必要なHRサービス間でデータ連携、マネーフォワードが「MF クラウド給与」のAPIを公開

採用から労務管理まで、HR領域のクラウドサービスは増えてきている。業務の用途別に複数のサービスを利用している会社も多いだろう。しかし、複数のサービスを利用する場合は、データ連携の課題が発生する。マネーフォワードは、HR領域の他社サービスとAPI連携することで、各企業が自社にとって最適な人事労務サービスを選べる世界を実現したい考えのようだ。マネーフォワードは本日、それを実現する「Connected HR」と銘打ったコンセプトを発表し、クラウド型給与計算ソフト「MF クラウド給与」と連携を希望するサービスにAPIを公開すると発表した。

企業の規模やステージに応じてニーズが異なるとマネフォワードは説明する。例えば、9時から17時が定時の会社と、アルバイトの多い飲食店、あるいは業務委託が多い職場だと勤怠管理や労務管理に求められる機能は違う。マネーフォワードでは、それを1社で全ての機能を賄うことは難しいと考え、各企業が労務管理にはこのサービス、勤怠管理には別のサービスといったように、その会社に最適な組み合わせで利用できるようにしたい考えだという。

これまでにもマネーフォワードは勤怠管理の分野ではKING OF TIMEジョブカンCREW CHECKERTouch On Timeの4サービス、労務管理ではSmartHR労務ステーションの2サービスとAPI連携を行ってきた。ただ、これまでのデータ連携は、勤怠管理サービスから「MF クラウド給与」に勤怠情報を移すといった一方通行に限られていたとマネーフォワードの広報担当者は説明する。今後はHR領域の他のサービスとも連携を進め、双方向でのデータ連携も可能になるという。具体的には、社会保険手続きの簡素化、年末調整の計算や電子申告、人材評価などの分野で、「MFクラウド給与」の給与や賞与データの活用を想定しているという。

HR領域で他社サービスと協力関係を築くというマネーフォワードが掲げる「Connected HR」のコンセプトは、競合となるfreeeの戦略とは正反対のものと言えそうだ。2017年3月、freeeは「給与計算 freee」に機能を追加する形で、新たに人事労務業務のための「人事労務 freee」を2017年初夏頃から提供すると発表した。freeeは従業員データを一元管理することで、企業の人事労務業務の効率化を目指すとしている。

ゲームのような社員教育プログラムのAxonifyが2700万ドルを調達

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最後に会社のトレーニングを受けた時を思い出してみてほしい。おそらく、そこから何かを学ぼうという気持ちよりも、早く終わってくれとイライラする気持ちの方が強かったのではないだろうか?(それは違うと言う人がいるとすれば、その人の気を疑ってしまう)。

JMI EquityBDC Capitalから2700万ドルを調達したAxonifyは、トレーニング受講者の負担を軽減しながら、それが生む成果を高めようとしている。あなたはどれくらい短いトレーニングを望むだろうか?Axonifyのプログラムは1日あたり3分のトレーニングで、しかもそれはゲームのようになっている。この時点ですでに、オフィスに座って受講する1時間のビデオ・レクチャーよりも魅力的に聞こえるのではないだろうか?しかし、ここまで聞いてまだ納得できないとしても、悪いのはあなたではない。

そもそも、なぜ社員を教育するコンテンツが必要なのだろうか。それを理解するためには何よりもまず、企業の導入例を見てみるのが良いだろう。自動車パーツ販売の全国チェーンであるPep Boysでは、職場での事故が原因で実際に毎年何百万ドルもの費用が発生していた。そのような費用は”OSHA(職業安全衛生法)”関連費用とも呼ばれている。このようなコストが発生するのを避けるのは簡単だ。もし従業員が謙虚にも、床にこぼれた油をそのままにしておいたら?

Pep Boysはまず、700店舗のうち20店舗にだけAxonifyを導入することにした。こうすることで簡単にこのツールの効果を測定できる。そのプログラムが完了したとき、Pep BoysはOSHA関連費用を1500万ドル削減することに成功しており、それどころか、万引きによる被害も2500万ドル減らすことができたのだ。

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Axonifyの興味深い特徴はおそらく、この教育プログラムは現在70代になるマーケッターの夫婦が考え付いたアイデアを元につくられたものだということだろう。OSHAのようなコストを削減するためにとった彼らの手法とは、従業員の心の中にある自意識過剰な部分を改めるというものだった。Axonify CEOのCarol Leamanは、このプロセスは3つのステップに分けられると説明している。

まず第一に、Axonifyのプログラムではコアとなるコンセプトが従業員ごとに最適化された間隔で何度も繰り返される。また、復習用のコンテンツが定期的に配信され、さらなる繰り返し学習で脳への定着を図る。最後に、Axonifyでは受講者からの回答とともに、その答えに対する受講者の自信の度合いも計測している。この背景にあるのは、答えに対する自信度と正解率との相関性を受講者に見せることで、自信過剰がどのような悪影響をもたらすのかということを学ばせるというアイデアだ。

Axonifyのゲームはどのようなデバイスでもプレイすることができ、PCからPOSデバイスまで様々な環境でプレイすることができる。Axonifyは昔ながらのアーケードゲームに似ているが、ゴルフゲームやCandy Crushのようなゲームを選ぶこともできる。

ゲームをプレイしている最中にキリのよいポイントまで到達すると、クイズが出題される。クイズの難易度や内容は従業員ごとにカスタマイズされている。クイズへの回答は強制ではないが、マネージャーはプログラムを管理するダッシュボードにアクセスでき、従業員のパフォーマンスを向上できる方法があれば、それを後から確認することもできる。

「従業員の教育という分野では、費用対効果を測定しにくいという問題がある」とJMI EquityのMatt Emeryは話す。

HRという分野には、問題に対する即効薬になると謳っている無数のサービスが存在していて、企業がそれに飽き飽きするのも無理はない。だが、LeamanとEmeryの両者は、Axonifyは他社の既存サービスに取って代わるものではないと主張している。繰り返しによって知識の定着力を伸ばすというコンセプトを社員教育プログラムに応用したものが、たまたま企業向けの教育プログラム市場には沢山あるというだけだ。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

人材サービス・テクノロジーのイノベーションの歴史

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【編集部注】執筆者のMichael Overellは、RecruitLoopのCEO兼共同ファウンダー。RecruitLoopは、企業がスマートな採用活動を行えるよう、人材サービス企業のオンラインマーケットプレイスを運営している。

「今を理解するためには、過去について知らなければならない」- カール・セーガン(Carl Sagan)

2016年は人材業界にとって大きな分岐点となる。同業界で最も有名なテック企業3社のうち、LinkedInとMonsterが買収され、CareerBuilderも売りに出されている。さらにMicrosoftが人材業界に華々しく参入し、多額の資金を持った既存プレイヤーは横からその様子を眺めている。

そしてその余波は、企業のファウンダーや投資家、サービスプロバイダーから求職者にまで届き、業界全体に影響を与えている。では私たちにはどんな変化が起きるのだろうか?

この記事では、歴史的な観点から人材業界の情報を整理していく。業界が過去20年間でどのように変わってきたかというフレームワークを提示することで、ファウンダーや投資家、人材業界で働く人に、現在進行中の大きなトレンドを理解してもらうと共に、今後の活動の参考にしてもらうのが目的だ。

変化の波

人材業界はディスラプションを起こすには格好の標的だ。何千億ドルものお金が毎年使われている一方、非効率的なビジネスモデルで多くの人が苦しんでいる。しかし何千ものスタートアップが何十億ドルという資金を調達しているにも関わらず、構造的な業界刷新の様子は一枚の紙の上にまとめることができる。

そして根本的な採用活動の流れは、テクノロジーの変化にも関わらず、驚くほど変わっていない。今日でも20年前のように、候補者集めをした後に面接などの選考プロセスを踏み、誰かがそのプロセスを管理しているのだ。

以下のフレームワークでは、3つの変革期に沿った人材業界の重要な変化が描かれている。矢印は変化の”方向”を表しており、どこから新しいモデルが誕生したかが分かるようになっている。例えば、求人情報サイト(Indeedのようなサービス)は2000年過ぎに誕生し、オンラインの求人掲示板を大きく変えた。

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出典: RecruitLoop

このフレームワークでは、人材業界のバリューチェーンが一般化されており、業界全体に影響を与えていない何千ものスタートアップやイノベーションについては省略されている。そして、新たなビジネスモデルが誕生しても、それ以前のものが使い続けられている場合もある(求人掲示板はいまだに広く使われている)。しかしこの図を見れば、いつどのように有名企業が誕生したのかという文脈を掴むことができる。

詳細に入る前に、過去20年間に起きたイノベーションは全て水平方向(左から右)に起きており、その影響はバリューチェーンの各ステップにとどまっていることに注目してほしい。

2016年中にこの状況が全て変わろうとしている。

人材業界のバリューチェーン

現在の人材業界を形作っている大きなトレンドの話をする前に、まずは、バリューチェーンの各ステップを特徴付けるビジネスモデルや企業について見ていきたい。理解を促すために、ここでは人材採用のプロセスが、候補者探し、プロセスの追跡、プロセスの実行、という3つのステップに簡素化されている。

候補者探し

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全ては新聞からはじまった。候補者を探したい企業は、紙の新聞の広告スペースにお金を払っていたのだ。これはシンプルで効率的な一方、値の張る手段だ。そこでインターネットが登場する。

第一波:オンライン求人掲示板。オンライン求人掲示板は1990年代後半に誕生し、新聞や印刷メディアからユーザーを奪っていった。MonsterCareerBuilderCraigslistが代表例で、彼らは雇用主と求職者両方のために、求人広告や求人検索を完全に作り変えたのだ。そして、明らかにディスラプションのターゲットとなっている一方で、求人掲示板はいまだにアメリカの雇用の10〜15%を支えている。

第二波:能動的・受動的な候補者。2000年代半ばにはソーシャルネットワークによって、求職者が能動的・受動的というふたつのカテゴリーにわけられた。求人掲示板は能動的な候補者のためのものだったが、広告主が獲得・購入できるトラフィックの量が限られていた。そこでIndeedは、他のウェブサイトの求人情報をまとめることに商機を見出し、”ペイパークリック”の求人広告を導入した。その後求人情報まとめサービスは、能動的な候補者探しの主要なモデルになり、現在でもアメリカの社外からの雇用の58%を支えているほか、2012年にはこのサービスに可能性を感じたリクルートがIndeedを買収した。

2016年は人材サービス・テクノロジー関連企業にとって別れ目の年になるだろう。

しかし、この期間を特徴づけた企業はLinkedInだった。LinkedInは候補者の情報をオンラインに移行させることで、受動的な候補者探しという新たなカテゴリーを生み出したのだ。今ではある人が求人に応募したかどうかに関わらず、誰でもその人の情報を確認できる。これまで人材紹介会社は、”自分たちの”データベースを利用することで、雇用主よりも多くの情報を握っていた。しかしそんな時代は終わりを迎え、必要なスキルやツールを持っている人であれば、誰でも候補者の情報を手に入れられるようになったのだ。

第三波:企業のブランディングと候補者探索ツール。求人掲示板モデルは、企業のレビューという出処の違うデータの登場によって、すぐにその地位が危ぶまれることになった。Glassdoorは、ユーザーが生み出すコンテンツの力をExpediaやYelpから学び、その手法を応用して人材業界に参入した。その後すぐにIndeed風のまとめサービスが追加されると、Glassdoorは最速の成長スピードを誇る求人サイトへと進化し、アメリカの求職者の約50%が就職活動中に一度はサイトを訪れるほどになった。

それと同時に、全く新しいツールやテクノロジーの誕生によって、受動的な候補者探しも採用活動のひとつの形として認められるようになった。この時期の最も重要なイノベーションが、ウェブ上のさまざまなサービスに登録されている候補者の情報をまとめた人材サーチエンジンだ。Connectifier(現在はLinkedInの子会社)やTalentBin (現在はMonsterの子会社)のほか、数十という数の企業が今もシェアを争っている。

プロセスの追跡

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採用管理システム(ATS=Applicant Tracking System)は、採用活動向けのCRMだ。ほとんどの企業は、時代遅れの使いづらいテクノロジーから抜け出せずにおり、現在使っているシステムは好きではないが、必要に駆られてしかたなく使っている。

第一波:オンプレミスATS。ATSは1990年代に、ソフトウェアの注目カテゴリーとして現れた。その頃に使われていた他のソフト同様、ATSは顧客のサーバーにインストールされ、企業での利用を前提としていた。その代表例がTaleoで、同社はその後上手くSaaSモデルへと(第二波で)移行し、結局Oracleに19億ドルで買収された。そしてTaleoは今でもATS市場のシェアの36%を握っている。

第二波:Saasへの移行。2000年代初頭に起きたソフトウェア全般のSaaSへの移行を受けて、”ウェブファースト”のATSという新しいカテゴリーが誕生した。JobviteiCIMSといった新たなプレイヤーがシェアを拡大していく一方、OracleやSAPといった規模の大きな既存のプレイヤーは、人材関連ソフト一式を揃えるために買収活動を加速させた。

第三波:新種の誕生。その後顧客が求めるものに変化が起きた。当時のエンタープライズ向けソフトは、効率性や魅力に欠けていたのだ。そして、ユーザーフレンドリーでモバイルファースト、他のシステムとの連携が可能で技術的負債の無い、新しい種類のATSが誕生した。ここ数年だけでも、1億ドル以上がGreenhouseLeverSmartRecruitersWorkableといった新たなプレイヤーに流れ込んでいる。今でもこの分野では激しい競争が繰り広げられており、勝ち抜くためにはイノベーションと積極的な営業・マーケティングを組合せていかなければならないだろう。

プロセスの実行

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20年間におよぶテクノロジーの変遷にも関わらず、いまだに採用活動の予算のほとんどは、社内外の人材サービスにつぎ込まれている。

人気の”革新的なリクルーター(disrupting recruiters)”という考えにも一理あるが、そこには3つの重要な要素が欠けている。(a)社内外を問わず誰かがツールを利用して採用プロセスを管理しなければいけないということ。(b)人材サービス企業にもさまざまな種類や専門があるということ。(c)人材サービス業自体で既に大きなイノベーションやディスラプションが起きているということ。

第一波:人材サービス企業にとっての”ゴールドラッシュ”。1990年代から2000年代半ばは、人材サービス業を営む企業にとってのゴールドラッシュだった。自分たちが所有しているデータから生まれた情報の非対称性を利用して、企業からお金をとることができたのだ。この頃は、さまざまなプレイヤーが人材業界に参入し一攫千金を狙っていた。多くの人材サービス企業は、ルールがほとんどないような売上重視の環境に社員を置き、その結果、企業のオーナーは金持ちになり、中には上場する企業までいた。

第二波:インハウスとRPO。2000年代半ばから後半のあいだに、ゴールドラッシュの影響を受けてふたつの相反するトレンドが生まれた。ひとつめは採用活動の内製化で、LinkedInの人気やその他のテクノロジーの誕生によって、多くの企業が外部の人材サービス企業への支出を減らし、自分たちで採用活動を管理しはじめた。この頃に、企業内の採用チームへの移行という大きなトレンドが誕生し、それまで人材サービス企業で働いていた採用担当者の多くが別の企業に移っていった。彼らは新しい環境でも”採用活動”を行っていたが、サービスを提供する企業は1社だけで、多くの場合以前よりも安定した環境に身を置くことができた。

そしてふたつめが、採用活動のアウトソース(RPO=Recruitment Process Outsourcing)だ。採用活動の内製化と同じ時期に、多くの企業が、採用機能全体をアウトソースすることで、採用チームの生み出す価値を安価に得られることができると気付いたのだ。例えばRandstadに買収されたSourcerightや、ADPに買収されたTheRightThingのように、この分野で早くから活躍していた企業は、既存の人材サービス企業に吸収されることになった。そして現在この分野のリーダーとなっている独立系の企業には、プライベート・エクイティ・ファンドから多額の資金が集まっている。例えばCieloWilsonHCGには、それぞれKKRとFrontier Capitalが投資している。RPOは現在30〜40億ドル規模の市場へと発展し、さらに毎年10%も成長している。しかし一般的にRPOは高くつくことから、主な顧客は採用ボリュームの大きな大企業に限られる。

第三波:専門化と個人事業主の登場。過去5年間の技術的なイノベーションの結果、採用担当という仕事が再形成されていった。候補者をみつけだしてコンタクトをとる際の技術的な部分にフォーカスした候補者探し専門の企業が、人材サービス企業とは別のカテゴリーとして誕生したのだ。それと同時に、個人事業主で採用活動を請け負う人たちが現れ、社内と社外の間の境界線がぼやけだした。採用サービス(および候補者探し)を提供する個人事業主は、新しいツールやプラットフォームを使いながら、柔軟な価格設定(時給、プロジェクトベース、成約ベースなど)で、今ではさまざま方法を用いてビジネスを展開することができる。その結果、雇用主である企業は、コストを下げるとともに採用活動の柔軟性を高めることができるようになった。

次の波

上記のトレンドが収束し、2016年は人材サービス企業にとって別れ目の年となる。次の波が人材業界を襲おうとしているのだ。2016年は統合の年になるだろうか?イノベーションの年になるだろうか?その両方だろうか?以下に、人材業界の今後10年以上を形作っていくであろう問いと共に、既に起きつつある4つの変化をまとめた。

大手企業の新規参入

Microsoftは260億ドルでLinkedInを買収し、積極果敢に人材業界へ参入していった。両社の事業統合には時間がかかることが予想されるが、この買収は業界全体に広く影響を与えることになるだろう。Microsoftの影響で、他の大手企業も人材業界への参入に興味を示すことになるのだろうか?

SalesforceやGoogle、FacebookもLinkedInの買収を検討していたことは周知の事実だが、特にSalesforceは長い間人材関連テクノロジーに興味を持っていた。Microsoftの参入によって、彼らの気持ちはくじかれてしまうのか、それともさらに高まるのか?

さらにその他にもOracle、SAP、IBMといった”忘れられた”巨大企業が存在する。彼らは豊富な資金力を持ち、人材業界での競争における本命である一方、人材関連テクノロジーにおける次のイノベーションの波に乗り遅れる可能性もある。

彼らのような巨大企業や、他の企業はどのように人材業界へ参入することができるだろうか?

バリューチェーンに沿った垂直統合

Randstad(世界第2位の人材サービス企業)は、Monsterを買収することで、世界で1番カバー範囲の広い人材サービスのポートフォリオを構築しようとしている。これが大型垂直統合の初めて例というわけではなく、以前既にリクルートグループがIndeedを買収していたが、RandstadとMonsterの事業統合の可能性を考えると、最も影響力のある垂直統合になりえる。

なお、垂直統合は他の分野でも起きている。

求人の枠を超えて投資を行っている、求人掲示板を運営する大手企業の例が以下だ。

  • CareerBuilder – ATS企業を買収予定
  • Monster – RPO企業を買収予定
  • SEEK – 新サービスの開発および新サービスへの投資

さらに、テクノロジーとサービスを混ぜ合わせたモデルが誕生している。

  • Hired – 人材サービス業とテクノロジープラットフォームの掛け合わせ
  • Indeed Prime – 怪しいほどHiredに似たIndeedの新サービス

さらにATS企業は、事業領域の拡大や統合を行うことで、採用活動全体を管理しようとしている。

既存の人材サービス企業や旧来のビジネスモデルは、垂直統合型のモデルとどのように戦って行けばいいのだろうか?

ソリューションの細分化

業界リーダーの間では合併や統合が進んでいる一方、人材関連のソリューションを提供するスタートアップの数は爆発的に増えている。以前に比べて、ずっと簡単かつ安くテック企業を始められるようになったことから、人材市場はファウンダーや次なる目玉を狙う投資家で溢れかえっているのだ。

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新しいスタートアップが提供しているソリューションの多くは、事業というよりも一機能のように感じられ、彼らはそのうちピボットもしくは撤退することになるだろう。また、人材業界で働いている人や人材サービスの利用者にとっては、サービスの種類の多さから、雑音を断って本当に採用活動の助けとなるサービスをみつけだすのが、今まで以上に難しくなっている。

今後スケールしそうな新しいテクノロジー・イノベーションとは何だろうか?

人材サービス企業の専門化

採用活動や候補者集め、ヘッドハンティングなどを行う旧来の人材サービス企業が、テクノロジーを利用したソリューションと競合することで、彼らの利益が減少する恐れがある。そのため、多くの企業が価格設定やビジネスモデルを変更しつつある。1番の手立ては、業界や地域、採用プロセスの段階に応じて専門性を高めていくことだろう。

逆に多方面でサービスを提供している企業は苦しむことになるだろう。冒険ができない既存プレイヤーも置いてけぼりにされてしまう。技術的な統合が進み、競争が激化している環境では、多くの企業がそこから撤退するか消え去る運命にあるのだ。

既存の人材サービス企業は顧客を保って利益を守るため、どのように差別化を図れば良いのだろうか?

この記事では上記の問いに対する答えは提示しない。本記事の目的は、あくまで人材業界の歴史的な文脈や、現在業界を騒がせている主要なトレンドをまとめることなのだ。ただ一つ言えるとすれば、2016年は人材サービス・テクノロジー関連企業にとって別れ目の年になるということだ。

あなたにはどのような影響があるだろうか?

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

人事、社員、その友人を繋ぐリファラル採用ツール「Refcome」——Combinatorが正式公開

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

左からCombinatorの中森恭平氏、代表取締役の清水巧氏、技術顧問の加瀬正喜氏

Combinatorは7月12日、リファラル採用(紹介採用)支援サービス「Refcome(リフカム)」を正式リリースした。Combinatorでは2015年8月に予約受付を開始し、クローズドベータ版としてサイバーエージェント、コロプラ、GMOメディア、オープンハウスグループのアサカワホームなど20社に限定してサービスを公開していたが、今後は全ての企業が利用できる。またCombinatorでは、2015年1月から12月にかけて、シード系VCとエンジェル起業家1人(いずれも非公開)から約1150万円の資金調達を実施したことも明らかにしている。

Refcomeは、企業のリファラル採用を支援するサービス。効果的なリファラル採用を行うための施策設計のサポート(コンサルティング)に加えて、人事担当者、社員、社員の友人(採用対象)の3者に向けた機能を提供する。

人事担当者には、社員への人材紹介依頼機能や、協力した社員の管理機能などを提供。実施しているリファラル採用の施策は専用のダッシュボードで一元管理でき、施策の効果測定などが可能だ。また社員には、友人の招待を促すメッセージの作成機能を提供。自動生成されるテキストを使って、FacebookやLINE、メールなどで手軽に友人を招待できる。招待された社員の友人には、「特別な招待ページ」と呼ぶ登録フォームを用意。PCやスマートフォンから必要事項を入力すればすぐに採用のエントリーができる仕組みを提供する。これらの機能により、人事、社員の双方に余計な手間がかからないリファラル採用を実現する。利用料は導入企業の社員数やコンサルティング内容によって異なるが月額7万〜10万円程度。

社員の知人や友人を紹介・推薦してもらう「リファラル採用」は米国では主流な採用手法として認知が進んでおり、最近では日本でも注目が集まっている。まだ属人的ではあるが、企業がリファラル採用に取り組むことも増えてきた。

しかし、採用担当者からすれば課題も残る。これまでのリファラル採用の施策は人事、社員、社員の友人という3者のコミュニケーションコストがかかりすぎてしまう傾向にあったのだ。その結果、社員が友人の紹介に協力的になれずに終わるということも少なくない。Refcomeではそんな課題を解決するため、煩雑な作業を一元管理するとしている。

Refcomeの利用イメージ

Refcomeの利用イメージ

失敗体験がサービスを生んだ

煩雑な社員紹介のプロセスをシンプルにしたRefcome。そのサービス開発には、Combinator代表取締役である清水巧氏の”事業の失敗経験”が大きく関わっている。

MOVIDA JAPAN(当時)からシードマネーを調達し、2014年1月からスタートアップに特化した仲間集めプラットフォーム「Combinator」を展開していた清水氏。だが同年11月、Combinatorは資金難に陥り、事業が立ち行かなくなってしまった。

「自分が起業しようと思ったときに、創業メンバーの仲間集めにすごく苦労したんです。その経験から、創業メンバーのマッチングができるサービスがあれば起業家が増えると思いサービスを立ち上げました。ただ、当時は全く売上を意識できていなくて……」(清水氏)

事業を継続していくのか、撤退するのか——迷った末に清水氏は事業の継続を選択。Combinatorのユーザーを対象にした採用イベントを開催し、売上を立てようとした。

「一度、オフィスなどは全て解散し、地元の石川県に帰って今後のことを考えました。株主の方とも相談しながら考えた結果、自分の失敗は”やりきった失敗”ではないと思ったんです。(起業前に就職していた)Sansanの寺田さん(代表取締役社長の寺田親弘氏)からも『お前はまだまだ骨が細い。きちんと積み上げていくことが大切だ』という言葉をもらい、もう一度挑戦したいと思いました。見栄やプライドは捨て、愚直に採用イベントでマネタイズすることに決めました」(清水氏)

2015年1月から半年間、何度も採用イベントを開催した。石川で企画までを仕込み、イベント直前に深夜バスで東京に向かい、イベントが終わればまた石川に戻る…そんなことを繰り返してなんとかキャッシュも回るようになってきた。そこであらためて、清水氏は本当に挑戦したいことを自問自答した。

「起業家が旗を掲げて仲間が集めるだけでなく、社員全員が仲間集めをできないか。今、勢いのあるスタートアップは社員全員が採用活動をやっている。であれば、その世界をサービスによって実現できないか、と考えたんです」(清水氏)

そんな思いからRefcomeの事前予約ページを公開したところ、1カ月で約150件の事前応募があったという。手応えを感じた清水氏は、そこから営業資料とプロトタイピングツールで作成したサービスのイメージを持ち、応募企業に対して営業をかけていった。企業のニーズを受けてサービスをブラッシュアップしていった結果、サイバーエージェントでの導入が決定。そこから約3ヶ月間、技術顧問の加瀬正喜氏、SanSanの同僚だった中森恭平氏と協力し、急ピッチで開発を進行。なんとか、導入に間に合わせたという。

「Combinator」のトップページ

「Combinator」のトップページ

導入企業ではすでに採用実績も

サイバーエージェントでは導入から2カ月で150人の応募者の獲得に成功。実数は非公開だが、複数人の採用実績もできた。実は筆者にも、サイバーエージェントの友人から特別選考の連絡(当時はRefcomeだと全く知らなかった)が来ていた記憶がある。友人からダイレクトに連絡が来るというのは企業からの連絡よりも嬉しい気持ちになったし、応募ページの記入は1分ほどですごく簡単だったのが印象的だったこともあり、応募率が上がるのではないかという感想を持った。実際、サイバーエージェント以外の企業でも一定の実績が出はじめているという。

一方で、会社の風土によっては応募者の獲得が難しいケースもあるそう。この点は社員のモチベーション向上施策など、コンサルティングも行っているという。

Combinatorでは2016年中に導入企業100社を目指す。現在の導入企業はIT企業がほとんどだが、今後は代理店とも連携し、アパレルや医療など、リファラル採用の文化がある業界への導入を進めていく。

新卒から中途、独立支援まで―、人材サービスのBranding Engineerが1億円調達

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就活中の学生にとって、今でも大手企業に就職するのが魅力的なキャリアであることに変わりないのかもしれないが、一方でスタートアップに参画したり、自分で起業したりなどキャリアのあり方は少し前とは変わって多様性が出てきたように思う。特にエンジニアであれば、大企業やスタートアップに就職するだけでなく、独立して働く選択肢もあるだろう。Branding Engineerはそうしたエンジニア向けの転職サービスを軸に、複数のサービスを展開する。今後Branding Engineerは学生の就職活動から、転職、そして独立まで様々なキャリアの段階での事業の確立を目指している。Branding Engineerは本日、East Ventures、ベクトル、JSH Holdings LLC、Skyland Ventures、バリュークリエイトから総額1億円を調達したことを発表した。techstars

TechCrunch Japanは昨年12月、Branding Engineerが提供するエンジニア向けのダイレクトリクルーテイングサービス「TechStars(テクスタ)」を紹介した。これまでの転職サイトでは、転職エージェントからのメールや必ずしも自分の希望条件に合わないメールが大量に届き、それらを確認するだけで手間がかかることもあった。転職を検討するエンジニアは「TechStars」のプロフィールに技術力、経歴、希望条件などを入力すると、その条件以上オファーを提示する企業からのみ連絡が届く仕組みを採用している。これにより、エンジニアと企業が効率的に出会える場を提供する。ローンチ以来、150社以上が「TechStars」を利用したとBranding Engineer、代表取締役COOを務める高原克弥氏は話す。

Branding Engineerは現在、中途採用事業、新卒採用事業、独立支援事業の3つの事業を展開していく計画と高原氏は話す。中途事業として「TechStars」を軸に、他に2つの関連サービスをリリースしている。1つは2016年4月から提供を開始した「TechStars PREMIUM」で、これはハイクラスのエンジニア向けの審査型転職サービスだ。年収700万円以上の求人情報のみを扱い、経歴や面談で審査を通過したスキルの高いエンジニアに提供する。もう1つプロダクトは、2016年2月からベータ版を提供している「Design Stars(デザスタ)」だ。これは「TechStars」と同じダイレクトリクルーティング方式のWebデザイナー向けサービスだ。

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2016年6月からは、新卒採用事業として就活生向けに就職サイトの登録やスケジュール管理をするためのツール「イッカツ」を提供している。就活生はたいてい5、6個の就活サイトに登録しているが、それぞれを上手く使いこなすのは難しいと高原氏は説明する。「イッカツ」を使うと、いくつか選択した就活サイトにその名の通り一括で登録することが可能だ。各サイトの情報は「イッカツ」内に統合され、企業情報やイベント情報を確認したり、企業からのメールに返信したりすることができるという。「イッカツ」では学生のキャリアの志向に応じて、その分野が得意な就活サイトとをつなぐ場にしたい考えだという。Branding Engineerとしては、学生と就職する企業との接点を「イッカツ」で確保することで、他の事業にも活かせるデータベースを構築していくことが目標と高原氏は話す。

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Branding Engineerは独立支援事業として、今年の10月に独立を検討するエンジニア向けに保障や福利厚生を提供する「MIDWORKS(ミッドワークス)」をローンチ予定だという。エンジニアのキャリアとして、会社で働く方法と独立して仕事を得る道が考えられると高原氏は説明する。会社で働けば保障も手厚く安定しているが、給与面での厚遇は期待できないかもしれない。一方で独立し、フリーランスとして働けば高い報酬も得ることもできるだろうが、安定的に仕事が得られるかは分からない。「MIDWORKS」では、エンジニアのスキルにあった報酬を受け取れる仕事を紹介し、共済や健康保険などを保障するパッケージを提供することでリスクを減らした上で独立への第一歩を支援するサービスだ。独立するにあたって必要な個人事業主登録といった手続きや経理業務などを行うシステムを提供するプランも用意する予定だという。「MIDWORKS」では、エンジニアにとって新たな働き方を提案し、それぞれがキャリアアップを達成できるよう支援していくという。

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2013年10月に創業したBranding Engineerは、もともと受託開発などの仕事を手がけてたが、1年ほど前に受託開発を辞め、自社サービスとして人材領域の事業を本格的に始めたと話す。人材領域、特にエンジニアのキャリアにおける課題を解決しようと考えたのは、Branding Engineerの共同代表でCEOの河端保志氏、そして高原氏のどちらもエンジニア出身で、エンジニアのキャリアの問題を学生の頃から感じてきたからと説明する。河端氏が通っていた大学では、多くの学生は先輩が就職した会社に就職することが一般的で、エンジニアとしてキャリアをどのようにしていくかを考えている人は少なかったという。高原氏もいくつかスタートアップの立ち上げに関わっていたこともあり、エンジニアの技術力やキャリアのステップアップに関心があったと話す。Branding Engineerでは各種サービスを展開し、エンジニアと会社との出会いを作ること、そして新たな働き方を提案することでキャリア開発のサポートしていきたいと話す。

今回の資金調達はこの3つの事業のグロースを目指し、人材の採用を行う計画だという。自社の技術力と営業力を強化し、ゆくゆくは人材領域に留まらず、ライフスタイル事業も行っていきたいと高原氏は話す。Branding Engineerにとって今回が2回目の資金調達だ。前回は、2014年10月にANRI2号投資事業有限責任組合から2000万円を調達している。

社員のスキルと保有資格を見える化、「SKILL NOTE」のイノービアが1億1000万円を調達

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どの社員が何のスキルや資格を持っているのか?何万人の社員を抱える会社にとってその管理は骨の折れる仕事だ。特に製造業では、重要なスキルを持っているベテラン層が引退して、プロダクトの品質に影響があっては大問題だ。イノービアの提供する「SKILL NOTE」は社員の持つスキルや資格を見える化し、そういった問題を解決する。本日イノービアはインキュベイトファンドから7000万円の第三者割当増資と日本政策金融公庫から4000万円をデットファイナンスで総額1億1000万円を調達したと発表した。

SKILL NOTEは主に製造業、工事業、IT業の企業が社員の保有資格やスキルを管理するためのクラウド型システムだ。SKILL NOTEにはスキルや資格の管理機能と各社員のキャリアプランのための機能、そして教育研修の募集や申し込み、参加履歴などを管理する機能などを備えている。SKILL NOTEの特徴は全社員の実務スキルと保有資格のデータを蓄積し、そのデータを可視化する点だ。例えば「スキルマップ」では、横軸に社員、縦軸にスキル項目が並び、誰がどのスキルを習得したかを一覧で確認することができる。習得済みや習得予定、レベルなど、全体の習得状況が一目で分かる。

SKILLNOTE_スキルマップ

SKILLNOTEのスキルマップ

規模の大きい製造業の会社では全社で5万から10万種類のスキルを設定しているとイノービアのファウンダーで代表取締役の山川隆史氏は説明する。社員が1万人を抱える企業だとその情報量は膨大な量となるが、未だに各部署の担当者は社員のスキルを紙やエクセルで管理しているところもあると話す。エクセルの管理だと上書きした場合に過去の履歴が参照できなかったり、人材が異動した場合に対応できなかったりすると山川氏は指摘する。SKILL NOTEではそういった情報を一元的に管理することが可能となる。

ただ、「SKILL NOTEは紙やエクセルを置き換える以上の価値を提供することができると考えています」と山川氏は話す。SKILL NOTEに社員のスキル情報が蓄積するほど、現時点のみならず、将来のスキルの習得状況も予測できるようになる。例えば「年齢別スキル分布」のデータからは、各年代ごとのスキルの習得状況が分かる。ベテラン層に重要スキルが集中している場合、彼らが引退した時にその仕事を引き継げる人がいないという状況になりかねない。データを随時確認することで、事業を運営していく上で必要なスキルを保持するための統合的な人材育成を図ることができるようになる。

SKILLNOTE_年齢別スキル分布

SKILL NOTEの年齢別スキル分布

スキルの可視化で、キャリアプランの制定もしやすくなると山川氏は言う。SKILL NOTEの「ステップアップシート」では、会社が職種ごとに若手や中堅に求めるスキルや資格を明示することができる。これまでも会社側は社員のキャリアプランを考えてはいたが、それを社員に明示することは少なかったと山川氏は話す。会社は様々な教育研修を用意し、社員のスキルアップを促してきたが、社員の方としては全体のキャリアプランが見えないために、なぜこの研修を受ける必要があるのか理解できないこともあるという。そこを明示することで、社員は自分のキャリアプランを見て、ステップアップとして次にこういったスキルが必要だから研修に参加しようと計画を立てることが可能になる。研修を受けるモチベーションにもつながると山川氏は言う。

SKILLNOTE_ステップアップシート

SKILL NOTEのステップアップシート

山川氏は信越化学工業で市場開拓や次世代技術開発などに従事した後、2006年3月に製造業の人材育成を支援する会社を創業した。その会社では製造業向けの教育研修を担っていたが、次第に単発の研修だけでなく、技術者の能力を見える化して戦略的な教育研修ができるソリューションを提供できないかと考えるようになったと山川氏は話す。そのためのシステムを少しづつ構築し始め、このサービスの展開のため2016年1月にイノービアを設立した。2016年6月からサービスを「SKILL NOTE」にリブランディングしている。

社員数によって価格は変動するが、SKILL NOTEは社員100名なら料金は月額2万円からだそうだ。すでにリコーインダストリー、JFEスチール、ヤマサ醤油など大手企業を含む50社以上に導入が進んでいるという。小規模なスタートアップにも関わらず、大手製造業からの引き合いが多いのはスキル管理に特化したサービスが他に少ないこと、大手企業が抱える課題にうまく刺さっていることが理由のようであると山川氏は説明する。問い合わせの多くは各企業の人事やITソリューション部ではなく、社員のスキル管理に日々頭を悩ませている現場に近い技術部門からなのだと言う。

今回の資金調達では営業とマーケティング力の強化、そして導入企業のフィードバックを元にサービスの拡充を進めていくという。総勢20名程度スタートアップだが、次の2、3年でSKILL NOTEを国内の製造メーカーへの普及を進め、5年後には海外でも使用されるサービスになることを目指すと話している。

労務管理クラウドの「SmartHR」がAPI公開、社内システムなどと連携可能に

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社会保険や雇用保険など労務手続き自動化をするクラウドサービス「SmartHR」。サービスを提供するKUFUは5月25日、開発者向けに「SmartHR for Developers」を公開した。

SmartHR for Developersでは、他社製クラウドサービスとのデータ連携を実現するためのAPIやWebhookを提供しており、すでにマネーフォワード、キメラなどクラウドサービスを提供する4社と連携、もしくは連携に向けて協議を進めている。概要は以下の通り。

マネーフォワード:クラウド給与計算ソフト「MFクラウド給与
従来は給与計算ソフトには社会保険関係の情報を含む膨大な従業員データの入力が必用だったが、本連携により、入社手続きを行った従業員情報を1クリックでMFクラウド給与に取り込むことが可能になる。※すでに実装済み

キメラ:クラウド型採用管理サービス「Talentio

Talentioはキメラが提供する採用管理クラウドサービス。SmartHRとの連携により、入社が決定した内定者のデータを1クリックで同期し、そのまま入社手続を行えるような仕組みを提供する予定。将来的には在籍期間まで含めた採用KPIの分析機能の追加も視野に入れる

ソネット:クラウド型勤怠管理システム「AKASHI
本日公開のクラウド型勤怠管理システム。SmartHRとの連携では、勤怠データを1クリックで取り込み、勤務実績に応じて必用な手続きの有無を自動判別、そのまま手続を作成、役所へウェブ申請まで行えるような仕組みを提供する予定

ヴェルク:受託ビジネスに特化したクラウド型業務サービス「board
受託ビジネスに特化したクラウド型業務システム。連携では、SmartHRが持つ人事情報を活用し、人件費まで考慮された案件単位の損益管理機能を予定する

またSmartHR導入企業であれば、内製の社内システムとSmartHRの自社アカウントをシステム連携できるようになる。すでにSmartHRを利用するメルカリ、VASILYなどが社内システムとの連携を進めている。

各種クラウドサービスとSmartHRのシステムを連携することで、例えば従業員の入退社をトリガーにして各種クラウドサービスへ従業員情報を登録するなど、登録されている従業員データを様々な活用が可能になる。将来的には、外部サービスからデータを取り込んで必要手続きを自動作成したり、シングルサインオンを活用した各種クラウドサービスのアカウント管理をしたりと昨日を拡張させていく予定だ。

「クライアント企業からも『社内システムとSmartHRで従業員データのマスタを二重に持つことは面倒だ』という声があったことからAPI提供に至った」(KUFU代表取締役の宮田昇始氏)。もともと中小規模向けにサービスを提供してきたが、現在では1000〜4000名規模の企業もSmartHRの導入検討を進めているのだという。そういった背景もあり、API提供によるシステム連携に加えて、IP制限や二段階認証など、大企業のニーズにも応えられる機能開発を進めていくとしている。

ビズリーチが37.3億円の資金調達、求人検索エンジン「スタンバイ」や採用管理システムに注力

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ハイクラス人材特化の会員制転職サイト「ビズリーチ」、20〜30代をターゲットにした転職サイト「キャリアトレック」、そして2015年5月リリースの求人検索エンジン「スタンバイ」の3つの転職サービスを展開するビズリーチ。

同社は3月29日、YJキャピタル、ジャパン・コインベスト投資事業有限責任組合(三井住友トラスト・インベストメントが運営)、Salesforce Ventures、電通デジタル・ホールディングス、グリー、楽天、リンクアンドモチベーション、EFU Investment Limited、East Ventures、IMJ Investment Partners Japan Fund 1号 投資事業有限責任組合の計10社から、総額37億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。リードインベスターはYJキャピタル。同社は今回約16億円をビズリーチに出資している。これは同社として最大額の投資案件となる。

ビズリーチでは今回の資金調達をもとにスタンバイの事業を拡大。また同時にクラウド型の採用管理システム「HRMOS(ハーモス)」をはじめとした新規サービスの開発を進めるという。

ビズリーチ代表取締役社長の南壮一郎氏によると、すでにビズリーチ事業は単月黒字化。この収益や子会社であるルクサのKDDIへの売却益などをもとに新規サービスへの投資を進めてきた。スタンバイはサービス開始から約10カ月。フリーターや派遣社員からスタッフレベルの社員といった人材を中心に400万件以上の求人を掲載。サービスの開発を本格化する時期になってきたと判断した。「ビズリーチの資金調達はこれが2回目。転職のマスマーケットを攻めていくのであれば、我慢比べをするのではなく、必要な資金を調達して勝負をする」(南氏)。南氏は具体的な名前こそ出さなかったが、求人検索と言えばリクルートが2012年9月に買収したindeedが先行する領域でもある。

またビズリーチでは、スタンバイの利用企業(掲載は無料、ビズリーチは検索連動広告で収益を得ている)に対して、求人情報の作成 ・公開 ・管理が可能なプロモーションツールを提供してきた。これをベースにしてクラウド型の採用管理システム「HRMOS(ハーモス)」を5月にも公開する予定だ。

「今まで人材サービスは『採用したら終わり』というものがほとんどだった。人をモノのようにするつもりはないが、採用者のパフォーマンスデータを見て、PDCAを回すということもできれば」(南氏)。この採用管理システム領域にはスタートアップもある。またOracleの「Taleo」やSAPの「SuccessFactors」などが先行している。

労務管理サービス「SmartHR」に年金事務所やハローワークへのオンライン申請機能

SmartHR_電子申請

KUFUは3月3日、労務管理担当者向けのクラウドサービス「SmartHR」上でオンライン申請機能を追加した。

この機能は総務省が提供する電子政府の外部連携API(eGov API)を利用して、SmartHRユーザーが年金事務所やハローワークでの社会保険・雇用保険に関するウェブ申請を実現するというものだ。

eGov自体は2008年から提供されているもの。2010年には一括申請機能、2014年には外部連携APIの仕様公開、2015年にはAPIの運用が開始されたが、現状の利用率はわずか4.2%。他の領域での電子申請では、例えば国税申告(確定申告など)が52.7%、登記が57.8%まで拡大しているのにも関わらず、だ。

KUFU代表取締役の宮田昇始氏はこの理由について、「電子証明書」の存在があると説明する。電子証明書とは、eGovを利用する際の本人を識別・証明するためのデータ。この証明書の取得には、認証局との契約や証明書の取り込みといった作業と、2年で約1万5000円ほどのコストがかかる。しかもこれは1社ごとに取得が必要なのだという。「150社ヒアリングしても、証明書を取得しているのは1、2社だった」(宮田氏)

これに対して SmartHRでは、同社の外部アドバイザーである社会保険労務士法人スマートエイチアールによる代行申請を行うことで、企業各社の負担を下げていると説明する。申請はSmartHRのサービス上で、3ステップで実行可能だ。

新機能はSmartHRの有料ユーザーであれば無料(追加料金なし)で利用できる。「実際に年金事務所やハローワークに行くと、待ち時間も含めて半日、1日仕事だった。それがオンラインで実現できる」(宮田氏)

「支払いは次の資金調達の際に」もOK、スタートアップのHR支援をCAVとインテリジェンスが開始

スタートアップの課題となるのは、採用や組織運営などいわゆるHR領域の話であることも少なくない。先日新ファンドの組成を行ったグロービス・キャピタル・マネジメント(GCP)でもIR、PR、HRの「3R」の支援を行っているという話があったが、米国の大手VCなどを中心にHRやPRを支援するような仕組みを内部に持っているケースも少なくない。

そんな中、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)も投資先スタートアップのHR支援に乗り出した。同社はインテリジェンスと組み、支援先企業の採用・組織に関する課題解決を支援する組織「HR Support Team」を設置することを明らかにした。

HR Support Teamでは、人材の採用・配置・育成や組織マネジメントに関する相談・コンサルティングを実施するだけでなく、インテリジェンスを通じた人材紹介において、企業の成長ステージに応じて採用手数料や支払期日が変動する特別プランを提供する。ステージにもよるが、「支払いは次の資金調達を行った際に行う」といった条件も用意するのだという。

果たしてそれでビジネスになるのか? とも思うのだが、CAVのHRアクセラレーターとしてHR Support Teamに参加するインテリジェンスの佐古雅亮氏によると、「ビジネス以上にスタートアップの人材活用の可能性を広げて、事業成長を支援するという新しい取り組み。国家戦略ではないが、次のベンチャーに元気になって欲しい。これまでの人材サービスはベンチャーにはフィットしないところもあったので、その領域で新しいことができないか考えた結果」なのだそうだ。

このほかHR Support Teamでは、求職者と起業家を繋ぐネットワーキングイベントやCAVの支援先スタートアップに限定した組織・人材に関するクローズドな勉強会も開催する。なおインテリジェンスとしてはCAV以外でもVCと組んでスタートアップのHR支援を行う予定。GMO VenturePartnersとも共同でスタートアップのHR支援を行うことが決定している。

ビジネスSNS「Wantedly」がいよいよオープン化、3つの機能が外部サイトでも利用可能に

ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏(中央)とOpen APIを担当した相川直視氏(左)、坂部広大氏(右)

ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏(中央)とOpen APIを担当した相川直視氏(左)、坂部広大氏(右)

ウォンテッドリーの提供するビジネスSNS「Wantedly」。6月に発表していたプラットフォームのオープン化がいよいよスタートした。同社は11月9日よりOpen APIの提供を開始。すでに発表されていたサイバーエージェント、クックパッド、ヤフー、ディー・エヌ・エー(DeNA)の4社に加えて、採用管理システムを提供するジャパンジョブポスティングサービス、ワークス・ジャパン、イグナイトアイがローンチパートナーとしてOpen APIの導入を実施。また、本日よりすべての企業に機能を開放する。ウォンテッドリーでは年内に100 社の導入を目指す。

Open APIを利用することで、Wantedlyのサイト外であっても同サービスの機能を利用できるようになるが、今回提供されるのは「話を聞きに行きたいボタン」「会社フィードボックス」「フォーム自動入力ボタン」の3つの機能だ。Wantedlyの会社アカウントを作成し、自動生成されたJavaScriptを一行ホームページに挿入すれば、これらの機能を外部サイトに導入できるようになる。これによって従来の応募フローには乗って来なかった潜在転職者や、採用のフローが面倒で離脱してしまうような転職者とも出会えることが期待できる。

Wantedly には、「本選考へのエントリ-」というかっちりしたものエントリーフォームではなく、カジュアルに企業へ遊びに行きたいという意思を表示する「話を聞きに行きたいボタン」がある。これまでWantedly内のクライアント企業各社のページでのみの利用できたこの機能が、外部サイト(例えばクライアント企業のコーポレートサイトなど)にも設置可能になる。

VisitButton

「話を聞きに行きたい」ボタンのイメージ

「会社フィード」は、Wantedly上に日々の会社の様子を投稿して情報を更新できる機能。ユーザーは気になる会社フィードをフォローすることで、最新の企業情報を受け取ることができる。この会社フィードを外部サイトに表示するのが「会社フィードボックス」だ。

「会社フィードボックス」のイメージ

「会社フィードボックス」のイメージ

「フォーム自動入力ボタン」は、Wantedly上にプロフィールを登録するユーザーが、ワンクリックでその情報をほかのサイトのプロフィール入力フォームにコピーできる機能。例えば転職希望者がWantedlyで興味のある企業を見つけ、話を聞きに行ったあとでその企業の選考に正式にエントリーする場合、企業のエントリーページにこのボタンが設置されていれば、ワンクリックで情報を入力できるようになる。今まではコーポレートサイトにWantedlyの自社ページのリンクを用意するケースが多かったそうだが、今後はWantedly上の更新情報が直接コーポレートサイトなどから閲覧できることになる。

Wantedlyの月間ユーザー数は60万人。クライアントは1万2000社にまで拡大した。ウォンテッドリー代表取締役の仲暁子氏によると「もともと4000社くらいまではスタートアップが中心だったが、その領域はほぼ取り切って、そこからは中小企業や大企業、病院、学校、行政など利用企業の裾野が広がっている状況」という。

スクーとエン・ジャパンが業務提携、転職希望者のスキル育成支援で特別カリキュラムを提供

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オンライン動画学習サービス「schoo WEB-campus」を運営するスクーと総合求人・転職支援サービス「エン転職」などを展開するエン・ジャパンが8月18日、業務提携を発表した。

今回の提携はウェブ・IT業界の人材不足の解消に向けた新しい人材の創出と企業から求められる人材の育成を目指すもの。スキルを持った人材を育成すべく、まず最初の取り組みとして、エン転職のユーザーに「schoo WEB-campus」の「Webデザイナー」(3コース:14授業、計12時間)、「Webプログラマー」(4コース:13授業、計13時間)「Webマーケター」(2コース:12授業、計12時間)の講座を無料で配信する。

これだけであれば、schooのコンテンツの配信先が1つ増えたというだけの話だが、9月からは人材の育成、転職についてより具体的な支援をしていくのだという。具体的には、スクーがエン転職のユーザーに対して、プログラミングやウェブデザインなどの特別カリキュラムを提供し、すべてを受講したユーザーに対して修了認定を行う。終了認定されたユーザーに対してはエン・ジャパンが転職サポートを行うほか、入社後の活躍・定着に向けたフォローを行うとしている。

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ペパボ創業者の家入氏の新会社キメラが始動、East Venturesや個人投資家から1億円の資金調達

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paperboy&co.(現:GMOペパボ)創業者の家入一真氏。29歳の最年少でJASDAQ上場(当時)を果たしたのち、飲食店経営や投資活動、クラウドファンディングサービス「CAMPFIRE」運営のハイパーインターネッツやネットショップ開設サービス「BASE」運営のBASEなどの共同創業、果てには都知事選への立候補など——時に騒ぎを起こしつつも活動してきた同氏の新会社キメラがいよいよ本格的に動き出した。

キメラは8月18日、East Ventures、あすかホールディングス取締役会長の谷家衛氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏など複数の個人投資家、リブセンスを引受先とする総額1億円超の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。資金の調達に合わせて谷家氏が同社の取締役に就任する。キメラでは今回の資金調達をもとに人材の拡充やマーケティング強化、開発環境の整備を進めるとしている。

キメラでは、「新しい働き方の提案や雇用力を強化するサービスを開発する」としており、第1弾のプロダクトとして、タレントマネジメントシステム「LEAN」を開発中だ。キメラ共同創業者で取締役の佐野一機氏(paperboy&co.のブランド戦略などを担当したコンサルタントであり、その後自身でも起業。コスメ事業を立ち上げて売却し、現在サティス製薬取締役も務める)によると、クローズドベータ版サービスの運用はすでに開始しており、9月にも正式にサービスを開始する予定だという。

「最近ではリファラル採用(人材会社を利用しない、人づてでの採用のこと)という言葉も出てきているが、企業のHRに必要なインフロー(採用)、インターフロー(教育、配置)、アウトフロー(輩出)にそれぞれモジュールを提供していきたいと考えている。LEANはその採用のモジュール」(佐野氏)

機能の詳細については聞けなかったが、LEANは採用に向けた情報発信に加えて、入社した人材の属性を一元管理。さらにデータを蓄積していくことで、自社に求められるのがどのような人材であるかを確認できるようなプロダクトだという。海外ではすでにLeverのようなサービスが登場しているし。国内で言えばWantedlyなどが近いだろうか(同様のサービスを提供予定だったハッチは現在活動をストップしていると聞いている)。

キメラのコーポレートサイトでは、社名の由来である「キメラ」について「同一個体内に異なった遺伝情報を持つ細胞が混じっていること。またそのような状態の個体のこと」という説明があるほか、その語源でもあるギリシャ神話の怪物「キメラ」を例に「獅子の頭、山羊の体、蛇の尾を持つ怪物キメラの様に、わたしたちはひとりひとりが独立した特徴を持つモンスターでありたい」というメッセージが書かれている。このメッセージどおりで、同社では今後LEANに加えて複数のサービスを展開していく予定だという。

バトル応募企業紹介:難病での休職、妻の産休手続き——起業家の経験が生んだ労務支援サービス「SmartHR」

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スタートから5年を数えるOpen Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム「Seed Accelerator Program」。4月に開催された第10期のデモデイで最優秀賞に輝いたKUFUのサービス「SmartHR」がクローズドベータ版のサービスを開始した。事前に募集をしていた約300社に対して順次アカウントを提供している。あわせて、SmartHRのサイト上で、新規のクローズドベータ版ユーザーも追加募集している。

SmartHRは「入退社の書類作成」「社会保険の手続き」といった労務手続きをサポートするサービスだ。例えば入社時の書類作成の場合、新入社員の氏名や住所などを入力すると、印刷すればそのまま利用できる役所提出書類などを自動で作成。さらに画面上にToDoリストを表示し、必要な作業を指示してくれる。今秋をめどに政府が提供する電子申請システム「e-Gov」と連携し、オンライン上での書類申請も可能になるという。ビズグラウンドの「Bizer」のほか、freeeやマネーフォワードが提供するクラウド会計サービスの機能の一部が競合にあたるだろうか。

自身の病気、妻の産休がサービスのきっかけに

KUFUの設立は2013年1月。代表取締役の宮田昇始氏は、かつてスタートアップで勤務していたが、数万人に1人発症するかどうかという難病にかかって顔面左半分麻痺、聴覚障害、視覚障害という経験をしたのだという。しばらく休職して病気から回復したが、自分の生き方や働き方を考えた上で独立しようとなったのだそう。そこでフリーランスで活躍していたデザイナーやエンジニアと作ったチームが同社の母体となった。

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

KUFU代表取締役の宮田昇始氏

受託を受けながらいくつかサービスを企画。その1つを持ってonlabの門を叩き、見事にプログラムに採択されるも、「スタートして1カ月くらい『本当にそこにユーザーの課題があるのか』とヒアリングを続けていた。深掘りして考えて行くと課題があるのか分からず、数えるだけでも9回のピボットをした」(宮田氏)のだという。

そんなタイミングで思い出したのが前職での休職経験。その際、休職時の手当の申請などで社会保険労務士(社労士)にはお世話になったのだそう。また時を同じくして宮田氏の妻が産休をすることになったが、会社で手続きをしてもらえなかったために宮田氏が代行。その面倒さを痛感したという。

「ここにユーザーのニーズがないかと思ってヒアリングしたところ、特に10人程度の会社だと、労務の専任者がおらず代表が労務手続きをしているというケースが多かった。コストが合わないため、労務は面倒だが社労士を雇えないのだという。そういった課題を解決できるサービスを考えた」(宮田氏)

デモが動くようになって各所に話をしたところ、反応が良かったのは小規模の会社だけではなかった。「実は30〜50人規模の会社の反応が一番いい。その規模でも労務専任の人材がおらず、経理や人事が兼任している状況」(宮田氏)。現在はベータ版でサービスを提供しているため、利用は無料。今後は月額課金を中心にしてサービスを提供する予定だが、詳細については現在検討中だという。

同社はOnlabのほか、DGインキュベーションおよび非公開の1社からシードマネーを調達している。金額については非公開となっている。

なお同社は、11月17日、18日に渋谷・ヒカリエで開催予定のイベント「TechCrunch Tokyo 2015」の目玉企画「スタートアップバトル」に応募頂いている。

スタートアップバトルは2日目の11月18日午後に予定している企画で、100社以上の応募の中から書類審査を勝ち残った約10社が投資家や起業家、経営者、スタートアップ関係者、大手ネット企業の事業担当者などを含む観客の前でプロダクトのお披露目をするコンテストとなっている。

もちろんSmartHRが登壇するかどうかは審査が終わるまで分からないが、早く正式版のサービスをお披露目してもらいたいと期待している。

【TechCrunch Tokyo 2015スタートアップバトルの応募はこちらから

【TechCrunch Tokyo 2015の前売りチケット購入はこちらから

女性特化転職サイト運営のLiBが2.7億円を調達、キャリア支援の新構想も発表

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キャリア女性特化の会員制転職サイト「LiBz CAREER(リブズキャリア)」を運営するLiBは7月30日、リンクアンドモチベーション、クラウドワークス、サイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)、日本ベンチャーキャピタル、ニッセイ・キャピタルの計5社を引受先とする第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は2億7千万円。出資比率やバリュエーション等は非公開。

LiBは2014年4月の創業。「企業で活躍する女性を増やし、女性が活躍する社会を創る」をミッションに掲げて同年5月にLiBz CAREERを立ち上げた。同年7月にはCAVおよびEast Venturesから7千万円の資金調達を実施している。LiBz CAREERは2015年7月末時点で会員数約2万4000人に到達する見込みだという。

同社では今回の資金調達をもとにマーケティングを強化。さらに女性向けキャリア支援サービスの提供。機能拡充をするが、その一環として発表されたのが今回出資するリンクアンドモチベーション、クラウドワークスとともに展開する「キャリアパスポート構想」だ。

LiBではより広い領域で女性のキャリア支援を行うべく、今回出資を受けた事業会社との連携を進める。まずリンクアンドモチベーションと提携し、クライアント企業に対して女性が働く際のモチベーションの診断や、採用や研修、制度設計などの支援を行う。またクラウドワークスと連携ユーザーにリモートワーク可能な求人情報をの提供していく。

クラウドワークスは「職務の経歴を可視化することで、個人の与信を作っていく」といった話を常々しているが、LiBz CAREERでは同社と連携する形でそんな与信を作っていくことも考えているようだ。具体的な連携内容は明かされていないが、キャリア・評価などをサイト上のレジュメに蓄積して、「次のキャリアに移る際の『パスポート』となる経歴書を作ることが可能になる」(LiB)とうたっている。

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

LiBの「キャリアプラットフォーム構想」

医療系スタートアップのメドレーが三井住友海上、MRT、グリーから3億円を調達

メドレーのメンバーら。左から2番目が石崎氏、3番目が
5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

メドレーのメンバーら。左から3番目が代表取締役医師の豊田剛一郎氏、5番目が代表取締役の瀧口浩平氏

医療系スタートアップのメドレーは6月30日、三井住友海上キャピタル、MRT、グリーおよび個人株主を引き受けとする総額3億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

今回メドレーに出資したMRTは、外勤紹介サービスの「Gaikin」、転職紹介サービスの「career」(いずれもMRTのコーポレートサイトで提供)、医局向けサービス「ネット医局」、ヘルスケア情報サイト「GoodDoctors」など、医療従事者向けのサービスを展開している。今後は、ジョブメドレーとGaikinのサービス連携、医師や医療従事者のネットワーク拡大、新サービスの共同開発を進めるとしている。

メドレーは2009年の設立。代表取締役の瀧口浩平氏は家族のがん治療の経験から、医療現場の効率化、情報の非対称性といった課題に気付き、それを改善すべく医療領域で起業した(同士は学生時代にも一度起業しており、これが二度目の起業となる)。

同年11月には医療・介護業界専門求人サイトの「ジョブメドレー」の提供を開始。2015年2月には瀧口氏と小、中学校時代からの友人である医師の豊田剛一郎氏を代表取締役医師として招聘。あわせてオンライン病気事典「MEDLEY」を公開した。また、2015年にはグリー傘下で介護施設の口コミサイト「介護のほんね」を提供していたプラチナファクトリーを株式交換により子会社化している。

同社にはこれまでにウノウ創業者でメルカリ代表取締役の山田進太郎氏やアトランティス創業者の木村新司氏といった個人投資家のほか、East Ventures、インキュベイトファンドなどが出資している。

社員数は現在約60人。役員を中心に、東大医学部卒業生も4人在席している。「2009年に創業した時は、医療分野をやりたいエンジニアなんかいなかった。だここ最近はApple Watchでヘルスケア情報が取得できるようになったりして、医療領域に注目が集まってきている」(瀧口氏)

医療情報の提供、「生半可な気持ちでやっていくつもりはない」

今回の増資を受け、メドレーでは前述のMRTとの協業に加えて、オンライン病気事典MEDLEYおよび医療系人材の求人サイトジョブメドレーのサービス開発を加速するとしている。

MEDLEYでは、医師や医療従事者が執筆する情報を、220人の専門医が校正。一度掲載された情報についても逐次アップデートするという体制を取っているそうだ。「病気を調べるときにパッと思い浮かぶ病気のサイトにしたい。将来的には疾患の基礎情報からQ&Aまでを網羅する。医者1人1人も時間が限られている。診断したあと、(MEDLEYの)URLや印刷物を渡して『聞きそびれ』をなくすようなものにしたい」(豊田氏)。

ここ最近では医療情報サイトもいくつか出ているが、その一部は、情報の信頼性に不安をおぼえるものも少なくない。例えば、ある医療情報サイトで「子宮肉腫」という項目が「良性の腫瘍」と説明されているのだが、実際は「良性の子宮筋腫と間違いやすい、悪性の腫瘍」なのだそう。競合サイトでこういった生死に関わる情報が正しく扱われていない背景を踏まえて豊田氏は前述のコンテンツチェック体制を強調。「サービスを生半可な気持ちでやっていくつもりはない」と語る。

またジョブメドレーも売上は伸びており(グラフを見せてもらったが、金額自体は非公開とのこと)、「採用決定数も競合比較で多くなっている」(瀧口氏)のだそう。

将来的には、遠隔医療分野を支援、効率化するサービスの提供も予定しているという。こちらも具体的な話は非公開ということだったが>、豊田氏いわく「医療は『サイエンスとアート』なんて言われることがある。そのサイエンスの部分をシステムに置き換えて、アート、つまりコミュニケーションなどのために医師が時間を使えるようにしたい」とのこと。

交通系ICカードをAndroid端末にかざせば処理完了、経費精算サービス「Staple」がバージョンアップ

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クラウドキャストのスマートフォン向け経費精算サービス「Staple」。2014年10月(iOS版のみ。Android版は2015年3月)にスタートしたこのサービスがバージョン2にアップデート。新たに、NFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末を使った交通系ICカードの自動読み取り機能を実装した。

Stapleは面倒な経費精算を、専用のスマートフォンアプリを使って手軽に入力できるサービスだ。個人および10〜20人規模の程度の中小企業のほか、各種イベントをはじめとした短期プロジェクトでの利用を想定している。

今回のリニューアルにあわせて、新アプリの「Stapleリーダー」を公開。ユーザーがNFC/おさいふケータイ対応のAndroid端末上でこのアプリ起動し、交通系ICカードをタッチすれば、カードの使用履歴を自動で取得。データはStapleのクラウド上にアップロードする。

あとはStapleのウェブサイトにアクセスするかアプリを起動し、勤怠に関わるデータを選択すれば、自動的に経費精算の一覧に反映される。これでもう、Excelにいちいち移動の記録を書き込んでいくという手間から開放されるわけだ。取り込んだデータは修正不可能なため、不正な処理も起こらない。また定期区間なども自動で処理され、二重に経費を申請するといったこともなくなる。

利用手順

実はこの機能、Staple開発時からユーザーから要望が高かったのだそう。「この機能さえあれば導入したいという声もよく聞いていた」(クラウドキャスト代表取締役の星川高志氏)

またこの機能のほか、外部サービスとの連携を強化。すでに連携済みの弥生会計に加えて、freeeやMFクラウド会計、A-SaaS、FreeWay、勘定奉行の合計5サービスに対して、経費データのインポートが可能になった。

gumi、100人規模の希望退職者募集へ、ブラウザゲーム2タイトルはマイネットに移管

業績の下方修正、韓国子会社での横領など厳しいニュースの続くgumi。同社は3月27日開催の取締役会で希望退職者の募集について決議したと発表した。

gumiの発表によると、同社はブラウザゲームからネイティブアプリへと主軸のサービスを転換(2015年4月期第3四半期累計でブラウザゲーム売上が連結売上高全体の9.3%にまで低下)しているが、一部でスキルセットの転換や配置換えが遅れているケースもあったため、これを機に他社への転進等を求める社員に対する選択肢として、希望退職を募集することを決定したという。

対象とするのはgumiおよびgumi Westの全社員で、募集する人員は100人程度。2015年4月期第3四半期決算で発表されたグループ従業員(正社員)数は901人だった。募集期間は3月30日から4月17日までで、退職日は4月30日を予定する。また今回の希望退職制度に応じて退職する従業員については会社都合の退職として扱い、特別退職金を支給する。希望者には再就職支援会社を通じた再就職支援を行うとしている。

gumiでは、今回の退職者募集に伴い発生する費用や業績への影響等について、確定次第速やかに開示するとしている。

あわせてgumiでは、ブラウザゲームタイトルの「ドラゴンジェネシス」および「幻獣姫」について、マイネットへの運営移管を行う旨の発表もしている。


月額2980円で士業に相談し放題のBizer、役所提出文書の自動生成が可能に

月額2980円で士業に相談し放題」でサービスを開始したビズグラウンドの「Bizer(バイザー)」。2014年12月からは士業への相談に加えて、中小企業向けのクラウド型バックオフィス機能「会社運営のダンドリ」を提供している。

会社運営のダンドリでは、必要な情報を入力するだけで株式会社設立に必要な文書を作成できるほか、テンプレートに従って作業をするだけで総務や労務、経理の処理ができる。

作業の途中で分からないことがあれば、士業に相談したり、手続きの代行を依頼したりもできる(ちなみに作業途中の質問は課題が明確なため、士業もこれまでに比べて素早く、適切な回答をしやすいのだそうだ)。ビズグラウンド代表取締役社長の畠山友一氏によると、会社の増資や年末調整、従業員の雇用・退職など、約120件のイベント(1つのイベントにつき10〜20件の作業が含まれる)を支援してきたそうだ。

今回その会社運営のダンドリに、役所への提出文書の自動生成機能が実装された。この機能を使うと、あらかじめ登録しておいた会社や従業員の情報をもとにして、役所へ提出可能な書類を自動生成できる。

現時点では、従業員の雇用時に必要となる「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」「国民年金第3 号被保険者資格取得・種別変更・種別確認(3 号該当)届」「健康保険被扶養者(異動)届」「特別徴収切替申請書」「雇用保険適用事業所設置届」「雇用保険被保険者資格取得届」の合計7つの文書に対応。印刷して押印さえすれば役所に提出可能だ。今後は従業員の退職や本社移転、増資などに関わる文書も追加する予定で、1年間で100種類の文書生成に対応するという。新機能も月額2980円の有料会員であれば自由に利用できる。

Bizerのサービス開始時にも畠山氏に「Bizerは士業の仕事を奪うようなものではないのか」といった質問をしたのだけれど、正直なところ今回の機能も同じような印象を受ける(もちろんユーザーにとっては大歓迎だろう)。これについて改めて聞いてみたのだけれど、「文書作成機能には士業の協力も得ている。書類作成のような単純労働ではなく、『士業でないとできない仕事』に集中する環境を作りたい」(畠山氏)とのことだった。


ペアプロの有無まで紹介するITエンジニア特化の人材サービス「Forkwell Jobs」運営のgroovesが2.2億円調達

TechCrunchで2年半前に紹介したエンジニア向けのソーシャルサービス「Forkwell」を手がけるgrooves(当時はforkwell事業のために新会社garbsを設立していたが、合併)が総額2億2000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。既存株主の日本ベンチャーキャピタルと三井住友海上キャピタルからの第三者割当増資に加え、一部は日本政策金融公庫の資本性ローンでの調達となっている。

最近では10億円前後をエクイティで調達するスタートアップも多いが、grooves代表取締役の池見幸浩氏は、「株式を希薄化しても問題ないという起業家もいるが、僕はデット(融資などの他人資本)で資金を獲得できるならそれがいいと思っている」と語っている。実際今回の調達は日本政策金融公庫の本店(3000万円超、3億円以内の案件を担当)が担当しているとのことで、億単位でデットファイナンスを実施していると見て間違いなさそうだ。

さて前述のforkwellは登録ユーザー1万人で、109万人いると言われている日本のエンジニアの1%も取れていないのでまだまだこれからというところだが、これと連携するエンジニア採用支援サービスの「Forkwell Jobs」、中小規模の人材エージェントをクラウド化(同社は「クラウド化」と呼んでいるが、「ネットワーク化」のほうが分かりやすいかもしれない)して、最適な人材の採用を効率化する中途採用支援サービスの「クラウドエージェント」が好調だそうだ。今回の調達では、各種サービス開発に向けた人材確保などを進める。

前者のForkwell Jobsは、例えばペアプログラミングをするしないといった「コード品質への取り組み」や「使用するバージョン管理ツール」「使用するプロジェクト管理ツール」などなど、その会社の開発環境をこと細かに紹介するエンジニア特化の採用支援サービス。採用する側にもエンジニアとしての高いレベルが求められることもあって、「人材募集案件の4割はお断りしている状況」(池見氏)なのだそうだ。後者は特にエンジニアに特化しているわけではないが、複数のエージェントから最適な人材を一括で探すことができるため、ユーザーのニーズは高い。金額に関しては非公開ということだったのだけれども、すでにかなりの売上を達成して事業の黒字化を達成しているそうだ。