FCCからの242億円の罰金と複数の州からの訴訟に直面するがロボコール業者たちはわずかしか払わない

人間の悪辣さの頂点を極めた2人の男が、2019年の最初の数カ月だけで約10億回のロボコール(自動音声勧誘電話)を行ったことを認め、現在FCC(連邦通信委員会)の2億2500万ドル(約242億円)の罰金(米国政府記事)と、それ以上の額に達することが見込まれる複数の州司法長官たちからの訴訟(米国政府記事)に直面している。しかし、実際に彼らがそれを支払うということにはならないだろう。

悪名悪いテキサス人のJohn Spiller(ジョン・スピラー)とJakob Mears(ジェイコブ・ミアーズ)は、怪しげなクライアントからの健康保険を販売することを目的として、1日に数百万のロボコールを行なう2つの会社を設立した件で訴訟を受けている(彼ら自身も自白している)。

彼らの行為は、米国内のDo Not Callレジストリ(セールス電話禁止を希望する電話番号登録制度)を無視しただけでなく、「そうした消費者を対象とする方が収益性が高かった」ために、特に対象として選んでいたのだ。しかも番号が偽装されていたために、怒ったユーザーたちがコールバックを行った結果、相手が何もわからず当惑するという事態が起こり、ますます事案は悪質化した。

これらの電話は2年間で数十億件にのぼり、最終的にFCC、複数の州司法長官および業界の詐欺防止協会によって事態が暴露された。

現在、この2人は2億2500万ドル(約242億円)の罰金を突きつけられているが、これはFCC史上最高額となる。また訴訟には複数の州が関与し、それぞれのケースでさまざまな法的損害賠償が含まれており、控えめな金額の見積もりでもFCCの罰金額を上回る可能性がある。

残念ながら、これまでもそうであったように、こうした罰金額は実際に支払われる金額とはほとんど相関関係がないようだ。FCCとFTC(連邦取引委員会)にはこれらの罰金の徴収を強制する権限がなく、執行は司法省に任されているからだ。そして司法省が実際にお金を集めようと試みたとしても、彼らは被告が持っている以上のものを徴収することはできない。

例えば2019年、FTCは1人のロボコール業者に500万ドル(約5億4000万円)の罰金を科したが、彼が払ったのは時価で売り払った彼のベンツの代金1万8332ドル(約200万円)だけだった。当然のことながら、こうした知能犯罪に関わる犯人たちは、処罰を回避する方法を知らないわけではない。連邦政府がドアをノックする前に現金資産を処分しておくことは、そうしたゲームの一部に過ぎない。

こうした場合、状況はさらに悲惨なものになる可能性がある。司法省が関与することすらしない場合だ。FCC委員のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)氏は、同庁の発表にともなう声明の中で次のように述べている。

この総力戦には欠けているものがあります。司法省です。彼らはこの詐欺に取り組む一員ではないのです。なぜなのでしょう?彼らが関与することを拒否することで、どんなメッセージが送られるでしょうか?

私が受け取るメッセージは以下のようなものです。過去数年間、FCCは今日ここにいる者たち同様に、ロボコール業者に対して数億ドル(数百億円)の罰金を科してきました。しかし、これまでのところ、こうした目を見張るような罰金に関する徴収実績は、ほぼ無きに等しいものなのです。実際、何億ドル(数百億円)もの罰金に対して、私たちがせいぜい6790ドル(約73万円)しか集められていないという計算を、ウォールストリートジャーナルが発表したのは2019年のことです。何故でしょう?まあ、ひとつの理由は、FCCが司法省にロボコール業者からの罰金徴収を頼っているからです。私たちには彼らの助力が必要なのです。したがって、彼らが動いてくれない場合には、つまり今回のようにということですが 、それは良い兆候ではありません。

確かに、FCCからの罰金と訴訟はこうしたロボコール業者を廃業させ、より多くの詐欺行為を防止するものの、彼らは億万長者ではないため、実際には数億ドル(数百億円)を負担することはない。

罰金がこのような事業を破産させるほど大きなものであることは良いことだが、2018年にまた別の莫大な罰金がロボコール業者に科されたときにローゼンウォーセル氏が述べたように、「それは小さじ1本で海をカラにしようとするようなもの」なのだ。FCCと各州は2人のろくでなしを追い詰めたものの、さらに多くのろくでもないヤカラたちが同じようなことを狙って出現する可能性は高い。

ロボコールを抑制するための業界全体の対策は何年も前から行われてきたものの、何度もの警告と遅延が繰り返された後、ようやくFCCによって最近義務付けられたのだ(未訳記事)。2021年には新しい詐欺対策フレームワークが施行されることを期待しよう。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:sako)

FCCが軌道デブリ規則を2004年以来初めて更新

FCC(米国連邦通信委員会)は、15年前に登場した軌道デブリ規則をようやく更新し、新しい要件を追加して承認プロセスを合理化した。毎年沢山の衛星が、ますます混雑する軌道に上がっていく中で、こうした規則はこれまで以上に重要になっている。

FCCは、軌道上に蓄積されたデブリ(軌道上のゴミ)の削減を行う必要性を述べる中で、問題を軽視したがる人はいるものの、すでに重大な危険が存在していると指摘している。

調査によれば、低軌道(LEO)の一部の領域では、衝突によって生成される新しいオブジェクトとフラグメントの数が、自然の空気抵抗によって取り除かれる数を超えている。他の地域では、軌道破片の密度が十分に高くなっているために、デブリオブジェクト間の衝突により、デブリの数が無期限に増加する「暴走」状態に近いか、すでにその状態に達していると結論付けているアナリストも存在する。

はっきりさせておきたいが、ここで言う規則とは「宇宙船は20個以上の破片に分解されてはいけない」というようなものではない。それらは、衛星事業者に対して、安全で持続可能な方法で運用していることを示すことを要求するというもので、問題が発生した場合には衛星を追跡または軌道から取り除く能力などを証明させるものだ。

新しい規則は、これまでのものと大きく異なるものではなく、むしろ、技術や打ち上げ方法の改善に起因する変化と、膨大な数の衛星配置の新しい現実を反映したものだ(2004年の規則はあちこちが微調整されてきたが、これは初めての「包括的な」更新なのだ)。

たとえば、SpaceXのStarlink衛星などの、複数の宇宙船の打ち上げでは、各衛星を一意に識別できて、地上レーダーやその他のテレメトリ方法などで追跡可能であることが重要だ。新しい規則では、衛星運用者は、そうした追跡が、どのようにどの程度行われているかを正確に開示し、また、軌道調整やその他の操作のようなものを、衛星追跡当局と共有するかどうか、またそれをどのように計画しているかを開示することも求められる。

また、大小の物体との衝突の可能性や、衛星が故障する可能性、地上にいる人にどのようなリスクがあるのかを推定しなければならない。

規則の最大の変更点は、おそらく、国際宇宙ステーションより高い高度に達する宇宙船は皆、衝突を回避するために何らかの操作を行えることが求められるという要件だ。

そうした軌道で何が行われているのかを考えるならば ―― 主に画像処理と通信だが ―― そうした操作はほとんどの衛星が既に行っているべきものだ。だが衛星とその打ち上げ価格が下がり続けている中で、もしこうした要件がなければ、他のものには絶対衝突しないという空虚な保証をつけて、数千の低性能の衛星を軌道にばらまいてしまう決定が下されるのは時間の問題だ。

そして問題は、FCCが規則を作らなければ、誰も規則を作らないということだ。同じ政府機関が、ブロードバンドの速度、TV番組の猥褻基準、そして軌道デブリに責任を負っているのは奇妙な話だが、それが事実なのだ。

新しい規則に付随する声明の中で、Jessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォーセル)委員は「FCCにはユニークな権限があることを認識する必要があります。商業宇宙活動を管轄しているのは私たちだけです。これにより、FCCの2004年軌道デブリポリシーを更新する作業が非常に重要になりました」と語っている。

彼らは、NASA、NOAA、および国際的なベストプラクティスを開発しようとする国際機関と協力して作業しているが、今日の衛星の大多数に関して、規則を制定しているのはFCCなのだ。

今回は採用されなかったが、FCCが議論のために公表している提案の1つは、衛星が計画通りに回収されたときに償還できる債券の購入を、企業に対して要求する可能性だ。

その場合、衛星を打ち上げようとする企業は、軌道にのせる前に、たとえば国債を1万ドル(約108万円)購入することを求められる。数年後、衛星がその仕事を終えて解体する準備ができたとき、すべてが計画通りに進んでいた場合には、その1万ドルが償還される。しかし、衛星が失敗したり、制御不能になったり、その他計画から逸脱したりした場合には、1万ドルは没収される。

このアイデアは直感的には理にかなっている。いわば宇宙船に対する一種の保証金だ。しかし具体的な内容を詰めて行くのはとても難しい。そこでFCCは、この要件にどのようにアプローチするのがベストなのか、あるいはまったくアプローチしない方が良いのかに関して、コメントを募集している。

FCCのWebサイトで、新しい規則とその解説の完全版を読むことができる。

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(翻訳:sako)

米政府がチーム・テレコムを正式組織化、通信インフラ事業への中国資本監視を強化

「チーム・テレコム」というのはシンプルな名前だが、国家安全保障関係の記事にうってつけの謎めいた響きがある。

チーム・テレコムはこれまで非公式なワーキンググループだ。この目立たないグループは国防省、国土安全保障省、司法省(管轄下官庁を含む)の担当者がFCC(連邦通信委員会)と協力して米国の電気通信インフラのセキュリティの評価と管理を行ってきた。

我々が知る範囲でいえば、グループの主な目的は、主要な通信インフラの所有権をモニターし、疑わしい勢力(つまり中国、ロシアなど)の手に渡らないようにすることだ。

2019年、Mark Harris(マーク・ハリス)氏はチャイナ・モバイルが米国市場への参入を申請してから却下の決定が出るまで7年以上も待ちぼうけの状態に置かれていたとExtra Crunch(有料)に寄稿している。

政府がチーム・テレコムを正式組織に格上げしたことにより。こうした非公式の取り扱いは過去のものとなった。新しい大統領行政命令はテレコム事業の許認可、買収、合併などFCCへの申請をチーム・テレコムの審査を正式なプロセスとして組み込んだ。

設置されたグループは「米国テレコムサービス分野における外国勢力参加評価委員会(Committee for the Assessment of Foreign Participation in the United States Telecommunications Services Sector)」というたいへん長い名前で呼ばれる(CAFPUSTSS?)。

委員会は「米国のテレコム事業への外国勢力の参加によって引き起こされる公益上の懸念の有無を国家安全保障および法執行の立場から評価することによってFCCを支援する」ものとされた。

チーム・テレコム同様、新しい委員会は司法長官、国防長官、国土安全保障長官で構成され、司法長官が委員長を務める。「委員会が処理する申請内容は米国政府の諜報責任者である国家情報長官に伝達され、分析を受ける」とされる。

7年間棚晒しという場合もあったチーム・テレコムとは異なり、新体制では審査のタイムラインにも基準が設けられた。行政命令によれば、当初の決定までが120日間、委員会が懸念を抱き追加審査の必要を認めればさらに90日間延長される。

FCCのAjit Pai(アジット・パイ)委員長は、短いコメントを発表し「大統領がチーム・テレコムのレビューを公式化し、これによって各省庁の専門家の評価が迅速にFCCに提供されるるプロセスを確立したことを高く評価する」と述べた。FCCは、オバマ政権時代の最後に提案され、それ以降継続しているチーム・テレコムに関するFCCとしてのルール作りを完了する予定だ。

チーム・テレコムの改革は、米国に対する外国勢力の投資全般を監視する組織であるCFIUS(対米外国投資委員会)の改革に準じたものだ。当初は諸官庁を横断する非公式なワーキンググループだったが、2018年に議会が改革法案を可決した後、2020年初めにCFIUSは正規の組織に改組された。

今回の改革で光ファイバーやモバイルネットワークなど米国の通信インフラの整備、拡張に関する事業の予測可能性が増すことは確かだが、同時に米国市場参入を図っていた中国などの事業者にとってはハードルがいっそう高いものとなるだろう。 事実、FCCは「China Mobile(チャイナ・モバイル)の(米国市場参入)申請を却下したことで2019年に示されたように、FCCは外国の脅威から我が国のネットワークを保護するために行動することを躊躇しない」と声明している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米国が未修正のままにしていたSS7の欠陥を利用しサウジのスパイが携帯電話を追跡している

位置の追跡監視

米国の議員とセキュリティの専門家たちは、世界の携帯電話ネットワークの弱点におけるセキュリティ欠陥について、長い間警告してきた。内部告発者によって最近明らかにされたところによると、サウジアラビア政府はそのセキュリティ欠陥を悪用し、「系統的な」監視キャンペーンの一環として、米国全体で自国民を追跡しているということである。

これは、サウジアラビア王国が海外にいる国民を見張るために最近採用している戦術である。同王国は、反体制派や活動家の活動を監視するために、強力なスパイウェアを使用してそれらの人々の携帯電話をハッキングしていると非難されてきた。このハッキングの対象には、サウジアラビア政権の役人によって殺害されたワシントンポストのコラムニストJamal Khashoggi(ジャマル・カショギ)氏の周囲の人たちも含まれていた。また同王国には、政権に対して批判的な人を監視するために、Twitterにスパイを送り込んでいたという疑いも掛けられている。

ガーディアン紙は、11月以降の4カ月間にサウジアラビア国民がいた場所を示す数百万件のデータのキャッシュを入手した。報告によると、その位置追跡リクエストは、サウジアラビアの3大携帯電話事業者から出されたもので(実際にはサウジアラビア政府の命令によるものだと考えられている)、SS7の弱点を悪用したものであった。

SS7(共通線信号No.7)は世界中のサービス事業者が使用しているプライベートネットワークと同種のもので、ネットワーク間で通話やメッセージをルーティングおよび転送するためのプロトコルセットである。このプロトコルがあるからこそ、T-Mobileの利用者が国を問わず、AT&Tの携帯電話に電話を掛けたり、Verizon(ベライゾン)を使っている友人にメッセージを送ったりすることができるのである。しかし、専門家たちによると、攻撃者(たいていの場合、政府やサービス事業者自身)はこのシステムの弱点を悪用してサービス事業者にアクセスし、通話を盗聴したり、テキストメッセージを盗み見たりすることができる。また、SS7を使うと、サービス事業者は「加入者情報提供」(PSI)リクエストを行うことによって、人口密集都市でも数百メートルの誤差でデバイス位置を追跡できる。このようなPSIリクエストは通常、あるサービス事業者のローミングサービスを別の国で利用している場合などに、携帯電話ユーザーへの請求が正確であることを確認するために使用される。PSIリクエストが一括で大量に行われているということは、位置の追跡監視が行われていることを示す可能性がある。

このシステムを悪用した攻撃に関する警告が何年にもわたって出され、数多くの報告が挙げられてきたにもかかわらず、米国最大のサービス事業者は、外国のスパイが監視のために自社のネットワークを悪用できないようにするため、ほとんど何もしてこなかった。

ある民主党議員は、対策を講じるよう携帯電話事業者に強制しなかったという理由で、米国連邦通信委員会(FCC)を強く非難している。

上院情報問題特別調査委員会のメンバーであるRon Wyden(ロン・ワイデン)氏は、3月29日の陳述で次のように述べた。「私は何年もの間、米国の携帯電話ネットワークにおけるセキュリティ欠陥について警告してきた。しかし、FCCの委員長であるAjit Pai(アジット・パイ)氏は、外国政府のハッカーから自社のネットワークを保護するようサービス事業者に求める規制や強制措置を設けるつもりはないことを明言してきた。この報告が事実だとすれば、パイ氏が対策を講じなかったために、独裁主義政府が米国の無線ネットワークに入り込み、我が国の中にいる人々を追跡している可能性が生じていることになる」。

携帯電話ネットワークの規制を担当する政府機関であるFCCのスポークスマンは、コメントを求められたが回答しなかった。

長い間、対策が後回しに

懸念を表明している議員はワイデン氏だけではない。2016年、当時新人の下院議員だったTed Lieu(テッド・リュウ)氏は、CBSの「60 Minutes」のある放送回で、セキュリティ研究者にSS7の弱点を悪用して自分の携帯電話をハッキングする許可を与えた。

リュウ氏は、FCCが「無線ネットワークのセキュリティ問題に対して対策を講じなかった」と非難した。

この脆弱性は、1年後の2017年にも、疑うことを知らない被害者の銀行口座情報を流出させるために利用された。その際には、ログインに必要な2段階認証コードをテキストメッセージから傍受し、盗み取ったのだ。この情報漏えいが要因の1つとなり、米国政府の標準技術機関であるNISTは、2段階認証コードの送信にテキストメッセージを使用しないようにと推奨することになった。

数か月後、メディアによる注目が集中したことにより、FCCはサービス事業者に対し、自社のSS7システムを補強する取り組みを行うようにという「推奨」(「要求」ではない)を公示した。この公示では、サービス事業者に、自社のネットワークをモニタリングし、悪意のあるリクエストを防止するためのファイアウォールを設置することを求めた。

しかし、それでは十分ではなかった。2018年、ワイデン氏の事務所は、ある大手携帯電話事業者(名前は伏せられた)でSS7のセキュリティ侵害によって顧客データが漏えいしたことを報告した。ベライゾンT-Mobileはワイデン氏の事務所に宛てた書面で、SS7における悪意のあるリクエストをフィルタリングするファイアウォールを実装しているところだと説明した。AT&Tは書面で、ファイアウォールのアップデートを進めているところだと説明した。しかし同時に、「情勢が不安定な非友好国」が携帯電話事業者のSS7システムにアクセスして、システムを悪用する可能性があると警告した。当時、自社がSS7のセキュリティ侵害の原因ではないと断言したのはSprint(スプリント)だけであり、同社のスポークスマンがTechCrunchにその旨を記載した電子メールを送信している。

T-Mobileはコメントを求められたが回答しなかった。ベライゾン(TechCrunchを運営するベライゾンメディアの親会社)もコメントしなかった。AT&Tは当時、SS7の問題に対処するために「業界団体や政府機関と引き続き連携していく」と述べた。

SS7の修正

SS7の問題の修正は簡単な仕事ではない。しかし、規制当局が変化を迫らなければ、サービス事業者は動こうとしない。

専門家によると、携帯電話事業者が導入しているファイアウォールを使えば、悪意のあるトラフィックが発生したときにそれをフィルタリングし、悪用をある程度防止できるとのことである。しかし、SS7の欠陥によって生じるリスクを把握するため2016年に設置されたFCCの作業部会は、SS7のトラフィックの大多数は正当なものであることを認めた。報告では、「サービス事業者がネットワークへの副次的な影響を回避するための対策を実施しているかどうかを調査する必要がある」と述べられている。

つまり、サービス事業者からの正当なリクエストをブロックしてしまうようでは使い物にならないのである。

携帯電話事業者はこれまでのところ、SS7の実装方法を修正する計画があるとは決して言えない。コメントを提出したのはAT&Tだけであった。同社はガーディアン紙に対し、「ローミングサービスのパートナー企業から送信される位置追跡メッセージをブロックするためのセキュリティ制御を実装済みである」と述べた。それがどれほどの範囲で実装されているのか、その対策がそもそも有効なのかどうかはわからない。Diameter(SS7と同様の4Gおよび5G向けルーティングプロトコル)のような新しいシステムについては、数多く脆弱性がすでに見つかっており、そのようなシステムに期待を寄せる専門家は少ない。

Signal(シグナル)やWhatsApp(ワッツアップ)など、エンドツーエンドの暗号化が実行されるアプリを使えば、スパイが通話やメッセージを傍受できる可能性は低くなる。しかし、それも万能薬ではない。SS7がすべての携帯電話ネットワークのまさに中核を支え続けている限り、位置データの追跡が格好の標的となる状況に出口は見えない。

プライバシーに関して強硬策を主張する議員が、米国民にSS7のハッキングの脅威について警告するよう国土安全保障省に要求

オレゴン州の上院議員であるロン・ワイデン氏とカリフォルニア州の下院議員であるテッド・リュウ氏が、携帯電話ネットワークの脆弱性がデジタルシステム全体に影響する脅威であることを国土安全保障省(DHS)に訴えている。

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(翻訳:Dragonfly)

米FCCが多発する新型コロナ関連ロボコールの被害を警告

ロボコールは何年も前から不注意な人々をターゲットにしてきたため、詐欺師たちが現在の世界的な大惨事を利用して活発に詐欺活動を行うことは、驚くに値しない。FCC(連邦通信委員会)は、新型コロナウイルスに関連したロボコールの被害が多数報告されていると警告している。

これまでのロボコール詐欺はIRS(米合衆国内国歳入庁)の罰則で脅かしたり、無料休暇を約束したりしていたのに対して、今回新たに登場した詐欺はパンデミック関連の情報と個人情報の両方を利用して、かなり説得力のある詐欺をしかけるというものだ。FCCに寄せられた一般的な詐欺をいくつか紹介しよう。

  • 検疫や戒厳令に関する警告:何かを注文させようとしているのかもしれないし、あるいは組織的な偽情報キャンペーンの一部なのかもしれない
  • WHOや慈善団体がチャリティーを要求していると称するメッセージ
  • 無料のウイルス検査キットの提供:なかには糖尿病患者を対象としたものもあり、無料の血糖モニターも提供する
  • ウイルスから保護するためのHVAC(空調)のクリーニング、アップグレードなどの提供
  • さまざまな偽製品やウイルス治療薬の販売促進
  • 政府からの小切手を確認するための情報の要求(このような手順はランダムなテキストメッセージでは行われない)

FCCに寄せられた事例投稿には、悪質なHVACのソリューションがどのように発信されているのか気になる場合のために、詐欺のいくつかの例(音声を含む)が掲載されている。

一般的なロボコールのルールとして、不明な番号(特に自宅の市外局番)は危険の兆候だ。メッセージは後でいつでも聞くことができる。もし注文の商品が用意できたという地元業者の連絡や病院予約の通知なら、その旨が伝えられるはずだ。

電話やテキストメッセージ、電子メールで個人情報や支払い情報を求める者は、ほぼ間違いなく詐欺師だ。この情報を安全でない方法で共有する必要はほとんどない。

不明な番号や不審な番号からのテキストメッセージ内のリンクには、絶対に触れないことだ。それらによってウェブ上からハッキングされたり、追跡されたりする可能性がある。

安全を確保しつつ、ロボコール対策を目的とした規制の枠組みが策定されることを期待しよう。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

米国議会に急かされてFCCはロボコール対策技術の実装をキャリアに義務化

通信キャリアに対して、1年間の猶予期間を与えた米国のFCC(連邦通信委員会)がついに本日、米国時間3月7日から、ロボコール排撃技術の実装を彼らに要請する。もちろんFCC自身も、待ちくたびれた議会にせっつかれて、通信キャリアに対する行動を起こさざるをえない。

この技術は「Secure Telephony Identity Revisited / Secure Handling of Asserted information using toKENs」と呼ばれ、幸いにも「STIR/SHAKEN」という略称がある。これは、電話番号の悪用を防ぐための一種の認証局だ。興味のある方は、この技術記事を読んでみよう。

STIR/SHAKENはかなり前から、ロボコール対策の重要なポイントとして頻繁に取り上げられてきた。2018年にFCCの議長であるAjit Pai(アジット・パイ)氏は、通信キャリアは2019年の末までにそれを実装せよと命じている。その2019年が過ぎ、FCCと通信キャリアは他のロボコール対策を導入し、STIR/SHAKENはほとんど忘れ去られていた。

その間、おそらく迷惑電話に悩まされ続けたと思われる議会は超党派で「TRACED Act」を成立させて、FCCとその他の省庁がロボコール対策のアクションを起こせることになった。そしてもちろん、通信キャリアはロボコール排撃サービスの料金を請求できない。

関連記事: ロボコール遮断法案が上院通過、大統領の署名待ちに

また議会は、FCCに対してSTIR/SHAKENの実装期限を設けるよう命じた。現在、パイ氏はそれに応じている。

パイ氏による3月7日の声明では「この重要な技術の全面的な展開を促進するために、FCCのアクションが必要なことは明らかである。ロボコールの根絶に特効薬はないが、しかしこれは 我々がかねてから攻撃していたターゲットにとって致命傷になる」と述べられている。

しかしまだ、みんなが急いでいる気配はない。必要なFCCの票決は3月終わりに予定されていて、音声サービスのプロバイダーはSTIR/SHAKENを2021年の6月までに実装しなければならない。実装が困難と自称している小規模なプロバイダーには、さらに1年間の猶予が与えられる。

ということは、クルーズ船の割引乗船料金とか、税務署からの警告などと称する奇怪な電話は、当分かかってくるということだ。もちろん、自分でできる迷惑電話対策もある。例えばこれらの簡単な工夫は、あなたの精神安定に役立つだろう。

関連記事: How to stop robocalls spamming your phone…ロボコール対策の基礎編(未訳)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

通信キャリアによるリアルタイムの顧客位置情報販売を米FCCが犯罪と認定

1年半あまり前に、米国の無線通信事業者たちがリアルタイムの顧客位置情報を、金さえ払えば誰にでも売ってることが発覚したが、このほどFCC(連邦通信委員会)はその販売を犯罪と認定した。彼らの犯行過程を詳細に述べた公式文書も、近く公開される。

FCCのAjit Pai(アジット・パイ)委員長は、FCCを監督する下院のエネルギーと商業委員会委員長Frank Pallone(フランク・パローン)氏(民主党・ニュージャージー州)およびそのほかの下院議員と、書簡でその所見を共有した。パローン議員と彼の同僚たちはこの問題に以前から熱心で、2019年は一貫してFCCにアップデートを促し、ついに本日、米国時間2月1日の書簡に至った。

パイ氏は「FCC監督局の徹底的な調査により、1つ以上の無線通信事業者に違法性の疑いがあると結論された」と記している。

TechCrunchがこの言語道断なプライバシー侵犯を知ったのは2018年の5月のことだ。そのときは複数の記事が、本誌の親会社Verizonも含むすべての大手キャリアが正確な位置データをリセラーに販売し、さらにそれらが売られたり公開されたりしていた、と報じていた。それをやめるというキャリアの約束が実行されたのは、それから1年近くあとだ。そして今日見られるように規制当局が対応したのは、それから18カ月後のこととなる。

関連記事:A year after outcry, carriers are finally stopping sale of location data, letters to FCC show…1年経ってやっとキャリアは位置データの販売を停止した(未訳)

委員長の書簡に伴う声明で委員のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)氏は「FCCが当然のような結論に到達するまでに、このように長くかかったことは残念だ」と言っている。彼女はこれまで何度もこの問題を採り上げてきた。これほど大規模であからさまな違反を、FCCがほとんど完全に無視してきたことに、彼女は疑問を感じていたようだ。

Brendan Starks(ブレンダン・スタークス)委員も、声明で彼女と同じ気持ちを述べている。「このような金を払えば追跡データが得られるという方式は、消費者のプライバシー権を犯し、安全を脅かしている。これほどひどい内容の申し立てに対してFCCがやっと腰を上げたことは喜ばしいが、しかし、なぜそんなに長くかかったのだろうか?」

パイ委員長の書簡は、数社に対して「科料義務可能性通告書」を近く提出するとある。このよくわからない名前の文書は、要するに公式の宣言であり、証拠と法的根拠を挙げて、誰かがFCCの規則に違反したので罰金措置の対象になるかもしれない、という可能性を告げるものだ。

今のところ、他の委員たちからの情報を含めてもここまでしかわかっていないが、通告書が届けば状況はさらに明らかになる。FCCがどれだけ本気だったかもわかる。

パローン議員の代理人は、Pai委員長の書簡を受け取ってから次のような声明を発表した。

我々が長期間行動を求めてきたFCCがやっと本日、当下院委員会に、一社以上の無線通信事業者が消費者のリアルタイムの位置情報を広く開示して国のプライバシー保護を犯したらしいことを報告してきた。確かにこれは、正しい方向への一歩であり、違法者を軽い叱責だけで解放しようとするFCCのジェスチャーでないことを確実に見守りたい。

関連記事: サイバーセキュリティ強化のためにチェックすべきトップ5

情報開示: 本誌TechCrunchはVerizon Mediaの子会社であり、さらにVerizon MediaはVerizon Wirelessの子会社である。しかしながらこの事実は、本誌の記事に何ら影響を及ぼしていない。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ロボコール遮断法案が上院通過、大統領の署名待ちに

大統領弾劾をめぐって両党が激しく対立している中で、米国上院はある法案を超党派で議決した。あとは、大統領が署名すれば法律が成立する。そのTRACED法(Telephone Robocall Abuse Criminal Enforcement Act、電話のロボコール濫用を犯罪とする法律)は、ロボコールが呼び出し音を鳴らす前にキャリアがそれを封ずることを義務付け、特に悪質なものはFCCに捜査権を与える。

下院エネルギーおよび商業委員会の法案共同提案者は:「不法なロボコールを遮断するこの法案を下院が速やかに可決したことは喜ばしい。我々は米国の人びとがこれらのしつこい不法な起呼から解放されるために懸命な努力を行った。この超党派の圧倒的多数で議決された法案に、大統領がきわめて速やかに署名することを期待する」。

関連記事: 米下院と上院が迷惑電話のロボコール対策法案で合意、早急の制定目指す

さまざまなケースが超党派と呼ばれるが、これは本物だ。上院と下院で法案の2つのバージョンが生まれ、どちらも圧倒的多数で議決された。関連する委員会が共同で両案を生かした統一バージョンの法案を作り、その後わずか1カ月でホワイトハウスに渡って大統領の署名を待つことになったのだから、すごいことだ。

法案の要約はここで読めるが、要約すると以下のようになる。

  • ロボコール迷惑行為に対するFCCの出訴期限を延長し、罰金を増額する
  • FCCはスパムコールとスパムテキストから消費者を護るための規則を作る(すでに着手)
  • FCCはロボコール対策に関する年報を作りFCC推奨の法案を作成する
  • 発信者電話番号の詐称を防止するためにSTIR/SHAKENフレームワークの適切なタイムラインを採用する
  • キャリアは上記サービスに課金せず、ありうる過誤を犯すことから自力で自己を遮蔽する
  • 司法長官は犯行者の訴追のために多省庁にまたがる特別調査委員会を召集する
  • 司法省は犯行者を訴追できる。
  • 規則が実効していることを確認するための切り抜き作成や調査を行い、関連団体などからのフィードバックが確実にあるように図る

この特定の問題に具体的にフォーカスしているという意味で、これはいい法案のようだ。余計なものは何もない。早く署名され、早く法律として発効することを望みたい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

T-MobileとSprintの合併阻止を求める訴訟がニューヨークで審理開始

約2兆8000億円の巨大企業を誕生させるT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併を阻止しようとする訴訟がら米国時間12月9日、マンハッタンの連邦地裁で審理される。原告は13州とコロンビア特別区の司法長官14名で、このグループは当初から合併に反対しており、数カ月前から訴訟を予告していた。

米国カリフォルニア州司法長官のXavier Becerra氏は次のようなコメントをTechchCrunchに寄せた。

「本日、我々は実質的競争と低価格を消費者にもたらすために立ち上がった。我々の電波帯域は公共のものであり、競争者の数を減らすのは間違いだ。この合併はもっとも弱い立場にある関係者、すなわち消費者の利益を損ねるものだ。競争者が減ることは高価格を意味する。われわれ14州の連合は法廷で消費者、米国人全員のために戦う。法は我々の味方であると確信している」。

司法長官グループの主張は「このような合併は米国における当該分野の競争者の数を3社に減らし、これは消費者の利益を損ねる」というものだ。他方、T-MobileとSprint側は「事実はその正反対であり、Verizon(ベライゾン)とAT&Tが5Gネットワーク建設に巨額の費用を投じている現在、合併することで両者と競争する体力が得られる」としている。

この夏、FCC(連邦通信委員会)は合併を承認し、アジット・パイ(Ajit Pai)委員長は8月に「提示された証拠はこの合併が5Gネットワークの構築を加速し、アメリカ人、ことにデジタル・デバイドと呼ばれるハンディキャップに苦しむ遠隔地の人々を助けることを明らかに示している」と述べた。

Wall Street Journalによれば、本日裁判の冒頭陳述があり、3週間程度続くという。SprintのMarcelo Claure(マルセロ・クラレ)会長と、近く退任が予定されているT-MobileのJohn Legere(ジョン・レジェール)CEOが司法長官連合に反駁する証言を行う予定だ。

【編集部注】TechCrunchはVerizonに属するメディアだと。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米FCCがT-Mobile/Sprint合併を承認

米国時間10月16日、米国連邦通信委員会(FCC)はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の合併について投票し3対2で正式に承認した。The Vergeによれば、承認が共和党3、反対が民主党2と政党の方針どおりに賛否が分かれた。

TechCrunchではFCCにコメントを求めている。

今年4月8日、T-MobileとSprintは260億ドル(約2兆8267億円)の大型合併で合意したが、当然ながら反トラスト法に違反するのではないかという議論を呼び起こした。当事者企業はAT&TとVerizon(TechCrunchの親会社)というモンスター企業と競争するうえで合併は必須だと主張した。かなりのやり取りの後、7月に入って合併は司法省の承認を受けた。FCCの承認を受けたことにより、残るハードルは他国籍の訴訟だが、両社とも合併手続き完了以前に解決することを約束している。

The Vergeの記事によれば、民主党側のJessica Rosenworcel(ジェシカ・ローゼンウォルセル)委員とGeoffrey Starks(ジェフリー・スタークス)委員は反対票、共和党側のAjit Pai(アジット・パイ)委員長、Brendan Carr(ブレンダン・カー)委員、Michael O’Rielly(マイケル、オリリー)委員は賛成票を投じたという。

民主党側のローゼンウォルセル委員はこの決定に反対票を投じたとして、次のような声明を発表している。

このような合併によりマーケットが寡占的になれば何が起きるか我々はよく知っている。航空業界でも荷物の料金はアップしシートは狭くなった。製薬業界では数少ない巨大企業が生命に関係する薬剤を高価なままにしている。携帯電話企業が例外であると考えるべき理由はない。T-MobileとSprintの合併は競争を阻害し、料金を高騰させ、品質を下げ、イノベーションを妨害すると考えるべき証拠が圧倒的だ。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ウェブ版YouTube Kidsが公開された

子供向けのYouTubeコンテンツ専用のウェブサイト、youtubekids.comが誕生した。このウェブサイトは、既存のYouTube Kidsモバイルアプリと同様の体験を提供する。このアプリを使うと、親が年齢にふさわしい動画に子供を誘導したり、子供の視聴履歴を追跡したり、YouTubeのフィルターが見逃したコンテンツを報告したりすることができる。ローンチ時には、サイトでのサインインオプションは提供されないが、後日公開されることが発表されている。

ウェブサイトがもうすぐ公開されることは、今週YouTubeによって控え目に発表された。またこれは、米国の子供のプライバシー法(COPPA)に対する違反に対して、Googleが所有するビデオプラットフォームに課された数億円に達する罰金を含むと言われているFTCとの和解の公式発表に先立って行われたものだ。

こうしたFTCの裁定には、先例がないわけではない。

規制当局は今年初め、Musical.ly(現在のTikTok)に過去最高の570万ドル(約6億円)の罰金を科し、アプリに年齢制限を設けさせた。

FTCのYouTube裁定も、同様の年齢制限が要求されるだろう。それは13歳未満の子供を、親の同意なしに子供の個人情報が収集されることはない、子供にとって安全なCOPPA準拠のYouTubeウェブサイトにリダイレクトするようにデザインされたものになるのだ。

今回の新しいウェブサイトは、FTCの発表に先立ち、YouTubeが最近行ったいくつかの変更の1つに過ぎない。

同社また、YouTube Kidsに、これまでの5歳から7歳向けの「小学校1〜2年生向け」、そして8歳から12歳向けの「小学校3〜6年生向け」に加えて、4歳以下の「未就学児向け」の新しい年齢グループを追加する変更を今週行った

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YouTube Kids(8〜12歳向けグループ)

そして先週、同社は子供の安全に関するポリシーを拡張し、以前のようにただ制限するだけでなく、「子供たちとその家族を対象とした動画の中で、誤解を招くおそれのあるファミリーコンテンツ、例えば性的なテーマ、暴力、猥褻、または若い視聴者にふさわしくない成熟したテーマなどを含んだもの」はすべて削除する、とした。

YouTubeはキーワードとYouTubeアルゴリズムを使用して子供をターゲットにした多くの奇妙で不穏なビデオをホストした件で、2017年に激しく非難された

例えば、子供たちが人気漫画キャラクターのペッパピッグ(Peppa Pig)の動画を探すと、ペッパピッグが漂白剤を飲んだり、歯を乱暴に引き抜かれたりする動画が見つかったりしていた。実際、この種の問題は何年もの間続いていたが、YouTubeがやっと腰を上げて、ビデオに年齢制限をかけ状況に対処したのは、報道によって大きな注目が集まってからだった。また同社は一部の動画の収益化も遮断した

しかし、消費者保護団体が主張しているように、YouTubeのより大きな問題は、YouTubeが子供にとって不適切な可能性があるだけではなく、実際に法律に違反しているということなのだ。

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YouTube Kids(4歳以下向けグループ)

Campaign for a Commercial-Free Childhood(CCFC、商業主義に無縁な子供時代を実現する運動)や、Center for Digital Democracy (CDD、デジタル民主主義センター)といった組織は、FTCにYouTubeの調査を依頼している。同社が長年にわたって2500万人近くの米国の子供たちから個人情報を収集しており、また「非常に洗練されたマーケティング手法」の中で同社がそのデータを使っていると主張しているのだ。

グループは、YouTubeはその利用規約を盾に逃げていると主張している。利用規約はサイトが13歳以上向けのものであると述べているのにもかかわらず、若いユーザーがアクセスしないようにするための策をなにも講じていないからだ(そして、より若いユーザーがYouTubeにいることは明らかだ。結局それこそがYouTubeがコンテンツのサブセットを、まず自身のYouTube Kidsアプリへと分離できた理由なのだ)。

YouTube Kidsのウェブサイトの準備は整った。あとはFTCの公式裁定を待つだけだ。

ワシントン・ポストは、その裁定の詳細が確定し、数百万ドルの罰金が含まれていると指摘している。本日のPoliticoのレポートによれば、罰金は最大2億ドル(約210億円)になる可能性があると言われている。また、ブルームバーグによれば、YouTubeは子供向け動画のターゲット広告を終了するという。

しかし、新しいウェブサイトからリンクされているYouTubeの既存のYouTube Kidsプライバシーポリシーをみる限り、それはまだ実現されていない。

また、子供向けの安全なコンテンツが実際にYouTube.comから引き出されてYouTube Kidsだけに掲載されるかどうかも、まだわからない。

なぜYouTubeが、公式YouTubeブログではなく、YouTubeのヘルプフォーラム上で、メディアに警告することなく、子供向けコンテンツポリシーの変更、Kidsウェブサイトの事前発表、年齢フィルタへの変更、そしてウェブサイトのローンチのニュースなどを発表したのかは不明だ。

とはいえ、確かにYouTubeはそのユーザーにKidsプロダクトの存在を周知しようとしている。大きなポップアップバナーがYouTube.comを開くたびに表示され、それは子供を持たないユーザーをイライラさせている(なお訳者の使っている日本語版の環境ではこのポップアップバナーは現在表示されないようだ)。

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新しいKids Webサイト自体に関しては、報告することはそれほど多くない。コンテンツはアプリ同様に、「アニメ・ドラマ」「おんがく」「はっけん」「ゲーム」などのカテゴリに整理されている。親は、自分のパスコードを設定して、子供が設定に入ることができないようにできる。ただし、プロファイル、ホワイトリスト、タイマーといった、アプリにあるより高度な機能の一部がまだ欠落している。それらはおそらく時間をかけて展開されるだろう。

「私たちは子供たちが興味と好奇心を探求できるより安全な環境を作るために、YouTube Kidsを構築しました。同時に保護者の方には子供たちの体験をカスタマイズするためのツールをご用意しています。保護者の方々や専門家の皆さまからのフィードバックに基づいて、アプリの改善を続けています」とYouTubeは述べている

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(翻訳:sako)

米連邦通信委員会が海外からのロボコールを摘発可能にする法案を提出

FCC(連邦通信委員会)と議会は、ロボコール(自動発信勧誘電話)を絶滅させる(と期待される)法案を検討しているが、とりあえず役立つ短期的なソリューションもある。つい数週間前に提出されたFCCの新しい提案は、海外からの発信やその他の方法で法の目をかいくぐる詐欺業者を摘発できるようにする。

このルールは厳密には新しいものではなく、昨年成立したRay Baum法に続くもので、中でもTruth in Caller ID(番号通知の真実性)法の強化がポイントだ。

従来後者の法律は、電話番号の詐称というロボコールを容易にする手段を禁止しているが、これまでは国内から発信されたものだけが対象だった。その結果、多くの詐欺業者が海外からの通話を利用した。Ray Baum法は規則を修正して、海外からの通話やVoIPなど最新の通信基盤を利用するロボコールを禁止した。

しかし、行為を違法にするだけではFCCが犯罪者を摘発できることにはならない。新法の違反者を見つけて取り締まる方法を規定する公式な規則がなければ、効力を発揮しない。今回の新しい規則はそのためにある。

FCCの、アジット・パイ委員長による提案は、今週中に公開され、8月1日にFCCの公開会議で投票される。採用されれば、米国内だけでなく海外のロボコール業者を摘発できるようになる。

もちろん外国の、しかも決して協力的でない詐欺集団を捕まえることは、国内業者を捕えて罰するのとはまったく異なる。記者からの質問に答えたFCC担当者によると、業者のやり方は非常にに複雑であり、複数のダミー会社や巧妙な抜け道を駆使しているという(FTCも同様の問題に直面している)。

関連記事:FCC、ロボコール業者に罰金1億2000万ドルを科すも「海をスプーンで空っぽにするようなもの」

しかし、多くのロボコール業者は米国当局の捜査対象ではないという仮定のもとに行動してきた。ひとたび免責ではなくなれば、危険を冒して事業を続けるのをやめて、別のことを始める業者もいるだろう。

より長期的な解決策を実現するために、通信業者らはロボコールを実質的にブロックする新システムの準備を進めている。ただし、デフォルトでは有効にしない、あるいは料金がかかるかもしれないなどの懸念は残されている。木曜日(米国時間7/11)には業界の現状と意向を知るための会議が行われる予定だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国の電話会社はロボコールを最初から遮断できるようになるかもしれない

FCC(Federal Communications Commission、米国連邦通信委員会)の今の委員たちのやり方は、ネット中立性の問題に見られるように、必ずしも消費者に評判がいいとは言えないが、ロボコールに対する今度のより厳しい規則ですこしファンができるかもしれない。米国時間5月15日朝、委員長のAjit Pai(アジート・パイ)氏は、モバイルのキャリアが好ましくない着信を無条件でブロックできる新しい規則を提案した。

委員長の説明によると、今の規則では多くの電話会社がそのような着信をブロックするツールの合法性に確信を持てないそうだ。

同氏は発表声明の中で「無条件で着信をブロックできるようになると、ロボコールに悩まされていた消費者の大きな利益になる。そのような着信のブロックを明示的に許容することによって、音声サービスのプロバイダーは好ましくない着信を最初からブロックして、消費者にかかってこないようにするために必要な合法性の面での確信を持てる。そして私は、この決定が採用されれば、ロボコールブロックサービスを現在と未来の顧客のためにデフォルトかつ無料で開始するようキャリアたちに積極的に勧奨したい」と述べている。

委員全員による票決は6月6日の会議で行われる。これらのオプションは電話企業がデフォルトで使えるだけでなく、提案ではロボコールを必要とする消費者にはブロックするツールをオプトアウトする能力が与えられるだろう。ロイターによると、好ましくない着信の量は相当大きい。例えばスペインでは、すべての着信のおよそ4分の1がこの分類に当てはまる。ここ米国ではほぼ10%に近い。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米連邦通信委員会が中国移動通信の通信インフラ参入申請を却下

FCC(連邦通信委員会)は中国移動通信(China Mobile)の米国市場参入の申請を却下する見込みだ。国営企業の中国移動は移動体通信プロバイダーとして世界最大であり、米国においてモバイルネットワークサービスの提供を申請していた。これに対し、FCC委員長は安全保障上のリスクを理由として認可に反対するという意見を公開した。米国のテレコムサービスにおいて重要なプレイヤーとなるという中国の試みはまた後退を余儀なくされそうだ。

中国移動は米国のモバイルインフラにおいて音声、データ通信事業を展開することを申請していた。FCCの広報担当者の電話記者会見によれば、米国のモバイルキャリアが中国にモバイルキャリアと通信を行う場合、そのインフラは現在中国側にある。

中国移動の申請を却下するというFCCの草案は明日公開され、5月に委員会で投票が行われる。申請は2011年に提出されていたが、今回アジット・パイFCC委員長はここれを正式に却下しようとしている。米国の安全保障上、決定的重要性9を持つインフラを外国組織が建設、運営しようとする場合、行政府の承認を必要とする。しかしトランプ政権は昨年この申請は認められるべきでないという見解を明らかにしていた。

ここ数ヶ月FCCの担当チームは中国移動のこれまでの活動を調査していた。アジット・パイ氏はその結果を次のように要約した。

中国移動の米国におけるテレコミュニケーションサービスを許可することは国家安全保障および法執行活動に深刻、重大なリスクを生じさせることが明白となった。このため中国移動の申請を認めることは公衆の利益に合致しないものと私は信じる。

外国勢力が重要な米国のインフラに参入を図るときに安全保障上の問題が伴うのは必然的だ。このような場合、リスクを軽減するための何らかの制限を課し、あるいは相手国政府との間で協定を結ぶことがある。たとえばドイツ企業がハード、ソフトで米国の通信インフラに参入する場合、こうした企業は米司法当局にデータへのアクセスを認め、ドイツの司法当局は捜査上の情報を米国に提供するなどの条件の下に認可される場合がある。

しかしこうした条件付き認可が行われるのは相手国との間に基本的な価値観の一致がある場合に限られる。問題の企業を(間接、直接に)所有している国家との間に信頼関係が存在シない場合は不可能だというのがFCCの見解だ。これはHuawei(ファーウェイ)が米国の5Gネットワーク構築に参加しようとしたのを退けたのとほぼ同様の理由だ。連邦政府は中国政府の強い影響下にある組織にはインフラ市場への参入の許可を与えないとしてきた。

「こうした理由による申請の却下は前例がないわけではないが、今回のケースでは行政府がFCCに対して安全保障上の理由により申請を却下すべきただと勧告した初めてのケースだという点に特に注意すべきだ」とパイ委員長は別の覚書で述べている。

すでに緊張している米中関係をさらに悪化させるかもしれないが、中国移動はこの結論を予期していたはずだ。申請がワシントンの官僚的手続きのブラックホールに吸い込まれた3年ないし4年たってもなんの回答もなかった時点で希望を捨てていたと思われる。

申請却下の決定の草稿は明日公開される。これには決定に至った理由と関連する証拠が含まれるはずだ。 FCCとしての賛否は5月9日に開催される公開の委員会における投票で決定される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Googleのレーダー技術によるジェスチャー入力方式SoliをFCCが認可、電波妨害問題をクリア

数年後にはタッチスクリーンを陳腐化するかもしれない、Googleのレーダーを利用するモーションセンサー技術を、アメリカの規制当局が認可した。Soli Projectと命名されたそのイニシアチブは2015年に、Googleの最先端の技術開発部門Advanced Technology and Projectsでスタートした

それ以降私たちは、Soliの技術的成果をいくつか見てきた。それはオブジェクトを認識でき、レーダーセンサーの消費電力を少なくできた。いちばん最近では、規制当局からの指示がきっかけで、もっと実用的な段階へ移行した。アメリカの連邦通信委員会(Federal Communications Commission, FCC)は今週初めに、Project Soliに対し、現在許されている以上の高い電力レベルでの運用を認めた。この政府機関はさらに、そのデバイスが“他のスペクトルのユーザーを妨害する可能性が極微なので”、航空機の中で使用してもよい、とした。

Soliのレーダーセンサーは25ドル硬貨サイズの小さなチップで、手や指のわずかな動きを高速高精度で追える。これによりたとえば、オーディオ装置ではボリュームのつまみを回さなくても、スピーカーの前で指をすり合わせるだけで音量を調節できる。FCCの今度の規制なら、スマートウォッチのボタンをエアプレスすることもできるだろう。

FCCは、安全性の懸念が一掃されればこのセンサー技術が公共の利益にも奉仕する、と言っている: “スマートフォンなどのデバイスをタッチをしない手のジェスチャーでコントロールできるようになれば、運動能力や発話能力、触知能力など多様な障害を持つ人びとを助けることができる。それにより、アメリカ社会のより多くの成員の生産性と生活の質が向上する”。

今本誌TechCrunchはGoogleに詳細を問い合わせているので、返事が得られ次第この記事をアップデートしたい。

FCCのこの認可の数か月前には、Facebookが、Soliのセンサーが高い電力レベルで運用された場合の電波妨害、という問題をこのお役所に持ち込んでいた。しかし両社は9月に合意に達し、 Soliは政府が許容したよりも高いがGoogleが求めたよりも低い電力レベルで運用される、という合意内容をFCCに届け出ていた。その合意内容が認可された、というわけだ。

この新しい分野でFacebookがルールを設けようとしたことは、理にかなっている。同社もまた、Oculusで同様のモーション技術を展開しようとしているからだ。Facebookはたとえば、腕の動きを作り出すデバイスで、ハグなどの社会的ジェスチャーをシミュレートする技術開発に投資している。

Googleのこの技術開発のアップデートはしかし、ある種の‘頭隠して尻隠さず’でもある。そう言いたくなるぐらい、最近の同社は問題含みの行為が多い。まず、Google+の大量のデータ漏洩、その前の、オンラインゴーストタウンの閉鎖。児童ポルノ対策の失敗。そして中国への再進出が、検索エンジンの検閲を伴うという報道

画像クレジット: Google

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

FCCがギガビットWi-Fiをロードマップに載せ、新たな専用スペクトルの開放を提案

インターネットはますます、ワイヤレスで利用されている。しかしひとつの家庭に複数のテレビやスマートデバイスやタブレット、スマートフォン等々があって帯域の需要が増加しているから、現今のWi-Fiの規格では間に合わなくなってきた。幸いにもFCCとワイヤレス業界には備えがあり、とくにFCCは、可利用スペクトルを大幅に増やして、ギガビット級のWi-Fiを実現しようとしている。

今私たちが使っているデバイスは、その多くが、可利用スペクトルのアンライセンス(“unlicensed”)と呼ばれる部分の帯域を使っている。アンライセンスとは、用途が特定されず、軍用や放送用などのように厳しい規制がない、という意味だ。そこで業界は、理にかなったものならどんなサービスでも、そこの周波数帯域を利用して作り出せる。そしてこのやり方は大成功し、競争と協力の両方の生長を刺激した。

しかし今では空きが少なくなり、身動きが苦しくなりつつある。そして何ダースものネットワークがあなたとあなたのスマートフォンを飲み込もうとしているから、電波の利用に大量の妨害が生じている。だから、可利用スペクトルをもっと増やして、チャネルの数と高速ネットワークを多くすることが、緊急の課題になっている。

そのために今FCCは、一般的に6ギガヘルツバンドと呼ばれているスペクトル(5,925-7,125MHz)を、開放しようとしている。

その公式の提案書はまだ一般公開されていないが、委員たち全員が楽観的で、ワイヤレスの業界はすでにその割り当て方針などについて会合を持っている。小規模なワイヤレスプロバイダーにとって不便な申請手続きにするな、商用だけでなく消費者の目的にも開放せよなど、細かい具体的な要望も多い。各社にブログ記事や声明文があるが、どれも内容はほとんど同じで、Wi-Fiは重要である、FCCの決定を賞賛する、などなどだ。

Wi-Fiの規格の次のバージョンはWi-Fi 6になる、802.11xxより分かりやすいというが?

6GHzは現在、完全に未使用ではなく既存のアプリケーションもあるが、そこはデバイスも規格も避けなければならない。よくあることだ。

Jessica Rosenworcel委員が、今日発表した声明で言っている: “既存のWi-Fi帯域に近いから、Wi-Fiの拡張を探求するのにふさわしい場所だ。またそれは、チャネルを拡大する機会を提供する。それら新しいチャネルにより、新しいスタンダードである802.11axないしWi-Fi 6を完全に実装できる。そのスピードは、毎秒1ギガビットを超えるであろう。言い換えるとそれは、次世代のGigabit Wi-Fiを開発する方法なのだ”。

ただし彼女は、3.5や5.9GHzなど、FCCがまだ十分に検討していない他の帯域にも多くの機会がある、と指摘する。今やワイヤレスを必要とするのは、ラップトップとスマートフォンだけではない。今では新しい種類のデバイス…セキュリティカメラ、スマート家電…、などなどあらゆるものがネットワークへの接続を必要としている。しかしそれらすべてを、ギガビットのダウンロードや4Kのストリーミングに使われる同じ帯域に置くのは、馬鹿げている。

FCCの提案が公表されるタイミングは未定だが、発表されたらこの記事を更新しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

宇宙技術の進歩に追いつけない宇宙法が、イノベーションを殺そうとしている

【編集部注】著者のLyon Brad Kingは、Orbion Space Technologyの共同創業者であり、ミシガン工科大学の宇宙システムRon and Elaine Starr教授、ならびに機械工学-工学機械科ディレクタである。

「ディスラプション」(Disruption)という言葉は、テクノロジーの世界で特に優れた開発や製品を表現するために(過剰に)使われている用語だ。とはいえ、この言葉の本来の意味は、そのカジュアルな意味とは正反対である:ディスラプションというのは「イベント、アクティビティ、あるいはプロセスを妨害する障害や問題」のことなのだ。現在宇宙技術が経験しているのは、この両者の意味のディスラプションである。

信頼できる見積もりによれば、今後5〜7年以内に、地球の住人たちは、これまでのこの惑星の歴史の中で打ち上げられてきたものよりも、さらに多数の衛星を宇宙空間に打ち上げることだろう。これは、最も良い意味でのディスラプションだ。しかしながらそこには深刻な問題が横たわっている。その興奮を粉砕し、星への歩みを遅らせるような真のリスクに、私たちは直面しているのだ。政府の検討事項の中では宇宙政策の優先度は高くない。このため、この不幸な規制不毛状況によって、現在最もイノベーティブな企業たちの計画が、古臭く時代遅れの規則や規制で悪い意味でディスラプトされようとしているのだ。

画像:Bryce Durbin/TechCrunch

既存の宇宙政策

既存の宇宙政策についての状況を知らない人のために説明すると、広く受け入れられている国際協定である“Treaty on Principles Governing the Activities of States in the Exploration and Use of Outer Space including the Moon and Other Celestial Bodies”(月その他の天体を含む宇宙空間の探査及び利用における国家活動を律する原則に関する条約)は、1966年〜1967年に草案が作られ、協議され、そして署名されたものだ。一般にThe Outer Space Treaty(宇宙条約)と呼ばれているこの協定は、各国がその国から発せられる、あらゆる宇宙関連の活動に対して責任を持つことを規定している。その活動が、市民によるもの、企業によるもの、あるいは政府自身のものであるかは問われない。各国は、自国発のすべての宇宙物体を完全に管轄し、管理もしなくてはならない。

この協定に署名が行われた時点では、企業が宇宙空間で何かをしようとすることを予測できた者はいなかったということは指摘しておく価値があるだろう。ましてや企業が自分たちで衛星を打ち上げるなどということは想像することもできなかったのだ。

許可…そしてFCC

このような経緯から、米国政府が、私たちの国を起点とする宇宙活動と宇宙物体に対して責任を持っていることになるのはお分かりだろうか?このことが意味するのは、打ち上げられる全ての人物と全ての物体について知り、追跡しなければならないということだ。もちろんこれは簡単な仕事ではない。大気圏と宇宙の間に横たわるカーマンラインを、衛星が横切ろうとするときに、強制的な衛星検査を行うことは不可能だ。では、どうやってそれらを追跡するのだろう?打ち上げ前にそれらに対する許可を行うのだ。そして私たちはここで「許可」という言葉を使ったが、この言葉の大まかな意味は「政府の官僚的巨大泥沼」というものだ。

現在のシステムでは、FCC(Federal Communications Commission:連邦通信委員会)から許可を得ることになる。だがこれは奇妙な話だ。「人工衛星」について考えたときに、適切な専門機関としてFCCがまず心の中に浮かぶだろうか。ここでの理屈はこのようなものだ。もし何らかの物体を宇宙に打ち上げることを計画しているのなら、もちろんそれと何らかの通信をすることを計画している筈だ…命令を送信したり、あるいはデータを受信したり…そしてそれにはある無線の周波数の利用が必要で、それを調整しているのがFCCなのだ。ともあれFCCに連絡すれば、「車検」を実施してくれて、許可証を衛星のお尻に貼り付けてくれるというわけだ。

問題は、FCCが現在、衛星に関連するすべてのもののゲートキーパーになり、無線周波数とは関係のない多くの検査項目にまで手を広げていることだ。例えば、FCCは、すべての許可申請者に対して、衛星が地球の大気に再突入するときに、負傷または損害を引き起こさないことを証明することを要求する。そうした計算に、複数の疑わしい前提や曖昧な数学が含まれていたとしても不思議はないだろう。そしておそらくは他の機関(NASAとか?)の方が、こうしたことを上手くチェックできるのではないだろうか。

多くの検査項目の中でも特に、FCCは打ち上げ許可申請者に対して、衛星が宇宙で常に監視下に置かれて他の衛星との衝突の可能性を予見できるように、「追跡可能」であることを証明することを要求する。これこそが、人工衛星製造業者であるSwarm Technologiesがその小さいSpaceBee衛星を、IoT世界のディスラプトを狙って申請を出した際に、FCCから妨害(ディスラプト)された理由なのだ(この2つのディスラプトの違いがおわかりだろうか?)。 それらの衛星はこれまで軌道に乗せられたいかなるものよりも小さい(うらやましいほどのイノベーションだ!)、だがそれ故にFCCはそれらが衛星の追跡に使われる通常のレーダーでは見ることができないと結論付けたのだ。許可は下りなかった。これは混乱を招いている、なぜならより小さな衛星が、これまでも同じ機関によって打ち上げ許可が行われてきたからだ。

スタートアップの行く末

論理的な道筋は、FCCにへつらいながら合法的な許可を懇願することである。これは、巨大な航空宇宙企業が、衛星を10年かけて開発していた過去に行われていたことだ。しかし数ヶ月のうちに小さな衛星を開発するディスラプティブなスタートアップの身になって考えて欲しい。ベンチャーキャピタルからの資金をゼロに向かって一定の勢いで食いつぶしながら、自分自身の宇宙における技術が、次の大金を生み出すことを実証しなければならないのだ。FCCの受付で番号をとって順番を待ち続けていたとしたら、おそらくその結果は、許可証が破産した会社の住所に届くことになることが多いだろう。

こうした見通しに直面すれば、野心的で大胆なスタートアップたちが、限界を押しのけて、許可なしで運用した場合の罰則がどれほど厳しいものかを試してみたくなる誘惑に駆られることは疑いがない(そして実際、その手段がSwarmチームによって実行されたようだ)。現時点では、その行く末がどうなるかは誰にもわからない。最悪の場合、挑戦したスタートアップのビジネス全体を破壊してしまうだろう。だがいつまでかかるかわからないFCCの再審査プロセスのことを思えば、いずれにせよ破産は免れそうにない。

だが興味深い別の選択肢が存在している:企業はその衛星を別の国に輸出し、その国での宇宙許可プロセスを申請するという方法だ。だが言うまでもなく、米国企業が技術をオフショアにしようとする際に直面する連邦規制は、私たちが喜んで取り組みたいものではない。ああそれに、衛星を輸出するための法律はそれはもう面倒くさいもので、それに比べたら打ち上げ許可申請などは国立公園の入場チケットを買う程度の手間だ。

Made in Spaceによって開発されたロボットシステムArchinautは、衛星、宇宙船、あるいはその他の大型機器を、ゼロ重力下で製造、組み立て、そして修理することができる。

新しい宇宙時代のために壊れたシステムを直す

どのように壊れたシステムを直せばよいだろうか?すぐに国際条約を改正できるとは思えないので、宇宙条約によって定められた内容に規定され続けることを想定することが安全だろう。可能性のある政府による対応の1つは、既存の政策や法律の適用をより厳格にすることであり、違反者には手厳しい罰則が科されるというものだ。だがこうすることで予想される事態は:エキサイティングで新しいアイデアに取り組むスタートアップたちは窮地に追い込まれ、旧来の宇宙巨大産業たちは影響を受けないという結末だ。反対に、政府は厳格な姿勢とは反対を向き、単に軽い罰則を与えるだけで済ませることもできる。だがこのやり方はより多くの危険で極端な規制違反を招くことになり、責任ある宇宙関係者たちにとってただ危険なものへと結びつく可能性がある。

宇宙条約があるために、米国は常に、米国内から打ち上げられる全ての衛星を監視し追跡することが求めらる。FAA(Federal Aviation Administration:アメリカ連邦航空局)によって提案されているコンセプトもある、これは各衛星に無線ビーコンの搭載を必須とするもので、海上の船舶のように自分自身を識別情報を発信させる。これまでのところ、こうしたことはただ議論されているだけで、実行されているものは何もない。そうしている間にも、新しい宇宙違反者たちは、規制の壁を押し続け、旧来の企業たちは礼儀をしらない若造たちの無礼に激怒することになる。混乱を鎮めるための唯一の解は、新しい探求者たちに、自己組織化と自己警察の機能を任せてしまうことなのかもしれない。

いずれにしても、私たちは地球周回衛星だけにとどまることのない、宇宙政策と規制に対する先見的なアプローチを取ることが、強く求められている。もしこの先政府が、広範な商業活動に拡大可能な、包括的宇宙政策の必要性を無視し続けていた場合には、法的に致命的な、市民、商業、あるいは国際的な紛争が宇宙で起きるのは時間の問題だ。

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(翻訳:sako)

FCC、ロボコール業者に罰金1億2000万ドルを科すも「海をスプーンで空っぽにするようなもの」

このすばらしきスマートホンの世界に電話勧誘がついてこない思った人は想像力に欠けている。ロボコール(自動電話勧誘)は怒濤のごとく増え続け、ある目立った業者に対しFCCが科した1.2億ドルの罰金ですら流れを止められそうにない。

罰金は今日おこなわれたFCCの月例公開会議で発表された。Mr Adrian Abramovichなる人物は3カ月間に1億回以上のロボコールをかけた責任を問われ、この記録的罰金によって破産に追い込まれることはほぼ間違いない。

「われわれの決定は明確なメッセージを発した」とFCCのChairman
Ajit Paiが声明で語った。「FCCは、いたずらやロボコールの規則に違反して消費者に害を与える者たちを積極的に取り締まっていく」。

これだけ聞くと感動的数字に見えるかもしれないが、これは2016年に発信されたロボット通話であり、今や〈先月だけ〉で34億回のロボコールが発信されている。コミッショナーのJessica Rosenworcelはこの罰金を称賛する一方、こうした犯罪がそもそも起きることを防止すべき状況で、個別に罰則を追求することの実利性に疑問を感じている。

「正直なところ、ひとりの悪者を追いかけることはスプーンで海を空っぽにしようとするようなもの」と声明で言った。

Rosenworcelは、ロボコールを防止するために作られた一連の規則が数カ月前に議会で破棄されたこと、FCCに対する20件の嘆願書に対応できていないことなどを指摘した。そしてロボコールを全面的に阻止する技術が1年以上前から推奨されており、カナダでは2019年に実施される予定だが、米国では何も決まっていないという。

こうしたロボコールをいつも受けている一人として、私は今回の罰金やRosenworcelが提案する規則の厳格化を全面的に支持する。早ければはやいほどよい。今これを書いている最中にもかかってきた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

T-Mobile、FCCに4000万ドルの制裁金支払へ――フェイク呼び出し音を鳴らしていた件

T-Mobileは接続が確立していないにもかかわらず呼び出し音を鳴らしていた件でFCC〔連邦通信委員会〕と和解し、4000万ドルの制裁金を支払うことになった。T-Mobileのフェイク呼び出し音は顧客に携帯からの発信が相手先デバイスに接続しているという誤解を与えていた。同社は「長年にわたって数億回も〔偽の呼び出し音を〕鳴らしていた」と認めた。

この問題の背景はこうだ。携帯電話のユーザーが接続の悪い地域に通話を試みると、接続が確立されるまで何秒も待たされることがある。特にキャリヤがその地区をカバーしておらず、通話を地元の別のキャリヤに渡す場合などに顕著になる。T-Mobileもこれを行っていたが、それ自体はなんら問題ではない。辺鄙な場所に電話すると接続に時間がかかることがあるというだけだ。

しかし相手先電話に接続していないにもかかわらず呼び出し音を鳴らし、接続が確立されたかのような誤解を与える行為は禁止されている。これがT-Mobileが2007年からやっていたことだった。ユーザーがダイヤルした後、所定の秒数が経つと、T-Mobileのサーバーは自動的に「ローカル呼び出し音」を鳴らし始める設定になっていた。

これは単に不都合なやり方というだけでなく、2014年以降、はっきり違法になった。この年、FCCはRural Call Completion Orderを制定し、まさにこれ(FCCはfalse audible ringingと呼んでいる)を禁止した。

…発呼側キャリヤがこうした仕組みを採用した理由のひとつは、ダイヤル完了後なにも聞こえない時間が続くことによってユーザーに不安を与えるのを避けるためもあった。その結果、なんらかの理由で相手が電話に出ないのだとユーザーに誤解させることとなった。また通話相手側キャリヤ、あるいは中間のキャリヤに通話失敗の原因があるとユーザーに誤解させる原因ともなっている。

ローカル呼び出し音が禁止されてからユーザー、キャリヤはT-Mobileに対して苦情を申し立てていた。FCCの調査に対しT-Mobileは「この問題は是正済み」と回答していたが苦情は続いた。やがて 禁止が制定された後もT-Mobileは延々規則を破り続けていたことが明らかとなった。というわけで4000万ドルの制裁金で和解という羽目に至った。

T-Mobileは90日以内に(もしまだ止めていないなら)偽の呼び出し音を鳴らすのを止めるようシステムを改善する必要がある。また今後3年間、毎年FCCに対しコンプライアンスの状況を報告しなければならない。同意裁決の全文はこちら(PDF)

画像:Justin Sullivan/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

FCC、SpaceXの衛星ブロードバンド計画を承認―― 4425個の小型衛星で世界をネットワーク

数千個の小型衛星のネットワークで世界的ブロードバンド網を建設するSpaceXの計画にFCC〔連邦通信委員会〕が承認を与えた。しかもこの計画は(少なくとも宇宙計画の一般的スピードでいえば)近々実行に移されるはずだ。承認された計画によれば、SpaceXは向こう6年間に計画されている衛星の半数を打ち上げることになっている。

FCCのAjit Pai委員長が先月メモを発表して、アメリカ企業による世界初の衛星による地球規模のブロードバンド網を建設する計画の称賛したため、SpaceXの提案がFCCから承認されることは確実になっていた。無論この称賛にイーロン・マスクも異議を唱えていない。

SpaceXのCOO、Gwynne ShotwellはFCCの承認に関連してTechCrunchに次のようなコメントを寄せた。

われわれはSpaceXの衛星ブロードバンド計画をFCCが詳細に調査した上で承認したことを喜んでいる。きわめて複雑な計画であるため、今後なすべきことは数多いが、FCCの承認はSpaceXが次世代の衛星ネットワークを建設する上できわめて重要なステップだった。このサービスは経済的であり、信頼性が高く、重要な点として現在インターネットに接続する手段を持っていない人々を結びつけるために特に役立つものとなるだろう。

Starlinkと呼ばれるSpaceXの計画は、OneWeb、Spireなど他の衛星事業者から反対を受けていた。単に事業のライバルが増えるということ以外に、何千個もの衛星が軌道と電波の帯域を混雑させることに対する懸念だ。

SpaceXのインターネット衛星網:FCCへの申請書から

たとえばOneWebは、SpaceXの衛星軌道は自社の衛星から高度にして125キロ以上離すべきだととしている。もちろん衛星間の干渉を防ぐ必要はあるが、それにしてもこれほどの距離が必要かどうかは疑わしい。

しかし軌道上に散らばるスペースデブリを極力減らすべきだという点はFCCによっても留意された。【略】SpaceXとしては計画を実行に移す前にさらに研究を続ける必要がある。

しかも問題は早急に解決する必要がある。FCCはSpaceXに対して「急がないなら承認を再検討する可能性もある」としている。FCCでは2024年3月29日までに計画している衛星の50%を打ち上げるよう求めている。【略】SpaceXでは最終的に1万2000基の衛星によるネットワークの構築を計画しているが、今回承認されたのは軌道高度が高い4425基の分だ。残りの衛星は高度と使用する周波数帯が異なるため別個の承認を必要とする。

Falcon 9がStarlink衛星を実験打ち上げ。2月22日

なおFCCのRosenworcel委員は、委員長のものとは別の声明で宇宙の商業利用に関するFCCの諸規制を根本的に見直す必要があると述べている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+