ウクライナ発の顔交換アプリ「Reface」が反戦プッシュ通知を追加

a16zが出資するウクライナ発の合成メディアアプリReface(リフェイス)は、世界中に抱える約2億人ものユーザーにロシアのウクライナ侵攻を知らせるプッシュ通知を追加し、アプリで作成した顔交換動画に透かしを入れるなど、人々に#StandWithUkraineを呼びかけている。

アプリで作成されたすべての動画には現在、ウクライナ国旗と#StandWithUkraineのハッシュタグの透かしが入る。

また、今回のアップデート後にアプリを開くと、キエフで避難する市民の画像が表示され、画像はロシアがウクライナを攻撃した「証拠」だとするキャプションが表示される。

メッセージはまた「戦争を止める」ために、ロシアを国際銀行決済システムSWIFTから排除するよう求めている。

Refaceによると、アプリの別の次期アップデートでは、すべてのユーザーに「ウクライナでの戦争に反対する声明を出す」よう促すという。

Refaceはまた、ウクライナをサポートできるリソースをユーザーに案内している。

画像クレジット:Reface

Refaceは2月最後の週末から反戦キャンペーンを開始し、これまでに900万通のメッセージが送信され、そのうち200万通はロシアのユーザーに届けられたという。

ユーザーの自撮り写真を有名人のビデオクリップにマッピングすることで、現実をファンタジーに変え、消費者に数秒間の想像上の楽しみを与えてきたこのアプリにとって、これは超現実的な展開だ。

しかし、Refaceの従業員がロシアの侵攻を直接体験していることから、チームは、この状況に対する世界的な認識を高め、人々に抗議を促すために何かする必要があると判断した。

画像クレジット:Reface

ウクライナからTechCrunchにメッセージを寄せたRefaceのCEOで共同創業者のDima Shvets(ディマ・シュヴェッツ)氏は、次のように語っている。「Refaceは大規模な情報キャンペーンを開始し、すべてのロシア人ユーザーにプッシュ通知を送り、我々の都市におけるロシアの攻撃の証拠を示し、ウクライナとともに立ち上がり、抗議行動に出るよう人々に呼びかけました。さらに、世界中のユーザーに対して、ウクライナを支援するためのアプリ内メッセージを追加し、現在、当社のアプリで作られたすべてのビデオには、#standwithukraineとウクライナ国旗の透かしが入っています」。

「我々はこのキャンペーンがいかに危険なものであるかを理解し、すべてのリスクを負っています。すでに多くの星1つのレビューや、真実を見る準備ができていなかった人たちからの報告を受けています」とも付け加えた。

Refaceは、ロシアにいる550万人のユーザーを対象に、抗議を促すプッシュ通知と、ウクライナ国内の戦争映像のスライドショー(焼け落ちた建物や爆撃を受けた建物、避難しようとする市民の写真など)へのリンクを送信する。

ロシアで展開されているスライドショーに添えられたキャプションには、次のように書かれている。「ロシアの顔に泥を塗れ」「一緒に戦争を止められる」「通りを埋め尽くせ」「我々が反対していることを世界に示せ」。

Refaceの広報担当者は「最初の目標は、ロシア人に本当の情報を広め、独立したメディアや信頼に値する情報源にアクセスできないロシアの人々に抗議を促すことです」と語った。

「リスクを理解し、そのすべてを負っていますが、それは我々の自由のために支払う小さな代償です。そして、App StoreとGoogle Playが我々をサポートすることを願っています」。

ロシア政府がロシアの主要メディアを支配しているため、ロシア国民は日常的に国家のプロパガンダにさらされている。例えば、ウクライナへの侵攻は「特別軍事作戦」であり、戦争行為や理不尽な侵略ではない、というプーチン大統領の主張などだ。

つまり、プーチン大統領の軍が隣国ウクライナを陸・空・海から砲撃し始めて以来、多くの一般ロシア人はウクライナ国内の映像を見たことがないことを意味する。

ロシア政府はまた、外国の主要ソーシャルメディアプラットフォームによって、プロパガンダの発信が制限されるのを防ごうと動いている。

同政府は2月25日、Facebook(フェイスブック)へのアクセスを一部制限すると発表した。明らかに、ソーシャルメディアプラットフォームがロシア政府とつながりのあるメディアに対して事実確認のラベルを貼ったことに対する報復だ。

関連記事:ロシア、国内でのフェイスブックへのアクセスを部分的に制限すると発表

ロシアのウクライナ侵攻を非難する立場を取ることで、Refaceはロシアのインターネット規制機関Roskomnadzorから同様の措置を受ける危険性がある。Roskomnadzorは、例えば、Apple(アップル)や Google(グーグル)のモバイルストアからRefaceアプリを排除するよう働きかけるかもしれない。

地下鉄に避難しているウクライナに残ったRefaceのスタッフ(画像クレジット:Reface)

ハイテク大手2社は9月、ロシア国家からの圧力に屈し、獄中のロシア政府批判者Alexei Navalny(アレクセイ・ナヴァルニー)氏の組織が作成した戦術的投票アプリをストアから削除した。

Roskomnadzorは、Smart Votingアプリを削除しないなら罰金を科すと脅した。

Roskomnadzorは以前にも、ロシア国民がローカルのアクセス制限を回避することを困難にしようと、VPNアプリを標的にしたことがある。

しかし、ロシアの情報形成のためのサイバー活動は、アクセス制限をはるかに超えて広がっている。Refaceに反戦メッセージが追加されて以来、突然星1つのレビューが殺到したのは、ロシア政府の支援を受けた偽情報屋が、反ウクライナ政策の一環として、アプリの評判を落として利用意欲を低下させようとする協調行動である可能性が少なくともある。

また、このほど新たな制裁を発表したEUは、悪名高いロシアのトロール工場(別名:インターネットリサーチ機関)とロシアの独裁者の出資者であるYevgeny Prigozhin(エフゲニー・プリゴジン)を、制裁対象の団体と個人の拡大リストに追加したことも注目される。

しかしRefaceは、反戦メッセージを公開して以来、同社のアプリに対する否定的なレビューが、ロシア政府への協調行動かどうかを判断するのは難しいと述べた(もちろん、もともと純粋な娯楽アプリであるRefaceが、反戦メッセージを送るという決定を下して、一部のユーザーを単に困らせたということは十分にあり得るし、おそらくかなりあり得ることだ)。

否定的な反応を受け、Refaceは「ウクライナの現状について世界に情報を提供し続ける」ことができるよう、人々に「App StoreとGoogle Play Storeでの評価を高く保つ」ことへの協力を呼びかけている。

つまり、アプリの評価さえも、サイバー戦争のプロパガンダの戦場として流用することができるようだ。

Refaceのチームが直面している現場の状況について尋ねると、チームのスタッフの多くは現在紛争地帯で仕事をしており、スタッフのほとんどがまだウクライナにいる、とRefaceは話した。ただし、12月以降、出国したり、海外でリモートワークをしている人もいるという。

男性の社員は、侵攻以来、政府の規制により国外に出ることができない。

Refaceの広報担当者はウクライナにいるスタッフについて、多くのスタッフはより安全な場所を求めてウクライナ西部に移動し、他のスタッフはキエフに留まって「防空壕から情報的・技術的に支援」していると話した。

また、自主的に国防軍に参加した人もいるという。

「チームは分裂を余儀なくされたものの、これほどまでに団結したことはありません」と広報担当者は語り、こう付け加えた。「私たちは勇敢で強く、ロシアの侵略者に滅ぼされることはないでしょう。しかし、世界からの全面的な支援なしには、この戦争を止めることはできません」。

ウクライナでの戦争中の別のReface従業員の仕事場(画像クレジット:Reface)

Refaceは世界の指導者たちに対して、ロシアに対してより厳しい制裁を科すとともに、ウクライナへの支援(武器など)を強化するよう求めている。

SWIFTに関しては、EUの首脳は禁止措置をめぐって揺れているように見えたが、2月25日、EUは他の多くの措置とともに、ロシアの銀行市場の70%を排除する制裁措置に合意した(ロイターより)。

EU委員長は週末に、ロシアの国営メディアであるロシア・トゥデイ(RT)とスプートニク(およびその子会社)に対し「前例のない」さらなる措置を講じると発表した

声明の中でEUのUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)委員長は、ロシア政府の「メディア・マシンは…プーチンの戦争を正当化し、我々の連合に分裂をもたらすために、もはや嘘を流すことはできないだろう」と述べ、EUは「欧州におけるロシアの有害な情報操作を禁止するツールを開発中」だと付け加えた。

EUが何を意図しているのか、禁止令が実際にどのように機能するのか、テレビ局だけでなく、そのコンテンツをホストしているオンラインプラットフォーム(YouTubeなど)にも適用されるのか、あるいは、穴だらけの(誤)情報時代にロシアのプロパガンダマシンを阻止するという話に本当に意味があるのか、正確にはわからないが、EUが試みたいと言っているという事実は注目される。

デジタル政策の立案において、EUの議員たちは往々にして言論統制と非難される可能性のある措置を提案することに非常に慎重だ。しかし、プーチンはEUの議員たちにその一線を越えさせてしまったようだ。

画像クレジット:Alain Pitton / NurPhoto / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

近い将来、すべてのブロックチェーン企業が暗号投機家になる

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター、The TechCrunch Exchangeへようこそ。

ロシアが間もなくウクライナに侵攻するというニュースが流れたばかりの時に、落ち着いてテクノロジースタートアップ市場の現状について活き活きとした原稿を書くのは、ちょっと難しい。独裁政治よりも民主主義を信じている人にとっては、かなり暗い一日になるだろう。そして、すぐ近くの地平線上にある、迫りくる地政学的な雲は、さらに悪いニュースを約束している。

それでも、ニュースエンジンは前進していて、自分の分野で何かをしなければならない。そこで、暗号市場での資本リサイクルについて話すことで仕事の手を止めないことにしよう。

それは、ぐるぐると回っていいる

現在、テクノロジーの世界で徐々に勢いを増しているイノベーションの1つが、企業が創立後のより早い段階からベンチャーキャピタル活動(防御的なものも攻撃的なものも)を始めるようになっているということだ。

OpenSea(オープンシー)は、その最新の例だ。同社は米国時間2月12日に、OpenSea Ventures(オープンシー・ベンチャーズ)という組織と「Ecosystem Grants」(エコシステム・グランツ)という名のプログラムを立ち上げることを発表した。どちらも「Web3とNFTの世界的な成長を促進するクリエイター、チーム、新技術を支援することを目的としている」という触れ込みだ。

OpenSeaから資金を得る企業は「OpenSeaのリーダーシップへのアクセス」を行うことが可能で、当然ながらa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)を含むOpenSeaの投資家へもアクセスすることができる。

The Block(ザ・ブロック)が指摘するように「OpenSeaは、ユニコーンのAlchemy(アルケミー)やFTXなどの、独自のベンチャーユニットを立ち上げた数多くの暗号スタートアップの一員になる」のだ。いずれも非公開企業であることをお断りしておく。ともあれ、急成長したブロックチェーン企業が余剰資金を得て、その資金を他のグループに再投資し始めることはよくある話だ。

Intel Capitalが企業のベンチャー取引のパラダイムだった時代は終わった。現在は、Coinbaseがおそらく最近最も尊敬されている企業投資チームだが、ライバルたちはそれに挑戦しようとしている。

だが、本当にそうなのだろうか?この近辺には奇妙なニュアンスがある。

  • Coinbaseは非公開の時代、a16zがバックアップしていた
  • Marc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、最近自身の暗号ファンドを立ち上げたKatie Haun(ケイティハウン)氏とともに、Coinbaseの役員として残っている
  • Coinbase VenturesがOpenSeaを支援
  • a16zもOpenSeaを支援
  • OpenSeaは現在、独自の投資を行っているが、理論的にはある程度はa16zとの共同投資となっているはずだ

a16zはまた、独自の投資を行っているAlchemyにも出資しているが、これはなかなかのからみ具合だ。OpenSeaはAlchemyの技術を使用しており、すべてが統合されている(このような中央集権化とファミリー化が、分権化すなわち民主化と正反対であることはいうまでもない)。

資本が暗号を追い、暗号が資本を追うこの渦巻は、いつほど収まり始めるのだろうか、そしていつ内部での競争が強まるのだろうか?もしCoinbaseがかねての計画通り独自のNFTプロダクトをローンチしたら、OpenSeaはいつまで共通の投資家に寄り添っていたいだろうか?Coinbaseがインフラを売りたいと思って、Alchemyのスペースに入ってきたらどうなるのだろうか?Alchemyがどれだけの活動をしているかを考えると、率直に言って、Coinbaseがそれをしない理由はない。

現在、OpenSeaが自らのイグジットの前に、資本を他のベンチャーに再投資しているのは奇妙なことだ。しかし、より大きな暗号資産市場の変化のペースが、単純なビジネスモデルである投機を行う企業を、多数ではないにしても少なくともある程度の数以上生み出したようだ。すごい!そして奇妙だ!

私は、主要な暗号資産プレイヤーとその財政スポンサーのクローズドネットワークを監視しようとしている。私にとっては、他のベンチャーカテゴリーよりも中央集権的で、ちょっと奇妙な感じを受けている。Web 2.0で大金を稼いだ人たちが、この先Web3が何になろうとほとんどの利益を手にしようとしているように見える中で、同じ人たちが、分散型の自律組織やゼロトラスト体制などを推進している話を読み続けていると、口の中にこみ上げる苦みを拭い去ることができない。

さて、私はもう消えて、今は自由な社会と民主主義の運命について心配することにしよう。月曜日までにロシアがウクライナに侵攻していないことを祈る。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

暗号資産をめぐるツイッターでのVCたちのビンタ合戦でおかしな状況に……

Twitter(ツイッター)でよくつぶやく一部のベンチャーキャピタリスト(VC)は最近やや敵意に満ちており、業界で最もパワフルな人々が前例のない方法で暴言を吐いている。  筆者が思い浮かべるのはChris Dixon(クリス・ディクソン) 氏とMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏の2人で、彼らは最近、暗号資産、ブロックチェーンを使ったコレクティブル、あるいは分散化の有望性が誇張されているのではと疑う影響力のある人々に対して我慢できない様子を見せている。

最も有名な争いは、12月下旬に億万長者の起業家でTwitterの共同創設者であるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が、フォロワー600万人に対して「『Web3』を所有しているのは君じゃない。VCやLPが所有している。彼らのインセンティブから逃れることはできないだろう。結局はラベルの違う中央集権的な存在なんだ」とつぶやいたことから始まった。

確かに、ドーシー氏はVCを嘲笑していたが、この見方には真実がある。Andreessen(アンドリーセン)や、Paradigm(パラダイム)やPantera(パンテラ)のような暗号資産に前向きな企業は、そこらにある最大のプラットフォームのいくつかと財政的な利害関係がある。それは構わない。そうした企業のサポートがなければ、これらのプラットフォームは存在しないかもしれないし、時間が経過するにつれ、プラットフォームはより分散化されていく可能性も大いにある。

とはいえ、ドーシー氏のツイートは戦争を勃発させた。ディクソン氏は、約80万人のフォロワーに向けて「あなたはまず無視され、次に笑われ、そして挑まれ、そうしてあなたが勝つ」とサブツイートし、最初の手榴弾を投げつけた。

ディクソン氏がほくそ笑むのには、それなりの理由があった。Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)は何年も前から、暗号資産プロジェクトに資金とリソースを注ぎ込んでいて、嘲られることになると思われていた。今となっては、同じような取り組みにもっと多くの時間とお金を捧げなかったすべての人に嘲が向けられている。ちなみに、Andreessen HorowitzのCoinbase(コインベース)への投資額は、2021年に暗号資産取引所が公開取引を開始した日に110億ドル(約1兆2675億円)と評価された。

しかし、戦争はそこで終わらなかった。ドーシー氏はディクソン氏に返信し、アンドリーセン氏自身も会話に割って入ってドーシー氏を何度も侮辱し、事態は悪化の一途をたどり続けた。

その毒々しい雰囲気は最近、さらに広まった。元Facebook社員でエンジェル投資家に転身し、さらにはベンチャーキャピタリストとなったBobby Goodlatte(ボビー・グッドラット)氏が米国時間2月4日「私は暗号資産の熱烈な支持者で、アートNFTは馬鹿らしいと思う」と特定の人に向けることなくツイートした。グッドラット氏のツイートは表面上は比較的無害に見えたが、突然、グッドラット氏の7万人の10倍のフォロワーを抱えるディクソン氏が、グッドラット氏のコメントをリツイートし、その上に「ボビー・グッドラットをショートカットできる?」と書き込んだ。

愕然とするグッドラット氏が反応する前に、ディクソン氏はグッドラット氏のアカウントをブロックした。

ディクソン氏はその後、そのコメントと、父親が元下院議員であるグッドラット氏に向けられた「私の両親は億万長者で、私は運良く暗号資産を手に入れたが、今度は自分の道を歩んだ勤勉な創業者たちをゴミ扱いしたい」という侮辱を削除したようだ。

この件に純粋に傷ついた様子のグッドラット氏は、その後ディクソン氏をピエロと呼んだ。

多くの業界関係者は、Andreessen Horowitzで何が起こっているのか、静かに問いかけている。あるベンチャーキャピタリストは2月5日に内々にこう言った。パートナーたちは、単に儲かりすぎて「問題ある投稿」をするようになってしまったのでは?

シードステージファンドのHustle FundのゼネラルパートナーEric Bahn(エリック・バーン)氏は別の説を唱えている。「これまで共有されてきたFacebookのコンテンツを見れば、そのアルゴリズムがネガティブなストーリーや攻撃的なストーリーを好んできたことがわかります。そうしたものは非常に共有しやすい材料です。Twitterでも同じことが言えます。意地悪な書き込みをすれば、それが注目されることに気づいている人もいます」。

明らかに、Andreessen Horowitzの投資家は何もいうつもりはない。同社は自社に関わるすべての人のために稼いできた。そうした投資家、そして資本市場にいる一部の創業者の中には、Andreessen Horowitzの強硬な戦術に説得力を感じる人もいるかもしれない。

一方、ライバル企業の中には、その強気な行動(最近、Andreessen Horowitzが持つ欠点の1つ)を利用しているところもあるようだ。

TNT Venturesのベンチャーキャピタリスト、Parker Thompson(パーカー・トンプソン)氏は、ディクソン氏とグッドラット氏の騒動の後、多くの人がささやく言葉を要約してツイートした。「あそこの水の中には、人々の正気を失わせる何かがあるようです。ポートフォリオにとって、強気な兆候ではありません」。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

a16zとMonasheesがブラジルの在庫発見B2BマーケットプレイスInventaの新ラウンドをリード

Inventaの共同設立者、左からフェルナンド・カラスコ氏マルコス・サラマ氏、ローラ・カマルゴ氏(画像クレジット:Inventa)

ブラジルを拠点とし、中堅・中小企業が新規在庫を発掘・購入するためのデジタルマーケットプレイスを提供しているInventa(インベンタ)は、シリーズAラウンドで2000万ドル(約22億7500万円)を調達した。

Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)とブラジルの大手VCであるMonasheesが共同でこのラウンドをリードし、Founders Fund、Greenoaks、Greylock、Tiger Global、そしてエンジェル投資家であるKavak(カバック)のHans Tung(ハンス・タン)氏とCarlos Gracia(カルロス・ガルシア)氏が参加した。また、今回のラウンドには、既存の投資家であるPear VC、NXTP、ONEVC、MAYA Capital、Alter Globalも参加した。

今回の新たな資本調達は、550万ドル(約6億2500万円)のシードラウンドを発表してから3カ月後に実施された。そのすべてが、2021年3月に設立された会社のためのものだ。

CEOのMarcos Salama(マルコス・サラマ)氏は、元General Atlanticの投資家Laura Camargo(ローラ・カマルゴ)氏、元McKinsey(マッキンゼー)のデータサイエンス専門家Fernando Carrasco(フェルナンド・カラスコ)氏とともに、ブラジルの起業家にテクノロジー、データ、クレジットを提供するために同社を設立した。

スペイン出身のサラマ氏は、機械工学のバックグラウンドを持ち、McKinseyとコロンビアのユニコーン企業Rappi(ラッピ)で働いた経験があり、それがブラジルへの道につながったという。同氏はRappiの食料品事業を担当していた時に、小売店と仕事をして、小さな店が品揃えや信用の確保に苦労している様子を目の当たりにした。

Inventaはテクノロジーを駆使して、中小企業の購買プロセスを容易にする。Inventaのオンラインプラットフォームは、実際の取引データに基づいて商品を推奨し、30日、60日、90日単位で小売店にクレジットを提供する。また、サプライヤー側でも、商品のアップロード、価格の管理、売れ筋・不人気商品の確認などができる。

これほど早く追加資金を調達した理由の1つは、Inventaが月次平均100%以上の成長を遂げていることだ。

「ブラジルには、Inventaがターゲットとしている小規模店舗を持つ起業家が500万人います」とサラマ氏は語る。「当社のB2Bマーケットプレイスは、ブランドと小規模小売店を結びつけ、化粧品、健康食品、ホームデコレーションなどの分野で品揃えを支援します。また、ニーズの高い製品のトレンドを知ることができるので、レコメンデーションがより有効になります」。

同社は400ブランドから7千以上の商品を提供し、2万人以上の顧客を獲得している。

今回の資金調達によりInventaは、100人の従業員の多くがエンジニアである同社の技術チームへの投資や、営業・マーケティングチームの構築が可能になる。サラマ氏は、今後数年間でさらに400人の従業員を増やすことを目標に、従業員分野での大規模な成長を期待している。

また、同社が化粧品、健康食品、家庭用品などの分野に深く入り込んでいくことで、扱うブランド数を1万に増やすことも計画している。さらに、技術開発にも力を入れ、最終的には小規模なサプライヤーや小売業者向けに無料のソフトウェア製品を提供できるようにしていきたいと考えている。

「Amazon(アマゾン)、MercadoLibre(メルカドリブレ)、RappiはB2Cの世界に対応していますが、B2Bにおいては、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ないです」とサラマ氏はいう。しかし、B2Bでは、この市場をターゲットにしている企業は非常に少ない。「規模は大きいですがソリューションが欠けている中で、当社はサービスを提供する準備ができています」。

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

アンドリーセン・ホロウィッツのケイティ・ハウン氏、暗号資産で同社が成功した道のりを語る

Katie Haun(ケイティ・ハウン)氏がNFT(非代替性トークン)の支持者であるということは驚きではない。元連邦検察官で、現在はAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ / a16z)で強力な暗号化の実践を共同で先導しているこの人物は、少なくとも2018年にa16zがDapper Labs(ダッパー・ラブズ)を最初に支援したときからこの技術についてを学んでおり、今ではかなり貴重な存在となっている。

バンクーバーに拠点を置くDapper Labsは当時、CryptoKitties(クリプトキティ)と呼ばれる収集可能なデジタル猫ゲームで知られており、暗号コミュニティ外の人々を困惑させていた。2021年Dapperはブロックチェーン上でNBA Top Shot(NBAトップショット)という、スポーツファンがコレクション性の高いハイライトクリップを売買できるサービスを提供したことでブレイクしたが、むしろこれも全体の構想から見ればマイナーなユースケースであると、先に筆者が主催したサンフランシスコのイベントでハウン氏は話している。

広範囲をカバーした今回のインタビューで、ハウン氏は、現在集中しているNFTのユーザー層がこれから爆発的に増えると同氏が考えている理由を説明し、またNFTを収入源にしている比較的少数のクリエイターのみがNFTの恩恵を受けているという考えを否定した。また、a16zが導入した技術革新により、同社の暗号化投資の75%を占めるトークンを20%割引で購入できるようになった仕組みを説明し、さらには2019年にa16zが行ったように、すべてのベンチャー企業が登録投資顧問になるべきか否かというトピックについても話してくれた。以下では長さを調整するために編集を行っている。また、以下にフルインタビューを掲載している。

TC:a16zがNFTへのさまざまな期待について投資家に伝えていること、そして今後の筋道について。

根本的にNFTは、消費者やコンテンツ制作者にとって、インターネットのビジネスモデルを劇的に変えるものだと思っています。なぜ消費者にとって重要なのか?例えば今「Fortnite(フォートナイト)」のスキンを買ったとして、それなのに後にこのゲームがなくなったらどうでしょう。……しかしそれでは、自分のアイテムなどを別のプラットフォームに持っていくことができ、どこでも使うことができたとしたらどうでしょうか。これは消費者にとって非常に大きな力となります。消費者の手に直接パワーが戻るのですから。

また、コンテンツ制作者にとってもすばらしいことです。デジタル上の希少な商品であるトークンをプログラムすることで、今後のすべての取引において金銭的利点を得ることができるからです(そしてその過程で30%を取る中間業者を排除することができます)。これがクリエイターの経済にどんな影響を与えるか想像してみてください。今はデジタルアートに注目が集まっていますが、2022年の今頃は音楽の世界でどのような障壁が取り除かれるのかという話になっていると思います。

ハウン氏は現在、音楽関連のNFTに注目しており、シンガーソングライターのBillie Eilish(ビリー・アイリッシュ)を例にミュージシャンとNFTの間にどんな可能性があるか(場合によっては、すでに起こっているか)を話した。

ビリー・アイリッシュは当初インターネット上で一部のファンによって発掘されました。しかし、彼女を有名にした初期のファンたち、つまり彼女の本当のファンたちは、彼女のスターダムを共有できたでしょうか?まったくできていません。実際、彼女のスターダムを共有できなかっただけでなく、彼女がブレイクしたことで彼らの状況は悪化したと言えるでしょう。チケットの値段が上がり、スタジアムには長蛇の列ができ、コンサートは完売です。ところがもし、彼女を発見し、初期の彼女の成功に寄与した人々が、NFTやスマートコントラクトを通じて、ビリー・アイリッシュの成功に関連する何かを保有していたとしたらどうでしょうか。例えば、彼女がSpotifyに曲を録音した後に、関連するスマートコントラクトNFTを作成し、そういったファンにライブへの永久アクセス権を与えたり、彼女と一緒にツアーに参加したり、あるいは将来的に彼女のロイヤリティの一部を受け取れる権利を与えたりすることが考えられます。これで突然、レコード会社や弁護士、中間業者だけでなく、ファンも経済的な利益を共有することになります。

Twitch(ツイッチ)ではわずか1%のストリーマーが収益の半分を占めているというデータが流出したが、少数の人のみが経済的な利益を得ることができるようになっており、クリエイターにとっては、結局は現在と同じような経済状況になるのかというトピックについて。

2021年11月11日に開催されたStrictlyVCのイベントに登壇したケイティ・ハウン氏(画像クレジット:Dani Padgett)

これらのビジネスモデルは、まだ非常に初期の段階にあります。しかし、暗号化アーキテクチャの分散型システムについては、これで生計を立てられることがわかっており、このことはNFTですでに見られています。Beeple(ビープル)になって大金持ちにならなくても、生計を立てることは可能です。私はNFTをいくつか所有していますが、その中には、OpenSea(オープンシー)で買った、仕事を辞めてデジタルアートをプログラミングしている女性アーティストのものも含まれています。彼女はスマートコントラクトをプログラムしていて、私がこれらのNFTをあなたに販売したら、彼女はその販売額の一部を受け取ることができます。そしてあなたがそれを別の人に販売して、高い価格で評価されたら、彼女はその販売額からロイヤリティを受け取ることができるのです。

米国人の多くが生活費の支払いに苦しんでいる中、NFTは一部のお金に余裕のある購買層を中心に普及しているという認識を我々は持っている。この点についてハウン氏は、NFTが金持ちの道楽だと思われているのはもっともだが、この技術はまだ始まったばかりだと説明する。

NFTに関して言えばイノベーションの現状を、最終状態として判断しないことがとても重要だと思っています。おっしゃることはよくわかりますし、私自身もそういった現状を目にしています。しかしそれは物理的な世界でも同様で、ステータスシンボルという点では多くの米国人が苦労している一方で、高級車やロレックスを買える人がいるという状況が起きています。そのためデジタル界も大差ないでしょう。物理的な高級品があるように、現実の世界にも人々が所有したいと思う一般的な商品があり、そうしたより一般的な商品がデジタルの世界でも増えていくようになるのではないでしょうか。

ある時点から、話はa16zのディールフローに転換した。Coinbase(コインベース)とOpenSeaの2つの取締役会に在籍しているハウン氏は、そのおかげで暗号の世界で何が、誰が盛り上がっているのかをよく見ることができると説明する。

この世界の中心にいることができ、とても恵まれていると思います。私たちはエコシステムの最前列に座っていますが、それはChris Dixon(クリス・ディクソン)氏と私の2人が、長年にわたってCoinbaseの取締役を務めてきたからです【略】Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)も運営されていますが、【略】Coinbase Venturesに売り込みにこない暗号化プロジェクトはほとんどありません。私はOpenSeaでも現在役員を務めていますが、彼らは記録的な取引量を達成し、世界最大のNFTマーケットプレイスになった他、ベンチャー投資も行っています。このようにこの分野の大物たちとのつながりがあるだけで、彼らが取引をすることで、我々にも取引の流れが作られているのです。

当然暗号は非常にグローバルなものであり、現時点で我々はまさにグローバルな存在になっています。直近の暗号化ファンドでの投資のうち、少なくとも50%は海外からの投資だと思います。しかしだからこそ「CoinbaseやOpenSeaの役員を務めているから大丈夫」などと安心していてはいけないのです。多くの創業者がAndreessen Horowitzの名前を聞いたことがないような、さまざまな国の、さまざまなプロジェクトに対してオープンマインドでいなければなりません. . .私たちはここにいることが当たり前だと思っていますが、世界の他の地域の人々は私たちのことを聞いたことがないのです。私たちの価値を知らないのです。

場合によっては飛行機に乗らなければならないこともあります。Kiva(キヴァ)やMercy Corps(メルシー・コープス)のようなNGO、Deutsche Telekom(ドイツテレコム)のような企業、Stanford(スタンフォード)やBerkeley(バークレー)のような大学やイスラエルのTechnion(テクニオン)大学をはじめとする世界中の多くの大学など、世界中の参加者に当社のプルーフオブステークシステムを委ねるデリゲートプログラムも開拓してきました. . . これまですばらしい取引が行われてきたからといって、それが今後も続くと期待して甘んじているわけではありません。暗号化投資家の市場は確実に拡大しています。

同社が店頭での直接取引を含むトークンへの投資を多く行っている理由についても話が出た。そのような取引において、a16zが何らかの優先的な地位を得ているのかどうか、またCoinbaseやOpenSeaのような従来の株式取引から会社がシフトしていった理由は何なのか、そして、こうした取り決めに反発し始めたのは、暗号化の創業者たち自身なのかどうかについても質問した。以下はそれに対するハウン氏の答えである(ハウン氏は株式取引が完全になくなったわけではなく、より多くのVCが株式取引を求めて競争を始めたために価格が高騰したのだと指摘している)。

もし優先的なレートを提供してくれる店頭窓口を知っているなら教えて欲しいものです。店頭の場合我々はその場で買っているだけで、特別な扱いは受けていません。どちらかというと. . .すべて店頭取引になってプロトコルの創設者は我々が投資家であることさえ知らないというような市場にはしたくないという意識が強いですね。

また、プロトコルが特定のベンチャーキャピタルの投資家を希望する場合もありますが、これは急速に変化しているので機敏に対応する必要があります。プロトコルの創設者が私たちの参加を強く望んでいた場合、実際に3年前、トークン環境の初期段階で私たちに割引をしてくれました。しかしこれは暗号化のエコシステムでは非常に不評でした。なぜVCの投資家がコミュニティよりも割安にならなければならないのか、と。

その懸念を払拭するために「それならロックアップをしてください。私たちは7年〜10年を見据えられる忍耐強い投資家であり、暗号化ヘッジファンドを運営しているわけではありません」と提案したわけです。例えばもし20%の割引を欲しいとしたら、その代わりに4年間、場合によってはそれ以上、それ以下の間ロックアップされることになるかもしれません。これは、私たちがさまざまなトークンディールにもたらした1つのイノベーションです。しかしロックアップと引き換えに割引を受けたプロトコルのため、私たちはたくさんの仕事をしてきたのです. .

この質問は重複するが、同氏がOpenSeaとCoinbaseの両方の取締役に就任していることについても質問が投げられた。その意図は、OpenSeaはNFTマーケットプレイスであり、暗号資産取引所のCoinbaseも最近NFTマーケットプレイスのようなものを作る計画を発表しているため、この2社が衝突しかねないのではないだろうか、というものだ。実際、CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏は先週の決算説明会で、NFTの市場は同社の暗号資産事業に匹敵するか、それ以上の規模になる可能性があると考えていると述べている。

ハウン氏はどのようにしてこの複雑な状況をやりのけているのか、さらにはCoinbaseがOpenSeaを買収するのではないかと質問すると、2つ目の質問に対しては首を横に振り、2社の衝突について次のように説明した。

それは悲観的な見方ですね。私は両者が衝突しているとは思っていません。まず第一に、Coinbaseがどのような計画を立てているかはまだ発表されていません。NFT分野で何かをすることを検討していると発表しただけで、それが何になるのかはまだわかりません。

ブライアン・アームストロングが数年前に言っていたことを覚えていますが、取引スペースに競合他社が参入し始めたとき、彼は「これはすばらしい」と言っていました。私は自分が何を見逃しているのか疑問に思ったところ彼は「これはパイが大きくなっている証拠です。大きなチャンスであり、他の人もそれに気づいているんです」と言ったのです。

同様にNFTの領域は非常に巨大なので、多くのプレイヤーが活躍できる余地があると思っています。私はこの領域で活躍する最先端の企業2社の役員を務められることを大変幸運に思っています。両社が衝突しかねないなどとは思いません。もちろん、もしそのような展開になったり、エコシステムがそのように進化したりした場合、元連邦検察官として私が対処しなければならないことになるでしょう。

暗号の創始者たちに注目されたければ、ベンチャー企業は登録投資顧問になる必要があるかどうかという質問についてハウン氏は明言を避けたものの、理に適っているのではとほのめかす。

暗号化専用ファンドはすべてRIAとして登録されています。今では多くのファンドが存在していますが、すべてRIAとして登録されているのです。規制状況が非常に不確実な今、トークンを保有したいのなら賢明なことでしょう。

画像クレジット:Dani Padgett

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

「誰かWeb3を見た人はいるか?」テスラ/SpaceXのイーロン・マスクと元Twitter CEOのジャック・ドーシーがWeb3を語る

「誰かWeb3を見た人はいるか?」イーロン・マスクとジャック・ドーシーがWeb3について語る

Handout . / reuters

元Twitter CEOのジャック・ドーシー氏と、テスラ/SpaceXのイーロン・マスク氏はともにBitcoinの信奉者ですが、月曜日にこの2人は「Web3」というキーワードで互いに意見を述べ合いました。

まず、Web3とは一体何なのかというところからですが、ざっくりいえば、次世代のインターネットの姿を漠然と現すために使われている単語ということです。2000年代中頃にはWeb 2.0という言葉がよく使われていましたが、Web3もそれと同じように、今の時点から見た将来のインターネットを指しています。

もう少し具体的に説明を付け加えると、Web3を考える人は現在のインターネットがGoogle(Alphabet)、Amazon、Facebook(Meta)、Appleによって大半のデータやコンテンツを握られ、支配されすぎていると考えています。実際われわれはインターネット上に共有した膨大な量のデータやコンテンツをこれら企業に蓄積、利用させています。またその弊害として行きすぎたターゲティング広告の氾濫などといった問題も表れています。

そして、未来のインターネットとなるWeb3では、こうした集中、集約型のネットワークとは違う、分散型のネットワークを基本にブロックチェーン技術に基づくインターネットが利用されるようになるとよく言われ、企業や起業家らがWeb3となるような技術やその他仕組みを設計、構築しようとしています。

現在のところ、Web3はまだ漠然としたものであり、流行のNFTや暗号資産を支えるブロックチェーン技術によってそれが実現されれば将来のインターネットはイケてる感じになるだろうと人々は夢想している、と言う段階の話です。

イーロン・マスク氏は、月曜日に1995年に当時マイクロソフトCEOだったビル・ゲイツ氏が人気司会者デイヴィッド・レターマン氏とインターネットに関して話している場面を使ったTikTok動画をツイートし「当時ほとんど想像できなかったような現在の状況を考えると、未来はどうなっているんだろう?」と述べました。

そして「今のところ、Web3が本物、現実のものというよりはマーケティングのためのバズワードのようだが、10年後、20年後または30年後の未来はどうなっているんだろう。 2051年なんてクレイジーなほど未来にじゃないか!」と続けました。さらに翌日、マスク氏は「誰かWeb3を見た人はいるか?私は見つけられないのだが」ツイートしました。

これを見たジャック・ドーシー氏は「それはきっとa~zの間のどこかにあるよ」と返答しました。これはWeb3の理想を追う人たちに向けたちょっとした皮肉で、Web3はすでに早くからFacebookを支援していたベンチャーキャピタル企業のAndreessen Horowitz(a16z。aで始まりzで終わる)が管理下に置いているとの意味を暗に示しました。ドーシー氏の考えは最終的にWeb3がどんな形になるのであれ、それを所有するのはベンチャーキャピタル(VC)とそのリミテッド・パートナーシップ企業(LP)であり「彼らの支配から逃れることはできないだろう」とツイート、結局は呼び方を変えただけの中央集権方式なのだと主張しています。

このドーシー氏のツイートには、大量のいいねやリツイートが付きましたが、一方で「大間違いだ」「まったくもって同意できない」といった否定的なコメントもあります。まあ、まだマスク氏ですら見つけられていないものがどんな風になるのか、いったい誰にわかろうかという話ではありますが、今のインターネットと、皆が思う理想のインターネットの形が違うのは間違いなさそうです。

(Source:Elon Musk(Twitter)Jack Dorsey(Twitter)Engadget日本版より転載)

音楽のNFT販売を支援するプラットフォーム「Sound.xyz」がa16zから5.7億円調達

2021年、私たちはNFT(非代替性トークン)がビジュアルアート販売の経済を揺るがす証拠を山ほど見てきたが、アート世界の別分野、たとえば音楽の経済をWeb3がひっくり返す、という動きはあまり見ることがない。

Sound.xyzは、ミュージシャンがNFTを通じて収益をあげるためのコミュニティを作ろうとしているスタートアップで、ミュージシャンたちを、いわゆる「web3 fold」(ウェブスリー・フォールド)と呼ばれる集団に導くための一連のツールを開発している。2021年12月、同社は最初の製品、Listening Parties(リスニング・パーティーズ)を公開した。アーティストが新曲のリリースにタグ付けされたNFTを販売できるようにするツールだ。

同社はAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がリードしたシードラウンドで500万ドル(約5億7000万円)調達したことをTechCrunchに伝えた。ラウンドには他に、Variant Fund、Weekend Fund、Scalar Capital、Flamingo、Packy McCormici、および21 Savageらが参加している。

同スタートアップは新進アーティストがNFTを活用し、自分たちの作品をより効率的に収益化できるようすることで、Spotifyなどのプラットフォームで得られるストリーム当たり1セント(約1円)以下の利益を乗り越えて欲しいと思っている。

「私たちはアーティストが自分たちの楽曲を新しい方法で収益化するためのツールセットを作っています」とSoundのCEOであるDavid Greenstein(デビッド・グリーンスタイン)氏がTechCrunchに話した。「私たちが解決したい問題は、『音楽を聴いてもらい、アーティストにお金が入るにはどうすればよいか?』です」。

スタートアップは、コミュニティに参加している数多くの「暗号化に理解のある」レコーディングアーティストたちとパートナー契約を結んだ。早期の作品は、数十曲の限定エディションNFTで、すぐに完売した。1万ドル(約114万円)分のNFTを売ることは、100万ドル(約1億1410万円)のセールスに慣れている業界にとって注目に値しないと感じるかもしれないが、同じ金額をSpotifyで稼ぐために数十万回のストリームが必要なアーティストにとっては大きな違いだとグリーンスタイン氏はいう。同社はアーティストの楽曲に結び付けられたNFTの需要を測定しているので、アーティストはコミュニティにさらにNFTをリリースするインセンティブがある。同社がNFTの販売手数料をとっていないことは注目に値する。

チームは他にも、NFT所有者がストリームにコメントを書いてアーティストに読んでもらう、といった機能も実験している。いずれは、ミュージシャンがファンのクラウドファンディングで新しい作品を作ったり、新しいプロジェクトに挑戦できるツールや、収集家が新しい作品を発見したり自慢するための新しいインセンティブモデルを作ろうとしている。

SoundはNFT音楽分野で唯一のプレイヤーではない。2021年11月、a16z Cryptoは、ロイヤリティをトークン化してファンに販売するNFT音楽プラットフォームであるRoyal(ロイヤル)に投資した。ブロックチェーンを利用した音楽ストリーミングプラットフォームAudius(オーディウス)は、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)とCoinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)らから、1350万ドル(約15億4000万円)以上の資金を調達た。

関連記事:NFT音楽著作権のスタートアップRoyalがa16z Cryptoの主導で63.1億円調達、前ラウンドからわずか3カ月

画像クレジット:Sound

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウータン・クランの幻のアルバムを手に入れたNFT投資家グループをアンドリーセン・ホロウィッツが支援

Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)のアルバム「Once Upon a Time in Shaolin」や、Doge(ドージ)のオリジナル写真データのNFT(非代替性トークン)を購入した暗号資産集団に新しいメンバーが加わった。ベンチャーキャピタル会社のAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)だ。

同社はTechCrunchに、PleasrDAOへの投資を行ったと述べている。PleasrDAOは、ブロックチェーンで連合したグループで、数十人の暗号資産投資家がチームを組み、ここ数カ月で高額なNFTを次々と購入している。このグループが購入したものには、4億円以上(正確には1696.9ETH)で落札した後、後に細分化して暗号コミュニティに販売した有名なDoge画像がある(現在の時価総額は100億円以上と見られている)。また、このDAOはEdward Snowden(エドワード・スノーデン)の作品に約5億5000万円(2224ETH)、ウータン・クランのアルバムに400万ドル(約4億5000万円)を払っている。

DAO(decentralized autonomous organization、自律分散型組織)とは、基本的にブロックチェーンの投票メカニズムを中心に形式的に組織されたグループで、意思決定や資本投資を行うというものだ。

A16z Crypto(アンドリーセン・ホロウィッツの暗号資産投資部門)によるPleasrDAOへの投資は、彼らが公に発表した組織タイプへの最初の投資というわけではない。

同社は10月、Friends With Benefits(FWB、フレンズ・ウィズ・ベネフィッツ)というDAOに投資を行い、これを1億ドル(約114億円)と評価している。Andreessen Horowitzは、PleasrDAOへの投資規模を明らかにしなかったが、評議員のSantiago Santos(サンティアゴ・サントス)氏は、このDAOの管理トークンに対する彼らの全体的な出資額が「5%未満」だと明言している。

他の多くの暗号資産グループと同様に、PleasrDAOはそれが形成されたとき、非常に特異な野心を持っていた。それは、デジタルアーティストによる作品に入札すること。この場合はpplpleasrの作品だ。この作品は、分散型取引所プラットフォーム「Uniswap(ユニスワップ)」のアニメーションビデオ広告だった。このグループは、暗号資産創設者のLeighton Cusack(レイトン・キューザック)氏がオークションへのリンクをツイートし「誰かこれに入札するクイックDAOを作りたい人はいませんか?」と尋ねたことをきっかけに、3月に結成された。同グループは最終的に310ETH(当時約5800万円)で落札し、購入代金はすべてチャリティーに充てられた。

「DeFiの最も賢い頭脳の多くがここにいる、これを本当におもしろい方向に持っていく機会がある、と私たちはすぐに考えました」。サントス氏はTechCrunchにそう語った。「時間が経つにつれて、もっと構造と階層が必要だと感じられるところまで、このDAOは成長したと私は思います」。

このグループはその後も投資を続け、ポートフォリオを充実させるとともに、支援できる新しいアーティストの発掘を目指している。サントス氏は、このグループがNFTの「メディチ家」になることを目指していると語る。それは「多くのデジタルネイティブアーティストが集まり、参加や発見ができる場所」だという。

「DAOはWeb3と暗号資産の最も純粋に近い現れ方です」と、a16zのGPであるAli Yahya(アリ・ヤーヤ)氏はTechCrunchに語った。

a16zは早くから暗号資産に取り組んできたが、この分野の創業者や開発者ネットワークの近くで活動するいわゆる「暗号ネイティブ」な投資ファンドの台頭により、a16zのような従来型の企業にはDAOのような新しいグループをより大胆に支援する必要性が生じてきた。Andreessen Horowitzは、方針や規制に関する懸念など、PleasrDAOを支援できる領域がたくさんあると見ている。DAOは現在、プールされた資本の規制されていない投資ファンドとしてグレーゾーンで運用されているように見えるからだ。

A16zのこのグループへの賭けは、多くの意味で、同グループがすでに大きく賭けているNFTへのレバレッジ賭けである。

A16zは2021年、NFTマーケットプレイスのOpenSea(オープンシー)や、大手NFTゲーム起業のSky Mavis(スカイメイビス)、NFT音楽プラットフォームのRoyal(ロイヤル)などに出資した。また、高価なNFTの買い取りに特化した1億ドルのベンチャーファンド「Meta4」にも参加している。これらの投資は、同社が2021年の夏に起ち上げた22億ドル(約2500億円)の巨大な暗号資産特化ファンドから行われている。

「NFTの可能性を過小評価することは簡単です」と、ヤーヤ氏はいう。「NFTが巨大化し、将来的にすべてのNFTの時価総額の合計が、代替可能トークンの時価総額よりも大きくなる可能性は十分にあります」。

関連記事:JPG画像に100億円?希少価値のある優良NFTプロジェクトを買い漁るMeta4 Capitalの狙い

画像クレジット:PleasrDAO

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

EVへの関心は電動ボートにも波及、Arcが約34.5億円調達

Arcはまだ創業1年にも満たないが、この電動ボートのスタートアップはVCのAndreessen Horowitzやエンターテインメント業界の大物たちからの投資を惹き寄せ、初期のTesla(テスラ)の役員で同社の初期の製造部門を率いた人物がリードする3000万ドル(約34億5000万円)の投資ラウンドを実らせた。

今回の3000万ドルのシリーズAはGreg Reichow(グレッグ・ライチョウ)氏がリードしたが、彼は元Teslaの役員で現在はEclipse Venturesのパートナーだ。今回は、これまでの投資家であるAndreessen HorowitzやChris Sacca(クリス・サッカ)氏のLowercarbon Capital、そしてRamtin Naimi(ラムティン・ナイミ)氏のAbstract Venturesらも参加した。同社は米国時間11月23日の発表で、ライチョウ氏が取締役会に加わることを発表した。これまでのArcの調達総額は3700万ドル(約42億5000万円)だが、それにはWill Smith(ウィル・スミス)氏のDreamers VCやKevin Durant(ケビン・デュラント)氏とRich Kleiman(リッチ・クレイマン)氏のThirty Five Ventures、そしてSean “Diddy” Combs(ショーン・コムズ)氏のCombs Enterprisesなどからの初期の投資も含まれている。

この若い企業に資本と強力な支援者が殺到していることは、電動化への関心が2つの車輪、4つの車輪を持つ乗り物を超えて広がっていることを反映している。後者は巨額の私募資金と驚異的な額の公開市場資金で溢れかえっているが、今週初めにGMは、電動ボート企業のPure Watercraftの株式の25%を取得したことを発表している。

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もちろん、30万ドルの限定版ボートを皮切りに、水上のあらゆるものを電動化するというArcの特殊なビジネスに対する高い評価となる。

CEOのMitch Lee(ミッチ・リー)氏と元SpaceXの技術者であるRyan Cook(ライアン・クック)氏が共同で創業したArcは、さまざまな価格帯と用途の電動船を開発していく計画だ。同社は最初、専用の船体と同じく専用のバッテリーパックの設計と開発に注力した。最初のボートArc Oneは、24フィート(約7m32cm)のアルミニウム製で475馬力、1回の充電で3〜5時間駆動する。このArc Oneは、最大で25隻の限定生産の予定となっている。

その後、2種類の高価なボートを数十隻作り、未来に向けて拡大していく計画だ。ただし短期的にはArc Oneに集中すると同社はいう。

画像クレジット:Arc

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クリエイターがゲーム内でアイテム作成、共有、収益化できるプラットフォームのOverwolfが約85億円調達

クリエイターがゲーム内でアイテムを作り、共有し、収益化できるプラットフォームを提供するOverwolf(オーバーウルフ)は、Andreessen Horowitz(a16z)がリードしたシリーズDで7500万ドル(約85億円)を調達した。既存投資家であるGriffin Gaming Partners、Insight Partners、Intel Capital、Liberty Technology Venture Capital、Markerなども参加した。調達した資金は、OverwolfのCurseForge Coreに投入される。CurseForge Coreは、ゲームスタジオ、IPオーナー、ゲーム内クリエイターがゲーム内にユーザー生成コンテンツを構築することを可能にするソリューションだ。

「ゴールド」やゲーム内MODが売買されていた世界は、大きく変化している。今やプレイヤーは、ゲーム内で体験を構築して共有できることに魅力を感じており、クリエイターとゲームオーナー向けにまったく新しい分野が生まれている。

テルアビブを拠点とするOverwolfは、Andreessen Horowitz、Atreides Management、Griffin Gaming Partners、Insight、Marker、Intel Capital、Liberty Technology Venture Capital、Market、Ubisoftなどの投資家から、これまでに1億5000万ドル(約171億円)超を調達している。

CurseForge Coreはホワイトレーベルのソリューションで、パブリッシャーが既存および新規のゲームにModを簡単に統合することを可能にする。

Overwolfは、技術的なソリューションであると同時に、ゲーム開発者に対してコンテンツのモデレーション、IP、その他さまざまな側面をカバーするフルサービスのUGCプラットフォームを提供している。

Overwolfの共同創業者でCEOのUri Marchand(ウーリ・マルシャン)氏は「情熱的なコミュニティの実行速度と圧倒的な創造性には、単一のゲームスタジオでは太刀打ちできません。主要なゲームスタジオが、コミュニティの創造に抵抗するのではなく、これらのクリエイターがコミュニティやスタジオ自体にもたらす価値を受け入れ始めているという認識の変化が見られます」と話す。

Overwolfによると、約8万7000人のインゲームクリエーターを擁し、毎月2000万人超のゲーマーがOverwolfの製品を利用しているとのことだ。Overwolfは、2020年の約3倍となる2900万ドル(約33億円)をゲーム内クリエイターに支払うと予想している。また、ゲーム内アプリのクリエイターやMODの作者、さらにはMODを新作品に統合することを計画しているゲームスタジオを支援するため、5000万ドル(約57億円)の基金「Overwolf Creators Fund」を立ち上げている。

a16zのパートナー、Jonathan Lai(ジョナサン・ライ)氏は、次のように語る。「TikTok、YouTube、Instagramなど、今日の最大のソーシャルプラットフォームは、友人や家族、コミュニティのためにコンテンツを生成するクリエイターによって大きく支えられています。ゲームがソーシャルネットワークに進化していく中で、クリエイターやユーザー生成コンテンツも同様に重要な役割を果たすでしょう。Overwolfのプラットフォームは、堅牢な開発エンジン、配信用のアプリストア、クリエイターが作品から生計を立てるための収益化ツールを備えているため、どんなプレイヤーでもお気に入りのゲームの共同制作者になることができます」。

筆者は電話でマルシャン氏に、Overwolfがメタバース形式の環境を提案するための「建築用ブロック」のようなものになる可能性があるかどうか尋ねた。

「ゲーム間で一貫した体験ということであれば、IPの所有者と一致した方法でそのようなものを作り、ギャップを埋めることができるかもしれません」と同氏は答えた。

「それは剣かもしれないし、物語かもしれないし、さまざまなものの可能性があります。人々が会話したり、体験を切り替えたり、所有権を生み出したりできることとは別に、メタバースの大きな部分を占めるのは創造であり、当社は創造の要素に焦点を当てている会社です」と付け加えた。

Overwolfの競合他社には、最近2600万ドル(約29億円)の資金調達を行ったMod.ioがある。

画像クレジット:Overwolf / Overwolf leadership team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

NFTマーケットプレイスOpenSeaの苦悩、「真の友人は正面から君を刺す」

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは!今日は気楽な話題なので、くつろぎながら読んで欲しい。

よく知られているオスカー・ワイルドの言葉に「真の友人は正面から君を刺す」というものがあるが、この言葉は覚えておくべき機知に富んだ真実だ。Coinbase(コインベース)がNFTに参入するという最近の決定について、ここ1、2週間あれこれと考えているうちにこの言葉が浮かんできた。

関連記事:CoinbaseがNFT市場参入を発表、OpenSeaに対抗するマーケットプレイスを準備中

いくつかの事実を知れば、ワイルドの言葉がなぜ今の状況に合っているのかがわかるだろう。

  • a16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)の共同創業者であるMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、上場前から支援してきたCoinbase(コインベース)の役員を務めている
  • 一方a16zはOpenSeaのシリーズAを主導した。これは2300万ドル(約26億円)規模で、NFT市場に多額の資金と信用をもたらした
  • Coinbase VenturesもOpeanSeaに投資しているが、これは同VCが行ってきた数多くの投資の1つだ
  • そしていま、CoinbaseがNFTに参入することを発表したことで、ウェイティングリストに大量の登録者が集まった

暗号資産ウォッチンググループのDappRadar(ダップレーダー)によれば、現在OpenSeaは最大のNFTマーケットプレイスだ。もし競合するソリューションに興味を示したユーザーたちが、著名な暗号資産投資プラットフォームであるCoinbaseで実際にNFTを売買するようになれば、CoinbaseはOpenSeaを圧倒するかもしれない。

そうなると、OpenSeaは困った立場になるだろう。

VCが上場後も企業の取締役に留まるのは、彼らがそうすることを選択し、そして投資先企業が彼らを引き留めるのであれば問題はない。公開された企業のボードメンバーになることを習慣にしているVCもある。例えばMarc Andreessen(マーク・アンドリーセン)氏は、Facebookの取締役会に参加しているが、Facebookはアンドリーセン氏についての説明の中で、彼が以前にeBayやHPで取締役を務めていたことを紹介している。やるもんだ。

しかし、ある投資家が上場後も投資先企業の役員に留まりながら、同じ投資家の会社のポートフォリオ企業と直接対抗することを決めたとすると、少し厄介なことになる。その投資家がまだ働いているところ。仮に私がOpenSeaの立場だったとすると、アンドリーセン氏がCoinbaseのボードにいて同時に彼のベンチャーファーム(a16z)が私(OpenSea)の投資者に名を連ねているときに、Coinbaseが私の市場を攻撃することを決めたとしたら、私は腹を立てるだろう。

「真の友人は正面から刺す」ものなのか?

また、Facebookによる最近の暗号資産の推進は、ご存知の通りCoinbaseとの提携であることも思い出そう!

関連記事:フェイスブックが暗号資産ウォレット「Novi」の試験運用を米国とグアテマラで開始

また最近、Facebookのボードメンバーが関わる皮肉な事態は他にもみられた。例えばPeter Thiel(ピーター・ティール)氏はFacebookの役員だ。そして彼は同時に、政治家を目指すJ.D. Vance(J.D.バンス)氏も支援している。ここで注目すべきは、J.D.バンス氏が選挙に出馬しながらFacebookを攻撃している点だ。個人的には大企業が中小企業を沈めようとしているのを見るのは好きではないので、OpenSeaの事態を眺めているのは少々不愉快だが、Facebookの資金が循環してFacebookの尻に噛みついているのを見るのは、その過程で稚魚たちが被害を受けていないこともあって滑稽だ。

とはいうものの、もう少し取締役会の席を他者に譲ったほうが良いのではないだろうか。そうでなければ、a16zは自分たちが支援している創業者たちを貶めるような活動を続けることなってしまうだろう。

Volvoその他のIPO

今週は時間を見つけてVolvo(ボルボ)の公開について調べようと思っていたが、それはかなわなかった。ここで会社自身によるノートを見ることができる。Volvoから分離したPolestar(ポールスター)は、SPACを使って株式を公開している。

そして先週の終わりに、Braze(ブレイズ)は株式公開を申請した。この会社とそのS-1については、米国時間の月曜日の朝一番に詳しくお伝えする。

今後も、(冗談抜きで)最高の企業ギフトプラットフォームを構築しようと競い合う熾烈なスタートアップレースの様子などを紹介していく。

関連記事:ボルボの高級EVブランドPolestarが約2兆2200億円の評価額でSPAC上場へ

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

コロンビアのクラウドキッチンFoodologyが約17億円調達、中南米全体へサービス拡大

FoodologyのCEOで共同創業者のダニエラ・イスキエルド氏と共同創業者フアン・ギレルモ・アズエロ(画像クレジット:Foodology)

Foodologyはクラウドキッチンとバーチャルレストランをベースとするレストランブランドで、2019年以降、コロンビアとメキシコで急伸している。今回新たな資金を得たことにより、ラテンアメリカ全体に拡大することを希望している。

ボゴタを拠点とする同社はこのほど、Andreessen HorowitzとBase PartnersがリードするシリーズAのラウンドで1500万ドル(約17億円)を調達した。これまでの投資家であるKayyak VenturesとJaguar Ventures(今はWollef)も参加し、またInstacartの社長Nilam Ganenthiran(ニラム・ガネンティラン)氏やKavakのCEOであるCarlos Garcia(カルロス・ガルシア)氏、UaláのCEOであるPierpaolo Barbieri(ピエルパオロ・バルビエリ)氏、Burger Kingの元会長Dick Boyce(ディック・ボイス)氏、そしてMeramaのCEOであるSujay Tyle(スジェイ・タイル)氏らのエンジェルたちも投資に加わった。これでFoodologyの調達総額は2000万ドル(約22億7000万円)を超えた。

同社を創業したCEOのDaniela Izquierdo(ダニエラ・イスキエルド)氏とJuan Guillermo Azuero(フアン・ギレルモ・アズエロ)氏は、ハーバード・ビジネス・スクールのレストラン産業コースで出会った。イスキエルド氏は、元々料理が大好きだったので、それをビジネスにしたいと願った。

「リスクの多い業界で、破産や閉店が頻繁に起こります。小さな店でさえ、開店までに相当の資本が必要です。私たちはテクノロジーとデータの力をもっと効率的に利用して、来たるべきバーチャルの世界に備えたいと考えています。バーチャルレストランを、フードデリバリーが支える。これまでは、デリバリーの顧客に奉仕するために、レストランはまったく何も変化しませんでした」という。

さらにアズエロ氏は「フードデリバリーは顧客にとってまあまあの体験であり、すばらしい食体験ではありませんでした」という。食べ物のパッケージングも、あまり良いものではない。Foodologyは、それを変えようとしている。彼らが作ったモデルであれば、レストランのラテンアメリカ全域への規模拡大が短期間ででき、また顧客が喜ぶ食事を配達できる。

そのためにまずFoodologyは、ユーザーの好みに関するデータを収集する。そしてそれを近隣の食べ物の既存の選択肢と対照し、オリジナルの料理を作り、そしてデリバリーに載せる。

イスキエルド氏によると、同社のクラウドキッチンを通常は7つから10のレストランが利用し、各自がよく売れる料理を研究開発し、シェフたちのチームとともにメニューを創造する。

Foodologyのキッチンは現在、コロンビアの6都市に計20、メキシコに10あり、企業従業員は60名、キッチンの労働者は300名を超えている。コロンビアでは、毎月のオーダーが10万件で、総オーダー数は100万のマイルストーンを超えたばかりだ。イスキエルド氏の計画ではさらに6つのキッチンを開き、また今回の資金で2022年にブラジルとペルーにも進出したい。

ラテンアメリカのフードサービス業界は2020年の推計値で2640億ドル(約29兆9820億円)という規模だ。その成長に乗り遅れないためにはキッチンの数を増やすとともに、製品開発にも投資して売上を月額で50%上げたい。そのためにはメキシコでその数を増やすこと、そして新市場の開拓が重要だ。アズエロ氏によると、目標は500のキッチンをサポートすることだ。

「現在、は多くの人にバーチャルレストラン求められているが、この地域では大きなモデルがまだほとんどありません。ラテンアメリカでは私たちが、圧倒的に最大のプレイヤーなのです」とイスキエルド氏はいう。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

JPG画像に100億円?希少価値のある優良NFTプロジェクトを買い漁るMeta4 Capitalの狙い

2020年のNFT(非代替性トークン)狂乱は、アート、トレーディングカードゲーム、豪華アバター、デジタル・オブジェクトなどさまざまな分野に暗号資産がなだれ込むきっかけとなったが、今のところ、機関投資家はこうしたブロックチェーンベース商品を注意深く見守りながら、背後にいるプラットフォームに株式投資べく資産を準備しているようだ。

フロリダ州マイアミ拠点のMeta4 Capital(メタ4キャピタル)は、このトレンドに逆らい、集めた資金をプロジェクトそのものにつぎ込み、画素の粗いカエルやデジタルの馬や少々疲れたサルを買い占めている。これは多くの伝統的スタートアップが一蹴する大胆な判断だが、チームはすでに大きな後ろ盾を得ている。リードインベスターはベンチャーキャピタルおAndreessen Horowitz(a16z)だ。Meta4は最終的に、a16zが支える1億ドル(約114億円)のファンドをターゲットにしている。

共同ファンダーのBrandon Buchanan(ブランドン・ブキャナン)氏とNabyl Charania(ナビル・チャラニア)氏は、著名VCのファンドに支えられて、予測可能性がないことでよく知られている市場に新境地を開こうとしている。Meta4の関心事は、認められた優良NFTプロジェクトの希少品を買うことであり、数には注目していない。2021年同社は、100万ドル(約1億1000万円)のパイロットファンドを立ち上げ、その資金でNFTを31件だけ購入した。その中には1組のCryptoPunks(クリプトパンク)やCrypToadz(クリプトトーズ)の他、 Zed Run(ゼッド・ラン)の馬がいくつか入っている。彼らの投資は、ここ数カ月の市場回復を受けて、すでに価値総額が500~600%になっていると言われている。

関連記事:イーサリアムの「最古のNFTプロジェクト」CryptoPunksをめぐる驚くべき熱狂

2021年4月にBeeple(ピープル)のコラージュが6900万ドル(約78億6000万円)で売れた後、NFTが初めて多くの投資家の目に止まって以来、驚くばかりの資金がこのスペースに流入している。8月にはNFTプラットフォームのOpenSea(オープンシー)が取引高34億ドル(約3873億3000万円)の新記録を打ち立てた。劇的な投資急増のきっかけの1つとなったのが、ビジネスインフルエンサーのGary Vaynerchuk(ゲイリー・ベイナーチャック)氏が、稀少なCryptPunkサルを376万ドル(約4億3000万円)で買ったことだった。高額取引の勢いは続いた。今週、レアなBored Ape(ボアード・エイプ、退屈なサル)が270万ドル(実際には696.969ETH、約3億1000万円)で売れた。

「私は投資家に対し、『ツナミ』はまだきもいないと言っています。これは必要な代物、今すぐ必要な代物。エイリアンもサルも必要なのです」とブキャナン氏はTechCrunchのインタビューで語った。

NFTスペースに高まる興奮がある分、規制の明瞭性を欠いている。既存ルールの遵守も欠けている。規制当局はCoinbase(コインベース)などの主要取引所に焦点を宛てているようだが、暗号資産投資の世界に関わる前に証券弁護士だったブキャナン氏によると、人気のNFTプロジェクトは闇の領域に陥りつつあるという。多くのNFTプロジェクトが投資家資産のリターンに複雑なメカニズムを開発しており、ブキャナン氏が特に強調したのは、NFTオーナーに独自のトークンを与えるプロジェクトがいくつかあることで、そのふるまいは証券に酷似していると彼はいう。

「私たちがまだ買っていない商品があるのには理由があるのです」。

新しいプロジェクトが毎日出現し、資産の爆発はいくつもの急上昇ユニコーンNFTスタートアップを生み出した。その多くがMeta4を支えるa16zが支援しているもので、OpenSeaやトレーディングカードゲーム、NBA Top ShotのメーカーであるDapper Labs、Axie Infinityを作ったSky Mavisなどがいる。2021年の夏、a16zは22億ドル(約2506億5000万円)の暗号資産に特化したファンドを立ち上げた。Meta4によると、このファンドはアートやコレクションアイテムに焦点を絞り、NFTスタートアップへの株式投資は見合わすようだ。

「(a16zは)そちらはカバー済なのだと私は思っています」とブキャナン氏はいう。

画像クレジット:Meta4 Capital

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

友達が食べているものがわかったり注文もできるソーシャルフードオーダープラットフォームSnackpass

あらゆる食品デリバリー企業が、割引コードやより迅速なサービス、さらにはゴーストキッチンやダークストアといった領域への進出などでライバルに差をつけようとしている一方で、友人が何を食べているかを見たり、食べ物や飲み物を注文し合ったり、グループオーダーをして購入者が自分で受け取りに行くといった、よりライトでソーシャルなコンセプトで作られたスタートアップ企業が、多額のシリーズBを調達したばかりで、すでに多くの市場で利益を上げているという。

Snackpassは、自らを「food meets friends(食で友達とつながる)」と表現し、本質的にはレストランでの注文のためのソーシャルコマースプラットフォームであるとしている。CEOによれば「snack」には「食べる」という意味と「かわいい人」を意味する媚びた意味があるとのことだが、当社は7000万ドル(約77億4100万円)という超大型のシリーズBを獲得し、資金は米国内のより多くの市場への拡大を継続するために使用される。

Snackpassは、4年前、Jamie Marshall(ジェイミー・マーシャル)と共同で会社を設立したCEOのKevin Tan(ケビン・タン)がまだイェール大学で物理学を専攻していた頃に構想され、高等教育機関というルーツに忠実であり続けることで成長してきた。現在、同社は13の大学都市に50万人のユーザーを抱え、前年比7倍の爆発的な成長を遂げている。今回のラウンドで、同社の企業価値は4億ドル(約442億2000万円)以上になる。

今回の資金調達には、興味深い投資家グループが参加している。Craft Ventures(クラフト・ベンチャーズ)を筆頭に、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、2100万ドル(約23億1900万円)のシリーズAを主導)、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)、Yコンビネータ、Pioneer Fund(パイオニア・ファンド、YCの卒業生によるファンド)、そして個人の出資者が多数参加しており、Snackpassが注目されていること、そしてミレニアル世代や若いユーザーが利用するフードプラットフォームとしての地位を確立しつつあることを物語っている。

このリストには、Airbnbの卒業生による投資家のシンジケートであるAirAngels、Uberに買収された配送大手Postmates(Bastian、お前もか)、ホスピタリティ起業家のDavid Grutman(デイビット・グラットマン)、ゴールデンステート・ウォリアーズのDraymond Green(ドレイモンド・グリーン)、Gaingels、Kevin Hart(ケヴィン・ハート)のベンチャーファンドであるHartBeat Ventures、ミュージシャンのJonas Brothers(ジョナス・ブラザーズ)、Shrug Capital(「非技術系」の消費者向けスタートアップに興味があるというベンチャーキャピタル)、Boston Celtics(ボストン・セルティックス)の共同オーナーであるStephen Pagliuca(スティーブン・パリウカ)のファミリーオフィスであるPags Group、ヒップホップDJのスティーブ・アオキ、Banana CapitalのTurner Novak(ターナー・ノヴァック)、Moving CapitalのWilliam Barnes(ウィリアム・バーンズ)、そしてUberの卒業生による投資家シンジケートなどが含まれている。

最近の食品注文プラットフォームの多くはデリバリーに焦点を当てており、多くの場合、その実行方法において他のプラットフォームよりも優位に立つ方法を模索しているが、それらのコスト差は往々にして非常に小さい。Snackpassの大きな突破口は、単純にそのような出し抜き作戦から撤退し、そうした前提から離れて、もっと平凡なもの、つまり行列をなくすことを目指したことだ。

タンは、Snackpassがユーザーにもしアプリを使っていなかったらどうするかを尋ねたところ「ああ、列に並んで注文するだけですよ」と答えたとインタビューで語っている。

「現在のマーケットシェアは、レジに並んで注文する人が占めています。私たちのビジョンは、5年後にはそのような光景はなくなっている、例えばレジがなくなっていることです。そうした行為は意味のないことだと思っています」。

彼は、どうしても配達を希望する人には、配達を選択することもできると付け加える。SnackpassはUberEatsのようなデリバリーサービスと統合しているが、Snackpassでの注文の90%は店頭受取だ。つまり、自社で配達員やそのインフラを用意する必要がないだけでなく、そのための運営コストもかからないということだ。

実際には、多くの若者が何かおいしいものを食べに行くことを喜んでいるようだ。つまり、社交的になり、食べ物や飲み物(タピオカティーが多い)を買った場所で自撮りをする。それが1つの経験になるのだ。

これは、別の意味で市場が存在する場所でもある。

タンは「デリバリー市場は、レストラン業界の8%に過ぎないということを人々は知らないのです。デリバリーは大手企業が競って参入しており、巨大な市場ですが、レストラン業界はそれよりもはるかに大きく、8000億ドル(約88兆3816億円)もの規模があります。そして、その購買の90%は未だにオフラインで行われています」と、行列に並び、注文し、購入して帰る多くの人々のことを指していう。「この購買方法は匿名性が高く、今まさに崩壊の危機に瀕しています。私たちは、その大きなブルーオーシャンに注目しています」。

そのやり方は、ターゲットとなるユーザーに効果を発揮しているようだ。タンは、このサービスを開始した市場では、学生への浸透率が80%に達しているという。平均的な顧客は月に4.5回注文し、中には毎日注文する顧客もいるという。「UberEatsのようなデリバリープラットフォームの5倍から10倍のエンゲージメントがあることが実際にわかります」。

同社のコミッションは7%からとなっており、現在はオンライン注文、セルフサービスキオスク、デジタルメニュー、マーケティングサービス、顧客紹介プログラムなどを提供している。すでに(特定の市場で)利益を上げているが、今後の成長に合わせて(他の購買層にも拡大するかもしれない)、これらすべてを追加・拡張していくことが考えられる。

Snackpassには、Snapchatを彷彿とさせる何かがある。それは、名前の響きが似ているということだけではなく、どちらも大学生のユーザーに支持されているということだけでもない(そして、どちらも彼らを正面切ってターゲットにしているということだけでもない)。それは、このアプリの少し変わっている点であり、そして他の方法では面倒だと感じたり、平凡だと感じたり、基本的には年配の人がすることだと思われることを、いかに軽いタッチで行うかということなのだ。

今のところ、SnackpassにはSNSとしての「ユーザー数グラフ」それ自体はなく、特定のSNSアプリとも深く連携していないが、SnapやFacebookのような企業が商売に大きく関与していることを考えれば、将来的にはパートナーシップを結ぶことも考えられる。

クラフトベンチャーズのパートナーであるBryan Rosenblatt(ブライアン・ローゼンブラット)はこう語る。「Snackpassは、共有された報酬、プレゼント、SNSのアクティビティフィードを通じて食を中心としたソーシャルな体験を構築することで、ダイナミックで魅力的なレストラン注文システムを作り上げました。その市場の成長と製品の口コミによる人気は、Snackpassの優れたチームとビジョンと相まって、消費者と企業の両方にとって究極のソリューションとなっています。今回の資金調達により、Snackpassを次のレベルに引き上げるお手伝いができることをうれしく思います」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

温暖化でリスクが高まる山火事に備える家屋強化のマーケットプレイス「Firemaps」にa16zが出資

世界中の国々を山火事が襲っている。カリフォルニア州は史上最悪(この比較級を毎年のように使っている気がする)の山火事に対処中であり、州北部ではCaldor fire(カルドア・ファイアー)などの火災が起きている。一方、ギリシアをはじめとする地中海の国々は数週間に渡る消火活動の結果巨大な火災を鎮圧した

気候温暖化が進む中、米国だけでも数百万世帯が山火事の高リスク地域に位置している。保険会社と政府は家屋所有者に対し、いわゆる「hardening」(ハードニング、耐火性強化)を実施するよう緊急な圧力をかけている。火災に遭った際に家屋が損害を免れる可能性を最大限に高め、それ以上災害を広げないための対策だ。

サンフランシスコ拠点のFiremaps(ファイアマップス)は、事業規模を急速に拡大し、複雑で時間のかかる手続きをできる限り簡易化することで、家屋ハードニングの問題を解決する、という壮大なビジョンを持っている。

会社は数カ月前(2021年3月)に創業したばかりで、ドローンを装備した作業員を山火事の高リスク地域にある家屋に派遣する。作業チームは20分以内に、センチメートル単位で物件の高解像度3Dモデルを作成する。そこからハードニングのプランを構成し、同社のマーケットプレイスに参加している業者に入札依頼が送られる。

ドローンで家をスキャンした後、Firemapsは建築物と近隣物件の高精細CADモデルを作成する(画像クレジット:Firemaps)

始まったばかりだがサービスはすでに好調だ。同社ウェブサイトに登録した数百人のホームオーナーに加えて、数十人がドローンによるスキャンを終えており、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)のAndrew Chen(アンドリュー・チェン)氏は同社の550万ドル(約6億円)のシードラウンドをリードした(Form D申請書によるとラウンドは4月ごろ実施された)。ラウンドにはUber(ウーバー)CEOのDara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏、Addition(アディション)のLee Fixel(リー・フィクセル)氏も参加している。

Firemapsを率いるJahan Khanna(ジャハン・カンナ)氏は都市工学の長い経験を持つ弟とRob Moran(ロブ・モラン)氏の3人で会社を共同設立した。カンナ氏は初期のライドシェアリングスタートアップ、Sidecar(サイドカー)の共同ファウンダー兼CTOで、モラン氏は同社の初期従業員の1人だった。3人は気候問題にどう取り組むかを繰り返し研究しながら、今ここににいる人たちを助けることに焦点を当て続けてきた。「人類が(気候に関する)一定のしきい値を超えてしまった今、私たちはこの問題を制御する必要があります」とカンナ氏は言った。「当社はそのソリューションの一部です」。

過去数年間、カンナ氏兄弟はカリフォルニアにソーラー施設かソーラー利用の家屋を作ろうとしていた。「誰と話した時にも驚いたのは、カリフォルニアには何も建てられない、なぜなら燃えてしまうから、と言われたことでした」とカンナ氏は言った。「それが転機でした」。2人は火災ハードニングについて調べるうちに、何百万というホームオーナーが、手軽で安い選択肢を必要としていることを知った。それもできるだけ早く。

家を火災に強くする方法は何十とある。家から1〜2メートル以内に耐火ゾーンを作るのはその1つで、花崗岩の砂利を置くことが多い。天井裏の換気口や排水溝、家の羽目板などを耐火性で高温に耐えられるようにすることもそうだ。これらの方法の価格はさまざまだが、一部の自治体や州政府は、助成金プログラムを設けて、ホームオーナーがこうした改善にかけた費用の一部でも取り戻せるようにしている。

Firemapsの3Dモデルで描かれた家にハードニングの代表例と価格が表示されている(画像クレジット:Firemaps)

同社のビジネスモデルはシンプルだ。選別された契約業者は、Firemapsのプラットフォームに掲載料を支払う。カンナ氏は、同社がドローンを使った家屋の総合的モデルを提供するので、契約業者は自分で現地視察をすることなく入札に参加できる、と考えている。「業者はすぐに取りかかれるプロジェクトが手に入るので、取得コストは事実上ゼロです」とカンナ氏は言った。

長期的に「当社の事業上の仮説は、プラットフォームを作り、このような家屋のモデルを作ることには本質的な価値がある、というものです」とカンナ氏は言った。現在同社はカリフォルニア州でサービスを開始し、2022年の目標は「このモデルを反復、スケール可能にして週に何百もの家屋をスキャンすることです」と彼は言った。

関連記事:国連IPCCの報告書を受け、我々には増加する災害に対応する技術が必要だ
画像クレジット:Firemaps

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nob Takahashi / facebook

暗号通貨スタートアップのPhantomがマルチチェーンウォレット拡大のためa16zから資金調達

2021年、個人投資家がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)を購入することに慣れてきた一方で、分散型アプリケーションの世界では、主流のユーザーベースを取り込むことに関してまだ多くの仕事が残っている。

Phantom(ファントム)は、暗号資産スタートアップの新しい層の1つだ。ブロックチェーンベースのアプリケーションを合理化するインフラを構築し、暗号通貨の世界をナビゲートするための、よりユーザーフレンドリーなUXを提供することを目指す。開発者ではなく、利用者にとって空間全体をより親しみやすいものにしようとしている。ユーザーは、Phantomウォレットをブラウザにダウンロードすると、アプリケーションとのやりとりやトークンの交換、NFTの収集などができる。

この暗号通貨ウォレットメーカーはシリーズAラウンドで900万ドル(約10億円)を調達した。ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードし、Variant Fund、Jump Capital、DeFi Alliance、Solana Foundation、Garry Tanも参加した。今年の夏の初めにクローズしたこのラウンドは、市場全体の不安定な状態が続いているにもかかわらず、暗号資産の未来を受け入れるベンチャーキャピタルが出てきたことを意味する。a16zは先月、22億ドル(約2420億円)の暗号通貨ファンドを発表した。これは業界に特化した同社の投資ビークルとして最大だ。

画像:Phantom提供

CEOのBrandon Millman(ブランドン・ミルマン)氏、CPOのChris Kalani(クリス・カラニ)氏、CTOのFrancesco Agosti(フランセスコ・アゴスティ)氏の共同創業チームは、いずれも暗号資産インフラのスタートアップである0xから移った。

Phantomは現在、Solanaコミュニティーで最もよく知られており、そのブロックチェーン上のアプリケーションとして最適なウォレットとなっている。ミルマン氏がTechCrunchに語ったところによると、同社はより広範なネットワークとのインターフェースに取り組んでおり、現在、イーサリアムとの互換性を構築している。また、他のブロックチェーンの準備もしており、「マルチチェーンの世界」のための製品を目指している。

Phantomは、他のネットワークへの対応を進めると同時に、より洗練されたDeFiメカニズムをウォレットに組み込み、ユーザーが暗号資産に賭けたり、ウォレット内でより多くのトークンを交換したりできるようにしたいと考えている。

Phantom社によると、既存のウォレット製品のユーザー数は約4万人とのことだ。

人気の高いイーサリアムのブロックチェーン上で存在感を示すのは難しいことだが、Phantomの最も大きな課題は、新しい種類の暗号資産に興味のあるユーザーが、主流になるにはまだ長い道のりを必要とするアプリのネットワークにアクセスできるようにすることだ。

「この分野全体が『開発者が他の開発者のために作ったもの』という状態に陥っています」とミルマン氏は話す。「ハードルの高さはそのまま放置されていました。より高いハードルを目指す人はいませんでした」。

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画像クレジット:Phantom

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

110兆円の馬たち、過剰な調達ラウンド、そしてFutureの未来

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

短い1週間が過ぎた。雑談のネタはあまりないが、お伝えしたいことはたくさんある。だが、それは楽しい話題ばかりなので、一緒に楽しむことにしよう!

まずは、高価な四足動物についての話題。

1兆ドル(110兆円)の馬とは?

The Echangeは、先週から2021年第2四半期のベンチャーキャピタル市場の調査を始めている。Anna(アンナ)の協力で、最初の記事はかなりいい感じに仕上がったと思う。他にもたくさんの記事が待ち構えている。しかし、ユニコーン関連の数字が、私の心を鷲掴みにした。考えてみて欲しい

  • 2021年第2四半期に生まれたユニコーンの数は136社で、過去最高を記録した。
  • CB Insights(CBインサイツ)が指摘するように、これは「1年前の2020年第2四半期に誕生した23社のユニコーンの約6倍であり、2020年全体で誕生した128社のユニコーンをすでに上回っている」のだ。

この角の生えた馬(ユニコーン)ブームの結果、現在世界には750頭のユニコーンがいることになった。元TechCrunch関係者で優秀な人間であるKatie Roof(ケイティ・ルーフ)氏がこの統計をツイートしたとき、私が最初に思ったのは、ユニコーンの価値が合わせて1兆ドル(約110兆円)を超えたということだ。

だがその直感は大きく外れていた。実際の数字は2.4兆ドル(約260兆円)近くなのだ(CB Insightsのデータによる)。これは驚くべき大きな数字だ。比較してみると、世界の未上場ユニコーンの合計は、現在のApple(アップル)の価値の2兆4200億ドル(約266兆円、Yahoo Finance調べ)とほぼ同額である。

ひょっとすると私は、現在ほとんど凍結された状態で非公開市場に置かれているユニコーン株式の量に、過剰反応しているのかもしれない。特にユニコーンのエグジットは増えているのだから。しかし、今日の高いエグジットレベルをもってしても、時間をかけてこの特別な状況を解消していくことは可能なのだろうか?いや、そうとは思えない。第2四半期に、週末を含めても1日あたり1.5社のユニコーンが増え続ける状況の中ではそれは無理な話だ。

資金調達ラウンド

先週は1つの資金調達ラウンド(非常に興味深かったこのr2cラウンド)についてしか書けなかった。その大きな理由は、他に噛み砕くべきことがたくさんあったからだ。しかし、より詳細な財務情報を掲載していないラウンドは取材しないと宣言してから、ベンチャーキャピタルからのピッチの入力がゆっくりになったのも事実だ。

先週の連休でピッチのボリュームが減ったのか、それとも私がみんなを怖がらせてしまったのかはまだはっきりしない。しかし、私は資金調達ラウンドのピッチのインバウンド量を、全体としても、業界別 としても、何が起こっているのかを判断するための材料に利用している。だから私は読者のみなさんに(1)私に何かネタを送ってもらえること、(2)それと同時にたくさんの情報も共有してもらえることを期待している。

宇宙のSPAC

Y Combinator(Yコンビネーター)はきちんとした組織だ。その最近の投資先の1つが、 Albedo(アルベド)だ。同社は地球の超高解像度写真を撮影する低軌道衛星のネットワークを構築することを目指すスタートアップである。それを実現するのはNatasha(ナターシャ)記者の言葉を借りるならクソ難しいことだが、既製の衛星部品や軌道上での燃料補給などの、さまざまな新しい技術を導入することで、可能になるかもしれない。

関連記事:10cmの高解像度衛星画像提供を目指すAlbedoが10.8億円調達

Albedoやそれに似た会社があるからこそ、私は毎年Demo Day(デモデー)を見に行くのだ。今後何が起きるかを目にする機会を持つことができるし、非常にわかりやすく楽しい体験だ。

だからこそ、今週、衛星画像処理会社2社がSPACで株式公開することを発表したときに、私は興味をそそられた。わかったことは、この両社が狙っているのは、低解像度の画像を提供することなので、真の意味でAlbedoとは競合しないということだ。しかし、彼らは……別の理由で注目されている。

Satellogic(サテロジック)は、このシンプルで芸術的な一連のチャートを提供している(各チャートの日付は必ず確認して欲しい)。

画像クレジット:Satellogic

また、Planet(プラネット)は下のグラフのように、衛星技術の経済がいかに未来にかかっているかを強調している。

画像クレジット:Planet

同社の長期的な粗利益率の目標は80~85%(資料によれば売上原価は15~20%)だが、そこに到達するまでにどれだけの時間がかかるかがここから読み取れる。これは、ベンチャーキャピタルの世界に興味深い問題を投げかけている。

つまり、Albedoのような企業が、十分なネットワークを構築し、スケールアップするためには多くの時間と資金が必要になるということだ。そして、普通のソフトウェア会社なら製品を販売した初日から得られるような粗利益を得るために、規模を拡大していくことにも時間がかかるだろう。

これが、たとえわずかでも持続的な成長が期待できるソフトウェア製品に多くの資金が集まっている理由の1つだ。利益率の高い経常収益は、価値創造のためのチートコードのようなものなのだ。そうして、投資家はだれでもそこに資金を投入したいと考えることになる。衛星技術は、一般に非常に重要なものなのだが、とにかくコストが高く、時間がかかる技術なのだ。

私の疑問は、ソフトウェア企業がベンチャーキャピタルへのリターンを生み出すことに長けているせいで、他の形態のスタートアップ企業が注目や資本を得るために苦労するのではないか?ということだ。すでにそうなのだろうか?

Future

最後に、取り上げるのはFuture(フューチャー)だ。正確にいえば、Future(未来)の未来だ。私はこのa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)によるサイトが気になっている。

このサイトが開設されて以来、私は毎週数回チェックしては、ベンチャーキャピタルの集合的意識を知りたいと思ってきた。私がそうするのは、私が変人だからというだけではない──まあ変人だけど!──またメディアがハイテクを嫌っているという記事を読んで心配したからでもあるが──率直に言えば──宇宙的に潤沢な資金を持つベンチャーグループがどんなサイトを作るのかに興味があったからだ。やはりすばらしい人材が採用されている。

私たちはFutureブログの発行サイクルの合間を縫っているようだ。メインコンテンツの最後の記事が出たのは約1カ月前で、最新のエントリーは6月25日付だ。そしてその最新記事は、7月にさらなるコンテンツを出す約束をしたメモに過ぎない。

これは予算、約束、派手なドメイン、そしてa16zの世界の中で何かを語るべき人の数を考えると、少々物足りないかも?もっとたくさんの言葉を尽くせばよいのに。7月がどうなるかに期待しよう。

さて今回はここまでとしよう。ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeユニコーン企業SPACa16z

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

従業員のコミュニケーションをパーソナライズし本当に重要な社内メッセージを確実に送る「Pyn」

最近のマーケターのほとんどは、ターゲットを絞ったコミュニケーションを顧客に送信する方法を知っており、役立つツールもたくさんある。だがパーソナライズされたメッセージを社内で送信するとなると、選択肢はそれほど多くない。オーストラリアを拠点とするアーリーステージのスタートアップであるPyn(ピン)はそれを変えたいと考えており、現地時間5月28日、800万ドル(約8億8000万円)のシードラウンドを発表した。

Andreessen Horowitzが投資をリードし、Accel、BambooHRの共同創業者であるRyan Sanders(ライアン・サンダース)氏、Atlassianの共同創業者で共同CEOのScott Farquhar(スコット・ファクファー)氏が参加した。

最後の1社は偶然ではない。Pynの共同創業者でCEOのJoris Luijke(ジョリス・ルイク)氏は、Atlassianで人事を担当し、後にSquarespaceや他の会社でも人事を担当した。同氏は、社内コミュニケーションにおいてターゲットを絞ったメッセージを提供するという一般的な課題に気づいた。

「私はプロフェッショナルとしてのキャリアを通してこの問題に取り組み、人々が受け取るメッセージをパーソナライズしようとしてきました。つまりそれがPynが行おうとしていることです。ひと言でいえば、私たちは従業員のコミュニケーションを根本からパーソナライズします」とルイク氏は説明する。共同創業者であるJon Williams(ジョン・ウィリアムズ)氏は、従業員体験管理プラットフォームであるCulture Ampの共同創業者だった。同氏は2011年にCulture Ampの立ち上げを支援した(同社は1億5000万ドル、約165億円以上を調達した)こともあり、2人はこのアイデアに没頭した。

彼らはWorkday、BambooHR、Salesforce、Zendeskなど、企業がすでに使用している既存システムの情報を利用し、Pynにパーソナライゼーションをもたらした。そしてマーケターがさまざまなタイプの情報を活用してパーソナライズされたメッセージを顧客に送るのと同じように、彼らは既存システムのデータを利用する。

つまり、すべての人に関係があるわけではないのに社内の全員が受け取る電子メールを削減し、受信する人にとって本当に重要なメッセージを送信できるということだ。また、マーケティングコミュニケーションツールと同様に、メールを開いた人の数がわかるため、目的を達成できたかどうかを確認できる。

a16zのゼネラルパートナーであり、今回の取引のリードインベスターでもあるDavid Ulevitch(デービッド・ウレビッチ)氏は「Pynは組織全体の文化の構築とポリシーの設定に役立つ、カスタマイズ可能なコミュニケーション資料のライブラリーも提供しています」と指摘する。「Pynはまた、従業員のコミュニケーションチャネルを『レール』として扱います。レールの上で、管理のためのプレイブックのライブラリーを提供することにより、組織全体を管理することができます」と同氏は投資を発表したブログ投稿で述べた。

2019年に立ち上げられたこのスタートアップには現在10人の従業員がおり、チームはオーストラリアとカリフォルニアのベイエリアで働いている。ウィリアムズ氏によると、チームの半分はすでに女性であり、会社を拡大するにあたり多様性を最優先とする計画だ。

「ジョリスは『ラディカルなパーソナライズ』が私たちのマントラだと言っています。これを組織に当てはめると、つまり実際にはインクルージョン(包摂性)に関わることです。私たちが1人1人のニーズに応えたいなら、それを理解する必要があります。ですから、私たちにとって多様性は極めて重要です」とウィリアムズ氏は語った。

同社は顧客数の詳細を開示していないが、Shopify、Rubrik、Cartaを初期の顧客として挙げている。創業者らによると、2020年のパンデミックで多くの関心が寄せられ、頻繁で意味のあるコミュニケーションがさらに重要になったという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Pyn資金調達オーストラリアAndreessen Horowitz

画像クレジット:Muqamba / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi