すべてのSPACが純粋なゴミというわけじゃない

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準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

みなさんこんにちは。先週は短い1週間だったが(米国は5月31日月曜日が祝日だった)、ここ数日のうちに扱ったニュースの多さにかなり参っている。そこで、一旦立ち止まって、愚痴をこぼしつつ、ちょっとした気休めにSPAC(特別買収目的会社)の話をしよう。

ただし、米国時間6月6日の月曜日にはBabylon Health(バビロン・ヘルス)のSPACについて掘り下げる予定だが、今回はSPACの投資家向けプレゼンテーションの分析をするわけではない。今回はその代わりに、SoFi(ソーファイ)とBarkBox(バークボックス)の白紙小切手取引(SPACのこと)について話したい。

両社とも、しばらく前に公開が行われた後、先週から取引が開始された。ものごとは順調に進んだのだろうか? SoFiの公開企業としての最初の動きについてCNBCは以下のように書いている。

Social Finance(ソーシャル・ファイナンス)の略称を名前としたSoFi(ソーファイ)が、ベンチャーキャピタル投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が所有する白紙小切手会社(SPAC)のSocial Capital Hedosophia Corp Vと合併して上場した。株価は12%以上上昇し、22.65ドル(約2478円)で終了した。

これはSoFiにとっての勝利であるばかりでなく、ここ数カ月やや翳りの見えるSPACへの投資で、いくぶん苦戦しているチャマス・パリハピティヤ)氏にとっても良い結果だ。もちろん、SPACによる公開はすべて投機的なものだが、一部の一般投資家は企業のファンダメンタルズよりもパリハピティヤ氏の評判の方を重視していたようだ。そもそも他に何ができるだろう。

BarkBoxも、Barrons(バロンズ)が報じたように、SPAC統合が完了した後先週取引を開始したときには、まったく問題がなかった。

BarkBox(ティッカー:BARK)の株価は水曜日(米国時間5月2日)には約7.5%上昇し、午後には12ドル(約1313円)前後で取引された。これにより、同社の市場価値は24億ドル(約2627億円)近くになった。

その後、BarkBoxの株価はやや下落したが、SPAC当初の価格を下回ることなく推移している。これは、設立が発表されたときよりも市場の状況が変化していることを考えると、勝利と言えるだろう。

1週間に2つの良い結果が出たことは、SPACの世界そのものや、市場にいる白紙小切手(SPAC)側やスタートアップ側の無数のプレイヤーにとって朗報だ。もちろん、今回の2つの確たる結果がトレンドを生み出すわけではないが、着実に収益を上げている企業にとっては、SPACルートは世間が噂するほどには穴だらけの道ではないということは明らかだ。

暗号資産への賭け

SPACが基本的には胡散臭いと思っているのなら、白紙小切手(SPAC)ブームと暗号資産の組み合わせについて話を聞いて欲しい。以下にお話ししよう。

今週、暗号資産に特化しステーブルコインを特に好むCircle(サークル)が4億4千万ドル(約481億4000万円)を調達した。USDC(USD Coin)というステーブルコインで知られる同社にとって、これは多額の資金であり、SPACのIPOを検討しているとも言われている。

ところでステーブルコインとは何だろう?それは法定通貨と連動している暗号資産(仮想通貨)だ。ご想像の通り、USDCの場合には米ドルと連動している。ステーブルコインは、暗号資産の世界の中での有用な法定通貨代替物で、非常に人気があることがわかっている。

CircleのUSDCは、228億ドル(約2兆4950億円)相当が流通しており、CoinMarketCapのデータによれば、1日の取引額は数十億ドル(数千億円)だという。悪くない!しかし、この会社が一体どのようにして魅力的な粗利益率の下に莫大な収益を上げているのかは、あなたの謙虚なるしもべである私にとってそれほど明確ではない。これは、一度に5億ドル(約547億円)近い民間資金を確保した会社には、当然明確化が期待されることだ。

だから、今度ばかりは、SPACをして欲しい。もちろん莫大な数字の中身を早く見たい、という好奇心からだ。

成長は?

先日Ron Miller(ロン・ミラー)記者と私は、いくつかの公開企業の決算報告書を調査した。その結果、一部の企業では、ご自慢のデジタルトランスフォーメーションの加速本当に実現していることがわかった。

先週のニュースには、その議論の続きがあった。例えば、Zoom(ズーム)の業績は、私たちの仮説を裏づけるものだった。その2022年第1四半期の売上高は、2021年第1四半期と比較して191%増加した。それはまさに目を見張る好成績だ。

その一方で、Dropbox(ドロップボックス)とBox(ボックス)は、先週外部の投資家から新たな圧力を受けた。かつて非公開市場の寵児であった2社は、成長の壁にぶつかり、そのために攻撃を受けている。「成長かさもなくば死を」は、単なるスタートアップ向けの助言ではない。それは、ソフトウェア企業が自らの運命を握り続けるために必要なことなのだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch ExchangeSPAC暗号資産ステーブルコイン

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

GMやPalantirが出資するコネクテッドカーデータ分析のWejoがSPAC経由で上場へ

GMやPalantirが出資するコネクテッドカーデータスタートアップのWejoがSPAC(特別買収目的会社)のVirtuoso Acquisition Corpとの合併による上場を計画している。米国時間5月28日に当局に提出した書類の中で発表された合意では、合併会社の評価額は負債含め8億ドル(約879億円)となる。

この取引でWejoは3億3000万ドル(約363億円)を調達する。内訳はVirtuosoからの現金2億3000万ドル(約253億円)とPIPE(上場企業の私募増資)での1億ドル(約110億円)だ。Wejoによると、既存の戦略投資家であるPalantirとGMがこの取引をまとめた。Wejoは2社の投資額を開示しなかった。投資家へのプレゼン資料によると、現株主はWejoの64%を保有する。

第3四半期に予定されている合併処理完了後は同社はNASDAQに上場する。

Wejoは車両に取り付けられたセンサーからリアルタイムにデータを収集するために自動車メーカー、そしてトップのサプライヤーと協業している。同社のクラウドプラットフォームはデータを集めて正規化し、そうした洞察を顧客と共有する。2030年までに同社はコネクテッドカーのデータマーケットが5000億ドル(約55兆円)規模に、サービスが実際に提供しうる市場規模は610億ドル(約6兆7000億円)になると予想している。これらの数字は世界中のコネクテッドカーが6億台超という予測に基づいている。

Wejoは、取引による現金収入で5カ年計画に必要な資金のすべてを賄い、また自動車メーカーやOEMのオンボーディングの迅速化やサービス展開の継続、新規マーケットへの拡大などいくつかの成長目標達成にもあてる。
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カテゴリー:モビリティ
タグ:WejoSPACコネクテッドカー

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

EV急速充電開発のオーストラリアのTritiumが約1310億円の評価額でSPAC上場へ

また1つ、モビリティ業界でのSPAC取引だ。今回はオーストラリア・ブリスベン拠点のDC急速EV充電デベロッパー兼プロデューサーのTritium(トリティウム)だ。同社は12億ドル(約1310億円)という評価額でのSPAC(特別買収目的会社)合併で上場する。

Tritiumは現地時間5月26日、SPACのDecarbonization Plus Acquisition Corp. II(DCRN)との合併を通じてNASDAQに上場すると明らかにしたが、この取引がいつ完了するのかタイムラインは示さなかった。合併により総収入は最大4億300万ドル(約440億円)となることが見込まれている。Tritiumはティッカーシンボル「DCFC」で取引される。

この取引は通常合併の際に行われる新会社への資本注入、PIPE(上場企業の私募増資)を含まないという点で珍しい。

「我々はPIPEを必要としていません。というのも、DCRNは4億ドル(約440億円)超のSPACであり、当社の株主たちはわずか2億ドル(約220億円)のキャッシュクロージングに同意したからです。これは償還のリスクを大幅に減らします」とTritiumのCEOであるJane Hunter(ジェーン・ハンター)氏はTechCrunchに語った 。「また、当社の売上高は2016年以来、年平均成長率(CAGR)56%で成長していて、当社がかなりのマーケットシェアを握っている米国や欧州など主要マーケットでプレゼンスを拡大しています。売上高の成長は成長戦略を実行するのに必要な新たな資金への依存を減らすのに役立っています」。

2001年創業のTritiumはDC急速充電のためのチャージャーのハードウェアとソフトウェアを手がけている。同社のプロダクトでは、1分で20マイル(約32km)走行分、あるいは5分で100マイル(約160km)走行分のEVバッテリー充電ができる、とDPAC IIの会長Robert Tichio(ロバート・ティキオ)氏は5月26日の投資家説明会で述べた。DCチャージャーはACチャージャーよりも高価だが、すばやく車両に給電できる。通常、ACチャージャーは家庭に設置されており、ドライバーが夜間に車両を充電するためにプラグをつなぐ。一方のDCチャージャーは公共の充電ステーションに設置されていることが多い。

「ドライバーは公共充電のエクスペリエンスを、その日走る距離に必要なガソリンを数分でまかなえる現在のガソリンスタンドでの給油と同じようなものに可能な限り近づけたいはずです」とハンター氏は述べた。

Tritiumの最大のマーケットは欧州で、同社の売上高の70%を占める。北米が20%、アジアが10%だと同氏は投資家らに説明した。同社は合併取引で獲得する資金を製造能力の拡大と販売の成長に使う。

EVのマーケットシェアが拡大するにつれ、公共のEVチャージャーステーションに対する需要は今後20年で急激に増えると見込まれている。分析会社Grandview Researchによると、EV充電インフラマーケットの規模は2020年に20億ドル(約2180億円)で、2028年までに39%近く成長すると予想されている。ジョー・バイデン大統領は全国のEV充電網は2兆ドル(約218兆円)のインフラ投資計画で最優先事項だと述べた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TritiumSPAC電気自動車充電ステーション

画像クレジット:Tritium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lucid Motorsが上場を控えWaymoやIntelなどから幹部を引き抜き

Lucid Motors(ルシード・モーターズ)は、公開企業となる準備を進める中、WaymoやIntel、Xperiなどから人材を引き抜き、経営陣とテクニカル面を主導するチームを増強している。Lucid Motorsは米国時間5月5日、Waymoで働いていたSherry House(シェリー・ハウス)氏が最高財務責任者に就任すると明らかにした。

ハウス氏はWaymoで4年過ごし、直近では財務部長およびIR(投資家向け広報活動)責任者を務めていた。Waymoの前は、Visteon Corporationで経営企画担当副社長を、Deloitte Corporate Financeでテクノロジー・メディア・通信担当マネージングディレクターを歴任した。

Lucid Motorsはまた、以前AppleとIntelで役職に就いていたMargaret Burgraff(マーガレット・バーグラフ)氏をソフトウェア検証担当副社長に、Sanjay Chandra(サンジェイ・チャンドラ)氏をIT担当副社長に、Jeff Curry(ジェフ・カリー)氏を販促担当副社長に指名した。バーグラフ氏は直近ではIntelでグローバルデベロッパーリレーションズ担当副社長を務め、エンジニアリングと世界の独立ソフトウェアベンダーがIntelのプロダクトと協業できるようにするのが仕事だった。同氏はまた、主にテックスタートアップを支援するグローバルベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの会社Continuous Venturesでパートナーも務めた。

チャンドラ氏は、Lucid Motorsに加わるために情報担当最高責任者とクラウド運用責任者を務めていたTiVo / Xperiを退職した。同氏はPayPal、Virgin Mobile、Workdayでも働いた経験がある。カリー氏の前職はJaguarブランドでの最高マーケティング責任者同等の役職で、FerrariとAudiにも従事した。同氏はSiriusXMでの副社長クラス役職を含め、自動車業界以外でのマーケティングのキャリアも持つ。そしてブランド戦略コンサル会社Mere Mortalsの創業パートナーでもある。

Lucid Motorsの新規採用は、特別買収目的会社Churchill Capital IV Corpとの合併完了が数週間後に迫る中でのものだ。完了すればLucid Motorsは正式に上場企業となる。サウジアラビアの政府系ファンドが引き続き最大株主となる合併会社の取引株式価値は117億5000万ドル(約1兆2800億円)となる見込みだ。私募増資取引では1株15ドル(約1600円)と設定され、見積もり株式価値は240億ドル(約2兆6200億円)となる。Churchillからの出資と現金で、計約44億ドル(約4800億円)がLucidに入る。

上場によってLucidは、同社初の電気自動車となるラグジュアリーなLucid Airの生産を開始するのに必要な資金を手にする。同社は元々、生産と納車を今春開始する予定だったが、2021年後半にずらした。Lucid Airはまず北米にお目見えし、2022年に欧州、そして2023年に中国でも展開する。

Lucidはまた、2種類目の車両となるGravityという高パフォーマンスでラグジュアリーなSUVを2023年に北米マーケットに投入する。車両はアリゾナ州カサグランデに新設した工場で生産される。7億ドル(約760億円)をかけた同工場建設の第1段階は2020年完了し、生産能力は年3万台だ。最終的に同社はもう3段階かけて工場を拡張し、生産能力を年36万5000台とする計画だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Lucid Motors新規上場SPAC

画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

3DプリントマーケットプレイスのShapewaysがSPACで上場へ

Shapewaysは米国時間8月24日の今朝、SPACを通じて株式公開する契約を締結したとの以前の報道を確認した。2020年にハイテク企業の間で人気が高まった同社の製品は、MarkforgedやDesktop Metalなど多くの3Dプリント企業がすでに採用している。

Greg Kress(グレッグ・クレス)CEOはこのニュースに関連したリリースの中で「誰もがデジタルデザインを物理的な製品に迅速に変換できるようにするという我々のビジョンは今日、Shapewaysを上場企業に移行することで、重要なマイルストーンに到達しました。私たちはビジョンの実現に成功しており、今回の資金調達により大規模なデジタルマニュファクチャリングを可能にし、Shapewaysの付加的な造形能力を加速させるとともに、当社の材料や技術をより多くの市場や産業に拡大することができます」。

2007年に設立されたShapewaysはオランダにルーツを持つニューヨークを拠点とした企業で、3Dプリントをサービスとして提供している。具体的には、ユーザーが3Dプリントオブジェクトのプリントを産業部門にアウトソースできる。同社のサービスには、ユーザーが3Dプリントされたオブジェクトを売買できるマーケットプレイスが含まれている。

Crunchbaseによればこれまでに1億700万ドル(約120億円)を超える資金を調達してきたShapewaysは、ブランクカンパニーのGalileo Acquisition Corpとの間で逆方向の合併を行う。この買収によりShapewaysの価値は4億1000万ドル(約450億円)となり、1億9500万ドル(約210億円)の資金を得ることができる。この資金は「Shapewaysの金属積層造形の能力を加速させ、材料や技術の提供を拡大して市場を拡大し、顧客のシェアを拡大するとともに、追加の運転資金を提供する」ことに充てられる。

この買収は規制当局による審査を受けることになるが、ニューヨーク証券取引所では「SHPW」として上場することになる。この取引は、今夏に完了する予定だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Shapeways3DプリントSPAC

画像クレジット:Shapeways

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

クリエイターのための経済オペレーティングシステム

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

先週のTechCrunchでは、Pico(ピコ)の650万ドル(約7億円)の資金調達を取り上げた。そこでは同社を「ニューヨークのPicoは、オンラインのクリエイターやメディア企業がお金を稼げて顧客データを管理できるようにする」と紹介した。The Exchangeは以前にもPicoを取り上げたことがある。最も近いところでは2020年半ばに、独立系出版やサブスクリプションメディアの世界での話題を紹介している。

関連記事:収益化ツールを統合したクリエイター向けCRMのPicoが7.1億円調達

Picoのラウンド記事では、Anthony Ha(アンソニー・ハー)記者がすばらしい仕事をお届けしたが、私もまた同社とZoom(ズーム)コールを行った。なぜなら、彼らの新しい資金調達は一種の再出発のようなものであり、その件について私はもっと理解したかったからだ。

Picoのチームは、クリエイティブなデジタルツールの歴史的変遷を説明しながら、彼らのビジネスの中で何が変わったのかを説明してくれた。彼らによれば、以前、この世界はコンテンツのホスティングや配信を中心に展開していたという。同社の考えでは、クリエイティブに特化した新世代のツールが登場することで、Substack(サブスタック)やWordPress(ワードプレス)のような、CMS(コンテンツ管理システム)がツールの中心ではなくなる時代がやってくる。むしろ、マネタイズが中心となるのだ。

そこに賭けたPicoは、クリエイター市場向けのオペレーティングシステムを開発することにしたのだ。私の直感では、マネタイズを中心としたクリエイティブなデジタルの世界は、それまでの時代よりも収益性が高いと思える。

Picoの想定では、クリエイターが最初にどこでオーディエンスを獲得したかに関わらず、最終的にはマルチSKU(管理単位)、あるいはマルチプラットフォームになるため、顧客データを一元管理することが重要になる。

スタートアップが提供する今回改良されたサービスは、これまでのようなちょっとしたマネタイズのためのツールであると同時に、CMS(コンテンツ管理システム)やその他プラットフォーム上のデジタルアウトプットの上に置くことができる、クリエイターに特化したCRM(顧客関係管理システム)なのだ。これまでのところ、同社の顧客数は順調に伸びていて、2020年は約5倍の伸びを記録した。この先、Picoがそのビジョンにどこまで乗れるのか、クリエイター経済中の中流階級の形成に貢献できるのかどうかを見極めていきたい。

現実世界の食料品店革命

コロナ禍の期間中、Instacart(インスタカート)の驚くべき飛躍が取り沙汰されるなかで、ほとんどの人びとが、まだ果物や野菜を買うために実店舗に行っているという事実がやや忘れられている。

もちろん食料品店はその事実を忘れてはいない。しかし、彼らは歴史的に薄利多売であり、Instacart時代には顧客獲得競争も激化しているため、あまり安心していることはできない。彼らが顧客との関係を第三者に委ねることなく、よりデジタル化された戦略を追求するにはどうすればよいのだろうか?

関連記事:買い物代行サービスのInstacartが283億円を調達、評価額は5カ月で2倍以上の4兆円超に

その答の1つが、Swiftly(スイフトリー)かもしれない。このスタートアップが開発している技術は、あらゆる規模の食料品チェーンがデジタル化を進め、最新のモバイル技術を活用し、広告によってより多くの収入を得るとともに、消費者により多くの買い物の選択肢を提供できるような技術だ。イイ感じかも?

Crunchbaseのデータによると、このスタートアップはこれまでに1500万ドル(約16億2000万円)強を調達しているが、米国で無数の店舗を展開する消費者向け小売業者Dollar Tree(ダラー・ツリー)との取引を開始したことで、再び私たちの記憶を呼び起こした。

私はSwiftlyについては昔から知っていた。共同創業者のHenry Kim(ヘンリー・キム)氏がSneakpeeq(スニークピーク)(後のSymphony Commerce[シンフォニー・コマース])を開発していた頃に会ったことがある。Symphony Commerceは、最終的にQuantum Retail(クオンタム・リテイル)に買収された。しかし、サンフランシスコ近辺で長年にわたってキム氏と会話をしてきた中では、Symphony Commerceを創業する前に彼が経験していた食料品市場の話が繰り返し出されていた。

5年以上前から、キム氏が食料品店とデジタルの可能性を声高に語っているのを聞いていたので、彼の希望と計画から生まれた会社が有力なパートナーを獲得したのを見るのはうれしい。

Swiftlyは2つの主要製品を提供している。リテールシステムとメディアサービスだ。リテール部門は、モバイルを使う買い物客に対して、レジ精算サービス、ロイヤリティプログラム、パーソナライズされた特典などを提供している。また、メディア部門は、実店舗に対して、通常は見逃されている消費者向けパッケージ商品(CPG)の広告費を手に入れるチャンスを提供する。同時にアナリティクスを活用することで、販売した広告の効果をより正確に把握することができる。

Swiftlyは、現在大きな公開取引案件を抱えているので、今後数四半期でより多くの資金を調達することになると思う。何か分かり次第お知らせする。

UiPath、SPACそしてすてきなベンチャーキャピタルラウンド

先の2週間、The ExchangeはUiPath(ユーアイパス)のIPOについてかなりの量の記事を書いてきた。おそらく書きすぎといわれるくらいに。しかし、念のためにいっておくなら、同社の最初のIPO価格帯は、出された評価額が予想よりも少し低くなったため、レイトステージ投資家に対する警告のようなものとなった。そして同社はその価格帯を引き上げて、私たちの懸念を払拭はしないまでも和らげてくれた。そして、最終的なプライベートラウンドに比べればまだ割安ではあるものの、調達した価格帯を上回る価格をつけた。その後、取引を開始してからは順調に推移して、CFOも「順調だ」と語っている。

同社のプライベート〜パブリック評価額の経緯を詳しく知ろうと、The Exchangeは、Battery VenturesのジェネラルパートナーでB2B投資家であるDharmesh Thakker(ダーメッシュ・タッカー)氏に、IPOの価格よりも少し高めだった同社の最終的なプライベートラウンドに対する彼の見解を尋ねた。彼の言葉を紹介しよう。

あのラウンドには、スマートマネーが絡んでいました。そうした人びとは、Twilio(トゥイリオ)、Atlassian(アトラシアン)、MongoDB(モンゴDB)、Okta(オクタ)、Crowdstrike(クラウドストライク)などがIPO後に価値を5~10倍に上げたように、重要な価値創造はIPO後3~5年で起こることを理解しているのです。

現在、UIPathは、600億ドル(約6兆5000億円)のオートメーション市場の中での普及率は、わずか1%に過ぎない6億800万ドル(約659億円)です。COVID以降、反復的なタスクのためのインテリジェントなプロセスオートメーションに関する緊急性は高まる一方なのです。企業は、自動化を使ったコスト管理を必要としています。よってUiPathは、ターゲット市場に徐々に普及し成長していく中で、継続的な価値をもたらして行くことになるでしょう。それをIPO直前やIPO段階での投資家たちが実感したのです。彼らは忍耐強く待つでしょう」。

つまり彼は強気だということだ。UiPathのIPOについては、PitchBook(ピッチブック)のアナリストであるBrendan Burke(ブレンダン・バーク)氏が、より辛辣な意見を述べている。彼は同社やその市場について以下のように語っている。

RPAは、自動化の需要に応じて急速に拡張されてきましたが、依然として限定的なソリューションであり、恒久的な価値を持たない可能性があります。私たちはカスタムスクリプトに依存しているRPAを、AIネイティブな挑戦者からの競争リスクに直面している、クラウドネイティブなAIオートメーションへの橋渡しをするテクノロジーであると考えています。エンタープライズオートメーションの未来は、フロントラインのユーザーに対して、ダイナミックなデータストリームに適応し、正確な判断を下すことができるクラウドネイティブな機械学習モデルを提供するところにあります。UiPathの実装はクラウドネイティブではありませんし、インテリジェントな意思決定のためには約75のAIモデルベンダーとのサードパーティ統合が必要です。さらに同社は、事業のリスク要因として、AIエンジニアの採用能力を挙げています。UiPathが、AIバリューチェーン全体に展開できる能力があるかどうかが、長期的な展望にとって重要となるのです。

このような発言を引用したのは、一般的なアナリストの世界では、失礼な発言であることを恐れるあまり、実際のネガティブな発言を引き出すのが難しい場合があるからだ。

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先を急ごう。先週は紹介しておきたい新しいSPACの案件があった。SmartRent(スマートレント)がFifth Wall Acquisition Corp(フィフス・ウォール・アクイジション・コープ)と合併する。Crunchbaseのデータによれば、SmartRentは非公開時代にRET Ventures、Spark Capital、Bain Capital Venturesなどから1億ドル(約108億1000万円)以上を調達している。

そのため、SmartRentに22億ドル(約2377億3000万円)の株式評価額が与えられた今回のSPAC取引は、VC支援による重要なエグジットとなっている。その投資家向け資料はここから見ることができる。私たちがSmartRentに注目しているのは、やはりSPACを行おうとしているLatch(ラッチ)と同じような分野で活動しているからだ。賃貸住宅のインフラ企業同士の激突となるか?こいつは楽しみだ(LatchのSPAC案件についてはこちら)。

今回の主たる話題の最後になるが、HYPRが先週3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。先週書きたかったけれど書けなかったベンチャーキャピタルのラウンドの中で、同社を取り上げたのは、HYPRがパスワードのない未来を約束しているからだ。そして、シリーズC調達を行ったばかりだが、その目的を達成できるチャンスがあるかもしれない。ああ神様、どうか実現しますように。

その他のことなど

先週は、Y Combinatorを卒業したばかりのメンバーが行った資金調達を取材した。Queenly(クイーンリー)とAlbedo(アルベド)の記事を書いている。読んでみて欲しい。

そうそう、Afterpay(アフターペイ)の最近の業績を見る限り、Buy-now-Pay-Later(後払い販売)の市場は今も急速に成長しているようだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch ExchangePicoInstacartUiPathSPAC

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

世界最大のSPAC合併で配車サービスGrabがNASDAQ上場へ

配車とデリバリーの会社Grab(グラブ)は米国で上場する計画を発表した。シンガポール拠点の同社は配車サービスアプリから、フードデリバリーや送金ができるeウォレットのような金融サースなどいくつかの消費者サービスを提供する東南アジアのスーパーアプリへと進化した。

同社はシンガポール、マレーシア、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムでサービスを展開している。Crunchbaseによると、同社はこれまでにソフトバンクのビジョンファンドなどから100億ドル(約1兆924億円)を調達している。

上場するのにGrabはAltimeter Growth CorpというSPAC(特別買収目的会社)との合併を選んだ。Altimeter Growth Corpは米国拠点の上場している空白小切手会社だ。このプロセスを経ての上場は米国では外国企業であるGrabにとってずっと簡単なものであるはずだ。

取引が完了すれば、世界最大のSPAC合併となる。Grabはティッカーシンボル「GRAB」でNASDAQに上場する。

発表の一環として、Grabはいくつかの指標や大きな数字を明らかにした。2020年の同社のGMV(販売総額)は約125億ドル(約1兆3649億円)だった。そして合併による同社の評価額は396億ドル(約4兆3241億円)となり、同社は現金45億ドル(約4913億円)を保有する。

東南アジアにおけるフードデリバリーとオンデマンドモビリティはまだ成長する余地があるとGrabは考えている。獲得可能な最大市場規模は520億ドル(約5兆6779億円)から2025年までに1800億ドル(約19兆6545億円)に急拡大すると見込む。

「誰でもデジタル経済の恩恵を受けられるようにアクセスを広げるという目的に向けた旅路におけるマイルストーンです。東南アジアが新型コロナウイルスから立ち直るのに、これはより重要な役割を果たします。新型コロナは当社にとっても非常に厳しいものでしたが、事業の耐久性について学ぶところがかなりありました」とGrabの共同創業者でCEOのAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明で述べた。

「当社の多様化したスーパーアプリ戦略はデリバリーを行うドライバーパートナーをサポートし、収益性を改善しながらの成長達成を可能にしました。上場企業となる現在、当社は我々のコミュニティの経済を強化すべく、一層懸命に取り組みます。というのも東南アジアが成功すれば、Grabも成功するからです」と同氏は付け加えた。

Altimeterは自社のスポンサー株に3年の売却禁止期間を設けることに同意した。これはしばらくの間、AltimeterがGrabにコミットし続けることを意味する。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GrabSPACAltimeter Growth CorpNASDAQ東南アジア

画像クレジット:Grab (Image has been modified)

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

米海軍やデルタ航空の「着るロボット」を作る外骨格パワードスーツのSarcosがSPAC合併計画を発表

VCの世界がこのところSPACにとりつかれているのは周知の事実だが、Berkshire-Greyのような特筆すべき例外を除いて、ロボティクスにおいてはこの逆合併手法はこれまで大きな推進力にはなっていなかった。しかし米国時間4月6日朝、ユタ州に本拠を置くSarcos Robotics(サーコス・ロボティクス)は、Rotor Acquisition Corp.との合併によりSPACの時流に飛び乗る計画を発表した。

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この取引により、ロボットエクソスケルトン(外骨格)メーカーと白紙小切手会社の合計企業価値は13億ドル(約1427億円)になる可能性があり、さらに2億8100万ドル(約308億5000万円)のアーンアウトが見込まれる。Sarcosはもちろん、現在、ロボット外骨格のカテゴリーを開拓している数多くの企業の1つだ。James Cameron(ジェームズ・キャメロン)風のヘビーデューティーなデザイン言語以外に、この会社が他社と一線を画している理由は何だろうか?

パートナーシップは常に大きなモチベーションになる。Sarcosは2020年のCESで、かなり大きな提携パートナーを確保していた。Sarcosは同イベントで、デルタ航空の大規模な技術プッシュの中心にあった。

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デルタ航空のCEOであるEd Bastian(エド・バスティアン)氏は、6日の発表の中で次のように述べた。「デルタ航空の従業員は、我々の成功を支える重要な要素です。当社は、より健康で安全なチームのために、労働災害を減らすだけでなく、従業員の多様性を促進し、寿命を向上させることに尽力しています。Sarcosの可能性に対する私の熱意は、(2020年に提携を結んで)以来高まるばかりです。当社はSarcosと緊密に協力して、日常のヒーローをスーパーヒーローに変え、彼らの仕事をこれまで以上に安全で簡単なものにしていきます」。

2020年当時、デルタはSarcosと提携してこのエクソスケルトンをスタッフの間で試験的に導入すると発表した。その際Sarcosは、この技術を使うことにより200ポンド(約90kg)の荷物を最長8時間、着用者を疲れさせることなく持ち上げられると述べている。これは、ウェアラブルロボットに対するSarcosのより産業的なアプローチに沿ったものだ。

2020年末、同社は「Guardian XO」の商品化に向けて4000万ドル(約44億円)の資金調達を発表した。本日のリリースによれば、2022年半ばの時点で同システムを納入し、その次には遠隔操作型の「Guardian XT」を発売する予定だという。

軍事資金がロボット産業の大きな原動力であり続ける中、2020年10月、Sarcosは米海軍から補助金を受け、XOシステムの遠隔操作版を製造することになった。

関連記事:パワードスーツ「Guardian XO」の市場投入でSarcoが42億円を調達

カテゴリー:ロボティクス
タグ:Sarcos外骨格SPAC米海軍デルタ航空

画像クレジット:Sarcos Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

英オンライン中古車販売のCazooがニューヨーク証券取引所にSPAC上場へ、評価額は約7728億円

2020年に大規模な資金調達をした英国拠点の中古車販売ポータルCazoo(カズー)はSPAC経由でさらなる成長を追求する次の企業となる。同社は3月29日、ヘッジファンドの第一人者Dan Och(ダン・オック)氏がGlenn Fuhrman(グレン・ファーマン)氏らとの提携のもとに設立した特別買収目的会社AJAX Iとの事業合併を経てニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場すると発表した。

この取引によるCazooの価値は70億ドル(約7728億円)で、ここには追加の新規資金調達16億ドル(約1766億円)が含まれる。新規資金の内訳は、AJAX Iからの現金8億500万ドル(約888億円)と、AJAXのスポンサー並びにCazooの投資家D1 Capital Partnersがリードした8億ドル(約883億円)のPIPE(上場企業の私募増資)だ。PIPEにはAltimeter、BlackRock、Counterpoint Global (Morgan Stanley)、Fidelity Management、Marcho Partners、Mubadala Capital、Pelham Capital、Senator Investment Group、Spruce House Partnershipといった新規・既存投資家も参加する。取引はすでにCazooとAJAX Iの取締役会に承認された。

「今回の発表は、欧州でのクルマの買い方を変革し続ける当社の取り組みにおいて新しい主要マイルストーンです」とCazooの創業者でCEOのAlex Chesterman OBE(アレックス・チェスターマン)氏は声明で述べた。「当社は、デジタル化がかなり浸透していない最大の小売部門で最も包括的で完全に統合されたサービスを創造しました。この取引は、当社の成長を支える資金として約10億ドル(約1103億円)をもたらします。欧州中の消費者に最高の車購入エクスペリエンスを急速に拡大して提供するために、ダンそしてAJAXのチームと提携することをうれしく思います」。

Cazooを創業する前から有名だったチェスターマン氏はCazooのCEOとして残る(同氏はAmazonによって買収され、NetflixのライバルAmazon Prime Video構築に向けた最初のステップとして使われたLoveFilm、それから不動産販売サイトZooplaも創業した)。

「豊作の年」を経て、Cazooは今回の取引による資金を引き続き欧州でのサービス拡大に使う計画だ。2020年同社の売上高は300%成長し、2021年は年間売上高10億ドルに向けて順調だ。主に中古車販売をベースとするビジネスモデルで第一四半期の年間売上高ランレートは6億ドル(約662億円)だが、車サブスクサービスなど売上源を多様化させている。

Cazooの取引は、資本構成表にたっぷりと資金を持っている非公開企業にとって、従来のIPOよりも手っ取り早く次のステップを取るのにユビキタスなSPACが選択肢となることを示している。IPOは時間がかかり、これは企業の財務や時間の制約に合わないかもしれない。あるいは買収されることもあるかもしれない。また、Cazooの取引は米国外に拠点を置く企業が米国の証券取引所に上場するのに、どのようなルートを取っているかも示している。Cazooの場合、そうすることで英国で上場するよりも幅広い投資家にアクセスできるようになる。

SPACとの合併は、ただ資金支援者という以上に、投資家側のレバレッジが財務面、そして戦略面でのコントロールを企業にもやたらすことになる。実際、ダン・オック氏はCazooの役員会に加わる。

「Cazooでアレックス、そしてひと際優れたチームと提携する機会を得ることを非常に喜んでいます。アレックスは欧州で最も成功している連続起業家の1人であることを証明し、このワールドクラスのチーム、ブランド、そしてプラットフォームの成長をサポートすることを誇りに思います」とオック氏は声明で述べた。「Cazooのイノベーション、データ、顧客満足への絶え間ない注力で、同社がこの巨大で手つかずのマーケット機会において引き続き先頭を行くことは間違いなく、Cazooの役員会に加わってアレックス、そして彼のチームと働くことを楽しみにしています」。

しかし合併は、彼らに取って長期的に強固な事業になると思われるところに取り組む別の方法でもある。

「Cazooの長期投資家として、そして同社の経営陣を信じる者として、我々は引き続きCazooの公開企業としての成長をサポートし続けることをうれしく思っています」とD1 Capital Partnersの創業者Daniel Sundheim(ダニエル・サンドヘイム)氏は声明で述べた。「Cazooは戦略の資金を賄うのに多くの選択肢を持っていました。AJAXと合併してダン・オック氏やその他の有名なパートナーに加わるという決断は良いものであり、同社や同社の未来にとってポジティブな意味をもたらすでしょう」。

Cazooの場合、適切な時に適切な場所にいたようだ。

新型コロナウイルスパンデミックでは、英国の人々は店頭での買い物を控え、また他人との接触も減らし、そして移動するのに公共あるいは混み合う交通手段より自分の車を使うことを選んだ。Cazooはデジタルプラットフォームを通じて2万台超のクルマを販売・納車した。

同社は販売ポータルと、現在展開している車サブスクサービスのような他の事業ラインの両方を拡大する計画だ。サブスクは現在、英国、ドイツ、フランスに6000人超の利用者を抱える。同社は2018年に設立され、パンデミック真っ只中だった2020年、4億2700万ドル(約471億円)を調達した。まず2020年3月に1億1600万ドル(約128億円)、そして10月に3億1100万ドル(約343億円)を調達した。2回目のラウンドでは同社の評価額は25億ドル(約2759億円)超で、つまり今回のSPACとの合併では評価額が飛躍的に増加したことを意味する。

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プライベート投資家から多くの資金を調達したスタートアップの数が増え続ける中、SPACはあっという間に常道の選択肢となった。IPOを下調べして早く進められないことが明らかになったのちにSPACに走るいくつかのケースもあった。例えばWitness WeWorkは先週、90億ドル(約9933億円)のSPACを発表したが、2019年にはバリュエーション470億ドル(約5兆1875億円)でのIPOを試み、失敗に終わっていた。

他には何年も事業展開している企業にとってイグジットがオプションとなるが、従来のIPOよりぴったりくるものではないケースもある。実際、デジタル通貨と仮想通貨にかけてきた創業14年のイスラエルの取引プラットフォームeToroも2021年3月初めに評価額104億ドル(約1兆1481億円)でのSPACとの合併を発表した。

関連記事:投資プラットフォームのeToroがSPAC経由で1兆円企業として上場へ

他の企業は上場する手っとりばやい手段としてSPACを使い、スタンダードであるIPOの長期にわたり、かつ費用のかかるプロセスの一部を回避するためにそうしたチャンネルを通じて資金調達している(Cazooもこのカテゴリーに含まれるようだ)。東南アジアの大手オンデマンド乗車プロバイダーGrabもまた米国で上場する計画を加速させるためにSPACを検討していると報道されている。同社は「スーパーアプリ」としてサービスを拡大してきた。

究極的には、何十億ドル(何千億円)という評価額は、これから実行される、あるいはすでに実行された多くのSPACを通じて今後も生み出される一方で、SPACを選んだ企業がどのように長期に上場を維持し続けるのかは不透明だ。特にプライベート投資家は短期的な利益のために数億ドル(数百億円)を投入するとき、こうしたハイスケールだがおそらく(まだ?)黒字でないモデルを長期に支援することに興味があるが、果たして公開市場の投資家がそうなのかはわからない(もちろんSPAC合併した企業が上場会社としてどういいう方向に向かうのかも依然として不透明だ)。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Cazoo中古車SPACイギリス

画像クレジット:Cazoo

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

買収意欲旺盛な宇宙インフラ企業RedwireがSPAC経由で株式公開へ

2021年に発表された一連の宇宙スタートアップSPACに最も新しく仲間入りするのは、2020年にPE会社によって立ち上げられたRedwireだ。同社はここ1年ほどの間に、Adcole Space、Roccor、Made in Space、LoadPath、Oakman Aerospace、Deployable Space Systemsなど、数多くの小規模企業を買収している。Redwireは、SPAC(特別買収目的会社)であるGenesis Park Acquisition Corp.との合併により株式公開し、合併後の会社はニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場すると発表した。

この合併により、Redwireのプロフォーマ企業価値は6億1500万ドル(約671億5000万円)となり、合併後のRedwireの資金には、1億ドル(約109億円)以上のPIPE(上場企業の私募増資)を含め、1億7000万ドル(約185億6000万円)が追加されると予想される。驚くことではないだろうが、Redwireが考えている資金使途の1つは、宇宙分野でのサービス提供を強化するための継続的なM&A活動だ。

Redwireのマンデートは特に新しい宇宙関連企業を狙うことではなく、混み合った宇宙市場の中でも、特定の狭い範囲の専門知識を持つ企業をターゲットとすることだ。軌道上での製造・サービス、衛星の設計・製造・組立、ペイロードの統合、センサーの設計・開発など、同社はさまざまな能力を持っている。アイデアとしては、打上げと地上局のコンポーネントを除く宇宙技術サービスを先端から末端まで提供できる、複数の技術に精通しているインフラ企業を構築しようとしているように見える。

関連記事:ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

急速に発展している宇宙経済に向けて、これはスマートなアプローチといえる。宇宙で事業を展開したいと考えているテック企業は、自社のユニークな価値提案に集中したいと考えており、実際に宇宙に行って活動するという、複雑ではあるがほとんど解決済みのビジネスを外注したいと考えている。他社も同様の方法で市場に対応しており、ロケットメーカーがプロセスの一部を内製化することで、比較的近い将来、ペイロードの顧客は基本的に宇宙に送りたいセンサーや通信機器を持ってくるだけでよく、ロケットメーカーは衛星も含めてその他のすべてを提供することになるだろう。

Redwireは2021年に1億6300万ドル(約177億9000万円)の収益を見込んでおり、収益を生み出す力があることが証明されている。また、現在Redwireの傘下で事業を展開している企業の多くはかなり成熟しており、何年にもわたって営業キャッシュフローが黒字の場合も多い。こうしたことから、公開市場への道としてのSPACは、このような場合には意味があると思われる。しかし、このルートを選択する宇宙企業の頻度と量が増えていることから、全体的には健全な懐疑心を持って見守るべきトレンドである。

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カテゴリー:宇宙
タグ:RedwireSPAC

画像クレジット:NASA

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

不動産テックスタートアップのOfferpadがSPACとの合併により公開へ

Offerpad(オファーパッド)はSPAC(特別買収目的会社)との合併により公開する最新のプロップテック(不動産テック)企業だ。

アリゾナ州フェニックスに拠点を置く同社は米国時間3月18日、Supernova Partners Acquisition Companyと合併し、公開する計画を発表した。合併取引は30億ドル(約3270億円)で評価された。

取引は2021年第2四半期または第3四半期初めに完了する予定。合併後の社名はOfferpad Solutions。ニューヨーク証券取引所で「OPAD」のティッカーで取引される。

2015年創業のOfferpadは、主にiBuyer(オンラインでサインアップした売り手から住宅を購入)として始まり、その後住宅を売買したい人々のためのワンストップショップになるべくプラットフォームの進化を進めてきた。たとえば今では、住宅改修のための貸し付けだけでなく、所有権移転や住宅ローンのサービスも提供している。同社は、長年にわたって負債で調達してきた数億ドル(数百億円)に加え、LL Fundsなどの投資家から1億5500万ドル(約205億円)を株式で調達した。

Offerpadは創業以来3万件の取引を実行し、総取引額で70億ドル(約7630億円)近くを達成したと述べている。同社は売上高について、2020年の見込額である11億ドル(約1200億円)から、2021年は14億ドル(約1530億円)に増えると予測している。ちなみに2016年の売上高は1億ドル(約109億円)だった。またOfferpadは2016年以来「住宅あたりの貢献利益がプラス」であると述べている。

同社は野心的な目標を掲げており、2022年に24億ドル(約2620億円)、2023年に39億ドル(約4210億円)の売上高を予想している。現在、16の市場で活動しており、最近デンバーとナッシュビルをリストに加えた。

この取引のためにSPACを設立したSupernova PartnersはSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏が率いる。同氏はシリアルアントレプレナーでHotwire、Zillow、dot.LA、Pacasoを共同で設立し、ZillowではCEOをほぼ10年務めた。

PIPE(上場企業の私募増資)の投資家には、Black RockとZimmer Partners、全米規模の住宅建設業者であるTaylor Morrison HomeCorpなどが管理するファンドや会社が含まれる。

Offerpadは、Supernovaと提携して公開会社になることで、市場の「より多くを得るために成長を加速」できると述べた。同社は現在、全国の900以上の市や町で事業を展開しており、全国への拡大を計画している。

ラスコフ氏は、Offerpadがオンライン不動産市場での「巨大なピースをつかむのに非常に良い位置にいる」と信じている。

「iBuyingは、世界最大の規模をもつ市場の1つである不動産のほんの表面をなでているに過ぎません」と同氏は声明で述べた。「一般的に、食料品、自動車、製薬などの他の業界とは対照的に、不動産は引き続き極めてアナログですが、消費者はオンラインソリューションを求めています。消費者が多くの取引をオンラインで行うようになり、私たちはオンライン不動産全体が今後数年間で急速に成長する準備が整ったと信じています」。

Offerpadは、Opendoor、Redfin、Zillowなどの企業と競合している。

取引の一環として、既存のOfferpadの株主は、保有株式の100%がそのまま合併後の会社の株式となり、クロージング時に合併後の事業体の約75%を所有する予定だ。Offerpadの創業者でCEOのBrian Bair(ブライアン・ベア)氏は、合併後の会社の議決権の約35%を保有する多議決権株式を受け取る。

2021年3月初め、不動産テックのスタートアップであるDoma(以前はStates Titleとして知られていた)は、SPACのCapitol Investment Corp. Vとの合併により、債務を含めて30億ドル(約3270億円)の評価で公開すると発表した。

関連記事:ハイテク不動業のDomaもSPACブームに乗って3250億円の大型上場を目指す

カテゴリー:その他
タグ:OfferpadSPAC不動産

画像クレジット:manusapon kasosod / Getty Images (Image has been modified)

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

英国のEVメーカーArrivalが米国で2つ目のマイクロファクトリーを建設、UPS向けEVバンを製造

間もなく上場企業となる英国の電気自動車(EV)メーカーArrival(アライバル)が、米国に2番目のマイクロファクトリー建設を予定している。

Arrivalが北米本社としてノースカロライナ州シャーロットを選んでから数カ月が経過している。この新しいマイクロファクトリーは、空港に近いウェストシャーロットに位置し、サウスカロライナ州のロックヒルにある米国1番目の工場から約32マイル(約51.5km)離れた場所となる。

同社CEOのMike Ableson(マイク・アベルソン)氏によれば、今回発表されたマイクロファクトリーは、米国の顧客向けに2種類のEVバンを生産し、車両群オペレーターのためのゼロエミッションの選択肢を広げることになるという。2022年の第3四半期までには生産を開始する予定だ。Arraivalによれば、この生産センターには約4120万ドル(約45億円)を投資し、年間最大1万台の電動デリバリーバンを組み立てる能力を持つようになる。

シャーロットに新設されるマイクロファクトリーで生産される車両の多くは、UPSの北米での車両群に入ることが期待されているという。UPSは、米国および欧州で、最大1万台の車両をArrivalから購入することを約束している。

一方、ロックヒルにある米国最初のマイクロファクトリーでは、EVバスの組み立てを行う。

Arrivalは、2020年1月に現代自動車と起亜自動車から受けた1億1千万ドル(約120億2000万円)の投資を発表するまで、約5年間秘密主義の電気自動車スタートアップだった。それ以降の14カ月の間に、同社は計画やパートナーについて発表してきたが、そのストーリーのクライマックスは、2021年2月に行われた、特別買収目的会社(SPAC)CIIG Merger Corp.と合併し株式公開企業となる発表だ。SPACとの合併は、2021年の第1四半期に完了する予定だ。

Arrivalのビジネスモデルは、マイクロファクトリーを中心としたもので、化石燃料を使用する商用のバンやバスなどと比較して、価格競争力のある電気自動車を生産することができると主張している。同社によれば、マイクロファクトリーは、従来の工場に比べて設備投資が少なく、設置面積も小さくて済むからだ。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Arrival電気自動車SPAC

画像クレジット:Arrival

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:sako)

投資プラットフォームのeToroがSPAC経由で1兆円企業として上場へ

各種の資産管理と投資のプラットフォームでRobinhoodのライバルであるeToroがSPAC(特別買収目的会社)を利用する上場を行うと米国時間3月16日に発表した。

eToroとFinTech Acquisition Corp. Vとの合併は104億ドル(約1兆1300億円)という巨額となる見込みだ。合併は第3四半期に完了し、新会社はeToro Group Ltd.としてNASDAQに上場される予定だ。

「資本市場のオープン化」をモットーとするeToroがイスラエルで設立されたのは14年前に遡る。同社は2年前に米国にサービスを拡大し、その後、急速な成長を遂げた。2020年にはeToroは500万人以上の新規登録ユーザーを獲得し6億500万ドル(約66億円)の収入を計上した。これは前年比で147%の成長となる。2021年1月だけで新たなユーザーを120万人以上の増やしており、このプラットフォーム上での取引は7500万回以上あったという。月次登録者数平均は2019年には19万2000人だったのに対して2020年に44万人と倍増している。

eToroによれば「我々のプラットフォームの成長は、デジタル資産管理プラットフォームの台頭、個人投資の増加、仮想通貨のメインストリーム化多くの長期的なトレンドを追い風としてている」という。同社は最近の小口投資への関心の高まり、特に一般個人投資家向けアプリ、サービスの普及の恩恵を受けていることは間違いない。最近も機関投資家がいわゆる「ミーム株」の急伸に不安を感じてショート(空売り)ポジションを取った。これに対しRedditの一部ユーザーがGameStop株にさらなる高値誘導策をぶつけて機関投資家と正面から対立したことが注目を浴びた。

関連記事:GameStop株を買いまくる個人投資家たち、ボスのボスのボスのボスとの話

eToroはソーシャル株式取引と仮想通貨にまたがるプラットフォームだが、2019年11月に暗号資産のポートフォリオ管理アプリであるDeltaを買収している。eToroはよればこのプラットフォームは公的規則に従って暗号資産を提供するパイオニアの1つだという。規制に適合するアプリは英国、ヨーロッパ、オーストラリア、米国、ジブラルタルで提供されている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:eToroSPAC

画像クレジット:Harry Murphy / Contributor / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:滑川海彦@Facebook

新たな1歩を踏み出すロボティクススタートアップたち

ロボティクス業界が2月最終週にSPACの世界への第一歩を踏み出した。Berkshire Greyが第2四半期までに株式を公開する計画を発表したのだ。これまで何度も議論してきた逆合併ルートを利用した場合の大きな問題点はさておき、さまざまな理由から同社は次の大きな一歩を踏み出すには理想的な候補といえる。

関連記事:ピックアンドプレースロボットBerkshire GreyがSPACを通じての上場を発表

第1にBerkshire Greyは高い実績を持ち、また注目度も高い。2020年、まだ全国がロックダウンに見舞われる前、筆者は同社の本社を訪れたのだが、同社の計画はすでにかなり積極的で、当時調達したばかりの2億6300万ドル(約281億円)のシリーズBの追い風も受けていた。どこの小売業者もAmazonという強敵に対する競争力を維持する方法としてすでに自動化に目を向けている。

Amazonはすでに世界中のフルフィルメントセンターに莫大な数のロボットを展開している。最近耳にした数字は20万台だが、それは2020年初頭の数字のため、それ以降間違いなく増えていることだろう。Locus RoboticsのCEOであるRick Faulk(リック・フォーク)氏によると「Amazonという名の企業以外なら誰にでも投資して、競争できるよう支援をしたいと考えている投資家が複数存在する」とのことで、昨今、「Amazon対世界」というかたちは普遍的な考え方になっているようだ。

画像クレジット:Berkshire Grey

巨額の資金を調達するという得意技はさておき、Berkshire Greyは工場をゼロから自動化したいと考えている企業にとって頼れる味方である。同社によると現在の倉庫の自動化状況は5%程度だという。これは以前に筆者も目にしたことのある数字であり、確かに多くのチャンスを示唆している。同社のサービスは完全自動化の提供ではないが、かなりフル機能のソリューションとなっている。

シリーズEで1億5000万ドル(約160億円)を調達したばかりのLocus Roboticsは、それとは真逆のアプローチで勝負している。Fetchのような企業と同様、同社は自動化へのプラグ・アンド・プレイ(PnP)アプローチを提供しており、顧客は初期投資が少なくすむため導入へのハードルが低い。また、テクノロジーの実装のために長期間倉庫を閉鎖する必要がないため、契約ベースの顧客や季節的なニーズにはより適切なソリューションである。

関連記事:フレキシブルな倉庫自動化ソリューションのLocus Roboticsが欧州、アジア進出に向け約159億円調達

Locus RoboticsはRaaS(ロボット・アズ・ア・サービス)モデルを採用して技術を展開している。これは最近業界でもよく耳にするようになった名前だが、HaaS(「H」はハードウェア)モデルと同様、同社は超高額なマシンをそのまま販売するのではなく、基本的には貸し出しを行っている。これもまた導入へのハードルを下げるための方法であり、またロボット企業には継続的なサービスアップグレードを提供する機会を与えるものだ。

画像クレジット:Future Acres

これは、ふいに姿を現した南カリフォルニアのアグテックスタートアップFuture Acresが模索しているモデルである。Wavemaker Partners(これは食品向けロボット会社Misoも立ち上げた企業だ)からスピンアウトした同社はまだ初期段階にあるが、同社はシードインベストとしてクラウドファンディングによる資金調達も目指している。このようなルートを取るロボット企業はあまり見たことがないので、今後の展開が気になるところだ。

関連記事:Future Acresがブドウ収穫を助ける自律農作物運搬ロボット「Carry」を発表し起ち上げ

ロジスティクスと同様に、アグテックはロボット投資におけるかなり巨大なカテゴリーになってきているようだ。FarmWiseは2019年に1450万ドル(約15億5000万円)のラウンドを発表し、他社の一歩先を行っていた(総額2000万ドル超え)。ベイエリアを拠点とする同スタートアップは同週、草取りロボットに農薬散布機能を追加している。

関連記事:全自動除草ロボットサービスのFarmWiseが薬物散布機能を追加

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAの火星探査機「Perseverance」は今週、ロボティクス界で大きく取り上げられたが、ジェット推進研究所(JPL)のモットーである「Dare mighty things(偉大なものに挑戦する)」が書かれたパラシュートで着陸した探査機は、これまでで最も美しい火星の画像を見せつけてくれた。

一方、MSCHFのライブストリームはこれとはやや異なるものとなった。しかし、幾度にもわたるフィードの中断を除けば、40回目ともなる同社の試みは期待通りの結果に終わったと言えるのではないだろうか。Spotの後部にリモートコントロール式のペイントボールガンを搭載すると発表する前に、Boston Dynamicsはこの動きを非難する声明を発表している。

弊社の使命は、社会にインスピレーションや喜び、ポジティブなインパクトを与える、驚くべき能力を持つロボットを創造し、提供することです。弊社はお客様がロボットを合法的に使用する意思があるかどうかを確認するため細心の注意を払っており、販売を許可する前にすべての購入依頼を米国政府の拒否者リストと照合しています。

画像クレジット:MSCHF

MSCHFは社名が明かされる前から注目を浴びていたようだ。少なくともロボット工学の未来についての会話に火をつけたという点で、今回の行為は成功したと言えるだろう。Boston Dynamicsは同社のロボットが時に人々をゾッとさせていることを分かっている。さまざまなロボットがコントゥアーズの音楽に合わせて踊る様子を撮影した動画は、当然バイラル動画となって世間を騒がせた。

Boston Dynamicsはとりわけ「Black Mirror(ブラック・ミラー)」のような番組のディストピア的な見方に対して否定的である。もちろんペイントボールガンは凶器ではないものの、現時点では世論もまた重要だ。同社の担当者によると「お化け屋敷でSpotを使いたいというお客様の申し出もお断りしました。弊社のテクノロジーを使って人々を怖がらせるということは、弊社の利用規約には含まれていません。同製品が人々にとって有益なものとなるということがこのケースでは想定できなかったため、販売はお断りしました」という。

アメリカ自由人権協会(ACLU)は2020年、マサチューセッツ州警察が現場でSpotを使用している様子が公開された後、こういったケースに対しての懸念を示している。そして今週、ニューヨーク市警はブロンクスの家宅侵入事件の現場で再びSpotロボットを配備した(新しい塗装と「Digidog」という名前の理由は言うまでもない)。警察にどういった感情を抱いているかによって、この行為に対する捉え方や意見は違うものとなるだろう。

関連記事:Boston Dynamicsのロボットの警察演習映像に関し市民団体が情報請求

確かに警察は何十年も前から爆弾処理のためにロボティクスを活用しており、ロボット業界の多くの企業と同様に、Boston Dynamicsが国防高等研究計画局(DARPA)から初期資金提供を受けたのも事実である。現在のSpotは戦争用マシンというほどのものではないものの、ロボット進化の現段階でこのようなトピックは話し合われるべきものなのではないだろうか。なんと言っても世界には軍用ドローンが10年以上も前から存在しているのだ。

これは非常に重要な倫理的トピックである。ロボットが世に出た後のロボットメーカーの責任も当然重要だ。Boston Dynamicsはロボットを販売する際にデューデリジェンスを行っているが、ロボットを販売した後も責任を負うのだろうか?その質問にすぐ答えてくれる人は現在どこにも存在しない。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:SPAC

画像クレジット:Locus Robotics

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

ハイテク不動業のDomaもSPACブームに乗って3250億円の大型上場を目指す

サンフランシスコに拠点を置くハイテク不動産事業のスタートアップ、Doma(以前のStates Title)はCapitol Investment Corp. Vと合併することによって上場する計画を発表した。Capitol VはSPAC(特別買収目的会社)であり、買収額は株式、社債を含めて30億ドル(約3250億円)規模となるという。

CEOのMax Simkoff(マックス・シムコフ)氏は、2016年9月にく「住宅ローンを即時に成立させるテクノロジー主導ソリューション」を生み出すことを目指してこのスタートアップを設立した。当初は不動産取引にともなくリスクをカバーするタイトル保険の処理を主な目的としていたためためStates Titleという社名だった。しかし契約処理全般、またこれにともなくエスクロ(預託保証)など「不動産取引のあらゆる側面」を扱うことなってため事業内容に拡大し、社名も変項した。

Domaは特許を取得済みの機械学習モデルを開発した。このテクノロジーは、タイトル処理にかかる時間を従来の5度からわずか1分程度に短縮した。これにより住宅ローンの契約に関する期間を苦痛きわまりない「50 日以上」からわずか1週間以内に短縮することができた。スタートアップはChase、Homepoint、Sierra Pacific Mortgageなどの有力な金融会社をユーザーに持っており、すでに80万件以上の不動産取引をクロージングしてきたという。

社名の変項は上場後の将来を考慮に入れたもので、タイトル保険以外に住宅ローンやその保証などの分野に事業を拡大する計画だ。

上場によって得られる資金は「企業規模の拡大、新たな市場への参入、新しいプロダクト開発」などへの投資を継続、拡大するために利用されるという。

PIPE(上場資金を私募により拠出した投資家)にはBlackRock、Fidelity Management & Research Company LLC、ソフトバンクグループのメンバーであるSB Management 、Gores、 Hedosophia、Wells Capital.が運用するファンドやアカウントなどが含まれている。またDOMAの以前からの株主であるLennarもPIPEに参加している。Ziillowの共同ファウンダーで元CEOのSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏も個人としてPIPEに加わっている。

さる2021年2月中旬、DomaはHSCM Bermudaから社債による1億5000万ドル(約162億8000万円)の資金調達を完了したことを発表した。HSCMは2020年5月にDomaに対して6億2300万ドル(約676億3000万円)の評価額で1億2300万ドル(約133億5000万円)のシリーズCの大型ラウンドによる投資を行っている。

更新:Domaのビジネスの現状

同社の成長は2019年から2020年にかけては緩やかなものだった。GAAP基準による収入は3億5810万ドル(約388億7000万円)から4億980万ドル(約540億4800万円)に増加した。不動産エージェントに支払った保険料を除いた収入(留保保険料および手数料)は2019年に1億7980万ドル(約195億1000万円)に落ち込んだが、2020年に1億8970万ドル(約205億9000万円)になると予想している。2020年の数字は決算報告では「推定」と警告されている(ただし2021年3月の時点では2020年の確定数字は「推定」に非常に近いものになるとしているので概数として利用するのはさしつかえないはず)。

他のいくつかの指標もネガティブだ。Domaは調整後EBITDAが2021年に赤字幅が2020年の1900万ドル(約20億6000万円)から6660万ドル(約72億3000万円)に拡大すると予想している。しかし2023年については大幅に改善されると楽観的な見通しを立てている。

同社では2021年のGAAPベースの収入は4億1640万ドル(約451億9000万円)エージェントへの支払い後は2億2640万ドル(約245億7000万円)という緩やかな成長を見込んでいる。2022年と2023年にはさらに大きな大きな成長を予測している。だいぶ先の予想なので今のところこれらの数字は割り引いて考る必要があるだろう。

Domaはまた、2021年には決算数字が悪化すると予想している。保険料・手数料収入に占める調整後粗利益は、2020年の48.3%から2021年は39.5%に低下ししている。GAAP会計基準からだいぶ離れた数字を問題にすることになる点は注意しなければならないが、同社が財務実績の悪化が差し迫っていると公表している点には注目すべきだろう。

2020年のDomaの純損失は3510万ドル(約38億1000万円)だったが、費用支出が同等なら、2021年は1億310万ドル(約142億2000万円)に拡大する見込みだ。SPAC経由で株式上場を目指す他のスタートアップ同様、ビジネスに調整が必要な要素を残したまま市場にデビューすることになる。しかしDomaは新型コロナワクチンの入手が順調になってきたことにより近くパンデミックが抑え込まれると見ている。同社は将来展望については非常に強気だ。

つまり現在はプロップテック(proptech、ハイテク不動産事業)を始めるのに非常に良いタイミングだと考えている。

更新:SPACフェスティバル

Domaは株式公開を目指す多数のプロップテック企業の仲間入りを果たした。最近も16億ドル(約1737億1000万円)のベンチャー資金を調達した不動産仲介ビジネスのスタートアップCompassS-1上場申請書を提出している。

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2020年にベンチャー投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)が創立した白紙委任会社(SPAC)、Social Capital Hedosophia IIはOpendoorとの合併を発表し、これによって非公開の不動産スタートアップであったOpnendoorを上場させた。

Porch.comも2020年12月にSPACを利用して上場している。また日本のSoftBankが支援するシリコンバレーのViewはSPACとの合併で米国時間3月9日にNASDAQに上場している。同社は、テクノロジーを利用した窓ガラスの製造と交換などを行うスマートウィンドウ企業の1つで時価総額16億ドルを目標として上場を開始した(Yahoo Financeでは時価総額はまだ判明していない)。

【追記】トップの小切手のイラストはSPAC企業が事業目標を示さないことから「白地小切手会社」と呼ぶことにかけたもの。

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タグ:Doma不動産SPAC機械学習

画像クレジット:Lawrence Anareta / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo, Alex Wilhelm、翻訳:滑川海彦@Facebook

スウェーデンの自動運転車両開発EinrideもSPAC上場を検討中か

スウェーデンの自動運転車両開発スタートアップEinride(アインライド)は追加資金を模索することで、Oatly、Lidlとの提携で火がついた勢いを継続させようとしているようだ。

Einrideの計画に詳しい人物によると、同社は新たな資金ラウンドで7500万ドル(約81億円)を調達しようとしており、同時に特別買収目的会社(SPAC)との合併を通じての上場の可能性も検討しているという。

未上場の企業と合併する上場企業というメカニズムのSPACは、モビリティの電動化に注力しているスタートアップによって米国の資本マーケットで存在感を増している。

Nikolaのような企業の上場の成功例(疑わしい主張にもかかわらず)がSPACブームに火をつけた。Canoo、Fisker Inc、ChargePoint、Lordstown Motorsなどは、2020年SPAC経由で上場した米国拠点のEV企業の一例だ。

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新しく作られたSPAC企業と異なり、Einrideはいくつかの基礎を持っている。同社はすでにスウェーデンのオーツミルクメーカーOatlyとの提携を通じて自社のテクノロジーの試験を行った。

Oatlyは2020年10月に、スウェーデンにある生産施設からの出荷にEinrideの電動トラックの使用を開始した。両社の声明によると、これまでにトラックは8600km超走行し、その結果、ディーゼルトラックに比べて1万500kgの二酸化炭素の排出を抑制した。

「持続可能性は我々が行うすべての根幹です。全面的に二酸化炭素排出を抑制するために懸命に取り組みます。ここには輸送にかかる二酸化炭素排出も含まれており、だからこそ電動車両への移行を進めています。電動車両の活用により輸送ルートでの二酸化炭素排出を87%抑制できます」とOatlyのサプライチェーン担当ディレクターSimon Broadbent(サイモン・ブロードベント)氏は当時の声明文で述べた。

Oatlyとの提携は始まりにすぎなかった。その提携が終了すると、Einrideは食品配送・ロジスティック会社Lidlや電気機械メーカーElectroluxといった他のスウェーデン企業とすぐに提携した。

大手自動車メーカーはそれぞれに電動と自動走行の計画を持っている。自動運転テクノロジーのデベロッパーArgoはFordとVW Groupからの投資のおかげでいまや企業価値は75億ドル(約8166億円)だ。VWのTraton Groupは2019年に発表した22億ドル(約2395億円)の投資を通じて低排出と電動化を推し進めている。

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Daimler、Paccar、Volvoもそれぞれ計画を持っている

それは自動走行の電動化された輸送に注がれている資金のうわべを撫でているにすぎない。もちろん、Teslaもセミトラックでこのゲームに参加している。そして中国ではPlus AIがManbang、Suning、FAW Jiefangの数多くの車両を自動化している。

これらの資金のすべては自動走行の電動化された車両マーケットでのシェアを獲得するのが目的だ。コンサル会社McKinseyはこの手の車両がトラック産業で1000億ドル(約10兆8876億円)超を節約すると予測した。2600億ドル(約28兆3075億円)の米国のトラック市場だけでもかなり大きな潜在的機会だ。McKinseyによると、世界規模では事業者はトラック輸送に約1兆2000億ドル(約130兆6500億円)を費やしている。

業界にもたらされるメリットは財務上のものだけではない。トラック輸送は陸上、鉄道、航空の運輸を含む輸送部門における温室効果ガス排出量の大きな部分を占める。2016年にトラック輸送と交通は世界の温室効果ガス排出の約24%を占めた。その数字は着実に大きくなってきている。

輸送部門からの二酸化炭素排出の削減は、環境上持続可能な未来に向けた大きな一歩となるはずだ。

ベンチャー投資家がこうした企業へ投資しようと先を争うのは不思議ではない。EinrideはEQT VenturesとNordicNinja VCに頼っている。NordicNinja VCはパナソニック、ホンダ、オムロン、国際協力銀行などが支援しているファンドだ。Ericsson Ventures、Norrsken Foundation、Plum Alley Investments、Plug and Play Venturesからの出資も含め、Einrideはこれまでに3200万ドル(約35億円)を調達している。

カテゴリー:モビリティ
タグ:EinrideSPACスウェーデン自動運転資金調達

画像クレジット:Einride

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星コンステレーションのSpire Globalが約1712億万円のSPACを通じて上場へ

米国時間3月1日、2つの宇宙SPACがやってきた。最初がRocket Lab、次がSpire Globalだ。Spire Globalは100機以上の人工衛星コンステレーションで可能になるデータとその分析を提供するSaaSを自称している。SPACは宇宙スタートアップ市場の圧力放出バルブであることを本質的に証明し、ベンチャーのサポートは儲かるとする連中の、鳴り物入りのエグジットへの期待に応えているのだ。

関連記事:ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

Spire Globalは2012年にデビューし、これまで約2億2000万ドル(約235億4000万円)を調達している。同社はNavSight Holdingsと呼ばれる特殊目的買収企業(SPAC)と合併して、ニューヨーク証券取引所に「SPIR」というティッカーシンボルでデビューするつもりだ。合弁後の企業は取引終了後の公式の企業価値が16億ドル(約1711億70000万円)になる予定で、期日は2021年夏を目指している。

この取引で同社には4億7500万ドル(約508億2000万円)が入る。それにはTiger GlobalやBlackRock、HedosophiaなどのPIPEも含まれる。Spireの既存株主は合併後の企業の約67%を保有することになる。

Spireの衛星ネットワークは顧客に「Space-as-a-Service」を提供し、各自が自分のペイロードで運用する。デベロッパーが自分のソフトウェアにAPIを統合して、コンステレーションが集めたデータにアクセスできる。ビジネスモデルはサブスクリプション方式で、データは顧客が宇宙で入手生成したものでもよい。ただしそれは契約とコミットメントから1年以内でなければならない。

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Spire Globalの既存の投資家はRRE VenturesやPromus Ventures、Seraphim Capital、Mitsui Global Investmentなどで、最新のラウンドは投資でなく融資だった。同社は衛星の打ち上げをRocket Labに依頼する、こちらも3月1日のSPACラッシュ仲間だ。同社が運用する衛星は小型のキューブサットで、使われる打ち上げ機はSpaceXのFalcon 9やロシアのSoyuz、ISROのPSLV、日本のH-2B、ULAのロケット、Northrop GrummanのAntaresそれに国際宇宙ステーションも使われる。

Spireの始まりは実にささやかなもので、10万ドル(約1070万円)の資金を集めたKickstarterキャンペーンにまで遡る。

カテゴリー:宇宙
タグ:Spire GlobalSPAC衛星コンステレーション

画像クレジット:Spire Global

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

SPAC(特別買収目的会社)の波が宇宙開発スタートアップにも押し寄せている。現在流行しているSPAC合併が広がる前、この業界のエグジットするペースは比較的緩やかなものだった。Rocket Labは最新のSPAC合併例となり、最も注目すべきものとなりそうだ。VectorというSPACとの合併によりティッカーシンボル「RKLB」でNASDAQに上場する。合併は2021年第2四半期に完了する見込みだ。

ニュージーランドで創業されたRocket Labは本社をロサンゼルスに移したが、それでもニュージーランドでロケットを打ち上げている。合併による形式上の企業価値は41億ドル(約4370億円)、VectorやBlackRockなどからの4億7000万ドル(約500億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を通じて総現金残高は7億5000万ドル(約800億円)となる。Rocket Labの既存株主は合併会社の総株式の82%を保有する。

ロケット打ち上げ企業であるRocket Labは2006年に創業され、創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏が率いてきた。2013年にカリフォルニアに本社を置き、同社にとって米国では初の打ち上げ施設をバージニア州ワロップス島に設置した。すばやく、フレキシブルな打ち上げオプションを念頭に、同施設は成長中の小型衛星マーケットに対応すべくデザインされている。

Rocket Labは、国家安全保障のペイロードなど米政府に代わってロケットを打ち上げてきた。同社の成長にとってこれは売上高を確保する主要な機会だ。現在、同社は受注残を抱えており、調整後で2023年には「EBITDA黒字」となる見込みで、2024年までにキャッシュフローは完全に黒字に、2026年までに売上高ランレートは10億ドル(約1070億円)を超えると予想されている。

同社はさまざまな方法で頻繁に打ち上げる能力を高めることに注力してきた。自動化された大規模なカーボンファイバー生産能力にフォーカスし、生産能力を着実に向上させている。同社はまた、前述のどおり米国に打ち上げ場を設置し、同社所有のニュージーランドの打ち上げ場に次ぐ2つ目の発射台として間もなく開所する。それから部分的に再利用可能なロケットElectronの製造にも取り組んでいる。「これはより早く打ち上げを行うのに貢献する」とベック氏はいう。

最後に、同社は8トンまでのペイロードを搭載することができるNeutronという従来のものより大型の打ち上げロケットも発表している

カテゴリー:宇宙
タグ:Rocket LabSPAC

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

SPACへの資金殺到が続く中、「市場はいつまで吸収できるのか」との疑問の声高まる

最近テクノロジー市場ではビッグニュースが続いたが、SPAC(特別買収目的会社)による上場方式は依然注目を集めている。SPACは資金を募って企業を設立、上場した後に未公開企業を買収し、結果的にそのスタートアップの上場を図る手法だ。事業目的を特定しないためSPACは白地小切手会社とも呼ばれる。一部の関係者はこの仕組に懐疑的になり始めているが、いわば「パーティーは始まったばかり」で会場には客が次々に詰めかけておりバンドは大音量で演奏している状態だ。なるほどパーティーはこれからますます盛り上がるのかもしれないが、誰かが部屋の隅でゲロ吐いているのではないか?

SPACがブームなのは確かだ。Facebookの(なにかと物議をかもした)共同ファウンダー、エドゥアルド・サベリン(Eduardo Saverin)氏が共同ファウンダーのベンチャーキャピタル、BCapitalは、SPACのための3億ドル(318億円)のSPACの上場を申請した。

フィンテック起業家のMike CagneyはSoFIのファウンダーで、最近ではホームエクイティとブロックチェーンの両方の分野にまたがるフィンテック企業、Figureを創立しているが、SPACのために2億5000万ドル(265億円)の資金を調達している。 マイケル・デルでさえ家族資産管理会社をつうじてSPACのために5億ドル(532億円)を調達することを発表した。

Renaissance Capitalよれば、最近16のSPAC企業が総額34億ドル(3600億円)を調達したという。上場にはSPACを利用したというパイプラインを通じて厖大ないキャッシュが流れこみ続けており、45のSPACが上場を申請している(従来方式の上場申請は10件だ)。 Yahoo Newsは「一部のSPAC投資家は火傷する可能性がある」という記事を載せていたが、理由があることだ。

INSEADのアシスタント・プロフェッサー、Ivana Naumovska(イバナ・ナウモフスカ)氏は、ハーバードビジネスレビューで「SPACバブルは間もなく崩壊する」と論じている。

Naumovska氏は「ある手法を採用するケースが増えれば増えるほど注目の度合いが高まり、正当化も進む。これによりその手法がますます普及することを示す研究がある」と指摘した。 しかし、一部の人が主張するようにSPACが問題ある手法なら、広く使用されるようになるにつれて外部の懸念と懐疑論も高ままる可能性もある。 つまりYahoo Financeの記事が生まれることになる。

重要だし、また納得できる点は、ネガティブな評価を受けてきた企業についてのSPAC上場の数が増えるにつれ懐疑的記事が増えてきたことだ。メディアがこうした逆買収による上場に注目すると同時に、規制当局も注目し、投資家、規制当局、メディアが互いにシグナルを送り合えばいかに盛大なパーティーでも急停止を余儀なくされる。

統計をとったわけではないが、現在のSPACに関する報道のほとんどは中立的だ。今のところ強く批判すべき状況にはなく、 たとえ記者個人がSPACに懐疑的であっても、電気トラックのスタートアップのNikolaニコラが詐欺で告発されたなどの例外的な場合を除いて、最終的な判断は保留している。

過去6か月間に資金調達を行ったSPACの多くは、特定の目標を発表していないため判断の材料がない(SPACSは、資金を調達してから目標とする買収を実行するまで2年の猶予がある。スタートアップの上場ができなかった場合は調達した資金は投資家に変換される)。

SPACの必要性を主張する議論は、企業評価額が10億ドルを超えるいわゆるユニコーン企業の多くは株式上場に適しているとする。これは非公開企業の市場に巨額の資金が流れこみきわめて肥大化していることを反映している。

一方、 2019年に上場された際、SPACブームの火付け役となった宇宙観光旅行企業、Virgin Galactなどの逆買収による上場は批判者の予想のような結果にはならなかった。

サー・リチャード・ブランソンは、2004年に低軌道を飛行して乗客に宇宙観光を体験させるためのスタートアップを設立し昨年SPAC経由で上場を果たした。しかしロケット動力による成層圏をわずかに超える弾道飛行の実行は、先週も含めて、何度も延期された。しかし1月以降、2倍以上になった同社の株価は、いわば成層圏上部にとどまっている。発表された決算によれば昨年の収入は事実上ゼロだったが時価総額は現在120億ドル(1.27兆円)だ。

もっとも他のSPACはそれほどうまくいっていない。健康保険のClover Healthは著名投資家、Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)が組織したSPACを通じて、 Virgin Galactとほぼ同様の仕組みで上場された。しかしForbsの綿密な調査報道によれば「事業の存続を脅かすいくつもの脅威」に直面しているという。

同社に対する調査行っているのは司法省、証券取引委員会(SEC)。また空売りを専門とするHindenburg ResearchはCloverが投資家を誤解させるような発表を行ったとして非難している。これに対してCloverは反論しているもの、Forbesの報道によれば、Cloverは株式公開に先立って司法省の調査を受けていることを公表しなかったとして少なくとも三つの集団訴訟に直面している)。

SPAC懐疑派の Steve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏は先月、私(この記事の筆者)との会話で「(SPAC狂騒曲は)まったく理解できないね」と言っていた。Jurvetson氏は著名なベテランのベンチャーキャピタリストであり、SpaceXの取締役でもあるが、「SPACで上場した中にも良い会社はある。誤解しないでもらいたいがSPACがすべて詐欺だとは言っていない」とかたった。だがSPACを利用するのはアーリーステージのスタートアップであり、SECが株式上場で要求する安定した事業見通しという要件を満たすことができない。つまりSPACは出資者にとって事業見通しを示さないでスタートアップを上場させる抜け道になっている。「事業目的を示さないSPACならそれができるる…そういう怪しげな仕組みに利用されている」のだJurvetson氏は指摘した。

Jurvetson氏と同じことを考えているベンチャー・キャピタリストもいるだろうが、今のところ公に言うことを躊躇している。一つにはベンチャー・キャピタリストというものはSPAC経由を含め、どんな方法であろうとポートフォリオ企業を上場させたたるものだからだ。今のところ自分でSPACを創立していなくとも、将来そうする考権利は保留したいだろう。

ニューヨークのBoldstart VenturesのEd Sim (エド・シム)氏は、ここ数ヶ月ではっきり意見を言った数少ないVCの一人だ。質問に対してSim氏は「正直言ってSPACには全く興味がありません。2年後に私やlBoldstartがSPACと関わっているのを見た文句言ってください」と笑った。

多くの投資家は、SPACに関し重要なのは「誰が何を上場させようとしているのか」という個別ケースだと強調している。ディズニーの元幹部でTikTokのCEOとして知られているKevin Mayer(ケビン・メイヤー)がそうだ。 昨日の電話で話したが、Mayer氏は「10年前に比べて現在は企業上場ははるかに少ない。だから上場のための別の方法を提供する必要があります」と述べた。

Mayer氏はSPACに強い利害関係を持っている。 最近、ディズニーで元同僚だったTom Staggs(トム・スタッグス)氏とともに、2社目のSPAC利用上場計画を発表した。2月初めに最初のSPACを使用してデジタル・フィットネスに特化したBeachbodyの新規上場を発表している。ただしMayer氏はすべてのSPACを同じ基準で判断すべきでいないとも主張している。

「これはひどい。ネコもシャクシもSPACに殺到している。この分ではすぐに…風がモミガラを吹き飛ばし、それぞれのケースの真価がわかることnなるんではないか?」といいうところだ。

未公開企業を上場させる引き込む永続的な方法になるにはSPACはさまざまなハードルを乗り越える必要があるだろう。

SPACは熱狂的な支持者を獲得しているが、次第に明らかになっきつつある数字は楽観を許さない。

たとえば先週、法律問題の専門メディア、Bloomberg Lawは、2019年1月1日以降のSPACとの合併による企業上場についての分析を発表した(合併1か月の後までのパフォーマンスデータも利用可能だ )。これによれば、24社中14社が合併完了後1か月の時点で企業価値が下落しており、企業の3分の対前年比で価値の下落を見せている。

「スタートアップの合併後にSPACへの投資家が起こした訴訟の数も増加している」とBloomberg Lawは指摘している。

ともあれSPACが現在作り出されている速度は驚くべきものだ。多くの人々が「いつまで続くのだ?」と考え始めたのは自然だろう。

しかしNaumovska氏はすでにはっきりした予測を抱いているようだ

画像:Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic / Getty Images

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(文:Connie Loizos 翻訳:滑川海彦@Facebook

ピックアンドプレースロボットBerkshire GreyがSPACを通じての上場を発表

資金調達に関して、Berkshire Grey(バークシャー・グレイ)はかなり良い状態にある。2020年、同社がシリーズBで2億6300万ドル(約279億円)もの巨額を調達した後、マサチューセッツ州にある本社を筆者が訪問した際には、非常に意欲的な成長計画について語っていた。しかし、それは新型コロナウイルス感染流行が米国に本格的に上陸する前のことだ。

むしろ、新型コロナウイルスは自動化への関心を加速させた。企業が将来的な感染流行による避けられない影響から身を守る手段を探し始めたからだ。Berkshire Greyは米国時間2月24日、SPAC(特別買収目的会社)によって株式公開する最新のハイテク企業となることを発表した。Revolution Acceleration Acquisition Corp.(レボリューション・アクセラレーション・アクイジション)と合併することで、同社の価値は最大27億ドル(約2859億円)となる見込みだ。

Berkshire Greyはこのニュースに関連したリリースの中で、現在、自動化されている倉庫は5%と記している。この業界に関する議論でよく耳にする数字だ。それはフルフィルメントやロジスティクスを合理化しようとしている小売業者の間で大きな成長の可能性を示すものである。彼らの多くは、Kiva Systems(キヴァ・システムズ)の買収などによって独自のロボティクスの取り組みを大幅に強化してきたAmazonのような企業に対する競争力を保つ手段を探しているからだ。

Berkshire Greyは、完全自動化に近いグランドアップ・ソリューションを提供している。この技術は、Locus(ローカス)やFetch Robotics(フェッチ・ロボティクス)のようなプラグアンドプレイの自動化ソリューションとは一線を画すものだ。これらの会社が提供するものは、企業の自動化をより速く、より安価に行うことに焦点を当てている。Berkshire Greyのエコシステムには、ピッキングやグリッピングから画像センシングまで、さまざまなロボット技術が含まれており、この分野では300件以上の特許を取得している。

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「消費者の期待は変化しており、適切な商品を適切な場所に適切な時間に、可能な限り効率的に届けなければならないというサプライチェーン業務へのプレッシャーが高まっています」と、Berkshire GreyのTom Wagner(トム・ワグナー)CEOはこのニュースと関連したリリースで述べている。「この12カ月間、新型コロナウイルス感染流行はすでに高い変革へのプレッシャーを増幅させてきましたが、今日では企業が変革するかどうかではなく、どのくらいのスピードで変革するかが問題となっています。私たちは今度の取引について非常に興奮しています。これによってBerkshire Greyは成長を加速させ、当社の最先端のロボットソリューションを新規および既存の顧客に提供していくことができます」。

この買収により、Berkshire Greyには最大4億1300万ドル(約438億円)の現金がもたらされることになる。この資金を使って、顧客のバックログに対処し、国際的なプレゼンスを確立することを計画していると、同社では述べている。この件は第2四半期には完了する見込みだ。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:Berkshire GreySPAC

画像クレジット:Berkshire Grey

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)