生鮮食品配達のBlue Apron、IPO後の株価下落で集団訴訟の恐れ

Blue Apronには息をつく暇もないようだ。食品通販サービスを提供する同社の株価は6月下旬のIPO時点から半分近く下がり、訴訟問題にまで発展しようとしている。

現在複数の弁護士事務所が集団訴訟の準備を進めており、彼らはBlue Apronが株価に影響を及ぼす重要な情報を開示していなかったと主張しているのだ。

具体的な内容としては、顧客維持、配送遅延、広告費の削減が焦点となっている。現地の法律事務所Bragar Eagel and Squireの主張は次の通りだ。「1)Blue Apronは2017年Q2に広告費を大幅に削減し、将来的な売上・利益をないがしろにした 2)Blue Apronは食材セットまたは一部食材の配送遅延で顧客維持に難航していた 3)ニュージャージー州リンデンに新しく設立された工場の稼働状況に問題があり2017年Q2にも配送遅延が発生していた」

Bottini & Bottiniという別の法律事務所も同様の内容で訴訟手続きを行った。こちらの原告はRustem Nurlybayevとなっており、以前Alibabaを訴えたのと同じチームのようだ

先述の事務所以外にも同じ内容の申し立てをしているところがいくつかあり、Googleで検索するとかなり数のウェブサイトがヒットする

Blue Apronに近い情報筋によれば、まだ原告を募集しているものもあるという。

先述の問題に加え、Blue Apronが上場する数週間前にWhole Foodsの買収を発表したAmazonの存在も、株価の急落に大きく関係していると言われている。買収発表後、多くのメディアがAmazonの食品通販サービスへの参入可能性について報じていた。そういう意味では、IPO時に株を購入した投資家は、少なくともAmazonの動きによる株価下落の可能性については事前に把握できていた。

業績の思わしくない企業が株主から訴えられるというのは珍しいわけではない。英語では”stock-drop challenges(=株価下落に伴う困難)”という呼び名がついているくらいだ。2012年に上場したFacebookも、IPO後に連日株価が下がったことを背景に訴訟問題を抱えていた(結局その後同社の株価は爆発的に上昇した)。最近で言えば、Snapの株主も同社がSnapchatのユーザー数を偽って公表していたと訴えていた。ロサンゼルス連邦地方裁判所に訴状が提出された本件では、Snapがユーザー数を偽ったことで株価が下落したという主張のもと、賠償金とクラスアクションの認定が求められている。

「このように、株価が下がるとすぐに弁護士が出てくる」とIPO ETFを運用しているRenaissance Capital社長のKathleen Smithは語る。

さらにSmithは、このような問題を「株主による抵抗」と呼び、通常和解に至るケースが多いと話す。原告が勝訴するためには、企業が重要な情報を偽り、かつ原告がそれを信用して株式を取得したと証明しなければならず、実証が難しいことがその理由だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

NoSQLデータベースのMongoDBが非公開でIPOを申請

情報筋によると、MongoDBが秘かにIPOしていた。同社がSECにS-1ファイルを提出したのは数週間前で、今年中の上場をねらっている。

ニューヨークのMongoDBは、そのデータベースプロダクトとデータベース管理サービスをAdobe, eBay, Citigroupなども利用している。主要なプロダクトは、社名と同じオープンソースのデータベースMongoDBと、Atlas DBaaS(Database as a Service, クラウド上から提供されるデータベース)だ。

同社は2008年以降3億ドルあまりの、非公開段階の資金を調達しており、Sequoia Capital, Intel Capital, NEAなど著名な投資家が投資に参加している。最近の資金調達ラウンドは2年あまり前で、そのときの評価額は16億ドルといわれる。

MongoDBは、2012年に制定された雇用創出法*が定めている“非公開申請”を利用している。それによると、申請をしてから15日間は財務条件などを公開せずに投資家めぐりができる。これによりスタートアップは、上場前の数週間、余計な審査や手続きに悩まされずに市場デビューの準備ができる。〔*: 参考記事

MongoDBのIPOは、数年前から噂されていた。今年の5月には、Wall Street Journalが、同社がIPOに向けて投資銀行の連中を雇った、と報じている。

本誌TechCrunchも最近、Stitch Fixがやはり非公開でIPOを申請したことを報じた。そのほかにも数社が、労働者の日(9月第一月曜日)と感謝祭(11月第四木曜日)までの間に上場を目論んでいる、と噂されている。

IPOは社員や初期の投資家たちに流動性(会社の所有権…株…が一般的に売買できること)を提供するための優れた方法だが、GoogleやAmazonが大成功を収めた反面、最近の人気IPOだったSnapやBlue Apronなどは、その後苦戦した。ビッグデータ企業のClouderaは、IPO価格よりも上の株価を維持している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Spotify、Appleを突き放し登録者6000万人を突破――ダイレクト・リスティングでの上場は依然検討中か

Spotifyの登録者数は音楽にひたむきな同社の姿勢もあり、iPhone製造の片手間にストリーミングサービスを提供しているどこかの企業よりも勢いよく伸びている。Spotifyが1年未満で2000万人もの有料会員を獲得した一方、Apple Musicは同じ数の会員を増やすのに1年半以上もかかった。その結果、両サービスの登録者数は、Spotifyが6000万人、Apple Musicが(2017年6月時点で)2700万人となった。

世界でもっとも強力な企業と言われるAppleと競合関係にありながら、Spotifyがここまでの勢いで登録者数を伸ばせたのは、同社がこれまでに築き上げてきたプロダクトとコミュニティのおかげだ。

Apple Musicは3か月の無料トライアルを提供しており、iPhoneには同アプリが出荷時点でインストールされているほか、同社は人気アルバムを早期リリースするためにレコード会社に大金まで支払っている。そのおかげで特定のアーティストのファンや、MP3からストリーミングサービスへようやく移行しようとしている一般消費者の中には、Apple Musicを選ぶ人もいるかもしれない。そうは言っても、音楽通が選ぶストリーミングサービスといえばSpotify、という状況は変わらない。

Spotifyはいわゆる「ダイレクト・リスティング」という道を進み、IPOなしで上場を果たそうとしている。つまり、(同社ではなく)関係者が市場で株式を売却するというやり方だ。

これはかなり珍しい動きで、それゆえSpotifyの上場にはさまざまな憶測が飛び交っている。証券会社が機関投資家をまとめ上げて売値を決めるという一連のプロセスに恐れを感じる企業も多いが、IPOは多額の資金を調達するチャンスでもある。

そんなIPOをスキップするということは、何億ドルという資金をみすみす見逃すことと同じだとも言えるが、上場後に増資もしくは売り出しという手もある。先日のWall Street Journalの報道によれば、Spotifyは今年中に上場を果たそうとしているようだ。

そもそもSpotifyの成長には、以下の重要なステップが大きく関係している。

Discover Weeklyのローンチユーザーの好みに基いて毎週アップデートされるDiscover Weeklyというプレイリストは、新しい曲やアーティストを求める音楽ファンの間で大人気となった。初年度で4000万人もの登録者を獲得したこのプレイリストに続き、Spotifyは新曲にのみフォーカスしたRelease Radarをローンチ。AppleSoundCloudといった競合サービスもDiscover Weeklyの類似機能を導入したが、Spotifyは流行の最先端にいる人たち向けの本格派ストリーミングサービスとしての地位を確立しようとしている。

楽曲を共有しやすくするため、Spotifyは最近QRコード機能をローンチした

ストリーミングに難色を示すアーティストの獲得:当初アーティストに十分なロイヤルティを支払っていないということで悪評が広まったSpotifyだが、登録者数が増えるにつれてこの問題もかなり改善してきた。しっかりお金が支払われるようになったことと、アーティストがヒットを狙うならば必ず抑えなければいけないチャンネルとしての地位が確立されたことにより、Spotifyはテイラー・スウィフトをはじめとする反ストリーミング派との契約をも勝ち取ることに成功した。ここに上場が加われば、音楽業界におけるSpotifyのポジションは盤石なものとなり、ストリーミングサービスに懐疑的なアーティストとファンも説得できるようになるかもしれない。

Google Home + Spotify VS Amazon Alexa:音楽を声でコントロールする魅力にひかれ、AmazonやGoogleのスマートスピーカーを購入する人が増えている。そんな中、Amazon AlexaではAmazon Prime Musicが押されている一方で、Google HomeはSpotifyをプレミアパートナーの1社に選んだ。PandoraやGoogle Musicにも勝る人気を受けて、Google HomeはSpotifyの広告入り無料プランのサポートを決めたのだAppleのHomePodの販売が始まれば、Google Homeとのパートナーシップの重要性はさらに増していくだろう。

IPOなしの上場

Spotifyはダイレクト・リスティングの可能性について公式には語っていないが、同社に近い関係者の情報によれば、上場直後の株価の大きな変動を避けるためにダイレクト・リスティングを選ぶ可能性もあるとのこと。引受人は取引初日の株価急騰を狙って公募価格を低めに設定するよう勧めることが多いが、上昇後の株価を保てない企業もかなり存在するため、ダイレクトリスティングがその対策に成りえると考える人もいる。

フランス・カンヌ―6月22日:SpotifyのファウンダーでCEOのDaniel Ek。2016年6月22日にフランスのカンヌで開催されたカンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルにて(写真:Antoine Antoniol/Getty Images)

さらにダイレクトリスティングの道を選ぶことで、上場後に関係者が株式を売却できない「ロックアップ期間」の問題も解消できる。Snapの株価は本日(現地時間7月31日)ロックアップ期間が終了することもあり、最近値を下げていた。

もしもSpotifyのダイレクト・リスティングがうまくいけば、他社もその後を追うことになるかもしれない。

その一方で、ダイレクト・リスティングによってSpotifyの株価のボラティリティがさらに高まる可能性も十分ある。まだ同社は具体的な計画を発表していないが、IPOで機関投資家に株式が売却される理由のひとつは、彼らが長期的にポジションを保有すると考えられているからだ。

それでもダイレクト・リスティングを選ぶとなれば、Spotifyは株価を保ってApple Musicの侵攻を防ぐために、これまで築き上げてきたユーザーベースに頼らざるを得なくなるかもしれない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

香港証券取引所に人気再燃の兆し――アジア企業のアメリカ志向を覆せるか

アメリカのいわゆるIPOウィンドウは、昨年の小康状態を経て2017年に再び開いたと言われているが、地球の反対側に位置する証券取引所でも状況が好転しつつあるようだ。

香港証券取引所(HKSE)で、テック企業のIPOがルネサンスを迎えようとしているのだ。昨年12月にはセルフィーアプリのMeituが、テック企業としては過去約10年で最大規模となるIPOを果たし、5億ドル以上を調達した。最近ではPCゲームブランドのRazerや、Tencent傘下で電子書籍サービス企業のChina Publishingも同取引所での上場の意向を示している。

香港は2014年に、その名を世界に知らしめるビッグチャンスを逃したと言われている。当時Alibabaが上場を検討していたものの、HKSEは同社の株主構成を容認できなかったため、結局Alibabaはニューヨーク証券取引所をIPOの舞台に選んだのだ。しかしそれから3年近くが経ち、状況が変わり始めたようだ。

先月中国の深センで行われたTechCrunchのイベントでは、オンデマンド物流企業Lalamoveの幹部が、2020年までに香港で上場する計画だとステージ上で語っていた。今年の1月に行われたシリーズBで3000万ドルを調達した同社で国際部門のトップを務めるBlake Larsonは、アメリカと香港の同時上場という可能性もあるが、「香港でもグローバルなテクノロジー企業をつくれるということを証明するため」同地での上場を優先的に考えていると話した。

海外企業も香港には注目しているようだ。今月行われたRiseというイベントで、TechCrunchがアジアを拠点とする2社(どちらも1億ドル以上を調達し世界中で営業している)のファウンダーに話を聞いたところ、彼らはHKSEでのIPOに向け、かなりの時間を割いて準備を進めていると語った。

Alibabaグループのフィンテック企業Ant Financialにも香港でのIPOの噂がある。しかし同社は今年の始めに最大600億ドルの評価額で30億ドル以上を調達しており、この資金調達によってIPOの計画が最短でも2018年まで先送りされたと言われている

HKSEは、MeituやRazer、China Publishingといった有名企業の誘致には成功したかもしれないが、世界中の企業にとって有力な選択肢となる上では、まだまだ越えなければならない壁がある。

まず、上記3社は全て中国国内で有名な企業やブランドで、これが同取引所に上場するための条件なのだ。さらに財務面での条件も厳しく、スケール中の企業が香港で上場を果たすのは難しい。

「HKSEはテック企業が上場する際のオプションになり得ると思うが、香港政府や投資家は赤字テック企業の分析の仕方やルールを変えていかなければならない」とアメリカ・中国を拠点とするVCのGGVでパートナーを務めるHans Tungは話す。

シンガポールの政府系ファンドTemasekの関連会社Vertex Holdingsで、社長兼CEOを務めるKee Lock Chuaも同じ意見だ。

「HKSEは流動性や評価額の観点から言って、テック企業の上場先としてふさわしい場だ。(しかし)まだ黒字企業が好まれる傾向にある」とChuaはメール内で語った。

「急成長を遂げながらも短期的には赤字のテック企業であれば、アメリカの方が上場しやすいと感じるかもしれない」と彼は付け加える。

別の問題が株主構成に関する条件だ。HKSEは種類株を認めていないことで知られている。これこそAlibabaがアメリカをIPOの場に選んだ理由で、結果同社はアメリカで歴史的な上場を果たし、香港はその様子を指をくわえて見ているしかなかった。

「HKSEはAlibabaの株主構成を容認して、香港で上場させるべきだった。Googleをはじめとするテック企業は、NASDAQ上場の際に種類株を発行していた。Alibabaが香港で上場していれば、潮目は大きく変わっていただろう」とTungは説明する。

その一方で、諸々の条件を乗り越えて上場を果たした若い企業も存在する。

「我々のポートフォリオ企業であるIGG(モバイルゲーム開発)は、当初GEM(新興企業向けの市場)に登録されていたが、その後メインボードに格上げされた。今では同社の時価総額は25億ドルに達する」とVertexのChuaは話す。

先行きが不透明なアメリカの政情と、ユニコーン企業がアジア中で増加していることを受けて、HKSEは有力な上場先になりつつある。しかし、依然アジア企業の上場先としてはアメリカが人気で、直近でIPOを考えている企業ではその傾向が顕著に見られる。

シンガポール発のゲーム企業Sea前Garena)やベトナムのゲーム・メッセージング企業VNG、EC企業のReboonz(VertexとGGVの投資先)といった企業は、VCを中心としたエコシステムから卒業し、新たなチャンスを求めていると言われているが、報道を見るとアメリカでのIPOばかりが話題になっている。

しかし最近では、アメリカで上場したアジア企業(中国企業を除く)に関するいい話を聞かない。

恐らく、マレーシア発のMOL Globalの話がもっとも注目に値するだろう。決済サービスを提供している同社は、NASDAQに上場してからの18ヶ月間、嵐のような日々を過ごした。2014年10月の上場直後に30%も下がった同社の株価は、その後も急落を続け、結局2016年4月には上場廃止となった。皮肉なことに、MOLはRazerに投資していることから、同社のIPOにも関わっている。

新しいアジア企業の中では、Seaが最初にアメリカで上場を果たす可能性が高い(日本のLINEはリスクを分散するため、東京とニューヨークで同時上場した)。彼らのIPOがいつ行われ、株価がどのように動くかということが、同じ道を辿ろうとしている企業の決断を左右することになるかもしれない。その一方で、RazerとChina PublishingがHKSEで上場することで、アジアのファウンダーがアメリカから香港に目を向けるようになるかも注目だ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

IPOの「秘密申請」手続きを大企業も利用可能に

本日(米国時間7/10)以降、年間売上10億ドル以上の企業もIPOの「秘密」申請ができるようになった。。これは、大企業が上場申請後に財務書類を変更した場合でも、上場の数週間前まで公表しなくてよいことを意味している。

2012年にJOBS法が施行されて以来、100を超える企業がこの制度を活用して長期にわたって世間に監視されることを避けてきた。企業がIPOの時期を遅らせることがあっても、秘密申請精度のおかげで非難の目に曝されずにすむ。

S-1書類を提出した会社は、「沈黙期間」に入り、この間メディアと話すことができない。自社株の宣伝とみなされるからだ。この期間が短いほど面倒が少ない。

申請書類が公開されてからIPOまでは速い。企業は説明のための投資家回りに出かける15日前までに財務情報を公開しなくてはならない。多くの企業は正確にこの時期を設定する。

新ルールの狙いは多くの企業が上場しやすくするためだ。これによってプレッシャーが回避できるという意見もある。秘密のうちに「申請」しながらIPO手続きを踏んでいない会社はいくつもある。

今回のルール変更は、Dropbox、Airbnb、Uberといった大きな会社がついに上場する後押しになるかもしれない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SaaS株好調の中、ついにDropboxがIPO準備中との噂――年内上場の可能性も

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

設立からかなりの時間が経ち、その間にエンタープライズ向けサービスへのピボット、そして2つの新たな信用枠の獲得を果たし、これまでに大金を調達しながらも再度コスト削減に努めているDropboxが、ようやくIPOに向けて動き始めたかもしれない。

ロイターによれば、クラウドストレージサービス(恐らくDropboxは「エンタープライズ向けプロダクティビティソフト」という情報も追加してほしいと考えているのだろうが)を提供する同社は、「年内のIPOに向けて、引受人を探している」ようだ。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模という、IPOに関して私たちがもっとも気にかけている情報が含まれているのだ。

もっと簡単に言うと、私たちはいつ今年が終わるか知っているし、SnapのIPOについても知っているので、もし全てがロイターの記事通りだとすれば、DropboxのIPOのタイミングは実質的にどちらかに絞られたことになる。

だが、恐らく人々の関心は収益と評価額に向いているだろうから、まずはその話をしよう。

収益、キャッシュフロー、上辺の利益、本当の損失

TechCrunchでは、Dropboxが今年の春に発表した業績に関連して「Dropbox really wants us to know its finances are healthy(Dropboxは健全な経営状況をかなりアピールしたいようだ)」と題された記事を公開した。

会社が健全な状態にあるというのは素晴らしいことだし、特に何か言うべきこともない。ちょうどいいので、去年から今までに発表(自主的かどうかは別として)されたDropboxのマイルストーンを確認してみよう。

そして今月に入って、DropboxはIPOに向かって動き出したと言われている。

各マイルストーンを確認したのは、読者の皆さん(そしてこの記事を書いた私自身)を退屈させるためではなく、他の企業と比較する上で重要な点を洗い出すためだ。その結果、良くも悪くもBoxが上場企業の中ではDropboxのベンチマークとしてふさわしいことがわかった。次は収益や評価額を比較するため、収益の質について考えたい。

企業価値はどのくらいなのか?

Dropboxの10億ドルという収益額は直近12ヶ月のものではない。彼らの正式なコメントは次の通りだ。「Dropbox is proud to announce that our business has surpassed $1 billion in revenue run rate(Dropboxのランレートがこの度10億ドルを突破したことをお知らせします)」

同社のコメントには、通常SaaS企業が収益を表すときに使う言葉が入っていない。それは月間ランレート(MRR)と年間ランレート(ARR)だ。

しかしDropboxは、コメントを発表したブログポストの中で、自分たちの業績を数十億ドルのARRを誇るSalesforceなどのSaaS企業と直接比較していたため、この10億ドルという数字をARRと解釈しても問題ないだろう。

それでは、今年の第1四半期にDropboxが10億ドルのARRを達成したと仮定しよう。つまり、私の脳がきちんと動いていれば、第1四半期のランレートは2億5000ドルだったということになる(非公開企業の情報は限られているので、ここではかなり大雑把に計算している。しかし、少なくともDropboxは真実を伝えているとしよう)。

これでDropboxの指標が揃った。四半期収益が2億5000万ドルでフリーキャッシュフローはポジティブ、さらにEBITDAベースで黒字、というのが同社の現状だ。

次は直近の四半期(2017年4月30日締め)における、Boxの業績を見てみよう。

  • 収益:1億1700万ドル
  • 営業・フリーキャッシュフロー:共にポジティブ
  • EBITDA:ネガティブ

Dropboxよりも規模の小さなBoxだが、フリーキャッシュフローはDropboxよりも早いタイミングでポジティブになり、前年比での成長率は30%を記録している。Dropboxの成長率に関する情報は手元にないが、同社の数字の多くはBoxのものに近いため、成長率も同じくらいの水準と考えることにする。

では、Boxの収益の質はどうなのか? 直近12か月の収益をもとにした同社の株価売上高倍率は5.73だ。また、今年の第1四半期の収益を4倍にしたものを年間収益と仮定した場合、株価売上高倍率は5.2となる。将来的な収益を割り引いて現在価値を求めると、この数字はさらに下がるが、そこまではしないでおこう。

いずれにしろ、これでかなり比較しやすくなった。先述の通りDropboxの成長率はBoxとほぼ同じだと仮定し、Boxの株価売上高倍率である5.2と、Dropboxの10億ドルという(仮定上の)年間収益を使ってDropboxの評価額を算出すると……約52億ドルということになる。

さらに、DropboxはBoxと違ってEBITDAベースで黒字のため、Dropboxの評価額はここから上がる可能性がある。また、もしもDropboxがBoxを上回るスピードで成長すれば、投資家はさらにDropboxの評価額を吊り上げるだろう。そして最後に、Dropboxは長らくフリーキャッシュフローをポジティブに保ってきたため、バランスシート上もBoxを凌駕しているかもしれず、これはIPO時の時価総額に良い影響を与えるだろう。

実際どうなるかはこれからの様子を見守っていくしかないが、一部のテック株が史上最高額に近い値をつけている中でDropboxが上場を狙っているということは注目に値する。まさにブームといったところか。その一方で、結局直近のラウンドよりも低い評価額がつくという可能性ももちろんある。

ここで冒頭の問いをもう一度見てみよう。

さらに同記事は、DropboxのIPOが「Snap Inc以来、アメリカのテック企業としては最大級」になる可能性があり、情報源については「本件に詳しい情報筋」としている。私たちはロイターの報道内容の中でも、特に引用した箇所に注目している。というのも、ここにはタイミングと規模というIPOに関して私たちがもっとも気にする情報が含まれているのだ。

そしてSnapのIPOの規模については、Forbesが以下のように報じている。

Snap Inc.は売り出し価格17ドルで水曜日に上場し、時価総額は236億ドルに達した。人気メッセージングアプリSnapchatの開発元である同社は、2億株を発行し、2014年以来最高額となるIPOで34億ドルを調達したと言われている。

SnapのIPOは規模が大きすぎるため、Dropboxの上場のシグナルとなる評価額の上限値はハッキリと見えないが、現時点の情報でできることはこのくらいだ。情報量が増えてくれば、さらに細かな分析ができるようになるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Blue Apron、上場初日は空振り――IPO価格からほぼ動かず

Blue Apronの株主は今頃泣いているかもしれない。もちろんこれは、彼らの商品に含まれる玉ねぎのせいではない。

会員制の食材宅配サービスを提供しているBlue Apronは、1株あたり10ドルをかろうじて上回った(四捨五入すると10.01ドル)あたりで初日(現地時間6月29日)の取引を終えた。これは、当初IPO価格を15〜17ドルに設定しようとしていた同社だけでなく、10ドルのIPO価格でBlue Apron株を購入した株主にとっても大変残念な結果だ。

市場に良いイメージを与えるため、新規上場企業は取引初日に少なくとも20%程度の値上がりを狙う場合が多い。その一方で、Blue ApronはIPO価格を引き下げた上、取引初日の結果も思わしくなかったため、今後が心配される。

さらに現在の時価総額は20億ドルを少し下回っており、上場前最後の投資ラウンドで20億ドルのバリュエーションをつけた投資家はさぞ落ち込んでいることだろう。ベンチャー投資家にとって、ブレイクイーブンは失敗と同じだ。というのも、彼らは一握りの投資先の大規模なエグジットから得た収益で、その他の企業のマイナス分をカバーしているのだ。

レーターステージで株主になった投資家の中には、ラチェット条項と呼ばれるもので保護されている人たちもいる。レーターステージの投資でよく見かけるこの条項では、エグジットの際のリターンに関して最低額が保証されており、ときには他の投資家がその影響を受けることさえある。IPOに特化した調査会社のRenaissance Capitalは「Fidelityの投資の一部には、IPO価格から7.5%割り引いた金額でラチェット条項が設定されている」とツイートに残している。

逆にBessemer Venture PartnersやFirst Round Capitalは、Blue Apronの株価が数セントくらいの頃に投資していたため、IPOでかなりのリターンを得ることができた。

Bessemer Venture PartnersのパートナーであるBob Goodmanは、CEOのMatt SlazbergがいるからこそBlue Apronのことを信じていると話す。Goodmanは「市場で生き残れるビジネスをつくるためなら努力を惜しまない彼の姿勢には驚かされました」と話し、さらにBlue Apronのチームは「食品の無駄や、高品質な食材へのアクセスといった実在する問題に取り組んできました」と付け加えた。ちなみに、SalzbergはかつてBessemer Venture Partnersでアソシエイトとして働いていた。

しかし、Blue Apron以外にも食材宅配サービスを提供している企業はたくさんあり、中でもSun BasketやPlated、HelloFreshは着実にトラクションを伸ばしている。投資家の中には、AmazonによるWhole Foods買収の影響がBlue Apronにも及ぶのではと心配している人もいる。Amazonは食材宅配に関しては何も発表していないが、少なくとも生鮮食料品の配送サービスには手をだしてくるだろう。

また、IPOに際して公開されたBlue Apronの数字を見ると、リテンションに問題があることに気付く。売上額はかなりの勢いで伸びており、昨年には8億ドル近い売上を記録したが、彼らのマーケティングの費用対効果はマイナスで、チャーンレートはBlue Apronにとって大きな問題になり得る。

とはいっても、IPOにたどり着けただけでも大きな快挙だというのも事実だ。しかも、ニューヨークに拠点を置くBlue Apronは設立から5年しか経っておらず、IPOを目指すスタートアップとしてはかなり早い段階でエグジットを果たすことができた。

なお、今週はテックIPOにはなかなか不利な週のようで、ストレージサービスのTintriは本日予定していた上場を延期することにした。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Delivery Hero、取引初日に時価総額が50億ドルを突破

フランクフルト証券取引所への上場を果たしたフードデリバリー企業Delivery Heroの時価総額が、取引初日(現地時間6月30日)に50億ドルを突破した。

今月に入ってから上場の意向を示した同社のIPO価格は、1株あたり25.50ユーロに設定され(仮条件の上限値)、取引初日の最高値は27.70ユーロ(約8.6%の値上がり)だったとBloombergが報じている。つまり、設立から6年が経ち40か国以上で営業しているDelivery Heroの時価総額は、最高で47億ユーロ(53億ドル)に達したのだ。

Delivery Hero自体はIPOで4億6500万ユーロ(5億3000万ドル)を調達し、この資金は債務の返済やビジネスの成長のために使われる予定だ。一方、その24時間ほど前にニューヨーク証券取引所で上場を果たした食材宅配サービスのBlue Apronは、Delivery Heroとは対照的に前途多難なスタートを切った

IPOがうまくいったとはいえ、Delivery Heroは未だ黒字化を果たせておらず、昨年度の純損失は2億200万ユーロ(2億3000万ドル)だった。その一方で、2016年の売上高は3億4700万ユーロ(3億9000万ドル)で前年比71%の伸びを見せ、オーダー数も51%増加した。これにはRocket Internet傘下だったFoodPandaの買収が深く関係している。Delivery HeroはこのM&Aを通じて、東欧や中東、アジアを含む合計20か国への進出を果たし、その他の市場でも大きな力をつけることができたのだ。

FoodPandaの売却によってDelivery Heroの株式の35%を手に入れたRocket Internetにとっても、本日のIPOは大きな追い風となった(投資会社NaspersもIPO直前の投資を通じて、同社の株式の10%を保有している)。

ドイツのインキュベーター兼投資会社であるRocket Internetは、ポートフォリオ企業の赤字体質で批判を受けてきたが、Delivery HeroのIPOによってこれまでに合計2社をエグジットさせたことになる。さらに同社は、FoodPandのほかにも先日東南アジアのEC企業Lazadaの株式を全て売却した。逆にAlibabaは、今週10億ドルもの資金を投じてRocket InternetやTescoを含むさまざまな投資家からLazada株を買い取り、同社の持株比率は51%から83%に上昇した。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ネット上の運転手付き物置サービスClutterが$64Mを調達、あのAtomicoも将来性を確信

ベンチャーの投資家たちがストレージ(storage)*に数千万ドルを注ぎこんでいる、と聞けば、それはクラウドストレージかフラッシュストレージのことだ、と思うだろう。しかしClutterについて語るときは、まったく違うストレージだ。〔*: storage, 保存, 保管〕

服や家具など、物理的な所有物を保管してくれるロサンゼルスのスタートアップClutterは、スタートアップの世界で著名な投資家たちから6400万ドルの資金を調達した。このシリーズCのラウンドはイギリスのAtomicoがリードし、Sequoia Capital, Google Ventures(GV), そしてFifth Wallが参加した。

Clutterはオンデマンドで品物を持って行ったり届けたりしてくれるが、すべてのコミュニケーションがネット上で行われる。いわば、物を保存/保管すること専門のネット上の便利屋さんだ。

しかもこの市場は大きいから、ご存知の方も多いと思うが、MakeSpace, Omni, Troveなど競合他社も多い。

SequoiaのパートナーOmar Hamouiはこう言う: “保管は大きな産業だが、これまではテクノロジーによって最適化ないし洗練されることがなかった”。彼は、まだまだ需要に対して供給、すなわちスタートアップの数や規模が足りない、と見ている。

よく見ると、誰の家にも大量の物がある。しかし自分で倉庫へ行って物を入れたり出したりするのは、かったるい。画面のボタンを押すだけで自分のスキーが来る方が、今の消費者好みだ。

しかも、保管するのも取り出すのもユーザー本人ではないから、便利な場所でなくても構わない。だから、高額な不動産投資は必要ない。

それでもClutterは、競合他社に比べるとユニットエコノミクス*が良い、と主張する。しかし具体的な数字は教えてもらえなかった。〔*: unit economics, 単位経済, そのビジネスの1扱い単位あたりの売上額、利益率(額)、LTV、CACなど。〕

Clutterの協同ファウンダーでCMOのAri Mirが、数字を挙げずに抽象的に言う: “個々の顧客から利益を上げているだけでなく、進出したどの都市でも粗利益が出ている”。しかし、売上額は数千万ドルあるが、事業全体としてはまだ黒字ではない。

今同社は、都市数を増やすことに注力している。目下稼働しているのは、ロサンゼルス、サンフランシスコ、ニューヨーク、ニュージャージー、シカゴ、シアトル、サンタバーバラ、サンディエゴ、そしてオレンジカウンティだ。また、海外進出もしたい。

Atomicoとのパートナーシップも、それが理由の一部だ。AtomicoのパートナーHiro Tamura(田村裕之)は、“Clutterがアメリカの国境を越えるつもりなら、大々的に支援する。同社のチームとビジネスについては、強い確信を持っている”、とベタぼれだ。

Clutterに関わっている人なら誰もが、Clutterなら350億ドルの上場企業Public Storageにチャレンジできる、と信じている。では、ClutterのIPOはどうか? Mirは即答する: “100%ありだ。この会社を売るつもりは、絶対にないからね”。

〔参考: Atomico関連記事。〕

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

銃撃事件の発生を45秒以内に警察に自動通報するShotSpotterがIPO初日で26%アップ

水曜日(米国時間6/7)に投資家たちは、その日から上場企業になるShotSpotterを温かく迎えた。IPO時に11ドルだった同社の株価は終値が13ドル86セントとなり、約26%上昇した。

ShotSpotterは、環境騒音を無視できるセンサーを利用して、銃による暴力事件の発生を警察に教える。それは、引き金が引かれてから45秒以内に通知するという、高度な技術だ。

今それは、ニューヨーク、シカゴ、サンフランシスコなど約90の都市で利用されている。ShotSpotterの推計では、発生する銃暴力事件の80%は警察に通報されない。そこで全世界の自治体に対して同社は、同社の技術が犠牲者を減らす、と説得に努めている。

CEOのRalph Clarkによると、暴漢を捉えることだけが目的ではなく、犯罪の発生を抑える効果もある。“警察が黙っていると銃暴力が日常化する”、と彼は主張する。

ShotSpotterの収益は、自治体が同社に払う年会費だ。IPOの申請書類によると、昨年の売上は1550万ドル、その前は1180万ドルだった。しかし同時期に損失は、620万ドルから690万ドルに増加した。

そのためかIPOの規模もささやかで、わずか3000万ドル強を調達できただけだ。お金の一部は、借金の返済で消える。

でも同社は、今後もっと多くの都市が採用することに関して、楽観的だ。なぜなら、Clarkによると、“銃暴力はアメリカでも世界でも大きな問題”だからだ。“今後も、顧客の成功に投資していきたい”、と彼は語る。

大株主は、Lauder Partners, Motorola Solutions, そしてClaremont Creek Venturesだ。カリフォルニア州マウンテンビューの同社は、これまでに6700万ドルあまりを調達している。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

25〜35%の値上がり幅が理想?――公募価格の考え方

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

IPOという観点では、2017年は2016年を上回っている。

昨年の今頃は、まだScureWorksとAcacia Communicationsの2社しかIPOを果たしていなかったが、今年は既に(どんな会社をテック企業と考えるかによるが)少なくとも10社が上場した。その中には、SnapClouderaOktaなどが含まれている。

IPOの数が増えただけでなく、上場直後の株価も大きな伸びを見せていることから、”机にお金を置いてきてしまった”という類の話を耳にすることも多くなった。これはどういう意味かというと、初日の取引で株価が急騰した企業は、理論上は公募価格をもっと高く設定できたはずだということだ。つまり、IPO直後の株価の急騰(IPOポップ)は値付けミスだという主張だ。

実際にそう考えている人は多かれ少なかれいる。

しかし、最近IPOを果たした2社の株価が、数週間前の業績発表後に大きく動いたのを受けて、私たちはこの問題に関する記事を公開した。その中でも触れた通り、小さなバブルのように上昇した株価も、業績が投資家の予測に届かないとわかるやいなや、すぐに下がってしまったのだ。

それでは、IPO直後の株価の上がり具合を予測するのは難しく、公募価格の値決めには芸術と科学の両方が必要だとすると、どうやってどの企業のIPOは上手くいって、どの企業は公募価格の設定を誤ってしまったと判断すればいいのだろうか?

ゴルディロックスと3社のIPO

先週のEquityでは、IPOとM&Aを専門とする弁護士のRick Klineが、IPOポップや彼のIPOに対する考え方について説明してくれた。彼は持論を展開する上で、AtlassianやHortonworks、Snap、Boxといった企業のIPOに触れている。

文章を読むより話を聞く方が好きな人は、こちらのリンク先に飛んで、4:20から彼がこの点について3分ほど話しているのを聞いてみてほしい。今聞いている音楽を止めたくない人は、以下に彼の考えをまとめたのでこちらを参照してほしい。

  • 25〜35%のIPOポップが「理想的」
  • 50%近い値上がり幅だと「机の上にお金を置いてきた」可能性がある

(さらにKlineは、これが絶対的な答えではないと注意を促し、金融業界にいる人の中には35%という上がり幅は大きすぎると考えている人もいると語っている)

また上記の数字は、ある不確定要素を前提にしている。その不確定要素とは、誰も取引初日の終値を予測することができないということだ。

しかしKlineは、もしも初日の終値を予測できたとしても、株価の上がり幅は小さければ小さいほど良いと言っているわけではない。むしろ、企業は「25〜35%」を少し下回るくらいを狙うだろうと彼は話す。”ポップ”としてのインパクトは弱くなるが、それでもかなりの値上がり幅だ。

全ての議論の前提として、彼はIPOポップは良いことだと考えている。しかし「値上がり幅=調達し損ねた金額」だとすれば、なぜ企業はもっと公募価格を高く設定しないのだろうか?

メディアが求める情報

大抵のことがそうであるように、この問題は見た目よりも複雑なのだ。Klineによれば、ポップのための余白を残した価格設定をすることで、公募価格を高くし過ぎて株価が上場後に下がるというリスクを抑えられるほか、IPOポップが発生すれば、その企業の上場が重要事項であるかのようにメディアが取り上げてくれるという。

この点について、Klineは「IPOポップを起こすことで、その企業(の上場)に関して良い噂が広がることになります」と話している。

経験則からも彼の言っていることは正しいように思える。以下のようにヘッドラインを飾りたいと思わない企業はいないだろう。

しかしメディアへの影響という意味では、IPOポップはポジティブな現象を引き起こすだけでなく、ネガティブなことが起きるのを避けるのにも効果がある。

「もしも取引初日の値上がり幅が大したことなければ、IPOのニュースを追っている記者はネガティブなことを書きがちですからね」と彼は言う。

IPOへのメディアの影響について尋ねると、Klineは「(IPOに対する)市場の見方に影響を与える」可能性があると答えた。そのせいで「IPOのニュースをポジティブなものにするため、値上がり幅が大きくなるように公募価格を設定する」企業もいるようだ。

つまり、私たちのようなメディアもある程度この問題の責任を負っていると言える。

控えめなIPOポップ

最後に、例えば値上がり率が1桁台といった、控えめなIPOポップを経験した企業について尋ねた。

恐らくその理由は、公募価格の設定が「挑戦的」過ぎたか、「幅広い投資家の興味や支援を引き出す」ことができなかったからだとKlineは話すが、どちらもハッキリとしたメッセージとは言いづらい。実際に彼も、中にはできるだけ多くの現金を獲得するために、値上がり幅を小さくしようとする企業も存在すると話していた。

それでは、株価が公募価格を下回った場合はどうなのかというと、これは全く別の話になる。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

1億ドル企業は過小評価されている――身の丈にあった資金調達の重要性

【編集部注】本記事はFounder CollectiveのEric Paley(マネージング・パートナー)とJoe Flaherty(コンテンツ&コミュニティ担当ディレクター)によって共同執筆された。

ユニコーン企業中心の現在のスタートアップ界では、成功の定義が大きく変わった。10億ドル規模のエグジットがもてはやされる中、かつては成功と考えられていた数字の価値が下がってきてしまったのだ。実際、自分が設立した企業を1億ドルで売却出来る確率は、純粋な可能性としては極めて低い。しかし今日では、1億ドルという数字は成功と呼ぶには小さすぎると考えられてしまうことが多々ある。

もちろん全員がこんな歪んだ見方をしているわけではないが、驚くほど多くのVCや業界関係者が、数億ドルのエグジットでは騒がなくなった。

一方で、刺激を追い求める現代社会で上記のような変化が起きているのは、そこまで驚くべきことではないとも言える。政治記者が州政府よりも大統領や最高裁判所について書きたがるように、テック記者はミリオン企業ではなく、ビリオン企業を求めているのだ。10億ドル規模のファンドは、各スタートアップに5000万ドルをつぎ込むのもいとわず、1億ドル程度のエグジットは成功どころか残念賞くらいにしか考えていない。そう考えると、1億ドルちょっとのエグジットは大型のアクハイヤー(人材獲得を目的とした企業買収)のようにさえ見えてくる。

この考え方がどれだけ歪んでいるかを確かめるため、私たちはここ数十年間に成功をおさめたファウンダーの中でも、その後VCになった人たちにフォーカスした調査を行うことにした。さまざまな分野で活躍するVCから、起業経験を持つ63人の投資家をピックアップしたところ、10億ドルを超える金額のエグジットを経験した人の数はたった11人だった。

素晴らしいスタートアップを創設した著名投資家はたくさんいるが、今の歪んだ基準で見ると、彼らの経済的な成功度合いは”そこそこ”ということになる。例えばY CombinatorのPaul Grahamは、過去10年でもっとも影響力のあるVCの1人だが、彼が設立したViawebは”たった”4900万ドルで売却された。現実的な基準で考えると、Viawebは間違いなく成功したビジネスだったが、今日の派手なサクセスストリーや資金調達のニュースに照らすと、そうでもないように見えてくる。また、Viawebは買収されるまでに250万ドルしか調達していない。しかしGrahamはかなり大きなリターンを得ることができ、このエグジットはその後の彼の将来を左右するような出来事となった。どうやら”小規模な”エグジットでも大きなことに繋がる可能性はあるようだ。

注:このリストには抜けがあるかもしれないので、もしも漏れている人がいれば是非教えてほしい。ドットコムバブル期のエグジット額は正確に評価するのが難しいため、別途出典をまとめている。金額に関する情報が明らかになっていないケースについては、買収額が売却先のマテリアリティスレッシュホールドを下回るという仮定に基いている(出典:Founder Collective)。

過小評価されている1億ドルのサクセスストーリー

自分の会社を1億ドルで売却するというのは、VCだけでなくスタートアップコミュニティ全体からも冷笑されることがある。Mint.comのファウンダーとして有名になったAaron Patzerは、サイトの革新的なUXを評価したIntuitに同社を1億7000万ドルで売却した。彼は「大きく出るかやめるか」いう哲学を信じていなかったのだ。しかしMint.comの売却でひと財産を築いた彼は、その後批判を受けることになる。さらに、1億ドル規模の”小さな”エグジットに対する軽蔑心がスタートアップ界に蔓延するあまり、Urban Dictionaryには自分の企業を低すぎる価格で売却することを表す表現さえ登録されている。「Pulling a Patzer」というフレーズで調べてみてほしい。

私たちの投資先が大手テック企業に1億ドル強で買収されることが最近決まった。私たちは短期間で大きなリターンをあげることができ、共同ファウンダーたちは昨年のレブロン・ジェームズの年収を上回るほどの金額を手にした。現実的に見て、この売却は当該企業にとっては最善の結果であっただろうし、関係者全員にとっても大きな成功と言えるものだった。

ユニコーン企業の存在にとらわれている現代のスタートアップ関係者が、もしもこのエグジットを失敗と考えるのであれば、彼らのビジョンには問題があるし、最悪の場合は単に皮肉を言っているようにさえ映る。

「大きく出るかやめるか」という崩壊したロジック

私たちはなるべく早くエグジットを目指したほうが良いと言っているわけでもなければ、自分の会社の可能性を低く見積もれと言っているわけでもない。私たちは次なるUberやGoogleやFacebookに投資したいと考えている。しかし現実として、全ての企業が彼らのような規模になるべきだとは言えない。これほど多くの(元起業家の)VCが、ユニコーンのステータスには遠く届かないようなスタートアップで成功をおさめられたのは、早い段階でのエグジットという選択肢を残せるような評価額で、適切な額の資金を調達していたことが関係している。

シードステージで将来10億ドル規模のビジネスに成長するであろうと思えるようなアイディアも、その道中で予想外の障壁にぶつかることがある。身の丈にあった資金調達を行ってきたスタートアップにとって、この障壁が生死を分ける問題になることはほとんどない。しかし残念ながらほとんどのVCは、その規模のせいでポートフォリオ企業のいくつかを10億ドル以上でエグジットさせなければいけないのだ。そのためVCは必要以上の資金をスタートアップにつぎ込むものの、企業が思い通りに成長しなければ、現実的かつ実り多いエグジットの可能性が無くなってしまう。

例えばあなたの企業が、前年度に1000万ドルの売上を記録し、直近のラウンドで5000万の評価額がついたとしよう。人気の業界にいるこの企業は、売り上げを今年度中に倍増しようと考えているが、利益は薄く、なかなかユニットエコノミクスも成立させられないでいる。普通に考えると、この企業が次回のラウンドで達成できるのは、プレマネーの評価額が8000万ドル、そして調達額が2000万ドルといったところだろう。

”小規模な”エグジットでも大きなことに繋がる可能性があるのだ。

しかし今日のVCは、企業が成長している様子や市場の盛り上がりを見るやいなや、ファウンダーに「大きく出るかやめるか」と言い聞かせようとする。すぐにでも手元に残った2000万ドルを投資しようとしている(次なるファンドを組成するために手元資金を使いきろうとしている)このVCは、先述の現実的な数字の代わりに、2億6000万ドルの評価額で4000万ドル(うち半分を当該VCが出資)を調達するようファウンダーを説得するのだ。そうするとポストマネーの評価額は3億ドルになり、VCが求めるようなリターンを実現するには、この企業を10億ドルで売却しなければいけなくなってしまう。

1000万ドル程度の売上と薄い利益しかないにもかかわらず、この企業は5億ドルのエグジットというオプションを捨ててしまったのだ。もしも調達額が少なければ、5億ドルのエグジットでも関係者全員がハッピーになれていたはずだ。恐らくこの企業のバーンレートはその後上昇し、さらなる資金調達が必要になってくるだろう。もしもインフレした評価額を受け入れられるような売却先が見つからず、VCも輝きを失いつつあるこのビジネスへの投資をやめたとすると、かつては将来有望と考えられていた企業が倒産してしまう可能性もあるのだ。

ファンドの規模が全てを物語る

1億ドルのエグジットを実りあるものにするためには、過度な資金を調達しないように細心の注意を払わなければいけない。自由が欲しければ戦略的な資金調達を行わなければいけないのだ。これは自分の企業にあった投資家探しからはじまる。Founder Collective パートナーのDavid Frankelは「ファンドの規模が全てを教えてくれる」とよく言っている。かなり大雑把な目安として、スタートアップは少なくとも投資を受けるファンドの規模と同じくらいの金額でエグジットできるようにならなければいけない。例えば5000万ドル規模のファンドから資金を調達した場合は、1億ドルでのエグジットでなんら問題ない。しかし10億ドル規模のファンドから資金を調達したとすると、エグジット時の期待値も膨大な額になるため、投資家選びは慎重に行い、どんな契約を結ぼうとしているのかしっかり把握するようにしたい。

1億ドル規模のスタートアップは恥ずかしくない

テック企業の大半は1億ドル未満で売却されているし、実のところ、必要最低限の資金を調達し1億ドルで事業を売却できれば御の字だ。元起業家のVCの多くも、自分たちのスタートアップを売却したときはこれが成功だと考えていた。ファウンダーにとっては、数千万ドルでのエグジットの方が、数億ドル、はたまた数十億ドルのエグジットより儲かるケースさえある。

ある程度成功したスタートアップを売却すれば、ファウンダーは残りの人生を心地よく過ごせるくらいのお金を手にすることができる。中には新たな事業をはじめる人もいれば、後に世界的に有名になるアクセラレーターを設立する人もいる。実際に多くのファウンダーが、起業家の世界における”まぁまぁの”成功をおさめた後に、ベンチャーキャピタルの世界で素晴らしいキャリアを築いているのだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

公募価格に関する誤解――IPO直後の株価急騰は気にするな

【編集部注】Alex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

業績発表を受け、ネット業界を先導するふたつの企業の株価が動いた。その2社とはSnapとTwilioだ。

両社はさまざまな点で違っている。Twilioは消費者にリーチするためのバックエンドツールとして、数々の有名企業に愛されている。一方Snapは、最近モバイルハードウェアにも手を出しはじめたソーシャル企業だ。しかし、2017年Q1はどちらにとっても厳しい結果に終わった。

2016年に上場したTwilioは業績面では予想を上回りながらも、思わしくない通期見通しを受け、同社の株価は業績発表の翌日までに25%近く下がった

一方、2017年IPO組のリーダーであるSnapは、売上・利益・アクティブユーザー数の全てで目標に到達できず株価が急落。一晩で何十億ドルもが消え去り、同社の株価は公募価格とほぼ同じくらいの水準に戻った。

ここからこの記事の本題である、IPO後の株価の急騰、そしてどの企業が公募価格の設定を誤って本来調達できたはずの資金を取り逃してしまったのかという話につながってくる。

株価急騰とその他の幻想

企業が上場する際、初日の株価の伸びしろを残しつつも調達金額を最大化するため、公募価格は(一般的には)できるだけ高く設定される。

これを基に考えると、IPO周りの数々の現象に納得がいく。企業はできるだけ多くの資金を調達しようと、市場で株主がリターンをあげられるだけの余白を残しつつも可能な限り高い公募価格を設定し、初日の株価急騰を狙う。そして目論見通り株価が上がれば、メディアや投資家から好意的な反応が返ってくるといった具合だ。

どのくらいの株価上昇を狙うかはケースバイケースだが、市場の反応を正確に予測するのは不可能だ。例えば、上場後にピッタリ10%株価が上がるように公募価格を設定することはできない。

そしてここからが難しいところだ。もしも、ある企業の株式に対する需要の大きさと価格感度の低さがその企業や引受人の予測を超えていた場合、何が起きるだろう? この場合、当該企業は公募価格を”低め”に設定する可能性が高いので、株価の上がり幅も想定より大きくなりがちだ。もちろん、逆に上場直後に株価が急落するケースもある。

(実際に、今年上場直後に株価が急落した企業が存在する)

いずれにせよ、企業が上場して物事が順調に進んでいけば、その企業が「本来調達できたはずの資金を取り逃してしまった」という内容のニュースを目にすることになる。実際に公募価格が低すぎると思われる場合もあるが、そう判断するには時期尚早というケースがほとんどだ。

つまり、企業の株価はIPO後に急騰することが多いが、上昇分はスーパーボウルにおけるファルコンズのリードよりも早く消えてなくなってしまう可能性がある。そのため、「本来調達できたはずの……」という話はナンセンスな議論である共に、公募価格の設定ミスの証拠とされているIPO直後の株価上昇こそが誤った情報を発信してしまっているのだ。

最近の例

実際の株価を追って見てみよう。

そうすると、Snapは多くの人が思っているよりも、かなり上手く公募価格を設定できていたのではないか気づく。

Snapの株式は、公募価格が17ドルで初値が24ドル、そして最高値が29.44ドルだった。この数字だけ見ると、本来Snapはもっと多くの資金をIPO時に調達できたはずだと感じられる。合計2億株を売ったSnapが公募価格を少しでも上げていれば、彼らの口座残高は増えていたはずだ。

24ドル(もしくは29.44ドル)という株価を見ると、Snapはとんでもない計算間違いをしたように見える。しかし、初めての業績発表を受け、現地時間5月11日のSnapの株価は最低で17.59ドルまで下がり、結局18.05ドルで取引を終えた。

もしもSnapが、公募価格を実際よりも1ドル高い18ドルに設定していたとすれば、上場後の株価が一時的に公募価格を下回っていたことになる。もしも公募価格が19ドルだったならば、損失幅はさらに広がっていただろうし、初値で売り出していればSnapの状況はさらに悪化していた。それ以上はすぐに推測できるだろう。

現在Snapの株式は、公募価格よりも数ドル高い価格で売買されており、株価の伸び率は20%ちょっとということになる。先述の状況を考えると、これは株価設定ミスとは到底言えない(さらに昨年ようやく粗利が黒字になった企業に値段をつけることの難しさも勘案してほしい。これはほぼ不可能なことだ)。

もうひとつの例であるTwilioの株式は、上場初日で公募価格より92%も高い28.79ドルの終値をつけた。その後も上昇を続けた同社の株価は最高で60ドルに達し、その後30ドル台に急落した。さらに最新の業績発表の後、株価は20ドル台前半〜半ばへと下降。Twilioはそもそも公募価格を予想より高く設定していたにもかかわらず、IPO直後はそれよりもさらに高い価格をつけることができたのではないか、という憶測が広がった。しかしその後継続して株価が下がったことで、その憶測が間違っていたとわかり、IPO時の株価と比較すると、現在のTwilioの株価の方が急騰時の株価よりも実態に即しているように映る。

さらにこれに対し、現在24ドルの株価がついているのだから、公募価格は少なくとも15ドルより高くした方がよかったのではと反論することもできるが、この1年でさらに成長したTwilioの現在の株価と公募価格をそこまで細かく比較することにあまり意味はない。

上記の2社の例から分かる通り、IPO後に株価が急騰したからといって、公募価格が誤っていたと判断するのは時期尚早なことが多い。その一方で、両社の現状の株価がまだ公募価格を上回っていることを考えると、本当に公募価格が間違っていなかったと言い切れるのだろうか?

これはもっともな問いなので、もう少し歴史をさかのぼって考えてみたい。

昔々の話

GoProのIPOは大成功だった。株価は初日だけで24ドルの公募価格から30%も上昇し、その後は報道の通り、連日数十%の上昇が続き、すぐに公募価格の倍に到達した。これが2014年7月の出来事だ。

その後2014年中にGoProの株価は98ドルまで上昇を続ける。なんという価格設定ミスだと思っている人もいるかもしれないが、2015年11月には「GoProの株価が公募価格を下回る」という見出しが紙面を飾ることになる。その日、GoProは23.15ドルの終値をつけた。現在の株価が8.62ドルの同社が、24ドルの公募価格をつけられたのは、今となってはラッキーだったように感じられる。

GoPro以外にも、EtsyやMobileIron、Fitbitをはじめとする企業が、IPO直後の株価急騰とその後に続く急落を経験している。

この話が現在の(アクティブな)IPOサイクルに対する警告になることを祈っている。冷静さを失わずに、自分たちが必要としている資金に対する調達額の大きさへもっと注意を払うようにしてほしい。最新の評価額と同等もしくはそれ以上の時価総額がつくのであれば、それ以外のことは気にしなくても良いのだ。

実際に業績が下がってしまった場合はまた別の話になってくるが。

Snap、初決算は期待外れで株価急落―上場後の値上がり帳消し

Snapの上場は成功したと考えられている。しかし最初の四半期決算はウォールストリートの期待に遠く及ばず上場の成功は完全に吹き飛んでしまった。

Snapの発表によれば、同社の2017年第1四半期の売上は1億4960万ドルで、1株あたり2.31ドルの損失だった。この損失は株式ベースの報酬によるものが大きかった。一方でアナリストは1億5800万ドルの売上に対して0.16ドルの損失を予想していた。簡単に言えば成績は悪かった。同時にユーザー数の伸びも鈍っていた

この結果を受けて、株価は延長取引時間に20%以上下落し、18ドルを割り込んだ。これは上場後の値上がりを帳消しにして当初の売り出し価格17ドルぎりぎりに戻ったことを意味する。

四半期決算の内容を考えれば株価の急落は当然のことと受け止められている。上場後最初の決算はビジネスの詳細が公になる最初の機会だ。そこで成長余力とコスト管理の能力に関して深刻な疑問が持ち上がった。Snapのサービスがクラウド上で運営されていること、FacebookがSnapでもっとも人気のある機能を積極的にコピーして戦いを挑んでいることも悪材料となった。FacebookはSnap的な機能をInstagramに導入している。Instagramはすでに億単位のユーザーを擁しており、Snapのユーザーの伸びへの影響が懸念されていた。これが事実そうであるかどうかは分からないものの、株価にとっては「そのように見える」だけで十分だ。

Snapの赤字は昨年同期の1億40万ドルから今期は22億ドルに膨らんだ。ただし このコストの大部分は株式ベースの報酬だ。決算報告によれば、Snapの株式公開に伴って社員への報酬として計上されたRSU(制限付き株式ユニット)が20億ドルに上っている。つまりこのRSUの分を除けば事態は一見したほど悪いものではないとも言える。しかしRSU分を除外してもSnapの赤字は前年同期比で2倍になっている。

なるほど上場後最初の決算というのはどんな企業にとって波乱の体験となることが多い。Snapはまったく新しいジャンルの広告ビジネスであり、ウォールストリートは営業成績の予測にあたって2年あまりのデータしかなかった。ビジネス自体は急成長している―2015年から2016年の間に6倍にもなった。しかしコストもそれに比例して急騰した。今後ウォールストリートはSnapについてユーザー数、コスト、売上構造など、あらゆる変化をきわめて注意深く研究することになるだろう。

〔日本版〕SnapはAWSクラウド上で運営されており、上場申請書によればAWSに対して毎年10億ドルを支払う契約をしている。RSUはストックオプションと似ているが株式自体を給与の一部として定期的に支払うことを約束する制度。Wikipediaに解説がある。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Clouderaは株式市場へのデビュー初日を20%アップで終える、前途は明るいというが損失は続く

ビッグデータ分析のトップ企業Clouderaは、IPOで15ドルをつけ、その日の終値はそれから20%強増の18ドル9セントになった。これもClouderaの予測12〜14ドルを上回っている。

株価の上昇は新たな投資家にとって良くても、その結果は一部の社員にとっては大きな幻滅だ。彼らが同社の最後のプライベートラウンドの後でチームに参加した場合は、報酬株式の価額が下がったことになるからだ。Clouderaの時価総額は今約23億ドルだが、Intelが2014年に与えた41億ドルの評価額より相当少ない。この、最近ますます一般的になってきた現象は、“ダウンラウンドIPO”とあだ名されている〔IPOで評価額が下がること〕。

しかしCEOのTom Rileyは本誌TechCrunchのインタビューで、“今後の確実な成長が見込めるからそれは問題ではない”、と力説した。株式市場におけるパフォーマンスは良いから、いずれ40億ドル+には達するだろう。2015年に上場したSquareは、上場前の市場評価額の半分でスタートし、その後株価は倍増した。

同社は2008年以来10億ドルあまりを調達している。Intelが最大の株主で、IPOの前には同社の22%を所有していた。Accelが16.3%、そしてGreylock Partnersが12.5%を握っていた。

Clouderaは、銀行や通信企業など、幅広い業種部門に顧客を抱えている。同社は、テロ対策のためのインテリジェンスサービスも提供している。

“弊社の顧客は、それまでアクセスできなかった新しいデータを活用して、彼らの顧客に関するより良いインサイトを得ている”、とRileyは語る。

Clouderaの売上は伸びていて、1月に終わった会計年度の売上2億6100万ドルは、前年度の1億6600万ドルを大きく上回った。

損失は1億8632万ドルで、前年度の2億300万ドルから減少した。しかしIPO申請書のリスク要素の節には、“今後もしばらくは継続的に純損失を負うことが予測される”、とある。

今後は競合がClouderaにとって大きな障害物になると思われるが、Releyは“うちは大企業専門だから大丈夫”、と言う。しかし同社のS-1申請書には、競合他社の長いリストがあり、そこにはHP, IBM, Oracle, Amazon Web Services, Hortonworksなどの名が挙げられている。

IntelとClouderaは協働して、データ処理のスピードとセキュリティの改善に努めている。両社が共同で“パフォーマンス向上のためのソフトウェアとハードウェアを設計している”、とRileyは語る。IntelはClouderaの上場に際してその株式を買い増しした。

Morgan StanleyとJP Morgan、そしてAllen & CompanyがIPOの引受銀行だった。同社は“CLDR”の チッカーでニューヨーク証券取引所に上場した。

先月はSnapが2017年のテクノロジー企業のIPOの口火を切り、市場を覚醒させた。そしてその後は、MuleSoft, Alteryx, Yext, Okta, Netshoes, Carvanaと公開市場へのデビューが続いた。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

イメージ戦略の一環?―、Uberが財務情報の一部を公開

人気配車スタートアップのUberは、この度Bloombergに財務情報の一部を公開した。その後Bloombergが報じた数字からは、同社が未だに凄まじい勢いで成長を続ける様子や、巨額の赤字を記録しながらも現金の流出を抑えつつある様子がうかがえる。

これまでにもUberの財務状況がリークしたことは何度かあったが、今回発表された内容は同社にとってポジティブなものだった。また、Uberがこのタイミングで情報を公開したというのにも納得がいく。というのも、4月に入って2017年Q1の結果が出揃ったということもあるが、崩壊しきった企業文化や短気なCEO、相次ぐ幹部の離脱を背景に同社には批判が集中している。さらにアメリカのライバルLyftが最近6億ドルを調達し、評価額がさらに上昇したことも関係しているかもしれない。

どうやらUberは、売上が増加している様子を伝えることで、同社に対する論調を変えようとしているようだ。一連のスキャンダルが起きる以前のUberは、売上記録を次々と破るディスラプティブな企業として評価されていたため、同社の経営陣がポジティブな財務情報を公開することで、当時のような評価を取り戻そうとしているのかもしれない。

この記事では、公開された数字をもとに、まずは事実としての数字を並べ、その後にそれぞれが何を意味するのかについて考えていきたい。

事実、数字、調整後損失

Bloombergが公開した情報によれば、2016年度のUberの総取引額は200億ドルだった。そして、その3分の1以下にあたる65億ドルが純売上(GAAPベース)とされている。

さらに、2016年Q4の純損失はQ3よりも5%増大したと報じられている。Q4の純損失が9億9100万ドルだったとするBloombergの報道内容を考慮すると、Q3の損失は約9億4300万ドルだったとわかる。

また、2016年度の純損失額(調整済み)は28億ドルだった。ここに中国事業関連の損失を加えると、トータルの純損失額は38億ドルに達するとBloombergは試算している(なお、以前の報道では、2015年度の純損失額が”少なくとも20億ドル以上”とされていた)。しかしどちらの数字も、「従業員向けの株式報酬や不動産投資、車両購入費などの経費」を考慮していないと記されている。

そのため、”調整後”の2016年度の純損失が38億ドルだったとしても、厳密なGAAPベースの数字はもっと悪かったと考えられる。仮に38億ドルという数字を使うと、2016年度のUberの純利益率は-58.5%だった。

この膨大な赤字額は、急激な売上額の伸びで一部正当化されている。

2016年Q4の総取引額がQ3と比較して28%伸びた結果、Q4の純売上額は29億ドルに到達したとBloombergは報じているが、29億ドルという純売上額は、Q3に比べて74%も伸びている。

なぜだろうか?この差には純売上の計上の仕方が関係しているようだ。

純売上はユーザーが支払う料金のうち、Uberの取り分のみをカウントしている。しかしカープーリングサービス(UberPOOL)に関しては、料金全体が純売上として捉えられている。つまり、複数人のユーザーが1台の車を共有するカープーリングサービスにUberの売上がシフトするにつれて、同社の売上の増加率も高まっていくのだ。

上記を考慮すると、2016年のUberの売上額は、そこまで驚くようなものではないと言えるだろう。さらに、これによってQ4の成績の見方も変わってくるばかりか、総取引額と純売上額の伸び率の差分も一考に値する。

最後に、現在Uberは70億ドル分の現金を保有しており、さらに数十億ドル分の借入ができる状態にあるようだ。ここから、同社がすぐに現金不足の状態に陥る可能性は低いと言える。

赤字は問題なのか?

Uberが赤字を計上すること自体は想定の範囲内だ。会社の規模もあって、同社の赤字は長いあいだ見逃されてきた。

しかし、各四半期の調整後損失額が10億ドル弱というのは注目に値する。特にUberのコスト構造を考えると、圧倒的なバーンレートだ。

以前までのUberであれば、オペレーションや成長を支えるために新たな資金を調達するのにも、何の心配もいらなかった。しかし、数々のスキャンダルや、設立からの年数・評価額・市場の成熟度と見合わない継続的な赤字を考慮すると、投資家はそこまでUberへの投資に意欲的ではないかもしれない。

これまでUberに投資したことがない、もしくは今後同社への継続的な投資を考えている投資家は、きっと「UberPOOLの売上の考え方がUberXの売上とは違うのであれば、GAAPよりもNon-GAAPの数字を信用したほうがいいということですか?」という質問を投げかけたくなるだろう。そうなるとUberは難しい立場に立たされる。というのも、Uberは売上に関してはGAAPベース、損失に関してはNon-GAAPベースの数字を見てもらいたい一方で、投資家は保守的にNon-GAAPベースの(小さな)売上とGAAPベースの(大きな)損失に注目するかもしれないからだ。

以上をまとめると、なかなか答えが見えづらい問いにたどり着く。Uberはどのように黒字化しようとしているのだろうか?

黒字化への道

修正や注意書きを無視すれば、Q4の調整済み営業利益はQ3と比較して大幅に改善している。GAAPベースの純売上額は74%も増加している一方で、調整後の赤字幅は5%しか拡大していない。つまり、売上に対する損失の割合は改善しているのだ。

急速に成長しながらも未だ赤字続きのUberは、このような改善点を投資家に見せ、同社の将来に投資家の目を向けようとしている。永遠に赤字を出し続けようと考えている企業は存在せず、もちろんUberも例外ではない。長期的な利益のために短期的な損失を背負うというのは、資金豊富で成長志向な企業が目指す姿でもある。

そうすると、黒字化はむしろタイミングの問題だと言える。では、Uberはいつ頃黒字化を果たせるのだろうか?

この問いには、オペレーション上のコストを含むさまざまな要因が関わってくる。例えば、特定の時間内の走行距離に応じて、Uberは一定数のドライバーにインセンティブを支払っている。

なぜUberは情報公開に踏み切ったのか?

これまでのリークと違い、今回Uberは自らBloombergに財務情報を手渡すと決めた。その様子からは、同社に対する世間の厳しい風当たりをどうにかしようという、Uberの裏の狙いが垣間見える。

多くの私企業がそうであるように、Uberも基本的には事業に関する情報をできるだけ公開しないようにしている。しかしCEOのTravis Kalanickはそこから一歩踏み出して、繰り返しIPOに対する関心のなさを表明しており、昨年にはIPOを”できるだけ後ろ倒しにしたい”とさえ語っていた。

その一方で、Bloombergの記事からも分かる通り、Uberは赤字を垂れ流し続けているため、資金面では投資家に頼るしかない状態にある。

これまでUberは、さまざま投資家から資金を引き出すことに成功しており、680億ドルという膨大な評価額で、VCからの投資を受けたスタートアップとしては、他社を大きく引き離す最大規模の企業へと成長した。

しかし、その結果株価も急上昇したため、投資家は段々とUberの将来的な成長度合いに疑問を抱きだしているかもしれない。通常ベンチャー投資家は10年間で3倍のリターンを求めているものの、厳しい競争にさらされ、スキャンダル騒ぎで企業文化が疑われているUberの株価が、今後3倍になるというのは想像しづらい。

つまり、Uberが引き続き資金を調達するためには、株式上場以外の道はないのだ。上場を果たせば、Uberの従業員もストックオプションのメリットを享受することができる。

もしかしたら、今回の情報公開は市場の反応をうかがうための作戦だったのかもしれないが、それよりはむしろ、Uberに対して否定的な意見を持っている人を黙らせるための動きであったように見える。

まだわかっていないこと

これまでにも断続的にUberの財務情報がリークされてきたが、四半期ごとや年度ごとの売上成長率に関してはまだハッキリしていない。

さらに、UberPOOLに関する売上の計上の仕方にも疑問が残る。ドライバーの取り分がわかれば、もっと全体像が見えてくるだろう。

また、先日公開された”貢献利益(contribution margins)”に関する記事では、Uberのメイン事業における売上やコストの詳細が明らかになったが、他事業の詳細については未だわかっていない。

例えばフードデリバリー事業のUberEATSは、これまでに世界中の数十都市への進出を果たしている。The Informationの昨年のレポートによれば、2017年度の純売上額におけるUberEATS関連の金額は1億ドルくらいになると予測されている一方、この新規サービスのドライバーに対するインセンティブがかさみ、関連赤字額は1億ドル以上になるだろうと推測されている。

Uberは確かに成長しているが、赤字幅も(売上成長率よりは低いものの)拡大し続けている。同社は明らかに、Amazon式の成長への再投資を見逃してもらおうとしているようだが、いつかはUberも投資家に対して黒字化への戦略を(大々的に発表するかどうかは別にして)示さなければいけなくなるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

筆頭株主Intelとの共同開発も進めるClouderaが上場申請

大方の予想通り、過去にIntelからの巨額出資を獲得したビックデータ企業のClouderaがIPOの申請を行ったことが明らかとなった。

S-1フォームで同社の財政状態を確認することができる。収益は伸びていて、2017年1月に終了した会計年度では2億6100万ドルを記録している。昨年同期における収益は1億6600万ドルだった。

最終損益は1億8632万ドルの損失。昨年の2億300万ドルと比べると損失額は減っている。フォームの「リスクファクター」の項には「近い将来に関して言えば、今後も損失が発生することが予測されます」と記載してある。

Clouderaの事業領域には多くの競合が存在することを同社は認識している。彼らは、HP、IBM、Oracle、Amazon Web Services、Hortonworksなどの企業を競合として挙げている。

2014年、IntelはClouderaに7億4000万ドルを出資した。当時のバリュエーションは41億ドルだ。しかし、IntelとClouderaのパートナーシップは財務的なものだけではない。S-1フォームによれば、この2社は大量のデータセットを処理するスピードとセキュリティ性を向上させるためのプロダクトの共同開発に取り組んでいるようだ。フォームには、「私たちが想定している共同開発の例として、Intelのアーキテクチャーに演算加速機構を組み入れることでデータを暗号化するスピードを向上させるという試みがあります。また、IntelとClouderaはSpot(インキュベーティング・プロジェクト)の開発にも取り組んでいます。これはオープンソースのサイバーセキュリティ分析プラットフォームで、ビックデータ分析と機械学習の技術によって想定される脅威を事前に警告するオープン・データモデル上に構築されたものです」と書かれている。

2008年まで遡った同社の累計調達金額は10億ドルだ。S-1フォームによればClouderaの筆頭株主はIntelで、発行済株式の22%を同社が保有している。以下、Accelが16.3%、Greylock Partnersが12.5%を保有している。

Clouderaが最後に資金調達を行ったのは3年前だ。IPOを目指し、かつベンチャー資金が投下された企業としてはその空白の期間は長かったと言える。ただ、この数年間Clouderaによる買収やIPOの噂は絶えなかった。

今回のIPOで主幹事を務めるのはMorgan Stanley、JP Morgan、Allen & Coの3社だ。Clouderaが上場するのはニューヨーク証券取引所(NYSE)で、ティッカーコードは「CLDR」。昨年は大半のテック系企業がNasdaqを目指していた一方、今年上場したSnap、Mulesoft、AlteryxなどはClouderaと同じくNYSEに上場した。

JOBS Actにより、企業は通常、ロードショーの約15日前に申請書類を公開する。つまり、企業と株式市場が安定していれば、実際の上場が行なわれるのは4月下旬から5月上旬になる可能性が高い。

株式の発行価格の合計は2億ドルだ。しかし、これはあくまで推定でしかない。実際の発行価格が最終的に決定するのは上場日の前日夜となる。

今回の上場により、Clouderaも最近のテック系企業によるIPOラッシュに加わることになる。閑散とした昨年の後に起こったIPOラッシュの先駆けとなったのは、今月はじめに上場したSnapだ。その後、Mulesoft、Alteryxがその流れに加わることとなる。YextとOktaもすでに申請を済ませており、彼らのデビュー戦は今後数週間のうちに行なわれると見られている。

直近に上場を果たした企業の成功、そしてポジティブな株式市場の動向によりIPOの「窓」は開いている。投資銀行と企業も株式公開に乗り気だ。

[原文]

(翻訳:木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

データ分析のAlteryxが上場 ― 株価は約11%上昇

米国時間24日、データ分析のAlteryxがニューヨーク証券取引所に上場した。アメリカでは、これが今年3番目のIPOとなる。IPO時の公募価格は14ドルだったが、金曜日の株式市場では10.7%高の15.50ドルの終値をつけている。

Alteryxの顧客はAmazon、Ford、Coca-Colaなどの企業だ。同社はこれらの顧客にデータ分析ツールを提供し、プロダクトの改善やマーケットに存在する非効率性の発見の手助けをしている。CEOのDean Stoecker氏のによれば、同ツールのリテンション率は高く、それにより高い精度で収益を予測することが可能だという。

Stoeckher氏によれば、Alteryxは「インストールと使い方の学習が簡単なプラットフォーム」だ。また、彼らは「セールスオペレーションやマーケティング、HR分析」まで幅広い業種のさまざまな部署を顧客として獲得している。

昨年度のAlteryxの収益は8580万ドルで、当期純損失は2430万ドルだった。2015年度の収益は5380万ドル、最終損益は2150万ドルの損失となった。

2010年の創業以来、これまでに同社は少なくとも1億6300万ドルを調達している。出資比率はInsight Venturesが27%、Thomson Reutersが13.1%、Sapphire Venturesが13%となっている。その他にもToba CapitalやICONIQなども出資に加わっている。

カルフォルニア州アーバインを拠点とするAlteryxは、急成長を遂げているカリフォルニア南部のテックシーンの一翼を担う企業だ。先日上場したSnapの本拠地もカリフォルニア南部に位置するVeniceであり、今年上場した企業の2/3は南カリフォルニア出身の企業だということになる。

Alteryxに続き、ニューヨークのYextとサンフランシスコのOktaもすでに上場申請済みだ。彼らの株式市場デビュー戦の日は今後数週間の内に訪れるだろう。昨年は不調だったテック企業のIPOだが、今年は「上場の窓」が開いていることを多くの企業が望んでいるところだ。

Meritech Capitalでマネージングディレクターを務めるRob Ward氏によれば、同社がAlteryxへの出資を決めたのは、「データの消費と保管のあいだには巨大なチャンスが眠っていると考えたから」だという。彼らはAlteryxが「複雑なデータ・エコシステムへの解決策を求める何百万のデータドリブンな企業に向けて、セルフ分析ツールを提供するリーダー的企業となる」ことを望んでいる。

Stoecker氏によれば、同社は今回のIPOによってビジネスの国際展開を加速する構えだ。また、他社の買収も視野に入れているという。

「IPOはこれから始まる物語の序章でしかありません」と彼は語る。

[原文]

(翻訳: 木村拓哉 /Website /Facebook /Twitter

MuleSoftは上場初日に46%アップで終わる、エンタープライズ系テク企業への市場の信頼厚し

今年最初のエンタープライズ系テクノロジー企業のIPOは、レースの始まりを告げた。

MuleSoftは企業顧客、たとえばNetflixやSpotifyなどが、いろんなサービスやアプリケーションのAPIを統合的に使って自らのビジネスニーズを満たすタスクを助けている。その同社は今日、17ドルのIPO価格に対して24ドル75セント、46%のプレミアムで引けた。その17ドル自体も、予想レンジの14-16ドルより上だった。

同社はIPOで2億2100万ドルを調達できたが、17ドルではなく20ドルだったらもっと調達できただろう。銀行家たちは通常、初日のご祝儀として20-30%の短期上昇を期待する。同社の価格が低すぎたら、彼らはお金を“テーブルの上に残した”(持ち帰らなかった)ことになる。

Snapの場合も同様で、やはり17ドルのレンジを超え、初日には大きく上がった。しかし2週間後の現在は、すでに20ドル以下になっている。

主に機関投資家と、引き受け銀行と仲の良い高資産の個人たちが17ドルでアクセスするのがIPOのスタンダードだが、今日(米国時間3/17)のMuleSoftは24ドル25セントで明けたから、24ドル75セントの仕舞いは、ふつうの投資家にとってかなり小さな儲けだ。

MuleSoftは金曜日(米国時間3/17)に、“MULE”というチッカーでニューヨーク証券取引所に上場した。NYSE(ニューヨーク証券取引所)にとってそれは、Snapの上場に続く再度の勝利だ。

MuleSoftは昨年の売上が1億8770万ドルで、2015年に対し1億1030万ドルの増、前年比では5760万ドルの増だ。純損失は4960万ドルで、前年の6540万ドルから減った。

【中略】

同社の最大の株主(17.1%)であるLightspeed Venture PartnersのパートナーRavi Mhatreによると、彼は初期からMuleSoftが良い投資対象だと認識していた。なぜなら同社は、ファウンダーたちが“明確なビジョンを”持っていたからだ。LightspeedはSnapとNutanixの最近のIPOでも投資したが、Mhatreが言う、勝者を見分けるコツとは、それが“スケーラブルで粘り強い”企業であることだ。

Battery VenturesのDharmesh ThakkerはMuleSoftへの投資の機会を逸したが、一般的にエンタープライズ系企業のIPOに対して楽観的だ。消費者向け企業のIPOと違ってエンタープライズ系のIPOは、“爆発的な上がり下がりがなくて安定成長が期待できる”からだ、と彼は言う。エンタープライズ系企業は、そのビジネスモデルに関しても、将来の予期不能の激変がないことが期待できる。だから、上場企業として適格なのだ。

【後略】

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

MuleSoftのIPO価格は予想を上回って17ドル、エンタープライズ系スタートアップの上場ブームとなるか

エンタープライズソフトウェアのMuleSoftが明日(米国時間3/17)上場するが、そのIPO価格は17ドルとなり、提案されていた14-16ドルよりもやや高い。

明日の上場先はニューヨーク証券取引所で、チッカーシンボルは“MULE”になる。2006年に創業したMuleSoftは、いろんなところのAPIを駆使して複数のアプリケーションを統合化したい、という企業のビジネスニーズに奉仕する。

同社の獲得資金は約2億2100万ドルになり、MuleSoftは上場の一環として1300万株の普通株を発行する。これにより同社の総評価額は21億4000万ドルとなり、この前プライベートに資金調達をしたときの15億ドルを大きく上回る。

このところ、うまくいっているIPOが多いから、明日のMuleSoftも上々だろう。

Snapchatの親会社Snap Inc.は先週上場して39億ドルを発行、価格は予想を上回る同じく17ドルだった。SNAPは初日の売買で44%アップし、最近株価は下がっているものの、商い額はIPO価格より上だ。今朝はラグジャリーグッズのメーカーCanada Gooseが上場して2億2500万ドルを獲得、終値はIPO価格12ドルを25%上回った(その12ドルも予想域より高い)。

MuleSoftのIPOは、大手エンタープライズソフトウェア企業の上場としては今年初めてである。それが成功すれば、そのほかのエンタープライズソフトウェア企業も後に続くだろう。先週は消費者テクノロジー企業Snap Inc.のまあまあの成功を見ているだけに、なおさら気が逸(はや)るところだ。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))