詐欺まがいのサブスクリプションの排除に舵を切ったApple

Appleは、ユーザーを騙してサブスクリプションに引き込むのは止めろ、というメッセージをデベロッパーに送っている。それは、モバイルアプリのデベロッパー向けガイドラインを更新し、許されることと許されないことの線引を明確に定義したことによるもの。この最近の変更点は、9to5Macによって発見された。この文書の改定のタイミングは、サブスクリプションが消費者にとって何かしら災難のように感じられ始めたことと時機を同じくしている。

サブスクリプションは、すべてのアプリがそのサービスに移行してしまうのではないかと思われるほど、急速に普及した。それは結局のところ、ユーザーにお気に入りのアプリの利用を止めさせることになりかねない。なぜなら、何十ものアプリの支払いがずっと続くのは、大きな金銭的負担となるからだ。しかしもっと喫緊の問題は、サブスクリプションに関するルールの適用が甘いせいで、グレーなアプリデベロッパーの懐を肥やしてきたことだ。

サブスクリプションは、アップストア上の大きなビジネスとなっている。アプリ業界は、無料アプリ内の1回限りの購入や有料ダウンロードから、継続的な収益が得られるモデルへと移行してきた。常にアプリを改良し、新機能をリリースし続けるデベロッパーにとって、サブスクリプションは、そうした仕事を続けるための財政的な支えとなる。それがなければ、常に新規のユーザーを開拓し続けなければならない。

しかし、必ずしもすべてのデベロッパーがフェアに振る舞ってきたわけではない。

TechCrunchが昨年の秋に報告したように、多くの詐欺師たちは、サブスクリプションモデルを悪用し、無料ユーザーにしつこくアップグレードを促し、消費者を騙して継続的な支払いに誘い込んでいる。

アップグレードを促すプロンプトを頻繁にポップアップしたり、そのプロンプトウィンドウを閉じるための「×」を隠したりするアプリがある。また、無料トライアルを謳いながら、非常に短期間、たとえば3日で有料版になってしまうものがある。あるいは、わざと混乱を招くようなデザインを採用し、サブスクリプションのオプトインのボタンが「始める」とか「続ける」のような大きな文字になっているものもある。それでいて、それによりサブスクリプション料金の支払いに同意することになる、と説明する文字は小さく、薄く、読みにくくなっていたり、何らかの方法で隠されていたりする。

Appleのデベロッパーガイドラインは、これまでもサブスクリプションに関して詐欺的な行為を明確に禁止してきたが、現在では可否を具体的に記述している。

9to5Macが見つけたところでは、AppleのヒューマンインターフェースガイドラインApp Storeのドキュメントの改定の結果、サブスクリプションの月額を明記するよう、はっきりと記述された。また、長期間を選ぶと、いくらお得になるかといった情報は、あまり目立たないようにしなければならない。

無料トライアルに関する記述には、トライアルの期間の長さと、トライアル期間が終了したときにかかる料金を明示しなければならなくなった。

こうした新しいドキュメント自体も明瞭な構成となっていて、適切なサブスクリプションのためのサインアップの手順が、スクリーンショット付きで示されている。また、デベロッパーが各自のアプリ用に修正して使えるような、サンプルテキストも含まれている。さらに、ユーザーがApp Store内のサブスクリプションのセクションを探すのではなく、アプリ内で自分のサブスクリプションを管理できるようにすることを、デベロッパーに促している。

今日、多くのユーザーは、いったん有効にしたサブスクリプションを停止する方法を理解してない。 iPhoneの「設定」から、サブスクリプションのセクションにたどり着くには、いくつものステップが必要となる。App Storeからでも、2、3ステップかかる。(しかも分かりにくい。ホームページの右上にある自分のプロフィールアイコンをタップし、次にApple IDをタップしてから、そのページのいちばん下までスクロールする。それに比べると、Google Playでは、左側のハンバーガーメニューを1回タップするだけで、「定期購入」セクションを表示できる。)

すべきことと、すべきでないことを明確に記述したドキュメントの存在は歓迎できるが、現時点での本当の問題は、Appleがそのルールをどの程度まで厳密に適用するか、ということだ。

結局のところ、Appleは以前からサブスクリプションに関する詐欺やごまかしを容認してきたわけではないが、App Storeの、特にユーティリティのカテゴリには、それなりの数のたちの悪いものが巣食っていたというわけだ。

もちろん、Appleとしても、App Store内で、誤解を招くような、あるいは詐欺的なアプリが幅を利かせているというような風評が立つことは望んでいない。しかし、それはそれでAppleに利益をもたらすことになる。

App Annieのレポート、「State of Mobile 2019」によれば、ゲームは依然としてApp Storeでの支払額の大部分を占めているものの、現在ではゲーム以外のアプリも、App Store全体の4分の1を超える(26%)までになった。そして、その数字は2016年から18%も増加している。これは、主にアプリ内サブスクリプションのためなのだ。

重要なのは、サブスクリプションを市場に広めるための適切な方法を会得することだ。しかし、長い目で見たときに、デベロッパーにとってサブスクリプションが、果たして持続可能なモデルになり得るのか、という大きな疑問もある。今日のApp Storeでは、サブスクリプションを一種のゴールドラッシュ的なものととらえる風潮が広まっている。実際、毎月のように転がり込む目先の利益には抗しがたいものがある。

しかし、より多くのデベロッパーがサブスクリプションを採用すれば、消費者は自分にとって本当に価値があるものを最終的に選択しなければならなくなる。Apple Storeに限らず、すでに多くのサブスクリプション料金を支払っているからだ。たとえば、Netflixのようなストリーミングビデオ、Spotifyのようなストリーミングミュージック、YouTube TVのようなストリーミングTV、Ipsyのような定期購入、Amazonプライムのメンバーシップ、Instacartのような食料品の配達、RingやNestのようなスマートホームのサブスクリプション、新聞や雑誌、ニュースレター、などなど。最終的に、自撮りのエディタ、To-Doリスト、天気予報アプリ、といったものに残される取り分はあるのだろうか?

多くの消費者は、これ以上は払えないという段階に達し始めている。新しいものを有効にするために、何かを無効にしなければならない。そうなれば、サブスクリプションアプリのユーザーベースは縮小せざるを得ない。有料のサブスクリプションに留まるのは、コアなユーザーだけ。それほどこだわらないユーザーは、たとえばApple純正の標準アプリや、Googleのような裕福な大企業が提供する無料サービスに戻るだけだ。

Appleは、アプリの実装や設計方法だけでなく、そのアプリにとってサブスクリプションが意味がある場合には、デベロッパーにそれをアドバイスするようにすれば良いだろう。サブスクリプションは、単にアプリを使い続けられるようにするだけでなく、本当の価値を提供すべきだ。また、いつもサブスクリプションを拒否するようなユーザーをアプリにつなぎ留めておくには、1回限りの購入のオプションが有効な場合もあるはずだ。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Apple、ビデオストリーミング・サービスを今春スタートか?

Appleは新しいビデオストリーミング・サービスを今春開始する予定であることを、The Informationが報じた。Amazonがビデオ・サブスクリプション・サービスをトーンダウンするらしいという記事の中で、The Informationは、Appleがエンターテイメント・パートナーに対してストリーミングサービスを4月中旬にスタートする準備が整ったと言っていることを伝えている。同じ記事で、実際の開始日はその時期から数週間以内になるかもしれないとも書いている。

この春というスタート時期は、Appleのビデオストリーミング・サービスが2019年前半に公開されるだろう、という 以前の報道と一致している

Apple CEO Tim Cookは、今月CNBCで話した際にこの計画を曖昧に肯定した。彼は、Appleは今年、一連の提供サービスへの「重要な」追加について発表すると語った。そこには、これも今春の公開が噂されるニュース・雑誌の購読サービスや、医療分野の新サービスの可能性も含まれているかもしれない。

Appleは以前からストリーミングサービスの準備に忙しく、数多くのTV番組や映画の権利を取得したり契約を結んだりしてきた。今週月曜日(米国時間1/28)にはサンダンス映画祭2019で初めて映画の契約を結んだ。

しかし、Appleのオリジナルコンテンツだけが、新サービスの注目点ではない。

Appleはビデオサービスの一環として、Amazon Channels風の機能を提供するかもしれない、と記事は伝えている。これも、以前BloombergCNBCが報じていたことだ。

このAmazon Channelsライクなモデルは、そのオーバーヘッドの低さとAmazonとRokuがサブスクリプション販売で得ている高い手数料(30%前後とThe Informationは言っている)ゆえに、競争の激しいストリーミング市場で広く模倣されている。

たとえば今週RokuはThe Roku Channelの中で独自のビデオ・サブスクリプションをスタートした。 Sling TVは昨年さまざまなプレミアムチャンネルを提供し、メディアセンター向けソフトウェアの開発メーカーであるPlexも2019年に同じことを計画している。Walmartは同社のビデオマーケットプレイスであるVuduを通じてこの市場への参入すると噂されている。現在Vuduはストリーミングでの戦いに焦点を当てようとしている

Facebookまでも、Amazon Channel方式を考慮中だと記事は伝えている。

Amazonが今春、早ければ4月中旬にもサービスをスタートすることで、Disney+と直接対決することになる。Disney+はDisney傘下のNetflix競合サービスで、4月11日、投資家に 披露された

しかし、未だに不明なのはAppleがどうやってこのストリーミングサービスのマーケティングや販売を行うつもりなのかという点だ。この部分は記事によって異なり、 Apple Musicとニュースにバンドルされるというものから完全無料まで、さまざまな主張を唱えている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPhoneの全世界のアクティブインストールベースが今四半期で9億台を突破

iPhoneの全世界のアクティブインストールベース(現用インストール総数)が膨大であることは誰もが知っているが、このほど、その正確な数が発表された。Q1の決算報告で同社CFOのLuca Maestriが、それを初めて明かした。

Maestriは曰く、“iPhoneのグローバルなアクティブインストールベースは今も成長を続けており、12月末にはこれまでで最高を記録した。数字を開示するのは今回が初めてだが、9億台を突破した”。

同社の全製品のアクティブインストールベースは、前にも発表したことがある。今日(米国時間1/29)発表されたその数は、12月末現在で14億台、2018年1月末現在の13億台から増加している。決算報告の中では今回も機種別のインストールベースの数値はないが、でも、今回こんな形でiPhoneの台数が公表されたことは、興味深い。

Maestriによると、Appleは今後も“定期的に”、iPhoneと全製品のインストールベースのアップデートを発表するそうだ。

Appleは、何でもいいから明るいニュースが欲しかったのではないか。同社会計年度2019Q1の決算報告には、すでにしぼんでいたマーケットの予想を裏切るような良いニュースがなかった。iPhoneの売上は15%減少した。

関連記事: Apple posts Q1 revenue decline with iPhone sales down 15 percent…Appleの第一四半期売上はiPhoneが15%ダウンして全体としても減少(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple、店舗内セッションを強化、写真、音楽、ヘルスなど新しいToday at Apple、58種類

Appleは、プロダクトの利用に習熟したいユーザーための店内におけるトレーニング・セッションを強化する。Today at Appleに58の新しいセッションが追加された。これはビデオ、写真、アクセシビリティ、コーディング、音楽、健康などが含まれる。世界中のApple店舗で利用でき、参加は無料だ。

Appleは先週、新セッションの発表に際して、クパチーノのApple Parkのキャンパスにわれわれジャーナリストのグループを招いた。、Appleセッションをスキル、ウォーク、ラボという3つのカテゴリーに分けて一日がかりのコースで紹介した。スキルは新しいテクニックをすばやく学ぶためにデザインされた30分のセッションだ。ウォークでは特定のプロダクト、サービスについて体験的に使い方を学ぶ。ラボはユーザー自身がプロジェクトを作成する90分のセッションだ。

Appleのリテール担当シニア・バイスプレジデントのAngela Ahrendtsは招待されたジャーナリストに「スキル、ウォーク、ラボは語学で例えれば、スペイン語講座1、2、3のようなものです。どんなものにも習得のしやすさでいくつかのレベルがあります」と説明した。

「Today at Appleがスタートしたときはシンプルなレッスンの集まりでした。現在はもっと組織化、階層化されています」とAhrendtsは付け加えた。

ビート作成、お絵かき、ジャンプカット編集

私(Dickey)は最初に音楽制作ソフトのGarage Bandのスキル・セッションを体験してみた。ビート・シークエンサーを使うと好みのビートをすばやく作ることができる。このセッションは、この分野のテクノロジーに不慣れで、最初から紹介が必要な人が対象だ。

ウォークはスキルの次のレベルのセッションとしてデザインされている。Appleキャンパスで、われわれはiPad ProとPencil、Procreateアプリを使ってイラストを描いた。われわれは宇宙船のようなAppleキャンパスを歩き回り、好みのスポットで色鮮やかな写真を撮り、その色をProcreateでキャプチャしてから、Appleの多様な描画ツールを使って画像を作成した(下に貼ったのが私の傑作?だ)。

Appleのシニアディレクター、Karl Heiselmanによれば「セッションの中ではウォークがいちばん人気がある。ウォークが人気がある理由は、インターネット上では体験できないからだろう」ということだ。

最上級のレベルはラボだ。われわれはClipsアプリを使ってジャンプカット映像を編集した。

こうしたセッションへの参加はまったく無料だ。Today at Appleはスタートしてから2年近く経つが、Appleは世界の店舗で毎週1万8000ものセッションをホストしてきた。何百万もの人々が参加してきたが、延べ利用者数について Ahrendtsはこう言う。

サインアップが必要なら人数を知るのは簡単ですが、店内の大画面でセッションが公開されると、普段の3倍以上の人が立ち止まって眺めるんです。正確な人数を言うのは難しい。

このようなAppleの店内イベントは ブランド・ロイヤルティを強化し、Googleその他実店舗のネットワークを持たないハードウェア・メーカーとの差別化を図る戦略の一環だ。Appleのオンラインストアは商品の購入とカスタマーサポートの提供を主たる目的としているが、実店舗はそこでの優れた体験の提供に焦点を合わてデザインされているとAhrendtsは述べた。

ユーザーはわざわざ時間をかけて来店するのですから、私たちはもっとヒューマンで満足のいく体験を提供したいと考えています」という。

Ahrendtsは、今回の大規模な新セッション追加をアプリのメジャー・アップデートに例えた。「しかしアプリやOSの場合と同様、インストアの体験もアップデートされ続けます」ということだ。

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滑川海彦@Facebook Google+

AppleはFaceTimeの盗聴バグを修復している間グループ通話機能を無効化

Appleは、盗聴を許す悪質なバグを修復するためのパッチを当てる工事の間、FaceTimeのグループ通話機能を無効にしている。

Appleのステータスページを見ると、“Group FaceTime is temporarily unavailable”となっている。これは今週中に恒久的な修復をするまでの、間に合せの対応だ。グループ通話はちょっと前までは有効にできて問題を再現できたが、今はできない。

すべてうまくいけば、このやり方ではバグのせいでFaceTimeを完全に無効にする必要はないが、気の短い人は焦るだろう。

この脆弱性が露呈したのは月曜日(米国時間1/28)で、誰かがグループ通話を開始してほかの人たちがそれに参加しているときに起きる。詳しくは前の記事で説明しているとおりだ:。

どうやら、FaceTimeのグループコールのシステムのロジックに、バグの原因があるようだ。ここでやり方を書くことは控えるが、このバグによって受信者のスマートフォンはグループコールがすでに進行中である、と思ってしまうらしい。何かタップするとFaceTimeはたちまちトリップ状態になり、まだその起呼を受け取っていないのに受信機のマイクロフォンをonにしてしまう。

さらに奇怪なのは、受信者がその起呼を無視しようとしてボリューム下げボタンや電源ボタンを押すと、こんどはカメラもonになることだ。受信機の画面はその入信を表示しているままだが、マイクロフォンとカメラはストリーミングを開始している。

Appleは、恒久的な対策を数日以内に講じる、と本誌などのメディア上で言っている。

同社のスポークスパーソンは、“この問題はすでに承知しており、すでに対策は分かっているので、今週後半のソフトウェアアップデートでそれをリリースする”、と言っている。

ちょっと気になるのは、iOSのある問題のため、グループ通話機能の提供が計画より遅れたことだ。それは一度加えられたが、iOS 12の8月のベータバージョンでは姿を消し、全ユーザーに行き渡るのにかなり手間取った。iOS 12が9月に全ユーザーに届いたときにはこの機能がなくて、10月のiOS 12.1で提供された。Appleは、遅れの理由を述べていない。

Appleは長年、企業や製品のポリシーとしてプライバシー重視を強調してきただけに、今回のバグは恥ずかしい事件だ。この前のCESでは、誇らしく、“あなたのiPhoneの上で起きることはあなたのiPhoneの上にとどまる”、と宣言していたのだから。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple、2018年の米国サプライヤーとの取引高は600億ドル

Appleは米国内での消費の最新情報を公開した。それによるとAppleは現在米国内9000社の企業と取引がある。それらの会社はApple製品のハードウェア部品やチップセットを主として扱っている。

一昨年Appleが、Finisar社の米国内生産拡大のために3.9億ドルを投資することを発表したのを覚えているだろうか。FinisarはiPhoneとiPad Proの重要コンポーネントであるTrueDepthカメラシステムを作っている会社だ

その投資は、米国拠点の企業を支援するための基金、Advanced Manufacturing Fundに10億ドルを注ぎ込むことを発表した計画の一部だった。

ただしAppleは、すでにもっと大きい金額を米国企業のために費やしている。2018年だけでAppleは600億ドルを使っており、これは2017年より10%増えている。同社はこれが約45万人の職を生み出したと推定している。

Finisarに加えて、Appleはほかにもパートナーの名前を上げた。Corning、Cincinnati Test Systems、およびBroadcomの3社だ。

そして、現在なんらかの形でAppleの仕事をしている人々を勘定に入れると、現在米国内で200万人が、従業員、請負業者、店長、サプライヤーなどとしてAppleの力になっている。この数字は2011年には60万人だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、App Storeデベロッパーは2008年以降、1200億ドル稼いだと発表

AppleのEntrepreneur Campがクパチーノで開幕した。 アプリのデベロッパーを創業した11人の女性起業家がAppleとのディスカッションやワークショップ参加のために招待されている。Appleはそのチャンスを利用してApp Storeの売上に関して新しい数字を公表した。

App Storeのスタート以来、AppleはApp Storeのデベロッパーに1200億ドルの売上を分配してきたという。つまり、App Store自身の売上はこれよりもずっと大きいわけだ。1,200億ドルはAppleの取り分を除いて開発者に支払われた額だ。

App Storeは依然として急速に成長中だ。過去12か月間で300億ドルを超える金額がデベロッパーに送金されている。ちなみにAppleが2018年6月のWWDCで発表した ところでは1000億ドルがデベロッパーに支払われたということだった。

Appleの発表に含まれるのはダウンロード、アプリ内課金、サブスクリプションなど直接App Store中で生み出された金額だ。デベロッパーはこれ以外にもサイト内の広告やサイトを通じたサブスクリプションなどでさらに売上を加算することが可能だ。

Entrepreneur Campで、AppleはBites、Camille、CUCO、Lembrete de Medicamentos、Deepr、D’efekt、Hopscotch、LactApp、Pureple、Statues of the La Paz 、Malecón、WeParent、Seneca Connectなどのデベロッパーを招待している。セッションは四半期ごとにに開催される。

画像: TechCrunch

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滑川海彦@Facebook Google+

新しいiPad miniとエントリーレベルのiPadがついそこまで来ている

Appleが、iPadのニューモデルをユーラシア経済委員会の参照データベースに登録している。モスクワに本部のあるこの委員会には、アメリカのFCCのような製品データベースがある。そしてそれによると、Appleは新しいiPad mini 5と、エントリーレベルのiPadのアップデートバージョンを近く発売するようだ。

このデータベースには過去にも、Appleの新製品の情報があった。今日(米国時間1/25)MySmartPriceが見つけた二つの新しい登録書類には、どちらもiOS 12が動く新しいタブレットが載っている。

最初の書類には5つのモデルがあり、第二の書類には2つのモデルがある。通常は、ストレージやLTEの能力など構成の違いによって、異なるモデルになる。

それはこれまでの噂どおりで、前から新しいiPad miniと廉価版のiPadが2019年に出る、と言われていた。Appleの新製品予言者Ming-Chi Kuoの予想では、iPad miniのアップデートは7.9インチのディスプレイだ。このデバイスは長年アップデートされなかったから、Appleはアップデートしない、とみんなは思ってしまった。でもAppleは、このサイズのタブレットが好きな人たちのために、新製品を用意したのだ。

通常サイズ(9.7インチ)のiPadに関しては、iPadの最後のアップデートは2018年3月だった。全員がiPad Proに注目している中で、中には安いiPadがほしい人もいる。だから329ドルの9.7インチiPadは悪くない。Appleはこの機種のアップデートを通常、毎年行っている。

今日の登録書類からは、これらのデバイスのルックスが分からない。ベゼルは薄くなるのか、Face IDのセンサーはあるのか、USBはUSB-Cになるのか、などなど気になることは多いけど。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

iOS 12.2ベータの隠し画面が「ヘイSiri」に応答するAirPodsを暗示

現状のAirPodの、ちょっと奇妙な特徴は、Siriをサポートしてはいるものの、はじめにイヤホンをダブルタップしなければならないということ。iPhone、iPad、Apple Watches、HomePodとは異なり、「ヘイSiri」に続けてリクエストをしゃべればいいというわけにはいかない。

最近の噂では、「AirPods 2」と呼び習わされているAirPodの新しいバージョンは、「ヘイSiri」に応答すると囁かれている。そして、最新のiOSベータ版に隠されていた画面も、それを裏付けているようだ。

これは一般に公開されている画面ではないが、9to5macのGuilherme Ramboは、リリースされたばかりのiOS 12.2ベータで、次のようなダイアログを表示することに成功した。

(画像クレジット:9to5Mac

この画面には、「『ヘイSiri』と言って、AirPodまたはiPhoneでSiriに話しかけてください」と書いてある。

この機能が現行のAirPodに搭載されていないのは、つまるところ、バッテリー寿命の問題によるのだろう。Appleは、iPhone 6sで、バッテリー寿命に与える影響を最小限に抑えながら「ヘイSiri」を機能させる方法を見つけ出した。その詳しいしくみは、2018年4月号のMachine Learning Journalの記事に掲載されている。しかし、その同じしかけを小さなイヤフォンで実現するのは、まったく新しい挑戦だ。何しろ、バッテリー容量は片方で93ミリワットアワーしかない。これはだいたいiPhoneの1パーセントに過ぎない。第1世代の製品では、イヤフォンにダブルタップを検出させる方が簡単だった。もしAppleがその問題を解決する方法をみつけたら、新たなセールスポイントにするつもりでとっておいたのだろう。

噂では、その新しいAirPodは、防水仕様で、健康データを監視するセンサーまでも装備しているという。残念ながら、それらを暗示するような、こっそり隠されたダイアログは、まだ発見されていない。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Apple、自動運転車部門の200人を配置転換

通称“プロジェクト・タイタン”と呼ばれる、Appleの自動運転車をつくるという密やかな取り組みは今年試練の時をむかえた。Appleはこの部門に従事していた従業員200人を配置転換した。

情報筋の話を引用しているCNBCの報道によると、200人規模のスタッフはApple内の別のプロジェクトに移され、一方で規模は不明だが他の部門のスタッフも同じタイミングで配置転換された。Appleはこの報道に素早く反応し、そこには自動運転分野で“野心”を抱えているというまれな言及とともに、報道内容を認めた。

「我々は、自動運転システムに取り組む非常に才能のあるスタッフを抱えている。チームは2019年のいくつかの鍵となるエリアに専念しているが、一部のグループは社内の他の部門のプロジェクトに異動してもらう。異動先では機械学習や、Apple内でも進取性のあることをサポートする。我々は自動運転システムには大きなチャンスがあると引き続き確信している。そして、そこに貢献できるだけの能力をAppleは持っている。と同時に、これはこれまでで最も野心的な機械学習プロジェクトでもある」と広報は語った。

TechCrunchはさらなるコメントをAppleに求めているが、この記事執筆時点で返事はない。

プロジェクト・タイタンはAppleベテランのBob Mansfield、そしてTeslaを辞めて10月に再びAppleに戻ってきた元Macハードウェアエンジニアリング担当副社長Doug Fieldが率いる新体制となり、スタッフ削減と再編は近いと予想されていた、とCNBCは報じた。

それでも、このプロジェクトについては多くが伏せられている。車両のルーフに変わったテック機材を載せているところ(ここには一連のセンサーや自動ハードウェアも含まれる)など予告のようなものはあり、Appleは昨年1月に車両台数を倍増させた、とされていた。CEOのTIm Cookは以前、Appleの車開発を“全てのAIプロジェクトの母”と呼んでいた。それから推測するに、ミステリーではあるものの、確かにAppleがかなり注力していたのは確かだろう。

Appleがプロジェクトを再編するのはこれが初めてではない。2016年には自前の車を開発するという大胆な目標を断念し、車をスマートにすることを選択した、と言われている。Fieldをプロジェクトの責任者として任命し、再編した今後、戦略がどうなるかは不透明だ。

イメージクレジット: Anthony Kwan/Bloomberg / Getty Images (Image has been modified)

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

Apple、Mac App StoreにとうとうOffice 365を追加、サブスクリプション可能に

世界中で期せずして起きた拍手が聞こえるだろうか? 今日(米国時間1/24)、AppleはMac App StoreにMicrosoftのOffice 365を追加した。パッケージにはWord、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNoteが含まれる。

Appleのワールドワイド・デベロッパー・リレーションズのシニア・ディレクター、Shaan Prudenは「昨年われわれがApp Storeをリニューアルした際、アプリ内で課金を行うサブスクリプション・ベースのソフトウェアの登録を可能にする改革を行った」と述べた。サブスクリプションでの利用を基本とするOffice 365がMac App Storeに登録できないことがAppleとMicrosoftの協力関係を前進させる上で大きな障害となっていた。

「リニューアルではMicrosoftとの協力関係を念頭に置いた。 Office 365をMac App Storeから利用できるようにするためにサブスクリプションのサポートが必須だった」という。

MicrosoftのOffice 365担当コーポーレート・バイスプレジデントのJared Spataroは「MicrosoftはOffice 365を一連のソフトウェアをバンドルしたサブスクリプション・パッケージとして販売している。ユーザーが個別アプリのダウンロードとインストールをおこなう必要をなくし、プラットフォームによらず同一のユーザー体験を提供したいからだ」と説明している。

Mac上のPowerPoint: Apple

Spataroはまた「これまでMacユーザーはMicrosoft、またはサードパーティーのリテラーのサイトを訪問してOffice 365のサブスクリプション・パッケージを入手することができた。しかし今日のAppleの発表は365を含むサブスクリプション・アプリがMacの環境に一体化して組み込まれたことを意味する。これによりmacOSの標準的作法によってインストールもアップデートも行われることになった」とメリットを強調している。【略】

アメリカでのサブスクリプションのホーム版の価格は個人が年額69ドル、ファミリーが99ドルだ。ファミリー版の場合は同一家族のメンバーが最大6人まで利用できる。メンバーはそれぞれ1TBのストレージが利用可能だ。さらに365に加入した場合、Windows、MacのパソコンからiOS、Androidまで多数のデバイスで同一のユーザー体験が提供される。つまりどのプラットフォームでもファイルや設定が同一となる。

企業も法人向けOfficeバンドルをApp Storeで入手できる。IT管理者はApple Business Managerを使って全社のデバイスにアプリを配布することが可能だ。インストールが完了すれば、ホーム版同様、ユーザーはどのプラットフォーム、デバイスでも同一のユーザー体験が得られる。

Mac上のMicrosoft OneNote:Apple

従来からAppleとMicrosoftの関係は複雑だった。過去30年に渡って両社は競争と協力の双方を繰り返してきた。AppleもMicrosoftも詳細、ことに金銭的取り決めの内容は語りたがらないが、Appleのプラットフォームにおけるサブスクリプション収入の標準的分配割合では、初年度はAppleがホスティング手数料として30%、アプリ販売者が70%を得る。次年度以降の比率は15/85となる。

Appleによれば、Office 365は今後24時間以内に世界各地で利用可能になるという。この日を長く待っていたユーザーはあと1日くらいは喜んで待つだろう。

(日本版)Mac App StoreプレビューにはまだOffice 365は登録されていないもよう。365の提供方式は国によって多少異なる。こちらはMicrosoftの日本サイト

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滑川海彦@Facebook Google+

iPhoneがOLED化するのは2020年、ジャパンディスプレイは台湾・中国ファンドと交渉中

日本の有力電子部品メーカー、ジャパンディスプレイは台湾と中国のファンドからの出資受け入れの交渉中だと Wall Street Journalが報じて注目を集めている。日本の部品サプライヤーが苦境に陥った原因の一つはiPhone XRの販売不振にあるという。この記事でわれわれが注目したのは、AppleがiPhoneをOLED化するのは来年になるという部分だ。これは(驚きとまではいえなくても)興味深い。

WSJの記事は情報源として「事情に詳しい人々」としか述べていないが、大筋で納得できるものだ。OLEDディスプレイの製造テクノロジーが進歩するにつれて価格は低下し、多くの人々が手にしやすくなる。Appleが部品のコストカットを止めてOLEDを採用することになるかどうかはともかく、LCDディスプレイのXRの売れ行きがAppleが望むようなものでなかったのは確かだ。

Appleは失望が大げさに伝えられるのを警戒し、廉価版モデル(XSより250ドル安い)が iPhoneの中でいちば人気があると述べている。しかし廉価版であろうとなからろうと、スマートフォン市場は全体として縮小傾向にある。これはAppleに限った現象ではない。

また常に最新のテクノロジーを採用し続けねばならないというのもこの業界の必然だ。たただし、Appleの場合採用は今年ではないようだ。この秋に発表されるXRの後継機はこれまでどおり通常LCDディスプレイとなる。ライバルの多くはすでにOLEDに移行しており、さらに「折り畳める」ディスプレイの採用に取り組んでいる。ただし実機が市場に登場するまでにはまだ時間がかかるようだ」。

2020年にAppleは5G iPhoneを発表するという。

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滑川海彦@Facebook Google+

スマートフォンを葬り去る新しいVRスクリーン

スマートフォンの画面は驚異の世界だ。明るく、カラフル、シャープなだけではない。ある意味、それは人間の生体に匹敵するほどのものだ。小さな面積に、あれほど多くのピクセルを詰め込んであり、これ以上増やしても認識が追いつかないだろう。画面自体を大きくすることはできない。片手で持てなくなるからだ。スマートフォンの画面から、より多くの情報を得るための唯一の方法は、ピクセルをもっと目に近づけること。手で持つのではなく、何らかの方法で頭にデバイスを取り付ければいい。われわれが普通に思い浮かべる電話機ではなく、メガネのようなものになるだろう。

ありそうもないって? 実のところ、多くの進んだCE企業(Apple、Microsoft、Google、HTCなど)は、すでにこの新しいスクリーンに取り組んでいる。実現すれば、映画の中でしか見られなかったような体験が、日常のものになるはずだ。

人間の目の「回折限界」

小さな穴を通して見ると、反対側のものはぼやけて見える。これは、光線が網膜に届くまでの間に穴を通過すると、わずかながら拡散するからだ。海の波が、狭い開口部を持つ防波堤に当たるのを観察しているところを思い浮かべてみよう。直線的な波が、防波堤を抜けるとさざ波に変化して反対側に拡がる様子は、光線が穴を通過するときに起こるのと同じなのだ。

「針穴写真機」を作って、遠くにある文字を見てみれば、これを実際に試すことができる。穴が小さいほど、ぼけはひどくなる。そして人間の目の虹彩は、もちろん穴なのだ。

GettyIMagesのCarmelo Geraci/ EyeEmから

われわれの目の大きさを考えると、このことは細部を見る能力に限界があることを意味している。人間の瞳孔は、直径が約5ミリメートルだ。これによる限界を1度あたりのピクセル数で表すと、約60となる。つまり、たとえば、25セント硬貨を目から腕の長さほど離れたところに掲げたとすると、視界の中の約2.5度を占めることになる。これは、それを表示するのに縦横150ピクセル程度のディスプレイがあれば、人間の目にはちょうどいいということになる。それ以上のピクセルがあっても無駄。なぜなら、もうそれを識別することはできないからだ。

2010年頃から、スマートフォンのディスプレイは、そのレベルの品質に達した。その段階では、めいっぱい顔に近づけても、個々のピクセルを見ることができなくなった。Appleが、適切にも、それをRetina(網膜)ディスプレイというブランド名で呼ぶことにしたのは記憶に新しい。大画面のテレビも、今同じ限界に達してしまった。実は4Kを超えるものは、みんなお金の無駄だ。画面が発する熱を肌で感じるほど近くに座らなければ、違いは分からないのだから。

つまり、手に持った6×3インチの携帯電話の画面は、われわれの視野のほんの一部を占めるに過ぎないのだから、それによって数十行を超えるようなテキストを読むことは不可能なのだ。

とどまるところを知らない食欲

それでも、視覚からの情報を吸収することに対する人間の食欲と能力には、いずれも恐るべきものがある。われわれは画面が大好きで、大きいほど好まれる。たとえば、ラップトップを拡げると、1つではなく、4つの画面が魔法のように現れたら、誰でも気にいるはずだ(映画Westworldに登場する超クールな折りたたみ式デバイスのように)。

理想的なのは、すべての方向に画面が見えていて、現実世界に集中したいときだけ、画面をオフにすることができる、というものだ。それはGoogle Glassのような、初期のプロトタイプとはまったく異なったものになるはずだ。そうした初期のものは、現在のスマートフォンの画面と比べても、より小さな視野しかなく、テキストを含む情報表示能力も劣っていた。

可能な最大サイズの画面

それこそが、今がまさに開発中のものだ。画面は眼の前に固定され、レンズによって見やすく表示される。頭の回転を正確に検出することによって、あなたを取り囲む、魔法のような新しい「スクリーン」を作り出す。もちろん、ピクセルは十分に細かくて識別することはできない。頭の向きを変えると、視線の向いた方にあるものが見えるように、目の前にあるピクセルが変化して仮想画面の部分を映し出す。

この新しいスクリーンは、非常に広大なものとして表示される。16台の4Kモニターと同等で、約2億画素を表示できる。想像してみよう。指をパチンと鳴らしただけで、いつでも16台のモニターが現れ、電子メール、テキストメッセージ、ウェブブラウザ、ビデオ、その他確認したい情報など、どんなコンテンツでも表示できるのだ。その画面は、あなた以外の誰にも見えない。そして、現在のスマートフォンのように、どこにでも持っていくことができる。

1兆ドル市場

もし、16台の4Kモニターが魔法のようにあなたの周りを取り囲み、重さもなにも感じることなく、他の誰からも見られないようなヘッドセットが500ドルで発売されたら、Appleストアの列に並んで待つだろうか。もちろん、あなたはそうしたいだろうし、そうすることになるだろう。ちなみに、キーボードとマウスは、そのまま古い机の上に置いて利用できる。もはやモニターは不要となるのだ。

Hoxton/Paul Bradburyによる

それこそが、Apple、Microsoft、HTC、Googleといった優れた企業、そしてMagic Leap、Avegant、ODGなどのスタートアップが、このようなスクリーンを作ろうと努力している理由だ。スクリーンの世界市場は約1兆ドルなので、この新しいスクリーンをうまく製品化できれば、誰でも莫大な利益を得ることができる。

誰でも使えるものに

それらは自立的に動くので、コンピュータにはさほど負担をかけない。こうした新しいデバイスは、これまでの同類の製品よりも安価になるはずだ。だいたいスマートフォンと同じくらいだろう。そういうわけで、PCに対するスマートフォンのように、かなり多くの人が使えるようになる。今後10年以内に、何十億もの人の手に渡るだろう。

このような変化は、現在はシンプルなスマホの画面にしかアクセスできないような、世界中の多くの人々の力となることができるはずだ。それによって、現状では高価なデスクトップマシンや、裕福な家庭や会社のオフィスにしかない壁面ディスプレイを必要とする、高度な仕事や学習の機会が得られるようになる。これらの安価なデバイスによって、世界中のすべての人々に、巨大なBloombergターミナルと同等のものを提供することができるのだ。

VRとARは幸運なサポーターであり、キラーアプリではない

ここまでは、3D VRの世界や、現実の世界にスーパーインポーズするARオブジェクトについては取り上げてこなかった。なぜなら、新しいスクリーンが広く成功を収めるために、とりあえずそうしたものは必要ないからだ。スマートフォンにとってのカメラアプリのように、VRとARの応用は、新しいスクリーンの普及にとって幸運なサポーターにはなるだろう。このようなスクリーンを備えたデバイスを手に入れれば、3Dコンテンツを表示したり、それを現実の世界に重ねて映したり、仮想世界を旅したり、アバターとして世界中の人々とコミュニケーションをとることができるようになる。はるか遠くに離れていても、人と人とのつながりを体験できるようにする、信じられないようなVRアプリケーションが開発されつつある。しかし、あわててヘッドセットを買いに走る必要はない。まだ、ウェブブラウジングや電子メール用のものしか手に入らない。

今後の数年で、いくつかの会社がヘッドセットやメガネを発売するだろう。それらはコンピュータから視覚的な情報を取り出すための方法として、スマートフォンの画面を置き換えることになる。こうしたスクリーンの最初の用途は、現在のスマートフォンでは苦労しているようなことすべて、ということになるだろう。それに続いて、仮想世界、VRとARがそのスクリーンを利用し始める。それにより、現実世界を拡張したり、まったく置き換えてしまうことが可能となる。

みんながVRとAR用ヘッドセット用の新しい「キラーアプリ」を探している。しかし、この記事を読んだあなたは、すでにそれを目にしているはずだ。

画像クレジット:Jane_Kelly(画像は修正されています)

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

AR/VR 2.0を生かすためにはAR/VR 1.0を殺さなければならない

拡張現実と仮想現実(AR/VR)の未来は明るい可能性があるが、それは現状から脱出できた場合のことだ。2018年は、2つの変化の年の前触れの年だったと言える。2019年には淘汰が起こり、2020年後半には転換期が訪れる。まずは、現状の確認から始めよう。そして、私たちはどのような未来へ向かうのか、そこへ到達するためには、何を変えなければいけないかを考えていこう(注意:AR/VRにはもっと前の世代もあるが、ここでは2014年後の市場に着目している)。

AR/VR普及台数(モバイルARを含む)

青のAIRKit、緑のARCore(Google)、赤のARCore(中国)が多く、Apple、Oculus Quest、Samsung、HTC Vive Focus、Sony PSVR、Magic Leap、Microsoft HoloLensなどと続く
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

AR/VR 1.0は今どうなっているか?

AR/VR 1.0は、FacebookがOculusを真剣に考えるようになった2014年にキックオフとなった。それには、起業家、企業、VCの特定の世代が大きく反応し、初期のAR/VRの開発が進められ、技術的に大きな進歩があったものの、まだ大衆市場は形成できないと、業界内部の人間すら認める状態だった。

モバイルARは、30億ドル(約3250億円)という、私たちが出した2018年の収益予測を2パーセント上回る結果となったが、その牽引役となったのは、アプリストアの売り上げ(おもに『Pokémon GO』)、広告費(メッセージアプルへのモバイルAR機能の導入など)、そして電子商取引での収益だ(たとえばHouzzはネット販売が11倍に伸びた)。モバイルARのインストールドベース(デバイスに組み込まれた形での普及数)も、期待を上回ってゆっくり伸びを見せ、世界で8億5000万件に到達している。ただ不安が的中し、2018年にはスタンドアローン型モバイルARの大ヒットアプリは現れなかった。モバイルARの何が売れて何が売れないのかを知ろうと、開発者たちは今でも頭を捻っている。

スマートグラスの2018年はいろいろだった。MicrosoftのHoloLensは、アメリカ陸軍との4億8000万ドル(約520億円)の契約を勝ち取った。Magic Leapは、一般向けの製品よりも開発用キットのほうがよく売れた。その他のスマートグラスの先駆者たちからは、資産を売却したり社員を一時解雇したという話が伝わってきている。スマートグラスの収益(おもにハードウエア、企業向けソリューションやサービス)は億単位にのぼるが、モバイルARを加えると、AR市場全体の収益は予想よりも3パーセント低かった。そのため、これまでの3年間のARの収益は、投資会社Digi-Capitalの予測にほぼ沿う形となった。

VRでは、携帯電話とヘッドセットの予約とのセット販売を電話会社が大幅に縮小するとは、昨年初めの時点では予想できず(これがモバイルVRの売り上げと普及数に悪い影響を与えた)、Oculus Questの2018年クリスマスシーズンの発売は延期されてしまった(昨年末の発表では2019年の春とのこと)。Oculus Goが昨年中期に発売されたことと、ソニーPSVRの売り上げが予測どおりになったことはよかったが、減少率を含めて考えると、2018年のVR市場の収益は前年比で少なくとも30億ドル(約3250億円)落ち込んだ(我々は適度な成長を予測していたが)。

AR/VR 2.0で私たちはどこへ行くのか?

モバイルARとスマートグラスを含むARは、2023年までには、25億台普及し、売り上げは700億から750億ドル(約8兆1300万円)に達する可能性がある。モバイル、スタンドアローン、ゲーム機、PCを含めたVRは、同じ時期までに300億台が普及し、100億から150億ドル(約1兆6300億円)の売り上げが得られる可能性がある。この開きはかなり大きい。なぜそうなるのか、少し掘り下げて考えてみよう。

AR/AVプラットフォームの収益

青はモバイルAR、緑はスマートグラス、赤は高級/スタンドアローンVR製品、紫はモバイル/スタンドアローンVR (Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

モバイルAR

モバイルARの収益は昨年をわずかに上回ったものの、プラットフォームのレベルでの根本的なデータを見ると、長期的なモバイルARの普及台数は見積もりを下方修正する必要がありそうだ。AppleとFacebookはそれぞれプラットフォーム(ARKitとSpark AR)を保有しているが、Googleにはそれがない。昨年、ARCoreを組み込んだデバイスを1億台から2億5000万台に増やすには、Android端末のメーカーとの協力に頼らざるを得なかった。

それでも大きな数字だが、私たちのAR/VR分析プラットフォームの予測では、ARCoreの普及台数の成長曲線は、2021年までAppleやFacebookの跡を追うことになっている。ARKitとSpark ARの成長曲線が、これまでの予測のまま維持されたとしても、ARCoreが伸び悩めば、モバイルAR市場全体の普及台数は、2023年までに25億台をわずかに超える程度にとどまる。

ARモバイル・ビジネスモデルの収益

緑はアプリストア、赤は電子商取引、紫は広告費、オレンジは事業向け
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

自動車、衣料からオモチャまで、大きな10のカテゴリーをカバーする電子商取引は、モバイルARの最大の収入源になることは確実と思われている。それに、小売から消費者向けパッケージ製品、旅行にいたる11の主要広告主カテゴリーが加わると、それはモバイルARの長期的な収益の4分の3を占めるようになる。

AR電子商取引の売り上げ

青のその他、緑の衣料、赤の一般消費者向け電子製品、紫の自動車、オレンジの家具、深緑の医療/介護、ピンクのオモチャ/ホビーなどと続く
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

モバイルARのアプリストアでの収益(アプリ内購入と単独購入を含む)は、現在のところ『Pokémon GO』を筆頭とするゲームに独占されているが、将来的にモバイルARが組み込まれたデバイスが増加すれば、ゲーム以外の主要アプリによるモバイルARの売り上げは、2023年までに総収益の半分を超えるだろう。モバイル市場全体を見渡せば、スタンドアローンのモバイルARアプリがアプリストアのトップに登りつめるまでには、まだまだ苦戦を覚悟しなければならない。モバイルARには、独立した新しいアプリとしてよりも、一般に浸透しているアプリの中のひとつの機能としてのほうが、大きく成長できたはずだ。

アプリストアでのモバイルARカテゴリーの収益

青のゲーム、緑のソーシャル、赤の写真/動画、紫の娯楽などと続く
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

スマートグラス

スマートグラスが大衆市場の一般的なデバイスになるためには、5つの大きな課題を解決しなければならない。それは、(1)ヒーロー・デバイスになること(たとえばApple社製のクオリティー。そこではAppleが作ったのかどうかが問われる)、(2)1日使えるバッテリー寿命、(3)ネットへの接続性、(4)アプリのエコシステム、そして(5)価格だ。一筋縄ではいかない課題だが、これらが解決すれば、2020年の中期以降も企業の注目を集めることができる。今年は、スマートグラスの販売台数は、全世界で数千万台を維持できるだろう。

スマートグラスのビジネスモデルの収益

青がハードウエア、緑がアプリストア、赤が電子商取引、紫が広告費、オレンジが事業向け、ピンクが位置情報 (Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

2016年に私たちが予測したとおり、もしAppleが2020年後半にiPhoneに接続して使うスマートグラスを販売したなら、AR/VR市場はついに転換点を迎えることになる。とは言え、2023年はまだ、スマートグラスの長期的収益は、ハードウエアとハードウエア以外の事業向けの収益がほとんどを占める状態が続くだろう。一般消費者向けスマートグラスの大衆市場は、Appleが参入したとしても、まだまだ先の話だ。

スマートグラスの事業収益

青の製造/資源、緑の技術/メディア/通信、赤の政府(軍を含む)、紫の小売りなどと続く
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

これまで、スマートグラスの事業者向け試驗プロジェクトと本格的な展開が初期段階の技術プラットフォームの兆候とされてきたが、現実には、HoloLensやScope ARを使うことで衛星製造作業を50パーセント以上減らすことができたロッキード・マーティンなどの企業からの需要に生産が支えられている。スマートフォンに接続して使うスマートグラスがシステムのコストを削減し、応用の幅を広げてくれるなら、製造/資源、技術/メディア/通信、政府(軍を含む)、小売り、建設/不動産、医療、教育、運輸、金融サービス、公共施設などの産業は2021年に転換期を迎え、事業者向けスマートグラスの収益は跳ね上がるだろう。

VR

VRは、今年、ハードウエアとゲームによる収入を引き続き柱として、適度な成長を取り戻す可能性がある。第二世代のスタンドアローンの高級VRヘッドセット(今年発売されるものではない)は、2020年から2021年の間、促進剤として活躍するだろう。そのためには、高い性能と、充実したコンテンツと、低価格が欠かせない。幸いなことに、そのころにはVRプラットフォームを運営する業者は、散乱した現在のプラットフォームを整理して製品の範囲を絞り込んでいることだろう(これはスティーブ・ジョブズの1997年のシナリオからの受け売り)。

VRビジネスモデルの収益

青はハードウエア、緑はアプリストア、オレンジは事業、深緑は動画、赤は位置情報
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

VRの収益は、おもに娯楽によるものだ。そしてそれは、普及率とユニットエコノミクスの関係で、スタンドアローンのモバイルVR製品よりも、高級な、またはスタンドアローン型VR製品によるところが大きい。長期的収益の大部分はゲームが占め、続いてハードウエア、事業向け(ハードウエアを除く)、動画、位置情報を使った娯楽となっている。VRプラットフォームの運用者はゲームに焦点を当てているため、ゲーム機でのゲーム以外の収入源を多様化しようと思うと、ソニーやMicrosoftが戦ってきたのと同じ困難に遭遇することとなる(結果はまちまちだ)。

AR/VRの国ごとの収益

青は広告、緑はアプリストア、赤は電子商取引、紫は娯楽、オレンジはハードウエア、深緑は位置情報、ピンクは動画
(Digi-Capital AR/VR分析プラットフォームより)

 

これからの5年間は、アジアがAR/VRを支配することになり、2023年には、北アメリカとヨーロッパを合わせたよりも多くの収益を得る。この市場への中国の関与は群を抜く。長期的にそこは、単独でもっとも大きなAR/VR市場となるだろう。

では、AR/VR 1.0からAR/VR 2.0に移行するには何が必要か?

AR/VR 1.0からAR/VR 2.0に移行するには、数多くのものが必要となる。

大きな摩擦を小さくする:AR/VR 1.0には、その大部分において、インストール、ユーザー・エクスペリエンス、ユーザー・インターフェイスの面で、いまだに大きな摩擦がある。いろいろな意味で、今のこの市場は、スティーブ・ジョブズがiPodを発売する以前のMP3プレヤーの市場によく似ている(アナログの感覚を捨てきれずにいたときだ)。AR/VR 2.0の摩擦を小さくする努力はまだ道半ばだが、今必要なのはAppleのスマートグラスだ(名前はiGlassesとなるかどうかは別として)。第二世代の高級なスタンドアローンのVR製品(Oculus QuestやHTC Viveの次の世代)とモバイルARの開発者は、NianticやHouzzなどの教訓を学び、それを超えるためのイノベーションに取り組んでいる。

エクスペリエンスからユースケースへ:AR/VR 1.0ではいろいろな「エクスペリエンス」があった。なかには、見た目は強烈だが有意義なユーザー・エクスペリエンスを提供してくれないアプリもあった。AR/VRのドラゴンやポータルには最初はびっくりするが、すぐに飽きてしまう。AR/VRの次の段階は、一日中、しかも毎日使う重要なアプリの機能として、決定的なユースケースに対応することだ。

スタンドアローンから機能へ:今日まで業界は、スタンドアローンのアプリに大きく集中してきたが、私たちが使っているアプリの主要な機能は、もっと利用度が高く、より大きな商業的な成功をもたらしてくれる。ナビゲーション(Google Map)、電子商取引(AmazonWalmartAlibaba)、メッセージ(Facebook Spark ARSnapchat Lens Studio)などは、そのほんの一例だ。

高価から安価へ:初期のAR/VR製品の価格は、3000ドル(約30万円)のHoloLensから200ドル(約2万円)やOculus Goから無料のモバイルARまでさまざまだった。しかし、モバイルのように、すでにユーザーがデバイスを所有している場合は、特定のユースケースを除けば、競争の激しいプラットフォームは価格以上のものを提供している。AR/VR 2.0では、価格は問題とならないため、高い価値を提供しなければならない。

点のソリューションからエコシステムへ:初期のAR/VRアプリの娯楽用(ゲームや動画)または、特定の問題を解決するためのひとつのソリューションを提供するものが大半だった。上で述べたように、AR/VRは、その規模を拡大するためには独自のリアリティー・エコシステムが必要だ。

低い投資利益率を高く:消費者にとってこれは、単に「わぁ!」とびっくりする以上のものが得られるアプリを意味し、企業にとっては、投資した以上の実益をもたらすアプリのことを意味する。これは、ロッキード・マーティンやBellといった企業の活動で実現し始めている。

試験から生産へ:企業向けAR/VR 1.0では、数多くの試験プロジェクトが行われてきたが、製品化されて本格生産に移ったものは少ない。これが変化しつつある。Walmart(STRIVR)などは、本格生産に入ろうとしている。

内輪ネタからブランドへ:AR/VR業界は、いまだにAR、VR、MR、XR、あるいは空間コンピューティングという言葉で自分たちを言い表すことのメリットについて論議し続け、それらをパイプでつなぐ内部的な作業に多くの時間を費やしている。しかし、初期の支持者ではない一般の消費者や企業にとっては、どうでもいいことだ。彼らは、決定的なユースケースに対応してくれるブランドを買うだけだ。それには、ユーザーに明確な焦点を当てることが必要であり、彼らにどのようにマーケティングするかが成功の鍵となる。

細分化から支配へ:AR/VR 1.0は、まだ初期段階であり、ユーザー基盤も比較的小さいのにも関わらずハードウエアとソフトウエアにまたがって細分化したままの状態にある。しかし現在、この業界は、重要な少数のプラットフォームに絞り込む腹を決めたようだ。市場の中のカテゴリーごとに、プラットフォームが自然淘汰され、少数の支配的なものが残ることになるだろう。

夢想からデータ駆動型へ:AR/VR 1.0の企業は、初期の市場の独立した情報源提供者が参入してこなかったこともあり、その多くが実際の数字の公表を怠ってきた。しかし、Digi-CapitalのAR/VR分析プラットフォームが開発され、ロードマップ、国際展開、投資額、評価額などに関する細かい疑問に答える確かなデータや分析結果が得られるようになると、もう隠してはいられなくなった。

VC投資からゴキブリ(資金調達)へ:昨年は、豊富な資金を持ついくつもの先駆者的企業の市場から撤退が始まった。2019年には、収支の合わない企業の大淘汰が行われる可能性がある。アメリカのAR/VR投資市場は、2018年の第四四半期の下落から回復し始めている(中国の投資も加速している)が、AR/VR 2.0では、VC投資を求めるよりも、金儲けをして、「ゴキブリ」のように無節操にバーンレートにこだわることが重要だ。

その他からAppleへ:2020年後半にAppleがスマートフォンと使うスマートグラスを発売したならば、AR/VR 2.0に「iPod現象」が起きる。つまり、新しい標準となるフォームファクターが生まれ、長期的な大衆市場が始まるのだ。ただしこれは、かならずしも業界においての「iPhone現象」ではないことを覚悟しておくべきだろう。こうした促進剤が登場しても、大衆市場が確立されるまでには5年以上かかるからだ。

否定から受容へ:2019年は「AR/VRの年」ではない。また、マーク・ザッカーバーグが言う「10億人がVRへ」も実現しないだろう。マークもそれを認めている。なので、市場の次の段階では、慎重な楽観主義が広がることに期待しよう。

AR/VR 3.0はどうなのか?

2023年までにAR/VR市場は、800億ドルから900億ドル(約9兆7600億円)規模に成長する潜在力があると私たちは見ているが、そこでAR/VR 2.0が完結するわるわけではない。それには、価格が同じでiPhoneに取って代わる軽量なスタンドアローン型スマートグラスなどの誕生が必要だ。そうしたAR/VR 3.0のビジョンを実現させるには、技術的にもコンテンツ的にも骨の折れる仕事を経なければならないわけだが、その前に、AR/VR 2.0を正しく導くことが重要だ。

これからエキサイティングな時代になる。次に何が現れるか、とても楽しみだ。

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(翻訳:金井哲夫)

Apple、高齢者医療保険によるApple Watchの助成を検討中(CNBC報道)

Watchを本格的医療機器へと進化させようというAppleの意欲が、心電計の採用によって強められたことは間違いない。同社は以前からこのベストセラー・ウェアラブルを様々な医療保険プラットフォームに載せることを目指してきたが、 最新の報道によると、同社はApple Watchの助成を受けるべく、複数の民間メディケアプラン[高齢者向け医療保険]提供会社と接触している。

もし保険会社が話に乗れば、279ドル以上するApple Watchが高齢ユーザー向けに大きな成功を収める可能性がある。心電計機能とともに、昨年発売されたSeries 4には、転倒検出という、高齢者や医療保険会社にいっそうアピールする機能が加わっている。

記事によると、少なくとも3社が同社と話をしているという。本誌はAppleにコメントを求めたが、契約完了前に返事があることは期待していない。しかしAppleにとってこのような提携は、ウェアラブル分野ではめったに光の当たらないターゲット層の顧客を増やす可能性がある。

医療健康に力を入れているのはもちろんAppleだけではない。Fitbitもこの分野を積極的に追求している。本日(米国時間1/16)同社は、国立衛生研究所 (NIH)の新しい医療研究プロジェクト、”All of Us”に参加することを発表した

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Apple、iPhone XSとXR向けのバッテリーケース発売

もちろんiPhone用のケースはそこらじゅうにある。しかしアクセサリーはApple純正のものでなければ、という人のためにAppleは最新機種XS、XS Max、そしてXR用の公式バッテリーケースをリリースした。

最初にMacRumorsが報じたこれらケースは、iPhone 7向けとして最初に登場したものと似たようなデザインだ。おなじみのバッテリーのこぶもあるが、今回はこのこぶが背面のほとんどを覆っている。これで、手に持った時の感触はさほど妙なものではなくなるはずだー少なくとも見かけはややましだ。

今回はシリコンカバーの黒と白の2色で、ケースを取り外さなくてもワイヤレス充電できる。

この新しいスマートバッテリーケースはモデルに関係なく129ドルだ。 XSの場合33時間、XRで39時間の通話が追加で可能になる。Appleが指摘するように、これに関しては純正のものであるアドバンテージがいくつかあるが、そのうちの一つとしてインテリジェント・バッテリー残量があり、ノーティフィケーションセンターとiPhoneのロックスクリーンにバッテリー残量が表示される。

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(翻訳:Mizoguchi)

Appleには悪いけど、まだiPhoneを買い換える気になれない

先週、Appleの売上高見通し下方修正の報告を聞いて、TechCrunchの同僚Ron Millerは、古いiPhoneの買い替えに時間がかかったことを皮肉まじりに謝罪した。

彼はついに、3年以上も使っていた(でもまだ使える)iPhone 6を、ピカピカのiPhone XR(750ドル以上)に大枚を投じて買い換える腹を決めたと書いている。最後の最後まで考えて、虎の子の1000ドルを叩きつけ、最上級のiPhone XSを購入したのだ。

ゆえに、かの有名なAppleの高級品としての魅力も、その程度だということだ。

Appleにとって、もっと悪いニュースがある。私は、今でも自分の(まだ使えるが、バッテリーとメモリーはヒーヒー言っている)iPhone 6sを買い換えられずにいる。なぜなら、これがぜひ言いたいのだが、Appleがヘッドホンジャックを廃止してしまったからだ。それが、利便性を貶め、選択の幅を狭めている。

私の小さい耳には、iPhone付属の全共用サイズの純正ヘッドホンが上手く入らない。音質は悪くないのだが、今でも使えずにいる。ヘッドホンは、歩き回っても耳にしっかり収まっていてくれないと困る。首を捻るごとに耳から飛び出して、そのたびに入れ直さなければならないようでは、汚い言葉を使わずに言うなら、あまり便利じゃない。

そしてそう、それがワイヤレスのAirPodsにも採用されている。私は、本当に使えるヘッドホンが完成するまで、ずっと熱心に開発を続けてもらうべくAppleに金銭的な貢献をしたいつもりでいるのだけど、正直言って、私にすれば、あれは悪手だった。

ヘッドホンに関して、Appleは小柄な人間のことは考えてないと言い切れる。仕方なく私は、何種類かのサイズのイヤーチップ(いつもいちばん小さいのを選んでいる)が付属しているカナル型ヘッドホンを使うはめになっている。つまり、適切なサイズのヘッドホンを使うためには3.5ミリのヘッドホンジャックが必要となる。これは好みの問題ではない。それでなければ困るのだ。

3.5ミリのヘッドホンジャックがあれば、もっと高音質なヘッドホンに投資することも可能になるのに。

だが、Appleの考えは違うようだ。ヘッドホンジャックを捨てたときのAppleのメッセージから判斷すると、私の小さい耳に、あれをとにかく無理にでも突っ込まないといけないらしい。冗談じゃない!

もちろん、iPhoneを買い替えて、付属の変換ケーブルを挿入すれば、ライトニングポートを3.5ミリのヘッドホンジャックに(再)変換すれば私の要求は満たされるが、この変換アダプターは単独に買えば9ドルの代物で、本来払わなくてもいい「アダプター税」だ。

なんだかんだ言ってもiPhoneは高級品だ。過去に戻るために欠かせない余分なアクセサリーを買わなければならないのは、進歩とは思えない(この苛立たしい金食い虫に、もっとふさわしい言葉は「余計な物」だ)。

それに加えて、ヘッドホンを使いたいときは、毎回あの馬鹿らしいやつが必要であることを思い出さなければいけない。そのイライラと面倒臭さは半端ではない。

おまけに、Appleの美学を愛する者として、あの変換ケーブルは100パーセント、まったくもって目障りだ。

さらに言わせてもらえば、Appleライトニングと3.5ミリ・ヘッドホンジャックの変換アダプターは、サードパーティー製のリモートコントローラーとは相性が悪い。ヘッドホンに付いている音量調整ボタンは誤動作しがちだ(星1つのレビューをすべて読めばわかる)。

AppleがMacBook AirからSDカードポートを廃止したことについては、触れずにおこう。しかし、新しい仕事用パソコンに買い換えた後のあの「いつもながらのメチャクチャな状況」に対処するための出費と苛立ちのことを思うと、本当に使いたいポートのことはすっぱり忘れようという「勇敢」な意思は砕かれてしまう。

TechCrunchには、ヘッドホンジャックがないと困るという人間が私の他にもいる。同僚のGreg Kumparakも12月に書いているが、彼は2年経ってもまだ3.5ミリ・ヘッドホンジャックが恋しいという。「あれは幸せな時間を与えてくれて、決して邪魔になることはなかった」とヘッドホンジャックの喪失を嘆いている。

あんな変換ケーブルが消えてなくなっても、誰も文句は言わないはずだ。

TechCrunchのMillerは、バッテリーがダメになってしまったのと、充電ケーブルがボロボロになってしまったために、愛用の古いiPhoneを買い換えざるを得なくなった。

私のiPhone 6sも、バッテリーがダメになりかけている。オリジナルのバッテリーは2017年に交換した(欠陥品だったためAppleが無償交換してくれた)。しかしある日、そのiPhoneが初めての「予期せぬシャットダウン」を起こし、「ピークパフォーマンス性能」がオンになったとの通知が表示された。

いわゆるパフォーマンス管理機能と呼ばれるそのオプションは、意味がよくわからないと消費者グループから責められAppleを窮地に立たせたため、現在のiOSではデフォルトで無効になっている。

もちろん、有料でバッテリーを交換することはできる。新しいiPhoneを買うよりは、ずっと安上がりだ。または、もっと安上がりな方法として、モバイルバッテリーを持ち歩くという手もある。

家に忘れて出かけたときに、どっちが困るだろう。バッテリーか変換ケーブルか?

少くとも、モバイルバッテリーがあれば、1日にiPhoneが使える時間は長くなる。そうなれば、利便性は高くなるだろう(頼まれれば友だちのスマートホンに充電してやる社会的貢献というボーナスもある)。

私なら、あのいまいましい変換ケーブルをどこにしまったかを常に憶えておかなければならないよりも、断然、カバンの中にモバイルバッテリーを入れておくほうを選ぶ。

いつだってすぐに皮が剥けてしまうAppleの充電ケーブルの問題を脇に置けば(これは交換すれば済む話)、もうひとつの問題は、今のiPhoneのストレージだ。もうほぼ満杯になっている。

Appleは、空き容量が少なくなると、有料のクラウドストレージを勧めてくる。しかしそれも、いらないデータを消去して、外付けのハードドライブを買って、ストレージの大半を占領している写真データを移せば済む。

それで、iPhone 6sはスッキリと出直すことが可能だ。

率直に言って、生まれ変わったiPhone 6sが正常に動くなら(バッテリーの不具合は横に置いて)、現行のものとそれほど変わらず、一部の重要な機能は私にとって迷惑で不便な高級機種を大枚はたいて買うよりは、そっちのほうがずっと魅力的だ。

しかもこれは、環境に優しい選択でもある。変換ケーブルが増えれば、不要な電子製品のゴミも増えるということを忘れてはいけない。つまり、この押しつけ変換ケーブル地獄は、地球に害をもたらすということだ。

ひとつの規格ですべてを満足させることなどあり得ないのだが、高級志向へとどんどん膨らんでゆくApplの方向性を合わせて考えると、「買い替えより再利用を」という今や常識になりつつある現状から、Appleの哲学がずれていっているように思えてくる。

Appleのだんだん怪しくなる国際取り引き


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(翻訳:金井哲夫)

Appleのだんだん怪しくなる国際取り引き

新興市場や中国でのトラブルからは遠く離れた場所で、Appleは、本当にコアな支持者層であるべき人たちの怒りを集めている。それは、数年前からTim Cookが一般向けの講演で表明してきた、プライバシーを尊重する姿勢に必然的に賛同する人たちだ。彼らは、Cookは偽善者だと責めている。

この人たちは、この問題さえなければヨーロッパの忠実なるiPhoneユーザーなのだが、Appleは彼らに十分なプライバシーを提供していない。

こうしたユーザーたちは、iPhoneの中核的要素の選択の幅を求めている。たとえば、iOSのSafariのように、デフォルトに設定できる検索エンジンの種類だ(現在Appleでは、Google、Yahoo、Bing、DuckDuckGoの4つの選択肢を提供しているが、すべてアメリカ製の検索エンジンだ。広告テクノロジーの巨人Googleはデフォルトに設定されている)。

また、Appleが主張するプライバシーを重視したデザイン哲学を覆すようなデフォルト設定にも、非難が集まっている。そのひとつがiOSの位置情報サービスの設定だ。ひと度これを有効にすると、関連するサブメニューの項目も知らぬ間に有効になる。これには、位置ベースのAppleの広告も含まれている。そこに記されている同意の内容は、事前の情報に基づく同意のときとは、まったく違うものになっている……

https://platform.twitter.com/widgets.js

私的にはAppleはリーダーなのだが、検索エンジンでAppleが選択したiOS SafariをiOSユーザーが無効にできない理由を知りたい。
「このデバイスで位置情報サービスを有効にすると、Appleとそのパートナー、ライセンシーがあなたの位置情報および位置検索のクエリーを、位置ベースまたは交通状況ベースの製品およびサービスの提供と改善のための転送、収集、維持管理、処理、使用することに同意したものとみなされます」

すべての人を同時に満足させることはできないと言うが、飽和状態のスマートフォン市場で生まれた新しい「常識」は、アプローチの再構成を迫る新たなプレッシャーになっている。

今後は、収益の増加とユーザーのつなぎとめに努力することが、ステップアップの唯一の手段となるのは明らかだ。そのため、行きつ戻りつのサービス提供が今後の成長には欠かせないこのハイテク最大手企業にとって、こうした問題さえなければ忠実なユーザーたちを満足させ、(決定的なこととして)彼らに自分たちの意見が届いていると感じさせ、自分たちが大切にされているという感覚を持たせることが、ますます重要になる。

(少くとも、Appleから奇跡のようなハードウエア……それはまだ誰も知らないが、スマートフォン級の需要を再燃させる何か……の登場は、中期的な時間の枠内では考えられない。スマートフォンの汎用性と機能性が大変に高いからだ。ゆえに、Appleの最大の成功が、今や最大の障害にもなっている)

スマートフォンの買い替え頻度が低下している今、自然の成り行きとして、サービスによる収益増加というプレッシャーがCookにかかってくる。言い換えればそれは、Apple本社が周囲に言いふらしている中核的な原則に関するプレッシャーでもある。

しかし、その原則なくしては、Appleが人々の注目を集める高級ブランドとしての魅力は消えてしまう。そうなれば間違いなく破滅だ。

コントロールの変化

主流の一般ユーザーが使いやすいようにiOSの一部のコントロールを制限していたことが、Appleの成功を長期的に支えてきたのは事実だ。しかし、iOSが次第に複雑化し、すべてが自分の支配下になければ気が済まない人たちが離れてしまったのも事実だ。

たとえばキーボードなど、これまで固定されていた要素がオープンになり、タイピング方法を自分で決めたいユーザーのために、サードパーティー製キーボードがインストールできるようになった。

こうした変化は、好きな検索エンジンをデフォルトに設定できないという制限を浮き彫りにし、Appleは、ユーザーエクスペリエンスの観点から正当性を訴えることが、次第に困難になってきた。

しかし、ビジネスの観点からすれば、Googleに検索エンジンのデフォルトという特別待遇を与えることで、Appleは巨額の利益を得ている。それは大変な額だと伝えられている。2018年は90億ドル(約9707億円)とも言われているが、確認は取れていない。当然のことながら、どちらの側からも取り引きの条件を公表する気はないようだ。

Appleの問題は、Googleから間接的な利益を得る代償として、Appleが擁護すると断言したユーザーのプライバシーが損なわれるところにある。広告の王者であるGoogleは、Appleに金を払うことでiOSユーザーの検索ワードをデフォルトで吸い上げる。これでは言っていることと違う。

プライバシーは、信頼あるAppleブランドの中核をなすものであるはずだ。

Cook自身も、一般に向けて強い口調で「データ工業団地」を非難してきた。しかし、間接的ではあっても、時として利益のためにユーザーのデータを売り渡しているという不都合な話には触れていない。

2017年、AppleはSiriのウェブ検索を、BingからGoogleに切り替えた。ユーザーのプライバシー保護に関してどんなうまい言葉を使ったとしても、西側のインターネットで最大のデータ商人との取り引き関係に依存していることに変わりはない。

これだけで、偽善者と呼ばれるには十分だ。

もちろんAppleは、トラッキングをしない検索エンジンを使いたい人のために、DuckDuckGo(DDG)も選択できるようにしている。これは2014年のiOS 8からの対応だ。

成長途中の、しかしまだ非常にニッチな製品を、主流の一般消費者向け製品に採り入れることは、Appleが自らの言葉を守り、プライバシーの保護を一番に思っている一例とも言える。

3大データ商人とも言うべきハイテク最大手企業の中にDDGスタートアップが現れたことで、事情に詳しいiOSユーザーは、それ以来Googleに中指を立てることが可能になった。つまりAppleは、プライバシーに敏感なユーザーに製品を買い続けてもらう状態を維持できたのだ(Appleの事業方針を完全に受け入れたわけではないが)。

しかし、そんなAppleの妥協的なポジションも、次第に危うくなっているように見える。

熾烈な値下げ競争を繰り広げ、データ商人のおかげで初期投資費用がずっと低く、それでも機能的にはほぼ同等のAndroidスマートフォンが台頭してきたこの時代に、Appleがブランドの差別化の大きな柱にプライバシー保護を据えようと思わなければ、その地位を守るのは難しい。

さらに、Appleの最上級iPhoneの価格が1000ドルを超えるという問題も見過ごすことはできない。デフォルトで自分のデータを売り渡すことがないとしても、1000ドル以上という価格は非常に高く感じられるが、他社製品との差額によって得られるものには、ピカピカのガラス筐体以上の価値があってしかるべきだ。しかし、実際のiPhoneは、そんな電話機ではない。デフォルトでは違う。

Appleは、プライバシーにもっとも敏感なiPhoneユーザーは、Google色の強いAndroidスマートフォンには手を出さず、選択肢が少なくてもiOS機器を選ばざるを得ない、事実上の専属市場だと思っているのかも知れない。たしかにそうだが、そんなiPhoneユーザーにAppleがより多くの高額なサービスを提供すれば、この飽和状態のスマートフォン市場で買い替えによる収益が上げられるかといえば、その保証はない。

最高の上客をそんなことで怒らせてしまえば、熱心に製品を買ってくれるユーザーは、控えめに言っても、目先のことしか見ない気の短い人たちばかりになってしまう。

しかし、Googleが検索市場を支配してる中で、Googleをデフォルトの検索エンジンから外せば、Appleの事業の存在意味を持つ主要なユーザー層の大半に楯突くことになる。

この理屈からすれば、ほとんどのインターネットユーザーはGoogleの検索エンジンをデフォルトとして使っているため、Googleをデフォルトの位置から動かすことはできなくなる。

実際、Cookは、昨年末、HBOが配信するニュース番組AXIOSのインタビューで、その取り決めの継続について聞かれたとき、はっきりとこう答えている。「彼らの検索エンジンは最高だよ」

彼はまた、近年、プライバシー保護のためのさまざまな機能をAppleのソフトウエアに組み込んでいると主張した。プライベートブラウズやスマートなトラッキング防止機能だが、それらはデータ商人に対抗するものだと彼は話している。

とは言え、それは血に飢えた吸血鬼を家に招き入れてから、家のまわりにニンニクのかけらを2つ3つばら撒くようなものだ。Cook自身も、その取り決めは「完璧」ではないとすでに認めている。

明らかに矛盾がある。しかし、Appleの儲けを考えば、これに限って言えば大した矛盾ではない。

このとこから、Appleの目は四半期のバランスシートと、ますます重要性を持つサービス関連の商品に向けられていることが想像できる。Appleが主張しているような長期的な視野ではなく、この完璧でないが儲かる取り決めを継続する姿勢だ。今週、株主に向けて発表されたCookの挨拶状には、こう書かれていた。「私たちは長期にわたりAppleを運営しており、逆境の折りには必ずそれを好機ととらえ、私たちが持つ柔軟性、適応性、創造性の文化を活かして、そこからよりよい結果を生み出すよう、自らの方針の再検討を行ってきました」

もし、Googleの検索製品が最高のものであり、Appleがデータ工業団地を非難することでプライバシーのモラル基準を高く保ちたいと望むなら、主流派ユーザーのためのサービスを今のままの取り引きで継続しつつ、Googleからの数十億ドルの資金を、人をプロファイリングする広告テクノロジーの巨大企業がもっとも嫌うプライバシー保護法の維持と強化のために奮闘している消費者やデジタル人権団体に寄付するという手がある。

しかし、株主はこの薬を好まないかも知れない。

投資家の口に合うのは、Appleが検索エンジンの選択肢を増やすことで活動の場を広げ、プライバシー保護に力を入れた、Googleに取って代わる検索エンジンを迎え入れるという策だろう。

またこの選択を、無数のユーザーに難しい駆け引きを持ちかけるようにデザインすることもできる。たとえば、デバイスの設定時に、インターネットでの検索をデフォルトでプライベートにするか、それともGoogleを使うかを積極的に尋ねるのだ。

それを実行したとき、想像を超える数のユーザーが検索エンジンのデフォルトにGoogleを選ばなくなることが想像できる。

たとえば、トラッキングを行わない検索エンジンであるDDGは、この数年間、着実に成長し、昨年の秋には一日に3000万件の検索を記録した。前年比で最大50パーセントの伸びだ。

AppleとGoogleの協定は守秘義務契約のもとに交わされていることを考えると(こうした協定では当然のことで、DDGもAppleとの取り決めの内容を詳しく話すことはできないと言っている)、Googleの条件の中に、iOSユーザーが選択できる検索エンジンの数に制限があるかどうかも不明だ。

しかし、少くともGoogleはAppleに金を払うことで、iOSユーザーがデフォルトに指定できるライバルのリストに制限を加えさせている可能性はある(最近になってGoogleは、反競争契約によりAndroid OEM製品での、検索エンジンを含むGoogle製品に代わる製品の利用機能に制限を課したとして、ヨーロッパでお仕置きを受けている。だから、検索エンジンに関してGoogleには前科があるのだ)。

同様に、Googleが中国で検索エンジンを再開するとしたら(本当に行うかどうかはっきり言わないのだが)、GoogleはAppleにデフォルトの座を渡すように要請してくるだろう。

しかし、それを押しのけるだけの強い理由がAppleにはある。中国市場ではGoogleは小魚も同然なのだ(現在Appleは、中国のiOSユーザーのために、現地の大手検索エンジンBaiduをデフォルトにしている)。

したがって、iOSを取り巻く現在の検索エンジンの構図は、Cookが望んでいるものよりも、少しぼやけている。

地元の好み

中国のケースは面白い。その市場でのApple成長の奮闘の様子を見ると、高級ブランドとしてのプライバシー保護の方向性とは、まったく別の方角を向いている。

中国では、なんでもありのスイス・アーミーナイフ的なWeChatプラットフォームのおかげで、物事はとても便利にできている。明らかにこれが消費者の方向性を決めている。そしてそれは今、中国市場でのAppleの事業の逆風にもなっている。

同時に、中国のユーザーはインターネット上でなんかしらのプラバシーがあるという考えは、国家による検閲があり、それが日常化しているその市場では、実質的にあり得ない。

それでもAppleは中国でビジネスを展開していて、さらなる偽善のためのコストとの釣り合いをとっている。

今週、改定された目標では、Appleの事業展開にとって重要な中国と新興市場にスポットを当てただけだった。原則に基づく行動は、どうも無理そうだ。

成長目覚ましい新興市場を重視することで、Appleは、公表している原則に反する方向に強く出ざるを得なくなる。プライバシーとは、どんだけ高価なのだろう?

はっきり言えるのは、飽和状態のスマートフォン市場で成長を遂ようとすれば、誰だって狡猾に立ち回らなければならない。とくにAppleは、未知の駆け引きや落とし穴に遭遇するリスクを負う。

株主に向けた挨拶状から推測れば、中国での交渉にはまったく新しいアプローチが必要になるとCookは考えているようだ。

こうした新しい「常識」により、飽和状態にあり単調なスマートフォン市場で差別化をはかるひとつの方法として、さらなる現地化が重要になる。

「すべての人にフィットするひとつの規格」というAppleの古い哲学は、今や一部のユーザーには時代遅れな考えとなり、多極化する前線においては足手まといで危険ですらある。ソフトウエアの「イノベーション」とプライバシーの原則を守るという主義に徹したいなら別だが。

検索エンジンの選択の幅を恣意的に制限していることが、ひとつのことを示している。なぜ、iOSはユーザーに自由に選ばせてくれないのか?

もしかして、Googleからの巨額の資金がそれを阻んでいるのか?

フランスのiPhoneユーザーの場合は、また複雑だ。フランスでは、使用できるキーボードアプリの数が非常に多い。有名どころのものから、チマチマした表面的に装飾されたものや、ネオンのように光るLEDキーボードスキンに、絵文字やGIFに取り憑かれたようなものまである。しかし、フランスで開発されたプライバシー保護を謳う検索エンジンQwantを、iPhoneのネイティブのブラウザーで使おうとすると、何かを検索するたびにQwantのウェブページに移動しなければならないという不便を強いられる。

Google検索は、おそらく世界(中国を除く)の平均的iOSユーザーにとって最善のものだろう。しかし、個人に特化した、個人を中心とした技術が発達し始めている現在、消費者の要求はこれまでよりも多くなり、個人が好きなものを自由に選ぶことに意義を挟むことは大変に難しくなっている。

ヨーロッパでは、改定された一般データ保護規則(GDPR)も警戒しなければならない。そのために、今日主流の広告テクノロジーのビジネスモデルは、さらに再構築が必要になるだろう。

この件に関してQwantは、トラッキングをさせない検索エンジンのライバルであるDDGでも、アメリカのCLOUD法に基づきAWSクラウドサービスを使ってユーザーの検索ワードを政府が検閲を行ったとき、どう対処できるのかと疑問を呈している(2年前、この件に関してGithubの討論スレッドでは、DDGの創設者がサーバーは世界中にあると話していた。彼は「ヨーロッパにいる人は、ヨーロッパのサーバーに接続されます」と言っている。DDGは個人データを一切収集しないので、CLOUD法に基づいてAWSからデータを抽出しようとしても、限られたものしか出てこないと繰り返し訴えていた)。

QwantがSafari iOSリストへの検索エンジンの掲載を求めたときの反応を聞くと、(間接的ながら)返ってきた反応をQwantは我々に話してくれた。「私たちはAppleにとって、あまりにもヨーロッパ的すぎるとのことです」(Appleは、iOSユーザーの検索エンジンの選択の自由に関してコメントをしていない)。

「もっとアメリカンになるように努力しなければなりません」と、クパチーノのApple本社から立ち上る狼煙の意味を解釈して、Qwantの共同創設者でCEOのEric Leandriは話していた。

「Appleが、ユーザーに同じエクスペリエンスを届けたいと考えていることは理解できます……。しかし、今もし私がAppleの人間だったら、ユーザーのプライバシーを守るという点においては、私には従いたい信念があります。まずは、ヨーロッパを、個人データに関する考え方が異なる人々の市場だと捉えることから始めるのです」と彼は話す。

「Appleはこれまで数多くの努力をしてきました。たとえば、アプリケーション同士でのデータのやり取りを、非常に厳格な反トラッキング指針に従って禁止してきました。またAppleは、クッキーやトラッキングの防止を確実にし、iOSではそれらを非常に困難にするという努力も重ねてきました。そして、最後にAppleに残った問題が、Google検索です」

「なのでAppleには、ひとつですべてを満足させるという方針とは別の考え方として、私たちの提案を見て欲しいのです。なぜなら、もはや私たちは、ひとつですべてを満足させられるとは思っていないからです」

Qwantもまた、この市場に関する小さな逆境を好機として、よりよいAppleが生まれることを期待している。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

Apple、SamsungのスマートTVにiTunesコンテンツ提供へ

Appleは今年自前のストリーミングサービスを導入する計画だが、それに先駆けて同社はSamsungと提携し、SamsungスマートTVからiTunesにアクセスできるようにする。Samsungは今朝、世界100カ国超で新しいアプリ“iTunes Movies and TV”を使ってSamsungスマートTV上でiTunesの映画やテレビ番組を視聴できるようになる、と発表した。また190カ国超で AirPlay 2もサポートする。

新しい“iTunes Movies and TV”アプリを使ってiTunesのコンテンツに直接アクセスできるようになるテレビメーカーはSamsungが初めてだが、iTunesのコンテンツがAppleのエコシステム外で利用できるのはこれが初めてではない。

iTunesのコンテンツはすでに、Prime Video、Google Play、Microsoft Movies&TV、Vuduそのほかで購入したものと同様にサードパーティーのMovies Anywhereアプリでアクセスできるようになっている。このアプリは現在、RokuやFire TV、Apple TVといった多くのストリーミングメディアサービスと連携している。加えて、Apple Musicは今やAndroidデバイスやEchoスピーカーでも流すことができ、 iTunesはWindows PCでも利用できる。

Samsungによると、Appleの“iTunes Movies and TV”アプリで、SamsungのスマートTV所有者はすでに持っている iTunesのライブラリや iTunesストアをブラウズできる。 iTunesストアでは4K HDRの豊富なセレクションを含む何十万もの映画やテレビ番組を購入したり借りたりできる。これらの映画とテレビ番組では、ユニバーサルガイドBixby、検索といったSamsungのスマートTVの機能が使える。

一方、SamsungはQLED 4Kと8KのTV、フレームTV、SerifライフスタイルTV、その他UHDモデル、HDモデルなど、幅広いスマートTVでのAirPlay 2サポートを展開する。こうしたTVの所有者はTVでビデオや写真、音楽、ポッドキャストを視聴できるようになる。

「SamsungのスマートTVを通じて世界中の顧客にiTunesとAirPlay 2を提供することを楽しみにしている。iPhone、iPad、そしてMacユーザーは、お気に入りのコンテンツを家の中で一番大きなスクリーンで楽しむ手段を手にする」とAppleのインターネットソフトウェア・サービス担当シニア・バイス・プレジデントEddy Cueは声明文で述べている。

2019年に独自のストリーミングサービスを立ち上げるAppleの計画ーおそらくすでに展開しているiTunesアプリを通じてーを考えるとき、Apple TVはさほど浸透していないために、リビングルームにあるより多くのデバイスでアプリを利用できるようにする、というのは理にかなっている。

Samsungは、新しいアプリとAirPlay 2は今春、2019 Samsung Smart TVモデルで提供され、2018 Samsung Smart TVにはアクセスを可能にするファームウェアのアップデートが案内される、としている。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

悪名高いAndroid向けマルウェアがiPhoneゲームにも潜入――専門家がGolduck汚染アプリを多数発見

セキュリティー専門家は10種類以上のiPhoneアプリがGolduckマルウェアがインストールされたサーバーと密かに通信していることを発見したという。GolduckはもともとはAndroidを対象としており、根強い人気のあるクラシック・ゲームに潜むマルウェアだった。

Appthorityによって最初に発見されたのは1年以上前になる。 iGoogle Play上のレトロゲームに潜んでおり、インストールされるとデバイスにバックドアを設け、ユーザーが気づかぬうちにサーバーから悪意あるプログラムをダウンロードする。発見されたときには1000万以上のユーザーが被害にあっていると推定された。ハッカーはデバイスにバックドアを通じて最高のユーザー特権で動作するコマンドを送り、SMSメッセージの送信などにより料金を詐取することが可能だ。

専門家はGolduckマルウェアがiPhoneにも危険をもたらしていることを発見しうた。

エンタープライズ向けセキュリティー企業のWanderaによれば、14種類のiPhoneアプリ(すべてレトロ・ゲーム)にGolduckマルウェアをインストールしたサーバーと通信できるコードが含まれているという。

汚染されているアプリは以下のとおりだ。 Commando Metal: Classic Contra, Super Pentron Adventure: Super Hard, Classic Tank vs Super Bomber, Super Adventure of Maritron, Roy Adventure Troll Game, Trap Dungeons: Super Adventure, Bounce Classic Legend, Block Game, Classic Bomber: Super Legend, Brain It On: Stickman Physics, Bomber Game: Classic Bomberman, Classic Brick – Retro Block, The Climber Brick, and Chicken Shoot Galaxy Invaders

Wanderaのプロダクト担当バイスプレジデント、Michael Covingtonは「[Golduckをインストールした]ドメインは当社が昨年公表した警告リストに登録されていた。われわれがiOSデバイスの外部との通信をチェックするとGolduckドメインと通信しているものがあることを発見したために調査を開始した」と述べている。

専門家によれば、これらのマルウェアの悪質性はそれほど高くない。マルウェアを含むサーバーはアプリ右上隅の広告スペースに勝手にアイコンを送り込む程度だという。.ユーザーがアプリを開くとサーバーはどのアイコンのリンクを起動するか指示する。しかしこのときサーバー上のGolduckはデバイスのIPアドレスや位置情報などのデータを抜き取ってしまう。【略】

AppleのApp StoreはGoogleのPlay Storeよりセキュリティーのレベルが高いと見られている。Androidアプリはときおり大規模なマルウェア汚染に見舞われてきた。しかし実のところどのストアのセキュリティーも完全ではない。昨年秋にMac App Storeでユーザーの許可を得ずにブラウズ履歴を収集するアプリが発見されている。また多数のiPhoneアプリが無承諾でユーザーの位置情報を広告主に送信していた。

一般ユーザーにとってマルウェアはネット上の最大の危険となっている。どうしても必要なもの以外ダウンロードしない、また信頼できるプロバイダーのアプリ以外インストールしないなどが防衛策として効果的だ。

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滑川海彦@Facebook Google+