ。

彼らのAIモデルを支えているネットワークや、投資先ファウンダーを集めて作っているネットワークと同じく、TLC Collectiveは投資家の中に三角形の繋がりを作っている。繋がりが広がるにつれ、モデルを最適化するためのデータを拡張することが可能になり、新しいビジネスを成長させる最高のテックファウンダーに投資することが彼らの願いだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:人工知能TLC Collective

画像クレジット:TLC Collective

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nob Takahashi / facebook

数百億円台のAIラウンドがあってもおかしくない理由

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

先週、Scale AI(スケールAI)が3億2500万ドル(約353億5000万円)のシリーズE調達を行った。TechCrunchも書いたように、この会社はデータラベリングの分野で活躍している。そして、ここ数年は資金調達にも大いに力を入れてきた。2019年にTechCrunchは、同社の当時22歳のCEOが1億ドル(約109億円)のラウンドを組んだことを記事にしている。そして2020年12月には約35億ドル(約3807億3000万円)の評価額で1億5500万ドル(約168億6000万円)を調達した。今では70億ドル(約7兆6000億円)以上の価値がある。

すごい話だよね?さて、先週初めにわかったのだが、どうやら2021年は、AIスタートアップにとって、全般的にとんでもない年になっているようだ。PitchBookのデータによれば、2021年の初めから4月12日までに、米国でのAIスタートアップの取引は442件、金額にして116億5000万ドル(約1兆2672億9000万円)に達している。そして、最近発表されたMicrosoftによるNuance AI(ニュアンスAI)の買収は、さらにこうした事象を加速させるかもしれない。

Sapphire VenturesのJai Das(ジェイ・ダス)氏に、AIベンチャー市場についての意見を、The Exchangeに寄せてもらった。同氏は、この分野の第1四半期における競争状況に対する、私たちからの質問に対し、第1四半期における「AI/MLスタートアップへの投資活動は、絶対にトチ狂っていますね」と答えた。

ダス氏によれば「AI / MLスタートアップは、日常的に一流のVCファームから5、6通の条件規定書を受け取っていますし、ARR(年間経常収益)の150~250倍の資金調達ができています」とのことだ。

このことを少し考えて欲しい。2020年私たちは、公開ソフトウェア企業が新たな高みに達したのを目にしてきたが、たとえ積極的なスタートアップのラウンドであったとしても、上の数字は非常に大きなものだ。経常収益が100万ドル(約1億1000万円)に過ぎないAIに特化したスタートアップが、25億ドル(約2719億5000万円)の評価を受けることを想像してみて欲しい。なんてこった。

しかし、AI投資のペースはどうだろうか?聞くところでは、多くのスタートアップで、ラウンド開始から終了までの時間に対する短縮に次ぐ短縮が行われているという。ダス氏は、この状況を説明するために「ほとんどの企業は、投資が実際に行われるはるか前にデューデリジェンスを完了しています」とメールで述べている。つまり「投資を行う時点ではもはやデューデリジェンスを行う必要がない」ということだ。

それって本当に意味があるのだろうか?もしラウンドが先制的なものならば、事前に徹底調査をしなければならない(これはダス氏が後ほどコメントで強調したことだ)。そうでなければ、盲目的に投資したり、動きの速い他の企業に取引を先取りされてしまうことになる。

今週のThe Exchangeでは、国内のベンチャーキャピタル市場についても、シード案件やニュースで話題になるような超レイトステージ投資に焦点を当てつつ掘り下げてみた。アーリーステージのベンチャー投資に関するコメントとして、EYの米国Venture Capital責任者であるJeff Grabow(ジェフ・グラボウ)氏からのコメントが寄せられた。

そのプレシード、シード、ポストシードについてのコメントの中で、私たちの注意を特に引くものがあった。予測に関するものだ。グラボウ氏は次のように語る。

2021年第1四半期のプレシード資金調達は、例年と比較すると好調でした。現在利用可能な資金が豊富で、技術的なソリューションで新市場を開拓できる、投資可能なテーマが数多くあることから、全体的な環境は引き続き堅調に推移すると考えています。このことから新型コロイナウイルス後の環境は、バラ色に描かれています。

これは私たちの社内での予測と同じだ。2021年第1四半期は、少なくとも米国のベンチャーキャピタル活動は非常に活発だったため(近々、海外事情も伝わってくるだろう)、2021年は多くの点で記録的な年になると思われる。大きく減速する傾向もみられないので、記録は更新されることだろう。そしてグラボウ氏もこうして新型コロナウイルスの流行が終了した後のベンチャー環境が、かなり魅力的なものになることを、はっきりと予想している。

ということで、記録は更新されるだろう。問題はその大きさがどれくらいになるのかということだ。

Coinbaseの直接上場に関するその他の情報

終わった話をあれこれいうつもりはないが、Coinbase(コインベース)の直接上場について、いくつか情報を追加しておこう。

消費者向け取引アプリRobinhood(ロビンフッド)の、ライバルであるPublic.com(パブリックコム)が、The Exchangeに対して、Coinbaseの株式に対する小口取引の関心がどれほどのものだったかを教えてくれた。いつもの広報担当者であるMo(モー)氏によれば、米国時間4月14日、Coinbaseは取引数で「公開されている全銘柄の中で最も人気があった」という。そしてさらに特筆すべきは、同じ日に「(投稿数で計測した)ソーシャルアクティビティが前日に比べて70%増加した」ことだ。

消費者トレーディングのブームがいつまで続くかはわからないが、これはかなりすばらしい指標値だ。

また、Similarweb(シミラーウェブ)は、2021年1月のcoinbase.comへのアクセス数が8640万件に達したことなどの、いくつかのデータを紹介している。いやあ、こいつはすごい。また、この月は新規訪問者数が再訪問者数を上回っている。このデータは、Coinbaseが第1四半期に大きな結果を出した理由を説明している。ということで現在の疑問は、こうした強気の動きを維持できるのかどうか、あるいは率直に言って、特に暗号資産の取引に対する消費者の関心が、株式取引のブームよりも長持ちするかどうかという点だ。

先週ポッドキャストなどでも何度か話題に出た、CoinbaseのシリーズDを主導した投資家のTom Loverro(トム・ラベロ)氏は「私たちはまだ暗号資産の第2ラウンドに立ったに過ぎません」と語っている。ということで、これらの話題は何度も何度も繰り返し出てくるだろう。ということでもう1度。

その他のことなど

さて記事の文字数の目標に達することができるように、先週のIPO市場に関するメモをいくつか。

まず、AppLovin(アプラビン)のIPOは計画どおりには進まなかった。モバイルアプリケーションに特化したハイテク企業の同社は、範囲の中央値である1株あたり80ドル(約8702円)という控えめな価格がついた後、最初の2日間の取引で価値が下落した。金曜(米国時間4月16日)終了時点では、1株あたり61ドル(約6636円)になった。

The Exchangeは、AppLovin社のCFOであるHerald Chen(ヘラルド・チェン)氏に、IPO当日にインタビューを行った。チェン氏との会話からは、上場したことで買収をより加速できるのではないかと感じることができた。流動性のある株式を所有しているということは、これまで以上に買収されやすくなったということだ。またS-1ファイリングによれば、AppLovin社は、他の企業を買収し、そのビジネスプロセスを実行して、収益を得ることができると主張している。

もしそれが実現できるなら、公開市場から同社に対する見方は少し厳し過ぎるかもしれない。現在の状況下で、ソフトウェア会社がIPO後に苦労しているのを見るのは少し奇妙なことだ。

また、チェン氏はThe Exchangeに対し、公開に先立つ会社説明会の際にマルチクラスの株式構造(株式に議決権などの差をつけること)についての反発は見られなかったと語っている。マルチクラス株式の悪影響については、同僚のRon Millerと一緒に書いたことがある。チェン氏は、たとえ議決権の異なる複数クラスの株式を保有していても、1人の人間が会社を完全にコントロールすることはできないと述べている。率直に言って、それが問題なのだが。

AppLovinの取引には注目して行くつもりだ(その数字に関する以前の記事はこちら)。

最後に。自動運転トラック会社のTuSimple(トゥーシンプル)が先週上場し、Similarwebが上場を申請した。また、UiPath(ユーアイパス)が価格帯を引き上げるか否かといった、幅広いIPO市場の動向にも注目している。私たちはその点について予測を行っている

そして週の終わりになって、Squarespace(スクエアスペース)がS-1(上場目論見書)を公開した。記事はこちら、続報も予定している。

ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangeAI機械学習Coinbase新規上場資金調達

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

NVIDIAが次世代車載半導体「DRIVE Atlan」発表、演算処理性能1000TPSの「車載データセンター」

NVIDIAが次世代車載半導体「DRIVE Atlan」発表、演算処理性能1000TPSの「車載データセンター」

4月12日(現地時間)、半導体メーカーNVIDIAはオンラインカンファレンス「GTC 2021」を開催。この中で、同社のジェンスン・フアンCEOが次世代車載半導体「DRIVE Atlan(ドライブ アトラン)」を発表しました。

NVIDIAの車載半導体は、2018年提供の「Parker(パーカー)」、2020年から供給している「Xavier(エグゼビア)」が現行モデル。来年にはXavierの後継に当たる「Orin(オーリン)」の供給が開始される予定です。すでにメルセデスベンツの次世代車両に搭載されることが決まっており、今回のカンファレンスでも、ボルボの車両に「Orin」の搭載が発表されましたが、早くもその次の車載半導体が発表されたかたちです。

注目の「Atlan」ですが、特筆すべきはその処理能力。「Atlan」はなんと1秒間に1000兆回もの処理を行うことが可能。「Parker」は1TOPS(1秒間に1兆回)、「Xavier」は30TOPS(1秒間に30兆回)、「Orin」は254TOPS(1秒間に254兆回)ですから、これらと比べると「Atlan」は破格の性能を有しているといえます。

高度なAI技術を用いて自律走行を行う無人車両はもちろんのこと、有人車両でもアプリケーションやAI機能が充実したモデルで高い演算能力が求められます。同社は「Atlan」の高い能力を「A Data Center on Wheels(車載データセンター)」と表現していますが、データセンターレベルの能力を車に搭載することができれば、自動運転技術も飛躍的に向上するかもしれません。

「Atlan」は2023年にサンプル提供が行われ、車両への搭載は2025年を予定しているとのこと。

(Source:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:モビリティ
タグ:AI / 人工知能(用語)NVIDIA(企業)GTC / GPU Technology Conference自動運転 / 自律運転(用語)DRIVE Atlan(製品)Drive AGX Orin(製品)Drive AGX Xavier(製品)Volvo Cars / ボルボ(企業)メルセデス・ベンツ / Mercedes-Benz(企業)

中央大学とスクエニが「特殊講義(ゲームプランニング)」を国際情報学部で開講

 

  1. 中央大学とスクエニが「特殊講義(ゲームプランニング)」を国際情報学部で開講

スクウェア・エニックス中央大学は4月8日、「特殊講義(ゲームプランニング)スクウェア・エニックス協力講座」を開講すると発表した。同講座は、2021年9月より国際情報学部の開講科目として実施する。教養豊かな国際的人材育成を目的として2018年に締結した、人的・知的資源の交流と活用を図る連携協定に基づくものという。

プログラミングやグラフィックスといったゲーム開発固有の専門知識だけでなく、ローカライズ(翻訳と異文化対応)や人工知能、映画制作の視点からみる映像ディレクションなど、バラエティに富んだ講義をスクウェア・エニックスの現役社員が13回にわたり展開する。

中央大学 国際情報学部は、「『情報の仕組み』と『情報の法学』の融合」を理念に掲げ、2019年4月に開設された学部。国際社会が抱える情報の諸課題を多角的に分析・解明した上で、その問題の解決策を論理的に構築し、国際社会に受容される情報サービス・政策を実現できる人材の養成を目的としている。

同講座は、ITや映像制作・AIなどのコンテンツ開発技術という「情報の仕組み」と、世界市場での事業展開に不可欠な法規制・文化慣習への対応という「情報の法学」の両側面において、スクウェア・エニックスの知見を盛り込んだ実務的かつ多面的な内容としているという。

スクウェア・エニックスと中央大学は、今後も教育・研究分野において協定に基づいた相互協力を推進し、社会の発展と教養豊かな国際的人材育成に貢献する。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:AI / 人工知能(用語)映画(用語)学生(用語)スクウェア・エニックス(企業)中央大学(組織)法令・規制日本(国・地域)

「目についたら異常」などあいまいな官能検査も対応、ロビットが工業製品向け汎用型AI外観検査ロボを提供開始

「目についたら異常」などあいまいな官能検査も対応、ロビットが工業製品向け汎用型AI外観検査ロボを提供開始

AI技術をロボティクスに実装し社会課題の解決を進めるロビット(ROBIT)は4月7日、自動車内装・外装部品をはじめ様々な工業製品における外観検査工程の自動化が可能な汎用型AI外観検査ロボット「TESRAY S」シリーズを開発し、提供を開始したと発表した。

すでに大手自動車部品メーカーの本番ラインに初号機を導入しており、外観検査工程の自動化を実現しているという。導入事例に関しては後日リリース予定。

様々な工業製品を対象に外観検査の自動化が可能

樹脂・金属・繊維などの素材、射出成形・プレス・メッキ・塗装などの製法/加工といった様々な工業製品を対象に外観検査の自動化が可能。ラメ加工など製品ごとに異なる模様、光の乱反射の影響をうける透明部品においても多数の実績を持つという。

高さ・厚みがある部品や窪みやR部にも対応

6軸(最大12軸)の検査ロボットによって、3次元形状のワーク(対象物)に対応し、高さ・厚みがある部品や窪みやR部にも対応。外観検査に最適化したロボットを独自開発しているため、特異点やケーブルの取り回しによる可動領域制限が存在しない。また、ワークに最適化するために、ロボットの軸を追加する等の検査範囲のカスタマイズ対応も可能。一般的に検査の見逃しが発生しやすいリブ・R部・意匠部上の異常に関しても安定した検出精度を実現する。

自動車部品メーカーの検査品質に対応したAIアルゴリズムを実装

「TESRAY S」シリーズは、極小サイズの異常や、寸法ではない「目についたら異常」といった曖昧な官能検査基準にも対応。

「目についたら異常」などあいまいな官能検査も対応、ロビットが工業製品向け汎用型AI外観検査ロボを提供開始

AIアルゴリズムによる異常検出時(操作画面)

多品種小ロットの生産品にも対応

独自開発のロボットティーチング機能により、多品種小ロットの生産品にも対応。直感的なGUIによって、どなたでも簡単にワークのティーチング操作を行える。

前後工程とのスムーズなつぎ込みにも対応

「TESRAY S」シリーズは、工場内の既存の生産設備との連動、前後工程とのスムーズなつぎ込みのためのカスタマイズ開発にも対応可能としている。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:ロビット(企業)日本(国・地域)

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbain」を開発・提供するUltimatrust(アルティマトラスト。旧ジーマックスメディアソリューション)は4月5日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による総額3億4000万円の資金調達の実施を発表した。引受先は、リードインベスターのAbies Ventures Fund I、大日本印刷、山田俊一氏。

調達した資金により、工場・物流・鉄道・空港・農業など様々な分野において、高セキュリティかつ高精度のAI解析が可能な多拠点一元管理「Wisbrain AI監視カメラ」、より導入しやすい「AI-SHOT」を販売するとともに、初期投資を抑えた月額課金型料金プランの導入を促進する。1兆円近い市場規模の監視カメラ市場をターゲットに展開するという。また販売チャネル強化を目的に販売代理店の増強も目指す。

多拠点データの一元管理・AI解析プラットフォーム「Wisbrain」を提供するUltimatrustが3.4億円調達

Ultimatrustは、2015年設立以来「IoTからIoFへ~モノが繋がる時代から機能が繋がる時代へ~」をミッションとし、Wisbainを開発してきた。Wisbrainは、監視カメラなど多拠点・多デバイスからのデータを一元的に管理し、高精度AIにより解析が可能なシステムを短期間で構築できる、汎用的かつ拡張性のあるプラットフォームという。

例えば、空港や交通インフラ、複合商業施設、河川・沿岸監視、工場などの大規模施設や、拠点数やデバイス数が多く、正確性や精度が求められるような様々な分野に利用可能としている。また、各用途別のソリューションの拡充を図っているそうだ。

今回発売するWisbrain AI監視カメラは、Wisbrainプラットフォーム上で、監視カメラシステムを短期間・低価格で導入することを可能にし、導入後の保守も容易にするシステムという。

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カテゴリー:IoT
タグ:Ultimatrust(企業)AI / 人工知能(用語)エッジAI(用語)エッジコンピューティング(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

味の素が一般アスリート・部活生向け自動献立提案AIアプリ「勝ち飯AI」β版を開発、限定ユーザーテスト開始

味の素が一般アスリート・部活生向け自動献立提案AIアプリ「勝ち飯AI」β版を開発、限定ユーザーテスト開始

味の素は3月31日、アスリート向け献立提案AIアプリ「ビクトリープロジェクト管理栄養士監修 勝ち飯AI」β版を開発し、ユーザーテストを開始した。限定ユーザーテストを通してコンセプトの受容性を確認するとともに、同社では今後さらに多様な領域において生活者への価値を創出・提案する予定。

勝ち飯AIは、同社がトップアスリート向けに培ってきた栄養計算や高度なサポートの知見を、一般のアスリートにも広く提供することをコンセプトとして開発した、自動献立提案アプリ。アスリートの厳しい栄養基準を満たしつつ好きなメニューを献立に組み込むなど、食事を楽しみ、親子のコミュニケーションなどを促しながら選手の目標に向けてサポートを行う。

同アプリは、献立やレシピに関する独自テクノロジーを基盤に、栄養面でトップアスリートへの食サポート活動を実施している同社「ビクトリープロジェクト」管理栄養士監修の下、開発。ビクトリープロジェクトのサポート現場で使用される栄養計算基準をアルゴリズム化し、ユーザーがアプリ上で必要な情報を入力するとAIが栄養基準を満たす献立を提案する。

また、必要栄養価を充たす献立を提案するためのメニューデータベースには、同社運営のレシピサイト「AJINOMOTO PARK」のデータを活用。各メニューに対し、栄養情報に加えて、ジャンル・季節・調理時間など様々な情報を紐づけており、AIがユーザーに適した献立を提案するという。

具体的な使用方法として、「選手」と、食で選手をサポートする「調理する人」とがアカウント連携することで利用できるという。

「選手」は、性別・体重・体脂肪率などの基礎情報に加え、種目(瞬発系、持久系、球技系、その他)や目標(体重を減らす、体重を増やす、現状維持)を選択し登録。日々の体組成をアプリに登録し、食事記録の際に味や食べた量を5段階で評価することでどのくらいの栄養価を摂取したかが分かるとともに、AIがユーザーの好みの味や量を学習し、使えば使うほど選手に最適化された献立が提案されるようになる。

「調理する人」は、選手の目標や体組成に応じてAIが提案する献立(10日分、毎食3パターン)から調理するメニューを選ぶことが可能。その際、あらかじめ選手が食べられない食材を登録したり、選手からのリクエストメニューを表示することもできる。

味の素は2018年、「食から未来を楽しく」というミッションの下、「生活者にとってのさまざまな価値」を実現することをすべての起点とし、新たな事業を生み出す部署として生活者解析・事業創造部を創設。研究機関やパートナーとの連携、AIなどのテクノロジーやデータの活用、サービスの開発と運用、生活者やパートナーからのフィードバックを通して世の中全体で多様な生活者価値を生み出し、新たな食の楽しい未来を作り上げたいという。

同アプリ開発にあたり生活者にヒアリングやリサーチを実施した結果、食事によるパフォーマンス向上への関心が高い「一般アスリート・部活生」に、トップアスリートと同様の食サポートプログラムを提供するサービスのニーズが高いことが判明。さらに、中高部活生を子に持つ親にインタビューを行ったところ、親としても食事面からサポートすべく講習会などに参加するものの、自分の子供に置き換えた場合栄養計算や献立の組み立てなどが結局分からないといった声があったという。

また、コロナ禍において活動休止・縮小となっている部活動も多く、「これまでの『たくさん動いて、たくさん食べよう』といった指導ができなくなっている」といった声も指導者から多く聞かれたそうだ。思うように練習ができない時にどのような食事でカラダ作りをするべきかなど、食事の内容に対する関心度の高まりを感じ、アスリート・部活生や食サポートをする方々の悩みを同社の知見を活かし解決することをアプリの目標として位置付けているという。

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カテゴリー:フードテック
タグ:味の素(企業・製品)アプリ / モバイルアプリ(用語)AI / 人工知能(用語)食品(用語)新型コロナウイルス(用語)スポーツ(用語)料理 / クッキング(用語)レシピ(用語)日本(国・地域)

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

創薬および再生医療高品質化の研究開発を行うナレッジパレットは3月29日、シリーズAにおいて、第三者割当増資による総額約5億円の資金調達を発表した。引受先は、リード投資家の未来創生2号ファンド(スパークス・グループ)、きぼう投資事業有限責任組合(横浜キャピタル)、既存株主のANRI。創業以来の累計調達額は約7億円となった。

ナレッジパレットのミッションは、遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)からなる細胞ビッグデータを「正確に・速く」取得する技術で細胞を診断し、製薬・再生医療業界の課題「開発・製造の困難さ」を解決するというもの。

人体を構成する基本要素である「ヒトの細胞」の状態について、同社の技術を基にした遺伝子発現プロファイルにより取得・診断し、「病因は何か」「薬の効果はあるか」「製造された細胞の品質」を特定。AI創薬により「開発効率の低さ」の解決、またAI再生医療による「製造の困難さ」の解決を目指している。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

調達した資金は、研究開発および人材採用にあて、さらなる技術開発と各領域における共同研究を加速し、より多くの難病に対処できる創薬・再生医療プラットフォームを構築する。

また今後2年間は、シリーズAで調達した資金をベースに業容を拡大。2023年にシリーズB調達の実施を目指しており、2025年にIPOを計画している。中長期的には、他社との協業のほかに、AI創薬事業、AI再生医療事業において自社での研究開発を進め、最終的には構築したデータベースを基とした新薬や再生医療プロダクトを他社にライセンスするなども目指すとした。

遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)というビッグデータ

ヒトは約37兆個の細胞で構成されており、細胞1個は30億文字に相当するDNAを持つ。さらにその中に3万カ所の「遺伝子領域」があり「RNA」として転写され、細胞の構成物質であるタンパク質を作るもととなる。

一口に「細胞」といっても心臓や肝臓など臓器の違いが生まれる理由は、この遺伝子の種類・状態により3万種類の遺伝子の活性化パターン(遺伝子発現プロファイル)が存在していることによる。同様に、病気による違い、化合物(薬)の効果の違いなども遺伝子発現プロファイルとして現れるという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

ナレッジパレットは、この遺伝子発現プロファイルを正確・高速・大量にとらえる技術を有しており、これを基にビッグデータとして分析・診断結果を蓄積し創薬・再生医療に活用するという。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得したコア技術

同社のコア技術は、共同創業者兼代表取締役CEO 團野宏樹氏が理化学研究所在籍時に開発した「シングルセル・トランスクリプトーム解析技術」だ。このコア技術は、国際ベンチマーキングの精度指標(遺伝子検出性能・マーカー遺伝子同定性能)と総合スコアにおいて1位を獲得しており、トップ学術誌Nature Biotechnologyに掲載されている(2020年4月)。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同技術は、精密な分子生物学実験術とAI技術を組み合わせて、1細胞レベルで全遺伝子発現プロファイルを取得するというもので、実験室で行う精密実験プロセス「精密分子生物学実験」と、コンピューター上で行う計算科学技術「AIによる大規模バイオインフォマティクス」により構成されている。

精密分子生物学実験では、解析対象となる細胞から多段階の分子生物学実験によりRNAを抽出し、次世代シーケンス技術により全遺伝子発現プロファイルを取得する。さらにAI科学計算・二次元マッピングといったバイオインフォマティクスを介し、どのような細胞がどの程度含まれているのか、また細胞に含まれる希少かつ重要な細胞(間葉系幹細胞など)も含めて、網羅的・高精度に細胞の状態を診断するという。

製薬会社と協業が進むAI創薬事業

近年、医薬品の開発現場では、薬のターゲットとなる体内物質(創薬標的)が枯渇しており(開発が容易な新薬・疾病はあらかた手が付けられている)、難病になるほど新薬開発の難易度が上昇、開発コストが急速に肥大化しているという。このため、新薬の開発効率を高める新たな創薬技術が必要となっている。

そこでナレッジパレットは、製薬会社との連携・協業の下、様々な病気の細胞や薬剤を投与した細胞の遺伝子発現データベースを構築し、これを活用したAI解析により新薬の開発を進めている。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

同社コア技術では、数多くの「微量な細胞サンプル」に対して、従来技術と比較して10~100倍のスループットで、どの化合物(薬品)が特定の細胞に効果が高く毒性が低いのかを選び出す「全遺伝子表現型スクリーニング」が可能という。

製薬会社では、薬剤の基となる数多くの化合物をまとめたライブラリーを持っており、対象の(かつ微量の)培養細胞などに対してそれぞれ処理を行い解析を行うことで、実際にどういった病気や細胞に効果があるのか特定する。ナレッジパレットは、これら大量の化合物サンプルと微量の細胞サンプルといった組み合わせでも、高精度・高速に遺伝子発現プロファイルの変化を捉えられる。これにより、従来技術と比べ1/10から数十分の1のコストで、大規模な全遺伝子表現型スクリーニングを可能としているという。

再生医療に関する3つの課題

現在の医薬品は、化合物合成で低分子化合物の製造を行う「低分子医薬品」、細胞の中でタンパク質を合成・製造する「バイオ医薬品」、ヒト由来の細胞を細胞培養により利用し機能の修復を行う「再生医療」に大別される。

再生医療では、「生きた細胞」をどう制御するかが医薬品として製造する上で大きなカギとなっているという。細胞のコントロールでは、大きく分けて「品質にバラツキが生じる」「培養液の未確立」「高い製造コスト」という3点の課題が存在しているそうだ。

品質のバラツキという点では、そもそも生きた細胞であることから個性が現れ、性質の制御が難しい。例えば同じ条件で培養した細胞、また違う研究機関が再現しようとしたところ別の細胞ができてしまったなどが起こりうるという。患者に移植予定の細胞シートが離職試験で剥がせず、移植に失敗するということもあるそうだ。

また、細胞を育てる培養液(培地)については、細胞の性質や増殖の機能を決定する生育環境にあたるものの、どのような化合物をどの程度の濃度で組み合わせると、特定の細胞に最適なのか、グローバルスタンダードが存在していない状況を挙げた。その理由として、細胞ごとに最適な生育環境を生み出すための培地調液は、高度なノウハウと手作業、多段階の実験プロセスが必要なため、試作可能なパターンが1年あたり約200種類と少なく、最適な培養液にたどり着けていないという。

これら品質のバラツキや培養液の課題が製造コストの高騰に結びついており、採算が取れない状況になっているそうだ。

同社は3つの課題の原因として、細胞がどのような性質を持っているのかという「細胞の診断技術」がなかった点を指摘。培養・製造の評価指標が不十分で、製造コストを下げられていないとした。

コア技術活用の「培養最適化」に基づく再生医療

ナレッジパレットは、コア技術(シングルセル・トランスクリプトーム解析技術)を用いることで、非常に多くの種類の培養条件で培養された細胞について、高速に全遺伝子レベルで診断することで、最適化された培養液を開発できる(培養最適化)という。

製造改善が必要な再生医療用細胞に対して、CTOの福田氏による独自のチューンナップを施した自動分注機・ロボットで多種類の培養液を作成。コア技術である遺伝子発現解析・分析により、どのような条件で培養された細胞がどのような性質を持つのか網羅的・高速に培養性能を評価しその情報を蓄積する。このデータベースとAIにより、最適な培養条件を選択できるようにするという。

AI創薬・AI再生医療スタートアップ「ナレッジパレット」が創薬・再生医療領域の停滞を吹き飛ばす

この取り組みにより、バラツキのない再現性の高い細胞製造をはじめ、さらに従来増殖が難しかった細胞についても10~100倍の収量を実現するといった生産性向上、製造コストの削減が可能になるという。再生医療を「製品」として確立させ、難病の治療に役立つものにするとした。

再生医療・細胞治療に関し、日本は国際的なトップランナー

創薬・再生医療領域において日本で起業したスタートアップというと、残念ながら耳にする機会はあまりない。TechCrunch Japanでも資金調達などの掲載例は数少ない状況にある。

国際ベンチマーキングの精度指標と総合スコアで1位を獲得(後述)という同社の技術力を考えると、海外での起業もあり得たのではないか。そう尋ねたところ、CEOの團野氏は、国内の製薬業界自体がそもそもグローバルに通じている点を挙げた。また同氏が理化学研究所においてバイオテクノロジーとAIの融合研究に従事したという経歴・人脈が、優れた人材をスピーディに採用する際に強みになると考えているそうだ。

また再生医療領域は、日本が力を入れている分野でもある。京都大学iPS細胞研究所所長・教授の山中伸弥氏が2012年のノーベル医学生理学賞を共同受賞したことから国として推している点が追い風となっており、民間企業やアカデミアが取り組むなか日本で起業する価値は高いという。

共同創業者兼代表取締役CTO 福田雅和氏は、日本では再生医療に関する新法が制定され、規制改革が大胆に行われた点を挙げた。法整備面では日本は進んでおり、海外から日本に参入する傾向も見受けられるという。再生医療・細胞治療に関しては日本は国際的なトップランナーといえるとした。

ナレッジパレットの技術、ナレッジパレットの事業で停滞を吹き飛ばし前進する

一方で團野氏は、「製薬の開発がすごく大変だという点は痛感しています。同時に、この領域が加速すると多くの方の幸せにつながると信じています。再生医療も同様です。再生医療だからこそ治る病気が多くあると期待されているにもかかわらず、日本では追い風があるにもかかわらず、承認された製品がまだまだ少ない状況です」と指摘。「私達の技術、私達の事業であれば、この停滞を吹き飛ばして前に進むことができると、強い気持ちで運営しています」と明かした。

福田氏は、「身近な人を治せるように、再生医療がそれが実現できるように、この領域でトップになることを決意して起業し、がんばっています」と続けていた。


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ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と課題解決「映像エッジAIソリューション」を提供するEDGEMATRIX(エッジマトリクス)は3月23日、シリーズBラウンドにおいて、第三者割当増資による約10億円を資金調達を実施したと発表した。引受先は、NTTドコモ、清水建設、SONY INNOVATION FUND (ソニー設立のCVC)、DGベンチャーズの4社。2019年8月のシリーズAにおける約9億円を加え、累計調達額は19億円となった。

2019年4月設立のEDGEMATRIXは、「映像エッジAI」のインフラ製品からプラットフォームサービスをエンドエンドに提供し、現場実装までをワンストップで提供できる体制を整えたスタートアップ企業。

調達した資金により、高精細映像などを現場(エッジ)でリアルタイムにAI処理するデバイス「Edge AI Box」新機種追加、「EDGEMATRIXサービス」新機能開発を行い製品サービスをさらに強化する。また、スマートシティやスマートビルディングにおける各種センサーとの連携開発を行うとともに、道路・鉄道などの公共施設や医療・福祉施設を含む社会インフラへのソリューション提供拡大、製品引き合いが増えているアジア市場から海外展開を加速する。

DGEMATRIXのEdge AI Boxは、街やビルを見守るIPカメラ映像などを現場でAI処理し伝送できる屋内と屋外用小型デバイス。深層学習ベースのAIなどの高速計算処理を行うNVIDIA製GPUとWiFi・LTE・5G通信モジュールを搭載し、カメラ接続などの豊富なインターフェイスを備えている。

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

EDGEMATRIXサービスは、現場設置の「Edge AI Box」からエンド・ツー・エンドで映像エッジAIを統合管理するプラットフォーム。デバイスの遠隔管理、設置場所を地図表示(マップビュー)する状態管理、現場からのAI処理済映像をブラウザーに多数同時表示する「エッジビュー」などのサービス管理、AIアプリケーションの配信・管理、パートナーが開発した汎用AIアプリケーションを選択購入できる「EDGEMATRIXストア」を提供している。

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

ワンストップでの現場実装と映像エッジAIソリューションを提供するEDGEMATRIXが約10億円を調達

顧客は、ストアアプリから月額課金のAIアプリを選択するだけで「映像エッジAI」を開始可能という。また、自社でAIアプリを開発する場合は、「EDGEMATRIX Platformサービス」によりプラットフォーム機能だけを利用できる。短時間で効率的な開発を行うための技術文書や画像処理用のソフトウェア開発キット「EDGEMATRIX Stream Toolkit」も提供している。

映像エッジAIソリューションでは、現地調査に始まり、顧客からの要望に応えるカメラ、周辺機器、AIアプリケーション調達や開発、設置工事、設定調整に至る「映像エッジAI」の現場実装と課題解決をワンストップで提供する。

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「東大IPC 1st Round」第4回の採択企業5社を発表、シード期から東大発スタートアップを支援

東大IPC 1st Roundのロゴマーク

東大IPC 1st Roundのロゴマーク

スタートアップが初めに直面する課題の1つにシード期の資金調達がある。東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)は、東大発のスタートアップなどを対象に、企業連携型インキュベーションプログラム「東大IPC 1st Round」を用意している。東大IPCは三井不動産など計10社のコーポレートパートナーと手を組み、最長6カ月の期間でさまざまなサポートをしながら、採択企業の垂直立ち上げを目目指している。同プログラムは採択企業の約9割が採択から1年以内に資金調達を実施するなど、大きな効果を生んでいる。

東大IPCは3月15日、第4回「東大IPC 1st Round」採択企業を発表した。採択されたのは、EVや鉄鋼材リサイクル、AI、バイオ、獣医DXで事業展開する5社だ。

Yanekara:商用電気自動車をエネルギーストレージ化する充放電器とクラウドの開発

Yanekaraは「自然エネルギー100%の日本を創る」ことをミッションとしている。電気自動車を太陽光で充電し、それらを群制御することで電力系統の安定化に必要な調整力を創出できる充放電システムを開発している。

電気自動車が拠点や地域内の太陽光発電で走るだけでなく、駐車中に遊休資産となっている車載バッテリーから調整力を生み出すことができれば、エネルギーの脱炭素化と地域内自給、さらには高い災害レジリエンスを実現できるという。

今回の支援によって、プロダクトを完成させEV利用企業への提供実績を作り、Yanekaraシステムの社会実装に繋げていく。

Citadel AI:AIを可視化し、AI固有の脆弱性・説明責任リスクから顧客を守る事業

Citadel AIは、AIの思考過程を可視化の上、顧客のAIの品質・信頼性を確保する「AI監視ツール」を提供する。元米国Google BrainのAIインフラ構築責任者が開発をリード。同ツールは、オンライン・バッチ環境、学習・運用フェーズのいずれにも対応し、さまざまなAIシステムへの適用を可能としている。

Citadel AIは、AIを「消費期限がある生鮮食料品のようなもの」と表現する。出来上がった瞬間から社内外の環境変化のリスクに晒され、品質劣化が始まる。AI固有の脆弱性を狙ったアタックも存在し、さらにAIの説明責任・コンプライアンスの観点から、学習データに潜むバイアスにも常に注意が必要となるという。

Citadel AIは「24時間いつでも頼れるAIをあなたに」という事業ビジョンを持つ。

EVERSTEEL:画像解析を用いた鉄スクラップ自動解析システムの開発

EVERSTEELのミッションは、鉄スクラップの自動解析システムにより鉄鋼材リサイクルを促進し、世界の二酸化炭素排出量を削減することだ。

鉄鋼材生産による二酸化炭素排出量は、世界の製造業全体において最も多い25%を占めており、低減の促進が望まれている。また、リサイクル過程での不純物混入により鉄鋼材の品質などが低下し、多大なコストが発生してしまう。さらに鉄鋼メーカーは、不純物混入制御を現場作業員の目視で行っており、品質確保と作業の効率化に限界がある。

EVERSTEELは自動解析システムを実用化することで、高効率・高精度な不純物混入制御を実現していく。また、世界の基盤材料である鉄鋼材のリサイクルを促進することで、世界規模でのSDGs達成を目指す。

LucasLand:バイオ産業にDXをもたらす簡便微量分析法の開発

創薬や食品科学、環境安全、感染症検査、科学捜査などのバイオ産業において微量分析は重要視されている。しかし、一般的な微量分析法(X線、NMR、質量分析など)は分析装置の大きさやコストが問題となる。また、簡便微量分析法である表面増強ラマン分光法は生体試料への適合性の課題があった。

LucasLandのミッションは、これらの難問を解決した東大発の新素材「多孔性炭素ナノワイヤ」を用いて、バイオ産業全般のDXに資する微量分析プラットフォームを創造すること。今回の支援を活用し、事業化を推進していく考えだ。

ANICLE(予定):獣医業界のDXを進める遠隔ペットケアサービス事業

ANICLEは、すべてのペットが最適なヘルスケアを受けられる社会の実現を目指していく。現在の獣医業界には、さまざまなハードルにより飼い主が動物病院に行くタイミングが遅れ、救えたはずの命が失われているという深刻な課題がある。

ANICLEはITを活用し、トリアージ、オンライン相談・診療、往診といった遠隔獣医療サービスを提供することで、獣医療へのアクセスの改善を図る。さらに家庭と動物病院を繋ぎ、シームレスなヘルスケアをペットが受けられるように獣医業界のDXを進めていく。

東大IPC 1st Roundでコーポレートパートナーと協業機会も

東大IPC 1st Roundは米国スタンフォード大学出身者によるアクセラレータプログラム「StartX」をベンチマークに、東大IPCが始めたインキュベーションプログラムだ。対象は起業を目指す卒業生や教員、学生などの東大関係者や、資金調達を実施していない東大関連のスタートアップとなる。

また東大IPCは、コーポレートパートナーを東大IPC 1st Roundに迎えることで、採択企業との協業機会の創出に力を入れている。コーポレートパートナーには、JR東日本スタートアップ、芙蓉総合リース、三井住友海上火災保険、三井不動産、三菱重工業、日本生命保険、トヨタ自動車、ヤマトホールディングスなど、各業界のリーディングカンパニーが参加している。

東大IPCによると、すでに採択先と各企業との資本業務提携など、オープンイノベーションの事例が10社以上も生まれたという。2020年からは採択先に対する東大IPCによる投資も開始し、BionicMやアーバンエックステクノロジーズ、HarvestXなどに対する投資を実行している。

今回の発表では、産業ロボット業界をけん引する安川電機と、基幹業務ソフトから中小企業の「マネジメントサポート・カンパニー」を目指すピー・シー・エーが新たにコーポレートパートナーに加わったことが明らかになった。新たに迎えた2社を加え、コーポレートパートナーは全部で10社となった。

インキュベーションプログラムとして高い実績

東大IPCはこれまで計34チームを採択した。採択1年以内の会社設立割合は100%で、資金調達成功率は約90%、大型助成金の採択率は50%だという。設立直前直後のチームを対象とするインキュベーションプログラムとして、東大IPCは実績を積んでいる。

具体的な支援としては、東大IPCは採択企業に対し、コーポレートパートナーによる協賛も含めた最大1000万円の活動資金を出している。事業推進に必要な資金調達や実証実験、体制構築、広報、資本政策などに関して、東大IPCや外部機関からのハンズオン支援なども提供する。

なお、東大IPC 1st Roundにおける採択企業の詳細な選定基準は非公開となっている。東大IPCの広報によると、スタートアップの事業性と実現性、支援意義の3つの観点で選定しているという。また、イノベーションエコシステムの拡大を目指す狙いから、審査プロセスにはコーポレートパートナーや外部VCも参加し、最終選定を行っているとのこと。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:東京大学協創プラットフォーム開発東京大学人工知能DX

ServiceNowがノーコードワークフローの構築を支援する新機能を追加

今回のパンデミックを乗り切る中で、企業にはトレンドを再考し、加速する必要が生まれている。そのようなトレンドの1つが、各部門のユーザーがエンジニアリングの支援なしで、アプリやワークフローを作成できるようにするノーコードツールへの移行だ。その要求に応えるために、ServiceNow(サービスナウ)が米国時間3月11日、最新リリースの一部として、いくつかの新ツールをリリースした。

ServiceNowのチーフイノベーションオフィサーであるDave Wright(デイブ・ライト)氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、多くのチームが分散して作業することを余儀なくされ、その結果、ソフトウェア構築をすべての従業員の手に委ねるというアイデアへと進んだのだと語る。

ライト氏は「このような状況なので、みなさんはこれまでと同じサポートネットワークを持っておらず、分散しているので、普通の人が簡単に使えるレベルのソフトウェアを作成できるようにする必要があります。そして、それを実現できれば、みなさんにシステムを使用してもらうことができます。みなさんにシステムを使用してもらうことで、従業員の方々の生産性とエンゲージメントが向上し始めるのです」と説明する。

この話は、これまでは特にServiceNowプラットフォームが重点を置いている3つの主要な領域(カスタマーサービス、IT、HR)を中心に展開されてきたが、これら3つのカテゴリから踏み出すために、同社は従業員が自分のニーズに合った新しいワークフローを構築するのを支援できるCreator Workflows(クリエイター・ワークフローズ)と呼ばれる新しい分野を開発することを決定した。

同社はこのCreatorを支えるために、AppEngine Studio (アップエンジンスタジオ)とAppEngine Templates(アップエンジンテンプレート)という2つの新しいツールを開発した。これらは、組織全体で人びとが作業する場所を問わず、ノーコードワークフローの構築を支援するために連携して働くものだ。

AppEngine Studioは、ユーザーが自分にとって役立つワークフローを構築するために、必要なコンポーネントをドラッグアンドドロップすることができるメインの開発環境を提供する。AppEngine Templatesは、いくつかの共通タスクのフレームワークを提供することによって、その使いやすさをさらに一歩進める。

今回の新しいリリースには最近買収したLoom Systems(ルーム・システム)とAttivio(アティビオ)の製品も取り込まれている、同社はAttivioを取り込んで、AI Search(AIサーチ)という名のプラットフォーム全体の検索ツールとして再利用している。

「これにより、状況に応じた、普通の人が使いやすい結果を提供することができます。つまり、検索から得られた結果をパーソナライズして、より関連性が高く、実用上価値の高い情報に的を絞った結果を提供できるようになるのです」と彼は述べている。

彼らが買収したもう1つの企業であるLoom Systemsは、ServiceNowにAIOps(AIオプス)コンポーネントと、それを用いてプラットフォーム全体にAIを注入する能力を提供する。買収前にはLoomのCEOで共同創業者だったGab Menachem(ガブ・メナヘム)氏は、ServiceNowの一部になるプロセスは順調に進んでいるという。

「この分野のベンダーは、気がつくとお客様に科学プロジェクトを提供しているような気がします。ServiceNowにおける、2021年の焦点は(Loomを)ワークフローに組み込み、ワークフローを自然なものにすることでした。これにより、働く人たちの生産性が向上し、エンゲージメントが高くなるでしょう。それこそが私たちが焦点を当てていることで、それは私たちのすべてのお客様にとても喜んで貰えましたので、大企業への移行は本当に良いことだったと思います」とメナヘム氏はいう。

この新しいツールは、すでに利用可能だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
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画像クレジット:Andrei Stanescu / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

チャットボットスタートアップのHeydayが約5.6億円を調達

米国時間3月10日、カナダのモントリオールを拠点とするHeydayは追加のシードラウンドで650万カナダドル(約5億6000万円)を調達したと発表した。

共同創業者でCEOのSteve Desjarlais(スティーブ・デジャレ)氏は筆者に対し、小売業者が顧客とのオンラインでのやりとりを自動化しパーソナライズできるようにすることを目指していると述べた。共同創業者でCMOのEtienne Merineau(エティエンヌ・メリノー)氏は同社を「オールインワンの統合カスタマーメッセージングプラットフォーム」と表現した。

顧客がFacebookのMessengerやWhatsApp、GoogleのBusiness Messagesからメッセージを送信した場合も、通常のメールを送信した場合も、Heydayではすべて1つのダッシュボードに集約される。その後、カスタマーサービスの案件かセールス関連かをAIが見分けて、可能な場合は自動で基本的な返信をする。

Heydayのチャットボットで注文の最新情報やおすすめ商品を伝え(HeydayはSalesforce、Shopify、Magento、Lightspeed、PrestaShopと統合されている)、その後必要に応じて人間のスタッフに転送することもできる。

カスタマーサービスとセールスを組み合わせたプラットフォームは他にもあるが、メリノー氏はこの2つのカテゴリーは扱いを分けて良いサービス体験が売上につながると考えることが重要だという。

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画像クレジット:Heyday

メリノー氏は「サポートは新規販売だと考えています」と述べた。

デジャレ氏はこう補足する。「我々はチケットIDシステムには強く反対しています。お客様はチケットではありません。私は、一人ひとりのお客様がブランドとの結びつきであり、その結びつきは時間をかけて育て、時間をかけてブランドに価値をもたらすものだと本気で信じています」。

Heydayは2017年に創業し、直近の2四半期で経常収益が2倍になったという。同社の顧客にはフランスのスポーツ用品会社のDecathlon、デンマークのアパレル会社のBestseller、食品ブランドのDannonなどがある。メリノー氏は、同社のプラットフォームは「すぐにバイリンガルで使えて」国際的に大きく成長していると述べた。

同氏は「小売業者が新型コロナ(による変化)は一時的なものだと考えるのは誤りです。前進するブランドの新たなスローガンは『適応か死か』です。ブランドは優れたサービスを提供したいと考えていますが損益も気にします。我々はブランドが一石二鳥の成果をあげられるようサポートします」と説明する

Crunchbaseによると、Heydayは以前に200万カナダドル(約1億7200万円)を調達していた。今回の新しいラウンドでは既存の投資家であるInnovobotとDesjardins Capitalから資金を調達した。メリノー氏は、今回の資金は「米国での事業規模を倍増させて成長する」ために使われると述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:HeydayAI資金調達チャットボット

画像クレジット:Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

Preferred NetworksがCrypkoを含む深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

Crypkoで自動生成したキャラクターの例

Preferred Networks(プリファードネットワークス。PFN)は3月10日、クリエイティブ産業向けとして、好みのキャラクターや高精細な3Dモデルを生成できるデジタル素材生成システムを発表した。

また同システムを利用した映像作品の第1弾として、PFNは、バーチャルシンガーHACHI(RK Music所属)の楽曲「20」をフィーチャーした短編動画(企画・制作:PFN、キングレコード、ポリゴン・ピクチュアズ)を公開した。

キャラクターの自動生成を行う「Crypko」(クリプコ)

同デジタル素材自動生成システムは、キャラクターの自動生成を行うプラットフォーム「Crypko」(クリプコ)、「高精細3Dモデル生成」の2機能で構成している。

Crypkoは深層学習を利用し、制作者が定義した顔のパーツ、表情、髪の色などに合ったキャラクターのCG(立ち絵)を自動生成可能。これまでCrypkoは顔を生成対象としていたが、より高い解像度で上半身まで生成可能となった。

高精細3Dモデル生成

高精細3Dモデル生成機能では、実物のアイテムを専用3Dスキャナーに配置し撮影するだけで、高精細な3Dモデルを自動生成できる。様々な材質や大きさの被写体に対応しており、小型アイテムであれば、約6時間の撮影作業で当日中に200点以上の3Dモデル化が可能という。生成した高精細3Dモデルは市販の編集ソフトで自由に加工・複製し、映像作品やゲームなどで使用できる。

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

実物の写真

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

3Dスキャンで生成した高精細モデル

 

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

回転させた3Dモデル(低解像度)

 

3Dモデルのメッシュ構造

3Dモデルのメッシュ構造

映像作品の第1弾で、主人公キャラクターやアイテム類の制作に利用

PFNが公開した短編動画では、キャラクター自動生成システムが生成したキャラクターを基に主人公のデザインを行ったほか、スマートフォンや背景の文房具などのアイテムは高精細3Dモデル生成機能を用いて実物から生成したデータを基にしているという。

また、動画に登場するギターのCG制作過程では細部の質を上げるため外部クリエイターと共同作業しており、精細なデジタル素材を作成できたとしている。

Preferred Networksが深層学習活用のデジタル素材生成システムをクリエイティブ産業向けに開発

短編動画で使われたギターと家具の3D CG

なお、同デジタル素材自動生成システムは、経済産業省の令和元年度補正予算「コンテンツグローバル需要創出促進・基盤整備事業費補助金」(J-LOD)第4弾の採択事業として開発したもの。

同システムをはじめとして、PFNは今後もクリエイティブ産業向けに先端技術を活用した制作手法を提案し、新しい表現・体験の実現を目指すとしている。

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NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発人の体内のほとんどの細胞は数十億の塩基対を核に押し込んだDNAの完全なコピーを持っています。そして身体の個々の細胞は、タンパク質の中に埋まっているDNAから必要な部分だけを外部からアクセスしやすくして、たとえば臓器、たとえば血液、たとえば皮膚など、異なる機能を持つ細胞になるための遺伝子を活性化します。

NVIDIAとハーバード大学の研究者らは、仮にサンプルデータにノイズが多く含まれていても(がんなどの遺伝性疾患の早期発見によくあるケース)、DNAのアクセス可能な部分を研究しやすくするためのAIツールキット「AtacWorks」を開発しました。

このツールは、健康な細胞と病気の細胞についてゲノム内の開かれたエリアを見つけるためのATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high-throughput sequencing)法と呼ばれるスクリーニング的アプローチをNVIDIAのTensor Core GPUで実行し、32コアCPUのシステムなら15時間ほどかかるゲノム全体の推論をたったの30分で完了するとのこと。

またATAC-seqは通常なら数万個の細胞を分析する必要がありますが、AtacWorksをATAC-seqに適用すれば、ディープラーニングで鍛えたAIによって数十の細胞だけで同じ品質の分析結果を得ることができます。たとえば研究チームは、赤血球と白血球を作る幹細胞を、わずか50個のサンプルセットを分析するだけで、DNAのなかのそれぞれの産生に関連する個別の部分を識別できました。

ゲノムの解析にかかる時間とコストを削減できるようになる効果から、AtacWorksは特定の疾患につながる細胞の病変やバイオマーカーの特定に貢献することが考えられます。また細胞の数が少なくてもゲノム解析ができるとなれば、非常に稀な種類の細胞におけるDNAの違いを識別するといった研究も可能になり、データ集積のコストを削減し、診断分野だけでなく新薬の開発においても、開発機関の短縮など新たな可能性をもたらすことが期待されます。

(Source:Nature Communications、via:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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議事録自動作成用AIツール26種類をまとめた「議事録作成AIカオスマップ」が公開

議事録自動作成用AIツール26種類をまとめた「議事録作成AIカオスマップ」が公開

人工知能(AI)を搭載したサービスの資料請求ができるAIポータルメディア「AIsmiley」を運営するアイスマイリーは3月8日、議事録自動作成用AIツールをまとめた「議事録作成AIカオスマップ」を公開した。掲載数は合計26サービス。

議事録自動作成用AIツールは、時間と労力がかかる議事録の文字起こしを、AIが代行してくれるというもの。AIが人の声を認識してテキストデータ化したり、複数の言語間を自動的に翻訳しテキスト化するといった技術の導入が進んでいる。

録音された音声を聞きながら文章として構成するのは楽な作業ではなく、場合によっては聞き間違いや聞き漏らしなどのミスも発生する。

間違いの修正など時間のロスを最小限に留め、より効率的に議事録を作成するための方法として最近注目されているのが、音声認識機能を活用した議事録自動作成のAIツールという。

ただ議事録作成AIには、ツールによって機能や実現できる内容に違いがあり、自社の課題は何か、どんな結果を実現したいのかという観点から、ツールごとの違いを比較検討することが重要としている。

また、議事録作成AIは、録音した音声から文字起こしを行うものと、リアルタイムで音声の文字起こしをするもの、日本語のみ対応・多言語対応といった違いもある。活用シーンによって選択すべきツールも異なるそうだ。

議事録作成AIカオスマップは、「議事録作成AIを試したい」企業や「議事録作成を行う最新のAIツールを探している」企業に向け、26の製品サービスを取りまとめ、マッピングしたもの。「大サイズの議事録作成AIカオスマップ(PDF)」と「議事録作成AIベンダー一覧(Excel)」が必要な場合は、問い合わせフォームから連絡することで入手できる。

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