IntelのSpectre-Meltdownのパッチでユーザーシステムがリブートしてしまう事故も

Intelにとってそれは、楽しい時間ではなかった。先週同社は、チップの脆弱性を二つ公表し、その後それらにはSpectreとMeltdownという名前まで付けられ、そしてさらにIntelだけでなくチップ業界全体の騒動になった。今週同社はパッチを発表したが、今日(米国時間1/12)は、それらをインストールした企業の一部がシステムの唐突なリブートを経験している、という情報がリークされてきた。泣きっ面に蜂、傷口に塩の不運な週だ。

Intelもそれを認め、同社Data Center GroupのVPでゼネラルマネージャーのNavin Shenoyが、この件に関するブログ記事を書いた。

そこにはこう書かれている: “複数の顧客から、ファームウェアのアップデートを適用したあとに高レベルのシステムがリブートする、という報告を受けている。具体的には、これらのシステムは、クライアントとデータセンターの両方でBroadwellとHaswellのCPUが動いている”。

“そのためにファームウェアアップデートの改訂が必要なら、その新たなアップデートは通常のチャネルから配布する”。

この問題はIntelがコントロールできないほど劇症化することはないだろう、とみんなが思っていたまさにそのときに、一層の劇症化が起きてしまった。Wall Street Journalが入手したIntelの極秘メモは、大企業やクラウドプロバイダーたちに、パッチをインストールしないよう指示している。一方Intelは消費者にはすべてのパッチをインストールするようアドバイスし、これはセキュリティの問題ではない、と指摘している。

ソフトウェアの不具合の問題にすぎないし、それは確実に直った、と言いたいところだったが、騒動の肥大化がプレッシャーとなり、ミスが生じたのかもしれない。

SpectreとMeltdownの問題は昨年、GoogleのProject Zeroのセキュリティチームが見つけていた。彼らは、セキュリティよりスピードを優先した設計により、現代的なチップのアーキテクチャに欠陥が生じ、チップのカーネルが露出した、と認識している。その場所にはパスワードや暗号鍵などの秘密情報が保存され、たぶん保護もされている。しかしその欠陥のために、保護がない状態になってしまった。

MeltdownはIntelのチップだけの問題だが、Spectreは今のチップのほとんどすべてにある…AMD, ARM, IBM Power, Nvidiaなどなど。この問題を抱えなかったのは、Raspberry Piだけかもしれない

今のところ、この脆弱性の悪用に関する情報や記録はない。Googleの昨日(米国時間1/11)のブログ記事によると、それは20年も前からチップに存在した脆弱性だが、しかしセキュリティの専門家たちによると、これまでのセキュリティ事故の、どれとどれがこの脆弱性の悪用であるかを特定するのは難しい。20年前からその存在を十分に知っていたとしても、事故原因としての特定は難しいだろう、という。

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メルトダウンとスペクターの暴露で、Intel CEOの株式売却のタイミングが問題に

Intel CEO Brian Krzanichが11月に大量の株を売却したことが議論を呼んでいる。証券取引委員会(SEC)の提出書類によると、その取引は同社がMeltdownとSpectreバグについて報告を受けた後だが、公表される前だったからだ。

当該株はSEC 規則10b5-1プランに沿って売却され、同規則は会社幹部が事前に自動売却プランを設定できるようにすることで違法なインサイダー取引を防ぐことを目的としている。しかしKrzanichが提出したForm 4には、売却プランが2017年10月30日に設定されたと書かれている —— バグについてGoogleがIntelや他の影響を受けた会社に通知したという6月より何カ月も後だ。その後今週になってようやくThe Register らのメディアによって公にされた。

Intel広報担当者はTechCrunchに対して、「Brianの売却は無関係だ。取引は事前に設定した株式売却プラン(10b5-1)に従って自動的に行われた。彼は会社のガイドラインに沿って今後も株を保有し続ける」と伝えた。しかし、SECへの申告によって取引が暴露された時点で、Krzanichは25万株を保有していた —— これはIntelのCEOでいるために必要な最低株数だとMotley Foolは言っている。

Form 4によるとKrzanichは、申告書類に書かれていた取引を実行する前に49万5743株を持っていた。Krzanichは11月29日にストックオプションを行使して取得した64万4000株を直ちに売り、持ち株数は変わらなかった。同じ日にKrzanichはあと2回取引を行い、計24万5743株を売却した —— その結果残った持ち株数は25万株ちょうどになった。

ちなみに会社幹部が株を売るのはよくあることで、必ずしも会社の業績を示すものではない。しかし、MeltdownとSpectreによる影響(事態が暴露された後Intel株は2%値下がりした )を別にしても、Krzanichの売り方は注目に値する。一般に会社幹部は最低必要数以上の株を保有することで、投資家に自信を示すのがふつうだからだ。つまり、来週のKrzanichのCESキーノートに暗雲が立ち込めることは間違いない。

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GoogleのProject ZeroチームはCPUの重要な欠陥を昨年発見していた

数分前(米国時間1/3)に公開されたブログ記事でGoogleのセキュリティチームが、今朝発表されたチップの脆弱性からGoogle Cloudの顧客を守るために彼らがやったことを述べている。その記事によると、この脆弱性は同社のProject Zeroのチームが昨年…時期不詳…発見していた。

発表によると、同社はその問題をチップのメーカーに報告した。それは、“投機的実行”と呼ばれているプロセスによって起きる。それは、CPUが次にやるべき命令を論理的に推測して実行し、処理速度を上げる、という高度なテクニックだ。そしてその機能に隙(すき)があり、悪者はそれを利用して、暗号の鍵やパスワードなどメモリ上の重要な情報にアクセスできる。

Googleによるとこれは、AMD, ARM, Intelなどすべてのチップメーカーに見られる現象である(AMDは否定)。Intelは、一部で報道された、脆弱性はIntelのチップのみという説を、同社のブログ記事で否定している。

Googleのセキュリティチームは、この問題を知った直後からGoogleのサービスを護るための措置を開始した、と書いている。早期に一般に発表しなかった理由は、調整版のリリース予定が来週(1月9日)だったため、という。そしてこのニュースがリークしたために、GoogleやIntelなどの関係企業は、情報を公開して憶測を終わらせることを選んだ。

なお、Google Apps/G Suiteには、被害が及んでいないので、ユーザーは何もしなくてもよい。そのほかのGoogle Cloudのユーザーは、何らかのリスク対策が必要かもしれない。ユーザーのアクションを必要とするプロダクトやサービスは、このページに詳細が載っている。

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「CPUに深刻なバグ」報道にIntel反論――OSアーキテクチャーに内在する欠陥で他社製チップにも同様の影響

今朝(米国時間1/3)、Intel製プロセッサーに 深刻なバグが発見されたとするとする報道があった。この欠陥を回避しようとすればチップの性能を大きく低下させる可能性があり、Intelの信頼性とその株価は共に大きな打撃を受けた。これに対してIntelは公式声明を発表し、こうした報道を「誤っており、不正確だ」と述べた。また同社はこの問題について「来週詳細を発表する予定だった」という。

この欠陥は一般ユーザーが日受利用するプロセスがプロセッサーのアーキテクチャーの極めて深い部分に位置するメカニズム、つまりカーネル・メモリーににアクセスすることを許すものだという。悪意あるハッカーがこの欠陥を利用すればシステムに数多くの巨大な抜け穴が生じる。一方、欠陥を回避しようとすれば、チップの性能を著しく低下させることになるという問題が生じていた。

Intelの公式声明は「不正確なメディア報道がなされているため」急ぎ発表されたという。

これらのシステム上の弱点(exploits)を「バグ」、「欠陥」と呼び、Intelプロダクト固有の問題だとする現在のメディアの報道は正しくない。現在までの調査の結果が、多種類のコンピューティング・デバイス、つまり多数のベンダーが製造するプロセッサーや複数のOSに共通してこの弱点が存在することが明らかになっている。

言い換えれば「問題はIntelだけじゃない」ということだ。Intelは問題の火消しを図ったのかもしれないが、同時に問題が今朝の報道よりはるかに大きいことを示唆する結果にもなった。Intelがすぐに確認できない主張で煙幕を張っているとは考えにくい。他の主要チップ・メーカー、OSベンダーはいずれも問題を認識していることは間違いない。実際、Intelによれば一部メーカーと共同声明を準備しているという。

Intelはプロダクトならびにユーザーのセキュリティーの確保に最大限の努力を払っており、他の多くのテクノロジー企業と協力して問題の解決にあたっている。Intelはこの問題に関して、AMD、ARM Holdingsなどのメーカーや複数のOSベンダーと共に業界全体として迅速かつ建設的な解決策を得ていく。

Intelを始めとするベンダー各社はソフトウェアおよびファームウェアのアップデートが利用可能になる来週の時点で詳細を発表する計画だった。

ということであれば、問題の詳細については共同発表を待たねばならないだろう。それ以前にこれ以上の情報が明らかされるかどうかは疑わしい。大企業が揃って何かするとなればある程度の時間はかかるものだ。

Intelは性能低下の可能j性に関しても「一部の報道とは異なり、パフォーマンスの低下は負荷に比例するものであり、一般ユーザーの場合、さほど大きなものとはならず、やがて緩和されるはずだ」と書いている。

とりあえずグッドニュースだが、やはりこれに関してもベンチマークテストの結果が詳しく説明される必要があるだろう。設定やアプリによって影響の出方は大きく異なる可能性がある。

画像: Smith Collection/Gado / Contributor/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

IntelとHyperがOpenStack Foundationとパートナーしてコンテナのセキュリティで独自技術

【抄訳】
すでに周知のように、OpenStack Foundationは今後、その名前が示すような単一のビッグプロジェクトだけでなく、もっと多様なオープンソースプロジェクトのホームになる、と宣言している。そこで今日、同Foundationが発表したのが、Kata Containersプロジェクトのローンチだ。

Kata Containersは、実行環境の仮想化/隔離化に関してコンテナと仮想マシンの良いとこ取りをするようなオープンソースプロジェクト(GitHub上)だ。コンテナからはそのスピードと柔軟性と管理性を、そして仮想マシンからはとくにそのセキュリティをいただく。この技術のベースは、IntelのClear Containersと、Hyperのハイパーバイザーランタイム(仮想マシン環境)runVだ。

OpenStack Foundationの事務局長Jonathan Bryceによると、彼のこの組織は、クラウド上の本格的なワークロードの実行を容易にするような、別のプロジェクトを求めていた。“OpenStack Foundationではユーザーコミュニティにフォーカスし、そのニーズに応えるものを作っている。それが、OpenStackの本来のサービスより大きいことも、ありえる”、と彼は語る。

では一体、Kata Containersプロジェクトとは何なのか? その基本的な着眼は、確かに優れた技術であるコンテナにも、長年手付かずのセキュリティの問題がいくつかあることだ。とくに複数のコンテナが仮想マシンを共有して動いていくときには、それぞれを完全に隔離孤立することが難しい。Kata Containersはこの問題を、それぞれのコンテナにきわめて軽量な仮想マシンとカーネルを与え、各コンテナないしコンテナポッドが自分だけの隔離された環境で動き、ネットワーキングもI/Oもメモリそれぞれ独自に割り当てられるようにすることで、解決しようとする。またIntelがプロセッサーに組み込んでいる仮想化技術により、ハードウェアレベルでの隔離孤立も利用する。

Kata Containersは現在、Kubernetes, Docker, およびOpenStackを統合し、x86アーキテクチャのプロセッサーでのみ動く。サポートしているハイパーバイザーは、KVMのみである。今後、他のアーキテクチャやハイパーバイザーにも拡張していくプランはある。

HyperとIntelとの技術融合には約1年を要しているが、この技術は多方面から期待されていて、すでにCanonical, China Mobile, CoreOS, Dell/EMC, Google, Huawei, JD.com, Mirantis, Suse, Tencent, ZTEなどがこれをサポートしている。

【後略】

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Nvidiaに負けたくないIntelとAMDがCPU/GPU盛り合わせチップを共同開発

IntelがAMDと一緒に、IntelのCPUとAMDのGPUを合わせたノートブック用チップを開発している。それは小さくて軽量で、しかもグラフィクス要求の厳しい最高クラスのゲームもゆうゆう扱える、というチップだ。

この二社の提携は、見た目には分かりやすいが、でも両社がコラボレーションするのは80年代以来久しぶりだ、とアナリストのPatrick MoorheadがThe Wall Street Journal紙に語っている。これまでは、どちらかというと両社は互いに強力なライバルとして、PC用プロセッサー市場を争っていた。まあ、レースの常勝はIntelだったけど。

でも最近では、Intelのトップの座をねらうのはAMDよりむしろNvidiaのようだ。グラフィクスカードのメーカーであるN社は、このところAIと機械学習に力を入れているし、それと同時に消費者向けとエンタープライズ向け両方のコンピューター用に、トップクラスのグラフィクスカードを提供し続けている。

AMDは最近、Nvidia製品に負けない性能/機能のGPUを作って、Nvidiaを押さえ込もうとしている。そして今回のIntelとの協働では、どでかい専用グラフィクスカードがなくても最高のグラフィクス性能を発揮するチップによって、さらに未来の成長の余地を作ろうとしている。このチップはPCのメーカーに、プロセッサーのサイズが小さく、グラフィクスカードもそれ用のヒートシンクも要らないという、省エネ省スペースを提供するはずだ。

そしておそらくIntelは、昔のライバルと組むことによって現在の最強ライバルを引き離したい、という根性だろう。消費者にとっては、良いニュースかもしれない。

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IntelのQ3決算はアナリストの予想をあっさりと上回り、とくにチップの多様化専用化で稼ぐ

本年第三四半期のIntel Corp.は、アナリストたちの予想をゆうゆう上回る数字によって、この世界的かつ支配的なチップメーカーがこのところ他社に後れを取っているという界隈の懸念を払拭した。

IntelのCEO Brian Krzanichが声明文で述べている: “第三四半期の業績は好調で、全分野で強力な結果が得られた。本年は弊社にとって記録的な年になると思われる。そう言えるほどの大きな前進と未来展望に、私は心躍らせている。人工知能や自動運転などの分野で従来よりも多くのイノベーションが進展しているためIntelは、これまでで最強の製品ラインナップを揃えることができている”。

同社が発表した調整済みの決算報告では、EPSはThomson Reutersのアナリストたちが予想した80セントに対し1ドル1セントになった。売上は予想157億3000万ドルに対し、実績161億ドル5000万ドルである。収益は前年同期比34%増の45億2000万ドルだった。

Intelの株式は今週、マーケットに火を着け、その週だけでも14%上がった。さらに終了後にも1%の上昇を見た。

これらの数字は、これまでの中核的ビジネスだったパーソナルコンピューティングの次を目指す、というIntelの戦略転換が功を奏し始めていることの兆しだ。

同社のデータセンター事業や、中核的なメモリ事業、それに物のインターネット(IoT)事業はいずれも今四半期の売上の急伸に貢献した。

とくに重要なのが“Programmable Solutions Group”と題された項目で、これはIntelの未来に最大の貢献をすると思われる分野だ。…これには、自動運転車や人工知能向けチップなどが含まれる。

このグループは売上が10%伸びて4億6900万ドルを記録した。IoT部門は23%増の8億4900万ドル、不揮発性メモリソリューショングループは37%増の4億6900万ドルを記録した。

—この稿続く—

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Nvidiaに負けたくないIntelがニューラルネットワーク専用プロセッサーNervanaを年内発売

今朝(米国時間10/17)WSJのD.LiveイベントでIntelが公式に、同社のニューラルネットワークプロセッサーNervanaを披露した。この機械学習のユースケースを想定したチップ系列は、開発時のコードネームがLake Crestだった。

このチップの基本技術は、Intelが昨年8月に3億5000万ドルで買収したNervana Systemsに負っている。このニューラルネットワークプロセッサー(Neural Network Processor, NNP)チップは標準的なキャッシュ階層を廃し、チップ上のメモリをソフトウェアが管理することによって、ディープラーニングのモデルの訓練を高速化する。

Intelはここ数か月、Nvidiaに完敗することを避けようと躍起になっていた。今成長著しいAI市場に向けて舵を切ることにより、このレガシーのチップメーカーは、これまでに築いた業界とのコネを利用して生き残ろうとしている。その点に関してIntelの目標は、2020年のAI部門の売上を現在の100倍にすることだ。

NervanaはNNPとしてスケーラビリティと数値計算の並列化を売りにしている。また、強力な双方向データ転送能力も、重要なセールスポイントだ。Intel独自の数値フォーマットFlexpointを使うことによって、スループットを上げているという。また回路のサイズを縮小したことによって並列処理を高速化し、同時に電力消費量を減らしている。

もちろんニューラルネットワークのパラメーターを大量のチップに分散して効率を上げることは、他者も当然ねらっている。Nervanaと並んで今後市場にどんなものが出てくるか、今から楽しみだ。

今日の発表には、ベンチマークがなかった。間に合わなかった。発売は年内だそうだが、大丈夫か。Facebookは技術情報をIntelと共有して、このチップの開発に協力してきた。

Intelは、Nervanaを軸とする総合的な製品ラインを目指しているようだ。次に出るAI向けXeonプロセッサーは、噂ではコードネームが“Knights Crest”だそうだ。

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書評:『パラノイアだけが生き残る』――今のIntelを築いた伝説的経営者の強烈な経営書

本書『パラノイアだけが生き残る』は『HIGH OUTPUT MANAGEMENT』に続くアンディー・グローブの名著復刻第二弾。Kindle版も配信している。 『インテル戦略転換』の復刊だが昨日書かれたかと思うほど内容はタイムリーだ。

現在のIntelは時価総額1700億ドル、日本最大の企業トヨタ自動車に匹敵するサイズの巨人で、モバイルチップでこそ新しいメーカーに一歩を譲るものの、サーバーやデスクトップCPU市場では圧倒的な存在だ。

Intelをこうした巨人にしたのは1979年から1998年にかけて経営を指揮したアンディー(アンドルー)・グローブだ。この時期にIntelは売上高を40倍近くに伸ばしている。ゲイツ、ジョブズ、ベゾス、ペイジ/ブリンなどの創業者経営者を別にすると、グローブは他を圧して伝説的な存在だ。グローブはなぜそのような業績を挙げることができたのだろうか?

Intelはゴードン・ムーア(ムーアの法則で知られる)らによって設立され、半導体メモリーのパイオニアとして1968年にスタートした。アンディー・グローブはIntelの社員1号だったという。シリコンバレーの発展と歩調を合わせて業績は順風満帆だったが、80年代に入ると日本メーカーがDRAM製造分野の主導権を握り、その攻勢にIntelは倒産の瀬戸際まで追い詰められた。

この本で印象的な一節は1985年半ばに会長、CEOだったゴードン・ムーアと社長だったグローブとの会話だ。

グローブ:もしわれわれが追い出され、取締役会が新しいCEOを任命したとしたら、その男は、いったいどんな策を取ると思うかい?ムーア:メモリー事業からの撤退だろうな。グローブ:(略)それをわれわれの手でやろうじゃないか。

グローブは打ち寄せる大波を押し返すような力技を発揮してDRAM生産を終了させ、IntelをCPUメーカーへと方向転換した。

その後もIntelにはペンティアムCPUの浮動小数点演算におけるバグという問題が降りかかる。この問題は本書の冒頭で扱われているがグローブの眼前で問題が爆発したのは「1994年11月22日、感謝祭2日前の火曜日だった」という。詳細に日時が書かれているところかして激しいショックを受けた事態だったのだろう。このトラブルはIntelに4億7500万ドルの損害をもたらしたものの、グローブはこの嵐も全面的な方針転換によって乗り切った。

グローブによれば、どんな企業もいずれ「戦略転換点」に遭遇するという。これは「10X(桁違いの巨大な)の変化が起き、ゲームのルールが根本的に変わる」ことによって生じる。たとえばコンピュータ業界ではデスクトップPCの登場によってこの変化が起きた。1980年ごろのコンピュータ業界は縦割りだった。つまりIBMの占める位置はハードの製造からOS、アプリケーション、さらには流通販売まで強固に垂直統合されていた。それが1995年にはチップはIntelが、コンピューターはコンパックやデルが、OSはWindowsが、というように水平分業の世界に変わる。IBMが立てこもっていた強固なサイロは消滅した。

日本製DRAMの販売攻勢によってIntelが直面したのも「メモリー製造では食っていけない」という戦略転換点だった。ペンティアム・チップのバグ問題も実は問題はバグそのものではなかったようだ。Intel Insideキャンペーンが成功したことにより、Intelがコンピューター・メーカーに部品を供給する企業ではなく、むしろコンピューター市場そのものをリードする消費材メーカーに変化していた。グローブによれば、その変化にまず自分が気づいていなかったことが失敗だったという。

本書に挙げられたさまざまな「戦略転換点」はMBAの教室で教えられるような概念ではなく、グローブの体験に基づいたものだったことが強く感じられる。グローブが世界的大企業のCEOという激務にありながら、「事業経営の勘所」を細かく伝授する本を執筆して後進の起業家、ビジネスパーソンのために非常に大きな影響を与えるようになったのはこの体験とその反省にもとづいたものだったと思う。

グローブの経営書に大きな影響を受けた1人がベン・ホロウィッツだった。ホロウィッツはマーク・アンドリーセンと共にラウドクラウドを起業したクラウドビジネスのパイオニアで、現在ではシリコンバレー最大のベンチャーキャピタル、アンドリーセン・・ホロウィッツを運営している。ホロウィッツのグローブへの傾倒ぶりは異色の経営書、『HARD THINGS』にも詳しく述べられており、『HIGHOUTPUT MANAGEMENT』の序文も寄稿している。

実はこの本の末尾に「本書を執筆している最中にネットスケープの株式が公開された」という一節があり、書かれた時代を感じさせる。世界初の商用インターネット・ブラウザ、ネットスケープの大成功はシカゴ大学を卒業したばかりのファウンダー、マーク・アンドリーセンを初の「テクノロジー起業家富豪」とした。創業直後のアンドリーセンの会社に飛び込んだのがベン・ホロウィッツで、この二人がやがてクラウド・サービスという事業分野を苦闘しつつ開発することになる。

上でも触れたように本書が書かれた1995年頃、日本経済はジャパン・アズ・ナンバーワンと囃されており、構造的な危機を乗り切るためのノウハウと哲学を述べたグローブの経営書は十分理解されたとは言えなかった。前途不透明な現在こそグローブに学ぶべき時期なのかもしれない。

今回のグローブ本の装丁も白地に黒のゴシックでPARANOID SURVIVEという原文を大きく配置してあり印象的だ。グローブの経営指揮は強烈でグローブの厳しい指摘に幹部が気絶したという伝説もある。グローブ自身はあまりに隔絶した存在なので、グローブのようになることを目指すことはベーブ・ルースになろうとするくらい非現実的だろう。しかしグローブは他の天才とは違い、自分が得た知識、ノウハウをできるかぎり後進に伝え、参考にさせようとしたように思える。その意志が伝わってくるだけでも一読の価値があるように感じた。

滑川海彦@Facebook Google+

IntelがMovidius Myriad Xを発表、ディープラーニング機能が組み込まれたコンピュータービジョンチップだ

IntelはMovidius買収1周年を迎え、新しいチップMyriad Xを披露した。

Myriad Xは一見、Myriad 2の「Pro」バージョンのように見えるものの、コンピュータビジョンを意識したチップとして大幅に再設計が行われたものだ。その新しい「Neural Compute Engine」を使って、新しく洗練されたディープラーニング機能を提供する。このことによって、Myriad Xを搭載したデバイスが環境からの情報を解釈することが容易になる。

Intel Movidiusの幹部Remi El-Ouazzaneは「このデバイスに直接埋め込まれた高速なインテリジェンスを使うことで、私たちの世界をより安全で、より生産的で、そしてよりパーソナルなものにする可能性は無限に広がります」と、ブログに投稿した

専用のコンピュータビジョンチップは、ほぼすべての電子デバイスで利用できると思われるが、Movidius Myriadチップを実装するインテルの主な目的は、ドローン、VR/ARヘッドセット、ロボット、そしてスマートカメラなどへの応用である。低消費電力SoCにより、デバイスは環境内のオブジェクトを識別し、変化を迅速に検知することに、より多くの能力を振り向けることができる。

Myriad 2は1秒間に約1〜1.5兆回の処理を実行したが、Myriad Xは1秒間に4兆回の処理を行なうことができる。より現実的な観点からすれば、インテルの最新のMovidiusチップを搭載したスマートなビデオカメラは、単に写真に人物がいるかどうかを認識できるだけではなく、その性別や年齢も識別できる可能性があるということだ。Neural Compute Engineは、相当に重い画像処理をエッジで行うことを可能にする。

このAIに最適化されたVPU(visual processing unit:視覚処理装置)は、コンピュータビジョンSoCでAIとディープラーニングにどのようにアプローチしていくかというMovidiusの野望を、Intelの買収がどのように拡大したかを良く示すものだ。

最新のMyriad 2チップは、引き続きIntelのビジュアル処理部品として大きな部分を占める。同社は価格設定について直接コメントしていないが、Myriad Xは間違いなくデバイスメーカーにとってより高価なオプションになるだろう。

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(翻訳:Sako)

Microsoftがディープラーニングを超高速化するFPGAシステムBrainwaveをベンチマーク結果と共に発表

今日(米国時間8/22)の午後Microsoftは、クラウド上で遅延のほとんどないディープラーニングを動かせるFPGAベースのシステム、Brainwaveを発表した。初期のベンチマークによると、IntelのStratix 10 FPGAsを使った場合Brainwaveは、大きなGated Recurrent Unit(GRU)の上でバッチなしで39.5 Teraflopsを維持できる。

MicrosoftはこれまでFPGAに注力し、FPGAの大きなクラスターを同社のデータセンターでデプロイしている。アルゴリズムはFPGAに書き込まれ、高い効率を得るとともに、プログラムの書き換えを容易にしている。FPGAのこのような専用化により、機械学習、とくにそのための並列処理が効率化される、と期待されている。

これらの成果を踏まえてMicrosoftは、FPGA中へ専用プロセッサーDPU(Dataflow Computing Unit)ないしDNN(Deep Neural Network)プロセシングユニットを合成した。このようにディープニューラルネットワークにフォーカスすることによってMicrosoftは、そのインフラストラクチャを研究のニーズに応じて高速化し、リアルタイムに近い処理を提供できる、と期待している。

FPGA自体はレトロな技術だが、最近ではその開発対応の素早さが見直されている。FPGAに取り憑かれているかのようなスタートアップMipsologyは、Amazonと密接に協働して、Amazon Web Servicesやそのほかのプラットホームでその技術を使えるよう、努めている。

これまでの数十年間が汎用CPUとその進化の過程だったとすると、最近の数か月は汎用の逆の、特定のタスクに秀でたカスタムチップに開発の主力が移行している。そして中でもとくにその注力が厚いのが、機械学習のための専用チップだ。

いちばん知名度が高いのが、GoogleのTensor Processing Unit、TPUだ。このチップはTensorFlow向けに最適化され、初期のベンチマークは将来有望と見なせる結果だった。しかしそのほかの主要テクノロジー企業も、その多くがサイドプロジェクトとして未来のコンピューティング、量子チップやFPGAなどに取り組んでいる。そして大企業がそうなら、スタートアップもそのゲームに参加しようとする。RigettiMythicWaveなどが、そんなスタートアップの例だ。

BrainwaveがMicrosoft Azureの顧客にいつから提供されるのか、それはまだ不明だ。現時点でこのシステムは、人気の高いGoogleのTensorFlowと、MicrosoftのCNTKに対応している。同社はこの技術を利用して、ディープラーニングのパフォーマンスを画期的に向上させるつもりだから、今後もさまざまなベンチマークが相次いで発表されることだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Intelの第二四半期は予想を上回る好成績、データセンターも首位の座を堅持

Intelは今日(米国時間7/27)の午後、148億ドルの売上と72セントの一株当たり利益を発表した。それらはアナリストたちの予測144億1000万ドルと68セントを確実に上回っている。

同社の通常取引の株価は22セント/0.63%上がり、34ドル97セントで終わった。決算発表の直後には、Intelの株価は3.43%上がった。現在は時間外取引で36ドル17セントになっている(~1:05pm PST)。

Intelは今、企業として興味深い立場にいる。同社の未来が人工知能関連の能力にかかっていることを、同社自身が知っている。ウォール街における同社の命運を決めるのは、153億ドルで買収したMobileyeを、やがて巨大な産業になる自動運転車業界のニーズに応える、高収益のビジネスに育てられるかどうかだ。Intelによると、買収手続きは2017年のQ3に完了する。

しかし今日は、三つの買収(Mobileye, Movidius, Nervana)があったにも関わらず、重要な話題は今なおデータセンターだ。Intelは同社のx86チップで長年データセンターを支配してきたが、最近はAMDの攻勢が著しく、データセンター市場におけるIntelのトップの座がいつまで安泰か、わからなくなっている。しかし現時点では、Intelはこのビジネスで9%の成長を達成できた。

前年同期2016Q2のIntelの売上は、135億ドルだった。その時点での前年同期比成長率は3%だったが、本日の2017Q2では9%の前年同期比成長率になった。

今回の決算発表のプレスリリースで、同社のCFO Bob Swanはこう述べている: “本年前半の好調とPC事業への期待の高まりにより、目下、通年売上と同EPSの予想を上方修正している”。

Intelの2017Q3の予測は、売上が157億ドル、EPSが80セントだ。Q4を含む全年売上の予測は613億ドル、EPSは3ドルだ。この値の一部は、買収完了後のMobileyeの貢献部分である。

同社は本日の決算報告で、通年の営業利益率の向上を課題として挙げた。

今本誌TechCrunchはIntelのIR部門に追加取材をしているので、情報が得られ次第、お伝えしよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IntelのCEOがMobileyeの買収に150億ドルを投じた理由を語る

IntelのCEO Brian Krzanichが木曜日(米国時間6/1)のCode Conferenceでインタビューに応じ、自動車に関する彼の長期的なビジョンを語った。彼によると、“未来の車はサーバーのようなものになる”、という彼の予測が、イスラエルの自動運転技術のスタートアップMobileyeの買収にIntelが150億ドルあまりを投じた理由だった

Krzanichによると、“ランサムウェアやウィルスなどがデバイスのどこかに取り付いても”、Intelはそんなときのためにバックアップを取るだけでなく、“走行中の車を自動的にリフレッシュする”。プライバシーの懸念があることは認めるものの、Krzanichによれば、コネクテッド・カー(connected cars, ネットに接続された車)は“とても安全”だ。

“そのような車が走行するためには、車に視覚が必要だ”、とKrzanichは自動運転車についてそう言う。“そしてそのことから、さまざまな社会的利益が生ずる”。

彼曰く、たとえば自動車技術がAmber Alertのような状況で、行方不明の子どもの所在を突きとめたりするだろう。“そのためにどんなデータが必要か、人工知能をどのように利用すべきか、今実際に研究している”。

彼のプレゼンテーションの直後に、Intelは、2050年には自動運転技術が7兆ドルの経済効果をもたらす、という試算を公表した。その根拠は、“自動運転とスマートシティの技術によって新しい旅客経済が生まれ、産業全体を変貌させるとともに、そこから生ずる余剰時間と余剰能力から新しい産業が創造される”からだ。

このような予言を、Marc AndreessenもCode Conferenceで述べている。彼によると、自動運転車によって通勤がずっと楽になるから、都市の郊外圏がずっと遠くまで広がる。そのことによって大量の雇用や仕事が作り出される、と彼は考えている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IntelがついにCore i9プロセッサーを発表、最上位機種は18コア32スレッドで1999ドル

今日(5/30)台北で行われたComputexのイベントで、Intelが同社のCore X連番シリーズのプロセッサーの新型機を発表した。ハイエンドデスクトップCPUの最新機種の計画は、今月初めにリークされたから驚きではないが、それでも、この新シリーズの旗艦機種となる18コア36スレッドのIntel i9-7980XEは、ほとんど衝撃的なデビューだ。

1999ドルという、思わず目が潤んでしまいそうなお値段のIntel i9-7980XEは、当分のあいだ、ごく一部の消費者を除いては憧れに留まるだろう。しかしAMDとのプロセッサー戦争においては、Intelの強力な新兵器になる。16コア32スレッドのAMD Ryzen Threadripperは今月初めに発表され、世界最強の消費者機向けCPUになるはずだったが、Intelがその王冠を奪い返したようだ。

Core i9系列のそのほかの機種は、10コア999ドル、16コア1699ドルと現実的なお値段だ(12コアと14コアもある)。すべてのi9プロセッサーがベースクロック3.3GHz、Turbo Boost 2.0では最大4.3GHz、Turbo Boost Maxで4.5GHzの、それぞれデュアルコア周波数だ。このほか、クァッドコアのi5-7640Xおよび4,6,8コアのi7プロセッサーも発売される。発売日は、まだ明らかでない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Intel、最大12コアのCore i9 CPUをまもなく発表か

もうすぐComputexカンファレンスが開催される。本誌はPCコンポーネントの最新情報を本格的に追っているわけではないが、Intelの計画に関するこのリーク情報は興味深い。IntelはデスクトップCPUの最新ラインアップとして、ハイエンド12コアのCore i9 CPUをまもなく発表するらしい。

Intelの計画がリークされたのはAnandTechの掲示板だ。どうやら社員か提携会社の誰かが、ドイツ語のPowerPointプレゼンを写真に撮ったようで、次期ライアップの一覧表が見える。

詳しくはAnandTechを見てもらうとして、最上位機種は怪物になりそうだ。12コア、消費電力140 Wはこの分野で最強のCPUと言ってよいだろう。これを使えるのはデスクトップコンピューターだけで、もし来るべきMac Proに採用されたらすばらしい。

唯一の問題は、Intelの上位CPUが概して非常に高価なことだ。このCore i9 CPUが1000ドルを超えても私は驚かない。

ほかのCore i9シリーズは、6、8、または10コアになるようだ。シングルスレッドのタスクを走らせることが多い人なら、Turbo Clock 3.0という新しいクロック状態を使えばシングルスレッドタスクを高速クロックで動かすことができる。

新しいCPUシリーズはまもなく発表されるはずで、出荷は6月でハイエンドのi9だけは8月の予定。多くの人々はノートパソコンや下位のCPUを使うだろうが、IntelがCPUの領域でイノベーションを続けているのを見ることはうれしいものだ。いずれは誰もがその恩恵にあずかることだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Intelの自動運転技術ショウルームAutonomous Driving Garageを見学した…シリコンバレーのど真ん中だ

Intelが今週サンノゼに、Autonomous Driving Garageをオープンした。この施設を見ると、そもそもチップメーカーが自動運転に関してビジネスとして一体何をやっているのか、が分かる。この比較的若い事業部門は、すでにいろんなことをやっている。HDマッピング、ワイヤレス接続スタンダードの改良、人と機械の対話モデル、などなど。

ここではこれらのプロジェクトを直接見ることができ、Intelの自動運転部門や人工知能部門のトップと話もできる。彼らはIntelが今やってることや、自動運転を日常的な実用技術にするためにDelphiなどのパートナーと一緒にやってることを、垣間見させてくれる。

Intelのこの新しい施設は、シリコンバレーの中でも、自動運転とAI技術のハブの中心的な位置にある。来たるべき自動運転革命においてIntelは、脇役ではなく主役に立ちたいのだ。そしてこのセンターは同社にとって、その目標を達成するための手段の一つだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

日産、Mobileyeの自動運転プラットフォームに正式参加――クラウドソースのリアルタイム地図搭載へ

今日(米国時間4/25)、MobileyeのREM( Road Experience Management)プラットフォームが再び大きな成功を収めた。日産自動車がREMの開発と採用を助けることで合意した有力自動車メーカーとして3社目となった。このプラットフォームは路上のユーザーの自動車から匿名で収集された情報をベースにリアルタイムで更新される精密な地図を作成する。

日産はBMWVolkswagenと共にREMプラットフォームのメンバーとしてGlobal RoadBookマップを採用していく。これはMobileyeのシステムで、搭載車両のナビゲーションを助けると同時に近く発表される自動運転ソフトウェアをバックアップする。REMを搭載した日産の自動車は地図データをクラウドソースして巨大な地図情報データベースを拡充することに貢献する。これはREMにとって大きなヒットだ。クラウドソースに参加する自動車の数が増えるほど地図の正確性は増す。大量の自動車がネットワークに参加していれば、たとえば路上に何らかの変化があった場合、即座にその情報が地図に反映され、他の車両にも共有される。

日産はすでにMobileyeのREMの開発に協力している。日産のロンドンを拠点とした自動運転のデモにもREMが採用されている。しかし日産とMobileyeの協力関係はREMだけにとどまらない。たとえば日産はMobileyeのテクノロジーをProPILOT ADASシステムに採用している。

Mobileye(と、その買収を決めたIntel)にとって日産のREMプラットフォームへの参加は特に嬉しいニュースだろう。参加する自動車メーカーが増えれば増えるほどプラットフォームの魅力は増大する。Mobileyeのテクノロジーは他の自動車メーカーも巻き込んで、自動運転に関する「事実上の標準」となっていくかもしれない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

筆頭株主Intelとの共同開発も進めるClouderaが上場申請

大方の予想通り、過去にIntelからの巨額出資を獲得したビックデータ企業のClouderaがIPOの申請を行ったことが明らかとなった。

S-1フォームで同社の財政状態を確認することができる。収益は伸びていて、2017年1月に終了した会計年度では2億6100万ドルを記録している。昨年同期における収益は1億6600万ドルだった。

最終損益は1億8632万ドルの損失。昨年の2億300万ドルと比べると損失額は減っている。フォームの「リスクファクター」の項には「近い将来に関して言えば、今後も損失が発生することが予測されます」と記載してある。

Clouderaの事業領域には多くの競合が存在することを同社は認識している。彼らは、HP、IBM、Oracle、Amazon Web Services、Hortonworksなどの企業を競合として挙げている。

2014年、IntelはClouderaに7億4000万ドルを出資した。当時のバリュエーションは41億ドルだ。しかし、IntelとClouderaのパートナーシップは財務的なものだけではない。S-1フォームによれば、この2社は大量のデータセットを処理するスピードとセキュリティ性を向上させるためのプロダクトの共同開発に取り組んでいるようだ。フォームには、「私たちが想定している共同開発の例として、Intelのアーキテクチャーに演算加速機構を組み入れることでデータを暗号化するスピードを向上させるという試みがあります。また、IntelとClouderaはSpot(インキュベーティング・プロジェクト)の開発にも取り組んでいます。これはオープンソースのサイバーセキュリティ分析プラットフォームで、ビックデータ分析と機械学習の技術によって想定される脅威を事前に警告するオープン・データモデル上に構築されたものです」と書かれている。

2008年まで遡った同社の累計調達金額は10億ドルだ。S-1フォームによればClouderaの筆頭株主はIntelで、発行済株式の22%を同社が保有している。以下、Accelが16.3%、Greylock Partnersが12.5%を保有している。

Clouderaが最後に資金調達を行ったのは3年前だ。IPOを目指し、かつベンチャー資金が投下された企業としてはその空白の期間は長かったと言える。ただ、この数年間Clouderaによる買収やIPOの噂は絶えなかった。

今回のIPOで主幹事を務めるのはMorgan Stanley、JP Morgan、Allen & Coの3社だ。Clouderaが上場するのはニューヨーク証券取引所(NYSE)で、ティッカーコードは「CLDR」。昨年は大半のテック系企業がNasdaqを目指していた一方、今年上場したSnap、Mulesoft、AlteryxなどはClouderaと同じくNYSEに上場した。

JOBS Actにより、企業は通常、ロードショーの約15日前に申請書類を公開する。つまり、企業と株式市場が安定していれば、実際の上場が行なわれるのは4月下旬から5月上旬になる可能性が高い。

株式の発行価格の合計は2億ドルだ。しかし、これはあくまで推定でしかない。実際の発行価格が最終的に決定するのは上場日の前日夜となる。

今回の上場により、Clouderaも最近のテック系企業によるIPOラッシュに加わることになる。閑散とした昨年の後に起こったIPOラッシュの先駆けとなったのは、今月はじめに上場したSnapだ。その後、Mulesoft、Alteryxがその流れに加わることとなる。YextとOktaもすでに申請を済ませており、彼らのデビュー戦は今後数週間のうちに行なわれると見られている。

直近に上場を果たした企業の成功、そしてポジティブな株式市場の動向によりIPOの「窓」は開いている。投資銀行と企業も株式公開に乗り気だ。

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(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

BMWが2021年までに投入する自動運転車はレベル5の自律性能を目指す

BMWは、同社が2021年までに自動運転技術と共に市場に投入しようと考えている車は、レベル3、レベル4、そしてレベル5の能力を持つものになると語った。これは木曜日(3月16日)にベルリンで開催されたパネルの席上で、同社の自動運転担当上席副社長であるElmar Frickensteinによって話された情報として、ロイターが報じたものだ。レベル5の自動運転とは、車両が人間のドライバーと少なくともパフォーマンスの面で同等で、市街地や高速道路を走行する際に車両が人間からの入力を一切必要としないことを意味する。

レベル3と4は、近い将来に、より達成可能なものだと考えられている。レベル3車両にはまだ人間のドライバーが必要だが、人間が介入するのは特定の状況だけで、状況を常に監視し続ける必要はなく、より低いレベルで要請されるように運転を直ちに引き継ぐ必要もない。レベル4は「完全自動」の第1段階で、原則的に行程全体を扱うことが可能だということを意味する。ただ完全に全ての可能な条件や環境に対応できるわけではないというだけの話だ。

今後数年間の自動運転車の配備計画について語っているほとんどの自動車メーカーは、レベル3と4の車両について語っている。例えば2021年に予定されているFordによる自動運転車の投入には、具体的にレベル4の実現が謳われている。BMWによる最先端への到達の決定は野心的なものだが、同社はIntelならびに、Intelによって最近買収された自動運転ハードウェアシステムの子会社Mobileyeと、自動運転技術に関する協業を行っているので、全く何もない状態から始めるわけではない。

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(翻訳:Sako)

Intel、Mobileyeを153億ドルで買収―自動運転テクノロジーの拠点をイスラエルに移す

Intelは自動運転のためのコンピューター・ビジョンのリーダー、Mobileyeを153億ドルで買収することを確認した。両社の関係は当初は提携だったが、最終的には買収に進んだ。これはテクノロジー関連のイスラエル企業の買収としてこれまでで最大となる。

Intelは声明で次のように述べている。 「合意された条件に基づき、Intelの子会社は、Mobileye社株式について1株当り63.54ドルのキャッシュで公開買付を開始する。すべての発行済株式が買付の対象となる。〔オプション実行などによる〕希薄化後の株式を含んだ買付総額は約153億ドルと見込まれる。会社評価額は147億ドル(…)」。買収手続きは9ヶ月程度で完了するものとIntelは見込んでいる。

現在Mobileyeは 広範囲なテクノロジーとサービスを保有している。センサーフュージョン、マッピング、フロントおよびリアカメラ関連のテクノロジーが含まれる。2018年には高精細度マップのためにデータ取得のクラウドソーシングを開始する。また自動運転の決断の基礎となるドライビング・ポリシーの実用化も導入するととしている。これらの新しいテクノロジーとサービスは今後すべてIntelブランドとなる。Intelはさまざまな自動運転テクノロジーを取得することになるだけでなく、自動車メーカー各社がMobileyeと結んでいる密接な関係もIntleの傘下に入ることを意味する。今日(米国時間3/13)の電話記者会見でMobileyeの共同ファウンダー、CTOのAmnon Shashuaは「われわれは現在自動車メーカー27社と提携している。20016年にはAudi、BMWその他のメーカーと10種類のプロダクション・モデルに関するプロジェクトを実行している」と述べた。【略】

Intelは当初のTechCrunch記事を確認し「Mobileyeの共同ファウンダー、CTOのAmnon Shashua教授がIntelの自動運転事業部の責任者となり、これはイスラエルを拠点する。Intelの上級副社長 Doug DavisがMobileyeとIntelの業務統合全般を指揮し、Shashua教授に直属する」と発表した。

イスラエルをベースとするコンピューター・ビジョン、機械学習に関連して、Googleは道路情報をクラウドソーシングするWazeを11億ドルで買収Appleは3DセンサーのPrimeSenseを3億ドルと報道される額で買収している。

Mobileyeが買収後もイスラエルにとどまることになったのはWazeの買収をめぐるドラマを想起させる。当初FacebookがWaze買収に動いたものの、Wazeのエンジニアはイスラエルにとどまりたいと希望し、FacebookはチームをシリコンバレーのFacebook本社に移したがった。この問題で交渉が中断している間にGoogleがWazeをさらってしまった。Googleはイスラエルに本拠を置きたいというWazeの条件を認めたために買収は即決されたという。

IntelとMobileyeは昨年から公式に提携していた。 今年に入って両社は、BMWの自動運転車40台にテクノロジーを供給している。Mobileyeは早期からTeslaの自動運転テクノロジーのパートナーだった。ただしMobileyeがTeslaの安全性に関する方針に反対したためこの提携は終了している

Mobileyeは2014年にNasdaqに上場し、現在の時価総額は105億ドル.だ。買収のニュースが流れると同時に、市場が開く前に、株価は33%以上アップした。【略】

自動運転テクノロジー関連の動きはIntelにとどまらない。同じく今日、自動車部品メーカー大手のValeoがドイツのスタートアップで、車載3D画像処理ソフトウェアのgestigonを買収したことを明らかにしている。同社のテクノロジーは車両内外のさまざまな情報をドライバーに伝えると同時に自動運転システムともコミュニケーションを取り、車両の動作を決定するのを助けるという。

金額など買収の詳細は明らかになっていない。Valeoは従来から自動運転テクノロジーに活発に投資しており、これまでにもフランスの自動運転シャトルバス、Navyaの株式の一部を取得したりカリフォルニア州で自動運転車のテストを行うライセンスを取得するなどしている。gestigonの買収はこの分野への関心が非常に強いものであることを意味するようだ。

Valeoはこの後、投資家向け電話会見を開く予定なので新しいニュースが判明すればアップデートする予定だ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+